IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-PHセンサ 図1
  • 特表-PHセンサ 図2
  • 特表-PHセンサ 図3
  • 特表-PHセンサ 図4
  • 特表-PHセンサ 図5
  • 特表-PHセンサ 図6
  • 特表-PHセンサ 図7
  • 特表-PHセンサ 図8
  • 特表-PHセンサ 図9
  • 特表-PHセンサ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】PHセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20230623BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20230623BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20230623BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
G01N27/414 301U
G01N27/00 J
G01N27/22 B
G01N27/414 301X
G01N27/414 301P
G01N27/416 353Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573223
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 US2021033975
(87)【国際公開番号】W WO2021242720
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】17/105,142
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/030,062
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】スコット ロバート サマーフェルト
(72)【発明者】
【氏名】アーンスト ジョルグ ミュルナー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティナ メイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ヘフェル
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AE18
2G060AF10
2G060AF20
2G060DA02
2G060DA07
2G060DA10
2G060DA19
2G060HC04
2G060KA06
(57)【要約】
流体のpHを感知するために、半導体ダイの加熱装置(102、105、107)が流体(114)の温度を第1の温度に制御する。流体の温度が第1の温度である間に、半導体ダイのフローティングゲートトランジスタ(120)のゲート(122)の第1の電圧が測定される。また加熱装置は、流体の温度を、第1の温度とは異なる第2の温度に制御する。流体の温度が第2の温度である間に、ゲートの第2の電圧が測定される。流体のpHは、第1及び第2の電圧、第1の温度、及び第2の温度に基づいて判定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサであって、
感知側、半導体基板、金属化構造、及び誘電体層を有する半導体ダイであって、前記金属化構造が、前記半導体基板上の第1のレベル、及び、前記第1のレベルと前記感知側との間の第2のレベル、及び、前記感知側と前記第2のレベルとの間の前記誘電体層を含む、前記半導体ダイと、
ゲート、ドレイン、及びソースを有するトランジスタと、
前記第2のレベルにおける第1の電極であって、前記第1の電極が、前記感知側上の流体への前記誘電体層内の第1の開口を介して露出される第1の表面を有する、前記第1の電極と、
前記第2のレベルにおける第2の電極であって、前記第2の電極が、前記感知側上の前記流体への前記誘電体層内の第2の開口を介して露出される第2の表面を有し、前記第2の電極が前記第1の電極から離間される、前記第2の電極と、
前記第2のレベルにおける第3の電極であって、前記第3の電極が、前記第1及び第2の電極から離間され、前記第3の電極が前記ゲートに結合され、前記第3の電極が、前記流体と前記ゲートとの間にキャパシタを形成するために前記誘電体層によって前記感知側から分離される、前記第3の電極と、
前記金属化構造における金属抵抗器と、
前記金属抵抗器に結合される出力を有する加熱器回路であって、前記加熱器回路が、前記流体を選択的に加熱するために電流信号を前記金属抵抗器に搬送するように構成される、前記加熱器回路と、
を含む、センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサであって、
前記第2のレベルにおける第4の電極であって、前記第4の電極が、前記第1、第2、及び第3の電極から離間され、前記第4の電極が前記誘電体層によって前記感知側から分離される、前記第4の電極と、
前記第4の電極に結合される温度感知回路と、
を更に含む、センサ。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサであって、前記第1、第2、第3、及び第4の電極がプラチナであるか又はプラチナを含む、センサ。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサであって、
入力及び出力を有する流体電位感知回路であって、前記流体電位感知回路の前記入力が前記トランジスタに結合され、前記流体電位感知回路の前記出力が前記流体の電位を表す出力信号を提供するように構成される、前記流体電位感知回路と、
コントローラ入力及びコントローラ出力を有するコントローラと、
を更に含み、
前記コントローラ入力が前記流体電位感知回路の前記出力に結合され、前記コントローラが、前記コントローラ入力に応答して前記コントローラ出力においてpH信号を提供するように構成され、前記pH信号が前記流体のpHを表す、
センサ。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサであって、
前記ゲートに結合される出力を有するゲート制御回路であって、前記ゲート制御回路が前記ゲートに調整信号を提供するように構成される、前記ゲート制御回路、
を更に含む、センサ。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサであって、
前記コントローラが前記加熱器回路に結合され、
前記コントローラが、
前記電流信号を前記金属抵抗器に搬送するのを控えるため、及び、前記加熱器回路が前記電流信号を前記金属抵抗器に搬送するのを控えている間、前記流体電位感知回路から前記出力信号を受信するために、第1のモードにおいて前記加熱器回路を制御するように構成され、
前記電流信号を前記金属抵抗器に搬送するため、及び、前記加熱器回路が前記電流信号を前記金属抵抗器に搬送する間に、前記流体電位感知回路から第2の出力信号を受信するために、第2のモードにおいて前記加熱器回路を制御するように構成され、
前記流体電位感知回路からの前記出力信号及び前記第2の出力信号に基づいて、前記pH信号を提供する、
ように構成される、
センサ。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサであって、
前記第2のレベルにおける第4の電極であって、前記第4の電極が、前記第1、第2、及び第3の電極から離間され、前記第4の電極が前記誘電体層によって前記感知側から分離される、前記第4の電極と、
前記第4の電極に結合される入力を有する温度感知回路と、
を更に含み、
前記コントローラが、前記温度感知回路に結合され、
前記第1又は第2のモードの少なくとも1つにおいて、前記温度感知回路から温度フィードバック信号を受信するように構成され、
(a)前記温度フィードバック信号に基づいて前記金属抵抗器への前記電流信号の振幅又はタイミングを制御すること、(b)前記温度フィードバック信号に基づいて前記流体電位感知回路からの前記出力信号のサンプリング又は前記第2の出力信号のサンプリングを制御すること、或いは、(c)前記流体電位感知回路からの前記出力信号、前記第2の出力信号、及び前記温度フィードバック信号に基づいて、前記pH信号を提供すること、のうちの1つを行うように構成される、
センサ。
【請求項8】
請求項1に記載のセンサであって、前記ゲートに結合される出力を有するゲート制御回路を更に含み、前記ゲート制御回路が前記ゲートに調整信号を提供するように構成される、
センサ。
【請求項9】
請求項8に記載のセンサであって、前記ゲート制御回路が、
第1の制御ゲート、第1の制御ドレイン、及び第1の制御ソースを有する第1の制御トランジスタであって、前記第1の制御ゲートが前記ゲートに結合され、前記第1の制御ドレインが第1の電圧源に結合される、前記第1の制御トランジスタと、
第2の制御ゲート、第2の制御ドレイン、及び第2の制御ソースを有する第2の制御トランジスタであって、前記第2の制御ゲートが前記ゲートに結合され、前記第2の制御ドレインが第2の電圧源に結合される、前記第2の制御トランジスタと、
を含む、センサ。
【請求項10】
請求項8に記載のセンサであって、前記ゲート制御回路が、
制御入力と、
pチャネルトランジスタ及びnチャネルトランジスタを有するトランスファゲートであって、前記pチャネルトランジスタが、第1のゲート、第1のドレイン、第1のソース、及び第1の本体接続1014を有し、前記nチャネルトランジスタが、第2のゲート、第2のドレイン、第2のソース、及び第2の本体接続1014を有し、前記nチャネルトランジスタの前記第2のゲートが前記制御入力に結合され、前記pチャネルトランジスタの前記第1のドレインが前記ゲートに結合され、前記nチャネルトランジスタの前記第2のドレインが前記ゲートに結合される、前記トランスファゲートと、
出力を有する電圧源であって、前記電圧源の前記出力が前記pチャネルトランジスタの前記第1のソースに結合され、前記電圧源の前記出力が前記nチャネルトランジスタの前記第2のソースに結合される、前記電圧源と、
前記制御入力に結合される入力を有するインバータであって、出力が前記pチャネルトランジスタの前記第2のゲートに結合される、前記インバータと、
を含む、センサ。
【請求項11】
請求項1に記載のセンサであって、
前記第2のレベル内の第4の電極であって、前記第4の電極が前記第1、第2、及び第3の電極から離間され、前記第4の電極が前記誘電体層によって前記感知側から分離される、前記第4の電極と、
前記第4の電極に結合される温度感知回路と、
前記第2のレベル内の第5の電極であって、前記第5の電極が前記第1、第2、及び第4の電極から離間され、前記第5の電極が前記誘電体層によって前記感知側から分離され、前記第5の電極が前記第3の電極に結合される、前記第5の電極と、
前記第2のレベル内の第6の電極であって、前記第6の電極が前記第1、第2、第3、第4、及び第5の電極から離間され、前記第6の電極が前記流体に結合されるべき前記誘電体層内の第3の開口を介して露出される第3の表面を有する、前記第6の電極と、
を更に含み、
前記第4及び第5の電極が、前記第2のレベルにおいて第1の方向に沿って延在する細長いセクションを備える蛇行形状を有し、
前記第1の電極が、前記第2のレベルにおいて前記第4の電極を横方向に囲み、
前記第1の電極が、前記第4の電極の前記細長いセクションのうちの隣接するセクション間で前記第1の方向に沿って延在する、内側に延在する分岐部分を有し、
前記第6の電極が、前記第2のレベルにおいて前記第5の電極を横方向に囲み、
前記第6の電極が、前記第1の電極の前記細長いセクションのうちの隣接するセクション間で前記第1の方向に沿って延在する、内側に延在する分岐部分を有する、
センサ。
【請求項12】
請求項11に記載のセンサであって、
前記第1及び第4の電極が、前記第2のレベルにおける第1の領域内にあり、
前記第5及び第6の電極が、前記第2のレベルにおける第2の領域内にあり、前記第2の領域が前記第1の領域から離間されており、
前記第2の電極が前記第1及び第2の領域を横方向に囲む、
センサ。
【請求項13】
請求項11に記載のセンサであって、
前記金属抵抗器が、それぞれの第1及び第2の端部と、前記第1及び第2の端部間のタップとを有する縦断面を含み、前記それぞれの縦断面が、前記第2のレベルにおいて第2の方向に沿って延在し、前記第2の方向が前記第1の方向に直交し、
前記加熱器回路が、前記それぞれの縦断面の前記タップに結合される第1の出力と、前記それぞれの縦断面の前記第1の端部に結合される第2の出力と、前記それぞれの縦断面の前記第2の端部に結合される第3の出力とを含み、
前記加熱器回路の前記第2の出力が、前記加熱器回路の前記第1の出力の電圧に関して正である第1の電圧信号を提供するように構成され、前記加熱器回路の前記第3の出力が、前記加熱器回路の前記第1の出力の前記電圧に関して負である第2の電圧信号を提供するように構成される、
センサ。
【請求項14】
センサであって、
感知側、半導体基板、金属化構造、及び誘電体層を有する半導体ダイであって、前記感知側が流体に結合されるように適合され、前記金属化構造が、
前記誘電体層において第1の開口を介して露出される第1の表面を有する第1の電極と、
前記誘電体層において第2の開口を介して露出される第2の表面を有する第2の電極であって、前記第2の電極が前記第1の電極から離間される、前記第2の電極と、
前記第1及び第2の電極から離間され、前記誘電体層によって前記感知側から分離される、前記第3の電極と、
を含む、前記半導体ダイと、
前記半導体ダイにおけるトランジスタであって、前記トランジスタがゲート、ドレイン、及びソースを有し、前記ゲートが、前記流体と前記第3の電極との間に前記誘電体層によって形成されるキャパシタを介して前記流体の電位を感知するために前記第3の電極に結合される、前記トランジスタと、
前記金属化構造内の金属抵抗器、及び前記半導体ダイ内の加熱器回路を有する加熱装置であって、前記加熱器回路が、前記金属抵抗器に結合される出力を有し、前記加熱装置が、前記流体を選択的に加熱するために電流信号を前記金属抵抗器に搬送するように構成される、前記加熱装置と、
前記半導体ダイにおける流体電位感知回路であって、前記流体電位感知回路が前記トランジスタに結合され、前記流体電位感知回路が前記流体の電位を表す出力信号を提供するように構成される、前記流体電位感知回路と、
前記半導体ダイにおけるコントローラと、
を含み、
前記コントローラが、
前記流体の温度を第1の温度に制御するように前記加熱器回路を制御し、
前記流体の温度が前記第1の温度である間に、前記流体電位感知回路からの前記出力信号の第1のサンプルを受信し、
前記流体の温度を前記第1の温度とは異なる第2の温度に制御するために前記加熱器回路を制御し、
前記流体の前記温度が前記第2の温度である間に、前記流体電位感知回路からの前記出力信号の第2のサンプルを受信し、
前記出力信号の前記第1及び第2のサンプル、前記第1の温度、及び前記第2の温度に基づいて、前記流体のpHを表すpH信号を提供する、
ように構成される、
センサ。
【請求項15】
請求項14に記載のセンサであって、
温度感知装置を更に含み、前記温度感知装置が、
前記金属化構造における第4の電極であって、前記第4の電極が前記第1、第2、及び第3の電極から離間され、前記第4の電極が前記感知側から前記誘電体層によって分離されている、前記第4の電極と、
前記第4の電極に結合される温度感知回路と、
を含み、
前記コントローラが、前記温度感知回路からの温度フィードバック信号に基づいて、前記流体の前記温度を検証又は制御するように構成される、
センサ。
【請求項16】
請求項15に記載のセンサであって、
前記ゲートに結合される出力を有するゲート制御回路であって、前記ゲート制御回路が前記ゲートに調整信号を提供するように構成される、前記ゲート制御回路を更に含み、
前記コントローラが、前記流体電位感知回路から前記出力信号をサンプリングする前又は後に、前記ゲートの電圧を設定又は調整するために、前記ゲート制御回路を制御するように構成される、
センサ。
【請求項17】
請求項14に記載のセンサであって、
前記ゲートに結合される出力を有するゲート制御回路であって、前記ゲート制御回路が前記ゲートに調整信号を提供するように構成される、前記ゲート制御回路を更に含み、
前記コントローラが、前記流体電位感知回路から前記出力信号をサンプリングする前又は後に、前記ゲートの電圧を設定又は調整するために、前記ゲート制御回路を制御するように構成される、
センサ。
【請求項18】
流体のpHを感知する方法であって、
半導体ダイの感知側を流体に結合することと、
前記半導体ダイの加熱装置を用いて、前記流体の温度を第1の温度に制御することと、
前記流体の前記温度が前記第1の温度である間に、前記半導体ダイのフローティングゲートトランジスタのゲートの第1の電圧を測定することと、
前記半導体ダイの前記加熱装置を用いて、前記流体の前記温度を前記第1の温度とは異なる第2の温度に制御することと、
前記流体の温度が前記第2の温度である間に、前記フローティングゲートトランジスタの前記ゲートの第2の電圧を測定することと、
前記ゲートの前記第1及び第2の電圧、前記第1の温度、及び前記第2の温度に基づいて、前記流体のpHを判定することと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
ゲート制御回路を用いて、前記ゲートの前記電圧を測定する前又は後に、前記ゲートの電圧を設定又は調整することを更に含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、
前記半導体ダイの電極からの温度フィードバック信号に基づいて、前記流体の前記温度を検証又は制御することを更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
センサは、水又は他の流体(例えば、液体)のpHを感知するために有用である。いくつかのpHセンサは、電解質絶縁体半導体電界効果トランジスタ(ISFET)、及び、銀(Ag)/塩化銀(AgCl)などの化学リファレンスを用いる。これらのセンサは、感知された流体のpHを特徴付けるために用いることが可能な、電気測定値を取得するために、感知された流体内に配置されたリファレンス電極を用いる。しかしながら、リファレンスは複雑であり製造するために費用がかかる。更に、リファレンスは、AgClでコーティングされ、リファレンスと感知された流体との間のガラスフリットを用いて塩化カリウム(KCl)+AgClを含む溶液中に懸濁されている、銀線などの、液体を含む。プラチナ(Pt)、金(Au)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ルテニウム(RuO)などの、よりシンプルな費用効率の高いリファレンスを用いることは、電極と流体との間の電圧が時間と共に不規則にドリフトすることになるため、問題である。
【発明の概要】
【0002】
一態様において、センサが、半導体ダイ、トランジスタ、第1の電極、第2の電極、第3の電極、金属レジスタ、及び加熱器回路を含む。半導体ダイは、感知側、半導体基板、金属化構造、及び誘電体層を有する。金属化構造は、半導体基板上の第1のレベル、及び第1のレベルと感知側との間の第2のレベルを含む。誘電体層は、感知側と第2のレベルとの間に配置される。第1の電極は、流体に結合される誘電体層において第1の開口を介して露出される第1の表面を有する。第2の電極は、流体に結合される誘電体層において第2の開口を介して露出される第2の表面を有する。第3の電極は、トランジスタゲートに結合され、流体とゲートとの間にキャパシタを形成するために誘電体層によって感知側から分離される。加熱器回路は、金属レジスタに結合される出力を有し、加熱器回路は流体を選択的に加熱するために電流信号を金属レジスタに搬送するように構成される。
【0003】
別の態様において、センサが、半導体ダイ、トランジスタ、加熱装置、流体電位感知回路、及びコントローラを含む。半導体ダイは、感知側、半導体基板、金属化構造、及び誘電体層を有する。金属化構造は、第1の電極、第2の電極、及び第3の電極を含む。第1の電極は、誘電体層において第1の開口を介して露出される第1の表面を有する。第2の電極は、誘電体層において第2の開口を介して露出される第2の表面を有する。第3の電極は、第1及び第2の電極から離間され、誘電体層によって感知側から分離される。トランジスタは、ゲート、ドレイン、及びソースを有する。ゲートは、流体と第3の電極との間に誘電体層によって形成されたキャパシタを介して、流体の電位を感知するために第3の電極に結合される。加熱装置は、金属化構造内の金属レジスタ、及び半導体ダイ内の加熱器回路を有する。加熱器回路は金属レジスタに結合される出力を有し、加熱器回路は、流体を選択的に加熱するために電流信号を金属レジスタに搬送するように構成される。流体電位感知回路は、流体の電位を表す出力信号を提供するために、トランジスタに結合される。コントローラは、流体の温度を第1の温度に制御するために加熱器回路を制御し、流体の温度が第1の温度である間に、流体電位感知回路からの出力信号の第1のサンプルを受信し、流体の温度を第1の温度とは異なる第2の温度に制御するために加熱器回路を制御し、流体の温度が第2の温度である間に、流体電位感知回路からの出力信号の第2のサンプルを受信し、並びに、出力信号の第1及び第2のサンプル、第1の温度、及び第2の温度に基づいて、流体のpHを表すpH信号を提供するように構成される。
【0004】
更なる態様において、或る方法が、半導体ダイの加熱装置を用いて流体の温度を第1の温度に制御することと、流体の温度が第1の温度である間に、半導体ダイのフローティングゲートトランジスタのゲートの第1の電圧を測定することとを含む。この方法は更に、半導体ダイの加熱装置を用いて流体の温度を第1の温度とは異なる第2の温度に制御することと、流体の温度が第2の温度である間に、フローティングゲートトランジスタのゲートの第2の電圧を測定することと、ゲートの第1及び第2の電圧、第1の温度、及び第2の温度に基づいて、流体のpHを判定することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】リファレンスフリーpHセンサの部分側面立断面図及び概略図である。
【0006】
図2図1のpHセンサの平面図である。
【0007】
図3図1及び図2のpHセンサを用いてpHを感知する方法のフローチャートである。
【0008】
図4図1及び図2のpHセンサにおける容量結合の概略図である。
【0009】
図5図1及び図2のpHセンサにおける例示の流体電位感知回路の概略図である。
【0010】
図6図1及び図2のpHセンサの第1の金属化レベルにおける金属レジスタ構造の平面図である。
【0011】
図7図1及び図2のpHセンサの第2の金属化レベルにおける電極構造の平面図である。
【0012】
図8図1及び図2のpHセンサにおける誘電体層内のそれぞれの開口を介して露出される、或る電極の感知側部及び表面の平面図である。
【0013】
図9図1及び図2のpHセンサにおける例示のゲート制御回路の概略図である。
【0014】
図10図1及び図2のpHセンサにおける別の例示のゲート制御回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図において、同様の参照番号は全体を通じて同様の要素を指し、様々な特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、「結合」という単語は、間接的又は直接的な電気的又は機械的接続、或いはそれらの組み合わせを含む。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスに結合するか又は第2のデバイスと結合される場合、その接続は、直接的電気接続を介し得るか、或いは、一つ又は複数の介在するデバイス及び接続を介した間接的電気接続を介し得る。様々な回路、システム、及び/又は構成要素の一つ又は複数の動作特徴は、以下で、回路要素が電力投入されて動作するときに、場合によっては様々な構造の構成及び/又は相互接続によって生じる機能との関連において記述される。
【0016】
初めに図1及び図2を参照すると、図1は、図2における線1-1に沿って取られた概略的回路構成要素及び部分側面立断面図を含む、リファレンスフリー(例えば、リファレンスの無い)センサ100を示し、図2は、図1のpHセンサの平面図を示す。一例におけるセンサ100は、流体のpHを感知するために用いられる。センサ100は、他の応用例において、流体のpH又は別の電気的状態を感知するために用いることができる。センサ100は、感知側101を有する半導体ダイを含み、例示された例では、感知側101は、センサ100の頂部上の概して平面的な感知面である。センサ100は、例えば軽くドープされたn型又はp型シリコン構造を有する、半導体基板102を備える半導体ダイ、逆向きにドープされたウェル103、及び、それらの頂部側の誘電体層104を含む。半導体ダイは、誘電体層104の上に形成される金属化構造も含む。金属化構造は、誘電体層104の上方の半導体基板上に延在するプリメタル誘電体(PMD)106を備える第1のレベル105を含む。金属化構造は、第1のレベル105と感知側101との間に配置される第2のレベル107も含む。別の例において、金属化構造は2つより多くのレベルを含む。図1における第2のレベル107は、二酸化シリコン(SiO)などの第1のレベル間誘電体(ILD)層108を含む。例示された例は、下にあるPMD層106の頂部側上に導電アルミニウムから形成され、ILD材料108で覆われる、パターン化された特徴109を備える、単一のILDレベル107を含む。他の例において、金属化構造は、信号配路及び/又は構成要素相互接続のための、導電ルーティング特徴及び導電コンタクト又はバイアを備える、任意の整数のレベルを含む。
【0017】
導電パターン化された電極層110が、下記で更に説明するように、様々な導電電極特徴を形成するためにILD層108の頂部側上で延在する。一例において、パターン化された電極層110は、プラチナであるか又はプラチナを含む。動作において、流体の電位は、パターン化された電極層110の一つ又は複数の電極との接触によって設定され、露出された電極は、好ましくは、流体、例えば、金(Au)、プラチナ(Pt)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrO)、パラジウム(Pd)などを備える、非反応性材料であるか又は非反応性材料を含む。溶液電位は、理想的には加熱器の外側に接続されて、加熱感知電極の電圧電位が変化しないようにする。パターン化された電極層110の特定の電極は、例えば、図1及び図2において111及び112と示されるような、露出された上側表面又は側部を有する。残りのパターン化された電極層110、及びILD層108の頂部側は、金属化構造の感知側101と第2のレベル107との間に延在する誘電体層113によって覆われる。一例において、誘電体層113は、流体114との直接接触するときに安定している、一つ又は複数の材料であるか又はそれを含む。水のpH感知の応用例にとって適切な例には、五酸化タンタル(Ta)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸窒化シリコン(SiON)、及び二酸化シリコン(SiO)窒化アルミニウム(AlN)が含まれる。
【0018】
pH感知応用例に設置された用途において、誘電体層113の頂部側又は表面は、被覆された電極と流体114との間に絶縁バリアを形成する。感知側101は、pH又は他の流体特性を感知するために、水又は他の液体又は気体などの流体114に結合され、センサ100は、半導体ダイを保護し、流体114をセンサ100の感知側101に結合(例えば、直接露出)させ得る、エンクロージャ(図示せず)などのパッケージ構造を含むことができる。
【0019】
金属化構造の第2のレベル107も、パターン化された電極層110の選択特徴と、PMD層106の頂部側上の選択パターン化された特徴109との間に、電気接続を形成するための導電バイアを含む。図1は、電極特徴110を配路特徴109と電気的に相互接続するバイア115、及び、フローティングゲート電極特徴110をトランジスタゲート配路特徴109と相互接続する別のバイア116を含む、2つの例を示す。第1のレベル105のPMD層106は、半導体ダイにおける電極、他の構成要素、又は回路への配路及び結合のために、選択構成要素端子(例えば、トランジスタゲート、ドレイン、及びソースなど)を、それぞれのパターン化された特徴109に電気的に相互接続する、導電バイア(例えば、タングステン(W))を含む。
【0020】
図1は、センサ100の3つの部分117、118、及び119の選択側部断面図を示し、3つの部分の位置は、図2の上面図において対応する切断線1-1に沿って示される。部分117は、センサ100の温度感知領域(図1では「温度感知」、図2では「温度感知(サーミスタ)」と標示される)の特徴及び態様を示す。部分118は、センサ100の流体電位感知領域(図1及び図2では「流体電位感知」と標示)の特徴及び態様を示す。部分119は、センサ100の流体電位感知領域の特徴及び態様を示す。図2に更に示されるように、例示のセンサ100は更に、各々が全般的に図1に示され下記で更に説明する特徴を有する2つの部分119を備える流体電位感知領域の2つのインスタンスを含む。
【0021】
図1において最も良く示されるように、センサ100の流体電位感知部分119は、ゲート誘電体121と、ゲート誘電体121の上に配置されるゲート122と、ドレイン124と、ソース126とを有する電界効果トランジスタ(FET)120を含む。この例において、ドレイン124及びソース126は、基板102の下線部分の極性とは逆の極性を有するドーパントを有する、複数の高度にドープされた注入領域を含む。例示された例において、トランジスタ120はnチャネルトランジスタである。他の例において、トランジスタ120はpチャネルトランジスタである。一例において、トランジスタ120は拡張ゲートISFETである。金属化構造の第1のレベル105は、第2のレベル107におけるパターン化された特徴109に対応する、トランジスタ120のそれぞれのゲート122、ドレイン124、及びソース126からの電気的接続を形成するタングステンコンタクトを含む。センサ100の動作において、下記で更に説明するように、流体114のpHを感知するためにトランジスタゲート122のゲート電圧VGが測定される。図1に示されるように、センサ100の部分118は、流体114に結合するために、誘電体層113内の第3の開口を介して露出される第3の表面130を有する、パターン化された電極特徴110を含む。
【0022】
金属化構造は、流体114のpHを感知するために用いられる様々な電極131、132、133、134、135、及び136を形成する、パターン化された特徴110を含む。温度感知部分117において、第1の電極131が第2のレベル107内の第1の電極131から離間され、流体114に結合されるべき誘電体層113内の第1の開口を介して露出される第1の表面111を含む。
【0023】
第2の電極132が、図1に示される流体電位感知部分119における第2のレベル107内の第1の電極131から離間されている。第2の電極132は、流体114に結合されるべき誘電体層113内の第2の開口を介して露出される第2の表面112を含む。流体電位感知部分119において、第3の電極133が、第2のレベル107内の第1及び第2の電極131、132から離間されている。第3の電極133は、流体114の電位を感知するためのゲート122に結合される。第3の電極133は、流体114とゲート122との間にキャパシタを形成するために、誘電体層113によって感知側101から分離される。第3の電極133は、流体114との直接接触を有さない。本例において、第3の電極133の上方の流体114は上側キャパシタプレートを形成し、第3の電極133は下側キャパシタプレートを形成し、これらのキャパシタプレートは、介在する誘電体材料の層113によって分離されてキャパシタ138を形成する。
【0024】
第4の電極134が、温度感知部分117における第2のレベル107内に配置される。第4の電極134は、図1に示されるように、導電バイア115によって温度感知回路に結合されるサーミスタとして動作する。第4の電極134は、第1、第2、及び第3の電極131、132、及び133から離間される。第4の電極134は感知側101から誘電体層113によって分離され、第4の電極134は流体114との直接接触を有さない。
【0025】
部分118において、第5の電極135が、金属化構造の第2のレベル107内のそれぞれの第1、第2、及び第4の電極131、132、及び134から離間されている。第5の電極135は、例えば、図1及び図2において破線137によって示される、第1及び第2のレベル105及び107内の導電相互接続配路トレース及びバイア(図示せず)によって、第3の電極133に電気的に結合される。第5の電極135は、誘電体層113によって感知側101から分離され、第5の電極135は流体114との直接接触を有さない。第6の電極136が、流体電位感知部分118における第2のレベル107内の、それぞれの第1、第2、第3、第4、及び第5の電極131、132、133、134、及び135から離間されている。第6の電極136は、流体114に結合されるべき誘電体層113における第3の開口を介して露出される第3の表面130を有する。
【0026】
センサ100は、半導体ダイにおける流体電位感知回路140を含む。流体電位感知回路140は、トランジスタ120に結合され、流体114の電位を表す出力信号を提供するように構成される。トランジスタゲート122は、流体114と第3の電極133との間に誘電体層113によって形成されるキャパシタ138を介して流体114の電位を感知するために、第3の電極133に結合される。流体電位感知回路140は、トランジスタ120のドレイン124に結合される第1の入力141と、トランジスタ120のソース126に結合される第2の入力142と、トランジスタ120の本体接続に結合される第3の入力143と、出力とを有する。流体電位感知回路の出力は、下記で更に説明するようにコントローラに結合され、出力は、流体114の電位を表す出力信号を提供するように構成される。
【0027】
センサ100は、半導体ダイ内に出力151、152、及び153を備える加熱器回路150を有する加熱装置を含む。加熱装置は、金属化構造の第2のレベル107内に金属レジスタ154も含む。加熱器回路150の出力151、152、及び153は、金属レジスタ154に結合される。加熱器回路150は、流体114を選択的に間接的に加熱するために、金属レジスタ154に電流信号を搬送するように構成される。金属レジスタ154は、一例において、金属化構造の第2のレベル107の、それぞれの温度感知及び流体電位感知の部分117及び118において延在する、相互接続されたアルミニウム加熱フィン構造109によって形成される。金属レジスタ特徴は、金属化構造の第2のレベル107内の電極131、134、135、及び136の部分の下方に近接して延在するが、これらの部分から離間されている。
【0028】
図6に関連して下記で更に表示及び説明するように、加熱器回路150は、金属レジスタ154のそれぞれの縦断面のタップに結合される第1の出力151を含む。加熱器回路150の第2の出力152は、金属抵抗器154のそれぞれの縦断面の第1の端部に結合され、第3の出力153は、金属抵抗器154のそれぞれの縦断面の第2の端部に結合される。本例において、加熱器回路150の第2の出力152は、加熱器回路150の第1の出力151の電圧VMに関して正の、第1の電圧信号VPを提供するように構成される。また、加熱器回路150の第3の出力は、第1の出力151の電圧VMに関して負の、第2の電圧信号VNを提供するように構成される。金属抵抗器154を感知側101に近接して置くことにより、加熱器回路150が、特に感知側101近くの流体114の温度を制御できるようにする。この温度制御により、流体温度が異なる温度である間、フローティングゲート122のゲート電圧VGを測定及びサンプリングすることによって、流体114のpHの正確な評価が可能になる。
【0029】
センサ100は、サーミスタとして動作する第4の電極134と、温度感知回路160とを含む温度感知装置を有する。温度感知回路160は、図1に示されるように、センサ100の温度感知部分117において、導体(例えば、アルミニウム)配路特徴109及び導電バイア115を介して第4の電極134に結合される入力161を含む。一例における加熱(例えば、温度上昇)は、流体114及び半導体ダイの両方において非常に局所的である。一実装において、加熱器/温度センサの組み合わせは、所与の制御信号についての温度上昇を判定するか、又は、目標の温度上昇を達成するための必要とされる制御信号を判定する。流体電位感知回路140は、この情報を用いて、一例における加熱と共に及び加熱無しに、異なる電位を得る。更に一例において、チップ及び流体114の永続的な加熱を軽減又は回避するため、及び電力消費を低減させるために、加熱は短パルスで生じる。一例において、加熱器のデフォルト状態は、加熱器がオフの状態で閉じるトランスファゲートを有する。一例において、センサは、ΔT又は加熱器制御値(加熱器オン対加熱器オフ)を判定するために温度センサを用いる第1の段階、及び、トランスファゲートが開の状態で流体電位を感知するための第2の段階を含む、2つの段階を実装し、センサは、2つの電位サンプル及び温度変化に従って流体pHを計算する。動作において、温度感知回路160は、第4の電極134の温度を判定するために、第4の電極134の抵抗を感知する。一例において、温度感知回路160は電流源を含み、電流源は、第4の電極134の一方の端部に所定の電流を選択的に印加し、電極抵抗を判定するために第4の電極134の第1の端部と第2の端部の間の電圧を感知する。この例において、温度感知回路160は、電圧感知回路要素を含み、第4の電極134の温度と相関され得る出力電圧信号を提供する。第4の電極134が流体114に近接することに起因して、出力電圧信号は流体114の温度を表す。
【0030】
一実装において、温度感知回路160からの出力電圧信号は、2つ又はそれ以上の既知の温度における流体電位感知出力をサンプリングするために、流体電位感知回路140の出力のサンプリングのタイミングを制御するために、流体温度を検証するコントローラに提供される。別の実装において、温度感知回路160からの出力電圧信号は、温度フィードバック信号としてコントローラに提供され、コントローラは、第4の電極134の温度及び閉ループ様式を調節するために、加熱器回路150の動作を修正する。
【0031】
一例におけるセンサ100は、ゲート制御回路170(図1では「フローティングゲート制御」と標示)も含む。ゲート制御回路170はゲート122に結合される出力171を含み、ゲート制御回路170は調整信号をゲート122に提供するように構成される。一例において、ゲート制御回路170は、図1に示されるトランジスタ120の本体接続に結合される出力172も含む。動作において、ゲート制御回路170は、特定の例において、流体電位感知測定の前又は後に、トランジスタゲート122のゲート電圧VGをリセット又は安定させるために用いられる。ゲート制御回路170の例示の実装は、図9及び図10に関連して下記で更に図示及び説明する。
【0032】
センサ100は、半導体ダイ内のコントローラ180を更に含む。コントローラ180は、電気接続によって、流体電位感知回路140、加熱器回路150、温度感知回路160、及びゲート制御回路170に動作可能に結合される。一例において、コントローラ180は、例えば、回路140、150、160、及び/又は170に制御信号を送信するため、及び、これらの回路からデジタル信号を受信するために、状態機械を実装するため、又は、他の論理動作を実行するための、論理回路要素を含む。一例において、コントローラ180は、バッファ、増幅器、アナログデジタル変換器などの、一つ又は複数のアナログインタフェース回路も含む。コントローラ180は、論理回路構成及び/又はプログラミングによって、下記で更に説明するような様々な動作及び機能を実施するように構成される。一実装において、コントローラ180は、異なる温度において一連のフローティングゲート電圧測定を繰り返すことによって、流体114のpHを連続的に感知するように、回路140、150、160、及び/又は170を制御する、及び/又は、これらの回路とインタフェースする。本実装におけるコントローラ180は、出力181においてpH信号(図1では「PH」と標示)を提供する。
【0033】
センサ100は、図1において第1の横方向X及び縦方向Zを伴う側面図で示される。図2は、第1及び第2の横方向X及びYの平面におけるpHセンサ100の一例の平面図を示す。図2の下向き平面図は感知側を示し、感知側は、誘電体層113の頂部表面と、誘電体層113のそれぞれの第1、第2、及び第3の開口を介して露出される、電極131、132、及び136の電極表面とを含む。図2は、誘電体層113によって覆われる、破線内の、下にある特徴及び構造も示す。図2におけるこれらの破線の構造は、第3の電極133、領域202及び204内の第4の電極134、領域201及び203内の第5の電極135、並びに、加熱器回路150の出力151、152、及び153への番号が付けられた接続を伴う、パターン化されたアルミニウム特徴109を含む。
【0034】
図2におけるセンサ実装は、第2の電極132によって横方向に囲まれた、4つの概して正方形の内部領域201、202、203、及び204を含む。この例において、領域203は領域201の第2のインスタンスであり、領域204は領域202の第2のインスタンスである。他の実装は、4つのこうした領域又は異なる数の領域の配置を含む。領域201~204は概して正方形であるが、異なる例では他の形状を用いることができる。この例では、それぞれの第1及び第4の電極131及び134は、第2のレベル107における第1の領域201(及び第3の領域203)内にある。また、第5及び第6の電極135、136は、金属化構造の第2のレベル107における第2の領域202(及び領域201)内にある。領域201~204はすべて、図2に示されるように互いに離間され、第2の領域は第1の領域から離間されている。第2の電極132は、領域201~204を横方向に囲み、概して長方形の形状を有するが、これはすべての可能な実装の厳密な要件ではない。
【0035】
この例におけるそれぞれの第1及び第6の電極131及び136は、それぞれの第5及び第4の電極135及び136を囲む外側の長方形構造を有する。例えば、第1の電極131は、第2及び第4の領域202及び204の第2の金属化レベル107において第4の電極134を横方向に囲む。同様に、第6の電極136は、領域201及び203の第2のレベル107において第5の電極135を横方向に囲む。また、それぞれの第4及び第5の電極134及び135は、第1の方向Xに沿って延在する細長い部分を備える蛇行形状を有する。第1及び第6の電極131及び136は、それぞれの蛇行形状の電極134及び135の分岐間で第1の方向Xに沿って延在する、逆方向に配置され、内側に延在する分岐部分を有する。例えば、第1の電極131は、領域202及び204における第4の電極134の細長い部分のうちの隣接する部分間で第1の方向Xに沿って延在する、内側に延在する分岐部分を有し、第6の電極136は、領域201及び203における第1の電極131の細長い部分のうちの隣接する部分の間で第1の方向Xに沿って延在する、内側に延在する分岐部分を有する。図2に示されるように、或る実装が、流体電位感知部分119の2つ又はそれ以上のインスタンスを含み、各々が、図1に関連して上記で説明したようなフローティングゲートトランジスタ120及び関連付けられた回路要素を有する。貫通(encircling)電極131及び136は、それぞれの貫通蛇行電極134及び135からほぼ等しく離間される。他の例において、電極は異なる量だけ離間される。図1及び図2における電極131、134、135、及び136は、概して等しい横幅である。他の例において、電極131及び134~136は異なる幅を有する。
【0036】
図3は、図1及び図2のセンサ100を用いてpHを感知するための方法300を示すフローチャートである。一例におけるコントローラ180は、図1における回路140、150、160、及び/又は170のうちの一つ又は複数を用いて方法300を実施するように構成される。図1に示されるように、半導体ダイ102、105、107の感知側101が流体114に結合された状態で、コントローラ180は一つ又は複数の測定サイクルにおいて方法300を実装し、そのうちの1つが図3に示されている。一実装において、方法300は、ゲート122の電圧VGの測定前又は測定後に、302及び304におけるフローティングゲート電圧VGを設定又は調整することを含む。図3の例において、コントローラ302は、ゲート制御回路170を用いて、ゲート電圧VGを302においてターゲット電圧に設定する。一例において、コントローラ180は、302において、ゲート電圧VGをターゲットレベルに設定するために、トランジスタゲート122を電圧基準に一時的に結合するように、ゲート制御回路にトランスファゲートを閉じさせる(例えば、図10に関連して下記で更に説明する)。この例では次いで、304において、コントローラ180はトランスファゲートを開き、トランジスタゲート122は電気的に浮遊したままである。
【0037】
次いでコントローラ180は、2つのそれぞれの温度において2つのフローティングゲート電圧測定のシーケンスを実装し、2つの温度及びそれぞれのゲート電圧測定に基づいて、流体のpHを計算する。一例では、306において、コントローラ180は、加熱装置(例えば、加熱器回路150)を用いて、流体114の温度を第1の温度T1に制御する。一例において、これは、例えば加熱電力をオフにすることによって、流体温度をT1に設定することを含む。別の実装において、コントローラ180は、流体114の温度を第1の温度T1に設定するために、加熱器回路150による非ゼロレベルへの電力の印加を制御する。図3の308において、一例ではコントローラ180は、温度感知回路160を用いて、流体114の温度が所望の第1の温度T1又はその近くであるかどうかを検証する。この例において、温度がT1周辺の所定の許容範囲内にない場合(308において「いいえ」)、コントローラ180は、308において、測定された温度の監視を続行する。
【0038】
温度が第1の温度T1の許容範囲内にあると(308において「はい」)、コントローラ180は、310において、流体電位感知回路140を用いてフローティングゲート電圧VGを測定する。一例では、コントローラ180は、流体114の温度がT1である間に、流体電位感知回路140から出力信号の第1のサンプルを受信する。一例において、これは、流体114の温度が第1の温度T1である間に、ゲート122の第1の電圧VGを測定することを含む。一実装において、ゲート電圧は、例えばバッファ増幅器回路を用いて、直接感知される。別の例において、流体電位感知回路140は、トランジスタ120のチャネルを介して電流信号を提供し、結果として生じるトランジスタドレイン124とソース126との間のドレイン-ソース電圧を測定してドレイン-ソースインピーダンスを判定し、感知されたドレイン-ソースインピーダンスに基づいて対応するフローティングゲート電圧VGを計算する。
【0039】
一例において、コントローラ180は次いで、加熱器回路150に流体114の温度を第2の温度T2へと制御させる。一実装において、これは、312において加熱器回路150に加熱電力をオンにさせること、及び、314において、温度感知回路160を用いて、測定したサーミスタ温度が異なる第2の温度T2に等しいかどうかを判定することを含む。一例においてコントローラ180は、314において、温度感知回路160を用いて、流体114の温度が所望の第2の温度T2又はそれに近いかどうかを検証する。この例において、温度がT2周辺の所定の許容範囲内にない場合(314において「いいえ」)、コントローラ180は、314において、測定された温度の監視を続行する。温度がT2の許容範囲内にあるとき(314において「はい」)、コントローラ180は、流体114の温度が第2の温度T2である間に、316において、流体電位感知回路140を用いて第2のゲート電圧VGを測定する。
【0040】
318において、コントローラは、ゲート122の第1及び第2の電圧VG、第1の温度T1、及び第2の温度T2に基づいて、流体114のpHを計算する。その後、この方法は302に戻り、コントローラ180は、次の測定サイクルのために方法300を繰り返す。一実装において、コントローラ180は、方法300を繰り返すために概して連続して動作する。別の実装において、コントローラ180は、例えばホスト回路(図示せず)からの要求信号に応答して、図3に示されるような測定サイクルをオンデマンドで実装する。一例において、コントローラ180は、図1の出力181において出力信号PHを提供し、一例において出力信号PHは、流体114のpHを表す振幅を備えるアナログ電圧又は電流信号である。別の実装において、出力信号PHは流体114のpHを表すデジタル値である。一例において、センサ100は、pH値の連続読み出しを提供するディスプレイ又は他のユーザインタフェース(図示せず)を含み、pH値はオンデマンドで、又は318において計算される直近のpH値を用いて連続的に更新される。
【0041】
一例における動作において、コントローラ180は、流体114のpHを計算するための計算回路要素(例えば、プログラム済み、又は構成済み、又はプログラマブル論理の論理演算ユニット(ALU)、又はそれらの組み合わせ)を含む。センサ100は、感知側101の一部に沿った誘電体層113の感知導電体インタフェースにおいて、流体114の局所温度を変更するためにトランジスタゲート122に結合される、感知第3電極133の下方のオンダイ加熱装置を含む。2つの異なる温度における同じ流体114のためのトランジスタ電圧を測定することによって、コントローラ180は、2つの温度T1及びT2並びにそれぞれの第1及び第2のゲート電圧VGに基づいて、ネルンストの式を用いてpHを計算又は算出する。ネルンストの式は、還元電位を標準電極電位、温度、及び濃度に関連付けるものであり、セル電位Ecell=E0cell-R×T×LN(XH+/X0H+)/Fであって、この式で、Xは濃度であり、X0はXH+と共に変動しない基準濃度である。結果として、一例においてコントローラ180は、式pH=LOG(XH+)=LOG(e)×LN(XH+)に従って流体pHを計算し、計算されたpHに従い、出力181において出力信号(例えば、アナログ電圧又は電流又はデジタル値)を提供する。センサ100の特定の実装は、費用の掛かる複雑なリファレンスを必要としないpH感知ソリューションを提供し、センサ100は、2つの温度において拡張ゲートISFET又は他のトランジスタ120を用いてソリューション電位を測定する。一実装において、サンプル間の時間は短く、例えば2つの温度間の遷移を可能にする。一例において、センサ100は、キャパシタ144及び誘電体層113によって容量的に結合されたフローティングゲート122と共に、流体電位を感知するためのリファレンスとして、プラチナ(Pt)電極131~136を用いる。例示された例では、更に、流体114の電位は、誘電体層113内の対応する開口を介して流体114に晒される貫通第1及び第6電極131及び136によって感知される。
【0042】
上記の例において、コントローラ180は、流体114の温度を第1及び第2の所定の温度値T1及びT2へと制御するように加熱器回路150を動作させる。例示された例では、コントローラ180は、感知された温度が所望の値に到達する時点を検証するため、及び/又は、感知された流体温度を所望の値T1又はT2へと制御するために加熱器回路150を用いて閉ループ制御のための温度フィードバック信号を提供するために、温度感知回路160、及び第4の電極134によって実装されるサーミスタも利用する。
【0043】
別の可能な実装において、第1及び第2の温度は事前に決定されず、コントローラ180は、2つの異なる温度において第1及び第2のゲート電圧値VGを測定するために、加熱器回路150の制御と組み合わせて温度感知回路160からの温度フィードバックを用いる。この実装において、温度感知回路160からのフィードバックを用いて、所与の測定サイクルについて異なる温度T1及びT2の実際の値を確認し、318において、これらの値をそれぞれの第1及び第2のゲート電圧値VGと共に用いて、流体pHを計算する。一例において、コントローラ180は、流体電位感知回路140からの出力信号の第1及び第2のサンプル、第1の温度T1、及び第2の温度T2に基づいて、流体114のpHを表す信号PHを出力181において提供する。
【0044】
特定の実装において、コントローラ180は、ゲート制御回路170を用いて測定サイクル間でフローティングゲートトランジスタ120のゲート電圧VGを安定化又は設定し、各測定サイクルは、例えば各pH測定サイクルの始まりの、2つ又はそれ以上の異なる温度における測定を含む。別の例において、コントローラ180は、ゲート制御回路170を用いて、所与のpH測定サイクルの終わりにゲート電圧VGを設定又は調整する。別の可能な実装において、コントローラ180は、ゲート制御回路170を用いて、異なる間隔で、例えば整数NのpH測定サイクルの後毎に、ゲート電圧VGを設定又は調整する。
【0045】
また、いくつかの実装において、コントローラ180は、個々の測定サイクル中に、閉ループの制御及び/又は加熱器回路150の流体温度バイアの検証を提供するために、温度感知回路160からの感知された流体温度信号又は情報を使用する。この点で、コントローラ180は、特定の例において、温度感知回路160からのフィードバックが、所望の値を含む特定の非ゼロの許容範囲内にあるとき、流体温度が所望の値であるものと決定する。
【0046】
例示された例において、コントローラ180は、電流信号を金属抵抗器154に搬送するのを控える(加熱電力は印加されない)ように、及び、加熱器回路150が電流信号を金属抵抗器154に搬送するのを控えている間、流体電位感知回路140から出力信号を受信するように、第1のモード(例えば、図3の306)において加熱器回路150を制御することによって、オン又はオフ温度制御を実装する。第2のモード(例えば、図3の312)において、コントローラ180は、加熱器回路150が電流信号を金属抵抗器154に搬送するように制御し、加熱器回路150が電流信号を金属抵抗器154に搬送する間に、流体電位感知回路140から出力信号を受信する。他の実装において、加熱器回路は、コントローラ180による閉ループ制御をサンプリングするか又は用いる前に、温度検証(例えば、図3の308及び314)と共に開ループ制御を用いるかどうかにかかわらず、2つの異なる流体温度を達成するために2つの異なる振幅の電流信号を印加すること、2つの異なる流体温度を達成するために電流信号のパルス幅変調を使用すること、などによって、異なる加熱制御技法を実装する。一例において、コントローラ180は、第1又は第2のモードの少なくとも1つにおいて、温度感知回路160から温度フィードバック信号を受信し、(a)温度フィードバック信号に基づいて、金属抵抗器154への電流信号の振幅又はタイミングを制御すること、(b)温度フィードバック信号に基づいて、流体電位感知回路140からの出力信号のサンプリング又は第2の出力信号のサンプリングを制御すること、或いは、(c)流体電位感知回路140からの出力信号、第2の出力信号、及び、温度フィードバック信号に基づいてpH信号を提供すること、のうちの1つを実施する。
【0047】
また、特定の実装において、コントローラ180は、2つ又はそれ以上の異なる温度において取得された感知された流体電位信号サンプルに基づいて、及び、異なる温度値に基づいて、流体114のpHを計算する。例えば、別の実装においてコントローラ180は、流体温度を3つ又はそれ以上の異なる温度値に設定又は制御し、第1、第2、及び第3(又はそれ以上)のそれぞれのゲート電圧値VGを測定し、318において、これら3つ又はそれ以上の異なる温度値と対応するゲート電圧値とを用いて流体のpHを計算する。
【0048】
このようにして、センサ100は、流体114における外部リファレンスを必要とせずに、流体114のpHを感知する。これにより、有利なことに、外部リファレンスを用いるpHセンサに比べて費用及び複雑さが低減される。特定の例において、ゲート制御回路170を選択的な使用することで、ドリフト及び他の影響を弱めることによって、経時的な流体電位の安定性が容易となる。
【0049】
図4は、図1及び図2のpHセンサにおける容量結合の概略的表現を示す。概略的に表されているため、流体電位感知キャパシタ144は、トランジスタ120のフローティングゲート122への他の容量結合よりも大きい。感知キャパシタ144は、フローティングゲート122と、図4では電圧ソース402であると表される流体電位との間に、容量結合を提供する。流体114は、誘電体層113内の対応する開口を介した直接接続によって、露出電極131及び136の電位に保持され、これは図4において、電極電圧源404(例えば、プラチナ電極131及び136の電圧VPt)として表される。一実装において、加熱器回路150は、正の第1の加熱器電圧VH+を金属抵抗器154の一方の端部(図4では第1の電圧源406として表される)に提供し、負の第2の加熱器電圧VH-を金属抵抗器154の他方の端部(第2の電圧源408として表される)に提供する。これらの電圧は、小さなキャパシタによってトランジスタ120のフローティングゲート122に容量的に結合される。
【0050】
図4に更に示されるように、別の小さなキャパシタは、電圧Vssをフローティングゲート122に結合する半導体ダイの寄生容量を表す(更なる電圧源410として表される)。こういったセンサ構成は、一例においてフローティングゲート122への加熱器容量結合を軽減又は防止する。例示された例において、金属抵抗器154は、大きな結合容量を備えるプラチナ/流体感知キャパシタ144の直下に配置される。一実装において、加熱器回路150は、検出される信号がmVの範囲内にある間に、ボルトの範囲内で
電圧ステップ(VH+、VH-)を金属抵抗器154に提供する。図6に関して下記で更に説明するように、一例において加熱器回路150は、有利なことに、加熱中に電流信号を金属抵抗器154に搬送するために、対称電圧ステップVH+及びVH-を印加する。
【0051】
図5は、図1及び図2のpHセンサ100において流体電位感知回路140として用いることが可能な、例示の流体電位感知回路540を示す。この例は、フローティングゲート122の電圧VGを表す出力電圧信号を提供するために、一定のチャネル電荷をバッファ回路に提供する。バッファ回路は、供給電圧VSを有する供給電圧端子503に結合される、第1の回路分岐501及び第2の回路分岐502を含む。第1の回路分岐501は、第1のカスコードトランジスタ(例えば、nチャネルFET)と直列に結合される、この例ではpチャネルFETである第1の電流ミラートランジスタ504と、供給電圧端子503とテール電流端子との間の感知トランジスタ120とを含む。第2の回路分岐502は、供給電圧端子503とテール電流端子との間で第2のカスコードトランジスタ510(例えば、nチャネルFET)と直列に結合される、第2のpチャネル電流ミラートランジスタ508と、半導体ダイ内に感知トランジスタ120としてマッチング寸法を有するように構築されたnチャネルトランジスタ500とを含む。カスケード電圧リファレンス512は、カスコードトランジスタ506及び510のゲートにリファレンス電圧VCASを提供する。流体電位感知回路540は、感知トランジスタ120のドレイン124、ソース126、及び本体接続との相互接続のための、図1及び図2における流体電位感知回路140のそれぞれの入力141、142、及び143に対応する、入力541、542、及び543を含む。この例の流体電位感知回路540は、感知増幅器からフローティングゲート122へ戻る容量結合を軽減する。この例において、トランジスタ120の動作条件(例えば、ドレイン電流Id、ドレイン-ソース電圧Vds)を変更することで、フローティングゲート内で反映可能であり、エラーを生じさせる可能性がある、チャネル電荷における変化を生じさせる。例示のバッファ回路540及び図5は、負のフィードバックを伴う差動増幅器としての動作によって、感知トランジスタ120に対して、概して一定のドレイン電流Id及び概して一定のドレイン-ソース電圧Vdsを提供する。このようにして、一定のテール電流ITAILは、フローティングゲート感知トランジスタ120とリファレンストランジスタ500との間で実質的に等しく分配され、感知トランジスタ120を介して概して一定のドレイン電流Idを与える。カスコードトランジスタ506及び510は、トランジスタ120及び500の両方にわたって、ドレイン-ソース電圧Vdsを一定値に調節するように動作する。リファレンス電圧源512は、一定のドレイン-ソース電圧Vdsを設定する。この回路ミラートランジスタ504及び508の出力は、フローティングゲート電圧を設定し、デバイスパラメータの変動は、センサ100の製造及び動作におけるプロセス、温度、及び電圧の変動を軽減するために、良好なマッチングを用いて完全に又は実質的に相殺される。
【0052】
図6図8を参照すると、図6は、図1及び図2のpHセンサ100の第1の金属化レベル105における、図1及び図2の金属抵抗器154の例示の構造の平面図を示す。図7は、電極構造131、132、133、134、135、及び136、並びに第2の金属化レベル107の平面図を示し、図8は、図1及び図2のpHセンサにおける誘電体層内のそれぞれの開口を介して露出される、特定の電極の感知側面及び表面の平面図を示す。この例における例示の領域201~204の各々において、金属抵抗器154(図6)は、導電金属(例えば、アルミニウム)のパターン化された特徴109及び第1の金属化レベル105の6つの折り返しの蛇行パターンとして構築される。これらのパターンの各々は、電圧VPを有する加熱器回路150の第2の出力152に結合される第1の端部、第3の出力153(電圧VNを有する)に結合される第2の端部、及び、中間電圧VMを有する第1の出力151に結合される中央タップ又は中間接続を有する。金属抵抗器154(例えば、図1)は、第3の電極133及び感知キャパシタ138に関連付けられた感知エリアの直下を含む、加熱のためのプラチナ電極の直下に配置される。実際には一例において、流体114(例えば、水)は、センサ100の感知側101の近く、例えば、感知エリアの表面からおよそ10mm以内で、加熱されるだけで良い。金属抵抗器154の折り返しの間隔に微細なピッチを使用することで、より均一な熱分布が与えられる。プラチナ電極及び感知エリアの熱伝導性も、均一な熱分布を容易にする。導電金属の蛇行パターンの折り返し間をより微細なピッチ間隔にすることは、所与の供給電圧内にとどめるために、加熱器を平行な加熱器セグメントに分割することと組み合わせることができる。一例において、中間タップは、ゲート122のフローティングノード内への低容量結合を容易にする。
【0053】
図2に関連して上記で説明したように、例示の金属抵抗器154は、それぞれの第1及び第2の端部と、第1及び第2の端部間のタップとを有する縦断面を含む。それぞれの縦断面は、第2のレベル107内で第2の方向Yに沿って延在する。加熱器回路150は、それぞれの縦断面のタップに結合される第1の出力151、それぞれの縦断面の第1の端部に結合される第2の出力152、及び、それぞれの縦断面の第2の端部に結合される第3の出力153を含む。加熱器回路150の第2の出力152は、第1の出力151の電圧(VM)に関して正である第1の電圧信号(VP)を提供し、加熱器回路150の第3の出力153は、第1の出力151の電圧VMに関して負である第2の電圧信号(VN)を提供する。この加熱器構成は、トランジスタ120の金属抵抗器154及びフローティングゲート122の容量結合の影響を軽減する。
【0054】
一実装において、加熱器回路150は、それぞれ、第2及び第3の出力152及び153において、VH+における正の電圧ステップ、及び、VH-における同じサイズの負の電圧ステップを印加する。この例では、第1の出力151において中間タップを使用すること、及び、正(VH+)及び負(VH-)のピンにおいてプルアップ及びプルダウントランジスタを使用することによって、対称電圧ステップが達成される。プルアップ及びプルダウントランジスタがオフにされているとき、結合キャパシタの電圧は中間電圧VMによって決定される。プルアップ及びプルダウントランジスタが対称的にオンにされているとき、中間ノードは欠陥によって生じる少量の電流のみを引き出さなければならず、半導体ダイの製造時のいずれのこうした欠陥も、例えば、金属抵抗器154の蛇行折り返し部分とプラチナ電極の感知エリアとが互いに直交する、プラチナ電極及び金属抵抗器のレイアウトを使用することによって、VH+及びVH-に対して同じ結合容量を有する。この例において、金属抵抗器154の折り返しは概してY方向に沿って延在し、蛇行感知電極134及び135の細長い部分はX方向に沿って延在する。
【0055】
このようにして、正の分岐と負の分岐との結合容量間の差は、デフォルトで最小となる。結合容量間のいかなる非対称性の影響も、VH-における正の電圧ステップ及びVH+における負の電圧ステップの印加を伴う第2の測定を実施すること、並びに2つの結果を平均化することによって相殺することができる。非対称性相殺は、たとえ結合が実際に分散されても保持される。
【0056】
図9は、上記図1及び図2のpHセンサにおいてゲート制御回路170として用いることが可能な、例示のゲート制御回路970を示す。ゲート制御回路970は、半導体ダイにおいて感知トランジスタ120の薄膜ゲート酸化物121(図1)におけるトンネル効果を介してフローティングゲート電圧VGを設定又は調整する、第1及び第2の制御トランジスタ901及び902の形態で、アナログフローティングゲート構造を実装する。この例において、コントローラ180は、流体電位感知回路140から出力信号をサンプリングする前又は後にゲート電圧VGを設定又は調整するために、ゲート制御回路970を制御する。図9のゲート制御回路970は、第1の制御トランジスタ901、第2の制御トランジスタ902、第1の電圧源910、及び第2の電圧源920を含む。第1の制御トランジスタ901は、第1の制御ゲート911、第1の制御ドレイン912、及び第1の制御ソース913を有する。第1の制御ゲート911は、図9に示すようにフローティングゲートトランジスタ120のフローティングゲート122に結合され、第1の制御ドレイン912は第1の電圧源910に結合される。第2の制御トランジスタ902は、第2の制御ゲート921、第2の制御ドレイン922、及び第2の制御ソース923を有する。第2の制御ゲート921はゲート122に結合され、第2の制御ドレイン922は第2の電圧源920に結合される。ゲート誘電体又はゲート酸化物121は、一例において、およそ70mmの厚みを有し、半導体ダイは、図9に示されるように結合される第1及び第2の制御トランジスタ901及び902を含み、制御トランジスタのゲートはフローティングゲート122に結合される。トンネル効果は、フローティングゲート122からの電荷を加えるか又は減じる。例示された例では、電圧源920の正のプログラミング電圧progpがフローティングゲート122に電荷を加え、電圧源910の負のプログラミング電圧prognがフローティングゲート122から電荷を減じる。一実装において、フローティングゲート電圧VGの予想される安定性は何年にもわたる範囲内にあり、およそ12Vのプログラミング電圧の絶対値である。
【0057】
図10は、上記図1及び図2のpHセンサにおいてゲート制御回路170として用いることが可能な、別の例示のゲート制御回路1070を示す。この実装は、トランスファゲート1000を用いて、フローティングゲート電圧VGを設定又は調整するために、フローティングゲート122をターゲット電圧値における電圧リファレンスに選択的に結合する。トランスファゲート1000は、pチャネルトランジスタ1001及びnチャネルトランジスタ1002を含む。pチャネルトランジスタ1001は、第1のゲート1011、第1のドレイン1012、第1のソース1013、及び第1の本体接続1014を有する。
【0058】
nチャネルトランジスタ1002は、第2のゲート1021、第2のドレイン1022、第2のソース1023、及び第2の本体接続1024を有する。nチャネルトランジスタ1002の第2のゲート1021は、コントローラ180から制御信号を受信する制御入力1040に結合され、制御信号は、トランジスタ1001及び1002をオンにするアクティブ高状態と、トランジスタ1001及び1002をオフにする低状態とを有する。pチャネルトランジスタ1001の第1のドレイン1012はゲート122に結合され、nチャネルトランジスタ1002の第2のドレイン1022はゲート122に結合される。この例において、ゲート制御回路1070は更に、pチャネルトランジスタ1001の第1のソース1013及びnチャネルトランジスタ1002の第2のソース1023に結合される出力1031を備える電圧源1030を含む。回路1070は更に、制御入力1040に結合される入力1043と、pチャネルトランジスタ1001の第2のゲート1011に結合される出力1044とを備えるインバータ1042を含む。トランスファゲート1000がオンにされているとき、電圧源1030の出力1031は、フローティングゲート電圧VGを設定又は調整するためにフローティングゲート122に結合される。pH測定サイクル中、コントローラ180は、電圧源1030をフローティングゲート122から切断するために、トランスファゲート1000をオフにする。
【0059】
また、例示された例において、トランスファゲート1000のトランジスタ1001及び1002のバックゲート又は本体接続は、トランジスタ1001及び1002のソースに接続される。イネーブル信号en=0である非アクティブ状態において、バックゲート相互接続は、フローティングゲート電圧VGがターゲット電圧VTARGETと異なるときに伝導するように構成される、逆平行ダイオードを作る。およそ+/-10mVの範囲内でのデルタ温度測定について予想されるフローティングゲート電圧変動に対し、結果として生じるダイオード電流は、バックゲートが供給及び接地に接続された状態での漏れ電流よりも小さい。
【0060】
図2に関連して上述したように、特定の実装は、複数の感知トランジスタ及び関連する流体電位感知部分119を含む。これにより、例えばノイズを低減させるための、複数のセンサの同時測定が容易になる。一例において、コントローラ180は、感知部分119のそれぞれの感知トランジスタに結合される、2つの流体電位感知回路140から測定サンプル信号を取得する。一例において、コントローラ180は、ノイズ及び/又はオフセット効果を軽減又は相殺するために、1つの測定サイクルで、温度T1において第1のセンサを測定し、温度T2において第2のセンサを測定した後、次の測定サイクルで、温度T1において第2のセンサを測定し、温度T2において第1のセンサを測定する。
【0061】
いくつかの例は、費用対効果が高く複雑さの低い、リファレンス無しpHセンサ100を提供し、リファレンスベースセンサよりも小さな信号レベルで動作する。記載される例は、追加のデータを収集するために高速感知を実装し得、したがってノイズ低減手法を利用することができる。図1及び図2の例において、感知トランジスタ120は金属抵抗器154から横方向に離間され、感知トランジスタ120の温度が加熱器温度変化によって強く影響されることはない。第1及び第2の感知トランジスタ120(例えば、上記図2に示されるような複数の流体電位感知部分119)の使用により、たとえ感知トランジスタ120が金属抵抗器154から横方向に離れて離間されていない場合であっても、加熱によって生じる局所温度差の補償を助けるために、感知トランジスタの隣でマッチングリファレンストランジスタ使用することが可能になる。特定の実装において、レイアウト構成及びアーキテクチャを用いて、感知電極133における熱が感知トランジスタに最小限に結合されることを保証できる。
【0062】
一実装において、電気的相互接続を長くすることは、寄生相互接続容量を潜在的に増加させることができるが、例えば、相互接続導電構造近くに冷却金属を配置することにより、又は、加熱器領域の外側の半導体ダイのポリシリコン及び/又はオンフィールド酸化物上の導電性相互接続構造を配路することにより、フローティングゲートへの第3の電極133の相互接続を冷却することによって、熱インパクトを軽減することができる。例示された例は、金属化構造の第2のレベル107内に金属抵抗器154を含む。他の例において、半導体ダイは、例えば、PMD又はポリシリコンレベル、第1の利用レベル、第2の金属化レベル、第3の金属化レベルなどのいずれかにおいて加熱器金属を備える多層金属化構造を含み、金属抵抗器154は、好ましくは、感知誘導体層113に近接して下方に配置される。また、金属抵抗器154と感知電極133との間の寄生容量結合は、2つの層の間の空間に依存し、いずれか厚い方の誘電体層108によって、又は2つの層の間の複数の空の金属層を使用することによって、結合を増加させることができる。
【0063】
一例において、パターン化された電極層110は、プラチナであるか又はプラチナを含む。動作において、流体の電位は、パターン化された電極層110の一つ又は複数の電極との接触によって設定され、露出された電極は、例えば、金(Au)、プラチナ(Pt)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOx)、パラジウム(Pd)などの、流体を備える非反応材料であるか又はこれを含む。流体114の電位は、理想的には加熱器エリアの外に接続されるため、感知電極の加熱の電圧電位は変化しない。例えば上記図1図2、及び図8に示されるような、流体114に触れる複数の電極は、流体114のESD抵抗を強化する。特定の実装は、センサ100の改良されたESD保護を容易にするために、加熱器の下及び感知電極133の隣に配置される電極を含む。こうした追加の電極は、一例において、ESDセルを用いて接続されるため、小さな電圧の場合、この電極は浮遊しているが、フローティングゲート122をESD事象から保護するために、大きな電圧は接地に接続される。特定の例において、センサは相対的に小さな温度差(例えば、1℃から30℃)の差を測定するので、pHを感知するための信号レベルは相対的に小さい。例えば、T1とT2との間の10℃の差は、外部リファレンスを用いるセンサで生成される信号と比べて、pH当たりおよそ5%の信号を生成することになる。
【0064】
水流体114のpHを感知するための一例において、水は、安定しているべきであるフローティングゲート誘電体層113の隣に組み込み電位を有する。水はプラチナ電極の露出部分に触れ(例えば、上記図8におけるサービス111、112、及び130)、水電位は理想的には安定している。水とプラチナとの間の接触は、水とPtとの間に局所電位を生成する。水/Pt電圧は時間と共にドリフトするが、短い時間期間(例えば、数秒から数分の範囲)にわたって安定している。Pt電極電位の変化は水の電位をシフトさせる。Pt電極も、特定の実装において、フローティングゲート122を保護するためにESD回路に接続される。説明する例は、異なる温度におけるpH測定を容易にし、同じか又は同様の(例えば、上記図2に示されるような櫛形/蛇行)レイアウトを有し、これらの領域の下に直交金属抵抗器構造を備える、個別の温度センサ及びpH感知エリアを含むことができる。特定の実装は、個別の温度センサ及びpH感知エリア又は領域(例えば、上記図2における温度感知領域202及び204、流体電位感知領域201及び203、並びに流体電位感知部分119)に、異なるレイアウト(例えば、蛇行及び正方形)及び各々の下方の加熱器を提供する。特定の実装は、pH感知エリアと温度センサとの組み合わせ(例えば、並列蛇行+櫛形)を提供する。金属抵抗器構造の端部及び中央タップに印加される制御されたステップ信号を用いることは、加熱器電力がフローティングゲート電圧VGを変化させるのを軽減又は保護する。また、説明する例は、加熱及び感知(例えば、温度及びpHの両方を感知)のための直交蛇行構造、並びに、加熱装置と感知電極との間の容量結合を軽減するために中央タップと共に駆動する差動加熱器を用いる。電極131及び136の櫛形構造は、例えば、感知蛇行構造及び直交加熱構造と交互の櫛形構造を用いて、感知電極の近くの感知された流体電位の制御を容易にする。これにより、感知された流体電位の制御、及びフローティングゲート122のESD保護を容易にすることが可能になる。
【0065】
特定の例は、例えば、ミリ秒範囲内で、加熱器回路150によって提供される短い加熱器パルスを用いて、温度制御と組み合わせて即時感知を容易にする。特定の実装は、電解質電位、光などの、同相ノイズ信号に対する耐性を容易にするために、独立して加熱可能な、同時に測定される複数のpHセンサも採用した。いくつかの例は、より低コスト及びより一層高い柔軟性で、基板の隔離も可能にする。また、所与の設計のための隔離の電圧能力は、半導体全体にわたるレイアウト(例えば、トレンチ幅)によって変更可能であり、バックサイド隔離は、ポリマーの厚みを変えることによって変更可能である。容量接続は、ウェハを介する隔離にとっては、特殊金属/誘電体スタックを用いる標準接続に比べて安価である。
【0066】
特許請求の範囲内で、説明した例における改変が可能であり、他の実装が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】