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特表2023-527861ろう付け合金粉末の製造のためのHDH(水素化脱水素)プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ろう付け合金粉末の製造のためのHDH(水素化脱水素)プロセス
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/04 20060101AFI20230623BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 27/02 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 16/00 20060101ALI20230623BHJP
   B22F 1/142 20220101ALI20230623BHJP
   B22F 1/065 20220101ALI20230623BHJP
   B23K 35/32 20060101ALI20230623BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20230623BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20230623BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20230623BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20230623BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B22F9/04 D
C22C30/02
C22C27/02 102Z
C22C14/00 Z
C22C16/00
B22F1/142
B22F1/065
B22F9/04 C
B23K35/32 310B
B23K35/32 310Z
B23K35/30 310C
B23K35/30 310D
B23K35/32 310C
B23K35/26 310A
B23K35/28 310D
B23K35/40 340F
C22C9/00
C22C19/03 G
C22C27/04 101
C22C27/04 102
C22C13/00
C22C18/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573383
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021034795
(87)【国際公開番号】W WO2021243175
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/031,835
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクラッケン,コリン・ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンミョン
(72)【発明者】
【氏名】ランガスワーミィ,サブラマニアム
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA07
4K017BA10
4K017BB01
4K017BB04
4K017BB05
4K017BB06
4K017CA01
4K017CA07
4K017DA09
4K017EA03
4K017EA09
4K018BA03
4K018BA20
4K018BB03
4K018BB04
4K018BC06
4K018BD10
(57)【要約】
水素化脱酸素プロセスを用いてTiおよびTi-Zr合金等の硬質合金の粉末を調製する方法、ならびにこのプロセスによって製造された粉末が開示される。この方法を用いてろう付け粉末を製造することができる。この方法は、そのようなろう付け材料を調製するためのガスアトマイズ等の現在の方法よりも有害性が低く費用対効果が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう付け粉末を製造する方法であって、前記方法は、
HDHプロセスに適した出発材料を得るステップを含み、前記出発材料は、55mol%~95mol%のHDH金属と、5mol%~45mol%の非HDH金属とを実質的に含む合金であり、前記方法はさらに、
前記出発材料をHDHプロセスにおいて処理することにより、処理されたHDH粉末を得るステップと、
前記HDH粉末をサイジングして目標粒度分布を得ることにより、サイジングされたHDH粉末を得るステップとを含み、
前記サイジングされたHDH粉末は、ろう付け粉末としての使用に好適である、方法。
【請求項2】
前記HDHプロセスは、
前記出発材料を好適な水素化条件下で加熱することにより、水素化物を多く含有する材料を形成することと、
前記水素化物を多く含有する材料を粉砕することと、
前記水素化物を多く含有する材料をサイジングすることにより、目標粒度分布を有するサイジングされた水素化物を得ることと、
前記サイジングされた水素化物を、好適な脱水素条件下で加熱して前記サイジングされた水素化物内の金属水素化物を分解することにより、前記HDH粉末を得ることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱水素された前記粉末をサイジングすることにより、第2の目標粒度分布を有する脱水素された粉末を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サイジングされた前記HDH粉末を球状化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記出発材料は75mol%~95mol%のHDH金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記HDH金属は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、またはそのうちの2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記HDH金属は、本質的にTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、またはそのうちの2つ以上の組み合わせからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非HDH金属は、Cu、Ni、W、Sn、Al、Zn、Mo、Cr、Fe、またはそのうちの2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
金属粉末を製造する方法であって、前記方法は、
HDHプロセスに適した出発材料を得るステップを含み、前記出発材料は、55mol%~88mol%のHDH金属と、12mol%~45mol%の非HDH金属とを実質的に含む合金であり、前記方法はさらに、
前記出発材料をHDHプロセスにおいて処理することにより、処理されたHDH粉末を得るステップと、
前記HDH粉末をサイジングして目標粒度分布を得ることにより、サイジングされたHDH粉末を得るステップとを含む、方法。
【請求項10】
ろう付け粉末であって、前記ろう付け粉末は、
55mol%~95mol%のHDH金属と、5mol%~45mol%の非HDH金属とを実質的に含む合金である出発材料を得ること、
前記出発材料をHDHプロセスにおいて処理することにより、処理されたHDH粉末を得ること、および
前記HDH粉末をサイジングして目標粒度分布を得ることにより、サイジングされたHDH粉末を得ることによって、調製され、
前記サイジングされたHDH粉末は、ろう付け粉末としての使用に好適である、ろう付け粉末。
【請求項11】
前記出発材料を前記HDHプロセスにおいて処理するステップの後に、脱酸素により、0.25wt%以下の格子間酸素を有するHDH粉末を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記出発材料を前記HDHプロセスにおいて処理するステップの後に、脱酸素により0.25wt%以下の格子間酸素を有するHDH粉末を得るステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
75mol%~95mol%のHDH金属を含む、請求項10に記載のろう付け粉末。
【請求項14】
前記HDH金属は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、またはそのうちの2つ以上の組み合わせを含む、請求項10に記載のろう付け粉末。
【請求項15】
前記非HDH金属は、Cu、Ni、W、Sn、Al、Zn、Mo、Cr、Fe、またはそのうちの2つ以上の組み合わせを含む、請求項14に記載のろう付け粉末。
【請求項16】
前記HDH金属は、実質的にTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、またはそのうちの2つ以上の組み合わせからなる、請求項10に記載のろう付け粉末。
【請求項17】
前記非HDH金属は、Cu、Ni、W、Sn、Al、Zn、Mo、Cr、Fe、またはそのうちの2つ以上の組み合わせを含む、請求項10に記載のろう付け粉末。
【請求項18】
前記出発材料の公称組成は、BTi-1(Ti-15Ni-15Cu);BTi-2(Ti-25Ni-15Cu);BTi-3(Ti-37.5Zr-10Ni-15Cu);BTi-4(Ti-24Zr-16Ni-16Cu);BTi-5(Ti-20Zr-20Ni-20Cu);Ti-17(Ti-2Zr-5Al-2Sn-4Mo-4Cr);Ti-21S(Ti-3Nb-3Al-15Mo);Ti-6246(Ti-4Zr-6Al-2Sn-6Mo);Ti-1023(Ti-10V-3Al-2Fe);Ti-15333(Ti-15V-3Al-3Sn-3Cr);Ti64(Ti-4V-6Al);Nb-20W-1Zr;Ti Beta C(Ti-4Zr-8V-3Al-4Mo-6Cr);TiAl;Zr-17Ti-20Ni;Zr-14Ti-12Ni-8Cu;Ti-24Zr-25Ni;またはTi-24Zr-17Ni-9Cuである、請求項10に記載のろう付け粉末。
【請求項19】
0.25wt%以下の格子間酸素を含む、請求項10に記載のろう付け粉末。
【請求項20】
0.25wt%以下の格子間酸素を含む、請求項18に記載のろう付け粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体を本明細書に引用により援用する2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/031,835号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、水素化脱水素(HDH:hydride-dehydride)プロセスおよび任意の脱酸素プロセスを含む製造方法に関し、かつ、この方法を使用してろう付け組成物を含む組成物を調製することに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
一般的に、ろう付けは、基板とろう付け材料とを、ろう付け材料を完全に溶融させるのに十分高い温度(すなわち少なくとも液相線)であるが基板を溶融させるほど高くはない温度に晒すこととして説明できる。すなわち、ろう付け材料は、基板の融点と比較して低い液相線温度を有していなければならない。溶融したろう付け材料は流れて基板の裂け目または隙間を埋めることができる。一般的に、基板は、冷却されたときに凝固したろう付け材料によって結合される2つ以上の被加工物を含む。ろう付けプロセスの正確さおよび精度は、ろう付け材料の物理的および化学的特性を含む多数の要因に応じて決まる。特に、粉末形態のろう付け材料は、明確な粒度分布を有していなければならない。
【0004】
TiおよびTi-Zr合金ベースのろう付け材料等のいくつかのろう付け材料は、特別な製造上の配慮を要するが、その理由は、これらの合金が極めて硬く、そのために製造プロセスが複雑になることにある。複雑になるもう1つの要因は、チタン粉末を含む金属微粒粉末の微粉化(高い比表面積)によって説明される、酸素に対する高い反応性および親和性であり、このことが、これらの製造および取り扱いを危険にする。米国特許第7,559,454号は、チタン等の金属を含む粉末ろう付け材料が、プラズマ回転電極法(PREP)、ガスアトマイズ法(GA)、反応合成法(RS)、または機械的粉砕によって製造されることを開示している。電極誘導溶解ガスアトマイズ法(EIGA)も知られている。
【0005】
機械的粉砕は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Yおよび/またはTa等の含有量が多いろう付け材料等の非常に硬いろう付け材料、および/または耐火金属の含有量が多いろう付け材料に対し、有効に実施することができない。
【0006】
プラズマ回転電極法は、非常にコストが高い方法であり、ガスアトマイズ法よりもさらに高コストなので、一般的には使用されない。PREPは、粒度分布に対する制限もあり、一般的には75μm未満という非常に低い収量をもたらす。
【0007】
歴史的に、チタンベースの粉末ろう付け組成物は、ガスアトマイズ法によって商業規模で調製されてきた。典型的に、ガスアトマイズ装置は、金属ストックを液化(溶融)させるための装置と、アトマイズガスジェットと、冷却/収集チャンバとで構成される。アルゴン等の不活性冷却ガスが、溶融金属、たとえばチタンの自由落下ストリームに吹き付けられ、これが、冷却チャンバを通過する際に、霧化および固化し、粒子が冷却チャンバの底で収集される。
【0008】
チタンおよびチタン合金のガスアトマイズ法は、チタン微粉の不安定な性質に起因する、危険なプロセスであり、爆発の高いリスクを伴う。ガスアトマイズプロセスで使用される機器(たとえばるつぼ)に対する液化チタンの高い反応性に起因する、さらなるリスクもある。加えて、ガスアトマイズ法によって作られたろう付け組成物の収量は、噴霧プロセス中の粒度分布の制御が困難なために低くなる。その後ふるい分けによって取り除かれた大小の粒子は、実際のところリサイクルまたは再利用が不可能であり、無駄になる。ガスアトマイズ法の危険性により導入しなければならない厳密なプロセスおよび機器制御、ならびに粒度分布に対する制御不良に固有の無駄な生成物は、チタンろう付け組成物の調製コストが高くなる大きな原因となる。
【0009】
これらの欠陥にもかかわらず、過去数十年にわたり、ガスアトマイズ法は、TiならびにTi合金およびTi-Zr合金等の硬質金属の含有量が多いろう付け組成物の製造について産業界で認められた標準であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガスアトマイズ法よりも安全でコストが低い、Ti合金およびTi-Zr合金等の硬質金属ベースのろう付け組成物を調製するためのプロセスが、必要とされている。また、産業界で現在使用されているものよりも安全でコストが低い、たとえばガスアトマイズ法よりも安全でコストが低い方法によって調製された、ろう付け組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
驚くべきことに、水素化脱水素プロセスを使用して、チタン等の硬質金属ベースのろう付け組成物を調製可能であることが発見された。この方法は、現在の製造方法よりも低コストで危険が少なく、現在の製造方法よりも商業的に有望であると予想される。
【0012】
一局面において、ろう付け粉末を製造する方法が提供され、この方法は、HDHプロセスに適した出発材料を得るステップを含み、出発材料は、55mol%~95mol%のHDH金属と、5mol%~45mol%の非HDH金属とを実質的に含む合金であり、この方法はさらに、出発材料をHDHプロセスにおいて処理することにより、処理されたHDH粉末を得るステップと、HDH粉末をサイジングして目標粒度分布を得ることにより、サイジングされたHDH粉末を得るステップとを含み、サイジングされたHDH粉末は、ろう付け粉末としての使用に好適である。
【0013】
別の局面において、金属粉末を製造する方法が提供され、この方法は、HDHプロセスに適した出発材料を得るステップを含み、出発材料は、55mol%~88mol%のHDH金属と、12mol%~45mol%の非HDH金属とを実質的に含む合金であり、この方法はさらに、出発材料をHDHプロセスにおいて処理することにより、処理されたHDH粉末を得るステップと、HDH粉末をサイジングして目標粒度分布を得ることにより、サイジングされたHDH粉末を得るステップとを含む。
【0014】
もう1つの局面において、ろう付け粉末が提供され、このろう付け粉末は、55mol%~95mol%のHDH金属と、5mol%~45mol%の非HDH金属とを実質的に含む合金である出発材料を得ること、出発材料をHDHプロセスにおいて処理することにより、処理されたHDH粉末を得ること、およびHDH粉末をサイジングして目標粒度分布を得ることにより、サイジングされたHDH粉末を得ることによって、調製され、サイジングされたHDH粉末は、ろう付け粉末としての使用に好適である。
【0015】
もう1つの局面において、格子間酸素が少ないろう付け粉末およびその製造方法が提供される。別の局面において、出発材料をHDHプロセスにおいて処理するステップの後に、脱酸素により、0.25wt%以下の格子間酸素を有するHDH粉末を得るステップをさらに含む、製造方法が提供される。別の局面において、0.25wt%以下の格子間酸素を含むHDH粉末が提供される。
【0016】
ある局面において、HDHプロセスは、出発材料を好適な水素化条件下で加熱することにより、水素化物を多く含有する材料を形成することと、水素化物を多く含有する材料を粉砕することと、水素化物を多く含有する材料をサイジングすることにより、目標粒度分布を有するサイジングされた水素化物を得ることと、サイジングされた水素化物を、好適な脱水素条件下で加熱してサイジングされた水素化物内の金属水素化物を分解することにより、HDH粉末を得ることとを含む。
【0017】
ある局面において、上記方法は、脱水素化された粉末をサイジングすることにより、第2の目標粒度分布を有する脱水素化された粉末を得るステップを含み得る。
【0018】
ある局面において、上記方法は、サイジングされたHDH粉末の球状化を含み得る。
ある局面において、出発材料は、実質的に75mol%~95mol%のHDH金属を含み得る。ある局面において、HDH金属は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、またはそのうちの1つ以上の組み合わせを含んでいてもよく、または実質的にそれからなるものであってもよく、またはそれからなるものであってもよい。
【0019】
ある局面において、非HDH金属は、Cu、Ni、W、Sn、Al、Zn、Mo、Cr、Fe、またはそのうちの1つ以上の組み合わせを含んでいてもよく、または実質的にそれからなるものであってもよく、またはそれからなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】水素化物形成後であってミリング、ふるい分け、および脱水素化前の、BTi-1粉砕粉末の写真の図である。
図2】脱水素化、再ミリング、およびふるい分け後の、実施例1の生成物の走査電子顕微鏡(SEM)(倍率100)写真の図である。スケールバーは500μmである。
図3】HDHプロセスを使用して作られたろう付け組成物のSEM-EDS画像の図である。Cu、Ni、およびTi元素マッピング画像がそれぞれ3a、3b、および3cに示される。スケールバーは500μmである。
図4】HDHプロセスを使用して作られたろう付け組成物の、粒径スケールでのSEM-EDS画像の図である。Cu、Ni、およびTi元素マッピング画像がそれぞれ4a、4b、および4cに示される。スケールバーは100μmである。
図5】単一粒子の選択された領域のSEM-EDS画像を含む図である。Cu、Ni、およびTi元素マッピング画像がそれぞれ5a、5b、および5cに示される。スケールバーは25μmである。
図6】本発明に従い製造されたBTi-1ろう付け粉末でろう付けされたTi-6Al-4Vクーポンの正面図および背面図(6aおよび6b)ならびに従来通りに製造されたものの正面図および背面図(6cおよび6d)を示す。
図7】0.26wt%の格子間酸素を有するBTi-1 HDHろう付け粉末でろう付けされたクーポンの正面図および背面図(7aおよび7b)ならびに0.12wt%の格子間酸素を有するBTi-1 HDHろう付け粉末でろう付けされたクーポンの正面図および背面図(7cおよび7d)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の説明
本発明は、水素化脱水素(HDH)プロセスを用いてろう付け粉末を調製するためのプロセスを提供する。一般的に、HDHプロセスは特定の金属の特性を利用し、これらの金属は、非常に硬く粉末に形成するのが難しい金属であるが、脆く安定し可逆性の水素化物を有する。
【0022】
当該技術では十分理解されているように、一般的にHDHプロセスは、
1.実質的にHDH金属および/またはその合金からなる材料を、鋳造物等の適切な形態で提供することと、
2.この材料を、高温にした炉の中に置き、水素の分圧下で冷却して脆化させることにより、脆い水素化物を形成することと、
3.この脆い水素化物を粉砕および/またはミリングによって粉末化することにより、適切な粒度分布を有する粉砕粉末を得ることと、
4.この粉砕粉末を、高温高真空(この組成物を脱水素化するには十分に高いが溶融させるほど高くはない)の真空炉の中に入れて、水素を取り除くことにより、金属粉末(合金粉末を含む)を得ることとを含む。
【0023】
一般的に、HDHプロセスは、純Ti(融点1649℃)の粉末およびTi-6Al-4V(融点1604℃~1660℃)の粉末を調製するために使用される。これらの粉末の融点は、チタンの融点またはそれに近いので、チタン基板およびそれと同様またはそれよりも低い融点を有する他の基板のためのろう付け材料としては不適切である。
【0024】
水素化および脱水素化には、任意の適切な高温が有効であり、当業者はその温度を決定することができる。典型的に、水素化物は、約650℃またはそれを上回る温度から、水素分圧で冷却することで形成される。真空下において、典型的に水素化物は約350℃またはそれを上回る温度で分解する。合金の溶融および合金粒子の焼結を避けなければならないので、使用される温度は合金の固相線未満でなければならない。
【0025】
当該技術では知られているように、水素化サイクルおよび脱水素化サイクルの双方の後に、合金粉末を制御された条件の下で不動態化する必要があり、そうすると、結果として、原料と比較して増加した酸素および窒素の全含有量が得られる。また、脱水素化作業中に、45um未満の範囲の合金粉末粒子は、高温高真空雰囲気下で焼結し始める可能性がある。45um未満の粉末が塊状化したものを再度サイジングするのは難しく、そのために、HDHプロセスを使用して得ることができるPSDが制限される可能性がある。
【0026】
所与の用途に対し、水素化サイクルおよび/または脱水素化サイクル後に酸素含有量を任意で低減できることが賢明と思われる。脱酸素の任意の方法を使用することができ、当業者はその方法を決定することができる。そのような1つの方法が、本明細書に引用により援用する、「Manufacture Of HDH Low Oxygen Ti‐6Al‐4V Powder Incorporating A Novel Powder De‐Oxidation Step,」, C.G. McCracken, et al., Proceedings of the 2009 International Conference on Powder Metallurgy & Particulate Materials, Pages 146‐152, Las Vegas, NV, USAに開示されている。
【0027】
本開示で使用される、金属または合金等の材料についての「HDHに適した」または「HDHに好適な」という表現は、この金属または合金が、たとえ以前にそのように認識されていなかったとしても、可逆的なHDHプロセスに好適であることを意味する。すなわち、この材料を水素化によって脆化し、水素化物の粒径を粉砕およびミリング等によって目標PSDまで減じ、この材料を脱水素化することにより、粒径が減じられた形態で材料を復元することが可能である。
【0028】
典型的に、HDHプロセスから得られる粉末は、空気圧静水圧鍛造(PIF:pneumatic isostatic forging)または熱間静水圧プレス(HIP:hot isostatic pressing)等のいくつかの技術のうちのいずれかにより、製造品に成形されていた。一般的に産業界では、チタン金属およびTi-6-4(公称組成は、90wt%のTi、6wt%のAl、および4wt%のV)等のその合金が、これらのプロセスによって製品になるように形成されている。そのような粉末は、溶射法を用いて医療用機器をコーティングするためにも使用される。
【0029】
しかしながら、HDHプロセスは、ろう付け材料の調製には使用されておらず、HDH金属の含有量が少ない合金(たとえばTまたはTi-Zrベースの合金)に対して使用されていないと考えられる。HDHプロセスは、成功するためには、純チタン(微量の不純物は除く)等の、HDH金属含有量が多く実際のところ100%である、出発材料を必要とする。HDH金属の含有量が少なすぎる場合、結果として得られる水素化物は、有効に粉砕またはミリングするのに十分な脆性を持たないことになる。産業界における従来の見識および実務において、(金属原子ベースで)約90mol%未満のHDH金属含有量は、HDHプロセスに適していないことになる。
【0030】
「HDH金属」は、HDHプロセスによる処理に適した、脆い水素化物を有する硬質金属を意味する。HDH金属は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、およびその組み合わせを含むが、これらに限定される訳ではない。好ましいHDH金属は、Ti、Zr、およびHfを含み、より好ましくはTiである。
【0031】
非HDH金属は、脆い水素化物を持たない、または事実上脱水素化できない等の、何らかの理由でHDHプロセスに適さない任意の金属を意味する。非HDH金属は、Cu、Ni、W、Sn、Al、Zn、Mo、Cr、およびFeを含むが、これらに限定される訳ではない。これらの金属のうちのいくつか、たとえばCuH、SnH、AlH、ZnH、およびCrHは、可逆的ではない安定した水素化物を形成する。
【0032】
今まで、HDHプロセスを意図した組成物において、非HDH金属は従来最小限に抑えられており、たとえば6mol%、8mol%、10mol%、または12mol%以下である。一般的に、非HDH金属の量が多くなると合金はHDHプロセスに適さなくなると考えられる。
【0033】
しかしながら、期せずして、非HDH金属の含有量が一層多い合金をHDHプロセスを使用して処理することで、非常に均一な粒度分布を有する粉末を提供できることが発見された。期せずしてHDHプロセスに適していることが発見されたそのような合金に基づくろう付け組成物は、期せずしてHDHプロセスを使用して調製できることが見出された。HDHプロセスは、業界標準のガスアトマイズプロセスよりもはるかに安全である。HDHプロセスは、業界標準のガスアトマイズプロセスよりもはるかに低コストである。比較的安全で低コストのHDHプロセスの有用性は、特に長い歴史と、ガスアトマイズ等の複雑で高コストの方法の産業界による受け入れとの観点から、完全に予想外である。
【0034】
特に、期せずして、12mol%超の非HDH金属、25mol%の非HDH金属、またはさらに45mol%もの非HDH金属を含む合金を、HDHプロセスで処理することで、有用な特性を有する粉末を提供できることが見出された。たとえば、そのような粉末はろう付け組成物として有用となる可能性がある。
【0035】
簡単に説明すると、本開示は、
A.HDHプロセスに適した材料を提供することと、
B.この材料を水素化することで、その脆い水素化物を形成することと、
C.この脆い水素化物を粉砕および/またはミリング等によって粉末化することと、
D.粉末化された脆い水素化物を、ふるい分け等によってサイジングすることにより、目標粒度分布を有する粉末を得ることと、
E.サイジングされた水素化物を脱水素化することで、金属粉末を得ることと、
F.任意で金属粉末を脱凝集化および/またはミリングすることと、
G.任意で金属粉末を再度ふるい分けすること等により再度サイジングすること、
H.任意で金属粉末を脱酸素することとを含む、プロセスを提供する。
【0036】
上記プロセスの生成物は、任意の好適なやり方で使用できる。ある局面において、上記方法を使用することにより、好ましくは主としてTiベースの合金またはTi-Zrベースの合金である組成物からなるろう付け粉末を調製する。
【0037】
HDH金属の任意の合金、好ましくは好適なチタンろう付け粉末を提供することができる合金は、本開示に従う出発材料としての使用について、評価することができる。そのような合金は、好ましくは、大部分を占めるHDH金属と、より小さな部分を占める非HDH金属とを含む。
【0038】
出発材料は、本開示の中で有効な限りにおいて、所望の任意の量のHDH金属を含むことができる。HDH金属の量が少なすぎると、たとえば効果的に粉末化するには脆性が不十分な水素化物を提供することで、HDHプロセスを損なう。出発材料中のHDH金属の量に上限はなく、100mol%または約100mol%の量が意図されている。「大部分を占めるHDH」は、組成物が、この組成物をHDH処理に好適なものにするのに十分なHDH金属を含むことを意味する。好ましくは、HDH金属は、出発材料および/またはろう付け粉末の、95mol%、または90mol%、89mol%、88mol%、87mol%、86%、85mol%、75mol%、65mol%、または55mol%、ならびにこれらのパーセンテージのうちのいずれか2つによって形成される範囲、およびこれらの範囲のうちのいずれかに含まれるすべての範囲を含む。
【0039】
出発材料は、本開示の中で有効な限りにおいて、所望の任意の量の非HDH金属を含むことができる。非HDH金属の量が多すぎると、たとえば効果的に粉末化するには脆性が不十分な水素化物を提供することで、HDHプロセスを損なう。非HDH金属の量に下限はないが、たとえばろう付け粉末等の、所望の特性を有する最終組成物を提供するために、特定の量が望ましい場合がある。非HDH金属が存在する場合、出発材料は、好ましくは、より少ない部分を占める非HDH金属を含む。「より少ない部分を占める非HDH金属」は、組成物が、組成物に好適な特性(たとえば良好なろう付け特性)を付与するのに十分でありかつ組成物をHDH処理に好適でないものにする量よりも少ない量の非HDH金属を含むことを意味する。好ましくは、非HDH金属は、出発材料および/またはろう付け粉末の、5mol%、8mol%、10mol%、11mol%、12mol%、13mol%、14mol%、15mol%、20mol%、30mol%、40mol%または45mol%、ならびにこれらのパーセンテージのうちのいずれか2つによって形成される範囲、およびこれらの範囲のうちのいずれかに含まれるすべての範囲を含む。
【0040】
出発材料は、必要に応じて1つ以上のメタロイドおよび/または非金属も含み得る。
表1は、HDHプロセスに適した合金のリストを提供し、本発明で使用できる合金を含む。
【0041】
【表1】
【0042】
当該技術では理解されるように、公称組成は、任意の所与のサンプルについて正確な比率を表さない場合がある。比率は、サンプルごとに、公称値から標準的な許容限度内で変動する可能性がある。
【0043】
HDHプロセスに適した合金は、本発明での使用に好ましいものである。本発明での使用が意図されたいくつかの好ましい合金は、BTi-1、Ti-17、Ti-6246、Ti-21S、Ti Beta C、Ti-15333、Ti-1023、TiAl、Zr-26Ti-24Ni、およびZr-25Ti-15Ni-8Cuを含む。
【0044】
HDHプロセスに適していない合金は、本発明での使用に推奨されない。本発明での使用に推奨されないいくつかの合金は、TiAl、TiAl、およびTi-48Al-2Cr-2Nb(mol%)を含む。
【0045】
好ましくは、出発材料は、HDH金属、非HDH金属、任意で非金属を実質的に含む合金であり、微量不純物も含み得る。公称組成は微量不純物を明示的に列挙するものではない。一般的に、微量不純物は金属または非金属を含み得る。金属微量不純物は、BTi-1のサンプル内の微量のFeまたはAl等の、公称組成に列挙されたもの以外の任意の金属を含み得る。非金属の微量不純物は、B、Si、C、H、N、またはO等の、任意の非金属物質を含み得る。「微量」は、特定の合金の仕様の範囲外ではない、各不純物および/または全不純物の量を意味する。これに代えて、微量は、0.2wt%、0.1wt%、もしくは0.05wt%未満の所与の不純物、または、合計0.5wt%、0.2wt%、0.1wt%、もしくは0.05wt%未満の全不純物を意味することがある。当該技術では、各種合金グレードについての金属不純物および非金属不純物の仕様が知られている。
【0046】
一般的に、材料は、製造プロセス中において1回または2回サイジングされ、水素化物はミリングの後であって脱水素化の前にサイジングされてもく、および/または合金は脱水素化の後であって脱凝集化の前にサイジングされてもよい。好ましくは、双方のサイジング段階が採用される。双方のサイジング段階が採用される場合、目標PSDは同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。サイジングの目的は、目標PSDの範囲内で妥当な程度の粒子を得ることである。任意の好適な方法を用いて粒子をサイジングすればよく、ふるい分けが好ましい方法である。
【0047】
典型的に、ふるい分けは、メッシュ/ミクロンサイズが異なる2つのふるいの使用を必要とする。粗い方のメッシュは通過するが細かい方のメッシュ上で捕捉される粒子が保持され、粗いふるいを通過しない大きな粒子と細かいふるいを通過する細かい粒子は、除外、たとえば廃棄、再利用、または他の目的に供されてもよい。産業界では知られているように、-n+m等の表現は、nよりも小さくmよりも大きい粒度分布を有する材料を意味する。よって、-106+45μmは、それぞれの目開きが106μmおよび45μmである2つのふるいの間で収集される材料の画分を意味する。任意の所望のPSDを得ることができ、PSDは、目開きのサイズ(たとえばμm)で、またはメッシュのサイズ(たとえば仕様メッシュサイズ)で既定することができる。
【0048】
ふるい分けに好適ないくつかの目開きサイズは、210μm、177μm、149μm、125μm、106μm、88、74、63μm、53μm、45μmおよび27μmを含む。ふるい分けに好適ないくつかのメッシュサイズは、70、80、90、100、120、125、140、170、200、230、250、270、325および400を含む。当技術分野では知られているように、他の目開きサイズおよびメッシュサイズが利用可能である、または製造することができる。米国標準ふるいシリーズASTM E11:01、英国標準ふるいシリーズBS.410:2000、および国際試験ふるいシリーズISO3310:2000おいて挙げられているもののような標準規格のふるいが使用されてもよく、これらの全体を本明細書に引用により援用する。いくつかの好適なPSDは、任意の2つのふるいサイズの組み合わせによって形成される。
【0049】
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、イットリウム、およびタンタル等のいくつかのHDH金属は、分子状酸素に対して親和性を有し、その結果、ろう付け粉末に格子間酸素が存在する可能性がある。期せずして、格子間酸素のレベルが低いほど、格子間酸素のレベルがより高い同様の粉末と比較して、より優れた濡れ性およびより優れたフィレット形成等の性能の改善が得られる。HDHプロセスによって製造されそのような金属を含むろう付け粉末は、0.26wt%以上の格子間酸素を含むことが見出された。よって、格子間酸素の量を減じるには、HDHプロセスに続いてろう付け組成物を脱酸素することが好都合であることが見出された。格子間酸素の量は、好ましくは0.25wt%以下、0.20wt%以下、または0.15wt%以下である。格子間酸素の好ましい下限は存在しないが、実際問題として、その量は一般的に0wt%以上、0.05wt%以上、または0.1wt%以上である。
【0050】
HDHプロセスによって製造された粉末は、球状ではなく角状の(角状塊状または不規則形状とも呼ぶ)粒子を含む。球状のチタン粒子は、付加加工法に使用することができ、輸出管理を受ける可能性がある。しかしながら、不規則形状のチタン粉末は、付加処理に好適ではなく、輸出管理を受けないので、国際商取引により適している。
【0051】
より優れた処理およびフロー特性のために、本プロセスによって形成された角状粉末を、任意で球状化することができる。いくつかの球状化方法が知られている。使用できるそのような方法の1つは、プラズマ球状化であり、これは、プラズマジェットを通して粉末を導くことを含み、高いプラズマ熱が作用して粒子を溶かして球状化し、プラズマストリームが作用して粒子の凝集化または焼結を防ぐ。いくつかの球状化方法が米国特許第7,671,294号および第4,246,208号に開示されている。球状化後、製品は任意で脱凝集化および/または任意でサイジングされる。
【0052】
一般的に、ろう付けは、ろう付け合金の液相線を上回るが基板合金の固相線を下回る、特定の温度差(たとえば50℃)で行われる。そうすることで基板の溶融が回避されるからである。温度差が大きいほど、基板内で、粒子成長、析出物粗大化、および/または再結晶化等の、望ましくないマイクロ構造効果が起こる可能性が高くなる。このように、より低温でろう付けできることは好都合である。
【0053】
驚くべき予期せぬ結果として、本プロセスが、合金の均質性を高度に保つことが挙げられる。すなわち、HDHを受けた材料、たとえばろう付け材料が異なるスケールで、たとえば500μm、100μm、および25μmで分析された場合、驚くべきことに成分分布にはほとんど変化がない。各種スケールにおける含有量の情報は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を含む任意の適切な方法で得ることができる。
【0054】
実施例
実施例1 BTiー1粉末
BTi-1(公称式Ti-15Ni-15Cu(重量))が得られ、誘導結合プラズマ質量分析(ICP)を用いて含有量が分析された。アッセイ結果は表2に示される。
【0055】
【表2】
【0056】
サンプルは鋳造物の形態で得られる。サンプルは、水素雰囲気において650℃を上回る温度の炉の中に入れられ、脆い水素化物を形成するのに十分なレートでゆっくりと冷却され、その後図1に示されるように粗く粉砕される。粉砕された水素化物は、ミルで粉末化され、ふるいにかけられて目標の-106+45μmの画分が得られ(たとえばASTM E11に準拠)、これがその後の処理のために保持される。次に、サイジングされた粉末が、350℃よりも高い真空炉の中に、サンプルの脱水素化に十分な時間置かれる。サンプルは、冷却され、脱凝集化され、再度ミリングされて粉末を分離した後に、再度ふるいにかけられて、-106+45μmのチタン合金粉末を提供する。生成物、すなわち粉末A1の顕微鏡写真が図2に示される。
【0057】
サンプルは、走査電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光法との組み合わせ(SEM-EDS)を用いて分析される。この粉末の広い元素マップが図3に示され、Cuは図3aに、Niは図3bに、Tiは図3cに示される。Ti、Ni、およびCuは十分に均質化されているように見え、EDSアッセイによると、Tiが73.1wt%、Niが14.0wt%、Cuが12.9wt%である。
【0058】
図4に示されるように、選択された単一の粒子もSEM-EDSを用いて分析され、図4は粒子レベルでもTi、NiおよびCuが十分に均質化されているように見えることを示す。EDSアッセイによると、Tiが72.8wt%、Niが13.9wt%、Cuが13.3wt%である。
【0059】
図5に示されるように、1つの粒子の小さな領域をSEM-EDSを用いて分析し、図5も、Ti、Ni、およびCuが粒子内で十分に均質化されていることを示す。EDSアッセイによると、Tiは74.7wt%、Niは13.4wt%、Cuは11.8wt%である。このスケールにおいて、Cuがいくらか多い領域(図5a)、Niがいくらか多い領域(図5b)、およびTiがいくらか多い領域(図5c)がわかる。しかしながら、Ti-15Cu-15Niの平衡相(Ti,TiNi,Ti-Cu)を考慮すると、このスケール上では許容可能である。
【0060】
実施例2 BTi-1粉末によるTi-6Al-4Vクーポンのろう付け
Ti-6Al-4Vのベースクーポンが、粉末A1でろう付けされ、ガスアトマイズ法を用いて製造されたBTi-1ろう付け組成物(ECOFM Co., Ltd.により表2の仕様に基づいて製造されたAE12046)(粉末C)でろう付けされたベースクーポンの結果と比較される。
【0061】
毎回2つの矩形クーポンが使用される。一方が水平、他方が鉛直である。2つのクーポンをそれぞれのエッジを重ねて並べる。0.5gのろう付け粉末が、水平のクーポンのほぼ中央に積み上げられる。別の0.5gのろう付け粉末が、共通するエッジに沿って置かれる。
【0062】
このようにして調製されたクーポンを、1050℃の炉に10分間置く。結果として得られるろう付けされたクーポンの写真が図6に示される。図6aおよび図6bは、粉末A1でろう付けされたクーポンの正面図および背面図である。図6cおよび図6dは、粉末Cでろう付けされたクーポンの正面図および背面図である。2セットのクーポン間でフィレット形成は同等であるように見える。
【0063】
実施例3 HDH粉末によるろう付けに対する格子間酸素の効果
実施例2の粉末A1のサンプルは0.27%の格子間酸素を有すると判断される。粉末Bは粉末A1の一部の脱酸素によって調製され、0.12%の格子間酸素を有すると判断される。
【0064】
Ti-6Al-4Vのベースクーポンが、粉末A1およびBを用いてろう付けされる。実施例2で説明したやり方で、毎回2つの矩形クーポンが使用され、0.5gのろう付け粉末が水平クーポンのほぼ中央に積み上げられ、別の0.5gのろう付け粉末が共通するエッジに沿って置かれる。
【0065】
このようにして調製されたクーポンを、1000℃の炉に10分間置く。結果として得られるろう付けされたクーポンの写真が図7に示される。図7aおよび図7bは、粉末A1でろう付けされたクーポンの正面図および背面図である。図7cおよび図7dは、粉末Bでろう付けされたクーポンの正面図および背面図である。2セットのクーポン間でフィレット形成は同等であるように見える。脱酸素されたろう付け粉末でろう付けされたクーポンは、格子間酸素の含有量がより多いろう付け粉末でろう付けされたクーポンよりも良好なフィレット形成および濡れ性を示す。
【0066】
本明細書に示される詳細は、例であり、本発明の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の原理および概念という側面の最も有用で容易に理解される説明と考えられるものを提供するために提示される。この点に関して、本発明の構造上の詳細を、本発明の基本的理解に必要なものよりも詳細に示す試みはなされておらず、本明細書は、図面とともに考慮されることで、本発明のいくつかの形態が実際如何にして実施され得るかを、当業者に対して明らかにする。
【0067】
上述の実施例は、単に説明のために提供され、本発明を限定するものとして解釈されてはならない。本発明を具体例としての実施形態を参照しながら説明してきたが、本明細書で使用されている表現は説明および例示の表現であって限定の表現ではない。現在記載されているおよび補正された以下の請求項の範囲の中で、本発明の局面における範囲および精神から逸脱することなく、変更が行われる可能性がある。本明細書では本発明を特定の手段、材料および実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明は、本明細書に開示された詳細事項に限定されることを意図しておらず、むしろ、本発明は、たとえば現在記載されているおよび補正された以下の請求項の範囲の中で、すべての機能的に均等である構造、方法および用途に拡張される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
【国際調査報告】