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特表2023-527780下流の油変換の性能向上のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】下流の油変換の性能向上のための方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 55/04 20060101AFI20230623BHJP
   C10G 19/073 20060101ALI20230623BHJP
   C10G 29/04 20060101ALI20230623BHJP
   C10G 9/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C10G55/04
C10G19/073
C10G29/04
C10G9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571154
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2021033244
(87)【国際公開番号】W WO2021236827
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,052
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518230452
【氏名又は名称】エンライテン イノベーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マコウスキー ミコラ
(72)【発明者】
【氏名】ゼナイティス マイケル
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA01
4H129CA05
4H129CA08
4H129CA09
4H129CA10
4H129CA11
4H129CA24
4H129CA25
4H129CA27
4H129CA28
4H129CA29
4H129MA01
4H129MA07
4H129MA12
4H129MB02B
4H129MB04A
4H129MB07A
4H129NA01
4H129NA21
4H129NA45
(57)【要約】
本技術は、下流の油変換の性能を向上させるための方法を提供する。したがって、とりわけ、熱変換プロセスからの液体炭化水素の収率を向上させるための方法を提供するものである。この方法は、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程を含む。炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含んでも良い。変換フィードストックは、炭化水素フィードストック中のものより少ない硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものより少ないマイクロ残留炭素含有量、炭化水素フィードストック中のものより少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含んでも良い。この方法は、ガス状生成物、精製生成物、および残留生成物を生成するために、変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程をさらに含み、残留生成物に対する精製生成物の割合は、炭化水素フィードストックを同じ熱変換プロセスに供することによって生成される割合よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変換プロセスからの液体炭化水素の収率を向上させるための方法であって、以下の工程:
ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程であって、
前記炭化水素フィードストックが、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含み、
前記変換フィードストックが、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素含有量、および前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む、前記接触させる工程と、
ガス状生成物、精製生成物、および残留生成物を生成するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程であって、
前記残留生成物に対する精製生成物の割合が、前記炭化水素フィードストックを同じ前記熱変換プロセスに供することによって生成される前記割合よりも大きい、前記熱変換プロセスに供する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
以下の工程:
ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃で接触させる工程であって、
前記炭化水素フィードストックが、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも15ppmのバナジウム含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含み、
前記変換フィードストックが、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、および前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む、前記接触させる工程と、
0.5wt%未満の硫黄および150ppm未満のバナジウムを有するプレミアムアノードグレードのコークス生成物を生成するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程と
を含む、方法。
【請求項3】
以下の工程:
ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程であって、
前記炭化水素フィードストックが、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも10ppmのニッケル含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含み、
前記変換フィードストックが、0.5wt%未満の硫黄含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、および0.25wt%未満のアスファルテン含有量、および<0.1wt%の灰含有量を有する炭化水素を含む、前記接触させる工程と、
0.5wt%未満の硫黄、0.7wt%未満の窒素、10ppm未満のニッケル、2.5×10/℃より大きい熱膨張係数、および320×10オーム-インチの電気抵抗率を有する高純度ニードルコークス生成物を生成するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスで処理する工程と
を含む、方法。
【請求項4】
以下の工程:
ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程であって、
前記炭化水素フィードストックが、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、および少なくとも100ppmの総金属含有量を有する炭化水素を含み、
前記変換フィードストックが、0.5wt%未満の硫黄含有量、50ppm未満のバナジウム含有量、50ppm未満のニッケル含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも低いアスファルテンの濃度、および前記炭化水素フィードストック中のものよりも大きい残留炭化水素(>538℃)に対する低沸点炭化水素(<538℃)の割合を有する炭化水素を含む、前記接触させる工程と、
任意で、二重変換生成物を提供するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスにさらに供する工程と、
混合またはさらなる変換処理を行わずに燃料グレード生成物を生成するために、前記変換フィードストックまたは前記二重変換フィードストックを触媒変換プロセスに供する工程と
を含む、方法。
【請求項5】
以下の工程:
ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程であって、
前記炭化水素フィードストックが、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量を有する炭化水素を含み、かつ粘度、密度、マイクロ残留炭素、金属含有量、および清浄度/適合性からなる群から選択される1つ以上の燃料グレード規格を満たさず、
変換生成物が、0.5wt%未満の硫黄含有量を有する炭化水素を含み、かつ粘度、密度、マイクロ残留炭素、金属含有量、および適合性からなる群から選択される1つ以上の燃料グレード規格を満たし、ならびに
前記燃料グレード規格が、50℃で380cSt未満の粘度、991kg/m未満の密度、18wt%未満のマイクロ残留炭素含有量、350mg/kg未満のバナジウム含有量、およびASTM D4740による清浄度スポットテストの結果が1または2である、前記接触させる工程
を含む、方法。
【請求項6】
前記二重変換フィードストックおよび固体コークス生成物を提供するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程をさらに含み、
前記変換フィードストックが、少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有し、ならびに
二重変換生成物が、前記炭化水素フィードストック中のものよりも低い不純物濃度、および前記変換フィードストックのものよりも大きい高沸点残渣炭化水素(>538℃)に対する低沸点炭化水素(<538℃)の割合を有する炭化水素を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
精製フィードストックおよび前処理されたフィードストックを提供するために、前記接触させる工程の前に前記炭化水素フィードストックを前処理する工程をさらに含み、
前記精製フィードストックが、前処理前の前記炭化水素フィードストックよりも低い不純物濃度を含み、
前記前処理された炭化水素フィードストックが、前記精製フィードストックよりも高い不純物濃度を含み、および
前記前処理された炭化水素フィードストックが、前記変換フィードストックを生成するために前記接触させる工程に供された前記フィードストックである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前処理工程が、外部から印加された場による相分離、熱の添加による分離、水素化変換、熱変換、触媒変換、触媒処理、溶媒抽出、溶剤脱瀝、またはそれらの任意の2つ以上の組合せを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記前処理工程が、硫黄、窒素、酸素、金属、およびアスファルテンの1つ以上を除去するために、炭化水素フィードストックを外因性水素および/または触媒と接触させることをさらに含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱変換プロセスが、ビスブレーキング、遅延コーキング、流動コーキング、Flexicoking(商標)、パイロリシス、それらの変種、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱変換プロセスが、約400℃~約570℃の温度で操作される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱変換プロセスが、約10~約200psigの圧力で操作される、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱変換プロセスが、約450℃~約500℃および約20~100psigで操作される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒変換プロセスが、流動接触分解(FCC)、残留FCC、水素化処理、残留水素化処理、水素化分解、触媒改質、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、または残留アップグレード/水素化変換、それらの変種、またはそれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、コバルト、モリブデン、ニッケル、タングステン、白金、パラジウム、アルミナ、シリカ、ゼオライト、それらの異性体、酸化物、硫化物、またはそれらのいずれか2つ以上の組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒変換プロセスが、約250℃~約575℃の温度で操作される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒変換プロセスが、約10~約3000psigの圧力で操作される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒変換プロセスが、約400℃~約575℃および約1000~約3000psigで操作される、請求項4または6~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒変換プロセスが、約450℃~約575℃および約15~約100psigで操作される、請求項4または6~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記熱または触媒変換工程に併せて硫黄回収ユニットを使用して硫化水素を回収する工程をさらに含み、前記硫黄回収ユニットの能力が、ナトリウムでの処理中にナトリウム塩に変換された前記硫黄に比例して増加する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記炭化水素フィードストックが、バージン原油もしくは熱分解プロセスの生成物であるか、またはそれに由来する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記炭化水素フィードストックが、石油、重油、ビチューメン、シェールオイル、およびオイルシェールからなる群から選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記硫黄含有量が、0.5wt%~15wt%の範囲である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記アスファルテン含有量が、1wt%~100wt%の範囲である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記アスファルテン含有量が、2wt%~40wt%の範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記炭化水素フィードストックが、精油中間流、水素化分解残留物、水素化処理残留物、FCCスラリー、残留FCCスラリー、大気圧または真空残渣物、溶剤脱瀝タール、脱瀝油、ビスブレーカータール、高硫黄燃料油、低硫黄燃料油、アスファルテン、アスファルト、蒸気分解タール、LC-Fining(登録商標)残留物、またはH-Oil(登録商標)残留物の1つ以上を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記炭化水素フィードストックが、50℃で1~10,000,000cStの粘度および15.6℃で800~1200kg/mの密度を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記炭化水素フィードストックが、50℃で400~9,000,000cStの粘度を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記炭化水素フィードストックが、室温で固体である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記硫黄含有量が、アスファルテン硫黄と非アスファルテン硫黄とを含み、前記変換フィードストック中の非アスファルテン硫黄に対するアスファルテン硫黄の前記割合が、前記炭化水素フィードストック中より低い、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記炭化水素フィードストックと比較して、前記変換フィードストックの粘度が、50℃で少なくとも50cSt、または40%低下し、前記変換フィードストックの密度が、前記変換フィードストックの硫黄含有量における減少1wt%あたり約5~約25kg/m減少する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記変換フィードストックの鉄およびバナジウム含有量が、前記炭化水素フィードストックと比較して少なくとも40%減少された、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記変換フィードストックの前記ニッケル含有量が、前記炭化水素フィードストックと比較して少なくとも40%減少された、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記炭化水素フィードストック中の前記アスファルテン含有量の少なくとも40%が、前記変換フィードストック中の液体炭化水素油に変換される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記外因性キャッピング剤が、水素、硫化水素、天然ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ジエン、これらの異性体、またはこれらのいずれか2つ以上の混合物である、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記炭化水素フィードストックが、約400psig~約3000psigの圧力で金属ナトリウムと組み合わされる、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記炭化水素フィードストックと金属ナトリウムとの反応が、1分~120分の時間起こる、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記変換フィードストックから前記ナトリウム塩を分離する工程をさらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記分離する工程が、
a.凝集ナトリウム塩を含む硫黄処理混合物を提供するために、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を元素状硫黄と共に約150℃~500℃の温度に加熱することと、
b.脱硫した液体炭化水素および分離されたナトリウム塩を提供するために、前記硫黄処理混合物から前記凝集ナトリウム塩を分離することと
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
金属ナトリウムおよび元素状硫黄を提供するために、前記分離されたナトリウム塩を電解する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ナトリウム塩が、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、またはポリ硫化ナトリウムのうちの1つ以上を含む、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記電解する工程が、アノライト区画と、カソライト区画と、前記アノライト区画を前記カソライト区画から分離するNaSICON膜とを備える電気化学セルにおいて行われ、前記カソライト区画内のカソライト中に、金属ナトリウムを含むカソードが配置され、前記アノライト区画内のアノライト中に、前記ナトリウム塩を含むアノードが配置され、ならびに電源が前記アノードおよび前記カソードに電気的に接続される、請求項40または請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月19日に出願された米国仮出願番号63/027052の優先権を主張し、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本技術は、炭化水素フィードストック中の硫黄およびアスファルテン含有量および不純物を減少させ、下流の油変換プロセスの性能を向上させる方法に関するものである。触媒変換性能と熱変換性能の両方が向上する可能性がある。
【背景技術】
【0003】
技術背景
多くの石油フィードストックを含む炭化水素油には、有機硫黄化合物の形状で除去困難な硫黄や、金属、および炭化水素の利用を阻害する他のヘテロ原子含有化合物がしばしば含まれる。炭化水素油に存在する望ましくない不純物は、一般に510℃~565℃(950°F~1050°F)またはそれより高い沸点で定義される真空残留蒸留画分に見られる樹脂やアスファルテンに濃縮され得る。従来の精製構成では、高価で低沸点の蒸留画分(ガソリン、ディーゼル、ジェット、およびガス油)を低価で高沸点の底画分(大気圧および真空残留)から分離することによって、望ましくない不純物をさらに濃縮する。低沸点蒸留画分は、水素化処理、アルキル化処理、接触改質処理、接触分解処理など、確立されたプロセスを使って容易に処理し、最終生成物に変換することが可能である。高沸点残渣流は、不釣り合いに高い金属含有量が触媒を汚染し、アスファルテンのポリ芳香族構造が不純物との接触を妨げるため、容易に処理することができない。
【0004】
炭化水素中に存在する硫黄種は、アスファルテン硫黄(すなわち硫黄含有アスファルテン種)と非アスファルテン硫黄(すなわち硫黄含有非アスファルテン種)として特徴づけることができる。とりわけ、非アスファルテン硫黄は一般に、チオール、硫化物、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン(DBT)誘導体などを含み、主に真空残渣画分に含まれるが、任意の蒸留画分に含まれる飽和物、芳香族および樹脂成分にも含まれることがある。これらの硫黄種、特にガソリン、ナフサ、灯油、ディーゼル、およびガス油画分内に位置する硫黄種は、一般に、従来の触媒処理または水素化処理、水素化脱硫、または水素化分解などの変換プロセスを用いて除去することができる。アスファルテン硫黄は、最も重い残渣蒸留画分内のアスファルテンに位置し、飽和種と硫黄により結合した硫黄含有多核芳香族化合物の凝縮層によって主に特徴づけられる。DBTおよびDBT誘導体および硫黄ブリッジは、アスファルテン硫黄種の大部分を占めても良い。さらに、ニッケル、バナジウム、および鉄を含む金属は、アスファルテン画分に位置するポルフィリン金属錯体内に濃縮されていることが多い。硫黄は、厳しい動作条件にアスファルテン硫黄をさらさずに、容易に除去することはできない。
【0005】
残渣熱または触媒変換ユニットは、通常、高温(>350℃/662°F)、高い水素分圧(500~3000psig)、金属やコークス析出によって不活性化される特殊触媒を有する厳しい動作条件下で操作する。残渣流を最も厳しい動作条件にさらした後でさえ、硫黄や金属の一画分は除去されず、油中に残留する。その結果、低価値の残渣底流は、1)アスファルトに変換されるか、2)熱変換ユニット(コーカーなど)で処理されて価値の高い中間体をできるだけ多く抽出するか、3)高硫黄バンカー燃料に混合されるかのいずれかである。
【発明の概要】
【0006】
技術の概要
驚くべきことに、硫黄含有アスファルテンの硫黄および金属を優先的に除去するプロセス、および/または炭化水素フィードストック中のアスファルテン画分の一部を非アスファルテン液体生成物に変換するプロセスが発見されてきた。このプロセスは、特にアスファルテン画分内の減少した硫黄(およびその他のヘテロ原子)含有量と減少した金属含有量を有する変換フィードストックを提供する。本技術を使って、炭化水素フィードストックのアスファルテン画分に濃縮された不純物はそのようなフィードを金属ナトリウムと接触させることで最も良く除去でき、一方でそれ以外の場所に濃縮された不純物は従来の精製プロセスで最も良く除去できる可能性がある。さらに、アスファルテン画分内に含まれる高濃度の不純物を減少させることで、下流のプロセスユニットの動作を最適化し、精油所の操業性および収益性を改善することができる。
【0007】
したがって、第1の態様において、本技術は、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程であって、前記炭化水素フィードストックは少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含み、前記変換フィードストックは、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素含有量、および/または前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む、前記接触させる工程と、およびガス状生成物、精製生成物、および残留生成物を生成するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程であって、前記残留生成物に対する精製生成物の割合が、前記炭化水素フィードストックを同じ熱変換プロセスに供することによって生成される割合よりも大きくなる、前記熱変換プロセスに供する工程と、を含む、熱変換プロセスからの液体炭化水素の収率を向上させる方法を提供する。熱変換プロセスが、例えばコークス化工程である実施形態において、本方法は、真空ガス油の収率の向上、コークス損失の低減、およびすべての後続流の硫黄含有量の減少を提供する。硫黄含有量が少ないと、例えばクラウスプラントで扱うHSが少なくなり、ガス油の水素化処理装置の負荷が減り、コークスが甘くなる。さらに、方法で使用する金属ナトリウムの量を変化させることで、下流の収率と経済性を最適化することも可能である。
【0008】
第2の態様において、本技術は、従来可能とされたよりも汚れたフィードからアノードグレードコークスを調製するための方法を提供するものである。この方法は、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃で接触させる工程であって、前記炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも15ppmのバナジウム含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含み、前記変換フィードストックは、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、および/または前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む、前記接触させる工程と、および0.5wt%未満の硫黄と150ppm未満のバナジウムを有するプレミアムアノードグレードのコークスを生成するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程と、を含む。
【0009】
第3の態様では、本技術は、従来可能とされたよりも汚れたフィードからニードルグレードのコークスを調製する方法を提供する。この方法は、ナトリウム塩と変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムと有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程と、前記炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量と、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量と、少なくとも10ppmのニッケル含有量と、少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量とを有する炭化水素を含み、前記変換フィードストックは、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、および/または前記炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含み、および0.5wt%未満の硫黄、0.7wt%未満の窒素、10ppm未満のニッケル、2.5×10/℃より大きい熱膨張係数、および320×10オーム-インチの電気抵抗率を有する高純度ニードルコークス生成物を生成するために、前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程と、を含む。
【0010】
第4の態様において、本技術は、触媒変換プロセスにおける炭化水素フィードストックの変換を向上させるための方法を提供する。この方法は、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で組み合わせる工程であって、前記炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、および少なくとも100ppmの総金属含有量を有する炭化水素を含み、前記変換フィードストックは、0.5wt%未満の硫黄含有量、50ppm未満のバナジウム含有量、50ppm未満のニッケル含有量、前記炭化水素フィードストック中のものよりも低いアスファルテンの濃度を有し、および/または前記炭化水素フィードストック中のものよりも残留炭化水素(>538℃)に対する低沸点炭化水素(<538℃)の割合が大きい炭化水素を含む、前記組み合わせる工程と、二重変換生成物を提供するために、任意に前記変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程と、および混合またはさらなる変換プロセスを行わずに燃料グレード生成物を生成するために、前記変換フィードストックまたは前記二重変換フィードストックを触媒変換プロセス(例えば、触媒水素化処理)に供する工程と、を含む。この方法は、下流の触媒プロセスにおいて、a)触媒寿命の向上させること、b)ガソリン収率の向上させること、c)コーカーの完全なバイパス化し得ることによって、残留流を含む炭化水素フィードの変換と性能を向上させる。
【0011】
第5の態様において、本技術は、規格外の炭化水素フィードストックから低硫黄燃料グレード生成物を、ほとんどあるいは全く混合せずに生成するための方法を提供する。この方法は、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で組み合わせる工程と、前記炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量を有する炭化水素を含み、粘度、密度、マイクロ残留炭素、金属含有量、および清浄度/適合性からなる群から選択される1つ以上の燃料グレード規格を満たさず、前記変換生成物は0.5wt未満の硫黄含有量を有する炭化水素を含み、および粘度、密度、マイクロ残留炭素、金属含有量、および適合性からなる群から選択される1つ以上の燃料グレード規格を満たし、および燃料グレード規格は、50℃で380cSt未満の粘度、991kg/m未満の密度、18wt%未満のマイクロ残留炭素含有量、350mg/kg未満のバナジウム含有量、およびASTM D4740による清浄度スポットテストの結果が1または2である、前記組み合わせる工程を含む。例えば、低硫黄バンカー燃料は、開示された方法を介して調製することができる。いくつかの実施形態において、生成物は、公称量のブレンドストックを混合することで規格に近づけることができる燃料グレードに近い生成物であり、例えば、0.5wt%~10wt%を混合することが挙げられる。
【0012】
本開示の概要は前述のとおりであり、必然的に簡略化、一般化、および詳細の省略が含まれる。したがって、当業者は、本概要が例示に過ぎず、いかなる意味でも限定的であることを意図しないことを理解するだろう。特許請求の範囲によって定義される、本明細書に記載される方法の他の態様、特徴、および利点は、本明細書に記載され、添付の図面と併せて解釈される詳細な説明において明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本技術の上記および他の特徴および利点が得られる態様が容易に理解されるように、添付の図面に示されるその特定の実施形態を参照することによって、上記で簡単に記載された技術のより詳細な説明がなされるだろう。これらの図面は、技術の典型的な実施形態のみを描いており、したがって、その範囲を限定するものとはみなされないことを理解した上で、本技術は、添付図面の使用を通じて、さらに具体的かつ詳細に記載および説明されるだろう。
図1】任意の分離工程および電解工程を含む、本技術の方法の第1、第2、または第3の態様の例示的な実施形態のフロー図である。
図2】任意の分離工程および電解工程を含む、本技術の方法の第4の態様の例示的な実施形態のフロー図である。
図3】任意の分離工程および電解工程を含む、本技術の方法の第4の態様の別の例示的な実施形態のフロー図である。
図4】任意の前処理工程と、任意の分離および電解工程と、および精油処理工程とを含む、本技術の方法の例示的な実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
技術の詳細な説明
以下の用語は、以下に定義されるとおり、全体を通じて使用される。
【0015】
本明細書で使用される場合、要素を説明する文脈で(特に以下の請求項の文脈で)「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」等の単数冠詞および同様の参照語は、本明細書に別途示されるか文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方をカバーするように解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で特に指示されない限り、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための省略法として役立つことを単に意図しているだけであり、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書に特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意のおよびすべての実施例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に実施形態をより良く照らすことを意図しており、特に断らない限り、特許請求の範囲を制限するものではない。本願明細書のいかなる文言も、いずれの非請求項の要素を必須とするものと解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書で使用する「約」は、当業者によって理解され得るものであり、使用される文脈によってある程度異なるだろう。なお、当該用語が使用される文脈から、当業者にとって明確でない用法がある場合には、「約」は当該用語のプラスマイナス10%までを意味するだろう。
【0017】
本明細書において使用される「アスファルテン」はC3-8アルカンのいずれかに不溶な油の成分を指す。アスファルテンは、S、N、およびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含むポリ芳香族分子を含む。アスファルテンに含まれる硫黄種を明細書において総称して「アスファルテン硫黄」と呼ぶ。炭化水素油の非アスファルテン画分およびそれらの画分に含まれるその他の全硫黄を明細書において総称して「非アスファルテン硫黄」と呼ぶ。後者としては、例えば、チオール、硫酸塩、ベンゾチオフェン、およびジベンゾチオフェンを含むチオフェン、硫化水素、および他の硫化物を含む。
【0018】
本明細書において、「炭化水素フィードストック」とは、炭化水素を主成分とする精製、変換、または他の工業プロセスの投入物となり得る任意の物質を指す。炭化水素フィードストックは室温で固体または液体であっても良く、ヘテロ原子含有(例えば、S、N、O、P、金属)有機および無機物質などの非炭化水素成分を含んでも良い。原油、精油流、化学プラント流(例えば、蒸気分解タール)およびリサイクルプラント流(例えば、タイヤまたは都市固形廃棄物からの潤滑油およびパイロリシス油)は、炭化水素フィードストックの非限定的な実施例である。
【0019】
本技術は、下流の油変換プロセスの収率を向上させる方法を提供するものである。したがって、第1の態様において、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程を含む熱変換プロセスからの液体炭化水素の収率を向上させるための方法を提供する。炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストックは、炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素含有量、および/または炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む。ASTMD4530に基づき測定されるマイクロ残留炭素(MCR)は、炭化水素が高温にさらされた後に炭素質の堆積物を形成する傾向を示す。MCRは、ASTMD189に従って測定されるコンラドソン残留炭素(CCR)と数値的に同等であり、互換的に使用しても良い。任意の実施形態において、変換フィードストックは、炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素含有量、および炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストックは、ガス状生成物(例えば、蒸気、HS、C-C飽和ガス、C-Cオレフィンおよびイソブタン)、精製生成物(例えば、ナフサ、ディーゼル、ガス油、ライトサイクルオイルおよびヘビーサイクルオイル)および残留生成物(例えば、コークスまたはビスブレーカータール)を生成するために、熱変換プロセス(例えば、コークス化またはビスブレーキングプロセス)に供されるものであり、残留生成物に対する精製生成物の割合は、炭化水素フィードストックを同じ熱変換プロセスに供することによって生じるものよりも大きい。
【0020】
第2の態様では、プレミアムアノードグレードコークスまたはニードルコークスを生成するための方法が提供される。この方法は、ナトリウム塩と変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程を含む。炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも15ppmのバナジウム含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストックは、炭化水素フィードストック中のものより少ない硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものより少ないマイクロ残留炭素、および/または炭化水素フィードストック中のものより少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む。任意の実施形態において、変換フィードストックは、炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、および炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストックは熱変換プロセスに供され、0.5wt%未満の硫黄含有量、150ppm未満のバナジウムを有するプレミアムアノードグレードコークスが生成される。
【0021】
第3の態様において、ナトリウム塩の混合物と変換フィードストックを生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で接触させる工程を含む、ニードルコークスを生成するための方法が提供される。炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも10ppmのニッケル含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含み、変換フィードストックは、0.5wt%未満の硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、0.25wt%未満のアスファルテン含有量、および/または<0.1wt%の灰含有量を有する炭化水素を含む。任意の実施形態において、変換フィードストックは、0.5wt%未満の硫黄含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも少ないマイクロ残留炭素、0.25wt%未満のアスファルテン含有量、および<0.1wt%の灰含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストックを熱変換プロセスで処理し、0.5wt%未満の硫黄、0.7wt%未満の窒素、10ppm未満のニッケル、2.5×10/℃より大きい熱膨張係数および320×10オーム-インチの電気抵抗率を有する高純度ニードルコークス生成物が生成する。
【0022】
第4の態様において、本技術は、触媒変換または処理プロセスにおけるフィードストックの変換を向上させるための方法を提供する。この方法は、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で組み合わせる工程と、二重変換生成物を提供するために、任意にさらに変換フィードストックを熱変換プロセスに供する工程と、および混合またはさらなる変換処理をせずに燃料グレード生成物を生成するために、変換フィードストックまたは二重変換フィードストックを触媒変換プロセス(例えば、触媒水素化処理、流動接触分解など)に供する工程と、を含むことができる。この方法において、炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量と、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量と、および少なくとも100ppmの総全属含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストックは、0.5wt%未満の硫黄含有量、50ppm未満のバナジウム含有量、50ppm未満のニッケル含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも低いアスファルテンの濃度、および/または炭化水素フィードストック中のものよりも残留炭化水素(>538℃)に対して割合が大きい低沸点炭化水素(<538℃)を有する炭化水素を含む。任意の実施形態において、変換フィードストックは、0.5wt%未満の硫黄含有量、50ppm未満のバナジウム含有量、50ppm未満のニッケル含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも低いアスファルテンの濃度、および炭化水素フィードストック中のものよりも残留炭化水素(>538℃)に対して割合が大きい低沸点炭化水素(<538℃)を有する炭化水素を含む。
【0023】
第4の態様において、変換フィードストックは、少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する場合、方法は、二重変換フィードストックおよび固体コークス生成物を提供するために、変換フィードストックを熱変換プロセス(例えば、コーカー)に供する工程をさらに含んでも良い。そのような実施形態において、二重変換生成物は、炭化水素フィードストック中のものよりも低い不純物濃度を有する液体炭化水素、および変換フィードストックのものよりも大きい高沸点残渣炭化水素(>538℃)に対する低沸点炭化水素(<538℃)の割合を含む。第4の態様の任意の実施形態において、燃料グレード生成物は、ガソリン、ディーゼル、灯油、ジェット燃料、石油ナフサ、またはLPGであっても良い。
【0024】
第5の態様において、本技術は、低硫黄燃料グレード生成物を生成するための方法を提供する。この方法は、ナトリウム塩と変換フィードストックの混合物を生成するために、炭化水素フィードストックを有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と250~500℃の温度で組み合わせる工程を含む。炭化水素フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量を有する炭化水素を含み、粘度、密度、マイクロ残留炭素、金属含有量および清浄度/適合性からなる群から選択される1つ以上の燃料グレード規格を満たすことができない。変換生成物は、0.5wt%未満の硫黄含有量を有する炭化水素を含み、粘度、密度、マイクロ残留炭素、金属含有量、および適合性かからなる群から選択される1つ以上の燃料グレード規格を満たし、燃料グレード規格は、50℃で380cSt未満の粘度、991kg/m未満の密度、18wt%未満のマイクロ残留炭素含有量、350mg/kg未満のバナジウム含有量であり、およびASTM D4740によって測定された清浄度スポットテストの結果が1または2である。いくつかの実施形態では、変換生成物は、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つすべての燃料グレード規格を満たす。いくつかの実施形態において、生成物は、公称量の混合ストックを混合することによって規格に近づけることができる燃料グレードに近い生成物であり、例えば、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、または10wt%、もしくは0.5~10wt%、1~10wt%、または2~7wt%などの前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲に混合される。
【0025】
本明細書に記載の方法の任意の実施形態において、方法は、精製フィードストックおよび前処理された炭化水素フィードストックを提供するために、接触させる工程の前に炭化水素フィードストックを前処理する工程をさらに含んでも良い。精製フィードストックは、前処理前の炭化水素フィードストックよりも不純物濃度が低く、前処理された炭化水素フィードストックは、精製フィードストックよりも高い不純物濃度を含み、および前処理された炭化水素フィードストックは、変換フィードストックを生成するために、接触させる工程に供されたフィードストックである。前処理工程を含む本方法の任意の実施形態において、前処理工程は、外部から印加された場による相分離、熱の添加による分離、水素化変換、熱変換、触媒変換または処理、溶媒抽出、溶剤脱瀝、またはそれらの任意の2つ以上の組合せを含んでも良い。任意の実施形態において、前処理工程は、硫黄、窒素、酸素、金属、およびアスファルテンのうちの1つ以上を除去するために、炭化水素フィードストックを外因性水素および/または触媒と接触させる工程を含んでも良い。精製フィードストックおよび前処理された炭化水素フィードストックを生成するための前処理工程の実施例は、常圧蒸留、減圧蒸留、蒸気分解、接触分解、熱分解、流動接触分解(FCC)、溶剤脱瀝、水素化脱硫、ビスブレーキング、パイロリシス、触媒改質、アルキル化、およびこれらのいずれか2つ以上の組合せを含む。常圧蒸留や減圧蒸留などの特定の前述のプロセスのうち、精製フィードストックと前処理された炭化水素フィードストックが直接得られるものもあれば、その後の分離工程を必要とするものもあることは理解されるだろう。例えば、蒸気分解、接触分解、熱分解、FCC、およびパイロリシスは、その後、蒸留や他の分離プロセスによって精製フィードストックと前処理された炭化水素フィードストックに分離することができる生成物の混合物をもたらす。
【0026】
熱変換プロセスを含む本明細書に記載の方法の任意の態様または実施形態において、熱変換プロセスは、ビスブレーキング、遅延コーキング、流動コーキング、Flexicoking(商標)、パイロリシス、それらの変形、またはそれらのいずれかの2つ以上の組み合わせであっても良く、またはそれらを含んでも良い。任意の実施形態において、熱変換プロセスは、約400℃~約570℃の温度で操作されても良い。任意の実施形態において、熱変換プロセスは、約10~約200psigの圧力で操作されても良い。任意の実施形態において、熱変換プロセスは、例えばコーカーの中のように、約450℃~約500℃および約20~100psigで操作されても良い。
【0027】
触媒変換プロセスを含む本明細書に記載の方法の任意の態様または実施形態において、触媒変換プロセスは、流動接触分解(FCC)、残留FCC、水素化処理、残留水素化処理、水素化分解、触媒改質、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、または残留アップグレード/水素化変換(例えば、ARDS(登録商標)、LC-Fining(登録商標)、H-Oil(登録商標))、それらの変種またはそれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む。触媒は、コバルト、モリブデン、ニッケル、タングステン、白金、パラジウム、アルミナ、シリカ、ゼオライト、それらの異性体、酸化物、硫化物、またはそれらのいずれか2つ以上の組合せを含んでも良い。任意の実施形態において、触媒変換プロセスは、約250℃~約575℃の温度で操作されても良い。任意の実施形態において、触媒変換プロセスは、約10~約3000psigの圧力で操作されても良い。任意の実施形態において、触媒変換プロセスは、約400℃~約575℃および約1000~約3000psigで操作されても良い。任意の実施形態において、触媒変換プロセスは、約450℃~約575℃および約15~約100psigで操作されても良い。
【0028】
本明細書に記載される方法の任意の態様または実施形態において、蒸留(常圧蒸留または減圧蒸留の両方)などの他の精油プロセスが方法の一部として採用され得ることが理解されるだろう。代替的に、特定の態様または実施形態において、熱または触媒変換プロセスの代わりに、他の精油プロセスが使用されても良い(例えば、図4参照)。
【0029】
本方法の炭化水素フィードストックは、バージン原油(例えば、石油、重油、ビチューメン、シェールオイル、およびオイルシェール)であるか、またそれからに由来するものであっても良い。炭化水素フィードストックは、残留フィードストック、例えば、熱分解プロセスの生成物であっても良い。残留フィードストックは、本技術の様々な前処理プロセスによって製造されても良く、「前処理された炭化水素フィードストック」と呼ぶだろうが、このフィードストックはまた、金属ナトリウムおよび外因性キャッピング剤と接触させることも可能である。したがって、前処理されたフィードストックは、炭化水素フィードストックの蒸留生成物、(大気圧または真空残渣物、ガソリン、ディーゼル、灯油、およびガス油)、および精油中間流を含み得る。任意の実施形態において、前処理された炭化水素フィードストックは、水素化処理生成物、水素化分解残留物、水素化変換残留物(例えば、LC-Finer(登録商標)(Chevron Global Lummus)残留物、またはH-Oil(登録商標)(Axens)残留物)、FCCスラリー、残留FCCスラリー、大気圧または真空残渣物、溶剤脱瀝タール、脱瀝油、蒸気分解タール、ビスブレーカータール、高硫黄燃料油、低硫黄燃料油、アスファルテン、アスファルト、およびコークスを含み得る。前述の炭化水素フィードストック(前処理された炭化水素フィードストックを含む)は、任意の地層(オイルサンド、従来型貯留層またはタイト貯留層、シェールオイル、オイルシェール)または地理的位置(北米、南米、中東など)に由来していても良い。本方法の特定の態様および実施形態、特に第2および第3の態様において、炭化水素フィードストックは、有意な量の芳香族化合物、例えば、少なくとも10wt%、少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも30wt%を含む。
【0030】
本技術の方法において、炭化水素フィードストックは、炭化水素(例えば、炭化水素油)および不純物を含む。同様に、残留フィードストックは炭化水素や不純物を含む。いくつかの実施形態において、残留フィードストックは、炭化水素フィードストックよりも高い濃度の不純物を有する。本明細書で使用される「不純物」は、硫黄、酸素、窒素、リン、および金属などのヘテロ原子(すなわち、炭素および水素以外の原子)を意味する。不純物には、ナフテン酸、水、アンモニア、硫化水素、チオール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ポルフィリン、Fe、V、Niなどの物質中に見つけられても良く、またそのような物質を含んでも良い。本方法の任意の実施形態において、炭化水素フィードストックまたは残留フィードストックは、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量および少なくとも1wt%のアスファルテン含有量を有する炭化水素を含む。硫黄含有量は、アスファルテン硫黄と非アスファルテン硫黄を含むが、フィードストック中の硫黄原子のwt%として測定される。任意の実施形態において、硫黄含有量は、例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15wt%、あるいは前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲を含む、0.5wt%~15wt%の範囲であっても良い。したがって、硫黄含有量の範囲は、任意の実施形態において、1wt%~15wt%、0.5wt%~8wt%、または1.5wt%~10wt%であっても良い。
【0031】
本技術の方法において、アスファルテン含有量は、フィードストックのn-ペンタン不溶画分として測定されたフィードストック中のアスファルテンの総量を指す。しかしながら、本方法のいくつかの態様または実施形態において、アスファルテン含有量は、十分な量の1つ以上のC3-8アルカンと混合した後、フィードストックから沈殿またはその他の方法で分離した不溶性画分として測定される場合がある。C3-8アルカンは、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、それらの異性体、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物であっても良い。任意の実施形態において、フィードのアスファルテン含有量は、ヘプタンに不溶な成分として定義し得る。アスファルテンの物性や構造、特定のアスファルテンを生成するために必要なプロセス条件(温度、圧力、溶媒/油比)の詳細については、J.G.Speight,“Petroleum Asphaltenes Part 1:Asphaltenes,Resins and the Structure of Petroleum”,Oil & Gas Science and Technology-Rev IFP,Vol 59(2004)pp.467-477(参照によりその全体およびすべての目的のために本明細書に組み込まれる)に記載される。ヘプタン(C)不溶性アスファルテン含有量を測定する標準試験法は、ASTM規格D6560-l7に記載され、ペンタンを含むあらゆるアルカンに拡張することができる。
【0032】
本方法の任意の実施形態において、炭化水素フィードストックまたは残留フィードストックのアスファルテン含有量は、少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、または少なくとも5wt%であっても良い。例えば、アスファルテン含有量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、95、または100wt%、もしくは前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む、1wt%~100wt%の範囲であっても良い。したがって、任意の実施形態において、アスファルテン含有量は、2wt%~100wt%、1wt%~30wt%、2wt%~30wt%、5wt%~100wt%、10wt%~100wt%、または20wt%~100wt%の範囲であっても良い。
【0033】
本方法の任意の実施形態において、炭化水素フィードストック中のアスファルテン含有量の上昇がナトリウム処理プロセスに対して高すぎる粘度をもたらす場合、炭化水素フィードストックを希釈剤を使って希釈することが必要である場合がある。アスファルテンは芳香族であるため、希釈剤は通常、芳香族(すなわち、芳香環を有する化合物)を含むだろう。希釈剤は、単一の化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ナフタレン、1-メチルナフタレン)、それらのいずれか2つ以上の混合物、または芳香族である精油中間体(例えば、ライトサイクルオイル、改質物)であっても良い。必要な希釈剤の量は、フィードストックのアスファルテン含有量やプロセスに必要な粘度によって変化するだろう。フィードストック中の高いアスファルテン含有量は、アスファルテン含有量が低いフィードストックに比べて、より多くの希釈剤を必要とする場合がある。本方法でアスファルテンの処理を可能にするために、適切な量の希釈剤を選択することは当業者の技術範囲内である。
【0034】
また、本方法は、炭化水素および前処理された炭化水素フィードストックと比較して、変換フィードストック中のナフテン酸含有量および/または金属含有量を減少/除去することができる。任意の実施形態において、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックは、(凝集的または個別的に)約1~約10,000ppmの金属を含む。金属は、炭化水素構造に結合した天然由来の金属であっても、上流プロセスで前処理された炭化水素フィードストックに巻き込まれた残留金属片(例えば、腐食生成物または触媒片)であっても良い。任意の実施形態において、金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、および82以下の原子量を有するメタロイドからなる群から選択される。任意の実施形態において、金属は、バナジウム、ニッケル、鉄、ヒ素、鉛、カドミウム、銅、亜鉛、クロム、モリブデン、ケイ素、カルシウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、チタン、水銀、およびそれらのいずれか2つ以上の組み合わせの群から選択される。任意の実施形態において、金属は、バナジウム、ニッケル、鉄、およびそれらのいずれか2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。任意の実施形態において、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックの金属濃度は、(凝集的にまたは個別的に)約2~約10,000ppm、約10~約10,000ppm、約100~約10,000ppm、約100~約5,000ppm、約10~約1,000ppm、約100~約1,000ppmなどであっても良い。
【0035】
本技術の方法は、不純物の除去/低減により用いられた炭化水素および前処理された炭化水素フィードストックをアップグレードするだけでなく、粘度や密度などの物性も向上させることができる。炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックは、50℃で1~10,000,000cStの粘度を有することができる。例えば、粘度は、1、10、25、50、100、200、300、400、500、1,000、2,000、5,000、10,000、25,000、50,000、100,000、500,000、1,000,000,2,000,000,3,000,000,4,000,000,5,000,000,6,000,000,7,000,000,8,000,000,または9,000,000cSt、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲を含んでも良い。したがって、任意の実施形態において、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックの粘度は、例えば、100~10,000,000cSt、380~9,000,000cSt、500~9,000,000cSt、または500~5,000,000cStなどであって良い。
【0036】
炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックは、15.6℃または60°Fで800~1200kg/mの密度であっても良い。例えば、密度は、800、825、850、875、900、925、975、1000、1050、1100、1150、1200kg/m、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲であっても良い。したがって、任意の実施形態において、密度は、例えば、850~1200kg/m、900~1200kg/m、950~1200kg/m、または925~1100kg/mであっても良い。
【0037】
本技術の方法において、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックを、有効量の金属ナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と接触させる。金属ナトリウムの任意の適切な供給源を使用することができ、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,088,270号に記載されているように、電気化学的に生成された金属ナトリウムを含むが、これらに限定されない。「有効量」とは、所望の結果をもたらすための物質または薬剤の量を意味する。例えば、本発明の方法における有効量の金属ナトリウムは、炭化水素フィードストック中のアスファルテンおよび/または硫黄の量を減少させるのに十分な、化学量論的、超化学量論的、または準化学量論的量の金属ナトリウムを含み得る。
【0038】
本方法で使用される外因性キャッピング剤は、典型的には、接触させる工程中に硫黄および他のヘテロ原子が金属ナトリウムによって抽出された時に形成されるラジカルをキャッピングするために使用される。いくらかのフィードストックには、少量の天然由来のキャッピング剤(「内在性キャッピング剤」)を内在し得るものもあるが、そのような量は、本方法で生成されるフリーラジカルを実質的にすべてキャッピングするには不十分である。有効量の外因性(すなわち、添加)キャッピング剤が本方法で使用され、例えば、存在する硫黄、窒素、または酸素1モルあたり1~1.5モルのキャッピング剤(例えば、水素)が使用されても良い。本明細書の開示に基づいて、使用される特定の炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックについて本発明の方法を実施するために必要な外因性キャッピング剤の有効量を決定することは、当業者の技術範囲内である。外因性キャッピング剤としては、水素、硫化水素、天然ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ジエン、これらの異性体、またはこれらのいずれか2つ以上の混合物を含み得る。任意の実施形態において、外因性キャッピング剤は、水素および/またはC1-6非環状アルカンおよび/またはC2-6非環状アルケン、またはそれらのいずれか2つ以上の混合物であっても良い。
【0039】
接触させる工程で使用される金属状態のナトリウムの有効量は、炭化水素および前処理された炭化水素フィードストックのヘテロ原子、金属およびアスファルテン不純物のレベル、不純物の所望の変換または除去の程度、使用温度および他の条件によって変化するだろう。任意の実施形態において、化学量論的または化学量論的よりも多い量の金属ナトリウムを使用して、例えば、硫黄含有量に対して1~3モル当量の金属ナトリウムなどの、すべてのまたはほぼすべての硫黄含有量を除去しても良い。任意の実施形態において、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックは、その中の硫黄含有量に対して1モル当量以上の金属ナトリウム、例えば、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.4、1.5、2、2.5または3当量の金属ナトリウムに接触させる。
【0040】
驚くべきことに、(炭化水素/前処理された炭化水素フィードストック中の)金属ナトリウムと硫黄含有量の準化学量論的な比率を用いて、アスファルテン硫黄の量を非アスファルテン硫黄に対して優先的に低下させ得る。したがって、任意の実施形態において、前処理された炭化水素フィードストック(または代替的に炭化水素フィードストック)は、その中の硫黄含有量に対して化学量論的量未満の金属ナトリウムと接触させ得る。本技術において、硫黄含有量に対する金属ナトリウムの化学量論的量は、前処理された炭化水素(または炭化水素)フィードストック中のすべての硫黄含有量を硫化ナトリウムに変換するために必要な金属ナトリウムの理論量であることが理解されるだろう。例えば、約1モルの硫黄原子を含むフィードストック中の硫黄のすべてを硫化ナトリウムに変換するために必要な金属ナトリウムの化学量論的量は、2モルの金属ナトリウムであることが当業者には理解されるだろう。このような実施例における硫黄含有量に対する金属ナトリウムの化学量論的量未満の量は、金属ナトリウム2モル未満、例えば1.6モル、または0.8モル当量の金属ナトリウムであるだろう。任意の実施形態において、硫黄含有量に対する化学量論的量未満の金属ナトリウムは、0.1当量~1当量未満であっても良い。そのような準化学量論的量の実施例は、硫黄含有量に対する金属ナトリウムの0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1当量未満、あるいは前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲を含む。したがって、任意の実施形態において、準化学量論的量は、0.1~0.9当量、0.2~0.8当量、0.4~0.8当量などの範囲であっても良い。
【0041】
接触させる工程は、約250℃~約500℃の温度で行われるため、金属ナトリウムは溶融状態(すなわち液体)となるだろう。例えば、接触させる工程は、約250℃、約275℃、約300℃、約325℃、約350℃、約375℃、約400℃、約425℃、約450℃、約500℃、または前述の温度のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲で実施されても良い。したがって、任意の実施形態において、接触は、約275℃~約425℃、または約300℃~約400℃(例えば、約350℃)で行われても良い。
【0042】
任意の実施形態において、接触させる工程は、約400~約3000psiの圧力、例えば、約400psi、約500psi、約600psi、約750psi、約1000psi、約1250psi、約1500psi、約2000psi、約2500psi、約3000psi、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲で行われても良い。
【0043】
金属ナトリウムと炭化水素/前処理された炭化水素フィードストック中のヘテロ原子汚染物質との反応は比較的速く、数秒とは言わないまでも数分以内に完了する。フィードストックと金属ナトリウムの組み合わせを混合すると、さらに反応が速くなり、工業的規模でこの反応によく使用される。しかしながら、特定の実施形態では、変換の程度を改善するために滞留時間の延長が必要となったり、特定のヘテロ原子不純物の除去を目標に動作条件を調整したりしても良い。したがって、任意の実施形態において、接触させる工程は、約1分~約120分、例えば、約1、約5、約7、約9、約10、約15分、約30、約45、約60、約75、約90、約105、または約120分間で実施されても良く、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲の時間実施される。したがって、任意の実施形態において、時間は、約1分~約60分、約5分~約60分、約1分~約15分、約60分~約120分などの範囲であっても良い。
【0044】
本方法は、炭化水素フィードストック(または前処理された炭化水素フィードストック)中のものより少ない硫黄含有量を有する炭化水素油を含む変換フィードストックを生成する。任意の実施形態において、変換フィードストックの硫黄含有量は、0.5wt%未満、例えば、0.4wt%未満または約0.4wt%、0.3wt%未満または約0.3wt%、0.2wt%未満または約0.2wt%、0.1wt%未満または約0.1wt%、さらには約0.05wt%未満または約0.05wt%、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲であっても良い。変換されたフィードストックと比較した炭化水素または前処理された炭化水素フィードストックからの硫黄含有量の除去効率(別名、変換効率)は、重量比で少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲とし得る。金属ナトリウムの有効量が化学量論的量より大きい場合、硫黄含有量の変換効率は非常に高く、例えば、少なくとも90%であり得る。
【0045】
本方法(第1、第2、第3、および第4の態様の方法を含むがこれらに限定されない)において準化学量論的量の金属ナトリウムを使用する場合、低い変換効率が観察されるが、アスファルテン硫黄からの硫黄含有量は、非アスファルテン硫黄からのものと比較して優先的に減少させる。例えば、(総)硫黄含有量の変換効率は、これには、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%を含む約10%~約80%の範囲であっても良く、または前述の値のうちいずれか2つの間およびそれらを含む範囲であっても良い。同時に、アスファルテン硫黄の対応する硫黄含有量の変換効率は、総変換効率よりも各ポイントで高い。例えば、任意のフィードに対するアスファルテン硫黄の硫黄含有量の変換効率は、対応する全硫黄分変換効率より1%~40%高い範囲(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、22%、24%、25%、27%、30%、32%、35%、37%、または40%高い、もしくは前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲)であっても良い。
【0046】
本技術の変換フィードストックは、炭化水素または前処理された炭化水素のフィードストックと比較して、金属濃度が減少している。変換フィードストックの金属含有量は、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックと比較して少なくとも20%減少しても良く、例えば、20%~100%減少させても良い。炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックと比較して、変換フィードストック中の金属の減少率(総じてまたは個別に)の実施例は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、100%、または前述の値のいずれか2つの間およびそれらを含む範囲を含む。したがって、任意の実施形態において、減少率は、20%~99%、20%~95%、70%~99%、または100%までであっても良い。金属は、本明細書に開示されているもののいずれかであっても良い。いくつかの実施形態では、金属は、鉄、バナジウム、ニッケル、またはそれらのいずれか2つ以上の組み合わせから選択される。例えば、変換フィードストックの鉄およびバナジウム含有量は、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックと比較して、少なくとも20%低減される。同様に、任意の実施形態において、変換フィードストックのニッケル含有量は、炭化水フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックと比較して、少なくとも20%減少される。
【0047】
本方法はまた、炭化水素フィードストックや前処理されたフィードストックと比較して、改善された物性を有する変換フィードストックを提供する。しかしながら、本方法の変換フィードストックの物性は、ナトリウムと硫黄の比率に必ずしも比例して変化しないことが分かってきた。例えば、金属脱金属の程度、特に鉄、バナジウム、ニッケルを含む触媒寿命に有害な金属は、一般に所定のナトリウムと硫黄の比率では脱硫の程度より大きくなる。実施例6は、触媒変換プロセスとは異なり、ナトリウム処理の初期金属含有量に対する無感度を示す。低いナトリウム/総硫黄添加比率でのナトリウム脱金属は、望ましくないほど高い金属含有量を有する炭化水素フィードを触媒変換または処理する前に前処理することで非常に有利になる可能性がある。
【0048】
重質残留フィードストックの価値を大きく低下させる追加の物性は、ナトリウムを用いた処理後に改善される。アスファルテン画分の脱硫は、水素化変換で見られる水素飽和や、熱分解プロセスで示される炭素排出を伴わずに行われる。その結果、アスファルテン含有量の少なくとも一部は、本方法によって、可溶性の、安定性の、および脱硫された変換液体生成物に変換され、より価値の高い液体生成物(例えば、アスファルテンに由来する炭化水素油)の収率を高める。したがって、本方法によって生成される変換フィードストックは、炭化水素フィードストック(または前処理されたフィードストック)中のものよりも少ないアスファルテン含有量を有し得る。任意の実施形態において、本方法は、少なくとも一部のアスファルテンをパラフィンなどの炭化水素油に変換する。任意の実施形態において、前処理されたフィードストック中のアスファルテン含有量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%以上が、変換フィードストック中の液体炭化水素油に変換される。炭化水素または前処理されたフィードストックから除去されたアスファルテン含有量に対する変換効率は、使用されるナトリウムの量によって異なるが、一般に高く、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、最大98%、最大99%、もしくは最大99.9%でさえ、または100%、または前述の値のうちいずれか2つの間およびそれらを含む範囲(例えば、70~100%または75~99.9%など)である。
【0049】
アスファルテンを、付着している官能基の数が少ない、より小さな低分子量成分に変換すると、通常、硫黄を1wt%除去するごとに、少なくとも40%から最大で5桁(10000倍)の粘度の低下と約1~約3単位のAPI重力の増加をもたらす。任意の実施形態において、変換フィードストックの粘度は、50℃で少なくとも50cSt、または少なくとも40%低下しても良い。任意のそのような実施形態において、粘度は、50℃で少なくとも100cSt、少なくとも200cSt、少なくとも300cSt、またはそれ以上低下する。1,000cSt(上記参照)を超える粘度を有する、本明細書に開示される炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックのいずれかのうち、低下が特に大きく、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%(例えば、粘度が少なくとも40~99%低下する)であっても良い。任意の実施形態において、変換フィードストックの密度は、炭化水素フィードストックまたは前処理された炭化水素フィードストックと比較して、変換フィードストックの硫黄含有量が1wt%減少するごとに約5~約25kg/m減少する。例えば、密度の減少は、約5、約10、約15、約20、約25kg/m、または前述の値のうちのいずれか2つの間およびそれらを含む範囲(約5~約20kg/mまたは約10~約25kg/mなど)であっても良い。
【0050】
上述のように、任意の実施形態において、本方法は、金属ナトリウムと接触させる前に、不純物を含む炭化水素フィードストックを前処理する工程を含んでも良い。いくつかの場合において、炭化水素フィードストックを前処理して前処理されたフィードストック中の不純物を濃縮し、そのため処理するフィードストックの量を減少させる場合がある。例えば、バージン原油を蒸留して、精製フィードストックと、バージン原油(炭化水素フィードストック)の両方に含まれるものよりも高い硫黄含有量および高いアスファルテン含有量を有する精製フィードストックおよび大気圧残渣物(前処理されたフィードストック)として、1つ以上の軽質蒸留物カットを生成することが可能である。あるいは、炭化水素フィードストックを前処理して望ましくない不純物の一部を除去し、不純物濃度の低い精製フィードストックと前処理後に残存する不純物を有する前処理されたフィードストックを提供することも可能である。前処理された炭化水素フィードストックは、選択された変換レベルのため、または前処理プロセスが不純物を除去できないため、不純物を含み得る。例えば、真空残渣を水素化処理反応器((LC-Fining(登録商標)ユニットまたはH-Oil(登録商標)ユニットなど)で処理し、硫黄を除去して残渣画分をより価値の高い生成物に変換し得る。しかしながら、触媒の存在下で、350℃および1500~3000psigを超える動作条件で水素化処理後、水素化処理済みの底流に難分解性の硫黄やアスファルテン画分が残ってしまう。前処理プロセスは、分離プロセス、熱または触媒による変換プロセス、または処理プロセスのいずれか、もしくはそれらの2つ以上の組み合わせを含んでも良い。
【0051】
任意の実施形態において、前処理プロセスは、エネルギー(熱)を使用した物理的分離、相添加(溶媒または吸収剤)、圧力変化、または外場もしくは勾配の適用のうちの1つ以上を含む分離プロセスを含み、前処理された炭化水素フィードストック中の不純物を濃縮し得る。分離プロセスには、重力分離、フラッシュ蒸発、蒸留、凝縮、乾燥、液液抽出、ストリッピング、吸収、遠心分離、静電分離、およびそれらの変種を含み得る。分離プロセスは、残渣油超臨界抽出法(ROSE(登録商標))等の溶剤脱瀝プロセスを含む溶媒抽出プロセスをさらに含んでいても良い。例えば、炭化水素フィードストックを脱塩して塩分や水分を除去したり、APIセパレータを用いて油から水分や固形分を分離したり、蒸留塔を用いて原油中の低硫黄からの低沸点生成物と高硫黄からの高沸点生成物とを分離したりしても良い。分離プロセスには、吸着、ろ過、浸透、またはそれらの変種などの固形剤またはバリアが必要な場合もある。開示された各分離処理により、炭化水素フィードストックよりも不純物濃度が低い精製フィードストックと、精製フィードストックよりも不純物濃度が高い前処理された炭化水素フィードストックが得られる。任意の実施形態において、前処理された炭化水素フィードストックは、炭化水素フィードストック中よりも高濃度の不純物を含む。
【0052】
任意の実施形態において、前処理プロセスは、分子構造を変更する、または炭化水素フィードストックの炭素含有量の少なくとも一部の排出をもたらす熱または触媒プロセスを含んでも良い。熱変換プロセスには、炭素をコークスとして排出することで分解蒸留物の収率を高めるコーカー、ビスブレーカー、または他のプロセスが含んでも良い。触媒プロセスには、接触分解(FCCまたは残渣FCC)、水素化分解装置、残渣水素化分解装置および水素化変換(例えば、LC Fining(登録商標)、H-Oil(登録商標))など)があるが、これらに限定されない固定床および流動床プロセスを含んでも良い。変換プロセスは、水素と触媒の両方を必要とする水素化処理プロセスであっても良い。
【0053】
本方法の前処理工程は、全フィードベースで炭化水素の飽和または特定の不純物の除去をもたらす処理プロセスを含んでも良い。したがって、任意の実施形態において、前処理プロセスは、溶媒脱脂、水素化処理、残渣水素化処理(RHT)、水素化脱硫(RDS)、水素化脱金属(HDM)もしくは水素化脱窒素(HDN)、またはそれらの2つ以上の組合せを含み得る。不純物(または複数の不純物)の全体の濃度は低下するものの、一般に処理プロセスでは、炭化水素フィードストックよりも不純物濃度の低い精製フィードストックと、精製フィードストックよりも不純物濃度の高い前処理された炭化水素フィードストックが生成される。それにもかかわらず、前処理された炭化水素フィードストックの不純物濃度は、炭化水素フィードストックよりも低くても良い。さらに、触媒処理プロセスでは、金属やマイクロ残留炭素による触媒の失活が促進されるため、アスファルテン中の高濃度の不純物を有するフィードストックを処理することは一般的にできない。
【0054】
本技術の方法では、変換フィードストックとナトリウム塩を含む混合物が生成される。本方法は、変換フィードストックからナトリウム塩を分離する工程をさらに含んでも良い。ナトリウム塩は粒子で構成されており、その粒子は非常に細かく(例えば<10μm)、および標準的な分離方法(例えば、ろ過や遠心分離)では完全に除去することができない。任意の実施形態において、分離する工程は、a.凝集ナトリウム塩を含む硫黄処理混合物を提供するために、ナトリウム塩と変換フィードストックの混合物を元素状硫黄で約150℃~500℃の温度に加熱する工程と、および脱硫液体炭化水素と分離されたナトリウム塩を提供するために、硫黄処理混合物から凝集ナトリウム塩を分離する工程と、を含んでも良い。この分離は、米国特許第10,435,631号(その内容全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように実施することができる。
【0055】
本方法は、分離されたナトリウム塩から金属ナトリウムを回収する工程をさらに含み得る。任意の実施形態において、本方法は、金属ナトリウムを提供するために、分離されたナトリウム塩を電解する工程をさらに含んでも良い。分離されたナトリウム塩は、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、またはポリ硫化ナトリウムの1つ以上を含んでも良い。電解は、例えば、米国特許第8,088,270号、または米国仮特許出願第62/985,287号に従って、電気化学セルで実施しても良く、これらの各々の内容全体は、あらゆる目的のために本明細書に参照として組み込まれるものとする。電気化学セルは、アノライト区画、カソライト区画、およびアノライト区画をカソライト区画から分離するNaSICON膜を含んでも良い。金属ナトリウムを含むカソードは、カソライト区画内のカソライト中に配置される。ナトリウム塩を含むアノードは、アノライト区画内のアノライト中に配置される。電源がアノードとかソードに電気的に接続される。任意の実施形態において、分離されたナトリウム塩は、金属ナトリウムを提供するために塩を電解する前に、有機溶媒に溶解される。
【0056】
現在の熱脱硫や触媒脱硫プロセスでは、副生成物として硫化水素を生成するため、クラウスプラントなどの硫黄回収ユニットで処理する必要がある。硫黄回収ユニット(SRU)は非常に効率的だが、動作中に硫黄を排出するため、精製設備は地域や国の当局によって規制された厳しい硫黄排出規制の対象となる。多くの場合、精製設備は硫黄排出規制値に近いか、あるいはその値で操業する。ナトリウムを用いた脱硫では、元素状硫黄を生成し、固体または液体として貯蔵し、市場に販売され得る。ナトリウムを使って除去された各有機結合硫黄は、SRUで処理されるものとする同量の硫黄がHSとして置換される。その結果、精製設備では、既存のSRUの処理量と動作コストの削減(およびその結果、硫黄の排出量も削減する)、あるいは炭化水素フィードストックの少なくとも一部をナトリウムで脱硫して設備の硫黄処理能力を向上させることで、運転上の柔軟性を得る。任意の実施形態において、本方法は、硫黄回収ユニット(例えば、クラウスプラント、SCOTユニット等)を使用する硫黄回収工程を含む。任意のそのような実施形態において、硫黄回収ユニットの容量は、炭化水素フィードストックをナトリウムで処理する間に回収された硫黄に比例して増加される。
【0057】
次に、本技術の方法の例示的な実施形態について、図1~4のフロー図を参照しながら説明する。図1の精製および変換システム10に関して、本明細書に記載の硫黄およびアスファルテン不純物(例えば、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量(本明細書において「wt%」は「重量パーセント」を意味する)および少なくとも1wt%のアスファルテン含有量)を含む炭化水素フィードストック101は、有効量の金属ナトリウム103と本明細書に記載の外因性キャッピング剤105と共に反応器120(連続またはバッチ)に装入される。反応は、本明細書に記載されるように、高温および高圧で実施されても良く、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物121を与えるために典型的には数分以内に完了するが、高いアスファルテン含有フィードは、本明細書に開示されるようにより長い時間を必要とする場合がある。変換フィードストックは、本明細書に記載されるように、炭化水素フィードストック中のものよりも少ない硫黄含有量を有する炭化水素油を含み、炭化水素フィードストック中のものよりも少ないアスファルテン含有量を含むことができる。さらに、変換フィードストックは、炭化水素フィードストックに比べて、非アスファルテン硫黄に対するアスファルテン硫黄の割合が低い。任意に、混合物121は反応器120から別の容器130に輸送され、そこでナトリウム塩は変換フィードストックから容易に分離できるほど大きな粒子に凝集される。任意の適切な凝集方法を用いることができるが、本明細書に記載されるような高温での元素状硫黄107を有する凝集を用いることができる。凝集したナトリウム塩、金属および変換フィードストックの得られた混合物131は、次に、金属143およびナトリウム塩145を含まない変換フィードストック141を与えるために、遠心分離機のような任意の適切なプロセスおよび装置140によって分離され得る。任意選択的に、本明細書に記載されるように、金属ナトリウム153および元素状硫黄157を提供するために、ナトリウム塩145は、NaSiCON膜などのナトリウムイオン選択性セラミック膜152を有する電解セル150で電解に供されても良い。なお、金属ナトリウム153および元素状硫黄157は、それぞれ本方法の103および107として再利用することができる。変換フィードストック141は、熱変換プロセス、160、例えば、コークス化プロセス、ビスブレーキングプロセス、または本明細書に記載の他のそのようなプロセスに供され、精製生成物161(例えば、ナフサ、ディーゼル、ガス油、およびライトサイクルオイルおよびヘビーサイクルオイル)、ガス状生成物163(例えば、蒸気、HS、C-C飽和ガス、C-Cオレフィンおよびイソブタン)および残留生成物165(例えば、コークスまたはビスブレーカータール)を提供し得る。残留生成物165に対する精製生成物161の割合は、本明細書に記載のように、ナトリウムを使用してフィードを最初に脱硫せずに炭化水素フィードストック101を同じ熱変換プロセスに供することによって生成されるものよりも大きくなる。
【0058】
図1の精製変換システム10を利用する本方法のいくつかの実施形態では、炭化水素フィードストック101は、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも15ppmのバナジウム含有量、および少なくとも5wt%のマイクロ残留炭素含有量を有する炭化水素を含む。変換フィードストック121/141は、炭化水素フィードストック101中のものよりも少ない硫黄含有量と、フィードストック101中のものよりも少ないマイクロ残留炭素とを有する炭化水素を含み、炭化水素フィードストック101中のものよりも少ないアスファルテン含有量を含んでも良い。変換フィードストック141を適切な熱変換プロセスに供した後、0.5wt%未満の硫黄および150ppm未満のバナジウムを有するプレミアムアノードグレードコークスを生成することができる。
【0059】
図2は、精製および変換システム20を用いた本技術の他の方法の実施形態を示す。不純な炭化水素フィードストック201は、少なくとも0.5wt%の硫黄含有量、少なくとも1wt%のアスファルテン含有量、少なくとも100ppmの総金属含有量を有する炭化水素を含んでも良い。このフィードストックは、図1に例示され、本明細書に記載されるような方法に類似した、金属ナトリウム203および外因性キャッピング剤205と共に、反応器220に装入される。得られたナトリウム塩と変換フィードストックの混合物221は、本明細書に記載されるように、凝集230(元素状硫黄207を有する)および変換フィードストック241からのナトリウム塩245の分離240に処理することができる。変換フィードストック241は、0.5wt%未満の硫黄含有量、50ppm未満のバナジウム含有量、50ppm未満のニッケル含有量、炭化水素フィードストック中のものよりも低いアスファルテンの濃度、および/または炭化水素フィードストック201中のものよりも大きい残留炭化水素(>538℃)に対する低沸点炭化水素(<538℃)の割合を有する炭化水素を含む。再び、ナトリウム塩245は、本明細書に記載されるように、金属ナトリウム253および元素状硫黄257を提供するために電解250されても良い。変換フィードストック241、は、次に、本明細書に記載されるような触媒変換プロセス(水素265を用いた水素化処理270など)、または他のそのようなプロセスに供する。燃料グレードの製品272は、この方法で生成される。
【0060】
代替的に、図3に示すように、精製および変換システム30を使用して同じプロセス実施形態を実施しても良いが、任意の熱変換工程360を採用して二重変生成物361を生成し、その後これを水素を用いた触媒変換プロセス370に供して再び燃料グレード生成物372を生成する。図2と同様に、熱変換プロセス360は、また、ガス状生成物363および残留生成物365を生成する。
【0061】
図4は、精製および変換システム40を用いた本技術の別のプロセス実施形態を示し、不純な炭化水素フィードストック401は、プロセス/装置400において前処理され、第1の残留フィードストック402および精製フィードストック404が提供される。第1の残留フィードストック402および第1の精製フィードストック404をもたらす任意の適切な前処理プロセスを、本明細書に記載するように使用することができる。残留フィードストック402は、任意でさらに前処理(410)され、第2の残留フィードストック411および精製フィードストック413を提供しても良い。任意選択で、1つ以上の不純物(例えば、HS、NH、水、軽質炭化水素などのガス状不純物)は、第1および/または第2(図示のとおり)の前処理工程中に別個流415で除去されても良い。次に、第2の残留フィードストック411は、本明細書に記載されるように、反応器420において金属ナトリウム403および外因性キャッピング剤405で処理され、ナトリウム塩および変換フィードストックの混合物421を提供し得る。混合物421のナトリウム塩は、次に、変換フィードストック441、金属443、およびナトリウム塩445を提供するために、前述のように凝集(430)および分離(440)され得る。ナトリウム塩445は、本明細書に記載のナトリウムイオン選択性セラミック膜452(例えば、NaSiCON)を有する電解セル450で電解して、回収された金属ナトリウム453および元素状硫黄457を提供しても良い。変換フィードストック441は、任意の精油プロセス(複数可)480(例えば、蒸留、熱変換、触媒変換、または同類のもの)に掛けられ、燃料グレード生成物482および残留生成物481を提供し得る。
【実施例
【0062】
実施例1-ナトリウムによる炭化水素フィードストックの脱硫処理
様々な炭化水素フィードストックを金属ナトリウムで処理し、金属ナトリウム処理が不純物除去や物性向上に広く適用できることを実証した。炭化水素フィードストックには、異なる地理的位置や地形からのバージン原油と、一般的な精製および改良設備内にある様々な変換および処理されたフィードストックが含まれた。炭化水素フィードストック700gを、1.8LのParr連続攪拌槽反応器において、適当な質量のナトリウムで以下の条件でバッチ式またはセミバッチ式に処理し、変換炭化水素とナトリウム塩の混合物を得た。反応条件、フィード、および生成物の特性を表1に示す。
【0063】
表1の結果は、溶融金属ナトリウムが不純物を効果的に除去し、変換フィードストックの物性を向上させ、したがって変換フィードストックの代替可能性が改善することを明らかに示す。変換フィードストックは、アスファルトまたは高硫黄バンカー燃料油として販売されるよりむしろ、燃料グレード生成物として直接販売されるか、下流の精油ユニットでより価値の高い生成物に変換されても良い。
【0064】
(表1)
【0065】
実施例2-ナトリウムによる炭化水素フィードストックの脱硫処理
連続操作中に不純物を除去し、物性を向上させるための金属ナトリウム処理の幅広い適用性をさらに実証するために、例えば、図4に本質的に示される連続システムを使用するパイロットプラントにおいて、様々な炭化水素フィードストックおよび前処理された炭化水素フィードストックを金属ナトリウムで処理した。炭化水素および前処理された炭化水素フィードストックには、バージン原油、真空残渣、および一般的な精製および改良設備内で生産される部分変換フィードストックが含まれた。各フィードストックを適当な質量のナトリウムと共に12L連続攪拌槽反応器で以下の条件で処理し、変換炭化水素とナトリウム塩の混合物を得た。すべてのテストキャンペーンで、水素が外因性キャッピング剤として使用された。反応条件、フィード、および生成物の特性を表2に示す。
【0066】
実施例1と同様に、表2の結果は、溶融金属ナトリウムが不純物を効果的に除去し、変換フィードストックの物性を向上させ、したがって変換フィードストックの代替可能性が改善することを明らかに示す。変換フィードストックは、アスファルトまたは高硫黄バンカー燃料油として販売されるよりむしろ、燃料グレード生成物として直接販売されるか、下流の精油ユニットでより価値の高い生成物に変換されても良い。
【0067】
(表2)
【0068】
実施例3-アスファルテン画分における硫黄の優先的な除去
5回の別個の実験により、混合真空残渣流をナトリウムのモル当量増加で処理した。真空残渣物700gを350℃、水素分圧750psigでナトリウムと接触させた。主な結果は表3にまとめる。アスファルテン画分からの硫黄の優先的除去に対するナトリウムを使用した処理の効果をまとめたものであり、
1.アスファルテン中に含まれる総硫黄の画分は、ナトリウムと硫黄比0.94で変換生成物の28.5%から7.9%に低減された。
2.非アスファルテン硫黄に対するアスファルテン硫黄の割合は、ナトリウムのモル当量の増加の関数として低下する。この割合の低下は、すべての実用的なナトリウムと硫黄の比率において、非アスファルテン硫黄からよりも大きいアスファルテン硫黄からの硫黄の割合が除去されたことを示しており、下流の精製プロセス(例えば、図2に示されるプロセスにおいて)で水素化処理触媒の負荷を軽減するために重要な結果である。
【0069】
(表3)様々な油画分からの硫黄の除去
【0070】
実施例4:ナトリウムで前処理することによって、触媒変換プロセスにおける炭化水素の変換を向上させること
精油中間流(前処理された炭化水素フィードストック)を様々なモル当量のナトリウムで処理し、モル当量のナトリウムの選択が下流の触媒変換プロセスにおける炭化水素の変換をいかに向上させるために使用され得るかを実証した。各精油中間体700gを350℃および750psig、または400℃および1500psigの水素分圧でナトリウム処理した。主な結果は表4にまとめる。
【0071】
炭化水素フィードストックを準化学量論的モル当量のナトリウムで処理することは、触媒を汚染する不純物:アスファルテン硫黄、金属、およびアスファルテンを優先的に除去することにより、FCCまたは残渣水素処理装置(RHT)フィードストックを前処理するのに好ましい場合がある。すべての場合において、アスファルテン画分からはより大きい割合の硫黄が除去された。さらに、除去された金属の画分は除去された全硫黄の割合を上回っており、下流の精油工程でさらに処理するために、金属およびアスファルテン硫黄の含有量が低い部分変換生成物を生成するには、低いナトリウム/硫黄添加比率が有利である可能性があることを示す。
【0072】
(表4)
【0073】
実施例5:真空残渣フィードストックから規格内低硫黄燃料油を生成すること
真空残渣フィードストックを、例えば図1に示されるような連続システムを使用したパイロットプラントで金属ナトリウムを使用して処理し、規格内の低硫黄燃料油の生成を実証した。真空残渣フィードストックを適当な質量のナトリウムと共に12L連続攪拌槽反応器で以下の条件で処理し、変換炭化水素とナトリウム塩の混合物を得た。すべてのテストキャンペーンで、水素が外因性キャッピング剤として使用された。反応条件、フィードおよび生成物の特性を表5に示す。
【0074】
本実施例は、炭化水素フィードストックを有効量のナトリウムおよび有効量の外因性キャッピング剤と接触させると、規格内低硫黄燃料油が生成できることを明確に実証する。
【0075】
(表5)
【0076】
実施例6:コーカーフィードをナトリウムで前処理することによって、コーカー生成物の収率および品質を向上させること
表1の真空残渣物、SDAタール、ビスブレーカー残留物、水素化分解残留物の4つのフィードストックを金属ナトリウムで処理し、コーカーフィードストックを熱変換前に金属ナトリウムで前処理した時のコーカー生成物の収率と品質の改善を実証した。炭化水素フィードストック700gを、1.8LのParr連続攪拌槽反応器において、適当な質量のナトリウムで以下の条件でバッチ式またはセミバッチ式に処理し、変換炭化水素とナトリウム塩の混合物を得た。反応条件、フィード、および生成物の特性を表1に示す。コーカー生成物の生成物収率と品質は、「受け取ったままの」炭化水素フィードストックとナトリウム処理後の変換フィードストック両方のために、業界で認められる相関関係(Gary,J.H.,and Handwerk,G.E.(2001)“Petroleum Refining.”Marcel Dekker,New York)を使って推定される。コーカー生成物は表6にまとめる。
【0077】
表6の結果は、受け取ったままのフィードストックの熱変換を比較すると、熱変換前に溶融金属ナトリウムでのフィードの処理によって、全液収率が増加し、コークス収率が低下し、残留生成物に対する精製生成物の割合が増加し、全コーカー生成物の硫黄含有量が減少することを明確に示す。
【0078】
さらに、その結果は、溶融金属ナトリウムでフィードストックを処理することで、硫黄回収プロセス(クラウスプラントやSCOTプラントなど)の負荷を軽減できることも実証する。4つの実施例において、ガス処理への硫黄(HSとして)を90%以上減少させる。このプロセス構成は、硫黄の排出量を増加させたり、規制値を超えたりすることなく、精製設備の硫黄処理能力を向上させるのに有利である。
【0079】
(表6)
【0080】
実施例7:ナトリウムで前処理することによって、高純度プレミアムグレードのアノードコークスまたはニードルコークスを生成すること
「受け取ったままの」炭化水素フィードストックとナトリウム処理後の変換フィードストック両方のために、実施例6からの同じ4つのフィードストック、真空残渣物、SDAタール、ビスブレーカー残留物、および水素化分解残留物に対するコークス生成物の品質は、業界で認められる相関関係(Gary,J.H.,and Handwerk,G.E.(2001).“Petroleum Refining.”Marcel Dekker,New York)を使って、表7にまとめられる。受け取ったままのフィードで生産されたコークスはどれもアノードグレードコークス規格を満たしていないが、変換フィードストックから生成されたコークス生成物はすべてアノードグレードコークス規格に近いかそれを上回っている。バナジウム規格は、ナトリウムに接触させる工程でのナトリウムのモル当量をわずかに増やすことによって達成され得る。
【0081】
(表7)
【0082】
実施例8:ナトリウムでフィードを前処理することによって、石油生成物の蒸留特性を向上させること
実施例1の手順に従ってナトリウムで処理する前後の炭化水素フィードストックについて、蒸留特性を比較した。表8の結果は、残留画分が1~10%減少し、それに伴って価値の高い残留物とガス油画分がそれぞれ0.5~3%および0.5~8%増加し、特性が改善されたことを示す。このように生成物プロファイルが向上することで、例えばナトリウムを使用して脱硫後に蒸留を行う場合、一定量のフィードからより価値の高い生成物が得られる。
【0083】
(表8)
【0084】
等価物
特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、当業者であれば、前述の明細書を読んだ後、本明細書に記載された本技術の方法およびその生成物に対して、変更、等価物の置換および他の種類の改変に影響を与え得る。上述した各態様および実施形態は、他の態様および実施形態のいずれかまたはすべてに関して開示されるような変形または態様を明細書に含むかまたはそれに組み込むことも可能である。
【0085】
また、本技術はまた、本明細書に記載された特定の態様の観点から限定されるものではなく、これらは、本技術の個々の態様の単一の例として意図されるものである。本技術の多くの修正および変形は、当業者には明らかなように、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。本技術の範囲内の機能的に等しい方法は、明細書中に列挙されたものに加えて、前述の記載から当業者には明らかだろう。このような修正および変形は、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図する。本技術は、特定の方法、フィードストック、組成物、または条件に限定されるものではなく、当然ながら、様々なものがあり得ることを理解されるものとする。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載するためのものであり、限定することを意図していないことも理解されるものとする。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲、それらの中の定義およびそれらの等価物によってのみ示される本技術の幅、範囲、および精神をもって、例示的なものとみなされることを意図する。
【0086】
本明細書に例示的に記載された実施形態は、本明細書に特に開示されていないいずれかの要素または複数の要素、限定または複数の限定がない場合にも好適に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、限定されることなく、広範に理解されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示され、記載された特徴またはそれらの一部の任意の等価物を除外する意図はないが、技術の請求の範囲内で様々な変更が可能であることは認識される。同様に、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等の使用は、用語「実質的に~からなる(consisting essentially of)」および「~からなる(consisting of)」を用いた実施形態を開示するものと理解されるものとし、用語「実質的に~からなる(consisting essentially of)」は、特に言及された要素および請求された技術の基本および新規特性に物質的に影響しない追加要素を含むものと理解されるだろう。「からなる(consisting of)」という句は、特定されていない任意の要素を除外する。
【0087】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点から説明される場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されることを認識するだろう。一般的な開示内に該当する狭義の種および亜属の各グループのそれぞれもまた、本発明の一部を構成する。これには、除外された物質が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、類から任意の主題を除去した但し書きまたは否定的な限定を付した発明の包括的な記載が含まれる。
【0088】
いずれかおよびすべての目的、特に文章による記載の提供の観点から、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、いずれかおよびあらゆる可能なサブレンジおよびそれらのサブレンジの組み合わせも包含することを当業者によって理解されるだろう。任意の列記された任意の範囲が、同じ範囲を少なくとも半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解することが十分に記載され、可能であることが容易に認識され得る。非限定的な実施例として、本明細書で説明する各範囲は、下位3分の1、中間3分の1、および上位3分の1などに容易に分解され得る。また、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての言語は、言及された数を含み、上述したように、その後サブレンジに分解することができる範囲を指すことも当業者によって理解されるだろう。最後に、範囲が個々の部材を含むことも当業者によって理解されるだろう。
【0089】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、発行済み特許、およびその他の文書(例えば、雑誌、論文、および/または教科書)は、個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、またはその他の文書がその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる文章に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する範囲において除外される。
【0090】
他の実施形態は、そのような請求項が権利を有する完全な等価物の範囲と共に、添付の請求項に記載される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】