(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】統合増幅器を備える静電ヘッドフォン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20230622BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H04R1/10 101Z
H04R1/10 101B
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573248
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 US2021070640
(87)【国際公開番号】W WO2021243378
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】グリニップ ロジャー スティーブン ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナクマール アルジュン
【テーマコード(参考)】
5D005
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BA04
5D005BA08
5D005BA10
5D005BB08
5D005BB11
5D220AA47
5D220DD03
(57)【要約】
第1のイヤカップアセンブリと、第2のイヤカップアセンブリと、第1のイヤカップアセンブリおよび第2のイヤカップアセンブリのそれぞれに結合されたヘッドバンドアセンブリとを備える静電ヘッドフォンが提供される。各イヤカップアセンブリは、静電変換器と、変換器に電気的に結合された高電圧増幅器と、高電圧増幅器に電気的に結合された高電圧電源とを備える。イヤカップアセンブリの少なくとも一方は、少なくとも1つのイヤカップアセンブリ内に含まれる高電圧電源に電力を供給するための電力源をさらに備える。いくつかのケースでは、イヤカップアセンブリのうちの1つまたは複数は、オーディオソースからオーディオ信号を受信するためのワイヤレス通信モジュールをさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のイヤカップアセンブリと、
第2のイヤカップアセンブリと、
前記第1のイヤカップアセンブリおよび前記第2のイヤカップアセンブリのそれぞれに結合されたヘッドバンドアセンブリと
を備える静電ヘッドフォンであって、
各イヤカップアセンブリが、静電変換器と、前記静電変換器に電気的に結合された高電圧増幅器と、前記高電圧増幅器に電気的に結合された高電圧電源とを備え、前記イヤカップアセンブリの少なくとも一方が、前記少なくとも1つのイヤカップアセンブリ内に含まれる前記高電圧電源に電力を供給するように構成された電力源をさらに備える、静電ヘッドフォン。
【請求項2】
前記イヤカップアセンブリのうちの1つまたは複数が、外部オーディオソースからオーディオ信号をワイヤレスに受信するように構成されたワイヤレス通信モジュールをさらに備える、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項3】
前記1つまたは複数のイヤカップアセンブリが、前記受信したオーディオ信号を処理するためのデジタル信号プロセッサをさらに備える、請求項2に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項4】
前記第1および第2のイヤカップアセンブリを電気的に接続するための前記ヘッドバンドアセンブリ内に含まれるケーブルをさらに備え、前記ワイヤレス通信モジュールが前記第1のイヤカップアセンブリ内に含まれ、前記ケーブルが、前記第1のイヤカップアセンブリから前記第2のイヤカップアセンブリに前記オーディオ信号を移送するように構成される、請求項2に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項5】
各イヤカップアセンブリが別々のワイヤレス通信モジュールを備える、請求項2に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項6】
前記第1のイヤカップアセンブリ内の前記ワイヤレス通信モジュールが、前記外部オーディオソースから前記オーディオ信号を受信し、前記オーディオ信号を前記第2のイヤカップアセンブリ内の前記ワイヤレス通信モジュールに送信するように構成される、請求項5に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項7】
各イヤカップアセンブリ内の前記ワイヤレス通信モジュールが、前記外部オーディオソースから前記オーディオ信号を受信するように構成される、請求項5に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項8】
前記第1および第2のイヤカップアセンブリを電気的に接続するための前記ヘッドバンドアセンブリ内に含まれるケーブルをさらに備え、前記電力源が前記第2のイヤカップアセンブリ内に含まれ、前記ケーブルが、前記電力源から前記第1のイヤカップアセンブリに前記電力を移送するように構成される、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項9】
各イヤカップアセンブリが、それぞれのイヤカップアセンブリ内に含まれる前記高電圧電源に前記電力を供給するための別々の電力源を備える、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項10】
前記イヤカップアセンブリの少なくとも一方が、外部オーディオソースからアナログオーディオ信号を受信するための少なくとも1つのオーディオポートをさらに備える、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項11】
各イヤカップアセンブリが、前記高電圧増幅器に電気的に結合された低電圧増幅器と、前記低電圧増幅器に電気的に結合された低電圧電源であって、前記電力源から電力を受ける低電圧電源とをさらに備える、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項12】
各イヤカップアセンブリ内の前記高電圧電源がスイッチング電源である、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【請求項13】
前記電力源が電池を含む、請求項1に記載の静電ヘッドフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/032,357号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は一般には静電ヘッドフォンに関する。詳細には、本願は、各イヤカップアセンブリ内に静電変換器、高電圧増幅器、および電源を備えるヘッドフォンに関する。
【背景技術】
【0003】
たとえばスピーカ、ヘッドフォン、イヤホンなどのオーディオリスニングデバイスは、1対の導電性固定子極板(conductive stator plate)間に配置されたテンション型導電性低質量振動板(tensioned conductive low-mass diaphragm)を含む音響再生用の静電変換器を利用し得る。振動板と固定子極板との間に小さいエアギャップが存在し得、振動板は、固定子極板に対して静電荷(stationary charge)を有し得る。固定子極板に信号が印加されない場合、振動板は静的であり、固定子極板の間の中心にとどまり得る。等しい大きさで逆位相のオーディオ信号が固定子極板に印加されるとき、正味の力の不均衡(net force imbalance)が振動板にわたって生み出され、それによって振動板が変位する。次に、振動板に隣接する空気が変位し、オーディオ信号に対応する音が生み出され得る。
【0004】
その結果、静電変換器を使用するオーディオリスニングデバイスは、たとえば可動コイル変換器を有するスピーカ、ヘッドフォン、およびイヤホンと比べて、非常に低い高調波ひずみ、全帯域幅周波数応答、および高忠実度音響再生を有し得る。静電変換器は、プッシュプルの一定電荷静電駆動(push-pull, constant charge electrostatic drive)、および比較的低質量の振動板のために、こうした特性を有し得る。具体的には、低い高調波ひずみは、プッシュプル静電駆動と、振動板上のほぼ一定のバイアス電荷のためであり得る。しかしながら、静電変換器で十分で許容できる音響出力を生成するためには、振動板にバイアスをかけ、オーディオ信号を生成するために高電圧が必要とされ得る。
【0005】
ヘッドフォンは通常、ユーザの頭部の定位置にヘッドフォンを保持するための十分な力をイヤカップに加えるように構成される弾性のある湾曲バンド、たとえばヘッドバンドによって互いに結合された1対のイヤカップを備える。各イヤカップは、音を再生するための少なくとも1つの音響変換器またはオーディオドライバを含み、ユーザの耳の耳道(auditory canal)付近に配置され、それらの間に音響的に必要な結合空間を生み出すように設計される。いくつかの既存のヘッドフォンでは、イヤカップのうちの1つまたは複数はまた、外部デバイス(たとえば、パーソナルリスニングデバイスまたはスマートフォン)からオーディオ信号を受信するための電力源(power source)(たとえば、電池)およびワイヤレス通信回路をも含み得、したがってワイヤレスの、またはケーブルのないヘッドフォン操作を可能にする。しかしながら、そのような既存のヘッドフォンは通常、静電変換器の高忠実度音響再生および全帯域幅周波数応答特性を実現することのできない可動コイル変換器を含む。
【0006】
いくつかの既存のヘッドフォンは、各イヤカップ内に静電変換器および高電圧増幅器を含むが、そのようなヘッドフォンは、ワイヤレスの、またはケーブルのない操作向けに構成されない。たとえば、DE4329991は、外部デバイスからイヤカップのうちの1つまたは複数に非増幅オーディオ信号(unamplified audio signal)および低電圧電力信号を移送するためのケーブルを使用して外部デバイスに接続される静電ヘッドフォンを説明している。別の例として、米国特許第10,178,465号は、前置増幅器からヘッドフォンに電圧増幅後オーディオ信号(voltage-amplified audio signal)および高電圧電源を移送するためのケーブルを使用して前置増幅器に結合される静電ヘッドフォンを説明している。多くのユーザは、特に仮想現実または代替現実体験およびゲーミングでは、ケーブルのないヘッドフォンの気軽さおよび単純さを好むが、パーソナルリスニング体験、および音楽のミキシングやマスタリングなどの業務用途でもそうである。
【0007】
したがって、こうした問題に対処するヘッドフォンシステムのための機会がある。より具体的には、ワイヤレスの、またはケーブルのない操作中であっても高忠実度音響再生を実現することのできる静電ヘッドフォンのための機会がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、とりわけ1対のイヤカップアセンブリを有する静電ヘッドフォンを提供することによって前述の問題を解決するためのものであり、各イヤカップアセンブリは、静電変換器に加えて、(1)対応する静電変換器に信号を供給する前に着信オーディオ信号を増幅するように構成された統合高電圧増幅器(integrated high voltage amplifier)と、(2)高電圧電力を高電圧増幅器に供給するように構成された統合高電圧電源とを備え、イヤカップアセンブリの少なくとも一方が、(3)着信オーディオ信号をワイヤレス受信するように構成されたワイヤレス通信回路をさらに備える。
【0009】
例示的実施形態は、第1のイヤカップアセンブリと、第2のイヤカップアセンブリと、第1のイヤカップアセンブリおよび第2のイヤカップアセンブリのそれぞれに結合されたヘッドバンドアセンブリとを備える静電ヘッドフォンを提供する。各イヤカップアセンブリは、静電変換器と、変換器に電気的に結合された高電圧増幅器と、高電圧増幅器に電気的に結合された高電圧電源とを備える。イヤカップアセンブリのうちの1つまたは複数は、オーディオソースからオーディオ信号を受信するためのワイヤレス通信モジュールをさらに備え、イヤカップアセンブリの少なくとも一方は、少なくとも1つのイヤカップアセンブリ内に含まれる高電圧電源に電力を供給するための電力源をさらに備える。いくつかの態様によれば、イヤカップアセンブリのうちの1つまたは複数は、オーディオソースからオーディオ信号を受信するためのワイヤレス通信モジュールをさらに備える。
【0010】
別の例示的実施形態は、第1のイヤカップアセンブリと、第2のイヤカップアセンブリと、第1のイヤカップアセンブリおよび第2のイヤカップアセンブリのそれぞれに結合されたヘッドバンドアセンブリとを備える静電ヘッドフォンを提供し、各イヤカップアセンブリは、静電変換器と、静電変換器に電気的に結合された高電圧増幅器と、高電圧増幅器に電気的に結合された高電圧電源とを備え、第1のイヤカップアセンブリは、第1のイヤカップアセンブリ内に含まれる高電圧電源に電力を供給するように構成された電力源をさらに備え、第2のイヤカップアセンブリは、外部オーディオソースからオーディオ信号をワイヤレスに受信するように構成されたワイヤレス通信モジュールをさらに備える。
【0011】
これらおよび他の実施形態、ならびに様々な置換および態様が、本発明の原理が利用され得る様々な方式を示す例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明および添付の図面から明らかとなり、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】いくつかの実施形態による例示的静電ヘッドフォンを示す概略図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、
図1に示される静電ヘッドフォンの例示的イヤカップアセンブリを示す拡大断面概略図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、高電圧増幅器および電源に結合された例示的静電変換器を示す回路図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、高電圧増幅器および高電圧電源に結合された別の例示的静電変換器を示す回路図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図2に示されるイヤカップアセンブリの例示的エレクトロニクスモジュールを示すブロック図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、例示的静電ヘッドフォン内に含まれる第1のイヤカップアセンブリの例示的構成要素を示すブロック図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、
図6のイヤカップアセンブリと同一の静電ヘッドフォン内に含まれる第2のイヤカップアセンブリの例示的構成要素を示すブロック図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、別の例示的静電ヘッドフォン内に含まれる第1のイヤカップアセンブリの例示的構成要素を示すブロック図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、
図8の第1のイヤカップアセンブリと同一の静電ヘッドフォン内に含まれる第2のイヤカップアセンブリの例示的構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、本発明の原理による本発明の1つまたは複数の特定の実施形態を説明し、図示し、例示する。この説明は、本明細書で説明される実施形態に本発明を限定するために与えられるのでなく、当業者が本発明の原理を理解することを可能にし、その理解と共に、こうした原理を適用して、本明細書で説明される実施形態だけではなく、こうした原理に従って思い浮かぶことがある他の実施形態も実施することができるような形でこうした原理を説明および教示するために与えられる。本発明の範囲は、文字通りに、または均等論の下で、添付の特許請求の範囲内に含まれ得るようなすべてのこうした実施形態を包含するものとする。
【0014】
この説明および図面では、同様の、またはほぼ同様の要素に同一の参照番号で符号が付けられ得ることに留意されたい。しかしながら、時には、たとえばそのような符号付けによってより明快な説明が容易となるケースなどで、こうした要素に異なる番号で符号が付けられ得る。さらに、本明細書で説明される図面は必ずしも原寸に比例せず、ある場合には、一定の特徴をより明快に示すために比率が誇張されていることがある。そのような符号付けおよび図面の慣習は、必ずしも基礎となる本質的な目的を含意するわけではない。前述のように、本明細書は、全体として理解され、本明細書で教示され、当業者にとって理解される本発明の原理に従って解釈されるものとする。
【0015】
本明細書で説明され、図示される例示的システム、構成要素、およびアーキテクチャに関連して、当業者によって理解される1つまたは複数のシステム、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア構成または構成要素、あるいはそれらの任意の組合せを含む多数の構成および構成要素によって、または多数の構成および構成要素で実施形態が実施され得ることも理解されたい。したがって、図面は、本明細書で企図される実施形態のうちの1つまたは複数についての構成要素を含む例示的システムを示すが、各実施形態に関連して、1つまたは複数の構成要素がシステム内に存在せず、またはシステム内で不要であり得ることを理解されたい。
【0016】
図1は、実施形態による例示的静電ヘッドフォン100を示す。ヘッドフォン100は、入力オーディオ信号に従って音を生成するための第1の静電変換器を収容する左側イヤカップ102(本明細書では「第1のイヤカップアセンブリ」とも呼ばれる)と、入力オーディオ信号に従って音を生成するための第2の静電変換器を備える右側イヤカップ104(本明細書では「第1のイヤカップアセンブリ」とも呼ばれる)と、イヤカップ102および104のそれぞれに結合されたヘッドバンド106(本明細書では「ヘッドバンドアセンブリ」とも呼ばれる)とを備える。いくつかの実施形態では、イヤカップ102および104は、たとえば同一のオーディオチャネルをそれぞれの側に送ることによって、単一チャネルのオーディオを出力するように構成され得る。別の実施形態では、イヤカップ102および104は、たとえばそれぞれに側に相異なるオーディオチャネルを送ることによって、デュアルチャネルオーディオを出力するように構成され得る。
【0017】
各イヤカップ102、104は、ファブリック、フィルム、ワイヤメッシュ、または他の適切な材料製の音透過性の(sound-permeable)前面103、105と、いくつかのケースでは、金属、プラスチック、または他の適切な材料製の部分的に、または完全に封入された背面(図示せず)とを含み得る。各イヤカップ102、104の深さは、その中に配設される静電変換器、および/またはそれによって必要とされる音響空洞(acoustical cavity)を収容するように選択され得る。
【0018】
ヘッドバンド106は、ユーザ(または着用者)の頭部または首の一部の周りに配置されるように、調節可能な曲率を有するように構成された、弾性のあるU型バンドまたはハーネス108を備える。図示されるように、バンド108の各端部は、イヤカップ102、104のそれぞれに結合される。いくつかの実施形態では、左側イヤカップ102を右側イヤカップ104に電気的に結合するためにケーブル110がバンド108内に埋め込まれる。たとえば、ケーブル110の第1の端部が、左側イヤカップ102内に埋め込まれた回路112に結合され得、ケーブル110の第2の端部が、右側イヤカップ104内に埋め込まれた回路114に結合され得る。様々な実施形態によれば、ケーブル110は、イヤカップ102と104の間で電力、オーディオ信号、データ信号、またはそれらの任意の組合せを移送するように構成され得る。たとえば、ケーブル110は、各タイプの信号を移送するための別々のワイヤまたはケーブルを含み得る。
【0019】
各イヤカップ102、104内の回路112、114は、(たとえば、
図3に示されるように)対応する変換器、ならびに高電圧電源および高電圧増幅器と、ヘッドフォン100の動作を制御するための1つまたは複数の他の電子構成要素とを備える。そのような電子構成要素は、たとえば、電力を供給するための電力源、オーディオおよび/またはデータ信号をワイヤレスに受信するためのワイヤレス通信モジュール、1つまたは複数のマイクロフォン、1つまたは複数のセンサ、ならびに/あるいは、たとえばディスクリートロジック回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサなどの様々な他のタイプのハードウェアを含み得る。
【0020】
図1にさらに示されるように、ヘッドフォン100は、ユーザの耳に対するイヤカップ102および104の快適な配置を実現するように、それぞれのイヤカップ102および104の音波放射側(または前側)の外周に巻かれた(wrapped circumferentially around)イヤパッド116および118をさらに備える。いくつかの実施形態では、イヤパッド116および118は、サーカムオーラル(circumaural)(または「オーバーイヤ」)用途向けに構成され得、したがってイヤカップ102および104は耳を完全に封入する。別の実施形態では、イヤパッド116および118は、スープラオーラル(または「オンイヤ」)用途向けに構成され得、したがってイヤカップ102および104は、耳を完全に封入し、または包むことなく耳の上に載る。
【0021】
さらに
図2を参照すると、実施形態による、静電ヘッドフォン100の例示的イヤカップアセンブリ200の拡大断面図が示されている。イヤカップアセンブリ200は、
図1に示されるイヤカップ102および104のいずれか1つを表し、またはそれに対応し得る。たとえば、いくつかの実施形態では、イヤカップアセンブリ200は右側イヤカップ104の断面図であり得、左側イヤカップ102は右側イヤカップ104の鏡像である。
【0022】
図2に示されるように、イヤカップアセンブリ200は、ハウジング202と、ハウジング202内に配設された回路構成要素204と、ハウジング202の前側の外周を取り囲むイヤパッド206とを含む。ハウジング202は、回路構成要素204を保護し、構造的に支持するように構成され得、回路構成要素204は、電気的オーディオ信号を対応する音に変換するための静電変換器208(本明細書では「静電オーディオドライバ」とも呼ばれる)を含む。回路構成要素204は、
図1に示される各イヤカップ102、104内に含まれる回路112、114とほぼ同様であり得る。同様に、イヤパッド206は、
図1に示される各イヤカップ102、104内に含まれるイヤパッド116、118とほぼ同様であり得る。いくつかの実施形態では、イヤパッド206は、静電変換器208の音波放射側または前側の前部容積(front volume)209を形成するように構成され得る。
【0023】
回路構成要素204は、静電変換器208の動作および/またはヘッドフォン100の他の側面を制御するためのエレクトロニクスモジュール210をさらに備える。いくつかの実施形態では、エレクトロニクスモジュール210は、1つまたは複数のプリント回路板(PCB)を使用して実装され得、
図2に示されるように、静電変換器208の外部表面に取り付けられ、または結合され得る。別の実施形態では、エレクトロニクスモジュール210は、たとえば静電変換器208内に含まれる固定子極板のうちの1つの上にエレクトロニクスモジュール210の構成要素を直に配置することによって、静電変換器208に統合され得る。さらに別の実施形態では、エレクトロニクスモジュール210は、変換器208から物理的に分離されるが、1つまたは複数のワイヤを使用して変換器208に電気的に結合される、独立したPCB上に実装され得る。たとえば、エレクトロニクスモジュール210は、変換器208の場所とは異なるイヤカップハウジング202の場所、またはイヤカップ200を別のイヤカップに接続するヘッドバンド(たとえばヘッドバンド106など)に配設され得る。エレクトロニクスモジュール210の構成要素に関するより詳しい詳細が、
図5に関連して以下で与えられる。同様に、静電変換器208に関するより詳しい詳細が、
図3および4に関連して以下で与えられる。
【0024】
静電変換器208によって出力される音は、たとえば、人間の話者によって話されるライブまたはリアルタイムオーディオ、オーディオプレーヤによって再生される事前レコーディングされたオーディオファイル、ネットワーク接続を使用してリモートオーディオソースから受信されるストリーミングオーディオなどを含む、任意のタイプの入力オーディオ信号を表し得る。実施形態によれば、入力オーディオ信号はデジタル信号またはアナログ信号であり得る。後者のケースでは、エレクトロニクスモジュール210は、(たとえば、
図7および9に示されるように)アナログオーディオ信号を処理し、対応するデジタルオーディオ信号を生成するために、たとえばアナログ-デジタル変換器、プロセッサ、および/または他の構成要素などの1つまたは複数の構成要素を含み得る。入力オーディオ信号は、たとえばメディアプレーヤ、スマートフォン、携帯電話、タブレット、コンピュータなどの外部オーディオソースからエレクトロニクスモジュール210に移送され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、イヤカップアセンブリ200は、1つまたは複数の外部オーディオソースまたは他のデバイスから、ポートおよび前記デバイスに結合されたケーブルを介して電力、制御信号、および/またはオーディオ信号を受信するための(たとえば、
図7から9に示されるような)1つまたは複数の外部ポートをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、外部ポートはまた、1つまたは複数の外部デバイスに制御信号および/またはオーディオ信号を送信するために使用され得る。外部ポートは、受信した信号をエレクトロニクスモジュール210(またはその中に含まれるプロセッサ)に供給し、かつ/またはそこからの発信信号を受信するためのエレクトロニクスモジュール210に電気的に結合され得る。一例として、外部ポートは、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート(たとえば、USB、USB-C、mini-USBなど)、3.5mmオーディオポート、あるいは静電ヘッドフォン100との間で電力、制御、および/またはオーディオを移送するためのケーブルに結合することのできる任意の他のポートを含み得る。
【0026】
エレクトロニクスモジュール210に移送される制御信号またはデータ信号は、(たとえば、
図7および9に示されるような)ヘッドフォン100のユーザインターフェースから受信された制御情報、および/またはヘッドフォン100に結合された1つまたは複数の外部デバイスによって受信された情報を含み得る。一例として、制御情報は、たとえばミュートオンまたはオフ入力、音量または利得入力、電源オンまたはオフ入力、イコライザ選択、音響雑音除去(ANC)選択(たとえば、FF、FB、または環境モード)などのユーザ制御情報、ならびに/あるいは、たとえば指向性、ステアリング、ソフトウェア更新などの、静電変換器またはエレクトロニクスモジュール210の1つもしくは複数の構成要素のパラメータに対する調節を含み得る。
【0027】
実施形態では、イヤカップハウジング202が、静電ヘッドフォン100からの望ましい音のタイプに応じて、クローズドバック、オープンバック、またはセミオープンバックとなるように構成され得る。その名前が示唆するように、クローズドバックヘッドフォンは、周囲環境に対して完全に閉じた、または音響的に密封された背面を有するイヤカップハウジングを有し、したがって周囲雑音がヘッドフォンに進入することを阻止し、ヘッドフォンから環境に漏れ得る音量を低減する。一方、オープンバックヘッドフォンは、周囲音がヘッドフォンに進入することを可能にし、ヘッドフォンからの音が環境に漏れることも可能にする、周囲環境に対して開いた背面を有するイヤカップハウジングを有する。オープンバックヘッドフォンによって生成される音は一般に、クローズドバックヘッドフォンと比べて、音場深度(depth of field)の向上と共に、より自然であると見なされる。しかしながら、クローズドバックヘッドフォンは重要なリスニングのためのより良好な遮音を実現し、オープンバックヘッドフォンからの音がレコーディングマイクロフォンによって拾い上げられ得るので、クローズドバックヘッドフォンは通常、スタジオモニタリングおよびレコーディング用途向けに使用される。
【0028】
セミオープンバックヘッドフォンは、周囲に対するわずかな漏れ、すなわち完全にオープンバックのヘッドフォンよりも少ない程度の漏れを可能にするための音響ポートを除いて、ほぼクローズドバックであるイヤカップハウジングを有する。たとえば、
図2に示されるイヤカップハウジング202は、イヤカップハウジング202によって静電変換器208の周りおよび/または後方に形成される、アコースティックチャンバ214(本明細書では「後部容積(rear volume)」とも呼ばれる)内への、およびアコースティックチャンバ214から外への空気の通過を可能にするように構成された音響ポート212(たとえば、開口)を備える。イヤカップハウジング202は、アコースティックチャンバ214の内部の、音響ポート212の上に(または音響ポート212の内部端の上に)配設された抵抗素子216をさらに備える。抵抗素子216は、たとえばクロスファブリックやワイヤメッシュなどの多孔質材料であり得、接着剤などを使用してイヤカップハウジング202の内部に取り付けられ得る。音響ポート212および抵抗素子216は、ハウジング202内に形成される内部音響ネットワークと、ハウジング202の外部の周囲環境との間の音響インピーダンスの制御を実現するように構成され得る。たとえば、音響インピーダンスは、ヘッドフォン100の低周波数応答(たとえば、1キロヘルツ(kHz)未満)を調整するように設定され得る。
【0029】
次に
図3を参照すると、実施形態による、例示的静電変換器302と、変換器302にオーディオ信号を供給するために変換器302に電気的に結合された高電圧増幅器304と、増幅器304に高電圧電力(たとえば、200ボルト(V))を供給するために増幅器304に電気的に結合された高電圧電源306とを備える回路300が示されている。静電変換器302は、
図2に示される静電変換器208とほぼ同様であり、または静電変換器208を表し得、高電圧増幅器304および高電圧電源306は、静電変換器208に結合されたエレクトロニクスモジュール210内に含まれ得る。
【0030】
図3に示されるように、静電変換器302は、1対の固定子極板312aと312bとの間に配置された振動板310を備える。変換器302は、高電圧増幅器304によって等しい大きさの逆位相ACオーディオ信号が固定子極板312aおよび312bに印加され、それによって振動板310が空気を偏向させ、変位させるとき、音を生成するように構成される。振動板310による空気の変位は、増幅器304によって供給されるオーディオ信号に従って音を生成する。図示されるように、固定子極板312aおよび312bは、振動板310によって生成された音が変換器302の外に、ユーザ(または着用者)の耳道(ear canal)に向かって移動することを可能にする複数の穴314を含み得る。
【0031】
ACオーディオ信号は、たとえばメディアプレーヤ、携帯電話、スマートフォン、ステレオシステム、コンピュータ、タブレット、コンパクトディスクプレーヤ、および他のデバイスなどの外部オーディオソース(図示せず)から受信され得、直接的または間接的に(たとえば、ヘッドフォンの他の回路構成要素を介して)高電圧増幅器304に供給され得る。高電圧増幅器304によって静電変換器302に供給されるオーディオ信号は、負極性信号および正極性信号を含み得、それらはそれぞれ固定子極板312aおよび312bに印加される。オーディオ信号は、静電変換器302で十分な電界強度を生成するために十分に高い電圧でなければならない。実施形態では、高電圧電源306は、増幅器304によって固定子極板312aおよび312bに供給されるACオーディオ信号が十分な電圧を有するように、高電圧増幅器304に十分な電圧を供給するように構成された高周波スイッチング電源であり得る。一例として、オーディオ信号は最大で±200Vであり得、高周波スイッチング電源の周波数は200キロヘルツ(kHz)であり得る。
【0032】
実施形態では、高電圧電源306によって供給されるDCバイアス電圧により、または他の電気的接続を通じて、振動板310にバイアスがかけられ得る。たとえば、いくつかのケースでは、振動板310は、高電圧電源306と振動板310との間に大きい抵抗値を有する抵抗器316を直列に配置することによって電気的に接続され得る。別のケースでは、振動板310は、差分ACオーディオ信号の間の抵抗分圧器を通じて電気的に接続され得、それによって振動板310は、差分ACオーディオ信号の間の中間でバイアスがかけられる。いくつかの実施形態では、回路300はまた、DCバイアス電圧の短絡電流がある場合にそれを制限するために1つまたは複数の抵抗器をも含み得る。
【0033】
図示されるように、各固定子極板312a、312bは、外面側と、振動板310に面する反対の内面側とを有する。たとえば、
図3では、第1の固定子極板312aの外面側が、静電変換器302の前に形成された前部容積C
fに面するように示されており、第2の固定子極板312bの外面側が、静電変換器302の後に形成された後部容積C
bに面するように示されている。別の実施形態では、変換器302の向きが切り替わり得、その結果、第1の固定子極板312aが後部容積C
bに面し、第2の固定子極板312bが前部容積C
fに面することを理解されたい。理解するであろうが、「前部」という用語は、本明細書では変換器302の音波放射側、すなわち着用者の耳に最も近い側を指すために用いられ、「後部」という用語は、本明細書では変換器302の反対側、すなわち着用者の耳から最も遠い側を指すために用いられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、固定子極板312aおよび312bのそれぞれは、たとえば高電圧増幅器304に対する接続などの一定の電気的接続を達成するための、様々な層およびトレース、ならびに層間の適切なバイアを有するプリント回路板(PCB)であり得る。いくつかのケースでは、固定子極板312aおよび312bのうちの1つまたは複数はまた、たとえば
図2に示されるエレクトロニクスモジュール210などの、極板の外面側に埋め込まれた1つまたは複数の回路構成要素をも含み得る。
【0035】
クローズドバックヘッドフォンのケースでは、イヤカップハウジングのクローズドバックの性質のために、振動板310の運動が、イヤカップハウジング(たとえば、
図2のイヤカップハウジング202)によって静電変換器302の周りに生み出された内部空洞、またはより具体的には後部容積C
b(たとえば、
図2に示される後部容積214)および前部容積C
f(たとえば、
図2に示される前部容積209)の剛性によって支配され得る。クローズドバックヘッドフォンの内部空洞は、オープンバックヘッドフォンと比べて小さいので、振動板310の変位も比較的小さい。一方、オープンバックヘッドフォンの振動板変位は主に、振動板の低い質量および高い基本共振周波数のために、低周波数での振動板の剛性によって制御される。
【0036】
図4は、実施形態による、クローズドバック型ヘッドフォンでオープンバック静電ヘッドフォンベースライン応答の性能を再現するように構成された代替回路400を示す。回路400は、回路全体の音響出力インピーダンスを2倍に増大させ、それによって体積速度音源(volume velocity source)を最も厳密に近似するために、音響的に直列に接続される2つの同一の静電変換器またはドライバ402および404を備える。図示されるケースでは、体積速度はドライバ402と404の両方を通じて連続的であるが、各スタックアップに対する電気的接続は並列である。
【0037】
より具体的には、
図4に示されるように、2つの静電変換器402および404は、互いに隣接して配置され、一方の上に他方が積層され、または積み重ねられ得、それによって共通固定子極板406が変換器402と404の間に形成される。さらに、第1の静電変換器402は、第1の固定子極板408と、第1の固定子極板408と共通固定子極板406との間に配設された第1の振動板410とをさらに備え得る。同様に、第2の静電変換器404は、第2の固定子極板412と、第2の固定子極板412と共通固定子極板406との間に配設された第2の振動板414とをさらに備え得る。さらに、第2の振動板414は負のバイアス電圧(たとえば、-200VDC)を有し、第1の振動板410は正のバイアス電圧(たとえば、+200VDC)を有する。他の点では、回路400の全般的動作は、
図4に示される回路300の動作とほぼ同様であり得る。実施形態では、
図2に示される静電変換器208は、
図3に示される変換器設計302、または
図4に示される変換器設計402のどちらかを使用して実装され得る。
【0038】
さらに
図5を参照すると、実施形態による、イヤカップアセンブリ200の例示的エレクトロニクスモジュール500が示されている。エレクトロニクスモジュール500は、
図2に示されるエレクトロニクスモジュール210を表し、またはそれに対応し得、
図1に示されるイヤカップ102および104の一方または両方の中に含まれ得る。いくつかの実施形態では、
図6~9に関連してより詳細に説明されるように、右側イヤカップ104の回路114内に含まれるエレクトロニクスモジュールは、
図5に示されるエレクトロニクスモジュール500と同一であり、またはほぼ同様であるのに対して、左側イヤカップ102の回路112内に含まれるエレクトロニクスモジュールは、
図5に示される構成要素のより小さいサブセットを備える。
【0039】
図示されるように、エレクトロニクスモジュール500は、プロセッサ502、ワイヤレス通信モジュール504、電源ユニット506、および増幅ユニット508を備える。エレクトロニクスモジュール500は、たとえばメディアプレーヤ、携帯電話、スマートフォン、ステレオシステム、コンピュータ、タブレット、コンパクトディスクプレーヤ、他のデバイスなどの外部オーディオソース(図示せず)からオーディオ信号を受信するように構成され得る。本明細書で説明されるように(たとえば、
図6~9に示されるように)、外部オーディオソースは、ステレオプラグ、USB接続、ワイヤレス接続、または他の適切な接続を介してエレクトロニクスモジュール500に接続され得る。いくつかの実施形態では、エレクトロニクスモジュール500は、たとえばプロセッサ502、ワイヤレス通信モジュール504、電力制御モジュール512、ならびにアナログ-デジタル変換器およびデジタル-アナログ変換器のうちの1つまたは複数などの、同一の回路内に埋め込まれたモジュールの構成要素のうちのいくつかを有する集積回路(たとえば、システムオンチップ(SOC)など)を含み得る。
【0040】
プロセッサ502は、外部オーディオソースから受信したオーディオ信号を処理するように構成され得る。たとえば、プロセッサ502は、たとえば等化、音響雑音除去(ANC)などの1つまたは複数のオーディオ補正技法、ならびに/あるいは、たとえば音響空間化(sound spatialization)のための3次元(3D)キュー、音声活動検出などの1つまたは複数のオーディオ操作技法をオーディオ信号に適用するように構成され得る。プロセッサ502は、オーディオプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、および/または他の適切なハードウェア(たとえば、マイクロプロセッサ、専用集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)など)であり得る。
【0041】
ワイヤレス通信モジュール504は、外部オーディオソース、他方のイヤカップアセンブリ内に含まれるワイヤレス通信モジュール、または他の電子構成要素とのワイヤレス通信を可能にするように構成され得る。通信モジュール504は、たとえばWiFi、セルラ、Bluetooth、近距離場通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、衛星、および/または赤外線などの1つまたは複数のワイヤレスネットワークに接続し、またはそれとインターフェースするための1つまたは複数のアンテナ、ラジオ、モデム、受信機、および/または送信機(図示せず)を含み得る。いくつかの実施形態では、ワイヤレス通信モジュール504は、外部オーディオソースからオーディオストリームを受信し、外部制御デバイス(たとえば、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、音楽プレーヤ、ステレオシステムなど)から制御信号を受信し、またはそれらの組合せを行うための少なくともBluetoothトランシーバ(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、ワイヤレス通信モジュール504は、静電ヘッドフォンの他方のイヤカップにオーディオ信号および/またはデータ信号を送信し、他方のイヤカップからオーディオ信号および/またはデータ信号を受信し、あるいはそれらの組合せを行うように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、たとえば、
図5に示されるように、電源ユニット506は、エレクトロニクスモジュール500用の電力源を供給するように構成された電力源510と、入力電力を増幅ユニット508に送ることを含めて、電力源510からエレクトロニクスモジュール500の構成要素への電力送達を管理するように構成された電力制御モジュール512とを備える。別の実施形態では、電力源510は、イヤカップハウジング200内に完全に埋め込まれ得るが、エレクトロニクスモジュール500の外部に配置され得る。そのようなケースでは、電力源510は、たとえば内部ケーブル、電気接点、または他の適切な接続を使用して、電源ユニット506の電力制御モジュール512に電気的に結合され得る。
【0043】
電力源510は、1つまたは複数の電池(たとえば、リチウムイオン電池、1つまたは複数のアルカリ電池など)、USBケーブルを介して外部電力源に結合されたユニバーサルシリアルバス(USB)ポートから電力を受けるための回路、または他の適切な電力源(たとえば、ファントム電源)を含み得る。いくつかのケースでは、電力源510は、イヤカップハウジングの外部ポート(たとえば、充電ポート、USBポートなど)に結合されたケーブルを使用して、またはワイヤレス充電技術(たとえば、無接点充電、Qiなど)を使用して充電される充電式電池であり得る。別のケースでは、電力源510は、電池電力または充電が消耗すると交換される電池であり得る。
【0044】
電力制御モジュール512は、電力共用、または電力源510から電源514への電力の送達を管理するための回路を備え得る。いくつかの実施形態では、電力制御モジュール512は、電力源510の電力消費および使用を管理するように構成された燃料計、電池管理システム、電池保護回路、および充電ポート(たとえば、USBポート)を介して受けた電力を管理するための充電回路のうちの1つまたは複数をさらに備える。別の実施形態では、代わりに、または追加で、電力源510が、燃料計、電池管理システム、および電池保護回路のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0045】
増幅ユニット508は、
図3に示される高電圧電源306とほぼ同様であり得る高電圧電源514と、
図3に示される高電圧増幅器304とほぼ同様であり得る高電圧増幅器516と、低電圧増幅器518(「前置増幅器」とも呼ばれる)とを備える。低電圧増幅器518は、プロセッサ502からオーディオ信号を受信し、第1の所定の量の利得(たとえば、10dB)または利得因子(たとえば1、2など)でオーディオ信号を増幅するように構成され得る。次いで低電圧増幅器518は、静電変換器の固定子極板にオーディオ信号を供給する前に、第2の所定の量の利得(たとえば、33デシベル(dB))または利得因子(たとえば、20、40など)でさらに増幅するために、増幅した信号を高電圧増幅器516に供給し得る。いくつかの実施形態では、増幅ユニット508は多段(または2段)増幅器として構成され、低電圧増幅器518が第1段増幅器として働き、高電圧増幅器が第2段増幅器として働く。実施形態では、増幅器516および518は、D級増幅器もしくはスイッチング増幅器、別のタイプの電気増幅器、または任意の他の適切な増幅器であり得る。
【0046】
高電圧電源514は、静電変換器の固定子極板に印加されるオーディオ信号が十分な電圧(たとえば、200V)を有するように、高電圧増幅器516に十分な電圧を供給するように構成され得る。いくつかの実施形態では、(たとえば、
図6~9に示されるように)低電圧増幅器518に電力を供給するために別々の低電圧電源(図示せず)が使用される。高電圧電源514と低電圧電源はどちらも、電源ユニット506から電力を受け得る。具体的には、電力制御モジュール512が、電力源510から高電圧電源514への電力の送達を管理するように構成され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、エレクトロニクスモジュール500はまた、所与の環境で音を検出し、音をオーディオ信号に変換するための1つまたは複数のマイクロフォン520をも含み、オーディオ信号は、音声呼出しを取り入れる(take voice call)ために、かつ/または音響エコー除去(AEC)または雑音除去、ボイスリフト、周囲ミキシング(ambient mixing)、および静電ヘッドフォンの性能を改善するように設計された他のオーディオ処理技法を実装するために使用され得る。マイクロフォン520は、たとえばマイクロ電気機械システム(MEMS)変換器、コンデンサマイクロフォン、ダイナミック変換器、圧電マイクロフォンなどの任意の適切なタイプのマイクロフォン素子を含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、マイクロフォン520は少なくとも2つのデジタル(MEMS)マイクロフォンを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、エレクトロニクスモジュール500は、静電ヘッドフォンの様々な機能を援助するための1つまたは複数のセンサまたは検知デバイス522を備える。たとえば、1つまたは複数のセンサ522は、空間ヒアリング(spatial hearing)または3次元立体音響技法(three-dimensional stereophonic sound technique)を実装するために、静電ヘッドフォンを着用しているユーザの頭部位置、および/またはイヤカップアセンブリの互いに対する位置を検出するように構成され得る。別の例として、1つまたは複数のセンサ522は、自動シャットオフ機能、自動ミュート機能などを実装するために、ヘッドフォンがユーザによって(たとえば、ユーザの耳に)着用されているかどうかを検出し、かつ/または音声または他の信号活動の存在を検出するように構成され得る。実施形態では、センサ522は、音声または他の信号活動を検出するためのマイクロフォンまたは他の電気デバイス、およびイヤカップハウジングの線形位置(相対的または絶対的)、向き、加速度、回転、角度、移動、または他の物理的特性を測定または検出するための位置センサ、近接センサ、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、慣性測定ユニット(IMU)、または他の電子デバイスのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、外部オーディオソースから受信されるオーディオ信号がアナログである場合、エレクトロニクスモジュール500は、(たとえば、
図7および9に示されるように)アナログオーディオ信号がデジタル信号処理のためにプロセッサ502に達する前に、アナログオーディオ信号をデジタルオーディオ信号に変換するためのアナログ-デジタル変換器をさらに含み得る。そのようなケースでは、エレクトロニクスモジュール500はまた、(たとえば、
図7および9で示されるように)増幅器516および518によって増幅する前に、各デジタルオーディオ信号を変換してアナログオーディオ信号に戻すデジタル-アナログ変換器をも含み得る。
【0050】
図6および7は、いくつかの実施形態による、統合増幅器および電源を備える、静電ヘッドフォンの第1および第2のイヤカップ内にそれぞれ含まれ得る例示的回路600および700を示す。
図8および9は、いくつかの他の実施形態による、統合増幅器および電力源を備える、静電ヘッドフォンの第1および第2のイヤカップ内にそれぞれ含まれ得る例示的回路800および900を示す。それぞれのケースでは、静電ヘッドフォンは、
図1に示される静電ヘッドフォン100とほぼ同様であり得、各イヤカップは、
図2に示されるイヤカップアセンブリ200とほぼ同様であり得、各イヤカップ内に含まれる静電変換器は、
図3に示される静電変換器302、または
図4に示される静電変換器402のどちらかとほぼ同様であり得る。さらに、図示される回路のセット(すなわち600および700、または800および900)は、それぞれのイヤカップ102および104内に回路112および114として含まれ得、2つのイヤカップの間に結合されたヘッドバンド(たとえば、
図1に示されるヘッドバンド106)内に埋め込まれたケーブルを使用して、互いに電気的に結合され得、たとえばイヤカップアセンブリ200の回路構成要素204のように、各イヤカップ内に構成および/または配置され得る。さらに、各回路600、700、800、および900は、
図5に示されるエレクトロニクスモジュール500の対応する構成要素とほぼ同様であり得る構成要素を備えるエレクトロニクスモジュールを含む。したがって、
図6~9の以下の説明は
図1~5を参照し、簡潔のために、対応する構成要素は再び詳細には説明されない。いくつかの実施形態では、エレクトロニクスモジュールは、たとえばプロセッサ、ワイヤレス通信回路、電力管理モジュール、アナログ-デジタル変換器、デジタル-アナログ変換器などの、同一の回路内に組み込まれるモジュールの構成要素のうちのいくつかを有する集積回路(たとえば、システムオンチップ(SOC)など)を含み得る。
【0051】
次に
図6および7を参照すると、静電ヘッドフォンの第1のイヤカップ内に含まれる第1の回路600が、第1の静電変換器603に電気的に結合された第1のエレクトロニクスモジュール601を備え、静電ヘッドフォンの第2のイヤカップ内に含まれる第2の回路700が、第2の静電変換器703に電気的に結合された第2のエレクトロニクスモジュール701を備える。実施形態では、第1のエレクトロニクスモジュール601は、たとえば各回路600および700に電気的に結合され、静電ヘッドフォンのヘッドバンド内に埋め込まれたケーブル(たとえば、
図1に示されるケーブル110)を介して、2つのイヤカップの間で電力、オーディオ信号、およびデータ信号のうちの1つまたは複数を移送するために、第2のエレクトロニクスモジュール701と通信中であり得る。図示される実施形態では、第1の回路600が静電ヘッドフォンの左側イヤカップ内に含まれ、第2の回路700が同一のヘッドフォンの右側イヤカップ内に含まれる。別の実施形態では、その逆が真であり得、すなわち、第1の回路600が静電ヘッドフォンの右側イヤカップ内に含まれ得、第2の回路700が同一のヘッドフォンの左側イヤカップ内に含まれ得る。
【0052】
図示されるように、第1のエレクトロニクスモジュール601は、(たとえば、電力源510と同様の)電力サブシステム610および(たとえば、増幅ユニット508と同様の)第1の増幅ユニットを備える。第1の増幅ユニットは、低電圧電源624に電気的に結合された(たとえば、低電圧増幅器518と同様の)低電圧増幅器618と、(たとえば、高電圧電源514と同様の)高電圧電源614に電気的に結合された(たとえば、高電圧増幅器516と同様の)高電圧増幅器616とを備える。電力サブシステム610は電力源を備え、電源は、低電圧電池(たとえば、5V)、ファントム電源、USBポートから電力を受けるための回路、または他の適切な電力源を含み得る。いくつかの実施形態では、電力サブシステム610はまた、電池を調整するための保護回路(たとえば、電池管理システム、保護回路モジュール(PCM)、過電流充電または放電電流保護、過電圧または不足電圧保護、温度保護など)、および/または電力消費および使用を監視するための燃料計をも含み得る。図示されるように、電力サブシステム610は、他方のイヤカップ内に含まれる第2のエレクトロニクスモジュール701に電力を送り、または供給するように構成される。いくつかのケースでは、電力サブシステム610はまた、第2のエレクトロニクスモジュール701、またはより具体的にはその中に含まれる電力制御モジュール712に、電力源を調整することに関するデータ(または制御)信号を送信し、かつ/またはそれから制御信号を受信する。
【0053】
図6に示されるように、低電圧電源624および高電圧電源614のそれぞれは、他方のイヤカップ内に含まれる第2のエレクトロニクスモジュール701から電力を受ける。一方で、低電圧電源624は、低電圧増幅器618に適切な低電圧電力(たとえば、6VまたはUSB)を供給するように構成され得る。同様に、高電圧電源614は、高電圧増幅器616に適切な高電圧電力(たとえば、±200V、500μA)を供給するように構成され得る。いくつかの実施形態では、高電圧電源614および低電圧電源624のそれぞれは、スイッチング電源を使用して実装され得る。別の実施形態では、電源614および/または624は、他のタイプの電源または電力変換器を使用して実装され得る。
【0054】
図6に示されるように、低電圧増幅器618は、他方のイヤカップの第2のエレクトロニクスモジュール701からオーディオ信号を受信し得る。実施形態では、第1および第2のエレクトロニクスモジュール601および701は、単一チャネルのオーディオを出力するように構成され得、同一のオーディオ信号がヘッドフォンのそれぞれの側に送られる。オーディオ信号は、図示されるように、等しい大きさで逆位相の2つのACオーディオ信号、すなわち正極性信号および負極性信号を含み得る。低電圧増幅器618は、第1の利得量(たとえば、10dB)に従ってオーディオ信号を増幅し、増幅した信号を高電圧増幅器616に送るように構成され得る。高電圧増幅器616は、第2の利得量(たとえば、33dB)に従って、増幅された(または前置増幅された(pre-amplified))オーディオ信号をさらに増幅し、増幅した信号を静電変換器603に送るように構成され得る。増幅された信号は、受信されたオーディオ信号に従って音を生成するために、第1の静電変換器603内に含まれるそれぞれの固定子に印加され得る。
【0055】
次に
図7を参照すると、第2のエレクトロニクスモジュール701は、低電圧電源724に電気的に結合された低電圧増幅器718と、高電圧電源714に電気的に結合された高電圧増幅器716とを備える第2の増幅ユニットを備える。増幅器718、716および電源724、714は、
図6に示される、対応する増幅器618、616および電源624、614と同様に動作し得る。電源724および714はまた、電力制御モジュール712から電力を受けるために電力制御モジュール712に電気的に結合される。
【0056】
図示されるように、電力制御モジュール712は、他方のイヤカップ内に配置された電力サブシステム610から電力を受け、低電圧電源724および高電圧電源714のそれぞれ、ならびに他方のイヤカップ内に配置された低電圧電源624および高電圧電源614のそれぞれに電力を送達するように構成され得る。いくつかのケースでは、電力制御モジュール712はまた、電力サブシステム610にデータ(または制御)信号を送信し、かつ/または電力サブシステム610から制御信号を受信する。電力制御モジュール712はまた、図示されるように、プロセッサ702に電気的に結合され得る。いくつかの実施形態では、電力制御モジュール712は、電源624、614、724、および714のそれぞれへの電力送達を管理し、たとえば電力制御モジュール712内に含まれる燃料計を使用して、電力サブシステム610内の電力源の電力消費および使用を監視するように構成された集積回路または他の回路を含み得る。いくつかのケースでは、電力制御モジュール712は、電力サブシステム610から受信したデータ信号に基づいて、電力サブシステム610の電力消費および使用を管理し、電池寿命およびヘルスなどに関する警報をプロセッサ702に提供し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、電力制御モジュール712は、第2のエレクトロニクスモジュール701のUSBポート732(「充電ポート」とも呼ばれる)を介して外部電力源から電力を受ける。たとえば、USBポート732は、一端が外部電力源に結合され、他端がUSBポート732に結合された外部ケーブルを使用して、外部電力源に電気的に結合され得る。いくつかのケースでは、電力制御モジュール712は、図示されるように、たとえば電池または電池内に含まれる他の電力源を充電するために、受けた電力を電力サブシステム610に供給し得る。別の実施形態では、USBポート732を介して受けた電力が、第2のエレクトロニクスモジュール701の1つまたは複数の他の構成要素に、かつ/または電源724および714に送達するために電力制御モジュール712に直接的に供給され得る。
【0058】
プロセッサ702は、(たとえば、プロセッサ502と同様の)デジタル信号プロセッサまたは他のオーディオプロセッサであり得、1つまたは複数の外部オーディオソースまたはデバイスからオーディオ信号を受信し、静電変換器703を介して出力するためにオーディオ信号を低電圧増幅器718に供給するように構成され得る。いくつかのケースでは、プロセッサ702はまた、たとえばオーディオ補正技法(たとえば、等化など)を適用するために、受信したオーディオ信号を処理するように構成される。
【0059】
エレクトロニクスモジュール701は、ワイヤレス通信ネットワーク(たとえば、WiFi、Bluetoothなど)に接続するためのアンテナ734を使用して、外部オーディオソース(たとえば、スマートフォン、携帯電話、タブレット、コンピュータ、スピーカシステム、メディアプレーヤなど)からオーディオ信号を受信するように構成された(たとえば、ワイヤレス通信モジュール504と同様の)ワイヤレス通信回路704をさらに備え得る。図示されるように、ワイヤレス通信回路704は、プロセッサ702に電気的に結合され、受信したオーディオ信号をプロセッサ702に供給し得る。いくつかのケースでは、ワイヤレス通信回路704はまた、プロセッサ702から外部オーディオソースまたは他の外部デバイスに受信されるデータ信号および/またはオーディオ信号を送信するように構成され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、プロセッサ702はまた、第2のエレクトロニクスモジュール701内に含まれ、または第2のエレクトロニクスモジュール701に電気的に結合された1つまたは複数のオーディオポートからオーディオ信号を受信し得る。前記オーディオ信号はアナログ、デジタル、またはそれらの組合せであり得、外部オーディオソースに電気的に結合されたケーブルを受けるように構成され得る。1つのそのようなオーディオポートはUSBポート732であり得、USBポート732は、外部オーディオソースから高解像度デジタルオーディオ信号を受信するように構成され得る。別のオーディオポートは、外部オーディオソースからアナログ信号を受信するためのフロントエンドモジュール726、またはインターフェースに結合されたアナログオーディオポート(たとえば、3.5mmオーディオポートなど)であり得る。第2のエレクトロニクスモジュール701は、受信したアナログオーディオ信号をデジタルオーディオ信号に変換するための、フロントエンドモジュール726およびプロセッサ702に(またはそれらの間に)結合されたアナログ-デジタル変換器728をさらに備え得る。
【0061】
第2のエレクトロニクスモジュール701はまた、両方のイヤカップ内の増幅器(または増幅ユニット)にオーディオ信号を出力する前に、プロセッサ702によって処理されたオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換するための、プロセッサ702および低電圧増幅器718に(またはそれらの間に)結合されたデジタル-アナログ変換器730をも備える。より具体的には、
図6および7に示されるように、デジタル-アナログ変換器730は、等しい大きさで逆位相のアナログオーディオ信号を、第2のエレクトロニクスモジュール701の低電圧増幅器718と、第1のエレクトロニクスモジュール601の低電圧増幅器618の両方に供給するように構成され得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ702は、第1の静電変換器603および第2の静電変換器703によるオーディオ信号の同時出力を保証するために、低電圧増幅器718に供給されるオーディオ信号に、適切な量の遅延を加えるように構成され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2のエレクトロニクスモジュール701はまた、呼出し機能を可能にし、かつ/または音響雑音除去、周囲ミキシングなどを実装するための(たとえば、マイクロフォン520と同様の)1つまたは複数のマイクロフォン720をも備え得る。マイクロフォン720は、(たとえば、電話呼出し中に)ユーザによって生成される音、またはユーザの周りの環境内に存在する音(たとえば、雑音)のどちらかを取り込み、または検出し、検出した音をオーディオ信号に変換するように構成され得る。マイクロフォン720は、プロセッサ702にオーディオ信号を供給し得、プロセッサ702は、電話呼出しのケースでは、アンテナ734またはオーディオポートのうちの1つ(たとえば、USBポート732)を介してオーディオ信号を外部デバイスに出力し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、第2のエレクトロニクスモジュール701は、プロセッサ702に電気的に結合され、静電ヘッドフォンの外面に配設されたユーザインターフェース736をさらに備える。ユーザインターフェース736は、たとえばミュートオンまたはオフ選択、電源オンまたはオフ選択、音量レベル選択などの、静電ヘッドフォンの動作を制御するためのユーザ入力を受け取るように構成され得る。いくつかのケースでは、ユーザインターフェース736はまた、ユーザに情報を表示または提供するように構成され得る。ユーザインターフェース736は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せで実装され得る。一例として、ユーザインターフェース736は、1つまたは複数のユーザ入力デバイス(たとえば、タッチスクリーン、ボタン、スライダ、ノブなど)、ディスプレイデバイス、光インジケータ(たとえば、発光ダイオード(LED)、振動インジケータ(たとえば、触覚変換器)、あるいはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0064】
したがって、
図6および7は、電力サブシステム610(または電力源)が一方のイヤカップ内に埋め込まれ、ワイヤレス通信回路704が他方のイヤカップ内に埋め込まれ、各イヤカップが、増幅ユニットに結合された静電変換器に適切なACオーディオ信号を供給するための別々の増幅ユニット(すなわち、増幅器616、618、716、718および関連する電源614、624、714、724)を含む、ワイヤレスの、またはケーブルのない静電ヘッドフォンの一実施形態を示す。
【0065】
次に
図8および9を参照すると、ワイヤレスの、またはケーブルのない静電ヘッドフォンの別の実施形態が示されており、イヤカップのそれぞれが、増幅ユニットに加えて、個々の電力源と、ワイヤレスオーディオおよび/またはデータ信号を受信するためのそれ自体のワイヤレス通信回路とを備える。こうした違い以外は、回路800および900の個々の構成要素は、回路600および700の対応する構成要素とほぼ同様であり得、したがって簡潔のために再び詳細には説明されない。
【0066】
より具体的には、
図8は、前記静電ヘッドフォンの第1のイヤカップ内に含まれ、第1の静電変換器803に電気的に結合された第1のエレクトロニクスモジュール801を備える第1の回路800を示す。
図9は、前記ヘッドフォンの第2のイヤカップ内に含まれ、第2の静電変換器803に電気的に結合された第2のエレクトロニクスモジュール901を備える第2の回路900を示す。図示される実施形態では、第1の回路800が静電ヘッドフォンの左側イヤカップ内に含まれ、第2の回路900が同一のヘッドフォンの右側イヤカップ内に含まれる。別の実施形態では、その逆が真であり得、すなわち、第1の回路800が静電ヘッドフォンの右側イヤカップ内に含まれ得、第2の回路900が同一のヘッドフォンの左側イヤカップ内に含まれ得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、
図8の第1のエレクトロニクスモジュール801は、2つのイヤカップの間で電力、オーディオ信号、およびデータ信号のうちの1つまたは複数を移送するために、
図9の第2のエレクトロニクスモジュール901と通信中であり得る。いくつかのケースでは、オーディオおよび/またはデータ信号が、(たとえば、
図7のワイヤレス通信回路704と同様の)それぞれのワイヤレス通信回路804および904ならびに(たとえば、
図7のアンテナ734と同様の)対応するアンテナ834および934を使用して、エレクトロニクスモジュール801と901の間でワイヤレスに移送され得る。別のケースでは、オーディオ、データ、および/または電力が、各回路800および900に電気的に結合され、静電ヘッドフォンのヘッドバンド内に埋め込まれたケーブル(たとえば、
図1のケーブル110)を使用して、2つのモジュール801と901の間で移送され得る。
【0068】
図示されるように、第1のエレクトロニクスモジュール801は、1つまたは複数の外部オーディオソースから受信したオーディオ信号を処理するための(たとえば、プロセッサ702と同様の)第1のプロセッサ802を備える。第1のエレクトロニクスモジュール801は、プロセッサ802に電気的に結合された(たとえば、電力制御モジュール712と同様の)第1の電力制御モジュール812と、電力制御モジュール812に電気的に結合された(たとえば、電力サブシステム610と同様の)第1の電力サブシステム810とをさらに備える。さらに、モジュール801は、(たとえば、低電圧電源624と同様の)低電圧電源824に電気的に結合された(たとえば、低電圧増幅器618と同様の)低電圧増幅器818と、(たとえば、高電圧電源614と同様の)高電圧電源814に電気的に結合された(たとえば、高電圧増幅器616と同様の)高電圧増幅器816とを備える第1の増幅ユニットをさらに備える。第1の電力サブシステム810は、第1の電力制御モジュール812に電力を供給または提供するように構成された電力源(たとえば、電池)を含み得る。一方で、第1の電力制御モジュール812は、電源824および814のそれぞれに電力を提供または送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、第1の電力制御モジュール812は、電源824および814への電力送達を管理することに加えて、(たとえば、電力制御モジュール812内に含まれる燃料計を使用して)電力サブシステム810の電力源の電力消費および使用を監視するように構成され得、いくつかのケースでは、電力サブシステム810に前記監視に関するデータ信号を送信し、かつ/または電力サブシステム810からデータ信号を受信し得る。
【0069】
第1のエレクトロニクスモジュール801は、第1の電力制御モジュール812ならびに第1のプロセッサ802に電気的に結合された(たとえば、USBポート732と同様の)第1のUSBポート832さらに備える。いくつかの実施形態では、第1のUSBポート832(本明細書では「充電ポート」とも呼ばれる)は、たとえば第1の電力サブシステム810内に含まれる充電式電池を充電し、または電源824および814についての代替電力源を提供する目的で、外部電力源から第1のエレクトロニクスモジュール801に電力を移送するために使用され得る。そのようなケースでは、第1のUSBポート832は、受けた電力を、電源824および814に配布するために第1の電力制御モジュール812に供給し得る。いくつかの実施形態では、追加または代替として、第1のUSBポート832は、外部オーディオソースからオーディオ信号を受信し、受信したオーディオ信号を第1のプロセッサ802に供給するように構成される。
【0070】
前述のように、第1のエレクトロニクスモジュール801はまた、第1のアンテナ834に電気的に結合された第1のワイヤレス通信回路804を備える。第1のワイヤレス通信回路804は、第1のアンテナ834を使用してワイヤレスネットワーク(たとえば、WiFi、Bluetoothなど)に接続し、同一のネットワークに結合された外部オーディオソースまたはデバイスから、オーディオ信号またはデータ信号を受信する。第1のワイヤレス通信回路804はまた、アンテナ834を使用して、第2のエレクトロニクスモジュール901からオーディオおよび/またはデータ信号をワイヤレスに受信し得る。いくつかの実施形態では、オーディオ信号はデュアルチャネルであり得、相異なるオーディオチャネルが、各イヤカップ、またはエレクトロニクスモジュール801および901のそれぞれに送られ得る。別の実施形態では、オーディオ信号は、それぞれの側(またはイヤカップ)に送られる単一チャネルのオーディオを含み得る。
【0071】
第1のプロセッサ802は、1つまたは複数のオーディオ補正アルゴリズム(たとえば、等化など)に従って、第1のワイヤレス通信回路804または第1のUSBポート832を介して受信されるオーディオ信号を処理するように構成され得る。実施形態では、受信されるオーディオ信号はデジタルであり得、第1のエレクトロニクスモジュール801は、デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換するための、第1のプロセッサ802に結合された(たとえば、デジタル-アナログ変換器730と同様の)第1のデジタル-アナログ変換器830をさらに備え得る。次いで第1のデジタル-アナログ変換器830は、アナログオーディオ信号を、増幅し、第1の静電変換器803を介して出力するために、低電圧増幅器818に供給し得る。
【0072】
次に
図9を参照すると、第2のエレクトロニクスモジュール901は、1つまたは複数の外部オーディオソースから受信したオーディオ信号を処理するための(たとえば、第1のプロセッサ802と同様の)第2のプロセッサ902と、第2のプロセッサ902に電気的に結合された(たとえば、第1の電力制御モジュール812と同様の)第2の電力制御モジュール912と、第2の電力制御モジュール912に電気的に結合された(たとえば、第1の電力サブシステム810と同様の)第2の電力サブシステム910とを備える。さらに、第2のモジュール901は、(たとえば、低電圧電源824と同様の)低電圧電源924に電気的に結合された(たとえば、低電圧増幅器818と同様の)低電圧増幅器918と、(たとえば、高電圧電源814と同様の)高電圧電源914に電気的に結合された(たとえば、高電圧増幅器816と同様の)高電圧増幅器916とを備える第2の増幅ユニットをさらに備える。電力サブシステム910は、電力源(たとえば、電池またはファントム電源)を含み得、電力源から電力制御モジュール912に電力を提供または供給するように構成され得る。一方で、電力制御モジュール912は、図示されるように、低電圧電源924および高電圧電源914のそれぞれに電力を提供または送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電力制御モジュール912はまた、電源924および914への電力の送達を管理することに加えて、電力サブシステム910内の電力源の電力消費および使用を監視し、いくつかのケースでは、電力サブシステム910に前記監視に関するデータ信号を送信し、かつ/または電力サブシステム910からデータ信号を受信するように構成され得る。
【0073】
図示されるように、第2のエレクトロニクスモジュール901は、外部オーディオソースまたはデバイスからオーディオ信号および/またはデータ信号を受信するための、かつ/または、たとえば、第2の電力サブシステム910の電池を充電する目的で、もしくは電源924および914についての代替電力源として、第2の電力制御モジュール912に電力を供給するための(たとえば、第1のUSBポート832と同様の)第2のUSBポート932をさらに備える。
【0074】
いくつかの実施形態では、第2のエレクトロニクスモジュール901は、第1のエレクトロニクスモジュール801内に含まれない1つまたは複数の構成要素をさらに備える。たとえば、
図9では、第2のエレクトロニクスモジュール901は、アナログオーディオ信号を受信するための(たとえば、フロントエンドモジュール726と同様の)フロントエンドモジュール926に結合された、たとえば3.5mmオーディオポートなどの1つまたは複数のアナログオーディオポートをも備える。フロントエンドモジュール926は、信号を第2のプロセッサ902に供給する前にデジタル化するために、受信した信号を(たとえば、アナログ-デジタル変換器728と同様の)アナログ-デジタル変換器928に供給し得る。いくつかの実施形態では、第2のエレクトロニクスモジュール901はまた、(たとえば、マイクロフォン720と同様の)1つまたは複数のデジタルマイクロフォン920、ならびに/あるいは追加の入力を受け取るための(たとえば、ユーザインターフェース736と同様の)ユーザインターフェース936をも備える。
【0075】
受信されたオーディオ信号が処理されると、第2のプロセッサ902は、処理された信号を(たとえば、デジタル-アナログ変換器830と同様の)第2のデジタル-アナログ変換器930に供給し、第2のデジタル-アナログ変換器930は、第2の増幅ユニット、またはより具体的には低電圧増幅器918に結合される。第2の増幅ユニットは、アナログオーディオ信号を適切に増幅し、次いで、元のオーディオ信号に従って音を生成するために、増幅した信号を静電変換器903に供給する。いくつかの実施形態では、たとえば、第2のエレクトロニクスモジュール901内にのみ設けられるアナログオーディオポートおよびフロントエンドモジュール926を介してオーディオ信号が受信されるケースでは、デジタル-アナログ変換器830はまた、アナログオーディオ信号を第1のエレクトロニクスモジュール801に供給するように構成される。そのようなケースでは、アナログオーディオ信号は、静電ヘッドフォン(たとえば、ケーブル110)のヘッドバンド内に埋め込まれたケーブルを介して第1のエレクトロニクスモジュール801の低電圧増幅器818に供給され得る。
【0076】
本明細書で説明された実施形態は各イヤカップに統合された静電変換器および高電圧増幅器を備えるヘッドフォンを示すが、別の実施形態は、高電圧増幅器に結合された他のタイプのオーディオ変換器またはスピーカ(たとえば、平面磁気ドライバ、動的ドライバなど)を含み得る。同様に、本明細書で説明された実施形態は、統合高電圧増幅器を備えるオーバーイヤまたはオンイヤ静電ヘッドフォンを示すが、別の実施形態は、各イヤホンまたはイヤバッドのハウジングに統合された高電圧増幅器および高電圧電源を有し、あるいは(たとえば、耳の後方に位置し、かつ/または耳の上で輪になるハウジング内の)イヤホンに取り付けられる静電イヤホンまたはインイヤヘッドフォンを含み得る。
【0077】
図の任意のプロセス説明またはブロックは、プロセスでの特定の論理的機能またはステップを実装するための1つまたは複数の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの部分を表すと理解されるべきであり、当業者によって理解されるように、図示され、関係する機能に応じて、ほぼ同時、または逆順を含む、論じられたのとは異なる順序で機能が実行され得る代替実装が、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。
【0078】
本開示は、本開示の真の意図される公正な範囲および趣旨を限定するためのものではなく、技術に従って様々な実施形態をどのように作り、使用するかを説明するためのものである。上記の説明は、網羅的なものではなく、開示される厳密な形態に限定されないものとする。上記の教示に照らして修正または変形が可能である。記載の技術の原理およびその実際的な適用の最良の例示を提供し、様々な実施形態で、企図される特定の用途に適するような様々な修正と共に当業者が技術を利用することを可能にするように実施形態が選ばれ、説明された。すべてのそのような修正および変形は、公正で法的で公平に本願に権利が与えられる広さに従って解釈されるとき、特許を求める本願の係属中に修正され得る、添付の特許請求の範囲によって決定される実施形態およびその均等物の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
図1は、実施形態による例示的静電ヘッドフォン100を示す。ヘッドフォン100は、入力オーディオ信号に従って音を生成するための第1の静電変換器を収容する左側イヤカップ102(本明細書では「第1のイヤカップアセンブリ」とも呼ばれる)と、入力オーディオ信号に従って音を生成するための第2の静電変換器を備える右側イヤカップ104(本明細書では「第
2のイヤカップアセンブリ」とも呼ばれる)と、イヤカップ102および104のそれぞれに結合されたヘッドバンド106(本明細書では「ヘッドバンドアセンブリ」とも呼ばれる)とを備える。いくつかの実施形態では、イヤカップ102および104は、たとえば同一のオーディオチャネルをそれぞれの側に送ることによって、単一チャネルのオーディオを出力するように構成され得る。別の実施形態では、イヤカップ102および104は、たとえばそれぞれに側に相異なるオーディオチャネルを送ることによって、デュアルチャネルオーディオを出力するように構成され得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
いくつかの実施形態では、第2のエレクトロニクスモジュール701は、プロセッサ702に電気的に結合され、静電ヘッドフォンの外面に配設されたユーザインターフェース736をさらに備える。ユーザインターフェース736は、たとえばミュートオンまたはオフ選択、電源オンまたはオフ選択、音量レベル選択などの、静電ヘッドフォンの動作を制御するためのユーザ入力を受け取るように構成され得る。いくつかのケースでは、ユーザインターフェース736はまた、ユーザに情報を表示または提供するように構成され得る。ユーザインターフェース736は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せで実装され得る。一例として、ユーザインターフェース736は、1つまたは複数のユーザ入力デバイス(たとえば、タッチスクリーン、ボタン、スライダ、ノブなど)、ディスプレイデバイス、光インジケータ(たとえば、発光ダイオード(LED))、振動インジケータ(たとえば、触覚変換器)、あるいはそれらの任意の組合せを含み得る。
【国際調査報告】