(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】乳製品組成物
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20230626BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20230626BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20230626BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20230626BHJP
C12P 7/6409 20220101ALI20230626BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20230626BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20230626BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20230626BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230626BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230626BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230626BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230626BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230626BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230626BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230626BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230626BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230626BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
C12P21/02 A ZNA
A23L33/18
A23L33/19
A23L33/00
C12P7/6409
A23L33/12
A23L33/125
A61K35/20
A61K9/14
A61K9/72
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/10
A61P3/02
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P1/00
A61P11/00
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572484
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 US2021034267
(87)【国際公開番号】W WO2021242866
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522261754
【氏名又は名称】バイオミルク,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストリックランド,レイラ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B029
4B064
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018MD10
4B018MD11
4B018MD12
4B018MD13
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4C076AA29
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4C087ZB37
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4C087ZC51
(57)【要約】
栄養補助食品として使用するための培養乳製品が本明細書で提供される。培養乳製品を生産するための生きた細胞構築物および培養乳製品を生産するためのバイオリアクターも提供される。分泌型IgA組成物および使用方法も提供される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳腺細胞から単離された培養乳製品を生産する方法であって、前記方法は、
a.培養乳製品を生産する条件下で、バイオリアクター内で細胞構築物を培養する工程であって、前記細胞構築物は、
i.外面と、内部空洞を規定する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と、
ii.前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と、
iii.前記内部空洞内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と、
iv.前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と、
v.前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞のコンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択され、前記極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える、コンフルエントな単層と、
を備える、培養する工程と、
b.前記培養乳製品を単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記極性化した乳腺細胞の単層が、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%が同じ方向に極性化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培養乳製品が分泌型IgA(sIgA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオリアクターが、前記細胞構築物の前記内部空洞から実質的に単離されている頂端区画を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記乳腺細胞の前記基底面が前記培地と流体接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記頂端区画が、前記乳腺細胞の前記頂端面と流体接触している、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記培養乳製品が、前記乳腺細胞の前記頂端面から前記頂端区画内に分泌される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記培地が前記培養乳製品と実質的に接触しない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度が少なくとも10
11であるか、あるいは、前記バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積が少なくとも1.5m
2である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度が、約200~500個の形質細胞/mm
2である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記培養する工程が約27℃~約39℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記培養する工程が、約4%~約6%のCO
2の大気濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
細胞構築物であって、
a.外面と、内部空洞/基底チャンバを規定する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と、
b.前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と、
c.前記内部空洞/基底チャンバ内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と、
d.前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と、
e.前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞の少なくとも70%コンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択される、少なくとも70%コンフルエントな単層と、
を備える、細胞構築物。
【請求項15】
前記極性化した乳腺細胞が、頂端面および基底面を備える、請求項14に記載の細胞構築物。
【請求項16】
前記乳腺細胞の前記基底面が前記培地と流体接触している、請求項15に記載の細胞構築物。
【請求項17】
前記乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%が同じ方向に極性化されている、請求項14に記載の細胞構築物。
【請求項18】
前記極性化した乳腺細胞の単層が、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである、請求項14に記載の細胞構築物。
【請求項19】
前記乳腺細胞が、構成的に活性なプロラクチン受容体タンパク質を含む、請求項14に記載の細胞構築物。
【請求項20】
前記培地がプロラクチンを含む、請求項14に記載の細胞構築物。
【請求項21】
培養乳製品であって、
β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、κ-カゼイン、α-S1-カゼイン、ラクトフェリン、ラクトアドヘリン、リゾチーム、C12:0(ラウリン酸)、C14:0(ミリスチン酸)、C16:0(パルミチン酸)、ラクトース、グルコース、3’-SLおよび6’-SLを含み、
前記培養乳製品は、残留性有機汚染物質(POP)、重金属、処方薬物、娯楽的薬物、アレルゲン、細胞、ホルモンまたはウイルスを含まないか、または実質的に含まず、
ただし、前記培養乳製品は、ヒト乳腺上皮細胞(hMEC)または形質細胞(PC)を含み得るという条件である、培養乳製品。
【請求項22】
C18:2n-6(リノール酸、LA)、C18;3n-3(α-リノレン酸、ALA)、ブトロフィリン、オステオポンチン、ムチン-4、ムチン-1、C8:0(カプリル酸)、C10:0(カプリン酸)、C13:0(トリデシル酸 C16:1(パルミトレイン酸)、C20:3n-6(ジホモ-γ-リノレン酸、DGLA)、C20:4n-6(アラカドン酸、AA)、C20:5n-3(エイコソペンタン酸、EPA)、C22:6n-3(ドコサヘキサエン酸、DHA)、C22:1n9(エルカ酸)、C24:1(ネルボン酸)、LNTまたはLNnTをさらに含む、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項23】
多価不飽和脂肪酸の少なくとも1つのオキシリピン代謝産物または少なくとも1つのエンドカナビノイドをさらに含む、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項24】
前記オキシリピン代謝産物が、9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE)、13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE)、5,15-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(5,15-DiHETE)、17,18-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(17,18-DiHETE)、8,9-ジヒドロキシイコサトリエン酸(8,9-DiHETrE)、11,12-ジヒドロキシイコサトリエン酸(11,12-DiHETrE)、9,10-ジヒドロキシオクタデセン酸(9,10-DiHOME)、12,13-ジヒドロキシオクタデセン酸(12,13-DiHOME)、14(15)-エポキシエイコサトリエン酸(14(15)-EpETre)、19(20)-エポキシドコサペンタン酸(19(20)-EpDPE)、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDoHE)、5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE)、8-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(8-HETE)、9-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(9-HETE)、11-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(11-HETE)、12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)、9-ヒドロキシオクタデカトリエン酸(9-HOTrE)、9-オキソ-オクタデカジエン酸(9-オキソ-ODE)、または13-オキソ-オクタデカジエン酸(13-オキソ-ODE)、17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17(18)-EpETE)、6-ケト-プロスタグランジンF1α(6-ケト-PGF1a)、または15(S)-ヒドロキシエイコサトリエン酸(15(S)-HETrE)である、請求項23に記載の培養乳製品。
【請求項25】
前記エンドカンナビノイドが、アナンダミドまたは2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)である、請求項23に記載の培養乳製品。
【請求項26】
分泌型IgA(sIgA)をさらに含む、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項27】
前記培養乳製品が、残留性有機汚染物質(POP)を含まないか、または実質的に含まない、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項28】
前記培養乳製品が、ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)および駆除薬を含まないか、または実質的に含まない、請求項27に記載の培養乳製品。
【請求項29】
前記培養乳製品が、DDTを含まないか、または実質的に含まない、請求項28に記載の培養乳製品。
【請求項30】
前記培養乳製品が、重金属を含まないか、または実質的に含まない、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項31】
前記培養乳製品が、水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、クロム、コバルトまたは亜鉛を含まないか、または実質的に含まない、請求項30に記載の培養乳製品。
【請求項32】
前記培養乳製品が、医療用薬物または娯楽的薬物を含まないか、または実質的に含まない、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項33】
前記培養乳製品が、化学療法剤、抗うつ剤または抗不安薬を含まないか、または実質的に含まない、請求項32に記載の培養乳製品。
【請求項34】
前記培養乳製品が、ベンゾジアゼピンを含まないか、または実質的に含まない、請求項32に記載の培養乳製品。
【請求項35】
前記培養乳製品が、リチウム、カルバマゼピン、クロルプロマジンおよびクロザピンを含まないか、または実質的に含まない、請求項32に記載の培養乳製品。
【請求項36】
前記培養乳製品が、アルコール、大麻、オピオイド、フェンサイクリジンまたはコカインを含まないか、または実質的に含まない、請求項32に記載の培養乳製品。
【請求項37】
前記培養乳製品が、アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項38】
前記培養乳製品が、オボムコイド、オボアルブミン、コンアルブミン、アラキン6、アラキン3、コンアラキン、Arah1およびアラキンArah2を含まないか、または実質的に含まない、請求項37に記載の培養乳製品。
【請求項39】
前記培養乳製品が、ヒト幹細胞、ヒト免疫細胞または細菌細胞を含まないか、または実質的に含まず、ただし、前記培養乳製品は、1つまたは複数のヒト乳腺上皮細胞(hMEC)または形質細胞(PC)を含む、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項40】
前記培養乳製品が、筋上皮細胞、骨髄前駆細胞、好中球、顆粒球またはT細胞を含まないか、または実質的に含まない、請求項39に記載の培養乳製品。
【請求項41】
前記培養乳製品が、ブドウ球菌(Staphylococcus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、連鎖球菌(Streptococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、乳酸球菌(Lactococcus)、腸球菌(Enterococcus)または乳酸桿菌(Lactobacillus)を含まないか、または実質的に含まない、請求項39に記載の培養乳製品。
【請求項42】
前記培養乳製品が、ウイルスを含まないか、または実質的に含まない、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項43】
前記培養乳製品が、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、西ナイルウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスを含まないか、または実質的に含まない、請求項42に記載の培養乳製品。
【請求項44】
前記培養乳製品が、ホルモンを含まないか、または実質的に含まない、請求項21に記載の培養乳製品。
【請求項45】
前記培養乳製品が、レプチン、グレリン、アディポネクチン、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)甲状腺刺激ホルモン(TSH)、表皮成長因子、βエンドルフィン、リラキシン、コルチゾールまたはエリスロポエチンを含まないか、または実質的に含まない、請求項44に記載の培養乳製品。
【請求項46】
培養乳製品であって、β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、κ-カゼイン、α-S1-カゼイン、ラクトフェリン、ブトロフィリン、オステオポンチン、ラクトアドヘリン、リゾチーム、ムチン-4、ムチン-1、C8:0(カプリル酸)、C10:0(カプリン酸)、C12:0(ラウリン酸)、C13:0(トリデシル酸)、C14:0(ミリスチン酸)、C16:0(パルミチン酸)、C16:1(パルミトレイン酸)、C18:2n-6(リノール酸、LA)、C18、3n-3(α-リノレン酸、ALA)、C20:3n-6(ジホモ-γ-リノレン酸、DGLA)、C20:4n-6(アラカドン酸、AA)、C20:5n-3(エイコソペンタン酸、EPA)、C22:6n-3(ドコサヘキサエン酸、DHA)、C22:1n9(エルカ酸)、C24:1(ネルボン酸)、ラクトース、グルコース、3’-SL、6’-SL、LNT、LNnT、9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE)、13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE)、5,15-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(5,15-DiHETE)、17,18-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(17,18-DiHETE)、8,9-ジヒドロキシイコサトリエン酸(8,9-DiHETrE)、11,12-ジヒドロキシイコサトリエン酸(11,12-DiHETrE)、9,10-ジヒドロキシオクタデセン酸(9,10-DiHOME)、12,13-ジヒドロキシオクタデセン酸(12,13-DiHOME)、14(15)-エポキシエイコサトリエン酸(14(15)-EpETre)、19(20)-エポキシドコサペンタン酸(19(20)-EpDPE)、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDoHE)、5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE)、8-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(8-HETE)、9-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(9-HETE)、11-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(11-HETE)、12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)、9-ヒドロキシオクタデカトリエン酸(9-HOTrE)、9-オキソ-オクタデカジエン酸(9-オキソ-ODE)、または13-オキソ-オクタデカジエン酸(13-オキソ-ODE)、17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17(18)-EpETE)、6-ケト-プロスタグランジンF1α(6-ケト-PGF 1a)、または15(S)-ヒドロキシエイコサトリエン酸(15(S)-HETrE)、およびsIgAを含み、
前記培養乳製品は、残留性有機汚染物質(POP)、重金属、処方薬物、娯楽的薬物、アレルゲン、細胞、ホルモンまたはウイルスを含まないか、または実質的に含まず、
ただし、前記培養乳製品は、ヒト乳腺上皮細胞または形質細胞を含み得るという条件である、培養乳製品。
【請求項47】
前記培養乳製品が、保存剤、安定剤、酸化防止剤、乳化剤または増粘剤をさらに含む、請求項21~46のいずれか一項に記載の培養乳製品。
【請求項48】
前記培養乳製品が、レシチンをさらに含む、請求項47に記載の培養乳製品。
【請求項49】
前記培養乳製品が、カラギーナンをさらに含む、請求項47に記載の培養乳製品。
【請求項50】
前記培養乳製品が、βカロテンをさらに含む、請求項47に記載の培養乳製品。
【請求項51】
前記培養乳製品が、ビタミンEをさらに含む、請求項47に記載の培養乳製品。
【請求項52】
前記培養乳製品が、パルミチン酸アスコルビルまたはアスコルビン酸をさらに含む、請求項47に記載の培養乳製品。
【請求項53】
前記培養乳製品が、レシチン、パルミチン酸アスコルビルおよびビタミンEをさらに含む、請求項47に記載の培養乳製品。
【請求項54】
前記培養乳製品が、脱水されているか、凍結乾燥されているか、または凍結されている、請求項21~53のいずれか一項に記載の培養乳製品。
【請求項55】
前記培養乳製品が食品等級である、請求項21~54のいずれか一項に記載の培養乳製品。
【請求項56】
栄養補給を必要とするヒト対象に栄養補給する方法であって、請求項21~55のいずれか一項に記載の培養乳製品を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項57】
前記ヒト対象が乳児である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ヒト対象が免疫無防備状態である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記ヒト対象が、重症複合免疫不全症(SCID)、HIV/AIDS、癌または自己免疫疾患から選択される疾患を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記対象が、ループスまたは糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)を有する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ヒト対象が、臓器または骨髄移植レシピエントである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記ヒト対象が栄養不良である、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記ヒト対象が吸収不良症候群を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記ヒト対象が消耗症候群を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記ヒト対象が高齢者である、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
微生物感染症の処置または予防を必要とする対象において微生物感染症を処置または予防する方法であって、請求項26または46に記載の培養乳製品を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項67】
前記感染症が、細菌感染症、真菌感染症または寄生生物感染症である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記細菌感染症が、大腸菌(E.coli)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、C.ディフィシル(C.difficile)またはビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)の感染症である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記寄生生物感染症が、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属種または戦争シストイソスポーラ(Cystoisospora belli)の感染症である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記微生物感染症が胃腸感染症である、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記胃腸感染症が胃腸炎である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記微生物感染症がカンジダ症である、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
乳腺細胞から単離されたsIgAを生産する方法であって、前記方法は、
a.培養乳製品を生産する条件下で、バイオリアクター内で細胞構築物を培養する工程であって、前記細胞構築物は、
i.外面と、内部空洞を規定する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と、
ii.前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と、
iii.前記内部空洞内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と、
iv.前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と、
v.前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞のコンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択され、前記極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える、コンフルエントな単層と、
を備える、培養する工程と、
b.前記培養乳製品から前記sIgAを単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項74】
前記極性化した乳腺細胞の単層が、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%が同じ方向に極性化されている、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記培養乳製品が分泌型IgA(sIgA)を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記バイオリアクターが、前記細胞構築物の前記内部空洞から実質的に単離されている頂端区画を備える、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記乳腺細胞の前記基底面が前記培地と流体接触している、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記頂端区画が、前記乳腺細胞の前記頂端面と流体接触している、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記培養乳製品が、前記乳腺細胞の前記頂端面から前記頂端区画内に分泌される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記培地が前記培養乳製品と実質的に接触しない、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度が少なくとも10
11であるか、あるいは、前記バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積が少なくとも1.5m
2である、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
前記バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度が、約200~500個の形質細胞/mm
2である、請求項73に記載の方法。
【請求項84】
前記培養する工程が約27℃~約39℃の温度で行われる、請求項73に記載の方法。
【請求項85】
前記培養する工程が、約4%~約6%のCO
2の大気濃度で行われる、請求項73に記載の方法。
【請求項86】
微生物感染症の処置または予防を必要とする対象において微生物感染症を処置または予防する方法であって、(a)sIgAおよび(b)薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を前記対象に投与する工程を含み、
前記sIgAは、請求項73~85のいずれか一項に記載の方法によって製造される、方法。
【請求項87】
前記ヒト対象が乳児である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ヒト対象が免疫無防備状態である、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記ヒト対象が、重症複合免疫不全症(SCID)、HIV/AIDS、癌または自己免疫疾患から選択される疾患を有する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記対象が、ループスまたは糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)を有する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記ヒト対象が、臓器または骨髄移植レシピエントである、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記ヒト対象が栄養不良である、請求項86に記載の方法。
【請求項93】
前記ヒト対象が吸収不良症候群を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記ヒト対象が消耗症候群を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項95】
前記ヒト対象が高齢者である、請求項86に記載の方法。
【請求項96】
前記ヒト対象が、嚢胞性線維症、COPDまたは非CF気管支拡張症を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項97】
前記感染症が、細菌感染症、真菌感染症または寄生生物感染症である、請求項86に記載の方法。
【請求項98】
前記細菌感染症が、大腸菌(E.coli)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、C.ディフィシル(C.difficile)またはビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)の感染症である、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記寄生生物感染症が、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属種または戦争シストイソスポーラ(Cystoisospora belli)の感染症である、請求項96に記載の方法。
【請求項100】
前記微生物感染症が胃腸感染症である、請求項86に記載の方法。
【請求項101】
前記胃腸感染症が胃腸炎である、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記微生物感染症がカンジダ症である、請求項86に記載の方法。
【請求項103】
前記微生物感染症が呼吸器感染症である、請求項86に記載の方法。
【請求項104】
前記呼吸器感染症が、肺炎(pneumonia)、気管支炎(bronchitis)、アスペルギルス症(Aspergillosis)またはクリプトコッカス症(Cryptococcosis)である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記呼吸器感染症が、B.セパシア(B.cepacia)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)またはニューモシスチス(Pneumocystis)による感染症である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記組成物が吸入用に製剤化されている、請求項86または請求項103~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記組成物が粉末である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記組成物がネブライザによる投与のための製剤である、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
a.本明細書に開示される方法によって製造されたsIgA;および
b.薬学的に許容され得る賦形剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項110】
前記薬学的に許容され得る賦形剤が、安定剤、界面活性剤、緩衝剤または等張化剤である、請求項109に記載の薬学的組成物。
【請求項111】
前記薬学的に許容され得る賦形剤が、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、エデト酸/またはエデト酸塩(例えば、EDTA)、グルタチオン、メタクレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メチオニンまたはシステインである、請求項109に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年5月26日に出願された米国仮出願第63/030,149号、2021年3月9日に出願された米国仮出願第63/200,480号および2021年3月29日に出願された米国出願第17/301,216号からの優先権の恩典を主張し、それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2021年5月24日に作成された前記ASCIIコピーの名称はBMQ_002WO_SL.txtであり、サイズは29,447バイトである。
【0003】
分野
本開示は、授乳中の女性によって生産されるヒト母乳を模倣するタンパク質、脂質およびオリゴ糖成分ならびに成分濃度を含む乳製品組成物に関し、この乳組成物は、培養された乳腺細胞からインビトロおよび/またはエクスビボで生産される。
【背景技術】
【0004】
背景
乳は、乳児期および全生涯の両方において、ヒトの食事に欠かせないものである。米国小児科学界および世界保健機構は、乳児が生後6ヶ月間は母乳で育てられることを推奨しており、乳児期以降の乳製品の消費は人間の栄養の柱であり、世界で7000億ドルの産業となっている。しかしながら、乳汁分泌は、授乳中の母親にとって生物学的かつ実際的な負荷をもたらし得る生理的に過酷で、代謝的に集約的な過程であり、乳生産には、農業の状況において、環境的、社会的および動物福祉上の影響が伴う。
【0005】
食品を製造するために哺乳動物細胞培養を使用する可能性に対して、近年関心が高まっており、培養された筋肉および脂肪細胞から肉およびシーフード製品のいくつかの試作品を開発することに成功している(Stephens et al.2018 Trends Food Sci Technol.78:155-166)。さらに、微生物発現系を使用して卵および乳タンパク質の生産を商業化する努力が進められている。しかしながら、この発酵に基づく過程は、個々の成分の遺伝子操作された発現および精製に依存しており、乳または乳製品の完全な分子的特性を再現することができない。
【発明の概要】
【0006】
ある特定の実施形態において、乳腺細胞から単離された培養乳製品を生産する方法であって、(a)前記培養乳製品を生産する条件下で、バイオリアクター内で細胞構築物を培養する工程であって、前記細胞構築物は、(i)外面と、内部空洞を画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(ii)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(iii)前記内部空洞内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(iv)前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と;(v)前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞のコンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択され、前記極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える、コンフルエントな単層と、を備える、培養する工程と;(b)前記培養乳製品を単離する工程と、を含む、方法が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、極性化した乳腺細胞の単層は、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%は同じ方向に極性化されている。いくつかの実施形態において、培養乳製品は分泌型IgA(sIgA)を含む。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、細胞構築物の内部空洞から実質的に分離されている頂端区画を備える。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の基底面は、培地と流体接触している。いくつかの実施形態において、頂端区画は、乳腺細胞の頂端面と流体接触している。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、乳腺細胞の頂端面から頂端区画内に分泌される。いくつかの実施形態において、培地は、培養乳製品と実質的に接触しない。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は少なくとも1011であるか、あるいは、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも1.5m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約200~500の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、培養する工程は、約27℃~約39℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、培養する工程は、約4%~約6%のCO2の大気濃度で行われる。
【0007】
ある特定の実施形態において、細胞構築物であって、(a)外面と、内部空洞/基底チャンバを画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(b)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(c)前記内部空洞/基底チャンバ内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(d)前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と;(e)前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞の少なくとも70%コンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択される、少なくとも70%コンフルエントな単層と、を備える、細胞構築物が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の基底面は、培地と流体接触している。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%は同じ方向に極性化されている。いくつかの実施形態において、極性化した乳腺細胞の単層は、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、構成的に活性なプロラクチン受容体タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、培地はプロラクチンを含む。
【0008】
ある特定の実施形態において、培養乳製品であって、β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、κ-カゼイン、α-S1-カゼイン、ラクトフェリン、ラクトアドヘリン、リゾチーム、C12:0(ラウリン酸)、C14:0(ミリスチン酸)、C16:0(パルミチン酸)、ラクトース、グルコース、3’-SLおよび6’-SLを含み、前記組成物は、残留性有機汚染物質(POP)、重金属、処方薬物、娯楽的薬物、アレルゲン、細胞、ホルモンまたはウイルスを含まないか、または実質的に含まず、ただし、前記組成物は、ヒト乳腺上皮細胞(hMEC)または形質細胞(PC)を含み得る、培養乳製品が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、C18:2n-6(リノール酸、LA)、C18;3n-3(α-リノレン酸、ALA)、ブトロフィリン、オステオポンチン、ムチン-4、ムチン-1、C8:0(カプリル酸)、C10:0(カプリン酸)、C13:0(トリデシル酸 C16:1(パルミトレイン酸)、C20:3n-6(ジホモ-γ-リノレン酸、DGLA)、C20:4n-6(アラカドン酸、AA)、C20:5n-3(エイコソペンタン酸、EPA)、C22:6n-3(ドコサヘキサエン酸、DHA)、C22:1n9(エルカ酸)、C24:1(ネルボン酸)、LNTまたはLNnTをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、多価不飽和脂肪酸の少なくとも1つのオキシリピン代謝産物または少なくとも1つのエンドカナビノイドをさらに含む。いくつかの実施形態において、オキシリピン代謝産物は、9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE);13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE);5,15-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(5,15-DiHETE);17,18-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(17,18-DiHETE);8,9-ジヒドロキシイコサトリエン酸(8,9-DiHETrE);11,12-ジヒドロキシイコサトリエン酸(11,12-DiHETrE);9,10-ジヒドロキシオクタデセン酸(9,10-DiHOME);12,13-ジヒドロキシオクタデセン酸(12,13-DiHOME);14(15)-エポキシエイコサトリエン酸(14(15)-EpETre);19(20)-エポキシドコサペンタン酸(19(20)-EpDPE);17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDoHE);5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE);8-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(8-HETE);9-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(9-HETE);11-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(11-HETE);12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE);9-ヒドロキシオクタデカトリエン酸(9-HOTrE);9-オキソ-オクタデカジエン酸(9-オキソ-ODE);または13-オキソ-オクタデカジエン酸(13-オキソ-ODE);17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17(18)-EpETE);6-ケト-プロスタグランジンF1α(6-ケト-PGF1a);または15(S)-ヒドロキシエイコサトリエン酸(15(S)-HETrE)である。いくつかの実施形態において、エンドカンナビノイドはアナンダミドまたは2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、分泌型IgA(sIgA)をさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、残留性有機汚染物質(POP)を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)および駆除薬を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、DDTを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、重金属を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、クロム、コバルトまたは亜鉛を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、医療用薬物または娯楽的薬物を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、化学療法剤、抗うつ剤または抗不安薬を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ベンゾジアゼピンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、リチウム、カルバマゼピン、クロルプロマジンおよびクロザピンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、アルコール、大麻、オピオイド、フェンサイクリジンまたはコカインを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、オボムコイド、オボアルブミン、コンアルブミン、アラキン6、アラキン3、コンアラキン、Arah1およびアラキンArah2を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ヒト幹細胞、ヒト免疫細胞または細菌細胞を含まないか、または実質的に含まず、ただし、培養乳製品は、1つまたは複数のヒト乳腺上皮細胞(HMEC)または形質細胞(PC)を含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、筋上皮細胞、骨髄前駆細胞、好中球、顆粒球またT細胞を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ブドウ球菌(Staphylococcus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、連鎖球菌(Streptococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、乳酸球菌(Lactococcus)、腸球菌(Enterococcus)または乳酸桿菌(Lactobacillus)を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ウイルスを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、西ナイルウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ホルモンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、レプチン、グレリン、アディポネクチン、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)甲状腺刺激ホルモン(TSH)、表皮成長因子、βエンドルフィン、リラキシン、コルチゾールまたはエリスロポエチンを含まないか、または実質的に含まない。
【0009】
ある特定の実施形態において、培養乳製品であって、β-カゼイン;α-ラクトアルブミン;κ-カゼイン;α-S1-カゼイン;ラクトフェリン;ブトロフィリン;オステオポンチン;ラクトアドヘリン;リゾチーム;ムチン-4;ムチン-1;C8:0(カプリル酸);C10:0(カプリン酸);C12:0(ラウリン酸);C13:0(トリデシル酸);C14:0(ミリスチン酸);C16:0(パルミチン酸);C16:1(パルミトレイン酸);C18:2n-6(リノール酸、LA);C18;3n-3(α-リノレン酸、ALA);C20:3n-6(ジホモ-γ-リノレン酸、DGLA);C20:4n-6(アラカドン酸、AA);C20:5n-3(エイコソペンタン酸、EPA);C22:6n-3(ドコサヘキサエン酸、DHA);C22:1n9(エルカ酸);C24:1(ネルボン酸);ラクトース;グルコース;3’-SL;6’-SL;LNT;LNnT;9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE);13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE);5,15-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(5,15-DiHETE);17,18-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(17,18-DiHETE);8,9-ジヒドロキシイコサトリエン酸(8,9-DiHETrE);11,12-ジヒドロキシイコサトリエン酸(11,12-DiHETrE);9,10-ジヒドロキシオクタデセン酸(9,10-DiHOME);12,13-ジヒドロキシオクタデセン酸(12,13-DiHOME);14(15)-エポキシエイコサトリエン酸(14(15)-EpETre);19(20)-エポキシドコサペンタン酸(19(20)-EpDPE);17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDoHE);5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE);8-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(8-HETE);9-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(9-HETE);11-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(11-HETE);12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE);9-ヒドロキシオクタデカトリエン酸(9-HOTrE);9-オキソ-オクタデカジエン酸(9-オキソ-ODE);または13-オキソ-オクタデカジエン酸(13-オキソ-ODE);17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17(18)-EpETE);6-ケト-プロスタグランジンF1α(6-ケト-PGF1a);または15(S)-ヒドロキシエイコサトリエン酸(15(S)-HETrE);およびsIgAを含み;組成物は、残留性有機汚染物質(POP)、重金属、処方薬物、娯楽的薬物、アレルゲン、細胞、ホルモンまたはウイルスを含まないか、または実質的に含まず;ただし、組成物は、ヒト乳腺上皮細胞または形質細胞を含み得る、培養乳製品が本明細書において開示される。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、保存剤、安定剤、酸化防止剤、乳化剤または増粘剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、レシチンをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、カラギーナンをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、βカロテンをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、ビタミンEをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、パルミチン酸アスコルビルまたはアスコルビン酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、レシチン、パルミチン酸アスコルビルおよびビタミンEをさらに含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、脱水され、凍結乾燥され、または凍結される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、食品等級である。
【0011】
ある特定の実施形態において、栄養補給を必要とする対象に栄養補給する方法であって、本明細書に開示される培養乳製品を対象に投与することを含む、方法が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は乳児である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、重症複合免疫不全症(SCID)、HIV/AIDS、癌または自己免疫疾患から選択される疾患を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、ループスまたは糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、臓器移植レシピエントまたは骨髄移植レシピエントである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、栄養失調である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、吸収不良症候群を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、消耗症候群を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、高齢者である。
【0012】
ある特定の実施形態において、微生物感染症の処置または予防を必要とする対象において微生物感染症を処置または予防する方法であって、本明細書に開示される培養乳製品を対象に投与することを含む、方法が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、感染症は、細菌感染症、真菌感染症または寄生生物感染症である。いくつかの実施形態において、細菌感染症は、大腸菌(E.coli)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、C.ディフィシル(C.difficile)またはビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)の感染症である。いくつかの実施形態において、寄生生物感染症は、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属種または戦争シストイソスポーラ(Cystoisospora belli)の感染症である。いくつかの実施形態において、真菌感染症は、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)またはニューモシスチス・ジロベシ(Pneumocystis jirovecii)の感染症である。いくつかの実施形態において、微生物感染症は胃腸感染症である。いくつかの実施形態において、胃腸感染症は胃腸炎である。いくつかの実施形態において、微生物感染症はカンジダ症である。
【0013】
ある特定の実施形態において、乳腺細胞からsIgAを生産する方法であって、(a)培養乳製品を生産する条件下で、バイオリアクター内で細胞構築物を培養する工程であって、前記細胞構築物は、(i)外面と、内部空洞を画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(ii)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(iii)前記内部空洞内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(iv)前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と;(v)前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞のコンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択され、前記極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える、コンフルエントな単層と、を備える、培養する工程と;(b)前記培養乳製品からsIgAを単離する工程と、を含む、方法が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、極性化した乳腺細胞の単層は、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%は同じ方向に極性化されている。いくつかの実施形態において、培養乳製品は分泌型IgA(sIgA)を含む。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、細胞構築物の内部空洞から実質的に分離されている頂端区画を備える。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の基底面は、培地と流体接触している。いくつかの実施形態において、頂端区画は、乳腺細胞の頂端面と流体接触している。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、乳腺細胞の頂端面から頂端区画内に分泌される。いくつかの実施形態において、培地は、培養乳製品と実質的に接触しない。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は少なくとも1011であるか、あるいは、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも1.5m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約200~500の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、培養する工程は、約27℃~約39℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、培養する工程は、約4%~約6%のCO2の大気濃度で行われる。
【0014】
ある特定の実施形態において、(a)sIgAおよび(b)薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物であって、sIgAは、本明細書に開示される方法によって製造される、薬学的組成物が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤は、安定剤、界面活性剤、緩衝剤または等張化剤である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤は、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、エデト酸/またはエデト酸塩(例えば、EDTA)、グルタチオン、メタクレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メチオニンまたはシステインである。
【0015】
ある特定の実施形態において、微生物感染症の処置または予防を必要とする対象において微生物感染症を処置または予防する方法であって、(a)sIgAおよび(b)薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を前記対象に投与することを含み、前記sIgAは、本明細書に開示される方法によって製造される、方法が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤は、安定剤、界面活性剤、緩衝剤または等張化剤である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤は、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、エデト酸/またはエデト酸塩(例えば、EDTA)、グルタチオン、メタクレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メチオニンまたはシステインである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は乳児である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、重症複合免疫不全症(SCID)、HIV/AIDS、癌または自己免疫疾患から選択される疾患を有する。いくつかの実施形態において、対象は、ループスまたは糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、臓器移植レシピエントまたは骨髄移植レシピエントである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、栄養失調である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、吸収不良症候群を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、消耗症候群を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、高齢者である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、嚢胞性線維症、COPDまたは非CF気管支拡張症を有する。いくつかの実施形態において、感染症は、細菌感染症、真菌感染症または寄生生物感染症である。いくつかの実施形態において、細菌感染症は、大腸菌、ストレプトコッカス・ニューモニエ、モラクセラ・カタラーリス、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、サルモネラ、赤痢菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、ヘリコバクター・ピロリ、C.ディフィシルまたはビブリオ・コレラエの感染症である。いくつかの実施形態において、寄生生物感染症は、ランブル鞭毛虫、エントアメーバ・イストリチカ、クリプトスポリジウム属種または戦争シストイソスポーラの感染症である。いくつかの実施形態において、真菌感染症は、アスペルギルス、クリプトコッカスまたはニューモシスチス・ジロベシの感染症である。いくつかの実施形態において、微生物感染症は胃腸感染症である。いくつかの実施形態において、胃腸感染症は胃腸炎である。いくつかの実施形態において、微生物感染症はカンジダ症である。いくつかの実施形態において、微生物感染症は呼吸器感染症である。いくつかの実施形態において、呼吸器感染症は、肺炎、気管支炎、アスペルギルス症またはクリプトコッカス症である。いくつかの実施形態において、呼吸器感染症は、B.セパシア(B.cepacia)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)またはニューモシスチス(Pneumocystis)による感染症である。いくつかの実施形態において、組成物は吸入用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、組成物は粉末である。いくつかの実施形態において、組成物は、ネブライザによる投与のための製剤である。
【0016】
本開示は、授乳中の女性によって生産されるヒト母乳を模倣するおよび/または授乳中の女性によって生産されるヒト母乳と実質的に同様であるタンパク質、脂質およびオリゴ糖成分ならびに成分濃度を含み、培養された乳腺細胞からインビトロおよび/またはエクスビボで生産される乳組成物に関する。
【0017】
したがって、本開示の一態様は、重量基準で特定の濃度または量のタンパク質成分、脂質成分、ヒト乳オリゴ糖成分およびラクトースを含む乳製品であって、タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される、乳製品に関する。
【0018】
一実施形態において、乳腺細胞から単離された培養乳製品を生産する方法であって、(a)前記培養乳製品を生産する条件下で、バイオリアクター内で細胞構築物を培養する工程であって、前記細胞構築物は、(i)外面と、内部空洞を画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(ii)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(iv)前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と;(v)前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞のコンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択され、前記極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える、コンフルエントな単層と、を備える、培養する工程と;(b)前記培養乳製品を単離する工程と、を含む、方法が本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、培養乳製品は分泌型IgA(sIgA)を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、細胞構築物の内部空洞から実質的に分離されている頂端区画を備える。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の基底面は、培地と流体接触している。いくつかの実施形態において、頂端区画は、乳腺細胞の頂端面と流体接触している。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、乳腺細胞の頂端面から頂端区画内に分泌される。いくつかの実施形態において、培地は、培養乳製品と実質的に接触しない。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は少なくとも1011である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも1.5m2である。いくつかの実施形態において、マトリックス材料は1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約200~500の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、培養する工程は、約27℃~約39℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、培養する工程は、約4%~約6%のCO2の大気濃度で行われる。
【0020】
ある特定の実施形態において、細胞構築物であって、(a)外面と、内部空洞/基底チャンバを画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(b)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(c)前記内部空洞/基底チャンバ内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(d)前記マトリックス材料上に配置された複数の形質細胞と;(e)前記複数の形質細胞上に配置された極性化した乳腺細胞の少なくとも70%コンフルエントな単層であって、前記乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択される、少なくとも70%コンフルエントな単層と、を備える、細胞構築物が本明細書において記載される。いくつかの実施形態において、極性化した乳腺細胞は、頂端面および基底面を備える。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の基底面は、培地と流体接触している。
【0021】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%は同じ方向に極性化されている。いくつかの実施形態において、極性化した乳腺細胞の単層は、少なくとも70%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、少なくとも95%コンフルエント、少なくとも99%コンフルエント、または100%コンフルエントである。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、構成的に活性なプロラクチン受容体タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、培地は、炭素源、化学緩衝系、1つまたは複数の必須アミノ酸、1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子、ならびに1つまたは複数の無機塩を含む。いくつかの実施形態において、培地はプロラクチンをさらに含む。いくつかの実施形態において、マトリックス材料は1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、三次元足場は、天然ポリマー、生体適合性合成ポリマー、合成ペプチド、前述のいずれかに由来する複合材料、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、天然ポリマーは、コラーゲン、キトサン、セルロース、アガロース、アルギナート、ゼラチン、エラスチン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸および/またはヒアルロン酸である。いくつかの実施形態において、生体適合性合成ポリマーは、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンコ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリラートポリマー、および/またはポリエチレングリコールである。
【0022】
ある特定の態様において、約6~14グラム/リットル(g/L)のタンパク質成分;約18~89g/Lの脂質成分;約7~14g/Lのヒト乳オリゴ糖(HMO);および約64~77g/Lラクトースを含む乳製品であって、タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される乳製品が本明細書において記載される。
【0023】
いくつかの実施形態において、乳製品は、1つまたは複数の免疫グロブリンをさらに含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは分泌型IgAである。
【0024】
いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、乳製品の乾燥重量の約55~65%を構成する。いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、β-カゼイン、κ-カゼインおよびα-カゼインを含む。いくつかの実施形態において、乳製品中で、β-カゼインは約0.5~1.5g/Lの濃度を有し、κ-カゼインは約0.5~0.6g/Lの濃度を有し、α-カゼインは約0.1~0.5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、β-カゼイン、κ-カゼインおよびα-カゼインは、合わせて、乳製品のタンパク質成分の約35~45%乾燥重量パーセントを構成する。いくつかの実施形態において、β-カゼインは、全カゼイン含有量の約50%超を構成する。
【0025】
いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、α-ラクトアルブミン、リゾチーム、ラクトフェリン、ハプトコリン、ブチロフィリン、オステオポンチン、ムチンMC5、ムチンBrE3およびラクトアドヘリンの1つまたは複数をさらに含む。いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、血清アルブミンをさらに含む。いくつかの実施形態において、α-ラクトアルブミンは、乳製品中で約2.7~3.3g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、リゾチームは、乳製品中で約0.2~0.5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ラクトフェリンは、乳製品中で約1.0~2.0g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ハプトコリンは、乳製品中で約0.07~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ブチロフィリンは、乳製品中で約0.03~0.05g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、オステオポンチンは、乳製品中で約0.05~0.2g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ムチンMC5は、乳製品中で約0.5~0.6g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ムチンBrE3は、乳製品中で約0.5~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ラクトアドヘリンは、乳製品中で約0.06~0.07g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、血清アルブミンは、約0.025~3.5g/L、または約0.01~2g/L、または約0.15~1g/L、または約0.2~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、タンパク質成分はヒト起源のものである。
【0026】
いくつかの実施形態において、脂質成分は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、コレステロール、リン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質の1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、飽和脂肪酸は、乳製品中で約5~34g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、飽和脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸およびラウリン酸を含む。いくつかの実施形態において、パルミチン酸は、少なくとも約50%のsn-2型を含む。いくつかの実施形態において、パルミチン酸は、乳製品中で約3~18g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ステアリン酸は、乳製品中で約0.7~5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ラウリン酸は、乳製品中で約0.5~5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、一価不飽和脂肪酸は、乳製品中で約7~46g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、一価不飽和脂肪酸はオレイン酸を含む。いくつかの実施形態において、オレイン酸は、少なくとも約50%のsn-1型を含む。いくつかの実施形態において、オレイン酸は、乳製品中で約7~45g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、多価不飽和脂肪は、乳製品中で約2~20g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、多価不飽和脂肪は、リノール酸、α-リノレン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸およびドコサヘキサジエン酸の1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、リノール酸は、乳製品中で約2~19g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、リノール酸は、少なくとも約50%のsn-3型を含む。いくつかの実施形態において、α-リノレン酸は、乳製品中で約0.5~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、エイコサジエン酸は、乳製品中で約0.5~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、アラキドン酸は、乳製品中で約0.5~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ジホモ-γ-リノレン酸は、乳製品中で約0.3~0.5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、ドコサヘキサジエン酸は、乳製品中で約0.02~0.4g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、乳製品中で、リノール酸は約2~19g/Lの濃度を有し、α-リノレン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有し、エイコサジエン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有し、アラキドン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有し、ジホモ-γ-リノレン酸は約0.3~0.5g/Lの濃度を有し、ドコサヘキサジエン酸は約0.02~0.4g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、乳製品は、オレイン酸、パルミチン酸およびリノール酸を含み、オレイン酸は少なくとも約50%のsn-1型を含み、パルミチン酸は少なくとも約50%のsn-2型を含み、リノール酸は少なくとも約50%のsn-3型を含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、乳製品中で約0.09~0.15g/Lの濃度を有するコレステロールを含む。いくつかの実施形態において、リン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質は、合わせて、乳製品中で約0.1~0.4g/Lの濃度を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、ヒト乳オリゴ糖成分は、1つまたは複数の中性オリゴ糖を含む。いくつかの実施形態において、ヒト乳オリゴ糖成分は、1つまたは複数の酸性オリゴ糖を含む。いくつかの実施形態において、ヒト乳オリゴ糖成分は、中性オリゴ糖および/または酸性オリゴ糖を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、2’-FL(2’-フコシルラクトース)、DF-LNHII(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、LNFPI(ラクト-N-フコペンタオースI)、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、LNT(ラクト-N-テトラオース)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、DF-L(ジフコシルラクトース)および3-FL(3-フコシルラクトース)を含む。
74.前記1つまたは複数の酸性オリゴ糖が、6’-SL(6’-シアリルラクトース)、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む、請求項65または66に記載の乳製品。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約1~4g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、2’-FL(2’-フコシルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約1~4g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖はDF-LNHII(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)を含み、このオリゴ糖は乳製品中で約1~4g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNFPI(ラクト-N-フコペンタオースI)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.5~2g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.2~2g/Lの濃度を有する。
80.前記1つまたは複数の中性オリゴ糖がLNT(ラクト-N-テトラオース)を含み、前記オリゴ糖が前記乳製品中で約0.3~1.5g/Lの濃度を有する、請求項64、66、67、または70~74のいずれかに記載の乳製品。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.5~1.5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、DF-L(ジフコシルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品で約0.1~1g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、3-FL(3-フコシルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.2~1.5g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、6’-SL(6’-シアリルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.2~1.2g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖はDS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)を含み、このオリゴ糖は乳製品中で約0.05~1g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.05~0.7g/Lを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.05~0.7g/Lの濃度を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.1~0.3g/Lの濃度を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、2’-FL(2’-フコシルラクトース)、DF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、LNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、LNT(ラクト-N-テトラオース)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、DF-L(ジフコシルラクトース)および3-FL(3-フコシルラクトース)を含み、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、6’-SL(6’-シアリルラクトース)、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約1~4g/LのTF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、約1~4g/Lの2’-FL(2’-フコシルラクトース)、約1~4g/LのDF-LNHII(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、約0.5~2g/LのLNFPI(ラクト-N-フコペンタオースI)、約0.2~2g/LのLNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、約0.3~1.5g/LのLNT(ラクト-N-テトラオース)、約0.5~1.5g/LのLNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、約0.1~1g/LのDF-L(ジフコシルラクトース)、約0.2~1.5g/Lの3-FL(3-フコシルラクトース)、約0.2~1.2g/Lの6’-SL(6’-シアリルラクトース)、約0.05~1g/LのDS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、約0.05~0.7g/LのFS-LNnHI(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、約0.05~0.7g/LのLSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および約0.1~0.3g/Lの3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。いくつかの実施形態において、中性オリゴ糖含有量は、酸性オリゴ糖含有量より重量で少なくとも約2倍、または約3倍、または約4倍、または約5倍、または約6倍、または約7倍、または約8倍、または約9倍、または約10倍、または約11倍、または約12倍、または約13倍、または約14倍、または約15倍多くを占める。
【0029】
ある特定の態様において、乳製品であって、約6~14グラム/リットル(g/L)のタンパク質成分;約18~89g/Lの脂質成分;約7~14g/Lのヒト乳オリゴ糖(HMO);および約64~77g/Lのラクトースを含み、前記タンパク質成分は、β-カゼイン、κ-カゼインおよびα-カゼイン、α-ラクトアルブミン、リゾチーム、ラクトフェリン、ハプトコリン、ブチロフィリン、オステオポンチン、ムチンMC5、ムチンBrE3およびラクトアドヘリンを含み、前記脂質成分は、パルミチン酸、ステアリン酸およびラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、ドコサヘキサジエン酸、コレステロール、リン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質を含み、前記ヒト乳オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、2’-FL(2’-フコシルラクトース)、DF-LNHII(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、LNFPI(ラクト-N-フコペンタオースI)、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、LNT(ラクト-N-テトラオース)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、DF-L(ジフコシルラクトース)および3-FL(3-フコシルラクトース)、6’-SL(6’-シアリルラクトース)、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含み、前記タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される、乳製品が本明細書において記載される。
【0030】
いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.5~1.5g/Lのβ-カゼイン、約0.5~0.6g/Lのκ-カゼイン、約0.1~0.5g/Lのα-カゼイン、約2.7~3.3g/Lのα-ラクトアルブミン、約0.2~0.5g/Lのリゾチーム、約1.0~2.0g/Lのラクトフェリン、約0.07~0.7g/Lのハプトコリン、約0.03~0.05g/Lのブチロフィリン、約0.05~0.2g/Lのオステオポンチン、約0.5~0.6g/LのムチンMC5、約0.5~0.7g/LのムチンBrE3、約0.06~0.07g/Lのラクトアドヘリン、約2~19g/Lのリノール酸、約0.5~0.7g/Lのα-リノレン酸、約0.5~0.7g/Lのエイコサジエン酸、約0.5~0.7g/Lのアラキドン酸、約0.3~0.5g/Lのジホモ-γ-リノレン酸、約0.02~0.4g/Lのドコサヘキサジエン酸、約0.09~0.15g/Lのコレステロール、約0.1~0.4g/Lのリン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質の組合せ、約1~4g/LのTF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、約1~4g/Lの2’-FL(2’-フコシルラクトース)、約1~4g/LのDF-LNHII(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、約0.5~2g/LのLNFPI(ラクト-N-フコペンタオースI)、約0.2~2g/LのLNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、約0.3~1.5g/LのLNT(ラクト-N-テトラオース)、約0.5~1.5g/LのLNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、約0.1~1g/LのDF-L(ジフコシルラクトース)、約0.2~1.5g/Lの3-FL(3-フコシルラクトース)、約0.2~1.2g/Lの6’-SL(6’-シアリルラクトース)、約0.05~1g/LのDS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、約0.05~0.7g/LのFS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、約0.05~0.7g/LのLSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)、および約0.1~0.3g/Lの3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。
【0031】
ある特定の態様においては、重量で約3~15%のタンパク質;重量で約9~92%の脂質;重量で約4~15%のヒト乳オリゴ糖(HMO);および重量で約33~80%のラクトースを含む乳製品であって、タンパク質、脂質、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される、乳製品が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、乳製品は、血清アルブミンをさらに含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.025~3.5g/L、または約0.01~2g/L、または約0.15~1g/L、または約0.3~0.7g/Lの血清アルブミンを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、乳製品は、1つまたは複数の免疫グロブリンをさらに含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgA、IgGおよびIgMの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、IgAはIgA2(分泌型)およびIgA1(非分泌型)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.2~1.0g/Lの分泌型IgAを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.15~1.6g/Lの総IgAを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.03~0.3g/LのIgGを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.01~0.1g/LのIgMを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、重量で約0.2~2%の免疫グロブリンを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースは、培養された乳腺上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態において、培養された乳腺上皮細胞は1つまたは複数の不死化された乳腺細胞株を含む。いくつかの実施形態において、培養された乳腺上皮細胞は、1つまたは複数の一次乳腺組織試料に由来する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の一次乳腺組織試料は、乳腺組織の外科的外植片に由来する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の一次乳腺組織試料は、乳腺の胞巣状構造から収集された胞巣状および/または管腔組織または細胞を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の一次乳腺組織試料は、乳腺組織の針吸引に由来する。いくつかの実施形態において、一次乳腺組織は、1つまたは複数の筋上皮細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、一次乳腺組織は、1つまたは複数の幹細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、一次乳腺組織は、1つまたは複数の免疫細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、免疫細胞はB細胞を含む。いくつかの実施形態において、免疫細胞は形質細胞を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、乳製品は、1つまたは複数の特定の人由来の培養された乳腺上皮細胞から単離される。いくつかの実施形態において、特定のドナー由来の培養された乳腺上皮細胞から単離された乳製品は、そのドナーまたはそのドナーによって承認された人に対してのみ提供される。いくつかの実施形態において、培養された乳腺上皮細胞は、1つまたは複数の形質細胞株と共培養される。いくつかの実施形態において、培養された乳腺上皮細胞は、1つまたは複数の筋上皮細胞株と共培養される。いくつかの実施形態において、培養された乳腺上皮細胞は、1つまたは複数の幹細胞株と共培養される。
【0035】
いくつかの実施形態において、乳製品は、ヒト母乳の総高分子組成物の少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含む。いくつかの実施形態において、非タンパク質窒素含有量は、全窒素含有量の少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%を占める。
【0036】
ある特定の態様において、冷凍された本明細書に記載の乳製品を含む冷凍乳製品が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、乳製品は凍結乾燥されている。ある特定の態様において、容器中に詰められた本明細書に記載の乳製品を含む、容器入り乳製品が本明細書に記載される。ある特定の態様において、容器中に詰められた冷凍乳製品を含む、容器入り冷凍乳製品が本明細書に記載される。ある特定の態様において、容器中に詰められた凍結乾燥乳製品を含む、容器入り凍結乾燥乳製品が本明細書に記載される。
【0037】
ある特定の態様において、本明細書に記載の乳製品から抽出された1つまたは複数の成分を含む抽出乳製品が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、収集された乳製品から抽出された1つまたは複数の成分は、凍結乾燥または濃縮された抽出乳製品成分を生成するために、凍結乾燥または濃縮される。いくつかの実施形態において、収集された乳製品から抽出された1つまたは複数の成分は、膜濾過または逆浸透によって濃縮される。いくつかの実施形態において、収集された乳製品からの1つまたは複数の抽出された成分は、乳タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルを含む。
【0038】
ある特定の態様において、容器中に詰められた本明細書に記載の抽出乳製品を含む、容器入り抽出乳製品が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、容器は無菌である。いくつかの実施形態において、容器は真空密封されている。いくつかの実施形態において、容器は食品等級の容器である。いくつかの実施形態において、容器は、キャニスタ、ジャー、瓶、袋、箱またはパウチである。
【0039】
いくつかの実施形態において、乳製品は、約500~1150kcal/Lの利用可能なエネルギー含有量を含む。いくつかの実施形態において、乳製品の利用可能なエネルギー含有量の約40~55%が脂質に由来する。いくつかの実施形態において、乳製品は、約95.8~195.2g/Lの高分子含有量を含む。
【0040】
ある特定の態様において、感染性疾患に罹患している患者を処置する方法であって、約6~14グラム/リットル(g/L)のタンパク質成分;約18~89g/Lの脂質成分;約7~14g/Lのヒト乳オリゴ糖(HMO);および約64~77g/Lのラクトースを含む有効量の乳製品であって、前記タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つが、乳製品を前記患者に投与することを含む、方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、乳製品は、1つまたは複数の免疫グロブリンをさらに含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgA、IgGおよびIgMの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、IgAはIgA2(分泌型)およびIgA1(非分泌型)のうちの1つまたは複数を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.2~1.0g/Lの分泌型IgAを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.15~1.6g/Lの総IgAを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.03~0.3g/LのIgGを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.01~0.1g/LのIgMを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、重量で約0.2~2%の免疫グロブリンを含む。いくつかの実施形態において、感染性疾患は胃腸感染症である。いくつかの実施形態において、患者は免疫無防備状態である。
【0042】
ある特定の態様において、胃腸感染症に罹患している乳児を処置する方法であって、約6~14グラム/リットル(g/L)のタンパク質成分;約18~89g/Lの脂質成分;約7~14g/Lのヒト乳オリゴ糖(HMO);および約64~77g/Lのラクトースを含む有効量の乳製品であって、前記タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、乳製品を投与することを含む、方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、乳製品は、1つまたは複数の免疫グロブリンをさらに含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgA、IgGおよびIgMの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、IgAはIgA2(分泌型)およびIgA1(非分泌型)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.2~1.0g/Lの分泌型IgAを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.15~1.6g/Lの総IgAを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.03~0.3g/LのIgGを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.01~0.1g/LのIgMを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、重量で約0.2~2%の免疫グロブリンを含む。
【0043】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下の本開示の説明においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、新鮮なまたはリサイクルされた培地が基底区画に提供され、頂端区画から乳が収集される区画化培養装置中でコンフルエントな単層として増殖された乳腺上皮細胞からの栄養的使用のための乳の収集の例を示す。TEER、経上皮電気抵抗。
【
図2】
図2は、基底面において足場に固定された乳腺上皮細胞のコンフルエントな単層を横切る栄養素の極性化された吸収および乳の分泌の一例を示す。
【
図3】
図3は、乳腺上皮細胞のコンフルエントな単層による栄養素の区画化された吸収および乳の分泌のために増加した表面積を付与する例示的なマイクロパターン化された足場を示す。
【
図4】
図4は、毛細管の束として図示された中空糸バイオリアクター(上)の3つの例を示しており、中空糸バイオリアクターは、毛細管の外側(上および左下)または内側(右下)表面のいずれかを覆う乳腺上皮細胞を支持することができ、方向性を有する区画化された栄養素の吸収および乳の分泌を提供する。
【
図5】
図5は、三次元細胞構築物の断面を例示する。構築物は、内部空洞/基底チャンバを画する内面と外面とを有する足場から構成される。内部空洞/基底チャンバは、細胞培地を含む。マトリックス材料は、足場の外面の上に位置する。細孔は、内面から外面まで足場を横切り、細胞培地がマトリックス材料上に配置された細胞単層の細胞の基底面に接触することを可能にする。
【
図6】
図6は、培養乳製品を生産するためのバイオリアクターを例示する。バイオリアクターは、細胞構築物および頂端チャンバから構成される。細胞構築物は、内部空洞/基底チャンバを画する内面および外面を有する足場から構成される。空洞は、細胞培地を含む。マトリックス材料は、足場の外面の上に位置する。細孔は、内面から外面まで足場を横切り、細胞培地がマトリックス材料上に配置された細胞単層の細胞の基底面に接触することを可能にする。細胞単層の細胞の頂端面は、乳/培養乳製品を頂端チャンバ中に分泌する。頂端チャンバおよび内部空洞/基底チャンバは、細胞単層によって分離されている。
【
図7】
図7は、細胞構築物を例示する。構築物は、内部空洞/基底チャンバを画する内面と外面とを有する足場から構成される。内部空洞/基底チャンバは細胞を含む。
【
図8】
図8は、乳腺上皮細胞(MEC)および形質細胞を有する細胞構築物を例示する。形質細胞は、足場に隣接している。MECは、形質細胞の上方に(いくつかの例では、その間に)コンフルエントな単層を形成し、MECの頂端側は頂端区画(または、乳区画)に面している。形質細胞はIgAを分泌し、次いでIgAはMECの基底外側面上の受容体に結合し、抗体-受容体複合体の内部移行および抗体が頂端面に向かって移動するにつれての抗体のsIgAへのさらなるプロセシングを誘発する(図示せず)。
【
図9】
図9 細胞培養されたヒト乳の製造。(A)中空糸バイオリアクター中での乳の生産のための乳腺上皮細胞の栽培。組織培養フラスコ(1)内でMECを拡大増殖させ、次いで、中空糸バイオリアクター(2)の毛細管外空間中に接種し、毛細管外空間において、MECは、大きな表面積にわたってさらに増殖するために糸の表面を被覆するECM成分に付着する。培地(3)は、蠕動ポンプ(4)によって糸を循環される。グルコース利用の毎日の測定によって、細胞代謝をモニターする(5)。MECがコンフルエンスに達し、接触阻害されたら、プロラクチンを含有する乳腺刺激性配合物に培地を切り替え、毛細管外空間から生成物を採取する(6)。(B)中空糸バイオリアクター中での乳腺上皮細胞の増殖および乳生合成のモニタリング。中空糸バイオリアクター中にヒト一次乳腺上皮細胞を接種した後に、それぞれ糖尿病グルコースモニター(AccuCheck)および蛍光測定ラクトースアッセイ(Sigma-Aldrich)を用いて、グルコース利用(実線)およびラクトース合成(破線)を毎日モニターした。(C)乳タンパク質合成の検出。毛細管外空間から収集された試料を、キャピラリー電気泳動およびヒトβ-カゼインの免疫検出に供した。(D)hMECの中空糸バイオリアクター培養物の頂端(毛細管外空間)区画および基底(培地)区画中の総タンパク質の定量。
【発明を実施するための形態】
【0045】
乳は、哺乳動物の乳腺中で産生される栄養豊富な液体食品である。乳は、他の種類の食物を消化することができるようになる前の乳児哺乳動物(母乳を与えられているヒトを含む)にとって主要な栄養源である。乳は、哺乳動物の乳児の成長および発達を支えるのに理想的である栄養特性および機能特性を有する、数千のユニークな分子から構成される複雑な生体マトリックスである。
【0046】
天然の乳は、タンパク質、脂質、多糖類およびラクトースを含む多くの主要栄養素を含有する。それぞれの種は、その異なる生理学的要求を反映する固有の組成を有する乳を産生する(Beck KL et al.,J Proteome Res.2015;14(5):2143-2157)。乳の組成は種ごとに最適化されているので、母乳はヒト乳児の栄養に関するゴールドスタンダードと考えられており、世界保健機関によって最初の6ヶ月間の排他的栄養源として推奨されている(Mordor Intelligence,Global dairy market(2016-2024))。
【0047】
牛乳と比較して、ヒトの乳はタンパク質がより少ないが、脂肪および炭水化物の含有量はより高い(Ballard O,et al.,Pediatr Clin North Am.2013;60(1):49-74)。多くの成分は重複するが、ヒトとウシでは異なる加工工程を経るため、それらの最終的な立体構造および生理学的特性が異なる。例えば、トリグリセリド中の特定の脂肪酸の位置は牛乳と母乳との間で異なり、これらの差は吸収に影響を及ぼすことが示されている(Andreas NJ et al.,Early Hum Dev.;91(11):629-635)。さらに、ヒトの乳は、発育中の乳児において腸の成熟および免疫に寄与する数百の特有のオリゴ糖を含有し、これらのオリゴ糖はウシをベースとする調製粉乳には欠けている(Totten SM,et al.,J Proteome Res.2012;11(12):6124-6133)。
【0048】
ヒトの乳は、単に栄養的であるだけではない。むしろ、ヒトの乳は、乳児の生存および健康において重大な役割を有する生物活性品質を備えた様々な因子を含有する。哺乳動物からの初期乳は、新生児への保護を与える抗体を含有する。自然乳の疾患と戦う能力に寄与するさらなる因子としては、白血球、ホルモン、抗菌ペプチド、サイトカイン、ケモカイン、および他の生物活性因子が挙げられる。
【0049】
分泌型IgA(sIgA)は、天然の母乳中に見出される。IgAは、乳房組織内に位置する形質細胞によって生産される。IgAは、乳腺上皮細胞の基底面上の受容体(多量体Ig受容体)に結合する。IgAおよび受容体は乳腺上皮細胞中に輸送され、そこで、乳腺細胞は、IgAに結合した多量体Ig受容体の細胞外ドメインを切断し、IgAに結合したIg受容体の可溶性外部ドメイン(「分泌成分」)を残すことによって、IgAを加工する。sIgAは、乳腺上皮細胞の頂端面から分泌される。母乳を介して小児に伝達されるsIgAは、乳児が感染症と戦うことを可能にする乳児の免疫系の不可欠な構成成分である。さらに、sIgAはすべてのヒトの免疫系の重要な構成成分であり、sIgA欠乏には、病気に対する増加した感受性が伴う。sIgAに基づく治療は、感染性疾患の侵入部位において感染性疾患を予防および処置するための機会を提供する。
【0050】
sIgAを分泌する形質細胞の前駆体であるCD20+B細胞を含む免疫細胞は、乳汁分泌していない正常な乳腺組織中に存在する。乳汁分泌の間、乳腺への免疫細胞のホーミングは、乳腺内での感染の予防に役立つ局所的な粘膜免疫に寄与する。さらに、乳腺への免疫細胞のホーミングは、母乳栄養補給を介した乳児へのsIgA抗体の移行を可能にする。
【0051】
残念なことに、sIgAは、その生物活性型へのプロセッシングのために粘膜上皮との協働を必要とする著しく翻訳後修飾された多価のタンパク質集合体であるという事実によって、sIgAの大量生産の取り組みは妨げられる。したがって、天然に存在しない母乳と共に使用するための、またはヒトに対して治療薬として使用するためのsIgAを製造することは困難である。
【0052】
これらは、乳児用調製粉乳が母乳の特性を再現することができないことに寄与する要因のいくつかである。したがって、授乳中の女性によって産生されるヒトの母乳の組成をより厳密に模倣する、乳児および小児を発育させるための改善された乳製品が必要とされている。
【0053】
培養中の乳腺上皮細胞(MEC)は、インビボで観察されるものと同様の組織化および挙動を示すことが以前に実証されている(Arevalo et al.2016 Am J Physiol Cell Physiol.310(5):C348-356;Chen et al.2019 Curr Protoc Cell Biol.82(1):e65)。Arevaloらでは、接着性2-Dプレート、超低接着表面3DマイクロプレートおよびMatrigelで被覆された3Dプレート上で培養した不死化されたウシ乳腺上皮細胞(BME-UV1)および不死化されたウシ乳腺胞巣状細胞(MAC-T)中に、MEC集団の特異的バイオマーカーが検出された。さらに、Chenらでは、ヒト乳房組織からのヒト一次乳腺上皮幹細胞/前駆細胞の単離および培養、ならびにゼラチンスポンジおよびMatrigelマトリックス上での3Dオルガノイド培養を使用したその後のマンモスフェアの生成に関して、プロトコルが詳述されている。しかしながら、ArevaloおよびChenはいずれも、これらのMEC培養物からの乳の生産を刺激することを試みなかった。
【0054】
特に、適切な細胞外マトリックス上で増殖させ、プロラクチンで刺激されると、培養されたウシ乳腺上皮細胞は極性化し、ある特定の乳成分を分泌することができる構造に組織化する(Blatchford et al.1999 Animal Cell Technology:Basic&Applied Aspects 10:141-145)。Blatchfordらでは、ウシMECは極性化し、マンモスフェアを形成した。培養物からカゼインおよびブチロフィリンが単離した。しかしながら、細胞は1つの均一な方向に極性化しなかった。Blatchfordらは、乳タンパク質が細胞間に分布しており、マンモスフェア全体に分散していることに気付いた。均一な極性化配向を欠くために、Blatchfordは、分泌されたタンパク質を培地から単離しなければならなかった。
【0055】
さらに、Blatchfordらにおいて使用されているものなどのインビトロ二次元モデルは、低い表面積対体積比を与える(低密度フォーマット)。細胞接着のために利用可能な表面積は、増殖させることができる細胞の数を制限する。
【0056】
中空糸バイオリアクターなどの高密度フォーマットでマウス乳腺上皮細胞を培養しようとする唯一の公知の試みは、培養乳製品の生産および抽出に必要な区画化を達成することができなかった(Sharfstein et al.,1992,Biotechnology and Bioengineering 40:672-680)。Sharfsteinらでは、COMMA-1D(不死化されたマウス乳腺上皮細胞株)の増殖、機能分化の長期発現および代謝が、拡大バッチ培養および中空糸リアクター培養という2つの異なる系において調べられた。Costar Transwell(登録商標)ポリカーボネート膜細胞培養インサート上に播種されたCOMMA-1Dを使用して、Sharfsteinらは、グルコースおよびラクタートの勾配を維持する頂端側と基底側の間における障壁形成および極性化した代謝が可能なコンフルエントな単層を作製した。しかしながら、中空糸バイオリアクター培養物を使用して、Sharfsteinらは、基底区画と頂端区画の分離を達成することはできなかった。さらに、中空糸培養物において栄養素取り込みが極性化されたかどうかは決定されなかった(Sharfstein et al.1992)。重要なことに、以前の研究は、ヒトまたは他の栄養的に適切な種由来の乳腺上皮細胞を高密度三次元区画化フォーマットで培養することができなかった。
【0057】
本開示は、以下でより詳細に説明される。この説明は、本開示が実施され得るすべての異なる態様、または本開示に追加され得るすべての特徴の詳細な列挙であることを意図するものではない。例えば、一実施形態に関して示された特徴は、他の実施形態に組み込まれることができ、特定の実施形態に関して示された特徴は、その実施形態から削除され得る。本明細書で提案される様々な実施形態に対する多数の変形および追加が、本開示に照らせば当業者には明らかであり、このような変形および追加は本開示から逸脱しない。したがって、以下の明細書は、本開示のいくつかの特定の実施形態を例示することを意図しており、そのすべての並べ替え、組み合わせおよび変形を網羅的に指定することを意図していない。
【0058】
文脈が別段の指示をしない限り、本明細書に記載される開示の様々な特徴は任意の組み合わせで使用できることが特に意図される。さらに、本開示はまた、本開示のいくつかの実施形態においては、本明細書に記載される任意の特徴または特徴の組み合わせを除外または省略することができることを企図している。例示のために、複合体が成分A、BおよびCを含むと本明細書が述べている場合、A、BもしくはCのいずれかまたはそれらの組み合わせは、単独でまたは任意の組み合わせで省略および放棄され得ることが特に意図される。
【0059】
定義
別段の定義が為されなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の開示の説明において使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0060】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに複数形を含まないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、要素、構成要素および/またはこれらの群の存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「X~Y」および「約X~Y」などの語句は、XおよびYを含むと解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「約X~Y」などの語句は、「約X~約Y」を意味する。本明細書で使用される場合、「約XからYまで」などの語句は、「約Xから約Yまで」を意味する。
【0061】
さらに、本開示はまた、いくつかの実施形態においては、本明細書に記載される任意の特徴または特徴の組み合わせを除外または省略することができることを企図している。
【0062】
さらに、本開示の化合物または作用物質の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらに±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という移行句は、列挙された材料または工程および本開示の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されるべきである。したがって、本明細書で使用される「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」と等価であると解釈されるべきではない。
【0064】
本明細書で使用される場合、本開示に記載される組成物は、「ヒトの乳に実質的に類似した栄養組成物」、「乳製品」、「乳組成物」、「培養乳製品」または文脈によって明らかにされる等価物(の単数または複数の形態)として互換的に表記される。
【0065】
本明細書で使用される場合、生成物を「単離する」(または文法的等価物、例えば「抽出する」)によって、出発材料中の他の成分の少なくともいくつかから生成物が少なくとも部分的に分離されていることが意味される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、ペプチドとタンパク質の両方を包含し、特に指示しない限り、特定のアミノ酸長または三次構造を必要としない。
【0067】
「培養乳製品」および「乳製品」という用語は、ヒト乳腺上皮細胞(hMEC)を含む生細胞構築物(または、細胞培養)の頂端面によって分泌される生成物を意味するために互換的に使用される。いくつかの実施形態において、生細胞構築物はバイオリアクター内で培養される。
【0068】
細胞および/または細胞の単層に関して本明細書で使用される「極性化した」という用語は、異なり得る、細胞の2つの別個の表面、例えば頂端面および基底面が存在する細胞の空間的状態を指す。いくつかの実施形態において、極性化した細胞の別個の表面は、異なる表面および/または膜貫通受容体および/または他の構造を備える。いくつかの実施形態において、連続単層中の個々の極性化した細胞は、同様に配向された頂端面および基底面を有する。いくつかの実施形態において、連続単層中の個々の極性化した細胞は、個々の細胞間での相互情報交換を可能にし、頂端区画と基底区画の分離(例えば区画化)を作出するために、情報交換に関する構造(例えば、密着結合)を個々の細胞間に有する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「頂端面」は、外部環境に面するか、または空洞もしくはチャンバ、例えば内臓の空洞に面する細胞の表面を意味する。乳腺上皮細胞に関して、頂端面は、そこから培養乳製品が分泌される表面である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「基底面」は、表面、例えばバイオリアクターのマトリックスと接触している細胞の表面を意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「バイオリアクター」は、本明細書に記載される乳腺細胞から本明細書に記載される培養乳製品の生産を可能にする生物学的に活性な環境を支える装置または系を意味する。
【0072】
本明細書で使用される「乳腺刺激性」という用語は、乳の生産および/または分泌を刺激する能力を指す。遺伝子またはタンパク質(例えば、プロラクチン)は、任意の他の天然および/または合成産物と同様に、乳腺刺激性であり得る。いくつかの実施形態において、乳腺刺激性培地はプロラクチンを含み、それにより、培地と接触している細胞による乳の生産を刺激する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「食品等級」という用語は、例えば、米国食品医薬品局によって設定された基準によって規制されるように、消費(例えば、ヒトおよび/または他の動物の消費)に関して非毒性かつ安全と考えられる材料を指す。
【0074】
細胞構築物
培養された乳腺上皮細胞(不死化されたまたは一次組織試料からの)およびIgA産生細胞、例えば形質細胞の生合成生産物に相当する培養乳製品を生産するための細胞構築物が本明細書に含まれる。ある特定の実施形態において、sIgAを含む培養乳製品を生産するための細胞構築物であって、(a)外面と、内部空洞/基底チャンバを画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(b)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(c)前記内部空洞/基底チャンバ内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(d)前記マトリックス材料上に配置された形質細胞(PC)の集団と;(e)前記形質細胞の集団上に配置された乳腺細胞の連続単層であって、前記乳腺細胞は、(i)乳腺上皮細胞、(ii)乳腺筋上皮細胞および(iii)乳腺前駆細胞からなる群から選択される、乳腺細胞の連続単層とを備える、細胞構築物が本明細書において開示される。
【0075】
乳腺細胞
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、乳生産性乳腺上皮細胞(MEC)、収縮性筋上皮細胞および/または乳腺上皮細胞(MEC)と乳腺収縮性筋上皮細胞の両方を生じ得る前駆細胞を含む。乳腺上皮細胞(MEC)は、乳を生産する唯一の細胞である。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、乳腺上皮細胞(MEC)、一次乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞を含む。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、乳腺の組織生検から得られる。
【0076】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、母乳由来の幹細胞または乳腺の組織生検に由来する乳腺幹細胞に由来する。母乳の上皮成分には、成熟した上皮細胞のみならず、培養されているその前駆体および幹細胞も含まれる。母乳由来の幹細胞の亜集団は、ヒト胚性幹細胞(hESC)に典型的な極めて高い多分化能に似た極めて高い多分化能を示す。乳腺幹細胞はまた、乳腺の組織生検に由来し得、最終分化したMECを含み得る。母乳由来の幹細胞および乳腺の組織生検に由来する乳腺幹細胞の両方が、MECまたは筋上皮細胞を生じ得る多能性細胞である。
【0077】
いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも50%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも55%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも60%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも65%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも70%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも75%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも80%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも85%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも90%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも95%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞培養物の乳腺細胞の少なくとも100%が極性化されている。いくつかの実施形態において、細胞構築物の乳腺細胞の実質的にすべてが極性化されている(すなわち、頂端面および基底面を有する)。いくつかの実施形態において、細胞構築物の実質的にすべての乳腺細胞が極性化されており、実質的にすべての極性化した細胞が同じ方向に配向されている。例えば、いくつかの実施形態において、乳腺細胞の実質的にすべてが頂端面および基底面を有し、実質的にすべての細胞の頂端面が同じ方向に配向されており、実質的にすべての細胞の基底面が同じ方向に配向されている。
【0078】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも70%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも約75%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも約80%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも約85%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも約90%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも約95%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に少なくとも約99%のコンフルエンスを有する。いくつかの実施形態において、乳腺細胞の連続単層は、足場上に100%のコンフルエンスを有する。
【0079】
乳腺細胞に対する遺伝子改変
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、構成的に活性なプロラクチン受容体タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、構成的に活性なヒトプロラクチン受容体タンパク質を含む。一次乳腺上皮細胞または不死化された乳腺上皮細胞が構成的に活性なプロラクチン受容体を含む場合、培地はプロラクチンを含有しない。
【0080】
いくつかの実施形態において、構成的に活性なヒトプロラクチン受容体タンパク質は、アミノ酸9~187の欠失を含み、付番は、配列番号1として特定されるヒトプロラクチン受容体の参照アミノ酸配列に基づく。
【0081】
配列番号1:ヒトプロラクチン受容体(GenBankアクセッション番号AAD32032.1)
【0082】
MKENVASATVFTLLLFLNTCLLNGQLPPGKPEIFKCRSPNKETFTCWWRPGTDGGLPTNYSLTYHREGETLMHECPDYITGGPNSCHFGKQYTSMWRTYIMMVNATNQMGSSFSDELYVDVTYIVQPDPPLELAVEVKQPEDRKPYLWIKWSPPTLIDLKTGWFTLLYEIRLKPEKAAEWEIHFAGQQTEFKILSLHPGQKYLVQVRCKPDHGYWSAWSPATFIQIPSDFTMNDTTVWISVAVLSAVICLIIVWAVALKGYSMVTCIFPPVPGPKIKGFDAHLLEKGKSEELLSALGCQDFPPTSDYEDLLVEYLEVDDSEDQHLMSVHSKEHPSQGMKPTYLDPDTDSGRGSCDSPSLLSEKCEEPQANPSTFYDPEVIEKPENPETTHTWDPQCISMEGKIPYFHAGGSKCSTWPLPQPSQHNPRSSYHNITDVCELAVGPAGAPATLLNEAGKDALKSSQTIKSREEGKATQQREVESFHSETDQDTPWLLPQEKTPFGSAKPLDYVEIHKVNKDGALSLLPKQRENSGKPKKPGTPENNKEYAKVSGVMDNNILVLVPDPHAKNVACFEESAKEAPPSLEQNQAEKALANFTATSSKCRLQLGGLDYLDPACFTHSFH
【0083】
いくつかの実施形態において、構成的に活性なヒトプロラクチン受容体タンパク質は、以下のアミノ酸の欠失を含む:VFTLLLFLNTCLLNGQLPPGKPEIFKCRSPNKETFTCWWRPGTDGGLPTNYSLTYHREGETLMHECPDYITGGPNSCHFGKQYTSMWRTYIMMVNATNQMGSSFSDELYVDVTYIVQPDPPLELAVEVKQPEDRKPYLWIKWSPPTLIDLKTGWFTLLYEIRLKPEKAA(例えば、配列番号1のアミノ酸位置10~178)。
【0084】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、概日性関連遺伝子PER2中に導入された機能喪失変異を含む。いくつかの実施形態において、概日性関連遺伝子PER2中に導入された機能喪失変異は、培養乳成分の増加した合成を促進する。いくつかの実施形態において、PER2遺伝子中の機能喪失変異は、PER2中の348位~434位までの87アミノ酸の欠失を含み、付番は配列番号2として特定されるヒトPER2の参照アミノ酸配列に基づく。
【0085】
配列番号2:ヒトピリオド概日性タンパク質ホモログ2(GenBankアクセッション番号NM022817)
【0086】
MNGYAEFPPSPSNPTKEPVEPQPSQVPLQEDVDMSSGSSGHETNENCSTGRDSQGSDCDDSGKJELGMLVEPPDARQSPDTFSLMMAKSEHNPSTSGCSSDQSSKVDTHKEL1KTLKELKVHLPADKKAKGKASTLATLKYALRSVKQVKANEEYYQLLMSSEGHPCGADVPSYTVEEMESVTSEHIVKNADMFAVAVSLVSGKILYISDQVASIFHCKRDAFSDAKFVEFLAPHDVGVFHSFTSPYKLPLWSMCSGADSFTQECMEEKSFFCRVSVRKSHENEIRYHPFRMTPYLVKVRDQQGAESQLCCLLLAERVHSGYEAPRIPPEKRIFTTTHTPNCLFQDVDERAVPLLGYLPQDLIETPVLVQLHPSDRPLMLAIHKKILQSGGQPFDYSPIRFRARNGEYITLDTSWSSFINPWSRKISFIIGRHKVRVGPLNEDVFAAHPCTEEKALHPSIQELTEQIHRLLLQPVPHSGSSGYGSLGSNGSHEHLMSQTSSSDSNGHEDSRRRRAEICKNGNKTKNRSHYSHESGEQKKKSVTEMQTNPPAEKKAVPAMEKDSLGVSFPEELACKNQPTCSYQQISCLDSVIRYLESCNEAATLKRKCEFPANVPALRSSDKRKATVSPGPHAGEAEPPSRVNSRTGVGTHLTSLALPGKAESVASLTSQCSYSSTIVHVGDKKPQPELEMVEDAASGPESLDCLAGPALACGLSQEKEPFKKLGLTKEVLAAHTQKEEQSFLQKFKEIRKLSIFQSHCHYYLQERSKGQPSERTAPGLRNTSGIDSPWKKTGKNRKLKSKRVKPRDSSESTGSGGPVSARPPLVGLNATAWSPSDTSQSSCPAVPFPAPVPAAYSLPVFPAPGTVAAPPAPPHASFTVPAVPVDLQHQFAVQPPPFPAPLAPVMAFMLPSYSFPSGTPNLPQAFFPSQPQFPSHPTLTSEMASASQPEFPEGGTGAMGTTGATETAAVGADCKPGTSRDQQPKAPLTRDEPSDTQNSDALSTSSGLLNLLLNEDLCSASGSAASESLGSGSLGCDASPSGAGSSDTSHTSKYFGSIDSSENNHKAKMNTGMEESEHFIKCVLQDPIWLLMADADSSVMMTYQLPSRNLEAVLKEDREKLKLLQKLQPRFTESQKQELREVHQWMQTGGLPAAIDVAECVYCENKEKGNICIPYEEDIPSLGLSEVSDTKEDENGSPLNHRIEEQT
【0087】
いくつかの実施形態において、PER2中に導入される機能喪失変異は、以下のアミノ酸の欠失を含む:CLFQDVDERAVPLLGYLPQDLIETPVLVQLHPSDRPLMLAIHKKILQSGGQPFDYSPIRFRARNGEYITLDTSWSSFINPWSRKISFIIGRHKV(例えば、配列番号2のアミノ酸位置341~434)。
【0088】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、改変された細胞内シグナル伝達ドメインを含むプロラクチン受容体をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、概日性関連遺伝子PER2中に導入された機能喪失変異は、個々の培養乳成分の増加した合成を促進する。いくつかの実施形態において、プロラクチン受容体は、エクソン10の位置154がエクソン11の3’配列にスプライシングされているトランケーションを含む。いくつかの実施形態において、プロラクチン受容体は、配列番号3に記載の配列を含む。
【0089】
配列番号3:プロラクチン受容体のヒトアイソフォーム4(GenBankアクセッション番号AF416619;Trott et al.2003 J.Mol.Endocrinol 3Q(l):31-47)
【0090】
MKENVASATVFTLLLFLNTCLLNGQLPPGKPEIFKCRSPNKETFTCWWRPGTDGGLPTNYSLTYHREGETLMHECPDYITGGPNSCHFGKQYTSMWRTYIMMVNATNQMGSSFSDELYVDVTYIVQPDPPLELAVEVKQPEDRKPYLWIKWSPPTLIDLKTGWFTLLYEIRLKPEKAAEWEIHFAGQQTEFKILSLHPGQKYLVQVRCKPDHGYWSAWSPATFIQIPSDFTMNDTTVWISVAVLSAVICLIIVWAVALKGYSMVTCIFPPVPGPKIKGFDAHLLEKGKSEELLSALGCQDFPPTSDYEDLLVEYLEVDDSEDQHLMSVHSKEHPSQGDPLMLGASHYKNLKSYRPRKISSQGRLAVFTKATLTTVQ
【0091】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、プロラクチンタンパク質の改変された(例えば、組換え)エフェクターをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、プロラクチンタンパク質の改変されたエフェクターは、ヤヌスキナーゼ-2(JAK2)チロシンキナーゼドメインを含む。いくつかの実施形態において、改変されたエフェクターは、シグナル伝達および転写活性化因子-5(STAT5)チロシンキナーゼドメイン(例えば、STAT5チロシンキナーゼドメインをコードするポリヌクレオチドの3’末端に連結されたJAK2チロシンキナーゼドメインをコードするポリヌクレオチド)に融合されたJAK2チロシンキナーゼドメインを含む。いくつかの実施形態において、プロラクチンタンパク質の改変されたエフェクターは、個々の培養乳成分の増加した合成を促進する。いくつかの実施形態において、改変されたエフェクターは、配列番号4に記載の配列を有する。太字のアミノ酸は、参照ヒトJAK2アミノ酸配列のアミノ酸位置757~1129のJAK2キナーゼドメインに対応する。
【0092】
配列番号4:JAK2ヒトチロシン-タンパク質キナーゼのアミノ酸757~1129に3’末端において融合されたSTA5Aヒトシグナル伝達および転写活性化因子5A
【0093】
MAGWIQAQQL QGDALRQMQV LYGQHFPIEV RHYLAQWIES QPWDAIDLDN PQDRAQATQL LEGLVQELQK KAEHQVGEDG FLLKIKLGHY ATQLQKTYDR CPLELVRCIR HILYNEQRLV REANNCSSPA GILVDAMSQK HLQINQTFEE LRLVTQDTEN ELKKLQQTQE YFIIQYQESL RIQAQFAQLA QLSPQERLSR ETALQQKQVS LEAWLQREAQ TLQQYRVELA EKHQKTLQLL RKQQTIILDD ELIQWKRRQQ LAGNGGPPEG SLDVLQSWCE KLAEIIWQNR QQIRRAEHLC QQLPIPGPVE EMLAEVNATI TDIISALVTS TFIIEKQPPQ VLKTQTKFAA TVRLLVGGKL NVHMNPPQVK ATIISEQQAK SLLKNENTRN ECSGEILNNC CVMEYHQATG TLSAHFRNMS LKRIKRADRR GAESVTEEKF TVLFESQFSV GSNELVFQVK TLSLPWVIV HGSQDHNATA TVLWDNAFAE PGRVPFAVPD KVLWPQLCEA LNMKFKAEVQ SNRGLTKENL VFLAQKLFNN SSSHLEDYSG LSVSWSQFNR ENLPGWNYTF WQWFDGVMEV LKKHHKPHWN DGAILGFVNK QQAHDLLINK PDGTFLLRFS DSEIGGITIA WKFDSPERNL WNLKPFTTRD FSIRSLADRL GDLSYLIYVF PDRPKDEVFS KYYTPVLAKA VDGYVKPQIK QWPEFVNAS ADAGGSSATY MDQAPSPAVC PQAPYNMYPQ NPDHVLDQDG EFDLDETMDV ARHVEELLRR PMDSLDSRLS PPAGLFTSAR GSLSLDSQ RKLQFYEDRH QLPAPKWAEL ANLINNCMDY EPDFRPSFRA IIRDLNSLFT PDYELLTEND MLPNMRIGAL GFSGAFEDRD PTQFEERHLK FLQQLGKGNF GSVEMCRYDP LQDNTGEWA VKKLQHSTEE HLRDFEREIE ILKSLQHDNI VKYKGVCYSA GRRNLKLIME YLPYGSLRDY LQKHKERIDH IKLLQYTSQI CKGMEYLGTK RYIHRDLATR NILVENENRV KIGDFGLTKV LPQDKEYYKV KEPGESPIFW YAPESLTESK FSVASDVWSF GWLYELFTY IEKSKSPPAE FMRMIGNDKQ GQMIVFHLIE LLKNNGRLPR PDGCPDEIYM IMTECWNNNV NQRPSFRDLA LRVDQIRDN
【0094】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞は不死化される。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)またはサルウイルス40(SV40)をコードする1つまたは複数の核酸を含む。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、p16に対する低分子ヘアピンRNA(shRNA)(サイクリン依存性キナーゼ4の阻害剤)(p16(INK4))ならびに細胞周期開始および増殖代謝の主要制御因子(c-MYC)を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記方法は、(a)改変された細胞内シグナル伝達ドメインを含むプロラクチン受容体をコードするポリヌクレオチドであって、任意で、プロラクチン受容体は、エクソン10の位置154がエクソン11の3’配列にスプライシングされているトランケーションを含む、ポリヌクレオチド;(b)プロラクチンの非存在下で乳合成を活性化することができるリガンドに結合するキメラプロラクチン受容体をコードするポリヌクレオチド;(c)構成的または条件的に活性なプロラクチン受容体タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、任意で、アミノ酸9~187の欠失(例えば、アミノ酸9~187の欠失、付番は、配列番号1として特定されるヒトプロラクチン受容体の参照アミノ酸配列に基づく)を含む構成的に活性なヒトプロラクチン受容体タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド;(d)(i)ヤヌスキナーゼ-2(JAK2)チロシンキナーゼドメインであって、任意で、JAK2チロシンキナーゼドメインはシグナル伝達および転写活性化因子-5(STAT5)チロシンキナーゼドメインに融合されている(例えば、STAT5チロシンキナーゼドメインをコードするポリヌクレオチドの3’末端に連結されたJAK2チロシンキナーゼドメインをコードするポリヌクレオチド)、ヤヌスキナーゼ-2(JAK2)チロシンキナーゼドメイン;および/もしくは(ii)JAK2チロシンキナーゼドメインに融合されたプロラクチン受容体細胞内ドメインを含むプロラクチンタンパク質の改変された(例えば、組換え)エフェクターをコードするポリヌクレオチド;(e)概日性関連遺伝子PER2(ピリオド概日性タンパク質ホモログ2)への機能喪失変異;ならびに/または(f)1つもしくは複数のグルコーストランスポーター遺伝子GLUT1および/もしくはGLUT12をコードし、それによって単層の基底面での栄養素取り込みの速度を増加させるポリヌクレオチドを乳腺細胞に導入することを含む。
【0096】
形質細胞
形質細胞は、ヒトドナーに由来する。いくつかの実施形態において、形質細胞は、骨髄、脾臓、および/またはリンパ節 一次乳腺組織試料に由来する。ある特定の実施形態において、形質細胞は、乳腺細胞以外の粘膜上皮細胞(例えば、口腔鼻組織、胃腸組織または呼吸器組織)に由来する。いくつかの実施形態において、形質細胞は、形質細胞株に由来する。ある特定の実施形態において、形質細胞は、形質細胞株に由来する。いくつかの実施形態において、形質細胞は、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別および/またはマイクロ流体細胞選別を介して非形質細胞から単離され、選別される。いくつかの実施形態において、形質細胞、形質芽球または前形質芽球は、当技術分野で公知のマーカー(例えば、CD38、CD138および/またはCD19)を使用したFACS分析によって選別され、単離される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、不死化された乳腺上皮細胞と共に足場上で栽培され、それにより、形質細胞および乳腺細胞の分泌産物(例えば、sIgA)を含む培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産する。ある特定の実施形態において、形質細胞は、乳腺細胞の単層の下の足場上で増殖される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、乳腺細胞の単層によって覆われた形質細胞の分散された集団として増殖される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、乳腺細胞との共培養中に免疫グロブリンを生産するために刺激される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、IgG、IgMおよびIgAから選択されるクラスの1つまたは複数の免疫グロブリンを生産する。ある特定の実施形態において、形質細胞はIgAを生産する。ある特定の実施形態において、形質細胞はIgAを生産し、IgAは乳腺上皮細胞によって加工されて分泌成分に結合されているsIgAを生成し、sIgAは乳腺細胞の頂端面によって分泌される。
【0097】
足場
いくつかの実施形態において、細胞構築物は、上面/外面および底面/内面を有する足場をさらに備える。いくつかの実施形態において、足場は二次元表面または三次元表面(例えば、三次元のマイクロパターン化された表面、および/または束にまとめられた円筒構造として)である。二次元表面足場の非限定的な例は、Transwell(登録商標)フィルタである。いくつかの実施形態において、足場は三次元表面である。三次元のマイクロパターン化された表面の非限定的な例には、微細構造化されたバイオリアクター、脱細胞化組織(例えば、脱細胞化乳腺または脱細胞化植物組織)、生体材料または生体適合性材料を用いた鋳造または三次元印刷を通じて製造されたマイクロパターン化された足場、凹凸のある表面が含まれる。いくつかの実施形態において、足場は、セルロースナノファイバーおよび/または束にまとめることができる円筒状構造体(例えば、中空糸バイオリアクター)を電界紡糸することによって製造される。いくつかの実施形態において、足場は多孔質である。いくつかの実施形態において、足場は3D足場である。いくつかの実施形態において、三次元足場は、閉鎖された中空の内部/中央空洞を有する任意の構造である。いくつかの実施形態において、三次元足場は、1つまたは複数の表面と接合して、閉鎖された内部チャンバ/基底区画を形成する。例えば、足場は、バイオリアクターの1つまたは複数の壁と接合して、内部チャンバ/基底区画を形成することができる。いくつかの実施形態において、足場は中空糸バイオリアクターである。いくつかの実施形態において、3D足場は、中央の空洞が足場の内面によって画される管である。いくつかの実施形態において、3D足場は、中央の空洞が足場の内面によって画される中空の球体である。
【0098】
腸血液関門をシミュレートし、薬物および栄養素の能動輸送と受動輸送の両方を可能にするために頂端側空間と基底側空間の両方を提供するので、腸吸収の研究のためのインビトロ培養法のために、Transwells(登録商標)などの二次元表面足場が、長く標準として使用されてきた。しかしながら、平坦な支持体上に播種された細胞は、1つには3D細胞外微小環境の提示が不十分であるために、インビボでの細胞に対して著しく異なる表現型を呈する。
【0099】
三次元足場は、細胞(例えば、MECおよび形質細胞)が3つの次元全てにおいて細胞の周囲と成長または相互作用することを可能にする。2D環境とは異なり、3D細胞培養は、インビトロで細胞があらゆる方向に成長することを可能にし、インビボ乳房環境に近い。さらに、3D足場は、細胞の培養のためにならびに代謝産物およびガス交換のためにより大きな表面積を可能にし、さらに必要な区画化を可能にし、細胞培地を別の区画内の乳腺細胞および形質細胞と接触させながら、培養乳製品を1つの区画内に分泌させることを可能にする。今日まで、3D表面上の乳腺上皮細胞を用いた基底細胞表面と頂端細胞表面の極性化した分離を伴うコンフルエントな単層は達成されていない(Sharfstein et al 1992)。
【0100】
いくつかの実施形態において、足場は多孔質である。いくつかの実施形態において、足場は細胞培地に対して透過性であり、細胞培地が細胞単層の細胞と接触することを可能にする。いくつかの実施形態において、細胞培地が細胞単層の細胞の基底面に接触することを可能にする少なくとも1つの細孔が足場を横切っている。
【0101】
いくつかの実施形態において、足場の上面/外面は、マトリックス材料で被覆されている。いくつかの実施形態において、マトリックスは、1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質から構成されている。細胞外マトリックスタンパク質の非限定的な例としては、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、テネイシンおよび/またはフィブロネクチンが挙げられる。いくつかの実施形態において、足場は、天然ポリマー、生体適合性合成ポリマー、合成ペプチド、および/またはこれらの任意の組み合わせに由来する複合材料を含む。いくつかの実施形態において、本発明で有用な天然ポリマーには、コラーゲン、キトサン、セルロース、アガロース、アルギナート、ゼラチン、エラスチン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸および/またはヒアルロン酸が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明で有用な生体適合性合成ポリマーには、セルロース、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンコ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリラートポリマー、および/またはポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、足場の上部はラミニンおよびコラーゲンで被覆されている。
【0102】
いくつかの実施形態において、マトリックス材料は多孔質である。いくつかの実施形態において、マトリックス材料は細胞培地に対して透過性であり、細胞培地が細胞単層の細胞と接触することを可能にする。いくつかの実施形態において、細胞培地が細胞単層の細胞の基底面に接触することを可能にする少なくとも1つの細孔がマトリックス材料を横切っている。
【0103】
いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.1μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.2μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.3μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.4μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.5μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.6μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.7μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.8μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約0.9μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.0μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.1μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.2μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.3μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.4μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.5μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.6μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.7μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.8μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約1.9μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.0μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.1μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.2μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.2μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.3μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.4μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.5μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.6μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.7μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.8μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約2.9μmである。いくつかの実施形態において、足場および/またはマトリックス材料の細孔径は、少なくとも約3.0μmである。
【0104】
いくつかの実施形態において、細胞構築物は、(a)外面と、内部空洞/基底チャンバを画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(b)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(c)前記内部空洞/基底チャンバ内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(d)前記マトリックス材料上に配置された形質細胞(PC)の集団と;(e)前記形質細胞の集団上に配置された乳腺細胞の連続単層であって、前記乳腺細胞は、(i)乳腺上皮細胞、(ii)乳腺筋上皮細胞および(iii)乳腺前駆細胞からなる群から選択され、前記連続単層乳腺上皮細胞は、頂端面および基底面を有する(例えば、極性化したコンフルエントな細胞単層からの細胞)、乳腺細胞の連続単層とを備える。
【0105】
バイオリアクター
ある特定の実施形態において、(a)培養乳製品を含む頂端区画と、(b)少なくとも1つの細胞構築物とを備えるバイオリアクターであって、前記少なくとも1つの細胞構築物は、(a)外面と、内部空洞/基底チャンバを画する内面と、前記内面から前記外面まで伸びる複数の細孔とを有する三次元足場と;(b)前記三次元足場の前記外面上に配置されたマトリックス材料と;(c)前記内部空洞/基底チャンバ内に配置され、前記内部表面と流体接触している培地と;(d)前記マトリックス材料上に配置された形質細胞(PC)の集団と;(e)前記形質細胞の集団上に配置された乳腺細胞の連続単層であって、前記乳腺細胞は、(i)乳腺上皮細胞、(ii)乳腺筋上皮細胞および(iii)乳腺前駆細胞からなる群から選択される、乳腺細胞の連続単層とを備える、バイオリアクターが本明細書において開示される。ある特定の実施形態において、バイオリアクターの細胞構築物は、マトリックス材料上に配置された極性化した乳腺細胞の少なくとも70%コンフルエントな単層を備え、乳腺細胞は、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞からなる群から選択され、乳腺細胞の頂端面は頂端区画と流体接触している。
【0106】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターは密閉されたバイオリアクターである。いくつかの実施形態において、頂端チャンバは、内部空洞/基底区画から実質的に分離されている。
【0107】
中空糸バイオリアクターは、本明細書に開示される方法と共に使用するための例示的なバイオリアクターである。中空糸バイオリアクターは、細胞がインビボで増殖する環境に極めて近い高密度の連続灌流培養系である。中空糸バイオリアクターは、入口ポートと出口ポートが取り付けられたカートリッジ外殻内に並列された数千の半透性3D足場(すなわち、中空糸)からなる。カートリッジの末端に入るあらゆる液体が必ず糸の内部を通って流れるように、これらの糸の束は、それぞれの末端においてポッティングまたは封止される。細胞は、一般に、毛細管外空間(ECS)中、カートリッジ内で繊維の外側に播種される。
【0108】
以下の3つの基本的な特徴によって、中空糸細胞培養は他の方法から区別される。(1)細胞は、プラスチック皿、微小担体または他の不透過性支持体ではなく、インビボでの場合と概ね同様に多孔質マトリックスに結合している、(2)支持マトリックスの分子量カットオフを制御することができる、(3)宿主細胞の効率的な増殖のための代謝産物および気体交換のために大きな面積を与える非常に高い表面積対体積比(150cm2/mLまたはそれを超える)。
【0109】
バイオリアクター構造は、細胞の廃棄物のみならず、栄養素、気体およびその他の基本培地成分を透過させるが、細胞は透過させない繊維マトリックスを提供し、細胞をそこで増幅させることができる。中空糸バイオリアクター技術は、細胞増殖チャンバと培地流との間に半透性障壁を設けるために中空糸を利用することによって高密度細胞増幅を得るために使用されてきた。この設計によって提供される表面積は大きいので、培養基材としてこの糸を使用することにより、多数の細胞の生産が可能になる。バイオリアクター内の三次元環境で増殖する細胞は、中空糸を通って灌流する際に新鮮な培地中に浸される。
【0110】
腸の形状を再現するために、Costelloらは、マイクロモールディングを介して両方とも多孔性絨毛足場を含有することができる3D印刷されたバイオリアクターを開発した(Costello et al.2017 Scientific Reports 7(12515):1-10)。この幾何学的に複雑な成形された足場は、流体の流れが腸上皮細胞を生理学的に適切な剪断応力にさらすように、頂端空間と基底外側空間を分離した(Costello et al.2017)。同様に、頂端面上に低酸素富栄養素環境を生成させながら、2つの制御された別々の環境(二相性)が基底層からの酸素および栄養素を宿主細胞に提供することを可能にした中空糸バイオリアクターを使用して、Moradaらによって、模倣した腸様環境での長期培養インビトロ培養が作り出された(Morada et al.2016 International Journal for Parasitology 26:21-29)。
【0111】
中空糸バイオリアクターを構成する際には、細胞の拡大に関連する目標に応じて変更することができる設計上の考慮事項およびパラメータが存在する。このような設計上の考慮事項の1つは、糸の壁中の細孔のサイズである。細孔のサイズは、一般に、栄養素の細胞への移動を可能にし、廃棄物を取り除き、細胞に所望の生成物(成長因子など)を提供し、細胞から所望の生成物を取り出し、存在し得るある種の因子が細胞に到達しないようにするように設計される。したがって、どの成分が壁を通過するかを修正するために、糸の壁の孔径は変化させることができる。例えば、孔径は、上皮成長因子および血小板由来成長因子を含むがこれらに限定されない成長因子を含む大きなタンパク質性分子を通過させることができる。当業者は、糸の壁を通過して細胞に到達することまたは細胞から材料を運ぶことが望ましい成分に応じて孔径をどのように変化させるかを理解するであろう。
【0112】
いくつかの実施形態において、細孔径は約0.2μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.1である。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.2μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.3μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.4μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.5μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.6μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.7μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.8μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約0.9μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.0μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.1μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.2μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.3μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.4μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.5μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.6μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.7μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.8μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約1.9μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.0μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.1μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.2μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.2μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.3μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.4μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.5μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.6μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.7μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.8μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約2.9μmである。いくつかの実施形態において、細孔径は約3.0μmである。
【0113】
細胞構築物を作製する方法
ある特定の実施形態において、免疫グロブリンを含む培養乳製品を生産するための細胞構築物を作製する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)形質細胞と乳腺細胞(すなわち、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞)の混合集団を生産するために、(i)単離された乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞と、(ii)単離された形質細胞とを、上面および下面を有する足場の上面に堆積させることと;(b)形質細胞に隣接し、形質細胞の上方に位置する極性化した乳腺細胞の単層を生産するために、(a)の乳腺細胞と形質細胞の混合集団を足場上で栽培し、形質細胞は足場の上面に隣接して足場の上面の上方に位置し、上面は足場の下面に隣接して足場の下面の上方に位置し、極性化した乳腺細胞は頂端面および基底面を備え、それにより培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産することと、を含む。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は一次乳腺細胞である。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は細胞培養物に由来する。いくつかの実施形態において、乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞は、骨髄、脾臓組織、リンパ節組織、乳腺組織(例えば、乳房、ウシおよびヤギなどの乳房、乳首組織)からの乳腺外植片、または生の母乳から単離される。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は乳腺上皮細胞を含む。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は乳腺筋上皮細胞を含む。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は乳腺前駆細胞を含む。いくつかの実施形態において、形質細胞は、任意の適切なヒト組織または細胞培養物から単離される。いくつかの実施形態において、乳腺細胞および形質細胞は同時に堆積される。いくつかの実施形態において、形質細胞は、乳腺細胞の堆積の前に足場の表面上に堆積される。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記方法は、(a)形質細胞と不死化された乳腺細胞(すなわち、不死化された乳腺上皮細胞、不死化された乳腺筋上皮細胞および/または不死化された乳腺前駆細胞)の混合集団を生産するために、(i)単離された不死化された乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞と、(ii)単離された形質細胞とを、上面および下面を有する足場の上面に堆積させることと;(b)形質細胞に隣接し、形質細胞の上方に位置する極性化した不死化された乳腺細胞の単層を生産するために、(a)の不死化された乳腺細胞と形質細胞の混合集団を足場上で栽培し、形質細胞は足場の上面に隣接して足場の上面の上方に位置し、上面は足場の下面に隣接して足場の下面の上方に位置し、極性化した不死化された乳腺細胞は頂端面および基底面を備え、それにより培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産することと、を含む。いくつかの実施形態において、不死化された乳腺細胞は、不死化された乳腺上皮細胞を含む。いくつかの実施形態において、不死化された乳腺細胞は、不死化された乳腺筋上皮細胞を含む。いくつかの実施形態において、不死化された乳腺細胞は、不死化された乳腺前駆細胞を含む。いくつかの実施形態において、形質細胞は、任意の適切なヒト組織または細胞培養物から単離される。いくつかの実施形態において、不死化された乳腺細胞および形質細胞は同時に堆積される。いくつかの実施形態において、形質細胞は、不死化された乳腺細胞の堆積の前に足場の表面上に堆積される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、乳腺細胞と形質細胞の共培養物を生産するために、不死化された乳腺上皮細胞の培養物に添加される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、足場上の不死化された乳腺上皮細胞とともに栽培され、それにより、免疫細胞および乳腺細胞の分泌産物(例えば、sIgA)を含む培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産する。ある特定の実施形態において、単離された乳腺細胞は、該細胞の共培養の前に不死化される。
【0115】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、共培養中に免疫グロブリンを生産するために刺激される。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、IgG、IgMおよびIgAから選択されるクラスの1つまたは複数の免疫グロブリンを生産する。ある特定の実施形態において、免疫細胞は分泌型IgAを生産する。免疫細胞によって生産される免疫グロブリンのクラスには、1つまたは複数のIgA、IgMおよびIgGが含まれる。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、本明細書に記載される方法に従ってバイオリアクター内でMECと共培養される。ある特定の実施形態において、バイオリアクターは、本明細書に記載される中空糸バイオリアクターである。
【0116】
ある特定の実施形態において、乳生産を刺激および最適化するために、本明細書に記載される方法に従って、乳腺細胞はプロラクチンで改変および/または刺激される。ある特定の実施形態において、乳腺細胞は、構成的に活性なプロラクチン受容体タンパク質を発現するように改変される。
【0117】
ある特定の実施形態において、乳腺細胞が同定され、乳腺組織試料から単離される。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別および/またはマイクロ流体細胞選別を介して単離され、選別される。ある特定の実施形態において、乳腺上皮細胞集団は、細胞集団を同定するための当技術分野で公知のマーカーを使用するFACS分析によって選別される。ある特定の実施形態において、筋上皮乳腺細胞および管腔上皮乳腺細胞は、FACS分析によって単離される。ある特定の実施形態において、前駆筋上皮乳腺細胞および/または前駆管腔上皮乳腺細胞は、FACS分析によって単離される。乳腺上皮細胞(例えば、管腔上皮細胞)、筋上皮細胞、前駆細胞および免疫細胞を選別するための当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用することができる。例えば、乳腺細胞は、細胞表面マーカーであるCD24、EPCAMおよび/またはCD49fを用いて選別することができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、形質細胞が同定され、一次粘膜組織(例えば、口腔鼻、胃腸、呼吸器または乳腺)から単離される。いくつかの実施形態において、形質細胞が同定され、一次乳腺組織試料から単離される。いくつかの実施形態において、形質細胞は、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別および/またはマイクロ流体細胞選別を介して単離され、選別される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、FACS分析によって選別され、単離される。ある特定の実施形態において、形質細胞、形質芽球または前形質芽球は、当技術分野で公知のマーカー(例えば、CD20、CD38、CD138および/またはCD19)を使用するFACS分析によって選別され、単離される。
【0119】
いくつかの実施形態において、細胞構築物のための乳腺細胞および形質細胞の培養および/または栽培は、約35℃~約39℃の温度(例えば、35℃、35.5℃、36℃、36.5℃、37℃、37.5℃、38℃、38.5℃もしくは約39℃の温度、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば、約35℃~約38℃、約36℃~約39℃、約36.5℃~約39℃、約36.5℃~約37.5℃または約36.5℃~約38℃)で行われる。いくつかの実施形態において、培養および/または栽培することは、約37℃の温度で行われる。
【0120】
いくつかの実施形態において、細胞構築物のための乳腺細胞および形質細胞の培養および/または栽培は、約4%~約6%のCO2の大気濃度、例えば約4%、4.25%、4.5%、4.75%、5%、5.25%、5.5%、5.75%もしくは6%のCO2の大気濃度、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば約4%~約5.5%、約4.5%~約6%、約4.5%~約5.5%もしくは約5%~約6%)で行われる。いくつかの実施形態において、培養および/または栽培することは、約5%のCO2の大気濃度で行われる。
【0121】
いくつかの実施形態において、細胞構築物のための乳腺細胞および形質細胞の培養および/または栽培は、概ね毎日~約10日ごと(例えば、1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、またはこれらの中の任意の値もしくは範囲、例えば、概ね毎日~3日ごと、約3日ごと~10日ごと、約2日ごと~5日ごと)に交換される培地中で培養および/または栽培することを含む。いくつかの実施形態において、培養および/または栽培は、概ね毎日~約数時間~約10日ごと、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24時間ごと~約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日ごと、またはその中の任意の値もしくは範囲ごとに交換される培地中で培養することをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、培養および/または栽培は、約12時間ごと~約10日ごと、約10時間ごと~約5日ごと、または約5時間ごと~約3日ごとに交換される培地中で培養および/または栽培することをさらに含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、細胞構築物は、冷凍庫または液体窒素中で保存される。保存温度は、所望される保存の長さに依存する。例えば、6ヶ月以内(例えば、1、2、3、4、5、または6ヶ月以内)に細胞が使用されることが予定される場合、冷凍庫温度(例えば、約0℃~約-80℃またはそれより低い、例えば、約0℃、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、-70℃、-80℃、-90℃、-100℃またはその中の任意の値もしくは範囲の温度での保存)が使用され得る。例えば、より長期間の保存(例えば、6ヶ月またはそれより長い、例えば、6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月、または1、2、3、4、5、6年もしくはそれを超える保存)のために、液体窒素が使用され得る(例えば、-100℃またはそれより低い温度(例えば、約-100℃、-110℃、-120℃、-130、-140、-150、-160、-170、-180、-190℃、-200℃またはそれより低い)での保存。
培養乳製品
【0123】
本開示は、授乳中の女性によって生産されるヒト母乳を模倣するタンパク質、脂質およびオリゴ糖成分ならびに成分濃度を含む培養乳製品に関し、この組成物は、少なくとも一部は、インビトロおよび/またはエクスビボで培養された乳腺細胞によって生産される。
【0124】
いくつかの実施形態において、細胞の入力および培養条件に応じて、2つの組成的に定義された製品:(a)培養された乳腺上皮細胞(不死化されたまたは一次組織試料からの)の生合成生産物に相当する機能的栄養製品;および(b)形質細胞(PC)を乳腺上皮細胞と共培養した場合に生産される、免疫グロブリンをさらに含む類似の製品を得ることができる。形質細胞は、一次乳腺組織試料に、または例えば形質細胞株に由来し得る。
【0125】
本開示の企図される製品組成物は、タンパク質、脂質および炭水化物の総レベルによって(表1A~1C)、ならびに/またはヒトの乳と一致する濃度および割合で存在する特定の主要栄養素成分のシグネチャ(表2A~2C)によって定義することができる。
【0126】
【表1】
HMO、ヒト乳オリゴ糖。MEC、乳腺上皮細胞;PC、形質細胞。
a非免疫グロブリンタンパク質含有量。
b免疫グロブリン含有量を欠く製剤は、形質細胞の非存在下でのMEC培養物に由来し得る。免疫グロブリン含有量を有する製剤は、形質細胞とのMECの共培養によって得ることができる。
c長鎖脂肪酸リノール酸およびα-リノール酸は哺乳動物の細胞によって合成されず、細胞培地中に補充される。
【0127】
【表2】
HMO、ヒト乳オリゴ糖。MEC、乳腺上皮細胞;PC、形質細胞。
a非免疫グロブリンタンパク質含有量。
b免疫グロブリン含有量を欠く製剤は、形質細胞の非存在下でのMEC培養物に由来し得る。免疫グロブリン含有量を有する製剤は、形質細胞とのMECの共培養によって得ることができる。
c長鎖脂肪酸リノール酸およびα-リノール酸は哺乳動物の細胞によって合成されず、細胞培地中に補充される。
【0128】
【表3】
HMO、ヒト乳オリゴ糖。MEC、乳腺上皮細胞;PC、形質細胞。
a非免疫グロブリンタンパク質含有量。
b免疫グロブリン含有量を欠く製剤は、形質細胞の非存在下でのMEC培養物に由来し得る。免疫グロブリン含有量を有する製剤は、形質細胞とのMECの共培養によって得ることができる。
c長鎖脂肪酸リノール酸およびα-リノール酸は哺乳動物の細胞によって合成されず、細胞培地中に補充される。
【0129】
いくつかの実施形態において、表1A~1Cに示される成分の濃度は、例えば、0.1倍、または0.2倍、または0.3倍、または0.4倍、または0.5倍、または0.6倍、または0.7倍、または0.8倍、または0.9倍、または1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10倍によって示される濃度よりも高い濃度を有することによって、それぞれ個別に変化し得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、表1A~1Cに示される成分の濃度は、例えば、0.1倍、または0.2倍、または0.3倍、または0.4倍、または0.5倍、または0.6倍、または0.7倍、または0.8倍、または0.9倍によって示される濃度よりも低い濃度を有することによって、それぞれ個別に変化し得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、表1A~1Cの成分(すなわち、高分子画分)のサブセットを含む乳製品が本明細書で企図される。他の実施形態において、本明細書で企図される乳製品は、表1A~1Cの成分(すなわち、高分子画分)の1つまたは複数を除外することができる。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
いくつかの実施形態において、表2A~Cに示される成分の濃度は、例えば、0.1倍、または0.2倍、または0.3倍、または0.4倍、または0.5倍、または0.6倍、または0.7倍、または0.8倍、または0.9倍、または1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10倍によって示される濃度よりも高い濃度を有することによって、それぞれ個別に変化し得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、表2A~Cに示される成分の濃度は、例えば、0.1倍、または0.2倍、または0.3倍、または0.4倍、または0.5倍、または0.6倍、または0.7倍、または0.8倍、または0.9倍によって示される濃度よりも低い濃度を有することによって、それぞれ個別に変化し得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、表2A~Cの成分(すなわち、高分子画分)のサブセットを含む乳製品が本明細書で企図される。他の実施形態において、本明細書で企図される乳製品は、表2A~Cの成分(すなわち、高分子画分)の1つまたは複数を除外することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、血清アルブミンをさらに含む乳製品が本明細書で企図される。いくつかの実施形態において、血清アルブミンは、約0.025~3.5g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、血清アルブミンは、約0.01~2g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、血清アルブミンは、約0.15~1g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、血清アルブミンは、約0.2~0.7g/Lの濃度を有することができる。
【0142】
本開示の一態様は、約6~14グラム/リットル(g/L)のタンパク質成分;約18~89g/Lの脂質成分;約7~14g/Lのヒト乳オリゴ糖(HMO);および約64~77g/Lラクトースを含む乳製品であって、タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される、乳製品を対象とする。
【0143】
いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、乳製品の乾燥重量の約55~65%を構成する。いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、β-カゼイン、κ-カゼインおよびα-カゼインのうちの1つまたは複数を含み、いくつかの実施形態において、β-カゼインは、約0.5~1.5g/Lの濃度を有することができ、κ-カゼインは、約0.5~0.6g/Lの濃度を有することができ、α-カゼインは、乳製品において約0.1~0.5g/Lの濃度を有することができる。乳製品のいくつかの実施形態において、β-カゼイン、κ-カゼインおよびα-カゼインは、合わせて、タンパク質成分の約35~45%乾燥重量パーセントを構成する。いくつかの実施形態において、β-カゼインは、全カゼイン含有量の約50%超を構成する。
【0144】
いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、例えば、α-ラクトアルブミン、リゾチーム、ラクトフェリン、ハプトコリン、ブチロフィリン、オステオポンチン、ムチンMC5、ムチンBrE3およびラクトアドヘリンの1つまたは複数をさらに含む。いくつかの実施形態は、血清アルブミンをさらに含む。乳製品のいくつかの実施形態において、α-ラクトアルブミンは、約2.7~3.3g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、リゾチームは、約0.2~0.5g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ラクトフェリンは、約1.0~2.0g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、ハプトコリンは約0.07~0.7g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ブチロフィリンは約0.03~0.05g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、オステオポンチンは約0.05~0.2g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ムチンMC5は約0.5~0.6g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、ムチンBrE3は約0.5~0.7g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ラクトアドヘリンは約0.06~0.07g/Lの濃度を有し得る。いくつかの実施形態において、血清アルブミンは、約0.025~3.5g/L、または約0.01~2g/L、または約0.15~1g/L、または約0.2~0.7g/Lの濃度を有することができる。
【0145】
乳製品のいくつかの実施形態において、タンパク質成分はヒト起源のものである。
【0146】
いくつかの実施形態において、脂質成分は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、コレステロール、リン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質の1つまたは複数を含む。乳製品のいくつかの実施形態において、飽和脂肪酸は、約5~34g/Lの濃度を有することができる。飽和脂肪酸は、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸およびラウリン酸ならびにこれらの組み合わせの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、パルミチン酸は、少なくとも約50%のsn-2型を含む。乳製品のいくつかの実施形態において、パルミチン酸は約3~18g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ステアリン酸は約0.7~5g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ラウリン酸は約0.5~5g/Lの濃度を有することができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、一価不飽和脂肪酸は、乳製品の約7~46g/Lの濃度を有することができる。飽和脂肪酸成分は、例えば、オレイン酸を含むことができ、いくつかの実施形態において、オレイン酸は、少なくとも約50%のsn-1型を含み、いくつかの実施形態において、オレイン酸は、乳製品中で約7~45g/Lの濃度を有することができる。
【0148】
乳製品のいくつかの実施形態において、多価不飽和脂肪は、約2~20g/Lの濃度を有することができる。多価不飽和脂肪は、例えば、リノール酸、α-リノレン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸およびドコサヘキサジエン酸の1つまたは複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、リノール酸は少なくとも約50%のsn-3型を含み、いくつかの実施形態において、リノール酸は約2~19g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、α-リノレン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、エイコサジエン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、アラキドン酸は約0.5 0.7g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、ジホモ-γ-リノレン酸は約0.3~0.5g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、ドコサヘキサジエン酸は約0.02~0.4g/Lの濃度を有することができる。乳製品のいくつかの実施形態は、上記の多価不飽和脂肪のすべてを含み、リノール酸は約2~19g/Lの濃度を有することができ、α-リノレン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有することができ、エイコサジエン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有することができ、アラキドン酸は約0.5~0.7g/Lの濃度を有することができ、ジホモ-γ-リノレン酸は約0.3~0.5g/Lの濃度を有することができ、ドコサヘキサジエン酸は乳製品中で約0.02~0.4g/Lの濃度を有することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、コレステロールは、乳製品中で約0.09~0.15g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、リン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質は合わせて、乳製品中で約0.1~0.4g/Lの濃度を有することができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、乳製品は、1つもしくは複数の中性オリゴ糖、1つもしくは複数の酸性オリゴ糖、または中性オリゴ糖および酸性オリゴ糖のそれぞれ1つもしくは複数を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、2’-FL(2’-フコシルラクトース)、DF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、LNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、LNT(ラクト-N-テトラオース)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、DF-L(ジフコシルラクトース)および3-FL(3-フコシルラクトース)を含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、6’-SL(6’-シアリルラクトース)、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、FS-LNnHI(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約1~4g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、2’-FL(2’-フコシルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約1~4g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、DF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約1~4g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.5~2g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNDFH I(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.2~2g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNT(ラクト-N-テトラオース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.3~1.5g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.5~1.5g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖はDF-L(ジフコシルラクトース)を含み、このオリゴ糖は乳製品中で約0.1~1g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は3-FL(3-フコシルラクトース)を含み、このオリゴ糖は乳製品の約0.2~1.5g/Lの濃度を有することができる。
【0154】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、6’-SL(6’-シアリルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.2~1.2g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.05~1g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.05~0.7g/Lの濃度を有することができ、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.05~0.7g/Lの濃度を有することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含み、このオリゴ糖は、乳製品中で約0.1~0.3g/Lの濃度を有することができる。
【0155】
乳製品のいくつかの実施形態において、1つまたは複数の中性オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、2’-FL(2’-フコシルラクトース)、DF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、LNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、LNT(ラクト-N-テトラオース)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、DF-L(ジフコシルラクトース)および3-FL(3-フコシルラクトース)を含み、1つまたは複数の酸性オリゴ糖は、6’-SL(6’-シアリルラクトース)、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、乳製品は、約1~4g/LのTF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)を含み、約1~4g/Lの2’-FL(2’-フコシルラクトース)を含み、約1~4g/LのDF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)を含み、約0.5~2g/LのLNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)を含み、約0.2~2g/LのLNDFH I(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)を含み、約0.3~1.5g/LのLNT(ラクト-N-テトラオース)を含み、約0.5~1.5g/LのLNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)を含み、約0.1~1g/LのDF-L(ジフコシルラクトース)を含み、約0.2~1.5g/Lの3-FL(3-フコシルラクトース)を含み、約0.2~1.2g/Lの6’-SL(6’-シアリルラクトース)を含み、約0.05~1g/LのDS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)を含み、約0.05~0.7g/LのFS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)を含み、約0.05~0.7g/LのLSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)を含み、約0.1~0.3g/Lの3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、中性オリゴ糖含有量は、酸性オリゴ糖含有量より重量で少なくとも約2倍、または約3倍、または約4倍、または約5倍、または約6倍、または約7倍、または約8倍、または約9倍、または約10倍、または約11倍、または約12倍、または約13倍、または約14倍、または約15倍多くを占める。
【0158】
本開示の別の態様では、乳製品であって、約6~14グラム/リットル(g/L)のタンパク質成分、約18~89g/Lの脂質成分、約7~14g/Lのヒト乳オリゴ糖(HMO)および約64~77g/Lのラクトースを含み、前記タンパク質成分は、β-カゼイン、κ-カゼインおよびα-カゼイン、α-ラクトアルブミン、リゾチーム、ラクトフェリン、ハプトコリン、ブチロフィリン、オステオポンチン、ムチンMC5、ムチンBrE3およびラクトアドヘリンの1つまたは複数を含み、前記脂質成分は、パルミチン酸、ステアリン酸およびラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、ドコサヘキサジエン酸、コレステロール、リン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質の1つまたは複数を含み、前記ヒト乳オリゴ糖は、TF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)、2’-FL(2’-フコシルラクトース)、DF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)、LNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)、LNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)、LNT(ラクト-N-テトラオース)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)、DF-L(ジフコシルラクトース)および3-FL(3-フコシルラクトース)、6’-SL(6’-シアリルラクトース)、DS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)、FS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)、LSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)および3’-SL(3’-シアリルラクトース)の1つまたは複数を含み、前記タンパク質成分、脂質成分、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される、乳製品が提供される。いくつかの実施形態において、乳製品は、血清アルブミンをさらに含む。
【0159】
いくつかの実施形態において、乳製品は、約0.5~1.5g/Lのβ-カゼインを含み、約0.5~0.6g/Lのκ-カゼインを含み、約0.1~0.5g/Lのα-カゼインを含み、約2.7~3.3g/Lのα-ラクトアルブミンを含み、約0.2~0.5g/Lのリゾチームを含み、約1.0~2.0g/Lのラクトフェリンを含み、約0.07~0.7g/Lのハプトコリンを含み、約0.03~0.05g/Lのブチロフィリンを含み、約0.05~0.2g/Lのオステオポンチンを含み、約0.5~0.6g/LのムチンMC5を含み、約0.5~0.7g/LのムチンBrE3を含み、約0.06~0.07g/Lのラクトアドヘリンを含み、約2~19g/Lのリノール酸を含み、約0.5~0.7g/Lのα-リノレン酸を含み、約0.5~0.7g/Lのエイコサジエン酸を含み、約0.5~0.7g/Lのアラキドン酸を含み、約0.3~0.5g/Lのジホモ-γ-リノレン酸を含み、約0.02~0.4g/Lのドコサヘキサジエン酸を含み、約0.09~0.15g/Lのコレステロールを含み、合わせて約0.1~0.4g/Lのリン脂質、プラスマローゲンおよびスフィンゴ脂質を含み、約1~4g/LのTF-LNH(トリフコシルラクト-N-ヘキソース)を含み、約1~4g/Lの2’-FL(2’-フコシルラクトース)を含み、約1~4g/LのDF-LNH II(ジフコシルラクト-N-ヘキサオース)を含み、約0.5~2g/LのLNFP I(ラクト-N-フコペンタオースI)を含み、約0.2~2g/LのLNDFHI(ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI)を含み、約0.3~1.5g/LのLNT(ラクト-N-テトラオース)を含み、約0.5~1.5g/LのLNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)を含み、約0.1~1g/LのDF-L(ジフコシルラクトース)を含み、約0.2~1.5g/Lの3-FL(3-フコシルラクトース)を含み、約0.2~1.2g/Lの6’-SL(6’-シアリルラクトース)を含み、約0.05~1g/LのDS-LNT(ジシアリルラクト-N-テトラオース)を含み、約0.05~0.7g/LのFS-LNnH I(フコシル-シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI)を含み、約0.05~0.7g/LのLSTc(シアリル-ラクト-N-テトラオースc)を含み、約0.1~0.3g/Lの3’-SL(3’-シアリルラクトース)を含む。いくつかの実施形態において、乳製品は血清アルブミンをさらに含み、血清アルブミンは、約0.025~3.5g/L、または約0.01~2g/L、または約0.15~1g/L、または約0.3~0.7g/Lの濃度を有する。
【0160】
本開示の別の態様において、重量で約3~15%のタンパク質、重量で約9~92%の脂質、重量で約4~15%のヒト乳オリゴ糖(HMO)、および重量で約33~80%のラクトースを含む乳製品であって、タンパク質、脂質、HMOおよびラクトースの少なくとも1つは、培養されたヒト乳腺上皮細胞によって産生される、乳製品が提供される。
【0161】
本開示のいくつかの態様のいくつかの実施形態において、乳製品は、ヒト母乳の総高分子組成物の少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%を含む。
【0162】
本開示の乳製品のいくつかの実施形態において、非タンパク質窒素含有量は、全窒素含有量の少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%である。
【0163】
いくつかの実施形態において、乳製品は、約500~1150kcal/Lの利用可能なエネルギー含有量を含み、いくつかの実施形態において、利用可能なエネルギー含有量の約40~55%は脂質に由来する。いくつかの実施形態において、乳製品は、約95.8~195.2g/Lの高分子含有量を含む。
【0164】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、κ-カゼイン、α-S1-カゼイン、ラクトフェリン、ラクトアドヘリン、リゾチーム、C12:0(ラウリン酸)、C14:0(ミリスチン酸)、C16:0(パルミチン酸)、ラクトース、グルコース、3’-SLおよび6’-SLを含む。
【0165】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、κ-カゼイン、α-S1-カゼイン、ラクトフェリン、ラクトアドヘリン、リゾチーム、C12:0(ラウリン酸)、C14:0(ミリスチン酸)、C16:0(パルミチン酸)、C18:2n-6(リノール酸、LA)、C18;3n-3(α-リノレン酸、ALA)、ラクトース、グルコース、3’-SLおよび6’-SLを含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、κ-カゼイン、α-S1-カゼイン、ラクトフェリン、ブトロフィリン、オステオポンチン、ラクトアドヘリン、リゾチーム、ムチン-4、ムチン-1、C8:0(カプリル酸)、C10:0(カプリン酸)、C12:0(ラウリン酸)、C13:0(トリデシル酸)、C14:0(ミリスチン酸)、C16:0(パルミチン酸)、C16:1(パルミトレイン酸)、C18:2n-6(リノール酸、LA)、C18;3n-3(α-リノレン酸、ALA)、C20:3n-6(ジホモ-γ-リノレン酸、DGLA)、C20:4n-6(アラカドン酸、AA)、C20:5n-3(エイコソペンタン酸、EPA)、C22:6n-3(ドコサヘキサエン酸、DHA)、C22:1n9(エルウ酸)、C24:1(ネルボン酸)、ラクトース、グルコース、3’-SL、6’-SL、LNTおよびLNnTを含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品は、多価不飽和脂肪酸の少なくとも1つのオキシリピン代謝産物または少なくとも1つのエンドカンナビノイドをさらに含む。いくつかの実施形態において、オキシリピン代謝産物は、9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE);13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE);5,15-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(5,15-DiHETE);17,18-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸(17,18-DiHETE);8,9-ジヒドロキシイコサトリエン酸(8,9-DiHETrE);11,12-ジヒドロキシイコサトリエン酸(11,12-DiHETrE);9,10-ジヒドロキシオクタデセン酸(9,10-DiHOME);12,13-ジヒドロキシオクタデセン酸(12,13-DiHOME);14(15)-エポキシエイコサトリエン酸(14(15)-EpETre);19(20)-エポキシドコサペンタン酸(19(20)-EpDPE);17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDoHE);5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE);8-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(8-HETE);9-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(9-HETE);11-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(11-HETE);12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE);9-ヒドロキシオクタデカトリエン酸(9-HOTrE);9-オキソ-オクタデカジエン酸(9-オキソ-ODE);または13-オキソ-オクタデカジエン酸(13-オキソ-ODE);17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17(18)-EpETE);6-ケト-プロスタグランジンF1α(6-ケト-PGF1a);または15(S)-ヒドロキシエイコサトリエン酸(15(S)-HETrE)である。いくつかの実施形態において、エンドカンナビノイドはアナンダミドまたは2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)である。
【0168】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、保存剤、安定剤、酸化防止剤、乳化剤または増粘剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、レシチンをさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、カラギーナンをさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、βカロテンをさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ビタミンEをさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、パルミチン酸アスコルビルまたはアスコルビン酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、レシチン、パルミチン酸アスコルビルおよびビタミンEをさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、レシチン、アスコルビン酸およびビタミンEをさらに含む。
【0169】
本開示の別の態様では、容器中に詰められた本開示のいくつかの実施形態による乳製品を含む容器入り乳製品が提供される。
【0170】
本開示の別の態様では、冷凍された本開示のいくつかの実施形態による乳製品を含む冷凍乳製品が提供される。いくつかの実施形態において、冷凍乳製品は、容器入り冷凍乳製品を作る容器中に詰められている。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、約-18℃~約-80℃で保存される。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、約-18℃で保存される。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、約-20℃で保存される。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、約-80℃で保存される。
【0171】
本開示の別の態様では、凍結乾燥された本開示のいくつかの実施形態による乳製品を含む凍結乾燥乳製品が提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥乳製品は、容器入り凍結乾燥乳製品を作る容器中に詰められている。
【0172】
本開示の別の態様では、本開示のいくつかの実施形態による乳製品から抽出された1つまたは複数の成分を含む抽出乳製品が提供される。乳製品から抽出することができる成分の非限定的な例としては、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンおよび/またはミネラル含有物が挙げられる。いくつかの実施形態において、収集された乳製品から抽出された1つまたは複数の成分は、凍結乾燥または濃縮された抽出乳製品成分を生成するために、凍結乾燥または濃縮される。いくつかの実施形態において、収集された乳製品から抽出された1つまたは複数の成分は、膜濾過または逆浸透によって濃縮されるが、他の実施形態においては、抽出されていない乳製品全体が、膜濾過または逆浸透によって濃縮される。いくつかの実施形態において、収集された乳製品からの1つまたは複数の抽出された成分は、乳タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルを含む。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の抽出乳製品成分が容器中に詰められ、いくつかの実施形態においては、濃縮された抽出されていない乳製品全体が容器中に詰められる。
【0173】
いくつかの実施形態において、容器は、無菌であるか、真空密封されているか、もしくは食品等級として分類されているか、またはこれらの任意の組み合わせである。容器の非限定的な例は、キャニスタ、ジャー、瓶、袋、箱またはパウチを含む。いくつかの実施形態において、容器は、キャニスタ、ジャー、瓶、袋、箱またはパウチである。
【0174】
免疫グロブリン
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、1つまたは複数の免疫グロブリンまたはsIgAをさらに含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、IgA、IgGおよびIgMのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、IgA2(分泌型)およびIgA1(非分泌型)を含む。いくつかの実施形態において、細胞構築物の形質細胞はIgAを産生し、乳腺上皮細胞はIgAを加工してsIgA(IgA2)を与える。sIgAは、IgAに付着する、多量体Ig受容体の細胞外ドメインである分泌成分を含む。乳腺上皮細胞は、多量体Ig受容体の細胞外ドメインを切断することによってIgAを加工してsIgAを生成する。いくつかの実施形態において、sIgAは、乳腺上皮細胞の頂端面から分泌される。
【0175】
ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、微生物(すなわち、細菌またはウイルス)の抗原に結合する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、ヒトにおいて感染性疾患を引き起こすことができるウイルス抗原または細菌抗原に結合する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、呼吸器または胃腸上皮の感染症を引き起こすウイルス抗原または細菌抗原に結合する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、乳児において腸炎または敗血症を引き起こす微生物由来の抗原を結合する。
【0176】
ある特定の実施形態において、乳製品は、約0.2~1.0g/Lの分泌型IgAを含む。ある特定の実施形態において、乳製品は、約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、または1.0g/Lの分泌型IgAを含む。ある特定の実施形態において、乳製品は、約0.15~1.6g/Lの総IgAを含む。ある特定の実施形態において、乳製品は、約0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55または1.6g/Lの総IgAを含む。
【0177】
IgGを含むいくつかの実施形態において、乳製品は約0.03~0.3g/LのIgGを含む。IgGを含むある特定の実施形態において、乳製品は、約0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3g/Lを含む。IgMを含むいくつかの実施形態において、乳製品は約0.01~0.1g/LのIgMを含む。ある特定の実施形態において、乳製品は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.1g/LのIgMを含む。いくつかの実施形態において、乳製品は、重量で約0.2~2.0%の総免疫グロブリンを含む。ある特定の実施形態において、乳製品は、重量で、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0%の総免疫グロブリンを含む。
【0178】
本明細書には、(a)形質細胞と共培養された乳腺上皮細胞の分泌産物に由来するIgAおよびsIgAと、(b)薬学的に許容され得る賦形剤とを含む免疫療法組成物が含まれる。いくつかの実施形態において、IgAおよびsIgAは、乳腺上皮細胞と形質細胞との共培養から得られる製品(例えば、培養乳製品)から単離される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤は、安定剤、界面活性剤、緩衝剤または等張化剤である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤は、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、エデト酸/またはエデト酸塩(例えば、EDTA)、グルタチオン、メタクレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メチオニンまたはシステインである。
【0179】
いくつかの実施形態において、IgAは、細胞構築物中の形質細胞によって産生される。IgAは、乳腺上皮細胞の基底面上の受容体(多量体Ig受容体)に結合する。IgAおよび受容体は、乳腺上皮細胞中に輸送される。乳腺細胞はIgAを加工する。IgAに結合した受容体の細胞外ドメイン(分泌成分)は乳腺上皮細胞内のプロテイナーゼによって切断され、分泌成分に結合したIgAは乳腺上皮細胞の頂端面から分泌されてsIgAを与える。いくつかの実施形態において、sIgAは、乳腺細胞の頂端面から頂端区画内に培養乳製品の一部として分泌される。いくつかの実施形態において、sIgAは、培養乳製品から単離される。いくつかの実施形態において、sIgAは、培養乳製品から単離されない。
【0180】
基礎培地および乳腺刺激性培地
いくつかの実施形態において、培地は、炭素源、化学緩衝系、1つまたは複数の必須アミノ酸、1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子、ならびに1つまたは複数の無機塩を含む。いくつかの実施形態において、炭素源、化学緩衝系、1つもしくは複数の必須アミノ酸、1つもしくは複数のビタミンおよび/もしくは補因子、ならびに/または1つもしくは複数の無機塩は食品等級である。
【0181】
いくつかの実施形態において、培地は乳腺刺激性培地である。いくつかの実施形態において、培地は、プロラクチン(例えば、哺乳動物プロラクチン、例えば、ヒトプロラクチン)、リノール酸およびα-リノール酸、エストロゲンおよび/またはプロゲステロンをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約20ng/mLの培地~約200ng/Lの培地、例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190もしくは200ng/mLまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でプロラクチンを含む(またはプロラクチンが添加される)。いくつかの実施形態において、培地は、約20ng/mLの培地~約195ng/mLの培地、約50ng/mLの培地~約150ng/mLの培地、約25ng/mLの培地~約175ng/mLの培地、約45ng/mLの培地~約200ng/mLの培地、または約75ng/mLの培地~約190ng/mLの培地の量でプロラクチンを含む(またはプロラクチンが添加される)。いくつかの実施形態において、培地は、インスリン、上皮成長因子および/またはヒドロコルチゾンを含むがこれらに限定されない、効率を改善するための他の因子をさらに含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約15g/Lの培地(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15g/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲)、または約1、2、3、4、5もしくは6g/Lの培地~約7、8、9もしくは10、11、12、13、14もしくは15g/Lの培地の量で炭素源を含む。炭素源の非限定的な例としては、グルコースおよび/またはピルバートが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約12g/Lの培地、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12g/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でグルコースを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約6g/Lの培地、約4g/Lの培地~約12g/Lの培地、約2.5g/Lの培地~約10.5g/Lの培地、約1.5g/Lの培地~約11.5g/Lの培地、または約2g/Lの培地~約10g/Lの培地の量でグルコースを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約1、2、3もしくは4g/L~約5、6、7、8、9、10、11もしくは12g/L、または約1、2、3、4、5もしくは6g/L~約7、8、9、10、11もしくは12g/Lの量でグルコースを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約5g/Lの培地~約15g/Lの培地、例えば約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15g/L、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でピルバートを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約5g/Lの培地~約14.5g/Lの培地、約10g/Lの培地~約15g/Lの培地、約7.5g/Lの培地~約10.5g/Lの培地、約5.5g/Lの培地~約14.5g/Lの培地、または約8g/Lの培地~約10g/Lの培地の量でピルバートを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約5、6、7もしくは8g/L~約9、10、11、12、13、14もしくは15g/L、または約5、6、7、8、9もしくは10g/L~約11、12、13、14もしくは15g/Lの量でピルバートを含む。
【0183】
いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約4g/Lの培地(例えば、約1、1.5、2、2.5、3、3.5もしくは4g/L、またはその中の任意の値もしくは範囲)または約10mM~約25mM(例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25mM、またはその中の任意の値もしくは範囲)の量で化学緩衝系を含む。いくつかの実施形態において、化学緩衝系としては、重炭酸ナトリウムおよび/または4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約4g/Lの培地、例えば約1、1.5、2、2.5、3、3.5もしくは4g/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲の量で重炭酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約3.75g/Lの培地、約1.25g/Lの培地~約4g/Lの培地、約2.5g/Lの培地~約3g/Lの培地、約1.5g/Lの培地~約4g/Lの培地、または約2g/Lの培地~約3.5g/Lの培地の量で重炭酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約10mM~約25mM、例えば約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25mM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でHEPESを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約11mM~約25mM、約10mM~約20mM、約12.5mM~約22.5mM、約15mM~約20.75mMまたは約10mM~約20mMの量でHEPESを含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約5mM(例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mM、またはその中の任意の値もしくは範囲)または約0.5、1、1.5、2mM~約2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mMの量で1つまたは複数の必須アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリンおよび/またはアルギニンである。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約5mM、例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mMまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でアルギニンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約4.75mM、約2mM~約3.5mM、約0.5mM~約3.5mM、約1mM~約5mM、または約3.5mM~約5mMの量で必須アミノ酸を含む。
【0185】
いくつかの実施形態において、培地は、約0.01μM~約50μM(例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、49.025、49.05、49.075もしくは50μMまたはその中の任意の値もしくは範囲)または約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9μM~約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3、4、5、6μMまたは約0.02、0.025、0.05、0.075、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10μM~約12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、49.025、49.05、49.075または50μMの量で1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子には、チアミンおよび/またはリボフラビンが含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約0.025μM~約50μM、例えば約0.025、0.05、0.075、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、49.025、49.05、49.075もしくは50μM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でチアミンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.025μM~約45.075μM、約1μM~約40μM、約5μM~約35.075μM、約10μM~約50μMまたは約0.05μM~約45.5μMの量でチアミンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.01μM~約3μM、例えば約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9もしくは3μM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でリボフラビンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.01μM~約2.05μM、約1μM~約2.95μM、約0.05μM~約3μM、約0.08μM~約1.55μMまたは約0.05μM~約2.9μMの量でリボフラビンを含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、培地は、約100mg/Lの培地~約150mg/Lの培地(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150mg/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲)または約100mg/Lの培地~約150mg/Lの培地(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150mg/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲)の量で1つまたは複数の無機塩を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の無機塩としては、カルシウムおよび/またはマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約100mg/Lの培地~約150mg/Lの培地、例えば約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150mg/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でカルシウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約100mg/Lの培地~約125mg/Lの培地、約105mg/Lの培地~約150mg/Lの培地、約120mg/Lの培地~約130mg/Lの培地、または約100mg/Lの培地~約145mg/Lの培地の量でアルギニンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.01mM~約1mM、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99もしくは1mM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でマグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.05mM~約1mM、約0.01mM~約0.78mM、約0.5mM~約1mM、約0.03mM~約0.75mM、または約0.25mM~約0.95mMの量でマグネシウムを含む。
【0187】
いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約15g/Lの培地(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15g/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲)、または約1、2、3、4、5もしくは6g/Lの培地~約7、8、9もしくは10、11、12、13、14もしくは15g/Lの培地の量で炭素源を含む。いくつかの実施形態において、炭素源には、グルコースおよび/またはピルバートが含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約12g/Lの培地、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12g/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でグルコースを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約6g/Lの培地、約4g/Lの培地~約12g/Lの培地、約2.5g/Lの培地~約10.5g/Lの培地、約1.5g/Lの培地~約11.5g/Lの培地、または約2g/Lの培地~約10g/Lの培地の量でグルコースを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約5g/Lの培地~約15g/Lの培地、例えば約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15g/L、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でピルバートを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約5g/Lの培地~約14.5g/Lの培地、約10g/Lの培地~約15g/Lの培地、約7.5g/Lの培地~約10.5g/Lの培地、約5.5g/Lの培地~約14.5g/Lの培地、または約8g/Lの培地~約10g/Lの培地の量でピルバートを含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約4g/Lの培地(例えば、約1、1.5、2、2.5、3、3.5もしくは4g/L、またはその中の任意の値もしくは範囲)または約10mM~約25mM(例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25mM、またはその中の任意の値もしくは範囲)の量で化学緩衝系を含む。いくつかの実施形態において、化学緩衝系としては、重炭酸ナトリウムおよび/またはHEPESが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約4g/Lの培地、例えば約1、1.5、2、2.5、3、3.5もしくは4g/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲の量で重炭酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約1g/Lの培地~約3.75g/Lの培地、約1.25g/Lの培地~約4g/Lの培地、約2.5g/Lの培地~約3g/Lの培地、約1.5g/Lの培地~約4g/Lの培地、または約2g/Lの培地~約3.5g/Lの培地の量で重炭酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約10mM~約25mM、例えば約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25mM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でHEPESを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約1mM~約25mM、約10mM~約20mM、約12.5mM~約22.5mM、約15mM~約20.75mMまたは約10mM~約20mMの量でHEPESを含む。
【0189】
いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約5mM(例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mM、またはその中の任意の値もしくは範囲)または約0.5、1、1.5、2mM~約2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mMの量で1つまたは複数の必須アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の必須アミノ酸は、アルギニンおよび/またはシステインである。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約5mM、例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mMまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でアルギニンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約4.75mM、約2mM~約3.5mM、約0.5mM~約3.5mM、約1mM~約5mMまたは約3.5mM~約5mMの量でアルギニンを含む。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約5mM、例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mMまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でシステインを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.5mM~約4.75mM、約2mM~約3.5mM、約0.5mM~約3.5mM、約1mM~約5mMまたは約3.5mM~約5mMの量でシステインを含む。
【0190】
いくつかの実施形態において、培地は、約0.01μM~約50μM(例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、49.025、49.05、49.075もしくは50μMまたはその中の任意の値もしくは範囲)または約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9μM~約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3、4、5、6μMまたは約0.02、0.025、0.05、0.075、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10μM~約12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、49.025、49.05、49.075または50μMの量で1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子には、チアミンおよび/またはリボフラビンが含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約0.025μM~約50μM、例えば0.025、0.05、0.075、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、49.025、49.05、49.075もしくは50μM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でチアミンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.025μM~約45.075μM、約1μM~約40μM、約5μM~約35.075μM、約10μM~約50μMまたは約0.05μM~約45.5μMの量でチアミンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.01μM~約3μM、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9もしくは3μM、またはその中の任意の値もしくは範囲の量でリボフラビンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.01μM~約2.05μM、約1μM~約2.95μM、約0.05μM~約3μM、約0.08μM~約1.55μMまたは約0.05μM~約2.9μMの量でリボフラビンを含む。
【0191】
いくつかの実施形態において、培地は、約100mg/Lの培地~約150mg/Lの培地(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150mg/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲)または約100mg/Lの培地~約150mg/Lの培地(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150mg/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲)の量で1つまたは複数の無機塩を含む。いくつかの実施形態において、例示的な1つまたは複数の無機塩は、カルシウムおよび/またはマグネシウムである。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約100mg/Lの培地~約150mg/Lの培地、例えば約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150mg/Lまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でカルシウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約100mg/Lの培地~約125mg/Lの培地、約105mg/Lの培地~約150mg/Lの培地、約120mg/Lの培地~約130mg/Lの培地、または約100mg/Lの培地~約145mg/Lの培地の量でアルギニンを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.01mM~約1mM、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99もしくは1mMまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でマグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、培地は、約0.05mM~約1mM、約0.01mM~約0.78mM、約0.5mM~約1mM、約0.03mM~約0.75mM、または約0.25mM~約0.95mMの量でマグネシウムを含む。
【0192】
いくつかの実施形態において、炭素源、化学緩衝系、1つもしくは複数の必須アミノ酸、1つもしくは複数のビタミンおよび/もしくは補因子、ならびに/または1つもしくは複数の無機塩は食品等級である。
【0193】
いくつかの実施形態において、培地は、乳腺刺激性培地であり、例えば、培地は、プロラクチン(例えば、哺乳動物プロラクチン、例えば、ヒトプロラクチン)をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約20ng/mLの培地~約200ng/Lの培地、例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190もしくは200ng/mLまたはその中の任意の値もしくは範囲の量でプロラクチンを含む(またはプロラクチンが添加される)。いくつかの実施形態において、培地は、約20ng/mLの培地~約195ng/mLの培地、約50ng/mLの培地~約150ng/mLの培地、約25ng/mLの培地~約175ng/mLの培地、約45ng/mLの培地~約200ng/mLの培地、または約75ng/mLの培地~約190ng/mLの培地の量でプロラクチンを含む(またはプロラクチンが添加される)。いくつかの実施形態において、前記方法は、培地にプロラクチンを添加し、それにより、乳腺刺激性培地を提供する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、プロラクチンは、組換えプロラクチン(例えば、プロラクチン遺伝子の179位のセリン残基のアスパラギン酸での置換を含むプロラクチン(S179D)、例えば、S179D-プロラクチン)を発現する微生物細胞および/またはヒト細胞によって生産される。いくつかの実施形態において、プロラクチンを培地に添加する工程は、プロラクチンを発現および分泌する細胞を培養することによって培地を馴化すること、ならびにプロラクチンを含む馴化された培地を乳腺細胞(例えば、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞)の単層の基底面に適用することを含む。
【0194】
いくつかの実施形態において、培地は、インスリン、上皮成長因子および/またはヒドロコルチゾンを含むがこれらに限定されない、効率を改善するための他の因子をさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、例えば効率を改善するために、培地に他の因子(例えば、インスリン、上皮成長因子、および/またはヒドロコルチゾン)を添加することをさらに含む。
【0195】
培養乳製品を製造する方法
本明細書では、培養された乳腺上皮細胞(MEC)および形質細胞の生合成生産物に相当する培養乳製品を製造する方法が開示される。
【0196】
いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に開示される形質細胞および乳腺細胞を含む細胞構築物を、基底区画および頂端区画を備えるバイオリアクター中で培養する工程を含み、基底区画は培地を含み、形質細胞および乳腺細胞は、免疫グロブリンを含む培養乳製品を頂端区画に秘匿する。
【0197】
いくつかの実施形態において、本方法は、(a)単離された乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞を生産するために、乳腺組織(例えば、乳房、ウシおよびヤギなどの乳房、乳首組織)からの乳腺外植片、生検試料または生母乳から乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞を単離する工程と;(b)単離された一次形質細胞を生産するために、乳腺組織、生検試料または生母乳から形質細胞を単離する工程と;(c)前記単離された乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞を培養する工程と;(d)前記単離された一次形質細胞を培養する工程と;(e)一次形質細胞と乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞との混合集団を生産するために、前記培養され、単離された乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞と、単離された一次形質細胞とを上面および下面を有する足場上に堆積させる工程であって、前記形質細胞は、前記乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞によって覆われている、堆積させる工程と;(f)前記形質細胞に隣接して前記形質細胞の上方に位置する極性化した乳腺細胞の単層を生産するために前記足場上で(e)の前記混合集団を栽培し、前記形質細胞は前記足場の前記上面に隣接して前記上面の上方に位置し、前記上面は前記足場の前記下面に隣接して前記下面の上方に位置し、前記極性化した乳腺細胞は頂端面および基底面を備え、それにより免疫グロブリンを含む培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産する工程と、を含む。
【0198】
いくつかの実施形態において、本方法は、a)単離された乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞を生産するために、乳腺組織(例えば、乳房、ウシおよびヤギなどの乳房、乳首組織)からの乳腺外植片、生検試料または生母乳から乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞を単離する工程と;(b)単離された一次形質細胞を生産するために、乳腺組織、生検試料または生母乳から形質細胞を単離する工程と;(c)一次乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞の混合集団を生産するために、前記単離された乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞を培養する工程と;(d)前記単離された一次形質細胞を培養する工程と;(e)一次乳腺上皮細胞の集団を生産するために、乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞の前記混合集団を選別する(例えば、前記一次乳腺上皮細胞を選択する)工程と;(f)一次乳腺上皮細胞、筋上皮細胞および/または乳腺前駆細胞の選別された集団と単離された一次形質細胞とを、上面および下面を有する足場上に堆積させる工程と;(g)前記形質細胞に隣接して前記形質細胞の上方に位置する極性化した一次乳腺上皮細胞の単層を生産するために前記足場上で乳腺上皮細胞および形質細胞の選別された集団を栽培し、前記形質細胞は前記足場の前記上面に隣接して前記上面の上方に位置し、前記上面は前記足場の前記下面に隣接して前記下面の上方に位置し、前記極性化した乳腺細胞は頂端面および基底面を備え、前記極性化した単層は頂端面および基底面を備え、それにより免疫グロブリンを含む培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産する工程と、を含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、本方法は、(a)増加した数の不死化された乳腺上皮細胞を生産するために、不死化された乳腺上皮細胞を培養する工程と;(b)増加した数の形質細胞を生産するために、形質細胞を培養する工程と;(c)足場の上面上の形質細胞の上方に極性化した不死化された乳腺上皮細胞の単層を生産するために、上面および下面を有する足場上で(a)および(b)の前記不死化された乳腺上皮細胞および形質細胞を栽培し、前記極性化した単層は頂端面および基底面を備え、それにより免疫グロブリンを含む培養乳製品を生産するための細胞構築物を生産する工程と、を含む。
【0200】
ある特定の実施形態において、形質細胞は、不死化された乳腺上皮細胞の培養物に添加される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、足場上の不死化された乳腺上皮細胞とともに栽培され、それにより、免疫細胞および乳腺細胞の分泌産物(例えば、sIgA)を含む培養乳製品を生産する。ある特定の実施形態において、単離された乳腺細胞は、該細胞を形質細胞と共培養する前に不死化される。
【0201】
形質細胞は、一次乳腺組織試料に、または例えば形質細胞株に由来し得る。ある特定の実施形態において、形質細胞は、共培養中に免疫グロブリンを生産するために刺激される。ある特定の実施形態において、形質細胞はIgAを生産する。ある特定の実施形態において、形質細胞は分泌型IgAを生産する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンの1つまたは複数のクラスは、分泌型IgA(sIgA)を含む。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、微生物(すなわち、細菌またはウイルス)の抗原に結合する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、ヒトにおいて感染性疾患を引き起こすことができるウイルス抗原または細菌抗原に結合する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、呼吸器または胃腸上皮の感染症を引き起こすウイルス抗原または細菌抗原に結合する。ある特定の実施形態において、免疫グロブリンは、乳児において腸炎または敗血症を引き起こす微生物由来の抗原を結合する。ある特定の実施形態において、形質細胞は、本明細書に記載の方法に従ってバイオリアクター内でMECと共培養される。ある特定の実施形態において、バイオリアクターは、本明細書に記載される中空糸バイオリアクターである。
【0202】
ある特定の実施形態において、乳生産を刺激および最適化するために、本明細書に記載される方法に従って、乳腺細胞はプロラクチンで改変および/または刺激される。ある特定の実施形態において、乳腺細胞は、構成的に活性なプロラクチン受容体を発現するように改変される。
【0203】
ある特定の実施形態において、乳腺上皮細胞集団が同定され、一次乳腺組織試料から単離される。いくつかの実施形態において、乳腺細胞は、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別および/またはマイクロ流体細胞選別を介して単離され、選別される。ある特定の実施形態において、筋上皮乳腺細胞および管腔上皮乳腺細胞は、FACS分析によって単離される。ある特定の実施形態において、前駆筋上皮乳腺細胞および/または前駆管腔上皮乳腺細胞は、FACS分析によって単離される。乳腺上皮細胞(例えば、管腔上皮細胞)、筋上皮細胞、前駆細胞および免疫細胞を選別するための当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用することができる。例えば、乳腺細胞は、細胞表面マーカーであるCD24、EPCAMおよび/またはCD49fを用いて選別することができる。
【0204】
いくつかの実施形態において、形質細胞は、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別および/またはマイクロ流体細胞選別を介して単離され、選別される。ある特定の実施形態において、形質細胞は、形質細胞を同定するための当技術分野で公知のマーカーを使用するFACS分析によって選別される。ある特定の実施形態において、形質細胞、形質芽球または前形質芽球は、当技術分野で公知のマーカー(例えば、CD20、CD38、CD138および/またはCD19)を使用するFACS分析によって選別され、単離される。
【0205】
いくつかの実施形態において、細胞構築物は、上面および下面を備える足場ならびに極性化した乳腺上皮細胞の連続単層、乳腺上皮細胞、乳腺筋上皮細胞および乳腺前駆細胞の極性化した混合集団の連続単層、および/または極性化した不死化された乳腺上皮細胞の連続単層を備え、前記連続単層は足場の上面に位置する。
【0206】
いくつかの実施形態において、足場の下面は基底区画に隣接している。いくつかの実施形態において、連続単層の頂端面は頂端区画に隣接している。いくつかの実施形態において、連続単層は、その頂端面を通じて頂端区画中に乳およびsIgAまたはIgAを分泌し、それによって培養中にIgAおよび/またはsIgAを含む乳を生産する。
【0207】
いくつかの実施形態において、乳腺細胞の単層は、頂端区画と基底区画とを分割する障壁を形成し、乳腺細胞の基底面は足場に付着されており、頂端面は頂端区画の方に向けられている。
【0208】
いくつかの実施形態において、基底区画は、足場の下面に隣接している。いくつかの実施形態において、基底区画は、乳腺上皮細胞の単層(例えば、乳腺上皮細胞の極性化した単層、乳腺細胞の混合集団の極性化した単層、または不死化された乳腺上皮細胞の極性化した単層)の基底面と流体接触している培地を含む。
【0209】
いくつかの実施形態において、培地は、炭素源、化学緩衝系、1つまたは複数の必須アミノ酸、1つまたは複数のビタミンおよび/または補因子、ならびに1つまたは複数の無機塩を含む。
【0210】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、単層の頂端面に隣接する頂端区画を備える。いくつかの実施形態において、頂端区画は、足場の上面に隣接している。
【0211】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は少なくとも1011の乳腺細胞である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は少なくとも1012の乳腺細胞である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は少なくとも1013の乳腺細胞である。
【0212】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約20~55の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約20の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、25の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約30の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約35の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約40の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約45の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約50の細胞/100μm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総細胞密度は、約55の細胞/100μm2である。
【0213】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約200~500の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約200の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約300の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約400の形質細胞/mm2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の形質細胞の総細胞密度は、約500の形質細胞/mm2である。
【0214】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約1.5m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約2m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約2.5m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約3m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約4m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約5m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約10m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約15m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約20m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約25m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約50m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約100m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約250m2である。いくつかの実施形態において、バイオリアクター内の乳腺細胞の総表面積は少なくとも約500m2である。
【0215】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターは約27℃~約39℃の温度(例えば、約27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、35℃、35.5℃、36℃、36.5℃、37℃、37.5℃、38℃、38.5℃もしくは約39℃の温度、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば、約27℃~約38℃、約36℃~約39℃、約36.5℃~約39℃、約36.5℃~約37.5℃または約36.5℃~約38℃)を維持する。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは約37℃の温度を維持する。
【0216】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、約4%~約6%のCO2の大気濃度、例えば約4%、4.25%、4.5%、4.75%、5%、5.25%、5.5%、5.75%もしくは6%のCO2の大気濃度、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば約4%~約5.5%、約4.5%~約6%、約4.5%~約5.5%もしくは約5%~約6%)を有する。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは約5%のCO2の大気濃度を有する。
【0217】
いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、約4%~約6%のCO2の大気濃度、例えば約4%、4.25%、4.5%、4.75%、5%、5.25%、5.5%、5.75%もしくは6%のCO2の大気濃度、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば約4%~約5.5%、約4.5%~約6%、約4.5%~約5.5%もしくは約5%~約6%)を有する。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは約5%のCO2の大気濃度を有する。
【0218】
いくつかの実施形態において、前記方法は、溶存O2およびCO2の濃度を監視することを含む。いくつかの実施形態において、溶存O2の濃度は、約10%~約25%またはその中の任意の値もしくは範囲(例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25%)に維持される。例えば、いくつかの実施形態において、溶存O2の濃度は、約12%~約25%、約15%~約22%、約10%~約20%、約15%、約20%または約22%の間に維持される。いくつかの実施形態において、CO2の濃度は、約4%~約6%、例えば、約4%、4.25%、4.5%、4.75%、5%、5.25%、5.5%、5.75%もしくは6%のCO2の濃度、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば、約4%~約5.5%、約4.5%~約6%、約4.5%~約5.5%もしくは約5%~約6%)に維持される。いくつかの実施形態において、CO2の濃度は、約5%に維持される。
【0219】
いくつかの実施形態において、培地は、概ね毎日~約10日ごと(例えば、1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、またはこれらの中の任意の値もしくは範囲、例えば、概ね毎日~3日ごと、約3日ごと~10日ごと、約2日ごと~5日ごと)に交換される。いくつかの実施形態において、培地は、概ね毎日~約数時間~約10日ごと、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24時間ごと~約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日ごと、またはその中の任意の値もしくは範囲ごとに交換される。例えば、いくつかの実施形態において、培地は、約12時間ごと~約10日ごと、約10時間ごと~約5日ごと、または約5時間ごと~約3日ごとに交換される。
【0220】
いくつかの実施形態において、前記方法は、培地中でのおよび/または乳腺刺激性培地中でのグルコース濃度および/またはグルコース消費速度を監視することを含む。いくつかの実施形態において、プロラクチンは、培地中でのグルコース消費の速度が定常状態であるときに添加される。
【0221】
いくつかの実施形態において、前記方法は、上皮細胞の単層の維持を測定するために経上皮電気抵抗(TEER)を適用することをさらに含む。TEERは、2つの区画内(例えば、頂端区画と基底区画との間)の流体(例えば、培地)間の電圧差を測定し、区画間の障壁が完全性を失えば、2つの区画内の流体は混合し得る。流体混合が存在する場合には、電圧差は低減または除去され、電圧差は、障壁が無傷であることを示す。いくつかの実施形態において、TEERによって電圧の喪失が検出されると、足場(例えば、Transwell(登録商標)フィルタ、微細構造化バイオリアクター、脱細胞化組織、中空糸バイオリアクターなど)が追加の細胞とともに再接種され、培養乳製品の生産(例えば、乳生産)を再開する前に障壁(例えば、単層)を再確立する時間が与えられる。
【0222】
いくつかの実施形態において、前記方法は、収集された培養乳製品を生産するために、頂端区画から培養乳製品を収集することをさらに含む。いくつかの実施形態において、収集は、ポートを介して、重力を介して、および/または真空を介して行われる。いくつかの実施形態において、真空がポートに取り付けられる。
【0223】
いくつかの実施形態において、前記方法は、冷凍培養乳製品を生産するために、収集された培養乳製品を冷凍すること、および/または凍結乾燥培養乳製品を生産するために、収集された培養乳製品を凍結乾燥することをさらに含む。
【0224】
いくつかの実施形態において、前記方法は、収集された培養乳製品、凍結培養乳製品および/または凍結乾燥培養乳製品を容器内に詰めることをさらに含む。
【0225】
いくつかの実施形態において、前記方法は、収集された培養乳製品から1つまたは複数の成分を抽出することをさらに含む。収集された培養乳製品からの成分の非限定的な例としては、乳タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンおよび/またはミネラル含有物が挙げられる。いくつかの実施形態において、収集された培養乳製品からの成分は、凍結乾燥または濃縮培養乳製品成分製品を生産するために、凍結乾燥および/または濃縮される。いくつかの実施形態において、収集された培養乳製品からの成分は、例えば、膜濾過および/または逆浸透によって濃縮される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥または濃縮培養乳製品成分製品は、容器内に詰められ、任意に、容器は無菌および/または食品等級の容器である。いくつかの実施形態において、容器は真空密封されている。いくつかの実施形態において、容器は、キャニスタ、ジャー、瓶、袋、箱またはパウチである。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、規格化された無菌培養乳製品である。いくつかの実施形態において、培養乳製品は栄養学的使用のためのものである。
【0226】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、本明細書に開示される任意の方法によって生産される。
【0227】
除外される成分
本明細書に開示される方法によって生産された培養乳製品は人体外で製造されるという事実のために、培養乳製品は、天然に存在する母乳中に見出されるある特定の成分を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの事例では、これらの成分は有害であり(例えば、環境汚染物質およびアレルゲン)、他の事例では、天然に存在する成分は、単に、天然に存在する乳は天然に生産されるが故に存在する。さらに、生細胞構築物およびバイオリアクターの設計は、細胞培地およびその成分を含まないか、または実質的に含まない本明細書に開示される培養乳製品の生産を可能にする。
【0228】
細胞培地
細胞培地のある種の成分は、培養乳製品中に移行し得る。例えば、血清アルブミン、リノール酸およびα-リノレン酸は、hMECによって生産された培養乳製品の成分と共に、hMECによって頂端区画内に能動的に分泌され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の約1%w/w~約20%を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の約5%w/w~約10%を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の約5%w/wを占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の約20%w/w~約40%を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の約25%w/w~約35%を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の約25%w/w~約30%を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の約25%w/wを占める。
【0229】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の80%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の85%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の90%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の95%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の97%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の98%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDaを超える細胞培地成分の99%w/w未満を占める。
【0230】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の60%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の65%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の70%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の75%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の77%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の78%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の79%w/w未満を占める。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される培養乳製品の総乾燥質量は、150kDa未満の細胞培地成分の80%w/w未満を占める。
【0231】
環境汚染物質および薬物
母乳は、低濃度ではあるが測定可能な濃度の環境汚染物質、すなわち、環境中に広く拡散している産業および工業製品由来の健康に有害な化学物質を含有する。環境汚染物質は、母乳中に部分的に分泌される。母乳中の汚染物質レベルは、母親の体内の汚染物質レベルを反映し、したがって曝露レベルを監視するのに理想的である。有毒な環境汚染物質は、授乳を介して母親から乳児に移行され得る。残留性有機汚染物質(POP)は、脂肪組織に生体蓄積し、持続的な毒性の体内負荷量をもたらす親油性の安定な化学物質のファミリーである。授乳は、人生の初期にPOPへの重大な曝露源を提供するが、その影響は不明である。
【0232】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、1つまたは複数の環境汚染物質を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、残留性有機汚染物質(POP)を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)およびDDTなどの駆除薬を含まないか、または実質的に含まない。
【0233】
水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、クロム、コバルト、亜鉛などの重金属、および環境全体に分散している他の潜在的に有毒な金属もまた、ヒトの乳に蓄積することが知られている生物蓄積性の特徴を有しており、したがって授乳中の乳児にとって懸念事項である。母乳中の金属は、外因性の源、すなわち汚染された空気、食物および飲料水を介した摂取、ならびに必須微量元素と一緒の内因性放出に由来する。例えば、鉛および水銀はヒトの食物連鎖中に均一に分散しており、胎児の発達に対するそれらの影響は、母親の食事および栄養状態によって大きく決定される。有毒金属への曝露は、低濃度および急性曝露であっても、重大な公衆衛生上の影響を及ぼし、これらの金属はヒトに対して有毒であり続ける。授乳中の乳児は、感受性が最も高い期間に有毒金属に曝露され得る。授乳中の乳児は、母乳を介して、適正な量を超えて重金属に曝露されることがあり得、曝露は乳児に対して健康上の影響を及ぼすことがあり得る。特に乳児の場合、これらの曝露は、発達中の中枢神経系に悪影響を及ぼし、認知能力に対して生涯にわたる異常を残すことがあり得る。
【0234】
母乳は、母親によって使用される任意の医療用薬物または娯楽的薬物の残留物を含有し得る。化学療法薬などのある種の医療用医薬品は、乳児に対するリスクのため、授乳に関して禁忌である。大麻およびアルコールなどの一般的に使用される娯楽的中毒性物質は母乳に移行する。さらに、授乳中にこれらの薬物を使用する女性からの母乳中には精神賦活物質が検出され、授乳時にこれらの物質を摂取した母親によって母乳を与えられた子供からの毛髪試料中には違法薬物の代謝産物が見出されている。
【0235】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ヒ素、鉛、カドミウム、ニッケル、水銀、クロム、コバルトおよび亜鉛などの1つまたは複数の重金属を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ヒ素を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、鉛を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、カドミウムを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ニッケルを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、水銀を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、クロムを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、コバルトを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、亜鉛を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ヒ素、鉛、カドミウム、ニッケル、水銀、クロム、コバルトおよび亜鉛を含まないか、または実質的に含まない。
【0236】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、化学療法薬、抗うつ薬、抗不安薬、ベンゾジアゼピン、アルコール、大麻、オピオイド、フェンサイクリジン、コカイン、またはこれらの代謝産物からなる群からの薬物を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、リチウム、カルバマゼピン、クロルプロマジンおよびクロザピンからなる群からの薬物を含まないか、または実質的に含まない。
【0237】
アレルゲン
外来のアレルゲン性タンパク質は、内因性のヒト乳タンパク質と区別することが困難であり得る。ヒトの乳中に検出されているアレルゲン性の可能性を有する食品タンパク質には、鶏卵およびピーナッツタンパク質が含まれる。米国における深刻な食物アレルギー反応のほとんどの原因であるビッグ8として知られる8つの主要な食物アレルゲンが存在する。ビッグ8のリストは、牛乳、卵、魚、甲殻類貝類、木の実、ピーナッツ、小麦および大豆アレルゲンから構成されている。卵アレルギーを引き起こすことが知られているタンパク質には、オボムコイド、オボアルブミンおよびコンアルブミンが含まれる。ピーナッツタンパク質には、アラキン6、アラキン3、コンアラキン、主要アレルゲンArah1およびアラキンArah2が含まれる。母親の食事性タンパク質の乳への輸送の一例として、1日当たり1個の卵の摂取は、卵を避けている母親と比較して、ヒトの乳中でのより高い濃度のニワトリ卵アレルゲン卵オボアルブミン(OVA)をもたらすことが示されている。
【0238】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、1つまたは複数の食物アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、卵、魚、甲殻類貝類、木の実、ピーナッツ、小麦および大豆アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、卵アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、魚アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、甲殻類アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、木の実アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ピーナッツアレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、小麦アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、大豆アレルゲンを含まないか、または実質的に含まない。
【0239】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、アラキン6、アラキン3、コンアラキン、Arah1およびArah2を含まないか、または実質的に含まない。
【0240】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、オボアルブミン(OVA)を含まないか、または実質的に含まない。
【0241】
細胞
天然に存在する母乳は、ヒト幹細胞、ヒト免疫細胞および細菌細胞を含む多様な細胞型に相当する生きた細胞の実質的な集団を含有する。母乳は約146,000細胞/mlを含有し、その量は移行乳(産後8~12日)および成熟乳(産後26~30日)においてそれぞれ27,500および23,650細胞/mlに減少する。細胞には、骨髄前駆細胞(9~20%)、好中球(12~27%)、未成熟顆粒球(8~17%)および非細胞傷害性T細胞(6~7%)が含まれる。ヒト乳微生物叢の存在が発見されたのはわずか10年前である。1日当たり800mlの母乳を哺乳される乳児は、毎日107~108個の細菌細胞を摂取し得ると推定される。ヒトの乳の中に最も頻繁に見出される細菌は、ブドウ球菌、アシネトバクター、連鎖球菌、シュードモナス、乳酸球菌、腸球菌または乳酸桿菌の種に属する細菌である。
【0242】
いくつかの実施形態において、培養乳製品は、細胞を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ヒト乳腺上皮細胞および/または形質細胞を含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、1つもしくは複数のヒト乳腺上皮細胞および/または1つもしくは複数の形質細胞以外の細胞を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、幹細胞、筋上皮細胞、骨髄前駆細胞、好中球、顆粒球、T細胞、ブドウ球菌、アシネトバクター、連鎖球菌、シュードモナス、乳酸球菌、腸球菌および乳酸桿菌からなる群から選択される細胞を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ヒト乳腺上皮細胞および/または形質細胞を含む。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、1つもしくは複数のヒト乳腺上皮細胞および/または1つもしくは複数の形質細胞以外の細胞を含まないか、または実質的に含まない。
【0243】
ウイルス
天然に存在する母乳は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、西ナイルウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスなどのある種の感染性因子を伝染させ得る。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、ウイルスを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、西ナイルウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスからなる群から選択されるウイルスを含まないか、または実質的に含まない。
【0244】
ホルモン
天然に存在する母乳は、乳腺の外側で合成され、乳腺上皮を横切って乳中に輸送されるレプチン、グレリンおよびアディポネクチンなどの、母体循環からのホルモンを含み得る。いくつかの実施形態において、培養乳製品はホルモンを含まない。いくつかの実施形態において、培養乳製品は、レプチン、グレリン、アディポネクチン、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)甲状腺刺激ホルモン(TSH)、表皮成長因子、βエンドルフィン、リラキシン、コルチゾールまたはエリスロポエチンからなる群から選択されるホルモンを含まない。
【0245】
使用方法
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるIgAもしくはsIgAを含む培養乳製品、または本明細書に記載される単離されたIgAもしくはsIgAを含む免疫療法組成物の投与を含む、微生物感染症の処置および/または予防を必要とする対象において微生物感染症を処置および/または予防する方法が本明細書に開示される。
【0246】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は乳児である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、重症複合免疫不全症(SCID)、HIV/AIDS、癌または自己免疫疾患から選択される疾患を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、ループスまたは糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、臓器移植レシピエントまたは骨髄移植レシピエントである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、栄養失調である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、吸収不良症候群を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、消耗症候群を有する。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、高齢者である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、嚢胞性線維症、COPDまたは非CF気管支拡張症を有する。
【0247】
ある特定の実施形態において、IgAおよび/またはsIgAを含む免疫療法組成物および培養乳製品は、微生物感染症の処置または予防に有効な量で患者に投与される。いくつかの実施形態において、微生物感染症は、細菌感染症、真菌感染症または寄生生物感染症である。
【0248】
ある特定の実施形態において、微生物感染症は細菌感染症である。処置および/または予防することができる細菌感染症の非限定的な例には、ストレプトコッカス・ニューモニエ、モラクセラ・カタラーリス、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、サルモネラ、赤痢菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、ヘリコバクター・ピロリ、大腸菌、C.ディフィシルまたはビブリオ・コレラエによって引き起こされる感染症が含まれる。
【0249】
ある特定の実施形態において、微生物感染症はウイルス感染症である。処置および/または予防することができるウイルス感染の非限定的な例には、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスおよびヒトメタニューモウイルスによって引き起こされる感染症が含まれる。
【0250】
いくつかの実施形態において、微生物感染症は寄生生物感染症である。いくつかの実施形態において、寄生生物感染症は、ランブル鞭毛虫、エントアメーバ・ヒストリチカ、クリプトスポリジウム属種または戦争シストイソスポーラの感染症である。
【0251】
いくつかの実施形態において、微生物感染症は真菌感染症である。いくつかの実施形態において、真菌感染症は、アスペルギルス、クリプトコッカスまたはニューモシスチス・ジロベシの感染症である。
【0252】
ある特定の実施形態において、IgAもしくはsIgAを含む培養乳製品免疫、またはIgAもしくはsIgAを含む治療用組成物は、胃腸感染症を処置または予防するために対象に経口投与される。ある特定の実施形態において、胃腸感染症は、細菌性またはウイルス性胃腸炎である。ある特定の実施形態において、対象は、ヘリコバクター・ピロリの感染症によって引き起こされる潰瘍を有する。
【0253】
いくつかの実施形態において、微生物感染症はカンジダ症である。
【0254】
いくつかの実施形態において、微生物感染症は呼吸器感染症である。いくつかの実施形態において、呼吸器感染症は、肺炎、気管支炎、アスペルギルス症またはクリプトコッカス症である。いくつかの実施形態において、呼吸器感染症は、B.セパシア、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、アスペルギルス、クリプトコッカスまたはニューモシスチスによる感染症である。
【0255】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される免疫療法組成物は、呼吸器感染症を処置または予防するための経鼻吸入剤として対象に投与される。いくつかの実施形態において、組成物は吸入用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、組成物は粉末である。いくつかの実施形態において、組成物は、ネブライザによる投与のための製剤である。
【0256】
ある特定の実施形態において、免疫療法組成物および/または培養乳製品は、別の抗菌剤(すなわち、抗生物質または抗ウイルス剤)と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される培養乳製品は、胃腸感染症の処置および/または予防のための追加の栄養製品と共に投与される。
【0257】
本開示について説明してきたが、本開示は以下の実施例においてより詳細に説明され、以下の実施例は例示のみを目的として本明細書に含められており、本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0258】
実施例
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態およびその様々な使用を例示するものである。以下の実施例は説明を目的としてのみ記載されており、決して本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0259】
実施例1:ヒト乳腺上皮からの乳成分の生産
本実施例では、ヒト乳腺上皮が再現され、インビトロで乳が生産される。記載された系および過程は例示的なものであり、1リットルを超える体積の乳成分を生産するようにスケールを拡大することができる。乳腺上皮細胞は、被覆されていない繊維上の他、ラミニンおよびコラーゲンまたは他の細胞外マトリックスタンパク質の1つまたは複数で予め被覆されたバイオリアクター繊維上に極性化した単層を形成すると予想される。コンフルエントになると、単層は、基底面が繊維に付着し、頂端面がECSの方を向いた状態で、毛細管内空間および毛細管外空間(ECS)を分割する障壁を形成する。乳成分の生産は、培地へのプロラクチンの添加によって刺激される。分泌された乳成分はECSから収集され、インビボで生産されたヒト母乳と比較したタンパク質、脂質および炭水化物含有量の下流分析に供される。
【0260】
本実施例で用いた材料が表3に示されている。
【0261】
【0262】
手順
【0263】
一次ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)の拡大増殖
【0264】
表3に列挙されているキットにおいて提供される補充物質を加えて調製された乳腺上皮細胞培地中、1つのコラーゲンIV被覆T300フラスコ(または2つのT175フラスコ)中にヒト乳腺上皮細胞(1アンプル;5×105個の細胞)を拡大増殖させる。適切な細胞数が得られたら、D-PBSで細胞をすすぎ、トリプシン-EDTAを用いてプレートから回収する。細胞が剥離したら、Trypsin Neutralizing Solutionを用いてトリプシン活性を停止させる。細胞を培地に再懸濁し、以下に記載されるように調製される中空糸バイオリアクター(Fibercell Systems)中に播種する。
【0265】
中空糸バイオリアクター(C2025D、20kD MWCO)の調製
【0266】
播種前に、PBSで最低24時間事前培養することによってバイオリアクターカートリッジ(Fibercell Systems)を調製する。バイオリアクターカートリッジは、3.2mLのPBS中に約50~100pgのコラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン111(例えば、Engelbreth-Holm Swarm腫瘍から単離されたラミニン111)、アルファ-4、アルファ-5、フィブロネクチンおよび/またはエンタクチンの1つまたは複数を添加し、室温で一晩、糸を横切った限外濾過を実施させることによって、任意で予め被覆してもよい。被覆されていないまたは予め被覆されたカートリッジを培地と交換し、室温で一晩インキュベートする。次いで、培地をT300(またはT175)フラスコから回収された細胞と交換する。リザーバ容積は125mL以下である。細胞を播種した後、カートリッジを180度回転させる。
【0267】
バイオリアクターにおける細胞増殖およびプロラクチン刺激
【0268】
バイオリアクターに播種した後、100mL培地あたり10~25mLのDMEM/10%CDM-HD(ダルベッコ改変イーグル培地;高密度細胞培養のための化学組成が明らかな培地)を補充した乳腺上皮細胞増殖培地中で細胞を増殖させる。DMEM/CDM-HDの割合は、グルコース消費の速度に基づいて調整することができる。
【0269】
乳分泌の刺激の前に、ECS中の培地を洗い流し、PBSと交換する。乳成分分泌を刺激するために、100ng/mLプロラクチンを補充した培地を添加する。乳腺刺激性培地には、高濃度のグルコース、および乳脂肪酸、リノール酸およびα-リノレン酸の必須食物性前駆体を補充することもできる。以下に記載されるようにサンプリングしながら、バイオリアクターを10日間維持する。
【0270】
採取および試料調製
【0271】
プロラクチンの培地への添加後、ECSからの上清およびリザーバからの等体積の培地から構成される試料を、10日間、1日1回収集する。遠心分離機中で試料を回転させて任意の残屑を収集し、等体積のPBSに再懸濁する。ECSおよび培地試料からの上清を微量遠心管中で0.5mLの一定分量に分割し、-80℃で凍結させる。元の試料と等しい体積のPBS中にペレット残屑を再懸濁し、-80℃で凍結させる。生産された乳成分の相対濃度を決定するために、試料を処理する。
【0272】
1リットルを超える生産のためのスケール拡大
【0273】
1リットルを超える生産に規模を拡大するために、より大きなバイオリアクター(例えば、Fibercell Systemsカタログ番号C2018)のために試薬体積の相対的調整を伴った前述の手順が実行される。
【0274】
実施例2:
乳の収集のために設計された細胞培養系は、細胞に栄養素を提供する培地に乳が曝露されないように、製品の区画化された分泌を支援すべきである。体内では、乳を生産する上皮細胞が乳腺の内面を連続単層として覆っている。基底面が下層の基底膜に付着する一方、乳は、頂端面から分泌され、搾乳または哺乳時に取り除かれるまで、腺または胞の管腔区画内に貯蔵されるように、単層は配向されている。細胞の外側面に沿った密着結合は、下層組織と胞巣状区画中に位置する乳との間に障壁を確保する。したがって、インビボでは、乳腺の組織は、乳分泌が区画化されるように配置されており、乳腺上皮細胞自体は界面を確立し、栄養素の方向性吸収および乳の分泌を維持する。
【0275】
本開示は、体外で増殖させた乳腺上皮細胞から乳を集めるために使用される乳腺の区画化能を再現する細胞培養装置を記載する。上皮単層が栄養培地と分泌される乳の間に物理的境界を提供するように、このような装置は、2つの区画間の界面において乳腺細胞の増殖を支えるための足場を含むことができる。増殖のための表面を提供することに加えて、足場は、細胞の極性化を誘導し、吸収および分泌の方向性を確保する空間的な手掛かりを提供する。本発明は、栄養的利用のために乳を生産および収集するための区画化された細胞培養装置中での乳腺上皮細胞の調製、栽培および刺激を記載する(例えば、
図1を参照)。
【0276】
乳腺上皮細胞の調製。乳腺上皮細胞は、切除された乳腺組織(例えば、乳房、ウシおよびヤギなどの乳房、乳首)の外科的外植片、生検試料または生の母乳から得られる。一般に、乳腺組織の外科的切除後には、無菌条件下において手作業で、すべての脂肪組織または間質組織が取り除かれ、乳腺の残りの組織は、「一般に安全と認められている」(GRAS)成分で構成されるべきである化学組成が明らかな栄養培地中で調製されたコラゲナーゼおよび/またはヒアルロニダーゼで酵素的に消化される。穏やかに撹拌しながら試料を37℃に維持する。消化後、遠心分離によって、または無菌ナイロンセルストレーナーを通して試料を注ぐことによって、単一細胞またはオルガノイドの懸濁液を収集する。次いで、適切な細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン)で被覆された組織培養プレートに細胞懸濁液を移す。
【0277】
あるいは、外植片標本は、例えば無菌のメスで細かく刻むことによって小片に加工することができる。組織片は、適切な細胞外マトリックスで被覆されたゼラチンスポンジまたはプラスチック組織培養プレートなどの適切な表面上に蒔かれる。
【0278】
5%CO2雰囲気の加湿されたインキュベータ内で、蒔かれた細胞を37℃に維持する。インキュベーションの間、約1~3日ごとに培地を交換し、液体窒素中での保存のための調製;SV40、TERTもしくは老化に関連するその他の遺伝子などの遺伝子の安定な形質移入を通じた不死化された細胞株の生成;例えば蛍光活性化細胞選別による乳腺上皮、筋上皮および幹/前駆細胞型の単離;ならびに/またはヒトが摂取するための乳の生産および収集のための区画化された組織培養装置中への導入を含むその後の処理のために、十分な生存細胞数が達成されるまで細胞を継代培養する。
【0279】
乳の生産のための乳腺上皮細胞の栽培。栄養的利用のための乳は、上述のように単離され、栄養培地と生成物の分離が維持されるように区画化された分泌を支える形式で培養された乳腺上皮細胞によって生産される。この系は、その中に乳が分泌される頂端区画とそこを通って栄養培地が供給される基底区画との間の界面に位置する適切な足場上に播種されたときに、適切な頂端-基底極性を有する連続単層を確立する乳腺上皮細胞の能力に依存する(例えば、
図2を参照)。これらの特性を支えるために、例えば中空糸または微細構造化足場に基づくバイオリアクターの他、組織培養プレート中に配置されたTranswell(登録商標)フィルタが使用される。
【0280】
乳腺上皮細胞の単離および拡大増殖に続いて、食品等級成分から構成される化学組成が明らかな栄養培地に細胞を懸濁し、コラーゲン、ラミニンおよび/またはフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質の混合物で予め被覆された培養装置中に接種する。細胞培養装置は、極性化したコンフルエントな上皮単層からの栄養素の区画化された吸収および生成物の分泌を可能にする任意の設計である。例としては、中空糸および微細構造化足場バイオリアクターが挙げられる(例えば、それぞれ、
図3および4を参照)。代替としては、インビトロで機能的器官を生成するために幹細胞が再配置された、足場としての脱細胞化乳腺の調製、またはヒドロゲルマトリックス中もしくは懸濁液中のいずれかで増殖させた乳腺上皮細胞オルガノイドもしくは「マンモスフェア」の管腔からの乳の収集などの三次元組織培養の他の方法が挙げられる。
【0281】
装置は、約5%CO2の加湿された雰囲気中で約37℃の温度を維持する密閉筐体を含む。細胞がバイオリアクター内で増殖するときの培養物の増殖を評価するために、グルコース取り込みをモニターする。グルコース消費の安定化は、細胞がコンフルエントな接触阻害状態に達したことを示す。単層の完全性は、経上皮電気抵抗を用いて保証される。センサは、複数の場所で培地中の溶存O2およびCO2の濃度をモニターする。コンピュータ化されたポンプは、栄養素の送達とアンモニアおよびラクタートなどの代謝廃棄物の除去とのバランスをとる速度で、バイオリアクターを通して培地を循環させる。Lactate Supplementation and Adaptation技術(Freund et al.2018 Int J Mol Sci.19(2))を使用してまたは充填されたゼオライトのチャンバを通過することによって廃棄物を除去した後、培地は、系を通じてリサイクルすることができる。
【0282】
母乳生産の刺激。インビボおよび培養された乳腺上皮細胞において、乳の生産および分泌はプロラクチンによって刺激される。培養において、プロラクチンは、乳汁分泌中に体内で観察される濃度に近い濃度、例えば約20ng/mL~約200ng/mLで栄養培地中に外因的に供給され得る。精製されたプロラクチンは商業的に入手することができる。しかしながら、微生物または哺乳動物の細胞培養物からの組換えタンパク質の発現および精製を含む、プロラクチンを提供するかまたは乳汁分泌を刺激する代替方法が使用される。あるいは、乳汁分泌を刺激するために、プロラクチンを発現および分泌する細胞を培養することによって調製される馴化培地を乳腺上皮細胞培養物に適用することができる。記載したような区画化された培養装置中で増殖された乳腺細胞への曝露前に、プロラクチンまたは他の重要な培地補助物質を発現する細胞の培養物を通過する培地が馴化されるように、バイオリアクターは直列に設置することができる。
【0283】
乳生産を上方制御し、および/または外因性プロラクチンの使用を控えるための他のアプローチとしては、以下のもの:(a)プロラクチンの翻訳後修飾を標的とする構築物の発現;(b)プロラクチン受容体の別のアイソタイプの発現;(c)細胞外ドメインが異なるリガンドに対する結合部位と交換されたキメラプロラクチン受容体の発現;(d)構成的もしくは条件的に活性なプロラクチン受容体もしくはSTAT5もしくはAktなどのその下流エフェクターの改変された様式をコードする遺伝子の導入;(e)PER2概日性遺伝子のノックアウトもしくは改変;および/または(f)乳腺上皮単層の基底面での栄養素取り込みの速度を増加させることを目的とした分子アプローチなどの、乳腺上皮細胞の表面上のプロラクチンの受容体へのプロラクチンの結合によって調節されるシグナル伝達経路の分子操作が挙げられる。
【0284】
乳の収集。分泌された乳は、例えば、培養装置の頂端区画中に設置されたポートを通して連続的にまたは間隔を置いて収集される。収集を容易にするためにポートに真空が適用され、さらなる生産の刺激にも寄与する。収集された乳は、無菌容器中に詰められ、流通のために密封され、貯蔵のために凍結もしくは凍結乾燥され、または特定の成分の抽出のために処理される。
【0285】
本発明は、栄養的利用のための乳を生産するための乳腺上皮細胞培養物を提供する。ヒトの母乳に加えて、この方法は、例えばヒトの摂取または獣医学的使用のために、他の哺乳動物種から乳を生成するために使用され得る。体外で乳を生産することは以前には可能ではなかったので、この技術は、既存の製品に対する代替の生産様式を提供することに加えて、新たな商機をもたらし得る。この技術の商業的開発の社会的および経済的な効果は幅広く、広範囲に及ぶ。培養された細胞からのヒト母乳の生産は、食料が乏しい地域社会において乳児の栄養不良に対処するための手段を提供し得、授乳できない未熟児に必須の栄養素を提供し得、乳児用調製粉乳の便利さに最適な栄養を付与する新生児に栄養を補給するための新しい選択肢を母親に与え得る。牛乳またはヤギ乳の生産は、畜産の環境的、社会的および動物福祉的影響を軽減するための機会を提供する。ここに記載される過程は、細胞農業という新興分野における重要な間隙に対処し、我々の栄養源の中で最も基本的なものに対する我々の生物的および文化的愛着を損なうことなく、人間の食品供給を刷新する機会を導入する。
【0286】
実施例3:免疫グロブリンを含む乳組成物の製造
健常ドナーから一次乳腺組織を収集する。筋上皮および管腔上皮細胞集団についての公知のマーカーを使用するFACS分析によってCD20+免疫細胞および乳腺上皮細胞集団を選別する。単離された乳腺細胞および免疫細胞は、これらの細胞の共培養の前に不死化される。中空糸バイオリアクター内で、不死化された免疫細胞を不死化された単離された乳腺上皮細胞と共培養し、コンフルエントになるまで増殖させる。培養物をプロラクチンで刺激して乳生産を刺激する。次いで、非破壊的回収機構によって、分泌型IgAを含む免疫グロブリンを含む分泌細胞培養生成物を採集する。
【0287】
実施例4:共培養された粘膜上皮細胞および免疫細胞からの免疫療法組成物の製造
粘膜感染症から回復した患者由来の組織から一次乳腺上皮細胞およびCD20+免疫細胞を採取する。ウイルス中和活性を示す血清について陽性であると試験された患者が選択される。CD20+免疫細胞は、中空糸バイオリアクター内で乳腺上皮細胞と共培養される。免疫細胞を2D培養で増殖させ、続いて中空糸バイオリアクター中に接種し、バイオリアクター内で最大密度(すなわち、コンフルエンス超)まで増殖させる。粘膜上皮細胞と免疫細胞の共培養を刺激して、分泌型IgAを含む免疫グロブリンを生産する。ウイルスタンパク質、ウイルスタンパク質断片、プロラクチン、TGF-βおよびインターロイキン10(IL-10)から選択される刺激剤のうちの1つまたは複数で共培養物を刺激する。標準的な真空法を用いて、粘膜上皮細胞と刺激された免疫細胞との共培養からの生成物を採取する。ある特定の実施形態において、分泌された生成物は精製される。免疫グロブリンは、採取した分泌生成物から精製される。精製された分泌生成物は、ヒト肺投与用の吸入剤として製剤化され、呼吸器感染の処置において有効である。
【0288】
実施例5:共培養された粘膜上皮細胞および免疫細胞からの免疫療法組成物による呼吸器感染の処置
実施例3で上記のようにして生産された免疫療法組成物は、吸入剤として製剤化され、呼吸器感染症を有する患者に、感染症を処置するのに有効な量で投与される。免疫療法組成物は、患者における感染症の症候の重症度を軽減するのに有効である。
【0289】
実施例6:培養乳製品
乳腺上皮細胞(MEC)は、乳成分の大部分を産生し、乳汁分泌中に体内の乳組成を調節する。ここで、本発明者らは、透過性足場を提供し、バイオリアクターの毛細管を通って循環する細胞培地と毛細管外空間(ECS)から収集される分泌された生成物との間に上皮の障壁を維持する接着性培養物の形成を可能にする中空糸バイオリアクター(HFBR)中でヒトMEC(hMEC)を培養することによって得ることができる細胞培養ヒト乳製品の組成を記載する。
【0290】
生産および分析
【0291】
本実施例に記載される製品組成は、乳腺刺激性条件下においてHFBR中で培養された様々な供給源に由来するhMECの生合成生産物に相当する(
図9A)。細胞入力には、公に入手可能な一次hMECおよび不死hMECが含まれる(表4)。
【0292】
【0293】
簡単に説明すると、組織培養フラスコ内で拡大増殖させた後、HFBRのECS中にhMECを接種し、蠕動ポンプを使用して、毛細管を通して酸素添加培地を循環させた。
【0294】
過程の増殖期を支えるための増殖培地は、増殖を維持するために必要な成長因子が補足された指定の基礎培地に対応する。
【0295】
接種後、グルコメータ(AccuCheck)で毎日のグルコース利用速度(GUR)を評価することによって増殖をモニターした。増加するGURは、過程の増殖期中の増加した細胞数の結果としての増加した代謝活性に対応する。GURの安定化または低下は、細胞がコンフルエントな状態を達成し、増殖が接触阻害されたことを示す。コンフルエンスが達成されたら、HFBRの毛細管を通って循環する培地を、組換えヒトプロラクチン(Sigma)を補充した乳腺刺激性培地に移行した。注目すべきことに、乳腺刺激性培地への移行は、ラクトースの生産を含む、乳生合成の上昇した代謝要求に関連するGUR増加の第2段階に対応することが観察された(
図9B)。この過程の乳腺刺激性段階の間、一方のECSアクセスポート中に新鮮なPBSを導入し、同時に、他方のECSアクセスポートにおいてシリンジを通して等しい体積の生成物試料を採取するために、シリンジを使用することによって分析試験のために一定の間隔でECSをサンプリングした。
【0296】
乳腺刺激性刺激下で、hMECは最終分化の状態を達成し、頂端/基底極性および側面における密着結合を有するコンフルエントな単層を形成し、基底区画と頂端区画との間に不透過性障壁をもたらした。基底面は、毛細管上に堆積した細胞外マトリックスに付着し、頂端面はECSの方を向いていた。この配向により、hMECは、頂端/基底軸に沿って吸収機構および分泌機構を構築し、毛細管を介して灌流された培地からの基底面における栄養素取り込みおよび頂端面におけるECS中への生成物分泌を可能にし、生成物はユニットから採取されるまでECSに蓄積した。生成物の蓄積は、ECS内でのラクトース、β-カゼインおよび増加した総タンパク質含有量の検出によって実証された(
図9B~D)。
【0297】
ECSにおける生成物蓄積の速度は、細胞付着および培地灌流のために利用可能な表面積によって制限された、HFBRが収容することができる細胞の数によって決定された。この過程は、約10^8(Fibercell Systems、C2025D)~10^11(Fibercell Systems C2018)個の細胞を収容することができる市販のHFBRを使用して行った。本発明者らは、約1kgの組織に相当する乳汁分泌中のヒト乳腺は約10^11個の細胞を含有すると推定し、この細胞数を支えることができるHFBRは、乳汁分泌中の乳腺の1日生産量と同様の1日生産量を生産することができるであろうと推定する。これらの推定値に基づく理論的収率は、乳腺刺激性の刺激中に収集された本発明者らのECS試料の総タンパク質含有量の定量分析によって裏付けられる(
図9D)。さらに、ECSから採取された生成物の、培地と比較して増加したタンパク質含有量は、細胞が区画間に機能的障壁を提供し、生成物中への培地成分の拡散移動を妨げることを確認する。
【0298】
高分子生成物組成
【0299】
HFBR中で増殖させたhMECによる総タンパク質生産が乳に対して予想される総タンパク質生産に対応することを確認することに加えて、本発明者らは、これらの生成物の分子組成を評価し、ヒト乳成分の存在を確認するために、一連の非標的化および標的化分析を行った。質量分析を使用して、最長90日間にわたる実行中に本発明者らの製品のタンパク質、脂質および炭水化物含有量を経時的に調査し、各カテゴリーからの上位10個の最も豊富なヒト乳成分を表5に提示する。各実行において使用された細胞培地配合物の対応する分析により、列挙されている成分は培地中に存在しなかったので、列挙されている成分はhMECによって合成されたことが確認される。
【0300】
【0301】
栄養素含有量を超えて、検出された成分は、母乳中の多数の既知の生物活性種に相当し、乳児の免疫系の発達および防御、腸の発達ならびに脳の発達に関連することに注目することが重要である。特に興味深いことに、本発明者らはまた、抗炎症活性および炎症促進活性を有することが報告されている9-ヒドロキシオクタデカジエン酸などの多価不飽和脂肪酸の多数の遊離オキシリピン代謝産物を検出した。
【0302】
結論
【0303】
これらの結果および本発明者らの進行中の分析は、重要な栄養成分および生物活性成分を含む、培養されたhMECからのヒト乳製品の生産の実現可能性を裏付けている。商業的過程は、指定された組成物を達成するために複数のユニットから得られた製品の生産後混合を含み得るので、本明細書に記載されている組成物は、製品にわたってプールされたデータを表す。
【0304】
前述の実施例は、本開示の例示であり、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、好ましい実施形態を参照しながら詳細に説明されているが、以下の特許請求の範囲に記載および定義されている本開示の範囲および精神内で変形および修正が存在する。
【配列表】
【国際調査報告】