(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】工作機械の精密な位置決めのための高精度の温度および汚染物質制御
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20230623BHJP
B23Q 1/25 20060101ALI20230623BHJP
B23Q 11/14 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B23Q11/00 K
B23Q1/25
B23Q11/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571142
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021033655
(87)【国際公開番号】W WO2021237089
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520487613
【氏名又は名称】コベントリー アソシエイツ, インク.
【氏名又は名称原語表記】COVENTRY ASSOCIATES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー クレイグ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ブロジェット デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
3C048
【Fターム(参考)】
3C048EE00
(57)【要約】
位置決めシステムの精度および正確さの低下を防止するために、位置決めシステムへの汚染物質の侵入を低減または実質的に防止するための汚染物質制御システム。汚染物質制御システムは、位置決めシステムの内部を通してガス流を方向付け、周囲気圧よりも高い内部圧力を位置決めシステム内に生じさせる。汚染物質制御システムは、位置決めシステムを通って流れるガスを加熱および/または冷却するための温度調節器を含んでもよい。温度調節は、熱影響を軽減することによって、位置決めシステムの追加的な精度および正確さを提供し得る。汚染物質制御システムは、ガス流およびガス温度の両方を制御するためのコントローラを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基部、前記第一の基部に回転可能に結合された第一のプラットフォーム、および第一の軸の周りに前記第一のプラットフォームを回転させる第一のモーターを備える第一の回転運動テーブルと、
前記第一のプラットフォームと前記第一の基部との間の第一の空洞と流体連通するガスの供給源と、
を備え、
前記ガスは、前記第一の基部と前記第一のプラットフォームとの間の第一のチャネルを通って前記第一の空洞から流れ出て、前記第一の空洞への粒子の侵入を防止する、位置決めシステム。
【請求項2】
前記第一のプラットフォームに固定された第二の基部、前記第二の基部に回転可能に結合された第二のプラットフォーム、および前記第一の軸に平行な第二の軸の周りに前記第二のプラットフォームを回転させる第二のモーターを備える、第二の回転運動テーブルをさらに備え、
前記第一のプラットフォームおよび前記第二の基部は、前記第二のプラットフォームと前記第二の基部との間の第二の空洞と、前記第一の空洞と、を接続する導管を形成し、
前記ガス源は、前記第一の空洞および前記導管を介して前記第二の空洞と流体連通して、前記第二の空洞を加圧するように構成される、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項3】
前記第二のプラットフォーム上に配置され、かつ前記第一の回転運動テーブルおよび前記第二の回転運動テーブルによって被加工物に対して位置付けられるように構成される、被加工物を機械加工するための工具をさらに備え、
前記ガスの供給源による前記第一の空洞および前記第二の空洞の加圧は、前記被加工物を機械加工することによって生成される切りくずが、前記第一の空洞または前記第二の空洞に入ることを防止する、請求項2に記載の位置決めシステム。
【請求項4】
前記ガスは、前記第一の基部と前記第一のプラットフォームとの間の前記第一のチャネルを通って前記第一の空洞から流れ出て、前記第二の基部と前記第二のプラットフォームとの間の第二のチャネルを通って前記第二の空洞から流れ出る、請求項3に記載の位置決めシステム。
【請求項5】
前記第一の空洞に流れ込む前記ガスを加熱および/または冷却するために、前記ガスの供給源と流体連通する空調装置をさらに備える、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項6】
前記第一の回転運動テーブルの温度を測定するために、前記第一の回転運動テーブルと熱的に連通する温度センサーと、
前記第一の回転運動テーブルの前記温度に基づいて前記ガスの温度を制御するために、前記温度センサーおよび前記空調装置に動作可能に接続されるコントローラと、
をさらに備える、請求項5に記載の位置決めシステム。
【請求項7】
前記温度センサーは第一の温度センサーであり、
工作機械に供給される冷却剤および/または切削液と熱的に連通し、かつ前記コントローラに動作可能に接続される第二の温度センサーをさらに備え、前記工作機械は、前記位置決めシステムに動作可能に結合され、
前記第二の温度センサーによって測定される温度は、前記コントローラによって温度設定点として使用される、請求項6に記載の位置決めシステム。
【請求項8】
前記温度センサーは第一の温度センサーであり、
周囲温度と熱的に連通し、かつ前記コントローラに動作可能に結合される第二の温度センサーをさらに備え、
前記第二の温度センサーによって測定される温度は、前記コントローラによって温度設定点として使用される、請求項6に記載の位置決めシステム。
【請求項9】
前記第一のチャネルはラビリンスである、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項10】
前記第一の空洞への液体の侵入を防止するために、前記第一のチャネルの出口の上に配備されるシールドをさらに備える、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項11】
ガス流を供給する供給源と、
前記供給源に流体結合されてガス流を方向付けるチャネルと、
前記チャネル内に配備される圧力センサーと、
工作機械であって、
エンクロージャであって、
前記エンクロージャ内に配置された可動構成要素と、
前記チャネルと前記エンクロージャを流体結合する入口と、
前記ガス流を前記エンクロージャから外に方向付けるための少なくとも一つの出口と、を備えるエンクロージャと、
前記エンクロージャの外面上に配備されて、前記可動構成要素に動作可能に結合される切削工具と、を備える工作機械と、
前記供給源および前記圧力センサーに動作可能に結合されるコントローラと、
を備える汚染物質制御システムであって、
前記ガス流は、前記切削工具によって生成された少なくとも一部の汚染物質が前記エンクロージャに入ること防止する、汚染物質制御システム。
【請求項12】
前記可動構成要素は精密位置決め構成要素を含む、請求項11に記載の汚染物質制御システム。
【請求項13】
前記精密位置決め構成要素は、
第一の軸の周りを回転可能な第一の回転可能部分を備える第一のアセンブリと、
前記第一の軸と一致しない第二の軸の周りを回転可能な第二の回転可能部分を備える第二のアセンブリと、
を備え、
前記アセンブリは、前記第一の回転可能部分の回転が、前記第一の軸の周りに前記第二の回転可能部分の偏心回転を引き起こすように結合される、請求項12に記載の汚染物質制御システム。
【請求項14】
前記少なくとも一部の汚染物質は、機械加工くずまたは研削切りくずのうちの少なくとも一つを含む、請求項11に記載の汚染物質制御システム。
【請求項15】
前記ガス流は、周囲圧力より約0.5水柱インチ~約100水柱インチ高い圧力をエンクロージャ内に生じさせる、請求項11に記載の汚染物質制御システム。
【請求項16】
前記チャネルに流体結合され、かつ前記コントローラに動作可能に接続された温度調節器であって、前記ガス流の温度を調節するように構成された温度調節器と、
前記エンクロージャ内に配置され、かつ前記コントローラに動作可能に接続された少なくとも一つの温度プローブと、
をさらに備える、請求項11に記載の汚染物質制御システム。
【請求項17】
前記温度調節器は、前記ガス流を、周囲温度より約5℃高い温度~前記周囲温度より約20℃高い温度まで加熱する、請求項16に記載の汚染物質制御システム。
【請求項18】
前記温度調節器は、前記ガス流の前記温度を、周囲温度より約5℃低い温度と5℃高い温度の間に調節する、請求項16に記載の汚染物質制御システム。
【請求項19】
前記温度調節器は、前記ガス流の前記温度を、周囲温度より約5℃低い温度~前記周囲温度より約20℃低い温度まで冷却する、請求項16に記載の汚染物質制御システム。
【請求項20】
前記供給源は加圧ガスの供給源を備え、
前記汚染物質制御システムは、
前記供給源と前記チャネルとの間に配備される圧力調節器と、
前記供給源と前記入口との間に配備され、かつ前記コントローラに動作可能に接続された第一の弁と、
をさらに備える、請求項11に記載の汚染物質制御システム。
【請求項21】
前記供給源はファンまたはブロアのうちの少なくとも一つを備える、請求項11に記載の汚染物質制御システム。
【請求項22】
工作機械内の汚染物質を制御する方法であって、
前記工作機械は、
エンクロージャであって、
前記エンクロージャ内に配置された可動構成要素と、
前記エンクロージャを、ガス流を供給する供給源に流体結合して、前記ガス流を前記エンクロージャの中に方向付ける入口と、
前記エンクロージャ内に配備される圧力センサーと、
前記ガス流を前記エンクロージャから外に方向付けるための少なくとも一つの出口と、を備えるエンクロージャと、
前記エンクロージャの外面上に配備され、かつ前記可動構成要素に動作可能に結合された切削工具と、
を備え、
前記汚染物質を制御する方法は、
前記工作機械を通る前記ガス流のコントローラを使用しての調節を含み、前記コントローラは、前記圧力センサーと、前記ガス流を供給する前記供給源と、に動作可能に接続され、
前記ガス流は、前記切削工具によって生成された少なくとも一部の汚染物質が前記エンクロージャに入ることを防止する、汚染物質を制御する方法。
【請求項23】
前記可動構成要素は精密位置決め構成要素を含む、請求項22に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項24】
前記精密位置決め構成要素は、
第一の軸の周りを回転可能な第一の回転可能部分を備える第一のアセンブリと、
前記第一の軸と一致しない第二の軸の周りを回転可能な第二の回転可能部分を備える第二のアセンブリと、
を備え、
それらのアセンブリは、前記第一の回転可能部分の回転が、前記第一の軸の周りに前記第二の回転可能部分の偏心回転を引き起こすように結合される、請求項23に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項25】
前記少なくとも一部の汚染物質は、機械加工くずまたは研削切りくずのうちの少なくとも一つを含む、請求項22に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項26】
前記ガス流の制御は、前記エンクロージャ内における、周囲圧力より約0.5水柱インチ高い圧力~前記周囲圧力より約100水柱インチ高い圧力の生成を含む、請求項22に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項27】
前記コントローラに動作可能に接続された温度調節器を使用しての前記ガス流の温度調節と、
前記コントローラに動作可能に接続された温度プローブでの前記エンクロージャ内の温度測定と、
をさらに含む、請求項22に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項28】
前記ガス流の前記温度調節は、周囲温度より約5℃高い温度~前記周囲温度より約20℃高い温度までの前記ガス流の加熱を含む、請求項27に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項29】
前記ガス流の前記温度調節は、前記ガス流の前記温度を、周囲温度より約5℃低い温度と5℃高い温度の間に調節することを含む、請求項27に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項30】
前記ガス流の前記温度調節は、前記ガス流を、周囲温度より約5℃低い温度~前記周囲温度より約20℃低い温度まで冷却することを含む、請求項27に記載の汚染物質を制御する方法。
【請求項31】
ガス流を供給する供給源と、
前記供給源に流体結合されてガス流を方向付けるチャネルと、
位置決めシステム中に配備された入口を介して前記チャネルに流体結合された位置決めシステムであって、
第一の軸の周りを回転可能な第一の回転可能部分を備える第一のアセンブリと、
前記第一の軸と一致しない第二の軸の周りを回転可能な第二の回転可能部分を備える第二のアセンブリと、
前記第一のアセンブリまたは前記第二のアセンブリのうちの少なくとも一つに流体結合されて、前記位置決めシステムから外に前記ガス流を方向付ける、少なくとも一つの出口と、
前記第一のアセンブリまたは前記第二のアセンブリのうちの少なくとも一つ内に配備された第一の圧力センサーと、を備える、位置決めシステムと、
前記ガス圧縮機および前記第一の圧力センサーに動作可能に接続されたコントローラと、
を備える汚染物質制御システムであって、
前記ガス流は、少なくとも一部の汚染物質が前記位置決めシステムに入ることを防止する、汚染物質制御システム。
【請求項32】
前記チャネルに流体結合されて前記ガス流の前記温度を調節する温度調節器をさらに備える、請求項31に記載の汚染物質制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月21日出願の米国特許出願第63/028,470号の米国特許法119条(e)の下での優先権利益を主張し、参照によりその全体がすべての目的のため本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
物体を二次元または三次元で自動的かつ適切に位置付ける必要がある、数え切れないほどの状況がある。このニーズは産業界で一般的であり、信頼性および再現性のある方法で物体を移動させるために機械が使用される。一例は、軸受レースの研削である。毎年数百万もの軸受レースが、非常に慎重に制御された研削盤を使用して研削される。こうした機械は、研削工具を、研削位置まで、また研削位置から移動(「Z」方向と称される)、および軸受レースに向かって、また軸受レースから離して移動(「X」方向と称される)させる必要がある。また、レースに対する研削ホイールの角度位置を制御しなければならない。したがって、研削盤に結合されることができる物体の二軸または三軸の運動を達成するように構成されたいくつかの位置決めシステムがある。
【0003】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,803,034号は、物体を二次元または三次元で非常に正確に(例えば、所望の位置について約0.05ミクロン以内に)、かつ非常に迅速に(例えば、10秒以内に)移動させたり、位置付けたりするために使用できる偏心位置決めシステム(EPS)を開示している。例えば、EPSを使用して、研削位置へ、また研削位置から、ならびに軸受レースに向かって、また軸受レースから離して、研削ホイールを移動させることができる。また、レースに対する研削ホイールの角位置を制御することができる。これは、互いに偏心した様式で積み重ねられた回転テーブルつまり回転運動アセンブリのセットでこれを行う。すなわち、上または下から見ると、それらの回転運動アセンブリは同心には取り付けられていない。
【0004】
図1は、二つの回転運動アセンブリ101および103を有する偏心位置決めシステム100の断面図である。アセンブリ101および103は、互いに同一であってもよく、なくてもよい(例えば、同一または異なる直径を有してもよい)。アセンブリ103が、アセンブリ101によって軸120の周りを回転するように、アセンブリ103は、アセンブリ101の回転部材110に結合されている。アセンブリ101は、固定部材104と、軸120の周りをモーター106(または油圧アクチュエータなど、回転運動を達成する別の回転運動装置)によって回転する回転可能部材110と、を備える。軸受107および108は、こうした回転運動を提供する。このように、部材110の回転は、軸120の周りのアセンブリ103の偏心運動を引き起こす。アセンブリ103の回転可能部材102自体は、モーター114ならびに軸受115および116によって、ケース112に対して軸122の周りを回転可能である。平行な平面(アセンブリ101の平面Aおよびアセンブリ103の平面B)における二つの回転運動は、部材102の平面Bにおける部材102の二軸運動を達成する。従って、部材102に直接的または間接的に結合されて、軸122と完全に一致しない任意の物体は、その物体の運動面内に位置付け可能であり、この場合、その平面は平面Bに平行である。装置の運動は、モーター106および114の回転の適切な制御を通して、この平面内の任意の直線または曲線経路に従うことができる。
【0005】
図2A~2Eは、三つの回転運動アセンブリを有する偏心位置決めシステム10が、物体18(例えば、研削ホイール)をページの平面内においてどのように位置付けできるかを示す。それらの回転運動アセンブリは、
図2Aに示されるように結合され、以下に記述される、入れ子状の三つの偏心軸受としてモデル化されている。最も大きい軸受12は、中間サイズの軸受14および最も小さい軸受16を包含する。軸受は、異なるが平行な軸の周りを各々回転できるように偏心して取り付けられていて、回転が起こると、これらの軸は一時的に一致し得る。それらの軸受は、軸受12の内側レースが回転する時、軸受14および16(およびこうした軸受によって支持された任意の構造または物体)も軸受12の回転軸の周りを移動するように支持されている。同様に、軸受14の内側レースが回転する時、軸受16(および軸受16によって支持された任意の構造または物体)も同様に移動する。
【0006】
物体18は、内側軸受16の内側レースに直接的または間接的に結合されている。
図2Aの実線の円13は、軸受12が回転する時の軸受14の中心の経路を示す。
図2Aの破線の円15は、軸受14が回転する時の軸受16の中心の経路を示す。軸受12および/または14は、その運動のX-Z平面におけるツール18の運動を制御し、それは図面ページに平行である。ツール18は、そのツールが軸受16の回転軸の周りを回転するように、軸受16に結合されている。このように、軸受16は、この平面内におけるツール18の角度配向(シータ)を制御する。軸受16は、XおよびZ位置ならびに角度配向に影響を及ぼす。
【0007】
図2Bおよび
図2Cは、
図2Bに示す開始位置から
図2Cに示す終了位置まで、物体18を「Z」軸に沿って概して直線状に移動させる、軸受12、14、および16の回転運動の方向および程度(度数)の特定の一例を図示する。この例では、軸受12は、43インチの外径(OD)および33.75インチの内径(ID)を有する。軸受14は、25インチのODおよび21.25インチのIDを有する。軸受16は、12.75インチのODおよび10インチのIDを有する。それらの運動には、大きい軸受12の138.7度の時計回りの運動、中間サイズの軸受14の277.2度の反時計回りの運動、および最も小さい軸受16の138.5度の時計回りの運動が含まれる。これらの回転運動により、物体18は、「Z」方向に13.963インチ移動する。ツール18は、図に示すように、この運動の開始および終了において同じ角度配向を有する。運動は、同時に、または順次に発生し得る。運動は、システムコントローラによって適切に制御される。これらの運動の経路が重要な状況では、直線的な、または他の意図的な方向性のある物体の運動を達成することができる。
【0008】
図2Dおよび2Eは、物体18が
図2Bに示す開始位置から、
図2Dに示す位置(これは
図2Cに示すものと同じ)、さらに「X」方向に下へ2.88インチ移動する運動を示す。単軸直線運動を維持するために、全体的な位置決めは、
図2Bおよび
図2Cに示すZ軸運動、さらに
図2Dおよび
図2Eに示すX軸運動の二つの工程をいずれかの順番で行うことができる。軸受12、14、および16の内側レースの(絶対的な)総回転運動は、それぞれ、時計回りに173.5度、反時計回りに294度、および時計回りに120.4度である。直線運動は、二つ以上の相対的回転の適切な制御によって他の運動経路を達成することができるため、偏心位置決めシステムの制約ではない。
【発明の概要】
【0009】
上述の偏心位置決めシステムは、可動部品の間(例えば、積み重なった回転運動アセンブリの間)にギャップ、スリット、または他の開口部を伴ってひとまとめに結合されたいくつかの可動部品を有する。汚染物質が偏心位置決めシステムの開口部に侵入した場合、いくつかの方法でシステムを損傷させる可能性がある。例えば、汚染物質が偏心位置決めシステムの軸受、ギア、モーター、または他の精密可動部品に到達した場合、汚染物質が可動部品の間に詰まったり、喰い込んだりして、可動部品が適切に動くことを妨げる可能性がある。また、汚染物質は、回転運動アセンブリの位置を監視するために使用される光学エンコーダーなどのセンサーに干渉、またはセンサーをブロックして、センサーの読み取り値を不完全または不正確なものとする。チェックしないと、工作機械中の汚染物質の存在は、精度の大幅な低下、および最終的には、工作機械の故障をもたらし得る。
【0010】
汚染物質は、偏心位置決めシステムが機械加工に使用される環境で特に問題がある。例えば、偏心位置決めシステムが軸受レースを研削するために使用される時、研削作業は切りくずを生成し、これは被加工物から除去された材料の微細な加工くず、および/または長い巻きひげ状の形態を取りうる。他の機械加工作業は、加工くず、ダライ粉、やすり粉、および/または削りくずを含む、その他の小さな破片を生成する場合がある。これらの小さな破片は、水または油などの流体と混合し、偏心位置決めシステムの軸受および/または光学エンコーダーの中に入り込み、偏心位置決めシステムの位置決め精度を劣化させる可能性がある。
【0011】
本技術の実施形態は、位置決めシステムを含む。位置決めシステムは、第一の回転運動テーブルおよびガス源を含む。第一の回転運動テーブルは、第一の基部、第一の基部に回転可能に結合された第一のプラットフォーム、および第一の軸の周りに第一のプラットフォームを回転させる第一のモーターを備える。ガス源は、第一のプラットフォームと第一の基部との間の第一の空洞と流体連通している。ガス源は、第一の空洞を加圧する。ガスは、第一の基部と第一のプラットフォームとの間の第一のチャネルを通って第一の空洞から流れ出て、第一の空洞への粒子の侵入を防止する。
【0012】
位置決めシステムは、第一のプラットフォームに固定された第二の基部、第二の基部に回転可能に結合された第二のプラットフォーム、および第一の軸に平行な第二の軸の周りに第二のプラットフォームを回転させる第二のモーターを備える、第二の回転運動テーブルを含んでもよい。第一のプラットフォームおよび第二の基部は、第一のプラットフォームと第一の基部との間の第二の空洞と、第一の空洞と、を接続する導管を形成してもよい。ガス源は、第一の空洞および導管を介して第二の空洞と流体連通してもよく、第二の空洞を加圧するように構成されてもよい。
【0013】
位置決めシステムは、工具をさらに含んでもよい。工具は、第二のプラットフォーム上に配備されてもよい。工具は、第一の回転運動テーブルおよび第二の回転運動テーブルによって、被加工物に対して位置付けられるように構成されてもよい。工具は、被加工物を機械加工し得る。ガス源による第一の空洞および第二の空洞の加圧は、被加工物を機械加工することによって生成される切りくずが、第一の空洞または第二の空洞に入ることを防止し得る。ガスは、第一の基部と第一のプラットフォームとの間の第一のチャネルを通って第一の空洞から流れ出て、第二の基部と第二のプラットフォームとの間の第二のチャネルを通って第二の空洞から流れ出てもよい。
【0014】
位置決めシステムは、空調装置をさらに含み得る。空調装置は、ガス源と流体連通していてもよい。空調装置は、第一の空洞の中に流れ込むガスを加熱および/または冷却し得る。位置決めシステムは、温度センサーおよびコントローラをさらに含んでもよい。温度センサーは、第一の回転運動テーブルと熱的に連通していてもよい。温度センサーは、第一の回転運動テーブルの温度を測定し得る。コントローラは、第一の回転運動テーブルの温度に基づいてガスの温度を制御するために、温度センサーおよび空調装置に動作可能に接続され得る。温度センサーは、第一の温度センサーであってもよく、システムは、第二の温度センサーをさらに含んでもよい。一つの実装では、第二の温度センサーは、工作機械に供給される冷却液および/または切削液と熱的に連通していてもよい。第二の温度センサーは、コントローラに動作可能に接続されてもよい。工作機械は、位置決めシステムに動作可能に結合され、位置決めシステムによって位置付けられてもよい。第二の温度センサーによって測定される温度は、コントローラによって温度設定点として使用され得る。別の実装では、第二の温度センサーは、周囲温度と熱的に連通していて、コントローラに動作可能に接続されてもよい。第二の温度センサーによって測定される温度は、コントローラによって温度設定点として使用され得る。
【0015】
位置決めシステムの第一のチャネルは、入り組んで(labyrinthine)いてもよい。位置決めシステムは、シールドをさらに含んでもよい。第一の空洞への液体の侵入を防止するために、シールドが、第一のチャネルの出口の上に配備され得る。
【0016】
本技術のその他の実施形態は、汚染物質制御システムを含む。汚染物質制御システムは、ガス流を供給する供給源、ガス流を方向付けるために供給源に流体結合されたチャネル、チャネル内に配備された圧力センサー、工作機械、切削工具、およびコントローラを含む。工作機械はエンクロージャを含む。エンクロージャは、エンクロージャ内に配置された可動構成要素、チャネルとエンクロージャを流体結合する入口、およびエンクロージャから外にガス流を方向付ける少なくとも一つの出口を含む。切削工具は、エンクロージャの外面上に配備される。切削工具は、可動構成要素に動作可能に結合される。コントローラは、ガス流を供給する供給源および圧力センサーに動作可能に接続される。ガス流は、切削工具によって生成される少なくとも一部の汚染物質がエンクロージャに入ることを防止する。汚染物質制御システム中の汚染物質は、機械加工くずまたは研削切りくずのうちの少なくとも一つを含み得る。汚染物質制御システム内のガス流は、周囲圧力より約0.5水柱インチ~約100水柱インチ高い圧力をエンクロージャ内に生じさせ得る。
【0017】
工作機械の可動構成要素は、精密位置決め構成要素を含み得る。精密位置決め構成要素は、第一のアセンブリおよび第二のアセンブリを含んでもよい。第一のアセンブリは、第一の軸の周りを回転可能な第一の回転可能部分を含む。第二のアセンブリは、第一の軸と一致しない第二の軸の周りを回転可能な第二の回転可能部分を含む。アセンブリは、第一の回転可能部分の回転が、第一の軸の周りに第二の回転可能部分の偏心回転を引き起こすように結合されてもよい。
【0018】
汚染物質制御システムは、温度調節器をさらに含み得る。温度調節器は、チャネルに流体結合され、コントローラに動作可能に接続されてもよい。温度調節器は、ガス流の温度を調節(例えば、加熱および/または冷却)するように構成されてもよい。少なくとも一つの温度プローブは、エンクロージャ内に配備されて、コントローラに動作可能に接続されてもよい。一つの実装では、温度調節器は、周囲温度より約5℃高い温度~周囲温度より約20℃高い温度までガス流を加熱し得る。別の実装では、温度調節器は、周囲温度よりも約5℃低い温度と約5℃高い温度の間にガス流の温度を調節し得る。別の実装では、温度調節器は、周囲温度より約5℃低い温度~周囲温度より約20℃低い温度までガス流の温度を冷却し得る。
【0019】
汚染物質制御システムのガス流を供給する供給源は、加圧ガスの供給源を含んでもよい。汚染物質制御システムは、圧力調節器および第一の弁をさらに含んでもよい。圧力調節器は、供給源とチャネルとの間に配置されてもよい。第一の弁は、供給源と入口との間に配備され、コントローラに動作可能に接続されてもよい。供給源は、ファンまたはブロワーのうちの少なくとも一つを備えてもよい。
【0020】
本技術のその他の実施形態は、工作機械中の汚染物質を制御する方法を含む。工作機械はエンクロージャおよび切削工具を含む。エンクロージャは、可動構成要素、入口、圧力センサー、および少なくとも一つの出口を含む。可動構成要素は、エンクロージャ内に配置される。入口は、ガス流を供給する供給源にエンクロージャを流体結合して、ガス流をエンクロージャの中に方向付ける。圧力センサーは、エンクロージャ内に配備される。少なくとも一つの出口は、ガス流をエンクロージャから外に方向付ける。切削工具は、エンクロージャの外面上に配備される。切削工具は、エンクロージャの可動構成要素に動作可能に結合されている。汚染物質を制御する方法は、コントローラを使用しての、工作機械を通るガス流の調節を含む。コントローラは、圧力センサーおよびガス流を供給する供給源に動作可能に接続される。ガス流は、切削工具によって生成される少なくとも一部の汚染物質がエンクロージャに入ることを防止する。ガス流を制御することは、周囲圧力より約0.5水柱インチ高い~約100水柱インチ高い圧力をエンクロージャ内に作り出すことを含み得る。
【0021】
汚染物質を制御する方法は、ガス流の温度調節、およびエンクロージャ内の温度測定をさらに含んでもよい。コントローラに動作可能に接続された温度調節器を使用して、ガス流の温度を調節してもよい。コントローラに動作可能に接続された温度プローブを使用して、エンクロージャ内の温度を測定してもよい。ガス流の温度調節は、周囲温度より約5℃高い温度~周囲温度より約20℃高い温度までガス流を加熱することを含み得る。ガス流の温度調節は、周囲温度よりも約5℃低いまたは周囲温度5℃高い温度の間にガス流の温度を調節することを含み得る。ガス流の温度調節は、周囲温度より約5℃低い温度~周囲温度より約20℃低い温度までガス流を冷却することを含み得る。
【0022】
本技術のその他の実施形態は、汚染物質制御システムを含む。汚染物質制御システムは、供給源、チャネル、位置決めシステム、およびコントローラを含む。供給源は、ガス流を供給する。チャネルは、供給源に流体結合されてガス流を方向付ける。位置決めシステムは、位置決めシステム中に配置された入口を介してチャネルに流体結合される。位置決めシステムは、第一のアセンブリ、第二のアセンブリ、少なくとも一つの出口、および第一の圧力センサーを含む。第一のアセンブリは、第一の軸の周りを回転可能な第一の回転可能部分を備える。第二のアセンブリは、第一の軸と一致しない第二の軸の周りを回転可能な第二の回転可能部分を備える。少なくとも一つの出口は、第一のアセンブリまたは第二のアセンブリのうちの少なくとも一つに流体結合されて、位置決めシステムから外にガス流を方向付ける。第一の圧力センサーは、第一のアセンブリまたは第二のアセンブリのうちの少なくとも一つ内に配備される。コントローラは、ガス圧縮機および第一の圧力センサーに動作可能に接続される。ガス流は、少なくとも一部の汚染物質が位置決めシステムに入ることを防止する。汚染物質制御システムは、チャネルに流体結合されてガス流の温度を調節する温度調節器をさらに含んでもよい。
【0023】
前述の概念および以下でより詳細に論じる追加的概念のすべての組み合わせは(このような概念は相互に矛盾していないという前提で)、本明細書に開示する本発明の主題の一部である。本開示の最後に現れる特許請求される主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示する本発明の主題の一部である。参照により本明細書に組み込まれる、任意の開示においても現れる場合がある、本明細書に使用する用語には、本明細書に開示する概念と最も一致する意味が与えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
当業者であれば、図面が主として例示的な目的で提示されていて、本明細書に記載の本発明の主題の範囲を制限することを意図していないことを理解するであろう。図面は必ずしも一定の比率ではなく、いくつかの例では、本明細書に開示する本発明の主題のさまざまな態様は、異なる特徴の理解を容易にするために、図面内で誇張または拡大されて示される場合がある。図面では、同様の参照文字は概して、同様の特徴(例えば、機能的および/または構造的に類似した要素)を意味する。
【0025】
【
図1】
図1は、二つの回転運動アセンブリを有する偏心位置決めシステムの断面図である。
【
図2A】
図2Aは、三つの軸受としてモデル化された三つの回転運動テーブルを有する偏心位置決めシステムの、上面図に沿った動作を示す。
【
図2B】
図2Bは、三つの軸受としてモデル化された三つの回転運動テーブルを有する偏心位置決めシステムの、上面図に沿った動作を示す。
【
図2C】
図2Cは、三つの軸受としてモデル化された三つの回転運動テーブルを有する偏心位置決めシステムの、上面図に沿った動作を示す。
【
図2D】
図2Dは、三つの軸受としてモデル化された三つの回転運動テーブルを有する偏心位置決めシステムの、上面図に沿った動作を示す。
【
図2E】
図2Eは、三つの軸受としてモデル化された三つの回転運動テーブルを有する偏心位置決めシステムの、上面図に沿った動作を示す。
【
図3】
図3は、汚染物質制御システムと一体化された三回転偏心位置決めシステムの断面図である。
【
図4】
図4は、汚染物質制御システムと一体化された五回転偏心位置システムの断面図である。
【
図5】
図5は、汚染物質制御システムと一体化された他の三回転偏心位置決めシステムの断面図である。
【
図6】
図6は、工作機械汚染物質制御システムの概略図である。
【
図7A】
図7Aは、蛇行したガス輸送経路を作り出す入り組んだチャネル(labyrinthine channel)の例を有する偏心位置システムの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願の発明の態様は、偏心位置決めシステムなどの位置決めシステムと一体化できる汚染物質制御システムを含む。汚染物質制御システムは、切りくず、加工くず、やすり粉、ダライ粉、削りくず、および/または汚染物質の、位置決めシステムへの侵入を防止または大幅に低減する。このようにして、汚染物質制御システムは、汚染物質が、位置決めシステムに進入して位置決めシステムの軸受、ギア、エンコーダー、および/または他の構成要素を汚すことによって引き起こされる、位置決めシステムの損傷および/または誤動作を防止する。
【0027】
汚染物質制御システムは、不活性ガス流を、位置決めシステムの内部を通して方向付けることによって、汚染物質の位置決めシステムへの侵入を防止する。汚染物質制御システムは、位置決めシステム内のガス圧力が周囲気圧よりも大きくなるように、ガスの流量を制御する。この過圧力は、位置決めシステムの任意のギャップ、開口、開口部、スリット、スロット、および/またはシームからガスを流出させ、汚染物質がそれらの同じギャップ、開口、開口部、スリット、スロット、および/またはシームを通って位置決めシステムに入ることを防止する。
【0028】
汚染物質制御システムは、位置決めシステムを通るガス流を制御するコントローラを含む。コントローラは、プログラム可能論理コントローラであってもよい。このコントローラは、位置決めシステムの位置決め動作を制御するプロセッサまたはコントローラと同一であってもよく、または別であってもよい。汚染物質制御システムはまた、位置決めシステム内に位置付けられ、かつアナログデジタル入力を介してコントローラに接続されてコントローラにフィードバックを提供する、一つ以上のセンサーを含む。また一つ以上のガス調節器および弁が、システムと一体化され、かつコントローラに結合されて、ガス流の方向、ガス流の量、ガス流の速度、および位置決めシステム内の内部圧力の制御を提供してもよい。
【0029】
汚染物質制御システムは、いくつかの供給源および技術のいずれかを使用して不活性ガス流を生成することができる。一実施形態において、ガス流は、加圧ガスの供給源を使用して作り出される。例えば、加圧ガスは、ガス圧縮機(例えば、工業用空気圧縮機)によって供給されてもよい。別の例として、加圧ガスは、加圧ガスシリンダによって供給されてもよい。この実施形態では、ガス流は、一つ以上のガス調節器、弁、および/またはブリードポート(bleed ports)で制御され得る。別の実施形態では、ガス流は、位置決めシステムを通して周囲空気を吹き込むファンまたはブロアを用いて生じさせられる。十分な空気圧を作り出す任意のファンを使用し得る(例えば、再生ファン)。この場合、スクリーンまたはフィルタは、ファンまたはブロアが微細粒子を位置決めシステムに吸い込むことを防止する。この実施形態では、ガス流は、ファンまたはブロアの速度を変化させることによって制御されてもよい。汚染物質制御システムは、純ガスまたはガスの混合物を位置決めシステムを通して流すことができる。適切なガスの例には、空気、窒素、およびアルゴンが含まれる。一実施形態では、単一のガス流源が、いくつかの位置決めシステムに接続される。別の実施形態では、いくつかのガス流源が、位置決めシステムに接続されて、より大きなガス流を提供するか、またはガス流源の故障によるダウンタイムを防止する。
【0030】
一つ以上のガス流チャネルを使用して、ガス流源を位置決めシステムに接続する。ガス流チャネルは、ダクト、パイプ、または管(例えば、PVCパイプまたはシート金属ダクト)を含み得る。ガス流チャネルは、圧力およびガス流仕様に従ってサイズ設定されている。ガス流チャネルは、コネクタ、接着剤、溶接、および/またはリベット締めを介してひとまとめに接合され得る。例えば、PVCパイプは、コネクタおよびPVC接着剤を介して接合することができる。金属ダクトは、溶接、ボルト締め、および/またはリベット締めを介して接合することができる。
【0031】
一つ以上の弁をガス流れチャネル内に配備して、ガス流を制御または調節してもよい。弁は、オン/オフ制御弁(例えば、ボール弁、バタフライ弁、ダイアフラム弁、ゲート弁、ポペット弁、または電磁弁)および/または計量弁(例えば、ダイアフラム弁、グローブ弁、ニードル弁、または電磁弁)を含み得る。弁はまた、チェック弁、減圧弁、および/または圧力逃し弁を含んでもよい。
【0032】
少なくとも一つのガス圧力センサーが汚染物質制御システムに組み込まれて、コントローラにフィードバックを提供する。このガス圧力センサーは、位置決めシステム内の内部圧力を監視する。コントローラは、内部圧力が所望の内部圧力に留まるように、位置決めシステム内の内部圧力を制御し得る。例えば、所望の内部圧力は、周囲気圧より約0.5水柱インチ高く~気圧より約100水柱インチ高くてもよい(例えば、1.0、2.5、5.0、10、25、50、または75水柱インチ)。他のガス圧力センサーが、ガス源と位置決めシステムとの間に、ガス流チャネルに沿って配備されてもよい。ピエゾ抵抗歪みゲージ、静電容量式圧力センサー、電磁圧力センサー、および圧電型圧力センサーを含む、多くのタイプのガス圧力センサーが使用されてもよい。センサーが故障した場合、ガス流源は、目標圧力範囲を作り出すために、所定のガス流にデフォルト設定されてもよい。
【0033】
汚染物質制御を提供することに加えて、汚染物質制御システムは、温度制御を提供することによってさらなる利益を提供し得る。位置決めシステムの温度が変化した場合、工作機械の精度および正確さが損なわれる。温度変化は、位置決めシステム内の熱膨張および熱収縮を引き起こす。これらの熱影響は、工作機械の正確さおよび精度を低下させる。工作機械の正確さおよび精度は、その温度を制御することによって改善され得る。温度制御は、熱影響を防止または低減することができる。
【0034】
汚染物質制御システムは、ガスが位置決めシステムを通って流れる前および/または間にガスの温度を調節することによって、温度制御を提供し得る。ガスの温度、ガスのタイプ、およびガス流の速度および体積を制御することによって、コントローラは、位置決めシステムの温度も制御することができる。ガス流源からのガスは、位置決めシステムに入る前に、温度調節器を通して方向付けられてもよい。一実施形態において、温度調節器は、例えば、ヒーターを使用して、ガス加熱のみを提供する。別の実施形態において、温度調節器は、例えば、ヒートポンプまたはヒーターおよび空調装置の組み合わせを使用して、加熱および冷却の両方を提供する。別の実施形態において、温度調節器は、例えば、空調装置を使用して冷却のみを提供する。
【0035】
汚染物質制御システムが温度を制御する実施形態において、汚染物質制御システムは、少なくとも一つの温度プローブも含む。温度プローブは、位置決めシステム内の温度を測定するために、位置決めシステム内に配備されるか、または位置決めシステムと熱的に連通している。温度プローブは、位置決めシステムの表面と接触してもよく、接触していなくてもよい。温度プローブは、位置決めシステムの表面と直接接触していることが好ましい。温度プローブは、温度調節器を制御するために、コントローラに接続されてフィードバックを提供する。他の温度プローブは、ガス源と位置決めシステムとの間に、ガス流チャネルに沿って設置されてもよい。熱電対およびサーモスタットを含む、任意の適切なタイプの温度プローブを使用し得る。
【0036】
一実施形態において、コントローラに動作可能に接続された温度プローブは、位置決めシステムに機械的に結合され、かつ位置決めシステムによって位置付けられる切削工具、研削工具、またはフライス工具に熱的に結合される。この実施形態において、温度プローブは、切削工具、研削工具、またはフライス工具の表面上に配備されてもよく、および/または切削工具、研削工具、またはフライス工具に供給される冷却液または切削液に熱的に結合されてもよい。冷却液または切削液供給の温度は、切削工具、研削工具、またはフライス工具のコントローラを使用して設定および制御され得る。切削工具、研削工具、もしくはフライス工具、および/または冷却液もしくは切削液に熱的に結合された温度プローブによって測定された温度は、位置決めシステムに接続された温度調節器の温度設定点として使用されてもよい。加熱および冷却の両方を提供する温度調節器は、冷却液供給または切削工具、研削工具、またはフライス工具の温度に対して、ガスの温度をある温度範囲に調整し得る。その温度の範囲は、冷却液供給または切削工具、研削工具、またはフライス工具の温度の±20℃以内であってもよい(例えば、±0.1℃、±0.25℃、±0.5℃、±1℃、±2℃、±5℃、または±10℃)。このように、位置決めシステムの温度および切削工具、研削工具、またはフライス工具の温度は、温度変化によって引き起こされる悪影響を低減するために、実質的に類似していてもよい。
【0037】
別の実施形態において、温度コントローラは、周囲温度より約5℃高い温度~周囲温度より約20℃高い温度まで位置決めシステムを加熱するように構成され得る。この実施形態において、コントローラに動作可能に接続された温度プローブは、周囲温度に熱的に結合されている。この実施形態は、位置システムの一定した温度が望ましい場合、および汚染物質制御システムが冷却機能を含まない場合に好ましい。汚染物質制御システムは、費用または空間を節約するために冷却機能を含まない場合がある。別の実施形態において、温度コントローラは、位置決めシステムを周囲温度から5℃以内の温度に維持するように構成されてもよい。この温度範囲は、研削プロセス制御に好適であるが、加熱および冷却機能の両方を使用する。別の実施形態において、温度コントローラは、位置決めシステムを、予想される最低周囲温度よりも約5℃~約20℃低い温度に維持するように構成されてもよい。この実施形態は、全季節運転のために、周囲温度を下回る温度を維持することが好ましい場合に好適である。
【0038】
コントローラは、アルゴリズムを使用して、ガス流およびガスの温度を制御してもよい。コントローラは、ガス流および温度を制御するために、加熱、冷却、ファン速度、および弁を制御してもよい。コントローラは、システム内の一つ以上の圧力センサーに対して設定された不感帯限度内にガス流を制御する。圧力センサーの故障の場合、コントローラは、ガスの流量をデフォルトの一定した所定の設定に戻して、位置決めシステムへの汚染物質の侵入を実質的に防止する。コントローラはまた、熱が要求された時、システムの出口で測定される温度が上部設定点に到達するまでヒーターをオンにすることによって、システムの温度を制御し、その後、ヒーターはエンクロージャ温度が温度帯内に留まるまでパルス動作される。
【0039】
温度センサーのうちの一つが故障した場合、温度制御システムは運転者に警告を送信し、システムの他の温度センサーに依存する。すべての温度プローブが故障した場合、コントローラは運転者に警告を送信し、温度制御を停止する。
【0040】
図3は、三つの偏心回転運動を提供するために積み重ねられた三つの回転運動アセンブリ210a~210cを有する偏心位置決めシステム201と一体化された、汚染物質制御システム200の断面図である。各回転運動アセンブリ210は、固定部分つまり基部214と、基部214に対して移動可能部材つまりプラットフォーム216を回転させる駆動装置、モーター、またはアクチュエータ212とを備える。各駆動装置212は、基部214に対するプラットフォーム216の角度位置を感知するために、それに組み込まれた光学エンコーダーを有する。各駆動装置212は、対応する回転運動テーブル210の基部214およびプラットフォーム216によって形成された空洞つまりエンクロージャ内にある。それぞれの基部214とプラットフォーム216との間には、小さな(例えば、幅0.5mm)ギャップ、チャネル、導管、または通路242a~242cがある。ギャップ242は、それぞれの回転運動テーブル210の円周の周りに延在し、回転運動テーブル210の駆動装置212および他の可動部品を包含する空洞内への切りくずおよび他の汚染物質の潜在的な侵入点となる。切りくずおよび他の汚染物質はまた、光学エンコーダーを覆い隠し、位置決めシステムの精度を悪化させ得る。
【0041】
回転運動テーブル210の基部214とプラットフォーム216との間に位置付けられた軸受221~226は、回転運動テーブルプラットフォーム214がそれぞれの基部216に対して自由に回転することを可能にする。例えば、軸受221および222は、底部回転運動テーブル210aのプラットフォーム216aを底部回転運動テーブル210aの基部214aに回転可能に結合する。これにより、プラットフォーム216aは、基部214aに対して自由に回転することが可能になる。
【0042】
中央回転運動テーブル210bの基部214bが底部回転運動テーブル210aのプラットフォーム216aに固定され、上部回転運動テーブル210cの基部214cが中央回転運動テーブル210bのプラットフォーム216bに固定されているため、軸受221~226はまた、回転運動アセンブリ210a~210cが互い自由に(かつ偏心して)回転することを可能にする。この場合、軸受221~226は、互いに入れ子になっていないが、偏心位置決めシステムの他の実施形態では入れ子状の軸受が使用され得る。
【0043】
位置付けられる物体、例えば、切削工具または研削工具202は、上部テーブル210cのプラットフォームの外面204に取り付けられる。位置決めシステム201は、切削工具202が取り付けられている平面内のZおよびX運動、ならびに、
図2A~2Eに図示されたような方法で、その平面内における切削工具202の加工端部203の角度運動を達成する。
【0044】
汚染物質制御システム200は、ガス源230、ガス源230を位置決めシステム201に結合するダクト234、圧力センサー251、およびコントローラ290を含む。汚染物質制御システム200は、加えて、温度調節器232、弁252および254、ならびに圧力センサー250を含んでもよい。ガス源230、温度調節器232、弁252および254、ならびにセンサー251は、コントローラ290に動作可能に接続される。コントローラ290は、入口236を通した、ガス源230から位置決めシステム201へのガスの流れ280(矢印で示される)を制御する。また、温度調節器232から出る際の、ガス流280の温度を制御する。圧力センサー251は、コントローラ290に追加のフィードバックを提供するために、一つ以上の回転運動アセンブリ内に配置してもよい。
【0045】
温度センサー253a~253cは、ガス出口242近傍の回転運動アセンブリの内面上に配備されて、コントローラ290に接続されてもよい。温度センサー253a~253cは、センサーフィードバックループの一部としてコントローラ290にフィードバックを提供し得る。温度センサー253dは、冷却液供給ノズル205上に配備されてもよく、または別の方法で切削工具もしくは研削工具202の温度を調節する冷却剤供給ノズル中の冷却液に熱的に結合されてもよい。あるいは、温度センサー253dは、切削工具もしくは研削工具202上に配備、または別の方法で切削工具もしくは研削工具に熱的に結合されてもよい。例えば、温度センサー253dは、切削工具の作業端203上またはその近傍に配備されてもよい。温度センサー253dは、切削工具もしくは研削工具202の温度、または切削工具もしくは研削工具202で使用される冷却液の温度に対して目標温度範囲を設定する、コントローラ290にフィードバックを提供し得る。温度センサー253eは、周囲温度を測定する。温度センサー253eは、コントローラ290に動作可能に接続されて、周囲空気温度に対して目標温度範囲を設定するコントローラ290にフィードバックを提供してもよい。
【0046】
動作中、ガス流280は、チャネル236を通して底部回転運動テーブル210aの空洞に入る。それは、空洞内部の圧力を周囲気圧より高く(例えば、周囲気圧より約0.5インチH2O高く)まで増加させる。結果として、ガスは、軸受221および222、ならびに基部214aとプラットフォーム216aとの間のギャップ242aを通って空洞から吹き出す。この吹き出すガス流280は、切りくず、加工くず、やすり粉、および他の小さな粒子をギャップ242aから押し出し、それらが第一の回転運動テーブル210aに侵入して、軸受221および222ならびに駆動装置212aを詰まらせることを防止する。
【0047】
ギャップ、チャネル、または通路242aは、蛇行したガス輸送経路を形成するために、入り組んだ幾何学的形状(labyrinthine geometry)を有してもよい。ギャップ242aは、構造物によって画定されて、ガス輸送経路にいくつかの屈曲を作り出してもよい。例えば、構造物は、ガス輸送経路に約2~約20個の屈曲(例えば、2、3、4、5、10、または20個の屈曲)を作り出してもよい。この経路の幅または直径は、一定(例えば、0.5mm)であってもよく、または離散点で(例えば、屈曲または曲がり角で)より狭くなってもよく、または外側から内側へ狭くなってもよい。その構造物は、スポット溶接、ボルト、クランプ、および/または接着剤を介して、基部214aおよび/またはプラットフォーム216aに接着されてもよい。その構造物は、腐食、塑性変形、およびへこみに耐える金属で作製されてもよい(例えば、ステンレス鋼)。蛇行したガス輸送経路を作り出すことに加えて、入り組んだ幾何学的形状はまた、液体(例えば、冷却液、オイル、または水)がギャップ242aを通って空洞に入ることを防止または低減するためのバリアを提供する。
【0048】
底部回転運動テーブル210aのプラットフォーム216aおよび中央回転運動テーブル210bの基部214bを通るチャネルつまり通路238aは、底部回転運動テーブル210aのエンクロージャを中央回転運動テーブル210bのエンクロージャに接続する。中央回転運動テーブル210bのプラットフォーム216bおよび上部回転運動テーブル210cの基部214cを通る別のチャネルつまり通路238bは、中央回転運動テーブル210bのエンクロージャを上部回転運動テーブル210cのエンクロージャに接続する。(プラットフォーム216aは基部214bに固定され、プラットフォーム216bは基部214cに固定されていることを思い出すこと。)これにより、ガス流280が積み重ねられた回転運動テーブル210の内部を通って伝搬し、中央回転運動テーブル210bおよび上部回転運動テーブル210cのエンクロージャ内の気圧を増加させることが可能になる。そのガスは、軸受222~226および円周ギャップ242bおよび242cを通って内部から流れ出て、破片が回転運動テーブル210に入り込んだり、軸受222~226およびモーター212を目詰まりさせたりすることを防ぐ。ギャップ、チャネル、導管、または通路242bおよび242cは、入り組んだ幾何学的形状を有して、上述のギャップ242aと同一または類似の蛇行したガス輸送経路を作り出してもよい。
【0049】
図4は、位置決めシステム300と一体化された、汚染物質制御システム301の別の実施形態を示す。位置決めシステム300は、回転テーブル部材352に結合された物体(例えば、研削ホイールまたは他の工作機械、図示せず)の三次元空間内の位置および一つの軸の周りの回転を制御する。システム300は、それぞれのモーター312a~312e、固定基部314a~314e、および回転プラットフォーム316a~316eを有する五つの回転運動アセンブリ310a~310eを備える。
図3と同様に、各モーター312は、対応する基部314とプラットフォーム316との間に形成される空洞内にあり、各空洞は、基部314とプラットフォーム316との間に円周ギャップ342を有する。
【0050】
回転運動アセンブリ310は、各回転運動アセンブリ310の基部314が、下側の回転運動アセンブリ310のプラットフォーム316に固定された状態で、互いに積み重ねられる。アセンブリ310dは、その回転軸が、アセンブリ310a~310cの一致しないが平行な三つの回転軸に直交するように取り付けられる。アセンブリ310eの回転軸は、アセンブリ310dの回転軸と平行であるが、それとは一致しない。各アセンブリ310において、モーター312はプラットフォーム316に固定される。基部314とプラットフォーム316との間の一つ以上の軸受(ラベルなし)は、モーター312が、基部314に対してプラットフォーム316をアセンブリ310の軸の周りで回転させ、5度の位置決め自由度を提供することを可能にする。
【0051】
図3の汚染物質制御システム200と同様に、
図4の汚染物質制御システム301は、ガス源330、回転運動テーブル310の空洞にガス源を結合するダクト334、およびコントローラ390を含む。汚染物質制御システムは、加えて、温度調節器332、弁354および556、ならびに圧力センサー358を含んでもよい。汚染物質制御システム301中に存在する任意の弁または温度センサーは、コントローラに接続される。コントローラ390は、入口336を通しての、ガス源330から位置決めシステム300内へのガスの流れ380を制御する。温度センサー353a~353cは、ガス出口342近傍の回転運動アセンブリの内面上に配備され、コントローラ390に接続されてもよい。
【0052】
位置決めシステム300は、各回転運動アセンブリ310に一つの、五つのエンクロージャを含み、それらは、チャネルつまり通路338a~338dを介してひとまとめに流体結合される。ガス380は、これらのエンクロージャを加圧し、過剰なガスは、チャネル338を通ってエンクロージャの間へ、そして、軸受およびギャップ342を介してエンクロージャの外に流れる。このことは、ギャップ342を介して加工くずおよび他の粒子がエンクロージャに入って、位置決めシステム300の軸受、モーター312、および/または他の可動構成要素に挟まるのを防ぐ。ギャップ342は、上述のように、蛇行したガス輸送経路を形成するために、入り組んだ幾何学的形状を有してもよい。
【0053】
図5は、三つの入れ子の回転運動テーブル510a~510cを有する偏心位置決めシステム500と一体化された、汚染物質制御システム592の別の実施形態を示す。回転運動テーブル510a~510cは、それぞれのモーター512a~512c、固定基部514a~514c、および回転プラットフォーム516a~516cを含む。モーター512a~512cは、他のバージョンの位置決めシステムのように積み重ねる必要がないように、互いに十分に横方向にオフセットされる。モーター512a~512cは、汚染が重大ではないように封止され、ガス580はモーターを通って流れない。モーターの横方向オフセットは、システムの高さを減少させる。
【0054】
他のシステムのように、モーター512は、オフセットされた平行な回転軸の周りでそれぞれのプラットフォーム516を回転させる。軸受501、503、および505は、プラットフォーム516が基部514に対して自由に回転することを可能にする。中央回転運動テーブル514bの基部514bは、底部回転運動テーブル514aのプラットフォーム516aに固定され、上部回転運動テーブル514cの基部514cは、中央回転運動テーブル514bのプラットフォーム516bに固定されているので、モーター512を作動させると、プラットフォーム516が互いに対して移動する。位置決めシステム500は、回転される部材510に平行な切削工具の平面において、切削工具512のZ、X、および角度位置決めを達成する。
【0055】
汚染物質制御システム592は、ガス源530、ガス源を位置決めシステム500に接続するダクト534、圧力センサー551、およびコントローラ590を含む。汚染物質制御システムは、加えて、温度調節器532、弁552および554、ならびに圧力センサー550を含んでもよい。汚染物質制御システム中に存在する任意の弁または温度センサーは、コントローラに接続されて、フィードバックを提供する。コントローラ590は、入口536を介した、ガス源530から位置決めシステム500へのガスの流れ580を制御する。圧力センサー551は、コントローラ590に追加のフィードバックを提供するために、回転運動アセンブリ中に設置されてもよい。温度センサー553a~553cは、ガス出口542の近くの回転運動アセンブリの内面上に配備されてもよい。
【0056】
ガス580は、位置決めシステム500の三つのエンクロージャつまり空洞(基部514aとプラットフォーム516aとの間の第一の空洞、基部514bとプラットフォーム516bとの間の第二の空洞、および基部514cとプラットフォーム516cとの間の第三の空洞)を加圧する。第一の空洞は、チャネル538aを介して第二の空洞に流体結合され、第二の空洞は、チャネル538cを介して第三の空洞に流体結合される。位置決めシステム500は、基部514とプラットフォーム516との間に周方向出口542a~542cを含み、これにより、ガスは加圧された空洞を出ることができる。これらの出口542からガスが吹き出し、汚染物質がそれらに入ることを防ぐ。ギャップ542は、上述のように、蛇行したガス輸送経路を形成するために、入り組んだ幾何学的形状を有してもよい。
【0057】
汚染物質が懸念される任意のタイプの工作機械(例えば、フライス盤、研削盤、または旋盤)は、本出願の発明の態様による汚染物質制御システムと共に設計、または汚染物質制御システムを含むように変更され得る。汚染物質制御システムは、位置決めシステムだけではなく、汚染物質が発生し得る可動部品を有する任意の機械に適用可能である。
【0058】
図6は、工作機械エンクロージャ610と一体化された汚染物質制御システム600の実施形態を示す。切削、研削、および/またはフライス加工用の工作機械構成要素612は、工作機械エンクロージャ610に結合される。工作機械の任意の数の内部構成要素は、工作機械エンクロージャ610内に配備することができ、切りくずまたは加工くずを生成する任意の構成要素(すなわち、切削、研削、および/またはフライス加工用の構成要素612)はエンクロージャの外側にある。汚染物質制御システムは、切りくずなどの汚染物質が工作機械エンクロージャ610に入ることを低減または実質的に防止する。汚染物質制御システムは、ガス源630、ガス源を工作機械エンクロージャに結合するダクト634、圧力センサー651、およびコントローラ690を含む。汚染物質制御システムは、加えて、温度調節器632、弁652および654、ならびに圧力センサー650を含んでもよい。汚染物質制御システム中に存在する任意の弁または温度センサーは、コントローラに接続される。コントローラは、入口636を介した、ガス源630から工作機械エンクロージャ610へのガスの流れ680を制御する。工作機械は、ガスが工作機械から出るための少なくとも一つの出口を含む。ガス出口は、切削、研削、および/またはフライス加工用の構成要素612がエンクロージャ610と結合する場所に位置付けられている。ガス出口は、蛇行したガス輸送経路を作り出すために入り組んだ幾何学的形状を有する。一部の実施形態では、出口は周方向にある。他の実施形態において、工作機械は、少なくとも二つの出口642aおよび642bを含む。
【0059】
図7Aは、基部714と、軸受の位置の近くの移動可能なプラットフォーム704と、の間のギャップにある、入り組んだ構造(ラビリンス構造;labyrinthine structure)の例を有する偏心位置システムの一部を示す。移動可能なプラットフォーム704は、位置決めされる物体、例えば、プラットフォーム704の外面に取り付けられた切削工具または研削工具702を支持し、その作業端703によって、システムが被加工物(例えば、軸受レース)に対して位置決めする。この例において、入り組んだ構造は、基部714とプラットフォーム704との間のギャップ742の上に配備されたシールドまたは金属バンド740によって部分的に形成される。金属バンド740は、金属バンドの側面にスポット溶接されたホースクランプで定位置に保持され、ギャップ742近傍のプラットフォーム704の外縁上に締め付けられる。プラットフォーム704の外縁は、ギャップ742近傍の周方向の溝706を含む。一実施形態において、Oリング746は、金属バンド740とプラットフォーム704との間の溝706に配置される。別の実施形態において、シーラント(例えば、ポリウレタンシーラント、またはシリコンシーラント)のビーズは、金属バンド740とプラットフォーム704との間の溝706に配備される。
【0060】
金属バンド740は、入り組んだ幾何学的形状を作り出して、蛇行したガス輸送経路を形成する。金属バンド740は、腐食、塑性変形、およびへこみに耐える金属から作製される(例えば、ステンレス鋼またはチタン)。蛇行したガス輸送経路を形成することに加えて、入り組んだ幾何学的形状はまた、液体(例えば、冷却液、オイル、または水)がギャップ742を通って位置決めシステムの空洞に飛び跳ねて入ることを防止または低減するためのバリアを提供する。金属バンド740は、約0.25mm~約5mm(例えば、0.25mm、0.4mm、0.5mm、1.0mm、3mm、または5mm)の厚さを有する。金属バンド740の幅は、ギャップ742の幅よりも約10倍~約1000倍大きくてもよい(例えば、10、50、100、500、1000倍大きい)。
【0061】
一部の実施形態では、より蛇行したガス輸送経路が望ましい。ギャップ742の上に金属の波状または波形のバンドを配備することによって、より蛇行したガス輸送経路を形成することができ、ここで、ガスは、波状の金属の表面を横切って流れて、位置決めシステムを出る。波状の金属バンドは、ガス輸送経路にU字形状またはW字形状の屈曲を作り出し得る。また、いくつかの金属バンドを層状にして、ガス輸送経路にいくつかのU字形状の屈曲を作り出すことによって、より蛇行したガス輸送経路を形成してもよい。
結論
【0062】
発明に関するさまざまな実施形態を本明細書に記述し、かつ例示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施するための、ならびに/または結果および/もしくは利点の一つ以上を得るための、さまざまな他の手段および/または構造を容易に想定し、またこうした変形および/または修正のそれぞれは、本明細書に記載の発明に関する実施形態の範囲内であるものと見なされる。より一般的に、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味することと、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、本発明の教示が使用される特定の用途に依存することとを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の発明に関する実施形態の多くの同等物を、単に通常の実験を用いて認識し、または確認することができるであろう。従って、前述の実施形態は、例としてのみ提示されていて、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明に関する実施形態は、具体的に記述および特許請求される以外の形で実践され得ることが理解される。本開示の発明に関する実施形態は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、二つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0063】
また、さまざまな発明に関する概念が、一つ以上の方法として具現化されてもよく、その例を提供してきた。方法の一部として行われる行為は、任意の好適なやり方で順序付けられてもよい。その結果、行為が例示するものとは異なる順序で実施される実施形態を構築してもよく、それは、例示的な実施形態に連続する行為として示されている場合であってさえも、一部の行為を同時に実施することを含んでもよい。
【0064】
本明細書で定義および使用されるすべての定義は、辞書による定義、参照により組み込まれる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味を統制するものと理解されるべきである。
【0065】
本明細書および特許請求の範囲で使用する不定冠詞「a」および「an」は、明確にそうでないと示されない限り、「少なくとも一つ」を意味すると理解されるべきである。
【0066】
本明細書および特許請求の範囲で使用する「および/または」という語句は、結合された要素の「いずれかまたは両方」を意味し、すなわち一部の場合において接続的に存在し、他の場合において離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で挙げられる複数の要素は、同じ様式、すなわち等位接続される要素のうちの「一つ以上」と解釈されるべきである。具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に識別される要素以外に、他の要素が随意に存在し得る。それゆえに、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの制限のない語法と連動して使われる時に、一実施形態においてAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態においてBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態においてAとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0067】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する時、「または」または「および/または」は包括的なもの、すなわち多数の要素または要素のリスト、および任意選択的にリストに無い追加の項目のうちの少なくとも一つを含むが、二つ以上も含むと解釈されるものとする。それとは反対であると明確に指示される用語、例えば「のうちの一つのみ」もしくは「のうちのまさに一つ」、または特許請求の範囲において使用する時の「から成る」などの用語のみ、多数のまたは列挙された要素のうちのまさに一つの要素を包含することを指す。概して、本明細書で使用する「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの一つ」、「のうちの一つのみ」、または「のうちのまさに一つ」など、排他的な用語が先行する時に、排他的な選択肢(すなわち「両方ではなく一方または他方」)を示すとのみ解釈されるものとする。「から基本的に成る」は、特許請求の範囲で使用する場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
【0068】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、一つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも一つ」という語句は、要素のリストの中の要素のいずれか一つ以上から選択される、少なくとも一つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に列挙したありとあらゆる要素のうちの、少なくとも一つを必ずしも含むわけではなく、要素のリストのいかなる要素の組み合せも除外するものではないと理解されるべきである。またこの定義によって、「少なくとも一つ」という語句が指す、要素のリスト内で具体的に識別される以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、任意に存在し得ることも許容される。それゆえに、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも一つ」(または等価的に「AまたはBのうちの少なくとも一つ」、もしくは等価的に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも一つ」)は、一実施形態において、Bは存在せず、任意選択的に二つ以上のAを含む、少なくとも一つのA(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態において、Aは存在せず、任意選択的に二つ以上のBを含む、少なくとも一つのB(任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態において、任意選択的に二つ以上のAを含む、少なくとも一つのA、および任意選択的に二つ以上のBを含む、少なくとも一つのB(任意選択的に他の要素を含む)を指すことなどができる。
【0069】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書において、すべての移行句、例えば「含む(comprising)」、「含む(including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「包含する(containing)」、「伴う(involving)」、「保つ(holding)」、「から構成される(composed of)」、およびこれに類するものは制限がないと理解され、すなわち含むがそれに限定はされないということを意味する。「から成る(consisting of)」および「から基本的に成る(consisting essentially of)」という移行句のみが、米国特許局の特許審査手続便覧、セクション2111.03に記載される、それぞれ閉鎖的または半閉鎖的な移行句であるものとする。
【国際調査報告】