(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】自転車サドルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/12 20060101AFI20230623BHJP
B62J 1/00 20060101ALI20230623BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230623BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B29C39/12
B62J1/00 B
B29C44/00 A
B29C44/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573651
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021064907
(87)【国際公開番号】W WO2021245189
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】102020000013249
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522464241
【氏名又は名称】セレ エスエムピー エス.エー.エス.ディ フランコ スキアヴォーン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スキアヴォーン、フランコ
(72)【発明者】
【氏名】スキアヴォーン、マウリツィオ
【テーマコード(参考)】
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD08
4F204AD16
4F204AD35
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH26
4F204AR07
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB11
4F204EB22
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F204EL21
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD08
4F214AD16
4F214AD35
4F214AG03
4F214AH26
4F214AR07
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UB22
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF05
4F214UF27
4F214UK21
(57)【要約】
本発明は、中央チャネル(2)、貫通孔(4′)を有する外殻(4)、ポリウレタン層(5)、ライナ(3)を提供する自転車サドルの製造方法に関する。この方法によって、従来技術のサドルとは異なり、前記中央チャネル(2)が、前記中央チャネル(2)の周囲に存在するエッジを完全に除去することを保証でき、使用者にとって美的および機能的観点の両方から大きな利点がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央チャネル(2)を提供する自転車サドルを製造するための方法であって、サドルは、
前記サドル(1)の中央チャネル(2)に貫通孔(4′)を有する外殻(4)と、
パディング要素としてのポリウレタン層(5)と、
前記ポリウレタン層(5)を覆うように適合されるライナ(3)と、を備え、
前記方法は、
下型(6)の中空面(8)にライナ(3)を配置し、
前記ライナ(3)と前記中空面(8)との間に真空を生じさせることにより、前記ライナ(3)と前記中空面(8)との間に完全な密着を可能にし、
先立って前記ライナ(3)で覆った前記中空面(8)にポリウレタン(5)を流し込み、
上型(7)の面に外殻(4)を配置し、
- 前記下型(6)及び前記上型(7)を相互に接近させて閉鎖し、前記下型(6)の前記中空面(8)に前記上型(7)を配置し、
前記ライナ(3)と前記外殻(4)の間の空間を完全に満たすように前記ポリウレタン(5)を膨張させ、
前記下型(6)と前記上型(7)を相互に移動させ、
前記下型(6)の、前記外殻(4)と前記ポリウレタン(5)と前記ライナ(3)とのセットを取り出す、ことを含み、
前記ライナ(3)は、前記サドル(1)の前記中央チャネル(2)が形成される領域にキャップ状構造体(14)を提供するように前処理を施され、前記下型(6)に前記キャップ状構造体(14)を提供する前記ライナ(3)を配置し、特に、前記下型(6)に設けられた突起(18)に前記キャップ状構造体(14)を配置し、特に、前記上型(7)に設けられた凹部(28)と係合するよう適合され、
前記方法は、
前の全ての工程の完了時に、前記突起(18)を覆い、前記外殻(4)の前記貫通孔(4′)のエッジの上方に突出する前記キャップ状構造体(14)の部分(19)を機械的に除去することを含み、
前記ライナ(3)は、
前記サドル(1)の前記中央チャネル(2)が存在する領域で、半製品ライナ(3′)に孔(12)を作ることにより、一旦形成され、
前記キャップ状構造体(14)を前記孔(12)で前記半製品ライナ(3′)に溶着することにより、前記キャップ状構造体(14)の開放エッジを前記孔(12)のエッジと実質的に一致させることにより製造する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記キャップ状構造体(14)は、前記孔(12)の長さと実質的に同様の長さの2つの要素(13′、13″)を相互に溶着する前工程によって得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電極(16)に存在する貫通孔(17)に前記キャップ状構造体(14)を挿入することにより、実質的に前記ライナ(3)に存在する前記孔(12)のように形成され、
前記電極に前記要素(13′、13″)を挿入し、前記キャップ状構造体(14)の開口基部の一部を折り曲げ、前記電極(16)の外壁に対して前記要素を配置し、
前記電極(16)と前記キャップ状構造体(14)のアセンブリを前記半製品ライナ(3′)に存在する前記孔(12)のエッジに配置し、
前記半製品ライナ(3′)と接触する前記キャップ状構造体(14)の前記部分と同じ前記ライナ(3)との間の相互に溶着させて密着を生じさせるために前記電極(16)によって溶着を実現し、
前記電極(16)を除去し、
前記電極(16)の前記外壁に対して配置された前記キャップ状構造体(14)の一部(15)の除去を促進するように、前記電極(16)の外壁に対して配置された前記キャップ状構造体(14)の一部(15)を切断する、ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記半製品ライナ(3′)と同じ前記ライナ(3)に接する前記キャップ状構造体(14)の前記部分との相互の溶着によって密着を生じさせるために、前記電極(16)によって高周波溶着が実現する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半製品ライナ(3′)と同じ前記ライナ(3)に接する前記キャップ状構造体(14)の前記部分との相互の溶着により密着を生じさせるために、クラッド溶着を提供する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記キャップ状構造体(14)を形成するように適合された2つの前記要素(13′、13″)は、前記電極(16)の前記外壁で折り畳まれることを意図した領域のエッジに沿って微細穴あけ工程を経る、ことを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記半製品ライナ(3′)が、完全に伸ばされるように、作業面(40)に配置され、前記半製品ライナ(3′)の前記孔(12)に対応する領域に穴(41′)を有する係止面(41)によって固定されることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載の自転車サドル。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造される、ことを特徴とする自転車サドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の一般部に記載の自転車サドルの製造方法に関する。本発明はまた、本発明に記載された方法によって得られる自転車サドルに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車サドルの分野では、中央部に中央チェネルを有するものがますます普及しつつある。これらのサドルは、レクリエーション用、アマチュア用及びスポーツ用にそれらを用いる人に、多かれ少なかれ長時間にわたって最大の快適性を提供するように特に成形される。実際、自転車サドルを用いる際に遭遇する問題の1つは、ある場合には、かなりの時間にわたって自転車を用いるときに、サイクリストが遭遇する不快感により、数時間にさえ達し得ることであることがよく知られている。したがって、サドル製造業者は、この欠点を克服しようとして、この中央チャネルを有し、かつ、使用者の坐骨結節位置をこのチャネルに近い部分に配置するように特定の方法で形作られたサドルを作製し、一方、人の性器官、特に男性はもちろん女性は、前記チャネルの内部に配置される傾向がある。
【0003】
このカテゴリーの中には、本出願の所有者のサドルが含まれなければならず、この分野におけるかなりの数の特許を有し、その中に次の欧州文献EP1590229、EP1778537、EP1781528、EP2029417、EP2673183、EP3022110に記載されているものが含まれなければならない。
【0004】
このようなサドルは中央チャネルを提供し、これは特に
前記中央チャネルに貫通孔を有する外殻と、
パディング要素としてのポリウレタン層と、
前記ポリウレタン層を覆うように構成されたライナと、を有する。
【0005】
先行技術文献である(国際特許出願の所有者が本出願と同一出願人である国際特許出願に関する)WO 2019/106449 A1は以下の通りである(括弧に囲まれた部分は上記の文書を参照)。
自転車サドル(第1頁第7~8行)の製造方法は、中央チャネル(
図5参照:パディングP間のチャネル)を提供し、中央チャネルは、
サドルの中央チャネルに貫通孔(
図5参照:外殻Sの両殻間の孔)を有する外殻(S)と、
パッド要素(P)としてのポリウレタン層(第7頁第第12行参照:パッドPはPU製)と、
ポリウレタン層(P)を覆うように(
図5参照)適合されたライナ(C)と、
を有し、前記製造方法は、
下型(M20)の中空面にライナ(C)を配置し(
図4参照)、
前記ライナ(C)と前記中空面との間に(M23ダクトを通して)真空を作り、前記間に完全な密着(
図4参照)を可能にし、
ポリウレタン(第8頁参照、第5行)をライナ(C)で覆われた前記中空面に流し込み、
上型(M22)の面へ外殻(S)を配置し(第8頁第5~6行参照)、
下型(M20)と上型(M22)を相互に接近させて閉鎖し(第8頁第6行参照)、下型(M20)の中空面に上型(M22)を配置し(
図5参照)、
ライナ(C)と外殻(S)の間の空間(
図5参照)を完全に満たすようにポリウレタンを膨張させ(第8頁第6行参照)、
下型(M20)と上型(M22)を(暗黙的に)相互移動させ、
- 下型(M20)の外殻(S)で、ポリウレタン(P)及びライナ(C)のセットを(暗示的に)取り出し、前記ライナ(C)は、キャップ状の構造(
図1及び2参照:完成したライナCが第2の型M2に配置される前に、キャップ状の構造は、第1の型M1により未完成のライナC1に形成される)を呈するように、前の処理工程を受け、キャップ状の構造は、サドルのチャネル(
図5参照:パドル間のチャネルP)が一旦形成され、かつ前記ライナ(C)に前記キャップ状の構造(
図3参照)を提供する前記下型M20の領域で作られるように、前記ライナを前記下型M20の突起に配置し(
図2及び4参照:型M10に形成されたキャップ状の構造が前記下型M20の突起に配置される)、前記キャップ状の構造は、特に前記下型(M20)に設けられ、特に前記上型(M22)に設けられた凹部(
図5参照:外殻Sの殻間)に係合するように適合される。
【0006】
他の先行技術文献は、US5356205A、EP1281607A1およびDE20213536U1を引用する。
【0007】
これらの方法は周知であり、特に信頼できる方法で数年実施されており、その結果、生産の観点からも、使用者の好みの機能的なものからも、特に満足できる実施形態となっている。
【0008】
しかしながら、ライナは、それ自体において、平らな形状の要素を構成し、さらに、従来の方法と共に、中央チャネルのカバレッジも生成される、ライナの適用のための特定の方法が与えられると、考慮されなければならない。チャネルを覆っているこの部分を除去しなければならないことは明らかである。これは、必然的に、この余剰部分を除去し、結果的に、ポリウレタン層とライナとの間の接触領域を通る前記中央チャネルの周りにエッジを形成することを含む。このエッジは極端に薄いが、それでも触れると目立つ。また、このタイプに属する自転車サドルは、販売コストが非常に高く、数百ユーロにも達することがあり、このエッジの存在は、美観上の理由からでさえ、ユーザにとって不快であると考えなければならない。さらに、そのようなエッジの存在を見つけることは、ユーザのタッチにとって明らかに不快である。したがって、原理的には、このようなかなり高いコストを有する物品において中央チャネルの面が完全に平滑であることを保証することが望まれるが、これは従来の方法では不可能である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の主たる目的は、詳細に前述した工程を有し、最終的に中央チャネルのエッジが完全に平滑である自転車サドルを生じる、中央チャネルを提供する自転車サドルを製造するための方法を正確に実現することであり、これにより、前述の欠点を克服することができる。
【0010】
本発明のさらなる目的は、そのような方法が単純であり、その実施のために特別な技術およびメカニズムを必要としないことを確実にすることである。
【0011】
さらに、本発明のさらなる目的は、サドルを作るために用いられる機器および用いられる材料の両方に関して、既知のタイプの類似の方法と同等のコストを伴う方法を実現することである。
【0012】
本発明はまた、前記チャネルにおいて前記エッジを完全に除去した中央チャネルを提供する自転車サドルの製造を提案する。
【0013】
これは、請求項1の特徴部分にしたがう方法によって達成される。この方法のさらなる特徴は、従属クレームに存在する。本発明はまた、そのような方法によって製造されるサドルに関する。
【0014】
ここで、本発明のこれら及び他の特徴を、添付図面を参照しながら、いくつかの特定の実施形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の方法によって製造されるサドルの平面図を示す。
【
図2】本発明の方法によって製造されるサドルの斜視図を示す。
【
図3】
図1のIII-III線にしたがうサドルの断面図を示す。
【
図4】
図3の断面図において、本発明の製造方法で用いられる下型及び上型、本発明で記載されるサドルのさらなる要素であるライナ及び外殻、サドルを構成する他の要素を示す。
【
図5】本発明の方法で用いられる下型の断面図を示し、3つの異なる工程で、本発明で記載されるサドルの製造に用いられるライナも示す。
【
図6】本発明の方法で用いられる下型の断面図を示し、3つの異なる工程で、本発明で記載されるサドルの製造に用いられるライナも示す。
【
図7】本発明の方法で用いられる下型の断面図を示し、3つの異なる工程で、本発明で記載されるサドルの製造に用いられるライナも示す。
【
図8】外殻が下型に置かれる場合の工程において本発明の方法で用いられる上型の断面図を示す
【
図9】本発明の方法の3つの異なる工程を示しており、本発明で記載される下型及び上型、外殻、ライナ及びサドルに存在するポリウレタンを示す。
【
図10】本発明の方法の3つの異なる工程を示しており、本発明で記載される下型及び上型、外殻、ライナ及びサドルに存在するポリウレタンを示す。
【
図11】本発明の方法の3つの異なる工程を示しており、本発明で記載される下型及び上型、外殻、ライナ及びサドルに存在するポリウレタンを示す。
【
図12】本発明の方法によって得られるサドルの断面図を示し、サドルの完全な仕上げのために除去すべき様々な部分を切削する工程を概略的に示す。
【
図13】従来技術に属する中央チャネルを備えたサドルの斜視図を示す。
【
図14】
図13のXIV-XIV線にしたがうサドルの断面図を示す。
【
図15】本発明で記載されるサドルを製造する本発明の方法の中間工程の一つで用いられる半製品ライナの全体斜視図を示す。
【
図16】本発明で記載されるサドルの完成のために用いられるキャップを構成する2つの要素を示す。
【
図19】本発明の方法で用いられる電極の全体的な斜視図を示す。
【
図20】キャップ状構造体の開口基部の一部を折り畳む工程における電極の全体斜視図を示す。
【
図21】本発明で記載されるサドル内側のライナにキャップを溶着するために電極が適用されるときの全体的な斜視図を示す。
【
図22】
図20に示されるキャップ状構造体の
図21のXXI-XXI線にしたがう断面図を示す。
【
図23】溶着されたライナ及びキャップから構成されたセットの全体斜視図を示す。
【
図24】
図23のXXIV-XXIVの線にしたがうセットの断面図を示し、本発明の方法の間に形成される切除すべき余剰部を示す。
【
図25】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するために用いられるライナの全体斜視図を示す。
【
図26】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図4に対応する。
【
図27】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図5に対応する。
【
図28】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図6に対応する。
【
図29】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図7に対応する。
【
図30】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図8に対応する。
【
図31】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図9に対応する。
【
図32】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図10に対応する。
【
図33】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図11に対応する。
【
図34】従来技術による中央チャネルを有するサドルを製造するための方法に関係する要素の図を示し、本発明の方法に関連し、
図12に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図13及び
図14から分かるように、中央チャネル102を有する従来の自転車サドル101は、実質的に、中央チャネル102によって占有されることになる領域に、パディング機能を有するポリウレタン層105によって、かつ層を覆うライナ103によって、貫通孔120(
図26)を備えた外殻104から構成される。ライナ103は、通常、合成材料で作られているが、皮革や織物のような動物由来の材料で作ることもできる。
【0017】
外殻104は、通常、プラスチック材料で作られるが、カーボンだけでなく、金属でも、または任意の場合に、サドルに十分な強度と固さを与える材料でも製作することができる。
【0018】
サドル101は、通常、次の工程を含む方法(
図26~34)によって組み立てられ、
下型106の中空面108にライナ103を配置し(
図27)、
ライナ103と中空面108(
図28)との間に真空ポンプ109などの任意の適切な手段によって真空を作り、パイプ110を中空面108に接続して、中空面及び前記ライナ103間の完全な密着を可能にする。真空は、当業者にとって大気圧より実質的に低い圧力を意味するが、完全な密着を可能にするにはなお十分である。
事前にライナ103によって覆われた中空面108へのポリウレタン105を流し込み(
図29)、
上型107の面に外殻104を配置し(
図30)、
下型106および上型107を相互に接近させて閉鎖し、下型106の中空面108に上型107を配置し(
図31)、
ライナ103と外殻104の間の空間が完全に満たされるようにポリウレタン105を膨張させる(
図32)。周知のように、ポリウレタンは非常に汎用性のあるポリマーであり、本発明で用いるために、ライナ103の上方で下型106の中に流し込む前に、この圧力で液体の形成になる促進剤と共に、容器の内側で液体の形成に保管されるべきである。係る混合物が圧力下で混合容器から出ると、促進剤はガス状に変化し、ポリウレタンの知覚可能な膨張につながる気泡を発生させる。
【0019】
一旦前述の工程が実施されると、実質的に仕上げられたサドル(
図33)を取り出すために、下型106を上型107から遠ざけることは十分である。しかしながら、中央チャネルはまだ存在しない。その理由は、この工程では、中央チャネル102のために意図された領域を占めるライナの一部がまだ存在するからである。したがって、この部分を中央チャネル102のエッジに沿って切断する必要があり(
図34)、ライナとポリウレタンの間の結合物が生じるエッジに沿ってビード200を形成することが必然的にもたらされ、したがって従来技術のサドルにおいて目に見えるままである。
【0020】
このビード200は、サドルの技術的性能には影響しないが、美的な不完全性があり、特に、上記のように、通常、この中央チャネル102を備えたサドルが、特に高品質であり、かなりの価格で販売されているという事実を考慮すると、触感には不快である。
【0021】
さらに、前記ビード200は中央チャネル102にあるので、使用中にチャネル102に配置されるように見えるサドルの構成により、使用者の会陰領域の敏感な部分に刺激を与えたり痛みを与えたりする可能性がある。
【0022】
本発明によるサドルを製造するための前記工程は、前記下型106の中空面108へのライナ103の完全な密着を容易にするために、抵抗器117(
図32)で概略的に示される公知のタイプによって、約50℃~60℃の温度に加熱された前記下型106で実施することもできる。
【0023】
前記ビードを除去するために、本発明によれば、中央チャネル2(
図1)によって占有される予定の領域に配置されるキャップ状構造体14(
図23)を備えたライナ3を用いることが必要である。キャップ状構造体14を含むライナ3(
図23)は、半製品ライナ3′(
図15)によって得られ、このライナでは、中央チャネル2(
図1)に配置されるであろう領域に孔12が予め作成されている。さらに、下型6および上型7(
図5~11)も、必ず、互いに係合するように適合された突起18および凹部28をそれぞれ有することになる。特に、突起18及び凹部28は、凹部28での突起18の係合を可能にするような寸法及び形状を有する、実質的なサイズにする。
【0024】
図5~
図12から分かるように、本発明による方法は、次の工程を含み、
キャップ状構造体14を含むライナ3のセットを、前記キャップ状構造体14を突起18に配置することに注意しながら、下型6の中空面8に配置し(
図5)、
ライナ3と突起18との間の完全な密着を可能にするために、ライナ3と中空面8との間に真空を作り、例えば、ダクト10によって下型6の中空面8に接続された真空ポンプ9を用いることによって、突起18へのキャップ状構造体14の結果としての完全な密着を可能にし(
図6)、
ライナ3で覆われた中空面8にポリウレタン5を流し込み(
図7)、
外殻4の貫通孔4′を上型7の凹部28に配置することに注意しながら、上型7の面に外殻4を配置し(
図8)、
下型6と上型7を相互に接近させて閉鎖し、上型7を下型6の中空面8(
図9)に配置し、上型7の凹部28とキャップ状構造体14で覆われた前記突起18の相互の係合により、突起18を覆うキャップ状構造体14が、上型7の前記凹部28の外殻4の貫通孔4′(
図8および12)を通って延在し(
図5)、突起18の寸法は、暗示的に、型が閉じられたときに、キャップ状構造体が外殻4の上方に延在することを可能にするようにし、
ライナ3と外殻4との間の空間が完全に満たされるまでポリウレタン5を膨張させ(
図10)、
ポリウレタンの必要な硬化/重合時間を待った後に、ポリウレタン5の膨張の完了時に下型6と上型7とを離し、下型6から、外殻4とポリウレタン5とライナ3とのセットを取り出し、(
図11)
突起18を覆い、外殻4の孔4′のエッジに対して突出するキャップ状構造体の部分19を機械的に除去する(
図12)。下型と上型との間のインターフェースに配置するライナ3の部分の横方向の余剰部分30の除去は、前記下型6の中空面8を占有していない。
【0025】
従来技術は、キャップ状構造体14を備えた前記ライナ3を工業的に製造する方法について何らの表示を与えていない。
【0026】
有利には、本発明によれば、以下の工程を含む方法によって製造することができ、
サドル1のチャネル2が存在する領域で、半製品ライナ3′に孔12を形成し(
図15)、
キャップ状構造体14(
図16、17、18)を形成するように孔12の長さと実質的に同じ長さの2つの要素13′、13″を相互に溶着し、
電極16(
図19)の外壁16′の上に折り畳まれることを意図する領域の縁(31)に沿って要素13′、13″(
図16および17)を微細穴あけし、
電極に要素13′、13″を挿入し、キャップ状構造体14の開口基部の一部を折り曲げ、電極16の外壁に対して配置し(
図20)、
電極16とキャップ状構造体14とのアセンブリをライナに存在する孔12(
図15に示す)のエッジに配置し、
高周波電流によって電極16を作動させ、ライナと接触するキャップ状構造体14の部分と同じ半製品ライナ3′との間の密着を生じさせる局所的溶融を可能とするように(
図21及び22)高周波電流によって電極16を作動させ、
電極16を除去(
図23)し、
電極16の外壁に対して配置されたキャップ状構造体14の一部15を切除する(
図24)。
【0027】
また、キャップ状構造体14と半製品ライナ3′との密着工程は、クラッドによる溶着を行うことによって行ってもよい。
【0028】
この方法は、孔12(
図15に示す)を提示する半製品ライナ3′が配置される作業面40(
図21および22)を使用して、それを完全に伸ばして完全に平らな位置に保つようにし、ライナの孔12(
図15に示す)に対応する領域に穴41′(
図21)を提供する係止面41(
図21)を用いることによって、有利に実施することができる。キャップ状構造体14が付与された電極16は穴41′に挿入されることになる。係止面41は、最終アセンブリの構造的品質を損なう可能性のある動きを回避するように、キャップの溶着工程中に半製品ライナ3′を固定させる。
【国際調査報告】