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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】スリーブ付き永久磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20230623BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022567034
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021030276
(87)【国際公開番号】W WO2021225902
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/019,848
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルセン,レイフ エリック
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラスカリス,コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】ゲー,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,イーサン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェガ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペレレイ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】パパニコラオウ,ヴァシレイオス
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP18
(57)【要約】
本開示は、電動モータに関する。この電動モータアセンブリは、シャフトに同軸に取り付けられたロータを含むことができる。このロータは、バランスリングに取り付けられた中心積層スタックを含むことができる。中心積層スタックは、複数の磁石に取り付けられたポールピースを保持する外周に沿って、スロットを有することができる。各磁石は、ポールピースと中心積層スタックとの間に配置することができる。各磁石は、ロータの金属体によって完全に囲まれていなくてもよい。記載されたロータの構成要素を、ワインディング繊維スリーブ内に包み込むことができる。ロータは、ステータ内に回転可能に取り付けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータであって、
磁場を生成し、ロータを中央開口部に受け入れるように構成されたステータと、
前記中央開口部内に嵌合するように寸法調整されたロータであって、前記ロータは、複数の磁石を備え、前記ロータは、その外周においてワインディング繊維スリーブで被覆されており、前記磁石が前記ロータによって完全に囲まれていない、ロータと、を備える、電動モータ。
【請求項2】
前記ロータが、第1の端部及び第2の端部を有して中央に位置するシャフトを備え、前記シャフトの第1の端部が、半径方向に突出するディスクを備える、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記ディスクの円周部が、複数の平坦な縁部を介して連続する、請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記シャフトの第1の端部に隣接するバランスリングと、前記バランスリング内の複数の位置決めダボとを更に備える、請求項2に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記位置決めダボが、前記バランスリングと同心の円形パターンで埋め込まれている、請求項4に記載の電動モータ。
【請求項6】
前記複数の磁石は、各ポールピースが少なくとも2つの磁石と結合されるように、複数のポールピースに結合される、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項7】
前記複数の磁石が前記ポールピースの内縁と中心積層スタックの外縁との間に配向されるように、前記ポールピースのそれぞれが前記中心積層スタック内の複数のスロットと噛み合う、請求項6に記載の電動モータ。
【請求項8】
各ポールピースの縁部上の固定用スロットを介して、前記ロータを貫通する複数の位置決めダボを更に備える、請求項7に記載の電動モータ。
【請求項9】
前記ワインディング繊維スリーブが、ワインディング炭素繊維スリーブを含む、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項10】
前記複数の磁石の各々の端部と、前記ワインディング繊維スリーブとの間に空間がある、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項11】
電動モータ用のロータを組み立てる方法であって、
ロータ固定具の外周のスロットに磁性ピースを挿入するステップと、
位置決めダボを用いて、前記ロータ固定具に磁性ピースを配置するステップと、
繊維ワインディング装置上で非金属繊維に張力をかけるステップと、
前記磁性ピースを前記ロータ固定具上の所定の位置に保持するために、前記非金属繊維を前記ロータの周りに張力をかけて巻き付けるステップと、を含む、方法。
【請求項12】
前記非金属繊維に張力をかけるために、前記ロータ固定具の一端にあるディスクの円周に沿った複数の平坦な縁部に、繊維ワインディング装置を固定するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
位置決めダボを用いて前記磁性ピースを位置決めするステップが、前記磁性ピースを前記ロータ固定具の表面に対して同一面に固定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
電動モータ用のロータを組み立てる方法であって、
積層スタックの外周のスロットに磁性ピースを挿入するステップと、
前記磁性ピースを前記スロット内の所定の位置に保持するために、非金属繊維を前記ロータの周りに張力をかけて巻き付けるステップを含む、方法。
【請求項15】
前記磁性ピースをロータ固定具の位置決めダボと噛み合わせるステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記磁性ピースを前記積層スタックに固定するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記非金属繊維を巻き付けるために、
ロータ固定具の一端のディスクの円周に沿った複数の平坦な縁部に、繊維ワインディング装置を固定するステップと、
前記繊維ワインディング装置上で前記非金属繊維に張力をかけるステップと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動モータに関し、より詳細には、電動モータにおけるロータの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
低燃費、低排出又はゼロ排出の、オンロード車両及びオフロード車両を設計し構築する傾向は、近年劇的に増加しており、ハイブリッド自動車及び全電気自動車の開発が非常に重要視されている。そのため、ひいては、推進の単独動力源(例えば、全電気自動車)として、又は複合推進システム(例えば、ハイブリッド自動車又はデュアル電気モータ自動車)における推進の二次的動力源として、電動モータに重点が置かれるようになっている。そのような用途における電動モータでは、AC又はDC永久磁石モータ設計、又はAC誘導モータ設計のいずれかを利用することができる。電動モータの種類にかかわらず、モータは一般に、許容可能なモータの寸法及び重量で、特定用途向けに、所望の効率、トルク密度、又は高速出力を達成するように設計される。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、電動モータに関する。電動モータアセンブリは、シャフトに同軸に取り付けられたロータを含む。一実施形態では、このロータは、バランスリングに取り付けられた中心積層スタックを含むことができる。中心積層スタックは、その外周に沿って、複数の磁石と結合されたポールピース(磁極片)を保持する、スロットを有することができる。各磁石は、ポールピースと中心積層スタックとの間に配置することができる。一実施形態では、ポールピースは、固定用スロットを更に備え、バランスリングの表面から突出する複数の埋め込まれた位置決めダボが、スリーブワインディング(winding、巻付け)プロセス中にポールピースを固定できるようすることができる。一実施形態では、記載されたロータの構成要素は、ロータの周囲で適所にポールピースを保持する、ワインディング繊維スリーブ(被覆材)内に包み込まれる。ロータは、ステータ内に回転可能に取り付けられて、永久磁石モータを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の特定の実施形態による、電動モータの例示的な軸方向部分断面図である。
【0005】
図2】本開示の特定の実施形態による、スリーブ付きロータの斜視図である。
【0006】
図3】本開示の特定の実施形態による、ロータスリーブ内に収容された、ロータの構成要素の斜視図である。
【0007】
図4】本開示の特定の実施形態による、スリーブ付きロータの、例示的な軸方向の図である。
【0008】
図5A】本開示の特定の実施形態による、ロータの内部構成要素の分解図である。
【0009】
図5B】本開示の特定の実施形態による、モータシャフト上の、バランスリング及び積層スタックアセンブリの斜視図である。
【0010】
図6】本開示の特定の実施形態による、ロータの横方向断面図である。
【0011】
図7】本開示の特定の実施形態による、従来の永久磁石モータ、及び炭素スリーブを有する永久磁石モータの両方について、トルクに対してモータ速度を比較する、モータ性能グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
各実施形態は、その外周に配置された磁性ピースを有し、その外周にワインディング(巻付け)繊維スリーブを使用して、磁性ピースを適所に保持するロータを備えた、永久磁石モータに関する。例えば、ワインディング繊維スリーブは、炭素繊維又は他の繊維材料で作製することができる。一実施形態では、金属部品を使用して各磁性ピースをロータ内に保持するわけではなく、各磁石はロータ内に完全には囲まれない。ロータ内の磁性ピースに作用する、ステータによって生成される磁界は、磁性ピースが金属に埋め込まれた従来のロータと比較して、より強くなり得る。これは、ワインディング繊維スリーブにより、金属構成要素がなくなることで、ステータによって生成される磁界との干渉が、より低いレベルになり得るためである。一実施形態では、磁性ピースとロータの中心部分との間に配置される金属部品は、限定的であるか、又は存在しない。したがって、本明細書に開示される永久磁石モータでは、磁束漏洩が低減されるため、従来の設計よりも改善された性能を提供することができる。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態による、永久磁石モータ100の軸方向断面図を示す。図1に示された図は、説明のために簡略化されており、この図では巻線及び他の構成要素が省略されている。図示のように、ロータ101はステータ103によって囲まれている。各ステータ歯109の周囲には、複数の巻線(図示せず)が配置される。様々な実施形態において、この巻線は銅であるが、他の材料も本発明の範囲内である。巻線は、複数の極、例えば3相、4極設計又は6極設計を規定する。
【0014】
図示のように、ロータ101はステータ103によって取り囲まれており、両者はエアギャップ105によって分離されている。シャフト107がロータ101に結合されており、このシャフト107は、モータ100を電気自動車内の車軸、ギアボックスなどの様々な装置及び機構に結合するための手段を提供する。ステータ103とロータ101との間のエアギャップ105は、ステータ103からロータ101への、所望のレベルの磁気インダクタンスを得るように、寸法調整される。エアギャップ105は、エアギャップ105に隣接する磁束の、飽和レベル及び高調波レベルにも影響を及ぼし得る。一般に、エアギャップ105が小さいほど、ステータ103とロータ101との間の磁束が強くなる。
【0015】
図示のように、ロータ101の周囲には、一連の磁石111A及び111Bが「V」字形構成で配置される。磁石111A及び111Bの構成は、シャフト107に向かって配置された頂端部117、及びステータ103に向けた2つのアーム部119A及び119Bを有するものである。各アーム部119A及び119Bの端部は、各磁石のアームとエアギャップ105との間に空間を提供する、開口部120A及び120Bに隣接する。このエアポケット又は空間により、永久磁石の磁束損失が最小化された、ロータからステータへの磁束がもたらされる。磁石111A及び111Bは、ロータ101の中実金属体には埋め込まれない。この図は、磁石111A及び111Bがどのように配向され得るかについての一例にすぎず、他の実施形態では、磁石111A及び111Bは、異なる配置がなされ得ることを理解されたい。ロータ101がステータ103内で回転するときに、磁石111A及び111Bを適所に保持するためにロータを取り囲む、ワインディング繊維スリーブ115が示されている。各磁石がロータによって完全に囲まれていない他の磁石構成でも、永久磁石の磁束の損失を低減し得ることを理解されたい。
【0016】
図2は、本発明によるロータ101の組立状態を示す。ロータ101は、従来の鉄ブリッジとは対照的に、ワインディング繊維スリーブ115内に包み込まれる。シャフト107はロータ101に結合され、電気自動車内の車軸、ギアボックスなどの様々な装置及び機構に、モータを結合するための手段を提供する。いくつかの実施形態では、このワインディング繊維スリーブ115は、プリテンションをかけながらロータに巻き付けられる、炭素繊維で構成される。一実施形態では、このスリーブは0.1mm~2mmの厚さを有する。他の実施形態では、このスリーブは、0.3mm、0.4mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、又は5mmの厚さを有する。ワインディング繊維ロータスリーブを製造する既存の方法とは異なり、本発明のワインディング繊維スリーブの製造方法は、ワインディング(巻付け)プロセス中に繊維に比較的高い張力をかけることによって、スリーブの厚さを最小化しようとするものである。スリーブの厚さを最小化するために、プリテンションをかけながら繊維をロータに巻き付けることができる。いくつかの実施形態では、繊維への損傷を最小限に抑えつつ、張力下でロータの周囲に繊維を巻き付けることができるゴデットロールを有する、固有のゴデット装置を使用して、繊維を巻き付けることができる。
【0017】
図3は、本開示による(スリーブが取り外された)ロータ101の、完全に組み立てられた内部構成要素の例示的な実施形態を示す。ロータ101は、シャフト107を取り囲み、下端のバランスリング313、中心積層スタック305、ポールピース307、並びに磁石111A及び111Bを備える。シャフト107は、シャフト301の下端から突出する、同軸ディスク315を有する。同軸ディスク315は、その円周に沿って、1つ又はそれ以上の平坦部分(「フラット部」)303を有する。フラット部303は、ロータの製造中、具体的には、繊維ワインディング(巻付け)装置がシャフトを把持してロータを回転させるスリーブワインディングプロセス中に、繊維ワインディング装置の把持領域として機能する。いくつかの実施形態では、このディスクはフラット部303を有さない場合があり、代わりに繊維ワインディング装置に適した他の把持機構を有することができる。いくつかの実施形態では、このディスクは、フラット部又は任意の他の把持機構を有さない場合があり、結果として、ディスクは途切れのない外周を有する。この図では、ワインディング繊維スリーブがロータ101を取り囲むことは示されていない。
【0018】
引き続き図3を参照すると、中心積層スタック305はバランスリング313に取り付けられている。中心積層スタック305は、中心積層スタック305の全長にわたって延びるその外側縁部に沿って、複数のスロット317を有する。各ポールピース307には、複数の磁石111が結合されている。組立て時に、ポールピース307及び磁石311は、ポールピース307と中心積層スタック305との間で磁石111が押圧されるように、中心積層スタック305のスロット317に嵌合する。このことは、以下の図5を参照することで、より完全に分かる。いくつかの実施形態では、ポールピース307及び中心積層スタック305は、従来のロータ設計のように、鋼製ブリッジ又は他の金属部品によって接続されていないことに留意されたい。ポールピース307と中心積層スタック305との間のすべての金属接続部を除去することで、接続部を介した磁束漏洩が減少する。
【0019】
いくつかの実施形態では、各ポールピース307は、バランスリング内の位置決めダボ(図示せず)と噛み合う(インターロックする)ように構成された、固定用スロット309を有する。固定用スロット309及び位置決めダボは、ロータの製造中に、固定機構として機能することができる。いくつかの実施形態では、磁石111、ポールピース307、及び中心積層スタック305は、組立て中に互いに固定される。そのような実施形態では、ポールピース307は、固定用スロット309を有さなくてもよい。スリーブワインディングプロセス中にロータ構成要素が回転する高速下で、この固定機構は、製造中にポールピース307を中心積層スタック305に対して近接したままにすることができる。
【0020】
一実施形態では、スリーブワインディングプロセスは、ゴデットロールなどの繊維引張装置に接続された回転機構に、図3のロータを配置することから始まる。例えば、この引張装置は、エポキシ樹脂の槽を通過し、次いで、一方向に回転するにつれて図3のロータ機構の外周に巻き付けられる炭素繊維の、スプールを含むことができる。別の実施例では、この引張装置は、供給プロセス中にスプール上に樹脂を塗布することができる。このシステムでは、ロータの長さにわたって所定のパターンで、かつ所定の数の繊維被覆でスリーブを巻き付けて、スリーブの特定の厚さを作り出すことが可能となる。
【0021】
ロータを取り囲むスリーブは、必ずしも炭素繊維製である必要はないことを理解されたい。他の同様の材料もロータの周りに巻き付けることができ、ロータを取り囲み、ポールピース及び磁石の位置を維持するために使用することができる。例えば、セラミック、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び同様のプラスチックなど、他の種類の繊維から作製された他の複合材料を樹脂に埋め込んで、ロータの周りに張力をかけたスリーブを形成するために使用することのできる、耐久性材料を形成することができる。更なる実施例では、プラスチックに埋め込まれた炭素繊維などの材料の組み合わせを使用して、スリーブを作製することが出来る。
【0022】
図4は、本開示による完全に組み立てられたロータの、軸方向断面図である。このアセンブリは、ロータの中心を貫通するシャフト107によって示されるように、シャフト107と同軸である。軸方向から見て、磁石111A及び111Bは、ポールピース307及び中心積層スタック305の両方に対し、同一面に押し付けられていることが分かる。いくつかの実施形態では、ポールピースの隣接する面に配置された磁石(例えば、「V」字形構成を形成する一対の磁石)は、エアギャップによって互いに分離されている。各ポールピース307は、ポールピース307がワインディングプロセス中に固定されるように位置決めダボと噛み合う、固定用スロット309を備えることができる。ワインディング繊維スリーブ115は、このアセンブリ全体を包み込むことができる。もちろん、この位置決めダボは必須ではなく、モータの実施形態が、位置決めダボ又はロッドを含まなくてもよいことを理解されたい。
【0023】
図5Aは、本開示によるロータ101の部分的アセンブリを示す。この部分的アセンブリでは、中心積層スタック305及びバランスリング313のみが、シャフト107に取り付けられている。図示のように、位置決めダボ507がバランスリング313に埋め込まれ、バランスリング313の表面を越えて突出する。一連の位置決めダボ507は、中心積層スタック305に接触するバランスリング313の表面から、わずかな距離だけ突出することができる。
【0024】
図5Bは、本開示によるロータの内部アセンブリの分解図を示す。図5Bは、ポールピース307、並びに磁石111A及び111Bがどのように複数のスロット317に嵌合し、互いに、及び中心積層スタック305と結合することができるかを示す。図示のように、いくつかの実施形態では、磁石111A及び111Bは、図5Bに示すようにポールピース307に固定されるが、中心積層スタック305には固定されない。一実施形態では、各ポールピース307の長さは、中心積層スタック305の長さと同様である。各ポールピース307は、同様の長さである2つの磁石、111A及び111Bと結合することができる。他の実施形態では、磁石111A及び111Bをより短くすることができ、それらが結合されるポールピース307の長さを占有するために、より多くの磁石111A及び111Bを使用することができる。更に他の実施形態では、磁石111A及び111Bは、図5Bに示す長方形の角柱とは異なる形状であってもよい。
【0025】
引き続き図5Bを参照すると、各ポールピース307は、ポールピース307をバランスリング313に固定するための、固定用スロット309を備えることができる。一実施形態では、固定用スロット309は、ポールピース307の全長にわたって貫通する。他の実施形態では、固定用スロット309は、ポールピース307の途中で終了してもよい。ロータが中心積層スタック305の各端部にある2つのバランスリングを含む実施形態では、ポールピース307は、ポールピース307の長さにわたって延びる1つの固定用スロット309を有することができる。あるいは、ポールピース307は、ポールピース307の各端部に1つの固定用スロット309を有することができ、各固定用スロット309はポールピース307の長さの内で終了する。本明細書で説明するように、いくつかの実施形態では、ポールピース307、磁石111A及び111B、並びに中心積層スタック305を、製造中に互いに固定することができ、その結果、このアセンブリは固定用スロット309又は位置決めダボ507を有さない。
【0026】
図6は、本開示によるロータの、横方向断面の片側である。シャフト107から始まり外側に放射状に広がる構成要素に対応して、図6は、中心積層スタック305、ポールピース307に結合された磁石111A、及びポールピース307の固定用スロット309と噛み合う位置決めダボ507を示す。このアセンブリ全体がバランスリング313に取り付けられる。この図は、如何にして位置決めダボ507をバランスリング313に埋め込み、ロータアセンブリと接触するバランスリング313の表面からのみ突出するか示している。
【0027】
図7は、開示されたスリーブ付きモータのトルク発生を、従来の永久磁石モータと比較する図である。実線701は、開示されたスリーブ付きモータによって様々な速度において生成された、トルク量を記録したものである。点線703は、同じ速度において、従来の永久磁石モータによって生成されたトルクを表す。図示のように、スリーブ付きモータでは、同じ速度において従来のモータよりも多くのトルクを生成することができる。スリーブ付きモータでは、リブ及びブリッジを排除することで、より大きな基本波磁束が可能となるため、より高い最大トルクを有することができる。
【0028】
スリーブ付きモータはまた、同じ速度において、従来のモータよりも多くの出力を生成することができる。スロットの高調波磁束に対する基本波磁束の比率がより高いことで、高速において、並びに低トルク時及び高トルク時の両方において、より高いモータ効率がもたらされる。更に、炭素被覆モータ設計では、磁束漏洩を低減又は排除することがでるため、インバータ電流をより良好に利用することが可能となり、最大25%以上の最大出力増加がもたらされる。高速において、スリーブ付きモータは、永久磁石の使用量を増加させることなく、従来のモータと比較してより多くの出力を生成することができる。
【0029】
前述の開示は、開示された厳密な形態、又は特定の使用分野に、本開示を限定することを意図していない。したがって、本明細書に明示的に記載されている、又は暗示されているかにかかわらず、本開示に対する様々な代替の実施形態及び/又は修正が、本開示に照らして可能であると考えられる。このように本開示の実施形態を説明してきたが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更を行うことができることを、認識するであろう。したがって、本開示は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0030】
上記の明細書では、特定の実施形態を参照して、本開示の説明を行ってきた。しかしながら、当業者が理解するように、本明細書に開示される様々な実施形態は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、修正する、又は様々な他の方法で実施することができる。したがって、この説明は例示と見なされるべきであり、開示されたモータアセンブリの様々な実施形態を作製及び使用する方法を、当業者に教示する目的のものである。本明細書に示され説明された開示の形態は、代表的な実施形態として解釈されるべきであることを、理解されたい。同等の要素、材料、プロセス又はステップを、本明細書に代表的に示され説明されたものと置き換えることができる。更に、本開示の特定の特徴は、本開示のこの説明の利点を知った上で当業者に明らかになるように、他の特徴の使用とは独立して利用することができる。本開示を説明かつ特許請求するために使用される、「含む(including)」、「備える(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「からなる(consisting of)」、「有する(have)」、「である(is)」などの表現は、非排他的な方法で解釈されること、すなわち、明示的に説明されていない項目、構成要素又は要素も存在し得ることを意図している。単数形への言及は、複数形にも関連すると解釈されるべきである。
【0031】
更に、本明細書に開示された様々な実施形態は、例示的かつ説明的な意味で解釈されるべきであり、決して本開示を限定するものと解釈されるべきではない。すべての接合に関する言及(例えば、「取り付けられた(attached)」、「添付された(affixed)」、「結合された(coupled)」、「接続された(connected)」、など)は、読者の本開示の理解を助けるためにのみ使用され、特に本明細書に開示されるシステム及び/又は方法の位置、向き、又は使用に関して、限定を生じさせるものではない。したがって、接合に関する言及がある場合、それらは広義に解釈されるべきである。更に、そのような接合に関する言及は、2つの要素が互いに直接的に接続されていることを、必ずしも意味しない。
【0032】
更に、「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」、「一次の(primary)」、「二次の(secondary)」、「主要な(main)」、又は任意の他の通常用語及び/又は数値用語など、これらに限定されないすべての数値用語もまた、本開示の様々な要素、実施形態、変形及び/又は修正に関して読者の理解を助けるための識別子としてのみ解釈されるべきであり、特に、任意の要素、実施形態、変形及び/又は修正に対する、又はそれを超える、別の要素、実施形態、変形及び/又は修正の順序又は優先順位に関して、いかなる制限も生じさせない。
【0033】
図面/図に示された要素のうちの、1つ又はそれ以上の要素は、特定の用途に応じて有用であるように、より分離された、又はより統合された方法で実装することもでき、あるいは、特定の場合には、動作不能として除去又は放棄さえし得ることも理解されよう。更に、図面/図中の任意のハッチングで記す部分は、特に明記しない限り、例示としてのみ考慮されるべきであり、限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータであって、
磁場を生成し、ロータを中央開口部に受け入れるように構成されたステータと、
前記中央開口部内に嵌合するように寸法調整されたロータであって、前記ロータは
複数のポールピース、
複数のスロットを備える中心積層スタック、および、
複数の磁石を備える、ロータと、を備え、
前記ロータは、繊維材料の複数の張力がかかった層のワインディング体の中で、その外周において被覆されており
前記複数の磁石が前記ロータによって完全に囲まれていなく、
前記複数の磁石及び前記複数のポールピースが、前記複数のスロット内に嵌合されている、電動モータ。
【請求項2】
前記ロータが、第1の端部及び第2の端部を有して中央に位置するシャフトを備え、前記シャフトの第1の端部が、半径方向に突出するディスクを備える、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記ディスクの円周部が、複数の平坦な縁部を介して連続する、請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記シャフトの第1の端部に隣接するバランスリングと、前記バランスリング内の複数の位置決めダボとを更に備える、請求項2に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記位置決めダボが、前記バランスリングと同心の円形パターンで埋め込まれている、請求項4に記載の電動モータ。
【請求項6】
前記複数の磁石は、各ポールピースが少なくとも2つの磁石と結合されるように、前記複数のポールピースに結合される、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項7】
前記複数の磁石が前記ポールピースの内縁と中心積層スタックの外縁との間に配向されるように、前記ポールピースのそれぞれが前記中心積層スタック内の前記複数のスロットと噛み合う、請求項6に記載の電動モータ。
【請求項8】
各ポールピースの縁部上の固定用スロットを介して、前記ロータを貫通する複数の位置決めダボを更に備える、請求項7に記載の電動モータ。
【請求項9】
前記繊維材料炭素繊維材料を含む、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項10】
前記複数の磁石の各々の端部と、前記繊維材料の複数の張力がかかった層のワインディング体との間に空間がある、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項11】
電動モータ用のロータを組み立てる方法であって、
ロータ外周のスロットに複数の磁石を挿入するステップと、
位置決めダボを用いて、前記ロータに複数の磁石を配置するステップと、
繊維ワインディング装置上で非金属繊維に張力をかけるステップと、
前記複数の磁石を前記ロータの所定の位置に保持するために、前記非金属繊維を前記ロータの周りに張力をかけて巻き付けるステップと、を含む、方法。
【請求項12】
前記非金属繊維に張力をかけるために、前記ロータ一端にあるディスクの円周に沿った複数の平坦な縁部に、繊維ワインディング装置を固定するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
位置決めダボを用いて前記複数の磁石を位置決めするステップが、前記複数の磁石を前記ロータ表面に対して同一面に固定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
電動モータ用のロータを組み立てる方法であって、
積層スタックの外周のスロットに複数の磁石を挿入するステップと、
前記複数の磁石を前記スロット内の所定の位置に保持するために、非金属繊維を前記ロータの周りに張力をかけて巻き付けるステップを含む、方法。
【請求項15】
前記複数の磁石を複数のポールピースに結合するステップと、
前記複数の磁石をロータ位置決めダボと噛み合わせるステップと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の磁石を前記積層スタックに固定するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記非金属繊維を巻き付けるために、
ロータ一端のディスクの円周に沿った複数の平坦な縁部に、繊維ワインディング装置を固定するステップと、
前記繊維ワインディング装置上で前記非金属繊維に張力をかけるステップと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】