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特表2023-527640複数の電池モジュールの性能を均衡させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】複数の電池モジュールの性能を均衡させる方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20230623BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230623BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20230623BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20230623BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20230623BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01M10/42 Z
G01R31/389
G01R31/3835
H01M10/30 Z
H01M10/28 Z
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559441
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 SE2021050262
(87)【国際公開番号】W WO2021201748
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2050360-3
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504013258
【氏名又は名称】ナイラー インターナショナル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スターボリ、スティナ
【テーマコード(参考)】
2G216
5H028
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA03
2G216BA51
2G216BA53
5H028AA07
5H028AA10
5H028BB11
5H028HH10
5H030AA01
5H030AS20
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'')を含む電池パック(100)の動作効率を改善する方法に関し、各電池パックは、共通のガス空間(29)を有するように構成される。本方法は、電池モジュール(10、10’、10'')に関するデータを取得する工程(101)(データは、電池モジュール当たりの電池セルの数、電池モジュールの数、各電池モジュールの温度、および電池モジュールのエネルギー容量に関する)、電池モジュールに関する内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3)の指標を取得する工程(102)、いずれかの電池モジュール間の指示パラメータの差が第1の閾値を超える場合に、電池パックに充填すべき酸素の充填量を決定する工程(104)、および決定された酸素の充填量に基づいて電池パックの充填を開始する工程(107)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)を含む電池パック(100、150)の動作効率を改善する方法であって、各電池モジュールは少なくとも1つの電池セルを含み、各電池モジュール(10、10’、10'’)は少なくとも1つの電池セルを包含し、かつガス空間を取り囲むケーシングを有し、前記電池モジュール(10、10’、10'’)のガス空間は互いに接続され、共通のガス空間(29)を形成し、各電池セルは、第1の電極、第2の電極、多孔質セパレータ、および前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置された水性アルカリ性電解質を含み、前記多孔質セパレータ、前記第1の電極および前記第2の電極は、これらの電極間にガスを移動させることで水素と酸素の交換を可能にするように構成され、前記ケーシングのうちの少なくとも1つは、前記共通のガス空間に気体または液体を添加するガス注入口を有し、該方法は、
前記電池モジュール(10、10’、10'’)あたりの前記電池セルの数、前記電池モジュール(10、10’、10'’)の数、各電池モジュールの温度、および各電池モジュール(10、10’、10'’)のエネルギー容量に関するデータを取得する工程(101)と、
前記電池モジュール(10、10’、10'’)のうちの少なくとも2つのモジュールの内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3)に関連する指示パラメータを取得する工程(102)と、
前記電池モジュールのいずれかのモジュールの間の指示パラメータの差が所定の第1の閾値を超える場合に、前記指示パラメータと前記電池モジュールに関するデータに基づいて、前記任意の2つの電池モジュールの間の指示パラメータの差を前記第1の閾値未満の水準に下げるために前記電池モジュール(10、10’、10'’)に充填すべき酸素の充填量を決定する工程(104)と、
前記決定された酸素の充填量に基づいて、前記電池パックの充填を開始する工程(107)とを含む方法。
【請求項2】
前記指示パラメータは、前記電池モジュール(10、10’、10'’)のうちの前記少なくとも2つのモジュールの内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3)であるように選択され、前記第1の閾値は第1の抵抗閾値(Rt1)であり、前記電池パックへの酸素の充填が、前記電池モジュール(10、10’、10'’)のうちのいずれかの少なくとも2つのモジュールの間の内部抵抗の差を前記第1の抵抗閾値(Rt1)未満の水準まで下げることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記指示パラメータは、前記電池モジュールの健全状態に関連することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記電池モジュール(10、10’、10'’)に対する前記指示パラメータおよび前記第1の閾値は、各電池モジュールの前記指示パラメータおよび取得された各電池モジュールの電池セルの数に基づいて電池セルごとに決定されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
該方法は、
少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)の各々の電圧指示(U、U、U)を取得する工程(105)と、
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)のいずれかの電圧指示(U、U、U)が所定の上限電圧指示閾値(Ut1)を超えているかを判定する工程(105a)と、
前記決定された充填量の酸素で電池パックの充填を開始する工程(107)の前に、前記少なくとも2つの電池モジュールの各々の取得された電圧指示が前記所定の上限電圧指示閾値(Ut1)よりも低い場合に充填工程(107)を実行する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記所定の電圧指示閾値(Ut1)は、前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)の前記内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3)に関連する指示パラメータの関数であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの電池モジュールのいずれかにかかる前記取得された電圧指示が、前記所定の上限電圧指示閾値(Ut1)以上の場合に、
前記決定された充填量の酸素で電池パックの充填を開始する工程(107)の前に、前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)の電圧を前記所定の上限電圧指示閾値(U)未満の水準まで下げるために前記電池パックを放電する工程(106a)をさらに含むことを特徴とする請求項5または6記載の方法
【請求項8】
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)のいずれかの前記電圧指示が、前記所定の下限電圧指示閾値(Ut0)以下か否かを判定する工程(105a)と、
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)の各々の前記取得された電圧指示が前記所定の下限電圧指示閾値(Ut0)を超える場合に、充填を開始する工程(107)を実行する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項5乃至7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)のいずれかの前記取得された電圧指示が、前記所定の下限電圧指示閾値(Ut0)以下の場合に、
前記決定された充填量の酸素で前記電池モジュールの充填を開始する工程(107)を実行する前に、前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)の電圧を、前記下限電圧指示閾値(Ut0)を超える水準まで上げるために、前記電池パックを充電する工程(106b)をさらに含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記充填を開始する工程(107)が前記少なくとも2つの電池モジュールに酸素を充填する前に、電池パックに水素を充填することをさらに含むことを特徴とする請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記電圧指示は、前記少なくとも2つの電池モジュールの開回路電圧であるように選択され、前記上限および下限電圧指示閾値は温度依存性であることを特徴とする請求項5乃至10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記電圧指示は、前記電池モジュールの充電状態、SOCに関連することを特徴とする請求項5乃至10いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記電池パック(100、150)への不活性ガスの充填を、前記電池パック(100、150)の酸素の充填と連動して実行することを特徴とする請求項1乃至12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記不活性ガスが、アルゴン、窒素、ヘリウムおよび/または空気の任意の組み合わせであるように選択されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記充填を開始する工程(107)が、前記少なくとも2つの電池モジュール間の指示パラメータの差を小さくするために、前記決定された充填量の酸素を有する容器(17)の準備を開始する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記電池パックを酸素で充填した後に、
前記電池パックの充填後の前記内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3)に関連する充填後パラメータを取得する(108)工程と、
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10’、10'’)のうちのいずれかのモジュールの間の前記充填後パラメータの差が、所定の第2の閾値を超えているかを判定する工程(109)と、
前記電池モジュール(10、10’、10'’)のうちのいずれかのモジュールの間の前記充填後パラメータの差が前記第2の閾値を超える場合に、前記電池モジュールの前記充填後パラメータ及び各電池モジュールに関するデータに基づいて、任意の2つの電池モジュール(10、10’、10'’)の間の前記充填後パラメータの差を第2の抵抗閾値(Rt2)未満の水準に下げるために前記電池パックに充填されるべき酸素の追加充填量を決定する工程と、
前記決定された追加量の酸素を前記電池パックに充填する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
該方法は、ニッケル水素(NiMH)電池セルを含む電池パックに対して実行されることを特徴とする請求項1乃至16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのプロセッサ(14’)で実行されると、少なくとも1つのプロセッサ(14’)に請求項1乃至17いずれか1項記載の方法を実行させる命令を含む、電池パックの動作効率を改善するコンピュータ・プログラム。
【請求項19】
請求項18記載の電池パックの動作効率を改善するためのコンピュータ・プログラムを搭載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電池、特にニッケル水素(NiMH)電池の分野に関する。本発明は、性能を改善するために水素または酸素ガスまたは過酸化水素を添加する電池パックのための方法に関する。さらに、本発明は、特に、電池パックの寿命を延ばす分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素電池(NiMH)は、長いサイクル寿命と急速充放電能を有する。充電・放電時には、電極間に水分子の形で水素が輸送されるので、水性アルカリ性電解質を介して電極同士が相互作用する。放電時には、水素は負極から放出され、正極(ニッケル電極)に移動し、そこで吸蔵される。この結合により、エネルギーが放出される。充電時には、水素の移動は逆になる。
【0003】
特にニッケル水素電池は、ニッケル電極を電解液が不足した状態に制限するように設計されている。これは、電池セルの過充電や過放電状態を回避するために行われ、気相を介して電池セルの化学反応と充電状態を制御している。
【0004】
電池セルを充電すると、水素はアルカリ性電解質中の水分子によって水酸化ニッケルから水素化金属に輸送される。放電時には、水素は再び水分子の形で水酸化ニッケル電極に輸送される。
【0005】
PCT公開WO2017/069691には、適切な量の過充電予備力と過放電予備力の両方を有する金属水素化物電極容量に対するニッケル電極容量を適切にバランスさせることが、電池モジュールが十分に機能するのに不可欠で、安定した長時間の充電および放電性能に到達することができることが記載されている。酸素ガス、水素ガス、過酸化水素を添加することで、適切な過充電・放電予備力と電解液の補充ができ、電池モジュールの寿命を延ばし、可能なサイクル数を増やすことができる。
【0006】
酸素の添加は、好ましくは、電池モジュールが動作していないときに行われる。従って、電池モジュールの動作を最適にするために、酸素の充填は、電池モジュールの容量だけでなく、動作時間も最適にするように行われることが好ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも2つの電池モジュール(各電池モジュールは、少なくとも先行技術の欠点の1つを緩和する少なくとも1つの電池セルを含む)を含む電池パックに酸素を添加することで動作効率を改善することを含む方法を提供することである。
【0008】
この目的は、独立請求項による方法によって達成される。
【0009】
本発明の更なる利点は、各従属請求項の構成によって提供される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも2つの電池モジュールを含む電池パックの動作効率を改善する方法が提供され、各電池モジュールは、少なくとも1つの電池セルを含む。各電池モジュールは、少なくとも1つの電池セルを包含し、かつガス空間を取り囲むケーシングを有し、電池モジュールの各ガス空間は、互いに接続されて、共通のガス空間を形成している。各電池セルは、第1の電極、第2の電極、多孔質セパレータ、および第1の電極と第2の電極の間に配置された水性アルカリ性電解質を含み、多孔質セパレータ、第1の電極および第2の電極は、これら電極間にガスを移動させて水素と酸素とを交換可能に構成される。ケーシングのうちの少なくとも1つは、ケーシングの共通ガス空間に気体または液体を添加するためのガス注入口を含む。この方法は、電池モジュールに関するデータを取得する工程を備え、このデータは、電池モジュールごとの電池セルの数、電池モジュールの数、各電池モジュールの温度、および各電池モジュールのエネルギー容量に関する。この方法は、さらに、電池モジュールのうちの少なくとも2つのモジュールの内部抵抗に関連する指示パラメータを取得する工程と、いずれかの電池モジュール間の指示パラメータの差が所定の第1の閾値を超える場合に、指示パラメータおよび電池モジュールに関するデータに基づいて、いずれか2つの電池モジュール間の指示パラメータの差を第1の閾値未満の水準に下げるために電池モジュールに充填すべき酸素の充填量を決定する工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本方法は、決定された酸素の充填量で電池パックの充填を開始する工程を含んでもよい。この開始は、正しい圧力で正しい充填量の酸素を含むガス容器が電池モジュールに送るよう指示する工程を含んでもよい。あるいは、電池モジュールが酸素供給装置に接続されている場合、この開始は、酸素供給装置からの酸素の充填を開始することを含んでもよい。
【0012】
本発明の第1の態様に従う方法により、従来技術に従う方法に比べて、電池の動作効率を改善することができる。動作効率は、電池モジュールの寿命が延び、同時に、酸素の補給時間を短く保つことを意味する。異なる電池モジュールの電池セルあたりの内部抵抗の均衡を適切に保つと、より寿命が長くなる。異なる電池モジュールの電池セルあたりの内部抵抗の均衡に閾値を設けると、電池の高内部抵抗の動作を避け、同時に酸素充填の間隔が短くなりすぎることを避けることができる。
【0013】
本方法は、コンピュータで構成されるコントロールユニットで実施されてもよい。
【0014】
電池モジュールのうちの少なくとも2つのモジュールについて、内部抵抗または健全状態(state of health=SOH)を決定するデータなどの指示パラメータを取得する工程は、電池モジュールのうちの少なくとも2つのモジュールについて指示パラメータを取得するように構成された測定ユニットからデータを受信することで実施されるのが好ましい。電池モジュール中のセルの数は電池モジュールに関するデータから得られる。この決定におけるセルの数は、実用上の制限に支配される。通常、電池モジュールの端子接点にのみアクセスすることが可能である。したがって、SOHや内部抵抗などの指示パラメータは、電池モジュール内のすべての電池セルに対して決定される。
【0015】
電池モジュールに関するデータ(このデータは、少なくとも電池モジュールの電池セルの数、および電池モジュールのエネルギー容量に関連する)を取得する工程は多くの異なる方法で行われる。一代替案は、測定ユニットが、本方法を実行するコンピュータ装置に電池モジュールに関するデータを送信するように構成されることである。データは測定ユニットから送信されてもよいが、測定ユニットの複雑さを最小にするために、測定ユニットは識別番号のみを送信することが好ましい。測定ユニットから識別番号を受信すると、データは、例えばメモリから取得することができる。上記のように、このデータは、少なくとも電池モジュールの電池セルの数、各電池モジュールの温度、および電池モジュールのエネルギー容量に関する。このデータは、電池モジュールに充填される酸素の充填量の決定に必要である。ただし、決定に際して、電池モジュールの実際の電池セルの数、または電池モジュールのエネルギー容量を使用する必要はない。一代替案によれば、コントロールユニットはメモリ内のルックアップテーブルを参照して、電池モジュールの識別番号に対応する電池のデータを取り出してもよい。電池のデータは、一例として、電池の種類を特定する型番であってもよい。コントロールユニットは、次に、決定された指示パラメータ、温度および型番に基づいて、必要な酸素充填量を別のルックアップテーブルから取り出してもよい。ルックアップテーブルの必要な酸素充填量は、同様の電池の種類を用いた以前の実験に基づくものであってもよい。型番は、所定の数の電池セル、所定のエネルギー容量、および必要なら所定の共通ガス空間の容積を有する電池モジュールを規定する。
【0016】
好ましくは、取得された指示パラメータが複数の電池セルにわたる内部抵抗を意味する内部抵抗の場合、測定された電池パックおよび/または電池モジュールの温度で、電池セルあたりの平均内部抵抗が計算される。次いで、電池セルあたりの平均内部抵抗は、単一の電池セルについて測定された温度値における抵抗の閾値と比較される。原理的には、異なる電池モジュール間の内部抵抗の差を抵抗閾値と比較することができるが、このことは、異なる電池モジュールからの電池セル間の内部抵抗の差を、測定された温度における抵抗閾値と比較することと等価である。異なる電池モジュール間の内部抵抗の差を抵抗閾値で比較することの欠点は、電池モジュール内の電池セルの数に依存して異なる抵抗閾値を供給する必要があることである。
【0017】
この方法は、少なくとも1つの電池モジュールの測定温度における開回路電圧(open circuit voltage=OCV)、または充電状態(state of charge=SOC)などの電圧指示を取得する工程、少なくとも2つの電池モジュールのいずれかあたりの電圧指示が所定の電圧範囲内にあるか否かを判定する工程、および取得された各電池モジュールの電圧指示が所定の電圧範囲外の値を有していない場合にのみ、電池パックへの酸素充填が安全であると判定する工程を含んでもよい。本発明者らは、電圧指示が電圧範囲外のときに電池モジュールに酸素を充填すると火災が発生する危険性があることを認識している。電圧指示としてOCVを用いる場合、各電池モジュールにわたる電圧から、電池セルあたりの平均電圧が算出されることが好ましい。そうすることで、1つの電圧閾値だけを使用すればよい。
【0018】
所定の電圧範囲は、下限電圧指示閾値と上限電圧指示閾値により規定され、電圧指示は、電池モジュール上の開回路電圧(OCV)または電池モジュールの充電状態(SOC)であってもよい。
【0019】
本方法は、電池パックに酸素を充填することが安全でないと判定された場合、電池パックへの決定された充填量の酸素の充填を開始する前に、電池モジュールを電圧範囲内の前記少なくとも1つの電池モジュールの電圧まで放電または充電を開始する工程も含んでもよい。放電または充電の開始は、一代替案に従って、電池の操作者に電池を放電または充電するようにメッセージを送信することであってもよい。あるいは、電池モジュールが自動放電または充電装置に接続されている場合、開始は、自動放電または充電を開始する工程を含んでいてもよい。
【0020】
電池パックへの不活性ガスの充填は、電池パックへの酸素の充填の開始と連動して、すなわち同時に開始することができる。酸素と不活性ガスを組み合わせて充填すると、火災の危険性をさらに小さくすることができる。電池モジュールがガス供給部に接続されている場合、ガス供給部は酸素と不活性ガスの正確な混合ガスを含んでいることが好ましい。
【0021】
この方法は、電池パックに酸素を充填することが安全でないと判定された場合、電池パックに酸素を充填する前に、共通ガス空間に水素ガスを添加する工程を含むこともでき、これにより電池モジュールの動作効率がさらに向上する。
【0022】
この方法は、電池パックに酸素を充填した後、共通ガス空間に水素ガスを添加する工程も含んでいてもよく、これにより電池モジュールの動作効率がさらに向上する。
【0023】
また、この方法は、電池パックに酸素を充填した後、電池パックおよび/または電池モジュールの温度を測定し、電池モジュールのそれぞれについて内部抵抗に関連する充填後パラメータを取得する工程と、測定温度で少なくとも2つの電池モジュールのいずれかの間の充填後パラメータの差が所定の第2の閾値を超えているか否かを判定する工程と、いずれかの電池モジュールの間の充填後パラメータの差が第2の閾値を超えている場合には、測定された電池パックおよび/または電池モジュールの温度における電池モジュールの充填後パラメータおよび電池モジュールに関するデータに基づいて、任意の2つの電池モジュール間の充填後パラメータの差を第2の閾値未満の水準までさらに低減するために電池パックに充填されるべき酸素の追加充填量を決定する工程と、決定された追加充填量の酸素で電池パックの充填を開始する工程とを含んでもよい。
【0024】
一実施態様において、指示パラメータを取得する工程は、測定された電池パックおよびまたは電池モジュール温度で、電池パック内のすべての電池モジュールの内部抵抗を取得することを含む。本方法は、測定温度で、電池パック内の任意の対の電池モジュール間の電池セルあたりの内部抵抗の差が、所定の第1の抵抗閾値を超えるか否かを判定する工程と、測定された電池パックの温度およびまたは電池パックの電池モジュールの温度における任意の対の電池モジュール間の電池セルあたりの内部抵抗の差が特定の温度で所定の第1の抵抗閾値を超える場合に、異なる電池モジュールの内部抵抗および取得された電池パックのデータから、電池パックに充填すべき酸素量を決定し、各電池モジュールの内部抵抗の差を第1の抵抗閾値未満に下げる工程とをさらに含む。すべての電池モジュールの内部抵抗を取得することで、測定された温度に対して補償される内部抵抗の差が最も大きいものを確実に検出することができる。
【0025】
酸素の量を決定する工程は、第2の抵抗閾値未満の電池モジュール間の、電池セルあたりの内部抵抗の差を取得するために、電池モジュールに充填される酸素の充填量を決定してもよく、ここで、第2の抵抗閾値は第1の抵抗閾値より低い。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、電池パックの動作効率を改善するコンピュータ・プログラムが提供される。このプログラムは、少なくとも1つのプロセッサで実行されると、この少なくとも1つのプロセッサに本発明の第1の態様による方法を実行させる命令を含む。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様による電池パックの動作効率を改善するコンピュータ・プログラムを搭載する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0028】
好ましくは、電池パックは、少なくとも1つのニッケル水素電池セルを有する複数の電池モジュールで構成される。
【0029】
以下、本発明の好ましい実施態様について、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】2つの電池モジュールを含む電池パック間の均衡を取るための電池システムを示す。
図2】3つの電池モジュールを含む電池パック間の均衡を取るための電池システムを示す。
図3】実施態様による、電池モジュール間の均衡を取る方法のフロー図を示す。
図4】抵抗および電圧の異なる測定値をプロットした図を示す。
図5図2による電池パックにおいて、電池セルの電圧が、酸素充填前の電池の品質保証のためのサイクル中にどのように変化するかを示す。
図6図2による電池パックの電池セルの電圧が、酸素充填後の電池の品質保証のためのサイクル中に、どのように変化するかを示す。
図7】電池パック間の均衡をとる際に内部抵抗がどのように変化するかを説明する第1の例を示す。
図8】電池パック間の均衡をとる際の内部抵抗の変化を説明するための第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
好ましい実施態様に関する以下の説明では、図面を参照する。図面は縮尺通りに描かれておらず、全ての構成を明確に示すために、寸法によっては誇張されている場合がある。異なる図面における同様の構成には、同じ参照数字が使用される。
【0032】
本明細書で使用される用語は、本開示の特定の態様を説明する目的のみのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むものとする。
【0033】
本願において、電池モジュールの内部抵抗に関連する用語「指示パラメータ」は、内部抵抗だけでなく、電池モジュールの健全状態(SOH)の尺度を含む。SOHの尺度は、内部抵抗、および内部ガス圧のような電池モジュールの状態を決定するのに重要な他のパラメータを含んでもよい。
【0034】
本明細書では、各電池モジュール、ひいては電池セルの状態を示す尺度として、内部直流抵抗と解釈すべき「内部抵抗」という用語を一般的に用いる。内部抵抗は、所定の放電電流を用いて制御放電を行った際の電圧降下を測定して得られる。その後、測定された電圧降下と放電電流に基づいて内部抵抗が計算される。一例が、以下の規格 IEC 63115-1,Ed.1.0(2020-01)の7.6.3章「内部直流抵抗の測定」に記載されている。
【0035】
本明細書に示される例示的な実施態様のいくつかは、複数の電池セル、好ましくは金属水素化物(MH)電極、より好ましくはニッケル水素電池セルを有する複数の電池セルを均衡する方法を対象とする。本明細書で提示される例示的な実施態様の開発の一部として、まず、問題を特定かつ考察する。
【0036】
複数の電池モジュール、たとえばニッケル水素電池モジュール(各電池モジュールは少なくとも1つの電池セルを含む)を含む電池パックは、充放電時に電解液の乾燥により各電池セルの性能が低下する.酸素ガスを添加すると電極は回復し、ガスの再結合が促進され、その結果、内圧が低下することが判明した。それにより、意図しない過充電や過放電の影響を受けにくくなる。欠乏した電解質設計は、電池モジュール内で最小限の電解質しか利用できないことを意味する。電解液が失われると、主に内部抵抗の増加によって性能が低下する。電解液の乾燥は、サイクル寿命を制限する主な原因である。電解液の乾燥は、主に電池の内圧が高すぎて安全弁が開き、過充電や過放電によって酸素や水素が放出されること、および負極が腐食して電解液を消費し、電池内の圧力水準が上ることで起こる。2つ以上の電池セルがガスで接続されている場合、電池セルから電解液が不均一に失われる。このことは、多数のセルを有する電池モジュールにも当てはまる。
【0037】
その主因は、電池セルが100%同一ではないため、充電ムラがあることである。充電ムラにより、あるセルが他のセルより先に発熱し、ガスで繋がった電池セル間を水(気体状)が移動し、温度の低いところで凝縮する。従って、電池モジュール内、さらに電池モジュール間を水が移動する。そのため、複数の電池セルのうちの1つは、他の電池セルに比べて内部抵抗の増加が速くなる。内部抵抗の増加は、電池モジュールの寿命の低下につながる可能性がある。電池モジュール間の内部抵抗が不均一に増加すると、電池モジュールの寿命が不均一になり、ひいては電池パックの寿命が短くなる可能性がある。
【0038】
図1は、直列に接続されて電池パック100を形成する2つの電池モジュール10、10’を含む電池システム50を示す。各電池モジュール10、10’は、少なくとも1つの電池セル12(好ましくはニッケル水素電池セル)を含む。各電池モジュール10、10’は、少なくとも1つの電池セルを収容し、ガス空間を囲むケーシング30を有する。電池モジュール10、10’の各電池セル12は、第1の正極、第2の負極、多孔質セパレータ、第1の電極と第2の電極の間に配置された水性アルカリ性電解質を含む。セパレータ、第1の電極および第2の電極は、両電極間をガスが移動することで、水素と酸素の交換を可能にするように構成される。各電池モジュール10、10’は、各電池モジュールにおける少なくとも1つの電池セル12と電気的に接触する正極端子11と負極端子12を含み、電池セルは好ましくは直列接続されている。第1のモジュール10の正極端子11は、プラス記号で示すように、電池パック100の正極端子を構成し、最後のモジュール10’の負極端子12は、負符号で示すように、電池パック100の負極端子を構成する。
【0039】
電池パック100は、各電池モジュール10、10’のガス空間を連通して共通のガス空間29を形成するようにも構成される。電池パック100は、共通ガス空間29に気体または液体を添加するためのガス注入口25をさらに含む。また図1は、各電池モジュールの正極端子11および負極端子12に接続され、上に説明したように、正極端子コネクタ11と負極端子コネクタ12の間で、電池モジュール10、10’の内部抵抗に関する指示パラメータを算出するために必要なデータを取得するように構成された測定ユニット13を示す。測定ユニット13が取得するデータは、内部抵抗を求めるための放電時の電圧降下、温度、内圧、および測定ユニット13内に電流検知器が含まれる場合の電流を含むことができる。測定ユニット13は、各電池モジュール10、10’中の正極端子11と負極端子12の間の開回路電圧(OCV)を測定するように構成されてもよい。代替案として、測定ユニット13を接続して1つの電池セル12のみのデータを取得することも可能である。しかし、この機能を備えた電池モジュールを製造するのは非常にコストがかかる。入口弁16がガス注入口25に接続されている。図1では、必要ならガス容器17が入口弁16に接続される。局所コントロールユニット20が測定ユニット13および入口弁16に接続されており、この局所コントロールユニットは、測定ユニット13から提供されるデータに基づいて、指示パラメータを計算するように構成されてもよい。安全弁24、例えば破裂式ディスクが共通空間29に接続されている。安全弁は、共通ガス空間29内の危険なガス圧の蓄積を防止する。圧力センサ23を安全弁24に取り付けて、共通ガス空間29内の内圧を測定してもよい。圧力センサ29も、局所コントロールユニット20に接続されている。
【0040】
局所コントロールユニット20は、コントロールユニット14と有線または無線で通信する。また、局所コントロールユニット20とコントロールユニット14との間に、1つ以上の中間部を設けることも可能である。また、局所コントロールユニットを省略し、コントロールユニット14を入口弁16および測定ユニット13に直接接続することも可能である。コントロールユニット14は、例えば、電池モジュール製造業者のような遠隔地に配置されてもよい。中央コントロールユニット14は、メモリ26に接続されているか、またはメモリ26を含む。
【0041】
コントロールユニット14は、測定ユニット13で指示パラメータ、たとえば電池モジュール10、10’の正極コネクタ11と負極コネクタ12の間の内部抵抗の計算に必要な温度、圧力、電圧、電流の測定を所定の間隔で開始し、この情報を各電池モジュール10、10’のそれぞれの識別情報と共にコントロールユニット14に送るように構成されている。これを達成するために、コントロールユニット14は局所コントロールユニット20に要求を送り、局所コントロールユニット20は電池モジュール10、10’の電流指示パラメータおよび必要に応じて電池モジュール10、10’の開回路電圧に関連する情報を回答として返す。内部抵抗は、測定ユニット13で直接測定されることはない。測定ユニット13は、上記の通り、所定の放電電流による放電中の電圧降下を測定し、その後、内部抵抗を計算する。
【0042】
電池モジュール10、10’の使用中、図面に正と負の記号を付した電池パックの端子経由で電池モジュールの放電と充電が行われる。電池モジュールの内部抵抗は、充放電の回数が増えるにつれて大きくなる。
【0043】
第1の実施例(図示せず)において、電池モジュール10は、本出願人に譲渡された公開出願WO2006/104442またはWO2007/093626に開示されているように、電池モジュール内の全ての電池セルに対してガス空間を作り出すケーシングを有する独立型電池モジュールである。独立型電池モジュールにおいて、セルは、双極構成である。本例のセルは、双曲板(biplate)を用いて直列接続され、電池セルの積層体を形成している。電池モジュールは、電池セルを収容し、ガス空間を囲むケーシングを有する。電池モジュールのガス空間を共通のガス空間に接続するために、接続管を設ける必要がある。
【0044】
第2の実施例(図示せず)において、電池モジュールは、双極方式で直列接続される。その場合、電池モジュールは、第1の電池モジュール10の正極端子を第2のモジュール10’の負極端子に当てることによって電気的に接続され、それにより、2つの電池モジュールを直列接続する際の抵抗を最小にするためにそれぞれの単板の全面を使用する。接続管は必要ない。その代わりに、各電池モジュール内のガス空間間の密閉構成を確保するために、シール用Oリングがモジュール間に配置される。このような型の電池モジュールは、本出願人に譲渡されたWO2018/111182に開示されている。
【0045】
図2は、本発明の別の実施態様による電池パック120を含む電池システム150を示す。図2の実施態様では、3つの電池モジュール10、10’、10'’が直列に接続されて、電池パック120を形成している。また、電池パック120は、電池モジュール10、10’、10'’のガス空間を共通のガス空間29に連結する密封リング(図示せず)を含む。電池パック120は、共通ガス空間29に気体または液体を添加するためのガス注入口をさらに含む。ガス注入口には、入口弁16が接続されている。入口弁16には、随意のガス容器17が接続されている。共通空間29には、安全弁(図示せず)が接続されてもよく、共通ガス空間29内の内圧を測定する圧力センサ23が設けられてもよい。
【0046】
電池システムは、測定ユニット13および入口弁16に接続された局所コントロールユニット20をさらに含む。安全弁は、危険なガス圧が共通ガス空間29に蓄積されるのを防止する。各電池モジュール10、10’、10'’はまた、正極端子、および負極端子を含む。異なる電池モジュール10、10’、10'’間の電気的接続は、電池モジュールの間に配置された接触板を介して提供される。
【0047】
局所コントロールユニット20は圧力センサ23に接続されてもよく、局所コントロールユニット20は、この例では有線によってコントロールユニット14と通信している。また、局所コントロールユニット20とコントロールユニット14の間に1つ以上の中間部を設けることも可能である。また、局所コントロールユニットを省略し、コントロールユニット14を圧力センサ23、入口弁16および測定ユニット13に直接接続させることも可能である。前記のように、コントロールユニット14は、例えば電池モジュール製造業者のような遠隔地に配置されてもよい。中央コントロールユニット14は、この例ではメモリ26を含む。測定ユニットは、第1の電池モジュール10の両端子間の第1の内部抵抗Ri1および必要なら第1の開回路電圧U、第2の電池モジュール10’の正極端子間の第2の内部抵抗Ri2および必要なら第2の開回路電圧U、第3の電池モジュール10'’の正極端子間の第3の内部抵抗Ri3および必要なら第3の開回路電圧Uなどの指示パラメータを求めるために必要なデータを取得するように構成されている。内部抵抗は、放電電流時の電圧降下に基づいて算出される(上記説明のとおり)。測定された内部抵抗Ri1を第1の電池モジュール10の数、すなわち10個の電池セルで割ることによって、第1の電池モジュール10の電池セル1個あたりの平均内部抵抗Ric1が求められる。第2の電池モジュール10’および第3の電池モジュール10'’についての電池セルあたりの内部抵抗Ric2、Ric3が、同様に計算される。なお、内部抵抗に関する指示パラメータは温度依存性があり、内部抵抗を正しく算出するためには、測定ユニットが各モジュール温度、少なくともパック温度を測定する必要がある。
【0048】
図3は、電池パック内の複数の電池モジュールの均衡をとる方法のフロー図である。この方法は、電池パックのデータを取得する第1の工程101を含む。この工程は、多くの異なる方法で行うことができる。データの取得方法の一例は、局所コントロールユニットがコントロールユニットに一意の識別番号を送信することである。コントロールユニットは、次に、メモリから電池パックに関するデータを取得してもよい。第2の工程102で、電池モジュールの少なくとも2つのモジュールの内部抵抗Rとして例示される指示パラメータが、例えばRi1およびRi3として取得される。一実施態様によれば、内部抵抗を計算するためのデータが測定ユニットから得られ、制御回路(例えば局所コントロールユニット20)が各電池モジュールの正極端子間の抵抗値を決定する。次いで、局所コントロールユニットは、内部抵抗に関連するデータ、すなわち、各電池モジュールの計算された内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3、またはある放電電流での電圧降下の測定に関する情報をコントロールユニットに送信する。
【0049】
第3の工程103で、コントロールユニット14は、2つの電池モジュールのいずれかのモジュールの間の内部抵抗の差が、測定された電池パックおよび/または電池モジュール温度における電池セルあたりの第1の抵抗閾値Rtc1に対応する所定の第1の抵抗閾値Rt1を超えているかを判定する。コントロールユニットは、電池モジュールが異なる数の電池セルから構成される場合に必要となる、電池セルあたりの平均内部抵抗Ricを、電池モジュールごとに算出してもよい。しかし、電池モジュールが同じ数の電池セルから構成される場合、その工程は省略されてもよい。
【0050】
実施態様によっては、電池パック内の電池モジュール間の均衡をとる処理が実行されるには、各電池モジュールの指示パラメータは、共通の閾値、例えば電池モジュールが新品であったときの内部抵抗の少なくとも2倍に相当する水準を超える必要がある。例えば、新品時の内部抵抗が6mΩであった場合、共通の閾値は少なくとも12mΩになるように選択されればよい。
【0051】
このように、同じ数の電池セルを有する電池モジュールについて、工程103における判定は、2つの電池モジュール、例えばモジュール10と10'’の間の内部抵抗の絶対差を所定の第1の抵抗閾値Rt1、すなわちΔR=│Ri1-Ri3│>Rt1 と比較して行ってもよい。あるいは、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’のいずれかのモジュールの間で比較を計算し、電池モジュールの内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3に基づいて、いずれかの差が所定の第1の抵抗閾値Rt1を超えているかを判定する。
【0052】
電池モジュールが異なる数の電池セルを有する場合、各電池モジュールの電池セルあたりの平均内部抵抗、すなわちRic1、Ric2、Ric3を計算する必要があり、工程103は、2つの電池モジュール、例えばモジュール10と10”の間の平均内部抵抗の絶対差を第1の所定のセル抵抗閾値Rtc1を比較して、例えばΔRic=│Ric1-Ric3│>Rtc1のように行われる。あるいは、比較は、少なくとも2つの電池モジュールのいずれかのモジュールの間で電池セルごとに計算され、電池モジュールの平均内部抵抗Ric1、Ric2、Ric3に基づいて、任意の差が所定の第1のセル抵抗閾値Rtc1を超えているかを判定する。
【0053】
第1の抵抗閾値Rt1は、メモリ26に格納されてもよいし、本方法、すなわち本方法の実行を制御するコンピュータ・プログラムに実装されてもよい。工程103における計算が電池モジュールにおける平均内部抵抗について実行される場合、第1のセル抵抗閾値Rtc1は、電池パックに関するデータ、すなわち各電池モジュールにおける電池セルの数とともに、各電池セルについての第1の抵抗閾値Rt1に基づいて決定される必要がある。より詳細には、コントロールユニットは、局所コントロールユニット20から識別番号を受信し、メモリから電池モジュールに関するデータを取り出す。このデータは、図2に示す電池パック120のように、電池パックが各電池モジュールで10個の電池セルを含むこと、および、電池パックが3個の電池モジュールを含むことであってもよい。
【0054】
各電池セルのエネルギー容量、および電池セルの数、並びに必要に応じて共通ガス空間の容積に関する情報は、メモリからコントロールユニットに転送される。次に、コントロールユニットは、取得された抵抗値を電池セルの数で割って、前記2つの電池モジュールの各々について電池セルあたりの平均内部抵抗Ric1、Ric2に到達させてもよい。異なる2つの電池モジュールからの内部抵抗の差の絶対値が所定の第1の抵抗閾値Rt1を超えない場合、あるいは、異なる2つの電池モジュールからの電池セルあたりの平均内部抵抗が所定の第1のセル抵抗閾値Rtc1を超えない場合、コントロールユニットは、電池モジュールの内部抵抗の更新値を取得する次の機会に対して待機時間Twの間待機する。
【0055】
異なる任意の2つの電池モジュールからの内部抵抗の差ΔRの絶対値が、予め定められた第1の抵抗閾値Rt1を超える場合、コントロールユニットは、電池モジュールの内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3、および電池パックのデータに基づいて、電池パック内に充填される酸素の量を決定して(工程104)、任意の2つの電池モジュール間の内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3の差を小さくし、その差を第1の抵抗閾値Rt1未満の水準まで下げ、あるいは好ましくは所定の第2の抵抗閾値Rt2未満の水準まで下げる。ここで第2の閾値は、第1の閾値より低い(Rt1>Rt2)。これは、電池モジュールが異なる数の電池セルを含む場合に、平均内部抵抗を用いて実行される。必要な酸素量の決定に用いられるデータは、好ましくは、各電池セルのエネルギー容量および各電池モジュール内の電池セルの数に関する情報、並びに必要に応じて共通ガス空間の容積に関する情報である。必要な酸素量は、以下に説明するように、多くの異なる方法で決定することができる。
【0056】
一代替案によれば、コントロールユニットは、電池パックの共通空間に充填されるべき必要量の酸素を取得するために、先の測定値に依存する。コントロールユニットは、メモリ内のルックアップテーブルを参照して、電池パックの識別番号に対応する電池パックのデータを取得してもよい。電池パックのデータは、一例として、電池パックの種類を識別する種類番号であってもよい。次いで、コントロールユニットは、測定された抵抗値と型番とに基づいて、必要な酸素量を別のルックアップテーブルから取り出してもよい。ルックアップテーブルの必要な酸素量は、同様の電池パックの種類を用いた以前の実験に基づくものであってもよい。
【0057】
別の代替案によれば、コントロールユニットは、酸素の量を計算するために必要なデータをルックアップテーブルから取得する。ルックアップテーブルのデータは、各電池モジュール内の電池セルの数、電池パック内の電池モジュールの数、および各電池セルのエネルギー容量、並びに必要なら共通ガス空間の容積であってもよい。
【0058】
本方法は、少なくとも2つの電池モジュールU(nは、電池パック内の電池モジュール、例えばU、U、Uの数に等しい)の各々の電圧指示を取得する随意の工程105を含んでいてもよい。電圧指示は、測定された温度における電池モジュールの開回路電圧(OCV)または電池モジュールに酸素を加えても安全であることを示す充電状態(SOC)であってもよい。この例ではOCVが使用され、工程105における判定は、電池モジュールの開回路電圧Uを測定することで行われ、電池モジュールの少なくとも2つのための各電池モジュールの電圧内(Ut0<U<Ut1)にあるか否かを判定する後続の随意の工程105aが実行される。あるいは、工程105は、例えば、電池モジュールが異なる数の電池セルを含む場合、電池セルUciごとに判定される。この場合、コントロールユニット14は、平均電池セル電圧を求め、所定のセル電圧閾値Uctと比較するために、電圧測定に含まれる電池セルの数に関する情報を持っていなければならない。
【0059】
図1および図2の実施態様に示されているように、電圧測定は、通常、電池モジュール全体にわたってのみ実行される。モジュール電圧Uが所定の電圧閾値Uを超えないと判定された場合、電池パックに酸素を充填しても安全であると判定される。逆に、電池モジュール電圧が電圧範囲内にない場合、工程105を繰り返す前に、電池パックを充電または放電して電池モジュールの電圧を調整する随意の工程106が実行される。つまり、電池モジュール電圧が上限電圧指示閾値以上(U≧Ut0)の場合、電池パックは放電され(工程106a)、電池モジュール電圧が下限電圧指示閾値以下(U≦Ut0)の場合、電池パックは充電される(工程106b)。これらの随意の工程105、105aおよび106を実行することは、電池セルの電圧が高すぎるときに酸素が電池パックに充填された場合の火災のリスクを低減するのに有利であり、これは、電池セル上の電圧が高いときに酸素再結合速度が高くなりすぎるという事実によって引き起こされ得る。電池モジュールの電圧が低すぎると、吸蔵水素から保護されていない負極に酸素が直接反応する。
【0060】
図4は、室温、すなわち20℃±2℃の電池モジュール抵抗Rinと、それに対応するn番目の電池モジュール(U)の開回路電圧(OCV)について描かれた複数の測定値を含む。図4のデータは、10個の電池セルを有するニッケル水素電池モジュールのものである。モジュールの電圧閾値Uは、図4に示すように、電池モジュールの抵抗値Rinの関数である。4つの丸で囲んだ点27は、電圧が高すぎて酸素を充填できない測定値を示す。
【0061】
上記のように、電池パックに酸素を充填することが安全でないと判定された場合、本方法は、電池モジュールの電圧を調整する随意の中間工程106を含んでもよい。これは、決定された量の酸素で電池パックの充填を開始する工程107の前に、電池パックの各電池モジュール上の開回路電圧が示された電圧範囲内にあることを保証する電圧に電池パックを充電または放電して実行される。一例として、+20℃±2℃の温度で上側電圧指示閾値は1.39V/セルであり、下側電圧指示閾値は1.3V/セルである。下限電圧指示電圧閾値と同様に上限電圧指示電圧閾値は温度に依存し、OCVが確実に電圧範囲1.3~1.39V/セル内にあるようにするために、所定の温度範囲(室温など)に正規化することができる。それ以外の場合は、電池モジュールに酸素を充填しても安全であることを判定するために、異なる温度に対する閾値が利用できることが必要である。
【0062】
電池モジュールに酸素を充填しても安全か否かをSOCで判定する場合、SOCの上限閾値は95%、下限閾値は50%である。
【0063】
電池モジュール10、10’、10'’は、電池モジュールに酸素を充填すると同時に不活性ガスを充填してもよく、これにより充填時の火災の危険性を低減することができる。充填は、図1では、入口弁16を介してガス入口25に接続可能なガス容器17を用いて行うことが例示されている。コントロールユニット14は、容器17の電池モジュール10、10’、10'’の部位への送付を開始することによって充填を開始するように構成されてもよい。
【0064】
実施態様によっては、電池パックの充填を開始する工程は、電池パックに酸素を充填する前に共通ガス空間に水素ガスを添加する工程を含むこともでき、これにより電池モジュールの動作効率をさらに改善することができる。しかし、この工程は、電圧指示が電圧指示範囲内にあり、電池モジュールが酸素で充填されても安全である場合にのみ実行することができる。
【0065】
予防措置として、工程107で電池モジュールに酸素を充填した後、本方法は随意の第8の工程108を含み、コントロールユニット14は電池パック内の前記少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’の充填後の内部抵抗に関連する充填後パラメータを取得する。随意の第9の工程109では、任意の2つの電池モジュール10、10’、10'’間の内部抵抗の差が、所定の第2の閾値、例えば第2の抵抗閾値Rt2を超えているかが判定される。この場合、方法は工程104に戻り、電池パック100内の少なくとも2つの電池モジュールのうちの2つのモジュール間の充填後パラメータの差を第2の抵抗閾値Rt2未満の水準に下げるための、電池パックに充填されるべき酸素の追加量が決定される。この追加量は、工程107で電池パックに充填される酸素の量である。これらの随意の工程は、電池モジュールRi1、Ri2、Ri3の内部抵抗が再び第1の抵抗閾値Rt1を超える前に電池のサイクルをより多く許容するので、より強固な方法を提供する。工程109から工程104への随意のフィードバックループは、原理的には必要ないはずだが、電池パックに任意の追加酸素を充填する必要がある場合には、電池パックに決定された量の酸素が充填される。この工程を有意義なものにするためには、酸素の充填が多かれ少なかれ瞬時に行われることが必要である。酸素充填のために容器17を送らなければならない場合、電池パックに酸素が充填されるまでに数時間から数日の遅れが生じる可能性がある。
【0066】
本方法が、任意の2つの異なる電池モジュール、例えば10、10'’の間の内部抵抗の差を第2の抵抗閾値未満で取得することを目的とする場合、2つの異なる電池モジュール10、10'’の間の電池モジュールあたりの内部抵抗の絶対差ΔR=│Ri1-Ri3│は、第2の抵抗閾値Rt2より低く(ΔR<Rt2)なければならない。
【0067】
決定工程109をQA工程で置き換えてもよい、というのは内部抵抗はQA工程の一部として決定されるからである。
【0068】
なお、コントロールユニットは電池パックのデータを取得する工程101を、前回データを取得したときからの経過時間の長さに応じて異なるように実行することが考えられる。また、データは、コントロールユニット14の作業用メモリに短時間だけ記憶されるようにしてもよい。
【0069】
上の記述では、コントロールユニット14がいかにこの方法を実行し得るかを説明した。コントロールユニットは、少なくとも1つのプロセッサ14’(図1)を含んでいてもよい。少なくとも1つのプロセッサで実行されると、このプロセッサは複数の命令を含むコンピュータ・プログラムでプログラムされてもよく、これらの命令は少なくとも1つのプロセッサで実行されると、電池パックの操作効率を改善する上記の方法を実行させる。コントロールユニットにおけるこの方法は、コンピュータで実行されてもよい。
実施例
【0070】
図5は、図2による電池パックにおいて、酸素充填前の電池の品質保証のためのサイクル中に、電池セルの電圧がどのように変化するかを示す。
【0071】
図6は、図2による電池パックにおいて、酸素充填後の電池の品質保証のためのサイクル中に、電池セルの電圧がどのように変化するかを示す。
【0072】
以下の表は、電池パックへの酸素充填(電池パックの充填を開始する工程の一例、図4の工程107)の詳細と、異なる電池モジュールの電池セルあたりの内部抵抗に関する詳細を含む。
【表1】
【0073】
上記の表1では、異なる電池モジュール1~3の電池セルあたりの抵抗が、電池パック120間の均衡を取る間の異なる時間で示されている。最初の列から分かるように、酸素は4工程で加えられる。第1の工程の前に、電池セルあたりの内部抵抗Ric1、Ric2、Ric3は、電池パックに接続された電池モジュールで得られる。第5欄の差は、第1の電池モジュール10と第3の電池モジュール10'’間の電池セルあたりの内部抵抗Ric1、Ric2、Ric3の差を意味する。このように選択した理由は、4回目の酸素充填後の電池セル当たりの内部抵抗Ric1、Ric2、Ric3の差が、図2の電池モジュール10、10'’に対応する第1の電池モジュール1と第3の電池モジュール3との間で最大になるためである。
【0074】
最初の酸素充填の前に、図5に示されるような品質保証サイクルが実行される。第1の電池モジュール1の第1の電圧曲線31は、第2の電池モジュール2の第2の電圧曲線32および第3の電池モジュール3の第3の電圧曲線33と明確に分離されている。これは、第1の電池モジュール1の電池セル当たりの平均内部抵抗Ric1と第2および第3の電池モジュールの電池セルあたりの平均内部抵抗Ric2、Ric3の間の差が大きいためである。また、第2の電圧曲線32と第3の電圧曲線33は、電池セルあたりの平均内部抵抗Ric2、Ric3が似ており、互いに接近している。
【0075】
電池パック120への酸素の4回目の充填の後、異なる電池モジュール間の電池セルあたりの内部抵抗Ric1、Ric2、Ric3の差は、上記の表の最後の行から明らかなようにかなり小さい。この小さな差は、第1の電圧曲線31、第2の電圧曲線32および第3の電圧曲線33が互いに非常に接近している図6からも明らかである。QAを反復と表記された工程は、電池モジュールの充電および放電を含む品質保証を繰り返す工程である。
【0076】
図7は、電池パック間の均衡をとる際に内部抵抗がどのように変化するかを説明する第1の例である。下記の表2において、電池間の均衡を取るために必要な充填量を決定するデータとして使用される電池パックの抵抗測定値は、平均K係数とその標準偏差で表される。K係数は、電池パックの初期平均抵抗値からの平均内部抵抗の増加分を反映する。例えば、K係数2.5は、内部抵抗が4mΩから10mΩに増加することを表す。
【0077】
さらに、式(1)を用いて、必要な酸素の充填量を決定している。
Y=(C・x-C)・M (1)
ここで、Yは酸素の充填量(リットル)、CおよびCは定数、xは電池パックの平均K係数、Mは電池パックのモジュールの数である。定数は、各電池モジュールの電池セル数、電池容量などの電池モジュールのデータに基づいて決定される.この例では、C=5.8958, C=5.3106, M=12 であり、式(2)が得られる。
Y=(5.8958・x-5.3106)・12 (2)
【表2】
【0078】
電池パックを充填する過程は、内部抵抗の差(ΔR=Rmax-Rmin)が所定値より大きいとき、または内部抵抗の標準偏差が所定値を超えるときに開始されてもよい。この例では、ΔR>3.5mΩのとき(図7の曲線40で示すように)、この過程が起動され、必要な酸素量が計算された。この例では、酸素の最大充填量は72リットルに制限されているため、2段階で実行される。72リットルの1回目の充填後の結果は曲線41で示されており、1回目の充填(37.9リットル)後に酸素の追加量が計算され、40リットルの2回目の充填が行われる。40リットルの2回目の充填後の結果は、曲線42で示される。表2より、内部抵抗の標準偏差が初期の標準偏差0.020を下回る水準まで低下し、電池パック間の均衡が取れていると判定できる。
【0079】
図8は、電池パック間の均衡をとる際の内部抵抗の変化を説明する第2の例である。式(2)を用いて充填する酸素量を算出しており、表3は、電池パックの抵抗値測定結果、電池パック間の均衡を取るための計算充填量、実際の充填量、内部抵抗の偏差を示す。
【表3】
【0080】
この例では、ΔR>2.5mΩのとき(図8の曲線50に示すように)、プロセスが起動され、必要な酸素量が計算された。計算量107.8リットルは充填装置の容量より大きいため、充填工程は別々の2工程で行われ、1回目の充填工程で充填される量は計算された量の約半分、すなわち53リットルに選択されている。53リットルの1回目の充填後の結果は曲線51で示されており、1回目の充填後に酸素の追加量(39.9リットル)が計算され、40リットルの2回目の充填が行われた。40リットルの2回目の充填後の結果は、曲線52で示される。表3より、2回目の充填後は内部抵抗の標準偏差が初期の標準偏差0.040を下回る水準まで低下し、電池パック間の均衡が取れていると判定できる。
【0081】
その後、電池パックの充放電を繰り返したところ、電池パック内の内部抵抗が増加し、電池モジュール間の内部抵抗の差も2.5mΩを超えるまで増加した(図8の曲線55で図示)。電池パック間の均衡をとるために必要な酸素量は67.6リットルであった。68リットルの3回目の充填後の結果は、曲線56で示される。表3から、3回目の充填後は内部抵抗の標準偏差が0.030を下回る水準まで低下し、電池パック間の均衡が取れていると判定できる。
【0082】
本開示は、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’を含む電池パックの動作効率を改善する方法に関し、各電池モジュールは、少なくとも1つの電池セルを含む。各電池モジュールは、少なくとも1つの電池セルを包含し、かつガス空間を囲むケーシングを有し、電池モジュールのガス空間は、互いに接続されて、共通のガス空間29を形成する。各電池セルは、第1の電極、第2の電極、多孔質セパレータ、および第1の電極と第2の電極の間に配置された水性アルカリ性電解質を含み、多孔質セパレータ、第1の電極および第2の電極は、電極間にガスを移動させて水素と酸素を交換可能に構成される。ケーシングのうちの少なくとも1つは、共通ガス空間に気体または液体を添加するためのガス注入口を含む。本方法は、電池モジュールあたりの電池セルの数および電池モジュールの数、各電池モジュールの温度、および電池モジュール(10、10’、10'’)のエネルギー容量に関連するデータを取得する工程、電池モジュール(10、10’、10'’)のうちの少なくとも2つについて内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3に関する指示パラメータを取得する工程、電池モジュール間の指示パラメータの差が所定の第1の閾値を超える場合に、指示パラメータと電池モジュールに関するデータとに基づいて、任意の2つの電池モジュール間の指示パラメータの差を第1の閾値未満の水準にするために電池モジュールに充填すべき酸素の充填量を決定する工程104、および決定された酸素充填量に基づいて、電池パックへの酸素充填を開始する工程を含む。
【0083】
実施態様によっては、指示パラメータは、電池モジュール10、10’、10'’のうちの少なくとも2つのモジュールの内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3であるように選択され、第1の閾値は、電池パックへの酸素充填が、電池モジュール10、10’、10'’のうちの任意の少なくとも2つのモジュールの間の内部抵抗の差を第1の抵抗閾値Rt1未満の水準まで下げる、第1の抵抗閾値Rt1である。
【0084】
実施態様によっては、指示パラメータは、電池モジュールの健全状態(state of health=SOH)に関連する。
【0085】
実施態様によっては、電池モジュール10、10’、10'’に対する指示パラメータおよび第1の閾値は、各電池モジュールの指示パラメータおよび取得された各電池モジュール内の電池セルの数に基づいて、電池セルごとに決定される。
【0086】
実施態様によっては、本方法は、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’の各々にわたる電圧指示U、U、Uを取得する工程105、少なくとも2つの電池モジュールのいずれかに関する電圧指示U、U、Uが所定の上限電圧指示閾値Ut1を超えているかを判定する工程105a、および決定した充填量の酸素で電池パックの充填を開始する工程107の前に少なくとも2つの電池モジュールの各々の取得された電圧指示が所定の上限電圧指示閾値Ut1より低い場合に充填工程107を実施する工程をさらに含む。
【0087】
実施態様によっては、所定の電圧指示閾値Ut1は、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’の内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3に関連する指示パラメータの関数である。
【0088】
実施態様によっては、本方法は、少なくとも2つの電池モジュールのいずれかにかかる取得された電圧指示が、所定の上限電圧指示閾値Ut1以上のとき、決定された充填量の酸素で電池パックの充填107を開始する前に、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’の電圧を所定の上限電圧指示閾値未満の水準に下げるために電池パックを放電する工程106a、をさらに含む。
【0089】
実施態様によっては、本方法は、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’のいずれかの電圧指示が所定の下限電圧指示閾値Ut0以下か否かを判定する工程105a、および少なくとも2つの電池モジュールのそれぞれに関する取得された電圧指示が所定の下限電圧指示閾値(Ut0)を超えるときに充填を開始する工程107を実行することをさらに含む。
【0090】
実施態様によっては、本方法は、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’のいずれかの取得された電圧指示が所定の下限電圧指示閾値Ut0以下の場合、決定された充填量の酸素で電池モジュールの充填を開始する工程107を実行する前に、電池パックを充電して少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’の電圧を下限電圧指示閾値Ut0を超える水準に上げる工程106bを更に備える。
【0091】
実施態様によっては、充填を開始する工程107は、少なくとも2つの電池モジュールに酸素を充填する前に、電池パックに水素を充填することをさらに含む。
【0092】
実施態様によっては、電圧指示は、少なくとも2つの電池モジュールの開回路電圧であるように選択され、上限および下限電圧指示閾値は、温度依存性である。
【0093】
実施態様によっては、電圧指示は、電池モジュールの充電状態(State of Charge=SOC)に関連する。
【0094】
実施態様によっては、電池パック100、150への不活性ガスの充填は、電池パック100、150への酸素の充填と連動して行われる。
【0095】
いくつかの実施態様によれば、不活性ガスは、アルゴン、窒素、ヘリウムおよび/または空気の任意の組み合わせであるように選択される。
【0096】
実施態様によっては、充填を開始する工程107は、少なくとも2つの電池モジュール間の指示パラメータの差を小さくするために、決定された充填量の酸素を有する容器17の準備を開始する工程を更に含む。容器内の気体の圧力は、容器の容積と容器内の気体の量に依存する。小さな容器の場合、容器中のガス量は酸素の充填量とほぼ同じになる。しかし、容器から酸素を充填した後は、残留酸素量が必ず容器内に留まっている。容器から電池モジュールへのガスの流れは、容器内の圧力が電池モジュールの共通ガス空間の圧力と同じになるまで続く。従って、容器のガス量は充填量より少し多めにする必要がある。
【0097】
実施態様によっては、電池パックを酸素で充填した後に、電池パックの充填後の内部抵抗Ri1、Ri2、Ri3に関連する充填後パラメータを取得する工程108、少なくとも2つの電池モジュール10、10’、10'’のうちのいずれかのモジュールの間の充填後パラメータの差が所定の第2の閾値を超えているかを判定する工程109、いずれかの電池モジュール間の充填後パラメータの差が第2の閾値を超える場合、電池モジュールの充填後パラメータと各電池モジュールに関するデータとに基づいて、任意の2つの電池モジュールの間の充填後パラメータの差を第2の抵抗閾値Rt2未満の水準に下げるために電池パックに充填されるべき酸素の追加充填量を決定する工程、および決定された酸素の追加充填量を電池パックに充填する工程を含む。
【0098】
いくつかの実施態様によれば、本方法は、ニッケル水素(NiMH)電池セルを含む電池パックに対して実行される。
【0099】
本開示は、少なくとも1つのプロセッサ14’で実行されると、少なくとも1つのプロセッサ14’に上述のような方法を実行させる命令を含む、電池パックの動作効率を改善するコンピュータ・プログラムにも関する。
【0100】
また、本開示は、上記のような電池パックの動作効率を改善するコンピュータ・プログラムを搭載したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0101】
本開示はまた、電池パック100、150間の均衡をとる容器17に関する。この容器は、上述の方法を実行するために、電池パックへの充填量の酸素の充填のために少なくとも所定量の加圧酸素で満たされている。
【0102】
本開示の各態様は、図面、例えば、ブロック図および/またはフロー図を参照して説明される。当然のことだが、図面中のいくつかの実体、例えばブロック図のブロック、および図面中の実体の組み合わせも、コンピュータ・プログラム命令によって実装することができ、この命令は、コンピュータ可読メモリに格納することができ、またコンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に読み込むことができる。このようなコンピュータ・プログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、および/または他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータおよび/または他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、ブロック図および/またはフロー図のブロックまたはブロックに指定された機能/行為を実施するための手段を作成するような機械を作り出すことが可能である。
【0103】
実施態様および本開示の態様によっては、各ブロックに記された機能または工程は、動作説明図に記された順序から外れて発生し得る。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には実質的に同時に実行されるか、または各ブロックは、関係する機能/行為に依存して、時には逆の順序で実行されることもある。また、各ブロックに記された機能または工程は、本開示のいくつかの態様によれば、ループで連続的に実行されることもある。
【0104】
図面および明細書に、本開示の例示的な態様が開示された。しかしながら、本開示の原理から実質的に逸脱することなく、これらの態様に対して多くの変形および修正を行うことができる。したがって、本開示は、制限的というよりは例示的であるとみなされるべきであり、上述した特定の態様に限定されるものでない。したがって、特定の用語が採用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的としたものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのニッケル水素(NiMH)電池モジュール(10、10'、10'')を含む電池パック(100、150)の動作効率を改善する方法であって、各電池モジュールは少なくとも1つの電池セルを含み、各電池モジュール(10、10'、10'')は少なくとも1つの電池セルを包含し、かつガス空間を取り囲むケーシングを有し、前記電池モジュール(10、10'、10'')のガス空間は互いに接続され、共通のガス空間(29)を形成し、各電池セルは、第1の電極、第2の電極、多孔質セパレータ、および前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置された水性アルカリ性電解質を含み、前記多孔質セパレータ、前記第1の電極および前記第2の電極は、これらの電極間にガスを移動させることで水素と酸素の交換を可能にするように構成され、前記ケーシングのうちの少なくとも1つは、前記共通のガス空間に気体または液体を添加するガス注入口を有し、該方法は、
前記電池モジュール(10、10'、10'')あたりの前記電池セルの数、前記電池モジュール(10、10'、10'')の数、各電池モジュールの温度、および各電池モジュール(10、10'、10'')のエネルギー容量に関するデータを取得する工程(101)と、
前記電池モジュール(10、10'、10'')のうちの少なくとも2つのモジュールの内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3 )を取得する工程(102)と、
前記電池モジュールのうちのいずれかのモジュールの間の内部抵抗の差が所定の第1の抵抗閾値(Rt1)を超える場合に、前記内部抵抗と前記電池モジュールに関するデータに基づいて、前記任意の2つの電池モジュールの間の内部抵抗の差を前記第1の抵抗閾値(R t1 未満の水準に下げるために前記電池モジュール(10、10'、10'')に充填すべき酸素の充填量を決定する工程(104)と、
前記決定された酸素の充填量に基づいて、前記電池パックの充填を開始する工程(107)とを含む方法。
【請求項2】
前記電池モジュール(10、10'、10'')の前記内部抵抗および前記第1の抵抗閾値(R t1 は、各電池モジュールの前記内部抵抗および取得された各電池モジュールの電池セルの数に基づいて電池セルごとに決定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該方法は、
少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')の各々の電圧指示(U、U、U)を取得する工程(105)と、
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')のいずれかの電圧指示(U、U、U)が所定の上限電圧指示閾値(Ut1)を超えているかを判定する工程(105a)と、
前記決定された充填量の酸素で電池パックの充填を開始する工程(107)の前に、前記少なくとも2つの電池モジュールの各々の取得された電圧指示が前記所定の上限電圧指示閾値(Ut1)よりも低い場合に充填工程(107)を実行する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記所定の電圧指示閾値(Ut1)は、前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')にの前記内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3 )の関数であることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電池モジュールのいずれかにかかる前記取得された電圧指示が、前記所定の上限電圧指示閾値(Ut1)以上の場合に、
前記決定された充填量の酸素で電池パックの充填を開始する工程(107)の前に、前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')の電圧を前記所定の上限電圧指示閾値(U)未満の水準まで下げるために前記電池パックを放電する工程(106a)をさらに含むことを特徴とする請求項または記載の方法
【請求項6】
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')のいずれかの前記電圧指示が、前記所定の下限電圧指示閾値(Ut0)以下か否かを判定する工程(105a)と、
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')の各々の前記取得された電圧指示が前記所定の下限電圧指示閾値(Ut0)を超える場合に、充填を開始する工程(107)を実行する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項乃至いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')のいずれかの前記取得された電圧指示が、前記所定の下限電圧指示閾値(Ut0)以下の場合に、
前記決定された充填量の酸素で前記電池モジュールの充填を開始する工程(107)を実行する前に、前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')の電圧を、前記下限電圧指示閾値(Ut0)を超える水準まで上げるために、前記電池パックを充電する工程(106b)をさらに含むことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項8】
前記充填を開始する工程(107)が前記少なくとも2つの電池モジュールに酸素を充填する前に、電池パックに水素を充填することをさらに含むことを特徴とする請求項または記載の方法。
【請求項9】
前記電圧指示は、前記少なくとも2つの電池モジュールの開回路電圧であるように選択され、前記上限および下限電圧指示閾値は温度依存性であることを特徴とする請求項乃至いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記電圧指示は、前記電池モジュールの充電状態、SOCに関連することを特徴とする請求項乃至いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記電池パック(100、150)への不活性ガスの充填を、前記電池パック(100、150)の酸素の充填と連動して実行することを特徴とする請求項1乃至1いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記不活性ガスが、アルゴン、窒素、ヘリウムおよび/または空気の任意の組み合わせであるように選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記充填を開始する工程(107)が、前記少なくとも2つの電池モジュール間の内部抵抗の差を小さくするために、前記決定された充填量の酸素を有する容器(17)の準備を開始する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至1いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記電池パックを酸素で充填した後に、
前記電池パックの充填後の前記内部抵抗(Ri1、Ri2、Ri3)に関連する充填後パラメータを取得する(108)工程と、
前記少なくとも2つの電池モジュール(10、10'、10'')のうちのいずれかのモジュールの間の前記充填後パラメータの差が、所定の第2の閾値を超えているかを判定する工程(109)と、
前記電池モジュール(10、10'、10'')のうちのいずれかのモジュールの間の前記充填後パラメータの差が前記第2の閾値を超える場合に、前記電池モジュールの前記充填後パラメータ及び各電池モジュールに関するデータに基づいて、任意の2つの電池モジュール(10、10'、10'')の間の前記充填後パラメータの差を第2の抵抗閾値(Rt2)未満の水準に下げるために前記電池パックに充填されるべき酸素の追加充填量を決定する工程と、
前記決定された追加量の酸素を前記電池パックに充填する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至1いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのプロセッサ(14')で実行されると、少なくとも1つのプロセッサ(14')に請求項1乃至1いずれか1項記載の方法を実行させる命令を含む、電池パックの動作効率を改善するコンピュータ・プログラム。
【請求項16】
請求項1記載の電池パックの動作効率を改善するためのコンピュータ・プログラムを搭載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【国際調査報告】