(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】加工物をレーザ切断するための装置、および生成された要素を集めるための装置、および使用方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/142 20140101AFI20230623BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230623BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B23K26/142
B23K26/38 A
B23K26/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564848
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 FR2021050682
(87)【国際公開番号】W WO2021214405
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522416778
【氏名又は名称】オネット テクノロジーズ シーエヌ
(71)【出願人】
【識別番号】508361416
【氏名又は名称】アンスティテュ ドゥ ラディオプロテクシオン エ ドゥ シュルテ ニュクレエール
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE RADIOPROTECTION ET DE SURETE NUCLEAIRE
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シエリオット、グウェナエル
(72)【発明者】
【氏名】デラレス、レミ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ルーレット、ダミアン テ.
(72)【発明者】
【氏名】ジェラン、トマ ジェ.
(72)【発明者】
【氏名】ポーシュロン、エマニュエル ジ.
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168DA02
4E168DA03
4E168FC04
4E168KB03
(57)【要約】
加工物をレーザ切断し、生成された要素を集めるための装置ならびに使用方法である。本発明は、パワーレーザによる部材(4)の切断中に生成された要素を捕捉し輸送するための装置に関し、前記部材は、特に放射性要素を有し、装置は前記部材を切断することができるパワーレーザを備え、レーザビーム(2)を放出するレーザ照射ヘッド(1)と、排出気流(3)と、前記レーザ照射ヘッド(1)に取り外し可能に接続された前記切断によって生成された要素を捕捉するためのチャンバとを備える。前記チャンバは、a)排気部(7)を備える凹部(5)と、b)圧縮空気流(8)を前記凹部(5)の排気部(7)の方向に放出することができる送風ノズル(6)とを備える。本発明はまた、部材(4)をレーザ切断し、部材の切断中に生成された要素を収集し、前記装置を使用するための方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材をレーザ切断し、切断によって生成された要素を回収する装置であって、前記装置は、
- 前記部材(4)を切断することができるパワーレーザであって、レーザビーム(2)と排出気流(3)放出することができるレーザ照射ヘッド(1)を備える、パワーレーザと、
- 前記レーザ照射ヘッド(1)に着脱自在に接続され、切削により生じる要素を捕捉する捕捉チャンバであって、排気部(7)を備える凹部(5)と、前記凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出可能な送風ノズル(6)とを備える、補足チャンバと、
を有する、装置。
【請求項2】
前記補足チャンバは前記レーザ照射ヘッド(1)に着脱可能に接続され、前記補足チャンバは、前記レーザビーム(2)が印加されることが意図されている部材(4)の部分とは反対側に配置され、前記捕捉チャンバは、前記レーザビーム(2)が印加されることが意図されている部材(4)の部分とは反対側に対して10mm~100mmの距離に配置されている、部材を貫通レーザ切断する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記凹部(5)は、
- 前記部材(4)の入口に配置され、前記レーザ照射ヘッド(1)により放射されたレーザビーム(2)及び排気気流(3)を通過させることができる、第1のオリフィス(9)と、
- 第1のオリフィス(9)と位置合わせされ、前記レーザビーム(2)を通過させることができる、第2のオリフィス(10)と、
- 排気部(7)と連通する第3のオリフィス(11)であって、前記排気部は切削中に生じた要素を収集し運搬するシステムと連通する、第3のオリフィスと、
- 送風ノズル(6)に連通し、前記第3のオリフィス(11)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる、第4のオリフィス(12)と、を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第4のオリフィス(12)が、前記レーザ照射ヘッド(1)によって放射される前記レーザビーム(2)によって形成される軸に対して45度から90度の間で構成される角度を形成する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
部材を非貫通レーザ切断するための装置であって、前記捕捉チャンバは、前記レーザ照射ヘッド(1)に着脱自在に接続され、かつ、前記レーザビーム(2)が印加される予定の部分に対応する、切断される部材(4)の側方に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記凹部(5)の前記排気部(7)は、前記レーザ照射ヘッド(1)に直接接続され、前記送風ノズル(6)は、前記レーザ照射ヘッド(1)に保持されたモジュール(13)を介して前記レーザ照射ヘッドに接続されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記送風ノズル(6)は、前記送風ノズルによって放出される圧縮空気流(8)が、前記レーザ照射ヘッド(1)によって放射される前記レーザビーム(2)によって形成される軸に対して70度から135度の間で構成される角度をなすように配置される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記凹部(5)の前記排気部(7)は、切断される部材(4)に対して30度から70度の間で構成される角度を形成する、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
部材をレーザ切断し、該切断によって生成された要素を集めるために、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置を使用する方法であって、該方法は連続的に、
- パワーレーザの照射ヘッド(1)によって放射されるレーザビーム(2)の軸線に切断される部材(4)が配置され、
- 切削により生成された要素を捕捉するための捕捉チャンバをレーザ照射ヘッド(1)に着脱可能に接続し、前記補足チャンバは、a)排気部(7)を備える凹部(5)と、b)前記凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる送風ノズル(6)と、を備え、
- 前記レーザ照射ヘッド(1)は、排出気流(3)に結合されたレーザビーム(2)を放射し、
- 前記送風ノズル(6)は、凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出し、切断時に生成される要素を排気部(7)の方向に向けることができる、方法。
【請求項10】
前記送風ノズル(6)は、400リットル/分と2000リットル/分との間の流量を有する圧縮空気流(8)を放出する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
部材を貫通レーザ切断するための請求項9または10のいずれかに記載の方法であって、前記捕捉チャンバは、前記レーザビーム(2)が適用される部材と反対側の前記切断される部材(4)の側面に配置され、前記切断される部材に対して10mmから100mmの間の距離を備え、前記レーザビームは前記切断される部材を通過する、方法。
【請求項12】
前記送風ノズル(6)によって放出される圧縮空気流(8)が、前記レーザ照射ヘッド(1)によって放出される前記レーザビーム(2)によって形成される軸に対して、45度から90度の間で構成される角度を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
部材を非貫通レーザ切断するための請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法であって、前記捕捉チャンバは、前記レーザビーム(2)が印加される部分に対応する、前記切断される部材(4)の側部に配置される、方法。
【請求項14】
前記送風ノズル(6)によって放出される前記圧縮空気流(8)が、前記レーザ照射ヘッド(1)によって放射される前記レーザビーム(2)によって形成される軸に対して70度から135度の間で構成される角度をなす、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記凹部(5)の前記排気部(7)は、切断される部材(4)に対して30度から70度の間で構成される角度を形成する、請求項13または14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、原子力分野に関し、より詳細には原子力施設の解体の分野に関する。
本発明は、パワーレーザによる部材の切断中に生成される要素を捕捉して輸送する装置に関し、前記部材は、特に放射性要素を含む。本発明はまた、部材をレーザ切断し、その部材の切断の際に生成される要素を回収する方法にも関し、前記部材は特に放射性要素を含む。
【背景技術】
【0002】
解体は、放射性物質や廃棄物の排出、存在する設備の撤去、原子力施設の寿命の終わりや最終停止時の建屋の衛生化・解体を目的とした業務を行う。作業のリスクを確実に制御するために、各段階で安全レビューを行っている非常に長期の産業プロジェクトである。
【0003】
原子力施設の解体は、環境、解体に直接的又は間接的に関与する人々、又は解体現場の直近又は遠方の人々さえも汚染しないように、高度に安全な運転条件の実施を必要とする。したがって、汚染のリスクを制御し、それらを減少させることは、原子力施設を解体する際の重要な目的の一つである。
【0004】
この解体は、例えば、解体が進行中の福島サイトのような原子力事故後にも必要である。福島に立地する原子力施設の解体の重要なステップの一つは、原子炉の炉心からの劣化燃料の除去に対応している(Le corium de Fukushi de Fukushima:フォーメーション、イータチュエ・R&D vue sa recuperation、Christophe Journeau、Damien Roulet、16 th国際流体力学会議、CNRS、CentraleSupelec、Paris Saclay University、RNSI、Sep 2018、Dourdan、France)。これらの燃料は、炉心の劣化に対応しており、「コリウム」とも呼ばれ、一般的には原子炉格納容器内に送られるロボットによって検出・観測される。コリウムは、原子炉の炉心の融解に由来し、原子炉の通常運転中にタンク内の燃料及び燃料を支持する構造材料の塊から成り、それらは融解して混合され、コリウム中に閉じ込められた核分裂生成物の放射性崩壊による残留電力の放出によって溶融状態に保たれている(「Les de fusion du coeur des reacteurs nucleaires de puissance」、Didier Jacquemain、Radioprotection and Nuclear Safety Institute、2013、p.70)。福島に存在するような原子力施設の原子炉に大量にコリウムが存在することは、事業者及び環境に対する放射性リスクの主要な発生源である。したがって、このリスクを低減することが不可欠であり、そのためには、このコリウムを除去し、安定した管理された条件下で保管する必要がある。
【0005】
コリウムの採取には、その除去とその調整を視野に入れて数個に切断し、その後、最終貯蔵前に発電所の敷地内の金属ドラム缶で冷却することが必要である。コリウムの切断は、コリウムが不均質で複雑な材料であり、異なる形態及び原子炉ブロック内の異なる場所にあり得ること、格納容器内で行われる全ての操作のための遠隔操作手段の介入を必要とする極めて放射性(10から1000Gy/h程度)が高いこと、及び、燃料の冷却が依然として存在することを保証するために原子炉建屋の内部が非常に汚染され、部分的に破壊され、又は部分的に水没しているためにコリウムへのアクセスが困難であることを考慮すると、幾つかの困難を呈する。多くの既存の切断技術の中で、例えば、コアリング、フライス加工、剪断加工、プラズマ切断、またはウォータージェットによる切断、レーザ切断技術は、その切断性能、遠隔操作によるその実施の容易性およびこの種の環境におけるそのロバスト性のために、特に福島サイトのために想定される可能性である。
【0006】
しかしながら、レーザ切断中に、格納容器内でのこれらの放射性元素の分散のリスクを制限するために、レーザ切断法からの二次廃棄物として形成されるエーロゾル、ガスおよびスラグの広がりを最良に制限し、それらを効率的に収集するための効率的な解決策が必要である。実際に、切断中に発生する二次放射性元素を回収するための方策がないことは、格納容器内にこれらの元素が懸濁することにつながる可能性があり、これは、特に、例えば、地震の際に、容器の全面的または部分的な密封性が失われる場合には、コリウムによる直近または遠方の環境の汚染のリスクをもたらすであろう。コリウムのレーザ切断のシミュレーションは、原子力委員会によって開発されたDELIAと呼ばれる特定の船内でフランスの研究グループによって行われ、特に、生成され、特性化されたエアロゾルの一部を収集することを可能にした(Peillonら、「原子力施設の解体のための鋼成分のレーザ切断中の水中操作のエアロゾル特性化および粒子スクラブ効率」、Aerosolおよび大気質研究、2017年、17年1463-1473年)。この容器では、円筒形ステンレススチールパイプで構成されたエーロゾルキャラクタリゼーションラインに接続された抽出煙突があり、そこでは通気が100m /hに維持され、2つの異なったフィルタに接続された2つのサンプリングプローブを備えている。また、この容器は、容器内の空気の再循環を可能にする煙突を備え、この煙突は、抽出煙突によって捕捉されない要素を集めるHEPAフィルタを備える。従って、この解決法では、コリウムのレーザ切断中に生成された要素をできるだけ切断領域に近くで収集し、前記要素の最適な収集を保証し、従って容器の緊密性のあり得る喪失に結びつくいかなるリスクも防止することができない。
【0007】
これらの元素の飛散及び環境・人員の汚染のリスクを制限するためには、切断が実施される容器の種類に関わらず、コリウムのレーザ切断によって生成される任意の大きさの二次放射性元素を効率的に集めるための解決策を有することが必要であることが理解される。
【0008】
より一般的には、放射性元素を含む部材のレーザ切断によって生成される任意のサイズの二次要素を効率的に収集することを可能にする解決策が必要とされている。実際、現在までの唯一の既存の解決法は、フィルタを備えた密閉された換気容器内で切断操作を実施することから成っている。しかし、これらの解決策は、上記で述べたように、切削領域にできるだけ近づけて切削中に生成された要素、特に放射性要素を収集して、前記要素の最適な収集を確実にするだけでなく、容器内でのそれらの懸架を避け、従って容器の緊密性の損失の可能性に関連するあらゆるリスクを制限することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の課題は、部材をレーザ切断する装置に関し、該切断によって生成された要素を回収する装置であって:
- 前記部材(4)を切断することができるパワーレーザであって、レーザビーム(2)を放射することができるレーザ照射ヘッド(1)と、排出気流(3)とを有するパワーレーザと、
- 前記レーザ照射ヘッド(1)に着脱自在に接続され、切削により生じる要素を捕捉するチャンバであって、前記チャンバの凹部(5)と、前記凹部(5)の排気部(7)方向に圧縮空気流(8)を放出可能な送風ノズル(6)を有する、チャンバ、とを備える。
【0010】
本発明の第2の課題は、部材をレーザ切断し、該切断によって生成された要素を集めるための方法に関し、請求項1~8の何れか一項に記載の装置を使用して:
- パワーレーザの照射ヘッド(1)によって放射されるレーザビーム(2)の軸線に切断される部材(4)が配置され、
- 切削により生成された要素を捕捉するためのチャンバをレーザ照射ヘッド(1)に着脱可能に接続し、該チャンバは凹部(5)を備え、凹部(5)はa)排気部(7)とb)送風ノズル(6)とを有し、送風ノズル(6)は排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができ、
- 前記レーザ照射ヘッド(1)は、排出気流(3)に結合されたレーザビーム(2)を放射し、
- 送風ノズル(6)は、凹部(5)の排気部(7)方向に圧縮空気流(8)を放出し、切断時に生成される要素を排気部(7)方向に向けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来技術のニーズを満たすために、本出願人は、部材をレーザ切断し、この切断によって生成された要素、特に放射性要素を集めるための装置を提案する。本発明によって提案される装置は、放射性元素を含む部材を切断することを有利に可能にし、前記部材は、例えばコリウムであることができ、その一方で、切断によって生成される二次的元素を切断領域に可能な限り近接して効率的な収集を確実にする。本発明によって提案される、この装置およびこの装置を使用するための方法は、切断環境内外での切断中に生成される二次要素の分散を制限することを可能にし、したがって、放射能汚染の可能性のあるリスクを制限する。したがって、提案された発明は、それが実施される格納容器内で切断中に生成される二次要素、特に放射性要素の分散を制限するか、あるいは回避することさえ可能にする。このことは、容器の気密性の全部または部分的損失の場合に二次汚染のリスクを制限することを有利に可能にするが、また、容器の抜き取りラインにストレスを与えることが少なく、容器を保持する動作を制限し、容器の寿命を延ばす。好ましくは、本発明は、遠隔操作手段の実施を必要とする切断及び/又は解体操作で実施されることを意図している。
【0012】
したがって、本発明の第1の手段は、部材をレーザ切断し、その切断によって生成された要素を回収するための装置であって:
- 前記部材(4)を切断することができるパワーレーザであって、レーザビーム(2)を放射することができるレーザ照射ヘッド(1)と、排出気流(3)とを有するパワーレーザと、
- 前記レーザ照射ヘッド(1)に着脱自在に接続され、切削により生じる要素を捕捉するチャンバであって、前記チャンバ(5)は、凹部(5)と、前記凹部(5)の排気部(7)方向に圧縮空気流(8)を放出可能な送風ノズル(6)とを有するチャンバ、とを備える。
【0013】
本発明においては、「部材のレーザ切断によって生成される要素」は前記部材のレーザ切断の間に、その部材から放出され、結果として生成される材料要素をを意味する。生成される要素の性質は、切断される部材の素材の性質によって異なる。
【0014】
レーザ切断によって生成される要素は、可変サイズであり、これらの要素は、例えば、粒子、ダスト、ヒューム、スラグ、エーロゾルとすることができる。エーロゾルは、例えば、100nm~10μmで構成されるサイズを有する。ダストは、例えば、10μm~500μmで構成されるサイズを有する。スラグは、例えば、500μm~10mmで構成されるサイズを有する。切断された部材が放射性元素を含む部分である場合、例えば、その部分がコリウムである場合、その部分のレーザ切断によって生成された元素の全部又は一部は放射性元素である。
【0015】
本発明では、実施されるパワーレーザは、パワーレーザビームを発生するコヒーレント光源と、このビームを集束し、切断される部材の表面上の少なくとも1つの軸に従ってそれを向けるための光学モジュールと、圧縮空気流に対応する排出気流を放出することができる吹送風手段とを備える「レーザ照射ヘッド」を含む。特に、本発明に係る装置で実現されるレーザ照射ヘッドは、送風手段を備える。より詳細には、照射ヘッドによって構成される送風手段は、排出気流を放出することができるので、レーザ切断中に生成される要素をチャンバの凹部の排気部方向に向けることが可能である。第1の態様によれば、レーザ照射ヘッドによって構成される送風手段は、光源および光学モジュールの周囲に配置される。第2の態様によれば、照射ヘッドによって構成される送風手段は、照射ヘッドに保持されたモジュール上に配置され、前記モジュールは、照射ヘッドの一部を形成する。上記のそれぞれの態様によれば、送風手段は、排出気流と呼ばれる圧縮空気流を、切断される部位にレーザビームの衝突する点の方向に放出する。好ましくは、レーザ照射ヘッドにより構成される送風手段は、エアコンプレッサに接続されている可能性のある送風ノズルである。本発明に係る装置で実現されるパワーレーザは、レーザビームの波長、レーザビームのパワーおよび排出気流の流量などのレーザ実現パラメータに応じて部材を切断することができる。
【0016】
好ましくは、本発明により実現されるパワーレーザの照射ヘッドは、650~1090nm、好ましくは1030~1070nmで構成される波長のレーザビームを照射する。この場合も、照射ヘッドが発するレーザビームは、4~14kWで構成される出力を有することが好ましい。
【0017】
特に、本発明において、照射ヘッドによって構成される送風手段によって放出される排出気流は、100から2000リットル/分を含む流量を有する。
【0018】
特に好ましい一態様によれば、パワーレーザの照射ヘッドは、4~14kWで構成された出力を有する1030~1070nmの波長のレーザビームを照射し、400~2000リットル/分の流量で排出気流を放射する。
【0019】
本発明による装置に実装される捕捉チャンバは、レーザ切断によって生成される要素を捕捉し、集めることができる。「レーザ切断によって生成される元素を捕捉し、捕集することができる」は、チャンバが、生成される元素の70~100%、好ましくは80~100%、より好ましくは90~100%、さらに好ましくは95~100%を捕捉および捕集するという事実を意味している。好ましくは、「レーザ切断によって生成される要素を捕捉し、捕集することができる」は、チャンバが、生成されるエーロゾルの80~100%、さらに好ましくは90~100%、さらにより好ましくは95~100%を捕捉および捕集するという事実を意味している。
【0020】
本発明による装置では、捕捉チャンバは、レーザ照射ヘッドに取り外し可能に接続されており、これにより、チャンバを取り外して、その保持、その清掃、または必要な場合にはそれを交換することさえも確実にすることができる。いずれの場合も、「レーザ照射ヘッドに接続する」は、捕捉チャンバが保持され、レーザ照射ヘッドに保持されているという事実を意味している。
【0021】
凹部の排気部は、レーザ切断中に生成された要素を収集及び輸送システムの方向に通過させることを可能にし、その排気部は、直接的に又は間接的に接続されている。
【0022】
捕捉チャンバ内に具備された送風ノズルは、圧縮空気流を放出するように空気コンプレッサに接続されている。本発明による送風ノズルによって放出される圧縮空気の流量は、100~2000リットル/分であり、好ましくは500~1000リットル/分である。
【0023】
本発明による装置に実装された捕捉チャンバ内に含まれる送風ノズルは、レーザ切断によって生成された要素を凹部からの排出部の方向に偏向するように配置される。
本発明において、捕捉チャンバによって構成される送風ノズルは、レーザ照射ヘッドによって放射されるレーザビームの軸に配置されていない。
【0024】
本発明の1つの特定の態様によれば、送風ノズルによって放出される圧縮空気流は、凹部を潤滑し、その使用期間を延長するか、または切削によって生成された要素を凹部の排気部の方向に輸送しやすくするように潤滑組成物を含むことができる。
【0025】
レーザ照射ヘッドによって構成される送風手段によって放出される排出気流と、潤滑組成物に結合される可能性がある捕捉チャンバによって構成される送風ノズルによって放出される圧縮空気流との組み合わせによって、切断によって生成される要素の収集および輸送のためのシステム内で必要な空気供給を有利に最小化することができる。
【0026】
特に、本発明による装置では、凹部の排気部は、レーザ切断によって生成された要素を収集し、輸送するためのシステムと連絡する。切断によって生成された要素を収集し輸送するためのシステムは、抽出ダクト、おそらく1つまたはいくつかの空気式コンベヤに連結された抽出ファン、1つまたはいくつかの中効率・高効率・および/または非常に高効率のフィルタとを含む。空気コンベヤは、システムダクト内で、沈降したであろう切断中に生成された要素を再浮遊させることを可能にする。抽出ファンは、収集及び輸送システム内で、より詳細には、前記システムの抽出ダクト内で、レーザ切断によって生成された要素を含む空気流の高速度を確実にすることを可能にする。収集運搬システム内のレーザ切断によって生成される要素を含む空気流の速度は、17メートル/秒から35メートル/秒で構成されることが好ましい。この高速は、有利には、生成された全ての要素が抽出ダクトだけでなくフィルタを通過し、収集運搬システム内に蓄積しないことを確実にする。
【0027】
好ましくは、収集及び輸送システムは、幾つかの中国立、高効率及び/又は非常に高効率のフィルタを備える。中効率または高効率フィルタの中で、ダストおよびスラグのような、5μmより大きいサイズの生成された要素を濾過することを可能にする機械的効果セパレーターフィルタがある。機械的効果セパレータフィルタの中/高効率フィルタが実装される場合、前記要素を集めることを可能にする区画に有利に連結される。HEPAフィルタのような非常に高効率のフィルタは、例えば、小型エアロゾルのような、以前には濾過されなかったであろう生産された全ての要素を濾過することを可能にする。
【0028】
本発明の1つの特定の具体例において、収集および輸送システムは、抽出ダクト、恐らくは1つまたはいくつかの空気式コンベアに連結された少なくとも1つのファン、機械的効果セパレータフィルタおよび非常に高い効率のフィルタを含む。この実施形態では、中/高効率フィルタは、非常に高効率のフィルタの上流に配置される。好ましくは、この実施形態では、中/高効率フィルタは、フィルタリングされた要素、すなわちスラグのような5μmより大きいサイズを有する要素を集めることを可能にするコンパートメントに結合される。
【0029】
本発明による捕捉チャンバの凹部は、例えば、ステンレス鋼、鋼、チタン、グラファイト、炭化タングステン、ジルコニアなどの溶接産業で使用される特殊被覆で被覆された鋼、溶接産業で使用される耐付着性浴(スパッタ防止)、またはNiCr19Fe19Nb5Mo3合金で構成されるINCONEL(登録商標)718、Ni72Cr14Fe6合金で構成されるINCONEL(登録商標)600、NiCr22Mo9Nb合金で構成されるINCONEL(登録商標)625などの高比率のニッケル、クロムおよび鉄などの金属の合金で構成することができる。1つの特定の態様によれば、凹部は、NiCr19Fe19Nb5Mo3合金、ステンレス鋼、チタン、又は黒鉛、炭化タングステン、ジルコニアのような溶接産業で使用される特殊なコーティングでコーティングされた鋼、溶接産業で使用される付着防止浴(スパッタ防止)の中から選択される材料から構成される。本発明による捕捉チャンバ、特に凹部は、例えば、その堅牢性を改善し、その寿命を延ばし、及び/又は、前記要素の収集及び輸送を改善するように、生産される要素の接着を減少させることを可能にするコーティングを含むことができる。このコーティングは、例えば潤滑組成物とすることができる。
【0030】
本発明の特定の一態様によれば、凹部の排気部は、曲がった形状を有する。より具体的には、凹部の曲がった形状は、凹部の入口と収集運搬システムとの間に、その部材の排気部の高さで位置する。この屈曲した形状は、有利には、捕捉チャンバとレーザ照射ヘッドとからなるシステムの総空間要件を制限することを可能にする。
【0031】
切断される部材の厚さは、数mmから200mmまで変化させることができる。切断する厚さに応じて、切断速度は1cm/ 分~20cm/ 分の範囲で変化する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、切断される部材を貫通切断するための本発明による装置を表す。レーザビーム(2)および排出気流(3)を、切断する部材(4)の方向に放出することができるパワーレーザのレーザ照射ヘッド(1)と、レーザ照射ヘッドに取り外し可能に接続され、切断によって生成された要素を捕捉するためのチャンバとを示し、前記チャンバは、a)排気部(7)と、b)凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる送風ノズル(6)とを有する、凹部(5)を備える。
【
図2】
図2は、切断する部材を非貫通で切断する装置を表す。レーザビーム(2)を放射可能なパワーレーザのレーザ照射ヘッド(1)と、被切断部(4)の方向に吹き出し手段(14)を介する排出気流(3)と、レーザ照射ヘッドに着脱可能に接続され、切断により生じた要素を捕捉するチャンバと、を備え、前記チャンバは、排気部(7)と、前記凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出可能な送風ノズル(6)とを有する、凹部(5)を備える。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の特定の実施形態の1つでは、この装置は、貫通切断するレーザ装置であり、捕捉チャンバがレーザ照射部に取り外し可能に接続されてカットされる部材(4)の側に配置され、該部材(4)はレーザビーム(2)が印加される部分と反対側の部分(4)であり、捕捉チャンバはカットされる部分(4)に対して10mmから100mmの間の距離で配置されるように、レーザビーム(2)が適用される。
【0034】
本実施形態は
図1に示すように、レーザビーム(2)照射できるレーザ照射ヘッド(1)と、切断対象部材(4)の方向の排出気流(3)と、レーザ照射ヘッドに着脱可能に接続され、切断により生成された要素を捕捉するチャンバとを備える。前記チャンバは排気部(7)を備える凹部(5)と、排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる送風ノズル(6)とを備える。
【0035】
この特定の実施形態を示す
図1は、また、凹部(5)に、レーザビームおよびレーザ照射ヘッドによって放射される排出気流を通過させることができる部材の入口に配置された第1のオリフィス(9)、第1のオリフィスに整列され、レーザビームを通過させることができる第2のオリフィス(10)、排気部(7)と連通する第3のオリフィス(11)、第3のオリフィス(11)の方向に圧縮空気流(8)を放射することができる送風ノズル(6)と連通する第4のオリフィス(12)を示す。
【0036】
この構成では、レーザ照射ヘッド(1)によって放射されたレーザビーム(2)は、切断される部材(4)を溶融し、レーザ切断によって生成された要素は、レーザビーム(2)が当てられた部分と反対側の切断される部材の側部に、前記照射ヘッドによって放出された排気気流(3)によって、凹部の内部に投影される。送風ノズル(6)によって放出される圧縮空気流(8)は、これらの要素を収集し運搬するためのシステムに接続される凹部(5)の排気部(7)の方向に、該要素を含む空気流を偏向させることを可能にする。
【0037】
より正確には、本発明に係る装置が、部材の貫通切断のために使用される場合には、レーザビームは、その部材を通過し、捕捉チャンバは、切断される部材の後面、すなわちレーザビームが印加された面とは反対側の面に配置される。本実施の形態においてより正確には、凹部は、切断する箇所の背面に対向して配置されている。
【0038】
好ましくは、この実施形態において、捕捉チャンバおよび特に凹部は、切断されるべき部材に対して10mmと50mmとの間の距離に配置される。この距離により、できるだけ切断される部材の近くに捕捉チャンバを配置することができ、切断の間に生成された最大量の要素を集め、一方で、捕捉チャンバ、特に凹部は、切断される部材に近すぎることがなく、また、前記部材上のレーザビームの適用による切断される部材の熱によって損傷されることがない。
【0039】
この実施形態では、レーザ照射ヘッドは、光源および光学モジュールの周囲に配置される送風手段、好ましくは送風ノズルを含む。本実施形態では、送風手段は、当該部材に前記ビームが衝突する点の方向に、すなわちレーザビームと同じ方向の圧縮気流を放出する。
【0040】
特に本実施形態では、凹部(5)は以下を備える:
- 前記部材(4)の入口に配置され、前記レーザ照射ヘッド(1)により放射されたレーザビーム(2)及び排気気流(3)を通過させることができる、第1のオリフィス(9)と、
- 第1のオリフィス(9)と位置合わせされ、レーザビーム(2)を通過させることができる第2のオリフィス(10)と、
- 排気部(7)と連通する第3のオリフィス(11)であって、前記排気部は切削中に生じた要素を収集し運搬するシステムと連通する、
- 送風ノズル(6)に連通する第4オリフィス(12)を備え、第3オリフィス(11)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる。
好ましくは、第1オリフィス(9)は、切断のタイプに応じて40mmから120mmまでの間で構成される直径を有し、第2オリフィス(10)は、20から60mmまでの間で構成される直径を有し、排気部(7)は、35から60mmまでの間で構成される直径を有し、レーザ照射ヘッドの方向に上昇する。
第4オリフィス(12)は、第1オリフィス(9)と第3オリフィス(11)の間に位置し、第3オリフィス(11)は排気部(7)と連通し、第1オリフィス(9)から10mmと50mmとの間に配置される。
【0041】
より詳細には、第4オリフィス(12)は、レーザ照射ヘッド(1)によって放射されるレーザビーム(2)によって形成される軸に対して45度から90度の間、好ましくは70度で構成される角度を形成する。
【0042】
さらにより詳細には、凹部の第4のオリフィスは、排気部と連通する第3のオリフィスに対して0度から90度の間で構成される角度を形成するように配置される。
【0043】
本発明に係る装置の他の実施形態では、装置は、部材を非貫通レーザ切断するための装置であり、捕捉チャンバは、レーザ照射ヘッド(1)に対して取り外し可能に接続され、レーザビーム(2)が適用されることが意図された部分に対応する、切断される部材(4)の側部に配置される。
【0044】
この実施形態は
図2に例示されており、切断される部材(4)の方向に、パワーレーザのレーザ照射ヘッド(1)によってレーザビーム(2)を放射し、送風手段(14)を介して排出気流(3)を放出する。チャンバはレーザ照射ヘッドに取り外し可能に接続され、切断によって生成された要素を捕捉する。前記チャンバは、排気(部7)及び、b)前記凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる送風ノズル(6)を有する凹部(5)を備える。
【0045】
この構成では、レーザ照射ヘッドにより放射されたレーザビームは、切断する箇所を溶融し、照射ヘッドに保持されたモジュール(13)に送風手段(14)及び送風ノズル(6)が装着される。
この実施形態では、レーザビームは、切断される部材を通過しない。特に、本実施の形態において、凹部(5)は、切断する箇所に対向する低部に開口を有している。好ましくは、この開口部は、10mm~50mmで構成される直径を有する。
【0046】
特に、本実施形態においては、凹部(5)の排気部(7)は、レーザ照射ヘッド(1)に直接接続され、送風ノズル(6)は、レーザ照射ヘッド(1)に保持されたモジュール(13)を介して前記ヘッドに接続されている。
【0047】
この実施形態では、レーザ照射ヘッドは、照射ヘッドに保持されたモジュール上に配置された送風手段を備え、前記モジュールは、照射ヘッドの一部を形成する。この送風手段は、レーザビームの切断する部位への衝突点の方向に、排気気流と呼ばれる圧縮空気流を放出する。好ましくは、レーザ照射ヘッドにより構成される送風手段は、エアコンプレッサに接続されている可能性のある送風ノズルである。
【0048】
この実施形態では、捕捉チャンバは、レーザ照射ヘッドの高さで閉じたアセンブリを形成し、特に前記ヘッドの周囲で、切断される部材に対して開いている。好ましくは、この閉鎖アセンブリは、照射ヘッドに保持されたモジュールを備え、そのモジュールの上には、レーザ照射ヘッドによって構成される送風手段と、捕捉チャンバによって構成される送風ノズルが配置される。
【0049】
この特定の実施形態では、捕捉チャンバと切断される部材との間の距離は、照射ヘッドと切断される部材との間の距離によって決定される。凹部および送風ノズルの排気は、切断される部材から10~40mmの距離にあって、好ましくは該部材から約20mmの距離にあることが好ましい。
【0050】
より詳細には、本実施形態によれば、送風ノズル(6)は、前記ノズルによって放出される圧縮空気流(8)が、レーザ照射ヘッド(1)によって放出されるレーザビーム(2)によって形成される軸に対して70度から135度の間で構成される角度をなすように配置される。より正確には、排出気流は、レーザ照射ヘッドによって構成される送風手段によって放出される。
【0051】
より詳細には、この実施形態によれば、凹部(5)の排気部(7)は、切削される部材(4)に対して30度から70度、好ましくは30度の角度を形成する。
【0052】
この実施形態の1つの特定の態様によれば、送風ノズルは、レーザ照射ヘッドによって放出される排出気流の流れによって形成される軸に対して70度から135度の間、好ましくは120度の角度を形成するように配置され、凹部の排気部は、切断される部材に対して30度から70度の間で構成される角度、好ましくは30度の角度を形成するように配置される。
【0053】
本発明の別の手段は、レーザ照射ヘッドに取り外し可能に接続することができる捕捉チャンバに関し、前記チャンバは、a)排気部を含む凹部と、b)前記凹部の排気の方向に圧縮空気流を放出することができる送風ノズルとを備える。
【0054】
この手段の第1の特定の実施形態では、捕捉チャンバは、レーザ照射ヘッドに取り外し可能に接続されるように、かつレーザビームが適用されることが意図されたものに対応して切断される部材の側部に配置されるようにすることが意図されている。
【0055】
この特定の実施形態によれば、凹部の排気部は、レーザ照射ヘッドに直接接続されるものであり、送風ノズルは、レーザ照射ヘッドに保持されたモジュールを介して前記ヘッドに接続されるものであり、前記ノズルは、凹部の排気部の方向に空気流を放出することができる。
【0056】
この実施形態によれば、照射ヘッドは、切断されるべき部材に対するレーザビームの衝撃点の方向に、排出気流と呼ばれる圧縮気流を放出することができる送風手段を備え、前記送風手段は、照射ヘッドに保持されたモジュール上に配置されている。好ましくは、レーザ照射ヘッドにより構成される送風手段は、エアコンプレッサに接続されている可能性のある送風ノズルである。
【0057】
この実施形態では、捕捉チャンバは、レーザ照射ヘッドの高さで、特に前記ヘッドの周囲で閉じたアセンブリを形成し、切断される部材に対して開いている。好ましくは、この閉鎖アセンブリは、照射ヘッドに保持されたモジュールを備え、そのモジュールの上には、レーザ照射ヘッドによって構成される送風手段と、捕捉チャンバによって構成される送風ノズルが配置される。
【0058】
この特定の実施形態によれば、送風ノズルは、レーザ照射ヘッドによって放射されるレーザビームによって形成される軸に対して70度から135度、好ましくは120度の角度を形成するように配置される。より詳細には、凹部の排気部は、切削される部材に対して30度から70度の間、好ましくは30度の角度を形成する。
【0059】
この物体の第2の特定の実施形態では、捕捉チャンバは、レーザビームが印加されることを意図された部材と対向して切断される部材の側に配置されるように、レーザ照射ヘッドに取り外し可能に接続され、捕捉チャンバは、レーザビームが印加されることが意図される部材と対向して切断される部材の側に対して10mm乃至100mmの間で構成される距離に配置される。
【0060】
この特定の実施形態によれば、捕捉チャンバの凹部は、以下を備える:
- 前記部材の前記入口に配置された第1のオリフィスであって、前記レーザ照射ヘッドにより放射される前記レーザビームおよび前記放出気流を通過させることができる第1のオリフィスと、
- レーザビームを通過させることができ、第1のオリフィスと位置合わせされた第2のオリフィスと、
- 排気部と連通する第3のオリフィスであって、切断の間に生成される要素を収集し運搬するためのシステムと連通する第3のオリフィスと、
- 送風ノズルに連通する第4オリフィスであって、第3オリフィスの方向に圧縮空気流を放出可能であり、前記第3および第4オリフィスは、前記凹部の両側に配置されている、第4のオリフィス。
【0061】
この特定の実施形態によれば、捕捉チャンバの凹部の第4のオリフィスは、レーザ照射ヘッドによって放射されるレーザビーム(2)によって形成される軸に対して45度から90度の間で構成される角度を形成する。
【0062】
この実施形態において、レーザ照射ヘッドは、レーザビームを放射する光源とレーザ照射ヘッドの光学モジュールとの周囲に配置された送風手段、好ましくは送風ノズルを備える。本実施形態では、送風手段は、当該部材に前記ビームが衝突する点の方向に、すなわちレーザビームと同じ方向の圧縮空気流を放出する。
【0063】
この実施形態の好ましい一態様によれば、捕捉チャンバは、レーザビームからわずかにずれて配置される。
【0064】
この目的の両方の実施例において、凹部の排気部は、生成された要素を収集し運搬するためのシステムと連絡する。
【0065】
本発明による捕捉チャンバの凹部は、例えば、ステンレス鋼、鋼、チタン、グラファイト、炭化タングステン、ジルコニアなどの溶接産業で使用される特殊被覆で被覆された鋼、あるいはNiCr19Fe19Nb5Mo3合金から構成されるINCONEL(登録商標)718、Ni72Cr14Fe6合金から構成されるINCONEL(登録商標)600、NiCr22Mo9Nb合金から構成されるINCONEL(登録商標)625などの、ニッケル、クロムおよび鉄などを高比率で含む金属の合金から構成することができる。1つの特定の態様によれば、凹部は、NiCr19Fe19Nb5Mo3合金、ステンレス鋼、チタン、又は黒鉛、炭化タングステン、ジルコニアのような溶接産業で使用される特殊なコーティングでコーティングされた鋼、溶接産業で使用される付着防止浴(スパッタ防止)の中から選択される材料から構成される。
【0066】
特に、凹部の排気部は曲がった形状をしている。
【0067】
本発明の第1の手段のために上述した捕捉チャンバに関連する特徴の全てが、この目的に準用される。
【0068】
本発明の第2の手段は、部材をレーザ切断し、その切断によって生成された要素を集めるための、第1の手段に係る装置を使用するための方法であって、方法は順に:
- パワーレーザの照射ヘッド(1)によって放射されるレーザビーム(2)の軸線に切断される部材(4)が配置され、
- 切削により生成された要素を捕捉するためのチャンバをレーザ照射ヘッド(1)に着脱可能に接続し、a)排気部(7)とb)送風ノズル(6)とからなる凹部(5)の排気部(7)の方向に圧縮空気流(8)を放出することができる凹部(5)と、
- 前記レーザ照射ヘッド(1)は、排出気流(3)に結合されたレーザビーム(2)を放射し、
- 送風ノズル(6)は、凹部(5)の排気部(7)方向に圧縮空気流(8)を放出し、切断時に生成される要素を排気部(7)方向に向けることができる。
【0069】
本発明による方法では、レーザ照射ヘッドは、前記ヘッドによって構成される送風手段を介して、圧縮空気流に対応する排出気流を放出する。第1の態様によれば、送風手段は、レーザ照射ヘッドの周囲、より具体的にはレーザ照射ヘッドの光源および光学モジュールの周囲に配置される。第2の態様によれば、送風手段は、照射ヘッドに保持されたモジュール上に配置され、前記モジュールは、照射ヘッドの一部を形成する。上記それぞれの態様によれば、送風手段は、排出気流を放出して、レーザビームの切断予定部位への衝突点の方向に向かう。
【0070】
特に、本発明による方法では、パワーレーザの照射ヘッドが発するレーザビームは、650~1090nm、好ましくは1030~1070nmで構成される波長を有する。さらに好ましくは、照射ヘッドによって放射されるレーザビームは、4~14kWで構成される出力を有する。
【0071】
好ましくは、本発明において、照射ヘッドにより放出される排気気流は、100~2000リットル/分を含む流量を有する。
特に好ましい一態様によれば、パワーレーザの照射ヘッドは、波長が1030~1070nmであり、パワーが4~14kWであり、流量が400~2000リットル/分である排出気流を放出する。
【0072】
本発明による方法では、凹部の排気部により、レーザ切断中に生成された要素を、該要素を収集し運搬するシステムの方向に通過させることができ、このシステムに排気部が直接的に又は間接的に連通される。
本発明による方法では、送風ノズルは、レーザ切断によって生成された要素を凹部の排出方向に偏向させる圧縮空気流を放出する。
【0073】
捕捉チャンバ内に含まれる送風ノズルは空気コンプレッサーに接続されている。
【0074】
特に、送風ノズル(6)は、400 L/分と2000L/分との間の流量を有する圧縮空気流(8)を放出する。
【0075】
本発明の1つの特定の態様によれば、送風ノズルによって放出される圧縮空気流は、凹部を潤滑するための潤滑組成物を含む。
【0076】
本発明による方法では、部材のレーザ切断によって生成される要素は、粒子、ダスト、ヒューム、スラグ、エーロゾルである。エーロゾルは、例えば、100nm~10μmで構成されるサイズを有する。ダストは、例えば、10μm~500μmで構成されるサイズを有する。スラグは、例えば、500μm~10mmで構成されるサイズを有する。
【0077】
1つの特定の態様によれば、切断される部材は放射性要素を含み、本発明による方法の実施によって生成される要素の全て又は一部が放射性要素である。
【0078】
この方法によれば、レーザ切断によって生成される要素は、凹部の排気部に向かって偏位され、次いで、排気部が連通する、すなわち直接的に又は間接的に接続される収集輸送システムに向かって方向付けられる。
【0079】
切断方法の実施中に生成された要素を収集し輸送するためのシステムは、抽出ダクト、おそらく1つ又はいくつかの空気式コンベヤに連結された抽出ファン、及び1つ又はいくつかの媒体、高効率及び/又は非常に高効率のフィルタを含む。空気コンベヤの存在はダクト内の粒子の再浮遊を可能にし、抽出ファンは収集及び輸送システム内、より詳細には前記システムの抽出ダクト内でレーザ切断によって生成された要素を含む空気流の高速度を保証することを可能にする。収集運搬システム内のレーザ切断によって生成される要素を含む空気流の速度は、17メートル/秒から35メートル/秒で構成されることが好ましい。この高速は、有利には、生成された全ての要素が抽出ダクトだけでなくフィルタを通過し、収集運搬システム内に蓄積しないことを確実にすることを可能にする。
【0080】
本発明による方法では、生成された要素は、中効率、高効率及び/又は非常に高効率のフィルタ、好ましくは高効率及び/又は非常に高効率のフィルタによって捕集され、前記フィルタは、捕集及び輸送システムの抽出ダクト内に配置される。本発明による方法の好ましい一態様によれば、スラグおよびダストのような、5μmより大きいサイズを有する生成された要素は、機械効果分離器のような中/高効率フィルタによって捕集され、前記分離器は、好ましくは、前記要素を捕集するための区画に連結され、ダストおよび小エーロゾルのような捕集されていない要素は、非常に高効率のフィルタによって捕集され、濾過される。
【0081】
第1の特定の実施形態によれば、本発明は第2の手段に関して、部材を貫通レーザ切断するための方法に関し、捕捉チャンバは、レーザビーム(2)が印加される部分と反対側の部材(4)の側に配置され、切断される部材に対して10mmと100mmとの間の距離に配置され、レーザビームは切断される部材を通過する。
【0082】
本実施の形態によれば、捕捉チャンバは、切断される部材の後面、すなわちレーザビームが照射される面と反対側の面の側に配置されている。より正確には、本実施の形態では、凹部、特に凹部の第1オリフィスが、切断される部材の後面に対向して配置されている。
【0083】
好ましくは、この実施形態において、捕捉チャンバ、特に凹部は、切断されるべき部材に対して10mm~50mmの距離に配置される。この距離により、捕捉チャンバを、切断の間に生成された最大量の要素を集めるように、できるだけ切断される部材の近くに配置することができる一方で、捕捉チャンバ、特に凹部が、切断される部材に近すぎることがなく、また、前記部材上のレーザビームの適用による切断される部材の熱によって捕捉チャンバ、特に凹部が損傷されることがない。
【0084】
この実施形態では、レーザ照射ヘッドは、好ましくは、レーザ照射ヘッドの周囲に、より詳細にはレーザビームを放射する光源とレーザ照射ヘッドの光学モジュールとの周囲に配置された送風手段、送風ノズルを備える。本実施形態では、送風手段は、当該部材に前記ビームが衝突する点の方向に、すなわちレーザビームと同じ方向の圧縮気流を放出する。
【0085】
本実施形態によると、本方法で実装される捕捉チャンバの凹部は、以下を備える:
- 部材の入口に配置された第1のオリフィスであって、レーザビーム及びレーザ照射ヘッドによって放射された排出気流を通過させることができる第1のオリフィス、
-第1のオリフィスと整列された第2のオリフィスであって、レーザビームを通過させることができる第2のオリフィス、
-排気部に対応する第3のオリフィスであって、切断の際に生成される要素を輸送することができる収集及び輸送システムと連絡する第3のオリフィス、
-送風ノズルと連絡する第4のオリフィスであって、第3のオリフィスの方向に空気流を放射することができ、前記第3及び第4のオリフィスは、凹部の反対側に配置される、第4のオリフィス。
【0086】
特に本実施形態によれば、送風ノズル(6)によって放射される圧縮空気流(8)は、レーザ照射ヘッド(1)によって放射されるレーザビーム(2)によって形成される軸に対して45度から90度の間、好ましくは70の角度をなす。
【0087】
さらに詳細には、送風ノズルによって放出される圧縮空気流は、部材の排気部に対して0度から90度の間で構成される角度を形成する。
【0088】
第2の特定の実施形態によれば、本発明は、部材を非貫通レーザ切断するための本発明の第2の手段に係る方法に関し、捕捉チャンバは、レーザビーム(2)が印加される部材(4)の側に対応する側に配置される。この実施形態によれば、レーザビームは、その部材を通過しない。
【0089】
この実施形態では、レーザ照射ヘッドは、照射ヘッドに保持されたモジュール上に配置された送風手段を備え、前記モジュールは、照射ヘッドの一部を形成する。この送風手段は、レーザビームの切断する部位への衝突点の方向に、排気気流と呼ばれる圧縮空気流を放出する。好ましくは、レーザ照射ヘッドにより構成される送風手段は、エアコンプレッサに接続されている可能性のある送風ノズルである。送風手段によって放出される排出気流によって、レーザ切断中に生成された要素を、レーザビームによって形成された軸に沿って、部材の排気方向に偏向させることができる。
【0090】
この実施形態では、捕捉チャンバは、レーザ照射ヘッドの高さで、特に前記ヘッドの周囲で閉じたアセンブリを形成し、該アセンブリは切断される部材の高さで開いている。好ましくは、この閉鎖アセンブリは、照射ヘッドに保持されたモジュールを備え、そのモジュールの上には、レーザ照射ヘッドによって構成される送風手段と、捕捉チャンバによって構成される送風ノズルが配置される。
【0091】
特に本実施形態によれば、送風ノズル(6)によって放射される圧縮空気流(8)は、レーザ照射ヘッド(1)によって放射されるレーザビーム(2)によって形成される軸に対して70度から135度の間、好ましくは120度の角度を形成する。
特に本実施の形態によれば、凹部(5)の排気部(7)は、切削される部材(4)に対して30~70度で構成される角度をなしている。
【0092】
この実施形態の好ましい一態様によれば、実施される捕捉チャンバの凹部は、レーザ照射ヘッドに直接接続された排気部を備え、送風ノズルは、レーザ照射ヘッドに保持されたモジュールを介して前記ヘッドに接続され、凹部の排気部の方向に空気の流れを放出する。
【0093】
この特定の実施形態によれば、捕捉チャンバは、レーザの照射ヘッドと切断される部材との間の距離によって決定される、切断される部材からの距離に配置される。凹部の排気部と送風ノズルは、切断される部材から10~40mmの距離にあって、好ましくは該部材から約20mmの距離にあることが好ましい。
【国際調査報告】