(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体を加熱するために作られた加熱要素を有する成形体
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20230623BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20230623BHJP
A47C 21/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A47C27/15
A47C7/74 D
A47C21/04 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573158
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021064485
(87)【国際公開番号】W WO2021240012
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519460199
【氏名又は名称】バリオウェル・ディベロップメント・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Variowell Development GmbH
【住所又は居所原語表記】Fridtjof-Nansen-Weg 5a, 48155 Munster, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トビアス、キルヒホフ
【テーマコード(参考)】
3B084
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JF01
3B084JF03
3B084JF04
3B096AB07
3B096AC14
3B096AD07
(57)【要約】
ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分を備えている成形体が、説明される。成形体は、ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分と熱的に接して配置された温度調節装置と、ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分の温度を変化させることによって、ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分の硬さを調節するように適合された温度調節装置のための制御装置と、を含み、この装置は「S」字形である。成形体は、1つの用途において、睡眠を促進するためのベッドまたはマットレスとして使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを発生する一体化された加熱要素を有するポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分を備え、
前記加熱体は、垂直に配置された「S」または「Z」の形状で、前記発泡体に挿入されている、
成形体。
【請求項2】
15℃から75℃までの間にガラス転移温度を有しているポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分と、
前記ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分と熱的に接するように配置された温度調節装置と、
前記ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分の温度を変化させることによって、前記ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分の硬さを調節するように適合された温度調節装置のための制御装置と、を備えている、
請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記ポリウレタン発泡体の複数の部分を含む、
先の請求項の少なくとも1つに記載の成形体。
【請求項4】
前記ポリウレタン発泡体の少なくとも1つの部分が、0.5cmから7.0cmの間、好ましくは2.5cmから3.5cmの間の厚さで垂直層に配置されている、
先の請求項の少なくとも1つに記載の成形体。
【請求項5】
前記垂直層は上部分および下部分を有し、前記垂直層が前記上部分および下部分で補完材料に固定されている、
先の請求項の少なくとも1つに記載の成形体。
【請求項6】
前記垂直層は、水平チャネルまたは垂直チャネルの少なくとも一方を有する、
先の請求項の少なくとも1つに記載の成形体。
【請求項7】
前記成形体の上端又は内にアルミニウム箔を更に備えている、
上記請求項の少なくとも1つに記載の成形体。
【請求項8】
前記温度調節装置は、加温装置である、
上記請求項のいずれかに記載の成形体。
【請求項9】
ベッドやマットレスとしての、上記請求項のいずれか1つに記載の成形体の使用。
【請求項10】
前記制御装置は、相対または絶対湿度を考慮する所望の硬さレベルに従って、前記温度調節装置の温度を調節するために、実際の相対または絶対湿度のセンサデータを使用する、
請求項2乃至8の少なくとも1項に記載の成形体。
【請求項11】
熱エネルギーを発生する加熱要素がポリウレタンでコーティングされた繊維バンドであり、このポリウレタンは導電性粒子が配合されたものである、
成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月29日に出願されたLU特許出願第LU101825号「ポリウレタン発泡体を加熱するために作られた加熱要素を有する成形体」の利益と優先権を主張するものである。
【発明の属する技術分野】
【0002】
発明は、特定の部分に熱エネルギーを効果的に集中させるためにポリウレタン発泡体で作られた加熱要素を有する成形体に関するものである。本発明はさらに、この要素を使用したベッドまたはマットレスに関する。
【先行技術】
【0003】
米国特許第8,499,389号には、従来の粘弾性または熱弾性の発泡体を温度変更装置および制御装置と組み合わせて、典型的な使用例において硬さの程度が変化する製品を作ることが記載されている。温度変更装置が30℃から周囲温度に冷却されるとき、発泡体が硬くなるまでに最大1時間かかることがある。また、発泡体を暖めることで発泡体の軟化は早くなるが、その場合も10~15分程度かかる。この特徴は、製品の市場性を大きく制限する。また、発泡体の本体温度に対する感度は、粘弾性または熱弾性の発泡体からなる発泡層が製品の奥深くに設置されなければ、本体温度が加温装置の効果を打ち消してしまうことを意味する。これは、使用者が経験する効果を制限する。
【0004】
米国特許第8,499,389号の図面は、発泡体を用いて作られた製品の構造例を示し、異なるタイプの発泡体を組み合わせる通常の方法である発泡体の層を図示している。発泡体層を用いた構造では、発泡体が冷却されるために十分な外気を発泡体に到達させることができない。米国特許8,499,389号は、発泡体や発泡体層に直接隣接する材料が硬さを変えることについて何も教示していない。これらの要素は、ユーザーが期待する製品の硬さの度合いを早く変化させるために必要である。
【発明の概要】
【0005】
成形体は、本明細書で説明される。この成形体は、一方が従来のポリウレタン発泡体であり、他方が25℃から95℃の間の温度に到達するための熱エネルギーを発生する加熱要素eである2つの異なる材料を備えている。熱エネルギー発生要素は、S字形またはZ字形で発泡材料に挿入されている。加熱要素は、「S」字形または「Z」字形の温度発生層として構成されることができる。このS字形またはZ字形は、発泡体の内側部分に発生した熱エネルギーを集中させ、熱エネルギーを投入することによる温度上昇が速い。また、発泡体が冷却されるべき時には、どの発泡体部分からも隣接する空気までの距離が短いので、熱エネルギーレベルの低下が速い。
【0006】
さらに、「S」字形または「Z」字形は、発泡体の滑らかな圧縮をサポートし、この圧縮は、輸送目的のために体積を減らすために、成形(発泡)体を圧縮する本体の力または機械力のいずれかによって引き起こされる。
【0007】
繊維バンドが記載されており、このバンドは、導電性粒子を配合したポリウレタンで被覆されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、動的発泡体を用いた成形体の硬さ調節部の構造を示している。
【
図4】
図4は、動的発泡体の更なる変形例を示している。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本明細書は、要素全体の小さな部分に熱エネルギーを集中させることによって、発泡体(foam)からなる要素に熱エネルギーを効率的に投入する方法を説明する。これは、家具(座席のような)またはマットレスがユーザーを全体でなく定められた部分においてのみ暖めるように、発泡体を加熱することを意図する場合に利点がある。
【0010】
さらに、開示された本体は、「動的発泡体(dynamic foam)」と呼ばれる発泡体パラメータが変更された発泡体と共に使用することができる。これらの動的発泡体は、15℃を超えるガラス転移温度を有する発泡体である。この本体は、以下に説明するように、加温装置およびコントローラと関連して使用することができる。本開示の動的発泡体は、米国特許US8,499,389号から知られている構造と組み合わせて使用することができる。動的発泡体は、スプリング、非動的PU発泡体に限定されない、それぞれの材料の特定の快適性を強化する他の材料と組み合わせることができる。
【0011】
動的発泡体と共に開示されるような本体の使用は、ベッドで使用するためのマットレスのようであるが、これに限定されない、非常に迅速に硬さを変えることができる製品を可能にする。動的発泡体は、18℃と28℃との間の温度範囲(ただし、これに限定されない)で使用することができる。動的発泡体は、積極的に冷却することなく、急速に硬さを変化することができる。これは、硬さを変更することができるが、積極的な冷却を必要とする先行技術から知られている粘弾性材料とは対照的である。また、粘弾性材料は、0℃から15℃の間の温度範囲でのみその硬さを急速に変化させることが知られており、このことは、粘弾性材料を、人が典型的な室温で寝ているマットレスに使用するには不向きなものにしている。
【0012】
加温装置および制御装置と組み合わされている本明細書に記載の本体は、ベッド内のような製品表面に近い領域で、このような動的発泡体を使用することができる。本体は、先行技術で知られている発泡体とは異なり、体温が硬さに及ぼす影響から実質的に独立している、ベッドの硬さの大幅な変化を可能にする。これは、本開示の本体が、ベッドのマットレスの表面により近く配置され得るため、硬さの変化が、ベッドの使用中により知覚可能であることを意味している。
【0013】
20℃から50℃の範囲での発泡体の加温を可能にする温度変更装置と、対応する制御装置とを一緒に有する成形体は、所望の特性を有する製品になる。発明者らは、発泡体自体の硬さの変化が急速であり、温度変更装置による小さな温度変化でも、使用者が明確に気付くことができることを確立した。
【0014】
本開示の本体は、製品の一部分のみを形成し、完全な製品と一体化されることができる。動的発泡体の全体の高さおよび/または厚さを非常に薄く保つことができることが判明している。動的発泡体の薄い設計は、(温度が上昇する場合)所望の量の熱エネルギーがこの薄い動的発泡体片に急速に浸透し、温度低下が望まれる場合、動的発泡体の薄い片を通じて熱エネルギーが急速に放出されることになる。
【0015】
異なるタイプの発泡体を含む従来の製品は、通常、これらの異なるタイプの発泡体が互いに隣接して水平方向に配置されるように設計されている。このような構造は、発泡体を互いに接着することができるため、製造が容易である。しかし、このような従来の構造では、製品の硬さを速く変化させることに劣ることが判明している。
【0016】
動的発泡体の上部および下部は、荷重を取り除いた後に動的発泡体が元の形状に戻ることができるように、全体の構造に強固に固定されている。研究では、ガラス転移相を変更した発泡体は、従来の発泡体のように圧縮後にそれ自体で元の形状に戻らないことが示されている。
【0017】
構造は、暖かい空気が上昇する傾向に基づいて、暖かい空気が動的発泡体の部分から離れることを可能にするために、動的発泡体または他の場所にチャネル(channel)または孔を含むことができる。
【0018】
構造は、製品全体の大部分が構成される補完材料も含む。この補完材料は、高い復元力を有し、補完材料が圧縮後にその元の形状に戻るのに十分な力を有することを意味する。この補完材料も発泡体であることができ、あるいは代替的または追加的に補完材料はマットレスまたは座椅子のような内部にスプリングの入った製品に従来から使用されているようなメタルスプリングであることができる。本明細書によって教示された動的発泡体と補完材料の組み合わせは、上昇した温度を有する動的発泡体の温度の後に、製品全体が柔らかくなることを可能にする。製品は、標準的なフォームまたはスプリングベースの本体のみによるある程度の弾力をまだ有している。熱エネルギーが本体から離れると、補完材料が動的発泡体で作られた部分を含む周囲の本体全体を元の形状に押し戻すので、製品は実質的に以前の形状に戻ることになる。
【0019】
温度調節装置は、小さなバンドから作ることができ、これらのバンドはポリウレタンでコーティングされ、このポリウレタンには導電性材料が配合されている。電流を流すと、導電性材料は、それ自身の電気抵抗で発熱する。
【0020】
(実施例)
図1は、前述のベッドやマットレスのような成形体の硬さ調節可能な部分の典型的な構造を示している。この部分のいくつかは、完全な製品を形成するために、水平方向または垂直方向またはその両方に、互いに隣接して配置されることができる。この部分は、この部分のみの硬さを調節して、完成品内で単独で使用することも可能である。
【0021】
図1に示す動的発泡体1は、その部分の一辺から反対側の辺まで薄く垂直方向に立てられた長方形のスライスである。動的発泡体1は、上部分および下部分において拡幅している。動的発泡体1は、上部分および下部分において、周囲の材料2の隣接面に接着されている。
図1に示す例示では、補完材料2として、例えばポリウレタンからなる高復元発泡体が使用される。標準的な発泡体3は、動的発泡体1と補完材料2との組み合わせの上端および下端に接着されている。動的発泡体1および補完材料2は、周囲空気で満たされた空の開放空間(open space)4を形成する。
【0022】
成形体内の空気の動きを高めるために、成形体にさらに孔またはチャネル(channel)5~8を設けてもよい。動的発泡体1内の水平チャネル6は、空気が動的発泡体部分の外側により速く出て行くことができるので、動的発泡体1のより速い冷却を強化している。空気室4のすぐ上で改良された発泡体1および補完材料2に切り込まれている垂直チャネル5は、暖かい空気が上方に流れる傾向があるので、暖かい空気が空気室4の上端部に集まるのを防ぐ。したがって、動的発泡体1から吸引され、動的発泡体1の硬さに影響を与えることができなくなる。水平チャネル7および8は、この暖かい空気を動的発泡体1から遠ざけるように流すことを可能にする。この構造は、説明した孔/チャネルを全く含まなくとも、いくつかを含んでも、またはすべてを含んでもよいことに留意されたい。加熱要素は、温度発生層9が「S」字形で動的発泡体1内に強固に固定または接着されるように構成されることができる。温度発生層9は、外部の制御装置とケーブルで接続されている。温度発生層9は、「Z」字形で動的発泡体1内に強固に固定または接着されることもできる(図示せず)。
【0023】
図2は、補完材料(
図1の要素2に相当)が複数のポケットメタルスプリング(pocketed metal springs)10で構成されている成形体の代替構造を示している。これらのポケットメタルスプリング10は、家具産業において広く使用されている。ポケットメタルスプリング10は、通常、快適さを提供するためのスプリングの層を形成するため、互いに隣接して使用される。ポケットメタルスプリング10は、動的発泡体の荷重-撓み曲線とは異なる荷重-撓み曲線を有する。内側スプリング10と動的発泡体1との組み合わせは、滑らかおよび-熱エネルギーで-調節可能な、荷重-撓み曲線をもたらすように構成されることができる。それぞれの材料、すなわち、動的発泡体1およびポケットメタルスプリング10の正確な位置は、非常に異なることが可能である。動的発泡体1は、荷重が除去された後、動的発泡体1が元の形状に復元できるように、発泡体3の上部分および下部分に固定される。加熱要素は、温度発生層9が「S」字形で動的発泡体1内に強固に固定または接着されるように構成されることができる。温度発生層9は、外部の制御装置とケーブルで接続されている。温度発生層9は、「Z」字形で動的発泡体1内に強固に固定または接着されることもできる(図示せず)。
【0024】
図3は、動的発泡体1のベースを広くした
図1の変形例である。
図3における動的発泡体1は、動的発泡体1のブロックで互いに取り付けられた2つの垂直層を備えている。ブロック11は、空の空間を作ることができ、熱エネルギーを外部に放出するために、0個、1個または複数個の孔およびチャネル6を有してもよい。動的発泡体1の垂直層は、中間において両材料の間に距離を有する補完材料2に、上部分および下部分で取り付けられ、空気で別の水平な空の空間を作る。温度発生層9は、「S」字形で動的発泡体1のブロック内に存在している。温度発生層9は、「Z」字形で動的発泡体1のブロック内に存在することもできる(図示せず)。
【0025】
図4は、動的発泡体1を有する部分を構成するための異なるバージョンである。上部分および下部分の両側に延長部12を有する動的発泡体1の垂直層のうち2つは、延長部12で片側で互いに、外側で補完部材2に取り付けられている。動的発泡体1のそれぞれの垂直層の中間部分は、異なる材料層13で互いに取り付けられ、この材料は、動的発泡体1、補完材料2と同じ材料とすることができ、または他の異なる柔軟な材料であってもよい。この構造は、過剰な熱エネルギーを集めて本体の外側に分配することができる2つの水平な空の空間6を作る。この構造は上端に動的発泡体1の完全な層を有し、この動的発泡体1が高い断熱特性を有するので、過剰な熱エネルギーは、上端で使用者に向かって放出されることはない。温度発生層9は、「S」字形で動的発泡体1のそれぞれの垂直層内に配置されている。温度発生層9は、「Z」字形で動的発泡体1のそれぞれの垂直層内に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 動的発泡体
2 高弾力発泡体のような補完材料
3 標準的なコンフォート(comfort)発泡体のような他の材料
4 発泡体間の空の空間により作られた空気室
5 動的発泡体内の垂直方向の空の空間
6 動的発泡体内の水平方向の空の空間
7 空気室からつながる水平方向の空の空間
8 改良された発泡体内の垂直方向の空の空間に接続された動的発泡体より上の水平方向の空の空間
9 動的発泡体部分における温度発生層
10 ポケットメタルスプリング
11 従来の発泡体ブロック
12 動的発泡体1の垂直層への水平な延長部
13 動的発泡体1の垂直層の間の材料層
【国際調査報告】