(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】HSV-2単周期ウイルスデルタ-gDおよびHSV-2組換え糖タンパク質の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/245 20060101AFI20230622BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230622BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20230622BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61K39/245
A61K39/39
A61P31/22
A61P37/04 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573260
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2021035168
(87)【国際公開番号】W WO2021243328
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520426357
【氏名又は名称】アルベルト・アインシュタイン・カレッジ・オブ・メディシン
【氏名又は名称原語表記】ALBERT EINSTEIN COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ヘロルド,ベッツィ シー
(72)【発明者】
【氏名】アシュナー,クレア バーン
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA78
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG10
(57)【要約】
単純ヘルペスウイルス感染症または単純ヘルペスウイルス感染症によって引き起こされる疾患に対して対象をワクチン接種、免疫、および/または治療する方法は、有効量のHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを対象に投与することを含み、HSV-2単周期ウイルスは、ゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有するHSV-2を含み、HSV-2は、HSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dにて表現型的に補完されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に有効量の単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dを投与して、HSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に関して対象にワクチン接種することを含む、HSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に対して対象にワクチン接種する方法であって、HSV-2単周期ウイルスがゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-2がにHSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的補完されている方法。
【請求項2】
対象に有効量の単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dを投与して、HSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に関して対象を免疫することを含む、HSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に対して対象を免疫するする方法であって、HSV-2単周期ウイルスがゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-2がHSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完されている方法。
【請求項3】
対象に有効量の単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dを投与して、対象におけるHSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病を治療または予防することを含む、対象におけるHSV-2感染を治療または予防する、あるいは対象おけるHSV-2感染により引き起こされる疾病を治療または予防する方法であって、HSV-2単周期ウイルスがゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-2がHSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完されている方法。
【請求項4】
HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dの投与が実質的に同時に行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dが対象に別々に投与するために処方される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dが対象に別々に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組換えHSV-2がアジュバント添加された組換えHSV-2 gDである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
HSV-2単周期ウイルスの投与が、組換え糖タンパク質Dの投与の1秒~60分前に行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
HSV-2単周期ウイルスの投与が、組換え糖タンパク質Dの投与の1秒~60分前に行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
HSV-2単周期ウイルスが、皮下、筋肉内、皮内、または膣内投与用に処方される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
組換えHSV-2糖タンパク質Dが、皮下、筋肉内、皮内、または膣内投与用に処方される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dが、対象の同じ肢に注射によって投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
HSV-1糖タンパク質Dが組換えHSV-2ゲノムによってコードされておらず、HSV-2が、HSV-1糖タンパク質Dを発現する補完細胞の中でHSV-2を増殖させることによってHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月29日に出願された米国仮出願第63/031,816号の利益を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
連邦研究声明
本発明は、国立衛生研究所(NIAID)によって授与された助成金番号R01 AI17321-01およびAI057552の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)および単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)は、一般的なヒト病原体である。先進国では、HSV-1は、49歳までに人口の約67%に感染し、口腔および眼の疾患の主な原因であり、感染性角膜失明および致命的な感染性脳炎の主な原因であり、生殖器疾患のより一般的な原因として浮上している(Looker, KJ et al., PLoS ONE 2015, 10, e114989-23; Lafferty, WE et al, Journal of Infectious Diseases 2000, 181, 1454-1457; Roberts, CM et al, Sexually Transmitted Diseases 2003, 30, 797-800; Xu, F. et al., JAMA 2006, 296, 964-973)。HSV-2感染者は、世界中で4億人を超えると推定されており、発展途上国における生殖器疾患の主な原因であり、HIVの獲得と感染の主要な危険因子である(Looker, KJ et al., PLoS ONE 2015, 10, e114989-23)。
【0003】
これら2つの関連ウイルスの巨大な世界的健康負担は、免疫保護の相関物としてウイルスエンベロープ糖タンパク質D(gD)を標的とする中和抗体(nAb)の生成に主に焦点を当てた広範なワクチン開発努力をもたらした。そのようなワクチンの1つは、水酸化アルミニウム(alum, アラム)およびモノホスホリルリピドAアジュバントとともに処方された組換えgD-2タンパク質ワクチン、gD-2-AS04(GlaxoSmithKline)であった。有望な前臨床研究ならびにHSV-1およびHSV-2二重血清陰性の女性(男性ではない)における保護を示す血清不一致カップルの第3相臨床試験にもかかわらず、その後の実地試験では、二重血清陰性の女性におけるHSV-2感染または疾患に対する保護は見出されなかった(Stanberry, L. R, et al., N Engl J Med 2002, 347, 1652-1661; Belshe, RB, et al., N Engl J Med 2012, 366, 34-43)。該ワクチンは、0、1、および6か月目に筋肉内投与された。最近、第I相臨床試験を完了した別のワクチンは、ウイルス複製に関与する2つの遺伝子(UL5およびUL29)が欠失した複製欠損HSV-2株であり、dl5-29(HSV529、Sanofi Pasteur)と命名された(Dropulic, LK, et al. Journal of Infectious Diseases 2019、220、990-1000)。前臨床試験では、該ワクチンは安全で、nAbおよびT細胞応答を誘発し、末梢神経における潜伏の確立を減少させた(Da Costa, XJEA, et al., J. Virol. 2000, 74, 7963-7971; Da Costa, XJEA, et al., Virology 2001, 288, 256-263; Hoshino, Y., et al., Vaccine 2008, 26, 4034-4040; Hoshino, Y., et al., J. Virol. 2004, 79, 410-418; Hoshino, Y., et al. Journal of Infectious Diseases 2009, 200, 1088-1095; Bernard, M.-C., et al., PLoS ONE 2015, 10, e0121518-21)。第I相試験では、ワクチンが安全であり、HSV血清陰性の参加者では、nAb応答が4倍以上増加したが、血清陽性の参加者ではnAb応答が持続的に増加しなかったこともわかった。さらに、参加者のサブセットのみが有意なCD4T細胞応答を誘発し、さらに少ないCD8T細胞応答を誘発した(Dropulic, LK, et al., Journal of Infectious Diseases 2019, 220, 990-1000)。
【0004】
ΔgD-2と命名された単周期候補HSV-2ワクチン株を得るために、糖タンパク質Dが欠失した単周期HSV-2株(ΔGD-2)が開発された。前臨床マウス研究では、このワクチン株ΔgD-2は、Fcガンマ受容体(FcγRs)を活性化して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘発する、高力価の非中和抗体を誘発した。皮下投与された2回の用量は、HSV-1およびHSV-2の臨床分離株による致死的な膣または皮膚攻撃からメスおよび/またはオスのマウスを完全に保護し、潜伏期の確立を防いだ(Petro, C., et al., eLife 2015; Petro, CD, et al., JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5; Kao, CM, et al., Journal of Infectious Diseases 2019, 42, 47-10)。さらに、メスのマウスにワクチンを接種すると、生後1週間以内にその後のHSVチャレンジから子マウスを保護できた(Kao, CM, et al., Journal of Infectious Diseases 2019, 42, 47-10)。アジュバント添加組換えgDとは対照的に、ΔgD-2は、HSV-1 血清反応陽性マウスの総応答とADCC Ab応答を増強し、その後の致命的なHSV-2重複感染を防止した(Burn Aschner, C., et al., npj Vaccines 2020, 1-33)。
【0005】
HSV-1および/またはHSV-2によって引き起こされる感染症および疾患を予防および治療するためのさらなる戦略が有益であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Looker, KJ et al., PLoS ONE 2015, 10, e114989-23
【非特許文献2】Lafferty, WE et al, Journal of Infectious Diseases 2000, 181, 1454-1457
【非特許文献3】Roberts, CM et al, Sexually Transmitted Diseases 2003, 30, 797-800
【非特許文献4】Xu, F. et al., JAMA 2006, 296, 964-973
【非特許文献5】Stanberry, L. R, et al., N Engl J Med 2002, 347, 1652-1661
【非特許文献6】Belshe, RB, et al., N Engl J Med 2012, 366, 34-43
【非特許文献7】Dropulic, LK, et al. Journal of Infectious Diseases 2019、220、990-1000
【非特許文献8】Da Costa, XJEA, et al., J. Virol. 2000, 74, 7963-7971
【非特許文献9】Da Costa, XJEA, et al., Virology 2001, 288, 256-263
【非特許文献10】Hoshino, Y., et al., Vaccine 2008, 26, 4034-4040
【非特許文献11】Hoshino, Y., et al., J. Virol. 2004, 79, 410-418
【非特許文献12】Hoshino, Y., et al. Journal of Infectious Diseases 2009, 200, 1088-1095
【非特許文献13】Bernard, M.-C., et al., PLoS ONE 2015, 10, e0121518-21
【非特許文献14】Petro, C., et al., eLife 2015; Petro, CD, et al., JCI Insight 2016, 1, 1-15
【非特許文献15】Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5
【非特許文献16】Kao, CM, et al., Journal of Infectious Diseases 2019, 42, 47-10
【非特許文献17】Burn Aschner, C., et al., npj Vaccines 2020, 1-33
【発明の概要】
【0007】
対象に有効量のHSV-2単周期ウイルス(HSV-2 single cycle virus)および有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを投与して、単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に関して対象にワクチン接種することを含む、HSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に対して対象にワクチン接種する方法であって、HSV-2単周期ウイルスがゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-2がHSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完されている(complemented)方法。
【0008】
対象に有効量のHSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dを投与して、単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に関して対象を免疫することを含む、HSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病に対して対象を免疫するする方法であって、HSV-2単周期ウイルスがゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-2がHSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完されている方法。
【0009】
対象に有効量の単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dを投与して、対象におけるHSV-2感染またはHSV-2感染により引き起こされる疾病を治療または予防することを含む、対象におけるHSV-2感染を治療または予防する、あるいは対象おけるHSV-2感染により引き起こされる疾病を治療または予防する方法であって、HSV-2単周期ウイルスがゲノム中の糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-2がHSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完されている方法。
【0010】
上記および他の特徴は、以下の図面および詳細な説明によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図面は例示的な実施形態であり、同様の要素には同様の番号が付けられている。
[
図1]ウイルスおよびアジュバント添加サブユニットHSVワクチンの免疫原性は、ワクチン接種経路によって調節される。メスのC57BL/6マウスに、5x10
4、5x10
5、または5x10
6pfu/マウスのdl5-29またはΔgD-2、または5μgのgD-2-アラム/MPLを3週間間隔で2回、皮下(sc)、筋肉内(im)または皮内(id)にワクチン接種した。2回目の免疫の1週間後、マウスの眼窩後採血を行い、ELISAによる総HSV特異的IgG(
図1A~C)、中和力価(
図1D~F)、およびNFAT-ルシフェラーゼレポーターアッセイによるFcγRIV活性化(
図1G~I)について血清を試験した。gD-2-アラム/MPLおよびdl5-29については1つの実験でグループあたり5匹のマウス(N=5)、ΔgD-2については2つの独立した実験でグループあたり5匹のマウス(n=5)。アスタリスクは、ANOVAによる有意性を示す。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【0012】
[
図2]ワクチンの投与量と経路に基づく免疫原性の違いは防御の違いを説明する。メスのC57BL/6マウスに、5x10
4、5x10
5、または5x10
6pfu/マウスのdl5-29またはΔgD-2、または5μgのgD-2-アラム/MPLを3週間間隔で2回、皮下(sc)、筋肉内(im)または皮内(id)にワクチン接種した。2回目のワクチン接種の3週間後、マウスの皮膚に10xLD90 HSV-2 SD90を接種した。gD-2-アラム/MPL(
図2A)、dl5-29(
図2B)、ΔgD-2(
図2C)の経時的な疾患スコアを示す。生存率を
図2D~2Jに示す。gD-2-アラム/MPLよびdl5-29については1回の実験でグループあたり5匹のマウス(N=5)、ΔgD-2については2つの独立した実験でグループあたり5匹のマウス(n=5)。生存曲線については、
**Gehan Breslow Wilcoxon検定によりp<0.01。
【0013】
[
図3]仙骨神経におけるHSV DNA検出は、生存データとパラレルである。5μgのrgD-2-アラム/MPL、または5x10
5pfu/マウスのdl5-29、またはΔgD-2を、sc、im、またはid 経路でワクチン接種したメスのC57BL/6マウスに、10xLD90 HSV-2 SD90を皮膚にチャレンジした。チャレンジ後、マウスを14日間毎日モニターし、チャレンジに屈したマウスについては死亡時に、あるいは生き残った動物についてはチャレンジ後14日目に仙骨神経組織を採取した。仙骨神経節のHSV DNAをqPCRで評価し、DNA10ngあたりのHSV-2 DNAのコピー数を、rgD-2-アラム/MPL(
図3B)、dl5-29(
図3A)、ΔgD-2(
図3C)について示す。チャレンジに屈したマウスは、十字の記号で示される。ワクチンの投与経路に基づく有意差はなかった(ANOVA)。
【0014】
[
図4]HSVワクチン接種後のT細胞応答の動態。5x10
5pfu/マウスのΔgD-2または5μgのgD-2-アラム/MPLを、メスのC57BL/6マウスに3週間間隔で2回筋肉内ワクチン接種した。ワクチン接種前(-1日目)と初回刺激および追加免疫後の1週目と2週目に、マウスを後眼窩採血し、CD11a
+CD49d
+活性化CD4およびCD8T細胞について評価した(
図4C-D)。CD4およびCD8T細胞活性化の評価のためのゲーティング戦略を示す(
図4A-B)。Mixed Effects Analysisによってデータを分析した。
*p<0.5、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。グループあたり5匹のマウス(n=5)。
【0015】
[
図5]ΔgD-2ワクチン接種は、HSV-2刺激に応答してIFN-γ、TNF、およびIL-2を産生する多機能CD4およびCD8T細胞を誘導する。メスのC57BL/6マウスに、5x10
5pfu/マウスのΔgD-2および5μgのgD-2-アラム/MPLを3週間間隔で2回筋肉内ワクチン接種した。ワクチン接種されたマウスからの脾細胞を、ブーストワクチン接種の2週間後に収集し、IFN-γ、TNF、およびIL-2の産生に関する染色およびフローサイトメトリー分析の前に、ブレフェルジンA処理を伴うPHAまたはUV不活化HSV-2 SD90で18時間刺激した。ゲーティング戦略を(
図5A)に示し、CD4(
図5B-D)およびCD8(
図5E-G)T細胞に対するサイトカイン応答を示す。Mixed Effects Analysisによってデータを分析した。
*p<0.5、
**p<0.01、
***p<0.001。グループあたり5匹のマウス(n=5)。
【0016】
[
図6]中和抗体の生成により、低用量のΔgD-2による保護が強化される。メスのC57BL/6マウスに5x10
4pfu/マウスのΔgD-2、5μgのgD-2-アラム/MPL、または両方のワクチンの組み合わせを3週間間隔で2回、反対側の側面(opposite)または同じ部位(same)に皮下ワクチン接種した。2回目のワクチン接種の1週間後、マウスの眼窩後採血を行い、血清をELISA(
図6A)、中和力価(
図6B)、およびFcγRIV活性化(
図6C)によって総HSV特異的IgGについて評価した。2回目のワクチン接種の3週間後、マウスの皮膚に10xLD90用量のHSV-2(SD90)を接種した。生存率%を示す(
図6D)。2つの独立した実験でグループあたり5匹のマウス(N=5)。(A-C)
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001、ANOVAによる。生存曲線については、
*p<0.05、***p<0.001、Gehan Breslow Wilcoxon検定による。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ワクチンの免疫原性は、ウイルス抗原がワクチンによってどのように提示されるか(弱毒化、複製欠損、単周期、不活化ウイルス、またはアジュバント添加サブユニットタンパク質)、ならびに投与量および投与経路によって影響を受ける。予防接種のルートは、多くの場合、免疫学的な考慮事項ではなく、実際的な考慮事項に基づいている。
【0018】
異なる経路およびワクチン用量を使用して、ゲノム中の糖タンパク質Dの欠失(ΔgD-2)を有する遺伝子改変された単周期の単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)の免疫原性および有効性が研究され、dl5-29ならびにアラムおよびモノホスホリルリピドAにてアジュバント添加組換えHSV-2糖タンパク質D(rgD-2)(gD-2-AS04ワクチン(GlaxoSmithKline)と同様のもの)と比較された。ΔgD-2とrgD-2の同時投与の免疫原性と有効性も評価された。驚くべきことに、ΔgD-2と組換えHSV-2糖タンパク質D(rgD-2)の同時投与は、どちらのワクチンの免疫原性にも干渉しないことが発見された。特に、アジュバント添加rgD-2と比較的低用量のΔgD-2を同じ側腹または反対側の側腹部に同時に送達すると、どちらのワクチンの免疫原性も妨げられず、アジュバント添加rgD-2単独よりも防御力が高くなる。さらに、低用量のΔgD-2とrgD-2の組み合わせが相加的な保護を提供することが示された。
【0019】
本明細書で使用される「治療有効量」または「有効な量」または「有効量」は、対象において所望の効果を達成するのに十分な特定の物質の量を指す。
【0020】
「治療する」または「治療」は、本開示のワクチンまたは本開示の製品を、1つまたは複数の疾患症状を有する、または疾患を有する疑いのある対象または患者に投与することを意味し、そのことに関してワクチンまたは製品は治療活性または予防活性を有する。ワクチンまたは製品は、臨床的に測定可能な程度で、そのような症状の退縮を誘導するか、またはその進行を阻害することによって、治療対象の1つまたは複数の疾患症状を緩和するのに有効な量で投与され得る。この用語は、障害に関連する症状の発症の遅延および/またはそのような障害の症状の重症度の低下をさらに含む。これらの用語は、すでに存在している制御されていないまたは望ましくない症状を改善すること、追加の症状を予防すること、およびそのような症状の根底にある原因を改善または予防することをさらに含む。
【0021】
「予防する」とは、疾患の素因があるかもしれないが疾患を有していない対象において、疾患が発生する可能性を有意に低減するのに十分な量の本開示のワクチンまたは本開示の製品を投与することを意味する。ウイルス感染の文脈において、「予防」には、ワクチンまたはウイルス感染のリスクが高いことが知られている対象へのワクチンの投与から生じる免疫産物の投与が含まれる。
【0022】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、ワクチンに添加され、抗原に対する免疫応答を増強、増強および/またはブーストする任意の成分を意味するが、それが単独で投与された場合は免疫応答が生じない。
【0023】
単純ヘルペスウイルス(HSV)感染に対して対象をワクチン接種、免疫および/または治療する方法が本明細書に開示される。また、本明細書において、HSV感染によって引き起こされる疾患に対して対象をワクチン接種、免疫、および/または治療する方法も開示される。HSV感染は、単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)感染、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染である。一態様では、HSV感染は、単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)感染である。HSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾患には、ヘルペス、口唇ヘルペス、白癬、性器ヘルペス(性器潰瘍)、ヘルペス湿疹、剣状ヘルペス、HSV角膜炎、HSV網膜炎、HSV脳炎またはHSV髄膜炎が含まれる。一態様では、HSV感染によって引き起こされる疾患は性器潰瘍である。
【0024】
本明細書に開示される方法は、対象に有効量のHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質D(rgD-2)を投与することを含む。HSV-2単周期ウイルスは、ゲノムにおいてHSV-2糖タンパク質Dをコードする遺伝子が欠失しているHSV-2であり、HSV-2は脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完されている。HSV-2糖タンパク質Dをコードする遺伝子は、HSV-2のUs6遺伝子であり、HSV-2ゲノムにおいて完全にまたは部分的に欠失されている。一態様では、HSV-2糖タンパク質Dをコードする遺伝子は、HSV-2ゲノムにおいて完全に欠失されている。
【0025】
HSV-1糖タンパク質Dは、HSV-2ゲノムによってコードされていない。特に、HSV-2糖タンパク質Dの欠失を有するHSV-2は、HSV-1 gDを発現するようにトランスフェクトされた細胞中でHSV-2糖タンパク質をコードする遺伝子の欠失を有するHSV-2を増殖させることによって、HSV-1糖タンパク質Dにて表現形的に補完される。HSV-2単周期ウイルスの完全な説明は、WO2015/134368に見出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
HSV-2のゲノム中にHSV-2糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有し、HSV-1糖タンパク質Dを発現する補完細胞においてHSV-2を増殖させることによってHSV-1糖タンパク質Dにて表現形的に補完されているHSV-2単周期ウイルスは、本明細書において「HSV-2ΔgD-2」または「ΔgD-2」または「HSV-2単周期ウイルス」と互換的に称される。
【0027】
組換えHSV-2糖タンパク質Dは、本明細書において「rgD-2」または「組換えHSV-2 gD」または「組換えgD-2」と互換的に称される。
【0028】
態様(複数)では、組換えHSV-2 gDをアジュバントと組み合わせ、アジュバント添加組換えHSV-2 gDを対象に投与する。
【0029】
アジュバントのタイプは限定されず、アジュバント添加されていない組換えHSV-2(例えば、可溶性組換えHSV-2 gD)の投与と比較して、組換えHSV-2 gDに対する対象の免疫応答を増強、増強、および/または促進することができる任意のアジュバントであり得る。アジュバントの非限定的な例は、アラム、硫酸カリウムアルミニウム、水酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸硫酸アルミニウム(AAHS)、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸カルシウム、スクアレン、Quillaja由来の植物サポニン(例えば、Quil ATM)、大豆、またはPolygala senegaが挙げられる。モノホスホリルリピドA(MPL)、フロイントアジュバント(完全または不完全)、非代謝性油を含む水中油エマルジョン、パラフィン油(例えば、EMULSIGENTM、MVP Laboratories、ネブラスカ州ラルストン)、鉱油、植物油または植物油、スクアランまたはスクアレン(例えばMF59TM)、および/または動物油、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、QS-21、またはそれらの組み合わせを含む。アジュバントは、3-DMP、ポリグルタミン酸またはポリリジンなどの高分子または単量体アミノ酸、または他の免疫増強剤などの他の特異的な免疫刺激剤とともに、あるいはそれらを伴わずに用いることができる。
【0030】
単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)感染、単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染に対して対象にワクチン接種する方法が本明細書に開示される。また、HSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾患に対して対象にワクチン接種する方法も開示される。HSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染、またはHSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾患に対して対象にワクチン接種する方法は、有効量の組換えHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを対象に投与して、HSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染に関して対象にワクチン接種することを含む。HSV-2単周期ウイルスは、ゲノムにおいて糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有するHSV-2を含み、HSV-2は、HSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完される。
【0031】
一態様では、単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)感染またはHSV-2感染によって引き起こされる疾患に対して対象にワクチン接種する方法は、有効量のHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2 gDを対象に投与して、HSV-2感染またはHSV-2感染によって引き起こされる疾患に関して対象にワクチン接種することを含む。
【0032】
一態様では、HSV-1感染またはHSV-1感染によって引き起こされる疾患に対して対象にワクチン接種する方法は、有効量のHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2 gDを対象に投与して、HSV-1感染またはHSV-1感染によって引き起こされる疾患について対象にワクチン接種することを含む。
【0033】
一態様では、HSV-1およびHSV-2の同時感染またはHSV-1およびHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾患に対して対象にワクチン接種する方法は、有効量のHSV-2単周期ウイルスおよび有効な量の組換えHSV-2 gDを対象に投与して、およびHSV-1およびHSV-2の同時感染またはHSV-1およびHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾患について対象にワクチン接種することを含む。
【0034】
単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)感染、単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)感染、またはHSV-1およびHSV-2の同時感染に対して被験体を免疫する方法、ならびにHSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾患に対して対象を免疫する方法も本明細書に開示される。HSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染、あるいはHSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾病に対して対象を免疫する方法は、有効量の組換えHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2 gDを対象に投与して、HSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染、あるいはHSV-1感染、HSV-2感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染によって引き起こされる疾病に関して対象を免疫することを含む。HSV-2単周期ウイルスは、ゲノムにおいて糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有するHSV-2を含み、HSV-2は、HSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完される。
【0035】
一態様では、HSV-2感染またはHSV-2感染によって引き起こされる疾患に対して対象を免疫する方法は、対象に有効量の組換えHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを対象に投与して、HSV-2感染またはHSV-2感染によって引き起こされる疾患に関して対象を免疫することを含む。
【0036】
対象におけるHSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2とHSV-1の同時感染を予防または治療する方法も本明細書に開示される。対象におけるHSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2とHSV-1の同時感染によって引き起こされる疾患を予防または治療する方法も開示される。
【0037】
対象におけるHSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2とHSV-1の同時感染を予防または治療する方法は、対象に有効量の組換えHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを対象に投与して、HSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2とHSV-1の同時感染に関して対象を治療することを含む。対象におけるHSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2とHSV-1の同時感染によって引き起こされる疾患を予防または治療する方法は、対象に有効量の組換えHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを対象に投与して、HSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2とHSV-1の同時感染によって引き起こされる疾患に関して対象を治療することを含む。HSV-2単周期ウイルスは、ゲノムにおいて糖タンパク質Dをコードする遺伝子の欠失を有するHSV-2を含み、HSV-2は、HSV-2の脂質二重層上のHSV-1糖タンパク質Dで表現型的に補完される。
【0038】
一態様では、対象における単純ヘルペスウイルス-2(HSV-2)感染を治療または予防する方法、あるいは対象におけるHSV-2感染によって引き起こされる疾患を治療する方法は、有効量の組換えHSV-2単周期ウイルスおよび有効量の組換えHSV-2糖タンパク質Dを対象に投与して、HSV-2感染に関して対象を治療することを含む。
【0039】
態様(複数)では、対象にワクチン接種、免疫、および/または治療する開示された方法は、HSV-2単周期ウイルスを含む有効量の組成物、医薬組成物、またはワクチンを投与すること、ならびに組換えHSV-2 gDを含む有効量の組成物、医薬組成物、またはワクチンを投与することを含む。
【0040】
態様(複数)では、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2糖タンパク質Dの投与は、実質的に同時に行われる。本明細書で使用する場合、「実質的に同時に」とは、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDを互いに短い時間のうちに、例えば、1秒~24時間、1秒から12時間、1秒から8時間、1秒から4時間、1秒から2時間(120分)、1秒から1時間(60分)、または1秒から30分以内に投与することを指す。
【0041】
一態様では、HSV-2単周期ウイルスの投与は、組換え糖タンパク質Dの投与の1秒~60分前に行われる。
【0042】
一態様では、HSV-2単周期ウイルスの投与は、組換え糖タンパク質Dの投与の1秒~60分後に行われる。
【0043】
一態様では、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDの投与は、同時に、例えば同じ時刻に行われる。本明細書で使用する場合、同時投与または同時に投与するとは、HSV-2単周期ウイルスと組換えHSV-2 gDの投与の間に識別可能な時間がない場合を指す。
【0044】
HSV-2単周期ウイルスを含む組成物または薬学的処方物またはワクチン、および組換えHSV-2 gDを含む組成物または薬学的処方物またはワクチンを対象に投与することができる。HSV-2単周期ウイルスおよび/または組換えHSV-2 gDを含む組成物または薬学的組成物またはワクチンは、対象への投与のために処方される。
【0045】
一態様では、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、対象への別々の投与のために、異なる組成物、薬学的処方物またはワクチン中に存在する。換言すれば、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、同じ組成物、薬学的処方またはワクチン中に存在しない。しかしながら、本開示は必ずしもそれに限定されず、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDの両方を含む組成物、薬学的処方またはワクチンは、その中に存在する物質によってHSV-2単周期ウイルスの生存能力が損なわれない限り、使用されうる。
【0046】
本開示の一態様において、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、対象への別々の投与のために処方され、実質的に同時に対象に投与される。一態様では、HSV-2単周期ウイルスの投与は、組換えgDの投与の1秒~60分前に行われる。一態様では、HSV-2単周期ウイルスの投与は、組換えgDの投与の1秒~60分後に行われる。
【0047】
一態様では、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、対象への別々の投与のために処方され、同時に対象に投与される。例えば、HSV-2単周期ウイルスを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンと、組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンとを、対象への投与前に一緒に組み合わせ、同時に投与することができる。あるいは、例えば、HSV-2単周期ウイルスを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンと、組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンとを、別々の手段(例えば、異なる注射器)によって同時に対象に投与することができる。
【0048】
態様(複数)において、HSV-2単周期ウイルスまたは組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンは、ヒト対象への投与に適するように処方される。特に、組成物または薬学的処方物またはワクチンは、対象への意図された投与経路に適するように処方される。HSV-2単周期ウイルスを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンの意図される投与経路は、組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方物またはワクチンの意図される投与経路と同じであっても異なっていてもよい。一態様では、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、同じ投与経路のために独立して処方される。一態様では、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、異なる投与経路のために処方される。
【0049】
一態様では、組成物、薬学的処方またはワクチンは、対象への皮下、筋肉内、皮内、または膣内投与に適するように処方される。本明細書に開示される方法、および本明細書に開示される組成物または薬学的処方またはワクチンにおいて、投与は、耳介、口腔、結膜、皮膚、皮下、子宮頸管内、洞内、気管内、経腸、硬膜外、血液透析、間質、腹腔内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、尾部内、海綿体内、腔内、脳内、槽内、角膜内、冠動脈内、皮内、椎間板内、管内、表皮内、食道内、胃内、膣内、歯肉内、回腸内、管腔内、病巣内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心外膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、副鼻腔内、脊髄内、滑膜内、腱内、精巣内、髄腔内、胸腔内、管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、脳室内、膀胱内、硝子体内、喉頭、鼻、経鼻胃、眼、経口、口腔咽頭、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、直腸、吸入、球後、くも膜下、結膜下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経粘膜、経胎盤、経気管、尿管、尿道、または膣にて行われ得る。前述の投与経路の少なくとも1つを含む組合せも使用することができる。
【0050】
一態様では、HSV-2単周期ウイルスを含む組成物、薬学的処方またはワクチン、および組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方またはワクチンは、注射による皮下、筋肉内または皮内投与用に処方される。HSV-2単周期ウイルスを含む組成物、薬学的処方またはワクチンは、組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方またはワクチンと同じ領域または異なる領域に投与することができる。例えば、HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDはそれぞれ、同じまたは異なる手足に投与することができる。
【0051】
本明細書に開示される組成物、薬学的処方、またはワクチンは、アジュバントを含むことができる。一態様では、HSV-2単周期ウイルスまたは組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方、またはワクチンは、アジュバントを含む。本明細書に開示される組成物、薬学的処方、またはワクチンはまた、薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の規制機関によって承認された物質、または米国薬局方、他の一般に認められた薬局方に加えて、動物、より具体的には、ヒトおよび/またはヒト以外の哺乳動物における使用に安全な他の処方にリストされている物質を意味する。「薬学的に許容される担体」という用語は、本抗体またはフラグメントとともに投与される賦形剤、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント(免疫学的アジュバントとも呼ばれる)、および/またはビヒクルを指す。薬学的に許容される担体の例としては、リン酸緩衝生理食塩水、滅菌水(USP注射用水を含む)、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、およびさまざまなタイプの湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾルまたは非経口投与に好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水または通常の(0.9%)生理食塩水、例えばUSP0.9%塩化ナトリウム溶液が挙げられる。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって処方される(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences、第 18 版、A. Gennaro 編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990 を参照;および Remington、The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing, 2000参照(それぞれの内容全体を本明細書に組み込む))。非限定的な例において、担体は、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化カリウム、一塩基性リン酸カリウム、ポリソルベート80(例えば、2-[2-[3,5-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル(E)-オクタデカ-9-エノエート)、エデト酸二ナトリウム二水和物、スクロース、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、および二塩基性リン酸ナトリウム二水和物のうちの1つまたはそれ以上を含む。薬学的に許容される担体は、HSV-2単周期ウイルスの生存能力または組換えHSV-2 gDの安定性および/またはコンフォメーションに不適合でない限り、限定されない。
【0053】
一態様では、組換えHSV-2 gDを含む組成物、薬学的処方、またはワクチンは、使用前の保管および輸送中の一定期間にわたる変性、酸化、または凝集の影響によるタンパク質の活性または構造的完全性の喪失を防止するための安定剤を含むことができる。組成物、薬学的処方たはワクチンは、塩、界面活性剤、pHおよび/または等張化剤、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0054】
組成物、薬学的処方、またはワクチンが注射剤として使用される場合、pH値はほぼ中性のpH範囲(pHまたは6.8~7.4)である。一態様では、組成物、薬学的処方、またはワクチンは液体形態である。一態様では、組成物または薬学的組成物は等張性である。
【0055】
本開示において、対象は、HSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2およびHSV-1の同時感染の治療または予防を必要とする対象である。対象はまた、HSV-2感染、HSV-1感染、またはHSV-2およびHSV-1の同時感染によって引き起こされる疾患の治療または予防を必要とする対象であり得る。対象は哺乳類の対象である。例えば、対象はヒト対象である。HSV-2単周期ウイルスおよび組換えHSV-2 gDは、ヒト対象への投与のために処方することができる。
【0056】
本明細書に開示される方法は、対象における免疫応答を誘導し、該免疫応答は、対象におけるウイルス播種および/またはウイルス感染を最小化および/または防止する抗体、細胞性免疫応答、および/または他の免疫因子(例えば、補体)を誘発する。特に、免疫応答は、Fc受容体を活性化して抗体依存性細胞障害(ADCC)応答を媒介する抗体(FcR活性化抗体)の産生を含む。一態様では、有効量のHSV-2単周期ウイルスの投与は、FcR活性化抗体(抗体依存性細胞傷害(ADCC)抗体とも呼ばれる)の産生を誘発する。HSV-2単周期ウイルスの有効量は、記載された目的を達成するHSV-2単周期ウイルスの一定量のプラーク形成単位(pfu)である。
【0057】
本開示は、非限定的である以下の実施例によってさらに説明される。
【0058】
実施例
材料および方法
年齢が一致した雌のC57BL/6(BL/6)マウスは、Jackson Laboratory(JAX、Bar Harbor、ME)から購入した。
【0059】
Vero細胞(ミドリザル腎臓細胞株、ATCC)、VD60細胞(Ligas,M.W.ら、J.Virol.1988,62,1486-1494)およびV5-29細胞(Da Costa,X.J.E.A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1999, 96, 6994-6998)を、10%FBS(Hyclone, Logan, UT)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したDMEM(Invitrogen, Carlsbad, CA)にて増殖させた。ウイルス攻撃に使用された臨床分離株は、HSV-2(SD90)(Dudek, T. E., et al., Journal of Infectious Diseases 2011, 203, 1434-1441)およびHSV-2(4674)を含んでいた。HSV-2株4674は、Montefiore Clinical Virology Labから入手した(Petro, C. D., et al, JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al, Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5)。ウイルス分離株をVero細胞で増殖させ、力価を測定した(Petro, C. D., et al., JCI Insight 2016, 1, 1-15)。
【0060】
補完的なVD60細胞中でΔgD-2を増殖させ、VD60細胞とVero細胞の両方にて力価測定した(Petro, C., et al., eLife 2015; Petro, C. D., et al., JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5; Kao, C. M., et al., Journal of Infectious Diseases 2019, 42, 47-10)。補完的なV5-29細胞にてDl5-29を増殖させ(Da Costa, X. J. E. A., et al., J. Virol. 2000, 74, 7963-7971)、補完的および非補完的なVero細胞にて力価測定した。組換えgD-2タンパク質(5μg)は、Einstein Macromolecular Therapeutics Development Facilityから提供され、150μgのアラム(Imject Alum、Pierce Biotechnology、ロックランド、イリノイ州)および12.5μgのMPL(Invivogen、カリフォルニア州サンディエゴ)にてアジュバント添加された(rgD- 2/Alum-MPL) (Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5)。組換えgD-2は、AS04ワクチン(GlaxoSmithKline)において使用される組換えgD-2と実質的に同じである。
【0061】
ワクチン接種とチャレンジプロトコル
雌のC57BL/6マウスに、5×104、5×105、または5×106pfu(補完的細胞系によるウイルス力価に基づく)のγgD-2またはdl5-29;5μgのrgD-2/アラムMPL;または5x104pfuのΔgD-2と5μgのrgD-2/アラム-MPLの組み合わせを皮下、筋肉内、または皮内(3週間間隔で2回投与)でワクチン接種した。皮内ワクチン接種には、マウス用に設計された専門の皮内マイクロニードルを使用した(Nanopass、Nes Ziona、ISR)。2回目のワクチン投与の3週間後、90%の動物に対する致死量(LD90)の10倍のHSV-2 SD90にてマウスの皮膚を攻撃した(Petro, C., et al., eLife 2015)。上皮および神経疾患についてマウスを毎日モニターし、記載されているように採点した。皮膚病の場合:1)接種部位の紅斑。2)遠隔転移、帯状疱疹、浮腫。3)潰瘍、表皮の広がり、四肢麻痺;4)後肢麻痺、5)死亡。マウスをスコア4で安楽死させ、翌日スコア5を割り当てた。
【0062】
HSV特異的抗体についてのELISA
総HSV結合IgGまたはアイソタイプ特異的HSV結合IgGを、組換えモノクローナル抗体またはワクチンの2回目の投与の1週間後に収集した血清を用いてELISAにより測定した。ELISAプレートを、0.1のMOIで24時間HSV-2(G)に感染させたVero細胞の溶解物、または対照として感染していないVero細胞溶解物でコーティングした。血清の連続希釈物を2連で、コーティングしたプレートとともに4℃で一晩インキュベートし、ビオチン標識二次抗体(BD Pharmingen, CA)を使用して結合したIgGを定量した。非感染ベロ細胞溶解物へのバックグラウンド結合を、HSV感染ベロ細胞溶解物への結合から差し引いて、HSV特異的結合を定量化した。
【0063】
FcγR活性化アッセイ
Fc受容体活性化、より具体的にはFcγRIV活性化は、マウスFcγRIV ADCCレポーターバイオアッセイ(Promega、Madison、WI)を用いて決定した(Petro、C.D.ら、JCI Insight 2016、1、1-15; Burn、 C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5)。標的ベロ細胞を、0.1のMOIで12時間、HSV-2(SD90)に感染させた。感染または非感染の対照細胞を白色の平底96ウェルプレートに移し、ワクチン接種または対照免疫マウスからの熱不活化血清またはヒト血清サンプル(下記参照)(DMEMで1:5希釈)とともに室温で15分間インキュベートした。マウスFcγRIVを37℃、5%CO2にて6時間添加し、ルシフェリン基質の添加によりFcγRIV活性化を検出した。SpectraMax M5e(Molecular Devices)でプレートを読み取った。誘導倍率を、血清の非存在下でのルシフェラーゼ活性と比較して計算した。
【0064】
中和アッセイ
中和力価をプラーク減少アッセイによって決定した(Petro, C., et al., eLife 2015; Petro, C. D., et al, JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5)。熱不活化血清の連続2倍希釈液を2連でウイルス(50pfu/ウェル)とともに37℃で1時間インキュベートし、Vero細胞単層に37℃で1時間適用した。細胞をメタノールで固定し、48時間のインキュベーション後にギムザ染色した。プラークを計数し、中和力価を、プラーク数が50%減少する最高希釈率として定義した。
【0065】
定量的PCRによる神経組織中のウイルスDNAの定量
安楽死時(マウスが病気に屈したとき、またはHSV-2チャレンジ後14日目)に、仙骨神経組織を抽出し、Qiagen Blood and Tissue DNA分離キット(Qiagen)を使用してDNAを分離した。サンプルあたり10ngのDNAをロードし、HSV-2 gBに特異的なプライマーとプローブを使用して、HSV DNAを定量化した(HSV-2フォワードプライマー(配列番号:1)配列 5’-TGCAGTTTACGTATAACCACATACAGC-3’(配列番号:1);HSV-2リバースプライマー配列 5’-AGCTTGCGGGCCTCGTT-3’(配列番号:2);HSV-2プローブ配列 5’-CGCCCCAGCATGTCGTTCACGT-3’(配列番号:3)(Namvar, L., et al. , Journal of Clinical Microbiology 2005, 43, 2058-2064)。マウスβアクチンをローディングコントロールとして使用し(Applied Biosystems, Foster City, CA)、qPCRをApplied Biosystems QuantStudio 7 Flexで実行した。標準曲線に基づけば、このアッセイは一貫して4以上のコピー数を検出した。検出されたコピー数が4未満のサンプルを陰性と見なした(Petro, C., et al, eLife 2015; Petro, C. D., et al, JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5)。
【0066】
細胞分離とフローサイトメトリー
末梢血を後眼窩採血により採取し、5mlの予熱したACK溶解緩衝液(Lonza BioWhittaker)にピペットで移し、37℃で7分間インキュベートした。溶解後、カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBSで細胞を2回洗浄した。脾細胞の分離のために、ワクチン接種した動物から脾臓を分離し、70μmセルストレーナーに押し付けて機械的に消化した。遠心分離によって細胞をペレット化し、2mlのACK溶解緩衝液に再懸濁した。37℃で7分後、RPMIを添加し、遠心分離により細胞をペレット化した。その後、細胞を洗浄し、さらなる処理のためにRPMIに再懸濁した。
【0067】
ex vivoでの刺激のために、200μLのRPMI+10%FBSあたり2x106個の脾細胞をU底96ウェルプレートにプレーティングした。細胞をPHA(5μg/mL)または1x106PFU UV不活化HSV-2 SD90で処理し、37℃で18時間インキュベートした。ブレフェルジンA(BioLegend、カリフォルニア州サンディエゴ)を刺激の最後の5時間に加えた。ウイルスのUV不活性化のために、HSV-2 SD90を24ウェルディッシュ中のRPMIで希釈し、プレートの4インチ上に配置したハンドヘルド(hand-held)UVライトに30分間曝露した。次いで、フローサイトメトリーのために、細胞外および細胞内染色のために細胞を処理した。
【0068】
フローサイトメトリー分析のために、100μLあたり1x106から2×106個の細胞を、Zombie Near-IR fixable viability dyeおよびTruStain FcX(抗マウスCD16/CD32)抗体と共に室温で10分間インキュベートした。表面染色のために、FACS BufferとBrilliant Stain Buffer(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)の混合物中、製造元の指示に従って室温で30分間、抗CD90.2-BV510、CD4-BV785、CD8-BV711、CD11a-APC、CD49d-APC/Fire750、KLRG1-BV605、およびCD62L-BV570(すべてBioLegend、カリフォルニア州サンディエゴ)にて細胞を染色した。次いで、細胞を洗浄し、室温で200mlの2%PFA中で20分間インキュベートすることによって固定し、続いて0.3%トリトンX-100中で7分間インキュベートすることによって透過処理した。細胞内染色のために、抗IFN-γ-PE、TNF-BV570、およびIL-2-PerCP/Cy5.5(BioLegend、カリフォルニア州サンディエゴ)のカクテル100μL中で細胞を4℃で30分間インキュベートした。染色後、細胞を洗浄し、40μmセルストレーナーに通し、次いで、5-レーザーCytek Auroraフローサイトメーターにて分析した。サンプルごとに50,000個の生CD90.2+細胞を収集し、FlowJo(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)を使用してデータ分析を実施した。
【0069】
統計分析
GraphPad Prismバージョン8.2.1ソフトウェア(GraphPad Software Inc.San Diego,CA)を使用して分析を行った。0.05のP値を統計的に有意であると見なした。Gehan-Breslow-Wilcoxon検定を使用して生存曲線を比較した。他の結果を、説明書に従ってANOVAまたは混合効果分析を使用して比較した。
【0070】
結果
用量と送達経路は HSV ワクチンの免疫原性に影響を与える
投与量および/または送達経路が免疫原性に影響を与えるかどうかを決定するために、γgD-2またはdl5-29の漸増用量(5×10
4、5×10
5、または5×10
6pfu/投与量、補完的細胞株での力価に基づく)またはアラムおよびMPLにてアジュバント添加した5μgのgDタンパク質にて、マウスをsc、im、またはid経路を介してプライムブースト免疫した。総HSV特異的(ELISA)、中和およびADCC応答(代理としてマウスFcγRIV活性化を使用して測定)を、ブースト後1週間で取得した血清中で定量した。アジュバント添加gDタンパク質ワクチンは、imまたはscと比較して、idにて送達された場合、有意に高い総HSV ELISA抗体応答を誘導した(p<0.001)。dl5-29およびΔgD-2に対する総HSV特異的Ab応答は、用量の増加に伴い増加したが、各用量での投与経路を比較するとほとんど差はなかった。dl5-29については、5x10
4pfu/マウスの用量で、im経路はscと比較して有意に高い応答を誘発し(p<0.05)、ΔgD-2については、5x10
6pfu/マウスの用量で、id経路はimと比較してより高いAb応答を誘発した(p<0.01、ANOVA)(
図1A-C)。
【0071】
総HSV特異的Abの増加と矛盾せずに、rgD-2/アラム-MPLのid投与後の中和力価の有意でない増加が見られた(
図1D-F)。dl5-29 に対する中和応答は用量とともに増加したが、投与経路を比較した場合には増加しなかった。ΔgD-2は、以前の研究から予想されるように、用量または投与経路に関係なく、中和Ab応答をほとんど、またはまったく誘導しなかった。対照的に、ΔgD-2は、他のワクチンと比較して最も強力なADCC応答を誘発し、これは用量とともに増加し、idまたはim投与をsc投与と比較した場合に、5x10
6用量で有意に大きかった。アジュバントを添加したgDタンパク質ワクチンは、投与経路に関係なく、対照血清と比較してADCC応答を誘発しなかった。dl5-29ワクチンは中間的なADCC応答を誘導した。これは、5x10
6pfuのΔgD-2のimまたはid投与によって誘発された30倍のFcγRIV活性化と比較して、5x10
6pfuのid投与後に最高であった(中央値で15倍)(
図1G-I)。
【0072】
免疫原性の違いは、致死的な皮膚攻撃後の防御の違いにつながる
プライムブーストワクチンを接種したマウスに、マウスモデル(Dudek,T.E.,et al., Journal of Infectious Diseases 2011, 203, 1434-1441)において一貫して致死的であることが以前に示されているHSV-2臨床単離物のLD90の10倍用量、SD90でマウスの皮膚を攻撃した。疾患の徴候についてマウスを2週間モニターし、重度の皮膚疾患または神経疾患の徴候が以前に記載されているように観察された場合は安楽死させた(
図2A-J)(Petro, C., et al, eLife 2015; Petro, C. D., et al, JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5)。imまたはsc投与と比較して、id投与した場合、アジュバント添加タンパク質ワクチンによってもたらされる防御の中庸ではあるが有意ではない増加があり(
図2A~C)、これは増加したELISAおよびnAb応答(
図1A、1D)に対応する。投与経路は、dl5-29の5x10
4投与後の生存率に有意な影響を及ぼさず(
図2E)、これは防御的ではなかったが、imとid経路の両方が、dl5-29の5x10
5投与後においてsc経路よりも優れた保護を提供し(80%対20%)(
図2F)、ADCCの有意な増加(
図1H)に対応していた。3つの経路はすべて、最高のワクチン用量で完全に保護的であった(
図2G)。ΔgD-2による生存率の唯一のブレークスルーは、scにて投与された5x10
4の用量で観察された(
図2H)。致死に対する完全な保護は、他のすべての用量および経路で観察された(
図2I~J)。用量、投与経路、またはワクチンに関係なく、総集団全体でADCCと生存率との関連を調べると(n=145)、49匹中14匹のマウスにおいてmFcγRIV活性化が4.5倍未満であったことと比較して、96匹中93匹のマウスにおいてmFcγRIV活性化が4.5倍増加しており、これらのマウスは生存していた(p<0.0001、カイ二乗)。
【0073】
ワクチン接種の経路が潜伏の確立を防止するワクチンの能力に影響を与えたかどうかを評価するために、死亡時または攻撃後14日目に神経節内のHSVウイルスDNAを定量した。アジュバント添加gDタンパク質によるidワクチン接種後のAb応答の増加にもかかわらず、いずれの経路の免疫でも神経節から回収されたウイルスDNAは減少しなかった。5x10
5用量のdl5-29およびΔgD-2での結果は、疾患スコアおよび生存データとパラレルであった。dl5-29でsc免疫した5匹中4匹のマウスが神経節内のHSV DNAを有していたことと比較して、imまたはidで免疫した場合、5匹中わずか1匹のマウスにおいて神経節内のHSV DNAが検出された。同用量のΔgD-2を任意の経路でワクチン接種したマウスでは、ウイルスDNAは回収されなかった(
図3A~C)。
【0074】
ΔgD-2ワクチン接種は、強力なCD4およびCD8 T細胞記憶応答を誘導する
機能的に異なるAb応答を誘発する、γgD-2およびrgD-2/アラム-MPLに対する免疫応答をさらに表現型決定するために、マウスに、5×10
5pfu/マウスのΔgD-2または5μgのgD-2-アラム/MPLを、3週間間隔でimにてプライム-ブーストワクチン接種し、ワクチン接種前(-1日目)ならびにプライムおよびブースト両方のワクチン接種後の指示された時間に末梢血において評価した。CD11a+CD49+ CD4およびCD8 T細胞を定量化することによって測定されるように、ΔgD-2は、プライムおよびブーストワクチン接種の両方の後に、活性化されたCD4およびCD8 T細胞を誘導した。対照的に、アジュバント添加タンパク質ワクチンに対する検出可能なT細胞応答はほとんどなかった(
図4C~D)。これらのマウスから脾細胞を42日目に採取し、サイトカイン応答を評価するための生存率コントロールとして、UV不活性化SD90またはフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激した。rgD-2/アラム-MPLワクチンを接種したマウスではなく、ΔgD-2を接種したマウスから単離した脾細胞を不活化ウイルスで刺激した場合、刺激していない細胞と比較して有意に多くのIFN-γ、TNFおよびIL-2産生CD4+T細胞が観察された(
図5B-D)。応答は、PHAマイトジェンで観察されたものよりも大きかった。刺激されていない細胞と比較して、ΔgD-2ワクチンに対するサイトカイン産生CD8 T細胞応答の有意でない増加もあった(
図5E~G)。
【0075】
低用量ΔgD-2とrgD-2の組み合わせにより、付加的な保護が提供される
γgD-2とrgD-2/アラム-MPLとの組合せが有益であるか、または拮抗的であるかを決定するために、マウスに、完全には防御しない用量のΔgD-2(5×10
4pfu/マウス)でscにてワクチン接種した。5μgのgD-2-アラム/MPL、または両方のワクチンの組み合わせを、反対側または同じ側腹部に送達した。潜在的な有益な効果を強調するために、効率の低いワクチン接種経路を使用した。両方の組み合わせは、いずれかのワクチン単独と比較して、総HSV特異的抗体応答を大幅に増加させた(
図6A)。これらの組み合わせは、rgD-2/アラム-MPLまたはΔgD-2の投与で観察されたそれぞれ20%および60%の保護(
図6D)と比較して、rgD-2/アラム-MPLに対するnAb応答(
図6B)またはΔgD-2に対するADCC応答(
図6C)に対して相加効果または拮抗効果を示さず、HSV-2でのLD90の10倍量(SD90)の皮膚攻撃に対して100%の保護をもたらした。組み合わせを反対側または同じ側腹部に投与しても違いはなかった。
【0076】
議論
主にgDを標的とする中和抗体応答を誘発するように設計されたワクチンを用いた有望な前臨床データにもかかわらず、HSVワクチン候補を用いた臨床研究は期待外れであることが証明された。ΔgD-2を用いた前臨床研究は、中和抗体への依存に挑戦し、ΔgD-2の105(またはそれ以上の)pfuによる皮下ワクチン接種が、HSV-1またはHSV-2の臨床分離株による致死的な皮膚、膣または眼の攻撃に対して再現性よく完全な保護を提供することを実証した(Petro, C., et al., eLife 2015; Petro, C. D., et al., JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5; Ramsey, N. L. M., et al., J. Virol. 2020)。受動伝達研究で証明されているように、保護は、中和AbsではなくADCCによって媒介される。rgD-2/アラム-MPLワクチンを接種したマウスではなくΔgD-2接種マウスからの免疫血清は、ナイーブな野生型を完全に保護したが、FcγRIVノックアウトマウスを致死攻撃から完全には保護しなかった(Petro, C., et al, eLife 2015; Petro, C. D., et al., JCI Insight 2016, 1, 1-15; Burn, C., et al., Journal of Infectious Diseases 2017, 1-5; Kao, C. M., et al., Journal of Infectious Diseases 2019, 42, 47-10; Burn Aschner, C., et al, npj Vaccines 2020, 1-33)。
【0077】
今回の研究は、マウスにおける中和応答と比較して、ADCCが免疫防御のより予測的な相関を提供するというさらなる証拠を提供する。dl5-29の投与量および送達経路を増加させることによって観察された保護の増加は、ADCCの有意な増加と関連していたが、中和応答とは関連していなかった。さらに、SD90での10xLD90チャレンジに対して100%の防御を提供しなかったΔgD-2によるワクチン接種の唯一の用量および経路、すなわち104pfuによるsc経路免疫は、2.8倍の(FcγRIV)活性化という平均ADCC応答を誘発した。ワクチンの投与量や送達経路に関係なく、FcγRIV倍増が4.5を超える96匹のマウスのうち3匹のみが、高用量致死攻撃に屈した。
【0078】
ワクチン接種のimおよびid経路は両方とも、sc経路と比較して有意に高い総応答および/またはADCC応答を誘導した。imおよびidがscよりも免疫原性が高いという観察結果は、他のワクチンを使用した研究と矛盾しないが、投与経路とAb機能(ADCCと中和)の間の関連性はこれまでに説明されていなかった。imまたはid経路による免疫原性の改善は、より長い抗原保持、真皮に存在する抗原提示細胞への差別的曝露、および/またはリンパ排出へのより大きなアクセスを映し出すことができた(Wahl, M., et al., Scand. J. Infect. Dis. 1987, 19, 617-621; Bryan, J. P., et al., Clin. Infect. Dis. 1992, 14, 697-707; Rahman, F., et al., Hepatology 2000, 31, 521-527; Belshe, R. B., et al., N Engl J Med 2004, 351, 2286-2294; Van Damme, P., et al., Vaccine 2009, 27, 454-459)。例えば、三価不活化インフルエンザワクチンの筋肉内投与は、高齢者の皮下ワクチン接種よりも高い抗体応答をもたらした(Gillet, Y., et al., BMC Med 2009, 7, 16)。しかしながら、同様のAbおよびT細胞応答が、弱毒化された麻疹、おたふくかぜ、および風疹ワクチンのscまたはim投与で報告された(Laurent, P. E., et al, Vaccine 2010, 28, 5850-5856)。皮内経路を介して一貫した用量を送達することは技術的に困難であるにもかかわらず、皮内狂犬病ワクチン接種は、1992年の世界保健機関の勧告以来、標準となっている(Dubois, B., et al, Journal of Leukocyte Biology 1999, 66, 224-230)。皮内ワクチン接種は、より強力な樹状細胞媒介性応答を活性化すると推定されるため、必要な抗原投与量はより少なくなる(Peng, S. L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002, 99, 5545-5550)。しかしながら、dl5-29またはΔgD-2の任意の用量においてidまたはim免疫経路を比較したところ、ADCC応答またはワクチン防御に有意差を我々は観察せず、id経路がこれらのワクチンに用量の利点を提供しないことが示唆された。しかしながら、id経路での投与により、サブユニットワクチンに対する総HSV特異的Ab応答の統計的に有意な増加が観察され、そのことが中和力価とワクチン保護の有意でない増加を生じさせたことを我々は観察した。
【0079】
用量および送達経路に加えて、gDサブユニットワクチンに対する排他的中和応答、非中和的でFcγRにより媒介されるγgD-2に対する応答、ならびにdl5-29によって誘発される中和応答および非中和応答の両方によって明らかなように、ワクチン組成物もまた免疫原性に影響する。ΔgD-2免疫後に中和抗体が存在しないことは、マウスにnAbsの主要な標的が存在しないことを反映している可能性がある。他の研究において、dl5-29免疫血清からgD特異的Abを枯渇させると、ADCCの力価ではなく中和が大幅に減少することを我々は見出し、gDがADCC応答の標的ではないことが示された(Burn Aschner and Herold mspt. submitted)。mFcγRIVに対して最も強い親和性を持ち、マウスのADCCに関連する、IgG2へのIgGサブクラスの切り替えには、抗原提示細胞、T細胞、およびB細胞間の胚中心内での相互作用が必要である(Sattentau, Q, et al, Nat Rev Micro 2008, 6, 815-826)。強力なADCC応答の生成におけるT細胞の要件と矛盾せずに、プライムおよびブーストワクチン接種後のCD4およびCD8 T細胞の強力な活性化を我々は記録したが、gD-2-アラム/MPLはほとんどT細胞の活性化を誘発しなかった。rgD-2/アラム-MPLワクチンを接種したマウスではなくΔgD-2接種マウスから採取したメモリーT細胞を不活化ウイルスで刺激すると、IFN-γ、TNF、およびIL-2が産生され、これはCD4+T細胞に関して特に強力であった。これらの違いは、活発なT細胞応答がADCC応答の生成に寄与するという考えを支持する。
【0080】
アジュバント添加rgD-2と低用量のγgD-2とを同じまたは反対側の側腹部に同時に送達した組み合わせは、いずれのワクチンの免疫原性にも干渉せず、rgD-2-アラム/MPL単独よりも防御的であった。これは、既存のgD中和AbがΔgD-2の免疫原性に干渉しないことを示した重複感染マウス研究と矛盾しない。HSV-1血清反応陽性マウスにΔgD-2をワクチン接種すると、ADCC(中和反応ではない)Ab応答が増加し、その後マウスが致死量のHSV-2で攻撃された場合、完全な保護が得られた(Burn Aschner, C., et al, npj Vaccines 2020, 1-33)。したがって、gDに対するnAbsだけではマウス(またはこれまでのところヒト)を保護するには不十分であるが、両方のタイプの応答の組み合わせが有益である可能性がある。理論に拘束されるわけではないが、nAbsによって媒介される不完全な保護の1つの理由は、HSVが細胞から細胞へ直接広がることによって中和を回避する能力であるかもしれない。しかしながら、ΔgD-2と同時に組換えgDタンパク質を送達することは、gDをウイルスエンベロープ中に存在させることとは異なることに注意することが重要である。他の研究において、エンベロープgDが、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14としても知られるヘルペスウイルスエントリメディエーター(HVEM)との相互作用を介して、IgG2サブクラススイッチされたAbsの生成を妨げることを我々は見出した(Burn Aschner および Herold、mspt under review)。このことが、今回の研究で示されているように、dl5-29によって生成されるADCCのレベルがより低いこと、ならびに亜致死感染に応答して生成されるレベルが低いことに寄与している可能性が高い(Kao, C. M., et al, Journal of Infectious Diseases 2019, 42, 47-10; Burn Aschner, C., et al, npj Vaccines 2020, 1-33)。
【0081】
まとめると、今回の研究は、ADCCが免疫防御の重要な関連事項であるというさらなる証拠を提供する。我々は当初、3つすべてのワクチンに関して皮内送達経路がより免疫原性であることがわかると仮定したが、このことはgDタンパク質サブユニットワクチンでのみ観察された。ΔgD-2およびdl5-29を用いると、im経路とid経路の両方が同様の抗体応答と保護を提供した。全体として、ΔgD-2は、最高のADCC応答ならびに致死的なチャレンジと潜伏に対する最も強力な防御を誘導した。
【0082】
組成物、方法および物品は、代替的に、本明細書に開示される任意の適切な材料、工程または構成要素を含む、からなる、あるいは本質的にそれらからなることができる。組成物、方法および物品は、組成物、方法および物品の機能または目的の達成に不必要な材料(種)、工程または成分を回避する、あるいは実質的にそれらがないように、付加的にあるいは代替的に処方されうる。
【0083】
「第1」、「第2」などの用語は、順序、量、または重要性を示すものではなく、ある要素を別の要素と区別するために使用される。「a」および「an」および「the」という用語は、量の限定を意味するものではなく、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。「または」は、特に明記されていない限り、「および/または」を意味する。本明細書全体にわたる「いくつかの実施形態」、「一の実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の要素が、本明細書に説明される少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態に存在する場合も存在しない場合もあるということを意味する。さらに、説明した要素は、さまざまな実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができることを理解されるべきである。「それらの組み合わせ」は自由であり、列挙された構成要素または特性のうちの少なくとも1つを、場合により列挙されていない類似または同等の構成要素または特性と共に含む任意の組み合わせを含む。
【0084】
本明細書に別段の定めがない限り、すべての試験基準は、本出願の出願日時点で有効な最近の基準であり、優先権が主張されている場合は、試験基準が記載されている最先の優先権出願の出願日である。
【0085】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本願が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。引用されたすべての特許、特許出願、およびその他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかし、本出願の用語が組み込まれた参考文献の用語と矛盾または矛盾する場合、本願の用語が、組み込まれた参考文献の矛盾する用語よりも優先される。
【0086】
特定の実施形態について説明してきたが、現在予見できないまたは予見できない可能性のある代替物、修正物、変形物、改良物、および実質的な等価物が出願人または当業者に対して生じる可能性がある。したがって、提出され、補正されるかもしれない添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改良、および実質的な均等物を包含することを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】