(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】生物試料採取装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
A61B10/02 130
A61B10/02 300Z
A61B10/02 300A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573288
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 US2021034280
(87)【国際公開番号】W WO2021242878
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】マーコウィッツ,サンフォード
(72)【発明者】
【氏名】チャク,アミタブ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】アクログ,リーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤズベック,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブーティレット,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デグズマン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ワートマン,デイビッド
(57)【要約】
患者体内の好酸球白血球を含む細胞試料を採取するための方法が提供される。当該方法は、第1の軸方向端部および膨張可能な第2の軸方向端部を有する採取部を含む装置を、食道において好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis、EoE)に関連する位置に進ませることを含む。方法は、その後、第2の軸方向端部を、第1の軸方向端部内の折り畳み位置から、第1の軸方向端部の外の展開位置に、第1の軸方向端部に対して軸方向に移動させることを含む。第2の軸方向端部が展開位置に置かれると、第2の軸方向端部がEoEに関連する位置と係合して細胞の試料を採取することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を採取するための方法であって、
第1の軸方向端部および第2の軸方向端部を有する採取部を含む装置を、食道において好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis、EoE)に関連する位置に、位置させるステップと、
前記第2の軸方向端部を、前記第1の軸方向端部内の折り畳み位置から、展開位置に、前記第1の軸方向端部に対して軸方向に移動させるステップと、
前記展開位置において前記第1の軸方向端部によって前記試料を採取するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
採取した細胞を保護するように、前記第2の軸方向端部を、前記展開位置から前記折り畳み位置に、前記第1の軸方向端部に対して軸方向に移動させるステップ
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記採取した細胞は、好酸球白血球(eosinophil white blood cells)を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の軸方向端部を前記折り畳み位置から前記展開位置に軸方向に移動させるステップは、
前記第2の軸方向端部を凹形状からに凸形状に変化させるステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の軸方向端部を前記展開位置から前記折り畳み位置に軸方向に移動させるステップは、
前記第2の軸方向端部を凸形状からに凹形状に変化させるステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の軸方向端部を前記展開位置から前記折り畳み位置に軸方向に移動させるステップは、
前記第2の軸方向端部が前記展開状態にあるときに、前記第2の軸方向端部の外面を径方向に外側へ向かわせ、前記第2の軸方向端部が前記折り畳みにあるときに、前記第2の軸方向端部の前記外面を径方向に内側へ向かわせるステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記装置の前記採取部を前記食道に移動させるステップは、
前記採取部を飲み込むステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記好酸球白血球を含む前記試料を採取するように設計された複数の組織採取突起を有する前記第2の軸方向端部を提供するステップ
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記装置を前記食道から移動させるステップは、
前記採取部の前記第2の端部が採取部位と異なる領域で食道に係合するのを防ぐステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の軸方向端部を前記折り畳み位置から前記展開位置に軸方向に移動させるステップは、
前記第2の軸方向端部に加圧空気を与えるステップ
を含み、
前記第2の軸方向端部を前記展開位置から前記折り畳み位置に軸方向に移動させるステップは、
前記採取部が真空になるようにするステップ
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記好酸球白血球を含む前記試料に対して、病理解析、診断解析、および細胞解析の少なくとも1つを行うステップ
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
成人に対して大直径を有する第2の軸方向端部を選択し、小児(pediatrics)または少年(adolescents)に対して小直径を有する第2の軸方向端部を選択するステップ
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者の前記食道から前記装置を取り外すステップ
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
好酸球性食道炎(EoE)に関連する細胞を採取するための装置であって、
食道に沿ってEoEに関連する部位まで進んで当該部位と係合できるようなサイズを有する長手方向に延びた本体と、
中空の内部を有し、流体を前記本体に導入できるように設計された第1の軸方向端部と、
第2の軸方向端部であって、前記第1の軸方向端部と連結することによって、前記第2の軸方向端部が折り畳み状態にあるときに、前記第1の軸方向端部の前記中空の内部に位置し、第1の軸方向端部を通して導入される流体の存在によって前記第2の軸方向端部が膨張状態にあるときに、第1の軸方向端部の前記内部から軸方向に外側へ延びて前記EoE部位から細胞を採取する前記第2の軸方向端部と、
を備えた、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2020年5月27日に出願された米国仮特許出願第63/030,547号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
<政府基金>
本発明は、認可(Grand)Nos.P50CA150964、U01CA152756、およびU54CA163060の米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)のもとでの政府基金援助(Government funding support)によって達成されたものである。
【0003】
本発明は、生物試料の採取に適した装置に関する。具体的には、本発明は、特定の診断のために食道内の試料を特に採取するように設計された装置に関する。
【背景技術】
【0004】
一般的には、好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis、EoE)を診断するために、医師は上部内視鏡検査を行うことができる。従来の内視鏡検査では、内視鏡を口から挿入できるように、患者を鎮静および/または麻酔することができる。内視鏡を使用して、食道、胃、および小腸の組織損傷、炎症、および/または食道壁の肥厚を視覚的に検査することができる。内視鏡検査中に食道が正常に見えても、患者はEoEを持っている可能性がある。場合によっては、医師は分析のために小さな組織試料(例えば、生検)を採取してもよい。分析中、EoEの指標である特定値よりも高い数がカウントされることによって、試料に存在する好酸球の数がカウントされる。
【発明の概要】
【0005】
生物試料の採取には改善のニーズがある。本発明は、他の望ましい特性を有することに加えて、このニーズに対処するためのさらなる解決策を対象としている。
【0006】
本発明の例示的な実施例によれば、患者における好酸球白血球(eosinophil white blood cells)を含む試料を採取するための装置が提供される。当該装置は、管状部材に取り付けられた採取部を含み、採取部および管状部材は、患者に飲み込まれるのに十分なサイズおよび形状を有する。採取部は、第1の軸方向端部と、採取の折り畳み位置と展開位置から作動するように設計された第2の軸方向端部を有する。第2の軸方向端部は、第1の軸方向端部に軸方向に延び、折り畳み位置にあるときに凹形状を有する。
【0007】
本発明の態様によれば、第2の軸方向端部は、第2の軸方向端部が展開位置にある場合、径方向に外側へ面する外面を有し、第2の軸方向端部が折り畳み位置にある場合、当該外面は径方向に内側へ面する。第2の軸方向端部は、好酸球白血球を含む試料を採取するための複数の組織採取突起を含んでもよい。少なくとも1つの組織採取突起は、V字形状を有してもよい。組織採取突起の少なくとも1つは、第1の側部および第2の側部を有してもよい。第2の軸方向端部が展開位置内にある場合、第1の側部および第2の側部は、その交差点から互いに角度をなして延びる。第2の軸方向端部が展開位置にあるとき、第1の側部および第2の側部は、交差点から第1の軸方向端部へ延びる。円周方向に延びるリブは、隣接する組織採取突起の間で延びてもよい。複数の組織採取突起は、少なくとも1つの、円周方向に延びるリブを含んでもよい。複数の組織採取突起は、少なくとも1つの、径方向に延びる円筒形状の突起を含んでもよい。複数の組織採取突起は、少なくとも1つの、双方向湾曲形状を有する突起を含んでもよい。複数の組織採取突起は、少なくとも1つの、X字形状の突起を含んでもよい。
【0008】
本発明の態様によれば、第1の軸方向端部および第2の軸方向端部は1つの部品として一体的に形成される。第1の軸方向端部および第2の軸方向端部は円周方向に延びるヒンジで連結可能である。第2の軸方向端部が折り畳み位置と展開位置との間で移動するとき、第2の軸方向端部は第1の軸方向端部に対して軸方向に移動することができる。第2の軸方向端部は、好酸球白血球を含む試料を採取するのに十分なサイズに展開(拡張)することができる。
【0009】
本発明の例示的な実施例によれば、患者における好酸球白血球を含む試料を採取するための方法が提供される。当該方法は、第1の軸方向端部および第2の軸方向端部を有する採取部を含む装置を、食道において好酸球性食道炎(EoE)に関連する位置に、位置させるステップと、第2の軸方向端部を、第1の軸方向端部内の折り畳み位置から、展開位置に、第1の軸方向端部に対して軸方向に移動させるステップと、展開位置において第1の軸方向端部によって、好酸球白血球を含む試料を採取するステップと、採取した細胞を保護するように、第2の軸方向端部を、展開位置から折り畳み位置に、第1の軸方向端部に対して軸方向に移動させるステップと、を含む。
【0010】
本発明の態様によれば、第2の軸方向端部を折り畳み位置から展開位置に軸方向に移動させるステップは、第2の軸方向端部を凹形状からに凸形状に変化させるステップを含む。第2の軸方向端部を展開位置から折り畳み位置に軸方向に移動させるステップは、第2の軸方向端部を凸形状からに凹形状に変化させるステップを含む。第2の軸方向端部を展開位置から折り畳み位置に軸方向に移動させるステップは、第2の軸方向端部が展開状態にあるときに、第2の軸方向端部の外面を径方向に外側へ向かわせ、第2の軸方向端部が折り畳みにあるときに、第2の軸方向端部の外面を径方向に内側へ向かわせるステップを含む。装置の採取部を食道に移動させるステップは、採取部を飲み込むステップを含む。方法は、好酸球白血球を含む試料を採取するように設計された複数の組織採取突起を有する第2の軸方向端部を提供するステップをさらに含んでもよい。装置を食道から移動させるステップは、採取部の第2の端部が採取部位と異なる領域で食道に係合するのを防ぐステップを含む。
【0011】
本発明の態様によれば、第2の軸方向端部を折り畳み位置から展開位置に軸方向に移動させるステップは、第2の軸方向端部に加圧空気を与えるステップを含み、第2の軸方向端部を展開位置から折り畳み位置に軸方向に移動させるステップは、採取部が真空になるようにするステップを含む。方法は、好酸球白血球を含む試料に対して、病理解析、診断解析、および細胞解析の少なくとも1つを行うステップをさらに含んでもよい。方法は、成人に対して大直径を有する第2の軸方向端部を選択し、小児(pediatrics)または少年(adolescents)に対して小直径を有する第2の軸方向端部を選択するステップをさらに含んでもよい。方法は、患者の食道から装置を取り外すステップをさらに含んでもよい。
【0012】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に基づいて構成された生物試料採取装置の概略絵画図
【
図2】折り畳み位置にあるように示された、
図1の採取装置の概略絵画図
【
図4】
図1の採取装置の突起または毛(bristle)の拡大平面図
【
図6】採取装置のスタイレットおよび接続部を示す、採取装置の概略絵画図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の例示的な実施形態は、生物試料の採取に適した装置に関する。この装置は、展開可能なテクスチャ面の組み合わせを使用して、様々な種類および量の生物試料を採取することができる。いくつかの実施例では、採取装置は、米国特許第10,660,621号明細書および米国出願公開第16/610,115号明細書で開示された装置であってもよく、当該両方の明細書とも参照によりその全体が本開示に組み込まれる。本開示の装置は、特定の種類の病状および/またはその後の診断のために、特定の種類の生物試料を対象とするように設計可能である。例えば、デバイスは、好酸球性食道炎(EoE)または関連疾患の診断のために、標的細胞の採取に使用可能である。EoEは、食道のアレルギー性炎症性疾患であり、白血球の一種(好酸球)が食道に蓄積することで発生する。好酸球の量が増えると、食道に損傷や炎症を引き起こし、食事が困難になったり、不快になったりする可能性があり、成長不良、慢性的な痛み、および/または嚥下困難を引き起こす可能性がある。
【0015】
全体を通して同様の部分が同様の参照番号で示される
図1から
図6は、本発明に基づく、生物学的細胞の採取のために改善された操作の例示的な実施形態を示す。本発明について図面に示された例示的な実施形態を参照して説明されるが、多くの代替的な形態によって本発明を具体化することができることを理解されたい。当業者は、本発明の趣旨および範囲にしたがった異なる手段で、要素または材料のサイズ、形状、または種類などの、開示される実施例のパラメータを追加的に変更することができる。
【0016】
図1から
図3を参照すると、いくつかの実施例では、EoE採取(EoEサンプリング)は、例示的な採取装置10を使用して実行され得る。一実施形態では、採取装置10は、食道に沿ってEoE採取のための部位まで進むのに、かつ、当該部位において細胞のサンプリング/採取のために当該部位に十分に係合するのに、十分小さいサイズを有するように設計され得る。一実施形態では、採取装置10は、略中空の長手方向に延びた本体、または採取部12を含んでもよい。採取部12は、第1または近位の軸方向端部14を有してもよく、当該第1または近位の軸方向端部14は、第2または遠位の軸方向端部16に接続されている。遠位端部16は、近位軸方向端部14に接続された第1の軸方向端部22を有してもよい。第1の端部22は、接着剤、溶接、機械的接続、ボンディング、またはそれらの組み合わせを使用することなどの、任意の所望方法で近位端部14に接続され得る。いくつかの実施例では、第1の軸方向端部22は、近位軸方向端部14の肩部24に係合してもよい。よって、採取部12は滑らかな外面を有することができる。遠位軸方向端部16と近位端部14との接続方法は任意である。近位軸方向端部14および遠位軸方向端部16は、シリコーンまたはポリウレタンなどの柔軟なポリマで形成され得る。いくつかの実施例では、遠位軸方向端部16は、近位軸方向端部14よりも低い硬さ(デュロメータ)を有できる。遠位軸方向端部16は、5~90ショアAのデュロメータを有してもよい。遠位軸方向端部16のデュロメータは、好ましくは、20~70ショアAであり、より具体的には、約30ショアAである。
【0017】
いくつかの実施例では、遠位軸方向端部16は展開(拡張)および縮小できる。いくつかの実施例では、第1または近位軸方向端部14は、比較的に硬い。よって、近位端部14は固定された半径範囲を有することができる。第1の軸方向端部14および第2の軸方向端部16は、任意の所望方法で、共に接続された別個の部品として形成されてもよく、一つの部品として一体的に形成されてもよい。近位端部14は円柱形状を有するように図示されているが、近位端部は任意の所望形状を有してもよい。
【0018】
いくつかの実施例では、近位軸方向端部14は、
図6に関してより詳細に説明されるように、カテーテルなどの支持部材20に接続可能である。支持部材20は、採取部12の内部と流体連通する管状部材であってもよい。近位軸方向端部14は、空気などの流体を支持部材20から遠位軸方向端部16に導くことができる。いくつかの実施例において、支持部材20は、支持部材が真空になるようにするときに折り畳まれるのに抵抗することができ、採取部位から採取装置10を回収する間に伸ばされるのに抵抗することができる。
【0019】
いくつかの実施例では、採取部12の第2または遠位の端部16は、(
図1に示すような)展開位置または膨張位置、および、(
図2、
図3に示すような)折り畳み位置または収縮位置を有してもよい。
図1に示されている展開位置は、遠位端部16の多くの展開位置の1つであってもよい。考えられることに、遠位端部16は、
図1に示された状態よりも大きく膨張でき、よって、遠位端部は、熱気球に似た形状に見えるように、より球状の形状を得ることができる。いくつかの実施例では、遠位端部16は、展開位置または膨張位置にあるとき、
図1に示された凸形状を有してもよい。遠位端部16は、展開位置にあるとき、径方向に外側へ、近位端部14よりも長い距離で延びてみてもよい。
【0020】
いくつかの実施例では、遠位軸方向端部16は、特定の生物試料の採取および/または特定の場所での採取のために変更可能である。いくつかの実施形態では、遠位軸方向端部16は、食道、胃、および小腸におおいて好酸球白血球を含む試料を採取するように、長手方向により多く展開するように設計され得る。例えば、遠位軸方向端部16は、近位端部14よりも長手方向に長く展開できる。好ましくは、遠位軸方向端部16の比較的長い長さは、EoEを診断するために、試料内の好酸球白血球を正確にカウントするのに十分な量の試料を採取できる長さである。いくつかの実施例では、遠位軸方向端部16は、特定の標的位置および/または対象において試料を採取するためのサイズおよび大きさを有してもよい。例えば、遠位軸方向端部16は、成人に対して大直径に展開するように、および、小児(pediatrics)または少年(adolescents)に対して小直径に展開するように設計され得る。同様に、遠位軸方向端部16の異なる直径サイズは、異なる場所で試料を採取するのに使用できる。例えば、胃内の試料採取は、食道内の採取の試料とは異なる直径を有する遠位軸方向端部16を使用してもよい。別の例では、遠位軸方向端部16は、様々な年齢、体重、身長などの患者のために、特定の長さ寸法および形状を有してもよい。
【0021】
いくつかの実施例では、遠位端部16は、第1または近位の軸方向端部14内に延びることができ、折り畳み位置または収縮位置にあるときに、
図2および
図3に示された凹形状を有してもよい。遠位端部16は、折り畳み位置にあるときに反転され得る。遠位端部16は、折り畳み位置または収縮位置にあるとき、近位端部14の内部に軸方向に延びることができる。よって、遠位端部16は、収縮位置と膨張位置との間を移動するとき、近位端部14に対して軸方向または長手方向に移動することができる。いくつかの実施例ではでは、遠位端部16のデュロメータ硬度が比較的低いため、遠位端部は、近位端部14の内部に軸方向に延び、折り畳み位置で凹型の形状を有することができる。遠位端部16は、任意の所望方法で折り畳み位置または収縮位置に付勢され得る。
【0022】
いくつかの実施例において、近位端部14は、支持部20を通して近位端部が真空になるようにするときに近位端部が崩壊しないように、比較的高いデュロメータを有してもよい。遠位端部16が収縮位置と膨張位置との間において移動されても、近位端部14の形状は変化しない。近位端部14は、遠位端部16が収縮位置と膨張位置との間において移動するとき、径方向には移動しない。
【0023】
いくつかの実施例では、デュロメータ、または、近位端部14および遠位端部16は、特定の生物試料採取の種類および/または特定の場所での採取のために変更可能である。いくつかの実施例では、デュロメータ、および/または、近位端部14および遠位端部16は、食道、胃、および小腸の少なくとも1つに位置する、好酸球白血球を含む試料の採取のために具体的に選択可能である。例えば、遠位端部16は、遠位端部16がその展開形状を十分に維持し、採取中に採取部位に十分に係合できるように十分なデュロメータレベルを有してもよい。言い換えると、遠位端部16のデュロメータは、遠位端部16が患者の組織壁と相互作用するときに折り畳まれないように十分に高いデュロメータを有することができる。その結果、遠位端部16上の突起または毛40は、EoEを試験するのに適切な程度の、好酸球白血球を含む試料物質を採取することができる。この例では、高レベルのデュロメータの使用について説明するが、遠位端部16の形状、その上の突起または毛40、および採取位置に応じて、デュロメータのレベルは、EoE試験のための好酸球白血球などの標的物質を有する試料物質を最も効率的に採取するために、適切なレベルに高くまたは低くすることができる。
【0024】
いくつかの実施例では、遠位端部16は、遠位部分が展開位置にあるときに、組織を採取するための外面32を有してもよい。外面32は、遠位端部16が展開位置にあるときに径方向に外側へ面してもよく、遠位端部が折り畳み位置または反転位置にあるときに、径方向に内側へ面してもよい。考えられることに、遠位端部16の外面32は、組織を採取するように任意の所望構造を有することができる。いくつかの実施例では、遠位端部16の外面32は、組織を採取するように複数の突起または毛40を有してもよい。遠位端部16は、所望の数の突起または毛40を有してもよい。
【0025】
いくつかの実施例では、突起または毛40はV字形状(
図4)を有してもよい。それぞれの突起40は、交差点48から延びる第1の側部42および第2の側部44を有してもよい。第1の側部42および第2の側部44は、(
図1に示すように)遠位端部16が展開位置にあるとき、交差点48から略近位方向に延びる。第1の側部42および第2の側部44は、(
図2および
図3に示されるように)遠位端部16が折り畳み位置または反転位置にあるとき、略遠位方向に延びてもよい。いくつかの実施例では、第1の側部42および第2の側部44は、採取した生物試料を受け取るためのカップ50を画定してもよい。カップ50は、遠位部分16が展開位置にあるときに近位方向に面し、遠位部分が折り畳み位置にあるときに遠位方向に面してもよい。
【0026】
いくつかの実施例では、第1の側部42および第2の側部44は、互いに対して約90°の角度で延びてもよい。考えられることに、いくつかの実施例では、第1の側部42および第2の側部44は、互いに対して任意の所望角度で延びてもよい。当該所望角度は、採取すべき生物試料の種類に基づいて決定されてもよい。代替的に、突起40は、カップ形状または半円形状を有してもよい。
【0027】
いくつかの実施例では、突出または毛40のそれぞれは、遠位部分16が展開位置にあるときに、(
図5に示すように)外面32から径方向に外側へ延びる側壁54および側壁56を有してもよい。側壁56は、遠位部分が展開位置にあるときに近位方向を面して、カップ50の内側を形成する。側壁54は、遠位端部が展開位置にあるときに遠位方向に面して、カップ50の外壁を形成する。側壁54および側壁56は、外面32から、突起40の径方向の外面58まで延びている。側壁56は、遠位端部16が展開位置と折り畳み位置との間の非膨張位置にあるときに、外面32と突出40の外面58とに対して略垂直に延びている。側壁54は、遠位端部16が非膨張位置にあるときに、側壁54が外面32から突起40の径方向に外面58へ延びることができるので、側壁56に向かって先細りになることができる。
【0028】
いくつかの実施例では、遠位端部16は、(
図1に示されるように)遠位端部16の遠位部分から延びる複数の突起または毛60を含んでもよい。突起60は、突起40と同じく略V字形を有してもよく、突起40よりも小さくなってもよい。いくつかの実施例では、突出60は、第1の側部62および第2の側部64を有してもよく、第1の側部62および第2の側部64は、突出40の第1の側部42および第2の側部44よりも短い長さを有する。
【0029】
いくつかの実施例では、突出または毛40、60は、(
図1に示すように)円周方向に延びて列になるように配置され得る。考えられることに、それぞれの列は6つの突出40または60を有してもよい。考えられることに、それぞれの列は、任意の所望の数の突起40または60を有してもよい。突出40、60のそれぞれは、隣接する列の突出から円周方向に離間していてもよい。リブ66は、それぞれの列において隣接する突起40、60の間で円周方向に延びてもよい。リブ66は、交差点48の反対側の側壁54、56の端部の間において延びてもよい。
【0030】
いくつかの実施例では、突起または毛40、60は、特定の種類の生物試料を採取するように適合されるように、特定のサイズを有したり、特定の形状を有したり、特定の材料から形成されたりしてもよい。例えば、突出または毛40、60は、食道、胃、および小腸の少なくとも1つで好酸球白血球を採取するために、より大きな突出および/またはより高いレベルのデュロメータで設計され得る。同様に、突出または毛40、60は、食道、胃、および小腸で特に好酸球血球を採取するために、異なる形状で設計され得る。いくつかの実施例では、突出または毛40、60は、かき寄せ工程(scraping process)またはかき出し工程(swabbing process)を使用して、生物試料を採取するように設計され得る。例えば、突起または毛40、60は、より大きく、より深く、または標的の生物試料(例えば、好酸球白血球)を得るために、粗く構成され得て、および/または硬い材料から構成され得る。
【0031】
図6を参照すると、いくつかの実施例では、カテーテル20は、カテーテル20に剛性を与えるスタイレット100を有してもよい。それによって、医師または操作者は、飲み込みやすくするように採取部12を患者の喉の奥に配置することができる。スタイレット100は、採取部12の第1または近位の軸方向端部14に隣接するところからカテーテル20を通って接続部102まで延びてもよい。いくつかの実施例では、接続部102は、カテーテル20と接続してもよく、接続部102によって、採取部12の遠位端部16を展開するように、カテーテルへ流体を導入することを可能にする。いくつかの実施例では、スタイレット100は、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone、PEEK)ポリマで作成される。しかしながら、スタイレットは、ステンレス鋼のガイドワイヤ、ポリマモノフィラメントの押出し、および/または、ステンレス鋼モノフィラメントのコアワイヤであってもよい。スタイレット100は、(
図3に示すように)採取部12から離間して丸みを帯びた柔軟な遠位端104を有してもよい。いくつかの実施例では、柔軟な遠位端104は、柔軟性を高めるための段階的な接触先端(グランドチップ、ground tip)であってもよい。遠位端104は、スタイレット100の最も柔軟な部分であってもよい。
【0032】
いくつかの実施例ではでは、(
図6に示すように)カテーテル20の近位端106は接続部102に接続してもよい。接続部102は、スタイレット100の近位端106に接続された第1の分岐110を有するY字形状の取付部(Y-fitting)であってもよい。いくつかの実施例では、スタイレット100の近位端106は、第1の分岐110を通って、第1の分岐を密封し閉じるキャップ112内に延びてもよい。近位端106は、エポキシでキャップ112および第1の分岐110に接続してもよく、キャップ112の近位端と同じ高さで切断され得る。エポキシは、キャップ112を第1の分岐110に接続してもよい。考えられることに、スタイレット100は、インサート成形などによってキャップ112に固定接続してもよい。そして、スタイレット100は、Y字形状の取付部102およびカテーテル20に挿入され、キャップによってY字形状の取付部に接続してもよい。その後、スタイレット100は、必要に応じて、カテーテル20およびY字形状の取付部102から取り外されてもよい。いくつかの実施例では、カテーテル20は、カテーテルからのスタイレット100の取り外しを促すように潤滑され得る。考えられることに、近位端106は、第1の分岐110に接続されたチューハイ-ボーストアダプタ(Tuohy-Borst adapter)を通って延びてもよく、ユーザは、チューハイ-ボーストアダプタを緩め、スタイレット100を取り外して、カテーテル20の剛性を低下させることができる。考えられることに、スタイレットがカテーテル20の外側に沿って延びてもよい。
【0033】
いくつかの実施例では、Y字形状の取付部102は、第1の分岐110に対して角度をなして延びる第2の分岐120を有してもよい。第2の分岐120は、第2の分岐を開閉するための活栓122を有してもよい。シリンジは、第2の分岐120に接続してもよい。それによって、空気などの流体をY字形状の取付部102およびカテーテル20に導入して採取部12の遠位端部16を展開させ、試料の採取後に真空になるようにして流体を除去して遠位端部16を折り畳むことができる。活栓122は、試料を取得する際にカテーテル20および採取部12内の流体を保持するために使用可能である。活栓122およびシリンジは、流体の注入を制御して、折り畳み位置と展開位置との間において遠位端部16を移動させるのに役立つ。
【0034】
いくつかの実施例では、ディスク126は、カテーテル20の近位端または接続部102の遠位端に接続してもよい。ディスク126は、接続部102が患者の口および/または喉に挿入されるのを防ぐために、カテーテル20から離れて径方向に延びてもよい。
【0035】
運用上、いくつかの実施例では、装置10は、好酸球性食道炎(EoE)などの様々な疾患の診断を支援するために使用可能である。EoEを診断するために、採取部12は、遠位端部16が折り畳み位置または収縮位置にある状態で、食道などの体管腔内の採取部位に移動され得る。いくつかの実施例では、採取部12は、患者に飲み込まれ得る。スタイレット100は、採取部の飲み込みを促すように、採取部12を患者の喉の奥に配置するように操作され得る。また、カテーテルに採取部12を取り付けて患者に挿管することも考えられる。
【0036】
いくつかの実施例では、遠位端部16は、例えば、支持部20を通して採取部12が真空になるようにすることによって、折り畳み位置または収縮位置に保持可能である。支持部20またはカテーテルは、患者の解剖学的構造内の採取部位を決定するための深さマーカを有してもよい。採取部12は、食道、胃、および/または小腸内で位置に移動でき、採取部12の遠位端部16は、適切な位置にあるときに展開できる。いくつかの実施例では、遠位端が正しい位置にあることを確認するために、ステップの任意の組み合わせが使用可能であり、例えば、マーカ、触覚フィードバック、透視ガイド、補助画像などの使用、またはそれらの組み合わせなどの使用が可能である。例えば、食道内に配置するために、遠位端部16は、胃の中に飲み込まれ、胃の中で裏返しにして展開し、食道胃接合部(esophagogastric junction、GEJ)に対して引っ張られてもよく、かき出すための食道の長さは、カテーテルの長さのマーカによって決定可能である。
【0037】
いくつかの実施例では、遠位端部16は、採取部12が採取部位にあるまたは採取部位の近くにあるときに、折り畳み位置から展開位置に移動され得る。Y字形状の取付部102に接続されたシリンジは、空気などの加圧流体を遠位端部16に与えて、遠位端部を折り畳み位置から展開位置に軸方向に移動させることができる。
【0038】
いくつかの実施例では、採取部12は、遠位端部16が展開位置にあるときに食道または体腔内で採取部位から生物試料を採取するように移動または回転可能であり、当該生物試料は、例えば、組織、細胞、タンパク質、RNA、DNA、体液、またはこれらの組み合わせである。採取部12は、特定の場所で特定の試料を採取するために移動可能である。例えば、食道、胃、小腸に好酸球白血球を含む試料を採取するために移動可能である。考えられることに、採取部12は近位方向にのみ移動され、展開した遠位端部16は生物試料を採取するように採取部位と係合する。支持部20またはカテーテルにある深さマーカは、装置を位置決めする際のガイドとして使用できる。生物試料の採取後、遠位端部16は展開位置から折り畳み位置または反転位置に移動可能である。遠位端部16は、Y字形状の取付部102に接続されたシリンジを有する採取部12が真空になるようにすることによって、展開位置から折り畳み位置に移動可能である。採取部12が体管腔から出ると、遠位端部16は体管腔に係合せず、採取した生物試料は、採取部位と異なる体管腔に沿った領域の組織によって汚染されるのが防がれる。採取装置10が患者から取り出されると、生物試料は洗浄によって回収され、および/または、採取部12または遠位端部16を支持部材20から切り離すことによって回収され、そして生物試料バイアルに入れられる。
【0039】
遠位端部16が支持部材20から取り除かれると、試料は更なる分析のために輸送可能である。いくつかの実施例では、採取された試料は、分析場所での試料の輸送および/または保管のために保存可能である。試料は、任意の方法の組み合わせを使用して保存可能である。例えば、試料は、保存液(例えば、メタノール、水など)中の容器(例えば、バイアル)内で保存され得て、試料は、冷却または冷凍、スライド内に置く/装着、またはそれらの組み合わせをされてもよい。一旦保存されると、試料は分析場所に送られる。採取された試料の分析には、任意の分析の組み合わせを受けてもよい。例えば、分析は、病理学的分析、スチュワード病理学、診断アッセイ、細胞分析、バイオメトリックアッセイなどの任意の組み合わせを含んでもよい。試料は、特定の種類の診断のために取得可能である。例えば、病理学者は生物試料を視覚的に検査し、好酸球の数を数えてEoEの可能性があるか否かを判断できる。いくつかの実施例では、分析はユーザによる分析とコンピュータによる分析との組み合わせによって実行可能である。例えば、ユーザは専用のソフトウェアまたは人工知能システムを使用して、ブラックボックス診断、目視検査、臨床現場即時検査(point of care diagnostics)、またはその他の分析を実行することができる。例えば、コンピュータ実装システムを使用して、生物試料を視覚的に検査し、好酸球の数を数え、当該数がEoEを示す閾値内にあるか否かを判断することができる。
【0040】
本明細書で使用される用語「含む」または「含んでいる」は、排他的ではなく包括的であると解釈されることを意図している。本明細書で使用される用語「例示的」、「実施例」、および「例」は、「例、実例、または例示として役立つ」ことを意味することを意図しており、他の構成と比べて好ましい構成または有利な構成を指すまたは指さないように解釈されるべきではない。本明細書で使用される場合、「約」、「一般的に」、および「略」という用語は、特性、パラメータ、サイズおよび寸法の変動など、主観的または客観的な値の範囲の上限および下限に存在し得る変動をカバーすることを意図している。非限定的な一例において、「約」、「一般的に」、および「略」という用語は、10パーセント以下でプラスする、または10パーセント以下でマイナスすることを意味する。非限定的な一例において、「約」、「一般的に」、および「略」という用語は、関連分野の当業者にとってそれに含まれると見なされるほど十分に近いことを意味する。本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、当業者によって理解されるように、作用、特性、属性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な範囲もしくは程度を指す。例えば、「実質的に」円形である物体は、物体が数学的に決定可能な限界まで完全に円であるか、または当業者によって認識もしくは理解されるようにほぼ円であることを意味する。絶対的な完全性から逸脱する正確な許容範囲は、特定の状況に依存する場合がある。しかし、一般的には、完成に近い状態は、完全なる完成が達成されまたは獲得される場合と同様の全体的結果が得られる。「実質的に」の使用は、当業者によって理解されるように、作用、特性、属性、状態、構造、項目、または結果について完全な欠如またはほぼ完全な欠如を指すために否定的な意味合いで使用される場合にも、同様に適用可能である。
【0041】
本発明の多数の変化例および代替例は、前述した説明を考慮して当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、単に例示として解釈されるべきであり、本発明を実行するための最良の形態を当業者に教示することを目的としている。構造の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく大幅に変更でき、添付の特許請求の範囲内に入るすべての変更の排他的使用が留保される。本明細書において、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を記述できるように記載されているが、本発明から離れることなく、実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることが考えられ、理解されるであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲および適用される法律規則によって必要とされる範囲にのみ限定されるように意図されている。
【0042】
また、理解されるべきことに、以下の特許請求の範囲は、本開示に記載された本発明のすべての一般的な特徴および特定の特徴と、用語の部分として用語の間にあると言える本発明の範囲のすべての記述とをカバーするものである。
【国際調査報告】