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特表2023-527733乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
A23G1/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569585
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021034485
(87)【国際公開番号】W WO2021242998
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20177019.5
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ベッサイ-ベイ、エラ
(72)【発明者】
【氏名】デュー、ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルーセル、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】デボン、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥクレルク、ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ワレカン、ジョエル
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG06
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK07
4B014GL10
(57)【要約】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物、及び乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を製造する方法。乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、より健康に良い代替物を提供するために、同等の従来の製造されたチョコレートと実質的に同じ粘度を有しながら、同等の従来の製造されたチョコレートよりも大きい最大充填率を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物であって、
連続脂肪相であって、前記脂肪相が、脂肪及び任意選択的に乳化剤を含む、連続脂肪相、
並びに
前記脂肪相全体に分布した少なくとも2つの粒子状材料を含み、
前記少なくとも2つの粒子状材料が、互いに異なるD50粒子径を有し、その差が、6~8倍である、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項2】
固相体積x、及び40℃以上でPa.sのビンガム塑性粘度値yを有し、
xが、0.4~0.7であり、
y<264x-330x+141x-20である、請求項1に記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項3】
押出用途について0.72以上、成形用途について0.63以上、エンロービング用途について0.64以上、又はアイスクリーム用途について0.66以上である最大充填率を有する、請求項1又は2に記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項4】
40℃で、0.1~10Pa.sのビンガム塑性粘度値、及び1~150Paのビンガム降伏応力を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項5】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を調製する方法であって、前記方法が、
(a)
連続脂肪相であって、前記脂肪相が、脂肪及び任意選択的に乳化剤を含む、連続脂肪相、並びに
前記脂肪相及び前記乳化剤全体に分散された少なくとも2つの粒子状材料を含む、初期チョコレート組成物を提供することと、
(b)任意選択的に、前記初期チョコレート組成物の最大充填率及び粘度を測定することと、
(c)前記初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを調製することと、を含み、前記調製することが、
i.前記初期チョコレート組成物の前記少なくとも2つの粒子状材料のための最適化された粒子充填パラメータを決定することであって、前記最適化された粒子充填パラメータは、前記乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、前記初期チョコレート組成物の前記最大充填率値よりも大きい最大充填率値、及び前記初期チョコレート組成物の前記粘度と実質的に同一である粘度を有するように、最適化される、決定することと、
ii.前記初期チョコレート組成物の前記少なくとも2つの粒子状材料と同一であるが、最適化された前記粒子充填パラメータを有するための、少なくとも2つの粒子状材料を、前記乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物のために選択することと、
iii.選択された粒子状材料を、前記初期チョコレート組成物の前記脂肪相及び乳化剤と同一である脂肪相及び任意選択的に乳化剤と組み合わせて、前記初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを提供することと、による、方法。
【請求項6】
前記粒子充填パラメータが、粒子径分布、粒子形状、及び/又は前記少なくとも2つの粒子状材料の相対量を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記最適化された粒子充填パラメータは、前記乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、前記初期チョコレート組成物の前記最大充填率よりも少なくとも1%大きい最大充填率を有するように、最適化される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化された粒子充填パラメータが、数学的モデリングを使用して決定される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
使用される前記数学的モデルが、本明細書に説明される圧縮性充填モデルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか一項に記載の方法によって取得されるか、又は取得可能である、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項11】
前記少なくとも2つの粒子状材料が、糖、カカオ固形分、乳固形分、増量剤、炭酸カルシウム、栄養粒子、及び香味料、並びに/又はそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項12】
前記脂肪相が、カカオ脂、カカオ脂等価物、カカオ脂代替物、無水乳脂肪、それらの画分、及び/又はそれらの2つ以上の混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【請求項13】
前記乳化剤が、レシチン、ダイズレシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)、アンモニウムホスファチド(AMP)、ソルビタントリステアレート、ポリエルカ酸スクロース、ポリステアリン酸スクロース、リン酸モノ-ジ-グリセリド/モノグリセリドのジアセチル酒石酸からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法又は乳化剤低減チョコレート組成物。
【請求項14】
請求項1~4又は10のいずれか一項に記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を含む、食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月28日出願の「REDUCED EMULSIFIER OR EMULSIFIER-FREE CHOCOLATE」と題された欧州特許出願第2017/7019.5号の利益を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物、及び乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を製造する方法に関する。特に、本発明は、より健康に良い代替物を提供するために、同等の従来の製造されたチョコレートと実質的に同じ粘度を有しながら、同等の従来の製造されたチョコレートよりも大きい最大充填率を有する乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
乳化剤は、一般に、レオロジー特性を増強するためにチョコレートに添加される。これらの乳化剤は、チョコレート中の固形粒子をコーティングして、それらの流動を助ける。チョコレートに典型的に使用される乳化剤のいくつかの例は、ダイズ、ヒマワリ又はナタネ、アンモニウムホスファチド、及びポリグリセロールポリリシノール酸(poly glycerol poly ricinoleic acid、PGPR)から生成されるレシチンである。乳化剤はまた、例えば、特別な形状の菓子を生産するために、又はチョコレートブルームとして知られるチョコレート上の白カビ様のスポットの形成を低減するために選択され得る。
【0004】
しかしながら、乳化剤の使用には欠点がある。例えば、乳化剤の用量が多くなるほど、不快な臭いが生じる場合があり、及びチョコレートの加工が難しくなる場合がある。いくつかの法域では、使用可能な乳化剤量に法的制限もある。また、消費者の間では、より少ない添加物を有する、いわゆるクリーンラベル又はラベルフレンドリといった「健康に良い」食品を好む傾向が強まっている。いくつかの乳化剤は、それらが腸の炎症及び疾患、結腸直腸がん、及びアレルギーを含む負の副作用に関連が指摘されているため、議論の的となっている。特定の植物に由来する乳化剤はまた、遺伝子改変された作物に関連する倫理的及び法的な懸念の対象となる。
【0005】
したがって、従来のチョコレート製品と比較して、乳化剤非含有であるか、又は低減された乳化剤含有量を有する、チョコレート製品に対する需要がある。
【0006】
チョコレートの粘度は、目的とする用途に重要である。一般的に言うと、より少ない脂肪及び/又は乳化剤をチョコレートが含有すると、溶融されたチョコレートがより粘稠で、かつより粘性になる。これは、押出用途に好適であり得るが、例えば、処理が困難になるため、エンロービング(enrobing)又は成形用途には適していない場合がある。例えば、チョコレートがあまりに粘稠である場合、チョコレートの薄いコーティングを菓子製品に塗布することは機械的に困難であり、硬化が起こる前に気泡が粘性チョコレートから出ていかない可能性があり、それによって、最終製品の外観及び生地に悪影響を及ぼす。粘度に対する乳化剤の効果は、典型的には、脂肪の効果よりも大きい。レシチンを一例にすると、0.5%のレシチンが5%のカカオ脂に相当すると言われ、したがって、レシチンの量を低減することは、脂肪が同じ量だけ低減された場合と比較して10倍の粘性をチョコレートにもたらすことが予想され得る。
【0007】
この従来の知識に基づいて、チョコレートから乳化剤を低減又は排除することは、チョコレートの粘度及び他のレオロジー特性に実質的に悪影響を有することになる。この効果を相殺するために、より多くの脂肪が配合物に添加される必要があり(例えば、レシチンの場合は10倍多く)、健康及び費用の理由から非常に望ましくない。
【0008】
チョコレートは、連続脂肪相中の固形粒子(例えば、糖、乳粉末、及びカカオ固形分)の分散体である。チョコレートのレオロジー特性に対するこれらの固形粒子の粒子径分布の影響は、以前から調査されている。例えば、欧州特許第1061813号は、特定の粒子径分布を用いることによって生成される、16~35%の総脂肪含有量を有する、レオロジー改質された菓子を開示している。欧州特許第1061813号の目的は、固形粒子の充填密度を改善することであった。しかしながら、達成された粒子充填は、著者らが粒子形状などの固有の特徴を考慮に入れることができなかったため、事実上不十分であった。欧州特許第1061813号に説明された製品の、本明細書に説明された方法によって決定された最大充填率は、およそ0.54だけである(本明細書の実施例4を参照されたい)。これは、高価なカカオ脂で充填された固形粒子間に大きい空間が依然として存在することを意味する。結果として、該文献で説明されたチョコレートは、生産するのに費用効果が高くなく、不十分なレオロジー特性を有することになる。加えて、欧州特許第1061813号に説明されているチョコレートは、乳化剤を含有するため、必然的に上述の欠点に悩まされる。
【0009】
従来のチョコレートに代わる、上述の欠点を回避又は改善する乳化剤非含有又は乳化剤低減代替物が尚も必要とされている。本発明は、チョコレート中の固形粒子の形態学的パラメータを調整して、チョコレートのレオロジー挙動を正確に制御しながら固相体積を増加させることによって、乳化剤含有量の減少を可能にし、この必要性を満たすことを目的とする。本明細書に説明される組成物及び方法は、様々な用途に好適なチョコレート組成物を生産するために使用され得る。本発明の組成物は、同等の従来のチョコレート組成物と同様のレオロジー特性を有し、かつ乳化剤の有利な低減を提供する。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、本発明は、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を提供し、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、
連続脂肪相であって、当該脂肪相が、脂肪及び任意選択的に乳化剤を含む、連続脂肪相、
並びに
当該脂肪相全体に分布した少なくとも2つの粒子状材料を含み、
少なくとも2つの粒子状材料が、互いに異なるD50粒子径を有し、当該差が、6~8倍である、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0011】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、固相体積x、及び40℃以上でPa.sのビンガム塑性粘度値yを有し得、
xが、0.4~0.7であり、
y<264x-330x+141x-20である。
【0012】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、押出用途について0.72以上、成形用途について0.63以上、エンロービング用途について0.64以上、又はアイスクリーム用途について0.66以上である最大充填率を有し得る。
【0013】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、40℃で、0.1~10Pa.sのビンガム塑性粘度値、及び1~150Paのビンガム降伏応力を有し得る。
【0014】
別の態様では、本発明は、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を調製する方法を提供し、方法が、
(a)
連続脂肪相であって、当該脂肪相が、脂肪及び任意選択的に乳化剤を含む、連続脂肪相、並びに
脂肪相及び乳化剤全体に分散された少なくとも2つの粒子状材料を含む、初期チョコレート組成物を提供することと、
(b)任意選択的に、初期チョコレート組成物の最大充填率及び粘度を測定することと、
(c)初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを調製することと、を含み、調製することが、
i.初期チョコレート組成物の少なくとも2つの粒子状材料のための最適化された粒子充填パラメータを決定することであって、最適化された粒子充填パラメータは、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、初期チョコレート組成物の最大充填率値よりも大きい最大充填率値、及び初期チョコレート組成物の粘度と実質的に同一である粘度を有するように、最適化される、決定することと、
ii.初期チョコレート組成物の少なくとも2つの粒子状材料と同一であるが、最適化された粒子充填パラメータを有するための、少なくとも2つの粒子状材料を、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物のために選択することと、
iii.選択された粒子状材料を、初期チョコレート組成物の脂肪相及び乳化剤と同一である脂肪相及び任意選択的に乳化剤と組み合わせて、初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを提供することと、による、方法を提供する。
【0015】
粒子充填パラメータが、粒子径分布、粒子形状、及び/又は少なくとも2つの粒子状材料の相対量を含み得る。
【0016】
最適化された粒子充填パラメータは、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも少なくとも1%大きい最大充填率を有するように、最適化され得る。
【0017】
最適化された粒子充填パラメータが、数学的モデリングを使用して決定され得る。好ましくは、使用される数学的モデルが、本明細書に説明される圧縮性充填モデルである。
【0018】
更なる態様では、本発明は、本発明の方法によって取得されるか、又は取得可能な乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を提供する。
【0019】
少なくとも2つの粒子状材料が、糖、カカオ固形分、乳固形分、増量剤、炭酸カルシウム、栄養粒子、及び香味料、並びに/又はそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され得る。
【0020】
脂肪相が、カカオ脂、カカオ脂等価物、カカオ脂代替物、無水乳脂肪、それらの画分、及び/又はそれらの2つ以上の混合物を含むか、又はそれらから構成され得る。
【0021】
存在する場合、乳化剤が、レシチン、ダイズレシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)、アンモニウムホスファチド(ammonium phosphatide、AMP)、ソルビタントリステアレート、ポリエルカ酸(polyerucate)スクロース、ポリステアリン酸スクロース、リン酸モノ-ジ-グリセリド/モノグリセリドのジアセチル酒石酸からなる群から選択され得る。
【0022】
別の態様では、本発明は、本発明による、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を含む食品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一般的な溶液の粘度と固相体積との間の関係を示すグラフである。
図2】ダークチョコレート試料についてのPGPR流動曲線である。
図3】ミルクチョコレート試料についてのPGPR流動曲線である。
図4】圧縮性充填モデル(compressible packing model、CPM)で考慮される(a)緩み及び(b)壁効果の表現である。
図5】二成分混合物の仮想最大充填率の展開を示すグラフである。
図6】0.49の最大充填率を有する典型的なカカオ粉末の粒子径分布を示すグラフである。
図7】(a)形状係数β、(b)粒子のアスペクト比、の関数として最大充填率を説明する一連の2つのグラフ(a)及び(b)である。粒子径分布は、一定に維持される(図6に示される)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別途指定されない限り、全ての用語は、当業者によって理解されるように、当技術分野における通常の意味と一致する技術的意味を与えられるべきである。
【0025】
本明細書における全ての比率、量、及びパーセンテージは、別途指定されない限り、チョコレート組成物の総重量に対するものである。
【0026】
全てのパラメータ範囲は、別途指定されない限り、範囲の終点及び終点間の全ての値を含む。
【0027】
これらの明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」及びその変形は、指定された特徴、工程又は整数が含まれることを意味する。用語は、他の特徴、工程又は成分の存在を除外すると解釈されるべきではない。
チョコレート組成物
【0028】
本発明は、乳化剤非含有又は乳化剤低減チョコレート組成物を調製する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「チョコレート組成物」という用語は、いくつかの法域では、チョコレートがカカオ脂又はカカオ脂置換物を含む最小量のカカオ固形分及び/又は化合物の存在によって法的に定義され得るにもかかわらず、任意の量でカカオ固形分(以下に定義されるような)を含む任意の組成物を指す。有利には、チョコレート組成物という用語は、任意の法域(好ましくは、US及び/又はEU)におけるチョコレートの法的定義を満たす組成物を指し、カカオ脂の全部又は一部がカカオ脂等価物、交換物、又は置換物によって交換される任意の製品(及び/又はその成分)も含む。チョコレート組成物という用語はまた、カカオ脂及びカカオ脂以外の食用固形分を含むチョコレート組成物、並びにカカオ脂以外の連続脂肪相中の食用固形分の懸濁液(例えば、Caramac(登録商標))を含む「チョコレート様」組成物を指し得る。チョコレート組成物という用語は、食品全体及び/又はその成分を指し得る。チョコレートは、当業者に既知のダーク、ミルク、若しくはホワイトチョコレート又はそれらの変形であり得る。チョコレート組成物は、限定されるものではないが、チョコレートバー、チャンク、チップ、クランプ、バーミセリ、及び/又はスプリンクルの押出、成形、エンロービング、コーティング、浸漬(例えば、浸漬アイスクリームのための)、噴霧、作製を含む、様々な用途に好適であり得る。
【0029】
「乳化剤非含有」という用語は、組成物に乳化剤が添加されないことを意味する。「乳化剤低減組成物」という用語は、チョコレート組成物が、初期チョコレート組成物に対して、より少ない総量の添加される乳化剤及び/又はより少ないタイプの乳化剤を有することを意味する。乳化剤低減組成物は、無視できる量の添加された乳化剤のみを含み得る。この文脈では、添加され得る乳化剤の非限定的な例は、レシチン、ダイズレシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)、アンモニウムホスファチド(AMP)、ソルビタントリステアレート、ポリエルカ酸スクロース、ポリステアリン酸スクロース、リン酸モノ-ジ-グリセリド/モノグリセリドのジアセチル酒石酸である。添加される乳化剤は、任意の量、例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%のリン脂質を含み得る。
【0030】
初期チョコレート組成物は、本発明の方法の出発材料であり、市販であるか、又は特別に作製され得る、上記で定義された任意の既存のチョコレート組成物を含み得る。この方法の目的は、初期チョコレート組成物の代替として使用され得る、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を取得すること、すなわち、初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを取得することである。
【0031】
本発明の方法によって取得されるか、又は取得可能であり得る乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、連続脂肪相全体に分散された少なくとも2つの粒子状材料を含む。溶融形態では、粒子状材料は、液体状態である組成物の脂肪相に懸濁される。好ましくは、粒子状材料は、脂肪相全体を通して実質的に均質に分布している。
脂肪相
【0032】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物の脂肪相は、限定されるものではないが、カカオ脂、カカオ脂代替物(等価物、交換物、及び置換物を含む)、植物性脂肪、無水乳脂肪、それらの画分、及び/又はそれらの2つ以上の混合物を含む、チョコレート作製に好適である任意の脂肪を含み得る。好ましくは、脂肪相は、チョコレート作製に好適な脂肪から構成される。
【0033】
好ましくは、脂肪相は、カカオ脂を含む。脂肪相中のこのカカオ脂はまた、本明細書では「添加されたカカオ脂」又は「添加された脂肪」とも称され、それを、以下に論じられるように、いくつかのカカオ固形分含有成分に固有であり得るカカオ脂と区別する。
【0034】
1つの非限定的な例では、添加されたカカオ脂は、チョコレート組成物の総質量に対して0質量%~40質量%の量でチョコレート組成物中に存在する。好ましくは、5%~35%、より好ましくは10%~30%、より好ましくは15%~25%である。
【0035】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物の総脂肪含有量は、脂肪相中の添加された脂肪、及び粒子状成分の一部であり得る任意の脂肪(例えば、フルファットカカオ粉末内の)を含む。本発明によるチョコレート組成物の総脂肪含有量は、初期チョコレート組成物の総脂肪含有量以下であり得る。
【0036】
脂肪相は、いかなる添加された乳化剤も含まないか、又は初期チョコレート組成物に対して低減された量の乳化剤を含有するかのいずれかである。驚くべきことに、チョコレート組成物のレオロジー特性が、粒子充填特性を操作及び最適化することによって十分に制御され、その結果、乳化剤が、所望の粘度を提供するために必要ではないか、又はより少ない乳化剤が必要であることが見出された。
粒子状材料
【0037】
乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、脂肪相全体を通して(例えば、均質に)分散される、少なくとも2つの粒子状材料を含む。
【0038】
少なくとも2つの粒子状材料は、糖、カカオ固形分、乳固形分、増量剤、炭酸カルシウム、栄養粒子(例えば、ビタミン、ミネラル、及び/又は栄養補助食品組成物)、風味(例えば、バニラ、スパイス、コーヒー、塩など)、非可視包含物、及び/又は菓子における使用に好適な任意の他の食用固形粒子、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
本明細書で使用される「糖」という用語は、食物における使用に好適である配合物を含有する任意のタイプの甘味料を指す。本発明で使用され得る糖の非限定的な例としては、グルコース、デキストロース、フルクトース、アルルロース、又はガラクトースなどの単糖、スクロース、ラクトース、又はマルトースなどの二糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、又はイソマルトなどのポリオール、Stevia(登録商標)などの高密度甘味料、ハチミツ、アガベシロップ、メープルシロップ、及びそれらの2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0040】
有利には、糖は、スクロースである。本明細書で使用される場合、「スクロース」という用語は、限定されるものではないが、標準(例えば、造粒又は結晶性)のテーブルシュガー、粉砂糖、上白糖、粉糖、液糖、シルクシュガー、粗糖、サトウキビ、及び糖蜜を含む、様々な形態のスクロースを含む。
【0041】
有利には、糖は、以下の実施例1に従って調製される、以下で「甘味脂肪」と称される、カカオ脂に分散された結晶糖を含む配合物である。甘味脂肪は、本質的に、カカオなしのチョコレート又は乳製品非含有ホワイトチョコレートである。
【0042】
1つの非限定的な例では、チョコレート組成物は、チョコレート組成物の総重量に対して1重量%~65重量%、例えば5重量%~60重量%、又は10重量%~55重量%、又は15重量%~50重量%、又は20重量%~45重量%、又は25重量%~40重量%、又は30重量%~35重量%の任意の量の糖を含む。好ましくは、糖は、40%~60%、又は好ましくは45%~60%、又は好ましくは50%~55%の量で含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、粒子径(「粒度測定」とも呼ばれる)は、D50値を使用して定義される。D50値は、粒子径分布を説明する一般的な方法であり、「平均」又は「統計的平均」粒子径と呼ばれることもある。「D50」は、試料中の粒子の体積の50%がその値未満の最大粒子寸法を有する、最大粒子寸法(例えば、一般的な球状粒子の直径)の値を指す。言い換えると、粒子の試料中の最大粒子寸法の累積分布では、分布の50%がD50値未満にある。
【0044】
「最大寸法」又は「最大粒子寸法」は、任意の特定の粒子、例えば、カカオ固形粒子又は糖の粒子の最長断面寸法を指す。
【0045】
D50値は、レーザ光回折/散乱粒子径分析器(例えば、Malvern Panalytical Ltd.によって販売されているMalvern Mastersizer 3000)を使用する本明細書に説明される方法を使用して、又は他の既知の方法を使用して、測定され得る。
【0046】
本発明で使用される糖は、50μm超のD50粒子径を有する「粗糖」であってもよく、又はそれは、1μm~15μm、又は好ましくは7μm~13μm、又は好ましくは8μm~12μm、又は好ましくは約10μmのD50粒子径を有する「精製糖」であってもよい。好ましい実施形態では、精製糖は、9μm~11μmのD50粒子径を有する甘味脂肪(上記で定義された)の形態の糖である。いくつかの例では、糖は、二峰性粒子径分布を有し得る。その場合、上記のD50値は、分布のうちの1つのみに適用し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「カカオ固形分」は、固形カカオ粒子を指す。好ましくは、使用されるカカオ固形分は、カカオ粉末、又はカカオ液若しくはカカオマスなどの成分を含有するカカオ固形分であることになる。そのようなカカオ固形分含有成分の場合、カカオ固形分という用語は、固形カカオ粒子のみを指し、成分中にも存在し得るいかなる周囲の脂肪も指さない。好ましくは、カカオ固形分は、標準カカオ粉末(10~12%の脂肪含有量を有する)、脂肪低減又は脱脂カカオ粉末(例えば、溶媒抽出を使用して生産される)、又はカカオ液である。
【0048】
1つの非限定的な例では、カカオ固形分は、チョコレート組成物の総質量に対して5質量%~40質量%、又は好ましくは15質量%~25質量%、又は好ましくは約20質量%の量でチョコレート組成物中に存在し得る。
【0049】
カカオ固形分は、5μm~15μm、又は好ましくは7μm~13μm、又は好ましくは8μm~12μm、又は好ましくは約10μmのD50粒子径を有する「粗いカカオ固形分」であり得る。代替的に、カカオ固形分は、0.5μm~4μm、又は好ましくは1~3μm、又は約2μmのD50粒子径を有する「微細カカオ固形分」であり得る。いくつかの例では、カカオ固形分は、二峰性粒子径分布を有し得る。その場合、上記のD50値は、分布のうちの1つのみに適用し得る。
【0050】
精製糖及び/又は微細カカオ固形分は、商業的に入手可能であり得るか、又はそれらは、粉砕、微粉化、又は粗糖若しくはカカオ固形分同様のものなどの、既知のプロセスを適用することによって、特許請求の範囲の方法の予備ステップで生産され得る。
【0051】
「充填剤」としても知られる「増量剤」は、チョコレート組成物の感覚刺激又はレオロジー特性に影響するように粒子状材料として使用され得る。可溶性及び/又は不溶性繊維を含む、当技術分野で知られている任意の好適な増量剤が、本発明に従って使用され得る。本発明に従って使用され得る「不溶性繊維」の非限定的な例は、食物繊維、穀物繊維、及び/又は他の植物繊維である。本発明に従って使用され得る「可溶性繊維」の非限定的な例は、難消化性デキストリン、難消化性/修飾マルトデキストリン、ポリデキストロース、β-グルカン、ガラクトマンナン、フルクトオリゴ糖、グルコオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、MOS(マンナンオリゴ糖又はマンノオリゴ糖としても知られているマンノースオリゴ糖)、ペクチン、サイリウム、イヌリン、及び難消化性デンプンである。
【0052】
本発明によると、少なくとも2つの粒子状材料は、互いに異なるD50粒子径を有する。好ましくは、差は、3~12倍、好ましくは5~10倍、より好ましくは6~8倍、より好ましくは7倍である。一例では、少なくとも2つの粒子状材料のより大きいD50粒子径は、少なくとも2つの粒子状材料のより小さいD50粒子径よりも少なくとも7倍大きい。別の例では、少なくとも2つの粒子状材料の最大のD50粒子径は、少なくとも2つの粒子状材料の最小のD50粒子径よりも少なくとも7倍大きい。チョコレート組成物中に3つ以上の粒子状材料が存在する場合、3つ以上の粒子状材料の各々のD50粒子径間の差は、少なくとも7倍である。
【0053】
好ましくは、少なくとも2つの粒子状材料は、糖及びカカオ固形分からなる群から選択される。糖及びカカオ固形分が存在する場合、糖粒子及びカカオ固形分は、互いに異なるD50粒子径を有し得る。代替的又は追加的に、カカオ固形分及び/又は糖は、二峰性粒子径分布を有し得る。1つの非限定的な例では、第1の粒子状材料は、粗糖であり、第2の粒子状材料は、微細カカオ固形分、又は微細カカオ固形分と粗いカカオ固形分との混合物である。代替的な非限定的な例では、第1の粒子状材料は、粗いカカオ固形分であり、第2の粒子状材料は、精製糖、又は精製糖と粗糖との混合物である。別の非限定的な例では、第1の粒子状材料は、カカオ液中に含有される粗いカカオ固形分(D50およそ10μm)であり、第2の粒子状材料は、カカオ液中に含有される微細カカオ固形分(D50およそ1~2μm)である。代替的な非限定的な例では、第1の粒子状材料は、粗いカカオ粉末(D50およそ10μm)であり、第2の粒子状材料は、カカオ液中に含有される微細カカオ固形分(D50およそ1~2μm)である。別の非限定的な例では、第1の粒子状材料は、カカオ液中に含有される粗いカカオ固形分(D50およそ10μm)であり、第2の粒子状材料は、粗糖(D50およそ50μm)である。別の非限定的な例では、第1の粒子状材料は、粗いカカオ粉末(D50およそ10μm)であり、第2の粒子状材料は、粗糖(D50およそ50μm)である。
【0054】
最大充填率と粘度との間の関係
溶融されたチョコレートは、粒子が脂肪のニュートン溶液中に分散し、かつ流体力学的に相互作用する非希釈懸濁液であり、粘性消散を増加させる。消散は、図1に例示されるように、固相体積とともに増加し(Φ)、固相体積が最大充填率に近づくにつれて発散する(Φmax(「最大充填密度」、「最大充填効率」、又は「最大充填体積」とも呼ばれる)。
【0055】
本明細書で使用される「粘度」は、チョコレート製造業界で使用される標準的なパラメータである、塑性粘度を指す。塑性粘度は、材料が一旦流動し始めてから、それがどの程度容易に流動するか、すなわち、材料が流動している間にそれがどの程度「水っぽい(thin)」か又は「粘稠である(thick)」かの尺度である。
【0056】
懸濁液の粘度は、当技術分野で既知である、Krieger Doughertyモデルによって説明され得る。
【数1】
式中、μは、懸濁液粘度であり、μは、懸濁液(この場合は脂肪相)の粘度であり、αは、当てはめ係数(本開示の目的に関して-2に設定される)である。この経験的モデルは、低固相体積におけるEinsteinの理論的予測と良好に合致し、固相体積が最大充填密度に向かう傾向があるときに定量的に予想されるように発散する利点を有する。これは、図1の実線によって例示されている。
【0057】
方程式(1)及び図1に示されるように、最大充填密度の増加(ΦmaxがΦmax1からΦmax2まで移動することを具体的に意味する)は、粘度の低下を可能にするが(実線と破線との間の差を示す矢印によって例示される)、固相体積は、一定に維持される。逆に、最大充填密度を増加させることは、チョコレート組成物の粘度に影響せずに、固相体積の増加(すなわち、脂肪含有量を低下させること)を可能にする。したがって、出願人は、驚くべきことに、粒子充填密度が、チョコレートのレオロジー特性、特に粘度を制御しながら、乳化剤含有量を調節するように操作及び/又は最適化され得ることを見出した。
粒子充填パラメータ
【0058】
本発明に関して、チョコレート組成物中の粒子状材料の非常に密接又は緊密な充填を有することが望ましく、理想的には最高の幾何学的に許容可能な充填に近づくことが望ましい。充填密度は、粒子系の固有の幾何学的特性であり、粒子径分布及び粒子形状を含む形態学的パラメータによって影響される。
【0059】
二峰性(すなわち、2つの算術最頻値を有する)又は多分散(すなわち、3つ以上の算術最頻値を有する)である粒子径分布は、一般に、変動するサイズを有する粒子が所与の空間をより効率的に充填し得るため、単分散(すなわち、1つの算術最頻値を有する)であるものよりも高い充填密度を有する。簡単に言うと、より粗い粒子間の空間が、二峰性又は多分散系におけるより微細な粒子によって占有され、粒子間の間質空隙のサイズを低減し得る。本発明の文脈では、この密閉充填は、粒子が互いに流れて通過する方式に影響し、それによって、系のレオロジー特性、例えば、粘度を変化させる。驚くべきことに、最終製品において望ましい流動特性達成するために、乳化剤が必要とされないか、又はより少ない乳化剤が必要とされるように、粒子充填を操作することによって、レオロジー特性が十分に制御され得ることが見出された。
【0060】
粒子充填を最適化するために、系の粒子径分布が制御されなければならない。トライアルアンドエラーを使用して様々な粒子径分布を有する異なる割合の粒子を混合することによって、単純な組成物の粒子充填を実験的に最適化することが理論的に可能であり得るが、これは、チョコレートなどの複雑な多成分系にとって実際には可能ではない。
【0061】
粒子形状はまた、粒子充填にも影響し得る。例えば、球体は、立方体、破砕された凝集体、又は繊維と同じ方式でそれ自体を配置しない。以前の研究は、規則的な形状及び平坦な表面を有する粒子が、不規則な形状を有するものよりも良好にそれら自体を局所的に配置されることを示している。より丸い、より平滑な形状を有する粒子はまた、概して、粗い表面を有する粒子よりも高い充填密度を有する。
【0062】
本発明の方法は、初期チョコレート組成物中の粒子状材料のための最適粒子充填パラメータを決定することを伴う。粒子充填パラメータが、粒子径分布、粒子形状、及び/又は少なくとも2つの粒子状材料の相対量を含み得る。この決定は、初期チョコレート組成物システム内の粒子状材料を分析することと、それらの粒子状材料のための最適粒子充填パラメータを計算又は予測することと、を伴う。
【0063】
最適粒子充填パラメータのこの決定は、数学的モデリングを使用して実施され得る。例えば、システムの変数は、粘度パラメータを制御しながら、最大充填率に対する効果を確認するために理論的モデルで操作され得る。最適粒子充填パラメータは、理論的に可能である最大の最大充填率を結果的にもたらすものである。
【0064】
以前に(例えば、欧州特許第1061813号において)使用されたモデルとは異なり、本発明によって採用される最大充填率計算、以下に説明されるCPMは、粒子の粒子径分布及び形状の両方を考慮に入れて、充填密度を推定する。これは、乳化剤低減又は乳化剤非含有製品において、はるかに密接な粒子充填が達成されることを可能にする。
圧縮性充填モデル(CPM)
【0065】
好ましくは、使用される数学的モデルは、Francois de Larrardによって開発された圧縮性充填モデル(CPM)であり、これは、Goncalves,E.V.;Lannes,S.C.d.S Food Sci.Technol.2010,30,845-851に説明され、また、Larrard,F.Concrete Mixture Proportioning:a scientific approach,E&FN SPON:An imprint of Routledge,London and New-York,1999.ISBN 0 419 23500 0(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)にも説明される。このモデルは、粒子の粒子径分布及び形状の両方を考慮して、最大充填率を推定する。CPMは、粒状混合物、すなわち、コンクリートによって達成される充填密度を説明するために開発された半経験モデルである。モデルの主な原理は、混合物中の全てのサイズクラスが、全体的な充填密度に影響する混合物中の全ての他のサイズクラスと相互作用することである。モデルはまた、同じ材料について、粒子の形状がサイズクラスに対して独立していることを想定する。形状係数は、各材料の粒子径分布及び最大充填率を考慮することによって計算される。
【0066】
本発明者らは、予想外に、コンクリートベースの材料のために最初に開発されたCPMが、糖及びココア粒子の最大充填率を予測及び最適化するために使用され得ることを見出した。本発明者らは、それらの組成物の関数として、予測(CPMによる)及び測定(以下の遠心分離測定方法1によって)された異なるココア/糖混合物の最大充填率が等しいことを見出した。
【0067】
圧縮性充填モデル(CPM)は、実際には、線形充填モデル(Linear Packing Model、LPM)と呼ばれる、1986年にde Larrard及びStorvallによって開発された古いモデルの改善である。CPMをLPMよりも良好な充填モデルにするものは、実験的なプロトコル充填に依存する充填指数Kを考慮に入れるという事実である。この指数は、実験的に系を充填するために使用されるエネルギーに対応し、したがって、実験的に測定された実数を表す予測充填密度を有することを可能にする。CPMは、2つのタイプの充填、すなわち、実際の最大充填率及び仮想最大充填率を予測することを可能にする。実際の最大充填率は、ランダムな密閉充填(すなわち、所与の量の締め固めエネルギー下の粒子の充填)として知られているものに対応し、それ自体は、本明細書に説明されるφmaxと呼ばれる実験的な最大充填率に対応する。以下では、φmax predictedは、CPMによって予測される実際の最大充填率を指し、φmaxは、実験的に測定された実際の最大充填率を指すことになる。de Larrardによって定義される仮想最大充填率は、完全に規則的な充填が存在することを考慮して、所与の混合物に対して達成可能であり得る最大の最大充填率を表している(すなわち、各粒子が互いの近くに1つずつ配置される)。それは、規則的な充填密度として知られるものに対応し、本発明者らは、それをφvirtualと呼ぶことにする。CPMでは、予測される実際の最大充填率(φmax predicted)は、仮想最大充填率(φvirtual)から取得され、これは、充填指数Kに起因する。CPMが考慮する別の重要なパラメータは、2つ以上の粉末が一緒に混合されたときに一般的に生じる粒子相互作用である。De Larrardは、これらの粒子相互作用を幾何学的相互作用と呼ぶ。それらは、3つの可能な幾何学的相互作用を定義し、最も一般的なものは、部分的相互作用と呼ばれるものであると結論付けた。この相互作用は、互いにそう離れてはいない異なるサイズの直径を有する2つの粒子間で生じる相互作用として定義され得る。以下では、本発明者らは、粒子が部分的に相互作用して、仮想最大充填率及び予測される実際の最大充填率がCPMでどのように計算されるかを説明する二成分及び多分散混合物のみに焦点を当てることになる。
【0068】
所与の混合物についての仮想最大充填率の予測(φvirtual)は、その成分の各々の体積による粒子径分布(すなわち、各サイズクラス及びその対応する体積分率)、それらの実験的な最大充填率(φmax)、実験的な充填指数K、及び粒子間で生じる幾何学的相互作用に依存する。
【0069】
CPMがどのように機能するかを実証するために、成分1(粗粒子)及び成分2(微粒子)から構成される二成分混合物の例をとる。成分1及び2は、それぞれ、粒子直径としてd及びdを有する。CPMは、そのような混合物に少なくとも1つの支配的な直径があると仮定する。それゆえに、2つの異なる構成が区別され得る。第1の構成では、粗粒子直径が支配的である。1つの微粒子が粗粒子充填に挿入されたとき、かつ微粒子が粗粒子間の空間に充満するのに十分に小さい場合、後者の非構造化を誘導する粗粒子充填の緩みが存在する。この非構造化現象は、通常、「緩み効果」と呼ばれる(図4(a))。微粒子が支配的である第2の構成では、1つの粗粒子が微粒子充填に挿入されたとき、その表面近くの多孔度の増加が観察され、「壁効果」と呼ばれる別の種類の非構造化現象につながる(図4(b))。両方の効果は、異なるサイズの粒子間の幾何学的相互作用に依存し、支配的な成分の最大充填率の線形関数とみなされる。
【0070】
以下では、本発明者らは、粒子間で部分的な相互作用が生じる、以前(d≧d)と同じ二成分系を調査することによって、仮想最大充填率計算において上記に説明された効果をde Larrardがどのように含むかを詳述する。de Larrardの手法では、二成分混合物の仮想最大充填率は、次のように定義され得る。
【数2】
式中、φ及びφは、部分体積である(すなわち、他の成分の存在を考慮する各成分によって占有される体積)。以下では、y及びyは、それぞれ、成分1及び2の体積分率を表す。β及びβは、別個にとられる各成分の残留充填率を表す。
【0071】
定義によると:
【数3】
【0072】
粒子間に部分的な相互作用が存在する場合、緩み効果は、粗粒子が支配的であるときに発生するが、一方で、壁効果は、微粒子が支配的であるとき観察されることになる。それゆえに、仮想最大充填率を計算するために、緩み及び壁効果係数(それぞれa1,2及びb1,2)が考慮される。
【0073】
緩み効果は、微粒子の存在に起因して、部分体積φの低下につながる。既に述べたように、この効果は、微粒子が互いに十分離れていると仮定したため、部分体積φの線形関数である。そのため、この場合、仮想最大充填率φvirtualは、次に等しい。
【数4】
【0074】
壁効果は、微粒子が占有する体積の低減につながる。繰り返しになるが、粗粒子が互いに十分に離れている場合、実際の最大充填率φmax1の線形関数であると仮定することになる。次いで、次のように書く。
【数5】
支配的な直径が何であれ、φvirtual(1)及びφvirtual(2)が計算され得る。したがって、いずれの場合でも次のように記述することができる。
【数6】
次いで、
【数7】
【0075】
これらの最後の不等式は、de Larrardによって、成分1及び2に対する不可侵制約と呼ばれる。それゆえに、これらの以前の記述から、どちらの成分が支配的であるかにかかわらず、次のように結論付けることができる。
【数8】
【0076】
係数についての境界条件a1,2及びb1,2は、
【数9】
(粒子間の相互作用なし)であるとき、a1,2=b1,2=0であり、
【数10】
(粒子間の総相互作用)であるとき、a1,2=b1,2=1である。
【0077】
粒子相互作用を考慮する仮想最大充填率(φvirtual)の展開が図5に表される。相互作用がないか、又は部分的な相互作用が存在する場合、仮想最大充填率は、最適値に達するまで増加し、次いで、減少する。それにもかかわらず、2つ以上のクラスが一緒に混合されるとき、常に最適なものが存在するとは限らないことを示す。
【0078】
ここで、d≧d≧dである以下の三成分混合物の一般的なケースを考慮する。
2が支配的な成分であり、1が2のものに対する壁効果を発揮し、一方で、3が2に対する緩み効果を発揮していると仮定する。それゆえに、
【数11】
【0079】
以前と同じ手法に従う場合、以下を結論付けることができる:
【数12】
次いで、
【数13】
【0080】
緩み及び壁効果を説明する方程式の線形性に起因して、異なるサイズのn個の成分の多分散混合物についての仮想最大充填率を与える方程式を容易に一般化することができる。iが多分散混合物中で支配的であるとき、仮想充填率についての一般方程式は、次のとおりである。
【数14】
式中、
【数15】
【0081】
ここで、二成分混合物の実際の充填率を考慮する。既に述べられたように、仮想最大充填率から実際の最大充填率を推測することを可能にする充填指数Kが存在する。de Larrard手法では、二成分混合物についての充填指数Kに対する式は、次のとおりである。
【数16】
【0082】
支配的な成分iとの多分散混合物について、充填指数Kの式は、次のようになる。
【数17】
【0083】
単分散混合物の場合は次のようになる:
【数18】
【0084】
CPMを実際的な方式で使用することができるために、ソフトウェアとしてMicrosoft Excel(商標)を使用してプログラムされ得る。ソフトウェアプログラミングのステップは、Goncalves,E.V.;Lannes,S.C.d.S Food Sci.Technol.2010,30,845-851に明確に説明されているde Larrard手法に従うべきである。次いで、ソフトウェアが、初期チョコレート組成物についての最適粒子充填パラメータを決定するために使用され得る。
最適化された粒子状材料を取得すること
【0085】
初期チョコレート組成物についての最適粒子充填パラメータが決定されると、製造業者は、次いで、この情報を使用して、初期チョコレート組成物と同じ種類の粒子状成分を有する初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを生産することができるが、粒子状材料の特性は、それらの粒子状材料の粒子充填パラメータが、以前に決定された最適粒子充填パラメータに対して可能な限り厳密に一致するように、選択又は操作されている。
【0086】
実際には、絶対最適粒子充填パラメータを達成することが可能ではない場合があるため、必ずしも「最適」ではなく「最適化された」乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物における粒子充填パラメータを説明する。最適化とは、粒子充填パラメータが最適になるのに実際に可能な限り近いこと、又は絶対的に最適であることを意味すると理解されるべきである。
【0087】
一例では、製造業者は、粒子径分布及び粒子形状などの、それらの特性を考慮して、粒子状材料の利用可能なセットから粒子状材料の最良の組み合わせを選択することによって、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物のための粒子状材料を選択し得る。別の例では、製造業者は、既知の方法(例えば、研削、粉砕など)を使用して、それらのサイズ及び/又は形状を変更することによって、利用可能な粒子状材料を操作し得る。いずれの場合も、目的は、以前に決定された最適な粒子充填パラメータに可能な限り厳密に一致する粒子状材料を取得することである。
【0088】
粒子充填パラメータが最適化されているとき、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも大きい最大充填率、及び初期チョコレート組成物の粘度と実質的に同一である粘度を有する。「実質的に同一の」粘度は、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物の粘度が、初期チョコレート組成物の粘度と同じであるか、又は乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物の意図された用途を考慮して、許容可能な限界(例えば、±5%)以内で初期チョコレート組成物の粘度と異なることを意味する。言い換えると、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物は、初期チョコレート組成物と同じ用途に好適であるように、粘度を有し、初期チョコレート組成物に対する代替、交換、又は置換物として使用され得る。
【0089】
一般に、所与のチョコレート組成物が、本発明の方法に従って生産された乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物であるか否か、すなわち、所与のチョコレート組成物中の粒子状材料が当該方法によって最適化されるか否かを検証され得、これは、そのような場合、所与のチョコレート組成物の最大充填率が当該方法で使用される数学的モデルに厳密に当てはまることになるためである。所与の実際のチョコレート組成物の最大充填率は、本明細書に説明される遠心分離測定方法1を使用して測定され得る。代替的に、所与のチョコレート組成物の粒子状材料の粒子径分布及び/又は形状などの特性が、例えば、文献から、既知である場合、所与のチョコレート組成物の最大充填率は、例えば、ソフトウェアを使用して、上記に説明されたCPMに当該値を入力することによって数学的に計算され得る。後者は、以下の実施例3で実証される。
【0090】
本出願人は、驚くべきことに、最大充填率の計算を達成するために成分を選択するときに、実質的に同一の粘度を維持しながら、乳化剤含有量が低減又は排除され得ることを見出した。
最大充填率、粘度、及び降伏応力の例示的な値
【0091】
本発明のチョコレート組成物の最大充填率は、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも大きい。好ましくは、本発明のチョコレート組成物の最大充填率は、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも少なくとも1%、又はより好ましくは、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも少なくとも3%大きい。非限定的な例では、チョコレート組成物の最大充填率は、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、又は0.75以上である。
【0092】
図1を参照して上記に詳述された最大充填率と粘度との間の相関関係、及びチョコレート処理のための粘度の重要性に起因して、rチョコレート組成物の所望の最大充填率は、チョコレート組成物の最終的な用途に依存し得る。例えば、押出用途のためのチョコレート組成物の理想的な最大充填効率は、エンロービング用途のためのチョコレートの最大充填率とは異なることになる(例えば、より高い)。例えば、最大充填率は、押出用途について0.72以上、成形用途について0.63以上、エンロービング用途について0.64以上、又は冷凍菓子(例えば、アイスクリーム浸漬)用途について0.66以上であり得る。本発明のチョコレート組成物についてのビンガム粘度値は、0.1~10Pa.sである。例えば、粘度は、40℃で1~9Pa.s、2~8Pa.s、3~7Pa.s、又は4~6Pa.sであり得る。
【0093】
粘度は、ビンガム塑性モデルで測定され得る。ビンガム塑性モデルは、多くのタイプの流体の流動特性を説明するために広く使用されている2パラメータレオロジーモデルである。それは、次のように数学的に説明され得る。
【数19】
式中、
【数20】
【0094】
塑性粘度は、ビンガム塑性モデルのパラメータである。それは、降伏応力を上回る剪断応力/剪断速度線の勾配である。
【0095】
降伏応力は、休止から流動を開始するために克服されるべき最小応力である。本発明のチョコレート組成物のビンガム降伏応力は、40℃で1~150Paである。例えば、降伏応力は、20~130Pa、又は40~110Pa、又は60~90Paである。
【0096】
粘度及び降伏応力についての測定方法は、以下の測定方法2に提供される。
【0097】
本発明の乳化剤非含有チョコレート組成物は、固相体積x、及び40℃以上でPa.sのビンガム塑性粘度値yを有し、
Xが、0.4~0.7であり、
y<264x-330x+141x-20である。
【0098】
本明細書で使用される場合、「固相体積」は、粒子状材料によって占有される総体積と溶融されたチョコレート組成物の総体積との比率を指し、次いで、固相(すなわち、粒子状材料)と脂肪相との積の合計である。
製造方法
【0099】
一例では、本発明の方法は、上記に説明されるように最適化された粒子充填パラメータを有する、利用可能な粒子状材料の中から少なくとも2つの粒子状材料を選択すること、すなわち、能動的に選択することを伴う。したがって、粒子状材料の選択は、上記に説明されるような粒子充填密度を最適化するための数学的モデリングによって駆動される。選択される少なくとも2つの粒子状材料は、充填密度を増強するために、異なる平均粒子径を有することが重要である。
【0100】
方法の目的は、初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを生産することであるため、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物で使用するために選択される成分(すなわち、粒子状材料、脂肪、及び乳化剤)は、粒子状材料の粒子充填パラメータが異なる(最適化される)ことになることを除いて、初期チョコレート組成物で使用される成分と同じタイプの成分になる。例えば、初期チョコレート組成物がカカオ固形分、糖、カカオ脂、及びPGPRを含む場合、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物もまた、カカオ固形分、糖、カカオ脂、及びPGPRを含有することになるが、差は、粒子充填パラメータが最適化されるようにカカオ固形分及び糖が具体的に選択されることである。
【0101】
別の例では、本発明の方法は、例えば、それらの粒子径分布及び/又は粒子形状を変化させることによって、1つ以上の利用可能な粒子状材料を操作することを伴い、その結果、上記のように、最適化された粒子充填パラメータを保有する。この操作を実施するのに好適な技術の非限定的な例としては、研削又は粉砕が挙げられる。
【0102】
少なくとも2つの粒子状材料が、選択又は操作のいずれか又はその両方によって取得されると、それらは、脂肪相と乳化剤(存在する場合)とを組み合わせて、任意の既知のチョコレート作製技術を使用してチョコレート組成物を形成する。
【0103】
好ましくは、方法は、乳化剤を添加するステップを含まないため、結果的に得られる組成物は、乳化剤非含有である。乳化剤が使用される場合、初期組成物中の乳化剤の量に対してより少量の乳化剤が添加される。脂肪及び乳化剤は、別々に又は同時に粒子状材料と組み合わせられ得る。一例では、乳化剤は、粒子状材料/脂肪混合物に添加される。代替例では、乳化剤は、粒子状材料と組み合わせる前に脂肪相に添加される。脂肪は、一度に、又はバッチで添加され得る。組み合わせは、混合中に好ましくは生じる。
【0104】
任意選択的に、粒子状材料は、脂肪相と組み合わせる前に予備混合され得る。
【0105】
任意選択的に、粒子状材料は、精製プロセスに供され得る。これは、方法の任意の段階で生じ得る。
【0106】
方法はまた、コンチングステップを含み得る。
食品
【0107】
本発明のチョコレート組成物は、食品の全部又は一部を形成し得る。食品は、好ましくは、菓子製品である。菓子製品は、風味が主に甘い食品である。例示的な菓子製品としては、限定されるものではないが、チョコレート、チョコレート様材料、脂肪連続フィリング材料、冷凍菓子(例えば、アイスクリーム)、冷凍菓子内のチョコレート片、ビスケット、ケーキ、パン、及びペーストリーなどの焼き菓子、スイーツ、キャンディ、グミ、砂糖菓子、タブレット、お菓子、トフィー、ボイルドスイーツ、ボンボン、キャンディフロス、キャラメル、ファッジ、リコリス、マシュマロ、ヌガー、トリュフ、フォンダン、ガナッシュが挙げられる。本発明による菓子製品は、食品全体であってもよく、又は食品のためのフィリング、結合剤、シェル若しくはコーティング、含有物又は装飾などの、食品の一部であってもよい。上記の代替物の任意の組み合わせも本発明に包含される。
【0108】
好ましくは、菓子製品は、チョコレート製品である。本発明の文脈では、「チョコレート」という用語は、「チョコレート組成物」という用語と同じ定義を有する(上記の定義を参照されたい)。
測定方法
1. 最大充填率を測定すること
【0109】
チョコレート固形分の最大充填率(φmax)は、乳化剤、PGPRを使用して、解膠(deflocculated)状態における多段遠心分離(摩擦力を有する非凝集固形が降伏応力最適化を介して最小まで低減される)によって測定される。
【0110】
レシピ(例えば、ダークチョコレート又はミルクチョコレート)に応じて、PGPR投与量は、降伏応力対PGPR濃度の測定を必要とする。
φmax=φinitial(Hinitial/Hequilibrium
式中、φinitial=Vsolid/(Vsolid+Vfat)であり、
solidは、遠心分離前に懸濁液中の個体粒子によって占有された体積であり、及びVfatは、遠心分離前に懸濁液中の脂肪によって占有された体積である。
【0111】
initial(Hとしても言及される)及びHequilebriumは、以下に定義される。
【0112】
液体状態の脂肪は、溶融されたカカオ脂であり、乳化剤、及びミルクチョコレートの場合、全脂粉乳由来の脂肪を含み得る。
【0113】
固形分(すなわち、粒子状材料)は、次のとおりである。
-ダークチョコレートについて、糖(スクロース)、カカオ固形分(カカオ液由来)
-ミルクチョコレートについて、糖(スクロース)、ラクトース、カカオ固形分(カカオ液由来)、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイ粉末。組成計算において、全脂粉乳(典型的には26重量%)の脂肪が、配合物質量から推測され、液体脂肪相に添加されることに留意されたい。
【表1】
装置:
-遠心分離:Sorvall Legend XTR Thermo Fisher Scientific(又はSigma3-16PK)、測定温度は、40℃である(遠心分離機は、予熱され、以下を参照されたい)。ロータは、4つの円形バケツを有するTX-750、コード7500 6308である。
【0114】
円形バケツは、合計28個の管である50mLの7つの管を収容することができるホルダ7500 3638を収容する。
-シールキャップを有する50mLポリプロピレン遠心管(VWR SuperClear)。
-4ブレードプロペラ07 410 00を有するRWD 20 Digital IKA撹拌器。
-金属へら。
-0.01g単位の化学天秤。
-プラスチックパスツールピペット。
-V13GAバッテリで動作するMitutoyo UK Ltd.(コード500-123U、モデルn℃D-15B、シリアル番号287072)のノギス。
-遠心分離前のチョコレート溶融及び調整のための50℃に設定されたファンアシストオーブン。
-超微粉なしのチョコレートを溶融するために50℃に設定され、超微粉を有するミルクチョコレートを溶融するために60℃に設定され、超微粉を有するダークチョコレートを溶融するために80℃に設定されたファンアシストオーブン。
-微細マーカペン
-較正された熱電対(0.1℃のデジタル読み取り値)
材料:
-オーブン内及び遠心分離中に)温度制御のために使用される液体状態のカカオ脂。
-PGPR(50℃で保管)。
チョコレート溶融方法:
【0115】
通常のチョコレートでは、50℃で一晩溶融が十分である。
【0116】
超微細粒子を有するチョコレートでは、ダークチョコレートは、80℃で一晩溶融され、ミルクチョコレートは、60℃で一晩溶融される。
【0117】
溶融後、内容物は、5分間840rpmで設定された4ブレードプロペラを有するRWD 20 Digital IKA撹拌器で完全に混合されて、全ての粒子がランダムに、かつ均質に分散されることを確保する。
【0118】
近接組成物に基づくφ(次のセクションのφの定義を参照されたい)、及び標的φから、PGPR投与量を考慮して(PGPRは脂肪とみなされる)、液体脂肪が添加又は除去される必要がある。
【0119】
Phi max、流動学、及びPSDに関して十分な試料を確保するために、50mLの3つの遠心管(充填レベル約45mL)に十分である質量スケールで溶融されたチョコレートを調製する。
チョコレート組成物及びφ
【0120】
標的φは、系が異なる粒子径の層に分離しない値が0.53であることを見出したため、ダークチョコレート及びミルクチョコレートの両方で少なくとも0.53である。
【0121】
PGPR最適投与量は、流動曲線(40℃における)を使用して決定される。異なる割合のPGPRが試料に添加され、粘度及び降伏応力が流動曲線を取得するために測定される。添加されるPGPRの割合は、固形粒子の総質量当たり0~2.5%(0.5%の増分で)の範囲である。降伏応力が最低であるPGPRの割合は、最大充填率を決定するために試料を解膠するために使用される投与量である。理論に拘束されることを望むものではないが、最小降伏応力は、試料が解膠される降伏応力に対応するため、使用され、粒子間に相互作用が存在しないことを意味する。最小降伏応力では、試料は、完全に解膠されたとみなされることができ、最大充填率を測定するために、系は、解膠状態になければならない。ダークチョコレート及びミルクチョコレートのそれぞれの例示的なPGPR流動曲線が図2及び図3に示される。
【0122】
降伏応力が最小である最適なPGPR投与量は、ダークチョコレートの総固形分の1.5%及びミルクチョコレートの総固形分の2.0%であることが見出された。
【0123】
チョコレート組成物に応じて、初期φは、標的φよりも高いか、又は低くてもよく、言い換えると、脂肪は、添加又は除去される必要があり得る。
【0124】
脂肪が除去される必要があるとき、試料は、4500rpmで約1時間、遠心分離される。脂肪が除去され、添加されたPGPR及び内容物が、ミキサを用いて完全に混合されて、φmaxのために直接分析される(培養の必要なしで)流体平滑スラリーを与える。
【0125】
例示1:ダークチョコレート:Noir 58 HC5738 AA00
*糖40.84w%
*カカオマス43.96w%(54w%の脂肪及び46w%のカカオ固形分から構成される)
*カカオ脂15.20w%
【表2】
【表3】
【0126】
初期状態の総質量100g当たり、除去する総脂肪の量は、5.15g(38.94-33.79)であるが、これは、0.92g(1.5%×61.06gの固形分)である、添加するためのPGPRを含む。
【0127】
したがって、遠心分離後に6.07gの脂肪が最初に除去され、次いで、0.92gのPGPRが添加される。
【0128】
例示2:ミルクチョコレート:Lacte Equilibre HL3435 AA00
*糖41.86w%
*カカオマス10.77w%(54w%の脂肪及び46w%のカカオ固形分から構成される)
*カカオ脂24.64w%
*全脂粉乳22.73w%(26w%の脂肪及び74w%の脱脂粉乳から構成される)
【表4】
【表5】
【0129】
初期状態の総質量100g当たり、除去する総脂肪の量は、2.22g(36.37-34.15)であるが、これは、0.95g(1.5%×63.63gの固形分)である、添加するためのPGPRを含む。
【0130】
したがって、遠心分離後に3.17gの脂肪が最初に除去され、次いで、0.95gのPGPRが添加される。
【0131】
PGPRの添加後、内容物が、5分間840rpmに設定された4ブレードプロペラを有するRWD 20 Digital IKA撹拌器を用いて混合される。解膠されたチョコレートは、遠心分離の準備が整う。
遠心分離手順:
1)遠心管充填
【0132】
垂直位置で、すなわち、ホルダ直径が大き過ぎて管ホルダ高さが低過ぎる場合に生じる傾きなしで、管に充填するために、直径が試験管よりもわずかに大きい管ホルダに空の管を置く。
【0133】
PGPR-解膠チョコレートを45mLのマークに移し、管をスクリューキャップで閉じ、微細マーカペンを使用して、底部及び頂部に4本の線を描く。4本の線は、2つの対角線の交差にある。
【0134】
手順は、3つの複製の平均のために、3つの異なる管で行われる。
2)遠心分離予熱及び始動
【0135】
遠心分離機は、第1の遠心分離ステップの前に温度管理される。予熱は、約20分かかり、4153rpmで回転して、熱風の流れを生成する。したがって、予熱は、管なしで行われる。
【0136】
遠心分離機は、速度/RCFを選択するための2モードを有する。動作モードは、回転速度rpmである。
【0137】
選択パラメータは、次のとおりである。
-加速度1(低)
-制動速度1(低)
-温度40℃
【表6】
【0138】
遠心分離ステップ5の終了時、初期高さ(H)及び遠心分離プロセス後の固形分と脂肪との間の分割線の高さ(Hequilibrium)を記録する。初期高さは、管に入れられる混合物の全高である(固相及び脂肪相の両方を含む)。しかしながら、混合物は、結果を歪ませることになる気泡を最初に含有し得る。したがって、全高の測定は、遠心分離後に行われ、その結果、気泡は、遠心分離によって除去され得、実際の全高が測定され得る。
【0139】
ステップ6及び7は、両方の高さが一定であることを確認することである。
【0140】
そうでない場合、一定になるまで追加の1時間ステップに進む。
結果:
【0141】
最大充填率は、以下のとおりである。
φmax=φ[H/Hequilibrium
【0142】
3回の測定(3つの別個の50mL遠心管)の平均をとって、数値を小数第2位まで報告する。
2. レオロジー特性(塑性粘度及び降伏応力)を測定すること
装置:
-40℃にサーモスタットで制御された水槽を備えるC-VOR Bohlin Rheometer。ベーン幾何学的形状が測定に使用される。ベーンツール直径は、25mmであり、その高さは、40mmであり、外側カップ直径は、50mmであり、その深さは、60mmである。
-Turbo-Test Rayneri VMIミキサ
-600mLガラスビーカ(VWR Collection)。
-金属へら。
-0.01g単位の化学天秤。
-試料調製前のチョコレート溶融及び調整のための50℃に設定されたファンアシストオーブン。
-ヒマワリ油加熱のために50℃に設定され、超微粉を有するミルクチョコレートを溶融するために60℃に設定され、超微粉を有するダークチョコレートを溶融するために80℃に設定されたファンアシストオーブン。
材料:
-チョコレート試料(CARGILLによって提供される)
チョコレート溶融:
【0143】
通常のチョコレートでは、50℃で一晩溶融が十分である。
【0144】
超微細粒子を有するチョコレートでは、ダークチョコレートは、80℃で一晩溶融され、ミルクチョコレートは、60℃で一晩溶融される。
試料の調製:
【0145】
オーブンから取り出したときにチョコレート試料を金属へらで混合する。
【0146】
150gをガラスビーカに注ぐ。150gは、ベーン形状に充填するために必要な量である。
【0147】
次いで、それを、ターボ試験Rayneri VMIミキサを使用して、840rpmで5分間混合する。混合は、5分後に40℃の試料を有するために、湯せんで行われるべきである。
【0148】
レオロジー測定は、混合直後に行われなければならない。
調査された試料は、次のとおりである。
試料1:Mouscronダークチョコレート、Noir 58 HC5738 AA00
*糖40.84w%
*カカオマス43.96w%(54w%の脂肪及び46w%のカカオ粒子から構成される)
*カカオ脂15.20w%
試料2:Mouscronミルクチョコレート、Lacte Equilibre HL3435 AA00
*糖41.86w%
*カカオマス10.77w%(54w%の脂肪及び46w%のカカオ粒子から構成される)
*カカオ脂24.64w%
*全脂粉乳22.73w%(26w%の脂肪及び74w%の脱脂粉乳から構成される)
測定手順:
【0149】
レオメータのカップに試料を充填し、測定シーケンスを開始した。
【0150】
試料は、177s-の速度で300秒間予備剪断される。
【0151】
残り3秒の時点で、試料は、100s-~1s-の低下する剪断速度の傾斜に500秒間供され、次いで、1s-~100s-の上昇する剪断速度の傾斜に500秒間供される。
【0152】
調査された剪断速度の範囲を網羅するために線形取得を選択する。
【0153】
低下、次いで、上昇する傾斜のシーケンスは、測定の再現性、試料の安定性を検証すること、及びレオロジー挙動に対して調査された系のチキソトロピーの影響がこのプロトコルで無視できることを確保することを可能にする。
【0154】
以下では、データ分析のために低下曲線のみを調査する。
結果:
【0155】
流動曲線は、ビンガム方程式で当てはめられる。
【0156】
分析手順は、次のとおりである。
-剪断速度の関数として見かけ粘度をプロットする。
-100s-~1s-の剪断速度を意味する低下曲線についてのみ、剪断速度の関数として剪断応力をプロットする。
-y=ax+bの線形方程式を有するように、曲線に線形近似曲線を追加する。
【0157】
試料の塑性粘度及び降伏応力は、それぞれ、a及びbによって与えられる。
3. 粒子径分布を測定すること
【0158】
チョコレートの固形粒子の粒子径分布は、レーザ回折法(解膠状態で)によって測定される。
【0159】
PGPRが、粒子を溶媒(すなわち、油)中に分散させるために使用される。粒子を分散させるのに必要なPGPR投与量は、異なる投与量における数回の測定後に決定された(セクションPGPR投与量を参照)。
用語の定義:
【0160】
粒度分布の計算は、Mie理論に基づく。
-d10、d50、及びd90は、これらの計算から取得された特性直径である。
-d10は、10%の粒子がその直径を下回る、体積ベースの直径である。
-d50は、50%の粒子がその直径を下回る、体積ベースの直径である。
-d90は、90%の粒子がその直径を下回る、体積ベースの直径である。
【0161】
Mie理論による粒度分布の計算には、光学指数(屈折率及び吸収)が必要である。それらは、材料の複素屈折率の実数及び虚数部分によって表され、次のように定義される。
N=n-ik
式中、nが実数部分であり、材料の性質に依存する。虚数部分kは、交差する粒子による光ビームの吸収を表す。それはまた、材料の性質に依存するが、その純度にも依存する。
【0162】
固形粒子は、次のとおりである。
-ダークチョコレートについて、糖(スクロース)、カカオ粒子(カカオマス由来)
-ミルクチョコレートについて、糖(スクロース)、ラクトース、カカオ粒子(カカオマス由来)、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイ粉末。
【0163】
ヒマワリ油は、溶媒として使用される。
【表7】
装置:
-分散ユニットHydro LV(Malvern Instruments Ltd.,Malvern Panalytical,France)を備えるレーザ回折計Mastersizer 3000。
-Turbo-Test Rayneri VMIミキサ
-圧力キャップを有する25mLガラスボトル(VWR Collection)。
-金属へら。
-0.01g単位の化学天秤。
-プラスチックパスツールピペット。
-試料調製前のチョコレート溶融及び調整のための50℃に設定されたファンアシストオーブン。
-ヒマワリ油加熱のために50℃に設定され、超微粉を有するミルクチョコレートを溶融するために60℃に設定され、超微粉を有するダークチョコレートを溶融するために80℃に設定されたファンアシストオーブン。
材料:
-商用ヒマワリ油(AUCHAN,France)
-乳化剤:PGPR(CARGILLによって提供される)。
-チョコレート試料(CARGILLによって提供される)
チョコレート溶融:
【0164】
通常のチョコレートでは、50℃で一晩溶融が十分である。
【0165】
超微細粒子を有するチョコレートでは、ダークチョコレートは、80℃で一晩溶融され、ミルクチョコレートは、60℃で一晩溶融される。
試料の調製:
【0166】
7gのヒマワリ油及び1gのPGPRを含有する溶液中に10gの溶融されたチョコレートを添加する。
【0167】
懸濁液を840rpmで5分間、Turbo-Test Rayneri VMIミキサを用いて混合して、全ての粒子が均質に分散されることを確保する。
【0168】
懸濁液をオーブン又は水槽内に50℃で一晩置く。
【0169】
各測定について600mlのヒマワリ油を50℃で一晩置く。
調査された試料は、次のとおりである。
試料1:Mouscronダークチョコレート、Noir 58 HC5738 AA00
*糖40.84w%
*カカオマス43.96w%(54w%の脂肪及び46w%のカカオ粒子から構成される)
*カカオ脂15.20w%
試料2:Mouscronミルクチョコレート、Lacte Equilibre HL3435 AA00
*糖41.86w%
*カカオマス10.77w%(54w%の脂肪及び46w%のカカオ粒子から構成される)
*カカオ脂24.64w%
*全脂粉乳22.73w%(26w%の脂肪及び74w%の脱脂粉乳から構成される)
測定手順:
【0170】
測定に必要なパラメータ(試料の名称、粒子及び溶媒の光学指数、粒子の形状...)を入力する。ソフトウェアを設定して各測定を5回繰り返すことを確認する。
【0171】
ユニットセルを予熱された600mlのヒマワリ油で充填し、セルを覆う。
【0172】
12~15%の不透明度まで調製された試料をセル内に注ぐ。
【0173】
粒子径分布を測定する。
【0174】
ダークチョコレート試料について、2回の測定が行われなければならない。1回の測定に糖の光学指数を使用し、もう1回の測定にカカオの指数を使用する。したがって、体積による粒子径分布は、各測定について取得される。
【0175】
ミルクチョコレート試料について、原理は同じであるが、2回の代わりに3回の測定を行う必要がある。第3の測定は、ミルクの光学指数で行われる。
結果:
・試料1:Mouscronダークチョコレート、Noir 58 HC5738 AA00
1. カカオの光学指数を使用して5つの連続測定から取得された体積による粒子径分布を平均化する。
2. 糖の光学指数を使用して5つの連続測定から取得された体積による粒子径分布を平均化する。
3. 試料中のカカオ及び糖粒子の体積割合を推定する。
糖の体積割合(α):
【数21】
カカオ粒子の体積割合(β):
【数22】
以下を再び用いる。
【数23】
及びカカオ粒子の質量=0.46×カカオマスの質量
試料1について、次を見出す。
【数24】
4. ダークチョコレートについての体積による粒子径分布は、それぞれの体積割合に従ってカカオ及び糖の光学指数で取得された体積による平均粒子径分布を平均化することによって取得される。
固定サイズにおける試料1について、
ダークチョコレートの体積割合(γ):
γ=(α×カカオの光学指数を用いて取得された体積による平均粒子径分布)+(β×糖の光学指数を用いて取得された体積による平均粒子径分布)
・試料2:Mouscronミルクチョコレート、Lacte Equilibre HL3435 AA00
【0176】
分析手順は、以前に説明されたものと同じである。しかしながら、この場合、ミルク粒子も考慮されるべきである。したがって、それらの体積割合を決定する必要がある。
糖の体積割合(α):
【数25】
カカオ粒子の体積割合(β):
【数26】
ミルク粒子の体積割合(Φ):
【数27】
以下を再び用いる。
【数28】
及びミルク粒子の質量=0.74×全脂粉乳の質量
試料2について、次を見出す。
【数29】
固定サイズにおいて、
ミルクチョコレートの体積割合(δ):
δ=(α×カカオの光学指数を用いて取得された体積による平均粒子径分布)+(β×糖の光学指数を用いて取得された体積による平均粒子径分布)+(δ×ミルクの光学指数を用いて取得された体積による平均粒子径分布)
例示的な実施形態
【0177】
以下は、本発明の例示的な実施形態である。
【0178】
例示的な実施形態1.固相体積x、及び40℃以上でPa.sのビンガム粘度値yを有し、
xが、0.4~0.7であり、
y<264x-330x+141x-20である、乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0179】
例示的な実施形態2.連続脂肪相及び任意選択的に乳化剤を含む、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を調製する方法であって、方法が、
脂肪相及び乳化剤全体に分散された少なくとも2つの粒子状材料を含む初期チョコレート組成物を提供することと、
初期チョコレート組成物の最大充填率及び粘度を決定することと、
初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを調製することと、を含み、調製することが、
少なくとも2つの粒子状材料のための最適化された粒子充填パラメータを決定することであって、最適化された粒子充填パラメータは、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも大きい最大充填率、及び初期チョコレート組成物の粘度と実質的に同一である粘度を有するように、最適化される、決定することと、
最適化された粒子充填パラメータを有する少なくとも2つの粒子状材料を選択することと、
選択された粒子状材料を、脂肪相及び任意選択的に乳化剤と組み合わせて、初期チョコレート組成物の乳化剤低減又は乳化剤非含有バージョンを提供することと、による、方法。
【0180】
例示的な実施形態3.粒子充填パラメータが、粒子径分布、粒子形状、及び/又は少なくとも2つの粒子状材料の相対量を含む、例示的な実施形態2に記載の方法。
【0181】
例示的な実施形態4.最適化された粒子充填パラメータは、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物が、初期チョコレート組成物の最大充填率よりも少なくとも1%大きい最大充填率を有するように、最適化される、例示的な実施形態2又は3に記載の方法。
【0182】
例示的な実施形態5.最大充填率が、粒子状材料の粒子径分布及び/又は形状の入力値に基づいて最大充填率を予測するソフトウェアを使用して決定される、例示的な実施形態2~4のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
例示的な実施形態6.最大充填率(φmax)が、測定方法1によって実験的に決定される、例示的な実施形態2~4のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
例示的な実施形態7.例示的な実施形態2~6のいずれか1つに記載の方法によって取得されるか、又は取得可能である、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0185】
例示的な実施形態8.
連続脂肪相及び任意選択的に乳化剤全体に分散された少なくとも2つの粒子状材料を含み、
少なくとも2つの粒子状材料が、互いに異なるD50粒子径を有する、例示的な実施形態1又は7に記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0186】
例示的な実施形態9.少なくとも2つの粒子状材料のD50粒子径が、3~12倍だけ互いに異なる、例示的な実施形態8に記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0187】
例示的な実施形態10.押出用途について0.72以上、成形用途について0.63以上、エンロービング用途について0.64以上、又はアイスクリーム用途について0.66以上である最大充填率を有する、例示的な実施形態1又は7~9のいずれか1つに記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0188】
例示的な実施形態11.40℃で、0.1~10Pa.sのビンガム粘度値、及び1~150Paのビンガム降伏応力を有する、例示的な実施形態1又は7~10のいずれか1つに記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0189】
例示的な実施形態12.少なくとも2つの粒子状材料が、糖、カカオ固形分、乳固形分、増量剤、炭酸カルシウム、栄養粒子、及び香味料、並びに/又はそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、例示的な実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0190】
例示的な実施形態13.脂肪相が、カカオ脂、カカオ脂等価物、カカオ脂代替物、無水乳脂肪、それらの画分、及び/又はそれらの2つ以上の混合物を含む、例示的な実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法、乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物。
【0191】
例示的な実施形態14.乳化剤が、レシチン、ダイズレシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)、アンモニウムホスファチド(AMP)、ソルビタントリステアレート、ポリエルカ酸スクロース、ポリステアリン酸スクロース、リン酸モノ-ジ-グリセリド/モノグリセリドのジアセチル酒石酸からなる群から選択される、例示的な実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法又は乳化剤低減チョコレート組成物。
【0192】
例示的な実施形態15.例示的な1又は7~15のいずれか1つに記載の乳化剤低減又は乳化剤非含有チョコレート組成物を含む、食品。
実施例
実施例1-甘味脂肪の調製
1. 11.7kg(78%)の結晶糖(重量)と3.3kg(22%)の液体カカオ脂との混合物がStephanミキサを使用して完全に混合される。
2. この混合物がトリプルロールリファイナを通過する。
3. 取得されたフレークが収集される。
4. これらのフレークが同じトリプルロールリファイナを通して第2の時間に送られる。
5. 0.15kg(1%)のカカオ脂が二重研削フレークに添加される。
6. この混合物がColetteコンチェ(垂直軸)に移される。
7. それは、60℃で5時間コンチングされる。
甘味脂肪中の糖のD50粒子径は、10.86μmである。
実施例2-乳化剤非含有チョコレート組成物
【0193】
表8の配合物を有する、押出用途のためのダークチョコレート試料を調製した。配合物1は、乳化剤を含有するが、最適化されていない粒子充填を有し、配合物2は、乳化剤を含有せず、最適化されていない粒子充填を有したが、一方で、配合物3は、乳化剤を含有せず、粗糖との甘味脂肪の30%の交換に起因する最適化された粒子充填を有した。配合物の粘度及び降伏応力を、上記の方法論に従って測定した。
【表8】
【0194】
結果は、乳化剤を排除することが、通常、粘度を増加させるが、粒子充填が最適化されたとき、乳化剤が、粘度に影響せずに除去され得ることを示す。
実施例3-糖を粗糖と交換する効果を更に調査する
【0195】
糖を粗糖と交換する粘度に対する効果を評価するために、更なる調査を実施した。
【0196】
本明細書に説明されるCPMを使用すると、配合物1中の糖の80%が粗糖に置換されたときに、最適に達するまで、φmaxが増加することが数学的に予測された。したがって、仮説は、乳化剤なしで配合するときの粘度の増加を回避するために、糖の少なくとも80%を粗糖で置換する必要があることであった。これを実験的に試験した。結果が表9に示される。
配合物4=粗糖なし
配合物5=粗糖によって交換された式1における糖の40%
配合物6=粗糖によって交換された式1における糖の60%
配合物7=粗糖によって交換された式1における糖の80%
【表9】
【0197】
予想どおり、配合物7(80%粗糖)は、配合物4(粗糖なし)の粘度に最も近い粘度を有した。したがって、CPMは、正確な予測を提供する。追加的に、80%粗糖の置換は、乳化剤の不在下における降伏応力の低下につながった。
実施例4-欧州特許第1061813号に説明されるチョコレートの最大充填率の計算
【0198】
欧州特許第1061813号は、実施例5のチョコレートを開示している。
【0199】
欧州特許第1061813号の実施例5に説明される粒子状材料の粒子径分布は、当該文書の図2aを参照することによって決定された。
【0200】
脱脂粉乳の密度は、測定されなかった。しかしながら、文献では、引用される密度は、1.13kg/m3である(参照によって本明細書に組み込まれる、Walstra P,JTM Wouters and TJ Geurts 2006 Dairy Technology 2nd edition CRC/Taylor&Francisを参照されたい。
【0201】
欧州特許第1061813号の実施例5に開示されている粒子状材料の比率(重量による)は、次のとおりである。
糖68.5%
脱脂粉乳25.4%
カカオ粉末6.1%
【0202】
上記の値を、de Larrard手法(CPM)に従うようにプログラムされたMicrosoft Excel(商標)スプレッドシートに入力し、de Larrard手法は、上記及びGoncalves,E.V.;Lannes,S.C.d.S Food Sci.Technol.2010,30,845-851に説明されている。これは、0.54の最大充填率値を出力する。この値は、本明細書に説明された最大充填率値(0.60以上)と比較して低い。理論に束縛されるものではないが、これは、カカオ粉末及び脱脂粉乳の粒子径が欧州特許第1061813号において非常に類似しているためであると考えられる。
【0203】
次いで、欧州特許第1061813号に説明されている粒子状材料の比率を変化させて、最大充填率値に対する効果を観察した。結果が表13に示される(CPMars)。比率を変化させることは、最大充填率値にほとんど影響しなかった。
【0204】
比較の目的で、次いで、同じ比率を調査したが、カカオ粉末を、1.8μmのより微細な粒子径を有する理論上のカカオ粉末のためのモデルで置換した。これらの結果もまた、表13に示される(CP1.8μm)。カカオ粉末を一貫して置換することは、より高い最大充填率値を結果的にもたらした。
【表10】
実施例5-圧縮性充填モデルから計算された最大充填率に対する粒子形状の効果
【0205】
図6に示される粒子径分布を有する典型的なカカオ粉末(粒度測定によって測定)及び0.49の最大充填率(遠心分離によって測定)を調査した。
【0206】
粉末の粒子径分布及び最大充填率から、圧縮性充填モデル(CPM)は、粉末の固有の形状係数β(図7に示されるように、ここでは0.42に等しい)の計算を可能にする。形状係数βは、同じ粒子形状を有する単分散粉末の最大充填率に対応する。多分散粉末を扱うとき、モデルは、同じ粉末について、粒子の形状がサイズクラスに対して独立していると仮定する。
【0207】
カカオの最大充填率に対する形状係数の効果を調査するために、ここでは、形状係数を変化させ、図6からの粒子径分布を維持しながら、CPMから対応する最大充填率を計算する。
【0208】
図7aは、CPMから計算された一定の粒子径分布を有するカカオ粉末についての形状係数の関数としての最大充填率を示す。形状係数の上昇は、粉末の最大充填率の上昇につながることに留意されたい。0.64に等しい形状係数は、球体に対応する。
【0209】
文献では、粒子アスペクト比は、粒子最大充填率に影響する主なパラメータのうちの1つであることが示されている。これらの粉末のアスペクト比を、Ahmadahら(Oumayma Ahmadah,Controle de la rheologie des liants a faibles impacts environnementaux,Universite Gustave Eiffel,These 2021)によって開発された半経験式から計算し、最大充填率をアスペクト比の関数としてプロットした(図9b参照)。粒子径分布を一定に維持しながら粒子のアスペクト比を低下させることが、最大充填率の上昇につながることに留意されたい。
【0210】
本明細書に説明されるように、粉末の最大充填率を上昇させることは、粘度を一定に維持しながら、チョコレート組成物中の乳化剤含有量の減少を可能にする。
【0211】
これらの結果は、CPMを利用する本発明の方法が粒子の形状を考慮に入れること、及び充填特性に対する、したがって、チョコレート組成物成分選択に対する粒子形状の影響が非常に重要であることを示す。
【0212】
前述の明細書、又は以下の請求項、又は付属の図面で開示され、特定の形態、又は開示される機能を実行する手段によって表される特徴部、若しくは、開示される結果を達成するための方法又はプロセスは、必要に応じて、発明を実現するために様々な形態で用いられ得る。
【0213】
本発明の特定の例示的実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲は、これらの実施形態にのみ限定されることを意図するものではない。特許請求の範囲は、文字通り、目的にかなって、及び/又は均等物を包含するものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】