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特表2023-527658ウイルス性非ビリオン膜タンパク質由来エピトープに対するヒト白血球抗原クラスI制限CD8 T細胞応答をプライムするワクチン組成物を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ウイルス性非ビリオン膜タンパク質由来エピトープに対するヒト白血球抗原クラスI制限CD8 T細胞応答をプライムするワクチン組成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20230623BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230623BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230623BHJP
   C07K 14/005 20060101ALN20230623BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20230623BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20230623BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
A61K39/12
A61P31/14
A61K35/76
A61K39/00 D
A61K39/215
C07K14/005
C12N15/33
C12N15/86 Z
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022564830
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2021060956
(87)【国際公開番号】W WO2021219619
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20171570.3
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519162570
【氏名又は名称】ジェノヴィー エービー
【氏名又は名称原語表記】GENOVIE AB
【住所又は居所原語表記】Forskargatan 20 C,151 36 Sodertalje,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ジャービス,リーガン マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA71
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB33
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
投与時に全身免疫応答及び/又は局所的免疫応答を効果的に誘導することができるワクチン組成物であって、ウイルス病原体の非ビリオン膜タンパク質(非VIP)から選択されるヒト白血球抗原クラスI(HLAI)制限エピトープを含み、したがってウイルス感染細胞を特異的に指向するCD8 T細胞応答をプライムする組成物を提供する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス性病原体に対して使用するワクチン組成物を製造する方法であって、以下:
a.対抗するワクチン組成物が望まれるウイルス病原体から、非ビリオン膜タンパク質由来のヒト白血球抗原クラスI制限エピトープ(非VIP由来HLAI-HRE)を同定すること
b.標的ウイルスに事前感染していないドナーから単離されたナイーブCD8 T細胞集団及び/又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーからのメモリーCD8 T細胞集団における、同定された非VIP由来HLAI-HREの免疫原性を分類すること
c.ナイーブドナーにおいて免疫原性が確認された非VIP由来HLAI-HRE又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーにおいてCD8 T細胞応答が観察された非VIP由来HLAI-HREを選択すること
d.選択された非VIP由来HLAI-HREをワクチン組成物に含めること
を含む方法。
【請求項2】
複数の非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン組成物に含めるために、ワクチン組成物を設計する対象の集団内の少なくとも60%の個体が保有する対立遺伝子であるHLAI対立遺伝子の中の1又は2以上のHLAI-HREを表すように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン組成物に含めるために、ワクチン組成物を設計する対象の個体が保有する1又は2以上のHLAI対立遺伝子の中の1又は2以上のHLAI-HREを表すように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ワクチン組成物が、下記:
a.組換え非複製又は複製ウイルスベクター;
b.ウイルス様粒子;
c.改変ヌクレオチドを含むか又は含まない組換えRNA構築物;
d.改変ヌクレオチドを含むか又は含まない組換えDNA構築物;
e.改変アミノ酸を含むか又は含まない組換えタンパク質;
f.改変アミノ酸を含むか又は含まない合成ポリペプチド
から選択される1又は2以上のワクチンベクターを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1又は2以上のワクチンベクターがa、b又はcから選択され、選択された非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン送達時に宿主細胞における機能的非VIPタンパク質の発現を許容しない発現構築物に組み込まれて、該ウイルス性非VIPの免疫回避活性を無効にする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
選択された非VIP由来HLAI-HREの提供が、以下:
a.タンパク質機能を不活化する、全長非VIP ORF内での点変異及び/又は配列挿入及び/又は配列欠失を導入すること;
b.連結構築物中の選択されたHLAI-HREをコードする非VIP ORFフラグメントを含む合成核酸配列の構築;
c.キャリアタンパク質配列内の選択されたHLAI-HREをコードする非VIP ORFフラグメントを含む合成核酸配列の構築
の1又は2以上により提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1又は2以上のワクチンベクターがd又はeから選択され、組換えタンパク質又は合成ポリペプチドが1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREを含み、タンパク質又はポリペプチド分子が、連結されたHLAI-HREを含むか又はキャリアタンパク質若しくはポリペプチド内に前記HLAI-HREをコードする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
1又は2以上のワクチンベクターが、中和Ig応答をプライムする1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープを更にコードする、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1又は2以上のワクチンベクターが、B細胞成熟及び中和抗体産生を支持するCD4 T細胞応答をプライムし、及び/又は記憶分化への非VIP由来HLAI-HRE特異的CD8 T細胞応答の傾倒を促進するよう1又は2以上の選択したHLAII-HREエピトープを更にコードする、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープが、ワクチン送達時にVIPタンパク質に対するCD8 T細胞応答をプライムしないようにVIPからHLAI-HREを除去するように改変されている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により製造される、ウイルス性病原体に対して使用するワクチン組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のワクチン組成物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含むワクチン製剤。
【請求項13】
請求項11に記載のワクチン組成物、請求項12に記載のワクチン製剤又は請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により製造されるワクチン組成物を投与することを含む、ヒト対象又は獣医学対象にワクチン接種してウイルスに対する免疫を付与する方法。
【請求項14】
請求項11に記載のワクチン組成物、請求項12に記載のワクチン製剤又は請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により製造されるワクチン組成物を用いてヒト対象又は獣医学対象を免疫して免疫応答を誘発することにより、急性、慢性又は潜在ウイルス感染を患うヒト対象又は獣医学対象を処置する方法。
【請求項15】
請求項11に記載のワクチン組成物、請求項12に記載のワクチン製剤又は請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により製造されるワクチン組成物を投与することを含む、ヒト対象又は獣医学対象におけるウイルス感染に対するCD8 T細胞応答を惹起する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫学及びワクチンに関する。より具体的には、本発明は、ウイルス性病原体に対して有用なワクチン組成物の製造方法及び該ワクチン組成物に関する。特に、本発明は、ウイルス感染症の予防薬又は治療薬として有用な投与可能なワクチン組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ウイルスワクチン組成物
現在、市販されているワクチン製剤は、主に、ウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)全体に対するものであって、中和免疫グロブリン(Ig)応答をプライムして、標的ウイルス病原体に対する免疫を獲得することを一般に目的としているものである。ワクチン戦略は、一般に、ワクチン組成物に含めるHLA制限T細胞エピトープを具体的に選択することは求めていない。多くの場合、HLA制限エピトープ(HRE)の特徴決定は、ビリオンを構成するタンパク質、すなわち「ビリオン膜タンパク質」(VIP)に見出されるものに限定される。なぜならば、これら特定のウイルスORF産物に対するT細胞応答は、臨床症状を伴うウイルス感染で優勢に観察され、よって有効なT細胞媒介細胞免疫を付与する推定されるからである。しかし、VIP由来HREをワクチン組成物に含めることは、B細胞駆動Ig応答をプライムする目的の結果であることが多く、一般に、感染宿主内での標的ウイルスの複製及び拡散のライフサイクルも、このライフサイクルが宿主内でT細胞中心の細胞性免疫をどのようにプライムするかも考慮したものではない。したがって、ワクチン組成物においてT細胞免疫を活用し又は回避しようとする場合、ウイルスのライフサイクル、ウイルスの免疫回避及び免疫病理の可能性をより詳細に注意深く検討すべきである。
【0003】
ウイルス感染に対する適応免疫応答
ウイルス感染の臨床症状は、しばしば、ウイルスの免疫回避及び/又はウイルス誘導免疫病態と関連づけられる。これら免疫病態は、多くの場合、「ウイルスがコードするタンパク質」(VEP)に対する過剰な応答に帰することができる。臨床症状を伴う自然ウイルス感染の間のVEPに対するIg産生は、一般に、ウイルスのIgエピトープに対するB細胞サンプリング及び成熟のためにビリオン表面で利用可能なVIPに限定される。これは、患者のT細胞がVIP由来HREに限定されることが多い、臨床症状を呈するウイルス感染における支配的なT細胞応答についての類似するケースである。対照的に、ウイルス性非ビリオン膜タンパク質(非VIP)は、ウイルスのライフサイクル因子と、そのライフサイクルを通して宿主免疫系がどのように反応するかとの組合せに起因して、優勢未満のT細胞応答を駆動することが多い。宿主の免疫は、多くの場合、VEPによって駆動される、特異的な自然免疫応答及び適応免疫応答の能動的免疫回避にさらされる。実際、ウイルス性非VIPは、一般に、宿主の自然免疫応答のウイルス駆動性調節不全を担い、よって下流の適応免疫応答の過程を変化させる。
【0004】
ワクチン組成物のためのヒト白血球抗原(HLA)制限エピトープ特定における課題
ワクチン組成物に含ませるウイルス性HREの特定は、集団全体にわたるHLAハプロタイプの多様性に起因して、困難である。HLA対立遺伝子のバリアントは、高等生物における最も多様な遺伝子ファミリーを表し、HLA遺伝子の遺伝的多様性は、集団レベルでの多様なHRE提示の広範な可能性を付与する。すなわち、HLA遺伝子の遺伝的多様性が、タンパク質レベルの多様性を導き、それが、次いで、ローディング及び細胞表面での提示のためのHREの差別的選択をもたらす。特定のHREの高度に複雑なプロセシング及び機能的な様式での提示を分析するための系統的で正確なツールが一般に不足しているため、VEPに由来するHREの系統的で信頼性の高い同定が制限されてきた。さらに、これらHREの複雑なT細胞受容体(TCR)誘導性T細胞認識は、その下流で多様なT細胞中心適応免疫及び免疫寛容を駆動する。HRE特異的T細胞応答を機能的に分析する系統的なバイオテクノロジーツールの欠如は、更に、ワクチン組成物に含ませるべきものを特定するための、VEPに対するT細胞応答の直接分析を妨げてきた。
【0005】
HLAクラスI及びクラスII並びに関連するT細胞応答
HLAの2つの主要なクラス、クラスI(HLAI)及びクラスII(HLAII)は、一般に、それぞれCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答を引き起こし、全ての有顎脊椎動物に見出される。HLAI分子は、全ての有核細胞により提示され、一般には、主にプロテアソーム分解及び該分解産物の小胞体(ER)への輸送を通じてプロセシングされる細胞内タンパク質を提示する。ER内では、HLAI分子にHLAI-HREを酵素駆動的にローディングし、その後、T細胞サンプリングのために細胞表面に輸送される過程で、さらなるタンパク質分解性プロセシングが行こり得る。HLAI分子は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)の表面にも提示される。樹状細胞(DC)又はマクロファージなどのプロフェッショナルAPCは、適応免疫の中心的なメディエーターである。プロフェッショナルAPC内では、追加のプロセシング及び輸送経路により、細胞外環境のサンプリングから得られたタンパク質抗原分解産物が、HLAI交差提示のためにERへ送達されることが可能である。対照的に、HLAII分子はプロフェッショナルAPCの表面でのみ構成的に提示される。HLAII分子は、細胞外ペイロードをエンドサイトーシス小胞内にエンドサイトーシスして、HLAII分子を種々のプロセシング酵素及びシャペロン酵素と共に含む別個の小胞区画との融合することを含むプロセスであって、シャペロン酵素が、T細胞サンプリングのために細胞表面に輸送される前にHLAII分子にHREをローディングするよう指示するプロセスでの、細胞外環境のサンプリングから得られたタンパク質分解産物の提示に大きく制限されている。
【0006】
HLAクラスI及びCD8 T細胞応答
CD8 T細胞コンパートメントの主な機能は、該当するCD8 CTLクローンが有するTCRを活性化する同族HLAI-HREエピトープを提示しているとして検出された標的細胞に対する種々の細胞死機序の実行を媒介する細胞傷害性リンパ球(CTL)としての役割である。そのため、CD8 T細胞によるHLAI-HREの検出は、有核細胞の細胞内プロテオームの監視を含み、よって細胞内で発現した非自己タンパク質に応答する適応細胞性免疫の中心機序である。このことにより、HLAI-HREを検出するCD8 T細胞応答は、細菌、寄生虫その他の細胞内微生物感染に加えて、異形成及び悪性の細胞形質転換並びにウイルス感染に対する主要な防御として特徴付けられる。HLAI-HREは比較的短いペプチドであり、HLAII-HREと比較して物理化学的制約がより厳格である。HLAI-HREの比較的厳格な性質は、自己及び非自己の抗原成分に由来するHLAI-HREに対する偽CD8 CTL応答から生じる組織損傷を避けるために、CD8 CTL適応応答の厳密な制御の必要性を反映している。
【0007】
HLAクラスII及びCD4 T細胞応答
HLAII-HRE指向性CD4 T細胞応答は、HLAI-HRE CD8 T細胞応答より複雑で多様である。一般に、CD4 T細胞は、白血球及び非白血球細胞へのシグナル伝達を通じて、自然免疫応答及び適応免疫応答を調和させる役割を果たす「ヘルパー」細胞と考えられる。適応免疫に関しては、HLAII-HRE CD4 T細胞応答は、B細胞成熟を高親和性Ig応答の生成に向けるために必要であり、例えば、CD8 T細胞の記憶細胞分化への傾倒にも関与している。細胞外域から採取したHLAII-HREの検出時に、CD4T細胞は、細胞外に存在する微生物を含む感染に対して適応免疫応答を、主に、B細胞成熟による液性Ig応答の進行を促すことによって調和させるための中心的存在である。例えば、常在菌及び食品に対する免疫寛容を担う制御性T細胞(Treg)もまた、HLAII-HREをサンプリングするCD4 T細胞として主に同定される。また、これらHLAII-HRE CD4 Treg応答は、病原性微生物に対する自然免疫応答及び適応免疫応答において重要な品質管理及び炎症解消の役割を果たし、例えば、ウイルス関連免疫病態の可能性を制限する。
【0008】
ウイルスのライフサイクル及び宿主のCD8 T細胞応答
宿主細胞のウイルス感染は、ウイルスゲノムの送達及びコードされたORF(非VIP及びVIPに分けることができる)の発現をもたらす。一般に、非VIPはウイルスの複製及び宿主防御の免疫回避を担う一方、VIPは感染細胞内でデノボビリオンに組み立てられるタンパク質である。様々なタイプの免疫回避機構が、或る特定のウイルスにおいてVIPに帰せられ得る。一般に、非VIPは、主に、ウイルスゲノムのプロセシング及び複製、ウイルスゲノムのパッケージングの調和、デノボビリオン生成の制御及び免疫回避の媒介を担っていると言われている。
【0009】
感染細胞が発現するHLAI-HREに対する有効なCD8 CTLのプライミングは、ウイルス感染に対する適応免疫の中心である。CD8 CTL作用によるウイルス感染細胞の排除は、ウイルス除去及び獲得免疫の確立の両方にとって重要な側面であると考えられる。感染宿主細胞は、一連の自然免疫応答を誘発して、CD8 T細胞(CD8 CTL適応免疫を開始するナイーブCD8 T細胞であっても、以前の自然感染又はワクチン接種に対する免疫を呼び起こすメモリーCD8 T細胞であっても)によるHLAI-HREのサンプリングを誘引する。CD8 T細胞の動員及びサンプリングを駆動する主要な細胞内自然免疫応答は、インターフェロンタイプI(IFN-I)経路である
ウイルス性非VIPは、一般に、細胞質区画に広く発現されるため、HLAI-HREのプロセシング及び提示機構に利用可能である一方、VIPはこれら機構から隔離されていることが多い。HLAI-HREプロセシング及び提示からのVIPの隔離は、デノボビリオン生成の過程で構造的VIPが膜及び小胞に隔離されるため、特にエンベロープウイルスにおいて明らかである。したがって、ウイルス性非VIPに対するCD8 CTL応答は、多くの形態のウイルス感染における、増殖性に感染した細胞の除去を介するウイルス除去の主要な原動力と考えることができる。
プロフェッショナルAPCは、HLAI-HRE CD8 CTL応答の強力な誘導因子である実際、特にDCは、細胞感染を促進して有益なCD8 CTL応答を駆動する機構を有する。しかし、増殖性のプロフェッショナルAPC感染がない場合、CD8 CTL応答の優勢なプライミングは、ビリオン全体のエンドサイトーシス、及びDCによるHLAI-HREの交差提示のためのVIPのERへの輸送を通じて、VIPに偏ることがある。このことが、臨床症状を呈する多くのウイルス感染において、VIP由来HLAI-HREに対するCD8 T細胞応答の免疫優位性の重要な原動力であろう。
【0010】
ウイルス感染に対して有益なCD8 T細胞宿主応答及び免疫回避
ウイルス感染に対する最も有効なCD8 T細胞応答は、最終的にウイルス感染細胞の除去を促進することができるCD8 CTL応答をプライムするものである。これが、ウイルス感染並びにウイルス性因子及びゲノムの認識が自然免疫応答を迅速に引き起こす主要な理由であり、INF-Iが自然免疫経路の誘導に大きな役割を有する。IFN-I経路は、CD8 T細胞の動員及び活性化の促進に重要な役割を有し、よって増殖性に感染した細胞が提示するHLAI-HREに対する有益なCD8 CTL応答のプライミングを促進する。
ウイルスの免疫回避の顕著な機構は、先天性INF-I応答の調節不全及び/又は抑制であり、多くのウイルスゲノムは、IFN-Iシグナル伝達を妨害する幾つかの非VIPをコードする。このことが、CD8 T細胞による感染細胞中のHLAI-HREの検出に関して特に、ウイルスの免疫回避を促進する。このような免疫回避機構により、ウイルス感染細胞のCD8 CTL駆動性排除からの逃避が促進される一方、ウイルスの複製は進行可能である。このことは、ウイルス感染の間の有効でなく、有害でさえあるHLAI-HRE CD8T細胞応答の可能性について明確な示唆を与えている。
【0011】
ウイルス感染に対する非生産的CD8 T細胞応答
ウイルス感染細胞のCD8 T細胞応答からの逃避は、ウイルス感染の間に非生産的な又は有害でさえあるCD8 T細胞応答の駆動に明確に影響を与える。重要なことには、ウイルス感染細胞のCD8 T細胞応答からの逃避は、感染細胞の排除によるウイルス除去に最も有益である、ウイルス性非VIP由来HLAI-HREに対するCD8 CTL応答を選択的に制限する。重要なことには、この免疫回避により、感染細胞が新たなビリオンを生成して放出し、感染を増幅させることが可能になる。このことにより、不可避的に、DC及びマクロファージを含むプロフェッショナルAPCが、ピノサイトーシス、エンドサイトーシス又はファゴサイトーシスを通じて、細胞外空間で増加するビリオンを採取できるようになる。しかし、現在利用可能なHLAI-HREエピトープは、プロフェッショナルAPC自体が増殖性ウイルス感染の対象でない場合、より有効な非VIP由来HLAI-HREではなく、むしろVIPに由来しなければならない。
増殖性感染した細胞が提示する非VIP由来HLAI-HREに対するCD8 CTL応答の免疫回避及びプロフェッショナルAPCがプライムしたVIP由来HLAI-HREに対する免疫優勢応答の出現の結果は、さらに下流のウイルス免疫回避に明確な影響を与える。第一に、CD8 T細胞応答をプライムするプロフェッショナルAPCの優位は、CD8 CTL応答を有効な非VIP由来HLAI-HREからVIP由来HLAI-HREに方向転換させる。第二に、VIP由来HLAI-HREの免疫優位は、CD8 CTL応答をプライムし、CD8 CTL作用によるプロフェッショナルAPCの排除を促進する。実際、CD8 CTLが媒介するプロフェッショナルAPCの排除は、ウイルス感染に対する炎症反応の解消の要因と考えられている。しかし、これは、活発なウイルス感染の間は、無調節免疫応答であると考えられ得、感染部位及び排出リンパ節(DLN)でのプロフェッショナルAPCの枯渇を推進し、プロフェッショナルAPCが連係させる適応免疫応答全体(特にHLAI-HRE/CD4 T細胞応答)の能力の低下をもたらす。このような適応免疫の累積的な免疫回避は、増殖性に感染した細胞に対するCTL作用の一次免疫回避の下流であり、宿主細胞の感染スペクトルが制限されたウイルス感染において、プロフェッショナルAPCの増殖性感染がないか又は非効率である場合に特に、重要である。
【0012】
CD4 T細胞及び無調節のCD8 CTL応答に由来するIg免疫回避
上記のVIP由来HLAI-HREに対するCD8 CTL応答の蓄積は、感染の間のプロフェッショナルAPCの枯渇を推進するものであるが、ウイルス感染に対する有効な適応免疫応答に有害な一連の下流効果をもたらすことがある。重要なことに、プロフェッショナルAPCがHLAII-HRE特異的CD4 T細胞応答の中心であり、この応答自体が体液性Ig免疫の成立の中心である。感染部位でプロフェッショナルAPCを排除する免疫優性なVIP由来HLAI-HRE CD8CTL応答は、有効な非VIP由来HLAI-HREに対する応答を犠牲した上、DLNにおいて、CD4 T細胞応答を協調させることができるプロフェッショナルAPCプラットフォームの利用性の低下をもたらす。このことが、不可避的に、そうでなければウイルス除去及び進行中の免疫を支援するB細胞成熟及び高親和性中和Ig生成を適時に効果的に協調させる能力の低下をもたらす。これは、CD4 T細胞応答が、非VIP由来HLAI-HREに対するCD8 CTL応答の記憶分化への傾倒及びCD8中心で進行する免疫の効率的な成立を媒介する能力の低下をもたらし得る。
【0013】
Ig駆動免疫病態及びワクチン関連疾患
現在のワクチン戦略のほとんどは、多くの場合で不活化又は弱毒化ウイルス全体内で、ほぼインタクトなVIPを提供する組成物を対象とし、中和抗体産生をプライムするという中心目的を有する。しかし、HRE T細胞の協調的応答による支持がなければ、これら戦略は、標的ウイルス性病原体に対して、乏しい中和抗体価及び不完全な免疫しか生じない場合が多く起こり得る。さらに、いくつかのワクチン戦略は、動物及びヒト対象において免疫病態の悪化をもたらした。これは、一部は、VIPを誤って指向するHRE特異的T細胞応答の下流での無調節Ig応答に帰結させ得る。幾つかの場合、開発的ワクチン戦略及び自然感染では、特に呼吸器粘膜の感染において、中和抗体産生自体に関連する免疫病態が観察されている。呼吸器粘膜での高力価の抗体分泌は、過剰なレベルの粘膜産生及び閉塞性呼吸困難を生じることがある。これらワクチン関連疾患現象は十分に理解されておらず、ウイルス感染の間のHREレパートリーの高度な複雑性、個人間のHLAハプロタイプの高度な多様性及びウイルス感染に対する適応免疫応答全般の不十分な理解に起因して、その対処は難題である。
【0014】
選択されたCD8 T細胞応答をプライムするウイルスワクチン組成物の展望
CD8 CTL応答は、ウイルス感染成立の防止及びウイルス感染の除去の両方において重要な役割を果たすことを支持する証拠が豊富に存在する。実際、動物モデルにより、抗原特異的CD8 T細胞がボーラスなウイルス攻撃を顕著に防御することが明確に示されている。上記の観察から、選択した非VIP由来HLAI-HREをワクチン組成物中に提供して、有益なCD8 CTL応答を選択的にプライムするワクチン戦略が指摘されている。そうすることで、このワクチン組成物は、侵入するウイルスに対する最前線の防御を提供しつつ、その後の自然ウイルス感染時に免疫病理の悪化をもたらし得るCD4及びIg応答の非生産的な又は有害なプライミングの可能性を回避することを目的とする。
これまで、有利なT細胞応答をプライムすることを目的とした効果的なワクチン組成物のために正確なHREを特定するに十分に詳細で正確にHRE特異的なT細胞応答を解析することは困難であった。今や、新たなバイオテクノロジー法により、HRE並びにこれら抗原に対するT細胞応答の詳細で迅速かつ正確な機能解析が可能になっている。(例えば、WO2018083316、WO2018083317、WO2018083339及びWO2018083318を参照)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、ウイルス感染症の予防薬又は治療薬として有用な投与可能なワクチン組成物を作製する方法を提供する。本発明は、特に、投与時に全身免疫応答及び/又は局所的免疫応答を効果的に誘導することができるワクチン組成物であって、ウイルス病原体の非ビリオン膜タンパク質(非VIP)から選択されるヒト白血球抗原クラスI(HLAI)制限エピトープ(HLAI-HRE)を含み、したがって、ウイルス感染細胞を特異的に指向するCD8 T細胞応答をプライムする組成物を提供する。
本発明は、ウイルス免疫及びクリアランスに有益なCD8 CTL応答を選択的にプライムすると同時に、VIP由来HLAI-HREに対する非生産的又は有害なCD8 CTL応答を回避するワクチン組成物を製造するために用いる非VIP由来HLAI-HREの選択方法を提供する。
この方法は、ウイルス感染細胞を指向する選択的CD8 CTL応答をプライムする一方で、ウイルスの免疫回避機構により駆動される疑似CD8 CTL応答及び下流の免疫病理を回避することを目的とするワクチン組成物に含ませるためのHLAI-HREの選択を含む。
特に、本発明は、ウイルス感染症の予防薬又は治療薬として投与可能なワクチン組成物を製造する方法を提供する。本発明は、特に、投与時に全身性免疫応答及び/又は局所的免疫応答を効果的に誘導することができるワクチン組成物であって、VIP由来HLAI-HREを避けて、標的ウイルス性病原体から選択された1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREを含み、したがって、ウイルス感染細胞を特異的に指向する、限定的で高度に規定されたCD8 T細胞応答をプライムする組成物を提供する。
【0016】
1つの観点では、本発明は、ウイルス性病原体に対して使用するためのワクチン組成物を製造する方法であって、以下:
a.対抗するワクチン組成物が望まれるウイルス病原体から、非ビリオン膜タンパク質由来のヒト白血球抗原クラスI制限エピトープ(非VIP由来HLAI-HRE)を同定すること;
b.標的ウイルスに事前感染していないドナーから単離されたナイーブCD8 T細胞集団及び/又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーからのメモリーCD8 T細胞集団における、同定された非VIP由来HLAI-HREの免疫原性を分類すること;
c.ナイーブドナーにおいて免疫原性が確認された非VIP由来HLAI-HRE又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーにおいてCD8 T細胞応答が観察された非VIP由来HLAI-HREを選択すること;
d.選択された非VIP由来HLAI-HREをワクチン組成物に含めること
を含む方法を提供する。
【0017】
ナイーブなドナー又は以前の感染が確認されたドナーにおける非VIP由来HLAI-HREの免疫原性は、感染細胞内で通常のウイルスライフサイクルの間に該エピトープが利用可能であることを確認するため、増殖性ウイルス感染が組み込まれた細胞モデルにおいてプロセスされて提示されることが確認されているHLAI-HREに対してであるべきである。すなわち、単独で発現させたウイルスORF、ORFフラグメント、又は組換えペプチドの使用は、所定の非VIP由来HLAI-HREの免疫原性の確認としては十分ではない。このことは、ナイーブなドナー又は感染ドナーにおけるT細胞応答の直接解析とは別に、例えば、ウイルス病原体に増殖性又は非増殖性に感染したエクスビボ細胞モデルにおける非VIP由来HLAI-HREの検出により確認され得る。
【0018】
非VIP由来HLAI-HRE免疫応答の系統的な比較解析は、以下:
1.無症状SARS-CoV-2感染被験者
2.有症状SARS-CoV-2感染に既往の被験者
3.重篤なCovid-19疾患を有する被験者
4.SARS-CoV-2未感染であることが判明している被験者
のヒト被験者クラスにおいて行い得る。
各被験者クラスにおいて同定された非VIP由来HLAI-HREは、1>2>3>4の優先順序でワクチン組成物に含まれることが好ましい。
【0019】
第2の観点では、本発明は、ウイルスに対する免疫を提供するためにヒト対象又は獣医学の対象にワクチン接種する方法であって、上記の方法により製造されたワクチン組成物の投与を含む方法を提供する。
これらワクチン製剤は、既知の病原体の処置及び予防並びに新規病原体に対する迅速な対応策の策定に有用であり得る。さらに、非VIP由来HLAI-HREの知識により、臨床的及び疫学的モニタリングのための診断手順の開発が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1.SARS-CoV-2初感染は、ウイルスにコードされたタンパク質を介した自然免疫の回避をもたらし、初期の適応CD8 T細胞応答の回避を媒介する。
図2図2.一次免疫回避の間に確立された感染は、免疫応答の動員の遅延をもたらす。
図3図3.適応免疫応答の遅れた開始は、蓄積したビリオンをサンプリングするプロフェッショナルAPCに偏り、ビリオン膜タンパク質に由来するHLA制限抗原を指向するT細胞応答を生じる。これは、HLAII/CD4ヘルパー細胞及びB細胞応答に関しては正しく指向した応答である。これは、HLAI/CD8 CTL応答には逆効果であり得る。HLAI/CD8 CTL応答は、ビリオンに現れるタンパク質ではなく、増殖性に感染された細胞において高度に発現する非ビリオンタンパク質を標的とするべきである。
図4図4.ウイルス血症及び組織損傷が蓄積する間にプロフェッショナルAPCにより交差提示されるVIPに由来するHLAI制限エピトープを誤って指向するCD8 CTL応答は、局所のプロフェッショナルAPCの枯渇を招き、その結果、無調節のT細胞及びB細胞応答をもたらし、これが、Covid-19重症例におけるサイトカインストームの基礎となり、SARS-CoV-2感染に対する中和抗体の全体的に弱い応答をもたらしている可能性がある。
図5図5.a)選択されたコアHLA-A、B、C対立遺伝子。b)少なくともnのコア対立遺伝子セットを保有すると予測される各民族の割合。c)ある民族において少なくともnのコア対立遺伝子を観察する累積確率。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の説明
本発明を以下の項目に記載して、観点及び実施形態を説明する。
1.ウイルス性病原体に対して使用するためのワクチン組成物を生成する方法であって、以下:
a.対抗するワクチン組成物が望まれるウイルス病原体から、非ビリオン膜タンパク質由来のヒト白血球抗原クラスI制限エピトープ(非VIP由来HLAI-HRE)を同定すること
b.標的ウイルスに事前感染していないドナーから単離されたナイーブCD8 T細胞集団及び/又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーからのメモリーCD8 T細胞集団における、同定された非VIP由来HLAI-HREの免疫原性を分類すること
c.ナイーブドナーにおいて免疫原性が確認された非VIP由来HLAI-HRE又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーにおいてCD8 T細胞応答が観察された非VIP由来HLAI-HREを選択すること
d.選択された非VIP由来HLAI-HREをワクチン組成物に含めること
を含む方法。
【0022】
2.複数の非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン組成物に含めるために、ワクチン組成物を設計する対象の集団内の少なくとも60%の個体が保有する対立遺伝子であるHLAI対立遺伝子の中の1又は2以上のHLAI-HREを表すように選択される、項目1に記載の方法。
3.1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン組成物に含めるために、ワクチン組成物を設計する対象の個体が保有する1又は2以上のHLAI対立遺伝子の中の1又は2以上のHLAI-HREを表すように選択される、項目1に記載の方法。
【0023】
4.ワクチン組成物が、下記:
a.組換え非複製又は複製ウイルスベクター;
b.ウイルス様粒子;
c.改変ヌクレオチドを含むか又は含まない組換えRNA構築物;
d.改変ヌクレオチドを含むか又は含まない組換えDNA構築物;
e.改変アミノ酸を含むか又は含まない組換えタンパク質;
f.改変アミノ酸を含むか又は含まない合成ポリペプチド。
から選択される1又は2以上のワクチンベクターを含む、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0024】
5.前記1又は2以上のワクチンベクターがa、b又はcから選択され、選択された非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン送達時に宿主細胞における機能的非VIPタンパク質の発現を許容しない発現構築物に組み込まれて、該ウイルス性非VIPの免疫回避活性を無効にする、項目4に記載の方法。
6.選択された非VIP由来HLAI-HREの提供が、以下:
a.タンパク質の機能を不活化する、非VIP ORF全長内の点変異、配列挿入、配列欠失を導入すること;
b.連結構築物中の選択されたHLAI-HREをコードする非VIP ORFフラグメントを含む合成核酸配列の構築;
c.キャリアタンパク質配列内の選択されたHLAI-HREをコードする非VIP ORFフラグメントを含む合成核酸配列の構築
の1又は2以上により提供される、項目5に記載の方法。
【0025】
7.前記1又は2以上のワクチンベクターがd又はeから選択され、組換えタンパク質又は合成ポリペプチドが1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREを含み、タンパク質又はポリペプチド分子が、連結されたHLAI-HREを含むか又はキャリアタンパク質若しくはポリペプチド内に前記HLAI-HREをコードする、項目4に記載の方法。
8.ウイルス性病原体が、アデノウイルス、アルファウイルス、アルボウイルス、ボルナ病、ブニヤウイルス、カリシウイルス、尖圭コンジローム、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱ウイルス、伝染性膿疱性皮膚炎、エプスタインバーウイルス、伝染性紅斑、ハンタウイルス、ウイルス性出血熱、ウイルス性肝炎、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、HIV、伝染性単核球症、インフルエンザ、ラッサ熱ウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、伝染性軟属腫、パラミクソウイルス、フレボトムス熱、ポリオーマウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、リフトバレー熱、風疹、遅発性ウイルス、天然痘、亜急性硬化性全脳炎、腫瘍ウイルス感染、西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、狂犬病ウイルス及び呼吸器多核体(RS)ウイルスからなる群より選択される、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
【0026】
9.ウイルス性病原体が、コロナウイルス、例えばSARS-Cov2である、項目8に記載の方法。
10.1又は2以上のワクチンベクターが、中和Ig応答をプライムする1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープを更にコードする、項目4~9のいずれか1項に記載の方法。
11.1又は2以上のワクチンベクターが、B細胞成熟及び中和抗体産生を支持するCD4 T細胞応答をプライムし、及び/又は記憶分化への非VIP由来HLAI-HRE特異的CD8 T細胞応答の傾倒を促進するよう1又は2以上の選択したHLAII-HREエピトープを更にコードする、項目4~10のいずれか1項に記載の方法。
12.1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープが、標的ウイルス性病原体のVIPタンパク質から選択され、ビリオンの表面上に発現される、項目10に記載の方法。
13.1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープが、ワクチン送達時にVIPタンパク質に対するCD8 T細胞応答をプライムしないようにVIPからHLAI-HREを除去するように改変されている、項目10及び12のいずれか1項に記載の方法。
【0027】
14.1又は2以上のHLAII-HREが、標的ウイルス性病原体に由来する配列を含んでいてもよく、或いはワクチン組成物に含まれる場合にB細胞成熟及び/又はCD8 T細胞記憶コミットメント(memory commitment)を支持する有益なCD4 T細胞応答を促進することができる合成の又は天然に存在するHLAII-HREエピトープであってもよい、項目11に記載の方法。
15.1又は2以上のワクチンベクターが、1又は2以上のワクチンアジュバントをさらに含む、項目4~10、13及び14のいずれか1項に記載の方法。
16.ワクチンベクターがさらに、ヒト対象又は獣医学の対象に投与するためのワクチン製剤として製造され、前記ワクチン製剤が、薬学的に適切な賦形剤をさらに含む、項目4~15のいずれか1項に記載の方法。
17.項目1~16のいずれか1項に記載の方法により製造される、ウイルス性病原体に対して使用するワクチン組成物。
18.項目17に記載のワクチン組成物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含むワクチン製剤。
【0028】
19.少なくとも1つのワクチンアジュバントをさらに含む、項目18に記載のワクチン製剤。
20.項目17に記載のワクチン組成物、項目18~19のいずれか1項に記載のワクチン製剤又は項目1~16のいずれか1項に記載の方法により製造されるワクチン組成物を投与することを含む、ヒト対象又は獣医学対象にワクチン接種してウイルスに対する免疫を付与する方法。
21.項目17に記載のワクチン組成物、項目18~19のいずれか1項に記載のワクチン製剤又は項目1~16のいずれか1項に記載の方法により製造されるワクチン組成物を用いてヒト対象又は獣医学対象を免疫して免疫応答を誘発することにより、急性、慢性又は潜在ウイルス感染を患うヒト対象又は獣医学対象を処置する方法。
22.項目17に記載のワクチン組成物、項目18~19のいずれか1項に記載のワクチン製剤又は項目1~16のいずれか1項に記載の方法により製造されるワクチン組成物を投与することを含む、ヒト対象又は獣医学対象におけるウイルス感染に対するCD8 T細胞応答を惹起する方法。
23.ワクチンの投与経路が、筋肉内、鼻内、経口、腹腔内、皮下、局所、皮内及び経皮送達から選択される、項目20~22のいずれか1項に記載の方法。
【0029】
24.ワクチンが鼻内に投与される、項目20~22のいずれか1項に記載の方法。
25.ワクチンが筋内に投与される、項目20~22のいずれか1項に記載の方法。
26.ワクチンが皮内に投与される、項目20~22のいずれか1項に記載の方法。
27.ワクチンがプライム-ブーストワクチン接種ストラテジを表す、少なくとも7日間隔で、2回の別個の機会に投与される、項目20~26のいずれか1項に記載の方法。
28.プライム-ブーストワクチンが同じ経路で投与される、項目20~27のいずれか1項に記載の方法。
29.プライム-ブーストワクチンが筋肉内に送達され、ブーストワクチンが鼻内に送達される、項目20~27のいずれか1項に記載の方法。
30.プライム及びブーストワクチン組成物、ワクチンベクター及び/又はワクチン製剤が、同一であっても異なっていてもよい、項目27~29のいずれかに記載の方法。
【実施例
【0030】
実施例
実施例1:非VIP由来HLAI-HREワクチン組成物の利点を示すSARS-CoV-2感染の免疫病態モデル
2019年12月に、中国武漢で原因不明の肺炎が数例確認された。これら肺炎症例は、後に、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)と名づけられた新規ウイルスに関連づけられた。2020年3月11日に、世界保健機関は、SARS-CoV-2が、現在ではパンデミックとみなされている「コロナウイルス病(COVID-19)」を引き起こしていると発表した。この疾患は、重症度によっては急性呼吸器ストレス障害を誘発することがある呼吸器感染症によって特徴づけられる。SARS-CoV-2感染高齢者は、若年者に比べてはるかに予後不良であると示されている。このことは、高齢者における適応免疫応答の能力低下が、SARS-CoV-2感染及びCOVID-19への進行の重篤度並びに重度合併症及び死亡のリスクに或る役割を演じていることを示唆している。本実施例は、SARS-CoV-2免疫病態のコンセンサスモデルを提案するものであり、このモデルは、非高齢者における現在及び過去の感染状態の決定、並びに高齢者におけるCOVID-19の重症度の理解の両方に直接影響すると共に、非VIP由来HLAI-HREを選択的に含むワクチン組成物の設計にも影響する。
【0031】
ウイルスワクチン開発は、自然ウイルス感染及び種々のワクチン様式に対する抗原特異的T細胞応答に関する理解の不足にって、長い間制限されてきた。このようなT細胞応答の理解の制限は、ウイルスタンパク質から提示されるHLA制限エピトープを同定するための系統的で高精度のツールが全般的に欠如しているためである。さらに、種々のHLA制限抗原に対するヒトT細胞応答を迅速的に明確に試験するためのツールの欠如は、重大な制限となっている。
いくつかの呼吸器系ウイルス感染症は、呼吸器粘膜の急性炎症反応と関連づけられており、しばしば無調節T細胞応答と関連づけられている。歴史的には、RSV、SARS-CoV、さらにはインフルエンザの攻撃的な株が、呼吸器粘膜の深刻な炎症症候群を引き起こすことが観察されてきた。現在、最も深刻なCovid-19の臨床症状を経験するSARS-CoV-2感染者は、最終的に死に至らせるサイトカインストームに苦しんでいることが明らかになりつつある。これら重篤な免疫病態は、明らかに、ウイルス血症の間の過剰なT細胞応答によって駆動される。
【0032】
呼吸器系ウイルス感染に対するワクチン接種の試みにおけるワクチンに関連した疾患悪化に関する歴史的経験は、新型コロナウイルスに対するワクチンを使用する現在の構想における相当のリスクを指摘する。RSVは何十年間も満たされていない高い医療ニーズを有すると認識されており、1960年代のRSVに対するワクチン接種の初期の試みは、ワクチン接種者がその後の天然感染時に急性呼吸困難を悪化させるという結果を招いた。その後の数十年にわたるこの現象に関する研究の結果、抗原特異的CD8及びCD4 T細胞応答が、ウイルス除去及び免疫病態の両方の駆動に関わっていることが明らかになった。同様に、2003年のSARS発生の原因となった前回の新型コロナウイルスであるSARS-CoVの実験用ワクチンは、ワクチン開発試験において、その一部が抗スパイク免疫グロブリンに起因し得る激しい炎症反応を導いた。
【0033】
コロナウイルス感染症におけるT細胞応答の大きな役割を支持して、SARS-CoV感染に関する研究は、回復した被験者ではB細胞応答は弱いが、抗原特異的T細胞応答が持続すること、この傾向がSARS-COV-2の大流行に反映されていることを示唆した。さらに、SARS-CoV及びSARS-CoV-2感染時のSARSの顕著な特徴は、リンパ球減少であり、これは呼吸器粘膜へのT細胞の大量動員によって駆動されると推定された。Covid-19患者におけるリンパ球減少及び予後不良の明らかな相関並びに重症Covid-19におけるT細胞免疫病理の詳細が明らかになってきたことを一緒に考慮すると、SARS-CoV-2感染者におけるT細胞応答を正確に分析する明白なニーズが存在する。このことは、現在のワクチン候補の安全性及び有効性を評価し、次世代ワクチンの開発に直接役立てるために必要とされる。
【0034】
SARS-CoV-2免疫病因モデルの概要
・ 感染早期のCD8 CTLの初期免疫回避が感染の確立をもたらす。このことは、高齢者において、胸腺分泌量の減少の結果としてのナイーブCD8 T細胞レパートリーの減少が知られていることを考慮すれば、高齢者でその可能性がより高い。この段階での効果的な早期CD8媒介応答は、無症状であっても感染を除去し、その後に検出可能な高親和性中和抗体を産生しないが、メモリーT細胞を確立し得る。感染がなければ健常である非高齢者は、無為症状SARS-CoV-2感染又は低レベルで一過性のIg応答により消失する非常に軽度の症状を示すことが多いことが明らかになった。
・ 初期免疫回避は、ウイルス感染細胞の除去に理想的に必要である「非ビリオン膜タンパク質」(非VIP)HLAI制限エピトープの検出を免れることになる。
・ 感染確立の間及び上皮細胞死時に蓄積される危険関連分子パターン(danger associated molecular patterns;DAMP)及び病原体関連分子パターン(pathogen associated molecular patterns;PAMP)は、感染した呼吸器粘膜に浸潤する免疫細胞の特徴的な動員をもたらした。
・ 初期免疫回避によりビリオンが蓄積され、蓄積が、その後、自身は増殖性に感染し得ないプロフェッショナルAPCによりサンプリングされる。
・ プロフェッショナルAPCによるビリオン膜タンパク質(VIP)のプロセシング及び提示は、HLAI/CD8応答及びHLAII/CD4応答をプライムする。
【0035】
・ VIPを検出するHLAII/CD4応答は、CD4ヘルパー応答を開始し、B細胞がサンプリングしたビリオン表面タンパク質に対するB細胞成熟を支援し、中和抗体を生成する有効な適応免疫応答をもたらす。その結果として、全てではないが多くの場合で、感染は消失し得る。
・ VIPを検出するHLAI/CD8応答は、増殖性にウイルス感染した上皮又はその他の細胞を標的とするには理想的ではない一方で、ウイルス感染細胞に由来するHLAI制限抗原を交差提示するプロフェッショナルAPCを標的とすることができる。
・ VIPに誤って指向されたCD8 CTL応答は、感染部位及びDLNにおけるプロフェッショナルAPCの枯渇をもたらし得、よってT細胞応答の全般的崩壊及びB細胞成熟支援の喪失をもたらし得る。
・ 乏しいB細胞応答は、SARS-CoV-2感染者とCovid-19臨床症状を示す被験者との間での一貫しない抗体反応を説明し得る。したがって、T細胞応答も考慮しなければならないので、患者の臨床管理及び方針決定の疫学調査において、血清学を単独で用いることは信頼性に欠ける。
・ SARS-CoV-2中のスパイクのような豊富なVIPを標的とするワクチン接種戦略は、当該特異的HLA制限エピトープ応答に感受性を与えるHLA対立遺伝子を保有するワクチン接種者において特に、天然の感染時に、逆効果のCD8 CTL応答をプライムし、病気を悪化させ得る。
・ 非VIP由来のエピトープに対するHLAI制限CD8 T細胞応答を正確にプライムして、ADE又はCD8 CTL応答のVIP媒介誤指向のリスクなしに、ウイルスの遭遇及び感染の間の初期にウイルス除去を駆動できるCD8 T細胞メモリー応答を確立することを目的とするワクチン接種戦略は有益であり得る。
【0036】
SARS-CoV-2免疫病因の詳細モデル
本節では、感染細胞内における自然免疫シグナル伝達のウイルス媒介抑制を介する感染初期のCD8 CTL応答の早期免疫回避によって開始されると提案される無調節免疫応答の4ステップモデルを概説する。たとえ細胞の増殖性感染がない場合でも、プロフェッショナルAPCの自然免疫シグナル伝達は、その後抑制される可能性が高い。全体として、感染細胞の最初の免疫逃避は、CD8 CTL応答をビリオン膜タンパク質(VIP)に対して再指向化する。免疫逃避は、ウイルス感染細胞の不十分な除去と、通常であれば相当のウイルス除去後の炎症反応の解消に関連するCD8 CTL駆動性のプロフェッショナルAPC削除の早期開始をもたらす。この免疫病態モデルは、重症Covid-19の臨床像に関連する多くの臨床観察、並びにSARS-CoV-2感染が確認された若年被験者における無症状又は軽症を説明するものである。このモデルは、SARS-CoV-2パンデミックの疫学を理解するために、CD8 T細胞のエフェクター及びメモリー集団を検出することにより、SARS-CoV-2に感染した若年被験者において、著しく弱く一過性のIg応答を用いる信頼性の低い血清検査に比べて、現在の軽度感染又は過去の感染をより高い信頼性で検出するための直接的な意義を有する。このモデルは、SARS-CoV-2感染の予防又は処置のためのワクチン組成物についての非VIP由来HLAI-HREの単独で選択的な使用を支持する。ここで、非VIP由来HLAI-HREに対するCD8 CTL応答のプライミングは、SARS-CoV-2及びある種のその他のウイルス感染に対する防御免疫に必要かつ十分であると考えられる。
【0037】
ステップ1:SARS-CoV-2初感染及びCD8 T細胞の免疫回避図1
この図は、SARS-CoV-2初感染が、ウイルスにコードされたタンパク質を介した自然免疫の回避をもたらし、初期の適応CD8 T細胞応答の回避を媒介することを説明する。
A) 標的上皮細胞のビリオン侵入は、ACE2複合体の関与により起こり、スパイク複合体プロセシング及びエンドサイトーシスにより生じた細胞内区画(endocytic compartment)からの宿主細胞侵入について、フリンのプレ切断並びに宿主細胞のセリンプロテアーゼ(特にTMPRSS2)の作用が関与している。
B) 宿主細胞侵入により、ウイルスゲノムの複雑な転写がもたらさせて、ウイルスにコードされたタンパク質(VEP)が産生される。
C) コロナウイルスのビリオン膜タンパク質(VIP)は、構造タンパク質及び非構造タンパク質の両方に関連する免疫回避活性を担う因子を含むことが知られている。免疫回避活性を付与するVIPの送達は、ビリオンエンベロープから宿主膜へのこれらVIP因子の送達により、感染細胞における自然免疫応答の即時抑制を付与すると考えられている。アクセサリータンパク質の更なる発現が、ウイルスゲノムの転写によって駆動されて、この免疫回避活性が増強される。
【0038】
D) ウイルスゲノムの転写により産生される非ビリオン膜タンパク質(非VIP)は、さらに、宿主細胞の自然免疫の抑制に関与し得る。
E) VEPによる自然免疫抑制の主要な手段は、IFNタイプI(IFNI)応答の遮断である。
F) 感染宿主細胞におけるIFNI応答の抑制は、ナイーブCD8 T細胞の動員及びサンプリングの減少を生じ、そのため、感染早期におけるウイルス性HLAI制限エピトープの検出能力及び該エピトープに対する応答能力を低下させる。よって、ナイーブCD8及びコンピテントメモリーCD8の相対的利用可能性が、初期感染をこの段階で除去するために重要である。
G) フロントラインのCD8 T細胞応答の免疫回避により、感染細胞は、ウイルスゲノムの複製及びデノボウイルス生成の実行が自由となる。
H) デノボビリオンの感染細胞からの放出は、さらなる宿主細胞感染を増強する。
【0039】
ステップ2:ウイルス伝播及び免疫活性化図2
この図は、一次免疫回避の間に確立された感染は、免疫応答の動員の遅延をもたらすことを説明する。
A) 細胞機能不全、VEP発現、ウイルスゲノムの複製及び膜の完全性の喪失の蓄積は、危険関連分子パターン(DAMP)及び病原体関連分子パターン(PAMP)の放出を生じる。
B) DAMP及びPAMPは、局所の健常上皮及び(IL-6、MCP1、MIP1a、MIP1b及びIP-10を含む炎症性ケモカイン及びサイトカイン産生を誘導する)常在性肺胞マクロファージの両方における自然免疫受容体により認識される。
C) 感染宿主細胞から放出されたデノボビリオンは、隣接する上皮に感染し、他の宿主細胞へのウイルス拡散を開始する。
【0040】
ステップ3:適応免疫の遅れた開始及び誤指向性CD8 CTL応答図3
この図は、適応免疫応答の遅れた開始は、蓄積したビリオンをサンプリングするプロフェッショナルAPCに偏り、ビリオン膜タンパク質に由来するHLA制限抗原を指向するT細胞応答を生じることを説明する。これは、HLAII/CD4ヘルパー細胞及びB細胞応答に関しては正しく指向した応答である。これは、HLAI/CD8 CTL応答には逆効果であり得る。HLAI/CD8 CTL応答は、ビリオンに現れるタンパク質ではなく、増殖性に感染された細胞において高度に発現する非ビリオンタンパク質を標的とするべきである。
【0041】
A) 慢性感染上皮細胞の細胞死は、粘膜透過性、肺内腔への細胞浸潤、水腫及び肺炎の開始をもたらす。特に、肺胞マクロファージは、このプロセスに重要であり、感染細胞及びビリオンのファゴサイトーシスを担う。
B) ウイルス拡散は、宿主内でのビリオン産生を増加させ、細胞外のビリオン価を上昇させる。これにより、感染が更に拡散し、プロフェッショナルAPC及びB細胞がビリオンをサンプリングして、任意の感染形態において典型的である大規模な適応免疫応答を開始させることができる。
C) DCが蓄積したビリオンをエンドサイトーシス機構によりサンプリングすることにより、HLA制限エピトープのプロセシング及び提示にVIPを供給する。DCが増殖性に感染するかどうかは不明であり、文献上も矛盾する報告がある。しかし、DCへのビリオンの送達は、自然免疫シグナル伝達を部分的に抑制し得、ビリオンと接触したDCの活性化は著しく低下し得ることが明らかである。このDC活性化は、通常、HLAI及びHLAII制限エピトープのプロセシング及び提示の増加をプライムする。このような活性化がないと、CD4及びCD8 T細胞によるHLA制限エピトープの全体的検出は脱感作される細胞応答の活性化は、ビリオンが提示する最も豊富なタンパク質(すなわちVIP)に偏ることになる。
D) 細胞外環境からサンプリングされたVIPの、HLAI制限エピトープのプロセシング及び提示への流れ。
【0042】
E) DCが提示するHLAI制限エピトープをサンプリングするナイーブCD8 T細胞は、DCの増殖性感染が存在せず、DC活性化抑制が存在する場合、非VIPではなく、主にVIPに対して活性化される。これは誤った免疫プライミングと考えることができる。なぜならば、理想的には、CD8 CTLを介したウイルス感染細胞の除去は、増殖性に感染した細胞に豊富に発現している非VIPを標的とするからである。
F) 細胞外環境からサンプリングされたVIPの、HLAII制限エピトープの提示へのプロセシング。
G) DCが提示するHLAII制限エピトープをサンプリングするナイーブCD4 T細胞は、非VIPよりむしろVIPに対して主に活性化される。これは正しい免疫プライミングと考えることができる。なぜならば、VIPに対するCD4ヘルパーエフェクター機能は、中和抗体産生に向けたB細胞の成熟に必要であるからである。
H) BCRを介するB細胞によるビリオンのサンプリングは、インタクトなCD4ヘルパーエフェクターサポートを伴って体液性応答を開始し、VIPに対する最初の低親和性抗体を提供し、クローン選択及びハプロタイプスイッチングを正常に進行させる。
I) ACE2発現細胞(肺胞マクロファージも明らかに含まれる)にウイルスが更に拡散する。
【0043】
ステップ4:誤指向性CD8CTL応答は全般的な免疫異常を引き起こす図4
図4は、ウイルス血症及び組織損傷が蓄積する間にプロフェッショナルAPCにより交差提示されるVIPに由来するHLAI制限エピトープを誤って指向するCD8 CTL応答は、局所のプロフェッショナルAPCの枯渇を招き、その結果、無調節のT細胞及びB細胞応答をもたらし、これが、Covid-19重症例におけるサイトカインストームの基礎となり、SARS-CoV-2感染に対する中和抗体の全体的に弱い応答をもたらしている可能性があることを説明する。
【0044】
A)アポトーシス細胞及び壊死細胞は、初期の抗体応答により標識され、マクロファージによりファゴサイトーシスを受ける。さらなる上皮の破壊は、呼吸器粘膜の重篤な組織損傷を生じ、細胞浸潤、浮腫及び肺炎悪化を伴う粘液産生が蓄積される。
B)マクロファージに貪食された物質は、このプロフェッショナルAPCを介する、VIP由来HLA制限エピトープの提示に寄与し得る。肺胞マクロファージはACE2を発現していることが知られており、感染すると考えられる。マクロファージにおいて天然PAMP受容体が強力に発現していること及び一般に自然免疫経路が強化されていることに起因して、感染が、ほとんどの生理的条件下(すなわち、ウイルスの転写及び複製の抑制下)で増殖性であるかどうかは不確かである。にもかかわらず、これら細胞は、感染して死亡しつつある細胞中に豊富なVIPタンパク質のファゴサイトーシスの継続に加えて、遊離ビリオンも取り込むため、VIPに対して既にプライムされたCTL応答に感受性となっている。
【0045】
C)VIP由来HLAI制限エピトープに対するCTL応答の蓄積は、無調節免疫応答の間の抗原特異的CTL作用によるマクロファージの枯渇に寄与し得る。
D)ウイルス血症におけるDCによるビリオンの継続的サンプリングは、これら細胞によるVIP由来HLAI制限エピトープの交差提示を持続させる。
E)VIP由来HLAI制限エピトープに対するCTL応答の蓄積は、無調節免疫応答の間の抗原特異的CTL作用によるマクロファージの枯渇に寄与し得、その結果、MALT及びDLNにおけるプロフェッショナルAPCの欠如をもたらし、よって無調節のT細胞及びB細胞応答の原因となり、結果として、免疫機能異常及びサイトカインストームの蓄積をもたらし得る。
F)MALT及びDLNからのDCの枯渇は、無調節で不十分なCD4 T細胞応答を生じ、また、高品質で多様な中和抗体応答に向かうB細胞成熟を駆動するCD4ヘルパーエフェクター機能の欠如を生じる。
【0046】
ヒトにおけるSARS-CoV-2感染及び他のウイルス感染の疫学についての示唆。
相当の割合のSARS-CoV-2感染者が、質の高い抗体応答も検出可能な抗体反応さえも生じないと認識されている。この背後のメカニズムは不明であるが、誤った指向性のCD8 CTL活性によるプロフェッショナルAPCの枯渇が媒介する無調節B細胞成熟反応は、回復期のCovid-19患者でさえ、抗体応答検出の信頼性が低いことを説明する。
さらに、マクロファージによるファゴサイトーシス性サンプリング及びDCによるエンドサイトーシス性サンプリングが抗原提示活性の部分的免疫抑制を説明し得るように、B細胞もまたウイルス血症の間にウイルス媒介性抑制を受け易くあり得る。実際、ウイルス性エピトープサンプリングの間のB細胞によるBCR駆動性エンドサイトーシスは、エンベロープに発現する自然免疫抑制因子を含むビリオンの内在化を伴う。このことのみで、宿主細胞とビリオンエンベロープとの間の膜融合事象により免疫抑制性VIPが漏れ出し、B細胞に自然免疫抑制を伝達して、B細胞成熟全体を弱め得ることを理解できる。確かに、増殖性感染及びマクロファージ、DC又はB細胞の破壊がない場合、ビリオンのサンプリングは、大量のVIP由来HLAI制限エピトープをもたらし、大量のエピトープがこれらプロフェッショナルAPC集団を、抗原特異的CD4 T細胞応答及びB細胞成熟に対する支援を制限することによって全体的な適応免疫応答に有害である誤指向性CTL作用に感受性とし得る。
【0047】
多くの研究が、プロフェッショナルAPC集団の増殖性感染及び非増殖性感染の両方を、無調節IFNI応答及びプロフェッショナルAPCの成熟低下と関連付けており、これらは、VEPによる自然シグナル伝達経路の直接抑制に関連づけることができる。このことは、明白なCOVID-19を有する被験者における、貧弱な全体的免疫病態に寄与し、適応免疫機能不全の蓄積の影響を悪化させ得る。
適応免疫異常の背後にある正確なメカニズムにかかわらず、血清学は、無症状又は軽度のCovid-19の症状を呈する被験者において信頼性が低いことは、新たな報告から明らかである。さらに、無症状であるか又は不顕性疾患を呈するSARS-CoV-2感染者が、どの程度まで検出可能な抗体応答を上昇させるかは不明である。対照的に、不顕性SARS-CoV-2が消失した被験者のほとんどは、VEPを指向する十分なCD8 CTL応答を高めることによってそのようになった可能性が高そうであり、VIPに対する抗体反応を高めた可能性はなさそうである。
軽度感染者が、他のVIP及び/又は非VIP由来HLA制限エピトープに対してCD8 CTL応答を上昇させるかどうかは不明である。抗原特異的T細胞応答の分析が歴史的に不十分であるため、特定のVIP及び非VIP由来HLAI制限エピトープに対するCD8 CTL応答が、ヒト被験者の任意のウイルスの不顕性感染におけるウイルス除去に寄与している役割は不明である。
【0048】
VIPをコードするワクチンのリスク
本明細書では、VIPを中心とするワクチンをヒト集団に用いる際の有害事象の一般的リスクを説明することを意図していない。しかし、上記のような重篤なCovid-19症状における免疫病理学的機序を考慮すると、VIPを中心とする組成を用いるワクチン接種者において、中和未満のIg応答をプライムすること、実際に一過性中和Ig応答をプライムすることに関連付けられる特有のリスクが存在する。
主に、ワクチン接種者の、後のSARS-CoV-2自然感染からの不完全な又は一過性のIg駆動性保護は、2つの異なるメカニズムによるワクチン関連疾患悪化に寄与し得る。第一に、中和未満の抗体応答は、部分的にオプソニン化された(すなわち、非中和化)ビリオンのプロフェッショナルAPC取込みを促進し、VIP由来HLA制限エピトープを誤って指向するCD8 CTL応答を促進することにより、抗体依存性のCovid-19増強を導き得る。第二に、完全長のVIP(「スパイク」タンパク質を含む)は、同様にCD8 T細胞応答をプライムし得、この応答が、その後の自然感染の間の免疫病因の加速化及びウイルス除去能力の低下を導き得る。
【0049】
VIPをコードするワクチン(これは、同時にVIP由来HLAI-HREに対する潜在的に有害なCD8 CTL応答をプライムする)の接種者において、有効なIg駆動防御免疫が存在する場合でさえ、経時的なIg力価の減弱は、メモリーCD8 CTL集団が防御的Ig力価の消失後も長く循環状態のままであるため、ワクチン関連疾患の増悪をもたらし得る。
実際、数十年にわたる研究にもかかわらず、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のような、下気道の同様な肺炎ウイルス感染に有効なワクチンはないままであり、例えばインフルエンザに対するワクチンも不完全にしか効果がないというのが事実である。これは、ウイルスワクチンの組成及び送達の組合せに起因し得るが、上記の観察結果を考慮すると、これは同様に、(中和抗体応答をプライムする目的でVIPを送達する)不活化ウイルスワクチン又は組換えワクチンにおける、有益な中和抗体反応及び有害なCD8CTL応答の二重プライミングに起因し得る。RSVワクチン接種におけるワクチン関連疾患の悪化の歴史的前例は、ワクチン接種の間に主要抗原性供給源としてVIPを(例えば、不活化ウイルスワクチンにより)提供することに内在するリスクを強調している。このワクチンは、当然、非VIP抗原性標的を提供できない。
【0050】
上記で提案した免疫病態モデルに関するVIP中心のワクチン接種戦略に伴うリスクの点で、不活化ウイルスワクチン、完全長VIP及びVIPフラグメント(すなわち、エピトープ中和化抗体を表す遺伝子フラグメント又はタンパク質ドメイン)ワクチン組成物に伴うリスク階層が、その後の天然ウイルス感染の際に疾患を悪化させ得る潜在的に有害なCD8 CTL応答をプライムするVIP由来HLAI制限エピトープを提供するこれら組成物の各々で表される配列空間に純粋に関して、当然に存在する。実際、ヒト免疫系に広範に曝露されていない新興のSARS-CoV-2ウイルスでは、ヒト免疫系からの長期の選択圧がない場合、任意のVEP内にHLAI制限エピトープが豊富に存在する可能性がある。このことは、SARS-CoV-2に対するワクチン戦略において、同様の性質のより確立されたヒトウイルス病原体と比較したときに、ワクチン関連疾患の増悪リスクが高いことを示唆する。
【0051】
任意の状況下、特に迅速なワクチン展開における、ワクチン関連疾患増悪の検出に際しての重要な課題の1つは、有害事象が、最初のワクチン接種時ではなく、むしろ確率的にその後の天然のウイルス感染の間に起こると予想されるという事実である。HLA制限抗原に対するT細胞応答の複雑性のために系統的に評価することが技術的に困難であるだけでなく、潜在的な有害事象は、時間的及び確率的要因の両方に起因して、既に非常に多くの被験者がワクチン接種を経験した後期の試験の間でのみ明らかになり得る。さらに、この有害事象は、VIP由来HLAI-HRE特異的CD8 CTLメモリー細胞が、VIP指向性Ig力価をはるかに超えて残存するため、最初のワクチン投与後、その後にブースター接種をしなくても、数ヶ月から数年で生じ得る。
【0052】
非VIP由来HLAI-HREから構成される次世代ワクチン組成物
上記の観察に関して、選択された非VIP由来HLAI-HREを含むワクチン組成物が保証される。ワクチン接種による最良の防御は、CD8 T細胞メモリー、中和抗体価及びB細胞メモリーの組合せによってもたらされると十分に認識されている。しかし、SARS-CoV-2及びその他の下気道の攻撃的ウイルス感染に対するVIP中心のワクチン戦略に内在する課題及びリスクを考慮すると、非VIP由来HLAI-HREを高度に選択的に組み込むことが、最も安全で十分に有効なワクチン展開手段である可能性が高いと提案されている。すなわち、非VIP由来HLAI-HREは、SARS-CoV-2及び或る範囲の他のヒトウイルス性病原体に対する選択的CD8 CTL応答による防御免疫の付与に必要十分である。
VIPに対するB細胞応答の誘発を求めるものではなく、非VIP抗原特異的CD8 T細胞応答をプライムするワクチンは、安全性プロフィールを向上させ得る。実際、ヒトにおけるHLA制限抗原提示の複雑性のために、ワクチン効力及びワクチン関連有害事象の両方が、レシピエントのHLAIハプロタイプ及び(より少ない程度ではあるが)HLAIIハプロタイプによって密接に予測され得ると仮定することは合理的である。
【0053】
有害事象の制御に関して、患者及びワクチン接種者の両方において、確立された実験技術(すなわち、一次検体を用いたELISPOTアッセイ)により、(おそらくVIPに由来する)免疫優性HLA制限エピトープに対するT細胞応答を確実に定量化することができる。しかし、臨床症状を伴うSARS-CoV-2感染における準優性(sub-dominant)T細胞応答を引き起こすHLAI制限エピトープの同定、分類及び仕様は、貧弱な感度及び分解能のために、このような手法では解決できない。
推定のHLAI制限エピトープ(すなわち、非VIP由来HLAI-HRE)及びその免疫原性を正確に分析する高解像度で体系化された技術は、新興SARS-CoV-2及び類似の感染ライフサイクルを有するウイルスに対する次世代ワクチンの可能性を支えるものである。現代の組換えRNA、DNA及びタンパク質ワクチンベクターが提供する限られた積載量(payload)を考慮すると、HLAI-HREのコンパクトな性質は、ワクチン接種される標的集団のHLAハプロタイプと適合するエピトープカバレッジの最大化を可能にする。最も制限的な組換えRNAワクチンベクターでも、世界人口の少なくとも60%のHLAI対立遺伝子のカバー率を、非VIP由来HLAI-HREの限定的コレクションで達成して、新興ウイルス病原体に対するワクチンの迅速な展開において特に、集団全体の保護を与え得る。
【0054】
呼吸器粘膜の同様な攻撃的ウイルス感染に関する先行研究では、T細胞及び免疫グロブリンに関連する免疫病理に加えて、無調節T細胞免疫の可能性を示唆するいくつかのテーマが浮上した。
重要な観点として、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、自然感染及び発育期のワクチン接種における強いウイルス性免疫グロブリン反応と関連づけられている。このことは、持続感染では、過剰なHLAII/CD4ヘルパーT細胞が、過剰な粘液産生及び呼吸困難の特徴である高力価抗体産生を引き起こすことを示唆する。これは、感染が、感受性の被験者における感染初期にはHLAI/CD8応答により貧弱にしか抑制できず、その後、高いウイルス力価がHLAII/CD4ヘルパー応答及びB細胞成熟の亢進を誘導することに関連する可能性がある。これは、重篤なCovid-19症状と年齢との間に強い相関があり、青年及び若年成人において有症状のSARS-CoV-2感染がほとんど見られないこととよく符合している。ナイーブT細胞区分のサイズが年齢とともに減少することは周知の現象であるが、また、ナイーブCD4区分に比べ、ナイーブCD8区分が明らかに速く相対的に減少している。高齢者は、ナイーブCD8 T細胞の少ないレパートリーに関連するCD8 T細胞応答の自然低下に一部起因して免疫調節不全を経験し、このことにより、感染及びウイルス血症が進行し、B細胞成熟及び免疫グロブリン関連免疫病態が引き起こされる可能性もある。
【0055】
Covid-19疾患の進行の見方を裏付けとして、2003年のSARS流行の原因となった関連するSARS-CoVウイルスから回復した被験者は、ウイルス特異的免疫応答が弱く一過性であり、数ヶ月しか持続しなかったことが観察されている。対照的に、相当なCD8 T細胞メモリー集団が、回復被験者において、感染後1年を過ぎても持続していることが観察された。
現在進行中のSARS-CoV-2に対するワクチン開発戦略の多くは、スパイクタンパク質を重要な抗原性積載物(payload)として焦点を当てている。免疫グロブリン関連免疫病態がCovid-19の重症炎症症状の原因であれば、これは逆効果になる可能性が十分にあることに留意しなければならない。実際、このことは、呼吸器粘膜の他のウイルス感染に対するワクチン接種の同様の試みでもそうであったようである。
さらに、ウイルスのライフサイクルには、自然感染の間にスパイクタンパク質をHLAI制限エピトープの貧弱なリザーバーとして特定する重要な側面がある。実際、スパイクタンパク質は膜内在性であり、生成されてER膜に挿入された後、小胞に輸送され、そこでビリオンの組立てが行われた後に出芽する。このことは、スパイクタンパク質が、抗原プロセシング及びHLAI制限エピトープの交差提示に対する主要な要因である細胞質経路から隔離されていることを意味する。このことは、CD8中心の免疫の有効なプライミングの可能性を制限するだけでなく、スパイクタンパク質自体がHLAII/CD4及び免疫グロブリン応答のプライミングを駆動し、その結果、その後の自然感染時にワクチン誘発性疾患増悪をもたらし得る可能性が高い。
【0056】
上記の観察を考慮すれば、CD8 T細胞免疫応答のプライミングを促進するHLA制限エピトープでの免疫は、SARS-CoV-2感染に対する有意な防御を提供する安全で効果的な方法であるとの仮説を立てることができる。HLAI制限エピトープをコードする高度に規定された搭載物(payload)は、HLAII/CD4又は免疫グロブリン応答の有害なプライミングの可能性を回避する一方、自然感染に対するフロントラインの保護としてCD8 T細胞メモリー応答を確立するために役立つ。このようなアプローチには、自然感染におけるHLA制限エピトープと、これらのエピトープに対するCD8 T細胞応答を正確に同定し、特徴付ける能力が必要である。
コロナウイルス及び呼吸器粘膜に感染する他の攻撃的なウイルスの重要な特徴の一つは、そのゲノムにコードされ、細胞内の自然免疫を破壊し、T細胞免疫の調節障害を引き起こす可能性がある制御タンパク質である。実際、2003年のSARS流行の原因であるSARS-CoVウイルスは、インターフェロン産生につながる自然免疫応答を阻害する能力を有する3つのORFをコードすることが判明した。これらは、SARS-CoV-2ゲノム内にも同様に含まれている。これら細胞質で入手可能なタンパク質は、理想的な標的を表し、自然感染の間の天然のHLAI制限エピトープの保有者となる。理想的なデザインのワクチン搭載物(payload)は、これらウイルスタンパク質の連結ORFフラグメントが組み込まれて、ワクチン送達の間のT細胞調節障害を回避する一方で、強力なHLAI制限エピトープ特異的CD8 T細胞応答を依然として促進する。
【0057】
SARS-Cov-2免疫及び免疫病理におけるT細胞免疫の明らかな中心的役割に起因して、ワクチンの安全で効果的な展開には、HLA制限エピトープに対する標的化された免疫が組み込まれなければならない可能性がある。これは、民族間及び地域間のハプロタイプの多様性を考慮すると、相当の難題である。将来のSARS-CoV-2の流行又はパンデミックの再来という悪いシナリオを想定しつつ、このような市場又は個体群にセグメント化されたワクチンを設計し展開する準備をすることは、相当な難題ではあるが、これは見過ごせない戦略的側面でもある。
戦略的に重要なことは、HLA対立遺伝子の既存のコアセットおいて特定のウイルスORFについてHLA制限エピトープをより深く分析すること、及び/又はこの分析を拡張して、全世界的SARS-CoV-2パンデミックにおける特徴的で戦略的に重要なHLAIハプロタイプを網羅することである。
今後出現する流行病の抑止に重要な点は、出現する可能性が高い免疫逃避型ウイルス株を系統的に評価する能力である。新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、他の動物種からヒトへの移行により出現した可能性があり、したがってヒト免疫系と広く接触しておらず選択圧に晒されていないことに留意すべきである。2019年に始まったパンデミックを引き起こしている新興のSARS-CoV-2株により、豊富なHLAI制限エピトープが提示され、感染の拡大とともに、特定のHLAI制限エピトープ提示の回避をもたらす変異を含む新型株が出現すると合理的に推測される。
【0058】
実施例2:ワクチン組成物に含めるための免疫原性非VIP由来HLAI-HREの決定方法
本実施例では、実施例1で概説したSARS-CoV-2ウイルス感染を用いて、ワクチン組成物を製造するために用いる非VIP由来HLAI-HREを選択する方法について概説する。
この節では、SARS-CoV-2ゲノムからのHLA制限エピトープを迅速に同定し、免疫原性を評価する方法を概説する。これらのエピトープに対するT細胞免疫原性の解析を、3つコホート:重篤なCovid-19症状を呈する患者、感染が既知であるが症状が軽い被験者、及びSARS-CoV-2に未感染の健常ドナーで行う。
この全体的な解析の目的は、ウイルスのクリアランスを最も効果的に媒介するHLA制限エピトープを特定することであり、可能であれば、無調節な抗原特異的T細胞応答を駆動するHLA制限エピトープを特定することでもある。これらの解析により、未感染被験者、重症Covid-19患者及び既往感染者における抗原特異的T細胞応答に関する重要なデータを提供する次世代ワクチンアセットを可能にする。
【0059】
これら例示の方法は、5つの主要なワークパッケージに分けることができる。
ワークパッケージ1(WP1)
SARS-CoV-2 HLAI制限エピトープの発見

ワークパッケージ2a(WP2a)
抗原特異的CD8 T細胞活性化及びTCRスクリーニング

ワークパッケージ2b(WP2b)
HLAI多量体及びTCR試薬ライブラリーの作製

ワークパッケージ3(WP3)
HLAI抗原特異的T細胞アッセイの検証

ワークパッケージ4(WP4)
Covid-19及び感染-ナイーブ対象者試験の実施
【0060】
SARS-CoV-2 HLAI制限エピトープ発見 - WP1
目的:
・ 全てのSARS-CoV-2 ORFの最初の完全なHLAI制限エピトープスキャンを行い、主要なマーケットで最も優勢な16対立遺伝子内の機能的にプロセスされ交差提示されたHLAI制限エピトープを同定すること。
・ WP2a、WP2b、WP3及びWP4における研究実施用の非VIP由来HLAi-HREを選択するための基礎データセットを提供すること。
【0061】
技術及び方法:
遺伝子操作した抗原提示細胞(eAPC)システムの最も基本的な形態は、標的被分析物を発現するeAPC株を迅速に製造する生産システムである。これら被分析物は、単に、標的HLAアレル及び標的抗原オープンリーディングフレーム(ORF)(この中の標的HLA制限エピトープを同定する)を表す。これは、HLA及び抗原ORF構築物用の標準化されたドナーベクターを、「プログラム可能な」eAPCを表す機能的に遺伝子操作された不死細胞株内のゲノム受容部位と対で用いることにより達成されます。(WO2018083316)
このeAPCプラットフォームは、被分析物eAPCの高スループット又は高量の生産を達成して、eAPCタンパク質自体に由来する内因性HLAI制限レパートリーをバックグランド内で統合された被分析物ORFからのHLA制限抗原を同定する質量分析(MS)ベースの方法に供給することができます。
【0062】
これにより、被分析物配列から機能的にプロセスされ提示されたエピトープの直接観察により、単一のHLAバックグラウンド(すなわち「モノアレリック」)での被分析物ORFの系統的分析が可能になります。任意選択的に、ミニ遺伝子被分析物の連結物を組み込んだ一連の発現構築物、及び発現系での被分析物タンパク質の細胞質プロセシングを強化するためのオプションのプロテアソーム標的化モチーフを使用してもよい。質量分析測定は、サンプル調製用eAPC細胞溶解物からのHLAプルダウン、サンプルの液体クロマトグラフィー分画に続くHLA制限エピトープのMS同定によって達成される。
最も一般的な16対立遺伝子のコレクションは、HLA制限抗原を発見するために用いるコアのワーキングセットを形成する。これらは、図5に示すように、主要マーケットにわたって最適なHLAカバレッジを確保するために選択される。
【0063】
成果物:
・ 選択された16のコアHLAアレルにより提示されるSARS-CoV-2 HLA制限エピトープのデータベース。
・ メタデータには、eAPC固有のHLA制限エピトープレパートリに対する評価した相対強度スコア(zスコア)及びHLA対立遺伝子エピトープ適合モデルに対するスコアが含まれる。
【0064】
抗原特異的CD8 T細胞活性化及びTCRスクリーニング - WP2a
目的:
・ SARS-Cov-2未感染者及び感染被験者の偏りのないスクリーニングにより、WP1で同定された免疫応答性HLA制限エピトープの妥当性を確立する。
・ 同定されたHLA制限SARS-CoV-2エピトープに関するCD8 T細胞活性化ベース及び四量体ベースのアッセイの感度を評価する。
・ WP2bにおけるTCR検証用材料及び分析標準物質の供給
【0065】
技術及び方法:
WP1に記載されたeAPCプラットフォームは、未感染ドナー又は患者から単離した初代CD8 T細胞に対して、信頼性の高い、高度に規定されたHLA制限抗原の提示を可能にする。これは、TCR探索能力をさらに実証するアプローチである細胞ベースアッセイにおけるHLA制限エピトープ応答のアッセイの重要な要素である。実際、「モノアレリック」eAPCは、各標本由来の複数の初代細胞タイプを複雑に分割し培養する必要がなく、T細胞亜集団におけるHLA制限エピトープ応答を刺激して試験する堅牢で再現性の高いモデルである。これは、天然のウイルス感染の間に免疫原性HLA制限エピトープを特定する上で特に重要である。
【0066】
このワークパッケージは、一連の技術及び方法論を効果的に展開する。
1.SARS-CoV-2未感染者及び感染被験者から分離したナイーブ及びメモリーCD8 T細胞集団のeAPCベースのHLAアレル制限刺激(WO2018083316)。
2.eAPC刺激成長後のHLA制限エピトープ特異的T細胞応答の、HLA多量体試薬ベースの定量化。
3.下流TCRクロノタイプの配列決定及び検証のための、フローサイトメトリーによる四量体陽性細胞の単細胞の堆積
4.T細胞活性化マーカー(主にINFγ産生)によるHLA制限エピトープT細胞応答を読み出すための、成長した初代CD8 T細胞分離体のeAPCベースの再刺激
【0067】
HLA制限エピトープ免疫原性の統合評価の中心目的は、SARS-CoV-2ゲノムにコードされたHLA制限エピトープに対する可能性のある免疫原性の状況を偏りなく示すことである。このワークパッケージはさらに、未感染被験者及び感染被験者における四量体ベース及び細胞活性化ベースのフローサイトメトリーアッセイの感度の予備評価として役立つ。
なお、4つの技術はすべてを1つの臨床検体に用い得ることに留意すべきである。このことにより、一次検体の使用量を節約し、スループットを大幅に向上させることができる。このことは、このような分析におけるHLA多量体試薬のルーチンの多重化によってさらに促進される。
再刺激アプローチに関しては、初代細胞の系統的なeAPCベースHLAアレル制限刺激の使用の後に、全く異なる細胞系統から構築したeAPCを用いる再刺激手順を続ける。これは、非自己APCを、以前に遭遇した刺激プラットフォームとして使用する際のバックグラウンドシグナルを除去するために設計されている。
【0068】
成果物:
・ アッセイされたときに観察されるHLA制限エピトープの免疫反応能を詳述するWP1で作成されたHLAI制限エピトープデータベースのメタデータ層。
・ SARS-CoV-2感染におけるHLA制限エピトープに対するT細胞応答のプロファイリングのための、細胞活性化ベースアッセイ及びHLAベースフローサイトメトリーアッセイの感度の予備的評価。
・ WP2b、WP3、WP4を直接支持する免疫原性HLA制限エピトープに対する有効なTCR配列。
【0069】
HLAI多量体及びTCR試薬ライブラリーの作製 - WP2b
目的:
・ TCRを発現する遺伝子操作TCR提示細胞(eTPC)の分析標準に適合する、内部検証されたHLA多量体試薬ライブラリーを構築する。
・ WP3及びWP4の試薬ニーズを満たす標的ライブラリ中の全てのHLA多量体試薬の製造を可能にする。
・ WP3で用いるHLA多量体試薬ベースのフローサイトメトリーアッセイで利用し得るTCR発現eTPC分析標準を作製する。
【0070】
技術及び方法:
HLA多量体製造技術は高度に標準化されており、当業者に周知であるが、これら方法は、タンパク質のリフォールディング及び精製を含む困難なタンパク質生化学を含む。これら生産ワークフローの運用は、特定のTCR発現eTPC細胞株における信頼性の高い機能的品質管理標準の提供によって推進される。
このワークパッケージは、WP2aで得られた材料を用いてeTPC標準を構築するために、一連のTCR分子遺伝学及び細胞生物学の技術を用いる。これら技術は、4つの主要なワークフローにまとめることができる。
1.独自のプライマーライブラリー及びソフトウェアを用いる半自動化TCRα/β鎖配列決定及びバイオインフォマティクスフィルタリング。
2.発現ベクター内での完全長TCR ORFの迅速で費用効率の高い再構成を可能にするTCR分子遺伝学プラットフォーム-TCR ORF再構成及び遺伝子操作システム(TORES)-を用いた迅速なPCR非依存性TCRα/β ORF再構成(WO2019016175及びWO2018083318)。
3.一対のTCRα/β ORFを組み込んで、HLA多量体試薬の標的結合並びに/又は標的HLA及びHLAI-HREを提示するeAPCとの相互作用についてスクリーニングするための、eTPCベースのハイスループットスクリーニング(WO2018083317及びWO2018083339及びWO2018083318)。
4.安定な、化学固定した分析標準試薬品を用いるハイスループットのTCR発現eTPC標準物製造(WO2018083317)。
これら方法は、これまでにない深度及び精度でのアッセイの開発及び実行に用いることができる大規模で高品質なHLA-及びTCR-試薬ライブラリを作製する能力の基礎をなす。
【0071】
成果物:
・ 後続のワークパッケージに用いるためのHLA多量体試薬ライブラリ
・ HLA多量体試薬製造の品質管理用のeTPCベース分析標準ライブラリ及びWP3におけるフローサイトメトリーアッセイ運用のための内部コントロール。
【0072】
HLAI抗原特異的T細胞アッセイの操作可能化 - WP3
目的:
・ WP4における抗原特異的T細胞応答の研究を支援するために、標的HLAアレル及び制限エピトープのフローサイトメトリーによる読み出しを用いる、末梢血及び可能であれば液体バイオプシーを直接染色するためのHLA多量体試薬ベースのアッセイの実用化。
・ WP4をサポートする並行展開のために、間接アッセイ読み出しのためのeAPC駆動細胞活性化ベースアッセイの実用化。
【0073】
技術及び方法:
試薬ベースアッセイの拡大可能な展開のアプローチに対する技術的及び方法論的観点は、TCR発現eTPCベース分析標準の使用である。これは、WP2bで特定された試薬の高信頼性の製造品質管理を可能とするだけでなく、これらフローサイトメトリーアッセイの内部陽性対照標準としての役割を果たすこともできる。特定のTCRを発現するeTPCは、化学的に固定され、アッセイ実行用のHLA多量体試薬ストックと共に安定した試薬として保存される。
細胞活性化ベースのアッセイにおける初代T細胞単離株のeAPC駆動HLA制限エピトープ刺激は、ウイルス性エピトープのためのCD8 T細胞メモリー区分における抗原特異的T細胞クローンの存在を直接検出する。このアッセイはまた、ナイーブ区分中の抗原特異的T細胞クローンの検出に十分な感度を有する。これらアッセイは、所望のHLA対立遺伝子を発現するモノアレリックeAPC調製物にペプチドをロードした後、被験者に由来するCD8 T細胞分離物と接触させてメモリー及びナイーブT細胞区分を刺激することに依拠している。これにより、標準的な白血球反応ミックスにおける初代APC源の使用と比較して、メモリー及びナイーブT細胞区分の両方におけるHLA制限エピトープ特異的T細胞応答を並行して分析する比較的高いスループットの分析が可能となる。
現行のワークパッケージにおける試薬ベース及び活性化ベースのアッセイの運用に関わるロジスティクスには、全ての被験者の正確なHLA型決定して、個々の被験者の分析に正確なHLA多量体試薬及び/又はペプチド搭載モノアレリックeAPCを割り当てることが含まれる。
【0074】
成果物:
・ WP4を支持する、操作可能化されたHLA-多量体試薬ベースのアッセイ
・ 選択されたHLAアレル及びHLA制限エピトープカバレッジに関するWP4を支持する、操作可能化された細胞活性化ベースアッセイ
【0075】
患者及び感染-ナイーブ対象者試験の実施 - WP4
このワークパッケージは、ウイルス除去を駆動する免疫原性エピトープを決定するために、ヒト被験者における非VIP由来HLAI-HRE応答に関する系統的研究を行うことを目的とする。これら研究は、WP1、WP2a、WP2b及びWP3におけるツール及びアッセイの構築によって可能になる。
【0076】
目的:
・ ワクチン組成物に含めるのに適した免疫原性非VIP由来HLAI-HREを選択するために、SARS-CoV-2未感染被験者及び感染被験者の一次検体における比較試験を行う。

技術及び方法:
このワークパッケージは、前述のワークパッケージで確立された試薬及びアッセイを使用し、重症の臨床症状を伴わずにSARS-CoV-2感染が治癒したことが既知である被験者と重症のCovid-19症状を呈する被験者との抗原特異的T細胞応答についての比較分析に焦点を当てている。異なるSARS-CoV-2転帰における支配的な抗原特異的CD8 T細胞応答の決定において、ヒト被験者において免疫原性が確認された非VIP由来HLAI-HREを特定してワクチン組成を規定することが中心目的である。これら研究の主な試料は、このようスケーリング解析における比較的容易であることに起因してHLA型が決定された被験者の末梢血である。
【0077】
成果物:
・ 以下のヒト被験者のクラスにおける非VIP由来HLAI-HRE免疫応答の系統的な比較解析の提供。
5.無症状のSARS-CoV-2被験者
6.有症状SARS-CoV-2感染に既往の被験者
7.重篤なCovid-19疾患を有する被験者
8.SARS-CoV-2未感染であることが判明している被験者
各被験者クラスにおいて特定された非VIP由来HLAI-HREは、1>2>3>4の順序でワクチン組成物に含まれることが好適である。
【0078】
定義:
ワクチン
微生物、ウイルス又はその他の自己若しくは非自己の物質の抗原成分を一般に含む調製物であって、ヒト対象又は獣医学の対象に投与されたときに、宿主において適応免疫応答を引き起こし、標的微生物、ウイルス、アレルゲン又はその他の非自己若しくは自己の物質に対する宿主の免疫又は寛容をもたらすことを目的とする調製物。

ワクチン組成物
ワクチンを製剤化してヒト対象又は獣医学の対象に投与したときに、所望の免疫応答を誘発するためにワクチンベクターにより送達される抗原及びアジュバント。

ワクチンベクター
本発明に関してワクチンベクターとは、ワクチン組成物をヒト対象又は獣医学の対象に投与するためのベクターであって、組換え非複製若しくは複製ウイルスベクター;ウイルス様粒子;組換えRNA構築物;組換えDNA構築物;組換えタンパク質及び/又はタンパク質複合体;合成ポリペプチドを含むベクターと定義される。

ワクチンアジュバント
固有の免疫調節特性を有し、抗原と共投与されると、抗原を単独で投与したときの応答と比較して、宿主の抗原特異的免疫応答を効果的に増強する分子又は化合物。一部のウイルスベクター及びウイルス様粒子ベクターは、内因性アジュバント分子及び化合物を有すると考えられるが、追加の共刺激分子が、核酸、タンパク質及びポリペプチド配列にコードされていてもよいし、又はワクチン組成物を含有する抗原性生体分子に接合されていてもよい。アジュバント分子及び化合物がワクチン製剤にさらに含まれていてもよい。

ワクチン製剤
ワクチンベクターを、ヒト対象又は獣医学の対象への投与のために、薬学的に適切なワクチンアジュバント及び賦形剤と共に製剤化した製剤。ここで、賦形剤としては、付着防止剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、崩壊剤、香料、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味料及びビヒクルを挙げ得る。
【0079】
プライム-ブーストワクチン接種
所望の抗原特異的免疫応答を「プライム」した後に、後続のワクチン投与により当該免疫応答をブーストするために、ワクチンをヒト対象又は獣医学の対象に複数回送達する連続ワクチン接種戦略。プライム-ブーストワクチン戦略は、ワクチン組成物、ワクチンベクター及び/又はワクチン製剤及び/又はワクチン経路がプライム投与及びブースト投与の両方で同じであり得る相同様式で投与され得る。プライム-ブーストワクチン戦略はまた、ワクチン組成物、ワクチンベクター及び/又はワクチン製剤及び/又はワクチン経路がプライム投与とブースト投与の両方で異なり得る異種様式で投与され得る。

抗原
適応免疫系の標的を表す分子、特に生体分子。ここで、抗原は、B細胞系及びT細胞系において、それぞれ免疫グロブリン及びT細胞受容体により検出される。

エピトープ
エピトープは、抗原決定基としても知られ、適応免疫系、特に免疫グロブリン(Ig)又はT細胞受容体(TCR)により認識される抗原の部分である。すなわち、エピトープは、免疫グロブリン又はT細胞受容体が結合する抗原の特定の部分である。

ヒト白血球抗原(HLA)
ヒト白血球抗原(HLA)系又は複合体は、有顎脊椎動物の主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体である。明確性のために、本明細書ではHLA命名法を用いて、遺伝子(すなわち、HLA)及びタンパク質複合体(すなわち、MHC)の両方を記述する。

ヒト白血球抗原クラスI(HLAI)
MHCクラスI(A、B、C及びE)に対応するHLA。これらはHLAクラス1群を含む。

ヒト白血球抗原クラスII(HLAII)
MHCクラスII(DP、DM、DO、DQ及びDR)に対応するHLA。これらはHLAクラス2群を含む。
【0080】
HLA制限エピトープ(HRE)
HLA分子に搭載され、TCRによるT細胞サンプリングのために細胞表面に提示されるエピトープ。HLAI及びII分子に関しては一般に、エピトープはペプチドを表す。非ペプチド分子もまた、細胞表面での提示のためにHLAに搭載され得る。

HLAI制限エピトープ(HLAI-HRE)
T細胞サンプリング用に細胞表面に輸送するためにHLAI分子に特異的に搭載され得るエピトープ。

HLAII制限エピトープ(HLII-HRE)
T細胞サンプリング用に細胞表面に輸送するためにHLAII分子に特異的に搭載され得るエピトープ。

ウイルスがコードするタンパク質(VEP)
ウイルスゲノムにコードされる全てのタンパク質(当該タンパク質の翻訳後修飾体を含む)。

ビリオン
ウイルス粒子全体。

ビリオン膜タンパク質(VIP)
ウイルスゲノムにコードされたタンパク質であって、デノボでのビリオン生成後に感染宿主細胞から放出されるとビリオン内に表われるタンパク質。

非ビリオン膜タンパク質(非VIP)
ウイルスゲノムにコードされたタンパク質であって、ウイルスのライフサイクルの間に感染宿主細胞内で発現されるが、ビリオン内には表れないタンパク質。
【0081】
抗原提示細胞
HLAI分子を発現する細胞であって、HLAI制限エピトープを搭載して、T細胞サンプリングのためにこれらの複合体を細胞表面に提示することができる細胞。一般に、有顎脊椎動物の全ての有核細胞であると考えられている。

プロフェッショナル抗原提示細胞
HLAII分子を構成的に発現する免疫系のAPCであって、ピノサイトーシス、エンドサイトーシス及びファゴサイトーシスによる細胞外成分のサンプリングの結果、HLAII制限エピトープが提示される経路が組み込まれている特殊なAPC。プロフェッショナルAPCの主な種類は、樹状細胞、マクロファージ及びB細胞である。

T細胞
Tリンパ球又はT細胞は、胸腺で分化したリンパ球であって、T細胞受容体(TCR)を介した抗原エピトープの検出により、多様な適応免疫機能を媒介するリンパ球を表す。

TCR
適応様式での抗原エピトープの検出を可能にする、T細胞の規定された免疫受容体。α/β及びγ/δTCR系が存在し、α/βは、一般に、HLAI及びHLAII制限エピトープの検出を担う。

ナイーブT細胞
ナイーブT細胞は、骨髄において分化したT細胞であって、胸腺における「正の選択」及び「負の選択」の中枢選択プロセスを成功裡に経たT細胞である。

エフェクターT細胞
有効エピトープとの遭遇により活性化されており、したがってT細胞の選択された機能に影響を及ぼすように傾倒しているCD4ヘルパーT細胞又は細胞傷害性CD8T細胞。

メモリーT細胞
エフェクターに傾倒したT細胞は、その後、メモリー状態への傾倒を受け得る。メモリー状態は、有効なエピトープとの再遭遇までの静止状態を表し、よって同種抗原を失ったエピトープに対する獲得T細胞免疫又は寛容の中心的態様を表す。
【0082】
CD8 T細胞
細胞表面にα/α、α/β又はβ/βのCD8受容体二量体を発現し、一般にAPCにより提示されたHLAI-HREのサンプリングを担うT細胞。CD8T細胞のエフェクター機能は、最も一般的には細胞傷害作用であるが、さらに制御機能及びヘルパー機能を含むことがある。

CD4 T細胞
細胞表面にCD4受容体を発現し、一般にAPCにより提示されたHLAII-HREのサンプリングを担うT細胞。CD4 T細胞のエフェクター機能は、非常に多様であり不完全にしか理解されていないが、多様な抗原エピトープを検出し、複雑な細胞内シグナル伝達ネットワークを通じて自然免疫系及び適応免疫系の全体を連携させる「ヘルパー」細胞であると考えられている。

細胞傷害性Tリンパ球(CTL)
細胞傷害性エフェクター機能を有するT細胞であって、通常CD8 T細胞が代表的である。

ヘルパーT細胞
細胞傷害性エフェクター機能を有さないT細胞についてのエフェクターT細胞機能の一般的な定義であり、ほとんどの場合、CD4 T細胞をいう。

調節性T細胞(Treg)
中心的なエフェクター機能として、或る種の免疫抑制シグナル伝達を介して免疫寛容を特異的に付与するエフェクター機能を有するT細胞は、CD4 T細胞及びCD8 T細胞で代表され得るが、最も一般的にはCD4 T細胞である。
【0083】
B細胞
Bリンパ球又はB細胞は、骨髄において分化したリンパ球であって、骨髄を出る前に「正の選択」及び「負の選択」を成功裡に経たリンパ球である。B細胞は、TCRと同様の遺伝子及びタンパク質構造を有する膜結合型免疫グロブリン(Ig)である表面B細胞受容体(BCR)によって定義される。BCRは、初遭遇時でのIgエピトープ検出の中心である。エピトープ検出がゲート型B細胞成熟プロセスを始動させる。このプロセスを進めるためには、エピトープの持続的利用可能性及び或る種のヘルパーT細胞入力が必要である。B細胞成熟プロセスは、種々の形態の可溶性免疫グロブリンの産生をもたらす。B細胞はまた、特にヘルパーT細胞と結合連絡してシグナル入力を受け取る能力において、プロフェッショナル抗原提示細胞として機能し得る。

免疫グロブリン(Ig)
一般には抗体と呼ばれる可溶性適応認識分子は、成熟B細胞により産生され、同種エピトープに結合した際に宿主免疫応答において或る種のエフェクター機能を媒介することができる。

中和免疫グロブリン(中和Ig)
一般には非自己抗原に由来するエピトープに対する免疫グロビンであって、病原体又は非自己分子を中和するエフェクター機能を果たす免疫グロビン。

樹状細胞(DC)
プロフェッショナル抗原提示細胞であり、T細胞及びB細胞応答の中心的媒体である。

マクロファージ
プロフェッショナル抗原提示細胞であって、T細胞及びB細胞応答の中心的媒体であり、通常、ファゴサイトーシス活性により定義される。

自己抗原
適応免疫に関して、宿主生物に由来する抗原。

非自己抗原
適応免疫に関して、宿主生物に対して外来性である抗原であり、病原体及びアレルゲンに由来する抗原を指す場合が多いが、食物及び片利共生微生物に由来する抗原も含まれ得る。
【0084】
インターフェロンクラスI(IFN-I)
インターフェロン受容体と結合して免疫系の調節を助ける、哺乳動物に見出されるサイトカインのファミリー。

排出リンパ節(DLN)
対象組織を排液するリンパ節。多くの場合、感染組織、異形成を含む組織、悪性腫瘍を排液するか、又はアレルゲン、片利共生及び/若しくは食品に直接曝されたリンパ節をいう。

オープンリーディングフレーム(ORF)
ORF産物又は遺伝子転写物を生じるように転写され得る核酸の読取り枠の部分。

免疫原性
或る抗原又はB細胞若しくはT細胞エピトープが、それぞれB細胞系及びT細胞系において測定可能な応答を引き起こす能力を示す一般的な用語。

活動性感染
ウイルス複製が進行中であり、感染宿主細胞からデノボビリオンが放出され、更なる宿主細胞に感染するウイルス感染。

既往感染
宿主免疫系によって除去されたウイルス感染。

潜在感染
宿主免疫系によりウイルス複製の抑制を生じているウイルス感染であって、宿主細胞内にウイルスゲノム物質が維持され、将来、再活性化しデノボビリオン生成により活動性感染を確立する可能性があるウイルス感染。

臨床像
臨床的関連性の顕著な兆候を示すウイルス感染
【0085】
図のボックス
図1、ボックス1:
高齢被験者
幅広い免疫不全;特に、ナイーブT細胞レパートリーの減少
高齢被験者は感染初期のナイーブCD8 T細胞監視が低い。
感染初期におけるCD8 CTL活性化からの逃避。
ウイルス感染細胞を除去する能力の低下及び/又は遅延を生じる。
【0086】
図2、ボックス1:
全身性免疫活性化
細胞傷害は、隣接細胞及びマクロファージにより認識されるDAMPS及びPAMPSを放出して、サイトカイン及びケモカイン産生を誘引する。
免疫細胞動員により、T細胞画分による細胞のより厳密なサンプリングが駆動される。より多くの樹状細胞が到着し、MALT及びDLNにおけるCD8及びCD4 HLA制限エピトープのサンプリングを促進するように応答する。

図2、ボックス2:
ウィルス拡散
ウイルス性HLAI制限エピトープに対するフロントラインCD8 CTL活性化の免疫回避により感染が確立する。
【0087】
図3、ボックス1:
ウイルス蓄積
上皮におけるウイルスの拡散により、更なるウイルス拡散並びにプロフェッショナルAPC及びB細胞によるサンプリングのためのビリオン蓄積が可能となる。

図3、ボックス2:
適応応答
広範な免疫細胞動員により、VIPに偏った適応CD8、CD4及びB細胞応答が可能になる。
【0088】
図4、ボックス1:
ウイルス血症及び組織障害
貪食された上皮細胞は、CD8 T細胞に交差提示のためのVEPを提供する。
呼吸器粘膜及び排出リンパ節における高いウイルス価は、CD8 CTLに交差提示されるためにDCによりサンプリングされる。

図4、ボックス2:
適応免疫応答の異常
自然免疫応答の抑制に基づく初期免疫回避は、増殖性に感染した細胞の早期CD8 T細胞検出及び遅延CD8 CTL応答からの回避をもたらす。
ウイルス感染の確立、細胞死、免疫動員及びウイルス血症は、多量のVIP由来HLAI-HREに偏った遅延適応CD8 CTL応答を駆動する。
感染部位及びDLNでCD8 CTL細胞傷害性機能により生じたプロフェッショナルAPCの枯渇は、組織損傷を急速に蓄積させ、CD4ヘルパー応答を指示するDCを減少させる。
T細胞適応免疫の協調が崩れると、重篤な炎症及びサイトカインストームを生じることに加えて、B細胞成熟のためのCD4 T細胞の援助が乏しくなり、抗体応答が損なわれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス性病原体に対して使用するワクチン組成物を製造する方法であって、以下:
a.対抗するワクチン組成物が望まれるウイルス病原体から、非ビリオン膜タンパク質由来のヒト白血球抗原クラスI制限エピトープ(非VIP由来HLAI-HRE)を、HLA及び抗原ORF構築物用の標準化ドナーベクターと、プログラム可能なeAPCを表す機能的に遺伝子操作された不死細胞株内のゲノム受容部位とを組み合わせて用いて同定すること、ここで、eAPCは、その後、eAPCタンパク質自体に由来する内因性HLAI制限レパートリーのバックグラウンド内で統合されたORFからのHLA制限抗原を同定する質量分析(MS)ベースの方法によってスクリーニングされ、単一HLAバックグラウンド(モノアレレック)における該ORFの系統的分析を可能にする;
b.標的ウイルスに事前感染していないドナーから単離されたナイーブCD8 T細胞集団及び/又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーからのメモリーCD8 T細胞集団における、同定された非VIP由来HLAI-HREの免疫原性を分類すること;
c.ナイーブドナーにおいて免疫原性が確認された非VIP由来HLAI-HRE又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーにおいてCD8 T細胞応答が観察された非VIP由来HLAI-HREを選択すること;
d.選択された非VIP由来HLAI-HREをワクチン組成物に含めること
を含み、ウイルス性病原体がSARS-CoV-2である、方法。
【請求項2】
複数の非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン組成物に含めるために、ワクチン組成物を設計する対象の集団内の少なくとも60%の個体が保有する対立遺伝子であるHLAI対立遺伝子の中の1又は2以上のHLAI-HREを表すように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン組成物に含めるために、ワクチン組成物を設計する対象の個体が保有する1又は2以上のHLAI対立遺伝子の中の1又は2以上のHLAI-HREを表すように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ワクチン組成物が、下記:
a.組換え非複製又は複製ウイルスベクター;
b.ウイルス様粒子;
c.改変ヌクレオチドを含むか又は含まない組換えRNA構築物;
d.改変ヌクレオチドを含むか又は含まない組換えDNA構築物;
e.改変アミノ酸を含むか又は含まない組換えタンパク質;
f.改変アミノ酸を含むか又は含まない合成ポリペプチド
から選択される1又は2以上のワクチンベクターを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1又は2以上のワクチンベクターがa、b又はcから選択され、選択された非VIP由来HLAI-HREが、ワクチン送達時に宿主細胞における機能的非VIPタンパク質の発現を許容しない発現構築物に組み込まれて、該ウイルス性非VIPの免疫回避活性を無効にする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
選択された非VIP由来HLAI-HREの提供が、以下:
a.タンパク質機能を不活化する、全長非VIP ORF内での点変異及び/又は配列挿入及び/又は配列欠失を導入すること;
b.連結構築物中の選択されたHLAI-HREをコードする非VIP ORFフラグメントを含む合成核酸配列の構築;
c.キャリアタンパク質配列内の選択されたHLAI-HREをコードする非VIP ORFフラグメントを含む合成核酸配列の構築
の1又は2以上により提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1又は2以上のワクチンベクターがd又はeから選択され、組換えタンパク質又は合成ポリペプチドが1又は2以上の非VIP由来HLAI-HREを含み、タンパク質又はポリペプチド分子が、連結されたHLAI-HREを含むか又はキャリアタンパク質若しくはポリペプチド内に前記HLAI-HREをコードする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
1又は2以上のワクチンベクターが、中和Ig応答をプライムする1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープを更にコードする、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1又は2以上のワクチンベクターが、B細胞成熟及び中和抗体産生を支持するCD4 T細胞応答をプライムし、及び/又は記憶分化への非VIP由来HLAI-HRE特異的CD8 T細胞応答の傾倒を促進するよう1又は2以上の選択したHLAII-HREエピトープを更にコードする、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1又は2以上のB細胞/免疫グロブリンエピトープが、ワクチン送達時にVIPタンパク質に対するCD8 T細胞応答をプライムしないようにVIPからHLAI-HREを除去するように改変されている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1のステップaが、遺伝子操作されたTCR提示細胞(eTPC)を更に含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1のステップdに含まれる、選択された非VIP由来HLAI-HREが、ナイーブドナー又は標的ウイルスの活動性感染、潜在感染若しくは既往感染が確認されたドナーにおいてCD8 T細胞応答が観察されたドナーからの非VIPのHLAI-HREに優先して含まれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】