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  • 特表-気体状薬剤のパルス式送達方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】気体状薬剤のパルス式送達方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20230621BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61M16/00 375
A61P31/04
A61K33/00
A61P31/12
A61P31/00
A61P31/14
A61P31/16
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573481
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021034884
(87)【国際公開番号】W WO2021243227
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/031,916
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448289
【氏名又は名称】ベレロフォン・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,マーティン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA93
4C076BB21
4C076BB27
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086HA07
4C086HA08
4C086HA13
4C086HA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
4C086MA56
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB31
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB38
(57)【要約】
全吸気時間の一部分にわたってパルス式用量の気体状薬剤の供給のための方法であって、気体状薬剤の用量は1回換気量1mL当たりnLの気体状薬剤の濃度で送達される、方法が記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある用量の気体状薬剤の必要とする患者への送達のための方法であって、前記方法は気体状薬剤の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって送達するステップを含み、気体状薬剤の用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの気体状薬剤の濃度で送達される、方法。
【請求項2】
気体状薬剤が患者の全吸気時間の一部分にわたって一定の速度で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気体状薬剤の用量の送達が全吸気時間の最初の三分の二内に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
気体状薬剤の用量の送達が全吸気時間の最初の二分の一内に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
気体状薬剤の用量の少なくとも50パーセントの送達が全吸気時間の最初の三分の一内に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
気体状薬剤の用量の少なくとも90パーセントの送達が全吸気時間の最初の三分の二内に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
気体状薬剤の用量の少なくとも70パーセントの送達が全吸気時間の最初の二分の一内に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
気体状薬剤がある期間にわたって一連のパルスとして送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
気体状薬剤送達が抗菌作用を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
気体状薬剤が一酸化窒素(NO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
気体状薬剤が一酸化炭素(CO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
気体状薬剤が二酸化炭素(CO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
気体状薬剤がヘリオックス(HeO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
気体状薬剤が硫化水素(HS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
吸気時間の一部分が約0.6秒である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
吸気時間の一部分が約0.4秒である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者におけるウイルス、細菌、または原生動物感染症を処置する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達される、方法。
【請求項18】
患者における疾患状態の発生につながるウイルス、細菌、または原生動物感染症を処置する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、ウイルス、細菌、または原生動物感染症が処置される、方法。
【請求項19】
患者におけるウイルス、細菌、または原生動物複製ウイルスを阻害する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、ウイルス、細菌、または原生動物の複製が阻害される、方法。
【請求項20】
ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者における酸素補給の必要性を低減する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、酸素補給の必要性が低減または除外される、方法。
【請求項21】
ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者の酸素化を改善する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、酸素化が改善される、方法。
【請求項22】
ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者の酸素飽和度を改善する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、酸素飽和度が改善される、方法。
【請求項23】
ウイルス、細菌、または原生動物感染症に起因する呼吸困難を有する患者に支持療法を提供する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、患者の呼吸困難が改善される、方法。
【請求項24】
ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者が機械的な呼吸補助を必要とする時間を短縮する方法であって、治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与するステップを含み、用量が前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、機械的な呼吸補助を必要とする時間が短縮または除外される、方法。
【請求項25】
一酸化窒素の用量の送達が全吸気時間の最初の二分の一内に起こる、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
一酸化窒素がある期間にわたって一連のパルスとして送達される、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
一酸化窒素が少なくとも1種の追加の気体と組み合わせて投与される、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1種の追加の気体が酸素である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の追加の治療薬の投与をさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
一酸化窒素の投与が外来患者の状況で起こる、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
吸入される一酸化窒素が少なくとも処置期間にわたって1日当たり24時間投与される、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
吸入される一酸化窒素が処置期間にわたって1日当たり最低18時間投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
吸入される一酸化窒素が処置期間にわたって1日当たり最低12時間投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
吸入される一酸化窒素が処置期間にわたって1日当たり最低8時間投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
処置期間が少なくとも21日である、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
処置期間が少なくとも14日である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
処置期間が少なくとも10日である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
処置期間が少なくとも7日である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
処置期間が少なくとも5日である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
処置期間が少なくとも3日である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
処置期間が少なくとも2日である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ウイルス感染がSARS-CoV2であり、疾患状態がCOVID-19である、請求項17~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ウイルス感染がインフルエンザ、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ボカウイルス、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスおよびエンテロウイルスから選択される、請求項17~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
細菌感染がS.pneumoniae、S.pyogenes、S.aureus、H.influenzae、Bordetella pertussis、Moraxella catarrhalis、Mycoplasma pneumoniae、Mycoplasma hominis、Chlamydia spp、Legionella、Francisella、Yersinia、Coxiella burnetti、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium haemolyticum、Neisseria gonorrhoeae、およびCandida albicanseから選択される、請求項17~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
原生動物感染がToxoplasma gondiiである、請求項17~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Method for Pulsatile Delivery of a Gaseous Drug」と題される2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/031,916号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
[002]本出願は一般に気体状薬剤の投与、特に治療処置を必要とする患者への患者の1回換気量を基準にした濃度での気体状薬剤のパルス式送達の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[003]一酸化窒素(NO)は、吸入されると、肺で血管を拡張する働きをし、血液の酸素化を改善し、肺の高血圧を低下させる気体である。このため、一酸化窒素は、疾患状態、例えば、肺動脈高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、特発性肺線維症(IPF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高所障害、またはその他の肺疾患に起因する息切れ(呼吸困難)を有する患者に対し吸入呼吸相内に治療気体として供給される。
【0004】
[004]吸入される一酸化窒素(iNO)は確立された安全かつ有効な血管拡張剤であり、新生児持続性肺高血圧症の処置に認可されている。本明細書に開示されるように、パルス投薬は患者の呼吸速度または吸気量に関係なく正確で一定の用量を確保するべく高濃度パルスを利用する。パルス式技術は用量の調整を可能にして現在病院ベースのシステムで利用可能なものよりずっと高い用量/濃度を可能にすると共に、療法の全体のサイズを低減して家庭で投与されることを可能にする。
【0005】
[005]NOは適当な条件下で投与されると治療上有効であり得るが、正しく投与されなければ毒性になる可能性もある。NOは酸素と反応して二酸化窒素(NO)を形成し、NOは酸素または空気がNO送出管内に存在すると形成される可能性がある。NOは数多くの副作用を生じ得る毒性の気体であり、米国労働安全衛生局(Occupational Safety&Health Administration)(OSHA)は一般産業用の許容曝露限界がたった5ppmであると規定する。したがって、NO療法中NOへの曝露を制限するのが望ましい。
【0006】
[006]コロナウイルスは風邪、SARS、およびMERSのような様々な呼吸器疾患を様々な病気の程度で引き起こす可能性があるウイルスの科である。SARS-CoV2ウイルス(当初n-CoV-19として知られていた)は、2019年12月中国武漢で発生したとして報告された、コロナウイルス感染症2019、すなわちCOVID-19を引き起こすコロナウイルスの株である。SARS-CoV2感染症/COVID-19の症状には発熱、咳、息切れ、および呼吸困難が含まれる。何人かの感染した人は匂いおよび/または味を感じられなくなった。他の症状には、身体の痛み、肺炎、悪寒、倦怠感、吐き気、下痢、および風邪のような症状、例えば鼻水または喉の痛みが含まれ得る。COVID-19の症状は軽度から重度にわたる可能性があり、COVID-19によって引き起こされる合併症、例えば肺炎および/または臓器不全に一部起因して死に至ることがある。一方、SARS-CoV2に感染した人々の中には無症状の人がいることがある。SARS-CoV2の潜伏期は1~14日の範囲であり、平均の期間は5~6日である。
【0007】
[007]COVID-19感染症の臨床スペクトルは上気道感染症の穏やかな兆候から深刻な肺炎および死の範囲である。現在、終末期疾患への進行の可能性はよく理解されていないが、軽度または中程度の病気の患者で進行を予防すれば、罹患率/死亡率を改善し、限られた医療資源に対する影響を低減することができると思われる。また、Chen(2004)において観察された陽圧換気装置支援の必要性を低減すると肺の損傷を制限し得る。2つのコロナウイルス間のゲノムの類似性に基づいて、SARS-CoVのデータはiNOがCOVID-19に感染した患者に対して利益をもたらす可能性を支持する。軽度~中程度のCOVID-19を有する患者において外因性のiNOはさらなる悪化を防止し、潜在的に回復までの時間を改善することができるであろう。
【0008】
[008]コロナウイルス(COVID-19)を標的とした治療処置はまだ明らかにされていない。症状は軽度の上気道感染症から重度の肺炎および死の範囲である。終末期疾患の進行は予測不可能であり、機械的に換気された患者の死亡率は多臓器不全の結果、高い。自発的に呼吸する軽度~中程度の病気の患者においてCOVID-19の進行を防止することは結果として罹患率および死亡率を改善し得ると共に限られた医療資源に対する負担を制限し得る。
【0009】
[009]一酸化窒素はウイルスの複製を抑制する上で重要な役割を果たす。NOは病原体に対する免疫反応の間に天然に生成される分子であり、内因性のNO生産は細菌、ウイルスおよび原生動物を含めていくつかの感染に対する防御機構としてマクロファージにより上方調節される。インビトロ研究により、NOが重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV)の複製を阻害し(Akerstrom,et al,J. of Virology,79,2005,1966-1969)、SARS-CoVに感染した細胞の細胞生存を改善する(Keyaerts et al,Int.J. of Infectious Disease,8,2004,223-226)ことが示された。SARS患者の臨床研究において、iNOは動脈血酸素化の改善、酸素補給の低減および換気装置支援に対する必要性を示した。また肺浸潤物の密度の低下を伴う胸部X線における改善もあった(Chen,et al,Clinical Infectious Disease,39,2004,1531-1535)。サンプルサイズは小さかったが、iNO群患者の退院までの時間は対照と比較してより短いようだった。
【発明の概要】
【0010】
[0010]本発明のある実施形態において、ある用量の気体状薬剤の必要とする患者への送達方法が教示される。1つの実施形態において、方法は気体状薬剤の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって送達することを含み、気体状薬剤の用量は患者の1回換気量1mL当たりnLの気体状薬剤の濃度で送達される。
【0011】
[0011]本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤は患者の全吸気時間の一部分にわたって一定の速度で送達される。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤の用量の送達は全吸気時間の最初の三分の二内に起こる。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤の用量の送達は全吸気時間の最初の二分の一内に起こる。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤の用量の少なくとも50パーセントの送達は全吸気時間の最初の三分の一内に起こる。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤の用量の少なくとも90パーセントの送達は全吸気時間の最初の三分の二内に起こる。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤の用量の少なくとも70パーセントの送達は全吸気時間の最初の二分の一内に起こる。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤はある期間にわたって一連のパルスとして送達される。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤送達は抗菌作用を有する。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤は一酸化窒素(NO)である。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤は一酸化炭素(CO)である。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤は二酸化炭素(CO)である。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤はヘリオックス(HeO)である。本発明の方法のある実施形態において、気体状薬剤は硫化水素(HS)である。本発明の方法のある実施形態において、吸気時間の一部分は約0.6秒である。本発明の方法のある実施形態において、吸気時間の一部分は約0.4秒である。
【0012】
[0012]本発明のある実施形態において、患者におけるウイルス、細菌、または原生動物感染症を処置する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達される。
【0013】
[0013]本発明のある実施形態において、患者における疾患状態の発生につながるウイルス、細菌、または原生動物感染症を処置する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、ウイルス、細菌、または原生動物感染症が処置される。
【0014】
[0014]本発明のある実施形態において、患者におけるウイルス、細菌、または原生動物の複製を阻害する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、ウイルス、細菌、または原生動物の複製が阻害される。
【0015】
[0015]本発明のある実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者における酸素補給の必要性を低減する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、酸素補給の必要性が低減または除外される。
【0016】
[0016]本発明のある実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者の酸素化を改善する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、酸素化が改善される。
【0017】
[0017]本発明のある実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者の酸素飽和度を改善する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、酸素飽和度が改善される。
【0018】
[0018]本発明のある実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に起因する呼吸困難を有する患者に支持療法を提供する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、患者の呼吸困難が改善される。
【0019】
[0019]本発明のある実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者が機械的な呼吸補助を必要とする時間を短縮する方法が教示される。方法は治療上有効な量の吸入される一酸化窒素の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって投与することを含み、用量は前記患者の1回換気量1mL当たりnLの一酸化窒素の濃度で送達され、機械的な呼吸補助を必要とする時間が短縮または除外される。
【0020】
[0020]本発明の方法のある実施形態において、一酸化窒素の用量の送達は全吸気時間の最初の二分の一内に起こる。
[0021]本発明の方法のある実施形態において、一酸化窒素はある期間にわたって一連のパルスとして送達される。
【0021】
[0022]本発明の方法のある実施形態において、一酸化窒素は少なくとも1種の追加の気体と組み合わせて投与される。1つの実施形態において、少なくとも1種の追加の気体は酸素である。
【0022】
[0023]本発明の方法のある実施形態において、方法は少なくとも1種の追加の治療薬の投与をさらに含む。
[0024]本発明の方法のある実施形態において、iNOの投与は外来患者の状況で起こる。
【0023】
[0025]本発明の方法のある実施形態において、吸入される一酸化窒素は少なくとも処置期間にわたって1日当たり24時間投与される。1つの実施形態において、吸入される一酸化窒素は処置期間にわたって1日当たり最低18時間投与される。1つの実施形態において、吸入される一酸化窒素は処置期間にわたって1日当たり最低12時間投与される。1つの実施形態において、吸入される一酸化窒素は処置期間にわたって1日当たり最低8時間投与される。
【0024】
[0026]本発明の方法のある実施形態において、処置期間は少なくとも21日である。1つの実施形態において、処置期間は少なくとも14日である。1つの実施形態において、処置期間は少なくとも10日である。1つの実施形態において、処置期間は少なくとも7日である。1つの実施形態において、処置期間は少なくとも5日である。1つの実施形態において、処置期間は少なくとも3日である。1つの実施形態において、処置期間は少なくとも2日である。1つの実施形態において、処置期間は5日以下である。1つの実施形態において、処置期間は4日以下である。1つの実施形態において、処置期間は3日以下である。1つの実施形態において、処置期間は2日以下である。1つの実施形態において、処置期間は1日以下である。
【0025】
[0027]本発明のある実施形態において、ウイルス感染はSARS-CoV2であり、疾患状態はCOVID-19である。本発明のある実施形態において、ウイルス感染はインフルエンザ、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ボカウイルス、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスおよびエンテロウイルスから選択される。ある実施形態において、細菌感染はS.pneumoniae、S.pyogenes、S.aureus、H.influenzae、Bordetella pertussis、Moraxella catarrhalis、Mycoplasma pneumoniae、Mycoplasma hominis、Chlamydia spp、Legionella、Francisella、Yersinia、Coxiella burnetti、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium haemolyticum、Neisseria gonorrhoeae、およびCandida albicanseから選択される。ある実施形態において、原生動物感染はトToxoplasma gondiiである。
【0026】
[0028]様々な実施形態が上に挙げられ、以下により詳細に記載される。挙げられた実施形態は以下に挙げられるように組み合わせられ得るだけでなく、本発明の範囲に合致して他の適切な組合せでも組み合わせられ得ると理解される。
【0027】
[0029]以上、本発明のいくつかの特徴および技術的利点をやや広めに概説した。当業者には分かるように、開示された特定の実施形態は本発明の範囲内の他の構造またはプロセスを修正または考案するための基礎として容易に利用され得る。また、かかる等価な構成が添付の特許請求の範囲に明記される本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことも当業者には理解されよう。
【0028】
[0030]以上の概要、ならびに以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読まれるとより良く理解されるであろう。
[0031]上に列挙された本発明の特徴がつぶさに理解されることができるように、上に簡潔に要約された本発明のより特定的な説明が実施形態として参照され、そのうちのいくつかが添付の図面に示される。しかしながら、添付の図面はこの発明の典型的な実施形態を示すだけであり、その範囲を限定すると考えるべきでなく、したがって、本発明は他の等しく有効な実施形態を認め得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】[0032]図1は、iNOピーク肺送達による本発明の方法の1つの実施形態を用いるNOの送達と、160ppm(一定)で送達される薬剤を担った気体の吸入の現在の送達方法との比較を示す。示されるように、iNOピークは伝統的な滑らかな波ではなく「方形パルス」として示される吸気時間の一部分にわたって一定の速度のNOを送達する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の詳細な説明
[0033]他に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語はこの発明が属する分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての特許および刊行物は参照によりその全体が組み込まれる。
【0031】
[0034]本発明のいくつかの代表的な実施形態を記載する前に、本発明は以下の説明で明記される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないと理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行または実施されることができる。
【0032】
[0035]この明細書を通じて、「1つの実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「ある実施形態」への言及はその実施形態に関連して記載された特定の特徴、構成、材料、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このように、この明細書を通して様々なところで「1つ以上の実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「1つの実施形態において」または「ある実施形態において」のような語句の出現は必ずしも本発明の同じ実施形態を参照しない。また、特定の特徴、構成、材料、または特徴は1つ以上の実施形態においてあらゆる適切なやり方で組み合わせられ得る。
【0033】
[0036]本明細書では本発明が特定の実施形態を参照して記載されるが、これらの実施形態は単に本発明の原理および応用の例示であると理解されたい。当業者には明らかなように、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく様々な修正および変化が本発明の方法および装置になされることができる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲内に入る修正および変化ならびにそれらと等価なものを包含することが意図される。
定義
[0037]用語「有効量」または「治療上有効な量」は、本明細書に記載される化合物または化合物の組合せの、限定されないが病気の治療を含めて意図された応用を達成するのに充分な量を意味する。治療上有効な量は意図された応用(インビトロまたはインビボ)、または処置される対象および病気の状態(例えば、対象の体重、年齢および性別)、疾患状態の重症度、投与の方法、等に応じて変化し得、当業者により容易に決定されることができる。この用語はまた標的細胞において特定の反応(例えば、血小板粘着および/または細胞遊走の低下)を誘発する用量にも適用される。具体的な用量は選ばれる個々の化合物、順守されるべき投与計画、化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、投与される組織、および化合物が運ばれる物理的送達システムに応じて変化する。
【0034】
[0038]「治療効果」は、この用語が本明細書で使用されるとき、治療上の利益および/または予防的利益を含む。予防効果は、疾患もしくは状態の出現を遅らせるかもしくは除去する、疾患もしくは状態の症状の発現を遅らせるかもしくは除去する、疾患もしくは状態の進行を遅くする、停止させる、もしくは逆転させる、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0035】
[0039]「間質性肺疾患」または「ILD」の疾患状態は、限定されないが、特発性間質性肺炎(IIP)、慢性過敏性肺炎、職業性または環境性肺疾患、特発性肺線維症(IPF)、非IPF IIP、肉芽腫(granulomoutus)(例えば、サルコイドーシス)、結合組織疾患関連ILD、およびILDのその他の形態を含めてILDのすべての亜型を含む。
【0036】
[0040]本明細書で本発明のある局面、例えば、投薬範囲、製剤の成分の量、等を記載するのに範囲が使用されるとき、範囲のおよびその中の特定の実施態様のすべての組合せおよび下位の組合せが含まれることが意図される。数または数値範囲に関連した用語「約」の使用は、その参照される数または数値範囲が実験のばらつきの範囲内(または統計的実験誤差の範囲内)の近似値であることを意味する。したがって数または数値範囲は変化し得る。変化は通例述べられた数または数値範囲の0%~15%、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%である。用語「含むcomprising」(および関連する用語、例えば「comprise」または「comprises」または「有するhaving」または「含むincluding」)は、例えば、記載された特徴「からなるconsist of」または「から本質的になるconsist essentially of」任意の組成物、方法またはプロセスの実施形態のような実施形態を含む。
【0037】
[0041]誤解を避けるために、本明細書では、本発明の特定の局面、実施形態または実施例と共に記載される特定の特徴(例えば整数、特性、値、使用、病気、式、化合物または群)は、適合しない場合を除いて、本明細書に記載されるあらゆる他の局面、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきであることが意図される。したがってかかる特徴は適宜本明細書に規定される定義、特許請求の範囲または実施形態のすべてと共に使用され得る。この明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のすべてを含む)に開示される特徴のすべて、および/またはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスのステップのすべては、特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、いかなる組合せで組み合わせられてもよい。本発明はいずれかの開示される実施形態の詳細に制限されない。本発明はこの明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のすべてを含む)に開示される特徴のあらゆる新規なもの、または新規な組合せ、またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのステップのあらゆる新規なもの、またはあらゆる新規な組合せに広がる。
【0038】
[0042]気体状薬剤の効果的な投薬は、薬剤の量および送達のタイミングを含めていくつかの異なる変数に基づく。吸入される薬剤の現在の送達は患者に薬剤を担った吸入される気体を投与することを含む。しかしながら、患者は通例この薬剤を担った気体の一部を吸入するのみであるから、結果としてかなりの量の薬剤が浪費される。吸入される薬剤送達の他の現在の方法はパルス式の気体送達を含み、これは患者の理想的な体重を基準にして単位時間当たりに固定された量の薬剤の末梢への送達を達成することを目指しており、この固定された量は患者の性別から数学的に誘導される。
【0039】
[0043]現在の方法を超える吸入薬剤送達を提供する気体薬剤送達の方法が本明細書に開示される。1つの局面において、本発明はある用量の気体状薬剤を呼吸の吸入段階中に患者に送達する方法を含み、用量の濃度は患者の1回換気量を基準にする。本明細書で使用されるとき、用語「1回換気量」は通常の呼吸中に吸入されるおよび/または吐き出される空気の容量を意味する。1回換気量を基準にした濃度で気体状薬剤の用量を投与することにより、薬剤の固定された量が呼吸毎に患者に送達され、単位時間当たり固定された量の薬剤のように薬剤の固定された量をある時間にわたって送達する他の方法を超えて改善された薬剤送達を提供する。図1は、薬剤を担った気体の吸入を用いる現在の送達システムと比較されたときの本明細書に記載された方法を用いたNOの送達速度を示す。
【0040】
[0044]当業者には理解されるように、1回換気量を決定するいずれかの方法が本開示内で考えられる。いくつかの実施形態において、患者の1回換気量は直接測定により決定される。例えば、1回換気量は肺活量測定、鼻内に配置された呼吸速度計またはサーミスタカニューレを用いて測定されることができる。いくつかの実施形態において、患者の1回換気量は数学的に計算される。例えば、1回換気量は1回換気量プロキシ(proxy)を用いることにより、例えば予測された体重および1回換気量の見積りによって計算されることができる。いくつかの実施形態において、1回換気量は約200mL~約600mL、約250mL~約550mL、約300mL~約500mL、約300mL~約400mL、約300mL、約400mL、および約500mLの範囲である。
【0041】
[0045]当業者には理解されるように、あらゆる気体状薬剤が本開示の方法内で使用されると考えられる。いくつかの実施形態において、気体は医療用気体である。いくつかの実施形態において、気体は治療気体である。1つの実施形態において、気体状薬剤は一酸化窒素である。1つの実施形態において、気体状薬剤は一酸化炭素(CO)である。1つの実施形態において、気体状薬剤はヘリオックス(HeO)である。1つの実施形態において、気体状薬剤は二酸化炭素(CO)である。1つの実施形態において、気体状薬剤は硫化水素(HS)である。
【0042】
NOのパルスのタイミングおよび送達
[0046]1つの局面において、本発明の方法は単一の呼吸の全吸気時間の規定された時間枠にわたるある用量の気体状薬剤の送達を含む。
【0043】
[0047]本発明のある実施形態において、全吸気時間は患者が単一の呼吸中に吸入する時間の合計量を意味する。しかしながら、状況に応じて、「全吸気時間」はまた、治療期間中すべての検出される呼吸に対するすべての吸気時間の総計も意味することができる。治療期間の非限定例は数秒の期間、数分の期間、および数時間の期間を含む。全吸気時間は観察または計算され得る。別の実施形態において、全吸気時間はシミュレートされた呼吸パターンに基づいて確認された時間である。
【0044】
[0048]本発明のある実施形態において、気体状薬剤は全吸気時間の一部分にわたって一定の速度で送達される。いくつかの実施形態において、薬剤が送達される吸気時間の一部分は約0.1秒~約2.0秒の範囲である。いくつかの実施形態において、薬剤が送達される吸気時間の一部分は約0.4秒~約0.6秒の範囲である。1つの実施形態において、薬剤が送達される吸気時間の一部分は約0.4秒である。1つの実施形態において、薬剤が送達される吸気時間の一部分は約0.6秒である。
【0045】
[0049]1つの実施形態において、方法は患者において呼吸パターンを検出することを含む。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは全吸気時間(例えば、患者の単一の吸気の継続時間)を含む。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは呼吸感度対照を含むデバイスを用いて検出される。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の気体状薬剤の投与のタイミングを計算するためにアルゴリズムと関連付けられる。本発明のある実施形態において、パルス毎基準である量の気体状薬剤の投与に必要な気体状薬剤を含有する気体の容量が計算される。ある実施形態において、気体状薬剤は全吸気時間の一部分にわたってパルス方式で患者に送達される。呼吸パターンを検出するのに有用なデバイスの非限定例は、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2016/207227号に見出されることができる。
【0046】
[0050]本発明のある実施形態において、複数の用量の気体状薬剤が、治療用量の気体状薬剤を患者に送達するのに充分な期間にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、デバイスは治療用量の気体状薬剤を患者に送達するのに充分な合計時間を計算する。本発明のある実施形態において、治療用量の気体状薬剤が患者に送達されるのに必要とされる合計時間は少なくとも部分的に前記患者の呼吸パターンに依存する。
【0047】
[0051]いくつかの実施形態において、気体状薬剤の用量は約0.03秒~約2.0秒の範囲の期間にわたって送達される。いくつかの実施形態において、気体状薬剤は各々の呼吸の間一定のパルスで送達される。1つの実施形態において、気体状薬剤の用量は約0.1秒~約2.0秒の範囲の期間にわたって送達される。いくつかの実施形態において、気体状薬剤の用量は約0.4秒~約0.6秒の範囲の期間にわたって送達される。1つの実施形態において、気体状薬剤の用量は約0.4秒の期間にわたって送達される。1つの実施形態において気体状薬剤の用量は約0.6秒の期間にわたって送達される。いくつかの実施形態において、パルスの持続時間は独立して調節される。
【0048】
[0052]本発明のある実施形態において、気体状薬剤は全吸気時間の最初の三分の一の間に送達される。ある実施形態において、気体状薬剤は全吸気時間の最初の二分の一の間に送達される。ある実施形態において、気体状薬剤は全吸気時間の最初の三分の二の間に送達される。
【0049】
[0053]本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも50パーセント(50%)が各々の呼吸の全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも60パーセント(60%)が全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明がある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は各々の呼吸の全吸気時間の最初の三分の一内にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも85(85%)パーセントは各々の呼吸の全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも92パーセント(92%)は全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の少なくとも99(99%)は全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の90%~100%は全吸気時間の最初の三分の一にわたって送達される。
【0050】
[0054]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも70パーセント(70%)が全吸気時間の最初の二分の一にわたって患者に送達される。さらにもう1つ別の実施形態において、パルス用量の少なくとも75パーセント(75%)が全吸気時間の最初の二分の一にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも80パーセント(80%)が全吸気時間の最初の二分の一にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)が全吸気時間の最初の二分の一にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)が全吸気時間の最初の二分の一にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の95%~100%が全吸気時間の最初の二分の一にわたって送達される。
【0051】
[0055]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)が全吸気時間の最初の三分の二にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)が全吸気時間の最初の三分の二にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の95%~100%が全吸気時間の最初の三分の二にわたって送達される。本発明のある実施形態において、気体のパルス用量の90%~100%が全吸気時間にわたって送達される。
【0052】
[0056]凝集したとき、治療期間/時間枠にわたるいくつかのパルス用量の投与も上記範囲を満たすことができる。例えば、凝集したとき治療期間中に投与されるすべてのパルス用量の95%より多くが検出された呼吸のすべての吸気時間のすべての最初の三分の二にわたって投与された。より高い精度の実施形態において、凝集したとき治療期間中に投与されるすべてのパルス用量の95%より多くが検出された呼吸のすべての吸気時間のすべての最初の三分の一にわたって投与された。
【0053】
[0057]本発明の検出方法の高度の精度を考えると、パルス用量は吸気のいずれかの規定された時間窓中に投与されることができる。例えば、パルス用量は患者の吸気の最初の三分の一、真ん中の三分の一または最後の三分の一を目標として投与されることができる。あるいは、吸気の最初の二分の一または第2の二分の一がパルス用量投与のための目標とされることができる。さらに、投与の目標は変化し得る。1つの実施形態において、吸気時間の最初の三分の一が一回または一連の吸気の目標とされることができ、ここで第2の三分の一または第2の二分の一は同一または異なる治療期間中の一回または一連の後の吸気の目標とされ得る。あるいは、吸気時間の最初の四分の一が経過した後パルス用量が始まり、中央の二分の一(次の2つの四分の一)で引き続き、吸気時間の最後の四分の一の始まりでパルス用量が終わるように目標とされることができる。いくつかの実施形態において、パルスは50、100、もしくは200ミリ秒(ms)または約50~約200ミリ秒の範囲だけ遅らせられ得る。
【0054】
[0058]いくつかの実施形態において、患者または個体は任意の年齢であることができるが、より確かな実施形態において患者は16歳以上である。
投薬量および投与計画
[0059]本発明のある実施形態において、患者に送達される気体状薬剤の用量は患者の1回換気量当たりある濃度の量の気体状薬剤で製剤化される。投与される気体状薬剤の用量は患者の単位重量当たりの薬剤の量(例えば薬剤の重量または容量)を基準にして計算されることができる(例えば、患者の体重1kg当たりの薬剤のmg)。1つの実施形態において、投与される気体状薬剤の用量は次の式を用いて計算される:
標的のパルス送達[ml]=測定された1回換気量(TV)[ml]×用量[気体状薬剤nl/mL TV]/濃度[気体状薬剤nl/ml]
[0060]1つの実施形態において、可能な1回換気量計算は次の通り:
TV=TV指数[ml/予測された体重(PBW)kg]×PBW[kg];
ここでTV指数は4~8、PBW=女性の場合45.5+2.3*(身長[インチ]-60)、男性の場合50+2.3*(身長[インチ]-60)
[0061]気体状薬剤の量は重量または容量で表されることができる。
【0055】
[0062]本発明のある実施形態において、患者に送達される気体状薬剤の量は患者の全吸気時間にわたって投与されるべき気体状薬剤の所望の量である。気体状薬剤の量は質量または容量で表されることができる。例えば、気体状薬剤の量はmgまたはnLで表されることができる。当業者には理解されるように、質量の単位で表された気体状薬剤の量は気体状薬剤の密度を基準にして容量の単位で表される量に変換されることができ、逆も可能である。
【0056】
[0063]いくつかの実施形態において、気体状薬剤の用量は1回換気量1mL当たりの気体状薬剤のnLの濃度で送達される。いくつかの実施形態において、気体状薬剤の用量は1回換気量1mL当たりの気体状薬剤のmgの濃度で送達される。気体状薬剤は単独で、または代わりの気体療法と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、酸素(例えば、濃縮酸素)が気体状薬剤と組み合わせて患者に投与されることができる。いくつかの実施形態において、気体状薬剤の用量は1回換気量1mL当たり約10nL~約200nLの気体状薬剤の濃度で送達される。
【0057】
[0064]本発明のいくつかの実施形態において、気体状薬剤は一酸化窒素である。1つの実施形態において、患者に送達される一酸化窒素の量は約0.001mg~約1mg、約0.010mg~約0.500mg、約0.050mg~約0.100mg、または約0.087mgである。1つの実施形態において、患者に送達される一酸化窒素は1回換気量1mL当たり約0.003mg~約0.018mgのNO、1回換気量1mL当たり約0.006mg~約0.010mg、1回換気量1mL当たり約0.003mgのNO、1回換気量1mL当たり約0.006mgのNO、または1回換気量1mL当たり約0.018mgのNOの濃度で配合される。
【0058】
[0065]本発明のある実施形態において、ある容量の気体状薬剤が呼吸毎に(例えば、単一のパルスで)投与される。いくつかの実施形態において、各々のパルス用量中の気体状薬剤の容量は単一の期間の間を通して同じであり得、したがって呼吸毎に同じ量の薬剤を患者に提供する。いくつかの実施形態において、いくつかのパルス用量中の気体状薬剤の容量は患者への気体送達の単一の時間枠の間異なってもよい。
【0059】
[0066]本発明のある実施形態において、単一のパルス用量が治療効果(例えば、治療上有効な量の気体状薬剤)を患者に提供する。本発明の別の実施形態において、2以上のパルス用量の集合が治療効果(例えば、治療上有効な量の気体状薬剤)を患者に提供する。
【0060】
[0067]本発明のある実施形態において、毎時少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約675、約700、約750、約800、約850、約900、約950、または約1000パルスの一酸化窒素が患者に投与される。
【0061】
[0068]本発明のある実施形態において、気体状薬剤治療期間はある時間枠にわたって起こる。1つの実施形態において、時間枠は1日当たり少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。
【0062】
[0069]本発明のある実施形態において、気体状薬剤処置は処置の最小経過の時間枠の間投与される。本発明のある実施形態において、処置の最小経過は約10分、約15分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、または約90分である。本発明のある実施形態において、処置の最小経過は約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。本発明のある実施形態において、処置の最小経過は約1、約2、約3、約4、約5、約6、または約7日、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、または約8週、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、または約24月である。
【0063】
[0070]本発明のある実施形態において、気体状薬剤処置は1日当たり一回以上投与される。本発明のある実施形態において、気体状薬剤処置は1日当たり一回、二回、三回、四回、五回、六回、または六回より多くてもよい。本発明のある実施形態において、処置は1月に一回、2週毎に一回、1週一回、1日おきに一回、毎日、または1日に多数回投与され得る。
【0064】
酸素の投与
[0071]本発明のある実施形態において、処置する医師の指示に従って酸素が患者に投与される。本発明のある実施形態において、酸素は20L/分以下で投与される。本発明のある実施形態において、酸素は1L/分、2L/分、3L/分、4L/分、5L/分、6L/分、7L分、8L/分、9L/分、10L/分、11L/分、12L/分、13L/分、14L/分、15L/分、16L/分、17L/分、18L/分、19L/分、または20L/分以下で投与される。本発明のある実施形態において、酸素は医師により指示された通りに投与される。別の実施形態において、患者は1日当たり24時間酸素を投与される。もう1つ別の実施形態において、患者は1日当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24時間酸素を投与される。別の実施形態において、患者は1日当たり少なくとも12時間酸素を投与される。
【0065】
処置の方法
[0072]本発明のある実施形態において、ある用量の気体状薬剤を必要とする患者に送達する方法が教示される。いくつかの実施形態において、方法は気体状薬剤の用量を前記患者にパルス方式で全吸気時間の一部分にわたって送達することを含み、気体状薬剤の用量は患者の1回換気量当たりある量の気体状薬剤の濃度で送達される。かかる送達は、限定されないが特発性肺線維症(IPF)、肺動脈高血圧症(PAH)、例えばI-V群の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高所障害、またはその他の肺疾患のような様々な疾患の処置に有用であり、また抗菌剤として、例えば肺炎の処置に有用である。
【0066】
[0073]本発明のある実施形態において、感染症を処置する方法が教示される。いくつかの実施形態において、感染症はウイルス、細菌、または原生動物感染症である。あらゆるウイルス、細菌、または原生動物感染症が本開示により予期される。感染症の非限定例はSARS-CoV2感染症、P.aeruginosa感染症、肺炎、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、嚢胞性線維症患者における肺感染症、非結核性抗酸菌、Mycobacterium Avium Complex(MAC)、Mycobacterium abscessus(M.abs)、SARS-CoV(original SARS)、MERS(中東呼吸器症候群)、百日咳(pertussis)、風邪、副鼻腔炎、咽頭炎、咽頭蓋炎、咽頭気管炎、気管支炎、細気管支炎を含む。1つの実施形態において、感染症はSARS-CoV2感染症である。感染症を引き起こすことができるウイルスの例は、限定されることはないが、インフルエンザ、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ボカウイルス、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスおよびエンテロウイルスを含む。感染症を引き起こすことができる細菌の例は、限定されることはないが、S.pneumoniae、S.pyogenes、S.aureus、H.influenzae、Bordetella pertussis、Moraxella catarrhalis、Mycoplasma pneumoniae、Mycoplasma hominis、Chlamydia spp、Legionella、Francisella、Yersinia、Coxiella burnetti、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium haemolyticum、Neisseria gonorrhoeae、およびCandida albicanseを含む。感染症を引き起こすことができる原生動物は、限定されることはないが、トキソプラズマToxoplasma gondiiを含む。
【0067】
[0074]別の実施形態において、感染または疾患、細菌またはウイルス感染症の症状を処置する方法が教示される。1つの実施形態において、感染症はSARS-CoV2感染、COVID-19である。もう1つ別の実施形態において、患者において酸素飽和度を改善する方法が教示される。別の実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者の酸素飽和度を改善する方法が教示される。もう1つ別の実施形態において、患者においてウイルス、細菌、または原生動物の複製ウイルスを阻害する方法が教示される。別の実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者において酸素補給に対する必要性を低減する方法が教示される。もう1つ別の実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者の酸素化を改善する方法が教示される。別の実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に起因する呼吸困難を有する患者に支持療法を提供する方法が教示される。もう1つ別の実施形態において、患者において酸素化を改善する方法が教示される。別の実施形態において、酸素療法に対する必要条件を低減するかまたは患者が酸素療法を受ける時間を短縮する方法が教示される。もう1つ別の実施形態において、機械的な呼吸補助、例えば、人工呼吸器または挿管に対する必要性を低減するかまたは患者が機械的な呼吸補助を受ける時間を短縮する方法が教示される。別の実施形態において、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に罹っている患者が機械的な呼吸補助を必要とする時間を短縮する方法が教示される。もう1つ別の実施形態において、COVID-19を処置する方法が教示される。別の実施形態において、COVID-19に関連する呼吸器症状の重症度を低減する方法が教示される。別の実施形態において、COVID-19に関連する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置する方法が教示される。もう1つ別の実施形態において、外来患者の状況における使用の方法が教示される。
【0068】
[0075]方法は本明細書で考察される投薬および投与計画に合致したiNOのような気体状薬剤の投与を含み、場合により気体状薬剤投与を酸素で補う。本発明のある実施形態において、気体状薬剤は本明細書で考察されるパルス様式に従って投与される。本発明のある実施形態において、気体状薬剤はINOパルス(登録商標)デバイス(Bellerophon Therapeutics)を用いて患者に送達される。
【0069】
[0076]本発明のある実施形態において、患者における酸素化が改善される。1つの実施形態において、酸素化はベースラインの酸素化レベルと比較して改善される。1つの実施形態において、酸素化は約1%~約50%改善される。別の実施形態において、酸素化は約1%~約25%改善される。もう1つ別の実施形態において、酸素化は約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%改善される。別の実施形態において、酸素化は約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%改善される。
【0070】
[0077]本発明の別の実施形態において、酸素化はベースラインの酸素化レベルと比較して維持される。もう1つ別の実施形態において、酸素化はベースラインの酸素化レベルと比較して低下しない。別の実施形態において、処置された患者における酸素化の低下は、処置されないまたはプラセボ患者と比べ時間と共に少なくなる。
【0071】
[0078]本発明のある実施形態において、酸素飽和度レベルが改善される。1つの実施形態において、酸素飽和度レベルはベースラインの酸素飽和度レベルと比較して改善される。1つの実施形態において、酸素飽和度レベルは約1%~約50%改善される。別の実施形態において、酸素飽和度レベルは約1%~約25%改善される。もう1つ別の実施形態において、酸素飽和度レベルは約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%改善される。別の実施形態において、酸素飽和度レベルは約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%改善される。
【0072】
[0079]本発明のもう1つ別の実施形態において、酸素飽和度レベルはベースラインの酸素飽和度レベルと比較して維持される。別の実施形態において、酸素飽和度レベルはベースラインの酸素飽和度レベルと比較して低下しない。もう1つ別の実施形態において、処置された患者における酸素飽和度レベルの低下は、処置されないまたはプラセボ患者と比べ時間と共に少なくなる。
【0073】
[0080]本発明のある実施形態において、患者が機械的な呼吸補助を受ける時間が処置されない患者と比較して低減される。1つの実施形態において、機械的な呼吸補助を受ける時間は約1%~約50%低減される。別の実施形態において、機械的な呼吸補助を受ける時間は約1%~約25%低減される。もう1つ別の実施形態において、機械的な呼吸補助を受ける時間は約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%低減される。別の実施形態において、機械的な呼吸補助を受ける時間は約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。もう1つ別の実施形態において、本発明に従ったiNOのような気体状薬剤による処置は機械的な呼吸補助に対する必要性を回避する。
【0074】
[0081]本発明のある実施形態において、患者が酸素補給療法を受ける時間が処置されない患者と比較して低減される。1つの実施形態において、酸素補給療法を受ける時間は約1%~約50%低減される。別の実施形態において、酸素補給療法を受ける時間は約1%~約25%低減される。もう1つ別の実施形態において、酸素補給療法を受ける時間は約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%低減される。別の実施形態において、酸素補給療法を受ける時間は約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。もう1つ別の実施形態において、本発明に従ったiNOのような気体状薬剤による処置は酸素補給療法に対する必要性を回避する。
【0075】
[0082]本発明のある実施形態において、例えば、SARS-CoV2およびCOVID-19を始めとして、ウイルス、細菌、または原生動物感染症に関連する呼吸器症状、およびそれらと関連する疾患状態の重症度の低下が本発明に従ったiNOのような気体状薬剤の処置により起こる。
【0076】
[0083]本発明のある実施形態において、気体状薬剤の用量は1回換気量(TV)1mL当たり約1nL~約250nL/mL TVの範囲である。本発明のある実施形態において、気体状薬剤の用量は約100nL/mL TV~約200nL/mL TVの範囲である。
【0077】
[0084]本発明のある実施形態において、気体状薬剤の用量は約1mcg/kg IBW/hr~約250mcg/kg IBW/hrの範囲である。本発明のある実施形態において、気体状薬剤の用量は約125mcg/kg IBW/hr~約250mcg/kg IBW/hrの範囲である。
【0078】
[0085]本発明のある実施形態において、COVID-19を処置するための気体状薬剤の用量は約125mcg/kg IBW/hr~約250mcg/kg IBW/hrの範囲である。
【0079】
[0086]本発明のある実施形態において、投与計画は、気体状薬剤に対する臨床的必要性に応じて、毎日24時間以下の期間、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日、および14日以下の期間の気体状薬剤の投与を含む。
【0080】
[0087]本発明のある実施形態において、投与計画は、iNOに対する臨床的必要性に応じて、毎日24時間以下の期間、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日、または14日、および28日以下の期間の約125mcg/kg IBW/hrのiNOである。
【0081】
[0088]本発明のある実施形態において、投与計画は、iNOに対する臨床的必要性に応じて、毎日24時間以下の期間、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日、および28日以下の期間の約250mcg/kg IBW/hrのiNOである。
【0082】
[0089]本発明のある実施形態において、気体状薬剤は、患者が入院する必要性を避けるため、または既に入院しているならば病院内にいる必要性がある時間を減らすために外来患者の状況で投与される。かかる外来患者の状況は患者の家、外来診療所、または歩行可能な環境であることができる。
【0083】
他の治療薬の投与
[0090]本発明のある実施形態において、気体状薬剤は別の治療薬の前、同時、または後に投与される。ある実施形態において、治療上有効な量の別の治療薬は細菌もしくはウイルス感染、またはかかる細菌もしくはウイルス感染により引き起こされる疾患を処置するためにそれを必要とする患者に投与される。1つの実施形態において、治療薬は抗IL-6 抗体、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、favilar、レムデシビル、ワクチン、抗炎症薬、ステロイド(例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはメチルプレドニゾンのようなグルココルチコイド)またはこれらの誘導体もしくは前駆体である。別の実施形態において、治療薬は呼吸器疾患、呼吸困難、および/または肺炎を処置する際に有用な作用物質である。
【実施例
【0084】
[0091]ここで、本発明に包含される実施形態が以下の実施例を参照して記載される。これらの実施例は単に例示の目的で提供され、本明細書に包含される本開示はいかなる意味でもこれらの実施例に限定されると解されるべきではなく、むしろ本明細書に提供される教示の結果として明らかになるいずれかおよびすべての変化を包含すると解釈されるべきである。
【0085】
実施例1
[0092]標的のパルス送達容量の計算
[0093]一酸化窒素の送達のための標的パルス容量は測定された1回換気量、所望の用量、および5000ppmのNO濃度基準にして次の式を用いて計算された:
標的のパルス送達[ml]=測定された1回換気量(TV)[ml]×用量[nl NO/mL TV]/濃度[ppm NO]
[0094]表1は計算された標的パルス容量の例を示す。
【0086】
【表1】
【0087】
[0095]本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され記載されたが、かかる実施形態は単に実例として提供され、他に本発明の範囲を限定するように意図されていない。本発明を実施する際には記載された実施形態に対して本発明の様々な選択肢が使用され得る。
図1
【国際調査報告】