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特表2023-528017重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用
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  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図1A
  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図1B
  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図2
  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図3
  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図4
  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図5
  • 特表-重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-COV-2)ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/50 20060101AFI20230626BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20230626BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230626BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230626BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230626BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230626BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230626BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C12N15/50
C07K14/165 ZNA
C07K19/00
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/215
A61K47/64
A61K47/65
A61K39/395 Y
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573138
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2021064098
(87)【国際公開番号】W WO2021239838
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20305550.4
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20306415.9
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21305092.5
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21305482.8
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】509004712
【氏名又は名称】ベイラー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
(71)【出願人】
【識別番号】511214484
【氏名又は名称】アシスターンス ピュブリク-オピト ドゥ パリ (アペアシュペ)
(71)【出願人】
【識別番号】518322621
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・エ・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヴ、レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ、ラカバラツ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン、カルディノ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、サレノ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA33
4C085BA71
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC08
4C085CC21
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミックは、紛れもなく今世紀最大の人類への世界的健康脅威として出現した。SARS-CoV-2ワクチンは、このウイルスが集団に定着した場合に罹患率と死亡率を減少させるために不可欠となる。本発明者らは、SARS-CoV-2に対する候補ワクチンを設定した。特に、本発明者らは、オンラインソフトウエア(NetMHC-4.0およびNetMHCII-2.3)およびペプチド結合予測ソフトウエアによって予測されたMHC-Iおよび-IIエピトープをマッピングするためにこれらのタンパク質のアミノ酸配列のイン・シリコ分析のおかげでワクチン候補に含まれるべき特定のエピトープを同定した。また、B細胞エピトープもオンラインソフトウエア(BepiPred-2.0およびDiscotope)を用いてマッピングするとともに、SARS-CoV-2および-CoV-1の間で配列が相同なエピトープに富む領域もマッピングした。最後に、本発明者らは、本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドを含み、ワクチン目的に適しているいくつかの特異的CD40抗体を作製した。従って、本発明は、SARS-CoV-2ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nタンパク質に由来し、かつ、配列番号2の276番の残基~411番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(N276-411、「Npep2」)。
【請求項2】
配列番号2の276番の残基~411番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;または136個の連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載のポリペプチド(N276-411)。
【請求項3】
配列番号2の276番の残基~411番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1のポリペプチド(N276-411)。
【請求項4】
Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)。
【請求項5】
配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;または126個の連続するアミノ酸を含む、請求項4に記載のポリペプチド(S125-250)。
【請求項6】
配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項4に記載のポリペプチド(S125-250)。
【請求項7】
配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲であり、かつ、C136S非自然突然変異を含む、アミノ酸配列からなる、請求項4に記載のポリペプチド(S125-250)。
【請求項8】
Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の1056番の残基~1209番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)。
【請求項9】
配列番号3の1056番の残基~1209番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;136;137;138;139;140;141;142;143;144;145;146;147;148;149;150;151;152;153;または154個の連続するアミノ酸を含む、請求項8に記載のポリペプチド(S1056-1209)。
【請求項10】
配列番号3の1056番の残基~1209番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項9に記載のポリペプチド(S1056-1209)。
【請求項11】
Mタンパク質に由来し、かつ、配列番号1の1番の残基~110番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(M1-110)。
【請求項12】
配列番号1の1番の残基~110番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;または110個の連続するアミノ酸を含む、請求項11に記載のポリペプチド(M1-110)。
【請求項13】
配列番号1の1番の残基~110番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項11に記載のポリペプチド(M1-110)。
【請求項14】
Mタンパク質に由来し、かつ、配列番号1の132番の残基~222番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(M132-222)。
【請求項15】
配列番号1の132番の残基~222番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;または91個の連続するアミノ酸を含む、請求項14に記載のポリペプチド(M132-222)。
【請求項16】
配列番号1の132番の残基~222番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項14に記載のポリペプチド(M132-222)。
【請求項17】
Nタンパク質に由来し、かつ、配列番号2の78番の残基~206番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(N78-206)。
【請求項18】
配列番号2の78番の残基~206番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;または129個の連続するアミノ酸を含む、請求項17に記載のポリペプチド(N78-206)。
【請求項19】
配列番号2の78番の残基~206番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項17に記載のポリペプチド(N78-206)。
【請求項20】
Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(S280-598)。
【請求項21】
配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;136;137;138;139;140;141;142;143;144;145;146;147;148;149;150;151;152;153;154;155;156;157;158;159;160;161;162;163;164;165;166;167;168;169;170;171;172;173;174;175;176;177;178;179;180;181;182;183;184;185;186;187;188;189;190;191;192;193;194;195;196;197;198;199;200;201;202;203;204;205;206;207;208;209;210;211;212;213;214;215;216;217;218;219;220;221;222;223;224;225;226;227;228;229;230;231;232;233;234;235;236;237;238;239;240;241;242;243;244;245;246;247;248;249;250;251;252;253;254;255;256;257;258;259;260;261;262;263;264;265;266;267;268;269;270;271;272;273;274;275;276;277;278;279;280;281;282;283;284;285;286;287;288;289;290;291;292;293;294;295;296;297;298;299;300;301;302;303;304;305;306;307;308;309;310;311;312;313;314;315;316;317;318;または319個の連続するアミノ酸を含む、請求項20に記載のポリペプチド(S280-598)。
【請求項22】
配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項20に記載のポリペプチド(S280-598)。
【請求項23】
配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、K417N、K417T、E484KおよびN501Y突然変異からなる群から選択される1以上の自然突然変異を含む、アミノ酸配列からなる、請求項20に記載のポリペプチド(S280-598)。
【請求項24】
配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、K417N、E484KおよびN501Y自然突然変異ならびにC538S非自然突然変異を含む、アミノ酸配列からなる、請求項20に記載のポリペプチド(S280-598)。
【請求項25】
Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の680番の残基~1029番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(S680-1029)。
【請求項26】
配列番号3の680番の残基~1029番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;136;137;138;139;140;141;142;143;144;145;146;147;148;149;150;151;152;153;154;155;156;157;158;159;160;161;162;163;164;165;166;167;168;169;170;171;172;173;174;175;176;177;178;179;180;181;182;183;184;185;186;187;188;189;190;191;192;193;194;195;196;197;198;199;200;201;202;203;204;205;206;207;208;209;210;211;212;213;214;215;216;217;218;219;220;221;222;223;224;225;226;227;228;229;230;231;232;233;234;235;236;237;238;239;240;241;242;243;244;245;246;247;248;249;250;251;252;253;254;255;256;257;258;259;260;261;262;263;264;265;266;267;268;269;270;271;272;273;274;275;276;277;278;279;280;281;282;283;284;285;286;287;288;289;290;291;292;293;294;295;296;297;298;299;300;301;302;303;304;305;306;307;308;309;310;311;312;313;314;315;316;317;318;319;320;321;322;323;324;325;326;327;328;329;330;331;332;333;334;335;336;337;338;339;340;341;342;343;344;345;346;347;348;349;または350個の連続するアミノ酸を含む、請求項25に記載のポリペプチド(S680-1029)。
【請求項27】
配列番号3の680番の残基~1029番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項25に記載のポリペプチド(S680-1029)。
【請求項28】
異種ポリペプチドが請求項1~27のいずれか一項に記載の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、コンジュゲート。
【請求項29】
請求項1に記載のポリペプチド(N276-411、「Npep2」)を含む、請求項28に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
ポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含む、請求項29に記載のコンジュゲート。
【請求項31】
配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む、請求項30に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含む、請求項29に記載のコンジュゲート。
【請求項33】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む、請求項32に記載のコンジュゲート。
【請求項34】
ポリペプチド(N276-411、「Npep2」)およびRBDポリペプチドを含む、請求項29に記載のコンジュゲート。
【請求項35】
配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む、請求項34に記載のコンジュゲート。
【請求項36】
異種ポリペプチドが免疫グロブリンドメイン、特に、抗体の重鎖または軽鎖である、請求項29に記載のコンジュゲート。
【請求項37】
抗体がIgG抗体、好ましくはIgG1もしくはIgG4抗体、またはいっそうより好ましくはIgG4抗体である、請求項36に記載のコンジュゲート。
【請求項38】
抗体が、DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CDllb、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体およびIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、およびASPGRからなる群から選択されるAPCの表面抗原に対するものである、請求項36に記載のコンジュゲート。
【請求項39】
抗体がCD40に対するものである、請求項38に記載のコンジュゲート。
【請求項40】
CD40抗体が
・以下を含む12E12抗体:
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含んでなり、CDR1Hがアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号8)を有し、CDR2Hがアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号9)を有し、かつ、CDR3Hがアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号10)を有する、重鎖、ならびに
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含んでなり、CDR1Lがアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号11)を有し、CDR2Lがアミノ酸配列YTSILHS(配列番号12)を有し、かつ、CDR3Lがアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号13)を有する、軽鎖、あるいは
・以下を含む11B6抗体:
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含んでなり、CDR1Hがアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号14)を有し、CDR2Hがアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号15)を有し、かつ、CDR3Hがアミノ酸配列EDYVY(配列番号16)を有する、重鎖;ならびに
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含んでなり、CDR1Lがアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号17)を有し、CDR2Lがアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号18)を有し、かつ、CDR3Lがアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号19)を有する、軽鎖、あるいは
・以下を含む12B4抗体:
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含んでなり、CDR1Hがアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号20)を有し、CDR2Hがアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号21)を有し、かつ、CDR3Hがアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号22)を有する、重鎖、ならびに
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含んでなり、CDR1Lがアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号23)を有し、CDR2Lがアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号24)を有し、かつ、CDR3Lがアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号25)を有する、軽鎖
に由来する、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項41】
CD40抗体が、表Aに記載されているmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項42】
抗体がランゲリンに特異的である、請求項38に記載のコンジュゲート。
【請求項43】
抗体が、ATCC受託番号PTA-9852を有する抗体15B10に由来するか、またはATCC受託番号PTA-9853を有する抗体2G3に由来するか、またはWO2011032161号公報に記載されている抗体91E7、37C1、もしくは4C7に由来する、請求項42に記載のコンジュゲート。
【請求項44】
抗体が、表Bに記載されているmAb7、mAb8、mAb9、mAb10、mAb11およびmAb12からなる群から選択される、請求項43に記載のコンジュゲート。
【請求項45】
異種ポリペプチドが請求項1~27のいずれか一項に記載の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドと融合して融合タンパク質を形成している、請求項28に記載のコンジュゲート。
【請求項46】
SARS-CoV-2ポリペプチドが直接またはリンカーを介して異種ポリペプチドに融合している、請求項45に記載のコンジュゲート。
【請求項47】
リンカーがFlexV1、f1、f2、f3、またはf4からなる群から選択される、請求項46に記載のコンジュゲート。
【請求項48】
CD40抗体(「Gen2a」と呼称)からなり、
・抗体の重鎖がRDBポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合している、
請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項49】
Gen2a抗体の軽鎖が配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項48に記載のコンジュゲート。
【請求項50】
Gen2a抗体が配列番号48に示される重鎖および配列番号49に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項48に記載のコンジュゲート。
【請求項51】
CD40抗体(「Gen2b」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合し、
・抗体の軽鎖がポリペプチド(N276-411、「Npep2」)およびRBDポリペプチドを含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合している、
コンジュゲート。
【請求項52】
Gen2b抗体の重鎖が配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項51に記載のコンジュゲート。
【請求項53】
Gen2bの軽鎖が配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項51に記載のコンジュゲート。
【請求項54】
Gen2b抗体が配列番号50に示される重鎖および配列番号51に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項51に記載のコンジュゲート。
【請求項55】
CD40抗体(「Gen2c」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖がRDBポリペプチドに融合している、
コンジュゲート。
【請求項56】
Gen2c抗体の重鎖が配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項55に記載のコンジュゲート。
【請求項57】
Gen2c抗体が配列番号52に示される重鎖および配列番号53に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項55に記載のコンジュゲート。
【請求項58】
CD40抗体(「CD40.CoV2v」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がRDBポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合している、
コンジュゲート。
【請求項59】
CD40.CoV2抗体の軽鎖が配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項58に記載のコンジュゲート。
【請求項60】
配列番号54に示される重鎖および配列番号55に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項58に記載のコンジュゲート。
【請求項61】
CD40抗体(「CD40.N2.RBDv」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)に融合し、
・抗体の軽鎖がRBDポリペプチドに融合している、
コンジュゲート。
【請求項62】
配列番号56に示される重鎖および配列番号57に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項61に記載のコンジュゲート。
【請求項63】
CD40抗体(「CD40.N2.RBDv-2」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がRBDポリペプチドに融合し、
・抗体の軽鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)に融合している、
コンジュゲート。
【請求項64】
CD40抗体(「CD40.RBDv.S4.N2」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がRBDポリペプチド、およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合し、
・抗体の軽鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)に融合している、
コンジュゲート。
【請求項65】
CD40.RBDv.S4.N2抗体の重鎖が配列番号58に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項64に記載のコンジュゲート。
【請求項66】
配列番号59に示される重鎖および配列番号60に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項64に記載のコンジュゲート。
【請求項67】
CD40抗体(「CD40.N2S1.RBDvS4」と呼称)からなる、請求項39~41のいずれか一項に記載のコンジュゲートであって、
・抗体の重鎖がポリペプチド(N276-411「Npep2」)、およびポリペプチド(S125-250、「Spep1」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合し、
・抗体の軽鎖がRBDポリペプチド、およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含んでなるポリエピトープポリペプチドに融合している、
コンジュゲート。
【請求項68】
CD40.N2S1.RBDvS4抗体の軽鎖が配列番号58に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項67に記載のコンジュゲート。
【請求項69】
CD40.N2S1.RBDvS4抗体の重鎖が配列番号61に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、請求項67に記載のコンジュゲート。
【請求項70】
配列番号62に示される重鎖および配列番号63に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項67に記載のコンジュゲート。
【請求項71】
RBDポリペプチドが、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501Y自然突然変異および非自然C538S突然変異を含む(「RBD南アフリカ株」)、アミノ酸からなる、請求項58、61、63、64または67に記載のコンジュゲート。
【請求項72】
抗原としての請求項1~27のいずれか一項に記載の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドおよび/または請求項28~71のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む、ワクチン組成物。
【請求項73】
請求項1~27のいずれか一項に記載の2、3、4、5、6、7または8個のSARS-CoV-2ポリペプチドを含む、請求項72に記載のワクチン組成物。
【請求項74】
請求項1~27のいずれか一項に記載の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドおよび/または請求項28~71のいずれか一項に記載のコンジュゲートをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項75】
必要とする対象にSARS-CoV-2のワクチン接種を行う方法であって、治療上有効な量の、請求項1~27のいずれか一項に記載の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドおよび/または請求項28~71のいずれか一項に記載の1個以上のコンジュゲート、および/または請求項72に記載のワクチン組成物、および/または請求項74に記載のポリヌクレオチドを投与することを含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、特に、ウイルス学およびワクチン学の分野にある。
【背景技術】
【0002】
2019年12月に中国武漢で発生した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)は、世界的な健康への脅威を引き起こした。2020年3月11日、WHOはCOVID-19をパンデミックと宣言した。急速さ、世界的な拡散速度および観測された死亡率の上昇は、公衆衛生、社会経済および科学的な課題を提起している。まだ今のところ極めて旺盛に拡散していると思われ、2020年5月10日現在、185か国以上に感染し、410万を超える症例が確認され、死者数は28万人を超える。SARS-CoV-2は、軽度の上気道疾患(風邪に似た症状)に類似した臨床病態を呈し、時に重症の下気道疾患および肺外症状が現れて多臓器不全および死に至る呼吸器症候群を引き起こし得る。このパンデミックは、死亡率10%の2002年のSARS-CoV、および死亡率36%の2012年のMERS-CoVを含む、いくつかの高病原性ヒトコロナウイルス感染症に続くものである。治療薬もワクチンもない。しかしながら、このウイルスが集団に定着した場合に罹患率と死亡率を減らすために、SARS-CoV-2ワクチンが不可欠となる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、SARS-CoV-2ポリペプチドおよびワクチン目的でのその使用に関する。
【0004】
発明の詳細な説明
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)パンデミックは、紛れもなく今世紀最大の人類への世界的健康脅威として出現した。急速さ、世界的な拡散速度および観測された死亡率の上昇は、公衆衛生、社会経済および科学的な課題を提起している。SARS-CoV-2は、軽度の上気道疾患(風邪に似た症状)に似た臨床病態を呈する呼吸器症候群を引き起こし、時には重篤な下気道疾患および肺外症状が現れて多臓器不全および死に至ることがある。治療薬もワクチンもない。しかしながら、このウイルスが集団に定着した場合に罹患率と死亡率を減らすために、SARS-CoV-2ワクチンが不可欠となる。候補ワクチンの開発を加速させるためには、新興および再興病原体に特化および適合した、すぐに使えるワクチンプラットフォームの使用が重要である。本発明者らは、SARS-CoV-2に対する候補ワクチンを設定した。特に、本発明者らは、オンラインソフトウエア(NetMHC-4.0およびNetMHCII-2.3)およびペプチド結合予測ソフトウエアによって予測されたMHC-Iおよび-IIエピトープをマッピングするためにこれらのタンパク質のアミノ酸配列のイン・シリコ(in silico)分析のおかげでワクチン候補に含まれるべき特定のエピトープを同定した。また、B細胞エピトープもオンラインソフトウエア(BepiPred-2.0およびDiscotope)を用いてマッピングするとともに、SARS-CoV-2および-CoV-1の間で配列が相同なエピトープに富む領域もマッピングした。
【0005】
定義:
本明細書で使用する場合、「対象」または「必要とする対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳類を意図するものである。一般に、患者は、SARS-CoV-2に罹患しているか、または罹患している可能性がある。
【0006】
本明細書で使用する場合、「コロナウイルス」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、コロナウイルス科のメンバーのいずれのメンバーも指す。コロナウイルスは、そのゲノムが、特定のウイルスによって約27kb~約33kbの長さのプラス鎖RNAであるウイルスである。ビリオンRNAは、5’末端にキャップおよび3’末端にポリAテールを有する。このRNAの長さにより、コロナウイルスはRNAウイルスゲノムの中で最大となっている。特に、コロナウイルスRNAは、(1)RNA依存性RNAポリメラーゼ、(2)Nタンパク質、(3)3つのエンベロープ糖タンパク質、および(4)3つの非構造タンパク質をコードしている。これらのコロナウイルスは、様々な哺乳類および鳥類に感染する。コロナウイルスは、呼吸器感染症(一般的)、腸管感染症(主として12か月以上の乳児)、および可能性としては神経学的症候群を引き起こす。コロナウイルスは、呼吸器分泌物のエアロゾルによって伝染する。
【0007】
本明細書で使用する場合、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」または「SARS-CoV-2」という用語は、当技術分野におけるその一般的意味を有し、軽い上気道疾患(風邪に似た症状)似た臨床病態および時に重症下気道疾患および肺外症状を呈して多臓器不全および死に至る呼吸器症候群であるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルスの株を指す。特に、この用語は、NCBIアクセス番号MN975262で完全なゲノムがアクセス可能な重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2分離株2019-nCoV_HKU-SZ-005b_2020を指す。
【0008】
本明細書で使用する場合、「Covid-19」という用語は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2によって誘発される呼吸器疾患を指す。
【0009】
本明細書で使用する場合、「無症状」という用語は、コロナウイルス感染に関して検出可能な症状のない対象を指す。本明細書で使用する場合、「有症状」という用語は、コロナウイルス感染の検出可能な症状のある対象を指す。コロナウイルス感染の症状には、倦怠感、嗅覚消失、頭痛、咳、発熱、呼吸困難が含まれる。
【0010】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して互換的に使用される。また、この用語は、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識成分との結合などの修飾を受けたアミノ酸ポリマーも包含する。遺伝子療法の文脈で論じる場合、ポリペプチドは、それぞれの無傷のポリペプチド、または無傷のタンパク質の所望の生化学的機能を保持するそのフラグメントもしくは遺伝子操作された誘導体を指す。
【0011】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体を含む任意の長さのヌクレオチドの重合体を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよく、非ヌクレオチド成分が挿入されていてもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリの前または後に付与され得る。ポリヌクレオチドという用語は、本明細書で使用する場合、二本鎖分子および一本鎖分子を互換的に指す。別段の指定または要求がない限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載の発明の任意の態様は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られているか予測されている2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「に由来する」という表現は、第1の成分(例えば、第1のポリペプチド)、またはその第1の成分からの情報が、異なる第2の成分(例えば、第1のポリペプチドとは異なる第2のポリペプチド)を単離、誘導または作製するために使用される工程を指す。
【0013】
本明細書で使用する場合、2配列間の「同一性パーセント」は、その2配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮して、それらの配列に共通の同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性パーセント=同一の位置の数/位置の総数×100)。配列の比較と2配列間の同一性パーセントの決定は、下記のように数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunschアルゴリズム(Needleman, Saul B. & Wunsch, Christian D. (1970). "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins". Journal of Molecular Biology. 48 (3): 443-53.)を用いて決定することができる。また、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えばEMBOSS Needle(ペアワイズアライメント;www.ebi.ac.ukで利用可能)などアルゴリズムを用いて決定することもできる。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62行列とともに、「ギャップオープンペナルティ」を10、「ギャップエクステンドペナルティ」を0.5、「エンドギャップペナルティ」をフォールス、「エンドギャップオープンペナルティ」を10、「エンドギャップエクステンドペナルティ」を0.5として使用することができる。一般に、「同一性パーセント」は、一致した位置の数を比較した位置の数で割って100を掛けた関数である。例えば、アライメント後に比較した2配列の間で、10個の配列位置のうち6個が同一であれば、同一性は60%である。同一性%は、通常、解析を行うクエリー配列の全長にわたって決定される。同じ第1のアミノ酸配列または核酸配列を有する2つの分子は、いかなる化学的および/または生物学的修飾にも関係なく同一である。本発明によれば、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するとは、第1の配列が第2のアミノ酸配列と90;91;92;93;94;95;96;97;98;99または100%の同一性を有することを意味する。
【0014】
本明細書で使用する場合、「突然変異」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、置換、欠失または挿入を指す。特に、「置換」という用語は、特定の位置の特定のアミノ酸残基が除去され、別のアミノ酸残基が同じ位置に挿入されることを意味する。本明細書中、突然変異は、標準的な突然変異命名法に従って参照される。特に、「突然変異」という用語は、「自然突然変異」と「非自然突然変異」を包含する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「自然突然変異」という用語は、SARS-CoV-2ポリペプチドの自然発生変異体に見出すことができるいずれの突然変異も指し、それには一般に、B.1.1.7系統(別名20I/501Y.V1 Variant of Concern(VOC)202012/01)、B.1.351系統(別名20H/501Y.V2)及びP.1系統(別名20J/501Y.V3)を含む。前記突然変異は、当技術分野で周知であり、参照により組み込まれる以下の参照文献に記載されているものを含む。
(1) Jie Hu et al. The D614G mutation of SARS-CoV-2 spike protein enhances viral infectivity and decreases neutralization sensitivity to individual convalescent sera. bioRxviv (2020).
(2) Korber B. et al.Spike mutation pipeline reveals the emergence of a more transmissible form of SARS-CoV-2. bioRxviv (2020). doi.org/10.1101/2020.04.29.069054.
(3) Lizhou Zhang et al. The D614G mutation in the SARS-CoV-2 spike protein reduces S1 shedding and increases infectivity. bioRxviv (2020). doi.org/10.1101/2020.06.12.148726.
(4) Junxian Ou et al. Emergence of RBD mutations in circulating SARS-CoV-2 strains enhancing the structural stability and human ACE2 receptor affinity of the spike protein. bioRxiv (2020). doi:10.1101/2020.03.15.991844v4
(5) Saha, P. et al.Mutations in Spike Protein of SARS-CoV-2 Modulate Receptor Binding, Membrane Fusion and Immunogenicity: An Insight into Viral Tropism and Pathogenesis of COVID-19. chemRxiv (2020). doi:10.26434/chemrxiv.12320567.v1
(6) Jian Shang, Yushun Wan, Chuming Luo, Gang Ye, Qibin Geng, Ashley Auerbach, Fang Li. Cell entry mechanisms of SARS-CoV-2. Proceedings of the National Academy of Sciences May 2020, 117 (21) 11727-11734; DOI: 10.1073/pnas.2003138117
(7) Allison J. Greaney, Andrea N. Loes, Katharine H.D. Crawford, Tyler N. Starr, Keara D. Malone, Helen Y. Chu, Jesse D. Bloom, bioRxiv 2020.12.31.425021; doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.31.425021
(8) Nicholas G. Davies, Rosanna C. Barnard, Christopher I. Jarvis, Adam J. Kucharski, James Munday, Carl A. B. Pearson, Timothy W. Russell, Damien C. Tully, Sam Abbott, Amy Gimma, William Waites, Kerry LM Wong, Kevin van Zandvoort, CMMID COVID-19 Working Group, Rosalind M. Eggo, Sebastian Funk, Mark Jit, Katherine E. Atkins, W. John Edmunds. Estimated transmissibility and severity of novel SARS-CoV-2 Variant of Concern 202012/01 in England. medRxiv 2020.12.24.20248822; doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.24.20248822
(9) Houriiyah Tegally, Eduan Wilkinson, Marta Giovanetti, et al. Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv 2020.12.21.20248640; doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.21.20248640
(10) Kim JS, Jang JH, Kim JM, Chung YS, Yoo CK, Han MG. Genome-Wide Identification and Characterization of Point Mutations in the SARS-CoV-2 Genome. Osong Public Health Res Perspect. 2020;11(3):101-111. doi:10.24171/j.phrp.2020.11.3.05
(11) Nilgiriwala K, Mandal A, Patel G, Mestry T, Vaswani S, Shaikh A, Sriraman K, Parikh S, Udupa S, Chatterjee N, Shastri J, Mistry N. Genome Sequences of Five SARS-CoV-2 Variants from Mumbai, India, Obtained by Nanopore Sequencing. Microbiol Resour Announc. 2021 Apr 15;10(15):e00231-21
(12) Wenjuan Zhang, Brian D Davis, Stephanie S Chen, Jorge M Sincuir Martinez, Jasmine T Plummer, Eric Vail. Emergence of a Novel SARS-CoV-2 Variant in Southern California. JAMA. 2021 Apr 6;325(13):1324-1326
【0016】
例えば、突然変異N501Yは、それぞれ南東イングランド、ブラジル/日本および南アフリカで最初に確認された3つのSARS-CoV-2系統B.1.1.7、P.1(別名20J/501Y.V3)および501Y.V2に共通の、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内の非同義変異である。これはRBD内の重要な接触残基の1つであり、ヒトおよびマウスのACE2との結合親和性を高めることが確認されている。Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内のE484K突然変異は、南アフリカとブラジルの新系統それぞれ501Y.S2とB.1.1.28に存在し、多くの中和抗体の結合に重要であることが示されているRBD内の残基に影響を及ぼす。Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内のE484Q突然変異は、インドとデンマークからの新系統それぞれB.1.617とB.1.429に存在し、RBD内の同じ残基に影響を及ぼす。L452R突然変異は、スパイクタンパク質とそのヒトACE2受容体との相互作用を安定化させ、それによってウイルスの感染力を高める得ることが研究により示唆された。従って、この突然変異は抗体認識に影響を与え、SARS-CoV-2の免疫逃避を可能にする。この突然変異を有するウイルスは、人々の回復期の血清中の抗体による認識を逃れることが示されており、従って、ワクチンの有効性を変更する可能性がある(例えば、Allison J. Greaney, Andrea N. Loes, Katharine H.D. Crawford, Tyler N. Starr, Keara D. Malone, Helen Y. Chu, Jesse D. Bloom, bioRxiv 2020.12.31.425021参照)。他の突然変異もいくつか発見されている。S1タンパク質の突然変異K417N、K417T、V367F、N354D、W436RまたはV483Aは、より高い親和性でACE2に結合することが示されている。V483AおよびG476S突然変異は、MERSおよびSARS-CoVの研究において、ヒトの受容体結合親和性に関係することが従前に報告されている。他方、R408Iは、潜在的にACE2結合親和性を低下させる。本発明によれば、主要な自然突然変異としては、配列番号3の417番のアミノ酸残基(K)がアミノ酸残基(N)で置換されている配列番号3のK417N突然変異、配列番号3の417番のアミノ酸残基(K)がアミノ酸残基(T)で置換されている配列番号3のK417T突然変異、配列番号3の484番のアミノ酸残基(E)がアミノ酸残基(K)で置換されている配列番号3のE484K突然変異、484番のアミノ酸残基(E)がアミノ酸残基(Q)で置換されている配列番号3のE48Q突然変異、配列番号3の452番のアミノ酸残基(L)がアミノ酸残基(N)で置換されている配列番号3のL452N突然変異、および配列番号3の501番のアミノ酸残基(N)がアミノ酸残基(Y)で置換されている配列番号3のN501Y突然変異が含まれる。
【0017】
本明細書で使用する場合、「非自然突然変異」という用語は、本発明のポリペプチドに遺伝的に挿入されるいずれの突然変異も指す。特に、前記突然変異は、ポリペプチドの産生を容易にするために挿入される。例えば、前記突然変異としては、配列番号3の136番のアミノ酸残基(C)がアミノ酸残基(S)によって置換された突然変異C136S、ならびに配列番号3の538番のアミノ酸残基(C)がアミノ酸残基(S)で置換されている配列番号3の突然変異C538Sが含まれる。前記突然変異は、本発明のポリペプチド内にジスルフィド結合が生じることを回避するために特に好適である。
【0018】
本明細書で使用する場合、「膜タンパク質」または「Mタンパク質」という用語は、他のウイルスタンパク質との相互作用を介してウイルスの形態形成および組み立てにおいて中枢的役割を果たすウイルスエンベロープの構成要素であるSARS-CoV-2のタンパク質を指す。一般に、膜タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
配列番号1>sp|P0DTC5|VME1_SARS2膜タンパク質 OS=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 OX=2697049 PE=3 SV=1。ポリペプチドMpep1およびMpep2を下線で示す。
【0020】
【化1】
【0021】
本明細書で使用する場合、「核タンパク質」または「Nタンパク質」という用語は、プラス鎖ウイルスゲノムRNAをらせん状のリボヌクレオキャプシド(RNP)に封入し、ウイルスゲノムおよび膜タンパク質Mとの相互作用を介してビリオンの組み立て中に基本的な役割を果たすSARS-CoV-2タンパク質を指す。
【0022】
配列番号2>sp|P0DTC9|NCAP_SARS2核タンパク質 OS=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 OX=2697049 GN=N PE=1 SV=1。ポリペプチドNpep1およびNpep2を下線で示す。
【0023】
【化2】
【0024】
本明細書で使用する場合、「スパイクタンパク質」または「Sタンパク質」という用語は、その細胞受容体(すなわちACE2)に結合し、膜融合とウイルス侵入を媒介するSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質を指す。3量体Sタンパク質の各単量体は約180kDaで、S1とS2の2つのサブユニットを含み、それぞれ付着と膜融合を媒介する。特に、スパイクタンパク質S1は、宿主の受容体(すなわち、ヒトACE2受容体)と相互作用することによって、ビリオンを細胞膜に付着させる。スパイクタンパク質S2は、クラスIウイルス融合タンパク質として機能することにより、ビリオンと細胞膜の融合を媒介する。現在のモデルでは、このタンパク質は、融合前の天然状態、前ヘアピン中間状態、融合後のヘアピン状態、の少なくとも3つの立体配座状態を有する。ウイルスと標的細胞の膜融合時には、コイルドコイル領域(ヘプタッドリピート)は3量体ヘアピン構造をとり、融合ペプチドをエクトドメインのC末端領域に近接して配置する。この構造の形成により、ウイルス膜と標的細胞膜の並置とそれに続く融合が促進されると思われる。スパイクタンパク質S2’は、ウイルスのエンドサイトーシス時に起こるS2切断の後に露出するウイルス融合ペプチドとして機能する。一般に、スパイクタンパク質は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。
【0025】
配列番号3>sp|P0DTC2|SPIKE_SARS2スパイク糖タンパク質 OS=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 OX=2697049 GN=S PE=1 SV=1。ポリペプチドSpep1、Spep2、Spep3およびSpep4を下線で示す。RBDポリペプチドを斜体と太字で示す。
【0026】
【化3】
【0027】
本明細書で使用する場合、「RBDポリペプチド」という用語は、配列番号3、すなわち、スパイクタンパク質の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドを指す。
【0028】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列からなる。
【0029】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、1以上の非自然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、538番に非自然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、C538S突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0030】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、1以上の自然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、417、452、484または501番に1以上の自然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、K417T、L452N、E84Q、E484KおよびN501Y突然変異からなる群から選択される位置に1以上の自然突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0031】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、1以上の非自然突然変異(特に、C538S突然変異)および1以上の自然突然変異(好ましくは、K417N、K417T、L452N、E84Q、E484KおよびN501Y突然変異のうち1以上)を含むアミノ酸からなる。
【0032】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、N501Y自然突然変異およびC538S非自然突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0033】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417T、E484K、N501Y自然突然変異および非自然突然変異C538Sを含むアミノ酸からなる。
【0034】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501Y自然突然変異および非自然C538S突然変異を含むアミノ酸(「RBD南アフリカ株」または「RBDSA Var」)からなる。
【0035】
いくつかの態様では、RBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、E484Q、L452N自然突然変異および非自然C538S突然変異を含むアミノ酸(「RBDインド株」)からなる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「コンジュゲート」または交換可能な「コンジュゲートしたポリペプチド」という用語は、1以上のポリペプチドの共有結合によって形成される複合分子またはキメラ分子を示すことを意図する。「共有結合」または「コンジュゲーション」という用語は、ポリペプチドおよび非ペプチド部分が互いに直接共有結合しているか、あるいはまた1または複数のブリッジ、スペーサー、または連結部分などの1または複数の介在部分を介して互いに間接的に共有結合していることを意味する。特定のコンジュゲートは融合タンパク質である。
【0037】
本明細書で使用する場合、「融合タンパク質」という用語は、異種ポリペプチドに作動可能に連結された本発明の少なくとも1つのポリペプチドを含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、本発明のペプチドと異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合していることを示すことを意図される。
【0038】
本明細書で使用する場合、「異種ポリペプチド」という用語は、前記異種ポリペプチドが融合しているものと同じタンパク質に由来しないポリペプチドを指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、「リンカー」という用語は、本発明のペプチドを異種ポリペプチドと連結する少なくとも1つのアミノ酸の配列を指す。リンカーは当業者に周知であり、一般に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれを超えるアミノ酸を含む。
【0040】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。齧歯類および霊長類の天然抗体において、2つの重鎖がジスルフィド結合により互いに連結され、各重鎖はジスルフィド結合により軽鎖に連結されている。軽鎖には、ラムダ(1)とカッパ(k)の2つのタイプがある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。各鎖は明瞭に異なる配列ドメインを含む。典型的なIgG抗体では、軽鎖は、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)の2つのドメインを含む。重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、CHと総称する)の4つのドメインを含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の結合、分泌、胎盤通過性、補体結合、およびFc受容体(FcR)への結合など、重要な生物学的特性を付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1本の軽鎖と1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の構造的相補性にある。抗体の結合部位は、主に超可変領域または相補性決定領域(CDR)からの残基で構成されている。時には、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)からの残基が抗体結合部位に関与することもあり、またはドメイン構造全体、従って接合部位に影響を及ぼすこともある。相補性決定領域またはCDRとは、天然の免疫グロブリン結合部位の本来のFv領域の結合親和性と特異性を共に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3およびH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれる3つのCDRを有する。従って、抗原結合部位は、重鎖V領域と軽鎖V領域のそれぞれから設定されるCDRを含む、通常6個のCDRを含む。フレームワーク領域(FR)とは、CDRの間に挟まれたアミノ酸配列を指す。従って、軽鎖および重鎖の可変領域は、通常、以下の配列の4つのフレームワーク領域と3つのCDRを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。抗体可変ドメイン中の残基は、Kabatらによって考案されたシステムに従って慣例的に符番される。このシステムは、Kabat et al., 1987, Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA (Kabat et al., 1992, hereafter “Kabat et al.”)に示されている。Kabat残基の指定は、配列番号の配列中のアミノ酸残基のリニアナンバリングに必ずしも直接対応しない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本可変ドメイン構造のフレームワークであれ相補性決定領域(CDR)であれ、構造成分の短縮、または挿入に対応する厳密なKabat符番よりも少ないまたは追加のアミノ酸を含む場合がある。残基の適正なKabat符番は、抗体の配列中の相同性のある残基と「標準」Kabat符番配列とのアラインメントによって、所定の抗体について決定することができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat符番システムに従って、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)および残基95~102(H-CDR3)に配置される。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat符番システムに従って、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)および残基89~97(L-CDR3)に配置される。以下に記載する抗体については、CDRは、www.bioinf.org.ukのCDR検索アルゴリズムを用いて決定されている。抗体ページ内の「配列を見てCDRを特定する方法(How to identify the CDRs by looking at a sequence)」と題された節を参照のこと。
【0041】
本明細書で使用する場合、「免疫グロブリンドメイン」という用語は、抗体鎖(例えば、従来の4鎖抗体または重鎖抗体もしくは軽鎖抗体の鎖)の球状領域、またはこのような球状領域から本質的になるポリペプチドを指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域および変異体Fc領域を含む免疫グロブリン重鎖C末端領域を定義するために使用される。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体のC226番からまたはP230からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むと定義される。Fc領域内の残基の符番は、KabatのEUインデックスの符番である。Fc領域のC末端リシン(残基K447)は、例えば、抗体の生産または精製の際に除去することができる。よって、本発明の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、およびK447残基を含むおよび含まない抗体の混合物を含む抗体集団を含み得る。
【0043】
本明細書で使用する場合、「エピトープ」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、免疫応答成分により認識される少なくとも8アミノ酸のフラグメントである。本明細書で使用する場合、「免疫応答成分」という用語としては、限定されるものではないが、マクロファージ、リンパ球、Tリンパ球、キラーTリンパ球、免疫応答モジュレーター、ヘルパーTリンパ球、抗原受容体、抗原提示細胞、細胞傷害性Tリンパ球、T-8リンパ球、CD1分子、Bリンパ球、抗体、組換え抗体、遺伝子操作抗体、キメラ抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ダイアボディ、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヘテロ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、および/または合成抗体の少なくとも一部が含まれる。「エピトープ」という用語は、抗原、パラトープ結合部位、抗原決定基、および/または決定基と互換的に使用することができる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「ポリエピトープポリペプチド」という用語は、少なくとも2つのエピトープを含むポリペプチドを指す。特に、本発明のポリエピトープポリペプチドは、本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドを含む。
【0045】
本明細書で使用する場合、「抗体エピトープ」という用語は、特定の抗体により認識され得る、または特定の抗体の形成を誘導するペプチドを指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」という用語は、非ヒト抗体のVHドメインとVLドメイン、およびヒト抗体のCHドメインとCLドメインを含む抗体を指す。一態様では「キメラ抗体」は、抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは変更されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、またはキメラ抗体、例えば、酵素、毒素、アゴニスト分子、例えば、CD40リガンド、ホルモン、増殖因子、薬物などに新たな特性を付与する全く異なる分子に連結されるように、定常領域(すなわち、重鎖および/もしくは軽鎖)、またはその一部が変更、置換または交換されている;あるいは(b)可変領域、またはその一部が、異なるまたは変更された抗原特異性を有する可変領域が変更、置換または交換されている抗体分子である。キメラ抗体はまた、霊長類化、特に、ヒト化抗体を含む。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密化するために行われる。さらに詳しくは、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)参照)。
【0047】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、マウス抗体の6つのCDRとヒト化されたフレームワークおよび定常領域を有する抗体を含む。より具体的には、「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、マウスなどの別の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含み得る。
【0048】
本明細書で使用する場合、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、イン・ビトロ(in vitro)ではランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはイン・ビボ(in vivo)では体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、一態様では、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、マウスなどの他の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことは意図されない。
【0049】
本明細書で使用する場合、「ヒト白血球抗原系」または「HLA」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、ヒトの主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)を指す。遺伝子座は、細胞表面抗原提示タンパク質をコードする多くの遺伝子を含む。ある特定の遺伝子によりコードされるタンパク質は抗原としても知られる。主要HLA抗原は、HLAクラスI抗原(A、BおよびC)およびHLAクラスII抗原(DR、DPおよDQ)である。HLAクラスI抗原は、通常、細胞内に由来するペプチド(8~12アミノ酸)を提示し、細胞を破壊するCD8細胞傷害性T細胞を誘引する。HLAクラスII抗原は、通常、細胞外に由来するペプチドをCD4 Tヘルパーリンパ球に提示し、B細胞および他の免疫細胞を刺激する。
【0050】
本明細書で使用する場合、「免疫応答」という用語は、宿主の体内の抗原に対する免疫系の反応であり、抗原特異的抗体および/または細胞傷害応答の生成を含む。最初の抗原暴露に対する免疫応答(一次免疫応答)は、通常、数日から2週間のタイムラグの後に検出可能であるが、同じ抗原によるその後の刺激に対する免疫応答(二次免疫応答)は、一次免疫応答の場合よりも迅速である。導入遺伝子産物に対する免疫応答は、導入遺伝子によってコードされる免疫原性産物に対して惹起され得る体液性(例えば、抗体応答)および細胞性(例えば、細胞溶解性T細胞応答)免疫応答の両方を含み得る。免疫応答のレベルは、当技術分野で既知の方法(例えば、抗体価の測定)によって測定することができる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「APC」または「抗原提示細胞」という用語は、T細胞を活性化し得る細胞を表し、限定されるものではないが、特定のマクロファージ、B細胞および樹状細胞が含まれる。
【0052】
本明細書で使用する場合、「樹状細胞」または「DC」という用語は、リンパ系組織または非リンパ系組織に見られる形態的に類似した細胞種の多様な集団の任意のメンバーを指す。これらの細胞は、その特徴的な形態、高レベルの表面MHCクラスII発現(Steinman,et al,Ann.Rev. Immunol. 9:271 (1991);そのような細胞の記述については、参照により本明細書に組み込まれる)を特徴とする。
【0053】
本明細書で使用する場合、「CD40」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、ヒトCD40ポリペプチド受容体を指す。いくつかの態様では、CD40は、UniProtKB-P25942(ヒトTNR5とも呼称)によって報告されているヒトカノニカル配列のアイソフォームである。
【0054】
本明細書で使用する場合、「CD40L」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、例えば、UniProtKB-P25942によって報告されているヒトCD40Lポリペプチドを指し、配列番号4のそのCD40-結合ドメインを含む。CD40Lは、可溶性ポリペプチドとして表すことができ、CD40受容体の天然リガンドである。
【0055】
配列番号4>CD40L結合ドメイン
【化4】
【0056】
本明細書で使用する場合、「CD40アゴニスト抗体」という用語は、B細胞増殖アッセイなどの細胞系アッセイにおいて、CD40Lの不在下でCD40により媒介されるシグナル伝達活性を増強する抗体を指すことが意図される。特に、CD40アゴニスト抗体は、(i)イン・ビトロにおいてフローサイトメトリー分析により、またはCFSE標識細胞の反復希釈の分析によって測定されるように、B細胞の増殖を誘導し;かつ/または(ii)イン・ビトロにおいて樹状細胞活性化アッセイで測定されるように、IL-6、IL-12、またはIL-15などのサイトカインの分泌を誘導する。
【0057】
本明細書で使用する場合、「ランゲリン」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、ヒトC型レクチンドメインファミリー4メンバーKポリペプチドを指す。いくつかの態様では、ランゲリンは、UniProtKB- Q9UJ71によって報告されているヒトカノニカル配列のアイソフォーム(ヒトCD207とも呼称)である。
【0058】
本明細書で使用する場合、「治療」または「治療する」という用語は、疾患に罹患しているリスクがあるまたは疾患に罹患している疑いがある患者ならびに病気の患者または疾患もしくは病状に罹患していると診断された患者の治療を含む、予防的または防止的処置と治癒的または疾患修飾的処置の両方を指し、臨床再発の抑制を含む。治療は、医学的障害を有する患者または最終的に障害となる可能性のある患者に対して、障害もしくは再発障害の1以上の症状を予防する、治癒する、発症を遅延させる、重症度を軽減する、もしくは改善するために、またはそのような治療を行わない場合に予想されるよりも患者の生存期間を延長するために投与され得る。「治療レジメン」とは、病気の治療パターン、例えば、治療中に使用される投与パターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメンと維持レジメンを含み得る。「導入レジメン」または「導入期間」という語句は、疾患の初期治療に用いられる治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、治療レジメンの初期期間中に患者に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンは、(部分的または全体的に)「ローディングレジメン」を採用することができ、これには、医師が維持レジメン中に採用するよりも多量の薬物を投与すること、医師が維持レジメン中に薬物を投与するよりも頻繁に薬物を投与すること、またはその両方を含み得る。「維持療法」または「維持期間」という語句は、病気の治療中に患者の維持のために使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指し、例えば、患者を長期間(数か月または数年)にわたって寛解状態に保つために使用される。維持レジメンは、連続療法(例えば、毎週、毎月、毎年などの定期的な間隔で薬物を投与する)または間欠療法(例えば、中断治療、間欠治療、再発時の治療、または特定の所定の基準[例えば、疼痛、疾患発現など]に至った際の治療)を使用することができる。
【0059】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、担体および/または賦形剤などの他の薬剤を伴う本明細書に記載の組成物、またはその薬学上許容される塩を指す。本明細書に提供される医薬組成物は一般に、薬学上許容される担体を含む。
【0060】
本明細書で使用する場合、「薬学上許容される担体」という用語は、所望の特定の投与形に適するあらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む。Remington's Pharmaceutical-Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)は、医薬組成物の調剤において使用される種々の担体およびそれらの調整のための公知の技術を開示している。
【0061】
本明細書で使用する場合、「ワクチン接種」または「ワクチン接種を行う」という用語は、限定されるものではないが、対象において特定の抗原に対する免疫応答を惹起する方法を意味する。
【0062】
本明細書で使用する場合、「ワクチン組成物」という用語は、免疫応答を誘導するためにヒトまたは動物に投与することができる組成物を意味することが意図され、この免疫応答は、特定の細胞、特に、APC、Tリンパ球およびBリンパ球の活性化をもたらすことができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「抗原」という用語は、MHC分子によってプロセシングを受け、提示された場合に、抗体またはT細胞受容体(TCR)が特異的に結合することができる分子を指す。抗原は、さらに、免疫系により認識され得る、ならびに/または体液性免疫応答および/もしくは細胞性免疫応答を誘導してBリンパ球および/もしくはTリンパ球の活性化をもたらし得る。抗原は、1以上のエピトープまたは抗原部位(B-エピトープおよびT-エピトープ)を有し得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「アジュバント」という用語は、対象または動物に投与した際に、抗原に対する免疫応答を誘導および/または増強することができる化合物を指す。それはまた、特定の抗原に対する特異的な免疫応答を加速、延長、またはその質を強化するために一般的に作用する物質を意味することが意図される。本発明の文脈では、「アジュバント」という用語は、自然免疫応答の一過性の反応に影響を与えることによって自然免疫応答を増強するとともに、抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)の活性化と成熟によって適応免疫応答のより長期的な効果を増強する化合物を意味する。
【0065】
本明細書で使用する場合、「治療上有効な量」という表現は、医療に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で免疫応答を誘導するのに十分な量の本発明の有効成分を意味する。
【0066】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、免疫阻害チェックポイントタンパク質の機能を阻害するいずれの化合物も指す。本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイントタンパク質」という用語は、当技術分野でその一般的な意味を有し、シグナルを上昇させる(刺激性チェックポイント分子)またはシグナルを低減する(抑制性チェックポイント分子)のいずれかにおいてT細胞により発現される分子を指す。免疫チェックポイント分子は、当技術分野において、CTLA-4およびPD-1依存性経路と同様の免疫チェックポイント経路を構成すると認識されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev Cancer 12:252-264; Mellman et al. , 2011. Nature 480:480- 489参照)。阻害性チェックポイント分子の例としては、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3およびVISTAが挙げられる。
【0067】
本発明のポリペプチド:
本発明の1つの目的は、Mタンパク質に由来し、かつ、配列番号1の1番の残基~110番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Mpep1」とも呼称されるM1-110)に関する。
【0068】
いくつかの態様では、ポリペプチド(M1-110)は、配列番号1の1番の残基~110番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;または110個の連続するアミノ酸を含む。
【0069】
いくつかの態様では、ポリペプチド(M1-110)は、配列番号1の1番の残基~110番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(M1-110)は、1以上の自然突然変異を含む。
【0070】
本発明のさらなる目的は、Mタンパク質に由来し、かつ、配列番号1の132番の残基~222番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Mpep2」とも呼称されるM132-222)に関する。
【0071】
いくつかの態様では、ポリペプチド(M132-222)は、配列番号1の132番の残基~222番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;または91個の連続するアミノ酸を含む。
【0072】
いくつかの態様では、ポリペプチド(M132-222)は、配列番号1の132番の残基~222番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(M132-222)は、1以上の自然突然変異を含む。
【0073】
本発明のさらなる目的は、Nタンパク質に由来し、かつ、配列番号2の78番の残基~206番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Npep1」とも呼称されるN78-206)に関する。
【0074】
いくつかの態様では、ポリペプチド(N78-206)は、配列番号2の78番の残基~206番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;または129個の連続するアミノ酸を含む。
【0075】
いくつかの態様では、ポリペプチド(N78-206)は、配列番号2の78番の残基~206番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(N78-206)は、1以上の自然突然変異を含む。
【0076】
本発明のさらなる目的は、Nタンパク質に由来し、かつ、配列番号2の276番の残基~411番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Npep2」とも呼称されるN276-411)に関する。
【0077】
いくつかの態様では、ポリペプチド(N276-411)は、配列番号2の276番の残基~411番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;または136個の連続するアミノ酸を含む。
【0078】
いくつかの態様では、ポリペプチド(N276-411)は、配列番号2の276番の残基~411番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(N276-411)は、1以上の自然突然変異を含む。
【0079】
本発明のさらなる目的は、Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Spep1」とも呼称されるS125-250)に関する。
【0080】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S125-250)は、配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;または126個の連続するアミノ酸を含む。
【0081】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S125-250)は、配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0082】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S125-250)は、1以上の自然突然変異を含む。
【0083】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S125-250)は、配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲であり、かつ、136番に非自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S125-250)は、配列番号3の125番の残基~250番の残基の範囲であり、かつ、C136S非自然突然変異(「Spep1C136S」)を含むアミノ酸配列からなる。
【0084】
本発明のさらなる目的は、Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲のアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Spep2」とも呼称されるS280-598)に関する。
【0085】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;136;137;138;139;140;141;142;143;144;145;146;147;148;149;150;151;152;153;154;155;156;157;158;159;160;161;162;163;164;165;166;167;168;169;170;171;172;173;174;175;176;177;178;179;180;181;182;183;184;185;186;187;188;189;190;191;192;193;194;195;196;197;198;199;200;201;202;203;204;205;206;207;208;209;210;211;212;213;214;215;216;217;218;219;220;221;222;223;224;225;226;227;228;229;230;231;232;233;234;235;236;237;238;239;240;241;242;243;244;245;246;247;248;249;250;251;252;253;254;255;256;257;258;259;260;261;262;263;264;265;266;267;268;269;270;271;272;273;274;275;276;277;278;279;280;281;282;283;284;285;286;287;288;289;290;291;292;293;294;295;296;297;298;299;300;301;302;303;304;305;306;307;308;309;310;311;312;313;314;315;316;317;318;または319個の連続するアミノ酸を含む。
【0086】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0087】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、1以上の非自然突然変異を含むアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、538番に非自然突然変異を含むアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、C538S非自然突然変異を含むアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0088】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、1以上の自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、417、438または501番に1以上の自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、K417N、K417T、E484KおよびN501Y突然変異からなる群から選択される1以上の自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。
【0089】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、N501Y自然突然変異およびC538S非自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。
【0090】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、K417T、E484K、N501Y自然突然変異およびC538S非自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。
【0091】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S280-598)は、配列番号3の280番の残基~598番の残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501Y自然突然変異およびC538S非自然突然変異を含むアミノ酸配列からなる。
【0092】
本発明のさらなる目的は、Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の680番の残基~1029番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Spep3」とも呼称されるS680-1029)に関する。
【0093】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S680-1029)は、配列番号3の680番の残基~1029番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;136;137;138;139;140;141;142;143;144;145;146;147;148;149;150;151;152;153;154;155;156;157;158;159;160;161;162;163;164;165;166;167;168;169;170;171;172;173;174;175;176;177;178;179;180;181;182;183;184;185;186;187;188;189;190;191;192;193;194;195;196;197;198;199;200;201;202;203;204;205;206;207;208;209;210;211;212;213;214;215;216;217;218;219;220;221;222;223;224;225;226;227;228;229;230;231;232;233;234;235;236;237;238;239;240;241;242;243;244;245;246;247;248;249;250;251;252;253;254;255;256;257;258;259;260;261;262;263;264;265;266;267;268;269;270;271;272;273;274;275;276;277;278;279;280;281;282;283;284;285;286;287;288;289;290;291;292;293;294;295;296;297;298;299;300;301;302;303;304;305;306;307;308;309;310;311;312;313;314;315;316;317;318;319;320;321;322;323;324;325;326;327;328;329;330;331;332;333;334;335;336;337;338;339;340;341;342;343;344;345;346;347;348;349;または350個の連続するアミノ酸を含む。
【0094】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S680-1029)は、配列番号3の680番の残基~1029番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S680-1029)は、1以上の自然突然変異を含む。本発明のさらなる目的は、Sタンパク質に由来し、かつ、配列番号3の1056番の残基~1209番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の少なくとも50個の連続するアミノ酸からなる、SARS-CoV-2ポリペプチド(「Spep4」とも呼称されるS1056-1209)に関する。
【0095】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S1056-1209)は、配列番号3の1056番の残基~1209番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;100;101;102;103;104;105;106;107;108;109;110;111;112;113;114;115;116;117;118;119;120;121;122;123;124;125;126;127;128;129;130;131;132;133;134;135;136;137;138;139;140;141;142;143;144;145;146;147;148;149;150;151;152;153;または154個の連続するアミノ酸を含む。
【0096】
いくつかの態様では、ポリペプチド(S1056-1209)は、配列番号3の1056番の残基~1209番の残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、ポリペプチド(S10565-1209)は、1以上の自然突然変異を含む。
【0097】
コンジュゲートおよび融合タンパク質
いくつかの態様では、本発明は、異種ポリペプチドが本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合しているコンジュゲートに関する。
【0098】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、2、3、4、5、6、7または8個の本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、ポリペプチド(M1-110、「Mpep1」)、ポリペプチド(M132-222、「Mpep2」)、ポリペプチド(N78-206、「Npep1」)、ポリペプチド(N276-411、「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)、ポリペプチド(S280-598、「Spep2」)、ポリペプチド(S680-1029、「pep3」およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含む。
【0099】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、前記コンジュゲートをコードするポリヌクレオチド中に存在する制限クローニング部位に由来する1個以上の配列を含む。一般に、前記配列は、2つのアミノ酸残基からなってよく、一般に、AP、AS、AR、PR、SA、TR、およびTS配列を含む。
【0100】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、シグナルペプチドの配列を含む。本明細書で使用する場合、「シグナルペプチド」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、タンパク質の前駆体の形態でN末端ペプチドとして存在するプレペプチドを指す。シグナルペプチドの機能は、それが付着された発現ポリペプチドの小胞体への輸送を促すことである。シグナルペプチドは通常、この過程で切断される。シグナルペプチドは、ポリペプチドを生産するために使用される生物に対して異種であっても同種であってもよい。
【0101】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、N末端からC末端に向かって、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)の融合物、ならびに場合により、Spep1からNpep2をおよび/もしくはSpep4からSpep1を分離する、本明細書に記載される1以上のリンカーを含むポリエピトープポリペプチドを含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、Npep2-Spep1-f2-Spep4の式を有するポリエピトープポリペプチドを含み、式中、f2は、本明細書で後述されるリンカーを表す。いくつかの態様では、コンジュゲートは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む。
【0102】
【化5】
【0103】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、N末端からC末端に向かって、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)およびポリペプチド(S125-250、「Spep1」)の融合物、ならびに場合により、Spep1からNpep2を分離する、本明細書で後述されるリンカーを含むポリエピトープポリペプチドを含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、Spep1-f2-Spep4の式を有するポリエピトープポリペプチドを含み、式中、f2は、本明細書に記載されるリンカーを表す。いくつかの態様では、コンジュゲートは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む。
【0104】
【化6】
【0105】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、ポリペプチド(N276-411、「Npep2」)およびRBDポリペプチドを含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、N末端からC末端に向かって、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)およびRBDポリペプチドの融合物、および場合により、RBDからNpep2を分離する、本明細書で後述されるリンカーを含むポリエピトープポリペプチドを含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む。
【0106】
【化7】
【0107】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、RBDSA VARポリペプチドおよびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、配列番号58に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む。
【0108】
【化8】
【0109】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、ポリペプチド(N276-411、「Npep2」)およびポリペプチド(S125-250、「Spep1」)を含む。いくつかの態様では、コンジュゲートは、配列番号63に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドを含む。
【0110】
【化9】
【0111】
いくつかの態様では、異種ポリペプチドは、抗体の免疫グロブリンドメイン、特に、Fc領域である。より詳しくは、異種ポリペプチドは、抗体の重鎖および/または軽鎖である。
【0112】
いくつかの態様では、抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG1またはIgG4抗体、またはいっそうより好ましくはIgG4抗体である。
【0113】
いくつかの態様では、抗体は、キメラ抗体、特に、キメラマウス/ヒト抗体である。
【0114】
いくつかの態様では、抗体は、ヒト化抗体である。
【0115】
キメラまたはヒト化抗体は、上記のように作製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて作製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、対象とするマウスハイブリドーマから取得し、標準的な分子生物学的技術を用いて非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作出するために、当技術分野で公知の方法を用いて(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号参照)、マウス可変領域をヒト定常領域に連結することができる。ヒト化抗体を作出するために、当技術分野で公知の方法を用いて、マウスCDR領域をヒトフレームワークに挿入することができる。例えば、Winterの米国特許第5,225,539号、Queenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号参照。
【0116】
いくつかの態様では、抗体は、ヒト抗体である。いくつかの態様では、ヒト抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソミックマウスを用いて同定することができる。これらのトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソミックマウスは、本明細書でそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれ、本明細書において「ヒトIgマウス」と総称されるマウスを含む。HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、再構成されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列を、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異とともにコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む(例えば、Lonberg, et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859参照)。別の態様では、ヒト抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスなど、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウスを用いて作製することができる。本明細書において「KMマウス」と呼ばれるこのようなマウスは、IshidaらのPCT公開WO02/43478に詳細に記載されている。
【0117】
いくつかの態様では、抗体は、APCの表面抗原に対するものであり、従って、本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドは、免疫応答を惹起するために前記細胞に標的化される。
【0118】
いくつかの態様では、抗体は、DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CDl lb、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体およびIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、およびASPGRと特異的に結合する抗体から選択される。いくつかの態様では、抗体は、プロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに特異的である。好ましくは、抗体は、DC、例えば、CD83、CMRF-44またはCMRF-56の細胞表面マーカーに特異的である。抗体は、B細胞またはマクロファージなどの別のプロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに特異的であってもよい。
【0119】
いくつかの態様では、抗体は、DC、B細胞、および他のAPCの両方で発現されるCD40に特異的であり、従って、より多数のAPCが動員される。
【0120】
いくつかの態様では、CD40抗体は、12E12抗体に由来し、
・相補性決定領CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hがアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号8)を有し、CDR2Hがアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号9)を有し、かつ、CDR3Hがアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号10)を有する、重鎖、および
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lがアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号11)を有し、CDR2Lがアミノ酸配列YTSILHS(配列番号12)を有し、かつ、CDR3Lがアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号13)を有する、軽鎖
を含む。
【0121】
いくつかの態様では、CD40抗体は、11B6抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hがアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号14)を有し、CDR2Hがアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号15)を有し、かつ、CDR3Hがアミノ酸配列EDYVY(配列番号16)を有する、重鎖、および
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lがアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号17)を有し、CDR2Lがアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号18)を有し、かつ、CDR3Lがアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号19)を有する、軽鎖
を含む。
【0122】
いくつかの態様では、CD40抗体は、12B4抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hがアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号20)を有し、CDR2Hがアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号21)を有し、かつ、CDR3Hがアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号22)を有する、重鎖、および
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lがアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号23)を有し、CDR2Lがアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号24)を有し、かつ、CDR3Lがアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号25)を有する、軽鎖
を含む。
【0123】
いくつかの態様では、CD40抗体は、表Aに記載されているmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される。
【0124】
【表1】
【0125】
配列番号26(ヒト化11B6の重鎖可変鎖領域(VH)(v2)のアミノ酸配列)
【0126】
【化10】
【0127】
配列番号27(ヒト化11B6 VLの軽鎖可変鎖(VL)Vk(v2)のアミノ酸配列)
【化11】
【0128】
配列番号28(ヒト化11B6の重鎖可変鎖領域VH(v3)のアミノ酸配列)
【化12】
【0129】
配列番号29(mAb3(12B4)のVHアミノ酸配列)
【化13】
【0130】
配列番号30(mAb3(12B4)のVLアミノ酸配列)
【化14】
【0131】
配列番号31(mAb4(24A3 HC)のVHアミノ酸配列)
【化15】
【0132】
配列番号32(mAb4(24A3 KC)のVLアミノ酸配列)
【化16】
【0133】
配列番号33(mAb5のVHアミノ酸配列)
【化17】
【0134】
配列番号34(mAb5のVLアミノ酸配列)
【化18】
【0135】
配列番号35(mAb6(12E12 H3ヒト化HC)のVHアミノ酸配列)
【化19】
【0136】
配列番号36(mAb6(ヒト化K2 12E12)のVLアミノ酸配列)
【化20】
【0137】
いくつかの態様では、CD40抗体は、CD40アゴニスト抗体である。CD40アゴニスト抗体は、WO2010/009346号公報、WO2010/104747号公報およびWO2010/104749号公報に記載されている。開発中の他の抗CD40アゴニスト抗体としては、ファイザー社により開発された完全ヒトIgG2 CD40アゴニスト抗体であるCP-870,893がある。これはCD40とKD3.48×10-10Mで結合するが、CD40L(例えば、米国特許第7,338,660号参照)およびヒト膀胱癌細胞株を免疫原として作出されたマウス抗体クローンS2C6からシアトル・ジェネティクス社により開発されたヒト化IgG1抗体であるSGN-40の結合は遮断しない。これはCD40とKD1.0×10-9Mで結合し、CD40とCD40Lの間の相互作用の増強を介して働き、従って、部分アゴニスト効果を示す(Francisco J A, et al., Cancer Res, 60: 3225-31, 2000)。いっそうより詳しくは、CD40アゴニスト抗体は、表Aに記載されているmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される。
【0138】
いくつかの態様では、CD40アゴニスト抗体の重鎖または軽鎖(すなわち、本発明1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合していない鎖)は、CD40LのCD40結合ドメインにコンジュゲートまたは融合している。
【0139】
いくつかの態様では、CD40LのCD40結合ドメインは、前記CD40アゴニスト抗体の軽鎖または重鎖のC末端に、場合によりリンカー、好ましくは本明細書で後述されるFlexV1リンカーを介して融合している。
【0140】
いくつかの態様では、本発明の抗体は、CD40アゴニスト抗体からなり、抗体の重鎖は本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドに融合またはコンジュゲートし、軽鎖はCD40LのCD40結合ドメイン(配列番号4)にコンジュゲートまたは融合している。
【0141】
いくつかの態様では、抗体は、ランゲリンに特異的である。
【0142】
いくつかの態様では、抗体は、ATCC受託番号PTA-9852を有する抗体15B10に由来する。いくつかの態様では、抗体は、ATCC受託番号PTA-9853を有する抗体2G3に由来する。いくつかの態様では、抗体は、WO2011032161号公報に記載されている抗体91E7、37C1、または4C7に由来する。
【0143】
いくつかの態様では、抗ランゲリン抗体は、15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0144】
いくつかの態様では、抗ランゲリン抗体は、2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0145】
いくつかの態様では、抗ランゲリン抗体は、4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0146】
いくつかの態様では、抗は、表Bに記載されているmAb7、mAb8、mAb9、mAb10、mAb11およびmAb12からなる群から選択される。
【0147】
【表2】
【0148】
配列番号37(15B10の重鎖可変鎖領域(VH)のアミノ酸配列)
【化21】
【0149】
配列番号38(軽鎖可変鎖(VL)15B10のアミノ酸配列)
【化22】
【0150】
配列番号39(2G3の重鎖可変鎖領域(VH)のアミノ酸配列)
【化23】
【0151】
配列番号40(軽鎖可変鎖(VL)2G3のアミノ酸配列)
【化24】
【0152】
配列番号41(4C7の重鎖のアミノ酸配列)
【化25】
【0153】
配列番号42(4C7の軽鎖のアミノ酸配列)
【化26】
【0154】
いくつかの態様では、異種ポリペプチドは、化学カップリングを使用することにより本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドとコンジュゲートする。抗体のそのコンジュゲート部分への付着またはコンジュゲーションのためには、いくつかの方法が当技術分野で知られている。ある部分を抗体にコンジュゲートするために使用されているリンカータイプの例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリンリンカーが挙げられる。例えば、リソソームコンパートメント内の低pHによる切断に感受性のある、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織で優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼによる切断に感受性のあるリンカーを選択することができる。ポリペプチドをコンジュゲートするための技術は、特に、当技術分野で周知である(例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,”Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy (Reisfeld et al.編, Alan R. Liss, Inc., 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery,” Controlled Drug Delivery (Robinson et al.編, Marcel Deiker, Inc., 第2版 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,”Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (Pinchera et al.編, 1985); “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,”Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy (Baldwin et al.編, Academic Press, 1985);およびThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58参照;例えば、PCT公開WO89/12624も参照)。一般に、ペプチドは、抗体上のリシン残基またはシステイン残基に、それぞれN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはマレイミド官能基を介して共有結合している。操作されたシステインを用いたコンジュゲーションまたは非天然アミノ酸の組み込みの方法は、コンジュゲートの均質性を向上させることが報告されている(Axup, J.Y., Bajjuri, K.M., Ritland, M., Hutchins, B.M., Kim, C.H., Kazane, S.A., Halder, R., Forsyth, J.S., Santidrian, A.F., Stafin, K., et al. (2012). Synthesis of site-specific antibody-drug conjugates using unnatural amino acids. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 16101-16106.; Junutula, J.R., Flagella, K.M., Graham, R.A., Parsons, K.L., Ha, E., Raab, H., Bhakta, S., Nguyen, T., Dugger, D.L., Li, G., et al. (2010). Engineered thio-trastuzumab-DM1 conjugate with an improved therapeutic index to target human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer. Clin. Cancer Res.16, 4769-4778)。Junutula et al. (Nat Biotechnol. 2008; 26:925-32)は、従来のコンジュゲーション方法に比べて治療係数の向上を示すことが主張されている「THIOMAB」(TDC)と呼ばれるシステインに基づく部位特異的コンジュゲーションを開発した。抗体に組み込まれている非天然アミノ酸へのコンジュゲーションはまたADCに関しても探索されているが、このアプローチの一般性はまだ確立されていない(Axup et al., 2012)。特に、当業者はまた、アシルドナーグルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグもしくはQ-タグ)で操作されたFc含有ポリペプチドまたはポリペプチド操作(例えば、ポリペプチド上のアミノ酸欠失、挿入、置換、もしくは突然変異)により反応性とされた内因性グルタミンも想定する。次に、トランスグルタミナーゼはアミンドナー剤(例えば、反応性アミンを含むまたは反応性アミンと結合している小分子)と共有結合的に架橋して、アミンドナー剤がアシルドナーグルタミン含有タグまたは接近可能な/露出した/反応性内因性グルタミン(WO2012059882号公報)を介してFc含有ポリペプチドに部位特異的にコンジュゲートしている操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートの安定かつ均質な集団を形成することができる。
【0155】
いくつかの態様では、異種ポリペプチド(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)は、US20160031988A1およびUS20120039916A1に記載されているコヘシン融合タンパク質への非共有結合的カップリングを可能にするためのドックリンドメインまたはマルチプルドメインによって本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドとコンジュゲートしている。
【0156】
いくつかの態様では、異種ポリペプチド(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)は、本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドと融合して融合タンパク質を形成している。
【0157】
いくつかの態様では、異種ポリペプチド(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)は、本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドのN末端またはC末端に融合させることができる。
【0158】
いくつかの態様では、本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドは、異種ポリペプチド(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)に直接またはリンカーを介して融合している。本明細書で使用する場合、「直接」という用語は、本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドの末端(N末端またはC末端)の(最初または最後の)アミノ酸が異種ポリペプチドの末端(N末端またはC末端)の(最初または最後の)アミノ酸と融合していることを意味する。この直接的融合は、(Vigneron et al., Science 2004, PMID 15001714)、(Warren et al., Science 2006, PMID 16960008)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015a, PMID 26401000)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015b, PMID 26401003), (Delong et al., Science 2016, PMID 26912858) (Liepe et al., Science 2016, PMID 27846572)、(Babon et al., Nat. Med. 2016, PMID 27798614)に本質的に記載されているように行うことができる。
【0159】
いくつかの態様では、リンカーは、下記のFlexV1、f1、f2、f3、またはf4からなる群から選択される。
【0160】
【化27】
【0161】
いくつかの態様では、本発明の融合タンパク質は、直接またはリンカーにより間接的に互いに融合させることができる本発明の2、3、4、5、6、7または8つのSARS-CoV-2ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明の融合タンパク質は、リンカーにより直接または間接的に互いに融合させることができるポリペプチド(M1-110)、ポリペプチド(M132-222)、ポリペプチド(N78-206)、ポリペプチド(N276-411)、ポリペプチド(S125-250)、ポリペプチド(S280-598)、ポリペプチド(S680-1029)およびポリペプチド(S1056-1209)を含む。
【0162】
いくつかの態様では、異種ポリペプチド(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)は、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)に融合しているRBDポリペプチドを含むポリエピトープポリペプチドとコンジュゲートしていない。
【0163】
いくつかの態様では、異種ポリペプチド(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)は、ポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)に融合しているポリペプチド(N276-411「Npep2」)を含むポリエピトープポリペプチドとコンジュゲートしていない。
【0164】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「Gen2a」または「CD40.CoV2」と呼称)は、CD40抗体(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来するCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、RDBポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0165】
いくつかの態様では、Gen2a抗体の軽鎖は、Npep2-Spep1-f2-Spep4の式を有するポリエピトープポリペプチドに融合し、式中、f2は本明細書に記載されるリンカーを表す。いくつかの態様では、Gen2a抗体の軽鎖は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0166】
いくつかの態様では、Gen2a抗体は、配列番号48に示される重鎖と配列番号49に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0167】
配列番号48>[h抗CD40VH3-LV-hIgG4H-C-ViralSARS-CoV-2-Spike-RBD]
【化28】
【0168】
配列番号49>[h抗CD40VK2-LV-hIgGK-C-f4-ViralSARS-CoV-2-Npep2-Spep1-f2-Spep4]
【化29】
【0169】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「Gen2b」と呼称)は、CD40抗体(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合し、
・抗体の軽鎖は、ポリペプチド(N276-411、「Npep2」)およびRBDポリペプチドを含むポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0170】
いくつかの態様では、Gen2b抗体の重鎖は、Spep1-f2-Spep4の式を有するポリエピトープポリペプチドに融合している、式中、f2は本明細書に記載されるリンカーを表す。いくつかの態様では、Gen2b抗体の重鎖は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0171】
いくつかの態様では、Gen2bの軽鎖は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。いくつかの態様では、Gen2b抗体は、配列番号50に示される重鎖と配列番号51に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0172】
配列番号50>[hAnti-D40VH3-LV-hIgG4H-C-Flex-v1-ViralSARS-CoV-2-Spep1-f2-pep4]
【化30】
【0173】
配列番号51>[hANTICD40VK2-LV-hIgGK-C-f4-ViralSARS-CoV-2-Npep2-Spike-RBD]
【化31】
【0174】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「Gen2c」と呼称)は、CD40抗体(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖は、RBDポリペプチドに融合している。
【0175】
いくつかの態様では、Gen2c抗体の重鎖は、Npep2-Spep1-f2-Spep4の式を有するポリエピトープポリペプチドに融合し、式中、f2は本明細書に記載されるリンカーを表す。いくつかの態様では、Gen2c抗体の重鎖は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0176】
いくつかの態様では、Gen2c抗体は、配列番号52に示される重鎖と配列番号53に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0177】
配列番号52>[hAnti-CD40VH3-LV-hIgG4H-C-f4-ViralSARS-CoV-2-Npep2-Spep1-f2-Spep4]
【化32】
【0178】
配列番号53>[h抗CD40VK2-LV-hIgGK-C-ViralSARS-CoV-2-Spike-RBD]
【化33】
【0179】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「CD40.CoV2v」と呼称)は、CD40抗体(特に、本発明に開示される任意の抗体、特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、RBDポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)、ポリペプチド(S125-250、「Spep1」)およびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0180】
いくつかの態様では、CD40.CoV2v抗体の軽鎖は、Npep2-Spep1-f2-Spep4の式を有するポリエピトープポリペプチドに融合し、f2は本明細書に記載されるリンカーを表す。いくつかの態様では、CD40.CoV2v抗体の軽鎖は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0181】
いくつかの態様では、CD40.CoV2v抗体は、配列番号54に示される重鎖と配列番号55に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0182】
配列番号54>[hAnti-CD40VH3-LV-hIgGK-C-ViralSARS-CoV-2-Spike-RBDC221S変異体(南アフリカ突然変異20H/501Y.V2)]
【0183】
【化34】
【0184】
配列番号55>[hAnti-CD40VK2-LV-hIgGK-C-f4-ViralSARS-Cov-2-Npep2-Spep1C12S-f2-Spep4]
【化35】
【0185】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「CD40.N2.RBDv」と呼称)は、CD40抗体(特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)に融合し、かつ
・抗体の軽鎖は、RBDポリペプチドに融合している。
【0186】
いくつかの態様では、CD40.N2.RBDvは、配列番号56に示される重鎖と配列番号57に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0187】
配列番号56>[hAnti-CD40VH3-LV-hIgG4H-C-f4-ViralSARS-Cov-2-Npep2]
【化36】
【0188】
配列番号57>[hAnti-CD40VK2-LV-hIgGK-C-ViralSARS-CoV-2-Spike-RBDC221S SA var]
【化37】
【0189】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲートは、CD40抗体(「CD40.N2.RBDv-2」と呼称)(特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、RBDポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」に融合している。
【0190】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「CD40.RBDvS4.N2」と呼称)は、CD40抗体(特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、RBDポリペプチドおよびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合し、かつ
・抗体の軽鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)に融合している。
【0191】
いくつかの態様では、CD40.RBDvS4.N2抗体の重鎖は、配列番号58に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0192】
いくつかの態様では、CD40.RBDvS4.N2は、配列番号59に示される重鎖と配列番号60に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0193】
配列番号59>[hAnti-CD40VH3-LV-hIgG4H-C-ViralSARS-CoV-2-RBDC221S SA var-Spep4]
【化38】
【0194】
配列番号60>[hAnti-CD40VK2-LV-hIgGK-C-f4-ViralSARS-CoV-2-Npep2]
【化39】
【0195】
いくつかの態様では、本発明のコンジュゲート(「CD40.N2S1.RBDvS4」と呼称)は、CD40抗体(特に、上記に定義される12E12抗体に由来する任意のCD40抗体)からなり、
・抗体の重鎖は、ポリペプチド(N276-411「Npep2」)およびポリペプチド(S125-250、「Spep1」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合し、
・抗体の軽鎖は、RBDポリペプチドおよびポリペプチド(S1056-1209、「Spep4」)を含むポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0196】
いくつかの態様では、CD40.N2S1.RBDvS4抗体の軽鎖は、配列番号58に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。いくつかの態様では、CD40.N2S1.RBDvS4抗体の重鎖は、配列番号61に示されるアミノ酸配列を有するポリエピトープポリペプチドに融合している。
【0197】
いくつかの態様では、CD40.N2S1.RBDvS4抗体は、配列番号62に示される重鎖と配列番号63に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0198】
配列番号62>[hAnti-CD40VH3-LV-hIgG4H-C-f4-ViralSARS-CoV-2-Npep2-Spep1C12S
【化40】
【0199】
配列番号63>[hAnti-CD40VK2-LV-hIgGK-C-ViralSARS-CoV-2-RBDC221S SA var-Spep4]
【化41】
【0200】
いくつかの態様では、上記に定義されるコンジュゲートGen2a、Gen2b、Gen2c、CD40.CoV2v、CD40.N2.RBDv、CD40.N2.RBDv-2、CD40.RBDvS4.N2またはCD40.N2S1.RBDvS4に含まれるRBDポリペプチドは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、非自然C538S突然変異および配列番号3の特に417、452、484または501番のうち1以上に少なくとも1つの自然突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0201】
特に、上記に定義されるコンジュゲートGen2a、Gen2b、Gen2c、CD40.CoV2v、CD40.N2.RBDv、CD40.N2.RBDv-2、CD40.RBDvS4.N2またはCD40.N2S1.RBDvS4に含まれるRBDポリペプチドは、
・配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、N501Y自然突然変異およびC538S非自然突然変異を含むアミノ酸;
・配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417T、E484K、N501Y自然突然変異および非自然突然変異C538S突然変異を含むアミノ酸;
・配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501Y自然突然変異および非自然C538S突然変異を含むアミノ酸(「RBD南アフリカ株」);または
・配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、E484Q、L452N自然突然変異および非自然C538S突然変異を含むアミノ酸(「RBDインド株)からなり得る。
【0202】
上記に定義されるコンジュゲートGen2a、Gen2b、Gen2c、CD40.CoV2v、CD40.N2.RBDv、CD40.N2.RBDv-2、CD40.RBDvS4.N2またはCD40.N2S1.RBDvS4に含まれるRBDポリペプチドは、好ましくは、配列番号3の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501Y自然突然変異および非自然C538S突然変異(「RBD南アフリカ株」)を含むアミノ酸からなり得る。
【0203】
本発明のポリペプチドを生産する方法:
本発明のSARS-CoV-2ポリペプチド、融合タンパク質、抗体は、限定されるものではないが、任意の化学的技術、生物学的技術、遺伝学的技術または酵素的技術などの、単独または組み合わせたそれ自体当技術分野で公知の任意の技術によって生産され得る。所望の配列のアミノ酸配列がわかれば、当業者はポリペプチドの生産のための標準的技術によって前記ポリペプチドを容易に生産することができる。例えば、それらは、周知の固相法を用い、好ましくは、製造者の説明書に従って市販のペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニア州により製造)を用いて合成することができる。あるいは、本発明のポリペプチドおよび融合タンパク質は当技術分野で現在周知である組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、これらのフラグメントは、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列の発現ベクターへの組み込みおよびこのベクターの所望のポリペプチドを発現する好適な真核生物または原核生物宿主への導入後にDNA発現産物として得ることができ、その後、これらのフラグメントはこれらの宿主から、周知の技術を用いて単離することができる。
【0204】
組換え発現のため、DNA構築物は、好ましくは、本発明によるコンジュゲートの重鎖および軽鎖のN末端におけるシグナルペプチドをコードする配列を含む。
【0205】
医薬組成物およびワクチン組成物:
本明細書に記載される融合タンパク質および抗体および抗体を含むSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲートは、1以上の医薬組成物の一部として投与してもよい。任意の従来の担体媒体が、望ましくない生物学的効果を生じることによるか、そうでなければ医薬組成物の他の成分と有害な方法で相互作用することにより、本発明のポリペプチドと不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあることが企図される。薬学上許容される担体として働き得る材料のいくつかの例として、限定されるものではないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカントガム;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐薬ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質除去水;等張性生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性適合滑沢剤が挙げられ、ならびに調剤者の判断によって、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤も本組成物中に存在することができる。
【0206】
本明細書に記載される融合タンパク質および抗体を含むSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲートは、ワクチン組成物を作製するために特に好適である。
【0207】
いくつかの態様では、本発明のワクチン組成物は、1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドを抗原として含む。本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドの利点の1つは、それがHLAクラスI制限エピトープおよび/またはHLAクラスII制限エピトープおよび/または抗体エピトープを含む複数のエピトープを含むことである。
【0208】
いくつかの態様では、本発明のワクチン組成物は、本発明の2、3、4、5、6、7または8つのSARS-CoV-2ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明のワクチン組成物は、理想的には、ポリペプチド(M1-110)、ポリペプチド(M132-222)、ポリペプチド(N78-206)、ポリペプチド(N276-411)、ポリペプチド(S125-250)、ポリペプチド(S280-598)、ポリペプチド(S680-1029)およびポリペプチド(S1056-1209)を含む。
【0209】
いくつかの態様では、本発明のワクチン組成物は、本発明の1以上のコンジュゲート(本明細書に記載の融合タンパク質および抗体を含む)を抗原として含む。
【0210】
よって、いくつかの態様では、本発明のワクチン組成物は、アジュバントを含む。いくつかの態様では、アジュバントはミョウバンである。いくつかの態様では、アジュバントは、30~70重量(w/w)%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%で存在する不完全フロイントアジュバント(IFA)またはその他の油に基づくアジュバントである。いくつかの態様では、本発明のワクチン組成物は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、およびTLR8アゴニストからなる群から選択される少なくとも1つのトル様受容体(TLR)アゴニストを含む。
【0211】
ポリヌクレオチドおよびその使用:
本発明のさらなる目的は、本発明のSARS-CoV-2ポリペプチドまたはコンジュゲート(本発明の融合タンパク質および抗体を含む)をコードするポリヌクレオチドに関する。ポリヌクレオチドは好ましくは、本発明によるコンジュゲートの重鎖および軽鎖のN末端にシグナルペプチドをコードする配列を含み、これによりそのコンジュゲートはイン・ビボにおいて発現および分泌され得る。
【0212】
一般に、前記ポリヌクレオチドは、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどのいずれの好適なベクターにも含まれ得るDNAまたはRNA分子である。
【0213】
本発明のポリヌクレオチドは、必要とする対象にワクチン接種を行うために特に好適である。
【0214】
本明細書で定義されるように、ポリヌクレオチドを対象に送達するための多種多様な方法が存在する。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、カチオン性リポソームを含むカチオン性ポリマーを用いて製剤化することができる。他のリポソームもまた、自己酸性核酸分子を製剤化して送達するための有効な手段となる。あるいは、DNAは、薬理学的送達のために、ウイルスベクター、ウイルス粒子、または細菌に組み込むことができる。ウイルスベクターは、感染能、弱毒化(疾患を誘発する能力を低下させる変異を有する)、または複製欠陥を有し得る。病原性自己タンパク質の沈着、蓄積、または活性を防止するためにDNAを利用する方法は、コードされた自己抗原に対する体液性応答を増加させるウイルスベクターまたは他の送達システムの使用によって増強され得る。いくつかの態様では、DNAは、金粒子、多糖類に基づく支持体、または注入、吸入、もしくは粒子衝撃(弾道送達)によって送達され得る他の粒子もしくはビーズを含む固体支持体とコンジュゲートし得る。核酸製剤を送達する方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、および同第5,589,466号参照。哺乳類細胞に導入するためにいくつかのウイルスに基づくシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスシステムが記載されている(米国特許第5,219,740号;Miller et al, Biotechniques 7:980-990 (1989); Miller, Human Gene Therapy 1 :5-14, (1990); Scarpa et al, Virology 180:849-852 (1991); Burns et al, Proc. Natl Acad. Sci. USA 90:8033-8037 (1993);およびBoris-Lawrie and Temin, Cur. Opin. Genet. Develop. 3: 102-109 (1993)。核酸送達のためには、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターシステムもまた開発されている。AAVベクターは、当技術分野で周知の技術を用いて容易に構築することができる。例えば、米国特許第5,173,414号および同第5,139,941号;国際公開第WO92/01070号および同第WO93/03769号;Lebkowski et al, Molec. Cell Biol. 8:3988-3996 (1988); Vincent et al, Vaccines 90 (Cold Spring Harbor Laboratory Press) (1990); Carter, Current Opinion in Biotechnology 3:533-539 (1992); Muzyczka, Current Topics in Microbiol. And Immunol. 158:97-129 (1992); Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994); Shelling et al., Gene Therapy 1: 165-169 (1994);およびZhou et al. , J. Exp. Med. 179: 1867-1875 (1994)参照。
【0215】
いくつかの態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ウイルスベクターを用いずに送達される。例えば、ポリヌクレオチドは、対象に送達する前にリポソームに封入することができる。脂質カプセル封入は一般に、核酸と安定に結合することができるか、または核酸を保持することができるリポソームを用いて達成される。核酸送達のための担体としてのリポソームの使用に関する総説としては、例えば、Hug et al, Biochim. Biophys. Acta. 1097: 1-17 (1991); Straubinger et al., Methods of Enzymology, 101: 512-527 (1983)参照。あるいは、ポリヌクレオチドは、エレクトロポレーションによって送達される(すなわち、エレクトロポレーションによる筋肉送達)。
【0216】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、筋肉(「IM」)注射によって送達される。いくつかの態様では、本発明の核酸分子は、鼻腔内、経口、皮下、皮内、静脈内、粘膜、経皮送達するか、または真皮に送達される粒子と結合させるか、または真皮を介して送達する。あるいは、ポリヌクレオチドは、リポソームも荷電脂質を用いてまたは用いずに局所適用によって皮膚細胞に送達することができる。さらなる別法は、核酸を吸入薬剤として送達することである。
【0217】
治療方法:
本明細書に記載されるSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲート(融合タンパク質および抗体を含む)ならびに医薬組成物またはワクチン組成物は、SARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導するために特に好適であり、従って、ワクチン目的に使用することができる。
【0218】
よって、本発明のさらなる目的は、治療上有効な量の本発明の1個以上のSARS-CoV-2ポリペプチドを投与することを含むSARS-CoV-2を、それを必要とする対象にワクチンとして接種するための方法に関する。
【0219】
本発明のさらなる目的は、治療上有効な量の本明細書に記載される1以上のコンジュゲートを投与することを含む、SARS-CoV-2を、それを必要とする対象にワクチンとして接種するための方法に関する。
【0220】
本発明のさらなる目的は、治療上有効な量の本明細書に記載される医薬組成物またはワクチン組成物を投与することを含む、SARS-CoV-2を、それを必要とする対象にワクチンとして接種するための方法に関する。
【0221】
本発明のさらなる目的は、治療上有効な量の本明細書に記載されるポリヌクレオチドを投与することを含む、SARS-CoV-2を、それを必要とする対象にワクチンとして接種するための方法に関する。
【0222】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲート(融合タンパク質および抗体を含む)および医薬組成物またはワクチン組成物は、Covid-19の治療のために特に好適である。
【0223】
いくつかの態様では、対象は、ヒトまたはコロナウイルス感染に感受性のある他のいずれかの動物(例えば、鳥類および哺乳類)(例えば、ネコおよびイヌなどの飼育動物;ウマ、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家畜および農用動物)であり得る。一般に、前記対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジー、およびヒト)を含む哺乳類である。いくつかの態様では、対象は、非ヒト動物である。いくつかの態様では、対象は、農用動物またはペットである。いくつかの態様では、対象はヒトである。いくつかの態様では、対象はヒト幼児である。いくつかの態様では、対象はヒト小児である。いくつかの態様では、対象はヒト成人である。いくつかの態様では、対象は、ヒト高齢者である。いくつかの態様では、対象は、ヒト未熟児である。
【0224】
いくつかの態様では、対象は、症候性または無症候性であり得る。
【0225】
一般に、本発明の有効成分(すなわち、本明細書に記載されるSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲート(融合タンパク質および抗体を含む)および医薬組成物またはワクチン組成物)は、治療上有効な量で対象に投与される。本発明の化合物および組成物の総1日使用量は健全な医学的判断の範囲で主治医によって決定されると理解される。特定の治療上有効な用量レベルまたは任意の特定の対象は、治療される障害および障害の重症度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物、対象の年齢、体重、健康状態、性別および食餌;使用する特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用する特定のポリペプチドと併用または同時使用される薬物などを含む医学分野で周知の様々な因子によって異なる。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、十分当業者の技量の範囲内にある。しかしながら、生成物の1日用量は、0.01~1,000mg/成人/日の広範囲にわたって変更可能である。特に、組成物は、治療対象に症状に合わせた用量調節を行うために0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250および500mgの有効成分を含有する。薬剤は、一般に、約0.01mg~約500mgの有効成分、特に、1mg~約100mgの有効成分を含有する。有効量の薬物は、通常、0.0002mg/kg~約20mg/kg体重/日、特に約0.001mg/kg~7mg/kg体重/日の用量レベルで供給される。
【0226】
本明細書に記載されるSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲート(融合タンパク質および抗体を含む)および医薬組成物またはワクチン組成物は、任意の投与経路、特に、経口、鼻腔、直腸、局所的、口内(例えば、舌下)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)および経皮投与によって対象に投与することができるが、任意の所与の場合おいて最も好適な経路は、治療される病態の性質および重症度および使用される特定の活性剤によって異なる。
【0227】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲート(融合タンパク質および抗体を含む)および医薬組成物またはワクチン組成物は、例えば、SARS-CoV-2コロナウイルスに対する既知の治療薬またはワクチン接種法と組み合わせて対象に投与することができる。このような既知の治療薬の限定されない例としては、限定されるものではないが、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキン、およびクロロキンなどの抗ウイルス薬が挙げられる。いくつかの態様では、本明細書に記載されるSARS-CoV-2ポリペプチドおよびコンジュゲート(融合タンパク質および抗体を含む)および医薬組成物またはワクチン組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。免疫チェックポイント阻害剤としては、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA-4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、およびBTLAアンタゴニストが挙げられる。いくつかの態様では、PD-1(プログラム細胞死-1)軸アンタゴニストとしては、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体)、PD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)およびPD-L2(プログラム細胞死リガンド-2)アンタゴニスト(例えば、抗PD-L2抗体)が挙げられる。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、およびオプジーボ(登録商標)としても知られる)、Merck 3475(ペンブロリズマブ、MK-3475、ラムブロリズマブ、キートルーダ(登録商標)、およびSCH-900475としても知られる)、ならびにCT-011(ピディリズマブ、hBAT、およびhBAT-1としても知られる)からなる群から選択される。いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224(B7-DCIgとしても知られる)である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、およびMEDI4736からなる群から選択される。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、WO2007/005874号公報に記載の抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634 A1に記載の抗PD-L1である。MEDI4736は、WO2011/066389号公報およびUS2013/034559号公報に記載の抗PD-L1抗体である。MDX-1106-04、ONO-4538またはBMS-936558としても知られるMDX-1106は、米国特許第8,008,449号およびWO2006/121168号公報に記載の抗PD-1抗体である。MK-3475またはSCH-900475としても知られるMerck 3745は、米国特許第8,345,509号およびWO2009/114335号公報に記載の抗PD-1抗体である。hBATまたはhBAT-1としても知られるCT-011(ピジジルマブ)は、WO2009/101611号公報に記載の抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、WO2010/027827号公報およびWO2011/066342号公報に記載のPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。アテゾリムマブは、米国特許第8,217,149号に記載の抗PD-L1抗体である。アベルマブは、米国特許第20140341917号に記載の抗PD-L1抗体である。CA-170は、WO2015033301号公報およびWO2015033299号公報に記載のPD-1アンタゴニストである。他の抗PD-1抗体は、米国特許第8,609,089号、US2010028330、および/またはUS20120114649に開示されている。いくつかの態様では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピディリズマブから選択される抗PD-1抗体である。いくつかの態様では、PD-L1アンタゴニストは、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STIA1012、STI-A1010、STI-A1014、A110、KY1003およびアテゾリムマブを含む群から選択され、好ましいものは、アベルマブ、デュルバルマブまたはアテゾリムマブである。
【0228】
本発明を以下の図および実施例によりさらに説明する。しかしながら、これらの実施例および図は、本発明の範囲を何ら限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0229】
図1】抗CD40.SARS-CoV-2 Gen2a、2b、2c融合タンパク質の設計および物理的特性。A)抗CD40.SARS-CoV-2 Gen2a、2b、2c、CD40.CoV2v、CD40.N2.RBDv、CD40.N2.RBDv-2、CD40.RBDvS4.N2、CD40.N2S1.RBDvS4融合タンパク質の概略図。B)還元および非還元SDS PAGEによりプロテイン-A精製した抗CD40.SARS-CoV-2 Gen2a、2b、2c融合タンパク質の3つの異なるバッチをクーマシーブリリアントブルーR250で染色したものの分析。分子量マーカーは両ゲルの右端のレーンに示される(BenchMark Pre-Stained Prptein Ladder;180、115、82、64、49、37、26、19、15、6kDa;ThermoFisher)。
図2】A)ヒトCD40およびB)ヒトIgGに対する抗CD40 Gen2a、Gen2bおよびGen2c融合タンパク質の結合。示された構築物に対応する融合タンパク質をモル濃度によって正規化し、希釈系をヒトCD40エクトドメインタンパク質(上のパネル)、またはヤギ抗ヒトIgGポリクローナル血清のいずれかでコーティングした表面に加え、インキュベートして結合させ、洗浄し、次いでセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗ヒトIgG試薬とともにインキュベートした後、洗浄し、HRP発色基質で現像した。
図3】SARS-CoV-2感染回復ドナーPBMC培養物中でのSARS-CoV-2特異的T細胞のイン・ビトロ増殖によって判定されたGen2a、Gen2bおよびGen2c融合タンパク質中のCD40標的SARS-CoV2pep抗原。SARS-CoV-2ドナー患者1 PBMCを9日間IL-2および抗CD40 Gen2a、Gen2b、Gen2c融合タンパク質(1nMまたは10nM)とともに培養した後、ブレフェルジン-Aとともに、SARS-CoV-2 N領域およびS領域に特異的なペプチドプールで6時間刺激し、次いで、細胞内サイトカイン染色(ICS)により分析した。1=DMSO刺激;2、3、4=N領域を含むペプチドプールによる刺激;5、6、7=RBD領域を含むペプチドプールによる刺激;8=SEBポリクローナル刺激;9、10=Spep1領域を含むペプチドプールによる刺激;11、12=Spep4領域を含むペプチドプールによる刺激。棒グラフは、細胞内インターフェロンγ(I+)、細胞内腫瘍壊死因子α(T+)、または両方(I+T+)を有するCD4T細胞%の積算値を示す。
図4】種々のH鎖およびL鎖構築物同時トランスフェクション実験の相対的発現のCD40結合ELISAによる評価の例。ELISAプレートを、1μg/mlのヒトCD40エクトドメインタンパク質でコーティングし、結合した抗体の検出は抗ヒトIgG-HRP試薬によった。CHO-Sトランスフェクション上清を無希釈で開始した(a対照抗ヒトCD40 12E12 hIgG4抗体バッチPAB2220に関しては1μg/ml点)。構築物の命名を表2に詳説する。
図5】抗CD40.Gen2ワクチンにより誘導されたCOVID-19回復患者における多機能CD4+T細胞応答。13名のCOVID患者からのPBMCを0日目に1nMの抗CD40.Gen2aワクチンまたはワクチンに含まれる各抗原(RBD、S1、S4、N2)にオーバーラップする等モル量のペプチドプールのいずれかによって刺激した。IL-2とともに8日間培養した後、細胞を各個のペプチドプール(1μg/ml)によって再刺激した、またはしなかった(非刺激)。イン・ビトロT細胞増殖はフローサイトメトリーによって分析した。個々のCD4T細胞応答(IFNγ、TNFαおよびIL-2の合計)およびワクチンで刺激したPBMCの平均値。統計分析のために多重比較一元配置ANOVA試験を使用した(ns、有意でない;p<0,05;***p<0,001;****p<0,0001)。
図6】プライム注射の後のhu-マウス44日の脾臓におけるhu-B細胞内のSARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgGスイッチヒトB-細胞頻度。A.7~9匹/群の4つの試験群を含むNSGヒト化(hu)マウスのワクチン接種戦略の模式的概略。B.免疫誘導44日後からのHu-マウス脾細胞を、まず、PE-SARS-CoV-2 Sタンパク質とともに4℃で1時間インキュベートした。洗浄工程後、細胞を4℃で30分間、抗マウスCD45、抗ヒト(h)CD45、抗hCD19、抗hCD20、抗hIgGで染色した。脾細胞上の染色はまた、生存マーカー(LiveDead aqua)も含んでいた。細胞をFACSバッファー(PBS 1%FCS)で2回洗浄し、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得した。分析はFlowJo v.10.7.1で実施した。
【実施例
【0230】
実施例1:
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)パンデミックは、紛れもなく今世紀最大の人類への世界的健康脅威として出現した。SARS-CoV-2の急速性、世界的拡散速度および観測された高い死亡率は、公衆衛生、社会経済および科学的な課題を提起している。SARS-CoV-2は、軽度の上気道疾患(風邪に似た症状)に似た臨床像を示す呼吸器症候群を引き起こし、時には重篤な下気道疾患や肺外症状により多臓器不全および死に至ることもある。
【0231】
治療法もワクチンもない。しかし、SARS-CoV-2ワクチンは、このウイルスが集団に定着した場合に罹患率と死亡率を減少させるために不可欠となる。候補ワクチンの開発を加速させるためには、新興および再興病原体に特化および適合した、すぐに使えるワクチンプラットフォームの使用が重要である。本発明者らは、SARS-CoV-2に対する候補ワクチンを、新興および再興原体に特化および適合した、そのすぐに使えるDC標的ワクチンプラットフォーム内に設定した。
【0232】
本発明者らは、特定のDCエンドサイトーシス受容体に対する特異的ヒト化モノクローナル抗体(mAb)を用いて、内在性DCに標的抗原(パブリック、優性、交差反応性)送達するワクチンに特化したプラットフォームを開発した。本発明者らは、抗原提示と抗原特異的免疫応答の活性化を促進し、低用量の抗原でも強力な体液性および細胞性免疫応答を誘発することを意図している。本発明者らは、第I相試験においてHIVまたはHPVを標的とするワクチンの臨床開発につながる膨大な一連のイン・ビトロおよびイン・ビボデータを得た[1~6]。本発明者らは従前に、HIVのT細胞エピトープストレッチと融合した抗CD40 mAbsが、ヒト[3]、NHP[2]、またはヒト化マウスでポリエピトープT細胞応答を引き起こすことを証明した[1]。さらに、HIV.Env gp140と融合した抗CD40ワクチンをPoxベクターと組み合わせるか、またはDNAもしくはDREP HIVワクチンのブーストとして使用すると、強力で強固なT細胞およびB細胞応答が惹起された[6](P Liljestrom/Y Levy,パーソナルデータ)。このDC標的化プラットフォームは、現在、前臨床段階でいくつかの感染症(エボラ、インフルエンザ、クラミジア、結核感染症)で検証されており、今年、第I相臨床試験(HIV予防とHPVに関連した頭頸部癌)に進むことになっている。
【0233】
本発明者らは、これらのタンパク質のアミノ酸配列をイン・シリコで解析し、オンラインソフトウエア(NetMHC-4.0およびNetMHCII-2.3)およびペプチド結合予測ソフトウエアにより予測されるMHC-IおよびIIエピトープをマッピングすることで、ワクチン候補に含まれる特定のエピトープを同定した。また、B細胞エピトープもオンラインソフトウエア(BepiPred-2.0およびDiscotope)を用いてマッピングし、SARS-CoV-2と-CoV-1の間で配列が相同なエピトープに富む領域もマッピングした。
【0234】
SARS-CoV-2の4つの構造タンパク質(S、N、MおよびE)を、それぞれNetMHC 4.0(https://services.healthtech.dtu.dk/service.php?NetMHC-4.0)およびNetMHCII 2.3(https://services.healthtech.dtu.dk/service.php?NetMHCII-2.3)、MHCクラス-IおよびMHCクラス-II/ペプチド結合予測ソフトウエアを用いて解析した。
【0235】
線形B細胞エピトープは、BepiPred 2.0(https://services.healthtech.dtu.dk/service.php?BepiPred-2.0) を用いて予測した。
【0236】
80のHLAクラスI(9マーペプチドの場合)および54のHLAクラスII分子(15マーのペプチドの場合)をT細胞エピトープ予測のために使用した。
【0237】
記載のSARS-CoV-1のT細胞およびB細胞エピトープをリストアップし、SARS-CoV-2との相同性%ならびに異なるβ-コロナウイルス間の配列の保存性を調べた。
【0238】
予測されたB、CD8およびCD4 SARS-CoV-2エピトープ、ならびに記載のB、CD8およびCD4 SARS-CoV-1エピトープのクラスターを含む領域(特に異なるβ-コロナウイルス間で保存されている領域)を選択した。
【0239】
NAbが標的とするSARS-CoV-1の配列を、ワクチン領域に含むように特に選択した。
【0240】
Dahlkeらによって発表されたSARS-CoV-2のB細胞反応の最近のカルトグラフィーを考慮して、領域を定義した。
【0241】
また、他のグループによって発表されているT細胞およびB細胞予測エピトープに従って、領域の調整を行った(Prachar M et al bioRxiv pre-print, Bojin F et al pre-print, Fast et al, [7-10])。
【0242】
上述の方法に基づき、本発明らは以下の対象領域を特定した(表1参照)。
【0243】
【表3】
【0244】
実施例2:
方法:
発現ベクターおよびタンパク質の精製・生産の方法およびCD40結合特異性を含む品質保証は、記載されている通り[1;2;3]。タンパク質の発現は、TransIT(登録商標)-CHOトランスフェクションキット(Mirus)を用いたCHO-S(チャイニーズハムスター卵巣細胞)一過性トランスフェクションによって行った。クローニングには、CHOに最適化されたコドンを用いて様々なSARS-Co-V2抗原領域をコードする合成DNAカセットを用い、このカセットには、通常、様々な組合せでベクターに連結するために便利な制限部位が隣接している。
【0245】
[1] Flamar AL., S. Zurawski, F. Scholz, I. Gayet, L. Ni, XH. Li, E. Klechevsky, J. Quinn, S. Oh, D. H. Kaplan, J. Banchereau and G. Zurawski. 2012. Noncovalent assembly of anti-Dendritic Cell antibodies and antigens for evoking immune responses in vitro and in vivo. J. Immunl. 189: 2645-55.
[2] Flamar AL., Y. Xue, S. M. Zurawski, M. Montes, B. King, L. Sloan, S. Oh, J. Banchereau, Y. Levy and G. Zurawski. 2013. Targeting concatenated HIV antigens to human CD40 expands a broad repertoire of multifunctional CD4+ and CD8+ T Cells. AIDS. 27: 2041-51.
[3] Zurawski G., X. Shen, S. Zurawaski, G. D. Tomaras, D. C. Montafiori, M. Roederer, G. Ferrari, C. Lacabaratz, P. Klucar, Z. Wang, K. E. Foulds, SF. Kao, X. Yu, A. Sato, N. L. Yates, C. LaBranche, S. Stanfield-Oakley, K. Kibler, B. Jacobs, A. Salazar, S. Self, E. Fulp, R. Gottardo, L. Galmin, D. Weiss, A. Cristillo, G. Pantaleo and Y. Levy. 2017. Superiority in rhesus macaques of targeting HIV-1 Env gp140 to CD40 versus LOX-1 in combination with replication-competent NYVAC-KC for induction of Env-specific antibody and T Cell responses. J. Virol. 91: 1-20.
【0246】
結果:
本発明者らは、従前に、ヒトDC受容体のパネル:CD40、DCIR、ランゲリンおよびLOX-1に対する新規抗原組換え抗体の発現、分泌および使用に関する組成物、方法を特許化した。DC標的化技術は、抗DC受容体モノクローナル抗体重鎖および/または軽鎖のC末端への病原体抗原の工学的直接融合に基づいている。そのため、選択されたCoV抗原領域のコーディング配列は、自社で定義したリンカーペプチドを挟んで、重鎖または軽鎖上の抗原領域の連結した文字列として分子クローニングにより融合される。
【0247】
ヒト化抗ヒトCD40 12E12 IgG4抗体の重鎖および軽鎖C末端に、フレキシブルリンカー領域を伴ってまたは伴わずに、様々なSARS-CoV-2抗原コード領域または領域の組合せを用いて、抗COVID-19 DC標的ワクチン候補の発現構築物を作製した。
【0248】
重鎖および軽鎖発現構築物をExpi CHO-S細胞に一過性に共トランスフェクトし、次に分泌された組換え融合抗体タンパク質の発現について、ELISAにより、hIgG4レベルおよび/またはヒトCD40結合の相対的産生を測定して試験した。ELISA測定は、ヒト化抗ヒトCD40 12E12 IgG4抗体の1μg/ml標準曲線と比較して評定した(図4参照)。この初期アッセイは、どの構築物の組合せが、大規模化ワクチン生産に有用となり得る範囲の産物を生産するかを決定するためのものであった。これは、表2に示される生産能を反映している。
【0249】
表2に示す生産されたワクチン候補の品質は、(i)還元条件および非還元条件下でSDS-PAGEにより分離し、クーマシーブルーで染色した精製rAb抗原融合タンパク質のSDS-PAGE分析および/または(ii)サイズ排除クロマトグラフィー分析によって評価した。
【0250】
【表4】
【0251】
特に、本発明者らは、以下のように生産能および品質が最もよい8つの構築物を作製した(図1):
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBD)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に3つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2、Spep1、Spep4)を有する抗CD40.COVID-19構築物「Gen2a」
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に2つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spep1、Spep4)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に2つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2、Spike-RBD)を有する抗CD40.COVID-19構築物「Gen2b」
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に3つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2、Spep1、Spep4)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBD)を有する抗CD40.COVID-19構築物「Gen2c」
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBDSA VAR)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に3つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2、Spep1C136S、Spep4)を有する抗CD40.COVID-19構築物「CD40.CoV2v」
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBDSA VAR)を有する抗CD40.COVID-19構築物「CD40.N2.RBDv」、
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBDSA VAR)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2)を有する抗CD40.COVID-19構築物「CD40.N2.RBDv-2」
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に2つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBDSA VAR、Spep4)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に1つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2)を有する抗CD40.COVID-19構築物「CD40.RBDvS4.N2」
・重鎖(h抗CD40VH3-LV-hIgG4H)に2つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Npep2、Spep1C136S)を有し、軽鎖(h抗CD40VK2-LV-hIgGK)に2つのペプチド(ViralSARS-CoV-2 Spike-RBDSA VAR、Spep4)を有する抗CD40.COVID-19構築物「CD40.N2S1.RBDvS4」
【0252】
本発明者らは、抗CD40 Gen2a、Gen2bおよびGen2c融合タンパク質がヒトCD40に結合することを確認した(図2)。次に、Gen2a、Gen2bおよびGen2c融合タンパク質中のCD40標的SARS-CoV2pep抗原を、SARS-CoV-2感染回復ドナーPBMC培養におけるSARS-CoV-2特異的T細胞のイン・ビトロ拡大培養によって試験した(図3)。
【0253】
本発明者らは、図5に、抗CD40.Gen2aワクチンが、COVID-19回復者患者のPBMCにおいて多機能CD4+T細胞応答を誘発したことを示す。
【0254】
同種または異種のプライム/ブーストワクチン接種戦略で与えられた抗CD40 Gen2aワクチンの免疫原性を、図6Aに記載のプロトコールに従って調べた。結果を図6Bに示す。本発明らは、ワクチンがS特異的IgG+hu-B細胞を惹起することを示す(図6B)。興味深いことに、S特異的IgG+hu-B細胞を誘発するためにアジュバントの添加は必要でないことが示される(図6B)。
【0255】
本願を通じて、様々な参照文献が、本発明が属する技術水準を説明する。これらの参照文献の開示内容は、参照により本開示の一部とされる。
参照文献
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023528017000001.app
【国際調査報告】