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特表2023-527819細胞のゲノムを改変するためのマルチプレックスCRISPR/Cas系
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  • 特表-細胞のゲノムを改変するためのマルチプレックスCRISPR/Cas系 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】細胞のゲノムを改変するためのマルチプレックスCRISPR/Cas系
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20230623BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230623BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230623BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230623BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230623BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230623BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/09 100
C12N1/21
C12P21/02 C
C12N15/09 110
A61K35/12
A61K38/00
A61K45/00
A61K38/43
A61K38/18
A61K39/395 D
A61K38/22
A61K38/19
A61K31/7105
A61P31/04
A61K35/76
A61P37/02
A61K48/00
A61P29/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572491
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2021063954
(87)【国際公開番号】W WO2021239758
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】2007943.0
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520188592
【氏名又は名称】エスエヌアイピーアール・バイオーム・アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ヘルム,エリック
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,ヴァージニア
(72)【発明者】
【氏名】タコス,アダム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA03
4C084DA01
4C084DB01
4C084DB52
4C084DC01
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB35
4C085AA13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA08
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、複数のCRISPR/Cas系を使用して相乗的に細胞のゲノムを改変する方法に関する。本発明は、そのような方法を実行するための組成物、crRNA、Casタンパク質、およびベクターにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が、構成要素(a)、(b)、(c)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために前記細胞において発現される、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために前記細胞において発現される、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために前記細胞において発現される、第1のcrRNAおよび核酸
を各細胞に導入することを含み、
各細胞について、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を前記細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
(i)crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が前記細胞において提供され、それにより前記細胞のゲノムがCas改変を受ける、
方法。
【請求項2】
(a)C1がクラス1 Casであり、C2がクラス1 Casであり、
(b)C1がクラス1 Casであり、C2がクラス2 Casであり、
(c)C1がクラス2 Casであり、C2がクラス2 Casであり、
(d)C1がI型Cas(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、またはI-U型)であり、C2がI型Cas(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)であり、
(e)C1がI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2がII型Casであり、
(f)C1がI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2がIII型Cas(任意に、I-A型もしくはI-B型)であり、
(g)C1がI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2がIV型Casであり、
(h)C1がI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2がV型Casであり、または
(i)C1がI型CasもしくはII型Casであり、C2がVI型Casである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)C1が、IB型CasもしくはC型Casであり、C2がI-E型CasもしくはI-F型Casであり(任意に、C1はIB型Cas3であり、C2はIE型Casである)、
(b)C1が、IC型CasもしくはC型Casであり、C2がI-E型CasもしくはI-F型Casであり(任意に、C1はIC型Cas3であり、C2はIE型Cas3である)、または
(c)C1がII型Cas9であり、C2がI型Cas3である(任意に、C2は、E coli IE型Cas3もしくはE coli F型Cas3であるか、またはC difficile Cas IBである)、
前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項4】
(a)C1がCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、C2がCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、
(b)C1がCas9であり、C2がCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、
(c)C1がCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、C2がCas10(任意に、Cas10サブタイプA、Cas10サブタイプB、Cas10サブタイプC、もしくはCas10サブタイプD)であり、
(d)C1がCas9であり、C2がCas10(任意に、Cas10サブタイプA、Cas10サブタイプB、Cas10サブタイプC、もしくはCas10サブタイプD)であり、
(e)C1がCas9であり、C2がCas12(任意に、Cas12a)であり、
(f)C1がCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、C2がCas12(任意に、Cas12a)であり、
(g)C1がCas9であり、C2がCas13(任意に、Cas13a、Cas13b、Cas13c、もしくはCas13d)であり、または
(h)C1がCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、またはI-U型Cas3)であり、C2がCas13(任意に、Cas13a、Cas13b、Cas13c、もしくはCas13d)である、
前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
PS1およびPS2が、
(a)それぞれRNAおよびRNA、
(b)それぞれDNAおよびRNA、
(c)それぞれRNAおよびDNA、または
(d)それぞれDNAおよびDNA
に含まれるプロトスペーサーである、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
C1が、ClostridiaceaeのCas3(任意に、I-B型Cas3などのC difficile Cas3)であり、C2が、EnterobacteriaceaeのCas3(任意に、I-E型Cas3などのE coli Cas3)である、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
C1がspCas9またはsaCas9であり、C2がI型Cas3である(任意に、C2がE coli I-E型Cas3またはE coli I-F型Cas3である)、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
PS1およびPS2がC1およびC2によるCas改変を受ける、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記改変が前記ゲノムの切断である、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
PS1が前記細胞の染色体配列である、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項11】
PS2が前記細胞の染色体配列である、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項12】
各細胞が細菌または古細菌細胞、任意に、E coli細胞またはC difficile細胞である、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記導入ステップが、前記細胞をウイルス(任意に、バクテリオファージ、ここで、前記細胞は細菌細胞である)に感染させること、または前記細胞にプラスミド(任意に、接合性プラスミド)を導入することもしくはファージミドを導入することを含み、前記ウイルス、プラスミド、またはファージミドが前記crRNAをコードする、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルス、プラスミド、またはファージミドが、C1および/またはC2をコードする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルス、プラスミド、またはファージミドが、前記C1および前記C2の一方をコードし、他方のCasが、前記細胞のゲノムによってコードされる内因性Casである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
C1およびC2の各々が、前記細胞のゲノムによってコードされる内因性Casである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
各crRNAが構造性プロモーターの制御下で発現する、請求項1(b)または(c)に従属する場合の、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項18】
各Casが構造性プロモーターの制御下で発現する、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
各crRNAが強力なプロモーターの制御下で発現する、請求項1(b)または(c)に従属する場合の、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項20】
第1の複数の異なるcrRNAが前記細胞の1つまたは複数で発現し、各crRNAがCS1と作動可能であり、前記複数が、前記細胞のゲノムに含まれる少なくとも2の異なるプロトスペーサーを標的とし、および/あるいは、第2の複数の異なるcrRNAが前記細胞の1つまたは複数において発現し、各crRNAがCS2と作動可能であり、前記第2の複数が、前記細胞のゲノムに含まれる少なくとも2の異なるプロトスペーサーを標的とする、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数の細胞が前記方法によって死滅する、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のcrRNAがガイドRNAに含まれ、前記ガイドRNAがtracrRNAをさらに含み、および/または前記第2のcrRNAがガイドRNAに含まれ、前記ガイドRNAがtracrRNAをさらに含む、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項23】
第1の種または株の複数の細胞(任意に、原核細胞)を死滅させる方法であって、前記方法が前記細胞を使用して前記いずれかの請求項に記載の方法を実行することを含み、C1および/またはC2がCasヌクレアーゼであり、前記細胞のゲノムがCasヌクレアーゼ切断によって切断され、前記細胞が死滅する、方法。
【請求項24】
前記複数の細胞の数を少なくとも10倍低減させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の少なくとも99.999%の細胞を死滅させる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記種がE coliまたはC difficileである、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
1つまたは複数の細胞のゲノムを編集する方法であって、
(a)請求項1から22のいずれか一項に記載の方法を実行することによって各細胞のゲノムを改変することであって、前記ゲノムがCas切断を受ける、改変すること、ならびに
(b)前記ゲノムにおけるCas切断部位においてもしくは隣接して核酸を挿入すること、および/または前記ゲノムにおけるCas切断部位においてもしくは隣接して前記ゲノムから核酸配列を欠失させることであって、編集されたゲノムを有する細胞が産生される、挿入すること、および/または欠失させること、ならびに
(c)任意に前記挿入もしくは前記欠失を含む核酸を前記細胞から任意に単離すること、または前記細胞の核酸配列を配列決定することであって、前記核酸配列が前記挿入もしくは前記欠失を含む、配列決定すること
を含む方法。
【請求項28】
(a)前記改変細胞(単数または複数)を培養してその子孫を産生すること、および、任意に、子孫細胞を単離すること、または
(b)ステップ(c)における細胞から得られた配列をレシピエント細胞に挿入し、それから細胞株を成長させること
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記子孫細胞または前記細胞株がタンパク質を発現し、前記挿入された核酸配列を含むヌクレオチド配列によって前記タンパク質がコードされ、前記方法が、前記発現タンパク質を得ること、または前記細胞もしくは前記細胞株から前記発現タンパク質を単離することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記子孫細胞、前記細胞株、または前記タンパク質を薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって、医薬組成物を生成することをさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
ヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置するかまたは防止する方法であって、(i)請求項30によって得られる医薬組成物を前記対象に投与することであって、前記組成物が前記タンパク質を含み、前記タンパク質が前記疾患もしくは状態の処置もしくは防止を媒介する、投与すること、または(ii)請求項30によって得られる医薬組成物を前記対象に投与することであって、前記組成物が前記子孫細胞もしくは前記細胞株を含む場合、前記細胞もしくは前記細胞株が前記対象においてタンパク質もしくはRNAを発現し、前記タンパク質もしくは前記RNAが前記疾患もしくは状態の処置もしくは防止を媒介する、投与すること、を含む方法。
【請求項32】
前記タンパク質が、抗生剤、抗菌剤、酵素、成長因子、抗体もしくはその断片、ホルモン、血液成分、サイトカイン、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、阻害剤)、鎮痛剤、神経伝達物質、抗炎症剤、または抗新生物剤である、請求項29、30、または31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の細胞がマイクロバイオーム試料に含まれ、前記第1の種または株の細胞を死滅させた改変細胞試料を産生し、前記方法が、前記改変試料を薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって、細胞移植片を含む医薬組成物を産生することをさらに含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置するかまたは防止する方法であって、請求項33によって得られる医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項35】
前記複数の細胞が環境的試料(例えば、水性、水、油、石油、土壌、または流体試料)に含まれる、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
標的細胞によって媒介されるヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置しまたは防止する方法における使用のための組成物であって、前記組成物が、構成要素(a)、(b)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1のcrRNAおよび核酸
を含み、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
前記方法が、前記組成物を前記対象に投与することであって、それによって前記組成物の前記構成要素が標的細胞に導入され、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が各細胞において提供され、各細胞のゲノムがCas改変を受け、前記疾患または状態が処置または防止される、投与することを含む、
組成物。
【請求項37】
前記処置することまたは防止することが、前記細胞において、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法を実行することを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記方法が、標的細胞によって前記対象の感染を低減させるためのものである(任意に、前記標的細胞が病原性細胞である)、請求項36または37に記載の組成物。
【請求項39】
構成要素(a)、(b)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸がcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1のcrRNAおよび核酸
を含む組成物であって、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
前記組成物の前記構成要素を標的細胞に導入することによって、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が前記細胞において提供される場合、前記細胞のゲノムがCas改変を受ける、
組成物。
【請求項40】
各細胞のゲノムが編集されるか、または前記細胞が死滅する、請求項36から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
各細胞が原核細胞(任意に、細菌または古細菌細胞)である、請求項36から40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記核酸(単数または複数)が、ウイルス、ファージ、プラスミド(任意に、接合性プラスミド)、ナノ粒子、またはファージミドに含まれる、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項43】
前記核酸(単数または複数)がC1および/またはC2をコードする、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項44】
C1がI型Casであり、前記核酸(単数または複数)が、C1と作動可能である1つまたは複数のCascade Casをコードし、および/またはC2がI型Casであり、前記核酸(単数または複数)が、C2と作動可能である1つまたは複数のCascade Casをコードする、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項45】
請求項36から43のいずれか一項に記載の組成物である医薬組成物であって、前記組成物が薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物。
【請求項46】
滅菌薬剤投与デバイス、任意に、シリンジ、IVバッグ、鼻腔内送達デバイス、吸入器、ネブライザー、または直腸投与デバイス)に含まれる、請求項36から45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記細胞が、前記対象の腸管、肺、腎臓、尿道、膀胱、血液、膣、または皮膚のマイクロバイオームに含まれる、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項48】
前記方法がヒトまたは動物の対象において実行され、前記細胞が前記方法によって死滅し、前記死滅は、前記対象における免疫細胞を上方制御するかまたは下方制御する(任意に、(i)CD8、CD4、TH1、TH2、TH17、制御性T細胞、もしくはエフェクターT細胞を上方制御するか、または(ii)CD8、CD4、TH1、TH2、TH17、制御性T細胞、もしくはエフェクターT細胞を下方制御する)ことによって、前記対象における疾患または状態を処置するかまたは防止する、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項49】
前記方法が、少なくとも3つの異なる型のcrRNAを、各細胞に導入すること、または各細胞において発現させることを含み、前記異なる型が、前記細胞のゲノムに含まれる異なるプロトスペーサー配列を標的とし、任意に、C1およびC2が、クラス1Casヌクレアーゼである、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項50】
前記方法が、Cas3、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5、およびCas6をコードする核酸、ならびに/またはCas3、Cas6、Cas8b、Cas7、およびCas5をコードする核酸を各細胞に導入することを含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物または方法。
【請求項51】
細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が
(a)前記ゲノムの第1のプロトスペーサーを改変するために、第1のCRISPR/Cas系を使用すること、および
(b)前記ゲノムの第2のプロトスペーサーを改変するために、第2のCRISPR/Cas系を使用することであって、前記第2のプロトスペーサーが前記第1のプロトスペーサーと異なる、使用すること
を含み、
前記系が、異なるCasを含み、前記細胞において同時に提供される、
方法。
【請求項52】
請求項1から35のいずれか一項に記載のものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
(a)細胞のゲノムの相乗的Casヌクレアーゼ切断を生じさせるか、
(b)第1の種もしくは株の細胞の集団を、少なくとも100000、1000000、もしくは10000000倍低減させるか、
(c)マイクロバイオームに含まれる第1の種もしくは株の少なくとも少なくとも99%、99.9%。99.99%、99.999%、99.9999%、もしくは99.99999%の細胞を死滅させるか、
(d)細胞のゲノムの相乗的クラス1 Cas改変を生じさせるか、または
(e)それぞれ少なくとも100000個、1000000個、もしくは10000000個の細胞を含む細胞集団における第1の種もしくは株(例えば、E coli細胞)の細菌細胞を、10、10、もしくは10倍低減させる
方法であって、
前記方法が請求項1から35、51および52のいずれか一項に記載のものである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のCRISPR/Cas系を使用して細胞のゲノムを改変する方法に関する。本発明は、本明細書に開示されるかかる方法を実行するための組成物、crRNA、Cas、およびベクターにも関する。
【背景技術】
【0002】
当業技術には、ベクターと、CRISPR/Cas系を用いる前記ベクターの使用とが記載されている。例えば、WO2020078893、WO2019185551、WO2019105821、WO2017118598、US20180140698、US20170246221、US20180273940、US20160115488、US20180179547、US20170175142、US20160024510、US20150064138、US20170022499、US20160345578、US20180155729、US20180200342、WO2017112620、WO2018081502、PCT/EP2018/066954、PCT/EP2018/066980、PCT/EP2018/071454、EP3356533、EP3307872、WO2020072253、WO2020072254、WO2020072250、WO2020072248、WO2019236566、WO2019144061、WO2017112620、WO2015066119、EP16804164、WO2019227080、EP3362571、EP3356533、WO2016205623、EP3307872、US2016/0324938、およびUS2019/0160120、ならびに米国特許商標庁(USPTO)またはWIPOによる同等の刊行物が参照されるが、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以下の構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の構成において、
細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が
(a)前記ゲノムの第1のプロトスペーサーを改変するために、第1のCRISPR/Cas系を使用すること、および
(b)前記ゲノムの第2のプロトスペーサーを改変するために、第2のCRISPR/Cas系を使用することであって、前記第2のプロトスペーサーが前記第1のプロトスペーサーと異なる、使用すること
を含み、
前記系が、異なるCasを含み、前記細胞において同時に提供される、
方法。
【0005】
第2の構成において、
1つまたは複数の細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が、構成要素(a)、(b)、(c)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために前記細胞において発現される、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために前記細胞において発現される、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために前記細胞において発現される、第1のcrRNAおよび核酸
を各細胞に導入することを含み、
各細胞について、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を前記細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
(i)crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が前記細胞において提供され、それにより前記細胞のゲノムがCas改変を受ける、
方法。
一態様では、本発明は、標的細胞を死滅させるために前記方法を使用している。別の態様では、本発明は、細胞のゲノムを編集するために前記方法を使用している。
【0006】
第3の構成において、
標的細胞によって媒介されるヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置しまたは防止する方法における使用のための組成物であって、前記組成物が、構成要素(a)、(b)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1のcrRNAおよび核酸
を含み、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
前記方法が、前記組成物を前記対象に投与することであって、それによって前記組成物の前記構成要素が標的細胞に導入され、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が各細胞において提供され、各細胞のゲノムがCas改変を受け、前記疾患または状態が処置または防止される、投与することを含む、
組成物。
【0007】
第4の構成において、
構成要素(a)、(b)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸がcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1のcrRNAおよび核酸
を含む組成物であって、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
前記組成物の前記構成要素を標的細胞に導入することによって、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が前記細胞において提供される場合、前記細胞のゲノムがCas改変を受ける、
組成物。
【0008】
態様は、
(a)細胞のゲノムの相乗的Casヌクレアーゼ切断を生じさせるためか、
(b)第1の種もしくは株の細胞の集団を、少なくとも100000倍、1000000倍、もしくは10000000倍低減させるためか、
(c)マイクロバイオームに含まれる第1の種もしくは株の少なくとも少なくとも99%、99.9%。99.99%、99.999%、99.9999%、もしくは99.99999%の細胞を死滅させるためか、
(d)細胞のゲノムの相乗的クラス1 Cas改変を生じさせるためか、または
(e)それぞれ少なくとも100000個、1000000個、もしくは10000000個の細胞を含む細胞集団における第1の種もしくは株(例えば、E coli細胞)の細菌細胞を、少なくとも105倍、106倍、もしくは107倍低減させる、
本発明の方法を提供する。
【0009】
態様は、医薬組成物、そのような組成物を作製する方法、およびそのような組成物を使用する医療方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】E.coli MG1655を標的とするE.coliおよびC.difficileのI型CRISPR-Cas系。CRISPR Guided Vector(商標)、CGV(商標)のレイアウト。(A)E.coli CRISPR-Cas CGV:ColE1 ori、cas3、およびE.coliのcascade、CRISPRアレイ。(B)C.difficile CRISPR Cas CGV。プラスミド1:pSC101 ori、cas3、およびC.difficileのcascade。プラスミド2:pCloDF13 ori、C.difficileのCRISPRアレイ。
図1B】同上。
図2】E.coliのIE型CRISPR-Cas系およびC.difficileのI-B型CRISPR-Cas系によるE.coli MG1655の死滅。C.difficileのcas遺伝子を有するE.coli MG1655を関連するCRISPRアレイおよびE.coli CRISPR-Cas CGVで形質転換した。両CRISPR系は、共に、空のベクターと比較して、7log10E.coli MG1655を驚くほど相乗的に死滅させた。さらに、CGVによる単回の形質転換を試験した。E.coli CRISPR-Cas系は約4-log10の低減となり、C.difficile CRISPR-Cas系は約3-log10となった(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、複数のCRISPR/Cas系を使用して細胞のゲノムを改変する方法に関する。本発明は、本明細書に開示されるものなどの方法を実行するための組成物、crRNA、Casおよびベクターにも関する。
【0012】
本発明は、以下の利点:
(a)細胞のゲノムの相乗的Casヌクレアーゼ切断を生じさせること、
(b)少なくとも100000倍、1000000倍、もしくは10000000倍、第1の種もしくは株の細胞の集団を低減させること、
(c)マイクロバイオームに含まれる第1の種もしくは株の少なくとも少なくとも99%、99.9%。99.99%、99.999%、99.9999%、もしくは99.99999%の細胞を死滅させること、
(d)細胞のゲノムの相乗的クラス1 Cas改変を生じさせること、または
(e)それぞれ少なくとも100000個、1000000個、もしくは10000000個の細胞を含む細胞集団における第1の種もしくは株の細菌細胞を、少なくとも10倍、10倍、もしくは10倍低減させること
の1つまたは複数を提供するために有用である。
【0013】
有利には、これは、細胞集団における標的細胞の数を低減させることによって、細胞が望ましくない(例えば、方法が適用される対象の健康に対する有害であるか、または、ex vivoにおける環境、または方法が適用されるか、もしくは組成物が投与されるin vitroにおける細胞試料に有害である)場合に有益である可能性がある。例えば、細胞は、患者に含まれるがん細胞であり、本発明の複数のCas切断は、非常に多く(例えば、少なくとも99.999%または10倍)の細胞を相乗的に死滅させる。このようにして細胞を低減させることによって、がんを再成長させる播種細胞の数が低減する。別の例では、細胞は、細菌または古細菌細胞であってもよく、このようにして細胞を低減させることによって、望ましくない細胞集団を再成長させる播種細胞の数字が低減することになる。
【0014】
構成において、本発明は、一態様では、
細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が、
(a)前記ゲノムの第1のプロトスペーサーを改変するために第1のCRISPR/Cas系を使用すること、および
(b)前記ゲノムの第2のプロトスペーサーを改変するために第2のCRISPR/Cas系を使用することであって、前記第2のプロトスペーサーが前記第1のプロトスペーサーと異なる、使用すること
を含み、
前記系が異なるCasを含み、同時に使用される、方法を提供する。
【0015】
前記構成の別の態様は、
1つまたは複数の細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が、構成要素(a)、(b)、(c)、または(d):
(a)第1および第2のcrRNA、
(b)第1および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために前記細胞において発現される、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために前記細胞において発現される、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために前記細胞において発現される、第1のcrRNAおよび核酸
を各細胞に導入することを含み、
各細胞について、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を前記細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
(i)crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が前記細胞において提供され、それにより前記細胞のゲノムがCas改変を受ける、
方法を提供する。
【0016】
任意に、C1および/またはC2はCasヌクレアーゼであり、例えば、C1およびC2は各々Cas3である。任意に、C1および/またはC2は、Cascade Cas、例えば、CasA、CasB、CasC、CasD、またはCasEである。任意に、C1は、Cascade Cas、例えば、CasA、B、C、D、およびEの1つ、複数、または全てで細胞において作動するCas3である。
【0017】
任意に、構成要素(a)のcrRNAは、同時にまたは逐次的に導入される。任意に、構成要素(c)の核酸およびcrRNAは、同時にまたは逐次的に導入される。任意に、構成要素(d)の核酸は、同時にまたは逐次的に導入される。しかし、方法は、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が各細胞において同時に存在することを含み、それによって複数のCRISPR/Cas系はゲノムを改変するために使用される。crRNA1、crRNA2、C1、およびC2は、細胞において提供され、それによってPS1およびPS2はCasヌクレアーゼ改変を受け、細胞のゲノムは改変される。
【0018】
好ましくは、第1のプロトスペーサーおよび第2のプロトスペーサーは異なるか、またはゲノムの異なる遺伝子もしくは遺伝子間配列に含まれる。
【0019】
ゲノムの改変は、ゲノムの核酸の切断、ゲノムに含まれる遺伝子の転写もしくは翻訳の抑制、ゲノムに含まれる遺伝子の転写もしくは翻訳の上方制御、またはゲノムの編集(例えば、1つまたは複数の核酸配列を挿入しおよび/または欠失させるため)であってもよい。本発明は、各細胞のゲノムを相乗的にまたは効率的に切断するか、改変するか、または編集するために、有利には有用であってもよい。一例では、ゲノムに含まれるDNAは、切断されるか、改変されるか、もしくは編集され、および/またはゲノムに含まれるRNAは、切断されるか、改変されるか、もしくは編集される。一例では、ゲノムに含まれるDNAは、(例えば、Casエキソまたはエンドヌクレアーゼ活性を含むプロセスにおいて)分解され、および/またはゲノムに含まれるRNAは、(例えば、Casエキソまたはエンドヌクレアーゼ活性を含むプロセスにおいて)切断されるか、改変されるか、もしくは編集される。
【0020】
一例では、構成要素は核酸ベクターに含まれる。一例では、構成要素(a)、(b)、(c)、または(d)は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、または接合性移入によって各細胞に導入される。例えば、ベクターはウイルスまたはファージであり、構成要素は形質導入によって導入される。例えば、ベクターはプラスミドであり、構成要素は、接合、トランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって導入される。例えば、ベクターはファージミドであり(任意に、ウイルスまたはファージに含まれるファージミド)、構成要素は、接合、形質導入、トランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって導入される。例えば、構成要素の核酸は、そのエレクトロポレーションによって導入される。例えば、本明細書におけるファージは尾状ファージである。例えば、本明細書におけるファージは溶菌性ファージである。例えば、本明細書におけるファージは非溶菌性ファージである。
【0021】
任意に、方法は、in vitroで実行される組み換え方法であり、例えば、細胞はE coli細胞である。
【0022】
任意に、各々の前記crRNAは、第1の反復配列および第2の反復配列ならびに前記反複配列を接合するスペーサー配列を含むCRISPRアレイによってコードされる。任意に、(b)の核酸は、crRNA1およびcrRNA2をコードするCRISPRアレイを含む。任意に、(c)の第1の核酸は、crRNA1をコードする第1のCRISPRアレイを含み、第2の核酸は、crRNA2をコードする第2のCRISPRアレイを含む。任意に、(b)の核酸は、crRNA2をコードするCRISPRアレイを含む。
【0023】
一例では、各反復配列は、GAGTTCCCCGCGCCAGCGGGGATAAACCGまたはGTTTTATATTAACTAAGTGGTATGTAAATである。一例では、各プロトスペーサー配列または各スペーサー配列は、15~70個、20~50個、17~45個、18~40個、18~35個、または20~40個の隣接するヌクレオチドからなる。
【0024】
任意に、Cas1および/またはCas2は、各細胞に導入されない。任意に、各核酸は、Cas1および/またはCas2をコードする核酸配列を欠く。任意に、さらに、Cas4は各細胞に導入されないか、または各核酸はCas4をコードする核酸配列を欠く。任意に、前記導入は、(i)一般的な構造性プロモーターの制御下においてI型Cas3(Cas3がC1である)をコードするヌクレオチド配列とCascadeタンパク質とを含むオペロンを各細胞に導入すること、および/または一般的な構造性プロモーターの制御下でI型Cas3(Cas3がC2である)をコードするヌクレオチド配列とCascadeタンパク質とを含むオペロンを各細胞に導入することを含む。一例では、C1はIB型Cas3であり、および/またはC2はIE型Cas3である。適切なオペロンの例は、WO2020078893またはUS20200115716に開示されており、それらの開示は、本発明における可能な使用のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。用語「オペロン」は、当業者、例えば、それぞれ発現産生物(例えば、それぞれの翻訳可能mRNA)をコードする少なくとも発現可能な2つのヌクレオチド配列であって、前記配列が一般的なプロモーターの制御下にある、2つのヌクレオチド配列を含むDNAの機能部に関連する当業者に知られている。
【0025】
一例では、C1は、WO2019002218に開示されているCasであり、任意に、第1のcrRNAは、関連する反復配列を含むCRISPRアレイによってコードされ、例えば、C1がWO2019002218に開示されているCas(例えば、Cas3)である場合、反復配列は、WO2019002218に開示されている関連する反復配列である。さらにまたはその代わりに、一例では、C2は、WO2019002218に開示されているCasであり、任意に、第1のcrRNAは、関連する反復配列を含むCRISPRアレイによってコードされ、例えば、C2がWO2019002218に開示されているCas(例えば、Cas3)である場合、反復配列は、WO2019002218に開示されている関連する反復配列である。一例では、第1のcrRNAは、WO2019002218に開示されている反復配列を含むアレイによってコードされ、および/または第2のcrRNAは、WO2019002218に開示されている反復配列を含むアレイによってコードされる。例えば、(例えば、C1またはC2に関連する)1つまたは複数のCascade Casをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列は細胞に導入され、Cascade Casは、WO2019002218に開示されているCascade Casである。WO2019002218におけるこれらの開示の全ては、本発明における可能な使用のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0026】
任意に、
(a)C1はクラス1 Casであり、C2はクラス1 Casであり、
(b)C1はクラス1 Casであり、C2はクラス2 Casであり、
(c)C1はクラス2 Casであり、C2はクラス2 Casであり、
(d)C1はI型Cas(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、またはI-U型)であり、C2はI型Cas(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)であり、
(e)C1はI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2はII型Casであり、
(f)C1はI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2はIII型Cas(任意に、I-A型もしくはI-B型)であり、
(g)C1はI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2はIV型Casであり、
(h)C1はI型(任意に、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、もしくはI-U型)CasもしくはII型Casであり、C2はV型Casであり、または
(i)C1はI型CasもしくはII型Casであり、C2はVI型Casである。
【0027】
任意に、C1およびC2は、表2に開示されるCasから選択される異なるクラス1 Casである。任意に、C1はE coli Cas(例えば、Cas3)であり、C2は、表2に開示されるCasから選択されるCasである。任意に、C1はC dificile Cas(例えば、Cas3)であり、C2は、表2に開示されるCasから選択されるCasである。
【0028】
任意に、C1は、I-A型Cas、I-B型Cas、I-C型Cas、I-D型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C2は、I-A型Cas、I-B型Cas、I-C型Cas、I-D型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。
【0029】
任意に、C1はI-A型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C1はI-B型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C1はI-C型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C1はI-D型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C1はI-E型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C1はI-F型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。任意に、C1はI-U型Casであり、C2は、I-B型Cas、I-C型Cas、I-E型Cas、I-F型Cas、またはI-U型Casである。
【0030】
任意に、
(a)C1は、IB型CasもしくはC型Casであり、C2はI-E型CasもしくはI-F型Casであり(任意に、C1はIB型Cas3であり、C2はIE型Casである)、
(b)C1は、IC型CasもしくはC型Casであり、C2はI-E型CasもしくはI-F型Casであり(任意に、C1はIC型Cas3であり、C2はIE型Cas3である)、または
(c)C1はII型Cas9であり、C2はI型Cas3である(任意に、C2は、E coli IE型Cas3もしくはE coli F型Cas3であるか、またはC difficile Cas IBである)。
【0031】
任意に、
(a)C1はCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、C2はCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、
(b)C1はCas9であり、C2はCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、
(c)C1はCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、C2はCas10(任意に、Cas10サブタイプA、Cas10サブタイプB、Cas10サブタイプC、もしくはCas10サブタイプD)であり、
(d)C1はCas9であり、C2はCas10(任意に、Cas10サブタイプA、Cas10サブタイプB、Cas10サブタイプC、もしくはCas10サブタイプD)であり、
(e)C1はCas9であり、C2はCas12(任意に、Cas12a)であり、
(f)C1はCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、もしくはI-U型Cas3)であり、C2はCas12(任意に、Cas12a)であり、
(g)C1はCas9であり、C2はCas13(任意に、Cas13a、Cas13b、Cas13c、もしくはCas13d)であり、または
(h)C1はCas3(任意に、I-A型Cas3、I-B型Cas3、I-C型Cas3、I-D型Cas3、I-E型Cas3、I-F型Cas3、またはI-U型Cas3)であり、C2はCas13(任意に、Cas13a、Cas13b、Cas13c、もしくはCas13d)である。
【0032】
任意に、PS1およびPS2は、
(a)それぞれRNAおよびRNA、
(b)それぞれDNAおよびRNA、
(c)それぞれRNAおよびDNA、または
(d)それぞれDNAおよびDNA
に含まれるプロトスペーサーである。
【0033】
任意に、C1は、ClostridiaceaeのCas3(任意に、I-B型Cas3などのC difficile Cas3)であり、C2は、EnterobacteriaceaeのCas3(任意に、I-E型Cas3などのE coli Cas3)である。
【0034】
代替では、C1およびC2は同じである。代替では、C1およびC2は同じ型のCasであり、例えば、各々はCas9であるか、または各々はCas3であるか、または各々はCas12であるか、または各々はCas13であるか、または各々は、同じ型のCascade Casである。
【0035】
任意に、C1は、Biostraticola、Buttiauxella、Cedecea、Citrobacter、Cronobacter、Enterobacillus、Enterobacter、Escherichia、Franconibacter、Gibbsiella、Izhakiella、Klebsiella、Kluyvera、Kosakonia、Leclercia、Lelliottia、Limnobaculum、Mangrovibacter、Metakosakonia、Pluralibacter、Pseudescherichia、Pseudocitrobacter、Raoultella、またはRosenbergiellaのCas(例えば、Cas3またはCascadeのCas)である。
【0036】
任意に、C1はspCas9(S pyogenes Cas9)またはsaCas9(S aureus Cas9)であり、C2はI型Cas3である(任意に、C2はE coli I-E型Cas3またはE coli F型Cas3である)。
【0037】
任意に、改変は、ゲノムの切断、例えば、ゲノムのDNA(例えば、ssDNAまたはdsDNA)、RNA(例えば、mRNA、crRNA、tracrRNA、tRNA、snRNA、またはrRNA、好ましくはmRNA)の切断、エンドヌクレアーゼ切断もしくはエキソヌクレアーゼ切断、またはゲノムのdsDNA(二本鎖DNA)の両方の鎖でなく、一方の切断、またはゲノムのdsDNAのニッキングである。
【0038】
任意に、PS1は細胞の染色体配列である。任意に、PS1は細胞のエピソーム(例えば、プラスミド)配列である。
【0039】
任意に、PS1は細胞の染色体配列であり、PS2は細胞の染色体配列である。任意に、PS1は細胞の染色体配列であり、PS2は細胞のエピソーム(例えば、プラスミド)配列である。
【0040】
任意に、各細胞は、ヒト、動物(すなわち、非ヒト動物)、植物、酵母、真菌、アメーバ、昆虫、哺乳動物、脊椎動物、鳥類、魚類、爬虫類、齧歯類、マウス、ラット、家畜動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、カエル(frog)、カエル(toad)、原生動物、無脊椎動物、軟体類、ハエ、草、木、顕花植物、果樹、作物植物、小麦、トウモロコシ、メイズ、大麦、ジャガイモ、ニンジン、または地衣類の細胞である。任意に、各細胞は、原核細胞または真核細胞である。例えば、各細胞は細菌または古細菌細胞であり、任意に、E coli細胞またはC difficile細胞である。一実施形態では、前記1つの細胞または前記複数の細胞は、表1に開示される属または種のものである。一実施形態では、前記1つの細胞または前記複数の細胞は、グラム陽性細胞である。一実施形態では、前記1つの細胞または前記複数の細胞は、グラム陰性細胞である。
【0041】
任意に、導入ステップは、細胞をウイルス(任意に、バクテリオファージ、ここで、細胞は細菌細胞である)に感染させること、または細胞にプラスミド(任意に、接合性プラスミド)を導入することもしくはファージミドを導入することを含み、ウイルス、プラスミド、またはファージミドがcrRNAをコードする。任意に、ウイルス、プラスミド、またはファージミドは、C1および/またはC2をコードする。任意に、ウイルス、プラスミド、またはファージミドは、前記C1および前記C2の一方をコードし、他方のCasは、細胞のゲノムによってコードされる内因性Casである。任意に、C1およびC2の各々は、細胞のゲノムによってコードされる内因性Casである。一例では、Casは、細胞の染色体によってコードされる。
【0042】
任意に、C1はCas3であり、ウイルスまたはプラスミドは、Cas3に関連するCas5、Cas6、Cas7、およびCas8(および、任意に、Cas11)をコードする。さらにまたはその代わりに、任意に、C2はCas3であり、ウイルスまたはプラスミドは、Cas3に関連するCas5、Cas6、Cas7、およびCas8(任意に、Cas11)をコードする。
【0043】
Casは、細胞に同時に存在し、Casは、ゲノムを同時にまたは逐次的に切断してもよい。
【0044】
任意に、方法は、型が細胞のゲノムに含まれる異なるプロトスペーサー配列(例えば、異なる染色体配列)を標的とする、少なくとも3、4、または5つの異なる型のcrRNAを、各細胞に導入すること、または各細胞において発現させることを含む。一例では、細胞は細菌または古細菌細胞であり、プロトスペーサーは細胞染色体に含まれる。例えば、crRNAの型の少なくとも1つまたは2つは、それぞれの染色体配列を標的とし、crRNAの型の少なくとも1つまたは複数は、細胞が細菌または古細菌細胞である細胞のエピソーム(例えば、プラスミド)に含まれる配列を標的とする。例えば、細胞(例えば、ヒトまたは哺乳動物細胞)は、複数の染色体を含み、crRNAは、前記染色体の2つ以上に含まれるプロトスペーサー配列を標的とする(例えば、染色体は、同じ倍数染色体対のメンバーではない)。
【0045】
例えば、方法は、核酸を各細胞に導入することであって、核酸が、5’から3’の方向に、Casヌクレアーゼ(例えば、cas3)をコードするヌクレオチド配列と、関連するプロトスペーサー配列を改変するためにCasヌクレアーゼと作動可能である1つまたは複数のCascade Cas(例えば、cas8e、cas11、cas7、cas5、およびcas6;またはcas6、cas8b、cas7、およびcas5)をコードする1つまたは複数の配列とを含む、導入することを含んだ。
【0046】
核酸は、好ましくは適応モジュールを欠いている。任意に、モジュールは、Cas1およびCas2、またはCas1、Cas2、およびCas4をコードする。
【0047】
一実施形態では、核酸は、それぞれ細胞の少なくとも3つ、4つ、または5つの配列を標的とする少なくとも3つ、4つ、または5つのスペーサー配列を含むアレイなど、crRNAをコードするCRISPRアレイを含む。例えば、複数の染色体遺伝子間領域が標的とされる。任意に、各スペーサー配列は、20~50、20~40、22~40、25~40、または30~35の連続したヌクレオチド、例えば、32または37のヌクレオチドからなる。
【0048】
一例では、アレイは、反復配列によって分離される以下のスペーサー配列(スペーサー1~3):
TGATTGACGGCTACGGTAAACCGGCAACGTTC、
GCTGTTAACGTACGTACCGCGCCGCATCCGGC、および
CGGACTTAGTGCCAAAACATGGCATCGAAATT
(すなわち、スペーサー1-反複-スペーサー2-反複-スペーサー3)
を含む。
【0049】
別の例では、アレイは、反復配列によって分離される以下のスペーサー配列(スペーサー4~8):
GCCATAATCTGGATCAGGAAGTCTTCCTTATCCATAT、
GGCTTTACGCCAGCGACGTATTGCCACAGGAATAACT、
GGGGATAGCGCGCCTGGAGCGTGCGATAGAGACTTTG、
【0050】
GGCATTTACCGACCAGCCCATCAGCAGTACAGCAAAC、および
TCCTGAATCAAATCCGCCTGTGGCAGGCCATAGCCCG
(すなわち、スペーサー4-反複-スペーサー5-反複-スペーサー6-反複-スペーサー7-反複-スペーサー8)
の3つ、4つ、または5つを含む。
【0051】
任意に、各反復配列は、20~50、20~40、22~40、25~40、または30~35の連続したヌクレオチド、例えば、29のヌクレオチドからなる。例えば、各反復配列はGAGTTCCCCGCGCCAGCGGGGATAAACCG(および、任意に、CasはE coli Casである)からなる。別の例では、各反復配列は、(および、任意に、CasはC dificile Casである)からなる。
任意に、各crRNAは、一般的なまたはそれぞれの構造性プロモーターの制御下にある核酸(単数または複数)から発現する。
【0052】
任意に、各Casは、一般的なまたはそれぞれの構造性プロモーターの制御下にある核酸(単数または複数)から発現する。一実施形態では、第1のcrRNAおよびC1は一般的な構造性プロモーターの制御下で発現し、および/または第2のcrRNAおよびC2は一般的な構造性プロモーターの制御下で発現する。例えば、プロモーターは、同じプロモーターであるか、または異なるプロモーターである。一例では、前記プロモーターの全ての1つ、複数は、強力なプロモーターである。プロモーターは、WO2020078893またはUS20200115716に開示されている任意のプロモーターであってもよく、そのようなプロモーター(ならびに1つまたは複数のそのようなプロモーターを含む核酸、オペロンおよびベクター)の開示は、本発明における可能な使用のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0053】
一実施形態では、第1の複数の異なるcrRNAは各細胞において1つまたは複数で発現し、各crRNAはゲノムの改変をガイドするためにCS1と作動可能であり、前記複数は、細胞のゲノムに含まれる、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20(好ましくは、少なくとも2、3、4、もしくは5、またはちょうど2、3、4、もしくは5)の異なるプロトスペーサーを標的とし、および/あるいは、第2の複数の異なるcrRNAは各細胞において発現し、各crRNAはCS2と作動可能であり、前記第2の複数は、細胞のゲノムに含まれる、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20(好ましくは、少なくとも2、3、4、もしくは5、またはちょうど2、3、4、もしくは5)の異なるものを標的とする。例えば、前記第1の複数は、2~10、例えば、2~7の異なるcrRNAを含む。例えば、前記第2の複数は、2~10、例えば、2~7の異なるcrRNAを含む。
【0054】
任意に、方法によって、前記細胞の1つもしくは複数または全てが死滅する。任意に、方法によって、前記細胞の1つもしくは複数または全ての成長または増殖が低減する。有用には、細胞が原核細胞(例えば、細菌または古細菌細胞)である場合、細胞の染色体はCasによって切断される。例えば、細菌細胞染色体はC1およびC2によって切断され、細胞は死滅する。
【0055】
任意に、第1のcrRNA(もしくは前記第1の複数の各crRNA)はガイドRNAに含まれ、ガイドRNAはtracrRNAをさらに含み、および/または第2のcrRNA(もしくは前記第2の複数の各crRNA)はガイドRNAに含まれ、ガイドRNAはtracrRNAをさらに含む。任意に、第1のcrRNA(もしくは前記第1の複数の各crRNA)はキメラガイドRNAに含まれ、および/または第2のcrRNA(もしくは前記第2の複数の各crRNA)はキメラガイドRNAに含まれる。
【0056】
例えば、複数の細胞のゲノム改変はゲノム核酸(例えば、染色体DNA)の切断であり、細胞は死滅するが、複数の細胞の前記死滅は、C1またはC2を単独で使用して死滅させることと比較して相乗的である。
【0057】
一態様は、
第1の種または株の複数の細胞(任意に、細菌細胞などの原核細胞)の成長または増殖を死滅させるかまたは低減させる方法であって、方法が、細胞を使用して本発明の方法を実行することを含み、C1および/またはC2がCasヌクレアーゼであり、細胞のゲノムがCasヌクレアーゼ切断によって切断され、細胞が死滅するか、または細胞の成長もしくは増殖が低減する、方法を提供する。
【0058】
任意に、本明細書に例示されるように、方法は、前記複数の細胞の数を、少なくとも10倍、10倍、または10倍に、例えば、10倍~10倍の間、または10倍~10倍の間、または10倍~10倍の間で低減させる。当業者は、例えば、マイクロバイオームまたは細胞集団を代表する細胞試料を使用して細胞における死滅または低減の倍数を決定することに精通している。例示的な例は、以下の実施例で示される。例えば、成長または増殖における死滅または低減の程度は、細胞試料、例えば、本発明の組成物が投与された対象から得られた試料、または本発明の組成物と接触した環境(例えば、水源、水路、もしくは野原)から得られた環境的試料(例えば、水性、水、もしくは土壌試料)を使用して決定される。
【0059】
例えば、方法は、複数の細胞の数を、少なくとも10倍、10倍、または10倍低減させ、任意に、前記複数は、それぞれ少なくとも100000個、1000000個、または10000000個の細胞を含む。
【0060】
任意に、複数の細胞は細胞集団に含まれ、集団の細胞の少なくとも5log10、6log10、または7log10が方法によって死滅し、任意に、前記複数は、それぞれ少なくとも100000個、1000000個、または10000000個の細胞を含む。
【0061】
本明細書における細胞は、細菌細胞である場合、表1から選択される第1の種または属のものであってもよい。同様に、本明細書における複数の細胞は、表1から選択される種または属の細胞であってもよい。
【0062】
任意に、本明細書に例示されるように、方法によって、前記複数の少なくとも99%、99.9%.99.99%、99.999%、99.9999%、または99.99999%の細胞が死滅する。
【0063】
一例では、方法は、集団(または前記複数)の前記細胞において実行され、方法によって、前記集団(または前記複数)の細胞の全て(または実質的に全て)が死滅するか、改変されるか、または編集される。一例では、方法は、集団(または前記複数)の前記細胞において実行され、方法によって、前記集団(または複数)の細胞の100%(または約100%)が死滅するか、改変されるか、または編集される。
【0064】
任意に、種は、E coliまたはC difficileである。
【0065】
本発明の一態様は、1つまたは複数の細胞のゲノムを編集する方法であって、
(a)本発明の方法を実行することによって各細胞のゲノムを改変することであって、ゲノムがCas切断を受ける、改変すること、ならびに
(b)ゲノムにおけるCas切断部位においてもしくは隣接して核酸を挿入すること、および/またはゲノムにおけるCas切断部位においてもしくは隣接してゲノムから核酸配列を欠失させることであって、編集されたゲノムを有する細胞が産生される、挿入すること、および/または欠失させること、ならびに
(c)挿入もしくは欠失を含む核酸を細胞から任意に単離すること、または、細胞の核酸配列を配列決定することであって、核酸配列が挿入もしくは欠失を含む、配列決定すること
を含む方法を提供する。
【0066】
一例では、方法は、集団が前記細胞の少なくとも100を含み、前記細胞の少なくとも90%または99%が編集される、前記細胞の集団において実行される。
【0067】
一実施形態では、方法は、例えば、1つまたは複数のE coli細胞における、組み換えの方法である。
【0068】
挿入は、切断部位に直接隣接してもよいか、もしくは重なってもよいか、または挿入は、1kb、2kb以内であるか、または切断部位の200、150、100、50、25、10、もしくは5のヌクレオチドであってもよい。例えば、核酸は、相同組換えによって挿入される。一実施形態では、核酸は、相同組換えによって挿入され、1~100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、もしくは5kb、またはゲノムの200、150、100、50、25、10、または5のヌクレオチドのゲノム配列を置換する(配列は、欠失させたゲノム配列の場所において挿入される)。例えば、欠失させたゲノム配列は、切断部位のいずれの側もフランクするか、または切断部位の5’側もしくは3’側にある。一実施形態では、核酸は、相同組換えによって挿入され、いずれのゲノム配列も置換しない。
【0069】
欠失は、切断部位に直接隣接してもよいか、もしくは重なってもよいか、または欠失は、1kb、2kb以内であるか、または切断部位の200、150、100、50、25、10、もしくは5のヌクレオチドであってもよい。例えば、欠失は、1~100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2、もしくは1kb、またはゲノムの200、150、100、50、25、10、もしくは5のヌクレオチドの欠失である。例えば、欠失させたゲノム配列は、切断部位のいずれの側もフランクするか、または切断部位の5’側もしくは3’側にある。
【0070】
例えば、挿入された核酸はDNAである。例えば、欠失させた核酸は、DNA、例えば、染色体またはエピソームDNA)である。
【0071】
例えば、挿入された核酸は、少なくとも100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2もしくは1kb(または100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2もしくは1kb以下)であるか、または長さが200、150、100、50、25、10、もしくは5の連続したヌクレオチドである。例えば、欠失させたゲノム核酸は、少なくとも100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2、もしくは1kb(または100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2、もしくは1kb以下)であるか、または長さが200、150、100、50、25、10、もしくは5の連続したヌクレオチドである。
【0072】
例えば、ゲノム配列はDNAである。例えば、ゲノムDNAは欠失または置換される。例えば、ゲノムDNAは欠失または置換され、編集はDNA配列を(例えば、切断部位における、または切断部位をフランクする)ゲノムに挿入する。
【0073】
例えば、ゲノム配列はRNAである。例えば、ゲノムRNAは欠失または置換される。例えば、ゲノムRNAは欠失または置換され、編集はRNA配列を(例えば、切断部位における、または切断部位をフランクする)ゲノムに挿入する。
【0074】
任意に、方法は、
(a)改変細胞を培養してその子孫を産生すること、および、任意に、子孫細胞を単離すること、または
(b)ステップ(c)における細胞から得られた配列をレシピエント細胞に挿入し、それから細胞系を成長させること
をさらに含む。
【0075】
任意に、子孫細胞または細胞系は、挿入された核酸配列を含むヌクレオチド配列によってタンパク質が(全てまたは部分的に)コードされるタンパク質を発現し、方法は、発現タンパク質を得ること、または細胞もしくは細胞系から発現タンパク質を単離することをさらに含む。
【0076】
任意に、方法は、子孫細胞、細胞系、またはタンパク質を薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって、医薬組成物を生成することをさらに含む。
【0077】
一実施形態では、挿入された核酸は、挿入と隣接する編集されたゲノムの1つまたは複数の核酸配列の発現を制御するための転写および/または翻訳制御エレメントを含む。例えば、挿入された核酸は、プロモーター、例えば、構造性または強力なプロモーターを含む。別の例では、エレメントは転写ターミネーターまたは翻訳ターミネーターであり、例えば、挿入配列は停止コドンを含む。このようにして、編集されたゲノムにおける挿入配列と隣接する遺伝子(または遺伝子の一部)の転写は終止するか、または防止されるか、または低減する。
【0078】
一例では、欠失したゲノム配列は、RNA(例えば、mRNA)配列である。例えば、RNA配列の欠失は、細胞におけるアミノ酸配列の発現を低減させるかまたは防止し、アミノ酸配列は、欠失したRNA配列によってコードされる。これは、タンパク質が、細胞に望ましくないかもしくは必要とされていないか、または有害であるか、あるいは細胞を含む対象または環境である場合など、アミノ酸配列を含むタンパク質の細胞における発現を低減させるかまたは防止するために有用であってもよい。
【0079】
一態様は、
ヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置するかまたは防止する方法であって、(i)本発明にかかる医薬組成物を前記対象に投与することであって、前記組成物が前記タンパク質を含み、前記タンパク質が前記疾患もしくは状態の処置もしくは防止を媒介する、投与すること、または(ii)本発明にかかる医薬組成物を前記対象に投与することであって、前記組成物が前記子孫細胞もしくは前記細胞系を含む場合、前記細胞もしくは前記細胞系が前記対象においてタンパク質もしくはRNAを発現し、前記タンパク質もしくは前記RNAが前記疾患もしくは状態の処置もしくは防止を媒介する、投与することを含む方法を提供する。
【0080】
例となる疾患および状態は、以下で開示される。
【0081】
例えば、RNAは、対象において発現する治療的または予防的タンパク質をコードする。例えば、タンパク質は、治療的または予防的タンパク質である。タンパク質は、対象においてさらなるタンパク質(例えば、内因的にコードされたタンパク質)と相互作用することによって、または対象のさらなる細胞と相互作用することによって、治療的または予防的細胞を働かせてもよい。
【0082】
任意に、前記タンパク質は、抗生剤、抗菌剤、酵素、成長因子、抗原結合性タンパク質(例えば、抗体もしくはその断片)、ホルモン、血液成分、サイトカイン、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、阻害剤または上方制御剤)、鎮痛剤、神経伝達物質、抗炎症剤、または抗新生物剤である。
【0083】
任意に、前記複数の細胞はマイクロバイオーム試料に含まれ、前記方法はin vitroで実施され、前記第1の種または株の細胞を死滅させた改変細胞試料を産生し、前記方法は、前記改変試料を薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって細胞移植片を含む医薬組成物を産生することをさらに含む。例えば、前記移植片は、例えば、経口投与によって、または直腸投与によって、ヒトまたは動物の対象の消化(GI)管または腸管に投与されてもよい。例えば、前記移植片は、膣内投与によって投与されてもよい。
【0084】
任意に、本明細書におけるマイクロバイオームは、腸管、肺、腎臓、尿道、膀胱、血液、膣、眼、耳、鼻、陰茎、腸、肝臓、心臓、舌、毛、または皮膚のマイクロバイオームである。
【0085】
一態様は、
ヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置するかまたは防止する方法であって、本発明の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0086】
一態様は、
環境または細胞試料を処置するex vivo方法またはin vitro方法であって、前記方法が本発明の組成物に環境または試料を曝露することを含み、環境もしくは試料に含まれる細胞が改変されるか、編集されるか、もしくは死滅するか、または環境もしくは試料の細胞の成長もしくは増殖が低減する、方法を提供する。
例えば、細胞は死滅する。例えば、細胞は、本発明の編集方法によって編集される。任意に、処置された試料をヒトまたは動物の対象に投与するか、または環境に接触させる。
【0087】
任意に、前記複数の細胞は環境的試料(例えば、水性、水、油、石油、土壌、または流体(例えば、空気もしくは液体)試料)に含まれる。適切な環境は、工業用装置もしくは工業用容器、または実験室装置もしくは実験室容器、例えば発酵容器の内容物であってもよい。
【0088】
任意に、本発明の方法は、in vitroで実行される。任意に、本発明の方法は、ex vivoで実行される。
【0089】
一態様は、
標的細胞によって媒介されるヒトまたは動物の対象における疾患または状態を処置しまたは防止する方法における使用のための組成物であって、前記組成物が、構成要素(a)、(b)、または(d):
(a)第1のcrRNAおよび第2のcrRNA、
(b)第1のcrRNAおよび第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1のcrRNAおよび核酸
を含み、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
前記方法が、前記組成物を前記対象に投与することであって、それによって前記組成物の前記構成要素が標的細胞に導入され、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が各細胞において提供され、各細胞のゲノムがCas改変を受け、前記疾患または状態が処置または防止される、投与することを含む、
組成物を提供する。
【0090】
任意に、前記処置することまたは防止することは、本発明の方法を実行することを含む。
【0091】
任意に、前記方法は、標的細胞によって前記対象の感染を低減させるためのものである(任意に、前記標的細胞が病原性細胞、例えば病原性原核細胞、例えば病原性細菌細胞である)。
【0092】
任意に、構成要素は、1つ(または1つもしくは複数の)核酸ベクターに含まれる。一例では、各ベクターは、ウイルス、ファージ、プラスミド(例えば、接合性プラスミド)、コスミド、ファージミド、またはナノ粒子(例えば、リポソーム)である。
【0093】
一例では、本明細書におけるいずれの方法も集団(または前記複数)の前記細胞において実行され、前記集団は少なくとも100個の前記細胞を含み、前記細胞の少なくとも90、99、99.9、99.99、99.999、99.9999、99.99999、99.999999、99.9999999、99.99999999、または99.999999999%のゲノムが改変され、例えば、Casヌクレアーゼ切断を受ける。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも1000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも10000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも100000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも1000000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも10000000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも100000000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも1000000000個の前記細胞を含む。一実施形態では、前記集団(または前記複数)は、少なくとも10000000000個の前記細胞を含む。
【0094】
一例では、前記集団または前記複数は、ヒト、動物(例えば、家畜動物もしくは伴侶ペット)、植物、または環境(例えば、水路、土壌、流体のマイクロバイオーム)のマイクロバイオームに含まれる。
【0095】
一態様は、
構成要素(a)、(b)、または(d):
(a)第1のcrRNAおよび第2のcrRNA、
(b)第1のcrRNAおよび第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸がcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、核酸、
(c)第1のcrRNAをコードする第1の核酸、および第2のcrRNAをコードする第2の核酸であって、前記核酸が前記crRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1の核酸および第2の核酸、または
(d)第1のcrRNA、および第2のcrRNAをコードする核酸であって、前記核酸が前記第2のcrRNAを産生するために標的細胞において発現可能である、第1のcrRNAおよび核酸
を含む組成物であって、
(e)前記第1のcrRNA(crRNA1)が、第1のCas(C1)を標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS1)にガイドしてPS1を改変することが可能であり、および
(f)前記第2のcrRNA(crRNA2)が、第2のCas(C2)を前記標的細胞のゲノムに含まれるプロトスペーサー配列(PS2)にガイドしてPS2を改変することが可能であり、
(g)C1およびC2が異なり、
(h)PS1およびPS2が異なり、ならびに
前記組成物の前記構成要素を標的細胞に導入することによって、crRNA1、crRNA2、C1、およびC2が前記細胞において提供される場合、前記細胞のゲノムがCas改変を受ける、
組成物を提供する。
【0096】
任意に、各細胞のゲノムは編集されるか、または前記細胞は死滅する。
【0097】
任意に、各細胞は原核細胞(任意に、細菌または古細菌細胞)である。
【0098】
任意に、前記核酸は、ウイルス(例えば、AAVもしくはサイトメガロウイルス、任意に、各細胞はヒト細胞などの哺乳動物細胞である)、ファージ(例えば、各細胞は細菌細胞である)、プラスミド(任意に、接合性プラスミド、例えば、各細胞は細菌細胞である)、ナノ粒子(例えば、リポソームもしくは金粒子)、またはファージミド(例えば、各細胞は細菌細胞である)に含まれる。
【0099】
核酸がウイルスに含まれる場合、細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト、または齧歯類、マウスもしくはラット)細胞、細菌細胞、古細菌細胞、またはアメーバ細胞であってもよい。核酸がファージに含まれる場合、細胞は細菌細胞であってもよい。
【0100】
任意に、前記核酸はC1および/またはC2をコードする。
【0101】
任意に、C1はI型Casであり、前記核酸は、C1と作動可能である1つまたは複数のCascade Casをコードし、および/またはC2はI型Casであり、前記核酸は、C2と作動可能である1つまたは複数のCascade Casをコードする。
【0102】
一態様は、
本発明にかかる組成物である医薬組成物であって、前記組成物が薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0103】
前記組成物は、水性組成物であってもよい。前記組成物は、例えば、患者への吸入送達のために適切な製剤において凍結乾燥またはフリーズドライされた組成物であってもよい。
【0104】
任意に、前記組成物は、滅菌薬剤投与デバイス、任意に、シリンジ、IVバッグ、鼻腔内送達デバイス、吸入器、ネブライザー、または直腸投与デバイス)に含まれる。任意に、前記組成物は、化粧品、歯科用衛生品、個人衛生品、洗濯品、油もしくは石油添加剤、水添加剤、シャンプー、ヘアコンディショナー、皮膚モイスチャライザー、石鹸、ハンド洗浄剤、衣服洗浄剤、清浄剤、環境改善剤、冷却剤(例えば、空気冷却剤)、または空気処置剤に含まれる。
【0105】
一例では、前記組成物は、前記組成物を液体または乾燥粉末スプレーとして送達するためのデバイスに含まれる。これは、患者への局所投与のために、または野原もしくは水路などの大きい環境的領域への投与のために有用であってもよい。
【0106】
任意に、前記細胞は、前記対象の腸管、肺、腎臓、尿道、膀胱、血液、膣、または皮膚のマイクロバイオームに含まれる。
【0107】
任意に、前記方法はヒトまたは動物の対象において実行され、前記細胞は前記方法によって死滅し、前記死滅は、前記対象における免疫細胞を上方制御するかまたは下方制御する(任意に、(i)CD8、CD4、TH1、TH2、TH17、NK細胞、TILS、制御性T細胞、もしくはエフェクターT細胞を上方制御するか、または(ii)CD8、CD4、TH1、TH2、TH17、制御性T細胞、もしくはエフェクターT細胞を下方制御する)ことによって、前記対象における疾患または状態を処置するかまたは防止する。好ましい一実施形態では、CD8、NK、またはTILS細胞は上方制御され、例えば、疾患または状態はがんである。好ましい一実施形態では、CD8またはNK細胞は上方制御され、例えば、疾患または状態はウイルス感染である。好ましい一実施形態では、TH1、TH2、またはTH17細胞は下方制御され、例えば、疾患または状態は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、または炎症性疾患もしくは炎症性状態である。例えば、疾患または状態は、がん、または自己免疫疾患もしくは自己免疫状態である。例えば、疾患または状態はがんおよびCD8であるか、またはエフェクターT細胞は対象において上方制御され、および/または制御性T細胞は対象において下方制御される。例えば、疾患または状態は自己免疫疾患または自己免疫状態であり、CD8もしくはエフェクターT細胞は対象において下方制御され、および/または制御性T細胞は対象において上方制御される。
【0108】
任意に、前記方法は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20(好ましくは、少なくとも2、3、4、もしくは5、またはちょうど2、3、4、もしくは5、またはちょうど8、または少なくとも8)の異なる型のcrRNAを、各細胞に導入すること、または各細胞において発現させることを含み、前記異なる型は、前記細胞のゲノムに含まれる異なるプロトスペーサー配列を標的とし、任意に、C1およびC2は、クラス1Casヌクレアーゼ、例えばCas3ヌクレアーゼである。
【0109】
任意に、前記方法は、Cas3、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5、およびCas6(任意に、前記CasはE coli Casである)をコードする核酸、ならびに/またはCas3、Cas6、Cas8b、Cas7、およびCas5(任意に、前記CasはC dificile Casである)をコードする核酸を各細胞に導入することを含む。
【0110】
別の例では、前記方法は、Cas3、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5をコードする核酸、およびCas9をコードする核酸を各細胞に導入することを含む。別の例では、前記方法は、Cas3、Cas6、Cas8b、Cas7、およびCas5をコードする核酸、ならびにCas9をコードする核酸を各細胞に導入することを含む。
【0111】
一態様は、
細胞のゲノムを改変する方法であって、前記方法が
(a)前記ゲノムの第1のプロトスペーサーを改変するために、第1のCRISPR/Cas系を使用すること、および
(b)前記ゲノムの第2のプロトスペーサーを改変するために、第2のCRISPR/Cas系を使用することであって、前記第2のプロトスペーサーが前記第1のプロトスペーサーと異なる、使用すること
を含み、
前記系が、異なるCasを含み、前記細胞において同時に提供される、
方法を提供する。
【0112】
任意に、方法は、ゲノムの第3のプロトスペーサーを改変するために第3のCRISPR/Cas系を使用することを含み、第3のプロトスペーサーが第1および第2のプロトスペーサーと異なる、使用することを含む。例えば、3つの異なるCas3を使用するか、3つの異なるCas9を使用するか、Cas3および2つの異なるCas9を使用するか、または2つの異なるCas3およびCas9を使用する。
【0113】
請求項1から35のいずれか一項に記載のものである、請求項51に記載の方法。
【0114】
ある特定の態様では、
本発明の方法は、
(a)細胞のゲノムの相乗的Casヌクレアーゼ切断を生じさせるか、
(b)第1の種もしくは株の細胞の集団を、少なくとも100000倍、1000000倍、もしくは10000000倍低減させるか、
(c)マイクロバイオームに含まれる第1の種もしくは株の少なくとも少なくとも99%、99.9%。99.99%、99.999%、99.9999%、もしくは99.99999%の細胞を死滅させるか、
(d)細胞のゲノムの相乗的クラス1 Cas改変を生じさせるか、または
(e)それぞれ少なくとも100000個、1000000個、もしくは10000000個の細胞を含む細胞集団における第1の種もしくは株(例えば、E coli細胞)の細菌細胞を、少なくとも10倍、10倍、もしくは10倍低減させる
方法である。
【0115】
疾患および状態
任意に、疾患または状態は、
(a)神経変性の疾患または状態、
(b)脳の疾患または状態、
(c)CNSの疾患または状態、
(d)記憶の喪失または損傷、
(e)心臓または心臓血管の疾患または状態、例えば心臓麻痺、発作、または心房細動、
(f)肝臓の疾患または状態、
(g)腎臓の疾患または状態、例えば慢性腎疾患(CKD)、
(h)膵臓の疾患または状態、
(i)肺の疾患または状態、例えば嚢胞性線維症またはCOPD、
(j)胃腸の疾患または状態、
(k)咽喉または口腔の疾患または状態、
(l)眼の疾患または状態、
(m)生殖器の疾患または状態、例えば膣、陰唇、陰茎、または陰嚢の疾患または状態、
(n)性感染性の疾患または状態、例えば淋病、HIV感染、梅毒、またはクラミジア感染、
(o)耳の疾患または状態、
(p)皮膚の疾患または状態、
(q)心臓の疾患または状態、
(r)鼻の疾患または状態、
(s)血液の疾患または状態、例えば貧血、例えば慢性疾患またはがんの貧血、
(t)ウイルス感染、
(u)病原性細菌感染、
(v)がん、
(w)自己免疫性の疾患または状態、例えばSLE、
(x)炎症性の疾患または状態、例えばリウマチ性関節炎、乾癬、皮膚炎、喘息、潰瘍性大腸炎、大腸炎、クローン病、またはIBD、
(y)自閉症、
(z)ADHD、
(aa)双極性障害、
(bb)ALS(筋委縮性側索硬化症)、
(cc)骨関節炎、
(dd)先天性または発育の欠陥または状態、
(ee)流産、
(ff)血液凝固状態、
(gg)気管支炎、
(hh)乾燥または湿潤AMD、
(ii)新生血管形成(例えば腫瘍または眼の)、
(jj)一般的な風邪、
(kk)てんかん、
(ll)線維症、例えば肝臓または肺の線維症、
(mm)真菌性の疾患または状態、例えば鵞口瘡、
(nn)代謝性の疾患または状態、例えば肥満、拒食症、糖尿病、I型もしくはII型の糖尿病、
(oo)潰瘍、例えば胃潰瘍または皮膚潰瘍、
(pp)乾燥皮膚、
(qq)シェーグレン症候群、
(rr)サイトカインストーム、
(ss)難聴、聴覚の喪失または損傷、
(tt)代謝の遅延または亢進(即ち、対象の体重、性別、および年齢の平均より遅延または亢進)
(uu)受胎障害、例えば不妊または受精能低下、
(vv)黄疸、
(ww)皮膚発疹、
(xx)川崎病、
(yy)ライム病、
(zz)アレルギー、例えばナッツ、草、花粉、イエダニ、ネコ、またはイヌの毛皮または鱗屑に対するアレルギー、
(aaa)マラリア、腸チフス熱、結核、またはコレラ、
(bbb)うつ病、
(ccc)精神発達遅滞、
(ddd)小頭症、
(eee)栄養不良、
(fff)結膜炎、
(ggg)肺炎、
(hhh)肺塞栓症、
(iii)肺高血圧症、
(jjj)骨障害、
(kkk)敗血症または敗血性ショック、
(lll)静脈洞炎、
(mmm)ストレス(例えば職業性ストレス)、
(nnn)サラセミア、貧血、フォンウィレブラント病、または血友病、
(ooo)帯状疱疹またはヘルペス、
(ppp)月経、
(qqq)精子数減少
から選択される。
【0116】
処置または防止のための神経変性またはCNSの疾患または状態
一例では、神経変性またはCNSの疾患または状態は、アルツハイマー病、老年期精神病、ダウン症候群、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、糖尿病性神経障害、パーキンソン症候群、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋委縮性側索硬化症、糖尿病性神経障害、およびクロイツフェルト・クロイツフェルト・ヤコブ病からなる群から選択される。例えば、疾患はアルツハイマー病である。例えば、疾患はパーキンソン症候群である。
【0117】
本発明の方法がCNSまたは神経変性の疾患または状態を処置するためにヒトまたは動物の対象に対して実施される例では、本方法は対象におけるTreg細胞の下方制御を惹起し、それにより全身的な単球誘導マクロファージおよび/またはTreg細胞が脈絡叢を横切って対象の脳の中に進入することを促進し、それにより疾患または状態(例えばアルツハイマー病)を処置し、防止し、またはその進行を低減する。一実施形態では、本方法は対象のCNSシステムにおける(例えば脳および/またはCSFにおける)IFN-ガンマの増加を惹起する。一例では、本方法は神経線維を回復し、および/または神経線維の損傷の進行を低減する。一例では、本方法は神経ミエリンを回復し、および/または神経ミエリンの損傷の進行を低減する。一例では、本発明の方法はWO2015136541に開示された疾患または状態を処置または防止し、および/または本方法はWO2015136541に開示された任意の方法とともに使用することができる(本書類の開示は、例えばCNSおよび神経変性の疾患および状態の処置および/または防止をもたらすために対象に投与することができるかかる方法、疾患、状態、および可能性のある治療剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1、抗PD-L1、抗TIM3、または本明細書で開示したその他の抗体などの薬剤の開示を提供するために、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。
【0118】
処置または防止のためのがん
処置し得るがんは、血管新生していない、または実質的に血管新生していない腫瘍、ならびに血管新生した腫瘍を含む。がんは非固形腫瘍(血液腫瘍、例えば白血病およびリンパ腫など)を含み得る、または固形腫瘍を含み得る。本発明によって処置すべきがんの型には、癌腫、芽腫、および肉腫、ならびにある種の白血病またはリンパ悪性疾患、良性および悪性の腫瘍、および悪性疾患、例えば肉腫、癌腫、および黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。成人の腫瘍/がんおよび小児の腫瘍/がんも含まれる。
【0119】
血液がんは血液または骨髄のがんである。血液の(または造血性の)がんの例には、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄原性白血病、および骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球、単球、および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄原性白血病、および慢性リンパ性白血病など)を含む白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(不活性および高グレードの形態)、多発性骨髄腫、ワルデンストロームのマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病、および骨髄異形成が挙げられる。
【0120】
固形腫瘍は、通常嚢胞または液体の区域を含まない組織の異常な塊である。固形腫瘍は良性または悪性であり得る。様々な型の固形腫瘍の名称は、それらを形成する細胞の型に由来する(肉腫、癌腫、およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、およびその他の肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞脂肪腺癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛腫、ウィルムズ腫瘍、子宮頸がん、睾丸腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、およびCNS腫瘍(例えば神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られている)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫〔craniopharyogioma〕、上衣腫、松果体腫〔pineaioma〕、血管芽細胞腫、聴覚神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫〔menangioma〕、神経芽細胞腫、網膜芽腫、および脳転移)が挙げられる。
【0121】
処置または防止のための自己免疫疾患
・急性播種性脳脊髄炎(ADEM)
・急性壊死性出血性白質脳炎
・アジソン病
・無ガンマグロブリン血症
・円形脱毛症
・アミロイドーシス
・強直性脊髄炎
・抗GBM/抗TBM腎炎
・抗リン脂質症候群(APS)
・自己免疫性血管性浮腫
・自己免疫性再生不良性貧血
・自己免疫性自律神経障害
・自己免疫性肝炎
・自己免疫性高脂血症
・自己免疫性免疫不全
・自己免疫性内耳疾患(AIED)
・自己免疫性心筋炎
・自己免疫性卵巣炎
・自己免疫性膵炎
・自己免疫性網膜炎
・自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)
・自己免疫性甲状腺疾患
・自己免疫性蕁麻疹
・軸索およびニューロンの神経障害
・バロー病
・ベーチェット病
・水疱性類天疱瘡
・心筋ミオパチー
・キャスルマン病
・セリアック病
・チャガス病
・慢性疲労症候群
・慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)
・慢性再発性多発性骨髄炎〔ostomyelitis〕(CRMO)
・チャーグ・ストラウス症候群
・瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡
・クローン病
・コーガンス症候群
・寒冷凝集素症
・先天性心ブロック
・コクサッキー心筋炎
・CREST病
・本態性混合クリオグロブリン血症
・脱髄性神経障害
・疱疹状皮膚炎
・皮膚筋炎
・デビッチ病(視神経脊髄炎)
・ディスコイドループス
・ドレスラー症候群
・子宮内膜症
・好酸球性食道炎
・好酸球性筋膜炎
・結節性紅斑
・実験性アレルギー性脳脊髄炎
・エバンス症候群
・線維筋痛症
・線維化性肺胞炎
・巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
・巨細胞性心筋炎
・糸球体腎炎
・グッドパスチャー症候群
・多発性血管炎を伴う内芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー内芽腫症と呼ばれていた)
・グレーブス病
・ギランバレー症候群
・橋本脳炎
・橋本甲状腺炎
・溶血性貧血
・ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
・妊娠性ヘルペス
・低ガンマグロブリン血症
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
・IgA腎症
・IgG4関連硬化性疾患
・免疫調節性リポタンパク質
・封入体筋炎
・間質性膀胱炎
・若年性関節炎
・若年性糖尿病(1型糖尿病)
・若年性筋炎
・川崎症候群
・ランバート・イートン症候群
・白血球破砕性血管炎
・扁平苔癬
・硬化性苔癬
・木質性結膜炎
・線状IgA疾患(LAD)
・ループス(SLE)
・ライム病、慢性
・メニエール病
・顕微鏡的多発性血管炎
・混合結合組織病(MCTD)
・モーレン潰瘍
・ムッカ・ハーベルマン病
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・筋炎
・ナルコレプシー
・視神経脊髄炎(デビッチの)
・好中球減少症
・眼瘢痕性類天疱瘡
・視神経炎
・回帰性リウマチ
・PANDAS(ストレプトコッカス関連小児自己免疫性神経精神障害)
・傍腫瘍性小脳変性症
・発作性夜間血色素尿症(PNH)
・パリー・ロンバーグ症候群
・パーソナージ・ターナー症候群
・扁平部炎(末梢ブドウ膜炎)
・天疱瘡
・末梢神経障害
・静脈周囲脳脊髄炎
・悪性貧血
・POEMS症候群
・結節性多発性動脈炎
・I型、II型、およびIII型の自己免疫性多腺性症候群
・リウマチ性多発性筋痛
・多発性筋炎
・心筋梗塞後症候群
・心膜切開術後症候群
・プロゲステロン皮膚炎
・原発性胆汁性肝硬変
・原発性硬化性胆管炎
・乾癬
・乾癬性関節炎
・特発性肺線維症
・壊疽性膿皮症
・赤芽球癆
・レイノー現象
・反応性関節炎
・反射性交感神経性ジストロフィー
・ライター症候群
・再発性多発性軟骨炎
・下肢静止不能症候群
・後腹膜線維化症
・リウマチ熱
・リウマチ性関節炎
・サルコイドーシス
・シュミット症候群
・強膜炎
・強皮症
・シェーグレン症候群
・精子および睾丸の自己免疫
・スティッフパーソン症候群
・亜急性細菌性心内膜炎(SBE)
・スーザック症候群
・交感性眼炎
・高安動脈炎
・側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎
・血小板減少性紫斑病(TTP)
・トロサ・ハント症候群
・横断性脊髄炎
・1型糖尿病
・潰瘍性大腸炎
・未分化結合組織疾患(UCTD)
・ブドウ膜炎
・血管炎
・小水疱水疱性皮膚病
・白斑
・ウェゲナー肉芽腫症(現在では多発性血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)と称する)
【0122】
処置または防止のための炎症性疾患
・アルツハイマー病
・強直性脊椎炎
・関節炎(骨関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、乾癬性関節炎)
・喘息
・アテローム性動脈硬化
・クローン病
・結腸炎
・皮膚炎
・憩室炎
・線維筋痛
・肝炎
・過敏性腸症候群(IBS)
・全身性エリテマトーデス(SLE)
・腎炎
・パーキンソン病
・潰瘍性大腸炎
【0123】
任意に、細胞は、C dificile細胞、P aeruginosa細胞、K pneumoniae細胞(例えば、カルバペネム耐性Klebsiella pneumoniae細胞または基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生K pneumoniae細胞)、E coli細胞(例えば、ESBL産生E.coli細胞またはE.coli ST131-O25b:H4細胞)、H.pylori細胞、S pneumoniae細胞、またはS aureus細胞である。
【0124】
本明細書においてベクターは、crRNAの発現を制御するための構造性プロモーター、および任意に1つまたは複数のCasタンパク質を含む高コピー数プラスミドまたは高コピー数ファージミドであってもよい。
【0125】
一例では、プロモーターは、培地強度プロモーターである。別の例では、プロモーターは、抑制性プロモーターまたは誘導性プロモーター細胞である。適切な抑制性プロモーターの例は、(lacIによって抑制される)Ptacおよび(λcIリプレッサーによって抑制される)ラムダファージの左側プロモーター(pL)である。一例では、プロモーターは、プロモーター配列に融合する抑制可能作動因子(例えば、tetOまたはlacO)を含む。任意に、プロモーターは、アンダーソンスコア(AS)が0.5>AS>0.1である。
【0126】
概して適用可能な構成:
本明細書における任意の細胞は、細菌細胞、古細菌細胞、藻類細胞、真菌細胞、原生動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、伴侶動物細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ウマ細胞、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、真核細胞、原核細胞、ヒト細胞、動物細胞、齧歯類細胞、昆虫細胞、または植物細胞であってもよい。好ましくは、細胞は細菌細胞である。あるいは、細胞はヒト細胞である。
【0127】
任意に、C1およびC2は、I型系の任意のCas(例えば、Cas2、3、4、5、または6)である。この例では、一実施形態では、Casは、標的プロトスペーサー配列を含む遺伝子の転写を増加させるかまたは低減させるために作動可能である部分に融合または接合されもよい。例えば、細胞に導入されるCasをコードする核酸は、部分をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく、Casおよび部分は融合タンパク質として宿主細胞において発現する。一実施形態では、Casは部分のN末端であり、別の実施形態では、それは部分に対するC末端である。
【0128】
一例では、本明細書におけるベクターは、DNAベクター、例えば、ssDNAベクターまたはdsDNAベクターである。任意に、ベクターは、1つまたは複数のCascadeタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を含む。例えば、Cascadeタンパク質は、Cas3であるC1またはC2と関連する。
【0129】
一例では、Cas1またはCas2は、細胞によってコードされるCascadeタンパク質と関連するCas3である。
【0130】
任意に、Cas3は、第1の細菌種または古細菌種のCRISPR/Cas遺伝子座によってコードされるCas3であり、遺伝子座において、Cas3をコードする配列は、Cascadeタンパク質をコードする配列の3’である(後者は、Cas3および遺伝子座の最も5’側のプロモーターの間にある)。任意に、Cas3はygcBタンパク質である。
【0131】
任意に、Cascadeタンパク質は、cas5(casD、csy2)、cas6(cas6f、cse3、casE)、cas7(csc2、csy3、cse4、casC)、およびcas8(casA、cas8a1、cas8b1、cas8c、cas10d、cas8e、cse1、cas8f、csy1)を含むか、または、からなる。
【0132】
任意に、本明細書において、プロモーター、およびCas3をコードするかまたはcrRNAをコードする配列は、150bp以下、100bp以下、50bp以下、40bp以下、30bp以下、20bp以下、または10bp以下間隔があいており、例えば、30~45bp、または30~40bp、または39もしくは約39bp間隔があいている。任意に、本明細書において、リボソーム結合部位、およびCas3をコードするかまたはcrRNAをコードする配列は、20bp以下、15bp以下、14bp以下、13bp以下、12bp以下、11bp以下、10bp以下、9bp以下、8bp以下、7bp以下、6bp以下、4bp以下、または3bp以下間隔があいており、例えば、10~5bp、6bpもしくは約6bp間隔があいている。
【0133】
一例では、本明細書におけるプロモーターは、配列5’-aaagaggagaaa-3’(配列番号5)を含むシャイン-ダルガーノ配列またはそのリボソーム結合部位ホモログと組み合わされる。任意に、プロモーターは、アンダーソンスコア(AS)がAS≧0.5であるか、またはアンダーソンスコア(AS)が0.5>AS>0.1であるか、またはアンダーソンスコア(AS)が≦0.1である。
【0134】
任意に、第1のcrRNAをコードする核酸配列、第2のcrRNAをコードする核酸配列、またはオペロンは、可動遺伝因子に含まれる。適切な可動遺伝因子、例えば、トランスポゾンは、WO2016177682およびUS20170246221に開示されており、それらの開示は、本発明における可能な使用のために、かつ、本明細書における請求項のための1つまたは複数の構成を提供するために本明細書に明示的に組み込まれる。
【0135】
任意に、前記ベクターは、Cas1、Cas2、Cas4、Cas6(任意に、Cas6f)、Cas7、およびCas8(任意に、Cas8f)の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を欠く。任意に、前記ベクターは、Cas6(任意に、Cas6f)をコードする配列を欠く。任意に、前記ベクターは、Cas11、Cas7、およびCas8a1の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。任意に、前記ベクターは、Cas3’および/またはCas3’’をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、前記ベクターは、Cas3(例えば、Cas3’および/またはCas3’’)、Cas11、Cas7、およびCas8a1をコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。
【0136】
任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas11配列の間にある。任意に、前記ベクターは、IA型CRISPRアレイまたは単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態におけるベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0137】
任意に、各細胞は、Cas3(C1またはC2)と関連するIA型CRISPRアレイを含む。任意に、各細胞は、内因性IB型、IC型、IU型、ID型、IE型、またはIF型CRISPR/Cas系を含む。任意に、ベクターは、Cas8b1、Cas7、およびCas5の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。一実施形態では、ベクターは、Cas3、Cas8b1、Cas7、およびCas5をコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas8b1配列の間にある。任意に、ベクターは、IB型CRISPRアレイ、または単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0138】
任意に、細胞は、Cas3と関連するIB型CRISPRアレイを含む。任意に、細胞は、内因性IA型、IC型、IU型、ID型、IE型、またはIF型CRISPR/Cas系を含む。任意に、ベクターは、Cas5、Cas8c、およびCas7の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。一実施形態では、ベクターは、Cas3、Cas5、Cas8c、およびCas7をコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas5配列の間にある。任意に、ベクターは、IC型CRISPRアレイ、または単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0139】
任意に、宿主細胞は、Cas3と関連するIC型CRISPRアレイを含む。任意に、宿主細胞は、内因性IA型、IB型、IU型、ID型、IE型、またはIF型CRISPR/Cas系を含む。任意に、ベクターは、Cas8U2、Cas7、Cas5、およびCas6の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。一実施形態では、ベクターは、Cas3、Cas8U2、Cas7、Cas5、およびCas6をコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas8U2配列の間にある。
【0140】
任意に、ベクターは、IU型CRISPRアレイ、または単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0141】
任意に、宿主細胞は、Cas3と関連するIU型CRISPRアレイを含む。任意に、宿主細胞は、内因性IA型、IB型、IC型、ID型、IE型、またはIF型CRISPR/Cas系を含む。任意に、ベクターは、Cas10d、Cas7、およびCas5の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。任意に、ベクターは、Cas3’および/またはCas3’’をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、ベクターは、Cas3、Cas10d、Cas7、およびCas5をコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas10d配列の間にある。任意に、ベクターは、ID型CRISPRアレイ、または単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0142】
任意に、宿主細胞は、Cas3と関連するID型CRISPRアレイを含む。
【0143】
任意に、宿主細胞は、内因性IA型、IB型、IC型、IU型、IE型、またはIF型CRISPR/Cas系を含む。
【0144】
任意に、ベクターは、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5、およびCas6の1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。一実施形態では、ベクターは、Cas3、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5、およびCas6をコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas11配列の間にある。任意に、ベクターは、IE型CRISPRアレイ、または単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0145】
任意に、宿主細胞は、Cas3と関連するIE型CRISPRアレイを含む。
【0146】
任意に、宿主細胞は、内因性IA型、IB型、IC型、ID型、IU型、またはIF型CRISPR/Cas系を含む。
【0147】
任意に、ベクターは、Cas8f、Cas5、Cas7、およびCas6fの1つ、複数、または全てをコードするヌクレオチド配列を(任意に、5’から3’の方向に)含む。一実施形態では、ベクターは、Cas3、Cas8f、Cas5、Cas7、およびCas6fをコードするヌクレオチド配列を(5’から3’の方向に)含む。任意に、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列およびCas8f配列の間にある。任意に、ベクターは、IF型CRISPRアレイ、または単一ガイドRNA(gRNA)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、アレイおよび各gRNAは、Cas3と関連する反復配列を含む。したがって、ガイドRNAの産生のための細胞にベクターが導入された場合、アレイは宿主細胞において作動可能であり、ここで、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるためにガイドRNAがCasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによってコードされる単一ガイドRNAは、宿主細胞における標的ヌクレオチド配列を標的とし、改変する(例えば、切断する)ことによって、任意に、宿主細胞を死滅させるために、CasおよびCascadeタンパク質と作動可能である。
【0148】
任意に、宿主細胞は、Cas3と関連するIF型CRISPRアレイを含む。
【0149】
任意に、宿主細胞は、内因性IA型、IB型、IC型、ID型、IU型、またはIE型CRISPR/Cas系を含む。
【0150】
任意に、CasおよびCascadeは、IA型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0151】
任意に、CasおよびCascadeは、IB型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0152】
任意に、CasおよびCascadeは、IC型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0153】
任意に、CasおよびCascadeは、ID型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0154】
任意に、CasおよびCascadeは、IE型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0155】
任意に、CasおよびCascadeは、IF型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0156】
任意に、CasおよびCascadeは、IU型CasおよびCascadeタンパク質である。
【0157】
任意に、CasおよびCascadeは、E coli(任意に、IE型またはIF型)CasおよびCascadeタンパク質であり、任意に、E coliは、ESBL産生E.coliまたはE.coli ST131-O25b:H4である。
【0158】
任意に、CasおよびCascadeは、Clostridium(例えば、C dificile)CasおよびCascadeタンパク質、任意に、アミノグリコシド、リンコマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、およびフルオロキノロンから選択される1つまたは複数の抗生剤に耐性のC dificileである。
【0159】
任意に、CasおよびCascadeは、Pseudomonas aeruginosa CasおよびCascadeタンパク質、任意に、カルバペネム、アミノグリコシド、セフェピム、セフタジジム、フルオロキノロン、ピペラシリン、およびタゾバクタムから選択される1つまたは複数の抗生剤に耐性のP aeruginosaである。
【0160】
任意に、CasおよびCascadeは、Klebsiella pneumoniae(例えば、カルバペネム耐性Klebsiella pneumoniaeまたは基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生K pneumoniae)CasおよびCascadeタンパク質である。
【0161】
任意に、CasおよびCascadeは、E coli、C difficile、P aeruginosa、K pneumoniae、P furiosus、またはB halodurans CasおよびCascadeタンパク質である。
【0162】
任意に、各crRNAまたはgRNAは、細胞のプロトスペーサーヌクレオチド配列にハイブリダイズすることが可能なスペーサー配列を含み、プロトスペーサー配列はPAMに隣接しており、PAMはC1またはC2に関連しており、C1またはC2は、Casヌクレアーゼ、例えばCas3である。したがって、スペーサーは、プロトスペーサーにハイブリダイズして、プロトスペーサーにCas3をガイドする。任意に、Cas3は、例えば、Cas3のエキソヌクレアーゼ活性および/またはエンドヌクレアーゼ活性を使用して、プロトスペーサーを切断する。任意に、Cas3は、プロトスペーサーから複数(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のヌクレオチドを除去する。
【0163】
任意に、ベクターは、ファージまたは非複製的形質導入粒子である。ファージまたは粒子は、DNAをキャプシド形成するファージコートタンパク質を含み、DNAがベクターを含む。ファージおよび粒子の適切な例はUS2019/0160120に開示されており、その開示は、本発明における可能な使用のために、かつ、本明細書における請求項に含まれてもよい1つまたは複数の構成を提供するために、参照により本明細書に組み込まれる。ファージまたは粒子は、細胞に感染することによって細胞にベクターを導入することが可能である。
【0164】
本明細書に記載した特定の実施形態は説明のために示されており、本発明の限定としてではないことが理解されよう。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態において本発明の主要な特徴を採用することができる。当業者であれば、日常的なものを超えない検討を使用して、本明細書に記載した特定の手順に数多くの等価物を認識し、または確定することができる。かかる等価物は本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲によって包含されている。明細書中で述べた全ての出版物および特許出願は、本発明が関係する当業者のスキルのレベルを示す。全ての出版物および特許出願、ならびに全ての等価の米国特許出願および特許は、それぞれ個別の出版物または特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される刊行物、および米国特許商標庁(USPTO)またはWIPOによる同等の刊行物が参照されるが、それらの開示は、本発明において使用されてもよい開示を提供するために、かつ/または、本明細書における1つまたは複数の請求項に含まれてもよい1つもしくは複数の特徴(例えば、ベクターの中で)を提供するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
単語「1つ(〔a〕または〔an〕)」の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む」と併せて使用される場合には、「1つ」を意味し得るが、これは「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも合致する。本開示は選択肢および「および/または」のみを意味する定義を支持するが、特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみを意味するように明示的に指示され、または選択肢が相互に排他的である場合以外には、「および/または」を意味するように使用される。本出願を通じて、用語「約」は、ある値がデバイスについての固有の誤差変動を含むことを示すために使用され、本方法はその値または検討対象の間に存在する変動を決定するために採用される。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、単語「含む〔comprising〕」(および〔comprising〕の任意の形態、例えば〔comprise〕および〔comprises〕)、「有する〔having〕」(および〔having〕の任意の形態、例えば〔have〕および〔has〕)、「含む〔including〕」(および〔including〕の任意の形態、例えば〔includes〕および〔include〕)、または「含む〔containing〕」(および〔containing〕の任意の形態、例えば〔contains〕および〔contain〕)は包括的またはオープンエンドであり、引用していないさらなる要素または方法ステップを排除しない。
【0167】
用語「またはそれらの組合せ」または同様の用語は、本明細書で使用する場合、その用語に先立って列挙された項目の全ての順列または組合せを意味する。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうち少なくとも1つを、また特定の文脈において順序が重要な場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABのうち少なくとも1つも含むことを意図している。この例を続けて、1つまたは複数の項目または用語、例えばBB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等々の繰り返しを含む組合せが明示的に含まれる。文脈から他が明白でない限り、典型的には任意の組合せにおいて項目または用語の数に制限がないことが当業者には理解されよう。
【0168】
文脈から他が明白でない限り、本開示のいずれの部分も本開示の任意の他の部分と組み合わせて読むことができる。
【0169】
本明細書で開示し特許請求する組成物および/または方法の全ては、本開示に照らして、不必要な実験をすることなく作製し実行することができる。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載しているが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、組成物および/または方法に、また本明細書に記載した方法のステップまたはステップの配列に、変更を適用できることは、当業者には明らかであろう。当業者には明らかな全てのかかる同様の置換および改変は、添付した特許請求の範囲で定義される本発明の精神、範囲、および概念に含まれるとみなされる。
【0170】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてさらに詳細に記載される。
【実施例1】
【0171】
複数のゲノムのプロトスペーサーを相乗的に標的とするI型CRISPR-Cas系の組み合わせ
構造性プロモーターの制御下でおいてI型Cas3をコードするヌクレオチド配列とCascadeタンパク質とを有するオペロンを含むプラスミド(CRISPR Guided Vector(商標)(CGV(商標))と称する)を構築した。E.coli IE型Cas3をおよびCascadeを使用した。E.coli直接反復配列とE.coli宿主細胞染色体を標的とするためのスペーサーとを含む関連するCRISPRアレイをベクター内でクローニングした。Cas1およびCas2を含む適応モジュールをベクターにおいて除いた(図1Aを参照されたい)。
【0172】
構造性プロモーターの制御下においてI型Cas3をコードするヌクレオチド配列とCascadeタンパク質とを有するオペロンを含むプラスミドを構築した。C.difficile IB型Cas3およびCascadeを使用した。Cas1、Cas2、およびCas4を含む適応モジュールをベクターにおいて除いた(図1Bを参照されたい)。構造性プロモーターの制御下で、C.difficile反復配列とE.coli宿主細胞染色体を標的とするためのスペーサーとを含む関連するCRISPRアレイを第2のベクター内でクローニングした(図1Bを参照されたい)。
【0173】
C.difficile IB型Cas3およびCascadeをコードするCGVをE.coli MG1655に形質転換した。続いて、C.difficileアレイをコードするベクター、およびE.coli IE型CRISPR-Cas系をコードするCGVを細胞に形質転換した。CFUアッセイは、図2に示される。図2において、E.coli CRISPR-Cas系と組み合わせたC.difficile CRISPR-Cas系による標的株E.coli MG1655のCRISPR死滅が示される。両方の系を組み合わせた場合、集団の実質的に100%の死滅を達成した(E.coli MG1655の生存細胞において7log10を少し超える低減)。しかし、E.coli CRISPR-Cas系単独の形質転換によって、細菌集団において約4log10の低減が生じ、C.difficileアレイの形質転換によって3log10を少し下回る低減が生じた。これらの結果は、E.coli CRISPR-Cas系およびC.difficile CRISPR-Cas系が適合性であり、それらの組み合わせによって標的株の死滅効率性が大きく相乗的に向上し、それによってエスケーパーの成長が妨げられることを示す。
【0174】
材料および方法
E.coli MG1655を37℃で振盪しながら(250rpm)溶原性ブロス(LB)において成長させた。必要に応じて、培養物にテトラサイクリン(10μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、およびスペクチノマイシン(100μg/mL)を補充した。
【0175】
構造性プロモーターの下でE.coli CRISPR-Cas系を含むプラスミドを構築するために、E.coliに由来するcas3、cas8e、cas11、cas7、cas5、およびcas6遺伝子をプロモーターの制御下でColE1型プラスミド(pZE21)(Lutz and Bujard,1997.Nucleic Acids Research,25,1203-1210)において増幅し、クローニングした。オペロンの先頭にcas3が位置し、cas8e、cas11、cas7、cas5、およびcas6が続いた。(cas1およびcas2からなる)適応モジュールをベクターにおいて除いた。さらに、E.coli MG1655における3つの染色体遺伝子間領域を標的とする3-スペーサーアレイがプロモーターの制御下においてCGVに含まれた。それは、29bpの重複配列(各反複はGAGTTCCCCGCGCCAGCGGGGATAAACCGであった)によって分離された、1つの標的遺伝子座につきE.coli MG1655のゲノムに由来する32のヌクレオチド(TGATTGACGGCTACGGTAAACCGGCAACGTTC、GCTGTTAACGTACGTACCGCGCCGCATCCGGC、およびCGGACTTAGTGCCAAAACATGGCATCGAAATT)を含んだ。さらに、3’-AAGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、E.coli MG1655のゲノムにおける選択標的配列に隣接して位置する(図1A)。
【0176】
2-プラスミド系においてC.difficile CRISPR-Cas系を構築した。C.difficile cas遺伝子を含むプラスミドを構築するために、C.difficileに由来するcas3、cas6、cas8b、cas7、およびcas5遺伝子をプロモーターの制御下でpSC101骨格において増幅し、クローニングした。オペロンの冒頭にcas3が位置し、cas6、cas8b、cas7、およびcas5が続いた。(cas1、cas2、およびcas4からなる)適応モジュールをベクターにおいて除いた(図1B)。5-スペーサーアレイを含む第2のプラスミドをプロモーターJ23100の制御下でCloDF13 ori骨格においてクローニングした。それは、29bpの重複配列(各反複はGTTTTATATTAACTAAGTGGTATGTAAATであった)によって分離された、1つの標的遺伝子座につきE.coli MG1655のゲノムに由来する37のヌクレオチド(GCCATAATCTGGATCAGGAAGTCTTCCTTATCCATAT、GGCTTTACGCCAGCGACGTATTGCCACAGGAATAACT、GGGGATAGCGCGCCTGGAGCGTGCGATAGAGACTTTG、GGCATTTACCGACCAGCCCATCAGCAGTACAGCAAAC、およびTCCTGAATCAAATCCGCCTGTGGCAGGCCATAGCCCG)を含んだ。さらに、3’-CCTプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、E.coli MG1655のゲノムにおける選択標的配列に隣接して位置する(図1B)。
【0177】
死滅アッセイを行うために、cas3およびC.difficileのcascade遺伝子を有するプラスミドをエレクトロポレーションによってE. coli MG1655に形質転換した。形質転換体を、中間log相に抗生剤を有する液体LB内で成長させ、C.difficileアレイを有するプラスミドとE.coli CRISPR-Cas系を有するプラスミドとによってさらにエレクトロポレーション処理した。空のベクターによる制御、および各CGVによる制御を別々に行った。抗生剤を有するLB上へ形質転換体を平板培養することによって死滅効率性を決定した。プレート上のコロニー形成単位(CFU)を計数することによって生存率を計算し、データを生存細胞濃度(CFU/mL)として計算した。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
図1A
図1B
図2
【配列表】
2023527819000001.app
【国際調査報告】