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特表2023-527566アルミニウム-ケイ素-鉄の鋳造合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】アルミニウム-ケイ素-鉄の鋳造合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
C22C21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573625
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021034577
(87)【国際公開番号】W WO2021247373
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/032,973
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317012374
【氏名又は名称】アルコア ユーエスエイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シンヤン
(57)【要約】
新しいアルミニウム鋳造(鋳物)合金が開示されている。新しいアルミニウム鋳造合金は、6.0~11.5重量%のケイ素、0.30~0.80重量%の鉄、任意で0.07~0.20重量%のXを含んでもよく、Xは、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群、および任意で100~500ppmのストロンチウムから選択され、残りはアルミニウムと不可避な不純物である。新しいアルミニウム鋳造合金は、複雑な形状に鋳造された高圧ダイカストであってもよい。新しいアルミニウム鋳造合金は、例えば、ヒートシンク/アンテナの用途に有用であり得る。
【選択図】 無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム鋳造合金であって、
6.0~11.5重量%のケイ素と、
0.30~0.80重量%の鉄と、
任意で0.07~0.20重量%のXを含み、Xは、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され、
任意で100~500ppmのストロンチウムを含み、
残りがアルミニウムと不可避な不純物である、アルミニウム鋳造合金。
【請求項2】
少なくとも7.0重量%のケイ素、または少なくとも8.0重量%のケイ素、または少なくとも9.0重量%のケイ素、または少なくとも9.5重量%のケイ素を含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項3】
11.0重量%以下のケイ素、または10.5重量%以下のケイ素を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項4】
少なくとも0.35重量%の鉄、または少なくとも0.40重量%の鉄、または少なくとも0.45重量%の鉄、または少なくとも0.50重量%の鉄を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項5】
0.75重量%以下の鉄、または0.70重量%以下の鉄、または0.65重量%以下の鉄を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項6】
前記アルミニウム鋳造合金がXを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項7】
0.07~0.18重量%のX、または0.07~0.15重量%のX、または0.07~0.12重量%のX、または0.07~0.10重量%のXを含む、請求項6に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項8】
前記アルミニウム鋳造合金が、マグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのすべてを実質的に含まず、0.07重量%未満のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項9】
0.05重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれ、または0.04重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれ、または0.03重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれ、または0.02重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを含む、請求項8に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項10】
前記アルミニウム鋳造合金がストロンチウムを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項11】
前記アルミニウム鋳造合金が、100ppm未満のストロンチウム、または50ppm以下のストロンチウム、または25ppm以下のストロンチウム、または10ppm以下のストロンチウムを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項12】
前記アルミニウム鋳造合金が、銅、マンガン、亜鉛、チタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムを実質的に含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項13】
0.10重量%未満の銅、または0.05重量%以下の銅、または0.03重量%以下の銅、または0.01重量%以下の銅を含む、請求項12に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項14】
0.04重量%以下のマンガン、または0.03重量%以下のマンガン、または0.02重量%以下のマンガンを含む、請求項12~13のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項15】
0.10重量%未満の亜鉛、または0.05重量%以下の亜鉛、または0.03重量%以下の亜鉛、または0.01重量%以下の亜鉛を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項16】
0.04重量%以下のチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムのそれぞれ、または0.03重量%以下のチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムのそれぞれ、または0.02重量%以下のチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムのそれぞれを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項17】
チタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムの前記累積量が、0.10重量%を超えない、またはチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムの前記累積量が、0.08重量%を超えない、またはチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムの前記累積量が、0.06重量%を超えない、請求項16に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のアルミニウム鋳造合金から作製された高圧ダイカスト製品。
【請求項19】
前記製品が、少なくとも65MPaの引張降伏強度および少なくとも2%の伸びを達成する、請求項18に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項20】
前記製品が、25℃の温度で少なくとも160W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも170W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも175W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも180W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも185W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも190W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも195W/m/℃またはそれ以上の熱伝導率を達成する、請求項18~19のいずれか一項に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項21】
前記製品が、IACSで少なくとも38%、またはIACSで少なくとも39%、またはIACSで少なくとも40%、またはIACSで少なくとも41%、またはIACSで少なくとも42%、またはIACSで少なくとも43%、またはIACSで少なくとも44%、またはIACSで少なくとも45%、またはACSで少なくとも46%、またはIACSで少なくとも47%、またはIACSで少なくとも48%の電気伝導率を実現する、請求項18~20のいずれか一項に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項22】
前記製品が、ヒートシンクまたはアンテナの形態である、請求項18~21のいずれか一項に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項23】
前記製品が、複雑な形状鋳造の形態である、請求項18~21のいずれか一項に記載の高圧ダイカスト製品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アルミニウム合金は、様々な用途で有用である。例えば、アルミニウム鋳造(鋳物)合金は、例えば、自動車や家電製品産業を含む多数の産業で使用されている。
【発明の概要】
【0002】
概して、本開示は、新しいアルミニウム鋳造(鋳物)合金および関連製品に関する。新しいアルミニウム鋳造合金は、概して、6.0~11.5重量%のケイ素、0.30~0.80重量%の鉄、任意に0.07~0.20重量%のXを含み(かつ一部の例ではこれらから成り、または実質的にそれらから成り)、Xは、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群、および任意に100~500ppmのストロンチウムから選択され、残りはアルミニウムと不可避な不純物である。新しいアルミニウム鋳造合金は、強度、熱伝導率、耐食性、流動性、およびダイはんだ付け抵抗のうちの二つ以上の改善された組み合わせなどの、特性の改善された組み合わせを実現してもよい。
【0003】
<i.組成物>
上述のように、新しいアルミニウム鋳造合金は概して6.0~11.5重量%のケイ素を含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも7.0重量%のケイ素を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも8.0重量%のケイ素を含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも8.5重量%のケイ素を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも9.0重量%のケイ素を含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも9.5重量%のケイ素を含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、11.0重量%以下のケイ素を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、10.5重量%以下のケイ素を含む。
【0004】
上述のように、新しいアルミニウム鋳造合金は概して0.30~0.80重量%の鉄を含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも0.35重量%の鉄を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも0.40重量%の鉄を含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも0.45重量%の鉄を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも0.50重量%の鉄を含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.75重量%以下の鉄を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.70重量%以下の鉄を含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.65重量%以下の鉄を含む。
【0005】
上述のように、新しいアルミニウム鋳造合金は、任意で0.07~0.20重量%のXを含んでもよく、Xは、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。群のX要素は、例えば、強化された強度を提供してもよい。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.07~0.18重量%のXを含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.07~0.15重量%のXを含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.07~0.12重量%のXを含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.07~0.10重量%のXを含む。
【0006】
他の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、マグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのすべてを実質的に含まず、0.07重量%未満のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを有する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.05重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.04重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.03重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、0.02重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを含む。
【0007】
上述のように、新しいアルミニウム鋳造合金は、例えば、100~500ppmのストロンチウム(Sr)などのストロンチウムを任意で含んでもよい。他の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、ストロンチウムを実質的に含まず、100ppm未満のストロンチウムを有する。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、50ppm以下のストロンチウムを含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25ppm以下のストロンチウムを含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、10ppm以下のストロンチウムを含む。
【0008】
新しいアルミニウム鋳造合金の残りは、概してアルミニウムと不可避な不純物である。これに関して、新しいアルミニウム鋳造合金は、概して、銅(Cu)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、およびバナジウム(V)のすべてを実質的に含まない。
【0009】
本明細書で使用される場合、「銅を実質的に含まない」とは、新しいアルミニウム合金が0.10重量%未満の銅を含むことを意味する。一つの実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.05重量%以下の銅を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.03重量%以下の銅を含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.01重量%以下の銅を含む。
【0010】
本明細書で使用される場合、「マンガンを実質的に含まない」とは、新しいアルミニウム合金が0.05重量%未満のマンガンを含むことを意味する。一つの実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.04重量%以下のマンガンを含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.03重量%以下のマンガンを含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.02重量%以下のマンガンを含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、「亜鉛を実質的に含まない」とは、新しいアルミニウム合金が0.10重量%未満の亜鉛を含むことを意味する。一つの実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.05重量%以下の亜鉛を含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.03重量%以下の亜鉛を含む。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.01重量%以下の亜鉛を含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、チタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムのいずれかを指す時、「実質的に含まない」とは、新しいアルミニウム合金がこれらの要素の0.04重量%以下を含むことを意味する。すなわち、新しいアルミニウム合金は、0.04重量%以下のチタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムのそれぞれを含む。一つの実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.03重量%以下のチタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムのそれぞれを含む。別の実施形態では、新しいアルミニウム合金は、0.02重量%以下のチタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムのそれぞれを含む。一つの実施形態では、チタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムの累積量は、0.10重量%を超えない。別の実施形態では、チタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムの累積量は、0.08重量%を超えない。さらに別の実施形態では、チタン、クロム、ニッケルおよびバナジウムの累積量は、0.06重量%を超えない。
【0013】
<ii.処理>
新しいアルミニウム鋳造合金は、任意の適切な鋳造方法を使用して鋳造されてもよい。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、高圧ダイカスト(HPDC)法を使用して形状鋳造される。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、形状鋳造品(例えば、複雑な形状鋳造品)内に形状鋳造される。一つの実施形態では、形状鋳造品はヒートシンクである。一つの実施形態では、形状鋳造品はアンテナの形態である。一つの実施形態では、形状鋳造品は、1.5~5.0mmの壁厚を有する。一つの実施形態では、形状鋳造品は、50~100mmの高さを有する。新しいアルミニウム鋳造合金は、鋳放し焼戻しを含む任意の適切な焼戻しで提供されてもよい。
【0014】
<iii.特性>
上述のように、新しいアルミニウム鋳造合金は、強度、熱伝導率、耐食性、流動性、およびダイはんだ付け抵抗のうちの少なくとも二つの改善された組み合わせなどの、特性の改善された組み合わせを実現してもよい。機械的特性は、ASTM E8およびB557(例えば、一方向凝固された時)に従い測定されてもよい。ダイはんだ付け抵抗は、合金を鋳造することによって決定されてもよい。
【0015】
一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも65MPaの引張降伏強度を達成する。一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも2%の伸びを達成する。
【0016】
一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも160W/m/℃の熱伝導率を達成する。熱伝導率は、ASTM E1461-13に従い得られた熱拡散率の結果、ASTM E1269-11(2018年)に従い得られた比熱容量の結果、およびASTM B311-17に従った密度の結果を用いたASTM E1461の方程式1を使用して測定されうる。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも170W/m/℃の熱伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも175W/m/℃の熱伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも180W/m/℃の熱伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも185W/m/℃の熱伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも190W/m/℃の熱伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、25℃の温度で少なくとも195W/m/℃以上の熱伝導率を達成する。
【0017】
一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACS(国際軟銅規格)で少なくとも38%の電気伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも39%の電気伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも40%の電気伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも41%の電気伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、少なくとも42%のIACSの電気伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも43%の電気伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも44%の電気伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも45%の電気伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも46%の電気伝導率を達成する。別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも47%の電気伝導率を達成する。さらに別の実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は、IACSで少なくとも48%またはそれ以上の電気伝導率を達成する。
【0018】
一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は耐食性である。本明細書で使用される場合、「耐食性」とは、新しいアルミニウム鋳造合金が、ASTM G110に従い試験された時、従来の合金A356と比較して同程度またはより優れた耐食性を達成することを意味する。
【0019】
一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金は良好な流動性を有する。本明細書で使用される場合、「良好な流動性」とは、新しいアルミニウム鋳造合金が、同様の高圧ダイカスト条件下で、従来の合金A365と比較して同程度またはより良好な流動性を達成することを意味する。
【0020】
一つの実施形態では、新しいアルミニウム鋳造合金はダイはんだ付け抵抗性があり、鋳放しアルミニウム合金製品が、鋳造品に損傷を与えることなく、および/またはダイに固着することなく、ダイから除去される。ダイはんだ付けは、溶融アルミニウムがダイ表面にはんだ付けされる高圧ダイカスト中に発生する可能性がある。一部の実施形態では、本明細書に記載する新しいアルミニウム鋳造合金は、ダイにはんだ付けされることなく鋳造されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
6つのアルミニウム合金を一方向凝固した。合金の組成物を以下の表1に示す。
【表1】
*合金の残りはアルミニウムと不純物であった。すべての合金は0.01重量%未満の銅を含む。すべての合金は0.02重量%未満のマンガンを含む。すべての合金は0.03重量%未満のマグネシウムを含む。すべての合金は、0.01重量%未満のクロム、ニッケル、亜鉛、チタン、およびジルコニウムのそれぞれを含む。すべての合金は、0.02重量%未満のバナジウムを含む。残りの不純物はすべて、それぞれ0.01重量%未満であった。
【0022】
合金の熱伝導率を様々な温度で測定し、その結果を以下の表2に示す。熱伝導率は、ASTM E1461-13に従い得られた熱拡散率の結果、ASTM E1269-11(2018年)に従い得られた比熱容量の結果、およびASTM B311-17に従った密度の結果を用いたASTM E1461の方程式1を使用して測定されうる。
【表2】
【0023】
示されるように、合金は高い熱伝導率を達成する。さらなる合金1~4は、そのケイ素含有量のため、良好な流動性を達成することが予想される。合金1~2は、優れた流動性を有することが予想される。
【0024】
本開示の様々な実施形態を詳細に説明しているが、当業者がこれらの実施形態の修正および適合を行うことが明らかである。しかしながら、そのような修正および適合は本開示の趣旨および範囲内であることが明示的に理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム鋳造合金であって、
6.0~11.5重量%のケイ素と、
0.30~0.80重量%の鉄と、
任意で0.07~0.20重量%のXを含み、Xは、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され、
任意で100~500ppmのストロンチウムを含み、
残りがアルミニウムと不可避な不純物である、アルミニウム鋳造合金。
【請求項2】
少なくとも7.0重量%のケイ素、または少なくとも8.0重量%のケイ素、または少なくとも9.0重量%のケイ素、または少なくとも9.5重量%のケイ素を含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項3】
11.0重量%以下のケイ素、または10.5重量%以下のケイ素を含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項4】
少なくとも0.35重量%の鉄、または少なくとも0.40重量%の鉄、または少なくとも0.45重量%の鉄、または少なくとも0.50重量%の鉄を含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項5】
0.75重量%以下の鉄、または0.70重量%以下の鉄、または0.65重量%以下の鉄を含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項6】
前記アルミニウム鋳造合金がXを含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項7】
0.07~0.18重量%のX、または0.07~0.15重量%のX、または0.07~0.12重量%のX、または0.07~0.10重量%のXを含む、請求項6に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項8】
前記アルミニウム鋳造合金が、マグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのすべてを実質的に含まず、0.07重量%未満のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを有する、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項9】
0.05重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれ、または0.04重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれ、または0.03重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれ、または0.02重量%以下のマグネシウム、モリブデン、およびジルコニウムのそれぞれを含む、請求項8に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項10】
前記アルミニウム鋳造合金がストロンチウムを含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項11】
前記アルミニウム鋳造合金が、100ppm未満のストロンチウム、または50ppm以下のストロンチウム、または25ppm以下のストロンチウム、または10ppm以下のストロンチウムを含む、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項12】
前記アルミニウム鋳造合金が、銅、マンガン、亜鉛、チタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムを実質的に含まない、請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項13】
0.10重量%未満の銅、または0.05重量%以下の銅、または0.03重量%以下の銅、または0.01重量%以下の銅を含む、請求項12に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項14】
0.04重量%以下のマンガン、または0.03重量%以下のマンガン、または0.02重量%以下のマンガンを含む、請求項12に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項15】
0.10重量%未満の亜鉛、または0.05重量%以下の亜鉛、または0.03重量%以下の亜鉛、または0.01重量%以下の亜鉛を含む、請求項12に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項16】
0.04重量%以下のチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムのそれぞれ、または0.03重量%以下のチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムのそれぞれ、または0.02重量%以下のチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムのそれぞれを含む、請求項12に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項17】
チタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムの前記累積量が、0.10重量%を超えない、またはチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムの前記累積量が、0.08重量%を超えない、またはチタン、クロム、ニッケル、およびバナジウムの前記累積量が、0.06重量%を超えない、請求項16に記載のアルミニウム鋳造合金。
【請求項18】
請求項1に記載のアルミニウム鋳造合金から作製された高圧ダイカスト製品。
【請求項19】
前記製品が、少なくとも65MPaの引張降伏強度および少なくとも2%の伸びを達成する、請求項18に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項20】
前記製品が、25℃の温度で少なくとも160W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも170W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも175W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも180W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも185W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも190W/m/℃、または25℃の温度で少なくとも195W/m/℃またはそれ以上の熱伝導率を達成する、請求項18に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項21】
前記製品が、IACSで少なくとも38%、またはIACSで少なくとも39%、またはIACSで少なくとも40%、またはIACSで少なくとも41%、またはIACSで少なくとも42%、またはIACSで少なくとも43%、またはIACSで少なくとも44%、またはIACSで少なくとも45%、またはACSで少なくとも46%、またはIACSで少なくとも47%、またはIACSで少なくとも48%の電気伝導率を実現する、請求項18~20のいずれか一項に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項22】
前記製品が、ヒートシンクまたはアンテナの形態である、請求項18に記載の高圧ダイカスト製品。
【請求項23】
前記製品が、複雑な形状鋳造の形態である、請求項18に記載の高圧ダイカスト製品。
【国際調査報告】