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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】吸入呼気人工呼吸器ガス用除染装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
A61M16/00 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570655
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021033277
(87)【国際公開番号】W WO2021236856
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,342
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515329768
【氏名又は名称】ナーダー、エム.ハバシ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】ナーダー、エム.ハバシ
(57)【要約】
本発明は、人工呼吸器内の吸入及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置を開示する。除染装置は、吸入及び呼気ガス流のためのガス入口及び出口、及びガス流のためのチャンバを含む。チャンバは、ガス入口と出口を接続するように構成されている。チャンバは、チャンバ内に一体に形成された、好ましくはUVC範囲で発光する少なくとも1つのUV(紫外線)光源を含む。ここで、UV光源は好ましくはUVC発光ダイオードである。UV光源は、ガス流内の汚染物質と光源間の距離を最小化し、ガス流路中のガス流を、汚染物質を不活性化するのに十分な長さに維持し、除染を最適化するために光源の強度を増大し、かつガス流を方向転換するために乱流を増大し、かつ境界層とシャドーイングを防止することで、吸入ガス及び/又は呼気ガス中の汚染物質を除染する、そのためのUV光線を生成するように構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入及び/又は呼気ガス流のためのガス入口及びガス出口、及びガス入口をガス出口に接続するように構成されたガス流用のチャンバを含む除染装置であって、
チャンバは、ガス流中の汚染物質とUV光源間の距離を最小化し、ガス流路内のガス流を汚染物質を不活性化するのに十分な長さに維持し、かつ、汚染物質を不活性化するためにUV光線の強度を最適化することにより、吸入ガス及び/呼気ガス中の汚染物質を除染するためのUV光線を生成するように構成された、チャンバ内に一体に形成された少なくとも1つの紫外線(UV)光源を含み、かつ
ガス流は抵抗を最小限にするために受動的である、
人工呼吸器と連携して吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置。
【請求項2】
ガス流中の汚染物質とUV光源間の距離が10mm以下、好ましくは5mm以下である、請求項1に記載された除染装置。
【請求項3】
ガス流は、ガス流路において、汚染物質を6秒以内、好ましくは3秒以内で不活性化させるのに十分な長さに維持される、請求項1に記載された除染装置。
【請求項4】
UV光線の強度は、約0.010~110mJ/cm、好ましくは約1.2~17mJ/cmである、請求項1に記載された除染装置。
【請求項5】
境界層の形成又はシャドーイングを防止するためにガス流を方向転換するためにチャンバ内の乱流を増大させるように構成された要素をさらに含む、請求項1に記載された除染装置。
【請求項6】
少なくとも1つの要素はバッフル又はフロープレートである、請求項5に記載された除染装置。
【請求項7】
フロープレートはガス流中の汚染物質を分散するよう構成されている、請求項6に記載された除染装置。
【請求項8】
チャンバは、ガス入口とガス出口間での吸入及び/又は呼気ガス流のための1以上のガス流路を含む、請求項1に記載された除染装置
【請求項9】
1以上のガス流路は、UV光線へのガス流中の汚染物質の暴露を増大させるために、スパイラル、コイル、又は螺旋形設計のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載された除染装置。
【請求項10】
チャンバは、UV光線透過を増幅する反射面を含む、請求項1に記載された除染装置。
【請求項11】
反射面は、アルミニウム又は反射性の銅を含む、請求項10に記載された除染装置。
【請求項12】
チャンバは外部環境へのUV光線の暴露を防止するケーシングを含む、請求項1に記載された除染装置。
【請求項13】
UV光線は、200~280nmの範囲の波長を含む、請求項1に記載された除染装置。
【請求項14】
少なくとも1つのUV光源は、UVランプ及び紫外線発光ダイオード(UV-LEDs)を含むグループから選択される、請求項1に記載された除染装置。
【請求項15】
少なくとも1つのUV光源は、ガスが沿って流れる1つ以上の支持プレート及び端部支持体によって支持された、少なくとも1つのUV発光管である、請求項1に記載された除染装置。
【請求項16】
除染の実効領域は少なくともガス流路の長さと直径に基づいている、請求項1に記載された除染装置。
【請求項17】
UV光線の強度が除染の実効領域に基づいている、請求項16に記載された除染装置。
【請求項18】
除染装置は、ガス分子の動きを増大しかつガス流をUV光線に暴露するために振動するように構成されている、請求項1に記載された除染装置。
【請求項19】
ガス入口及びガス出口は、人工呼吸器の吸入肢及び/又は呼気肢に接続するように構成されている、請求項1に記載された除染装置。
【請求項20】
請求項1に記載された除染装置を、人工呼吸器の吸入ガス流及び/又は呼気ガス流内に設置すること、及び汚染物質を低減してガス流を除染することを含み、汚染物質は、細菌、ウイルス、COVID19、又はその他の病原体の少なくとも1つを含む、人工呼吸器からのガス流を除染する方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照及び優先権主張】
【0001】
本出願は、2020年5月19日出願の仮出願番号63/027342に関し、その開示内容を参照することで本明細書に組み込み、優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、除染装置(decontamination device)並びに除染装置を含む人工呼吸器(ventilator)に関する。より具体的には、本発明は、人工呼吸器からの吸入及び/又は呼気ガスを紫外線(UV)光線を使用して除染する装置、及びそのような装置を備える人工呼吸器に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、インフルエンザ、サーズ(SARS)、COVID-19、コロナウイルス、細菌、その他のウイルスなどの感染症は、呼吸器感染症(respiratory infection)による死亡と罹患の原因になっている。このような感染症は、患者の肺を含む呼吸器系に影響を及ぼし、そのため、患者の呼吸及び酸素と二酸化炭素を交換する能力を阻害する。技術の進歩により、人工呼吸器などの幾つかの装置は、肺機能が低下した患者の治療に重要な役割を果たしており、そのため、患者の肺を支援して酸素と二酸化炭素を交換するのに使用されている。
【0004】
典型的には、現代の人工呼吸器は、機械式人工呼吸器回路にフィルターを有している。このようなフィルターは、ガス取り入れ口及び呼気回路に設置可能であり、そのため、ガス供給システム中又は取り込んだ周囲空気中に含まれているかも知れない空気中の汚染物質から患者を保護すると共に、患者が環境に吐き出す病原体から医療従事者を保護するのに役立っている。なお、呼気ガスの汚染には、微生物病原体、揮発性有機化合物、規格外の呼気ガス(麻酔ガスなど)、及び残留噴霧薬が含まれている。環境空気やガスを引き込むためにタービンが使用可能で、かつ環境が汚染されている可能性がある状況では、吸入ガスが病原体や化学物質を人工呼吸器に引き込む可能性がある。供給されたガスのろ過により、人工呼吸器の吸入肢(inspiratory limb)の細菌及び粒子汚染(particulate contamination)が防止される。典型的には、患者が吐出したガスは環境中に排出される。ろ過しないと、吐出された病原体(pathogens)が環境に排出され、集中治療室(ICU)又は手術室の空気と混合し得る。したがって、呼気ガスをろ過することで、周囲大気の汚染を防ぎ、医療従事者、他の患者、及び訪問者を保護する。
【0005】
患者は、病原体を含む可能性のある水蒸気と二酸化炭素とは別に、揮発性有機化合物と水の微粒子を吐出する。現在、フィルターは、粒子サイズが1~3μmの汚染物質をろ過するとの勧告がある。しかしながら、挿管された患者からの汚染物質の80%は、通常、直径が約0.3~1μmで、呼吸当たり約2,500個の粒子が存在する。さらに、粒子数の主な決定因子は、呼気終端陽圧(positive end expiratory pressure;PEEP)変数である(PEEPが高いほど呼気粒子が多い)が、これに対して、1回呼吸量(tidal volume)と人工呼吸モードは一般に粒子数に影響を与えない。例えば、呼吸器感染症の重症患者は、より高い生物汚染度(bioburden)及びより高い呼気ガス汚染に該当する。さらに、肺炎患者の呼気粒子(exhaled breath particle)(EBP)濃度は、肺炎のない患者の粒子数(particles)/呼吸(breath)2.35~887.69(0.005~1.928粒子/mL)であるのに対して、粒子数/呼吸約237.67~1,208.13(0.2~2.196粒子/mL)である。加えて、重症患者はより多くの人工呼吸器のサポートとより高レベルのPEEPを必要とする。高レベルPEEP(5cmHO)の機械人工呼吸が施される患者からのEBP濃度の中央値は粒子数/呼吸77.08(0.184粒子/mL)であり、低レベルPEEP患者のEBP濃度を大幅に上回っている、即ち、低レベルPEEP(<5cmHO)粒子数/呼吸13.92(0.027粒子数/mL)の患者の場合、p=0.003である。COVID19患者のPEEPレベルは、一般的に>10cmHOである。
【0006】
このように、これらのフィルターによっても環境汚染の深刻なリスクが存在する。フィルターは、吸入又は呼気ガス中の汚染物質をろ過するのに効率的ではない、したがって、汚染物質が患者の肺と患者の周囲環境に入り込み、患者と患者の周囲環境に居る人々にとって呼吸器感染症のリスクとなる。このリスクは、吸入ガス又は呼気ガス中の汚染物質のろ過が難しいということだけではなく、汚染物質の原因となる呼吸器感染症の高い臨床的蔓延(clinical prevalence)にも起因している。例えば、サーズの期間中、呼気フィルターを使用しているにもかかわらず、ICU室の汚染は高かった。汚染された凝縮物(condensates)は、機械的人工呼吸中に発生する典型的な圧力下で幾つかのフィルターを通過する可能性があり得る。ろ過を行わないと、吐出された病原体は、ICU、手術室、又は治療のための病院内の患者の搬送や別の病院への搬送中(病院間又は病院内搬送)などの他の場所の空気に混ざり易い。
【0007】
COVID19などの呼吸器疾患を患っている患者からの環境汚染を最小にするために、現在呼気ガスのろ過が用いられている。加えて、マスクが使用されている、しかしマスクは漏れ易い。さらに、呼気フィルターの有効性は検査では分からず、かつ集中治療室(ICU)、手術室(OR)、又は病院間又は病院内の搬送中などの環境汚染のリスクが懸念されている。現在のフィルターは、粒子径閉塞(particle size blockage)の推定に基づく試験管内(in vitro)での検査を受ける。しかしながら、呼気回路内でのガスの冷却及び水蒸気の凝縮及び陽圧など臨床的に遭遇するものを含んだ、臨床的に関連した変数(clinically relevant variables)はフィルター効率に影響を与え、それは呼気抵抗を増加させる。
【0008】
吸入又は呼気ガス中の汚染物質の上述の欠点の幾つかを克服するために、紫外線(UV)光線を用いてガス流を除染する。しかしながら、吸入又は呼気中の汚染物質を除染するために使用されるUV光線は、現在効率的ではない。したがって、患者を保護し、かつ人工呼吸を受けている患者からの感染性マイクロエアロゾルへの暴露のリスクを低減するための改良された装置が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、抵抗を増大させる人工呼吸器流(ventilator flow)を低減することで、患者の呼吸を妨げない除染装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、装置内のガス流が、人工呼吸器からの本来のガス流(native gas flow)を妨げないように受動的であり、好ましくはバルブを含まず、ガス流を変化させない除染装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、人工呼吸器の吸入側及び/又は呼気側で使用できるが、呼気ガスによる環境の汚染を防止するために、好ましくは呼気側に使用することができる除染装置を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ガス流を方向転換(redirect)するために乱流を作り出し、UV光線への暴露面を最大化するために狭いガス経路を提供し、UV光線に対する暴露時間を最大にするためにガス経路長を増大し、かつガス流を99.9%まで除染するために必要に応じてUV光線の強度を変化させることによって、人工呼吸器内のガス流を除染する除染装置を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、流れを方向転換するための乱流、振動(vibrations)、揺動(oscillations)、又はその組み合わせによって、狭い経路による境界層(boundary layers)及びシャドーイング(shadowing)を防止する構成を備えた除染装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、UV光線の強度に関連してガス流のUV光線暴露時間を最適化する除染装置を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、UVC光源、好ましくは発光ダイオードUVC光線又は他の安全で非発熱性のUVC光源により、人工呼吸器からのガス流を除染する除染装置を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、マスクのように漏れる可能性のない人工呼吸器を用いて侵襲的に使用する(invasive use)ための除染装置を提供することである。挿管された患者のガス流は、患者が挿管されたときは全てのガスが人工呼吸器を通って流れるため、封じ込められる。
【0017】
本発明の別の目的は、既存の人工呼吸器に後付けすることができる、又は人工呼吸器製造中に人工呼吸器に組み込むことができる除染装置を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、人工呼吸器と連携して、吸入及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置を提供することである。除染装置は、吸入及び呼気ガス流用のガス入口及びガス出口を含む。除染装置は、ガス流用のチャンバをさらに含む。チャンバは、ガス入口をガス出口に接続するように構成されている。さらに、チャンバは、チャンバの内部に一体に形成された少なくとも1つのUV(紫外線)光源を含む。UV光源は、ガス流中の汚染物質とUV光源間の(すなわち、汚染物質をUV光線に暴露する)距離を最小化することで、ガス流路内のガス流を、汚染物質を6秒以内に、好ましくは3秒以内に、さらに好ましくは 呼吸頻度の高い場合には1/2秒以内に不活性化するのに十分な長さに維持することで、及び乱流を増大させて境界層及びシャドーイングを防止することで、吸入ガス及び/又は呼気ガス中の汚染物質を除染するためのUV光線を生成するように構成されている。加えて、ガス流は、抵抗を最小限に抑え、人工呼吸器本来の(native flow)流れ/排気(exhaust)への影響を最小限に抑えるために受動的である。別の実施形態によれば、除染装置は原装置のガス流路と一体化されており、かつ除染チャンバは、全てのガス流入及び流出流を除染に晒す。
【0019】
一実施形態において、ガス流を方向転換し、境界層の形成又はUV光源のシャドーイングを防止するために、チャンバ内で一体化された少なくとも1つの要素によって乱流が生成される。さらに、少なくとも1つの要素は、バッフル、フロープレート(flow plate)、又はガス流を方向転換して乱流を作り出すために当業者に知られている他の何らかの構造であり得る。フロープレートは、吸入ガス及び/又は呼気ガス中の汚染物質を分散するように構成されている。一実施形態において、ガス入口及びガス出口は、人工呼吸器の吸入肢及び/又は呼気肢(expiratory limb)に接続されるように構成されている。さらに、チャンバは、UV光源の透過性を増幅する反射面を含み得る。加えて、反射面は、アルミニウム又は反射性の銅で作成し得る。別の実施形態においては、内面は、酸化銅又は銅コールドスプレー(cold copper spray)などの抗菌コーティングでコーティングし得る。別の実施形態においては、チャンバは、UV光線が外部環境に暴露するのを防止するためにケーシングによって遮蔽し得る。
【0020】
別の実施形態では、チャンバは、ガス入口とガス出口との間の吸入及び/又は呼気ガス流のための1以上のガス流路を含む。さらに、1以上のガス流路は、スパイラル、コイル、螺旋形(corkscrew)、又は、吸入及び/又は呼気ガスのUV光線への暴露を最大化する他の設計のうちの少なくとも1つを含み得る。このような設計は、境界層又はシャドーイング効果を最小化又は排除して、UV光線への病原体の暴露を最大化する。
【0021】
少なくとも1つのUV光源は、UVランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LEDs)、及び他の好ましくはUV光線の非発熱光源からなるグループから選択される。さらに、少なくとも1つのUV光源は、これを通してガスが流れる1以上の支持プレート及び端部支持体によって支持された少なくとも1つのUV発光管(UV light tube)である。さらに、UV光線は、約200~280nmの範囲、より好ましくは約254nm又は遠UVCの波長を含む。さらに、除染の実効領域(effective area)は、少なくともガス経路の長さと直径、UV光線の位置と量、及びUV光線の強度に基づく。UV光線の強度は、少なくともガス経路に基づく。さらに、ガス流中の汚染物質と光源との間の距離は、汚染物質をUV光線に暴露させるために最小化される。加えて、人工呼吸器のガス流には固有の乱流があるが、バッフル又は振動/揺動を追加することで乱流を増大し、境界層又はシャドーイングを最小化又は排除し、それによって病原体のUV光線への暴露を最大化することができる。
【0022】
このような除染装置は、人工呼吸器に連携して吸入又は呼気ガスからの汚染物質の効率的な除染を提供する。一実施形態において、汚染物質は、少なくとも細菌、ウイルス、COVID19、又は他の病原体を含む。
【0023】
本発明は、吸入と呼気の各サイクルの間に固有のタイムラグがある人工呼吸の周期的な性質に基づく。本除染システムにより、(単に総流量の一部ではなく)ガス出力全体をチャンバ内で流すことができ、その結果、吸入ガス又は呼気ガス全体が除染され、再循環の必要性がなくなる。本発明の別の目的は、フィルター技術に依らずに環境汚染を除去することである。
【0024】
好ましい実施形態によれば、本発明の除染装置は、呼気流量を減少させ、(フィルター又は濾過方法を使用するなどして)抵抗を増大させることによる患者の呼吸妨害をせず、かつ患者から人工呼吸器への本来のガス流を妨害又は逸らすことがない。好ましくは、除染装置は、抵抗を追加するバルブ又は方向転換流(redirect flow)を含まない。
【0025】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される除染装置を含む人工呼吸器、ならびに、ここに記載された除染装置を人工呼吸器のガス流内に設置することによって、人工呼吸器のガス流を除染する方法を含む。
【0026】
本発明のこれらおよび他の実施形態について、以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付図面は、システムの様々な実施形態、方法、及び開示の様々な態様の実施形態を示す。当業者は、図中の図示された要素境界(element boundaries)(例えば、箱、箱群、又は他の形状)が、開示発明を表す様々な境界の一例を表していることを認めることとなろう。いくつかの例で、1つの要素が複数の要素として設計されてもよいし、複数の要素が1つの要素として設計されてもよい。他の例では、ある要素の内部構成要素として示されている要素が、別の要素の外部構成要素として実施されてもよく、逆もまた同様である。さらに、各要素は正確な縮尺率でない場合がある。本開示の非限定的かつ非網羅的な説明が以下の図面を参照してなされる。図の構成要素は必ずしも縮尺どおりではなく、それよりも説明する原理に重点がある。
【0028】
様々な実施形態を添付の図面に従って以下に記載するが、これらは、如何なる意味においても例示するために提示するものであって開示の範囲を限定するためではなく、ここでは、同様の名称は同様の要素を示す。
図1】本開示の第1の実施形態による、吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置の概略図を示す。
図2】本開示の第2の実施形態による、吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置の概略図を示す。
図3図3A及び図3Bは、本開示の第3の実施形態による、吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置の概略図を示す。
図4】本開示の第4の実施形態による、吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置の概略図を示す。
図5】本開示の一実施形態による、人工呼吸システムに取り込まれた空気を除染するシステムの概略図を示す。
図6】本開示の一実施形態による、人工呼吸システムの内部に除染装置を有するシステムの概略図を示す。
図7】本開示の一実施形態による、人工呼吸システムの吸入肢に結合された除染装置の概略図を示す。
図8】本開示の一実施形態による、人工呼吸システムの呼気肢に結合された除染装置の概略図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0029】
次に、添付の図面に例示する特定の実施形態又は特徴について詳細に参照する。同様又は対応する部分を参照するために、対応する又は同様の参照番号を可能な限り図面全体にわたって使用する。また、ここに記載されている種々の要素への参照は、同じタイプの1以上の要素が存在し得る場合には、集合的又は個々になされる。しかしながら、そのような参照は本質的に単なる例示である。なお、単数の要素へのいかなる参照も、添付の特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、開示の範囲をそのような要素の正確な数又はタイプに限定するものではなく、複数と解釈できるし逆もまた同様である。
【0030】
明確にしておくと、本明細書に記載される器具(implementations)について、ありふれた特徴の全てが示されかつ説明されるわけではない。勿論、このようないかなる実際の実装部品(actual implementation)の開発でも、製造やビジネス関連の制約への準拠などの特定の目標を達成するために、器具固有の多数の決定が行われる可能性があり、これらの特定の目標は、器具毎にかつメーカー毎に異なることが理解されよう。また、そのような製造努力(manufacturing effort)は複雑で時間を要するかもしれないが、それにもかかわらず、この開示の利益を享受する当業者にとっては職務活動(engineering)のありふれた業務であることが理解されよう。
【0031】
本開示の全ての特徴を例示するいくつかの実施形態について、次に詳細に説明する。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(including)」、及びその他の形態の単語は、意味が同等であることを意図しており、かつこれらの単語のいずれかに続く単数又は複数の項目(item)がそのような単数又は複数の項目の網羅的なリストであること又はリストされた単数又は複数の項目のみに限定することを意味しないという点で、範囲を設定するものではない。
【0032】
また、単数「a, an」及び「the」は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈が別段の指示をしない限り、複数の参照を含むことにも留意されたい。本開示の実施形態の実施又は試験において、本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の数のシステム及び方法を使用することができるが、好ましいシステム及び方法をここで説明する。
【0033】
本開示の実施形態は、同じ数字がいくつかの図全体にわたって同じ要素を表し、かつ例示的実施形態を示す添付図面を参照して、以下でより完全に説明する。しかしながら、本開示の実施形態は、代替的な形態で具体化してもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解すべきではない。ここで記載された実施例は非限定的な例であり、他の可能な例の内の単なる例示に過ぎない。
【0034】
図1は、本開示の第1の実施形態による、吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置100の概略図を示す。除染装置100は、ガス入口102とガス出口104とを含み得る。一実施形態では、ガス入口102は、人工呼吸器の吸入肢及び/又は呼気肢に接続できる。代替実施形態では、ガス出口104は、人工呼吸器の吸入肢及び/又は呼気肢に接続し得る。
【0035】
さらに、除染装置100は、ガス流通用のチャンバ106を含み得る。チャンバ106は、ガス入口102をガス出口104に接続するように構成し得る。チャンバ106は、チャンバ106の内部に一体化された少なくとも1つの紫外線(UV)光源108を含み得る。別の実施形態においては、少なくとも1つのUV光源108は、チャンバ106の1以上のコーナーに一体化されて、ガス入口102とガス出口104との間で、ガス流をUV光に暴露し得る。さらに、少なくとも1つのUV光源108は、ガス流中の汚染物質とUV光源との間の距離を最小化することによって、ガス流路内のガス流を、汚染物質を3~6秒以内に不活性化させるのに十分な長さに維持することによって、また、境界層(boundary layers)とシャドーイング(shadowing)を防ぐために乱気流を作成することによって、吸入及び/又は呼気ガス中の汚染物質を除染するためのUV光線を生成するように構成し得る。好ましい実施形態によれば、ガス流中の汚染物質とUV光源間の距離は、10mm以下であり、好ましくは5mm以下である。
【0036】
UV光線は、波長が10nmから400nmの範囲の電磁放射線の一種である。UV光線の波長は可視光線の波長よりも短い。さらに、100~400nmの範囲の紫外線(UV光線)は、100~280nmの範囲の紫外線C(UVC)、280~315nmの範囲の紫外線B(UVB)、及び315~400nmの範囲の紫外線A(UVA)の3つの異なる範囲に細分化される。さらに、UVAは皮膚に浸透可能であり、皺からシミまで、皮膚の老化の最大80%の原因となる。UVBは皮膚のDNAに損傷を与え、日焼けを引き起こし、遂には皮膚がんを引き起こし得る。UVCは、より短く、よりエネルギーの高い光の波長で構成されており、ウイルス粒子を含む遺伝物質を破壊するのに特に優れている。UVC光線は、微生物の薄い壁を透過し、その核酸(nucleic acids)を破壊することができる。
【0037】
典型的には254nm付近である殺菌UV光線は、皮膚及び眼に悪影響を及ぼす可能性がある。別の実施形態によれば、本発明のUV光線は、環境への暴露を防止するために、チャンバ内又は人工呼吸器の内部に収容されている。別の実施形態では、遠UVCが光源として使用できる。遠-UVC光線(207~222nm)は、微生物を殺す際に従来の殺菌UV光線と同等に効果的であり、皮膚や目を透過しないため、より安全であることが分っている。
【0038】
さらに、UV光源は、UVランプ、アーク溶接(arc welding)、水銀ランプ(mercury vapor lamps)、UV LED光線、又は好ましくは別の非発熱UV光源を含む人工UV光源のいずれでもよい。好ましい実施形態によれば、UV LED光線を光源として使用し得る。UV LED光線は、除染装置への組み込みを容易にする小さなサイズを有し得る。加えて、UV LEDには水銀が含まれていないため、人体や環境への毒性のリスクが軽減される。加えて、UV LED強度は温度変化の影響を受けず、最大強度出力のためのウォームアップ時間は必要ない。加えて、UVC LEDは、細菌(bacteria)、ウイルス、及び菌類(fungi)に対してはるかに高い不活性化効果を有することが分っている。
【0039】
したがって、UVC光線を使用して、ガス流中の汚染物質を除染することができる。一実施形態において、汚染物質は、開示の範囲から逸脱することなく、細菌、ウイルス、COVID19、又は他の病原体(pathogens)からなるグループから選択できる。なお、ガス流は、患者の吸入ガス又は呼気ガスに対応し得る。
【0040】
チャンバ106は、UV光源の透過性を増幅する反射面を含み得る。さらに、反射面はアルミニウムや反射性の銅で作り得る。さらに、チャンバ106の内面は、酸化銅又は銅コールドスプレーなどの抗菌コーティングでコーティングし得る。図1に示すように、チャンバ106は、狭い経路又は乱流を作成することによって、少なくとも1つのUV光源108からの汚染物質の境界層の形成又はシャドーイングを防止するために、チャンバ106内に一体化された少なくとも1つの要素110を含み得る。別の実施形態においては、少なくとも1つの要素110は、チャンバ106内で並んで配置し得る。さらに、少なくとも1つの要素110は、ガス流中の汚染物質がUV光線に暴露することを保証し得る。別の実施形態では、少なくとも1つの要素110は、チャンバ106の壁に固定された少なくとも1つのバッフルであり得る。
【0041】
本発明によれば、ガス流は、抵抗を最小化し、かつ人工呼吸器の本来の流れへの影響を低減するために受動的(passive)であり得る。人工呼吸を受ける患者の呼気を妨げる場合は固有のリスクがある。人工呼吸器によって患者に押し込まれる加圧ガスの結果である吸入とは異なり、呼気は受動的であり、かつ胸部の反動力と下流の抵抗の結果で得られる。人工呼吸器回路の呼気側に追加された装置(device)は、抵抗を考慮しかつそれを最小限に抑える必要がある。
【0042】
除染装置100は、人工呼吸器からの呼気流量を変化させないことによって、患者の呼吸の妨害を防ぐ。さらに、少なくとも1つの要素110は、UV光線暴露のための強度及び持続時間を最適化するために、暴露を増大させるための乱流を作成し得る。さらに、乱流は、境界層の形成やシャドーイングを防ぐためにガス流を循環させかつ消毒するのに役立ち得る。少なくとも1つのUV光源108と汚染物質間の距離を減少させてUV光線の強度を増加させることで、境界層形成の問題は解消し得る。さらに、乱流は境界層をさらに減少させ、シャドーイングを減らして除染を改善することができる。しかしながら、乱流はガス流に対する抵抗を生む可能性があり、これは機能領域(functional area)を増やすことで相殺できる。さらに、除染装置100内のガス経路は、全てのガス流を最大UV光線に暴露し、抵抗を最小化し、したがって患者の呼気ガス流に影響を与えない十分な大きさであるべきである。一実施形態においては、ガス流路内のガス流は、6秒以内に汚染物質を不活性化するのに十分な長さを維持し得る。
【0043】
別の実施形態においては、少なくとも1つの要素110は、吸入及び/又は呼気ガス中に汚染物質を分散するように構成できるフロープレート(flow plate)であり得る。一実施形態においては、除染チャンバを通るガス流路の構成は、多方向ガス暴露を可能にする光源から22mm以下のガス経路距離を有する。別の実施形態においては、除染装置100のチャンバ106は、正方形、長方形又は円筒形で、好ましくは幅4”×深さ12”であり、かつガス経路は22mmのチューブを貫流し得る。
【0044】
別の実施形態においては、ガス経路に酸化銅を含浸させ得る。酸化銅の使用により、それらの物理的バリア特性(barrier properties)を変えることなく、強力な抗ウイルス特性を生み出し得る。抗ウイルスガス経路を使用することで、汚染のリスクを大幅に低減することができる。チャンバ106の上述の形状は、開示の範囲から逸脱することなく、例示目的のためだけで提供されたものであることが当業者には明らかであろう。このような除染装置100には、環境汚染物質を除去するため又は呼気ガスを濾過するためのフィルター技術を必要としない。なお、除染装置100は、後付けされてもよいし人工呼吸器に内蔵されてもよい。さらに、除染装置100には、患者の呼吸に影響を与えることとなる呼気流に沿ったバルブの必要性が無い。別の実施形態においては、除染装置100は、汚染物質の移動を増大させ、ガス流をUV光線に暴露させるために振動するように構成し得る。たとえば、揺動人工呼吸器(oscillating ventilator)内などで動くスピーカーやメンブレン(膜;membrane)を使用して低レベルの周波数を生成する。
【0045】
別の実施形態においては、UV光源108からのUV線量は、次のように定義し得る:
UV線量(dose)=UV強度(mJ/cm)×暴露時間(秒)
【0046】
さらに、データに基づくと、COVID19などのウイルスはUVC及び遠UVC(207~222nm)に敏感である。さらに、1.2~17mJ/cmの線量が99.9に達するために、以下のデータが記録された:
なお、上記データは、UVC光源がウイルス培養物(viral culture)に対して20cmの距離でCOVID19を殺すために必要な比較的低線量を記述している。この線量を増大することで、より高いUV殺菌照射(UVGI)効果を達成することができる。好ましい実施形態によれば、UV光線の強度は、約0.010~110mJ/cmの間、好ましくは約1.2~17mJ/cmの間である。代替的には、UVC光源への近接を最小限に抑えることができる。さらに、ガス流の暴露時間はUV光線の強度に対応するため、暴露持続時間は規制される。別の実施形態においては、UV光源とガス流との間の距離を減少させることで、光源に近接したところからの強度が増加するので、より低い線量を適用し得る。さらに、チャンバ106は、UV光源108を増幅し、最適強度を維持するために必要なUV光源108の物理的な数を減らすために反射面を備え得る。
【0047】
ウイルス培養物(viral culture)に対するUVC光源に対して、30cmの距離にした場合の別の実施形態において、記録されたデータを示す(表1)。
【表1】
【0048】
別の実施形態においては、UVGIのガス-光線暴露は、病原体のlog3又はより大きな減少を達成するように設計し得る。log3レベルの低減を達成するために、除染装置100の構成は、UVC線量、光源からの距離、ガス経路の距離に関連する暴露時間、及び境界層又はシャドー層(shadow layer)の除去、UVC波長、及びUVC発光ダイオード(LEDs)を含む変数を最適化し得る。
【0049】
図2は、本開示の別の実施形態による、吸入ガス及び/又は呼気ガスを除染するための除染装置200の概略図を示す。除染装置200は、ガス入口202及びガス出口204を含み得る。一実施形態においては、ガス入口202は、人工呼吸器の吸入肢及び/又は呼気肢に接続し得る。代替実施形態においては、ガス出口204は、人工呼吸器の吸入肢及び/又は呼気肢に接続され得る。
【0050】
さらに、除染装置200は、ガス流通用のチャンバ206を含み得る。なお、ガス流はガス入口202からガス出口204に向かっている。チャンバ206は、ガス入口202をガス出口204に接続するように構成し得る。チャンバ206は、少なくとも1つのガス流路208、及び少なくとも1つのガス流路208の各々に関連した少なくとも1つのUV光源210を備え得る。さらに、少なくとも1つのUV光源210は、ガス流を除染するために少なくとも1つのガス流路208を通して発光し得る。さらに、少なくとも1つのUV光源210は、1以上の支持体212によって除染装置200に支持し得る。別の実施形態においては、除染装置200の少なくとも1つのUV光源210は、UV光線が除染装置200の外部に漏れるのを防ぐためにケーシング214によって外部環境から遮蔽し得る。追加の実施形態においては、少なくとも1つのガス流管208は、UV光線への暴露を増加させるためのコイル又は螺旋形状の設計(図示せず)を有し得る。さらに、除染装置200を人工呼吸器の呼気側で使用することにより、人工呼吸を施される患者の周囲の医療提供者及び他の患者に対する環境の汚染及びリスクを防止し得る。
【0051】
除染装置200の上述の構成要素は、開示の範囲から逸脱することなく、例示の目的のみで提供されたものであることは当業者には明らかであろう。
【0052】
図3A及び図3Bは、本開示のさらに別の実施形態による除染装置300の概略図を示す。除染装置300は、ガス流302が装置300を通過するようにし得る。さらに、除染装置300は、チャンバ304を含み得る。チャンバ304は、少なくとも1つのUV光源306と、汚染物質310を少なくとも1つのUV光源306に暴露するよう汚染物質310を分散させるための少なくとも1つのガスフロープレート308を含み得る。一実施形態において、汚染物質310は、細菌、ウイルス、COVID19、又は他の病原体であり得る。
【0053】
図4は、本開示のさらに別の実施形態による除染装置400の概略図を示す。除染装置400は、ガス入口402及びガス出口404を含み得る。一実施形態においては、ガス入口402は吸入又は呼気ガス流用であり、ガス出口404は吸入又は呼気ガス流用であり得る。さらに、除染装置400は、ガス流のためのチャンバ406をも含み得る。なお、ガス流はガス入口402からガス出口404に向かっている。
【0054】
さらに、チャンバ406は、ガス入口402及びガス出口404に結合し得る。チャンバ406は、少なくとも1つのUV発光管408を備え得る。さらに、ガス流は、少なくとも1つのUV発光管408に沿い得る。さらに、少なくとも1つのUV発光管408は、1以上の支持プレート410及び一対の端部支持体412によって支持し得る。さらに、1以上の支持板410及び一対の端部支持体412は、ガス流及び汚染物質を分散させて除染を増大させるための貫通孔414を含み得る。さらに、ガス流の除染の実効領域は、チャンバの長さ及び直径、及びガス経路内の少なくとも1つのUV発光管408の量(quantity)に基づき得る。さらに、必要な除染の実効領域は、少なくとも1つのUV発光管408におけるUV光線の強度に基づき得る。加えて、UV光線の強度は、ガス経路の長さならびにUV発光管408に対する汚染物質の距離に応じて多かれ少なかれ依存し得る。さらに、被除染断面領域は、ガス流の完全な滅菌のためにUVが浸透可能であることが好ましい。したがって、ガス路長が短いほどより大きなUV光線強度が必要である。なお、ガス経路は、ガス流が約6秒以内、好ましくは約3秒以内で除染されるのに十分な接触時間を得るのに十分な長さである必要がある。一実施形態においては、接触時間及びUV光線への暴露は、コイル又はスパイラル経路を通してガス流を送り込むことによって増大し得る。代替的には、ガス経路は、UV光源への暴露を増加させるために、複数のより小さな区画を通して流し得る。
【0055】
図5は、開放環境で汚染される可能性のある空気を除染するためのシステム500を示す。システム500は、開示の一実施形態により、人工呼吸システムに取り込まれた空気を除染するために使用される。図5に示すように、除染装置502は、人工呼吸システムの吸入肢、例えばタービン504の下流に後付けできる。さらに、空気506は、タービン504によって取り込まれ、酸素供給源508からの酸素と所望の比率で混合され、特定の濃度でガス流を作り出し得る。さらに、フィルターは吸入側に追加されて、水やより大きな粒子/汚染物質を除去することもできる。次いで、ガス流は、除染装置502に供給され、かつ上述の実施形態のいずれかによるUV光源で除染され得る。ガス流510が除染されると、それは患者に人工呼吸を施すために人工呼吸システムに供給される。さらに、ガスは挿管によって人工呼吸器を通して患者に供給されるので、除染装置502はガスの漏れの可能性がない。なお、除染装置502は、図1図2図3A図3B、又は図4のいずれかに示すように除染装置であり得る。
【0056】
図6は、本開示の別の実施形態による、人工呼吸装置(ventilator apparatus)604の内部に除染装置602を有するシステム600の概略図を示す。図6に見られるように、除染装置602は、ガス経路606内の人工呼吸装置604の内部に設置され得る。本システムは、ガス入口608を含み得る。ガス入口608は、人工呼吸装置604に入ってくるガス源用の高圧コネクタであり得る、さらに、システムは、人工呼吸装置604の内部に内部ガス経路606を含み得る。さらに、システムは、吸入コネクタ610を含み得る。吸入コネクタ610は、人工呼吸装置604の吸入肢が患者に接続できるように、人工呼吸装置604から出してもよい。なお、除染装置602は、図1図2図3A図3B、又は図4のいずれかに示すような除染装置であり得る。
【0057】
図7は、本開示の一実施形態による、人工呼吸システム706の吸入肢704に結合された除染装置702を有するシステム700の概略図を示す。除染装置702は、人工呼吸システム706の吸入肢704に後付けできる。さらに、システム700は、除染装置702を人工呼吸システムの吸入コネクタポート及び人工呼吸器回路に接続するためのコネクタ708を含み得る。さらに、ガス流は、次いで、除染装置702に供給され、かつ上記の実施形態のいずれかに従ってUV光線で除染し得る。一実施形態においては、高圧ガス源を人工呼吸システム706に結合し得る。なお、除染装置702は、図1図2図3A図3B、又は図4のいずれかに示す除染装置であり得る。
【0058】
図8は、本開示の一実施形態による、人工呼吸システム806の呼気肢804に結合された除染装置802を有するシステム800の概略図を示す。除染装置802は、人工呼吸システム806の呼気肢804に後付けし得る。さらに、システム800は、除染装置802を人工呼吸システムの呼気コネクタポート及び人工呼吸器回路に接続するためのコネクタ808を含み得る。さらに、ガス流は、それから除染装置802に供給され、かつ上述の実施形態のいずれかによってUV光線で除染し得る。一実施形態において、人工呼吸器の排気は、人工呼吸システム806に結合できる。なお、除染装置802は、図1図2図3A図3B、又は図4のいずれかに示す除染装置であり得る。
【0059】
現在の人工呼吸器は高度に専門的であり、かつその挙動が変化するか、或いは呼気ガスが変化するか、或いは抵抗が増大するかして患者を危険に晒すと故障となし得る(警報を鳴らす)。人工呼吸器の通常の操作中に、オペレータは臨床的に指示された周波数の範囲を選択して設定し得る。したがって、暴露時間は著しく変化し得る。その結果として、呼気ガスの流れを遅くしたり、逸らしたり又は患者の呼気ガスの流れに影響を与えたりすることなく、UVC暴露時間が少なくなる可能性に対する患者への対策が必要である。したがって、本発明によれば、患者からの呼気ガス流量に影響を与えることなく呼気ガス流を除染するために、最小の熱量(LED UVCなどによる)でUVC強度を最大にし、ガス経路を縮小することでUVC源までの距離を最小化し、UVCの接触長を長くし、境界層及びシャドーイングを排除し、銅などの殺菌性表面を使用し、かつガスの振動又は揺動を利用する、ことが重要である。
【0060】
本発明の様々な実施形態を示す特定の構造を本明細書に示しかつ説明したが、各部分の様々な変更及び再配置が、基本となる発明概念の趣旨及び範囲から逸脱することなく行い得ること、及び添付の特許請求の範囲によって示す場合を除き、本発明が、ここに示しかつ記載した特定の形態に限定されないことは当業者に明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】