(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】過免疫IGG及び/又はIGM組成物及びその調製方法及び過免疫ヒト血漿をドナーから得る方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230623BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20230623BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230623BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K39/395 Y
C07K16/10
A61P31/14
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573528
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2021063995
(87)【国際公開番号】W WO2021244910
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515116009
【氏名又は名称】グリフォルス・ワールドワイド・オペレーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRIFOLS WORLDWIDE OPERATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Grange Castle Business Park,Grange Castle,Clondalkin,Dublin 22,IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ヴァンデバーグ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ウェルハウス
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】マリリン・ローザ-ブレイ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・オーガー
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ・ガハルド・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ・リンジィ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア・オルロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】エリン・ロメス
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA33
4C085BA71
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC14
4C085DD34
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA29
4H045FA71
4H045GA10
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、それを必要とする患者でコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための、IgG 1mg/mL当たり250~2,500の抗体価及び/又はIgG 1mg/mL当たり1.5~15のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、ヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物に関連する。本開示は、2,000~17,000のSARS-CoV-2力価、及び/又は200~70,000のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、ヒト血漿由来免疫グロブリンM(IgM)を含む液体治療用又は予防用過免疫免疫グロブリン組成物、その調製方法、及びCOVID-19の治療又は予防のためのその使用にも関連する。最後に、本開示は、COVID-19の治療で使用するための過免疫ヒト血漿をドナーから得る方法にも関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全タンパク含有量の少なくとも97%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンG(IgG)を含み、IgG 1mg/mL当たり250~2,500のSARS-CoV-2抗体価及び/又はIgG 1mg/mL当たり1.5~15のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、液体治療用過免疫グロブリン組成物。
【請求項2】
前記ヒト血漿由来のIgGの純度が全タンパク含有量の少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記SARS-CoV-2抗体価がIgG 1mg/mL当たり300~2,200である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記SARS-CoV-2抗体価がIgG 1mg/mL当たり350~2,000である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記SARS-CoV-2抗体価がIgG 1mg/mL当たり400~1,900である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記SARS-CoV-2抗体価がIgG 1mg/mL当たり450~1,800である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記SARS-CoV-2抗体価がIgG 1mg/mL当たり485~1,700である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記SARS-CoV-2抗体価が、IgG 1mg/mL当たり250より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは750より大きく、好ましくは1,000より大きく、好ましくは1,500より大きく、好ましくは2,000より大きい、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記SARS-CoV-2中和活性がIgG 1mg/mL当たり1.8~12である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記SARS-CoV-2中和活性がIgG 1mg/mL当たり2~10.5である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記SARS-CoV-2中和活性がIgG 1mg/mL当たり2.2~9.5である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記SARS-CoV-2中和活性がIgG 1mg/mL当たり2.4~8.8である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記SARS-CoV-2中和活性が、IgG 1mg/mL当たり1.5より大きく、好ましくは2より大きく、好ましくは2.5より大きく、好ましくは5より大きく、好ましくは7.5より大きく、好ましくは10より大きく、好ましくは12.5より大きい、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ヒト血漿由来のIgG含有量が5%~20%(w/v)である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ヒト血漿由来のIgG含有量が9%~11%(w/v)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ヒト血漿由来のIgGの少なくとも90%が単量体及び二量体として存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
免疫グロブリンA(IgA)の含有量が0.04mg/ml以下である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
免疫グロブリンM(IgM)の含有量が0.01mg/ml以下である、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
全タンパク含有量の少なくとも97%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンG(IgG)を含み、25,000~250,000のSARS-CoV-2抗体価、及び/又は150~1,500のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、液体治療用過免疫グロブリン組成物。
【請求項20】
前記ヒト血漿由来のIgGの純度が全タンパク含有量の少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記SARS-CoV-2抗体価が50,000~200,000である、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
前記SARS-CoV-2抗体価が75,000~150,000である、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項23】
前記SARS-CoV-2抗体価が100,000~125,000である、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項24】
前記SARS-CoV-2抗体価が50,000より大きく、好ましくは75,000より大きく、好ましくは100,000より大きく、好ましくは150,000より大きい、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項25】
前記SARS-CoV-2中和活性が200~1,250である、請求項19又は24に記載の組成物。
【請求項26】
前記SARS-CoV-2中和活性が250~1,000である、請求項19から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記SARS-CoV-2中和活性が300~725である、請求項19から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記SARS-CoV-2中和活性が400~500である、請求項19から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記SARS-CoV-2中和活性が、150より大きく、好ましくは200より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは400より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは750より大きく、好ましくは1,000より大きい、請求項19から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記ヒト血漿由来のIgG含有量が5%~20%(w/v)である、請求項19から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記ヒト血漿由来のIgG含有量が9%~11%(w/v)である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ヒト血漿由来のIgGの少なくとも90%が単量体及び二量体として存在する、請求項19から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
免疫グロブリンA(IgA)の含有量が0.04mg/ml以下である、請求項19から32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
免疫グロブリンM(IgM)の含有量が0.01mg/ml以下である、請求項19から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
それを必要とする患者におけるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための、請求項19から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載の液体治療用過免疫グロブリン組成物を、抗SARS-CoV-2 IgG抗体を含む出発溶液から調製する方法であって:
a)出発溶液のpHが約3.8~約4.5の範囲内にあるように調整して、溶解した抗体を含む中間溶液を形成する工程、
b)工程a)の前記中間溶液にカプリル酸イオンの供給源を加え、前記中間溶液のpHが約5.0~約5.2の範囲内にあるように調整して、沈殿物及び溶解した抗体を含む上清溶液を形成する工程、
c)前記上清溶液を実質的に全てのウイルスを不活性化する時間、温度及びカプリル酸イオン濃度の条件下でインキュベートする工程、
d)前記上清溶液を少なくとも1つのイオン交換樹脂と、IgA又はIgMを含む他の物質の少なくともいくつかの前記樹脂への結合を可能にするが、IgGを含む抗体の前記樹脂への結合を可能にしない条件下で接触させる工程、及び
e)IgG抗体を収集する工程、
の連続した工程a)~e)を含み、前記出発溶液はSARS-CoV-2回復期ヒト血漿である方法。
【請求項37】
前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿が少なくとも2人の回復期ドナーからの血漿試料のプールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿が血液由来病原体及びヒト白血球抗原(HLA)抗体の少なくとも1つについて陰性である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿が血液型について試験される、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
全免疫グロブリン含有量の少なくとも85%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンM(IgM)を含み、2,000~17,000のSARS-CoV-2力価、及び/又は200~70,000のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、液体治療用又は予防用過免疫IgM組成物。
【請求項41】
前記ヒト血漿由来のIgMの純度が全免疫グロブリン含有量の少なくとも90%、好ましくは少なくとも94%である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記SARS-CoV-2力価が3,000~13,000、好ましくは4,000~12,000である、請求項40又は41に記載の組成物。
【請求項43】
中和活性が300~60,000、好ましくは500~50,000である、請求項40~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記SARS-CoV-2中和活性が1,000~40,000、好ましくは2,000~30,000である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記抗体価が2,000より大きく、好ましくは4,000より大きく、好ましくは5,000より大きく、好ましくは6,000より大きい、請求項40~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記SARS-CoV-2中和活性が200より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは400より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは800より大きく、好ましくは1,000より大きく、好ましくは2,000より大きい、請求項40~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記ヒト血漿由来のIgM含有量が1%~10%(w/v)である、請求項40~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記ヒト血漿由来のIgM含有量が1.5%~5%(w/v)である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記ヒト血漿由来のIgMの少なくとも75%が五量体として存在する、請求項40~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
免疫グロブリンG(IgG)の含有量が全免疫グロブリン含有量の4%以下である、請求項40~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
免疫グロブリンA(IgA)の含有量が全免疫グロブリン含有量の7%以下である、請求項40~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
それを必要とする患者におけるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療又は予防で使用するための、請求項40~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
請求項40から52のいずれか一項に記載の液体治療用過免疫IgM組成物を、抗SARS-CoV-2 IgM抗体を含む出発溶液から調製する方法であって:
a)ポリエチレングリコール(PEG)を使用した前記IgMの沈殿;
b)沈殿したIgMの再懸濁;
c)吸着クロマトグラフィー;
d)同種凝集素親和性クロマトグラフィー;
e)ナノ濾過;及び
f)限外濾過/ダイアフィルトレーション
の連続した工程a)~f)を含み、前記出発溶液はSARS-CoV-2回復期ヒト血漿から得られる方法。
【請求項54】
前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿が少なくとも2人の回復期ドナーからの血漿試料のプールである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための過免疫ヒト血漿をドナーから得る方法であって、前記ドナーはCOVID-19の検査室確定診断を有し、回復期の非感染性状態にある方法。
【請求項56】
前記ドナーがCOVID-19に関して症候的であるか又は無症状である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
COVID-19の前記症状が、発熱、疲労、空咳、痛み、疼痛、鼻づまり、鼻水、咽喉の痛み又は下痢のうちの1つ又は複数である、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記ドナーが、任意の核酸技術(NAT)試験及び/又は抗体抗SARS-CoV-2を検出するための任意の血清学試験によって判定したときにCOVID-19について試験で陽性又は陰性である、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ドナーが無症状であり、抗体抗SARS-CoV-2について陽性であるが、NAT試験で陰性である場合、前記ドナーは血漿供与に直ちに適格である、請求項55~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ドナーが無症状であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗体抗SARS-CoV-2について陽性である場合、前記ドナーはNAT試験のための試料を収集してから28日後に血漿供与に適格である、請求項55~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記ドナーが無症状であり、抗SARS-CoV-2抗体について陽性であるだけである場合、前記ドナーは、血清学試験の7日後に血漿供与に適格である、請求項55~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記ドナーが無症状であり、NAT試験について陽性であり以降にNAT試験について陰性である場合、前記ドナーは、陰性のNAT試験の14日後に血漿供与に適格である、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記ドナーが症候性であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体について陽性であるか、又は抗SARS-CoV-2抗体について陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体について陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後に血漿供与に適格である、請求項55から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記ドナーが症候性であり、NAT試験について陽性であり以降にNAT試験について陽性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後又は第2のNAT試験の28日後のいずれか遅いときに血漿供与に適格である、請求項55から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記ドナーが症候性であり、NAT試験について陽性であり以降にNAT試験について陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の14日後に血漿供与に適格である、請求項55から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記血漿が少なくとも血液由来病原体及び血液型についてスクリーニングされる、請求項55から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記血漿が収集後に冷凍される、請求項55から66のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の分野に関する。特に、本発明は、コロナウイルス疾患(COVID-19)を経た患者から得たSARS-CoV-2回復期血漿から調製された、ヒト血漿由来の免疫グロブリンG(IgG)及び/又は免疫グロブリンM(IgM)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物、その調製方法、並びにそれを必要とする患者におけるCOVID-19の治療でのそれらの使用に関連する。本発明は、それを必要とする患者でのコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための過免疫ヒト血漿をドナーから得るための方法であって、ドナーはCOVID-19の検査室確定診断を有し、回復期の非感染性状態にある方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
COVID-19は、2019年12月に中国の武漢で最初に認知された新興コロナウイルスである、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる気道感染症である(WHO Interim guidance 13、2020年3月)。ウイルスの遺伝子シークエンシングは、SARS-CoV-2が重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスと緊密に関連付けられているベータコロナウイルスであることを示唆する(Team NCPERE 2020)。COVID-19を有するほとんどの人々は軽度であるか又は合併症のない病気を発生させるが、概ね14%は入院及び酸素補助を必要とする重度の疾患を発生させ、5%は集中治療室への入院を必要とする(Team NCPERE 2020)。重度の場合、COVID-19は急性呼吸器疾患症候群(ARDS)、敗血症及び敗血症ショック、急性の腎臓損傷及び心臓損傷を含む多臓器不全が合併することがある(Yang等、2020)。高齢及び共存疾患は死亡の危険因子として報告されており、近年の多変量解析は、高齢、より高い連続臓器不全評価(SOFA)スコア及び入院時のd-ダイマー>1μg/Lがより高い死亡率と関連していることを確認した。その研究は、ウイルスRNA検出の中央持続時間が生存者で20.0日間(四分位範囲[IQR] 17.0~24.0)であったことも観察したが、非生存者ではSARS-CoV-2ウイルスは死亡まで検出可能であった。生存者において観察されたウイルスのシェディングの最も長い持続時間は37日間であった(Huang等、2020;Zhouら、2020)。
【0003】
COVID-19の処置のための疾患に向けられた治療オプションの欠如は、多少の潜在的に有望な作用を期待した緊急の介入につながった。一部の抗ウイルス薬が、現在評価中である。これらには、日本のFujifilm社によって製造されるファビピリビル(AVIGAN(登録商標))、Gilead社によって製造されるレムデシビル及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)のために市販されているKaletra(登録商標)(ロピナビル/リトナビル)が含まれる。曝露後の予防のための処置モダリティー及び潜在的適用として、Clinicaltrials.gov及び他の治験レジストリによるクロロキン及びヒドロキシクロロキンの調査も存在する。これら及び他の潜在的治療剤は、世界保健機構(WHO)ウェブサイトに記載されている。
【0004】
COVID-19の治療のためのアプローチの1つは、受動免疫である;すなわち、COVID-19から回復して、この感染症に対する抗体(過免疫血漿)を有するドナーからの血漿を患者に投与することである。これは、SARS-CoV-2回復期のヒト血漿として知られ、集中治療室(ICU)入院を必要としているかしていない患者で全ての原因の死亡率を低減させるために、並びに/又は臨床重症度、入院及びICU滞在期間、酸素及び人工呼吸器補助への依存を低減させるためにそれを必要とする患者におけるCOVID-19の治療で使用することができる。
【0005】
回復期血漿には、スペイン風邪パンデミック(Luke、T.C.等、2006)から重症急性呼吸器症候群(SARS)(Soo、Y.O.等、2004)、中東呼吸器症候群(MERS)(Ko、J.H.等、2018)及びエボラ(Mupapa、K.等、1999)のより近年の大流行にまでわたる感染症の処置に長い歴史がある。
【0006】
しかし、回復期血漿にはいくつかの欠点があり、それらには、その中の抗体の性質、力価及び中和力がドナー間で大いに異なることがあることが含まれる。更に、注入される回復期血漿の量(輸血関連の循環過負荷)、ドナー/レシピエントの血液型に一致させる必要性、輸血関連アレルギー性反応の可能性、及び検証された病原体低減プロセスの欠如と関連したリスクがある。
【0007】
本出願の発明者は、回復期のドナーからの抗-SARS-CoV-2過免疫血漿を使用することの欠点が、特異抗体の薬物製剤への精製及び濃縮を通して克服することができることを驚くべきことに発見した。したがって、本発明は、症状、罹患率及び死亡率を低減させるために重度の臨床疾患を有するCOVID-19患者の治療のために使用することができる、回復期の又はワクチン接種をされたドナーのプールされた血漿から作製された過免疫グロブリン及び/又は免疫グロブリンM(IgM)組成物を開示する。
【0008】
更に、本出願の発明者は、SARS-CoV-2回復期のヒト血漿から前記過免疫グロブリン及び/又はIgM組成物を調製する方法を開発し、回復期血漿に比較して向上した抗体価及び中和活性を有する高度に純粋なIgG及び/又はIgM組成物をもたらした。
【0009】
前記方法は、ウイルスクリアランス及び血液型判別について有効なプロセシング工程を含み、不注意に既知の感染病原体を移すか輸血反応を誘発するリスクを低減する。したがって、回復期血漿に対する過免疫グロブリン及び/又はIgM組成物の別の利点は、プロセシングに組み込まれた病原体クリアランス能力である。輸血のための及び製造のための回復期血漿は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びB型肝炎ウイルスなどの一般的なウイルス病原体の試験を必要とする。しかし、新規ウイルス混入物が存在する場合には、過免疫グロブリン及び/又はIgM組成物を製造するための本明細書に記載される方法は、いかなるウイルス病原体も除去又は不活性化するために有効な工程を含む。
【0010】
本出願の発明者は、前記過免疫血漿が回復期の抗SARS-CoV-2から得ることができることも驚くべきことに発見した。COVID-19のための回復期血漿の治療的使用は、症状、罹患率及び死亡率を低減させるために重度の臨床疾患を有する患者のためにも興味深い。
【0011】
回復期血漿の受動投与は、血液物質の移入と関連した一般的なリスクを包含する可能性があり、それらには、別の感染症病原体による不用意な感染及び血漿構成成分への反応が含まれる。血液由来病原体(blood-borne pathogen)についてスクリーニングし、ドナー及びレシピエントの血液型を一致させる現代の血液銀行技術では、不注意に既知の感染性病原体を移入するか輸血反応を誘発するリスクは低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6307028号
【特許文献2】米国特許仮出願第63/034289号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】WHO Interim guidance 13、2020年3月
【非特許文献2】Gamunex-C[Immune Globulin Injection (Human) 10 % Caprylate/Chromatography Purified]-添付文書。2020年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、全タンパク含有量の少なくとも97%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンG(IgG)を含み、IgG 1mg/mL当たり250~2,500のSARS-CoV-2抗体価及び/又はIgG 1mg/mL当たり1.5~15のSARS-CoV-2中和活性を有する、液体治療用過免疫グロブリン組成物を開示する。
【0015】
一部の実施形態では、前記ヒト血漿由来のIgGの純度は全タンパク含有量の少なくとも98%であり、好ましくは少なくとも99%である。
【0016】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり300~2,200、好ましくはIgG 1mg/mL当たり350~2,000、より好ましくはIgG 1mg/mL当たり400~1,900、一層より好ましくはIgG 1mg/mL当たり450~1,800、更により好ましくはIgG 1mg/mL当たり485~1,700である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり300より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは750より大きく、好ましくは1,000より大きく、好ましくは1,500より大きく、好ましくは2,000より大きい。
【0017】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり1.8~12、好ましくはIgG 1mg/mL当たり2~10.5、より好ましくはIgG 1mg/mL当たり2.2~9.5、更により好ましくはIgG 1mg/mL当たり2.4~8.8である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり1.5より大きく、好ましくは2より大きく、好ましくは2.5より大きく、好ましくは5より大きく、好ましくは7.5より大きく、好ましくは10より大きく、好ましくは12.5より大きい。
【0018】
一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量は、5%~20%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量は、9%~11%(w/v)である。
【0019】
一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgGの少なくとも90%は、単量体及び二量体として存在する。
【0020】
他の実施形態では、免疫グロブリンA(IgA)の含有量は、0.04mg/ml以下であり、及び/又は免疫グロブリンM(IgM)の含有量は、0.01mg/ml以下である。
【0021】
本発明は、全タンパク含有量の少なくとも97%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンG(IgG)を含み、25,000~250,000のSARS-CoV-2抗体価、及び/又は150~1,500のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、液体治療用過免疫グロブリン組成物も開示する。
【0022】
一部の実施形態では、前記ヒト血漿由来のIgGの純度は全タンパク含有量の少なくとも98%であり、好ましくは少なくとも99%である。
【0023】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、50,000~200,000、好ましくは75,000~150,000、より好ましくは100,000~125,000である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、50,000より大きく、好ましくは75,000より大きく、好ましくは100,000より大きく、好ましくは150,000より大きい。
【0024】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、200~1,250、好ましくは250~1,000、より好ましくは300~725、より好ましくは400~500である。
【0025】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、200より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは400より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは750より大きく、好ましくは1,000より大きい。
【0026】
一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量は、5%~20%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量は、9%~11%(w/v)である。
【0027】
一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgGの少なくとも90%は、単量体及び二量体として存在する。
【0028】
他の実施形態では、免疫グロブリンA(IgA)の含有量は、0.04mg/ml以下であり、及び/又は免疫グロブリンM(IgM)の含有量は、0.01mg/ml以下である。
【0029】
本発明は、それを必要とする患者でコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物も開示する。
【0030】
本発明は、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を、抗-SARS-CoV-2 IgG抗体を含む出発溶液から調製する方法も開示し、この方法は、以下の連続工程a)からe):
a)出発溶液のpHが約3.8~約4.5の範囲内にあるように調整して、溶解した抗体を含む中間溶液を形成する工程と、
b)工程a)の中間溶液にカプリル酸イオンの供給源を加え、中間溶液のpHが約5.0~約5.2の範囲内にあるように調整して、沈殿物及び溶解した抗体を含む上清溶液を形成する工程と、
c)上清溶液を実質的に全てのウイルスを不活性化する時間、温度及びカプリル酸イオン濃度の条件下でインキュベートする工程と、
d)上清溶液を少なくとも1つのイオン交換樹脂と、IgA又はIgMを含む他の物質の少なくともいくつかの樹脂への結合を可能にするが、IgGを含む抗体の樹脂への結合を可能にしない条件下で接触させる工程と、
e) IgG抗体を回収する工程と、
を含み、ここで、出発溶液はSARS-CoV-2回復期ヒト血漿である。
【0031】
一部の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、少なくとも2人の回復期ドナーからの血漿試料のプールである。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液由来病原体及びヒト白血球抗原(HLA)抗体の少なくとも1つについて陰性(tested negative)である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液型について試験される。
【0032】
本発明は、全免疫グロブリン含有量の少なくとも85%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンM(IgM)を含み、2,000~17,000のSARS-CoV-2力価、及び/又は200~70,000のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、液体治療用過免疫IgM組成物も開示する。
【0033】
一部の実施形態では、前記ヒト血漿由来のIgMの純度は全免疫グロブリン含有量の少なくとも90%であり、好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、又は少なくとも96%である。
【0034】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、3,000~13,000、好ましくは4,000~12,000、より好ましくは5,000~11,000である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、2,000より大きく、好ましくは4,000より大きく、好ましくは5,000より大きく、好ましくは6,000より大きい。
【0035】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、300~60,000、好ましくは500~50,000、より好ましくは1,000~40,000、より好ましくは2,000~30,000である。
【0036】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、200より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは400より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは800より大きく、好ましくは1,000より大きく、好ましくは2,000より大きく、好ましくは5,000より大きく、好ましくは8,000より大きく、好ましくは10,000より大きい。
【0037】
一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgM含有量は1%~10%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgM含有量は、1.5%~5%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgM含有量はおよそ2.5%(w/v)である。一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgM含有量は1%(w/v)より高く、又は2%(w/v)より高く、又は3%(w/v)より高く、又は4%(w/v)より高く、又は5%(w/v)より高い。
【0038】
一部の実施形態では、ヒト血漿由来のIgMの少なくとも75%は、五量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgMの少なくとも90%は、五量体として存在する。より好ましい実施形態では、少なくとも94%は五量体として存在する。より好ましい実施形態では、少なくとも95%又は少なくとも98%は五量体として存在する。
【0039】
他の実施形態では、免疫グロブリンG(IgG)の含有量は、全免疫グロブリンの7%以下、好ましくは2%以下であり、及び/又は免疫グロブリンA(IgA)の含有量は、全免疫グロブリンの7%以下、好ましくは4%以下である。
【0040】
本発明は、それを必要とする患者でコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための、本明細書に記載される液体治療用過免疫IgM組成物にも関連する。
【0041】
本発明は、本明細書に記載される液体治療用過免疫IgM組成物を、抗SARS-CoV-2 IgM抗体を含む出発溶液から調製する方法にも関連し、この方法は、以下の連続工程a)からf):
a)ポリエチレングリコール(PEG)を使用した前記IgMの沈殿;
b)沈殿したIgMの再懸濁;
c)吸着クロマトグラフィー;
d)同種凝集素親和性クロマトグラフィー;
e)ナノ濾過;及び
f)限外濾過/ダイアフィルトレーション
を含み、ここで、出発溶液はSARS-CoV-2回復期のヒト血漿から得られる。
【0042】
本発明の方法では、使用する出発物質は異なる供給源から得ることができる。例えば、記載されるIgM方法のための供給源物質は、連続的に操作される2つのGamunexプロセス(米国特許第6307028号に記載される)陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(Qセファロース又はANXセファロース)のいずれかからのカラムストリップであってよい。そのプロセスでは、IgGは、前述の特許に記載のGrifols血漿分画プロセスから生成される分画II+IIIペーストから精製される。簡潔には、陰イオン交換カラムフロースルーでIgGを回収した後に、ほとんど免疫グロブリン(IgM、IgG及びIgA)である結合したタンパク質は、pH5.2の0.5M酢酸ナトリウムを含む緩衝液を加えることによって溶出される。カラムは別々に剥離され、片方又は両方の分画を更に処理してIgMを精製することができる。3つの免疫グロブリンの各々の存在比は、2つのカラムストリップの間でかなり異なる。
【0043】
一部の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、少なくとも2人の回復期ドナーからの血漿試料のプールである。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液由来病原体及びヒト白血球抗原(HLA)抗体の少なくとも1つについて陰性である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液型について試験される。
【0044】
一実施形態では、前記沈殿工程a)は、pH4.5~6.5で実行される。
【0045】
一実施形態では、前記PEGは、5%(w/v)~11%(w/v)の濃度である。好ましくは、前記PEGはPEG-3350である。
【0046】
一実施形態では、前記沈殿工程は30分間以上実行される。
【0047】
一実施形態では、前記吸収クロマトグラフィーは、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィーである。
【0048】
一実施形態では、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)のローディング又は洗浄溶液はNaCl、好ましくは0.5M~2.0Mの濃度のNaClを含む。
【0049】
一実施形態では、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)の洗浄溶液は尿素、好ましくは1M~5Mの濃度の尿素を含む。
【0050】
一実施形態では、同種凝集素A/Bを除去する前記工程d)は、リガンドとしてA/B三糖を使用する親和性クロマトグラフィーによって実行される。
【0051】
一実施形態では、同種凝集素A/Bを除去する前記工程d)は、少なくとも1つはリガンドとして三糖Aを有し、少なくとも1つはリガンドとして三糖Bを有する少なくとも2つの連続した親和性カラムを使用することによって実行されるか、又は、工程d)はリガンドとして三糖A及び三糖Bを有する混合物を含有する少なくとも1つの親和性カラムを使用して実行される。
【0052】
一実施形態では、前記ナノ濾過工程e)は、35nm以上の平均孔径のフィルターを通して実行される。
【0053】
一実施形態では、前記ナノ濾過工程e)は、pH6.0~9.0の少なくとも0.5Mのアルギニン-HClを含む緩衝液を使用して実行される。好ましくは、前記ナノ濾過工程e)は、pH7.0~8.0の少なくとも0.5Mのアルギニン-HClを含む緩衝液を使用して実行される。
【0054】
一実施形態では、前記限外濾過工程(f)は、pH4.5~5.0で実行される。
【0055】
一実施形態では、前記ダイアフィルトレーション工程e)は、pH3.8~4.8のコハク酸緩衝液又はアミノ酸含有緩衝液を用いて実行される。
【0056】
一実施形態では、前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、バリン又はヒドロキシプロリン、又はその混合物である。
【0057】
本発明は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための過免疫ヒト血漿をドナーから得る方法に関連し、ここで、前記ドナーはCOVID-19の検査室確定診断を有し、前記ドナーは回復期の非感染性状態にある。
【0058】
一部の実施形態では、前記ドナーはCOVID-19に関して症候的であるか又は無症状である。
【0059】
一部の実施形態では、COVID-19の症状は、発熱、疲労、空咳、痛み、疼痛、鼻づまり、鼻水、咽喉の痛み又は下痢のうちの1つ又は複数である。
【0060】
一部の実施形態では、前記ドナーは、任意の核酸技術(NAT)試験及び/又は抗体抗SARS-CoV-2を検出するための任意の血清学試験によって判定したときにCOVID-19の試験で陽性又は陰性(tested positive or negative)である。
【0061】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗体抗SARS-CoV-2に陽性であるが、NAT試験で陰性である場合、前記ドナーは血漿供与のために直ちに適格である。
【0062】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗体抗SARS-CoV-2に陽性である場合、前記ドナーはNAT試験のための試料を収集してから28日後に血漿供与のために適格である。
【0063】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけである場合、前記ドナーは、血清学試験の7日後に血漿供与のために適格である。
【0064】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、陰性のNAT試験の14日後に血漿供与のために適格である。
【0065】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるか、又は抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後に血漿供与のために適格である。
【0066】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陽性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後又は第2のNAT試験の28日後のいずれか遅いときに血漿供与のために適格である。
【0067】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の14日後に血漿供与のために適格である。
【0068】
一部の実施形態では、前記血漿は、少なくとも血液由来病原体及び血液型についてスクリーニングされる。
【0069】
一部の実施形態では、前記血漿は、収集後に冷凍される。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本明細書で使用される場合、段落の見出しは構成上の目的だけのためであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきでない。特許、特許出願、記事、書籍、論文及びインターネットウェブページを限定されずに含む、この出願で引用される全ての文献及び類似の資料は、あらゆる目的のために参照により完全に明示的に組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義が本教示で規定される定義と異なるようであるとき、本教示で規定される定義が支配するものとする。本教示で議論される温度、濃度、時間等の前に暗示されている「約」があり、その結果わずかな及び非実質的な逸脱は本明細書の本教示の範囲内にあることが理解される。
【0071】
本出願では、特に明記されていなければ単数形の使用は複数形を含む。更に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」の使用は、限定するものでない。
【0072】
本明細書及び請求項で使用されるように、内容が明らかに別途指図しない限り、単数形「a」、「an」及び「the」には複数形が含まれる。
【0073】
本明細書で使用されるように、「約」は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、質量又は長さに対して20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%異なる数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、質量又は長さを意味する。
【0074】
本明細書で使用される用語「核酸技術又はNAT」は、標的核酸の検出及び定量化のための任意の増幅ベース又は転写ベースの方法を指す。多数の増幅ベースの方法、例えばPCR、その変形形態RT-PCR、鎖置換増幅(SDA)、好熱性SDA(tSDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)又はループ介在等温増幅(LAMP)が周知であり、当技術分野で確立されている。当技術分野で一般的に使用される転写ベースの増幅方法には、核酸配列をベースとした増幅(NASBA)、Qβレプリカーゼ、自律的配列複製又は転写媒介の増幅(TMA)が含まれる。
【0075】
本明細書で使用される用語「回復期血漿」は、前に感染した個体から収集される血漿を指す。したがって、本明細書で使用される用語「回復期の抗SARS-CoV-2血漿」又は「SARS-CoV-2回復期ヒト血漿」は、COVID-19から回復して回復期の非感染性状態にある、前にSARS-CoV-2に感染した個体から収集される回復期血漿を指す。
【0076】
本明細書で使用される用語「過免疫」は、血漿及び/又は血清から得られる、1つ又は複数の特異抗原に対する上昇したレベルの抗体、例えばポリクローナル抗体を含む生成物又は組成物を指す。
【0077】
本明細書で使用される用語「血漿由来の」は、血漿又は血漿タンパク質(免疫グロブリンなど)が分離又は取り出されてタンパク質濃縮液又は新鮮な凍結血漿に加工される、供与されたヒト血液から作製される生成物を指す。血漿由来の生成物は、複数のドナー、通常1,000人以上のドナーからの試料のプールから作製することができる。
【0078】
本明細書で使用される用語「中和活性」又は「IC50中和力価」は互換性であり、SARS-CoV-2による感染の50%を中和又は阻害するのに必要とされる、本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物の量を指す。
【0079】
この開示はある特定の実施形態及び実施例に関連するが、当業者は、本開示が具体的に開示される実施形態を超えて他の代わりの実施形態及び/又はその実施形態の使用、及びその明らかな改変及び同等物に及ぶことを理解する。更に、実施形態のいくつかの変形形態が示され、詳細に記載されているが、この開示の範囲内の他の改変がこの開示に基づいて当業者に容易に明らかになる。
【0080】
実施形態の特異的な特徴及び態様の様々な組合せ又は下位組合せが可能であり、本開示の範囲内になお入ることも想定される。開示される実施形態の様々な特徴及び態様は、本開示の様々な様式又は実施形態を形成するために互いと組み合わせるか、置換することができることを理解すべきである。したがって、本明細書に開示される本開示の範囲は、上記の特定の開示される実施形態によって限定されるべきでないことが意図される。
【0081】
しかし、この記載は本開示の好ましい実施形態を示しているが、本開示の精神及び範囲の中で様々な変更及び改変が当業者に明らかになるので、実例として与えられるだけであることを理解すべきである。
【0082】
本明細書で提示される記載で使用される用語は、限定的又は制限的なものであると解釈すべきものではない。むしろ、用語は系、方法及び関連した成分の実施形態の詳細な記載と共に単純に利用されている。更に、実施形態はいくつかの新規の特徴を含むことができ、そのいずれの1つも単独でその望ましい属性の役割を担わず、本明細書に記載される実施形態の実施に必須であると考えられてもいない。
【0083】
本発明の第1の態様は、全タンパク含有量の少なくとも97%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンG(IgG)を含む、液体治療用過免疫グロブリン組成物に関する。
【0084】
一部の実施形態では、前記組成物は、全タンパク含有量の少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%又は少なくとも99.9%の純度を有するヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む。一部の実施形態では、前記組成物は、約100%の純度を有するヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む。
【0085】
本発明のヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物は、25,000~250,000のSARS-CoV-2抗体価を有することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物のSARS-CoV-2抗体価は、50,000~200,000である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、75,000~150,000である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、100,000~125,000である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、110,000~120,000である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、50,000より大きく、好ましくは75,000より大きく、好ましくは100,000より大きく、好ましくは125,000より大きく、好ましくは150,000より大きく、好ましくは200,000より大きい。
【0086】
本発明の一部の実施形態では、液体治療用過免疫グロブリン組成物のSARS-CoV-2抗体価は、前記組成物が調製されるプールされた血漿中のSARS-CoV-2抗体価に対して少なくとも2倍増加する。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、前記組成物が調製されるプールされた血漿中のSARS-CoV-2抗体価に対して少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも15倍、好ましくは少なくとも25倍、好ましくは少なくとも30倍増加する。
【0087】
本組成物のSARS-CoV-2抗体価は、例えば、Alpha Diagnostics社(Switzerland)からのヒト抗SARS-CoV-2ウイルススパイク1(S1) IgGアッセイを使用して決定することができる。しかし、当業者に公知である他のアッセイを使用することもできる。
【0088】
本発明のヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物のSARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mlで標準化することができる。したがって一部の実施形態では、本発明の組成物のSARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり250~2,500である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり300~2,200である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり350~2,000である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり400~1,900である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり450~1,800である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり485~1,700である。一部の実施形態では、前記SARS-CoV-2抗体価は、IgG 1mg/mL当たり300より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは750より大きく、好ましくは1,000より大きく、好ましくは1,500より大きく、好ましくは2,000より大きい。
【0089】
本発明のヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物は、150~1,500のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有することができる。一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は200~1,250である。より好ましい実施形態では、前記中和活性は250~1,000である。更により好ましい実施形態では、前記中和活性は300~725である。より好ましい実施形態では、前記中和活性は400~500である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、150より大きく、好ましくは200より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは400より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは750より大きく、好ましくは1,000より大きい。
【0090】
本発明の一部の実施形態では、液体治療用過免疫グロブリン組成物のSARS-CoV-2中和活性は、前記組成物が調製されるプールされた血漿中のSARS-CoV-2中和活性に対して少なくとも2倍増加する。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、前記組成物が調製されるプールされた血漿中のSARS-CoV-2中和活性に対して少なくとも5倍、好ましくは少なくとも7倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも13倍増加する。
【0091】
本組成物のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)は、例えば、培養された真核細胞、例えばVero(CCL-81)細胞のSARS-CoV-2による感染の阻害が試験される、免疫蛍光法をベースとした中和アッセイを使用して決定することができる。しかし、当業者は、本組成物のSARS-CoV-2中和活性(IC50)を決定するために使用することができる他のアッセイを知っている。
【0092】
本発明のヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)は、IgG 1mg/mlで標準化することもできる。したがって一部の実施形態では、本発明の組成物のSARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり1.5~15である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり1.8~12である。より好ましい実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり2~10.5である。更により好ましい実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり2.2~9.5である。一層より好ましい実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり2.4~8.8である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、IgG 1mg/mL当たり1.5より大きく、好ましくは2より大きく、好ましくは2.5より大きく、好ましくは5より大きく、好ましくは7.5より大きく、好ましくは10より大きく、好ましくは12.5より大きい。
【0093】
本発明のヒト血漿由来免疫グロブリンG(IgG)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物は、上の抗体価及び/又は中和活性のいずれかによって規定することができる。
【0094】
一部の実施形態では、本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物のヒト血漿由来のIgG含有量は、5%~20%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量は、7%~15%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量は、9%~11%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgG含有量はおよそ10%(w/v)である。
【0095】
一部の実施形態では、本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物のヒト血漿由来のIgGの少なくとも90%は、単量体及び二量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgGの少なくとも95%は、単量体及び二量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgGの少なくとも98%は、単量体及び二量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgGの少なくとも99%は、単量体及び二量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgGの少なくとも99.8%は、単量体及び二量体として存在する。
【0096】
本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物は、高度に精製されたIgG組成物であるが、それは残留量の他の免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンA(IgA)又は免疫グロブリンM(IgM)を含むことができる。一部の実施形態では、前記組成物中のIgAの含有量は、0.04mg/ml以下である。より好ましい実施形態では、前記組成物中のIgAの含有量は、0.038mg/ml以下である。一部の実施形態では、前記組成物中のIgMの含有量は、0.01mg/ml以下である。
【0097】
本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物は、それを必要とする患者でコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用することができる。当業者は、本発明の過免疫グロブリン組成物によるCOVID-19の治療のための好ましい投薬療法及び投与経路(免疫グロブリン組成物のために静脈内経路が好ましい)を知っている。
【0098】
本発明の第2の態様は、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を、抗SARS-CoV-2 IgG抗体を含む出発溶液から調製する方法であって、
a)出発溶液のpHが約3.8~約4.5の範囲内にあるように調整して、溶解した抗体を含む中間溶液を形成する工程、
b)工程a)の中間溶液にカプリル酸イオンの供給源を加え、中間溶液のpHが約5.0~約5.2の範囲内にあるように調整して、沈殿物及び溶解した抗体を含む上清溶液を形成する工程、
c)上清溶液を実質的に全てのウイルスを不活性化する時間、温度及びカプリル酸イオン濃度の条件下でインキュベートする工程、
d)上清溶液を少なくとも1つのイオン交換樹脂と、IgA又はIgMを含む他の物質の少なくともいくつかの樹脂への結合を可能にするが、IgGを含む抗体の樹脂への結合を可能にしない条件下で接触させる工程、
e) IgG抗体を収集する工程、
の連続した工程a)~e)を含み、ここで、出発溶液はSARS-CoV-2回復期のヒト血漿である方法に関する。
【0099】
一部の好ましい実施形態では、本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物を調製する方法は、イオン交換樹脂カラムからIgA又はIgMを溶出する非連続工程f)を更に含む。
【0100】
他の実施形態では、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を調製する方法は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第6307028号に開示されるものである。
【0101】
本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を調製する方法の一部の実施形態では、出発溶液として使用されるSARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、複数の回復期ドナーからの血漿試料のプールである。より好ましい実施形態では、出発溶液として使用されるSARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、少なくとも2人の回復期ドナーからの、好ましくは少なくとも50人の回復期ドナーからの、より好ましくは少なくとも100人の回復期ドナーからの、更により好ましくは少なくとも50人の回復期ドナーからの、一層より好ましくは少なくとも100人の回復期ドナーからの血漿試料のプールである。
【0102】
一部の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液由来病原体及びヒト白血球抗原(HLA)抗体の少なくとも1つに陰性である。血液由来病原体の試験のための任意の公知の方法を使用することができる。同様に、ヒト白血球抗原(HLA)抗体の存在の試験のための任意の公知の方法を使用することができる。
【0103】
他の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液型について試験される。
【0104】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を調製する方法で出発溶液として使用される、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿を得る方法に関する。
【0105】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、当業者に公知である任意の方法に従って得られる。他の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、米国特許仮出願第63/034289号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法に従って得られる。
【0106】
したがって、一部の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿を得る方法は、COVID-19の検査室確定診断を有し、回復期の非感染性状態にあるドナーを少なくとも1人選択することを含む。一部の実施形態では、前記ドナーはCOVID-19に関して症候的であるか又は無症状である。一部の実施形態では、COVID-19の症状は、発熱、疲労、空咳、痛み、疼痛、鼻づまり、鼻水、咽喉の痛み又は下痢のうちの1つ又は複数である。
【0107】
一部の実施形態では、前記ドナーは、任意の核酸技術(NAT)試験及び/又は抗体抗SARS-CoV-2を検出するための任意の血清学試験、及び/又はSARS-CoV-2抗原を検出するための任意の抗原試験によって判定したときにCOVID-19の試験で陽性又は陰性である。
【0108】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗体抗SARS-CoV-2に陽性であるが、NAT試験で陰性である場合、前記ドナーは血漿供与のために直ちに適格である。
【0109】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験若しくは抗原試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗体抗SARS-CoV-2に陽性である場合、前記ドナーはNAT試験のための試料を収集してから28日後に血漿供与のために適格である。
【0110】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけである場合、前記ドナーは、血清学試験の7日後に血漿供与のために適格である。
【0111】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験又は抗原試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、陰性のNAT試験の14日後に血漿供与のために適格である。
【0112】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるか、又は抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後に血漿供与のために適格である。
【0113】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陽性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後又は第2のNAT試験の28日後のいずれか遅いときに血漿供与のために適格である。
【0114】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の14日後に血漿供与のために適格である。
【0115】
一部の実施形態では、前記血漿は、少なくとも血液由来病原体及び血液型についてスクリーニングされる。他の実施形態では、前記血漿は、ヒト白血球抗原(HLA)抗体に陰性である。
【0116】
一部の実施形態では、前記血漿は収集後に冷凍される。一部の実施形態では、前記血漿は、血漿交換法によって収集される。
【0117】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿を得る方法は、メチレンブルーによる前記血漿の処理を含む。
【0118】
本発明の第3の態様は、全免疫グロブリン含有量の少なくとも85%の純度を有するヒト血漿由来の免疫グロブリンM(IgM)を含み、2,000~17,000のSARS-CoV-2力価、及び/又は200~70,000のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)を有する、液体治療用過免疫グロブリン組成物に関する。
【0119】
一部の実施形態では、前記組成物は、全免疫グロブリン含有量の少なくとも90%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%の純度を有するヒト血漿由来免疫グロブリンM(IgM)を含む。
【0120】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は、3,000~15,000、好ましくは4,000~12,000、より好ましくは5,000~11,000である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2抗体価は2,000より大きく、好ましくは4,000より大きく、好ましくは5,000より大きく、好ましくは6,000より大きい。
【0121】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、300~60,000、好ましくは500~50,000、より好ましくは1,000~40,000、より好ましくは2,000~30,000である。
【0122】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、200より大きく、好ましくは300より大きく、好ましくは400より大きく、好ましくは500より大きく、好ましくは800より大きく、好ましくは1,000より大きく、好ましくは2,000より大きく、好ましくは5,000より大きく、好ましくは8,000より大きく、好ましくは10,000より大きい。
【0123】
本発明の一部の実施形態では、液体治療用過免疫グロブリン組成物のSARS-CoV-2中和活性は、前記組成物が調製されるプールされた血漿中のSARS-CoV-2中和活性に対して少なくとも2倍増加する。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、前記組成物が調製されるプールされた血漿中のSARS-CoV-2中和活性に対して少なくとも5倍、好ましくは少なくとも7倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも15倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも25倍、より好ましくは少なくとも30倍増加する。
【0124】
本組成物のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)は、例えば、培養された真核細胞、例えばVero(CCL-81)細胞のSARS-CoV-2による感染の阻害が試験される、免疫蛍光法をベースとした中和アッセイを使用して決定することができる。しかし、当業者は、本組成物のSARS-CoV-2中和活性(IC50)を決定するために使用することができる他のアッセイを知っている。例えば、とりわけ細胞変性細胞傷害性Luminometryアッセイ(CCLA)、プラーク形成単位(PFU)又は中央組織培養感染用量(TCID50)。
【0125】
本発明のヒト血漿由来免疫グロブリンM(IgM)を含む液体治療用過免疫グロブリン組成物のSARS-CoV-2中和活性(IC50中和力価)は、IgM 1mg/mlで標準化することもできる。したがって一部の実施形態では、本発明の組成物のSARS-CoV-2中和活性は、IgM 1mg/mL当たり1.5~15である。他の実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgM 1mg/mL当たり1.8~12である。より好ましい実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgM 1mg/mL当たり2~10.5である。更により好ましい実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgM 1mg/mL当たり2.2~9.5である。一層より好ましい実施形態では、前記SARS-CoV-2中和活性は、IgM 1mg/mL当たり2.4~8.8である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2中和活性は、IgM 1mg/mL当たり1.5より大きく、好ましくは2より大きく、好ましくは2.5より大きく、好ましくは5より大きく、好ましくは7.5より大きく、好ましくは10より大きく、好ましくは12.5より大きい。
【0126】
一部の実施形態では、本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物のヒト血漿由来のIgM含有量は、1%~10%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgM含有量は、1.5%~5%(w/v)である。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgM含有量はおよそ2.5%(w/v)である。
【0127】
一部の実施形態では、本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物のヒト血漿由来のIgMの少なくとも75%は、五量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgMの少なくとも90%は、五量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgMの少なくとも94%は、五量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgMの少なくとも95%は、五量体として存在する。より好ましい実施形態では、ヒト血漿由来のIgMの少なくとも96%は、五量体として存在する。
【0128】
本発明の液体治療用過免疫グロブリン組成物は、高度に精製されたIgM組成物であるが、それは残留量の他の免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンA(IgA)又は免疫グロブリンG(IgG)を含むことができる。一部の実施形態では、前記組成物中のIgAの含有量は、全免疫グロブリン含有量の7%以下である。より好ましい実施形態では、前記組成物中のIgAの含有量は4%以下である。一部の実施形態では、前記組成物中のIgGの含有量は、全免疫グロブリン含有量の7%以下である。より好ましい実施形態では、前記組成物中のIgGの含有量は2%以下である。
【0129】
本発明の血漿由来のIgMを含む液体治療用過免疫グロブリン組成物は、それを必要とする患者でコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用することができる。当業者は、本発明の過免疫グロブリン組成物によるCOVID-19の治療のための好ましい投薬療法及び投与経路(免疫グロブリン組成物のために静脈内経路が好ましい)を知っている。
【0130】
本発明の第4の態様は、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を、抗SARS-CoV-2 IgM抗体を含む出発溶液から調製する方法であって、
a)ポリエチレングリコール(PEG)を使用した前記IgMの沈殿;
b)沈殿したIgMの再懸濁;
c)吸着クロマトグラフィー;
d)同種凝集素親和性クロマトグラフィー;
e)ナノ濾過;及び
f)限外濾過/ダイアフィルトレーション
の連続した工程a)~f)を含み、出発溶液はSARS-CoV-2回復期のヒト血漿から得られる方法に関する。
【0131】
本発明の方法では、使用する出発物質は異なる供給源から得ることができる。例えば、記載されるIgM方法のための供給源物質は、連続的に操作される2つのGamunexプロセス(米国特許第6307028号に記載される)陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(Qセファロース又はANXセファロース)のいずれかからのカラムストリップであってよい。そのプロセスでは、IgGは、前述の特許に記載のGrifols血漿分画プロセスから生成される分画II+IIIペーストから精製される。簡潔には、陰イオン交換カラムフロースルーでIgGを回収した後に、ほとんど免疫グロブリン(IgM、IgG及びIgA)である結合したタンパク質は、pH5.2の0.5M酢酸ナトリウムを含む緩衝液を加えることによって溶出される。カラムは別々に剥離され、片方又は両方の分画を更に処理してIgMを精製することができる。3つの免疫グロブリンの各々の存在比は、2つのカラムストリップの間でかなり異なる。
【0132】
本明細書に記載される液体治療用過免疫IgM組成物を調製する方法の一部の実施形態では、出発溶液として使用されるSARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、複数の回復期ドナーからの血漿試料のプールである。より好ましい実施形態では、出発溶液として使用されるSARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、少なくとも2人の回復期ドナーからの、好ましくは少なくとも50人の回復期ドナーからの、より好ましくは少なくとも100人の回復期ドナーからの、更により好ましくは少なくとも50人の回復期ドナーからの、一層より好ましくは少なくとも100人の回復期ドナーからの血漿試料のプールである。
【0133】
一部の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液由来病原体及びヒト白血球抗原(HLA)抗体の少なくとも1つに陰性である。血液由来病原体の試験のための任意の公知の方法を使用することができる。同様に、ヒト白血球抗原(HLA)抗体の存在の試験のための任意の公知の方法を使用することができる。
【0134】
他の実施形態では、前記SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、血液型について試験される。
【0135】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載される液体治療用過免疫グロブリン組成物を調製する方法で出発溶液として使用される、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿を得る方法に関する。
【0136】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、当業者に公知である任意の方法に従って得られる。他の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿は、下記の通り米国特許仮出願第63/034289号に開示される方法に従って得られる。
【0137】
したがって、一部の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿を得る方法は、COVID-19の検査室確定診断を有し、回復期の非感染性状態にあるドナーを少なくとも1人選択することを含む。一部の実施形態では、前記ドナーはCOVID-19に関して症候的であるか又は無症状である。一部の実施形態では、COVID-19の症状は、発熱、疲労、空咳、痛み、疼痛、鼻づまり、鼻水、咽喉の痛み又は下痢のうちの1つ又は複数である。
【0138】
一部の実施形態では、前記ドナーは、任意の核酸技術(NAT)試験及び/又は抗体抗SARS-CoV-2を検出するための任意の血清学試験、及び/又はSARS-CoV-2抗原を検出するための任意の抗原試験によって判定したときにCOVID-19の試験で陽性又は陰性である。
【0139】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗体抗SARS-CoV-2に陽性であるが、NAT試験で陰性である場合、前記ドナーは血漿供与のために直ちに適格である。
【0140】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験若しくは抗原試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗体抗SARS-CoV-2に陽性である場合、前記ドナーはNAT試験のための試料を収集してから28日後に血漿供与のために適格である。
【0141】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけである場合、前記ドナーは、血清学試験の7日後に血漿供与のために適格である。
【0142】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験又は抗原試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、陰性のNAT試験の14日後に血漿供与のために適格である。
【0143】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるか、又は抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後に血漿供与のために適格である。
【0144】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陽性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後又は第2のNAT試験の28日後のいずれか遅いときに血漿供与のために適格である。
【0145】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の14日後に血漿供与のために適格である。
【0146】
一部の実施形態では、前記血漿は、少なくとも血液由来病原体及び血液型についてスクリーニングされる。他の実施形態では、前記血漿は、ヒト白血球抗原(HLA)抗体に陰性である。
【0147】
一部の実施形態では、前記血漿は収集後に冷凍される。一部の実施形態では、前記血漿は、血漿交換法によって収集される。
【0148】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿を得る方法は、メチレンブルーによる前記血漿の処理を含む。
【0149】
本発明の方法では、使用する出発物質は異なる供給源から得ることができる。例えば、記載されるIgM方法のための供給源物質は、連続的に操作される2つのGamunexプロセス(米国特許第6307028号に記載される)陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(Qセファロース又はANXセファロース)のいずれかからのカラムストリップであってよい。そのプロセスでは、IgGは、前述の特許に記載のGrifols血漿分画プロセスから生成される分画II+IIIペーストから精製される。簡潔には、陰イオン交換カラムフロースルーでIgGを回収した後に、ほとんど免疫グロブリン(IgM、IgG及びIgA)である結合したタンパク質は、pH5.2の0.5M酢酸ナトリウムを含む緩衝液を加えることによって溶出される。カラムは別々に剥離され、片方又は両方の分画を更に処理してIgMを精製することができる。3つの免疫グロブリンの各々の存在比は、2つのカラムストリップの間でかなり異なる。
【0150】
本発明の第5の態様は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の治療で使用するための過免疫ヒト血漿をドナーから得る方法に関連し、ここで、前記ドナーはCOVID-19の検査室確定診断を有し、回復期の非感染性状態にある。
【0151】
一部の実施形態では、前記ドナーはCOVID-19に関して症候的であるか又は無症状である。
【0152】
一部の実施形態では、COVID-19の症状は、発熱、疲労、空咳、痛み、疼痛、鼻づまり、鼻水、咽喉の痛み又は下痢のうちの1つ又は複数である。
【0153】
一部の実施形態では、前記ドナーは、任意の核酸技術(NAT)試験及び/又は抗体抗SARS-CoV-2を検出するための任意の血清学試験によって判定したときにCOVID-19の試験で陽性又は陰性である。
【0154】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗体抗SARS-CoV-2に陽性であるが、NAT試験で陰性である場合、前記ドナーは血漿供与のために直ちに適格である。
【0155】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗体抗SARS-CoV-2に陽性である場合、前記ドナーはNAT試験のための試料を収集してから28日後に血漿供与のために適格である。
【0156】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけである場合、前記ドナーは、血清学試験の7日後に血漿供与のために適格である。
【0157】
一部の実施形態では、前記ドナーが無症状であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、陰性のNAT試験の14日後に血漿供与のために適格である。
【0158】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験で陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるか、又は抗SARS-CoV-2抗体に陽性であるだけであるか、又はNAT試験で陽性であり以降に抗SARS-CoV-2抗体に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後に血漿供与のために適格である。
【0159】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陽性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の28日後又は第2のNAT試験の28日後のいずれか遅いときに血漿供与のために適格である。
【0160】
一部の実施形態では、前記ドナーが症候性であり、NAT試験に陽性であり以降にNAT試験に陰性である場合、前記ドナーは、全ての症状の停止の14日後に血漿供与のために適格である。
【0161】
一部の実施形態では、前記血漿は、少なくとも血液由来病原体及び血液型についてスクリーニングされる。
【0162】
一部の実施形態では、前記血漿は収集後に冷凍される。
【0163】
以降、本発明は例示的な実施例を参照して更に詳細に記載されるが、それは本発明の制限を構成しない。
【実施例】
【0164】
(実施例1)
SARS-CoV-2回復期血漿の収集のための血漿ドナーの選択
本発明の過免疫グロブリン組成物の生成で使用するためのSARS-CoV-2回復期血漿を得るための血漿ドナーの選択のために、米国特許仮出願第63/034289号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法が使用される。
【0165】
簡潔には、プレスクリーニングプロセスを通して承認された健康の優れた個体は、最終評価及び供与のために供与施設に進ませる。このプレスクリーニングプロセスは、病気から回復したか又は疾患因子に曝露したが無症状のままであった個体だけが施設に来て潜在的に供与する資格があることを保証した。したがって、登録前に核酸増幅試験(NAT)、陽性抗原試験又はSARS-CoV-2抗体試験によってCOVID-19感染の試験室証拠を有し、その後回復期の非感染性状態にあった個体だけが、ドナー施設で安全に処理され得る。
【0166】
したがって、症候性のドナーは、彼らが経過観察NATによって陰性であるならば供与の少なくとも14日前に、又は彼らが経過観察試験を受けなかったならば28日前に症状の完全解消を有しなければならなかった。同様に、NAT又は抗原試験によって陽性であった無症状のドナーは、彼らが経過観察で陰性のNATを有していたならば最初の試験から14日間待つ必要があったが、彼らが経過観察試験を受けなかったならば、最初の試験から28日間待たなければならなかった。抗SARS-CoV-2抗体試験によって試験されただけだった無症状のドナーは、供与の前に7日間待つ必要があったが、彼らが陰性のNATも有していたならば直ちに供与することができた。
【0167】
ドナーは、ヒト白血球抗原(HLA)抗体にも陰性でなければならなかった。
【0168】
Table 1 (表1)は、症状及び試験結果に基づく血漿ドナーの適格性のための上記の判定基準を要約する。
【0169】
【0170】
【0171】
(実施例2)
SARS-CoV-2回復期ヒト血漿の製造
実施例1で説明したように又は任意の他の判定基準に従ってドナーが選択されると、血漿交換法によって血漿が収集される。
【0172】
各血漿単位は様々な感染性因子のスクリーニングを含む規制によって規定される、製造のための供給源血漿の要件を満たさなければならない。更に、各単位がSARS-CoV-2ウイルスについて陰性であり、抗SARS-CoV-2抗体について陽性であることを確認するために試験した。
【0173】
各血漿試料は、ヒト白血球抗原(HLA)抗体について陰性であることも試験され、血液型も判定した。次に、抗A及び抗Bの一貫したバッチ間レベルを維持するために全体のドナーABO式血液型分布と一貫した分布を維持するために、血漿プールをモデル化した。
【0174】
これらのパラメータは、免疫グロブリン生成物を作製するために大きなバッチの血漿が一緒にプールされる場合、希釈によって通常限定されるが、より小さいバッチでは、単一のドナーが最終生成物に対してより大きな影響を有するかもしれない。
【0175】
したがって、O型及びB型のドナーは、各血漿プールが最終生成物中に高い抗A力価を有する可能性を低下させるために、任意の単一のドナーから2単位以下に限定された。
【0176】
この実施例では、SARS-CoV-2回復期ヒト血漿のプールバッチを製造するために使用された500血漿単位からのABO式血液型判定結果をTable 2 (表2)に示す。2つの公開された研究からの結果が、コンパレーターとして含まれる。これらの結果は、COVID-19回復期血漿ドナーのABO式血液型分布が、血液及び血漿ドナーの他の研究で報告された分布に類似していたことを示す。
【0177】
【0178】
(実施例3)
SARS-CoV-2回復期血漿からの液体治療用過免疫グロブリン組成物の製造
実施例2で得られた血漿プールは、次にGamunex-Cカプリル酸/クロマトグラフィープロセス(Lebing、W.等、2003、米国特許第6307028号、各々参照により本明細書に組み込まれる)と同じ工程に従って処理した、それには、ウイルスの除去及び/又は不活性化に有効な複数の工程が含まれていた(Gamunex-C[Immune Globulin Injection (Human) 10 % Caprylate/Chromatography Purified]-添付文書。2020年)。
【0179】
生じた生成物は、低pHにおいてグリシンでおよそ10%のタンパク含有量で製剤化された高度精製IgG溶液(SARS-CoV-2ヒト免疫グロブリン(hIVIG))であった。
【0180】
(実施例4)
SARS-CoV-2ヒト免疫グロブリン(hIVIG)生成物の特徴付け
SARS-CoV-2回復期ヒト血漿から得られた本発明の過免疫グロブリン組成物(hIVIG)を、抗SARS-CoV-2特異抗体の回収を調査するために特徴付けた。したがって、hIVIG生成物を、IgG特異的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及び中和抗体アッセイで試験した。
【0181】
hIVIG生成物の特徴付けは、生成物を特徴付け、使用のために好適であることを確認するために事前のルーチンバッチ試験を更に含んだ。この特徴付けには、グリシン、pH、タンパク質濃度、オスモル濃度、電気泳動による組成、及びサイズ排除クロマトグラフィーによる分子量プロファイリングのための分析が含まれた。分析は、カプリル酸ナトリウム、残留IgA及びIgM、プレカリクレイン活性化剤(PKA)、第Xa因子、抗A、抗B並びに抗Dについても実行した。更に、無菌性及び発熱性物質のための簡潔な試験を全てのバッチについて実行した。
【0182】
これらの試験は、試験したバッチがGamunex-Cなどのカプリル酸/クロマトグラフィープロセスで製造される他の免疫グロブリン生成物について記載される純度、製剤、分子プロファイル及び純度についてバッチ基準の範囲内であることを示した。これらのバッチは、USPの発熱物質及び無菌性試験にも合格した。
【0183】
驚くべきことに、これらの試験はタンパク含有量の97%~100%がIgGであったことを示した。更に、IgGはほとんど全部が単量体及び二量体として存在し、凝集体及び断片は検出限界未満であった。プロセス不純物(カプリル酸ナトリウム)及び血漿タンパク質不純物は、最終生成物中に非常に低い濃度で見出され、十分バッチ要件未満であった。
【0184】
残留IgA及びIgMの量も、バッチ要件(それぞれ0.13mg/ml未満及び0.030mg/ml未満)及びGamunex-C生成物で知られている濃度未満であった。
【0185】
IgMは、抗A及び抗B血管内溶血活性の主な供給源として同定されている(Flegel、W.A.、2015)。本発明のhIVIG生成物は0.01mg/ml未満を含有することが示され、これはこの有害事象の危険性を大いに低減する。対照的に、患者を回復期血漿で治療するとき、溶血の可能性を低減するために彼らはドナーの血液型に一致させなければならない。
【0186】
同様に、IgAの除去は、IgAが欠乏し、血液製剤によって以前に処置されており、IgAへの抗体を形成していた可能性がある患者において、回復期血漿と比べてhIVIG生成物に潜在的な治療的利点を提供する。本発明のhIVIG生成物は、0.04mg/ml未満のIgAを含有することが示された。
【0187】
抗SARS-CoV-2 ELISA
抗SARS-CoV-2 IgG力価は、Alpha Diagnostics社からのヒト抗SARS-CoV-2ウイルススパイク1(S1) IgGアッセイを使用して決定した。複数の段階希釈、及び希釈の対数の関数として光学密度の対数をプロットすることによって構築された曲線を使用して、20バッチのhIVIGを試験した。力価は、この曲線が低いキット基準に等しい希釈と規定された。力価は、非COVID-19ドナーからの血漿にCOVID-19ドナーの血漿で見出されたものと類似の力価を与えるように意図されたレベルで混入された市販のキメラモノクローナルSARS-CoV-2 S1抗体(Sino Biologicals社、Beijing、China)からなるインハウス対照との比としても表された。
【0188】
生成された20バッチのhIVIG及びその対応する血漿プールについて、結果をTable 3 (表3)に示す。前記結果は、プールされた血漿を最終生成物にプロセシングしたとき、ELISA活性(ELISA力価、1:X)が最高ほぼ30倍に増加したことを実証した。プールされた血漿から最終生成物までIgG濃度も10倍を超えて増加した。抗SARS-CoV-2抗体価をIgG濃度に標準化したとき、データは250~2,500の間で変化し、それは出発材料及び完成生成物の類似の値をもたらす。これは、ELISA活性へのIgM及びIgAの寄与によって説明することができ、それらはIgGの精製の間に除去され、hIVIG最終生成物の高い純度を再び実証する。
【0189】
【0190】
抗SARS-CoV-2中和抗体アッセイ
hIVIG生成物は、米国国立衛生研究所のIntegrated Research Facility、Frederick、MD、で実行された免疫蛍光法をベースとした中和アッセイを使用して、抗SARS-CoV-2抗体についても試験した。このアッセイは、培養されたVero(CCL-81)細胞のSARS-CoV-2(ワシントン分離株、CDC)による感染の阻害を試験するために試験物質の希釈系列を使用して、抗SARS-CoV-2中和力価を定量化する。
【0191】
力価は、SARS-CoV-1核タンパク質に対する特異抗体を使用してSARS-CoV-2核タンパク質を検出することによって感染を定量化するための細胞ベースの免疫吸着アッセイを使用して調査した。
【0192】
高スループット光学式イメージングシステムで個々の感染細胞の定量化を可能にする蛍光体に、二次検出抗体をコンジュゲートさせた。2連プレートの各々2つに4ウェルにわたって、試料希釈につき最少で16,000個の細胞を数えた。データは、Table 3 (表3)に50%中和力価(IC50)として4パラメータ回帰曲線(制約されたフィット(constrained fit)を使用して)に基づいて報告される。
【0193】
結果は、抗体中和活性(IC50)が、血漿プールから最終生成物まで10倍を超えて増加したことを示した。中和活性のこの増加は、回復期血漿の同等量と比較してhIVIG生成物で処置した患者がより高い中和活性を受けるだろうことを示す。或いは、hIVIGで処置した患者は、回復期血漿による処置と比較してより少ない処置量を受ける可能性があり、輸血関連の循環過負荷の可能性を潜在的に減少させる。
【0194】
特異的な中和活性(IgG濃度に標準化される)は、血漿と比較して最終生成物でわずかに低減された。前に議論されたように、これはIgGの精製の間に除去されたIgM及びIgAの寄与によって引き起こされる可能性がある。
【0195】
本発明のhIVIG生成物を製造するためにSARS-CoV-2回復期ヒト血漿を使用することの利点は(個体からの血漿の直接投与又はモノクローナル抗体の投与と比較して)、より広い範囲の抗ウイルス活性を提供することができる回復期ドナーのプールから得られる抗体の多様性である。この多様性は、ウイルスでの突然変異を克服することに重要である。異なるウイルスエピトープを攻撃し、異なる細胞機構を参加させることによって、抗体多様性はより広い範囲の抗ウイルス活性を提供する。遊離ウイルスの中和は、主に感染を阻止する立体的ブロッキングの結果であるが、追加の抗ウイルス活性は、補体媒介性又は抗体依存性細胞性細胞傷害性などのエフェクター機能の活性化からもたらされ得る。
【0196】
(実施例5)
SARS-CoV-2回復期血漿からの液体治療用過免疫IgM組成物の製造
実施例2で得られた血漿プールを、Gamunexプロセスと類似の方法で処理した。Q-セファロース陰イオン交換の溶出液(Q-ストリップ)は、ANXストリップのそれと比較してより高いIgM力価を有し、次に以下の工程:
a) 5.0~6.0のpHで10%(w/w)のPEG-3350を使用した前記IgMの沈殿;
b)沈殿したIgMの5mMリン酸ナトリウム、20mMトリス、1M NaClを含む緩衝液pH8.0での再懸濁;
c)セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィーを使用した吸着クロマトグラフィー;
d)同種凝集素親和性クロマトグラフィー;
e)ナノ濾過;及び
f)限外濾過/ダイアフィルトレーション
に従って処理した。
【0197】
得られた生成物は、Table 4 (表4)に示すようにIgG、IgA及びIgMの一般的な免疫グロブリンレベル、並びに得られた生成物中のそれらの含有量を示した。
【0198】
【0199】
プールされた血漿(Q-ストリップ)及びIgMバルクは、SARS-CoV-2抗原のS1タンパク質への結合について試験され、結果は、プールされた血漿のそれと比較して、バルク中のSARS-CoV-2 S1タンパク質へのIgM抗原結合におけるおよそ35~40の増加を示した。これを、Table 5 (表5)に示す。
【0200】
【0201】
(実施例6)
SARS-CoV-2ヒト免疫グロブリンM生成物の特徴付け
IgM生成物の特徴付けは、生成物を特徴付け、それが使用のために適切であることを確認するために事前のルーチンバッチ試験を含んだ。
【0202】
下のTable 6 (表6)は、IgMプロファイルを示す。凝集体、オリゴマー、五量体及び<五量体は、SEC-HPLCによって同定した。
【0203】
【0204】
Table 7 (表7)及びTable 8 (表8)に示すように、IgMバルクはMaverick (商標)(Genalyte社、USA) SARS-CoV-2タンパク質パネルの全てへの反応性シグナルも示した(回復期のプールされた血漿の各バッチと比較して18~97倍)。Maverick SARS-CoV-2 Multi-Antigen Serology Panel v2は、Maverick (商標)診断系を使用したヒト二カリウムEDTA血漿(human dipotassium EDTA plasma)の中のSARS-CoV-2に対する全抗体(IgG及びIgMを含む)の定性検出のためのフォトニックリングイムノアッセイ(PRI)である。
【0205】
【0206】
【0207】
抗SARS-CoV-2中和抗体アッセイ
Table 9 (表9)に示すように、異なる検査室及び異なる技術を使用して3つの異なるバッチに対する抗SARS-CoV-2抗体についてIgM生成物を試験した。検査室1は、細胞変性-細胞傷害性Luminometryアッセイ(Cytopathic-Cytotoxicity Luminometry Assay, CCLA)を使用した;検査室2は、プラーク形成単位(Plaque Forming Units, PFU)技術を使用し、検査室3は中央組織培養感染用量(Median Tissue Culture Infectious Dose, TCID50)を使用した。
【0208】
全ての場合で、半減阻止濃度(half-maximal inhibitory concentration, IC50)は、免疫グロブリン希釈として計算した。
【0209】
【0210】
本発明のIgM生成物を製造するために回復期ヒト血漿を使用することの利点は(個体からの血漿の直接投与又はモノクローナル抗体の投与と比較して)、より広い範囲の抗ウイルス活性を提供することができる回復期ドナーのプールから得られる抗体の多様性である。この多様性は、ウイルスでの突然変異を克服することに重要である。異なるウイルスエピトープを攻撃し、異なる細胞機構を参加させることによって、抗体多様性はより広い範囲の抗ウイルス活性を提供する。遊離ウイルスの中和は、主に感染を阻止する立体的ブロッキングの結果であるが、追加の抗ウイルス活性は、補体媒介性又は抗体依存性細胞性細胞傷害性などのエフェクター機能の活性化からもたらされ得る。
【国際調査報告】