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特表2023-527462CD22に特異的な抗体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】CD22に特異的な抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230621BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230621BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61P35/02
A61K39/395 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573478
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2021004568
(87)【国際公開番号】W WO2021246637
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0065666
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0169499
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521533463
【氏名又は名称】イノベイション バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】InnoBation Bio Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】キム、キテ
(72)【発明者】
【氏名】キム、スング
(72)【発明者】
【氏名】イ、ビョンウン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CD22に特異的な抗体およびその使用に関し、より詳細には、CD22に特異的に結合する抗体、前記抗体を含むキメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞、およびそれらを含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療のための医薬組成物に関する。
本発明で選択した抗体は、CD22を発現する細胞を特異的に認識することを確認し、上記確立された抗体を用いてCD22を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)およびCAR-T細胞はCD22と効果的に結合する。加えて、CD22と結合したCAR-T細胞の活性化がなされたことを確認した。さらに、本発明のCAR-T細胞はCD22を発現する細胞を効果的に死滅させることが確認されたので、本発明のCD22に特異的な抗体、CD22を標的とするキメラ抗原受容体およびCAR-T細胞はCD22発現に関連する疾患予防または治療用組成物として有用に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(b)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(c)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(d)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;または,
(e)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;からなる
CD22に特異的に結合する抗体またはその断片。
【請求項2】
前記(a)抗体が、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(b)抗体は、配列番号17のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号18のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(c)抗体は、配列番号27のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号28のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(d)抗体は、配列番号37のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号38のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(e)抗体は、配列番号47のアミノ酸で表される重鎖可変部位と、配列番号48のアミノ酸で表される軽鎖可変部位とからなることを特徴とする
請求項1に記載のCD22に特異的に結合する抗体またはその断片。
【請求項3】
請求項1または2に記載のCD22に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1または2に記載のCD22に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項4に記載のベクターで形質転換されたCD22に特異的に結合する抗体またはその断片を産生する組換え細胞。
【請求項6】
CD22結合ドメイン;
膜貫通ドメイン;
共同刺激ドメイン; および
細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain)を含むキメリック抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)で、
前記CD22結合ドメインは、(a)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(b)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(c)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号26のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(d)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号36のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;または
(e)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;であることを特徴とする
キメリック抗原受容体。
【請求項7】
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質であって、
共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40およびICOSからなる群から選択されるタンパク質であって、
シグナル伝達ドメインはCD3ζであることを特徴とする
請求項6に記載のキメリック抗原受容体。
【請求項8】
前記CD22結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間にヒンジ領域がさらに含まれる、
請求項6に記載のキメリック抗原受容体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載のキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか一項に記載のキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか一項に記載のキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むベクターを含む免疫エフェクター細胞。
【請求項12】
請求項1または2に記載のCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;または,請求項11に記載の免疫エフェクター細胞を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項13】
前記CD22を発現する細胞によって媒介される疾患が、リンパ腫、ノンホッキンスリンパ腫(NHL)、攻撃的NHL、再発性攻撃的NHL、再発性遅延性NHL、不応性NHL、不応性遅延性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小型リンパ性リンパ腫、白血病、毛髪細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia)トリンパ腫およびコート細胞リンパ腫からなる群から選択されることを特徴とする,
請求項12に記載のCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項14】
請求項1または2に記載のCD22に特異的に結合する抗体またはその断片を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の診断または監視用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD22に特異的な抗体およびその使用に関し、より詳細には、CD22に特異的に結合する抗体、前記抗体を含むキメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞、およびそれらを含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CD22はシアロアドヘシン(sialoadhesins)と呼ばれるシアリル酸(sialic acid)結合タンパク質ファミリーに属する135kDaの膜糖タンパク質である。 CD22は、B細胞発生の初期に細胞質で検出され、IgDと同時に細胞表面に現れ、ほとんどの成熟B細胞に見られる。 B細胞が活性化されると発現が増加する。 CD22は分化末期に失われ、一般に形質細胞(plasma cell)には存在しないことが報告されている。
【0003】
ヒトのCD22には2種類の同型(isoform)が存在する。支配的な形態(CD22β)は、細胞外領域に7つの免疫グロブリン様(Ig-like)ドメインを含む。 CD22α変異体は、Ig様ドメイン4を欠いており、細胞質ドメインが切り取られた形態を有することができる。単核球、好中球、リンパ球および赤血球へのCD22の結合を遮断する抗体は、第1または第2のIg様ドメイン内に結合することが観察された。
【0004】
CD22の細胞質ドメインは、B細胞抗原受容体の結合に応じてチロシンがリン酸化され、Lyk、Sykおよびホスファチジルイノシトール3-キナーゼと結合する。 CD22の機能は、B細胞活性化閾値(threshold)を下方調節(down-modulation)することである。これはまた、適切なシアロ糖コンジュゲート(sialoglycoconjugates)を含む細胞との結合を介して細胞結合を媒介することができる。
【0005】
CD22は、NHL、急性リンパ芽球白血病(acute lymphoblastic leukaemia: B-ALL)、慢性リンパ芽球白血病(chronic lymphocytic leukaemiaB-CLL)、および特に急性非リンパ球白血病(acute non-lymphocytic leukaemia)ほとんどのB細胞白血病およびリンパ腫で発現される。
【0006】
このようなCD22発現に関連する疾患などの治療または診断のためにCD22に特異的な抗体の開発がなされている。国際公開特許WO1998-041641号は、 V44およびV100位置にシステイン残基を有する組換え抗CD22抗体について開示されており、国際公開特許WO1998-042378号は、B細胞悪性腫瘍の治療のための抗-CD22抗体について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、CD22により特異的に結合する抗体を開発するために、CD22に結合する抗体をスクリーニングし、新規抗体5種(1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3)を確立し、本発明で選別した5種の抗体はCD22抗原と特異的に結合することが確認された。また、本発明のCD22特異的抗体を用いてCD22を標的とするキメラ抗原受容体およびCAR-T細胞を調製し、CD22-CAR-T細胞はCD22と結合するだけでなく、CD22発現細胞(B細胞リンパ腫)を効果的に死滅させることを確認した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、CD22に特異的に結合する抗体を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記抗体をコードするポリヌクレオチド、前記抗体を発現するベクター、前記ベクターで形質転換された組換え細胞を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、前記抗体を含むキメラ抗原受容体、CD22を標的とするキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、それを含むベクター、および前記ポリヌクレオチドまたはベクターを含むキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記抗体またはCD22を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記抗体を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の診断またはモニタリング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、
【0014】
本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位および配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(b)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(c)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(d)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;または
(e)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片を提供する。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態では、前記抗体はモノクローナル抗体、好ましくはscFv(Single-chain variable fragment)であり得る。
【0016】
本発明の好ましい別の実施形態において、前記(a)抗体は、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(b)抗体は、配列番号17のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号18のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(c)抗体は、配列番号27のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号28のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(d)抗体は、配列番号37のアミノ酸で表される重鎖可変部位および配列番号38のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(e)抗体は、配列番号47のアミノ酸で表される重鎖可変部位と、配列番号48のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され得る。
他の目的を達成するために、本発明は、前記CD22に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
さらに、本発明は、前記CD22に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記ベクターで形質転換されたCD22に特異的に結合する抗体またはその断片を産生する組換え細胞を提供する。
【0018】
さらに、他の目的を達成するために、本発明はCD22結合ドメイン;膜貫通ドメイン(transmembrane domain);共同刺激ドメイン(costimulatory domain);および細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain);を含むキメリック抗原受容体を提供する。
【0019】
前記CD22結合ドメインは、本発明のCD22に特異的に結合することができる抗体またはその断片で選択することができる。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質に由来し得る。
【0021】
本発明の別の好ましい一実施形態では、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40およびICOSからなる群から選択されるタンパク質由来であり得、シグナル伝達ドメインはCD3ζ由来であり得る。
【0022】
本発明の別の好ましい一実施形態では、前記CD22結合ドメインのC末端と膜経由ドメインのN末端との間に位置するヒンジ領域(hinge region)をさらに含むことができ、前記ヒンジ部位はCD8α由来であり得る。
【0023】
他の目的を達成するために、本発明はキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0024】
さらに、本発明は、前記キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態では、前記ベクターはプラスミド(plasmid)、レトロウイルス(retroviral)ベクター、またはレンチウイルス(lentiviral)ベクターであり得る。
【0026】
また、本発明は、前記キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドまたはキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含み、前記キメリック抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞を提供する。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態では、 前記免疫エフェクター細胞はT細胞であり得る。
【0028】
別の目的を達成するために、本発明は、CD22を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞;あるいは、CD22に特異的に結合する抗体またはその断片;を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療のための医薬組成物を提供する。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態では、CD22を発現する細胞によって媒介される疾患は、リンパ腫、非ホギキンリンパ腫(non-Hogkins lymphoma: NHL)、攻撃的NHL、再発性攻撃的NHL、再発性遅延性NHL、不応性性NHL、不応性遅延性NHL、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia: CLL)、小型リンパ性リンパ腫、白血病、毛髪細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic )、バケットリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択することができる。
【0030】
本発明の好ましい別の実施形態では、組成物は、CD22を発現する細胞によって媒介される疾患の治療薬を含み得る。
【0031】
さらに、本発明は、CD22に特異的に結合する抗体を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の診断または監視のための組成物を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、CD22により特異的に結合する抗体をスクリーニングし、新規抗体5種(1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3)を確立し、前記新規抗体がCD22抗原と特異的に結合することを確認した。
【0033】
また、上記確立された抗体を用いて製造されたCD22を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)およびCAR-T細胞は、CD22と効果的に結合するだけでなく、CD22と結合したCAR-T細胞の活性化がなされたことを確認した。
【0034】
さらに、本発明のCAR-T細胞はCD22を発現する細胞を効果的に死滅させることが確認されたので、本発明のCD22に特異的な抗体、CD22を標的とするキメラ抗原受容体およびCAR-T細胞はCD22発現に関連する疾患予防または治療用組成物として有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1は、本発明で選択した1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3抗体のCD22に対する結合力をFACSで確認したデータである。
図2は、CD22を標的とするキメラ抗原受容体(CD22-CAR)を発現するレンチウイルスベクターおよびT細胞で発現されたキメラ抗原受容体を示す模式図である。
図3は、CD22-CARを発現するレンチウイルスを用いたCD22-CAR-T細胞の製造方法を示す模式図である。
図4は、1C2、9E9、2G1、および6B3抗体のそれぞれを用いて作製したCD22-CAR-T細胞のCD22結合能を確認したデータである。
図5は、1C2、9E9、2G1及び6B3抗体のそれぞれを用いて作製したCD22-CAR-T細胞の活性化を確認するために、標的細胞の存在下でCD22-CAR-T細胞によるIFNγ発現程度を確認したデータである。
図6は、1C2、9E9、2G1及び6B3抗体のそれぞれを用いて作製したCD22-CAR-T細胞による標的細胞の死滅効果を確認したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
CD22に特異的に結合する抗体
【0038】
本発明は、一態様において、CD22に特異的に結合する抗体またはその断片であって、
(a)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(b)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(c)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号26のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(d)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号36のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;または
(e)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;に関する。
【0039】
本発明において、抗体はモノクローナル抗体であり得る。本発明において、用語「モノクローナル抗体」は単一抗体形成細胞が産生する抗体であり、一次構造(アミノ酸配列)が均一な特徴がある。ただ一つの抗原決定基のみを認識し、一般にがん細胞と抗体産生細胞を融合したハイブリドーマ細胞を培養して産生されるが、確保された抗体遺伝子配列を用いて他の組換えタンパク質発現宿主細胞を用いて生産することもできる。また、上記抗体は、必要に応じてCDR部分を除いた残りの部分をヒト化して用いることもできる。
【0040】
本発明において、用語「CDR」、すなわち「相補性決定領域」は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見られる非近接(non-contiguous)抗原結合部位を意味する。
【0041】
本発明において、「ヒト化抗体」という用語は、ヒトによって産生された抗体のものに対応するアミノ酸配列を所有および/または本明細書に開示されるようなヒト抗体を作製するための技術のうちの1つを使用して作製された抗体である。ヒト化抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合部分を含むヒト化抗体を特異的に排除する。
【0042】
本発明において、用語「抗体」は、2つの全長の軽鎖および2つの全長の重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の断片も使用することができる。抗体分子の断片とは、少なくともペプチドタグ(エピトープ)結合機能を保持している断片を意味し、scFv、Fab、F(ab’)、F(ab’)、単一ドメイン(single domain)などを含む。
【0043】
抗体断片のうち、Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域および重鎖の最初の定常領域(CH1)とを有する構造であり、1つの抗原結合部位を有する。 Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域を有するという点で、Fabとは異なる。 F(ab’)抗体は、Fab’のヒンジ部位のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しながら生成される。 Fvは、重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみを有する最小の抗体断片で、Fv断片を生成する組換え技術は、国際公開特許WO 88/10649、WO 88/106630、WO 88/07085、WO 88/07086およびWO 88/09344に開示されている。二重鎖Fv(dsFv)はジスルフィド結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、短鎖Fv(scFv)は一般にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域が共有結合で連結されている。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインに制限切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)断片を得ることができる)、好ましい。遺伝子組み換え技術によって作製することができます。
【0044】
本発明のCD22に特異的に結合するモノクローナル抗体は、CD22タンパク質の全部または一部のペプチドを免疫原(または抗原)として利用して調製することができる。より具体的には、まず免疫原としてCD22、CD22タンパク質を含む融合タンパク質、またはCD22タンパク質を含むキャリアを必要に応じて免疫増強剤であるアジュバント(例えば、Freund adjuvant)と共に、ヒト以外の哺乳動物の皮下、筋肉、静脈、足凸、または腹腔内に1回以上の注射により免疫感作をさせる。ヒト以外の哺乳動物は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ウマまたはウシ(ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスなどの他の動物由来の抗体を産生するように操作されたトランスジェニック動物を含む)であり、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、鶏やウサギです。最初の免疫から約1~21日ごとに1~4回免疫を行い、最終免疫から約1~10日後に免疫感作された哺乳動物から抗体産生する細胞を得ることができる。免疫をさせる回収及び時間的間隔は、使用する免疫原の特徴等により適宜変更することができる。
【0045】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ(hybridoma)の製造は、ケイラおよびミルシュタインなどの方法(Nature、1975、Vol。256、p.495-497)およびそれに準ずる方法に従って行うことができる。上記のように免疫感作されたヒトを除く動物から採取した脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃からなる群から選択されるいずれか、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生する細胞と自己抗体産生能力のない哺乳動物由来の骨髄腫細胞(myeloma cells)を細胞融合させることによりハイブリドーマ(hybridoma)を製造することができる。哺乳動物は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリ、ウサギまたはヒトであり得、好ましくはマウス、ラット、ニワトリまたはヒトであり得る。
【0046】
細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコールやセンダイウイルスを含む融合促進剤や電気パルスによる方法が用いられ、例えば、融合促進剤を含む融合培地に抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞を約1:1~1:10の割合で浮遊させ、この状態で、約30~40℃で約1~5分間インキュベートする。融合培地には、例えば、MEM培地、RPMI1640培地及びイスコブ修飾ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)を含む通常の一般的なものを用いるとよく、ウシ血清などの血清流は除いておくことが好ましい。
【0047】
前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングする方法は、まず、上記のように取得した融合細胞をHAT培地などの選択用培地に移し、約30~40℃で約3日~3週間培養して、ハイブリドーマ以外の細胞を死滅させる。続いて、マイクロタイタープレート(microtiter plate)等でハイブリドーマを培養した後、上述したヒトを除く動物の免疫反応に用いた免疫原と培養上清との反応性が増加した部分をRIA(radioactive substance-marked immuno antibody)またはELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)などのイムノアッセイ方法を用いて見つける方法によって行うことができる。そして、上記で見つけたモノクローナル抗体を産生するクローンは、前記免疫原に対して特異的な結合力を示す。
【0048】
本発明のモノクローナル抗体は、このようなハイブリドーマを生体内外で培養することにより得ることができる。培養には、哺乳動物由来の細胞を培養するための通常の方法が用いられ、培養物などからモノクローナル抗体を採取するためには、抗体一般を精製するためのこの分野における通常の方法が用いられる。それぞれの方法としては、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、遠心分離、分別沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動等電点電気泳動などが挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて適用される。精製したモノクローナル抗体は、その後、濃縮、乾燥し、用途に応じて液相または固相とする。
【0049】
また、本発明のモノクローナル抗体は、重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNAをそれぞれ、重鎖及び軽鎖の正常領域をコードする既知のDNA(例えば、特開2007-252372号公報)号公報参照)とそれぞれ連結した遺伝子を、PCR法、または、化学合成により合成し、その遺伝子の発現を可能にする公知の発現ベクター(pcDNA 3.1(Invitrogen社販売)等に移植して形質転換体を製造し、CHO細胞や大腸菌などの宿主中で発現させることにより抗体を産生し、このような培養液から、タンパク質AまたはGカラムなどを用いて抗体を精製することにより得ることができる。
【0050】
本発明の具体的な一実施形態では、CD22に特異的に結合する抗体を製造するために、抗CD22抗体を産生するハイブリドーマを調製およびスクリーニングして、CD22に特異的に結合する抗体(scFv)5種を選択し、これをそれぞれ1C2、9E9、2A9、2G1および6B3と命名した。
【0051】
(a)前記1C2抗体は、配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTSYWMNW)、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域(IDPSDSET)及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARWGNYDYVVAMDY)を含む重鎖可変部位および配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域(QNIVHLNGNTF)、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)および配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域(FQGSHVPYT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0052】
具体的には、1C2抗体は、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号9の塩基配列であり、軽鎖可変部位は配列番号10の塩基配列でコードされることを確認した。
【0053】
(b)前記9E9抗体は、配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYAFSIYW)、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域(IYPGDGDT)及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARRGITPWFAY)を含む重鎖可変部位および配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSLLNSSNQKNY)、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域(FAS)および配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域(CQQHYSTPLT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0054】
具体的には、9E9抗体は、配列番号17のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号18のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号19の塩基配列であり、軽鎖可変部位は配列番号20の塩基配列でコードされることを確認した。
【0055】
(c)前記2A9抗体は、配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTTYP)、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域(FHPYNDDT)及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGDYYVSSWYFDV)を含む重鎖可変部位および配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域(QNVGTN)、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域(SAS)および配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域(QQYNSYPLT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0056】
具体的には、2A9抗体は、配列番号27のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号28のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号29の塩基配列であり、軽鎖可変部位は配列番号30の塩基配列でコードされることを確認した。
【0057】
(d)前記2G1抗体は、配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域(GFSLTSYDI)、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域(IWTGGGT)及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域(VPHYYGYAMDYW)を含む重鎖可変部位および配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域(QDINKY)、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域(YTS)および配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域(LQYDNLLT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0058】
具体的には、2G1抗体は、配列番号37のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号38のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号39の塩基配列であり、軽鎖可変部位は配列番号40の塩基配列でコードされることを確認した。
【0059】
(e)前記6B3抗体は、配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTDYN)、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域(IYPYNGGT)及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARLYYYGRTSYWG)を含む重鎖可変部位および配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域(QNVGTY)、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域(SAS)および配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域(HQYDSYPYT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0060】
具体的には、6B3抗体は、配列番号47のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号48のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号49の塩基配列であり、軽鎖可変部位は配列番号50の塩基配列でコードされることを確認した。
【0061】
本発明のCD22に特異的な抗体は、好ましくはscFv(single chain variable fragment)であり、重鎖可変部位および軽鎖可変部位がリンカーに連結され得るように遺伝子組換え技術を介して作製することができる。リンカーは、好ましくは、配列番号51のアミノ酸配列または配列番号52の塩基配列で表され得るが、これらに限定されない。
【0062】
軽鎖可変部位-リンカー-重鎖可変部位で連結された場合、1C2抗体は配列番号53のアミノ酸配列または配列番号54の塩基配列で、9E9抗体は配列番号55のアミノ酸配列または配列番号56の塩基配列で、2A9抗体は配列番号57のアミノ酸配列または配列番号58の塩基配列で、2G1抗体は配列番号59のアミノ酸配列または配列番号60の塩基配列で、6B3抗体は配列番号61のアミノ酸配列または配列番号62の塩基配列で表示することができます。
【0063】
本発明は、別の観点から、前記CD22に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0064】
本発明において、「ポリヌクレオチド」という用語は、一般に、任意の長さに単離された核酸分子(nucleic acid molecule)、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体を指す。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、(1)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などのインビトロ増幅; (2)クローニングおよび組換え; (3)切断およびゲル電気泳動分離などの精製; (4)化学合成などの合成;によって製造することができ、好ましくは単離されたポリヌクレオチドは組換えDNA技術によって製造される。本発明において、抗体またはその抗原結合断片をコードするための核酸は、合成オリゴヌクレオチドの制限断片操作(restriction fragment operation)またはSOE PCRの適用を含むがこれらに限定されず、当技術分野で公知の様々な方法により、製造することができる。
【0065】
本発明はさらに別の観点から、前記CD22に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ベクターで形質転換された組換え細胞に関する。
【0066】
本発明において、「ベクター(expression vector)」という用語は、適切な宿主細胞内で目的遺伝子が発現できるように、プロモーターなどの必須の調節要素を含む遺伝子調製物である。ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターのうちの1つ以上から選択することができる。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは宿主ゲノムとは無関係に複製および機能することができ、または場合によってはゲノム自体に組み込むことができる。
【0067】
さらに、ベクターは、コード領域が適切な宿主において正確に発現されることを可能にする発現制御要素を含み得る。そのような調節要素は当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写またはmRNA翻訳を調節するための他の調節要素を含み得る。発現制御配列の特定の構造は、種または細胞型の機能に応じて変わり得るが、通常、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などの転写開始および翻訳開始にそれぞれ関与する5’非-転写配列、および5’または3’非翻訳配列を含む。例えば、5’非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸を転写および制御するためのプロモーター配列を含み得るプロモーター領域を含み得る。
【0068】
本発明において、用語「プロモーター」は、転写を指示するのに十分な最小配列を意味する。さらに、細胞型特異的または外部のシグナルまたは制裁によって誘導される調節可能なプロモーター依存性遺伝子を発現させるのに十分なプロモーター構成を含めることができ、そのような構成は遺伝子の5’または3’部分に配置することができる。保存的プロモーターと誘導的プロモーターの両方が含まれる。プロモーター配列は、原核生物、真核生物またはウイルスに由来し得る。
【0069】
本発明において、「形質転換体」という用語は、1つ以上の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するベクターが宿主細胞に導入されて形質転換された細胞を意味し、発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を製造する方法としては文献(Sambrook、 J.、 et al .、 Molecular Cloning、 A Laboratory Manual(2版)、 Cold Spring Harbor Laboratory、 1. 74、 1989)に記載のリン酸カルシウム法または塩化カンシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法(electroporation)、電気注入法(electroinjection)、PEGなどの化学的処理方法、遺伝子銃(gene gun)などを用いる方法などがある。
【0070】
前記ベクターが発現される形質転換体を栄養培地で培養すると、抗体タンパク質を大量に製造、分離可能である。培地と培養条件は、宿主細胞によって慣用されるものを適宜選択して用いることができる。培養時の細胞の生育とタンパク質の大量生産に適するように、温度、培地のpH、培養時間などの条件を適切に調節しなければならない。
【0071】
本発明によるベクターは、抗体の産生のために宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞に形質転換することができる。完全なグリコシル化タンパク質を発現できる適切な宿主細胞株の数は当分野で開発されており、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、COS-7(例えば、ATCC CRL-1651)、HEK293 、BHK21(例えば、ATCC CRL-10)、CHO(例えば、ATCC CRL 1610)およびBSC-1(例えば、ATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、 P3X63Ag8653、 SP2/0-Agl4、 293細胞、HeLa細胞などを含み、これらの細胞は、例えば、ATCC(American Type Culture Collection、米国)から容易に利用可能である。好ましい宿主細胞は、黒色腫およびリンパ腫細胞などのリンパ球起源の細胞を含む。
【0072】
CD22を標的とするキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor)
【0073】
本発明は、他の観点から、
CD22結合ドメイン;
膜貫通ドメイン;
共同刺激ドメイン;および
細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain)を含むキメリック抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)で、
前記CD22結合ドメインは、(a)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(b)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(c)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号26のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;
(d)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号36のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;または
(e)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域、および配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片;である。
【0074】
本発明において、用語「キメリック抗原受容体(CAR)」は、一般に、抗原および1つ以上の細胞内ドメインと結合する能力を有する細胞外ドメインを含む融合タンパク質を指す。 CARはキメリック抗原受容体T細胞(CAR-T)の重要な部分であり、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。 CARは、抗体の抗原(例えばCD22)特異性に基づいてT細胞受容体-活性化細胞内ドメインと組み合わせることができる。遺伝子改変されたCAR発現T細胞は、標的抗原発現悪性細胞を特異的に同定し除去することができる。
【0075】
本発明において、「CD22結合ドメイン」という用語は、一般にCD22タンパク質に特異的に結合することができるドメインを指す。例えば、CD22結合ドメインは、B細胞で発現されたヒトCD22ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合することができる抗CD22抗体またはその断片を含み得る。
【0076】
本発明において、用語「結合ドメイン」は、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」および「細胞外抗原特異的結合ドメイン」は互換的に使用することができ、標的抗原(例えばCD22)に特異的に結合する能力を有するCARドメインまたは断片をという。
【0077】
本発明において、前記抗CD22抗体またはその断片は、上述の抗CD22抗体であり、モノクローナル抗体(モノクローナル抗体)、好ましくはscFv(single chain variable fragment)である。具体的には、本発明のCD22に特異的な1C2、9E9、2A9、2G1または6B3抗体を用いて製造することができ、本発明では好ましくは1C2、9E9、2G1または6B3抗体を使用した。
【0078】
本発明において、CD22結合ドメインのN末端にシグナルペプチドをさらに含むことができ、前記「シグナルペプチド」は一般にタンパク質送達を誘導するためのペプチド鎖を指す。 シグナルペプチドは、5~30のアミノ酸長を有する短いペプチドであり得、本発明では、好ましくは配列番号70のアミノ酸配列を使用した。
【0079】
本発明において、CD22結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジ領域をさらに含むことができ、ヒンジ部位はCD8α由来であり、好ましくは配列番号71のアミノ酸配列で表すことができる。 前記「ヒンジ領域」は、一般に、抗原結合領域と免疫細胞Fc受容体(FcR)結合領域との間の結合領域を指す。
【0080】
本発明において、「膜貫通ドメイン」とは、一般に細胞膜を通過し、細胞内シグナル伝達ドメインに連結されてシグナル伝達の役割を果たすCARのドメインを指す。膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質に由来し得、好ましくは配列番号72のアミノ酸配列で表され得る。
【0081】
本発明において、「共刺激ドメイン」とは、一般に、リンパ球の抗原に対する効果的な反応に必要な細胞表面分子である免疫刺激分子を提供することができる細胞内ドメインを指す。上記の共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインを含み、OX40および4-1BBの共刺激ドメインなどのTNF受容体ファミリーの共刺激ドメインを含むことができ、好ましくは配列番号73のアミノ酸配列で表される4-1BBであり得る。
【0082】
本発明において、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、一般に、細胞内に位置し、シグナルを伝達することができるドメインを指す。本発明において、細胞内シグナル伝達ドメインはキメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達ドメインである。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、4-1BB細胞内ドメイン、およびOX40細胞内ドメインから選択することができ、好ましくは配列番号74のアミノ酸配列で表されるCD3ζであり得る。
【0083】
キメリック抗原受容体をコードするポリヌクレオチドおよびキメリック抗原受容体発現ベクター
【0084】
本発明はさらに別の観点から、キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0085】
本発明において、キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドは、CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;共刺激ドメインをコーティングするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み得る。
【0086】
前記CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチドは、本発明のCD22に特異的な1C2、9E9、2A9、2G1または6B3抗体、好ましくは1C2、9E9、2G1または6B3抗体をコードするポリヌクレオチドであり得、軽鎖である。可変部位および重鎖可変部位がリンカーで連結されたscFvの形態で、具体的な塩基配列は上述した通りである。
【0087】
好ましくは、本発明のキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号64の塩基配列で表されるシグナルペプチド; 配列番号54の塩基配列で表される1C2抗体、配列番号56の塩基配列で表される9E9抗体、配列番号60の塩基配列で表される2G1抗体、または配列番号62の塩基配列で表される6B3抗体; 配列番号66の塩基配列で表される膜貫通ドメイン; 配列番号67の塩基配列で表される4-1BB(共刺激ドメイン);および 配列番号68の塩基配列で表されるCD3ζ(細胞内シグナル伝達ドメイン);から構成することができる。
【0088】
また、CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチドと膜貫通ドメインとの間に、ヒンジ部位をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができ、好ましくは配列番号65の塩基配列で表されるCD8ヒンジ部位を含むことができる。
【0089】
本発明はさらに別の観点から、キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0090】
本発明の特定の実施形態では、ベクターは組換えウイルスベクターであり、好ましくはレンチウイルスベクターであり、作動可能に連結されたEF1αプロモーター;シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド;CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み、タンパク質の発現を増加させるためにWPRE(woodchuck hepatitis virus post-transcriptional regulatory element)をさらに含み得る(図2)。
【0091】
前記EF1αプロモーターは配列番号63の塩基配列で表され、必要に応じて前記配列番号63の塩基配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同じ配列を含み得る。
【0092】
さらに、プロモーターは、CD22結合ドメインである抗CD22抗体(scFv)の発現を誘導するように作動可能に連結されている。
【0093】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスなどに由来し得る。
【0094】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースシステムを含みます。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。核酸の最新技術の標的化送達、例えば、標的化ナノ粒子または他の適切なマイクロメータ未満の送達システムを用いたポリヌクレオチドの送達のための他の方法が利用可能である。
【0095】
非ウイルス送達システムが使用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロまたはインビボ)のために企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合することができる。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されるか、リポソームの脂質二重層に点在するか、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに結合するか、リポソーム内に捕捉されるか、リポソームと複合体化されるか、脂質含有溶液中に分散させるか、脂質と混合するか、脂質と組み合わせるか、脂質中に懸濁液として含有するか、ミセルと共に含有または複合体化するか、または脂質とは異なり会合することができる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。
【0096】
キメリック抗原受容体(CAR)発現免疫エフェクター細胞
【0097】
本発明はさらに別の観点から、キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドまたはキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含み、キメリック抗原受容体(CAR)を含む。を発現する免疫エフェクター細胞に関する。
【0098】
本発明において、免疫エフェクター細胞は哺乳動物由来細胞であり得、好ましくはT細胞または自然殺害(NK)細胞であり得る。
【0099】
本発明において、キメリック抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞は、本発明のCARベクターを免疫エフェクター細胞、例えばT細胞またはNK細胞に導入することにより製造することができる。
【0100】
具体的には、CARベクターは、エレクトロポレーション、リポフェクタミン2000、Invitrogenなどの当技術分野で公知の方法によって細胞に導入することができる。例えば、免疫エフェクター細胞をレンチウイルスベクターでトランスフェクトして、CAR分子を運ぶウイルスゲノムを宿主ゲノムに組み込むことによって標的遺伝子の長期的かつ安定した発現を確実にすることができる。他の例では、転移因子を用いてCAR輸送プラスミドおよび転移酵素輸送プラスミドを標的細胞に導入することができる。他の例では、CAR分子を遺伝子編集方法(例えば、CRISPR / Cas9)によってゲノムに添加することができる。
【0101】
本発明の具体的な一実施形態では、図2に示すようにCD22-CARをコーティングするポリヌクレオチドが挿入されたレンチウイルスベクターを作製し、作製したベクターをT細胞に形質転換してCD22-CAR-T細胞を作製する。した。製造されたCD22-CAR-T細胞では、本発明のCD22を標的とするキメラ抗原受容体を発現することになる。
【0102】
キメリック抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞を調製するための免疫エフェクター細胞は、対象から得ることができ、「対象」は免疫応答を引き出すことができる生きている生物(例えば哺乳動物)を含む。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。 T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出、脾臓組織、および腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。
【0103】
T細胞は、当業者に知られている多くの技術、例えばFicoll(商標)単離を用いて対象から収集された血液単位から得ることができる。血液からの細胞は単離輸出によって得られ、単離輸出産物は典型的にはT細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。
【0104】
分離エクスポートによって収集された細胞は、血漿画分を除去し、細胞をその後の処理工程のために適切な緩衝液または培地に入れるために洗浄することができる。
【0105】
T細胞は、赤血球を溶解し、例えばパーコール(PERCOLL)TM勾配による遠心分離によってまたは逆流遠心分離によって単球を枯渇させることによって末梢血リンパ球から単離される。
【0106】
本発明の具体的な一具現例において、図3に示されるように、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、 PBMC)から活性化されたT細胞を単離した後、CD22-CARレンチウイルスをT細胞に形質導入する。してCD22-CAR-T細胞を調製した。作製したCD22-CAR-T細胞のCD22-ペプチド結合能を確認した結果、図4に示すように、CD22-ペプチドの増加に伴い、CD4またはCD8を発現するCD22-CAR-T細胞が増加することを確認した。これは、本発明で調製したCD22-CAR-T細胞が効果的にCD22と結合することを意味する。
【0107】
本発明の他の具体的な一実施形態では、CD22-CAR-T細胞の活性化を確認するために、標的細胞の存在下でCD22-CAR-T細胞によるIFNγ発現の程度を確認した。その結果、図5A図5Dに示すように、CD22を発現しないK562細胞ではT細胞が活性化されていない一方、CD22を発現するU2932細胞の存在下でT細胞が活性化されてIFNγ発現が増加することを確認した。
【0108】
本発明の具体的な別の一実施形態において、CD22-CAR-T細胞による標的細胞の死滅効果を確認した結果、図6に示すように、CD22-CAR-T細胞はCD22を発現するU2932細胞に対する死滅効果が見られることを確認した。
【0109】
すなわち、本発明のCD22を標的とするキメラ抗原受容体およびCAR-T細胞は、B細胞またはCD22発現に関連する疾患予防または治療用組成物として有用に活用することができる。
【0110】
CD22発現によって媒介される疾患の予防または治療用組成物
【0111】
本発明は、別の観点から、CD22に特異的に結合する抗体、またはCD22を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療のための医薬組成物に関する。
【0112】
本発明において、CD22を発現する細胞によって媒介される疾患は、リンパ腫、ノンホッキンリンパ腫(NHL)、攻撃的NHL、再発性攻撃的NHL、再発性遅延性NHL、不応性NHL、不応性遅延性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小型リンパ性リンパ腫、白血病、毛髪細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia: ALL)コート細胞リンパ腫からなる群から選択することができる。
【0113】
本発明において、組成物は、CD22を発現する細胞によって媒介される疾患の治療剤を含むことができ、治療剤は、CD22に特異的に結合する抗体の重鎖および/または軽鎖に共有結合した状態で存在する。あるいは、本発明のCD22に特異的な抗体またはCD22-CAR-T細胞と併用投与することができる。
【0114】
治療薬は、低分子薬物、ペプチド薬物、毒素(例えば細胞毒素)などを含む。
【0115】
低分子薬物は目的の薬学的活性を示し、一般に分子量が約800Da以下または2000Da以下の化合物であり得る。無機低分子は炭素原子を1つも含まない分子を指し、一方、有機低分子は少なくとも1つの炭素原子を含有する化合物を指す。
【0116】
ペプチド薬はポリマー化合物を含むアミノ酸を指し、これは天然および非天然ペプチド、オリゴペプチド、環状ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにペプチド模倣物を含む。ペプチド薬物は、化学合成によって得られてもよく、または遺伝的にコードされた供給源(例えば、組換え供給源)で生成されてもよい。ペプチド薬物の分子量の範囲は、200Da~10kDa以上であり得る。
【0117】
前記毒素は好ましくは細胞毒素であり、細胞毒素には非限定的に、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、シュードモナス菌体外毒素(例えば、PE35、PE37、PE38、PE40など)、サポリン、ゲルロニン、米国座空孔抗ウイルスタンパク質(PAP)、ボツリヌス毒素、ブリオジン、モモルジンおよびブガニンが含まれる。
【0118】
さらに、治療薬は抗癌剤であり得る。抗癌剤は、癌細胞の増殖を減少させ、細胞傷害性薬剤および細胞増殖抑制剤を組み合わせた非ペプチド性(すなわち、非タンパク質系)化合物を含む。抗癌剤の非限定的な例には、アルキル化剤、ニトロソ要素、抗代謝物質、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイドおよびステロイドホルモンが含まれる。ペプチド性化合物も使用することができる。
【0119】
前記医薬組成物中のCD22に特異的に結合する抗体またはCD22を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞は、治療または診断用組成物内で唯一の活性成分であるか、または例えば抗T細胞、抗IFNγまたは抗LPS抗体などの他の抗体成分、またはキサンチンなどの非抗体成分を含む他の活性成分と共に使用可能である。
【0120】
医薬組成物は、治療的有効量の本発明の抗体を含むことが好ましい。本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、標的疾患または状態を治療、改善、または予防するのに必要な治療薬の量を意味し、または検出可能な程度の治療または予防効果を示すために必要な治療薬の量を指す。意味する。いくつかの抗体について、治療的有効投与量は、細胞培養アッセイまたは通常げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、または霊長類などの動物モデルによって最初に決定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与ルートを決定するために使用することができる。そのような情報は、ヒトの投与に有用な投与量および根を決定するために使用することができる。
【0121】
ヒト患者の正確な有効量は、疾患状態の重症度、患者の一般的な健康状態、患者の年齢、体重および性別、食事、投与時間、投与頻度、薬剤組成、反応感度および治療に対する耐性/反応に依存する。できる。量は従来の実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、有効用量は0.01~50mg/kg、好ましくは0.1~20mg/kg、さらに好ましくは約15mg/kgである。
【0122】
組成物は患者に個別に投与することができ、または他の薬剤、薬剤またはホルモンと組み合わせて投与することができる。
【0123】
本発明の抗体が投与される投与量は、治療される状態の性質、悪性リンパ腫または白血病のグレード、および抗体が疾患予防レベルで使用されるか、または存在する状態を治療するために使用されるかによって異なる。
【0124】
投与頻度は、抗体分子の半減期、薬効の持続性に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば、2~10時間)を有する場合、1日当たり1回以上の用量を提供する必要がある。あるいは、抗体分子が長い半減期(例えば、2~15日)を有する場合、1日に1回、1週間に1回、または毎月または2ヶ月あたり1回の用量を提供する必要がある。
【0125】
さらに、医薬組成物は、抗体の投与のために薬学的に許容される担体を含有してもよい。担体は、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を引き起こすべきではなく、毒性がないべきである。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポオソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子などの徐々に新陳代謝される高分子であり得る。
【0126】
薬学的に許容される塩は、例えば、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩などのミネラル酸塩、または酢酸、プロピオン酸である。マロン酸および安息香酸などの有機酸の塩を使用することができる。
【0127】
治療組成物中の薬学的に許容される担体はさらに、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含み得る。さらに、湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝物質などの補助物質がそのような組成物中に存在し得る。担体は、患者による医薬組成物の摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、および懸濁剤として製剤化することができる。
【0128】
投与のための好ましい形態は、例えば注射または注入(例えば、喪失注射または連続注入)による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注入または注射用である場合、油または水溶性賦形剤中の懸濁剤、溶液またはエマルジョンの形態をとることができ、これは懸濁剤、保存剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。あるいは、抗体分子は無水形態であってもよく、使用前に適切な滅菌液で再構成されてもよい。
【0129】
一旦製剤化されると、本発明の組成物は患者に直接投与することができる。治療を受ける患者は動物であり得る。しかしながら、組成物はヒト患者の投与のために適合することが好ましい。
【0130】
本発明の医薬組成物は制限はないが、経口、静脈、筋肉内、動脈内、骨髄内、脊椎腔内、心室内、経皮、経皮(例えば、国際公開第98/20734号参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸経路を含む任意の経路によって投与することができる。本発明の医薬組成物を投与するためにハイポスプレーを使用することができる。典型的には、治療用組成物は液体溶液または懸濁液として注射可能な材料として調製することができる。また、注入前に液体賦形剤内容液または懸濁液に適した固体形態を製造することができる。
【0131】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射によって行うことができ、または組織の間質空間に送達することができる。さらに、組成物は創傷部位で投与することができる。用量処理は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。
【0132】
組成物中の活性成分は抗体分子であり得る。それ自体、胃腸管内で分解に敏感である。したがって、組成物が消化管を使用する経路によって投与される場合、組成物は、分解から抗体を保護するが消化管から吸収された抗体を放出する薬剤を一旦含む必要があるであろう。
【0133】
薬学的に許容される担体の完全な議論は、レミントンの薬学科学(Mack Publishing Company、NJ、1991)を利用することができる。
【0134】
CD22を発現する細胞によって媒介される疾患の診断またはモニタリング
【0135】
本発明は、別の観点から、CD22に特異的に結合する抗体を含むCD22を発現する細胞によって媒介される疾患の診断または監視用組成物に関する。
【0136】
CD22に特異的に結合する抗体は直接的または間接的に標識することができる。間接的標識は、検出可能な標識を含む二次抗体を含み、二次抗体がCD22に特異的に結合する抗体に結合する。他の間接的標識はビオチンを含み、ビオチン化CD22に特異的に結合する抗体は検出可能標識を含むアビジンまたはストレプトアビジンを使用して検出することができる。
【0137】
適切な検出可能標識は、分光分析的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能なすべての組成物を含む。適切な標識は、非限定的に、磁石ビーズ、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアン酸塩、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、たとえば、 H 、 125I、 35S、 14C、または 32 )、酵素(例えば、マスタード無過酸化酵素、アルカリンホスファターゼ、ルシフェラーゼおよび酵素結合免疫吸着検査(ELISA)に一般的に使用されるもの)およびコロイド状の金または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの表色系標識が含まれる。
【0138】
さらに、診断または監視のために、抗体は蛍光タンパク質で標識することができ、造影剤または放射線同位体を含み得る。
【0139】
本発明のCD22に特異的に結合する抗体を診断キットに用いる場合、抗体は支持体に固定されており、支持体はマイクロプレート、マイクロアレイ、チップ、ガラス、ビーズまたは粒子、または膜であり得る。
【0140】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、以下の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、以下の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0141】
実施例1:CD22に特異的に結合する抗体の調製および選択
【0142】
CD22ペプチド特異的抗体を選択するために、CD22に結合する抗体を産生するハイブリドーマを調製して抗体を選択した。
【0143】
まず、CD22タンパク質(ACRObiosystems Inc.、 cat#CD2-H52H8、米国)を免疫して脾細胞を摘出し、マウス骨髄症細胞と細胞融合を通じてハイブリドーマ細胞を作製した。
【0144】
細胞融合に用いるマウス骨髄腫細胞は、HGPRT(HypoxanthineGuanidine-Phosphoribosyl-Transferase)を有していないため、HAT培地では生存できないが、ハイブリドーマは脾臓細胞と融合することによりHAT培地で生存できる。これを用いるとハイブリドーマのみを増殖させることができるので、通常ハイブリドーマを確立するまでHAT培地で増殖させた。
【0145】
増殖したハイブリドーマの中でCD22に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択するために限界希釈法を使用した。まず、96ウェル当たり1細胞以下となるようにした後、1つの細胞から増殖したクローンで得られた抗体がCD22と結合するかどうかをELISAで確認し、CD22と結合するクローンを選別した。この過程を3回繰り返してCD22と結合する抗体を産生するハイブリドーマを選別した。このようにしてCD22に結合する5種の抗体を得た。
【0146】
上記5種の抗体はそれぞれ1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3と命名し、それらの塩基配列とアミノ酸配列を分析した。配列分析結果による各抗体の重鎖可変部位および軽鎖可変部位の配列情報を下記表1~表5に示し、下記表1~5で下線を付した部分は相補的決定部位)を意味する。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
実施例2:選択された抗体のCD22に対する特異性の確認 - ELISA分析
【0153】
本発明では、上記実施例1で確立した1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3抗体のCD22に対する特異性を確認するために、ELISA分析を行った。
【0154】
まず、CD22ペプチドをコードするために、CD22-Hisタグ(CD22 extracellular domain; ACRObiosystems Inc.)を96ウェルプレートに分注し、100ng /ウェルにし、4℃で一晩反応させた。次いで、3%BSAを含む1×PBSTを処理した後、室温で30分間ブロッキングした。
【0155】
1C2、9E9、2A9、2G1および6B3抗体を各ウェルに処理し、室温で2時間反応させた後、1×PBSTで3回洗浄した。二次抗体(anti-HRP、1:10、000)を処理して室温で30分間反応させた後、1×PBSTで3回洗浄した後、発色のためにTMBを処理して室温で5分間反応させた。最後に1NHSOの停止液(stop solution)を処理して反応を終了させた後、450nmで吸光度を測定した。
【0156】
【表6】
【0157】
【表7】
【0158】
その結果、表7に示すように、本発明で選択した抗体が全てCD22に特異的に結合することを確認した。
【0159】
実施例3:選択された抗体のCD22に対する特異性の確認 - FACS分析
【0160】
本発明では、上記実施例1で確立した1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3抗体のCD22に対する特異性を確認するために、FACS分析を行った。
【0161】
まず、CD22を発現する非細胞リンパ腫U2932(B-cell lymphoma U2932 cell)が1x10個と1C2、9E9、2A9、2G1および6B3抗体1μgそれぞれを30分間反応させた後、二次抗体で表面を染色した後、フローサイトメーターで測定した。
【0162】
陽性対照としてPE-コンジュゲーションされた抗CD22抗体(PE-conjugated anti-CD22 antibody; Biolegend Inc.、 cat# 302506、 米国)を使用し、二次抗体としてPE-コンジュゲーションされた抗マウスIgG抗体(PE-conjugated goat anti-mouse IgG; Biolegend Inc.、cat#405307、米国)を使用した。
【0163】
その結果、図1に示すように、1C2、9E9、2A9、2G1及び6B3抗体とも、CD22を発現する細胞と特異的に結合することを確認した。
【0164】
実施例4:CD22を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)発現ベクターの作製
【0165】
本発明では、上記実施例1で製造した抗体のうち、CD22に対する特異性の高い1C2、9E9、2G1及び6B3抗体を用いて、CD22を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するレンチウイルスベクター(CD22-CARレンチウイルス)を調製した。
【0166】
図2の模式図に示すように、EF1αプロモーター(配列番号63); シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号64); CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号54で示される1C2、配列番号56で示される9E9、配列番号60で表される2G1、または配列番号62で表される6B3); CD8ヒンジ部位をコードするポリヌクレオチド(配列番号65)。膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号66); 4-1BB(共同刺激ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号67); CD3ζ細胞内信号伝達ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号68); およびWPREをコードするポリヌクレオチド(配列番号69)からなるCAR DNAをin vitroで合成し、第3世代レンチウイルスベクターに挿入した。
【0167】
レンチウイルスベクターは、pMDLg/pRRE(Addgene、 cat##12251) pMD2.G (Addgene、 cat##12259)、 pRSV-Rev(Addgene、 cat##12253)の3つのベクターとともにLenti-X 293T細胞と共同感染させた後、CD22-CARレンチウイルスを産生した。共感染のために、Lipofectamine 3000トランスフェクションキット(Invitrogen、cat#L3000-015)とOpti-MEM + GlutaMAX(gibco、cat#51985-034)培地を用いて3つのベクターとLenti-X 293T細胞を6時間培養した。
【0168】
実施例5:CD22-CAR-T細胞の調製
【0169】
本発明では、上記実施例4で作製したCD22-CARレンチウイルスベクターをT細胞に形質転換してCD22-CAR-T細胞を作製した。
【0170】
具体的には、図3に示すように、血液から末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、 PBMC)を分離した後、T細胞活性化ビーズ(T cell activation bead; Miltenyl Biotec、 cat#130-091-441)を使用してT細胞を活性化した。活性化T細胞に上記実施例4で製造したCD22-CARレンチウイルスをT細胞に形質導入してCD22-CAR-T細胞を調製し、Lenti-boost-pを用いて形質導入効率を増加させた。
【0171】
CD22-CAR-T細胞のCD22ペプチド結合能はフローサイトメトリー法により確認した。上記で製造したCD22-CAR-T細胞をFITC-CD22タンパク質とanti-CD3、anti-CD4、anti-CD8抗体と反応させた後、FACS機を用いて蛍光強度を測定した。分析過程でCD3を発現する細胞をT細胞としてT細胞内でFITC発現程度を確認した。
【0172】
その結果、図4に示すように、CD22ペプチドの増加に伴い、CD22と結合するCD4またはCD8を発現するCD22-CAR-T細胞が増加することを確認した。これは、本発明で調製したCD22-CAR-T細胞が効果的にCD22と結合することを意味する。
【0173】
実施例6:CD22ペプチドによるCD22-CAR-T細胞活性化の確認
【0174】
本発明では、上記実施例5で製造したCD22-CAR-T細胞がCD22ペプチドにより活性化されることを確認するために、標的細胞の存在下でCD22-CAR-T細胞によるIFNγ発現程度を確認した。
【0175】
標的細胞はCD22を発現しないK562細胞(ATCC、cat#CCL-243)およびCD22を発現するU2932細胞(DSMZ、cat#ACC-633)を用い、CD22-CAR-T細胞と標的細胞を2:1, 1:1. 0.5:1, 0:1比で一定時間反応させた後、サーフェス&イントラアンチボディで染色してFACS測定した(CD22プロテイン、INF-r、CD107a、CD3、CD4、CD8染色)。 0:1(CAR-T only)を基準に、標的細胞と反応させたCD22-CAR-TのIFNγ発現程度を確認した。
【0176】
その結果、図5A図5Dに示すように、CD22を発現しないK562細胞ではT細胞が活性化されていない一方、CD22を発現するU2932細胞の存在下でT細胞が活性化されてIFNγ発現が増加することを確認した。
【0177】
実施例7:CD22発現細胞に対するCD22-CAR-T細胞の死滅効果の確認
【0178】
本発明では、CD22-CAR-T細胞による標的細胞の死滅効果を確認した。
【0179】
標的細胞としてCD22を発現しないK562細胞とCD22を発現するU2932細胞を用いた。CD22-CAR-T細胞と1:4、1:2、1:1、1:0.5および1:0.25の比率になるように混合した後、ルミネセンス(CytoTox-Glo Cytotoxicity Assay, Promega, cat# G9291)を測定した。測定した値として下記式(1)を用いてアポトーシスの程度を計算した。
【0180】
[数式1]
% Cytotoxicity = [(Experimental - Effector Spontaneous - Target Spontaneous) / (Target Maximum - Target Spontaneous)] X 100
Experimental:標的細胞およびCAR-T細胞複合培養の培地から導出された発光(Luminescence)値
Effector Spontaneous: CAR-T細胞のみの培地から導出された発光値
Target Spontaneous: 標的細胞のみの培地から導出された発光値
Target Maximum: 標的細胞の100%溶解(溶解試薬(Lysis Reagent)利用)から導出された発光値
その結果、図6に示すように、本発明のCD22-CAR-T細胞は、CD22を発現するU2932細胞を特異的に死滅させることを確認した。
【産業上利用可能性】
【0181】
本発明で選択した抗体は、CD22を発現する細胞を特異的に認識することを確認し、上記確立された抗体を用いてCD22を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)およびCAR-T細胞はCD22と効果的に結合する。加えて、CD22と結合したCAR-T細胞の活性化がなされたことを確認した。
【0182】
また、本発明のCAR-T細胞はCD22を発現する細胞を効果的に死滅させることを確認したので、本発明のCD22に特異的な抗体、CD22を標的とするキメラ抗原受容体およびCAR-T細胞はCD22発現に関連する疾患予防または治療用組成物として有用に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
【配列表】
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【国際調査報告】