(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】感染症検査システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230622BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230622BHJP
C12M 1/33 20060101ALI20230622BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230622BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12M1/33
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574096
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 GB2021051332
(87)【国際公開番号】W WO2021245390
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2021/050822
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522238642
【氏名又は名称】シャヒーン イノベーションズ ホールディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イマド ラフード
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ マコヴェック
(72)【発明者】
【氏名】サジド バッティ
(72)【発明者】
【氏名】モハンメド アルシャイバ サレハ ガナム アルマズルーイ
(72)【発明者】
【氏名】クレメント ラムール
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA15
4B029BB13
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA03
4B029FA11
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4B063QA01
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4B063QQ03
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4B063QS25
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4B063QS40
4B063QX02
(57)【要約】
COVID-19感染症などの感染症を検査するための感染症検査システム(1)である。かかるシステムは、生体サンプル中の細胞を溶解するための超音波を発生させる超音波トランスデューサ(49)を備える。システム(1)は、細胞の溶解に最適な周波数で振動するように超音波トランスデューサ(49)を制御するコントローラ、サンプルからDNAを受け取って増幅するPCR装置(16)、増幅されたDNAにおける感染症の存在を検出し、検出配列(70)が増幅されたDNAにおける感染症の存在を検出したか否かを示す出力を提供する検出装置(70)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症検査システムであって、
感染症検査のための生体サンプルを受け入れるように構成された超音波処理チャンバーと、
前記超音波処理チャンバー内の生物学的サンプルから細胞を溶解するために2800kHz~3200kHzの周波数範囲の超音波を出力するように構成された超音波トランスデューサと、
コントローラであって、
2800kHz~3200kHzの周波数範囲内の所定の周波数で交流駆動信号を生成するように構成され、前記超音波トランスデューサを駆動するための前記交流駆動信号を出力するように構成された交流ドライバと、
前記超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに、前記超音波トランスデューサによって使用される有効電力を監視するように構成された有効電力モニターであって、前記超音波トランスデューサによって使用される前記有効電力を示す監視信号を提供するように構成された有効電力モニターと、
前記交流ドライバを制御し、前記有効電力モニターから前記監視信号を受信するように構成されたプロセッサと、
命令を記憶するメモリであって、前記プロセッサによって実行されたとき、前記プロセッサに、
A. 前記交流ドライバを制御して、前記超音波トランスデューサに対して所定の掃引周波数で交流駆動信号を出力し、
B. 前記監視信号に基づいて、前記超音波トランスデューサによって使用されている前記有効電力を計算し、
C. 前記交流ドライバを制御して前記交流駆動信号を変調し、前記超音波トランスデューサが使用する前記有効電力を最大化し、
D. 前記超音波トランスデューサが使用する前記最大有効電力と前記交流駆動信号の前記掃引周波数の記録を前記メモリに保存し、
E. 所定の回数の反復の後、掃引周波数が掃引開始周波数から掃引終了周波数まで増分するように、反復ごとに増分する掃引周波数で、ステップAからDを所定の回数の反復で繰り返し、
F. 前記メモリに格納された前記記録から、前記超音波トランスデューサによって前記最大有効電力が使用される前記交流駆動信号の前記掃引周波数である前記交流駆動信号の最適周波数を特定し、かつ
G. 前記交流ドライバを制御して、前記超音波トランスデューサに対して前記所定の最適周波数で前記交流駆動信号を出力する、メモリと、を備えるコントローラとを備え、
システムはさらに、
生物サンプルの溶解した細胞からDNAを受け取り増幅するように構成されたポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)装置、及び
増幅されたDNA中の感染症の存在を検出し、増幅されたDNA中に感染症が存在することを検出したか否かを示す出力を提供するように構成された感染症検出装置を備えることを特徴とする感染症検査システム。
【請求項2】
前記有効電力モニターが、
前記超音波トランスデューサを駆動する前記交流駆動信号の駆動電流を感知するように構成された電流センサーであって、前記有効電力モニターが、前記感知された駆動電流を示す監視信号を提供するように構成された電流センサーを備えることを特徴とする請求項1に記載の感染症検査システム。
【請求項3】
前記メモリがプロセッサによって実行されたとき、前記プロセッサに前記掃引周波数を2800kHzの掃引開始周波数から3200kHzの掃引終了周波数に増分させながら、ステップA~Dを繰り返させる命令を記憶することを特徴とする請求項1または2に記載の感染症検査システム。
【請求項4】
前記メモリは、前記プロセッサによって実行されたとき、前記プロセッサに、
ステップGでは、前記最適周波数を1~10%の間でシフトさせた周波数の前記交流駆動信号を前記超音波トランスデューサに出力するよう前記交流ドライバを制御させる命令を記憶することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の感染症検査システム。
【請求項5】
前記交流ドライバは、前記超音波トランスデューサによって使用される前記有効電力を最大化するために、前記交流駆動信号をパルス幅変調するように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の感染症検査システム。
【請求項6】
前記メモリは、前記プロセッサによって実行されたとき、前記プロセッサに、
前記超音波トランスデューサに対して前記最適な周波数の交流駆動信号を第1の所定時間だけ出力し、前記超音波トランスデューサに対して前記交流駆動信号を第2の所定時間だけ出力しないように前記交流ドライバを交互に制御させる命令を記録することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の感染症検査システム。
【請求項7】
前記メモリは、前記プロセッサによって実行されたとき、前記プロセッサに、
次から選択される動作モードに従って、前記交流駆動信号の出力、及び前記交流駆動信号の非出力を交互に行わせる命令を記憶することを特徴とする請求項6に記載の感染症検査システム。
【表1】
【請求項8】
前記感染症検査システムであって、
加熱装置であって、
前記PCR装置の一部を受け入れる加熱凹部と、
移動可能な支持要素と、
前記支持要素により担持される第1の加熱要素と、
前記第1の加熱要素から間隔を置いた位置で前記支持要素によって運ばれる第2の加熱要素であって、前記支持要素は、前記第1の加熱要素が前記第2の加熱要素よりも前記加熱凹部に近い位置に配置される第1の位置と、前記第2の加熱要素が前記第1の加熱要素よりも前記加熱凹部に近い位置に配置される第2の位置との間で移動可能であること特徴とする第2の加熱要素と、及び
前記支持要素を前記第1の位置と前記第2の位置との間で周期的に移動させるように構成されたモーターと、を含む加熱装置をさらに備える請求項1から7のいずれかに一項に記載の感染症検査システム。
【請求項9】
前記加熱装置が、
前記加熱凹部内に配置された前記PCR装置内の液体の温度を感知するように構成された温度センサーであって、コントローラが感知された温度に応答して第1および第2の加熱要素の動きを制御するように構成された温度センサーを備えることを特徴とする請求項8に記載の感染症検査システム。
【請求項10】
前記コントローラが逆転写酵素工程中に、前記PCR装置内の液体を実質的に45℃に加熱するように第1の加熱要素を制御するように構成されたことを特徴とする請求項8または9に記載の感染症検査システム。
【請求項11】
PCR工程中に、前記コントローラが、
前記PCR装置内の液体を実質的に55℃に加熱するように、前記第1の加熱要素を制御し、
前記PCR装置内の液体を実質的に95℃に加熱するように前記第2の加熱要素を制御し、
前記第1および第2の加熱要素が前記PCR装置内の液体の温度を実質的に55℃と実質的に95℃の間で循環するように、前記支持要素を前記第1および第2の位置の間で循環的に移動させるように構成されたことを特徴とする請求項9に記載の感染症検査システム。
【請求項12】
前記システムが、
サンプルチャンバー、超音波処理チャンバー及びPCRチャンバーの間でサンプルの少なくとも一部を連続的に移送できるように、前記サンプルチャンバー、前記超音波処理チャンバーまたは前記PCRチャンバーの間に流体流路を選択的に提供するように可動流路をさらに備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の感染症検査システム。
【請求項13】
前記システムが、
前記可動流路から流出する流体を濾過するように構成された濾過配置であって、直径2μm以上30μm以下の孔を備える第1のフィルター要素を備える濾過配置をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の感染症検査システム。
【請求項14】
前記濾過配置は、前記第1のフィルター要素上に重ねられる第2のフィルター要素を備え、前記第2のフィルター要素の細孔は直径0.1μmから5μmであることを特徴とする請求項13に記載の感染症検査システム。
【請求項15】
前記システムがCOVID-19感染症検査システムであり、前記感染症検出装置は、増幅DNA中のCOVID-19感染症を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出し、SARS-CoV-2ウイルス検出装置が増幅DNA中のCOVID-19疾患の存在を検出するか否かを示す出力を提供するように構成されたSARS-CoV-2ウイルス検出装置であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の感染症検査システム。
【請求項16】
感染症検査方法であって、前記方法は、
超音波処理チャンバーであって、前記超音波処理チャンバー内で生体サンプルから得られた細胞を溶解するために2800kHz~3200kHzの周波数範囲の超音波を出力する超音波トランスデューサを備える超音波処理チャンバーに、感染症検査の対象となる生体サンプルを入れることと、
交流ドライバにより、2800kHzから3200kHzの周波数範囲内の所定の周波数で交流駆動信号を生成し、前記交流駆動信号を超音波トランスデューサに出力して前記超音波トランスデューサを駆動させることと、
有効電力モニターによって、前記超音波トランスデューサが前記交流駆動信号によって駆動されるときに前記超音波トランスデューサによって使用される有効電力を監視し、前記有効電力モニターは、前記超音波トランスデューサによって使用される前記有効電力を示す監視信号を提供することと、
プロセッサにおいて、前記有効電力モニターから有効信号を受信することと、を含み、さらに前記方法は、
A. 前記プロセッサにより、前記超音波トランスデューサに対して所定の掃引周波数で前記交流駆動信号を出力するよう前記交流ドライバを制御することと、
B. 前記プロセッサにより、前記監視信号に基づいて、前記超音波トランスデューサで使用されている前記有効電力を計算することと、
C. 前記プロセッサにより、前記交流駆動信号を変調し、前記超音波トランスデューサで使用される前記有効電力を最大にするよう前記交流ドライバを制御することと、
D. 前記プロセッサにより、前記超音波トランスデューサが使用する前記最大有効電力と前記交流駆動信号の前記掃引周波数の記録をメモリに保存することと、
E. 所定の回数の反復の後、掃引周波数が掃引開始周波数から掃引終了周波数まで増分するように、各反復で増分する掃引周波数で、ステップAからDを所定の回数で反復することと、
F. 前記プロセッサにより、前記メモリに格納された前記記録から、前記超音波トランスデューサによって前記最大有効電力が使用される前記交流駆動信号の前記掃引周波数である前記交流駆動信号の最適周波数を特定することと、並びに
G. 前記プロセッサによって、前記超音波トランスデューサに対して前記所定の最適周波数で前記交流駆動信号を出力するよう、前記交流ドライバを制御することと、を含み、
さらに前記方法は、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)装置で、生体サンプルの溶解細胞からDNAを受け取ることと、増幅することと、
感染症検出装置において、前記増幅されたDNA中の感染症の存在を検出することと、
前記感染症検出装置が前記増幅されたDNA中に感染症が存在することを検出したか否かを示す出力を提供することと、を含む感染症検査方法。
【請求項17】
前記方法は、
電流センサーによって、前記超音波トランスデューサを駆動する前記交流駆動信号の駆動電流を感知することと、
前記有効電力モニターにより、前記感知された駆動電流を示す監視信号を提供することをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の感染症検査方法。
【請求項18】
前記方法は、
前記交流ドライバにより、前記交流駆動信号をパルス幅に変調し、前記超音波トランスデューサで使用される前記有効電力を最大にすることをさらに含むことを特徴とする請求項16または17に記載の感染症検査方法。
【請求項19】
前記方法は、
前記超音波トランスデューサに対して前記最適な周波数の前記交流駆動信号を第1の所定時間だけ出力し、前記超音波トランスデューサに対して前記交流駆動信号を第2の所定時間だけ出力しないように交流ドライバを交互に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項16から18の何れか一項に記載の感染症検査方法。
【請求項20】
前記方法は、
以下から選択される動作モードに従って、前記交流ドライバを制御して、前記交流駆動信号の出力と非出力を交互に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の感染症検査方法。
【表2】
【請求項21】
前記方法は、COVID-19感染病検査方法であり、前記方法は、
SARS-CoV-2ウイルス検出装置において、増幅されたDNA中のCOVID-19感染症の原因となるSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出し、
SARS-CoV-2ウイルス検出装置が増幅DNA中のCOVID-19病の存在を検出したか否かを示す出力を提供することを含むことを特徴とする請求項16から20のいずれか一項に記載の感染症検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、以下の各々の優先権の利益を主張し、参照により全体を本明細書に組み入れる。2020年6月1日出願の欧州特許出願番号20177685.3、2020年10月8日出願の欧州特許出願番号20200852.0、2020年12月15日出願の欧州特許出願番号20214228.7、および2021年4月1日出願の国際特許出願番号PCT/GB2021/050822。
【0002】
本発明は、COVID-19感染症を含むがこれに限定されない感染症の検査を行うための感染症検査システムに関するものである。本発明は、より詳細には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを用いたウイルス感染症の検査のための感染症検査システムに関するものであり、SARS-CoV-2ウイルス感染症の検査を含むがこれに限定されない。
【背景技術】
【0003】
医療分野における技術の進歩は、診断方法や診断機器の効率を向上させた。検査時間は大幅に短縮され、同時に信頼性の高い結果を得ることができるようになった。あらゆる種類の感染症を検査するために、さまざまな検査方法がある。ウイルス感染症の検査では、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が最も信頼できる方法であることが証明されている。他の方法と同様に、PCR法も高い信頼性を維持しながら、より時間効率と費用対効果の高い方法として進化してきた。
【0004】
PCRは、DNA中の一致する2本の鎖を利用して、わずか数個のサンプルから数十億個のコピーまで、目的とするDNA配列を増幅する技術であり、その結果、DNAサンプルをそのサイズに応じて分離するゲル電気泳動で分析する。
【0005】
従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR):
従来のPCR検査は、以下の3~4つのステップで構成されている。
【0006】
1. 細胞溶解と核酸(DNA/RNA)抽出:
鼻(鼻咽頭ぬぐい棒)または喉(中咽頭ぬぐい棒)から患者サンプルを採取したら、そのサンプルを溶出緩衝液と混合する。溶出液を濾過し、大きな粒子(毛髪、皮膚片など)を除去する。濾過された溶液を溶解槽に注ぐ。
【0007】
細胞溶解を行い、サンプル中の細胞の脂質二重層を破壊し、DNA/RNAを含む細胞の成分を抽出するためのゲートウェイを提供する。
【0008】
細胞溶解は、化学的または電気機械的に、あるいはその両方の組み合わせで行われる。この工程では、成分を抽出し、溶液を濾過して核酸(DNA/RNA)と他の細胞成分を分離する。この後、このDNA/RNAは、次の工程に進むことができる。
【0009】
2. 逆転写(RT):
このステップは、核酸がDNAではなくRNAである場合にのみ必要である。
【0010】
この工程では、RNAを含むPCR溶液に逆転写酵素と呼ばれる酵素を導入し、40~50℃の温度でRNAから相補的DNA(cDNA)配列を作成する。PCRはDNAまたはcDNAを必要とするので、逆転写のステップはPCRに関連する行為の前に行われることになる。
【0011】
3. ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
PCRの原理は、DNAサンプルの種類に関係なく同じである。PCRの処理には、DNAサンプル、プライマー、DNA塩基、ポリメラーゼ酵素、そして反応に適切な条件を確保するための緩衝液の5つの核となる材料が必要である。
【0012】
PCRでは、サーマルサイクリングと呼ばれる加熱と冷却の工程がある。サーマルサイクリングは変性、アニーリング、伸長の3つのステップで構成される。
【0013】
変性は反応溶液を95℃~100℃に加熱することから始まる。この高い温度は、2本鎖DNAまたはcDNAを一本鎖に分離するために必要である。
【0014】
アニーリングは、サンプルDNAまたはcDNAの変性した鎖にプライマーを結合させることである。この工程には、55℃~62℃の温度が必要である。この温度に達すると、プライマーが一本鎖に結合するアニーリングステージが開始される。
【0015】
プライマーが結合すると、ポリメラーゼがプライマーを一本鎖の長さに沿って結合・伸長させ、新しい2本鎖DNAを作るために温度を約72℃まで上昇させる。
【0016】
最適な結果を得るためには、検査に必要な塩基対の数に応じて、サーマルサイクルを20~40回繰り返し、各段階で所望の温度が達成されることを確認する。
【0017】
4. ゲル電気泳動
PCR終了後、電気泳動と呼ばれる方法で、生成されたDNA断片の量とサイズを確認することができる。DNAは負に帯電しているため、サイズごとに分離するために、PCR処理したサンプルをアガロースゲルに入れ、ゲル内に電流を流して負に帯電したDNAを反対側の端に引き寄せる。より大きなDNA断片は溶液中でより大きな抵抗を受けるため、同じ時間内に小さな断片ほどは移動しない。
【0018】
DNA断片の移動距離を既知のサンプルと比較することで、検査結果が得られる。溶液調製時、ゲル電気泳動ステップの前に、DNAのバンドを確認するために蛍光色素を添加し、その位置からDNAの長さを知ることができる。
【0019】
高速PCR:
高速PCRは、従来のPCRよりも短いサーマルサイクル時間(1サイクル20~60秒)で行うことで、全体の検査時間を短縮している。また、高速PCRはリアルタイムPCRという、密閉された反応容器内で増幅と検出を1つの工程で行う自動高速サーマルサイクリングプロセスを採用している。この工程により、感染のリスクを大幅に低減することができる。高速PCRは、PCRのサーマルサイクルと同時に検出するために蛍光分光法を使用している。
【0020】
高速RT-PCRは、ウイルス(RNA)を検査する場合、検査全体に工程を1つ追加している。その追加工程とは、上述のPCR工程の前に、RNAからcDNAを作成するための逆転写工程である。
【0021】
蛍光分光法:
蛍光分光法は、ゲル電気泳動法の代替法として、検査全体の時間を短縮するために使用される。蛍光分光法は、光を用いて特定の化合物の分子内の電子を励起し、発光させる。その光を検出器で検知して蛍光を測定し、分子や分子の変化を特定することができる。
【0022】
SARS-CoV-2ウイルス(COVID-19感染症)の世界的流行により、ウイルス検査キットの需要が急増している。また、従来の検査では完了までに4~8時間、高速検査でも2時間以上かかるため、より迅速な検査が求められている。
【0023】
従来のウイルス検査では、大量の検体を同時に処理する方法が一般的である。しかし、各ステップ(主にPCR)の時間が長いため、結果が出るまでの待ち時間が長い。高速PCR法では、サーマルサイクルの時間を短縮することで、従来のPCR法よりもある程度のリードタイムを確保し、全体の検査時間を1~2時間程度に短縮している。しかし、この検査時間でもCOVID-19のような感染症に対する有用な大量高速検査としては長すぎる。
【0024】
本明細書で概説した問題の少なくともいくつかを緩和する、感染症検査のための改良されたシステムおよび装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0025】
一部の配置の感染症検査システムには以下が含まれる。感染症について検査されるべき生体サンプルを受け取るように構成された超音波処理チャンバー、超音波処理チャンバー内の生体サンプルから細胞を溶解するために約2800kHz~約3200kHzの周波数範囲で超音波を出力するように構成された超音波トランスデューサ、約2800kHz~約3200kHzの周波数範囲内の所定の周波数で交流駆動信号を生成するように構成され、超音波トランスデューサを駆動するために交流駆動信号を出力するように構成された交流ドライバ(AC driver)を備えたコントローラ、超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を監視するように構成された有効電力監視装置であって、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を示す監視信号を提供するように構成された有効電力監視装置、交流ドライバを制御し、有効電力モニターから監視信号を受信するように構成されたプロセッサ、並びにプロセッサによって実行されたとき、プロセッサに
A. 交流ドライバを制御して、超音波トランスデューサに対して所定の掃引周波数で交流駆動信号を出力し、
B. 監視信号に基づいて、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を計算し、
C. 交流ドライバを制御して交流駆動信号を変調し、超音波変換器が使用する有効電力を最大化し、
D. 超音波トランスデューサが使用する最大有効電力と交流駆動信号の掃引周波数の記録をメモリに保存し、
E. 所定の回数の反復の後、掃引周波数が掃引開始周波数から掃引終了周波数まで増分するように、ステップAからDを所定の回数の反復で繰り返し、各反復で掃引周波数を増分し、
F. メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサによって最大の有効電力が使用される交流駆動信号の掃引周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定し、かつ
G. 交流ドライバを制御して、最適な周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力させる命令を格納するメモリを備える。かかるシステムは、生体サンプルの溶解した細胞からDNAを受け取り増幅するように構成されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)装置、及び増幅したDNA中の感染症の存在を検出し、増幅したDNA中の感染症の存在を感染症検出装置が検出したかどうかを示す出力を提供するように構成された感染症検出装置をさらに備える。
【0026】
一部の配置では、有効電力モニターは、超音波トランデューサを駆動する交流駆動信号の駆動電流を感知するための電流センサーを備え、有効電力モニターは、感知された駆動電流を示す監視信号を提供するように設計されている。
【0027】
一部の配置では、メモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに掃引周波数を2800kHzの開始掃引周波数から3200kHzの終了掃引周波数まで増分し、ステップA~Dを繰り返させる命令を記憶する。
【0028】
一部の配置では、メモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに、ステップGにおいて、最適周波数の1~10%の間でシフトされた周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力するように交流ドライバを制御させる命令を格納する。
【0029】
一部の配置では、交流ドライバは、超音波トランデューサによって使用されている有効電力を最大化するために、パルス幅変調によって交流駆動信号を変調する。
【0030】
一部の配置では、メモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに交流ドライバを制御させ、第1の所定時間に最適な周波数で超音波トランデューサに交流駆動信号を出力し、第2の所定時間に超音波トランデューサに交流駆動信号を出力しない行動を交互に実行する命令を記憶する。
【0031】
一部の配置では、メモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに、以下から選択される動作モードに従って交流駆動信号を出力し、交流駆動信号を出力しない行動を交互にさせる命令を格納する。
【0032】
【0033】
一部の配置では、システムは、PCR装置の一部を受容する加熱凹部、可動支持要素、支持要素によって担持される第1の加熱要素、第1の加熱要素から離間した位置で支持要素によって担持される第2の加熱要素(第1の加熱要素が第2の加熱要素よりも加熱凹部の近くに配置される第1の位置と第2の加熱要素が第1の加熱要素よりも加熱凹部の近くに配置される第2の位置の間で支持要素が移動可能であることを特徴とする)、並びに第1の位置と第2の位置の間で支持要素を周期的に動かすように構成されているモーターが組み込まれた加熱装置をさらに備える。
【0034】
一部の配置では、加熱装置は加熱凹部内に配置されたPCR装置内の液体の温度を感知するように構成された温度センサーであって、コントローラが感知された温度に応答して第1および第2の加熱要素の動きを制御するように構成されていることを特徴とする温度センサーを備える。
【0035】
一部の配置では、コントローラは、逆転写酵素プ工程中に、PCR装置内の液体を実質的に45℃に加熱するように第1の加熱要素を制御するように構成される。
【0036】
一部の配置では、PCR工程中に、コントローラは、第1の加熱要素を制御してPCR装置内の液体を実質的に55℃に加熱し、第2の加熱要素を制御してPCR装置内の液体を実質的に95℃に加熱し、かつ第1および第2の加熱要素がPCR装置内の液体の温度を実質的に55℃から実質的に95℃との間で循環するように、支持要素を第1および第2の位置間で周期的に移動するように構成されている。
【0037】
一部の配置では、システムはサンプルチャンバー、超音波処理チャンバー及びPCRチャンバーの間でサンプルの少なくとも一部を連続的に移送できるように、サンプルチャンバー、超音波処理チャンバーまたはPCRチャンバーの間に流体流路を選択的に提供するように可動流路をさらに備える。
【0038】
一部の配置では、システムは可動の流路から流れ出る流体を濾過するように構成された濾過構成をさらに備える。この濾過構成は直径2μmから30μmの細孔の第1のフィルター要素を備える。
【0039】
一部の配置では、濾過構成は、第1のフィルター要素に重ねた第2のフィルター要素を備える。第2のフィルター要素の細孔は直径0.1μmから5μmである。
【0040】
一部の配置では、システムはCOVID-19感染症検査システムであり、この感染症検出装置は、増幅DNA中のCOVID-19感染症を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出し、SARS-CoV-2ウイルス検出装置が増幅DNA中のCOVID-19感染症の存在を検出するか否かを示す出力を提供するように構成されたSARS-CoV-2ウイルス検出装置である。
【0041】
一部の配置の感染症検査方法は、感染症検査を行う生体サンプルを超音波処理チャンバーに入れること(この超音波処理チャンバーは約2800kHz~約3200kHzの周波数帯の超音波を出力し、生体サンプルから得られた細胞を超音波処理チャンバー内で溶解させる超音波トランスデューサを備える)、交流ドライバにより、約2800kHz~約3200kHzの周波数範囲内の所定周波数で交流駆動信号を生成し、その交流駆動信号を超音波トランスデューサに出力して超音波トランスデューサを駆動させること、超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに超音波トランスデューサによって使用される有効電力を有効電力モニターによって監視すること(有効電力モニターは超音波トランスデューサによって使用される有効電力を示す監視信号を提供することを特徴とする)、並びにプロセッサで有効電力モニターから監視信号を受信することが含まれ、その方法はさらに以下で構成される。
【0042】
A. プロセッサにより、超音波トランスデューサに対して所定の掃引周波数で交流駆動信号を出力するよう、交流ドライバを制御すること、
B. プロセッサにより、監視信号に基づいて、超音波トランスデューサで使用されている有効電力を計算すること、
C. プロセッサにより、交流駆動信号を変調し、超音波トランスデューサで使用される有効電力を最大するよう、交流ドライバを制御すること
D. プロセッサにより、超音波トランスデューサが使用する最大有効電力と交流駆動信号の掃引周波数の記録をメモリに保存すること、
E. 所定の回数の反復の後、掃引周波数が掃引開始周波数から掃引終了周波数まで増分するように、各反復で増分する掃引周波数で、ステップAからDを所定の回数で反復すること。
F. プロセッサにより、メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサによって最大の有効電力が使用される交流駆動信号の掃引周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定すること、並びに
G. プロセッサにより、最適周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力するように交流ドライバを制御すること。その方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)装置で生体サンプルの溶解した細胞からDNAを受け取って増幅し、感染症検出装置で、増幅されたDNA中の感染症の存在を検出し、感染症検出装置が増幅されたDNA中の感染症の存在を検出したか否かを示す出力を提供することを特徴とする。
【0043】
一部の配置では、本方法は、電流センサーにより、超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号の駆動電流を感知することと、及び友好伝慮億モニターにより、感知された駆動電流を示す監視信号を提供することがさらに含まれる。
【0044】
一部の配置では、本方法は、超音波トランスデューサにより、使用される有効電力を最大化するために、交流ドライバにより、交流駆動信号をパルス幅変調することがさらに含まれる。
【0045】
一部の配置では、本方法は、プロセッサにより、第1の所定時間、最適周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力し、次に第2の所定時間、超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力しないように交互に行う交流ドライバの制御することがさらに含まれる。
【0046】
一部の配置では、本方法は、以下から選択される動作モードに従って、交流駆動信号を出力し、次に交流駆動信号を出力しないように交互に交流ドライバを制御することがさらに含まれる。
【0047】
【0048】
一部の配置では、本方法はCOVID-19感染症検査方法であり、本方法は、SARS-CoV-2ウイルス検出装置において、増幅DNA中のCOVID-19感染症を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出し、SARS-CoV-2ウイルス検出装置が増幅DNA中のCOVID-19感染症の存在を検出するか否かを示す出力を提供することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明がより容易に理解されるように、本発明の実施形態は、次に、添付の図面を参照しながら、例として説明される。
【0050】
【
図1】
図1は、一部の配置のアッセイ装置を有する一部の配置のシステムの透視概略図である。
【
図2】
図2は、一部の配置のアッセイ装置の模式図である。
【
図3】
図3は、一部の配置のアッセイ装置を有する一部の配置のシステムの一部を示した模式図である。
【
図4】
図4は、一部の配置のアッセイ装置の一部を示す透視概略図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すアッセイ装置の一部を示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すアッセイ装置の一部を示す端面図である。
【
図7】
図7は、一部の配置のアッセイ装置の一部を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すアッセイ装置の一部の断面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示すアッセイ装置の一部の断面図である。
【
図10】
図10は、一部の配置の濾過配置の構成要素を示す概略図である。
【
図11】
図11は、一部の配置のアッセイ装置の一部を示す模式図である。
【
図12】
図12は、RLC回路としてモデル化された圧電トランスデューサを示す模式図である。
【
図13】
図13は、RLC回路の周波数対対数インピーダンスのグラフである。
【
図14】
図14は、圧電トランスデューサの動作の誘導性領域と容量性領域を示す周波数対対数インピーダンスのグラフである。
【
図15】
図15は、一部の配置のコントローラの動作を示すフロー図である。
【
図16】
図16は、一部の配置のアッセイ装置の一部の透視図である。
【
図17】
図17は、一部の配置のアッセイ装置の一部の透視図である。
【
図18】
図18は、一部の配置のアッセイ装置の一部の透視図である。
【
図21】
図21は、一部の配置のシステムの一部と、一部の配置のアッセイ装置の一部を示す断面図である。
【
図22】
図22は、一部の配置のシステムの一部と、一部の配置のアッセイ装置の一部を示す透視図である。
【
図23】
図23は、一部の配置のアッセイ装置の一部を示す側面図である。
【
図24】
図24は、一部の配置のシステムの一部を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
本開示の態様は、添付の図と共に提供する以下の詳細な説明により、最もよく理解される。当業界の標準的な慣行に従って、図面中の様々な特徴は縮尺通りに描写されていないことに留意されたい。実際、様々な特徴の寸法は、議論を明確にするために任意に増加または減少させることがある。
【0052】
以下の開示は、提供される主題の様々な特徴を実施するための多くの異なる実施形態、又は例を提供する。構成要素、濃度、用途、及び配置の具体例は、本開示を簡略化するために以下に説明される。当然ながら、これらは単なる例であり、限定することを意図するものではない。例えば、以下の説明における第1の特徴及び第2の特徴の取り付けは、第1の特徴及び第2の特徴が直接接触して取り付けられる実施形態を含むことがあり、また、第1の特徴及び第2の特徴が直接接触していなくてもよいように、第1の特徴と第2の特徴との間に追加の特徴が配置され得る実施形態を含むこともある。加えて、本開示は、様々な例において参照数字及び/又は文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、単純化及び明確化のためであり、それ自体は、議論された様々な実施形態及び/又は構成間の関係を指示するものではない。
【0053】
以下の開示は、代表的な配置又は例を説明するものである。各例は、実施形態と見なすことができ、「配置」または「例」への言及は、本開示において「実施形態」に変更することができる。
【0054】
本開示は、感染症検査、特にCOVID-19感染症を引き起こすことが知られているSARS-COV-2のためのポイントオブケア(POC)及び/又は家庭での使用のために設計された高速結果診断アッセイシステムの改良された態様を確立するものである。
【0055】
一部の配置のアッセイ装置およびシステムは、細菌またはウイルスなどの病原体によって引き起こされる他の任意の感染症を検査するためのものである。一部の配置では、アッセイ装置及びシステムは、インフルエンザ、コロナウイルス、麻疹、HIV、肝炎、髄膜炎、結核、エプスタインバーウイルス(腺熱)、黄熱、マラリア、ノロウイルス、ジカウイルス感染または炭疽を含むがこれらに限定されない群から選択される感染性物質または疾患を検査するためのものである。
【0056】
一部の配置では、アッセイ装置及びシステムは、唾液サンプル、喀痰サンプル、又は血液サンプルの形態の標的サンプルを検査するためのものである。別の配置では、アッセイ装置及びシステムは、鼻咽頭ぬぐい棒又は中咽頭ぬぐい棒によってユーザーから採取される標的サンプルを検査するためのものである。
【0057】
一部の配置のアッセイシステムは、様々な液体チャンバーを含むアッセイ装置又はポッド、プランジャーカラム、フロー方向付け歯車、超音波処理チャンバー、濾過アレイ、PCRフィン、PCR試薬、PCR方法、サーマルサイクラー、感染症検出装置、蓋、結果報告方法、及びポッドを操作するための全ての必要部品を含む筐体を含む13の主要な構成要素を備える。
【0058】
添付図面の
図1を参照すると、感染症検査のためのシステム1は、この配置では、単回使用ポッドの形態である取り外し可能なアッセイ装置2と共に使用するように構成されている。一部の配置では、システム1は、アッセイ装置2とは別個に提供される。別の配置では、システム1は、アッセイ装置2と組み合わせて提供される。さらに別の配置では、アッセイ装置2は、システム1なしで提供されるものの、システム1と共に使用する。
【0059】
システム1は、システム1の様々な構成要素を収容する筐体3を備える。この配置では、筐体3は、扉5によって閉じられた開口部4を備える。扉5は、
図1に示す開位置と、扉5が筐体3の開口部4を閉じる閉位置との間で移動するように構成される。この配置では、扉5には、ユーザーによる開閉を容易にするために、ハンドル6が設けられている。この配置では、扉5は、
図1の矢印7で一般的に示されるように、ユーザーがシステム1を開いてアッセイ装置2をシステム1内に挿入することを可能にするために設けられている。別の配置では、ユーザーがアッセイ装置2をシステム1に挿入することを可能にするために、異なるアクセス手段を組み込む。
【0060】
この配置では、システム1は携帯用システムである。筐体3は、システム1が容易に持ち運べるように、またシステム1が建物の入口ドアに隣接するような便利な場所に目立たず配置されるように、コンパクトである。一部の配置のシステム1の携帯可能な構成は、システム1が感染症検査の必要性がある場所に容易に運搬できるようにする。一部の配置では、システム1は、システム1が主電源を必要とせずに遠隔地で使用できるように、電池または他の低電力源によって給電されるように構成されている。別の配置では、システム1は、システム1に電力を供給するため、及び/又はシステム1内の電池を充電するため、主電源に接続される電源入力を備える。
【0061】
システム1は、筐体3の基部に設けられた支持台8を備える。支持台8は、アッセイ装置2を載せるための面を備える。支持台8は、支持台8の周囲に配置され、アッセイ装置2がシステム1に挿入されるときにアッセイ装置2を所定の位置に誘導する複数のガイド部材9を備える。この配置では、支持台8は、アッセイ装置2が支持台8によって運ばれるときにアッセイ装置2の下に配置される中央開口部10を備えている。
【0062】
次に添付図面の
図2を参照すると、アッセイ装置2は、この配置では、アッセイ装置2は基台11を備え、これはアッセイ装置2が基台11上に載っているとき、アッセイ装置2に安定性を与えるために拡大した下端を具備する。アッセイ装置2は、以下により詳細に説明されるアッセイ装置2の内部構成要素を収容するアッセイ装置筐体12をさらに備える。アッセイ装置筐体12は、アッセイ装置2内へのアクセスを提供するために開放されるように構成された、基台11から離れた上端部13を備える。カバー14は、上端部13を少なくとも部分的に覆うようにアッセイ装置の筐体12に移動可能に取り付けられている。カバー14は、中央開口部15を備える。カバー14については、以下でより詳細に説明する。
【0063】
アッセイ装置2は、アッセイ装置2の一側面から突出するPCR装置16を備える。PCR装置16は、以下でより詳細に説明する。
【0064】
次に添付図面の
図3を参照すると、アッセイ装置2がシステム1に挿入されるとき、アッセイ装置2は、PCR装置16が、以下に詳細に説明する加熱装置17の加熱凹部内に少なくとも部分的に受け入れられるように、支持台8上の所定の位置に誘導される。
【0065】
アッセイ装置2は、システム1の一部を形成する駆動装置18の下に位置する。この配置では、駆動配置18はプランジャー19の形態の駆動要素を備える。これは、プランジャー19の先端20が、概して矢印21で示す方向に沿ってアッセイ装置2のカバー14内の開口部15を通って移動し、アッセイ装置2内のピストン22と係合するように、駆動配置18によって外側に移動するように構成されている。システム1は、システム1の動作中にピストン要素22を移動させるため、プランジャー19を伸縮させるように構成されている。
【0066】
システム1は、マイクロプロセッサのような演算装置とメモリとを組み込んだコントローラ23を含備える。コントローラ23は、以下に説明するように、システム1の動作を制御するように構成されている。
【0067】
ここで添付図面の
図4~6を参照すると、アッセイ装置2は、細長く、少なくとも1つの内部チャンバーを画定する本体部分24を備える。この配置では、本体部分24は、本体部分24が八角形の断面を有するように配置された8つの概して平面的な表面によって規定される側面を有する。しかしながら、別の配置では、異なる形状および異なる断面を有する本体部分を組み込むことを理解されたい。
【0068】
この配置では、本体部分24は、複数の内部チャンバーを画定する。この配置では、本体部分24は、6つの内部チャンバー、サンプルチャンバー25、洗浄チャンバー26、溶解剤チャンバー27、液体試薬チャンバー28、乾燥試薬チャンバー29及び廃棄物チャンバー30を画定している。また、本体部分24には、中央開口部31が設けられている。
【0069】
アッセイ装置内のチャンバー数は、配置によって1から最大10までで変化し得る。SARS-CoV-2アッセイのための配置では、アッセイ装置2は、6つのチャンバーを備える。
【0070】
本体部分24の一端は、
図5に示すように、突出部32を備える。突出部32には、
図6に示すように、複数の開口部33が設けられている。各開口部33は、チャンバー25~30のうちのそれぞれの1つと流体連通経路を提供する。
【0071】
次に、添付図面の
図7を参照すると、アッセイ装置2は、本体部分24に移動可能に装着される移送装置34を備える。移送装置34は、細長い移送チャンバー36を画定するプランジャーカラム35を備える。この配置では、プランジャーカラム35は、アッセイ装置本体24の中央開口部31内に少なくとも部分的に受け入れられるように構成された細長い概ね円柱状のカラムである。
【0072】
プランジャーカラム35は、アッセイ装置2の中心部分である。また、アッセイ装置2に含まれる液体がPCRのための準備の全段階を経るに連れ、様々なチャンバーとの間で移動し、操作される仕組みとなっている。移送チャンバー36は、システム1の筐体内に含まれるプランジャアームに接続するゴム製プランジャチップを含む。液体は、負圧を介して移送チャンバー36に引き込まれた後、正圧を介して移送チャンバー36からその目的チャンバーに向けて強制的に排出される。
【0073】
移送装置34は、拡大端部37を備える。この配置では、拡大端部37は概して円筒形であり、拡大端部37の周囲の離間した位置に設けられた歯38の形態の駆動部を備えている。歯38は、システム1の対応する駆動部の回転が移送装置34を回転させるように、システム1の対応する駆動部と係合するように構成される。移送装置の移動は、システム1の筐体内に収容されたモーターによって制御される。モーターは、ブラシレスDCモーター、ステッパモーターまたは任意の種類の電子的に駆動されるモーターである。
【0074】
次に添付図面の
図8及び
図9を参照すると、移送装置34は、拡大端部37内の内部通路によって画定される可動流路39を備える。可動流路39は、移送装置34と共にアッセイ装置本体24に対して相対的に移動するように構成される。移送装置34は、可動流路39に流体的に結合される流れ開口部40、41を備える。流れ開口部40、41は、アッセイ装置本体24に対する移送装置34の相対位置に応じて各チャンバー25~30を可動流路39に選択的に流体結合するために、流れ開口部40、41がアッセイ装置本体24上の開口部33と選択的に整合するように位置決めされる。
【0075】
流れ開口部40の1つは、ピストン22の移動の結果として移送チャンバー36内に生じる正圧又は負圧によりピストン22が移送チャンバー36の長さの少なくとも一部に沿って移動したとき、移送チャンバー36への流体の流入又は流出を可能にするために移送チャンバー36と流体的に結合される。
【0076】
移送装置34は、可動流路39に沿って流れる流体が濾過配置42を通過するように、拡大端部37内に設けられた濾過配置42を備える。この配置では、濾過配置42は、サンプルに含まれる細胞から大きな汚染物質を分離し、「溶解領域」内に細胞を捕捉するように設計されたフィルター、ガスケット及びマイクロビーズの配列を備える。
【0077】
添付図面の
図10を参照すると、濾過配置42は、少なくとも1つのフィルター要素を備える。この配置では、濾過配置42は、毛髪又は埃などの汚染物質を濾過するように設計された細孔が直径2μm~30μmの第1のフィルター要素43を備える。この配置では、濾過配置42は、第1のフィルター要素33に重畳される第2のフィルター要素44を備える。第2のフィルター要素44には直径0.1μmから5μmの間の細孔が設けられ、細孔のサイズは、標的細胞の平均サイズよりわずかに小さくなるように選択され、標的細胞が第2のフィルター要素44を通過することができないようにしている。
【0078】
この配置では、濾過配置42は、フィルター要素42、43の周りを密封するガスケット45~47を備える。この配置では、第1及び第2のフィルター要素43、44の間に大きめのガスケット(約200μm厚)が設けられ、第1及び第2のフィルター間に溶解領域のための空間を形成する。
【0079】
この配置では、濾過配置42は、第1のフィルター要素43と第2のフィルター44との間に保持される複数のビーズBを備える。一部の配置では、ビーズBは、約100ミクロンの直径を有するマイクロビーズである。一部の配置では、ビーズBの約半分は、超音波処理中にフィルター配置42の上部付近に集まるように浮力を持ち、残りの半分は、浮力を持たずフィルター配置42の下部付近に集まるように設計されている。2種類のビーズの間で、溶解領域の大部分はマイクロビーズで満たされ、これにより超音波処理中に細胞膜を破壊するのが補助される。
【0080】
ここで添付図面の
図11を参照すると、移送装置34は、濾過配置42に隣接して配置され、可動流路39に流体的に結合される超音波処理チャンバー48を備える。一部の配置では、超音波処理チャンバー48は、100μlから1000μlの間の容積を有する。一部の配置では、超音波処理チャンバー48への入口は、アッセイ装置2が直立しているときに、超音波処理チャンバー48の出口より下のレベルに配置され、液体が低い方から高い方へ流れるようにし、工程においてあらゆる気泡を逃がすようにする。
【0081】
濾過配置42は超音波処理チャンバー内に設けられ、超音波トランスデューサ49は超音波処理チャンバー48の一端に設けられる。一部の配置では、濾過配置42は、超音波処理チャンバー48の入口領域と出口領域を、超音波処理チャンバー48の入口と出口との間の距離の実質的に半分から1/4の間で分離する。
【0082】
超音波トランスデューサ49は、アッセイ装置2がシステム1に挿入されたときに、システム1のコントローラ23に電気的に結合される。超音波トランスデューサ49は、コントローラ23によって制御されるように構成されている。コントローラ23は、システムの少なくとも1つのプロセスを制御するように構成されたプロセッサ及びメモリを備え、当該メモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに少なくとも1つのプロセスを実行する出力を提供させる実行可能命令を格納している。コントローラ23のメモリは、プロセッサによって実行されたとき、超音波処理チャンバー48内の細胞を溶解して細胞から核酸(DNA/RNA)を放出するために、プロセッサが超音波トランスデューサ49を制御し、選択した周波数で振動させる実行可能命令を格納する。
【0083】
一部の配置では、超音波トランスデューサ49は、少なくとも一部が、鉛、ジルコニウムおよびチタンを含む化合物である。超音波トランスデューサ49の化合物は、それが約2.8MHz~約3.2MHzの周波数で振動するための特性を超音波トランスデューサ49に与えるように選択される。この周波数範囲は、超音波トランスデューサ49が細胞を溶解または破裂させる超音波を生成する好ましい周波数範囲である。
【0084】
一部の配置では、超音波トランスデューサ49は、上部の第1の電極と、超音波トランスデューサ49の反対側に位置する下部の第2の電極を備える。一部の配置では、第1の電極および第2の電極は、銀スタンプ塗料の形態などの銀からなる。一部の配置では、第1の電極と第2の電極との間の静電容量は800pF~1300pFである。
【0085】
一部の配置では、超音波トランスデューサ49の上側の第1の電極は、少なくとも部分的にガラスコーティングで覆われている。ガラスコーティングは、第1の電極の材料による超音波処理チャンバー48内での液体の汚染の可能性を最小にし、または防止する。また、ガラスコーティングは、例えば、システムの使用時に超音波処理チャンバー48内の液体を伝わる超音波によって引き起こされるキャビテーション気泡の崩壊による第1電極の銀の侵食を最小限に抑え、又は防止することができる。
【0086】
超音波トランスデューサ49の第1及び第2の電極は、コントローラ23のそれぞれの第1及び第2の電気端子と電気的に接続されている。
【0087】
一部の配置では、コントローラ23は、交流ドライバを備える。交流ドライバは、所定の周波数の交流駆動信号を生成し、超音波トランスデューサ49を駆動するために交流駆動信号を出力する。交流ドライバは、電源から受けた電力から交流駆動信号を生成するように接続された電子部品を組み込んだ回路で構成されている。一部の配置では、交流ドライバは、Hブリッジ回路を備える。一部の配置では、Hブリッジ回路は、高周波数(例えば、2.8MHz~3.2MHzの範囲の周波数)で直流を交流に変換するように接続された4つのMOSFETを備える。
【0088】
一部の配置では、コントローラ23は、有効電力モニターを備える。有効電力モニターは、超音波トランスデューサ49が交流駆動信号によって駆動されたときに、超音波トランスデューサ49が使用する有効電力を監視する電子回路を備える。有効電力モニターは、超音波トランスデューサ49によって使用される有効電力を示す監視信号を提供する。一部の配置では、有効電力モニターは、超音波トランスデューサ49を駆動する交流駆動信号の駆動電流を感知し、感知された駆動電流を示す監視信号を提供する電流センサーを備える。
【0089】
コントローラ23のプロセッサは、交流ドライバを制御し、有効電力モニターから監視信号を受信する。
【0090】
一部の配置では、コントローラ23は、周波数コントローラを備え、メモリに格納された実行可能コードに実装される。この実行可能コードは、プロセッサによって実行されたとき、少なくとも1つの機能を実行させる。
【0091】
コントローラ23のメモリは、プロセッサによって実行されたとき、超音波トランスデューサ49を制御して、所定の掃引周波数範囲内の複数の周波数で振動させ、超音波処理チャンバー48内の細胞を溶解するための第1の所定の周波数から第2の所定の周波数までの間で超音波トランスデューサ49の駆動周波数を選択させる、実行可能命令を格納している。
【0092】
一部の配置では、一部の細胞は、それらの物理的特性(サイズ、形状、細胞壁の存在など)のために異なる周波数を必要とすることがあるため、溶解される細胞のタイプによって周波数が決定される。
【0093】
超音波チャンバー内で細胞を溶解するのに最適な周波数又は周波数範囲がある。最適な周波数や周波数範囲は、少なくとも以下の4つのパラメータに依存する。
【0094】
1. トランスデューサの製造工程
一部の配置では、超音波トランスデューサ49は、圧電セラミックを備える。圧電セラミックは、セラミック生地を作るために化合物を混合することによって製造され、この混合工程は、製造全体を通じて一貫していない可能性がある。この一貫性の欠如により、硬化した圧電セラミックの共振周波数にばらつきが生じることがある。
【0095】
圧電セラミックの共振周波数が必要な動作周波数に対応していない場合、細胞を溶解する工程は最適ではない。圧電セラミックの共振周波数がわずかにずれただけでも溶解工程に影響を与え、システムが最適に機能しないことを意味する。
【0096】
2. トランスデューサの負荷
動作中、超音波トランスデューサ49にかかる負荷が変化すると、超音波トランスデューサ49の振動の全体的な変位が阻害される。超音波トランスデューサ49の振動の最適な変位を実現するためには、コントローラ23が最大変位に十分な電力を供給できるように、駆動周波数を調整する必要がある。
【0097】
超音波トランスデューサ49の効率に影響を与え得る負荷の種類は、トランスデューサ上の液体の量(すなわち、超音波処理チャンバー48内の液体の量)を含み得る。
【0098】
3. 温度
超音波トランスデューサ49の超音波振動は、アッセイ装置2への組み付けによって部分的に減衰される。この振動の減衰は、超音波トランスデューサ49上およびその周辺の局所的な温度上昇を引き起こす可能性がある。
【0099】
温度の上昇は、超音波トランスデューサ49の分子挙動の変化により、超音波トランスデューサ49の振動に影響を与える。温度の上昇は、セラミックの分子により多くのエネルギーを与えることを意味し、一時的にその結晶構造に影響を与える。温度が下がるとその影響は逆転するが、最適な振動を維持するためには供給周波数の変調が必要である。
【0100】
温度の上昇はまた、超音波処理チャンバー48内の溶液の粘性を低下させるため、超音波処理チャンバー48内の細胞の溶解を最適化するために、駆動周波数の変更を必要とする場合がある。
【0101】
4. 電源までの距離
超音波トランスデューサ49の振動周波数は、超音波トランスデューサ49とオシレータードライバとの間の配線長によって変化し得る。電子回路の周波数は、超音波トランスデューサ49とコントローラ23との間の距離に反比例する。
【0102】
距離パラメータは、この配置では主に固定されているが、システム1の製造工程中に変化し得る。従って、変動を補償し、システムの効率を最適化するために、超音波トランスデューサ49の駆動周波数を変更することが望ましい。
【0103】
超音波トランスデューサ49は、
図12に示すように、電子回路におけるRLC回路としてモデル化することができる。上述の4つのパラメータは、トランスデューサに供給される共振周波数範囲を変化させ、RLC回路全体的のインダクタンス、キャパシタンス、及び/又は抵抗の変更としてモデル化できる。回路の周波数がトランスデューサの共振点付近まで上昇すると、回路全体の対数インピーダンスは最小に落ち込み、その後最大に上昇して、中央値の範囲に落ち着く。
【0104】
図13は、RLC回路における周波数上昇に伴う全体インピーダンスの変化を説明する一般的なグラフである。
図14は、圧電トランスデューサが、第1の所定周波数f
s以下の周波数では第1の容量性領域で、第2の所定周波数f
p以上の周波数では第2の容量性領域で、コンデンサとして作用する様子を示したものである。圧電トランスデューサは、第1および第2の所定周波数f
s、f
pの間の周波数において、誘導領域でインダクタとして作用する。トランスデューサの最適な振動、すなわち最大効率を維持するため、トランスデューサを流れる電流は、誘導領域内の周波数に維持されなければならない。
【0105】
コントローラ23のメモリは、プロセッサによって実行されたとき、超音波処理チャンバー48内の細胞の溶解効率を最大にするために、プロセッサに対して超音波トランスデューサ49の振動周波数を誘導領域内に維持させる実行可能命令を格納する。
【0106】
コントローラ23のメモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに対して、コントローラ23が所定の掃引周波数範囲にわたって漸次追跡する周波数でトランスデューサを駆動する掃引動作を実行させる実行可能命令を格納する。言い換えれば、駆動装置2は、所定の掃引周波数範囲にわたって、複数の異なる周波数でトランスデューサを駆動する。例えば、掃引周波数範囲の一端からもう一端まで所定の周波数毎に増分する周波数である。
【0107】
一部の配置では、コントローラ23が掃引を実行するとき、コントローラ23は、コントローラ23内に設けられ、超音波トランスデューサ49に結合されるアナログ-デジタル変換器のADC(Analog-to-Digital Conversion)値を監視する。一部の配置では、ADC値は、超音波トランスデューサ49全体の電圧に比例するADCのパラメータである。別の配置では、ADC値は、超音波トランスデューサ49を流れる電流に比例するADCのパラメータである。
【0108】
掃引動作の間、コントローラ23は、トランスデューサの周波数の誘導領域を特定する。コントローラ23が誘導領域を特定すると、コントローラ23は、ADC値を記録し、超音波トランスデューサ49の動作を最適化するために、変換器の駆動周波数を誘導領域内の周波数(すなわち、第1及び第2の所定の周波数fs、fpの間)でロックする。駆動周波数が誘導領域内にロックされると、変換器の電気機械結合係数が最大化され、それによって、超音波トランスデューサ49の動作が最大化される。
【0109】
一部の配置では、コントローラ23は、トランスデューサ49を流れる電流を監視することによって、超音波トランスデューサ49が使用する有効電力を決定する。有効電力とは、超音波トランスデューサ49によって散逸される実電力または真の電力である。
【0110】
超音波(圧電)トランスデューサの機械的変形は、それに印加される交流電圧振幅と連動しており、システムの最適な機能および送達を保証するために、超音波トランスデューサには常に最大の変形が供給されなければならない。超音波トランスデューサに印加される交流電圧のパルス幅変調(PWM)により、振動の機械的振幅は同じままである。一部の配置では、システムは、システムの最適な機能と提供を保証するため、超音波トランスデューサの変形を最大化するため、交流電圧波形のデューティサイクルを積極的に調整する。
【0111】
あるアプローチでは、デジタル・アナログ変換器(DAC)の使用を介して超音波トランスデューサに適用されるAC電圧を変更することを含む。超音波プローブに伝達されるエネルギーは減少するが、機械的変形も減少するため、結果は最大の変形ではない。超音波トランスデューサにかかる実効電圧は電圧変調と同じであるが、超音波トランスデューサに伝達される有効電力は劣化する。実際、以下の式で表すことができる
超音波トランスデューサに表示される有効電力は、以下の通りである。
【0112】
【0113】
ここで
【0114】
【0115】
Irmsは二乗平均平方根電流
Vrmsは二乗平均電圧である。
【0116】
第一高調波を考慮する場合、パルス幅変調が超音波トランスデューサに供給される電圧の持続時間を変化させ、Irmsを制御するので、Irmsは超音波トランスデューサに印加される実電圧振幅の関数である。
【0117】
この配置では、コントローラ23のメモリは、コントローラ23のプロセッサによって実行されたとき、プロセッサに以下を実行させる命令を格納する。
【0118】
A. コントローラ23の交流ドライバを制御して、超音波トランスデューサ49に所定の掃引周波数で交流駆動信号を出力させる。
【0119】
B. 監視信号に基づいて、超音波トランスデューサ49によって使用されている有効電力を計算する。
【0120】
C. 交流ドライバを制御して交流駆動信号を変調し、超音波トランスデューサ49が使用する有効電力を最大化する
D. 超音波トランスデューサ49が使用している最大有効電力と交流駆動信号の掃引周波数の記録をメモリに保存する。
【0121】
E. 所定の回数の反復の後、掃引周波数が掃引開始周波数から掃引終了周波数まで増分するように、ステップAからDを所定の回数の反復で繰り返し、各反復で掃引周波数を増分する。
【0122】
F. メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサ49によって最大の有効電力が使用される交流駆動信号の掃引周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定する、及び
G. 交流ドライバを制御して、最適な周波数で超音波トランスデューサ49に交流駆動信号を出力する。
【0123】
一部の配置では、開始掃引周波数は2800kHzであり、終了掃引周波数は3200kHzである。別の配置では、開始掃引周波数及び終了掃引周波数は、2800kHz~3200kHzの範囲内の周波数範囲の下限周波数及び上限周波数である。
【0124】
一部の配置では、プロセッサは、最適周波数の1~10%の間だけシフトされた周波数で超音波トランスデューサ49に交流駆動信号を出力するように交流ドライバを制御する。これらの配置では、周波数シフトは、超音波トランスデューサ49が最大変位を生成する最適駆動周波数で連続的に駆動されるときに超音波トランスデューサ49に生じる潜在的な損傷を最小限にすることによって、超音波トランスデューサ49の耐用年数を延ばすために使用される。
【0125】
一部の配置では、交流ドライバは、超音波トランスデューサ49によって使用される有効電力を最大化するために、パルス幅変調によって交流駆動信号を変調する。
【0126】
一部の配置では、プロセッサ40は、交流ドライバを制御して、第1の所定時間、最適な周波数で超音波トランスデューサ49に交流駆動信号を出力し、第2の所定時間、超音波トランスデューサ49に交流駆動信号を出力しないように交互に行う。超音波トランスデューサ49のこの交互の活性化及び非活性化は、超音波処理チャンバー48内のサンプル中の細胞を溶解する工程を最適化することが見出されている。
【0127】
一部の配置では、超音波トランスデューサ49の最適な動作を保証するために、コントローラ23は、再帰モードで動作する。コントローラ23が再帰モードで動作するとき、コントローラ23は、システムの動作中にステップA~Dの周波数の掃引を周期的に実行する。
【0128】
一部の配置では、コントローラ23の交流ドライバは、動作モードに従って、交互に、交流駆動信号を出力し、交流駆動信号を出力しないように構成される。一部の配置の12の動作モードのタイミングを以下の表1に示す。
【0129】
【0130】
一部の配置では、コントローラ23のメモリは、プロセッサによって実行されるとき、振動が開始または再始動されるたびに誘導性領域を特定するための掃引動作をプロセッサに実行させる実行可能命令を格納する。これらの配置では、コントローラ23のメモリは、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに対して、振動が開始されるたびに誘導領域内の新しい周波数で駆動周波数をロックさせ、それによって超音波トランスデューサ49の動作効率に影響を与えるパラメータの変化を補償させる実行可能命令を格納する。
【0131】
一部の配置では、超音波トランスデューサ49の最適な動作を保証するために、コントローラ23は、再帰モードで動作する。コントローラ23が再帰モードで動作する場合、コントローラ23は、システムの動作中に周波数の掃引を周期的に実行し、ADC値を監視して、ADC値が超音波トランスデューサ49の動作の最適振動を示す所定の閾値以上であるか否かを判断する。
【0132】
一部の配置では、コントローラ23は、コントローラ23が超音波トランスデューサ49の変位を最大化する超音波トランスデューサ49のための可能かつより良好な周波数を特定できる場合、システムが細胞を溶解する工程中に掃引動作を実行する。コントローラ23がより良好な周波数を特定した場合、コントローラ23は、超音波トランスデューサ49の最適な動作を維持するために、駆動周波数を新たに特定されたより良好な周波数でロックする。
【0133】
図15は、一部の配置のコントローラ23の動作のフロー図である。
【0134】
次に添付図面の
図16及び
図17を参照すると、アッセイ装置2の蓋14は、アッセイ装置本体24の少なくともサンプルチャンバー25の開放端を閉じるように構成された概ね平面状のカバー50を備える。蓋14は、カバー50の周縁に延びる側壁51を備える。この配置では、給気口開口部52は、側壁51の1つに設けられる。
【0135】
この配置では、蓋14は、蓋14をアッセイ装置本体24に枢動可能に取り付けるための枢動取付配置53を備える。別の配置では、蓋14は、蓋14をアッセイ装置本体24に移動可能に取り付けるための異なる移動可能な取り付け配置を備えて構成される。
【0136】
蓋14は、側壁51の端部の周囲で蓋部材50の下に重ね合わされるガス透過性膜54を備える。ガス透過性膜54は、側壁51の周囲及び中央開口部15の周囲に実質的に気密シールを提供し、交差汚染又は偶発的な流出を防止する。一部の配置では、ガス透過性膜54は、Gore-Tex(登録商標)材である。
【0137】
使用時、給気口開口部52は、空気が蓋14内に流入し、その空気がガス透過性膜54を通過してアッセイ装置本体24内の少なくともサンプルチャンバー25に流入することを可能にする。
【0138】
別の配置では、ガス透過性膜54は、バルブのような別の一方向ガス流部材に置き換えられる場合がある。
【0139】
ここで添付図面の
図18~20を参照すると、アッセイ装置2のPCR装置16は、フィン55を備え、このフィン55は、アッセイ装置本体24から外側に突出するようにアッセイ装置本体24に結合される。フィン55は、アッセイ装置本体24に連結されるように構成された、拡大取付部材56を備える。取付部材56には、開口部57、58がフィン55内に画定されるPCRチャンバー59と流体連通するようにフィン55に貫通して延びる第1開口部57及び第2開口部58が設けられている。この配置では、フィン55は、PCRチャンバー59を部分的に囲む中央部分61に複数の内部チャンバー60をさらに備えている。
【0140】
フィン55は、点64に収束する角度の付いた端部62、63を有する概ね長方形である。使用において、サンプルは、アッセイ装置2の両方の試薬チャンバーを通過した後、PCRチャンバー59を含むPCRフィン55の中に押し込まれる。
【0141】
一部の配置では、PCR工程に選択された試薬は、極端なrRT-PCR工程を容易にすると同時に、蛍光による温度監視を可能にするように選択される。一部の配置では、試薬の配合には、5μMの各フォワードおよびリバースプライマー(合計6つのプライマー、SARS-COV-2を検出するための2セットおよびPCR反応が成功した場合の対照として使用する1セット)、IX LCGreen+色素、0.2μMの各デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP):dATP、dTTP、dGTP、dCTP、50mM Tris、1.65μM KlenTaq、25ng/μL BSA、1.25U/μL Malone Murine leukemia virus reverse transcriptase (MMLV)、7.4mM MgCl2およびスルホタミンBが含まれる。
【0142】
ここで添付図面の
図21および22を参照すると、PCR装置16のフィン55は、少なくとも一部が加熱装置17内に受容されるように構成されている。
【0143】
この配置では、加熱装置17は、互いに間隔をあけて配置され、ピボット部材67に回転可能に取り付けられた2つの概ね円形の平面ディスク65、66を備える。加熱凹部68は、ディスク65、66の間の空間の一部によって画定されている。
【0144】
この配置では、ディスク65の1つは、
図23に示すように、第1の加熱要素69および第2の加熱要素70を担持する可動支持要素である。第1及び第2の加熱素子69、70は、ディスク65の両側で互いに間隔を空けて配置されている。
【0145】
加熱装置17は、ディスク65が、第1の加熱要素69が第2の加熱要素70よりも加熱凹部68に近い位置に配置される第1の位置と、第2の加熱要素70が第1の加熱要素69よりも加熱凹部68に近い位置に配置される第2の位置との間で動作するように、円板65をピボット部材67を中心に回転させるように構成されたモーターをさらに備える。モーターは、コントローラ23に電気的に結合され、コントローラ23がモーターを制御してディスク65を第1の位置と第2の位置との間で周期的に移動できるようになっている。
【0146】
一部の配置では、加熱装置17は、加熱凹部68内に配置されたPCR装置内の液体の温度を感知するように構成された温度センサーを備え、このシステムは、感知された温度に応答して第1及び第2の加熱要素の動作を制御するように構成されている。
【0147】
次に添付図面の
図24を参照すると、システム1は、ピボット部材67が伸長する開口部72を備える概ね平面状の支持部材71を備える蛍光検出配置70の形態で感染症検出配置を備える。蛍光検出配置は、第1の三角形部分73及び第2の三角形部分74並びにくぼみ部分75を備える。平面状本体71および三角形部分73、74は、加熱装置のディスク65、66の間の空間に配置される。
【0148】
くぼみ部分75は、PCR装置16のフィン55の尖った端部を受け入れる形状である。
【0149】
検出装置70は、くぼみ部分75の一方の縁に沿って複数の発光体76を備え、くぼみ部分75の他方の縁に沿って複数の光受容体77を備えている。この配置では、それぞれが異なる波長の光を透過するように構成された4つのLEDの形態の4つの発光体があり、それぞれが異なる波長の光を検出するように構成された4つの光受容体77がある。しかしながら、別の配置では、異なる数の発光体及び光受容体が存在する。
【0150】
検出装置70は、一部の配置では、PCR、融解曲線及び温度変化を監視するために、LCGreen+及びスルフォホーダミンB色素から放出される蛍光を検出するように構成される。
【0151】
一部の配置では、検出装置は、SARS-CoV-2ウイルス検出装置であり、COVID-19疾患を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出する。
【0152】
結果報告
一部の配置では、システム1は、筐体3の外側にLCDモニターなどのディスプレイを備える。システムからの情報がコントローラ23によって処理された後、検査結果がディスプレイ上に表示される。検査結果としては、陽性、陰性、判定不能、若しくは無効の4つがある。COVID-19検査の場合、4つの結果の基準は、以下の表2に示すとおりである。
【0153】
【0154】
SARS-COV-2の例
次に、SARS-COV-2アッセイについて、一部の配置のシステムの動作を説明する。
【0155】
アッセイ装置2において、第1のチャンバーは、ユーザーが検査の対象となる標的サンプルを加えるサンプルチャンバーである。一部の配置では、標的サンプルは、唾液サンプル又は喀痰サンプルである。別の配置では、標的サンプルは、鼻咽頭ぬぐい棒又は中咽頭ぬぐい棒によってユーザーから収集される。さらに別の配置では、標的サンプルは血液サンプルである。
【0156】
一部の配置では、標的サンプルの容積は1mlから5mlの間である。患者から採取されたサンプルは、サンプルチャンバーに追加される前に溶出緩衝液に入れられる。一部の配置では、溶出緩衝液は、1Mイミダゾール溶液、1Mトリス、0.5M EDTA、Milli-Qまたは脱イオン水を含む。
【0157】
次のチャンバーは、洗浄チャンバーである。一部の配置では、洗浄チャンバーは、上記に述べた溶出緩衝液の過剰量(3ml~5ml)を含む。この洗浄緩衝液は、サンプルを洗浄し、潜在的な汚染物質を除去するために使用される。
【0158】
次のチャンバーは、溶解剤チャンバーである。一部の配置では、溶解剤チャンバーは、アッセイの細胞溶解ステップを補助するための化学物質の混合物を含む。一部の配置では、溶解剤は製剤からなり、以下の3つの製剤を含むが、これらに限定されない:
溶解剤の配合 #1:
10mM Tris
0.25% Igepal
CA-630
150mM NaCl
溶解剤の配合 #2:
10mM Tris-HCl
10mM NaCl
10mM EDTA
0.5% Triton-X100
溶解剤の配合 #3:
0.1M LiCl
0.1M Tris-HCl
1% SDS
10mm EDTA
次のチャンバーは、液体試薬の混合チャンバーである。サンプルは超音波処理され、細胞溶解が起こると、遊離した核酸はプランジャーカラムからの圧力で液体試薬混合チャンバーに押し出される。液体試薬チャンバーには、rRT-PCR試薬混合物の液体安定性成分が含まれる。このチャンバーに保持される成分の例は、一部の配置では、Tris、IX LCGreen Dye、フリーヌクレオチド、MgCl2またはスルフォローダミンBである。
【0159】
次のチャンバーは、凍結乾燥試薬混合チャンバーである。このチャンバーには、タンパク質のように液体または水和状態で長期間保存できない試薬の凍結乾燥または凍結乾燥した形態が含まれる。アッセイ装置での長期保存のために凍結乾燥されるであろう成分の例は、ある配置では、プライマー、ポリメラーゼ、逆転写酵素またはウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0160】
次のチャンバーはPCRチャンバーであり、このチャンバーはPCRフィン内のポッドのメインセクションの外側に位置する。このチャンバーは、rRT-PCR工程の前に、最終混合PCR溶液(最初のサンプルから遊離した核酸とすべてのPCR試薬を含む)が送られる場所である。
【0161】
最後のチャンバーは廃棄物チャンバーである。このチャンバーには、アッセイ装置のサイクルを通して廃棄されるすべての成分が保持される。例えば、洗浄液が超音波処理チャンバーから押し出されると、この溶液は超音波処理チャンバーから出るときに直接廃棄物チャンバーに送られる。このチャンバーの容積は、最低でもポッド内の全液体の合計容積と添加されたサンプルの容積の合計である必要がある。
【0162】
PCR法
一部の配置の方法では、サンプル中のSARS-COV-2の存在を迅速に検出及び確認するためにrRT-PCRを実行する。RT-PCR反応が起こるために必要な加熱及び冷却プロセスを制御するために、一部の配置のシステムは、加熱装置17を、必要な温度サイクルを提供する二重加熱要素を有するサーマルサイクラーとして使用する。
【0163】
加熱装置17のディスク65、66は、極端なrRT-PCRサイクリング中に急速回転し、異なる熱レベルを適用してPCRチャンバーを所望の温度に加熱する。加熱要素69a、69bは、ディスクの反対側に位置し、各々がディスクの表面積の1/4の面積を占めている。各加熱要素69a、69bは、所定の温度に到達するようにプログラムされている。
【0164】
第1の加熱要素69aは、最初に45℃まで加熱し、逆転写酵素ステップのために一時停止し、その後、そのPCR温度である55℃まで加熱する。第2の加熱要素69bは、95℃まで加熱し、PCRステップでのみ使用される。ディスク65の他の2つのセクションは、加熱要素69a、69bの間の絶縁領域として機能する。
【0165】
一部の配置では、熱サイクルは次のように行われる。PCRチャンバーがディスクの絶縁セクションに曝露されている間に第1の加熱要素69aの45℃まで上昇する。第1の加熱要素69aが45℃に達すると、ディスク65は回転してPCRチャンバーを第2の加熱要素69bに2秒間露出し、逆転写酵素工程を発生させることができる。その直後、第1の加熱要素は55℃まで加熱され、PCR工程を開始する。
【0166】
一部の配置では、ディスク65は、加熱と冷却の約30~35サイクルの間、PCRチャンバーの第1及び第2の加熱要素への曝露を交互に急速に行うことで開始される。ディスク65の各回転後、PCRチャンバー内の液体の温度は、スルフォローダミンB色素の受動蛍光検出を用いて監視される。
【0167】
第2の加熱要素69bがPCRに近接した位置にあり、PCRチャンバー内の液体の温度が95℃に達すると、ディスク65は回転するようにトリガされ、第1の加熱要素69aをPCRチャンバーに隣接して移動させる。チャンバーその後、温度が55℃まで下がると、ディスク65は回転して第2の加熱要素69bに戻る。これにより、1サイクルが完了する。
【0168】
最後のPCRサイクルの後、第1の加熱要素69aは回転してPCRチャンバーに近接した位置で回転し、90℃~100℃の間の温度まで8℃/秒の速度で加熱を開始し、特定のPCR産物の存在を確認するために溶融分析を実行できるようにする。
【0169】
システム1は、10分以内に試験結果を提供することが可能であり、一部の配置では、わずか5分以下とすることが可能である。これは、従来のPCR検査よりも格段に速く、家庭、店舗、娯楽施設だけでなく、空港、バス又は電車のターミナルなどの交通機関でも迅速に検査できる可能性を開くものである。
【0170】
一部の配置のシステム1は、携帯性に優れ、検査が必要な場所に容易に持ち運ぶことができる。システムの効率的な動作により、一部の配置のシステムは、電池による電力供給が可能であり、システムは、実質的にあらゆる場所で検査を提供することができる。
【0171】
以上は、当業者が本開示の様々な態様をより良く理解できるように、いくつかの実施形態の特徴を概説したものである。当業者は、本明細書に導入された様々な実施形態の同じ目的を遂行し、及び/又は同じ利点を達成するための他のプロセス及び構造を設計又は修正するための基礎として本開示を容易に使用できることを理解するべきである。また、当業者は、そのような同等の構造が本開示の精神及び範囲から逸脱しないこと、並びに、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本書に様々な変更、置換、及び改変を行うことができることを認識すべきである。
【0172】
構造的特徴又は方法論的行為に特有の言語で主題を説明してきたが、添付の請求項の主題は、必ずしも上記の特定の特徴又は行為に限定されないことが理解されたい。むしろ、上述した具体的な特徴や行為は、特許請求の範囲の少なくとも一部を実施する例示的な形態として開示されるものである。
【0173】
本明細書では、実施形態の様々な動作が提供される。動作の一部又は全部が説明される順序は、これらの動作が必ずしも順序に依存することを意味するように解釈されるべきではない。代替的な順序については、この説明の利益を有することが理解されたい。さらに、すべての操作が、本明細書で提供される各実施形態に必ずしも存在するわけではないことが理解されたい。また、一部の実施形態においては、すべての操作が必要であるとは限らないことも理解されよう。
【0174】
さらに、本明細書において、「例示的な」は、例、インスタンス、イラストレーションなどとして使用することを意味し、必ずしも有利であるとは限らない。本願で使用される「又は」は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図される。さらに、本願及び添付の特許請求の範囲で使用される「a」及び「an」は、他に指定されない限り、又は文脈から単数形に向けられることが明らかでない限り、一般に「1つ又は複数」を意味するものと解釈される。さらに、「含む」、「有している」、「有する」、「共に」、又はそれらの変形が使用される限り、かかる用語は、用語「含む」と同様の方法で包括的であることを意図している。また、特に断らない限り、「第1」、「第2」などは、時間的側面、空間的側面、順序などを示唆することを意図していない。むしろ、このような用語は、特徴、要素、アイテムなどの識別子、名称などとして使用されるに過ぎない。例えば、第1の要素および第2の要素は、一般に、要素Aおよび要素B、または2つの異なる要素もしくは2つの同一の要素、または同じ要素に対応する。
【0175】
また、本開示は、1つ以上の実施態様に関して示され、説明されてきたが、本明細書および付属図面の読解および理解に基づき、当業者の他の者には、同等の変更および修正が生じるであろう。本開示は、すべてのかかる変更および修正を含み、以下の請求項の範囲によってのみ制限される。特に、上述した特徴(例えば、要素、資源など)によって実行される様々な機能に関して、かかる特徴を説明するために使用される用語は、特に示されない限り、開示された構造と構造的に同等ではないとしても、説明された特徴の特定の機能を実行する任意の特徴(例えば、機能的に同等であるもの)に対応することが意図される。加えて、本開示の特定の特徴は、複数の実施態様のうちの1つに関してのみ開示されたかもしれないが、かかる特徴は、任意の又は特定の用途にとって所望かつ有利であるように、他の実施態様の1つ又は複数の他の特徴と組み合わされる場合がある。
【0176】
本明細書に記載された主題および機能的動作の実施形態は、本明細書に開示された構造およびそれらの構造的等価物を含むデジタル電子回路、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアで、あるいはそれらの1つまたは複数の組み合わせで実装することが可能である。
【0177】
一部の実施形態の特徴は、データ処理装置またはコントローラによる実行、またはその動作を制御するために、コンピュータ可読媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールを用いて実装される。コンピュータ可読媒体は、コンピュータシステム又は組込みシステムにおけるハードドライブなどの製造品とすることができる。コンピュータ可読媒体は、有線又は無線ネットワークを介したコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールの配信などによって、別々に取得し、後にコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールで符号化することができる。コンピュータ-可読媒体は、機械可読記憶装置、機械可読記憶基板、記憶装置、またはそれらの1つ以上の組合せとすることができる。
【0178】
「計算装置」及び「データ処理装置」という用語は、一例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータを含む、データを処理するための全ての装置、デバイス、及びマシンを包含する。装置は、ハードウェアに加えてプロセッサファームウェアを構成するコードなどの当該コンピュータプログラムの実行環境を構築するコード、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、ランタイム環境、またはそれらの1つ以上の組合せを含むことができる。さらに、本装置は、ウェブサービス、分散コンピューティング、グリッドコンピューティング基盤など、様々な異なるコンピューティングモデル基盤を採用することができる。
【0179】
本明細書に記載された工程および論理フローは、1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラマブルプロセッサによって、入力データに対して動作し、出力を生成することによって関数を実行することができる。
【0180】
本明細書で使用されるように、一部の実施形態では、モジュールという用語は、システムまたは回路構造の少なくとも1つのプロセスを制御するように構成されたメモリおよび/またはプロセッサを含む。プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに少なくとも1つのプロセスを実行するための出力を提供させる実行可能命令を記憶するメモリ。メモリの実施形態は、非一時的なコンピュータ可読媒体が含まれる。
【0181】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサには、一例として、汎用及び特殊目的のマイクロプロセッサ、並びにあらゆる種類のデジタルコンピュータの任意の1つ又は複数のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサは、読み取り-専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受け取ることになる。コンピュータの本質的な要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令とデータを格納するための1つ以上のメモリ装置である。一般に、コンピュータには、データを格納するための1つ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気-ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクを含むか、又はそれらからデータを受信するか、若しくはそれらへデータを転送するか、又はその両方を実行するように動作可能に結合される。しかし、コンピュータは、そのような装置を有する必要はない。コンピュータプログラム命令およびデータを格納するのに適した装置は、あらゆる形態の不-揮発性メモリ、媒体およびメモリ装置を含み、例としてEPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの半導体メモリ装置、及び内蔵ハードディスクまたは取り外し可能ディスクなどの磁気ディスク、光-磁気ディスク及びCD-ROM並びにDVD-ROMディスクなどのフラッシュメモリ装置を挙げることができる。
【0182】
ユーザーとの対話を提供するために、一部の実施形態は、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニターなどのユーザーに情報を表示するためのディスプレイ装置、並びにマウス又はトラックボールなど、ユーザーがコンピュータに入力を提供できるキーボード及びポインティング装置を備えるコンピュータに実装される。ユーザーとの対話を提供するため、他の種類のデバイスが使用されることもある。例えば、ユーザーに提供されるフィードバックは、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、触覚的フィードバックなど、あらゆる形式の感覚的フィードバックとすることができ、ユーザーからの入力は、音響、音声、触覚入力など、あらゆる形式で受信することができる。
【0183】
本明細書において、「備える」は「含む、または構成する」を意味し、「備えている」は「含んでいる、または構成している」を意味する。
【0184】
前述の説明、又は以下の請求項、又は添付図面に開示された特徴は、それらの具体的な形態で、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又は工程の観点から適宜表現され、個別に、又はそれらの特徴の任意の組み合わせで、その多様な形態で発明を実現するために利用できる。
【国際調査報告】