(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】バックコンタクト型太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20230626BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/04 440
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022564378
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021057244
(87)【国際公開番号】W WO2021223932
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】102020111997.6
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522412518
【氏名又は名称】エーエヌペーファオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、エーリク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー、ユルゲン
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA03
5F151CB12
5F151CB15
5F151CB18
5F151CB19
5F151CB20
5F151DA10
5F151GA04
5F151GA14
(57)【要約】
本発明は、前面(16)及び背面(14)を有する半導体基板(12)、特にはシリコンウェハ、を含むバックコンタクト型太陽電池(10)であって、前記太陽電池(10)は、第1の極性の電極(30)及び第2の極性の電極(32)を背面に有し、トンネル層(18)及び高度にドープされたシリコン層(20)が第1の極性の電極(34)の下に位置し、第2の極性の電極(36)が前記半導体基板(12)と直接の電気的及び機械的な接触をすることを特徴とする、前記バックコンタクト型太陽電池(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面(16)及び背面(14)を有する半導体基板(12)、特にはシリコンウェハ、を含むバックコンタクト型太陽電池(10)であって、
前記太陽電池(10)は、第1の極性の電極(30)及び第2の極性の電極(32)を背面に有し、
トンネル層(18)及び高度にドープされたシリコン層(20)が第1の極性の電極(34)の下に位置し、第2の極性の電極(36)が前記半導体基板(12)と直接の電気的及び機械的な接触をすることを特徴とする、前記バックコンタクト型太陽電池(10)。
【請求項2】
前記第2の極性の電極が、高度にドープされたベース領域(26)において前記半導体基板と接触することを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池(10)。
【請求項3】
コンタクトの無い、軽度にドープされた領域(28)が、前記ベース領域(26)から前記高度にドープされたシリコン層(20)を隔てることを特徴とする、請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
請求項1~3のうち少なくとも1項に記載のバックコンタクト型太陽電池を製造する方法であって、
前記太陽電池(10)の半導体基板(12)は背面(14)、特には研磨された若しくはテクスチャー形成された背面(14)、及び前面(16)、特にはテクスチャー形成された前面(16)を有し、
トンネル層(18)、特には二酸化ケイ素を含むトンネル層(18)が前面(16)の表面に、及び/又は背面(14)の表面に付与されることを特徴とする、
前記方法。
【請求項5】
前記方法は、背面(14)の前記トンネル層(18)上に、高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積する、特には全面積の、高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積するステップを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積することは、ドープされていないシリコンを堆積すること、及びその後にドーパントを導入することを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記トンネル層(18)、特にはシリコン酸化物、及び/又は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を前面(16)から除去するステップを含むことを特徴とする、請求項4~6のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、背面(14)及び/又は前面(16)の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)上に、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(22)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項4~7のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)及び前記前駆体層(22)中のドーパントの濃度は、前記前駆体層(22)中の第2の極性のドーパントの量が、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)中の第1の極性のドーパントの量よりも高くなるように選択されていることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、背面(14)のレーザー照射、特には局所的に高度にドープされたベース領域(26)を形成するためのレーザー照射、のステップを含むことを特徴とする、請求項4~9のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)及び/又は前記前駆体層(22)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項4~10のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前面(16)及び/又は背面(14)の表面にパッシベーション層(30、32)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項4~11のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、太陽電池(10)の背面(14)に電極(34、36)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項4~12のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、パッシベーション層(30、32)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項4~13のうち少なくとも1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池に関し、また、太陽電池を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、太陽電池は光を電気エネルギーに変換するための光起電素子として働く。光が半導体基板に吸収された際に生成する電荷キャリアペアは、第1のドープ型、例えばn型又はp型、を(第1の極性を生み出すために)有するエミッター領域と、反対のドープ型を(反対の極性を生み出すために)有するベース領域との間の接合部で分離される。このようにして生成しそして分離した電荷キャリアペアは、エミッター領域に接するエミッターコンタクトを通じて、及びベース領域に接触するベースコンタクトを通じて外部回路に供給することができる。
【0003】
一つの極性のコンタクトが前面側に配置され、反対の極性のコンタクトが背面側に配置された太陽電池が知られている。太陽に面する面は前面と呼ばれ、背面は太陽から遠い側にある。前面上のコンタクトによる影落としに起因する損失を最小化するために、バックコンタクト型太陽電池(back-side contact solar cells)が開発された。バックコンタクト型太陽電池では、両方のコンタクト型、つまりエミッターコンタクト及びベースコンタクトが半導体基板の背面に配置されている。
【0004】
太陽電池の前面への影落としが無く、そのため入射する放射がより多くの自由電荷キャリアを生成するため、バックコンタクト型太陽電池はより高い効率のための大きな可能性を有している。2つの極性の電極は、太陽電池の背面に互いに隣接して配置される。生成した電荷キャリアは、そのため、太陽電池内を横にも流れなければならない。この横方向電流で生じる抵抗損失を最小化し、自由電荷キャリア同士が電極に到達する前に再結合することを防ぐために、2つの極性の電極は互いになるべく近くあるべきである。電極は、極性に応じてp型シリコン又はn型シリコンに接続しているため、pn接合同士も互いになるべく近くにある。pn接合は、500μm未満の解像度の微細な櫛形構造であるが、これは例えば、レーザー照射により生み出される。このプロセスでは、パルス状のレーザービームが、時間及び位置の点で別個に表面を融解することにより2つの異なるドーパント、例えばホウ素及びリン、が局所的にシリコンに入るようにし、ドーパントに応じて高p型ドーピング又は高n型ドーピングを生み出す。このような微細な構造は、低い内部直列抵抗、及びn=24%といった効率ηを可能とする。より高い効率は、ベース内での、並びに高度にドープされたコンタクト付き表面及びコンタクト無し表面における、再結合メカニズムにより実質的に制限される。ベース内での再結合はウェハ品質に左右され、太陽電池のさらなる製造プロセス中には低度にしか影響され得ない。高度にドープされたn型表面及びp型表面における再結合は、コンタクト無し領域では、良好な表面パッシベーションにより制限される。前記は、例えばアモルファス水素化シリコンの場合、シリコン内のドーパント濃度と共に増加するオージェ(Auger)再結合によるものである。コンタクト付き領域においては、シリコンは金属と接触しており、このことは高い界面再結合を生じる。太陽電池プロセスにおいて、シリコン中にできる限り少ないドーパントしか存在しなければコンタクト無し表面におけるオージェ再結合を減少させることができ、一方、金属/シリコンコンタクトでの界面再結合は、可能な限り小さいコンタクト面積を用いることで減少させることができる。しかし、ドーパント及びコンタクト面積を単純に減少させると直列抵抗は増加し、今度はこのことが効率の制約因子となってしまう。
【0005】
この理由のため、パッシベーションされた又は選択性のコンタクトが用いられる。金属電極は結晶性ベースに直接電気的に接続されるのではなく、薄いトンネル酸化物により分離され、トンネル酸化物はシリコン表面をパッシベーションするものの、同時に、極性に応じて半導体から電極へ、及び/又は電極から半導体へと電子が酸化物を通ってトンネルできるほどに薄い。電子をトンネルさせるよう励起するために、トンネル酸化物には電場が存在しなければならない。電場は、トンネル酸化物上の高度にドープされたn型シリコン又はp型シリコンにより生み出すことができる。トンネル酸化物の上でのこのシリコンのドーピングはトンネル酸化物の下方のシリコンベース中におけるバンド曲げ(band bending)につながるため、シリコンベースのより高度なドーピングはもはや必要無い。高度にドープされたn型シリコン上では、電子のみがトンネル酸化物を通り抜けるが、これは電子流としても知られており、一方、高度にドープされたp型シリコン上では、いわゆる正孔流だけが起こる:電子は、高度にドープされたp型シリコンからシリコンベースに入る。金属電極それ自体は、トンネル酸化物の上方の高度にドープされたn型又はp型のシリコンと電気的及び機械的接触をしているのみである。ドーピングに応じて、トンネル酸化物と組み合わさっての高度にドープされたシリコン領域の選択性は、ほぼ排他的に1種類の電荷キャリアが金属/シリコンコンタクト領域に輸送されることを保証し、界面再結合を最小化する。提示された構造はさらに、トンネル酸化物に向かうシリコンベースの表面でのオージェ再結合を減少させる。これは、pn接合界面、又はこの界面におけるベースへのオーミックコンタクトのために高ドーピングは必要無いからである。パッシベーションされたコンタクトを有するバックコンタクト型太陽電池はこれまでのところ、η=26.7%という記録的効率を達成している。しかし、このような電池の製造はこれまでは非常に複雑である。2つの異なるドーピングを受けた選択的コンタクトは、種々の複雑なマスキング及び構造形成ステップを用いてのみ与えることができるためである。そのようにする際には、マスキング及び構造形成の高精度かつ微細な解像度に注意を払わなくてはならない。選択的なコンタクト同士の間の距離は大きすぎてはならず、自由電荷キャリアの拡散長を超えるものとすべきではなく、また、ベース内における横電流によって内部直列抵抗の増加につながるべきでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの不利な点は本発明に係る太陽電池により、及びそのような太陽電池を製造する本発明に係る方法により解消される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、太陽に向いた前面と、背面とを有する半導体基板、特にはシリコンウェハ、を含むバックコンタクト型太陽電池であって、背面に第1の極性の電極及び第2の極性の電極を有する太陽電池について、トンネル層及び高度にドープされたシリコン層を第1の極性の電極の下に位置させ、第2の極性の電極が前記半導体基板と直接の電気的及び機械的接触をするようにさせることが提案される。
【0008】
1つの実施形態によれば、第2の極性の電極が高度にドープされたベース領域で半導体基板と接触することとされる。この高度なドーピングは低い接触抵抗のために必要である。
【0009】
1つの実施形態によれば、コンタクト無しの、軽度にドープされた領域が、前記高度にドープされたシリコン層をベース領域から隔てることとされる。この、コンタクト無しの、パッシベーションされた領域では、コンタクトを有し、前記高度にドープされたベース領域よりも低いドーピングであることが有利でありうる。
【0010】
さらなる実施形態は、上記の実施形態に係るバックコンタクト型太陽電池を製造する方法に関する。背面での微細解像度構造形成の製造は、マスキング無しに行われる。これは、局所的なレーザー照射により実現される。その方法は以下に記載される。
【0011】
太陽電池の半導体基板、特にはシリコンウェハ、は、背面、特には研磨された又はテクスチャー形成された背面、及び前面、特にはテクスチャー形成された前面、を有する。前記方法の第1のステップでは、トンネル層、特にはシリコン酸化物を含むトンネル層、が、前面の表面及び/又は背面の表面に付与される。該トンネル層は、好ましくは約4ナノメートル以下の厚さを有する。該トンネル層は、例えば、熱プロセス若しくはウエットケミカルプロセスで、又は堆積により形成される。
【0012】
1つの実施形態によれば、前記方法はさらに、背面側トンネル層上に、高度にドープされた第1の極性のシリコン層、特には高度にドープされた第1の極性の全面積シリコン層、を堆積するステップを含む。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層は、例えば、プラズマCVDつまりPECVD、常圧CVDつまりAPCVD、低圧CVD(LPCVD)、又はスパッタリングにより堆積することができる。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層は、おおよそ、100ナノメートル~300ナノメートルの厚さを有する。
【0013】
高度にドープされた第1の極性のシリコン層は、1つではなく2つのステップで堆積することもできる。1つの実施形態によれば、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層を堆積させることは、ドープされていないシリコンを堆積すること、及びそれからドーパントを導入すること、を含む。ドーパントは、例えば、イオン注入、炉を用いた拡散(furnace diffusion)、又はレーザー拡散により導入される。ドーパントは、例えば、ホウ素、アルミニウム、又はガリウムである。
【0014】
1つの実施形態によれば、前記方法は、前記トンネル層、特には二酸化ケイ素、及び/又は前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層を前面から除去するステップを含むこととされる。前記トンネル層及び/又は前記高度にドープされた第1の極性の前記シリコン層は、全面積にわたり、又は局所的に、エッチング除去することができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、前記方法は、第2の極性のドーパントを含む前駆体層を、背面及び/又は前面の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層上に付与するステップを含むこととされる。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層がp型シリコン層の場合、第2の極性によってシリコンをドーピングするためのドーパントは、例えばリンである。前駆体層を付与するためには、例えば炉を用いた拡散プロセスを行うことができる。このプロセスにおいては、背面の及び前面の高度にドープされたp型シリコン層上でリンケイ酸ガラスが成長する。炉を用いた拡散プロセスは、炉を用いた拡散のプロセスの後ではリンの大部分がリンケイ酸ガラス内に含まれるように行うことができる。炉を用いた拡散の間、リンは太陽電池の前面内へと拡散し、前面表面をn型にドープする。背面では、リンはまた前記高度にドープされたp型シリコン層内へと拡散する。炉を用いた拡散のパラメータは、p型シリコン層内においてはホウ素のドーパント濃度をリンのドーパント濃度が超えないように選択される。前駆体層、例えばリンケイ酸ガラス、はその他の方法、例えばPECVD、を用いて付与することもできる。
【0016】
1つの実施形態によれば、炉を用いた拡散の間に、第2のドーパントの一部が前駆体層から前記高度にドープされたシリコン層へと拡散することとされる。炉を用いた拡散は、前記高度にドープされたシリコン層中における第1のドーパントのドーパント濃度を拡散された第2のドーパントのドーパント濃度が超えないように、行われる。このようにすることで、炉を用いた拡散の間における第1のドーパントに対する過剰な相殺(overcompensation)が防がれる。したがって、前記高度にドープされた第1極性のシリコン層がp型シリコン層であって第2極性のドーパントがリンの場合、高度にドープされたp型シリコン層はp型にドープされたままであることになる。一方で、前駆体層中に依然として存在する第2のドーパントの量は、前記高度にドープされたシリコン層中における第1のドーパントのドーパント量よりも大きい。
【0017】
1つの実施形態によれば、前記方法は、背面をレーザー照射するステップを含むこととされ、これは特には局所的に高度にドープされた第2の極性のベース領域を形成するためである。先に付与された第2の極性のドーパントがリンであるならば、局所的に高度にドープされたn型ベース領域を形成するためのレーザー照射の際にリンケイ酸ガラスがドーピング源として働く。レーザー放射のエネルギーは、選択された領域において、前記リンケイ酸ガラス、前記高度にドープされたp型シリコン層、前記トンネル層、及び背面の表面を局所的に溶融する。前記リンケイ酸ガラス及び前記高度にドープされたp型シリコン層からのドーパントは、背面の表面上のシリコン溶融物内へと拡散する。レーザー放射が沈静化すると、溶融物は冷え、固化する。両方のドーパントがシリコン内に残り、ここで一方又は両方のドーパントが表面に集積している。前駆体層内に第2極性のドーパントがより大きな量で存在するために、固化したシリコン表面内における第2のドーパントの濃度は前記高度にドープされたp型シリコン層からの第1のドーパントの濃度よりも顕著に高く、そのため、選択された領域における過剰相殺を通じて局所的な高n型ドーピングを生じる。レーザーパラメータを適切に選択することで、選択された領域内に、ドーピングのレベルが異なるn型シリコンの領域(複数)を局所的にかつ選択的に形成することもできる。
【0018】
1つの実施形態によれば、前記方法は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層及び/又は前記前駆体層を、選択的に除去するステップを含むこととされる。異なる極性の隣接した領域における層又は積層体を除去することにより、2つの別々のドーピングを受けた領域の間の接触が妨げられ、そして、当該接触領域において高い再結合又は短絡が起こることを防ぐことができる。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層の選択的な除去は、例えば、レーザー照射、ウェットケミカルエッチング、又は両方のプロセスの組み合わせにより起こすことができる。前記前駆体層、特にはリンケイ酸ガラス、は、例えば、ウエットケミカルエッチングにより除去することができる。前記高度にドープされた第1極性のシリコン層がp型シリコン層であり、第2極性のドーパントがリンである場合、p型シリコン層を数ナノメートル分エッチングバックすると、シリコン層のうちの高いリン含有量を有する一部を除去することができ、そしリン拡散によるp型シリコン層の層抵抗の上昇は制限される。
【0019】
1つの実施形態によれば、前記方法は、前面及び/又は背面の表面にパッシベーション層を付与するステップを含むこととされる。前記パッシベーション層は、例えば、熱成長させた二酸化ケイ素、ケイ素窒化物、酸化アルミニウム、又は2つ以上の誘電体層からなる積層体を含む。背面のパッシベーション層の厚さ、屈折率、及び組成は、前面のパッシベーション層の厚さ、屈折率、及び組成とは異なってもよい。パッシベーション層の厚さは、有利には、前面での反射を減少させ、背面での反射を増加させるように最適化される。
【0020】
1つの実施形態によれば、前記方法は、太陽電池の背面に電極を付与するステップを含むこととされる。電極は、例えば、1種又は複数種の金属又はその他の導電性層のスクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、又は溶融めっき(galvanic deposition)により付与することができる。電極は、例えば、銀ペースト、銀/アルミニウムペースト、アルミニウムペースト、若しくは純アルミニウム、銅、錫、パラジウム、銀、チタン、ニッケル、又はこれら言及された金属の積層体若しくは合金、又はその他の導電性層、特には導電性ポリマー若しくは導電性酸化物、若しくはこのような層と金属との組み合わせ、を含んでいてもよい。電極の組成及び堆積プロセスは両極性について異なっていてもよい。電極は局所的にパッシベーション層を貫通してもよく、これは特にはスクリーン印刷後の高温ステップにおいてそうであり、そして、電極の極性に応じて、電極は前記高度にドープされたp型シリコン層又は前記高度にドープされたベース領域と接触していてもよい。
【0021】
1つの実施形態によれば、前記方法は、パッシベーション層を選択的に除去するステップを含むこととされる。電極が堆積される前に、パッシベーション層は局所的に除去されてもよく、これは例えばレーザー照射により行われる。
【0022】
本発明のさらなる特徴、可能な用途、及び利点は、図面に示された本発明の実施形態についての以下の記載に見ることができる。記載された又は例示された特徴は、その全てが、個別に又は任意の組み合わせで、本発明の主題を形成する。このことは、特許請求の範囲又はそれらが参照する請求項におけるそれら特徴のまとめとは関係無く当てはまり、また、明細書における及び図面におけるそれら特徴の記載ぶり(formulation)若しくは表し方(representation)とは関係無く当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明に係る太陽電池の断面の模式図である。
【
図2a】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2b】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2c】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2d】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2e】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2f】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2g】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2h】
図2a~2hは、太陽電池を製造する方法の様々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、半導体基板12、特にはシリコンウェハ、背面14、及び太陽に面する前面16を有する太陽電池10の断面を示す。シリコンウェハ12は、n型及びp型のどちらにドープされてもよい。太陽電池10を、シリコンウェハ12のn型ドープである「ベース」を用いた例により説明する。
【0025】
多結晶の高度にドープされたp型シリコン層20は背面14に設けられている。これは、背面14上の第1の極性を形成する。高度にドープされたp型シリコン層20の領域では、トンネル層18、特には二酸化ケイ素を含むトンネル層18、がシリコンウェハ12の表面をパッシベーションしている。
【0026】
太陽電池10は、背面14に、第1の極性の電極34及び第2の極性の電極36を含む。第1の極性の電極34の下には、トンネル層18及び高度にドープされたp型シリコン層20がある。第2の極性の電極36は、半導体基板12と直接の電気的及び機械的接触をしている。第2の極性の電極36は、この例示された実施形態に係る半導体基板12と高度にドープされたベース領域26で接触している。コンタクトが無いエッジ領域28が高度にドープされたp型シリコン層20と高度にドープされたn型ベース領域26とを離している。
【0027】
太陽電池10のための製造プロセスを、
図2a~2hを参照して以下で説明する。
図2a~2hは、単一の種類の選択的なコンタクトを有する太陽電池10のマスク無しでの製造のためのプロセスフローを例示する。出発材料として、前面14及び背面16を有するシリコンウェハ12はn型又はp型にドープされていてよい。プロセスシーケンスを、ウェハのn型ドーピングである「ベース」を用いて説明する。
【0028】
図2aは、研磨された背面14及びテクスチャー形成された前面16を有するシリコンウェハ12を示す。好ましくは厚さが最大で約4ナノメートルであるトンネル層18、例えば二酸化ケイ素、を両方の表面に、あるいは好ましくは背面14のみに、例えば熱プロセス若しくはウエットケミカルプロセスで、又は堆積により、形成する。
【0029】
前記方法の次のステップでは、高度にドープされた第1の極性のシリコン層20が、背面14のトンネル層18に堆積され、特にはその全面積にわたって堆積される。以下では、p型ドープが第1の極性であると仮定する。
図2bは、背面14のトンネル層18上への高度にドープされたp型シリコン層20の全面積堆積を示す。高度にドープされたp型シリコン層20は、例えば、プラズマCVDであるPECVD、常圧CVDであるAPCVD、低圧CVD(LPCVD)、又はスパッタリングにより堆積させることができる。高度にドープされたp型シリコン層20はおおよそ100ナノメートル~300ナノメートルの厚さを有する。
【0030】
高度にドープされたp型シリコン層20は、1ステップでなく2ステップで堆積させることもできる。この場合、p型シリコン層20を堆積することは、ドープされていないシリコンを堆積させること、及びそれからドーパントを導入することを含む。ドーパントは、例えば、イオン注入、炉を用いた拡散、又はレーザー拡散により導入される。ドーパントは、例えば、ホウ素、アルミニウム、又はガリウムである。
【0031】
前面16にトンネル層18及び/又は高度にドープされたp型シリコン層20、特には非意図的に堆積されてしまったそれら、が存在する場合、トンネル層18及び/又は高度にドープされたp型シリコン層20は前記方法の次のステップにおいて前面16から除去される。トンネル層18及び/又は高度にドープされたp型シリコン層20は、全面積にわたって又は局所的にエッチング除去することができる。このことは
図2cに示される。
【0032】
図2dに示される前記方法の次のステップでは、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層22が背面14の高度にドープされた第1の極性のシリコン層20に及び/又は前面16に付与される。この例示された実施形態によれば、第2の極性のドーパントはリンである。前駆体層22を付与するために、例えば、炉を用いた拡散プロセス又はPECVD蒸着が行われ、そのプロセスの中では、リンケイ酸ガラス22が背面14の高度にドープされたp型シリコン層20上で、及び前面16で、成長する。炉を用いた拡散の間、リンケイ酸ガラス22からのリンが太陽電池10の前面16内へと拡散し、前面16の表面をn型にドープする。背面14では、リンはまた高度にドープされたp型シリコン層20内へと拡散する。炉を用いた拡散プロセスは、有利には、炉を用いた拡散プロセスの後にはリンの大部分がリンケイ酸ガラス22内に含まれるように行われる。
【0033】
高度にドープされたp型シリコン層20及び前駆体層22内におけるドーパントの濃度は、有利には、炉を用いた拡散の後における高度にドープされたp型シリコン層20内において第1のドーパントのドーパント濃度が第2のドーパントのドーパント濃度よりも高く、一方で前駆体層内では第2のドーパントのドーパント量が高度にドープされたp型シリコン層20における第1のドーパントのドーパント量よりも高くなるように選択される。このことは、炉を用いた拡散の間における第1のドーパントに対する過剰相殺(overcompensation)を防ぐ。高度にドープされたp型シリコン層はそれゆえp型にドープされたままである。一方で、このようにして、レーザー照射の間に第1の極性のドーパントに対する過剰相殺(overcompensation)を起こすようにするため、次のレーザー照射のステップのための十分なドーパントがリンケイ酸ガラス22内に存在するようにする。
【0034】
1つの実施形態によれば、前記方法は、背面14をレーザー照射するステップを含み、これは特には高度にドープされたn型ベース領域26を局所的に形成するためである。
図2eは、背面14が局所的にレーザーで照射された後の太陽電池10を示す。リンケイ酸ガラス22は、局所的に高度にドープされたn型ベース領域26内に局所的に高度にドープされたn型ベース表面を形成するためのレーザー照射の間のドーピング源として働く。レーザー放射のエネルギーは、リンケイ酸ガラス22、高度にドープされたp型シリコン層20、トンネル層、つまり二酸化ケイ素18、及び背面14の表面を局所的に溶融し、その結果、局所的に高度にドープされたn型ベース領域26が作られる。リンケイ酸ガラス22及び高度にドープされたp型シリコン層20からのドーパントは、背面14の表面上のシリコン溶融物内へと拡散する。レーザー放射が沈静化すると、溶融物は冷えて固化する。両方のドーパントがシリコン内に残り、ここで一方又は両方のドーパントは表面に集積している。リンケイ酸ガラス22内における第2極性のドーパントのドーパント量の方が大きいため、固化したシリコン表面における第2のドーパントの濃度は、高度にドープされたp型シリコン層20からの第1のドーパントの濃度よりも顕著に高く、したがって、局所的に高度にドープされたn型ベース領域26内における過剰相殺(overcompensation)により局所的な高n型ドーピングを生じる。レーザーパラメータを適切に選ぶことにより、ドーピングのレベルが局所的-選択的に異なるn型シリコンの部分(複数)を、局所的に高度にドープされたn型ベース領域26内に作製することができる。
【0035】
両方の極性の選択的なコンタクト(複数)を有するバックコンタクト型太陽電池の場合、2つのドーピングが異なるシリコン層が接触したなら、高いレベルの再結合が生じうる。前記方法は、それゆえ、高度にドープされた第1の極性のシリコン層20及び/又は前駆体層22を選択的に除去するステップを含んでいる。
【0036】
図2fは、局所的に高度にドープされたn型ベース領域26のエッジ領域28において高度にドープされたp型シリコン層20が除去された後の太陽電池10を示す。エッジ領域28におけるp型シリコン層20は、例えば、レーザー照射、ウエットケミカルエッチング、又は両方のプロセスの組み合わせによって除去することができる。さらに、高度にドープされたp型シリコン層及び太陽電池の前面16からリンケイ酸ガラス22を除去するためにウエットケミカルプロセスを用いることもできる。高度にドープされたp型シリコン層20のうち数ナノメートル分をエッチングバックすることで、高リン含有量のシリコン層を除去することができ、高度にドープされたp型シリコン層20の層抵抗がリン拡散によって増加することを制限することができる。
【0037】
図2gは、前面16及び/又は背面14の表面にパッシベーション層30、32が付与された後の太陽電池10を示す。パッシベーション層30、32は、例えば、熱成長させた二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、又は2つ又はそれ以上の数の誘電体層からなる積層体を含む。背面14の誘電体層30の厚さ、屈折率、及び組成は、前面16のパッシベーション層32の厚さ、屈折率、及び組成とは異なっていてもよい。パッシベーション層30、32の厚さ、組成、及び屈折率は、有利には、前面16での反射を減少させ、背面14での反射を増加させるように最適化される。
【0038】
図2hは、太陽電池10の背面14に電極34、36が付与された後の太陽電池10を示す。電極34、36は、例えば、1種又は複数種の金属又はその他の導電性層のスクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、又は溶融めっき(galvanic deposition)により付与することができる。電極34、36は、例えば、銀ペースト、銀/アルミニウムペースト、アルミニウムペースト若しくは純アルミニウム、銅、錫、パラジウム、銀、チタン、ニッケル、又はこれら言及した金属の積層体若しくは合金、又はその他の導電性層、特には導電性ポリマー若しくは導電性酸化物、又はそのような層と金属との組み合わせ、であってよい。電極34、36の組成及び堆積プロセスは、両方の極性について異なってもよい。電極34、36は、局所的にパッシベーション層を貫通してもよく、特にはスクリーン印刷後の高温ステップにおいてそうであってよく、電極は、電極の極性に応じて、高度にドープされたp型シリコン層20又は局所的に高度にドープされたn型ベース領域26に接触する。
【0039】
任意に(optionally)は、電極がp型シリコン層20又は局所的に高度にドープされたn型ベース領域26に直接接触することになるように、電極34、36が付与される前にパッシベーション層を選択的に除去、例えばレーザー照射により選択的に除去してもよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックコンタクト型太陽電池(10)を製造する方法であって、
前記太陽電池(10)の半導体基板(12)は背面(14)、特には研磨された若しくはテクスチャー形成された背面(14)、及び前面(16)、特にはテクスチャー形成された前面(16)を有し、
前記方法は、トンネル層(18)、特には二酸化ケイ素を含むトンネル層(18)を前面(16)の表面に、及び/又は背面(14)の表面に付与するステップ、及び背面(14)の前記トンネル層(18)上に、高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積する、特には全面積の、高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積するステップを含み、
前記方法が、背面(14)の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)上に、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(22)を付与するステップをさらに含み、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)及び前記前駆体層(22)中のドーパントの濃度が、前記前駆体層(22)中の第2の極性のドーパントの量が、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)中の第1の極性のドーパントの量よりも高くなるように選択されていること、並びに、前記方法が
局所的に高度にドープされたベース領域(26)を形成するための背面(14)のレーザー照
射のステップを含
み、そこでは前記レーザー照射の間に前記第2の極性のドーパントが前記第1の極性のドーパントを過剰相殺し(overcompensate)、これによって前記局所的に高度にドープされたベース領域(26)が過剰相殺により形成されることを特徴とする、
前記方法。
【請求項2】
前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積することは、ドープされていないシリコンを堆積すること、及びその後にドーパントを導入することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記トンネル層(18)、特にはシリコン酸化物、及び/又は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を前面(16)から除去するステップを含むことを特徴とする、請求項1~2のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前面(16)の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)上に、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(22)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項1~3のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)及び/又は前記前駆体層(22)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項1~4のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前面(16)及び/又は背面(14)の表面にパッシベーション層(30、32)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項1~5のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、太陽電池(10)の背面(14)に電極(34、36)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項1~6のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、パッシベーション層(30、32)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項1~7のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のうち少なくとも1項に記載の方法により製造されるバックコンタクト型太陽電池(10)であって、
前記太陽電池(10)は、前面(16)及び背面(14)を有する半導体基板(12)、特にはシリコンウェハ、を含み、
前記太陽電池(10)は、第1の極性の電極(30)及び第2の極性の電極(32)を背面に有し、
トンネル層(18)及び高度にドープされたシリコン層(20)が第1の極性の電極(34)の下に位置し、高度にドープされたベース領域(26)であって、前記高度にドープされたシリコン層(20)が選択的に過剰相殺された(overcompensated)領域を含むベース領域(26)において、第2の極性の電極(36)が前記半導体基板(12)と直接の電気的及び機械的な接触をする、前記バックコンタクト型太陽電池(10)。
【請求項10】
コンタクトの無い、軽度にドープされた領域(28)が、前記ベース領域(26)から前記高度にドープされたシリコン層(20)を隔てることを特徴とする、請求項9に記載の太陽電池。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
この理由のため、パッシベーションされた又は選択性のコンタクトが用いられる。金属電極は結晶性ベースに直接電気的に接続されるのではなく、薄いトンネル酸化物により分離され、トンネル酸化物はシリコン表面をパッシベーションするものの、同時に、極性に応じて半導体から電極へ、及び/又は電極から半導体へと電子が酸化物を通ってトンネルできるほどに薄い。電子をトンネルさせるよう励起するために、トンネル酸化物には電場が存在しなければならない。電場は、トンネル酸化物上の高度にドープされたn型シリコン又はp型シリコンにより生み出すことができる。トンネル酸化物の上でのこのシリコンのドーピングはトンネル酸化物の下方のシリコンベース中におけるバンド曲げ(band bending)につながるため、シリコンベースのより高度なドーピングはもはや必要無い。高度にドープされたn型シリコン上では、電子のみがトンネル酸化物を通り抜けるが、これは電子流としても知られており、一方、高度にドープされたp型シリコン上では、いわゆる正孔流だけが起こる:電子は、高度にドープされたp型シリコンからシリコンベースに入る。金属電極それ自体は、トンネル酸化物の上方の高度にドープされたn型又はp型のシリコンと電気的及び機械的接触をしているのみである。ドーピングに応じて、トンネル酸化物と組み合わさっての高度にドープされたシリコン領域の選択性は、ほぼ排他的に1種類の電荷キャリアが金属/シリコンコンタクト領域に輸送されることを保証し、界面再結合を最小化する。提示された構造はさらに、トンネル酸化物に向かうシリコンベースの表面でのオージェ再結合を減少させる。これは、pn接合界面、又はこの界面におけるベースへのオーミックコンタクトのために高ドーピングは必要無いからである。パッシベーションされたコンタクトを有するバックコンタクト型太陽電池はこれまでのところ、η=26.7%という記録的効率を達成している。しかし、このような電池の製造はこれまでは非常に複雑である。2つの異なるドーピングを受けた選択的コンタクトは、種々の複雑なマスキング及び構造形成ステップを用いてのみ与えることができるためである。そのようにする際には、マスキング及び構造形成の高精度かつ微細な解像度に注意を払わなくてはならない。選択的なコンタクト同士の間の距離は大きすぎてはならず、自由電荷キャリアの拡散長を超えるものとすべきではなく、また、ベース内における横電流によって内部直列抵抗の増加につながるべきでもない。マスキングステップを有する製造方法は、EP2955760A1、US2014/096821A1、及びEP2804219A1に知られている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
これらの不利な点は、太陽電池を製造する本発明に係る方法により、及びこの方法によって製造される、本発明に係る太陽電池によって解消される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、太陽に向いた前面と、背面とを有する半導体基板、特にはシリコンウェハ、を含むバックコンタクト型太陽電池であって、背面に第1の極性の電極及び第2の極性の電極を有し、トンネル層及び高度にドープされたシリコン層が第1の極性の電極の下に位置する太陽電池について、高度にドープされたベース領域であって、前記高度にドープされたシリコン層が選択的に過剰相殺された(overcompensated)領域を含むベース領域において、第2の極性の電極が前記半導体基板と直接の電気的及び機械的接触をするようにさせることが提案される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
高度にドープされたベース領域のこの高度なドーピングは低い接触抵抗のために必要である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
前記方法はさらに、背面側トンネル層上に、高度にドープされた第1の極性のシリコン層、特には高度にドープされた第1の極性の全面積シリコン層、を堆積するステップを含む。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層は、例えば、プラズマCVDつまりPECVD、常圧CVDつまりAPCVD、低圧CVD(LPCVD)、又はスパッタリングにより堆積することができる。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層は、おおよそ、100ナノメートル~300ナノメートルの厚さを有する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
前記方法は、第2の極性のドーパントを含む前駆体層を、背面及び/又は前面の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層上に付与するステップを含むこととされる。前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層がp型シリコン層の場合、第2の極性によってシリコンをドーピングするためのドーパントは、例えばリンである。前駆体層を付与するためには、例えば炉を用いた拡散プロセスを行うことができる。このプロセスにおいては、背面の及び前面の高度にドープされたp型シリコン層上でリンケイ酸ガラスが成長する。炉を用いた拡散プロセスは、炉を用いた拡散のプロセスの後ではリンの大部分がリンケイ酸ガラス内に含まれるように行うことができる。炉を用いた拡散の間、リンは太陽電池の前面内へと拡散し、前面表面をn型にドープする。背面では、リンはまた前記高度にドープされたp型シリコン層内へと拡散する。炉を用いた拡散のパラメータは、p型シリコン層内においてはホウ素のドーパント濃度をリンのドーパント濃度が超えないように選択される。前駆体層、例えばリンケイ酸ガラス、はその他の方法、例えばPECVD、を用いて付与することもできる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
前記方法は、背面をレーザー照射するステップを含み、これは特には局所的に高度にドープされた第2の極性のベース領域を形成するためである。先に付与された第2の極性のドーパントがリンであるならば、局所的に高度にドープされたn型ベース領域を形成するためのレーザー照射の際にリンケイ酸ガラスがドーピング源として働く。レーザー放射のエネルギーは、選択された領域において、前記リンケイ酸ガラス、前記高度にドープされたp型シリコン層、前記トンネル層、及び背面の表面を局所的に溶融する。前記リンケイ酸ガラス及び前記高度にドープされたp型シリコン層からのドーパントは、背面の表面上のシリコン溶融物内へと拡散する。レーザー放射が沈静化すると、溶融物は冷え、固化する。両方のドーパントがシリコン内に残り、ここで一方又は両方のドーパントが表面に集積している。前駆体層内に第2極性のドーパントがより大きな量で存在するために、固化したシリコン表面内における第2のドーパントの濃度は前記高度にドープされたp型シリコン層からの第1のドーパントの濃度よりも顕著に高く、そのため、選択された領域における過剰相殺を通じて局所的な高n型ドーピングを生じる。レーザーパラメータを適切に選択することで、選択された領域内に、ドーピングのレベルが異なるn型シリコンの領域(複数)を局所的にかつ選択的に形成することもできる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックコンタクト型太陽電池
(10)を製造する方法であって、
前記太陽電池(10)の半導体基板(12)は背面(14)、特には研磨された若しくはテクスチャー形成された背面(14)、及び前面(16)、特にはテクスチャー形成された前面(16)を有し、
前記方法は、トンネル層(18)、特には二酸化ケイ素を含むトンネル層(18)
を前面(16)の表面に、及び/又は背面(14)の表面に付与
するステップ、及び背面(14)の前記トンネル層(18)上に、高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積する、特には全面積の、高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積するステップを含み、
前記方法が、背面(14)の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)上に、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(22)を付与するステップをさらに含み、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)及び前記前駆体層(22)中のドーパントの濃度が、前記前駆体層(22)中の第2の極性のドーパントの量が、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)中の第1の極性のドーパントの量よりも高くなるように選択されていること、並びに、前記方法が背面(14)のレーザー照射、特には局所的に高度にドープされたベース領域(26)を形成するためのレーザー照射、のステップを含むことを特徴とする、
前記方法。
【請求項2】
前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を堆積することは、ドープされていないシリコンを堆積すること、及びその後にドーパントを導入することを含むことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記トンネル層(18)、特にはシリコン酸化物、及び/又は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)を前面(16)から除去するステップを含むことを特徴とする、請求項
1~
2のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は
、前面(16)の前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)上に、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(22)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項
1~
3のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記高度にドープされた第1の極性のシリコン層(20)及び/又は前記前駆体層(22)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項
1~
4のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前面(16)及び/又は背面(14)の表面にパッシベーション層(30、32)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項
1~
5のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、太陽電池(10)の背面(14)に電極(34、36)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項
1~
6のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、パッシベーション層(30、32)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項
1~
7のうち少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のうち少なくとも1項に記載の方法により製造されるバックコンタクト型太陽電池(10)であって、
前記太陽電池(10)は、前面(16)及び背面(14)を有する半導体基板(12)、特にはシリコンウェハ、を
含み、
前記太陽電池(10)は、第1の極性の電極(30)及び第2の極性の電極(32)を背面に有し、
トンネル層(18)及び高度にドープされたシリコン層(20)が第1の極性の電極(34)の下に位置し、
高度にドープされたベース領域(26)であって、前記高度にドープされたシリコン層(20)が選択的に過剰相殺された(overcompensated)領域を含むベース領域(26)において、第2の極性の電極(36)が前記半導体基板(12)と直接の電気的及び機械的な接触をす
る、前記バックコンタクト型太陽電池(10)。
【請求項10】
コンタクトの無い、軽度にドープされた領域(28)が、前記ベース領域(26)から前記高度にドープされたシリコン層(20)を隔てることを特徴とする、請求項
9に記載の太陽電池。
【国際調査報告】