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特表2023-527773制御された剥離区画処理を伴い、強化された性能を有する、中間層ならびに積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】制御された剥離区画処理を伴い、強化された性能を有する、中間層ならびに積層体
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20230623BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230623BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230623BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230623BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20230623BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B17/10
B32B7/12
C09J11/06
C09J7/00
C03C27/12 D
C03C27/12 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571123
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021033870
(87)【国際公開番号】W WO2021237205
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/191,545
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/155,009
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,486
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/028,782
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,447
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,577
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/126,135
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,518
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】スミス,チャールズ アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ベニソン,スティーブン ジョン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AK01A
4F100AK23A
4F100AK52A
4F100AK68A
4F100AL09A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100JA05A
4F100JA06A
4F100JA11A
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JK03
4F100JK06
4F100JK06A
4F100JK10
4F100JL11A
4F100YY00A
4G061AA03
4G061AA04
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD18
4G061DA38
4J004AA08
4J004AB03
4J004FA08
4J040DD071
4J040HD32
4J040JA09
4J040JB01
4J040KA43
4J040MA05
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA16
(57)【要約】
本発明は、分離区画を含む接着性ポリマー中間層(API)を含む積層構造に関する。このような分離区画は、APIとガラス基材との界面に配置される。一般に、分離区画は、剥離性および接着性の2セットの分離区画を含む。これらの区画は、変性API-ガラス剥離性、積層体靭性および積層体耐久性のユニークな組み合わせを可能にする。分離区画の様々な空間パターンと密度、ならびに得られる材料特性が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマー材料、
第1表面および第2表面、
前記第1表面上の、最大平均剥離接着力を有する第1分離区画、ならびに
前記第1表面上の、約0.01kJ/mより大きい最小平均剥離接着力を有する第2分離区画
を含み、ここで、前記最大平均剥離接着力は、前記最小平均剥離接着力よりも少なくとも約2倍大きい、接着性ポリマー中間層(API)。
【請求項2】
前記第1分離区画または前記第2分離区画の一方が第1ポリマー材料を含み、前記第1分離区画および前記第2分離区画の他方が、前記第1ポリマー材料とは化学的および/または物理的に異なる第1材料を含む、請求項1に記載のAPI。
【請求項3】
前記第1材料は以下:
(i)第1ポリマー材料とは異なる分子量、(ii)第1ポリマー材料とは異なる結晶化度、(iii)第1ポリマー材料とは異なる密度、(iv)第1ポリマー材料とは異なるガラス転移温度、(v)第1ポリマー材料とは異なるメルトフローインデックス、または(vi)前記特徴の1つ以上の組み合わせ
を特徴とする、請求項2に記載のAPI。
【請求項4】
前記第1分離区画および/または前記第2分離区画は、規則的なパターンで分布している、請求項1に記載の接着性ポリマー中間層(API)。
【請求項5】
前記第1分離区画および/または前記第2分離区画は確率的に分布している、請求項1に記載のAPI。
【請求項6】
前記第1分離区画または前記第2分離区画の一方は実質的に連続しており、前記第1分離区画または前記第2分離区画の他方は、以下:
(i)規則的な形状、
(ii)確率的またはランダムな形状、
(iii)一次元パターン、および/または
(iv)規則的、ランダム、および/または一次元パターンのクラスター
を特徴とする、請求項1に記載のAPI。
【請求項7】
前記第1分離区画および前記第2分離区画のいずれかの重量含有率は、API全体に対するパーセンテージとして、約0.00001%~約30%の範囲である、請求項1に記載のAPI。
【請求項8】
APIは少なくとも2つの区画を含み、ここで、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも約2倍~約250倍大きい平均剥離接着力を有する、請求項1に記載のAPI。
【請求項9】
APIは少なくとも2つの区画を含み、ここで、該区画の少なくとも1つは、約0.01~約12.0kJ/mの平均剥離接着力を有する、請求項1に記載のAPI。
【請求項10】
ポリマー材料は、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のAPI。
【請求項11】
前記第1材料は、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、シラン、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のAPI。
【請求項12】
第2分離区画は第1ポリマー材料であり、第1ポリマー材料はアイオノマー樹脂である、請求項11に記載の接着性ポリマー中間層(API)。
【請求項13】
第1分離区画は第1ポリマー材料であり、第1ポリマー材料はポリビニルアセタールである、請求項11に記載のAPI。
【請求項14】
第1材料は接着改質剤である、請求項12または13に記載のAPI。
【請求項15】
接着改質剤は第1ポリマー材料の約0.001重量%~約75重量%の範囲で存在する、請求項14に記載のAPI。
【請求項16】
第1分離区画または第2分離区画の一方は、約0.001mm~約10.0mmの厚さを有する、請求項1に記載のAPI。
【請求項17】
各分離区画は、ドット、円、部分円、楕円、部分楕円、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形;七角形の形状をしているか、または、無定形である、請求項1に記載のAPI。
【請求項18】
分離区画の有効直径は約0.1mm~約50mmの範囲である、請求項17に記載の接着性ポリマー中間層(API)。
【請求項19】
最小剥離強度(Zmin)を有する区画に対する最大剥離強度(Zmax)を有する区画の剥離強度比、すなわち(ZmaxZmin)は、5以上である、請求項1に記載のAPI。
【請求項20】
請求項19に記載のAPIであって、ここで:
全ての分離区画は異なる剥離強度を有する;
1つまたはそれより多くの分離区画は同じ剥離強度を有する;または
1つまたはそれより多くの分離区画は異なる剥離強度を有する、
API。
【請求項21】
規則的な形状の分離区画、ランダムな形状の分離区画、またはクラスター分離区画の有効径は、分離区画の厚さの約1倍~約150,000,000倍である、請求項6に記載の接着性ポリマー中間層(API)。
【請求項22】
(i)第1ガラス基材;および
(ii)請求項1~21のいずれかに記載の接着性ポリマー中間層;
のスタックを含む積層構造であって、ここで、前記第1ガラス基材は前記接着性ポリマー中間層(API)に接着する、積層構造。
【請求項23】
(i)第1ガラス基材;
(ii)請求項1~22のいずれかに記載の接着性ポリマー中間層;および
(iii)第2ガラス基材;
のスタックを含む積層構造であって、ここで、前記第1ガラス基材は、前記接着性ポリマー中間層(API)を介して、前記第2ガラス基材に接着する、積層構造。
【請求項24】
分離区画は片面において以下の表面積を有する、請求項22~23のいずれかに記載される積層構造:
(i)ガラス基材の1つの表面積の約1%~約80%;
(ii)ガラス基材の1つの表面積の約10%~約60%;
(iii)ガラス基材の1つの約20%~約50%;
(iv)ガラス基材の1つの表面積の約30%~約40%;
(v)ガラス基材の1つの表面積の約5%~約25%;または
(vi)ガラス基材の1つの表面積の約1%~約35%。
【請求項25】
前記接着性ポリマー中間層は少なくとも2つの区画を含み、ここで、該区画の少なくとも1つは以下:
(i)約0.01~約12.0kJ/m
(ii)約0.1~約4.0kJ/m
(iii)約0.5~約3.0kJ/m
(iv)約8.0~約12.0kJ/m;または
(v)約9.0~約11.0kJ/m
の平均剥離接着力を有する、請求項22~24のいずれかに記載の積層構造。
【請求項26】
接着性ポリマー中間層は1cmあたりに0.04~10,000の区画を有する、請求項22~25のいずれかに記載の積層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月22日に出願された米国仮出願No.63/028,782、2020年12月16日に出願された米国仮出願No.63/126,135、2021年3月1日に出願された米国仮出願No.63/155,009、2021年5月21日に出願された米国仮出願No.63/191,486、2021年5月21日に出願された米国仮出願No.63/191,447、2021年5月21日に出願された米国仮出願No.63/191,518、2021年5月21日に出願された米国仮出願No.63/191,545、2021年5月21日に出願された米国仮出願No.63/191,577の利益を主張し、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本発明は、制御された剥離区画処理の使用により、強化された特性を硬質基材に提供する、熱可塑性樹脂に基づく中間層、およびそのような中間層を含む硬質基材積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
合わせガラスは、一般的にポリマー中間層の上に2枚のガラスを積層させることによって作られる。固体ガラスシートに対する合わせガラスの特定の利点の1つは、ガラスが中間層シートに接着することによる耐衝撃性と飛散防止である。
【0004】
安全ガラス積層体では、中間層のガラスへの最適な接着はバランスである。接着力が強すぎると、積層体が衝撃時にエネルギーを吸収して放散する能力が損なわれ、接着力が小さすぎると、(積層時およびその後の環境暴露や風化の際に)光学的欠陥が発生する可能性があり、衝撃時にガラスの破片を保持する中間層の能力にも悪影響を与え得る。
【0005】
多くの刊行物が、積層された構造が高いエネルギー事象(例えば、衝撃)を吸収および放散できるようにする、中間層とガラス基材との間の接着を調整する技術を開示している。例えば、米国特許第3,607,178号は、積層前にガラスをカルシウムおよびマグネシウム塩を含む水で洗浄することを記載しており、米国特許第4,292,372号は、カルシウムおよび/またはマグネシウムカルボキシレートを中間層シートに組み込んで接着を低減することを記載している。
【0006】
ポリマー中間層には多くの異なる材料が使用されている。例えば、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラールとしても知られる)と可塑剤を含有するシートは、ガラスとの密着性に優れているため、合わせガラスの中間層として広く利用されている。このような中間層を含む合わせガラスは、透明性、機械的強度、柔軟性、音響減衰性、および耐飛散性に優れている。
【0007】
少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマー(アイオノマー)もまた、例えば以下に開示されるように、合わせ安全ガラスを製造するための中間層として使用されてきた:米国特許番号No.3,404,134;3,344,014;7,445,683;7,763,360;7,951,865;7,960,017;8,399,097;8,399,098;米国特許出願公開番号No.2018/0117883、および2019/0030863;国際特許出願公開番号WO2016/076336A1;WO2016/076337A1;WO2016/076338A1;WO2016/076339A1;および WO2016/076340A1;ならびに米国特許出願番号No.16/781787。
【0008】
アイオノマー樹脂は、曲げ強度と光学特性に優れた中間層を作るために選択され得るが、ガラスへの接着特性は最適ではない場合がある。特に、アイオノマーは一般的に中和された酸コポリマーであるため、特に高湿度環境下で、積層欠陥が発生する可能性がある。
【0009】
例えば、アイオノマー樹脂をフロートガラスの中間層として使用する場合、ガラスの「スズ側」では十分な接着が得られるが、ガラスの「空気側」では接着が不十分な場合が多く、そのため、積層プロセス中に特別な注意を払い、このようなガラス板を適切に配置し、「スズ側」が中間層に確実に接触するようにする必要がある。
【0010】
フロートガラスの中間層または中間層の一部として、ポリビニルブチラールや熱可塑性エラストマーを含む他の樹脂を使用することもできる。これらも、接着性、ラミネートの靭性、および耐久性に問題がある可能性がある。
【0011】
特許文献では、プライマーを使用して接着を強化する方法についても説明している。例えば、米国特許No.3,445,423は、ポリウレタン組成物を使用してフロントガラスの外側周縁部分を金属受容部材に結合するためのプライマーとして、γ-アミノプロピル-トリエトキシシランの溶液を使用することを開示している。
【0012】
米国特許No.3,881,043には、早期剥離の傾向を減少させるためにフロントガラスの周囲に接着プライマーを適用することが開示されている。別の実施形態は、全体的な接着力を増大させるために、界面表面の範囲全体にわたってドットのパターンで塗布される、接着促進組成物の塗布を含む。
【0013】
米国特許No.5,342,653;5,478,412;および5,5477,36には、シートの表面に付着防止突起を適用して、突起間でガラスへのシートの高い接着を弱める方法が開示されている。これらの特記は、接着手段の物理的遮断に作用し、好ましくは、化学的手段に依存しないと言われている。
【0014】
米国特許No.10,022,908には、中間層とガラス表面との間の接着力を高め、高湿度条件下での接着保持力を高めるプライマーを中間層の表面に塗布することが開示されている。
【0015】
米国特許No.3,505,160には、フロントガラスの内側部分に接着力低下物質(「弱い接着剤」)を適用し、事故シナリオにおいて乗員への衝撃が生じ得る領域での衝撃性能を高めることが開示されている。
【0016】
米国特許出願公開No.2019/0030863には、特定種類のシランが、ナトリウム中和型アイオノマー用のガラス接着促進剤として、非常に特定の量および限られた条件下でうまく有利に使用でき、強化された中間層-ガラス接着特性を有する中間層およびガラス積層体の製造における、そのようなアイオノマーの最適な使用を可能にすることが開示されている。
【0017】
従来技術のほとんどは、全体的な接着が積層体界面全体で単調であるアプローチを含んでいる。さらに、改善された接着性、積層体靭性、および積層体耐久性の組み合わせは、これらには開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第3,404,134号明細書
【特許文献2】米国特許第3,344,014号明細書
【特許文献3】米国特許第7,445,683号明細書
【特許文献4】米国特許第7,763,360号明細書
【特許文献5】米国特許第7,951,865号明細書
【特許文献6】米国特許第7,960,017号明細書
【特許文献7】米国特許第8,399,097号明細書
【特許文献8】米国特許第8,399,098号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2018/0117883号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2019/0030863号明細書
【特許文献11】国際特許出願公開第2016/076336号
【特許文献12】国際特許出願公開第2016/076337号
【特許文献13】国際特許出願公開第2016/076338号
【特許文献14】国際特許出願公開第2016/076339号
【特許文献15】国際特許出願公開第2016/076340号
【特許文献16】米国特許出願番号第16/781787号明細書
【特許文献17】米国特許第3,445,423号明細書
【特許文献18】米国特許第3,881,043号明細書
【特許文献19】米国特許第5,342,653号明細書
【特許文献20】米国特許第5,478,412号明細書
【特許文献21】米国特許第5,5477,36号明細書
【特許文献22】米国特許第10,022,908号明細書
【特許文献23】米国特許第3,505,160号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2019/0030863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、適切な積層体の完全性と耐久性を維持しながら、改善された衝撃性能を提供する、中間層/ガラス積層体アセンブリのマルチモーダル接合堅強性を備えて製造された積層体の完全性を向上する手段を提供することによって、上記の問題に対処する。これは、接着性ポリマー中間層とガラス基材との界面に分離した剥離区画を設けることにより行われる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施形態において、本発明は以下を含む接着性ポリマー中間層(adhesive polymeric interlayer、API)に関する:
第1ポリマー材料、
第1表面および第2表面、
前記第1表面上の最大平均剥離接着力を有する第1分離区画、および
前記第1表面上の、約0.01kJ/mより大きい最小平均剥離接着力を有する第2分離区画
ここで、前記最大平均剥離接着力は、前記最小平均剥離接着力よりも少なくとも約2倍大きい。
【0021】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1分離区画または前記第2分離区画の一方は第1ポリマー材料を含み、前記第1分離区画および第2分離区画の他方は、前記第1ポリマー材料とは化学的および/または物理的に異なる第1材料を含む。
【0022】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、該第1材料は以下を特徴とする:(i)第1ポリマー材料とは異なる分子量、(ii)第1ポリマー材料とは異なる結晶化度、(iii)第1ポリマー材料とは異なる密度、(iv)第1ポリマー材料とは異なるガラス転移温度、(v)第1ポリマー材料とは異なるメルトフローインデックス、または(vi)前記特徴の1つ以上の組み合わせ。
【0023】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1分離区画および/または第2分離区画は規則的なパターンで分布している。
【0024】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1分離区画および/または第2分離区画は確率的に分布している。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1分離区画または前記第2分離区画の一方は実質的に連続しており、前記第1分離区画または前記第2分離区画の他方は、以下を特徴とする:
(i)規則的な形状、
(ii)確率的またはランダムな形状、
(iii)一次元パターン、および/または
(iv)規則的、ランダム、および/または一次元パターンのクラスター。
【0026】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1分離区画および前記第2分離区画の一方の重量含有率は、API全体に対するパーセンテージとして、約0.001%~約30%の範囲である。
【0027】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、前記APIは少なくとも2つの区画を含み、ここで、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも約2倍~約250倍大きい平均剥離接着力を有する。
【0028】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、前記APIは少なくとも2つの区画を含み、ここで、該区画の少なくとも1つは、約0.01~約12.0kJ/mの平均剥離接着力を有する。
【0029】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1ポリマー材料は、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、該APIは、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、シラン、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0031】
さらに別の実施形態において、 本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着性ポリマー中間層内の分離剥離区画(discrete debonding zone)は、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、シラン、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0032】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記分離剥離区画の少なくとも1つはアイオノマーを含み、該アイオノマー樹脂はナトリウム中和型エチレン-α,β-不飽和カルボン酸コポリマーである。
【0033】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1材料は、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、シラン、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0034】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、第2分離区画は第1ポリマー材料であり、第1ポリマー材料はアイオノマー樹脂である。
【0035】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1分離区画は第1ポリマー材料であり、該第1ポリマー材料はポリビニルアセタールである。
【0036】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、該ポリビニルアセタールはポリビニルブチラールである。
【0037】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記第1材料は接着改質剤である。
【0038】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着改質剤は、シラン、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはカルボキシル基含有オレフィン系重合体である。
【0039】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、接着改質剤はシランである。
【0040】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、前記接着改質剤は、第1ポリマー材料の約0.001重量%~約75重量%の範囲で存在する。
【0041】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着改質剤は、第1ポリマー材料の約0.001重量%~約25重量%の範囲で存在する。
【0042】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着改質剤は、第1ポリマー材料の約5重量%~約25重量%の範囲で存在する。
【0043】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着改質剤は、第1ポリマー材料の約10重量%~約20重量%の範囲で存在する。
【0044】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着改質剤は、第1ポリマー材料の約50重量%~約75重量%の範囲で存在する。
【0045】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層に関し、ここで、前記接着改質剤は、第1ポリマー材料の約60重量%~約70重量%の範囲で存在する。
【0046】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、第1分離区画または第2分離区画の一方は約0.001mm~約10.0mmの厚さを有する。
【0047】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層および積層構造(laminate structure)に関し、ここで、該中間層は約0.35mm~約5.0mmの厚さを有する。
【0048】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、各分離区画は、ドット、円、部分円、楕円、部分楕円、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形;七角形の形状をしているか、または、無定形である。
【0049】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、分離区画の有効径は約0.1mm~約50mmの範囲である。
【0050】
一実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、最小剥離強度(Zmin)を有する区画に対する最大剥離強度(Zmax)を有する区画の剥離強度比、すなわち(Zmax/Zmin)は5以上である。
【0051】
別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで:
全ての分離区画は異なる剥離強度を有する;
1つまたはそれより多くの分離区画が同じ剥離強度を有する;または
1つまたはそれより多くの分離区画が異なる剥離強度を有する。
【0052】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、規則的な形状の分離区画、ランダムな形状の分離区画、クラスター分離区画の有効径は、分離区画の厚さの約1倍~約150,000,000倍である。
【0053】
一実施形態において、本発明は以下のスタックを含む積層構造に関する:
(i)第1ガラス基材;および
(ii)上記の接着性ポリマー中間層;
ここで、前記第1ガラス基材は、前記接着性ポリマー中間層(API)に接着する。
【0054】
別の実施形態において、本発明は以下のスタックを含む、上記の積層構造に関する:
(i)第1ガラス基材;
(ii)上記の接着性ポリマー中間層;および
(iii)第2ガラス基材;
ここで、前記第1ガラス基材は、前記接着性ポリマー中間層(API)を介して前記第2ガラス基材に接着する。
【0055】
さらに別の実施形態において、本発明は上記の積層構造に関し、ここで、分離区画は片面において以下の表面積を有する:
(i)ガラス基材の1つの表面積の約1%~約80%;
(ii)ガラス基材の1つの表面積の約10%~約60%;
(iii)ガラス基材の1つの約20%~約50%;
(iv)ガラス基材の1つの表面積の約30%~約40%
(v)ガラス基材の1つの表面積の約5%~約25%;または
(vi)ガラス基材の1つの表面積の約1%~約35%。
【0056】
一実施形態において、本発明は上記の積層構造に関し、ここで、前記接着性ポリマー中間層は少なくとも2つの区画を含み、該区画の少なくとも1つは、以下の平均剥離接着力を有する:
(i)約0.01~約12.0kJ/m
(ii)約0.1~約4.0kJ/m
(iii)約0.5~約3.0kJ/m
(iv)約8.0~約12.0kJ/m;または
(v)約9.0~約11.0kJ/m
【0057】
別の実施形態において、本発明は上記の積層構造に関し、ここで、前記接着性ポリマー中間層は、1cmあたりに0.04~10,000の区画を含む。
【0058】
別の実施形態において、本発明は上記の積層構造に関し、ここで、前記1つ以上の分離剥離区画の少なくとも1つは、前記APIに対して、および/または、前記第1ガラス基材または前記第2ガラス基材の少なくとも1つに対して同一平面上である。
【発明の効果】
【0059】
驚くべきことに、接着性ポリマー中間層内の接着性ポリマー中間層とガラスシートとの界面に剥離領域を設けることにより、中間層および積層体性能が向上することがわかった、これは、接着促進剤を少ない量で用いるなどによる、制御された剥離を可能にする。さらに、不均一で制御された接着により、剥離領域-ガラス接着、積層体の耐引き裂き性、および積層体の破壊後の耐久性のユニークな組み合わせが生み出されることがわかった。強化された性能は、ボールオンリング、サイクル耐候性、および本明細書に記載の他の試験を含む種々の方法で測定される。改善された接着は、このような剥離領域を含む積層体の改善された耐久性をもたらす。
【0060】
制御された剥離区画処理(Controlled debonding zone treatments、CDZT)により、積層体性能特性(主に、従来技術と比較して、API内のガラスとAPIとの界面における剥離領域の所定の単位厚さにおける、積層体の耐引き裂き性))のさらなる最適化が可能となることがわかった。積層体の耐久性を最適化して、積層体の完全性の側面と、積層体を破るように作用する衝撃やその他の極端な力が加えられたときのエネルギー吸収能力の側面とのバランスを取ることもできる。
【0061】
CDZT方法論は、中間層と硬質基材との間の界面接触領域内およびその周辺の全区画を考慮する。これには、処理を直接適用できない区画/領域、すなわち、ポリマー中間層および硬質基材の元の特性を実質的に有する領域/区画が含まれる。これらの領域/区画の剥離挙動は、処理領域/区画の剥離特性の設計および大きさに影響を与える。本主題技術において利点を提供するのは、これらの異なる区画の剥離挙動および相互作用である。
【0062】
CDZTアプローチは、ガラス基材とポリマー中間層との間の界面またはその付近での剥離「事象(event)」を引き起こすために必要なエネルギーの、範囲と境界の両方を定義することを含む。これらの境界条件は、少なくとも下限と上限を有するであろう。それぞれの下限および上限は、少なくともバイモーダルまたはマルチモーダル接着レベルが生成されるように処理を適用することによって作られ、ここで、接着/剥離特性は、少なくとも適用された処理の組成と、付された「パターン」の幾何学的態様と絡み合っている。すなわち、CDZTは、「中間部」スペース/区画と、「パターン化処理」の特定の適用のスペース/区画の両方で構成されている。CDZT技術は、従来技術よりも優れた積層体性能を提供することがわかった。これは、さまざまなモードで達成でき、本明細書に挙げた特性の一部またはすべてを備えている。
【0063】
境界条件の下限は、「接着不良」、つまり、通常の積層体の使用(熱膨張/収縮、ポリマー中間層のキャリパーの変動、および/または、硬質基材の平面性とうねり、積層体のエッジの挟み込みなどの手段によって加えられる通常の応力)、ならびに、積層体の完全性の長期耐久性に影響を与えるその他の環境影響(湿気の侵入など)の下で起こる剥がれまたは剥離であってはならない。積層体は、予想される環境への暴露および使用を通じて、十分な程度の耐久性および完全性を維持する能力を有することが望ましい。
【0064】
境界条件の上限は、それより上では、積層体の中間層の引き裂き抵抗に測定可能な影響がない接着/剥離限界に設定できる。これは、ボール-オン-リングテストまたはボール-ドロップテスト、または積層体に十分なエネルギーを加えてガラスの破砕を引き起こし、結果としてポリマー中間層内の破損が発生する可能性があるその他のテストのいずれかによって直接測定できる。
【0065】
境界条件の上限を設定/確立するための別の手段は、剥離試験中に得られたエネルギー値であって、それより多くでは、50%より多くのサンプリングケースで中間層の引き裂きが発生する値を利用して実行できる。剥離エネルギーが非常に高く、0.8mm程度の厚さのポリマー中間層が硬質基材から剥離されるよりもむしろ頻繁に引き裂かれる場合、引き裂きを引き起こすのに十分な大きさの衝撃または他のエネルギー事象中に、完全に積層された状態で、同様の引き裂きが予想されることが予想される。
【0066】
CDZT技術は、理論に拘束されることを望まないが、ある側面では、物理的性質ではなく、化学的性質の1つになる可能性がある。剥離処理は、硬質基材とポリマー中間層との間の界面または界面付近での接着/剥離特性を変えることができる、化学的に活性な物質または混合物の塗布で構成される。処理は、代わりに、電子ビーム、ガンマ線、プラズマ、電子放電、レーザー、イオンビーム、またはプラズマ、火炎処理、UV/VIS/IR放射、マイクロ波などの他のエネルギー手段などのエネルギー「ビーム」、あるいは、コーティング技術、化学蒸着などによる化学変化などの適用で構成することもできる。化学物質とエネルギー源との組み合わせも、処理として使用できる。処理は非常に小さな次元であってよい(すなわち、表面の原子または分子の単分子層のみが、処理によって影響を受ける、または、処理がAPIの厚さの限られた厚さ(最大30%に近づく)の処理であってよい)。処理は、硬質基材またはポリマー中間層のいずれか、または両方に適用してよい。一般的にはポリマー中間層に適用することが最も有利である。中間層に直接、その一部として適用することで(例えばロールツーロール処理など)製造が容易になる。
【0067】
CDZT技術は設計可能であり、硬質基材に対する中間層の相対的な位置決めが普遍的な方法で平行移動および/または回転できる場合に、前記「パターン」の基材エッジへの位置合わせを気にすることなく、エッジまたは平面の連続中断(穴、カットアウト、くぼみ、インサートなど)での剥離性能が明らかに影響を受けており、最も有利である。
【0068】
CDZTは、差し迫った剥離前面への方向性成分を任意に含むことができる。パターンは、ランダムに配置されるよりも、剥離前面に対してより効果的な結合関係を与えるように、補完的で好ましい幾何学的配向で生成することができる。例えば、EX-D-011と-012のラインパターンは、両方とも、適用されると同じ間隔パラメータおよび体積分率を有しているが、ラインが、剥離前面が前記ラインに対して垂直になるように方向付けられている場合(EX-D-012)、剥離前面と同じ方向を向いたライン(EX-D-011)よりも、剥離の総量が最小限に抑えられる。剥離前面は、所与の積層体の「端」から発生して進行することがしばしば見られるため、このような剥離の進行に最もよく抵抗するようにパターンを有利に構成することができる。
【0069】
適用される処理のデザインは、さまざまな記述子によって定義できる。表面被覆率(または体積分率)は、目的の効果または結果を達成するために調整できる1つの側面である。設計では、確率的「パターン」から、規則的で反復可能なパターン、ならびにその間の全てのバリエーションまで、デザイン範囲全体を使用することができる。デザイン要素は、互いに近接して変化する可能性がある。デザインは、開いた構造(単離された「島」)を有することも、閉じた構造(直接的または迂回的な性質の接続された経路)を有することもできる。適用されたデザインは、適用された処理の下限または上限の接着/剥離の側面に関連するものとして定義できる。
【0070】
CZDTは、積層体を破るのに必要なエネルギーレベル、および/またはさまざまな過酷な環境要因(広い温度変動/暴露および高湿度)または課された応力(たわみ、固定荷重または活荷重、積層応力など)に耐える積層体耐久性に関して、強化されたラミネート性能を提供する。さらに、幅広い範囲の製造バリエーション(例えば硬質基材の組成、基材表面の清浄度(例えばガラス洗浄条件など)、水分条件、不適切なラミネーション温度および滞留時間など)にわたって、パフォーマンスの堅牢性を向上させることができる。
【0071】
上に挙げた実施形態に加えて、適用された処理はまた、少なくともCZDT領域の一部において、凝集破壊モードを示す可能性がある剥離事象を生成する可能性がある。この凝集破壊モードは、硬質基材からのポリマー中間層の剥離分離の一部となるように設計される。
【0072】
本発明のこれらおよび他の実施形態、特徴および利点は、以下の詳細な説明および関連する図面を読むことにより、当業者によってより容易に理解されるであろう。
【0073】
本発明の様々な実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1図1は、比較的均一な接着力を有する通常の中間層/ガラス「積層体」の剥離力を示し、これは従来技術の代表例である。
図2図2は、「確率的」タイプジオメトリーでの制御された剥離区画処理を施した中間層/ガラス「積層体」の剥離力を示す。
図3図3は、積層体の引き裂きエネルギーの測定に使用される「ボールオンリング」装置を示す。
図4図4は、「ボールオンリング」装置により提供される通常の荷重/変位プロットを示し、ボールが積層体に接触してから徐々に押し出され、中間層に裂け目が生じる。
図5図5は、トップガラスライト10、中間層14、およびボトムガラスライト12の従来の配置を示す。中間層表面16は、積層処理中の脱気を可能にするために、典型的には、粗面化またはエンボステクスチャが付与される。従来技術において、表面の組成は本質的にバルク中間層の組成と同じであり、すなわち、積層物品の形成においてガラス表面との融着との相互作用を調整するために、その構成を変更する試みはなされていない。
図6図6は、本技術の断面図を示す(制御された剥離区画処理)。該処理は、硬質基材表面に適用されるか、または、ポリマー中間層の表面または表面付近に適用または配置されてよく、その両方を行うこともできる。
図7図7a~eは、本発明の特定の実施形態の概略断面図である。図2aは、ガラス10のトップライト、外面に区画26および28(これは「制御された剥離区画処理」層として定義され、下にある中間層の影響を受ける)を含む中間層からなり、ガラス12のボトムライトと組み合わされた、積層体の主要な構成を示す。
図8図8は、実施例に記載した剥離試験の配置の「平面図」を示す。
図9図9は、実施例に記載した剥離試験の配置の「断面」タイプの図を示す。
図10図10は、ドット形状の区画を有する中間層の代表的なグリッド状パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、ポリマー中間層組成物、およびこのような中間層を含有するガラス積層体に関する。より具体的には、本発明は、分離区画を含む接着性ポリマー中間層(API)を含む、積層構造に関する。このような分離区画は、APIとガラス基材との境界面で、APIに配置されている。これらの分離区画は、改変されたAPI-ガラスの剥離、積層体の靭性、および積層体の耐久性の独自の組み合わせを可能にする。これらの分離区画の様々な空間パターンと密度、ならびに得られる材料特性が記載されている。
【0076】
本発明の基本的な枠組みは、ヒョウ斑点パターンに関して説明される。しかし、本発明は、以下に説明するように、他の分離区画にも同様に適用される。
【0077】
一実施形態において、一部のヒョウ斑点は、剥離のために表面処理されている、および/または、一部は接着強化のために表面処理されている、および/または、一部は全く処理されていない。一実施形態において、分離された暗い斑点は、その機能において剥離している。一実施形態において、これらの剥離区画は、さまざまな表面処理によって生成される。剥離傾向を有する分離区画は、斑点間の区画と比較して、衝撃に際して最初に破損する可能性がある。
【0078】
別の実施形態において、不連続な暗い斑点は、その接着機能を強化するように処理されている。ただし、斑点間の区画はその機能において剥離性である。これらの剥離区画は、さまざまな表面処理によって生成されるか、または、接着力が強化された、表面処理された分離区画と比較して、剥離性である。接着傾向のある分離区画やヒョウ斑点は、斑点間の区画と比較して、衝撃に際して最初に破損する可能性が低い。
【0079】
別の実施形態において、ヒョウ斑点の一部は接着傾向があるが、他の一部のヒョウ斑点は剥離傾向がある。これらの接着および剥離の傾向は、表面処理によって、またはそれらの相対的な剥離強度によって生じ得る。同様に、斑点間の一部の区画は接着傾向を有し、一部の区画は剥離傾向を有する。
【0080】
別の言い方をすれば、一実施形態において、接着性ポリマー中間層(API)は、片面または両面に、2つのセットの分離区画(接着性分離区画および剥離性分離区画)を含む。分離区画の各セットは、少なくとも1つの分離区画を有する。分離区画の第1セット(すなわち接着区画)には、APIの表面のすべての分離区画の中で最も高い平均剥離接着力を有する区画が存在する。分離区画の第2セット(すなわち剥離区画)には、APIの表面のすべての分離区画の中で最も低い平均剥離接着力を有する分離区画が存在する。しかし、本発明の条件は、(接着性分離区画のセット内に存在する)分離区画の最大平均剥離接着力が、(剥離性分離区画のセット内に存在する)分離区画の最小平均剥離接着力よりも少なくとも約2倍大きいことである。
【0081】
一実施形態において、一部の分離区画には剥離処理が施され、一部の分離区画には何ら剥離処理が施されず、後者は、処理された分離区画よりも高い接着傾向を示す。同様に、別の実施形態において、一部の分離区画には剥離処理が施され、一部の他の分離区画には接着性を高める表面処理が施される。同様に、さらに別の実施形態において、一部の分離区画には剥離処理が施され、一部の分離区画には接着性を高める表面処理が施され、一部の分離区画には何らの処理も施されない。接着性付与分離区画または剥離促進分離区画は、平均剥離強度の同じ相対的スペクトル上に存在する。
【0082】
定義
制御された剥離
制御された剥離とは、APIとガラス基材との間の界面領域の付近での、接着における、一般に平面方向での、区画に分けられた変化性を意味する。別の言い方をすれば、剥離区画を含む界面の接着強度が、ガラス基材とAPIとの界面において、一般に面方向に変化する。この変化は、以下の複数の例示的な実施形態で説明される。
【0083】
制御された剥離区画処理
硬質基材とポリマー中間層との界面または界面付近の界面区画の剥離破壊エネルギーを変化させる処理。分離時のエネルギー放出率/仕事は、接着性測定ではキロジュール/mとして報告される。
【0084】
分離区画
「分離区画」とは、区画がAPIの表面に含まれるが、実質的に分離していること、すなわち、該区画は、接着性ポリマー中間層(API)の概して全ての領域を平面方向に覆っていても、覆っていなくてもよく、所定の境界で互いに実質的に分離している。材料の制限および/または材料の製造方法を考えると、区画の分離性における、可能性があるランダムな欠陥(例えば、実質的に分離している2つの区画が互いに「にじみ合う(bleed into)」)が、本発明で認められる。分離区画は、異なる剥離破壊エネルギー、または、等しい剥離破壊エネルギーを有し得る。分離区画は、視覚的に異なるようには見えないかもしれないが、その分離する境界において、剥離破壊エネルギーは、概して、当技術分野で知られるような接着ポリマー性界面で通常みられる破壊エネルギーの分散よりも、大きく変換する。
【0085】
分離剥離区画
「分離剥離区画」または「剥離区画」は、それらの平均剥離強度に関して剥離性として記載される区画を意味する。ガラス基材と接着性ポリマー中間層が剥離する場合、最初に「剥離区画」内で剥離が生じる可能性が高い。
【0086】
以下の説明では、その剥離に関する分離区画について、そのような剥離区画を生じさせるための制御された剥離区画処理の具体例を用いて論じる。分離区画は、制御された剥離処理が施されているかどうかにかかわらず、様々な形状でAPI表面に位置し、いくつかはガラス基材に対してより接着性であり、いくつかは低接着性である。本発明は、例えば、分離区画の剥離強度を高める表面処理を想定している。
【0087】
パターン化接着
パターン化接着とは、剥離処理が中間層と硬質基材の界面領域内に、配列を伴い幾何学的に配置されていることを意味する。パターン化処理には一定の規則性がある。この処理により、パターンに隣接する間隙とは異なる、剥離不連続性が作られるであろう。パターンタイプ、幾何学的パラメータにおいて異なる、1つより多いパターン処理を適用してもよく、下にあるパターン処理に重ねるか、押し付けるか、間隙内に収まるか、または、これらの任意の組合せで行うことができる。
【0088】
確率的
「確率的」とは、アイテムまたはパターンがランダムに決定され、一般に正確に予測できないことを意味する。したがって、本明細書で使用される場合、確率的パターンはランダムなものである。
【0089】
確率的に変化する接着
「確率的に変化する接着」とは、中間層と硬質基材との界面領域内で、剥離処理が「ランダム様の」配置に近づいていることを意味する。この処理により、接着/剥離のより均一なフィールドのものから剥離不連続性が作られる。
【0090】
均一接着
均一接着とは、ポリマー中間層の厚さの5%~100%に基づく界面面積領域で測定した場合、ある場所からある場所へ±10%を超えて変化しないような方法で、界面領域における接着/剥離が実質的に生じることを意味する。
【0091】
自在配置
「自在配置(universal positioning)」とは、接着改質剤がガラスまたは中間層のいずれか、あるいは両方に適用され、これにより、ガラスパネルを中間層に対して方向に関係なく配置することができ、そのため、無駄を最小限にして中間層をカットできることを意味する。
【0092】
円形度
円形度(C)は、周囲(長さP)の滑らかさを考慮して、区画が円に似ている度合いとして定義される。これは、円形度が区画と粗さの両方の測定値であることを意味する。したがって、完全に丸い、滑らかな円から離れるほど、該区画は円形度値が低くなる。円形度は無次元の値である。Aが特徴領域である場合、ISO9276-6は円形度を次のように定義する:
【数1】
【0093】
ソリディティ
ソリディティ(S)は、区画の全体的な凹みの測定値である。これは、以下のように、イメージ領域(A)を凸包面積(Ac)で割ったものとして定義される。したがって、区画がよりソリッドになるにつれて、イメージ領域と凸包領域が互いに接近し、ソリディティ値が1になる。しかし、区画が閉じた円からそれるにつれて、凸包領域が増加し、算出されるソリディティが減少する。リディティは無次元の値である。
【数2】
【0094】
有効径
「有効径」とは、本明細書に記載されるような任意の形状を有する区画の面積に等しい面積を有する円の直径を意味する。
【0095】
一態様において、本発明は、制御された剥離処理を含むポリマー中間層を提供し、これは、1またはそれより多くの層のガラスと組み合わせて積層体を形成する際に、改善された靭性、接着および耐久性の組み合わせを提供する。
【0096】
一態様において、本発明は、制御された剥離処理を含む1またはそれより多くの硬質基材を提供し、これは、1またはそれより多くの層のポリマー中間層と組み合わせて積層体を形成する際に、改善された靭性、接着および耐久性の組み合わせを提供する。
【0097】
一態様において、本発明は、少なくとも1つのポリマー中間層と少なくとも1つのガラスシートとを含む積層体を提供し、ここで、制御された剥離処理は、ポリマー中間層の表面、ガラスの表面、または両方に処理され、制御された剥離区画または領域を与え、ここで、該積層体は改善された靭性、接着および耐久性の組み合わせを示す。
【0098】
別の態様において、本発明は、所定の破壊エネルギーレベルで剥離が生じるように、実質的に均一で、可変的破壊靭性を有する分離剥離区画を作る、制御された剥離処理を提供する。
【0099】
別の態様において、本発明は、制御された剥離処理を提供し、これは、実質的に分離され、破壊エネルギーが高い場合と低い場合とで破壊靭性が変化する剥離区画を作りだす。
【0100】
さらに別の態様において、本発明は、実質的に分離され、実質的に均一なパターンを有する制御された剥離処理を提供し、破壊エネルギーが高い場合と低い場合とで破壊靭性が変化する剥離区画を作りだす。
【0101】
さらに別の態様において、本発明は、実質的に分離され、実質的に確率的な、制御された剥離処理を提供し;破壊エネルギーが高い場合と低い場合とで破壊靭性が変化する剥離区画を作りだす。
【0102】
本開示において、ガラスは例示的基材として使用される。ポリマー性基材などの他の基材も使用してもよい。例えば、ポリカーボネートおよび他の透明ポリマー性基材も本発明において想定される。
【0103】
本開示の関連において、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、別段の指示がない限り、全ての目的のために完全に記載されているかのように、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【0104】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0105】
特に明記されている場合を除き、商標は大文字で表示される。
【0106】
特に断りのない限り、全てのパーセンテージ、部、比率などは重量によるものである。
【0107】
特に断りのない限り、psi単位で表される圧力はゲージ圧であり、kPa単位で表される圧力は絶対圧である。しかし、圧力差は絶対値として表される(例えば、圧力1は、圧力2よりも、25psi高くなる)。
【0108】
量、濃度、または他の値またはパラメータが、範囲として、または上限値と下限値のリストとして与えられる場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上限値と任意の下限値との任意のペアから形成されるすべての範囲が具体的に開示されていると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に記載される場合、別段の記載がない限り、該範囲はその端点および該範囲内の全ての整数および分数を含むことを意図する。本発明の開示の範囲は、範囲が定められる際、挙げられた特定の値に限定することを意図するものではない。
【0109】
「約」という用語が使用される場合、それは、特定の効果または結果が特定の許容範囲内で得られることを意味するために使用され、当業者は許容範囲を得る方法を知っている。
「約」という用語が値または範囲の端点を記述する際に使用される場合、かかる開示は、言及される特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0110】
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはそれらの他のバリエーションは、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素のリストを含む、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができる。
【0111】
「からなる」という移行句は、クレームで特定されていない要素、ステップ、または成分を除外し、列挙されたもの以外の材料の包含に対してクレームを閉じる(通常、それらに関連する不純物を除く)。「からなる」という語句が、プリアンブルの直後ではなく、クレーム本文の規定に現れる場合、それはその規定に記載されている要素のみを限定し、他の要素はクレーム全体から除外されない。
【0112】
「から本質的になる」という移行句は、特定された材料またはステップ、ならびにクレームされた発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに、請求項の範囲を限定する。「本質的に~からなる」というクレームは、「~からなる」のフォーマットで記載された閉じたクレームと、「~を含む」のフォーマットで記載された完全にオープンあクレームとの中間の立場を占める。本明細書で定義される、添加剤に適当なレベルの量での、任意の添加剤、および少量の不純物は、「~から本質的になる」という用語によって、組成物から除外されない。
【0113】
さらに、そうでないことが明示されない限り、「または」および「および/または」は、排他的ではなく、包括的であることを指す。例えば、条件AまたはB、あるいはAおよび/またはBは、以下のいずれかによって満たされる:Aが真(または存在する)かつBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在する)、および、AおよびBの両方が真(または存在する)。
【0114】
本明細書における様々な要素および成分を説明するための「a」または「an」の使用は、単に便宜のためであり、本開示の一般的な意味を与えるためのものである。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、別の意味であることが明らかでない限り、単数形は複数形も含む。
【0115】
本明細書で使用される用語「大部分」または「主に」は、本明細書で別段の定義がない限り、言及される材料の50%超を意味する。特定されていない場合、パーセントは、分子に言及する場合(例えば水素やエチレンなど)はモル基準であり、そうでない場合(例えば添加物含量など)は重量基準である。
【0116】
本明細書で使用される用語「実質的な部分」または「実質的に」は、別段の定義がない限り、使用される文脈において当業者によって理解されるように、全てまたはほぼ全てまたは大部分を意味する。産業規模または商業規模の状況で通常発生し得る100%からの妥当な差異を考慮することが意図される。
【0117】
本明細書で使用される用語「コポリマー」は、2以上のコモノマーの共重合から得た、コポリマー化された単位を含むポリマーを意味する。これに関して、コポリマーは、その構成コモノマーまたはその量を参照して、例えば「エチレンと15重量%のアクリル酸とを含むコポリマー」、または類似の説明で、本明細書に記載され得る。このような記載は、以下の点で、または別の理由のために、非公式であるとみなされ得る:コポリマー化された単位として言及していない点;例えば国際純正・応用化学連合(IUPAC)命名法などの、コポリマーに対する慣用的な命名法が含まれていない点;プロダクトバイプロセス用語を使用していない点。しかし、本明細書で使用されるように、その構成コモノマー、または、その構成コモノマーの量に関するコポリマーの記載は、該コポリマーが、特定されたコモノマーのコポリマー化された単位を(特定される場合は特定量で)含有することを意味する。当然のことながら、限定された状況でそのように明示されない限り、コポリマーは所定のコモノマーを所定の量で含有する反応混合物の生成物ではない。
【0118】
用語「ジポリマー」は、2つのモノマーから本質的になるポリマーを表し、用語「ターポリマー」は少なくとも3つのモノマーを含むポリマーを表す。
【0119】
本明細書で使用する用語「酸コポリマー」は、α-オレフィン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、および任意に他の適当なコモノマー(例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルなど)の、コポリマー化された単位を含む、コポリマーを表す。
【0120】
本明細書で使用される用語「(メタ)アクリル」は、単独または組み合わせた形で、例えば「(メタ)アクリレート」はアクリルまたはメタクリルであり、例えば「アクリル酸またはメタクリル酸」または「アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート」を表す。
【0121】
本明細書で使用する用語「アイオノマー」は、一般的に、カルボン酸塩、例えばアンモニウムカルボキシレート、アルカリ金属カルボキシレート、アルカリ土類カルボキシレート、遷移金属カルボキシレート、および/またはこのようなカルボキシレートの組合せであるイオン性基を含むポリマーを表す。このようなポリマーは、一般に、本明細書で定義される酸コポリマーである前駆体または親ポリマーのカルボン酸基を、例えば塩基との反応により、部分的または完全に中和することによって製造される。本明細書で使用されるアルカリ金属アイオノマーは、ナトリウムアイオノマー(例えばエチレンとメタクリル酸とのコポリマー)であり、ここで、コポリマー化されたメタクリル酸単位のカルボン酸基の全部または一部が中和され、該中和されたカルボン酸基の実質的に全てが、カルボン酸ナトリウムの形態である。
【0122】
便宜上、本発明の多くの要素が別々に議論され、選択肢のリストが提供され得り、数値が範囲であり得る;しかし、本開示の目的のためには、これらは、任意の別々の構成要件の任意の組合せの任意の請求項に対する、本開示の範囲の限定または本開示のサポートとはみなされるべきではない。別段の記載がない限り、本開示において可能な全ての組合せは、全ての目的に対する明示的な開示と理解されるべきである。
【0123】
本開示に記載されるものと類似する又は等しい方法および材料を、本開示の実施および試験において使用することができるが、適当な方法および材料は本明細書に記載されている。したがって、本明細書の材料、方法、および実験例は単に説明のためのものであり、具体的に述べられている場合を除き、限定を意図するものではない。
【0124】
〔ポリ(ビニル)アセタール樹脂〕
本発明によれば、可塑化されたポリビニルアセタール組成物、好ましくはポリビニルブチラール組成物が提供され、ここで、該組成物は以下を含む:(a)ASTM D1396-92に従い測定して、約12~約34、好ましくは約15~約34のヒドロキシル価数を有するポリビニルアセタール樹脂;(b)ポリビニルアセタール樹脂の乾燥重量に基づいて、約20pph~、または約30pph~、約60pphまで、または約50pphまでの量での量の可塑剤;および(c)酸化防止機能を有するオリゴマーヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含む光安定剤/酸化防止剤添加剤パッケージ;ここで、追加の酸化防止剤は実質的に存在しない。可塑化されたポリビニルアセタール組成物は、可塑化されたポリビニルブチラール組成物であることがさらに提供される。さらに、可塑化されたポリビニルアセタール組成物を含むシート、ならびに、該シートを含む積層体が、本明細書で提供される。
【0125】
適当なポリビニルアセタール樹脂およびその製造方法は、以前に組み込まれたUS8329793B2、US2016/0214354A1、US2016/0214352A1、US2017/0253704A1、US2017/0072665A1およびUS2017/0217132A1、および以下に述べる他の刊行物に例示されるように、一般的な意味で、関連する技術分野の当業者によく知られている。これらの樹脂は、例えば、最終用途条件ごとに許容可能な衝撃強度を示し、許容可能な接着性、低着色、低へーズおよび最終用途条件における比較的小さい変化を示す。
【0126】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化する従来既知の方法により製造できる。ポリビニルアルコールは、対応するポリビニルアセテートの加水分解により製造される。
【0127】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、通常、100以上、または300以上、または400以上、または600以上、または700以上、または750以上、または900以上、または1200以上である。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が低すぎる場合、耐貫通性または耐クリープ性、特に高温高湿条件下(例えば85℃、85%RH)での耐クリープ性が低下する懸念がある。さらに、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、通常、5000以下、または3000以下、または2500以下、または2300以下、または2000以下である。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が5000より高い場合、樹脂フィルムの押出しが困難となる懸念がある。
【0128】
なお、ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、原料であるポリビニルアルコール粘度平均重合度と一致するため、ポリビニルアルコールの上記の好ましい粘度平均重合度は、ポリビニルアセタール樹脂の典型的な粘度平均重合度と一致する。
【0129】
ポリビニルアセタール樹脂は、一般に、ビニルアセタール単位、ビニルアルコール単位、およびビニルアセテート単位から構成され、それぞれの単位は、例えば、JIS K 6728の「ポリビニルブチラール試験法」または核磁気共鳴法(NMR)によって測定することができる。
【0130】
典型的には、(ASTM D1396-92に従い測定して)約12~約34、好ましくは約15~約34のヒドロキシル価を有するポリビニルアセタール樹脂が使用される。
【0131】
ポリビニルアセタール樹脂がビニルアセタール単位以外の単位を含有する場合、ビニルアルコールの単位量とビニルアセテートの単位量を測定し、これら両方の単位量を、ビニルアセタール単位以外の単位を含有しない場合のビニルアセタール単位量から差し引くことにより、残りのビニルアセタール単位量を算出することができる。
【0132】
ポリビニルアルコールのアセタール化に用いられるアルデヒドは、好ましくは、1以上12以下の炭素原子を有するアルデヒドである。アルデヒドの炭素数が12より多い場合、アセタール化の反応性が低下し、さらに、反応中に樹脂のブロッキングが生じやすくなり、ポリビニルアセタール樹脂の合成が困難になりやすい。
【0133】
アルデヒドは特に限定されず、その例としては以下が挙げられる:脂肪族、芳香族、または脂環式アルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等。中でも、2以上6以下の炭素原子を有する脂肪族アルデヒドが好ましく、全ての中で、ブチルアルデヒドが特に好ましい。さらに、上記のアルデヒドは単独で使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、少量の多価アルデヒドまたは他の官能基を有するアルデヒドなどを、20質量%以下の範囲の量で組み合わせて使用してもよい。
【0134】
ポリビニルアセタール樹脂は、最も好ましくはポリビニルブチラールである。
【0135】
ポリ(ビニル)アセタール樹脂に対する可塑剤
一実施形態において、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は可塑剤を含有する。適切な可塑剤は、可塑化PVBシート組成物の製造において既知であるか、または従来から使用されている、任意のものから選択できる。例えば、本明細書での使用に適した可塑剤は、以下からなる群から選択される可塑剤または可塑剤混合物であり得る:脂肪族ジオールとカルボン酸との化学反応から得られるジエステル(ポリエーテルジオールのジエステルまたはポリエーテルポリオールのジエステルを含む);および、多価カルボン酸および脂肪族アルコールから得られるエステル。便宜上、本発明のシート組成物を説明する際、可塑剤の混合物を本明細書において「可塑剤」と称し得る。すなわち、本明細書において使用される単数形の用語「可塑剤」は、シート組成物によける、1種類の可塑剤の使用、または、2種以上の可塑剤の混合物の使用のいずれかを表す。使用目的は、当業者には明らかであろう。本明細書で使用するのに好ましい可塑剤は、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールと、6~10個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸との反応により得られるジエステル;および、セバシン酸と1~18個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとの反応から得られるジエステルである。より好ましくは、可塑剤は、テトラエチレングリコールジ(2-ヘプタノエート)(4G7)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(3GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート(3GH)またはジブチルセバケート(DBS)のいずれかである。最も好ましくは、可塑剤は3GOである。
【0136】
一実施形態において、分離区画は「非可塑化」PVBまたは任意の他の適当な材料(ポリマーまたはその他)によって作られる。別の言い方をすれば、適用されるような処理で可塑剤は必要ではない。
【0137】
ポリ(ビニル)アセタール樹脂に対する他の添加剤
本発明のポリ(ビニル)アセタール樹脂は、界面活性剤を含んでもよい。本明細書での使用に適した界面活性剤は、ポリビニルアセタール製造の分野で有用であることが知られている任意のものであり得る。例えば、本明細書で使用するに適当な界面活性剤としては、以下が挙げられる:ラウリル硫酸ナトリウム;ラウリル硫酸アンモニウム;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム;6~12個の炭素原子を有するアンモニウムパーフルオロカルボキシレート;アリールスルホン酸ナトリウム、塩素化シクロペンタジエンと無水マレイン酸の付加物;部分中和型ポリメタクリル酸;アルキルアリールスルホネート;N-オレイル-N-メチルラウリン酸ナトリウム;アルキルアリールポリエーテルスルホン酸ナトリウム;トリエタノールアミンラウリルサルフェート;ジエチルジシクロヘキシルアンモニウムラウリルサルフェート;第二級アルキル硫酸ナトリウム;サルフェート化脂肪酸エステル;サルフェート化アリールアルコール;等。好ましい界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ココメチルタウリドナトリウム、およびデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム塩が挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が特に有用であることがわかった。
【0138】
界面活性剤は、実行される特定のプロセス条件のセットに対して任意の有効量で含めることができる。界面活性剤は、ポリビニルアセタールの製造に最終的に使用されるポリビニルアセテート樹脂の重量に基づいて、約0.01重量pph~、または約0.10重量pph~、または約0.15重量pph~、約0.85重量pphまで、または約0.80重量pphまで、または約0.75重量pphまで、または約0.70重量pphまでの量で含めることができる。
【0139】
さらに、所望される場合、1つ以上の接着改質剤を添加することにより、得られる積層体のガラスなどへの接着を調整することもできる。典型的な接着改質剤としては、例えば、国際特許出願公開No.WO03/033583A1に開示されているものが挙げられる。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が通常使用される。塩の例としては、有機酸、例えばオクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸およびギ酸の塩;無機酸、例えば塩酸および硝酸;などが挙げられる。マグネシウム化合物が好ましい。
【0140】
アイオノマー
本発明によれば、アイオノマー樹脂はナトリウム中和型エチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり、これは、エチレンに由来する構成単位、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位、および場合により以下に記載するような他の構成単位を含み、ここで、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の少なくとも一部は、ナトリウムイオンで中和されている。
【0141】
ベースポリマーとなるエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーにおいて、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有割合は、通常2質量%以上、または5質量%以上(全コポリマー質量に基づく)である。さらに、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有割合は、通常30質量%以下である(全コポリマー質量に基づく)。
【0142】
アイオノマーを構成するα,β-不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸 は、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択される。別の実施形態において、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0143】
エチレン酸コポリマーは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルなどの、1つ以上の追加のコモノマーのコポリマー化単位をさらに含んでもよい。存在する場合、3~10個、または3~8個の炭素を有するアルキルエステルが典型的に使用される。適当な不飽和カルボン酸のエステルの具体例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびそれらの2種以上の混合物。一実施形態において、追加のコモノマーは以下から選択される:メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルアセテート、およびそれらの2種以上の混合物。別の実施形態において、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよびイソブチルメタクリレートの1種以上である。別の実施形態において、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレートおよびイソブチルアクリレートの1種または両方である。
【0144】
適当なエチレン酸コポリマーは、ASTM法 D1238-89に従い、190℃、2.16kgで測定して、約1g/10分から、または約2g/10分から、約4000g/10分まで、または、1000g/10分まで、または、約400g/10分までのメルトフローレート(MFR)を有する。
【0145】
最後に、適当なエチレン酸コポリマーは、例えば以下に記載されるようにして合成してよい:米国特許No.3404134号、米国特許No.5028674号、米国特許No.6500888号、米国特許No.6518365号、米国特許No.8334033号、および米国特許No.8399096。一実施形態において、米国特許No.8399096号に記載の方法が使用され、反応混合物中に、十分に高いレベルで相補的な量の第2α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体が存在する。
【0146】
アイオノマーを得るために、エチレン酸コポリマーは1種以上の延期との反応によって部分的に中和される。エチレン酸コポリマーを中和するための適当な手順の例は、米国特許No.3404134号および米国特許No.6518365号に記載されている。中和後、約1%~、または約10%~、または約15%~、または約20%~、約90%まで、または約60%まで、または約55%まで、または約30%までの、エチレン酸コポリマーに存在するカルボン酸基の水素原子が、他のカチオンに置き換えられる。言い換えると、エチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の全含有量の、約1%~、または約10%~、または約15%~、または約20%~、約90%まで、または約60%まで、または約55%まで、または約30%までが、中和される。別の代替表現では、酸基は、非中和型のエチレン酸コポリマーについて算出または測定したエチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の全含有量に基づいて、約1%~、または約10%~、または約15%~、または約20%~、約90%まで、または約60%まで、または約55%まで、または、約30%までのレベルまで、中和されている。中和レベルは、特定の最終用途に合わせて調整できる。
【0147】
アイオノマー中のカルボキシレートアニオンに対する対イオンはナトリウムカチオンである。本発明で使用されるアイオノマーはナトリウムで中和されたアイオノマーであるが、ナトリウムカチオン以外の対イオンは、アイオノマー中のカルボキシレート基の総当量に基づいて、5当量%未満、または3当量%未満、または2当量%未満、または1当量%未満の少量で存在してもよい。一実施形態において、対イオンは実質的にナトリウムイオンである。
【0148】
ナトリウム以外の適当なカチオンとしては、アイオノマー組成物が合成され、加工され、使用される条件下で安定な、任意の正に帯電した種が挙げられる。適当なカチオンは、2種以上を組み合わせて使用してよい。典型的には、このような他のカチオンは金属カチオンであり、これは、一価、二価、三価、または多価であってよい。一価金属カチオンとしては、これらに限定されないが、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅などのカチオンが挙げられる。二価金属カチオンとしては、これらに限定されないが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などのカチオンが挙げられる。三価金属カチオンとしては、これらに限定されないが、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなどのカチオンが挙げられる。多価金属カチオンとしては、これらに限定されないが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄などのカチオンが挙げられる。金属カチオンが多価の場合、米国特許No.3404134号に記載されるような、ステアレート、オレエート、サリチレート、およびフェノレートラジカルなどの錯化剤を含めることができる。 典型的には、存在する場合、使用される金属カチオンは、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、およびこれらの金属カチオンの1つ以上の組み合わせなどの一価または二価の金属カチオンである。
【0149】
一実施形態において、ナトリウム以外の対イオンは、関連技術分野の当業者により認識されるような、工業的状況で通常見出されるような、せいぜい「コンタミナント」量で存在する。
【0150】
得られたナトリウムで中和されたエチレン酸コポリマーは、対応するエチレン酸コポリマーよりも低い、ASTM法D1238-89に従い、190℃、2.16kgで測定されるメルトインデックスを有する。アイオノマーのメルトインデックスは、多くの要因(エチレン酸コポリマーのメルトインデックス、コポリマー化された酸の量、中和レベル、カチオンの種類とその原子価など)によって決まる。さらに、アイオノマーのメルトインデックスの所望の値は、その意図される最終用途によって決定され得る。しかしながら、典型的には、アイオノマーは、ASTM法D1238-89に従い、190℃、2.16kgで測定して、約1000g/10分以下、または約750g/10分以下、または約500g/10分以下、または約250g/10分以下、または約100g/10分以下、または約50g/10分以下、または約25g/10分以下、または約20g/10分以下、または約10g/10分以下、または約7.5g/10分以下のメルトインデックスを有する。
【0151】
一実施形態において、アイオノマーは、以下のコポリマー化単位を含む(以下のコポリマー単位から本質的になる)、少なくとも部分的にナトリウムで中和されたエチレン酸ジポリマーである:
(i)エチレン、および
(ii)約10重量%~、または約15重量%~、または約18重量%~、または約20重量%~、約30重量%まで、または約25重量%まで、または約23重量%まで、または約22重量%までの、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
ここで、コポリマー化単位の重量パーセンテージは、エチレン酸コポリマーの総重量に基づき、コポリマー化単位の重量パーセンテージの合計は100重量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部は中和され、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成する。
【0152】
一実施形態において、アイオノマーは、以下のコポリマー化単位を含む、少なくとも部分的にナトリウムで中和されたエチレン酸ターポリマーである:
(i)エチレン、
(ii)約10重量%~、または約15重量%~、または約18重量%~、または約20重量%~、約30重量%まで、または約25重量%まで、または約23重量%まで、または約22重量%までの、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸、
(iii)約2重量%~、または約3重量%~、または約4重量%~、または約5重量%~、約15重量%まで、または約12重量%まで、または約11重量%まで、または約10重量%までの、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸エステル、および
(iv)場合により、(iii)+(iv)が約15重量%以下、または約12重量%以下、または約11重量%以下であるような量の、(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸誘導体、
ここで、コポリマー化単位の重量パーセンテージは、エチレン酸コポリマーの総重量に基づき、コポリマー化単位の重量パーセンテージの合計は100重量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部は中和され、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成する。
【0153】
このようなターポリマーアイオノマーは、国際特許出願番号WO 2015/199750A1およびWO 2014/100313A1に一般に開示されており、ならびに、US仮出願Ser.No.62/333,371(2016年5月9日出願)に以前に組み込まれている。
【0154】
上記のようなジポリマーまたはターポリマーの一実施形態において、α,β-不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0155】
上記のようなターポリマーの一実施形態において、α,β-不飽和カルボン酸エステルは、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、またはそれらの混合物である。
【0156】
上記のようなターポリマーの一実施形態において、該コポリマーは、(i)、(ii)および(iii)のコポリマー化単位から本質的になる。
【0157】
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーを、上記の多層ポリマー中間層において使用することができる。これらの材料は一般的に、US特許出願公開第2017/0320297A1号に記載されているように、改善された音響特性を有する、ポリマー中間層シートおよび該シートを含む積層体を提供する。一般的にいえば、「エラストマー」とも称されるこれらの材料としては、一般的に、ソフトセグメントとハードセグメントとを有する材料、例えば以下が挙げられる:ポリスチレン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリブタジエン、ポリイソプレン/ハードセグメント:ポリスチレン)、ポリオレフィン系エラストマー(ソフトセグメント:エチレンプロピレンゴム/ハードセグメント:ポリプロピレン)、ポリビニルクロリド系エラストマー(ソフトセグメント:ポリビニルクロリド/ハードセグメント:ポリビニルクロリド)、ポリウレタン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネート/ハードセグメント:ポリウレタン)、ポリエステル系エラストマー(ソフトセグメント:脂肪族ポリエステル/ハードセグメント:芳香族ポリエステル)、ポリエーテルエステル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル/ハードセグメント:ポリエステル)、ポリアミド系エラストマー(ソフトセグメント:ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステル、またはポリエーテル/ハードセグメント:ポリアミド(ナイロン樹脂など)、ポリブタジエン系エラストマー(ソフトセグメント:アモルファスブチルゴム/ハードセグメント:シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン樹脂)、アクリルエラストマー(ソフトセグメント:ポリアクリレートエステル/ハードセグメント:ポリメチルメタクリレート)。なお、上記の熱可塑性エラストマーは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0158】
熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは、約5質量%以上、または約7質量%以上、または約8質量%以上、または約10質量%以上、または約14質量%以上、または約16質量%以上、または約18質量%以上である。ハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは、約40質量%以下、または約30質量%以下、または約20質量%以下である。ハードセグメントの含有量が約5質量%未満である場合、層Bの成形が困難になり、tanδのピーク高さが小さくなり、積層体の曲げ剛性が小さくなる、または、高周波領域の遮音性が低下する傾向がある。ハードセグメントの含有量が約40質量%より多い場合、熱可塑性エラストマーの特性が発揮されにくくなり、遮音性能の安定性が低下したり、室温付近での遮音特性が低下したりする傾向がある。
【0159】
熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは、約60質量%以上、または約70質量%以上、または約80質量%以上である。ソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは、約95質量%以下、または約92質量%以下、または約90質量%以下、または約88質量%以下、または約86質量%以下、または約84質量%以下、または約82質量%以下である。ソフトセグメントの含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーの特性が発揮されにくくなる。ソフトセグメントの含有量が約95質量%より多い場合、層Bの成形が困難になり、tanδのピーク高さが小さくなり、積層体の曲げ剛性が小さくなる、または、高周波領域の遮音性が低下する傾向がある。
【0160】
ここで、複数の熱可塑性エラストマーが混合されている場合、熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとソフトセグメントの含有量は、それぞれ、混合物の平均値と考えられる。
【0161】
成形性と遮音性を互いに両立させる観点から、熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロックコポリマーを用いることがより好ましい。さらに、遮音性をさらに向上させる観点から、ポリスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0162】
さらに、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの架橋ゴムを、熱可塑性エラストマーとして使用してよい。
【0163】
熱可塑性エラストマーは、好ましくは、芳香族ビニルモノマーと、ビニルモノマーまたは共役ジエンモノマーとのコポリマー、または、該コポリマーの水素化生成物である。遮音性を示すゴムとしての機能とプラスチックとしての機能とを互いに両立させる観点からは、該コポリマーは、好ましくは、芳香族ビニルポリマーブロックと脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックとを有するブロックコポリマー、例えばポリスチレン系エラストマーである。
【0164】
芳香族ビニルポリマーブロックとビニルポリマーブロックまたは共役ジエンポリマーブロックとを有するコポリマー、例えば、芳香族ビニルポリマーブロックと脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックとを有するブロックコポリマーを、熱可塑性エラストマーとして使用する場合、これらのポリマーブロックの結合形態は特に限定されず、線状の結合形態、分岐状の結合形態、放射状の結合形態、およびこれらの2つ以上を組み合わせた結合形態のいずれであってもよい。これらのうち、線状の結合形態が好ましい。
【0165】
芳香族ビニルポリマーブロックを「a」と表し、脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックを「b」と表すと、線状の結合形態の例としては以下が挙げられる:a-bで表されるジブロックコポリマー、a-b-aまたはb-a-bで表されるトリブロックコポリマー、a-b-a-bで表されるテトラブロックコポリマー、a-b-a-b-aまたはb-a-b-a-bで表されるペンタブロックコポリマー、(a-b)nX型コポリマー(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)、ならびにこれらの混合物。これらのうち、ジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーが好ましく、トリブロックコポリマーは、より好ましくは、a-b-aで表されるトリブロックコポリマーである。
【0166】
ブロックコポリマーにおける芳香族ビニルモノマー単位と脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位との合計量は、モノマー単位全体に対して、好ましくは約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上である。なお、ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックの一部または全体が水素化されていてもよい。
【0167】
ブロックコポリマーにおける芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーのモノマー単位の全体に対して、好ましくは約5質量%以上、または約7質量%以上、または約8質量%以上、または約14質量%以上、または約16質量%以上、または約18質量%以上である。芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーのモノマー単位の全体に対して、好ましくは約40質量%以下、または約30質量%以下、または約25質量%以下、または約20質量%以下である。
【0168】
ブロックコポリマーにおける芳香族ビニルモノマー単位の含有量が約5質量%未満である場合、A層の成形が難しい、熱によりガラスのズレが生じる、tanδのピークの高さが小さい、積層板の曲げ剛性が小さい、または高周波域での遮音性が低下する傾向がある。ブロックコポリマーにおける芳香族ビニルモノマー単位の含有量が約40質量%を超える場合、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくく、または、遮音性の安定性が低下する傾向がある。
【0169】
ブロックコポリマーにおける芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーを合成する際の各モノマーの供給割合、またはブロックコポリマーの1H-NMR等の測定結果から決定することができる。ここで、ブロックコポリマーにおける芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーを合成する際の各モノマーの供給割合、またはブロックコポリマーのH-NMR等の測定結果から決定することができる。ここで、複数のブロックコポリマーが混合されている場合、そのブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、該混合物の平均値とみなす。
【0170】
芳香族ビニルポリマーブロックにおいて、芳香族ビニルモノマー以外のモノマーは、少量である限りコポリマー化させてよい。芳香族ビニルポリマーブロックにおける芳香族ビニルモノマー単位の割合は、芳香族ビニルポリマーブロックにおけるモノマー単位全体に対して、好ましくは、約80重量%以上、または約95重量%以上、または約98重量%以上である。
【0171】
芳香族ビニルポリマーブロックを構成する芳香族ビニルモノマーの例としては、以下が挙げられる:スチレン;アルキルスチレン、例えばα-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、および4-ドデシルスチレン;アリールスチレン、例えば2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、および2-ビニルナフタレン;水素化スチレン;アルコキシスチレン;ビニル安息香酸エステル;など。これらの芳香族ビニルモノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0172】
ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーのモノマー単位の全体に対して、好ましくは、約60質量%以上、または約70質量%以上、または約75質量%以上、または80質量%以上である。ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーのモノマー単位の全体に対して、好ましくは、約95質量%以下、または約92質量%以下、または約90質量%以下、または約88質量%以下、または約86質量%以下、または約84質量%以下、または約82質量%以下である。
【0173】
ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくく、または遮音性能の安定性が低下する傾向がある。ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量が約95質量%よりも多い場合、層Bの成形が困難になり、tanδのピーク高さが小さくなり、積層体の曲げ剛性が小さくなる、または、高周波領域の遮音性が低下する傾向がある。
【0174】
ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーを合成する際の各モノマーの供給割合、またはブロックコポリマーのH-NMR等の測定結果から決定することができる。ここで、複数のブロックコポリマーが混合されている場合、該ブロックコポリマーにおける脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、該混合物の平均値とみなす。
【0175】
脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックにおいて、脂肪族不飽和炭化水素モノマー以外のモノマーは、少量である限りコポリマー化させてよい。脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロック中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の割合は、脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックにおけるモノマー単位全体に対して、好ましくは、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上である。
【0176】
脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックを構成する脂肪族不飽和炭化水素モノマーの例としては、以下が挙げられる:エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-フェニル-1-ブテン、6-フェニル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2-フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、3-フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4-ジクロロ-1-ブテン、ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、アセチレンなど。これらの脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0177】
入手容易性および取り扱い性の観点から、脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、好ましくは、2個以上の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素、または4個以上の炭素原子を有する脂肪族炭化水素であり、好ましくは、12個以下の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素であり、または8個以下の炭素原子を有する脂肪族炭化水素である。これらのうち、ブタジエン、イソプレン、およびブタジエンとイソプレンの組み合わせが好ましい。
【0178】
さらに、入手容易性および取り扱い性、ならびに合成容易性の観点から、脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、好ましくは共役ジエンである。熱安定性向上の観点から、脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックの構成単位として共役ジエンを使用する場合、該共役ジエンは、その一部または全体が水素添加された水素添加生成物であることが好ましい。その場合、水素添加率は、好ましくは80%以上、または90%以上である。本明細書における水素添加率とは、水素添加反応前後のブロックコポリマーのヨウ素価を測定することにより得られる値である。
【0179】
機械的特性と成形加工性の観点から、ブロックコポリマーの重量平均分子量は、好ましくは約30,000以上、または約50,000以上であり、好ましくは約400,000以下、または約300,000以下である。ブロックコポリマーの数平均分子量に対する重量平均分子量の割合(Mw/Mn)は、好ましくは約1.0以上であり、好ましくは約2.0以下、または約1.5以下である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により決定されるポリスチレン換算の重量平均分子量をいい、数平均分子量とは、GPC測定により決定されるポリスチレン換算の数平均分子量をいう。
【0180】
ブロックコポリマーの製造方法は特に限定されないが、該ブロックコポリマーは、例えば、アニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法等により製造できる。例えば、アニオン重合の場合、その具体例は以下である:
(i)開始剤としてアルキルリチウム化合物を用いて、芳香族ビニルモノマー、共役ジエンモノマー、および、次いで芳香族ビニルモノマーを順次重合させる方法;
(ii)芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとを開始剤としてアルキルリチウム化合物を用いて順次重合させた後、次いで、カップリング剤を加えてカップリングさせる方法;
(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用いて、共役ジエンモノマー、および、続いて芳香族ビニルモノマーを順次重合させる方法;
など。
【0181】
脂肪族不飽和炭化水素モノマーとして共役ジエンを使用する場合、アニオン重合の際に有機ルイス塩基を加えることにより、熱可塑性エラストマーの1,2-結合量と、熱可塑性エラストマーの3,4-結合量を高めることができ、熱可塑性エラストマーの1,2-結合量および3,4-結合量は、有機ルイス塩基の添加量によって容易に制御することができる。それらを制御することにより、tanδのピーク温度または高さを調整することができる。
【0182】
有機ルイス塩基の例としては以下が挙げられる:エステル、例えばエチルアセテート;アミン、例えばトリエチルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)およびN-メチルモルホリン;窒素含有複素環芳香族化合物、例えばピリジン;アミド、例えばジメチルアセトアミド;エーテル、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド;ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン;など。
【0183】
非水素添加ポリスチレン系エラストマーに水素添加反応を施す場合、水素添加反応は、得られた非水素添加ポリスチレン系エラストマーを水素添加触媒に対して不活性な溶媒に溶解させることにより、または、該非水素添加ポリスチレン系エラストマーに反応液から単離することなく水素添加触媒の存在下で直接水素を反応させて、行うことができる。水素添加率は、好ましくは、約60%以上、または約80%以上、または約90%以上である。
【0184】
水素添加触媒の例としては以下が挙げられる:Raneyニッケル;金属(例えばPt、Pd、Ru、Rhおよび/またはNi)が担体(例えばカーボン、アルミナおよび/またはケイソウ土)に担持された不均一触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物および/またはアルキルリチウム顔愚物との組合せからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒;など。水素添加反応は、一般に、約0.1MPa以上、約20MPa以下の水素圧、および、約20℃以上、約250℃以下の反応温度、および、約0.1時間以上、約100時間以下の反応時間の条件下で行うことができる。
【0185】
好ましい一実施形態において、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントブロックが島成分として含まれ、ソフトセグメントブロックが海成分として含まれる、海-島相分離構造を有する。合わせガラス用の中間層において使用される層において、島成分の相分離サイズが大きくなる場合があり、そのため、合わせガラス用の中間層は、合わせガラスを製造する際に収縮し、該合わせガラスのヘイズが低下することがわかり、また、特定の構造を有する合わせガラス用中間層を用いる合わせガラスは、厚さを薄くした場合でさえ優れた遮音性を有し、低い収縮性も有することがわかった。
【0186】
より具体的には、この実施形態では、熱可塑性エラストマーはハードセグメントブロックおよびソフトセグメントブロックを含み、層Bは海-島相分離構造を有し、該構造において、ハードセグメントブロックは島成分として含まれ、ソフトセグメントブロックは海成分として含まれ、小角X線散乱測定により層Aについて得られた、ハードセグメントブロックまたはソフトセグメントブロックによる周期散乱またはコヒーレント散乱の方位強度分布において、強度が最大となる方位を含む180°の任意の方位範囲での、最大強度値および最小強度値に基づいて、配向度(1)が以下の式(I)で定義されるとき、配向度(1)は約0.9以下である。
【0187】
配向度(1)=(最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値) (I)
【0188】
下記式(II)で定義される配向度(2)は約10以下であることが好ましい。
【0189】
配向度(2)=最大強度値/最小強度値 (II)
【0190】
また、相Bに対して略平行な面に沿って層Bの厚さ方向の中央領域を切断することによって得られた切断面の任意の5箇所において、200nm×200nmの範囲の領域の原子間力顕微鏡観察により得た各相画像において、最も大きい長軸サイズを有する島成分を、略楕円形状または略連続直線形状を有する島成分から選択したとき、選択された島成分の長軸サイズの平均は約100nm以下であることが好ましい。
【0191】
適当な熱可塑性エラストマーの具体例は、例えば米国特許出願公開No.2010/0239802を参照することにより見出すことができる。
【0192】
好ましい一実施形態において、熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物単位から主に構成されるポリマーブロック(A)と、1,3-ブタジエン単位から主に構成される、または、イソプレン単位および1,3-ブタジエン単位から主に構成される、ポリマーブロック(B)とを少なくとも含むブロックコポリマーを水素化することによって形成される水素化ブロックコポリマーであり、ここで、ポリマーブロック(A)の含有量は水素化ブロックコポリマーの総量に基づいて約5質量%~約40質量%であり、ここで、ポリマーブロック(B)は約70%以上の水素化率を有し、ここで、水素化ブロックコポリマーは約-45℃~約30℃のガラス転移温度を有する。
【0193】
別の好ましい実施形態において、熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物単位から主に構成されるポリマーブロック(C)と、1,3-ブタジエン単位から主に構成される、または、イソプレン単位および1,3-ブタジエン単位から主に構成されるポリマーブロック(D)とを少なくとも含むブロックコポリマーを水素化することによって形成される水素化ブロックコポリマーであり、ここで、ポリマーブロック(C)の含有量は水素化ブロックコポリマーの総量に基づいて約10質量%~約40質量%であり、ここで、ポリマーブロック(D)は約80%以上の水素化率を有し、ここで、水素化ブロックコポリマーは約-45℃未満のガラス転移温度を有する。
【0194】
上記の2つの好ましい実施形態において、望ましくは、芳香族ビニル化合物はスチレンである、および/または、ポリマーブロック(B)および(D)は、イソプレン単位および1,3-ブタジエン単位から主に構成される、および/または、水素化ブロックコポリマーはA1-B-A2またはC1-D-C2タイプの構造を有するトリブロックコポリマーである。
【0195】
〔エチレンビニルアセテート(EVA)〕
本発明において、音響減衰層は、例えば米国特許出願公開No.2016/0167348A1に開示されているような、エチレンビニルアセテート(EVA)タイプ材料であり得る。好ましくは、EVA材料は、約25重量%より多く、または約30重量%~、約40重量%まで、または約35重量%まで、または約33重量%までのビニルアセテート含量を有し、該材料を当業者に既知の1つ以上の方法(例えば、過酸化物架橋剤を用いる熱的架橋)によって架橋した後、少なくとも約14g/10分の初期メルトフローインデックス、および、約2g/10分以下、または約1.5g/10分以下の最終メルトフローインデックスを有する、エチレンビニルアセテートを含む。
【0196】
〔シラン〕
本発明に従い使用するに適したシランは、ジアルコキシシランである。理論に拘束されるものではないが、シランの加水分解されたシラノール部分は、ガラス表面(シラノール)と接着結合を形成することができ、それによって、ポリマーとガラス表面との間の界面での接着力を高めることができると考えらえる。シラン分子の残りの部分は、周囲のアイオノマー樹脂「マトリックス」と、何らかの形で、一定程度、「アンカー」すべきである。これを達成する1つの方法は、シランがいずれかの結合に、好ましい方法で、化学的に、またはイオン結合または水素結合を介して、または、十分なファンデルワールス力を介して相互作用できるように、あるいは、立体的に、中間層とガラス表面との間を「橋渡し」できるようなサイズおよび形状となるように、官能基を選択することであり、それによって、有利なシラン添加剤なしで同じ中間層の接着性が高くなる。
【0197】
一実施形態において、それぞれのアルコキシ基は個々に1~3個の炭素原子を含有する。適当な例としては、以下が挙げられる:ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシル(メチル)ビニルシラン、1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシルメチルビニルシラン、メチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピル-N-シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン。
【0198】
別の実施形態において、アルコキシ基に加えて、該シランは、アイオノマー樹脂マトリックス中に結合する「活性」化学基、例えば、アミノ基またはグリシジル基などのカルボン酸反応性基も含有する。適当な例としては、以下が挙げられる:γ-アミノプロピル-N-シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン。
【0199】
望ましくは、シランは周囲条件下(例えば、20℃)で液体である。そのような特定の例としては、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CAS#3069-29-2)および3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(CAS#2897-60-1)が挙げられる。
【0200】
別の実施形態において、アルコキシ基に加えて、該シランは、中間層樹脂マトリックス中への結合または接着の程度を低減することができる相互作用が少ない化学基、例えばメチル基、フェニル基またはオクタデシル基を含有してもよい。
【0201】
別の実施形態において、該コーティングは、ガラス基材と、堆積される中間層との両方に十分なレベルの接着を有するが、十分に大きい力が積層構造に作用する際(例えば衝撃事象)には、凝集破壊様式で第1に破壊(剥離)する能力を供するように処方される。
【0202】
〔追加の接着改質剤〕
シランの使用に加えて、所望される場合、中間層のガラス等への接着性をさらに制御することも可能である。
【0203】
例えば、官能基がカルボキシル基およびカルボキシル基の誘導体基(以下、カルボキシル基と称する)から選択される少なくとも1つの基である反応性官能基含有オレフィン性ポリマー(以下、「カルボキシル基含有オレフィン系重合体」と称する)も、接着改質剤として使用することができる。適当なカルボキシル基含有オレフィン系重合体は、例えば米国特許No.7989083に開示されている。
【0204】
十分な積層体の完全性の維持(例えば、層間剥離欠陥の防止)および破砕後の状態でのガラスの十分な維持のためには、臨界的最小レベルの接着が必要であるが、得られる積層体の衝撃性能の最適化または調整は、意図的に行うことができる。接着改質剤の最適添加量(累積)は、使用する添加剤や接着改質される樹脂によって異なるが、得られる積層体のガラスに対する接着力が、概ね、(国際特許出願WO03/033583A1などに記載される)ポンメル試験において約3以上、約10以下となるように調整されることが好ましい。特に、高い耐貫通性が要求される場合、該接着力が約3以上、約6以下となるように接着改質剤の添加量を調整することがより好ましく、一方、高いガラス飛散防止性が要求される場合、該接着力が約7以上、約10以下となるように接着改質剤の添加量を調整することがより好ましい。
【0205】
〔他の添加剤〕
本発明の樹脂組成物およびマスターバッチは、上記シランおよび他の接着改質剤の他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、遮熱材(赤外線吸収剤)など、またはこれらの混合物を含有してもよい。このような他の添加剤は、一般的な意味で当業者によく知られている。
【0206】
酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。これらのうち、フェノール系酸化防止剤が好ましく、とりわけ、アルキル置換型フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0207】
フェノール系酸化防止剤の例としては、以下が挙げられる:アクリレート系化合物、例えば2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、および2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート;アルキル-置換型フェノール系化合物、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3-トリックス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンおよびトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート);トリアジン基含有フェノール系化合物、例えば1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジンおよび2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン;など。
【0208】
リン系酸化防止剤の例としては、以下が挙げられる:モノホスファイト系化合物、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、および10-デシルオキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン;ジホスファイト系化合物、例えば4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12-C15)ホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12-C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、およびテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイト;など。これらのうち、モノホスファイト系化合物が好ましい。
【0209】
硫黄系酸化防止剤の例としては、以下が挙げられる:ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなど。
【0210】
これら酸化防止剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。最終的な樹脂組成物において、酸化防止剤は、アイオノマー樹脂100重量部に基づいて、通常約0.001重量部以上、または約0.01重量部以上で使用される。さらに、使用される酸化防止剤の量は、アイオノマー樹脂100重量部に基づいて、通常約5重量部以下、または約1重量部以下である。紫外線吸収剤の例としては、以下が挙げられる:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、例えば2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、および2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)トリアゾール;ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、例えば2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、および4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ フェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;ベンゾエート系紫外線吸収剤、例えば2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、およびヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;など。
【0211】
これら紫外線吸収剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。最終的な樹脂組成物において、使用される紫外線吸収剤の量は、アイオノマー樹脂の重量に基づいて、通常約10重量ppm以上、または約100重量ppm以上である。さらに、使用される紫外線吸収剤の量は、アイオノマー樹脂の重量に基づいて、通常約50,000ppm以下、または約10,000ppm以下である。
【0212】
いくつかの実施形態において、2種以上のUV吸収剤を組み合わせて使用することも可能である。
【0213】
他の実施形態では、UV吸収剤は添加されず、または積層体は実質的にUV
吸収剤不含である。
【0214】
光安定剤の例としては、ヒンダードアミン系物質、例えば株式会社ADEKA製「ADEKA STAB LA-57」(商品名)、およびチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「TINUVIN 622」(商品名)が挙げられる。
【0215】
積層体に遮熱性機能を持たせるために、遮熱性微粒子または遮熱性化合物を遮熱材として本発明の中間層に組み込み、合わせガラスを製造する場合、1,500nmの波長における透過率は、約50%以下に調整することが可能であり、または、TDS値(ISO 13837:2008より算出)は、約43%未満に調整することが可能である。
【0216】
遮熱性微粒子の例としては、以下が挙げられる:金属ドープ酸化インジウム、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)、金属ドープ酸化スズ、例えばアンチモンドープ酸化スズ(ATO)、金属ドープ酸化亜鉛、例えばアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、一般式:MWO(Mは金属元素を表す;mは約0.01以上約1.0以下である;および、nは約2.2以上約3.0以下である)で表される金属元素複合酸化タングステン、亜鉛アンチモネート(ZnSb)、六ホウ化ランタンなどである。これらのうち、ITO、ATO、および金属元素複合酸化タングステンが好ましく、金属元素複合酸化タングステンがより好ましい。金属元素複合酸化タングステン中のMで表される金属元素の例としては、Cs、Tl、Rb、Na、Kなどが挙げられ、特にCsが好ましい。遮熱性の観点から、mは好ましくは約0.2以上、または約0.3以上であり、好ましくは約0.5以下、または約0.4以下である。
【0217】
最終的な積層体の透明性の観点から、遮熱性微粒子の平均粒子径は、好ましくは約100nm以下、または約50nm以下である。なお、ここでいう遮熱性粒子の平均粒子径は、レーザー回折装置で測定されるものを意味する。
【0218】
最終的な樹脂組成物において、遮熱性微粒子の含有量は、アイオノマー樹脂の重量に対して、好ましくは約0.01重量%以上、または約0.05重量%以上、または約0.1重量%以上、または約0.2重量%以上である。さらに、遮熱性微粒子の含有量は、好ましくは約5重量%以下、または約3重量%以下である。
【0219】
遮熱性化合物の例としては、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物などが挙げられる。遮熱性をさらに改善する観点から、遮熱性化合物は金属を含有することが好ましい。金属の例としては、Na、K、Li、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、V、Ca、Alなどが挙げられ、Niがとりわけ好ましい。
【0220】
遮熱性化合物の含有量は、アイオノマー樹脂の重量に基づいて、好ましくは約0.001重量%以上、または約0.005重量%以上、または約0.01重量%以上である。さらに、遮熱性化合物の含有量は、好ましくは約1重量%以下、または約0.5重量%以下である。
【0221】
〔密着性改善組成物の製造〕
分散コーティング組成物は、当技術分野で知られる他の添加剤を含んでもよい。例えば、該組成物は、ワックス添加剤、例えばマイクロクリスタリンワックスまたはポリエチレンワックスを含んでよく、これはアンチブロッキング剤として機能するだけでなく、最終的にコーティングされた基材の摩擦係数を改善する。他の種類の添加剤としては、室温でコーティングの粘着性を低下させるヒュームドシリカ、フィラー、架橋剤、帯電防止剤、消泡剤、染料、光沢剤、加工助剤、流動性向上添加剤、潤滑剤、染料、顔料、難燃剤、耐衝撃性改良剤、成核剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0222】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、カーボンブラック、セラミック、白亜、またはそれらの混合物が挙げられる。有機フィラーとしては、天然デンプン、加工デンプン、化学加工デンプン、米デンプン、コーンスターチ、木粉、セルロース、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0223】
〔表面処理された中間層の製造〕
コーティング方法としては、ブレンドの組合せが水性分散体の形態である実施形態、ブレンドの組合せが溶融形態である押出コーティング、および、ブレンドの組合せが予備成形フィルムの形態であるラミネーション法が挙げられる。コーティング組成物を、基材の片面または両面、ならびに、ガラスまたは他の硬質基材の表面に適用することができる。
【0224】
さらに、中間層内に直接組み込むための高度にグラフト化されたシラン酸コポリマーの製造、表面に共押出しまたは貼り合わされ、または、何らかの方法(静電粉体塗装、インクジェット、グラビア印刷、スロットダイコーティング、または当技術分野で知られる任意の他の手段)で中間層の表面に配置される。
【0225】
〔シート/中間層〕
本発明の樹脂組成物のシートは、ガラス積層体の中間層を作製するのに適した従来の溶融押出または溶融成形プロセスによって製造することができる。そのようなプロセスは、以前に組み込まれた刊行物によって例示されるように、関連技術の当業者には周知である。
【0226】
シートは、単層シートまたは多層シートであり得る。例えば、2つの外層と任意に他の内層との間に挟まれた機能性コア層を有する多層シートを形成することができる。一実施形態において、多層中間層の外層の少なくとも1つ(または両方)は、本発明による樹脂組成物のシートである。
【0227】
機能性コア層の一例としては以下が言及できる:音響減衰層、例えばポリスチレンコポリマー中間膜(JP2007-91491A参照)、ポリビニルアセタール層(米国特許出願公開No.2013/0183507、米国特許No.8741439、JP出願公開公報No.2012-214305A、および米国特許No.8883317参照)、粘弾性アクリル層(米国特許No.7121380参照)、スチレンとゴム系樹脂モノマーとのコポリマーを含有する層(JP出願公開公報No.2009-256128A参照)、ポリオレフィンを含有する層(米国特許出願公開No.2012/0204940参照)、エチレン/ビニルアセテートポリマーを含有する層(国際特許出願公開No.WO 2015/013242A1)、エチレン酸コポリマーを含有する層(国際特許出願公開No.WO 2015/085165A1)。
【0228】
特定の一実施形態では、中間層は、例えば国際特許出願公開No.WO 2016/076336A1、WO 2016/076337A1、WO 2016/076338A1、WO 2016/076339A1、およびWO 2016/076340A1、ならびに米国特許出願No.15/588986(2017年5月8日出願)に開示される熱可塑性エラストマー樹脂である。より特定の実施形態において、熱可塑性エラストマー樹脂は以下を有するブロックコポリマーの水素化生成物である:
(i)芳香族ビニルポリマーブロックに基づいて、約60mol%以上の芳香族ビニルモノマー単位を含有する、芳香族ビニルポリマーブロック(A)、および
(ii)脂肪族不飽和ポリマーブロックに基づいて、約60mol%以上の共役ジエンモノマー単位を含有する、脂肪族不飽和ポリマーブロック(B)、
ここで、該脂肪族不飽和ポリマーブロック(B)は、共役ジエンモノマー単位として、合計して約50mol%以上のイソプレン単位およびブタジエン単位を含有し、
ここで、共役ジエンモノマー単位から誘導された脂肪族不飽和ポリマーブロックの炭素-炭素二重結合の残留割合は、約2~約40mol%である。
【0229】
さらに、中間層は全体として、実質的に一定の厚さを有する対称であってよく、または、中間層の一部が他の部分よりも厚い厚さを有する非対称であることもできる(例えば、米国特許出願No.15/588986(2017年5月8日出願)および米国特許仮出願No.62/414015(2016年10月28日出願)において議論されるような、部分的または完全な「くさび」)。さらに、積層体は実質的に透明であるか、または、全体または部分的に着色を有することができる(例えば、米国特許出願No.15/588986(2017年5月8日出願)および米国特許仮出願No.62/414015 (2016年10月28日出願)において議論されるような「シェードバンド」)。
【0230】
くさびのような非対称構造においては、中間層の薄い部分は対称的な構造の厚さを有するべきであるが、厚い部分の厚みはくさび角度などのさまざまなパラメータに依存する。くさび形の中間層の一実施形態において、より厚いエッジは、約1850μm以下、または約1600μm以下、または約1520μm以下、または約1330μm以下、または約1140μm以下の厚さを有し、より薄いエッジは、約600μm以上、または約700μm以上、または約760μm以上の厚さを有する。
【0231】
さらに、積層体製造における脱気を補助するための従来既知の方法により、本発明の中間層の表面に、例えばエンボス加工などの凹凸構造が形成されていてもよい。エンボスの形状は特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。
【0232】
一実施形態において、合わせガラス用の中間層の少なくとも1つの表面(好ましくは両方の表面)を成形する。合わせガラス用の中間層の少なくとも1つの表面を成形することにより、合わせガラスを製造する場合に、合わせガラス用中間層とガラスとの間の界面に存在する気泡が合わせガラスの外側に抜けやすくなるため、合わせガラスの外観を良好にすることができる。合わせガラス用中間層の少なくとも1つの表面をエンボスロール法によって成形することが好ましい。合わせガラス用中間層の表面を成形することによって、合わせガラス用中間層の表面に凹部および/または凸部が形成される。
【0233】
エンボスロール法に使用するエンボスロールは、例えば、所望の凹凸パターンを有し、金属ロールの表面に該凹凸パターンを転写する、彫刻ミル(マザーミル)を用いることによって、製造することができる。さらに、レーザーエッチングによりエンボスロールを製造することもできる。さらに、上記のようにして金属ロールの表面に微細な凹凸パターンを形成後、微細な凹凸パターンを有する表面に、アルミニウムオキサイド、シリコンオキサイド、またはガラスビーズなどの研磨剤を用いてブラスト処理を施すことにより、より微細な凹凸パターンを形成することもできる。
【0234】
さらに、エンボスロール法で使用するエンボスロールには、離型処理が施されていることが好ましい。離型処理を施していないエンボスロールを使用する場合、合わせガラス用中間層をエンボスロールから剥離することが難しくなる。離型処理のための方法の例としては、シリコーン処理、テフロン(登録商標)処理、プラズマ処理などの既知の方法が挙げられる。
【0235】
エンボスロール法などにより形成された合わせガラス用中間層の表面の凹部の深さおよび/または凸部の高さ(以下、「エンボス部の高さ」ということがある)は、約5μm以上、または約10μm以上、または約20μm以上である。エンボス部の高さは、通常、約150μm以下、または約100μm以下、または約80μm以下である。
【0236】
本発明において、エンボス部の高さとは、JIS B 0601(2001)において定義される最大高さ粗さ(Rz)を表す。エンボス部の高さは、例えば、レーザー顕微鏡等の共焦点原理を利用して測定できる。なお、エンボス部の高さ、すなわち凹部の深さや凸部の高さは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更してよい。
【0237】
エンボスロール法等により付与される形状の形態の例としては、格子、斜め格子、斜め楕円、楕円、斜め溝、溝等が挙げられる。このような形状の傾斜角は、通常、フィルムの流れ方向(MD方向)に対して約10°~約80°である。また、形状パターンは、規則的なパターンであっても、ランダムマットパターンなどの不規則なパターンであってもよいし、または米国特許第7351468号に開示されているようなパターンであってもよい。エンボスロール法等による成形は、合わせガラス用中間層の片面で行ってよく、または、両面で行ってもよいが、より典型的には両面で行う。
【0238】
〔積層体〕
本発明の積層体は、従来公知の方法で製造できる。その例としては、例えば、真空ラミネータを用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。さらに、仮接着後、得られた積層体をオートクレーブに入れて本接着する方法も用いることができる。これらの方法の詳細な説明は、米国特許第7642307などに記載されている。
【0239】
真空ラミネータを使用する場合、例えば、太陽電池の製造に使用される既知の装置を使用することができ、アセンブリは、約1×10-6MPa以上、約3×10-2MPa以下の減圧下で、約100℃以上、または約130℃以上、および約200℃以下、または約170℃以下の温度で、ラミネートされる。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば、EP公開特許出願公報No.1235683A1(CA 公開特許出願No.2388107A1)に記載され、例えばアセンブリは約2×10-2MPaのもと約130℃以上約145℃以下でラミネートされる。
【0240】
ニップロールを使用する場合、例えば、スキン樹脂の流動開始温度以下の温度で最初の仮接着を行った後、流動開始温度に近い条件で仮接着をさらに行う方法が例示的に挙げられる。具体的には、例えば、約30℃以上約100℃以下で、赤外線ヒーターなどによりアセンブリを加熱し、次いで、ロールで脱気し、約50℃約150℃以下でさらに加熱し、続いてロールで接着を行い、接着または仮接着を達成する方法が挙げられる。
【0241】
仮接着後に補助的に実施されるオートクレーブ処理は、モジュールの厚さまたは構成によって異なるが、例えば約1MPa以上約15MPa以下の圧力のもと、約120℃以上約160℃以下の温度で、約0.5時間以上約2時間以下で行われる。
【0242】
代わりに、周知の「非オートクレーブ」プロセスを積層体処理に使用してもよい。
【0243】
有利には、合わせガラスの調製に使用されるガラスは特に限定されない。無機ガラス、例えばフロート板ガラス、研磨板ガラス、形状化ガラス、剛板ガラス、熱線吸収ガラス、および、従来既知の有機ガラス、例えばポリメチルメタクリレートおよびポリカーボネートなどを使用することができる。これらのガラスは、無色、有色、透明または不透明ガラスのいずれであってもよい。これらのガラスは、単独で使用してもよいし、2つ以上を組合せて使用してもよい。
【0244】
本発明の合わせガラスは、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、またはヘッドアップディスプレイ用ガラス;窓、壁、屋根、サンルーフ、防音壁、展示窓、バルコニー、手すり壁などの建築部材;会議室の仕切りガラス部材;ソーラーパネル;などに好適に使用できる。そのような使用に関するさらなる情報は、以前に組み込まれた刊行物を参照することで見出すことできる。
【0245】
一実施形態において、本発明は、接着性ポリマー中間層に接着された少なくとも1つのガラス基材の積層体を含む積層構造に関する。接着性ポリマー中間層(API)の内部領域または区画は、分離区画を含む。
【0246】
前述のように、分離区画は実質的に分離しており、すなわち、区画は、接着性ポリマー中間層(API)表面の概して全体領域を平面方向に覆っていても、覆っていなくてもよく、画定された境界で互いに実質的に分離されている。本発明において、材料の制限および/または材料の製造方法の制限が与えられ、区画の分離性のランダムな欠陥-例えば実質的に分離された2つの区画が、互いに僅少に「流れ込み(bleed into)」得る-が認められる可能性がある。所定の平面内の分離区画は、少なくとも1つのガラス基材、またはAPI層と、同一平面上であり得る。分離剥離区画は、少なくとも1つの物理的および/または化学的特性においてAPIとは異なる。
【0247】
一実施形態において、積層構造は、1よりも多いガラス基材と、その間の対応するポリマー中間層を含み得る。例えば、ガラス基材の数は、1、2、3、・・・18、19、および20であり得る。
【0248】
以下に説明する実施形態は、2つのガラス基材を1つのAPI層と共に使用するが、単なる例としてにすぎない。説明は、対応する複数のAPI層を伴う複数のガラス基材に適用されることが理解される。
【0249】
一実施形態において、本発明の積層された構造は、1より多くの分離剥離区画を含む。
【0250】
一実施形態において、分離剥離区画は、APIとは化学的および/または物理的に異なるポリマー材料を含む。例えば、接着性分離剥離区画およびAPIは、分子量、結晶化度、密度、ガラス転移温度、メルトフローインデックス、化学組成、添加剤、化学修飾、またはこのような特徴の1つ以上の組合せに関して異なる。
【0251】
別の実施形態において、本発明は、接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、第1分離区画または第2分離区画の一方は第1ポリマー材料を含み、前記第1分離区画および第2分離区画の他方は、前記第1ポリマー材料とは化学的および/または物理的に異なる第1材料を含む。さらに別の実施形態において、本発明は接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、第1材料は以下を特徴とする:(i)第1ポリマー材料とは異なる分子量、(ii)第1ポリマー材料とは異なる結晶化度、(iii)第1ポリマー材料とは異なる密度、(iv)第1ポリマー材料とは異なるガラス転移温度、(v)第1ポリマー材料とは異なるメルトフローインデックス、または(vi)前記特徴の1つ以上の組み合わせ。
【0252】
別の態様において、本発明は、制御された剥離処理を伴う剥離領域を提供し、これは、実質的に分離し、高い剥離エネルギーおよび低い剥離エネルギーを有する種々の剥離靭性を有する剥離区画を形成する。
【0253】
〔制御された剥離区画の特徴〕
(分離剥離区画間での剥離接着力の違い)
本発明の一実施形態において、ポリマー中間層は、最小剥離接着力(Zmin)を有する区画と、最大剥離接着力(Zmax)を有する区画との間の平均剥離接着力の差が、少なくとも約2倍であるような、1より多い分離区画または制御された剥離区画(剥離区画とも称される)を含む。別の言い方をすれば、(Zmax/Zmin)≧2である。本発明の一実施形態において、積層体は、APIの表面に複数の剥離区画を有する中間層であって、任意の2つの区画ZとZとの間の剥離強度または平均剥離接着力の差が0以上、またはそれらの比が1以上であるような、中間層を含む。言い換えると、Z-Z≧0、またはZ/Z≧1である。しかし、この実施形態において、(Zmax/Zmin)≧2という条件は維持される。
【0254】
一実施形態において、最小剥離強度(Zmin)を有する区画に対する最大剥離強度(Zmax)を有する区画の剥離強度比、すなわち(Zmax/Zmin)は、5以上である。一実施形態において、全ての区画が異なる剥離強度を有する;1つ以上の区画が同じ剥離強度を有する;または、1つ以上の区画が異なる剥離強度を有する。
【0255】
さらに詳しく述べると、本発明は、1つより多くの区画が互いに異なる剥離強度を示すが、(Zmax/Zmin)≧2の条件が維持される実施形態を包含する。例えば、界面の中間層にZ、Z、ZおよびZの4つの区画を有する積層体において、Zは最大剥離強度を有する区画であり、Zは最小剥離強度を有する区画である。区画Z、Z、ZおよびZは異なる剥離強度を有する。式の形では、以下である:
(Z/Z)≧2;かつ
≠Z≠Z≠Z
【0256】
本発明の一実施形態において、中間層は、同じ剥離強度、または異なる剥離強度を示すが、(Zmax/Zmin)≧2の条件が維持される、互いに分離した界面で1つより多くの区画を含む。例えば、中間層に10区画、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、ZおよびZ10を有する積層体において、Zは最大剥離強度を有する区画であり、Zは最小剥離強度を有する区画である。区画Z、Z、およびZは、同一の剥離強度を有する。区画Z、Z、およびZは、異なる剥離強度を有する。式の形では以下である:
=Z=Z
(Z/Z)≧2;および
≠Z≠Z
【0257】
一実施形態において、Zmaxは、分離区画を含む未処理のAPI表面の平均剥離強度である。言い換えると、例えばヒョウ斑点型の分離区画の配において、ダークスポットは制御された剥離区画処理で処理された分離区画であり、処理されていないAPI表面の内部区画スペースは、Zmaxの平均剥離強度を有する。別の実施形態において、Zminは、制御された剥離区画処理で処理されたAPI表面の平均剥離強度である。そして、処理されれたAPI表面に、Zmax平均剥離強度に対応する分離区画を有する分離区画が点在している。言い換えると、API表面には分離区画のスペクトルが存在し、一部は処理され、一部は未処理であり、2つの区画の割合(Zmax/Zmin)≧2である。Zmin平均剥離強度を有する分離区画およびZmax平均剥離強度を有する分離区画の間には、同一または異なるさまざまな平均剥離強度を含み、剥離性のための処理がされているか、またはされていない、全ての他の分離区画が存在する。
【0258】
(制御された剥離分離区画間の形状の違い)
一実施形態において、ポリマー中間層は、分離(剥離)区画が規則的な形状を有するように、1より多くの分離区画を含む。剥離区画は、剥離接着強度によって定義される。別の言い方をすれば、通常の目には中間層は均質かつ一様に見え得るが、本発明の目的のためには、該剥離区画はそれらの剥離強度が異なることによって定義される。
【0259】
規則的な形状としては、例えば円形、正方形、長方形、楕円形、三角形、およびそのような他の形状が挙げられ、一実施形態では、一般に中間層の厚さよりも大きい有効面積を有する。不規則な形状としては、閉じた境界を有するランダムな形状が挙げられ、別の実施形態では、一般に中間層の厚さよりも大きい有効面積を有する。一実施形態において、剥離区画は互いに隣接して配置されている。別の実施形態において、剥離区画は間隙により分離されている。一実施形態において、いくつかの剥離区画は互いに隣接して配置され、他の剥離区画は間隙により分離されている。他の形状としては、例えばグリッド線、十字線、格子、インターウィーブ、ランダム線、同心円および偏心円、スパゲッティパターン、フラットストリップ等の一次元配向パターンが挙げられる。図10は、2つの区画を有する代表的な中間層14を示し、これによって、ドットはグリッド様パターンに分布される。ドット100は最小平均剥離接着力を有する区画の代表例であり、ドット200は最大平均剥離接着力を有する区画の代表例である。一実施形態において、より小さい形状のクラスターが区画を形成し、より小さい形状の第2クラスターが第2区画を形成するであろう。このような実施形態において、各クラスターの凝集剥離強度を測定し、形状の該クラスターを剥離区画とみなす。クラスター内の形状は、ランダム形状、規則的形状、混合された規則的形状、混合されたランダム形状、または混合されたランダム形状および規則的形状であってよい。クラスターとしての剥離区画は、例えばグリッド線、十字線、ランダム線、同心円および偏心円、スパゲッティパターン、フラットストリップ等の一次元配向パターンを含むこともできる。
【0260】
グリッド線、およびそのような他のもの(中間層上の一次元配向形状)の場合、グリッド線と隣接する剥離区画との間の剥離強度の差は、グリッド線の強度を有する別個の中間層剥離区画を調製し、それを、2つのグリッド線の間における、すなわち、2つのグリッド線の間の間隙における、着目する中間層上の剥離区画と比較することによって測定してよい。一次元配向パターンの場合でさえ、このような形状の面積は、制御された剥離区画と間隙との間の剥離強度の差、または、2つの隣接する制御された剥離区画の差を決定し得る。
【0261】
剥離区画は、剥離接着強度によって定められる。別の言い方をすれば、通常の目にはAPIの界面領域は均質かつ一様に見え得るが、本発明の目的のためには、該剥離区画はそれらの剥離強度が異なることによって定義される。
【0262】
上記の積層構造の一実施形態において、分離区画の重量含有量は、該分離区画を含むAPI全体のパーセンテージとして、1%~約30%の範囲内である。別の言い方をすれば、重量含有量は、APIのパーセンテージで測定して、以下の数字のいずれかである:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30。重量含有量は、範囲の終点を含む、ここに記載の任意の2つの数で定義される範囲内の任意の数値であり得る。
【0263】
上記の積層構造の一実施形態において、分離区画の重量含有量は、該分離区画を含むAPI全体のパーセンテージとして、0.00001%~約30%の範囲内である。別の言い方をすれば、重量含有量は、APIのパーセンテージで測定して、以下の数字のいずれかである:0.00001、0.00002、0.00005、0.00008、0.00010、0.001、0.005、0.008、0.010、0.05、0.1、0.5、1.0。
【0264】
上記の積層構造の別の実施形態において、分離剥離区画の重量含有量は、該分離剥離区画を含むAPI全体のパーセンテージとして、0.001%~約1%の範囲内である。別の言い方をすれば、重量含有量は、APIのパーセンテージで測定して、以下の数字のいずれかである:0.001、0.10、0.020、0.030、0.040、0.050、0.060、0.070、0.080、0.090、および1.00。重量含有量は、範囲の終点を含む、ここに記載の任意の2つの数で定義される範囲内の任意の数値であり得る。
【0265】
一実施形態において、2つの分離剥離区画間の分離が明確に画定されている。別の言い方をすれば、剥離強度の違いが、違いを示すのに十分に劇的である。別の実施形態において、2つの区画間の違いがより広まっている。一実施形態において、2つの分離剥離区画間には、少なくとも約0.1mm;または約0.5mm;または約1.0mm;または約2.0mm;または約3.0mm;または約4.0mm;または約5.0mm;または約10.0mm;または約25.0mm;または約50.0mm;または約100.0mmの空間的距離が存在する。
【0266】
一実施形態において、剥離区画の剥離強度は、異なるポリマーまたは同一のポリマーを使用して中間層を形成することによって発生する。両方の場合において、本発明は、ポリマーの分子量を使用して剥離区画を生成するシナリオを想定している。別の実施形態において、ポリマー中間層の厚さを使用して剥離区画を生成する。さらに別の実施形態において、ポリマー中間層の外面処理を使用して、剥離区画を生成する。一実施形態において、剥離区画は、中間層ポリマー接着剤および/または該ポリマー中間層に接着する積層体ガラスの処理によって、生成される。剥離処理は、硬質基材とポリマー中間層との界面またはその付近での接着/剥離特性を変えることができる、化学的活性物質または混合物の適用を含む。処理は、あるいは、エネルギー「ビーム」、例えば電子線、ガンマ、プラズマ、電子放電、レーザー、イオンビーム、または他のエネルギー手段、例えばプラズマ、火炎処理、UV/VIS/IR放射、マイクロ波、または、コーティング技術、化学蒸着などによる化学変化などの適用を含み得る。処理として、化学物質とエネルギー源との組合せを用いることもできる。該処理は、微小な小さい次元(すなわち、表面原子または分子の単層のみが該処理によって影響を受ける)であってよく、または、該処理が中間層の厚さの(10%以下に近づく(この数値を決定する必要がある))限定された厚さの処理であってよい。処理は、硬質基材またはポリマー中間層のいずれか、または両方に適用してよい。一般的には、処理をポリマー中間層に適用するのが最も有利である。中間層の一部として、中間層に直接適用することで、製造が容易になる(例えばロール-トゥ-ロール処理など)。
【0267】
一実施形態において、剥離区画は、特定のパターンを有するマスクを供することによって、接着傾向が該マスクを描くような方式で、硬化光または硬化作用が中間層の表面に達するようにして、製造される。そのため、例えば一実施形態において、マスク上の所望の剥離区画相当物が、ガラスにおいて、異なる屈折率または形状(例えば凹凸)で被覆され、硬化光が特定の接着パターンを生じる波数で中間層表面に到達するようにして、種々のパターンを有するマスクを思い描くことができる。
【0268】
一実施形態において、本発明は、少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約2倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約3倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約4倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約5倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約6倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約7倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約8倍大きい、または、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約9倍大きい、平均剥離接着力を有する。
【0269】
一実施形態において、本発明は、少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約10倍大きい平均剥離接着力を有する;または、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約15倍大きい平均剥離接着力を有する;または、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約20倍大きい平均剥離接着力を有する;または、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約25倍大きい平均剥離接着力を有する;または、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも少なくとも約30倍大きい平均剥離接着力を有する;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約35倍大きい平均剥離接着力を有する;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約40倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約45倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約50倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約55倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約60倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約65倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約70倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約75倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約80倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約85倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約90倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約95倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約100倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約105倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約110倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約115倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約120倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約125倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約130倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約135倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約140倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約145倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約150倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約155倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約160倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約165倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約170倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約175倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約180倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約185倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約190倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約195倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約200倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約205倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約210倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約215倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約200倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約225倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約230倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約235倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約240倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約245倍大きい;または、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約250倍大きい。
【0270】
一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約10倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約20倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約30倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約40倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約50倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約60倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約70倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約80倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約90倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約100倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約110倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約120倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約130倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約140倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約150倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約160倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約170倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約180倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約190倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約200倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約210倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約220倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約230倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約240倍大きい。一実施形態において、最大平均剥離接着力は、最小平均剥離接着力よりも少なくとも約250倍大きい。
【0271】
一実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも約2倍~約250倍大きい平均剥離接着力を有する;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約3倍~約225倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約4倍~約200倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約5倍~約175倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約5倍~約150倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約5倍~約125倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約5倍~約100倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約10倍~約95倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約15倍~約90倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約20倍~約85倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約25倍~約80倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約30倍~約75倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約35倍~約70倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約40倍~約65倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約45倍~約60倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約50倍~約55倍大きい。
【0272】
一実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、最大平均剥離接着力を有する区画は、最小平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力よりも約2倍~約5倍大きい平均剥離接着力を有する;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約5倍~約10倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約10倍~約15倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約15倍~約20倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約20倍~約25倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約25倍~約30倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約30倍~約35倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約35倍~約40倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約40倍~約45倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約45倍~約50倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約50倍~約55倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約55倍~約60倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約60倍~約65倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約65倍~約70倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約70倍~約75倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約75倍~約80倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約80倍~約85倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約85倍~約90倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約90倍~約95倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約95倍~約100倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約100倍~約105倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約105倍~約110倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約110倍~約115倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約115倍~約120倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約120倍~約125倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約125倍~約130倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約130倍~約135倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約135倍~約140倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約140倍~約145倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約145倍~約150倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約150倍~約155倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約155倍~約160倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約160倍~約165倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約165倍~約170倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約170倍~約175倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約175倍~約180倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約180倍~約185倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約185倍~約190倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約190倍~約195倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約195倍~約200倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約200倍~約205倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約205倍~約210倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約210倍~約215倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約215倍~約220倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約220倍~約225倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約225倍~約230倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約230倍~約235倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約235倍~約240倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約240倍~約245倍大きい;またはここで、該最大平均剥離接着力は最小平均剥離接着力よりも約245倍~約250倍大きい。
【0273】
一実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、約0.1~約4.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約0.25~約3.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約0.5~約3.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約0.75~約2.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約1.0~約2.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約1.25~約1.5kJ/mの平均剥離接着力を有する。
【0274】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つ約0.1~約0.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約0.5~約1.0kJ/m; or wherein 該区画の少なくとも1つ約1.0~約1.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約1.5~約2.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約2.0~約2.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約2.5~約3.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約3.0~約3.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約3.5~約4.0kJ/mの平均剥離接着力を有する。
【0275】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つ約8.0~約12.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約8.5~約11.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約9.0~約11.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約9.5~約10.5kJ/mの平均剥離接着力を有する。
【0276】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つ約8.0~約8.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約8.5~約9.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約9.0~約9.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約10.0~約10.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約10.5~約11.0kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約11.0~約11.5kJ/mの平均剥離接着力を有する;またはここで、該区画の少なくとも1つは約11.5~約12.0kJ/mの平均剥離接着力を有する。
【0277】
少なくとも2つの区画を含む一実施形態において、最大平均剥離接着力を有する区画の平均剥離接着力は、約0.3kJ/m~約12.0kJ/mの範囲内である。別の言い方をすれば、平均剥離接着力は次の数値(単位kJ/m)のいずれかであり得る:
0.3、0.4、0.5、..、1.0、1.5、2.0、..3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、および12.0。
【0278】
一実施形態において、このような平均剥離接着力は、上記の任意の2つの数値を選択することによって定義される範囲内にあり、そのような範囲の端点を含む。
【0279】
一実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画は順序付けられたパターンで分布される。一実施形態において、該区画はグリッド状、同心円状、またはドットパターンで分布される。別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画は確率的に分布される。
【0280】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、ポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、シラン、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはポリビニルアセタールを含む。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはアイオノマーを含む。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは熱可塑性エラストマーを含む。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはシランを含む。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはエチルビニルアセテートを含む。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはこれらの材料の組み合わせを含む。
【0281】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画はそれぞれポリビニルアセタール、アイオノマー、熱可塑性エラストマー、シラン、エチルビニルアセテート、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、該区画はそれぞれポリビニルアセタールを含む。さらに別の実施形態において、両方の区画はアイオノマーを含む。一実施形態において、該区画はそれぞれ熱可塑性エラストマーを含む。一実施形態において、該区画はそれぞれシランを含む。一実施形態において、該区画はそれぞれエチルビニルアセテートを含む。一実施形態において、該区画はそれぞれこれらの材料の組み合わせを含む。
【0282】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つはアイオノマーを含み、該アイオノマーは、ナトリウム中和型エチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーである。別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画はそれぞれアイオノマーを含み、該アイオノマーはナトリウム中和型エチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーである。
【0283】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つはポリビニルアセタールを含み、該ポリビニルアセタールはポリビニルブチラールである。別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画はそれぞれポリビニルアセタールを含み、該ポリビニルアセタールはポリビニルブチラールである。
【0284】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは接着改質剤をさらに含む。一実施形態において、接着改質剤は、シラン、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはカルボキシル基含有オレフィン系重合体である。一実施形態において、接着改質剤はシランである。一実施形態において、接着改質剤はアルカリ金属塩である。一実施形態において、接着改質剤はアルカリ土類金属塩である。一実施形態において、接着改質剤はカルボキシル基含有オレフィン系重合体である。
【0285】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、合わせた重量の約5%~約25重量%の範囲で、該区画に接着改質剤を含む。別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、合わせた重量の約10%~約20重量%の範囲で、該区画に接着改質剤を含む。
【0286】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約5%~約10重量%の範囲で接着改質剤を含む;またはここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約10%~約15重量%の範囲で接着改質剤を含む;またはここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約15%~約20重量%の範囲で接着改質剤を含む;またはここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約20%~約25重量%の範囲で接着改質剤を含む。
【0287】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約50%~約75重量%の範囲で接着改質剤を含む。別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約60%~約70重量%の範囲で接着改質剤を含む。
【0288】
別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、該区画において合わせた重量の約50%~約55重量%の範囲で接着改質剤を含む;またはここで、該接着改質剤は、該区画において合わせた重量の約55%~約60重量%の範囲で存在する;またはここで、該接着改質剤は、該区画において合わせた重量の約65%~約70重量%の範囲で存在する;またはここで、該接着改質剤は該区画において合わせた重量の約70%~約75重量%の範囲で存在する。
【0289】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該中間層は約0.1mm~約10.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約0.25mm~約7.5mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約0.35mm~約5.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約0.5mm~約2.5mmの厚さを有する。
【0290】
さらに別の実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該中間層は約0.1mm~約1.0mmの厚さを有する;またはここで、該約1.0mm~約2.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約2.0mm~約3.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約3.0mm~約4.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約4.0mm~約5.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約5.0mm~約6.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約6.0mm~約7.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約7.0mm~約8.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約8.0mm~約9.0mmの厚さを有する;またはここで、該中間層は約9.0mm~約10.0mmの厚さを有する。
【0291】
さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該中間層は2枚のガラス板の間に配置されている。一実施形態において、該ガラス板の少なくとも1つはフロートガラスである。一実施形態において、ガラス板の両方がフロートガラスである。一実施形態において、該中間層はフロートガラスのスズ側に接触している。
【0292】
さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、ドット、円、正方形、長方形、五角形、六角形の形状をしているか;または無定形である。さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画はそれぞれ、ドット、円、楕円、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形の形状をしているか;または、無定形である。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはドットの形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは円の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは楕円の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは三角形の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは正方形の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは長方形の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは五角形の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは六角形の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは無定形である。
【0293】
さらなる実施形態において、少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の少なくとも1つは、グリッド線、十字線、ランダムな線、同心円、偏心円、スパゲッティパターン、およびフラットストリップに形状化されている。さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画はそれぞれ、グリッド線、十字線、ランダムな線、同心円、偏心円、スパゲッティパターン、およびフラットストリップに形状化されている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはグリッド線として成形される。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは十字線として成形される。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはランダム線として成形される。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは同心円の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つは偏心円の形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはスパゲッティパターンの形状をしている。一実施形態において、該区画の少なくとも1つはフラットストリップの形状をしている。
【0294】
さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画は中間層の厚さの約0.5倍~中間層の厚さの約10倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約1.5倍~中間層の厚さの約9.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約2.0倍~中間層の厚さの約8.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約3.0倍~中間層の厚さの約7.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約4.0倍~中間層の厚さの約6.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約4.5倍~中間層の厚さの約5.5倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約5.0倍の厚さを有する。
【0295】
さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画は中間層の厚さの約0.5倍~中間層の厚さの約1.5倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約1.5倍~中間層の厚さの約2.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約2.0倍~中間層の厚さの約3.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約3.0倍~中間層の厚さの約4.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約4.0倍 ~中間層の厚さの約5.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約5.0倍~中間層の厚さの約6.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約5.0倍~中間層の厚さの約6.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約6.0倍~中間層の厚さの約7.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約7.0倍~中間層の厚さの約8.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約8.0倍~中間層の厚さの約9.0倍の範囲のサイズを有する;またはここで、該区画は中間層の厚さの約9.0倍~中間層の厚さの約10.0倍の範囲のサイズを有する。
【0296】
また、さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画は中間層の厚さの約0.5倍~中間層の厚さの約10倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は中間層の厚さの約1.5倍~中間層の厚さの約9.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は中間層の厚さの約2.0倍~中間層の厚さの約8.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は中間層の厚さの約3.0倍~中間層の厚さの約7.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は中間層の厚さの約4.0倍~中間層の厚さの約6.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は中間層の厚さの約5.5倍~中間層の厚さの約5.5倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は中間層の厚さの約5.0倍の直径を有するドットまたは円の形状をしている。
【0297】
また、さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画は中間層の厚さの約0.5倍~中間層の厚さの約1.5倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約1.5倍~中間層の厚さの約2.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約2.0倍~中間層の厚さの約3.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約3.0倍~中間層の厚さの約4.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約4.0倍~中間層の厚さの約5.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約5.0倍~中間層の厚さの約6.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約5.0倍~中間層の厚さの約6.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約6.0倍~中間層の厚さの約7.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約7.0倍~中間層の厚さの約8.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約8.0倍~中間層の厚さの約9.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている;またはここで、該区画は厚さの約9.0倍~中間層の厚さの約10.0倍の範囲の直径を有するドットまたは円の形状をしている。
【0298】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、分離区画の有効直径は約0.1mm~約50mmの範囲である。一実施形態において、本発明は、分離区画の有効直径が、mm単位で測定して、以下の数値のうちの1つから選択されるか、または、任意の2つの数値で定義される範囲内である(このような範囲の端点を含む)、APIを提供する:
0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50。
【0299】
さらに別の実施形態において、本発明は上記のような接着性ポリマー中間層(API)に関し、ここで、規則的な形状の分離区画、ランダムな形状の分離区画、またはクラスター分離区画の有効直径は、分離区画の厚さの約1倍~約150,000,000倍である。倍数の例示的なセットとしては、以下の数値が挙げられ、以下の任意の2つの数値によって形成される範囲に含まれるものが挙げられる:
1、5、10、20、100、150、200、1000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、5000000、10000000、20000000、50000000、100000000、120000000、125000000、および150000000。
【0300】
一実施形態において、本発明は、基材またはAPI表面の面積のパーセンテージ数である表面積を片側に有する、分離剥離処理区画を含む中間層を提供し、ここで、該パーセンテージ数は以下の数の1つである、または、以下の数の任意の2つによって定義される範囲に含まれる(このような範囲の端点を含む):
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、および80。
【0301】
さらに、さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2セットの分離区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、1セットの分離区画は例えば以下の表面積にわたり被覆する制御された剥離処理区画である:ガラス基材の1つの表面積の約1%~約80%;1つのガラス板の約10%~約60%;ガラス基材の1つの約20%~約50%;ガラス基材の1つの表面積の約30%~約40%;ガラス基材の1つの表面積の約5%~約25%;ガラス基材の1つの表面積の約1%~約35%;1つのガラス板の約15%~約55%;1つのガラス板の約25%~約45%;1つのガラス板の約10%~約15%;1つのガラス板の約15%~約20%;1つのガラス板の約20%~約25%;1つのガラス板の約25%~約30%;1つのガラス板の約30%~約35%;1つのガラス板の約35%~約40%;1つのガラス板の約40%~約45%;1つのガラス板の約45%~約50%;1つのガラス板の約50%~約55%;または、1つのガラス板の約55%~約60%。
【0302】
一実施形態において、本発明は、例えばガラス基材1/API/ガラス基材2積層体において、第1ガラス基材および対応するAPI表面と、第2ガラス基材および対応するAPI表面との間で、同一の面積被覆率または異なる面積被覆率が想定される。
【0303】
一実施形態において、本発明は積層体のスタックも想定される。そのため、例えばガラス基材を「A」としAPIを「B」としたとき、以下の積層体がここで想定される:
A1/B1;A1/B1/A2;A1/B1/A2/B2/A3;A1/B1/A2/B2/B3/A3...;およびA1/B1B2B3/A2/B4/A3;など。少なくとも1つのAPI層は、本発明のそのようなスタックでは、本明細書に記載されるような分離区画を含む。
【0304】
上記は以下の一般式で表すことができる:
(A
式中、y、1≦y≦90;
式中、z、1≦z≦30;および
式中、x=1、およびw=1;またはx=0およびw=1;またはx=1およびw=0。
言い換えると、Aは、スタック内のその場所での配置において基材が存在しないことを意味する。
【0305】
一実施形態において、本発明は、別の保護層-例えば耐摩耗性コートされたポリエステルを想定している。本発明は、硬質基材(例えばガラス)に焦点を当てて説明されてきたが、いくつかの場合において、コーティングされたポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン、およびその他の高分子基材も包含される。
【0306】
本発明の一実施形態において、より薄い中間層を重ね合わせて、より厚い中間層を作る。
【0307】
さらに別の実施形態では、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の1つはガラス板の1つの約1%~約35%の表面積を覆う;または、該区画の1つはガラス板1つの約5%~約30%の表面積を覆う;または、該区画の1つはガラス板の1つの約5%~約25%の表面積を覆う;または、該区画の1つはガラス板の1つの約10%~約20%の表面積を覆う。
【0308】
さらに、さらなる実施形態において、本発明は少なくとも2つの区画を含むポリマー中間層を提供し、ここで、該区画の1つはガラス板の1つの約1%~約5%の表面積を覆う;または、該区画の1つはガラス板の1つの約5%~約10%の表面積を覆う;または、該区画の1つはガラス板の1つの約10%~約15%の表面積を覆う;または、該区画の1つはガラス板の1つの約15%~約20%の表面積を覆う;該区画の1つはガラス板の1つの約20%~約25%の表面積を覆う;該区画の1つはガラス板の1つの約25%~約30%の表面積を覆う;該区画の1つはガラス板の1つの約30%~約35%の表面積を覆う。
【0309】
さらに別の実施形態において、本発明は、1cmあたりの区画の数が0.04~10,000(範囲の端点を含む)を含むポリマー中間層を提供する。さらに詳しく述べると、例えば、一実施形態において、1cm当たりの区画の数として、以下の数値のいずれかが挙げられ、以下のいずれか2つの数値で定義される範囲内の任意の数値が挙げられる(端点を含む):
0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.5、0.8、1.0、10、20、50、100、200、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、および10000。
【0310】
一実施形態において、上記の区画の数は、1cmあたり、1inchあたり、1ftあたり、および1mあたりで測定される。
【0311】
別の実施形態において、3個の区画を含むポリマー中間層を提供する;またはここで、該中間層は少なくとも4個の区画を含む;またはここで、該中間層は少なくとも5個の区画を含む;またはここで、該中間層は少なくとも6個の区画を含む;またはここで、該中間層は少なくとも7個の区画を含む;またはここで、該中間層は少なくとも8個の区画を含む;またはここで、該中間層は少なくとも9個の区画を含む;またはここで、該中間層は少なくとも10個の区画を含む。
【0312】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載のポリマー中間層を含む積層体を提供する。一実施形態において、該積層体は、木材、プラスチック、またはガラスを含む。一実施形態において、該積層体は木材を含む。一実施形態において、該積層体はプラスチックを含む。一実施形態において、該積層体はガラスを含む。
【0313】
本発明は、以下の合わせガラスの特性の具体例からさらに理解されるであろう。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲をいずれの方法でも限定するものとは解釈されるべきでないことを理解されたい。
【実施例
【0314】
〔サンプル調製〕
これらの実施例において、Kuraray America、Inc.(ウィルミントン、DE、USA)より「SENTRYGLAS(登録商標)XTRA」の商品名で販売される(米国特許シリアルNo.16/050728、出願日2018年7月31日に記載)、アニール化フロートガラスと単層ter-アイオノマー中間層とから製造された積層体について、接着、積層体破壊挙動、および破壊後の耐久性を研究した。該ter-アイオノマーは、E.I. du Pont de Nemours & Co.(ウィルミントン、DE、USA)から入手した、部分的に中和されたエチレン酸ターポリマーアイオノマーである(21.7%メタクリル酸、3.5%i-ブチルアクリレート、Na 25%中和型、MI=3.8)。
【0315】
フロートガラスは、溶融金属錫浴に、溶融したソーダ石灰シリカ溶融物を浮かべることにより製造される。該ガラスの「錫」側は、製造中に溶融錫と接触したガラスであり、該ガラスの「空気」側は、溶融錫と接触しなかった、反対の側である。ガラス「錫」表面における微量の錫(Sn)不純物は、ポリマー-ガラス接着に影響を与える。フロートガラスは、Guardian Industries、Inc.(ゲイラクス、VA、USA)より入手可能である。
【0316】
積層体の製造前に、全てのガラスを50℃の石鹸脱イオン水を用いて洗浄し、脱イオン水を用いて完全にすすいだ。一般的に、石鹸水を作るために、混合の際に泡立つ程度の量で、水に石鹸または洗剤を添加する。
【0317】
接着促進剤:接着促進処理における活性成分は、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A-1100、Momentive Performance Materials、Inc.(ウォーターフォード、NY USA)より入手可能)である。以下の組成(重量%)の溶液を使用した:2-プロパノール(92.00 %)、水(7.90%)、酢酸(0.01%)、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン(0.09%)。
【0318】
積層体製造:ポリマー中間層積層体フィルムとガラスとが所望の順で室温にて積み重ねられたプリプレスアセンブリを使い捨て真空バッグに入れ、25~30の水のインチの真空で60分間保持し、該プリプレスアセンブリの層間に含まれる空気を除去した。該プリプレスアセンブリを、該バッグに真空をなお適用しながら、エアオートクレーブに入れた。サンプルおよびバッグを、0.7MPaの静水空気圧の適用下で135℃に加熱した。135℃に到達後、バッグに付した真空を取り除き、積層体を0.7MPaの静水圧の適用下で、エアオートクレーブ中、90分間維持した。次いで、サンプルを一定圧力下で、約4℃/分の速度で冷却した。約25分の冷却の後、約50℃未満になった際に過剰の圧力を抜き、積層体を室温まで冷却し、オートクレーブから取り出した。
【0319】
実施例で用いたプロセスは、合わせガラスの製造のための多くの標準的な工業プロセスに似ており、高い透明性および最小限の欠陥(気泡等)を有する材料が得られた。
【0320】
〔コントロール実験例-均一な接着処理〕
ガラス/ポリマー配向を特定すること、および/または、ガラス表面に接着促進剤を適用することによって、さまざまなレベルの均一な接着が達成された。表1に、様々な均一接着レベルで作成したサンプルを示す。
【0321】
【表1】
【0322】
〔パターン化接着サンプル〕
各ガラス片の錫表面を、上記に述べた接着促進剤をしみ込ませた布でふき、接着促進させた。進める前にガラス表面を室温で乾燥させた。
【0323】
インクパターンをガラス表面に転写するために、ゴムスタンプパッドを使用した。インクは、株式会社ツキネコ(5-11-10、荒川区荒川、116-0002、日本)製のStaezOn 31-ジェットブラックであった。このインクは、ガラスにはよく接着するが、ポリマーにはあまり接着しないため、インクが塗られた領域とポリマーとの間に低接着領域が生じる。
【0324】
2つの確率的パターンを調査した。パターン特徴を表2に定義する。
【0325】
【表2】
【0326】
サンプルは表3に従い製造した。
【表3】
【0327】
〔試験方法〕
接着
接着は、合わせガラスについて鍵となる要求である。記載したサンプルの接着を特徴付けるため、標準剥離試験法を使用した。
【0328】
2つの重要な変更を加えた記載されるアプローチにて、接着試験用に積層体を製造した。初めに、薄いポリエステル離型テープ(25mm×25mm)の25.4mm幅のストリップを、ガラスおよびポリマーコンポーネントを組み立てる前に、ガラスの1枚の一端に適用した。このテープはガラスに軽く接着するのみであり、ポリマーのストリップを剥離試験治具でつかむことが可能となる。次に、薄い離型フィルム(Teflon(登録商標)13mm)を、ポリマーと、ガラス片の1つとの間に配置した。これは、ガラス片の1つからポリマーのストリップを剥離することができるように、1つのガラス片を取り除くことを可能にする。剥離試験の前に、ポリマーの40mm幅のストリップを、鋭利なナイフを用いて2つのチャネルを切断することにより、隣接するポリマーから分離した。チャネルがポリマーを完全に切断し、隣接する材料から切り離すのに十分に深いことを確認するため注意した。
【0329】
90度の剥離構成を使用し、0.18mm/sの伸長速度、23℃、50%RHで実施した。測定には、変位制御モードで動作する1kNロードセルを備えたMTS Criterion M45万能試験機を使用した。力-変位特性を、1Hzの周波数で記録した。各接着処理について5つのサンプルを試験し、剥離力を伸長の関数として記録した。
【0330】
図1は典型的な剥離測定を示す。均一接着制御法により、界面クラック発生後に、定常剥離力が得られる。剥離力は小さな変動を示す。界面の単位面積を作るエネルギーは、剥離エネルギー(γ)として定義され、90度の剥離ジオメトリの場合、以下で与えられる:
【数3】
【0331】
ここで、Pは剥離力であり、wは剥離アーム幅である。ニュートンとmmの単位を用いると、これは、kJ/mの単位での剥離エネルギーが得られる。平均剥離エネルギーは、水平線を定常剥離力応答にフィッティングさせることにより決定した。
【0332】
図2は、確率的接着コントロールについての剥離測定を示す。力の応答は、界面のクラックが進行し複雑な形で停止するにつれて、大きな変動を示す。剥離接着エネルギーは、図2に示すように、水平線を、パターン化された領域の剥離力応答にフィッティングさせることによって決定した。
【0333】
積層体破壊-ボール-オン-リング
積層安全ガラスの重要な性能属性は、ガラスの破損中および破損後の挙動である。具体的には、積層体の引き裂き抵抗と貫通抵抗が、その安全性能の鍵となる。積層体の破壊特性を評価するために、ボールオンリング試験プロトコルが開発された。
【0334】
この試験では、ガラス積層体をアルミ製の円環で支え、その中心に硬い金属球(タングステンカーバイド)で荷重をかける。支持リングの直径=250mm、荷重ボールの直径=25.4mm。サンプルに10mm/secで負荷をかけ、試験は23℃/50%RHで実施した。図3は、試験ジオメトリの断面のスケッチである。薄い(1mm)のゴム製ガスケットを支持リングと合わせガラスサンプルとの間に配置して、ガラスの接点の破損を防ぐことに注意する。変位制御モードで動作する30kNロードセルを備えた、MTS Criterion M45万能試験機を測定に使用した。応力-変位特性は、1Hzの周波数で記録された。各接着状態について5つのサンプルをテストした。
【0335】
試験された積層体構造は全て以下であった:1.9mmガラス|0.89mmSentryGlas(登録商標)XTRA(商標)|1.9mmガラス。サンプルサイズ 305mm×305mm。試験の前に、ガラスの表面を400グリットのエメリーペーパー(シリコンカーバイドグリット)で中央において軽く研磨した。ガラスの強度は、主にガラス表面の傷によって決まることはよく知られている。この表面損傷処理により、サンプル中心部の破壊が調整され、最初のクラック事象の変動性が減少した。
【0336】
典型的な負荷変位トレースを図4に示す。積層体の引き裂きエネルギーUは、ピーク荷重、F(δδ)(ここでは、積層体の引き裂きが始まる)までの荷重-変位曲線の下の面積:
【数4】
として定義される。
【0337】
最初の2つの小さなピークは、各ガラス層の最初のクラックに起因するため、この計算を行う前に削除することに注意する。したがって、引き裂きエネルギーは、各ガラス層の最初のクラック後の積層体変形中に起こることを表す。
【0338】
耐久性-破壊された積層体の熱サイクル中のガラスの保持
積層体破壊後のガラス保持は、積層された安全ガラスの重要な性能要件である。ガラス破壊後の積層体の耐久性を評価するために、ボールオンリング破壊試験で試験した積層体に、続いて熱サイクルを施した。水が接着に影響を及ぼし、凍結-融解事象は特に有害であることが知られているため、破壊された積層体を次の熱サイクル試験プロトコルにかけた。
【0339】
室温(23℃)で開始、-40℃まで移動(2℃/分)(1時間保持)、50℃まで移動(2℃/分)(1時間保持)、23℃まで移動(2℃/分)。1サイクルに3.5時間かかった。温度が0℃を超える場合、チャンバー湿度を80%RHに維持した。
【0340】
このサイクルを100回まで繰返し、サンプルの重量損失を選択した間隔で記録した。サンプル重量損失は、熱サイクル中の、破壊された積層体からのガラス破片の脱離によるものである。
【0341】
〔実験例〕
(比較例-CE1)
1.9mmアニール化ガラス|0.89mm SentryGlas(登録商標)XTRA(商標)|1.9mmアニール化ガラスと、ガラス「錫」表面に対して配向したポリマー中間層とからなる積層体(ここで、ガラス「錫」表面は、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン接着促進剤で処理されている)を、接着、引き裂き抵抗および耐久性について、記載された試験方法に従い試験した。この構成処理は均一な接着状態を表す。性能結果を表4に示す。
【0342】
(比較例-CE2)
1.9mmアニール化ガラス|0.89mm SentryGlas(登録商標)XTRA(商標)|1.9mmアニール化ガラスと、ガラス「錫」表面に対して配向したポリマー中間層とからなる積層体を、接着、引き裂き抵抗および耐久性について、記載された試験方法に従い試験した。この構成処理は均一な接着状態を表す。性能結果を表4に示す。
【0343】
(比較例-CE3)
1.9mmアニール化ガラス|0.89mm SentryGlas(登録商標)XTRA(商標)|1.9mmアニール化ガラスと、ガラス「空気」表面に対して配向したポリマー中間層とからなる積層体を、接着、引き裂き抵抗および耐久性について、記載された試験方法に従い試験した。この構成処理は均一な接着状態を表す。性能結果を表4に示す。
【0344】
(実施例-E1)
1.9mmアニール化ガラス|0.89mm SentryGlas(登録商標)XTRA(商標)|1.9mmアニール化ガラスと、ガラス「錫」表面に対して配向したポリマー中間層とからなる積層体(ここで、ガラス「錫」表面は、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシランで、確率的接着剥離インクパターン(確率的-A、表2)で処理されている)を、接着、引き裂き抵抗および耐久性について、記載された試験方法に従い試験した。この構成処理は確率的に変化する接着状態を表す。性能結果を表4に示す。
【0345】
(実施例-E2)
1.9mmアニール化ガラス|0.89mm SentryGlas(登録商標)XTRA(商標)|1.9mmアニール化ガラスと、ガラス「錫」表面に対して配向したポリマー中間層とからなる積層体(ここで、ガラス「錫」表面は、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシランで、確率的接着剥離インクパターン(確率的-B、表2)で処理されている)を、接着、引き裂き抵抗および耐久性について、記載された試験方法に従い試験した。この構成処理は確率的に変化する接着状態を表す。性能結果を表4に示す。
【0346】
【表4】
【0347】
(材料)
以下の実験例で使用した材料は次の通りである:
【0348】
実験例で使用したガラスは、標準アニール化ソーダ石灰ガラスであった(Guardian Industries、Inc.、ゲイラクス、VA、USAより入手)。
【0349】
アイオノマー1(I1)-Dow Company、ミッドランド、MIより入手した部分中和型エチレン酸ジポリマーアイオノマー(21.7%メタクリル酸、Na 26%中和形、MI=1.8、190℃にて)。
【0350】
シラン2(S2)-3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(CoatOSil(登録商標)2287、Momentive Performance Materials、Inc.(ウォーターフォード、NY、USA)より入手。
【0351】
処理溶液「A」は促進剤の混合物から調製した:接着促進処理剤中の活性成分は、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A-1,100、Momentive Performance Materials、Inc.(ウォーターフォード、NY、USA)から入手可能)。以下の成分(重量%)の溶液を使用した:2-プロパノール(92.00 %)、水(7.90%)、酢酸(0.01%)、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン(0.09%)。該溶液を使用前に24時間かけて「熟成」させ、シランの加水分解を生じさせた。
【0352】
処理溶液「B」は接着提言処理における活性成分の混合物から調製された:メチルトリメトキシシラン、CAS番号 1185-55-3、Sigma-Aldrichより入手可能、400 Summit Drive, Burlington, MA 01803。以下の組成(重量%)の溶液を使用した:2-プロパノール(91.90%)、水(7.90%)、酢酸(0.01%)、メチルトリメトキシシラン(0.19%)。該溶液を使用前に24時間かけて「熟成」させ、シランの加水分解を生じさせた。
【0353】
PVA:ポリビニルアルコール、Elvanol(登録商標)90-50、CAS番号 9002-89-5、Kuraray America, Inc.(2625 Bay Area Blvd.、ヒューストン、TX 77058)より入手可能。
【0354】
PVA 3Dプリンターフィラメント:Inland PVA175N05 1.75mmフィラメント。
【0355】
上記のPVA材料のそれぞれについて、80℃で撹拌しながら脱塩水中に溶解させ、次いで室温まで冷却することによって、水溶液を得た。Elvanol(登録商標)90-50PVAから、1.0% w/w濃度で溶液「C」を調製し、Inland PVAフィラメントから、0.5% w/w/濃度で溶液「D」を調製し、両方を何らさらなる処理を行うことなく使用した。
【0356】
(アイオノマーシート製造)
処理溶液「A」および「B」を、0.2mmの先端径を有するフェルトのペン先を有するペンを用いて塗布した。0.05mm~2.0mmの範囲の他の直径も試した。先端径の選択と、流動特性、および表面エネルギーおよび表面張力、表面エクスチャ/粗さ等との選択は、最終的な堆積量と、種々の表面の「パターン化された」特徴のサイズ/形状とに関するいくつかの要因である。ほとんどのサンプルは、予備洗浄されたアニール化ガラス表面(硬質基材の1つの選択肢)に塗布することによって製造したが、代わりに、処理溶液を、ポリマー中間層およびそれらの組合せに適用することもできる。
【0357】
(積層体製造法)
各アイオノマーシートから、以下の方法によってガラス積層体を製造した。アニール化ガラスシート(100×100×3mm)を、リン酸三ナトリウムの脱イオン水溶液(5g/l)で、50℃で5分間洗浄し、次いで脱イオン水で十分にすすぎ、乾燥させた。3層の、表1に示す各アイオノマーシート(それぞれ約0.76mm厚)を重ね合わせ、2枚のガラスシートの間に配置した(2.28mm中間層厚さを与える)。
【0358】
室内環境(約35%RH)との接触時間を最小限に抑えることにより、アイオノマーシートの水分レベルを、0.08重量%以下に維持するか、または、以下の実験例に示す温度および湿度レベルに10日間暴露した(サンプルをEspec 調湿チャンバー、Model LHU-113に入れた)。
【0359】
アイオノマーシートの水分レベルは、電量的カールフィッシャー法(Metrohm Model 800)を用いて、サンプルバイアルの加熱チャンバー温度150℃で測定した。アイオノマーシートを小片に切断し、合計0.40グラムの重量でサンプルバイアルに収めた。
【0360】
次いで、予備積層アセンブリをポリエステルテープで2カ所において止め、各層とガラスシートとの相対的位置を維持した。層間からの空気の除去を容易にするために、アセンブリの周囲に、ナイロンファブリック片を配置した。アセンブリをナイロン真空バッグ内に入れ、密封し、次いで真空ポンプに接続した。内部から空気を実質的に除去できるように真空を適用した(バッグ内の空気圧を絶対50ミリバール未満に低下させた)。袋詰めされたアセンブリを次いで対流式空気オーブンで120℃まで加熱し、30分保持した。次いで、冷却ファンを使用してアセンブリを室温近くまで冷却し、該アセンブリを真空源から外し、バッグを取り除いて、完全に予備プレスされたガラスと中間層とのアセンブリを得た。
【0361】
次いで、該アセンブリをエアオートクレーブに入れ、温度および圧力を周囲条件から135℃、13.8バールまで、15分かけて上昇させた。この温度および圧力を30分間保持し、次いで、該温度を約2.5℃/分の冷却で40℃まで下げ、その後、それによって圧力を周囲条件まで下げ(15分かけて)、オートクレーブから最終的な積層体を取り出した。
【0362】
(ボール落下衝撃試験)
安全ガラス業界で積層体を試験するために広く使用されている従来の衝撃試験は、5ポンド(2.27kg)スチール球落下試験である。この試験は、American National Standard Z26.1-1983 Section 5.26 耐貫通性、Test 26に定義されている。この試験の目的は、グレージング材料が十分な耐貫通性を有しているかどうかを決定することである。自動車用フロントガラスについて、最小性能レベルは、10サンプルのうち8つが、12フィート(3.66m)ボール落下を、衝撃の5秒以内にボールがサンプルを貫通することなく合格することに設定されている。この試験方法は、積層体温度を77~104°F(25~40℃)に制御する必要がある。(空気循環をもたらすために分けられた)積層体は、23+/-2℃に平衡化するために、衝撃の少なくとも2時間前に制御温度オーブン中に入れられた。5ポンド(2.27kg)のボールを12フィート(3.66m)から落下させるのではなく、2.44m~6.71mの範囲の様々な落下高さを使用して、「平均」サポート高さ(50%のサンプルが貫通されると推定される高さ)を評価した。様々な落下試験高さのそれぞれにおいて、積層体と中間層の裂け目の長さも測定し、各落下高さで複数のサンプルを試験し(平均3つの積層体)、2.54cmと12.7cmの裂け目を作るのに必要な高さも計算した。
【0363】
(耐候性サイクル:剥離耐久性積層体の製造)
300mm×300mm寸法、厚さ3.0mmのアニール化フロートガラスを十分に洗浄し乾燥させた。円形寸法70mmのWhatmanろ紙(#1)を、該ろ紙の90度の円弧がガラス領域内となるように、ろ紙の中心をガラスの一角においた。ガラスの面は、ガラス積層体アセンブリの内面に対して、「空気」または「錫側」のいずれかに向けた。ろ紙が、1枚のガラスと中間層との間にあるように配置した。このアセンブリおよび設計は、ろ紙がガラス内表面への中間層の接着の障壁となるため、(ろ紙領域内で)層間剥離が保証される「弱い」界面を作成する目的に役立つ。ろ紙は、角領域において追加の体積を占めるため、それによって、ろ紙の外縁を超えた領域を剥離可能な拡散力を作り出すため、くさびとしても作用した。ろ紙はまた、水がろ紙を通って「抜ける」経路を可能にし、中間層とガラスの間の接着性をさらに損なう可能性があった。
【0364】
上記で作成した積層体を、脱塩水に1時間、室温で浸漬し、次いで、該積層体を-20℃に調整したチャンバーに16時間入れた。次いで、積層体を取り出し、室温(23℃+/-2℃)に7時間戻した。このプロセスを合計10サイクル繰り返した後、剥離/剥がれの程度を目視で評価した。剥離が存在する場合、剥離の程度を定量化するために積層体の画像解析を行い、そのデータを表5に示す。
【0365】
(ヘーズ測定)
WINDEX ガラスクリーナー(S.C. Johnson & Son, Inc.)および糸くずの出ない布を用いて、積層体を十分に洗浄し、有効な光学測定を妨げる可能性がある気泡および他の欠陥がないことを確認した。次いで、積層体をHaze-gard Plusヘーズメーター(Byk-Gardner)を用いて評価して、パーセントヘーズの測定値を得た。ヘーズの測定は、American National Standard (ANSI Z26.1-1966)“Safety Code for Safety Glazing Materials for Glazing Motor Vehicles Operating on Land Highways”に概説される方法に従った。試験セクション5.17および5.18は、図5および図6と共に、このようなスタンダードにおいて、グレージング材料のヘーズレベルを測定するための適当な方法および装置セットアップを詳述する。Haze-gard Plusヘーズメーターは、このスタンダードの適切な基準を満たし、続く全ての測定において使用した。National Bureau of Standards(現在のNIST)に起因するヘーズスタンダードが使用され、装置が適切に較正され、動作していることを確認した。ヘーズの結果を以下の表5に示す:
【0366】
【表5】
【0367】
上記の結果からわかるように、追加された追加剥離区画処理は、得られる積層体の光学的透明性/ヘーズに実質的に悪影響を及ぼさなかった。
【0368】
(剥離接着測定)
剥離接着の測定を可能にするために、以下の例外を除いて、いくつかのサンプルを上記のように調製した。
【0369】
アニール化ガラスをスクライブし、100mm×300mmの長方形に切り出し、前述の手順で洗浄した。シリコーン接着剤を有する薄いポリエステルテープ(25μm厚×25mm幅)を、「対象となる側(空気または錫側)」のガラス表面に、2本の平行なストリップにて適用し、その間に25mm幅の均一な結合領域を提供した。この手順により、標準的な剥離接合法で従来行われているようにポリマー層を切断して剥離ストリップを作成する必要なく、非常によく定義された結合領域の作成が可能である。中間層試験片の上に、薄い4ミリのFEPフィルムのシートを置き、2つ目のガラス片を上に置いて、積層ステップについて比較的フラットな面を提供し、ガラス片のトップの取り外しに対する剥離層として作用させた。次いで、全ての積層ステップを上記のように行った。その後、上記の方法で作成した種々のサンプルについて、機械的試験装置(INSTRON Model 1122, Instron Industrial Products, Norwood, MA USA)を用いて、90度の角度剥離接着測定を行った。剥離は、標準的な実験室条件(実質23℃および50%RH)で、1cm/minのクロスヘッド速度で行った。サンプルの約100mmの剥離後、ガラスと剥離面に脱塩水を塗布し界面が液体水に完全に浸漬するようにした。その後、剥離速度を0.25mm/minまで低下させ、サンプルのさらに約100mmが試験されるまで、試験を数時間続けた。この最終試験期間中にサンプルが「湿った」状態に維持されるように、十分な水が存在していた。データは、コンピュータソフトウェア(INSTRON Bluehill III software, Instron Industrial Products, Norwood, MA USA)を介して集められ、「乾燥」および「湿潤状態」剥離試験セクションの平均力が計算された。
結果を以下の表6に示す。
【0370】
【表6】
【0371】
表面全体を溶液「A」で処理して製造したCE-1-1は、(調製したままの)「乾燥」剥離サンプル試験条件で、予想されたように、7.10kJ/mの比較的高いエネルギーレベルで剥離することがわかった。また、「湿潤」条件下で試験した場合でさえも、比較的高い剥離エネルギー(3.05kJ/m)を維持した。CE-1-2は、表面全体を溶液「B」で処理して製造され、低い剥離エネルギーレベル(0.02kJ/m)を生じることがわかった。(より高い破壊エネルギーレベルを作り出すことができる)溶液「A」をガラスの表面に塗布すると、存在する特定のパターン形状の表面被覆率(体積分率)に関する一般的な方法で、接着レベルが増加することがわかるが、直接的な関係では必ずしもない。種々のパターン形状/デザインを、それぞれの剥離/剥がれサイズ(くさび紙挿入からの最大距離および総剥離面積)と共に表7に示す。
【0372】
【表7】
【0373】
【表8】
【0374】
【表9】
【0375】
ここで、本発明を十分に説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、かつ、過度の実験を行うことなく、同等のパラメータ、濃度、および条件の広い範囲内で同様のことを行うことができることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】