(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電磁制御分割ミラー、電磁制御分割ミラーにおいて使用するための電磁アクチュエータ、および電磁アクチュエータを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20230626BHJP
H01F 7/06 20060101ALI20230626BHJP
H01F 7/122 20060101ALI20230626BHJP
H01F 7/127 20060101ALI20230626BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20230626BHJP
G02B 26/06 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
H02K33/16 A
H01F7/06 E
H01F7/122 C
H01F7/127
H01F7/16 Q
H01F7/06 Z
H01F41/02 F
G02B26/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572475
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 NL2021050336
(87)【国際公開番号】W WO2021242101
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515124288
【氏名又は名称】ネーデルランツ オルガニサティー フォール トゥーゲパスト‐ナトゥールヴェテンシャッペリーク オンデルズーク テーエンオー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カウペル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ファン アドリケム,トーマス パウルス コルネリス
【テーマコード(参考)】
2H141
5E048
5H633
【Fターム(参考)】
2H141MA27
2H141MB23
2H141MB63
2H141MC05
2H141MD02
2H141MD04
2H141MD31
2H141MZ03
5E048AB10
5E048AC05
5E048AD07
5E048BA01
5H633BB07
5H633GG02
5H633GG09
5H633HH02
5H633JA03
(57)【要約】
第1の端部においてベース(12)で覆われ、第2の端部において上面(13)で覆われた、少なくとも実質的に円筒形の周壁(11;11a、11b、11c)を持つ軟強磁性ヨーク(10)を備え、周壁(11)が、前記ベース端部から前記上部までの方向(14’)において軸(14)を画定する、電磁アクチュエータ(1)が、本明細書において開示される。中間ヨーク部(10b)は、少なくとも1つの弾性要素(18、19)で柔軟に制限される、軸方向に可動なコア要素(17)を収納する内部スペースを残す、固定された永久磁石(20)を保持する。下部ヨーク部(10a)および/または上部ヨーク部(10c)のうちの一方が、電磁コイル(16)を収納する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部においてベース(12)で覆われ、第2の端部において上面(13)で覆われた、少なくとも実質的に円筒形の周壁(11;11a、11b、11c)を有する軟強磁性ヨーク(10)を備える電磁アクチュエータ(1)であって、
前記周壁(11)が、前記ベースから前記上面までの方向(14’)において軸(14)を画定し、
前記軟強磁性ヨーク(10)が、軸方向において、下部ヨーク部(10a)、中間ヨーク部(10b)、および上部ヨーク部(10c)を備え、前記下部ヨーク部(10a)が、前記ベース(12)、および前記周壁の第1の軸方向部(11a)、ならびに前記周壁の前記第1の軸方向部によって空間で囲まれたベース突起部(15)を形成し、前記中間ヨーク部(10b)が、前記周壁の第2の軸方向部(11b)を形成し、前記上部ヨーク部(10c)が、前記上面(13)、および前記周壁の第3の軸方向部(11c)、ならびに前記周壁の前記第3の軸方向部によって空間で囲まれた上面突起部を形成し、
前記下部ヨーク部(10a)および/または前記上部ヨーク部(10c)が、それらの突起部(10a1、10c1)と前記周壁のそれらの軸方向部(10a2、10a2)との間の前記空間に電磁コイル(16)を収納し、
前記中間ヨーク部(10b)が、少なくとも1つの永久磁石(20)であって、その第1の磁極が前記周壁(11b)の内面に面し、その第2の磁極が前記中間ヨーク部(10b)中の内部空間に面した状態で固定される、前記少なくとも1つの永久磁石(20)を保持し、前記永久磁石が、前記内部空間に収納される前記軸方向に可動なコア要素(17)に負剛性を有する引力を加え、前記軸方向に可動な前記コア要素(17)が、前記負剛性の大きさ以上の値を持つ剛性を有する少なくとも1つの弾性要素(18、19)で柔軟に制限され、前記ベースおよび前記上面のうちの少なくとも一方が、それを通して、前記軸方向に可動な前記コア要素(17)に固定された操作ロッド(22)が突き出る、前記軸方向に延びる開口部(21)を画定する、電磁アクチュエータ(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弾性要素が、前記中間ヨーク部(10b)と、前記下部ヨーク部(10a)および前記上部ヨーク部(10c)のうちの一方との間に配置される第1のメンブレンである、請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記中間ヨーク部(10b)が、前記下部ヨーク部(10a)または前記上部ヨーク部(10c)と一体である、請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
互いに別個の構成要素としての前記下部ヨーク部(10a)、前記中間ヨーク部(10b)および前記上部ヨーク部(10c)から組み立てられる、請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記下部ヨーク部(10a)が、第1の構成要素および第2の構成要素から組み立てられ、前記第1の構成要素(10a1)が、前記ベース(12)および前記ベース突起部を備え、前記第2の構成要素(10a2)が、前記周壁の前記第1の軸方向部(11a)である、請求項4に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの弾性要素が、前記下部ヨーク部(10a)と前記中間ヨーク部(10b)との間に配置される第1のメンブレン(18)であり、前記電磁アクチュエータが、さらなる弾性要素として、前記中間ヨーク部(10b)と前記上部ヨーク部(10c)との間に配置される第2のメンブレン(19)を備える、請求項4または5に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記第1のメンブレンが、前記軸方向に可動な前記コア要素に固定される中央部分(180)と、端部(184、185、186)まで放射状に外側へ延びる第1、第2、および第3のサスペンション・アーム(181、182、183)とを備え、一対のヨーク部間で機械的に結合される、請求項6に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記端部(184、185、186)が、少なくとも部分的に放射状に内側へ延びる第1の端部分および第2の端部分(1841、1842;1851、1852;1861、1862)に分岐する、請求項7に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項9】
前記第1および第2の端部分(1841、1842;1851、1852;1861、1862)が、それらが接続要素(1843、1844;1853、1854;1863、1864)で固定される、互いに反対の接線方向にさらに延びる、請求項8に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項10】
複数の空間的に分散された、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の電磁アクチュエータを備える、アクチュエータ・アレイ(100)。
【請求項11】
前記電磁アクチュエータが、一体的に形成される少なくとも1つの部品を備える、請求項10に記載のアクチュエータ・アレイ(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの部品が、前記軟強磁性ヨークの部分(10b)であり、前記電磁アクチュエータの各々について、前記軟強磁性ヨークの前記部分が、強磁性体の単一のパターン化ブロック(50)で形成され、および/または前記少なくとも1つの部品が、メンブレン(18)であり、前記電磁アクチュエータの前記メンブレンが、弾性非磁性体の単一のパターン化平板(60)として形成される、請求項11に記載のアクチュエータ・アレイ(100)。
【請求項13】
前記各中間ヨーク部(10b1)が、反対の極性を持つ永久磁石を有する少なくとも1つの他の前記中間ヨーク部(10b2)と境を接する、請求項10から12のうちのいずれか一項に記載のアクチュエータ・アレイ(100)。
【請求項14】
互いに対して可動である複数のミラー・セグメント(31a、31b、...、31n)を備え、それぞれのミラー・セグメントが、請求項10から13のうちのいずれか一項に記載のアクチュエータ・アレイ(100)のそれぞれの前記電磁アクチュエータ(1a)の前記操作ロッド(22a、22b、...、22n)に機械的に結合される、ミラー(30)。
【請求項15】
各々が軟強磁性体である下部ヨーク部(10a)、中間ヨーク部(10b)、および上部ヨーク部(10c)を与えることと、
少なくとも実質的に非磁性体である第1および第2のメンブレン(18、19)と、
コア要素(17)を与えることと、
永久磁石(20)を与えることと、
電磁コイル(16)を与えることと、
前記電磁コイル(16)を前記下部ヨーク部(10a)および前記上部ヨーク部(10c)のうちの一方に実装することと、
前記第1のメンブレン(18)を持つ前記下部ヨーク部(10a)を前記中間ヨーク部(10b)に対して実装することと、
前記永久磁石(20)を前記中間ヨーク部(10b)の内壁に対して実装することであって、その第1の磁極が前記内壁に面し、第2の磁極が内側を向く、実装することと、
前記コア要素(17)を前記中間ヨーク部(10b)の残りの内部空間に挿入することと、
前記第2のメンブレン(19)を持つ前記上部ヨーク部(10c)を前記中間ヨーク部(10b)に対して実装することと
を含む、電磁アクチュエータを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁制御分割ミラーに関する。
本開示は、電磁制御分割ミラーにおいて使用するための電磁アクチュエータにさらに関する。
本開示は、電磁アクチュエータを製造する方法にまたさらに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁制御分割ミラーは、それぞれの電磁アクチュエータによって個別に変形され得る複数のミラー・セグメントを備える。そのような変形可能なミラーは、たとえば、天文学において、または波面の乱れを補償するためにレーザー通信において使用される。用途によっては、そのような変形可能なミラーは、典型的には、百から数千のアクチュエータを有する。
【0003】
円対称アクチュエータ設計は、WO2007/008068から公知である。その中で開示されているアクチュエータは、取り付け部の少なくとも一点においてキャリアに取り付けられるリーフ・スプリング、磁場を与えるための手段、および磁束ループを与えるために磁場を導くための手段を備える。リーフ・スプリングの可動部は、磁場を与えるための手段に対して可動である。アクチュエータは、リーフ・スプリングの可動部に取り付けられた駆動コアをさらに備え、これは、磁束ループ中に組み込まれ、可動部に相対運動を与えるためのものである。駆動コアは、磁束ループの磁気特性が、駆動コア上の磁力およびリーフ・スプリングのばね力を互いに調整するための前記相対運動の影響下で変化するように位置決めされる。この構成は、それが要素の階層化構造からなり、それにより製造が容易になるという利点を有する。しかし、その効率が比較的低いことが、既知のデバイスの欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、既知の電磁アクチュエータのように容易に組み立てられ得るが、より高い効率を有する、改良された電磁アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に明示されているような電磁アクチュエータにより達成される。
【0007】
この構成は、効率的に組み立てられ得、実質的に線形な応答を与える。
【0008】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの弾性要素が、中間ヨーク部と、下部ヨーク部および上部ヨーク部のうちの一方との間に配置される第1のメンブレンである。
【0009】
いくつかの実施形態では、中間ヨーク部は、下部ヨーク部または上部ヨーク部と一体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、アクチュエータは、互いに別個の構成要素としての下部ヨーク部、中間ヨーク部、および上部ヨーク部から組み立てられる。そのいくつかの例では、下部ヨーク部は、第1の構成要素および第2の構成要素から組み立てられ、第1の構成要素は、ベースとベース突起部を備え、第2の構成要素は、周壁の第1の軸方向部である。そのさらなる例では、上部ヨーク部は、第1および第2の構成要素から組み立てられ、第1の構成要素は、上面および上面突起部を備え、第2の構成要素は、周壁の第3の軸方向部である。いくつかの他の例では、上部および下部の両方が、このようにして、構成要素のアセンブリとして与えられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの弾性要素は、下部ヨーク部と中間ヨーク部との間に配置される第1のメンブレンである。さらに、これらの実施形態では、アクチュエータは、さらなる弾性要素として、中間ヨーク部と上部ヨーク部との間に配置される第2のメンブレンを備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のメンブレンは、軸方向に可動なコア要素に固定される中央部分と、端部まで放射状に外側に延びる第1、第2、および第3のサスペンション・アームとを備え、一対のヨーク部間で機械的に結合される。第2のメンブレンは、同様の構造を有し得る。メンブレンは、他の構成要素と簡単に組み立てられ得る。その例では、サスペンション・アームの端部は、少なくとも部分的に内側へ放射状に延びる第1の端部分および第2の端部分に分岐する。それに伴い、サスペンション・アームの効果的な長さが増大され、柔軟性を高めることができる。端部分は、それらが接続要素で固定される、相互に反対の接線方向にさらに延び得る。接続要素は、たとえば後続のヨーク部間にクランプされて固定され得、またはそれに接着され得る。いくつかの実施形態では、サスペンション・アームの端部の運動が接続要素だけによって制約されるように、それらの周りに空間が与えられる。
【0013】
本開示は、空間的に分散された複数のアクチュエータを備えるアクチュエータ・アレイをさらに提供する。その実施形態では、アクチュエータは、少なくとも1つの一体的に形成された部品を備える。これらの実施形態の例では、少なくとも1つの部品は、ヨークの部分であり、前記電磁アクチュエータの各々に対し、ヨークの前記部分は、軟強磁性体の単一のパターン化ブロック中に形成される。その他の例では、少なくとも1つの部品は、メンブレンであり、アクチュエータのメンブレンは、弾性非磁性体の単一のパターン化平板として形成される。個別のアクチュエータの部分を単一のブロックまたは平板として与えることによって、アクチュエータ・アレイの組み立ては、より効率的になり得る。
【0014】
本開示は、互いに対して可動である複数のミラー・セグメントを備えるミラーをさらに提供し、それぞれのミラー・セグメントは、アクチュエータ・アレイのそれぞれのアクチュエータの操作ロッドに機械的に結合される。第1の例として、数百のアクチュエータを持つアクチュエータ・アレイを有し、横方向サイズが、直径数cmから数十cm、たとえば10cmまたは20cmのミラーのための数mmのオーダーである、比較的小さいミラーが与えられ得る。密集したアクチュエータを必要とするそのような比較的小さいミラーについては、アクチュエータのメンブレンを形成する弾性非磁性体の単一のパターン化平板や、下部ヨーク部、中間ヨーク部および上部ヨーク部を形成するための軟強磁性体のそれぞれの単一のパターン化ブロックのような一体化されたアクチュエータ構成要素を使用してアクチュエータ・アレイを組み立てることが特に有利である。
【0015】
他の例では、ミラーは、実質的により大きくてもよく、たとえば、50cm以上の範囲の直径を有する。アクチュエータが典型的により大きい横方向寸法を有するそのような場合、たとえば追加のサポート枠を使用して、アクチュエータ・アレイのアクチュエータを個別にミラーに組み付けることがより有利であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、分割されたミラーのミラー・セグメントは、それらの状態がそれらの適切なアクチュエータによって個別に制御され得るように、互いに機械的に分離されている。適切なアクチュエータは、たとえば、アクチュエータで画定される軸方向にミラー・セグメントを並進させることによってミラー・セグメントを位置決めするように構成される。代替的に、ミラー・セグメントは、部分的に制限され得る。たとえば、ミラー・セグメントは、ミラーの平面中の軸によって回転可能であり得、アクチュエータは、回転角を制御し得る。またさらに、各ミラー・セグメントは、各ミラー・セグメントの位置および向きが完全に制御可能であるように、複数のアクチュエータによって制御され得る。
【0017】
他の例では、ミラー・セグメントはその縁で固定された柔軟素材の平板であり、アクチュエータは、ミラー・セグメントを変形させるために与えられる。他の実施形態では、ミラー・セグメントは柔軟素材の単一の平板の互いに一体の部分であり、分割されたミラーの形状は、それらのそれぞれのアクチュエータによってそのミラー・セグメントの各々に加えられる力によって決定され、さらに平板の剛性の結果としてミラー・セグメントが機械的に結合される程度に依存する。互いに隣接するミラー・セグメント間に薄くした境界区域を設けることにより、それらの機構的な結合が低減され得る。
【0018】
本開示は、請求項15に記載の改良されたアクチュエータを組み立てるための方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】改良された電磁制御分割ミラーの一実施形態の上面図を概略的に示す図である。
【
図1B】改良された電磁制御分割ミラーの一実施形態の上面図を概略的に示す図である。
【
図2】使用するために好適な改良された電磁アクチュエータの一実施形態の軸方向の断面を示す図である。
【
図3】同じ軸方向の断面による前記実施形態の分解図である。
【
図4】改良された電磁アクチュエータの一実施形態の軸方向の断面をその動作状態において概略的に示す図である。
【
図5】改良された電磁制御分割ミラーの一実施形態のより詳細な態様の断面を示す図である。
【
図6】改良されたアクチュエータ・アセンブリの一実施形態の第1の部品を示す図である。
【
図7】改良されたアクチュエータ・アセンブリの一実施形態の第2の部品を示す図である。
【
図9A】中間ヨーク部の中の永久磁石のさまざまな構成を示す図である。
【
図9B】中間ヨーク部の中の永久磁石のさまざまな構成を示す図である。
【
図9C】中間ヨーク部の中の永久磁石のさまざまな構成を示す図である。
【
図9D】改良されたアクチュエータ・アセンブリにおける磁極のバリエーションの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示のこれらおよび他の態様を、図面を参照して、より詳細に説明する。
【0021】
図1A、
図1Bは、電磁制御分割ミラー30の上面図を概略的に示す。そのうち、
図1Bは、
図1AのBBによる断面を示す。ミラー30は、複数のミラー・セグメント31a、31b、...、31nを備える。各ミラー・セグメントは、関連する操作ロッドによってそれが機械的に結合される適切な電磁アクチュエータ1a、1b、...1nによって制御される。たとえば、ミラー・セグメント31aは、操作ロッド22aによって電磁アクチュエータ1aに機械的に結合される。説明のため、
図1Aのミラーは、16のミラー・セグメントを有する。実際には、セグメントの数は著しくより多くあり得、たとえば、数百または数千のオーダーである。さらに
図1Bに示されているように、アクチュエータ1a、1b、...は、アクチュエータ・コントローラ40からそれぞれの制御信号を受ける。
【0022】
図2および
図3は、
図1のミラー30に使用される電磁アクチュエータ1の一実施形態を概略的に示す。そのうち、
図2はその組み立てられた状態の電磁アクチュエータ1の断面を示し、
図3は、同じ断面によるアクチュエータ1の分解図を示す。アクチュエータ1は、第1の端部においてベース12で覆われ、第2の端部において上面13で覆われる、少なくとも実質的に円筒形の周壁11を持つ軟強磁性体のヨーク10を備える。軟強磁性体の例は、鉄、ニッケル、ならびに鉄およびニッケルおよび/またはコバルトの合金である。周壁11は、ベース12から上面13までの方向14’における軸14を画定する。ヨーク10は、その方向14’に、下部ヨーク部10a、中間ヨーク部10b、および上部ヨーク部10cを続けて有する。ヨーク部10a、10bおよび10cは、円筒壁11のそれぞれの部分11a、11b、11cを有する。示されている実施形態では、下部ヨーク部10a、中間ヨーク部10b、および上部ヨーク部10cは、ヨーク10を形成するために組み立てられる互いに別個の構成要素である。次に、下部ヨーク部10aは、突起部を持つベース12を形成する第1のサブコンポーネント10a1および第2の円筒形サブコンポーネント10a2から組み立てられる。他の例では、2つ以上の構成要素またはサブコンポーネントが一体型構成要素と置き換えられる。たとえば、下部ヨーク部は、一体型構成要素として与えられ得る。さらなる例として、中間ヨーク部10bおよび上部ヨーク部10cは、一体型構成要素として与えられ得る。
【0023】
図2に、および
図3の分解図に示されているように、下部ヨーク部10aは、その突起部10a1と周壁のその軸方向部10a2との間の空間に電源ライン161を有する電磁コイル16を収納する。代替的に、または追加的に、電磁コイルは、突起部10c1と上部ヨーク部の周壁の円筒部10c2(11c)との間の空間に収納され得る。電磁コイル16は、それを用いて電磁アクチュエータ1がコントローラ40によって駆動され得る電源ライン161を有する。
【0024】
中間ヨーク部10bは、中間ヨーク部にある円筒壁11bの内面内に固定された円筒形永久磁石20を保持する。円筒形永久磁石20は、放射状に外側へ向けられるとともに、内壁に面する第1の磁極を有し、第2の磁極は、永久磁石20によって囲まれた内部空間に収納されている、軸方向に可動なコア要素17に面する。単一の円筒形永久磁石20の代わりに、円筒壁11bの内面の内壁にわたって分散された複数の別個の永久磁石が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、永久磁石は、NdFeB、SmCo、またはAlNiCoを含むグループから選択される材料を含む。
【0025】
図2に示されているように、コア要素17は、一対のメンブレン18、19の間にクランプされる。メンブレンは、永久磁石20によってコア要素17に加えられる負剛性特性を有する引力と平衡をとる弾性要素として働く。メンブレンは、ステンレス・スチール、アルミニウム、チタンもしくはその、たとえばバナジウムとの合金、たとえば合金Ti-6Al-V(TiAlV)、および/またはモリブデンのような弾性非磁性体であるが、この目的ではプラスチックも考えられ得る。
【0026】
コア要素17に固定された操作ロッドは、アクチュエータ1の上面13にある開口部21を通って軸方向にある空間とともに延びる。いくつかの他の実施形態では、操作ロッドのための開口部が、アクチュエータの下部に設けられる。
【0027】
図4は、同じ断面において、たとえば、
図1A、
図1Bのミラー30の反射面部分31asを持つセグメント31aを制御するために動作状態にあるアクチュエータを示す。そのうち、
図1Bに示されているように、たとえばコントローラ40によって、制御電圧Vcが電磁コイル16に供給される。それに伴い、磁束が、ベース12から、円筒壁11を通り、上面13を通り、そして軸方向に可動なコア要素17を通って延びる経路Fcに沿って誘起される。
図4にさらに示されているように、永久磁石20は、上面13を通って延びる第1の経路FPt、およびベース12を通って延びる第2の経路FPbに沿った磁束を与える。コア要素17の(上面13と面している)上側部分にある永久磁石20を起点とする磁束密度(Dp)の極性は、コア要素17の(ベース12と面している)下側部分にある永久磁石20を起点とする磁束密度(-Dp)の極性と反対である。電磁コイル16の磁束(Dc)は、同じ極性を持つ磁束密度Dcを両方のコア要素部分中に有する。コア要素に働く磁力Fmは、二乗された総磁束密度の積分に比例する。結果として、コア要素17の第1の軸部分、たとえば上側半分において(Dc+Dp)
2のオーダーの磁力が誘起され、コア要素の第2の軸部分、その場合、下側半分において、(Dc-Dp)
2のオーダーの磁力が誘起される。これらの項の合計は、Dcにおいて線形である。それに伴い、たとえばミラー・セグメント31aを操作するための電磁アクチュエータ1の動作は良好に制御可能となる。
【0028】
図5は、代表的なメンブレン18を概略的に示す。代表的なメンブレン18は、軸方向に可動な(概略的に破線の輪郭で示されている)コア要素17に固定される中央部分180と、端部184、185、186まで放射状に外側に延びる第1、第2、および第3のサスペンション・アーム181、182、183とを備え、一対のヨーク部間で機械的に結合される。さらに
図5に示されているように、端部184、185、186は、各々が、少なくとも部分的に放射状に内側に延びる第1および第2の端部分1841、1842;1851、1852;1861、1862に分岐する。端部分1841、1842;1851、1852;1861、1862は、さらに互いに反対の接線方向に延び、そこでそれらは、ヨークの壁11に固定されている適切な実装要素1843、1844;1853、1854;1863、1864に固定され、たとえば、クランプされ、および/または接着剤で接着される。
図5Aは、
図5のVA-VAによる断面を示す。その中でさらに詳細に示されているように、円筒壁11は、放射状に延びるサスペンション・アーム、たとえば181、およびそれらの対応する端部、たとえば、端部分1841、1842を持つ184のためのスペース11Sを画定し、それにより、それらの運動は、実装要素、たとえば1843、1844へのそれらの取り付けによってのみ制限される。
【0029】
図1A、
図1Bの例では、アクチュエータ1a、1b、...、1nは、空間的に分散されたアクチュエータのアクチュエータ・アレイ100を形成する。示されている例では、前記複数のアクチュエータのアクチュエータは、それらの軸14a、14b、14cが、たとえば仮想平面101の面法線に対応する互いに平行な方向にある状態で配置される。この場合の仮想平面101は、ミラー30の中立状態を示す。いくつかの実施形態では、ミラー30はその中立状態において湾曲した形状を有し、各アクチュエータの軸は、それが制御するミラー・セグメントの面法線に対して平行である。
【0030】
図1A、
図1Bに示されている電磁制御分割ミラー30の実施形態では、アクチュエータ1a、1b、...、1nは、互いに別個のユニットである。その場合のアクチュエータ1a、1b、...、1nは、たとえば追加のキャリア枠を使用して、たとえば局所的にミラー30と組み付けられる。
【0031】
代替的な実施形態では、アクチュエータは、一体的に形成される少なくとも1つの部品を備える。
図6の例では、
図2および
図3において10bとして示されている中間ヨーク部が、軟強磁性体の単一ブロック50として形成される。ブロック50は、その中にアクチュエータ1a、1b、...、1nの各々のための内部空間を形成することによってパターン化される。個別のアクチュエータ、たとえば1mは、その内部空間の内壁に固定された、固定された適切な永久磁石20m、およびそれぞれの可動コア要素17mを備えている。
図6において示されている実施形態では、濃い灰色部分51は、実装要素、たとえば1843、1844;1853、1854;1863、1864(
図5、
図5A参照)を取り付けるための場所を示す。薄い灰色部分52は、空間11S(
図5、
図5A参照)がサスペンション・アーム181、182、183の端部184、185、186、およびそれらをこれらの接続要素に結合するそれらの端部分1841、1842などの運動ができるように形成される領域を示す。また、ヨークの他の部分、すなわち下部および上部は、軟強磁性体の単一のパターン化ブロックとして与えられ得る。
【0032】
図7に示されているように、アクチュエータ1a、1bのメンブレン18a、18b、...も、この場合、弾性非磁性体の単一のパターン化平板60として一体的に形成される。それに伴い、アクチュエータのメンブレン18aの実装要素は、他のアクチュエータのメンブレンと共有される。
【0033】
図8は、アクチュエータ・アセンブリを構築するときに、どのようにこれらの構成要素50、60が重ねられるかを示す。説明のためだけに、下に軟強磁性体のブロック50を明らかにするために、パターン化平板60の一部分のみが示されている。
【0034】
上述のように、ヨークの他の部分も、すなわち、下部および上部も、単一のパターン化構成要素として与えられ得る。それに伴い、アクチュエータ・アセンブリの組み立て工程は、大幅に簡素化され得る。
【0035】
一実施形態では、たとえば
図2および
図3に示されているような単一のアクチュエータは、以下のように製造される。最初のステップでは、下部ヨーク部10a、中間ヨーク部10b、および上部ヨーク部10cが与えられ、各々が軟強磁性体である。また、少なくとも実質的に非磁性体の第1および第2のメンブレン18、19が与えられる。さらに、コア要素17、永久磁石20、電磁コイル16が与えられる。電磁コイル16は、下部ヨーク部10a、または上部ヨーク部10cに実装される。第1のメンブレン18を持つ下部ヨーク部10aは、中間ヨーク部10bに対して実装される。したがって、第1のメンブレン18は、下部ヨーク部と中間ヨーク部10bとの間に収容される。前のステップでは、第1のメンブレン18が、最初に下部ヨーク部および中間ヨーク部のうちの一方に接着され得る。
【0036】
永久磁石20は、その第1の磁極が内壁に面し、第2の磁極が内側を向くように、中間ヨーク部10bの内壁に対して実装される。コア要素17は、中間ヨーク部10bの残りの内部空間に挿入される。中間ヨーク部10bに対する第2のメンブレン19を持つ上部ヨーク部10c。したがって、第2のメンブレン19は、上部ヨーク部と中間ヨーク部との間に収容される。前のステップで、第2のメンブレン19は、最初に、上部ヨーク部および中間ヨーク部のうちの一方に接着され得る。この例では、アクチュエータは、下部から上部の方向に組み立てられる。代替的に、アクチュエータは、上部から下部への方向に組み立てられ得る。
【0037】
記述したように、アクチュエータ・アレイ中にあるアクチュエータの部品は、たとえば、
図6、
図7および
図8に示されているように、一体化して与えられ得る。その場合、アクチュエータ・アレイの製造は、次のように行われ得る。アクチュエータ・アレイ中の各アクチュエータのためのそれぞれの電磁コイル16は、下部ヨーク部(下部ブロック)を形成する軟強磁性体のブロック中に、または上部ヨーク部(上部ブロック)を形成する軟強磁性体のブロック中に実装される。第1のメンブレンを形成する弾性材料のパターン化平板(第1のパターン化平板)は、下部ブロック、または中間ヨーク部(中間ブロック)を形成する軟強磁性体のブロックに取り付けられる。次いで、下部ブロック、第1のパターン化平板、および中間ブロックが組み立てられる。それぞれの永久磁石は、中間ブロックにある各アクチュエータのための適切な開口部の中に実装される。さらに、残りの内部空間に各アクチュエータのための適切なコア要素が挿入される。次いで、そのように得られたサブアセンブリは、さらに、第2のメンブレンを形成する第2のパターン化平板および上部ブロックと組み立てられる。代替的に、組み立ては、上部から下部への順で行われ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、
図9Aに概略的に示されているように、中間ヨーク部10bに収容されている少なくとも1つの固定された永久磁石20は、中間ヨーク部10bの円筒壁11bの内面に向かって放射状に外側へ向いているその第1の磁極(たとえば北極N)を持つ単一の円筒形磁石である。
【0039】
他の実施形態では、
図9Bに概略的に示されているように、その第1の磁極Nが放射状に外側に向いている円筒形磁石は、それぞれがそれらの第1の磁極Nが外側を向いている状態で配置される一式の磁石構成要素20a、20b、20c、20dによって形成される。磁石構成要素が中間ヨーク部の内側に途切れない輪を形成する必要がないことが、例として
図9Cに示されている。磁石20または磁石構成要素20a、...、20dの第1の磁極は、必ずしも北極Nではないことが理解されるであろう。しかし、中間ヨーク部10b中の複数の磁石構成要素は、外側を向いている同じ極、たとえば、
図9Bに示されているようなそれらの北極N、または
図9Cに示されているような南極Sを互いに有するべきである。
【0040】
アクチュエータ・アレイのいくつかの実施形態では、各中間ヨーク部は、反対の極性を持つ永久磁石を有する少なくとも1つの他の中間ヨーク部と境を接する。各中間ヨーク部のいくつかの例では、3つの隣接する中間ヨーク部のうち少なくとも2つは反対の極性を持つ永久磁石を有する。これは
図9Dにおいて説明されており、文字「N」は、少なくとも1つの磁気要素の北極が中間ヨーク部において外側を向いていることを示し、文字「S」は、少なくとも1つの磁気要素の南極が中間ヨーク部において外側を向いていることを示す。
図9Dの例では、中間ヨーク部10b1が反対の極性を持つ永久磁石を有する4つの中間ヨーク部10b2、10b3、10b4、105bと境を接する。
【0041】
この実施形態では、中間ヨーク部が反対の極性を持つ永久磁石を有する1つまたは複数の他の中間ヨーク部と境を接し、ヨーク中の正味磁束が実質的に打ち消されることが達成される。それに伴い、ヨークの飽和がより簡単に回避され得、いくつかの場合、ヨークの壁は、他の方法が使用される場合よりも薄くなり得る。
【国際調査報告】