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特表2023-527775IL-4R阻害剤の投与により好酸球性食道炎を処置する方法
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  • 特表-IL-4R阻害剤の投与により好酸球性食道炎を処置する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】IL-4R阻害剤の投与により好酸球性食道炎を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230623BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230623BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P1/04 ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/4439
A61K31/573
A61P1/00
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571133
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021033693
(87)【国際公開番号】W WO2021237110
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/029,085
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/066,705
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/071,264
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/088,147
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/121,088
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/144,939
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21315068.3
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ディー・ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・マロニー
(72)【発明者】
【氏名】レーダ・マンネン
(72)【発明者】
【氏名】マルセラ・ルディ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZB082
4C084ZB112
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086DA10
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤、例えば抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントの1つまたはそれ以上の用量を対象に投与することにより、青年または成人の対象における好酸球性食道炎の1つまたはそれ以上の症状を処置、防止、または寛解する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
12歳以上の対象における好酸球性食道炎(EoE)の少なくとも1つの症状を処置、防止、または寛解する方法であって、該方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を前記対象に投与することを含み、前記対象は、処置の開始前に、10以上の嚥下障害症状質問票(DSQ)スコアを有し、前記IL-4R阻害剤は、IL-4Rαと結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号7のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象は、成人である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象は、12歳以上18歳未満の青年である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、処置の開始前に、近位食道領域、中位食道領域、および遠位食道領域のうちの少なくとも2つにおいて、内視鏡生検によって測定した場合に15eos/hpf以上の上皮内好酸球浸潤ピーク細胞数を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象は、併存性のアトピー性疾患を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記併存性のアトピー性疾患は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、またはアレルギー性結膜炎である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、好酸球性胃腸炎を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、平均して1週間に少なくとも2回の嚥下障害のエピソード歴を少なくとも4週間にわたって有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、嚥下局所コルチコステロイドおよび/またはプロトンポンプ阻害剤(PPI)による処置に不応性または応答不十分である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記IL-4R阻害剤は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記IL-4R阻害剤は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的均等物である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記IL-4R阻害剤は、約50mg~約600mgの用量で投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記IL-4R阻害剤は、約300mgの用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記IL-4R阻害剤は、1週間に1回または2週間に1回投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記IL-4R阻害剤は、第2の治療剤または療法と組み合わせて投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の治療剤または療法は、IL-1β阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、吸入型コルチコステロイド、グルココルチコイド、PPI、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、食道拡張、アレルゲン除去、または食事管理である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記IL-4R阻害剤は、PPIと組み合わせて投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記PPIは、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるオメプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるエソメプラゾール、60mg QDまたは30mg BIDの用量におけるランソプラゾール、60mg QDの用量におけるデクスランソプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるラベプラゾール、および80mg QDまたは40mg BIDの用量におけるパントプラゾールからなる群から選択される高用量レジメンとして投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記IL-4R阻害剤による処置は、1つまたはそれ以上のEoE関連遺伝子および/または2型炎症関連遺伝子の発現を正常化する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記IL-4R阻害剤による処置は、前記対象における嚥下障害を低減する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記IL-4R阻害剤による処置は、
前記対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも30%減少させる;および/または、
前記対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも10ポイント減少させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記IL-4R阻害剤による処置は、前記対象における食道上皮内好酸球を低減する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記IL-4R阻害剤による処置は、
前記対象のピーク食道上皮内好酸球数を、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも50%低減する;および/または、
前記対象のピーク食道上皮内好酸球数を、24週間の処置後に、6eos/hpf以下に低減する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記IL-4R阻害剤による処置は、前記対象のEoE-EREFSスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも25%低減する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記IL-4R阻害剤による処置は、前記対象の食物嚥下能力を改善する、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記IL-4R阻害剤による処置は、
TARC、エオタキシン-3、およびIgEからなる群から選択されるバイオマーカーの発現を低減する;
図3に示される1つまたはそれ以上の2型炎症関連遺伝子の発現を正常化する;および/または、
図6に示される1つまたはそれ以上のEoE関連遺伝子の発現を正常化する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
対象の食物嚥下能力を改善する方法であって、該方法は、
好酸球性食道炎(EoE)を有する対象に、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含み、前記IL-4R阻害剤は、IL-4Rαと結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号7のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、前記方法。
【請求項29】
前記対象は、12歳以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象は、成人である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象は、12歳以上18歳未満の青年である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記対象は、処置の開始前に、10以上の嚥下障害症状質問票(DSQ)スコアを有する、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象は、併存性のアトピー性疾患を有する、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記併存性のアトピー性疾患は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、またはアレルギー性結膜炎である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象は、好酸球性胃腸炎を有する、請求項28~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象は、平均して1週間に少なくとも2回の嚥下障害のエピソード歴を少なくとも4週間にわたって有する、請求項28~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象は、嚥下局所コルチコステロイドおよび/またはプロトンポンプ阻害剤(PPI)による処置に不応性または応答不十分である、請求項28~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記IL-4R阻害剤は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む、請求項28~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記IL-4R阻害剤は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項28~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的均等物である、請求項28~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記IL-4R阻害剤は、約50mg~約600mgの用量で投与される、請求項28~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記IL-4R阻害剤は、約300mgの用量で投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記IL-4R阻害剤は、1週間に1回または2週間に1回投与される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記IL-4R阻害剤は、第2の治療剤または療法と組み合わせて投与される、請求項28~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の治療剤または療法は、IL-1β阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、吸入型コルチコステロイド、グルココルチコイド、PPI、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、食道拡張、アレルゲン除去、または食事管理である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記IL-4R阻害剤は、PPIと組み合わせて投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記PPIは、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるオメプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるエソメプラゾール、60mg QDまたは30mg BIDの用量におけるランソプラゾール、60mg QDの用量におけるデクスランソプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるラベプラゾール、および80mg QDまたは40mg BIDの用量におけるパントプラゾールからなる群から選択される高用量レジメンとして投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記IL-4R阻害剤による処置は、
前記対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも30%減少させる;
前記対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも10ポイント減少させる;および/または、
前記対象の嚥下障害の変化に関する患者の全般的印象(PGIC)スコアを改善する、請求項28~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記IL-4R阻害剤は、ガラスバイアル、シリンジ、ペン送達デバイス、および自己注射器からなる群から選択される容器内に含まれている、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年5月21日にPCT国際特許出願として出願され、2020年5月22日に出願された米国仮特許出願第63/029,085号;2020年8月17日に出願された同第63/066,705号;2020年8月27日に出願された同第63/071,264号;2020年10月6日に出願された同第63/088,147号;2020年12月3日に出願された同第63/121,088号;および2021年2月2日に出願された同第63/144,939号;ならびに2021年4月21日に出願された欧州特許出願第21315068.3号の優先権を主張するものである;これらの各々の内容全体は、参照によって組み入れる。
【0002】
本開示は、好酸球性食道炎の処置または防止を、それを必要とする対象において行うための、インターロイキン-4(IL-4)受容体阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
好酸球性食道炎(EoE)は、食道機能異常の症状につながる局所的な好酸球性炎症を特徴とする、食道の慢性、炎症性、アレルギー性/免疫媒介性の疾患である。希少疾患と考えられているが、現在の有病率は全世界で100,000中22.7と推定されており(非特許文献1)、増加傾向にあると見受けられる(非特許文献2)。好酸球性食道炎は、あらゆる年齢で報告されている;しかし、ほとんどの症例は、小児および50歳よりも若い成人に認められている(例えば、非特許文献3を参照されたい)。EoEでは、臨床症状に性別関連差はないが、性差が一貫して報告されており、男性は女性の3~4倍高い頻度で罹患する(例えば、非特許文献4を参照されたい)。
【0004】
成人および10歳を超える小児の両方において、EoEの一次臨床兆候は、嚥下障害および食片圧入である(非特許文献5)。これらの症状は、生活の質(QOL)の実質的な悪化につながる(非特許文献6;非特許文献7;および非特許文献8を参照されたい)。内視鏡所見は、食道の炎症に関連し、固定性または一過性の同心円状の輪状溝、長軸方向の縦走溝、白斑、粘膜血管分布の低減、脆弱なまたはクレープ様の粘膜、および狭窄からなる。
【0005】
EoEの発症において2型サイトカイン媒介性免疫応答が重要な役割を果たすことを示唆する証拠が増加している。これは、インターロイキン(IL)-4、IL-5、IL-13、ならびにエオタキシン-1、エオタキシン-2、およびエオタキシン-3のような、食道における好酸球の蓄積を調節することが知られているサイトカインを介して、好酸球誘発性、マスト細胞誘発性、T細胞誘発性、およびリンパ球誘発性の慢性炎症を惹起することで起こると考えられている(例えば、非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;および非特許文献12を参照されたい)。食道組織において観察される2型媒介性炎症と一致して、EoE患者は、IL-4およびIL-13のシグナル伝達の増強にも関連する共存性のアレルギー疾患、特に食物アレルギー、アトピー性皮膚炎(AD)、喘息、およびアレルギー性鼻炎を高率で有する(例えば、非特許文献13;および非特許文献14を参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ariasら、Aliment Pharmaco Ther 2016、43:3~15
【非特許文献2】Dellon、Gastroenterology Clinics of North America 2014、43:201~218
【非特許文献3】Dellonら、Clinical Gastroenterology and Hepatology 2014、12:589~596
【非特許文献4】Kapelら、Gastroenterology 2008、140:82~90
【非特許文献5】Lucendoら、United European Gastroenterol J、2017、5:335~358
【非特許文献6】DeBrosseら、Journal of Allergy and Clinical Immunology 2011、128:132~138
【非特許文献7】Falk、Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America 2014、43:231~242
【非特許文献8】Straumann、Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America 2008、18:99~118
【非特許文献9】AboniaおよびRothenberg、Annual Review of Medicine 2012、63:421~434
【非特許文献10】Blanchardら、Journal of Clinical Investigation、2006、116:536~547
【非特許文献11】Blanchardら、Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America、2008、18:133~43
【非特許文献12】Mishra、Immunology and Allergy Clinics of North America、2009、29:29~40
【非特許文献13】Assa’ad、Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America、2008、18:119~132
【非特許文献14】Weinbrand-Goichbergら、Immunologic Research、2013、56:249~260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の治療アプローチとしては、長期的な食物除去、嚥下局所製剤のコルチコステロイド(欧州連合[EU]以外ではEoEの処置のために承認されていない)、および食道拡張が挙げられる。長期および/または有痛性の食片圧入のための緊急内視鏡検査は、重度食道傷害のリスクに関連し、根底にある病因または疾患の進行を変化させない。嚥下局所コルチコステロイドは、臨床試験において、部分的な臨床応答および組織学的緩解を誘発すると報告されているが、一様に有効とはいえず、中止後の疾患再発だけでなく真菌感染症にも関連することがある。したがって、EoEを処置するための安全および有効な療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、12歳以上の対象における好酸球性食道炎(EoE)の少なくとも1つの症状を処置、防止、または寛解する方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を対象に投与することを含み、対象は、処置の開始前に、10以上の嚥下障害症状質問票(DSQ:Dysphagia Symptom Questionnaire)スコアを有し、IL-4R阻害剤は、IL-4Rαと結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号7のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、対象は、成人である。いくつかの実施形態では、対象は、12歳以上18歳未満の青年である。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、処置の開始前に、近位食道領域、中位食道領域、および遠位食道領域のうちの少なくとも2つにおいて、内視鏡生検によって測定した場合に15eos/hpf以上の上皮内好酸球浸潤ピーク細胞数を有する。いくつかの実施形態では、対象は、平均して1週間に少なくとも2回の嚥下障害のエピソード歴を少なくとも4週間にわたって有する。いくつかの実施形態では、対象は、嚥下局所コルチコステロイドおよび/またはプロトンポンプ阻害剤(PPI)による処置に不応性または応答不十分である。
【0011】
いくつかの実施形態では、対象は、併存性のアトピー性疾患を有する。いくつかの実施形態では、併存性のアトピー性疾患は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、またはアレルギー性結膜炎である。いくつかの実施形態では、対象は、好酸球性胃腸炎を有する。いくつかの実施形態では、対象は、喘息、アトピー性皮膚炎、手湿疹および食物性湿疹、アレルギー性鼻炎、口腔アレルギー症候群、ならびに食物アレルギー(例えば、ピーナッツアレルギー)からなる群から選択される、現在または以前の共存症を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象は、併存性の2型炎症性疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象は、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、統合気道疾患、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称はチャーグ・ストラウス症候群)、胃食道逆流性疾患(GERD)、アトピー性結膜炎、血管炎、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRSwNP)、アスピリン過敏症、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)過敏症(例えば、NSAID増悪性呼吸器疾患、またはNSAID-ERD)、通年性アレルギー性鼻炎(PAR)、アトピー性皮膚炎(AD)、慢性好酸球性肺炎(CEP)、または運動誘発気管支痙攣のうちの1つまたはそれ以上を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的均等物である。
【0014】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、約50mg~約600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、約300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、1週間に1回または2週間に1回投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、第2の治療剤または療法と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、第2の治療剤または療法は、IL-1β阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、吸入型コルチコステロイド、グルココルチコイド、PPI、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、食道拡張、アレルゲン除去、または食事管理である。
【0016】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、PPIと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、PPIは:40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるオメプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるエソメプラゾール、60mg QDまたは30mg BIDの用量におけるランソプラゾール、60mg QDの用量におけるデクスランソプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるラベプラゾール、および80mg QDまたは40mg BIDの用量におけるパントプラゾールからなる群から選択される高用量レジメンとして投与される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、PPIによる処置の必要性を低減する。
【0017】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、1つもしくはそれ以上のEoE関連遺伝子および/または2型炎症関連遺伝子の発現を正常化する(例えば、図3に示される1つもしくはそれ以上の2型炎症関連遺伝子の発現を正常化する、および/または、図6に示される1つもしくはそれ以上のEoE関連遺伝子の発現を正常化する)。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、対象における嚥下障害を低減する(例えば、対象の食物嚥下能力を改善する)。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも30%減少させる;および/または、対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも10ポイント減少させる。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、嚥下障害の症状を、処置開始の約4週間以内、約6週間以内、または約8週間以内に、対象のベースライン値に比して低減する。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、対象における食道上皮内好酸球を低減する。いくつかの実施形態では、対象のピーク食道上皮内好酸球数を、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも50%低減する;および/または、対象のピーク食道上皮内好酸球数を、24週間の処置後に、6eos/hpf以下に低減する。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、対象のピーク食道上皮内好酸球数を、24週間の処置後に、1eos/hpf以下に低減する。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、食道の1つまたはそれ以上の内視鏡的特性、例えば、食道の近位部および/または遠位部における、浮腫、輪状溝、滲出物、縦走溝、および/または狭窄の存在または重篤度を改善する。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、対象のEoE-EREFSスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも25%低減する。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、TARC、エオタキシン-3、およびIgE(例えば、全IgE)からなる群から選択されるバイオマーカーの発現を低減する。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、疾患重篤度の臨床的尺度と相関する遺伝子(例えば、CTSC、CCL26、CCR3、ANO1、および/またはSPINK8)の発現を正常化する。
【0018】
別の態様において、食物嚥下能力を改善する方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は:
好酸球性食道炎(EoE)を有する対象に、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含み、IL-4R阻害剤は、IL-4Rαと結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号7のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象は、成人である。いくつかの実施形態では、対象は、12歳以上18歳未満の青年である。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象は、処置の開始前に、10以上の嚥下障害症状質問票(DSQ)スコアを有する。いくつかの実施形態では、対象は、処置の開始前に、近位食道領域、中位食道領域、および遠位食道領域のうちの少なくとも2つにおいて、内視鏡生検によって測定した場合に15eos/hpf以上の上皮内好酸球浸潤ピーク細胞数を有する。いくつかの実施形態では、対象は、平均して1週間に少なくとも2回の嚥下障害のエピソード歴を少なくとも4週間にわたって有する。いくつかの実施形態では、対象は、嚥下局所コルチコステロイドおよび/またはプロトンポンプ阻害剤(PPI)による処置に不応性または応答不十分である。
【0021】
いくつかの実施形態では、対象は、併存性のアトピー性疾患を有する。いくつかの実施形態では、併存性のアトピー性疾患は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、またはアレルギー性結膜炎である。いくつかの実施形態では、対象は、好酸球性胃腸炎を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、対象は、併存性の2型炎症性疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象は、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、統合気道疾患、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称はチャーグ・ストラウス症候群)、胃食道逆流性疾患(GERD)、アトピー性結膜炎、血管炎、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRSwNP)、アスピリン過敏症、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)過敏症(例えば、NSAID増悪性呼吸器疾患、またはNSAID-ERD)、通年性アレルギー性鼻炎(PAR)、アトピー性皮膚炎(AD)、慢性好酸球性肺炎(CEP)、または運動誘発気管支痙攣のうちの1つまたはそれ以上を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的均等物である。
【0024】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、約50mg~約600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、約300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、1週間に1回または2週間に1回投与される。
【0025】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、第2の治療剤または療法と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、第2の治療剤または療法は、IL-1β阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、吸入型コルチコステロイド、グルココルチコイド、PPI、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、食道拡張、アレルゲン除去、または食事管理である。
【0026】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、PPIと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、PPIは:40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるオメプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるエソメプラゾール、60mg QDまたは30mg BIDの用量におけるランソプラゾール、60mg QDの用量におけるデクスランソプラゾール、40mg QDまたは20mg BIDの用量におけるラベプラゾール、および80mg QDまたは40mg BIDの用量におけるパントプラゾールからなる群から選択される高用量レジメンとして投与される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、PPIによる処置の必要性を低減する。
【0027】
いくつかの実施形態では、Il-4R阻害剤による処置は:
対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも30%減少させる;
対象のDSQスコアを、24週間の処置後に、ベースラインに比して少なくとも10ポイント減少させる;および/または、
対象の嚥下障害の変化に関する患者の全般的印象(PGIC:Patient Global Impression of Change)スコアを改善する。
【0028】
いくつかの実施形態では、Il-4R阻害剤による処置によって、対象の嚥下障害アウトカムの変化に関する患者の全般的印象(PGIC)スコアが、24週間の処置後に「大幅に改善された」または「中等度に改善された」になる。
【0029】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、ガラスバイアル、シリンジ、ペン送達デバイス、および自己注射器からなる群から選択される容器内に含まれている。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、ガラスバイアル内に含まれている。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、シリンジ内に含まれている。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、自己注射器内に含まれている。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、ペン送達デバイス内に含まれている。いくつかの実施形態では、ペン送達デバイスは、充填済みである。
【0030】
他の実施形態は、後述する詳細な説明を確認すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】デュピルマブによる処置は、24週間の処置期間にわたるDSQ合計スコアの変化によって測定した場合に、EoE患者の嚥下障害重篤度を有意および急速に低減した。DSQスコアは0~84の範囲をとり、スコアが低いほど、嚥下障害の頻度が低いまたは重篤度が低いことを示す。プラセボ=ひし形(グラフの上方の線);デュピルマブ300mg QW=円形(グラフの下方の線)。LS、最小二乗;SE、標準誤差。*P<0.05、**P<0.01;***P<0.001。
図2A】デュピルマブによる処置は、EREFSスコアによって測定した場合に、第24週のEoEの内視鏡的特徴を低減した。EREFSスコアは0~18の範囲をとり、スコアが高いほど、重篤度/存在度が高いことを示す。図2A:EREFS合計スコアにおけるベースラインからの絶対的変化。図2B:近位食道領域および遠位食道領域におけるEREFSの主要な特徴における、ベースラインから第24週への変化。**P<0.01;***P<0.001。P値は名目値である。EREFS、好酸球性食道炎-内視鏡参照スコア(Eosinophilic Esophagitis-Endoscopic Reference Score);LS、最小二乗;SD、標準偏差;SE、標準誤差。プラセボ群の患者5名はレスキュー処置を受けた;レスキュー処置後のデータは欠損に設定し、これらの第24週のデータは補完した。欠損データの他の理由には、パートAにおいて試験を早期中止したこと、患者がパートC試験薬の最初の用量を投薬された後に第24週の内視鏡検査が行われたこと、またはCOVID-19パンデミックによる規制のために第24週の来診が遅延されたことが含まれる。
図2B】デュピルマブによる処置は、EREFSスコアによって測定した場合に、第24週のEoEの内視鏡的特徴を低減した。EREFSスコアは0~18の範囲をとり、スコアが高いほど、重篤度/存在度が高いことを示す。図2A:EREFS合計スコアにおけるベースラインからの絶対的変化。図2B:近位食道領域および遠位食道領域におけるEREFSの主要な特徴における、ベースラインから第24週への変化。**P<0.01;***P<0.001。P値は名目値である。EREFS、好酸球性食道炎-内視鏡参照スコア(Eosinophilic Esophagitis-Endoscopic Reference Score);LS、最小二乗;SD、標準偏差;SE、標準誤差。プラセボ群の患者5名はレスキュー処置を受けた;レスキュー処置後のデータは欠損に設定し、これらの第24週のデータは補完した。欠損データの他の理由には、パートAにおいて試験を早期中止したこと、患者がパートC試験薬の最初の用量を投薬された後に第24週の内視鏡検査が行われたこと、またはCOVID-19パンデミックによる規制のために第24週の来診が遅延されたことが含まれる。
図3】デュピルマブによる処置は、実施例1における成人および青年のEoE患者の食道生検において、2型炎症シグネチャー(T2INFGS)を正常化した。横列は、2型炎症シグネチャーの遺伝子:IL13RA1、FCER1A、CCL17、ARG1、IL4R、STAT6、CCR4、TSLP、DPP4、SIGLEC8、GATA1、PTGDR2、CCR3、CLC、HRH1、CCL24、ALOX15、CCL26、IL1RL1、HDC、TPSAB1、CMA1、IL25、IL4、GATA3、IL13、IL5、POSTN、CCL13、CCL18、IL33、CCL11、MUC5B、MUC5AC、PTGDS、およびFCER2を示す。各縦列は、患者1名(患者1名当たり、1時点当たり最大3つのサンプルが利用可能)の平均遺伝子発現である。スクリーニング時および処置第24週におけるプラセボ処置患者、スクリーニング時および処置第24週におけるデュピルマブ処置患者、健康な対照、ならびにEoE対照についての遺伝子発現シグネチャーが示されている。
図4】デュピルマブによる処置は、実施例1における成人および青年のEoE患者の食道生検において、96遺伝子EoE診断パネル(EDPGS)を正常化した。横列は、EoE診断パネル(Wenら、Gastroenterology 2013;145(6):1289~1299)の遺伝子を示す。各縦列は、患者1名(患者1名当たり、1時点当たり最大3つのサンプルが利用可能)の平均遺伝子発現である。スクリーニング時および処置第24週におけるプラセボ処置患者、スクリーニング時および処置第24週におけるデュピルマブ処置患者、健康な対照、ならびにEoE対照についての遺伝子発現シグネチャーが示されている。
図5】第12週における、発現が調整された1,302の遺伝子(「DpxOme-EoE」(商標))に対するデュピルマブ300mg QW対プラセボの効果、および各個のサンプルにおけるそれらのエンリッチメントスコア(NES_EoE)。ベースラインおよび処置第12週におけるプラセボ処置患者(n=19)、ベースラインおよび処置第12週におけるデュピルマブ処置患者(n=22)、健康な対照、ならびにEoE対照についての遺伝子発現シグネチャーが示されている。横列は、DpxOme-EoE(商標)の遺伝子を示す。
図6】プラセボと比してデュピルマブ300mg QWによる処置後の第12週において発現の変化が最大であった上位30の遺伝子。
図7A】EoE患者における2型炎症のバイオマーカーである血清TARC(図7A)、血漿エオタキシン-3(図7B)、および血清全IgE(図7C)のベースラインから第4週、第12週、および第24週への変化中央値に対するデュピルマブ300mg QW対プラセボの効果。***デュピルマブとプラセボとのP値<0.0001。ベースラインからの変化におけるデュピルマブとプラセボとの差は、共変量としてのベースライン測定値、および層別因子、および固定因子としての処置を用いる順位ベースのANCOVAモデルを使用して分析した。使用された最初のレスキュー処置後の値は打ち切り、最終観察繰り越し(LOCF:last observation carried forward)法を使用して各来診時の欠損データを補完した。
図7B】EoE患者における2型炎症のバイオマーカーである血清TARC(図7A)、血漿エオタキシン-3(図7B)、および血清全IgE(図7C)のベースラインから第4週、第12週、および第24週への変化中央値に対するデュピルマブ300mg QW対プラセボの効果。***デュピルマブとプラセボとのP値<0.0001。ベースラインからの変化におけるデュピルマブとプラセボとの差は、共変量としてのベースライン測定値、および層別因子、および固定因子としての処置を用いる順位ベースのANCOVAモデルを使用して分析した。使用された最初のレスキュー処置後の値は打ち切り、最終観察繰り越し(LOCF:last observation carried forward)法を使用して各来診時の欠損データを補完した。
図7C】EoE患者における2型炎症のバイオマーカーである血清TARC(図7A)、血漿エオタキシン-3(図7B)、および血清全IgE(図7C)のベースラインから第4週、第12週、および第24週への変化中央値に対するデュピルマブ300mg QW対プラセボの効果。***デュピルマブとプラセボとのP値<0.0001。ベースラインからの変化におけるデュピルマブとプラセボとの差は、共変量としてのベースライン測定値、および層別因子、および固定因子としての処置を用いる順位ベースのANCOVAモデルを使用して分析した。使用された最初のレスキュー処置後の値は打ち切り、最終観察繰り越し(LOCF:last observation carried forward)法を使用して各来診時の欠損データを補完した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について説明する前に、方法および実験条件は様々であり得るので、本発明は記載される特定の方法および実験条件に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0033】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0034】
本明細書で使用される「約」という用語は、記載された特定の数値に関して使用されている場合、その値が、記載された値から1%以下変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99および101ならびにその間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」などの用語は、挙げられた障害または状態の症状を軽減すること、その症状の原因を一時的もしくは恒久的に排除すること、またはその症状の出現を防止もしくは緩徐化することを意味する。
【0036】
「好酸球性食道炎」または「EoE」は、本明細書で使用される場合、食道における異常な好酸球性炎症および食道機能異常を特徴とする炎症性疾患を指す。EoEの一次症状としては、胸痛および腹痛、嚥下障害、胸やけ、食物拒絶、嘔吐ならびに食片圧入が挙げられるが、これらに限定されない。EoEの臨床病理は、食道壁における隆起または気管様輪状溝の存在、および食道粘膜における好酸球浸潤を特徴とする。EoEは現在、生検を伴う食道の内視鏡検査の後に、食道粘膜内層の顕微鏡的分析および生化学的分析を行うことにより診断されている。EoEは、アトピー性または非アトピー性に分類することができる(Mulderら、Histopathology 2012、61:810~822を参照されたい)。本開示は、アトピー性と非アトピー性の両形態のEoEを処置する方法を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という用語は、好酸球性食道炎の1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を呈する、および/または好酸球性食道炎と診断されている、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を指す。ある特定の実施形態では、この用語には、1つもしくはそれ以上のEoE関連バイオマーカー(本明細書の他の箇所に記載する)のレベル上昇を示す対象、および/またはEoEに関連する遺伝子発現プロファイル(「EoE疾患トランスクリプトーム」)を有する対象が含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の方法に従って処置される対象は、IgE、血清TARC、および/もしくはエオタキシン-3のレベルが上昇している対象、公開されているEoE遺伝子発現シグネチャー(Dellonら、Clin Transl Gastroenterol 2017、8(2):e74)と一致する遺伝子発現プロファイルを有する対象、または公開されているEoE遺伝子発現シグネチャーの1つもしくはそれ以上の遺伝子の発現レベルが変化している対象である。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は同義に使用される。
【0038】
「それを必要とする対象」という用語は、例えば、処置前に、EoEの1つまたはそれ以上の徴候、例えば、マスト細胞などの炎症促進性メディエーターの食道における過剰発現、食道の好酸球浸潤、食道壁の肥厚、嚥下障害、食片圧入、ならびに胸痛および腹痛、ならびに/またはEoE関連バイオマーカーのレベル上昇などを呈する(または呈したことがある)対象も含み得る。この用語には、上昇した末梢好酸球数(例えば、≧100、≧150、≧200、または≧300細胞/μL)または上昇した血清IgE(>150kU/L)を有する対象も含まれる。
【0039】
「好酸球浸潤」という用語は、対象の血液、食道、胃、十二指腸、および回腸を含む臓器または組織における好酸球の存在を指す。本開示との関連において、「好酸球浸潤」という用語は、消化管のうち食道および胃を含むがこれらに限定されない領域の粘膜内層における好酸球の存在を指す。好酸球浸潤は、例えば、EoEを有する対象の食道組織生検において分析される。いくつかの実施形態によれば、「好酸球浸潤」は、食道の強拡大視野1つ当たりの、または食道の近位領域、中位領域、および遠位領域のうちの2つ以上における、15個以上の好酸球の存在を指す。「強拡大視野」という用語は、例えば対象の食道由来の組織において、好酸球を見るために使用される、顕微鏡による400倍の標準的な総合拡大率を指す。よって、いくつかの実施形態において、「それを必要とする対象」は、食道において、例えば、食道の近位領域、中位領域、および遠位領域のうちの2つ以上において、強拡大視野(「hpf」)当たり15個以上の好酸球(「eos」)の存在を示す対象を指す。ある特定の実施形態では、「好酸球浸潤」は、白血球、例えばリンパ球、好中球、およびマスト細胞による組織への浸潤を含む。白血球の浸潤、例えば食道組織への浸潤は、好酸球特異的マーカー(例えば、CD11cLow/Neg、SiglecF、F4/80、EMR1、Siglec 8、およびMBP2)、マクロファージ特異的マーカー(例えば、CD11b、F4/80、CD14、EMR1、およびCD68)、好中球特異的マーカー(例えば、CD11b、Ly6G、Ly6C、CD11b、およびCD66b)、およびT細胞特異的マーカー(例えば、CD3、CD4、およびCD8)のような細胞表面マーカーによって検出することができる。
【0040】
治療方法
一態様において、対象における好酸球性食道炎(EoE)の1つまたはそれ以上の症状を処置、防止、または寛解する方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、12歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は、成人である。いくつかの実施形態では、対象は、12歳以上18歳未満の青年である。いくつかの実施形態では、対象は、処置の開始前に40kg超の体重を有する青年である。
【0041】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、高頻度および/または重度の嚥下障害歴を有する。例えば、いくつかの実施形態において、対象は、処置の開始前に、10以上の嚥下障害症状質問票(DSQ)スコア、例えば、15以上、20以上、25以上、30以上、または35以上のDSQスコアを有する。いくつかの実施形態では、対象は、処置の開始前に、平均して1週間に少なくとも2回、3回、4回、5回またはそれ以上の嚥下障害エピソードを経験している。いくつかの実施形態では、対象は、1週間に複数の嚥下障害エピソード(例えば、平均して2回以上の嚥下障害エピソード)を、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、もしくは少なくとも20週間にわたって、または少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、もしくはそれ以上にわたって経験している。いくつかの実施形態では、対象は、処置の開始前に、緩和を得るために液体、咳嗽もしくは空嘔吐、嘔吐、または医学的措置を必要とする嚥下障害のエピソードを複数回(例えば2回以上)経験したことがある。
【0042】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、EoEの1つもしくはそれ以上のバイオマーカーのレベルが変化しているか、または、EoE患者に関する公開されている遺伝子シグネチャープロファイルを示す、もしくはそれと一致する、EoE関連遺伝子の遺伝子シグネチャープロファイルを有する。EoEの診断のためのEoE関連バイオマーカーおよび遺伝子発現パネルについては、当技術分野において、例えば、Sherrillら、Genes Immun 2014、15(6):361~369;Dellonら、Clin Transl Gastroenterol 2017、8(2):e74;および米国特許公開第2017/0067111号において説明されている。いくつかの実施形態では、対象は、エオタキシン-3、血清TARC、全IgE、アレルゲン特異的IgE、および/またはアレルゲン特異的IgG4のレベルが上昇している。いくつかの実施形態では、処置される対象は、TNFAIP6、LRRC31、SLC26A4-AS1、ALOX15、CCL26、TGM6、NRXN1、PMCH、SLC26A4、CXCL1、CCR3、TREML2、POSTN、LURAP1L、またはCXCL6のような、1つまたはそれ以上のEoE関連遺伝子のレベルが上昇している。いくつかの実施形態では、処置される対象は、CRTAC1、BC107108、SFTA2、C2orf16、KRTAP3-2、PLNIPRP3、CIDEA、FLG、SLC8A1-AS1、SPINK5、SPINK7、SPINK8、DPCR1、MUC22、CRISP2、DSG1、GYS2、またはCRISP3のような、1つまたはそれ以上のEoE関連遺伝子のレベルが低下している。
【0043】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、少なくとも1つの共存症を有しているか、または有したことがある。いくつかの実施形態では、共存症は、喘息、アトピー性皮膚炎、手湿疹および食物性湿疹、アレルギー性鼻炎、口腔アレルギー症候群、または食物アレルギー(例えば、ピーナッツアレルギー)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、併存性のアトピー性疾患を有する。いくつかの実施形態では、併存性のアトピー性疾患は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、またはアレルギー性結膜炎である。
【0045】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、併存性の2型炎症状態を有しているか、または有したことがある。2型炎症状態の非限定的な例としては、喘息、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、統合気道疾患、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称はチャーグ・ストラウス症候群)、胃食道逆流性疾患(GERD)、アトピー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、血管炎、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRSwNP)、アスピリン過敏症、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)過敏症(例えば、NSAID増悪性呼吸器疾患、またはNSAID-ERD)、通年性アレルギー性鼻炎(PAR)、慢性好酸球性肺炎(CEP)、および運動誘発気管支痙攣が挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、アレルゲンに対して感受性のある対象、例えば、食物アレルギーを有する対象である。例えば、いくつかの実施形態において、対象は、次の特性のうちの1つを呈し得る:(a)1つもしくはそれ以上のアレルゲンに曝露されたときにアレルギー反応もしくはアレルギー応答を起こしやすい;(b)1つもしくはそれ以上のアレルゲンに対するアレルギー応答もしくはアレルギー反応を以前に呈したことがある;(c)アレルギーの既往歴を有する;および/または(d)アレルギー応答もしくはアナフィラキシーの徴候もしくは症状を呈する。本明細書で使用される場合、「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などの語句には、蕁麻疹(例えば、じんま疹)、血管性浮腫、鼻炎、喘息、嘔吐、くしゃみ、鼻水、副鼻腔の炎症、涙目、喘鳴、気管支痙攣、最大呼気流量(PEF)の低減、胃腸窮迫、潮紅、口唇膨張、舌膨張、血圧低下、アナフィラキシー、および臓器機能異常/不全からなる群から選択される1つまたはそれ以上の徴候または症状が含まれる。「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などには、例えば、IgE産生の増加、アレルゲン特異的免疫グロブリン産生の増加、および/または好酸球増加症のような、免疫学的応答および免疫学的反応も含まれる。ある特定の実施形態では、対象は、EoEに関連するアレルゲン、または対象をEoEに対して感受性のあるものおよび/もしくはEoEを発症しやすいものにするアレルゲンに対してアレルギー性がある。いくつかの実施形態では、アレルゲンは、例えば、乳製品(例えば、牛乳)、卵、小麦、大豆、トウモロコシ、ライ麦、魚、甲殻類、ピーナッツ、木の実のような食料品に含まれるか、またはそれに由来する。いくつかの実施形態では、アレルゲンは、例えば、粉塵(例えば、イエダニを含む)、花粉、昆虫毒(例えば、ミツバチ、スズメバチ、蚊などの毒)、カビ、動物の鱗屑、ラテックス、医薬品、薬物、ブタクサ、草、またはカバの木のような非食料品に含まれるか、またはそれに由来する。
【0047】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、胃食道逆流性疾患(GERD)を含む慢性食道炎障害に関連する病態および症状を呈するか、または慢性食道炎障害と診断されている。いくつかの実施形態では、処置される対象は、好酸球性胃腸炎に関連する病態および症状を呈するか、または好酸球性胃腸炎と診断されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、EoEのための現在の標準治療療法(例えば、食物除去食、嚥下局所コルチコステロイド、グルココルチコイド、高用量PPIレジメンのようなPPI療法、または食道拡張)のうちの1つまたはそれ以上に対して非応答性であるか、応答不十分であるか、または抵抗性がある。いくつかの実施形態では、対象は、IL-4R阻害剤による処置の開始時に高用量PPIレジメンを受けている。いくつかの実施形態では、対象は、1回またはそれ以上の食道拡張を受けたことがある。
【0049】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合性フラグメント
本開示のある特定の例示的な実施形態によれば、IL-4R阻害剤は、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントである。「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖という4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、C1、C2、およびC3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(C1)を含む。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる高度に保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された、3つのCDRおよび4つのFRから構成されている。本開示の様々な実施形態において、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合性部分)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一であってもよく、または天然もしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義することができる。
【0050】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合性フラグメントも含む。抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性フラグメント」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、天然起源の、酵素的に取得可能な、合成の、または遺伝子工学操作された任意のポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性フラグメントは、例えば、タンパク分解性消化、または抗体の可変ドメインと場合により定常ドメインとをコードするDNAの操作および発現を伴う組換え遺伝子工学操作技法のような、任意の好適な標準的技法を使用して、完全な抗体分子から導出することができる。そのようなDNAは、公知であり、および/もしくは、例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つもしくはそれ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な構成に配置するために、またはコドンを導入する、システイン残基を作出する、アミノ酸の修飾、付加、もしくは欠失などを行うために、シーケンシングして、化学的に、または分子生物学技法を使用することによって操作することができる。
【0051】
抗原結合性フラグメントの非限定的な例としては、次のものが挙げられる:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチド。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIPs:small modular immunopharmaceuticals)、およびサメ可変IgNARドメインのような他の工学操作分子も、本明細書で使用される「抗原結合性フラグメント」という表現に包含される。
【0052】
抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成でよく、概して、1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列に隣接する、またはそれとインフレームである、少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインに関連するVドメインを有する抗原結合性フラグメントでは、VドメインおよびVドメインは、互いに対して相対的に、任意の好適な配置で位置付けられていてよい。例えば、可変領域は、二量体であり、V-V、V-V、またはV-Vの二量体を含むことがある。あるいは、抗体の抗原結合性フラグメントは、単量体のVまたはVドメインを含むこともある。
【0053】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本開示の抗体の抗原結合性フラグメント内に見出すことのできる、可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的で例示的な構成としては、次のものが挙げられる:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-C。上記に列挙した例示的な構成のすべてを含む、可変ドメインおよび定常ドメインのいずれの構成においても、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接結合していてもよく、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって結合していてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子における隣接した可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可動性または半可動性の結合をもたらす、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなり得る。さらに、本開示の抗体の抗原結合性フラグメントは、互いと、および/または1つもしくはそれ以上の単量体VもしくはVドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合性に会合している、上記に列挙した可変ドメインおよび定常ドメインの構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0054】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、多特異性(例えば、二重特異性)抗体も含む。多特異性抗体または抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで、各可変ドメインは、別個の抗原に、または同じ抗原上の異なるエピトープに、特異的に結合することができる。いずれの多特異性抗体フォーマットも、当技術分野で利用可能な定型的技法を使用して、本開示の抗体または抗体の抗原結合性フラグメントとの関連における使用のために適合させることができる。例えば、本開示は、二重特異性抗体の使用を含む方法を含み、ここで、免疫グロブリンの一方のアームは、IL-4Rαまたはそのフラグメントに対して特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームは、第2の治療標的に対して特異的であるか、または治療部分にコンジュゲートされている。本開示との関連において使用することのできる例示的な二重特異性フォーマットは、限定されるものではないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディの二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合物、デュアル可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ・イントゥ・ホール、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを用いた共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマットを含む(前述のフォーマットの概説については、例えば、Kleinら、2012、mAbs 4:6、1~11、および同文献で引用されている参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体は、例えば、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、ペプチド/核酸コンジュゲーションでは、直交性の化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、これが次いで自己集合して、定義された組成、結合価、および幾何学的形状を有する多量体複合体になる。(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照されたい)。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示の方法において使用される抗体は、ヒト抗体である。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図している。しかしながら、本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によってin vitroで、または体細胞変異によってin vivoで導入された変異)を、例えばCDRに、特にCDR3に含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスのような別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を含むことを意図するものではない。
【0056】
本開示の方法において使用される抗体は、組換えヒト抗体でもよい。「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、組換え手段によって製造、発現、作出、または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞(下記でさらに説明する)にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリ(下記でさらに説明する)から単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら、(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295を参照されたい)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを伴う任意の他の手段によって製造、発現、作出、もしくは単離された抗体を含むことを意図している。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物を使用する場合は、in vivo体細胞変異誘発)に供され、したがって、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のV配列およびV配列に由来し、それらに関連するものでありながらも、in vivoでヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在しない可能性のある配列である。
【0057】
「単離抗体」とは、同定されており、その天然の環境の少なくとも1つの構成要素から分離および/または回収されている抗体を指す。例えば、生物の少なくとも1つの構成要素から、または抗体が天然に存在するもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から、分離されている、または取り出されている抗体は、「単離抗体」である。単離抗体は、組換え細胞内のin situの抗体も含む。単離抗体は、少なくとも1回の精製または単離工程に供されている抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0058】
ある特定の実施形態によれば、本開示の方法において使用される抗体は、IL-4Rαと特異的に結合する。「特異的に結合する」などという用語は、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、生理学的条件下で比較的安定である抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、IL-4Rαと「特異的に結合する」抗体は、本開示との関連において使用される場合、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定した場合に、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満、または約0.05nM未満のKで、IL-4Rαまたはその一部と結合する抗体を含む。しかし、ヒトIL-4Rαと特異的に結合する単離抗体は、他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子のような他の抗原との交差反応性を有し得る。
【0059】
ある特定の例示的な実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、米国特許第7,608,693号に記載されているような、抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む抗IL-4Rα抗体、またはその抗原結合性フラグメントである。ある特定の例示的な実施形態において、本開示の方法との関連において使用することのできる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ配列番号3、4、5、6、7、および8のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するHCVRと、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するLCVRとをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1を含むHCVRと、配列番号2を含むLCVRとを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0062】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む例示的な抗体は、デュピルマブとして知られる完全ヒト抗IL-4R抗体である。ある特定の例示的な実施形態によれば、本開示の方法は、デュピルマブの使用を含む。本明細書で使用される場合、「デュピルマブ」には、デュピルマブの生物学的均等物も含まれる。「生物学的均等物」という用語は、デュピルマブに関して本明細書で使用される場合、単一用量でも複数用量でも、同様の実験条件下にて等モル用量で投与されたときに、吸収の速度および/または程度がデュピルマブのものとの有意差を示さない薬学的均等物または薬学的代替物である、抗IL-4R抗体もしくはIL-4R結合性タンパク質またはそれらのフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、この用語は、IL-4Rに結合する抗原結合性タンパク質で、その安全性、純度、および/または効力においてデュピルマブとの臨床的に有意義な差がないものを指す。
【0063】
本開示の方法との関連において使用することのできる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317と称され、当技術分野で知られている抗体(Correnら、2010、Am J Respir Crit Care Med.、181(8):788~796)、またはMEDI 9314、または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、もしくは米国特許第8,877,189号、米国特許第10,774,141号、もしくは国際特許公開第WO2020/096381号に記載されている抗IL-4Rα抗体のすべてが挙げられ、各文献の内容は、参照によって本明細書に組み入れる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示の方法において使用される抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントは、添付の配列表に記載されている1つまたはそれ以上のCDR、HCVR、および/またはLCVR配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号32(SCB-VH-59)、配列番号33(SCB-VH-60)、配列番号34(SCB-VH-61)、配列番号35(SCB-VH-62)、配列番号36(SCB-VH-63)、配列番号37(SCB-VH-64)、配列番号38(SCB-VH-65)、配列番号39(SCB-VH-66)、配列番号40(SCB-VH-67)、配列番号41(SCB-VH-68)、配列番号42(SCB-VH-69)、配列番号43(SCB-VH-70)、配列番号44(SCB-VH-71)、配列番号45(SCB-VH-72)、配列番号46(SCB-VH-73)、配列番号47(SCB-VH-74)、配列番号48(SCB-VH-75)、配列番号49(SCB-VH-76)、配列番号50(SCB-VH-77)、配列番号51(SCB-VH-78)、配列番号52(SCB-VH-79)、配列番号53(SCB-VH-80)、配列番号54(SCB-VH-81)、配列番号55(SCB-VH-82)、配列番号56(SCB-VH-83)、配列番号57(SCB-VH-84)、配列番号58(SCB-VH-85)、配列番号59(SCB-VH-86)、配列番号60(SCB-VH-87)、配列番号61(SCB-VH-88)、配列番号62(SCB-VH-89)、配列番号63(SCB-VH-90)、配列番号64(SCB-VH-91)、配列番号65(SCB-VH-92)、または配列番号66(SCB-VH-93)のアミノ酸配列を含むHCVR;および(ii)配列番号12(SCB-VL-39)、配列番号13(SCB-VL-40)、配列番号14(SCB-VL-41)、配列番号15(SCB-VL-42)、配列番号16(SCB-VL-43)、配列番号17(SCB-VL-44)、配列番号18(SCB-VL-45)、配列番号19(SCB-VL-46)、配列番号20(SCB-VL-47)、配列番号21(SCB-VL-48)、配列番号22(SCB-VL-49)、配列番号23(SCB-VL-50)、配列番号24(SCB-VL-51)、配列番号25(SCB-VL-52)、配列番号26(SCB-VL-53)、配列番号27(SCB-VL-54)、配列番号28(SCB-VL-55)、配列番号29(SCB-VL-56)、配列番号30(SCB-VL-57)、または配列番号31(SCB-VL-58)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、配列番号64(SCB-VH-91)のアミノ酸配列を含むHCVRと、配列番号17(SCB-VL-44)、配列番号27(SCB-VL-54)、または配列番号28(SCB-VL-55)のアミノ酸配列を含むLCVRとを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体は:配列番号67/68(MEDI-1-VH/MEDI-1-VL);配列番号69/70(MEDI-2-VH/MEDI-2-VL);配列番号71/72(MEDI-3-VH/MEDI-3-VL);配列番号73/74(MEDI-4-VH/MEDI-4-VL);配列番号75/76(MEDI-5-VH/MEDI-5-VL);配列番号77/78(MEDI-6-VH/MEDI-6/VL);配列番号79/80(MEDI-7-VH/MEDI-7-VL);配列番号81/82(MEDI-8-VH/MEDI-8-VL);配列番号83/84(MEDI-9-VH/MEDI-9-VL);配列番号85/86(MEDI-10-VH/MEDI-10-VL);配列番号87/88(MEDI-11-VH/MEDI-11/VL);配列番号89/90(MEDI-12-VH/MEDI-12-VL);配列番号91/92(MEDI-13-VH/MEDI-13-VL);配列番号93/94(MEDI-14-VH/MEDI-14-VL);配列番号95/96(MEDI-15-VH/MEDI-15-VL);配列番号97/98(MEDI-16-VH/MEDI-16/VL);配列番号99/100(MEDI-17-VH/MEDI-17-VL);配列番号101/102(MEDI-18-VH/MEDI-18-VL);配列番号103/104(MEDI-19-VH/MEDI-19-VL);配列番号105/106(MEDI-20-VH/MEDI-20-VL);配列番号107/108(MEDI-21-VH/MEDI-21-VL);配列番号109/110(MEDI-22-VH/MEDI-22-VL);配列番号111/112(MEDI-23-VH/MEDI-23-VL);配列番号113/114(MEDI-24-VH/MEDI-24-VL);配列番号115/116(MEDI-25-VH/MEDI-25-VL);配列番号117/118(MEDI-26-VH/MEDI-26-VL);配列番号119/120(MEDI-27-VH/MEDI-27-VL);配列番号121/122(MEDI-28-VH/MEDI-28-VL);配列番号123/124(MEDI-29-VH/MEDI-29-VL);配列番号125/126(MEDI-30-VH/MEDI-30-VL);配列番号127/128(MEDI-31-VH/MEDI-31-VL);配列番号129/130(MEDI-32-VH/MEDI-32-VL);配列番号131/132(MEDI-33-VH/MEDI-33-VL);配列番号133/134(MEDI-34-VH/MEDI-34-VL);配列番号135/136(MEDI-35-VH/MEDI-35-VL);配列番号137/138(MEDI-36-VH/MEDI-36-VL);配列番号139/140(MEDI-37-VH/MEDI-37-VL);配列番号141/142(MEDI-38-VH/MEDI-38-VL);配列番号143/144(MEDI-39-VH/MEDI-39-VL);配列番号145/146(MEDI-40-VH/MEDI-40-VL);配列番号147/148(MEDI-41-VH/MEDI-41-VL);配列番号149/150(MEDI-42-VH/MEDI-42-VL);および配列番号151/152(MEDI-37GL-VH/MEDI-37GL-VL)からなる群から選択されるアミノ酸配列ペアを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号153(AJOU-1-VH)、配列番号154(AJOU-2-VH)、配列番号155(AJOU-3-VH)、配列番号156(AJOU-4-VH)、配列番号157(AJOU-5-VH)、配列番号158(AJOU-6-VH)、配列番号159(AJOU-7-VH)、配列番号160(AJOU-8-VH)、配列番号161(AJOU-9-VH)、配列番号162(AJOU-10-VH)、配列番号163(AJOU-69-VH)、配列番号164(AJOU-70-VH)、配列番号165(AJOU-71-VH)、配列番号166(AJOU-72-VH)、または配列番号167(AJOU-83-VH)のアミノ酸配列を含むHCVR;および(ii)配列番号168(AJOU-33-VL)、配列番号169(AJOU-34-VL)、配列番号170(AJOU-35-VL)、配列番号171(AJOU-36-VL)、配列番号172(AJOU-37-VL)、配列番号173(AJOU-38-VL)、配列番号174(AJOU-39-VL)、配列番号175(AJOU-40-VL)、配列番号176(AJOU-41-VL)、配列番号177(AJOU-42-VL)、配列番号178(AJOU-77-VL)、配列番号179(AJOU-78-VL)、配列番号180(AJOU-79-VL)、配列番号181(AJOU-80-VL)、配列番号182(AJOU-86-VL)、配列番号183(AJOU-87-VL)、配列番号184(AJOU-88-VL)、配列番号185(AJOU-89-VL)、配列番号186(AJOU-90-VL)、または配列番号187(AJOU-91-VL)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号188(REGN-VH-3)、配列番号189(REGN-VH-19)、配列番号190(REGN-VH-35)、配列番号191(REGN-VH-51)、配列番号192(REGN-VH-67)、配列番号193(REGN-VH-83)、配列番号194(REGN-VH-99)、配列番号195(REGN-VH-115)、配列番号196(REGN-VH-147)、または配列番号197(REGN-VH-163)のアミノ酸配列を含むHCVR;および(ii)配列番号198(REGN-VL-11)、配列番号199(REGN-VL-27)、配列番号200(REGN-VL-43)、配列番号201(REGN-VL-59)、配列番号202(REGN-VL-75)、配列番号203(REGN-VL-91)、配列番号204(REGN-VL-107)、配列番号205(REGN-VL-123)、配列番号206(REGN-VL-155)、または配列番号207(REGN-VL-171)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示の方法において使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存性結合特性を有し得る。例えば、本開示の方法において使用される抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHにおいて低減したIL-4Rα結合性を呈し得る。あるいは、本開示の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHにおいて増強された抗原結合性を呈し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ以下のpH値を含む。本明細書で使用される場合、「中性pH」という表現は、約7.0から約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0070】
ある特定の事例では、「中性pHと比較して酸性pHにおいて低減したIL-4Rα結合性」は、酸性pHでIL-4Rαに結合する抗体のK値の、中性pHでIL-4Rαに結合する抗体のK値に対する比という点から表される(またはその逆も同様である)。例えば、抗体またはその抗原結合性フラグメントが約3.0またはそれ以上の酸性/中性K比を呈する場合、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、本開示では「中性pHと比較して酸性pHにおいて低減したIL-4Rα結合性」を呈するものとみなすことができる。ある特定の例示的な実施形態において、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、またはそれ以上であり得る。
【0071】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、酸性pHにおいて中性pHと比較して低減した(または増強された)特定の抗原に対する結合について、抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルにおける抗原結合性ドメインの修飾により、pH依存性特性を有する抗体をもたらすことができる。例えば、抗原結合性ドメインの(例えば、CDR内の)1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHに比して酸性pHで抗原結合性が低減している抗体を得ることができる。
【0072】
ヒト抗体の製造
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成する方法は当技術分野において公知である。そのような公知の方法のいずれも、ヒトIL-4Rに特異的に結合するヒト抗体を作製するために、本開示との関連において使用することができる。
【0073】
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticalsを参照されたい)またはいずれかの他の公知のモノクローナル抗体生成方法を使用する場合、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、IL-4Rに対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に応答して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するような、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を伴う。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結させる。次いで、完全ヒト抗体を発現することができる細胞において、DNAを発現させる。
【0074】
一般的には、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに目的の抗原が負荷され、抗体を発現するマウスからリンパ性細胞(B細胞など)が回収される。リンパ性細胞を骨髄腫細胞株と融合させて、不死ハイブリドーマ細胞株を製造することができ、そのようなハイブリドーマ細胞株は、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するために、スクリーニングされ選択される。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結してもよい。そのような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞において産生することができる。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0075】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。この抗体を、当業者に知られている標準的な手順を使用して、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特性について解析し、選択する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域と置き換えることで、本開示の完全ヒト抗体、例えば野生型または修飾型のIgG1またはIgG4が生成される。選択される定常領域は特定の用途に従って異なり得るが、高親和性抗原結合および標的特異性の特性は、可変領域に存在する。
【0076】
概して、本開示の方法において使用することのできる抗体は、上述のように、固相に固定化した抗原または溶液相における抗原への結合によって測定した場合に、高親和性を有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域と置き換えることで、本開示の完全ヒト抗体が生成される。選択される定常領域は特定の用途に従って異なり得るが、高親和性抗原結合および標的特異性の特性は、可変領域に存在する。
【0077】
一実施形態では、IL-4Rに特異的に結合し、本明細書で開示される方法において使用することのできるヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)とを含む。HCVRおよびLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は、当技術分野において周知であり、本明細書で開示される特定のHCVRおよび/またはLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を同定するために使用することのできる例示的な規則としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。大まかにいえば、Kabat定義は配列可変性に基づくものであり、Chothia定義は構造的ループ領域の位置に基づくものであり、AbM定義はKabatのアプローチとChothiaのアプローチとの折衷案である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948(1997);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268~9272(1989)を参照されたい。抗体中のCDR配列を同定するためには、公開データベースも利用可能である。
【0078】
医薬組成物
一態様において、本開示は、IL-4R阻害剤を対象に投与することを含む方法を提供し、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容されるビヒクル、担体、および/または賦形剤を含む医薬組成物中に含まれている。様々な薬学的に許容される担体および賦形剤が当技術分野では周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAを参照されたい。いくつかの実施形態では、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、腹腔内投与、鞘内投与、経皮投与、局所投与、または皮下投与に好適である。
【0079】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内注射、皮下注射、皮膚内注射、および筋肉内注射、点滴などのための剤形のような、注射用製剤を含む。これらの注射用製剤は、公知の方法によって製造することができる。例えば、注射用製剤は、例えば、上述の抗体またはその塩を、注射に従来使用されている無菌の水性媒体または油性媒体中に溶解、懸濁、または乳化させることによって製造することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含む等張液などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水添ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、これらは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このように製造される注射液は、適切なアンプルに充填することができる。
【0080】
本開示の方法に従って患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、症状、状態、投与経路などに応じて異なり得る。用量は、典型的には、体重または体表面積に従って計算される。状態の重篤度に応じて、処置の頻度および持続期間は調節可能である。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するための有効な投与量およびスケジュールは、経験的に決定することができる;例えば、患者の進捗を定期的な評価によってモニタリングし、それに従って用量を調節することができる。さらに、当技術分野において周知の方法(例えば、Mordentiら、1991、Pharmaceut.Res.8:1351)を使用して、投与量の種間スケーリングを行ってもよい。本開示との関連において使用することのできる、抗IL4R抗体の特定の例示的な用量、およびそれを用いる投与レジメンについては、本明細書の他の箇所で開示する。
【0081】
リポソームへの封入、微粒子、マイクロカプセル、変異型ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスなど(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429~4432を参照されたい)、様々な送達系が知られており、医薬組成物を投与するために使用することができる。投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、任意の簡便な経路によって、例えば輸注またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸管粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、他の生物学的に活性のある薬剤と一緒に投与してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、皮下投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、容器内に含まれている。よって、別の態様では、本明細書で開示される医薬組成物を含む容器が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ガラスバイアル、シリンジ、ペン送達デバイス、および自己注射器からなる群から選択される容器内に含まれている。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、例えば、皮下または静脈内に、標準的な針およびシリンジによって送達される。いくつかの実施形態では、シリンジは、充填済みシリンジである。いくつかの実施形態では、ペン送達デバイスまたは自己注射器が、本開示の医薬組成物を送達するために(例えば、皮下送達のために)使用される。ペン送達デバイスは、再使用可能でも使い捨てでもよい。再使用可能なペン送達デバイスは、概して、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物がすべて投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジは容易に廃棄でき、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換できる。これでペン送達デバイスを再使用することができる。使い捨てのペン送達デバイスには、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てのペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバに入れられた医薬組成物が予め充填された状態で用意される。リザーバから医薬組成物がなくなると、デバイス全体が廃棄される。
【0084】
好適なペンおよび自己注射器送達デバイスの例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自己注射器(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、制御放出系を使用して送達される。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer、上掲;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近傍に配置することで、全身用量の一部のみが必要となるようにしてもよい(例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上掲、第2巻、115~138ページを参照されたい)。他の制御放出系については、Langerによる総説、1990、Science 249:1527~1533に記述されている。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される使用のための医薬組成物は、活性成分の用量を入れるのに適した単位用量の剤形へと製造される。そのような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射(アンプル)、坐薬などが挙げられる。
【0087】
本開示との関連において使用することのできる抗IL-4R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号で開示されている。
【0088】
投与量および投与レジメン
典型的に、本明細書で開示される方法に従って対象に投与されるIL-4R阻害剤(例えば、本明細書で開示される抗IL-4R抗体)の量は、治療有効量である。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、次のうちの1つまたはそれ以上をもたらすIL-4R阻害剤の量を意味する:(a)好酸球性食道炎の症状の重篤度もしくは持続期間の低減;(b)食道内の好酸球数の低減;(c)食道伸展性の増加;(d)嚥下障害のエピソードもしくは嚥下障害の強度の低減;(e)1つもしくはそれ以上のEoE関連バイオマーカーもしくは遺伝子発現シグネチャーの正常化;および/または(f)別の薬剤を用いる同時処置もしくはレスキュー処置の使用もしくは必要性の低減(例えば、全身性および/または嚥下局所コルチコステロイド、PPIなどの使用の低減もしくは排除)。
【0089】
抗IL-4R抗体の場合、治療有効量は、抗IL-4R抗体約0.05mg~約600mg、約50mg~約600mg、または約50mg~約300mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgであり得る。ある特定の実施形態では、抗IL-4R抗体75mg、100mg、150mg、200mg、または300mgが対象に投与される。
【0090】
個々の用量に含まれるIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の量は、患者体重1キログラム当たりの活性剤(例えば、抗体)のミリグラム(すなわち、mg/kg)の単位で表されることがある。例えば、IL-4R阻害剤は、患者体重基準で約0.0001~約10mg/kg、例えば、約1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、もしくは10mg/kgの用量で患者に投与することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤またはIL-4R阻害剤を含む医薬組成物は、1週間に約4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回、または治療応答が達成される限りより低頻度の投薬頻度で対象に投与される。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物の投与を伴うある特定の実施形態では、約50mg~約600mg、例えば、約75mg、150mg、200mg、または300mgの量で、1週間に1回の投薬を用いることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤の複数用量が、定義された期間にわたって対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、IL-4R阻害剤の複数用量を対象に順次投与することを含む。本明細書で使用される場合、「順次投与すること」は、IL-4R阻害剤の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間、または数カ月)を空けて異なる日に対象に投与されることを意味する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、単一の初期用量のIL-4R阻害剤を、その後に1つまたはそれ以上の二次用量のIL-4R阻害剤を、そして場合によりその後に1つまたはそれ以上の三次用量のIL-4R阻害剤を、患者に順次投与することを含む。
【0093】
「初期用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、IL-4R阻害剤の投与の時間的順序を指す。よって、「初期用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量である(「ローディング用量」とも呼ばれる);「二次用量」は、初期用量の後に投与される用量である;そして「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初期用量、二次用量、および三次用量はいずれも、同じ量のIL-4R阻害剤を含み得るが、概して、投与の頻度という点から互いと異なり得る。しかし、ある特定の実施形態では、初期用量、二次用量、および/または三次用量に含まれるIL-4R阻害剤の量は、処置の過程中に互いから異なる(例えば、必要に応じて上または下に調節される)。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4、または5)の用量が、処置レジメンの開始時に「ローディング用量」として投与され、これに、より低頻度で投与される後続用量(例えば、「維持用量」)が続く。例えば、IL-4R阻害剤は、約200mg、400mg、または約600mgのローディング用量、続いて約75mg~約300mgの1つまたはそれ以上の維持用量で、対象に投与することができる。一実施形態では、初期用量および1つまたはそれ以上の二次用量の各々は、IL-4R阻害剤50mg~600mg、例えば、IL-4R阻害剤100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、または600mgを含む。いくつかの実施形態では、初期用量および1つまたはそれ以上の二次用量の各々は、同じ量のIL-4R阻害剤を含む。他の実施形態では、初期用量は、第1の量のIL-4R阻害剤を含み、1つまたはそれ以上の二次用量の各々は、第2の量のIL-4R阻害剤を含む。例えば、IL-4R阻害剤の第1の量は、IL-4R阻害剤の第2の量の1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、もしくは5倍、またはそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、ローディング用量なしで、IL-4R阻害剤(例えば、約50mg~約600mg、例えば、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、または約mgの1つまたはそれ以上の用量)を投与される。
【0094】
いくつかの実施形態では、二次用量および/または三次用量の各々は、直前の用量から1~14週間後(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5週間後、またはそれ以上後)に投与される。「直前の用量」という語句は、本明細書で使用される場合、複数投与の順序において、間に入る用量がなく、その順序においてすぐ次の用量の投与の前に患者に投与されるIL-4R阻害剤の用量を意味する。
【0095】
本開示の方法は、任意の数の二次用量および/または三次用量のIL-4R阻害剤を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0096】
複数の二次用量を伴ういくつかの実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各二次用量は、直前の用量から1~2週間後に患者に投与してもよい。同様に、複数の三次用量を伴ういくつかの実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各三次用量は、直前の用量から2~4週間後に患者に投与してもよい。あるいは、二次用量および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程にわたって変化してもよい。また、投与の頻度は、臨床検査後に個々の患者の必要性に応じて、処置の過程中に医師が調節してもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、好酸球性食道炎を有する12歳以上の対象のための、IL-4R阻害剤(例えば、本明細書で開示される抗IL-4R抗体)の治療有効量は、初期(ローディング)用量に続いて、1つまたはそれ以上の二次(維持)用量を含み、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の初期用量は、600mgを含み、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の各二次用量は、毎週(QW)投与される300mgを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、好酸球性食道炎を有する12歳以上の対象のための、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、初期(ローディング)用量に続いて、1つまたはそれ以上の二次(維持)用量を含み、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の初期用量は、600mgを含み、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の各二次用量は、2週間毎(Q2W)に投与される300mgを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、好酸球性食道炎を有する12歳以上の対象のための、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、毎週(QW)投与される300mgを含むIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の用量を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、好酸球性食道炎を有する12歳以上の対象のための、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、2週間毎(Q2W)に投与される300mgを含むIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)の用量を含む。
【0101】
EoE関連パラメータ
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される治療方法は、対象におけるEoEの存在または重篤度を評価するために使用される1つまたはそれ以上のエンドポイントまたはEoE関連パラメータの改善をもたらす。EoE関連パラメータの例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(a)嚥下障害の頻度および/もしくは強度における、例えば、嚥下障害症状質問票(DSQ)、シュトラウマン嚥下障害計測法(SDI:Straumann Dysphagia Instrument)、嚥下障害の変化に関する患者の全般的印象(PGIC)もしくは重篤度に関する患者の全般的印象(PGIS)を使用して測定した場合の変化(例えば、低減);(b)食道上皮内好酸球数における変化(例えば、低減);(c)1つもしくはそれ以上の食道特性、例えば、浮腫、輪状溝、滲出物、縦走溝、および/もしくは狭窄の不在、存在、もしくは重篤度における、例えば、EoE-EREFSを使用して測定した場合の変化;(d)食道伸展性における、例えば、腔内機能的管腔画像診断プローブ(EndoFLIP:endoluminal functional lumen imaging probe)を使用して測定した場合の変化(例えば、増加);(e)食道内の組織学的特徴の重篤度および/もしくは範囲における、例えば、好酸球性食道炎組織学的スコアリングシステム(EoE-HSS:Eosinophilic Esophagitis Histological Scoring System)を使用して測定した場合の変化;(f)1つもしくはそれ以上のEoE関連バイオマーカーのレベルもしくはEoE遺伝子発現シグネチャーにおける変化(例えば、正常化);または(g)EoEの他の症状の頻度および/もしくは重篤度における、例えば、好酸球性食道炎の影響に関する質問票(EoE-IQ:Eosinophilic Esophagitis Impact Questionnaire)、EoE症状質問票、好酸球性食道炎活性指数(EEsAI:Eosinophilic Esophagitis Activity Index)、成人の好酸球に関する生活の質(EoE-QQL-A:Adult Eosinophilic Quality of Life)、もしくは欧州における生活の質5項目スケール(EQ-5D:European Quality of Life 5-Dimensional Scale)を使用して測定した場合の変化。これらのEoE関連パラメータを評価するための方法は、下記の実施例セクションに記載されており、また、参照によって本明細書に組み入れるWO2019/028367において開示されている。
【0102】
EoE関連パラメータが「改善した」かどうかを決定するためには、パラメータをベースラインで、またIL-4R阻害剤の投与後の1つまたはそれ以上の時点で数量化する。例えば、EoE関連パラメータは、本開示の医薬組成物による初回処置後、第1日、第2日、第3日、第4日、第5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第11日、第12日、第14日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日;または第1週の最後、第2週の最後、第3週の最後、第4週の最後、第5週の最後、第6週の最後、第7週の最後、第8週の最後、第9週の最後、第10週の最後、第11週の最後、第12週の最後、第13週の最後、第14週の最後、第15週の最後、第16週の最後、第17週の最後、第18週の最後、第19週の最後、第20週の最後、第21週の最後、第22週の最後、第23週の最後、第24週の最後、またはそれよりも後に測定してよい。処置開始後の特定の時点におけるパラメータの値と、ベースラインにおけるパラメータの値との差を使用することで、EoE関連パラメータに改善があったかどうかが確証される。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法に従うIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、嚥下障害の症状の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、対象における嚥下障害の頻度および/または強度における変化(例えば、低減)をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、1週間当たりの嚥下障害のエピソードの頻度における低減、例えば、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象の1週間当たりの嚥下障害のエピソードの平均頻度)に比して少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、DSQスコアの改善をもたらす。DSQは、嚥下障害の頻度および強度を測定するために臨床試験において使用されている、有効性確認済みの患者報告アウトカム(PRO:patient reported outcome)である(Hudgensら、J Patient Rep Outcomes 2017、1(1):3、doi:10.1186/s41687-017-0006-5)。DSQは、毎日の想起期間を使用し、EoE嚥下障害の存在および重篤度に関する3つの質問を含む。DSQでは通常、患者は少なくとも質問1および2に回答し、質問票の次に進むためには固形食を食べていること(質問1:「今朝起きてから、固形食を食べましたか?」に対して「はい」)が必要とされる。患者が質問1に対して「いいえ」と答えた場合、DSQの残りの項目はスコアリングされない。質問2(「今朝起きてから、食物が喉をゆっくり通過したり、喉につかえたりしましたか?」)に対して「いいえ」と回答した患者は、ゼロのスコアを与えられ、質問3の回答へは進まない(日誌には、その日は完了と記録される)。質問1および2に「はい」と回答した者は質問3に進み、質問3は、行動を取らなかったから医学的措置を求めたまで、症状を軽減するための患者の行動に基づいて嚥下障害の重篤度を推量する5ポイントスケールでスコアリングされる。したがって、DSQスコアリングアルゴリズムは、最終的なスコアが嚥下障害の頻度および重篤度によって決まることを確実にするために、質問2および3への回答から構築される。DSQスコアを計算するには、14日間を通した累積スコアに基づいて標準化された合計スコアを導出するために、各14日期間に対して少なくとも8つの日誌エントリが必要とされる。いくつかの実施形態では、DSQは修正版DSQであり、質問1(「今朝起きてから、固形食を食べましたか?」)に「いいえ」と回答した患者について、フォローアップ質問により、患者が固形食の嚥下に関する問題を理由として固形食を避けたかどうかを調べる。DSQスコアは理論上0~84の範囲をとることができ、スコアが低いほど、嚥下障害の頻度が低いまたは重篤度が低いことを示す。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のDSQスコア)に比して、DSQスコアにおける減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、DSQスコアにおける少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のポイントの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、DSQスコアにおける少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、DSQスコアにおける変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、IL-4R阻害剤による処置の開始から約4週間以内、約5週間以内、約6週間以内、約7週間以内、約8週間以内、約9週間以内、または約10週間以内に、対象における嚥下障害の症状を(例えば、その対象についてのベースライン値に比した絶対DSQスコアの変化またはDSQスコアの減少率によって測定した場合に)低減する。
【0104】
嚥下障害の症状における変化は、嚥下障害の変化に関する患者の全般的印象(PGIC)を使用して評価することもできる。PGICは、食物の嚥下困難の変化に関する7ポイントスケール(大幅に改善された;中等度に改善された;少し改善された;変化なし;少し悪化した;中等度に悪化した;または大幅に悪化した)の総合的自己評価を提供することを患者に求める1項目の質問票である。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のPGICスコア)に比して、PGICスコアにおける減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、PGICスコアにおける少なくとも1、2、3、またはそれ以上のポイントの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、「大幅に改善された」または「中等度に改善された」のPGIC評価をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、IL-4R阻害剤による処置の開始から約4週間以内、約5週間以内、約6週間以内、約7週間以内、約8週間以内、約9週間以内、または約10週間以内に、対象における嚥下障害の症状を(例えば、その対象についてのベースライン値に比したPGICスコアの改善によって測定した場合に)低減する。
【0105】
いくつかの実施形態では、処置は、SDIスコアの改善をもたらす。SDIは、嚥下障害の頻度および強度を決定するために臨床試験において使用されている、有効性未確認の患者報告アウトカム(PRO)である(Straumann 2010)。SDIには1週間の想起期間がある。嚥下障害事象の頻度は、5ポイントスケール:0=なし、1=1週間に1回、2=1週間に数回、3=1日に1回、および4=1日に数回によってグレーディングされ、嚥下障害事象の強度は、6ポイントスケール:0=嚥下の制限なし、1=わずかな抵抗感、2=通過遅延を伴うわずかな悪心、3=介入(例えば、飲料摂取、呼吸)を要する短期間の閉塞、4=嘔吐によってのみ除去可能な、より長期間の閉塞、および5=内視鏡的介入を必要とする長期間の完全な閉塞によってグレーディングされる。合計SDIスコアは0~9の範囲をとる。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のSDIスコア)に比して、SDIスコアにおける1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のポイントの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、SDIスコアにおける少なくとも3ポイントの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、SDIスコアにおける少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、SDIスコアにおける変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。
【0106】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、ピーク食道上皮内好酸球数の改善(例えば、低減)をもたらす。「ピーク食道上皮内好酸球数」は、1つの強拡大視野(hpf)に含まれる好酸球の数を指す。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のピーク数)に比して、ピーク食道上皮内好酸球数における減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、ピーク食道上皮内好酸球数における少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ピーク食道上皮内好酸球数の、10eos/hpf未満または6eos/hpf未満への減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ピーク食道上皮内好酸球数の、6eos/hpf以下、5eos/hpf以下、4eos/hpf以下、3eos/hpf以下、2eos/hpf以下、または1eos/hpf以下への減少をもたらす。いくつかの実施形態では、ピーク食道上皮内好酸球数における変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。
【0107】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、EoEの1つまたはそれ以上の内視鏡的特徴の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、EoE-EREFSスコアの改善をもたらす。EoE-EREFS[(浮腫(edema)、輪状溝(rings)、滲出物(exudates)、縦走溝(furrows)、狭窄(strictures)]は、内視鏡で同定されたEoE食道粘膜の炎症性特徴およびリモデリング特徴を測定するために使用されている、疾患の炎症性特徴およびリモデリング特徴に関する有効性確認済みのスコアリングシステムである(Hirano 2014)。この計測法は、食道特徴の存在および重篤度に関連する合計17項目を含む。特定の食道特徴は、次のものを含む:輪状溝(食道を囲む同心円状の輪状溝-不在、軽度、中等度、重度、該当せず);狭窄(食道の狭小化-あり、なし、該当せず);狭窄の直径(該当する場合);滲出物(白斑を指す-不在、軽度、重度)、縦走溝(食道に走る縦線-不在、存在);浮腫(粘膜の血管影の喪失-不在、存在);クレープ紙状食道(不在、存在);内視鏡で同定されたすべてのEoE所見(すなわち、固定性の輪状溝、狭窄、白みがかった滲出物、縦走溝形成、浮腫、およびクレープ紙状粘膜)を統合した総合的な全体的様相。さらに、胃食道逆流性疾患に関連する粘膜の変化が、びらんのLos Angeles分類体系(びらんなし、またはLA分類A、B、C、D)を使用して記録される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のEoE-EREFSスコア)に比して、EoE-EREFSスコアにおける少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、EoE-EREFSスコアにおける変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。
【0108】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、EoEの1つまたはそれ以上の組織学的特徴の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、EoE-HSSスコアの改善をもたらす。EoE-HSSは、別個の重篤度(グレード)および範囲(ステージ)疾患スコアを生成する、有効性確認済みの計測法である。このスコアは、食道の3つの異なる領域(近位、中位、および遠位)におけるEoEの8つの組織学的特徴(パラメータ)を測定するために使用される(Collinsら、2017)。8つのパラメータは、次のものを含む:好酸球密度、基底部過形成、好酸球膿瘍、好酸球表面層化、細胞間隙拡張、表面上皮変化、異常角化性細胞、および固有層線維症。グレードとステージとの両方で、0~3のスケールが各パラメータに使用される(0は炎症が最も軽度で正常である)。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のEoE-HSSスコア)に比して、EoE-HSSスコアにおける少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、EoE-HSS複合スコア、グレードスコア、および/またはステージスコアの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、EoE-HSSスコアにおける変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。
【0109】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、食道伸展性の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、食道伸展性は、食道内腔の直径および圧力を測定するために腔内機能的管腔画像診断プローブ(EndoFLIP、Medtronic、USA)を使用することで評価される。EndoFLIPデバイスは、食道の容積膨張中の腔内圧を記録すると同時に食道に沿った複数の部位で断面積を測定するカテーテルベースの手法である。食道の断面積対圧力の関係の分析により、食道コンプライアンスおよび伸展性プラトー(DP)の決定が可能になる。DPは、EoE患者では健康な対照と比較して著しく低減することが示されている(Kwiatek 2011)。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象の食道伸展性またはDP)に比して、食道伸展性の(例えば、DPによって測定した場合の)少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、DPの少なくとも0.5mm、1mm、1.5mm、またはそれ以上の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、食道伸展性における変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法に従うIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、健康に関連する生活の質の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、EoE-IQスコアの改善をもたらす。EoE-IQは、EoEの影響を1~5のスケールで評価する;スコアが高いほど、健康関連QoLの悪化が大きいことを示す。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、EoE-IQスコアにおける少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、EoE-IQスコアにおける変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、IL-4R阻害剤による処置の開始から約4週間以内、約5週間以内、約6週間以内、約7週間以内、約8週間以内、約9週間以内、または約10週間以内に、対象における健康に関連する生活の質を(例えば、その対象についてのベースライン値に比した絶対EoE-IQスコアの変化またはEoE-IQスコアの減少率によって測定した場合に)改善する。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法に従うIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、嚥下障害以外の症状の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、EoE-SQ-頻度スコアの改善をもたらす。EoE-SQ-頻度は、嚥下障害以外の症状を5~25のスケールで評価する;スコアが高いほど、症状負荷が高いことを示す。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、EoE-SQ-頻度スコアにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のポイントの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、ベースラインに比して、EoE-SQ-頻度スコアにおける少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、EoE-SQ-頻度スコアにおける変化は、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、IL-4R阻害剤による処置の開始から約4週間以内、約5週間以内、約6週間以内、約7週間以内、約8週間以内、約9週間以内、または約10週間以内に、対象における嚥下障害以外の症状を(例えば、その対象についてのベースライン値に比した絶対EoE-SQ-頻度スコアの変化またはEoE-SQ-頻度スコアの減少率によって測定した場合に)改善する。
【0112】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、1つまたはそれ以上のEoE関連バイオマーカー、EoE遺伝子シグネチャー、2型炎症遺伝子シグネチャー、および/またはEoE関連遺伝子のセットについて計算される正規化エンリッチメントスコア(NES:Normalized Enrichment Score)の正常化をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による対象の処置は、EoE遺伝子シグネチャー、2型炎症遺伝子シグネチャー、および/またはEoE関連遺伝子もしくは2型炎症遺伝子のセットについて計算されるNESを抑制する。本明細書で使用される場合、「EoE関連バイオマーカー」という用語は、非EoE患者に存在するまたは非EoE患者において検出可能なマーカーのレベルまたは量とは異なる(例えば、それよりも高いまたは低い)レベルまたは量で、EoE患者に存在するまたはEoE患者において検出可能である、生物学的応答、細胞型、パラメータ、タンパク質、ポリペプチド、酵素、酵素活性、代謝産物、核酸、炭水化物、または他の生体分子を指す。いくつかの実施形態では、EoE関連バイオマーカーは、線維症、組織リモデリング、または上皮バリア機能に関連する遺伝子である。例示的なEoE関連バイオマーカーとしては、例えば、食道好酸球、エオタキシン-3(CCL26)、ペリオスチン(POSTN)、血清IgE(全IgEおよびアレルゲン特異的IgE)、血清IgG(全IgGおよびアレルゲン特異的IgG)、アラキドン酸15-リポキシゲナーゼ(ALOX15)、IL-13、IL-5、血清中の胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC;CCL17)、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、血清中の好酸球カチオンタンパク質(ECP)、コラーゲン遺伝子(例えば、COL4A3、COL4A4、COL4A6、COL8A2、COL14A1、およびCOL21A1)、カルパイン14、デスモグレイン-1(DSG1)、フィラグリン(FLG)、シグナル伝達および転写活性化因子6(STAT6)、Kazal型セリンペプチダーゼ阻害剤5(SPINK5)、SPINK7、SPINK8、インターロイキン4受容体(IL-4R)、好酸球関連遺伝子(例えば、CLCおよびSIGLEC8)、アノクタミン-1(ANO1)、カテプシンC(CTSC)、C-Cケモカイン受容体3型(CCR3)、ならびに好酸球由来神経毒(EDN)が挙げられるが、これらに限定されない。「EoE遺伝子シグネチャー」という用語は、健康な対照と比較したEoE患者の食道生検の示差的な遺伝子発現プロファイルを指し、「EoE疾患トランスクリプトーム」(Sherrill、2014)とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、EoE遺伝子シグネチャーは、EoE診断パネル(EDP、EoGenuis(商標)として臨床的に利用可能、Inform Diagnostics、USA)のような、公開されているEoE疾患トランスクリプトームのより小さな遺伝子セットである。「2型炎症遺伝子シグネチャー」は、2型炎症に関連する遺伝子セットについてのトランスクリプトームを指す。例示的な2型炎症関連遺伝子としては、CCL26、ALOX15、CCR3、およびIL1RL1が挙げられるが、これらに限定されない。2型炎症遺伝子シグネチャーの例示的な遺伝子のリストを図3に示す。正規化エンリッチメントスコア(NES)は、転写物セットの活性レベルが、サンプル中の転写物の順位付けされたリスト全体の両端(上位または下位)で過剰提示される程度を反映し、セット中の転写物の数を考慮することによって正規化したものである(Subramanian、2005)(Barbie、2009)。
【0113】
いくつかの実施形態では、EoE関連バイオマーカー、EoE遺伝子シグネチャー、2型炎症遺伝子シグネチャー、および/またはNESは、対象由来の組織サンプル(例えば、近位領域、中位領域、および/または遠位領域由来の食道ピンチ生検サンプル)を使用して決定される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による対象の処置は、例えば、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定した場合、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のEoE関連バイオマーカーの発現レベル、EoE遺伝子シグネチャー、またはNES)に比して、1つまたはそれ以上のEoE関連バイオマーカー、EoE遺伝子シグネチャー、2型炎症遺伝子シグネチャー、および/またはNESの正常化をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による対象の処置は、例えば、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定した場合、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象のNES)に比して、1つまたはそれ以上のEoE関連バイオマーカー、EoE遺伝子シグネチャー、または2型炎症遺伝子シグネチャーについてのNESを抑制する。
【0114】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、2型炎症遺伝子シグネチャーの正常化、または2型炎症遺伝子シグネチャーの遺伝子のサブセットの正常化をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、例えば、遺伝子IL13RA1、FCER1A、CCL17、ARG1、IL4R、STAT6、CCR4、TSLP、DPP4、SIGLEC8、GATA1、PTGDR2、CCR3、CLC、HRH1、CCL24、ALOX15、CCL26、IL1RL1、HDC、TPSAB1、CMA1、IL25、IL4、GATA3、IL13、IL5、POSTN、CCL13、CCL18、IL33、CCL11、MUC5B、MUC5AC、PTGDS、およびFCER2を含む、図3に示される遺伝子シグネチャーである。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤による処置は、2型炎症遺伝子シグネチャー、例えば、図3に示される2型炎症遺伝子シグネチャーの遺伝子の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の正常化をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーまたは遺伝子シグネチャーの遺伝子のサブセットの正常化は、例えば、IL-4R阻害剤の投与後第8日、第15日、第22日、第25日、第29日、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第85日、もしくはそれ以降、またはIL-4R阻害剤による処置の24週間後に測定した場合、ベースライン(例えば、処置の開始前の対象の遺伝子シグネチャー(例えば、遺伝子発現レベル))に比して測定される。
【0115】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、図6に示される遺伝子シグネチャーの正常化、または、例えば、遺伝子TNFAIP6、LRRC31、SLC26A4-AS1、ALOX15、CCL26、TGM6、NRXN1、PMCH、SLC26A4、CXCL1、CCR3、TREML2、POSTN、LURAP1L、CXCL6、CRTAC1、BC107108、SFTA2、C2orf16、KRTAP3-2、PLNIPRP3、CIDEA、SLC8A1-AS1、SPINK8、DPCR1、MUC22、CRISP2、DSG1、GYS2、およびCRISP3を含む、図6の遺伝子シグネチャーにおける遺伝子のサブセットの正常化をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)による対象の処置は、TARC(例えば、血清TARC)、エオタキシン-3(例えば、血漿エオタキシン-3)、および/またはIgE(例えば、血清全IgE)の発現を減少させる、抑制する、または正常化する。
【0116】
併用療法
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、1つまたはそれ以上の更なる治療剤をIL-4R阻害剤と組み合わせて対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」という表現は、更なる治療剤が、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の前に、その後に、またはそれと同時に投与されることを意味する。「と組み合わせて」という用語には、IL-4Rアンタゴニストおよび第2の治療剤または療法の順次投与または同時投与も含まれる。いくつかの実施形態では、第2の治療剤または療法は、IL-1β阻害剤、IL-5阻害剤またはIL-5R阻害剤(例えば、ベンラリズマブ、メポリズマブ、またはレスリズマブのような抗IL-5抗体または抗IL-5R抗体)、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤(例えば、トラロキヌマブ、RPC4046、またはQAX576のような抗IL-13抗体)、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤(例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブのような抗TNFα抗体)、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブのような抗IgE抗体)、TSLP阻害剤(例えば、テゼペルマブのような抗TSLP抗体)、CRTH2阻害剤、Siglec-8阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、インテグリン阻害剤(例えば、ベドリズマブのようなインテグリンα4β7阻害剤)、エオタキシン阻害剤、免疫抑制薬、局所コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、吸入型コルチコステロイド、グルココルチコイド、PPI、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、食道拡張、アレルゲン除去、または食事管理である。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、食事管理と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、コルチコステロイド(例えば、嚥下局所コルチコステロイド)と組み合わせて使用される。
【0117】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、PPI、例えば、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、ラベプラゾール、またはパントプラゾールと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤は、高用量PPIレジメンと組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態において、IL-4R阻害剤は:40mg QDもしくは20mg BIDの用量のオメプラゾール、40mg QDもしくは20mg BIDの用量のエソメプラゾール、60mg QDもしくは30mg BIDの用量のランソプラゾール、60mg QDの用量のデクスランソプラゾール、40mg QDもしくは20mg BIDの用量のラベプラゾール、または80mg QDもしくは40mg BIDの用量のパントプラゾールと組み合わせて使用される。
【0118】
いくつかの実施形態では、IL-4R阻害剤の投与は、同時療法(例えば、PPI、コルチコステロイド、またはグルココルチコイド)への依存性、またはそれを使用する必要性を低減する。いくつかの実施形態では、第2の療法(例えば、PPI、コルチコステロイド、またはグルココルチコイド)と組み合わせたIL-4R阻害剤の投与は、患者が使用する第2の療法(例えば、PPI、コルチコステロイド、またはグルココルチコイド)の量を、IL-4R阻害剤による処置の前の対象が使用する量と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低減する。
【実施例
【0119】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物をどのように作製し使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示するものであり、発明者らが自身の発明とみなすものの範囲を限定する意図はない。使用される数(例えば、量、温度など)に関しての正確性を保証するための努力は払われているが、いくらかの実験誤差および逸脱が考慮されるべきである。別途記載されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【実施例1】
【0120】
好酸球性食道炎を有する成人患者および青年患者におけるデュピルマブの効能および安全性を調査するための臨床試験
試験デザインおよび目的
この実施例は、好酸球性食道炎(EoE)を有する成人患者および青年患者におけるデュピルマブの効能および安全性を調査するための、3パート、フェーズ3、無作為化臨床試験(NCT03633617)について説明する。臨床試験のパートAおよびパートBは、24週処置、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験フェーズであり、パートCは、パートAおよびパートBからの患者を登録する、28週間の延長実薬処置(extended active treatment)フェーズである。デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列ペア;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む完全ヒト抗IL-4R抗体である。
【0121】
パートAにおける試験の主要目的は、組織学的尺度および臨床的尺度によって評価した、24週間の処置後の成人および青年のEoE患者における、プラセボと比較したデュピルマブ処置の効果を決定すること、そしてパートBのための最終的なサンプルサイズの決定についての情報を得る/確定することである。パートBにおける主要目的は、組織学的尺度および臨床的尺度によって評価した、24週間の処置後の成人および青年のEoE患者における、プラセボと比較したデュピルマブ処置の効能を実証することである。パートCにおける主要目的は、組織学的尺度および臨床的尺度によって評価した、最長52週間の処置の後の成人および青年のEoE患者における、デュピルマブ処置の安全性および効能を評価することである。試験の副次的目的は、次のものを含む:成人および青年のEoE患者におけるデュピルマブ処置の安全性、忍容性、および免疫原性を評価すること;成人および青年のEoE患者におけるデュピルマブ濃度と応答との関係を、記述的分析を使用して探究すること;ならびにEoEおよび2型炎症に関連するトランスクリプトームシグネチャーに対するデュピルマブの効果を評価すること。
【0122】
パートAは、次のとおり、スクリーニング期間、無作為化、および処置期間からなる:
・ スクリーニング期間(最長12週間):インフォームドコンセントを取得した後、患者の試験適格性を来診1回目にまず評価する。試験参加者はEoEの診断が確定していることが必要であり、この診断は、過去の生検歴によって確証されたものでも、スクリーニング期間中に行われた生検によって確証されたものでもよい。臨床適格性基準および検査適格性基準を満たす患者はすべて、ベースライン参照基準を確立するために、来診2回目に生検を伴う内視鏡検査を受ける。過去の生検がない患者については、来診2回目の生検が、EoE診断の確定とベースライン参照基準との両方となる。
・ 無作為化:ベースライン来診時(来診3回目)に、適格性基準を依然として満たしている患者は、24週間のプラセボ対照二重盲検処置期間に入り、デュピルマブ300mg週1回(QW)またはプラセボの皮下(SC)投与に1:1の比で無作為に割り付けられる。
・ プラセボ対照二重盲検処置期間(24週間):コプライマリーエンドポイントを、二重盲検処置期間中の最後の試験薬投与から1週間後の第24週に評価して、パートBのための最終的なサンプルサイズの決定についての情報を得る/確定する。二重盲検処置来診の最後(第24週)に、パートAの適格患者は、28週間の延長実薬処置期間(パートC)に入ることができる。パートCに参加しない患者は、12週間のフォローアップ期間に入る。パートAに登録した患者は、パートBに参加するには不適格となる。
・ フォローアップ期間(12週間):パートCを完了した後、またはパートCに不適格であればパートAもしくはBの直後にさらに12週間、すべての患者をフォローアップする。
【0123】
パートBの登録は、パートAに最後の患者が登録した直後に開始するようにスケジューリングされる。パートBのスクリーニング手順は、パートAについて上述したものと同一である。無作為化については、ベースライン来診時(来診3回目)に、適格性基準を依然として満たしている患者は、24週間の二重盲検処置期間に入り、デュピルマブ300mg QW、デュピルマブ300mg 2週間に1回(Q2W)、またはプラセボのSC投与に1:1:1の比で無作為に割り付けられる。プラセボ対照二重盲検処置期間(24週間)の手順は、パートAのものと同一である。二重盲検処置来診の最後(第24週)に、パートBの適格患者は、28週間の延長実薬処置期間(パートC)に入ることができる。パートCに参加しない患者は、12週間のフォローアップ期間に入る。
【0124】
パートCの28週間の延長実薬処置期間では、二重盲検処置来診の最後(第24週)に、パートAおよびパートBの適格患者は、28週間の延長実薬処置期間に入ることができ、この期間はすべての患者がデュピルマブによる実薬処置を受けるが、パートBの患者のみがパートCにおける処置レジメンについて盲検化される。二重盲検処置期間においてプラセボに無作為に割り付けられたパートAの患者は、パートCではデュピルマブ300mg QWを受ける。二重盲検処置期間においてデュピルマブ300mg QWに無作為に割り付けられたパートAの患者は、パートCでも引き続きデュピルマブ300mg QWを受ける。二重盲検処置期間においてプラセボに無作為に割り付けられたパートBの患者は、デュピルマブ300mg QWまたはデュピルマブ300mg Q2Wに1:1の比で再度無作為に割り付けられる。デュピルマブ300mg Q2Wに無作為に割り付けられた患者はまた、レジメン盲検化の目的で注射頻度が他の群とマッチするように、マッチするプラセボのQ2W投与をデュピルマブ投与と交互に受ける。他の患者はすべて、二重盲検処置期間において無作為に割り付けられたものと同じデュピルマブ投与レジメンを維持する。パートCを完了した後、またはパートCに不適格であればパートAもしくはBの直後にさらに12週間、すべての患者をフォローアップする。
【0125】
この試験は、ヘルシンキ宣言の規定、医薬品規制調和国際会議の臨床試験実施基準、および該当する規制要件に従って実施されている。プロトコールは、すべての施設で施設内審査委員会/倫理委員会によって審査され、承認された。書面によるインフォームドコンセントをすべての成人患者から取得した。青年患者については、書面によるインフォームドコンセントまたはインフォームドアセントを患者から取得し、書面によるインフォームドコンセントを患者の親または法的保護者から取得した。
【0126】
患者集団
この試験では、EoEを有する、試験参加時の年齢で18歳以上の成人男性および女性、ならびに12歳以上18歳未満の青年男性および女性を登録する。
【0127】
組み入れ基準:患者が試験への組み入れに適格となるには、次の基準を満たさなければならない:(1)12歳以上の男性または女性であること;(2)スクリーニング前に、高用量PPIレジメンによる少なくとも8週間の処置の後に行われた、少なくとも1つの食道領域における上皮内好酸球浸潤(ピーク細胞数≧15eos/hpf)によって示される内視鏡生検によるEoEの診断の記録があること。患者がPPI療法を中止した場合、生検は中止日から2週間以内に行われている必要がある。これらの基準を満たす以前の(過去の)内視鏡生検が利用可能でない(または利用可能な以前の生検がない)場合、他の臨床適格性基準および検査適格性基準を満たす患者は、高用量PPIレジメンによる処置をベースライン内視鏡検査/生検の前に少なくとも8週間受ける。注:患者がスクリーニング来診時に許容される高用量PPIレジメンを既に使用している場合、ベースライン内視鏡検査は、8週間の処置が記録された後のスクリーニング期間中の任意の時点でスケジューリングしてよい。(3)生検された3つの食道領域(近位、中位、または遠位)のうち少なくとも2つにおいて、ベースライン内視鏡生検の中央読影により上皮内好酸球浸潤(ピーク細胞数≧15eos/hpf)が実証されていること;(4)スクリーニング前の4週間において、平均して1週間に少なくとも2回の嚥下障害(固形物の摂取について)のエピソード歴(患者の報告による)があること;(5)ベースライン前の2週間において、eDiaryによって記録された嚥下障害のエピソードが少なくとも4回あり、そのうち少なくとも2回は、緩和を得るために液体、咳嗽もしくは空嘔吐、嘔吐、または医学的措置が必要であったこと;(6)ベースライン来診(来診3回目)前の2週間に、14日中少なくとも11日分のDSQ eDiaryデータ入力を完了していること;(7)ベースラインDSQスコアが10以上であること;(8)試験に関連する質問票を理解して記入することができること;(9)クリニック来診および試験に関連する手順を順守する意思があり実行できること;(10)試験患者または法的に認められる代理人が署名したインフォームドコンセントを提供すること。青年については、親または法的保護者が署名済みのインフォームドコンセントを提供しなければならない(試験に登録するには患者も別個のインフォームドアセントを提供しなければならない)。
【0128】
除外基準:試験のパートAおよびパートBの除外基準は以下のとおりであった:(1)体重が40kg以下であること;(2)以前にデュピルマブの臨床試験に参加したこと、または過去もしくは現在にデュピルマブによる処置を受けていること;(3)スクリーニング前の6週間に、食物除去食レジメンを開始もしくは変更したこと、または以前に除去されていた食物群を再導入したこと。食物除去食を摂っている患者は、試験期間全体にわたって同じ食事を維持しなければならない。(4)食道好酸球増加症の他の原因または次の状態があること:好酸球増多症候群および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス症候群)。注:好酸球性胃腸炎患者は、他の適格性基準を満たすことを条件として適格とする。(5)活動性ヘリコバクター・ピロリ感染があること;(6)アカラシア、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病の既往、および食道手術歴があること;(7)スクリーニング時に、標準的な診断用の9~10mmの上部内視鏡で通過不可能な何らかの食道狭窄、または拡張を必要とする何らかの重大な食道狭窄があること;(8)治験責任医師の意見により、内視鏡検査手技から重大な合併症を起こす過度のリスクに患者を晒すとされる、出血障害または食道静脈瘤の既往があること;(9)ベースライン前の8週間以内に嚥下局所コルチコステロイドによる処置を受けたこと;(10)ベースライン内視鏡検査前の8週間以内に次の医薬品の投与量レジメンを開始、中止、または変更したこと:プロトンポンプ阻害剤(ベースライン内視鏡検査の前にPPIトライアルを必要とする患者を除く)、ロイコトリエン阻害剤、または経鼻および/もしくは吸入型コルチコステロイド。ベースライン内視鏡検査の前にこれらの医薬品の一定用量を少なくとも8週間受けている患者は試験に組み入れてもよいが、試験中に用量を変更してはならない。(11)SC免疫療法(SCIT)の投与量レジメンを開始、中止、または変更したこと。来診1回目の前にこれらの医薬品の一定用量を少なくとも1年間受けている患者は試験に組み入れてもよいが、試験中に用量を変更してはならない。(12)舌下免疫療法(SLIT)による処置を受けていること;(13)来診1回目前の6カ月以内に経口免疫療法(OIT)による処置を受けていること;(14)スクリーニング前の3カ月以内に以下の処置を受けたこと、または、治験責任医師の意見により、試験中にそのような処置を必要とする可能性が高いとされる何らかの状態があること:全身性コルチコステロイド、オマリズマブ、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロンガンマ[IFN-γ]、ヤヌスキナーゼ阻害剤、アザチオプリン、およびメトトレキサートを含むがこれらに限定されない全身性免疫抑制薬/免疫調節薬(注:各内視鏡手技中に麻酔準備の一環として使用されるコルチコステロイドの1回の使用は認められる);(15)来診1回目前の2カ月以内または5半減期以内(既知の場合)いずれか長い方に治験薬による処置を受けたこと;(16)試験中に何らかの禁止されている医薬品および手技の使用が予定または予想されること;(17)試験中に大きな外科手術が予定または予想されること;(18)ベースライン来診前の4週間以内に生(弱毒化)ワクチンによる処置を受けたこと;(19)無作為化前に臨床的評価および(必要であれば)検査的評価によって活動性感染の可能性が排除された場合を除き、活動性寄生虫感染または寄生虫感染の疑いがあること;(20)ベースライン来診前の2週間以内に全身性抗生物質、抗ウイルス薬、または抗真菌薬による処置を必要とする慢性または急性の感染があったこと;(21)感染の解消にかかわらず、侵襲性日和見感染症(例えば、結核[TB]、結核以外のマイコバクテリア感染症、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、アスペルギルス症)の既往を含む、既知の免疫不全障害またはその疑いがあること、あるいは、治験責任医師の判断により、異常な頻度の再発性感染、または免疫低下状態を示唆する長期感染があること;(22)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既往歴があること;(23)スクリーニング時にB型肝炎ウイルス感染の診断が確定していること、またはスクリーニング時にB型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性であること。ワクチン接種後にB型肝炎ウイルス感染に対して免疫を獲得した患者(HBsAg陰性、B型肝炎表面抗体[HBsAb]陽性、およびB型肝炎コア抗体[HBcAb]陰性である患者)は試験に適格とする。HBcAb陽性患者は、B型肝炎ウイルスDNAレベルが検出不可能な場合に限り試験に適格とする。(24)スクリーニング時にC型肝炎ウイルス(HCV)感染の診断が確定していること。C型肝炎抗体(Ab)陽性の患者は、HCV RNAが陰性である場合に限り試験に適格とする;(25)急性もしくは慢性の肝炎、硬変、もしくは肝不全を含むがこれらに限定されない肝疾患の処置を現在受けていること、またはスクリーニング期間中に正常上限[ULN]の3倍を超える持続性の(2週間以上間を空けた繰り返し検査によって確定された)トランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])の上昇によって示される肝疾患の証拠があること;(26)スクリーニング時に次の異常検査値のいずれかがあること:血小板<100×10/μL、好中球<1.5×10/μL、または推算糸球体濾過速度(eGFR)<30mL/分/1.73m;(27)治験責任医師の判断において患者の試験参加に悪影響を及ぼすとされる重度併存症があること。例としては、短い平均余命、制御されない糖尿病、心血管病態(例えば、NYHAクラスIIIまたはIVの心不全)、重度の腎臓病態(例えば、重度のネフローゼ症候群)、肝胆道病態(例えば、Child-PughクラスBまたはC)、神経学的病態(例えば、脱髄性疾患)、活動性の主要な自己免疫疾患(例えば、ループス、炎症性腸疾患、関節リウマチなど)、他の重度の内分泌学的疾患、胃腸疾患、代謝疾患、肺疾患、またはリンパ系疾患が挙げられるが、これらに限定されない。(28)スクリーニング前の5年以内に、完全に処置された子宮頸部上皮内がんおよび完全に処置された皮膚の非転移性扁平上皮がんまたは基底細胞がん以外の悪性疾患歴があること;(29)スクリーニング前の6カ月以内にアルコールまたは薬物の乱用歴があること;(30)スクリーニング時に、治験責任医師の意見により、新たな疾患および/もしくは理解が不十分な疾患を示唆する、当臨床試験に患者が参加する結果として試験患者に不当なリスクを与え得る、患者の参加の信頼性をなくし得る、または試験の評価に干渉し得るとされる、関連する検査的異常を含む何らかの他の医学的状態または心理学的状態があること;(31)患者または患者の近親が治験チームのメンバーであること;(32)妊娠中もしくは授乳中の女性、または試験中に妊娠もしくは授乳する予定がある女性;(33)初期用量/最初の処置の開始前、試験中、および最後の投与後少なくとも12週間にわたり、有効性の高い避妊法を実践する意思がない妊娠可能な女性。閉経後の女性が妊娠可能であるとみなされないためには、少なくとも12カ月にわたって無月経である必要がある。妊娠検査および避妊は、子宮摘出または卵管結紮の記録がある女性については必要とされない。(34)デュピルマブまたは製剤の賦形剤に対する全身性過敏症の既往があること。
【0129】
試験処置
この試験では、デュピルマブ製剤を150mg/mLの濃度で供給し、各2.0mLのスナップオフキャップ付き単回使用充填済みガラスシリンジで試験薬300mg(150mg/mL溶液2.0mL)を送達した。デュピルマブにマッチするプラセボは、タンパク質(すなわち、活性物質である抗IL-4Rαモノクローナル抗体)を加えずに同じ製法で製造した。
【0130】
二重盲検プラセボ対照パートAおよびB、ならびにパートCでは、すべての患者が週1回(QW)皮下(SC)注射を受ける。パートAでは、すべての患者がデュピルマブ300mgまたはプラセボのいずれかをQWで受ける。パートBの患者は、デュピルマブ300mg QW、デュピルマブ300mg Q2W、またはプラセボQWのいずれかを受ける。デュピルマブ300mg SC Q2W群については、盲検性を維持すべく、注射頻度が他の2群(デュピルマブQWおよびプラセボ)とマッチするように、デュピルマブ投与とデュピルマブ投与との間にプラセボのSC注射を行う。延長実薬処置パートCの患者は、処置割り付けのとおりの頻度(QW、または、レジメン盲検化の目的で注射頻度が両群で同一になるようにデュピルマブ投与と交互にマッチするプラセボを用いるQ2W)でデュピルマブ注射を受ける。試験薬の皮下注射部位は、2回連続の投与で同じ部位に注射しないように、腹部四区分(臍部および腰部は避ける)、大腿上部、および上腕の間で交互に行うべきである。
【0131】
バックグラウンド処置:スクリーニング前またはパートAもしくはパートBのスクリーニング期間中に開始された高用量PPI療法のトライアルを受ける患者は、下記に列挙する投与量レジメンを52週間の処置期間にわたって維持しなければならない。高用量PPIレジメンは次のように定義される:
・ オメプラゾール40mg 1日1回(QD)または20mg 1日2回(BID)
・ エソメプラゾール40mg QDまたは20mg BID
・ ランソプラゾール60mg QDまたは30mg BID
・ デクスランソプラゾール60mg QD
・ ラベプラゾール40mg QDまたは20mg BID
・ パントプラゾール80mg QDまたは40mg BID
【0132】
PPIを現在使用中であることを初回スクリーニング来診時に示す患者もまた、52週間の処置期間にわたって同一または同様の承認された投与量レジメンを維持しなければならない。患者は、試験中に異なる承認済みPPI医薬品に変更してもよい。PPI療法は、他のすべての患者について禁止とする。
【0133】
レスキュー処置:医学的に必要であれば(例えば、忍容できないEoE症状の処置のために)、試験患者のためのレスキュー医薬品(全身性および/または嚥下局所コルチコステロイド)または緊急食道拡張が認められる。レスキュー療法の開始前には、生検を伴う内視鏡検査を行う。レスキュー療法の開始のために生検を伴う内視鏡検査を受ける患者は、スケジュールされた処置終了来診時の内視鏡検査/生検を受けない。試験の二重盲検期間中にレスキュー処置を受ける患者は、生検を伴う内視鏡検査がレスキュー処置の開始前に行われない限り、延長実薬処置期間に不適格とする。ただし、生検を伴う内視鏡検査を行えない場合には、レスキュー処置を遅延させるべきではなく、これらの患者はパートCに適格とする。パートCの処置は、事象のスケジュールどおりに、クリニック内来診時にのみ開始される。レスキュー療法を受ける患者は、引き続き試験薬を受けることができる。これらの患者は、盲検状態を保つものとし、指定された事象のスケジュールに従って、二重盲検処置期間およびフォローアップ期間にわたり、残りのすべての試験来診のためにクリニックを再訪し、これらの来診におけるすべての評価に参加することを求められる。効能分析の目的で、試験中にレスキュー処置を受ける患者は、処置失敗とみなされる。
【0134】
評価したアウトカム
試験のパートAおよびBの両方におけるコプライマリーエンドポイントは次のとおりである:第24週に6eos/hpf以下のピーク食道上皮内好酸球数を達成している患者の割合;およびベースラインから第24週へのDSQスコアにおける絶対的変化。
【0135】
試験のパートAおよびBの両方における主要なセカンダリーエンドポイントは次のとおりである:ベースラインから第24週へのEoE-EREFSにおける絶対的変化;ベースラインから第24週へのピーク食道上皮内好酸球数(eos/hpf)におけるパーセント変化;ベースラインから第24週へのEoE組織学スコアリングシステム(EoEHSS)によるEoEグレードスコアにおける絶対的変化;およびベースラインから第24週へのEoEHSSによるEoEステージスコアにおける絶対的変化。
【0136】
他のセカンダリーエンドポイントは次のとおりである:第24週に15eos/hpf未満のピーク食道上皮内好酸球数を達成している患者の割合;第24週に1eos/hpf以下のピーク食道上皮内好酸球数を達成している患者の割合;ベースラインから第24週へのDSQにおけるパーセント変化;EoE診断パネル(EDP)トランスクリプトームシグネチャーにおけるベースラインから第24週への相対的変化についての正規化エンリッチメントスコア(NES);2型炎症トランスクリプトームシグネチャーにおけるベースラインから第24週への相対的変化についてのNES;嚥下障害以外のEoE症状の重篤度および/または頻度におけるベースラインから第24週への絶対的変化;24週間のプラセボ対照処置期間中にレスキュー医薬品または手技を受ける患者の割合;ならびに、第24週における、収集された場合は機能的管腔画像によって測定される、食道伸展性プラトーのベースラインからの絶対的変化。
【0137】
効能を評価するための手順は、以下に記載されており、また、参照によって本明細書に組み入れるWO2019/028367に記載されている。
【0138】
EoE-EREFS:EoE食道特性はEoE-EREFSに基づいて分析され、これは、総合スコアと各個の特性についてのスコアとの両方を使用する、疾患の炎症性特徴およびリモデリング特徴に関する有効性確認済みのスコアリングシステムである(Hirano、2013)。近位食道領域および遠位食道領域は別々にスコアリングされる;各領域のスコアは0~9の範囲をとり、総合スコアは0~18の範囲をとる。主要な食道特徴は、次のものを含む:浮腫(不在、存在);輪状溝(不在、軽度、中等度、重度);滲出物(不在、軽度、重度);縦走溝(不在、軽度、重度);および狭窄(不在、存在)。これらの主要な特徴に加えて、次のマイナーな特徴についてのデータも、内視鏡検査手技を行う医師によって取得される:クレープ紙状食道(診断用内視鏡の通過の際の粘膜の脆弱性または裂傷):不在、存在;内径の狭い食道(管状の食道の大部分の内腔径の低減):不在、存在;および狭窄の直径。胃食道逆流性疾患に関連する粘膜の変化も、びらんのLos Angeles分類体系(びらんなし、またはグレードA、B、C、もしくはD)を使用して記録される。
【0139】
生検:生検は、内視鏡検査により、第2のスクリーニング来診時(来診2回目、第21日±7)、第24週および第52週の来診時、ならびに二重盲検処置期間中のレスキュー医薬品または手技の開始直前に取得する。各時点で3つの食道領域から合計9つ:近位3、中位3、および遠位3の粘膜ピンチ生検を収集する。各領域から2つのサンプルを組織学的検査(試験組み入れ基準およびエンドポイント評価のために必要)および他の組織分析(免疫組織化学[IHC]、RNAスコープ(in situハイブリダイゼーション)、およびRNAシーケンシングを含み得るが、これらに限定されない)に使用する。各領域からの第3のサンプルはRNA分析のために処理する。さらに、食道好酸球増加症の別の病因の可能性を排除するために、来診2回目に18歳未満のすべての患者から胃および/または十二指腸の生検試料を取得する。成人では、異常な内視鏡所見(典型的なEoE所見以外)があった場合、または別の病因が臨床的に疑われる場合にのみ、標的を定めた胃および/または十二指腸の生検を取得する。胃の生検サンプルは、幽門洞から2つのサンプルおよび本体から2つのサンプルを含むべきである。十二指腸の生検サンプルは、2つの球部サンプルおよび十二指腸の別の部分から2つを含むべきである。生検サンプルをhpf当たりのピークeosについて評価し、EoEグレードスコアおよびステージスコアを割り当てる。EoEグレードスコアおよびステージスコアは、次の8つの特徴を評価する:好酸球密度、基底部過形成、好酸球膿瘍、好酸球表面層化、細胞間隙拡張、表面上皮変化、異常角化性上皮細胞、および固有層線維症(不在/存在)。
【0140】
EndoFLIP:EndoFLIPデバイスは、食道の容積膨張中の腔内圧を記録すると同時に食道に沿った複数の部位で断面積を測定するカテーテルベースの手法である。食道の断面積対圧力の関係の分析により、食道コンプライアンスおよび伸展性プラトーの決定が可能になる。伸展性プラトーは、EoE患者では健康な対照と比較して著しく低減することが示されている(Kwiatek、2011)。さらに、食道伸展性は、食片圧入と食道拡張の必要性との両方のアウトカムに関連している(Nicodeme、2013)。
【0141】
嚥下障害症状質問票(DSQ):DSQは、嚥下障害の頻度および強度を測定するために臨床試験において使用されている、有効性確認済みのPROである(Hudgensら、J Patient Rep Outcomes 2017、1(1):3、doi:10.1186/s41687-017-0006-5)。質問1(「今朝起きてから、固形食を食べましたか?」)に「いいえ」と回答した患者については、患者が固形食の嚥下に関する問題を理由として固形食を避けたかどうかを調べるフォローアップ質問をすることによるDSQの修正を行った。この修正版DSQは、スクリーニングから試験終了またはET来診まで、患者がeDiaryを使用して毎日記入する。DSQは、毎日の想起期間を使用し、EoE嚥下障害の存在および重篤度に関する3つの質問を含む。すべての患者が質問1および2に回答し、質問票の次に進むためには固形食を食べていること(質問1:「今朝起きてから、固形食を食べましたか?」に対して「はい」)が必要とされる。患者が質問1に対して「いいえ」と答えた場合、DSQの残りの項目はスコアリングされない。質問2(「今朝起きてから、食物が喉をゆっくり通過したり、喉につかえたりしましたか?」)に対して「いいえ」と回答した患者は、ゼロのスコアを与えられ、質問3の回答へは進まない(日誌には、その日は完了と記録される)。質問1および2に「はい」と回答した者は質問3に進み、質問3は、行動を取らなかったから医学的措置を求めたまで、症状を軽減するための患者の行動に基づいて嚥下障害の重篤度を推量する5ポイントスケールでスコアリングされる。したがって、DSQスコアリングアルゴリズムは、最終的なスコアが嚥下障害の頻度および重篤度によって決まることを確実にするために、質問2および3への回答から構築される。DSQスコアを計算するには、14日間を通した累積スコアに基づいて標準化された合計スコアを導出するために、各14日期間に対して少なくとも8つの日誌エントリが必要とされる。DSQスコアは理論上0~84の範囲をとることができ、スコアが低いほど、嚥下障害の頻度が低いまたは重篤度が低いことを示す。
【0142】
EoEの影響に関する質問票(EoE-IQ):EoE-IQは、スポンサーによって策定された、EoE患者の健康関連QOLの疾患特異的尺度である。EoE-IQは、患者の情緒的態様、社会的態様、労働および学業の態様、ならびに睡眠の態様に対するEoEの影響を1~5のスケールで測定する;スコアが高いほど、症状負荷が高いことを示す。EoE-IQにおいて(「まったく当てはまらない」から「非常に当てはまる」までの5ポイントの回答選択肢で)測定される概念は、次のものを含み得る:「過去7日間で、次のことはありましたか:EoEの症状に悩まされた;嚥下困難を懸念した;窒息を懸念した;恥をかいた;公共の場にいる間に嚥下困難を懸念した;食物の摂取を伴う社会的活動に参加するのが困難であった;家族との関係にEoEが影響した;友人との関係にEoEが影響した;職場または学校で物事を把握するのが困難であった;仕事または学校を休んだ;睡眠障害があった」。EoE-IQは、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0143】
EoE症状質問票(EoE-SQ):EOE症状質問票は、嚥下障害および嚥下痛以外の症状の頻度および重篤度を5~25のスケールで測定する質問票である;スコアが高いほど、症状負荷が高いことを示す。これはスポンサーによって策定される。EoE-SQ-頻度において(「まったくない」から「1日に2回以上」までの5ポイントの回答選択肢で)測定される概念は、次のものを含み得る:「過去7日間で、どのくらいの頻度で次のことを経験しましたか:胸痛;胃痛;胸部の熱感(胸やけ);食物または液体の喉への逆流;嘔吐」。EoE症状質問票は、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0144】
嚥下障害の変化に関する患者の全般的印象(PGIC):PGICは、食物の嚥下困難の変化に関する7ポイントスケール(大幅に改善された;中等度に改善された;少し改善された;変化なし;少し悪化した;中等度に悪化した;または大幅に悪化した)の総合的自己評価を提供することを患者に求める1項目の質問票である。PGICは、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0145】
総鼻症状スコア(TNSS):0~9スケールで測定される総鼻症状スコア(TNSS)は、鼻詰まり、かゆみ/くしゃみ、および鼻漏の症状の複合評価である(各々は0~3スケールでグレーディングされ、3が重度である)。TNSSが施行されるのは、アレルギー性鼻炎歴の記録があり、質問票が提示される言語(参加国における翻訳の利用可能性に基づく)を流暢に話す患者に限られる。TNSSは、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0146】
12歳以上を対象とする標準化された鼻結膜炎の生活の質に関する質問票(RQLQ(S)+12:Standardized Rhinoconjunctivitis Quality of Life Questionnaire for ages 12+):12歳以上を対象とする標準化された鼻結膜炎の生活の質に関する質問票[RQLQ(S)+12]は、通年性または季節性のアレルギー性鼻炎の結果としての12歳以上の対象者の健康関連QOLを測定する、自己記入式質問票である。RQLQ(S)では、28項目が次の7つのドメインにわかれている:活動の制限、睡眠障害、鼻の症状、眼の症状、鼻/眼以外の症状、現実的問題、および情緒的機能。RQLQ(S)+12の回答は、0(困難なし)から6(極めて困難)までの回答を用いる7ポイントのリッカートスケールに基づく。総合的なRQLQ(S)+12スコアは、全28項目の回答の平均であり、個々のドメインスコアは、該当するドメインにおける項目の平均である。スコアが高いほど、健康関連QOLの悪化が大きいことを示す(スコアが低いほどよいとされた)。合計スコアにおける0.5ポイント以上の変化は臨床的に有意義とみなされる。RQLQ(S)+12は、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0147】
ジュニパーの喘息制御質問票(ACQ:Asthma Control Questionnaire):5質問形式のジュニパーのACQ(ACQ-5)は、喘息制御を評価するための有効性確認済みの質問票である。ACQ-5スコアは、5項目のスコアの平均であり、0(完全に制御された)から6(重度の制御不良)の範囲をとる。1.0未満のスコアは、喘息の制御が十分であることを反映し、1.0以上のスコアは、喘息の制御が不十分であることを反映する。スコアが高いほど、喘息制御が低度であることを示す。推奨される0.50の変化は、有意義な個人レベルの変化を定義するのに合理的な閾値である。ACQ-5が施行されるのは、喘息歴の記録があり、質問票が提示される言語(参加国における有効性確認済みの翻訳の利用可能性に基づく)を流暢に話す患者に限られる。ACQ-5は、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0148】
患者指向型湿疹測定(POEM:Patient-Oriented Eczema Measure):POEMは、ADを有する小児および成人の疾患症状を評価するために臨床業務および臨床試験において使用されている、7項目の有効性確認済みの質問票である(Charman、2004)。フォーマットは、過去1週間における発生頻度に基づく5ポイントスケールを使用した7項目(乾燥、かゆみ、落屑、ひび割れ、睡眠障害、出血、および滲出)への回答である。各質問がとり得るスコアは次のとおりであった:0~28の複合スコアリングシステムで、0(1日もなし)、1(1~2日)、2(3~4日)、3(5~6日)、および4(毎日);スコアが高いほど、より重度のADを示す。次のPOEMバンディングスコアが確立されている:0~2=消失またはほぼ消失;3~7=軽度の湿疹;8~16=中等度の湿疹;17~24=重度の湿疹;および25~28=きわめて重度の湿疹。POEMが施行されるのは、AD歴の記録があり、質問票が提示される言語(参加国における有効性確認済みの翻訳の利用可能性に基づく)を流暢に話す患者に限られる。POEMは、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0149】
欧州における生活の質5項目スケール(EQ-5D):欧州における生活の質5項目(EQ-5D)スケールは、健康状態を評価するために使用されている標準化された質問票である(Rabin、2014)。これは記述的体系およびEQビジュアルアナログスケール(EQ VAS)からなる。EQ-5D-3L(3レベル)の記述的体系は、次の5項目からなる:易動性、セルフケア、通常の活動、疼痛/不快感、および不安/うつ状態。各項目について、患者は、次の3レベルのうちの1つを選択する:問題なし、多少問題あり、およびきわめて問題あり。EQ VASは、両端点が「考えられる最良の健康状態」および「考えられる最悪の健康状態」と表示されている縦のビジュアルアナログスケールで、患者が自己評価した健康状態を記録する。EQ-5D-3Lは、試験中の具体的に定義された時間に、患者が電子質問票を使用して記入する。
【0150】
薬力学的および探索的なバイオマーカーの手法
この試験では、研究評価を行って、EoE、どのようにしてデュピルマブがEoEの根底にある疾患過程を変化させ得るか、2型炎症、ならびにデュピルマブの安全性および効能の予測因子について探究する。エオタキシン-3(ヘパリン添加血漿);血清TARC、全IgE、ならびにアレルゲン特異的IgEおよびIgG4のためのサンプルを、指定された時点で収集する。研究対象のバイオマーカーは、EoEの病態生理、処置への応答(すなわち、2型炎症の評価)、ならびに応答およびデュピルマブ作用機構のベースライン予測因子に関連すると考えられている。
【0151】
EoE診断パネルおよび2型炎症トランスクリプトミクス
健康な対照と比較したEoE患者の食道生検の示差的遺伝子発現プロファイルが、EoE疾患トランスクリプトームである(Sherrillら、Genes Immun 2014、15(6):361~369)。この疾患遺伝子発現シグネチャーは、EoE診断パネル(EDP)として使用するために、より小さな遺伝子セットまでさらに洗練されている(Dellonら、Clin Transl Gastroenterol 2017、8(2):e74)。
【0152】
正規化エンリッチメントスコア(NES)は、転写物セットの活性レベルが、サンプル中の転写物の順位付けされたリスト全体の両端(上位または下位)で過剰提示される程度を反映し、セット中の転写物の数を考慮することによって正規化したものである(Subramanian、2005;Barbie、2009)。NESスコアは、各個の患者について、トランスクリプトーム内のすべての遺伝子についての発現レベル(TPM、100万当たりの転写物)におけるベースラインと第24週との差を計算し、予め選択された転写物のセットが分布上どこに位置するかを決定し、エンリッチメントスコア(発現レベルの差が分布の両端に位置する程度)を計算することにより、各サンプルの各トランスクリプトームシグネチャーについて計算される。統計比較のため、NESが各個人について計算されたら、ウィルコクソンの符号付き順位検定を使用して、プラセボ群とデュピルマブ群との間に有意差があるかどうかを決定する。
【0153】
臨床試験のパートAについての結果
ベースライン特性
試験のパートAに登録した患者のベースラインにおける人口統計的特性および疾患特性を以下の表1および2にまとめる。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
ベースラインにおける人口統計的特性および疾患特性は、表1および2に示したように、処置群間で同等であった。母集団の平均DSQは約34であり、かなりの程度のベースライン症状を示していた。表2に示したように、高率の対象が以前の嚥下局所ステロイドの使用歴および食道拡張歴を有していた。ベースラインのピーク好酸球数は上昇していた。また、対象の大多数は、表3に示すように、少なくとも1つのアレルギー性状態(EoEを除く)を併発していた。
【0157】
【表3】
【0158】
効能
デュピルマブによる処置は、以下の表7に示すように、コプライマリーエンドポイント(第24週に6eos/hpf以下のピーク食道上皮内好酸球数を達成している患者の割合、およびベースラインから第24週へのDSQスコアにおける絶対的変化)の統計的に有意な改善をもたらした。デュピルマブを300mg QWの用量で受けた患者の大多数(59.5%)は、プラセボでの5.1%と対比して、第24週で6eos/hpf以下のピーク食道上皮内好酸球数を達成し、これは組織学的な疾患緩解と一致していた。デュピルマブを受けた患者は、平均で21.92の絶対DSQスコアの低減を達成し、これに対してプラセボでの絶対DSQスコアの低減は9.60であった。DSQ合計スコアにおけるベースラインからの経時的な絶対的変化を図1に示す。デュピルマブは、EoE患者における嚥下障害の重篤度を有意および急速に低減した。プラセボ処置患者と対比して、デュピルマブ処置患者ではDSQスコアのより大きな改善が見られ、第4週以降に統計的有意性に達した。
【0159】
デュピルマブによる処置は、表7に示すように、主要なセカンダリーエンドポイントおよび他のセカンダリーエンドポイントにおける統計的に有意な改善をもたらした。デュピルマブを受けた患者は、ピーク食道上皮内好酸球数(eos/hpf)におけるベースラインから-71.24%の変化を呈し、これに対してプラセボでの変化は-2.98%であった。15eos/hpf未満のピーク食道上皮内好酸球数を達成したのは、デュピルマブを受けた患者では大多数(64.3%)であったが、プラセボを受けた患者では7.7%に留まった。デュピルマブを受けた患者のかなりの割合が、1eos/hpf以下のピーク食道上皮内好酸球数を達成した(21%、これに対してプラセボの患者は0名)。デュピルマブは、第24週におけるEoE組織学的スコアも有意に改善した;また、デュピルマブを受けた患者は、EOEHSSによる平均グレードスコアおよび平均ステージスコアにおけるベースラインからの絶対的変化の低減を呈した(平均グレードスコア:デュピルマブでは-0.761、対してプラセボでは-0.001;平均ステージスコア:デュピルマブでは-0.753、対してプラセボでは-0.012)。
【0160】
デュピルマブは、内視鏡所見の重篤度を測定するEoE-EREFSによって測定して、第24週におけるEoEの内視鏡的特徴を低減した;スコアが高いほど、重篤度が高いことを示す。EREFSは、スクリーニング時および第24週に、近位および遠位の食道における内視鏡検査によって評価した。評価した特徴は、浮腫(スコア範囲0~1)、輪状溝(0~3)、滲出物(0~2)、縦走溝(0~2)、および狭窄(0~1)であり、スコアが高いほど、重篤度が高いことを示す。合計スコアは、両領域でのすべての特徴の和(0~18)を表す。合計スコア、炎症サブスコア(浮腫、滲出物、および縦走溝の和)、リモデリングサブスコア(輪状溝および狭窄の和)、および個々の特徴スコアにおけるベースラインからの変化を第24週に分析した。
【0161】
ベースラインにおいて、平均[SD]合計EREFSは、デュピルマブに割り付けられた患者とプラセボに割り付けられた患者とで同様であった(6.5[3.20]対6.0[2.38])(表4)。第24週においては、デュピルマブに割り付けられた患者とプラセボに割り付けられた患者とで、合計EREFSスコアおよび炎症サブスコアに有意により大きな変化(改善)があり(いずれもP<0.0001)、リモデリングサブスコアが改善する傾向があった。第24週には、統計的に名目上有意な改善または数値の改善が、近位および遠位の浮腫(プラセボに対するデュピルマブの最小二乗平均差はそれぞれ-0.3および-0.1)、輪状溝(-0.2および-0.2)、滲出物(-0.4および-0.5)、および縦走溝(-0.5および-0.6)において観察されたが、狭窄(0および0)には観察されなかった(図2B)。
【0162】
【表4】
【0163】
表4および7ならびに図2Aが示すところによれば、デュピルマブ処置患者は、EoE-EREFS合計スコアにおけるベースラインから-3.2の絶対的変化を呈したが、これに対してプラセボでは-0.3であった。図2Bは、プラセボと対比したデュピルマブ処置患者のEREFS構成要素スコアにおけるベースラインからの減少も示している。
【0164】
試験中、患者は電子日誌を使用してDSQに毎日記入した。DSQスコア(範囲0~84)は、「食物がゆっくり通過したり、つかえたりした」に関する質問に対する患者の回答および「食物を通過させるまたは緩和を得る」ために取った行動に基づくものであった。嚥下障害関連疼痛スコア(範囲0~56)は、「嚥下時の疼痛」に関するフォローアップ質問に基づくものであった。スコアが高いほど、重篤度が高いことを示していた。第24週にDSQの30%以上および50%以上の低減(一般に評価されるPRO回答者分析閾値)を達成している患者の割合を、コクラン-マンテル-ヘンツェル検定を使用して分析した。ベースラインから第24週への嚥下障害関連疼痛スコアにおける最小二乗(LS)平均変化を、共分散分析モデルによって評価した。DSQスコアの30%以上の低減を達成したのはデュピルマブ処置患者で76.2%、これに対してプラセボ処置患者で41.0%であり(P<0.01)、50%以上の低減を達成したのはデュピルマブ処置患者で71.4%、これに対してプラセボ処置患者で30.8%であった(P<0.001)(表5)。嚥下障害関連疼痛スコアにおいてはプラセボと対比してデュピルマブでより大きな低減が第2週から観察され(LS平均差:-2.3;95%CI -4.4から-0.1;P<0.05)、第24週まで低下し続けた(LS平均差:-5.7;95%CI -8.7から-2.7;P<0.001)。デュピルマブ処置患者についてのDSQのベースラインからの変化は-69.17%であり、これに対してプラセボ処置患者についてのDSQの変化は-31.68%であった。
【0165】
【表5】
【0166】
好酸球性食道炎組織学的スコアリングシステム(EoE-HSS)は、EoE食道生検における臨床症状と相関する組織学的特徴の重篤度(グレード)および範囲(ステージ)を評価する。生検を近位、中位、および遠位の食道領域から採取し、8つの特徴(基底部過形成[BZH]、好酸球炎症[EI]、好酸球膿瘍[EA]、好酸球表面層化[ESL]、細胞間隙拡張[DIS]、表面上皮変化[SEA]、異常角化性上皮細胞[DEC]、および固有層線維症[LPF])の異常性の重篤度および範囲を中央病理学者がスコアリングした(0正常~3最大の変化)。平均EoE-HSSグレードスコアまたはステージスコアは、割り当てられたスコアの和を各食道領域で可能な最大スコアで割ることによって計算した;各領域からの3つのスコアを足して合計スコアを求めた。グレードおよびステージについて、合計スコアおよび個々の特徴スコアにおけるベースラインから第24週への絶対的変化を分析した。
【0167】
ベースライン特性は、平均EoE-HSSグレード(1.26対1.32)およびステージ(1.30対1.38)合計スコアを含め、デュピルマブ群とプラセボ群とで同様であった。第24週において、デュピルマブ群では、プラセボ群と対比して、平均EoE-HSS合計グレードスコアおよびステージスコアが改善していた(いずれもP<0.001);有意な改善は、BZH、EI、EA、ESL、DIS、SEAのグレードスコア、およびBZH、EI、EA、ESL、SEAのステージスコアを含め、ほとんどの組織学的特徴において観察された;すべてP<0.05(表6)。DECおよびLPFのグレードスコアおよびステージスコアについては、デュピルマブ群においてプラセボ群と対比した数値の改善が見られた。LPFは生検で認められないことが多かったため、サンプルサイズが低減した。これらのデータは、BZHおよびDISを含め、食道上皮の非好酸球成分に対するデュピルマブの有益な効果を記録している。
【0168】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0169】
合計5名のプラセボ患者が次のレスキュー療法を受けた:嚥下局所ステロイド(3)、全身性ステロイド(1)、または拡張(1)。デュピルマブ処置患者でレスキュー療法を利用したものはいなかった。
【0170】
【表7】
【0171】
安全性
試験に関する安全性データを以下の表8に示す。新しい副作用または不測の副作用は試験中に観察されず、関連するSAEも観察されなかった。デュピルマブは忍容性良好であり、AEの強度は大多数が軽度であった。
【0172】
【表8】
【0173】
遺伝子発現プロファイル
示差的遺伝子発現プロファイルに対するデュピルマブ処置の影響を、処置前のベースラインにおける組織プロファイルと比較して、本試験の患者から食道生検を介して取得された組織を使用したRNAシーケンシングにより評価した。疾患時に調節不全になる遺伝子発現(EoE疾患トランスクリプトーム)には、好酸球および2型炎症に関連する遺伝子だけでなく、上皮増殖、バリア機能、リモデリング、および線維症に関連するものも含まれることが知られている。トランスクリプトームシグネチャーから導出されたスコアを利用することで、疾患および標的炎症経路の全体的な調節不全を定量化する機構がもたらされる。さらに、トランスクリプトームは、他の方法論では容易に測定できない、炎症だけでなく上皮バリア、リモデリング、および線維症にも関連するパラメータを含む、疾患の定量的な分子表現型をもたらす。
【0174】
パートAにおいて、デュピルマブによる処置は、2型炎症とEoE診断パネル(EDP)との両方の正規化エンリッチメントスコア(NES)を抑制したが、プラセボはこれらを抑制しなかった。図3および4を参照されたい。2型炎症トランスクリプトームは、図3に示したように、2型炎症に関連する遺伝子をRegeneronが精選した遺伝子リストである。EDPは、EoE患者と対照との食道ピンチ生検において示差的に発現される遺伝子の公開されている96遺伝子パネルである(Wenら、Gastroenterology 2013;145(6):1289~1299)。以下の表9に示すように、デュピルマブは、食道生検におけるEoE疾患シグネチャーを-2.66減少させ(これと比較してプラセボでは-0.160)、正常な食道組織により類似した表現型とし、2型炎症シグネチャーをベースラインから-1.97減少させた(これと比較してプラセボでは-0.32)。
【0175】
【表9】
【0176】
他のエンドポイント
HRQoLは、情緒、社会性、生産性、および睡眠に関連するEoEの影響を測定する、11項目のEoEの影響に関する質問票(EoE-IQ)によって評価した(スコア範囲:1~5)。症状負荷は、胸痛、胃痛、胸やけ、逆流、および嘔吐を含む、嚥下障害/嚥下痛以外のEoE症状の頻度を測定する、5項目のEoE症状質問票(EoE-SQ-頻度)によって評価した(スコア範囲:5~25)。EoE-IQ/EoE-SQ-頻度スコアが高いほど、HRQoLへの影響/症状負荷が高いことを示す。変化に関する患者の全般的印象(PGIC)において嚥下障害の改善を報告する患者の割合を評価した。PGICでは、食物を嚥下する難しさにおいて試験処置を受け始めてから生じた全体的変化を、「大幅に改善された」から「大幅に悪化した」までの7ポイントスケールで患者に格付けさせた。
【0177】
結果
ベースラインでは、それぞれデュピルマブ群/プラセボ群において、平均EoE-IQは2.0/2.4であり、平均EoE-SQ-頻度は10.1/11.5であった。第24週において、プラセボに対するデュピルマブのベースラインからの変化のLS平均差は、EoE-IQについては-0.4(95%CI:-0.6、-0.1;名目P=0.008)、EoE-SQ-頻度については-1.7(-2.9、-0.5;名目P=0.005)であった。第24週には、デュピルマブ患者40.5%対プラセボ患者7.7%(名目P<0.001)が、ベースラインと比較して嚥下障害が「大幅に改善された」とPGICで報告した;26.2%対10.3%(名目P=0.074)が「中等度に改善された」と報告した。
【0178】
バイオマーカー分析
24週間の処置期間にわたる2型炎症の循環バイオマーカーに対するデュピルマブの効果を分析した。バイオマーカーである血清中の胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、血漿エオタキシン-3、および血清中の全免疫グロブリンE(IgE)の中央値、ならびにこれらのベースラインからの変化の中央値を、第4週、第12週、および第24週に評価した。
【0179】
TARC、エオタキシン-3、および全IgEのベースラインレベルは、処置群間で同様であった(デュピルマブ対プラセボで、中央値[Q1~Q3]は、TARC:322.0pg/mL[232.0~430.0]対293.0pg/mL[226.0~418.0];エオタキシン-3:217.5pg/mL[139.0~330.0]対217.0pg/mL[163.0~448.0];全IgE:110.0kU/L[51.1~463.0]対100.0kU/L[46.7~294.0])。プラセボ処置患者に対してデュピルマブ処置患者では、TARCおよびエオタキシン-3がベースラインから急速に減少し、効果は24週間にわたって持続したが、全IgEはより漸進的に減少した(図7A~7C)。第24週において、デュピルマブ対プラセボの中央値(Q1~Q3)は、TARCが196.5pg/mL(134.0~277.0)対319.0pg/mL(191.0~381.0)であり、エオタキシン-3が110.0pg/mL(82.3~133.0)対203.0pg/mL(164.0~358.0)であり、全IgEが59.8kU/L(21.7~161.0)対106.0kU/L(42.7~228.0)であった(ベースラインからの変化中央値においてデュピルマブはプラセボに対してすべてP<0.0001)。デュピルマブ対プラセボのベースラインからの変化中央値は、第4週、第12週、および第24週でそれぞれ次のとおりであった:TARC、-109.0pg/mL対-1.5pg/mL、-109.0pg/mL対-9.0pg/mL、-115.5pg/mL対-35.0pg/mL;エオタキシン-3、-109.1pg/mL対-4.0pg/mL、-118.4pg/mL対-14.5pg/mL、-88.6pg/mL対-9.0pg/mL;全IgE、-13.6kU/L対-0.7kU/L、-32.1kU/L対-1.8kU/L、-45.7kU/L対-8.6kU/L(すべてP<0.0001)。
【0180】
まとめると、24週間の処置期間にわたり、デュピルマブ処置は、EoEを有する青年および成人において、血清TARCおよび血漿エオタキシン-3の急速および持続的な抑制、ならびに血清全IgEの漸進的な抑制をもたらした。これらの結果は、EoEおよび他の2型炎症性疾患における過去の所見と一致して、2型炎症のIL-4/IL-13依存性調節を実証している。
【0181】
結論
このフェーズ3臨床試験におけるパートAのデータは、デュピルマブの毎週投与が、嚥下障害ならびにEoEの処置のための組織学的尺度および内視鏡的尺度を改善するのに有効であることを実証している。本試験は、そのコプライマリーエンドポイントの両方(DSQにおける絶対的変化、および第24週に6eos/hpf以下のピーク食道上皮内好酸球数を達成している患者の割合)、ならびにすべての主要なセカンダリーエンドポイントを満たした。注目すべきことに、バイオ医薬品を用いたフェーズ3試験において、有効性確認済みのDSQによって報告されたように、患者の食物嚥下能力における改善が報告されたのは、これが初めてである。5%のプラセボ処置患者と比較して、60%のデュピルマブ処置患者において、食道好酸球数が正常範囲まで低減した。デュピルマブは、プラセボと比較して、EREFSによって測定されたように、異常な内視鏡所見も低減した。さらに、転写プロファイリングが示すところによれば、デュピルマブは、好酸球および2型炎症、上皮増殖、バリア機能、リモデリングおよび線維症に関連するものを含め、EoEに関連する遺伝子の発現を正常化し、好酸球性炎症の低減を超えた疾患の分子的逆転が示された。
【実施例2】
【0182】
デュピルマブ処置を受けた好酸球性食道炎患者のトランスクリプトーム分析
この実施例は、フェーズ2臨床試験(NCT02379052)に登録した成人患者(18~65歳)に関するトランスクリプトーム分析の結果について説明する。トランスクリプトーム結果は、フェーズ2試験に登録した24名中19名のプラセボ患者(79%)および23名中22名のデュピルマブ患者(96%)について入手可能であった;6名の患者は生検試料が入手不可能であり、分析から除外した。
【0183】
方法
患者が35日間のスクリーニング期間を完了した後、12週間にわたるデュピルマブ300mg(第1日はローディング用量600mg)週1回(QW)またはマッチするプラセボの皮下注射に1:1で無作為に割り付け、その後16週間のフォローアップ期間を設けた。RNA分析のためのピンチ生検は、スクリーニングおよび第12週の内視鏡検査手技において、近位、中位、および遠位の食道から収集してRNALaterで凍結した。RNA抽出後、KAPA stranded mRNA-Seq Kit(KAPA Biosystems、Roche Sequencing and Life Sciences、MA、USA)を使用し、鎖特異的RNA-seqライブラリを製造した。増幅後、Illumina HiSeq(登録商標)2000(Illumina Inc.、CA、USA)でマルチプレックスシングルリードラン(80bp、40Mリード)によるシーケンシングを行った。Array Studioソフトウェア(OmicSoft、NC、USA)を使用し、リードをヒトゲノム(米国立生物工学情報センターのGRCh37)に対してマッピングした。示差的に発現された遺伝子を、DESeq2パッケージの使用により同定した。
【0184】
陽性および陰性の両方の遺伝子セットを考慮に入れる遺伝子セットエンリッチメント分析ツール(www.mathworks.com/matlabcentral/fileexchange/33599-gsea2)を使用し、EoEにおいて最も上方調節された遺伝子の上位50および最も下方調節された遺伝子の上位50を使用して、正規化エンリッチメントスコア(NES)を生成した。遺伝子発現プロファイルをまずz-スコアに変換し、各サンプルにおいて順位付けされたz-スコアを使用して単一サンプルのNESを算定し、EoE-NESと表記されるサンプルの総合的な疾患シグネチャースコアを表した。
【0185】
分子シグネチャーデータベース(MSigDB、c5.bp.v7.0)の遺伝子オントロジー(GO:gene ontology)生物学的過程遺伝子セットを用いた遺伝子セットエンリッチメント分析(GSEA:Gene Set Enrichment Analysis)を使用し、偏りがない大域的なトランスクリプトーム分析を行った。サイズが100を超える遺伝子セットは予めフィルタリングして生物学的過程特異性を確実にし、EoE対健康の比較およびデュピルマブ処置後対ベースラインの比較の両方においてFDRが0.05未満であれば上位GOタームを選択した。
【0186】
DESeq2バージョン1.26.0を使用して示差的発現分析を行った。2つのアーム(プラセボおよびデュピルマブ300mg QW)において、第12週をベースラインと比較した。遺伝子が処置(デュピルマブまたはプラセボ)によって有意に調整されたとみなされるのは、多重検定の補正を反映するベースラインからの相対的な対数変化≧2、q-値≦0.05の閾値に達した場合とした。ピアソン相関は:(i)EoEにおける公開されている遺伝子の変化(疾患対健康)、および(ii)デュピルマブ処置後の遺伝子変化(処置後対処置前)の間で計算した。
【0187】
結果
第12週をベースラインと比較した際、プラセボアームで示差的に発現された遺伝子(ベースラインからの相対的な対数変化≧2、q≦0.05)は見出されなかった。第12週において、デュピルマブ300mg QWによる処置は、ベースラインと対比して、1,302遺伝子、DpxOme-EoE(商標)の発現を調整し(ベースラインからの相対的な対数変化≧2、q≦0.05)、このうち513は下方調節され、789は上方調節された(図5)。処置後の結果はサンプリングした3つの食道領域のすべてにおいて高度に類似していたため、すべてのサンプルの平均値を提示している。EoEにおいて最も上方調節された遺伝子の上位50および最も下方調節された遺伝子の上位50を使用して、正規化エンリッチメントスコア(EoE-NES)を生成した。遺伝子すべてにおいて、デュピルマブ処置は有意に低いEoE-NESを示し(ウィルコクソン順位和検定、P<5.0×10-8)、プラセボ群に有意な変化は見られなかった。デュピルマブによる最も高い発現変化を示した30の遺伝子には、2型炎症、組織リモデリング/線維症、バリア機能、および増殖/分化に関連するものが含まれていた(図6)。EoEトランスクリプトームにおいて上方調節される遺伝子で、デュピルマブによって下方調節されたものには、ALOX15、CCL26、POSTN、NRXN1、およびCCR3が含まれていた;疾患時に下方調節され、デュピルマブによって上方調節された遺伝子には、SPINK8およびDSG1が含まれていた。
【0188】
健康なトランスクリプトームに対する公開されているEoEトランスクリプトームと比較すると、デュピルマブによる処置(第12週対ベースライン)は、第12週においてトランスクリプトームを正常化した。公開されているEoEトランスクリプトーム(対健康)と、DpxOme-EoE(商標)(第12週対ベースライン)との間で、強い負の相関性が観察された(ピアソン相関係数:ρ=-0.872、P<1×10-6)。有意性閾値を満たさなかった遺伝子について正常化傾向があり、デュピルマブは、公開されているEoEトランスクリプトームには含まれていなかったいくつかの遺伝子も有意に調整した。さらに、EoEおよびデュピルマブのシグネチャー間で重複しなかった遺伝子の多くは、いずれのデータセットにおいても測定不可能であった。EoEにおいて変化し、デュピルマブ処置によって修飾された主な遺伝子には、次の遺伝子オントロジー(GO)群が含まれていた:免疫機能/炎症(例えば、インターロイキン-12産生、B細胞媒介性免疫、1型インターフェロンに対する応答)、好酸球遊走リモデリング(例えば、細胞外マトリックスの分解)、マスト細胞活性化、および上皮の分化(例えば、ケラチン化および角質化)。
【0189】
第12週において、デュピルマブは、2型炎症性遺伝子、好酸球関連遺伝子、およびマスト細胞活性化に関連する遺伝子を調整した。これらの調整された遺伝子には、CCL26、MUC5B、CLC、IL1RL1、HDC、IL13、FCER1G、GATA2、およびKITが含まれていた。デュピルマブ処置は、第12週における好酸球組織浸潤を低減し、サンプリングした3つすべての領域に対して効果は同様であった。好酸球関連遺伝子発現において観察された変化は、デュピルマブ処置後の食道生検で観察された好酸球の密度の減少と一致していた。
【0190】
第12週において、デュピルマブ処置は、コラーゲンファミリー遺伝子ならびにDSG1、SPINK5、SPINK7、およびSPINK8を含むバリア関連遺伝子のような、線維症、間質リモデリング、TGFβおよびインテグリンのシグナル伝達に関連する遺伝子も調整した。発現の変化はさらに、1型炎症遺伝子、公開されている抗IL-13遺伝子、および抗IL-13抗体QAX576によって調整されなかった遺伝子において観察された。
【0191】
遺伝子発現プロファイルと、合計EoE-HSSグレードスコア、好酸球数、ならびに粘膜の炎症特徴およびリモデリング特徴(EoE-EREFS)との関係を評価するために、個々の遺伝子の結果およびNESを使用して、相関性分析を行った。DpxOme-EoE(商標)NESスコアは組織学的重篤度と強く相関しており(ρ=0.832、P<0.001)、分子シグネチャーと臨床的尺度との生物学的関連性が実証された。さらに、いくつかの個々の遺伝子の発現も高度に相関していた。合計EoE-HSSと最も高度に相関していた単一の遺伝子は、他の炎症促進性プロテイナーゼの活性化に関与するプロテアーゼであるCTSCであった(カテプシンC;ρ=0.826、P<0.001)。この遺伝子は、CCL26、CCR3、ANO1、およびSPINK8を含む他の遺伝子とともに、好酸球数とも高度に相関していることが見出された(ρ=0.783、P<0.001)。ρ=0.585~0.623の範囲の他の相関性がEoE-EREFSについて観察された。
【0192】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更形態が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。本明細書に引用されたすべての特許および非特許文献の開示内容は、その全体を参照によって明示的に組み入れる。
【0193】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【表10-7】
【表10-8】
【表10-9】
【表10-10】
【表10-11】
【表10-12】
【表10-13】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
【配列表】
2023527775000001.app
【国際調査報告】