(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】聴取機器用の省スペースMIアンテナ
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
H04R25/00 N
H04R25/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570423
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022052741
(87)【国際公開番号】W WO2022167596
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021201095.4
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021214085.8
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508115093
【氏名又は名称】シバントス ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ニクレス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クーン
(57)【要約】
アンテナ18、特に、聴取機器2用の磁気誘導式アンテナ18、並びにそのようなアンテナ18を備えた聴取機器が提示される。アンテナ18は、フレキシブルな磁性フィルム22からそれぞれ形成された第1のアンテナ面30及び第2のアンテナ面32を備える。アンテナ18は、さらに、磁性材料から形成され、又は磁性層22を含み、2つのアンテナ面30,32を互いに接続するベース部34であって、2つのアンテナ面30,32は、ベース部34から同じ方向に曲げられている、ベース部34を備える。最後に、アンテナ18は、少なくとも1つの第1の単層スパイラルコイル48を有するアンテナ巻線46を備え、その第1の単層スパイラルコイル48は、第1のアンテナ面30の外側に配置されており、特に取付られており、それによって、第1のスパイラルコイル48の軸49が、第1のアンテナ面30に対して垂直に方向づけられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴取機器(2)用の磁気誘導式アンテナ(18)であって、
フレキシブルな磁性フィルム(22)からそれぞれ形成された第1のアンテナ面(30)及び第2のアンテナ面(32)と、
磁性材料から形成され、又は磁性層(22)を含み、前記2つのアンテナ面(30,32)を互いに接続するベース部(34)であって、前記2つのアンテナ面(30,32)は、前記ベース部(34)から同じ方向に曲げられている、ベース部(34)と、
アンテナ巻線(46)と、を備えた聴取機器用の磁気誘導式アンテナにおいて、
前記アンテナ巻線(46)は、少なくとも1つの第1の単層スパイラルコイル(48)を有し、その第1の単層スパイラルコイルは、前記第1のアンテナ面(30)の外側に配置されており、特に取付けられており、それによって、前記第1のスパイラルコイル(48)の軸(49)が、前記第1のアンテナ面(30)に対して垂直に方向づけられていることを特徴とする、聴取機器(2)用の磁気誘導式アンテナ(18)。
【請求項2】
1つの第2の単層スパイラルコイル(56)を備え、その第2の単層スパイラルコイルは、前記第2のアンテナ面(32)の外側に配置され、特に取付けられており、それによって、この第2のスパイラルコイル(56)の軸(49)が、前記第2のアンテナ面(32)に対して垂直に方向づけられている、請求項1に記載のアンテナ(18)。
【請求項3】
少なくとも1つの第3の単層スパイラルコイル(60)を備え、その第3の単層スパイラルコイは、前記第1のアンテナ面(30)において、前記第1のスパイラルコイル(48)の外側に且つ平行に配置されている、特に取付けられている、請求項1又は2に記載のアンテナ(18)。
【請求項4】
前記第1のスパイラルコイル(48)、及び、前記第2のスパイラルコイル(56)又は第3のスパイラルコイル(60)は、互いに独立に制御可能である、請求項2又は3に記載のアンテナ(18)。
【請求項5】
1つの又は各スパイラルアンテナ(48,56,60)は、RFID技術において、特に、支持フィルム(50)への、印刷、電着、蒸着、スパッタリング、エッチング、又は、コイル線の埋め込みによって製造される、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項6】
1つの又は各スパイラルアンテナ(48,56,60)は、フレキシブルプリント回路基板の導体路によって形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項7】
1つの又は各スパイラルアンテナ(48,56,60)は、絶縁された、特にエナメル絶縁された巻線の直接互いに隣接する複数のターンを有する空心コイルとして形成されており、
前記複数のターンは、エナメル層によって互いに固定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項8】
前記2つのアンテナ面(30,32)及び前記ベース部(34)は、前記磁性フィルム(22)の単体のフィルム裁断片によって形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項9】
前記2つのアンテナ面(30,32)及び前記ベース部(34)は、それぞれの前記ベース部(34)の領域に突出する、前記磁性フィルム(22)の2つのフィルム裁断片によって形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項10】
前記2つのアンテナ面(30,32)は、それぞれ前記ベース部(34)に対して拡がっており、特に円形の拡がり部(26)を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項11】
低透磁率の導電性材料からなる、特に銅又はアルミニウムからなる第1の磁気反射層(36)を備え、この第1の磁気反射層は、前記第1のアンテナ面(30)及び前記第2のアンテナ面(32)の外側にそれぞれ配置されており、特に取付けられており、それによって、前記第1の反射層(36)は、1つの又は各スパイラルコイル(48,56,60)とそれぞれ関連する前記アンテナ面(30,32)との間に配置されており、
前記第1の反射層(36)は、前記2つのアンテナ面(30,32)のそれぞれの領域において空白部(42)を有し、
又は各スパイラルコイル(48,56,60)は、2つの空白部(42)のうちの1つの領域に配置されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項12】
前記第1の反射層(36)は、前記アンテナ面(30,32)を越えて横方向に突出している、請求項11に記載のアンテナ(18)。
【請求項13】
前記第1の反射層(36)は、前記ベース部(34)も覆っている。請求項11又は12に記載のアンテナ(18)。
【請求項14】
前記第1の反射層(36)は、前記ベース部(34)からそれぞれ離れる側の各アンテナ面(30,32)のうちの1つの領域においてスリット(44)を有し、このスリットは、それぞれの前記空白部(42)から前記第1の反射層(36)の外縁まで延びている、請求項11~13のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項15】
低透磁率の導電性材料からなる、特に銅又はアルミニウムからなる第2の磁気反射層(62)を備え、
前記第2の磁気反射層(62)は、前記第1のアンテナ面(30)及び前記第2のアンテナ面(32)の内側にそれぞれ配置されている、特に取付けられている、請求項1~14のいずれか1項に記載のアンテナ(18)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のアンテナ(18)を備えた聴取機器(2)。
【請求項17】
機能部品、特に電池(10)又はレシーバ(8)を備え、
前記機能部品は、低透磁率の導電性材料からなる、特に銅、アルミニウム又は鋼板からなるケース(54)を有し、
前記アンテナ(18)は、前記ケース(54)が前記アンテナ面(30,32)の内側において側面に位置するように、前記機能部品に配置されている、請求項16に記載の聴取機器(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴取機器用の磁気誘導式アンテナ(略して:MIアンテナ、すなわち磁気誘導式の近傍磁場伝送用のアンテナ)、及びそのようなアンテナを備えた聴取機器に関する。
【背景技術】
【0002】
聴取機器は、一般的に、その聴取機器を装着した人(「ユーザ」又は「装着者」とも呼ばれる)の耳に音信号を発し、それによって、その人の聴力をサポートする電子機器を意味する。狭義には、聴力低下者のために使用される補聴器は、それに含まれる。このような補聴器は、周囲の音を拾い、その音を、空気伝搬音及び/又は固体伝搬音として処理し、特に周波数に依存して増幅された形態においてユーザに伝える。その際、補聴器は、ユーザの聴力不足を完全に又は少なくとも部分的に補償する。その他の聴取機器は、古典的な補聴器と同様に、取得された周囲の音を処理し、しかしながら、特殊な状況下において聴力を保護するために(例えば、音楽家用の特殊な弱音化聴取機器)、又は、その他の方法においてサポートするために、通常聴力のユーザのために使用される。また、以下においては、聴取機器は、有線又は無線によって受信したオーディオ信号を空気伝搬音又は固体伝搬音に変換し、この形態においてユーザに与える装置、例えばヘッドホン、イヤピース(Ohrstuecke)等と解される。
【0003】
様々な種類の聴取機器が知られている。いわゆる「耳かけ型補聴器」(Behind-The-Ear、略して:BTE)は、頭と耳介の間に装着される。その際、増幅された音信号は、音チューブによって人の耳道に導入される、又は、外耳道に置かれた音変換器(「受話器」又は「レシーバ」ともいう)によって放射される。聴取機器のさらなる形態は、「耳穴型補聴器」(In-The-Ear、略して:ITE)であり、この機器においては、全体の補聴器自体が耳の中、特に耳道に挿入される。さらには、固体伝搬音の形態の音情報を伝達する、又は、聴神経を直接刺激する聴取機器もある。
【0004】
磁気誘導式の近傍磁場伝送は、聴取機器において、従来の無線伝送技術(例えば、Bluetooth)に代えて、外部機器とのデータ、特にオーディオ信号の無線伝送のために使用されている。特に、両耳用聴取システムの2つの聴取機器間の通信には、磁気誘導式の近傍磁場伝送がよく使用される。さらに、磁気誘導方法は、エネルギ伝送のためにも、すなわち、聴取機器の充電式電池のワイヤレス充電のためにも利用されている。
【0005】
これまで、そのために(すなわち、磁気誘導式のデータ及び/又はエネルギ伝送のために)必要なMIアンテナは、通常、フェライトコアにアンテナ巻線(コイルとも呼ばれる)を巻くことによって製造されていた。この場合、アンテナ性能は、フェライトコアの大型化、特別な巻線、及び特別なフェライト材料によって向上させ得る。しかしながら、狭い構造スペース、聴取機器内の精密な(それによって干渉を受けやすい)電子機器、及び、可能な限り軽量化の要望の理由から、聴取機器に使用するための従来のMIアンテナの性能向上には、狭い限界がある。
【0006】
国際公開第2017/153274号パンフレットには、MIアンテナの代替的な構造形態のコンセプトが記載されており、そのMIアンテナにおいては、アンテナ巻線を巻いたコイルコア(ベース部)の断面が平坦な磁性フィルムによって拡張されている。このフィルムアンテナにおいては、フィルムによって形成されるアンテナ面(そこでは「遮蔽板」と呼ばれる)は、そのベース部の軸に対してほぼ直交するように方向づけされている。そのアンテナ面において、その互いに向かい合う内側に、常磁性層又は反磁性層がオプションとして設けられており、この層によって、アンテナ面間に形成される内部空間が磁気的に遮蔽される。そのため、アンテナ面間の内部空間には、補聴器の電気又は電子部品(例えば、電池)を省スペースにおいて収容できる。
【0007】
このアンテナ構造形態のさらなる展開が、独国特許出願公開第102018209189号明細書及び独国実用新案第202018104183号明細書に開示されている。独国特許出願公開第102018209189号明細書によれば、ベース部から曲げられたアンテナ面は、部分的に横方向のコイルコア部に形成されており、このコイルコア部は、ベース部の両側に位置し、それぞれがさらなるコイルを支持している。それによって、アンテナ巻線は、軸に関して互いに曲がった3つのコイルを含む。独国実用新案第202018104183号明細書によれば、アンテナ巻線を形成する磁気コイルは、フレキシブルプリント回路基板に一体化されている。このプリント回路基板には、磁性フィルムを挟む2つの導体層が設けられている。その2つの導体層はそれぞれ複数の導体路に分けられており、その際、2つの導体層の対向する導体路は、アンテナ巻線を形成するために、スルーホール(ビア)を介して互いに電気的に接続されている。
【0008】
欧州特許出願公開第3614494号明細書から、フィルムアンテナのさらなる変形例が知られている。この文献においては、アンテナ面は、互いに分離した磁性のフィルム裁断片(Folienzuschnitt)から形成されている。アンテナ巻線が巻かれたベース部は、その両端に開口部を有し、その開口部に、それぞれフィルム裁断片の1つが挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/153274号
【特許文献2】独国特許出願公開第102018209189号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202018104183号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3614494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、聴取機器用アンテナを、特に製造技術面に関してさらに向上させるという課題に基づく。特に、アンテナは、容易且つ安価に製造可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有するアンテナによって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0012】
本発明によるアンテナは、聴取機器、特に補聴器に使用することを意図しており、且つその使用に適している。このアンテナは磁気誘導式アンテナ(MIアンテナ)であり、そのMIアンテナは、近傍磁場において、特に約300MHz(メガヘルツ)までの周波数において、データ及び/又はエネルギ伝送のために適合されている。そのアンテナは、第1のアンテナ面及び第2のアンテナ面を備え、これらのアンテナ面はそれぞれフレキシブルな磁性フィルム、特にフェライトフィルムから形成されている。
【0013】
そのアンテナは、磁性材料から形成された、又は少なくとも1つの磁性層を含むベース部をさらに備える。そのベース部は2つのアンテナ面の間に配置され、2つのアンテナ面を機械的及び磁気的に互いに接続する。その際、2つのアンテナ面は、ベース部から同じ方向に曲げられており、それによって、ベース部は、2つのアンテナ面と共に、ほぼ「U」の字の形状を形成する。2つのアンテナ面が、それに沿ってベース部から曲っている(折曲がり)線を、以下において、ベース部の「フロントエッジ」とも呼ぶ。その際、2つのアンテナ面とベース部とは、3つの側面から空間ボリューム(「内部空間」とも呼ぶ)を囲んでいる。この内側の空間に面する、2つのアンテナ面及びベース部の側面をそれぞれ「内側」と呼ぶ。2つのアンテナ面の、この内側と反対側を「外側」と呼ぶ。「内側の」及び「外側の」という用語は、対応して使用する。2つのアンテナ面は、特にベース部から(必須ではなく)直角に曲がっており、それによって、アンテナ面が内部空間の左右において平行に向かい合っている。2つのアンテナ面は、好ましくは、互いに対称に形成されている。
【0014】
最後に、アンテナはアンテナ巻線を含む。
【0015】
そこまでは、本発明によるアンテナは、上記した従来技術からそれ自体知られているように、フィルムアンテナに類似している。しかしながら、公知のフィルムアンテナとは異なり、本発明によるアンテナにおいては、アンテナ巻線がベース部に巻かれることはない。むしろ、本発明によるアンテナ巻線は、少なくとも1つの第1の単層スパイラルコイルを有する。この第1のスパイラルコイルは、第1のアンテナ面の外側に配置され、それによって、第1のスパイラルコイルの(コイル)軸が、第1のアンテナ面に対して垂直となるように方向づけられている。そのスパイラルコイルは、特に、第1のアンテナ面に取付けられており(angebracht)、特に、第1のアンテナ面に(直接に又は間接的に)貼り付けられている。
【0016】
単層スパイラルコイルは、ここ以下において、平坦な(例えば、円形の、多角形の、又は不定形の)スパイラル形状の磁性コイルと解され、その磁性コイルにおいては、コイル線又はコイル導体が同一面内において直径を変えながら2ターン以上巻かれている。本発明の特定の実施形態においては、アンテナ巻線は、第1のスパイラルコイルのみから構成される。しかしながら、所与の大きさのアンテナの場合に、より高いアンテナ効率を達成するために、本発明の好適な実施形態においては、アンテナ巻線は少なくとも1つのさらなるスパイラルコイルを含む。
【0017】
そのため、本発明の一変形例においては、第1のスパイラルコイルに加えて、第2の単層スパイラルコイルが設けられ、この第2のスパイラルコイルは、第2のアンテナ面の外側に配置され、特に取付けられている。それによって、この第2のスパイラルコイルの軸が第2のアンテナ面に対して垂直に方向づけられている。好適な実施形態においては、第2のスパイラルコイルは、第1のスパイラルコイルと同一の構造であり、及び/又は、第1のスパイラルコイルに対して中心軸に(すなわち、2つのコイル軸に関して同軸に)配置されている。
【0018】
代替的に又は第2のスパイラルコイルに加えて、本発明の更なる一変形例においては、アンテナは少なくとも1つの第3の単層スパイラルコイルを含み、その第3の単層スパイラルコイルは、第1のアンテナ面において、第1のスパイラルコイルの外側に、且つ、スパイラル平面に対して、平行に配置されている、特に、取付けられている。好適な実施形態においては、第3のスパイラルコイルも第1のスパイラルコイルと同一の構造であり、及び/又は、第1のスパイラルコイルに対して中心軸に(すなわち、2つのコイル軸に関して、ここにおいても同軸に)配置されている。
【0019】
本発明の範囲においては、アンテナは、第2のアンテナ面又は第1のアンテナ面の側面に位置する、さらなる第2の又は第3のスパイラルコイルを含み得る。したがって、「第2の」スパイラルコイル及び「第3の」スパイラルコイルという用語は、第1のスパイラルコイルに対する配置に関してそれぞれのスパイラルコイルを明確に識別するためにのみ用いられ、スパイラルコイルの数を数えるために用いられるものではない。したがって、本発明の特定の実施形態においては、アンテナは、第1のスパイラルコイルと1つ以上の第3のスパイラルコイルとを有し、第2のスパイラルコイルを有しないこともあり得る。
【0020】
必要に応じて、複数の単層スパイラルコイルは、本発明の範囲において、互いに固定して接続する(特に電気的に直列に接続する)ことができ、それによって、共に多層のアンテナ巻線を形成することができる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態においては、2つのスパイラルコイルは、又は必要に応じて、複数のスパイラルコイルのうちの少なくとも2つは、互いに独立して制御可能であり、すなわち、信号の送信又は受信のため、或いは、エネルギの供給又は取出しのために、対応する回路に結合される。少なくとも2つのスパイラルコイルの独立の制御は、一方において、1つのスパイラルコイルをオフにして、それによって巻線電流の電流強度を上げることによって、アンテナの送信電力を一時的に増加させることができる。他方において、少なくとも2つのスパイラルコイルの独立の制御は、1つのスパイラルコイルをオンにすることによって、一時的にアンテナ効率を上げることができる。
【0021】
本発明の有利な実施形態においては、1つの又は各スパイラルコイルは、RFID技術において(すなわち、RFIDトランスポンダのアンテナコイル技術にしたがって)製造される。その際、特に、スパイラルコイルは、支持フィルムへの、導体路の印刷、電着、蒸着、スパッタリング、エッチングによって、又は、コイル線の埋め込みによって製造される。1つの又は各スパイラルコイルの製造のためのRFID技術の使用は、1つの又は各スパイラルコイルを、そのような方法において、特に、容易且つ安価に製造できるという利点を有する。
【0022】
同様に好適な代替例として、1つの又は各スパイラルコイルは、フレキシブルプリント回路基板の導体路によって形成されている。これは、特に、スパイラルコイルを、関連する電子制御部と、並びにオプションとして、通常存在する聴取機器の信号処理部と、比較的簡単に一体化して製造できるという利点を有する。
【0023】
更なる代替的な一実施形態においては、1つの又は各スパイラルコイルは、絶縁された(特にエナメル絶縁された)巻線の複数のターンが直接互いに隣接して巻かれている空芯コイルとして形成されている。複数のターンは、好ましくはエナメル層(特に電気絶縁に使用されるエナメル)によって互いに固定され、特に共に焼成される。その際、特に、エナメル層は複数のターンを互いに固定する唯一の手段であり、それによって、好ましくは、このような空芯コイルは、支持フィルム又は他の平坦な支持構造を有さない。空芯コイルとしての、1つの又は各スパイラルコイルの上記の形成は、有利には、比較的少ない費用によって、特に高いターン密度を達成することができる。
【0024】
1つの又は各スパイラルコイルは、好ましくは、巻線のない比較的大きな中央の自由空間を囲むように形成されている。その際、この自由空間の直径は、好ましくは、各スパイラルコイルの外径の50%以上を占める。1つの又は各スパイラルコイルのこの形成によって、特に高いターン集中度が、それぞれのスパイラルコイルの外側の領域において得られる。それによって、所与のターン数の場合において、より小さな巻線無し自由空間を囲むスパイラルコイルと比較して、特に大きな有効面積が得られ、その結果、特に高いアンテナ感度(性能)が得られる。
【0025】
アンテナの有利な実施形態においては、1つの又は各スパイラルコイルは、その外径が関連するアンテナ面の外径より大きくなるように形成されている。言い換えれば、1つの又は各スパイラルコイルは、好ましくは、それぞれに関連するアンテナ面を越えて横方向に突出している。1つの又は各スパイラルコイルをそれぞれに関連するアンテナ面と比較して大きくすることによって、ここにおいても、特に高いアンテナ感度が得られる。
【0026】
アンテナの好適な実施形態においては、フェライトフィルムは、それぞれのアンテナ面の周囲に配置された複数の形成物(半径方向突出部(Radialsteg))が、2つのアンテナ面のうちの少なくとも一方の外周から突出するように形成されている。上記のように、1つの又は各スパイラルコイルが関連するアンテナ面の端から横方向に突出している場合においては、これらの半径方向突出部はコイルを機械的に安定させる役割を果たす。これは、スパイラルコイルがアンテナ面に直接固定され、支持フィルム又は反射フィルムによって支持されていない場合に、特に有利である。さらに、又は代替的に、半径方向突出部は、アンテナを、聴取機器の構造部品、例えば、ハウジング又はそこに挿入される電子機器フレームに固定するために使用される。
【0027】
基本的には、2つのアンテナ面は別々のフィルム部品から形成されてもよい。しかしながら、製造をさらに簡略化し、特に高いアンテナ効率を達成するために、2つのアンテナ面及びベース部は、好ましくは、磁性フィルムの単体のフィルム裁断片によって形成される。代替的には、2つのアンテナ面及びベース部は、それぞれベース部の領域に突出する、磁性フィルムの2つのフィルム裁断片によって形成されている。
【0028】
従来技術から知られているフィルムアンテナに類似して、2つのアンテナ面は、好ましくは、それぞれベース部に対して拡がっている。欧州特許出願公開第3614494号明細書に開示されたアンテナから知られているように、その際、特に、2つのアンテナ面はそれぞれ円形の拡がり部を有している。
【0029】
限られた設置スペース及び/又はアンテナの最大重量を考慮して、アンテナの磁場を有利に形成し、したがってアンテナの効率を著しく向上させるために、アンテナは、好ましくは、低透磁率の導電性材料からなる第1の磁気反射層を備える。この第1の反射層は、特に銅又はアルミニウムからなり、例えばフィルム又はコーティング層の形態である。第1の反射層は、その際第1のアンテナ面及び第2のアンテナ面の外側に配置されており、特に取付けられている。それによって、第1の反射層は、アンテナ面と、1つの又は各スパイラルコイルとの間に配置される。すなわち、1つの又は各スパイラルコイルと、それぞれ関連するアンテナ面とは、第1の反射フィルムを挟み込むように配置されている。その際、2つのアンテナ面のそれぞれの領域において、第1の反射層は、磁束が束になってアンテナ面に導入され、及びアンテナ面から排出される空白部(すなわち、孔)を有する。その際、1つの又は各スパイラルコイルは、2つの空白部のうちの1つの領域に、特に関連する空白部に対して中心を合わせて配置されている。第1のアンテナ面のみに1つ以上のスパイラルコイルが関連するアンテナの実施形態の場合には、第2のアンテナ面における第1の反射層は、オプションとして、省略される。この場合、第1の反射層は、第1のアンテナ面のみを覆い、並びに、好ましくはベース部を覆う。
【0030】
本発明の好適な実施形態においては、第1の反射層は、アンテナ面を越えて横方向(すなわち、1つの又は各スパイラルコイルの軸に対して横切る方向)に突出するように、その大きさが決められている。これによって、特に効果的な磁場形成が得られる。好ましくは、第1の反射層は、ベース部の磁性材料からの望ましくない漂遊磁場の漏れをできる限り防止するために、2つのアンテナ面だけでなく、さらにベース部も覆う。特に、第1の反射層は、2つのアンテナ面及びベース部を覆う、つながった面を形成している。
【0031】
好ましくは、第1の反射層は、ベース部からそれぞれ離れる側の各アンテナ面の領域においてスリットを有し、このスリットは、それぞれの空白部から第1の反射層の外縁まで延びている。そのスリットのために、第1の反射層は空白部の周囲において環状に閉じていない。それによって、第1の反射層内における不都合な循環電流の発生を阻止することができる。
【0032】
第1の反射層に加えて、又はその代わりに、アンテナは、好ましくは、低透磁率の導電性材料からなる、特に銅又はアルミニウムからなる第2の磁気反射層を備える。この第2の反射層は、第1のアンテナ面及び第2のアンテナ面の内側に配置されている、特に取付けられている。第2の磁気反射層は、好ましくは、ベース部上に延び、好適には、2つのアンテナ面とベース部を覆う、つながった面を形成する。
【0033】
本発明によるアンテナは、非常に薄いフィルム又は層(すなわち、磁気フィルム、特にフェライトフィルム、場合によっては存在する第1の及び/又は第2の反射層、及び、少なくとも1つのターン層)のみから形成されているため、非常に軽量であり、且つ非常に少ない設置スペースしか必要としないという利点を有する。アンテナ面とそれらを接続するベース部とから形成されるU字型の構造のために、アンテナは、設置スペースが少ない場合でありながら、比較的大きな体積を有している。この大きな体積のために、アンテナは、一方において高い性能を有する。それによって、特に、アンテナは、励起状態において、同じ体積のロッドアンテナとほぼ同等の磁場推移を発生させる。しかしながら、そのようなロッドアンテナとは異なり、閉じられ体積は、ほとんど空であり、そのため、聴取機器の少なくとも1つの他の部品、特に電池を収容するために使用することができる。アンテナによって囲まれた内部空間に、金属製のケースを有する、電池又は他の部品を収容することは、その際、その金属ケースが磁束をアンテナの磁性フィルム内にガイドし、それによってアンテナの性能をさらに促進するという、追加効果を有する。
【0034】
本発明によるアンテナは、従来のフィルムアンテナと比較して、RFID技術における平らなコイルの実施によって、プリント回路基板に又は空芯コイルとして、非常に容易に且つ安価に製造できるというさらなる利点を有している。その際、プリント回路基板へのコイルの形成は、1つの又は各コイルを聴取機器の信号処理部及び/又は制御電子部品と共通の基板に統合することができ(好ましくは統合する)、それによって、聴取機器の組立労力が軽減されるという追加の利点を有する。特にこの場合、アンテナ巻線と、関連する送信及び/又は受信回路、或いは聴取機器の充電電子部品との、はんだ付け又はその他の接続のための労力が省略される。
【0035】
本発明によるアンテナのさらなる利点は、柔軟性が高く、それによって、聴取機器の構造的な周辺条件に適応できることである。そのため、アンテナは、特に、様々な固体形状に対応することができる。コイルのターンは必ずしも円形である必要はない。むしろ、コイルのターンは、本発明の範囲内において、他の形状、特に角張った形状、楕円形、器官的な形状又はこれらの形状の組み合わせ(例えば、聴取機器の形状に適合した輪郭)を採用することも可能である。最高の性能のアンテナを得るために、コイルの形状は、その際好ましくは、アンテナ巻線が最大限に利用可能な面積を満たすように、決定される。さらに、アンテナは、単層スパイラルコイルの数の選択によって、それぞれの用途において求められる性能、及び/又は、インダクタンスに簡単に対応することができる。特に、スパイラルコイルの1つ以上の追加によって、非常に小さな使用可能面積においても、アンテナの高い性能、或いはインダクタンスを実現可能である。
【0036】
アンテナを組み立てる好適な方法においては、まず、2つのアンテナ面のうちの1つを、その一端面を用いて、アンテナの内部に収容されている部品の表面(特に電池の端面)に配置する、オプションとして、固定する、特に貼り付けによって固定する。次いで、ベース部と、もう一方のアンテナ面を部品の周りに折り畳む。最後に、そのもう一方のアンテナ面を部品の反対側の表面(特に電池の他方の端面)に配置する、オプションとして、固定する。ただし、それ自体は簡単なこの組み立て方法は、アンテナ面を、互いに対して、及び部品に対して正確にセンタリングすることが比較的困難であるという点においては、複雑化する可能性がある。これは、一方においては、磁性フィルム及び他の部品の製造公差に起因する。他方においては、経験上、磁性フィルムの磁性層(特にフェライト層)は、フィルム裁断片を部品の周りに折り畳む際に、不規則、且つ再現性のない破断を起こす傾向がある。したがって、アンテナの製造上の差異は、特に、第2のアンテナ面を部品に位置決めするための自由度が、先行するプロセスステップによって制限されるため、上記の組立プロセスによってさらに増大する。
【0037】
簡単でありながら、同時に正確且つ再現性のあるアンテナの組み立てを可能にするために、本発明のさらなる展開において、以下に詳述する複数の手段が提案され、これらは互いに独立して、又は互いに任意の組み合わせによって使用することができる。
【0038】
上記手段の第1の手段によれば、アンテナは、好ましくは、ガイド体をさらに備え、そのガイド体は、ガイド面によって、内部空間に面するベース部の表面に接している。好ましくはプラスチック製の射出成形部品によって形成されているガイド体は、したがって、アンテナの組立状態において、特に、ベース部と、アンテナの内部空間に収容されている部品(特に電池)との間に封入されている。ガイド体は、ベース部から始まる(したがって対称的な)組立プロセスを容易にするために、部品に対するアンテナのセンタリングを(ひいては、アンテナ面のセンタリングも)サポートする。好ましくは、ベース部は、最初に、ガイド体に結合される。次いで、ガイド体をアンテナの内部空間に収容する部品上に配置する。続いて、2つのアンテナ面を部品の両側において折り曲げ、オプションとして、部品に固定する。その際、ガイド体の内側に、部品と相補的な輪郭を設け、それによって、ガイド体を部品上に正確に(特に、おのずから中心配置して)載置可能となることによって、この組立プロセスの精度は、好適な実施形態において向上する。
【0039】
2つのアンテナ面がベース部から曲げられる折り畳みプロセスの再現性を高めるために、特に、磁性フィルムの磁化可能な層の不規則な、再現性のない破損を回避するために又は少なくとも小さく保つために、ガイド体には、好ましくは、ベース部の端縁の領域において、そのガイド面に、それぞれ、(円筒形に)凸状のガイド半径が設けられている。そのガイド半径によって、アンテナ面がベース部から曲げられるときに磁性フィルムがガイドされる。
【0040】
追加的又は代替的に、好適な実施形態において、ガイド体は、ガイド面から突出する(例えばピン状の)少なくとも1つのセンタリング突出部を有する。このセンタリング突出部は、ベース部の位置決め(センタリング)のために、ベース部の対応する切り込み又は孔に係合する。さらなる好適な一実施形態においては、ガイド体のガイド面の両側には、その間にベース部が挿入される壁板(Bruestungssteg)又は突出部が設けられている。この形態によって、ベース部(ひいては、間接的にアンテナ面も)をガイド面に確実に保持することができる。
【0041】
オプションとして、ガイド体には、さらに機能的な構造、例えば、プリント回路基板を固定するための構造、及び/又は、巻線をガイドするための構造が設けられる。
【0042】
第2の手段によれば、好ましくは、1つの又は各フィルム裁断片には、2つのアンテナ面のうちの1つとベース部との間の領域において、目標曲げ部位が設けられている。それによって、磁気フィルムが、その目標曲げ部位において、少なくとも1つの凹部(Vertiefung)によって局所的に弱められる。様々な変形例において、磁性フィルムには、複数の点状の凹部、又は1つ以上の線状の凹部、又は点状と線状の凹部との組み合わせのいずれかが導入される。この凹部は、特にレーザー照射(レーザー切断)を用いた材料除去によって製造される。1つの又は各凹部は、異なる深さにおいて磁性フィルムに導入することができ、しかしながら、好ましくは、フィルムを完全に貫通しないような方法において導入される。1つの又は各凹部は、さらに好ましくは、磁性フィルムの、内部空間に面する内側に導入される。それによって、凹部は、磁性フィルムの曲げられた状態において曲げ部位の凹側にあり、その結果、磁性フィルムが曲げられた際に、フィルムの材料によって完全に又は少なくとも部分的に、再び押し合わされる。目標曲げ部位によって、磁化可能な層の不規則な破損が回避され、それによって、ここにおいても、アンテナ組み立て時の製造公差を低減することができる。
【0043】
簡単でありながら、同時に精密且つ再現性の高いアンテナの組み立てを実現するための第3の手段は、アンテナ面及びベース部が磁性フィルムの2枚のフィルム裁断片によって構成されている、アンテナの実施形態において使用される。2枚のフィルム裁断片のそれぞれは、2つのアンテナ面のうちの1つと、それぞれのアンテナ面の端から(特に半径方向に)突出した少なくとも1つの連結部(Lasche)とを有する。ベース部を形成するために、2つのフィルム裁断片のうちの1つの連結部は、又は必要に応じて、複数の連結部のうちの1つは、他のフィルム裁断片の(それぞれ)対応する連結部に重なって配置されている。
【0044】
2枚のフィルム裁断片からなるアンテナ面及びベース部の形成は、2つのアンテナ面をアンテナ内部に収容される部品に独立して(したがって特に正確に)固定することができる。さらに、製造公差は(部品の厚みの違いも)、連結部の様々な大きな重なりによって調整することができ、それは、アンテナの磁気特性に特に影響を与えない。さらに、2つのフィルム裁断片は、好ましくは、同一形状に製造され、それによって製造プロセスが簡略化される。
【0045】
2枚のフィルム裁断片にそれぞれ複数の連結部が設けられる場合、これらの連結部によって形成されるアンテナのベース部は、複数の独立した平板部(Strang)に分割される。その際に、2つのフィルム裁断片の連結部を重ねる順序は、好ましくは、交代される。ベース部のこの複数平板部の形態は、ベース部が内部空間に収容される部品よりも径方向に大きく突出することなく、比較的大きな断面積(それによって、2つのアンテナ面間の良好な磁気結合)を有するベース部の実現を可能にする。言い換えれば、ベース部の、それぞれ2つのフィルム裁断片の連結部によって形成された複数の平板部への分割は、ベース部を内部空間に収容される部品の周りに平板部を簡単に配置することを可能にする。それによって、特にコンパクトな形状のアンテナにおいて、2つのアンテナ面間の良好な磁気結合が得られる。さらに、知られているように、同一断面積のより幅広い連結部よりも、幅の狭い複数の連結部の方が、アンテナ面から簡単に、及び、磁性体層の不規則な破損の少ないリスクのもとに、曲げられる。好ましくは、ベース部の複数の平板部は、アンテナ面の一方に対して見たときに、40°~180°、好ましくは45°,90°又は120°の角度に向くように、互いに配置されている。ベース部の平板部が互いに離れていることによって、1つの平板部又は密接に隣接する2つの平板部からなるベース部と比較して、2つのアンテナ面間の特に効果的な磁気結合が得られることが示されている。
【0046】
好ましくは、2つのフィルム裁断片の磁気フィルムは、磁化可能な層、特にフェライト層又はフェライト粉末層によって形成され、この層は、プラスチック層(特にポリエチレンテレフタレート、略してPET)によって、両側において(サンドイッチ状に)囲まれている。この場合、本発明の好適な一実施形態においては、プラスチック層の1つが、対応する連結部の1つの又は各重なり領域において除去され、それによって、対応する連結部がそれぞれ磁化可能な層と直接重なる。これによって、アンテナ面間の磁気結合がさらに向上する。
【0047】
本発明の特定の実施形態は、上記した本発明による、特に、上記した実施形態のうちの1つにおけるアンテナを備えた聴取機器である。その聴取機器は、特に、従来の方法において、ハウジングの内側又は外側に、出力変換器、例えばユーザの耳に音信号を出力するためのレシーバを備えている。聴取機器は、さらに好ましくは、ユーザに出力する音信号を処理、特に増幅するための(プログラム可能、プログラム不可能、又は部分的にプログラム可能な)信号処理装置を備える。さらに、聴取機器は、好ましくは、周囲音を検出するための入力変換器、特に少なくとも1つのマイクロホンを備え、この検出された周囲音は、処理、特に増幅の後に出力変換器を介して出力される。
【0048】
好適な実施形態においては、聴取機器は、機能部品、例えば(充電式又は非充電式)電池又はレシーバを備え、この機能部品には、低透磁率の導電性材料、特に銅、アルミニウム又は薄鋼板からなるケースが設けられている。アンテナは、その際、ケースがアンテナ面(好ましくはベース部も)の内側において側面に密に位置するように、機能部品に配置されている。それによって、機能部品のケースは、上記した第2の反射層の効果を果し、そのため、第2の反射層は、この実施形態においては省略され、したがって、好ましくは存在しない。好ましくは、ケースはアンテナ面のそれぞれの内側に直接隣接し、オプションとして、ベース部の内側にも直接隣接する。
【0049】
本発明の範囲内において、本発明によるアンテナは、基本的に、冒頭において説明したタイプの任意の聴取機器、特にヘッドホン、イヤピース等の場合にも、有利に使用することができる。しかしながら、好ましくは、本発明による聴取機器は、任意に、例えば、BTE又はITE機器として存在可能な補聴器である。
【0050】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】電池とその上に配置されたアンテナとを備えた、耳かけ型補聴器の形態の聴取機器の概略図である。
【
図2】
図1の補聴器のアンテナの斜視図であり、そのアンテナは、フェライトフィルムと、フェライトフィルムの外側に配置された第1の反射フィルムと、第1の反射フィルムの外側に配置されたアンテナ巻線とを含み、そのアンテナ巻線は単層スパイラルコイルから形成されていることを示す。
【
図3】聴取機器の電池に取付けられた状態のアンテナを示す、
図2による図である。
【
図4】電池とアンテナのフェライトフィルムとを示す、
図3による図である。
【
図5】電池と、アンテナのフェライトフィルムと第1の反射フィルムとを示す、
図3による図である。
【
図6】アンテナのフェライトフィルムを展開した状態を示す図である。
【
図7】代替的な一実施形態におけるアンテナの第1の反射フィルムを示す図であり、その実施形態においては、アンテナ巻線の2つの単層スパイラルフィルムが第1の反射フィルム上に取付けられ、その2つのスパイラルフィルムは第1の反射フィルムの互いに反対に位置する長手方向端部に取付けられていることを示す。
【
図8】電池と、その上に配置される
図2によるアンテナとの断面を示す概略的な断面図である。
【
図9】アンテナの代替的な一実施形態であり、その実施形態においては、アンテナ巻線が、重なり合って取付けられた2つの単層スパイラルコイルを含むことを示す、
図8による図である。
【
図10】フェライトフィルムの内側に取付けられた第2の反射フィルムを備えたアンテナのさらなる一実施形態を示す、
図8による図である。
【
図11】電池に対して、フェライトフィルムを案内し、且つセンタリングのためのガイド体を備えたアンテナのさらなる一実施形態を示す斜視図である。
【
図12】電池に対して、フェライトフィルムを案内し、且つセンタリングのためのガイド体を備えたアンテナのさらなる一実施形態を示す斜視図である。
【
図13】電池の上に配置された、
図11によるアンテナの断面図である。
【
図14】4つの異なる実施形態の内の1つのフェライトフィルムの平面図であり、その実施形態においては、2つのアンテナ面のうちの1つとベース部との間の領域に目標曲げ部位を有し、その目標曲げ部位中においてフェライトフィルムは1つ以上の凹部によって局所的に弱体化させられていることを示す。
【
図15】4つの異なる実施形態の内の1つのフェライトフィルムの平面是であり、その実施形態においては、2つのアンテナ面のうちの1つとベース部との間の領域に目標曲げ部位を有し、その目標曲げ部位中においてフェライトフィルムは1つ以上の凹部によって局所的に弱体化させられていることを示す。
【
図16】4つの異なる実施形態の内の1つのフェライトフィルムの平面是であり、その実施形態においては、2つのアンテナ面のうちの1つとベース部との間の領域に目標曲げ部位を有し、その目標曲げ部位中においてフェライトフィルムは1つ以上の凹部によって局所的に弱体化させられていることを示す。
【
図17】4つの異なる実施形態の内の1つのフェライトフィルムの平面是であり、その実施形態においては、2つのアンテナ面のうちの1つとベース部との間の領域に目標曲げ部位を有し、その目標曲げ部位中においてフェライトフィルムは1つ以上の凹部によって局所的に弱体化させられていることを示す。
【
図18】目標曲げ部位の1つに深さの異なる3つの凹部を有するフェライトフィルムの概略的な断面図である。
【
図19】アンテナの一実施形態の斜視図であり、そのアンテナはフェライトフィルムの2つのフィルム裁断片から組み立てられ、その際、アンテナは電池上に配置されていることを示す。
【
図20】アンテナの一実施形態の斜視図であり、そのアンテナはフェライトフィルムの2つのフィルム裁断片から組み立てられ、その際、アンテナは電池上に配置されていることを示す。
【
図21】
図19によるアンテナのフィルム裁断片の、個別の斜視図である。
【
図22】2つのフィルム裁断片から形成されたアンテナの変形例を示す斜視図である。
【
図23】2つのフィルム裁断片から形成されたアンテナの変形例を示す平面図である。
【
図24】聴取機器の電池に装着された状態のアンテナのさらなる一実施形態を示す斜視図である。
【
図25】
図24によるアンテナのフィルム裁断片の、個別の斜視図である。
【
図26】固定されたアンテナのスパイラルコイルをその上に伴い、展開した状態における、
図25によるフィルム裁断片の平面図である。
【
図27】聴取機器の電池に装着された状態のアンテナのさらなる一実施形態を示す斜視図である。
【
図28】
図27によるアンテナのフィルム裁断片の、個別の斜視図である。
【
図29】固定されたアンテナのスパイラルコイルをその上に伴い、展開した状態における、
図28によるフィルム裁断片片の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
すべての図において、対応する部品には常に同一の参照符号を付す。
【0053】
図1は、聴取機器を示しており、その聴取機器は、聴力低下者の聴力をサポートするための補聴器2である。本実施例においては、その補聴器2は、ユーザに耳かけ可能なBTE補聴器である。
【0054】
補聴器2は、ハウジング4内に、入力変換器としての2つのマイクロホン6と、出力変換器としてのレシーバ8とを含む。補聴器2は、さらに、電池10と、信号プロセッサ12の形態の信号処理装置とを含む。好ましくは、信号プロセッサ12は、プログラム可能なサブユニット(例えばマイクロプロセッサ)とプログラム不可能なサブユニット(例えばASIC)との両方を含む。
【0055】
信号プロセッサ12には、電池10から電源電圧Uが供給される。
【0056】
補聴器2の通常の動作においては、マイクロホン6はそれぞれ補聴器2の周囲から空気伝搬音を拾う。マイクロホン6は、その音を、拾った音に関する情報を含む(入力)オーディオ信号Iにそれぞれ変換する。入力オーディオ信号Iは、補聴器2内において信号プロセッサ12に供給され、信号プロセッサ12は、ユーザの聴力をサポートするために、この入力オーディオ信号Iを修正する。
【0057】
信号プロセッサ12は、出力オーディオ信号Oをレシーバ8に出力し、その出力オーディオ信号Oは、処理されることによって修正された音に関する情報を含む。
【0058】
レシーバ8は、その出力オーディオ信号Oを修正された空気伝搬音に変換する。この修正された空気伝搬音は、レシーバ8とハウジング4の先端部16とを結ぶ音チャネル14を介して、並びに、先端部16とユーザの耳道に挿入されるイヤピースとを結ぶ柔軟な音チューブ(明示せず)を介して、ユーザの耳道に伝搬される。
【0059】
周辺機器、例えば、ユーザの第2の耳に提供するための第2の補聴器とデータ交換できるようにするために、補聴器2は、さらにアンテナ18を含む。アンテナ18は、磁気誘導の近傍磁場伝送をデータ交換に利用するMIアンテナである。アンテナ18を制御するために、補聴器2は送受信回路20を含み、その送受信回路は、補聴器2の、一方においてはアンテナ18に、他方においては信号プロセッサ12に接続されている。さらに、又は代替的に、アンテナ18は、電池10を充電するためのエネルギを無線によって受信するために使用される。アンテナ18は、この場合(必要に応じて)、電池10の充電プロセスを制御する、補聴器2の電子充電制御部に接続されている。
【0060】
図2によれば、固体磁気コアの代わりに、アンテナ18は、本実施例においてはフェライトフィルム22の形態の、フレキシブルな磁性フィルムを含み、その厚さは、約30~400μm(マイクロメートル)、好ましくは50~300μm、特に100μmである。特に
図2,
図4及び
図6からも分かるように、フェライトフィルム22は、(好ましくは単体の)ダンベル状の裁断片によって形成されている。したがって、ここに示す実施例においては、フェライトフィルム22は、互いに反対側に位置する長手方向端部24に、それぞれ円形の拡がり部26を有し、その2つの拡がり部26は、より狭い接続部28によって接続されている。アンテナ18を形成するために、フェライトフィルム22はU字型の輪郭に折り畳まれ、その脚部は、2つの拡がり部26のうちの1つと、接続部28の隣接部とによってそれぞれ形成されている。U字型輪郭の脚部、すなわち2つの拡がり部26と、接続部28のそれぞれの隣接部とは、それによって、平行に、且つ距離をおいて対向して横たわる2つのアンテナ面30及び32を形成する。これら2つのアンテナ面30及び32を接続する接続部28の一部分を、ベース部34と呼ぶ。
【0061】
図2及び
図5から明らかなように、フェライトフィルム22には、外側において、銅からなる反射フィルム36が第1の反射層として取付けられており、この反射フィルムは、好ましくはフェライトフィルム22に貼り付けられている。反射フィルム36は、フェライトフィルム22に適合した形状、すなわち本実施例の場合には同様にダンベル形状を有している。しかしながら、反射フィルム36には、フェライトフィルム22と比較して、その長手方向端部40により大きな拡がり部38が設けられており、それによって、反射フィルム36は、アンテナ面30及び32の領域においてフェライトフィルム22の端部を越えて横方向に突出している。さらに、反射フィルム36には、その拡がり部38の領域に、それぞれ中央の円形の空白部42が設けられており、それによって、拡がり部38はそれぞれ円形リングの形状を有している。ベース部34から離れる方向の側(すなわち、反射フィルム36の長手方向端部40)において、円形リング状の拡がり部38は、それぞれの空白部42から反射フィルム36の外縁まで延びる細いスリット44によってそれぞれ中断されている。
【0062】
最後に、アンテナ18はアンテナ巻線46を含む。
図2~
図6及び
図8に示す実施例においては、このアンテナ巻線46は単層スパイラルコイル48によって形成されており、このコイルは、反射フィルム36に、ここにおいても、その外側において取付けられている。その際、スパイラルコイル48は、フェライトフィルム22の拡がり部26と反射フィルムの拡がり部38とに対してセンタリングして(したがって、後者に導入された空白部42に対してもセンタリングして)配置されている。それによって、アンテナ巻線46は、上記の従来のフィルムアンテナとは異なり、フェライトフィルム22又はその他の磁性体コアに巻き付けられていない。むしろ、スパイラルコイル48のコイル軸49(
図3及び
図7)がフェライトフィルム22の面拡大部に対して垂直であり、それによって、アンテナ面30に対して垂直であるように、スパイラルコイル48がフェライトフィルム22に対して配置されている。
【0063】
好ましい実施形態においては、スパイラルコイル48は、RFIDトランスポンダのアンテナコイルの態様によって形成されている。そのために、スパイラルコイル48は、特に、支持フィルム50上に印刷された、又は支持フィルム50内に埋め込まれた導体路によって形成される(特に
図8参照)。その際、この支持フィルム50は好ましくは反射フィルム36に貼り付けられている。なお、スパイラルコイル48が設けられた支持フィルム50を、まとめて巻線フィルム52とも呼ぶ。
【0064】
特に
図3~
図5及び
図8から明らかなように、組み立てられた状態においては、アンテナ18は、アンテナ面30及び32が電池10の2つの端面に密に位置するように、又は、電池10の端面に隣接するように、(円筒形の)電池10上に配置される。
【0065】
図3及び
図5から分かるように、その際、反射フィルム36は、拡がり部38がその形状及び大きさの点に関して電池10の端面にほぼ対応するように、そのサイズが決められている。スパイラルコイル48は、反射フィルム36に属する拡がり部38によって張られた面を大きく利用するように、ここにおいても、そのサイズが決められている。
【0066】
アンテナ18の動作中、アンテナ巻線46によって発生する磁界は、アンテナ18の磁界がアンテナ面30及び32間の距離に等しい長さを有するロッドアンテナの磁界にほぼ対応するように、穴あき反射フィルム36によって成形される。反射フィルム36と電池10の金属ケース54とによって、その際、アンテナ面30及び32の間の内側の領域の磁界は、ほとんどフェライトフィルム22の内部を走るように強制されている。そのため、電池10の金属ケース54は、内側の磁気反射層として機能し、その磁気反射層は、一方においてはアンテナ18によって囲まれた内部を磁気的に遮蔽し、他方においてはアンテナ18の性能を向上させることができる。
【0067】
与えられた設置スペース(それによって限られた大きさ)においてアンテナ18の性能をさらに高めるために、アンテナ18のさらなる実施形態においては、1つ以上の追加のスパイラルコイルがアンテナ巻線46に追加される。
【0068】
アンテナ巻線46が施された反射フィルム36を展開状態において示す
図7を参照すると、アンテナ巻線46がスパイラルコイル48に加えてさらに単層スパイラルコイル56を含む場合の、アンテナ18の一実施形態が示されている。このさらなるスパイラルコイル56は、他方のアンテナ面32に取付けられている。本実施形態においては、アンテナ18は、フェライトフィルム22及び反射フィルム36の形状に関して、並びにその構造に関しても(特に2つのスパイラルコイル48及び56の配置に関しても)対称である。それによって、2つのスパイラルコイル48及び56は、アンテナ18の(折り畳んだ)組立状態において、それらのコイル軸49に関して互いに同軸に配置される。その際、スパイラルコイル56のコイル軸49は、フェライトフィルム22の面拡がり部に対して垂直(したがって、アンテナ面32に対して垂直)に方向づけられている。
【0069】
図7による実施形態においては、2つのスパイラルコイル48及び56は、共通の電気的なリード線58に接続され、電気的に直列に接続されている。しかしながら、代替的な実施形態においては、2つのコイル48及び56は、送受信回路20に互いに別々に接続され、アンテナ18の動作中に、必要に応じて、個別にオン及びオフされ得る、又は、その他の場合、互いに独立して制御され得る。アンテナ18の一実施形態においては、スパイラルコイル48のみが送受信回路20に接続され、一方、スパイラルコイル56は、充電コイルとして、本実施形態において存在する、補聴器2の充電制御部に接続される。
【0070】
アンテナ18の更なる一実施形態においては、アンテナ巻線46は、スパイラルコイル48に加えてさらに単層スパイラルコイル60も含む。その際、このさらなるスパイラルコイル60は、
図9に示すように、スパイラルコイル48と共にアンテナ面30に取付けられている。スパイラルコイル60は、その際、好ましくはスパイラルコイル48に直接取付けられ、特に、スパイラルコイル48に貼り付けられる。その際、好ましくは、2つのスパイラルコイル48及び60は、それらが、それらのコイル軸49に関して互いに同軸に配置されるように、互いに配置される。
【0071】
また、
図9による実施形態においては、2つのスパイラルコイル48及び60は、好ましくは電気的に直列に接続され、それによって共通に制御される。2つの単層スパイラルコイル48及び60は、それによって、合わせて多層コイルを形成する。代替的には、2つのコイル48及び60は、本発明の範囲内において、ここにおいても、互いに個別に制御され得る。
【0072】
アンテナ18の性能をさらに高めるために、必要に応じて2つのスパイラルコイル48及び56、或いは、48及び60にさらなるスパイラルコイルが追加される。そのさらなるスパイラルコイルは、アンテナ面30に、及び/又は、アンテナ面32に、任意に配置され得る。
【0073】
スパイラルコイル48及び56、或いは、48及び60、並びに必要に応じてさらなるスパイラルコイルは、好ましくは同一構造に製造される。それによって、それぞれが、特に、安価に製造可能な、且つ取り扱いが簡単な巻線フィルム52の形態において存在する。しかしながら、アンテナ巻線46は、(特にターン数及び直径に関して)異なる形状のコイルを含むことことができる。
【0074】
さらなる一実施形態において、
図10によるアンテナ18は、第2の反射層として、フェライトフィルム22の内側に取付けられたさらなる反射フィルム62を含む。このさらなる反射フィルム62は、好ましくは、反射フィルム36に対応する形状(ただし、空白部42及びスリット44を含まない)を有し、反射フィルム36と一致するように配置される。それによって、反射フィルム36及び62は、フェライトフィルム22を挟むように包み込む。反射フィルム62は、好ましくは、反射フィルム36に類似して、銅又はアルミニウムの金属フィルムによって形成され、好ましくは、フェライトフィルム22及び反射フィルム36に貼り付けられている。内側の反射フィルム62は、アンテナ18によって囲まれた内部空間の磁気シールド性とフェライトフィルム22の内部における磁束の伝導性とを向上させる。アンテナ18の設置状況において、このアンテナの内部空間に、
図1~
図5とは異なり、磁気干渉を受けやすい部品が配置されており、その部品自体が十分に磁気シールドされていない場合に、特に、その反射フィルム62が設けられる。
【0075】
また、反射フィルム62は、渦電流による、アンテナ18の内部空間の金属体(例えば、電池10の金属ケース54)の加熱を防止するためにも設けられ得る。
【0076】
図11~
図13においては、アンテナ18のさらなる実施例が示される。本実施例においては、アンテナ18は、プラスチック射出成形によって形成されたガイド体64をさらに含む。アンテナ18の組立状態において、ガイド体64は、ベース部34と電池10との間に配置される。電池10に面するその内側66において、ガイド体64は、電池10の周辺輪郭と少なくともほぼ相補的に形成された形状を有する。この内側66によって、ガイド体64は電池10の外周に正確に配置される。内側66と反対側には、ガイド体64はガイド面68を有し、そのガイド面68によってガイド体64はベース部34に隣接する。ガイド面68は両側には突出部70及び72が設けられており、この突出部70及び72はベース部34を挟み込んで確実に保持し、それによってセンタリングする。また、突出部72には、アンテナ巻線46のリード線74をプリント回路基板76にガイドする輪郭が設けられている。ベース部34(ひいては2つのアンテナ面30,32)の追加的な固定とセンタリングのために、ガイド体64は、ガイド面68から突出する2つのガイドピン78を有し、これらのガイドピン78はベース部の対応する孔80を通って突出する。
【0077】
アンテナ18を組み立てるには、まず、ベース部34をガイド体64に(例えば、貼り付けによって)結合する。次いで、ガイド体64を、電池10の周面に装着する。続いて、2つのアンテナ面30、32を、電池10の両側の周りに折り畳み、オプションとして、電池10に(例えば、ここでも貼り付けによって)固定する。
【0078】
2つのアンテナ面30及び32がベース部34から曲げられる折り畳みプロセスの再現性を高めるために、特に、フェライトフィルム22のフェライト層86(
図18)の不規則で再現性のない破損を避けるために、又は少なくとも小さく保持するために、ガイド体64は、ベース部34が曲げられたアンテナ面30、32に移行する、ガイド面68の領域(すなわち、ベース部34の端縁のそれぞれの領域)において、フェライトフィルム22がガイドされる、(円筒状に)凸面状に曲がったガイド半径81を有している。
【0079】
ベース部34が曲げられたアンテナ面30及び32に移行するこれらの屈曲又は曲がり領域のそれぞれにおいて、
図14~
図17に示す実施例によれば、それぞれ、フェライトフィルム22には目標曲げ部位82が設けられている。目標曲げ部位82は、レーザー放射(レーザー切断)による材料除去によって、フェライトフィルム22に点状又は線状の凹部84を導入することによって生成される。その凹部84は、フェライトフィルム22を局所的には弱め、しかしながら、好ましくは完全には貫通しない。
図14~
図17は、これらの凹部84の様々な実施形態を示す。
-
図14によれば、各目標曲げ部位82には、それぞれ、ぎざぎざの線状の凹部84が設けられている。
-
図15によれば、各目標曲げ部位82には、それぞれ、点状の凹部84の均一なパターンが設けられている。
-
図16によれば、各目標曲げ部位82には、フェライトフィルム22上を横切って延びる直線形状の複数の凹部84が設けられている。
-
図17によれば、各目標曲げ部位82には、不規則な線状の複数の凹部84が設けられており、その複数の凹部84は、それぞれ、長さが異なる2本の脚を有するほぼ「U」字の形状を有している。
【0080】
図18においては、凹部84の断面形状を、フェライトフィルム22の概略的な断面図によって示している。図から、まず、フェライトフィルム22は、中央のフェライト層86を有し、そのフェライト層86は、その両側からそれぞれのプラスチック層88及び90(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる)によってサンドイッチ状に挟まれていることがわかる。
図18に示す3つの凹部84によって、
図14~
図17に示す凹部84がそれぞれ異なる深さを有し得ることが、明確にされる。第1の実施変形例(
図18の左側)において、凹部84は実質的にプラスチック層88のみを貫通し、一方、フェライト層86は、接触されない、又は、単にひっかき傷を負う。第2の実施変形例(
図18の中央)においては、凹部84は、フェライト層86に、特にその層厚の約50%分、深く入り込んでいる。第3の実施変形例(
図18の右側)においては、凹部84はプラスチック層88のみでなくフェライト層86も完全に又は少なくともほぼ貫通し、それによって、プラスチック層90だけが接触されない、又は、単にひっかき傷を負う。上記した凹部84の3つの実施形態は、連続的な形成範囲にまたがるものであり、その形成範囲内において、
図14~
図17に示すフェライトフィルム22において凹部84を変化させ得る。さらに、深さの異なる複数の凹部84、又は、深さが変化する(線状の)凹部84を、1枚の同じフェライトフィルム22に設けることもできる。
【0081】
図14~
図18に示すフェライトフィルム22の場合、凹部84は、フェライトフィルム22の電池10に面した内側に導入されている。そのため、フェライトフィルム22の曲げられた状態においては、凹部84は曲げられた箇所の凹側にあり、磁性フィルムが曲げられる際に、フェライトフィルム22の材料によって再び完全に又は少なくとも部分的に押し合わされる。目標曲げ部位82によって、フェライト層86の不規則な破損を防止することができる。
【0082】
上記したアンテナ18の実施形態においては、アンテナ面30,32及びベース部34は、常にフェライトフィルム22の単体の裁断片から形成されていたが、
図19~
図29を参照して後述する例においては、アンテナ面30,32及びベース部34は、それぞれフェライトフィルム22の2つのフィルム裁断片92及び94から構成されている。2つのフィルム裁断片92,94の各々は、2つのアンテナ面30,32のうちの1つと、それぞれのアンテナ面30,32の端部から(特に半径方向に)突出する少なくとも1つの連結部96とを有する。その際、ベース部34を形成するために、2つのフィルム裁断片92,94のうちの一方のフィルム裁断片の1つの連結部96は、又は必要に応じて、複数の内の1つの連結部96は、他方のフィルム裁断片94又は92の対応する連結部96上に(それぞれ)重なって配置される。
【0083】
アンテナ18の一実施形態(より詳細には図示せず)においては、単一の連結部96がアンテナ面30,32のそれぞれから突出している。2つのフィルム裁断片92,94の重ねられた連結部96は、その際、(
図2~
図18による実施形態と同様に)ベース部34の単一平板式に関連した変形例を形成している。
【0084】
これとは異なり、
図19~
図21によるアンテナ18の実施形態においては、アンテナ面30,32のそれぞれから連結部96が突出しており、この連結部はベース部34の領域において2つの枝部98,100に分岐している。2つのフィルム裁断片92,94の連結部96の交互に重ねられた枝部98,100は、その際、ベース部34の2個平板式の変形例を形成する。
図19及び
図20による説明においては、アンテナ巻線46は、上記したように、反射フィルム36(ここにおいては図示せず)を介してアンテナ面30又は32に間接的に固定されている。
【0085】
図22及び
図23によるさらなる実施例においては、2つの連結部96がアンテナ面30及び32のそれぞれから半径方向に突出している。その際、ここにおいてもベース部34の2個平板式の変形例を形成するために、2つのこれらの連結部96が、ここにおいても入れ替わった順番にそれぞれ重ね合わされている。この場合、ベース部34の2個の平板部がそれぞれの幅と比較して大きく離間するように、具体的には、ベース部34の2つの平板部の間隔は、本実施例においては、例えば、1つの平板部の幅の約3倍となるように、連結部96がアンテナ面30,32の周方向に配されている。アンテナ面30に向かう方向から見て、ベース部34の2つの平板部は、互いにほぼ90°の角度においてアンテナ面30から突出しており、それによって、アンテナ面30及び32の間の磁気結合が特に良好にある。
【0086】
さらに、
図22及び
図23による例においては、ベース部34の2つの平板部は、電池10の、プリント回路基板76から離れる側に配置されている。これは、補聴器2の内部の部品の配置に応じて、設置スペースの面において有利になり得る。
【0087】
代替的には、
図24~
図26による例に示すように、ベース部34の2つの平板部は、互いに密に隣接して配置され、それによって、2つの平板部間の距離が各平板部の幅より小さい、又は、ほぼ等しくなる。
図24~
図26による例においては、さらに以下のことが認識される。すなわち、好ましくは、スパイラルコイル48は、その外径が関連するアンテナ面30の外径よりも大きく、したがって、スパイラルコイル48は関連するアンテナ面30を越えて横方向に突出するように形成されている。存在する場合、同様のことがさらなるスパイラルコイル56及び60にも適用される。スパイラルコイル48をアンテナ面30の端から安定させるために、本実施例においては2つの半径方向突出部102が形成されている。本実施例においては、第2のアンテナ面32にも、対応する半径方向突出部が設けられている。半径方向突出部102は、半径方向にスパイラルコイル48(及び、存在する場合にはスパイラルコイル56,60)を越えて突出するように、そのサイズが決められている。
【0088】
本実施形態においては、半径方向突出部102は、アンテナ18を補聴器2の電子機器フレーム(図示せず)に固定する役割も果たす。
【0089】
図27~
図29に示すアンテナ18の実施形態は、2つのフィルム裁断片92,94のそれぞれにおいて、特に、2つの連結部96のうちの1つが追加の旗部(Fahne)104によって片側に拡げられている点において、上記の2つの実施例と異なっている。2つの旗部104によって、アンテナ18の内部に収容される部品への、すなわち本実施例においては電池10へのアンテナ18の設置性が向上される。
【0090】
図24~
図29による実施例においては、スパイラルコイル48と、存在する場合には、スパイラルコイル56及び60とは、それぞれ空心コイルとして形成されている。その際、エナメルによって絶縁された巻線の複数のターンが、直接重なり合って巻かれ、且つ絶縁エナメルによって共に焼き付けられている。スパイラルコイル48は、直接、すなわち中間の支持フィルム50又は反射フィルム36なしに、アンテナ面30に、固定されている、特に、貼り付けられている。必要に応じて、スパイラルコイル56,60もまた、アンテナ面32に、或いはスパイラルコイル48に、対応する方法において固定されている。
【0091】
図24~
図29による実施例においては、スパイラルコイル48と、存在する場合は、スパイラルコイル56,60もそれぞれ、比較的大きな、巻線のない自由空間106を囲んでいる。この自由空間の直径は、それぞれのスパイラルコイル48,56,60の外径の約60%を占めている。
【0092】
図19~
図29に示すアンテナ18の実施例においては、2つのフィルム裁断片92及び94は、好ましくは、同一の部品として製造される。これによって、特に合理的な製造が実現される。
【0093】
さらに、
図19~
図29に示すアンテナ18の実施例においては、好ましくは、フェライトフィルム22の外側プラスチック層の1つが、連結部96の重なる面において、それぞれ除去される。それによって、連結部96がフェライト層86と直接重なる。その結果、アンテナ面30及び32間の磁気結合がさらに向上する。
【0094】
本発明は、上記した実施例において特に明らかであるが、これらの実施例に決して限定されない。むしろ、本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲及び上記の説明から導き出すことができる。
【符号の説明】
【0095】
2 補聴器
4 ハウジング
6 マイクロホン
8 レシーバ
10 電池
12 信号プロセッサ
14 音チャネル
16 先端部
18 アンテナ
20 送受信回路
22 フェライトフィルム
24 長手方向端部
26 拡がり部
28 接続部
30 アンテナ面
32 アンテナ面
34 ベース部
36 反射フィルム
38 拡がり部
40 長手方向端部
42 空白部
44 スリット
46 アンテナ巻線
48 スパイラルコイル
49 コイル軸
50 支持フィルム
52 巻線フィルム
54 金属ケース
56 スパイラルコイル
58 リード線
60 スパイラルコイル
62 反射フィルム
64 ガイド体
66 内側
68 ガイド面
70 突出部
72 突出部
74 リード線
76 プリント回路基板
78 ガイドピン
80 孔
81 ガイド半径
82 目標曲げ部位
84 凹部
86 フェライト層
88 プラスチック層
90 プラスチック層
92 フィルム裁断片
94 フィルム裁断片
96 連結部
98 枝部
100 枝部
102 半径方向突出部
104 旗部
106 自由空間
I (入力)オーディオ信号
O 出力オーディオ信号
U 電源電圧
【国際調査報告】