(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ブレーキディスクロータのブレーキパッド用の下層
(51)【国際特許分類】
F16D 69/04 20060101AFI20230623BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230623BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F16D69/04 Z
C09K3/14 520M
C09K3/14 520L
C09K3/14 530G
C09K3/14 530J
F16D65/092 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570661
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021033203
(87)【国際公開番号】W WO2021236798
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102020000012001
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514060514
【氏名又は名称】アイティーティー・イタリア・エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シン・シコーラ、アグスティン
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA41
3J058BA21
3J058BA23
3J058CA42
3J058CA45
3J058CA47
3J058DD00
3J058EA13
3J058EA15
3J058EA28
3J058EA37
3J058FA01
3J058GA92
(57)【要約】
一般的に、ブレーキディスクロータのブレーキパッドの下層用の組成物に関する技術を記載する。組成物は、繊維パック、粉末ゴム、少なくとも一つの結合剤、および少なくとも一つの充填剤を含み得、繊維パックは、最大約3重量%のアラミド繊維を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキパッドの下層用の組成物であって、
繊維パックと、
粉末ゴムと、
少なくとも一つの結合剤と、
少なくとも一つの充填剤であって、前記繊維パックは、約0.1重量%~約3重量%の範囲のアラミド繊維を含有する、充填剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記繊維パックは、アクリル繊維、アラミド繊維、および無機鉱物繊維を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アクリル繊維は、アクリルポリアクリロニトリルパルプ(PAN)を含み、前記アラミド繊維は、ポリ(p-フェニレンテレフタラミド)繊維(PPTA)を含み、前記無機鉱物繊維は、天然ストーンウール繊維を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記繊維パックは、約0.5重量%~約7重量%の範囲のアクリル繊維、約0.1重量%~約3重量%の範囲のアラミド繊維、および約0.5重量%~約7重量%の範囲の無機鉱物繊維を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記粉末ゴムは、約5重量%~約25重量%の前記組成物を含み、無機充填剤とまたはそれを有さないで配合され、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記粉末ゴムは、約0.3mm~約0.7mmの範囲の平均直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つの結合剤は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PF Novolak)およびヘキサメチレンテトラミン(HMT)の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも一つの充填剤は、硫酸バリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
有機顔料フタロシアニンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
約20~約100のアスペクト比を有する鋼繊維をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
車両用のブレーキパッドであって、
金属バックプレートと、
摩擦材料と、
前記金属バックプレートと前記摩擦材料との間に挟まれる下層と、を備え、前記下層は、
繊維パックと、
粉末ゴムと、
少なくとも一つの結合剤と、
少なくとも一つの充填剤であって、前記繊維パックは、約0.1重量%~約3%の範囲のアラミド繊維を含む、充填剤と、を含む、ブレーキパッド。
【請求項12】
前記下層の前記繊維パックは、アクリル繊維、アラミド繊維、および無機鉱物繊維を含む、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項13】
前記繊維パックは、約0.5重量%~約7重量%の範囲のアクリル繊維、約0.1重量%~約3重量%の範囲のアラミド繊維、および約0.5重量%~約7重量%の範囲の無機鉱物繊維を含む、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項14】
前記アクリル繊維は、アクリルポリアクリロニトリルパルプを含み、前記アラミド繊維は、ポリ(p-フェニレンテレフタアミド)繊維を含み、前記無機鉱物繊維は、天然のストーンウール繊維を含む、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項15】
前記下層は、ほぼ室温で約35kN~約60kNの範囲のせん断強度を有する、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項16】
前記下層は、約300℃の温度で1時間曝露された後、約35kN~約60kNの範囲のせん断強度を有する、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項17】
前記下層は、ほぼ室温で約300N/cm
2~約600N/cm
2の範囲の比せん断強度を有する、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項18】
前記下層は、ほぼ室温で約0.08mm~約0.12mmの範囲の圧縮率を有する、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項19】
前記下層は、約400℃の温度で約0.13mm~約0.15mmの範囲の圧縮率を有する、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項20】
前記下層は、平均より10%下のノイズ、平均より4.4%下のホットノイズ、平均より10.2%下のコールドノイズ、および平均より5.7%下の総ノイズを有する、請求項11に記載のブレーキパッド。
【請求項21】
ブレーキパッド用の下層の調製方法であって、
約1~4重量%のアクリル繊維、約0.5~1重量%のアラミド繊維、および約1~4重量%の無機鉱物繊維を含む繊維パックを提供すること、
約0%~約80%の無機充填剤と配合された粉末ゴムを提供すること、および
前記繊維パック、前記ゴム粉末、少なくとも一つの充填剤、および前記少なくとも一つの結合剤を乾燥混合すること、を含む、方法。
【請求項22】
無機充填剤と配合された前記粉末ゴムを提供することは、約0.3mm~1.00mmの平均粒子直径を有する前記粉末ゴムを提供することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
無機充填剤と配合された前記粉末ゴムを提供することは、約0.3mm~約0.7mmの範囲の平均直径を有する前記粉末ゴムを提供することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記繊維パック、前記ゴム粉末、少なくとも一つの充填剤、および少なくとも一つの結合剤を混合することは、前記繊維パック、前記ゴム粉末、少なくとも一つの充填剤、および少なくとも一つの結合剤を、約5分~約20分間、レディゲミキサー内で混合することを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、同一発明者らによる、2020年5月22日出願のイタリア特許出願第102020000012001号に対する優先権を主張するものである。優先出願の開示は、全体として、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本節に記載される材料は、本明細書で別段の示唆がない限り、本出願における特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、本節に包含することにより先行技術として認められない。
【0003】
車両ブレーキシステムには、ブレーキロータおよびブレーキパッドが含まれることが多い。ブレーキパッドは、ブレーキシステムで生成されるノイズの顕著な発生源でありうる。ノイズおよび振動は、自動車用ブレーキシステムにおける重要な検討項目である。
【0004】
車両ブレーキシステム内の典型的なブレーキパッドは、サンドイッチ構造を有し得る。サンドイッチ構造は、約10mmの摩擦材料の他に、約3mmの下層と、硬質のバックプレートと、シムと、を含み得る。摩擦部材は、ブレーキディスクロータの表面と係合して摩擦を生成し、車両速度を低減する。バックプレートと摩擦材料との間に配置される下層により、バックプレートと摩擦材料との間の接合が改善され、摩擦材料の性能を改善し得る。下層により、摩擦により生成される熱が、摩擦材料とバックプレートとの間の結合を劣化するのを防止する一助となる。下層はまた、摩擦材料の振動により生成されるノイズを低減するために使用されうる。
【発明の概要】
【0005】
一部の実施例によれば、ブレーキパッドの下層用の組成物が記載される。組成物は、繊維パック、粉末ゴム、少なくとも一つの結合剤、および少なくとも一つの充填剤を含んでもよく、繊維パックは、約0.1重量%~約3%の範囲のアラミド繊維を含有する。
【0006】
他の実施例によれば、繊維パックは、アクリル繊維、アラミド繊維、および無機鉱物繊維を含みうる。アクリル繊維は、アクリルポリアクリロニトリルパルプ(PAN)を含んでもよく、アラミド繊維は、ポリ(p-フェニレンテレフタラミド)繊維(PPTA)を含み、無機鉱物繊維は、天然のストーンウール繊維を含む。繊維パックは、約0.5重量%~約7重量%の範囲のアクリル繊維、約0.1重量%~約3重量%の範囲のアラミド繊維、および約0.5重量%~約7重量%の範囲の無機鉱物繊維を含みうる。
【0007】
さらなる実施例によれば、粉末ゴムは、約5重量%~約25重量%の組成物であり、無機充填剤とまたはそれを有さないで配合され、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)のうちの一つ以上を含み得る。粉末ゴムは、約0.3mm~約0.7mmの範囲の平均直径を有し得る。少なくとも一つの結合剤は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PF Novolak)およびヘキサメチレンテトラミン(HMT)の混合物を含み得る。少なくとも一つの充填剤は、硫酸バリウムを含んでもよい。組成物は、有機顔料フタロシアニンをさらに含みうる。組成物はまた、約20~約100のアスペクト比を有する鋼繊維を含み得る。
【0008】
他の実施例によれば、車両用のブレーキパッドが記載される。ブレーキパッドは、金属バックプレート、摩擦材料、および金属バックプレートと摩擦材料との間に挟まれた下層を含み得る。下層は、繊維パック、粉末ゴム、少なくとも一つの結合剤、および少なくとも一つの充填剤を含み得、繊維パックは、約0.1重量%~約3%の範囲のアラミド繊維を含む。
【0009】
一部の実施例によれば、下層の繊維パックは、アクリル繊維、アラミド繊維、および無機鉱物繊維を含みうる。下層の繊維パックは、約1重量%~約4重量%の範囲のアクリル繊維、約0.5重量%~約1重量%の範囲のアラミド繊維、および約1重量%~約4重量%の範囲の無機鉱物繊維を含みうる。アクリル繊維は、アクリルポリアクリロニトリルパルプを含み得、アラミド繊維は、ポリ(p-フェニレンテレフタラミド)繊維を含み、無機鉱物繊維は、天然のストーンウール繊維を含む。
【0010】
他の実施例によれば、下層は、ほぼ室温で約35kN~約60kNの範囲のせん断強度を有し得る。下層は、約300℃の温度で1時間曝露された後、約35kN~約60kNの範囲のせん断強度を有し得る。下層は、ほぼ室温で約300N/cm2~約600N/cm2の範囲の比せん断強度を有し得る。下層は、ほぼ室温で約0.08mm~約0.12mmの範囲の圧縮率を有し得る。下層は、約400℃の温度で約0.13mm~約0.15mmの範囲の圧縮率を有し得る。下層は、平均より10%下のノイズ、平均より4.4%下のホットノイズ、平均より10.2%下のコールドノイズ、および平均より5.7%下の総ノイズを有し得る。
【0011】
さらなる実施例によれば、ブレーキパッド用の下層を調製する方法が記載される。該方法は、約1~4重量%のアクリル繊維、約0.5~1重量%のアラミド繊維、および約1~4重量%の無機鉱物繊維を含む繊維パックを提供すること、約0%~約80%の無機充填剤と配合された粉末ゴムを提供すること、および繊維パック、ゴム粉末、少なくとも一つの充填剤および少なくとも一つの結合剤を乾燥混合すること、を含み得る。
【0012】
他の実施例によれば、無機充填剤と配合された粉末ゴムを提供することは、約0.3mm~1.00mmの平均粒子直径を有する粉末ゴムを提供することを含み得る。無機充填剤と配合された粉末ゴムを提供することは、約0.3mm~約0.7mmの範囲の平均直径を有する粉末ゴムを提供することを含み得る。繊維パック、ゴム粉末、少なくとも一つの充填剤、および少なくとも一つの結合剤を混合することは、繊維パック、ゴム粉末、少なくとも一つの充填剤、および少なくとも一つの結合剤を、レディゲミキサー内で約5分~約20分間混合することを含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の前述およびその他の特徴は、添付図面と併せて、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。これらの図面は、本開示に係るいくつかの実施形態のみを示し、従って、その範囲を限定するとみなされないことが理解され、本開示は、添付図面を使用することで、追加的な具体性および詳細を持って記載される。
【
図1】
図1は、低重量%のアラミド繊維を有する下層を含む例示的なブレーキパッドを示す。
【
図2】
図2は、ディスクブレーキロータのブレーキパッド用の下層のための組成物の合成方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、異なる組成物を用いて、三つの下層を合成するためのシステムおよびプロセスの概略図である。
【
図4A】
図4Aは、室温での三つの異なる下層のせん断強度を示すグラフであり、
【
図4B】
図4Bは、300℃の温度での三つの異なる下層のせん断強度を示すグラフである。
【
図4C】
図4Cは、室温での三つの異なる下層の比せん断強度を示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、室温での三つの異なる下層の圧縮率を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、400℃の温度での三つの異なる下層の圧縮率を示すグラフである。
【
図6B】
図6Bは、別の下層の温度-周波数応答のグラフを示す。
【
図6C】
図6Cは、さらに別の下層の温度-周波数応答のグラフを示す。
【
図7】
図7は、二つの下層に対する、300℃の温度で経時の比せん断強度および形状%の変動を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本明細書に記載の少なくとも一部の実施形態に係り配列される、二つの下層に対する、300℃の温度で経時の圧縮率の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明において、その一部を構成する、添付図面を参照する。図面では、類似の記号は、文脈上別途指示されない限り、類似の構成要素を、典型的に特定する。詳細な説明、図面および特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定の意図を有さない。他の実施形態を利用することができ、本明細書に提示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の変更を行ってもよい。本開示の態様は、本明細書に一般的に記載され、図示されるように、多種多様な異なる構成で、配列、置換、組み合わせ、分割および設計可能で、その全てが本明細書に明示的に想定される。
【0015】
本開示は、一般的に、特に、組成物、下層、ブレーキパッド、および下層の合成方法を対象とする。
【0016】
簡潔に述べると、一般的に、ブレーキディスクロータのブレーキパッドの下層用の組成物に関する技術を記載する。組成物は、繊維パック、粉末ゴム、少なくとも一つの結合剤、および少なくとも一つの充填剤を含み得、繊維パックは、最大約0.1重量%~3重量%、好ましくは、1重量%未満のアラミド繊維を含み得る。
【0017】
本開示は、低アラミド繊維含有量を有する組成物を使用して、下層を合成することができ、それゆえに、下層の一キロ当たりのコストが低減されることを認識する。原材料の選択により、高価なアラミド繊維を、最大約0.1重量%~3重量%、好ましくは、1重量%未満の量に低減可能にし得る一方、ブレーキパッドのせん断強度を維持する。
【0018】
本開示の組成物のいくつかの例示的な利点は、従来型のブレーキパッドの製造プロセスと比較して、より高い柔軟性を有するブレーキパッドの製造において、より優れたプロセス制御を可能にすることである。例えば、本開示の組成物により、従来型の下層の減衰およびノイズ、振動および硬さ(NVH)特性の多くを維持しつつ、より高価なKruppミキサーの代わりにレディゲミキサーを使用して、下層が調製可能になる。
【0019】
例示的な下層は、繊維、結合剤、および粉末および/または顆粒状充填剤からなり得る。下層は、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換可能な粘性挙動ポリマーを有してもよい。下層中の繊維は、摩擦力が加えられる場合、ブレーキディスクロータの表面とバックプレートとの間に生成されるせん断力に抵抗するために使用されうる。繊維状形態を有するアラミド線維は、下層の機械的強度を改善するために一般的に使用される。アラミド繊維は、優れた熱機械的特徴を有する。しかしながら、アラミド繊維は、高価であり、下層当たりの総コストを増加させる場合がある。
【0020】
本開示の下層は、断熱効果、バックプレートとの良好な接合、および標準的な摩擦材料の性能の脆弱性を補償する能力を有する。本開示の組成物により作製された下層はまた、従来型の下層と比較して、より低い圧縮率およびより低い減衰を有し得る。
【0021】
本開示の下層の熱機械特性は、室温で、また300℃で、せん断強度を測定し、その後、この定常状態の条件下で、5日間にわたり熱分解を調査することによって評価された。本開示の下層により作製されたブレーキパッドを、ブレーキ動力計(最大600℃)を用いて、動的応力が高い状態で試験を行った。下層の主な機能は、典型的には、ノイズの振動減衰および圧縮率の快適性挙動を提供することであり、この最後の特性については、下層の圧縮率(Cpx)の測定が重要である。
図1を参照すると、Cpx測定は、摩擦材料108、下層106、およびバックプレート104により構成される、ブレーキパッド全体のISO基準 6310 B(K3 100バール)に従って実施される。
【0022】
さらに、本開示の下層の粘弾性特性を、WLF理論および時間-温度重ね合わせ原理に基づく分析方法論と組み合わせた、動的機械熱分析(DMTA)により調査した。この調査により、広範囲の周波数および温度における下層組成物の減衰能力が測定される。開示された下層は、実際の動的ノイズ挙動を測定し、最新技術の性能と比較するために、ブレーキ動力計において異なるNVH試験手順に供された。
【0023】
図1は、本開示の態様に係り配列される下層106を含む例示的なブレーキパッド100である。例示的なブレーキパッド100は、シム102、バックプレート104、下層106、摩擦材料108、および摩擦表面110を含む。一部の実施例では、ブレーキパッド100は、サンドイッチ構造を有する。例えば、サンドイッチ構造は、摩擦材料108を含み得、これは、ブレーキディスクロータ(図示せず)の表面に続いて、下層106、その後にバックプレート104に付勢される場合、摩擦を生成する。
【0024】
様々な実施例では、シム102は、ブレーキパッド100とブレーキディスクロータとの間に位置決めされる薄いゴム層であり得る。この薄いゴム層は、ブレーキ作動中にノイズを引き起こす場合がある、表面(例えば、ロータの表面またはパッドの表面)のいずれかにおける様々な欠陥を補正しうる。いくつかの実施例では、ブレーキシム102は、アンチラトルパッドとして機能しうる。
【0025】
一部の実施例では、バックプレート104は、鋼などの硬質材料であり得る。様々な実施例では、硬質材料は、他の金属、合金、または炭素繊維強化プラスチック(CFRP)またはガラス強化プラスチック(GRP)などの他の複合材料を含みうる。
【0026】
下層106は、繊維パック、粉末ゴム(レディゲミキサーベースの下層用途において)、少なくとも一つの結合剤、および少なくとも一つの充填剤を含みうる組成物を含み得、繊維パックは、最大約0.1重量%~3重量%、好ましくは、1重量%未満のアラミド繊維を含み得る。下層材料に関する追加の実施例について、以下でさらに説明する。
【0027】
様々な実施例では、摩擦材料108は、ブレーキディスクロータに面する摩擦面110に結合されてもよい。摩擦材料108は、制動に適した摩擦特性を有する有機、セラミック、または金属材料であり得る。例示的な有機摩擦材料は、繊維と、樹脂と一緒に結合されたゴム、炭素化合物、ガラス、繊維ガラス、および/またはケブラーなどの他の材料の混合物を含み得る。例示的なセラミック摩擦材料は、ホウ素、シリカ、炭化物、アルミナ、またはジルコニアから作製され得、酸化アルミニウム(Al2O3)および二酸化ケイ素(SiO2)を含む。例示的な金属摩擦材料は、銅、鉄、鋼、グラファイト、真鍮、または樹脂と接合された他の複合合金などの金属材料を含み得る。
【0028】
図2は、本開示の態様に係り配列される下層の調製方法を示すフローチャートである。記載された方法200は、ブロック202「繊維パックを提供する」、ブロック204「粉末ゴムを提供する」、ブロック206「繊維パック、粉末ゴム、結合剤および充填剤を、レディゲミキサー内で混合する」、およびブロック208「固体層を成形プレス内で形成する」を含み得る。
【0029】
例示的な方法は、約1重量%~約5重量%の範囲のアクリル繊維、約0.5重量%~約1重量%の範囲のアラミド繊維、および約1重量%~約5重量%の範囲の無機鉱物繊維を含む、繊維パックが提供され得る、ブロック202で開始し得る。一部の例示的な実施例では、ブロック202で、繊維パックは、約0.5~5重量%のアクリル繊維、約0.5~3重量%のアラミド繊維、および約1~6重量%の無機鉱物繊維を含みうる。
【0030】
ブロック202の後にブロック204が続き、ここで、粉末ゴムを提供し得る。一部の実施例では、ゴムは、無機充填剤と配合され得、約0.5mmの平均粒子直径を有する粉末形態で提供され得る。一部の追加の実施例では、粉末の平均粒子直径はまた、約0.3mm~約1mmの範囲内であり得る。一部の実施例では、10重量%の粉末ゴムが提供され得る。一部の他の実施例では、粉末ゴムは、約5重量%~約25重量%の範囲内であり得る。一部の追加の実施例では、粉末ゴムは、NBRであってもよい。
【0031】
ブロック204の後にブロック206が続き、ここで、繊維パック、粉末ゴム、充填剤、および結合剤を、レディゲミキサー内で混合し得る。一部の実施例では、充填剤は、バライトであり得る。一部の追加の実施例では、約5~25重量%の充填剤が使用され得る。一部の他の実施例では、充填剤は、鋼繊維であり得、約10重量%~約20重量%の範囲で提供され得る。
【0032】
一部の実施例では、約50~80重量%の鋼繊維が使用され得る。従来、下層に使用されるゴム材料は、Kruppミキサー内で機械加工可能な嵩高片であり得、これは、高価であり、混合中に多量の熱を生成し、原材料の熱分解を引き起こす場合がある。さらに、ゴムの嵩高片は、塊になる傾向があり得、粒子サイズ分布に不十分な制御を引き起こし、0.5mm超の直径を有する比較的大きなゴム粒子を形成する。しかしながら、使用されるゴムが、本開示において粉末形態であるため、混合は、混合温度がより良好に制御されることで穏やかに混合するレディゲミキサー内で行われ得る。レディゲミキサー内での混合により、開示された組成物を使用して調製された下層の減衰およびNVH特性がさらに保持され得る。
【0033】
ブロック206の後にブロック208が続き、ここで、下層を、繊維パック、粉末ゴム、充填剤および結合剤を成形プレスに入れ、好適な圧力を加えることによって調製し得る。成形中に提供されうる例示的な圧力は、約200~500kg/cm
2の範囲内であり得る。成形中に提供されうる例示的な温度は、約130~200℃の範囲内であり得る。表1は、開示された下層に対する、原材料および例示的な重量%の範囲を示す。
【表1】
【0034】
図3は、異なる組成物を使用して、三つの下層を合成するためのシステムおよびプロセスの概略図であり、すべてが、本明細書記載の少なくとも一部の実施形態に係り配列される。これらの実施例の三つの下層は、UL_A、UL_B、およびUL_Cである。UL_Aの原材料とその重量%を、表2に示す。UL_Bの原材料とその重量%を、表3に示す。UL_Cの原材料とその重量%を、表4に示す。
【0035】
記載されたプロセス/システム300の各々は、ブロック302「原材料」で開始し、ここで、原材料を、材料ローダー、フィーダー、またはコンベアなどで提供し得る。
【0036】
基準UL_Aを調製するために、ブロック302の後にブロック304「KRUPPミキサー」が続き、表2に示す原材料を、Kruppミキサー内で混合する。ブロック304の後にブロック306「粉砕」が続き、ここで、Kruppミキサーからの混合材料を、粉砕機に搬送して、微粉末に磨り潰される。ブロック306の後にブロック308「成形プレス」が続き、ここで、粉砕された材料を、成形プレスに搬送、移動、またはその他の方法で供給して、ブロック310に提供されるUL_A材料の成形片を形成する。
【0037】
Kruppミキサーは、嵩高ゴム片を含む、ゴムの大部分を処理可能である。しかしながら、Kruppミキサーの投資コストは、レディゲミキサーよりも大幅に高い。さらに、Kruppミキサー内で原材料の混合中に熱が発生し、熱分解を引き起こす場合がある。一般的に、Kruppミキサー内で嵩高ゴムを使用すると、ゴムの粒子サイズ分布が広くなり、その後、下層混合物の分散が悪化する。形成されたUL_Aは、高い減衰能力を有するが、最終的に粒子サイズ分布が広くなる、ゴムの機械加工での粗い制御により、下層の分布が不良になる。機械の寸法上、生産の柔軟性と生産可能な混合物の数を制限する、大量の製造バッチが必要となる。
【0038】
Krupp技術により、ゴムを嵩高の形態で使用し、この種類の下層の製造は、UL製品のスポンジ様の形態を有することを意味する。実施形態は、Kruppミキサーをレディゲミキサーに代えて利用するが、これは、粉末様形態のULでゴムを使用することを意味する。したがって、スポンジ様形態は、粉末様形態と比較して、分散性で劣る。粉末形態は分散が容易であり、ブレーキパッドの厚さにおいて良好な均質性を達成する。
【表2】
【0039】
UL_Bを調製するために、ブロック302の後にブロック312「レディゲ MIXER」が続き、表3に示す原材料を、レディゲミキサー内で混合する。UL_Bは、レディゲベースのULであり、このため、レディゲ ULの長所および短所を有する。しかし、UL_Bは、UL_Aと同じアラミド繊維の含有量を有する。レディゲプロセスでは、すべての原材料は、いかなる種類の粉砕も必要としないほど、すでに十分小さい。レディゲミキサー内ですべての原材料を処理した後、材料は、ブロック314「成形プレス」で成形プロセスに使用される準備が整い、成形機械に移送されるか、またはその他の方法で供給されて、ブロック316に提供されるUL_B材料の成形片を形成する。
【0040】
レディゲミキサーを使用する記載プロセスは、柔軟性があり、UL_Aと同等の性能を有する。しかしながら、ULのプロセスコストは、UL_Bよりも高い。
【表3】
【0041】
UL_Cを調製するために、ブロック302の後にブロック322「レディゲミキサー」が続き、表4に示す原材料を、レディゲミキサー内で混合する。ブロック322の後にブロック324「成形プレス」が続き、ここで、粉砕された材料を、成形プレスに搬送、移動、またはその他の方法で供給して、ブロック326に提供されるUL_C材料の成形片を形成しうる。
【0042】
UL_Cの記載プロセスは、投資コストを低減し、プロセス制御を向上し、柔軟性を高める。しかしながら、レディゲミキサーは、ゴムの嵩高片を扱うことができず、粉末ゴムの利用可能性が限定される。UL_Cは、良好な下層分布、製法の柔軟性を有し、UL_AおよびUL_Bと比較して安価である。しかし、UL_Cは圧縮率が低く、減衰性が低いが、低コストにより、これらの欠点が補われる。
【表4】
【0043】
図4Aは、室温で測定された三つの異なる下層のせん断強度(kN)を示すグラフ400である。三つの下層の熱機械特性を、室温でのせん断強度を測定することにより評価した。棒402は、室温でのUL_Aのせん断強度である。UL_Aは、従来型で調製された下層である。棒404は、室温でのUL_Bのせん断強度である。UL_Bは、レディゲミキサーと高含有量のアラミド繊維を使用して作製される下層である。カラム406は、室温でのUL_Cのせん断強度である。UL_Cは、レディゲミキサーと低含有量のアラミド繊維のみを使用して作製される、開示の下層である。三つの下層に対する原材料とそれらの重量%を、表2、3および4に示す。
【0044】
グラフ400から分かるように、UL_Cのせん断強度は、他の二つの下層と同等であり、最大で約1重量%のアラミド繊維含有量を有する開示の下層が、他の二つの下層と類似のせん断強度を有することを示す。したがって、UL_Cを作製するために使用される原材料を選択することで、アラミド繊維の量を約10重量%未満に低減可能にする一方、せん断強度の点で、ブレーキパッドの良好な抵抗が維持される。
【0045】
図4Bは、オーブン内に300℃で1時間保持された後、室温で測定された三つの異なる下層のせん断強度(kN)を示すグラフ410である。棒412は、オーブン内に300℃で1時間保持された後、室温でのUL_Aのせん断強度である。棒414は、オーブン内に300℃で1時間保持された後、室温でのUL_Bのせん断強度である。棒416は、オーブン内に300℃で1時間保持された後、室温でのUL_Cのせん断強度である。オーブン内に300℃で1時間保持された後、室温での開示された下層UL_Cのせん断強度が、約10重量%の高アラミド繊維含有量を有する下層UL_Bのせん断強度よりも高いことは留意され得る。
【0046】
図4Cは、室温での三つの異なる下層の比せん断強度(daN/cm
2)を示すグラフ420である。実施例では、パッド表面は、83.9cm
3である。棒422は、ほぼ室温でのUL_Aの比せん断強度である。棒424は、ほぼ室温でのUL_Bの比せん断強度である。棒426は、ほぼ室温でのUL_Cの比せん断強度である。開示された下層の比せん断強度は、他の二つの下層と同等であり、低アラミド繊維含有量が、開示された下層の物理的特性に有意な影響をもたらさないことを示す。表5は、三つの下層の熱機械特性の概要である。
【表5】
【0047】
図5Aは、100バールの圧力で、ほぼ室温での三つの異なる下層の圧縮率を示すグラフ500である。圧縮率は、下層のノイズの振動減衰をチェックする際に考慮すべき重要なパラメータである。棒502は、ほぼ室温でのUL_Aの圧縮率である。棒504は、ほぼ室温でのUL_Bの圧縮率である。棒506は、ほぼ室温でのUL_Cの圧縮率である。グラフ500から分かるように、UL_Cの圧縮率は、UL_Bの圧縮率と略同一であり、低アラミド繊維含有量が、開示された下層のノイズの振動減衰に悪影響を及ぼさなかったことを示す。
【0048】
図5Bは、100バールの圧力で、約400℃の温度での三つの異なる下層の圧縮率を示すグラフ510である。棒512は、約400℃の温度でのUL_Aの圧縮率である。棒514は、約400℃の温度でのUL_Bの圧縮率である。棒516は、約400℃の温度でのUL_Cの圧縮率である。UL_Cの圧縮率は、約400℃の温度で、UL_Bの圧縮率よりもわずかに低い。
【0049】
UL_Cのノイズ圧力レベルは、UL_Aのノイズ圧力レベルと同等である。室温および400℃での圧縮率の値の概要を表6に示す。
【表6】
【0050】
図6A~6Cは、異なる下層の温度-周波数応答のグラフを示す。
【0051】
例示的なULの粘弾性挙動は、DMA(動的機械分析)により調査され、その後、WLF理論および時間温度重ね合わせ原理を適用して、試料温度に対する周波数応答のマップを作成した。これにより、ULなどの複合材料の減衰特性の視覚的および数値的な推定を作成できる。UL_A(
図6C中のグラフ620)は、主に温度20~40℃の範囲内の高振動減衰能力を有するKruppベースのUL(UL_A)を示す。UL_B(
図6B中のグラフ610)は、全体的にはるかに低い減衰能力を有するが、温度0~20℃で最高値を有する、10重量%のアラミド繊維を有するレディゲ UL(UL_B)を示す。UL_C(
図6A中のグラフ600)は、UL_Aに対して全体的に低い減衰能力を有するが、UL_Bよりも高く、温度0~20℃で最高値を有する、低含有量のアラミド繊維(1%重量未満)を有するレディゲ ULを示す。最終的に、レディゲベースのULは、Kruppベースよりも低い減衰能力を有する傾向にあるが、アラミド含有量の低減は、レディゲベースのULの減衰特性に悪影響を及ぼさない。
【0052】
表7は、三つの下層のNVH性能評価の結果を示す。UL_A、UL_B、UL_Cにより製造されたパッドは、NVH評価(ノイズ-振動-粗さ)用に装備された動的ベンチで試験手順(FCA PF.90244基準)に供された。該手順は、低温および高温の両方でのブレーキ試験区間を伴い、ノイズの多い制動事象の数を評価し、表7に報告する。意外なことに、レディゲベースのULである、UL_BおよびUL_Cの両方が、UL_Aと同程度の性能を示し、新しい製造手法が、実際の用途におけるノイズ減衰の最終目的に影響を与えないことが示された。
【表7】
【0053】
図7は、下層UL_AおよびUL_Cに対する、約300℃の温度での経時の比せん断強度および形状%(せん断剥離により実際に除去されたULの割合)の変動を示すグラフ700を含む。グラフ700では、水平軸702は、時間(時間単位)を表し、左垂直軸704は、UL_CおよびUL_Aそれぞれのせん断強度曲線706および708に対する比せん断強度(N/cm
2)を表す。曲線706から明らかなように、UL_Cは、最初により高い比せん断強度を有し、これは、曲線708に示されるように、UL_Aの値よりも低い割合で、約65時間まで減少する。
【0054】
グラフ700では、水平軸702は、時間(時間単位)を表し、右垂直軸710は、形状曲線712および714の形状%を表す。UL_Cの形状%は、約15時間経過するまで一定で、その後急減し、約68時間の時点でゼロに達する。したがって、レディゲベースのUL_Cは、熱分解に対しより良好または基準UL_Aと同等の抵抗を示した。両方の材料は、試験の20時間後、急速に分解する。
【0055】
図8は、100バールで測定された二つの下層UL_AおよびUL_Cに対する、300℃の温度での経時の圧縮率の変動を示すグラフ800を含む。グラフ800では、水平軸802は時間(時間単位)を表し、垂直軸804は、UL_CおよびUL_Aそれぞれの曲線806および808の圧縮率(マイクロメートル)を表す。曲線806から明らかなように、UL_Cの圧縮率は、試験時間の最初の15時間で漸進的に増加し、曲線808のUL_Aと類似の挙動を示す。温度曝露の15~20時間後、両方の材料が劣化し始める一方、圧縮率の値は上昇を示す。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、例示的および非限定的なものと意図され、本開示の特定の実施形態を表す。実施例は、摩擦材料が、フェノール樹脂を備える非アスベスト有機(NAO)ファミリーにおける一般的な摩擦材料であることを示す。
【0057】
実施例1
UL_Aの合成
表2は、下層UL_Aの作製に使用される原材料を示す。原材料をKruppミキサー内で混合し、その後、粉砕して固体層に成形し、UL_Aを形成した。
【0058】
実施例2
UL_Bの合成
表3は、下層UL_Bの作製に使用される原材料を示す。原材料をレディゲ内で混合し、その後、固体層に成形し、UL_Bを形成した。
【0059】
実施例3
UL_Cの合成
表4は、下層UL_Cの作製に使用される原材料を示す。原材料をレディゲミキサー内で混合し、その後、固体層に成形して、UL_Cを形成した。
【0060】
本開示は、さまざまな態様の図解として意図される、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されない。多くの修正および変形を、その趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。本開示の範囲内の機能的に同等の方法および装置は、本明細書に列挙したものに加えて、前述の記載から可能である。このような修正および変形は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本開示は、このような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ制限されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみの記載を目的として、限定することを意図しない。
【0061】
本明細書に記載される主題は、他の異なる構成要素内に含まれるか、または該構成要素と接続される、異なる構成要素を示す場合がある。このような図示された構造は、単に例であり、実際には、同じ機能性を達成する他の多くの構造を実装し得る。概念的意味で、同じ機能を達成するための構成要素の任意の配列は、所望の機能性が達成されるように、効果的に「関連付けられる」。従って、特定の機能性を達成するために組み合わせられた本明細書中の任意の二つの構成要素は、構造または中間構成要素に関係なく、所望の機能性が達成されるように、互いに「関連付けられている」とみなされ得る。同様に、そのように関連付けられる任意の二つの構成要素は、所望の機能性を達成するために、互いに「動作可能に連結される」、または「動作可能に結合される」とみなされてもよく、そう関連付けられることが可能な任意の二つの構成要素も、所望の機能性を達成するために、互いに「動作可能に連結可能である」とみなされ得る。動作可能な連結可能な具体的な例には、物理的に接続可能な構成要素および/または物理的に相互作用する構成要素、および/または無線で相互作用可能な構成要素および/または無線で相互作用する構成要素、および/または論理的に相互作用する構成要素、および/または論理的に相互作用可能な構成要素が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書における実質的に任意の複数および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適切なように、複数形から単数形および/または単数形から複数形に解釈することができる。さまざまな単数形/複数形の順列は、明確さを目的に、本明細書に明示的に記載され得る。
【0063】
一般的に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、一般的に、「非限定的」な用語として意図される(例えば、用語「含む(including)」は「含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが限定されない」と解釈されるべきである。導入される特定数の請求項の列挙が意図される場合、このような意図は、請求項に明示的に列挙され、このような列挙が存在しなければ、このような意図は存在しないことが、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、理解の補助として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を導入するため、導入語句「少なくとも一つ」および「一つ以上」の使用を含み得る。しかしながら、このような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の列挙の導入が、このような導入された請求項の列挙を含む任意の特定の請求項を、このような列挙を一つのみ含む実施形態に限定することを意味するものとして解釈されるべきではなく、それは、同一クレームが、導入語句「一つ以上」または「少なくとも一つ」、および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも一つ」または「一つ以上」を意味すると解釈されるべきである)を含む場合でさえも同じであり、請求項の列挙を導入するために使用される定冠詞の使用についても同様である。さらに、導入された特定数の請求項の列挙が明示的に列挙されていても、当業者は、このような列挙が、少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語句のない「二つの列挙」の最小限の列挙は、少なくとも二つの列挙、または二つ以上の列挙を意味する)。
【0064】
さらに、「A、B、およびCなどのうちの少なくとも一つ」に類似する定型語句が使用される事例では、一般的に、このような構成は、当業者が、該定型語句(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも一つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、および/またはA、B、およびCを一緒に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)を理解する意味で意図される。明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、二つ以上の代替的な用語を提示する実質的に任意の離接語および/または語句が、当該用語のうちの一つ、当該用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を想定するよう理解されるべきであることを、当業者は理解されるであろう。例えば、語句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0065】
記述を提供することに関するなどの任意のおよび全ての目的のために、本明細書に開示される全ての範囲は、任意のおよび全ての可能な部分範囲およびそれらの部分範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも同一の二分の一、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一などに分解されることを十分に記載し、可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じる各範囲は、下位三分の一、中位三分の一、上位三分の一などに容易に分解可能である。また、当業者であれば理解するように、全ての言い回し、例えば、「最大(up to)」、「少なくとも(at least)」、「~超(greater than)」、「~未満(less than)」などは、列挙された数を含み、上記で論じたように、その後に部分範囲に分解され得る範囲を指す。最後に、範囲は、各個々の構成要素を含む。従って、例えば、1~3個のセルを有する群は、1、2、または3個のセルを有する群を指す。同様に、1~5個のセルを有する群は、1個、2個、3個、4個、または5個のセルを有する群などを指す。
【0066】
様々な態様および実施形態が本明細書で開示されるものの、他の態様および実施形態は可能である。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、例示を目的としており、限定することを意図するものではなく、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲により示される。
【国際調査報告】