(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、PD-L1および/またはPD-L2を含む標的化モジュール
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230623BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230623BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230623BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230623BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230623BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230623BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230623BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230623BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230623BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230623BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230623BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230623BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C07K16/28
C07K16/30
C07K19/00
C12N5/10
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K35/76
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555742
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2021056625
(87)【国際公開番号】W WO2021185807
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517071070
【氏名又は名称】アヴェンセル ユーロップ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AvenCell Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Tatzberg47,01307 Dresden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】エーニンガー・アルミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA17
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4C084MA23
4C084MA66
4C084NA14
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4C084ZB091
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4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
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4C085AA14
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4C085EE01
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4C087AA01
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4C087CA12
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4C087MA22
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4C087NA14
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4C087ZB09
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4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、少なくとも1つのPD-L1および/またはPD-L2結合ドメイン、ならびにタグ結合ドメインまたはタグを含む標的化モジュールに、標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、ベクター、または細胞に、標的化モジュールと、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞とを含む医薬組成物およびキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、
i)少なくとも1つのPD-L1および/またはPD-L2結合ドメイン、
ii)タグ結合ドメインまたはタグ、
を含む標的化モジュールであって、
前記標準化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と組み合わせて投与され、
前記のスイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインを含み、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、および
-第3のドメインはシグナル変換ドメインであり、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
前記の標的化モジュール。
【請求項2】
1価または2価である、請求項1に記載の標的化モジュール。
【請求項3】
PD-L1および/またはPD-L2結合ドメインが、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、3F2.1またはそれらのフラグメントである、請求項1または2に記載の標的化モジュール。
【請求項4】
タグがペプチドエピトープタグである、請求項1~3のいずれか一つに記載の標的化モジュール。
【請求項5】
ペプチドエピトープタグが、mycタグ、Hisタグ、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列、ロイシンジッパー配列、またはヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列である、請求項4に記載の標的化モジュール。
【請求項6】
エフェクター細胞結合ドメインをさらに含み、エフェクター細胞結合ドメインが、ヒトCD3鎖、ヒトT細胞受容体(TCR)またはヒトCD16上のエピトープに特異的に結合する、請求項1~5のいずれか一つに記載の標的化モジュール。
【請求項7】
前記の少なくとも1つのPD-L1および/またはPD-L2結合ドメインおよび/または前記のエフェクター細胞結合ドメインの可変領域が、ヒト化アミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一つに記載の標的化モジュール。
【請求項8】
長さが20~1600個のアミノ酸の範囲内にある、請求項1~7のいずれか一つに記載の標的化モジュール。
【請求項9】
哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、請求項1~8のいずれか一つに記載の標的化モジュールであって、
前記標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールと組み合わせて投与され、
前記の少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、少なくとも1つの標的細胞結合ドメイン、およびタグ結合ドメインまたはタグを含み、
前記の少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、指定される抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドの突然変異体およびアナログを含めた、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーおよびそれらの突然変異体、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4またはそれらの突然変異体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)および胎児アセチルコリン(acethylcholine)受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド(diasialogangliosides)、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、および腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドであり、
請求項1~8のいずれか一つに記載の標的化モジュール、および前記の少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールが、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含む、
前記の標的化モジュール。
【請求項10】
哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、請求項1~9のいずれか一つに記載の標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸、ベクターまたは細胞であって、
前記の核酸、ベクターまたは細胞は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と組み合わせて投与され、
前記スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインを含み、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、および
-第3のドメインはシグナル変換ドメインであり、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
前記の核酸、ベクターまたは細胞。
【請求項11】
誘導性発現系、好ましくはTet-On、Tet-On Advanced、Tet-On 3G、T-REx、または活性化T細胞の核因子(NFAT)に応答性のプロモーターから選択される誘導性発現系をさらに含む、請求項10に記載の核酸、ベクターまたは細胞。
【請求項12】
スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列をさらに含み、
前記のスイッチ可能なキメラ抗原受容体が3つのドメインを含み、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、および
-第3のドメインはシグナル変換ドメインであり、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
請求項10または11に記載の核酸、ベクターまたは細胞。
【請求項13】
-誘導性発現系、好ましくはTet-On、Tet-On Advanced、Tet-On 3G、TREx、またはNFATに応答性のプロモーターから選択される誘導性発現系、ならびに
-スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列、ここで、前記のスイッチ可能なキメラ抗原受容体が3つのドメインを含み、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、および
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、ならびに
-請求項1~9のいずれか一つに記載の標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列、
を含む、核酸、ベクターまたは細胞であって、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、前記の核酸、ベクターまたは細胞。
【請求項14】
哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、請求項1~9のいずれか一つに記載の標的化モジュール、請求項10~13のいずれか一つに記載の核酸、ベクターまたは細胞を含む、医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と組み合わせて投与され、
前記のスイッチ可能なキメラ抗原受容体は3つのドメインを含み、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、および
-第3のドメインはシグナル変換ドメインであり、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
前記の医薬組成物。
【請求項15】
a)請求項1~9のいずれか一つに記載の標的化モジュール、請求項10~13のいずれか一つに記載の核酸、ベクターまたは細胞、ならびに
b)スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞、
を含むキットであって、
前記のスイッチ可能なキメラ抗原受容体は3つのドメインを含み、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、および
-第3のドメインはシグナル変換ドメインであり、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
前記のキット。
【請求項16】
タグが、mycタグ、Hisタグ、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列、ロイシンジッパー配列、またはヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列である、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
タグ結合ドメインが、mycタグ、Hisタグ、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列、ロイシンジッパー配列、またはヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列に結合する抗体または抗体フラグメントである、請求項15または16に記載のキット。
【請求項18】
細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインが、ヒトCD28分子、CD8a鎖、NK細胞受容体、好ましくはナチュラルキラー群NKG2D、のヒンジおよび膜貫通ドメイン;または抗体の定常領域の一部、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項15~17のいずれか一つに記載のキット。
【請求項19】
シグナル変換ドメインが、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD278(ICOS)、DAP10およびCD27、プログラム細胞死-1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)の細胞質領域、CD3鎖、DAP12、CD122(インターロイキン-2受容体β)、CD132(インターロイキン-2受容体γ)、CD127(インターロイキン-7受容体α)、CD360(インターロイキン-21受容体)、活性化Fc受容体ならびにそれらの突然変異体の細胞質領域から選択される、請求項15~18のいずれか一つに記載のキット。
【請求項20】
標的化モジュール、および/またはスイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターもしくは細胞が、医薬組成物の形態にある、請求項15~19のいずれか一つに記載のキット。
【請求項21】
哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、好ましくは癌、感染性疾患または自己免疫疾患の治療における使用のための、請求項15~20のいずれか一つに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、少なくとも1つのPD-L1および/またはPD-L2結合ドメイン、ならびにタグ結合ドメインまたはタグを含む標的化モジュールに、標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、ベクター、または細胞に、標的化モジュールと、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞とを含む医薬組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)とは、抗原特異性を提供する結合部分、および免疫受容体に由来する1種または数種のシグナル伝達鎖からなる人工受容体である(Cartellieriら2010)(非特許文献1)。これらの2つの主なCARドメインは、CARを細胞原形質膜に固定(anchor)する膜貫通ドメインを含む連結ペプチド鎖によって接続される。免疫細胞、特にTおよびNK細胞は、それらの原形質膜に挿入されたCARを発現するように遺伝子改変され得る。そのようなCAR改変免疫細胞が、CAR結合部分の適当な標的を発現しているまたはそれで修飾されている他の細胞または組織構造に遭遇した場合、標的抗原にCAR結合部分が結合すると、CAR改変免疫細胞は標的に架橋される。架橋は、CARシグナル伝達鎖を介したシグナル経路の誘導につながり、CARグラフト免疫細胞の生物学的特性を変化させる。例えば、エフェクターCD4+およびCD8+ T細胞におけるCAR誘発は、溶解性化合物およびサイトカインの分泌などの典型的なエフェクター機能を活性化すると考えられ、最終的にそれぞれの標的細胞の殺傷につながる。対照的に、遺伝子改変された制御性T細胞(Treg)におけるCAR活性化は、インターロイキン(IL)-10または腫瘍成長因子ベータ(TGF-β)分泌などのTreg特異的な免疫調節性および抑制性メカニズムの活性化につながる。キメラ抗原受容体(CAR)を用いて操作された免疫細胞の養子移入は、現在、さもなければ治療不能の悪性、感染性、または自己免疫性の疾患の治療に対する非常に有望な治療選択肢と考えられている。今日まで、2種のCAR-T細胞治療法が、B細胞由来悪性腫瘍の治療に対して販売承認を得ており、この手法の臨床上の実行可能性を提供している。
【0003】
しかしながら、従来のCAR技術は、この治療様態が臨床治療に広く適用され得る前に解決される必要があるいくつかの重大な問題を伴っている。まず第一に、いくつかの安全性問題が取り組まれなければならない。これまでのところ、従来のCARを用いて操作されたT細胞の免疫応答は、患者への注入後に制御することが難しい。深刻な有害事象率は高い(Titovら2018)(非特許文献2)。とりわけ、正常組織での予想外の標的遺伝子発現は、正常細胞に対する操作されたT細胞の急速でかつ厳しい免疫反応を惹起し得、それは重度の副作用を引き起こし得る(Lamersら2006(非特許文献3)、Morganら2010(非特許文献4))。さらに、CAR-T細胞は、新しいクラスの自己増幅細胞薬であることから、注入されたT細胞は、重い腫瘍負荷の存在下で活発な増大を受け得、腫瘍崩壊症候群、サイトカイン放出症候群、およびマクロファージ活性化症候群につながる(BrudnoおよびKochenderfer 2016(非特許文献5)、Maudeら2014(非特許文献6))。従来のCAR技術の別の欠点は、単一抗原に、操作されたT細胞再標的化が制限されることである。そのような単一療法的手法は、治療中に標的抗原を失ってしまう腫瘍回避バリアントの発達のリスクを暗示している。数カ月後の、従来のCAR T細胞療法の下での腫瘍回避バリアントの出現は、臨床試験においてすでに観察された(Gruppら2013(非特許文献7)、Sotilloら2015(非特許文献8))。まとめると、これらの障害は、CAR-T細胞の適用を非常にわずかな適応に制限する。実際、臨床上の有効性の例は、今まで、CD19標的化およびBCMA標的化CAR-T細胞に制限されている。
【0004】
モジュール式「普遍的(universal)」CAR-T(UniCAR)手法は、CARの抗原認識および活性化ドメインを2つの別個の作動単位に分離することによって、これらの限界を克服し得る。T細胞は、タグを認識する普遍的結合ドメインを有するCARを発現するように操作される(Cartellieriら2016(非特許文献9))。抗原特異性は、普遍的CARによって認識されるタグに融合した抗原結合ドメインからなる可溶性アダプタータンパク質によって提供される。Cartellieriらは、インビトロおよびインビボにおけるCD33および/またはCD123陽性の急性骨髄性白血病細胞の処理を記載する。
【0005】
国際公開第2012/082841号(特許文献1)は、普遍的抗タグキメラ抗原受容体発現T細胞、および細胞関連障害、例えば癌を治療する方法を開示する。加えて、国際公開第2013/044225号(特許文献2)は、多様でかつ複数の抗原を標的化するための、T細胞によって発現される普遍的免疫受容体を開示する。両方法は、普遍的抗タグ免疫受容体を発現する改変T細胞の使用を記載する。これらのT細胞は、これらの表面抗原に結合する可溶性モジュールを付加的に適用し、かつそれぞれのタグを担持することによって、疾患関連細胞表面抗原にリダイレクトし得る。国際公開第2016/030414号(特許文献3)は、核タンパク質に基づく内因性タグを使用して、安全でかつ効率的な様式で多様な障害に対してのリダイレクションを可能にする遺伝子改変された免疫細胞を提供する。
【0006】
国際公開第2018/224660号(特許文献4)は、ヒト表面タンパク質またはタンパク質複合体に特異的な化学合成されたペプチド結合単位を含む普遍的抗タグキメラ抗原受容体発現T細胞に対する標的モジュール、およびそれらの利点、特に迅速でかつ容易な調製、安定性の向上、および良好な薬学的特性を記載する。国際公開第2016/168773号(特許文献5)は、受容体結合パートナー、特にペプチド抗原、標的結合部分、特に可溶性T細胞受容体もしくはその一部、または抗体フラグメント;およびリンカーを含む、CAR-T細胞に対するペプチド・ネオエピトープ(PNE)に基づくスイッチを開示する。
【0007】
国際公開第2015/057834号(特許文献6)は、スイッチ可能なCAR-T細胞、および受容体結合パートナー、特にペプチド抗原を含む、CAR-T細胞に対するスイッチを開示する。ペプチド抗原は、天然の、非天然の、または人工のペプチド、特に酵母転写因子GCN4またはそのホモログであり得る。さらに、スイッチは、標的結合部分、特に、好ましくは抗Her2抗体、抗BCMA抗体、抗CD19抗体、抗CEA抗体、およびそのフラグメントから選択される抗体または抗体フラグメント、ならびにリンカーを含む。
【0008】
Yuらは、いわゆるサイトカイン放出症候群を含めた毒性、およびオンターゲット・オフ腫瘍毒性を低下させるための、異なる世代のCAR-T細胞およびストラテジー(Yuら2019(非特許文献10))、特に自殺遺伝子、例えば単純ヘルペス・ウイルス・チミジン・キナーゼ(HSV-tk)もしくは誘導性カスパーゼ9(iCasp9)による、またはFITC結合CAR-T細胞およびFITCを含む小分子および腫瘍標的に対する抗体、特にセツキシマブ、トラスツズマブ、もしくはリツキシマブを使用した普遍的CARシステムによる、特にスイッチ可能なCAR-T細胞を記載する。
【0009】
さらに、Yuらは、PD-1阻害CAR-T細胞(iCAR)を開示し、i-CAR-T細胞の不利な点、特に、iCAR-T細胞は、腫瘍に不在でありまたは下方調節されており、オフターゲット組織によって発現される組織特異的抗原のみを認識すること、ならびにiCAR-T細胞の時間的および空間的制御は不可能であることを指摘する。
【0010】
国際公開第2018/078066号(特許文献7)は、リンカー/標識エピトープ結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル変換ドメインを含む、抗リンカー/標識エピトープ(抗LLE)細胞外CARであって、細胞外リンカー/標識エピトープ結合ドメインは、抗原結合部分(ABM)、天然に存在する標識エピトープ(LaM)、およびリンカー(LiM)を含む標的細胞結合分子(TCBM)に結合し、ABMは、標的細胞上の抗原、好ましくは腫瘍抗原に特異的に結合し、リンカーは、ABMおよびLaMを接続し、リンカー/標識エピトープを形成し、細胞外LLE結合ドメインは、天然に存在するLaMよりも高い選好性でLLEに結合する、抗LLE細胞外CARを開示する。
【0011】
血液学的悪性腫瘍におけるキメラ抗原受容体改変T細胞(CAR-T)を使用して顕著に治療が成功しているにもかかわらず、腫瘍細胞によるPD-L1またはPD-L2等の阻害性免疫チェックポイントの発現を含めた、それらの不均質性および免疫抑制環境を考慮すると、固形腫瘍を標的にすることは依然として困難なままである。前臨床モデルは、CAR-T療法と、PD-1/PD-L1軸を標的にするチェックポイント阻害剤とを組み合わせることが、固形腫瘍においてCAR-Tの抗癌活性を増強するための有望なストラテジーであり得ることを実証し、進行中の第I相試験はこのストラテジーを臨床的に評価しているところである(Grosserら2019(非特許文献11))。しかしながら、その幅広い適用性および効力を限定する、チェックポイント遮断に対する一次耐性および獲得耐性が高頻度に観察される(腫瘍回避バリアント)。加えて、特異性の欠如は、いくつかの臓器に影響を及ぼす免疫関連有害事象の高頻度の発生をもたらす。
【0012】
Rafiqらは、インビボで抗腫瘍効力を増強するための、CAR-T細胞によるPD-1遮断scFvの標的化送達のための方法を開示する(Rafiqら2018(非特許文献12))。さらに、Rafiqらは、CAR-T細胞および免疫チェックポイント遮断阻害剤、特にPD-1遮断mAbを含む併用療法との比較;ならびにCAR-T細胞療法の効力の増加、特に、PD-1遮断mAbの可変重鎖および軽鎖から獲得されたc-mycタグ付けされたscFvを含む、CD19またはMUC16ectoに対するCAR構築物を用いた処理によって、PD-L1腫瘍を持つマウスの生存を増加させることを記載する。
【0013】
さらに、Rafiqらは、CAR-T細胞応答のPD-1誘導性衰退を阻止するための代替法として、PD-1の細胞外ドメインが活性化シグナル伝達ドメインに連結されているキメラスイッチ受容体の共発現、またはドミナント・ネガティブPD-1受容体を発現するCAR-T細胞の共改変、およびこれらの方法の不利な点、特に保護がT細胞自体に限定されることを開示する。ドミナント・ネガティブPD-1受容体を発現させる後者の手法は、Cherkasskyら(Cherkasskyら2017(非特許文献13)によっても開示される。
【0014】
Prosserらは、T細胞に対する抑制性腫瘍PD-L1効果を逆転させるための、CD28の膜貫通および細胞質ドメインを使用した、共刺激受容体へのPD-1の変換によって産生される、PD-1およびCD28キメラ受容体を発現し、一方でPD-L1に結合する受容体の能力を保持する、改変された初代ヒトCD8+細胞傷害性T細胞を記載する(Prosserら2012(非特許文献14))。さらに、Prosserらは、PD-L1腫瘍による、改変T細胞の共刺激を開示する。不利なことには、キメラPD-1:CD28受容体を有する改変T細胞は、それらがPD-L1またはPD-L2陽性細胞に曝露された場合、常に共刺激シグナルを受け取る。PD-L1は、腫瘍細胞によってだけでなく抗原提示細胞によっても発現されることから、この慢性刺激は、腫瘍回避バリアントの発達および非特異的効果(すなわち、自己免疫)のリスク、ならびに発癌性形質転換リスクを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2012/082841号
【特許文献2】国際公開第2013/044225号
【特許文献3】国際公開第2016/030414号
【特許文献4】国際公開第2018/224660号
【特許文献5】国際公開第2016/168773号
【特許文献6】国際公開第2015/057834号
【特許文献7】国際公開第2018/078066号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Cartellieriら2010
【非特許文献2】Titovら2018
【非特許文献3】Lamersら2006
【非特許文献4】Morganら2010
【非特許文献5】BrudnoおよびKochenderfer 2016
【非特許文献6】Maudeら2014
【非特許文献7】Gruppら2013
【非特許文献8】Sotilloら2015
【非特許文献9】Cartellieriら2016
【非特許文献10】Yuら2019
【非特許文献11】Grosserら2019
【非特許文献12】Rafiqら2018
【非特許文献13】Cherkasskyら2017
【非特許文献14】Prosserら2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、最先端技術の不利な点を克服する手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的は、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、好ましくは癌、感染性疾患または自己免疫疾患の治療における使用のための、
i)少なくとも1つのPD-L1および/またはPD-L2結合ドメイン、
ii)タグ結合ドメインまたはタグ
を含む標的化モジュールであって、
標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と組み合わせて投与され、
前記のスイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
前記標的化モジュールによって解決される。
【0019】
有利には、スイッチ可能なキメラ抗原受容体との組み合わせで使用される本発明に従った標的化モジュールは、腫瘍細胞によって発現されるPD-L1および/またはPD-L2を能動的に標的にし、著しい抗腫瘍応答を誘導し得、スイッチ可能なキメラ抗原受容体の抗腫瘍応答は、標的化モジュールの存在下においてのみ誘導される。効果は、標的化モジュールの投与を抑え、中断することによって直ちに中断され得る。さらに有利には、本発明に従った標的化モジュールの薬物動態学的および薬力学的半減期は短く、好ましくは10分間~5時間の範囲内にあり、媒介性免疫応答の急速でかつ可逆的なスイッチオフメカニズムを提供する。有利には、本発明に従った標的化モジュールの毒性は低く、それは、インビトロ実験において、標的化モジュールが補充されない場合、PD-L1低発現細胞を取っておくことによって実証され得るように、急速なスイッチオフメカニズムの結果である。
【0020】
本明細書において使用するとき、「標的化モジュール」という用語は、少なくとも2つの異なるドメインを有する単離されたタンパク質であって、各ドメインは、それぞれ標的または標的の均一な群に特異的であり、少なくとも1つのドメイン、特にPD-L1および/またはPD-L2結合ドメインは、標的細胞に特異的であり;1つのドメイン、特にタグ結合ドメインまたはタグは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体に特異的である、前記の単離されたタンパク質を指す。
【0021】
本発明によれば、標的化モジュールは、少なくとも1つのPD-L1結合ドメイン、または少なくとも1つのPD-L2結合ドメイン、または少なくとも1つのPD-L1結合ドメインおよび少なくとも1つのPD-L2結合ドメインを含む。
【0022】
本明細書において使用するとき、「PD-L1」(Programmed death ligand 1:プログラム死リガンド1)とは、ヒトにおいてCD274またはPDCD1LG1遺伝子によってコードされ、PD-1のリガンドである、配列番号1に従った膜貫通タンパク質を指す。本明細書において使用するとき、「PD-L2」(Programmed death 1 ligand 2:プログラム死1リガンド2)とは、ヒトにおいてCD273またはPDCD1LG2遺伝子によってコードされ、PD-1のリガンドである、配列番号2に従った膜貫通タンパク質を指す。
【0023】
本明細書において使用するとき、「ドメイン」という用語は、タンパク質の残部から独立して存在し得かつ機能し得る、タンパク質配列の一部を指す。
【0024】
本明細書において使用するとき、「特異的」という用語は、サンプルに存在する結合パートナー(例えば、腫瘍抗原)タンパク質を認識しかつ結合するが、サンプルにおける他の分子を実質的に認識せず結合もしない、抗体もしくは抗体フラグメント、またはタンパク質、ペプチド、または低分子量有機リガンドの能力を指す。
【0025】
本明細書において使用するとき、「結合する」または「結合」という用語は、非共有結合、特にイオン結合、水素結合、ファン・デル・ワールス力、および/または疎水性相互作用を指す。
【0026】
本明細書において使用するとき、「組み合わせて投与される」という用語は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の前、それと同時に、および/またはその後に、標的化モジュールが投与される処理を指す。
【0027】
一部の実施形態において、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の、好ましくは1時間~2日間前に、より好ましくは4~24時間前に、それだけで投与される。有利には、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の前の標的化モジュールの投与は、当該スイッチ可能なキメラ抗原受容体を刺激し、スイッチ可能なキメラ抗原受容体担持エフェクター細胞の増大および標的部位でのそれらの蓄積を増加させる。
【0028】
さらなる実施形態において、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と同時に投与される。
【0029】
さらなる実施形態において、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の後、好ましくは3日間~30日間の範囲内で投与される。さらに、標的化モジュールの付加的なそのような投薬を休止期間の後に実施して、スイッチ可能なキメラ抗原受容体担持エフェクター細胞を再活性化し得る。
【0030】
本明細書において使用するとき、「スイッチ可能なキメラ抗原受容体」という用語は、人工キメラ融合タンパク質、特にタグ結合ドメインまたはタグ、細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメイン、ならびにシグナル変換ドメインを含む受容体を指す(
図1)。ドメインは、異なる起源に由来し得、それゆえ受容体はキメラと呼ばれる。有利には、受容体は、タグ結合ドメインまたはタグを用いて、種々の標的化モジュールに結合し得る。
【0031】
有利には、スイッチ可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含む細胞は、標的化モジュールのタグ結合ドメインまたはタグに対する結合特異性を有するスイッチ可能なCARを発現し、それはその結果、標的細胞上のPD-L1および/またはPD-L2に結合する。
【0032】
「自己免疫障害」という用語は、体内に正常に存在する物質および組織に対する、身体の異常な免疫応答(自己免疫)を指す。
【0033】
一部の実施形態において、標的化モジュールは、単量体または二量体形態、好ましくは単量体形態にある。
【0034】
さらなる実施形態において、標的化モジュールは1価または2価である。
【0035】
一部の実施形態において、本発明に従った標的化モジュールは2価であり、1つのPD-L1および1つのPD-L2結合ドメインを含む。
【0036】
好ましくは、PD-L1結合ドメインは抗体または抗体フラグメントである。好ましくは、PD-L2結合ドメインは抗体または抗体フラグメントである。
【0037】
本明細書において使用するとき、「抗体」という用語は、Fab’可変領域を介して抗原に結合するタンパク質を指す。フラグメント抗原結合(Fab)フラグメントとは、抗原に結合する、抗体における領域である。それは、重鎖(VH)および軽鎖(VL)のそれぞれの1つの定常および1つの可変ドメインから構成される。本明細書において使用するとき、「抗体フラグメント」という用語は、抗体の軽鎖または重鎖の少なくとも可変ドメインを含むタンパク質を指す。一実施形態において、抗体フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)、単鎖抗体、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、または単一ドメイン抗体(ナノボディ)から選択される。
【0038】
本明細書において使用するとき、「単鎖可変フラグメント(scFv)」という用語は、共有結合で連結された、抗体の軽鎖および重鎖の可変ドメインを含む人工抗体フラグメントを指す。一実施形態において、抗体の軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変ドメインは、10~25個のアミノ酸の短いペプチドによって共有結合で連結される。さらなる実施形態において、短いペプチドは、VHのN末端とVLのC末端とを連結する、または逆もまた同様。
【0039】
一部の実施形態において、抗体は、動物種から、好ましくは哺乳類、例えばヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、またはネコから獲得される。好ましくは、抗体または抗体フラグメントは、ヒト、ヒト化、または脱免疫化(deimmunized)抗体である。ヒト化抗体は、様々な方式、例えばリサーフェシング(resurfacing)およびCDRグラフトによって調製され得る。リサーフェシングの場合、分子モデリング、統計解析、および突然変異導入の組み合わせを使用して、標的生物の抗体の表面に類似するように抗体の表面のすべての非CDR領域を改変する。CDRグラフトでは、本発明に従ったCDR領域が、公知のヒトフレームワーク領域に導入され、それは元のものと配列が類似している。脱免疫化抗体は、インシリコのペプチド-MHCアフィニティー予測に基づいて予測される免疫原性ホットスポットを与える残基を特異的に突然変異させることによって獲得され得る。
【0040】
一部の実施形態において、抗体または抗体フラグメントは、インシリコ設計を含めた組み換えDNA技法によって、非ヒト抗体の抗原結合領域がヒト抗体のフレームワークに移入されている、ポリクローナル、モノクローナル、またはキメラ抗体である。
【0041】
一部の実施形態において、選択されたタグまたは抗原に対する抗体は、特定のタンパク質を発現する細胞、該タンパク質をコードするDNAまたはRNA、該タンパク質自体または任意の一部、該タンパク質の免疫原性特性を保持するフラグメントまたはオリゴペプチドを用いた注射による、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒトを含むがそれらに限定されない様々な宿主の免疫付与によって産生され得る。
【0042】
一部の実施形態において、PD-L1結合ドメインは、PD-1、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、3F2.1、およびそれらのフラグメントから選択される。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、BMS-936559、アテゾリズマブまたはデュルバルマブのscFvフラグメントである。
【0043】
本明細書において使用するとき、「フラグメント」という用語は、PD-L1結合ドメインのアミノ酸配列の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%からなるタンパク質を指す。
【0044】
本明細書において使用するとき、「PD-1」(Programmed cell death protein 1:プログラム細胞死タンパク質1)という用語は、免疫系を下方調節し、かつT細胞炎症活性を抑制することにより自己寛容を促進することによって、ヒト身体の細胞に対する免疫系の応答を調節することにおいて役割を有する細胞の表面にあるタンパク質を指す。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、配列番号3またはそのフラグメントと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は、抗原PD-L1およびPD-L2に結合する。一部の実施形態において、配列番号3のフラグメントは、PD-1の細胞外ドメインを含む。
【0045】
本明細書において使用するとき、「BMS-936559」という用語は、PD-L1に特異的に結合する抗体を指す。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号4および配列番号5または配列番号67および配列番号68または配列番号69および配列番号70または配列番号71および配列番号72または配列番号73および配列番号74または配列番号75および配列番号76または配列番号77および配列番号78または配列番号79および配列番号80または配列番号81および配列番号82または配列番号83および配列番号84と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原PD-L1に結合する。
【0046】
より好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号4および配列番号5または配列番号77および配列番号78と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原PD-L1に結合する。
【0047】
一部の実施形態において、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、および配列番号104を含む群の1種の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含む。
【0048】
好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号86または配列番号97と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含む。
【0049】
本明細書において使用するとき、「アテゾリズマブ」という用語は、PD-L1に特異的に結合する抗体を指す。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号6および配列番号7と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原PD-L1に結合する。
【0050】
一部の実施形態において、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号57または配列番号65と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含む。
【0051】
本明細書において使用するとき、「デュルバルマブ」という用語は、PD-L1に特異的に結合する抗体を指す。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号8および配列番号9と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原PD-L1に結合する。
【0052】
一部の実施形態において、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号58または配列番号66と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含む。
【0053】
本明細書において使用するとき、「アベルマブ」という用語は、PD-L1に特異的に結合する抗体を指す。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号61および配列番号62または配列番号105および配列番号106と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原PD-L1に結合する。
【0054】
一部の実施形態において、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号107または配列番号108と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含む。
【0055】
本明細書において使用するとき、「3F2.1」という用語は、PD-L1に特異的に結合する抗体を指す。好ましくは、PD-L1結合ドメインは、それぞれが、配列番号63および配列番号64と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原PD-L1に結合する。
【0056】
本明細書において使用するとき、「タグ」という用語は、ペプチドまたはタンパク質に付着した、それらが特異的な原子、イオンまたは分子、特にタグ結合ドメインに結合するのを可能にするペプチド配列を指す。
【0057】
一部の実施形態において、PD-L2結合ドメインは、PD-L2に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントから選択される。
【0058】
一部の実施形態において、タグはペプチドエピトープタグである。さらなる実施形態において、タグは10~20個のアミノ酸を含む。
【0059】
一部の実施形態において、ペプチドエピトープタグは、mycタグ、Hisタグ、好ましくは配列番号10、配列番号11に従った、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列またはその突然変異体;ロイシン・ジッパー配列、好ましくはSYNZIP 1~SYNZIP 48、BATF、FOS、ATF4、ATF3、BACH1、JUND、NFE2L3、HEPTAD(Reinkeら2010)、配列番号12もしくは配列番号13に従った配列またはその突然変異体;あるいはヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列である。好ましくは、ヒトLaタンパク質由来のペプチドエピトープタグは、配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9、または配列番号15もしくは配列番号16に従ったE7B6、最も好ましくは配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9または配列番号16に従ったE7B6である。
【0060】
本明細書において使用するとき、「突然変異体」という用語は、指定されるペプチドまたはタンパク質と少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するペプチドまたはタンパク質を指す。有利には、突然変異体は、指定されるペプチドまたはタンパク質の1種または複数の活性を有し得、特にペプチドエピトープタグと同一のタグ結合ドメインに結合する。
【0061】
一部の実施形態において、突然変異体は、ペプチドまたはタンパク質の短縮型バージョンである。本明細書において使用するとき、「短縮型バージョン(truncated versions)」という用語は、指定されるペプチドまたはタンパク質と少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の鎖長および100%の配列同一性を有し、最も好ましくは少なくとも95%の鎖長および100%の配列同一性を有する、短くされたペプチドまたはタンパク質を指す。有利には、短縮型バージョンは、指定されるペプチドまたはタンパク質の活性の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%を有する。
【0062】
本明細書において使用するとき、「核タンパク質」という用語は、細胞核に見い出されるタンパク質を指す。
【0063】
一部の実施形態において、Hisタグは、好ましくは6~14個のヒスチジン残基の範囲内の、ヒスチジン残基からなるアミノ酸配列である。
【0064】
有利には、核抗原由来のペプチド配列であるタグは、生理学的条件下での天然タンパク質の背景において、対応するタグ結合ドメインによってアクセスされ得ずかつ結合され得ない。さらに有利には、タグは免疫原性ではない。これは、サイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群(CRS)と様々に称される有毒なレベルのサイトカインの放出などの、CAR発現免疫細胞による無制御のオンターゲット・オフサイト毒性のリスクの最小化につながる。
【0065】
好ましい実施形態において、ペプチドエピトープタグは、mycタグ、Hisタグ、好ましくは配列番号10、配列番号11に従った、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列;ロイシン・ジッパー配列、好ましくはSYNZIP 1~SYNZIP 48、BATF、FOS、ATF4、ATF3、BACH1、JUND、NFE2L3、HEPTAD(Reinkeら2010)、配列番号12もしくは配列番号13に従った配列;または、ヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列である。好ましくは、ヒトLaタンパク質由来のペプチドエピトープタグは、配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9、または配列番号15もしくは配列番号16に従ったE7B6、最も好ましくは配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9または配列番号16に従ったE7B6である。
【0066】
さらなる実施形態において、タグ結合ドメインは抗体または抗体フラグメントである。
【0067】
一部の実施形態において、タグ結合ドメインは、ヒト核Laタンパク質由来のタグに結合し、好ましくはタグ結合ドメインは抗体または抗原結合フラグメントであり、タグ結合ドメインは、抗LaエピトープscFv、より好ましくは、以下の配列:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCX1SSQSLLNSRTX2KNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRX3SGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLX4TFGGGTKVElK(配列番号17)
X1~X4は、好ましくはタンパク質を構成する(proteinogenic)アルファアミノ酸残基から選択される、可変アミノ酸残基である、配列;または、配列番号19もしくは配列番号21の配列の一方と少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列、に従ったVLを含む抗LaエピトープscFvを構成する。
【0068】
一部の実施形態において、可変アミノ酸残基X1~X4は、以下のように選択される:
X1は、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、およびアルギニン等の極性でかつ/または正に帯電した残基;好ましくはリジンまたはアルギニンから選択され;
X2は、好ましくはリジンおよびプロリンから選択され;
X3は、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、およびアルギニン等の極性でかつ帯電した残基、好ましくはグルタミン酸およびリジンから選択され;
X4は、イソロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、およびトリプトファン等の疎水性残基;好ましくはロイシンまたはプロリンから選択される。
【0069】
さらなる実施形態において、タグ結合ドメインは抗体または抗原結合フラグメントであり、タグ結合ドメインは、配列番号18または配列番号20の配列の一方と少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む抗LaエピトープscFvを構成する。
【0070】
好ましくは、タグ結合ドメインは、それぞれが、配列番号18(VH)および配列番号19(VL)に従った配列、または配列番号20(VH)および配列番号21(VL)に従った配列と、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む抗LaエピトープscFvを構成する。
【0071】
最も好ましくは、タグ結合ドメインは、配列番号18(VH)および配列番号19(VL)に従った抗La 5B9 scFv、または配列番号20(VH)および配列番号21(VL)に従った抗La 7B6 scFvを構成する。
【0072】
さらなる実施形態において、本発明に従った標的化モジュールは、エフェクター細胞結合ドメインをさらに含み、エフェクター細胞結合ドメインは、ヒトCD3鎖、ヒトT細胞受容体(TCR)、またはヒトCD16上のエピトープに特異的に結合する。
【0073】
本明細書において使用するとき、「エフェクター細胞結合ドメイン」という用語は、エフェクター細胞上のタンパク質またはタンパク質複合体(抗原)に特異的に結合するペプチドまたはタンパク質を指す。本明細書において使用するとき、「タンパク質複合体」という用語は、2以上の会合したタンパク質鎖の群を指す。
【0074】
本明細書において使用するとき、「エフェクター細胞」という用語は、免疫反応を実行する免疫細胞、特に細胞溶解、食作用および/または免疫抑制活性を有する免疫細胞を指す。好ましくは、エフェクター細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞またはマクロファージである。
【0075】
有利には、標的化モジュールは、ドメインに結合し、そのような相互作用の要求される数に関するある特定の閾値を超えることによって、エフェクター細胞を活性化する。
【0076】
好ましくは、エフェクター細胞結合ドメインは抗体または抗体フラグメントである。
【0077】
一実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインは、最高10-8Mの解離定数Kdで、ヒトCD3上のエピトープに特異的に結合する。一般に、エフェクター細胞結合ドメインのアフィニティー、特に解離定数Kdは、表面プラズモン共鳴測定またはフローサイトメトリーに基づく細胞結合アッセイを用いて決定される。
【0078】
好ましくは、エフェクター細胞結合ドメインは、低いアフィニティーで、好ましくは10-4M~10-8Mの範囲内の解離定数Kdで、ヒトCD3上のエピトープに特異的に結合する。
【0079】
一部の実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインは、以下の配列:
i)配列番号22もしくは24に従ったVL、および/または
ii)配列番号23もしくは25に従ったVH
の少なくとも一方を含む。
【0080】
一部の実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインは、配列番号22もしくは24および/または配列番号23もしくは25と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原CD3に結合する。
【0081】
好ましくは、ヒト化抗ヒトCD3エフェクター細胞結合ドメインは、例えばscFvの形態で、配列番号25に従った重鎖(VH)の可変領域、および配列番号24に従った軽鎖(VL)の可変領域を含む。好ましくは、VHおよびVLは、グリシンセリンリンカーを介して接続される。
【0082】
一部の実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインはヒト化抗TCRドメインであり、好ましくは、以下の配列:
i)配列番号26に従ったVL、および/または
ii)配列番号27に従ったVH
の少なくとも一方を含む。
【0083】
一部の実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインは、配列番号26または27に従った配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、当該少なくとも1種の配列は抗原TCRに結合する。
【0084】
一部の実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインはヒト化抗CD16Aドメインであり、好ましくは、以下の配列:
i)配列番号28に従ったVL、および/または
ii)配列番号29に従ったVH
の少なくとも一方、好ましくは配列番号28に従ったVLおよび配列番号29に従ったVHを含む。
【0085】
一実施形態において、エフェクター細胞結合ドメインは、配列番号28または29に従った配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する少なくとも1種の配列を含み、少なくとも1種の配列は抗原CD16Aに結合する。
【0086】
一部の実施形態において、少なくとも1つのPD-L1および/もしくはPD-L2結合ドメイン、ならびに/またはエフェクター細胞結合ドメインの可変領域は、ヒト化アミノ酸配列を含む。
【0087】
一部の実施形態において、本発明に従った標的化モジュールの異なるドメインは、リンカーによって互いと連結される。リンカーは、好ましくは10~20個のアミノ酸残基の短い配列を含む。一部の実施形態において、標的化モジュールは、ドメインが、それらがエフェクター細胞および標的細胞結合に対する特異性を呈するのを可能にする3次元フォールディングを有するように選択される、柔軟性のあるペプチド配列を含む。好ましいリンカーは、1~10、好ましくは1~5から選択されるxおよびyを有する構造(GxSy)を有するグリシン-セリンリンカーである。配列G4S1の1~10リピートが最も好ましい。さらに、抗体誘導体のプロテアーゼ耐性を増加させ得るペプチド配列から構成されるリンカーが好ましい。
【0088】
好ましくは、本発明に従った標的化モジュールは、融合タンパク質として発現される。
【0089】
一部の実施形態において、本発明に従った標的化モジュールは、共刺激リガンド、放射性核種、細胞死誘導化学的化合物、および半減期増加ドメイン、好ましくはIgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、IgG4 Fc、HSA、またはそれらの突然変異体を含む群から選択されるさらなるドメインを含む。本明細書において使用するとき、「突然変異体」という用語は、半減期増加ドメインと少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質を指す。有利には、突然変異体は、指定されるペプチドまたはタンパク質の1種または複数の活性を有し得、特に突然変異体は、半減期増加ドメインのように半減期を増加させる。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明に従った標的化モジュールは、共刺激リガンド、放射性核種、細胞死誘導化学的化合物、および半減期増加ドメイン、好ましくはIgG1 Fc、IgG2 Fc、IgG3 Fc、IgG4 Fc、またはHSAを含む群から選択されるさらなるドメインを含む。
【0091】
一部の実施形態において、本発明に従った標的化モジュールの長さは、20~1600個のアミノ酸の範囲内にある。
【0092】
一部の実施形態において、本発明に従った標的化モジュールは、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法において使用され、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールと組み合わせて投与され、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインおよびタグ結合ドメインもしくはタグを含み、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーおよびそれらの突然変異体、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、またはそれらの突然変異体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン(acethylcholine)受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質(folate binding protein)FBP、葉酸(folate)受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド(diasialoganglioside)、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原(carbohydrate antigen)ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンド(指定した抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドの突然変異体およびアナログを含む)であり、本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含む。
【0093】
本明細書において使用するとき、「標的細胞結合ドメイン」という用語は、標的細胞、好ましくは癌細胞、T細胞、感染細胞、または病原体もしくは寄生生物の表面のタンパク質またはタンパク質複合体(抗原)に特異的に結合する、ペプチド、タンパク質または低分子量有機リガンドを指す。
【0094】
本明細書において使用するとき、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合で連結されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成できるアミノ酸の最大数に限界は課されない。
【0095】
本明細書において使用するとき、「低分子量有機リガンド」という用語は、標的細胞、好ましくは癌細胞、T細胞、感染細胞または病原体もしくは寄生生物の表面のタンパク質またはタンパク質複合体(抗原)に特異的に結合する、最大10キロダルトン、好ましくは最大3キロダルトンの分子量を有する有機分子を指す。
【0096】
「標的細胞結合ドメイン」という用語は、T細胞受容体(TCR)のアルファおよびベータまたはガンマおよびデルタ鎖から構成される可溶性T細胞受容体、それらのフラグメントまたは突然変異体も含む。そのようなTCR由来結合部分は、ヒト白血球抗原クラス(HLA)IおよびIIタンパク質複合体によって提示されるペプチドを認識しかつ結合する。例は、EGFRファミリー、サバイビン、sry様高移動度(motility)群ボックス(SOX)タンパク質ファミリー、黒色腫関連抗原(例えば、自己免疫原性癌/精巣抗原NY-ESO-1、黒色腫抗原ファミリーAのメンバーMAGEA、黒色腫において優先的に発現される抗原PRAME)、および白血病関連抗原(例えば、ウィルムス腫瘍遺伝子1 WT1)などのタンパク質に由来するペプチドに特異的なTCRであるが、それらに限定されない。
【0097】
本明細書において使用するとき、「突然変異体」という用語は、指定される抗体、抗体フラグメント、タンパク質またはペプチドと少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するペプチドまたはタンパク質を指す。有利には、突然変異体は、指定される抗体、抗体フラグメント、タンパク質またはペプチドと同一の抗原に結合する。
【0098】
本明細書において使用するとき、「アナログ」という用語は、指定される抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドと高い程度の構造同一性を有し、好ましくは少なくとも1つの原子、原子の群、官能基または部分構造が、別の群の原子、例えばヒドロキシ基で置き換えられている分子を指す。一部の実施形態において、ソマトスタチン(SRIF14)のアナログは、オクトレオチドまたはパシレオチドである。有利には、アナログは、指定される抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドと同一の抗原に結合する。
【0099】
一部の実施形態において、指定される抗体、抗体フラグメント、タンパク質またはペプチドのアナログは、Dアミノ酸、擬ペプチド結合、アミノアルコール、タンパク質を構成しないアミノ酸、非天然アミノ酸、改変された側鎖を有するアミノ酸および/または環状タンパク質を含む群から選択される改変を含む。有利には、これらのアナログは、安定性の増加を示す。
【0100】
さらなる実施形態において、標的細胞結合ドメインは、T細胞受容体(TCR)のアルファおよびベータまたはガンマおよびデルタ鎖からなる可溶性T細胞受容体である。
【0101】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインおよびタグ結合ドメインまたはタグを含み、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバー、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、またはErbB4;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体または抗体フラグメントであり、本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメインおよび同一のタグ結合ドメインまたはタグを含む。
【0102】
さらなる実施形態において、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、PSCAおよびPSMA、CD19およびCD20、CD19およびCD22、CD19、CD20およびCD22、CD19およびCD123、CD33およびCD123、CD33およびCD99、CD33およびCD366、CD123およびCD366、CD123およびCD371、CD366およびCD371、ErbB-1およびErbB-2、PSCAおよびErbB-2、PSMAおよびCEA、IL-13Rα2およびErbB-2、CD38およびCD269、メソテリンおよびムチン16から選択される表面抗原に結合する2つの標的細胞結合ドメインを含む。
【0103】
好ましくは、本発明に従った標的化モジュールは、配列番号57~59に従った配列の1つを含み、より好ましくは本発明に従った標的化モジュールは、配列番号57~59に従った配列の1つからなる。
【0104】
好ましい実施形態において、本発明に従った標的化モジュールは、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法において使用され、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールの投与の後、好ましくは3日間~30日間の範囲内で投与される。有利には、さらに別の標的化モジュールと組み合わせ標的化モジュールを使用することによって(ここで、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞、およびさらに別の標的化モジュールの投与の後に投与される)、PD-L1療法の有害な全身効果は低下する。さらに、標的化モジュールの付加的なそのような投薬を休止期間の後に実施して、スイッチ可能なキメラ抗原受容体担持エフェクター細胞を再活性化し得る。
【0105】
より好ましくは、本発明に従った標的化モジュールは、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法において使用され、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の前、好ましくは1時間~2日間前に、より好ましくは4~24時間前に、それだけで投与され、本発明に従った標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の後、好ましくは3日間~30日間の範囲内で投与される。さらに、標的化モジュールの付加的なそのような投薬を休止期間の後に実施して、スイッチ可能なキメラ抗原受容体担持エフェクター細胞を再活性化し得る。
【0106】
本発明は、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療における使用のための、本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、ベクター、または細胞であって;
核酸、ベクター、または細胞は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と組み合わせて投与され、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、ベクター、または細胞をさらに含む。
【0107】
本発明によれば、核酸、ベクター、および/または細胞は単離される。本明細書において使用するとき、「単離された」という用語は、天然の状態から変更されたまたは取り出されたことを意味する。
【0108】
一部の実施形態において、核酸はcDNAである。本明細書において使用するとき、「cDNA」(相補的DNA)という用語は、逆転写酵素という酵素によって触媒される反応において、一本鎖RNA、例えばmRNAから合成される二本鎖DNAを指す。一部の実施形態において、cDNAは合成起源のものである。さらなる実施形態において、cDNAはmRNAに由来し、それゆえ、ゲノムDNAとは対照的に、エクソンのみを含有し、イントロンを含有しない。
【0109】
ベクターは、好ましくはプラスミド、人工染色体、線状化DNAもしくはRNA、ウイルス粒子、または宿主細胞もしくは宿主生物のゲノムに安定に組み入れられる発現カセットを含有する別のベクターである。
【0110】
一部の実施形態において、細胞は、免疫細胞、好ましくは細胞溶解、食作用または免疫抑制活性を有する免疫細胞、例えばT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびマクロファージから選択される。好ましい実施形態において、細胞は、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタT細胞、または幹細胞メモリーT細胞もしくはセントラルメモリーT細胞、細胞傷害性T細胞などのT細胞の亜集団を含めたT細胞;あるいはNK細胞から選択される。
【0111】
一部の実施形態において、核酸、ベクター、または細胞は、誘導性発現系をさらに含む。一部の実施形態において、誘導性発現系は、lacオペロン、トランスポゾンTn10、またはテトラサイクリンオペロンを含むがそれらに限定されない、原核生物オペロンをベースとする。他の実施形態において、誘導性発現系は、ステロイド受容体、エストロゲン受容体、プロゲステロン、またはメタロチオネインをベースとする発現システムを含むがそれらに限定されない、真核生物シグナル伝達経路の構成要素をベースとする。
【0112】
好ましい実施形態において、誘導性発現系は、Tet-On(登録商標)(また、rtTA;TET Systems、タカラバイオ)、Tet-On(登録商標)Advanced(また、rtTA2S-M2またはrtTA2-syn1;TET Systems、タカラバイオ)、Tet-On(登録商標)3G(また、rtTA-V16;TET Systems、タカラバイオ)、T-REx(登録商標)(Life Technologies)、または活性化T細胞の核因子(NFAT)に応答性のプロモーターから選択される。
【0113】
本明細書において使用するとき、「Tet-On」という用語は、少なくともテトラサイクリン応答エレメント(TRE)およびリバース・テトラサイクリン・トランスアクチベーター(rtTA)タンパク質またはそれらのバリアントを含む、誘導性発現系を指す。本明細書において使用するとき、「リバース・テトラサイクリン・トランスアクチベーター(rtTA)タンパク質」という用語は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリンによって結合された場合、TRE上のオペレーター(tetO)に結合し得るタンパク質を指す。ゆえに、システムへのテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体の導入は、遺伝子産物の転写を始動する。一部の実施形態において、誘導性発現系は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列、および/または本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導し、好ましくは誘導性発現系は、本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導する。
【0114】
本明細書において使用するとき、「バリアント」という用語は、ヌクレオチドまたは指定されるアミノ酸配列の1種または複数の機能を果たし得る、ヌクレオチド配列、ペプチド、またはタンパク質を指す。
【0115】
本明細書において使用するとき、「誘導体」という用語は、少なくとも1つの原子、原子の群、官能基または部分構造が、別の原子、原子の群、官能基または部分構造、例えばヒドロキシ基で置き換えられている、分子と高い程度の構造同一性、好ましくは同じ骨格(scaffold)を有する分子を指す。有利には、誘導体は、指定される分子の1種または複数の活性を有し得る。
【0116】
有利には、Tet-Onシステムは、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体による抑止よりもむしろ、そのより迅速な応答性およびその活性化で、Tet-Offよりも好ましい。
【0117】
一部の実施形態において、rtTAタンパク質は、rTetR(リバース・テトラサイクリン・リプレッサー)、大腸菌(Escherichia coli)由来のTetR(テトラサイクリン・リプレッサー)の突然変異バージョン、および単純ヘルペスウイルス由来のビリオンタンパク質16(VP16)活性化ドメインの融合タンパク質である。好ましい実施形態において、rtTAは、配列番号30、配列番号31、または配列番号32を含む。
【0118】
本明細書において使用するとき、「テトラサイクリン応答エレメント(TRE)」という用語は、そのプロモーターの下流にある1つまたは複数の遺伝子の発現の増加によってrtTAタンパク質の結合に応答する、最小プロモーターを有する少なくとも1つのTetO配列を指す。
【0119】
一部の実施形態において、TREは、好ましくはスペーサー配列によって、より好ましくは配列番号34を含むスペーサー配列によって分離された、配列番号33に従った19bpの細菌TetO配列の2~9リピート、好ましくは7リピートからなる。
【0120】
好ましい実施形態において、TREは配列番号35である。
【0121】
本明細書において使用するとき、「Tet-On Advanced」という用語は、配列番号31のrtTAに対応する、ヒトコドン最適化されかつ3つの最小転写活性化ドメインを含む、基底発現の低下およびドキシサイクリンに対する感度の増加を有するTet-Onシステムを指す。
【0122】
本明細書において使用するとき、「Tet-On 3G」という用語は、配列番号32のrtTAに対応する、ドキシサイクリンに対する感度のさらなる増加を有するTet-Onシステムを指す。
【0123】
本明細書において使用するとき、「T-REx」という用語は、関心対象の遺伝子が、上流のCMVプロモーターおよび2つのTetO2部位によって隣接されるシステムを指す。各TetO2部位へのTetRホモ二量体の結合は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体の非存在下で遺伝子発現を抑止する。TetRホモ二量体に対するテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体の存在下で、それらはTetO2から解離し、関心対象の遺伝子の発現をもたらす。
【0124】
本明細書において使用するとき、「活性化T細胞の核因子(NFAT)に応答性のプロモーター」という用語は、遺伝子産物の転写を始動する活性化T細胞の核因子(NFAT)によって結合される、ヒト細胞核に天然に存在するプロモーターを指す。本明細書において使用するとき、「活性化T細胞の核因子(NFAT)」という用語は、転写のための1つのDNA結合ドメイン、およびカルシニューリンによる活性化のための2つのカルシニューリン結合ドメインを有する転写因子を指す。カルシニューリンによる活性化は、カルシウムセンサータンパク質であるカルモジュリンによる、セリン/トレオニンホスファターゼであるカルシニューリンの活性化によって生じる。活性化されたカルシニューリンは、NFATタンパク質のアミノ末端におけるセリンに富む領域(SRR)およびSPリピートを脱リン酸化し、核局在化シグナルを曝露する立体構造変化をもたらし、NFAT核輸送をもたらす。
【0125】
一部の実施形態において、NFATに応答性のプロモーターは、任意選択的にスペーサー配列によって分離され、その後に最小プロモーターが続く、配列番号36に従った30bpのヒトNFAT結合配列の2~12リピート、好ましくは6リピートからなる。
【0126】
一部の実施形態において、最小プロモーターは、配列番号37または配列番号38に従ったインターロイキン-2(IL-2)プロモーターに由来する。
【0127】
一部の実施形態において、NFATに応答性のプロモーターは、配列番号39または配列番号40を有する。
【0128】
さらなる実施形態において、本発明に従った核酸、ベクター、または細胞は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列をさらに含み、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する。
【0129】
本発明の別の態様は、
-好ましくはTet-On、Tet-On Advanced、Tet-On 3G、T-REx、またはNFATに応答性のプロモーターから選択される誘導性発現系、ならびに
-スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列であって、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含む、ヌクレオチド配列、ならびに
-本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列であって、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、ヌクレオチド配列
を含む、核酸、ベクター、または細胞である。
【0130】
一部の実施形態において、誘導性発現系は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列、および/または本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導し、好ましくは誘導性発現系は、本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導する。
【0131】
本発明は、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療における使用のための、本発明に従った標的化モジュール、本発明に従った核酸、ベクター、または細胞を含む医薬組成物であって;
医薬組成物は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞と組み合わせて投与され、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、
医薬組成物をさらに含む。
【0132】
医薬組成物は、好ましくは非経口的に、特に好ましくは静脈内に投与される。一実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与に適切な形態で存在する。好ましくは、医薬組成物は、溶液、エマルションまたは懸濁液である。
【0133】
一部の実施形態において、医薬組成物は、1ng/ml~500mg/mlの範囲内の、好ましくは5μg/ml~5mg/mlの範囲内の濃度の、本発明に従った標的化モジュール、核酸、ベクターおよび/または細胞を含む注射用緩衝溶液である。
【0134】
一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤または担体をさらに含む。さらなる実施形態において、担体は、水、水性バッファー溶液、0.9%生理食塩溶液、5%グルコース、5%キシリトール、0.3%グリシン溶液、リンゲル溶液、アミノ酸溶液、および同様の溶媒から選択される。さらなる実施形態において、水性バッファー溶液は、pH5.0~pH7.0の範囲内のpH値を有する水性ヒスチジン、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム緩衝溶液から選択される。一部の実施形態において、バッファー溶液は、1mmol/l(mM)~500mMの範囲内の、好ましくは5mM~20mMの範囲内の、とりわけ好ましくは5mM~10mMの範囲内のバッファー濃度を有する。さらなる実施形態において、担体は、好ましくは1mM~300mMの範囲内の、とりわけ好ましくは150mMの濃度の、塩化ナトリウムを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、好ましくは1mM~900mMの範囲内の、とりわけ好ましくは50mMおよび600mMの範囲内の濃度の、安定剤をさらに含む。一部の実施形態において、安定剤は、スクロース、トレハロース、またはL-メチオニンである。
【0135】
一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、およその生理学的条件を提供しかつ/または安定性を増加させる化合物、例えば、pH値を調整するための剤および緩衝化剤、毒性等を調整するための剤を指す。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、0.0001%(w/v)~1%(w/v)の範囲内の、とりわけ好ましくは0.001%(w/v)~0.1%(w/v)の範囲内の酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、およびポリソルベート-80、好ましくはポリソルベート-80から選択される。
【0136】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、25μg/日~100mg/日の範囲内の投薬分量で、好ましくは0.1mg/日~20mg/日の範囲内の投薬分量で標的化モジュールを含む。
【0137】
さらなる実施形態において、医薬組成物は無菌である。医薬組成物は、滅菌濾過を含むがそれに限定されない、従来の周知の技法によって滅菌される。
【0138】
一部の実施形態において、医薬組成物は、対象への投与のために使用される。
【0139】
一部の実施形態において、医薬組成物は、保存の前に凍結乾燥されるか、または周囲温度で溶液として、もしくは冷凍保存を含むがそれに限定されない、周囲温度よりも下で保存される。
【0140】
一部の実施形態において、医薬組成物は、対象への投与の前に注入液および安定剤溶液中で再構成されかつ/または希釈される。再構成または注入/安定化に使用される溶液は、医薬組成物に対して言及される構成要素または同様の構成要素のいずれかを含有し得る。
【0141】
本発明の別の態様は、
a)本発明に従った標的化モジュール、本発明に従った核酸、ベクターまたは細胞、ならびに
b)スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞であって、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞
を含むキットである。
【0142】
一部の実施形態において、タグはペプチドエピトープタグである。さらなる実施形態において、タグは10~20個のアミノ酸を含む。
【0143】
一部の実施形態において、ペプチドエピトープタグは、mycタグ、Hisタグ、好ましくは配列番号10、配列番号11に従った、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列またはそれらの突然変異体;ロイシン・ジッパー配列、好ましくはSYNZIP 1~SYNZIP 48、BATF、FOS、ATF4、ATF3、BACH1、JUND、NFE2L3、HEPTAD(Reinkeら2010)、配列番号12もしくは配列番号13に従った配列またはそれらの突然変異体、あるいはヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列である。好ましくは、ヒトLaタンパク質由来のペプチドエピトープタグは、配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9、または配列番号15もしくは配列番号16に従ったE7B6、最も好ましくは配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9または配列番号16に従ったE7B6である。
【0144】
一部の実施形態において、Hisタグは、好ましくは6~14個のヒスチジン残基の範囲内の、ヒスチジン残基からなるアミノ酸配列である。
【0145】
好ましい実施形態において、ペプチドエピトープタグは、mycタグ、Hisタグ、好ましくは配列番号10もしくは配列番号11に従った、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列;ロイシン・ジッパー配列、好ましくはSYNZIP 1~SYNZIP 48、BATF、FOS、ATF4、ATF3、BACH1、JUND、NFE2L3、HEPTAD(Reinkeら2010)、配列番号12もしくは配列番号13に従った配列;または、ヒト核タンパク質由来の、好ましくはヒトLaタンパク質由来の短い線状ペプチド配列である。
【0146】
さらなる実施形態において、タグ結合ドメインは抗体または抗体フラグメントである。
【0147】
一部の実施形態において、タグ結合ドメインは、mycタグ、Hisタグ、酵母転写因子GCN4由来の短い線状ペプチド配列、ロイシン・ジッパー配列、またはヒト核タンパク質由来の短い線状ペプチド配列に結合する抗体または抗体フラグメントである。
【0148】
一部の実施形態において、タグ結合ドメインは、ヒト核Laタンパク質由来のタグに結合し、好ましくはタグ結合ドメインは抗体または抗原結合フラグメントであり、タグ結合ドメインは、抗LaエピトープscFv、より好ましくは、以下の配列:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCX1SSQSLLNSRTX2KNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRX3SGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLX4TFGGGTKVEIlK(配列番号17)
ここでX1~X4は、好ましくはタンパク質を構成するアルファアミノ酸残基から選択される、可変アミノ酸残基である、配列;または、配列番号19もしくは配列番号21の配列の一方と少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列、に従ったVLを含む抗LaエピトープscFvを構成する。
【0149】
一部の実施形態において、可変アミノ酸残基X1~X4は、以下のように選択される:
X1は、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、およびアルギニン等の極性でかつ/または正に帯電した残基から選択され;好ましくはX1は、リジンまたはアルギニンであり;
X2は、好ましくはリジンおよびプロリンから選択され;
X3は、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、およびアルギニン等の極性でかつ帯電した残基、好ましくはグルタミン酸およびリジンから選択され;
X4は、イソロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、およびトリプトファン等の疎水性残基から選択され;好ましくはZ4は、ロイシンまたはプロリンから選択される。
【0150】
さらなる実施形態において、タグ結合ドメインは抗体または抗原結合フラグメントであり、タグ結合ドメインは、配列番号18もしくは配列番号20の配列の一方と少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む抗LaエピトープscFvを構成する。
【0151】
好ましくは、タグ結合ドメインは、それぞれが、配列番号18(VH)および配列番号19(VL)に従った配列、または配列番号20(VH)および配列番号21(VL)に従った配列と、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む抗LaエピトープscFvを構成する。
【0152】
最も好ましくは、タグ結合ドメインは、配列番号18(VH)および配列番号19(VL)に従った抗La 5B9 scFv、または配列番号20(VH)および配列番号21(VL)に従った抗La 7B6 scFvを構成する。
【0153】
本明細書において使用するとき、「細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメイン」という用語は、スイッチ可能なCARを細胞の細胞膜に固定し、その特定の標的化モジュールに最適に結合するために細胞の表面から突き出している、タグ結合ドメインまたはタグに接続された柔軟性のあるペプチド配列を指す。
【0154】
一部の実施形態において、細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインは、ヒトCD28分子、CD8a鎖、NK細胞受容体、好ましくはナチュラルキラー群NKG2D、のヒンジおよび膜貫通ドメイン;または抗体の定常領域の一部、ならびにそれらの組み合わせから選択される。本明細書において使用するとき、「それらの組み合わせ」という用語は、種々のヒンジおよび膜貫通ドメインの組み合わせを指す。
【0155】
Pinthusら2003、Pinthusら2004、およびCartellieriら2016は、CARにおけるヒトCD28分子のヒンジおよび膜貫通ドメインの使用を記載する(Pinthusら2003、Pinthusら2004、Cartellieriら2016)。
【0156】
Carpentinoら、Miloneら、およびZhaoらは、CARにおけるヒトCD8α分子のヒンジおよび膜貫通ドメインの使用を記載する(Carpentinoら2009、Miloneら2009、Zhaoら2009)。
【0157】
Zhangら2005およびZhangら2006は、CARにおけるNKG2Dのヒンジおよび膜貫通ドメインの使用を記載する(Zhangら2005、Zhangら2006)。
【0158】
Hombachら、Frigaultら、およびWangらは、免疫グロブリンG1(IgG)の定常領域の一部のヒンジおよび膜貫通ドメインの使用を記載する(Hombachら2007、Frigaultら2015、Wangら2007)。Frigaultらは、IgG4の定常領域のヒンジドメインの使用を記載する。
【0159】
細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインの組み合わせの例は、CD28細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD8アルファ細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD28またはCD137膜貫通ドメインと組み合わせられたIgG1またはIgG4定常領域であるが、それらに限定されない。
【0160】
本明細書において使用するとき、「シグナル変換ドメイン」という用語は、ヒト細胞表面タンパク質またはタンパク質複合体(標的細胞)への、スイッチ可能なCARを発現する細胞(エフェクター細胞)の架橋によって、細胞内にシグナルを送るペプチド配列を指す。エフェクターおよび標的細胞の間の架橋は、本発明に従った標的化モジュールによって媒介される。
【0161】
一部の実施形態において、シグナル変換ドメインは、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD278(ICOS)、DAP10およびCD27、プログラム細胞死-1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD3鎖の細胞質領域、DAP12、CD122(インターロイキン-2受容体β)、CD132(インターロイキン-2受容体γ)、CD127(インターロイキン-7受容体α)、CD360(インターロイキン-21受容体)、活性化Fc受容体、ならびにそれらの突然変異体、の細胞質領域から選択される。
【0162】
本明細書において使用するとき、「突然変異体」という用語は、シグナル変換ドメインと少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質を指す。有利には、突然変異体は、指定されるシグナル変換ドメインと同じ方式で、ヒト細胞表面タンパク質またはタンパク質複合体(標的細胞)への、スイッチ可能なCARを発現する細胞(エフェクター細胞)の架橋によって、細胞内にシグナルを送る。
【0163】
一部の実施形態において、突然変異体は、短縮型バージョンである。本明細書において使用するとき、「短縮型バージョン」という用語は、シグナル変換ドメインと少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の鎖長および100%の配列同一性を有し、最も好ましくは少なくとも95%の鎖長および100%の配列同一性を有する、短くされたタンパク質を指す。有利には、短縮型バージョンは、指定されるシグナル変換ドメインの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の活性を有する。
【0164】
Hombachら、Maherら、およびCartellieriらは、CARにおけるシグナル変換ドメインとしてのCD28の細胞質領域の使用を記載する(Hombachら2001、Maherら2002、Cartellieriら2016)。Guedanらは、シグナル変換ドメインとしてのCD28の細胞質領域の突然変異体の使用を記載する(Guedanら2020)。
【0165】
MiloneらおよびFinneyらは、シグナル変換ドメインとしてのCD137(4-1BB)の細胞質領域の使用を記載する(Finneyら2004、Miloneら2009)。
【0166】
Finneyら、ならびにHombachおよびAbkenは、CARにおけるシグナル変換ドメインとしてのCD134(OX40)の細胞質領域の使用を記載する(Finneyら2004、HombachおよびAbken 2011、HombachおよびAbken 2013)。
【0167】
Guedanらは、シグナル変換ドメインとしてのCD278(ICOS)の細胞質領域の使用を記載する(Guedanら2018)。
【0168】
Zhangらは、シグナル変換ドメインとしてのDAP10の使用を記載する(Zhangら2005)。
【0169】
Fedorovらは、CARにおけるシグナル変換ドメインとしてのプログラム細胞死1(PD-1)のおよび細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)の使用を記載する(Fedorovら2013)。
【0170】
GongらおよびGadeらは、CARにおけるシグナル変換ドメインとしてのCD3鎖、特にCD3ζ鎖の細胞質領域の使用を記載する(Gongら1999、Gadeら2005)。
【0171】
Topferらは、CARにおけるシグナル変換ドメインとしてのDAP12の使用を記載する(Topferら2015)。
【0172】
Kagoyaらは、CARにおけるシグナル変換ドメインとしてのインターロイキン受容体に由来するシグナル伝達鎖またはモチーフの使用を記載する(Kagoyaら2018)。
【0173】
LamersらおよびKershawらは、シグナル変換ドメインとしての活性化Fc受容体、特にFcイプシロン受容体γ鎖の使用を記載する(Lamersら2004、Kershawら2006)。
【0174】
好ましい実施形態において、シグナル変換ドメインは、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD278(ICOS)、DAP10およびCD27、プログラム細胞死-1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD3鎖の細胞質領域、DAP12、CD122(インターロイキン-2受容体β)、CD132(インターロイキン-2受容体γ)、CD127(インターロイキン-7受容体α)、ならびにCD360(インターロイキン-21受容体)、活性化Fc受容体、の細胞質領域から選択される。
【0175】
一部の実施形態において、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、とりわけ好ましくはCD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD278(ICOS)、DAP10およびCD27、プログラム細胞死-1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)の細胞質領域、CD3鎖、DAP12、CD122(インターロイキン-2受容体β)、CD132(インターロイキン-2受容体γ)、CD127(インターロイキン-7受容体α)、CD360(インターロイキン-21受容体)、活性化Fc受容体、ならびにそれらの突然変異体、の細胞質領域から選択される、少なくとも1つのシグナル変換ドメイン、好ましくは2、3、4つ、またはそれを超えるシグナル変換ドメインを含む。
【0176】
好ましい実施形態において、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、とりわけ好ましくはCD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD278(ICOS)、DAP10およびCD27、プログラム細胞死-1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、CD3鎖の細胞質領域、DAP12、CD122(インターロイキン-2受容体β)、CD132(インターロイキン-2受容体γ)、CD127(インターロイキン-7受容体α)、ならびにCD360(インターロイキン-21受容体)、活性化Fc受容体、の細胞質領域から選択される、少なくとも1つのシグナル変換ドメイン、好ましくは2、3、4つ、またはそれを超えるシグナル変換ドメインを含む。
【0177】
さらなる実施形態において、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は第4のドメインを含み、第4のドメインは、細胞表面のキメラ抗原受容体を検出するまたはキメラ抗原受容体T細胞を刺激する働きをし得る、受容体の細胞外部分における短いペプチドリンカーである。
【0178】
さらなる実施形態において、第4のドメインは、第4のドメインに特異的に結合するモノクローナル抗体(mab)に対する線状エピトープを形成する。一部の実施形態において、第4のドメインは、少なくとも1つの線状エピトープ、好ましくは配列番号15または配列番号16に従ったE7B6を含む。
【0179】
一部の実施形態において、第4のドメインは、タグ結合ドメインまたはタグと、細胞外ヒンジドメインまたは細胞外ヒンジドメインの不可欠な部分との間に位置する。
【0180】
有利には、第4のドメインを有するスイッチ可能なCARグラフト細胞は特異的に刺激されて、インビトロでもインビボでも、非グラフト細胞と比較して優先的に増殖しかつより長く持続することができる。さらに有利には、第4のドメインは、混合された細胞集団からスイッチ可能なCARグラフト細胞を精製するために、またはスイッチ可能なCARグラフト細胞媒介性免疫応答を弱め、かつスイッチ可能なCARグラフト細胞をインビボで排除するためにも使用され得る。
【0181】
さらなる実施形態において、スイッチ可能なCARはシグナルペプチドを含む。有利には、シグナルペプチドは、エフェクター細胞の細胞表面での発現を可能にする。一実施形態において、シグナルペプチドは、タグ結合ドメインまたはタグの前のスイッチ可能なCARヌクレオチド配列のN末端にある。一部の実施形態において、シグナルペプチドは、共翻訳的にまたは翻訳後的にタンパク質を分泌経路に標的化し、免疫原性反応を逃れるために、CD28、CD8アルファ、IL-2、またはヒト起源の抗体の重鎖もしくは軽鎖などのタンパク質由来のリーダーペプチドから選択される。
【0182】
さらなる実施形態において、核酸はcDNAである。
【0183】
一部の実施形態において、核酸は、配列番号41~48の配列のうちの1つに従ったスイッチ可能なCARをコードする。好ましくは、核酸は、配列番号49~56の配列のうちの1つである。
【0184】
一部の実施形態において、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞は、免疫細胞、好ましくは細胞溶解、食作用または免疫抑制活性を有する免疫細胞、例えばT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびマクロファージから選択される。好ましい実施形態において、細胞は、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタT細胞、または幹細胞メモリーT細胞もしくはセントラルメモリーT細胞、細胞傷害性T細胞などのT細胞の亜集団を含めたT細胞;あるいはNK細胞から選択される。
【0185】
一部の実施形態において、キットは、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールをさらに含み、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、少なくとも1つの標的細胞結合ドメイン、およびタグ結合ドメインまたはタグを含み、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーおよびそれらの突然変異体、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、またはそれらの突然変異体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチド、または低分子量有機リガンド(指定した抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドの突然変異体およびアナログを含む)であり、本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含む。そのようなキットは、免疫系からの腫瘍回避を避けるのに適切である。
【0186】
「標的細胞結合ドメイン」という用語は、T細胞受容体(TCR)のアルファおよびベータまたはガンマおよびデルタ鎖から構成される可溶性T細胞受容体、それらのフラグメントまたは突然変異体も含む。
【0187】
好ましい実施形態において、キットは、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールをさらに含み、少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインおよびタグ結合ドメインまたはタグを含み、少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバー、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、またはErbB4;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体または抗体フラグメントであり、本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含む。
【0188】
一部の実施形態において、キットは、
・本発明に従った核酸、ベクターまたは細胞、ならびに
・スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞であって、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含む、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞
・少なくとも1つのさらに別の標的化モジュール
を含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合し、
本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含む。
【0189】
一部の実施形態において、キットは、1~3つの標的化モジュール、好ましくは本発明に従った1つの標的化モジュール、および1つまたは2つのさらに別の標的化モジュールを含む。
【0190】
一部の実施形態において、タグ結合ドメインまたはタグは、スイッチ可能なCARを含むポリペプチドのアミノ末端に存在する。有利には、アミノ末端にタグ結合ドメインまたはタグを置くことは、タグ結合ドメインまたはタグが、標的細胞に結合している標的化モジュールに妨げるものなくアクセルすることを可能にする。
【0191】
一部の実施形態において、キットは、誘導物質、好ましくはテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリンをさらに含む。
【0192】
キットの一部の実施形態において、標的化モジュール、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターおよび/または細胞は、医薬組成物の形態にある。
【0193】
医薬組成物は、好ましくは非経口的に、特に好ましくは静脈内に投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与に適切な形態で存在する。好ましくは、医薬組成物は、溶液、エマルションまたは懸濁液である。
【0194】
一部の実施形態において、医薬組成物は、1μg/ml~500mg/mlの、好ましくは50μg/ml~50mg/mlの、本発明に従った標的化モジュールおよび/または核酸および/またはベクターおよび/または細胞を含む注射用緩衝溶液である。
【0195】
一部の実施形態において、医薬組成物は、1,000ml-1~5・108ml-1、好ましくは1・105ml-1~2.5・107ml-1の、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞を含む注射用緩衝溶液である。
【0196】
一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤または担体をさらに含む。さらなる実施形態において、担体は、水、水性バッファー溶液、0.9%生理食塩溶液、5%グルコース、5%キシリトール、0.3%グリシン溶液、リンゲル溶液、アミノ酸溶液、および同様の溶媒から選択される。さらなる実施形態において、水性バッファー溶液は、pH5.0~pH8.0の範囲内のpH値を有する、好ましくはpH6.0~pH7.0の範囲内のpH値を有する水性ヒスチジン、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム緩衝溶液から選択される。一部の実施形態において、バッファー溶液は、1mmol/l(mM)~500mMの範囲内の、好ましくは5mM~20mMの範囲内の、とりわけ好ましくは5mM~10mMの範囲内のバッファー濃度を有する。さらなる実施形態において、担体は、好ましくは0mM~300mMの範囲内の、とりわけ好ましくは150mMの濃度の、塩化ナトリウムを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、好ましくは1mM~900mMの範囲内の、とりわけ好ましくは10mMおよび600mMの範囲内の濃度の、安定剤をさらに含む。一部の実施形態において、安定剤は、スクロース、トレハロース、またはL-メチオニンである。
【0197】
さらなる実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、およその生理学的条件を提供しかつ/または安定性を増加させる化合物、例えば、pH値を調整するための剤および緩衝化剤、毒性等を調整するための剤、または医薬組成物の冷凍保存を可能にする剤を指す。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、0.0001%(w/v)~1%(w/v)の範囲内の、とりわけ好ましくは0.001%(w/v)~0.1%(w/v)の範囲内の酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、およびポリソルベート-80、好ましくはポリソルベート-80から選択される。
【0198】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、25μg/日~100mg/日の範囲内の投薬分量で、好ましくは0.1mg/日~10mg/日の範囲内の投薬分量で標的化モジュールを含む。
【0199】
さらなる実施形態において、医薬組成物は無菌である。医薬組成物は、滅菌濾過を含むがそれに限定されない、従来の周知の技法によって滅菌される。
【0200】
一部の実施形態において、医薬組成物は、対象への投与のために使用される。
【0201】
一部の実施形態において、医薬組成物は、保存の前に凍結乾燥されるか、または周囲温度で溶液として、もしくは冷凍保存を含むがそれに限定されない、周囲温度よりも下で保存される。
【0202】
一部の実施形態において、医薬組成物は、対象への投与の前に注入液および安定剤溶液中で再構成されかつ/または希釈される。再構成または注入/安定化に使用される溶液は、医薬組成物に対して言及される構成要素または同様の構成要素のいずれかを含有し得る。
【0203】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、投与あたり1・107~1・109個の範囲内の投薬分量で、好ましくは投与あたり1・108~5・108個の範囲内の投薬分量で、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞を含む。
【0204】
本発明の別の態様は、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法における使用のための、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療における使用のための、本発明に従ったキットである。
【0205】
一部の実施形態において、本発明に従った標的化モジュール、本発明に従った核酸、ベクター、もしくは細胞、または本発明に従ったキットは、癌、感染症、または自己免疫疾患の症例における治療的および/または診断的使用のための医薬を製造するために使用される。
【0206】
本発明のさらなる態様は、本発明に従った標的化モジュール、細胞もしくはベクター、医薬組成物、またはキットの投与による、癌、感染性疾患、または自己免疫疾患を有する哺乳類、好ましくはヒトにおける、キメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法である。治療適用に関しては、本発明に従った標的化モジュール、およびスイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の薬理学的に有効な分量を含む、本発明に従った無菌の医薬組成物または本発明に従った無菌のキットを対象に投与して、前述の疾病を治療する。
【0207】
一部の実施形態において、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法;好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療のための方法は、誘導物質、好ましくはテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリンの投与をさらに含む。
【0208】
一部の実施形態において、誘導物質、好ましくはテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリンは、本発明に従った核酸、ベクター、または細胞の投与の後に、経口的にまたは静脈内に投与される。
【0209】
一部の実施形態において、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療のための方法は、以下のステップ:
a)本発明に従った標的化モジュールの有効量を哺乳類に投与するステップ、ならびに
b)スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の有効量を哺乳類に投与するステップであって、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、ステップ
を含み、
標的化モジュールは、ベクターまたは細胞の投与の前、投与と同時に、または投与の後に哺乳類に投与される。
【0210】
さらなる実施形態において、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療のための方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの標的細胞結合ドメイン、およびタグ結合ドメインまたはタグを含む標的化モジュールの有効量を哺乳類に投与するステップであって、
少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーおよびそれらの突然変異体、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、またはそれらの突然変異体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンド(指定した抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドの突然変異体およびアナログを含む)である、ステップ、ならびに
b)スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の有効量を哺乳類に投与するステップであって、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、ステップ、ならびに
c)本発明に従った標的化モジュールの有効量を哺乳類に投与するステップ
を含み、
本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含み、
方法は、ステップa)、b)、およびc)の順序で行われる。
【0211】
「標的細胞結合ドメイン」という用語は、T細胞受容体(TCR)のアルファおよびベータまたはガンマおよびデルタ鎖から構成される可溶性T細胞受容体、それらのフラグメントまたは突然変異体も含む。
【0212】
好ましい実施形態において、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療のための方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの標的細胞結合ドメイン、およびタグ結合ドメインまたはタグを含む標的化モジュールの有効量を哺乳類に投与するステップであって、
少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバー、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、またはErbB4;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドである、ステップ、ならびに
b)スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の有効量を哺乳類に投与するステップであって、
スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含み、
標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、ステップ、ならびに
c)本発明に従った標的化モジュールの有効量を哺乳類に投与するステップ
を含み、
本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含み、
方法は、ステップa)、b)、およびc)の順序で行われる。
【0213】
好ましい実施形態において、標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の前、好ましくは1時間~2日間前に、より好ましくは4~24時間前に、それだけで投与され、本発明に従った標的化モジュールは、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは細胞の投与の後、好ましくは3日間~30日間の範囲内で投与される。さらに、標的化モジュールの付加的なそのような投薬を休止期間の後に実施して、スイッチ可能なキメラ抗原受容体担持エフェクター細胞を再活性化し得る。
【0214】
さらなる実施形態において、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療のための方法は、以下のステップ:
a)好ましくはTet-On、Tet-On Advancedトランスアクチベーター、Tet-On 3G、またはNFATに応答性のプロモーターから選択される、誘導性発現系;ならびに、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列であって、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含む、ヌクレオチド配列、ならびに
本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列であって、標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、ヌクレオチド配列
を含む、ベクターまたは細胞の有効量を哺乳類に投与するステップ、ならびに
b)誘導物質、好ましくはテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリンの有効量を哺乳類に投与するステップ
を含む。
【0215】
一部の実施形態において、誘導性発現系は、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列、および/または本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導し、好ましくは誘導性発現系は、本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列の転写を誘導する。
【0216】
好ましい実施形態において、哺乳類におけるキメラ抗原受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法、好ましくは癌、感染性疾患、または自己免疫疾患の治療のための方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの標的細胞結合ドメイン、およびタグ結合ドメインまたはタグを含む標的化モジュールの有効量を哺乳類に投与するステップであって、
少なくとも1つの標的細胞結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD52、CD90、CD99、CD123、CD133、CD150、CD181、CD182、CD184、CD223、CD229、CD269(BCMA)、CD273、CD274、CD276、CD279、CD319、CD366、およびCD371、インターロイキン受容体、とりわけ好ましくはIL-8Rα(CXCR1)、IL-8Rβ(CXCR2)、IL-11Rα、IL-11Rβ、IL-13Rα1および2、CXCR4、c-Met、メソテリン、上皮成長因子受容体ファミリーのメンバー、とりわけ好ましくはErbB1、ErbB2、ErbB3、またはErbB4;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、エフリン、エフリン受容体、とりわけ好ましくはEphA1-10、EphA5、またはEphB1-6、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)、胚抗原、癌胎児性抗原(CEA)、および胎児アセチルコリン受容体、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、アルファフェトプロテインAFP、細胞間接着分子ファミリーのメンバー、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体、ソマトスタチン受容体、NKG2D受容体のリガンド、サイトカイン受容体、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジシアロガングリオシド、グリピカン、Gタンパク質共役受容体、炭酸脱水酵素ファミリーのメンバー、糖鎖抗原ファミリーのメンバー、Notchリガンド、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、糖タンパク質A33、グアニル酸シクラーゼ2C、ならびに腫瘍特異的グリカンを含む群から選択される表面抗原に結合する抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチドまたは低分子量有機リガンドである、ステップ、ならびに
b)好ましくはTet-On、Tet-On Advancedトランスアクチベーター、Tet-On 3G、またはNFATに応答性のプロモーターから選択される、誘導性発現系;ならびに、スイッチ可能なキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列であって、スイッチ可能なキメラ抗原受容体は、3つのドメインであって、
-第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり、
-第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、
-第3のドメインはシグナル変換ドメインである、
3つのドメインを含む、ヌクレオチド配列、ならびに
本発明に従った標的化モジュールをコードするヌクレオチド配列であって、標的化モジュールのタグ結合ドメインがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグに結合するか、または標的化モジュールのタグがスイッチ可能なキメラ抗原受容体のタグ結合ドメインに結合する、ヌクレオチド配列
を含む、ベクターまたは細胞の有効量を哺乳類に投与するステップ、ならびに
c)誘導物質、好ましくはテトラサイクリンまたはテトラサイクリンの誘導体、例えばドキシサイクリンの有効量を哺乳類に投与するステップ
を含み、
本発明に従った標的化モジュール、および少なくとも1つのさらに別の標的化モジュールは、異なる標的細胞結合ドメイン、および同一のタグ結合ドメインまたはタグを含み、
方法は、好ましくはステップa)、b)、およびc)の順序で行われる。
【0217】
さらなる実施形態において、前述の実施形態は組み合わせられ得る。
【0218】
本発明は、ここで、以下の非限定的な図および例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【
図1】
図1は、第1のドメインはタグ結合ドメインまたはタグであり(scFvとして例示される)、第2のドメインは細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインであり、第3のドメインはシグナル変換ドメインであり、任意選択的な第4のドメインは受容体の細胞外部分における短いペプチドリンカーである、3つのドメインを有するスイッチ可能なキメラ抗原受容体(CAR)の概要を示す。
【
図2】
図2は、PD-L1発現細胞への、3つの異なるPD-L1および/またはPD-L2結合TMについてのフローサイトメトリーに基づくインビトロ結合アッセイの結果を示す。データは、少なくとも4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【
図3】
図3は、PD-L1発現細胞へ、3つの異なるPD-L1および/またはPD-L2結合TMによってリダイレクトされたスイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞についてのフローサイトメトリーに基づくインビトロ殺傷アッセイの結果を示す。A)24時間およびB)48時間のインキュベーション後に、標的細胞数を決定した。データは、個々のT細胞ドナーに関する4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【
図4】
図4は、インターフェロン-γ処理されたPC3-PSCA細胞へ、2つの異なる抗PD-L1 TMによってリダイレクトされた、スイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞についての生細胞顕微鏡法インビトロ殺傷アッセイの結果を示す。データは、個々のT細胞ドナーに関する4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【
図5】
図5は、PC3-PSCA腫瘍を皮下移植され、単独での、または抗PSCA TM、デュルバルマブに基づく抗PD-L1 TM、もしくはデュルバルマブとの種々の組み合わせでの、スイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞で処理された免疫不全マウスのインビボ処理の結果を示す。データは、群あたり11匹のマウスについての平均±SEMとして提示されている。
【
図6】
図6は、組み合わせられたUniCARおよびTetOn誘導性免疫チェックポイント特異的標的化モジュール発現カセットの概要を示す(TRE-テトラサイクリン応答エレメント、EF1a-伸長因子1a、rtTA-リバース・テトラサイクリン・トランスアクチベーター、iRFP-赤外蛍光タンパク質、eGFP-増強緑色蛍光タンパク質)。
【
図7】
図7は、レンチウイルス遺伝子移入:UniCARと組み合わせられたTetOn-カセットの制御下におけるPD-L1結合標的化モジュールのドキシサイクリン誘導性遺伝子発現によって獲得された遺伝子改変された初代ヒトT細胞の頻度を示す。示されたデータは、個々のヒトT細胞ドナーから獲得された少なくとも6つのバッチを表す。
【
図8】
図8は、A)48時間後およびB)120時間後の、ドキシサイクリン応答性TetOn-カセットの制御下でUniCARならびにPD-L1および/またはPD-L2結合TMを発現するように遺伝子操作されたヒトT細胞の標的化モジュール依存的細胞傷害性応答を示す。6人の独立したヒトドナーに関して獲得された結果の平均±SDが示されている。
【
図9】
図9は、A)48時間後およびB)120時間後の、PD-L1および/またはPD-L2結合TMを分泌するように改変されたUniCAR-Tによって媒介されるPD-L1陽性Nalm-6細胞の溶解を査定するためのフローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイを示す。データは、それぞれ、個々のT細胞ドナーに関する少なくとも4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【
図10】
図10は、A)48時間後およびB)120時間後の、本質的にPD-L1を上方調節するPC3-PSCA細胞に対する、ドキシサイクリン応答性TetOn-カセットの制御下でUniCARならびにPD-L1および/またはPD-L2結合TMを発現するヒトT細胞についての細胞傷害性アッセイを示す。データは、それぞれ、個々のT細胞ドナーに関する3回の反復的な実験についての平均±SDとして示されている。
【
図11】
図11は、ドキシサイクリン誘導があると、遺伝子操作されたヒトT細胞によって分泌されるTM-PD-L1-scFv1の濃度の定量化を示す。データは、5人の個々のT細胞ドナーに関する5回の反復的な実験についての平均±SDとして提示されている。
【
図12】
図12は、ドキシサイクリン誘導性TM-PD-L1-scFv1分泌のオン/オフスイッチの反応速度論を示す。データは、4人の個々のT細胞ドナーおよび実験についての平均±SDとして提示されている。
【
図13】
図13は、TM-PD-L1-scFv1のドキシサイクリン誘導性発現による活性化に依存した、表面におけるUniCAR分子の定量化を示す。3人の個々のT細胞ドナーについての平均±SDが示されており、統計的有意性を、対応のあるt検定によって算出した、**p<0.01。
【
図14】
図14は、TetOn-カセットの制御下におけるTM-PD-L1-scFvの基底発現が、細胞傷害性誘導の閾値を下回ることを示す。スイッチ可能なキメラ抗原受容体を発現しかつドキシサイクリンに応答してTM-PD-L1-scFvを分泌するように遺伝子改変されたヒトT細胞を、1,000ng/mlのドキシサイクリンの非存在下(SN w/o)または存在下(SN +)において標準的培養培地中で72時間培養した。上清を収穫し、1:5希釈し、Nalm-6-PD-L1標的細胞、およびスイッチ可能なキメラ抗原受容体のみを発現するように遺伝子改変されたヒトT細胞に添加した。付加的な対照として、細胞ミックスを、1nMの精製TM-PD-L1-scFv1(+TM)または単純細胞培養培地(plain cell culture medium)(w/o TM)とともにインキュベートした。24時間のインキュベーション後に、標的細胞の溶解をフローサイトメトリーを使用して解析した。データは、4人の個々のT細胞ドナーについての平均±SDとして提示されている。統計的有意性を、一元配置ANOVAによって算出した、****p<0.0001。
【
図15】
図15は、フローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイが後に続く、37℃で72時間の培養培地中でのTM-PD-L1-scFv1の安定性を示す。
【
図16】
図16は、前立腺癌(PCa)の異種移植モデルにおける、TetOn-カセットの制御下でUniCARおよびTM-PD-L1-scFvを発現するように遺伝子操作されたヒトT細胞のインビボ効力を示す。A)実験セットアップの概略図。B)少なくとも9匹のマウスについての平均±SEMとして、時間の関数としてプロットされた測定された腫瘍容積。
【
図17】
図17は、組み換えヒトFcタグ付けされたPD-L1へのTM-PD-L1-scFv1の結合についての表面プラズモン共鳴(SPR)測定を示す。
【
図18】
図18は、組み換えヒトFcタグ付けされたPD-L1へのTM-PD-L1-scFv2の結合についての表面プラズモン共鳴(SPR)測定を示す。
【
図19】
図19は、UniCARおよびUniCAR/PD-1スイッチ改変T細胞による、組み換えPD-L1を発現する急性骨髄性白血病細胞株MOLM-13のインビトロ排除を示す。A)MOLM-13細胞を、組み換えPD-L1を発現するように操作し、PD-L1表面発現についてフローサイトメトリーにより解析した。B)UniCAR-T細胞(CD137/CD3-ζ、UC04)またはUniCAR-PD-1スイッチT細胞を、CD33特異的標的化モジュール(TM CD33)の非存在下または存在下において、2:1のエフェクター対標的細胞(E:T)の比でMOLM-13-PD-L1とともに共培養した。MOLM-13-PD-L1に対する細胞傷害反応性を、48時間および120時間後にフローサイトメトリーにより査定した(平均±SD)。C)MOLM-13-PD-L1との共培養の120時間後の、T細胞活性化マーカーCD25の表面染色によるT細胞活性化の解析(平均±SD)。n=3の独立したT細胞ドナーに対する統計的有意性を、ウィルコクソンの符号順位検定によって査定した(*P<0.05、ns=有意でない)。
【
図20】
図20は、TM-PD-L1バリアントの血漿濃度をELISAによって決定することによる、NSGマウスにおけるTM-PDL1バリアントの薬物動態学的調査を示す:A)TM-PD-L1-scFv2、B)TM-PD-L1-scFv3、およびC)TM-PD-L1-scFv4を示す。データは、解析された時点あたり3~4匹のマウスに対して示されている。
【
図21】
図21は、PD-L1発現細胞株上のPD-L1特異的TMの標的媒介性内在化を示す:PD-L1特異的可溶性アダプターのPD-L1媒介性薬力学的半減期を決定するために、PD-L1陽性標的細胞株(A)DU-145および(B)U-251を、1000nMのTM-PD-L1-scFv3(TMPD-L1
v3)またはTM-PD-L1-scFv5(TMPD-L1
v5)で染色し、4℃または37℃のいずれかで表示される時点の間インキュベートした。データは、測定された最も高いMFIに対して、獲得されたMFIを正規化することによる、最大についての結合%として示されている。付加的に、薬力学的半減期(t
1/2)を、37℃で各TMに対して算出した。データは、技術的に三重で測定された1回の実験についての平均±SDとして示されている。
【実施例】
【0220】
スイッチ可能なCAR細胞の産生
様々な方法によって、PD-L1および/またはPD-L2に向けられたスイッチ可能なCARおよび/または誘導性TMを発現するように、免疫細胞を遺伝子操作し得る。スイッチ可能なCAR、および遺伝子操作された免疫細胞におけるその発現を確実にするためのすべての必要なエレメントをコードするポリヌクレオチドベクターを、免疫細胞に移入する。ベクターの移入は、核酸のエレクトロポレーションもしくはトランスフェクション、またはアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、フォーミーウイルスまたはレンチウイルスのウイルス遺伝子移入などのウイルスベクターシステムの支援によって実施され得る。
【0221】
選択されたスイッチ可能なCARをコードするレンチウイルスベクターをまず構築することによって、レンチウイルス遺伝子移入を、免疫細胞におけるスイッチ可能なCARの安定な発現に適用する。レンチウイルスベクターは、pLVX-EF1alpha UniCAR 28/ζ(Clontech、タカラバイオグループ)であり、ベクターのレンチウイルス部分はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来し、MSC/IRES/ZxGreenI部を、スイッチ可能なCAR構築物によって置き換えた。
【0222】
レンチウイルス粒子は、スイッチ可能なCARをコードするレンチウイルスベクタープラスミドによるヒト胎児腎臓(HEK)293T(ACC 635)細胞の一過性のトランスフェクション、ならびに群特異的抗原(group specific antigen)(gag)およびポリメラーゼ(pol)をコードするプラスミド(psPAX2)+エンベロープをコードするプラスミド(pMD2.G)による共トランスフェクションによって産生される。トランスフェクションの後、パッケージングプラスミドは、HIV-1のGagおよびPolタンパク質を発現する。プラスミドMD2.Gは、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)をコードする。VSV-Gは、広範な哺乳類細胞に形質導入するためのレンチウイルスベクターに使用される。種々のウイルス種由来の様々なエンベロープが、この目的のために利用され得る。レンチウイルスベクターは、両種指向性マウス白血病ウイルス(MLV)のエンベロープ糖タンパク質(Env)、または水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質(VSV-G)、プロトタイプフォーミーウイルス(prototypic foamy virus:PFV)の改変エンベロープ、またはテナガザル白血病ウイルス(GaLV)およびMLVに由来するキメラエンベロープ糖タンパク質バリアントを用いて、偽型に成功し得る。
【0223】
トランスフェクトされたHEK293T細胞由来の上清を、トランスフェクションの24時間~96時間後に収穫し、ウイルス粒子を、超遠心分離または他の方法によって上清から濃縮する。免疫細胞のレンチウイルス形質導入に関しては、末梢血単核細胞(PBMC)または単離されたT細胞を、溶液で与えられたまたはプラスチック細胞培養ディッシュもしくは磁気ビーズもしくは生分解性ポリマーマトリックスにコートされた、CD3複合体に特異的なmab、例えばクローンOKT3またはUCHT1で活性化する。PBMCまたは単離されたT細胞の活性化を、単独でまたはプラスチック細胞培養ディッシュもしくは磁気ビーズもしくは生分解性ポリマーマトリックスにコートされて組み合わされた、CD27、CD28、CD134、またはCD137に特異的なmabまたはリガンドを用いて共刺激経路を刺激し、ならびにインターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-12、IL-15、およびIL-21などの外因性組み換えサイトカインの供給によってさらに増強する。濃縮されたまたは濃縮されていないウイルス粒子を、活性化CD3特異的抗体、および/または共刺激受容体CD27、CD28、CD134、もしくはCD137に特異的な抗体、および/または組み換えサイトカインの初回投与の24時間~96時間後にPBMCまたはT細胞培養物に単回または複数回用量として添加する。T細胞エレクトロポレーション、形質導入、および増大(expansion)は、手動の取り扱いによる開かれた細胞培養システムにおいて、または閉じられた部分的にもしくは完全に自動化したシステムにおいて実施され得る。
【0224】
T細胞の安定な形質導入は、ウイルス上清の最終投与の後3日目以降、スイッチ可能なCARの表面発現に対するタグ含有分子またはスイッチ可能なCARの第4のドメインに向けられたmabを用いて染色した後に、フローサイトメトリーによって判定され得る。スイッチ可能なCARを形質導入されたT細胞は、組み換えサイトカインおよび活性化抗CD3 mabの供給の下でそれらを培養することによって、インビトロで増殖し得る。
【0225】
スイッチ可能なCARが、mabに対する線状エピトープを形成するペプチド配列である任意選択の第4のドメインを持つ場合、スイッチ可能なCARを発現するように遺伝子改変された免疫細胞は、培養ディッシュの表面にまたは任意の種類のビーズもしくは生分解性ポリマーマトリックスに、第4のスイッチ可能なCARドメインに結合するmabまたはその抗体フラグメントをコーティングすることによって、インビトロで特異的に増殖し得、それは既定の比で細胞培養物に添加される。スイッチ可能なCARペプチドドメインへの、表面にコーティングされたmabの結合は、細胞表面に発現したスイッチ可能なCARの架橋および免疫シナプスの形成を誘導し、それは、スイッチ可能なCARのシグナルドメインによって特異的に誘発されるシグナル経路の活性化につながる。これは、誘導されたシグナル経路に応じて、スイッチ可能なCAR担持免疫細胞の増殖の増強および活性化誘導性細胞死に対する持続的耐性、それゆえ、混合集団におけるスイッチ可能なCAR遺伝子改変免疫細胞の富化につながり得る。
【0226】
mabに対する線状エピトープを形成するペプチド配列である任意選択の第4のドメインは、混合集団から、スイッチ可能なCAR発現免疫細胞を富化しかつ精製するためにさらに利用され得る。富化および精製は、細胞選別のためにスイッチ可能なCAR発現細胞を印付けする、または細胞単離に利用され得る小さな粒子にスイッチ可能なCAR発現免疫細胞を一過性に連結するための、第4のスイッチ可能なCARドメインに結合するmabまたはその抗体フラグメントの支援で実施される。1つの態様において、スイッチ可能なCARグラフト免疫細胞を、第4のドメインを認識するmabとともにインキュベートする。次に、任意選択の第4のドメインに結合するmabの種特異的でかつアイソタイプ特異的な重鎖および軽鎖に向けられた抗体またはそのフラグメントとコンジュゲートされている磁気ビーズを添加する。ゆえに、スイッチ可能なCAR発現免疫細胞および磁気ビーズは連結され、捕捉され、磁場において他の免疫細胞から分離される。
【0227】
本発明に従った標的化モジュールの設計
1つの例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号6および7、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号57に従ったアテゾリズマブのscFvを含む(TM-PD-L1-scFv1)。
【0228】
代替的な例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号6および7、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号65に従ったアテゾリズマブのscFvを含む。
【0229】
さらなる例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号8および9、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号58に従ったデュルバルマブのscFvを含む(TM-PD-L1-scFv2)。
【0230】
代替的な例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号8および9、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号66に従ったデュルバルマブのscFvを含む。
【0231】
さらなる例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号4および5、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号86に従ったBMS-936559のscFvを含む(TM-PD-L1-scFv3)。
【0232】
代替的な例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号4および5、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号85に従ったBMS-936559のscFvを含む。
【0233】
さらなる例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号77および78、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号97に従ったBMS-936559のscFvを含む(TM-PD-L1-scFv4)。
【0234】
代替的な例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号77および78、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号98に従ったBMS-936559のscFvを含む。
【0235】
さらなる例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号67および68、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号87に従ったBMS-936559のscFvを含む(TM-PD-L1-scFv5)。
【0236】
代替的な例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは、リンカーによって接続された配列番号67および68、ならびに配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む、配列番号88に従ったBMS-936559のscFvを含む。
【0237】
さらなる例において、PD-L1および/またはPD-L2結合TMは2価であり、2つのPD-1細胞外ドメインを含み、そのそれぞれは、配列番号3のフラグメントおよび配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9である(TM-tdPD1)。TM-tdPD-1は、配列番号59によってコードされる。
【0238】
本発明に従った標的化モジュールの機能性の特徴付け
PD-L1および/またはPD-L2結合TMの機能性は、表面プラズモン共鳴を使用したヒトおよびマウスPD-L1への結合アッセイにおいて、ならびに細胞をベースとする細胞傷害性アッセイにおいて確認され得る。
【0239】
PD-L1を発現するように形質導入されたNalm-6細胞への、3つの異なるPD-L1および/またはPD-L2結合TMについてのフローサイトメトリーに基づくインビトロ結合アッセイの結果が
図2に示されている。データは、少なくとも4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【0240】
PD-L1を発現するように形質導入されたNalm-6細胞へ、3つの異なるPD-L1および/またはPD-L2結合TMによってリダイレクトされた、スイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞(配列番号60)についてのフローサイトメトリーに基づくインビトロ殺傷アッセイの結果が
図3に示されている。エフェクター対標的の比(E:T)は1:1であった。A)24時間およびB)48時間のインキュベーション後に、標的細胞数を決定した。データは、個々のT細胞ドナーに関する4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【0241】
インターフェロン-γ処理されたPC3-PSCA細胞へ、2つの異なる抗PD-L1 TMによってリダイレクトされた、スイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞(配列番号60)についての生細胞顕微鏡法に基づくインビトロ殺傷アッセイの結果が
図4に示されている。エフェクター対標的の比(E:T)は1:1であった。96時間のインキュベーション後に、標的細胞数を決定した。データは、個々のT細胞ドナーに関する4回の独立した実験についての平均±SDとして提示されている。
【0242】
PC3-PSCA腫瘍を皮下移植され、単独での、または抗PSCA TM、デュルバルマブに基づく抗PD-L1 TM、もしくはデュルバルマブとの種々の組み合わせでの、スイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞(配列番号60)で処理された免疫不全マウスのインビボ処理の結果が
図5に示されている。スイッチ可能なキメラ抗原受容体T細胞を、表示される時点で静脈内に注射した。表示される処理期間(T)のそれぞれの間に、TMを腹腔内に1日2回注射し、デュルバルマブを腹腔内に1回注射した。データは、群あたり11匹のマウスについての平均±SEMとして提示されている。
【0243】
組み合わせられたスイッチ可能なCARおよび誘導性標的化モジュール発現カセットの設計(
図6)
レンチウイルス遺伝子発現プラスミドは、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス由来ペプチド切断部位(2pA)によって分離された、rtTAおよびUniCARの連続的ポリシストロン性転写のためのEF1aプロモーターを含有する。加えて、PD-L1および/またはPD-L2結合標的化モジュール(TM)は、TRE3Gプロモーターの制御下にあり、それは、ドキシサイクリンの存在下におけるrtTAの結合によってのみ活性化される。この編成は、ドキシサイクリン依存的な誘導性でかつ可逆的な遺伝子発現を可能にする。
【0244】
組み合わせられたスイッチ可能なCARおよび誘導性標的化モジュール発現カセットの機能性の特徴付け
レンチウイルス遺伝子移入によって獲得された遺伝子改変された初代ヒトT細胞の頻度が
図7に示されている。志願した健常なヒトドナーから単離されたT細胞に、レンチウイルス上清を用いて形質導入し、UniCARと組み合わせられたTetOn-カセットの制御下における、PD-L1および/またはPD-L2結合標的化モジュール(TM-PD-L1-scFv-1、TM-PD-L1-scFv2、およびTM-tdPD1)のドキシサイクリン誘導性遺伝子発現のための遺伝情報を移入した。形質導入後14日目における形質導入効率を、UniCARヒンジに組み込まれた細胞外E7B6タグに向けられた一次マウスa7B6-mAb(10μg/ml)を使用した、表面に呈示されたUniCARの免疫蛍光染色により解析した。AlexaFluor 647コンジュゲートヤギ-a-マウスAbを、二次Abとして使用した。
【0245】
ドキシサイクリン応答性TetOn-カセットの制御下でUniCARおよび本発明に従ったTMを発現するように遺伝子操作されたヒトT細胞のTM依存的細胞傷害性応答が
図8に示されている。志願した健常なヒトドナーから単離されたT細胞を、TetOn-カセットの制御下でUniCARならびにPD-L1および/またはPD-L2結合標的化モジュール、特にTM-PD-L1-scFv2を発現するように遺伝子改変した。標的癌細胞に対するTM依存的細胞傷害性応答を媒介するUniCAR改変細胞の能力を、フローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイにおいて評価した。EP2990416B1に従ったPSCA結合ドメイン;および配列番号14に従ったヒトLaエピトープE5B9を含む増加する濃度のPSCA結合TMの存在下において、Nalm-6-PSCA細胞を、ヒトUniCAR発現T細胞とともに1:1の総T細胞対標的細胞の比で培養した。表示される時点で、生きた標的細胞の数を決定した。特異的溶解を、TMの添加なしの対照と比べて算出した。
【0246】
PD-L1特異的TMを分泌するように改変されたUniCAR-Tによって媒介されるPD-L1陽性Nalm-6細胞の溶解を査定するための細胞傷害性アッセイの結果が
図9に示されている。1,000~1ng/mlに及ぶ減少する濃度のドキシサイクリンの存在下において、Nalm-6-PD-L1標的細胞を、遺伝子改変されたヒトT細胞とともに1:1の総T細胞対標的細胞(E:T)の比で培養した。T細胞を、UniCARおよびドキシサイクリン応答性TetOn-カセットを発現するように操作して、ドキシサイクリンの存在下においてTM-PD-L1-scFv-1、TM-PD-L1-scFv2、またはTM-tdPD1の発現および分泌を誘導した。標的細胞の特異的溶解を、インキュベーションのA)48時間およびB)120時間後に解析し、ドキシサイクリンなしのバックグラウンド溶解に対して正規化した。
【0247】
図10は、本質的にPD-L1を上方調節するPC3-PSCA細胞に対する、ドキシサイクリン応答性TetOn-カセットの制御下でUniCARおよびPD-L1特異的TMを発現するヒトT細胞についての細胞傷害性アッセイの結果を示している。PC3-PSCA細胞を25ng/mlのIFN-γで処理して、PD-L1上方調節を誘導した。その後、PD-L1提示PC3-PSCA細胞を、UniCARおよびPD-L1特異的TM、特にTM-PD-L1-scFv1を発現する遺伝子改変されたT細胞とともに、ドキシサイクリン誘導性TetOn-カセットの制御下で、1:1の総T細胞対標的細胞(E:T)の比でA)48時間およびB)120時間インキュベートした。ドキシサイクリンを1000~1ng/mlの減少する濃度で添加し、特異的溶解を、ドキシサイクリンなしでの標的細胞の溶解と比べて算出した。
【0248】
PD-L1陽性標的細胞、および1:1の総T細胞対標的細胞(E:T)の比でUniCARとドキシサイクリン誘導性TM-PD-L1-scFv1に対するTetOn-カセットとを発現するように操作されたヒトT細胞を、減少する濃度のドキシサイクリンとともに120時間インキュベートすることによって、ドキシサイクリン誘導があると、遺伝子操作されたヒトT細胞によって分泌されるTM-PD-L1-sFv1の濃度の定量化(
図11)を行った。無細胞上清を収穫し、分泌されたTM-PD-L1-scFv1濃度をELISAによって解析した。ドキシサイクリン濃度が、ng/mlおよび結果として生じるモル濃度単位でのTM濃度に対してそれぞれプロット(blot)されている。
【0249】
ドキシサイクリン誘導性TM-PD-L1-scFv1分泌のオン/オフスイッチの反応速度論が
図12に示されている。オン相の各表示される時点に関しては、ドキシサイクリン(dox)誘導性TetOn-カセットの制御下でUniCARおよびTM-PD-L1-scFv1を発現するように遺伝子操作された1×10
5個のヒトT細胞を、1000ng/mlのドキシサイクリンの存在下において500μlの培養培地中でインキュベートした。同じように、オフ相に関しては、操作されたT細胞のプールを、まず同量のドキシサイクリンとともに24時間培養し、その後徹底的に洗浄し、ON相に関して記載されるように、しかしドキシサイクリンの添加なしで、付加的な4、6、8、12、および24時間培養した。解析される各時点に関して、無細胞上清を収穫し、TM-PD-L1-scFv1レベルをELISAを使用して定量化した。
【0250】
TM-PD-L1-scFv1のドキシサイクリン誘導性発現による活性化に依存した、表面におけるUniCAR分子の定量化が
図13に示されている。操作されたT細胞上のUniCAR表面分子の数を、DAKO QIFIKIT(登録商標)を用いて作成された検量線を使用して定量化した。遺伝子操作されたT細胞の免疫蛍光染色を、UniCAR検出のための抗7B6-mAbを使用して実施し、二次AbとしてのAlexaFluor 647ヤギ-a-マウスAbを、事前に染色されたT細胞に、ただしキャリブレーションビーズにも適用した。UniCAR、およびドキシサイクリン誘導性TM-PD-L1-scFv1に対するTetOn-カセットを発現する遺伝子操作されたヒトT細胞を、1,000ng/mlのドキシサイクリンの非存在下または存在下で24時間培養した。
【0251】
図14は、TetOn-カセットの制御下におけるTM-PD-L1-scFvの基底発現が、細胞傷害性誘導の閾値を下回ることを示している。UniCARを発現しかつドキシサイクリンに応答してTM-PD-L1-scFvを分泌するように遺伝子改変されたヒトT細胞を、1,000ng/mlのドキシサイクリンの非存在下(SN w/o)または存在下(SN +)において標準的培養培地中で72時間培養した。上清を収穫し、1:5希釈し、Nalm-6-PD-L1標的細胞、およびUniCARのみを発現するように遺伝子改変されたヒトT細胞に添加した。付加的な対照として、細胞ミックスを、1nMの精製TM-PD-L1-scFv1(+TM)またはその代わりに単純細胞培養培地(w/o TM)とともにインキュベートした。24時間のインキュベーション後に、標的細胞の溶解をフローサイトメトリーを使用して解析した。
【0252】
37℃でのTM-PD-L1-scFv1の安定性を検証するために、精製されたTMを37℃で72時間培養培地中でインキュベートし、1:1の総T細胞対標的細胞(E:T)の比で、UniCARのみを発現するように遺伝子改変されたヒトT細胞およびNalm-6-PD-L1標的細胞を24時間使用して、標準的なフローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイにおいて効能を解析した(
図15)。
【0253】
前立腺癌(PCa)の異種移植モデルにおける、TetOn-カセットの制御下でUniCARおよびTM-PD-L1-scFvを発現するように遺伝子操作されたヒトT細胞のインビボ効力が
図16に示されている。マウスに、1×10
6個の腫瘍細胞(PC3-PSCA)を皮下移植した(
図16A)。25日後、200万個のT細胞(そのうちの28.7%は、TetOn-カセットの制御下でUniCARおよびTM-PD-L1-scFvを発現するように遺伝子操作された)を投与し、ドキシサイクリン付与を同日に開始した。ドキシサイクリンの付与を連続して2週間続け、その間の2日間では停止した。第2の処理サイクルを2週間後に開始し、同じ方式で実施した。腫瘍容積を1週間に1回デジタルキャリパーで測定し、少なくとも9匹のマウスについての平均±SEMとして時間の関数としてプロットした(
図16B)。
【0254】
CD33に対して標的化モジュールを用いてリダイレクトされたスイッチ可能なCARと、PD-L1:CD28スイッチ受容体との組み合わせ
UniCARおよびUniCAR/PD-1スイッチ改変T細胞による、組み換えPD-L1を発現する急性骨髄性白血病細胞株MOLM-13のインビトロ排除を、組み換えPD-L1を発現するように操作されたMOLM-13細胞によって調べ、PD-L1表面発現についてフローサイトメトリーにより解析した(
図19Aを参照されたい)。
【0255】
UniCAR-T細胞(CD137/CD3-ζ、UC04)またはUniCAR-PD-1スイッチT細胞を、CD33特異的標的化モジュール(TM CD33)の非存在下または存在下において、2:1のエフェクター対標的細胞(E:T)の比でMOLM-13-PD-L1とともに共培養した。MOLM-13-PD-L1に対する細胞傷害反応性を、48時間および120時間後にフローサイトメトリーにより査定した(
図19Bを参照されたい、平均±SD)。
【0256】
T細胞活性化を、MOLM-13-PD-L1との共培養の120時間後に、T細胞活性化マーカーCD25の表面染色によって解析した(
図19Cを参照されたい、平均±SD)。n=3の独立したT細胞ドナーに対する統計的有意性を、ウィルコクソンの符号順位検定によって査定した(*P<0.05、ns=有意でない)。
【0257】
UniCARとの組み合わせでのPD-L1:CD28スイッチ受容体(4-1BB-CD3ゼータ UniCAR)は、MOLM-13-PD-L1細胞の高い標的化モジュール非依存的溶解を呈し、そのような手法の限界を指摘する。
【0258】
TM-PDL1バリアントの薬物動態学的調査
NSGマウスにおけるTM-PDL1バリアントの薬物動態学的調査に関しては、TM-PD-L1を、NSGマウスの1μg/g
BWの静脈内尾静脈注射により投与した。表示される時点で、末梢血を眼窩後穿刺により採取した。TM-PD-L1バリアントの血漿濃度を、PDL1-Fcキメラ捕捉タンパク質および抗5His HRPコンジュゲート検出抗体を利用したELISAにより決定した(定量化の下限0.03~0.22ng/mlのアッセイ濃度)。
図20のA)、B)、C)において、データは、解析された時点あたり3~4匹のマウスに対して示されている。表示される薬物動態学的パラメーターを、重み付き(1/Y
2)2コンパートメント解析を適用したPK solver 2.0(Zhangら2010)を利用して規定した。終末相の傾きを、最後の3つまたは4つの時点から算出した(t
1/2β)。
図20において、A)TM-PD-L1-scFv2、B)TM-PD-L1-scFv3、およびC)TM-PD-L1-scFv4の濃度が示されており、表1は、算出された薬物動態学的(PK)パラメーターを示している。
【0259】
【0260】
図21において、PD-L1発現細胞株上のPD-L1特異的TMの標的媒介性内在化が示されている。PD-L1特異的可溶性アダプターのPD-L1媒介性薬力学的半減期を決定するために、PD-L1陽性標的細胞株(A)DU-145および(B)U-251を、1000nMのTM-PD-L1-scFv3(TMPD-L1
v3)またはTM-PD-L1-scFv5(TMPD-L1
v5)で染色した。その後、染色された標的細胞を、4℃または37℃のいずれかで表示される時点の間インキュベートした。PD-L1特異的TMの結合を、PE標識α-His Abを使用したフローサイトメトリーにより解析した。付加的に、薬力学的半減期(t1/2)を、37℃で各TMに対して算出した。
【0261】
引用された非特許文献
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【符号の説明】
【0262】
1 第1のドメイン、タグ結合ドメインまたはタグ
2 第2のドメイン、細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメイン
3 第3のドメイン、シグナル変換ドメイン
4 任意選択的な第4のドメイン、短いペプチドリンカー
【配列表】
【国際調査報告】