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特表2023-5279084-1BBをターゲティングする多量体免疫調節物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】4-1BBをターゲティングする多量体免疫調節物質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230623BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230623BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230623BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20230623BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230623BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230623BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230623BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230623BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230623BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230623BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20230623BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C07K16/44
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
C12P21/02 C
A61P35/00
A61K47/68
A61K35/17
A61P43/00 107
C12N15/86 Z
C07K14/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574395
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2021065020
(87)【国際公開番号】W WO2021245240
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】20178414.7
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20178721.5
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509029645
【氏名又は名称】ピエリス ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ペパー-ガブリエル ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】プラスラー ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】アイヒナー ティモ
(72)【発明者】
【氏名】グリューナー シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ムーサ アハメド
(72)【発明者】
【氏名】オルウィル シャネ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB22
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、3つ、4つ、またはそれより多いモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドが、第1の4-1BBターゲティング部分、オリゴマー形成部分、ならびに任意でリンカーを含む、多量体タンパク質を提供する。前記モノマーポリペプチドは、1つまたは複数の付加的なターゲティング部分をさらに含んでよい。前記オリゴマー形成部分は、前記モノマーポリペプチドの三量体化、四量体化、またはより高次の状態のオリゴマー形成を促進する。このような多量体タンパク質は、多くの薬学的適用において、例えば、抗がん剤および/または免疫調節物質として、使用され得る。本開示はまた、本明細書において説明する多量体タンパク質、ならびに、そのような多量体タンパク質を含む組成物を作製する方法にも関する。本開示はさらに、そのような多量体タンパク質をコードする核酸分子、ならびに、そのような多量体タンパク質および核酸分子を作製するための方法にも関する。さらに、本出願は、そのような多量体タンパク質および1種類もしくは複数種類のそのような多量体タンパク質を含む組成物の治療的使用および/または診断的使用も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドが、(1)第1の4-1BBターゲティング部分(T1)および(2)オリゴマー形成部分(O)を含む、多量体タンパク質。
【請求項2】
前記第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が、そのN末端またはC末端において、リンカー(L)を介して前記オリゴマー形成部分(O)のC末端またはN末端にそれぞれ融合されている、請求項1記載の多量体タンパク質。
【請求項3】
前記モノマーポリペプチドが、少なくとも1つの付加的なターゲティング部分(T2)を含む、請求項1または2記載の多量体タンパク質。
【請求項4】
前記モノマーポリペプチドが、付加的なターゲティング部分(T2)を含み、前記付加的なターゲティング部分が、前記第1の4-1BBターゲティング部分(T1)とタンデムに配置されている、請求項1~3のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項5】
前記モノマーポリペプチドが、下記の配置:
a T1-L'-T2-L-O;
b T2-L'-T1-L-O;
c O-L-T1-L'-T2;または
d O-L-T2-L'-T1
のうちの1つを有し、ここで、L'が、Lと同じまたは異なるリンカーである、請求項4記載の多量体タンパク質。
【請求項6】
前記モノマーポリペプチドが、付加的なターゲティング部分(T2)を含み、
前記第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が連結されている末端とは異なる、前記オリゴマー形成部分(O)の末端に、前記付加的なターゲティング部分(T2)が連結されている、
請求項1~3のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項7】
前記モノマーポリペプチドが、下記の配置:
a T1-L-O-L'-T2;または
b T2-L'-O-L-T1
のうちの1つを有し、ここで、L'が、Lと同じまたは異なるリンカーである、請求項6記載の多量体タンパク質。
【請求項8】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が第2の4-1BBターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項9】
前記第2の4-1BBターゲティング部分が前記第1の4-1BBターゲティング部分(T1)と同じである、請求項8記載の多量体タンパク質。
【請求項10】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項11】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分であり、かつリポカリンムテインである、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項12】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分であり、かつ抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項13】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分であり、かつ単鎖可変断片(scFv)である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項14】
前記付加的なターゲティング部分(T2)がGPC3ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項15】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、リポカリンムテインであるGPC3ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項16】
前記リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 74~97からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項15記載の多量体タンパク質。
【請求項17】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物であるGPC3ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項18】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、単鎖可変断片(scFv)であるGPC3ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項19】
前記付加的なターゲティング部分(T2)がPD-L1ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項20】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、単鎖可変断片(scFv)であるPD-L1ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項21】
前記scFvが、SEQ ID NO: 172に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項20記載の多量体タンパク質。
【請求項22】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項23】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分であり、前記増大させるターゲティング部分がリポカリンムテインである、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項24】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分であり、前記増大させるターゲティング部分が抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項25】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分であり、前記増大させるターゲティング部分が単鎖可変断片(scFv)である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項26】
前記付加的なターゲティング部分(T2)がOX40ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項27】
前記付加的なターゲティング部分(T2)が、リポカリンムテインであるOX40ターゲティング部分である、請求項3~7のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項28】
前記リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 174~202からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項27記載の多量体タンパク質。
【請求項29】
前記第1の4-1BBターゲティング部分(T1)がリポカリンムテインである、請求項1~28のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項30】
前記第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が、SEQ ID NO: 56~71からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するリポカリンムテインである、請求項1~29のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項31】
前記オリゴマー形成部分(O)が三量体形成を促進することができる、請求項1~30のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項32】
前記オリゴマー形成部分(O)がコラーゲンの三量体形成ドメインである、請求項1~31のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項33】
前記オリゴマー形成部分(O)が、SEQ ID NO: 35~37からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項1~32のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項34】
三量体タンパク質である、請求項1~33のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項35】
四量体タンパク質である、請求項1~30および請求項33のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項36】
前記リンカー(L)が、SEQ ID NO: 12~28からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項2~35のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項37】
SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項1~36のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項38】
SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~37のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項39】
約0.68nMまたはそれ未満のKD値で4-1BBに結合することができる、請求項1~38のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項40】
前記多量体タンパク質が、4-1BBをターゲティングするリポカインムテインのKD値よりも低い見かけのKD値で4-1BBに結合することができ、前記4-1BBをターゲティングするリポカインムテインが前記モノマーポリペプチドに含まれる、請求項1~39のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項41】
前記見かけのKD値が表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、請求項39または40記載の多量体タンパク質。
【請求項42】
カニクイザル4-1BBと交差反応性である、請求項1~41のいずれか一項記載の多量体タンパク質。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパクに含まれるモノマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項44】
前記核酸分子の発現を可能にする調節配列と機能的に連結されている、請求項43記載の核酸分子。
【請求項45】
ベクター中またはファージミドベクター中に含まれる、請求項43または44記載の核酸分子。
【請求項46】
ウイルスベクター中、ナノ粒子中、またはリポソーム中に含まれる、請求項43または44記載の核酸分子。
【請求項47】
宿主細胞のゲノムDNA中に含まれる、請求項43~46のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項48】
請求項43~47のいずれか一項記載の核酸分子を含み、かつ/または請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質を発現し、かつ/または請求項1~42のいずれか一項で定義されるモノマーポリペプチドを発現する、細胞。
【請求項49】
前記多量体タンパク質および/または前記モノマーポリペプチドを分泌する、請求項48記載の細胞。
【請求項50】
前記モノマーポリペプチドを分泌する、請求項48記載の細胞。
【請求項51】
前記モノマーポリペプチドが分泌後に多量体タンパク質へと自己集合する、請求項50記載の細胞。
【請求項52】
免疫細胞である、請求項48~51のいずれか一項記載の細胞。
【請求項53】
T細胞である、請求項52記載の細胞。
【請求項54】
CD8+ T細胞である、請求項53記載の細胞。
【請求項55】
CD4+ T細胞である、請求項53記載の細胞。
【請求項56】
組換え抗原受容体を含む、請求項52~55のいずれか一項記載の細胞。
【請求項57】
前記組換え抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項56記載の細胞。
【請求項58】
前記組換え抗原受容体がT細胞受容体(TCR)である、請求項56記載の細胞。
【請求項59】
CAR-T細胞である、請求項52~57のいずれか一項記載の細胞。
【請求項60】
4-1BBを発現する、請求項52~59のいずれか一項記載の細胞。
【請求項61】
ヒト細胞である、請求項52~60のいずれか一項記載の細胞。
【請求項62】
請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質が、前記多量体タンパク質に含まれる前記モノマーポリペプチドをコードしている核酸を出発材料として生産される、前記多量体タンパク質を生産する方法。
【請求項63】
前記多量体タンパク質が、細菌宿主生物または真核宿主生物において生産される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
T細胞上での4-1BB(および/または、任意でOX40)のクラスター形成および活性化を誘導するための、請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質の使用、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物の使用、または請求項48~61のいずれか一項記載の細胞の使用。
【請求項65】
T細胞を共刺激しかつ/または4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)の下流のシグナル伝達経路を活性化するための、請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質の使用、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物の使用、または請求項48~61のいずれか一項記載の細胞の使用。
【請求項66】
GPC3発現腫瘍細胞またはPD-L1発現腫瘍細胞に結合した場合にT細胞を共刺激するための、請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質の使用、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物の使用、または請求項48~61のいずれか一項記載の細胞の使用。
【請求項67】
前記T細胞が、
前記多量体タンパク質を発現しかつ/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現する、T細胞
である、請求項64~66のいずれか一項記載の使用。
【請求項68】
前記T細胞が、
前記多量体タンパク質を発現せずかつ/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現しない、T細胞
である、請求項64~66のいずれか一項記載の使用。
【請求項69】
請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質を1種類もしくは複数種類含み、かつ/または請求項48~61のいずれか一項記載の細胞を1種類もしくは複数種類含む、薬学的組成物。
【請求項70】
治療法における使用のための、請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質および/または請求項48~61のいずれか一項記載の細胞。
【請求項71】
前記使用ががんの治療におけるものである、請求項70記載の使用のための多量体タンパク質および/または細胞。
【請求項72】
医薬の製造のための、請求項1~42のいずれか一項記載の多量体タンパク質の使用および/または請求項48~61のいずれか一項記載の細胞の使用。
【請求項73】
前記医薬ががんの治療のためのものである、請求項72記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
I 背景
分化クラスター137またはCD137(4-1BBまたはTNFRS9としても公知)は、共刺激免疫受容体であり、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。これは、活性化されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞、活性化されたB細胞、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞において主に発現されるが、休止中の単球および樹状細胞(Li and Liu, 2013)または内皮細胞(Snell et al., 2011)においても見出すことができる。4-1BBは、免疫応答の調節において重要な役割を果たし、したがって、がん免疫療法のための標的である。4-1BBリガンド(4-1BBL)は、4-1BBの天然リガンドとして唯一公知であり、活性化B細胞、単球、および脾臓樹状細胞などいくつかのタイプの抗原提示細胞において構成的に発現され、かつTリンパ球において誘導することができる。
【0002】
がん細胞の排除に4-1BB共刺激が与える利益が、いくつかのインビボモデルで実証されている。腫瘍上で4-1BBLを強制的に発現させると、例えば、腫瘍拒絶が起こる(Melero et al., 1998)。同様に、腫瘍上で抗4-1BB scFvを強制的に発現させると、CD4+ T細胞およびNK細胞依存的な腫瘍排除が起こる(Yang et al., 2007、Zhang et al., 2006、Ye et al., 2002)。全身的に投与された抗4-1BB抗体もまた、腫瘍増殖の遅延をもたらすことが実証されている(Martinet et al., 2002)。4-1BBがヒト腫瘍中の天然に存在する腫瘍反応性T細胞の優れたマーカーであること(Ye et al.,2014)、および抗4-1BB抗体を用いて、養子T細胞療法での適用のためにCD8+黒色腫腫瘍浸潤リンパ球の増殖および活性を強化できること(Chacon et al., 2013)もまた、示されている。4-1BB共刺激の潜在的な治療的利益が前臨床的に実証されたことにより、BMS-663513(米国特許第7,288,638号に記載)およびPF-05082566(Fisher et al., 2012)を含む、4-1BBをターゲティングする治療的抗体の開発にはずみがついた。
【0003】
4-1BBLは、タンパク質分解によって切断されて可溶性三量体リガンドになることができる膜結合型として存在する、三量体タンパク質である。しかし、例えば4-1BBを発現するリンパ球において可溶性4-1BBLが4-1BBを活性化する能力は限定的であり、作用を誘発するためには高濃度が必要とされ(Wyzgol et al., 2009)、このことは、細胞内4-1BBを誘導するためには細胞表面での4-1BBの大規模なクラスター形成が必要とされる(Wyzgol et al., 2009、Rabu et al., 2005)という証拠を与える。4-1BBの天然の活性化方法は、4-1BB陽性細胞と4-1BBL陽性細胞との結合を介する。したがって、4-1BB活性化は、向かい合わせの細胞上の4-1BBLを介したクラスター形成によって誘導されて、TRAF1、TRAF2、およびTRAF3を介したシグナル伝達(Snell et al., 2011、Yao et al., 2013)およびさらに、付随する下流の作用を4-1BB陽性T細胞においてもたらすと考えられている。T細胞がそれらの各同族標的の認識によって活性化される場合、4-1BBの共刺激によって誘発される作用は、さらに増大された活性化、増強された生存および増殖、炎症誘発性サイトカインの産生、および死滅させる能力の向上である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、とりわけ、FcγRに依存しない様式で、高レベルの4-1BBクラスター形成を可能にする4-1BBをターゲティングする1種類または複数種類の多量体タンパク質を介して4-1BBを刺激するための新規なアプローチを提供する。
【0005】
II 定義
下記のリストは、本明細書の全体を通して使用される用語、語句、および略語を定義するものである。本明細書において列挙され定義される用語はすべて、あらゆる文法的語形を包含すると意図される。
【0006】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「4-1BB」とは、ヒト4-1BB(hu4-1BB)を意味する。ヒト4-1BBとは、UniProt Q07011によって定められる完全長タンパク質、その断片、またはそのバリアントを意味する。ヒト4-1BBは、遺伝子TNFRSF9によってコードされる。4-1BBはまた、分化クラスター137(CD137)または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー9(TNFRSF9)としても公知であり、これらは同義的に使用される。カニクイザル(Cynomolgus)4-1BB(cy4-1BB)とは、カニクイザルの4-1BBを意味する。いくつかの特定の態様において、非ヒト種の4-1BB、例えば、カニクイザル4-1BBおよびマウス4-1BBが使用される。
【0007】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「グリピカン-3」または「GPC3」とは、ヒトGPC3(huGPC3)を意味する。ヒトGPC3とは、UniProt P51654によって定められる完全長タンパク質、その断片、またはそのバリアントを意味する。ヒトGPC3は、遺伝子GPC3によってコードされる。いくつかの特定の態様において、非ヒト種のGPC3、例えば、カニクイザルGPC3およびマウスGPC3が使用される。
【0008】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「OX40」とは、ヒトOX40(huOX40)を意味する。ヒトOX40とは、UniProt P43489によって定められる完全長タンパク質、その断片、またはそのバリアントを意味する。ヒトOX40は、遺伝子TNFRSF4によってコードされる。OX40はまた、分化クラスター134(CD134)または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー4(TNFRSF4)としても公知であり、これらは同義的に使用される。カニクイザルOX40(cyOX40)とは、カニクイザルのOX40を意味する。いくつかの特定の態様において、非ヒト種のOX40、例えば、カニクイザルOX40およびマウスOX40が使用される。
【0009】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「プログラム細胞死1リガンド1」または「PD-L1」とは、ヒトPD-L1(huPD-L1)を意味する。ヒトPD-L1とは、UniProt Q9NZQ7によって定められる完全長タンパク質、その断片、またはそのバリアントを意味する。ヒトPD-L1は、遺伝子CD274によってコードされる。PD-L1はまた、分化クラスター274(CD274)またはB7ホモログ1(B7-H1)としても公知である。いくつかの特定の態様において、非ヒト種のPD-L1、例えば、カニクイザルPD-L1およびマウスPD-L1が使用される。
【0010】
本明細書において使用される場合、「結合親和性」とは、本開示の生体分子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)(例えば、リポカリンムテイン、抗体、融合タンパク質、多量体タンパク質、または他の任意のペプチドもしくはタンパク質)が、選択された標的に結合し複合体を形成する能力を示す。結合親和性は、限定されるわけではないが、蛍光滴定、直接ELISAおよび競合ELISAを含む酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に基づくアッセイ法、等温滴定熱量測定(ITC)などの熱量測定方法、ならびに表面プラズモン共鳴(SPR)を含む、当業者に公知のいくつかの方法によって測定される。これらの方法は当技術分野において十分に確立されており、このような方法のいくつかの例が、本明細書においてさらに説明される。それにより、結合親和性は、このような方法を用いて測定される解離定数(KD)、半最大有効濃度(EC50)、または半最大阻害濃度(IC50)の値として報告される。より低いKD値、EC50値、またはIC50値は、より優れた(高い)結合能力(親和性)を反映する。したがって、選択された標的に対する2種類の生体分子の結合親和性を測定し比較することができる。選択された標的に対する2種類の生体分子の結合親和性を比較する場合、「ほぼ同じ」、「実質的に同じ」、または「実質的に同様」という用語は、一方の生体分子が、結合親和性測定の実験変動の範囲内で、他方の分子の結合親和性と同一または同様である、KD値、EC50値、またはIC50値として報告される結合親和性を有することを意味する。結合親和性測定の実験変動は、使用される具体的な方法に応じて変わり、当業者に公知である。
【0011】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語はまた、関心対象の特徴または特性について全部またはほぼ全部の程度または度合いを示す定性的状態を意味し得る。生物学的技術の当業者は、生物学的現象および化学的現象が、あるとしても、完了に至ること、および/もしくは完全な状況まで進むこと、または決定的な結果を実現もしくは回避することはめったにないことを理解するであろう。したがって、「実質的」という用語は、多くの生物学的現象および化学的現象に本来備わっている、完全性の潜在的な欠如を表現するために、本明細書において使用される。
【0012】
本明細書において使用される場合、「検出する」、「検出」、「検出可能な」、または「検出すること」という用語は、定量レベルおよび定性レベルの両方、ならびにそれらの組合せに基づいて理解される。したがって、この用語は、本開示の生体分子に対して行われる定量的測定、半定量的測定、および定性的測定を含む。
【0013】
本明細書において使用される場合、「検出可能な親和性」とは、通常、KD値、EC50値、またはIC50値を用いて報告される、ある生体分子とその標的との結合親和性が、最大で約10-5Mまたはそれより小さいことを意味する。KD値、EC50値、またはIC50値を用いて報告される結合親和性が10-5Mより大きい場合、通常、ELISAおよびSPRなどの一般的方法で測定することがもはや不可能であり、したがって、それほど重要ではない。
【0014】
本開示の生体分子とその標的との複合体形成が、各標的の濃度、競合相手の存在、使用される緩衝液系のpHおよびイオン強度、結合親和性を測定するために使用される実験方法(例えば、蛍光滴定、競合的ELISA(競合ELISAとも呼ばれる)、および表面プラズモン共鳴)、ならびにさらに、実験データを評価するために使用される数学アルゴリズムなど多くの様々な因子の影響を受けることに、留意されたい。したがって、KD値、EC50値、またはIC50値を用いて報告される結合親和性が、方法および実験設定に応じて一定の実験範囲内で変動し得ることが、当業者には明らかである。これは、例えば、KD値、EC50値、またはIC50値がELISA(直接ELISAもしくは競合ELISAを含む)によって測定されたか、SPRによって測定されたか、または別の方法によって測定されたかに応じて、それらの値の測定値のわずかなずれまたは許容誤差範囲が存在し得ることを意味する。
【0015】
本明細書において使用される場合、「に特異的な」、「特異的結合」、「特異的に結合する」、または「結合特異性」とは、所望の標的(例えば、4-1BB、OX40、PD-L1、およびGPC3)と1種類または複数種類の参照標的(例えば、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリンに対する細胞受容体)とを見分ける、生体分子の能力に関する。このような特異性が絶対的な特性ではなく相対的特性であること、ならびに例えば、SPR、ウェスタンブロット、ELISA、蛍光活性化細胞選別(FACS)、ラジオイムノアッセイ法(RIA)、電気化学発光(ECL)、イムノラジオメトリックアッセイ法(IRMA)、免疫組織化学的検査(IHC)、およびペプチドスキャンによって測定できることが、理解される。
【0016】
4-1BB、OX40、PD-L1、および/またはGPC3に結合する本開示の多量体タンパク質との関連で本明細書において使用される場合、「に特異的な」、「特異的結合」、「特異的に結合する」、または「結合特異性」という用語は、その多量体タンパク質が、本明細書において説明されるように、4-1BB、OX40、PD-L1、および/またはGPC3に結合するか、それらと反応するか、またはそれらを対象とするが、別のタンパク質には本質的に結合しないことを意味する。「別のタンパク質」という用語は、4-1BB、OX40、PD-L1、およびGPC3でもなく、4-1BB、OX40、PD-L1、もしくはGPC3の近縁であるか、または相同であるタンパク質でもない、任意のタンパク質を含む。しかし、ヒト以外の種に由来する4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3、ならびに4-1BB、OX40、PD-L1、もしくはGPC3の断片および/またはバリアントは、「別のタンパク質」という用語に含まれない。「本質的に結合しない」という用語は、本開示の多量体タンパク質が、4-1BB、OX40、PD-L1、および/またはGPC3に対してよりも低い結合親和性で別のタンパク質に結合する、すなわち、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、特に好ましくは9%、8%、7%、6%、または5%未満の交差反応性を示すことを意味する。多量体タンパク質が本明細書において上記に定義したように特異的に反応するかどうかは、特に、本開示の多量体タンパクと4-1BB、OX40、PD-L1、および/またはGPC3との反応を、前記多量体タンパク質と他の(別の)タンパク質との反応と比較することにより、容易に試験することができる。
【0017】
本明細書において使用される場合、「リポカリン」という用語は、円柱状βプリーツシート超二次構造領域を有する重量約18~20kDaの単量体タンパク質を意味し、前記円柱状βプリーツシート超二次構造領域は、複数の(好ましくは4つの)ループによって2つ1組で片端が連結されている複数のβ鎖(好ましくは、A~Hと呼ばれる8本のβ鎖)を含み、それによって、リガンド結合ポケットを構成し、リガンド結合ポケットへの入口を定めている。好ましくは、本発明で使用されるリガンド結合ポケットを構成するループは、β鎖AおよびB、CおよびD、EおよびF、ならびにGおよびHの開放端を連結するループであり、ループAB、CD、EF、およびGHと呼ばれる。他の点では柔軟性のないリポカリン骨格において前記ループが多様であることにより、リポカリンファミリーメンバー間で種々の異なる結合様式が生じ、各メンバーが、サイズ、形状、および化学的特徴が異なる標的を収容できる(例えば、Skerra, 2000、Flower et al., 2000、Flower, 1996において概説されている)ということが、十分に確立されている。リポカリンファミリーのタンパク質は、広範なリガンドに結合するように自然に進化しており、それらは、全体的配列保存は著しく低レベルである(多くの場合、20%未満の配列同一性を有する)が、高度に保存された全体的フォールディングパターンは保持していることが理解されている。様々なリポカリンにおける位置間の対応もまた、当業者に周知である(例えば米国特許第7,250,297号を参照されたい)。本明細書において使用される「リポカリン」の定義に入るタンパク質には、涙液リポカリン(Tlc、Lcn1)、リポカリン-2(Lcn2)、または好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、アポリポタンパク質D(ApoD)、アポリポタンパク質M、α1酸性糖タンパク質1、α1酸性糖タンパク質2、α1ミクログロブリン、補体成分8γ、レチノール結合タンパク質(RBP)、精巣上体レチノイン酸結合タンパク質、グリコデリン、臭気物質結合タンパク質IIa、臭気物質結合タンパク質IIb、リポカリン-15(Lcn15)、およびプロスタグランジンDシンターゼを含むヒトリポカリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0018】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「涙液リポカリン」はヒト涙液リポカリン(hTlc)を意味し、さらに、成熟ヒト涙液リポカリンを意味する。「成熟」という用語は、タンパク質を特徴付けるために使用される場合、シグナルペプチドを本質的に含まないタンパク質を意味する。本開示の「成熟hTlc」とは、シグナルペプチドを含まない、成熟型のヒト涙液リポカリンを意味する。成熟hTlcは、アクセッション番号P31025としてSWISS-PROTデータバンクに寄託された配列の残基19~176によって表され、そのアミノ酸をSEQ ID NO: 1に示している。
【0019】
本明細書において使用される場合、「リポカリン-2」または「好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン」とは、ヒトリポカリン-2(hLcn2)またはヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)を意味し、さらに、成熟ヒトリポカリン-2または成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンも意味する。「成熟」という用語は、タンパク質を特徴付けるために使用される場合、シグナルペプチドを本質的に含まないタンパク質を意味する。本開示の「成熟hNGAL」とは、シグナルペプチドを含まない、成熟型のヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンを意味する。成熟hNGALは、アクセッション番号P80188としてSWISS-PROTデータバンクに寄託された配列の残基21~198によって表され、そのアミノ酸をSEQ ID NO: 2に示している。
【0020】
本明細書において使用される場合、「ネイティブ配列」とは、調製の仕方にかかわらず、自然界に存在する配列を有しているか、または野生型配列を有している、タンパク質またはポリペプチドを意味する。このようなネイティブ配列のタンパク質またはポリペプチドは、自然界から単離することができるか、または他の手段、例えば、組換え方法もしくは合成方法によって作製することができる。
【0021】
「ネイティブ配列リポカリン」とは、自然界に由来する対応するポリペプチドと同じアミノ酸配列を有しているリポカリンを意味する。したがって、ネイティブ配列リポカリンは、任意の生物、特に哺乳動物に由来する個々の天然(野生型)リポカリンのアミノ酸配列を有することができる。リポカリンとの関連で使用される場合、「ネイティブ配列」という用語は、具体的には、天然に存在する短縮型または分泌型のリポカリン、リポカリンの選択的にスプライシングされた型および天然に存在する対立遺伝子バリアントなどの天然に存在するバリアント型を包含する。「ネイティブ配列リポカリン」および「野生型リポカリン」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0022】
本明細書において使用される場合、「ムテイン」、「変異した」実体(タンパク質もしくは核酸)、または「変異体」とは、天然(野生型)のタンパク質または核酸と比べての、1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドの交換、欠失、または挿入を意味する。前記用語には、本明細書において説明されるムテインの断片も含まれる。本開示は、本明細書において説明するように、4つのループによって2つ1組で片端が連結されている8本のβ鎖を含み、それによって、リガンド結合ポケットを構成し、リガンド結合ポケットの入口を定めている、円柱状βプリーツシート超二次構造領域を有するリポカリンムテインであって、前記4つのループのうち少なくとも3つのそれぞれについての少なくとも1つのアミノ酸が、ネイティブ配列リポカリンと比べて変異している、リポカリンムテインを明示的に包含する。本開示のリポカリンムテインは、好ましくは、本明細書において説明するように4-1BB、OX40、またはGPC3に結合する機能を有している。
【0023】
本明細書において使用される場合、本開示のリポカリンムテインに関連する「断片」という用語は、N末端および/またはC末端が切り詰められている、すなわち、N末端および/またはC末端アミノ酸のうちの少なくとも1つを欠いている、完全長の成熟したhTlcもしくはhNGALまたはリポカリンムテインに由来するタンパク質またはポリペプチドを意味する。このような断片は、由来元である成熟したhTlcもしくはhNGALまたはリポカリンムテインの一次配列の少なくとも10個またはそれより多い、例えば、20個もしくは30個またはそれより多い連続したアミノ酸を含んでよく、通常、成熟したhTlcまたはhNGALを対象とするイムノアッセイ法において検出可能である。このような断片は、N末端および/またはC末端のアミノ酸のうちの最高2個、最高3個、最高4個、最高5個、最高10個、最高15個、最高20個、最高25個、または最高30個(間の数をすべて含む)を欠いている場合がある。例示的な例として、このような断片は、成熟hTlcの1個、2個、3個、もしくは4個のN末端アミノ酸(His-His-Leu-Leu)および/または1個もしくは2個のC末端アミノ酸(Ser-Asp)を欠いている場合がある。この断片は、由来元である成熟したhTlcもしくはhNGALまたはリポカリンムテインの機能的断片であることが好ましい、すなわち、由来元である成熟したhTlc/hNGALまたはリポカリンムテインの、好ましくは4-1BB、OX40、またはGPC3に対する結合特異性を保持していることが好ましいことが、理解される。例示的な例として、このような機能的断片は、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列に対応する、5~153位、5~150位、9~148位、12~140位、20~135位、または26~133位のアミノ酸を少なくとも含んでよい。別の例示的な例として、このような機能的断片は、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列に対応する、13~157位、15~150位、18~141位、20~134位、25~134位、または28~134位のアミノ酸を少なくとも含んでよい。
【0024】
本開示の多量体タンパク質についての対応する標的、例えば、4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3に関する「断片」とは、N末端および/もしくはC末端が切り詰められている、4-1BB、OX40、PD-L1、もしくはGPC3などの標的タンパク質、または4-1BB、OX40、PD-L1、もしくはGPC3などの標的タンパク質のタンパク質ドメインを意味する。本明細書において説明される4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3の断片は、本開示の多量体タンパク質によって認識および/または結合される、完全長の4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3の能力を保持している。例示的な例として、断片は、4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3の細胞外ドメインであってよい。例示的な例として、ヒト4-1BBのこのような細胞外ドメインは、UniProt Q07011の残基24~186またはSEQ ID NO: 4の残基1~163を含み得る。このような細胞外ドメインは、4-1BBの細胞外サブドメインのアミノ酸、例えば、ドメイン1(Uniprot Q07011の残基24~45)、ドメイン2(Uniprot Q07011の残基46~86)、ドメイン3(Uniprot Q07011の87~118)、およびドメイン4(Uniprot Q07011の残基119~159)の個々のアミノ酸配列または組み合わせたアミノ酸配列を含み得る。カニクイザル4-1BBの細胞外ドメインは、SEQ ID NO: 6の残基1~163を含み得る。
【0025】
本明細書において使用される場合「バリアント」という用語は、例えば、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列に対する置換、欠失、挿入、および/または化学修飾による変異を含む、タンパク質またはポリペプチドの派生物に関する。いくつかの態様において、このような変異および/または化学修飾によって、タンパク質またはペプチドの機能性が低下することはない。このような置換は、保存的であることができる、すなわち、あるアミノ酸残基が、化学的に類似しているアミノ酸残基で置換される。保存的置換の例は、以下のグループのメンバー間の置換である:1)アラニン、セリン、トレオニン、およびバリン;2)アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、およびアスパラギン、およびヒスチジン;3)アルギニン、リジン、グルタミン、アスパラギン、およびヒスチジン;4)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、トレオニン、およびプロリン;ならびに5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン。このようなバリアントには、1つまたは複数のアミノ酸が、それらの各々のD立体異性体によって、または天然に存在する20種類のアミノ酸以外のアミノ酸、例えば、オルニチン、ヒドロキシプロリン、シトルリン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、ノルバリンによって置換された、タンパク質またはポリペプチドが含まれる。このようなバリアントには、例えば、N末端および/またはC末端において、1つまたは複数のアミノ酸残基が付加されているか、または欠失している、タンパク質またはポリペプチドも含まれる。通常、バリアントは、ネイティブ配列のタンパク質またはポリペプチドに対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有している。好ましくは、バリアントは、由来元であるタンパク質またはポリペプチドの生物活性を保持しており、例えば同じ標的に結合する。
【0026】
本開示の多量体タンパク質についての対応するタンパク質標的、例えば、4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3に関して本明細書において使用される場合、「バリアント」という用語は、本明細書において説明されるように、UniProt Q07011として寄託されている4-1BB、UniProt P43489として寄託されているOX40、UniProt Q9NZQ7として寄託されているPD-L1、またはUniProt P51654として寄託されているGPC3などのタンパク質標的のネイティブ配列と比較して、1つまたは複数の、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、22個、24個、26個、28個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、またはそれより多い、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を有する、タンパク質標的、例えば、それぞれ、4-1BB、OX40、PD-L1、もしくはGPC3、またはそれらの断片に関する。4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3のバリアントは、それぞれ、野生型の4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のアミノ酸配列同一性をそれぞれ有することが好ましい。本明細書において説明される4-1BB、OX40、PD-L1、またはGPC3のバリアントは、本明細書において開示される4-1BB、OX40、PD-L1、および/またはGPC3に特異的な多量体タンパク質に結合する能力を保持している。
【0027】
リポカリンムテインに関して本明細書において使用される場合、「バリアント」という用語は、その配列が、置換、欠失、および挿入、ならびに/または化学修飾を含む変異を有する、本開示のリポカリンムテインまたはその断片に関する。本明細書において説明されるリポカリンムテインのバリアントは、由来元であるリポカリンムテインの生物活性、例えば、4-1BB、OX40、またはGPC3への結合を保持している。通常、リポカリンムテインバリアントは、由来元であるリポカリンムテインに対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0028】
本明細書において使用される場合、「変異誘発」という用語は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列への変異の導入を意味する。変異は、タンパク質配列またはポリペプチド配列の所与の位置に天然に存在するアミノ酸を変更、例えば、少なくとも1つのアミノ酸によって置換することが可能であるような実験条件下で、好ましくは導入される。「変異誘発」という用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸の欠失または挿入による、配列セグメントの長さの(さらなる)改変も含む。したがって、例えば、選択された配列位置の1つのアミノ酸が一続きの3つのアミノ酸によって置換されて、ネイティブなタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列の各セグメントの長さと比べてアミノ酸残基が2つ追加されることは、本開示の範囲内である。このような挿入または欠失は、本開示において変異誘発に供され得る配列セグメントのいずれかに、互いに無関係に導入されてよい。本開示の1つの例示的な態様において、挿入は、ネイティブ配列リポカリンのループABに対応するアミノ酸配列セグメント中に導入され得る(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる国際特許公報WO 2005/019256を参照されたい)。
【0029】
本明細書において使用される場合、「ランダム変異誘発」という用語は、ある特定の配列位置に、前もって決定された変異(アミノ酸の変化)は1つも存在しないが、変異誘発の間に少なくとも2つのアミノ酸が既定の配列位置にある程度の確率で組み入れられ得ることを意味する。
【0030】
本明細書において使用される場合、「配列同一性」または「同一性」という用語は、類似性または関係の程度を示す、配列の性質を意味する。「配列同一性」または「同一性」という用語は、本開示で使用される場合、―本開示のタンパク質またはポリペプチドの配列を問題の配列と(相同性)アライメントした後の―、これら2つの配列の長い方の残基数を基準とした、ペアをなす同一残基のパーセンテージを意味する。配列同一性は、同一アミノ酸残基の数を残基の総数で割り、その結果に100を掛けることによって計算される。
【0031】
本明細書において使用される場合、「配列相同性」または「相同性」という用語は、その通常の意味を持ち、相同なアミノ酸には、本開示のタンパク質またはポリペプチド(例えば、本開示の任意の抗体、抗体断片もしくは抗体派生物、多量体タンパク質、またはリポカリンムテイン)の直鎖アミノ酸配列における等価な位置にある、同一アミノ酸ならびに保存的置換であるとみなされるアミノ酸が含まれる。
【0032】
当業者は、標準的パラメーターを用いて配列相同性または配列同一性を測定するために利用可能なコンピュータープログラム、例えば、BLAST(Altschul et al., 1997)、BLAST2(Altschul et al., 1990)、およびSmith-Waterman(Smith and Waterman, 1981)を認識すると考えられる。配列相同性または配列同一性のパーセンテージは、例えば、BLASTPプログラム、バージョン2.2.5(November 16, 2002; Altschul et al., 1997)を用いて、本明細書において測定することができる。この態様において、相同性のパーセンテージは、好ましくは、ペアワイズ比較において参照として野生型タンパク質骨格を用いる、プロペプチド配列を含むタンパク質配列全体またはポリペプチド配列全体のアライメントに基づいている(マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:11.1;カットオフ値10-3に設定)。これは、BLASTPプログラム出力で結果として示される「陽性」(相同なアミノ酸)の数を、アライメントのためにプログラムによって選択したアミノ酸の総数で割ったパーセンテージとして算出される。
【0033】
具体的には、リポカリンムテインのアミノ酸配列が、参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列中の特定の位置に関して、参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列と異なるかどうかを判定するために、当業者は、当技術分野において周知の手段および方法、例えば、手作業によるアライメントあるいはBLAST 2.0(Basic Local Alignment Search Toolを意味する)もしくはClustalWまたは配列アライメントを作成するのに適している他の任意の適切なプログラムなどのコンピュータープログラムを使用することによるアライメントを用いることができる。したがって、参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列は「対象配列」または「参照配列」の役割を果たすことができ、一方、リポカリンムテインのアミノ酸配列は「クエリー配列」の役割を果たす。「野生型配列」、「参照配列」、および「対象配列」という用語は、本明細書において同義的に使用される。リポカリンの好ましい野生型配列は、SEQ ID NO: 1に示しているhTLcまたはSEQ ID NO: 2に示しているhNGALの配列である。
【0034】
「ギャップ」とは、アミノ酸の付加または欠失の結果である、アライメント中の空白である。したがって、全く同じ配列の2つのコピーは100%の同一性を有するが、それほど高度に保存されておらず欠失、付加、または置換を有する配列は、それより程度の低い配列同一性を有し得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、「位置」という用語は、本明細書において開示されるアミノ酸配列内のアミノ酸の位置または本明細書において開示される核酸配列内のヌクレオチドの位置のいずれかを意味する。「対応する(correspond)」または「対応する(corresponding)」という用語が1種類または複数種類のリポカリンムテインのアミノ酸配列位置との関連で本明細書において使用される場合、対応する位置は、先行するヌクレオチドまたはアミノ酸の数に基づいて決められるばかりではないことを理解すべきである。したがって、本開示による所与のアミノ酸の絶対位置は、(変異体または野生型)リポカリン中の別の場所でのアミノ酸の欠失または付加が原因で、対応する位置から変わり得る。同様に、本開示による所与のヌクレオチドの絶対位置は、ムテインまたは野生型リポカリンの、プロモーターおよび/もしくは他の任意の調節配列を含む5’-非翻訳領域(UTR)または遺伝子領域(エキソンおよびイントロンを含む)中の別の場所での欠失または付加的ヌクレオチドが原因で、対応する位置から変わり得る。
【0036】
本開示による「対応する位置」は、本開示に従うペアワイズ配列アラインメントまたは多重配列アラインメントにおいてそれが対応する配列位置にアラインする配列位置であってよい。本開示による「対応する位置」に関して、ヌクレオチドまたはアミノ酸の絶対位置は、隣接ヌクレオチドまたは隣接アミノ酸とは異なり得るが、交換、欠失、または付加された可能性がある前記隣接ヌクレオチドまたは前記隣接アミノ酸は、1つまたは複数の同じ「対応する位置」に含まれ得ることを、好ましくは理解すべきである。
【0037】
さらに、本開示による参照配列に基づく、リポカリンムテイン中の対応する位置に関して、リポカリンムテインのヌクレオチドまたはアミノ酸の位置は、絶対位置番号が異なり得るとしても、参照リポカリン(野生型リポカリン)または別のリポカリンムテインの別の場所の位置に構造的に対応できることを、好ましくは理解すべきである。このことは、リポカリン間で高度に保存されている全体的フォールディングパターンの見地から、当業者によって理解される。
【0038】
本明細書において同義的に使用されるように、「コンジュゲートする」、「コンジュゲーション」、「融合する」、「融合」、または「連結された」という用語は、遺伝子融合、化学的コンジュゲーション、リンカーまたは架橋剤を介した結合、および非共有結合的結合を非限定的に含む手段により、任意の形態の共有結合的または非共有結合的連結を介して2つまたはそれより多い部分を互いに結び付けることを意味する。
【0039】
「多量体タンパク質」または「多量体」という用語は、本明細書において使用される場合、2つまたはそれより多い結合した「モノマーポリペプチド」からなるタンパク質複合体を意味する。多量体タンパク質中のモノマーポリペプチドは、非共有結合によって連結されている。いくつかの態様において、本明細書において説明される多量体タンパク質は、2個、3個、4個、5個、またはそれより多いモノマーポリペプチドを含む。いくつかの態様において、多量体タンパク質は、多量体タンパク質に含まれるモノマーポリペプチドが同一である、ホモ多量体であってよい。いくつかの態様において、多量体タンパク質は、多量体タンパク質に含まれるモノマーポリペプチドが互いに異なる、ヘテロ多量体であってよい。
【0040】
いくつかの態様において、本明細書において説明される多量体タンパク質は、2つまたはそれより多いモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、4-1BBターゲティング部分およびオリゴマー形成部分、ならびに任意で1つまたは複数の付加的なターゲティング部分を含む。いくつかの態様において、本明細書において説明される多量体タンパク質は、3つまたはそれより多いモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、4-1BBターゲティング部分およびオリゴマー形成部分、ならびに任意で1つまたは複数の付加的なターゲティング部分を含む。いくつかの態様において、本明細書において説明される多量体タンパク質は、4つまたはそれより多いモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、4-1BBターゲティング部分およびオリゴマー形成部分、ならびに任意で1つまたは複数の付加的なターゲティング部分を含む。モノマーポリペプチド内で、これらの部分は、共有結合または非共有結合によって連結されていてよい。好ましくは、モノマーポリペプチドは、2つまたはそれより多い部分間の翻訳融合ポリペプチドである。翻訳融合ポリペプチドは、1つの部分のコード配列を、別の部分のコード配列を有するリーディングフレームにおいて遺伝的に操作することによって生成することができる。両方の部分の間に、リンカーをコードするヌクレオチド配列が割り込んでいてもよい。しかし、本開示のモノマーポリペプチドに含まれるこれらの部分は、化学的コンジュゲーションによって連結されていてもよい。典型的には、モノマーポリペプチドを形成する部分は、次のように互いに連結されている:1つの部分のC末端が別の部分のN末端に、または1つの部分のC末端が別の部分のC末端に、または1つの部分のN末端が別の部分のN末端に、または1つの部分のN末端が別の部分のC末端に。モノマーポリペプチドに含まれるこれらの部分は、任意の順序で連結することができ、前記構成部分のいずれかを複数含んでもよい。
【0041】
本明細書において開示される「オリゴマー形成部分」または「多量体形成部分」は、モノマーポリペプチドが集合して多量体タンパク質を構築することを促進する。いくつかの態様において、オリゴマー形成部分は、モノマーポリペプチドの三量体形成、四量体形成、またはより高次のオリゴマー状態になることを促進する。いくつかの好ましい態様において、オリゴマー形成部分は、モノマーポリペプチドの三量体形成を促進する。
【0042】
本明細書において使用される場合、本明細書において開示されるモノマーポリペプチドの「部分」という用語は、安定な構造をそれ自体で形成し、独特な機能を定め得る、単一のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを意味する。いくつかの態様において、本開示の好ましい部分は、リポカリンムテインである。いくつかの態様において、本開示の好ましい部分は、完全長抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物、例えば、単鎖可変断片(scFv)である。いくつかの態様において、本開示の好ましい部分は、オリゴマー形成部分である。
【0043】
本開示のモノマーポリペプチドに含まれてよい「リンカー」は、本明細書において説明するモノマーポリペプチドの2つまたはそれより多い部分を互いに結び付ける。その結合は、共有結合的または非共有結合的であってよい。好ましい共有結合は、アミノ酸間のペプチド結合などのペプチド結合によるものである。好ましいリンカーは、ペプチドリンカーである。したがって、好ましい態様において、リンカーは、1つまたは複数のアミノ酸、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれより多いアミノ酸を含む。グリシン-セリン(GS)リンカー、グリコシル化GSリンカー、プロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS)リンカー、ヘリックス形成リンカー、および曲がらないリンカーを含む好ましいペプチドリンカーが、本明細書において説明される。例示的なペプチドリンカーは、SEQ ID NO: 12~28に示されている。他の好ましいリンカーには、化学的リンカーが含まれる。
【0044】
「試料」は、任意の対象から採取された生物試料と定義される。生物試料には、血液、血清、尿、大便、精液、または腫瘍組織を含む組織が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0045】
「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。「哺乳動物」という用語は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味するために本明細書において使用され、ごく少数の例示的な例を挙げれば、ヒト、家畜および農場動物、ならびに動物園、競技用、またはペット用の動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ラット、ブタ、類人猿、例えばカニクイザルが、非限定的に含まれる。好ましくは、本明細書において使用される「哺乳動物」はヒトである。
【0046】
「有効量」とは、有益または望ましい結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の個々の投与または用量で投与することができる。
【0047】
本明細書において使用される場合、「抗体」には、完全長抗体または任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはその派生物(例えば、単鎖の抗体派生物)が含まれる。完全長抗体とは、ジスルフィド結合によって相互に連結されている少なくとも2本の重鎖(HC)および2本の軽鎖(LC)を含む糖タンパク質を意味する。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VHまたはHCVR)および重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3種類のドメイン、すなわちCH1、CH2、およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VLまたはLCVR)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1種類のドメイン、すなわちCLから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に保存度が高い領域が間に割り込んでいる、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原(例えばGPC3またはPD-L1)と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への、免疫グロブリンの結合を任意で媒介し得る。
【0048】
本明細書において使用される場合、抗体の「抗原結合断片」とは、ある抗原(例えばGPC3またはPD-L1)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つまたは複数の断片を意味する。完全長抗体の断片は、抗体の抗原結合機能を果たせることが示されている。抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例には、(i)VHドメイン、VLドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含むF(ab')2断片;(iii)VHドメイン、VLドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインならびにCH1ドメインとCH2ドメインの間の領域からなるFab′断片;(iv)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(v)抗体の1つのアームのVHドメインおよびVLドメインからなる単鎖Fv(scFv)断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., 1989);ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、または合成リンカーによって結合されていてもよい、2つもしくはそれより多い単離されたCDRの組合せ;(viii)同一のポリペプチド鎖中で短いリンカーを用いて連結されたVHおよびVLを含む「ダイアボディ」(例えば、特許文献EP 404,097;WO 93/11161;およびHolliger et al., 1993を参照されたい);(ix)VHまたはVLのみを含み、場合によっては、2つまたはそれより多いVH領域が共有結合的に連結されている、「ドメイン抗体断片」が含まれる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「T細胞活性化を増大させるターゲティング」部分、例えばリポカリンムテインは、T細胞、抗原提示細胞、および/または腫瘍細胞上の受容体またはそのリガンドをターゲティングする部分である。さらに、ターゲティング部分は、T細胞活性化を刺激、特に共刺激することができるか、またはT細胞阻害に拮抗することができる。T細胞活性化を増大させるこのようなターゲティング部分は、T細胞上の共刺激受容体に対するアゴニストであることができ、本明細書において、「T細胞共刺激受容体ターゲティング」部分とも呼ばれる。例示的なT細胞共刺激受容体は4-1BBであり、別の例はOX40である。あるいは、T細胞活性化を増大させるこのようなターゲティング部分は、T細胞上の抑制性受容体に対するアンタゴニストであることができる。拮抗作用は、抑制性受容体またはそのリガンドへの結合によって生じ得る。T細胞上の共刺激受容体およびT細胞上の抑制性受容体ならびにそれらのリガンドは当技術分野において周知であり、例えば、Bakdash G dt al. (2013) Front. Immunol. 4:53およびCatakovic et al. Cell Communication and Signaling (2017) 15:1にその概説がある。T細胞活性化を増大するターゲティングリポカリンムテインは、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、WO 2006/056464、WO 2012/072806、WO 2016/177762、WO 2018/087108、WO 2017/009456、およびWO 2018/134274において開示されている。
【0050】
本明細書において使用される場合、「腫瘍関連抗原(TAA)」という用語は、腫瘍細胞によって発現されるタンパク質抗原またはポリペプチド抗原を意味する。例えば、TAAは、腫瘍細胞の1種類または複数種類の表面タンパク質もしくは表面ポリペプチド、核タンパク質もしくは糖タンパク質、またはその断片であってよい。あるいは、TAAは、腫瘍間質に関連するタンパク質抗原またはポリペプチド抗原を意味してもよい。TAAターゲティングリポカリンムテインは、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、WO 2009/095447、WO 2012/065978、WO 2013/174783、WO 2016/184875、WO 2012/136685、WO 2005/019256、およびWO 2016/120307において開示されている。本明細書において開示される具体的なTAAは、GPC3およびPD-L1である。
【0051】
本明細書において使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、細胞障害性細胞、例えば、T細胞、NK細胞、およびマクロファージ、好ましくはT細胞の受容体に抗原特異性を移すことが典型的である、操作された受容体を意味する。CARは複数の部分からなる人工融合物である。これは、典型的には、少なくとも1つの抗原特異的なターゲティング領域(外部ドメイン)、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の(共)刺激免疫受容体のシグナル伝達ドメインを典型的には含む細胞内シグナル伝達ドメイン(内部ドメイン)を含む。外部ドメインの例は、scFv断片またはCD19リガンドである。膜貫通ドメインの例は、CD28膜貫通ドメインである。内部ドメインの例は、CD3-ζである。例えば、CTL019の場合、認識ドメインは、CD19に特異的な抗体単鎖断片(scFv)であり、リンカー領域および膜貫通領域は膜タンパク質CD8から接ぎ合わせられ、細胞内シグナル伝達部分は、タンデムに融合された4-1BBおよびCD3ζの完全な細胞内ドメインからなる。この構築物によって形質導入されたT細胞がCD19陽性の標的細胞に出会うと、キメラ抗原受容体がクラスター形成され、その結果、CD3ζおよび共刺激受容体4-1BBの下流のシグナル伝達経路が活性化され、次に、T細胞の増殖、サイトカイン分泌、生存、および殺傷能力の活性化をもたらす。この設計と共に、CTL019は、「第2世代」CARの例であり、2つの免疫刺激性ドメインの存在によって確認される。対照的に、「第1世代」CARは、1つの免疫刺激性ドメイン-通常はCD3ζのもの-しか含まず、一方、「第3世代」CARでは、全部で3つの細胞内免疫刺激性ドメイン、例えば、CD3ζ、CD28、および4-1BBのものがタンデムに融合されている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本出願において説明する代表的なモノマーポリペプチドおよびそれが集合した多量体タンパク質の設計についての概要を提供する。1つまたは複数の本開示の4-1BBターゲティング部分(例えば、SEQ ID NO: 56~71)を、SEQ ID NO: 12~28のいずれか1つに示されるリンカーなどのリンカーを介して、本開示のオリゴマー形成部分(例えば、SEQ ID NO: 35~37)のN末端、C末端、またはN末端とC末端の両方に融合することによって、代表的なモノマーポリペプチドを作製した。作製した様々な形態を図1Aおよび図1Bに示しており、これらには、4-1BBターゲティング部分がOX40ターゲティング部分で置き換えられている二重特異性形態も含まれる(図1B)。本開示の4-1BBターゲティング部分(例えば、SEQ ID NO: 56~71)および(1)本開示のGPC3ターゲティング部分(例えば、SEQ ID NO: 74~98)、(2)本開示のOX40ターゲティング部分(例えば、SEQ ID NO: 174~202)、または(3)本開示のPD-L1ターゲティング部分(例えば、SEQ ID NO: 172)を、SEQ ID NO: 12~28のいずれか1つに示されるリンカーなどのリンカーを介して、オリゴマー形成部分(例えば、SEQ ID NO: 35~37)のN末端、C末端、またはN末端とC末端の両方に融合することによって、その他の例示的な二重特異性モノマーポリペプチドを作製した。作製した様々な形態を図1Cに示している。
図2】ヒト4-1BB(図2A)またはヒトGPC3(図2B)に対する例示的な多量体タンパク質の結合を、実施例3で説明するように測定した、ELISA実験の結果を示す。C末端Hisタグ付きの4-1BBまたはGPC3でマイクロタイタープレートをコーティングし、試験される作用物質を、最高濃度の100nMから始めて段階的に変化させた濃度で添加した。試験中に結合した作用物質を、抗NGAL-HRPを介して検出した。このデータに、自由パラメーターとしてのEC50値および最大シグナルならびに1に固定された傾きを用いる1:1結合モデルを当てはめた。得られたEC50値を表3に記載している。
図3】代表的な多量体タンパク質がGPC3および4-1BBに同時に結合する能力を、実施例4で説明するように測定した、例示的なELISA実験の結果を示す。組換えhuGPC3-Hisでマイクロタイタープレートをコーティングし、その後、多量体タンパク質を段階的に変化させた濃度で添加した。続いて、一定濃度のビオチン標識hu4-1BBを添加し、ExtrAvidin-ペルオキシダーゼを介してこれを検出した。このデータに、自由パラメーターとしてのEC50値および最大シグナルならびに1に固定された傾きを用いる1:1結合モデルを当てはめた。得られたEC50値を表4に記載している。
図4】実施例5に説明するような、ヒト4-1BBを発現するCHO細胞(図4A)、カニクイザル4-1BBを発現するCHO細胞(図4B)、およびヒトGPC3を発現するHepG2細胞(図4C)を用いるフローサイトメトリーによる、例示的な多量体タンパク質の標的結合の評価結果。モックトランスフェクションした細胞を用いた場合、結合は観察されなかった(データ不掲載)。蛍光強度の幾何平均を用いてEC50値を算出した。これらを表5に記載している。
図5】T細胞活性化を例示的な多量体タンパク質が共刺激する潜在能力を実証する。モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞を、抗CD3抗体でコーティングしたプレートに播種した。Pan T細胞、様々な濃度の試験分子、および抗CD28抗体を添加し、3日間インキュベーションした。上清中の分泌されたIL-2のレベルを、実施例6で説明するように、電気化学発光に基づくアッセイ法によって測定した。三価の多量体タンパク質(SEQ ID NO: 38 およびSEQ ID NO: 43)の場合、IL-2分泌は増加しなかった。三価よりも大きな結合価を有する多量体タンパク質(SEQ ID NO: 46~48およびSEQ ID NO: 50~53)は、hIgG4アイソタイプ対照と比べて、IL-2分泌の明らかな増加をもたらし、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)と同等の能力を有していた。さらに、三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質は、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)より、さらに強力であった。
図6】代表的な多量体タンパク質がT細胞活性化を共刺激する能力を示す。GPC3を発現する腫瘍細胞HepG2を、抗ヒトCD3でコーティングしたプレートに播種した。Pan T細胞、様々な濃度の試験分子、および抗CD28を添加し、3日間インキュベーションした。実施例7で説明するように、分泌されたIL-2のレベルを測定した。二重特異性多量体タンパク質SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55、ならびに三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質は、参照4-1BB抗体であるSEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73と比べて、IL-2分泌の大きな増加をもたらした。参照GPC3抗体SEQ ID NO: 108およびSEQ ID NO: 109でも、GPC3に特異的なリポカリンムテインSEQ ID NO: 90でも、多量体タンパク質に含まれる4-1BBに特異的なリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 64)でも、バックグラウンドを超えるIL-2分泌増加は観察されなかった。
図7】実施例8で説明するように4-1BBバイオアッセイ法を用いて評価した、代表的な多量体タンパク質が4-1BBの下流のシグナル伝達経路を活性化し、かつT細胞を共刺激する潜在能力を示す。NFκB-luc2/CD137ジャーカット細胞を、様々な濃度の多量体タンパク質または対照と共に、GPC3を発現する腫瘍細胞HepG2の非存在下および存在下で同時培養した。4時間後、ルシフェラーゼアッセイ法の試薬を添加し、発光シグナルを測定した。4パラメーターロジスティック曲線解析を実施してEC50値を算出した(表6を参照されたい)。三価の多量体タンパク質SEQ ID NO: 38~42およびSEQ ID NO: 44は、GPC3の非存在下および存在下で、4-1BBを介したT細胞共刺激を誘導しない。六価の多量体タンパク質SEQ ID NO: 48~53は、GPC3の非存在下および存在下で、同程度の活性化を示す。二重特異性多量体タンパク質SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55は、GPC3に依存的な、4-1BBを介したT細胞共刺激を誘導する。
図8】単離されたCD8+ T細胞の活性化(図8A)および単離されたCD4+ T細胞の活性化(図8B)を例示的な多量体タンパク質が共刺激する潜在能力を実証する。モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞を、抗CD3抗体でコーティングしたプレートに播種した。CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞および様々な濃度の試験分子を添加し、2日間インキュベーションした。上清中の分泌されたIL-2のレベルを、実施例6で説明するように、電気化学発光に基づくアッセイ法によって測定した。多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)または参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)は、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)と比べて、CD8+ T細胞によるIL-2分泌の明らかな増加をもたらした。多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)は、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)と比べて、CD4+ T細胞によるIL-2分泌の明らかな増加をもたらし、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)と同等の能力を有した。
図9】実施例10に説明するような、ヒト4-1BBを発現するCHO細胞(図9A)、ヒトOX40を発現するCHO細胞(図9B)、およびヒトPD-L1を発現するCHO細胞(図9C)を用いるフローサイトメトリーによる、例示的な多量体タンパク質の標的結合の評価結果を示す。モックトランスフェクションした細胞を用いた場合、結合は観察されなかった(データ不掲載)。蛍光強度の幾何平均を用いてEC50値を算出した。これらを表7に記載している。
図10】T細胞活性化を例示的な多量体タンパク質が共刺激する潜在能力を示す。Flp-In-CHO::huPD-L1細胞を、抗CD3抗体でコーティングしたプレートに播種した。Pan T細胞および様々な濃度の試験分子を添加し、3日間インキュベーションした。上清中の分泌されたIL-2のレベルを、実施例11で説明するように、電気化学発光に基づくアッセイ法によって測定した。試験した多量体タンパク質はどれも、hIgG4アイソタイプ対照と比べて、IL-2分泌の明らかな増加をもたらした。
図11】単離されたCD4+ T細胞の活性化を例示的な多量体タンパク質が共刺激する潜在能力を示す。Flp-In-CHO::huPD-L1細胞を、抗CD3抗体でコーティングしたプレートに播種した。CD4+ T細胞および様々な濃度の試験分子を添加し、3日間インキュベーションした。上清中の分泌されたIL-2のレベルを、実施例12で説明するように、電気化学発光に基づくアッセイ法によって測定した。試験した多量体タンパク質はどれも、hIgG4アイソタイプ対照と比べて、CD4+ T細胞によるIL-2分泌の明らかな増加をもたらした。
図12】単離されたCD8+ T細胞の活性化を例示的な多量体タンパク質が共刺激する潜在能力を示す。Flp-In-CHO::huPD-L1細胞を、抗CD3抗体でコーティングしたプレートに播種した。CD8+ T細胞および様々な濃度の試験分子を添加し、3日間インキュベーションした。上清中の分泌されたIL-2のレベルを、実施例13で説明するように、電気化学発光に基づくアッセイ法によって測定した。試験した多量体タンパク質はどれも、hIgG4アイソタイプ対照と比べて、CD8+ T細胞によるIL-2分泌の明らかな増加をもたらした。
図13】実施例14で説明するように4-1BBバイオアッセイ法を用いて評価した、代表的な六価の三量体タンパク質が4-1BBの下流のシグナル伝達経路を活性化し、かつT細胞を共刺激する潜在能力を示す。NFκB-luc2/CD137ジャーカット細胞を、様々な濃度の多量体タンパク質または対照と共に、Flp-In-CHO::huOX40細胞の非存在下および存在下で同時培養した。4時間後、ルシフェラーゼアッセイ法の試薬を添加し、発光シグナルを測定した。試験した多量体タンパク質はどれも、Flp-In-CHO::huOX40細胞の存在下では、アイソタイプ対照と比べて、4-1BBを介したT細胞共刺激の大きな増大をもたらしたが、それらの非存在ではもたらさなかった。
図14】実施例15で説明するようにOX40バイオアッセイ法を用いて評価した、代表的な六価の三量体タンパク質がOX40の下流のシグナル伝達経路を活性化し、かつT細胞を共刺激する潜在能力を示す。NFκB-luc2/OX40ジャーカット細胞を、様々な濃度の多量体タンパク質または対照と共に、Flp-In-CHO::hu4-1BB細胞の非存在下および存在下で同時培養した。5時間後、ルシフェラーゼアッセイ法の試薬を添加し、発光シグナルを測定した。試験した多量体タンパク質はどれも、Flp-In-CHO::hu4-1BB細胞の存在下では、アイソタイプ対照と比べて、OX40を介したT細胞共刺激の大きな増大をもたらしたが、それらの非存在ではもたらさなかった。
【発明を実施するための形態】
【0053】
IV 本開示の詳細な説明
本明細書において説明するように、本開示は、三価の可溶性4-1BBLは効率的な4-1BB活性化をもたらさない場合があり、効率的な4-1BB活性化には、抗原提示細胞の細胞表面発現によって媒介される、より高次元の4-1BBクラスター形成が必要である、という認識を含む(Wyzgol et al., 2009、Rabu et al., 2005)。同様に、4-1BBをターゲティングする二価の分子、例えば抗体も、単独では、4-1BBクラスター形成によって媒介される効率的な活性化を誘導するのに十分ではない場合がある。したがって、T細胞およびNK細胞上での高レベルの4-1BBクラスター形成を誘導する治療物質に対するニーズがあり、まだ満たされていない。したがって、本出願は、とりわけ、Fc領域を含まない新規な多量体タンパク質であって、FcγRに依存しない様式で4-1BBクラスター形成を可能にするため、かつ細胞表面での高レベルの4-1BBクラスター形成によって4-1BB活性化を誘導するための、多量体タンパク質を提供する。本出願はまた、細胞表面で4-1BBをクラスター形成させ、かつ多量体タンパク質を介して4-1BB活性化および免疫応答を刺激するための、新規なアプローチも提供する。
【0054】
さらに、4-1BB発現細胞と他の細胞、例えば、腫瘍細胞との架橋を必要としない、4-1BBをターゲティングする治療物質が、望ましい場合がある。この点に関して、本開示の多量体タンパク質は、付加的な標的タンパク質の発現に依存せずに、4-1BBを活性化し、かつT細胞を共刺激することができる。
【0055】
さらに、本開示の多量体タンパク質は、抗体よりサイズが小さく、短期間作用する4-1BBアゴニストとして働いて、末梢毒性のリスクおよび長期的4-1BBアゴニズムに伴う制約を軽減することができる。したがって、提供される多量体タンパク質は、モノクローナル抗体などの現在使用されている4-1BBアゴニストが、説得力のあるリスク-ベネフィットプロファイルを示すことができていない、悪性腫瘍を含む疾患領域に対して治療物質を提供するというまだ満たされていないニーズを満たすことができる。
【0056】
A 例示的な本開示の多量体タンパク質
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、少なくとも2つのモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、(1)第1の4-1BBターゲティング部分(T1)、例えば、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテイン、および(2)オリゴマー形成部分(O)、例えば、SEQ ID NO: 35~37のいずれか1つに示されるオリゴマー形成部分を含む。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、少なくとも3つのモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、(1)第1の4-1BBターゲティング部分(T1)、例えば、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテイン、および(2)オリゴマー形成部分(O)、例えば、SEQ ID NO: 35~37のいずれか1つに示されるオリゴマー形成部分を含む。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、少なくとも4つのモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、(1)第1の4-1BBターゲティング部分(T1)、例えば、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテイン、および(2)オリゴマー形成部分(O)、例えば、SEQ ID NO: 35~37のいずれか1つに示されるオリゴマー形成部分を含む。いくつかの態様において、提供される多量体ポリペプチドは、このようなモノマーポリペプチドを3つ含む。いくつかの態様において、本開示の提供される多量体ポリペプチドは、このようなモノマーポリペプチドを4つ含む。
【0057】
いくつかの態様において、提供されるモノマーポリペプチドの第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、そのN末端および/またはそのC末端において、オリゴマー形成部分(O)に融合される。いくつかの態様において、提供されるモノマーポリペプチドの第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、リンカー(L)を介してオリゴマー形成部分(O)に融合される(図1A)。本明細書において説明されるリンカーは、例えば、SEQ ID NO: 12~28のいずれか1つに示されるようなペプチドリンカーであってよい。
【0058】
いくつかの態様において、提供されるモノマーポリペプチドの第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、そのN末端および/またはそのC末端において、オリゴマー形成部分(O)に連結される。いくつかの態様において、提供されるモノマーポリペプチドの第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、リンカー(L)を介してオリゴマー形成部分(O)に連結される(図1A)。本明細書において説明されるリンカーは、例えば、SEQ ID NO: 12~28のいずれか1つに示されるようなペプチドリンカーであってよい。
【0059】
いくつかの態様において、提供されるモノマーポリペプチドの第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、そのC末端において、リンカー(L)、好ましくはペプチドリンカーを介して、オリゴマー形成部分(O)のN末端に連結される(図1A)。
【0060】
いくつかの態様において、本開示のモノマーポリペプチドは、少なくとも1つの付加的なターゲティング部分(T2)を含む。いくつかの態様において、モノマーポリペプチドは、第2の4-1BBターゲティング部分である付加的なターゲティング部分(T2)を含む。いくつかの態様において、モノマーポリペプチドは、別の標的(すなわち、4-1BB以外)をターゲティングする部分、例えば、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分、例えば、GPC3ターゲティング部分もしくはPD-L1ターゲティング部分、またはT細胞活性化を増大させるターゲティング部分(4-1BBターゲティング部分以外)、例えばOX40ターゲティング部分である、付加的な部分(T2)を含む。通常、このような付加的なターゲティング部分(T2)は、任意の標的特異的結合分子であることができる。好ましくは、このような付加的なターゲティング部分(T2)は、リポカリンムテイン、抗体、または抗体の抗原結合断片もしくは派生物、例えば単鎖可変断片(scFv)である。
【0061】
いくつかの態様において、本開示のモノマーポリペプチドは、第1の4-1BBターゲティング部分(T1)とタンデムに配置された付加的なターゲティング部分(T2)を含む。付加的なターゲティング部分(T2)および第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、ペプチドリンカーなどのリンカーを介して連結されてよい。いくつかの特定の態様において、モノマーポリペプチドは、第2の4-1BBターゲティング部分である付加的なターゲティング部分(T2)を含む。第2の4-1BBターゲティング部分である付加的なターゲティング部分(T2)は、第1の4-1BBターゲティング部分(T1)とタンデムに配置されてよい。これら2つの4-1BBターゲティング部分(T1およびT2)は、ペプチドリンカー(L)を介して、オリゴマー形成部分(O)のN末端またはC末端に連結されてよい(図1B)。いくつかの態様において、付加的なターゲティング部分(T2)が第2の4-1BBターゲティング部分である場合、前記第2の4-1BBターゲティング部分はリポカリンムテインであってよい。付加的なターゲティング部分(T2)は、第1の4-1BBターゲティング部分と同じリポカリンムテインであってよい。付加的なターゲティング部分(T2)および第1の4-1BBターゲティング部分は、本開示の4-1BB特異的リポカリンムテインより個別に選択されてよい。いくつかの態様において、付加的なターゲティング部分(T2)は、別の標的(すなわち、4-1BB以外)をターゲティングする部分、例えば、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分、例えば、GPC3ターゲティング部分もしくはPD-L1ターゲティング部分、またはT細胞活性化を増大させるターゲティング部分(4-1BBターゲティング部分以外)、例えばOX40ターゲティング部分である。いくつかの特定の態様において、T1は、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテインであり、T2は、OX40をターゲティングするリポカリンムテインである。
【0062】
いくつかの態様において、本開示のモノマーポリペプチドは、(N末端からC末端の方向に)下記の配置:
a T1-L'-T2-L-O;
b T2-L'-T1-L-O;
c O-L-T1-L'-T2;
d O-L-T2-L'-T1;
e T1-L-T2-O;
f T2-L-T1-O;
g O-L-T1-T2;
h O-L-T2-T1;
i T1-T2-L-O;
j T2-T1-L-O;
k O-T1-L-T2;
l O-T2-L-T1;
m T1-T2-O;
n T2-T1-O;
o O-T1-T2;または
p O-T2-T1
のうちの1つを有する(L'は、Lと同じまたは異なるリンカーである)。
【0063】
いくつかの態様において、本開示のモノマーポリペプチドは、付加的なターゲティング部分(T2)を含み、前記付加的なターゲティング部分は、第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が連結されている末端とは異なる、オリゴマー形成部分(O)の末端に連結されている。いくつかの特定の態様において、モノマーポリペプチドは、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分である付加的なターゲティング部分(T2)を含む。いくつかの特定の態様において、モノマーポリペプチドは、GPC3ターゲティング部分またはPD-L1ターゲティング部分である付加的なターゲティング部分(T2)を含む。いくつかの特定の態様において、モノマーポリペプチドは、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分、例えばOX40ターゲティング部分である付加的なターゲティング部分(T2)を含む。腫瘍関連抗原をターゲティングする部分またはT細胞活性化を増大させるターゲティング部分であることが好ましい付加的なターゲティング部分(T2)は、オリゴマー形成部分(O)のC末端またはN末端に連結されてよく、一方、第1の4-1BBターゲティング部分(T1)は、オリゴマー形成部分(O)のN末端またはC末端にそれぞれ連結される(図1C)。いくつかの特定の態様において、T1は、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテインであり、T2は、OX40をターゲティングするリポカリンムテインである。
【0064】
いくつかの態様において、本開示のモノマーポリペプチドは、(N末端からC末端の方向に)下記の配置:
a T1-L-O-L'-T2;
b T2-L'-O-L-T1;
c T1-L-O-T2;
d T2-L-O-T1;
e T1-O-L-T2;
f T2-O-L-T1;
g T1-O-T2;または
h T2-O-T1
のうちの1つを有する(L'は、Lと同じまたは異なるリンカーである)。
【0065】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、少なくとも4個のターゲティング部分(T1またはT2)を含んでよい。このような多量体タンパク質は、少なくとも3個の第1の4-1BBターゲティング部分(T1)を含んでよい。例示的な例として、多量体タンパク質は、4個の第1の4-1BBターゲティング部分(T1)を含んでよい。このような例示的な多量体タンパク質は、第1の4-1BBターゲティング部分(T1)、およびオリゴマー形成部分(O)、ならびに任意でリンカー(L)をそれぞれが含む、4個のモノマーポリペプチドを含んでよく、その際、オリゴマー形成ドメインは、四量体形成を促進することができる。別の例示的な例において、多量体タンパク質は、6個の第1の4-1BBターゲティング部分(T1)を含んでよい。このような例示的な多量体タンパク質は、3個の本明細書において開示されるモノマーポリペプチドを含んでよく、各モノマーポリペプチドは、三量体形成を促進することができるオリゴマー形成ドメイン(O)および2個の第1の4-1BBターゲティング部分(T1)を含む。別の例示的な例において、多量体タンパク質は、3個の第1の4-1BBターゲティング部分(T1)および少なくとも1つの付加的なターゲティング部分(T2)を含んでよい。このような多量体タンパク質は、3個のモノマーポリペプチドを有してよく、各モノマーポリペプチドは、三量体形成を促進することができるオリゴマー形成ドメイン(O)を含み、かつ前記モノマーポリペプチドのうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてのモノマーポリペプチドは、付加的なターゲティング部分(T2)を含む。付加的なターゲティング部分(T2)は、本明細書において開示される任意の付加的なターゲティング部分(T2)であることができる。モノマーポリペプチドのうちのいずれかは、これらの部分T1、T2、および/またはOを連結する1つまたは複数のリンカー(L)を含んでよい。
【0066】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、約1nMまたはそれ未満、例えば0.94nMもしくはそれ未満、約0.68nMもしくはそれ未満、約0.5nMもしくはそれ未満、約0.3nMもしくはそれ未満、または約0.2nMもしくはそれ未満のKD値で4-1BBに結合する能力があり得る。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、そのような多量体タンパク質に含まれる4-1BBターゲティング部分、例えば、SEQ ID NO: 64に示されるリポカリンムテインのKD値よりも低いKD値で4-1BBに結合する能力があり得る。提供される多量体タンパク質のKD値は、例えば実施例2で説明するように、見かけのKD値であってよい。提供される多量体タンパク質のKD値は、例えば、実施例2で本質的に説明する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ法などのSPRアッセイ法によって測定してよい。
【0067】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、約1.5nMもしくはそれ未満、例えば、約0.7nMもしくはそれ未満、約0.3nMもしくはそれ未満、約0.2nMもしくはそれ未満、約0.15nMもしくはそれ未満、または約0.1nMもしくはそれ未満のEC50値で4-1BBに結合する能力があり得る。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、そのような多量体タンパク質に含まれる4-1BBターゲティング部分、例えば、SEQ ID NO: 64に示されるリポカリンムテインのEC50値よりも低いEC50値で4-1BBに結合する能力があり得る。提供される多量体タンパク質のEC50値は、例えば、実施例3で本質的に説明する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)アッセイ法などのELISAアッセイ法によって測定してよい。
【0068】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、約11nMもしくはそれ未満、例えば、約9nMもしくはそれ未満、約7nMもしくはそれ未満、約5nMもしくはそれ未満、約4nMもしくはそれ未満、約3nMもしくはそれ未満、または約2nMもしくはそれ未満のEC50値で4-1BB発現細胞に結合する能力があり得る。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、そのような多量体タンパク質に含まれる4-1BBターゲティング部分、例えば、SEQ ID NO: 64に示されるリポカリンムテインのEC50値よりも低いEC50値で4-1BBに結合する能力があり得る。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、抗4-1BB抗体、例えば、SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73によって提供される重鎖および軽鎖を有する抗体のEC50値と同程度のEC50値またはそれよりも低いEC50値で4-1BBに結合する能力があり得る。提供される多量体タンパク質のEC50値は、例えば、実施例5で本質的に説明するフローサイトメトリー解析などのフローサイトメトリー解析によって測定してよい。4-1BBを発現する細胞は、例えば、ヒト4-1BBをトランスフェクトされたCHO細胞であってよい。
【0069】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、カニクイザル4-1BBと交差反応性であってよい。いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質は、最大で約7nMもしくはそれ未満、例えば、約6nMもしくはそれ未満、約5nMもしくはそれ未満、約4nMもしくはそれ未満、約3nMもしくはそれ未満、または約2nMもしくはそれ未満のEC50値でカニクイザル4-1BBに結合する能力があり得る。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、抗4-1BB抗体、例えば、SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73によって提供される重鎖および軽鎖を有する抗体のEC50値と同程度のEC50値またはそれよりも低いEC50値でカニクイザル4-1BBに結合する能力があり得る。多量体タンパク質のEC50値は、例えば、実施例5で本質的に説明するフローサイトメトリー解析などのフローサイトメトリー解析によって測定してよい。4-1BBを発現する細胞は、例えば、カニクイザル4-1BBをトランスフェクトされたCHO細胞であってよい。
【0070】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、最大で約3nMもしくはそれ未満、例えば、約2nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.5nMもしくはそれ未満のEC50値でGPC3発現細胞に結合する能力があり得る。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、GPC3ターゲティング部分が由来する抗GPC3抗体、例えば、SEQ ID NO: 108およびSEQ ID NO: 109によって提供される重鎖および軽鎖を有する抗体のEC50値と同程度のEC50値またはそれよりも低いEC50値でGPC3に結合する能力があり得る。提供される多量体タンパク質のEC50値は、例えば、実施例5で本質的に説明するフローサイトメトリー解析などのフローサイトメトリー解析によって測定してよい。GPC3を発現する細胞は、例えば、HepG2細胞であってよい。
【0071】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、4-1BBおよびGPC3に同時に結合する能力があり得る。いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質は、最大で約0.2nMまたはそれ未満、例えば約0.1nMまたはそれ未満のEC50値で4-1BBおよびGPC3に同時に結合する能力があり得る。他のいくつかの態様において、提供される多量体タンパク質は、最大で約1.5nMまたはさらにそれより小さい、例えば、約1.4nMもしくはそれ未満、約1.3nMもしくはそれ未満、約0.7nMもしくはそれ未満、または約0.6nMもしくはそれ未満のEC50値で4-1BBおよびGPC3に同時に結合する能力があり得る。同時結合は、例えば、実施例4で本質的に説明するELISAアッセイ法などのELISAアッセイ法によって測定してよい。
【0072】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、最大で約10nMもしくはそれ未満、例えば、約9nMもしくはそれ未満、約7nMもしくはそれ未満、約5nMもしくはそれ未満、約4nMもしくはそれ未満、約3nMもしくはそれ未満、約2nMもしくはそれ未満、または約1.5nMもしくはそれ未満のEC50値でPD-L1発現細胞に結合する能力があり得る。提供される多量体タンパク質のEC50値は、例えば、実施例10で本質的に説明するフローサイトメトリー解析などのフローサイトメトリー解析によって測定してよい。PD-L1を発現する細胞は、例えば、ヒトPD-L1をトランスフェクトされたCHO細胞であってよい。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、4-1BBおよびPD-L1に同時に結合する能力があり得る。
【0073】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、最大で約10nMもしくはそれ未満、例えば、約9nMもしくはそれ未満、約7nMもしくはそれ未満、約5nMもしくはそれ未満、約4nMもしくはそれ未満、約3nMもしくはそれ未満、約2nMもしくはそれ未満、約1.5nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.5nMもしくはそれ未満のEC50値でOX40発現細胞に結合する能力があり得る。提供される多量体タンパク質のEC50値は、例えば、実施例10で本質的に説明するフローサイトメトリー解析などのフローサイトメトリー解析によって測定してよい。OX40を発現する細胞は、例えば、ヒトOX40をトランスフェクトされたCHO細胞であってよい。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、4-1BBおよびOX40に同時に結合する能力があり得る。
【0074】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、IL-2分泌の増大を誘導する能力があり得る。いくつかの好ましい態様において、提供される多量体タンパク質は、濃度依存的なIL-2分泌を誘導する能力があり得、かつ/または高濃度で、IL-2分泌の増大を誘導する傾向を示し得る。IL-2分泌は、例えば、実施例6、7、および/または9で本質的に説明するアッセイ法などの機能的T細胞活性化アッセイ法によって測定してよい。いくつかの態様において、T細胞は、CD4+ T細胞であるか、CD8+ T細胞であるか、またはCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の両方を含む。
【0075】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、T細胞応答を共刺激する能力があり得る。いくつかの態様において、T細胞は、CD4+ T細胞であるか、CD8+ T細胞であるか、または両方を含む。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、GPC3、OX40、4-1BB、またはPD-L1に依存的にT細胞応答を共刺激する能力があり得る。いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質は、GPC3、OX40、4-1BB、またはPD-L1の非存在下ではT細胞応答を共刺激する能力がない。刺激されたT細胞応答またはT細胞活性化は、例えば、実施例8で本質的に説明するアッセイ法などの4-1BBバイオアッセイ法、または実施例15で本質的に説明するアッセイ法などのOX40バイオアッセイ法によって測定してよい。
【0076】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、少なくとも2個、好ましくは3個または4個のモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、少なくとも2個、好ましくは3個または4個のモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドは、SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
B 多量体タンパク質に含まれる例示的なオリゴマー形成部分
いくつかの態様において、本開示のモノマーポリペプチドに含まれるオリゴマー形成部分は、2つまたはそれより多いモノマーポリペプチドを本開示の多量体タンパク質に変換し得る。
【0079】
いくつかの態様において、本開示のオリゴマー形成部分は、GCN4ロイシンジッパーなどの二量体形成ドメインであってよい。
【0080】
いくつかの態様において、本開示のオリゴマー形成部分は、T4フィブリチンのC末端ドメイン(フォルドン)などの三量体形成ドメイン、ヒトコラーゲンXVIII三量体形成ドメインおよびヒトコラーゲンXV三量体形成ドメインなどコラーゲンの三量体形成ドメイン、GCN4ロイシンジッパー、ならびに肺サーファクタントタンパク質の三量体形成モチーフであってよい。コラーゲンの三量体形成ドメインは、当技術分野において説明されており、例えば、WO 2006/048252、WO 2012/022811、WO 2012/049328、およびEP 2065402に記載されているコラーゲンXV、コラーゲンXVIII、および/またはコラーゲンXXIIの三量体形成ドメインが含まれる。いくつかの態様において、本開示の三量体形成ドメインは、SEQ ID NO: 35に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、提供される三量体形成ドメインは、SEQ ID NO: 35に示されるアミノ酸配列を含む。
【0081】
いくつかの態様において、本開示のオリゴマー形成部分は、p53四量体形成ドメイン、GCN4ロイシンジッパー、およびTRP様ドメインなどの四量体形成ドメインであってよい。いくつかの態様において、本開示の四量体形成ドメインは、SEQ ID NO: 36またはSEQ ID NO: 37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、提供される四量体形成ドメインは、SEQ ID NO: 36またはSEQ ID NO: 37に示されるアミノ酸配列を含む。
【0082】
C 本開示の例示的なリポカリンムテイン
リポカリンは、リガンドに結合するように自然に進化したタンパク質性結合分子である。リポカリンは、脊椎動物、昆虫、植物、および細菌を含む多くの生物に存在する。リポカリンタンパク質ファミリーのメンバー(Pervaiz and Brew, 1987)は、典型的には、小型の分泌タンパク質であり、単一のポリペプチド鎖を有する。これらは、次の一連の様々な分子認識特性を特徴とする:主に疎水性の様々な低分子(例えば、レチノイド、脂肪酸、コレステロール、プロスタグランジン、ビリベルジン、フェロモン、味物質、および臭気物質)への結合、ならびに特異的な細胞表面受容体への結合および高分子複合体の形成。これらのリポカリンは過去に主として輸送タンパク質に分類されたが、これらが様々な生理学的機能を果たすことが現在は明らかである。これらには、レチノール輸送、嗅覚、フェロモンシグナル伝達、およびプロスタグランジン合成における役割が含まれる。リポカリンはまた、免疫応答の調節および細胞恒常性の仲介にも関与している(例えば、Flower et al., 2000、Flower, 1996において概説されている)。
【0083】
リポカリン間の全体的配列保存のレベルは、著しく低く、しばしば、配列同一性は20%未満である。これとは極めて対照的に、全体的なフォールディングパターンは高度に保存されている。リポカリン構造の中心部分は、8本の鎖からなる1つの逆平行βシートからなり、このβシートはそれ自体で閉じて、連続的に水素結合したβバレルを形成している。このβバレルが、中央の窪みを形成している。バレルの片端は、その底部に伸びるN末端ペプチドセグメントならびにβ鎖を連結する3つのペプチドループによって立体的に妨害されている。βバレルのもう一方の端は、溶媒との接触が可能であり、かつ4個の柔軟なペプチドループ(AB、CD、EF、およびGH)によって形成された標的結合部位を含む。他の点では柔軟性のないリポカリン骨格においてこれらのループが多様であることにより、種々の異なる結合様式が生じ、各々が、サイズ、形状、および化学的特徴が異なる標的を収容できる(例えば、Skerra, 2000、Flower et al., 2000、Flower, 1996において概説されている)。
【0084】
本開示によるリポカリンムテインは、任意のリポカリンのムテインであってよい。そのムテインが使用され得る適切なリポカリン(「参照リポカリン」、「野生型リポカリン」、「参照タンパク質スキャフォールド」、または単に「スキャフォールド」と呼ばれることもある)の例には、涙液リポカリン(リポカリン-1、Tlc、またはフォンエブネル腺タンパク質)、レチノール結合タンパク質、好中球リポカリン型プロスタグランジンD-シンターゼ、β-ラクトグロブリン、ビリン結合タンパク質(BBP)、アポリポタンパク質D(APOD)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、α2-ミクログロブリン関連タンパク質(A2m)、24p3/ウテロカリン(24p3)、フォンエブネル腺タンパク質1(VEGP1)、フォンエブネル腺タンパク質2(VEGP2)、および主要アレルゲンCanf1(ALL-1)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。関連する態様において、リポカリンムテインは、ヒト涙液リポカリン(hTlc)、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ヒトアポリポタンパク質D(hAPOD)、およびオオモンシロチョウ(Pieris brassicae)のビリン結合タンパク質からなるリポカリン群に由来する。
【0085】
本開示によるリポカリンムテインのアミノ酸配列は、別のリポカリンとの配列同一性と比べた場合(上記も参照されたい)、それが由来する参照(または野生型)リポカリン、例えばhTlcまたはhNGALと比べた場合に高い配列同一性を有し得る。この一般的な文脈において、本開示によるリポカリンムテインのアミノ酸配列は、対応する参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列と少なくとも実質的に同様であり、ただし、アミノ酸の付加または欠失の結果であるギャップ(本明細書において定義する)がアライメント中に存在し得ることを条件とする。本開示のリポカリンムテインの各配列は、対応する参照(野生型)リポカリンの配列に実質的に類似しており、いくつかの態様において、対応するリポカリンの配列に対して、少なくとも95%の同一性を含む、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%の同一性を有する。これに関して、本開示のリポカリンムテインは当然、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分または4-1BBもしくはGPC3などの腫瘍関連抗原をターゲティングする部分のように、所望の標的にリポカリンムテインが結合できるようにする、本明細書において説明する置換を含んでよい。
【0086】
典型的には、リポカリンムテインは、野生型リポカリンまたは参照リポカリン、例えばhTlcおよびhNGALのアミノ酸配列と比べて、1つまたは複数の変異アミノ酸残基を、リガンド結合ポケットを含みリガンド結合ポケットの入り口を定める、開放端の4つのループ中に含む(上記を参照されたい)。上記に説明したように、これらの領域は、所望の標的に対するリポカリンムテインの結合特異性を定めるにあたってきわめて重要である。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインはまた、4つのループの外側に変異アミノ酸残基領域を含んでもよい。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、リポカリンの閉端でβストランドを連結している3つのペプチドループ(BC、DE、およびFGと呼ばれる)のうちの1つまたは複数の中に1つまたは複数の変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの態様において、涙液リポカリン、NGALリポカリン、またはそのホモログに由来するムテインは、N末端領域中ならびに/または天然リポカリン結合ポケットの向かい側に位置しているβバレル構造の端に並んでいる3つのペプチドループBC、DE、およびFG中の任意の配列位置に、1個、2個、3個、4個、またはそれより多い変異アミノ酸残基を有してよい。いくつかの態様において、涙液リポカリン、NGALリポカリン、またはそのホモログに由来するムテインは、涙液リポカリンの野生型配列と比べて、βバレル構造の端に並んでいるペプチドループDE中に変異アミノ酸残基を1つも有していなくてよい。
【0087】
いくつかの態様において、本開示によるリポカリンムテインは、対応する参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列と比べて1つまたは複数の、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはさらにそれより多い変異アミノ酸残基を含んでよいが、ただし、そのようなリポカリンムテインが、当然、4-1BBまたはGPC3などの所与の標的に結合できることを条件とする。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、2個、3個、4個、5個、またはさらにそれより多くを含む、少なくとも2個の変異アミノ酸残基であって、対応する参照(野生型)リポカリンのネイティブアミノ酸残基がアルギニン残基によって置換されている、変異アミノ酸残基を含む。
【0088】
提供されるリポカリンムテインが、その所与の標的、例えば4-1BBもしくはGPC3への結合能力を保持し、かつ/または参照(野生型)リポカリン、例えば、成熟hTlcもしくは成熟hNGALのアミノ酸配列に対して少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、もしくはそれより高い同一性である配列同一性を有しさえすれば、置換、欠失、および挿入を含む、任意のタイプおよび数の変異が想定される。
【0089】
具体的には、参照(野生型)リポカリンとは異なるリポカリンムテインのアミノ酸配列のあるアミノ酸残基が、参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列中の特定の位置に対応するかどうかを判定するために、当業者は、当技術分野において周知の手段および方法、例えば、手作業によるアライメントあるいはBLAST2.0(Basic Local Alignment Search Toolを意味する)もしくはClustalWまたは配列アライメントを作成するのに適している他の任意の適切なプログラムなどのコンピュータープログラムを使用することによるアライメントを用いることができる。したがって、参照(野生型)リポカリンのアミノ酸配列は、「対象配列」または「参照配列」の役割を果たすことができ、一方、リポカリンムテインのアミノ酸配列は、「問合せ配列」の役割を果たす(上記も参照されたい)。
【0090】
いくつかの態様において、置換は、保存的置換である。一般に、保存的置換は、以下の置換である。変異されるアミノ酸に基づいて列挙しており、保存的になるように起こすことができる1つまたは複数の置換をそれぞれの後に続けている:
。他の置換もまた許容され、経験に基づいて、または他の公知の保存的置換もしくは非保存的置換を踏まえて、決定することができる。さらなる方針として、以下のグループはそれぞれ、互いにとっての保存的置換を定めるように典型的に選ぶことができるアミノ酸を含む:
(a)アラニン(Ala)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)
(b)アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、ヒスチジン(His)
(c)アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、ヒスチジン(His)
(d)イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val)、アラニン(Ala)、フェニルアラニン(Phe)、トレオニン(Thr)、プロリン(Pro)
(e)イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)。
【0091】
このような保存的置換によって生物活性が変化する場合は、以下のような、またはアミノ酸クラスに関してさらに後述するような、より大幅な変更を導入し、それらの産物を所望の特徴を求めてスクリーニングしてもよい。このようなより大幅な変更の例は、
である。
【0092】
いくつかの態様において、リポカリン(ムテイン)の物理学的特性および生物学的特性の大幅な改変は、(a)例えば、シート状もしくはらせん状の立体構造としての、置換領域のポリペプチド骨格の構造、(b)分子の標的部位における電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさを維持することに対する影響が顕著に異なる置換を選択することによって、達成される。
【0093】
天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、次のグループに分けられる:(1)疎水性:メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン;(2)中性で親水性:システイン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン;(3)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;(4)塩基性:ヒスチジン、リジン、アルギニン;(5)鎖の向きに影響する残基:グリシン、プロリン;および(6)芳香族:トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン。いくつかの態様において、置換は、これらのクラスのうちの1つに属するメンバーを別のクラスと交換することを伴ってよい。
【0094】
各リポカリンの適切な立体構造を維持するのに関与していない任意のシステイン残基を、通常はセリンで置換して、分子の酸化安定性を向上させ、かつ異常な架橋を防止することもできる。逆に、システイン結合をリポカリンに追加して安定性を向上させてもよい。
【0095】
D 多量体タンパク質に含まれる例示的な4-1BBターゲティング部分
いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質に関して、4-1BBターゲティング部分は、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテインであってよいか、またはそれを含んでよい。
【0096】
上記のように、リポカリンは、その超二次構造、すなわち、4つのループによって2つ1組で片端が連結されている8本のβ鎖を含み、それによって結合ポケットを画定している円柱状βプリーツシート超二次構造領域によって定められるポリペプチドである。本開示は、本明細書において具体的に開示されるリポカリンムテインに限定されない。この点に関して、本開示は、4つのループによって2つ1組で片端が連結されている8本のβ鎖を含み、それによって結合ポケットを画定している円柱状βプリーツシート超二次構造領域を有するリポカリンムテインであって、前記4つのループのうちの少なくとも3つのそれぞれについて少なくとも1つのアミノ酸が変異しており、かつ前記リポカリンが、検出可能な親和性で所与の標的、例えば4-1BBに結合するのに有効である、リポカリンムテインに関する。
【0097】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるリポカリンムテインは、成熟ヒト涙液リポカリン(hTlc)のムテインであってよいか、またはそれを含んでよい。成熟hTlcのムテインは、本明細書において「hTlcムテイン」と呼ばれ得る。いくつかの他の態様において、本明細書において開示されるリポカリンムテインは、成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)のムテインである。成熟hNGALのムテインは、本明細書において「hNGALムテイン」と呼ばれ得る。
【0098】
1つの局面において、本開示は、参照(野生型)リポカリンに由来する、好ましくは成熟hTlcまたは成熟hNGALに由来する、検出可能な親和性で4-1BBに結合する任意の数のリポカリンムテインを含む。関連する局面において、本開示は、4-1BBに結合することによって4-1BBの下流のシグナル伝達経路を活性化することができる様々なリポカリンムテインを含む。この点で、4-1BBは、参照(野生型)リポカリン、好ましくはhTlcまたはhNGALの非天然標的とみなすことができ、ここで、「非天然標的」とは、生理的条件下では参照(野生型)リポカリンに結合しない物質を意味する。特定の配列位置における1つまたは複数の変異を用いて参照(野生型)リポカリンを操作することによって、本発明者らは、非天然標的4-1BBに対する高い親和性および高い特異性が実現可能であることを実証した。いくつかの態様において、4-1BBに結合できるリポカリンムテインを生成することを目指して、野生型リポカリン上の特定の配列位置をコードする1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、またはさらにそれより多いヌクレオチドトリプレットにおいて、ヌクレオチドトリプレットのサブセットによるこれらの位置での置換により、ランダム変異誘発を実施してもよい。
【0099】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、参照リポカリン、好ましくはhTlcまたはhNGALの直鎖ポリペプチド配列に対応する1つまたは複数の配列位置において、置換、欠失、および挿入を含む変異を加えられたアミノ酸残基を有してよい。いくつかの態様において、参照リポカリン、好ましくはhTlcまたはhNGALのアミノ酸配列と比較して変異している、本開示のリポカリンムテインのアミノ酸残基の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれより多く、例えば、25、30、35、40、45、または50個であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個が好ましく、9、10、または11個がさらにより好ましい。しかし、本開示のリポカリンムテインが、依然として4-1BBに結合できることが好ましい。
【0100】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、各参照(野生型)リポカリンと比較して、そのN末端において1個、2個、3個、4個、もしくはそれより多いアミノ酸を欠いてよく、かつ/またはそのC末端において1個、2個、もしくはそれより多いアミノ酸を欠いてよく、例えばSEQ ID NO: 56~62である。いくつかの態様において、本開示は、成熟hTlcの配列の最初の4個の1個、2個、3個、もしくはN末端のアミノ酸残基(His-His-Leu-Leu;1~4位)および/または成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列の最後の1個もしくは2個のC末端アミノ酸残基(Ser-Asp;157~158位)が欠失している、上記に定義したhTlcムテインを包含する(例えば、SEQ ID NO: 56~62)。いくつかの態様において、本開示は、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列のアミノ酸残基(Lys-Asp-Pro、位置46~48)が欠失している、上記に定義したhNGALムテインを包含する(SEQ ID NO: 67)。さらに、本開示のリポカリンムテインは、変異したアミノ酸配列位置以外では、参照(野生型)リポカリン、好ましくはhTlcまたはhNGALの野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0101】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインに組み込まれる1つまたは複数の変異アミノ酸残基は、指定の標的に対する結合活性およびムテインのフォールディングを実質的に妨げもせず、邪魔もしない。置換、欠失、および挿入を含むこのような変異は、確立されている標準的方法(Sambrook and Russell, 2001, Molecular cloning: a laboratory manual)を用いて、DNAレベルで遂行することができる。いくつかの態様において、参照(野生型)リポカリン、好ましくはhTlcまたはhNGALの直鎖ポリペプチド配列に対応する1つまたは複数の配列位置における変異アミノ酸残基は、参照リポカリンの対応する配列位置をコードするヌクレオチドトリプレットを、ヌクレオチドトリプレットのサブセットで置換することにより、ランダム変異誘発によって導入される。
【0102】
いくつかの態様において、検出可能な親和性で4-1BBに結合する提供されるリポカリンムテインは、別のアミノ酸、例えばセリン残基による、ネイティブシステイン残基のアミノ酸置換を少なくとも1つ含んでよい。いくつかの態様において、検出可能な親和性で4-1BBに結合するリポカリンムテインは、参照(野生型)リポカリン、好ましくはhTlcまたはhNGALの1つまたは複数のアミノ酸を置換する1つまたは複数の非ネイティブシステイン残基を含んでよい。いくつかの態様において、本開示によるリポカリンムテインは、システイン残基によるネイティブアミノ酸のアミノ酸置換を少なくとも2つ含み、これによって、1つまたは複数のシステイン架橋を形成する。いくつかの態様において、前記システイン架橋は、少なくとも2つのループ領域を連結してよい。これらの領域の定義は、(2000)、Flower (1996)、およびBreustedt et al. (2005)に従って本明細書において使用される。
【0103】
通常、本開示のリポカリンムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)または成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のアミノ酸配列との、少なくとも約80%を含む、少なくとも約70%、例えば少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0104】
いくつかの局面において、本開示は、4-1BBに結合するhTlcムテインを提供する。この点に関して、本開示は、約300nM、200nM、150nM、100nM、またはそれより小さいKDによって示される親和性で4-1BBに結合することができる、1種類または複数種類のhTlcムテインを提供する。いくつかの態様において、提供されるhTlcムテインは、約250nM、150nM、100nM、50nM、20nM、またはさらにそれより小さいEC50値で4-1BBに結合することができる。他のいくつかの態様において、4-1BBに結合するhTlcムテインは、カニクイザル4-1BB(cy4-1BB)と交差反応性であってよい。
【0105】
いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、4-1BBへの4-1BBLの結合の邪魔をし得る。
【0106】
いくつかの態様において、提供されるhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、26~31位、33~34位、42位、46位、52位、56位、58位、60~61位、65位、71位、85位、94位、101位、104~106位、108位、111位、114位、121位、133位、148位、150位、および153位に対応する1つまたは複数の位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0107】
いくつかの態様において、提供されるhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の26~34位、55~58位、60~61位、65位、104~106位、および108位に対応する1つまたは複数の位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0108】
いくつかの態様において、提供されるhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の101位、111位、114位、および153位に対応する1つまたは複数の位置に変異アミノ酸残基をさらに含んでよい。
【0109】
いくつかの態様において、提供されるhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、26~31位、33~34位、42位、46位、52位、56位、58位、60~61位、65位、71位、85位、94位、101位、104~106位、108位、111位、114位、121位、133位、148位、150位、および153位に対応する、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、またはさらにそれより多い位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの好ましい態様において、提供されるhTlcムテインは、4-1BB、特にヒト4-1BBに結合することができる。
【0110】
いくつかの態様において、提供されるhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の26~34位、55~58位、60~61位、65位、104~106位、および108位に対応する、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、またはさらにそれより多い位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの好ましい態様において、提供されるhTlcムテインは、4-1BB、特にヒト4-1BBに結合することができる。
【0111】
いくつかの態様において、本開示によるリポカリンムテインは、例えばセリン残基による、ネイティブシステイン残基のアミノ酸置換を少なくとも1つ含んでよい。いくつかの態様において、本開示によるhTlcムテインは、セリン残基などの別のアミノ酸による、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の61位および/または153位に対応する位置のネイティブシステイン残基のアミノ酸置換を含む。これに関連して、システイン残基61番および153番によって形成される野生型hTlcの(各ナイーブ核酸ライブラリーのレベルでの)構造的ジスルフィド結合の除去により(Breustedt, et al., 2005を参照されたい)、安定にフォールディングされるだけでなく、所与の非天然標的に高い親和性で結合することもできるhTlcムテインが与えられ得ることが判明していることに留意されたい。いくつかの態様において、構造的ジスルフィド結合の消失により、本開示のムテインに非天然のジスルフィド結合を発生させることまたは意図的に導入することが可能になり、それによってムテインの安定性が高まるというさらなる利点が与えられ得る。しかし、4-1BBに結合し、かつCys61とCys153の間で形成されるジスルフィド架橋を有するhTlcムテインもまた、本開示の一部分である。
【0112】
いくつかの特定の態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の61位および/または153位に対応する位置に、アミノ酸置換Cys61→Ala、Phe、Lys、Arg、Thr、Asn、Gly、Gln、Asp、Asn、Leu、Tyr、Met、Ser、Pro、もしくはTrp、および/またはCys153→SerもしくはAlaのうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0113】
いくつかの態様において、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の61位、101位、および153位に対応する位置のシステインコドンのうちの2つまたは3つすべてが、別のアミノ酸のコドンで置換されている。さらに、いくつかの態様において、本開示によるhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の101位に対応する位置のネイティブシステイン残基の、セリン残基またはヒスチジン残基によるアミノ酸置換を含む。
【0114】
いくつかの態様において、本開示によるムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の28位または105位に対応する位置での、システイン残基によるネイティブアミノ酸のアミノ酸置換を含む。さらに、いくつかの態様において、本開示によるムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の111位に対応する位置のネイティブアルギニン残基の、プロリン残基によるアミノ酸置換も含む。さらに、いくつかの態様において、本開示によるムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の114位に対応する位置のネイティブリジン残基の、トリプトファン残基またはグルタミン酸によるアミノ酸置換も含む。
【0115】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、26~31位、33~34位、42位、46位、52位、56位、58位、60~61位、65位、71位、85位、94位、101位、104~106位、108位、111位、114位、121位、133位、148位、150位、および153位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、もしくはそれより多い、またはさらにはすべての変異アミノ酸残基を含む。
【0116】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)と比較して、下記の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つを含んでよい:
【0117】
いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインの残りの領域、すなわち、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、26~31位、33~34位、42位、46位、52位、56位、58位、60~61位、65位、71位、85位、94位、101位、104~106位、108位、111位、114位、121位、133位、148位、150位、および153位に対応する位置とは異なる領域は、変異したアミノ酸配列位置以外では、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列の野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0118】
いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlcの配列(SEQ ID NO: 1)に対して少なくとも70%の配列同一性または少なくとも70%の配列相同性を有する。例示的な例として、SEQ ID NO: 56のムテインは、成熟hTlcのアミノ酸配列に対して約84%のアミノ酸配列同一性または配列相同性を有する。
【0119】
いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、SEQ ID NO: 56~62のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含む。
【0120】
いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、SEQ ID NO: 56~62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する。
【0121】
本開示はまた、SEQ ID NO: 56~62からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するhTlcムテインの構造的ホモログを含み、この構造的ホモログは、前記hTlcムテインに対して、約60%より高い、好ましくは65%より高い、70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、92%より高い、および最も好ましくは95%より高い、アミノ酸配列相同性または配列同一性を有する。
【0122】
いくつかの局面において、本開示は、4-1BBに結合するhNGALムテインを提供する。これに関して、本開示は、約800nM、700nM、200nM、140nM、100nMまたはそれ未満、好ましくは約70nM、50nM、30nM、10nM、5nM、2nM、またはさらにそれより小さいKDによって示される親和性で4-1BBに結合することができる、1種類または複数種類のhNGALムテインを提供する。いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、約1000nM、500nM、100nM、80nM、50nM、25nM、18nM、15nM、10nM、5nM、またはそれ未満のEC50値で4-1BBに結合することができる。
【0123】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、カニクイザル4-1BBと交差反応性であってよい。いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、約50nM、20nM、10nM、5nM、2nM、またはさらにそれより小さいKDによって示される親和性でカニクイザル4-1BBに結合することができる。いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、約100nM、80nM、50nM、30nM、またはさらにそれより小さいEC50値でカニクイザル4-1BBに結合することができる。
【0124】
いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、4-1BBへの4-1BBLの結合の邪魔をし得るか、または競合し得る。他のいくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、4-1BBLの存在下で4-1BBに結合するか、かつ/または4-1BB/4-1BBL複合体に結合する能力を有し得る。
【0125】
いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の28位、36位、40~41位、49位、52位、65位、68位、70位、72~73位、77位、79位、81位、83位、87位、94位、96位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0126】
いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の28位、36位、40~41位、49位、52位、65位、68位、70位、72~73位、77位、79位、81位、83位、87位、94位、96位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位に対応する、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、またはさらにそれより多い位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの好ましい態様において、提供されるhNGALムテインは、4-1BB、特にヒト4-1BBに結合することができる。
【0127】
いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の28位、36位、40~41位、49位、52位、65位、68位、70位、72~73位、77位、79位、81位、87位、96位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの好ましい態様において、提供されるhNGALムテインは、4-1BB、特にヒト4-1BBに結合することができる。
【0128】
いくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、87位、および96位に対応する1つまたは複数の位置、ならびに成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の28位、40~41位、49位、52位、65位、68位、70位、72~73位、77位、79位、81位、83位、94位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置において、変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0129】
他のいくつかの態様において、提供されるhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の20位、25位、28位、33位、36位、40~41位、44位、49位、52位、59位、68位、70~73位、77~82位、87位、92位、96位、98位、100位、101位、103位、122位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0130】
他の態様において、提供されるhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、40位、41位、49位、52位、68位、70位、72位、73位、77位、79位、81位、96位、100位、103位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置、ならびに成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の20位、25位、33位、44位、59位、71位、78位、80位、82位、87位、92位、98位、101位、および122位に対応する1つまたは複数の位置において、変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0131】
いくつかの態様において、本開示によるリポカリンムテインは、例えばセリン残基による、ネイティブシステイン残基のアミノ酸置換を少なくとも1つ含んでよい。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、セリン残基などの別のアミノ酸による、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の76位および/または175位に対応する位置のネイティブシステイン残基のアミノ酸置換を含んでよい。これに関連して、システイン残基76番および175番によって形成される野生型hNGALの(各ナイーブ核酸ライブラリーのレベルでの)構造的ジスルフィド結合の除去により(Breustedt, et al., 2005を参照されたい)、安定にフォールディングされるだけでなく、所与の非天然標的に高い親和性で結合することもできるhNGALムテインが与えられ得ることが判明していることに留意されたい。いくつかの態様において、構造的ジスルフィド結合の消失により、本開示のムテインに非天然のジスルフィド結合を発生させることまたは意図的に導入することが可能になり、それによってムテインの安定性が高まるというさらなる利点が与えられ得る。しかし、4-1BBに結合し、かつCys76とCys175の間で形成されるジスルフィド架橋を有するhNGALムテインもまた、本開示の一部分である。
【0132】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の28位、36位、40~41位、49位、52位、65位、68位、70位、72~73位、77位、79位、81位、83位、87位、94位、96位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、さらにそれより多い、例えば、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、またはすべての変異アミノ酸残基を含む。
【0133】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の20位、25位、28位、33位、36位、40~41位、44位、49位、52位、59位、68位、70~73位、77~82位、87位、92位、96位、98位、100位、101位、103位、122位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、または34個の変異アミノ酸残基を含む。
【0134】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、40位、41位、49位、52位、68位、70位、72位、73位、77位、79位、81位、96位、100位、103位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の20位、25位、33位、44位、59位、71位、78位、80位、82位、87位、92位、98位、101位、および122位に対応する1つまたは複数、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数をさらに含んでよい:
【0135】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、下記の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つを含んでよい:
【0136】
いくつかの別の態様において、残りの領域、すなわち、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の28位、36位、40~41位、49位、52位、65位、68位、70位、72~73位、77位、79位、81位、83位、87位、94位、96位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位とは異なる領域において、本開示のhNGALムテインは、変異したアミノ酸配列位置以外では、成熟hNGALの野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0137】
他のいくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、下記の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つを含んでよい:
【0138】
いくつかの態様において、提供される、4-1BBに結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、次の変異アミノ酸残基のセット:
を含んでよく、かつ/または提供されるムテインは、SEQ ID NO: 64のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有し得る。
【0139】
いくつかの態様において、残りの領域、すなわち、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の20位、25位、28位、33位、36位、40~41位、44位、49位、52位、59位、68位、70~73位、77~82位、87位、92位、96位、98位、100位、101位、103位、122位、125位、127位、132位、および134位とは異なる領域において、本開示のhNGALムテインは、変異したアミノ酸配列位置以外では、成熟hNGALの野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0140】
いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの配列(SEQ ID NO: 2)に対して少なくとも70%の配列同一性または少なくとも70%の配列相同性を有する。例示的な例として、SEQ ID NO: 64のムテインは、成熟hNGALのアミノ酸配列に対して約87%のアミノ酸配列同一性または配列相同性を有する。
【0141】
いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、SEQ ID NO: 63~71のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含む。
【0142】
いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、SEQ ID NO: 63~71からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する。
【0143】
本開示はまた、SEQ ID NO: 63~71からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するhNGALムテインの構造的ホモログを含み、この構造的ホモログは、前記hNGALムテインに対して、約60%より高い、好ましくは65%より高い、70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、92%より高い、および最も好ましくは95%より高い、アミノ酸配列相同性または配列同一性を有する。
【0144】
いくつかの態様において、本開示は、約5nMまたはそれより小さいKDによって示される親和性で4-1BBに結合するリポカリンムテインであって、SEQ ID NO: 64のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する、リポカリンムテインを提供する。
【0145】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質は、前記リポカリンムテインの(その標的、例えば4-1BBに結合する)生物活性に影響を及ぼすことなく、そのN末端またはC末端、好ましくはC末端において異種アミノ酸配列、例えば、Strep IIタグ(SEQ ID NO: 12)またはある特定の制限酵素のための切断部位配列を含むことができる。
【0146】
いくつかの態様において、ムテインのいくつかの特徴を変えるため、例えば、フォールディング安定性、血清安定性、タンパク質耐性、もしくは水溶性を向上させるため、または凝集傾向を小さくするため、あるいはムテインに新しい特徴を取り入れるために、リポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質に対するさらに別の改変を導入してよい。いくつかの態様において、改変により、提供されるムテインの2つまたはそれより多い(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の)特徴が変更され得る。
【0147】
例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ビオチン、ペプチド、もしくはタンパク質などの他の化合物にコンジュゲートさせるため、または天然に存在しないジスルフィド結合を形成させるために、新しい反応性基を導入することを目的として、リポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質の1つまたは複数のアミノ酸配列位置を変異させることが、例えば可能である。コンジュゲートされる化合物、例えば、PEGおよびHESは、いくつかの場合において、対応するリポカリンムテインの血清半減期を長くすることができる。
【0148】
いくつかの態様において、リポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質の反応性基は、そのアミノ酸配列中に天然に存在してよく、例えば、前記アミノ酸配列中の天然システイン残基である。他のいくつかの態様において、このような反応性基は変異誘発によって導入されてよい。反応性基を変異誘発によって導入する場合、1つの実行可能な手段は、適切な位置のアミノ酸をシステイン残基によって変異させることである。hTlcムテインのアミノ酸配列にシステイン残基を導入するためのこのような変異の実現可能な例には、hTlcの野生型配列(SEQ ID NO: 1)を対象とする置換Thr40→Cys、Glu73→Cys、Arg90→Cys、Asp95→Cys、およびGlu131→Cysが含まれる。hNGALムテインのアミノ酸配列にシステイン残基を導入するためのこのような変異の実現可能な例には、hNGALの野生型配列(SEQ ID NO: 2)の配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146、または158に対応する配列位置のうちの1つまたは複数における、システイン残基の導入が含まれる。生成されたチオール部分は、例えば、各リポカリンムテインの血清半減期を長くするために、ムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質をPEG化またはHES化するのに使用され得る。
【0149】
いくつかの態様において、上記の化合物のうちの1つをリポカインムテインにコンジュゲートするために、適切なアミノ酸側鎖を新たな反応性基として提供することを目的として、リポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質のアミノ酸配列に人工アミノ酸を導入してよい。一般に、このような人工アミノ酸は、反応性がより高くなるように、したがって、所望の化合物へのコンジュゲーションを促進するように、設計されている。このような人工アミノ酸は、例えば人工tRNAを用いる変異誘発によって導入されてよく、パラ-アセチル-フェニルアラニンである。
【0150】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質は、そのN末端またはそのC末端(のうちの少なくとも1つ)において、タンパク質、タンパク質ドメイン、またはペプチド、例えば、抗体、シグナル配列、および/またはアフィニティータグに融合されている。他のいくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、そのN末端またはそのC末端において、タンパク質、タンパク質ドメイン、またはペプチド、例えば、抗体、シグナル配列、および/またはアフィニティータグである、パートナーにコンジュゲートされる。
【0151】
StrepタグもしくはStrepタグII(Schmidt et al., 1996)、c-mycタグ、FLAGタグ、Hisタグ、もしくはHAタグなどのアフィニティータグ、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのタンパク質、あるいはそれらの組合せは、組換えタンパク質の容易な検出および/または精製を可能にするものであり、これらは、適切な融合パートナーの例である。例示的な例として、例えばSEQ ID NO: 131に示されるmyc-Hisタグは、リポカリンムテイン、例えばSEQ ID NO: 38~55に示されるものとしての、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質に、例えばC末端において融合されてよい。緑色蛍光タンパク質(GFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)などの発色特性または蛍光特性を有するタンパク質も、同様に本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質にとって適切な融合パートナーである。一般に、化学反応、物理反応、光学的反応、または酵素反応において検出可能な化合物またはシグナルを直接的にまたは間接的に生成する任意の適切な化学物質または酵素で本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質を標識することが可能である。例えば、蛍光性標識または放射性標識をリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質にコンジュゲートして、検出可能なシグナルとして蛍光またはX線を発生させることができる。アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびβ-ガラクトシターゼは、発色性反応生成物の形成を触媒する酵素標識(同時に光学的標識)の例である。一般に、抗体に対して通常使用される標識すべて(免疫グロブリンのFc部分の糖部分と共にもっぱら使用されるものを除く)もまた、本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質にコンジュゲートさせるために使用され得る。
【0152】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、ムテインの血清半減期を延長する部分に融合またはコンジュゲートされ得る(この点に関して、このような戦略が、CTLA-4に対する結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)のムテインに関して説明されている国際特許公報WO 2006/056464も参照されたい)。血清半減期を延長する部分は、ほんの少し挙げると、PEG分子、HES分子、脂肪酸分子、例えばパルミチン酸(Vajo and Duckworth, 2000)、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合タンパク質、またはトランスフェリンであってよい。
【0153】
いくつかの態様において、PEGがコンジュゲーションパートナーとして使用される場合、PEG分子は、置換型、非置換型、直鎖状、または分枝状であることができる。また、これは、活性化ポリエチレン誘導体であってもよい。適切な化合物の例は、インターフェロンに関して国際特許公報WO 1999/64016、米国特許第6,177,074号、もしくは米国特許第6,403,564号において説明されているか、またはPEG修飾アスパラギナーゼ、PEG-アデノシンデアミナーゼ(PEG-ADA)、もしくはPEG-スーパーオキシドジスムターゼなどの他のタンパク質に関して説明されている(Fuertges and Abuchowski, 1990)、PEG分子である。ポリエチレングリコールなどのこのようなポリマーの分子量は、約300~約70,000ダルトンに及んでよく、例えば、分子量が約10,000ダルトン、約20,000ダルトン、約30,000ダルトン、または約40,000ダルトンのポリエチレングリコールが含まれる。さらに、例えば米国特許第6,500,930号または同第6,620,413号で説明されているように、炭水化物オリゴマーおよびポリマー、例えばHESを、血清半減期を延長する目的で本開示のムテインにコンジュゲートすることができる。
【0154】
いくつかの態様において、免疫グロブリンのFc部分が、本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質の血清半減期を長くする目的で使用される場合、Syntonix Pharmaceuticals, Inc. (MA, USA)から市販されているSynFusion(商標)技術が使用され得る。このFc融合技術の使用により、より長い時間作用する生物薬剤を作製することが可能になり、例えば、薬物動態、溶解度、および製造効率を向上させるために抗体のFc領域に連結されたムテインの2つのコピーからなり得る。
【0155】
リポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質の血清半減期を延長するために使用され得るアルブミン結合ペプチドの例は、例えば、米国特許出願公開第20030069395号またはDennis et al. (2002)において説明されているように、Cys-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Cysコンセンサス配列(式中、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr、またはTrpであり;Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu、またはLysであり;Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp、またはTyrであり;かつXaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、またはThrである)を有するものである。血清半減期を延長するためにリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質に融合またはコンジュゲートされるアルブミン結合タンパク質は、細菌のアルブミン結合タンパク質、抗体、ドメイン抗体を含む抗体断片(例えば米国特許第6,696,245号を参照されたい)、またはアルブミンに対する結合活性を有するリポカリンムテインであってよい。細菌のアルブミン結合タンパク質の例には、連鎖球菌プロテインGが含まれる(Konig and Skerra, 1998)。
【0156】
いくつかの態様において、アルブミン結合タンパク質が抗体断片である場合、それはドメイン抗体であってよい。ドメイン抗体(dAb)は、生物物理学的特性およびインビボ半減期の正確な制御を可能にして安全性および有効性が最適な生成物プロファイルをもたらすように、操作される。例えば、ドメイン抗体は、Domantis Ltd.(Cambridge, UKおよびMA, USA)から市販されている。
【0157】
いくつかの態様において、アルブミンそれ自体(Osborn et al., 2002)またはアルブミンの生物学的に活性な断片を、血清半減期を延長するために本開示のリポカリンムテインのパートナーとして使用することができる。「アルブミン」という用語は、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンもしくはラットアルブミンなどの哺乳動物アルブミンすべてを含む。アルブミンまたはその断片は、米国特許第5,728,553号または欧州特許公報EP0330451およびEP0361991において説明されているように組換えによって作製することができる。したがって、組換えヒトアルブミン(例えば、Novozymes Delta Ltd., Nottingham, UKによるRecombumin(登録商標))を、本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質にコンジュゲートまたは融合することができる。
【0158】
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質の血清半減期を延長するためにトランスフェリンがパートナーとして使用される場合、これらのムテインを、非グリコシル化トランスフェリンのN末端もしくはC末端、または両方に遺伝学的に融合することができる。非グリコシル化トランスフェリンの半減期は14~17日であり、トランスフェリン融合タンパク質は、延長された半減期を同様に有すると考えられる。また、トランスフェリン担体は、高度な生物学的利用能、体内分布、および循環血中安定性も与える。この技術は、BioRexis(BioRexis Pharmaceutical Corporation, PA, USA)から市販されている。タンパク質安定化物質/半減期延長パートナーとして使用するための組換えヒトトランスフェリン(DeltaFerrin(商標))もまた、Novozymes Delta Ltd.(Nottingham, UK)から市販されている。
【0159】
本開示のリポカリンムテインの半減期を長くするためのさらに別の代替方法は、リポカリンムテイン、モノマーポリペプチド、または多量体タンパク質のN末端またはC末端に、長くて明確な構造を持たず柔軟なグリシンリッチ配列(例えば、約20~80個の連続したグリシン残基を有するポリグリシン)を融合することである。例えば国際特許公報WO2007/038619において開示されているこのアプローチは、「rPEG」(組換えPEG)とも呼ばれている。
【0160】
E 多量体タンパク質に含まれる例示的なGPC3ターゲティング部分
いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質に関して、GPC3ターゲティング部分は、GPC3に特異的な完全長抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物であってよいか、あるいはそれを含んでよい。いくつかの態様において、GPC3ターゲティング部分は、GPC3に特異的な単鎖可変断片(scFv)であってよいか、またはそれを含んでよい。
【0161】
本開示のGPC3結合抗体の例示的な例は、コドリツズマブ(GC33またはRO5137382としても公知)、YP7(ヒト化YP7を含む)、HN3、およびHS20などの公知の抗体の重鎖可変ドメイン(VH)領域および軽鎖可変ドメイン(VL)領域を含むGPC3結合抗体と同じエピトープを交差妨害するか、またはそれに結合する、抗原結合領域を含んでよい。いくつかの態様において、本開示のGPC3結合抗体は、コドリツズマブ、YP7、HN3、およびHS20からなる群より選択される抗体に由来する3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のいずれか1つなどの抗原結合領域を含んでよい。
【0162】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物は、SEQ ID NO: 104、SEQ ID NO: 105、SEQ ID NO: 115、SEQ ID NO: 120、およびSEQ ID NO: 126からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)ならびに/またはSEQ ID NO: 106、SEQ ID NO: 116、SEQ ID NO: 127、およびSEQ ID NO: 128からなる群より選択される軽鎖可変領域(LCVR)を有し得る。
【0163】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物の重鎖および軽鎖のペアは、次のように、それぞれHCVRおよびLCVRであるか、またはそれらを含む:SEQ ID NO: 104およびSEQ ID NO: 106、SEQ ID NO: 106およびSEQ ID NO: 106、SEQ ID NO: 115およびSEQ ID NO: 116、SEQ ID NO: 126およびSEQ ID NO: 127、またはSEQ ID NO: 126およびSEQ ID NO: 128。
【0164】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物の重鎖および軽鎖のペアは、それぞれHCVRおよびLCVRであるか、またはそれらを含み、前記HCVRおよび前記LCVRは、SEQ ID NO: 104およびSEQ ID NO: 106、SEQ ID NO: 106およびSEQ ID NO: 106、SEQ ID NO: 115およびSEQ ID NO: 116、SEQ ID NO: 126および127、またはSEQ ID NO: 126および128に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を有する。
【0165】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物は、SEQ ID NO: 104もしくはSEQ ID NO: 105である重鎖および/またはSEQ ID NO: 106である軽鎖を有し得る。
【0166】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体の重鎖および軽鎖のペアは、SEQ ID NO: 104およびSEQ ID NO: 106もしくはSEQ ID NO: 105およびSEQ ID NO: 106に示されるアミノ酸配列であるか、またはそれらを含む。
【0167】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体の重鎖および軽鎖のペアは、SEQ ID NO: 104および106またはSEQ ID NO: 105およびSEQ ID NO: 106に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはそれより高い配列同一性を有する配列を有する重鎖および軽鎖であるか、またはそれらを含む。
【0168】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 104、SEQ ID NO: 105、SEQ ID NO: 115、SEQ ID NO: 120、およびSEQ ID NO: 126からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはさらに高い配列同一性を有するHCVR、ならびに/またはSEQ ID NO: 106、SEQ ID NO: 116、SEQ ID NO: 127、およびSEQ ID NO: 128からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはさらに高い配列同一性を有するLCVRを有し得る。他の態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 104およびSEQ ID NO: 105からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはさらに高い配列同一性を有する重鎖、および/またはSEQ ID NO: 106のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはさらに高い配列同一性を有する軽鎖を有し得る。
【0169】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの重鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの重鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの重鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの重鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。
【0170】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの軽鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの軽鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインの軽鎖可変領域は、以下の配列:
を有する3つのCDRを有し得る。
【0171】
いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインは、以下の配列:
を有する3つのCDRを有する重鎖可変的領域(variably region)、および以下の配列:
を有する3つのCDRを有する軽鎖可変的領域を含む。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインは、以下の配列:
を有する3つのCDRを有する重鎖可変的領域、および以下の配列:
を有する3つのCDRを有する軽鎖可変的領域を含む。いくつかの態様において、提供されるGPC3抗体またはその抗原結合ドメインは、以下の配列:
を有する3つのCDRを有する重鎖可変的領域、および以下の配列:
を有する3つのCDRを有する軽鎖可変的領域を含む。
【0172】
いくつかの態様において、本明細書において開示される、GPC3に特異的な単鎖可変断片(scFv)は、SEQ ID NO: 104およびSEQ ID NO: 106またはSEQ ID NO: 105およびSEQ ID NO: 106に示されるアミノ酸配列を有するGPC3抗体に由来してよい。いくつかの態様において、提供される、GPC3に特異的なscFvは、SEQ ID NO: 98に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高い配列同一性を有し得る。いくつかの態様において、提供される、GPC3に特異的なscFvは、SEQ ID NO: 98に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0173】
別段の定めがない限り、本明細書において開示されるすべてのCDR配列は、Lefranc, M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999)において説明されているIMGT法に従って定義される。CDR1は、27~38位からなり;CDR2は、56~65位からなり;生殖系列V遺伝子の場合のCDR3は、105~116位からなり;再構成されたV-J遺伝子またはV-D-J遺伝子の場合のCDR3は、105~117位からなり(J-PHE 118もしくはJ-TRP 118の前の位置)、その際、アミノ酸が13個未満の再構成されたCDR3-IMGTの場合に、ループの上部に隙間を有しているか、またはアミノ酸が13個を超える再構成されたCDR3-IMGTの場合に、追加の位置112.1、111.1、112.2、111.2などを有している。この段落で示される位置は、Lefranc, M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999)において説明されているIMGT番号付与に従っている。
【0174】
抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物を作製するための様々な技術が当技術分野において周知であり、例えばAltshuler et al. (2010)において説明されている。したがって、例えば、ポリクローナル抗体は、添加物およびアジュバントと混合した抗原を用いて免疫化した後に動物の血液からを得ることができ、モノクローナル抗体は、連続的な細胞株培養によって産生される抗体をもたらす任意の技術によって作製することができる。このような技術の例は、例えば、Harlow and Lane (1999)、(1988)で説明されており、Kohler and Milstein, 1975によって最初に説明されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Li et al., 2006、Kozbor and Roder, 1983を参照されたい)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1984)が含まれる。さらに、モノクローナル抗体から組換え抗体を得てもよく、またはファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、もしくは細胞ディスプレイなど様々なディスプレイ方法を用いて組換え抗体を新規に調製することができる。いくつかの態様において、組換え(ヒト化)抗体またはその断片を発現させるための適切な系は、例えば、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物細胞株、またはトランスジェニック動物もしくはトランスジェニック植物より選択され得る(例えば、米国特許第6,080,560号、Holliger and Hudson, 2005を参照されたい)。さらに、単鎖抗体の作製のために説明されている技術(とりわけ、米国特許第4,946,778号を参照されたい)を適応させて、本発明の標的に特異的な単鎖抗体を作製することができる。BIAcoreシステムで使用される表面プラズモン共鳴を用いて、ファージ抗体の効率を高めることができる。
【0175】
他のいくつかの態様において、提供される多量体タンパク質に関して、GPC3ターゲティング部分は、GPC3をターゲティングするリポカリンムテインであってよいか、またはそれを含んでよい。
【0176】
いくつかの局面において、本開示は、GPC3に結合するhNGALムテインを提供する。この点に関して、本開示は、約1nM、0.5nM、0.3nM、0.2nM、またはそれ未満のKDによって示される親和性でGPC3に結合することができる、1種類または複数種類のhNGALムテインを提供する。
【0177】
いくつかの態様において、提供される、GPC3に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、40位、41位、49位、52位、65位、68位、70位、72位、73位、77位、79位、81位、87位、96位、100位、103位、105位、106位、125位、127位、132位、134位、136位、および175位に対応する1つまたは複数の位置において、変異アミノ酸残基を含んでよい。
【0178】
いくつかの態様において、提供される、GPC3に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、40位、41位、49位、52位、65位、68位、70位、72位、73位、77位、79位、81位、87位、96位、100位、103位、105位、106位、125位、127位、132位、134位、136位、および175位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、さらにそれより多い、例えば、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、またはすべての変異アミノ酸残基を含む。
【0179】
いくつかの態様において、提供される、GPC3に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、下記の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つを含んでよい:
【0180】
いくつかの態様において、残りの領域、すなわち、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、40位、41位、49位、52位、65位、68位、70位、72位、73位、77位、79位、81位、87位、96位、100位、103位、105位、106位、125位、127位、132位、134位、136位、および175位とは異なる領域において、本開示のGPC3に結合するhNGALムテインは、変異したアミノ酸配列位置以外では、成熟hNGALの野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0181】
いくつかの態様において、本開示のGPC3に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの配列(SEQ ID NO: 2)に対して少なくとも70%の配列同一性または少なくとも70%の配列相同性を有する。例示的な例として、SEQ ID NO: 90のムテインは、成熟hNGALのアミノ酸配列に対して約87%のアミノ酸配列同一性または配列相同性を有する。
【0182】
いくつかの態様において、本開示のGPC3に結合するhNGALムテインは、SEQ ID NO: 74~97のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含む。
【0183】
いくつかの態様において、本開示のGPC3に結合するhNGALムテインは、SEQ ID NO: 74~97からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する。
【0184】
本開示はまた、SEQ ID NO: 74~97からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、GPC3に結合するhNGALムテインの構造的ホモログを含み、この構造的ホモログは、前記hNGALムテインに対して、約60%より高い、好ましくは65%より高い、70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、92%より高い、および最も好ましくは95%より高い、アミノ酸配列相同性または配列同一性を有する。
【0185】
F 多量体タンパク質に含まれる例示的なPD-L1ターゲティング部分
いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質に関して、PD-L1ターゲティング部分は、PD-L1に特異的な単鎖可変断片(scFv)であってよいか、またはそれを含んでよい。例えば、PD-L1に特異的なscFvは、アテゾリズマブ(MPDL3280AまたはRG7446としても公知、商品名Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(MSB0010718Cとしても公知、商品名Bavencio(登録商標))、デュルバルマブ(MEDI4736として既知、商品名Imfinzi(登録商標))、およびBMS-936559(MDX-1105としても公知)からなる群より選択される、PD-L1に特異的な抗体に由来してよい。これらおよび他の適切な、PD-L1に特異的な抗体は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2020/025659 A1においてさらに説明されている。
【0186】
いくつかの態様において、提供される、PD-L1に特異的なscFvは、SEQ ID NO: 172に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高い配列同一性を有し得る。いくつかの態様において、提供される、PD-L1に特異的なscFvは、SEQ ID NO: 172の重鎖CDRおよび軽鎖 CDRと同じ配列を有する重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。いくつかの態様において、提供される、PD-L1に特異的なscFvは、SEQ ID NO: 172に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0187】
G 多量体タンパク質に含まれる例示的なOX40ターゲティング部分
いくつかの態様において、提供される多量体タンパク質に関して、OX40ターゲティング部分は、OX40をターゲティングするリポカリンムテインであってよいか、またはそれを含んでよい。
【0188】
いくつかの特定の態様において、OX40をターゲティングするリポカリンムテインは、hTlcムテインである。他のいくつかの態様において、OX40をターゲティングするリポカリンムテインは、hNGALムテインである。いくつかの態様において、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ法で測定した場合に、ムテインは、約500nMまたはそれ未満、約400nMまたはそれ未満、約300nMまたはそれ未満、約200nMまたはそれ未満、約150nMまたはそれ未満、約100nMまたはそれ未満、約70nMまたはそれ未満、約50nMまたはそれ未満、約30nMまたはそれ未満、約20nMまたはそれ未満、約15nMまたはそれ未満、約10nMまたはそれ未満、約5nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、約2nMまたはそれ未満、約1nMまたはそれ未満、約0.5nMまたはさらにそれより小さいKDによって示される親和性でOX40に結合することができる。いくつかの態様において、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイ法で測定した場合に、ムテインは、約250nMまたはそれ未満、約200nMまたはそれ未満、約150nMまたはそれ未満、約100nMまたはそれ未満、約70nMまたはそれ未満、約50nMまたはそれ未満、約30nMまたはそれ未満、約20nMまたはそれ未満、約15nMまたはそれ未満、約10nMまたはそれ未満、約7nMまたはそれ未満、約5nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、約2nMまたはそれ未満、約1nMまたはさらにそれより小さいEC50値でOX40に結合する。いくつかの態様において、ムテインは、ヒトOX40とカニクイザルOX40の両方と交差反応性である。いくつかの態様において、ムテインは、OX40へのOX40リガンド(OX40L)の結合を邪魔する。いくつかの態様において、ムテインは、OX40への結合についてOX40Lと競合する。
【0189】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、6位、8位、11位、19位、23位、26~34位、36位、37位、40位、52位、55~56位、58位、60~61位、65位、79位、86位、101位、104~106位、108位、111位、113~114位、116位、121位、124位、137位、140位、148位、および153位に対応する1つまたは複数の(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、またはさらにそれより多い)位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の前述の位置のうちの1つまたは複数において、10個またはそれより多い変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の前述の位置のうちの1つまたは複数において、15個またはそれより多い変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の前述の位置のうちの1つまたは複数において、20個またはそれより多い変異アミノ酸残基を含む。
【0190】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、6位、8位、11位、19位、23位、26~34位、36位、37位、40位、52位、55~56位、58位、60~61位、65位、79位、86位、101位、104~106位、108位、111位、113~114位、116位、121位、124位、137位、140位、148位、および153位に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、もしくはそれより多い、またはさらにはすべての残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの10個またはそれより多い残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの15個またはそれより多い残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの20個またはそれより多い残基を含む。
【0191】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の26~34位、55~56位、60位、101位、104~105位、108位、111位、および114位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、または18個の残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの10個またはそれより多い残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの15個またはそれより多い残基を含む。
【0192】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の23位、26~34位、55~56位、58位、60~61位、101位、104~106位、108位、111位、114位、および153位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhTlcムテインは、成熟hTlc(SEQ ID NO: 1)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、または23個の残基を含む。
【0193】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、6位、8位、11位、19位、36位、37位、40位、52位、65位、79位、86位、113位、116位、121位、124位、137位、140位、および148位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
【0194】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)と比較して、下記の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つを含んでよい:
【0195】
いくつかの態様において、OX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)と比較して、前述の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つに含まれる変異アミノ酸残基を、3つを除くすべて、2つを除くすべて、または1つを除くすべて含む。
【0196】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhTlcムテイン残りの領域、すなわち、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 1)の5位、6位、8位、11位、19位、23位、26~34位、36位、37位、40位、52位、55~56位、58位、60~61位、65位、79位、86位、101位、104~106位、108位、111位、113~114位、116位、121位、124位、137位、140位、148位、および153位に対応する位置とは異なる領域は、変異したアミノ酸配列位置以外では、成熟hTlcの直鎖ポリペプチド配列の野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0197】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhTlcムテインは、成熟hTlcの配列(SEQ ID NO: 1に対して少なくとも70%の配列同一性または少なくとも70%の配列相同性を有する。例示的な例として、SEQ ID NO: 182のムテインは、成熟hTlcのアミノ酸配列に対して約84%のアミノ酸配列同一性または配列相同性を有する。
【0198】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhTlcムテインは、SEQ ID NO: 174~184のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含む。
【0199】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhTlcムテインは、SEQ ID NO: 174~184からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する。
【0200】
本開示はまた、SEQ ID NO: 173~183からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するOX40に結合するhTlcムテインの構造的ホモログを含み、この構造的ホモログは、前記hTlcムテインに対して、約60%より高い、好ましくは65%より高い、70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、92%より高い、および最も好ましくは95%より高い、アミノ酸配列相同性または配列同一性を有する。
【0201】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の3位、21位、25~26位、28位、36位、40~41位、44位、49~50位、52位、55位、59位、60位、62~63位、65位、68位、70位、72~73位、75位、77~83位、87位、93位、96位、98位、100位、103位、106位、108位、114位、118位、125位、127位、129位、132位、134位、143位、150位、164位、および170位に対応する1つまたは複数の(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、またはさらにそれより多い)位置に変異アミノ酸残基を含んでよい。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の前述の位置のうちの1つまたは複数において、10個またはそれより多い変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の前述の位置のうちの1つまたは複数において、15個またはそれより多い変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の前述の位置のうちの1つまたは複数において、20個またはそれより多い変異アミノ酸残基を含む。
【0202】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の3位、21位、25~26位、28位、36位、40~41位、44位、49~50位、52位、55位、59位、60位、62~63位、65位、68位、70位、72~73位、75位、77~83位、87位、93位、96位、98位、100位、103位、106位、108位、114位、118位、125位、127位、129位、132位、134位、143位、150位、164位、および170位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、またはすべての変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの10個またはそれより多い残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの15個またはそれより多い残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、前述の変異アミノ酸残基のうちの20個またはそれより多い残基を含む。
【0203】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の36位、40~41位、49位、52位、68位、72~73位、77位、79位、81位、87位、96位、100位、103位、106位、125位、127位、132位、および134位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO: 2)のこれらの配列位置において、2個またはそれより多い、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の変異アミノ酸残基を含む。
【0204】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の3位、21位、25~26位、28位、44位、50位、55位、59~60位、62~63位、65位、70位、75位、78位、80位、82~83位、93位、98位、108位、114位、118位、129位、143位、150位、164位、および170位に対応する1つまたは複数の位置において、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含んでよい:
【0205】
いくつかの態様において、提供される、OX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、下記の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つを含んでよい:
【0206】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、次の変異アミノ酸残基のセット:
を含み、かつ/またはSEQ ID NO: 194のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する。
【0207】
いくつかの態様において、OX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)と比較して、前述の変異アミノ酸残基のセットのうちの1つに含まれる変異アミノ酸残基を、3つを除くすべて、2つを除くすべて、または1つを除くすべて含む。
【0208】
いくつかの別の態様において、残りの領域、すなわち、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列(SEQ ID NO: 2)の3位、21位、25~26位、28位、36位、40~41位、44位、49~50位、52位、55位、59位、60位、62~63位、65位、68位、70位、72~73位、75位、77~83位、87位、93位、96位、98位、100位、103位、106位、108位、114位、118位、125位、127位、129位、132位、134位、143位、150位、164位、および170位とは異なる領域において、本開示のhNGALムテインは、変異したアミノ酸配列位置以外では、成熟hNGALの野生型(天然)アミノ酸配列を含んでよい。
【0209】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhNGALムテインは、成熟hNGALの配列(SEQ ID NO: 2)に対して少なくとも70%の配列同一性または少なくとも70%の配列相同性を有する。例示的な例として、SEQ ID NO: 194のムテインは、成熟hNGALのアミノ酸配列に対して約83%のアミノ酸配列同一性または配列相同性を有する。
【0210】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhNGALムテインは、SEQ ID NO: 185~202のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含む。
【0211】
いくつかの態様において、本開示のOX40に結合するhNGALムテインは、SEQ ID NO: 185~202からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有する。
【0212】
本開示はまた、SEQ ID NO: 185~202からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、OX40に結合するhNGALムテインの構造的ホモログを含み、この構造的ホモログは、前記hNGALムテインに対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の、アミノ酸配列相同性または配列同一性を有する。
【0213】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質中で使用するためのOX40ターゲティング部分は、OX40をターゲティングするscFvであってよいか、またはそれを含んでよい。このようなscFvは、例えば、OX40をターゲティングする公知の抗体、例えば、MEDI0562、BMS-986178、またはPF-04518600に由来してよい。
【0214】
H 多量体タンパク質の例示的な使用および適用
いくつかの態様において、本開示は、治療法における使用のための、本開示の多量体タンパク質、本開示の核酸分子、そのような多量体タンパク質および/もしくはそのような核酸分子を含む組成物、ならびに/または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。
【0215】
いくつかの態様において、本開示は、本開示の多量体タンパク質、本開示の核酸分子、および/または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞を含む薬学的組成物を包含する。
【0216】
いくつかの態様において、本開示は、医薬の製造のための、本開示の多量体タンパク質、本開示の核酸分子、そのような多量体タンパク質および/もしくは核酸分子を含む組成物、ならびに/または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。
【0217】
いくつかの態様において、本開示は、がん、例えば、GPC3陽性がんまたはPD-L1陽性がんの治療のための、本開示の多量体タンパク質、本開示の核酸分子、そのような多量体タンパク質および/もしくはそのような核酸分子を含む組成物、細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞、本開示の薬学的組成物、ならびに/または本開示の医薬を包含する。いくつかの態様において、がんは固形腫瘍である。
【0218】
いくつかの態様において、本開示は、T細胞を共刺激しかつ/または4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)の下流のシグナル伝達経路を活性化するための、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。いくつかの態様において、T細胞はCD4+ T細胞であるか、CD8+ T細胞であるか、または両方を含む。共刺激されたT細胞および/または4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)の下流のシグナル伝達経路が活性化されたT細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌するT細胞であってよい。共刺激されたT細胞および/または4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)の下流のシグナル伝達経路が活性化されたT細胞はまた、バイスタンダー免疫細胞、例えばT細胞、すなわち、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌しない免疫細胞またはT細胞であってもよい。しかし、バイスタンダー免疫細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌する細胞の近くに存在してよい。バイスタンダー免疫細胞は、別の腫瘍浸潤T細胞であってもよい。本開示は、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞を投与することによって、T細胞を共刺激し、かつ/または4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)の下流のシグナル伝達経路を活性化する方法を提供する。
【0219】
いくつかの態様において、本開示は、T細胞上での4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)のクラスター形成および/または活性化を誘導するための、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。いくつかの態様において、T細胞はCD4+ T細胞であるか、CD8+ T細胞であるか、または両方を含む。4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)のクラスター形成が誘導されたか、かつ/または活性化されたT細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌するT細胞であってよい。4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)のクラスター形成が誘導されたか、かつ/または活性化されたT細胞はまた、バイスタンダー免疫細胞、例えばバイスタンダーT細胞、すなわち、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌しない免疫細胞またはT細胞であってもよい。しかし、バイスタンダー免疫細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌する細胞の近くに存在してよい。バイスタンダー免疫細胞は、別の腫瘍浸潤T細胞であってもよい。本開示は、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞を投与することによって、T細胞上での4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)のクラスター形成および活性化を誘導する方法を提供する。
【0220】
いくつかの態様において、本開示は、4-1BBおよびGPC3または4-1BBおよびPD-L1に同時に結合するための、本明細書において開示される1種類もしくは複数種類の多量体タンパク質またはそのような多量体タンパク質を含む1種類もしくは複数種類の組成物の使用を包含する。いくつかの態様において、本開示は、GPC3を発現する腫瘍細胞またはPD-L1を発現する腫瘍細胞に結合した場合にT細胞を共刺激しかつ/または4-1BBの下流のシグナル伝達経路を活性化するための、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。いくつかの態様において、T細胞はCD4+ T細胞であるか、CD8+ T細胞であるか、または両方を含む。共刺激されたT細胞および/または4-1BBの下流のシグナル伝達経路が活性化されたT細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌するT細胞であってよい。共刺激されたT細胞および/または4-1BBの下流のシグナル伝達経路が活性化されたT細胞はまた、バイスタンダー免疫細胞、例えばT細胞、すなわち、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌しない免疫細胞またはT細胞であってもよい。しかし、バイスタンダー免疫細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌する細胞の近くに存在してよい。バイスタンダー免疫細胞は、別の腫瘍浸潤T細胞であってもよい。本開示は、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞を投与することによって、GPC3を発現する腫瘍細胞またはPD-L1を発現する腫瘍細胞に結合した場合にT細胞上での4-1BBのクラスター形成および活性化を誘導する方法を提供する。
【0221】
いくつかの態様において、本開示は、4-1BBおよび腫瘍関連抗原に同時に結合するための、本明細書において開示される1種類もしくは複数種類の多量体タンパク質またはそのような多量体タンパク質を含む1種類もしくは複数種類の組成物、あるいは細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。いくつかの態様において、本開示は、TAAを発現する腫瘍細胞または腫瘍に結合した場合にT細胞を共刺激しかつ/または4-1BBの下流のシグナル伝達経路を活性化するための、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞の使用を包含する。共刺激されたT細胞および/または4-1BBの下流のシグナル伝達経路が活性化されたT細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌するT細胞であってよい。共刺激されたT細胞および/または4-1BBの下流のシグナル伝達経路が活性化されたT細胞はまた、バイスタンダー免疫細胞、例えばT細胞、すなわち、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌しない免疫細胞またはT細胞であってもよい。しかし、バイスタンダー免疫細胞は、多量体タンパク質および/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/または分泌する細胞の近くに存在してよい。バイスタンダー免疫細胞は、別の腫瘍浸潤T細胞であってもよい。本開示は、本開示の多量体タンパク質、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物、または細胞、特に、T細胞などの免疫細胞、例えば、本開示のCAR-T細胞を投与することによって、GPC3を発現する腫瘍細胞またはPD-L1を発現する腫瘍細胞に結合した場合にT細胞上での4-1BBのクラスター形成および活性化を誘導する方法を提供する。
【0222】
いくつかの態様において、本開示は、抗腫瘍物質および/または抗感染物質ならびに免疫調節物質などの使用のための、4-1BBとGPC3もしくはPD-L1とに同時に結合する多量体タンパク質、または多量体タンパク質および/もしくはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現および/もしくは分泌する細胞を提供する。いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、GPC3を発現する腫瘍細胞(例えば、HCC、黒色腫、メルケル細胞がん、ウィルムス腫瘍、および肝芽腫細胞)またはPD-L1を発現する腫瘍細胞を同時にターゲティングし、かつそのような腫瘍細胞に隣接した宿主免疫系のリンパ球を活性化し得る。
【0223】
本開示の付加的な目的、利点、および特徴は、限定することを意図しない以下の実施例およびその添付図面を考察すると、当業者に明らかになるであろう。したがって、本開示は例示的な態様および任意の特徴によって具体的に開示されるが、本明細書において開示されその中で具体化される本開示の修正および変更を当業者は行ってもよいこと、ならびにそのような修正および変更が本開示の範囲内であるとみなされることを理解すべきである。
【0224】
I 多量体タンパク質の生産
いくつかの態様において、本開示は、提供される多量体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(DNAおよびRNA)を提供する。いくつかの態様において、本開示は、多量体タンパク質に含まれる提供されるモノマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(DNAおよびRNA)を提供する。いくつかの態様において、本開示は、提供される核酸分子を含む細胞を包含する。遺伝コードの縮重により、いくつかのコドンが、同じアミノ酸を指定する他のコドンによって置き換えられることが可能であるため、本開示は、本明細書において説明される多量体タンパク質または前記多量体タンパク質に含まれるモノマーポリペプチドをコードする特定の核酸分子に限定されず、もっと正確に言えば、機能的多量体タンパク質または前記多量体タンパク質に含まれるモノマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むあらゆる核酸分子を包含する。これに関して、本開示はまた、提供される多量体タンパク質または前記多量体タンパク質に含まれるモノマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にも関する。SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167のモノマーポリペプチドをコードする、本開示によって提供される例示的なヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO: 144~161およびSEQ ID NO: 168~171に示されている。SEQ ID NO: 144~161およびSEQ ID NO: 168~171からなる群より選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ本開示のモノマーポリペプチドをコードする、これらのヌクレオチド配列のバリアントもまた、本明細書において提供される。
【0225】
DNAなどの核酸分子は、転写調節および/または翻訳調節に関する情報を含む配列エレメントを含み、そのような配列が、タンパク質をコードするヌクレオチド配列に「機能的に連結され」ている場合、「核酸分子を発現させることができる」または「ヌクレオチド配列の発現を可能にすることができる」と呼ばれる。機能的な連結とは、調節配列エレメントおよび発現されるべき配列が、遺伝子発現を可能にするように結合されている連結である。遺伝子発現に必要な調節領域の厳密な性質は、種によって様々であり得るが、一般に、これらの領域はプロモーターを含み、プロモーターは、原核生物では、プロモーターそれ自体、すなわち、転写開始を指示するDNAエレメントと、RNAに転写されると翻訳開始の合図を出すと考えられるDNAエレメントの両方を含む。通常、このようなプロモーター領域は、原核生物の-35/-10ボックスおよびシャイン・ダルガノエレメント、または真核生物のTATAボックス、CAAT配列、および5'キャッピングエレメントなどの、転写および翻訳の開始に関与する5'非コード配列を含む。また、これらの領域は、エンハンサーエレメントまたはリプレッサーエレメント、ならびにネイティブなタンパク質を宿主細胞の特定の区画にターゲティングするための翻訳されたシグナル配列およびリーダー配列も含み得る。
【0226】
さらに、3'非コード配列は、転写終結またはポリアデニル化などに関与している調節エレメントを含み得る。しかし、これらの終結配列が、特定の宿主細胞において充分に機能的ではない場合、それらは、その細胞において機能的なシグナルで置換されてよい。
【0227】
したがって、本開示の核酸分子は、この核酸分子の発現を可能にするために1つまたは複数の調節配列、例えばプロモーター配列に「機能的に連結され」てよい。いくつかの態様において、本開示の核酸分子は、プロモーター配列および転写終結配列を含む。適切な原核生物プロモーターは、例えば、tetプロモーター、lacUV5プロモーター、またはT7プロモーターである。真核細胞での発現に有用なプロモーターの例は、SV40プロモーターまたはCMVプロモーターである。
【0228】
いくつかの態様において、本出願において開示される多量体タンパク質に含まれる提供されるモノマーポリペプチドの部分またはドメインをコードする核酸分子は、本明細書において開示される多量体タンパク質の発現を可能にするために、本開示の部分またはドメインをコードする別の核酸分子に「機能的に連結され」てよい。
【0229】
いくつかの態様において、提供される核酸分子はまた、ベクターまたは他の任意の種類のクローニングビヒクル、例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ、バキュロウイルス、コスミド、もしくは人工染色体の一部分であることもできる。いくつかの態様において、提供される核酸分子を、宿主細胞のゲノムDNA中に含ませることもできる。いくつかの態様において、提供される核酸分子を、発現ベクター中に含ませることができる。このようなベクターは、ウイルスベクターであってよい。哺乳動物細胞などの動物細胞における発現のためのウイルスベクターは、当技術分野において公知である。免疫細胞における発現のためのウイルスベクターは、例えば、参照により本明細書に組み入れられるWO 2016/113203 A1、Chmielewski et al. 2011 Cancer Res 71(17): 5697-706、Zhang et al. 2011 Mol Ther 19(4): 751-9、Pegram et al. 2012 Blood 119(18): 4133-41、およびPegram et al. 2014 Leukemia 29(2):415-22において開示されている。いくつかの態様において、核酸分子を、ナノ粒子中に含ませることができる。いくつかの態様において、核酸分子を、リポソーム中に含ませることができる。例えば、本開示の多量体タンパク質またはそのモノマーポリペプチドをコードするmRNAを、ナノ粒子中またはリポソーム中に含ませることができる。
【0230】
いくつかの態様において、提供される核酸分子は、ファージミド中に含まれてもよい。この文脈において使用される場合、ファージミドベクターとは、関心対象のcDNAに融合された、M13またはf1などのテンペレートファージの遺伝子間領域またはその機能的部分をコードするベクターを意味する。例えば、いくつかの態様において、細菌宿主細胞にそのような提供されるファージミドベクターおよび適切なヘルパーファージ(例えば、M13K07、VCS-M13、またはR408)を重感染させた後に、無傷のファージ粒子が生産され、それによって、コードされた異種cDNAを、ファージ表面に提示された対応するポリペプチドに物理的に結び付けることが可能になる(Lowman, 1997, Rodi and Makowski, 1999)。
【0231】
様々な態様によれば、クローニングビヒクルは、前述の調節配列および本明細書において説明する多量体タンパク質をコードする核酸配列とは別に、発現に使用される宿主細胞と適合性がある種に由来する複製配列および制御配列、ならびに形質転換された細胞またはトランスフェクトされた細胞に選択可能な表現型を与える選択マーカーを含むことができる。多数の適切なクローニングベクターが当技術分野において公知であり、市販されている。
【0232】
本開示はまた、いくつかの態様において、多量体タンパク質またはその中の任意のモノマーポリペプチドをコードしている核酸を出発材料として本開示の多量体タンパク質を生産するための方法にも関する。いくつかの態様において、提供される方法は、インビボで実施することができ、その際、提供される多量体タンパク質を、例えば、細菌宿主生物または真核宿主生物において生産することができる。多量体タンパク質は、宿主生物またはその培養物からさらに単離してよい。また、例えば、インビトロの翻訳系を用いて、本開示の多量体タンパク質をインビトロで生産することも可能である。
【0233】
インビボで多量体タンパク質を生産する場合、多量体タンパク質をコードする核酸を、当技術分野において周知の組換えDNA技術を用いて、適切な細菌宿主生物または真核宿主生物中に導入してよい。いくつかの態様において、本明細書において説明される多量体タンパク質をコードするDNA分子、特に、そのような多量体タンパク質のコード配列を含むクローニングベクターを、その遺伝子を発現することができる宿主細胞に形質転換させることができる。形質転換は、標準的技術を用いて実施することができる。したがって、本開示は、本明細書において開示される核酸分子を含む宿主細胞も対象としている。
【0234】
いくつかの態様において、形質転換された宿主細胞は、本開示の多量体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現させるのに適した条件下で培養されてよい。いくつかの態様において、宿主細胞は、原核性、例えば、大腸菌(Escherichia coli(E. coli))もしくは枯草菌(Bacillus subtilis)、または真核性、例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、SF9昆虫細胞もしくはHigh5昆虫細胞、不死化哺乳動物細胞株(例えば、HeLa細胞もしくはCHO細胞)、もしくは初代哺乳動物細胞であることができる。
【0235】
いくつかの態様において、本明細書において開示される多量体タンパク質に含まれるものを含めて、本開示のリポカリンムテインが分子内ジスルフィドを含む場合、適切なシグナル配列を用いて、酸化性の酸化還元環境を有する細胞区画に新生タンパク質を向かわせることが好ましい場合がある。このような酸化性環境は、大腸菌などのグラム陰性細菌の周辺質によって、グラム陽性細菌の細胞外環境において、または真核細胞の小胞体の内腔において提供されてよく、通常、構造的なジスルフィド結合の形成を促進する。
【0236】
いくつかの態様において、宿主細胞、好ましくは大腸菌のサイトゾルにおいて本開示の多量体タンパク質を生産することもまた可能である。この場合、提供される多量体タンパク質は、可溶性の折り畳まれた状態で直接的に得ることができるか、または封入体の形態で回収し、続いてインビトロで復元することができる。別の選択肢は、酸化性の細胞内環境を有しており、したがって、サイトゾルでのジスルフィド結合形成を可能にし得る特定の宿主株を使用することである(Venturi et al., 2002)。
【0237】
いくつかの態様において、本明細書において説明される本開示の多量体タンパク質は、全体的にまたは部分的に遺伝子工学を用いて、必ずしも生成または生産しなくてもよい。もっと正確に言えば、このようなタンパク質は、従来から使用され周知である多くの技術、例えば、単純な有機合成戦略、固相支援合成技術、市販の自動合成装置のいずれかによって、またはインビトロの転写および翻訳によっても得ることができる。例えば、分子モデリングを用いて有望な多量体タンパク質またはそのような多量体タンパク質に含まれるリポカリンムテイを特定し、インビトロで合成し、関心対象の標的に対する結合活性について調査することが可能である。タンパク質を固相合成および/または溶相合成するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Bruckdorfer et al., 2004を参照されたい)。
【0238】
いくつかの態様において、本開示の多量体タンパク質は、当業者に公知の十分に確立された方法を用いるインビトロの転写/翻訳によって生産され得る。
【0239】
いくつかの別の態様において、本明細書において説明される多量体タンパク質はまた、単独または従来の合成技術と組み合わせた従来の組換え技術によっても調製され得る。
【0240】
さらに、いくつかの態様において、本開示による多量体タンパク質は、個々のサブユニット、例えば、多量体タンパク質に含まれる単鎖可変断片およびリポカリンムテインを互いにコンジュゲートすることによって得てもよい。このようなコンジュゲーションは、例えば、従来の方法を用いて、共有結合または非共有結合のあらゆる形態を介して実現することができる。
【0241】
本発明の1つの好ましい適用は、武装化細胞療法におけるものである。炎症誘発性サイトカインを分泌する能力を有する組換えT細胞、例えばCAR-T細胞を設計することができる。このようにして、設計されたCAR-Tは、前記CAR-Tが行き来する腫瘍微小環境における炎症誘発性サイトカインの蓄積をもたらすことができる。炎症誘発性サイトカインは、局所に限定された様式で第二弾の免疫細胞の動員を促進して、腫瘍の細胞に対して、より全面的かつ場合によっては標的に依存しない攻撃を開始することが望まれる場合がある。このアプローチは、特に、インターロイキン12の操作された単鎖バリアント(以降、scIL-12と呼ぶ)を用いて説明されている。
【0242】
さらに他のタイプの治療的タンパク質を分泌するようにT細胞を操作できることが望ましいと考えられ、これができると、適応可能な範囲が、腫瘍微小環境で利用できる治療様式までさらに拡大する。本発明の多量体タンパク質を分泌するT細胞は、このニーズを満たす。
【0243】
このような構築物は、(遺伝子操作を用いない、またはCARもしくは組換えTCRを用いる形質導入による)定められた特異性を有するT細胞に基づくことができ、前記T細胞は、本発明の多量体タンパク質または個々のモノマーポリペプチドを分泌する能力を備えており、前記モノマーポリペプチドは、次いで自己集合して多量体タンパク質を構築し得る。当業者は、このアプローチがNK細胞またはB細胞などの他の細胞型に基づくこともできることを理解するであろう。
【0244】
いくつかの態様において、本開示による多量体タンパク質は、細胞によって発現され分泌され得る。いくつかの態様において、細胞は、多量体タンパク質を発現し分泌する。いくつかの態様において、細胞は、1種類または複数種類のモノマーポリペプチドを発現し分泌する。モノマーポリペプチドは、次いで多量体タンパク質へと自己集合し得る。モノマーポリペプチドおよび/または多量体タンパク質の発現および分泌は、インビトロまたはインビボのいずれかで起こることができる。
【0245】
インビボ適用の場合、モノマーポリペプチドおよび/または多量体タンパク質の発現および/または分泌が所望の組織または部位で起こる場合が有利である。例えば、発現および/または分泌が、腫瘍で、腫瘍間質で、腫瘍微小環境で、または腫瘍の近位で起こることが望ましい場合がある。
【0246】
いくつかの態様において、細胞は免疫細胞である。本明細書において使用される「免疫細胞」とは、免疫系の一部であり、身体が感染症および他の疾患と戦う助けをする細胞を意味する。免疫細胞には、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ならびにリンパ球、例えばB細胞および/またはT細胞が含まれる。免疫細胞は、組換え細胞であってよい。好ましい免疫細胞はT細胞である。いくつかの態様において、T細胞はCD8+ T細胞であってよい。いくつかの態様において、T細胞はCD4+ T細胞であってよい。いくつかの態様において、T細胞はCAR-T細胞であってよい。いくつかの態様において、免疫細胞、特に、T細胞は、組換え抗原受容体を含んでよい。このような組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であってよい。このような組換え抗原受容体は、T細胞受容体であってよい。免疫細胞、特にT細胞は、4-1BBを発現し得る。細胞、特に免疫細胞は、ヒト細胞、例えばヒトT細胞であってよいことが理解される。
【0247】
当業者は、本開示によって企図されるが、そのタンパク質配列または核酸配列が本明細書において明示的に開示されない多量体タンパク質を調製するために有用な方法を認識するであろう。概要として、アミノ酸配列のこのような改変には、例えば、特定の制限酵素のための切断部位を組み入れることにより、タンパク質遺伝子またはその一部分のサブクローニングを容易にするための、単一のアミノ酸位置を指定した変異誘発が含まれる。さらに、これらの変異は、その標的(例えば、4-1BB、OX40、PD-L1、およびGPC3)に対する多量体タンパク質の親和性をさらに向上させるために組み入れることもできる。さらに、変異は、必要に応じて、タンパク質の1つまたは複数の特徴を変えるため、例えば、フォールディング安定性、血清安定性、タンパク質耐性、もしくは水溶性を向上させるため、または凝集傾向を小さくするために、導入することもできる。
【0248】
本発明は、以下の項目をさらに特徴とし得る。
項目1 少なくとも3つのモノマーポリペプチドを含み、各モノマーポリペプチドが、(1)第1の4-1BBターゲティング部分(T1)および(2)オリゴマー形成部分(O)を含む、多量体タンパク質。
項目2 第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が、そのN末端またはC末端において、リンカー(L)を介してオリゴマー形成部分(O)のC末端またはN末端にそれぞれ融合されている、項目1の多量体タンパク質。
項目3 モノマーポリペプチドが、少なくとも1つの付加的なターゲティング部分(T2)を含む、項目1または2の多量体タンパク質。
項目4 モノマーポリペプチドが、付加的なターゲティング部分(T2)を含み、付加的なターゲティング部分が、第1の4-1BBターゲティング部分(T1)とタンデムに配置されている、項目1~3のいずれかの多量体タンパク質。
項目5 モノマーポリペプチドが、下記の配置:
(a) T1-L'-T2-L-O;
(b) T2-L'-T1-L-O;
(c) O-L-T1-L'-T2;または
(d) O-L-T2-L'-T1
のうちの1つを有し、ここで、L'が、Lと同じまたは異なるリンカーである、項目4の多量体タンパク質。
項目6 モノマーポリペプチドが、付加的なターゲティング部分(T2)を含み、
第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が連結されている末端とは異なる、オリゴマー形成部分(O)の末端に、付加的なターゲティング部分(T2)が連結されている、
項目1~3のいずれかの多量体タンパク質。
項目7 モノマーポリペプチドが、下記の配置:
(a) T1-L-O-L'-T2;または
(b) T2-L'-O-L-T1
のうちの1つを有し、ここで、L'が、Lと同じまたは異なるリンカーである、項目6の多量体タンパク質。
項目8 付加的なターゲティング部分(T2)が第2の4-1BBターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目9 第2の4-1BBターゲティング部分が第1の4-1BBターゲティング部分(T1)と同じである、項目8の多量体タンパク質。
項目10 付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目11 付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分であり、かつリポカリンムテインである、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目12 付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分であり、かつ抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目13 付加的なターゲティング部分(T2)が、腫瘍関連抗原をターゲティングする部分であり、かつ単鎖可変断片(scFv)である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目14 付加的なターゲティング部分(T2)がGPC3ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目15 付加的なターゲティング部分(T2)が、リポカリンムテインであるGPC3ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目16 リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 74~97からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目15の多量体タンパク質。
項目17 付加的なターゲティング部分(T2)が、抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物であるGPC3ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目18 付加的なターゲティング部分(T2)が、単鎖可変断片(scFv)であるGPC3ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目19 付加的なターゲティング部分(T2)がPD-L1ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目20 付加的なターゲティング部分(T2)が、単鎖可変断片(scFv)であるPD-L1ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目21 scFvが、SEQ ID NO: 172に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目20の多量体タンパク質。
項目22 付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目23 付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分であり、増大させるターゲティング部分がリポカリンムテインである、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目24 付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分であり、増大させるターゲティング部分が抗体またはその抗原結合ドメインもしくは派生物である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目25 付加的なターゲティング部分(T2)が、T細胞活性化を増大させるターゲティング部分であり、増大させるターゲティング部分が単鎖可変断片(scFv)である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目26 付加的なターゲティング部分(T2)がOX40ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目27 付加的なターゲティング部分(T2)が、リポカリンムテインであるOX40ターゲティング部分である、項目3~7のいずれかの多量体タンパク質。
項目28 リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 174~202からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目27の多量体タンパク質。
項目29 第1の4-1BBターゲティング部分(T1)がリポカリンムテインである、項目1~28のいずれかの多量体タンパク質。
項目30 第1の4-1BBターゲティング部分(T1)が、SEQ ID NO: 56~71からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するリポカリンムテインである、項目1~29のいずれかの多量体タンパク質。
項目31 オリゴマー形成部分(O)が三量体形成を促進することができる、項目1~30のいずれかの多量体タンパク質。
項目32 オリゴマー形成部分(O)がコラーゲンの三量体形成ドメインである、項目1~31のいずれかの多量体タンパク質。
項目33 オリゴマー形成部分(O)が、SEQ ID NO: 35~37からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目1~32のいずれかの多量体タンパク質。
項目34 三量体タンパク質である、項目1~33のいずれかの多量体タンパク質。
項目35 四量体タンパク質である、項目1~30および項目33のいずれかの多量体タンパク質。
項目36 リンカー(L)が、SEQ ID NO: 12~28からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目2~35のいずれかの多量体タンパク質。
項目37 SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目1~36のいずれかの多量体タンパク質。
項目38 SEQ ID NO: 38~55およびSEQ ID NO: 164~167からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~37のいずれかの多量体タンパク質。
項目39 約0.68nMまたはそれ未満の見かけのKD値で4-1BBに結合することができる、項目1~38のいずれかの多量体タンパク質。
項目40 多量体タンパク質が、4-1BBをターゲティングするリポカインムテインのKD値よりも低い見かけのKD値で4-1BBに結合することができ、4-1BBをターゲティングするリポカインムテインがモノマーポリペプチドに含まれる、項目1~39のいずれかの多量体タンパク質。
項目41 見かけのKD値が表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、項目39または40の多量体タンパク質。
項目42 カニクイザル4-1BBと交差反応性である、項目1~41のいずれかの多量体タンパク質。
項目43 項目1~42のいずれかの多量体タンパクに含まれるモノマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
項目44 核酸分子の発現を可能にする調節配列と機能的に連結されている、項目43の核酸分子。
項目45 ベクター中またはファージミドベクター中に含まれる、項目43または44の核酸分子。
項目46 ウイルスベクター中、ナノ粒子中、またはリポソーム中に含まれる、項目43または44の核酸分子。
項目47 宿主細胞のゲノムDNA中に含まれる、項目43~46のいずれかの核酸分子。
項目48 項目43~47のいずれかの核酸分子を含み、かつ/または項目1~42のいずれかの多量体タンパク質を発現し、かつ/または項目1~42のいずれか一項で定義されるモノマーポリペプチドを発現する、細胞。
項目49 多量体タンパク質および/またはモノマーポリペプチドを分泌する、項目48の細胞。
項目50 モノマーポリペプチドを分泌する、項目48の細胞。
項目51 モノマーポリペプチドが分泌後に多量体タンパク質へと自己集合する、項目50の細胞。
項目52 免疫細胞である、項目48~51のいずれかの細胞。
項目53 T細胞である、項目52の細胞。
項目54 CD8+ T細胞である、項目53の細胞。
項目55 CD4+ T細胞である、項目53の細胞。
項目56 組換え抗原受容体を含む、項目52~55のいずれかの細胞。
項目57 組換え抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、項目56の細胞。
項目58 組換え抗原受容体がT細胞受容体(TCR)である、項目56の細胞。
項目59 CAR-T細胞である、項目52~57のいずれかの細胞。
項目60 4-1BBを発現する、項目52~59のいずれかの細胞。
項目61 ヒト細胞である、項目52~60のいずれかの細胞。
項目62 項目1~42のいずれかの多量体タンパク質が、多量体タンパク質に含まれるモノマーポリペプチドをコードしている核酸を出発材料として生産される、多量体タンパク質を生産する方法。
項目63 多量体タンパク質が、細菌宿主生物または真核宿主生物において生産される、項目62の方法。
項目64 T細胞上での4-1BB(および/または、任意でOX40)のクラスター形成および活性化を誘導するための、項目1~42のいずれかの多量体タンパク質の使用、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物の使用、または項目48~61のいずれかの細胞の使用。
項目65 T細胞を共刺激しかつ/または4-1BB(および/もしくは、任意でOX40)の下流のシグナル伝達経路を活性化するための、項目1~42のいずれかの多量体タンパク質の使用、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物の使用、または項目48~61のいずれかの細胞の使用。
項目66 GPC3発現腫瘍細胞またはPD-L1発現腫瘍細胞に結合した場合にT細胞を共刺激するための、項目1~42のいずれかの多量体タンパク質の使用、もしくはそのような多量体タンパク質を含む組成物の使用、または項目48~61のいずれかの細胞の使用。
項目67 T細胞が、
多量体タンパク質を発現しかつ/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現する、T細胞
である、項目64~66のいずれかの使用。
項目68 T細胞が、
多量体タンパク質を発現せずかつ/またはそのモノマーポリペプチドのうちの1つを発現しない、T細胞
である、項目64~66のいずれかの使用。
項目69 項目1~42のいずれかの多量体タンパク質を1種類もしくは複数種類含み、かつ/または項目48~61のいずれかの細胞を1種類もしくは複数種類含む、薬学的組成物。
項目70 治療法における使用のための、項目1~42のいずれかの多量体タンパク質および/または項目48~61のいずれかの細胞。
項目71 使用ががんの治療におけるものである、項目70の使用のための多量体タンパク質および/または細胞。
項目72 医薬の製造のための、項目1~42のいずれかの多量体タンパク質の使用および/または項目48~61のいずれかの細胞の使用。
項目73 医薬ががんの治療のためのものである、項目72の使用。
【実施例
【0249】
V 実施例
実施例1:代表的な多量体タンパク質の発現および解析
この実施例において、多量体タンパク質は、構成要素であるモノマーポリペプチドの自己集合によって生じた。これらのモノマーポリペプチドは、4-1BBターゲティング部分、オリゴマー形成部分、および任意で1つまたは複数の付加的なターゲティング部分を互いに融合することによって作製した。
【0250】
1つまたは複数の本開示の4-1BBターゲティングリポカリンムテイン、例えばSEQ ID NO: 64を、SEQ ID NO: 12~28のいずれか1つに示されるリンカーなどのリンカーを介して、ヒトコラーゲンXVIII三量体形成ドメイン(SEQ ID NO: 35)のN末端、C末端、またはN末端およびC末端の両方に融合することによって、代表的なモノマーポリペプチドを作製した。作製した様々な形態を図1Aおよび図1Bに示している。さらに、本開示の4-1BBターゲティングリポカリンムテイン、例えば、SEQ ID NO: 64および(1)本開示のGPC3ターゲティング部分、例えば、SEQ ID NO: 90またはSEQ ID NO: 98、(2)本開示のOX40ターゲティング部分、例えばSEQ ID NO: 194、または(3)本開示のPD-L1ターゲティング部分、例えばSEQ ID NO: 172を、SEQ ID NO: 12~28のいずれか1つに示されるリンカーなどのリンカーを介して、ヒトコラーゲンXVIII三量体形成ドメイン(SEQ ID NO: 35)のN末端、C末端、またはN末端とC末端の両方に融合することによって、例示的な二重特異性モノマーポリペプチドを作製した。作製した様々な形態を図1Cに示している。
【0251】
図1Bに示されているモノマーポリペプチドの4-1BBターゲティング部分のうちの1つを、別の標的(すなわち4-1BB以外)をターゲティングする部分で置き換えることにより、その他の二重特異性形態を作製することができる。リンカーを介して、(1)本開示の4-1BBターゲティングリポカリンムテイン、例えば、SEQ ID NO: 64のC末端を本開示のOX40ターゲティングリポカリンムテイン、例えばSEQ ID NO: 194のN末端に、かつOX40ターゲティングリポカリンムテインのC末端をヒトコラーゲンXVIII三量体形成ドメイン(SEQ ID NO: 35)のN末端に融合して、例えばSEQ ID NO: 165のモノマーポリペプチドを得るか、または(2)本開示のOX40ターゲティングリポカリンムテイン、例えばSEQ ID NO: 194のC末端を本開示の4-1BBターゲティングリポカリンムテイン、例えば、SEQ ID NO: 64のN末端に、かつ4-1BBターゲティングリポカリンムテインのC末端をヒトコラーゲンXVIII三量体形成ドメイン(SEQ ID NO: 35)のN末端に融合して、例えばSEQ ID NO: 166のモノマーポリペプチドを得ることにより、例示的な二重特異性モノマーポリペプチドを作製した。
【0252】
モノマーポリペプチドの構築物を、C末端においてmyc-Hisタグ(SEQ ID NO: 131)に融合し、遺伝子合成によって作製し、哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。次いで、それらをExpi293F細胞またはExpiCHO-S細胞(Life Technologies)中で一過性に発現させ、自己集合させた。Hisタグ精製を行い、続いてリン酸緩衝食塩水(PBS)中でのサイズ排除クロマトグラフィーを行った後の例示的な多量体タンパク質の収量を表1に要約している。SEC精製後、所望のオリゴマー形成状態にある多量体タンパク質を含む画分を集め、解析的SECを用いて再び解析した(表1を参照されたい)。
【0253】
(表1)一過性発現
【0254】
実施例2:表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した、4-1BBに対する多量体タンパク質の結合
ヒト4-1BB(hu4-1BB)に対する例示的な多量体タンパク質の見かけの結合動態および親和性を、Biacore 8K装置(GE Healthcare)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。
【0255】
標準的なアミン化学反応を用いて、抗ヒトIgG Fc抗体(GE Healthcare)をCM5センサーチップ上に固定した:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて、チップ上のカルボキシル基を活性化した。続いて、10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)に溶かした濃度25μg/mLの抗ヒトIgG Fc抗体溶液(GE Healthcare)を、4000~10000レゾナンスユニット(RU)の固定化レベルに達するまで流速5μL/分で加えた。1Mエタノールアミン溶液を表面全体に流すことによって、残存している未反応NHSエステルをブロックした。参照流路を同様に処理した。続いて、0.3μg/mLのhu4-1BB-Fc(R&D Systems)を、流速10μL/分で180秒間、抗ヒトIgG-Fc抗体によってチップ表面に捕捉した。
【0256】
親和性を測定するために、各試験多量体ポリペプチドについての8~2000nMの範囲の様々な濃度の希釈物を、HBS-EP+緩衝液中で調製し、ヒト4-1BBに対する親和性の測定のために、前処理したチップ表面に加えた。180秒の接触時間、1200秒または3000秒の解離時間、および30μL/分の流速を用いて、結合アッセイ法を実施した。測定はいずれも25℃で実施した。多量体タンパク質に含まれるリポカリンムテインSEQ ID NO: 64もまた、陰性対照として試験した。3M MgCl2を流速10μL/分で120秒間注入し、続いて、ランニング緩衝液(HBS-EP+緩衝液)で追加洗浄して、チップ表面の再生を実現した。タンパク質測定の前に、コンディショニングのために開始サイクルを3回実施した。Biacore評価ソフトウェアを用いてデータを評価した。二重参照を用い、かつ1:1結合モデルを用いて生データを当てはめた。
【0257】
値はすべて、多価性相互作用に関するアッセイ法において測定され、得られたデータは、解析された多量体タンパク質の明らかな多価性相互作用を示し、1:1の結合挙動をとらない。それでもなお、おおよその比較を可能にするために1:1結合モデルを用いてデータを解析した。この点に関して、決定されたkon、koff、および平衡解離定数(KD)(表2)は、説明されたこのアッセイ法に固有な見かけの値である。
【0258】
試験された多量体タンパク質(SEQ ID NO: 38~54)は、多量体タンパク質に含まれる単量体リポカリンムテインSEQ ID NO: 64と比較して高い親和性(低いKD値)でhu4-1BBに結合することから、アビディティー効果が示唆される。
【0259】
(表2)SPRアッセイ法によって測定した、ヒト4-1BBに対する多量体タンパク質の見かけの速度定数および見かけの親和性
【0260】
実施例3 酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)における、4-1BBまたはGPC3への多量体タンパク質の結合
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、ヒト4-1BBまたはヒトGPC3への例示的な多量体タンパク質の結合能力を測定した。
【0261】
PBSに加えた濃度1μg/mLの組換えhu4-1BB-His(C末端ポリヒスチジンタグを有するヒト4-1BB、R&D Systems)で、マイクロタイタープレートを4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%T(0.05%(v/v)Tween 20を添加したPBS)で洗浄した後、これらのプレートを室温で1時間、PBS-0.1%T(0.1%(v/v)Tween 20を添加したPBS)中2%BSA(w/v)でブロックした。100μLのPBS-0.05%Tで5回洗浄した後、100~0.002nMの範囲の様々な濃度の例示的な多量体タンパク質(SEQ ID NO: 38~44およびSEQ ID NO: 46~53)または多量体タンパク質に含まれる4-1BBに特異的なリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 64)をウェルに添加し、室温で1時間インキュベーションし、続いて、洗浄段階をもう一度行った。PBS-0.1%T-2%BSA中で1:1000希釈した抗NGAL-HRPと共にインキュベーションすることにより、結合された研究対象分子を検出した。追加の洗浄段階の後、蛍光原性HRP基質(QuantaBlu, Thermo)を各ウェルに添加し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて蛍光強度を検出した。
【0262】
同じELISA設定を使用して、例示的な二重特異性多量体タンパク質(SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55)のGPC3に対する結合能力も測定し、その際、huGPC3-His(C末端ポリヒスチジンタグを有するヒトGPC3、R&D Systems)を代わりに用いてマイクロタイタープレートをコーティングした。試験物質を同様に段階的に変化させた濃度で添加し、結合した物質を検出した。
【0263】
例示的な実験の結果を、EC50値および最大シグナルが自由パラメーターであり、傾きを1に固定した1:1結合シグモイドフィッティングの結果として生じるあてはめ曲線と共に、図2に示している。得られたEC50値を表3に記載している。試験した全多量体タンパク質について、hu4-1BBに対する観察されたEC50値は、ナノモル濃度以下の範囲に含まれた。
【0264】
(表3)4-1BB結合またはGPC3結合に関するELISAデータ
【0265】
実施例4 二重特異性多量体タンパク質のGPC3および4-1BBへの同時結合
例示的な二重特異性多量体タンパク質のGPC3および4-1BBへの同時結合を実証するために、デュアル結合ELISA形式を使用した。
【0266】
PBSに加えた濃度1μg/mLの組換えhuGPC3-His(C末端ポリヒスチジンタグを有するヒトGPC3、R&D Systems)で、マイクロタイタープレートを4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%T(0.05%(v/v)Tween 20を添加したPBS)で洗浄した後、これらのプレートを室温で1時間、PBS-0.1%T(0.1%(v/v)Tween 20を添加したPBS)中2%BSA(w/v)でブロックした。100μLのPBS-0.05%Tで5回洗浄した後、100~0.002nMの範囲の様々な濃度の例示的な多量体タンパク質(SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55)をウェルに添加し、室温で1時間インキュベーションし、続いて、洗浄段階をもう一度行った。PBS-0.1%T-2%BSAに加えた1μg/mL組換えhu4-1BB-His(C末端ポリヒスチジンタグを有するビオチン標識ヒト4-1BB、Sino Biological)と共に1時間インキュベーションすることにより、結合された研究対象分子を検出した。この段階の後に、さらに洗浄段階を行い、かつPBS-0.1%T-2%BSA中で1:5000希釈したExtravidin-HRPと共にインキュベーションした。追加の洗浄段階の後、蛍光原性HRP基質(QuantaBlu, Thermo)を各ウェルに添加し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて蛍光強度を検出した。
【0267】
例示的な実験の結果を、EC50値および最大シグナルが自由パラメーターであり、傾きを1に固定した1:1結合シグモイドフィッティングの結果として生じるあてはめ曲線と共に、図3に示している。得られたEC50値を表4に記載している。二重特異性多量体タンパク質(SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55)は、はっきりした結合シグナルを示していることから、これらがGPC3および4-1BBに同時に結合できることが実証される。
【0268】
(表4)GPC3と4-1BBの両方に対する同時標的結合に関するELISAデータ
【0269】
実施例5 4-1BBおよびGPC3を発現する細胞に結合する多量体タンパク質のフローサイトメトリー解析
4-1BB発現細胞およびGPC3発現細胞への多量体タンパク質の標的特異的結合をフローサイトメトリーによって評価した。
【0270】
製造業者の取扱い説明書に従ってFlp-Inシステム(Life Technologies)を用いて、ヒト 4-1BB、カニクイザル4-1BB、またはモック対照をCHO細胞に安定にトランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO細胞を、10%ウシ胎児血清(Biochrom)および500μg/mlヒグロマイシンB(Roth)を添加したハムF12培地(Life Technologies)中で維持した。製造業者の取扱説明書に従って、細胞培養フラスコ中で細胞を培養した(37℃、5%CO2雰囲気)。
【0271】
製造業者の取扱説明書に従って、細胞培養フラスコにおいて、10%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMSO、Pan Biotech)中で、GPC3陽性腫瘍細胞株HepG2を培養した(37℃、5%CO2雰囲気)。
【0272】
フローサイトメトリー解析にあたって、以下に説明するように、試験する多量体タンパク質と共に各細胞をインキュベーションし、蛍光標識したウサギ抗NGALスキャフォールド抗体(または参照抗体のための抗ヒトIgG抗体)をFACS解析において用いて検出した。
【0273】
ウェル当たり5×104個の細胞を、5%ウシ胎児血清を含む氷冷PBS(PBS-FCS)中で1時間インキュベーションした。試験される多量体タンパク質(SEQ ID NO: 38~44およびSEQ ID NO: 46~55)、多量体タンパク質に含まれる、4-1BBをターゲティングするリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 64)、またはGPC3をターゲティングするリポカリンSEQ ID NO: 90の希釈系列を細胞に添加し、氷上で1時間インキュベーションした。PBSで細胞を2回洗浄し、次いで、蛍光色素Alexa 488で標識したウサギ抗NGALまたはヤギ抗ヒトIgGと共に氷上で30分間インキュベーションした。ヒトIgG4アイソタイプ(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)ならびにリポカリンムテインSEQ ID NO: 8を陰性対照として試験した。次に細胞を洗浄し、iQueフローサイトメーター(Intellicyte Screener)を用いて解析した。蛍光シグナルの幾何平均をプロットし、Graphpadソフトウェアを用いて非線形回帰(共通の下限値、4パラメーター、可変勾配)によってフィッティングした。
【0274】
多量体タンパク質がヒト4-1BB、カニクイザル4-1BB、およびGPC3に結合する能力を、図4に示している。試験された多量体タンパク質のヒト4-1BB発現細胞およびカニクイザル4-1BB発現細胞に対する結合親和性(EC50、表5に示している)はどれも、1桁のナノモル濃度範囲に含まれている。多量体タンパク質に含まれる、4-1BBに特異的な単量体リポカリンムテインSEQ ID NO: 64は、カニクイザルと交差反応性ではないため、これらの結果は多量体タンパク質のアビディティー効果を実証するものである。モックトランスフェクションした細胞に対する結合は観察されなかった(データ不掲載)。
【0275】
(表5)4-1BBまたはGPC3を発現する細胞に対する多量体タンパク質の結合親和性
【0276】
実施例6 T細胞活性化の評価
多量体タンパク質によるT細胞共刺激を、T細胞活性化アッセイ法を用いて解析した。抗CD3および抗CD28で刺激したT細胞に、多量体タンパク質を様々な濃度で加え、モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞と同時培養した。上清中のIL-2分泌レベルを測定した。
【0277】
ポリスクロース密度勾配(Biocoll、1.077g/mL、Biochrom)を用いる遠心分離をBiochromのプロトコールに従って行うことにより、健常志願者ドナーに由来するPBMCをバフィコートから単離した。製造業者の取扱い説明書に従ってPan T細胞精製キット(Miltenyi Biotec GmbH)を用いて、磁気細胞選別によってPBMCからTリンパ球をさらに精製した。精製したPan T細胞を、90%FCSおよび10%DMSOからなる緩衝液に再懸濁し、直ちに凍結し、次に使用するまで液体窒素中で保存した。アッセイ法のために、T細胞を解凍し、湿潤5%CO2雰囲気下で、37℃にて一晩、10%FCSおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を添加した培地(RPMI 1640、Life Technologies)中で休ませた。
【0278】
以下の手順を実験条件ごとに3つ1組で実施した:37℃で2時間、0.25μg/mLの抗CD3抗体で平底組織培養プレートを予めコーティングし、次いでPBSで2回洗浄した。増殖を妨害するために、モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞を30μg/mlマイトマイシンC(Sigma Aldrich)で30分間処理した。次いで、マイトマイシンで処理した細胞をPBSで2回洗浄し、ウェル当たり細胞8.3×103個の密度で培地に播種して、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃で一晩、接着させた。CHO細胞は、前もって標準条件下で増殖させ、Accutase(PAA Laboratories)を用いて剥離し、培地に再懸濁しておいた。
【0279】
翌日、ウェル当たり2.5×104個のT細胞をCHO細胞に添加した。試験される多量体タンパク質(SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 46~48、およびSEQ ID NO: 50~53)、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)、三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質、陰性対照リポカリンムテイン(SEQ ID NO: 8)、またはヒトIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の、典型的には0.008nM~500nMの範囲の希釈系列を、対応するウェルに添加し、続いて、0.05μg/mLの抗CD28抗体を添加した。この二重特異性の六価タンパク質は、SEQ ID NO: 38に示されるように三量体形成ドメインにN末端において融合されている4-1BBターゲティングリポカリン部分を含み、これはC末端において、SEQ ID NO: 12のリンカー(L1)を介してT細胞共刺激受容体ターゲティングリポカリンムテインに融合されており、これはさらに、C末端において、リンカーおよびSEQ ID NO: 131に示されるMyc-Hisタグに融合されている(L19-Myc-His)。二重特異性の六価タンパク質の一般的構造を図1cに示している。プレートを気体透過性シールで覆い、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃で3日間インキュベーションした。
【0280】
3日間の同時培養後に、上清中のIL-2レベルを、下記の手順で説明するようにヒトIL-2 DuoSetキット(R&D Systems)を用いて評価した。
【0281】
PBSに溶かした1μg/mLの「ヒトIL-2捕捉抗体」で、室温で2時間、384ウェルプレートを被覆した。続いて、80μlのPBS-0.05%Tで5回、ウェルを洗浄した。1%カゼイン(w/w)を含むPBS-0.05%T中で1時間ブロックした後、アッセイ上清および培地中で希釈したIL-2標準物質の濃度系列を各ウェルに移し、4℃で一晩インキュベーションした。翌日、0.5%カゼインを含むPBS-0.05%Tに溶かした100ng/mLのヤギ抗hIL-2-Bio検出抗体(R&D Systems)および1μg/mLのSulfotag標識ストレプトアビジン(Mesoscale Discovery)の混合物を添加し、室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、25μLの読み取り緩衝液(Mesoscale Discovery)を各ウェルに添加し、生じた電気化学発光(ECL)シグナルをMesoscale Discoveryリーダーによって検出した。解析および定量は、Mesoscale Discoveryソフトウェアを用いて行った。
【0282】
例示的なデータを図5に示している。三価の多量体タンパク質(SEQ ID NO: 38およびSEQ ID NO: 43)の存在下でPan T細胞をCHO細胞と同時培養した場合、IL-2分泌はバックグラウンドを超えるほどには増えなかった。三価よりも大きな結合価を有する多量体タンパク質(SEQ ID NO: 46~48およびSEQ ID NO: 50~53)は、hIgG4アイソタイプ対照と比べて、IL-2分泌の明らかな増加をもたらし、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)と同等の能力を有していた。さらに、三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質をさらに試験したところ、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)より、さらに強力であった。
【0283】
実施例7 GPC3を発現する腫瘍細胞の存在下でのT細胞活性化の評価
4-1BBおよびGPC3に対する例示的な二重特異性多量体タンパク質がGPC3標的に依存的にT細胞活性化を共刺激する能力を、T細胞アッセイ法を用いて評価した。GPC3陽性腫瘍細胞株HepG2の存在下で、抗CD3および抗CD28で刺激したT細胞に多量体タンパク質を様々な濃度で加えた。上清中のIL-2分泌レベルを測定した。
【0284】
このアッセイ法のために、T細胞上でのGPC3標的依存的な4-1BBクラスター形成を評価するために、GPC3陽性腫瘍細胞株HepG2をマイトマイシンCで処理し、T細胞との同時培養に使用したことを除いては、実施例5で説明したのと同じプロトコールを使用した。
【0285】
試験される多量体タンパク質(SEQ ID NO: 54またはSEQ ID NO: 55)、実施例6で説明したような、三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質、多量体タンパク質に含まれる4-1BBに特異的なリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 64)、GPC3に特異的なリポカインムテインSEQ ID NO: 90、GPC3抗体SEQ ID NO: 108およびSEQ ID NO: 109、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)、ヒトIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)、または陰性対照リポカリンムテイン(SEQ ID NO: 8)の、典型的には0.01nM~200nMの範囲の希釈系列を、対応するウェルに添加した。湿潤5%CO2雰囲気下、37℃で3日間インキュベーションした後、読取りを実施した。上清中のIL-2レベルを、実施例6で説明したようにヒトIL-2 DuoSetキット(R&D Systems)を用いて評価した。
【0286】
例示的なデータを図6に示している。4-1BBおよびGPC3に対する二重特異性多量体タンパク質SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55、ならびに三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質は、IL-2分泌の大きな増加をもたらし、これは、参照4-1BB抗体であるSEQ ID NO: 72 およびSEQ ID NO: 73と比べて、より大きな増加である。参照GPC3抗体SEQ ID NO: 108 およびSEQ ID NO: 109でも、GPC3に特異的なリポカリンムテインSEQ ID NO: 90でも、多量体タンパク質に含まれる4-1BBに特異的なリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 64)でも、バックグラウンドを超えるIL-2分泌増加は観察されない。
【0287】
実施例8 4-1BBバイオアッセイ法を用いる多量体タンパク質によるGPC3依存的なT細胞共刺激
選択された多量体タンパク質がGPC3に依存的に4-1BBシグナル伝達経路の活性化を誘導する潜在能力を、4-1BBおよびluc2遺伝子(ホタルルシフェラーゼのヒト化型)を発現する市販の安定な二重トランスフェクトされたJurkat細胞株を用いて評価した。一方で、luc2発現は、NFκB応答エレメントによって駆動される。このバイオアッセイ法では、4-1BB結合によって4-1BBの細胞内シグナル伝達が起こり、それにより、NFκBに媒介されるルミネセンスが生じる。
【0288】
10%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMSO、Pan Biotech)中で、GPC3陽性腫瘍細胞株HepG2を培養した。アッセイ法より1日前に、HepG2細胞をウェル当たり細胞6.25×103個の密度で播種し、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃で一晩、接着させた。構築物がGPC3発現HepG2細胞の非存在下でレポーター細胞を活性化できるかどうかを試験するために、いくつかのウェルは、培地のみを入れて一晩インキュベーションした。
【0289】
翌日、3.75×104個のNF-kB-Luc2/4-1BBジャーカット細胞を各ウェルに添加し、続いて、様々な濃度、典型的には0.01nM~100nMの範囲の、試験される多量体タンパク質(38~42、44、および48~55)、多量体タンパク質に含まれる4-1BBに特異的なリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 64)、GPC3に特異的なリポカリンムテイン(SEQ ID NO: 90)、参照GPC3抗体(SEQ ID NO: 108およびSEQ ID NO: 109)、ヒトIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)、または陰性対照リポカリンムテイン(SEQ ID NO: 8)を添加した。さらに、最高濃度の各構築物を、HepG2細胞の非存在下でNF-kB-Luc2/4-1BBジャーカット細胞に添加した。プレートを気体透過性シールで覆い、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃でインキュベーションした。4時間後、Bio-Glo(商標)試薬を各ウェルに添加し、照度計(PHERAstar)を用いて生物発光シグナルを定量した。GraphPad Prism(登録商標)を用いて4パラメーターロジスティック曲線解析を実施してEC50値を算出した(共通の下限値、4パラメーター、可変勾配)。これらを表6に要約している。同じ実験を、HepG2細胞の非存在下で並行して実施した。アッセイ法は、3つ1組で実施した。
【0290】
代表的な実験の結果を図6に示している。三価の多量体タンパク質SEQ ID NO: 38~42およびSEQ ID NO: 44は、GPC3の非存在下および存在下で、4-1BBを介したT細胞共刺激を誘導しない。六価の多量体タンパク質SEQ ID NO: 48~53は、GPC3の非存在下および存在下で、同程度の活性化を示す。二重特異性多量体タンパク質SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 55は、GPC3陽性HepG2細胞の存在下でのみ、4-1BBを介したT細胞共刺激を誘導することから、GPC3に依存的な作用様式が実証される。
【0291】
(表6)4-1BBバイオアッセイ法を用いる、T細胞活性化の評価
【0292】
実施例9 CD8 T細胞活性化およびCD4 T細胞活性化の評価
CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞に対する構築物の影響を明らかにするために、改変したT細胞活性化アッセイ法を用いて多量体タンパク質による共刺激を解析した。モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞と同時培養された、抗CD3で刺激され単離されたCD4+ T細胞またはCD8+ T細胞に、多量体タンパク質を様々な濃度で加えた。上清中のIL-2分泌レベルを測定した。
【0293】
このアッセイ法のために、単離されたCD4+ T細胞またはCD8+ T細胞のいずれかをPan T細胞の代わりに使用したことを除いては、実施例5で説明したのと同じプロトコールを使用した。したがって、健常志願者ドナーに由来するPBMCを単離した。製造業者のプロトコールに従ってCD4+ T細胞単離キットまたはCD8マイクロビーズ(Miltenyi Biotec GmbH)を用いて、磁気細胞選別によってPBMCからCD4 Tリンパ球またはCD8 Tリンパ球をさらに精製した。
【0294】
選択された多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)、実施例6で説明したような、三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)、またはヒトIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の、典型的には0.05nM~500nMの範囲の希釈系列を、対応するウェルに添加し、続いて、0.05μg/mLの抗CD28抗体を添加した。プレートを気体透過性シールで覆い、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃で2日間インキュベーションした。
【0295】
3日間の同時培養の後、上清中のIL-2レベルを、実施例5で説明したようにヒトIL-2 DuoSetキット(R&D Systems)を用いて評価した。
【0296】
例示的なデータを図8に示している。単離されたCD8+ T細胞を、多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)または参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)の存在下でCHO細胞と同時培養した場合、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の場合と比べてIL-2分泌が明らかに増加した。三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価のT細胞共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質を用いた場合は、IL-2分泌は増加しなかった(図8A)。単離されたCD4+ T細胞を多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)の存在下でCHO細胞と同時培養した場合、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の場合と比べてIL-2分泌が明らかに増加し、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)と同等の能力を有していた。三価の4-1BBターゲティング部分および別の三価の共刺激受容体ターゲティング部分を有する二重特異性の六価タンパク質を用いた場合、CD4+ T細胞によるIL-2分泌の増加は、さらに大きかった(図8B)。
【0297】
実施例10 ヒト4-1BB、OX40、またはPD-L1を発現する細胞に結合する多量体タンパク質のフローサイトメトリー解析
ヒト4-1BB、OX40、またはPD-L1を発現する細胞に対する六価の三量体タンパク質の標的特異的結合を、ヒト4-1BB、ヒトOX40、またはヒトPD-L1を安定にトランスフェクトしたCHO細胞を用いて(Flp-Inシステム; Life Technologies)、実施例5で説明したようにフローサイトメトリーによって評価した。
【0298】
結果は、図9に示されており、多量体タンパク質がヒト4-1BB(図9A)、ヒトOX40(図9B)、および/またはヒトPD-L1(図9C)に結合する能力をそれぞれ実証している。試験された多量体タンパク質の標的発現細胞に対する結合親和性(EC50、表7に示している)はどれも、1桁のナノモル濃度範囲またはさらにそれより小さい範囲に含まれている。モックトランスフェクションした細胞に対する結合は観察されなかった(データ不掲載)。
【0299】
(表7)4-1BB、OX40、またはPD-L1を発現する細胞に対する多量体タンパク質の結合親和性
【0300】
実施例11 T細胞活性化の評価
モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞の代わりにFlp-In-CHO::huPD-L1細胞を使用したことを除いては、実施例6で説明したようにT細胞活性化アッセイ法を用いて、本開示の六価の三量体タンパク質によるT細胞共刺激を解析した。
【0301】
例示的なデータを図10に示している。Pan T細胞を、単特異性(SEQ ID NO: 52)および二重特異性(SEQ ID NO: 164~167)の六価の三量体タンパク質の存在下でCHO細胞と同時培養した場合、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の場合と比べてIL-2分泌が明らかに増加した。4-1BBのみをターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)の場合よりも、4-1BBとOX40の両方をターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)または4-1BBとPD-L1の両方をターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 167)の場合の方が、増加の程度は有意に大きかった。
【0302】
実施例12 CD4 T細胞活性化の評価
モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞の代わりにFlp-In-CHO::huPD-L1細胞を使用したことを除いては、実施例9で説明したように、改変したT細胞活性化アッセイ法を用いて、本開示の六価の三量体タンパク質によるCD4+ T細胞共刺激を解析した。
【0303】
例示的なデータを図11に示している。単離したCD4+ T細胞を、単特異性(SEQ ID NO: 52)および二重特異性(SEQ ID NO: 164~167)の六価の三量体タンパク質の存在下でCHO細胞と同時培養した場合、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の場合と比べてIL-2分泌が明らかに増加した。4-1BBのみをターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)の場合よりも、4-1BBとOX40の両方をターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)または4-1BBとPD-L1の両方をターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 167)の場合の方が、増加の程度は有意に大きかった。
【0304】
実施例13 CD8 T細胞活性化の評価
モックトランスフェクションしたFlp-In-CHO細胞の代わりにFlp-In-CHO::huPD-L1細胞を使用したことを除いては、実施例9で説明したように、改変したT細胞活性化アッセイ法を用いて、本開示の六価の三量体タンパク質によるCD8+ T細胞共刺激を解析した。
【0305】
例示的なデータを図12に示している。単離したCD8+ T細胞を、単特異性(SEQ ID NO: 52)および二重特異性(SEQ ID NO: 164~167)の六価の三量体タンパク質の存在下でCHO細胞と同時培養した場合、hIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)の場合と比べてIL-2分泌が明らかに増加した。4-1BBとOX40の両方をターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)の場合よりも、4-1BBのみをターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)または4-1BBとPD-L1の両方をターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 167)の場合の方が、増加の程度は有意に大きかった。
【0306】
実施例14 4-1BBバイオアッセイ法を用いる、二重特異性の六価タンパク質のT細胞共刺激
選択された多量体タンパク質が4-1BBシグナル伝達経路の活性化を誘導する潜在能力を、HepG2細胞の代わりにFlp-In-CHO::huOX40細胞を使用したことを除いては、実施例8で説明したように市販の4-1BBバイオアッセイ法を用いて評価した。最高濃度の構築物もまた、Flp-In-CHO::huOX40細胞の非存在下で試験した。
【0307】
例示的なデータを図13に示している。Flp-In-CHO::huOX40細胞の存在下で、4-1BBおよびOX40をターゲティングする二重特異性の六価の三量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)は、(アイソタイプ)対照(SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 29、およびSEQ ID NO: 30)ならびに追加の陰性対照として働くOX40Lタンパク質(SEQ ID NO: 204)と比べて、4-1BBシグナル伝達経路の顕著な活性化をもたらした。活性化のレベルは、4-1BBのみをターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)、または4-1BBをターゲティングする三量体タンパク質(SEQ ID NO: 38)とOX40をターゲティングする三量体タンパク質(SEQ ID NO: 203)との組合せを用いて得られる活性化レベルよりも実質的に高かった。二重特異性の六価の三量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)のどれも、Flp-In-CHO::huOX40細胞の非存在下では、4-1BBを介したT細胞共刺激を誘導しなかった。
【0308】
実施例15 OX40バイオアッセイ法を用いる二重特異性の六価タンパク質のT細胞共刺激
選択された多量体タンパク質がOX40シグナル伝達経路の活性化を誘導する潜在能力を、OX40およびluc2遺伝子(ホタルルシフェラーゼのヒト化型)を発現する市販の安定に二重トランスフェクトされたJurkat細胞株を用いて評価した。その際、luc2発現は、NFκB応答エレメントによって駆動された。このバイオアッセイ法では、OX40結合によってOX40の細胞内シグナル伝達が起こり、それにより、NFκBに媒介されるルミネセンスが生じる。
【0309】
Flp-In-CHO::hu4-1BB細胞株を、10%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich)および500μg/mlヒグロマイシンB(Carl Roth)を添加したハムF12(Gibco、Thermo Fisher)中で培養した。このアッセイ法の実施日より1日前に、Flp-In-CHO:hu4-1BB細胞をウェル当たり細胞8×103個の密度で播種し、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃で一晩、接着させた。構築物が4-1BB発現細胞の非存在下でレポーター細胞を活性化できるかどうかを試験するために、いくつかのウェルは、培地のみを入れて一晩インキュベーションした。
【0310】
翌日、1×104個のNF-kB-Luc2/OX40ジャーカット細胞を各ウェルに添加し、続いて、様々な濃度、典型的には0.004nM~100nMの範囲の、試験される4-1BB/OX40ターゲティング多量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)、ヒトIgG4アイソタイプ対照(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)、陰性対照リポカリンムテイン(SEQ ID NO: 8)、OX40Lタンパク質(SEQ IS NO: 204)、4-1BBのみをターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)、ならびに4-1BBをターゲティングする三量体タンパク質(SEQ ID NO: 38)とOX40をターゲティングする三量体タンパク質(SEQ ID NO: 203)との組合せを添加した。さらに、最高濃度の各構築物を、Flp-In-CHO::hu4-1BB細胞の非存在下でNF-kB-Luc2/OX40ジャーカット細胞に添加した。プレートを気体透過性シールで覆い、湿潤5%CO2雰囲気下、37℃でインキュベーションした。5時間後、Bio-Glo(商標)試薬を各ウェルに添加し、照度計(PHERAstar)を用いて生物発光シグナルを定量した。GraphPad Prism(登録商標)を用いて4パラメーターロジスティック曲線解析を実施した。アッセイ法は、3つ1組で実施した。
【0311】
代表的な実験の結果を図14に示している。Flp-In-CHO::hu4-1BB細胞の存在下で、4-1BBおよびOX40をターゲティングする二重特異性の六価の三量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)は、(アイソタイプ)対照(SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 29、およびSEQ ID NO: 30)と比べて、OX40シグナル伝達経路の顕著な活性化をもたらした。活性化のレベルは、4-1BBのみをターゲティングする多量体タンパク質(SEQ ID NO: 52)、参照4-1BB抗体(SEQ ID NO: 72およびSEQ ID NO: 73)、OX40Lタンパク質(SEQ ID NO: 204)、または4-1BBをターゲティングする三量体タンパク質(SEQ ID NO: 38)とOX40をターゲティングする三量体タンパク質(SEQ ID NO: 203)との組合せを用いて得られる活性化レベルよりも実質的に高かった。二重特異性の六価の三量体タンパク質(SEQ ID NO: 164~166)のどれも、Flp-In-CHO::hu4-1BB細胞の非存在下では、4-1BBを介したT細胞共刺激を誘導しなかった。
【0312】
本明細書において例示的に説明される態様は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で適切に実施され得る。したがって、例えば「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、包括的かつ非限定的に読み取られるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定するのではなく説明する用語として使用されており、このような用語および表現を使用する際、示され説明される特徴またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明の態様が好ましい態様および任意の特徴を用いて具体的に開示されてきたが、その修正および変更を当業者は行ってもよいこと、ならびにそのような修正および変更が本発明の範囲内であるとみなされることを理解すべきである。本明細書において説明したすべての特許、特許出願、教科書、および同領域の専門家によって審査された刊行物は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、参照により本明細書に組み入れられる参考文献におけるある用語の定義または使用が、本明細書において提供されるその用語の定義と一致しないか、または相いれない場合、本明細書において提供されるその用語の定義が適用され、その参考文献におけるその用語の定義は適用されない。また、包括的開示の範囲内にある、より狭い種および亜属群のそれぞれも、本発明の一部分をなす。これには、削除される題材が本明細書において具体的に挙げられるか否かに関わらず、属から任意の題目を除く条件または否定的限定を伴う本発明の包括的説明が含まれる。さらに、特徴がマーカッシュ群によって説明される場合、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの下位集団の観点から、開示内容がそれによっても説明されることを、当業者は認識すると考えられる。さらなる態様は、添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【0313】
等価物:当業者は、ごく普通の実験法を用いるだけで、本明細書において説明した本発明の個々の態様に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されると意図される。本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、本明細書において、個々の各刊行物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み入れられることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に参照により本明細書中に組み入れられる。
【0314】
VI 非特許参照文献
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023527908000001.app
【国際調査報告】