(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】エキソソーム由来のPIWI-interacting RNAおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20230623BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230623BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230623BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230623BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230623BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K31/7105 ZNA
A61K48/00
A61P9/10
A61P43/00 105
A61P21/00
A61P11/00
A61K35/12
A61K9/127
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570643
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021070568
(87)【国際公開番号】W WO2021237238
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513268380
【氏名又は名称】シーダーズ―シナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マーバン,エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】キウロ,アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム,アフマド,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
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4C086MA56
4C086MA65
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4C086NA14
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4C086ZA59
4C086ZA96
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB55
4C087BB63
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4C087MA56
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA96
4C087ZB21
(57)【要約】
本明細書において、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するための治療用エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)およびその使用方法が提供される。エキソソーム由来のpiRNAおよび/または同物質を担持するエキソソームにより処置される状態は、一部の実施形態では、虚血性外傷および/または組織線維症を含む。また、エキソソーム由来のpiRNAと、薬学的に許容される賦形剤とを含む治療用組成物が提供される。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血性心筋外傷を処置するエキソソームフリーの方法であって、
虚血性心筋外傷の処置を必要とする対象を同定するステップと、
hsa_piR_016659(配列番号1)のヌクレオチド配列を含むpiRNA(PIWI-interacting RNA)の治療上有効量を前記対象に投与することにより、虚血性心筋外傷を処置するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
piRNAが、hsa_piR_016659のヌクレオチド配列からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
虚血性心筋外傷が、虚血性/再灌流外傷を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
虚血性心筋外傷が、心筋線維症を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、心筋梗塞を罹患したことがある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記piRNAの治療上有効量が、虚血性心筋外傷から約10分~約2時間後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療上有効量が、約80ng~約5mgのpiRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
piRNAが、1つ以上の化学的に修飾されたヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
虚血性心筋外傷を処置するエキソソームフリーの方法であって、
虚血性心筋外傷の処置を必要とする対象を同定するステップと、
エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の治療上有効量を前記対象に投与することにより、虚血性心筋外傷を処置するステップであって、前記治療上有効量が、約80ng~約5mgのpiRNAを含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、CDC(cardiosphere由来細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659(配列番号1)、hsa_piR_016658(配列番号2)、hsa_piR_001040(配列番号3)、hsa_piR_007424(配列番号4)、hsa_piR_008488(配列番号5)、hsa_piR_018292(配列番号6)、hsa_piR_013624(配列番号7)、hsa_piR_019324(配列番号8)、およびhsa_piR_020548(配列番号9)のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の方法
【請求項12】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
虚血性心筋外傷が、虚血性/再灌流外傷を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
虚血性心筋外傷が、心筋線維症を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、心筋梗塞を罹患したことがある、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記エキソソーム由来のpiRNAの治療上有効量が、虚血性心筋外傷から約10分~約2時間後に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するエキソソームフリーの方法であって、
組織の修復および/または再生を必要とする状態を有する対象を同定するステップと、
エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の治療上有効量を前記対象に投与することにより、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するステップであって、前記治療上有効量が、約80ng~約5mgのpiRNAを含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記組織の修復および/または再生を必要とする状態が、筋肉または肺組織に対する外傷を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記筋肉組織が、心筋または骨格筋を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記状態が、組織線維症を引き起こす状態である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記状態が、虚血性心筋外傷または肺線維症を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、CDC(cardiosphere由来細胞)由来のエキソソームpiRNAまたは線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する細胞フリーの方法であって、
組織の修復および/または再生を必要とする状態を有する対象を同定するステップと、
エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の治療上有効量を前記対象に投与することにより、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するステップと
を含み、
前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659(配列番号1)、hsa_piR_016658(配列番号2)、hsa_piR_001040(配列番号3)、hsa_piR_007424(配列番号4)、hsa_piR_008488(配列番号5)、hsa_piR_018292(配列番号6)、hsa_piR_013624(配列番号7)、hsa_piR_019324(配列番号8)、hsa_piR_020548(配列番号9)、piR-20450(配列番号10)、piR-16735(配列番号11)、piR-01184(配列番号12)、piR-20786(配列番号13)、piR-00805(配列番号14)、piR-04153(配列番号15)、piR-18570(配列番号16)、piR-16677(配列番号17)、およびpiR-17716(配列番号18)のうちの1つ以上を含む、
方法。
【請求項26】
投与するステップが、前記エキソソーム由来のpiRNAを多く含む、前記エキソソーム由来のpiRNAを含むエキソソーム、細胞外ベシクル、またはリポソームの治療上有効量を投与するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療上有効量が、約80ng~約5mgのエキソソーム由来のpiRNAを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記組織の修復および/または再生を必要とする状態が、筋肉または肺組織に対する外傷を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記状態が、組織線維症を引き起こす状態である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAまたはCDC(cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、1つ以上の化学的に修飾されたヌクレオチドを含む、請求項9~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
piRNAが、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、心筋内、または気管内に投与される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
肺線維症を処置する細胞フリーの方法であって、
肺線維症を有する対象を同定するステップと、
エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)、治療用エキソソーム、および/またはエキソソーム由来のmiRNAの治療上有効量を前記対象に投与することにより肺線維症を処置するステップであって、前記エキソソームが、操作された線維芽細胞に由来する、ステップと
を含む、方法。
【請求項34】
前記エキソソーム由来のpiRNA、治療用エキソソーム、および/またはエキソソーム由来のmiRNAの治療上有効量が、気管内に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療用エキソソームの治療上有効量が、約10
6~約10
12個の粒子を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
組織の修復を調節する方法であって、分化転換している線維芽細胞の集団をエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)、エキソソーム、および/またはエキソソーム由来のmiRNAの治療上有効量と接触させることにより、前記線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換を抑制するステップを含み、前記エキソソームが、操作された線維芽細胞に由来する、方法。
【請求項37】
前記エキソソームの治療上有効量が、約10
6~約10
12個の粒子を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記分化転換が、TGFβが介在する分化転換である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記接触するステップを、in vitroで行う、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
piRNAの治療上有効量が、約1nM~約200nMを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記接触するステップが、エキソソームを対象に投与するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記分化転換している線維芽細胞が、肺線維芽細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記接触するステップが、エキソソーム由来のpiRNA、エキソソーム、および/またはエキソソーム由来のmiRNAを、対象へ気管内投与するステップを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、肺線維症を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記接触するステップが、前記分化転換している線維芽細胞の集団をエキソソーム由来のmiRNAの治療上有効量と接触させるステップを含み、前記エキソソーム由来のmiRNAが、miR-183-5p(配列番号19)、miR-182-5p(配列番号20)、miR-19a-3p(配列番号21)、miR-92a-3p(配列番号22)、miR-17-5p(配列番号23)、miR-126-3p(配列番号24)、およびmiR-510-3p(配列番号25)のうちの1つ以上を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記接触するステップが、前記分化転換している線維芽細胞の集団をエキソソーム由来のpiRNAの治療上有効量と接触させるステップを含み、前記エキソソーム由来のpiRNAが、piR-20450(配列番号10)、piR-20548(配列番号9)、piR-16735(配列番号11)、piR-01184(配列番号12)、piR-20786(配列番号13)、piR-00805(配列番号14)、piR-04153(配列番号15)、piR-18570(配列番号16)、piR-16677(配列番号17)、およびpiR-17716(配列番号18)のうちの1つ以上を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記piRNAを治療用エキソソームから単離するステップを含む、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記治療用エキソソームが、CDC由来のエキソソームまたは線維芽細胞由来のエキソソームである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記治療用エキソソームを、治療用細胞の集団から単離するステップを含む、請求項33~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記治療用細胞の集団を、非治療用細胞から作製するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記非治療用細胞が、線維芽細胞またはCDCを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記CDCが、不死化したCDCである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記治療用細胞が、同種である、請求項49~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記エキソソーム由来のpiRNAの治療上有効量が、約80ng~約500μgである、請求項33~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記エキソソーム由来のpiRNAの治療上有効量が、約100ng~約10μgである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記piRNAの治療上有効量が、約10
9~約10
12個の不死化したCDC由来のエキソソームを投与する治療効果と同等の治療効果を有する量である、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
それを必要とする対象の虚血性心外傷を処置するためのエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用。
【請求項58】
それを必要とする対象の虚血性心外傷を処置するための医薬の調製のためのエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用。
【請求項59】
前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上を含む、請求項57および58に記載のエキソソーム由来のpiRNAの使用。
【請求項60】
それを必要とする対象の肺線維症を処置するための治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用。
【請求項61】
それを必要とする対象の肺線維症を処置するための医薬の調製のための治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用。
【請求項62】
前記治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNAが、piR-20450、piR-20548、piR-16735、piR-01184、piR-20786、piR-00805、piR-04153、piR-18570、piR-16677、およびpiR-17716のうちの1つ以上を含む、請求項60または61に記載の治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNAの使用。
【請求項63】
組織の修復および/または再生を必要とする状態の処置のためのエキソソームフリーの治療用組成物であって、
hsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548から選択される1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAと、
薬学的に許容される賦形剤と
を含む、組成物。
【請求項64】
1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAと、薬学的に許容される賦形剤とから本質的になる、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659である、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
前記状態が、組織線維症を引き起こす状態である、請求項63に記載の組成物。
【請求項67】
前記状態が、虚血性心筋外傷または肺線維症を含む、請求項63に記載の組成物。
【請求項68】
前記1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAが、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAまたはCDC(cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む、請求項63~67のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する言及
本出願は、全体が本明細書中参照により組み込まれている2020年5月19日に出願された米国特許仮出願番号第63/027191号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府により支援されたR&Dに関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所によりEduardo Marban博士に授与されたグラント番号第R01 HL124074号の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
配列リストに対する言及
本出願は、電子形式の配列リストと共に出願されている。配列リストは、3.85KBの大きさで、2021年5月16日に作成された標題SEQLIST_CSMC014WO.txtのファイルとして提供されている。配列リストの電子形式での情報の全体は、本明細書中参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0004】
本開示は、全般的に、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するためのエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)およびその使用方法に関する。
【0005】
piRNAは、PIWIタンパク質と結合する小分子ノンコーディングRNAのグループであり、遺伝子サイレンシングのレトロトランスポゾンおよびの生殖細胞株における他の遺伝要素で機能することが知られている。細胞質PIWIタンパク質は、トランスポゾンの標的のヌクレオチド鎖切断を導く小分子RNAによりガイドされるヌクレアーゼ(スライサー)であり、核PIWIタンパク質は、転写サイレンシングに介在するために標的のゲノム座にサイレンシング複合体をアセンブリする。
【0006】
CDC(Cardiosphere由来の細胞)は、前臨床および臨床の背景において治療効果を示した心臓由来の前駆細胞の集団である。CDCは、生理活性分子を搭載した脂質二重層のナノ粒子である細胞外ベシクル(EV)を分泌することにより機能する。治療可能性を保持する不死化したCDC(imCDC)が作製でき、これらの分泌したEVを介して高いCDCの機能を提供することができる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書において、虚血性心筋外傷を処置するエキソソームフリーの方法および任意選択で細胞フリーの方法であって、虚血性心筋外傷を有するかまたはそれを処置する必要がある対象を同定するステップと、エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)有効(または治療上有効)量を対象に投与するステップを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、有効(治療上有効)量は、約80ng~約5mgのpiRNAを含み、これにより、虚血性心筋外傷を処置する。任意選択で、エキソソーム由来のpiRNAは、CDC(Cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む。任意選択で、虚血性心筋外傷は、虚血性/再灌流外傷を含む。一部の実施形態では、虚血性心筋外傷は、心筋線維症を含む。一部の実施形態では、対象は心筋梗塞を罹患したことがある。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量が、虚血性心筋外傷から約10分~約2時間後に投与される。
【0008】
また、虚血性心筋外傷を処置するエキソソームフリーの方法および任意選択で細胞フリーの方法であって、虚血性心筋外傷を処置する必要がある対象を同定するステップと、hsa_piR_016659のヌクレオチド配列を含むpiRNAの有効(治療上有効)量を前記対象に投与することにより、虚血性心筋外傷を処置するステップとを含む、方法が提供される。さらに、本明細書において、筋肉外傷(たとえば心筋外傷)を処置するエキソソームフリーの方法であって、piRNA(たとえばhsa_piR_016659)の有効(治療上有効)量を前記対象に投与することにより、外傷を処置するステップを含む、方法が提供される。任意選択で、piRNAは、hsa_piR_016659のヌクレオチド配列からなる。一部の実施形態では、虚血性心筋外傷は、虚血性/再灌流外傷を含む。一部の実施形態では、虚血性心筋外傷は、心筋線維症を含む。一部の実施形態では、対象は、心筋梗塞を罹患したことがある。一部の実施形態では、piRNAの治療上有効量が、虚血性心筋外傷から約10分~約2時間後に投与される。一部の実施形態では、治療上有効量は、約80ng~約5mgのpiRNAを含む。一部の実施形態では、piRNAは、1つ以上の化学的に修飾されたヌクレオチドを含む。
【0009】
また本明細書において、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するエキソソームフリーの方法であって、組織の修復および/または再生を必要とする状態を有する対象を同定するステップと、エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(治療上有効)量を前記対象に投与することにより、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するステップであって、前記治療上有効量が、約80ng~約5mgのpiRNAを含む、ステップとを含む方法が提供される。任意選択で、組織の修復および/または再生を必要とする状態は、筋肉または肺組織に対する外傷を含む。任意選択で、筋肉組織は、骨格筋または心筋を含む。一部の実施形態では、状態は、組織線維症を引き起こす状態を含むかまたは当該状態である。一部の実施形態では、状態は、虚血性心筋外傷または肺線維症を含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAまたはCDC(cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む。
【0010】
虚血性心筋外傷を処置する方法または組織の修復および/もしくは再生を必要とする状態を処置する方法のいくつかの実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、hsa_piR_016659(配列番号1)、hsa_piR_016658(配列番号2)、hsa_piR_001040(配列番号3)、hsa_piR_007424(配列番号4)、hsa_piR_008488(配列番号5)、hsa_piR_018292(配列番号6)、hsa_piR_013624(配列番号7)、hsa_piR_019324(配列番号8)、およびhsa_piR_020548(配列番号9)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、hsa_piR_016659、そのバリアント、および/またはそのフラグメントである。
【0011】
また、本明細書において、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する細胞フリーの方法であって、組織の修復および/または再生を必要とする状態を有する対象を同定するステップと、エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量を対象に投与することにより、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するステップとを含み、前記エキソソーム由来のpiRNAが、hsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、hsa_piR_020548、piR-20450、piR-16735、piR-01184、piR-20786、piR-00805、piR-04153、piR-18570、piR-16677、およびpiR-17716のうちの1つ以上を含む、方法が提供される。任意選択で、投与するステップが、エキソソーム由来のpiRNAを多く含む、エキソソーム由来のpiRNAを含むエキソソーム、細胞外ベシクル、またはリポソームの有効(治療上有効)量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、有効(治療上有効)量は、約80ng~約5mgのエキソソーム由来のpiRNAを含む。実施形態に応じて、組織の修復および/または再生を必要とする状態は、筋肉および/または肺組織に対する外傷を含む。一部の実施形態では、状態は、組織線維症を引き起こす状態を含むかまたは当該状態である。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAまたはCDC(cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む。
【0012】
一部の実施形態では、piRNA、たとえばエキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量が、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、心筋内、または気管内に投与される。
【0013】
一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、1つ以上の化学的に修飾されたヌクレオチドを含む。
【0014】
また、本明細書において、肺線維症を処置する細胞フリーの方法であって、肺線維症を有する対象を同定するステップと、治療用エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量を前記対象に投与することにより、肺線維症を処置するステップであって、エキソソームが、操作された線維芽細胞に由来する、ステップとを含む、方法が提供される。任意選択で、治療用エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量が、気管内投与される。一部の実施形態では、治療用エキソソームの有効(または治療上有効)量は、約106~約1012個の粒子を含む。
【0015】
また本明細書において、組織の修復を調節する方法であって、分化転換している線維芽細胞の集団を、エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量と接触させることにより、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換を抑制するステップを含み、前記エキソソームが操作された線維芽細胞に由来する、方法が提供される。任意選択で、エキソソームの有効(または治療上有効)量は、約106~約1012個の粒子を含む。一部の実施形態では、分化転換は、TGFβが介在する分化転換である。一部の実施形態では、接触するステップは、in vitroで行われる。任意選択で、piRNAの有効(または治療上有効)量は、約1nM~約200nmを含む。
【0016】
一部の実施形態では、接触するステップは、エキソソームを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、線維芽細胞は、肺線維芽細胞である。任意選択で、接触するステップは、エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNAを対象に気管内投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、肺線維症を有する。
【0017】
一部の実施形態では、エキソソーム由来のmiRNAは、miR-183-5p(配列番号19)、miR-182-5p(配列番号20)、miR-19a-3p(配列番号21)、miR-92a-3p(配列番号22)、miR-17-5p(配列番号23)、miR-126-3p(配列番号24)、およびmiR-510-3p(配列番号25)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、piR-20450(配列番号10)、piR-20548(配列番号9)、piR-16735(配列番号11)、piR-01184(配列番号12)、piR-20786(配列番号13)、piR-00805(配列番号14)、piR-04153(配列番号15)、piR-18570(配列番号16)、piR-16677(配列番号17)、およびpiR-17716(配列番号18)、それらのバリアント、および/またはそれらのフラグメントのうちの1つ以上を含む。
【0018】
一部の実施形態では、本方法は、治療用エキソソームから、piRNA、たとえばエキソソーム由来のpiRNAを単離するステップを含む。任意選択で、治療用エキソソームは、CDC由来のエキソソームまたは線維芽細胞由来のエキソソームである。
【0019】
一部の実施形態では、本方法は、治療用細胞の集団から治療用エキソソームを単離するステップを含む。任意選択で、本方法は、非治療用細胞から治療用細胞の集団を作製するステップを含む。一部の実施形態では、非治療用細胞は、線維芽細胞またはCDCを含む。任意選択で、CDCは、不死化したCDCである。
【0020】
一部の実施形態では、治療用細胞は、同種である。いくつかの実施形態では、治療用細胞は、piRNAを投与する前、当該投与と同時、または当該投与の後に、投与される。
【0021】
一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約80ng~約500μgである。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約100ng~約10μg(たとえば、約100ng、約200ng、約300ng、約400ng、約500ng、約600ng、約700ng、約800ng、約900ng、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、およびそれらの間のいずれかの量)である。一部の実施形態では、piRNA、たとえば、エキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約109~約1012個の不死化したCDC由来のエキソソームを投与する治療効果と同等の治療効果を有する量である。
【0022】
また、本明細書において、それを必要とする対象の虚血性心外傷を処置するためのエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用が提供される。また、それを必要とする対象の虚血性心外傷を処置するための医薬の調製のためのエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用が提供される。本明細書において、それを必要とする対象の肺線維症を処置するための治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用が提供される。また、本明細書において、それを必要とする対象の肺線維症を処置するための医薬の調製のための治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の使用が提供される。
【0023】
また、本明細書において、組織の修復および/または再生を必要とする状態の処置のためのエキソソームフリーの治療用組成物であって、hsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548から選択される1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAと、薬学的に許容される賦形剤とを含む治療用組成物が提供される。任意選択で、本組成物は、1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAと薬学的に許容される賦形剤とから本質的になる。一部の実施形態では、1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAは、hsa_piR_016659である。一部の実施形態では、状態は、組織線維症を引き起こす状態を含むか当該状態である。一部の実施形態では、状態は、虚血性心筋外傷または肺線維症を含む。一部の実施形態では、1つ以上のエキソソーム由来のpiRNAは、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAまたはCDC(cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、imCDC(不死化したcardiosphere由来細胞)由来のエキソソーム(IMEX)の単離のための概略的なプロトコルを示す。
【
図1B】
図1Bは、初代CDC(pCDC)、imCDC、ならびにpCDC由来の細胞外ベシクル/エキソソーム(EV)(pCDC-EV)およびimCDC由来の細胞外ベシクル/エキソソーム(EV)(imCDC-EV)におけるIMEX piRNA(PIWI-interacting RNA)を示す。
【
図1C】
図1Cは、異なる濃度のimCDC-EVにおけるImEV-piRNAのqPCRによる検出を示す。
【
図2A】
図2Aは、in vivoでの虚血/再灌流(I/R)モデルの概略的なプロトコルを示す。
【
図2B】
図2Bは、I/Rから48時間後の心臓のトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)染色を示す。
【
図3A-3B】
図3Aおよび3Bは、I/Rから24時間後および48時間後の心筋トロポニンIのレベル(ng/ml)を示す。
【
図4A-4B】
図4Aおよび4Bは、I/R後の末梢血における単球のパーセンテージに及ぼすImEV-piRNAの効果を示す。
図4Aは、I/Rから24時間後および48時間後での単球のパーセンテージを示す。
図4Bは、I/Rから24時間~48時間後までの単球のパーセンテージの変化を示す。
【
図5A-5B】
図5Aおよび5Bは、I/Rから24時間後および48時間後の末梢血における単球のパーセンテージを示す。
【
図6A-6C】
図6A-6Cは、ナイーブな(M0)BMDM(骨髄由来のマクロファージ)の増殖活性のin vitroでの評価を示す。
図6Aは、24時間の間記載されるように処置されたBMDM由来のM0の画像を示す。
図6Bは、8時間および24時間での細胞の代謝活性を検出するCCK-アッセイを示す(FC(倍差)vsビヒクル)。
図6Cは、24時間でのBrDu陽性細胞を示す(FCvsビヒクル)。
【
図7A-7B】
図7Aおよび7Bは、一晩の処置後のBMDM由来のM0の遊走のin vitroでの評価を示す。
図7Aは、記載される条件での一晩の処置の後にクリスタルバイオレットで染色したポリカーボネートインサート中のBMDM由来のM0の画像を示す。
図7Bは、BMDM由来のM0の遊走の計算を示す。
【
図8A-8D】
図8A-8Dは、ASTEX(ASTEC(Activated-Specialized Tissue Effector Cells)由来の細胞外ベシクル/エキソソーム)のシーケンシングがいくつかの抗線維性メディエーターを明らかにしていることを示している。
図8Aおよび8Bは、修飾されていない正常なヒト真皮線維芽細胞におけるEVと比較したASTEXにおけるmiRの差次的な発現を示す。
図8Cは、顕著な抗線維性MiRのQPCRのバリデーションを示す。
図8Dは、線維芽細胞EVと比較したASTEXにおけるpiRNA(Piwi RNA)の多さおよび存在量を示す。
【
図9A-9C】
図9A-9Cは、ASTEXの気管内投与の耐用量試験を示す。
図9Aは、耐用量試験の試験概略を示す。ASTEXは、動物の体重の保持(
図9B)および浮腫の欠如(体重に対する肺の重量比)(
図9C)により示されるように健常な動物の肺において良好に認容される。
【
図10A-10D】
図10A-10Dは、ASTEXが、線維症の不存在(ヒドロキシプロリン、
図10A)、Ashcroftスコア(
図10B)、浸潤する白血球の欠如を示すH&E染色(
図10C)、および肺胞組織におけるマッソントリクローム染色(
図10D)により示されるように健常な動物の肺において良好に認容されることを示している。
【
図11A-11C】
図11A-11Cは、気管内に滴下したASTEXがマウスのブレオマイシンモデルにおいて生存を改善し肺線維症を減弱することを示している。
図11Aは、動物試験の試験概略を示す。
図11Bは、ビヒクルで処置した損傷した動物と比較した、ASTEXを滴下した動物の生存の増大を示すカプランマイヤープロットを示す。
図11Cは、肺組織におけるヒドロキシプロリンの減少により見られる肺の線維症の低減を示す。
【
図12A-12D】
図12A-12Dは、ASTEXがin vitroでの肺線維芽細胞の分化転換を低減できることを示す。
図12Aは、in vitroでの試験の試験概略を示す。ASTEXで処置したTGFb(外傷)に曝露したヒト肺線維芽細胞でのα平滑筋の発現のレベルの低下が、フローサイトメトリー(
図12B)およびウェスタンブロット(
図12Cおよび12D)により観察された。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態による、虚血性心筋外傷を処置する方法の非限定的な例のフローチャートを示す。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態による、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する方法の非限定的な例のフローチャートを示す。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態による、肺線維症を処置する方法の非限定的な例のフローチャートを示す。
【
図16】
図16は、ヒトpiRNA配列のhsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、hsa_piR_020548、piR-20450、piR-16735、piR-01184、piR-20786、piR-00805、piR-04153、piR-18570、piR-16677、およびpiR-17716のヌクレオチド配列を示す。
【
図17A-17B】
図17Aおよび17Bは、初代マクロファージの細胞質と核との間のimCDC-EV piRNAシャトリング(shuttling)を示すグラフの集合である。
【
図18A-18B】
図18Aおよび18Bは、初代マクロファージの全体的なメチル化を増大させるimCDC-EV piRNA処置を示すグラフの集合である。
【
図19】
図19は、imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNAのin vivoおよびin vitroでの効果をまとめた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中開示されるように、CDCにより産生されるエキソソームおよび細胞外ベシクル(EV)の治療効果は、エキソソームまたはEVの1つ以上の生理活性ペイロード分子に起因し得る。たとえば、imCDCは、初代CDCと比較して異なるRNAの中身(miRNA、mRNA、rRNA、tRNA、およびpiRNA)を示し得る。特に、piwiタンパク質により結合した小分子RNAのPiwi RNA(piRNA)は、エピゲノムおよびトランスクリプトームの両方の重要な調節因子である。ImCDC-EV(imEV-Pi)は、piRNAを著しく多く含み得る。
【0026】
本明細書において、それを必要とする対象にエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)を投与することにより組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する方法が提供される。本明細書中に開示されるように、治療用細胞、たとえばimCDC(不死化したcardiosphere由来細胞)および操作された線維芽細胞により産生されるエキソソーム/EVは、piRNAおよびmiRNAなどの生理活性生体分子を含み得、よってエキソソームおよび/または細胞の治療効果を介在し得る。一部の実施形態では、状態、たとえば虚血性外傷、線維症などを罹患した対象にエキソソーム由来のpiRNAを投与することは、当該状態を処置し得る。一部の実施形態では、状態、たとえば虚血性外傷、線維症などを罹患した対象にpiRNAを含む治療用エキソソームを投与することは、当該状態を処置し得る。
【0027】
本明細書中使用される場合、「エキソソーム」は、本開示の技術および観点において当業者が理解する通常の意味を有する。また、エキソソームは、マイクロベシクル、エピディディモソーム(epididimosome)、アルゴソーム(argosome)、エキソソーム様ベシクル、微粒子、プロミニノソーム(promininosome)、prostasome、dexosome、texosome、dex、tex、アーケオソーム(archeosome)、およびoncosomeを含み得る。エキソソームおよび細胞外ベシクル(EV)は、他の意味が記載されない限り、本明細書中互換可能に使用される。他の意味が本明細書中に記載されない限り、上記用語はそれぞれ、操作された高効力の、様々な、膜に結合したベシクルの各種を含むように理解すべきである。
【0028】
「PIWI-interacting RNA」および「piRNA」は、約24~約3ヌクレオチド長、たとえば約26~約32ヌクレオチド長の小分子のノンコーディングRNAを表すように本明細書中互換可能に使用される。内因性piRNAは、PIWIタンパク質(たとえばPiwi、Argonaute(たとえばAgo3)、およびAubergine)に結合し得る。内因性piRNAは、宿主の転位性エレメントに相補的であり得る。
【0029】
Wntシグナリング経路は、細胞表面受容体を介して細胞にシグナルを渡すタンパク質で開始するシグナル伝達経路の一グループである。古典的Wntシグナリング経路および非古典的Wntシグナリング経路が知られている。古典的Wntシグナリング経路および非古典的Wntシグナリング経路は、両方とも、Wntタンパク質リガンドのFrizzledファミリー受容体への結合により活性化され、生物学的シグナルが、細胞の中のディシブルドタンパク質へと入る。たとえば、古典的なWnt経路は、遺伝子転写の調節をもたらし、非古典的経路は、細胞骨格および細胞内カルシウムを調節する。古典的Wntシグナリング経路は、βカテニンを含む。対照的に、非古典的Wntシグナリングは、βカテニンとは無関係に機能する。
【0030】
「対象」は、本明細書中使用される場合、哺乳類および非哺乳類を含む全ての脊椎動物を表す。対象は、ヒトを含む霊長類、およびげっ歯類、家畜動物、または狩猟動物などの非霊長類の哺乳類を含み得る。非霊長類の哺乳類は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、キツネ、オオカミ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、シカ、バッファロー、バイソンなどを含み得る。非哺乳類は、トリ(たとえばニワトリ、ダチョウ、エミュー、ハト)、爬虫類(たとえばヘビ、トカゲ、カメ)、両生類(たとえばカエル、サンショウウオ)、サカナ(たとえばシャケ、タラ、フグ、マグロ)などを含み得る。用語「個体」、「患者」、および「対象」は、本明細書中互換可能に使用される。
【0031】
本明細書中使用される場合、「~を処置する(treat)」および「処置(treatment)」は、疾患、その状態および/または症状の治癒、改善、寛解、その重症度の低減、予防、進行の遅延、および/または出現の遅延を含む。
【0032】
処置は、本明細書中に記載される状態の兆候または症状のうちの1つ以上が有益な方法で変えられるか、他の臨床的に認められた症状が改善するか、もしくはさらには寛解するか、または望ましい応答が本明細書中に記載の方法に係る処置の後にたとえば少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、またはそれ以上誘導される場合、処置は本明細書中使用される場合「有効」または「治療上有効」とみなされ得る。効力は、たとえば本明細書中に記載の方法により処置した状態のマーカー、指標、症状、および/もしくは頻度、または他のいずれかの適切な測定可能なパラメータ、たとえば心臓の電気的活性を測定することにより評価され得る。また効力は、入院により評価される個体が悪化する失敗、または医療行為の必要性(たとえば疾患の進行が停止すること)により測定され得る。処置は、個体または動物(一部の非限定的な例はヒトまたは動物を含む)の疾患のいずれかの処置を含み、(1)疾患の阻害、たとえば症状(たとえば疼痛もしくは炎症)の悪化の予防;または(2)疾患の重症度の軽減、たとえば症状の後退をもたらすことを含む。疾患の処置に有効な量は、それを必要とする対象に投与される場合に、当該量が、当該疾患に対し用語が本明細書中定義されるように有効な処置をもたらすために十分であることを意味する。作用物質の効力は、状態または望ましい応答(たとえば心臓の活動)の物理的な指標を評価することにより決定され得る。当業者は、当該パラメータのうちのいずれか1つまたはパラメータのいずれかの組み合わせを測定することにより投与および/または処置の効力をモニタリングし得る。
【0033】
用語「有効量」または「治療上有効量」は、本明細書中使用される場合、疾患または障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減するために必要とされる組成物または作用物質の量を表し、望ましい効果を提供するために十分な治療用組成物の量に関連する。「有効量」または「治療上有効量」は、典型的な対象に投与する場合に、特定の修復効果および/または再生効果を提供するために十分である組成物または治療用作用物質の量を表し得る。治療上有効量は、様々な文脈で本明細書中使用される場合、疾患の症状の発症を遅延するか、疾患の症状の過程を変える(たとえば限定するものではないが疾患の症状の進行を遅らせる)か、または疾患の症状を反転させるために十分な量を含み得る。治療上有効量は、1つ以上の用量の治療用作用物質で投与され得る。治療上有効量は、単一の投与で投与されてもよく、または複数の用量で一定期間にわたり投与されてもよい。
【0034】
「~を投与すること(Administering)」は、本明細書中使用される場合、本明細書中開示される治療用作用物質または組成物を投与するいずれかの適切な経路を含み得る。適切な投与経路として、限定するものではないが、経口投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、気道(エアロゾル)投与、肺投与、皮膚投与、注射、または局所投与が挙げられる。投与は、局所的または全身性であり得る。
【0035】
本明細書中使用される場合、用語「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体、たとえば製薬業界で一般に使用される担体と組み合わせられた有効な作用物質を表す。「薬学的に許容される」との文言は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内にて、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的なリスク・ベネフィット比と釣り合い、ヒトおよび動物の組織との接触での使用に適切である化合物、物質、組成物、および/または剤形を表すために使用される。
【0036】
本明細書中使用される場合、用語「核酸」は、複数のヌクレオチド(すなわち、リン酸基、および置換されたピリミジン(たとえばシトシン(C)、チミジン(T)、またはウラシル(U))または置換されたプリン(たとえばアデニン(A)またはグアニン(G))である交換可能な有機塩基に結合した糖(たとえばリボースまたはデオキシリボース)を含む分子)を表す。またこの用語は、ポリヌクレオシド(すなわちポリヌクレオチド-リン酸塩)および他のいずれかの有機塩基含有ポリマーを含む。プリンおよびピリミジンとして、限定するものではないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、イノシン、5-メチルシトシン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,6-ジアミノプリン、ヒポキサンチン、ならびに他の天然に存在するヌクレオ塩基および天然に存在しないヌクレオ塩基、置換された芳香族部分および置換されていない芳香族部分が挙げられる。全ての適切な修飾が企図される。よって、用語核酸はまた、塩基および/または糖などの置換または修飾を伴う核酸を包有する。
【0037】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他の意味を明記しない限り複数形を含む。同様に、用語「または(or)」は、文脈が他の意味を明記しない限り「および(and)」を含むように意図されている。本明細書中に記載される方法および物質と類似または同等の方法および材料が本開示の実務または試験で使用され得るが、適切な方法および材料が後述される。略語「e.g.」は、非限定的な例を表すように本明細書中使用される。よって、略語「e.g.」は、用語「たとえば(for example)」と同義である。
【0038】
細胞生物学および分子生物学において一般的な用語の定義は、“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy”, 19th Edition,Merck Research Laboratoriesにより出版, 2006 (ISBN 0-91 1910-19-0);Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Science Ltd.により出版, 1994 (ISBN 0-632-02182-9);Benjamin Lewin, Genes X,Jones & Bartlett Publishingにより出版, 2009 (ISBN-10: 0763766321);Kendrew et al. (eds.), Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers, Inc.により出版, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)およびCurrent Protocols in Protein Sciences 2009, Wiley Intersciences, Coligan et al., edsにより見出され得る。
【0039】
方法
本明細書において、それを必要とする対象にエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)を投与することにより、状態、たとえば組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する方法が提供される。様々な状態が本方法により処置され得る。状態として、限定するものではないが、虚血性外傷(たとえば筋肉に対する虚血性外傷)、虚血/再灌流後の組織(たとえば筋肉組織)に対する損傷、および組織線維症が挙げられる。一部の実施形態では、状態は、たとえば処置されないままの場合に、組織線維症を引き起こす状態である。
【0040】
本明細書において、特定の実施形態では、虚血性心筋外傷を処置する細胞フリーおよびエキソソームフリーの方法が提供される。
図13を参照すると、虚血性心筋外傷を処置する方法の一実施形態の非限定的な例が記載されている。方法1300は、虚血性心筋外傷を有するかまたは虚血性心筋外傷の処置を必要とする対象を同定するステップ1310と、エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)、たとえばCDC(cardiosphere由来の細胞)由来のエキソソームpiRNAの有効(または治療上有効)量を対象に投与するステップ1320とを含む。投与されるpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約80ng~約5mgの範囲、たとえば約80ng~約500μgの範囲にあり得る。
【0041】
また、虚血性心筋外傷を有するかまたは虚血性心筋外傷の処置を必要とする対象を同定するステップと、RNA(たとえばhsa_piR_016659などのpiRNA)の治療上有効量を対象に投与することにより、虚血性心筋外傷を処置するステップとを含む、虚血性心筋外傷を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659のヌクレオチド配列(配列番号1)、またはそのバリアントもしくは誘導体を含む。一部の実施形態では、投与されるpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約80ng~約5mgの範囲、たとえば約80ng~約500μgの範囲にある。
【0042】
様々な虚血性心筋外傷が、本方法により処置され得る。一部の実施形態では、虚血性心筋外傷は、虚血による心筋に対する損傷を含む。一部の実施形態では、虚血性心筋外傷は、虚血性/再灌流外傷、たとえば虚血後の再灌流からの心筋に対する損傷を含む。一部の実施形態では、虚血性心筋外傷は、心筋線維症を含む。一部の実施形態では、対象は、心筋梗塞を罹患したことがある。
【0043】
piRNAは、いずれかの適切な時間に投与され得る。一部の実施形態では、piRNAは、対象が虚血性心筋外傷を罹患してから約10分、約20分、約30分、約45分、約60分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約12時間、約24時間、またはそれ以上、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲の時間間隔の後に、投与される。いくつかの実施形態では、piRNAは、たとえば予兆となる症状を呈するかまたは虚血性イベントに関して非常にリスクの高い対象へ、防止的に投与され得る。
【0044】
本明細書において、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置するエキソソームフリーの方法が提供される。
図14を参照すると、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する方法の一実施形態の非限定的な例が記載されている。方法1400は、組織の修復および/または再生を必要とする状態を有する対象を同定するステップ1410と、エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量を対象に投与するステップ1420とを含む。投与されるpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約80ng~約5mgの範囲、たとえば約80ng~約500μgの範囲にあり得る。
【0045】
様々な組織の修復および/または再生を必要とする状態が、本方法により処置され得る。一部の実施形態では、状態は、筋肉または肺組織に対する外傷または損傷を含む。一部の実施形態では、状態は、骨格筋または心筋に対する外傷または損傷を含む。一部の実施形態では、状態は、組織線維症、たとえば心筋線維症または肺線維症をもたらす状態を含むか、または当該状態である。一部の実施形態では、状態は、たとえば本明細書中に記載の、虚血性心筋外傷を含む。一部の実施形態では、状態は、肺線維症、たとえば特発性肺線維症を含む。
【0046】
piRNAのいずれかの適切な量が投与され得る。一部の実施形態では、piRNAの有効(または治療上有効)量は、約80ng、約100ng、約120ng、約140ng、約160ng、約180ng、約200ng、約250ng、約300ng、約350ng、約400ng、約500ng、約600ng、約700ng、約800ng、約900ng、約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約20μg、約50μg、約100μg、約200μg、約500μg、約1mg、約2mg、約5mg、またはそれ以上、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲の量である。特定の実施形態では、piRNAは、キログラム単位にて、たとえば約100ng/kg体重~約10mg/kg体重、たとえば約1μg/kg~約100μg/kgを含む約1μg/kg~約1mg/kgで投与される。さらなる実施形態では、エキソソームは、標的組織(たとえば心臓または肺)の質量に基づく量、たとえば約1μg/kg~約10mg/kg標的組織、たとえば約10μg/kg~約100mg/kg、約100μg/kg~約10mg/kg(約1mg/kg~約10mg/kg標的組織を含む)で送達される。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約109、約2×109、約5×109、約1010、約2×1010、約5×1010、約1011、約2×1011、約5×1012、約1012、またはそれ以上、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲の数の不死化したCDC由来のエキソソームを投与する治療効果と同等の治療効果を有する量である。一部の実施形態では、piRNAは、hsa_piR_016659である。
【0047】
エキソソーム由来のpiRNAは、いずれかの適切な投与経路を介して投与され得る。一部の実施形態では、piRNAは、全身に投与される。一部の実施形態では、piRNAは、局所的に投与される。局所投与は、処置される組織に応じて、一部の実施形態において、組織への直接的な投与(たとえば心筋内注射などの直接的な注射)により達成され得る。また局所投与は、たとえば特定組織の洗浄(たとえば気管内洗浄)により達成され得る。一部の実施形態では、エキソソームおよび/またはpiRNAは、噴霧または吸入される。一部の実施形態では、piRNAは、非経口的に投与される。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、または気管内に投与される。
【0048】
一般的に、本方法のpiRNAは、エキソソーム、たとえば本明細書中に記載される治療用細胞に由来するエキソソームに由来するか、かつ/またはエキソソームから単離される。一部の実施形態では、本開示の方法は、エキソソームフリーの方法である。一部の実施形態では、エキソソームの実質的な量がpiRNAと共に対象へ投与されない。一部の実施形態では、piRNAは、エキソソームを本質的に含まずに投与される。一部の実施形態では、実質的に全ての投与されるpiRNAは、エキソソームに関連していない。一部の実施形態では、投与されるpiRNAの約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、約0.001%以下、約0.0001%以下、約0.00001%以下、または先行する値のうちのいずれか2つにより定義される範囲のパーセンテージが、エキソソームに関連する。一部の実施形態では、piRNAを含み対象へ投与される組成物は、エキソソームを実質的に含まない。
【0049】
一部の実施形態では、本方法は、組織の修復および/または再生を必要とする状態を処置する細胞フリーの方法である。一部の実施形態では、細胞フリーの方法は、エキソソーム由来のpiRNAを含むエキソソーム、細胞外ベシクル、および/またはリポソーム(たとえば合成リポソーム)の投与を介して、エキソソーム由来のpiRNAの有効(または治療上有効)量を投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、エキソソーム、細胞外ベシクル、および/またはリポソームは、エキソソーム由来のpiRNAを多く含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、治療用細胞(たとえば不死化したCDC、操作された線維芽細胞(ASTEC))由来のエキソソーム中のエキソソーム由来のpiRNAの量と比較して多い。
【0050】
また、本明細書において、肺線維症を処置する細胞フリーの方法が提供される。
図15を参照すると、肺線維症を処置する方法の一実施形態の非限定的な例が記載されている。方法1500は、肺線維症を有する対象を同定するステップ1510と、治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量を対象に投与するステップ1520とを含む。投与されるpiRNAの有効(または治療上有効)量は、約80ng~約5mgの範囲、たとえば約80ng~約500μgの範囲にあり得る。投与される治療用エキソソームの有効(または治療上有効)量は、約10
6~約10
12個の粒子であり得る。
【0051】
適切な量の治療用エキソソームが対象に投与され得る。一部の実施形態では、本方法は、約106~約2×106個の粒子、約2×106~約5×106個の粒子、約107~約2×107個の粒子、約2×107~約5×107個の粒子、約5×107~約108個の粒子、約108~約2×108個の粒子、約2×108~約5×108個の粒子、約5×108~約109個の粒子、約109~約2×109個の粒子、約2×109~約5×109個の粒子、約5×109~約1010個の粒子、約1010~約2×1010個の粒子、約2×1010~約5×1010個の粒子、約5×1010~約1011個の粒子、約1011~約2×1011個の粒子、約2×1011~約5×1011個の粒子、または約5×1011~約1012個の粒子の治療用エキソソームを投与するステップを含む。
【0052】
特定の実施形態では、エキソソーム用量はキログラム単位で、たとえば約1.0×105個のエキソソーム/kg~約1.0×109個のエキソソーム/kgで投与される。さらなる実施形態では、エキソソームは、標的組織の質量に基づく量、たとえば約1.0×105個のエキソソーム/グラム標的組織~約1.0×109個のエキソソーム/グラム標的組織で送達される。いくつかの実施形態では、エキソソームは、特定の標的組織の細胞の数に対するエキソソームの数の比率に基づき、たとえば約108:1、約107:1、約106:1、約105:1、約104:1、約103:1、約102:1、約10:1、およびこれら比率の間の比率を含む約109:1~約1:1の範囲のエキソソーム:標的細胞の比率で投与される。さらなる実施形態では、エキソソームは、標的組織における細胞の数よりも約10倍多い量~約1,000,000倍多い量(約50倍、約100倍、約500倍、約1000倍、約10,000倍、約100,000倍、約500,000倍、約750,000倍を含む)で投与される。エキソソームが併用療法(たとえば依然としてエキソソームを流し得る細胞、薬学的療法、核酸療法など)と併用して投与される場合、投与されるエキソソームの用量は、適切に調整され得る(たとえば望ましい治療効果を達成するために必要に応じて増大または減少し得る)。
【0053】
治療用エキソソームおよび/またはエキソソーム由来のpiRNAは、いずれかの適切な投与経路を介して投与され得る。一部の実施形態では、エキソソームおよび/またはpiRNAは、全身に投与される。一部の実施形態では、エキソソームおよび/またはpiRNAは、局所的に投与される。一部の実施形態では、エキソソームおよび/またはpiRNAは、非経口的に投与される。一部の実施形態では、エキソソームおよび/またはpiRNAは、気管内、たとえば気管内洗浄により投与される。一部の実施形態では、エキソソームおよび/またはpiRNAは、噴霧または吸入される。
【0054】
いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、単一のボーラス用量で送達される。しかしながら、一部の実施形態では、複数の用量のpiRNAおよび/またはエキソソームが送達され得る。特定の実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、経時的に特定の比率で注入(または他の方法で送達)され得る。いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームが有害事象(外傷もしくは損傷イベント、または有害な生理学的イベント、たとえばMI)の後に比較的短い時間枠の中で投与される場合、それらの投与は、標的組織に対する損傷の作製または進行を予防する。たとえば、piRNAおよび/またはエキソソームが、有害事象から約20~約30分以内、約30~約40分以内、約40~約50分以内、約50~約60分以内に投与される場合、組織に及ぼす損傷または有害な影響は、(このように早期の時点で処置されなかった組織と比較して)低減される。一部の実施形態では、投与は、有害事象の後限りなく早く可能である。一部の実施形態では、投与は、有害事象の後限りなく早く(たとえば対象が他の観点で安定した後)実行可能である。いくつかの実施形態では、投与は、約1~約2時間以内、約2~約3時間以内、約3~約4時間以内、約4~約5時間以内、約5~約6時間以内、約6~約8時間以内、約8~約10時間以内、約10~約12時間以内、およびそれらの重複する範囲内にある。有害事象の後に起こるより長い時点での投与は、特定のさらなる実施形態において、組織に対する損傷の予防に有効である。上述されるように、いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、防止的に投与され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、エキソソームは、損傷した組織または疾患状態の組織を特異的に標的とする。一部のこのような実施形態では、エキソソームは、それらを特定の標的組織に導くように(たとえば遺伝子的にまたは他の方法で)修飾されている。たとえば、修飾は、一部の実施形態では、エキソソーム上での特異的な細胞表面マーカーの発現の誘導を含み、これにより望ましい標的組織での受容体との特異的な相互作用がもたらされる。一実施形態では、エキソソームのネイティブな中身が除去され、望ましい外因性タンパク質または核酸と交換される。一実施形態では、エキソソームのネイティブな中身に、望ましい外因性タンパク質または核酸が補充される。しかしながら、一部の実施形態では、エキソソームの標的化は行われない。いくつかの実施形態では、エキソソームは、特に標的化、精製、追跡などのために使用され得る、特異的な核酸またはタンパク質を発現するように修飾されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、エキソソームの修飾は行われない。一部の実施形態では、エキソソームは、キメラ分子を含まない。
【0056】
一般的に、本方法の治療用エキソソームは、本明細書中に記載されるように、治療用細胞に由来するか、かつ/または治療用細胞から単離される。一部の実施形態では、本開示の方法は、細胞フリーの方法である。一部の実施形態では、実質的な量の細胞は、治療用エキソソームおよび/またはpiRNAと共に対象に投与されない。一部の実施形態では、治療用エキソソームおよび/またはpiRNAは、細胞を本質的に含まずに投与される。一部の実施形態では、実質的に全ての投与される治療用エキソソームおよび/またはpiRNAは、細胞に関連しない。一部の実施形態では、投与される治療用エキソソームおよび/またはpiRNAの約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、約0.001%以下、約0.0001%以下、約0.00001%以下、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲のパーセンテージが、細胞に関連する。一部の実施形態では、治療用エキソソームおよび/またはpiRNAを含み対象に投与される組成物は、細胞を実質的に含まない。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、核酸合成に適切ないずれかの選択肢を使用して作製した合成RNAである。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、化学的に合成されている。一部の実施形態では、合成のエキソソーム由来のpiRNAは、天然のヌクレオチドおよび/または非天然のヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、合成のエキソソーム由来のpiRNAは、ヌクレオチドの類縁体および誘導体を含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、組み換え技術を使用して産生される。
【0057】
様々なpiRNA、たとえばエキソソーム由来のpiRNAは、本明細書中に記載されるように、本方法で使用され得る。一部の実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNA、たとえば本明細書中に記載される操作された線維芽細胞またはASTEX由来の治療用エキソソームに由来するpiRNAである。一部の実施形態では、本方法は、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNAを投与することにより肺線維症を処置するステップを含む。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示される、piR-20450、piR-20548、piR-16735、piR-01184、piR-20786、piR-00805、piR-04153、piR-18570、piR-16677、およびpiR-17716のうちの1つ以上を含む。
【0058】
一部の実施形態では、piRNA、たとえばエキソソーム由来のpiRNAは、CDC由来のエキソソームpiRNA、たとえば、本明細書中に記載の不死化したCDC(imCDC)由来の治療用エキソソームに由来するpiRNA、または当該治療用エキソソームに多く含まれるpiRNAである。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはそれ以上同一である配列を含む。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上と1以下、2以下、3以下、4以下、または5以下のヌクレオチドだけ異なる配列を含む。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659である。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_0166591と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはそれ以上同一である配列を含む。一部の実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_0166591と1以下、2以下、3以下、4以下、または5以下のヌクレオチドだけ異なる配列を含む。
【0059】
一部の実施形態では、本方法は、治療用エキソソームからエキソソーム由来のpiRNAを単離するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、治療用細胞、たとえば操作された線維芽細胞または不死化したCDC(imCDC)の集団から治療用エキソソームを単離するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、非治療用細胞から治療用細胞の集団を、たとえば正常なヒト真皮線維芽細胞から操作された線維芽細胞を、または低効力のimCDCから高効力のimCDCを作製するステップを含む。非治療用細胞から治療用細胞の集団を作製するためのいずれかの適切な選択肢が使用され得る。一部の実施形態では、治療用細胞の集団は、非治療用細胞、たとえば低効力のimCDCでWnt/βカテニンシグナリングを活性化することにより高効力の治療用imCDCを作製することにより、産生され得る。本明細書中使用される場合、「不死化したCDC」および「imCDC」は、他の意味が記載されない限り、高効力の治療用imCDCを表すように互換可能に使用され得る。一部の実施形態では、治療用細胞の集団は、Wnt/βカテニンシグナリングを活性化し、線維芽細胞、たとえば正常なヒト真皮線維芽細胞でgata4を過剰発現させることにより操作された線維芽細胞を作製することにより操作された線維芽細胞を作製することにより、産生される。本明細書中使用される場合、「ASTEX」は、操作された線維芽細胞由来の細胞外のベシクル/エキソソームを表す。非治療用細胞から治療用細胞の集団を作製するための適切な選択肢は、たとえば、開示全体が本明細書中参照により組み込まれている国際特許公開公報第20/31808号およびIbrahim et al., Nat Biomed Eng. 2019 Sep;3(9):695-705,に記載されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、エキソソーム(たとえば高効力のため操作されたエキソソーム)が自身の潜在的な免疫原性を低減するために、たとえばCRISPR-Cas、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、および/またはTALENを使用した遺伝子編集を介して操作され得る。好適には、エキソソームは、実施形態に応じて、エキソソームの最終的なレシピエントに関して同種、自家性、異種、または同系である供給源から得た細胞に由来し得る。さらに、特定のpiRNA、miRNA、および/またはタンパク質の発現に関して性質決定されているエキソソームのマスターバンクが作製され得、「市販」ベースで定義された対象でのその後の使用のため長期間保存され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、エキソソームは、単離された後、長期間または短期間保存することなく使用される(それらは作製された後可能な限り早く使用される)。
【0061】
一部の実施形態では、エキソソームは、本明細書中に記載されるように回収され、それらの核酸の中身、たとえばpiRNAを遊離および回収するための方法に供される。いくつかの実施形態では、核酸は、エキソソームのカオトロピックな破壊(chaotropic disruption)およびその後の核酸の単離を使用して単離される。他の確立した核酸単離のための方法もまた、カオトロピックな破壊に加えて、またはカオトロピックな破壊の代わりに使用され得る。単離される核酸は、限定するものではないが、DNA、DNAフラグメント、およびDNAプラスミド、総RNA、mRNA、tRNA、snRNA、saRNA、miRNA、piRNA、rRNA、調節RNA(regulating RNA)、ノンコーディングRNAおよびコーディングRNAなどを含み得る。RNAが単離されるいくつかの実施形態では、RNAは、目的のRNAの(DNA形態の)多数のコピーを作製するためのRT-PCRベース(または他の増幅)方法のテンプレートとして使用され得る。このような例では、特定のRNAまたはフラグメントが特に重要である場合、エキソソームの単離およびRNAの調製は、任意選択で、in vitroでの合成および望ましい配列の共投与により補完され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、1つ以上のさらなる作用物質と組み合わせて投与される。たとえば、いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、(たとえばエキソソームの中身を補完するために)エキソソーム由来の1つ以上のタンパク質または核酸と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームが単離される細胞が、エキソソームと組み合わせて投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、より伝統的な治療、たとえば外科的療法または薬学的療法と組み合わせて送達される。いくつかの実施形態では、このような手法の組み合わせは、標的組織のバイアビリティおよび/または機能において相乗的な改善をもたらす。一部の実施形態では、エキソソームは、遺伝子療法ベクター(または複数のベクター)、核酸(たとえばsiRNAとして使用される核酸またはRNA干渉を達成するための核酸)、および/または他の細胞種由来のエキソソームの組み合わせと組み合わせて送達され得る。
【0064】
よって、一部の実施形態では、(単独または核酸などの補助的な作用物質と組み合わせた)piRNAおよび/またはエキソソームの送達は、組織の修復、機能の改善、バイアビリティの増大、またはそれらの組み合わせを促進するように機能する特定の効果(たとえばパラクリン作用)を提供する。一部の実施形態では、送達されるエキソソームのpiRNAの中身は、標的組織の修復または再生の少なくとも一部に寄与する。いくつかの実施形態では、エキソソームによるmiRNA送達は、全体的または部分的に、損傷した組織の修復および/または再生に寄与する。上記で論述されるように、miRNA送達は、特定のメッセンジャーRNA(たとえばプログラム細胞死に関与するメッセンジャーRNA)の翻訳を阻止するように作動し得、またはメッセンジャーRNAの切断をもたらし得る。いずれかの場合および組み合わされた一部の実施形態において、これらの効果は、標的組織の細胞のシグナリング経路を変え、本明細書中開示されるデータにより示されるように、細胞のバイアビリティの改善、細胞の複製の増大、有用な解剖学的効果、および/または細胞機能の改善をもたらし得る。よってこれらはそれぞれ、全体として、損傷した組織または疾患状態の組織の修復、再生、および/または機能的な改善に寄与する。
【0065】
piRNAおよび/またはエキソソーム(またはこれらの中身)の有用な効果は、直接損傷したかまたは傷害を受けた細胞に対してのみである必要はない。一部の実施形態では、たとえば、開示される方法の影響を受ける損傷した組織の細胞は、健常な細胞である。しかしながら、いくつかの実施形態では、開示される方法の影響を受ける損傷した組織の細胞は、損傷した細胞である。
【0066】
いくつかの実施形態では、再生は、組織の機能を改善することを含む。たとえば、心臓組織が損傷する特定の実施形態では、機能的な改善は、心拍出、収縮力、心室機能の増大、および/または不整脈の低減(特に機能的な改善)を含み得る。また他の組織では、神経の損傷に応答した認知の亢進、肺組織の処置に応答した血中酸素移動の改善、損傷した免疫学的関連組織の処置に応答した免疫機能の改善などの機能に改善が実現され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、再生piRNAおよび/またはエキソソームは、起源が哺乳類である。いくつかの実施形態では、再生piRNAおよび/またはエキソソームは、起源がヒトである。一部の実施形態では、piRNAおよび/またはエキソソームは、非胚性ヒト再生細胞および/またはエキソソームに由来する。いくつかの実施形態では、再生エキソソームは、個体に対し自家性であり、いくつかの他の実施形態では、再生エキソソームは、個体に対し同種である。他の特定の実施形態では、異種性または合成エキソソームが使用される。
【0068】
また、本明細書において、組織修復を調節する方法であって、分化転換している線維芽細胞の集団を、エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量と接触させることにより、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換を抑制するステップを含み、前記エキソソームが操作された線維芽細胞に由来する、方法が提供される。一部の実施形態では、分化転換は、TGFβが介在する分化転換、たとえばTGFβシグナリングにより誘導される分化転換である。一部の実施形態では、TGFβシグナリングは、組織の外傷または損傷により活性化される。一部の実施形態では、線維芽細胞は、肺線維芽細胞である。
【0069】
一部の実施形態では、接触するステップは、エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNAを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、肺線維症、たとえば特発性肺線維症を有する。一部の実施形態では、接触するステップは、エキソソーム、エキソソーム由来のmiRNA、および/またはエキソソーム由来のpiRNAを対象に、たとえば気管内洗浄、吸入、または吸入投与により気管内投与するステップを含む。いずれかの適切な量のエキソソームは、本明細書中に記載されるように、分化転換している線維芽細胞と接触され得るか、または対象に投与され得る。一部の実施形態では、エキソソームの有効(または治療上有効)量は、約106~約1012個の粒子を含む。
【0070】
治療用細胞、それに由来するエキソソーム、およびpiwiRNA
本方法に使用するためのpiRNAは、一般に、細胞外ベシクル(EV)、たとえば治療用細胞に由来するエキソソームである。piRNAが由来し得る適切なEVまたはエキソソームは、CDC、たとえば不死化したCDC由来のエキソソーム、および操作された線維芽細胞、たとえばASTEX由来のエキソソームを含む。
【0071】
特定の種類の核酸が、膜に結合した粒子と結合し得る。このような膜に結合した粒子は、大部分の細胞種から来ており、細胞膜のフラグメントからなり、DNA、RNA、mRNA、マイクロRNA、piRNA、およびタンパク質を含む。これら粒子は、多くの場合、由来する細胞の組成を反映する。エキソソームは、このような膜に結合した粒子の1種であり、通常、直径約15nm~約95nmの範囲(約15nm~約20nm、20nm~約30nm、約30nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約95nm、およびそれらの重複した範囲を含む)にある。いくつかの実施形態では、エキソソームは、より大きい(たとえば約140~約210run(約140nm~約150nm、150nm~約160 run、160nm~約170 run、170nm~約180nm、180nm~約190 run、190nm~約200 run、200nm~約210nm、およびそれらの重複した範囲を含む)。一部の実施形態では、元の細胞体から作製したエキソソームは、元の細胞体よりも少なくとも1つの次元(たとえば直径において)100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、5000、10,000倍小さい。
【0072】
また、多くの場合、エキソソームを表すための代わりの術語が使用される。よって、本明細書中使用される場合、用語「エキソソーム」は、通常の意味で提供されるが、同様に、マイクロベシクル、エピディディモソーム(epididimosome)、アルゴソーム(argosome)、エキソソーム様ベシクル、微粒子、プロミニノソーム(promininosome)、prostasome、dexosome、texosome、dex、tex、アーケオソーム(archeosome)、およびoncosomesを含む用語をも含み得る。本明細書中他の意味が記載されない限り、上記用語はそれぞれ、操作された高効力の様々なエキソソームの各種を同様に含むことを理解されたい。エキソソームは、幅広い範囲の哺乳類細胞により分泌され、正常な条件および病理学的な条件の両方の下で分泌される。エキソソームは、一部の実施形態では、mRNA、miRNA、piRNA、または他の中身を第1の細胞を別の細胞(もしくは複数の細胞)へ運ぶ性質により、細胞内メッセンジャーとして機能する。
【0073】
エキソソームは、いくつかの実施形態では、ろ過、遠心分離、抗原ベースの捕捉などのうちの1つ以上を含む方法により細胞調製物から単離される。たとえば、いくつかの実施形態では、培養物で増殖した細胞の集団が、回収および貯蔵される。いくつかの実施形態では、細胞の単層が使用され、この場合任意選択で、細胞の収率を改善するために貯蔵より前に細胞を処置する(たとえばディッシュをこするか、かつ/またはトリプシンなどの酵素を用いて酵素により処置して細胞を遊離する)。一部の実施形態では、細胞を、約10日以上、約12日以上、または約15日以上の間血清飢餓下で培養し、エキソソームを条件付け培地から回収する。一部の実施形態では、標準的な細胞培養条件下の培養物で増殖した細胞を、低酸素条件下で一晩血清フリー培地に曝露し、エキソソームを含む条件付け培地を回収する。一部の実施形態では、低酸素条件は、約15%、約12%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%のO2またはそれ以下、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲のO2のパーセンテージを含む。一部の実施形態では、低酸素条件は、37℃での2%のO2/5%のCO2を含む。一部の実施形態では、低酸素条件に曝露した細胞は、約24、約36、約48、約60、約72時間以上、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲の時間間隔で、37℃で標準的な酸素下にて完全な血清に回復し、その後、条件培地を作製するために低酸素条件に再曝露される。標準的な酸素は、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%またはそれ以上のO2、または先行する値のうちいずれか2つにより定義される範囲のO2のパーセンテージを含む。一部の実施形態では、細胞は、低酸素培地および標準的な酸素培地の間を、1回、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上の回数を循環する。いくつかの実施形態では、懸濁液で増殖した細胞が使用される。その後、貯蔵した集団は、1ラウンド以上の遠心分離(いくつかの実施形態では、超遠心分離法および/または密度遠心分離が使用される)に供されることにより、細胞の集団由来の細胞の中身の残りおよびデブリから、エキソソームフラクションを分離する。一部の実施形態では、遠心分離は、エキソソームを回収するために行う必要がない。いくつかの実施形態では、エキソソームの捕捉の効率を改善するために、細胞の前処置が使用される。たとえば、いくつかの実施形態では、細胞からのエキソソームの分泌の速度を増大させる作用物質が、エキソソームの総合的な収率を改善するために使用される。一部の実施形態では、エキソソーム分泌の増大は行われない。一部の実施形態では、分子ふるいろ過が、特定の粒径(たとえば直径)のエキソソームを回収するために、遠心分離と組み合わせてまたは遠心分離の代わりに使用される。一部の実施形態では、エキソソームは、100KDaの分子量のカットオフフィルターを用いた遠心限外ろ過を使用して精製される。いくつかの実施形態では、ろ過は使用する必要はない。さらなる実施形態では、エキソソーム(またはエキソソームの下位集団)は、エキソソーム上のまたは中の固有のマーカー(たとえば膜貫通タンパク質)の選択的な同定により捕捉される。このような実施形態では、固有のマーカーは、特定のエキソソームの集団を選択的に強化するために使用され得る。一部の実施形態では、特定のマーカーまたはエキソソームの特徴に基づく強化、選択、またはろ過は行われない。
【0074】
さらに、エキソソーム、特に高効力のため操作されたエキソソームの作製を促進するための方法が提供される。いくつかのこのような実施形態では、ヒドロラーゼが、細胞からのエキソソームの遊離(たとえば分泌)を促進するために使用される。特定の実施形態では、エステル結合、糖(たとえばDNA)、エーテル結合、ペプチド結合、炭素-窒素結合、酸無水物、炭素間結合、ハロゲン化物結合、リン-窒素結合、硫黄-窒素結合、炭素-リン結合、硫黄間結合、および/または炭素-硫黄結合のうちの1つ以上を切断するヒドロラーゼが使用される。一部の実施形態では、ヒドロラーゼは、DNAseである(たとえば糖を切断する)。特定の実施形態は、特定のヒドロラーゼ、たとえばリソソーム酸性スフィンゴミエリナーゼ、分泌性亜鉛依存性酸性スフィンゴミエリナーゼ、中性スフィンゴミエリナーゼ、およびアルカリ性スフィンゴミエリナーゼのうちの1つ以上などを使用する。
【0075】
特定の実施形態では、エキソソームは、細胞または組織の修復または再生を惹起するために対象へ投与される。いくつかの実施形態では、エキソソームは、幹細胞に由来する。いくつかの実施形態では、幹細胞は、非胚性幹細胞である。一部の実施形態では、非胚性幹細胞は、成年の幹細胞である。しかしながら、特定の実施形態では、任意選択で、胚性幹細胞が、エキソソームの供給源として使用される。一部の実施形態では、体細胞(非限定的な例として線維芽細胞)が、エキソソームの供給源として使用される。さらなる実施形態では、生殖細胞が、エキソソームの供給源として使用される。
【0076】
一部の実施形態では、高い治療効力を有する細胞が、本明細書中に記載されるように作製される。一部の実施形態では、細胞は、高い治療効力のエキソソームを産生するように操作される。高い治療効力を有する細胞を作製するため、かつ/または高い治療効力のエキソソームを産生するいずれかの細胞種が使用される。たとえば、CDC(cardioshpere由来細胞)または線維芽細胞が使用され得る。
【0077】
エキソソーム供給源として幹細胞を使用するいくつかの実施形態では、幹細胞由来のエキソソームの核酸および/またはタンパク質の内容物は、損傷した細胞または疾患状態にある細胞の修復または再生をもたらすために特に適している。いくつかの実施形態では、エキソソームは、処置される組織に由来する幹細胞から単離される。たとえば、心臓組織が修復される一部の実施形態では、エキソソームは、心臓幹細胞に由来する。心臓幹細胞は、いくつかの実施形態において、限定するものではないが、心房、中隔、心室、心房部(auricola)、およびそれらの組み合わせを含む心臓の様々な領域から得られる(たとえば、部分的または全体的な心臓が、一部の実施形態において心臓幹細胞を得るために使用され得る)。いくつかの実施形態では、エキソソームは、心臓幹細胞を含むかまたは心臓幹細胞を生じさせるように培養物にて操作され得る細胞(または細胞のグループ)(たとえばcardiosphereおよび/またはCDC(cardiosphere由来細胞))に由来する。Cardiosphereの単離に関するさらなる情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている2012年9月18日に発行された米国特許第8,268,619号で見出され得る。いくつかの実施形態では、心臓幹細胞は、CDC(cardiosphere由来細胞)に由来する。CDCの単離のための方法に関するさらなる情報は、2008年に出願された米国特許公開公報第11/666,685号および2012年3月5日に出願された同第13/412,051号で見出され得る(両文献の全体は参照により本明細書に組み込まれている)。また、限定するものではないが、骨髄幹細胞、脂肪組織由来幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、および神経幹細胞を含む他の様々な幹細胞もまた、実施形態に応じて使用され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、エキソソームは、たとえば翻訳を阻止および/またはmRNAを切断することにより遺伝子発現の変更を誘導する。一部の実施形態では、遺伝子発現の変更は、望ましくないタンパク質または他の分子、たとえば細胞死経路に関与するかまたは周辺細胞にさらなる損傷を誘導するもの(たとえばフリーラジカル)の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子発現の変更は、直接または間接的に、望ましいタンパク質または分子(たとえば有用な効果を有するもの)の作製をもたらす。このタンパク質または分子自体は、自身が望ましいものである必要はない(たとえばタンパク質または分子は、組織の損傷の状況で総合的な有用な効果を有し得るが、他の状況では有用な効果をもたらさない)。一部の実施形態では、遺伝子発現の変更は、望ましくないタンパク質、分子、または経路の阻止(たとえば有害な経路の阻害)を引き起こす。いくつかの実施形態では、遺伝子発現の変更は、1つ以上の炎症性作用物質および/または当該作用物質に対する感受性の発現を低減する。好適には、いくつかの実施形態では、エキソソーム、miRNA、またはpiRNAの投与は、炎症経路に関与する特定の炎症性分子および/または複数の分子のダウンレギュレーションをもたらす。よって、いくつかの実施形態では、エキソソーム、miRNA、またはpiRNAと接触した細胞は、外傷後炎症または疾患による炎症のイベントであっても、高いバイアビリティを享受する。
【0079】
いくつかの実施形態では、エキソソームは、損傷した組織の1つ以上のレシピエント細胞と融合する。いくつかの実施形態では、エキソソームは、マイクロRNAおよび/またはpiRNAを、損傷した組織の1つ以上のレシピエント細胞に放出し、これにより損傷した組織の1つ以上の細胞の少なくとも1つの経路を変える。一部の実施形態では、エキソソームは、損傷した組織の細胞の周りの環境を変えることにより損傷した組織の細胞へそれらの影響を行使する。一部の実施形態では、エキソソームの中身もしくは特徴により作製されるかまたは中身もしくは特徴の結果としてのシグナルは、特定の細胞経路の増大または減少をもたらす。たとえば、エキソソーム(またはそれらの中身/特徴)は、タンパク質および/または脂質のプロファイルを変えることにより細胞の環境を変えることができ、これにより、この環境での細胞の挙動の変更をもたらし得る。さらに、いくつかの実施形態では、エキソソームのmiRNAおよび/またはpiRNAは、レシピエント細胞の遺伝子発現を変えることができ、これにより、遺伝子が関与する経路を変更し、その後、細胞の環境をさらに変えることができる。いくつかの実施形態では、エキソソームの影響は、血管新生を直接的または間接的に刺激する。いくつかの実施形態では、エキソソームの影響は、細胞の複製に直接または間接的に影響する。いくつかの実施形態では、エキソソームの影響は、細胞のアポトーシスを直接または間接的に阻害する。同様に、いくつかの実施形態では、エキソソーム由来のpiRNAは、これらおよび/または他の効果を誘導する。
【0080】
治療用組成物
いくつかの実施形態では、1つ以上のpiRNA、たとえばエキソソーム由来のpiRNAと、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物、たとえば治療用組成物が提供される。本組成物は、組織の修復および/または再生を必要とする状態の処置、たとえば虚血性外傷および/または組織線維症の処置での使用を見出されている。一部の実施形態では、本組成物は、細胞フリーかつ/またはエキソソームフリーの組成物である。一部の実施形態では、エキソソームフリーの組成物は、エキソソームまたは細胞外ベシクルを実質的にまたは本質的に含まない。一部の実施形態では、エキソソームフリーの組成物は、いずれのエキソソームもしくは細胞外ベシクルをも含まないか、または(たとえば本組成物を本明細書中提供されるように対象に投与する場合に)検出可能な機能的な効果を提供するために不十分な量のエキソソームもしくは細胞外ベシクルを含む。一部の実施形態では、細胞フリーの組成物は、細胞を実質的にまたは本質的に含まない。一部の実施形態では、細胞フリーの組成物は、いずれの細胞をも含まないか、または(たとえば本組成物を本明細書中提供されるように対象に投与する場合に)検出可能な機能的な効果を提供するために不十分な量の細胞を含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、1つ以上のエキソソーム由来のRNA(たとえばpiRNAおよび/またはmiRNA)および薬学的に許容される賦形剤を含むか、またはからなるか、またはから本質的になる。一部の実施形態では、本組成物は、核酸、タンパク質、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、メッセンジャーRNA、snRNA、saRNA、miRNA、piRNA、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のRNAは、線維芽細胞由来のエキソソームpiRNA、たとえば操作された線維芽細胞由来のエキソソーム由来のpiRNAを含む。一部の実施形態では、エキソソーム由来のRNAは、CDC由来のエキソソームpiRNA、たとえば不死化したCDC由来のエキソソームに由来するpiRNAを含む。いくつかの実施形態では、piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、piRNAは、hsa_piR_016659である。いくつかの実施形態では、piRNAは、piR-20450、piR-20548、piR-16735、piR-01184、piR-20786、piR-00805、piR-04153、piR-18570、piR-16677、およびpiR-17716のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、合成piRNAおよび薬学的に許容される担体を含むか、からなるか、またはから本質的になる。一部のこのような実施形態では、合成piRNAは、たとえば
図16に示されるhsa_piR_016659、hsa_piR_016658、hsa_piR_001040、hsa_piR_007424、hsa_piR_008488、hsa_piR_018292、hsa_piR_013624、hsa_piR_019324、およびhsa_piR_020548のうちの1つ以上を含む。一部のこのような実施形態では、合成piRNAは、hsa_piR_016659である。いくつかの実施形態では、本組成物は、合成piRNAおよび薬学的に許容される担体を含むか、からなるか、またはから本質的になる。いくつかの実施形態では、miRNAは、たとえば以下の表1に示されるmiR-183-5p、miR-182-5p、miR-19a-3p、miR-92a-3p、miR-17-5p、miR-126-3p、およびmiR-510-3pのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、miRNAは、miR-92a、miR-182、miR-183、miR-19a、miR-26a、miR27-a、let-7e、mir-19b、miR-125b、mir-27b、let-7a、let-7c、miR-140-3p、miR-125a-5p、miR-150、miR-155、mir-210、let-7b、miR-24、miR-423-5p、miR-22、let-7f、miR-146a、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【表1】
【0081】
いくつかの実施形態では、本組成物は、様々な細胞種に由来する複数のpiRNA(たとえば第1種および第2種の「親細胞」に由来するエキソソームの集団から単離したpiRNA)を含む。上記で論述されるように、いくつかの実施形態では、本明細書中開示される組成物は、単独でか、または1つ以上の補助的な治療形式(たとえば薬学的、細胞療法、遺伝子療法、タンパク質療法、外科手術など)と併用して使用され得る。
【0082】
本開示のRNA(たとえばpiRNA、miRNA)は、核酸に沿った1つ以上の位置で化学的に修飾され得る。一部の実施形態では、piRNAは、1つ以上の位置で化学的に修飾されている。一部の実施形態では、miRNAは、1つ以上の位置で化学的に修飾されている。一部の実施形態では、RNAは、1つ以上の化学的に修飾されたヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、いずれかの適切な化学的修飾を含み得る。一部の実施形態では、RNA(たとえばpiRNA、miRNA)の化学的修飾は、in vitroおよび/またはin vivoでRNAの安定性を増大させる。一部の実施形態では、RNA(たとえばpiRNA、miRNA)の化学的な修飾は、in vivoでRNAの活性を増大させる。
【0083】
一部の実施形態では、RNA、たとえばpiRNAまたはmiRNAは、約1%~約100%修飾されたヌクレオチド(全体のヌクレオチド含有量に関連または1種以上のヌクレオチド、すなわちA、G、U、もしくはCのうちのいずれか1つ以上に関連)、または間のいずれかのパーセンテージ(たとえば1%~20%、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、および95%~100%)だけ修飾されたヌクレオチドを含む。全ての残りのパーセンテージは、修飾されていないA、G、U、またはCの存在から構成されることが理解されるであろう。
【0084】
一部の実施形態では、RNA、たとえばpiRNAまたはmiRNAは、最小1%および最大100%の修飾されたヌクレオチド、またはいずれかの間のパーセンテージ、たとえば少なくとも5%修飾されたヌクレオチド、少なくとも10%修飾されたヌクレオチド、少なくとも25%修飾されたヌクレオチド、少なくとも50%修飾されたヌクレオチド、少なくとも80%修飾されたヌクレオチド、または少なくとも90%修飾されたヌクレオチドを含む。たとえば、RNAは、修飾されたピリミジン、たとえば修飾されたウラシルまたはシトシンを含み得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドにおけるウラシルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、修飾されたウラシル(たとえば5-置換されたウラシル)と置き換えられている。一部の実施形態では、核酸におけるシトシンの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、修飾されたシトシン(たとえば5-置換されたシトシン)と置き換えられている。
【0085】
薬学的に許容される賦形剤として、限定するものではないが、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒および/または分散媒体が挙げられる。薬学的に許容される賦形剤として機能し得る物質のいくつかの非限定的な例として、(1)糖、たとえばラクトース、グルコース、およびスクロース;(2)スターチ、たとえばコーンスターチおよびポテトスターチ、(3)セルロースおよびその誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、および酢酸セルロース;(4)トラガント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)平滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク;(8)ココアバターおよび座薬用ワックス;(9)油、たとえばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、およびダイズ油;(10)グリコール、たとえばプロピレングリコール;(11)ポリオール、たとえばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、たとえばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)アガー;(14)緩衝剤、たとえば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ無水物;(22)増量剤、たとえばポリペプチドおよびアミノ酸(23)血清成分、たとえば血清アルブミン、HDLおよびLDL;(22)C2-C12アルコール、たとえばエタノール;ならびに(23)薬学的製剤で使用される他の非毒性の適合可能な物質が挙げられる。一部の実施形態では、賦形剤は、有効な作用物質、たとえばpiRNAの分解を阻害する。
【0086】
一部の実施形態では、本組成物は、非経口的な剤形にある。一部の実施形態では、非経口的な剤形は、無菌性であるか、または患者に投与する前に無菌にすることができる。非経口的な剤形の例として、限定するものではないが、注射が容易な液剤、注射のため薬学的に許容されるビヒクルに溶解または懸濁することが容易な乾燥した生成物、注射が容易な懸濁物、およびエマルジョンが挙げられる。さらに、徐放非経口剤形が、対象への投与のために調製され得る。エキソソーム由来のpiRNAの非経口的な剤形を提供するために使用され得る適切な賦形剤として、限定するものではないが、滅菌水;注射用水、USP;生理食塩水;グルコース溶液;水性ビヒクル、たとえば限定するものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、およびラクトリンゲル注射液;水と混和するビヒクル。たとえば限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール;ならびに非水性ビヒクル、たとえば限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルが挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、エキソソームは、対象への投与、たとえば対象への気管内投与に適した剤形で製剤化されている。一部の実施形態では、エキソソームは、本明細書中に記載される薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化されている。一部の実施形態では、エキソソームは、いずれかの適切な選択肢を使用して吸入または吸入投与のために製剤化されている。一部の実施形態では、エキソソームは、エアロゾル化されている。
【0088】
好適には、いくつかの実施形態では、エキソソームは、実施形態に応じて特定の範囲の直径に構成されている、合成の膜に結合した粒子(たとえばエキソソームサロゲート)を含む。このような実施形態では、エキソソームサロゲートの直径は、特定の適用(たとえば標的部位または送達経路)に対して調整されている。さらなる実施形態では、エキソソームサロゲートは、投与後の特定の部位または領域への輸送を高めるように標識または修飾されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、エキソソームは、再生細胞の遠心分離を介して得られる。いくつかの実施形態では、超遠心分離が使用される。しかしながら、いくつかの実施形態では、超遠心分離は使用されない。いくつかの実施形態では、エキソソームは、再生細胞の分子ふるいろ過を介して得られる。上記に開示されるように、一部の実施形態では、上記のものと同様の機構により単離され得る合成エキソソームが作製される。
【0090】
また、本明細書において、組織の修復および/または再生を必要とする状態(たとえば心臓虚血性外傷、肺線維症)を処置するためのキットであって、本明細書中に記載の1つ以上のエキソソーム由来のpiRNA種または本開示の組成物を含む、キットが提供される。一部の実施形態では、本キットは、本明細書中に記載の薬学的に許容される賦形剤を含む。キットは、キットの1つ以上の成分を保持するための1つ以上の容器(たとえばバイアル、アンプル、試験管、フラスコ、またはビン)を含み得る。本キットは、組織の修復および/または再生を必要とする状態(たとえば心臓虚血性外傷、肺線維症)を処置するためのキットを使用するための説明書をさらに含み得る。この情報および説明書は、言葉、写真、またはその両方などの形態であり得る。
【0091】
上記の実施形態のいずれかの具体的な要素は、他の実施形態の要素と組み合わせることができ、またはこれと置き換えることができる。さらに、本開示の特定の実施形態に関連する利点は、これら実施形態の文脈で説明されているが、他の実施形態もまた、当該利点を呈し得、全ての実施形態が、本開示の範囲内に入るために当該利点を必ずしも呈する必要はない。
【0092】
本明細書中に記載の技術は、さらなる限定と全く解釈されるべきではない以下の実施例によりさらに示される。
【0093】
実施例
実施例1
この非限定的な実施例は、不死化したCDC(imCDC)およびimCDC由来の細胞外ベシクル(EV)/エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の検出および単離を示す。
【0094】
細胞外ベシクル(EV)は、以前に使用され
図1に記載されている低酸素サイクリング法を使用してCDCから回収した。簡潔に述べると、細胞を、37℃、20%のO
2/5%のCO
2でコンフルエンスとなるまで増殖させ、次に、細胞を、24時間、2%のO
2/5%のCO
2、37℃で血清フリーにした。条件培地を回収し、0.45μmのフィルターを介してろ過し、アポトーシス体および細胞のデブリを除去し、後に使用するため-80℃で凍結した。これら細胞を、2%のO
2/5%のCO
2条件に3回通し、低酸素条件への曝露の間に48時間、完全な血清を用いて20%のO
2/5%のCO
2で回復させた。EVを、1000kDaの分子量カットオフフィルターを用いて遠心限外ろ過を使用して精製した。フラクションを、粒径、数、および濃度、ならびにpiRNA含有量の観点から分析した。
【0095】
初代のCDC(pCDC)、imCDC、pCDC-EV、およびimCDC-EVのpiRNA含有量を、小分子RNA配列分析を使用して分析した。
図1Bは、piRNAが、それらが由来する細胞と比較してEVに多く含まれていたことを示している。さらに、不死化したCDCおよびそれから単離したEVは、不死化していないCDCおよびそれに由来するEVはと比較してpiRNAを多く含んでいた。よって、imCDCは、初代CDCと比較して異なるpiRNA組成を示している。ImEV-Pi(hsa_piR_016659)は、最も多く発現されたノンコーディングRNAの1つとして同定された(imCDC-EVにおいて読み取りの数は、CDC-EVと比較して35倍多かった)(
図1B)。
図1Cに示されるように、piRNAの量はEVの量と相関していた。
【0096】
これらの結果は、imCDCが、初代CDCと比較してpiRNAを多く含んでいることを示している。一部の実施形態では、EVは、piRNAを多く含んでいる。一部の実施形態では、imCDC-EVは、pCDC-EVと比較してpiRNAを多く含んでいる。
【0097】
実施例2
この非限定的な実施例は、心筋の虚血/再灌流(I/R)外傷におけるimCDC-EV由来のpiRNAのin vivoでの心保護効果を示す。
【0098】
imCDC-EV由来のpiRNAの役割を調査するために、心筋の虚血/再灌流のラットモデルを使用した。
図2Aは、実験プロトコルの概略図を示す。0日目に、心筋梗塞を、8~10週齢の雌性のWistar-Kyotoラットに外科的に45分間誘導し、この後再灌流を行った。再灌流から20分後に、ビヒクル、imCDC-EV(10
10個の粒子)、imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659;400ng)、またはスクランブルRNAを、クランプ注射を用いて心筋内に投与した。虚血/再灌流から24時間後に、尾静脈の血液を、血液細胞計測のため回収し、心筋トロポニンI(cTnI)のレベルを測定した。48時間後に、血液細胞計測のため動物を屠殺し、cTnIの測定およびトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)染色を行い、瘢痕の大きさを測定した。
【0099】
imCDC-EVを投与した動物は、TTC染色に基づき、ビヒクルと比較して小さな瘢痕の大きさ(梗塞の大きさ)を示した(
図2)。また、imCDC-EV piRNAの投与は、ビヒクルと比較して小さな梗塞の大きさを示した。imCDC-EVで処置した動物の梗塞の大きさは、imCDC-EV piRNAで処置した動物と比較して小さかった。対照的に、スクランブルRNAを投与した動物は、ビヒクルで処置した動物と比較して梗塞の大きさは変化しなかったが、imCDC-EV piRNAを投与した動物では、スクランブルRNAを投与した動物と比較して梗塞の大きさが小さい傾向があった。
【0100】
末梢血における心筋トロポニンI(cTnI)は、心筋の虚血/灌流後のimCDC-EV piRNAの治療効果を測定するために使用した。24時間目で、cTnIのレベルは、全ての処置グループで低かった(
図3A)。48時間目では、cTnIのレベルは、ビヒクルで処置した動物およびスクランブルRNAで処置した動物において増大した(
図3B)。imCDC-EV piRNAを投与された動物は、ビヒクルで処置した動物と比較して低いレベルのcTnIを示した。imCDC-EV piRNAで処置した動物におけるcTnIのレベルは、imCDC-EVを投与した動物のレベルと同様であった。imCDC-EV piRNAで処置した動物のcTnIのレベルは、スクランブルRNAで処置した動物と比較して低い傾向を示した。
【0101】
これらの結果は、imCDC-EV piRNAが、心筋の虚血/再灌流の外傷の後のimCDC-EVの治療効果を再現したことを示している。一部の実施形態では、imCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)を投与することは、心外傷の後の心筋梗塞の大きさを低減するために有効である。一部の実施形態では、imCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)を投与することは、心外傷の後の血中cTnIレベルを低減する。
【0102】
実施例3
この非限定的な実施例は、imCDC-EVおよびimCDC-EV piRNAが、心筋の虚血/再灌流外傷の後に末梢単球集団の動態を変えることを示している。
【0103】
心筋の虚血/再灌流外傷後の動物の末梢血における単球のフラクションの変化に及ぼすimCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)の投与の効果を試験した。心筋の虚血/再灌流から24時間後に、ビヒクルで処置した動物およびスクランブルRNAで処置した動物は、偽手術された動物と比較して単球の増大を示した(
図5A)。対照的に、imCDC-EVで処置した動物は、ビヒクルで処置した動物およびスクランブルRNAで処置した動物と比較して低い単球のパーセンテージを有していた。imCDC-EV piRNAで処置した動物は、ビヒクルで処置した動物およびスクランブルRNAで処置した動物と比較して同様の低い単球のパーセンテージの傾向を示した。
【0104】
末梢血中の単球のパーセンテージは、次の24時間にわたり変化した。ビヒクルまたはスクランブルRNAで処置した動物では、単球のパーセンテージは、心筋の虚血/再灌流から24時間~48時間後まで減少した(
図4A、4B)。対照的に、imCDC-EVで処置した動物およびimCDC-EV piRNAで処置した動物では、単球のパーセンテージは増大した。
【0105】
心筋の虚血/再灌流から48時間後に、imCDC-EV piRNAで処置した動物は、ビヒクルで処置した動物およびスクランブルRNAで処置した動物よりも高い単球のパーセンテージを有していた(
図5B)。ImCDC-EVで処置した動物は、ビヒクルで処置した動物およびスクランブルRNAで処置した動物と比較して高い単球のパーセンテージの傾向を示した。対照的に、imCDC EV piRNAは、血中の好中球計数プロファイルにおいて最小限の効果のみを有していた。
【0106】
これらの結果は、imCDC-EVおよびimCDC-EV piRNAの投与が、心筋の虚血/再灌流の外傷の後に末梢血における単球集団の動態を変えることができることを示している。単球は、imCDC-EVおよびimCDC-EV piRNAの標的であり得る。一部の実施形態では、imCDC-EVおよびimCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)は、末梢血中の単球の組成を変える。一部の実施形態では、imCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)の投与は、心筋の虚血/再灌流の外傷から24時間後に末梢血中の単球の増加を抑制する。一部の実施形態では、imCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)の投与は、心筋の虚血/再灌流の外傷後24時間~48時間末梢血中の単球の増加を遅延する。
【0107】
実施例4
この非限定的な実施例は、imCDC-EVおよびimCDC-EV piRNAの存在下で培養した初代マクロファージのin vitroでの生存、増殖、および遊走の増大を示している。
【0108】
単球に及ぼすimCDC-EVおよびimCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)の効果を、in vitroで試験した。骨髄由来マクロファージ(BMDM)由来のナイーブな(M0)マクロファージを、imCDC-EV、imCDC-EV piRNA、またはスクランブルRNAの存在下で24時間培養し、細胞のバイアビリティおよび増殖に関して試験した。
図6Aは、24時間の培養後のBMDM由来のM0マクロファージの画像を示す。ImCDC-EVで処置した細胞は、8時間および24時間の培養で、ビヒクル対照と比較して2倍超の細胞のバイアビリティの増加を示し(
図6B)、24時間で3倍超の増殖の増加を呈した(
図6C)。またimCDC-EV piRNAと培養した細胞は、24時間で、ビヒクル対照と比較して高いバイアビリティおよび増殖を示した。対照的に、スクランブルRNAと培養した細胞は、ビヒクル対照の値と同等の細胞増殖を示した。スクランブルRNAで処置した細胞は、24時間でビヒクルと比較して高い生存を示したが、これはimCDC-EVまたはimCDC-EV piRNAで処置した細胞と比較して低いレベルであった。
【0109】
imCDC-EV、imCDC-EV piRNA、またはスクランブルRNAで処置したマクロファージの遊走を、in vitroで試験した。
図7Aは、クリスタルバイオレットで染色したポリカーボネートのインサートにおけるBMDM由来のM0マクロファージの画像を示す。imCDC-EVまたはimCDC-EV piRNAと増殖したマクロファージは、ビヒクルで処置した細胞およびスクランブルRNAで処置した細胞と比較して大きな遊走を示した(
図7B)。
【0110】
これらの結果は、imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNAが、細胞の生存、増殖、および遊走を促進するように単球に直接作用し得ることを示している。
【0111】
実施例5
この非限定的な実施例は、imCDC-EV piRNAにより誘導されるマクロファージのトランスクリプトームの変化を示している。
【0112】
In vitroにおいて、骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、実施例4のようにimCDC-EV、imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)、および対照に曝露させた。次に、トランスクリプトームのプロファイルおよび活性化した経路を評価した。ImCDC-EV piRNA-条件付けBMDMは、対照と比較して異なるトランスクリプトームプロファイルを呈し、経路のアップレギュレーションは、炎症応答、細胞死、および細胞間シグナリングに関与していた。
【0113】
これらの結果は、マクロファージが、imCDC-EVおよびimCDC-EV piRNAの標的であり得ることを示している。一部の実施形態では、imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)は、マクロファージのmRNA発現プロファイルを変える。
【0114】
実施例6
この非限定的な実施例は、ASTEX(ASTEC(Activated-Specialized Tissue Effector Cells)由来の細胞外ベシクル/エキソソーム)における抗線維性メディエーターの同定を示す。
【0115】
RNAを、15日間の血清飢餓方法を使用して培養したASTECにより産生された細胞外ベシクル(EV)から単離した。単離したRNAのシーケンシングは、修飾されていない正常なヒト真皮線維芽細胞由来のEVと比較して、抗線維性メディエーターとして関与するものを含む、miRNAおよびpiRNA種の高い発現を明らかにした(
図8A、8D)。特に、特発性肺線維症(IPF)の病理学的な駆動因子を標的とし阻害することが知られている、miRNAのmiR-183ファミリーおよびmiR-17-92ファミリーが多く含まれていた。miR-182、miR-183、およびmiR-92aが多く含まれていることは、qPCRにより確認された(
図8C)。対照的に、ASTEXは、修飾されていない正常なヒト真皮線維芽細胞由来のEVと比較してmiRNAおよびpiRNAが枯渇していた(
図8B)。
【0116】
これらの結果は、ASTEXが、IPFの病理学的な駆動因子を標的とするmiRNA種を含む抗線維性メディエーターを多く含み得ることを示している。一部の実施形態では、ASTEXは、miR-182、miR-183、およびmiR-92aを多く含む。一部の実施形態では、ASTEXは、piR-20450を多く含む。
【0117】
実施例7
この非限定的な実施例は、特発性肺線維症におけるASTEXの治療効果を示す。
【0118】
特発性肺線維症のマウスモデルを使用して、ASTEXの治療効果を試験した。第1に、ASTEXの耐用量試験を、
図9Aに概略的に示されるように行った。試験開始時に、50μLの生理食塩水溶液(HBSS)を、100μlの空気と共に髄腔内投与した。7日後に、ASTEXを、10
7、10
8、および10
9個の粒子の用量で髄腔内投与した。ASTEXの投与から21日後に、体重、肺の質量、および肺中ヒドロキシプロリンのレベル(HyP)を測定し、肺胞組織の組織学的な染色を行った。各用量のASTEXを投与された動物は、ビヒクル対照と比較して体重を保持し、肺浮腫を示さず(
図9B)、ASTECが良好に許容されたことを示している。肺中ヒドロキシプロリンのレベルは、全ての用量でビヒクル対照と同等であり(
図10A)、ASTEXを投与された動物に線維症がないことを表している。また、肺胞組織の組織学的な性質決定により、10
9個のASTEXを投与された動物において線維症がないことが示された。ASTEXを投与された動物由来の肺胞組織のAshcroftスコアは、ビヒクル対照と同等であった(
図10B)。H&E染色により、ASTEXを投与した動物由来の肺胞組織において浸潤する白血球は示されず(
図10C)、またマッソントリクローム染色に基づく線維症のエビデンスも存在しなかった(
図10D)。
【0119】
ASTEXが健常な動物により良好に許容されたことを確認した後、EVを、肺線維症をブレオマイシンにより誘導した動物に投与した(
図11A)。動物にブレオマイシンを投与してから5日後に、1×10
8個の粒子のASTEX(1000kDa)を髄腔内投与した。
【0120】
ASTEXを投与したブレオマイシンで処置した動物は、ビヒクルで処置した動物と比較して改善された生存を示した(
図11B)。さらに、ASTEX投与は、ビヒクルで処置した動物と比較して肺中ヒドロキシプロリンのレベルを低減した(
図11C)。
【0121】
これらの結果は、ASTEXが特発性肺線維症(IPF)の処置において治療効果を有することを示している。一部の実施形態では、ASTEXは、IPF由来の死亡率を低減または死亡を遅延する。一部の実施形態では、ASTEXは、IPFの肺線維症を低減または遅延する。
【0122】
実施例8
この非限定的な例は、in vivoでの肺線維芽細胞の分化転換に及ぼすASTEXの効果を示している。
【0123】
IPFでのASTEXの治療効果の根底にある機構を理解するために、初代ヒト肺線維芽細胞に及ぼすASTEXの効果を、in vitroで試験した。肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換を促進する外傷を模倣するように、細胞をTGFβで処置した(
図12A)。同時に、細胞をASTEXまたはビヒクル溶液で処置した。ASTEX処置は、ビヒクルで処置した細胞と比較してTGFβにより誘導されるα平滑筋アクチン(α-SMA)のアップレギュレーションを減弱した(
図12B-12D)。
【0124】
これらの結果は、ASTEXが、肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への外傷により誘導される分化転換を低減し得ることを示している。一部の実施形態では、ASTEXは、肺線維芽細胞におけるTGFβにより誘導されるα-SMAのアップレギュレーションを減弱する。
【0125】
実施例9
この非限定的な実施例は、ASTEX由来のpiRNAを投与することにより特発性肺線維症を処置する方法を示す。
【0126】
piRNAは、ASTEXから単離される。動物は、肺線維症を誘導するために、動物は、気管内にてブレオマイシンに曝露される。ASTEX由来のpiRNAを、ブレオマイシン曝露から5日後に動物に気管内投与する。動物を生存について観察し、体重を、piRNAの投与から21日にわたり測定する。肺組織中のヒドロキシプロリンのレベルを測定し、肺線維症のレベルを推定する。
【0127】
実施例10
この非限定的な実施例は、細胞質と核との間のimCDC-EV piRNAのシャトリングを示す。
【0128】
BMDM由来のM0マクロファージを、imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)またはビヒクル対照の存在下で増殖させ、対照のレベルと比較した倍差としてのpiRNAの細胞内の局在を、異なる時点で測定した(実施例4参照)。最初に、piRNAは、培養の開始から5分後から、核よりも細胞質でより多く存在し、45分目では主に細胞質に存在する(
図17A)。18時間目に、piRNAは、細胞質および核の区画で見出され、24時間までに、piRNAは主に核に存在するようになり、細胞質にはほとんど残らなかった(
図17A)。48時間目までに、piRNAは、細胞質または核の中に有意なレベルで見出されなかった(
図17A)。対照的に、スクランブルRNAは、5時間目、18時間目、および24時間目に細胞質および核に存在し、48時間目までに両区画においてほとんどが排除された(
図17B)。この結果は、imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)が核に優先的に蓄積し、遺伝子発現を調節し得ることを示している。
【0129】
実施例11
この非限定的な実施例は、imCDC-EV piRNAで処置した初代マクロファージにおける全体的なメチル化の増大を示す。
【0130】
BMDM由来のM0マクロファージを、imCDC-EV、imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)、スクランブルRNA、またはビヒクル対照の存在下で増殖させ、全体的なメチル化のレベルを、24時間目および48時間目に測定した(実施例4参照)。24時間目に、imCDC-EVで処置した細胞およびimCDC-EV piRNAで処置した細胞は、ビヒクル対照またはスクランブルRNAと比較して全体的なメチル化の増大を示した(
図18A)。48時間目に、imCDC-EVで処置した細胞は、ビヒクル対照と同等のメチル化レベルを有していた(
図18B)。対照的に、imCDC-EV piRNAで処置した初代マクロファージは、ビヒクル対照またはスクランブルRNAと比較して高いレベルの全体的なメチル化を維持していた(
図18B)。
【0131】
この結果は、imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)が、DNAメチル化を増大し得、遺伝子発現の調節に寄与し得ることを示している。
【0132】
一部の実施形態では、初代マクロファージをimCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)と接触させることは、初代マクロファージの全体的なメチル化を増大させる。一部の実施形態では、初代マクロファージをimCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)と接触させることにより誘導される全体的なメチル化レベルの変化は、imCDC-EVにより誘導される全体的なメチル化の変化よりも長く続いている。
【0133】
実施例11
この非限定的な実施例は、実施例1~5、10、および11に示される、初代マクロファージに及ぼすimCDC-EV piRNA(たとえばhsa_piR_016659)の効果をまとめた概略図を示している。
【0134】
実施例1~5、10、および11に開示されたデータは、BMDM由来のM0マクロファージへの作用を介した、心筋の虚血/再灌流(I/R)の外傷におけるimCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)の心保護のモデルを裏付けている(
図19、上部のパネル)。imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)と共に培養したBMDMは、炎症応答、細胞死、および細胞間シグナリングに関与する経路のアップレギュレーションを示した転写プロファイルの変更を呈した(実施例5、
図19、左下のパネル)。imCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)は、核へと優先的にシャトリングされ、全体的なDNAメチル化を増大させた(実施例10、
図19、右下のパネル)。心筋の虚血/再灌流(I/R)の外傷のモデルの動物に投与する場合、imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)は、梗塞の大きさを低減し、末梢血におけるcTnIのレベルを低減した(実施例2、
図19、中央下部のパネル)。心筋の虚血/再灌流外傷後の末梢の単球集団の動態もまた、imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNAの投与により変化した(実施例3、
図19、中央下部のパネル)。In vitroでは、imCDC-EVおよび/またはimCDC-EV piRNA(hsa_piR_016659)は、初代マクロファージの生存、増殖、および遊走を増大させた(実施例4、
図19、中央下部のパネル)。
【0135】
上記を、明確性および理解のため例示および実施例により一部を詳細に説明してきたが、本開示の趣旨から逸脱することなく修正がなされ得ることを当業者は理解するものである。よって、本明細書中開示される形態は、単なる例であり、本開示の範囲を限定するようには意図されておらず、むしろ、本開示の実施形態の真の範囲および趣旨と一致する全ての修正および代替を包有するように意図されていることを理解されたい。
【0136】
上記に開示される実施形態の特定の性質および態様の様々な組み合わせまたは下位の組み合わせがなされ得ることが企図されている。さらに、一実施形態と組み合わせたいずれかの特定の性質、態様、方法、特性、特徴、質、特質、要素などの本明細書中の開示は、本明細書中に記載の他の全ての実施形態で使用され得る。よって、開示される実施形態の様々な性質および態様は、開示される主題の様々な様式を形成するために互いに組み合わせることができ、置き換えることができることを理解されたい。よって、本開示の範囲は上述の特定の開示された実施形態により限定されるべきではないことが意図されている。さらに。開示した主題は、様々な修正および別の形態の影響を受けやすいが、その具体的な実施例が図面に示されており、本明細書中詳細に記載されている。しかしながら、本開示は、開示した特定の形態または方法に限定されるべきではなく、記載される様々な実施形態および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある全ての修正、均等物、および代替物を包有することを理解されたい。本明細書中開示される全ての方法は、記載された順序で行われる必要はない。本明細書中開示される方法は、実務者に行われる特定の行為を含むが、これらはまた、明示的または暗示的に、これら行為の第三者の説明をも含み得る。たとえば、「エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量を投与すること」は、「エキソソーム由来のpiRNA(PIWI-interacting RNA)の有効(または治療上有効)量の投与を説明すること」を含む。さらに、本開示の性質または態様がマーカッシュグループの観点で記載される場合、当業者は、本開示がこれにより、マーカッシュグループのいずれかの個別のメンバーまたは下位グループの観点で記載されることを認識している。
【0137】
また、本明細書中開示される範囲は、そのあらゆる重複、下位範囲、および組み合わせを包有する。「最大(up to)」、「少なくとも(at least)」、「~超(greater than)」、「~未満(less than)」、「間(between)」などの言語は、記載される数を含む。「約(aboutまたはapproximately)」などの用語が先行する数は、記載される数字を含む。たとえば、「約90%」は、「90%」を含む。一部の実施形態では、少なくとも95%相同は、参照配列に対し96%、97%、98%、99%、および100%相同であることを含む。さらに、配列が、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列を「含む(comprising)」と開示される場合、当該言及はまた、他の意味が記載されない限り、当該配列が記載した配列「を含む(comprises)」か、「からなる(consists of)」か、または「から本質的になる(consists essentially of)」ことを含む。
【0138】
本出願で、特に添付の特許請求の範囲において使用される用語および文言、ならびにそれらの変形は、他の意味が明記されない限り、限定とは反対の、オープンエンドとして解釈すべきである。上記の例として、用語「~を含む(including)」は、「限定するものではないが、~を含む(including, without limitation)」、「限定するものではないが、~を含む(including but not limited to)」などを意味するように読まれるべきである。
【0139】
不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除するものではない。用語「約」は、本明細書中使用される場合、たとえば分子量の値および範囲を定義するために、記載された値および/または範囲の限界が、±20%以内、たとえば±5%以内を含む±10%以内で変動し得ることを意味する。数の前に「約」を使用することは、その数自体を含む。たとえば、「約5」は、「5」の支持を提供する。範囲に提供される数は、その間の重複する範囲および整数を含み、たとえば、1~4および5~7の範囲は、たとえば、1-7、1-6、1-5、2-5、2-7、4-7、1、2、3、4、5、6、および7を含む。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】