(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】油圧ブレーカー用チゼル
(51)【国際特許分類】
E21C 37/26 20060101AFI20230623BHJP
B25D 9/04 20060101ALI20230623BHJP
B25D 17/02 20060101ALI20230623BHJP
B25D 17/11 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
E21C37/26
B25D9/04
B25D17/02
B25D17/11
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572380
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2021015967
(87)【国際公開番号】W WO2022169070
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0017463
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0081496
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522281604
【氏名又は名称】マップ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAPP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ムンギョ
【テーマコード(参考)】
2D058
2D065
【Fターム(参考)】
2D058AA12
2D058BA11
2D058CB03
2D058DA33
2D065AA03
2D065AA17
2D065AA23
(57)【要約】
本発明は、油圧ブレーカーの内部に設けられて往復動するピストンによって打撃される油圧ブレーカー用チゼルにおいて、下端には、錐状の破砕部が設けられた軸構造のチゼル胴体;チゼル胴体の外周面に長手方向に複数の溝と突起とが交互に形成された凹凸状に設けられて、ピストンの打撃によってチゼル胴体の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部の被破砕物の打撃によってチゼル胴体の下側から上側に伝達される応力波を分散させる応力分散部;を含む油圧ブレーカー用チゼルを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ブレーカーの内部に設けられて往復動するピストンによって打撃される油圧ブレーカー用チゼルにおいて、
下端には、錐状の破砕部が設けられた軸構造のチゼル胴体と、
前記チゼル胴体の外周面に長手方向に複数の溝と突起とが交互に形成された凹凸状に設けられて、ピストンの打撃によってチゼル胴体の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部の被破砕物の打撃によってチゼル胴体の下側から上側に伝達される応力波を分散させる応力分散部と、
を含む、油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項2】
前記応力分散部は、チゼル胴体の長手方向に互いに離隔して複数個が設けられた、請求項1に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項3】
前記応力分散部の溝と突起とのうち、溝は、チゼル胴体の最上側に配された溝を除いた残りの溝がチゼル胴体の下側から上側に行くほどチゼル胴体の内側への深さが順次に深くなるように形成された、請求項1に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項4】
前記応力分散部の溝と突起とのうち、突起の厚さは、チゼル胴体の下側から上側に行くほど順次に厚くなるように形成された、請求項3に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項5】
前記応力分散部の最下側と破砕部の上側との間に位置するチゼル胴体の外周面は、上側から下側に行くほど小径になるようにテーパー状を有する、請求項1に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項6】
前記応力分散部の溝にそれぞれ挿入されるように設置して、チゼル胴体の軸方向に沿って移動する振動を吸収するように弾性を有する円環状の弾性吸収リングをさらに備える、請求項1に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項7】
前記応力分散部の突起外周面には、円周方向に一定間隔離隔して複数個の切開溝が形成された、請求項1に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項8】
前記応力分散部の溝部分には、チゼル胴体の内側に延びるように応力分散孔がさらに形成され、
前記応力分散孔は、応力分散部の溝周りに互いに離隔して複数個が設けられた、請求項1に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項9】
前記複数の応力分散孔を連結するようにチゼル胴体に設置して、チゼル胴体に沿って移動する振動を吸収するように弾性を有する振動吸収連結部をさらに備える、請求項8に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【請求項10】
前記振動吸収連結部は、
前記応力分散孔に対応して挿入され、弾性を有する材質からなる複数の挿入部材と、
前記チゼル胴体の外側に挿設された状態で複数の挿入部材を連結する環状の連結部材と、
を含む、請求項9に記載の油圧ブレーカー用チゼル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機に装着された油圧ブレーカーのピストンを通じて打撃される過程で発生する振動と衝撃反発力とを低減させる油圧ブレーカー用チゼルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ブレーカーは、掘削機、ローダーなどの建設機械に装着されて岩盤やコンクリートなどを破砕する装備であって、シリンダー作動時に、ピストンが昇降し、破砕工具であるチゼル(Chisel)を打撃し、チゼルがコンクリート及び岩盤などに衝撃力を加えて破砕する。
【0003】
このような、油圧ブレーカーを利用した破砕作業時に発生する騒音は、ピストンがチゼルを打撃する時に発生する打撃騒音と、チゼルがコンクリート及び岩盤を破砕する時に発生する破砕騒音と、に区分される。そのうち、ほとんどは打撃騒音であり、その数値は、油圧ブレーカーのサイズによって異なるが、ほぼ90~110dB程度である。
【0004】
最近、騒音及び振動に対する規制が強化されながら、建設機械の騒音度表示が申告制から義務制に転換され、掘削機、ブルドーザー、ローダー、ブレーカーなどの製品が騒音度表示義務対象と指定された。このような騒音及び振動に関する規制に対応するために、低騒音型ブレーカーに対する開発が活発に進められている。
【0005】
特に、関連機関でも、騒音規制を満足するブレーカーについて低騒音ブレーカー認証を行うなど低騒音型ブレーカーの開発を誘導している。
【0006】
図1を参照して、従来の油圧ブレーカー1を説明すれば、油圧シリンダー10と、油圧シリンダー10の内部で上下に移動可能に設けられるピストン20と、油圧シリンダー10の下部に結合されるフロントヘッド30と、フロントヘッド30に設けられてピストン20によって打撃されるチゼル40と、を含む。油圧シリンダー10の上端には、ガス室12が備えられ、油圧シリンダー10の側面には、弁14が形成され、弁14と隣接した下側に油圧オイルを一時貯蔵して運動エネルギー源として使用するためのアキュムレータ50が形成される。また、チゼル40は、フロントヘッド30の中端の内側に設けられた上部ブッシュ60とフロントヘッド30の下端に結合される下部ブッシュ70とによって支持される。そして、下部ブッシュ70の内側に挿入溝(図示せず)が形成され、挿入溝に防振材(図示せず)が設けられる。
【0007】
このような、前記チゼル40は、ピストン20によって打撃されてピストン20の運動エネルギーを被破砕物に伝達しながら自体的に振動する。すなわち、ピストン20が下降してチゼル40の上端面を叩くと、ピストン20の衝撃エネルギーによってチゼル40の打撃面に弾性圧縮変形を伴った応力波が発生し、この応力波は、チゼル40の胴体に沿って下端に伝達されて、最終的に被破砕物との接触面に到達されることにより、破砕作業を行う。
【0008】
この際、前記ピストン20とチゼル40とが一直線上で衝突するならば、圧縮応力波がチゼル40の中心線に沿って伝達されて、チゼル40の左右または横方向の振動が発生しない。しかし、実際の場合には、それぞれの中心線が一致せず、また、チゼル40と上部ブッシュ60及び下部ブッシュ70との隙間によって、打撃時に、チゼル40が偏心打撃されてチゼル40の中心線を外れた地点にピストン20とチゼル40との接触面の中心が形成されることにより、この際、発生した衝撃力によってチゼル40の曲げ変形が発生する。これにより、チゼル40は変形されるということはもとより、チゼル40に沿って伝達される応力波は、曲げ応力が伴われた圧縮応力波の形態になる。この際、被破砕物との境界面に到達した応力波は、その一部が被破砕物に拡散されて吸収され、残りの一部は、逆に反射してピストン20との打撃面に向けて伝達された後、再び逆方向に復帰される過程を繰り返す。この過程で互いに異なる方向に伝播される2つの応力波が合う地点でその応力波が重畳され、このような重畳によって特定周波数でその振幅が目立つようになって、振動及び騒音を発生させると共に、チゼル40の使用寿命を減少させるという問題点がある。
【0009】
このような、油圧ブレーカーに関する技術は、大韓民国登録特許第10-1712553号(2017.02.27)に提示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ピストンによる打撃及び被破砕物に対する破砕する過程で発生する振動及び騒音を減少させる油圧ブレーカー用チゼルを提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、油圧ブレーカーの内部に設けられて往復動するピストンによって打撃される油圧ブレーカー用チゼルにおいて、下端には、錐状の破砕部が設けられた軸構造のチゼル胴体;前記チゼル胴体の外周面に長手方向に複数の溝と突起とが交互に形成された凹凸状に設けられて、ピストンの打撃によってチゼル胴体の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部の被破砕物の打撃によってチゼル胴体の下側から上側に伝達される応力波を分散させる応力分散部;を含む油圧ブレーカー用チゼルを提供する。
【0012】
また、前記応力分散部は、チゼル胴体の長手方向に互いに離隔して複数個が設けられうる。
【0013】
また、前記応力分散部の溝と突起とのうち、溝は、チゼル胴体の最上側に配された溝を除いた残りの溝がチゼル胴体の下側から上側に行くほどチゼル胴体の内側への深さが順次に深くなるように形成されうる。
【0014】
また、前記応力分散部の溝と突起とのうち、突起の厚さは、チゼル胴体の下側から上側に行くほど順次に厚くなるように形成されうる。
【0015】
また、前記応力分散部の最下側と破砕部の上側との間に位置するチゼル胴体の外周面は、上側から下側に行くほど小径になるようにテーパー状を有しうる。
【0016】
また、前記応力分散部の溝にそれぞれ挿入されるように設置して、チゼル胴体の軸方向に沿って移動する振動を吸収するように弾性を有する円環状の弾性吸収リングをさらに備えることができる。
【0017】
また、前記応力分散部の突起外周面には、円周方向に一定間隔離隔して複数個の切開溝が形成されうる。
【0018】
また、前記応力分散部の溝部分には、チゼル胴体の内側に延びるように応力分散孔がさらに形成され、前記応力分散孔は、応力分散部の溝周りに互いに離隔して複数個が設けられうる。
【0019】
また、前記複数の応力分散孔を連結するようにチゼル胴体に設置して、チゼル胴体に沿って移動する振動を吸収するように弾性を有する振動吸収連結部をさらに備えることができる。
【0020】
また、前記振動吸収連結部は、前記応力分散孔に対応して挿入され、弾性を有する材質からなる複数の挿入部材;前記チゼル胴体の外側に挿設された状態で複数の挿入部材を連結する環状の連結部材;を含みうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による油圧ブレーカー用チゼルは、チゼル胴体の外周面に長手方向に一定間隔離隔して複数の溝と突起とが交互に形成された凹凸状の応力分散部が設けられて、ピストンの打撃によってチゼル胴体の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部の被破砕物の打撃によってチゼル胴体の下側から上側に伝達される応力波が溝と突起とを通過時に、多様な方向に分散移動させながらチゼル胴体上で応力波の重畳を最小化させるので、ピストンがチゼル胴体の上端を打撃した後、破砕部が被破砕物を打撃しながら発生する振動及び騒音を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の油圧ブレーカーの概略構成断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの正面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの部分拡大断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの部分拡大斜視図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの部分拡大斜視図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの部分拡大斜視図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの部分拡大断面図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態による油圧ブレーカー用チゼル及び従来の油圧ブレーカー用チゼルの被破砕物の打撃時に、応力状態を示すシミュレーションイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの斜視図であり、
図3は、本発明の一実施形態による油圧ブレーカー用チゼルの正面図である。
図2及び
図3を参照すれば、一実施形態の油圧ブレーカー用チゼル100は、チゼル胴体110、応力分散部120を備える。ここで、油圧ブレーカー用チゼル100は、シリンダーの内側で油圧によって往復動作が行われるピストンによって打撃された後、移動しながら被破砕物を破砕するように動作する。この際、油圧ブレーカーは、従来の技術と同じ構成からなるものであって、ここでは、油圧ブレーカーの具体的な構成についての詳細な説明は省略する。
【0025】
前記チゼル胴体110は、油圧によって上下方向に往復動するピストンによって打撃される軸構造を有する部分である。このような、チゼル胴体110の下端には、ピストンによって下方に移動しながら被破砕物と衝突時に、破砕が行われるように錐状の破砕部111が設けられる。この際、破砕部111は、円錐または角錐状に形成されうる。
【0026】
ここで、前記チゼル胴体110の破砕部111の上側、より詳細には、後述する応力分散部120の最下側と破砕部111の上側との間に位置するチゼル胴体110の外周面部分‘a’は、上側から下側に行くほど小径になるようにテーパー状を有するように形成されうる。このように、応力分散部120の最下側と破砕部111の上側との間に位置するチゼル胴体110の外周面部分を上側から下側に行くほど小径になるようにテーパー状に形成させる場合、破砕部111が被破砕物と衝突された後、チゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波方向とピストンによって打撃されながらチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波の方向とを互いに異ならせながら、応力波の重畳を最小化させて振動の発生を減少させる。
【0027】
また、前記チゼル胴体110の応力分散部120の最下側と破砕部111の上側との間に位置する‘a’部分の外側面に両端を開放させた管状の圧縮弾性体(図示せず)を挿設することもできる。このような、圧縮弾性体は、油圧によってピストンを下方に移動させてピストンの下側がチゼル胴体110と接触されながらチゼル胴体110の上側を打撃する時、圧縮された後、一定時間経過後、再び原状に弾性復元されるように弾性を有する軟質のゴムや合成樹脂で形成されうる。このような、圧縮弾性体は、チゼル胴体110の振動を吸収しながら打撃応力がチゼル胴体110の軸方向と平行な直線方向に伝達が行われるようにする。すなわち、圧縮弾性体は、油圧によるピストンの下方移動でチゼル胴体110を打撃時に、慣性力を通じてチゼル胴体110の内側中心方向に向けて圧縮されながらチゼル胴体110に圧縮力を伝達し、これを通じてチゼル胴体110の振動を吸収する。このように、圧縮弾性体は、ピストンでチゼル胴体110の打撃時に、チゼル胴体110で発生する振動を吸収して打撃応力がチゼル胴体110の軸方向と平行な直線方向に伝達させながら、破砕部111が被破砕物に対する打撃力を増大させる。このように、圧縮弾性体がチゼル胴体110に挿設される場合、チゼル胴体110の外周面で‘a’部分の上端の縁部と下端の縁部には、圧縮弾性体が‘a’部分から離脱しないように係止させる係止ストッパー(図示せず)が突出するように形成されうる。
【0028】
また、前記圧縮弾性体は、圧縮された状態で一定時間が経過時に、すなわち、ピストンの打撃によって発生した慣性力の大きさが圧縮弾性体自体の弾性復元力の大きさよりも小さくなる時点には、原状に弾性復元された後、チゼル胴体110が被破砕物を打撃しながら下端から上端に伝達される振動に対しても、慣性力によって圧縮状態で減少させる。このように、圧縮弾性体は、チゼル胴体110の下端が被破砕物を打撃しながらチゼル胴体110の下端から上端に伝達される振動を減少させるので、チゼル胴体110の外側面と油圧ブレーカーの内壁との間隔を安定して保持して、チゼル胴体110の外側面と油圧ブレーカー内壁との接触による損傷を防止すると共に、チゼル胴体110が以後再びピストンによって打撃される位置を定位置に保持させながら安定した打撃力を発生させる。
【0029】
そして、前記圧縮弾性体の内周面は、チゼル胴体110の外側面のうち、‘a’部分に対応する形状を有するように形成される。すなわち、圧縮弾性体の内周面は、応力分散部120の最下側と破砕部111の上側との間に位置する‘a’部分の外側面に対応して密着状態で挿入されるように上側から下側に行くほど内径サイズが小さくなるようにテーパー状に形成されうる。
【0030】
前記応力分散部120は、ピストンの打撃によってチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部111の被破砕物の打撃によってチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波を分散させるので、互いに異なる方向に伝播される応力波の重畳を防止して、振動及び騒音を減少させる部分である。このような、応力分散部120は、互いに異なる方向に伝播される応力波を分散させるように、チゼル胴体110の外周面に長手方向に複数の溝121と突起122とが交互に順次に形成された凹凸状に形成される。このように、応力分散部120は、チゼル胴体110の外周面に長手方向に複数の溝121と突起122とが交互に順次に形成された凹凸状に備えられたので、チゼル胴体110の表面に沿って伝播される応力波を分散させると共に、突起122は、応力波を上下方向に揺動する運動エネルギーに変換させながら互いに異なる方向に伝播される応力波の重畳を最小化させる。
【0031】
そして、前記応力分散部120は、互いに異なる方向に伝播される応力波の分散効率を増大させるようにチゼル胴体110の長手方向に互いに離隔して複数個が設けられるように備えることができる。すなわち、応力分散部120がチゼル胴体110の長手方向に互いに離隔して複数個が設けられる場合、ピストンの打撃によってチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波の分散及び破砕部111の被破砕物の打撃によってチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波の分散を数回行われるようにしながら応力波の重畳比率をさらに低減させるので、振動及び騒音の減少効率を増大させる。
【0032】
図4を参照すれば、前記応力分散部120のうち、溝121は、チゼル胴体110の最上側に配された溝121aを除いた残りの溝121bは、チゼル胴体110の下側から上側に行くほどチゼル胴体110の内側への深さが順次に深くなるように形成されうる。この際、チゼル胴体110の最上側に配された溝121aの深さは、チゼル胴体110の最下側に配された溝121bの深さと同様に形成されるか、これよりも深さが浅く形成されうる。
【0033】
このように、前記応力分散部120のうち、溝121を形成時に、チゼル胴体110の最上側に配された溝121aを除いた残りの溝121bが、チゼル胴体110の下側から上側に行くほどチゼル胴体110の内側への深さが順次に深くなるように形成される場合、ピストンの打撃で下降時に、突起122部分の慣性による下方反り運動で誘発される圧縮力をチゼル胴体110の下端に安定して伝達させて、被破砕物を打撃する力を増大させる。また、チゼル胴体110の下端である破砕部111で被破砕物を打撃時に、チゼル胴体110の下端を通じて伝達された振動が応力分散部120を通じて均一に分散伝達させながら応力分散部120の溝121と突起122部分での応力の集中を防止可能にする。
【0034】
さらに詳細に説明すれば、前記チゼル胴体110の下側から上側に行くほどチゼル胴体110の内側への深さが順次に深くなるように溝121bが形成された応力分散部120部分は、シリンダーの内側でチゼル胴体110の上端にピストンが打撃される時、チゼル胴体110の下側に配された応力分散部120の突起122の反り運動をチゼル胴体110の上側に配された突起122の反り運動よりも先に発生させる。この際、チゼル胴体110の上側に配された突起122の反り運動エネルギー及び圧縮エネルギーのサイズがチゼル胴体110の下側に配された突起122の反り運動エネルギー及び圧縮エネルギーの大きさよりも小さいが、突起122の反り運動エネルギー及び圧縮エネルギーがチゼル胴体110の中心方向に集中させながら破砕部111方向への圧縮力伝達が安定して行われるようにしながら、破砕部111を通じた被破砕物に対する打撃する力を増大させる。また、前記チゼル胴体110の下側から上側に行くほどチゼル胴体110の内側への深さが順次に深くなるように溝121bが形成された応力分散部120部分を通じて破砕部111でチゼル胴体110の上端方向に発生する振動とチゼル胴体110の上端で破砕部111方向に発生する振動との重畳を相殺させて騒音発生を減少させる。
【0035】
そして、前記チゼル胴体110の最上側に配された溝121aを除いた残りの溝121bは、チゼル胴体110の下側から上側に行くほどチゼル胴体110の内側への深さが順次に深くなるように形成時に、突起122の厚さは、チゼル胴体110の下側から上側に行くほど順次に厚さを厚くして突起122の反り運動変位を最小化しながら耐久性を向上させる。
【0036】
図5を参照すれば、前記応力分散部120の突起122の外周面には、円周方向に一定間隔離隔して複数個の切開溝122aが形成されうる。そして、切開溝122aは、チゼル胴体110の長手方向を基準に複数の突起122上に交互に同じ位置に配されるように形成されうる。すなわち、切開溝122aは、チゼル胴体110の長手方向を基準に奇数番目に配される複数の突起122上に同じ位置に配されるように形成され、偶数番目に配される複数の突起122上に同じ位置に配されるように形成されうる。これにより、互いに隣接した突起122がピストンの打撃によってチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波及び破砕部111の被破砕物の打撃によってチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波によって上下方向に曲がり変形が行われる時、互いに突起122の衝突のような干渉の発生を防止可能にする。
【0037】
このような、前記切開溝122aは、ピストンの打撃によってチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部111の被破砕物の打撃によるチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波によって突起122部分を上下方向に曲がり変形を通じた運動エネルギーに変換させながら振動及び騒音を減少させる。ここで、切開溝122aは、応力分散部120の突起122に直線形の断面形態に形成されたものと図示したが、これに限定せず、半円形の断面形態の以外に多様な断面形態に形成されてもよいということはいうまでもない。
【0038】
また、
図6を参照すれば、前記応力分散部120の溝121には、弾性を有する弾性吸収リング130を挿設することができる。このような、弾性吸収リング130は、硬質または軟質の弾性材からなり、チゼル胴体110の外側に配されるように応力分散部120の溝121に挿入できるように円環状に形成されうる。この際、弾性吸収リング130の一側には、内外側を連結する開放部が設けられて、チゼル胴体110の外側に配されるように応力分散部120の溝121に挿設時に、力を加えて内径を拡径することができる。
【0039】
このように、前記応力分散部120の溝121に弾性吸収リング130を挿設する場合、チゼル胴体110の応力分散部120のうち、溝121部分に対する強度を補強できると共に、ピストンの打撃によってチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波及び破砕部111の被破砕物の打撃によってチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波によって応力分散部120の突起122部分が上下方向に曲がり変形時に、運動エネルギーを吸収しながら振動及び騒音を減少させる役割も果たす。ここで、弾性吸収リング130の外周面は、凹凸構造を有するように形成して、突起122から伝達吸収された運動エネルギーを分散させて弾性吸収リング130の耐久性を増大させる。
【0040】
図7を参照すれば、前記応力分散部120の溝121部分には、チゼル胴体110の内側に延びた応力分散孔123が形成されうる。このような、応力分散孔123は、破砕部111でチゼル胴体110の上側方向に移動する振動をチゼル胴体110上で多様な方向に分散させて分散率を高くしながら振動及び騒音を低減させる。そして、前記応力分散孔123は、チゼル胴体110の外周面の円周方向、すなわち、溝121が形成された部分周りに互いに離隔して複数個が形成されうる。
【0041】
また、前記応力分散孔123は、チゼル胴体110の内側に行くほどチゼル胴体110の強度低減を最小化できるようにチゼル胴体110の外側から内側に行くほど小径になるように形成されうる。この際、応力分散孔123は、チゼル胴体110の内側に行くほど小径になるように形成され、応力分散孔123は、テーパー断面形態に形成されることが望ましいが、これに限定せず、チゼル胴体110の内側に行くほど直径が小さくなる多段形態に形成されうる。また、応力分散孔123は、チゼル胴体110の外側から内側に同じ直径を有する状態で延びるように形成されてもよいということはいうまでもない。
【0042】
また、
図8を参照すれば、前記チゼル胴体110には、複数の応力分散孔123を連結するように振動吸収連結部140を備えることができる。このような、振動吸収連結部140は、弾性を有する材質で形成されて、チゼル胴体110の長手方向に沿って移動する振動の吸収と応力分散孔123が形成されたチゼル胴体110の強度補強、及び応力分散部120の突起122部分が上下方向に反り運動時に、上下方向に隣接した突起122部分の衝突を防止可能にする。ここで、振動吸収連結部140は、挿入部材141、連結部材142を含む。
【0043】
前記挿入部材141は、複数個で構成されて、それぞれの応力分散孔123に対応して挿入される部分である。このような、挿入部材141は、弾性を有する材質からなるが、より詳細には、軟性を有するゴム材や合成樹脂材からなりうるが、これに限定せず、硬質のプラスチック材からなってもよいということはいうまでもない。
【0044】
前記連結部材142は、複数の挿入部材141を連結した状態でチゼル胴体110の外側に挿設される環状の部材である。このように、連結部材142は、複数の挿入部材141を連結して、挿入部材141を通じて伝達される振動を通じて上下方向に反り運動しながら運動エネルギーに変換させると共に、上下方向に互いに隣接した応力分散部120の突起122部分の上下方向の反り運動時に、突起122部分と衝突しながら運動エネルギーを吸収すると共に、上下方向に隣接した突起122の衝突を防止する。このような、連結部材142は、前述した挿入部材141と同様に弾性を有する材質からなるが、より詳細には、軟性を有するゴム材や合成樹脂材からなりうるが、これに限定せず、硬質のプラスチック材からなってもよいということはいうまでもない。
【0045】
図9は、一実施形態による油圧ブレーカー用チゼル100と従来の油圧ブレーカー用チゼルとの被破砕物の打撃時に、応力状態を比較したシミュレーションイメージであって、油圧によって下方に移動するピストンがチゼル100を叩き、チゼル100が500tの厚さの打撃板(鉄板)を打撃する時である。
図9の(a)、
図9の(b)から見るように、一実施形態による油圧ブレーカー用チゼル100が打撃板を叩きながら発生する圧縮応力持続時間は、従来のチゼルが打撃板を叩きながら発生する圧縮応力持続時間よりも約15%程度増加したことが分かる。これは、チゼル100と打撃板との接触時間が従来のチゼルと打撃板との接触時間よりも15%増加することを意味するが、このように、チゼル100と打撃板との接触時間が増加するにつれて、チゼル100から発生する振動及び騒音は減る。
【0046】
このように、構成される一実施形態による油圧ブレーカー用チゼルのピストンによる打撃及び被破砕物の打撃時に発生する振動の吸収作用を説明すれば、次の通りである。
【0047】
まず、油圧によってピストンが下方に移動すれば、ピストンの下端がチゼル胴体110の上端を打撃する。
【0048】
この際、前記チゼル胴体110の上側から下側、すなわち、チゼル胴体110の長手方向を基準に一端から他端に向かう応力波は、突起122部分を慣性による下方反り運動で誘発させた後、チゼル胴体110の下端に圧縮力を安定して伝達させて、破砕部111を通じた被破砕物の打撃する力を増大させる。
【0049】
そして、前記チゼル胴体110の下端の破砕部111が被破砕物を打撃しながらチゼル胴体110の下側から上側、すなわち、チゼル胴体110の長手方向を基準に他端から一端に向ける応力波は、応力分散部120の溝121と突起122とによって分散、及び突起122が上下方向への反り運動を通じた運動エネルギーに変換させる。
【0050】
このように、前記ピストンがチゼル胴体110の上端に打撃時に、チゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波及び破砕部111の被破砕物の打撃によってチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波は、応力分散部120の溝121と突起122とによって互いに分散されながらチゼル胴体110上で応力波の重畳を最小化させるので、ピストンがチゼル胴体110の上端を打撃した後、破砕部111が被破砕物を打撃しながら発生する振動及び騒音を低減させる。また、チゼル胴体110の上側から下側に向かう応力波は、応力分散部120の突起122部分が慣性による下方反り運動を誘発し、これを通じてチゼル胴体110の下側に圧縮力を伝達させるので、破砕部111による被破砕物の打撃する力を増大させる。
【0051】
このような、一実施形態の油圧ブレーカー用チゼルは、チゼル胴体110の外周面に長手方向に一定間隔離隔して複数の溝121と突起122とが交互に形成された凹凸状の応力分散部120が設けられて、ピストンの打撃によってチゼル胴体110の上側から下側に伝達される応力波、及び破砕部111の被破砕物の打撃によってチゼル胴体110の下側から上側に伝達される応力波が溝121と突起122とを通過時に、多様な方向に分散移動させながらチゼル胴体110上で応力波の重畳を最小化させるので、ピストンがチゼル胴体110の上端を打撃した後、破砕部111が被破砕物を打撃しながら発生する振動及び騒音を低減させる。
【0052】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これにより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【国際調査報告】