(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(54)【発明の名称】静脈内投与と関連する抗体耐容性の改善
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230623BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230623BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230623BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230623BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P37/02
A61P31/00
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574537
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2021065014
(87)【国際公開番号】W WO2021245238
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522470231
【氏名又は名称】バイオインベント インターナショナル アーべー
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ビヨルン, フレンデウス
(72)【発明者】
【氏名】リンダ, モルテンソン
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド, テイゲ
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド, カールソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC03
4C076DD23
4C076DD41
4C076EE23
4C076FF61
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB42
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は概して、治療システム及び抗体投薬レジメンにおける使用のための組み合わせ、並びにそれらの使用に関する。ヒト標的に結合する治療用抗体が、静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するためのモデル、及び/又は前処置、投与経路の変更、若しくは抗体の改変が、治療用抗体のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止することができるかどうかを予測するためのモデルも、本明細書に記載される。このモデルは、マウスに抗体を静脈内投与又は腹腔内投与することと、肉眼的症状の孤立及び活動の低下の任意の一過的な呈示について、投与直後にマウスを観察することと、を含む。このモデルはまた、抗体の投与と組み合わせた前処置の投与、静脈内投与又は腹腔内投与以外の投与経路による治療用抗体の投与、又はマウスへの改変形態の抗体の投与、並びにかかる投与の直後に、肉眼的症状の孤立及び活動の低下の任意の一過的な呈示についてマウスを観察すること、並びにこれを、前処置なしの未改変抗体の静脈内投与又は腹腔内投与後の肉眼的症状の孤立及び活動の低下の一過的な呈示と比較すること、を含み得る。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療において使用するための治療用抗体分子であって、前記治療用抗体分子が、抗FcγRIIB抗体であり、前記治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される、治療用抗体分子。
【請求項2】
がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療において使用するための医薬品の製造における治療用抗体分子の使用であって、前記治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、前記医薬品が、皮下投与用に製剤化される、使用。
【請求項3】
治療用抗体分子を含む薬学的製剤であって、前記治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、前記薬学的製剤が、薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤を含み、皮下投与用に製剤化される、薬学的製剤。
【請求項4】
前記治療用抗体が、Fc受容体結合抗体である、請求項1に記載の使用のための治療用抗体分子、請求項2に記載の治療用抗体分子の使用、又は請求項3に記載の薬学的製剤。
【請求項5】
前記治療用抗体が、抗FcγRIIB抗体である、請求項1若しくは4に記載の使用のための治療用抗体分子、請求項2若しくは4に記載の治療用抗体分子の使用、又は請求項3若しくは5に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
前記治療用抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する、請求項5に記載の使用のための治療用抗体分子、請求項5に記載の治療用抗体分子の使用、又は請求項5に記載の薬学的製剤。
【請求項7】
がんの治療のための、請求項5若しくは6に記載の使用のための治療用抗体分子、請求項5若しくは6に記載の治療用抗体分子の使用、又は請求項5若しくは6に記載の薬学的製剤。
【請求項8】
前記治療用抗体が、約90mg/mL~約220mg/mLの濃度で存在する、請求項3~7のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項9】
約5mM~約20mMの酢酸塩、及び/若しくは約50mM~約250mMのNaCl、及び/若しくは約0.05%のポリソルベート20を更に含み、かつ/又は前記薬学的製剤が、約pH5.0~約pH5.8のpHである、請求項3~8のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項10】
前記製剤が、
-150mg/mLの濃度の前記治療用抗体、
-5mMの酢酸塩、
-110mMのNaCl、
-0.05%(w/v)のポリソルベート20、を含み、
-前記製剤が、pH5.8である、請求項3~9のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項11】
対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療のための方法であって、前記対象に治療用抗体分子を投与するステップを含み、前記治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、前記治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される、方法。
【請求項12】
前記Fc受容体結合抗体が、抗FcγRIIB抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Fc受容体結合抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患を治療するための方法であって、請求項3~10のいずれか一項に定義される薬学的製剤を前記対象に皮下投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
がんの治療のための請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性(tolerability)を改善するための治療システム、投薬レジメンにおける使用のための組み合わせ、使用、方法、及びキットに関する。本発明はまた、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題(tolerability issue)と関連するかどうかを予測するために、並びに/又は予防的若しくは治療的処置、投与経路の変更、及び/若しくは治療用抗体分子の改変が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止若しくは緩和することができるかどうかを予測するために使用することができる方法又はモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体は、がん、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び感染性疾患を含む多様な疾患の療法に承認されている、十分に証明されたクラスの薬物を構成する。
【0003】
モノクローナル抗体療法、特にがん療法に使用されるものは、静脈内注入によって投与することができ、反復投薬を通して維持することができる高い即時薬物曝露を可能にする。しかしながら、多くの場合、患者又は対象は、注入関連反応(infusion-related reaction)(「IRR」)と呼ばれる治療用抗体の注入に対する有害反応を経験する可能性がある。
【0004】
IRRは、治療用抗体の注入中に(「単相性」反応)及び/又は注入から数時間以内に(「二相性」若しくは「遅延型」反応)対象によって経験され得、それらには、過敏反応及びサイトカイン放出症候群(「CRS」)が含まれる。米国保険福祉省が2017年11月27日に公表した有害事象の一般用語基準(CTCAE)バージョン5.0によると、IRRなどの有害事象の重症度は、1(最小の重症度)から5(最大の重症度)までの異なるグレードに分類される。
【0005】
一般的なIRRには、鼻閉、咳、アレルギー性鼻炎、咽喉刺激、及び呼吸困難などの呼吸状態、並びに悪寒及び悪心などの非呼吸状態が含まれるが、これらに限定されない。多くの場合、IRRは、対象に投与される第1の用量で生じるが、それらはまた、第2又はそれ以降の投与後にも生じ得る。多くの場合、IRRは軽度であるが、より深刻なIRRが生じることがあり、適切に管理されないと致命的なリスクになる可能性がある。IRRは、体内のあらゆる臓器系に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
重度のCRSは、生命を脅かす有害事象を表す可能性があり、迅速かつ積極的な治療を必要とする。腫瘍負荷の低減、投与される療法の用量の制限、及びステロイドによる前投薬(premedication)は、抗サイトカイン治療の使用と同様に、重度のCRSの発生率を低減した。
【0007】
耐容性の問題は、異なる治療用抗体間で、及び異なる頻度、期間、重症度、及び異なる性質を有する対象間で異なる可能性がある。
【0008】
IRRなどの過敏反応の従来の管理には、一時的な注入の中断、注入速度の低下、並びに/又は抗ヒスタミン剤、解熱剤、及び/若しくはコルチコステロイドによる治療、又は重篤な場合には注入の中断/停止が含まれる。かかる重度の症例では、許容される増加に伴うより遅い速度で、慎重に注入を再導入することが考慮され得る。解熱剤及び/又は抗ヒスタミン剤による前処置は、その後の注入時の反応を予防し得る。
【0009】
コルチコステロイドはしばしば、注入関連反応(IRR)及び治療用抗体で見られる関連する毒性を予防又は抑制するためによく使用される。コルチコステロイドレジメン、すなわち、コルチコステロイドのタイプ、用量、及び投与のタイミングは、使用する治療用抗体及び適応症の両方に依存する。Rituxan(リツキシマブ)は、CD20陽性B細胞リンパ腫(非ホジキンリンパ腫(NHL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL))の両方、並びに関節リウマチ(RA)などの慢性炎症性障害において一般的に使用されるCD20指向性細胞溶解性抗体である。NHL及びCLLの場合、コルチコステロイドは、IRRのリスクを低下させるために使用されることが多く、次いで、第1のリツキシマブサイクルの30分前に、及び第1のサイクル中に重度の注入関連有害事象を経験した場合、その後のサイクルでのみ投与される。NHLの場合、コルチコステロイド(すなわちプレドニゾン)は、併用療法の一部としても使用される(すなわち、リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン(R-CHOP))。RAの場合、各注入の30分前に、コルチコステロイドが推奨される。別のCD20指向性抗体Gazyva(オビヌツズマブ)を投与する場合、コルチコステロイドの前投薬は、最初の治療サイクルの前に、及び次の治療サイクルの前に、以前の注入でグレード3のIRRを経験した患者、又は次の治療の前にリンパ球数が>25×109/Lの患者にのみ推奨される。Gazyvaの場合、コルチコステロイドの前投薬は、抗体の注入の少なくとも1時間前に投与する必要がある。IRRのリスクを低下させるためにコルチコステロイドが使用される治療用抗体の第3の例は、多発性骨髄腫の患者の治療に適応されるCD38指向性抗Darzalex(ダラツムマブ)である。この場合、コルチコステロイドは、全ての注入の前後、注入の1~3時間前、及び注入後2日間の各々で推奨される。
【0010】
WO2020/047389には、免疫療法を受けている患者におけるサイトカイン放出症候群又は注入関連反応の有病率及び重症度を軽減する抗体(例えば、T細胞を標的とする二重特異性抗体)などの治療用タンパク質の投薬戦略及び投薬レジメンが記載され、(i)投薬レジメンの1週目に治療用タンパク質の一次用量(D1)の画分を投与することであって、一次用量が、10mg以下の治療用タンパク質を含み、第1の用量の画分(F1D1)が、総一次用量の40%~60%を含み、1週目の1日目に対象に投与され、第2の用量の画分(F2D1)が、総一次用量の残りの40%~60%を含み、F1D1の投与後12~96時間から対象に投与される、投与することと、(ii)投薬レジメンの2週目に治療用タンパク質の二次用量(D2)の画分を投与することであって、二次用量が、治療用タンパク質の最大週用量の2分の1以下であり、第1の用量の画分(F1D2)が、総二次用量の40%~60%を含み、第2の用量分画(F2D2)が、総二次用量の残りの40%~60%を含み、F2D2が、投薬レジメンの2週目中のF1D2の投与後12~96時間から対象に投与される、投与することと、(iii)投薬レジメンの次の週に、治療用タンパク質の最大週用量を単回用量として対象に投与することと、を含む。有効性が準最適用量で投与すると、最悪の場合、意図された治療処置の臨床的利益が得られないか又は疾患進行の誘導をもたらし、治療上の利益が制限されるリスクがあるため、分割投薬(fractionated dosing)は理想的ではない。
【0011】
WO2020/037024は、モノメチルアウリスタチン又はその機能的類似体若しくは誘導体又は機能的誘導体にコンジュゲートされた抗組織因子抗体又はその抗原結合断片を用いた、卵巣がん、腹膜がん、又は卵管がんの治療における注入関連反応などの有害事象を予防又はその重症度低減するための、抗ヒスタミン剤、アセトアミノフェン、又はコルチコステロイドなどの追加の治療剤の使用に言及している。
【0012】
免疫療法と関連する毒性の管理は、困難な臨床問題である。異なる抗体の静脈内投与と関連する耐容性の問題を低減、抑制、又は克服する方法が非常に必要である。しかしながら、異なる標的に対する抗体と関連する耐容性の問題の性質及び頻度の不均一性、並びにそれらの基礎となるメカニズムの分子的及び細胞的な理解が不十分であることは、多数の異なるアプローチが開発されてきたことを意味し、各々の有効性は、それらが使用される治療用抗体のタイプに応じて大きく異なり得る。
【0013】
上記は、異なる標的への抗体の静脈内投与が、しばしば耐容性の問題と関連することを示している。かかる耐容性の問題は、異なる治療用抗体間で、及び異なる頻度、期間、重症度、及び異なる性質を有する患者間で異なる可能性がある。
【0014】
したがって、同じ標的(例えば、オビヌツズマブと比較した場合の抗CD20抗体リツキシマブ)又は異なる標的(例えば、抗CD20抗体と比較した場合の抗CD38抗体)を対象とする異なる抗体のIV投与と関連する異なる耐容性の問題を低減、抑制、又は克服する方法は大きく異なり、治療用抗体の静脈内投与の直前、同時及び/又は直後の異なる薬剤(例えば、コルチコステロイド又は抗ヒスタミン剤)の投与を含む。
【0015】
異なる標的への抗体の静脈内投与と関連して耐容性の問題が生じやすいかどうかの予測を可能にする方法、及び、同様に重要なことに、所与の標的への抗体の静脈内投与と関連する耐容性の問題を予防、抑制、又は克服するのに役立つ手段の発見を可能にする方法の必要性及び価値は大きい。治療用抗体の開発の初期段階において、ヒト臨床環境と比較して比較的低いコスト及びより高いスループットで、かかる予測及びスクリーニングを可能にする前臨床方法は、卓越した重要性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この背景に対して、本発明者らは、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子を投与するための驚くべき有利なアプローチを開発した。添付の実施例において実証されるように、本発明者らのアプローチは、かかる抗体の投与と関連するIRRを低減及び/又は防止しながら、かかる抗体の治療有効性を維持する。本発明者らのアプローチは、抗体の最初の準最大治療用量を含む、いくつかの別個の用量の抗体を投与することと、コルチコステロイドが対象に投与された後に、その抗体の投与を行うことと、を含む。したがって、本発明者らのアプローチは、かかる抗体を投与するための改善されたレジメンを提供し、これは、対象における耐容性の問題を低減及び/又は予防するように行なわれる。
【0017】
加えて、本発明者らは、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するために、並びに/又は治療用抗体分子の予防的若しくは治療的処置、投与経路の変更、及び/若しくは改変が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止若しくは緩和することができるかどうかを予測するために、使用することができる方法又はモデルを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1から第5の態様
第1の態様では、本発明は、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性の改善に使用するための治療システムを提供し、治療システムは、
(i)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子であって、抗体分子が、少なくとも第1の用量及び第2の用量として、対象に投与される、抗体分子と、
(ii)コルチコステロイドと、を含み、
抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量(maximum therapeutically effective dose)よりも低く、コルチコステロイドが、抗体分子の第1の用量の前に、対象に投与される。
【0019】
第2の態様では、本発明は、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するための投薬レジメンで使用するための抗体分子及びコルチコステロイドを含む組み合わせを提供し、投薬レジメンが、以下のステップ:
(i)抗体分子の第1の用量を投与する前に、コルチコステロイドを投与するステップと、
(ii)最大治療有効用量よりも低い、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量を投与するステップと、
(iii)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量(及び、好ましくは、少なくとも第2の用量)を投与するステップであって、抗体分子の第1の用量が、第2の用量の前に投与される、第2の用量を投与するステップと、を含む。
【0020】
第3の態様では、本発明は、
(i)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子と、
(ii)コルチコステロイドと、の使用を提供し、
対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するための医薬品の製造において、医薬品が、抗体分子の少なくとも第1の用量及び第2の用量を含み、抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量よりも低く、コルチコステロイドが、抗体分子の第1の用量の前に投与される。
【0021】
第4の態様では、本発明は、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するための方法を提供し、
(i)抗体分子の第1の用量を投与する前に、コルチコステロイドを投与することと、
(ii)最大治療有効用量よりも低い、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量を投与することと、
(iii)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量(及び、好ましくは、少なくとも第2の用量)を投与することであって、抗体分子の第1の用量が、第2の用量の前に投与される、第2の用量を投与することと、を含む。
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、ある用量のコルチコステロイド、続いて最大治療有効用量よりも低いFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量、続いて抗体分子の第2の用量の組み合わせが、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性の驚くべき改善につながることを見出した。
【0023】
抗体分子は、免疫学及び分子生物学の分野の当業者には周知である。典型的には、抗体は、2つの重鎖(H)と、2つの軽鎖(L)と、を含む。本明細書では、時には、この完全な抗体分子を、フルサイズ抗体又は完全長抗体と称する。抗体の重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)と、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)と、を含み、抗体分子の軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)と、1つの定常ドメイン(CL)と、を含む。可変ドメイン(時には、FV領域と総称される)は、抗体の標的、又は抗原に結合する。各可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)と称される3つのループを含み、これらは、標的の結合に関与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、様々なエフェクター機能を呈する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、ヒトでは、これらのうちのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、並びにIgA1及びIgA2に分けられる。
【0024】
抗体の別の部分は、Fc領域(あるいは断片結晶化可能ドメインとしても知られている)であり、抗体の重鎖の各々の2つの定常ドメインを含む。本明細書で言及されるように、Fc領域は、抗体とFc受容体との間の相互作用に関与する。
【0025】
本明細書で使用される場合、抗体分子という用語は、完全長抗体又はフルサイズ抗体、並びに完全長抗体の機能的断片及びかかる抗体分子の誘導体を包含する。
【0026】
フルサイズ抗体の機能的断片は、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有し、対応するフルサイズ抗体と同じ可変ドメイン(すなわち、VH配列及びVL配列)並びに/又は同じCDR配列のいずれかを含む。機能的断片が、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、それがフルサイズ抗体と同じ標的上のエピトープに結合することを意味する。このような機能的断片は、フルサイズ抗体のFv部分に対応し得る。代替的に、このような断片は、Fc部分を含まない一価の抗原結合断片であるFab(F(ab)とも表される)、又はジスルフィド結合によって一緒に結合された2つの抗原結合Fab部分を含む二価の抗原結合断片であるF(ab’)2、又はF(ab’)(すなわち、F(ab’)2の一価のバリアント)であり得る。このような断片は、単鎖可変断片(scFv)でもあり得る。
【0027】
機能的断片には、対応するフルサイズ抗体の6つのCDR全てが常に含まれているわけではない。3つ以下のCDR領域(場合によっては、単一のCDRだけ又はその一部)を含む分子は、そのCDRに由来する抗体の抗原結合活性を保持することが可能であることが理解されるであろう。例えば、Gao et al.,1994,J.Biol.Chem.,269:32389-93には、全VL鎖(3つのCDR全てを含む)がその基質に対して高い親和性を有することが記載されている。
【0028】
2つのCDR領域を含む分子については、例えば、Vaughan&Sollazzo 2001,Combinatorial Chemistry&High Throughput Screening,4:417-430に記載されている。418頁に(右欄-3(設計のための本発明者らの戦略))、フレームワーク領域内に散在するH1及びH2 CDR超可変領域のみを含むミニボディが記載されている。ミニボディは、標的に結合することが可能であると記載されている。Pessi et al.,1993,Nature,362:367-9 and Bianchi et al.,1994,J.Mol.Biol.,236:649-59は、Vaughan&Sollazzoによって参照されており、H1及びH2ミニボディ、並びにその特性がより詳細に記載されている。Qiu et al.,2007,Nature Biotechnology,25:921-9では、2つの結合されたCDRからなる分子が抗原に結合することが可能であることが示されている。Quiocho 1993,Nature,362:293-4は、「ミニボディ」技術の概要を提供している。Ladner 2007,Nature Biotechnology,25:875-7は、2つのCDRを含む分子が抗原結合活性を保持することが可能であるとコメントしている。
【0029】
単一のCDR領域を含む抗体分子は、例えば、Laune et al.,1997,JBC,272:30937-44に記載されている。ここでは、CDRに由来する様々なヘキサペプチドが抗原結合活性を示すことが実証されており、完全な単一のCDRの合成ペプチドが強力な結合活性を示すことが指摘されている。Monnet et al.,1999,JBC,274:3789-96では、様々な12-merペプチド及び関連するフレームワーク領域が抗原結合活性を有することが示されており、CDR3様ペプチド単独で抗原に結合することが可能であるとコメントされている。Heap et al.,2005,J.Gen.Virol.,86:1791-1800では、「マイクロ抗体」(単一のCDRを含む分子)が抗原に結合することが可能であることが報告されており、抗HIV抗体からの環状ペプチドが抗原結合活性及び機能を有することが示されている。Nicaise et al.,2004,Protein Science,13:1882-91では、単一のCDRが、そのリゾチーム抗原に対する抗原結合活性及び親和性を付与し得ることが示されている。
【0030】
したがって、5つ、4つ、3つ以下のCDRを有する抗体分子は、それらが由来する完全長抗体の抗原結合特性を保持することが可能である。
【0031】
抗体分子は、完全長抗体の誘導体又はかかる抗体の断片であってもよい。誘導体が使用される場合、完全長抗体と同じ標的上のエピトープに結合するという意味で、対応する完全長抗体と同じ抗原結合特徴を有するべきである。
【0032】
したがって、本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、全てのタイプの抗体分子、並びにそれらの機能的断片及びそれらの誘導体を含み、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、組換え産生された抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト起源の抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖のホモ二量体、抗体軽鎖のホモ二量体、抗体重鎖のヘテロ二量体、抗体軽鎖のヘテロ二量体、そのようなホモ二量体及びヘテロ二量体の抗原結合機能的断片を含む。
【0033】
更に、本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、以下を含む、全てのクラスの抗体分子及び機能的断片を含む:(特に明記しない限り)IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、及びIgE。
【0034】
上で概説したように、抗体分子の異なるタイプ及び形態は、本発明に包含され、免疫学分野の当業者には既知であろう。治療目的に使用される抗体は、多くの場合、抗体分子の特性を改変する追加の構成成分を用いて改変されることがよく知られている。
【0035】
したがって、本発明者らは、本発明の抗体分子又は本発明に従って使用される抗体分子(例えば、モノクローナル抗体分子、及び/又はポリクローナル抗体分子、及び/又は二重特異性抗体分子)が、検出可能な部分及び/又は細胞傷害性部分を含むことを含める。
【0036】
「検出可能な部分」とは、酵素、放射性原子、蛍光部分、化学発光部分、生物発光部分で構成される群からの1つ以上を含む。検出可能な部分は、抗体分子をインビトロ、及び/又はインビボ、及び/又はエクスビボで視覚化することを可能にする。
【0037】
「細胞傷害性部分」とは、放射性部分及び/又は酵素が挙げられ、酵素は、カスパーゼ及び/又は毒素であり、毒素は、細菌毒素又は毒液であり、細胞傷害性部分は、細胞溶解を誘導することが可能である。
【0038】
本発明者らは更に、抗体分子が、単離された形態及び/又は精製された形態であり得、かつ/又はPEG化され得ることを含める。PEG化は、その挙動を改変する、例えば、その流体力学的サイズを増加させ、腎クリアランスを防止することでその半減期を延ばすように、ポリエチレングリコールポリマーを、抗体分子又は誘導体などの分子に付加する方法である。
【0039】
上で考察されたように、抗体のCDRは、抗体標的に結合する。本明細書に記載の各CDRへのアミノ酸の割り当ては、Kabat EA et al.1991,In“Sequences of Proteins of Immunological Interest”Fifth Edition,NIH Publication No.91-3242,pp xv-xviiによる定義に従う。
【0040】
当業者が認識するように、アミノ酸を各CDRに割り当てるための他の方法も存在する。例えば、International ImMunoGeneTics information system(IMGT(登録商標))(http://www.imgt.org/and Lefranc and Lefranc“The Immunoglobulin FactsBook”published by Academic Press,2001)。
【0041】
一部の実施形態では、抗体分子は、FcyRllbに特異的に結合する。Fc受容体は、マクロファージなどの免疫エフェクター細胞の細胞表面に見られる膜タンパク質として当該技術分野で周知である。この名称は、抗体が受容体に結合する通常の方法である、抗体のFc領域に対するそれらの結合特異性に由来する。しかしながら、特定の抗体は、抗体が1つ以上のFc受容体に特異的に結合する場合、抗体の相補性決定領域(「CDR」)配列を介してFc受容体に結合することもできる。
【0042】
Fc受容体のサブグループには、IgG抗体に特異的であるFcγ受容体(Fc-γ受容体、FcγR)がある。Fcγ受容体には、活性化Fcγ受容体(活性化Fcγ受容体とも表される)及び抑制性Fcγ受容体の2タイプがある。活性化受容体及び抑制性受容体は、それぞれ、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)又は免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を介して、それらのシグナルを伝達する。ヒトでは、FcγRIIb(CD32b)は、抑制性Fcγ受容体であり、一方、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIc(CD32c)、FcγRIIIa(CD16a)、及びFcγRIVは、活性化Fcγ受容体である。FcγRIIIbは、好中球上で発現するGPI結合受容体であり、ITAMモチーフを欠くが、脂質ラフトを架橋し、他の受容体と会合するその能力によって活性化ともみなされる。マウスでは、活性化受容体は、FcγRI、FcγRIII及びFcγRIVである。
【0043】
抗体がFcγ受容体との相互作用を介して免疫細胞活性を調節することは周知である。具体的には、抗体免疫複合体が免疫細胞の活性化をどのように調節するかは、活性化Fcγ受容体及び抑制性Fcγ受容体の相対的な関与によって決定される。異なる抗体アイソタイプは、異なる親和性で活性化Fcγ受容体及び抑制性Fcγ受容体に結合し、結果として異なるA:I比(活性化:抑制の比率)をもたらす(Nimmerjahn et al;Science.2005 Dec 2;310(5753):1510-2)。
【0044】
抑制性Fcγ受容体に結合することにより、抗体は、エフェクター細胞機能を阻害、遮断、及び/又は下方制御することができる。
【0045】
抗体は、活性化Fcγ受容体に結合することにより、エフェクター細胞の機能を活性化し、それによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン放出、及び/又は抗体依存性エンドサイトーシス、並びに好中球の場合はネトーシス(すなわち、NET(好中球細胞外トラップ)の活性化及び放出)などのメカニズムを誘発することができる。活性化Fcγ受容体に結合する抗体も、CD40、MHCII、CD38、CD80、及び/又はCD86などの特定の活性化マーカーの増加につながり得る。
【0046】
FcγRIIbに特異的に結合する本発明による抗体分子は、抗体のFab領域を介して、すなわち、重鎖及び軽鎖の各々の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインで構成される、抗原に結合する抗体上の抗原結合領域を介して、このFcγ受容体に結合又はそれと相互作用する。特に、それは、免疫エフェクター細胞上に存在するFcγRIIb(特に、免疫エフェクター細胞の表面に存在するFcγRIIb)に結合する。
【0047】
一部の好ましい実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する本発明による抗体分子は、そのFc領域を介してFcγ受容体にも結合することができる。一部の実施形態では、これらは、活性化Fcγ受容体又は抑制性Fcγ受容体である。一部の好ましい実施形態では、抗体分子は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4型の抗体分子であり得る。
【0048】
一部の他の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、そのFc領域を介して(例えば、脱フコシル化を介して)、Fcγ受容体への結合が増強されるように操作され得る。
【0049】
一部の他の実施形態では、本発明による抗体分子は、そのFc領域を介してFcγ受容体に対する結合が低減又は障害される。抗体の脱グリコシル化、具体的には297位(例えば、以下の変異のうちの1つ:N297A、N297Q、又はN297G)により、FcγRへの結合に対してヒトIgG及びマウスIgGの両方が障害されることはよく知られている。抗体分子は、Fc領域を欠く場合も、結合が減少又は障害され得る。更に、障害又は無効化されたFcγR結合は、改変形態(modified format)がFcγRにまったく結合しないこと、又はそれが未改変抗体よりもFcγRに強く結合しないことを意味する。
【0050】
「Fcγ受容体への結合の低減」(「親和性が低減した結合」とも称される)によって、抗体分子がFcγ受容体へのFc媒介性結合を低減させたこと、言い換えれば、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子のFc領域が、正常なヒトIgG1のFc領域よりも低い親和性で活性化Fcγ受容体に結合することを含む。結合の低減は、表面プラズモン共鳴などの技術を使用して評価することができる。これに関連して、「正常なIgG1」とは、そのグリコシル化を変化させるようには産生されていない、非変異Fc領域を有する従来通りに産生されたIgG1を意味する。この「正常なIgG1」の基準として、CHO細胞で産生されたリツキシマブを、なんら改変せずに使用することができる(Tipton et al,Blood 2015 125:1901-1909;リツキシマブは、例えば、EP0605442に記載されている)。ヒトIgG2及びヒトIgG4は、ヒトIgG1と比較して、Fcγ受容体への親和性が低下して結合する抗体アイソタイプの例である。したがって、ヒトIgG2及びIgG4に基づく抗体は、この用語の意味の範囲内で「Fcγ受容体への結合が減少」している。
【0051】
一部の他の実施形態では、本発明による抗体分子は、Fc領域を有しない場合がある(したがって、Fc領域を介してFcγ受容体に結合することができない)。そのような断片は、上で考察されており、Fv、Fab(F(ab)とも表される)、F(ab’)2、F(ab’)、又はscFvを含む。本発明による抗体分子は、FcgRIIB及び追加のFcgRに特異的な二重特異性抗体断片、例えば、scFv、Fab、又はFab´2であり得る。
【0052】
次いで、治療用抗体分子は、WO2012/022985、WO2015/173384、及び/又はWO2019/13805に記載されている抗体分子であってもよい。一部の実施形態では、WO2012/022985に記載されているCDR配列(配列番号83~88)を有する抗体である。一部の実施形態では、それは、WO2012/022985に記載されている、配列番号12のVH及び配列番号25のVLを有する抗体である。
【0053】
一部の実施形態では、それは、WO2012/022985に記載されている抗体であり、配列番号12のVH、配列番号25のVL、配列番号1のCH、及び配列番号2のCLを有する(配列番号1を有する軽鎖及び配列番号2を有する重鎖を含む本明細書に開示される抗体に対応する)。一部の好ましい実施形態では、本発明の抗体分子は、配列番号1の軽鎖を有する。一部の更なる実施形態では、本発明の抗体分子は、配列番号2の重鎖を有する。
軽鎖:
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYADDHRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCASWDDSQRAVIFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号1)
重鎖:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWMAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARELYDAFDIWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号2)
【0054】
一部の実施形態では、本発明の抗体分子は、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する(この抗体は、BI-1206と表される)。
【0055】
上述のように、本発明の抗体分子は、一部の実施形態では、そのFc領域を介して、Fcγ受容体に対する結合が低減又は障害され得る。この場合、治療用抗体分子は、Fc受容体結合抗体(Fc receptor binding antibody)であり、改変形態は、同じFv可変配列を有するが、治療用抗体分子と比較して、FcγR結合が障害又は無効化されている抗体である。
【0056】
一部の実施形態では、治療用抗体は、Fc受容体に結合する抗FcγRIIB抗体であり、一部のかかる場合では、改変形態は、抗FcγRIIB抗体は、配列番号1の軽鎖及び配列番号195の重鎖を有する抗体である。
【0057】
BI-1206の改変形態は、N297におけるグリコシル化部位(上記の配列番号2において太字でマークされている)がQ(下記の太字でマークされている)に変異しており(すなわち、N297Q変異)、以下の重鎖が得られる。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWMAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARELYDAFDIWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号195)
【0058】
配列番号1の軽鎖のCDR領域、及び配列番号2又は195の重鎖のCDR領域を以下に示す。
【表1】
【0059】
したがって、一部の実施形態では、本発明の抗体分子は、配列番号196~201のCDR配列のうちの1つ以上を含む。例えば、抗体分子は、配列番号196~201のCDR配列のうちの2つ以上、3つ以上、4つ以上、若しくは5つ以上、又は6つ全てを含む。例えば、抗体分子は、1つ以上、若しくは2つ以上、若しくは3つの軽鎖CDR領域(すなわち、配列番号199、200、及び201)、並びに/又は1つ以上、若しくは2つ以上、若しくは3つの重鎖CDR領域(すなわち、配列番号196、197、及び198)を含み得る。
【0060】
好ましくは、本発明の抗体分子は、以下の定常領域(CH及びCL)を含む。
IgG1-CH[配列番号202]:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
λ-CL[配列番号203]:
QPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0061】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の抗体分子は、
-配列番号1の軽鎖、及び配列番号2の重鎖、及び配列番号202及び203の定常領域、又は
-配列番号1の軽鎖、及び配列番号195の重鎖、及び配列番号202及び203の定常領域、を含む。
【0062】
代替的な実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、公開されているPCT特許出願第WO2012/022985号、同第WO2015/173384号、及び/又は同第WO2019/138005号に記載されている抗体である。
【0063】
FcγRIIbに特異的に結合する抗体は、以下のクローンのうちの1つ以上の配列を含み得る:
抗体クローン:1A01
1A01-VH[配列番号3]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMNWIRQTPGKGLEWVSLIGWDGGSTYYADSVKGRFTISRDNSENTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARAYSGYELDYWGQGTLVTVSS
1A01-VL[配列番号27]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYDNNNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNASIFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYYMN[配列番号51]
CDRH2:LIGWDGGSTYYADSVKG[配列番号52]
CDRH3:AYSGYELDY[配列番号53]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号54]
CDRL2:DNNNRPS[配列番号55]
CDRL3:AAWDDSLNASI[配列番号56]
【0064】
抗体クローン:1B07
1B07-VH[配列番号4]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAFTRYDGSNKYYADSVRGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENIDAFDVWGQGTLVTVSS
1B07-VL[配列番号28]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYDNQQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCEAWDDRLFGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号57]
CDRH2:FTRYDGSNKYYADSVRG[配列番号58]
CDRH3:ENIDAFDV[配列番号59]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号60]
CDRL2:DNQQRPS[配列番号61]
CDRL3:WDDRLFGPV[配列番号62]
【0065】
抗体クローン:1C04
1C04-VH[配列番号5]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSISDSGAGRYYADSVEGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARTHDSGELLDAFDIWGQGTLVTVSS
1C04-VL[配列番号29]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNHVLWYQQLPGTAPKLLIYGNSNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYAMS[配列番号63]
CDRH2:SISDSGAGRYYADSVEG[配列番号64]
CDRH3:THDSGELLDAFDI[配列番号65]
CDRL1:SGSSSNIGSNHVL[配列番号66]
CDRL2:GNSNRPS[配列番号67]
CDRL3:AAWDDSLNGWV[配列番号68]
【0066】
抗体クローン:1E05
1E05-VH[配列番号6]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMNWVRQVPGKGLEWVAVISYDGSNKNYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARNFDNSGYAIPDAFDIWGQGTLVTVSS
1E05-VL[配列番号30]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYDNNSRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLGGPVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:TYAMN[配列番号:69]
CDRH2:VISYDGSNKNYVDSVKG[配列番号70]
CDRH3:NFDNSGYAIPDAFDI[配列番号71]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号72]
CDRL2:DNNSRPS[配列番号73]
CDRL3:AAWDDSLGGPV[配列番号74]
【0067】
抗体クローン:2A09
2A09-VH[配列番号7]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNAWMSWVRQAPGKGLEWVAYISRDADITHYPASVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCTTGFDYAGDDAFDIWGQGTLVTVSS
2A09-VL[配列番号31]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGSNAVNWYQQLPGTAPKLLIYGNSDRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGRWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NAWMS[配列番号75]
CDRH2:YISRDADITHYPASVKG[配列番号76]
CDRH3:GFDYAGDDAFDI[配列番号77]
CDRL1:SGSSSNIGSNAVN[配列番号78]
CDRL2:GNSDRPS[配列番号79]
CDRL3:AAWDDSLNGRWV[配列番号80]
【0068】
抗体クローン:2B08
2B08-VH[配列番号8]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWVRQAPGKGLEWVALIGHDGNNKYYLDSLEGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARATDSGYDLLYWGQGTLVTVSS
2B08-VL[配列番号32]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYYDDLLPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCTTWDDSLSGVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYYMS[配列番号81]
CDRH2:LIGHDGNNKYYLDSLEG[配列番号82]
CDRH3:ATDSGYDLLY[配列番号83]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号84]
CDRL2:YDDLLPS[配列番号85]
CDRL3:TTWDDSLSGVV[配列番号86]
【0069】
抗体クローン:2E08
2E08-VH[配列番号9]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSAIGFSDDNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAGGDGSGWSFWGQGTLVTVSS
2E08-VL[配列番号33]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGNNAVNWYQQLPGTAPKLLIYDNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCATWDDSLRGWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:DYYMS[配列番号87]
CDRH2:AIGFSDDNTYYADSVKG[配列番号88]
CDRH3:GDGSGWSF[配列番号89]
CDRL1:SGSSSNIGNNAVN[配列番号90]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号91]
CDRL3:ATWDDSLRGWV[配列番号92]
【0070】
抗体クローン:5C04
5C04-VH[配列番号10]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREWRDAFDIWGQGTLVTVSS
5C04-VL[配列番号34]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSDNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGSWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号93]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号94]
CDRH3:WRDAFDI[配列番号95]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号96]
CDRL2:SDNQRPS[配列番号97]
CDRL3:AAWDDSLSGSWV[配列番号98]
【0071】
抗体クローン:5C05
5C05-VH[配列番号11]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARENFDAFDVWGQGTLVTVSS
5C05-VL[配列番号35]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSNSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGQVVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:TYGMH[配列番号99]
CDRH2:VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号100]
CDRH3:ENFDAFDV[配列番号101]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号102]
CDRL2:SNSQRPS[配列番号103]
CDRL3:AAWDDSLNGQVV[配列番号104]
【0072】
抗体クローン:5D07
5D07-VH[配列番号12]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIAYDGSKKDYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREYRDAFDIWGQGTLVTVSS
5D07-VL[配列番号36]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNSNRPSGVPDRFSGSKSGTTASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSVSGWMFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:TYGMH[配列番号105]
CDRH2:VIAYDGSKKDYADSVKG[配列番号106]
CDRH3:EYRDAFDI[配列番号107]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号108]
CDRL2:GNSNRPS[配列番号109]
CDRL3:AAWDDSVSGWM[配列番号110]
【0073】
抗体クローン:5E12
5E12-VH[配列番号13]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGINKDYADSMKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARERKDAFDIWGQGTLVTVSS
5E12-VL[配列番号37]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYSNNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCATWDDSLNGLVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号111]
CDRH2:VISYDGINKDYADSMKG[配列番号112]
CDRH3:ERKDAFDI[配列番号113]
CDRL1:TGSSSNIGAGYDVH[配列番号114]
CDRL2:SNNQRPS[配列番号115]
CDRL3:ATWDDSLNGLV[配列番号116]
【0074】
抗体クローン:5G08
5G08-VH[配列番号14]
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFNNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNRYYADSVKGRFTMSRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRWNGMDVWGQGTLVTVSS
5G08-VL[配列番号38]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYANNQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLNGPWVFGGGTKLTVLG
CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号:117]
CDRH2:VISYDGSNRYYADSVKG[配列番号118]
CDRH3:DRWNGMDV[配列番号119]
CDRL1:SGSSSNIGAGYDVH[配列番号120]
CDRL2:ANNQRPS[配列番号121]
CDRL3:AAWDDSLNGPWV[配列番号122]
【0075】
抗体クローン:5H06
5H06-VH[配列番号15]
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5H06-VL[配列番号39]
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CDR領域
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【0076】
抗体クローン:6A09
6A09-VH[配列番号16]
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6A09-VL[配列番号40]
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CDR領域
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【0077】
抗体クローン:6B01
6B01-VH[配列番号17]
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6B01-VL[配列番号41]
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CDR領域
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【0078】
抗体クローン:6C11
6C11-VH[配列番号18]
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6C11-VL[配列番号42]
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CDR領域
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【0079】
抗体クローン:6C12
6C12-VH[配列番号19]
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6C12-VL[配列番号43]
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CDR領域
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【0080】
抗体クローン:6D01
6D01-VH[配列番号20]
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6D01-VL[配列番号:44]
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CDR領域
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【0081】
抗体クローン:6G03
6G03-VH[配列番号21]
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6G03-VL[配列番号:45]
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【0082】
抗体クローン:6G08
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6G08-VL[配列番号:46]
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【0083】
抗体クローン:6G11
6G11-VH[配列番号23]
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6G11-VL[配列番号:47]
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CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号171]
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【0084】
抗体クローン:6H08
6H08-VH[配列番号24]
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6H08-VL[配列番号48]
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CDR領域
CDRH1:NYGMH[配列番号177]
CDRH2:VISYDGSNKYYAD SVKG[配列番号178]
CDRH3:EYKDAFDI[配列番号179]
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【0085】
抗体クローン:7C07
7C07-VH[配列番号25]
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7C07-VL[配列番号49]
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CDR領域
CDRH1:SYGMH[配列番号183]
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【0086】
抗体クローン:4B02
4B02-VH[配列番号26]
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4B02-VL[配列番号50]
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CDR領域
CDRH1:NHGMH[配列番号189]
CDRH2:VISYDGTNKYYADSVRG[配列番号190]
CDRH3:ETWDAFDV[配列番号191]
CDRL1:SGSSSNIGSNNAN[配列番号192]
CDRL2:DNNKRPS[配列番号193]
CDRL3:QAWDSSTVV[配列番号194]
【0087】
一部の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト抗体である。
【0088】
一部の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト起源の抗体、すなわち、本明細書に記載されるように改変された元々ヒトの抗体である。
【0089】
一部の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト化抗体、すなわち、ヒト抗体との類似性を高めるように改変された元々非ヒトの抗体である。ヒト化抗体は、例えば、マウス抗体又はラマ抗体であってよい。
【0090】
上で考察されたように、第1の抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル起源の抗体分子であり得る。
【0091】
抗体が、定義された標的分子若しくは抗原に特異的に結合する、又はそれと相互作用することはよく知られている。つまり、抗体は、その標的に優先的かつ選択的に結合し、標的ではない分子には結合しない。
【0092】
タンパク質の結合を評価する方法は、生化学及び免疫学の当業者には既知である。当業者であれば、それらの方法を使用して、抗体の標的への結合及び/又は抗体のFc領域のFc受容体への結合、並びにそれらの相互作用の相対的な強度、若しくは特異性、若しくは抑制、若しくは防止、若しくは低減を評価することができることを理解するであろう。タンパク質の結合を評価するために使用され得る方法の例は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)がある(抗体特異性に関する考察については、Fundamental Immunology Second Edition,Raven Press,New York at pages 332-336(1989)を参照されたい)。
【0093】
したがって、「特異的に結合する抗体分子」とは、抗体分子が標的に特異的に結合するが、非標的には結合しないか、又は標的よりも非標的により弱く(例えば、より低い親和性で)結合することを含む。
【0094】
また、抗体が、非標的よりも標的に、少なくとも2倍強く、又は少なくとも5倍強く、又は少なくとも10倍強く、又は少なくとも20倍強く、又は少なくとも50倍強く、又は少なくとも100倍強く、又は少なくとも200倍強く、又は少なくとも500倍強く、又は少なくとも約1000倍強く、特異的に結合するという意味を含む。
【0095】
加えて、抗体が標的に少なくとも約10-1Kd、又は少なくとも約10-2Kd、又は少なくとも約10-3Kd、又は少なくとも約10-4Kd、又は少なくとも約10-5Kd、又は少なくとも約10-6Kd、又は少なくとも約10-7Kd、又は少なくとも約10-8Kd、又は少なくとも約10-9Kd、又は少なくとも約10-10Kd、又は少なくとも約10-11Kd、又は少なくとも約10-12Kd、又は少なくとも約10-13Kd、又は少なくとも約10-14Kd、又は少なくとも約10-15KdのKdで結合する場合、抗体が標的に特異的に結合するという意味を含む。
【0096】
上で考察されたように、本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用は、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するためのものである。治療用抗体の投与が耐容性の問題と関連し得ることはよく知られている。一部の実施形態では、これらの問題は、当該抗体の静脈内投与と関連し得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「耐容性」という用語は、治療剤の有害作用が対象によって耐容され得る程度を指す。「有害作用」とは、直接的若しくは間接的に治療剤によって引き起こされる、所望の治療効果ではない任意の効果、又は直接的若しくは間接的に治療剤に起因する任意の他の有益な効果を含む。
【0098】
「耐容性の改善」とは、抗体分子の投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和することを含む。別の定義では、抗体分子の投与と関連する有害作用の低減又は予防を含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「耐容性の問題」という用語は、ヒトへの抗体分子の投与(特に、静脈内投与)に関連して生じ得る異なるタイプの有害作用を包含する。これらは、例えば、注入関連反応(IRR)、サイトカイン放出症候群、血小板減少症、肝毒性(例えば、肝酵素の上昇)、発熱、低血圧、及び/又は皮膚毒性(痙攣などの発疹が含まれる)であり得る。ここで、これらの異なる耐容性の問題は、以下に更に説明するように、有害事象の一般用語基準(CTCAE)バージョン5.0(米国保健福祉省2017年11月27日発行)で定義されている方法で定義される。
【0100】
耐容性の問題は、それらを経験する対象に対して異なるグレード(すなわち、異なる重症度)であり得る。それらが対象に不快感をもたらす場合もあれば、治療用抗体分子による治療の継続を妨げる深刻な問題を引き起こす場合もある。更に悪い場合、耐容性の問題は、対象の死亡につながる可能性さえある。
【0101】
本明細書に記載されるように予測、予防、及び/又は緩和され得る耐容性の問題は、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する、すなわち、治療用抗体分子が投与されるとすぐに(例えば、対象への治療用抗体分子の投与から数分から最大数時間以内又は24時間以内に)発生する有害事象である。多くの場合、第1の耐容性の問題は、30分以内に観察される。
【0102】
一部の好ましい実施形態では、IRRに関してFcγRllbに特異的に結合する抗体の耐容性を改善することが特に興味深い。一部の実施形態では、これらの抗体は、ヒト対象において様々な重症度のIRRを引き起こす、又はそれにつながる可能性がより高い場合がある。したがって、そのようなIRRを防止又は緩和することは、それらが対象の経験を改善し、また、耐容性の問題のために治療を中止する必要がある前に(これが必要な場合)、治療用抗体をより長く、より高い用量で投与することを可能にするので、有利である。
【0103】
場合によっては、特に、血小板減少症及び/又は肝毒性を予防することが重要な場合がある。
【0104】
本明細書に記載されるように防止又は緩和され得るIRR、及び/又は本明細書に記載の方法で予測され得るIRRは、任意のIRRであり得る。CTCAEバージョン5.0で「注入関連反応」と表される有害事象は、「損傷、中毒、及び処置合併症」の群に属する、薬理学的物質又は生物学的物質の注入に対する有害反応を特徴とする障害に使用される。CTCAEで特定された5つのグレードは以下の通りである:
1)軽度の一過性反応、注入の中断は適応されない、介入は適応されない。
2)治療又は注入の中断が適応されるが、対症療法(例えば、抗ヒスタミン剤、NSAID、麻薬、静注液)に速やかに応答する、24時間以内の予防薬が適応される。
3)長期間(例えば、対症薬に速やかに応答しない、及び/又は短時間の注入の中断)、初期改善後の症状の再発、臨床的続発症のための入院の適応。
4)生命を脅かす結果、緊急介入の適応。
5)死亡。
【0105】
上記の分類指標に基づいて、当業者であれば、例えば、IRRの症状について対象を観察することによって、本明細書で定義される抗体分子の投与後の対象における注入関連反応を特定することができるであろう。これらは、一部の実施形態では、掻痒、蕁麻疹、発熱/悪寒、発汗、気管支痙攣、悪心、筋肉痛、及び心血管虚脱を含み得る。
【0106】
一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗体分子と関連するIRRは、本明細書に記載の投薬レジメンによって低減又は完全に防止される。
【0107】
CTCAEバージョン5.0で「サイトカイン放出症候群」と表される有害事象は、「免疫系障害」の群に属するサイトカインの放出によって引き起こされる発熱、頻呼吸、頭痛、頻脈、低血圧、発疹、及び/又は低酸素を特徴とする障害に使用される。CTCAEで特定された5つのグレードは以下の通りである:
1)全身症状の有無にかかわらない発熱
2)液体に反応する低血圧、<40%O2に反応する低酸素
3)1つの昇圧薬で管理されている低血圧、≧40%のO2を必要とする低酸素症
4)生命を脅かす結果、緊急介入が適応される
5)死亡
【0108】
CTCAEバージョン5.0で「血小板数の減少」(すなわち、血小板減少症)と表される有害事象は、「調査」の群に属する血液検体中の血小板数の減少を示す臨床検査結果に基づく所見に使用される。CTCAEで特定された5つのグレードは以下の通りである:
1)<LLN~75,000/mm3;<LLN~75.0×10e9/L
2)<75,000~50,000/mm3;<75.0~50.0×10e9/L
3)<50,000~25,000/mm3;<50.0~25.0×10e9/L
4)<25,000/mm3;<25.0×10e9/L
5)-
【0109】
また、関連する毒性は、肝臓の有害事象又は肝毒性であり得る。そのような毒性の例は、2つの酵素であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の一方又は両方の上昇である。血小板減少症と同様に、CTCAEバージョン5.0で「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加」及び「アラニンアミノトランスフェラーゼの増加」と表される有害事象は、「調査」の群に属する。AST又はALTの増加は、それぞれ、血液検体中のAST(又はSGOT)及びALT(又はSGPT)のレベルの増加を示す臨床検査結果に基づく所見である。ASTの増加及びALTの増加の両方について、CTCAEで特定された5つのグレードは、以下の通りである:
1)>ULN~3.0×ULN(ベースラインが正常であった場合)、1.5~3.0×ベースライン(ベースラインが異常であった場合)
2)>3.0~5.0×ULN(ベースラインが正常であった場合)、>3.0~5.0×ベースライン(ベースラインが異常であった場合)
3)>5.0-20.0×ULN(ベースラインが正常であった場合)、>5.0-20.0×ベースライン(ベースラインが異常であった場合)
4)>20.0×ULN(ベースラインが正常であった場合)、>20.0×ベースライン(ベースラインが異常であった場合)
5)-。
【0110】
CTCAEバージョン5.0で「発熱」と表される有害事象は、「全身障害及び投与部位の状態」群に属する、正常値の上限を超える体温の上昇を特徴とする障害に使用される。CTCAEで特定された5つのグレードは以下の通りである:
1)38.0~39.0℃
2)>39.0~40.0℃
3)>40.0℃(24時間以内)
4)>40.0℃(24時間超)
5)死亡。
【0111】
CTCAEバージョン5.0で「低血圧」と表される有害事象は、「血管障害」の群に属する、所与の環境で個人について予想される正常値を下回る血圧を特徴とする障害に使用される。CTCAEで特定された5つのグレードは以下の通りである:
1)無症候性、介入は適応されない
2)緊急ではない医療介入が適応される
3)医療介入が適応され、入院が適応される
4)生命を脅かす結果、及び緊急介入が適応される
5)死亡。
【0112】
CTCAEバージョン5.0で「蕁麻疹」と表される有害事象は、「皮膚障害及び皮下組織障害」の群に属する、内側が淡く、はっきりとした赤い縁の膨疹を特徴とする痒い皮疹を特徴とする障害に使用される。CTCAEで特定された5つのグレードは以下の通りである:
1)<10%のBSAをカバーする蕁麻疹様病変、局所的介入が適応される
2)10~30%のBSAをカバーする蕁麻疹様病変、経口介入が適応される
3)>30%のBSAをカバーする蕁麻疹様病変、IV介入が適応される
4)-
5)-。
【0113】
一部の他の実施形態では、耐容性の改善は、抗体の投与時に観察される有害作用の低減又は予防と関連する。これらの効果は、一部の実施形態では、抗体の投与に直接的又は間接的に起因し得る。
【0114】
一部の実施形態では、上述の耐容性の問題及び/又は有害作用は、正常レベル外のいくつかの対象観察の変化を引き起こす。一部の実施形態では、これらの観察は、以下のうちの1つ以上を含む:体温、血小板数、肝酵素の血中レベル(例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT))、サイトカインの血中レベル(例えば、IL-6、TNF-α、IL-8、IFN-γ、MIP-1β、IL-10、IL-4、IL-1b、IL-2、IL-12)。
【0115】
上記の測定値の各々の正常レベルは、典型的には、以下のように定義される:
●体温:36.1℃~37.9℃。
●血小板数:1リットル当たり145×109~400×109。
●ALATの血中レベル:0~1.09μkat/L、16~63U/L。
●ASATの血中レベル:0~0.759μkat/L、15~37U/L。
●血中レベルIL-6:0.16~27.2pg/ml、中央値0.47pg/ml。
【0116】
一部の実施形態では、本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用は、上記パラメータの各々の変化を低減する。「変化を減少させる」とは、抗体分子の本明細書で定義される本発明の第1の用量及び第2の用量(mgで)の合計に相当する単回投与が投与される場合と比較して、本発明の治療システム又は投薬レジメンが使用される場合、上記の測定値の各々の変化の程度がより少ないことを意味する。好ましくは、これらの変化は、許容レベル(acceptable level)の範囲内に低減される。
【0117】
「許容レベル」とは、上記測定値が、抗体分子の第2の用量による処置後、上で定義された正常範囲内に留まることを意味する。一部の実施形態では、上記の測定値は、抗体分子の第2の用量の投与後に上で定義された正常範囲内に留まる。一部の他の実施形態では、「許容レベル」とは、IRRの臨床グレーディング(当該技術分野で定義され、CTCAEスケールを使用して本明細書に定義される)は、少なくともグレード2に低減されることを含む。一部の好ましい実施形態では、IRRのグレーディングは、グレード1に低減される。本明細書で考察されるように、当業者は、CTCAEスケールに従ってIRRをグレーディングする方法を認識するであろう。
【0118】
一部の好ましい実施形態では、これらの値は、抗体分子の第2の用量の投与後に少なくとも24時間、正常レベル内に留まるか、又は許容レベル内で変化する。
【0119】
上で考察されたように、本発明は、抗体分子の第1の用量の前に、コルチコステロイドが対象に投与されるシステム、組み合わせ、方法、又は使用を提供する。コルチコステロイドは、よく知られたクラスのステロイドホルモンであり、多種多様な臨床用途に使用されている。
【0120】
実施例1に示されるように、コルチコステロイドは、驚くべきことに、本発明の治療用抗体の投与と関連する注入関連反応に対する保護効果を提供することが見出されている。実施例2にも示されるように、臨床でIRRを治療するために以前に使用された他の化合物は、保護効果を提供しなかった(又は、単に相加効果を提供した)。IRRを治療するために一般的に使用されてきたこれらの他の化合物には、限定されないが、以下の:抗ヒスタミン剤(例えば、H1及びH2遮断薬)、抗PAF、抗IL-6R、及びロイコトリエン受容体拮抗薬(例えば、モンテルカスト)が含まれる。これらの他の一般的に使用される療法のいずれも同様の保護効果を提供しなかったため、これは、本発明の文脈において、コルチコステロイド単独の保護効果を驚くべきものにする。
【0121】
本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用の好ましい実施形態では、コルチコステロイドは、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の10分~48時間前の時点で、対象に投与される。より好ましくは、コルチコステロイドは、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の10分~24時間前の時点で、対象に投与される。
【0122】
したがって、本発明の実施形態では、コルチコステロイドは、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の約10分、又は約20分、又は約30分、又は約40分、又は約50分、又は約1時間、又は約2時間、又は約3時間、又は約4時間、又は約5時間、又は約6時間、又は約7時間、又は約8時間、又は約9時間、又は約10時間、又は約11時間、又は約12時間、又は約13時間、又は約14時間、又は約15時間、又は約16時間、又は約17時間、又は約18時間、又は約19時間、又は約20時間、又は約21時間、又は約22時間、又は約23時間、又は約24時間、又は約25時間、又は約26時間、又は約27時間、又は約28時間、又は約29時間、又は約30時間、又は約31時間、又は約32時間、又は約33時間、又は約34時間、又は約35時間、又は約36時間、又は約37時間、又は約38時間、又は約39時間、又は約40時間、又は約41時間、又は約42時間、又は約43時間、又は約44時間、又は約45時間、又は約46時間、又は約47時間、又は約48時間前の時点で投与される。
【0123】
本発明の実施形態では、コルチコステロイドは、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の前に、複数回の用量で投与され得る。例えば、コルチコステロイドは、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の前に、2回の用量、3回の用量、4回の用量、5回の用量、6回の用量、7回の用量、8回の用量、9回の用量、10回の用量、11回の用量、12回の用量、又は12回超の用量で投与され得る。
【0124】
一部の追加的又は代替的な実施形態では、複数回の用量のコルチコステロイドが投与される場合、コルチコステロイドが、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の前及び後の両方で(ただし、FcγRIIbに特異的に結合する抗体の第2の用量の前に)投与され得る。少なくとも1回の用量のコルチコステロイドは、抗体分子の第1の用量の前に投与されるが、記載される他の後続のコルチコステロイドの用量は、抗体分子の第1の用量の後に投与され、任意の順序で抗体の用量間で分配され得る。
【0125】
これらの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体の第2の用量の前のコルチコステロイド投与は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約10分、又は約20分、又は約30分、又は約40分、又は約50分、又は約1時間、又は約2時間、又は約3時間、又は約4時間、又は約5時間、又は約6時間、又は約7時間、又は約8時間、又は約9時間、又は約10時間、又は約11時間、又は約12時間、又は約13時間、又は約14時間、又は約15時間、又は約16時間、又は約17時間、又は約18時間、又は約19時間、又は約20時間、又は約21時間、又は約22時間、又は約23時間、又は約24時間、又は約25時間、又は約26時間、又は約27時間、又は約28時間、又は約29時間、又は約30時間、又は約31時間、又は約32時間、又は約33時間、又は約34時間、又は約35時間、又は約36時間、又は約37時間、又は約38時間、又は約39時間、又は約40時間、又は約41時間、又は約42時間、又は約43時間、又は約44時間、又は約45時間、又は約46時間、又は約47時間、又は約48時間前の時点であり得る。
【0126】
好ましくは、コルチコステロイドは、FcγRIIbに特異的に結合する抗体の第1の用量の前に、第1の用量及び第2の用量として投与される。好ましくは、コルチコステロイドが第1の用量及び第2の用量として投与される場合、コルチコステロイドの第1の用量は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の16時間~48時間前の時点で投与され、コルチコステロイドの第2の用量は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の10分~2時間前の時点で投与される。
【0127】
本発明のかかる実施形態では、コルチコステロイドの第1の用量は、抗体分子の第1の用量の16時間~48時間前の任意の時点で、例えば、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の約16時間、又は約17時間、又は約18時間、又は約19時間、又は約20時間、又は約21時間、又は約22時間、又は約23時間、又は約24時間、又は約25時間、又は約26時間、又は約27時間、又は約28時間、又は約29時間、又は約30時間、又は約31時間、又は約32時間、又は約33時間、又は約34時間、又は約35時間、又は約36時間、又は約37時間、又は約38時間、又は約39時間、又は約40時間、又は約41時間、又は約42時間、又は約43時間、又は約44時間、又は約45時間、又は約46時間、又は約47時間、又は約48時間前の時点で、投与され得る。また、本発明のかかる実施形態では、コルチコステロイドの第2の用量は、抗体分子の第1の用量の10分~2時間前の任意の時点で、例えば、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の約10分、又は約20分、又は約30分、又は約40分、又は約50分、又は約1時間、又は約2時間前の時点で投与され得ることが理解されるであろう。
【0128】
本発明の更なる好ましい実施形態では、コルチコステロイドの更なる用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の前に投与される。したがって、かかる実施形態では、コルチコステロイドの更なる用量は、抗体分子の第1の用量の後であるが、抗体分子の第2の用量の前に投与される。好ましくは、コルチコステロイドの1回以上の更なる用量が投与され、例えば、1回の更なる用量、又は2回の更なる用量、又は3回の更なる用量、又は4回の更なる用量、又は5回の更なる用量、又は6回の更なる用量、又は7回の更なる用量、又は8回の更なる用量、又は9回の更なる用量、又は10回の更なる用量、又は11回の更なる用量、又は12回以上の更なる用量が投与される。
【0129】
好ましくは、コルチコステロイドの更なる用量は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の16時間~48時間前の時点で投与される。したがって、本発明のかかる実施形態では、コルチコステロイドの更なる用量は、抗体分子の第2の用量の16時間~48時間前の任意の時点で、例えば、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約16時間、又は約17時間、又は約18時間、又は約19時間、又は約20時間、又は約21時間、又は約22時間、又は約23時間、又は約24時間、又は約25時間、又は約26時間、又は約27時間、又は約28時間、又は約29時間、又は約30時間、又は約31時間、又は約32時間、又は約33時間、又は約34時間、又は約35時間、又は約36時間、又は約37時間、又は約38時間、又は約39時間、又は約40時間、又は約41時間、又は約42時間、又は約43時間、又は約44時間、又は約45時間、又は約46時間、又は約47時間、又は約48時間前の時点で、投与され得る。
【0130】
一部の実施形態では、本明細書に記載の投薬レジメンは、特定の患者において、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。例えば、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子が患者に投与されるたびに、この投薬レジメンを用いることができる。一部の実施形態では、投薬レジメンの正確な形式(時間及び投与量に関して)は、患者への反復投与の間で変化し得る。本明細書に記載の投薬レジメンを繰り返し使用する利点は、それが、FcyRllbに特異的に結合する抗体の各投与に伴って、改善された耐容性(例えば、注入関連反応の低減)を確実に達成することである。
【0131】
本発明のコルチコステロイドは、0.5~20mgの用量で投与され得る。本発明の好ましい実施形態では、コルチコステロイドは、約4mg~約20mgの用量で、例えば、約12mg~約20mgの用量、又は約4mg~約12mgの用量で投与される。例えば、コルチコステロイドは、約4mg以上で、例えば、約5mg以上、又は約6mg以上、又は約7mg以上、又は約8mg以上、又は約9mg以上、又は約10mg以上、又は約11mg以上、又は約12mg以上、又は約13mg以上、又は約14mg以上、又は約15mg以上、又は約16mg以上、又は約17mg以上、又は約18mg以上、又は約19mg以上、又は約20mg以上の用量で投与される。
【0132】
一部の好ましい実施形態では、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。一部の追加的又は代替的な実施形態では、コルチコステロイドは、ベタメタゾンである。一部の実施形態では、デキサメタゾン及びベタメタゾンの組み合わせが使用される。当業者は、他のコルチコステロイド、例えば、以下のうちの1つ以上が、本発明によって企図されることを理解するであろう:コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、及びメチルプレドニゾロン、又はそれらの組み合わせ。
【0133】
一部の実施形態では、コルチコステロイドがデキサメタゾンである場合、デキサメタゾンの用量は、0.5mg~20mgである。一部の実施形態では、デキサメタゾンが使用される場合、デキサメタゾンの用量は、約4mg以上、例えば、好ましい実施形態では、約4~20mgである。一部の実施形態では、デキサメタゾンの用量は、約12mg以上、例えば、約12~20mgである。一部の実施形態では、デキサメタゾンの用量は、約4~12mgである。特に好ましい実施形態では、デキサメタゾンの用量は、約約12mg又は約約20mgである。
【0134】
本発明の特に好ましい実施形態では、コルチコステロイドであるデキサメタゾンの第1の用量及び第2の用量が投与される。より好ましくは、本発明のこれらの実施形態では、デキサメタゾンが使用される場合、第1の用量は、約4~20mg、かつ/若しくは第2の用量は、約4~25mgであるか、又は第1の用量は、約4~20mg、かつ第2の用量は、約4~25mgであるか、又は第1の用量は、約10~12mg、かつ/若しくは第2の用量は、約20mgであるか、又は第1の用量は、約10~12mg、かつ第2の用量は、約20mgである。
【0135】
一部の実施形態では、コルチコステロイドがベタメタゾンである場合、ベタメタゾンの用量は、0.5mg~20mgである。一部の実施形態では、ベタメタゾンが使用される場合、ベタメタゾンの用量は、約3.2mg以上、例えば、約4mg以上、例えば、約3.2~16mg、又は約4~20mgである。一部の実施形態では、ベタメタゾンの用量は、約12mg以上、例えば、約12~20mgである。一部の実施形態では、ベタメタゾンの用量は、約4~12mgである。特に好ましい実施形態では、ベタメタゾンの用量は、約約12mg又は約約20mgである。
【0136】
本発明の特に好ましい実施形態では、コルチコステロイドであるベタメタゾンの第1の用量及び第2の用量が投与される。より好ましくは、本発明のこれらの実施形態では、ベタメタゾンが使用される場合、第1の用量は、約3.2~16mg、かつ/若しくは第2の用量は、約3.2~20mgであるか、又は第1の用量は、約3.2~16mg、かつ第2の用量は、約3.2~20mgであるか、又は第1の用量は、約8~9.6mg、かつ/若しくは第2の用量は、約16mgである。
【0137】
当業者は、本明細書に記載のものに加えて、他のコルチコステロイドが当該技術分野で既知であることを理解するであろう。コルチコステロイドが同様の様式で機能するため、任意のコルチコステロイドが本発明で使用され得ることを理解するであろう。
【0138】
上で考察されたように、本発明は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子が、少なくとも第1の用量及び第2の用量として対象に投与される、システム、組み合わせ、方法、又は使用を提供する。
【0139】
本発明の好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約1~約24時間前の時点で投与される。したがって、本発明のかかる実施形態では、抗体分子の第1の用量は、抗体分子の第2の用量の約1~約24時間前の任意の時点で、例えば、FcγRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約1時間、又は約2時間、又は約3時間、又は約4時間、又は約5時間、又は約6時間、又は約7時間、又は約8時間、又は約9時間、又は約10時間、又は約11時間、又は約12時間、又は約13時間、又は約14時間、又は約15時間、又は約16時間、又は約17時間、又は約18時間、又は約19時間、又は約20時間、又は約21時間、又は約22時間、又は約23時間、又は約24時間前の時点で投与される。
【0140】
最も好ましくは、本発明のその実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約1時間前に投与されるか、又はFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約24時間前に投与される。
【0141】
別の実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約24時間~約48時間前の時点で投与される。したがって、本発明のかかる実施形態では、抗体分子の第1の用量は、抗体分子の第2の用量の約24時間~約48時間前の任意の時点で、例えば、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約24時間、又は約25時間、又は約26時間、又は約27時間、又は約28時間、又は約29時間、又は約30時間、又は約31時間、又は約32時間、又は約33時間、又は約34時間、又は約35時間、又は約36時間、又は約37時間、又は約38時間、又は約39時間、又は約40時間、又は約41時間、又は約42時間、又は約43時間、又は約44時間、又は約45時間、又は約46時間、又は約47時間、又は約48時間前の時点で投与される。
【0142】
上で考察されたように、本発明は、抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量よりも低い、システム、組み合わせ、方法、又は使用を提供する。
【0143】
当業者は、承認された抗体療法のために、特定の用量(典型的には、mg/kgで表される)は、特定の患者群又は特定のタイプのがんを有する対象における使用のために推奨されることを認識するであろう。多くの場合、推奨用量は、承認された抗体治療薬の標識又は処方情報に記載される。推奨用量は、特定の対象について、すなわち、がんのタイプ、がんの病期、それらの体重、肥満度指数(Body Mass Index)(BMI)及び他の要因に基づいて計算され得る。
【0144】
当業者は、推奨用量が、抗体分子の同一性に応じて異なることを理解するであろう。抗体分子が標識又は処方情報に記載されていない場合、当該技術分野で周知の技術を使用して推奨用量を決定する方法は、当業者には明らかであろう。
【0145】
「推奨用量」は、典型的には、抗体分子の「承認用量」、「最大耐容用量(MTD)」、又は「治療有効用量」と称される。MTDは、創薬でよく知られた用語であり、許容レベルの耐容性で使用され得る最高用量の薬物を指す。
【0146】
「治療有効用量」とは、治療的に活性であるとみなされるであろう任意の用量(すなわち、本明細書で定義される、対象において所望の治療効果をもたらす用量)を意味する。
【0147】
「最大治療有効用量」とは、耐容性を考慮せずに、最大治療活性を達成する(最低)用量を意味する(これは、有害作用を軽減するための適切な投与尺度がない場合、最適ではないか又は許容されない可能性がある)。これは、抗体分子を、それを必要とする対象に投与する場合、当業者が使用することを試みる理想的な用量であろう。
【0148】
「治療的に活性な」とは、用量が、対象において所望の治療効果をもたらす場合を含む。「治療効果」とは、当の治療の使用に直接的又は間接的に起因する全ての効果を含む。これは、腫瘍体積の減少又は腫瘍サイズの減少(例えば、CTスキャンによって決定され得る)などの測定可能な治療効果、又は治療用抗体若しくは治療の有効性であり得る。他の場合では、これは、対象によって報告される症状の重症度の低下などの、より主観的な効果であり得る。治療用抗体の投与に応答する対象における治療効果の測定は、当該技術分野でよく知られている。更に、所定の期間にわたる対象又は対象群の生存レベルは、治療効果の代替的な読み出しである。
【0149】
本発明は、対象にコルチコステロイドを投与し、その後、抗体分子を少なくとも第1の用量及び第2の用量で投与すると(第1の用量は、その抗体の「最大治療有効用量」よりも低い)、対象におけるFcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の耐容性が改善されるという本発明者らの驚くべき発見に基づいている。別の言い方をすれば、抗体分子の第1の用量は、準最大治療用量(すなわち、抗体の最大治療有効用量よりも低い用量)である。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、最大許容治療用量よりも低い。上で考察されたように、最大許容治療用量は、許容されると考えられる使用可能な薬物の最高用量である(すなわち、患者において許容されないレベルの毒性又は副作用をもたらさず、これは最大治療有効用量よりも低くなり得る)。これは、用量が患者において許容されなければならないという点で、最大治療有効用量とは異なる。特定の患者によって許容される副作用/毒性のレベルは、疾患の病期又は重症度などの要因に依存する。
【0151】
薬物耐容性及び治療域(therapeutic window)の向上は、例えば、がんを有する重症患者の治療に重要であるだけでなく、中等度又は軽度の副作用さえ許容でき得ない自己免疫疾患又は感染性疾患などの生命を脅かさない疾患を有する患者での使用にも重要であり得る。
【0152】
一部の他の場合では、最大治療有効用量又は最大許容治療用量よりも低い用量は、治療的に有効と考えられる最低用量(すなわち、最小有効量)よりも低い。言い換えれば、抗体分子の第1の用量は、単回用量として単独で投与された場合、治療的に有効ではない用量であり得る。
【0153】
場合によっては、抗体の第1の用量は、最大投与可能用量(maximum feasible dose)よりも低い。場合によっては、製剤の考慮事項などの実用性は、投与され得る最大用量を制限し得る。そのような要因を考慮した最大のかかる用量は、最大投与可能用量と呼ばれる。
【0154】
いくつかの他の場合では、許容治療用量よりも低い用量は、推奨される許容治療用量よりも低い。一部の実施形態では、これは、医薬品表示(drug label)に含まれる適応症のための推奨用量を含み得る。
【0155】
一般に、臨床試験中に用量漸増試験を使用して、特定の許容治療用量が任意の特定の抗体についてどのように定義されるかは、当業者には明らかであろう。まだ承認されていない抗体についての許容治療用量は、承認されているか又は広範な臨床試験を受けた類似の抗体の許容治療用量に基づいてもよい。
【0156】
本発明の好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、最大治療有効用量よりも、少なくとも50%低い。例えば、抗体分子の第1の用量は、最大治療有効用量よりも、少なくとも60%低いか、又は少なくとも70%低いか、又は少なくとも80%低いか、又は少なくとも90%低い。
【0157】
本発明の一実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、FcγRIIbの高い受容体飽和度(receptor saturation)、例えば、少なくとも50%の受容体飽和度、又は少なくとも60%の受容体飽和度、又は少なくとも70%の受容体飽和度、又は少なくとも80%の受容体飽和度、又は少なくとも90%の受容体飽和度、又は少なくとも95%の受容体飽和度、又は少なくとも96%の受容体飽和度、又は少なくとも97%の受容体飽和度、又は少なくとも98%の受容体飽和度、又は少なくとも99%の受容体飽和度、又は100%に近い受容体飽和度、又は100%の受容体飽和度をもたらす第1の用量で投与される。受容体飽和を測定するための方法は、当業者にはよく知られている。
【0158】
好ましくは、高い受容体飽和は、少なくとも一時的であるが、より長期間維持され得る。一時的な受容体飽和とは、示された飽和が少なくとも15分間、好ましくは1~6時間維持され、最も好ましくは第2の抗体投与まで持続することを意味する。本明細書で考察されるように、抗体分子の第1の用量及び第2の用量の間の期間は、約1時間~約48時間まで変化し得る。
【0159】
本明細書で考察されるように、抗体分子の用量は、それが投与される対象の体重に基づいて表され、典型的には、対象の体重1kg当たりのmg単位の抗体分子で表される。
【0160】
本発明の好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、約0.2mg/kg~約0.6mg/kgの用量、例えば、約0.3mg/kg~約0.5mg/kgの用量で投与される。したがって、抗体分子の第1の用量は、約0.2mg/kg、又は約0.3mg/kg、又は約0.4mg/kg、又は約0.5mg/kg、又は約0.6mg/kgの用量で投与され得ることが理解されるであろう。
【0161】
抗体分子が投与される対象の体重に応じて、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量は、約10mg~約20mgの用量で投与され得ることが理解されるであろう。他の実施形態では、抗体の第1の用量は、約20mg~約40mg、又はそれ超の用量、例えば、約20mg~30mg、又は約30mg~40mg、又は約40mg~50mg、又は約50mg~60mg、又は約60mg~70mg、又はそれ超の用量で投与され得る。したがって、抗体分子の第1の用量は、約10mg、約20mg、又は約25mg、又は約30mg、又は約35mg、又は約40mg、又は約45mg、又は約50mg、又は約55mg、又は約60mg、又は約65mg、又は約70mg、又はそれ超の用量で投与され得ることが理解されるであろう。
【0162】
本発明の一実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、少なくとも一時的に、少なくとも50%の受容体飽和度、又は少なくとも60%の受容体飽和度、又は少なくとも70%の受容体飽和度、又は少なくとも80%の受容体飽和度、又は少なくとも90%の受容体飽和度、又は少なくとも95%の受容体飽和度、又は少なくとも96%の受容体飽和度、又は少なくとも97%の受容体飽和度、又は少なくとも98%の受容体飽和度、又は少なくとも99%の受容体飽和度、又は100%に近い受容体飽和度、又は100%の受容体飽和度などの、FcγRIb受容体の高い受容体飽和度をもたらす用量で投与される。受容体飽和を測定するための方法は、当業者にはよく知られている。
【0163】
一時的な受容体飽和とは、示された飽和が少なくとも15分間、好ましくは1~6時間維持され、最も好ましくは第2の抗体投与まで持続することを意味する。
【0164】
上で考察されたように、本発明は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量が対象に投与される、システム、組み合わせ、方法、又は使用を提供する。
【0165】
好ましくは、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量は、治療有効用量である。一部の実施形態では、抗体分子の第2の用量は、本明細書に定義される最大治療有効用量であり得る。
【0166】
より好ましくは、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量は、最大許容治療用量又は最大投与可能治療用量(maximum feasible therapeutic dose)である。
【0167】
より好ましくは、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量は、治療有効用量よりも低い。
【0168】
一部の実施形態では、抗体分子の第2の用量は、抗体分子の第1の用量よりも高い。代替的な実施形態では、抗体分子の第2の用量は、抗体分子の第1の用量よりも低い。
【0169】
一部の実施形態では、第1の用量及び第2の用量の間に投与されるFcyRllbに特異的に結合する抗体の総量は、約30mg~約3000mgである。一部の実施形態では、第1の用量及び第2の用量の間に投与されるFcyRllbに特異的に結合する抗体の総用量は、約0.3mg/kg~約20mg/kgである。一部の他の実施形態では、第1の抗体用量及び第2の抗体用量の間の総用量は、少なくとも一時的に、FcγRIIb受容体の高い受容体飽和度、例えば、少なくとも90%の受容体飽和度をもたらす用量である。一部の好ましい実施形態では、この高い受容体飽和度は、約1時間~約4週間の範囲の総持続時間で持続する。
【0170】
当業者は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量が、投与される抗体分子の第1の用量の量に基づいて調整され得ることを理解するであろう。
【0171】
一部の好ましい実施形態では、FcγRIIb受容体に特異的に結合する抗体分子の第2の用量は、約0.1mg/kg~約19.8mg/kgの用量で投与される。
【0172】
抗体分子が投与される対象の体重に応じて、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量は、約20mg~約2900mgの用量で投与され得ることが理解されるであろう。
【0173】
本発明の好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の更なる追加の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の後に、対象に投与される。
【0174】
好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の更なる追加の用量もまた、本明細書に開示される投薬レジメンに従って投与される。例えば、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子が患者に投与されるたびに、この投薬レジメンを用いることができる。一部の実施形態では、投薬レジメンの正確な形式(時間及び投与量に関して)は、患者への反復投与の間で変化し得る。本明細書に記載の投薬レジメンを繰り返し使用する利点は、それが、FcyRllbに特異的に結合する抗体の各投与に伴って、改善された耐容性(例えば、注入関連反応の低減)を確実に達成することである。一部の他の実施形態では、抗体分子の更なる追加の用量は、本明細書に定義される最大治療有効用量で投与される。典型的には、反復用量は、以前に投与された用量と同様の量になる。例えば、
-以前に投与された抗体用量が1.3mg/kg(例えば、0.3mg/kg(第1の用量)+1mg/kg(第2の用量))であった場合、その後の追加の用量も1.3mg/kgとなり、
-以前に投与された抗体用量が2.5mg/kg(例えば、0.5mg/kg(第1の用量)+2mg/kg(第2の用量))であった場合、その後の追加の用量も2.5mg/kgとなり、
-以前に投与された抗体用量が3.3mg/kg(0.3mg/kg(第1の用量)+3mg/kg(第2の用量))であった場合、その後の追加用量も3.3mg/kgとなり、
-以前に投与された抗体用量が5.4mg/kg(例えば、0.4mg/kg(第1の用量)+5mg/kg(第2の用量))であった場合、その後の追加の用量も5.4mg/kgとなり、
-以前に投与された抗体用量が10.5mg/kg(例えば、0.5mg/kg(第1の用量)+10mg/kg(第2の用量))であった場合、その後の追加用量も10.5mg/kgとなる。
【0175】
しかしながら、当業者が理解するように、反復投与はまた、患者の耐容性によって導かれるように、より高い又はより低い総用量を利用することができる。類似の平坦投薬(flat dosing)に基づく、又は受容体占有率誘導型の投薬レジメンを使用することができる。
【0176】
FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、特定の治療用抗体(特に、がん又は炎症性疾患の治療に使用される治療用抗体)と共に投与される場合、特に有用であることが理解されるであろう。
【0177】
多くの治療用抗体が、細胞傷害性細胞(例えば、マクロファージ)及び酵素(例えば、補体)などの自然エフェクターシステムを動員し、次いで、治療用抗体が結合する細胞を標的とすることによって、がん及び他の望ましくない細胞の除去を刺激することで、それらの治療効果を発揮することはよく知られている。例えば、I型抗CD20モノクローナル抗体(例えば、現在の市場リーダーであるリツキシマブ)は、B細胞の表面のCD20分子に結合し、これらの標的B細胞を欠失させることによって機能する。それらは、エフェクター細胞を動員及び活性化することによってこれを行い、これらのエフェクター細胞の表面に発現するFcγ(すなわち、Fc-γ)受容体を介して治療用抗体のFcドメインと相互作用する。
【0178】
かかる治療用抗体(例えば、CD20などの抗原に対するもの)の有効性を決定する要因は、抑制性FcγRIIb(CD32、CD32B、CD32B1、CD32B2、FcRII、FcγRII、又はFcRIIBとしても知られており、それらを含む)との相互作用であることが知られている。FcgRIIBは、シスで作用するか(すなわち、治療用抗体によって標的化された細胞に対して)、又はトランスで作用する(すなわち、抗体の標的となる細胞の表面に被覆された抗体の定常ドメインに結合する上で、そのFcγ受容体を介して会合する隣接するエフェクター細胞に対して)いくつかのメカニズムによって、治療効果を低下させ、がんに対する耐性を促進し得る。例えば、この相互作用は、標的細胞による治療用抗体の内部移行(interaction)をもたらすことができ、したがって、エフェクター細胞Fc受容体と相互作用するその能力を除去する。標的細胞上のFcγRIIbに結合する薬剤(例えば、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子)は、この内部移行を遮断し、治療用抗体の活性を向上させることが知られている。
【0179】
したがって、特に好ましい実施形態では、本発明は、対象におけるがん又は炎症性疾患の治療のための1つ以上の治療用抗体の投与を更に含む、システム、組み合わせ、使用、又は方法を提供する。
【0180】
好ましくは、1つ以上の治療用抗体は、以下からなる群から選択される:
-1つ以上の抗PD1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ドスタルリマブ、及び/又はそれらのバイオシミラー)、
-1つ以上の抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、及び/又はそれらのバイオシミラー;例えば、Roghanian et al.,Cancer Cell,2015,27:473-488で考察されている)、
-1つ以上の抗CD19抗体(例えば、ロンカスツキシマブ・テシリン)、
-1つ以上の抗CD40抗体(例えば、CP-870,893)、
-1つ以上の抗CD38抗体(例えば、Vaughan et al.,Blood,2014,123:669-677に記載されているもの、又はダラツムマブ若しくはダラツムマブのバイオシミラー)、
-1つ以上の抗Her2抗体(例えば、トラスツズマブ又はトラスツズマブのバイオシミラー)、
-1つ以上の抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ又はセツキシマブのバイオシミラー)。
【0181】
好ましくは、治療用抗体は、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ドスタルリマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、及びそれらのバイオシミラー又は同等物を含む群から選択される1つ以上である。
【0182】
本明細書で考察され、企図される治療用抗体の各々の用量及び投薬レジメンは、これらの治療用抗体の承認された用量/レジメンに依存し、また、適応症(例えば、がんのタイプ/病期)及び対象(例えば、BMI又は年齢)に応じて変化することを理解されたい。
【0183】
例えば、一部の実施形態では、治療用抗体がリツキシマブであり、その用量及び投薬レジメンは、FDAラベルに定義されている通りであり得る(https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/103705s5311lbl.pdfを参照されたい)。本明細書に記載されるように、用量は以下の通りであり得る:
●非ホジキンリンパ腫(NHL):375mg/m2を、週に1回、4~8回の投与、
●慢性リンパ球性白血病(CLL):375mg/m2を、FC化学療法開始前日に、次いで、500mg/m2を、サイクル2~6の1日目に(28日毎)、
●関節リウマチ(RA):2週間間隔で1000mgを2回注入して投与する。
【0184】
別の実施例では、治療用抗体がペムブロリズマブであり、その用量及び投薬レジメンは、FDAラベルに定義されている通りであり得る(https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2019/125514s040lbl.pdfを参照されたい)。本明細書に記載されるように、用量は以下の通りであり得る:
●黒色腫:200mgを3週間毎、
●非小細胞肺がん(NSCLC):200mgを3週間毎、
●頭頸部扁平上皮がん(HNSCC):200mgを3週間毎、
●古典的ホジキンリンパ腫(cHL)又は原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL):成人で200mgを3週間毎、小児で2mg/kg(最大200mg)を3週間毎、
●尿路上皮がん:200mgを3週間毎、
●マイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)がん:成人で200mgを3週間毎、小児で2mg/kg(最大200mg)を3週間毎、
●胃がん:200mgを3週間毎、
●子宮頸がん:200mgを3週間毎、
●肝細胞がん(HCC):200mgを3週間毎、
●メルケル細胞がん(MCC):成人で200mgを3週間毎、小児で2mg/kg(最大200mg)を3週間毎。
【0185】
「対象」(本明細書において「患者」と互換的に使用される)という用語は、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子による治療を必要とする、ヒトを含む任意の動物を含む。対象又は患者は、哺乳類又は、非哺乳類であり得る。好ましくは、対象は、ウマ、又はウシ、又はヒツジ、又はブタ、又はラクダ、又はイヌ、又はネコなどの哺乳類である。最も好ましくは、哺乳類患者は、ヒトである。
【0186】
好ましくは、対象は、がん若しくは炎症性疾患を有すると診断された対象、又はがん若しくは炎症性疾患を有する可能性が高いと特定された対象、及び/又はがん若しくは炎症性疾患の症状を呈する対象である。
【0187】
他の好ましい実施形態では、対象は、感染性疾患を有すると診断された対象、又は感染性疾患を有する可能性が高いと特定された対象、及び/又は感染性疾患の症状を呈する対象である。感染性疾患には、細菌、真菌、寄生虫、又はウイルスによって引き起こされる、人から人へ(直接的又は間接的のいずれかで)伝染する可能性のある疾患が含まれる。
【0188】
一部の他の実施形態では、対象は、がん、及び/又は炎症性疾患、及び/又は感染性疾患を有し、本明細書に記載の投薬レジメンは、当該がん又は疾患を治療及び/又は予防するために、体液又は細胞応答を高めることを目的とするワクチンの投与と併せて使用される。
【0189】
「呈する」とは、対象が、がん症状及び/若しくはがん診断マーカーを表すこと、並びに/又はがん症状及び/若しくはがん診断マーカーを測定、及び/若しくは評価、及び/若しくは定量化することができることを含む。医学分野の当業者であれば、がん症状及びがん診断マーカーがどのようなものであるか、並びにがん症状の重症度に減少若しくは増加があるかどうか、又はがん診断マーカーに減少若しくは増加があるかどうかをどのように測定及び/若しくは評価及び/若しくは定量化するか、並びにがん症状及び/若しくはがん診断マーカーを使用して、どのようにがんに関する予後診断を形成することができるかは、容易に明らかであろう。
【0190】
一部の実施形態では、がんは、FcyRllb陽性がんである。他の実施形態では、がんは、FcγRIIb陰性がんである。
【0191】
「FcγRIIb陽性がん」とは、レベルが異なっていても、FcγRIIbを発現する任意のがんを含む。FcγRIIbの発現は、慢性リンパ球性白血病及びマントル細胞リンパ腫で最も顕著であり、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では中程度であり、濾胞性リンパ腫では最も顕著ではない。しかしながら、場合によっては、一般的に低レベルのFcγRIIBを発現するがん(例えば、濾胞性リンパ腫)を有する対象は、非常に高いレベルのFcγRIIb発現を有し得る。
【0192】
「FcγRIIb陰性がん」とは、いずれのFcγRIIb受容体も提示しない任意のがんを含む。これは、抗FcγRIIB特異的抗体を使用して、Tutt et al,J Immunol,2015,195(11)5503-5516に示されているような免疫組織化学及びフローサイトメトリーを含む様々な方法で検査することができる。
【0193】
一部の好ましい実施形態では、がんは、がん腫、肉腫、及びリンパ腫からなる群から選択される。一部の実施形態では、がんは、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、低分化がん又は未分化がん、大細胞がん及び小細胞がんからなる群から選択されるがん腫である。一部の実施形態では、がんは、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、及び平滑筋肉腫からなる群から選択される肉腫である。
【0194】
一部の好ましい実施形態では、がんは、抗FcgRIIB抗体と同時投与される承認された治療用抗体の表示(label)に示されるがんの群から選択される。同時投与とは、療法を含む抗FcgRIIB抗体の一部として使用される抗体を意味し、ここで、同時投与された抗体は、抗FcgRIIB抗体の前に、同時に、又はその後に投与され得る。
【0195】
一部の好ましい実施形態では、疾患は、抗FcgRIIB抗体と同時投与される承認された治療用抗体の表示に示される疾患群から選択される。同時投与とは、療法を含む抗FcgRIIB抗体の一部として使用される抗体を意味し、ここで、同時投与された抗体は、抗FcgRIIB抗体の前に、同時に、又はその後に投与され得る。
【0196】
がんは、黒色腫、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、転移性ホルモン不応性前立腺がん、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、膀胱がん、腎臓がん、中皮腫、メルケル細胞がん、頭頸部がん、及び膵臓がんを含む群から選択され得る。
【0197】
好ましくは、がんは、B細胞がん、例えば、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む群から選択されるがんである。
【0198】
上述のがんの各々はよく知られており、症状及びがん診断マーカーは、それらのがんを治療するのに使用される治療剤であるため、十分に説明されている。したがって、上述のタイプのがんを治療するために使用される症状、がん診断マーカー、及び治療剤は、医学分野の当業者には既知であろう。
【0199】
多数のがんの診断、予後診断、進行の臨床的定義は、病期分類として知られている特定の分類に依る。それらの病期分類システムは、いくつかの異なるがん診断マーカー及びがん症状を照合して、がんの診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行の概要を提供するように機能する。病期分類システムを使用して、がんの診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行をどのように評価するか、並びにそうするためにどのがん診断マーカー及びがん症状を使用するべきかは、腫瘍学分野の当業者には既知であろう。
【0200】
「がんの病期分類」には、病期0、病期I、病期II、病期III、及び病期IVを含む、Raiの病期分類、並びに/又は病期A、病期B、及び病期Cを含む、Binetの病期分類、並びに/又は病期I、病期II、病期III、及び病期IVを含む、Ann Arbourの病期分類が挙げられる。
【0201】
がんは、細胞の形態に異常を引き起こし得ることが知られている。これらの異常は、多くの場合、特定のがんで再現性よく生じ、これは形態におけるこれらの変化の検査(あるいは組織学的検査としても知られる)が、がんの診断又は予後診断に使用され得ることを意味する。細胞の形態を検査するために試料を視覚化し、視覚化用の試料を準備するための技術、例えば、光学顕微鏡法又は共焦点顕微鏡法は、当該技術分野でよく知られている。
【0202】
「組織学的検査」とは、小さな成熟リンパ球の存在、並びに/又は細胞質の境界が狭い小さな成熟リンパ球の存在、識別可能な核小体を欠く高密度の核を有する小さな成熟リンパ球の存在、並びに/又は細胞質の境界が狭く、識別可能な核小体を欠く高密度の核を有する小さな成熟リンパ球の存在、及び/又は異型細胞、及び/若しくは非正円形細胞(cleaved cell)、及び/若しくは前リンパ球の存在が挙げられる。
【0203】
がんは、細胞のDNAの変異の結果であり、これにより、細胞が細胞死を回避し、又は細胞が制御不能に増殖するようになることはよく知られている。したがって、これらの変異の検査(細胞遺伝学的検査としても知られる)は、がんの診断及び/又は予後診断を評価するための有用なツールであり得る。この例は、染色体上の位置13q14.1の欠失であり、これは、慢性リンパ球性白血病の特徴である。細胞の変異を検査するための技術、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)は、当該技術分野でよく知られている。
【0204】
「細胞遺伝学的検査」とは、細胞(特に、染色体)のDNAの検査を含む。細胞遺伝学的検査を使用して、難治性がん及び/又は再発がんの存在と関連し得る、DNAの変化を特定することができる。かかるものとしては、以下が含まれる:13番染色体の長腕の欠失、及び/又は染色体位置13q14.1の欠失、及び/又は12番染色体のトリソミー、及び/又は12番染色体の長腕の欠失、及び/又は11番染色体の長腕の欠失、及び/又は11qの欠失、及び/又は6番染色体の長腕の欠失、及び/又は6qの欠失、並びに/又は17番染色体の短腕の欠失、及び/又は17pの欠失、及び/又はt(11:14)転座、及び/又は(q13:q32)転座、並びに/又は抗原遺伝子受容体の再編成、及び/又はBCL2の再編成、及び/又はBCL6の再編成、及び/又はt(14:18)の転座、及び/又はt(11:14)の転座、及び/又は(q13:q32)の転座、及び/又は(3:v)の転座、及び/又は(8:14)の転座、及び/又は(8:v)の転座、及び/又はt(11:14)及び(q13:q32)の転座を挙げることができる。
【0205】
がん患者は、特定の身体症状を呈することが既知であり、これは多くの場合、がんが身体に負担をかけている結果である。これらの症状は、多くの場合、同じがんで再発するため、疾患の診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行の特徴であり得る。医薬分野の当業者であれば、どの身体症状がどのがんと関連するか、並びにそれらの身体系の評価が疾患の診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行とどのように相関し得るかを理解するであろう。「身体症状」としては、肝腫及び/又は脾腫が挙げられる。
【0206】
一部の実施形態では、がんは、治療用抗がん抗体による治療に耐性であるがんである。かかる耐性がんは、再発がん及び/又は難治性がんであり得る。
【0207】
再発がんは、以前に治療されており、その治療の結果として、対象が完全に又は部分的に回復したが(すなわち、対象は寛解中であると言われる)、治療の中止後に、がんが復帰又は悪化したがんである。換言すると、再発がんは、それが有効であり、対象が完全に又は部分的に回復した期間の後に、治療に耐性を有するようになったがんである。
【0208】
難治性がんは、治療されているが、その治療に応答しておらず、かつ/又は治療されているが、治療中に進行したがんである。換言すると、難治性のがんは、治療に耐性のがんである。がんは、固有の耐性により難治性がんであり得ることが理解されるであろう。「固有の耐性」とは、がん、及び/又は対象、及び/又は標的細胞が、それが最初に投与されたときから、又はそれが投与される前から、特定の治療に耐性であるという意味を含む。
【0209】
再発がん及び/又は難治性がんは、医学分野の当業者によって容易に診断されるであろう。
【0210】
本発明の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、静脈内、筋肉内、皮下を含む群から選択される経路による送達用に製剤化及び/又は適合される。一部の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、静脈内(すなわち、i.v.又はiv)送達用に製剤化及び/又は適合される。他の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、皮下(すなわち、s.c.又はsc)送達用に製剤化及び/又は適合される。
【0211】
本発明の実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、静脈内、筋肉内、皮下を含む群から選択される経路によって対象に送達される。好ましくは、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、静脈内に送達される。
【0212】
したがって、好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1及び/又は第2及び/又は更なる用量は、対象への静脈内送達用に製剤化され、かつ/又は対象への静脈内送達によって送達される。
【0213】
抗体分子の静脈内投与のための方法及び製剤化は、当該技術分野でよく知られている。本発明では、注射又は注入などのあらゆるタイプの静脈内投与を使用することができる。
【0214】
本発明の実施形態では、コルチコステロイドは、静脈内、経口を含む群から選択される経路による送達用に製剤化及び/又は適合される。
【0215】
本発明の実施形態では、コルチコステロイドが、静脈内、経口を含む群から選択される経路によって対象に送達される。
【0216】
したがって、好ましい実施形態では、第1及び/又は第2及び/又はコルチコステロイドの更なる用量は、対象への静脈内又は経口送達用に製剤化され、かつ/又は対象への静脈内又は経口送達によって送達される。
【0217】
コルチコステロイドの静脈内又は経口投与のための方法及び製剤化は、当該技術分野でよく知られている。
【0218】
FcγRIIb及び/又は本明細書に定義されるコルチコステロイドに特異的に結合する抗体分子は、賦形剤、及び/又は薬学的に許容される担体、及び/又は薬学的に許容される希釈剤、及び/又はアジュバントと組み合わせることができる。
【0219】
例えば、FcγRIIb及び/又はコルチコステロイドに特異的に結合する抗体は、水性及び/又は非水性滅菌懸濁液として製剤化することができ、それは、抗酸化剤、並びに/又は緩衝剤、並びに/又は静菌剤、並びに/又は意図したレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、並びに/又は懸濁剤及び/若しくは増粘剤を含み得る水性及び/若しくは非水性滅菌懸濁液を含有してもよい。かかる製剤は、単位用量又は複数用量の容器(例えば、密封されたアンプル及びバイアル)で提供され得、使用直前に滅菌液体担体(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)状態で保存され得る。
【0220】
即時注射液及び懸濁液は、当該技術分野で既知の種類の滅菌粉末、及び/又は顆粒、及び/又は錠剤から調製され得る。
【0221】
FcγRIIb及び/又はコルチコステロイドに特異的に結合する抗体は、薬学的に許容される酸付加塩又は塩基付加塩と共に製剤化され得る。薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用される酸は、とりわけ、非毒性の酸付加塩、すなわち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート)]塩などの薬理学的に許容されるアニオンを含む塩を形成するものである。また、薬学的に許容される塩基付加塩を使用して、薬学的に許容される塩の形態をもたらしてもよい。薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、非毒性塩基塩を形成するものである。かかる非毒性塩基塩には、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウム及びナトリウム)及びアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、アンモニウム又は水溶性アミン付加塩(例えば、N-メチルグルカミン-(メグルミン)及び低級アルカノールアンモニウム)、並びに他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩などのそのような薬理学的に許容されるカチオンに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
FcγRIIb及び/又はコルチコステロイドに特異的に結合する抗体分子は、保存のために凍結乾燥され、使用する前に、好適な担体で再構成され得る。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、及び/又は再構成技術を用いることができる。当業者は、凍結乾燥及び再構成が、様々な程度の抗体活性の損失につながる場合があり(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも活性の損失が大きい傾向がある)、使用レベルを上方調節して補う必要があり得ることを理解するであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)抗体分子は、再水和した場合、(凍結乾燥前の)その活性の約20%以下、又は約25%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下、又は約45%以下、又は約50%以下を損失する。
【0223】
上で考察されたように、また添付の実施例で実証されるように、本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用は、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善する。換言すると、本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用は、抗体分子の投与と関連する(特に、抗体分子の静脈内投与と関連する)有害作用を低減又は防止する。
【0224】
本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用の好ましい実施形態では、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の投与と関連する注入関連反応は、低減又は排除される。かかる注入関連反応は、本明細書に記載され、本発明のシステム、組み合わせ、方法、又は使用は、それらの注入関連反応のうちのいずれか1つ以上を低減又は排除することが企図される。
【0225】
好ましい実施形態では、対象の体温、及び/又は血小板数、及び/又は肝酵素(例えば、ALAT又はASAT)の血中レベル、及び/又はサイトカイン(例えばIL-6)の血中レベルの変化が低減する。好ましくは、IRRは、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の投与の少なくとも24時間後、本明細書に定義されるように、有害事象の一般用語基準(CTCAE)で定義されるように、許容レベル(すなわち、グレード3未満)に低減される。最も好ましくは、IRRは、対象の正常化された体温、及び/又は血小板数、及び/又は肝酵素(例えばALAT又はASAT)の血中レベル、及び/又はサイトカイン(例えばIL-6)の血中レベルにより完全に予防される。
【0226】
上で定義したように、これらのパラメータのうちのいくつかの正常レベルは、以下の通りである:
●体温:36.1℃~37.9℃、
●血小板数:1リットル当たり145×109~400×109、
●ALATの血中レベル:0~1.09μkat/L、16~63U/L、
●ASATの血中レベル:0~0.759μkat/L、15~37U/L、
●血中レベルIL-6:0.16~27.2pg/ml、中央値0.47pg/ml。
【0227】
「許容レベル」とは、(CTCAEスケールを使用して、当該技術分野及び本明細書で定義されるように)IRRの臨床グレーディングが少なくともグレード2に低減されることを含む。一部の好ましい実施形態では、IRRのグレーディングは、グレード1に低減される。本明細書で考察されるように、当業者は、CTCAEスケールに従ってIRRをグレーディングする方法を認識するであろう。
【0228】
本発明の第5の態様は、キットを提供し、
(i)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子、好ましくは本明細書に定義される抗体分子と、
(ii)コルチコステロイド、好ましくは本明細書に定義されるコルチコステロイドと、
(iii)任意選択的に、使用説明書と、を含み、
抗体分子が、少なくとも第1の用量及び第2の用量として提供され、抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量よりも低く、更に任意選択的に、第1の用量が、本明細書に定義される通りであり、更に任意選択的に、第2の用量が、本明細書に定義される通りである。本発明の抗体分子及びその態様の用量は、本明細書に定義される通りである。
【0229】
好ましくは、本発明のキットは、本明細書に記載されるように、対象における抗体分子の耐容性を改善するためのものである。
【0230】
好ましくは、本発明のキットにおいて、コルチコステロイドは、本明細書に定義される用量で提供される。
【0231】
好ましい実施形態では、本発明のキットは、本明細書に定義される1つ以上の治療用抗体を更に含む。例えば、治療用抗体は、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ドスタルリマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、及びそれらのバイオシミラー又は同等物を含む群から選択される1つ以上である。
【0232】
1つ以上の治療用抗体がキットに存在する場合、本発明のキットは、本明細書に記載されるように、対象におけるがんの治療に使用するためのものであることが理解されるであろう。
【0233】
本発明の更なる態様
第6の態様では、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するための方法(又はモデル)が本明細書に開示され、以下のステップ:
(i)マウス標的若しくは代替抗体(surrogate antibody)と交差反応する場合、治療用抗体分子をマウスに静脈内投与若しくは腹腔内投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、マウスの状態の正常状態への回復に続く期間中の肉眼的症状(macroscopic symptoms)の孤立及び活動の低下の呈示が、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与が耐容性の問題と関連しているであろうことを示す、観察するステップと、
並びに/又は予防的若しくは治療的処置、投与経路の変更、及び/若しくは治療用抗体分子の改変が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止若しくは緩和することができるかを予測するステップと、を含み、
上記の(i)に加えて、以下のステップ:
(ii)マウスに予防剤若しくは治療剤を投与し、これに併せて、マウスに治療用抗体若しくは代替抗体を静脈内投与若しくは腹腔内投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、(i)においてマウスによって呈示される肉眼的症状と比較して減少した肉眼的症状の呈示、又はその期間中に肉眼的症状の呈示がないことが、予防剤若しくは治療剤による前処置と組み合わせたヒトへの治療用抗体分子の投与により、耐容性の問題を防止若しくは緩和することができ、それ以外の場合は、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことを示す、観察するステップと、
(iii)静脈内投与若しくは腹腔内投与以外の投与経路によってマウスに治療用抗体若しくは代替抗体を投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、(i)においてマウスによって呈示される肉眼的症状と比較して減少した肉眼的症状の呈示、又はその期間中に肉眼的症状の呈示がないことが、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止若しくは緩和するために、ヒトへの治療用抗体分子の投与に、他の投与経路を使用することができることを示す、観察するステップ、並びに/あるいは
(iv)静脈内投与若しくは腹腔内投与以外の投与経路によってマウスに改変形態の治療用抗体若しくは代替抗体を静脈内投与若しくは腹腔内投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、(i)においてマウスによって呈示される肉眼的症状と比較して減少した肉眼的症状の呈示、又はその期間中に肉眼的症状の呈示がないことが、ヒトへの改変形態の治療用抗体分子の投与を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止若しくは緩和することができることを示す、観察するステップと、を含む。
【0234】
第7の態様では、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するために投薬レジメンで使用するためのコルチコステロイドも本明細書に開示され、
治療用抗体分子が、上記の方法を使用するヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又は、コルチコステロイドによる前処置と組み合わせたヒトへの治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、上記の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、
投薬レジメンが、治療用抗体分子の静脈内投与前の少なくとも2回の用量での対象へのコルチコステロイドの投与を含み、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され(「第1の用量」)、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される(「第2の用量」)。
【0235】
この態様の変形形態は、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための投薬レジメンで使用するためのコルチコステロイドに関し、
治療用抗体分子が、抗FcγRIIB抗体であり、
投薬レジメンが、治療用抗体分子の静脈内投与前の少なくとも2回の用量での対象へのコルチコステロイドの投与を含み、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され(「第1の用量」)、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される(「第2の用量」)。
【0236】
第8の態様では、がんの治療に使用するための治療用抗体分子も本明細書に開示され、治療用抗体分子は、上記の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又はヒトへの治療用抗体分子の皮下投与経路は、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、上記の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、抗体が、皮下投与用に製剤化される。
【0237】
第9の態様では、がんの治療に使用するための改変形態の治療用抗体分子も本明細書に開示され、治療用抗体分子は、上記の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又はヒトへの改変形態の治療用抗体分子の投与は、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、上記の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、改変形態が、同じFv可変配列を有するが、治療用抗体分子と比較して、低減、障害、又は無効化されたFcγR結合を有する抗体である。
【0238】
第10の態様では、コルチコステロイド投薬レジメンを含む、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための方法も本明細書に開示され、治療用抗体分子が、上記の予測方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又はコルチコステロイドによる前処置と組み合わせたヒトへの治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止若しくは緩和し、それ以外の場合は、上記の予測方法を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、投薬レジメンが、治療用抗体分子の静脈内投与前の少なくとも2回の用量での対象へのコルチコステロイドの投与を含み、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され(「第1の用量」)、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される(「第2の用量」)。
【0239】
第11の態様では、がんの治療のための方法も開示され、上記の予測方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されている治療有効用量(therapeutically active amount)の治療用抗体分子の皮下投与、及び/又はヒトへの治療用抗体分子の皮下投与経路が、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、上記の予測方法を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されている。
【0240】
第12の態様では、治療有効量の改変形態の治療用抗体の投与を含むがんの治療のための方法も開示され、治療用抗体分子が、上記の予測方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又は上記の方法を使用して、ヒトへの改変形態の治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、改変形態が、同じFv可変配列を有するが、治療用抗体分子と比較して、FcγR結合が障害又は無効化されている抗体である。
【0241】
本発明の更なる態様の詳細な説明
簡潔に、本発明のこれらの更なる態様では、ヒト標的に結合する治療用抗体が、静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するためのモデル、及び/又は前処置、投与経路の変更、若しくは抗体の改変が、治療用抗体のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止することができるかどうかを予測するためのモデルを記載する。このモデルは、マウスに抗体を静脈内投与又は腹腔内投与することと、肉眼的症状の孤立及び活動の低下の任意の一過的な呈示について、投与直後にマウスを観察することと、を含む。このモデルはまた、抗体の投与と組み合わせた前処置の投与、静脈内投与又は腹腔内投与以外の投与経路による治療用抗体の投与、又はマウスへの改変形態の抗体の投与、並びにかかる投与の直後に、肉眼的症状の孤立及び活動の低下の任意の一過的な呈示についてマウスを観察すること、並びにこれを、前処置なしの未改変抗体の静脈内投与又は腹腔内投与後の肉眼的症状の孤立及び活動の低下の一過的な呈示と比較すること、を含み得る。関連する微視的症状、生化学的パラメータ又は細胞パラメータの変化の分析は、下記のように、IRRの性質の情報を収集するのに役立ち、候補の予防的前投薬又はIRR低減介入をモデルでテストするように誘導することができる。
【0242】
本発明の更なる態様では、本明細書に記載される予測方法は、所与の標的に対する治療用抗体分子が、ヒト対象へのその静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するであろうか、又は関連する可能性が高いかを予測することを可能にする。追加的又は代替的に、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和するために、予防的又は治療的処置、投与経路の変更、及び/又は治療用抗体分子の改変が使用され得るかどうかを予測することが可能になる。
【0243】
本発明のこれらの更なる態様では、治療用抗体分子は、ヒト標的に特異的に結合する。抗体が標的に特異的に結合することは、所定の標的分子又は抗原に特異的に結合するか、又はそれと相互作用することを意味し、これは、抗体が標的ではない分子ではなく、その標的に優先的かつ選択的に結合することを意味する。
【0244】
治療用抗体分子が結合する標的は、任意のヒト細胞上に見出される受容体又は抗原であり得る。かかる細胞の例は、白血球、骨髄系細胞及びB細胞である。
【0245】
一部の実施形態では、標的は、FcγRII(CD32)である。
【0246】
一部の実施形態では、標的は、FcγRIIB(CD32b)である。
【0247】
一部の実施形態では、標的は、FcγRIIA(CD32a)である。
【0248】
一部の実施形態では、標的は、CD40である。
【0249】
本発明のこれらの更なる態様では、治療用抗体分子は、ヒトにおける使用のための規制当局の承認を受けた任意の治療用抗体分子、若しくは臨床開発における治療用抗体分子であってもよく、又はヒト疾患の療法に使用することが意図若しくは仮定されたヒト標的抗原に結合する任意の抗体であってもよい。本明細書で使用される場合、治療用抗体分子という用語は、前臨床開発中の抗体を含む、治療的使用が考慮されているか、又はそのために開発されていると想定される抗体も包含する。したがって、治療用抗体分子は、ヒトに対する治療効果を有する抗体である。本明細書に記載の予測方法では、治療用抗体分子(交差反応性の場合)、又は類似のマウス標的に対する代替抗体をマウスに投与してもよい。使用されるマウスは、免疫能のある実験用マウスである。異なる遺伝的背景の近交系又は非近交系マウスを使用してもよい。更に、治療用抗体分子のヒト標的のためのトランスジェニックマウスを使用してもよい。
【0250】
多くの場合、かかる治療用抗体分子は、モノクローナル抗体である。多くの場合、それは、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0251】
本発明のこれらの更なる態様では、治療用抗体分子は、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)、又は免疫グロブリンM(IgM)などの任意のタイプの抗体であり得る。一部の実施形態では、それはIgGである。また、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4などの任意のサブクラスであり得る。増強、低減、又は軽減されたFcγR依存的関与(engagement)及び機能のために操作された抗体分子であり得る。更に、治療用抗体分子は、同じ又は異なる標的に対して単一特異性、二重特異性、又は三重特異性であり得、抗体Fcドメインを含むか、又はそれに融合されている。更に、治療用抗体分子は、同じ又は異なる標的に対して単一特異的、二重特異的、又は三重特異的であってもよく、抗体Fcドメインを含まない。更に、治療用抗体分子は、抗体の可変ドメインからなるFv、Fc部分を含まない一価の抗原結合断片であるF(ab)とも表されるFab、又はジスルフィド結合によって一緒に結合された2つの抗原結合Fab部分を含む二価の抗原結合断片であるF(ab’)2、又はF(ab’)(すなわち、F(ab’)2の一価のバリアント)などの抗体の機能的断片であり得る。このような断片は、単鎖可変断片(scFv)でもあり得る。
【0252】
一部の実施形態では、治療用抗体分子は、がん療法で使用されるか、又はそのために意図された抗体である。いくつかのがんに対してモノクローナル抗体が開発されており、より多くのがんがこれに続く可能性が高いであろう。いくつかの例は、脳がん、乳がん、慢性リンパ球性白血病、大腸がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、肺がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺がん、及び胃がんである。いくつかの抗体は、異なる適応症における使用が承認されている。例えば、抗CD20抗体であるリツキシマブは、がん(NHL及びCLL)及び自己免疫疾患(関節リウマチ)の両方における使用が承認されている。しかしながら、本明細書に記載の方法は、がん療法又は自己免疫疾患/炎症性疾患の療法で使用される抗体に限定されない。
【0253】
上述のように、一部の実施形態では、標的は、FcγRIIBである。一部の好ましい実施形態では、治療用抗体分子は、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する。
【0254】
本発明のこれらの更なる態様では、ヒトに治療用抗体分子を投与するために使用される静脈内(iv)投与法は、注射又は注入などの任意のタイプの静脈内投与であり得る。
【0255】
本発明のこれらの更なる態様で本明細書に記載の予測方法は、マウスをモデルとして利用して、ヒトで何が起こるかを予測する。試験される治療用抗体分子が、ヒト標的の既知のマウスホモログと交差反応性である場合、予測方法で治療用抗体分子を使用することができる。試験される治療用抗体分子が、ヒト標的の既知のマウスホモログと交差反応性ではない場合、代替抗体を使用する必要がある。代替抗体は、治療用抗体分子が結合するヒト標的のマウスホモログに特異的な抗体である。例えば、この文脈において、ヒト標的FcγRIIBのマウスホモログは、マウスFcγRIIであり、ヒト標的FcγRIIAのマウスホモログは、マウスFcγRIIIであり、ヒト標的CD40のマウスホモログは、マウスCD40である。代替抗体は、マウス抗体、又は別の種(例えば、ラット、ウサギ、サル、若しくはニワトリ)由来の抗体であり得る。時には、試験される治療用抗体分子が、ヒト標的の既知のマウスホモログと交差反応性である場合でも、代替抗体を使用することが好ましい場合がある。これは、抗体活性を調節するマウス標的抗原及びマウス免疫タンパク質(例えば、FcγR)との代替抗体の結合及び相互作用が、治療用抗体分子自体と比較して、抗体活性を調節するヒト標的及びヒト免疫タンパク質(例えば、FcγR)とのヒト候補抗体の相互作用をよりよく反映している場合であり得る。好ましくは、また入手可能な場合、交差反応性の治療用抗体分子及びマウス代替抗体の両方を、本明細書に記載されるように、耐容性の問題の試験に並行して使用することができる。
【0256】
本発明のこれらの更なる態様では、治療用抗体分子は、Fc受容体に結合するか、又は結合しない抗体であり得る。次に、改変形態、すなわち、アイソタイプスイッチング又はFcエンジニアリングによるFc-FcgR関与が低い抗体バリアントを使用することができる。代替抗体が、同じ又は相同の標的に対する治療用抗体分子の耐容性の問題を予測又はモデル化するために使用される場合、代替抗体のFcは、FcγR結合及び機能の結合/非結合(又は関与(engagement)/非関与(non-engagement))に関して治療用抗体分子のFcと一致するように選択する必要がある。例えば、ヒトIgG1、IgG3、及びIgG4の両方が、異なる絶対親和性及び相対親和性を有するにもかかわらず、ヒトFcγRに生産的に結合及び関与することは周知である。同様に、マウスでは、mIgG2aは、異なるマウスFcγRに強くかつ広範に結合し、一方、mIgG1は、マウスFcγRII及びFcγRIIIにのみ結合する。更に、抗体の脱グリコシル化、具体的には297位(以下の変異のうちの1つ:N297A、N297Q、又はN297G)により、FcγRへの結合に対してヒトIgG及びマウスIgGの両方が障害、及び/又は低減、若しくは重度に低減されることはよく知られている。この文脈において、Fc結合は、治療用抗体分子のFc部分がFcγRに結合し、これがFc:FcγR依存性活性又は機能の関与につながることを意味する。更に、障害又は無効化されたFcγR結合は、改変形態がFcγRにまったく結合しないか、又はそれが治療用未改変抗体よりもFcγRに強く結合しないことを意味する。
【0257】
本発明のこれらの更なる態様では、治療用抗体分子又は代替抗体は、マウスに静脈内投与又は腹腔内投与される。場合によっては、マウスに投与される治療用抗体分子又は代替抗体の用量は、高い受容体飽和度をもたらす用量である。場合によっては、マウスに投与される治療用抗体分子又は代替抗体の用量は、少なくとも90%の受容体飽和度をもたらす用量である。場合によっては、マウスに投与される治療用抗体分子又は代替抗体の用量は、100%又は100%に近い受容体飽和度をもたらす用量である。
【0258】
抗体がマウスに投与されると、動物は視覚的な物理的反応、特に行動の変化又は肉眼的症状が観察される。治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するであろう抗体である場合、マウスは、治療用抗体又は代替抗体の投与後、すぐ間もなく(すなわち、数分以内、例えば、5~10分)肉眼的症状の孤立及び活動の低下を示し始めるであろう。場合によっては、マウスはまた、平衡障害、立毛、及び/又は円背、続いて不自然な体位の兆候を示す。これらの3つの追加の肉眼的症状は、孤立及び活動の低下と同じ時間枠内、すなわち、治療用抗体又は代替抗体の投与後、数分以内(例えば、5~10分)に観察される。これらの追加の肉眼的症状のうちの1つ、2つ、又は3つの呈示は、より強力な予測マーカーであり、マウスが孤立及び活動の低下の兆候のみを示すであろう場合と比較して、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連する可能性が高い。
【0259】
これらの兆候は観察されやすく、治療用抗体又は代替抗体の投与前のマウス行動の顕著な変化であるため、実験用マウスを用いた作業経験のある人は、マウスの行動で上記の変化が生じた場合は、すぐに気が付くであろう。症状がはっきりと現れ、マウスの調子が悪いのは明らかである。抗体(治療用抗体又は代替抗体)の注射後、約1時間(例えば、45分間~1.5時間)で終了する期間の後、マウスは、もはや肉眼的症状を示さなくなる。代わりに、抗体の挙動は、正常状態、すなわち、抗体(治療用抗体又は代替抗体)の投与前の行動に回復する。
【0260】
上記の肉眼的症状に加えて、マウスは他の症状を示す場合がある。そのような症状の1つは、血圧の低下である。別のこのような症状は、血小板数の減少である。別のそのような症状は、2つの肝酵素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルの上昇である。肉眼的症状とは逆に、これらはマウスを観察するだけでは判断することができない。代わりに、血液分析によってそれらを判断することができる。これらの「非肉眼的(non-macroscopic)」症状を確認するために、抗体(治療用抗体又は代替抗体)の注射の約5分後にマウスから血液を採取する。次いで、血液を、血小板数、及び/又はAST、及び/又はALTのレベルについて分析する。血圧の低下は、このようにして決定され得る。血圧が低下した場合、肉眼的症状が呈示されている期間中にマウスから血液を採取することは不可能である。血小板数が減少しているか、かつ/又はAST及び/若しくはALTのレベルが上昇しているかを判断するために、治療用抗体分子若しくは代替抗体の投与前にマウスから採取された血液試料と比較するか、又は対照マウスから採取された試料と比較することが可能である。血圧の低下は、肉眼的症状と同じ期間内に回復する。血小板数、ASTレベル、及びALTレベルが回復するまでには少し時間がかかり、6~10時間(例えば、8時間以内)以内に正常化する。
【0261】
本発明のこれらの更なる態様では、本明細書に記載の予測方法は、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するために使用することができる。
【0262】
更に、本発明のこれらの更なる態様では、本明細書に記載の予測方法を使用して、そのような耐容性の問題を克服するための戦略を試験することができる。より正確には、特定の戦略が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和することができるかどうかを予測するために使用することができる。これは、例えば、臨床的に開発されているか、又は耐容性の問題が観察されている臨床で既に使用されている治療用抗体分子に対して有用である。
【0263】
更に、本明細書に記載の予測方法は、本発明のこれらの更なる態様では、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測し、特定の戦略が耐容性の問題を防止又は緩和することができるかどうかを予測するために使用することができる。これは、潜在的な問題の特定及び問題の解決策を見つける手段の両方を可能にするため、例えば、薬物を開発する際に重要である可能性がある。
【0264】
本発明のこれらの更なる問題と関連するに記載の予測方法が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するためにのみ使用される場合、本方法は、治療用抗体又は代替抗体の投与、続いてマウスの観察と共に、上記のように実行される。通常、1匹のマウスだけでなく、代わりに、数匹(例えば、5~10匹)のマウスの試験群を使用し、観察された任意の変化が代表的で、再現性があり、統計的に有意であることを確認するために、実験が繰り返されるであろう。
【0265】
本発明のこれらの更なる態様では、本明細書に記載の予測方法は、特定の戦略が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和することができるかどうかを予測するためにのみ使用されるか、又はそれに加えて使用される場合、上記の方法は、対照マウス、又は好ましくは対照マウス群(例えば、5~10匹のマウス)に対して行われる。加えて、第2のマウス、又は好ましくは第2のマウス群(例えば、5~10匹のマウス)が、試験する特定の戦略に従って処置される。第2のマウス又は第2のマウス群の結果を、対照マウス又は対照マウス群の結果と比較する。
【0266】
ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与に関連して生じる耐容性の問題を克服するための戦略の例は、異なる予防的処置、異なる治療的処置、投与経路の変更、及び/又は治療用抗体分子の改変である。本明細書に記載されるかかる戦略を試験することによって、その特定の戦略を使用して、ヒトへの特定の治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止又は緩和することができるかどうかを予測するために使用することができるデータが得られる。したがって、耐容性の問題を最初に経験しなければならないヒトに対する異なる戦略の効果を試験することなく、信頼性の高いデータを得ることが可能である。
【0267】
耐容性の問題を克服するための戦略が予防的処置である場合、予防剤は、マウス又はマウス群への治療用抗体又は代替抗体の静脈内投与又は腹腔内投与の前に、第2のマウス又は第2のマウス群に投与される。したがって、この戦略は、予防剤による前処置である。第2のマウス又は第2のマウス群は、治療用抗体又は代替抗体の投与直後に続く期間中に観察される。第2のマウス又は第2のマウス群の結果は、予防剤を投与されていない対照マウス又は対照マウス群の結果と比較される。その期間中の、対照マウス又は対照マウス群と比較した、第2のマウス若しくは第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の減少、又は第2のマウス若しくは第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の皆無は、予防剤の投与を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止又は緩和することができることを示す。
【0268】
このようにして試験した予防薬剤は、耐容性の問題を防止若しくは緩和することが知られている任意の薬剤、又は耐容性の問題を緩和するのに役立つ能力について仮定若しくはスクリーニングされている任意の薬剤であり得る。
【0269】
本発明のこれらの更なる態様の一部の実施形態では、予防的処置は、コルチコステロイドによる前処置である。一部のかかる実施形態では、前処置は、コルチコステロイドの2回の投与を含む。コルチコステロイドは、好ましくは強力なコルチコステロイドであり、より好ましくは、可能な限り又は利用可能な高い有効性を有するコルチコステロイドである。そのようなコルチコステロイドの例は、デキサメタゾン及びベタメタゾンである。
【0270】
デキサメタゾン又はベタメタゾンなどのコルチコステロイドによる前処置が使用される場合、治療用抗体又は代替抗体の投与前に、コルチコステロイドの2回の投与を含み得る。一部のかかる実施形態では、1回の用量のコルチコステロイドは、治療用抗体又は代替抗体の投与の10~48時間前に投与され、他方は、治療用抗体又は代替抗体の投与の5分~5時間前に投与される。一部のかかる実施形態では、1回の用量のコルチコステロイドは、治療用抗体又は代替抗体の投与の6~36時間前に投与され、他方は、治療用抗体又は代替抗体の投与の15~120分前に投与される。一部のかかる実施形態では、コルチコステロイドの第1の用量は、治療用抗体又は代替抗体の投与の16~24時間前に投与される。一部のかかる実施形態では、コルチコステロイドの第2の用量は、治療用抗体又は代替抗体の投与の30~60分前に投与される。
【0271】
耐容性の問題を克服するための戦略が治療的処置である場合、これは、第2のマウス又は第2のマウス群に、治療剤を投与し、これに併せて、マウス又はマウス群に治療用抗体又は代替抗体を静脈内投与又は腹腔内投与することによって行われ得る。この文脈において、併せてとは、本質的に同時に又は直後にを意味する。第2のマウス又は第2のマウス群は、治療用抗体又は代替抗体の投与直後に続く期間に観察される。第2のマウス又は第2のマウス群の結果は、治療剤を投与されていない対照マウス又は対照マウス群の結果と比較される。その期間中の、対照マウス又は対照マウス群と比較した、第2のマウス若しくは第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の減少、又は第2のマウス若しくは第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の皆無は、治療剤の投与を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止又は緩和することができることを示す。
【0272】
このようにして試験した治療剤は、有害事象を逆転又は管理することが知られている任意の薬剤又は薬物であり得る。抗体などの免疫調節剤、例えば、サイトカイン放出症候群に対する使用で知られている抗IL-6抗体(Frey NV,Porter DL.Cytokine release syndrome with novel therapeutics for acute lymphoblastic leukemia.Hematology Am Soc Hematol Educ Program.2016;2016:567-572)、又はコルチコステロイド及び抗ヒスタミン剤などの免疫抑制剤及び/若しくは抗炎症剤。
【0273】
耐容性の問題を克服するための戦略が異なる投与経路である場合、治療用抗体又は代替抗体は、静脈内投与又は腹腔内投与以外の投与経路によって第2のマウス又は第2のマウス群に投与される。第2のマウス又は第2のマウス群は、治療用抗体又は代替抗体の投与直後に続く期間に観察される。第2のマウス又は第2のマウス群の結果は、静脈内投与又は腹腔内投与によって治療用抗体又は代替抗体を投与された対照マウス又は対照マウス群の結果と比較される。その期間中の、対照マウス又は対照マウス群と比較した、第2のマウス又は第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の減少、又は第2のマウス又は第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の皆無は、静脈内投与又は腹腔内投与以外の投与経路によるヒトへの治療用抗体分子の投与を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止又は緩和することができることを示す。
【0274】
このように試験される投与経路は、当業者に知られている任意の経路であり得、これは、ヒトへの治療用抗体分子の投与に好適であり、かつマウスへの治療用抗体又は代替抗体の投与も実行可能である。
【0275】
本発明のこれらの更なる態様の一部の実施形態では、異なる投与経路(すなわち、静脈内投与又は腹腔内投与以外の投与経路)は、皮下投与である。次いで、治療用抗体又は代替抗体は、第2のマウス又は第2のマウス群への皮下投与のために調製又は製剤化する必要がある。
【0276】
耐容性の問題を克服するための戦略が、治療用抗体又は代替抗体の改変形態を使用する場合、この治療用抗体又は代替抗体の改変形態は、第2のマウスに静脈内投与又は腹腔内投与される。第2のマウス又は第2のマウス群は、改変された治療用抗体又は代替抗体の投与直後に続く期間中に観察される。第2のマウス又は第2のマウス群の結果は、静脈内投与又は腹腔内投与によって未改変の治療用抗体又は代替抗体を投与された対照マウス又は対照マウス群の結果と比較される。その期間中の、対照マウス又は対照マウス群と比較した、第2のマウス若しくは第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の減少、又は第2のマウス若しくは第2のマウス群の肉眼的症状の呈示の皆無は、ヒトへの改変された治療用抗体分子の投与を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止又は緩和することができることを示す。
【0277】
このようにして試験した治療用抗体分子の改変は、ヒトにおいてより少ない又はより軽度の毒性事象を引き起こす、既知又は未知の任意の改変であり得る。例えば、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが見出されている治療用抗体分子が、Fc受容体に関与する抗体である場合、かかる改変は、抗体がFc受容体に関与しないように、又は治療用未改変抗体と比較してFcγR結合が障害又は無効化されるように、抗体を改変するためであり得るが、改変抗体のFv可変配列は、治療用抗体分子と同じままである。上述のように、代替抗体のFcは、FcγR結合及び機能の結合/非結合(又は関与/非関与)に関して治療用抗体分子のFcと一致するように選択する必要がある。
【0278】
本発明のこれらの更なる態様の一部の実施形態では、改変は、Fc受容体の関与の増加をもたらす改変である。
【0279】
上記の戦略のうちの2つ以上、又は上記の戦略のうちの1つ又は2つ以上のいくつかのバリアントを、マウス又はマウス群(各戦略の1匹のマウス若しくはマウス群、又は戦略の各バリアント)を更に含めることによって、同時に試験することが可能である。
【0280】
本発明のこれらの更なる態様では、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための投薬レジメンで使用するためのコルチコステロイド、並びに対象へのコルチコステロイドの投与のための投薬レジメンを含む対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための方法も本明細書に記載される。
【0281】
本発明のこれらの更なる態様では、治療用抗体分子は、上記の予測方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されているものであり得る。追加的に又は代替的に、上記の予測方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の投与と組み合わせたコルチコステロイドによる前処置が、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう可能性が高いと予測するために使用された可能性がある。
【0282】
投薬レジメンは、治療用抗体分子の静脈内投与の前に、少なくとも2回の用量で対象にコルチコステロイドを投与することを含む。コルチコステロイドの1回の用量(「第1の用量」)は、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され、コルチコステロイドの1回の用量(「第2の用量」)は、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される。これらの2回の用量に加えて、「第1の用量」の前の1回の用量、及び/又は「第1の用量」と「第2の用量」との間の1回の用量などの更なる用量を使用することが可能である。多くの場合、患者は、全療法中に治療用抗体分子の数回の投与を受ける。次いで、コルチコステロイドの2回の用量は、治療用抗体分子の1回又は数回の投与に関連して患者に投与され得る。好ましくは、2回の用量は、治療用抗体分子の各投与に関連して患者に投与される。
【0283】
場合によっては、コルチコステロイドの第1の用量は、治療用抗体分子の投与開始の6~36時間前に投与され、コルチコステロイドの第2の用量は、治療用抗体分子の投与開始の直前に投与される。この文脈において、直前とは、治療用抗体分子の投与開始の約15~120分前を意味する。
【0284】
場合によっては、コルチコステロイドの第1の用量は、治療用抗体分子の投与開始の8~30時間前に投与される。
【0285】
場合によっては、コルチコステロイドの第1の用量は、治療用抗体分子の投与開始の16~24時間前に投与される。
【0286】
場合によっては、コルチコステロイドの第2の用量は、治療用抗体分子の投与開始の30~60分前に投与される。
【0287】
場合によっては、コルチコステロイドの第1の用量は、治療用抗体分子の投与開始の16~24時間前に投与され、コルチコステロイドの第2の用量は、治療用抗体分子の投与開始の30~60分前に投与される。
【0288】
場合によっては、投薬レジメンは、抗体療法の過程中、抗体の各注入の前に、コルチコステロイドの少なくとも2回の用量の投与を含む。
【0289】
使用されるコルチコステロイドは、好ましくは強力なコルチコステロイドであり、より好ましくは、可能な限り又は利用可能な高い有効性を有するコルチコステロイドである。そのようなコルチコステロイドの例は、デキサメタゾン及びベタメタゾンである。デキサメタゾン若しくはベタメタゾンのいずれか、又はデキサメタゾンとベタメタゾンの組み合わせを使用することが可能である。
【0290】
場合によっては、デキサメタゾンを使用する場合、第1の用量は、4~20mgである。場合によっては、デキサメタゾンを使用する場合、第2の用量は、4~25mgである。場合によっては、デキサメタゾンを使用する場合、第1の用量は、4~20mgであり、第2の用量は、4~25mgである。場合によっては、デキサメタゾンを使用する場合、第1の用量は10~12mgである。
【0291】
場合によっては、デキサメタゾンを使用する場合、第2の用量は、20mgである。場合によっては、デキサメタゾンを使用する場合、第1の用量は、10~12mgであり、第2の用量は、20mgである。場合によっては、ベタメタゾンを使用する場合、第1の用量は、3.2~16mgである。場合によっては、ベタメタゾンを使用する場合、第2の用量は、3.2~20mgである。
【0292】
場合によっては、ベタメタゾンを使用する場合、第1の用量は、3.2~16mgであり、第2の用量は、3.2~20mgである。場合によっては、ベタメタゾンを使用する場合、第1の用量は、8~9.6mgである。場合によっては、ベタメタゾンを使用する場合、第2の用量は、16mgである。場合によっては、ベタメタゾンを使用する場合、第1の用量は、8~9.6mgであり、第2の用量は、16mgである。
【0293】
場合によっては、投薬レジメンは、コルチコステロイドの少なくとも2回の投与に加えて、抗ヒスタミン剤の投与を含む。場合によっては、抗ヒスタミン剤は、治療用抗体分子の投与開始の10分~24時間前に投与される。場合によっては、抗ヒスタミン剤は、治療用抗体分子の投与開始の30~60分前に投与される。
【0294】
治療用抗体分子は、例えば、コルチコステロイドと共に、静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するために使用され、場合によっては、Fc受容体結合抗体である。場合によっては、それは、抗FcγRIIB抗体である。場合によっては、それは、抗FcγRIIB抗体であり、抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する。
【0295】
本発明の第13の態様では、がんの治療に使用するための治療用抗体分子であって、治療用抗体分子が、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連して生じるであろう耐容性の問題を防止又は緩和するために、皮下投与用に製剤化される、治療用抗体分子、並びに耐容性の問題を防止又は緩和するために、静脈内投与の代わりに治療用抗体の皮下投与を含むがんの治療方法も本明細書に記載される。
【0296】
場合によっては、皮下投与用に製剤化される治療用抗体分子は、抗FcγRIIB抗体である。一部のかかる場合では、治療用抗体分子は、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗体である。
【0297】
本発明の第14の態様では、がんの治療に使用するための改変形態の治療用抗体分子であって、治療用抗体分子の改変が、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連して生じるであろう耐容性の問題を防止又は緩和するために行われる、改変形態の治療用抗体分子、並びにかかる改変形態の治療用抗体の投与を含む、がんの治療方法も本明細書に記載される。
【0298】
使用される治療用抗体分子の改変は、ヒトにおいてより少ない又はより軽度の毒性事象を引き起こすことが知られている任意の改変であり得る。
【0299】
上記のように、治療用抗体の改変は、本明細書に記載の予測モデルで試験され、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連して生じるであろう耐容性の問題を防止又は緩和するために有用であることが見出された、ヒトにおいてより少ない又はより軽度の毒性事象を引き起こす以前に知られていない改変であり得る。
【0300】
上述のように、1つの例は、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが見出されている治療用抗体分子が、Fc受容体に関与する抗体である場合、本文脈で使用される改変は、抗体がFc受容体に関与しないように、又は治療用未改変抗体と比較してFcγR結合が障害又は無効化されるように、抗体を改変するためであり得るが、改変抗体のFv可変配列は、治療用抗体分子と同じままである。
【0301】
したがって、一部のかかる場合では、治療用抗体分子は、Fc受容体結合抗体であり、改変形態は、同じFv可変配列を有するが、治療用抗体分子と比較して、FcγR結合が障害又は無効化されている抗体である。場合によっては、治療用抗体は、Fc受容体結合抗体であるFcγRIIB抗体であり、一部のかかる場合では、改変形態は、抗FcγRIIB抗体であり、配列番号1の軽鎖及び配列番号195の重鎖を有する抗体である。
【0302】
場合によっては、抗FcgRIIB抗体は、単剤として使用される。他の場合では、それは、FcgR(例えば、抗CD20又は抗PD-1)によって活性が調節される他の治療用抗体に対する活性を増強するか、又は耐性を克服するために使用される。
【0303】
抗CD20抗体の併用治療に関して、抗FcgRIIBは、抗CD20抗体が療法に承認されているがん及び炎症性疾患/自己免疫疾患の両方の治療において使用され得る。本明細書で使用される対象という用語は、特定の疾患を有すると診断されたヒトを指す。本明細書では、対象及び患者という用語は、互換的に使用される。
【0304】
場合によっては、対象は、がんと診断されている。一部のかかる場合では、がんは、B細胞悪性腫瘍である。一部のかかる場合では、がんは、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、又は慢性リンパ球性白血病などの非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0305】
場合によっては、防止又は緩和される耐容性の問題は、血小板減少症(血小板の減少)である。一部のかかる場合では、それは、一過性血小板減少症である。
【0306】
場合によっては、防止又は緩和される耐容性の問題は、サイトカイン放出症候群である。一部のかかる場合では、それは、一過性サイトカイン放出である。
【0307】
場合によっては、防止又は緩和される耐容性の問題は、肝酵素の上昇である。一部のかかる場合では、それは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルの上昇及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルの上昇である。
【0308】
本発明の第15の態様では、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療において使用するための治療用抗体分子が提供され、治療用抗体分子が、抗FcγRIIB抗体であり、治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される。
【0309】
本発明の第16の態様では、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療において使用するための医薬品の製造における治療用抗体分子が提供され、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、医薬品が、皮下投与用に製剤化される。
【0310】
本発明の第17の態様では、治療用抗体分子を含む薬学的製剤が提供され、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤を含み、皮下投与用に製剤化される。
【0311】
好ましくは、本発明のこれらの態様における治療用抗体は、Fc受容体結合抗体である。より好ましくは、治療用抗体は、抗FcγRIIB抗体である。
【0312】
本発明のこれらの態様の代替的な実施形態では、治療用抗体分子は、本明細書における本発明の先行する態様のいずれかにおいて本明細書に記載されているものである。
【0313】
しかしながら、好ましい実施形態では、薬学的組成物は、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する治療用抗体分子(この抗体は、本明細書に記載されるように、BI-1206と表される)を含む。好ましくは、治療用抗体分子は、配列番号1の軽鎖、及び配列番号2の重鎖、及び配列番号202及び203の定常領域を含む。
【0314】
したがって、本発明は、以下も提供する:
-がんの治療に使用するための治療用抗体分子であって、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化されている、治療用抗体分子、
-がんの治療に使用するための医薬品の製造における治療用抗体分子の使用であって、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、治療用抗体分子及び/又は医薬品が、皮下投与用に製剤化される、使用、
-治療用抗体分子を含む薬学的製剤であって、治療用抗体分子が、本明細書に定義される抗FcγRIIB抗体であり(好ましくは、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり)、薬学的製剤が、薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤を含み、皮下投与用に製剤化される、薬学的製剤。
【0315】
好ましくは、使用のための治療用抗体分子、治療用抗体分子の使用、又は本発明の上記の態様(本発明の第15、第16、及び第17の態様を含む)による薬学的製剤は、がんの治療のためのものである。
【0316】
本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、治療有効用量の治療用抗体を含むことが理解されるであろう。好ましくは、治療用抗体は、約90mg/mL~約220mg/mLの濃度で存在する。例えば、治療用抗体は、約90mg/mL、又は約100mg/mL、又は約110mg/mL、又は約120mg/mL、又は約130mg/mL、又は約140mg/mL、約150mg/mL、又は約160mg/mL、又は約170mg/mL、約180mg/mL、又は約190mg/mL、又は約200mg/mL、約210mg/mL、又は約220mg/mLの濃度で存在し得る。特に好ましいのは、約150mg/mLの濃度である。
【0317】
本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、無菌であることが好ましい。
【0318】
好ましい実施形態では、本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、約5mM~約20mMの酢酸塩(例えば、約10mMの酢酸塩又は約15mMの酢酸塩)を更に含む。特に好ましいのは、約5mMの酢酸塩である。
【0319】
好ましい実施形態では、本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、約50mM~約250mMのNaCl、例えば、約60mMのNaCl、又は約70mMのNaCl、又は約80mMのNaCl、又は約90mMのNaCl、又は約100mMのNaCl、又は約110mMのNaCl、又は約120mMのNaCl、又は約130mMのNaCl、又は約140mMのNaCl、又は約150mMのNaCl、又は約160mMのNaCl、又は約170mMのNaCl、又は約180mMのNaCl、又は約190mMのNaCl、又は約200mMのNaCl、又は約210mMのNaCl、又は約220mMのNaClを更に含む。特に好ましいのは、約110mMのNaClである。
【0320】
好ましい実施形態では、本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、約0.05%(w/v)ポリソルベート20、例えば、Merck/SigmaAldrichからのTween20(ポリソルベート)EMPROVE(登録商標)ESSENTIAL Ph Eur,JPE,NF(カタログ番号8.17072.1000)を更に含む。
【0321】
好ましい実施形態では、本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、約pH5.0~約pH5.8、例えば、約pH5.1、又は約pH5.2、又は約pH5.3、又は約pH5.4、又は約pH5.5、又は約pH5.6、又は約pH5.7のpHである。特に好ましいのは、約pH5.8のpHである。
【0322】
特に好ましい実施形態では、本発明のこれらの態様の薬学的製剤は、以下を含むか、又はそれからなる:
-150mg/mLの濃度の治療用抗体、
-5mMの酢酸塩、
-110mMのNaCl、
-0.05%(w/v)のポリソルベート20、及び
-pH5.8。
【0323】
本発明の第18の態様では、対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療のための方法が提供され、本方法は、対象に治療用抗体分子を投与するステップを含み、治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される。
【0324】
好ましくは、本発明の第18の態様では、Fc受容体結合抗体は、抗FcγRIIB抗体である。より好ましくは、Fc受容体結合抗体は、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体である。
【0325】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、以下を提供する:
-対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療のための方法であって、対象に治療用抗体分子を投与するステップを含み、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される、方法。本発明の第18の態様では、治療用抗体は、好ましくは、皮下投与経路によって対象に投与されることを理解されたい。
【0326】
本発明の第19の態様では、対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療のための方法が提供され、本方法は、対象に本発明の第17の態様の薬学的製剤を投与するステップを含む。本発明の第19の態様では、薬学的製剤は、好ましくは、皮下投与経路によって対象に投与されることを理解されたい。本方法は、がんの治療のためのものであることが好ましい。
【0327】
ここで、以下の図面及び実施例を参照して、本発明の特定の態様を具体化する、好ましい非限定的な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0328】
【
図1】BI-1206耐容性プロファイルを再現するマウスモデル。マウス代替抗CD32b抗体(AT-130-2 IgG2a)を、野生型C57/BL6マウスに静脈内(i.v.)又は腹腔内(i.p.)に注射すると、マウスは、臨床におけるBI-1206の耐容性プロファイルを再現する反応を示す。A.注射後の孤立、活動の低下、平衡障害、立毛、円背、続いて不自然な体位などの肉眼的IRRを示すマウスの割合(%)を示す。静脈内用量を滴定すると、肉眼的症状の同じタイミング及び重症度が、10mg(0.5mg/kg)まで見られる。しかしながら、4mg(0.2mg/kg)では、IRRは見られなかった。200mg(10mg/kg)を腹腔内投与すると、静脈内注射と比較して、注射の20~30分後にIRRが現れ、IRRの発症の遅延が見られた。しかしながら、腹腔内用量を400mg(20mg/kg)に増加させると、IRRの発症は、静脈内注射経路と比較して、依然として遅延したが、全てのマウスは、200mgの静脈内用量と同じ程度及びグレードのIRRを示した。全てのマウスは、注射の1時間後に完全に回復していた。B.Vetscanを使用して新鮮血中のPLT(血中の血小板数)を分析したところ、IRR(灰色の棒)を示すマウスも血小板数の減少を示すことがわかった。C.ASTについても血液試料を分析したところ、200ugの抗CD32b抗体を静脈内投与した群で増加を示した。D.注射後の経時的な、200ugの抗CD32b抗体を腹腔内注射したマウスの血中のIL6レベルを示す。注射の1時間後にピークが見られ、注射の8時間後にレベルが正常に戻る(灰色の領域)。IL-5、IL-10、KC/GRO、TNF-αについても同様のパターンが見られた。
【
図2】2回の用量のコルチコステロイドによる前投薬は、インビボでIRRを用量依存的に遮断又は低減する。マウスを以下により前処置した:AT-130-2 IgG2aの静脈内注射の24時間及び1時間前(前投薬)のA:40mg/kg又はB:10mg/kgのベタメタゾン。注射の20分後にマウスを採血した。血小板数について、血液を分析した。10mg/kgのベタメタゾンによる前投薬は、IRRを完全に阻害しなかったか、又は血小板数Bの減少を示し(縞状の棒)、前投薬の用量を減少させると、IRRが阻害され、血小板数が減少する可能性があることを示した。
【
図3】分割用量-Abの少量の事前用量が、IRRの重症度を減少させ、血小板を減少させる。A.8μg/マウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aの静脈内分割投薬を開始し、続いて1時間後に200μg/マウスのバルク用量を開始した。並行して、マウスに、バルク用量のみを注射した。IRRを試験し(Bのグレーディングシステムに従って図中で可視化されている)、血小板数及び体温を測定し、比較した。AT-130(8ug)の少量の前投薬は、多/主用量(200ug)を投与すると、IRR、血小板減少、及び体温低下に対する重症度/保護を減少させる。灰色領域は、PLT(血中の血小板数)及び体温の正常範囲を示す。前用量は、8ug(マウスCの50%にIRRが見られる用量)である必要があり、より低い用量は保護的ではない。
【
図4】完全な(抗体)耐容性及びIRRに対する保護には、ステロイドによる前投薬と抗体の分割投薬との組み合わせが必要である。分割投薬は、以下のいずれかで開始された:準最適コルチコステロイド処置(10mg/kg)の24時間後、又はコルチコステロイド前処置なしで、8μg/マウスの抗CD32B AT-130-2 IgG2aの静脈内投与、続いて1時間後、200μg/マウスのバルク用量。並行して、マウスに、バルク用量のみを注射した。IRRを試験し、血小板数及び体温を測定し、比較した。コルチコステロイドの「低用量」(10mg/kg)が24時間前に投与された場合、AT-130(8ug)の少量の前用量は十分に許容される。AT-130(8ug)の少量の前用量と共に準最適な前投薬は、多量のAb用量(200ug)と関連するIRR及び血小板減少から完全に保護する。準最適用量のコルチコステロイド(10mg/kg)自体は保護的ではない。灰色の領域は、PLT及び体温の正常範囲を示す。
【
図5】いくつかの異なる臨床的に関連する物質を用いた前投薬は、AT-130-2 IgG2a投与と関連するIRRを阻害しない。このモデルでは、IRRを治療するために臨床で一般的に使用される物質による前処置が、IRRを阻害することができるかどうかを評価するために、マウスを、抗PAF、抗IL6、抗ヒスタミン、又はロイコトリエン拮抗薬で前処置した。これらの前投薬を、200ug/マウスのバルク用量としてのマウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aの静脈内注射の1時間前に、腹腔内投与した。マウスを、肉眼的IRR(例えば、孤立、運動性、及び毛皮状態)について観察した。これらの前投薬は、いずれもIRRを阻害することはできなかった。
【
図6】70~100mgの用量でのBI-1206の投与後、非ホジキンB細胞リンパ腫を有するヒト対象において見られた耐容性プロファイル。(A)BI-1206による処理後の血小板減少。減少は一過性であり、ほとんどのエピソードは1週間以内に解消され、重篤な出血又は出血と関連するものはない。各点は、測定値と中央値の線を表す。縦縞線は、BI-1206の投与を示す。(B)血小板減少は、ALT上昇と関連する。ALT/ASTの上昇は、14人中3人の患者においてのみ有意であった。(C)BI-1206による処理後の検出されたサイトカイン上昇の頻度。解析のために血清/血漿が利用可能であった8人中7人の対象において、一過性のサイトカイン放出が検出された。サイトカイン放出のピークは、注入直後に見られ、常に24時間以内に消失した。(D)血小板減少、ALT及びサイトカインの上昇の動態は、個体504-001によって例示される。サイトカインは、ここではIL-6によって例示される。
【
図7】FcgRIIb受容体占有率は、B細胞枯渇に翻訳される。臨床データは、hFcgRIIBトランスジェニックマウスを使用したインビボモデルからの前臨床データと一致しており、ここでは、持続的なBリンパ球枯渇を達成するために持続的な受容体飽和が必要であることが実証されている。抗FcgRIIb mAbの投与前の2回の用量のコルチコステロイド、及び少量の前用量のmAb(分割用量)は、耐容性を改善する(IRR)。100mg BI-1206単剤療法で処置された非ホジキンB細胞リンパ腫を有するヒト対象における末梢B細胞(A)及び末梢B細胞レベル(B)におけるFcgRIIb受容体占有率。漸増用量のBI-1206の静脈内投与後のhFcgRIIBトランスジェニックマウスにおけるFcgRIIb受容体占有率(E)及び末梢B細胞枯渇(F)。(C)70~100mgのBI-1206で処置された非ホジキンB細胞リンパ腫を有するヒト対象における注入関連反応(IRR)のグレード。黒色の記号を有する濃い灰色の棒は、2回の用量のコルチコステロイドによる前投薬なしの投与を示し、薄い灰色の棒と中空の白色の記号は、2回の用量のコルチコステロイドによる前投薬ありの投与を示す。X軸上に、対象のid及び抗体の用量が示されている。(D)IRRの有意により低い頻度及び重症度は、臨床プロトコルにおける2回の用量のコルチコステロイドによる前投薬の実施後に見られる。黒色の記号は、2回の用量のコルチコステロイドなし、灰色の記号は、2回の用量のコルチコステロイドによる。マン・ホイットニーU検定を使用して、P<0.0001。(G)野生型マウスにおける抗FcgRIIb mAb(AT-130-2 mIgG2a)の静脈内投与後の注入関連反応。用量滴定は、0.4mg/kgのAbIRRが、約50%の動物に現れ、IRRを上回る静脈内投与用量が、100%の動物に見られることを示す。2回の40mg/kg用量のbetapredによる前投薬は、IRRを完全に遮断するが、2回の40mg/kg用量のbetapredは、IRRを部分的に遮断する。準最適な10mg/kgのbetapredを分割用量で添加すると、IRRが遮断される。分割用量は、0.4mg/kgのAbの小量の前用量であり、10mg/kgのAbの多量の用量がそれに続く。(H)耐容性及び持続的な有効性の改善は、臨床プロトコルにおける2回の用量のコルチコステロイドによる前投薬の実施後に見られる。CR:完全奏効、PR:部分奏効、SD:安定した疾患、DLT:用量制限毒性。
【
図8】BI-1206注入後の一過性FcγRIIB受容体占有率及び末梢リンパ球枯渇。
図8A)100mgのBI-1206を投与した対象(n=8)において、BI-1206注入後の末梢B細胞上のFcγRIIB受容体占有率を経時的に追跡した。垂直の破線は、BI-1206注入を表す。第2及び第3のBI-1206注入の受容体占有率データは、注入前にのみ利用可能である。線は、中央値を表す。予備データに基づく。
図8B)100mgのBI-1206を投与した対象(n=9)において、BI-1206注入後の末梢リンパ球を経時的に追跡した。垂直の破線は、BI-1206注入を表す。線は、中央値を表す。予備データに基づく。
【
図9】血小板の一過性の減少は、BI-1206注入後のALTの増加と関連する。
図9A)70~100mgのBI-1206を投与した対象において、BI-1206の注入後の血小板数を経時的に追跡した(n=16)。垂直の破線は、BI-1206注入を表す。線は、中央値を表す。予備データに基づく。
図9B)血小板減少パーセントと比較したALTの倍率増加(n=16)。変化は、BI-1206注入前の1日目と関連して計算される。予備データに基づく。
【
図10】BI-1206注入後のサイトカイン放出。BI-1206注入の終了時に検出した、異なるサイトカインの血漿/血清中の増加を有する患者数。陽性とみなされるには、注入前と比較して10倍超増加し、正常上限(ULN)範囲を10倍超上回る必要がある。分析用の試料は、70mg以上のBI-1206を投与された5人の対象から入手可能であった。予備データに基づく。
【
図11】BI-1206を投与された2人の対象において、2回の用量のデキサメタゾンにより、IRR、血小板減少、及びトランスアミナーゼ増加が緩和された。対象501-001(
図11A)及び503-002(
図11B)における血小板数及びALT。垂直の破線は、抗体の注入を表す。各対象における最初の注入は、リツキシマブ単独であり、BI-1206及びリツキシマブがそれに続いた。各抗体注入時のIRRのグレードが示されている。501-001及び503-002は、導入療法中、BI-1206(70mg)の3回目の投与前の夕方に、それぞれ12mg及び4mgのデキサメタゾン、及び30分前に、再び20mgのデキサメタゾンが投与された。この2回の用量のデキサメタゾンによる前投薬レジメン後、いずれの対象もIRRを罹患しなかった。注入のわずか30分前にデキサメタゾン(20mg)が投与されたBI-1206による前の2回の注入中に、IRR(グレード2~3)を経験した。加えて、対象501-001及び503-002では、2回の用量のデキサメタゾンを前投薬した場合、血小板の減少がないか低く、BI-1206投与後、ALT/ASTの増加が見られなかった。
【
図12】マウス代替抗CD32b(AT-130-2 IgG2a)の注射後の肉眼的症状。マウス代替抗CD32b(AT-130-2 IgG2a)を、3つの異なる注射経路である静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、又は皮下(s.c.)経路を介して、野生型C57/BL6マウスに注射した。静脈内及び腹腔内注射後に、肉眼的症状が見られた。これらの肉眼的症状には、孤立、活動の低下、平衡障害、立毛、円背、続いて不自然な体位が含まれた。肉眼的症状を、観察に基づいて0~2でスコアリングした。静脈内用量を滴定すると、注射の5~7分後にIRRの迅速な発症が見られた。同じタイミング及び重症度の肉眼的症状が、10μg(0.5mg/kg)まで見られた。しかしながら、1μg(0.05mg/kg)では肉眼的症状は見られなかった。200μg(10mg/kg)の腹腔内投与では、静脈内注射と比較して、肉眼的症状の発症の遅延が見られ、注射の20~30分後に肉眼的症状が現れた。静脈内注射経路とは対照的に、この群の全てのマウスは肉眼的症状を示さず、いくつかのマウスでは、肉眼的症状がより軽度であった。腹腔内用量を400μg(20mg/kg)に増加させると、肉眼的症状の発症は、静脈内注射経路と比較して依然として遅延したが、全てのマウスは、200μgの静脈内投与と同じ程度及びグレードで肉眼的症状を示した。全てのマウスは、注射の1時間後に完全に回復していた。最後に、マウスに200μgを皮下投与した場合、肉眼的症状は見られなかった(注射後24時間まで)。皮下用量を400μgに増加させても、マウスは影響を受けなかった。
【
図13】C57BL/6マウスにおけるAT-130-2 IgG2aの薬物動態プロファイル。3つの異なる投与経路を介してAT-130で処置されたマウスにおいて観察されたAT-130-2の血清中濃度(静脈内注射による200μgのAT-130-2、腹腔内注射による200μgのAT-130-2、及び皮下注射による400μgのAT-130-2)。提示されたデータは、1~4匹のマウス/用量群の平均値である。略称:h=時間、i.p.腹腔内、i.v.静脈内、s.c.皮下。完全で持続的なFcgRIIB受容体は、皮下であるが、以下のAT130の皮下投薬で達成されることに留意されたい。C
Maxは低く、完全な飽和を得るための動態は、静脈内投与又は腹腔内投与と比較して遅い。
【
図14】肉眼的症状(この図ではIRRと表される)と、FcγRIIBの飽和時間ではなく、AT-130-2の急速曝露との間の相関。AT-130-2 IgG2aの血清中濃度(点付きの線)を、異なる投与経路(A:静脈内、B:腹腔内、及びC:皮下)について肉眼的症状のグレード(四角付きの線)に対してプロット化した。AT-130-2の血清中濃度と推定受容体占有率(RO)(点線、10mg/mlで100%の受容体飽和度)をIRRの発症、重症度、及び持続時間と比較すると、FcγRIIBの飽和時間ではなく、AT-130-2の高曝露と急速曝露との間に相関があることが明らかである。耐容性は、皮下>腹腔内>静脈内の明確なパターンを示し、肉眼的症状の回復後に、ROが長期間維持されている。
【
図15A】血小板(PLT)最低値のタイミングは、投与経路及びFcγRIIB飽和までの時間と相関する。AT-130-2 IgG2aの注射後の異なる時点でマウスを採血し、血液を自動Vetcountで血小板数(PLT)について分析した。静脈内投与経路及び腹腔内投与経路の両方を介したAT-130-2の注射後の肉眼的症状の発症と同時に、血小板数の最低値が見られた。肉眼的症状が見られない皮下投与経路については、注射の10時間後に中程度の低下が見られ、PKによるFcγRIIBの飽和までの時間と相関する。全ての場合で、PLTの減少は一過性であり、注射後8時間以内に正常範囲内の値まで回復した。肉眼的症状を呈するマウスは、塗りつぶした棒で示されている。
【
図15B】皮下投与経路を使用すると、AT-130-2 IgG2aの注射後のトランスアミナーゼの増加が回避されることを示す。AT-130-2 IgG2aの注射後にマウスを採血し、血液をトランスアミナーゼについて分析した。静脈内投与経路については、肉眼的症状の発症の1時間後、トランスアミナーゼ(AST)において増加が見られる(トランスアミナーゼにおけるピーク値の時点として以前に確立された)。肉眼的症状が見られない皮下投与経路については、注射の11時間後(PKによるFcγRIIBの飽和時間(10時間)の1時間後)、トランスアミナーゼの増加は見られなかった。
【
図16】AT-130-2 IgG2aの投与後の、一過性の血小板減少、トランスアミナーゼ増加、及びサイトカイン放出。200μgのAT-130-2の腹腔内注射後の異なる時点でマウスを採血し、血液を、血小板数(
図16A)、トランスアミナーゼ(
図16B)、及びサイトカイン(
図16C)について分析した。PLTカウントで一過性のPLT減少が見られ、注射の8時間後に完全に回復した(
図16A)。注射の1時間後にピークを有するトランスアミナーゼ(AST及びALT)の増加は、AT-130-2注射によって影響を受けた唯一の臨床化学パラメータであった(
図16B)。これらの増加は、PLTの減少と同様に一過性であった。AT-130-2を静脈内注射した場合、同じ一過性の増加が見られた。AT-130-2を皮下注射した場合、トランスアミナーゼの増加は検出されなかった。(データは示さず)。分析物IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、KC/GRO、TNF-αを含むサイトカインのパネルを、200mgの腹腔内注射後の異なる時点で分析した。分析されたサイトカインのうち、IL-5、IL-6、IL-10、KC/GRO、TNF-αは、注射の1~3時間後にピークがあるIL-5を除く全てで一過性の増加を示した(
図16C)。IL-5は、注射の3~8時間後の遅れたピークを示した(
図16C)。これらは、BI-1206を用いた臨床試験において、一部の患者で増加することが示された同じサイトカインである。
【
図17】2回の用量のコルチコステロイドによる前投薬は、AT-130-2 IgG2a投与と関連する肉眼的症状を阻害する。マウスを、40mg/kgのベタメタゾンで24時間及び1時間前に前処置したか、又は10mg/kgのAT-130-2 IgG2aの静脈内注射前に未処置のままにした。肉眼的症状についてマウスを観察し(
図17A)、注射の20分後に採血した。血小板数(
図17B)、トランスアミナーゼ(
図17C)、及びサイトカインについて、血液を分析した。ベタメタゾンによる前投薬は、肉眼的症状を完全に阻害し(
図17A)、血小板数を減少させ(
図17B)、トランスアミナーゼ増加を低下させた(
図17C)。AT-130-2の静脈内注射後に見られた一過性のサイトカイン放出も前投薬によって阻害された(データは示さず)。デキサメタゾンを使用した場合も、同じ結果が見られた(データは示さず)。
【
図18】前投薬の投与量は重要である。マウスを、10mg/kgのAT-130-2 IgG2aの静脈内注射の24時間及び1時間(前投薬)前に、40mg/kg又は10mg/kgのベタメタゾンのいずれかで前処置した。肉眼的症状についてマウスを観察し(
図18A)、注射の20分後に採血した。血小板数(
図18B)について、血液を分析した。10mg/kgのベタメタゾンによる前投薬は、肉眼的症状(
図18A)又は血小板数の減少(
図18B)を完全に阻害しなかった。これは、前投薬の用量を減少させることで、肉眼的症状及び血小板数の減少を阻害する可能性を低下させ得ること示している。
【
図19】ステロイド前投薬は、注入の1時間前ではIRRを阻害するには不十分である。マウスを、10mg/kgのAT-130-2 IgG2aの静脈内注射の24時間前、1時間前、又は24時間+1時間前のいずれかで、40mg/kgのベタメタゾンで前処置した。肉眼的症状についてマウスを観察し(
図19A)、注射の10~20分後に採血した。血小板数(
図19B)について、血液を分析した。AT-130-2の注射の1時間後にベタメタゾンによる単回の前投薬は、肉眼的症状(
図19A)又は血小板の減少(
図19B)を阻害しなかった。AT-130-2の注射の24時間後にベタメタゾンによる単回の前投薬は、肉眼的症状をグレード1に低下させただけであった。これは、耐容性の問題を完全に阻害するために2回のステロイド治療が必要であることを示している。
【
図20】抗ヒスタミン剤による前投薬は、AT-130-2 IgG2aの投与と関連する耐容性の問題を阻害するのに十分ではない。マウスを、10mg/kgのAT-130-2 IgG2aの静脈内注射前に、抗ヒスタミン剤の有無で、抗ヒスタミン剤のみ、又は40mg/kgのベタメタゾン(24時間及び1時間)のいずれかで、前処置した。肉眼的症状について、マウスを観察し(
図20A)、注射の約20分後に採血した。血小板数(
図20B)について、血液を分析した。抗ヒスタミン剤のみによる前投薬は、肉眼的症状を阻害しなかったが(
図20A)、血小板数の減少を改善したようには見えなかった(
図20B)。10mg/kgのAT-130-2 IgG2aの静脈内注射前に、40mg/kgのベタメタゾン(24時間及び1時間)に抗ヒスタミン剤を追加しても、肉眼的症状又は血小板数に影響を与えなかった。3つの異なるタイプの抗ヒスタミン剤(Zyrlex、Zantac、又はAu、データは示さず)を使用した場合も、同じ結果が見られた。
【
図21】全てではないがいくつかの代替抗体が、IRRを誘導することを示す。マウス代替抗CD32b抗体(AT-130-2 mIgG2a)、抗CSFR1(AFS98 rIgG2a)、抗EGFR(7A7 mIgG2a)、抗CD40(FGK4.5 rIgG2a)、及び抗FcγRIII(AT154-2 mIgG2a)を、野生型C57/BL6マウスに静脈内注射した。IRRは、抗CD32b、抗CD40、及び抗FcγRIIIの注射後に見られた。IRRには、孤立、活動の低下、平衡障害、立毛、円背、続いて不自然な体位が含まれた。IRRを、観察に基づいて0~2でスコアリングした。抗EGFR又は抗CFSR1については、IRRは見られなかった。マウスを、抗CD32b又は抗CD40の注射の24時間及び1時間前に、40mg/kgのベタメタゾンにより前処置したところ、IRRは見られなかった(抗FcγRIIIは、前投薬で評価されなかった)。前投薬が、異なる抗体及び標的に関連するIRRを阻害することができることを示す。
【
図22】IRRを誘導する抗体もまた、血小板減少を誘導することを示す。マウス代替抗CD32b抗体(AT-130-2 mIgG2a)、抗CD40(FGK4.5 rIgG2a)、及び抗FcγRIII(AT154-2 mIgG2a)を、野生型C57/BL6マウスに静脈内注射した。Vetscan(Vetscan HM5 Abaxis,Triolab)を使用して、注射20分後の新鮮血中の血小板数を分析した。抗CD32b、抗CD40、及び抗FcγRIIIの注射後に、血小板数の減少が見られた。マウスを、抗CD32b又は抗CD40の注射の24時間及び1時間前に、40mg/kgのベタメタゾンにより前処置したところ、血小板の減少は見られなかった(抗FcγRIIIは、前投薬で評価されなかった)。前投薬が、異なる抗体及び標的に関連する血小板の減少を阻害することができることを示す。
【0329】
ここで、本発明の特定の態様を具体化する、特定の非限定的な実施例を説明する。これらの実施例は、上に提供される図面の簡単な説明と併せて読む必要がある。
【実施例】
【0330】
実施例1
概要
コルチコステロイド前処置と組み合わせた分割投薬レジメンをインビボモデルで評価し、BI-1206マウス代替AT-130-2 IgG2aを使用して、BI-1206で見られる耐容性プロファイルを再現した。コルチコステロイド前処置と組み合わせた分割投薬レジメンは、抗FCγRIIb処置の耐容性プロファイルを改善する。肉眼的IRR及び血小板数は、分割投薬で改善される。第1の用量及び第2の用量の間のタイムスパンは重要ではないように見えるが、コルチコステロイドによる前処置の正しいタイミングは、第1の用量の完全な耐容性に重要であるように思われる。
【0331】
材料及び方法
試験物質
抗マウスCD32B IgG2aクローンであるAT130-2を、HEK293細胞で一過性に発現させた。精製された研究バッチの特異性は、発光に基づくELISA又はFACS分析で実証された。抗体のエンドトキシンのレベルは、LAL-アメーボサイト試験によって決定されるように、<0.1IU/mLであることがわかった。
【表2】
【0332】
マウス
6~8週齢(17~20g)の雌C57/BL6及びBalbCマウスは、Taconic又はJanvierから入手した。マウスに、マウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aを、200ug/マウスのバルク用量として、又は8ug/マウス、続いて200ug/マウスの分割用量として、静脈内注射した。
【0333】
前投薬
コルチコステロイド処置の場合、Betapred(ベタメタゾン、VNR:008938,Alfasigma S.P.A.)を、10mg/kgで使用した(これらのマウスモデルでは準最適用量である)。
【0334】
分割投薬
分割投薬は、コルチコステロイド処置(8μg/マウス、続いて20~40分後にバルク用量200μg/マウスのマウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aによる)の24時間後に開始した。並行して、マウスに、バルク用量のみを注射した。
【0335】
動物のモニタリング
マウスを、孤立、運動性、及び毛皮状態などの行動の変化及び肉眼的症状に関して注射後にモニタリングした。観察結果に基づいて、0~2の肉眼的IRRスコアリングシステムを設定した。
【表3】
【0336】
体温
バルク用量の注射の20分後、マウス温度計を用いて体温を測定した。
【0337】
採血
血液試料を、即時の血球数分析のために、抗CD32Bのバルク用量の注射の20分後、伏在静脈から採取した。肝酵素及びサイトカイン分析のために、マウスを、安楽死の直前にイソフルラン麻酔下で大動脈から採血した。肝酵素及びサイトカインの試料を、バルク用量の1時間後及び3時間後にそれぞれ採取した。
【0338】
血小板数
Vetscan(Vetscan HM5 Abaxis,Triolab)を使用して、新鮮血中の血小板数を分析した。
【0339】
トランスアミナーゼ
トランスアミナーゼは、凍結した血清試料を(IDEXX BioResearch Vet Med Labor GmbH)に出荷することによって分析した。
【0340】
結果及び考察
コルチコステロイド前処置と組み合わせた分割投薬レジメンは、抗CD32b処置の耐容性プロファイルを改善する。抗CD32b処置のみの耐容性プロファイルは、
図1に見ることができる。肉眼的IRR及び血小板数は、初回用量のコルチコステロイドと組み合わせた分割投薬により改善される(
図2、
図3、及び
図4)。これをインビボモデルで評価し、BI-1206マウス代替AT-130-2 IgG2aを使用して、BI-1206で見られる耐容性プロファイルを再現した。第1の用量及び第2の用量の間のタイムスパンは重要ではないように見えるが、コルチコステロイドによる前処置の正しいタイミングは、第1の用量の完全な耐容性に重要であるように思われる。
【0341】
実施例2
概要
IRRを治療するために臨床で一般的に使用される他の物質(コルチコステロイドを除く)による前処置が、このモデルにおいてIRRを阻害することができるかどうかを評価するために、本発明者らは、他のいくつかの臨床的に関連する物質でマウスを前処置した。このモデルでは、試験した前投薬のいずれもIRRを阻害することができず、BI-1206投与と関連する有害作用を防止するのに有用ではないことを示唆している。
【0342】
材料及び方法
試験物質
抗マウスCD32B IgG2aクローンであるAT130-2を、HEK293細胞で一過性に発現させた。精製された研究バッチの特異性は、発光に基づくELISA又はFACS分析で実証された。抗体のエンドトキシンのレベルは、LAL-アメーボサイト試験によって決定されるように、<0.1IU/mLであることがわかった。
【表4】
【0343】
マウス
6~8週齢(17~20g)の雌C57/BL6及びBalbCマウスは、Taconic又はJanvierから入手した。マウスに、マウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aを、200ug/マウスのバルク用量として、又は8ug/マウス、続いて200ug/マウスの分割用量として、静脈内注射した。
【0344】
前投薬
コルチコステロイド処置の場合、Betapred(ベタメタゾン、VNR:008938,Alfasigma S.P.A.)を、10mg/kgで使用した(これらのマウスモデルでは準最適用量である)。
【0345】
評価した他の前投薬は、抗PAF(CV3988、sc-2015、Santa Cruz 20mg/kg)、抗IL6(クローン15A7、BE0047、Bioxcell、10mg/kg)、抗ヒスタミン(Zantac、VNR:077875、GlaxoSmithKline AB、5mg/kg)、又はロイコトリエン拮抗薬(131064、Apoex、4mg/kg)であった。これらの前投薬を、マウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aの注射の1時間前に、200ug/マウスのバルク用量として腹腔内投与した。
【0346】
分割投薬
コルチコステロイド処置の24時間後、8μg/マウスのマウス抗CD32B AT-130-2 IgG2a、続いて20~40分後に200μg/マウスのバルク投薬による静脈内分割投薬を開始した。並行して、マウスに、バルク用量のみを注射した。
【0347】
動物のモニタリング
マウスを、孤立、運動性、及び毛皮状態などの行動の変化及び肉眼的症状に関して注射後にモニタリングした。観察結果に基づいて、0~2の肉眼的IRRスコアリングシステムを設定した。
【表5】
【0348】
体温
バルク用量の注射の20分後、マウス温度計を用いて体温を測定した。
【0349】
採血
血液試料を、即時の血球数分析のために、抗CD32Bのバルク用量の注射の20分後、伏在静脈から採取した。肝酵素及びサイトカイン分析のために、マウスを、安楽死の直前にイソフルラン麻酔下で大動脈から採血した。肝酵素及びサイトカインの試料を、バルク用量の1時間後及び3時間後にそれぞれ採取した。
【0350】
血小板数
Vetscan(Vetscan HM5 Abaxis,Triolab)を使用して、新鮮血中の血小板数を分析した。
【0351】
トランスアミナーゼ
トランスアミナーゼは、凍結した血清試料を(IDEXX BioResearch Vet Med Labor GmbH)に出荷することによって分析した。
【0352】
結果及び考察
図5に示すように、このマウスモデルでは、試験した物質(抗PAF、抗IL-6、抗ヒスタミン、及びロイコトリエン拮抗薬)のいずれも、AT-130-2の投与と関連するIRRを防止することができなかった。これは、前処置としてのコルチコステロイドのみが実施例1に記載の保護効果を提供することができることを示唆する。この所見は、これらの物質の全てが、他の治療用抗体と関連するIRRを治療するために一般的に臨床で使用されていることを考慮すると、驚くべきことである。
【0353】
実施例3
概要
BI-1206の静脈内投与は、頻繁に、IRR、血小板減少、サイトカインの一過性スパイクと関連し、それほど頻繁ではないが最も重度の症例では、肝酵素の増加と関連していることは明らかである(
図6)。したがって、それは、これらの有害作用を防止又は緩和することができる投薬レジメンを使用することができる場合に有利である。また、非ホジキンリンパ腫の患者では、FcγRIIb受容体占有率がB細胞枯渇につながり(これはマウスモデルからのインビボデータと相関する)、したがって、持続的な受容体の飽和が持続的なBリンパ球の枯渇に重要であるが、静脈内注射による治療上の利益のために必要なかかる持続的に高い受容体占有率を達成することが、高レベルのIRRと関連していることも明らかである(
図7)。
【0354】
材料及び方法
血小板数、ALT濃度、及びIRRグレーディング
血小板数、ALT濃度、及びIRRグレーディングは、現地の標準的な手順に従って分析及び報告された臨床現場から入手した。臨床試験からの記載されたデータは全て予備的であり、部分的に品質管理されているだけであり、BI-1206と関連する薬力学的効果及び耐容性を示すものとみなされるべきである。
【0355】
FcgRIIb受容体占有率
ヒトにおけるFcgRIIb受容体占有率及びhFcgRIIbトランスジェニックマウスを、フローサイトメトリーを使用して分析した。由来の全血を、005-C05抗体(hFcgRIIbを標的とする)又は抗hCD32-AF647抗体のいずれかとインキュベートした。005-C05は、BI-1206と同じエピトープに結合するが、はるかに低い親和性で結合する。その分析では、CD19+細胞集団に対して、それぞれ、mAb(005-C05及び抗ヒトCD32)の幾何平均(Geo Mean)を取得した。受容体占有率(RO)を、以下の式を使用して計算した:RO(%)=((総受容体-正規化遊離受容体)*100)/総受容体。次いで、CD19+細胞の005-C05幾何平均の全ての複製物に、正規化係数を掛けた。
【0356】
サイトカイン分析
サイトカイン濃度については、凍結血漿試料を解凍し、2倍及び8倍に希釈した。IL-6、IL-8、TNF-α、IFN-γ、IL-10、IL-2、及びIL-4を含む炎症誘発性アッセイ(MesoScale Discovery(MSD)#K15049)、並びにMIP-1β、IL-1β、IL-23、IL-12p70、TARC、及びVEGFを含むケモカインアッセイ(MSD#K15067)の2つの並列セットのサイトカインを分析した。アッセイは、以下に簡潔に概説するように、製造元のプロトコルに従った:適切なMSDプレートに50μLの試料及び較正用標準物質を添加し、インキュベートした。洗浄後、25μLのSULFO-TAG検出抗体混合物を、対応するプレートの各ウェルに添加した。プレートを、QuickPlex SQ120リーダー機器(MSD)で分析し、サイトカイン濃度を、MSDソフトウェア(Discovery Workbench,2013;バージョンLSR-4-0-12)を使用して計算した。
【0357】
hFcgRIIbトランスジェニックマウスにおけるB細胞枯渇
hFcgRIIbトランスジェニックマウスにおけるB細胞枯渇を、市販のアニトボディを使用するフローサイトメトリーを使用して解析した。
【0358】
結果及び考察
図6に示すように、BI-1206の静脈内投与は、IRR、血小板減少症、サイトカインにおける一過性スパイク、及びそれほど頻繁ではないが最も重度の症例では、肝酵素の増加と関連していることは明らかである。
図7に示すように、治療上の利益のために必要なかかる持続的に高い受容体占有率を達成することが、高レベルのIRRと関連している。
【0359】
実施例4
実施例4A及び実施例4Bでは、BI-1206と表される抗体が使用される。この抗体は、以下の軽鎖及び重鎖を有する。
軽鎖:
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYADDHRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCASWDDSQRAVIFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号1)
重鎖:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWMAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARELYDAFDIWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号2)
【0360】
BI-1206の改変形態は、N297におけるグリコシル化部位(上記の太字でマークされている)がQ(下記の太字でマークされている)に変異しており(すなわち、N297Q変異)、以下の重鎖が得られる。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWMAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARELYDAFDIWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号195)
【0361】
代替抗体及び対照抗体として、IgG2aアイソタイプとしての抗マウスCD32B抗体AT130-2、及びIgG1アイソタイプとしての対照抗体AT130-2 N297Aが、以下で使用される。IgG2aアイソタイプとしてのAT130-2は、例えば、ThermoFisher Scientificから(カタログ番号12-0321-82として)市販されているが、#12-0321-82がPEコンジュゲートであるため、抗体を、次いで、コンジュゲートではないように改変する必要がある。IgG1アイソタイプとしてのAT130-2 N297Aは、任意の既知の方法によって産生され得、(上で特定される)297位のNをAで置換することが含まれる。
【0362】
実施例4A-標的:FcγRIIB
背景
BioInvent International ABは、抗腫瘍活性を有する治療用モノクローナル抗体BI-1206を開発し、単独療法として、又は抗CD20標的治療薬若しくは他の臨床的に検証されたチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。BI-1206は、CD32B(FcγRIIB)に高い特異性で結合し、慢性リンパ球性白血病(CLL)及びB細胞非ホジキンリンパ腫(B細胞NHL)を有する患者を治療するCRUKD/16/001及び17-BI-1206-02の2つの臨床第I/IIa相試験において現在評価されている。臨床試験からの下記のデータは全て予備的であり、部分的に品質管理されているだけであり、BI-1206と関連する薬力学的効果及び耐容性を示すものとみなされるべきである。データの一部は、個々の治験責任医師との個人的なコミュニケーションに基づいている。
【0363】
現在までに、最大100mgのBI-1206が、単剤療法として、又はリツキシマブと組み合わせて、24人のヒト対象に投与されている。100mgのBI-1206は、末梢B細胞上の一過性の受容体飽和を示し、最大48時間、100%又は100%に近い受容体占有率を有する(
図8)。これに対応して、末梢Bリンパ球の一過性の枯渇が見られ、およそ7日以内に回復する(
図8)。これは、持続Bリンパ球枯渇を達成するために持続的な受容体飽和が必要であることが実証されているhFcγRIIBマウスを使用した臨床前インビボモデルと一致する。
【0364】
ヒト対象におけるBI-1206注入中に、頻繁な注入関連反応(IRR)が見られた(
図7A)。50mg以上のBI-1206の投与は、血小板の一過性の減少とも関連する(
図9)。血小板減少は重篤ではなく、出血とも関連しておらず、ほとんどのエピソードは1週間以内に解消された。血小板の減少と、トランスアミナーゼ(すなわち、アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST))の上昇との間には関連があるように思われ、ALT及びASTの増加は、70mg以上のBI-1206を投与された16人の対象のうちの3人で有意であった(
図9)。
【0365】
更に、分析のために血漿又は血清が利用可能であった、70mg以上のBI-1206を投与された5人中5人の対象で、一過性のサイトカイン放出が観察されている。サイトカイン放出は、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1β、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-10、IL-8、IL-6、及びIL-4を含み、ピークは注入直後に見られ、サイトカインは、常に24時間以内に正常化される(
図10)。サイトカイン放出は、臨床症状とは関連していない。
【0366】
臨床試験17-BI-1206-02では、16名の対象が70~100mgのBI-1206を投与され、これらの用量レベルで合計58回のBI-1206投与があった。これらの投与のうちの46回は、動物モデルにおいて同定されたインビボ保護コルチコステロイドベースの前投薬レジメンの実施後に与えられた(
図7C及び7H)。インビボ動物モデルで特定された前投薬レジメンの臨床への実施は、ヒトがん患者におけるIRRの重症度及び頻度の統計的に有意な低下をもたらした(
図7D及び7H)。
【0367】
対象501-001及び503-002は、導入療法中、BI-1206(70mg)の3回目の投与前の夕方に、それぞれ12mg及び4mgのデキサメタゾン、及び30分前に、再び20mgのデキサメタゾンが投与された。この2回のデキサメタゾンの用量を使用した前投薬レジメン後、いずれの対象もIRRを罹患しなかった。注入のわずか30分前にデキサメタゾン(20mg)が投与されたBI-1206による前の2回の注入中に、IRR(グレード2~3)を経験した。加えて、対象501-001及び503-002では、2回の用量のデキサメタゾンを前投薬した場合、血小板の減少がないか低く、BI-1206投与後、ALT/ASTの増加が見られなかった(
図11)。3番目の対象(201-003)は、30mgのBI-1206を9回投与され(導入期に4回の用量、及び維持期に5回の用量)、IRRを繰り返し経験した。10回目のBI-1206の投与では、2回の用量のデキサメタゾンによる前投薬が使用され、IRRがグレード1まで改善した。低用量のBI-1206(30mg)を投与された対象201-003では、血小板の減少又はALT/ASTの増加は見られなかった。重要なことに、治療有効性を決定するFcgRIIB受容体飽和と一致して、治療有効性は、臨床における前投薬レジメンの実施後に維持された。完全奏効及び部分奏効の両方が、前投薬レジメンを臨床プロトコルに組み込んだ後の患者で観察されている(
図7H)。
【0368】
材料及び方法
試験物質及び対照物質
抗マウスCD32B IgG2aクローンAT130-2及び対照抗体(AT130-2 N297A)を、HEK293細胞で一過性に発現させた。精製された研究バッチの特異性は、発光に基づく酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はフローサイトメトリー分析で実証された。抗体のエンドトキシンのレベルは、LAL-アメーボサイト試験によって決定されるように、<0.1IU/mLであることがわかった。
【表6】
【0369】
マウス
6~8週齢(17~20g)の雌C57/BL6マウスは、Taconicから入手した。マウスに、1μg~400μg/マウスの範囲の用量で、マウス抗CD32B AT-130-2 IgG2aを静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)又は皮下(s.c.)のいずれかに注射した。
【0370】
前投薬
コルチコステロイド処置の場合、Betapred(ベタメタゾン、VNR:008938,Alfasigma S.P.A.)又はデキサメタゾン(カタログ番号:S1322、バッチ番号:02、Selleckchem)を使用した。抗ヒスタミン治療の場合、Zyrlex(10mg/ml、VNR:523084、MACURE PHARMA ApS)、Zantac(25mg/ml VNR:077875、GlaxoSmithKline AB)、又はAeurius(0.5mg/ml、VNR:097288、Merck Sharp&Dohme BV)を使用した。
【0371】
動物のモニタリング
マウスを、孤立、運動性、及び毛皮状態などの行動の変化及び肉眼的症状に関して注射後にモニタリングした。以下の観察に基づいて、0~2の肉眼的IRRスコアリングシステムを設定した。
【表7】
【0372】
採血
血液試料を、即時の血球数分析のために、伏在静脈から採取した。AT130-2の血清中濃度、肝酵素、及びサイトカイン分析のために、マウスを、安楽死の直前にイソフルラン麻酔下で大動脈から採血した。
【0373】
AT130-2の血清中濃度
AT130-2 mAbの血清中濃度は、サンドイッチELISAを使用して定量化した。簡単には、組換えCD32Bタンパク質(Sino Biological#50030-M08H)を、コーティングとして使用した。希釈した試料を、ELISAプレートに添加し、インキュベーション及び洗浄ステップ後、HRPコンジュゲートポリクローナルロバ抗マウスIgG Ab(Jackson#715-035-151)を介して検出を行った。続いて、ピコ化学発光基質(ThermoFisher#37069)を使用し、Tecan Ultraマイクロプレートリーダーでプレート読み取りを行った。
【0374】
血小板数
Vetscan(Vetscan HM5 Abaxis,Triolab)を使用して、新鮮血中の血小板数を分析した。
【0375】
トランスアミナーゼ
トランスアミナーゼは、凍結した血清試料を(IDEXX BioResearch Vet Med Labor GmbH)に出荷することによって分析した。
【0376】
サイトカイン
マウスにおける注入関連反応(IRR)の潜在的寄与を研究するために、AT-130-2 mAbの腹腔内注射と関連したサイトカイン放出を、選択された時点で評価した。一度凍結した血清試料を解凍し、2倍又は4倍に希釈した。サイトカインを、分析物であるインターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、KC/GRO、腫瘍壊死因子(TNF)-αを含む、V-plex炎症誘発性パネル1マウスキット(MesoScale Discovery #K15048D)で分析した。アッセイは、以下に簡潔に概説するように、製造元のプロトコルに従った:MSDプレートに50μLの試料及び較正用標準物質を添加し、インキュベートした。洗浄後、25μLのSULFO-TAG検出抗体混合物を、対応するプレートの各ウェルに添加した。プレートを、QuickPlex SQ120リーダー機器(MSD)で分析し、サイトカイン濃度を、MSDソフトウェア(Discovery Workbench,2013;バージョンLSR-4-0-12)を使用して計算した。
【0377】
結果
マウス代替抗CD32b IgG2a(AT-130-2)後の肉眼的症状
マウス代替抗CD32b(AT-130-2 IgG2a)を、3つの異なる注射経路である静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、又は皮下(s.c.)経路を介して、野生型C57/BL6マウスに注射した。200μg(10mg/kgに対応)で、静脈内注射の5~7分後に注入関連反応(IRR)の迅速な発症が見られた。これらのIRRには、孤立、活動の低下、平衡障害、立毛、円背、続いて不自然な体位が含まれた。これらのマウスの採血は、血圧の低下を示した。IRR発症の10~15分後、これらのマウスは回復し始め、注射の1時間後、肉眼的症状は見られなかった。
【0378】
静脈内用量を滴定すると、肉眼的症状の同じタイミング及び重症度は、10μg(0.5mg/kg)まで見られた。しかしながら、1μg(0.05mg/kg)では、IRRは見られなかった(
図12)。
【0379】
同じ用量200μg(10mg/kg)を腹腔内投与すると、注射の20~30分後にIRRが現れ、IRRの発症の遅延が見られた。静脈内注射経路とは対照的に、この群の全てのマウスはIRRを示さず、いくつかのマウスでは、IRRがより軽度であった(
図12)。
【0380】
しかしながら、腹腔内用量を400μg(20mg/kg)に増加させると、IRRの発症は、静脈内注射経路と比較して依然として遅延したが、全てのマウスは、200μgの静脈内投与と同じ程度及びグレードでIRRを示した(
図12)。全てのマウスは、注射の1時間後に完全に回復していた。
【0381】
最後に、マウスに200μgを皮下投与した場合、肉眼的症状は見られなかった(注射後24時間まで)。皮下用量を400μgに増加させても、マウスは影響を受けなかった(
図12)。
【0382】
AT-130-2のFcヌルバージョンであるAT-130-2 IgG1 N297Aを静脈内投与した場合、IRRは見られず、AT-130-2と関連する症状を誘発するためにはFc結合が必要であることを示した。
【0383】
AT-130-2の薬物動態プロファイルを、静脈内注射、腹腔内注射、及び皮下注射について評価した(
図13)。
【0384】
薬物動態(PK)及び推定受容体占有率(RO、10μg/mlが100%の受容体飽和を与えることが示された本明細書に示されていない別個の実験に基づく)を、IRRの発症、重症度、及び持続時間と比較すると、FcγRIIBの飽和時間ではなく、AT-130-2の高曝露と急速曝露との間に相関があることが明らかである。耐容性は、皮下>腹腔内>静脈内の明確なパターンを示し、IRR回復後に、ROが長期間維持されている(
図14)。
【0385】
血小板、トランスアミナーゼ、サイトカイン
これらのマウスで見られたIRRが、BI-1206マウスの臨床試験で見られた他のパラメータと関連しているかどうかを調査するために、IRRの発症時に採血し、血球数、臨床化学パラメータ、及びサイトカインについて、血液を分析した。皮下注射の場合、IRRは発生せず、注射後の異なる時点で、マウスを採血した。静脈内投与及び腹腔内投与経路の両方を介したAT-130-2の注射後のIRRの発症と同時に、血小板数(PLT)の減少が見られた(
図15A)。皮下投与経路の場合、注射の10時間後に中程度の減少しか見られなかった(
図15A)。全ての場合で、PLTの減少は一過性であり、注射後8時間以内に正常範囲内の値まで回復した(腹腔内注射された200μgのAT-130-2の関するデータが、
図16Aに示されている)。AT-130-2 IgG2aを皮下投与した場合、静脈内注射後に見られるトランスアミナーゼの増加が回避される。静脈内投与経路については、肉眼的症状の発症の1時間後、トランスアミナーゼ(AST)において増加が見られる(トランスアミナーゼにおけるピーク値の時点として以前に確立された)。ただし、皮下投与経路の場合、肉眼的症状は見られなかった。より具体的には、
図15Bに示すように、注射の11時間後(PKによるFcγRIIBの飽和時間(10時間)の1時間後)にトランスアミナーゼの増加は見られなかった。
【0386】
臨床化学パラメータに関して、注射の1時間後にピークを有するトランスアミナーゼ(AST及びALT)の増加は、AT-130-2注射によって影響を受ける唯一のパラメータであった。これらの増加は、PLT減少の一過性と同様であった(
図16B)。AT-130-2を静脈内注射した場合、同じ一過性の増加が見られた。AT-130-2を皮下注射した場合、トランスアミナーゼの増加は検出されなかった。
【0387】
分析物IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、KC/GRO、TNF-αを含むサイトカインのパネルを、200μgの腹腔内注射後の異なる時点で分析した。分析した全てのサイトカインのうち、IL-5、IL-6、IL-10、KC/GRO、TNF-αは、IL-5を除いて、注射の1~3時間後に一過性の増加を示した(
図16C)。IL-5は、注射の3~8時間後の遅れたピークを示した(
図16C)。これらは、BI-1206を用いた臨床試験において、一部の患者で増加することが示された同じサイトカインであった。
【0388】
前投薬
コルチコステロイドによる前投薬が、AT-130-2のIRR及び関連する毒性を阻害することができるかどうかを調査するために、マウスに、AT-130-2の注射の16~24時間及び1時間前、40mg/kgのベタメタゾンを前投薬した。AT-130-2で見られたIRR及び血小板減少の両方は、前投薬で完全に阻害された(
図17A~B)。また、肝臓トランスアミナーゼ及びサイトカイン放出の増加は、それほど深刻ではなかった(
図17C及びデータは図示せず)。同じ効果は、別のコルチコステロイドであるデキサメタゾンを評価した場合でも見られた(データは図示せず)。
【0389】
コルチコステロイド処置の用量の重要性を評価するために、以下の実験ではベタメタゾンの用量を40mg/kg~10mg/kgに減少させた(
図18)。10mg/kgでは、半数のマウスにおいてIRR及び血小板数の減少の両方が見られ、IRR及び関連する毒性を完全に遮断するには高用量のコルチコステロイドが必要であることを示した(
図18)。
【0390】
更に、コルチコステロイド処置の2回投与の重要性は、早期のみ(注射前1時間)又は後期のみ(注射前24時間)の前投薬の保護効果を、コルチコステロイド処置の2回の用量と比較することによって調査した。注射の1時間前の前投薬は、IRR又は血小板数の減少を抑制することができなかった(
図19)。注射前24時間の前投薬は、IRRを減少させ、血小板を減少させたが、これらの症状を完全に遮断することはできなかった(
図19)。これは、IRRを完全に遮断するために2回の用量のコルチコステロイドが必要であることを示している。
【0391】
最後に、臨床試験における標準的な前投薬である抗ヒスタミン剤の影響を評価した。抗ヒスタミン剤のみによる前投薬は、IRRや血小板減少を阻害しなかった。2回の用量のコルチコステロイド処置と抗ヒスタミン剤の前投薬を組み合わせた場合、保護効果が保持された(
図20)。これらの結果は、3つの異なるタイプの抗ヒスタミン剤(Zyrlex、Zantac、及びAeurius)について確認された。
【0392】
結論
本発明者らのデータは、野生型マウスにおける抗FcγRIIB mIgG2a代替(AT-130-2)の静脈内(i.v.)又は腹腔内(i.p.)投与を使用したインビボモデルを実証し、IRRの減少、血小板数の減少、トランスアミナーゼの上昇(すなわち、ALT及びAST)、並びに一過性のサイトカイン放出を含む、BI-1206で見られる耐容性プロファイルを再現する。IRRは、AT-130-2注射の5~20分後に現れ、孤立、活動の低下、平衡障害、立毛、円背、不自然な体位、血圧の低下を含む肉眼的症状を伴う。視覚的な物理的反応は一過性であり、動物は、抗体投与の1時間後に、完全に回復する。肉眼的症状は、血小板数の減少及びトランスアミナーゼの上昇を伴い、これらは、8時間以内に正常化する。サイトカイン放出は、急性かつ一過性であり、IL-6、IL-5、IL-10、TNFα、及びKC/GRO(ヒトIL-8のげっ歯類ホモログ)を含む。サイトカインのプロファイル及び動態は、ヒト対象におけるBI-1206の後に見られるものと同等である。マウスモデルでは、FcγRIIBの飽和時間ではなく、IRRの高曝露及び急速曝露の間に明らかな相関があり、AT-130-2の皮下(s.c.)投与が、腹腔内及び静脈内の投与よりも良好に許容される。症状の発症のタイミングは、受容体飽和が達成される血清中濃度と相関する。しかしながら、受容体飽和を6日間以上達成する抗体用量を投与すると、動物は、24時間以内に全ての症状から回復する。持続的なFcγRIIB遮断自体が、IRRの原因ではないと思われる。
【0393】
このモデルでは、2回の用量のコルチコステロイド(デキサメタゾン又はベタメタゾン)による前投薬が、肉眼的IRR、並びに血小板の減少及びトランスアミナーゼの上昇を阻害する。2回の用量が、抗体投与の30~60分前に皮下投与され、16~24時間前に静脈内投与される。コルチコステロイドによるマウスの肉眼的症状の防止は用量依存的であり、重要なことに、前投薬のタイミングが大切である。保護効果を得るためには、抗体投与の16~24時間前の用量が必須である。コルチコステロイドが抗体投与の30~60分前にのみ投与される場合、肉眼的症状に関する保護効果は見られないが、抗体投与のみの16~24時間前の用量は、耐容性を部分的に改善する。両方の用量が与えられると、肉眼的症状、血小板の減少、トランスアミナーゼの上昇、及びサイトカイン放出の阻害が達成される。
【0394】
マウスモデルで特定されたコルチコステロイドベースのレジメンによるヒト患者の投薬は、IRRから保護し、より高用量の投与を可能にし、これが、研究された抗FcgRIIB抗体のより強い抗腫瘍活性と関連している可能性が高い。
【0395】
実施例4B-他の標的
材料及び方法
試験物質及び対照物質
抗マウスCD32bクローンを、HEK293細胞で一過性に発現させた。バッチの特異性は、発光に基づく酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はフローサイトメトリー分析で実証された。抗体のエンドトキシンのレベルは、LAL-アメーボサイト試験によって決定されるように、<0.1IU/mLであることがわかった。抗マウスCD40、EGFR、及びCSFR1抗体は、BioXcell又はAbsolute Antibody(以下の表を参照)から購入し、抗マウスFcγRIII抗体AT154-2は、サウサンプトン大学から寄贈された。代替的に、AT154-2は、ラットIgG2bアイソタイプとして、例えば、BioRad、Argio Biolaboratories(ARG23942)、又はLSBio(LS-C745656)から購入してもよく、次いで、任意の周知の方法を使用して、IgG2a形態に変換される。
【表8】
【0396】
マウス
6~8週齢(17~20g)の雌C57/BL6マウスは、Taconicから入手した。マウスに、200μg/マウスの異なる抗体を静脈内(静脈内)注射した。
【0397】
前投薬
コルチコステロイド処置の場合、Betapred(ベタメタゾン、VNR:008938、Alfasigma S.P.A.)又はデキサメタゾン(カタログ番号:S1322、バッチ番号:02、Selleckchem)を使用した。
【0398】
動物のモニタリング
マウスを、孤立、運動性、及び毛皮状態などの行動の変化及び肉眼的症状に関して注射後にモニタリングした。以下の観察に基づいて、0~2の肉眼的IRRスコアリングシステムを設定した。
【表9】
【0399】
採血
血液試料を、即時の血球数分析のために、伏在静脈から採取した。
【0400】
血小板数
Vetscan(Vetscan HM5 Abaxis,Triolab)を使用して、新鮮血中の血小板数を分析した。
【0401】
結論
この実施例は、本明細書に記載のモデルが、耐容性の問題を誘導する抗体分子とそうではない抗体分子を区別することができることを示す。それは更に、前投薬は、異なる抗体及び標的に関連するIRRを阻害することができることを示す。
【0402】
この実施例はまた、IRRを誘導する抗体もまた、血小板減少を誘導することを示す。それは更に、前投薬が異なる抗体及び標的に関連する血小板減少を阻害することができることを示す。
【0403】
本発明の実施形態
本発明の特定の実施形態は、以下の番号付けされた段落を参照して説明される。
【0404】
1.対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性の改善に使用するための治療システムであって、
(i)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子であって、抗体分子が、少なくとも第1の用量及び第2の用量として対象に投与される、抗体分子と、
(ii)コルチコステロイドと、を含み、
抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量よりも低く、
コルチコステロイドが、抗体分子の第1の用量の前に、対象に投与される、治療システム。
【0405】
2.抗体分子と、対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するための投薬レジメンで使用するためのコルチコステロイドと、を含む組み合わせであって、投薬レジメンが、以下のステップ:
(i)抗体分子の第1の用量を投与する前に、コルチコステロイドを投与するステップと、
(ii)最大治療有効用量よりも低い、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量を投与するステップと、
(iii)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量を投与するステップであって、抗体分子の第1の用量が、第2の用量の前に投与される、第2の用量を投与するステップと、を含む、組み合わせ。
【0406】
3.(i)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子と、
(ii)コルチコステロイドと、の使用であって、
対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するための医薬品の製造において、医薬品が、抗体分子の少なくとも第1の用量及び第2の用量を含み、
抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量よりも低く、
コルチコステロイドが、抗体分子の第1の用量の前に投与される、使用。
【0407】
4.対象におけるFcyRllbに特異的に結合する抗体分子の耐容性を改善するための方法であって、
(i)抗体分子の第1の用量を投与する前に、コルチコステロイドを投与することと、
(ii)最大治療有効用量よりも低い、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量を投与することと、
(iii)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量を投与することであって、抗体分子の第1の用量が、第2の用量の前に投与される、第2の用量を投与することと、を含む、方法。
【0408】
5.対象におけるがんの治療のための1つ以上の治療用抗体の投与を更に含む、段落1~4に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0409】
6.治療用抗体が、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ドスタルリマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、及びそれらのバイオシミラー又は同等物から選択される、段落5に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0410】
7.コルチコステロイドが、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の10分~48時間前の時点で対象に投与される、段落1~6に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0411】
8.コルチコステロイドが、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の10分~24時間前の時点で対象に投与される、段落7に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0412】
9.コルチコステロイドが、第1の用量及び第2の用量として投与され、コルチコステロイドの第1の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の16時間~48時間前の時点で投与され、コルチコステロイドの第2の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量の10分~2時間前の時点で投与される、段落1~6に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0413】
10.コルチコステロイドの更なる用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の16時間~48時間前の時点で投与される、段落9に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0414】
11.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の1~24時間前の時点で投与される、段落1~10に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0415】
12.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約1時間前に投与される、段落1~10に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0416】
13.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の約24時間前に投与される、段落1~10に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0417】
14.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の24時間~48時間前に投与される、段落1~10に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0418】
15.コルチコステロイドが、4mg以上の用量で投与される、段落1~14に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0419】
16.コルチコステロイドが、12mg以上の用量で投与される、段落1~15に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0420】
17.コルチコステロイドが、4mg~20mgの用量で投与される、段落1~14に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0421】
18.コルチコステロイドが、12mg~20mgの用量で投与される、段落17に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0422】
19.コルチコステロイドが、4mg~12mgの用量で投与される、段落17に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0423】
20.コルチコステロイドが、デキサメタゾン若しくはベタメタゾン、又はデキサメタゾンとベタメタゾンの組み合わせである、段落1~19に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0424】
21.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、最大許容治療用量よりも低い、段落1~20に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0425】
22.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、最大治療有効用量よりも少なくとも50%低い、段落1~21に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0426】
23.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、0.2mg/kg~0.6mg/kgの用量で投与される、段落1~22に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0427】
24.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、0.3mg/kg~0.5mg/kgの用量で投与される、段落23に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0428】
25.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、20mg~40mgの用量で投与される、段落1~24に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0429】
26.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1の用量が、約30mgの用量で投与される、段落25に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0430】
27.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量が、治療有効用量である、段落1~26に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0431】
28.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量が、最大許容治療用量又は最大投与可能治療用量である、段落1~27に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0432】
29.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量が、治療有効用量よりも低い、段落1~27に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0433】
30.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量に続いて、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の更なる追加の用量が対象に投与される、段落1~29に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0434】
31.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の投与と関連する注入関連反応が低減又は排除される、段落1~30に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0435】
32.対象の体温、及び/又は血小板数、及び/又は肝酵素の血中レベルの変化が、FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第2の用量の投与の少なくとも24時間後に低減される(好ましくは、許容レベルに低減される)、段落1~31に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0436】
33.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子が、そのFc領域を介して1つ以上のFcγ受容体に結合することができる、段落1~32に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0437】
34.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子が、配列番号1の軽鎖配列及び配列番号2の重鎖を有する、段落1~33に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0438】
35.FcyRllbに特異的に結合する抗体分子の第1及び第2の用量が、対象への静脈内送達用に製剤化される、段落1~34に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0439】
36.コルチコステロイドが、対象への静脈内送達又は経口送達用に製剤化される、段落1~35に記載のシステム、使用のための組み合わせ、使用、又は方法。
【0440】
37.キットであって、
(i)FcyRllbに特異的に結合する抗体分子、任意選択的に、段落33及び/又は34に定義される抗体分子と、
(ii)コルチコステロイド、任意選択的に、段落15~20のいずれか1つに定義されるコルチコステロイドと、
(iii)任意選択的に、使用説明書と、を含み、
抗体分子が、第1の用量及び第2の用量として提供され、抗体分子の第1の用量が、抗体分子の最大治療有効用量よりも低く、更に任意選択的に、第1の用量が、段落11~14及び21~26に定義される通りであり、更に任意選択的に、第2の用量が、段落27~29に定義される通りである、キット。
【0441】
38.キットが、対象における抗体分子の耐容性を改善するためのものである、段落37に記載のキット。
【0442】
39.コルチコステロイドが、段落12~17のいずれか1つに定義される用量で提供される、段落37又は38に記載のキット。
【0443】
40.キットが、1つ以上の治療用抗体を更に含む、段落37~39に記載のキット。
【0444】
41.治療用抗体が、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ドスタルリマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、及びそれらのバイオシミラー又は同等物から選択される、段落40に記載のキット。
【0445】
42.キットが、対象におけるがんの治療に使用するためのものである、段落40又は41に記載のキット。
【0446】
43.説明及び図面を参照して、実質的に本明細書に記載されるシステム、使用のための組み合わせ、使用、方法、又はキット。
【0447】
44.ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子が、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連するかどうかを予測するための方法であって、以下のステップ:
(i)マウス標的若しくは代替抗体と交差反応する場合、治療用抗体分子をマウスに静脈内投与若しくは腹腔内投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、マウスの状態の正常状態への回復に続く期間中の肉眼的症状の孤立及び活動の低下の呈示が、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与が耐容性の問題と関連しているであろうことを示す、観察するステップと、
並びに/又は予防的若しくは治療的処置、投与経路の変更、及び/若しくは治療用抗体分子の改変が、ヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止若しくは緩和することができるかを予測するステップと、を含み、
上記の(i)に加えて、以下のステップ:
(ii)マウスに予防剤若しくは治療剤を投与し、これに併せて、マウスに治療用抗体若しくは代替抗体を静脈内投与若しくは腹腔内投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、(i)においてマウスによって呈示される肉眼的症状と比較して減少した肉眼的症状の呈示、又はその期間中に肉眼的症状の呈示がないことが、予防剤若しくは治療剤による前処置と組み合わせたヒトへの治療用抗体分子の投与により、耐容性の問題を防止若しくは緩和することができ、それ以外の場合は、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことを示す、観察するステップと、
(iii)静脈内投与若しくは腹腔内投与以外の投与経路によってマウスに治療用抗体若しくは代替抗体を投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、(i)においてマウスによって呈示される肉眼的症状と比較して減少した肉眼的症状の呈示、又はその期間中に肉眼的症状の呈示がないことが、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止若しくは緩和するために、ヒトへの治療用抗体分子の投与に、他の投与経路を使用することができることを示す、観察するステップと、並びに/あるいは
(iv)静脈内投与若しくは腹腔内投与以外の投与経路によってマウスに改変形態の治療用抗体若しくは代替抗体を静脈内投与若しくは腹腔内投与し、治療用抗体若しくは代替抗体の投与直後に続く期間中にマウスを観察するステップであって、(i)においてマウスによって呈示される肉眼的症状と比較して減少した肉眼的症状の呈示、又はその期間中に肉眼的症状の呈示がないことが、ヒトへの改変形態の治療用抗体分子の投与を使用して、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろう耐容性の問題を防止若しくは緩和することができることを示す、観察するステップと、を含む、方法。
【0448】
45.(i)マウスの状態が正常状態に回復した後の(i)の期間中に、平衡障害、立毛、及び円背、続いて不自然な体位から選択される1~3つの追加の肉眼的症状の(i)の呈示が、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与が耐容性の問題と関連するであろうという指標を更に強化する、段落44に記載の方法。
【0449】
46.肉眼的症状が(i)において呈示される期間が、治療用抗体又は代替抗体の投与の5~10分後に開始し、治療用抗体又は代替抗体の投与の45~90分後に終了し、(ii)、(iii)、及び/又は(iv)の観察期間が同じ長さである、段落44又は45に記載の方法。
【0450】
47.以下の追加パラメータ:
●血圧の低下
●血小板数の減少、及び/又は
●肝酵素(AST/ALT)の増加、のうちの少なくとも1つは、
(i)の期間中に観察されることが、ヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与が耐容性の問題と関連するであろうという指標が更に強化される、段落44~46のいずれか1つに記載の方法。
【0451】
48.予防的又は治療的治療が、少なくともステップ(i)及び(ii)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和することができるかを予測するための方法であって、前処置が、(ii)で使用され、この前処置が、治療用抗体又は代替抗体の注射前にマウスにコルチコステロイドを投与することである、方法。
【0452】
49.前処置が、コルチコステロイドの2回の投与を含み、1回が、治療用抗体又は代替抗体の投与の10~48時間前に投与され、もう1回が、治療用抗体又は代替抗体の投与の5分~5時間前に投与される、段落48に記載の方法。
【0453】
50.コルチコステロイドが、デキサメタゾン又はベタメタゾンである、段落49に記載の方法。
【0454】
51.投与経路の変更が、少なくともステップ(i)及び(iii)を含む、段落44~50のいずれか1つに記載のヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和することができるかどうかを予測する方法であって、(iii)で使用される投与経路が、皮下投与である、方法。
【0455】
52.治療用抗体分子の改変が、少なくともステップ(i)及び(iv)を含む、段落44~51のいずれか1つに記載のヒト標的に特異的に結合する治療用抗体分子のヒトへの静脈内投与と関連する耐容性の問題を防止又は緩和することができるかどうかを予測するための方法であって、(iv)で使用される改変形態の治療用抗体又は代替抗体が、Fc受容体の関与の減少又は消失をもたらす改変である、方法。
【0456】
53.ヒト標的が、FcγRIIB、FcγRIIA、及びCD40からなる群から選択される、段落44~52のいずれか1つに記載の方法。
【0457】
54.治療用抗体分子が、そのFcドメインを介してヒトFcγRに結合することができるヒト抗FcγRIIB抗体であり、マウス代替抗体が、そのFcドメインを介してマウスFcγRに結合することができる抗FcγRIIb抗体である、段落53に記載の方法。
【0458】
55.治療用抗体分子が、ヒト抗FcγRIIB IgG1抗体であり、マウス代替抗体が、抗FcγRIIb mIgG2aである、段落54に記載の方法。
【0459】
56.対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための投薬レジメンでの使用のためのコルチコステロイドであって、
治療用抗体分子が、段落44~56のいずれか1つに記載の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又はコルチコステロイドによる前処置と組み合わせたヒトへの治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止若しくは緩和し、それ以外の場合は、段落48~50のいずれか1つに記載の方法、若しくは段落48~50のいずれか1つを参照する場合は段落53~55のいずれか1つに記載の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、
投薬レジメンが、治療用抗体分子の静脈内投与前の少なくとも2回の用量での対象へのコルチコステロイドの投与を含み、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され(「第1の用量」)、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される(「第2の用量」)、使用のためのコルチコステロイド。
【0460】
57.対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための投薬レジメンでの使用のためのコルチコステロイドであって、
治療用抗体分子が、抗FcγRIIB抗体であり、
投薬レジメンが、治療用抗体分子の静脈内投与前の少なくとも2回の用量での対象へのコルチコステロイドの投与を含み、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され(「第1の用量」)、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される(「第2の用量」)、使用のためのコルチコステロイド。
【0461】
58.第1の用量が、治療用抗体分子の投与開始の6~36時間前に投与され、第2の用量が、治療用抗体分子の投与開始の15~120分前に投与される、段落56又は57に記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0462】
59.第1の用量が、治療用抗体分子の投与開始の16~24時間前に投与される、段落56~58に記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0463】
60.第2の用量が、治療用抗体分子の投与開始の30~60分前に投与される、段落56~59のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0464】
61.投薬レジメンが、抗体療法の過程中、抗体の各注入の前に、少なくとも2回の用量のコルチコステロイドを投与することを含む、段落56~60のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0465】
62.コルチコステロイドが、デキサメタゾン若しくはベタメタゾン、又はデキサメタゾンとベタメタゾンの組み合わせである、段落56~61のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0466】
63.コルチコステロイドが、デキサメタゾンであり、第1の用量が、4~20mgであり、第2の用量が、4~25mgである、段落56~62のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0467】
64.第1の用量が、10~12mgであり、第2の用量が、20mgである、段落63に記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0468】
65.コルチコステロイドが、ベタメタゾンであり、第1の用量が、3.2~16mgであり、第2の用量が、3.2~20mgである、段落56~62のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0469】
66.第1の用量が、8~9.6mgであり、第2の用量が、16mgである、段落65に記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0470】
67.投薬レジメンが、治療用抗体分子の投与開始の10分~24時間前の抗ヒスタミン剤の投与を更に含む、段落56~66のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0471】
68.治療用抗体が、Fc受容体結合抗体である、段落56~67のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0472】
69.治療用抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落56~68のいずれか1つに記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0473】
70.抗FcγRIIB抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗体である、段落69に記載の使用のためのコルチコステロイド。
【0474】
71.がんの治療に使用するための治療用抗体分子であって、治療用抗体分子が、段落44~55のいずれか1つに記載の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測され、かつ/又はヒトへの治療用抗体分子の皮下投与経路が、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、段落51に記載の方法、若しくは段落51を参照する場合は段落53~55のいずれか1つに記載の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、
治療用抗体が、皮下投与用に製剤化される、治療用抗体分子。
【0475】
72.治療用抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落71に記載の使用のための治療用抗体分子。
【0476】
73.抗FcγRIIB抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗体である、段落72に記載の使用のための治療用抗体分子。
【0477】
74.がんの治療に使用するための改変形態の治療用抗体分子であって、治療用抗体分子が、段落44~55のいずれか1つに記載の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測され、かつ/又はヒトへの改変形態の治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止又は緩和し、それ以外の場合は、段落52に記載の方法、若しくは段落52を参照する場合は段落53~55のいずれか1つに記載の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、
治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、改変形態が、同じFv可変配列を有するが、治療用抗体分子と比較して、FcγR結合が障害又は無効化されている抗体である、改変形態の治療用抗体分子。
【0478】
75.治療用抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落74に記載の使用のための改変形態の治療用抗体分子。
【0479】
76.改変形態の抗FcγRIIB抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号295の重鎖を有する抗体である、段落75に記載の使用のための改変形態の治療用抗体分子。
【0480】
77.コルチコステロイド投薬レジメンを含む、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連する耐容性の問題を防止又は緩和するための方法であって、
治療用抗体分子が、段落44~56のいずれか1つに記載の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又はコルチコステロイドによる前処置と組み合わせたヒトへの治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止若しくは緩和し、それ以外の場合は、段落48~50のいずれか1つに記載の方法、若しくは段落48~50のいずれか1つを参照する場合は段落53~56のいずれか1つに記載の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、
投薬レジメンが、治療用抗体分子の静脈内投与前の少なくとも2回の用量での対象へのコルチコステロイドの投与を含み、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の10~48時間前に投与され(「第1の用量」)、コルチコステロイドの1回の用量が、治療用抗体分子の投与開始の5分~5時間前に投与される(「第2の用量」)、方法。
【0481】
78.第1の用量が、治療用抗体分子の投与開始の6~36時間前に投与され、第2の用量が、治療用抗体分子の投与開始の15~120分前に投与される、段落77に記載の方法。
【0482】
79.第1の用量が、治療用抗体分子の投与開始の16~24時間前に投与される、段落77又は78に記載の方法。
【0483】
80.第2の用量が、治療用抗体分子の投与開始の30~60分前に投与される、段落77~79のいずれか1つに記載の方法。
【0484】
81.投薬レジメンが、抗体療法の過程中、抗体の各注入の前に、少なくとも2回の用量のコルチコステロイドを投与することを含む、段落77~80のいずれか1つに記載の方法。
【0485】
82.コルチコステロイドが、デキサメタゾン若しくはベタメタゾン、又はデキサメタゾンとベタメタゾンの組み合わせである、段落77~81のいずれか1つに記載の方法。
【0486】
83.コルチコステロイドが、デキサメタゾンであり、第1の用量が、4~20mgであり、第2の用量が、4~25mgである、段落77~82のいずれか1つに記載の方法。
【0487】
84.第1の用量が、10~12mgであり、第2の用量が、20mgである、段落83に記載の方法。
【0488】
85.コルチコステロイドが、ベタメタゾンであり、第1の用量が、3.2~16mgであり、第2の用量が、3.2~20mgである、段落77~82のいずれか1つに記載の方法。
【0489】
86.第1の用量が、8~9.6mgであり、第2の用量が、16mgである、段落85に記載の方法。
【0490】
87.投薬レジメンが、治療用抗体分子の投与開始の10分~24時間前の抗ヒスタミン剤の投与を更に含む、段落77~86のいずれか1つに記載の方法。
【0491】
88.抗体が、Fc受容体結合抗体である、段落76~86のいずれか1つに記載の方法。
【0492】
89.抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落77~88のいずれか1つに記載の方法。
【0493】
90.抗FcγRIIB抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗体である、段落89に記載の方法。
【0494】
91.がんの治療のための方法であって、段落44~56のいずれか1つに記載の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されている治療有効用量の治療用抗体分子を皮下投与することを含み、かつ/又はヒトへの治療用抗体分子の皮下投与経路が、耐容性の問題を防止若しくは緩和し、それ以外の場合は、段落51に記載の方法、若しくは段落51を参照する場合は段落53~56のいずれか1つに記載の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されている、方法。
【0495】
92.抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落91に記載の方法。
【0496】
93.抗FcγRIIB抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗体である、段落92に記載の方法。
【0497】
94.改変形態の治療用抗体の治療活性量を投与することを含む、がんの治療のための方法であって、治療用抗体分子が、段落44~56のいずれか1つに記載の方法を使用して、ヒトへの静脈内投与に関連する耐容性の問題と関連することが予測されており、かつ/又はヒトへの改変形態の治療用抗体分子の投与が、耐容性の問題を防止若しくは緩和し、それ以外の場合は、段落52に記載の方法、若しくは段落52を参照する場合は段落53~56のいずれか1つに記載の方法を使用するヒトへの治療用抗体分子の静脈内投与と関連するであろうことが予測されており、
治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、改変形態が、同じFv可変配列を有するが、治療用抗体分子と比較して、FcγR結合が障害又は無効化されている抗体である、方法。
【0498】
95.抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落94に記載の方法。
【0499】
96.抗FcγRIIB抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有し、重鎖にN297Q変異を有する抗体である、段落95に記載の方法。
【0500】
97.がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療において使用するための治療用抗体分子であって、治療用抗体分子が、抗FcγRIIB抗体であり、治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される、治療用抗体分子。
【0501】
98.がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療において使用するための医薬品の製造における治療用抗体分子の使用であって、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、医薬品が、皮下投与用に製剤化される、使用。
【0502】
99.治療用抗体分子を含む薬学的製剤であって、治療用抗体分子が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体であり、薬学的製剤が、薬学的に許容される希釈剤又は賦形剤を含み、皮下投与用に製剤化される、薬学的製剤。
【0503】
100.治療用抗体が、Fc受容体結合抗体である、段落97に記載の使用のための治療用抗体分子、段落98に記載の治療用抗体分子の使用、又は段落99に記載の薬学的製剤。
【0504】
101.治療用抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落97又は100に記載の使用のための治療用抗体分子、段落98又は100に記載の治療用抗体分子の使用、又は段落99又は100に記載の薬学的製剤。
【0505】
102.治療用抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する、段落101に記載の使用のための治療用抗体分子、段落101に記載の治療用抗体分子の使用、又は段落101に記載の薬学的製剤。
【0506】
103.がんの治療のための、段落101若しくは102に記載の使用のための治療用抗体分子、段落101若しくは102に記載の治療用抗体分子の使用、又は段落101若しくは102に記載の薬学的製剤。
【0507】
104.治療用抗体が、約90mg/mL~約220mg/mLの濃度で存在する、段落99~103のいずれか1つに記載の薬学的製剤。
【0508】
105.約5mM~約20mMの酢酸塩、及び/若しくは約50mM~約250mMのNaCl、及び/若しくは約0.05%のポリソルベート20を更に含み、かつ/又は約pH5.0~約pH5.8のpHである、段落99~104のいずれか1つに記載の薬学的製剤。
【0509】
106.製剤が、
-150mg/mLの濃度の治療用抗体、
-5mMの酢酸塩、
-110mMのNaCl、
-0.05%(w/v)のポリソルベート20、を含み、
-製剤が、pH5.8である、段落99~105のいずれか1つに記載の薬学的製剤。
【0510】
107.対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患の治療のための方法であって、対象に治療用抗体分子を投与するステップを含み、治療用抗体分子が、Fc受容体結合抗体であり、治療用抗体分子が、皮下投与用に製剤化される、方法。
【0511】
108.Fc受容体結合抗体が、抗FcγRIIB抗体である、段落107に記載の方法。
【0512】
109.Fc受容体結合抗体が、配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を有する抗FcγRIIB抗体である、段落107又は108に記載の方法。
【0513】
110.対象におけるがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患、及び/又は感染性疾患を治療するための方法であって、段落99~106のいずれか1つに定義される薬学的製剤を対象に皮下投与するステップを含む、方法。
【0514】
111.がんの治療のための、段落109又は110に記載の方法。
【国際調査報告】