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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20230623BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230623BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230623BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230623BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230623BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20230623BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/58
H01M4/136
H01M10/0585
H01M4/1397
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574522
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021064773
(87)【国際公開番号】W WO2021245127
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】102020114893.3
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨンリ
(72)【発明者】
【氏名】大石 昌弘
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AL01
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ04
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ17
5H050AA01
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H050GA02
5H050GA04
5H050GA12
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、電気化学ハーフセル反応動力学の差が電極の面積によって補償される電気化学セルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルであって、
- 第1表面積A1を有する第1電極において第1電気化学ハーフセル反応が起こり、
- 第2表面積A2を有する第2電極において第2電気化学ハーフセル反応が起こり、
- 前記第1電極と前記第2電極との間に電解質が配置されており、
- 前記第1表面積と前記第2表面積との比A/Aは、前記第1電気化学ハーフセル反応と前記第2電気化学ハーフセル反応との化学量論比よりも大きい、
電気化学セル。
【請求項2】
前記第1電気化学ハーフセル反応は前記第2電気化学ハーフセル反応より遅い反応動力学を有する、
請求項1記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記第1電極の、より大きい過剰な化学量論表面積Aは、より遅い前記反応動力学を補償できる、
請求項2記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記第1電気化学ハーフセル反応の理論的最大比電流密度jは、前記第2電気化学ハーフセル反応の理論的最大比電流密度jよりも小さい、
請求項1乃至3いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記表面積の比A/Aは前記理論的最大比電流密度の比j/jと等しい、
請求項4記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記第1電気化学ハーフセル反応の理論的最大比定格容量Cは、前記第2電気化学ハーフセル反応の理論的最大比定格容量Cよりも小さい、
請求項1乃至5いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記表面積の比A/Aは、前記理論的最大比定格容量の比C/Cと等しい、
請求項6記載の電気化学セル。
【請求項8】
- 前記第1電極は、前記第1電気化学ハーフセル反応に関与する第1red/ox活性化合物を含み、
- 前記第2電極は、前記第2電気化学ハーフセル反応に関与する第2red/ox活性化合物を含み、
- 前記第1電極における前記第1red/ox活性化合物の正規化濃度は、前記第2電極における前記第2red/ox活性化合物の正規化濃度に等しく、
- 前記第1電極及び前記第2電極におけるred/ox活性化合物の正規化濃度は、関連するハーフセル反応において交換される電子の数に対して正規化された、関連する電極における前記red/ox活性化合物のモル濃度である、
請求項1乃至7いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記第1電極は、前記第2電極と同じ表面形態を有する、
請求項1乃至8いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記第1電極は、前記第2電極と同じ厚さを有する、
請求項1乃至9いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項11】
- 前記第1電極は、第1サブ電極及び第2サブ電極からなり、
- 前記第2電極、前記第1サブ電極及び前記第2サブ電極は、平坦な形状を有し、電極平面に関して平行にアセンブルされており、
- 前記第2電極は、前記第1サブ電極と異なる高さに配置されており、
- 前記第2サブ電極は、前記第2電極に隣り合って同じ高さに配置されている、
請求項8乃至10いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記第1red/ox活性化合物及び前記第2red/ox活性化合物は同一である、
請求項8乃至11いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項13】
全固体電気化学セルである、
請求項1乃至12いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項14】
- 前記第1電極及び前記第2電極は、電荷コレクタ材料上のリン酸バナジウムリチウム電極であり、
- 前記電解質は、Li伝導性固体電解質であり、
- 前記第1電極は、前記第1電気化学ハーフセル反応において酸化される、Li(POを含む、アノードであり、
- 前記第2電極は、前記第2電気化学ハーフセル反応において還元される、Li(POを含む、カソードである、
請求項1乃至13いずれか1項記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記第1表面積Aは、前記第2表面積Aの2倍である、
請求項13記載の電気化学セル。
【請求項16】
複数の、請求項1乃至15いずれか1項記載の電気化学セルが積層されている、
電気化学システム。
【請求項17】
- 前記電気化学セルは同一の配向で積層されており、
- 前記電解質は、前記同一の配向の2つの隣り合う電気化学セルの間に配置されている、
請求項16記載の電気化学システム。
【請求項18】
電気化学システムを形成するプロセスであって、
- 前記電気化学システムは、複数の第1電極を備え、前記複数の第1電極は、それぞれ第1表面積Aを有し、第1サブ電極及び第2サブ電極からなり、
- 前記電気化学システムは、前記第1電極と同じ数の第2電極を備え、各第2電極は第2表面積Aを有し、
- 各第1サブ電極、各第2サブ電極及び各第2電極は、電気化学活性材料の電気化学活性層及び電荷コレクタ層を備え、
- 前記複数の第1電極及び前記第2電極は、固体電解質内に埋設されており、
- 全ての第1サブ電極及び全ての第2サブ電極の前記電荷コレクタ層は、前記電気化学システムの表面上の第1外部電極と電気的にコンタクトしており、全ての第2電極の前記電荷コレクタ層は、前記第1外部電極と反対側の、前記電気化学システムの表面上の第2外部電極と電気的にコンタクトしており、
- 前記第1電極において第1電気化学ハーフセル反応が起こり、前記第2電極において第2電気化学ハーフセル反応が起こり、
- 前記表面積の比A/Aは、前記第1電気化学ハーフセル反応と前記第2電気化学ハーフセル反応との化学量論比よりも大きく、
前記プロセスは、
- セラミック電解質粉末、有機溶媒、バインダー、分散剤及び可塑剤からセラミック電解質スラリーを提供するステップと、
- 前記セラミック電解質スラリーから予備固体電解質テープを形成するステップと、
- 前記予備固体電解質テープ上に予備電気化学活性層と予備電荷コレクタ層とを含む予備電極層を形成するステップと、
- 前記予備電極層を有する前記予備固体電解質テープをシートにカットするステップと、
- 複数のシートからシートスタックを形成するステップであって、前記シートスタックの頂部及び底部に前記予備電極層が無いように固体電解質シートを配置する、ステップと、
- 前記シートスタックからグリーンチップをカットするステップと、
- 加熱によってバインダーを除去するステップと、
- 前記グリーンチップを焼結するステップと、
- 前記チップの相対向する表面上に第1外部電極及び第2外部電極を形成するステップと、
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
再生可能エネルギーの貯蔵需要の高まりを受け、電池又はバッテリ(batteries)などの高性能な電気化学システムが求められている。
【0002】
さらに、例えば、電気モビリティや電子応用での用途では、高い容量と放電率を提供しながら、高い安全基準を満たす電気化学貯蔵システムが必要とされている。
【0003】
例えば、全固体電池は、液体電解質の漏洩のリスクなしに電気エネルギーを貯蔵することができる。
【背景技術】
【0004】
通常、任意の電気化学セルは、ハーフセル反応又は半電池反応の化学量論(the chemical stoichiometric of the half-cell reactions)に関して構築される。
【0005】
例えば、一般化された電気化学反応スキームは以下の式で表される:
【0006】
第1ハーフセル反応:X⇔xe+Xx+
【0007】
第2ハーフセル反応:Y⇔ye+Yy+
【0008】
電気化学総反応(sum-reaction):yX+xYy+⇔yXx++xY
【0009】
従来は、反応の化学量論を考慮するために、電極材料の量は、各ハーフセル反応で生成される電子の数に適合されている。
【0010】
これは、典型的な化学量論セルでは、第1ハーフセル反応の電極の量Mと第2ハーフセル反応の電極の量Mとの比は、次の依存性に従うことを意味する:
【0011】
化学量論的セル電極比率:M/M=y/x
【0012】
しかしながら、電気化学システムでは、2つの電気化学ハーフセル反応が異なる反応速度又は反応動力学(reaction kinetics)を有することが多い。これは、例えば、ハーフセルの理論上の最大放電電流が著しく異なり得ることを意味する。
【0013】
両方のハーフセルが化学量論に従って構成されている場合、これは、化学量論的に適合した量の電極材料でred/ox活性成分を同じ負荷又は充填量(loading)で保持しながら、より遅いハーフセル反応が電気化学プロセス全体を支配することを意味する。
【0014】
この場合の例は、例えばUS2015/0333366A1に開示されている。ここでは、対称型全固体電池について説明するが、放電反応におけるアノード及びカソードは、各ハーフセル反応で1つの電子が交換されるように、表面積、厚さ、構造を持つ。これにより、全体的な性能は、動力学的により遅いアノード反応によって支配される。
【0015】
例えば、非特許文献1 (Kobayashi他, Electrochemistry Communications 12, 2010, pp.894-896)に記載されている全固体バッテリの場合、この問題は、red/ox活性成分の濃度を変化させることによって対処され、2つの電気化学ハーフセルの反応レートの差を補償する。特に、放電反応におけるアノードとカソードとの両方のred/ox活材化料リン酸バナジウムリチウムは、カーボンなどの導電性多孔質マトリックスに埋め込まれている。
【0016】
放電プロセスにおけるアノードのより遅い動力学は、red/ox活性成分による、より高い負荷又は充填量によって補償される。ただし、これは特に層の厚さに影響する。
【0017】
したがって、かかるアプローチは、例えば、印刷や型鋳造プロセスを含む安価な従来の多層セラミックプロセス技術では容易に実現できない。
【発明の概要】
【0018】
これらの課題を考慮して、本発明の目的は、2つのハーフセル反応間の反応動力学の差が補償され、従来の多層セラミックプロセスによって調製されることができる電気化学セルを提供することである。
【0019】
さらなる目的は、電気化学セルを備える電気化学システムを提供することである。
【0020】
第1態様として、第1表面積Aを有する第1電極において第1電気化学ハーフセル反応が起こり、第2表面積Aを有する第2電極において第2電気化学ハーフセル反応が起こる、電気化学セルが提供される。電解質は、第1電極と記第2電極との間に配置されている。さらに、第表面積の比A/Aは、第1ハーフセル反応と第2ハーフセル反応との化学量論比よりも大きい。
【0021】
第1電気化学ハーフセル反応がより遅いか、より遅い反応動力学を有する場合、第1電極のより大きい過剰な化学量論表面積Aは、より遅い反応動力学を補償することができる。
【0022】
特に、例えば電極から電解質へのイオンの遷移を意味する界面での拡散プロセスは、レートを制限するステップ又は律速ステップ(rate-limiting step)であり得る。特定の時間内に界面を通過するイオンの絶対レートは、反応レート及び表面積に依存する。これは、表面積を増加させることで、界面を通過するイオンの総数を増やすことができることを意味する。
【0023】
さらなる態様として電気化学セルは、第1ハーフセル反応の理論的最大比電流密度j(theoretical maximum specific current density j)は、第2ハーフセル反応の理論的最大比電流密度jよりも小さい、という性質を持つことができる。
【0024】
ハーフセル反応の理論的最大比電流密度は、理想的な反対のハーフセル(an idealized counter half-cell)に関して測定される場合に、関連するハーフセルに印加され又はそこからリリースされる、電極面積あたりの最大電流である。さらに、理論的最大比電流密度は、電気化学セル全体の特定の条件について定義されることができる。
【0025】
例えば、バッテリの場合、このある条件は特有の電圧又は充電状態であり得る。理想的な反対のハーフセルは、レートを制限せず、例えば、調査されるべきハーフセル、基準電極及び反対極を備える3電極テスト設定でアクセス可能である。例えば、理論的最大比電流密度は、すなわち、非限定的な反対電極設定に対して(against a non-limiting counter electrode setup)測定された無負荷電流条件下(under vanishing load current conditions)である、近短絡回路電流であり得る。
【0026】
がjより小さい場合、過剰な化学量論表面積比A/Aは理論的最大比電流密度の差を補償することができる。したがって、電気化学セル全体で1回に交換される電子の総数は、AがAと同じ場合よりも多くなり得る。
【0027】
さらなる態様として、電気化学セルは、表面積比A/Aが理論的最大比電流密度の比j/jと等しい、ように設計されることができる。
【0028】
換言すれば、電気化学セルの2つのハーフセルの表面積の比は、関連する第1電気化学ハーフセル反応と第2電気化学ハーフセル反応との理論的最大比電流密度に反比例する。
【0029】
これは、各ハーフセル反応で交換される電子の数に正規化するかわりに、表面積比A/Aを電子の量、すなわち特定の境界条件で特定の時間内に電極から取り出せる電流に適応させることを意味する。
【0030】
理論的最大電流J及びJは、それぞれ、第1電気化学ハーフセル及び第2電気化学ハーフセルに対して定義され得る。ここで、以下の関係を定義することができる。
=j×A及びJ=j×A
【0031】
一般的に、電気化学セル全体の全電流は、J又はJのより小さい方に制限される。
【0032】
これは、A/Aをj/jと等しくすることで、第1電気化学ハーフセルの理論的最大電流Jを第2電気化学ハーフセルの理論的最大電流Jと等しくすることができることを意味する。
【0033】
このように、表面積比を逆理論的最大比電流密度の比(the inverse theoretical maximum specific current density ratio)に適応させることによって、両電極の所与の全面積和に対して電気化学セルに印加すること又はそこから取り出すことができる電流を可能な限り最大化することができる。
【0034】
さらなる態様として、電気化学セルは、第1ハーフセル反応の理論的最大比定格容量Cは、第2ハーフセル反応の理論的最大比定格容量Cよりも小さい、という性質を持つことができる。
【0035】
ここで及び以下の理論的最大比定格容量は、関連する電気化学ハーフセルの表面積あたりの電子数(単位クーロンを有する電荷として)を意味し、特定の境界条件の下で蓄積又は解放することができる。かかる境界条件は、特有の電流ウィンドウ又は特有の電圧ウィンドウであり得る。
【0036】
例えば、電気化学セルがバッテリ又は電池(battery)である場合、Cは、少なくとも特定の最大レート、すなわち第1電気化学ハーフセルから特定の特有の電流ウィンドウ(a certain specific current window)で放出できる電子の数であり得る。
【0037】
あるいは、電気化学セルがバッテリである場合にも、Cは、特定の放電電流条件下で少なくとも特定の電圧を供給する電子の数であることもできる。
【0038】
は第2ハーフセル反応について同様に定義できる。
【0039】
とCの同等の定義は、例えばガルバニックシステムなどのバッテリ以外の電気化学システムや、例えば拡散制限プロセスの基礎となり得る電気化学キャパシタについてもされることができる。
【0040】
さらなる態様として、表面積A/Aが理論的最大比定格容量比C/Cに等しいように電気化学セルを構成することができる。
【0041】
上記の場合と原理的に等価であるが、化学量論的電極の設定で行われるように、各ハーフセル反応で交換される電子の数に正規化するかわりに、表面積比A/Aを理論的最大比定格容量、すなわち特定の境界条件の下で取り出し又は注入できる電子の量に適応させる。
【0042】
このように、電気化学セル全体の定格容量を最大化することができる。
【0043】
さらなる態様として、電気化学セルは、第1電極が第1電気化学ハーフセル反応に関与する第1red/ox活性化合物を含むことができ、第2電極が第2電気化学ハーフセル反応に関与する第2red/ox活性化合物を含むことができるように構成されている。さらに、第1電極における第1red/ox活性化合物の正規化濃度は、第2電極における第2red/ox活性化合物の正規化濃度に等しいことができる。電極におけるred/ox活性化合物の正規化濃度は、関連するハーフセル反応において交換される電子の数によって正規化された、関連する電極におけるこのred/ox活性化合物のモル濃度である。
【0044】
これは、両方の電極は、セルの全体的な電気化学反応で交換される電子と比較して、red/ox活性化合物で同じ負荷又は充填量を有し得ることを意味する。
【0045】
各ハーフセル反応に1つの電子が含まれる場合、red/ox活性化合物による両電極のモル負荷又は充填量は等しい。例えば、第1電極と第2電極の電極は、第1red/ox活性化合物及び第2red/ox活性化合物のみで構成されることができ、これらはそれぞれ電荷コレクタ材料上にアセンブルされている。
【0046】
このようにして、例えば従来の多層セラミックプロセスでのスクリーン印刷による電極の製造が可能になる。
【0047】
さらなる態様として、電気化学セルは、第1電極が第2電極と同じ表面形態(surface morphology)を有するように構成することができる。
【0048】
これは、例えば、両方の電極表面の構造が同一であることを意味する。したがって、例えば電極のナノ構造化、その表面積を変更するためのくどいプロセス技術を回避することができる。例えば、両電極の表面は主に平坦であり、これは簡単で安価なスクリーン印刷技術による電極の調製を可能にする。特に、両方の電極に同じプリントデバイスが適用されたとしても、両方の電極が同じ表面形態を持つ原因となる。
【0049】
したがって、この場合、電極の表面積は電極の寸法のみによって操作されるが、その表面形態によっては操縦されない。
【0050】
さらなる態様として、電気化学セルは、第1電極が第2電極と同じ厚さを有するように構成することができる。
【0051】
優位には、平面内のそれらの範囲は、この平面に垂直な範囲、すなわち厚さ、よりも少なくとも1桁大きい。これは厚さが電極面積に及ぼし得る影響を無視できることを意味する。これは特に典型的なセラミックアセンブリに当てはまる。
【0052】
特に、red/ox化合物の負荷又は充填量が両方のハーフセルで等しく、かつ、両電極の表面形態が同じ場合、第1電極と第2電極の厚さが同じであれば、異なる厚さを補償するための措置を講じる必要がないため、テープキャスト法やスクリーン印刷法による調製が容易になる。
【0053】
別の実施形態において、電気化学セルは、第1電極が第1サブ電極及び第2サブ電極からなり、第1サブ電極、第2サブ電極、第2電極は、平坦な形状を有し、電極平面に関して平行にアセンブルされるように構成されている。この実施例では、第2電極は第1サブ電極の上に配置され、第2サブ電極は、第2電極に隣り合って同じ高さに配置されている。
【0054】
これは、例えば、第2電極、第1サブ電極、第2サブ電極として、同じ表面形態、同じ厚さ、同じ負荷又は充填量の電極が提供されることを意味する。さらに、第2電極は、例えばUS2015/0333366A1に示されているように、完全に対称な電気化学セルの従来の設計と同様の方法で第1サブ電極に面することができる。ただし、この場合とは対照的に、第2電極は第1サブ電極よりも面積が小さいことができる。さらに、第2電極と同じ高さに第2サブ電極を形成することができる。優位には、第2サブ電極は第1サブ電極よりも小さい。第1サブ電極と第2サブ電極は共に第1電極を形成し、これは同じ極性を有することを意味する。
【0055】
さらなる実施形態として、電気化学セルは、第1red/ox活性化合物と第2red/ox活性化合物とが同一であるように構成することができる。
【0056】
このような構成は、例えば、充電中に全体的な電気化学反応が、一方のハーフセル反応においてred/ox活性化合物が酸化され、他方では還元される、不均化反応(disproportionation reaction)であるバッテリに有利に使用することができる。関連する放電反応では、両方のハーフセル反応でred/ox活性化合物が再び生成する均化反応(comproportionation reaction)がある。
【0057】
これは、かかるシステムではしばしば同じイオンが交換されるように、両方のハーフセル反応に効率的な電解質が選択されるという利点を持つことができる。
【0058】
さらなる実施形態では、電気化学セルは全固体電気化学セル、例えば全固体バッテリである。
【0059】
特に、全固体電気化学セルでは、前述の特徴を最も効率的に適用することができる。これは特に、全固体電気化学セルが通常の多層セラミックプロセスで調製されるためである。
【0060】
さらなる実施形態では、電気化学セルは、第1電極及び第2電極は、電荷コレクタ材料上のリン酸バナジウムリチウム電極である。さらに、本実施形態において、電解質は、リン酸リチウムアルミニウムチタンなどのリチウム伝導性固体電解質である。また、第1電極は、第1電気化学ハーフセル反応において酸化される、Li(POを含むアノードである。また、第2電極は、第2ハーフセル反応において還元される、Li(POを含むカソードである。
【0061】
これらの反応は、放電中のリチウムイオン全固体バッテリのハーフセル反応であることができ、それにより、正味の反応(net-reaction)において、2当量(two equivalents)のLi(POが形成される。
【0062】
ここで、アノードから固体電解質へのリチウムイオンの相転移は、レートを制限するステップである。したがって、全体の反応レートは通常、アノード反応に対する理論最大電流密度又は理論最大比定格容量のいずれかに関して制限される。
【0063】
通常、カソード側の活性(activity)はアノード側の2倍である。この活性の差は電極サイズで補償できる。
【0064】
例えば、電気化学セルは、表面積Aが第2表面積Aの2倍になるように構成することができる。
【0065】
特に、リン酸バナジウムリチウム全固体電気化学セルの場合、この表面積比は、アノードに対して2倍高いカソードの最大比定格容量を補償できるので有利である。
【0066】
他の態様として、上記のような複数の電気化学セルを積層した電気化学システムが提供される。
【0067】
例えば、このような電気化学システムでは、同じ電気化学的機能を有する内部電極、例えば全てのアノードが1つの外部電極によって優先的にコンタクトされ、したがって、個々の電気化学セルの電極が電気化学システムの内部電極になる。
【0068】
いくつかの積層された電気化学セルからなる、このような電気化学システムでは、高い容量と全体的な放電又は充電電流を達成することができる。さらに、特に全固体電気化学セルの場合、従来の多層セラミックプロセスによって容易に製造することができる。
【0069】
一実施形態では、電気化学システムは、電気化学セルが同じ配向で積層され、電解質が同じ配向の2つの隣り合う電気化学セルの間に配置される、ように構成される。
【0070】
優位には、個々の電気化学セルの電極は、両電極側で電気化学的に活性である。例えば、電極は、両側に電気化学的に活性な化合物をコーティングすることができる。この場合、元のセルの間に電解質も配置されるため、元の積層された電気化学セルの間に、さらなる電気化学セルが形成される。これらの追加の電気化学セルは、積層された個々の電気化学セルに対して逆向きの配向を有する。
【0071】
これにより、全体の容量、電荷密度又は最大放電電流を増加させることができる。
【0072】
上記のような電気化学システムは、まずセラミック電解質粉末、有機溶媒、バインダー、分散剤及び可塑剤からセラミック電解質スラリーを提供するステップによって調整することができる。このことから、予備的な固体電解質テープを形成することができる。予備的な固体電解質テープ上に、予備的な電気化学活性層を含む予備の電極層を、例えばスクリーン印刷によって形成することができる。例えば、電荷コレクタ層は、電気化学活性層によって取り囲まれるか又は埋め込まれている。その後、印刷したままのテープをシートにカットすることができる。ここからシートを上下に積層し、印刷されていない予備電解質テープを頂部及び底部に配置することによってシートスタックが形成されることができる。その後、スタックからグリーンチップをカットすることができる。その後、グリーンチップはバインダーを除去する処理を受けることができ、好ましくは、保護ガスの下で加熱することで、酸化を防ぐことができる。その後、グリーンチップは、例えば還元雰囲気下で、高温で焼結することができる。焼結されたチップの2つの対向面上に、第1外部電極及び第2外部電極が形成される。
【0073】
前述のような電気化学システムの設計は、この単純なプロセスの適用を可能にし、大量生産も可能にする。
【0074】
以下では、本発明を例示的な実施形態及び関連する図面に基づいてより詳細に説明する。図面は、本発明を説明するためだけに役立つものであり、したがって、概略的に示されているだけであり、縮尺どおりではない。個々のパーツは、拡大された方法で、又はそれらの寸法に関して歪められた方法で図示され得る。したがって、絶対的又は相対的な寸法や仕様を図面から推測することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
同一又は同様に作動するパーツは、同一の参照符号を備えている。
図1図1は、電気化学セルの第1実施形態を概略断面図で示す図である。
図2図2は、電気化学セルの第2実施形態を概略断面図で示す図である。
図3図3は、電気化学セルの第3実施形態を概略断面図で示す図である。
図4図4は、電気化学セルの第4実施形態を概略断面図で示す図である。
図5図5は、電気化学セルの第5実施形態を3つの直交する概略図において示し、図5A及びBにおいて断面図を、図5Cにおいて電解質を省略した上面図を示す。
図6図6は、電気化学システムの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
電気化学セル1の第1実施形態は、図1の概略断面図に示されている。電気化学セル1は、互いに対向する第1電極2及び第2電極3と、両電極の間に配置された電解質4とを備える。
【0077】
電気化学セルの形状は制限されない。例えば、円筒形、又は好ましくはブロック形であることができる。
【0078】
第1電気化学ハーフセル反応は第1電極2で起こり、第2電気化学ハーフセル反応は第2電極3で起こる。
【0079】
両電極2及び3はいずれも平面電極である。
【0080】
電極2及び3の形状は特に限定されない。例えば、電極は円形であることができ、又は、正方形若しくは長方形であることができる。
【0081】
電極2及び3は、それぞれ電荷コレクタ層21と31を備える。電荷コレクタ層21及び31は、例えばAl、Cu、Pt、又は優位には銅などの任意の適切な伝導材料であり得る電荷コレクタ材料で構成されている。
【0082】
両電極2及び3は、それぞれ第1電極2及び第2電極3の電気化学活性層22及び32を備える。
【0083】
電気化学活性層22及び32は、それぞれ電気化学活性材料を備え、優位には、電気化学活性材料のみからなる。
【0084】
電気化学活性層22及び32は、優位には、それぞれ電荷コレクタ層21及び31の上にコーティング層として形成される。本実施例では、電気化学活性層22及び32は、電荷コレクタ層21及び31の片側のみを覆う。このことと、電気化学セル1のリム上への配置により、本実施形態では電荷コレクタ層21、31を外部電極として採用することもできる。
【0085】
電気化学活性層22及び32のそれぞれの電気化学活性材料は、電気化学反応に関与するのに適した任意の材料であり得る。
【0086】
例えば、湿式電気化学セル1の場合、電気化学活性材料は、液体電解質4に溶解したred/ox活性化合物の電気化学反応を促進する電気触媒であり得る。
【0087】
しかしながら、優位には、電気化学セル1は全固体電気化学セルであり、第1電極2及び第2電極3に、固体電解質4と固体電気化学活性材料を有する。
【0088】
この場合、優位には、電気化学活性層22及び32内にred/ox活性化合物が埋め込まれている。電気化学活性層22及び32内のred/ox活性化合物の負荷又は充填量の程度は同じである。
【0089】
かかる全固体電気化学セル1の好ましい実施例は、Li1.3Al0.3Ti1.7(POなどのLi伝導性固体電解質を有するリン酸バナジウムリチウムセルである。そこでは電気化学活性層22及び32は電気化学活性材料としてLi(POを備える。充電状態では、放電反応のアノードである第1電極2の電気化学活性材料にLi(POが存在し、放電反応のカソードである第2電極3の電気化学活性材料にLi(POが存在する。
【0090】
アノードでの放電反応(第1電気化学ハーフセル反応)は以下の式で表される:
Li(PO→Li(PO+Li + e
【0091】
カソードでの放電反応(第2電気化学ハーフセル反応)は以下の式で表される:
Li(PO + Li + e→ Li(PO
【0092】
したがって、電気化学総反応は、均化反応であり、次の式で表される。
Li(PO + Li(PO → 2Li(PO
【0093】
図1に示すように、第1電極の表面積Aは、第2電極の表面積Aよりも大きい。特に、図示されているように、両方の電極が同じ幅のストライプなどとして形成されている場合、表面積比A/Aは2/1であることができる。
【0094】
これは、上記のようなリン酸バナジウムリチウムバッテリセルの場合、表面積比A/Aが、従来の対称バッテリ設定に相当する、1:1比となるであろう電極の化学量論比を超えることを意味する。
【0095】
表面積比A/A=2/1を有することによって、理論的最大比電流密度の比j/j=2/1を完全に補償することができる。
【0096】
あるいは、2/1の理論的最大比定格容量の比C/Cを完全に補償することもできる。
【0097】
概して電気化学システムでは、j/jとC/Cの比は必ずしも同じではないが、同じ傾向を有することが多い。
【0098】
多くの場合、j>jの場合、C>Cでもある。これは、j/j又はC/Cのどちらか一方を完全に補償することによって、他方も、優位には、少なくとも部分的に補償されるようになり得る。
【0099】
これは、特に、上記のタイプのリン酸リチウムバナジウムバッテリセルの場合には、セルのパラメータの詳細と放電条件に依存して、理論的最大比電流密度の比j/j又は最大比定格容量の比C/Cを有すべきものであることが見出される。
【0100】
これは、放電反応中に、アノードから固体電解質4へのLiの拡散が律速段階であるためである。
【0101】
しかしながら、多くの場合、上記のタイプのリン酸バナジウムリチウムバッテリセルでは、j/jは少なくともおおよそC/Cに等しい。
【0102】
図1に示されているように、電極2及び3の両方が厚さ及び同一の表面形態を有し、電解質に面する電気化学活性層22及び32の表面形態が主に同一であることを意味する。両電極はナノメートルスケールで構造化されておらず、単に平坦なだけと考えることができる。
【0103】
図2は、電気化学セル1の第2実施形態を概略断面図で示す図である。
【0104】
この第2実施形態は、上述した第1の実施例と同一であるが、以下の点が異なる。
【0105】
第1電極2及び第2電極3は、電気化学セル1のリムではなく、電解質に完全に埋め込まれており、したがって内部電極となっている。
【0106】
したがって、第1内部電極2及び第2内部電極3の電荷コレクタ層21及び31は、それぞれ電気化学活性層22及び32によって両側が覆われる。
【0107】
したがって、電極の電気化学活性面積を、片面のみがコーティングされた同じサイズを有する電極の場合と比較して大きくすることができる。
【0108】
内部電極2及び3は基本的に平坦であるため、表面積は電気化学活性層22及び32によって電荷コレクタ層21及び31のエッジのコーティングの影響を基本的に受けない。
【0109】
電極を電気的にコンタクトさせるために、第1外部電極5は第1内部電極2の電荷コレクタ層21に、第2外部電極6は第2内部電極3の電荷コレクタ層31に導かれている。
【0110】
外部電極5及び6は、任意の適切な伝導材料であることができ、電解質4に対して絶縁されている。
【0111】
図3は、電気化学セル1の第3実施形態を概略断面図で示す図である。
【0112】
電気化学セル1の本第3実施形態は、ブロック形状であり、以下の詳細を除いて、第1の例示的な実施形態に関して説明したものと同様のリン酸バナジウムリチウムバッテリである。
【0113】
第1外部電極5及び第2外部電極6は、電気化学セル1の対向する側面に配置される。外部電極5及び6は、配置された電気化学セル1の側面を完全に覆うことが望ましい。
【0114】
外部電極5及び6は、例えばCr/Ni/Ag三重層であれば、任意の適切な導電性材料であることができる。第1外部電極5の側から第1内部電極2がLiイオン伝導性固体電解質4内に延在する。
【0115】
第2内部電極3は、第2外部電極6の側から電解質4内に延在する。
【0116】
内部電極2及び3の両方は、同じ厚さの平坦な長方形のプレートであり、互いに向かい合っている。
【0117】
電荷コレクタ層21及び31は、それぞれ外部電極5及び6に電気的にコンタクトしている。
【0118】
電解質との界面を形成する電荷コレクタ層21と31は、それぞれ電気化学活性層22及び32によって完全にコートされている。
【0119】
第2電極での第2電気化学ハーフセル反応と比較して、第1電極での第1電気化学ハーフセル反応の遅い反応動力学を補償するために、第1電極の第1電極1面積Aは、第2電極3の第2電極面積Aよりも大きい。
【0120】
特に、面積比A/Aが2/1となるように選択され、理論的最大比電流密度の比j/j又は理論的最大比定格容量の比C/Cを補償し、そのうちの少なくとも1つは、好ましくは2/1である。
【0121】
本実施例では、内部電極2及び3の幅は同一である。ただし、内部電極2及び3は長さが異なるため、表面積に差が生じる。
【0122】
第3例示的実施形態は、任意の適切なプロセスで形成することができるが、好ましくは通常の多層セラミックプロセスで形成することができる。
【0123】
この目的のために、まず、有機溶媒、バインダー、分散剤、及び可塑剤と混合された電解質粉末からセラミックの均一なスラリーが調製される。スラリーをキャリアテープにキャストして、均一に厚い予備固体電解質テープを形成する。
【0124】
この予備固体電解質テープの上に、予備電極層が層ごとに印刷される。すなわち、まず予備電気化学活性層の下部としてリン酸バナジウムリチウム層が印刷され、その後金属ペーストから予備電荷コレクタ層が印刷され、再び予備電気化学活性層の上部としてリン酸バナジウムリチウム層が印刷される。
【0125】
層はカットされ、第1電極及び第2電極が適切な配置で形成されるようにアセンブルされる。頂部と底部には印刷されていない予備電解質シートが配置されている。
【0126】
グリーンチップは前述のスタックから切り出される。これらは脱バインダー処理とその後の焼結手順とを経る。どちらも酸化を避けるために還元雰囲気又は不活性雰囲気下で行われる。
【0127】
最後に、例えばCr/Ni/Ag三重層のスパッタリング堆積によって、チップの側面に外部電極を形成する。
【0128】
図4は、電気化学セル1の第4実施形態を概略断面図で示す図である。
【0129】
第4実施形態は、内部電極2及び3の配置以外は第3実施形態と同一である。第2電極3は、第3実施形態の第2電極3と基本的に同一である。
【0130】
ただし、第1電極2は、第1サブ電極210及び第2サブ電極220からなる。
【0131】
第1サブ電極及び第2サブ電極は、第3実施形態の第1電極2と同様の構造を有する。どちらも第1外部電極5の側から電解質中に延在し、それぞれ電荷コレクタ層211と221を備え、それぞれ電気化学活性層212及び222によって覆われている。第2電極3、第1サブ電極210、第2サブ電極220はいずれも、同一の、厚さ、表面形態、及び酸化還元(redox)活性化合物の負荷又は充填量を有する。
【0132】
第2サブ電極220はサブ電極のうち小さい方であり、第2電極3と同じレベルで電気化学セル1に配置されている。どちらも、同一の配向及び電気化学セル1の下に配置されている第一サブ電極210に向かう面を有する。
【0133】
第1サブ電極及び第2サブ電極の電極面積は、共に第2電極2の第1電極面積Aを形成するが、これは第3例示的実施形態において同じ条件の下にある。
【0134】
好ましくは、内部電極2及び3(又は210、220及び3)は、電気化学セル1内で、図4の断面切断面が鏡面を形成し、それらが鏡面に対して対称になるように配置される。
【0135】
第2電極と同じ高さに配置された第2サブ電極を有すると、第3実施形態と比較して、電気化学セル内の電極のより密なパッキングを可能にする。特に、電極をこのように積層することによって、従来の対称セルと同じ電極及び電気化学活性材料パッキング密度を達成することができる。
【0136】
第4実施形態は、第3実施形態と類似している。
【0137】
図5は、異なる概略断面図において電気化学セル1の第5実施形態を示す。
【0138】
第5実施形態は、以下の詳細を除いて第4実施形態と同一である。特に、内部電極2及び3(又は210,220及び3)の配置は、第3実施形態と比較して異なる。
【0139】
図5cは、電気化学セルの概略的上面図であり、図5cでは電解質4を省略して、他の内部電極を示している。
【0140】
図5bの断面図にも見られるように、第2電極3は第2外部電極6から電解質4内に延在する。
【0141】
第1電極2を共に形成する第1サブ電極210及び第2サブ電極220の両方は、第1外部電極の側面から電解質内に延在する。
【0142】
図5a~5cに見られるように、第2電極3、第1サブ電極210及び第2サブ電極220は、それぞれ同じ長さを有するが、幅は異なる。
【0143】
第2サブ電極220は、第2電極2に隣り合って同じレベルに配置されている。両方とも、下に配置される第1サブ電極210に面する。
【0144】
この配置の利点は、主に第4実施形態と同じである。しかしながら、この第5配置により、第2電極と第1サブ電極との間のオーバーラップがわずかに増加し、電解質内のイオン輸送がより効率的になる。
【0145】
第5実施形態は、第3実施形態と類似している。
【0146】
第3、第4、又は第5実施形態によって電極を配置することにより、受け入れ可能な最大電流または容量は、第1及び第2内部電極の同じ合計表面積を有する対称的に設計された従来の全固体電池の場合のように、最大33%高くなり得る。
【0147】
図6は、本発明による電気化学システムの実施形態を示す図である。
【0148】
本実施例は、同一の配向で上下に積層された、第4実施形態による4つの電気化学セル1を備え、電気化学システムを形成する。
【0149】
したがって、電気化学システムは全固体多層Liイオンバッテリである。
【0150】
図6では、電気化学セル1の1つが、それぞれの隣り合うセルとの上部及び下部の界面を示す破線で示されている。
【0151】
積層された電気化学セル1の間には、第1サブ電極210と直接隣り合う全ての第2電極3と(さらに、同じレベルの全ての第2サブ電極220と)の距離が等しくなるように、追加の電解質4が配置されている。
【0152】
一方の電極の両側の反対の電荷の対向する電極は、電解質を通るイオン輸送距離を最適化することによって、個々の電気化学セルの合計と比較して、システムの容量を増加させる。
【0153】
外部電極は、電気化学システムの2つの対向する側表面の全表面上に形成される。
【0154】
同じ原理により、必要な数の電気化学セル1を積層させることによって、任意の所望のサイズの電気化学システムを構築することができる。
【0155】
もちろん、第4実施形態の電気化学セルから電気化学システムを形成する代わりに、第3又は第5実施形態の電気化学セルを同様に積層することもできる。
【0156】
電気化学システムは、電気化学セルの第3実施形態で説明されているものと同様の変更手順によって形成することができる。
【0157】
まず、予備固体電解質テープを形成し、その上に特定のパターンの予備電極層を形成する。したがって、まず予備電気化学活性層の下部をスクリーン印刷する。その後、予備電荷コレクタ層をスクリーン印刷し、予備電気化学活性層の上部をスクリーン印刷する。したがって、予備電荷コレクタ層は予備電気化学活性層に埋め込まれる。その後、印刷したままのテープをシートにカットすることができる。ここからシートを上に積層させ、印刷されていない予備電解質テープを頂部及び底部に配置することによって、シートスタックが形成される。その後、アイソスタティックホットプレス手順の後、スタックからグリーンチップをカットすることができる。その後、グリーンチップはバインダーを除去する処理を受け、好ましくは、保護ガス下で700°Cに加熱することによって、酸化を防ぐ。続いて、グリーンチップを高温、例えば850°C、還元雰囲気下で焼結する。焼結チップの2つの対向面に、例えばCr/Ni/Ag三重層などの金属層のスパッタ堆積によって、第1外部電極及び第2外部電極が形成される。
【符号の説明】
【0158】
1 電気化学セル(electrochemical cell)
2 第1電極(first electrode)
21 第1電極の電荷コレクタ層(charge collector layer of the first electrode)
22 第1電極の電気化学活性層(electrochemically active layer of the first electrode)
3 第2電極(second electrode)
31 第2電極の電荷コレクタ層(charge collector layer of the second electrode)
32 第2電極の電気化学活性層(electrochemically active layer of the second electrode)
4 電解質(electrolyte)
5 第1外部電極(first external electrode)
6 第2外部電極(econd external electrode)
210 第1サブ電極(first sub-electrode)
211 第1サブ電極の電荷コレクタ層(charge collector layer of the first sub-electrode)
212 第1サブ電極の電気化学活性層(electrochemically active layer of the first sub- electrode)
220 第2サブ電極(second sub-electrode)
221 第2サブ電極の電荷コレクタ層(charge collector layer of the second sub-electrode)
222 第2サブ電極の電気化学活性層(electrochemically active layer of the second sub- electrode)
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
【国際調査報告】