(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】薬剤送達装置に取り付けられた補助装置の起動および検出システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230623BHJP
A61M 5/50 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61M5/32 502
A61M5/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570380
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021066992
(87)【国際公開番号】W WO2022008233
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ファリエタ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066NN04
(57)【要約】
本開示は、薬物送達装置の既存の設計に取り付けられる補助装置のための起動システムに関し、薬物送達装置の保護キャップまたは他のカバーに加えられる動きが、電池モジュールと電源の間の回路を閉じるために電気接触を再確立し、電池モジュールを起動させる補助装置の起動機構をトリガーする。起動機構は、用量送達出口の無菌性に介入しないように構成されている。したがって、補助装置は、保護キャップまたは他のカバーを取り外す前にいつでも起動することができる。補助装置は、薬物送達装置の使用に関する情報をスマートデバイスなどの外部装置に伝達するための送信機をさらに有することができる。また、固有の識別データを有するメモリ記憶素子も含めることができる。本開示はまた、付属の補助装置を有する薬物送達装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達システム(10,30)であって、前記薬剤送達システム(10,30)は、
ハウジング(24)内に配置された薬剤容器(65)、前記ハウジング(24)の終端部を通りアクセス可能な用量送達出口(60)、および針シールドリムーバー(61)に連結され、無菌バリアとして機能する針シールド(62)を備える薬剤送達装置(20)と、
バッテリーモジュール(18)、起動部材(8,38)および通信モジュール(13,3b)を備える補助装置(1,3)と、
前記針シールドリムーバー(61)に連結された移動可能なキャップ(21,31)であって、キャップ(21,31)の移動が前記起動部材(8,38)に作用して、前記補助装置(1,3)を起動する、移動可能なキャップ(21,31)と、
を備え、
前記補助装置(1,3)は、前記キャップ(21,31)が前記針シールド(62)に対して移動したかどうかを判定するよう構成され、前記通信モジュール(13,3b)は、外部装置にデータを送信するよう構成され、前記データは、前記起動部材(8,38)の状態、および/または前記取り外し可能なキャップ(21,31)の移動に直接関連する情報を含む、薬剤送達システム(10,30)。
【請求項2】
前記針シールドリムーバー(61)に連結された場合、前記キャップ(21,31)は、軸方向および/または円周方向に移動可能となるように構成され、前記キャップの初期移動シーケンスは、前記補助装置(1,3)を作動させるが、前記針シールドリムーバー(61)を移動させない、請求項1に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項3】
前記キャップ(21,31)が前記薬剤送達装置(20)から完全に取り外されない限り、前記用量送達出口(60)へのアクセスが防止され、前記用量送達出口(60)から針シールド(61)を取り外すために、前記キャップ(21,31)の初期移動シーケンスに続く前記キャップの継続した移動シーケンスが必要である、請求項1または2に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項4】
前記バッテリーモジュール(18,2)または前記通信モジュール(13,3b)は、前記薬剤送達装置(20)の構成要素の少なくとも1つの動きを検出するよう構成された1または複数のセンサーを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項5】
前記システムは、任意の他のモジュールに接続可能なセンサーモジュールをさらに備え、前記センサーモジュールは、前記薬剤送達装置(20)の構成要素の少なくとも1つの動きを検出するよう構成された1または複数のセンサーを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項6】
前記起動部材(8,28)は、スイッチ(8)または絶縁パッド(38)の1つである、請求項1に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項7】
前記スイッチ(8)は、最初は、前記通信モジュール(13)がバッテリーから電力を受け入れることを防止される第1の状態(A)にあり、前記薬剤送達装置(20)の近位端に対して前記キャップユニット(21)が移動することにより、前記スイッチ(8)が、前記バッテリーが前記通信モジュール(13)に電力を供給する第2の状態(B)に変わる、請求項6に記載の薬剤送達システム(10)。
【請求項8】
前記起動部材(8,28)は、前記補助装置(1,3)を一度だけ作動させるよう構成され、前記スイッチが第2の状態(B)にあること、または前記絶縁パッド(38)が取り外されていることが、前記薬剤送達装置(20)の前記無菌バリアが破られた可能性を示す、請求項6に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項9】
前記通信モジュール(13)または前記バッテリーモジュール(18)または補助装置(3)が、前記薬剤送達装置(20)に関するデータ情報を取得し、保存するよう構成されたレコーダ(1d,3d)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項10】
前記通信モジュール(13,3b)によるデータ伝送は、レコーダ(1d,3d)がバッテリー(2)から電力を受けとった場合に開始される、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項11】
前記モジュールが前記ハウジング(24)から取り外し可能であり、かつ再利用可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項12】
前記システムは、任意の他のモジュールに接続可能な、または任意の他のモジュールの一部として含まれるロギングモジュールをさらに備え、前記ロギングモジュールが前記キャップユニット(21,31)が取り外された場合に前記薬剤送達装置の動きの追跡を開始するよう構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項13】
前記システムが任意の他のモジュールに接続可能な、または任意の他のモジュールの一部として含まれるメモリモジュールをさらに備え、前記メモリモジュールは、データを保存するよう構成され、前記通信モジュールは、前記データを前記外部装置に無線で送信するよう構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【請求項14】
前記通信モジュールは、無線データ伝送のための手段と、前記起動部材(8,38)の状態および/または前記キャップ(21,31)の移動のための信号手段とを備える、請求項1に記載の薬剤送達システム(10,30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達装置に取り付けることができる補助装置のイベント検出メカニズムおよび起動に関し、補助装置は、薬剤送達装置に関する固有の情報を送信できる情報プロバイダとして機能することができる。補助装置は、薬剤送達装置からカバーを取り外すことによって作動する。薬剤送達装置に対する保護カバーの動きは検出可能である。薬剤送達装置の保護カバーは、剛性および/または可撓性の針シールドと針シールドリムーバーのアセンブリを備えることができる。補助装置は、薬剤送達装置の保護カバーの使用または動きを監視し、外部のスマートデバイスと通信することができる。
【背景技術】
【0002】
薬剤送達装置、特に自己投与による薬剤送達用に設計されたものは、何年もの間市場に出回っている。素人でも扱えるように、これらは使いやすく直感的である必要がある。さらに、医薬品の多くは患者にとって不可欠であるか、少なくとも非常に重要であるため、医師や他の専門家から、患者が処方されたスキームに従って投薬する情報を入手したいという要望がある。必要な情報には、薬剤の種類、送達時間、日付、投与量、および無菌性などの安全性情報が含まれる。薬剤やデバイス自体が偽造品や改ざんされていないかどうかも重要である。タグおよびデバイスのワイヤレス通信機能を維持しながら、開いた容器を検出するための方法およびシステムが知られている。たとえば、特許文献1は、開封されたパッケージまたは容器を検出するメカニズムを備えた無線周波数(RFおよび/またはRFID)および近距離無線通信(NFC)タグおよびデバイスに関する方法を開示しており、保護ラインの少なくとも1つが断線した場合は、パッケージまたは容器の導通状態は開封済みであると判断される。代替的または追加的に、パッケージまたは容器の導通状態は、保護ラインの1つまたは複数が切断されていない場合に、閉じているまたは密閉されていると判断される場合がある。
【0003】
しかし、特許文献1による解決策の1つの欠点は、電源が、システムへの電力の供給を開始する動作によってトリガーされる代わりに、連続的にセンサーおよび回路に電気を供給する可能性があることである。したがって、電源すなわち蓄電池の寿命は限られている。もう1つの欠点は、保護ラインが切断された後、つまり無菌バリアが破られた後にのみ起動されることである。したがって、無菌バリアが破られる前にデバイスを起動することはできず、この段階では外部デバイスへの情報の送信は行われない可能性がある。しかし、無菌が破られる前のデバイスに関する情報が有益または必要な場合がある。
【0004】
同様に、医師にとって有益な情報は、薬剤が正しい手順を用いて使用説明書に従って服用されたかどうか、薬剤送達前および薬剤送達中に、薬剤が所定の温度に維持されているかどうか、薬剤送達装置が注射器である場合、正しい注射深度で使用され、正しい注射速度で使用されたかどうかに関するものである。
【0005】
薬剤送達装置から情報を取得するためのシステムが知られている。例えば、特許文献2は、薬剤送達装置が、携帯電話または携帯情報端末(PDA)などの外部装置との通信を可能にする通信機構を備えるように構成された、薬剤情報を提示および配信するためのシステムを開示している。推奨される通信規格は、Bluetooth(登録商標)である。薬剤送達装置には、用量送達シーケンスなどの監視および登録などのための多数のセンサーが配置されている。次に、ディスプレイ、プロセッサ、キーボードなどの機能を薬剤送達装置に提供する代わりに、外部デバイスの機能を使用するというアイデアである。外部デバイスへの機能の移転は、そのような機能を備えた薬剤送達装置と比較して、薬剤送達装置のコストを削減する。
【0006】
しかし、特許文献2による解決策の欠点は、Bluetooth回路、またはANTまたはZigBeeなどの別の無線通信システムが薬剤送達装置のハウジングに組み込まれていることである。回路に電力を供給するバッテリーを備えた通信システムには、薬剤送達装置内に専用のスペースが必要である。追加のバッテリーモジュールに対応するために既存のデバイス設計を対応させると、予期しない規制上の問題が発生する可能性がある。既知のデータ収集装置のもう1つの問題は、バッテリーモジュールが製造され、薬剤送達装置に取り付けられるときに、電源が電子回路に直接接続されることである。これによりバッテリー電池の消耗が早くなる場合がある。さらに、このようなシステムでは、ユーザーがバッテリーモジュールを起動する別の特定の手順を実行する必要があるが、これは常に正常に実行されるとは限らない。そのため、バッテリーが空になった後、またはユーザーが正常に作動させなかった場合、無菌性が破られたことが検出されない場合がある。
【0007】
したがって、既存の設計を変更すること、または通信システムが提供できる追加機能を既存の設計に容易に提供することは容易ではない。そのため、薬剤送達装置の通常の使用の一部として、無菌バリアが破られる前に自動的に実行される起動システムを提供する必要がある。無菌バリアが取り除かれる前に保護ユニットの取り外しシーケンスによって作動する検出機構を提供し、それによって、薬剤送達装置の無菌バリアが破られたことを記録および通知するための補助装置が起動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,519,904号
【特許文献2】国際公開第2004/084116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、既存の薬剤送達装置に取り付け可能な補助装置用の、無菌バリアの突破前に薬剤送達装置の統合された作動機構によってトリガーされるイベント検出システムを提供することである。取り付けは、薬剤送達装置の既存の設計を修正または変更する必要がない。特に好ましい補助装置は、多数の異なる薬剤送達装置上で使用でき、特に薬剤の自己投与用の薬剤送達装置で使用するように構成された情報提供装置である。好ましくは、このような情報プロバイダが配置された薬剤送達装置は、市場で一般的であり、自己投与用の薬剤送達装置を扱う大多数の患者によって使用される従来の外部スマートデバイスで使用することができる。
【0010】
本開示において、「遠位方向」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用中に用量送達部位から離れる方向を指す。「遠位部分/遠位端部」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用下で、用量送達部位から最も離れた位置にある薬剤送達装置の部分/端部、またはその部材の部分/端部を指す。対応して、「近位方向」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用中に用量送達部位に向かう方向を指す。「近位部分/近位端部」という用語が使用される場合、これは、薬物送達装置の使用中に、用量送達部位の最も近くに位置する薬剤送達装置の部分/端部、またはその部材の部分/端部を指す。
【0011】
さらに、「長手方向」、「長手方向に」、「軸方向」、および「軸方向に」という用語は、近位端から遠位端まで、装置またはその構成要素に沿って、典型的には装置および/または構成要素の最も長い方向に延びる方向を指す。
【0012】
同様に、用語「横方向」、「横方向の」および「横方向に」は、長手方向に対してほぼ垂直な方向を指す。
【0013】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、制御された方法でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができる、液体、溶液、ゲル、微細懸濁液などの任意の薬剤含有流動性薬剤を包含することを意味する。代表的な薬剤には、ペプチド、タンパク質、ホルモンなどの薬剤、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養処方、およびその他の固体(調剤)または液体の形態の物質が含まれる。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用について言及する。対応して、「皮下」注入または注射という用語は、被験体への経皮送達の任意の方法を包含することを意味する。
【0014】
本開示において、「モジュール」という用語は、電子部品または電子部品のアセンブリおよび関連する配線などの自己完結型のユニットまたはアイテムを包含することを意味し、それ自体が定義されたタスクを実行し、より大きなシステムを形成するために他のそのようなユニットとリンクすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主な態様によれば、補助装置は、補助装置に電力が供給されないように、または補助装置から電力が供給されないように、最初は切り離された状態にあるバッテリーによって電力を供給される。補助装置の作動機構は、薬剤送達装置の通常の使用に関連していることが好ましい。保護カバーユニットが動くと、ユーザーによる保護キャップの取り外しシーケンスによって起動要素がトリガーされる。補助装置を起動させる取り外しシーケンスは、針の近位端から離れる針シールドの軸方向移動に先立つものである。補助装置を起動するために必要なキャップの取り外しシーケンスは許容され、この動きによって無菌バリアは動かされたり破られたりしない。つまり、起動機構は、送達出口の無菌状態を破壊しない。
【0016】
主要な態様によれば、起動機構は、無菌バリアが破られる前に、バッテリーを再接続して補助装置に電力を供給する。バッテリーは、スイッチまたは絶縁材(以下、一般に起動部材と呼ぶ)によって、絶縁または非接続状態に維持される。電気接点の間から起動部材を取り外すことは、従来のラインスイッチを閉じることに似ている。常閉スイッチを開いたままにすることは、スイッチに適用される機械的、空間的、または機能的な構成によって実現できる。同様に、絶縁材料を除去すると、電気接点が閉じたり、一緒になったりして電気接続が形成され、バッテリーからの電気が接点を通って接点間を流れ、他の電気部品に接続された電気回路が閉じたり通電したりする。
【0017】
好ましくは、補助装置は、装置を使用する前に、例えば、製造または組み立て中に、非通電状態で薬剤送達装置に取り付けることができ、バッテリーは、補助装置の他の構成要素との電気的接続から一時的に電気的に分離される。
【0018】
起動部材は、補助装置が薬剤送達装置に取り付けられた場合に、薬剤送達装置のハウジングまたはキャップと接触するように構成される。起動部材としての機械的スイッチ構成の場合、スイッチは、医療送達装置の近位端の表面と摺動可能に接触するように配置される。自動注射器など、別の針カバーまたはシールドを取り囲む保護キャップを備えた既存の注射装置に補助装置が取り付けられる場合、ユーザーがキャップに引っ張りまたはねじり動作を加えると、キャップは装置の近位端に向かって移動する。
【0019】
装置の近位端に向かうキャップの軸方向移動の一部は、ハウジングとキャップとの間に間隙を作り出す。キャップは、スイッチが薬剤送達装置のハウジングと機械的に接触するように、ハウジングの近位端に隣接する。キャップが送達装置の近位端に向かって移動すると、キャップの移動によってトリガーされたスイッチが、薬剤送達装置のハウジングに沿ってスライドする。スイッチがハウジングの近位端の末端部分に到達すると、スイッチは、薬剤送達装置のハウジングからキャップを離すことによって生じる空間に垂直にスライドすることができる。薬剤送達装置の長手方向軸に対するこの垂直方向の動きは、スイッチをデフォルト位置に戻し、回路を閉じて、バッテリーからの電気が接点を通って接点間を流れるように電気接続を形成し、他の電気部品に接続された電気回路を閉じる、または通電する。
【0020】
あるいは、キャップの周方向または軸方向の動き、または軸方向および周方向の動きの組み合わせは、起動部材、例えば、絶縁シートまたはストリップをバッテリーと直接接触している電気接点から取り外すことを伴う。バッテリーは、バッテリーおよび接触パッドに動作可能に接続されたスイッチを含むことができる補助装置の電気回路の一部であり、スイッチの一部はキャップに直接接続されている。
【0021】
キャップの物理的な除去シーケンスまたは移動は、好ましくは、薬剤送達装置を使用する必要なステップの一部として達成される。例えば、薬剤送達装置の場合、通常、薬剤送達装置を使用する前に、用量送達出口部材の保護キャップまたは他のカバーを取り外す必要がある。キャップの取り外しシーケンスに起動部材の手順を組み込むことは、装置のユーザーが別のステップまたは手順を実行する必要がなくなり、針シールドの移動の前に補助装置を起動できるため、好ましい機構である。特に、用量送達出口が、保護キャップに軸方向に固定された独自の別個の柔軟な針シールドを有する注射針である場合、装置のハウジングから離れるキャップの動きは、無菌状態を破る針の近位端から離れる針シールドの軸方向の動きをもたらす。
【0022】
保護キャップと針シールドリムーバーとの間の結合は、針シールドリムーバーに対するキャップの所定の軸方向変位を可能にするように構成されてもよく、この軸方向の動きは、針シールドリムーバーと係合して針シールドを取り外すことはない。一例は、キャップの把持部材と針シールドリムーバーとの間の追加の間隔を含む。別の言い方をすれば、針シールドの把持部材とキャップの把持部材が互いに係合する前に、キャップは針シールドリムーバーに沿って軸方向および/または回転移動を伴ってスライドし、軸方向の変位を画定する。把持部材を結合すると、キャップのさらなる軸方向および/または回転移動は、針シールドリムーバーおよび取り付けられた剛性または柔軟な針シールドの動きに変換される。
【0023】
一実施形態は、針シールドリムーバーに追加の外側円周部材を提供するように構成され得る。円周部材は、キャップの係合部材と係合するように構成された外面上の突起を含む。キャップと針シールドリムーバーを組み付けると、キャップと円周部材が係合部材と係合する。軸方向および/または回転移動がキャップに適用されると、針シールドに対するキャップの所定の軸方向変位が可能になり、針シールドの把持または係合部材と係合するまで、キャップと係合している円周部材が針シールドリムーバーユニットに沿ってスライドする。これにより、針シールドリムーバーに対する円周部材のスライド移動が停止し、それ以上のキャップの動きが針シールドリムーバーに作用する。
【0024】
薬剤送達装置からのキャップまたはカバーの取り外しシーケンスを補助装置の作動に結合することは、起動部材を薬剤送達装置に配置されたキャップまたは他のカバーに接続することによって達成することができる。
【0025】
薬剤送達装置のハウジングの近位端からの保護キャップの取り外しは、ハウジングに対するキャップの純粋な直線運動または円周運動によって、またはキャップの純粋な回転によって、または回転および軸運動の組み合わせによって達成することができる。キャップがハウジングの近位端から分離される方法に関わらず、本開示の起動機構は、キャップに取り付けられた起動部材がキャップの取り外し中にキャップにしっかりと取り付けられたままになるように構成される。これにより、常閉スイッチがデフォルトの位置に戻るか、または絶縁材料を除去することによって確立された電気接点に戻ることができるようになり、その結果、電気回路が閉じて、補助装置がバッテリーによって通電され、バッテリーから電力を受け取るようになる。
【0026】
薬剤送達装置の保護キャップまたはカバー部分は、例えば薬剤送達装置に取り付けた場合、または薬剤容器に固定した場合に、用量送達出口を覆うように構成および適合されている。薬剤送達装置がペン型注射器である場合、キャップが、注射器の近位部分の長方形部分を受容するように構成されたほぼ長方形の空洞を有することが好ましい。状況によっては、キャップと薬剤送達装置ハウジングの近位部分の末端との間の軸方向の相対的な動きを少し許容することが必要または望ましい場合がある。
【0027】
本開示の可能な一実施形態は、薬剤送達装置に取り付けられた補助装置を起動させるためのシステムを対象とし、薬剤送達装置は、近位端を有するハウジング、ハウジング内に配置された薬剤容器、および近位端の末端を通してアクセス可能な用量送達出口を含む。用量送達出口は、無菌バリアとして機能する針シールドによって囲まれ、取り外し可能なキャップに機械的に結合された針シールドリムーバーに取り付けられている。補助装置は、ハウジング、好ましくはハウジングの近位端に取り付けられたバッテリーモジュールを備え、起動部材と、通信モジュールとをさらに備え、キャップの動きが起動部材に作用して補助装置を作動させる。補助装置は、キャップが針シールドに対して移動したかどうかを判断するように構成されている。通信モジュールは、起動部材の状態および/または取り外し可能なキャップの動きに直接関連する情報を含むデータを外部装置に送信するように構成される。
【0028】
一実施形態では、キャップは針シールドリムーバーに結合され、軸方向および/または円周方向に移動可能であるように構成され、キャップの初期動作シーケンスは補助装置を作動させるが、針シールドリムーバーを動かさない。
【0029】
キャップは、多くの場合、薬剤送達装置の針シールドリムーバーまたは閉鎖部材と組み立てられ、針シールドに係合され、針を密閉することによって針を保護する。針シールドは、針が埋め込まれている柔軟なゴム部材、つまり柔軟な針シールド(FNS)を備えることがある。一部の用途では、FNSに剛性のある外側シェル、つまり剛性針シールド(RNS)が設けられている。薬剤送達装置の使用前に針シールドを取り外すことができるように、針シールドリムーバーには、針シールドと係合するグリップ部材が付いている。キャップにはシールドリムーバーが付いているので、キャップを外すと、把持部材がシールドと係合しているため、シールドが針から引き離される。取り外し可能なキャップは、ハウジングの近位端に取り付けられており、キャップと針シールドアセンブリが装置から完全に取り外されない限り、用量送達出口にアクセスできない。
【0030】
一例では、用量送達出口から針シールドを取り外すために、キャップの最初の移動シーケンスに続くキャップの連続移動シーケンスが必要とされる。
【0031】
起動部材は、スイッチまたは絶縁パッドのいずれかである。
【0032】
一実施形態では、バッテリーモジュールまたは通信モジュールは、薬剤送達装置の構成要素のうちの少なくとも1つの動きを検出するように構成された1つまたは複数のセンサーを備える。
【0033】
1つの可能な実施形態は、任意の他のモジュールに接続可能なセンサーモジュールをさらに備え、センサーモジュールは、薬剤送達装置の構成要素のうちの少なくとも1つの動きを検出するように構成された1つまたは複数のセンサーを備える。
【0034】
一実施形態では、スイッチは最初、通信モジュールがバッテリーから電力を受け取ることが防止される第1の状態(A)にあり、薬剤送達装置の近位端に対するキャップユニットの動きにより、スイッチは、バッテリーが通信モジュールに電力を供給する第2の状態(B)に移行される。
【0035】
さらに、通信モジュールは、バッテリーモジュールに接続可能であるか、またはバッテリーモジュールの一部として含まれ、外部装置にデータを送信するように構成される。レコーダは、バッテリーモジュールの一部として、または通信モジュールの一部として含めることができ、レコーダは、薬剤送達装置に関する情報を取得および保存するように構成されている。スイッチは、好ましくは、レコーダがバッテリーから電力を受け取ることを妨げられている/受け取らない第1の状態にあり、キャップがハウジングに対して近位に移動すると、バッテリーがレコーダおよび/または通信モジュールに電力を供給する第2の状態にスイッチが変更される。
【0036】
1つの可能な実施形態では、起動部材は、補助装置を1回だけ起動するように構成され、スイッチが第2の状態(B)にあるか、または絶縁パッドが除去された場合に、薬剤送達装置の無菌バリアが破られた可能性が示される。
【0037】
スイッチは、一度だけ第1の状態になることができるように構成することができる。これは、スイッチが第2の状態から第1の状態に戻るのを防ぐ/できないように構成することによって最もよく達成される。このような変換を防止する代替構成には、一時的な開位置に物理的に保持される常閉スイッチの使用、またはバッテリーと接触パッドの間に動作可能に接続された材料のシート、リボン、またはストリップの使用が含まれる。
【0038】
通信モジュールまたはバッテリーモジュールまたは補助装置は、薬剤送達装置に関するデータ情報を取得および保存するように構成されたレコーダを備える。
【0039】
通信モジュールによるデータ送信は、レコーダがバッテリーから電力を受け取ると開始される。
【0040】
常閉の機械的スイッチが使用されるいくつかの場合では、キャップが取り付けられている薬剤送達装置ハウジングからキャップが引き離されると、ハウジングに取り付けられた補助装置が、キャップの近位端に向かって移動し、キャップとハウジングの末端の間に間隙を形成する。キャップと共に移動するスイッチは、ハウジング一部に沿ってスライドし、ハウジングの末端に到達すると、スイッチがハウジングとキャップの間の間隙に突出するように、ハウジングに接触している。本開示の補助装置はそれ自体で提供できる、すなわち、薬剤送達装置およびカバー部分またはキャップを含むアセンブリを提供する必要がないことが企図される。つまり単体での提供も可能である。
【0041】
本開示の起動システムは、2つのステップが完了すると形成される。1つのステップは、薬剤送達装置のキャップへの補助装置の取り付けを含み、もう1つのステップは、薬剤送達装置が意図された設計目的のために最終的に使用される前に取り除かれなければならない保護キャップまたは他のカバーの取り外しである。
【0042】
別の実施形態では、補助装置は、一体化または分離されて互いに取り付け可能な2つ以上のモジュールを備えてもよく、モジュールのいずれもハウジングから取り外し可能であり、再利用可能である。
【0043】
例えば、第1のバッテリーモジュールは、薬剤送達装置のキャップのハウジングに恒久的に取り付けられる、すなわち解放不能に連結されるように構成することができる。接着剤、溶接、またはワンウェイスナップフィットは、この恒久的な取り付けを実現する方法である。通信モジュール、センサーモジュール、ログモジュールなどの構成要素モジュールには、レコーダなどの他の電気構成要素が含まれる場合がある。一例では、構成要素モジュールは、再使用して別のバッテリーモジュールに取り付けることができるように、バッテリーモジュールに取り外し可能に取り付けられるように構成することができる。このような場合、第1のバッテリーモジュールは、第1の薬剤送達装置のハウジングまたはキャップと共に配置され、取り外された構成要素モジュールは、フレッシュなまたは新しいバッテリーを含む第2のバッテリーモジュールに取り付けられる。これは、第2のバッテリーモジュールが第2の薬剤送達装置のハウジングまたはキャップに取り付けられる前または後に発生する可能性がある。次に、絶縁材料の一端が、第2の薬剤送達装置のハウジングに取り付けられた保護キャップまたは他のカバーに固定される。
【0044】
キャップ上への補助装置の位置決めは、薬剤送達装置の製造業者、医療提供者、または装置のユーザーによって実行され得る。補助装置の形状は、好ましくは、それが取り付けられる薬剤送達装置のキャップの形状に一致または適合する。
【0045】
補助装置からの情報の転送は、バッテリーを他の電気部品を含む電気回路に接続することによって補助装置が起動されるまで防止される、または発生することができない。起動されると、薬剤送達装置の状態に関する補助装置への情報の転送は、ガルバニックまたは非ガルバニック手段によって行うことができる。可聴、光学、振動、または電磁などである。
【0046】
薬剤放出機構は、機械的または実質的に機械的、すなわち電気機械的であってもよく、いくつかの電子部品を含むこともできる。補助装置は、非限定的に、ワイヤレスIR、RF、または光学的手段によってデータを外部デバイスに転送するための手段を含むことができる。
【0047】
補助装置は、例えば、投与ドラムなど投与量設定機構の回転音を検出できる音センサーなどのセンサーをさらに備えることができる。補助装置に含まれる光学センサーまたは他のセンサーからの出力信号を処理するための処理ユニットを配置することもできる。音センサーは、ノブを回して手動で投与量の設定が開始されたときに処理ユニットを起動するように適合させることができる。処理ユニットに統合されるか、別のユニットのメモリ(例えばRAMランダムアクセスメモリまたは別の種類のメモリ)を備えることができる。メモリユニットは、補助装置に配置された1つまたは複数のセンサーからのデータを受信および記録するように構成されている。音センサーは、投与量設定機構の動きの音、または例えば投与量設定ドラムの回転音を検出し、マイクロフォン、加速度計、および振動センサーのいずれかから選択することができる。
【0048】
補助装置は、投与量データを外部装置に通信および送信するための通信モジュールをさらに備えることができ、外部装置は、携帯電話などのモバイル装置、コンピュータ、およびクラウドなどのリモートサーバのうちの1つであり得、投薬量、送達時間、日付、頻度、薬剤などの注射または吸入薬剤送達データの記録、保存、および監視する。メモリユニットは、補助装置にも配置することができる。補助装置は、補助装置の手動リセットを可能にするリセットボタンをさらに備えてもよい。このようなリセット機能は、補助装置または補助装置の一部が、たとえば別の薬剤送達装置で再利用される場合に有益である。
【0049】
本発明の別の態様によれば、薬剤送達データ、例えば投薬情報、送達時間、頻度、薬剤、日付などを薬剤送達装置から収集および記録する方法が提示される。薬剤送達装置は、ペン型注射器、自動注射器、または例えば投与量設定ドラムなど投与量表示器を有する投与量設定機構を有する吸入器とすることができる。投与量表示器が、その表面に投与量値の表示、および/または投与量値を表示するための投与量表示ウィンドウまたは薬剤送達装置の円周表面上の開口部を有する場合、方法は、投与量表示器の動きから音、例えば投与量設定ドラムまたは別の種類の設定機構からの回転音を音センサーによって検出し、音センサーにより処理ユニットを起動するステップを含むことができる。
【0050】
補助装置は、制御モジュールおよび通信モジュールを含むことができ、これらのモジュールのいずれかは、薬剤送達装置の構成要素の少なくとも1つの動きを検出するように構成された1つまたは複数のセンサーを含む。補助装置が、任意の他のモジュールに接続可能なセンサーモジュールを含み、薬剤送達装置の構成要素の少なくとも1つの動きを検出するように構成された1つ以上のセンサーを含むことも実現可能である。センサーモジュールは、他のモジュール、例えばバッテリーモジュールまたは通信モジュールの一部として含めることもできる。同様に、補助装置は、バッテリーモジュール、通信モジュール、センサーモジュールなどの他のモジュールに接続可能な、または他のモジュールの一部として含まれるロギングモジュールをさらに含むことができる。ロギングモジュールは、薬剤送達装置のユーザーの行動を追跡するように構成されており、そのユーザーの行動は、1つまたは複数のセンサーによって検出された動きに基づいている。薬物送達装置の動きを追跡することにより、研究、トレーニング、またはコンプライアンスのためのユーザーの行動の追跡が改善され、薬物送達が容易になる。
【0051】
本開示で使用されるように、1つまたは複数のセンサーは、一般に、動きを検出できる任意の種類のセンサーを指し得る。好ましくは、1つまたは複数のセンサーは、動きの高精度追跡が改善される磁力計、ジャイロスコープ、および/または加速度計の1つまたは複数のセンサーとすることができる。
【0052】
システムは、任意の他のモジュールに接続可能であるか、または任意の他のモジュールの一部として含まれるメモリモジュールをさらに備える。メモリモジュールは、データを保存するように構成され、通信モジュールは、データを外部装置にワイヤレスで送信するように構成されている。好ましくは、メモリモジュールは、ロギングモジュールからのデータを保存するように構成され、そのユーザーの追跡が容易になる。メモリモジュールは、不揮発性メモリを含んでいてもよい。一実施形態によれば、通信モジュールは、レコーダ、ロギングモジュール、またはメモリモジュールから(無線または有線のいずれかで)データを送信するように構成されてもよく、追跡が達成された場合、リアルタイムの視覚化が可能である。薬剤送達装置の近位端に取り付けられた薬剤送達装置のキャップまたは他のカバーが近位端に対して移動すると、バッテリーモジュールに通電される。
【0053】
薬剤送達装置は、薬剤を注射するための実際の送達装置であってもよいし、人的要因の研究または訓練のためのモックアップデモ装置であってもよい。
【0054】
別の態様によれば、本開示のシステムは、補助装置に結合された薬剤送達装置であり得、薬剤送達装置および補助装置とは別個のコンピュータ装置、例えば、表示装置を有する携帯電話をさらに含む。通信モジュールは、ロギングモジュールから薬剤送達装置とは別のコンピュータ装置および/または後の分析のために遠隔地にリアルタイムデータを無線および/または有線で送信するように構成することができる。通信モジュールはまた、メモリモジュールに保存されたデータを、ロギングモジュールから薬剤送達装置とは別のコンピュータ装置、または後で分析するために遠隔地に無線および/または有線で送信するように構成することもできる。
【0055】
上記の理由により、補助装置が、相対的な軸方向のキャップの動きに関するデータを収集するセンサーコンポーネントの一部として、またはセンサー構成要素に加えて、レコーダコンポーネントを含むことが望ましい場合がある。別の言い方をすれば、補助装置の起動は、キャップの動きまたは完全な取り外しに直接関連付けることができる。このような設計では、起動された補助装置は、その通信コンポーネントを介して信号を外部装置に送信し、相対的なキャップの動きが発生したことを通知するようにプログラムすることができる。この通知は、補助装置を起動するとすぐに自動になるようにプログラムすることができる。
【0056】
起動部材の長さの操作および/またはハウジングの近位端への補助装置の配置により、ハウジングの末端からの所定のキャップ分離に基づいて起動を行うことができる。補助装置の制御コンポーネントは、このような所定のイベントパターンを検出し、イベントが発生したことを外部装置に通知するように適合させることができる。制御コンポーネントは、検出されたイベントを時間の関数として表す時間ログも作成することができる。
【0057】
本開示の起動システムで使用できるバッテリーは、好ましくはボタン電池であり、コイン型電池または時計電池と呼ばれることもある。このようなバッテリーは、単回使用で使い捨てにすることも、充電式にすることもできる。好ましくは、バッテリーの保存期間または非使用期間が少なくとも数年、最も望ましいのは少なくとも4年である必要がある。さらに、一度起動すると、バッテリーは、約30日、少なくとも3週間の稼働時間をもたらす電力を供給できる必要がある。補助装置が薬剤送達装置のハウジングに取り付けられている間、ユーザーがバッテリーにアクセスできるようにするバッテリーカバーを提供することができる。
【0058】
本開示のシステムは、補助装置内の通信コンポーネントまたはモジュールを介して、外部装置、例えば、コンピュータ、スマートフォン、タブレットなどの携帯情報端末(PDA)と通信することができる。通信モジュールまたはレコーダにバッテリーから電源が供給されると、すぐに通信モジュールによるデータ伝送を開始することができる。外部装置へのこのデータ伝送は、無線または有線接続を介して行われる。上記のシステムでは、薬剤送達装置とデータ収集装置との間のデータの伝送は、例えばRF、IR、容量性または誘導性などの無線手段、または光学範囲の電磁放射によって行うことができる。データ収集装置と薬剤送達装置が互いに近接している、例えば所定の範囲内の場合、データの送信が自動的に行われる場合がある。
【0059】
電子回路は、以下の群から選択される1つまたは複数の機能を実行するように適合され得る:薬剤放出機構によって設定された投与量の大きさを表すデータを生成すること、薬剤放出機構によって放出された投与量の大きさを表すデータを生成すること、薬剤放出機構によって設定された投与量のサイズを表すデータの時間ログを生成および保存すること、薬剤放出機構によって放出される投与量のサイズを表すデータの時間ログを生成および保存すること、外部受信機にデータを送信すること、外部送信機からデータを受信すること、ユーザー可読情報を表示するように適合されたディスプレイを制御すること、二次電源が再充電される必要があるときを示すように適合される表示手段を制御すること、および二次電源が再充電される必要があるときに投与量が設定または放出されるのを防止するように適合される制御手段を制御すること。
【0060】
外部またはデータ収集装置は、以下の装置のうちの1つの形態であってもよい:BGM、CGM、薬剤送達装置、機械制御薬剤送達装置、電子制御薬剤送達装置、PDA、携帯電話、キーリングデバイス、クレジットカードサイズのデバイス、医療ハブ、ルーター、ネックレス、スマートウォッチ、または使い捨ての監視ユニット。
【0061】
本開示の別の実施形態では、薬剤送達装置の近位部分に取り付けられたキャップまたは他のカバーが、薬剤送達装置ハウジングの近位部分に対して軸方向に移動されるか、または薬剤送達装置ハウジングから完全に取り外される場合に、薬剤送達装置に関連する情報を含むデータの送信が行われる、補助装置を起動する方法が提示される。この方法は、補助装置の電気回路の一部であるバッテリーに直接接触する電気接点から起動部材を除去することを含み、バッテリーに動作可能に接続されているスイッチを含むことができ、スイッチの一部がキャップに直接接続されている。起動部材は、絶縁パッドであってもよい。レコーダは、薬剤送達装置に関する情報を取得および保存するように構成でき、通信モジュールは、レコーダから外部装置にデータを送信するために使用される。
【0062】
スイッチは最初、制御モジュールがバッテリーから電力を受け取ることができない/受け取らない第1の状態にあり、キャップがハウジングに対して近位に移動すると、スイッチが、バッテリーがバッテリーモジュール、およびその中に含まれる場合は通信モジュールへ電力を供給する第2の状態に変化する。バッテリーからバッテリーモジュールに電力が供給されると、薬剤送達装置に関する情報を受け入れることができる。情報やデータをレコーダに記録し、さらに通信モジュールで外部装置に送信する場合がある。補助装置は、バッテリーモジュールが起動されたときにトリガーされるフィードバック信号を有することができる。フィードバックは、可聴信号および/または触覚信号にすることができる。フィードバック信号の生成には、電気回路、エネルギー源(バッテリー)、スイッチ、スピーカーユニット、圧電ユニットのすべてを使用することができる。さらに、本開示の別の態様によれば、補助装置は、時計機能を有する制御ユニットであり得る。別の態様では、制御ユニットがシミュレートされた投与量送達の持続時間を測定し、それを所定の時間値と比較し、フィードバック信号を制御して、正しいシミュレートされた投与量送達または失敗したシミュレートされた投与量送達の発生をユーザーに示すことができる。ユーザーに提供されるフィードバックの質をさらに向上させるために、電子回路は、針の刺入および/または投与量の送達の開始を示すだけでなく、トレーニング注射部位にトレーニング装置を押し付けるのに必要な時間をユーザーに示すように構成することもできる。
【0063】
補助装置はまた、通信モジュールと、薬剤送達装置に関連する一意の識別データを含むメモリ記憶要素とに動作可能に接続されたアンテナを備えてもよい。
【0064】
補助装置はまた、通信モジュールと、薬剤送達装置に関連する一意の識別データを含むメモリ記憶要素とに動作可能に接続された光学モジュールを備えてもよい。
【0065】
したがって、本開示の主なアイデアの1つは、補助装置が起動前には非アクティブであるということである。使用する技術の種類によっては、非アクティブとは、バッテリーが回路に電力を供給するまで、回路がまったくオンにならないことを意味する場合がある。従来のコイン型電池について説明してきたが、補助装置を作動させるための電力またはエネルギー源が、太陽バッテリーパネルなどのあまり一般的でない電源から得られることは、本開示の範囲内である。
【0066】
別の有利な解決法によれば、補助装置は、キャップのハウジング内に配置することができる。この解決策を使用すると、補助装置を既存の薬剤送達装置ハウジングの外面に簡単に追加することができる。そのため、補助装置を薬剤送達装置に組み込む必要はない。
【0067】
使用可能な技術に関して、補助装置の電子回路は、いくつかの利点を有するBluetooth技術を含むことができる。Bluetooth送信機は、スマートデバイスと通信することができNFC技術などのように近距離である必要はない。最近のスマートデバイスの多くはBluetooth通信回路を備えており、情報発信機からスマートデバイスへの情報伝達が容易になっている。Bluetoothのさらなる利点は、特定のユーザーに提供された薬剤送達装置の情報送信機が、その特定のユーザーのスマートデバイスに結合される可能性があるということである。このように、ユーザーが受け取って使用する薬剤送達装置と個人のスマートデバイスとの間には緊密な接続がある。したがって、特定の薬剤送達装置からの情報は、特定のスマートデバイスにのみ送信される。本発明のこれらおよび他の態様、ならびに本発明の利点は、以下の本発明の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0068】
以下の本発明の詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1A】起動部材の初期状態における本開示の1つの可能な実施形態の側面図での概略図であり、明確にするためにキャップのハウジングおよび機能的接続は示されていない。
【
図1B】起動部材の最終状態における本開示の1つの可能な実施形態の側面図での概略図であり、明確にするためにキャップのハウジングおよび機能的接続は示されていない。
【
図2A】
図1Bに示されるような最終状態におけるスイッチユニットおよびキャップの構成を、視認性のためにキャップハウジングなしで概略的に示す。
【
図2B】本開示による一般的な回路図を概略的に示しており、明確にするために薬剤送達装置は示されていない。
【
図3A】キャップの移動前の初期状態にあるスイッチを有する起動部材およびキャップの構成を概略的に示しており、明確にするためにキャップのハウジングの一部および機能的接続は示されていない。
【
図3B】
図3Aの部分断面図であり、針シールドリムーバーまたは閉鎖部材を有するキャップユニットと、キャップの移動前および針シールドリムーバーの移動前の初期状態にある起動部材を示す。
【
図4A】キャップの移動後、針シールドの移動前の起動状態にあるスイッチを有する起動部材およびキャップの構成を概略的に示しており、明確にするためにキャップのハウジングの一部および機能的接続は示されていない。
【
図4B】無菌バリアが除去される前の、針シールドリムーバーまたは閉鎖部材を備えたキャップユニットを備えた
図4Aの部分断面図である。
【
図5A】キャップの移動後および針シールドの移動後にスイッチが作動状態にある起動部材およびキャップの構成を概略的に示しており、明確にするためにキャップのハウジングの一部および機能的接続は示されていない。
【
図5B】無菌バリアが除去された後の、針シールドリムーバーまたは閉鎖部材を備えたキャップユニットを備えた
図5Aの部分断面図である。
【
図6A】補助装置を備えたキャップユニットの分解図を示している。
【
図6B】補助装置がハウジングに取り付けられ、起動部材が起動部材の初期状態の隔離パッドである代替実施形態の概略図である。
【
図7】補助装置がユーザーおよび外部装置と統合される、本開示による機能シナリオを示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の説明では、スマートデバイスという文言が使用される。本明細書では、スマートデバイスには、コンピュータプログラムを実行できるプロセッサまたは処理回路、プログラムやさまざまな外部ソースから取得したデータを格納するためのストレージスペースを備えた電子デバイスを含むことができる。処理回路は、たとえば、データの検出および/または送信に関する本明細書に開示された操作を実行することができる適切な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のうちの1つまたは複数の任意の組み合わせを使用することができる。さらに、スマートデバイスには、さまざまなデータベースにアクセスするためにデータネットワークと通信できる通信システムが備わっていることを理解する必要がある。データベースは、インターネットを介してアクセスされる、いわゆるクラウドサービスとすることができる、および/またはローカルエリアネットワークに直接接続されてアクセスされるデータベースであることを理解されたい。本明細書でのスマートデバイスは、双方向通信用のある種のヒューマンマシンインターフェイスを備えていることをさらに理解する必要がある。ヒューマンマシンインターフェイスは、ディスプレイ、キーボード、マイク、スピーカー、周辺機器接続用のI/Oポートを備えることができる。さらに、スマートデバイスには、ネットワークとのワイヤレス通信用のアンテナが装備されている場合がある。スマートデバイスは、NFCタグとの通信を確立および処理することができるプログラムだけでなく、NFCタグと通信できる受信および送信機構を備えることができる。また、スマートデバイスは、Li-Fi(ライトフィデリティ)技術を介して通信できる受信および送信機構を備えている場合がある。
【0071】
さらに、以下の説明では、薬剤送達装置という文言が使用される。本明細書において、薬剤送達装置は、注射針の有無にかかわらず注射装置、粉末、エアロゾル駆動、ガスなどのあらゆる種類の吸入器、口または鼻のピースを有するネブライザー、錠剤形態の薬剤用ディスペンサーなどの特定用量の薬剤をユーザーに送達することができるいくつかのデバイスを含み得る。薬剤送達装置は、使い捨てタイプまたは再使用可能タイプのいずれかであり、特定の形態の特定の薬剤に対して適切に配置された薬剤容器を備えることができる。
【0072】
薬剤送達装置20の起動システムの可能な構成10を表す
図1Aおよび
図1Bを参照すると、補助装置1は、薬剤送達装置20のキャップ21に取り付けられており、ハウジング24には、用量送達出口60、すなわち針シールド62によってカバーされた固定針を有する薬剤容器65が含まれる。保護キャップ21には針シールドリムーバー61が取り付けられており、ハウジング24からキャップ21を取り外すと、
図3B、
図4B、および
図5Bに示すように、必然的に針から針シールド62が取り外される。
図1Aは、キャップ21に取り付けられた補助装置1に取り付けられた起動部材8を有する薬剤送達装置の側面図を示し、明確にするために起動部材8を取り囲むハウジングは示されていない。
【0073】
図1Aは、起動部材8が、レコーダがバッテリー2から電力を受信しない/防止されている第1の状態にある構成10表し、キャップ21がハウジング24に対して近位に移動することにより、バッテリーがレコーダおよび/または通信モジュールに電力を供給する
図1Bに示されるような第2の状態に起動部材8を変化させる。
【0074】
起動部材8は、1回だけ第1の状態になることができるように構成することができる。これは、起動部材8が第2の状態から第1の状態に戻るのを防ぐ/できないように構成することによって最もよく達成される。このような変換を防止する1つの可能な構成は、物理的に一時的に開いた位置に保持される常閉スイッチの使用を伴う。
【0075】
起動部材8は、補助装置1が薬剤送達装置20に取り付けられた場合に、薬剤送達装置20のハウジング24と接触するように構成される。別の言い方をすれば、起動部材8は、
図1Aおよび
図3Aに示されるように、薬剤送達装置20の近位端の表面と摺動可能に接触するように配置される。補助装置1が、別個の針カバーまたはシールド62を取り囲む保護キャップ21を有する自動注射器などの既存の注射装置に取り付けられる場合、ユーザーによってキャップ21に引っ張りまたはねじり運動が加えられると、キャップは装置20の近位端に向かって移動する。
【0076】
装置20の近位端に向かうキャップ21のこの軸方向の動きは、
図1B、
図4Aおよび
図5Aに示されるように、ハウジング24とキャップ21との間に間隙12を作り出す。この例ではスイッチである起動部材8が、
図1Aおよび
図3Aに示されるように、薬剤送達装置20のハウジング24と機械的に接触するように、キャップ21がハウジング24の端部に接触する。キャップ21が送達装置の近位端に向かって動くと、キャップ21の動きによってトリガーされたスイッチ8は、薬剤送達装置20のハウジング24に沿ってスライドする。スイッチ8がハウジング24の近位端の縁に達すると、スイッチは、
図1B、
図4Aおよび
図5Aに示されるように、薬剤送達装置20のハウジング24からキャップ21を離すことによって作り出される空間12内に垂直にスライドすることができる。薬剤送達装置の長手方向軸に対するこの垂直方向の動きにより、スイッチ8がデフォルト位置に戻り、回路が閉じて、バッテリーからの電気が接点を介して接点間を流れるように電気接続が形成され、他の電気部品に接続された電気回路が閉じて通電する。常閉スイッチ8は、集合的に起動部材と呼ばれる代替の空間的または機能的構成を有することができる。
【0077】
一実施形態では、保護キャップ21と針シールドリムーバー62との間の結合は、針シールドリムーバー62に対するキャップ12の所定の軸方向変位を可能にするように構成されてもよく、この軸方向の動きは、針シールドを取り外すために針シールドリムーバー62に作用しない。
【0078】
1つの例は、キャップの把持部材と針シールドリムーバーとの間の追加の延長を含み得る。別の言い方をすれば、キャップ21は、針シールドの把持部材および/またはキャップ21の把持部材が互いに係合する前に、針シールドリムーバー62に沿って軸方向および/または回転移動によりスライドし、軸方向変位12を画定することができる。把持部材を結合すると、キャップ21のさらなる軸方向および/または回転移動は、針シールドリムーバー62および取り付けられた剛性または可撓性の針シールドの動きに変換される。
【0079】
一実施形態は、針シールドリムーバー62またはキャップ21の内周側に追加の外側円周部材26を提供するように構成されてもよい。円周部材26は、キャップ21または針シールドリムーバー62の係合部材と係合するように構成された外面または内面上の突起を備える。キャップ21と針シールドリムーバー62を組み付けると、キャップと円周部材26が係合部材に係合する。軸方向および/または回転方向の動きがキャップ21に適用されると、キャップ21と係合している円周部材が、針シールドの把持部材または係合部材と係合するまで、針シールリムーバーに沿ってスライドするため、針シールドに対するキャップ21の所定の軸方向変位12が可能になる。したがって、針シールドリムーバーに対する円周部材のスライド移動が停止し、キャップ21に加えられたそれ以上の動きが針シールドリムーバー62に作用する。
【0080】
あるいは、円周部材は、針シールドリムーバー62に結合され、キャップ21は、把持部材または係合部材に当接するまで円周部材26上をスライドすることができ、キャップ21に対する円周部材のスライド移動が停止すると、キャップ21に適用されるさらなる動きは、針シールドリムーバー62に作用する。
【0081】
キャップ21、31および針シールド62を取り外す前の補助装置1、3の起動は、外部装置で薬剤送達装置の状態をチェックするために使用され得る。例えば、内容物や運営に関する情報を外部機器に保存・表示することができる。補助装置が起動され、データが無線または有線接続を介して外部装置に送信されると、外部装置は、内容物のステータスを確認できる。つまり、センサーが温度センサーを備える場合は温度、製造日、内容物が安全に使用できるかどうかの検証、または患者データが利用可能な場合は、個人管理計画が表示される場合がある。
【0082】
とりわけ利点は、追加の安全層であり、無菌違反または温度違反または内容物の安全な使用が検証され、外部装置からユーザーに伝達される。たとえば、装置の寿命にわたる温度ログを無線で送信し、送信されたデータに基づいて薬剤の有効期間を計算できる。また、外部装置は、薬剤がまだ安全に使用できるかどうか、いつまで使用できるかをユーザーに伝えることができる。温度条件により、一部の薬剤の分解または汚染が加速または減速する場合があり、したがって、保存期間が短縮または延長される場合がある。薬剤送達装置が一定でない温度の周囲環境に保管されている地域では、これは無視できない利点である可能性がある。
【0083】
起動機構の別の可能な用途は、キャップを取り外す前に、無菌状態に違反がないかどうか、薬剤が意図したものであるかどうか、および投与が正しいかどうかを確認することである。たとえば、視覚的および/または精神的な障害を持つユーザーは、視覚的または触覚的な手段によって、異なる薬剤または薬剤用量を含む複数の薬剤送達装置を区別できない可能性があるか、個人的な投与計画を覚えていない可能性があるが、薬を自己投与する前に、補助装置を起動してそれが目的の薬であるかどうかを確認することができる。
【0084】
例えば、より多くの薬剤送達装置およびユーザーを有する医療環境では、補助装置の起動は、複数のユーザーの投与計画を検証および監視する外部装置に結合され、したがって薬剤送達装置に含まれる薬剤の偶発的または誤った投与を最小限に抑えることができる。
【0085】
図4Bに示されるように、キャップの軸方向変位は、初期デフォルト状態Aの起動部材8を起動して、第2の状態Bに移行させ、電源への接続を確立し、従って、
図2Aと
図2Bに示されるように補助装置1を起動する。キャップのこの初期動作シーケンスは、針シールドリムーバーの動きを誘発することなく、補助装置1を起動する。別の言い方をすれば、補助装置を起動する初期動作シーケンスは、一連の動作として針シールドリムーバー62に投影されない。
【0086】
特に、用量送達出口の無菌性に依存する薬剤送達装置の場合、補助装置が作動する前に、キャップの動きはほとんど許容されない。
図4Bに示されるように、針シールドリムーバー62の変位または移動を誘発することなく、補助装置1を作動させるためには、薬剤装置の近位端に向かうキャップユニットの軸方向変位に変換される比較的小さなキャップの動きが必要である。補助装置を起動するために必要な動作シーケンスを超えてキャップをさらに変位または移動させると、針シールドリムーバー62が作動する場合がある。これは特に、用量送達出口が、保護キャップに軸方向に固定された独自の別個の柔軟な針シールドを有する注射針である場合に当てはまる。言い換えると、装置ハウジングから離れるキャップの追加の軸方向の動きは、
図5Bに示すように無菌状態を破壊する可能性のある針の近位端から離れる針シールドの軸方向の動きをもたらす可能性がある。
【0087】
図6Aは、例えば、通信ユニット1bを含む通信モジュール13、データストレージを有するレコーダ1d、およびプロセッサまたは制御ユニット1cなど、いくつかの電気コンポーネントを含む実施形態を示す。これらのコンポーネント/モジュールはすべて、回路基板1eを介して電気通信し、カバー1aで囲まれている。さらに、コイン型電池2として示されるエネルギー源に通信可能に結合される起動部材を備えるバッテリーモジュール18が表され、通信モジュール13は図示されていない。
【0088】
本発明の補助装置1に含まれる通信ユニット1bはまた、無線周波数識別技術RFIDを利用することができる。特に高周波RFIDは通信面で多くのメリットがある。HFRFIDを使用する可能性は多数あり、特に近距離無線通信(NFC)の使用を提供する。NFCは、スマートフォンなどのスマートデバイスが無線通信を確立するための一連の規格であるため、特に適している。NFCは近距離無線技術のセットで、通常10cm以下の距離を必要とする。NFCは、ISO/IEC18000-3エアインターフェイスで13.56MHzで動作し、速度は106kbit/sから424kbit/sの範囲である。NFCは、常にイニシエータおよびターゲットを含み、イニシエータは、パッシブターゲットに電力を供給することができるRF電界をアクティブに生成する。これにより、NFCターゲットは、タグ、ステッカー、キーフォブ、またはバッテリーを必要としないカードなどの非常に単純なフォームファクタを取ることができる。
【0089】
使用される技術の以下の説明では、NFCタグという言葉が使用される場合がある。これに関連して、NFCタグは、回路およびアンテナに接続されたNFCチップを含むことが理解されるべきである。NFCタグは、パッチまたはラベルに統合されることに限定されないが、スタンドアロンユニット、または薬剤送達装置の製造に使用される材料に統合される場合がある。さらに、NFCタグは、以下で明らかになるように、必要または所望の目的および用途に必要なさらなる機能および構成要素を含むことができる。
【0090】
NFCタグはデータを含み、典型的には読み取り専用であるが、書き換え可能であってもよい。メーカーが独自にエンコードするか、技術の促進と主要な標準の設定を担当する業界団体であるNFCフォーラムが提供する仕様を使用することができる。タグは、デビットカードやクレジットカードの情報、ロイヤルティプログラムのデータ、PIN、ネットワークの連絡先などの個人データを安全に保存できる。
【0091】
薬剤送達装置に関しては、多数のタスクを実行するためにNFCタグを配置することができる。NFCタグは、本発明の上述の補助装置の一部として配置され、薬剤送達装置のハウジングの外面に取り付けられるラベルに好都合に組み込まれ得る。
【0092】
補助装置で利用できる短距離無線技術(SRWT)のタイプには、ANT+、RFID、Zigbee、およびBluetoothが含まれる。好ましい技術の一つは、Bluetooth技術である。Bluetooth技術は、2.4~2.485GHzのライセンス不要の産業、科学、医療(ISM)帯域で動作し、1600ホップ/秒の公称速度でスペクトル拡散、周波数ホッピング、全二重信号を使用する。2.4GHz ISM帯域は、ほとんどの国でライセンスなしで利用することができる。特に、Bluetooth Low EnergyまたはBluetooth Smartは、薬剤送達装置および要求される機能に関連して利用される場合がある。Bluetooth回路には送信機が設けられ、固有の識別番号やデータなどを送信したり、タイムスタンプを記録したりすることができる。Bluetooth回路は、コイン型電池などの上記の電源で駆動されることが望ましく、薬剤送達装置の状態の発生または変化がある場合にのみブルートゥース回路が起動される。
【0093】
あるいは、Wi-Fiによって生成される無線周波数スペクトルの代わりに、LEDによって生成される光に基づくLi-Fi技術は、Wi-Fiまたは他の放射が干渉を引き起こすか、または病院など特定の領域内の他の機器を妨害する可能性がある状況で使用され得る。本発明の補助装置1に含まれる通信モジュール1bは、光検出器およびLED電球を利用することもできる。
【0094】
図2Bを参照すると、本起動システムで使用できる補助装置1の基本回路図が概略的に示されている。コイン型電池として示されるエネルギー源2は、制御モジュール1cに電気的に接続され、制御モジュール1cは、通信モジュール13に接続または組み込まれる。この通信モジュールは、上述の1つ以上のセンサー/センサーモジュール、外部装置にデータを伝送するための通信ユニット1b、レコーダまたはメモリモジュール、およびコントローラ1c(制御ユニット)を含むことができる。センサーは、磁力計、ジャイロスコープ、および/または加速度計を含むことができる。磁力計を使用して、補助装置が取り付けられた薬剤送達装置の自動注射針の位置を検出することができる。薬剤送達装置の位置を検出するためにジャイロスコープを使用することができ、特定の方向の動きを検出するために加速度計を使用することができる。ジャイロスコープと3つの加速度センサーの組み合わせにより、高精度のトラッキングが可能である。
図2Bの補助装置は、常閉の機械的スイッチ機構を含むエネルギー分離機能も含まれ、この機構は、キャップが取り外されるまで機械的に開いたままになり、その後スイッチが閉じて回路が完成する。
【0095】
メモリモジュールは、存在する場合、センサー/センサーモジュールおよび/またはロギングモジュールからのデータを格納するための不揮発性メモリであり得る。不揮発性メモリは、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、強誘電体RAM(F-RAM)、ほとんどのタイプの磁気コンピュータストレージデバイス(例:ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ)、光ディスクである。不揮発性メモリは取り外し可能で、外部装置のリーダーに挿入することができる。補助装置には、さらに接触インターフェースを設けることができ、ケーブル接続を介して保存されたデータを外部装置にアップロードすることができる。通信モジュールがある場合、実際のデータおよび/または保存されたデータを外部装置にアップロードすることができる。通信モジュールは、ロギングモジュールからのリアルタイムデータの送信(無線および/または有線)、またはメモリモジュールからの保存データの送信を行うように構成されている。通信モジュールには、例えばWi-Fi、Bluetooth、BLE、またはLi-Fiが設けられている。
【0096】
ハウジング24からキャップ21を取り外すと、薬剤送達装置の長手方向軸に対する動きが生じ、スイッチ8をデフォルト位置に戻す。これは、起動部材の移動を表す。これにより回路が閉じ、バッテリー2が通信モジュール1b、データ記憶装置を有するレコーダ1d、およびプロセッサまたは制御ユニット1cなどの電気部品を起動および通電できるようになる。
【0097】
本開示の起動システムの別の可能な実施形態では、補助装置の設計は、薬剤送達装置20から取り外して再利用できるようになっている。
【0098】
図6Bは、医療用送達装置20のための起動システムの可能な構成30を表す代替の起動システムおよび実施形態を示し、補助装置3が、ハウジング24を有する薬剤送達装置20のキャップ31に取り付けられ、ハウジングは、用量送達出口60、すなわち針シールド62によって覆われる固定針を有する薬剤容器65を含んでいる。保護キャップ31には、針シールドリムーバー61が取り付けられており、ハウジング24からキャップ31を取り外すと、必然的に針シールド62が針から取り外される。
図6Bは、薬剤送達装置20のハウジング24に取り付けられ、キャップ31に結合された補助装置3に取り付けられた起動部材38を有する薬剤送達装置20の側面図を示す。
【0099】
図6Bはさらに、例えば通信モジュール3b、データ記憶装置を有するレコーダ3d、およびプロセッサまたは制御ユニット3cなどのいくつかの電気コンポーネントを含む補助装置3を示す。これらのコンポーネント/モジュールはすべて、回路基板3eを介して電気通信し、カバー3aで囲まれている。さらにバッテリーモジュールがコイン型電池2として示されている。バッテリーモジュールは、接触パッド38と、バッテリー2および接触パッド38に動作可能に接続されたスイッチ48とを含むことができ、バッテリーモジュールがハウジング24に取り付けられると、スイッチ48の一部が取り外し可能なキャップ31に直接接続されるか、またはバッテリーモジュールがキャップ31に取り付けられると、スイッチの一部がハウジングに直接接続される。
【0100】
本開示の別の実施形態では、補助装置3を作動させる方法が提示され、薬剤送達装置20の近位部分に取り付けられたキャップ31または他の保護カバーが、薬剤送達装置ハウジングの近位部分に対して軸方向に移動されるか、または薬剤送達装置ハウジング10から完全に取り外される場合に、薬剤送達装置に関連する情報を含むデータの送信が行われる。この方法は、補助装置3の電気回路の一部であるバッテリーに直接接触する電気接点から、起動部材、例えば絶縁シートまたはストリップを除去することを含み、スイッチ48の一部は、バッテリー2および接触パッド38に接続され、ここで、スイッチ48の一部は、キャップ31に直接接続される。レコーダは、薬剤送達装置20に関する情報を取得して記憶するように構成することができ、通信モジュールは、レコーダによってデータレコーダを外部装置に送信するために使用することができる。
【0101】
図7は、本開示の起動システムを表す1つの可能な論理フロー図を示す。回路は、ステータス情報を提供するために、補助装置内の多数のモジュールまたはコンポーネントに接続され得る。このようなステータス情報には、投与終了が含まれる場合がある。たとえば、注射シーケンスがいつ終了したか、および注射部位からデバイスを安全に取り外すことができるかをユーザーが知ることが重要な場合がある。この場合、回路は、投与の最後にコンポーネントを動かすことによって影響を受ける可能性があり、回路はスイッチとして機能する。SRWTによって検出されたスイッチ情報は、スマートデバイスに送信され、スマートデバイスは、装置を安全に取り外すことができることをユーザーに示すように構成される。また、この情報により装置が使用されていることが確認される。
【0102】
回路およびスイッチはさらに、インタラクティブな段階的命令として使用することができる。例えば、スマートデバイスは、装置の取り扱い方を段階的にユーザーに示す指示アプリケーションを備えていてもよい。1つのステップが実行されると、特定の回路がSRWTによって影響を受けて検出され、スマートデバイスに送信され、マートデバイスによってOKまたは肯定応答がユーザーに提供され、表示される。指示アプリケーションは、その後の取り扱い手順を示す。このように、すべてのステップがさまざまな回路に影響を与え、SRWTチップにステータス情報を提供する。このステータス情報は、スマートデバイスに逐次送信され、指示アプリにより適切な情報がユーザーに表示される。
【0103】
補助装置による薬剤送達装置とスマートデバイスの強化された統合に関連して、例えば、病気のモニタリングなど特定の治療スキームの効果の理解を深めるために、さらなる情報を収集することができる。薬剤送達装置に関連してスマートデバイスで使用されるプログラムまたはアプリケーションは、用量送達操作に関連してユーザーによって記入されるアンケートをさらに含み得る。アンケートには、患者の現在の状態に関するいくつかの質問が含まれる場合があり、治療、疾患、およびユーザーのニーズに応じて構成できることが望ましい場合がある。対応可能領域は、生活の質、認知機能、痛み、疲労、吐き気、メンタルヘルスなどである。アンケートの回答は、SWRTタグを介して収集された情報とともにスマートデバイスから外部データベースに送信され、処理および評価されて、知覚された患者の状態に関連して治療スキームと薬剤の種類との間の正または負の相関関係を検出することができる。
【0104】
さらに、スマートデバイスがNFCリーダーを備えていない場合、アタッチメントにそのようなNFCリーダーを設け、それによってスマートデバイスに機能を追加することができる。薬物送達装置とスマートデバイスの統合は、NFCタグのリアルタイムの読み取りによる薬剤送達装置とスマートデバイスの間の密接な接続により、リアルタイムのインタラクティブなユーザー指示、および正確な注射時間、日付、および投与量をさらに提供することができる。注射の時間、日付、投与量をスマートデバイスに直接記録して、さらに処理したり送信したりすることができる。
【0105】
多くのスマートデバイスには、三次元のモーションセンサーが配置されており、この機能は、薬剤送達装置の取り扱いに関連して使用することができる。例えば、スマートデバイスは、それが、したがって薬剤送達装置がどのように保持されているかを検出することができる。これは、いくつかのタイプの薬剤およびいくつかのタイプの薬剤送達装置にとって、使用時にいくつかのステップ中に特定の方法で薬剤送達装置を保持しなければならないという点で重要であり得る。これは、例えば、混合およびプライミング中に薬剤容器をどのように保持するかが重要となる、いわゆるデュアルチャンバー薬剤容器を使用する薬剤送達装置である可能性がある。スマートデバイスのモーションセンサーを使用して、薬剤送達装置の持ち方を検出し、装置の持ち方をユーザーに通知し、装置が指示どおりに保持されていない場合はユーザーに警告することができる。
【0106】
統合された薬剤送達装置と共に使用できるスマート装置のさらなる特徴には、しばしばスマート装置の統合された部分であるカメラの使用が含まれる。カメラは、光の忠実度を受信するために使用されるか、または代わりに、薬剤の状態に関する情報を取得するために、多くの場合透明な薬剤容器の内容の写真を撮るために使用することができる。例えば、薬剤の着色や不透明性は、処方範囲外の温度にさらされたなど、薬剤が使用されるべきではないなど、何らかの悪影響が薬剤に起こったことを示している可能性がある。色または不透明度の比較は、スマートデバイスのアプリケーションでユーザーが直接実行するか、スマートデバイスから外部サイトに画像を送信して、熟練した担当者が比較し、薬剤の欠陥を患者に警告することができ、どのように進めるかについてアドバイスすることができる。
【0107】
アドヒアランスおよび患者の責任に関して、利用できるスマートデバイスの特徴および機能がある。一部の薬剤や治療計画は、国の医療機関にとって非常に高額であり、治療計画を本当に遵守するためにユーザーに多くの責任が課せられている。世界のいくつかの国では、患者が高価な治療法を順守しない場合、継続的な治療費の全額または一部を支払うことを余儀なくされるべきである、治療に対して十分な関心がない人は、治療費を払わなければならないという議論があった。NFCタグから取得した情報と薬剤の送達履歴を、アドヒアランスの監視に使用することができる。
【0108】
その点で、指紋センサー、スマートデバイスマット上のカメラを介した目および/または顔認識などの生体認証センサーは、特定の薬剤送達装置のユーザーの証拠を提供し、用量を送達するための薬剤送達装置を起動したのは正当なユーザーであるという証拠を提供することができる。生体認証センサーは、装置が第三者によって誤って、または故意に使用されることを防止されている/不可能にすることを確認するためにさらに使用される場合がある。
【0109】
例えば、より大きなバッテリーが使用される場合、NFCタグは、NFCチップに組み込まれた温度センサーを使用することができる。これは、薬剤送達装置および/または薬剤容器の温度を、例えば輸送中に監視および記録することができるため、利点となり得る。これは、温度に敏感な多くの薬剤にとって重要であり、それにより薬剤の品質が承認された範囲外の温度変化によって影響を受けていないことを保証することができる。また、温度センサーは、薬剤が送達の目標温度に達したときに情報を提供するために使用することができる。情報は、スマートデバイスに伝えられ、スマートデバイスは、取り扱いと温度情報をユーザーに提供することができる。
【0110】
上述の実施形態および図に示される実施形態は、本発明の非限定的な例としてのみみなされるべきであり、特許保護の範囲内で多くの方法で修正され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0111】
1 補助装置
2 バッテリー
8 起動部材
10 構成
13 通信モジュール
18 バッテリーモジュール
20 薬剤送達装置
21 キャップ
24 ハウジング
26 円周部材
31 キャップ
38 接触パッド
48 スイッチ
60 用量送達出口
61 針シールドリムーバー
62 針シールド
65 薬剤容器
【国際調査報告】