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特表2023-527488ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗不安薬および抗うつ薬、その生産および使用のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗不安薬および抗うつ薬、その生産および使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20230622BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230622BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230622BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230622BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230622BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61K31/437
C07D471/04 103S
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/18
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/68
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/02
A61K9/12
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544322
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 RU2020000161
(87)【国際公開番号】W WO2021187997
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2020111367
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509276582
【氏名又は名称】アラ・ケム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】513016895
【氏名又は名称】アレクサンドル・バシリエビッチ・イワシェンコ
(71)【出願人】
【識別番号】509277338
【氏名又は名称】アンドレイ・アレクサンドロビッチ・イワシェンコ
(71)【出願人】
【識別番号】519311293
【氏名又は名称】イワシェンコ,アレナ・アレクサンドロブナ
(71)【出願人】
【識別番号】513016909
【氏名又は名称】ニコライ・フィリッポビッチ・サブチュク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・アレクサンドロビッチ・イワシェンコ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・バシリエビッチ・イワシェンコ
【テーマコード(参考)】
4C065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065AA18
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP01
4C065QQ01
4C065QQ02
4C076AA01
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA45
4C076AA53
4C076AA69
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC01
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE09J
4C076EE16
4C076EE31
4C076EE38
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA47
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA18
(57)【要約】
本発明は、新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗不安薬および抗うつ薬(NaSSA)、ならびに精神障害を処置するためのその生産および使用のための方法に関する。本発明の主題は、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)、その多形修飾体である、ヒトにおける精神障害の処置のための新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物、ならびにそれらの生産および使用のための方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)およびその多形修飾体である、ヒトにおける精神障害の処置のためのノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物。
【請求項2】
結晶群Pbcaを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の多形修飾体(PM-1)である、請求項1に記載の薬物。
【請求項3】
結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の多形修飾体(PM-2)である、請求項1に記載の薬物。
【請求項4】
結晶群Pbcaを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の多形修飾体(PM-1)。
【請求項5】
結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の多形修飾体(PM-2)。
【請求項6】
多形修飾体PM-1および/またはPM-2と、非晶質相との混合物。
【請求項7】
最大30%の非晶質相を含む、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の生産のための方法であって、
【化1】
4-メチルフェニルヒドラジン塩酸塩(A1・HCl)とスチレン(A6)との反応、それに続き、得られた1-(4-メチルフェニル)-1-(2-フェニルエチル)ヒドラジン塩酸塩(A7・HCl)と、1-メチルピペリジン-4-オン(A2)との反応、それに続き、必要であれば、反応生成物(A・HCl)の塩基(A)への変換による、上記方法。
【請求項9】
結晶群Pbcaを特徴とする斜方晶系の形態の多形修飾体(PM-1)の生産のための方法であって、イソプロパノールからの、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の再結晶による、上記方法。
【請求項10】
結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態の多形修飾体(PM-2)の生産のための方法であって、エタノールからの、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の再結晶による、上記方法。
【請求項11】
PM-1および/またはPM-2と非晶質相との混合物の生産のための方法であって、水またはエタノール水溶液からの、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の再結晶による、上記方法。
【請求項12】
ヒトにおける精神障害の処置のためのノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物であって、治療有効量での、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)、その多形修飾体または多形修飾体と非晶質相との混合物である、上記薬物。
【請求項13】
PM-1、PM-2、またはPM-1および/もしくはPM-2と、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の非晶質相との混合物である、請求項12に記載の薬物。
【請求項14】
治療有効量での、請求項12または13に記載のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物である、医薬組成物の活性成分。
【請求項15】
医薬的に有効な量の請求項14に記載の活性成分および任意選択で賦形剤を含む、皮下、筋肉内、静脈内、および鼻腔内投与のための、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、経口液剤または懸濁剤、エアロゾル、インプラントの形態の医薬組成物。
【請求項16】
活性成分として多形修飾体PM-1を含有する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
活性成分として多形修飾体PM-2を含有する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
活性成分としてPM-1および/またはPM-2の混合物と最大30%の非晶質相を含有する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
2.2%~17.2%の本発明の活性成分を含有し、残りのパーセンテージを構成する医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
賦形剤として、増量剤(ラクトースおよび微結晶性セルロース101)、流動助剤(エアロジル200)、懸濁化剤(ポリビニルピロリドン)、および潤滑剤を含有する錠剤の形態である、請求項15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
カプセル剤の形態の、請求項15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
遅延放出腸溶性ポリマーフィルムのカラコン・アクリル-EZEでコーティングされた錠剤の形態の、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
経口薬物としての、請求項15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
請求項15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物として作製された経口薬物。
【請求項25】
CNS疾患の処置のための、請求項14に記載の活性成分の使用。
【請求項26】
CNS疾患の処置のための、請求項15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
不安および/またはうつ病の処置のための、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
CNS疾患を、それを必要とする患者において処置および/または予防するための方法であって、治療有効量の、請求項15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物を該患者に投与することによる、上記方法。
【請求項29】
不安および/またはうつ病を処置および/または予防するための、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物を、2mg/日から60mg/日(塩基Aとして)に変化する活性成分の用量で前記患者に投与することによる、請求項28または29に記載の処置および/または予防するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗不安薬および抗うつ薬(NaSSA)、ならびに精神障害を処置するためのその生産および使用のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な精神障害は、世界中で増加しつつある。1990年から2013年の間、うつ病および/または不安に罹っている人の数は、4億1600万人から6億1500万人にほぼ50%増加した。世界人口の10%近くが影響を受けており、精神障害は、世界的な非致死的な疾病負荷の30%を占める。人道的な非常事態および現在起こっている対立が、処置選択肢のスケールアップへの必要性をさらに増大させている。WHOは、非常事態中、5人のうち1人もの多くの人がうつ病や不安の影響を受けていると見積もっている。うつ病および不安障害は、世界経済に毎年1兆USドルを費やさせる[https://www.who.int/ru/news-room/detail/13-04-2016-investing-in-treatment-for-depression-and-anxiety-leads-to-fourfold-return]。
【0003】
過去10年間、精神薬理療法は着実に進展しており、精神疾患を処置するための新しい薬物が出現してきた。今日、向精神薬療法(PM)の選択は、精神科クリニックでだけでなく一般的な医療現場でも処置される患者にとって極めて重要である。これは、国民の間での不安およびうつ病罹患の蔓延(ロシアで最大6~7%)、その着実な成長、精神的な病理と肉体的な病理の密接な組合せに起因しており、この理由のために、様々な専門分野の医者がPMを使用する必要性に直面している。神経病学者または精神科医というよりむしろ、このような医者が、全てのPMの3分の2を処方している。結果として、WHOによれば、先進国の成人人口の約3分の1が、精神薬理学的な薬物を摂取している(少しの診断も行われない場合、この計算はより一層高くなる可能性がある)[https://www.rmj.ru/articles/psikhiatriya/Antidepressanty_l_anksiolitiki_ preimuschestva_l_nedostatki/]。
【0004】
不安および抑うつ障害は、疾患と高度に関連しており、症状発現がオーバーラップする。実際に、大うつ病性障害(MDD)を有する全ての患者の半分より多く(58%)が、全般性不安障害(GAD)などの不安障害を有する。
【0005】
1950年代の三環式抗うつ薬(TCA)およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)の導入から、大うつ病性障害の処置のための薬物療法が利用できるようになった。第1の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は1980年代に導入され、TCAおよびMAOIと比較してその改善された安全性および忍容性プロファイルのために、それらがうつ病および関連障害の処置のために最も広く処方される薬物になった。1990年代には、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)が市場に入ってきた。
【0006】
SSRIおよびSNRIは第1選択療法とみなされる、不安と抑うつ状態の両方において効果的である。しかしながら、うつ病に罹っており高レベルの不安を有する患者は通常、うつ病に罹っているが不安障害のない患者より、重度の症状、弱い処置に対する応答、および大きい副作用への感受性を呈示する。これらの要因が、処置中断頻度の増加および著しい未だ満たされていない必要性に寄与する[Richelson E. Multi-modality: a new approach for the treatment of major depressive disorder. SSRIs/SNRIs Intern. J. Neuropsychopharmacology 2013、16(6)、1433~1442]。
【0007】
1990年代に、ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗不安薬および抗うつ薬(NaSSA)のクラスに属する精神治療薬が市場に入ってきた。それらは、アドレナリン作動性およびセロトニン受容体と拮抗することによって作用する。
【0008】
NaSSAの典型的かつ最も有効な代表例は、レメロン(Remeron)、ノルセット(Norset)、アバンザ(Avanza)、ジスピン(Zispin)などのブランド名で販売されているミルタザピンである。ミルタザピンは、抑うつ障害での使用のために、最初にオランダで1994年に、さらに米国で1996年にレメロンというブランド名で承認された[https://en.wikipedia.org/wiki/Mirtazapine]。ミルタザピンは、他のクラスの典型的な薬物(TCA、SSRIおよびSNRI)と比較して最も有効で安全な薬物である[S.-M. Wangら、Addressing the Side Effects of Contemporary Antidepressant Drugs:A Comprehensive Review. Chonnam Med. J. 2018、54(2)、101~112]。
【0009】
ミルタザピンは、不安または睡眠問題によって複雑化するうつ病のために使用される[Anttila S.A., Leinonen E.V. A review of the pharmacological and clinical profile of mirtazapine. CNS Drug Rev. 2001, 7 (3), 249-264. Nutt D.J. Tolerability and safety aspects of mirtazapine. Hum. Psychopharmacol. 2002, 17 Suppl 1, S37-41.]。また、強い抗ヒスタミン作用も有する[Mirtazapine Monograph for Professionals. Drugs.com. American Society of Health-System Pharmacists. 2018]。
【0010】
一般的な副作用としては、体重の増加、傾眠、および眩暈が挙げられる[8]。重篤な副作用としては、躁病、低い白血球数、および子供の自殺数の増加を挙げることができる。療法を止めると、禁断症状が起こる可能性がある[British national formulary: BNF 74 (74版). British Medical Association. 2017、354頁. ISBN 978-0857112989.]。妊娠中にミルタザピンを使用することが安全であるかどうかは不明である[Mirtazapine Monograph for Professionals. Drugs.com. American Society of Health-System Pharmacists. 2018]。これに関して、ミルタザピンより副作用が少ない新しいNaSSAの創薬が緊急課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】https://www.who.int/ru/news-room/detail/13-04-2016-investing-in-treatment-for-depression-and-anxiety-leads-to-fourfold-return
【非特許文献2】https://www.rmj.ru/articles/psikhiatriya/Antidepressanty_l_anksiolitiki_ preimuschestva_l_nedostatki/
【非特許文献3】Richelson E. Multi-modality: a new approach for the treatment of major depressive disorder. SSRIs/SNRIs Intern. J. Neuropsychopharmacology 2013、16(6)、1433~1442
【非特許文献4】https://en.wikipedia.org/wiki/Mirtazapine
【非特許文献5】S.-M. Wangら、Addressing the Side Effects of Contemporary Antidepressant Drugs:A Comprehensive Review. Chonnam Med. J. 2018、54(2)、101~112
【非特許文献6】Anttila S.A., Leinonen E.V. A review of the pharmacological and clinical profile of mirtazapine. CNS Drug Rev. 2001, 7 (3), 249-264.
【非特許文献7】Nutt D.J. Tolerability and safety aspects of mirtazapine. Hum. Psychopharmacol. 2002, 17 Suppl 1, S37-41.
【非特許文献8】Mirtazapine Monograph for Professionals. Drugs.com. American Society of Health-System Pharmacists. 2018
【非特許文献9】British national formulary: BNF 74 (74版). British Medical Association. 2017、354頁. ISBN 978-0857112989.
【非特許文献10】Mirtazapine Monograph for Professionals. Drugs.com. American Society of Health-System Pharmacists. 2018
【発明の概要】
【0012】
以下に、本発明を説明するのに使用される様々な用語の定義を列挙する。これらの定義は、具体的な例において別段の限定がない限り、個々に、またはより大きい群の一部としてのいずれかで、本明細書と特許請求の範囲にわたりそれらが使用されるのと同様に用語に適用される。
【0013】
用語「結晶形態」は、結晶格子を形成するように分子が配列されている物質構造を指す。
用語「多結晶形態」は、様々な結晶格子形態を有する複数の小さい単結晶からなる多結晶性物質構造を指す。
【0014】
用語「活性成分」(医薬物質)は、薬理活性を呈示し、医薬組成物の活性成分である、合成または他の起源の生理学的に活性な化合物を指す。
用語「医薬組成物」は、活性成分と、医薬的に許容され、薬理学的に適合性のある増量剤、溶媒、希釈剤、担体、賦形剤、分散剤および受容剤(receptive agent)、送達のための物質、例えば保存剤、安定剤、増量剤、崩壊薬、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤、抗菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、ならびに長期運搬のための制御物質からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む組成物を指し、これらの選択および比率は、投与および投薬量の性質および経路に依存する。好適な懸濁化剤の例は、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン、ソルビトールおよびソルビトールエーテル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物である。微生物からの防御は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸などを使用して提供することができる。前記組成物はまた、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含んでいてもよい。組成物の長期作用は、活性成分の吸収を減速させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用して達成することができる。好適な担体、溶媒、希釈剤、および送達のための物質の例としては、水、エタノール、多価アルコールおよびそれらの混合物、天然油(例えばオリーブ油)、および注射のための有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。増量剤の例は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどである。崩壊薬および分散剤の例は、デンプン、アルギン酸およびそれらの塩、ならびにケイ酸塩である。潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、および高分子量のポリエチレングリコールである。活性成分の経口、舌下、経皮、筋肉内、静脈内、皮下、および局所または直腸内投与のための医薬組成物は、単独で、または別の活性化合物と組み合わせて、標準的な投与形態で、従来の製剤用担体との混合物として、動物やヒトに投与することができる。
【0015】
用語「賦形剤」は、本明細書で使用される場合、医薬組成物を生産するために使用される、一般的に安全であり、非毒性である化合物を指し、薬での使用に許容される物質を含む。活性成分は、ヒトまたは動物に個々に投与することができるが、それらは通常、意図した投与経路および標準的な療法に基づき選択された1つまたはそれより多くの医薬的に許容される物質(賦形剤、希釈剤、または担体)と共に混合物の形態で投与される。
【0016】
用語「医薬用薬物」は、ヒトや動物における生理学的機能の回復、改善、または改良、ならびに疾患の処置および予防、診断、麻酔、避妊、美容術などを意図した完成した剤形での化合物(または医薬組成物を構成する化合物の混合物)を指す。好適な標準的な投与形態としては、経口形態、例えば錠剤、ゼラチンカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、および経口液剤または懸濁剤;舌下および口腔粘膜投与形態;エアロゾル;インプラント;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、経鼻、または経眼形態;ならびに直腸内投与形態が挙げられる。
【0017】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、対象における疾患の症状を軽減するのに必要な活性成分の量を指す。活性成分の用量は、それぞれ特定のケースにおいて個々の要求を満たすものとなる。前記用量は、その活性および生物学的利用率、処置しようとする疾患の重症度、患者の年齢および全身状態、患者の処置のために使用される他の医薬、投与の様式および経路、ならびに担当医師の経験のような多数の要因に応じて広範に変更することができる。経口投与の場合、1日用量は、単独療法および/または併用療法の両方において、およそ0.01~10gであり、それらの間の全ての値を含む。好ましい1日用量は、約0.01~1gである。
【0018】
用語「対象」は、哺乳動物を指し、その例としては、これらに限定されないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、シチメンチョウ、スイギュウ、ラマ、ダチョウ、イヌ、ネコ、およびヒトが挙げられ、好ましくは、対象は、ヒトである。
【0019】
用語「患者」は、医療ケアを受けているヒト、医療的管理を受けている、および/またはあらゆる疾患、病的な状態または他の健康状態もしくは生活上の障害のための処置を受けているヒト、加えて、彼らが疾患を有するかどうかにかかわらず医療サービスを使用しているヒトを指す。
【0020】
発明の概要
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)、その医薬的に許容される塩および/または水和物は、5-HT6セロトニン受容体のアンタゴニストであり、同時に細胞中のカルシウムイオンのホメオスタシスを調節することが公知である[特許RU2334747号、2008]。また、このリガンド(A)の様々な生物学的活性は、同時に、α-アドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ヒスタミン受容体、イミダゾリン受容体およびセロトニン受容体を含むことも公知である[特許RU2407744号、2010.A.V. Ivachtchenkoら、AVN-101:A Multi-Target Drug Candidate for the Treatment of CNS Disorders. Alzh. Disease 53 (2016) 583~620.]。
【0021】
マウスモデルにおけるこのリガンドの活性の研究に基づき、その病因が、α-アドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ヒスタミンH2受容体、イミダゾリン受容体および5-HT1A、5-HT1B、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT7セロトニン受容体の群の同時の過剰または過少活性化に関連するCNS疾患および病的な状態の、薬理学的に有効な量の2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールの投与による処置および/または防止のための薬物および方法が提唱されている[特許RU2407744号、2010]。
【0022】
しかしながら、それを必要とするヒトにおけるCNS障害を処置するための、ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物としての前記リガンドの使用に関する科学文献や特許文献におけるデータはない。
【0023】
発明者らは、驚くべきことに、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩、その多形修飾体(PM)は、ヒトにおいて、ドーパミン、ヒスタミンおよびイミダゾリン受容体に対する活性を有するリガンドの特徴である副作用を示さないことを見出した。
【0024】
本発明の主題は、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)、その多形修飾体である、ヒトにおける精神障害の処置のための新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物、ならびにその調製および適用のための方法である。
【0025】
本発明の主題は、結晶群Pbcaを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の多形修飾体(PM-1)である、ヒトにおける精神障害の処置のための新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物である。
【0026】
本発明の主題は、結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A・HCl)塩酸塩の多形修飾体(PM-2)である、ヒトにおける精神障害の処置のための新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物である。
【0027】
本発明の主題は、結晶群Pbcaを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリドール[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)のこれまでに知られていない多形修飾体(PM-1)である。
【0028】
本発明の主題は、結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態の、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリドール[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)のこれまでに知られていない多形修飾体(PM-1)である。
【0029】
本発明の主題は、斜方晶PM-1および/またはPM-2と非晶質相との混合物である、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルメチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリドール[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の多形修飾体のこれまでに知られていない混合物である。
【0030】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)を生産することが公知のプロセスは、以下を含む:
(a)80℃での、ジオキサン中でのp-トリルヒドラジン(A1)と、N-メチルピペリドン-4(A2)との相互作用による、52%収量での2,8-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリドン[4,3-b]インドール(A3)の合成(スキーム1)[WO/2010/051501];
【0031】
【化1】
【0032】
スキーム1. 2,8-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリドン[4,3-b]インドール(A3)の合成。
(b)20~80℃で、6~12時間にわたり、3mlの60%のKOH水溶液および100mlの50%(Bu4N)2SO4水溶液の存在下、1mlのジメチルスルホキシド中で、カルボリンA3とフェニルアセチレン(A4)とを相互作用させることにより、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)を合成し、それに続いて白金触媒で水素化して、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエテニル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A5)および(スキーム2)を形成した。反応が完了したら、反応物をろ過または遠心分離し、ろ液を真空中で蒸発させ、残留物を、トリエチルアミンを含浸させたシリカゲル(溶離剤:クロロホルム-トリエチルアミンまたはジクロロメタン-テトラヒドロフラン-トリエチルアミン)でのクロマトグラフィーにかけるか、または好適な溶媒(溶媒は特定されない)から再結晶させる。明示した特許では、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A・HCl)塩酸塩を調製するための方法は提供されない。これらの特許は、得られた2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)およびその塩の位相形態に関するデータ、または(a)で得られた2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールサンプルの多形修飾体を確認するX線位相データも欠如している[特許RU2334747号(2008)、RU2407744号(2010)]。
【0033】
【化2】
【0034】
スキーム2. 2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)およびその塩酸塩A・HClの合成。
【0035】
本発明の主題は、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)の生産のための方法であって、4-メチルフェニルヒドラジン塩酸塩(A1・HCl)とスチレン(A6)との相互作用、および得られた1-(4-メチルフェニル)-1-(2-フェニルエチル)ヒドラジン塩酸塩(A7・HClと、1-メチルピペリジン-4-オン(A2)との相互作用、それに続き、必要に応じて、反応生成物(A・HCl)の塩基(A)への変換、次いで、必要に応じて、別の医薬的に許容される塩への変換(スキーム3)による、上記方法である。
【0036】
【化3】
【0037】
スキーム3. 2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(A)およびその塩酸塩A・HClの合成。
【0038】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の生産のための新規の方法は、公知の方法[特許RU2334747号(2008)、RU2407744号(2010)]と比較して、より簡単で、より短い期間であり、費用がかかる白金触媒の使用を必要としない。
【0039】
本発明の主題は、イソプロパノールからのA・HClの再結晶によって、結晶群PBCを特徴とする斜方晶系の形態で、多形修飾体(PM-1)2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)を生産するための方法である。
【0040】
本発明の主題は、エタノールからのA・HClの再結晶によって、結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態で、多形修飾体(PM-2)2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)を生産するための方法である。
【0041】
本発明の主題は、水またはエタノール水溶液からのA・HClの再結晶によって、結晶群Pbcaおよび/またはPnnnを特徴とする斜方晶ならびに非晶質相の形態で、PM-1混合物および/またはPM-2混合物、ならびに2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の非晶質相を生産するための方法である。
【0042】
本発明の主題は、治療有効量での、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)、その多形修飾体または多形修飾体と非晶質相との混合物である、ヒトにおける精神障害の処置のための新規のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物である。
【0043】
好ましい薬物は、治療有効量での、PM-1、PM-2、またはPM-1および/またはPM-2と、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の非晶質相との混合物である。
【0044】
本発明のさらなる主題は、治療有効量での本発明のノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬物である医薬組成物の活性成分である。
薬物プロトタイプと比較した本発明の活性成分
【0045】
【化4】
【0046】
ミルタザピンは、アドレナリン作動性および特異的セロトニン受容体に対して、より著しく高い活性を有する(表1)
【0047】
【表1】
【0048】
本発明のよりさらなる主題は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、および経口液剤または懸濁剤、エアロゾル、インプラント、ならびに皮下、筋肉内、静脈内、および経鼻の形態の医薬組成物であって、医薬的に有効な量の本発明の活性成分および任意選択で賦形剤を含む、前記組成物である。
【0049】
本発明の主題は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、および経口液剤または懸濁剤、エアロゾル、インプラント、ならびに皮下、筋肉内、静脈内、および経鼻の形態の医薬組成物であって、活性成分として、医薬的に有効な量の、結晶群Pbcaを特徴とする斜方晶系の形態のPM-1を含む、前記組成物である。
【0050】
本発明の主題は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、および経口液剤または懸濁剤、エアロゾル、インプラント、ならびに皮下、筋肉内、静脈内、および経鼻の形態の医薬組成物であって、活性成分として、医薬的に有効な量の結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶系の形態のPM-2を含む、前記組成物である。
【0051】
本発明の主題は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、および経口液剤または懸濁剤、エアロゾル、インプラント、ならびに皮下、筋肉内、静脈内、および経鼻の形態の医薬組成物であって、活性成分として、医薬的に有効な量のPM-1および/またはPM-2と、2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の非晶質相との混合物を含む、前記組成物である。
【0052】
賦形剤は、一般的に、薬理学的に適合性のある分散剤および受容剤、送達のための物質、例えば保存剤、安定剤、増量剤、崩壊薬、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤、抗菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、ならびに長期運搬のための制御物質から選択され、これらの選択および比率は、性質および投与方法、および医薬組成物に依存する。好適な懸濁化剤の例は、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン、ソルビトールおよびソルビトールエーテル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物である。微生物からの防御は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸などを使用して提供することができる。前記組成物はまた、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含んでいてもよい。組成物の長期作用は、活性成分の吸収を減速させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用して達成することができる。好適な担体、溶媒、希釈剤および送達のための物質の例としては、水、エタノール、多価アルコールおよびそれらの混合物、天然油(例えばオリーブ油)、および注射のための有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。増量剤の例は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどである。崩壊薬および分散剤の例は、デンプン、アルギン酸およびそれらの塩、ならびにケイ酸塩である。潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、および高分子量のポリエチレングリコールである。活性成分の経口、舌下、経皮、筋肉内、静脈内、皮下、および局所または直腸内投与のための医薬組成物は、単独で、または別の活性化合物と組み合わせて、標準的な投与形態で、従来の製剤用担体との混合物として、動物やヒトに投与することができる。好適な標準的な投与形態としては、経口形態、例えば錠剤、ゼラチンカプセル、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、および経口液剤または懸濁剤;舌下および口腔粘膜投与形態;エアロゾル;インプラント;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、経鼻、または経眼形態;ならびに直腸内投与形態が挙げられる。
【0053】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガム、液剤、または懸濁剤である。
本発明の医薬組成物は、好ましくは、2.2%~17.2%の本発明の活性成分を含有し、残りのパーセンテージを構成する医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0054】
本発明の主題は、2.2%~11.1%または2.2%~17.2%の本発明の活性成分を含み、残りのパーセンテージを構成する医薬的に許容される賦形剤を含む、錠剤の形態の医薬組成物である。
【0055】
賦形剤に関して、錠剤の形態の医薬組成物は、例えば、増量剤(ラクトースおよび微結晶性セルロース101)、流動助剤(エアロジル(Aerosil)200)、懸濁化剤(ポリビニルピロリドン)、および潤滑剤(ステアリン酸カルシウム)を含有する。錠剤は、カラコン・アクリル-EZE(Colorcon Acryl-EZE)遅延放出アクリル酸腸溶性フィルムでコーティングされていてもよい。
【0056】
本発明の主題は、2.2%~17.2%の本発明の活性成分を含み、残りのパーセンテージを構成する医薬的に許容される賦形剤を含む、カプセル剤の形態の医薬組成物である。
【0057】
賦形剤に関して、カプセル剤の形態の医薬組成物は、例えば、増量剤(ラクトースおよび微結晶性セルロース101)、流動助剤(エアロジル200)、懸濁化剤(ポリビニルピロリドン)、膨張剤(デンプングリコール酸ナトリウム)および潤滑剤(ステアリン酸カルシウム)を含有するか、または、例えば、増量剤(ラクトースおよび微結晶性セルロース101)、エンテロソルベント(enterosorbent)(コロイド状二酸化ケイ素)、潤滑剤(水添ヒマシ油およびステアリン酸マグネシウム)および膨張剤(ジャガイモデンプン6%)を含有する。
【0058】
本発明の主題は、経口薬物として治療有効量での本発明の活性成分を含む、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤またはチューインガムの形態の医薬組成物の使用である。
本発明の主題は、治療有効量の本発明の活性成分を含む、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、またはチューインガムの形態の医薬組成物である経口薬物である。
【0059】
本発明の別の主題は、中枢神経系(CNS)の疾患の処置における、治療有効量の本発明の活性成分およびそれをベースとした医薬組成物の使用である。
本発明の主題は、不安障害およびうつ病などのCNS障害を、それを必要とする患者において処置することにおける本発明の医薬組成物の使用である。
【0060】
本発明の主題は、不安障害およびうつ病などのCNS障害を、それを必要とする患者において処置および/または防止するための方法であって、治療有効量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを特徴とする、上記方法である。
【0061】
不安障害およびうつ病などのCNS障害を、それを必要とする患者において処置および/または予防する好ましい方法であって、本発明の特許請求の範囲によれば、本発明の医薬組成物を、2mg/日から60mg/日(塩基Aとして)に変化する活性成分の用量で該患者に投与することを特徴とする、上記方法。
【0062】
本発明の活性成分の用量は、患者の疾患の状態、年齢、または体重に依存する。用量は、1日1回で投与してもよいし、または数回の1日用量に分割してもよい。本発明の化合物は、薬物活性を強化する、化合物の用量を低減するなどの目的で、他の医薬と組み合わせて使用することができる(下記では併用療法と称される)。
【0063】
健康な志願者における、1日当たりの、錠剤およびカプセル剤での、単回および複数回の活性成分の漸増用量(塩基として、2mg、4mg、10mg、20mg)、ならびに複数回の40mgおよび60mgの活性成分の漸増用量(塩基として)の薬物動態および安全性の研究は、全般的に、本発明の活性成分および薬物の好都合な安全性プロファイルおよび優れた忍容性を実証した。この研究において、薬物を摂取することに関連する有害事象(AE)はほとんど検出されなかった(実施例7~9)。
【0064】
129人のGTRを有する患者(グループ1:43人の患者、活性成分の1日用量:60mg(塩基Aとして);グループ2:43人の患者、活性成分の1日用量:40mg(塩基Aとして)、およびグループ3:43人の患者、プラセボ)に対する本発明の活性成分を含有するカプセル剤での新規の医薬組成物の効能および安全性のランダム化二重盲検プラセボ対照試験(実施例9)は、例えばハミルトン不安尺度(HARS)(表3)およびハミルトンうつ病尺度(HAMD)(表4)、加えて、視覚的アナログ尺度(VAS)(表5)、臨床全般印象度-重症度尺度(CGI-S)(表6)、および臨床全般印象度-改善尺度(CGI-I)(表7)において高い効能を実証した(表2)。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
図1~5は、125人のヒトを含むMITT研究中の研究された尺度に対する総スコアの変化の動態を示し、本発明の活性成分を含むカプセル剤での新規の医薬組成物の高い効能も確認された。
【0072】
上述した本発明の活性成分の臨床研究は、患者におけるその好都合な安全性プロファイルおよび優れた忍容性を実証した(表8)。安全性に関して、40mgの用量はプラセボに近い。60mgの用量で、いくつかの副作用、すなわち頭痛、傾眠、眩暈、衰弱、吐き気、不安の増加が観察された。
【0073】
【表8】
【0074】
本発明は、以下の図で例示される:
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1図1は、125人の患者からなるMITTの研究中のHARS尺度における全体的なスコアにおける変化の動態である。
図2図2は、125人の患者からなるMITTの研究中のHAMD尺度における全体的なスコアにおける変化の動態である。
図3図3は、125人の患者からなるMITTの研究中のVAS尺度における全体的なスコアにおける変化の動態である。
図4図4は、125人の患者からなるMITTの研究中のCGI-S尺度における全体的なスコアにおける変化の動態である。
図5図5は、125人の患者からなるMITTの研究中のCGI-I尺度における全体的なスコアにおける変化の動態である。
図6図6は、1:12.5の比率での塩酸と水との混合物からの再結晶によって実施例2に従って調製されたA・HClサンプル番号021119Aの回折パターン図である。
図7図7は、A・HClサンプル番号0050120(A)および050120MP(B)の回折パターン図、ならびにイソプロパノールからの再結晶による実施例4に従って調製されたA・HClサンプル番号050120(C)および050120MP(D)の理論上(赤色のライン)および実験上(青色のライン)の回折パターン図、ならびにそれらの差(灰色のライン)の概観である。
図8図8は、エタノールからの再結晶によって実施例5に従って調製されたA・HCl結晶サンプル番号041119Aの理論上および実験上(赤色および青色のライン)の回折パターン図、ならびにそれらの差(灰色のライン)である。
図9図9は、A・HClサンプル番号111611の理論上および実験上(赤色および青色のライン)の回折パターン図、ならびにそれらの差(灰色のライン)である。青色の垂直線は、不純物ピークの位置を表す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下の実施例は、限定することなく、本発明を例示する。
【実施例1】
【0077】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の合成。
4-メチルフェニルヒドラジン塩酸塩(A1・HCl)(2230g、14mol)を20リットルのリアクターに入れ、次いで水(6l)およびメチルtert-ブチルエーテル(6l)を添加する。得られた懸濁液に、水酸化ナトリウム(843g、21mol)を撹拌しながら少量ずつ添加する。最初の塩酸塩が完全に溶解するまで混合物を40分間撹拌し、撹拌を止め、混合物を層分離する。下の水層を底の栓から排出する。加熱を行い、メチルtert-ブチルエーテル(5l)を蒸留で取り除く。次いで加熱を止め、冷却した反応物に、ジメチルスルホキシド(1.4l)、ヘキサン(2.1l)、乳鉢で予め粉砕した水酸化カリウム(39g、0.7mol)、および2196g(21mol)のスチレン(A6)を撹拌しながら添加する。反応物を沸騰するまで加熱し、ディーン・スタークノズルを用いて20~30時間沸騰させる。反応が完了したら(最初のA1・HCl、TLC対照がなくなる)、加熱を止め、次いで撹拌を止めた。冷却した反応物に水(5~7倍体積)を添加し、混合物を、メチルtert-ブチルエーテル(3×5l)で抽出する。合わせた有機画分をセライト(281g)に通過させてろ過し、ロータリーエバポレーターで、真空中で濃縮する。残留物に濃塩酸(1.27l)を強く撹拌しながら慎重に添加し、得られた沈殿をフィルターに移し、ヘキサン(4,2l)で洗浄し、乾燥させて、2600gの1-(4-メチルフェニル)-1-(2-フェネチル)ヒドラジン塩酸塩(A7・HCl)(70%)を得る。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ md = 10.54 (s, 3H), 7.35 - 7.04 (m, 9H), 3.78 - 3.61 (m, 2H), 2.85 -2.71 (m, 2H), 2.28 (s, 3H)。
【実施例2】
【0078】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の合成。
100リットルのリアクター中に、10gの1-(4-メチルフェニル)-1-(2-フェネチル)ヒドラジン塩酸塩(A7・HCl)および5.5gのN-メチルピペリドン-4(A2)をエタノール(20ml)中で混合する。得られた混合物を完全に溶解するまで撹拌し、濃塩酸(10ml)を徐々に添加し、反応プロセスをTLCによって制御して反応混合物を4~6時間沸騰させる。A7・HClの変換が完了した後、加熱を止め、水(125ml)を添加する。撹拌を止め、反応混合物を室温で放置する。沈殿した結晶をろ過して除き、空気乾燥させ、12gの標的生成物A・HCl(88%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ md = 11.23 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.31 - 7.16 (m, 4H), 7.11 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.81 - 3.88 (m, 4H), 3.57 (s, 1H), 3.35 (s, 1H), 3.13 - 2.78 (m, 6H), 2.67 (s, 1H), 2.38 (s, 3H)。得られた生成物A・HCl(サンプル番号021119A)を、ゲルマニウムモノクロメーターおよび単色化と集光のためのスリットのシステムを備えたブルカー(Bruker)のD8アドバンス(D8 Advance)回折計でのX線位相法(λ[CuKα]=1.5406Å)、加えて、2θで4°~50°の角度範囲および0.02°のステップサイズの位置検出型LynxEye検出器によって研究した。X線をサンプルに通過させることによって記録を実行した。50mgのサンプルを乳鉢で1~2分間粉砕し、マイラーフィルム(Chemplex)上に塗り広げ、2枚のフィルム間のサンプルホルダーにサンプルの薄層を固定した。次いで回折パターンを約4時間にわたり測定した。得られた回折パターン図(図6)を同定できなかったことから、これは、得られたサンプルが多結晶であることを示す。
【実施例3】
【0079】
2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の合成。
得られた1-(4-メチルフェニル)-1-(2-フェネチル)ヒドラジン塩酸塩(A7・HCl)(2500g、9.5mol)を、機械式の撹拌器を備えた100リットルのリアクターに供給し、エタノール(5l)およびN-メチルピペリドン-4(A2)(1184g、10.5mol)を添加する。A7・HClが完全に溶解するまで混合物を撹拌し、濃塩酸(1.24l)を徐々に添加する。混合物を沸騰するまで加熱し、反応プロセスをTLCによって制御しながら沸騰させる。8時間後、A7・HClの完全変換が観察された。加熱を止め、反応物をそのまま室温に冷却させ、強く撹拌しながら水(40l)を添加する。30~40分後、沈殿が始まる。反応物をそのまま一晩撹拌する。次いで撹拌を止め、残留物をろ過して除き、少量の水で洗浄し、最初に空気で乾燥させ、次いで真空中で乾燥させて、一定の質量にする。収量は、2987gのA・HCl(92%)である。
【実施例4】
【0080】
結晶形態(CF1)での2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の調製。
【0081】
実施例3で合成されたA・HCl(2987g)を撹拌しながら力強く溶解し、イソプロパノール(76.2l)中で沸騰させる。加熱を止め、反応混合物をそのまま12時間撹拌する。得られた結晶性の沈殿をろ過して除き、少量のイソプロパノールで洗浄し、一定の質量になるまで50℃未満の温度で真空乾燥して、2021gのA・HCl(70%)(結晶サンプル番号050120)を得る。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ md = 11.35 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.32 - 7.15 (m, 4H), 7.11 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.63 - 4.02 (m, 4H), 3.56 (s, 1H), 3.29 (s, 1H), 3.09 - 2.76 (m, 6H), 2.67 (s, 1H), 2.38 (s, 3H)。A・HClの結晶化後、母液をロータリーエバポレーターで蒸発させ、フィルター上で残留物をイソプロピルアルコール(2l)で洗浄し、一定の質量になるまで空気乾燥させる。得られた追加の生成物(547g)を30リットルのリアクターに供給し、次いでイソプロピルアルコール(14.5l)を添加し、混合物を撹拌しながら沸騰するまで加熱する。残留物が完全に溶解した後、加熱を止める。反応混合物をそのまま12時間撹拌する。得られた結晶性の沈殿をろ過して除き、少量のイソプロパノールで洗浄し、一定の質量になるまで50℃未満の温度で真空乾燥して、383g(70%)のA・HCl(結晶サンプル番号050120MP)を得るこれは、特許請求の範囲のX線位相分析データによれば、元の結晶サンプルA・HCl番号050120に同一であり、3813.4(2)Åの格子体積および以下の結晶格子パラメーター:a=10.5074(2)Å、b=37.360(2)Å、およびc=9.7144(2)Åを有する斜方晶群(PM-1)に相当する(図7、表9)。Ge111モノクロメーターおよびLynxEye位置検出型検出器を備えたブルカーのD8アドバンス・バリオ(D8 Advance Vario)X線粉末回折計でサンプルを記録した。2枚のマイラーフィルム間に固定した回転するサンプルにX線を通過させることによって記録を実行した。TOPASソフトウェアを使用して回折パターンを記載した。
【0082】
【表9】
【実施例5】
【0083】
結晶形態(CF2)でのCF2である2,8-ジメチル-5-(2-フェニルエチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(A・HCl)の調製。
【0084】
A・HCl(25g)を撹拌しながら力強く溶解し、エタノール(0.66l)中で沸騰させる。加熱を止め、反応混合物をそのまま24時間撹拌する。得られた沈殿をろ過して除き、少量のイソプロパノールで洗浄し、一定の質量になるまで50℃未満の温度で真空乾燥して、12.5g(50%)のA・HCl結晶サンプル番号041119A)を得る。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ md = 11.39 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.30 - 7.15 (m, 4H), 7.11 (d, J = 6,8 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.79 - 3.85 (m, 4H), 3.7 - 3.19 (m, 2H), 3.17 - 2.76 (m, 6H), 2,75 - 2.55 (m, 1H), 2.38 (s, 3H)。得られた結晶サンプル番号041119Aは、6042.4(3)Åの格子体積および以下の結晶格子パラメーター:a=41.673(8)Å、b=24.107(7)Å、およびc=6.0141(17)Å(図8、表10)を有する結晶群Pnnnを特徴とする斜方晶(PM-2)として出現する。Ge111モノクロメーターおよびLynxEye位置検出型検出器を備えたブルカーのD8アドバンス・バリオX線粉末回折計でサンプルを記録した。2枚のマイラーフィルム間に固定した回転するサンプルにX線を通過させることによって記録を実行した。TOPASソフトウェアを使用して回折パターンを記載した。
【0085】
【表10】
【実施例6】
【0086】
PM-2および非晶質相を含む多形混合物の調製。
A7・HCl(217g、1.92mol)、N-メチルピペリドン-4(394.5g、1.74mol)、およびエタノール(0.91l)を一緒に混合する。A7・HClが完全に溶解するまで混合物を撹拌し、濃塩酸(370ml)を滴加する。反応プロセスをTLCによって制御しながら反応混合物を4~6時間沸騰させる。加熱を止め、反応物をそのまま室温に冷却させ、強く撹拌しながら水(8l)を添加する。30~40分後、沈殿が始まる。反応物をそのまま一晩撹拌する。次いで撹拌を止め、残留物をろ過して除き、少量の水で洗浄し、最初に空気で乾燥させ、次いで真空中で乾燥させて、一定の質量にする。A・HCl(サンプル番号111611)の収量は、529g(89%)である。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.19 (bs, 1H), 7.45 - 7.34 (m, 1H), 7.31 - 7.15 (m, 4H), 7.14 -7.06 (m, 2H), 7.04-6.93 (m, 1H), 4.58 - 4.09 (m, 4H), 3.68 - 3.50 (m, 1H), 3.36 - 3.20 (m, 1H), 3.08 - 2.79 (m, 6H), 2.74 - 2.58 (m, 1H), 2.38 (s, 3H)。得られたサンプル番号111611の回折パターン図は、図5に示される。サンプル番号111611はいくつかの不純物ピークを示したことを除き、サンプル番号111611の回折パターン図(図5)およびサンプル番号041119Aの回折パターン図(図4)上のピークのほとんどの位置が類似している。注目すべきことに、これらのピークは異なる幅を有することから、サンプル中に少なくとも2つの位相、すなわち結晶性(PM-2)および無定形が存在することが示唆される。サンプル中の無定形不純物ピークの強度部分は、25%である。
【実施例7】
【0087】
錠剤の形態の医薬組成物として作製された本発明の経口薬物。
振動ふるいで前もってふるいにかけた本発明の活性成分を高剪断ミキサーで混合し、次いで棒状にプレスした。得られた棒状物を顆粒に粉砕し、ふるいでより分けて、14~16メッシュサイズの顆粒を収集した。このようにして得られた顆粒を二つのくぼみを有する錠剤の形態にプレスし、これを水性アクリル酸腸溶遅延放出フィルムであるカラコン・アクリル-EZEでコーティングした。錠剤の形態で得られた本発明の経口薬物(表11)を臨床研究でさらに使用した。
【0088】
【表11】
【実施例8】
【0089】
カプセル剤の形態の医薬組成物として作製された本発明の経口薬物。
本発明の活性成分、微結晶性セルロース101、乳糖一水和物200、コロイド状二酸化ケイ素(エアロジル)、ステアリン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを振動ふるいでより分ける(ふるいのセルの直径は0.5mmである)。より分けた成分を別個の容器に必要な比率で量り入れる。微結晶性セルロースおよび塩酸塩(A・HCl)を高剪断ミキサーに入れ、メインの撹拌器の回転速度を350±100rpmとし、チョッパーの回転速度を900±100rpmとして60秒撹拌する。60秒後、乳糖一水和物200を入れ、同じパラメーターでさらに60秒間撹拌を続ける。次いで、コロイド状二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン、およびデンプングリコール酸ナトリウムを1つずつ入れる各成分を入れた後、同じパラメーターで60秒間撹拌し続ける。次いで、ステアリン酸カルシウムを入れ、メインの撹拌器の回転速度を200±100rpmとして40秒間撹拌した。カプセルマシーンで、得られた医薬組成物を白色の本体とふたを有するカプセル番号4中にカプセル化して、カプセル剤の形態の医薬組成物として作製された本発明の経口薬物(表12)を生産し、これを臨床研究でさらに使用した。
【0090】
【表12】
【実施例9】
【0091】
カプセル剤の形態の医薬組成物として作製された本発明の経口薬物。
無水ラクトース、ジャガイモデンプン6%、および水添ヒマシ油(Kolliwax HCO)を別個の容器に量り入れ、振動ふるいでより分ける(ふるいのセル直径=0.5mm)。より分けた成分を別個の容器に量り入れる。次いで、結晶形態IまたはIIのA・HCl、無水ラクトース、およびジャガイモデンプン6%をタンブリングバレルミキサーに入れ、そこで混合物を15分間撹拌する。次いで、水添ヒマシ油を添加し、混合物をさらに3分間撹拌する。得られた医薬組成物をローラー圧縮機に供給し、20±10rpmのフィーダー速度、25±5kNの圧力、8±2rpmのローラー回転速度、150±50rpmのキャリブレーター回転速度、および0.6mmのキャリブレーターセル直径で圧縮する。得られた医薬組成物の粒状物を、0.5mmのセル直径を有する振動ふるいでより分ける。
【0092】
医薬組成物のふるいにかけた粒状物をタンブリングバレルミキサーに入れ、5分間撹拌し、その後すぐにカプセルマシーンで、白色の本体とふたを有するカプセル番号4にカプセル化する。結果として、本発明の経口薬物をカプセル剤の形態の医薬組成物として生産し、これを臨床研究でさらに使用した。表13は、前記経口薬物の成分を要約する。
【0093】
【表13】
【実施例10】
【0094】
本発明の経口薬物の安全性の臨床研究。
カプセル剤の形態の本発明の医薬組成物として作製された抗精神病薬の薬物動態学の非盲検臨床治験を、20~55の肥満指数を有する20~50歳の身体的および精神的に健康な男性に対し、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)(Good clinical practice (GCP))」の推奨に従って、塩基Aとして表される2mg/日(コホート1、8人の志願者)、4mg/日(コホート1、8人の志願者)、10mg/日(コホート1、8人の志願者)、および20mg/日(コホート1、8人の志願者)の用量での32人の健康な志願者における単回経口投与を用いて実行した。試験の結果から、カプセル剤の形態の本発明の医薬組成物として作製された抗精神病薬は、2、4、10、および20mgの単回用量で十分許容され、血漿および尿のパラメーターに著しく影響を与えたり、Qt間隔を延長させたりしないことが実証された。20mgコホートで、傾眠、動揺および感覚異常のような副作用が観察された。調和平均半減期は14時間にも上昇し、2~20mgの用量範囲におけるCmaxおよびAUCの直線的な増加を示し、約1時間で塩基(A)の血液中の最大濃度が達成される(表14)。
【0095】
【表14】
【実施例11】
【0096】
カプセル剤の形態の本発明の医薬組成物として作製された本発明の経口薬物の漸増用量の安全性研究。
単回および複数回投与のためのカプセル剤の形態の本発明の医薬組成物として作製された抗精神病薬の漸増用量の臨床的な安全性研究。この研究は、20mgの用量で1回、次いで4日間にわたり同じ用量で1日2回の抗精神病薬を摂取している4人の志願者の1つのコホートを取り入れた。抗精神病薬を1日2回摂取している20mgコホートで得られた3週間の安全性データに基づいて、独立した安全性データをモニターする委員会は、試験用の抗精神病薬を、20mgの用量で1回、次いで4日間にわたり同じ用量で1日3回摂取した4人の志願者の第2のコホートを組み入れるという決定を行った。
【0097】
この研究において、抗精神病薬は、好都合な安全性プロファイルおよび優れた忍容性を実証した。この研究は、薬物摂取に関連するいかなる有害事象(AE)も示さなかった。60mgの1日用量を受けた志願者でのみAEが観察された。抗精神病薬の残りの濃度は、規則的な薬物投与の開始から1~2日後に安定化された。40mgコホート累積係数(F)は2.5であり、60mgコホートでは2.1であった。
【0098】
志願者の大部分で、抗精神病薬のピーク濃度の時間(Tmax)は顕著ではなく、0.5時間から4時間まで様々であり、40mgコホートでは中央値は0.75時間であり、60mgコホートでは2.3時間であった。繰り返しの用量の場合、Tmaxのばらつきは0.3~4時間の同じ範囲内のままであり、40mgコホートでは、中央値は0.38時間であり、60mgコホートでは1.0時間である。代謝産物のTmaxは同じ時間枠内で観察されていることから、源物質からのその迅速な形成示唆される。
【0099】
単回用量の場合、40mgコホートにおける抗精神病薬の平均半減期は10.3±5.4時間であり、60mgコホートでは7.3±2.6時間であった。繰り返しの投与後、ほとんどの志願者でT1/2がわずかに増加する傾向がみられ、平均して1.4倍である。
【実施例12】
【0100】
カプセル剤の形態の本発明の医薬組成物として作製された本発明の経口薬物の効能および安全性研究。
全般性不安障害(GAD)を有するヒトにおける抗精神病薬の効能および安全性の多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照研究を、それぞれ:1~40mg抗精神病薬コホート(20mg×2回/日);2~60mg抗精神病薬コホート(20mg×3回/日)、および3-プラセボコホートの43人の患者の3つのコホートで8週間にわたり実行した。研究中、3回の計画的な来訪を2周目、4周目、および8周目に実行して、療法の有効性および安全性ならびに薬物の調査記録および投与を評価した。全てのこれらの来訪の間、患者の日記をチェックし、薬物の調査記録を作製し、患者のコンプライアンスを評価した。加えて、有害事象、併用療法、およびバイタルサインを評価し、尿薬物スクリーニングを実行し、ハミルトン不安評価尺度(HARS)、ハミルトンうつ病尺度(HAMD)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、臨床全般印象度-改善(CGI-I)、および視覚的アナログ尺度(VAS)を使用した評価を作製した;妊娠の可能性がある女性は妊娠尿検査を受けることになる。4周目および8周目の来訪中、身体検査も実行し、体重を測定し、12誘導でECGを実行し、実験室試験、すなわち:尿検査および生化学血液分析のために血液および尿サンプルを得て、この研究薬物(SD)を摂取する前および1時間後にPK分析、および尿検査を行った。4周目に、CYP2D6による遺伝子型解析のために血液サンプルも得た。8周目に、グループにおける処置を完了し、全ての患者に、1週間続く経過観察期間中に接種することになるプラセボを処方した。この期間中、プラセボのバックグラウンドに対して起こり得るSD離脱症候群の発症を評価した。9周目の来訪中、患者の日記をチェックし、薬物調査記録を作製し、患者のコンプライアンスを評価した。加えて、有害事象、併用療法、およびバイタルサインを評価し、尿薬物スクリーニングを実行し、ハミルトン不安評価尺度(HARS)、ハミルトンうつ病尺度(HAMD)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、臨床全般印象度-改善(CGI-I)、および視覚的アナログ尺度(VAS)を使用した評価を作製した;妊娠可能年齢の女性は妊娠尿検査を受けることになる。この時点で、この研究への患者の参加が完了し、患者は、標準的なGAD療法の一部としてさらなる処置の推奨を受けた。
【0101】
GAD療法における抗精神病薬の効能の主要な結果は、表2~7に示され、ハミルトン不安評価尺度(HARS)、ハミルトンうつ病尺度(HAMD)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、臨床全般印象度-改善(CGI-I)、および視覚的アナログ尺度(VAS)における総スコアにおける変化の動態は、図1~5に提示される。これらのデータは、HARSおよびHAMDデータを含むGAD処置における抗精神病薬の有効性、ならびにその好都合な安全性プロファイルおよび優れた忍容性を強く裏付ける(表8)。40mg用量は、安全性に関してプラセボに近い。60mgの用量で、頭痛、傾眠、眩暈、衰弱、吐き気、不安の増加などのいくつかの有害事象が観察されている。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、医学および獣医学で使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】