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特表2023-527592電極板およびウェアラブル除細動デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電極板およびウェアラブル除細動デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20230622BHJP
   A61N 1/39 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/39
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516638
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2021083107
(87)【国際公開番号】W WO2021238375
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202010478035.1
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522465341
【氏名又は名称】マイクロポート ソアリング シーアールエム (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘ ミンチェン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB23
4C053JJ13
4C053JJ15
4C053JJ23
(57)【要約】
電極板100およびウェアラブル除細動デバイスが開示される。電極板100は、気密シェル110および気密シェル110に配置されるカプセル120を備える。気密シェル110は、膨張ポート111およびオーバーフロー開口部112を有する。オーバーフロー開口部112は、気密シェル110の導電性を有する露出面113に設けられる。カプセル120は、本体121およびカバー124を備える。本体121は、中空のキャビティ122およびキャビティ122と連通する出口オリフィス123を画定する。キャビティ122は、導電性ペーストSをその中に収納するように構成され、気密シェル110の中空の内部空間から隔離される。カバー124は、出口オリフィス123を閉じるように出口オリフィス123の上に配置される。カバー124が破壊されて開くと、破壊に起因するそのカバーにおける開口が、出口オリフィス123およびオーバーフロー開口部112と連通し、キャビティ122内の導電性ペーストSが、出口オリフィス123、カバー124の開口、およびオーバーフロー開口部112を通って露出面113上に連続して流れ出すことができる。このような導電性ペーストSの自動適用は、患者に適時の保護を提供し、導電性ペーストSの放出の安全性を向上させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓除細動に使用するための電極板であって、前記電極板は、気密シェルと、前記気密シェルに配置されたカプセルとを備え、前記気密シェルは、膨張ポートと、オーバーフロー開口部とを有し、前記オーバーフロー開口部は、前記気密シェルの露出面に設けられ、前記露出面は導電性を有し、
前記カプセルは、本体と、カバーとを備え、前記本体は、中空のキャビティと、前記キャビティと連通する出口オリフィスとを画定し、前記キャビティは、その中に導電性ペーストを収納するように構成され、前記キャビティは、前記気密シェルの中空の内部空間から隔離され、前記カバーは、前記出口オリフィス上に配置され、前記出口オリフィスを閉じるように構成され、前記カバーは、破壊されて開くときに破壊に起因する開口をその中に有し、前記開口は、前記出口オリフィスおよび前記オーバーフロー開口部と連通する、電極板。
【請求項2】
前記カバーは、ガスが前記気密シェル内に導入されるときに、加熱によりおよび/または前記ガスの圧力の作用下で、破壊されて開くように構成される、請求項1に記載の電極板。
【請求項3】
前記カバーに取り付けられた加熱エレメントをさらに備え、前記加熱エレメントおよび前記出口オリフィスは、前記カバーの反対側にあり、前記カバーは、前記加熱エレメントが通電されると加熱され、溶融され、破壊されて開くように構成される、請求項2に記載の電極板。
【請求項4】
前記カバーは、前記カバーの残りの部分が耐えることができる最大圧力よりも低い最大圧力に耐えることができる脆弱化された特徴部を有して構成される、請求項1または2に記載の電極板。
【請求項5】
加熱エレメントをさらに備え、前記加熱エレメントおよび前記出口オリフィスは、前記カバーの反対側にあり、前記加熱エレメントは接着剤によって前記カバーに取り付けられ、前記接着剤の少なくとも一部が、前記脆弱化された特徴部に塗布され、前記加熱エレメントが通電されると、前記接着剤が加熱され、溶融されるように構成され、前記加熱エレメントが通電されると、前記カバーは、加熱され、溶融され、破壊されて開くようにさらに構成される、請求項4に記載の電極板。
【請求項6】
前記脆弱化された特徴部は、貫通していないくぼみとして構成される、請求項4に記載の電極板。
【請求項7】
前記本体は、前記出口オリフィスの周囲の取り付け凹部を画定し、前記カバーが、シート形状であり、前記本体の前記取り付け凹部に嵌合する、請求項1に記載の電極板。
【請求項8】
前記カバーは、2層からなる片面接着フィルムであり、前記加熱エレメントは、前記2層の間に挿入される、請求項3に記載の電極板。
【請求項9】
複数の前記カプセルを備え、前記カプセルの各々は、1列に配置された複数のオーバーフロー開口部と共に設けられた細長い出口オリフィスを画定し、前記オーバーフロー開口部の各々は、細長く、前記出口オリフィスと同じ長さ方向を有する、請求項1または2に記載の電極板。
【請求項10】
前記気密シェルは、前部シェル半体および後部シェル半体を備え、前記前部シェル半体および前記後部シェル半体は、両方とも絶縁体であり、一緒に結合して前記気密シェルを形成し、前記前部シェル半体は前記露出面を備え、前記前部シェル半体は、前記後部シェル半体の材料強度よりも強い材料強度を有し、前記後部シェル半体は、前記気密シェルの膨張の結果として拡張的に変形するように構成される、請求項1または2に記載の電極板。
【請求項11】
前記後部シェル半体には、前記前部シェル半体に面する側に突出部が設けられ、前記突出部は、前記カプセルに当接するように構成される、請求項10に記載の電極板。
【請求項12】
前記出口オリフィスおよび前記オーバーフロー開口部は、前記カバーが破壊されて開いた後、前記キャビティ内に収納された前記導電性ペーストが、前記出口オリフィスから前記オーバーフロー開口部を通って前記露出面上に流れ出すように構成される、請求項1に記載の電極板。
【請求項13】
ベストならびに、前記ベストに設けられる、検出電極、ホストおよびエアバッグを備えるウェアラブル除細動デバイスであって、前記ベストに設けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の電極板をさらに備える、ウェアラブル除細動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスの分野に関し、特に、電極板およびウェアラブル除細動デバイス(defibrillation device)に関する。
【背景技術】
【0002】
生活の中で、心室細動(cardiac ventricular fibrillation)は一般的に見られる心臓病であり、発症の兆候がなく、救助時間が短く(発症から死亡までわずか4分)、突然死率が高いという特徴がある。この疾患を有する患者では、現在の緊急処置アプローチは、主に心臓に高DC電圧(high DC voltage)を供給することによって心臓を除細動し、心臓を正常なリズムに戻すことである。既存の除細動器デバイスは、主に次の4つのタイプに分類されることができる。
(1)移動させることができるが、かさばるため持ち運びに不便であり、そのため主に病院に配置されている、移動式除細動器、
(2)持ち運びが容易で、通常、公共の場所の非常に目につく位置に設置されている、自動体外式除細動器(AED)、
(3)完全に自動化された方法で操作可能であり、患者に植え込むことができる、植え込み型心臓除細動器(implantable cardioverter-defibrillator)(ICD)、ならびに
(4)完全に自動化された方法で操作可能であり、主に診断からICD植え込みまでの患者保護、およびICD植え込みに適さない患者に使用される、ウェアラブル心臓除細動器(WCD)。
【0003】
前者の2つのタイプの除細動器デバイスは、手動操作が必要である。しかしながら、患者は通常、発症後10秒~20秒以内に意識を失い、このような短い時間は、手動操作には非常に困難である。したがって、これらのデバイスは患者を常時保護するには適していない。対照的に、後者の2つのタイプの除細動器デバイスは両方とも、手動操作を必要としない完全に自動化された方法で操作可能であり、そのため患者を常時保護するのに適している。現在、WCDデバイスは、外科的移植を必要とせず、容易に取り外すことができるため、臨床業務において広範に使用されている。
【0004】
図1は、従来のウェアラブル心臓除細動器(WCD)デバイスを使用する方法を説明している。図1に示すように、WCDデバイスは、ショルダーストラップハーネスの形態で上部胴体(upper torso)に装着するように意図されており、ショルダーストラップ1、除細動パッド2、検出電極3、ホスト4およびエアバッグ5を備える。具体的な動作原理は、検出電極3がECG信号を検出し、ECG信号をホスト4に供給することである。ホスト4は、応答して心電図(electrocardiogram)を生成し、心電図に基づいて決定を行う。患者が心室細動を経験していると判断された場合、ショルダーストラップ1上のエアバッグ5が膨張して、除細動パッド2を患者の皮膚に対して押し付け、除細動パッド2に除細動処置のための高DC電圧(high DC voltage)を供給させる。この除細動器デバイスに関する課題の1つは、電極板による電気除細動の前に、除細動パッド2と皮膚との間の接触抵抗が十分に小さくなければならず、そうでなければ、比較的大きな接触抵抗は、除細動パッドによる電気除細動の場合、患者の皮膚および心筋(skin and myocardium)を焼く傾向があるか、または患者を緊急保護するための除細動に失敗することさえある。
【0005】
この課題に取り組むために、点火されたガス生成ペレットによって生成された大量のガスの作用下で導電性ペーストを含むカプセルがバーストし、その結果、除細動パッドがコーティングされ、それによって治療電極の導電面と患者の皮膚との間のインピーダンスが減少する。しかしながら、このアプローチは、カプセルをガスが破壊して開くのに十分に高い、ガス発生剤の爆発によってガス圧を生成するために、カプセルを封入するためのボックスが、可能な限り強く設計されなければならないという点で不都合である。結果として、ボックスは、十分に厚くて硬い壁を有しなければならず、このデバイスを装着している患者に不快感を与え、彼/彼女がこれ以上それを装着したくないと思わせる。さらに、ガス発生剤の安全性を確保することも困難である。さらに、複数のカプセルが使用される場合、それらの間で強度に差があると、個々のカプセルが破壊して開く可能性がある。破壊すると、あるものは、ガス漏れが発生し、それによって急激な圧力低下が起こり、他のものは、それ以上破壊することができず、その中に含まれる導電性ペーストを放出することができない。一定量の導電性ペーストの放出を保証することができないため、除細動器デバイスが、患者に緊急保護をもたらすように常に適時に機能できることを確保することは不可能である。したがって、このアプローチは、信頼性が不十分であるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題を克服するために、本発明の目的は、導電性ペーストの自動コーティングを可能にし、適時に患者を保護することができる電極板およびウェアラブル除細動デバイスを提供することである。さらに、導電性ペーストは確実で安全な様式で放出される。特に、電極板を、患者の装着の快適性および適合性を高めるのに十分に軽量でスリムにすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の一態様では、気密シェルと、気密シェルに配置されたカプセルとを備える、心臓除細動に使用するための電極板が提供される。気密シェルは、膨張ポートと、オーバーフロー開口部とを有する。オーバーフロー開口部は、導電性である、気密シェルの露出面に設けられる。
【0008】
カプセルは、本体と、カバーとを備える。本体は、中空のキャビティと、キャビティと連通する出口オリフィスとを画定する。キャビティは、その中に導電性ペーストを収納するように構成され、キャビティは、気密シェルの中空の内部空間から隔離される。カバーは、出口オリフィスを閉じるように出口オリフィス上に配置される。カバーが破壊されて開くと、破壊に起因するそのカバーにおける開口は、出口オリフィスおよびオーバーフロー開口部と連通する。
【0009】
必要に応じて、カバーは、ガスが気密シェル内に導入されるときに、加熱によりおよび/またはガスの圧力の作用下で、破壊されて開くように構成され得る。
【0010】
必要に応じて、電極板は、出口オリフィスと反対側でカバーに取り付けられた加熱エレメントをさらに備えることができ、加熱エレメントが通電されると、カバーは、加熱され、溶融され、破壊されて開くように構成される。
【0011】
必要に応じて、カバーは、カバーの残りの部分が耐えることができる最大圧力よりも低い最大圧力に耐えることができる脆弱化された特徴部を有して構成され得る。
【0012】
必要に応じて、電極板は、出口オリフィスと反対側に配置される加熱エレメントをさらに備えることができ、加熱エレメントは接着剤によってカバーに取り付けられ、接着剤の少なくとも一部が、脆弱化された特徴部に塗布され、加熱エレメントが通電されると、接着剤が加熱され、溶融されるように構成され、加熱エレメントが通電されると、カバーは、加熱され、溶融され、破壊されて開くように構成される。
【0013】
必要に応じて、脆弱化された特徴部は、貫通していないくぼみ(刻み目、indentation)として構成され得る。
【0014】
必要に応じて、本体は、出口オリフィスの周囲の取り付け凹部を画定し得、カバーは、シート形状であり、本体の取り付け凹部に嵌合する。
【0015】
必要に応じて、カバーは、2層からなる片面接着フィルムであり得、加熱エレメントは、2層の間に挿入される。
【0016】
必要に応じて、2個または10個より多いカプセルが含まれ得る。
【0017】
必要に応じて、電極板は、複数のカプセルを備えることができ、カプセルの各々は、1列に配置された複数のオーバーフロー開口部と共に設けられた細長い出口オリフィスを画定し、オーバーフロー開口部の各々は、細長く、出口オリフィスと同じ長さ方向を有する。
【0018】
必要に応じて、気密シェルは、前部シェル半体および後部シェル半体を備えることができ、前部シェル半体および後部シェル半体は、両方とも絶縁体であり、一緒に結合して気密シェルを形成し、前部シェル半体は露出面を備え、前部シェル半体は、後部シェル半体の材料強度よりも強い材料強度を有し、後部シェル半体は、気密シェルの膨張の結果として拡張的に変形するように構成される。
【0019】
必要に応じて、後部シェル半体には、前部シェル半体に面する側に突出部が設けられ、突出部はカプセルに当接するように構成される。
【0020】
必要に応じて、出口オリフィスおよびオーバーフロー開口部は、カバーが破壊されて開いた後、キャビティ内に収納された導電性ペーストが、出口オリフィスからオーバーフロー開口部を通って露出面上に流れ出すように構成され得る。
【0021】
本発明の別の態様では、以前の段落のいずれかに定義される電極板を備えるウェアラブル除細動デバイスが提供される。
【0022】
本発明に提供される電極板およびウェアラブル除細動デバイスにおいて、電極板は、気密シェルと、気密シェルに配置されたカプセルとを備え、カプセルは、その中に導電性ペーストを収納するように構成され、気密シェルは、オーバーフロー開口部を通して導電性ペーストを放出することができる。実際の使用では、ウェアラブル除細動デバイスに含まれる膨張ポンプを使用して、膨張ポートを介して気密シェル内にガスを導入し、気密シェルを拡張変形させることができる。このプロセスでは、カプセルのカバーが破壊されて開くときに、気密シェル内のガス圧の作用下で、カプセル内の導電性ペーストが、破壊に起因したカバーの開口からオーバーフロー開口部を通って導電性の露出面上に流れ出すことができる。このように、患者を適時に保護することができる導電性ペーストの自動適用とは別に、ガスを爆発的に発生させることによってガス圧を上昇させるためのガス発生剤(gas-producing agent)の使用を避けることにより、より高い安全性を得ることができる。
【0023】
加えて、ガス発生剤の爆発から生じる十分に高い圧力の代わりに、適切な量のガスを気密シェル内に導入することによって、カプセルのカバーの破壊を簡単に達成することができる。このプロセスでは、気密シェル内に導入されたガスの圧力、加熱作用、またはその両方の結果として、カバーが破壊され得る。破壊を引き起こすためのこれらのアプローチでは、ウェアラブル除細動デバイスに含まれる膨張ポンプによってガス圧を制御することができ、したがって、人体にとって許容可能な安全な圧力範囲内にある最大限界圧力でカバーが破壊されることが確保され、導電性ペーストの放出の安全性が確保される。特に、ガス発生剤の瞬間爆発によって生じるガス圧とは異なり、気密シェル内に充填されたガスの圧力がバランスを保ち、全てのカプセルの同時破壊、およびそれによる十分な量の導電性ペーストの放出が確保される。したがって、除細動器デバイスは、緊急事態において患者を保護するために適時に機能することが可能になる。さらに、カバーを加熱することにより、絞り出された導電性ペーストも加熱することが可能になるので、流動性を増加させる。このようにして、導電性ペーストの放出が促進される。
【0024】
特に、加熱作用によって、および/または膨張作用によって生じるガス圧の作用下でカバーを破壊することにより、電極板の気密シェルを十分に軽量でスリムに設計して、装着の快適性および適合性を増加させることができる。さらに、本発明の電極板は安価な使い捨て製品であり、患者の治療負担を軽減することができる。
【0025】
さらに、ガス圧の作用下でのカバーの破壊を確実にするために、カバーには、その上に、好ましくは貫通していないくぼみの形態の脆弱化された特徴部を設けていることが好ましい。この場合、カバーが熱負荷および/または圧力負荷を受けると、脆弱化された特徴部が最初に破裂する。これは、構造が簡単で、操作しやすく、安全で確実なカバーの破壊という利点がある。さらに、日常の装着中にカプセルが偶発的に損傷しないことを確実にするために、接着剤が、好ましくは、脆弱化された特徴部の周りに塗布されて脆弱化された特徴部の構造強度を向上させる。通常の状況下では、接着剤が加熱エレメントによって加熱されて溶融し、カバーの破壊を確実にすることができる。
【0026】
さらに、電極板における気密シェルは、好ましくは、前部シェル半体および後部シェル半体を備える。前部シェル半体の材料強度は、後部シェル半体の材料強度より強く、後部シェル半体は、気密シェルの膨張の結果として拡張して変形するように構成される。この構成により、一方では電極板が全体的に柔軟になり、装着の快適性をさらに向上させ、他方では電極板は依然として十分な靭性を示し、患者の日常の装着の間、例えば、彼/彼女の身体活動の間に電極板がねじれ、変形した場合の電極板の除細動性能の低下を防止する。これらとは別に、電極板の後部シェル半体は、好ましくは、前部シェル半体に面する側に突出部が設けられ、日常の装着の間にカプセルが偶発的に衝撃を受けて破壊されるのを防止することができる。
【0027】
さらに、放出される導電性ペーストの量を増加させ、コーティング領域を大きくし、除細動の安全性を高めることができるように、複数のカプセルを電極板に含めることができる。特に、ガスが気密シェル内に充填されると、各カプセルのキャビティが、気密シェルの中空の内部空間から隔離され、全てのカプセルが同じガス圧条件を受けるので、カプセルが同時に破壊されなかったとしても、他のカプセルより先に破壊されたそれらの1つまたは複数は、気密シェル内の圧力低下を引き起こさず、したがって残っているカプセルがこれ以上破壊することができなくなることはない。したがって、導電性ペーストの確実な放出を確保することができる。さらに、本発明によれば、電極板は2つのカプセルを備えることができ、所与の除細動領域において、より多くの量の導電性ペーストを収容することができる。このようにして、より多くの量の導電性ペーストが放出されて、さらに安全な除細動を達成することができる。特に、電極板が、より一層軽量でスリムになり、患者により良好な装着の快適性を与えることができる。
【0028】
添付の図面は、本発明のより良い理解を促すために提供され、いかなる意味においてもその範囲を過度に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、従来のウェアラブル心臓除細動器を使用する方法を説明している。
図2図2は、本発明の第1の好ましい実施形態による電極板の概略的な組立図である。
図3図3は、本発明の第1の好ましい実施形態による電極板の概略的な分解図であり、前部シェル半体および後部シェル半体が一緒に結合されている。
図4図4は、電熱線が取り付けられていない、本発明の第1の好ましい実施形態によるカプセルの正面図である。
図5図5は、図4の線A-Aに沿ったカプセルの断面図である。
図6図6は、本発明の第1の好ましい実施形態による電極板の別の概略的な分解図であり、前部シェル半体および後部シェル半体が互いに分離されている。
図7図7は、本発明の第1の好ましい実施形態による電極板の概略的な組立図であり、導電性パネルが省略されている。
図8図8は、本発明の第1の好ましい実施形による電極板の正面図である。
図9図9は、図8の線B-Bに沿った電極板の断面図であり、後部シェル半体が省略されている。
図10図10は、電熱線が取り付けられた、本発明の第1の好ましい実施形態によるカプセルの概略的な正面組立図である。
図11図11は、本発明の第1の好ましい実施形態によるカプセルの概略的な分解図である。
図12図12は、本発明の第1の好ましい実施形態によるカプセルの概略的な背面組立図である。
図13図13は、本発明の第1の好ましい実施形態によるウェアラブル除細動デバイスを使用する方法を説明している。
図14図14は、本発明の第2の好ましい実施形態による電極板の概略的な分解図である。
図15図15は、本発明の第2の好ましい実施形態による前部シェル半体を概略的に示す。
図16図16は、本発明の第2の好ましい実施形態による、カプセルが取り付けられた前部シェル半体の内側を示す概略図である。
図17図17は、本発明の第2の好ましい実施形態による、カプセルが取り付けられた前部シェル半体の外側を示す概略図である。
図18図18は、本発明の第2の好ましい実施形態によるカプセルの構造を示す概略図である。
図19図19は、片面接着フィルムおよび加熱エレメントが上に設けられている、本発明の第2の好ましい実施形態によるカプセルの概略図である。
図20図20は、図19の構造の正面図である。
図21図21は、線A-Aに沿った図20の構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を特定の例によって以下に説明する。本明細書で提供される開示および教示に基づいて、当業者は、本発明によって提供される他の利益および利点を容易に理解するであろう。本発明はまた、異なる実施形態を通じて他の方法で具体化または適用することができ、本発明の精神から逸脱することなく、異なる観点から、または異なる用途のために、本明細書に開示された詳細に対して様々な修正または変更を行うことができる。添付の図面は、本発明の基本的な概念を概略的に示すためだけに本明細書に提供されていることに留意されたい。したがって、それらは本発明に関連する構成要素のみを示しており、必ずしも全ての構成要素ならびに実用的な実装におけるそれらの実際の形状および寸法を示しているわけではない。実際には、構成要素の構成、数、および相対的なスケールは任意に変更することができ、それらの配置はより複雑になる場合がある。
【0031】
以下では、実施形態の各々は、1つまたは複数の技術的特徴を有するものとして説明される。しかしながら、これは、本発明が必ずしもそのような技術的特徴の全てとともに実施されなければならないことを意味するものではなく、または実施形態のいずれかの技術的特徴の一部もしくは全部とは別個に実施されなければならないことを意味するものではない。換言すれば、本発明を実現することができる限り、当業者は、本明細書の教示に基づき、関連する設計仕様または実際の用途の要件に応じて、実施形態のいずれかにおける技術的特徴の一部もしくは全部を選択することができるか、または異なる実施形態の技術的特徴の一部もしくは全部を組み合わせることができる。これにより、本発明をより柔軟に実施することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される場合、「複数の」という用語は、文脈が明確に他を指示しない限り、2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、「または」という用語は、文脈が明確に他を指示しない限り、「および/または」を含む意味で利用される。さらに、参照番号および/または文字は、本明細書以下に開示される実施形態全体にわたって繰り返し使用される場合があることに留意されたい。このような繰り返しの使用は、単純化および明確化を目的としており、議論された実施形態および/または構成の間の関係を意味するものではない。構成要素が別の構成要素に「接続されている」と本明細書で説明されている場合、それは直接または1つもしくは複数の介在要素を介して他の構成要素に接続され得ることにも留意されたい。
【0033】
一般的には、本発明は、主に心臓除細動に使用するための電極板を提供しようとするものである。電極板は、気密シェルと、気密シェルに収容されたカプセルとを備える。気密シェルは、膨張ポートと、オーバーフロー開口部とを有する。オーバーフロー開口部は、導電性である気密シェルの露出面に設けられる。カプセルは、本体と、カバーとを備える。本体は、中空のキャビティと、キャビティと連通する出口オリフィスとを画定する。キャビティは、その中に導電性ペーストを収納するように構成され、気密シェルの中空の内部空間から隔離されている。カバーは、出口オリフィスを閉じるように出口オリフィスの上に設けられる。カバーが破壊されたときにカバーに形成される開口は、出口オリフィスおよびオーバーフロー開口部と連通する。
【0034】
これは、負荷がかかっていないときに出口オリフィスをカバーで閉じて、導電性ペーストが放出されないように出口オリフィスを閉じた構成に維持することによって動作する。負荷がかかった状態でカバーが破壊されて開くと、出口オリフィスは閉じた構成から開いた構成に移行し、導電性ペーストを放出することができる。加えて、外部ガスが膨張ポートを介して気密シェル内に導入されると、カバーが加熱されて破壊し、出口オリフィスを開いた構成にすることができる。あるいは、カバーは、充填されたガスの圧力の作用下で破壊されて開き、出口オリフィスを開いた構成にすることができる。さらに代替として、上記の2つの作用の両方の結果としてカバーが破壊され、出口オリフィスを開いた構成にすることができる。使用する方法に関係なく、カバーが破壊されると、そこに生じた開口がカプセルの出口オリフィスおよび気密シェルのオーバーフロー開口部と連通し、充填されたガスの圧力によって導電性ペーストが押し出されて、出口オリフィスから露出面上にオーバーフロー開口部を通って流出し得る。露出面は患者の皮膚と接触するように構成されているため、患者の皮膚と露出面との間に導電性ペーストが充填されると、インピーダンス低下が起こり得る。
【0035】
本発明の電極板は、導電性ペーストの自動適用(automatic application of the conductive paste)が可能であり、ウェアラブル除細動デバイスが患者に適時に保護を提供するのに役立ち得ることを理解されたい。さらに、複数のカプセルが使用される場合、カプセルの1つまたは複数が先に破壊されたとしても、残りのカプセルの破壊にはまったく影響しない。したがって、全てのカプセルが壊れて十分な量の導電性ペーストを放出することができ、除細動器デバイスを適時に機能させて緊急事態に患者を保護できることが保証される。特に、ガス発生剤の爆発(explosion of a gas-producing agent)によってカプセルの破壊を引き起こすものと比較して、加熱作用および/またはガス圧の作用下でカバーを破壊することにより、ウェアラブル除細動デバイスに含まれる膨張ポンプによるガス圧の制御が可能になるので、人体にとって許容可能な安全な圧力範囲内にある最大限界圧力でカバーが破壊されることを保証し、導電性ペーストの放出の安全性を保証する。さらに、カバーを加熱することにより、押し出された導電性ペーストも加熱されるので流動性を増加させることができる。このようにして、導電性ペーストの放出が促進される。さらに、電極板の気密シェルは、装着の快適性および適合性を向上させるのに十分に軽量でスリムに設計することが可能になる。一方、本発明の電極板は使い捨て製品であるため、安価であり、患者の治療負担を軽減することができる。
【0036】
本発明で提供される電極板およびウェアラブル除細動デバイスは、本発明のいくつかの好ましい実施形態を示す添付の図面を参照して、以下でさらに説明される。
【0037】
実施形態1
図2および図3は、本発明の第1の好ましい実施形態による電極板の概略的な組立図および分解図である。図2および図3に示されるように、この実施形態における電極板100は、心臓除細動に使用するためのものであり、特に気密シェル110およびカプセル120を備える。カプセル120は気密シェル110内に収容され、その中に導電性ペーストを収納するように構成される。
【0038】
図4および図5は、それぞれ、本発明の第1の好ましい実施形態におけるカプセルの正面図および図4のA-A線に沿った断面図である。図4図5に示されるように、カプセル120は本体121を備え、本体121は、導電性ペーストが収納される中空のキャビティ122を画定する。キャビティ122は、出口オリフィス123を有し、出口オリフィス123は、開いた構成または閉じた構成のいずれかを取ることができる。出口オリフィス123の閉じた構成では、キャビティ122は閉鎖空間であり、そこから導電性ペーストを放出することはできない。出口オリフィス123の開いた構成では、キャビティ122は開放空間であり、そこから導電性ペーストを放出することができる。
【0039】
出口オリフィス123の上記の構成を可能にするために、カプセル120は、出口オリフィス123上に配置されたカバー124をさらに備え、カバー124は、キャビティ122の出口オリフィス123を閉じるように構成される。この実施形態では、カバー124は、本発明を何ら限定するものではないが、本体121と分離していても、一体であってもよい。カバー124が本体121から分離している場合、カバー124は本体121に接着されてもよい。実際の使用では、負荷がかかっていないとき、カバー124は無傷であり、出口オリフィス123を効果的に閉じ、出口オリフィス123を閉じた構成に維持する。カバー124が、負荷がかかって破壊されると、出口オリフィス123は閉じた構成から開いた構成に移行する。本発明の文脈において、破壊(breakage)は、以前に互いに接続されていた2つの部品の不完全な分離および完全な分離の両方を含み得ることに留意されたい。さらに、カバー124の破壊は、カバー124が加熱されたときにカバー124が部分的に溶融し、そこに孔が形成されること、気密シェル110内のガス圧が、カバー124が耐えることができる最大圧力を超えたときにカバー124が破裂もしくは断裂すること、またはその両方の結果であり得る。
【0040】
より具体的には、カバー124の破壊を可能にするために、いくつかの実施形態では、カバー124は、75℃の融点を有するエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーなどの融点の低い材料から作製され、これにより、カバー124が加熱されるとカバー124に孔が形成され、この孔が出口オリフィス123と連通し、したがって出口オリフィス123を開いた構成にする。いくつかの実施形態では、カバー124は、カプセル120に作用する気密シェル110内に充填されたガスの圧力の作用下で破裂または断裂され、カバー124の裂け目は出口オリフィス123と連通し、出口オリフィス123を開いた構成にする。この場合、カバー124をさらに加熱してそれを軟化させ、その構造強度を低下させ、これにより、ガスの圧力の作用下でカバー124がより破裂または断裂しやすくなるようにすることがより好ましい。したがって、加熱作用により、カバー124が破壊されやすくなり得るか、またはそれ自体でカバー124に孔を生じることさえあり得る。破壊が、加熱作用またはガスの圧力によって引き起こされるかどうかにかかわらず、気密シェル110内に充填されたガスの圧力は制御可能であり、ガス発生剤の爆発から生じる圧力よりもはるかに低いことは理解されたい。したがって、気密シェル110は、より低い構造強度を有することができ、十分に軽量でスリムに設計することができる。さらに、カバー124を加熱することにより、押し出される導電性ペーストも加熱し、それにより流動性を増加させることができるという利点もある。結果として、導電性ペーストの放出が促進される。
【0041】
図2および図3に戻ると、気密シェル110は、膨張ポート111およびオーバーフロー開口部(ペーストオーバーフロー開口部)112を有する。外部ガス(好ましくは空気)は、膨張ポート111を介して気密シェル110内に導入され得る。ここで、気密シェル110は、ウェアラブル除細動デバイスに含まれる膨張ポンプを使用して膨張させることができ、充填ガスの圧力は、カバー124の破壊を引き起こし得る値に制御することができる。好ましくは、カバー124の破壊は、ガス圧が1.5~3.0気圧になったときに発生するように設計される。オーバーフロー開口部112は、カプセル120の出口オリフィス123と一直線に並んで気密シェル110の露出面113に配置される。ここで図9を参照する。カバー124が破壊され、それにより出口オリフィス123が開いた構成になると、導電性ペーストSは、充填されたガスの圧力によって、出口オリフィス123およびオーバーフロー開口部112を通って露出面113上に流出するように促される。使用の間、導電性ペーストSは、電極板100と患者の皮膚との間の接触抵抗を減少させるために、患者の体の最も近くに配置されることは理解されたい。また、露出面113は、導電性金属から作製されることに限定されないことも理解されたい。むしろ、それは導電性ゴムなどの非金属材料から作製されてもよい。カプセル120のキャビティ122は、気密シェル110の中空の内部空間から隔離されていることは理解されるであろう。このように、出口オリフィス123を通ってカプセル120から流出した導電性ペーストは、気密シェル110の内部空間に入り込まない。さらに、カバー124の破壊は、気密シェル110内の圧力低下を引き起こさず、したがって気密シェル110の気密性を保証する。
【0042】
図13に示すように、この実施形態では、ベスト200と、ベスト200上に設けられた電極板100と、検出電極300と、ホスト400と、エアバッグ500とを備えるウェアラブル心臓除細動器(WCD)デバイスも提供される。図13を参照すると、実際の使用では、ベスト200が患者に装着された後、WCDデバイスは心臓除細動を行うことができる。WCDデバイスは、心臓からの電気信号を検出し、検出電極300によって信号をホスト400に供給することによって動作する。ホスト400は応答して心電図を生成し、それに基づいて決定を行う。ホスト400が、患者が除細動を必要としていると判断した場合、エアバッグ500および電極板100が膨張する。膨張したエアバッグ500は、電極板100を患者の皮膚に対して押し付け、電極板100の膨張は、その気密シェル110の拡張変形を引き起こす。したがって、気密シェル110内のカプセル120もガスの圧力下で変形する。圧力が所定の値まで上昇すると、カプセル120の出口オリフィス123が破壊されて開き、カプセル120内の導電性ペーストSが、ガス圧によって押し出されて、気密シェル110のオーバーフロー開口部112を通って、露出面113と患者の皮膚との間の隙間に流出し、インピーダンスの低下をもたらす。その後、電極板100は、除細動治療のために高DC電圧を供給する。
【0043】
電極板100およびエアバッグ500は、本発明を何ら限定しないが、同時にまたは連続的に膨張させることができ、同時膨張がより好ましいことを理解されたい。また、本発明の気密シェル110の構造的強度は、電極板100が、患者の日常の身体活動中に圧縮またはねじられたときに生じる変形による除細動性能の低下を受けるのを防ぐのに十分であるべきであり、カプセル120が偶発的に圧縮されて破壊されるのを防ぎ、所定の値未満のガス圧での膨張の間にシェル自体の破壊を防ぐことも理解されたい。同時に、気密シェル110はまた、患者の快適な装着を保証する、ある程度の柔軟性も有するべきである。これらの理由のために、気密シェル110は、十分な支持強度およびある程度の柔軟性の両方を備えて構成されている。これとは別に、本発明のWCDデバイスは自動的に作動して、適時に十分な患者の保護を行う。さらに、電極板100による電気除細動の前に、自動的に導電性ペーストを適用して電極板100と皮膚との間の接触抵抗を効果的に低減させ、安全で効果的なスタイルで除細動を行うことを保証する。さらに、電極板100は低コストの使い捨て製品であり、それを使用することにより、手術に対する患者の負担を大幅に軽減することができる。
【0044】
さらに、図2および図3と併せて図6および図7を参照する。理解を容易にするために、図7では導電性パネル114が省略されている。気密シェル110は、導電性パネル114と、前部シェル半体115と、後部シェル半体116とを備えることができる。前部シェル半体115および後部シェル半体116は両方とも絶縁体である。前部シェル半体115および後部シェル半体116は一緒に結合されて気密シェルを形成し、カプセル120は前部シェル半体115上に設けられる。露出面113は、後部シェル半体116から離れた側の前部シェル半体115上に配置される導電性パネル114によって提供される。オーバーフロー開口部112の各々が出口オリフィス123のそれぞれの1つと位置合わせされるようにオーバーフロー開口部112は導電性パネル114に設けられる。この実施形態では、複数(すなわち、少なくとも2つ)のカプセル120、したがって同数のオーバーフロー開口部112を備えることができる。カプセル120の数は、実際の除細動領域に依存し得る。例えば、この実施形態では、60cm以上の除細動領域に対応する3つの検出電極300(図13を参照のこと)を備えることができる。この場合、より多くの量の導電性ペーストを収容するために、14個または15個のカプセル120が気密シェル110内に配置され得る。これらのカプセル120は、高い空間利用を達成するために、通常、均一に分散している。均一な分散は、好ましくは、直線配列の形態である。より好ましくは、カプセル120は同じサイズである。
【0045】
さらに、前部シェル半体115は、後部シェル半体116よりも強い材料強度を有する。このように、前部シェル半体115は、電極板100に十分な支持強度を与えることができ、患者の身体活動中(例えば、睡眠中の寝返りなど)に起こり得る圧縮変形から電極板100を保護し、カプセル120が偶発的に損傷するのを防ぐ。同時に、後部シェル半体116は、電極板100に十分な柔軟性を与えることができ、これにより、膨張の間の拡張変形が容易になり、装着の快適性を増加させることができる。前部シェル半体115は、好ましくは非金属材料から作製され、これは金属材料よりも軽量であり、したがって装着の快適性をさらに増加させることができる。前部シェル半体115が作製される非金属材料の例には、プラスチック、ならびに適切な硬度および強度特性を有する他の材料が含まれ得るが、これらに限定されない。後部シェル半体116は、一般に、シリカゲル、ラテックス、TPUまたはPVCなどの、ある程度の耐衝撃性を備えた比較的柔軟な非金属材料から作製される。他の実施形態では、前部シェル半体116の材料強度は後部シェル半体116の材料強度と等しくてもよいことを理解されたい。導電性パネル114は、導電性の金属または非金属材料から作製され、導電性パネル114は、上述の露出面113として機能する外面を有する。この実施形態では、導電性パネル114は金属プレートであり、カプセル120を容易に圧縮して保持し、膨張プロセスの間にカプセル120が外れないようにすることができる。組み立ての間、金属プレートは、金属プレートの周縁端部および前部シェル半体115に近接するその表面に接着剤を塗布することによって前部シェル半体115に接着接合され得る。これは、組み立てを容易にする簡単なプロセスを伴う。具体的には、前部シェル半体115には、取り付け貫通孔1151が設けられてもよく、取り付け孔1151の数はカプセル120の数と同じである。実際には、前部シェル半体115および後部シェル半体116が一緒に結合された後に、カプセル120が前部シェル半体115における取り付け孔1151に配置され、続いて導電性パネル114が取り付けられ得る。この実施形態では、前部シェル半体115と後部シェル半体116との間の結合は、接着、ねじ切り、またはスナッピングによって達成され得る。本発明は、前部シェル半体115および後部シェル半体116についての任意の特定の結合方法に限定されない。膨張ポート111は気密シェルに設けられる。
【0046】
図8及び図9は、それぞれ、本発明の第1の好ましい実施形態における電極板の正面図及び図8の線B-Bに沿った断面図である。より具体的には、図8および図9に示される構造は、導電性パネル114を取り付けた後に得ることができ、カプセル120の各々は、前部シェル半体115の取り付け孔1151のそれぞれの1つに収容され、導電性パネル114は前部シェル半体115を圧縮して覆う。各カプセル120は、前部シェル半体115および後部シェル半体116の結合の結果として形成された気密シェル内に部分的に配置される。膨張すると、ガス圧が、図の矢印によって示されるように各カプセル120に作用し、カプセル120を変形させる。結果として、カプセル120の内部キャビティ122内の圧力が上昇し、圧力が、カバー124が耐えることができる最大圧力を超えるレベルまで増加すると、カバー124が破裂または断裂され、出口オリフィス123が開く。さらに、導電性ペーストSは、ガス圧によって押し出され、出口オリフィス123からオーバーフロー開口部112を通って露出面113上に流出する。ここで、出口オリフィス123は、ガス圧によって開かれることに限定されない。なぜなら、それはまた、膨張プロセスの間にカバー124を加熱して、それを軟化および溶融することによって、またはさらにこれによりその中に孔を作製することによっても開くことができるからである。
【0047】
さらに、本発明は、カプセル120が作製される任意の特定の材料に限定されず、材料の例には、シリカゲル、ラテックス、TPUなどを含むことができるが、これらに限定されない。好ましくは、複数のこのようなカプセル120が使用される。実際に、所与の除細動パッドについて、放出される導電性ペーストの量を増加させ、コーティング面積を大きくし、除細動の安全性を高めるために、その内部空間が許容する限り、可能な限り多くのカプセル120を内部に配置することができる。また、複数のカプセル120が使用される場合、図9に示すように、全てのカプセル120が同じガス圧条件にさらされることも理解されたい。カプセル120が同時に破壊されて開かない場合でも、残りのカプセル120より先に破壊されて開くそれらのうちの1つまたは複数は、残りのカプセル120がこれ以上破壊されることができない、気密シェル110内の圧力低下につながらない。したがって、全てのカプセル120が破壊されて開いて、十分な量の導電性ペーストを放出することを保証することができる。除細動器デバイスが適時に機能して患者を保護し、それによって導電性ペーストの放出の信頼性を保証できるようにする。
【0048】
再び図2および図3を参照すると、気密シェル110は、導電性パネル114に電流を供給し、以下に記載する加熱エレメント130に電力を供給するためのケーブルの、気密シェル110内への通過用のケーブルポート117をさらに備える。再び図6を参照すると、突出部118が、好ましくは、前部シェル半体115に面する側の後部シェル半体116上にある。突出部118は、カプセル120がそれに当接するように構成される。日常の装着の間、突出部118は、カプセル120に損傷をもたらし得る外力を緩衝することができ、それによってカプセルの偶発的な破壊を防止する。本発明は、突出部118のいかなる特定の形状にも限定されない。好ましくは、突出部118は、後部シェル半体116と一体的に形成される。本発明はまた、気密シェル110のいかなる特定の形状にも限定されず、可能な形状には、図に示される直方体が含まれ得るが、これに限定されない。一般的には、気密シェル110を直方体として設計することは、容易な製造、カプセルのための大きな収容空間、およびそれにより高い空間利用において有利である。
【0049】
図10は、本発明の第1の好ましい実施形態における1つのカプセルの概略的な正面組立図である。図11は、本発明の第1の好ましい実施形態におけるカプセルの概略的な分解図である。図12は、本発明の第1の好ましい実施形態における1つのカプセルの概略的な背面組立図である。図10図12に示すように、この実施形態では、カプセル120における本体121およびカバー124が別個に製造される。中空のキャビティ122を画定する本体121は、シリカゲル、ラテックス、PVCなどのような高靭性の柔軟な材料から作製され得る薄壁の部分である。出口オリフィス123が、キャビティ122の一端に画定され、凹状の取り付け凹部125が出口オリフィス123の周りに画定される。カバー124は、本体121の取り付け凹部125に嵌合する。カバー124は、シート状構造として構成され、限定されないが、円形を有し得る。一部の実施形態では、カバー124は複合紙から作製され、その上に、脆弱化された特徴部として機能する貫通していないくぼみが設けられている。このようにすれば、カバー124は、所与のガス圧下で脆弱化された特徴部において最初に破壊されて開くことが保証される。このような脆弱化された特徴部は1つまたは複数(例えば、2つ、3つ、またはそれ以上)存在してもよく、それらはくぼみの形態を取ることに限定されない。代わりに、それらは、局所的な熱処理によってカバー124上に形成された内部キャビティまたは他の脆弱化された特徴部であってもよい。さらに、弱体化された特徴部は、様々な構造の組み合わせであってもよい。脆弱化された特徴部の最大限界構造は、カバー124の残りの部分よりも低く、カバー124が脆弱化された特徴部のうちの1つまたは複数において最初に破壊されることを確実にすることを理解されたい。
【0050】
さらに、電極板100は、それぞれのカバー124に取り付けられた加熱エレメント130(図10を参照のこと)をさらに備えることができ、各加熱エレメント130および対応する出口オリフィス123は、対応するカバー124の反対側に配置される。通電されると、加熱エレメント130は加熱し、したがってカバー124を溶融する。本明細書で使用される場合、「溶融する」という用語は、破壊が起こるか起こらないかまで材料を軟化させることを含むことを意味することを理解されたい。本発明は、加熱エレメント130のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは電熱線またはインダクタンスコイルであってもよいが、構造が単純で組み立てを容易にすることができるため、電熱線がより好ましい。脆弱化された特徴部の周囲のカバー124を強化して、脆弱化された特徴部におけるカバー124の望ましくない破壊を防止するために、脆弱化された特徴部を少なくとも部分的に横切るように、加熱エレメント130は、接着剤を使用してカバー124に取り付けることができる。好ましくは、接着剤は、加熱エレメント130が通電されると溶融し、したがってカバー124の破壊に影響を及ぼさない低融点を有する材料から形成され得る。この実施形態では、接着剤が作製される低融点を有する材料の例には、パラフィンが含まれ得るが、これに限定されない。カバー124の本体121には、加熱エレメント130を固定するための溝(符号は付けていない)を設けることができる。例えば、図10に示すように、加熱エレメント130が電熱線として実装される場合、電熱線の反対側の端部は溝に受容され得る。これは、電熱線の配置を容易にすることができるだけでなく、使用中のそれらのずれを防ぐこともできる。
【0051】
実施形態2
本発明者らは、さらなる研究から、所与の除細動領域に対して、電極板がより多くのカプセルを備える場合、電極板が導電性ペーストを収容するためのより小さな空間を有することを見出した。したがって、実際には、カプセルの数が多いほど、充填できる導電性ペーストの量が増えることに相当するとは限らない。具体的には、第1の実施形態では、電極板100は、例えば14個のカプセル120を備え、このカプセル120は、それらの間に隙間が存在するように分散している。これらの隙間がどれほど大きくても、全く役には立たない。相対的に言えば、そのような隙間が大きいほど、導電性ペーストを収容するために残される気密シェルの領域が小さくなる。したがって、導電性ペーストの充填可能な量の合計は標準未満である。特に、導電性ペーストの充填可能な量を増加させるために電極板を厚くすると、コストの増加とは別に、電極板が嵩張り重くなり、患者に不快感を与える可能性がある。さらに、カプセルの数が増えると、より多くの加熱エレメントを使用する必要があり、これは、消費電力の増加につながるだけでなく、典型的には、より重く、ウェアラブルデバイスの全体的な装着の快適性に悪影響をもたらす、より強力なバッテリーの使用も必要とする。このような理由のために、第2の実施形態では、除細動領域を維持したまま、数は少ないが、長くて幅が広いカプセルが、厚さを薄くした電極板の中に含まれる。このように、電極板は、より多くの導電性ペーストを収容できるより大きな空間を有し、患者により十分な装着の快適性を与えるために、さらに軽量でスリムに設計することができる。さらに、より少ない数の加熱エレメントを使用することができ、電力消費が減少する。さらに、この省電力設計により、それほど強力ではなく、したがって軽量なバッテリーを使用することができ、デバイスの装着の快適性がさらに向上する。
【0052】
第2の実施形態の電極板は、本質的に第1の実施形態の電極板と同じ構造であることは理解されるであろう。同一の特徴については、再度詳細に説明しない。すなわち、第1の実施形態の様々な変形例は、第2の実施形態にも適用可能である。したがって、以下の説明では、それらの相違のみに焦点を当てている。
【0053】
図14は、本発明の第2の好ましい実施形態による電極板の概略的な分解図である。図14に示すように、第2の実施形態による電極板100’は、2つのカプセル120’のみを組み込んでいる。第1の実施形態と比較して、電極板100’はより大きな有効な利用可能な空間を有し、各カプセル120’はより大きなサイズを有する。したがって、所与の領域に対して、第2の実施形態による電極板100’は、より多くの量の導電性ペーストを収容することができ、より軽量でよりスリムであり、患者により十分な装着の快適性を与える。第2の実施形態では、最大の可能な有効な利用可能な空間および充填することができる顕著に多くの量の導電性ペーストを可能にするために2つのカプセル120’が含まれることが好ましい。本発明は、第2および第1の実施形態におけるカプセル120’およびカプセル120の任意の特定の形状に限定されない。例えば、第1の実施形態におけるカプセル120は、半球形状を有することに限定されず、第2の実施形態におけるカプセル120’は、矩形形状を有することに限定されない。
【0054】
図14図17に示すように、第2の実施形態では、前部シェル半体115’に2つの取り付け孔1151’を設けることが好ましい。取り付け孔1151’は、形状およびサイズに関してカプセル120’とほぼ一致する。加えて、カプセル120’は、取り付け孔1151’の側壁に周方向に塗布された接着剤によって、それぞれの取り付け孔1151’に封止して取り付けられる。これは、組み立てを容易にする単純なプロセスを伴うだけでなく、加熱エレメント130の配置を妨げることを回避し、それによって電極板100’がさらに薄い厚さを有することを可能にする。図18に示すように、導電性ペーストを導電性パネル114’上に均一に適用することを確保するために、各カプセル120’は、より大きな細長い出口オリフィス123’を有するように設計されている。さらに、図14に示すように、各出口オリフィス123’には、一列に配置された複数のオーバーフロー開口部112’が設けられている。各オーバーフロー開口部112’も細長く、対応する出口オリフィス123’と同じ長さ方向を有することが好ましい。より具体的には、各出口オリフィス123’には、一列に配置された2つのオーバーフロー開口部112’を設けることができる。各出口オリフィス123’に一列に複数のオーバーフロー開口部112’を設けることは、導電性パネル114’を強化し、それによって組み立てプロセスに影響を与える可能性のあるその変形を防止するだけでなく、複数のオーバーフロー開口部112’からの導電性ペーストの絞り出しを容易にし、その均一な適用を招くという点で有利である。
【0055】
図19図21に示すように、各カプセル120’には、出口オリフィス123’を閉じるためのカバーも設けられる。しかしながら、第2の実施形態では、カバーが片面接着フィルム124’(片面のみに接着剤が塗布されているフィルムである)に結合されている。片面接着フィルム124’は、出口オリフィス123’を閉じるように、出口オリフィス123’の上に片面で取り付けられる。さらに、加熱エレメント130は、片面接着フィルム124’によって固定され、リードを介してホスト400に接続される。必要に応じて、加熱エレメント130に通電して片面接着フィルム124’を加熱し、片面接着フィルム124’を焼いて孔を空け、出口オリフィス123’を開く。さらに、加熱エレメント130と片面接着フィルム124’との間の不十分な接触を防止するために、加熱エレメント130は好ましくは片面接着フィルム124’を介して挿入される。実際には、片面接着フィルム124’は2層からなり得、加熱エレメント130は片面接着フィルム124’の層の間に挿入され得る。片面接着フィルム124’は、複合紙またはアルミ箔などの低融点の材料から形成され得る。あるいは、それは、EVA、PEまたは別の材料から作製されてもよい。
【0056】
図14を再び参照すると、第2の実施形態では、後部シェル半体116’が、いくつかのねじ119によって前部シェル半体115’に固定される。加えて、第2の実施形態では、エアバッグ500と連通する膨張孔141が気密シェルに設けられる。具体的には、膨張孔141は、後部シェル半体116’に取り付けられ、気密シェル110内に延び、エアバッグ500および気密シェル110による共通のガス源の共有使用を可能にする。エアバッグ500は、シリカゲル、ラテックスまたはポリウレタンなどの柔軟な材料から作製され得る。膨張すると、エアバッグは拡張し、導電性パネル114’を患者の皮膚に対して押し付ける。
【0057】
この実施形態の電極板100’は、第1の実施形態のものと同様に動作する。ホスト400が、患者が除細動を必要としていると判断すると、電極板100’が膨張し、エアバッグ500が拡張して電極板100’を患者の皮膚に対して押し付ける。同時に、カプセル120’も一定の圧力を受けるので、加熱エレメント130は、膨張の開始から数秒後に通電される。結果として、片面接着フィルム124’が焼けて孔が空き、孔から導電性ペーストが放出される。ガス圧の作用下で、導電性ペーストは、オーバーフロー開口部112’を通って患者の皮膚上に流れ、電極板と患者の皮膚との間の電気抵抗を減少させる。
【0058】
要約すると、本出願は、WCDデバイスに含まれる膨張ポンプを使用して、膨張ポートを介して気密シェル内にガスを導入し、気密シェルの拡張変形を引き起こすことを可能にする、電極板を提供する。このプロセスでは、カプセルのカバーが破壊されると、気密シェル内のガス圧の作用下で、カプセル内の導電性ペーストが、破壊に起因してカバーの開口から、オーバーフロー開口部を通って導電性の露出面に流出し得る。このように、患者を適時に保護できる導電性ペーストの自動適用とは別に、ガスを爆発的に発生させることによってガス圧を上昇させるガス発生剤の使用を避けることにより、より高い安全性を得ることができる。
【0059】
加えて、ガス発生剤の爆発に起因する十分に高い圧力の代わりに、適切な量のガスを気密シェル内に導入することによって、カプセルのカバーの破壊を簡単に達成することができる。このプロセスでは、気密シェル内に導入されたガスの圧力、加熱作用、またはその両方の結果として、カバーが破壊され得る。これらの破壊を生じるアプローチでは、WCDデバイスに含まれる膨張ポンプによりガス圧を制御することができるため、人体にとって許容できる安全な圧力範囲内にある最大限界圧力でカバーが破壊されることが確保され、導電性ペーストの放出の安全性が確保される。特に、ガス発生剤の瞬間爆発によって生じるガス圧とは異なり、気密シェル内に充填されたガスの圧力がバランスを保ち、全てのカプセルの同時破壊、およびそれによる十分な量の導電性ペーストの放出が確保される。したがって、除細動器デバイスは、緊急事態において患者を保護するために適時に機能することが可能になる。
【0060】
これらとは別に、カバーを加熱することにより、絞り出された導電性ペーストも加熱され、流動性を増加させることができる。このようにして、導電性ペーストの放出が促進される。特に、加熱作用によって、および/または膨張作用によって生じるガス圧の作用下でカバーを破壊することにより、電極板の気密シェルを十分に軽量でスリムに設計して、装着の快適性および適合性を増加させることができる。さらに、本発明の電極板は安価な使い捨て製品であり、患者の治療負担を軽減することができる。
【0061】
さらに、ガス圧の作用下でのカバーの破壊を確実にするために、カバーには、その上に、好ましくは貫通していないくぼみの形態の脆弱化された特徴部を設けていることが好ましい。この場合、カバーが熱負荷および/または圧力負荷を受けると、脆弱化された特徴部が最初に破裂する。これは、構造が簡単で、操作しやすく、安全で確実なカバーの破壊という利点がある。さらに、日常の装着中にカプセルが偶発的に損傷しないことを確実にするために、接着剤が、好ましくは、脆弱化された特徴部の周りに塗布されてその構造強度を向上させる。通常の状況下では、接着剤が加熱エレメントによって加熱されて溶融し、カバーの破壊を確実にすることができる。
【0062】
さらに、本発明の実施形態によれば、十分な構造強度に加えて、電極板の気密シェルは、望ましくは、電極板が、電極板の除細動性能の低下につながり得る、患者の日常的な装着の間の彼/彼女の身体活動によってねじれ、変形するのを回避することができる。さらに、膨張後、電極板は、ある程度の柔軟性を示して拡張し、変形することができ、さらに装着の快適性を向上させることができる。特に、放出される導電性ペーストの量を増加させ、コーティング領域を大きくし、除細動の安全性を高めることができるように、複数のカプセルを含めることができる。さらに、全てのカプセルが同じガス圧条件にさらされるため、カプセルが同時に破壊されなかったとしても、それらの1つまたは複数が他のカプセルよりも先に破壊されても、気密シェル内の圧力が低下せず、したがって残りのカプセルがこれ以上破壊されることができなくなることはない。したがって、導電性ペーストの確実な放出を確保することができる。さらに、この出願によれば、所与の除細動領域に対して、より少ない数のカプセルに、より多くの量の導電性ペーストを充填することができる。このようにして、より多くの量の導電性ペーストが放出されて、さらに安全な除細動を達成することができる。特に、電極板が、より一層軽量でスリムになり、患者により良好な装着の快適性を与えることができる。
【0063】
本発明の特徴は、当業者が本発明をよりよく理解できるように、前述の好ましい実施形態に開示されていることを理解されたい。本明細書の開示に基づいて、本明細書に開示された実施形態と同じ目的および/または利点を達成しながら本発明を修正することは容易であることが当業者には理解されよう。当業者はまた、そのような同様の構成が本発明の開示の範囲から逸脱せず、本発明の開示の範囲を逸脱することなく様々な変更、置換、および改変を受け得ることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0064】
1 ショルダーストラップ
2 除細動パッド
3 検出電極
4 ホスト
5 エアバッグ
100、100’ 電極板
110 気密シェル
111 膨張ポート
112、112’ オーバーフロー開口部
113 露出面
114、114’ 導電性パネル
115、115’ 前部シェル半体
1151、1151’ 取り付け孔
116、116’ 後部シェル半体
117 ケーブルポート
118 突出部
119 ねじ
120、120’ カプセル
121 本体
122 キャビティ
123、123’ 出口オリフィス
124 カバー
125 取り付け凹部
124’ 片面接着フィルム
130 加熱エレメント
141 膨張孔
S 導電性ペースト
200 ベスト
300 検出電極
400 ホスト
500 エアバッグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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【国際調査報告】