(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】小ペプチド又はタンパク質によるTREML1/MD2相互作用の選択的ターゲティング及びワクチンアジュバントのためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230623BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230623BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230623BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230623BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230623BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230623BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/705 ZNA
C07K14/47
A61K45/00
A61K39/39
A61K39/00 G
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569225
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021032620
(87)【国際公開番号】W WO2021231971
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520154058
【氏名又は名称】アセンド バイオテクノロジー インク
(71)【出願人】
【識別番号】522442504
【氏名又は名称】フランク・ウェン-チ・リー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ウェン-チ・リー
(72)【発明者】
【氏名】イェン-タ・ル
(72)【発明者】
【氏名】チア-ミン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ピン-イェン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ-ファン・ツァイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA99
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF13
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
免疫応答を強化するための医薬組成物は、TREM様転写物-1(TREML1)細胞外ドメイン(ECD)又はストークポリペプチドを含む。TREML1 ECD又はストークポリペプチドは、ヒト又はマウスTREML1に由来する。医薬組成物は更に、ワクチンとしての抗原を含み、TREML1 ECD又はストークポリペプチドは、アジュバント又は免疫ブースターとして機能する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答の強化における使用のための医薬組成物であって、TREM様転写物-1(TREML1)細胞外ドメイン(ECD)又はTREML1ストークポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記TREML1 ECD又はTREML1ストークポリペプチドが、ヒト又はマウスTREML1に由来する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記TREML1 ECD又はTREML1ストークポリペプチドが配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
TLRアゴニストを更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記TLRアゴニストが、リポ多糖、熱ショックタンパク質、フィブリノーゲン、ヘパラン硫酸断片、ヒアルロン酸断片、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、4-アミノ-2-(エトキシメチル)-α,α-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール(R848)、又はオピオイド薬物である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、抗原を更に含み、前記医薬組成物が、ワクチンとして使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗原が、がんのマーカーである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記がんが、結腸直腸がん、乳がん、肺がん、黒色腫、肝細胞腫、頭頸部がん、肺の扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、胃癌、子宮頸がん、食道癌、膀胱がん、腎臓がん、脳がん、骨がん、膵がん、皮膚がん、皮膚若しくは眼内悪性黒色腫、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、ファロピウス管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性若しくは急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平細胞がん、髄芽腫石灰化上皮腫、子宮内膜がん、多発性骨髄腫、又はT細胞性リンパ腫からなる群から選択される1種である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
免疫応答を強化するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、TREM様転写物-1(TREML1;TLT-1)タンパク質及びペプチド断片に由来するポリペプチド断片並びにワクチンアジュバント又は免疫ブースター又はTLR(トール様受容体)アゴニストとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
TREML1は、ヒトの末梢血液中の血小板中に専ら見出される。血小板活性化によって、TREML1は、血小板の膜上に迅速に露出し、その後分解され、可溶性断片(sTREML1)の放出に至る。研究によって、敗血症のある患者は、健康な個体とは対照的に、血漿中の上昇したレベルの可溶性TREML1を有することが示された。敗血症で死亡した患者は、血漿中の持続された高いレベルの可溶性TREML1を有し、他方、敗血症を乗り切った患者は、血漿中の低下したレベルの可溶性TREML1を示した。他の疾患、例えば急性呼吸促迫症候群(ARDS)、急性冠不全症候群、及び冠動脈疾患において、高いレベルの可溶性TREML1血漿濃度はまた、負の転帰と関連することが示されている。したがって、血漿中の可溶性TREML1レベルをモニタリングすることは、重要な予後指標となり得る。本発明者らは、以前、可溶性TREML1が単球に直接結合し、免疫応答を調節することができることを見出した(WO2016197975A1)。これらの結果は、可溶性TREML1が炎症関連疾患において重要な役割を果たしていることを示唆した。
【0003】
MD2(LY-96、リンパ球抗原96)は、細胞表面上のトール様受容体4(TLR4)と会合しており、広範囲の内毒素リポ多糖(LPS)に対する応答性を付与し、したがって受容体とLPSシグナル伝達とを関連付ける。しかし、MD2及びTLR4が他の内在性タンパク質に結合してTLRシグナル伝達を可能にすることができるか否かは、不明確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D-W Yehら、「CpG-oligodeoxynucleotides developed for grouper toll-like receptor(TLR)21s effectively activate mouse and human TLR9s mediated immune responses,」、Sci Rep、2017年、7(1):17297
【非特許文献2】M.R.Hutchinsonら、「Opioid Activation of Toll-Like Receptor 4 Contributes to Drug Reinforcement,」、J.Neuorosci.、2012年、32(33):11187-11200
【非特許文献3】Hayden MS、West AP、Ghosh S(2006年10月)、「NF-κB and the immune response」、Oncogene.25(51):6758-80
【非特許文献4】J.Takedaら、「Anti-tumor immunity against CT26 colon tumor in mice immunized with plasmid DNA encoding beta-galactosidase fused to an envelope protein of endogenous retrovirus」、Cell Immunol.、(2000年)、204(1):11-18
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要
本発明の実施形態は、TREML1細胞外ドメイン(ECD)又はそのストーク(stalk)がTLR4/MD2複合体に結合することができ、TLR4シグナル伝達の調節をもたらすという予測されない発見に基づく。更に、TREML1 ECDはまた、TLR7/8/9アゴニストによって薬物適用される(medicated)細胞応答を増強することができる。TLR4/MD2複合体に結合するTREML1 ECD又はそのストークの結果、TREML1 ECD又はそのストークは、樹状細胞活性化及び成熟を誘発し得る。したがって、TREML1 ECD又はそのストークは、ワクチンアジュバント若しくは免疫ブースターとして、又はTLRアゴニストとして作用し得る。
【0007】
本発明の一態様は、免疫応答を強化する(boosting)ための医薬組成物に関する。本発明の一実施形態による医薬組成物は、TREM様転写物-1(TREML1)細胞外ドメイン(ECD)又はストークポリペプチドを含む。TREML1 ECD又はストークポリペプチドは、ヒト又はマウスTREML1に由来し得る。TREML1 ECD又はTREML1ストークポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によると、医薬組成物は更に、TLRアゴニストを含む。TLRアゴニストの例には、リポ多糖、熱ショックタンパク質、フィブリノーゲン、ヘパラン硫酸断片、ヒアルロン酸断片、CpG(CpG-ODNs(CpGオリゴデオキシヌクレオチド)、D-W Yehら、「CpG-oligodeoxynucleotides developed for grouper toll-like receptor(TLR)21s effectively activate mouse and human TLR9s mediated immune responses,」、Sci Rep、2017年、7(1):17297)、R848(4-アミノ-2-(エトキシメチル)-α,α-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール、ACS #144875-48-9)及び様々なオピオイド薬物(例えばモルヒネ、レミフェンタニル、M.R.Hutchinsonら、「Opioid Activation of Toll-Like Receptor 4 Contributes to Drug Reinforcement,」、J.Neuorosci.、2012年、32(33):11187-11200)が挙げられる。本発明のいくつかの実施形態によると、医薬組成物は更に、ワクチンとしての抗原を含んでもよく、TREML1 ECD又はストークポリペプチドは、アジュバント又は免疫ブースターとして機能する。抗原は、がんに対するマーカーでもよい。がんは、結腸直腸がん、乳がん、肺がん、黒色腫、肝細胞腫、頭頸部がん、肺の扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、胃癌、子宮頸がん、食道癌、膀胱がん、腎臓がん、脳がん、骨がん、膵がん、皮膚がん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、ファロピウス管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病を含む慢性若しくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平細胞がん、髄芽腫石灰化上皮腫、子宮内膜がん、多発性骨髄腫、又はT細胞性リンパ腫の場合がある。
【0009】
本発明の一態様は、免疫応答を強化するための方法に関する。本発明の一実施形態による方法は、上記の医薬組成物のいずれか1種を必要とする対象に投与することを含む。
【0010】
本発明の他の態様は、以下の記載及び添付した図面で明らかである。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、細胞外ドメイン(ECD)、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを例示するTREML1の概略図を示す。ECDは、TREML1の残基16から残基162までにわたり、膜貫通ドメインは、TREML1の残基163~183にわたる。ECDは、単一のIgVドメイン(残基16~121)及びストーク領域(残基122~162)を含む。TREML1の残基184~313にわたる細胞質ドメインは、免疫チロシン阻害モチーフ(ITIM;残基279~284)を含む。
【
図2】
図2は、様々な候補タンパク質へのTREML1 ECDの結合からの結果を示す。結果は、組換えTREML1 ECDが固相結合アッセイにおいて固定化されたMD2及びTLR4に結合することができることを示す。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、様々なタンパク質へのMD2結合の結果を示す。結果は、ヒト及びマウスMD2タンパク質が固相結合アッセイにおいて固定化されたTREML1ストーク及びmTREML1ストークにそれぞれ結合することができることを示す。
【
図4】
図4は、MD2及びCD14を発現するTHP1/XBlue/MD2/CD14に結合するTREML1 ECDと競合する種々の抗体の結果を示す。THP1は、トール様受容体を含む多くのパターン認識受容体を天然に発現するヒト単球に由来する。MD2及びCD14は共に、TLR4の共受容体であり、LPSで誘発される応答を媒介する。結果は、抗MD2抗体(18H10)及び抗TLR4抗体(HTA125)がTHP1/XBlue/MD2/CD14単球に結合するTREML1 ECDと競合し得ることを示す。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、TREML1 ECDがTHP1/XBlue/MD2/CD14単球活性化を誘発することができることを示す。
図5Aは、THP1/XBlue/MD2/CD14の活性化によるTREML1 ECDで誘発されたNF-κB分泌を示す。
図5Bは、THP1/XBlue/MD2/CD14の活性化によるTREML1 ECDで誘発されたTNF-α分泌を示す。
【
図6】
図6は、抗MD2抗体(18H10)及び抗TLR4抗体(HTA125)処理によって、低下したTNF-α分泌によって証明されるように、TREML1 ECDで誘発されたTHP1/XBlue/MD2/CD14単球活性化が低減することを示す。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、TREML1 ECDが細胞内TLR(すなわちTLR7、TLR8、及びTLR9)で誘発される細胞活性化を増強することができることを示す。
【
図8】
図8は、mTREML1 ECD及びmTREML1ストークペプチドが樹状細胞成熟を引き起こし得ることを示す。
【
図9】
図9Aは、がんワクチンのアジュバントとしてのTREML1ストークの効果を試験するための動物モデルにおける処置スケジュールを示す。
図9Bは、アジュバントとしてのmTREML1ストークが、がんワクチンの効能を増強することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明の実施形態は、免疫ブースター又はTLRアゴニストとしての使用のための、TREML1 ECD又はTREML1に由来するストークペプチドに関する。本発明の発明者らは、予期しないことに、TREML1 ECD又はそのストークがMD2に結合することができ、MD2は細胞表面上のトール様受容体4(TLR4)と会合し得ることを見出した。MD2は、TLR4と相互作用して、広範囲の刺激、例えば内毒素リポ多糖(LPS)に対する応答性を付与する。TLR4活性化によって、NF-κB及び炎症性サイトカイン(例えばTNF-α)産生を増大させる細胞内シグナル伝達が起こり、これが、自然免疫応答を活性化する原因となる。更に、TREML1 ECD又はそのストークはまた、TLR2、7、8又は9と相互作用することが見出される。TREML1 ECD又はそのストークとTLR2/7/8/9との間の相互作用の結果、樹状細胞(DC)活性化及び成熟、更に免疫応答を強化することがもたらされる。
【0013】
TREM様転写物-1(TREML1)は、TREMファミリーの一員である。
図1に示すように、TREML1は、細胞外ドメイン(ECD、残基16~162)、膜貫通ドメイン(TMD、残基163~183)、及び免疫チロシン阻害モチーフ(ITIM、残基279~284)を含む細胞質ドメイン(残基184~311)からなる単一の膜貫通タンパク質である。TREML1のECDは、単一のVセット免疫グロブリン(Ig)ドメイン(残基16~121)及びストーク領域(残基122~162)を含む。
【0014】
TREML1 ECDの可能性のある結合パートナーを特定するために、本発明者らは、固相結合アッセイを用いて、TREML1 ECDと候補タンパク質との間の相互作用を評価した。要するに、様々な候補タンパク質及びBSA(陰性の対照として)を、96ウェルプレート上に被覆し、様々な濃度でのTREML1 ECDを、ウェルに加えた。結合し、洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗TREML1抗体を、各ウェルに加えた。洗浄後、HRP基質、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を、加えた。反応後、450nmでの吸光度を測定して、TREML1結合を評価した。結果の例示的な組を、
図2に示し、組換えTREML1 ECDは、MD2及びTLR4に、濃度依存的に結合する。対照的に、TREML1 ECDは、CD14にもBSAにも結合しない。
【0015】
更に、MD2(LY96)は、TREML1ストークと、濃度依存的に結合する。対照的に、TLR4及びCD14は、TREML1ストークに結合しない(
図3A及び3B)。MD2と同様に、CD14はまた、細菌リポ多糖(LPS)の検出のための共受容体として作用する(トール様受容体TLR4と共に)。これらの結果は、TREML1ストークがCD14/MD2/TLR4受容体複合体中のMD2と直接結合することを示す。
【0016】
固相結合アッセイに加えて、TREML1 ECD結合を、MD2及びCD14を発現するTHP1/XBlue/MD2/CD14細胞(InvivoGen社、San Diego、USA)を用いて更に評価した。これらの細胞(InvivoGen社、San Diego、USA)は、ヒト単球THP1細胞株に由来し、NF-κB及びAP1誘発性の分泌された胚アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を発現する。
【0017】
図4に示すように、TREML1 ECDは、THP1/XBlue/MD2/CD14細胞に結合することができる。結合試験をまた、THP1/XBlue/MD2/CD14細胞に結合するTREML1と競合するための抗MD2抗体(18H10)及び抗TLR4抗体(HTA125)を用いて確認した。結合競合の結果を、
図4に示す。抗MD2抗体及び抗TLR4抗体は、THP1/XBlue/MD2/CD14細胞に結合するTREML1と競合することができ、抗MD2と抗TLR4抗体との組み合わせによって、相加効果が生じる。
【0018】
THP1/XBlue/MD2/CD14細胞によって発現されるTLR4/MD2へのTREML1 ECDによる結合は、TREML1 ECDが単球を活性化できるはずであることを示唆する。実際、
図5A及び5Bに示すように、TREML1 ECDは、NF-κB(
図5A)及びTNF-α(
図5B)分泌の誘発された活性化によって証明されるように、THP1/XBlue/MD2/CD14単球活性化を誘発する。
【0019】
TREML1によるTHP1/XBlue/MD2/CD14単球活性化は、抗MD2抗体(18H10)及び抗TLR4抗体(HTA125)がTREML1で誘発されたTNF-α分泌を阻害する能力によって証明されるように、MD2及びTLR4によって媒介される。
図6は、TREML1で誘発されたTNF-α分泌が抗MD2抗体(18H10)、抗TLR4抗体(HTA125)又はその組み合わせによって特異的に阻害され、他方、対照のIgG(MOPC137及び/又はMPC-11)はこの効果を有しないことを示す。
【0020】
TLRファミリーは、病原体認識及び自然免疫性の活性化において重要な役割を果たす。それらは、感染病原体上で発現し、有効な免疫の発現に必要なサイトカインの産生を媒介する病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する。様々なTLRは、発現の種々のパターンを示し、種々の機能を媒介し得る。
【0021】
TLR4を通じて機能を発揮することに加えて、本発明者らはまた、TREML1 ECDが細胞内TLR(すなわちTLR7、TLR8、及びTLR9)で誘発された細胞活性化を増強し得ることを見出した。例えば、
図7Aは、R848のアゴニスト(TLR7及びTLR8アゴニスト)がTNF-α分泌を誘発し得ることを示す。TLR7/8によって媒介されるR848で誘発されたTNF-α分泌は、TREML1 ECDの存在下で増強される。同様の結果は、TLR9について観察された。
図7Bに示すように、ODN 2395(TLR9アゴニスト)で誘発されたTNF-α分泌は、用量依存的にTREML1 ECDの存在下で増強される。これらの結果は、TREML1 ECD又はストークペプチドをTLR受容体のアゴニストとして用いることができることを示す。これらの受容体のアゴニストとして、TREML1 ECD又はストークペプチドは、自然免疫応答を増強することができる。
【0022】
樹状細胞(DC)が適応免疫を調節する能力は、その成熟状態及び寿命によって制御される。TNFは、DCについての周知の成熟及び生存因子である。本発明者らは、TREML1がDC成熟についての更により有効な因子であることを見出した。
図8に示すように、マウスTREML1(mTREML1)ECD及びmTREML1ストークペプチドは、DC成熟マーカーCD40、CD86、CD80、及びMHC IIの増大したレベルによって証明されるように、樹状細胞成熟を引き起こし得る。TREML1 ECD又はそのストークペプチドの効果は、TNF-αのものよりも有意に強力である。これらの結果は、TREML1 ECD又はストークペプチドがまた、自然免疫応答を増強することに加えて適応免疫応答を増強し得ることを示す。
【0023】
上記の結果は、総合して、TREML1 ECD又はTREML1ストークがMD2/TLR4と相互作用し、TLR7、TLR8、及びTLR9活性化を増強し、DC成熟を引き起こすことができることを示す。TLRは、自然及び適応の両免疫応答の重要な調節因子である。(Hayden MS、West AP、Ghosh S(2006年10月)、「NF-κB and the immune response」、Oncogene.25(51):6758-80)。TREML1 ECD(又はそのストーク)とMD2/TLR4又はTLR7/8/9との間の相互作用によって、NF-κB及びTNF-α分泌の活性化がもたらされる。
【0024】
TNF-αの一次的な役割は、免疫細胞の調節にある。NF-κBは、自然及び適応の両免疫応答を担う遺伝子を調節する主要な転写因子である。T又はB細胞受容体のいずれかの活性化によって、NF-κBは、別個のシグナル伝達成分によって活性化されるようになる。リン酸化事象のカスケードを介して、キナーゼ複合体は活性化され、NF-κBは核に進入して、T細胞の発生、成熟及び増殖に関与する遺伝子をアップレギュレートする。したがって、TREML1 ECD又はストークとMD2/TLR4との間の相互作用は、自然及び適応の両免疫応答を強化することができる。これに関して、ある特定のTLR4アゴニストは、免疫調節薬として、又はワクチンアジュバントとして用いられてきた。例えば、MPL(モノホスホリルリピドA、リポ多糖の解毒された形態)は、市販されているワクチン製剤において使用される。
【0025】
更に、TREML1 ECD又はストークとTLR4/MD2との間の相互作用の結果、TLR7/8/9で誘発された細胞活性化の増強がもたらされる。これらの効果は、総合して、樹状細胞(DC)の活性化及び成熟を増強する。TLR4/MD2系とTLR7/8/9系との両方を介して作用する能力は、TREML1 ECD又はそのストークが強力な免疫ブースターであることを示唆する。これらの新規な発見に基づいて、本発明の実施形態は、TREML1 ECD又はそのストークを用いて免疫応答を強化するための試薬及び方法に関する。したがって、TREML1 ECD又はそのストークを、ワクチンにおいて用いて、免疫応答をアジュバントに類似した様式で強化してもよい。アジュバント又は免疫ブースターとして、TREML1 ECD又はそのストークペプチドを、抗原と共に、別のアジュバント又は別のTLR受容体アゴニストと共に又はそれなしで用いることができる。
【0026】
ワクチンアジュバント又は免疫ブースターとしてのTREML1 ECD又はそのストークを試験するために、本発明者らは、CT26結腸癌動物モデルを用いる。
図9Aは、この研究についての実験的プロトコルを示す。要するに、CT26結腸がん細胞(3×10
5細胞)を、0日目にBALB/Cマウス中に皮下注射した。6日目に腫瘍が30~100mm
3に成長したときに、腫瘍ワクチン(マウスTREML1ストークを有する、又は有しない腫瘍抗原5E-GP70-15/アルミニウム混合物;各回100μL/マウス)を、皮下注射した。ワクチン接種を、13日目に繰り返した。腫瘍体積を、3~4日毎に測定した。GP70は、ヒト腫瘍関連抗原に相当する内在性のエコトロピックなマウス白血病ウイルスである。gp70遺伝子を含むDNAワクチンを用いて、CT26細胞に対する防御免疫を誘発した。(J.Takedaら、「Anti-tumor immunity against CT26 colon tumor in mice immunized with plasmid DNA encoding beta-galactosidase fused to an envelope protein of endogenous retrovirus」、Cell Immunol.、(2000年)、204(1):11-18)。
【0027】
図9Bに示すように、腫瘍抗原5E-GP70-15/アルミニウム混合物のみでの処置によって、対照群(アルミニウムのみで処置)と比較して腫瘍体積がわずかに減少した一方、腫瘍抗原5E-GP70-15/アルミニウム混合物とmTREML1ストークとの組み合わせによって、腫瘍体積における劇的な減少が生じた。これらの結果は、TREML1ストークが免疫応答を強化することによってワクチン効能を実質的に増強し得ることを示す。TREML1 ECD又はストークによる予期されない程度に強度の免疫応答強化は、上記のように、自然及び適応の両免疫系に対する組み合わせ効果、すなわちTREML1 ECD又はストークによる抗原提示細胞(APC)の成熟の誘発、並びにTREML1 ECD又はストークのTLR4/MD2及び/又はTLR7/8/9との相互作用のためなようである。
【0028】
本発明の実施形態に従って、TREML1 ECD又はストークペプチドを、TLRアゴニストとして単独で用いて、自然免疫応答を増強することができる。更に、TREML1 ECD又はストークペプチドを、他のアジュバント(例えばミョウバン)又は他のTLRアゴニスト(例えばモノホスホリルリピドA)と共に又はそれなしで、ワクチン接種又は免疫療法における抗原と一緒に、アジュバント又は免疫ブースターとして用いることができる。これらのTREML1 ECD又はストークペプチドを、アジュバントに類似するその機構又は作用のために、任意の特定の腫瘍に限らないがんを治療するための免疫療法又はワクチンにおいて用いることができる。しかし、TREML1 ECD又はストークペプチドは、TLRアゴニストとして機能することができ、自然及び適応の両免疫応答を増強することができるため、従来のアジュバントよりも有効であることが期待される。これらの理由のために、一般的な免疫ブースターとしてのTREML1 ECD又はストークペプチドを、腫瘍免疫療法を含むすべての種類のワクチン接種又は免疫療法において用いることができる。TREML1 ECD又はストークペプチドを用いることができる腫瘍又はワクチンの例には、結腸直腸腫瘍(gp70-15ワクチン、癌胎児抗原(CEA)ワクチン、MUC-1ワクチン、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)ワクチン、グアニリルシクラーゼC(GUCY2C)ワクチン、上皮成長因子受容体(EGFR)ワクチン、上皮細胞接着分子(EpCAM)ワクチン)、乳がん(MUC-1ワクチン、生存ワクチン、テロメラーゼワクチン及び上皮腫瘍抗原ワクチン)、肝細胞癌(アルファフェトプロテインワクチン)、卵巣がん(CA-125)、悪性黒色腫(チロシナーゼワクチン、及び黒色腫関連抗原ワクチン)、ウイルスで誘発された腫瘍(HPV16型及び18型E6/E7、HBV、HCV、EBVワクチン)並びに種々の腫瘍(RASワクチン、p53ワクチン、β-カテニンワクチン、CDK4遺伝子BCR-ABLタンパク質ワクチン、個別化ゲノムワクチン及びネオ抗原個別化ワクチン)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0029】
本発明の実施形態で用いるためのTREML1 ECD又はストークペプチドは、ヒトTREML1、マウスTREML1又は他の動物TREML1に由来し得る。本発明の実施形態において用いるTREML1タンパク質又はペプチドのいくつかの例を、Table I(表1)に示す。
【0030】
【0031】
本発明の実施形態を、以下の特定の例で更に例示する。当業者は、これらの例は、例示のみのためであり、他の改変及び変形が、本発明の範囲を逸脱せずに可能であることを理解する。
【0032】
材料及び方法
組換えTREML1 ECD及びTREML1ストークポリペプチドの生成
本発明の実施形態で用いるためのタンパク質及びペプチドを、当該分野において公知の組換え手法又は化学合成で生成することができる。例えば、組換えTREML1 ECDを生成するために、N末端でポリヒスチジンタグを有するヒト又はマウスTREML1 ECD(配列番号1及び配列番号2)をコードするpET30-TREML1を、大腸菌を用いて発現させ、Ni-NTAカラム(Novagen社)を用いて精製した。組換えタンパク質の純度を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて決定し、クマシー・ブルー染色を用いて視覚化し、95%超であった。精製したタンパク質のエンドトキシン汚染を、LALアッセイ(QCL-1000;Charles River Laboratories社、Wilmington、Massachusetts、USA)を用いて試験した。すべてのタンパク質は、無菌であり、エンドトキシン濃度は、検出可能な限界(<0.1EU/μgタンパク質)よりも低かった。TREML1ストークポリペプチドを、Kelowna International Scientific Inc.社(Taipei、Taiwan)によって化学的に合成した。
【0033】
固相結合アッセイ
タンパク質-タンパク質相互作用を調査するためのものである。組換えTLR4(PBS中5ug/ml)、MD2(PBS中5ug/ml)、CD14(PBS中5ug/ml)、及びBSA(陰性の対照)タンパク質を、96ウェルプレート上に別個に播種し、摂氏4度で一晩インキュベートした。遮断緩衝液(PBS中2%BSA)を加えて、室温での2時間の非特異的な結合を回避した。系列希釈したTREML1 ECD(2.5ug/ml~156ng/ml、2倍希釈)溶液を加え、室温で2時間インキュベートさせた。次に、抗TREML1抗体(PBS中1ug/ml)を、1時間にわたって加えた。次に、HRP標識を有する二次抗体、抗ラットIgG-HRPを、プレートに加え、室温で30分間インキュベートした。プレートを、各段階の間にPBS緩衝液(PBST)の0.05%tween20で3回洗浄した。最後に、TMB基質を加え、10~15分間インキュベートして、HRPで標識された抗体を検出した。その後、1NのHCLの停止溶液を加えて、反応を停止した。OD450/540nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダーで測定した。
【0034】
ヒト又はマウスMD2タンパク質に結合するTREML1又はmTREML1ストークについて、TREML1ストーク又はmTREML1ストーク(PBS中5ug/ml)を、96ウェルプレート上で別個に被覆した。組換えhTLR4、hMD2、hCD14、又はmMD2を、各々系列希釈し、プレートに加えた。抗Hisタグ抗体-HRPを、検出抗体として用いて、タンパク質結合を検出した。
【0035】
ヒト白血球の調製
健康な志願者ドナーからのヒト末梢血液サンプルを、静脈穿刺によってACDバキュテナー管中に出血させて採集した。Ficoll-Paque Plus(GE17-1440-03)を製造者の指示に従って用いて全血から分離したヒト末梢血液単核細胞(PBMC)。
【0036】
ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を、hTREML1(10ug/ml、5ug/ml及び1ug/ml)で、又はそれなしで前処理し、5%CO2と共に37℃で30分間インキュベートした。処理の後、細胞を、R848(InvivoGen社 #tlrl-r848)及びODN2395(InvivoGen社 #tlrl-2395)を含むTLRアゴニストで刺激し、5%CO2と共に37℃で18時間インキュベートした。細胞培養培地の上清を、TNF-α測定のために採集した。
【0037】
THP1/XBlue/MD2/CD14細胞株
THP1/XBlue/MD2/CD14細胞株は、ヒト単球THP1細胞株に由来し、InvivoGen社から購入した。細胞を、10%熱不活性化FBS及び抗生物質を含むRPMI1640中で、5%CO2と共に37℃で培養した。
【0038】
in vitroアッセイ
THP1/XBlue/MD2/CD14細胞に結合するTREML1 ECD上の抗TLR4抗体(HTA125、BioLegend社 #312814)及び抗MD2抗体(18H10、ThermoFisher社 #MA5-33351)の効果を検査するために、細胞を、抗MD2抗体、抗TLR4抗体、IgG対照、又は組み合わせと共に、5%CO2と共に37℃で15分間前処理した。抗体処理の後、細胞を、TREML1 ECD(10ug/ml)で処理し、1時間インキュベートした。細胞を、1%FBSを含むPBSで洗浄し、AF647-抗ヒトTREML1抗体で染色し、続いてフローサイトメトリー分析を行った。
【0039】
THP1/XBlue/MD2/CD14細胞におけるNF-κB活性化
TREML1 ECDで引き起こされたTLR応答に対する抗TLR4抗体及び抗MD2抗体の影響を調査するために、THP1/XBlue/MD2/CD14細胞を、示した群について抗TLR4抗体、抗MD2抗体、又はIgG対照で前処理し、37℃、5%CO2で15分間インキュベートした。前処理の後、THP1/XBlue/MD2/CD14細胞を、TREML1 ECD(10ug/ml)によって刺激し、96ウェルプレートのウェル中に18時間にわたって37℃、5%CO2で1×106細胞/ml(ウェルあたり200ul)の濃度で播種した。NF-κB活性化を決定するために、培養培地の上清を採集し、製造者の指示に従ってQUANTI-Blue(商標)試薬(InvivoGen社)で評価した。
【0040】
サイトカイン分析
細胞上清及び血漿サンプルを収穫し、-80℃で貯蔵した。ヒトTNFα濃度を、製造者の指示に従ってTNF-αDuoSet ELISAキット(R&D社 #DY210)を用いて検出した。シグナルを、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンを用いて発現させ、450nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーで検出した。
【0041】
フローサイトメトリー分析
細胞を、1%FBSを含むPBS中に、2×106細胞/mlの密度で再懸濁させ、Abの非特異性結合を、Human Fc Block(BD Biosciences社 #564220)を用いて、室温で10分間遮断した。AF647抗ヒトTREML1(クローン268420)(R&D社 #FAB2394R)抗体を、細胞表面に結合するTREML1の検出抗体として用いた。死滅した細胞を、Fixable Viability Stain 780(FVS780)(BD Horizon社 #565388)染色に従って除外した。結合分析を、CytoFLEX Flow Cytometer(Beckman Coulter社)上で実施し、収集したデータを、Kazulaソフトウェアを用いて分析した。
【0042】
マウス骨髄由来の樹状細胞生成
大腿骨及び脛骨を、雌C57BL/6マウスから収穫し、余分な筋肉組織を除去した。骨を、70%エタノールで消毒し、次にRPMI-1640培地で洗浄し、両方の末端を切断して、骨髄をRPMI-1640培地で26G針シリンジを用いて流し出した。細胞凝集を分散させるために、骨髄懸濁液を、内外に数回ピペットで採取し、遠心分離によりRPMI-1640培地で2回洗浄した。R10培養培地は、抗生物質、10%不活性胎児ウシ血清、及び2-メルカプトエタノール(50μM、Sigma USA社)を有するRPMI-1640で構成されていた。0日目に、細胞計数の後に、白血球を、無菌の直径10mmのペトリ皿中に、200U/mlのrmGM-CSFを含むR10培地10mlあたり2×106細胞の濃度で播種し、5%CO2と共に37℃でインキュベートした。3日目に、別の200U/mlのrmGM-CSFを含むR10培地10mlを、加えた。6日目に、上清の半分を取り出し、遠心分離して、細胞ペレットを収集し、200U/mlのGM-CSFを含むR10培地10mlを有する最初のプレート中に再懸濁した。8日目に、非付着性の細胞を、穏やかにピペットで採取することによって収集し、300gで5分間遠心分離した。より純粋な樹状細胞を得るために、マクロファージ(F4/80high)の集団を、抗F4/80 MicroBeads UltraPure(130-110-443、Miltenyi Biotec社、Bergisch Gladbach、Germany)で、製造者の指示に従って除去した。要するに、細胞ペレットを再懸濁させ、MACS緩衝液中で抗F4/80 MicroBeads UltraPureと十分混合した。この混合物を、15分間暗中で4℃においてインキュベートした。細胞をMACS緩衝液で洗浄した後、細胞を、MACS緩衝液中に再懸濁させ、30μmのナイロンメッシュで濾過し、MACS緩衝液で洗浄したカラムに加えて、F4/80+細胞を分離した。標識していない細胞を収集し、R10培地で洗浄した。細胞を凍結させるために、細胞ペレットを計数し、凍結保存バイアルあたり2mlのCELLBANKER2(#11891、ZENOAQ社)中1×107細胞の濃度で再懸濁させ、摂氏-80度で貯蔵した。
【0043】
BMDCを、DC成熟実験のために融解した。これらの細胞を、6ウェル組織培養皿のウェル中に200U/mlのrmGM-CSFを含むR10培地中に1×106細胞/2mlで播種し、培養して、5%CO2と共に37℃で細胞生存能を回復した。6時間後、BMDCを、mTREML1タンパク質の様々な断片と共に処理し、5%CO2と共に37℃において培養した。次の日、再懸濁させた細胞を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0044】
細胞を、1800rpmで3分間、1%FBS及び0.1%アジ化ナトリウム(PBSBA)を含むPBS中で遠心分離し、次に流管中で1×105細胞/100ulのPBSBAの濃度で分割した。DCの表面マーカーを染色する前に、細胞を、マウスFcブロッカーで処理して、室温で30分間抗体非特異性結合を回避した。細胞を、以下の抗体:PE抗マウスCD11c抗体(BioLegend社 #117308)、Brilliant Violet 421(商標)抗マウスI-A/I-E抗体(BioLegend社 #107631)、BV786ラット抗マウスCD40(BD社 #140891)、Alexa Fluor(登録商標)488抗マウスCD86抗体(BioLegend社 #105018)、又はPE/Dazzle(商標)594抗マウスCD80抗体(BioLegend社 #104737)と共に、4℃で30分間インキュベートした。PBSBAで洗浄した後、サンプルを、CytoFlexフローサイトメーターを用いて、CytExpertソフトウェアで分析した。
【0045】
マウス
すべての遺伝子的に野生型の実験BALB/c及びC57BL/6マウスを、National Laboratory Animal Center社(台湾)から購入した。すべての動物実験の実験的手順は、地域のInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の規制に準拠していた。
【0046】
腫瘍研究
同一遺伝子のマウス結腸がんモデルの確立のために、BALB/cマウスに、背面において、マウスあたり3×105のCT26細胞を皮下注射した。接種した腫瘍の体積が30~100mm3に達したときに、マウスを、種々の処置についてのコホートに無作為に分けた。腫瘍抗原ワクチンを、示したタイムスケジュールに従って皮下投与した。各動物研究の間、腫瘍の寸法を、キャリパー測定でモニタリングし、腫瘍体積を、等式:v=π/6(長さ)×(幅)を用いて計算し、式中、長さは、腫瘍の最も長い直径であり、幅は、最も短い直径である。腫瘍負荷のサイズが3000mm3を超えた場合には、マウスを、生存研究において死亡したものと考え、CO2又は頸椎脱臼を用いて安楽死させた。
【0047】
本発明の実施形態を、限定された数の例を用いて記載した。当業者は、これらの例は、例示のみのためであり、他の改変及び変形が、本発明の範囲を逸脱せずに可能であることを理解する。したがって、保護の範囲は、添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】