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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】農業用アジュバント
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/24 20060101AFI20230623BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20230623BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20230623BHJP
   A01N 37/40 20060101ALI20230623BHJP
   A01N 47/36 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A01N25/24
A01N25/00 101
A01P13/00
A01N37/40
A01N47/36 101E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562461
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 PL2021050029
(87)【国際公開番号】W WO2021215947
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P.433649
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522399909
【氏名又は名称】シェブチック,ロマン
【氏名又は名称原語表記】SZEWCZYK, Roman
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェブチック,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォズニカ,ゼノン
(72)【発明者】
【氏名】ウォス,カジミエシュ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB01
4H011BA01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BB14
4H011BC04
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA16
4H011DD03
4H011DH03
(57)【要約】
農薬、特に植物保護剤のためのアジュバントであって、植物油、植物性脂肪酸メチルエステル、植物性脂肪酸エチルエステル、植物性脂肪酸ブチルエステル、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分と、アルキル鎖長C13~15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤、および炭素鎖長C12~22の植物性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される非イオン系界面活性剤、を含む湿潤成分である湿潤アルカリ相溶化剤と、を含む、アジュバント。本発明はまた、除草剤、生物刺激剤、成長調整剤もしくは肥料またはそれらの混合物からなる群から選択される植物保護剤、水、および本発明によるアジュバント、を含む葉面散布組成物に関する。本発明によるアジュバントは、高い生分解性を特徴とし、高寿命の散布液を得るために使用され、用いられる活性物質の高い溶解性と散布面上での高い保持性を保証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬、特に植物保護製品のためのアジュバントであって、
植物油、植物性脂肪酸メチルエステル、植物性脂肪酸エチルエステル、植物性脂肪酸ブチルエステル、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分と、
アルキル鎖長C13~15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤、および
炭素鎖長C12~22の植物性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される非イオン系界面活性剤、
を含む湿潤アルカリ相溶化成分と、
を含む、アジュバント。
【請求項2】
植物油、植物性脂肪酸メチルエステル、植物性脂肪酸エチルエステル、植物性脂肪酸ブチルエステル、またはそれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分を70~90重量%、
アルキル鎖長C13~15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤を5~15重量%、および、
炭素鎖長C12~22の植物性ポリグリセリン脂肪酸エステル群から選択される非イオン系界面活性剤を5~15重量%、
含む、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項3】
植物油、植物脂肪酸メチルエステル、植物脂肪酸エチルエステル、植物脂肪酸ブチルエステル、またはそれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分を80重量%、
アルキル鎖長C13~15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤を10重量%、および、
炭素鎖長C12~22の植物性ポリグリセリン脂肪酸エステル群から選択される非イオン系界面活性剤を10重量%、
含む、請求項2に記載のアジュバント。
【請求項4】
植物由来の油が、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、亜麻仁油である、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項5】
除草剤、生物刺激剤、成長調整剤または肥料またはそれらの混合物からなる群から選択される植物保護製品、
水、および、
請求項1~4のいずれか1項に記載のアジュバント、
を含む、葉面散布組成物。
【請求項6】
前記除草剤がスルホニルウレア系除草剤である、請求項5に記載の葉面散布組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬用多機能性アジュバント、特に植物保護剤、主に除草剤ならびに生物刺激剤、成長調整剤、肥料および他の葉面施用農薬のための多機能性アジュバントに関する。
【背景技術】
【0002】
ブースターと呼ばれるアジュバント(adjuvants;補助剤、機能性展着剤ともいう。)は、多くの葉面散布型農薬、特に除草剤、殺菌剤、および殺虫剤の散布液に添加され、対象有害生物の表面への噴霧液滴の付着を高め、その濡れを促進し、そして作用部位への活性物質の浸透および輸送を図るものである。アジュバントの他の効果、例えば、活性物質の水への溶解度を高めたり、噴霧液滴の急速な乾燥や噴霧表面での活性物質の結晶化を防止したり、風による噴霧液滴の飛散を抑制して環境汚染を低減するなどの効果も重要である。この目的のために、界面活性剤と呼ばれる表面活性剤、鉱物および植物起源の油、無機化合物、特にアンモニウム化合物、ならびに補助アジュバントに基づいた活性化アジュバントが一般に使用されており、その最も重要なものは、風による噴霧液滴の発泡および飛散を防止する化合物である。これらの一液性アジュバントは作用範囲が比較的狭いという事実があるため、農業の現場においては、複数の成分の個々が異なる機能を持って互いに補完し合うアジュバント混合物を使用することが合理的であるとされている。そのような多機能性アジュバントは、ユーザが使用するのに便利であり、植物保護製品の有効性を強力に高め、様々な自然条件および技術条件においてその性能を高いレベルで維持することを可能にし、さらに、使用する農薬の用量を減らすことを可能にし、これは、測定できるほどの経済的利益をもたらすとともに、農産物および環境の汚染の減少に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5238604号公報
【特許文献2】米国特許第5624883号公報
【特許文献3】米国特許第6642178号公報
【特許文献4】米国特許第6659720号公報
【特許文献5】ポーランド国特許発明第201947号
【特許文献6】米国特許第8765637号公報
【特許文献7】国際公開第2016/055344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なかでも、雑草、病害、および害虫に対する植物保護製品の有効性を高めるアジュバントとして、特許文献1および特許文献2が知られている。これらのアジュバントは、油または脂肪酸エステルとは別に、親水性-親油性バランス(hydrophilic-lipophilic balance:HLB)値が10未満の親油性を有する単一の非イオン系界面活性剤を含有し、その主な機能は、表面張力を低下させることの他に、スプレー液中の水-油エマルジョンの調製を可能にすることである。この種のアジュバントは多くの重大な欠点を有し、特に、(i)葉面上での噴霧液滴の保持と植物細胞への活性物質の浸透を最適化する、HLBが10を超える親水性界面活性剤を含んでいない、(ii)噴霧液のpHを7を超えて上昇させず、そのため活性物質(特に、スルホニルウレア系除草剤)の水への最大溶解度を保証せず、これにより、これらの物質は結晶の形態で噴霧液中に大量に残存し、植物細胞への浸透は限られた程度にとどまる。
【0005】
従来技術によれば、葉面除草剤を目的とする米国特許およびポーランド特許に記載されたアジュバントも知られており、このアジュバントは、脂肪酸メチルエステル、界面活性剤、および噴霧液のpHを7より高くする化合物を含有し、多くの活性物質、特にスルホニルウレア系除草剤の溶解を容易にする。例えば、特許文献3では、この機能は製剤中に組み込まれたトリエタノールアミン(triethanolamine:TEA)によって行われ、特許文献4に示されるアジュバントでは、TEAに加えて、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどの無機塩基、および一級アミノアルコールも、スプレー液のpHを上昇させる緩衝剤として作用することができる。一方、特許文献4に記載されたアジュバントでは、スプレー液の緩衝およびpH上昇の機能は、アルキルジメチルポリオキシエチレンアンモニウムヒドロキシドによって行われる。特許文献5にはまた、エトキシル化ココナッツアミンや環境に優しくないエトキシル化タリウムアミンに代表されるアルカリ性成分を、オイルアジュバントの組成物中に含有させる可能性が記載されている。しかしながら、これらのアジュバントのいずれも、植物保護製品の作用を制限する最も重要な因子に対して、包括的な効果を有していない。
【0006】
特許文献7には、ポリグリセロールエステルと、例えばエトキシル化アミンの形態の乳化剤とからなる2成分系アジュバントが開示されている。この出願に開示されるアジュバントは、植物細胞への農薬の侵入に対する重要な障壁を構成する、植物表面上のクチクラワックスを溶解するように機能する油留分を含んでいなかった。この重大な欠点にもかかわらず、このアジュバントは、農薬の有効性を増大させ、散布時における噴霧液滴の風力ドリフトを低減するために使用されてきた。
【0007】
本発明の目的は、これまでに示された欠点がなく、最も重要な制限因子をより包括的に排除する、葉面散布用農薬のアジュバントを提供することである。このようなアジュバントについて行われた研究では、高い生分解性を有し、高い耐用年数を有する散布液を保証し、そして使用される活性物質の高い溶解性、散布表面における高い保持性を確保し、また、適切な被覆および標的有害生物への活性浸透を保証する、組成物が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、除草剤、生物刺激剤、成長調整剤、または肥料を含む、葉面農薬用のアジュバント、特に、植物保護製品のためのアジュバントであって、
植物油、植物性脂肪酸メチルエステル、植物性脂肪酸エチルエステル、植物性脂肪酸ブチルエステル、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分、および
C13~15のアルキル鎖長を有するエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤と、
C12~22の炭素鎖長を有する植物性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される非イオン系界面活性剤と、
を含む湿潤-アルカリ化-相溶化成分、
を含有する。
【0009】
本発明のアジュバントは、好ましくは、植物油、植物性脂肪酸メチルエステル、植物性脂肪酸エチルエステル、植物性脂肪酸ブチルエステル、またはそれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分を70~90重量%;C13~15のアルキル鎖長を有するエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤を5~15重量%;および、C12~22の炭素鎖長を有する植物性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される非イオン系界面活性剤を5~15重量%;含む。
【0010】
本発明のアジュバントは、より好ましくは、植物油、植物性脂肪酸メチルエステル、植物性脂肪酸エチルエステル、植物性脂肪酸ブチルエステル、またはそれらの混合物からなる群から選択される物質である油成分を80重量%;C13~15のアルキル鎖長を有するエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤を10重量%;および、C12~22の炭素鎖長を有する植物性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される非イオン系界面活性剤を10重量%;含む。
【0011】
好ましくは、植物由来の油は、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、亜麻仁油などである。
【0012】
別の態様によれば、本発明はまた、除草剤、生体刺激剤、成長調整剤もしくは肥料、またはこれらの混合物からなる群から選択される植物保護剤;本発明によるアジュバント;および、水;を含む葉面散布組成物に関する。
【0013】
葉面散布組成物における除草剤は、スルホニルウレア系除草剤であることが好ましい。
【0014】
本発明によるアジュバントは、散布液中に安定な油-水エマルジョンの形成を保証し、散布液を7を超えるpHレベルに緩衝し、したがって活性物質、例えばスルホニルウレア群からなる除草剤、を容易に溶解することができ、散布表面の十分な濡れ性と、標的害虫の細胞に対して活性な生体物質の浸透とを確実にする、液状均質濃縮物である。このようなアジュバントを農薬の散布液に添加することにより、それらに含まれる生物学的活性物質の活性を強く高め、用量を減らして使用する場合であっても、広範囲な気候条件および技術条件において高い効果を維持することができ、また、風力によるドリフトを著しく低減させ、このことにより、農薬を用いて、敏感な近隣作物を損傷したり、環境を汚染したりする可能性を減少させる。
【0015】
予想外なことに、粗製植物油(例えば、菜種、大豆、ヒマワリ、亜麻仁および/またはその他)および/または、エステルメチル,エチルまたはブチル脂肪酸、ならびにアルキル鎖長C13~15でHLB数が15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤を含むアジュバントの組成物に対し、炭素鎖長C12~22の植物性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される追加の非イオン系界面活性剤を添加することによって、透明で、均一かつ貯蔵性が安定な処方物を調製することが可能になり、この処方物により、均質で長期保存可能な油-水エマルジョン噴霧液の製剤を作製できることが明らかとなった。本発明によるアジュバントへの脂肪酸ポリグリセリルエステル群からの追加の界面活性剤の添加は、そのレオロジー特性および機能特性を有意に改善することを可能にした。
【0016】
本発明によるアジュバントに含まれ、非イオン系界面活性剤に含まれる、アルキル鎖長がC13[1]、C14[2]、およびC15[3]のエトキシル化アルキルアミンは、以下の化学構造を有する。
【0017】
【化1】
【0018】
本発明によるアジュバントのレオロジー特性および機能特性の改善を可能にする、植物性脂肪酸ポリグリセロールエステルからなる群から選択される界面活性剤は、以下の化学構造を有する。
【0019】
【化2】
式中、n=2~20(ポリマー中のグリセロール分子の数)、R=C12~22の脂肪酸、である。
【0020】
本発明によるアジュバントは、-10℃~+54℃の温度範囲で少なくとも12ヶ月の保存の間、生物静止性(biostatic)かつ安定である。0.5~2%の濃度で散布液に添加すると、少なくとも12時間のあいだ化学的に植物保護に許容されるレベルに留まる、安定な油-水エマルジョンを生成する。本発明によるアジュバントの重要な利点は、その調製中だけでなく、商業的な生産段階で、液体植物保護製品製剤に組み込んで、散布液に添加できることである。
【0021】
特許出願の非限定的な実施形態によれば、本発明によるアジュバント組成物と、除草剤の混合物とともにこのアジュバントを使用することの生物学的効果と、以下に示される。
【0022】
(実施例I)
20℃における粘度が4mm2/s、密度が0.85g/cm3の菜種油脂肪酸メチルエステル700重量部、アルキル鎖長がC13~15でHLB数15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤150重量部、および炭素鎖長C12~22の植物性脂肪酸ポリグリセロールエステル群から選択される非イオン系界面活性剤150重量部、をメカニカルスターラーを備えた容器に収容した。
【0023】
混合物が完全に均質化するまで、全体を20℃で約10分間、ゆっくりと撹拌した。これにより、菜種油脂肪酸メチルエステル70重量%、アルキル鎖長C13~15でHLB数が15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤15重量%、および炭素鎖長C12~22の植物性脂肪酸ポリグリセロールエステル群から選択される非イオン系界面活性剤15重量%からなり、密度0.91g/cm3、20℃における動粘性率が4.1mPa/sの、淡い琥珀色をした透明で均質な組成物を得た。このように調製したアジュバントを、濃度1%で水に導入したところ、pH8.28で、静的表面張力が31.08mNmの、12時間安定な油-水エマルジョンを形成した。
【0024】
(実施例II)
20℃における粘度が4mm2/s、密度が0.85g/cm3の菜種油脂肪酸メチルエステル800重量部、アルキル鎖長がC13~15でHLB数15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤100重量部、および炭素鎖長C12~22の植物性脂肪酸ポリグリセロールエステル群から選択される非イオン系界面活性剤100重量部、をメカニカルスターラーを備えた容器に収容した。
【0025】
混合物が完全に均質化するまで、全体を20℃で約10分間、ゆっくりと撹拌した。これにより、菜種油脂肪酸メチルエステル80重量%、アルキル鎖長C13~15でHLB数が15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤10重量%、および炭素鎖長C12~22の植物性脂肪酸ポリグリセロールエステル群から選択される非イオン系界面活性剤10重量%からなり、密度0.89g/cm3、20℃における動粘性率が3.4mPa/sの、淡い琥珀色をした透明で均質な組成物を得た。このように調製したアジュバントを、濃度1%で水に導入したところ、pH8.12で、静的表面張力が31.87mNmの、12時間安定な油-水エマルジョンを形成した。
【0026】
(実施例III)
20℃における粘度が4mm2/s、密度が0.85g/cm3の菜種油脂肪酸メチルエステル900重量部、アルキル鎖長がC13~15でHLB数15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤50重量部、および炭素鎖長C12~22の植物性脂肪酸ポリグリセロールエステル群から選択される非イオン系界面活性剤50重量部、をメカニカルスターラーを備えた容器に収容した。
【0027】
混合物が完全に均質化するまで、全体を20℃で約10分間、ゆっくりと撹拌した。これにより、菜種油脂肪酸メチルエステル90重量%、アルキル鎖長C13~15でHLB数が15のエトキシル化アルキルアミンの混合物からなるアルカリ性非イオン系界面活性剤5重量%、および炭素鎖長C12~22の植物性脂肪酸ポリグリセロールエステル群から選択される非イオン系界面活性剤5重量%からなり、密度0.87g/cm3、20℃における動粘性率が3.3mPa/sの、淡い琥珀色をした透明で均質な組成物を得た。このように調製したアジュバントを、濃度1%で水に導入したところ、pH7.54で、静的表面張力が33.07mNmの、12時間安定な油-水エマルジョンを形成した。
【0028】
(実施例IV)
アジュバント組成物において、ポリグリセロールエステル群から選択された非イオン系界面活性剤が油-水エマルジョンの品質に及ぼす影響を調べたところ、驚くべきことに、水中においてこの界面活性剤と菜種油のメチルエステルとの混合物は、その調製後12時間まででも非常に良好な品質を保持することがわかった。
【0029】
【表1】
【0030】
上記表に示されたデータは、ポリグリセロールエステル群から選択された界面活性剤をアジュバントとする油-水エマルジョン(実施例I~IIIによる3成分組成物)が、アルキル鎖長C13~15でHLB数15のエトキシル化アミン群から選択されるエトキシル化アミン群から選択されたアルカリ性非イオン系界面活性剤のみをアジュバントとして含む油-水エマルジョン組成物に比べて、安定していることを示す。
【0031】
(実施例IV)
トウモロコシにおける推奨用量および減量用量で使用した除草剤Hector Max 66.5 WG (ジカンバ+ニコスルフロン+リムスルフロン)の除草効果に対する、実施例IIにしたがって調製したアジュバント組成物の影響も調べた(フィールド調査、2018年および2019年の平均、ポズナン生命科学大学ブロディ分校ゴルジニ教育実験学部)。
【0032】
【表2】
【0033】
上記の表に示されたデータは、本発明の実施例IIにしたがって調製されたアジュバント組成物を1.5L/haの用量で、トウモロコシにおける減量された用量の除草剤Hector Max 66.5 WG(ジカンバ+ニコスルフロン+リムスルフロン)とともに用いることによって、この除草剤をアジュバントなしで全用量で施用した後よりも、高い除草効果が達成されたことを示している。本発明の実施例IIのアジュバントの効果は、比較例のTrend 90 ECのhアジュバントの効果よりも明らかに優れていた。
【国際調査報告】