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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】粒子の分離のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B04C 5/081 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
B04C5/081
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022573251
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 AU2021050514
(87)【国際公開番号】W WO2021237298
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】2020901719
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522461550
【氏名又は名称】バイオアクティブ マテリアルズ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOACTIVE MATERIALS PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヘ, リジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン, イアン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ポール, プジャ
(72)【発明者】
【氏名】シャンバグ, ブバナ
(72)【発明者】
【氏名】ジ, リー
【テーマコード(参考)】
4D053
【Fターム(参考)】
4D053AA03
4D053AB04
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CA04
4D053CB02
(57)【要約】
記載される実施形態は、概して、流体中の粒子を分離するための液体サイクロンに関する。液体サイクロンは、上側円錐部分であって、流体を受け入れるための少なくとも1つの入口と、上側円錐部分内に伸びる渦ファインダと、渦ファインダに流体接続されており、流体の一部を上側円錐部分から排出するように構成されたオーバーフローポートと、を画定する上側円錐部分と、アンダーフローポートを画定する下側円錐部分であって、アンダーフローポートは、下側円錐部分から残りの流体を排出し、下側円錐部分は、単一の中空ボリュームを画定するように、上側円錐部分に流体接続されている、下側円錐部分と、を備える。液体サイクロンの形状は、所定の粒径より小さい粒子をオーバーフローポートから排出することによって、それらの粒子を分離させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の粒子を分離するための液体サイクロンであって、前記液体サイクロンは、
上側円錐部分であって、前記流体を受け入れるための少なくとも1つの入口と、前記上側円錐部分内に伸びる渦ファインダと、前記渦ファインダに流体接続されており、前記流体の一部を前記上側円錐部分から排出するように構成されたオーバーフローポートと、を画定する、上側円錐部分と、
アンダーフローポートを画定する下側円錐部分であって、前記アンダーフローポートは、前記下側円錐部分から残りの流体を排出し、前記下側円錐部分は、単一の中空ボリュームを画定するように、前記上側円錐部分に流体接続されている、下側円錐部分と、を備え、
前記下側円錐部分の壁は凹状であり、
前記液体サイクロンの形状は、所定の粒径より小さい粒子を前記オーバーフローポートから排出することによって、前記粒子を分離させる、液体サイクロン。
【請求項2】
前記所定の粒径が、5μm未満である、請求項1に記載の液体サイクロン。
【請求項3】
前記所定の粒径が、1μm未満である、請求項2に記載の液体サイクロン。
【請求項4】
前記液体サイクロンの前記形状が、前記所定の粒径よりも大きい粒子を前記アンダーフローポートから排出させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項5】
前記液体サイクロンの直径が、0.5mm~5mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項6】
前記上側円錐部分が、前記流体を受け入れるための2つの逆向きに配設された入口を画定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項7】
前記少なくとも1つの入口の直径が、0.25~0.71mmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項8】
前記オーバーフローポートの直径が、0.075~0.75mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項9】
前記渦ファインダの長さが、0.5~1.67mmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項10】
前記上側円錐部分の長さが、1.0~3.6mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項11】
前記アンダーフローポートの直径が、0.05~1.5mmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項12】
前記下側円錐部分の長さが、2~98.6mmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項13】
前記下側円錐部分の円錐形状が、0.6~1である、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項14】
前記液体サイクロンの内部の粗さが、3~10μmである、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項15】
前記少なくとも1つの入口が、円形の形状を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項16】
前記少なくとも1つの入口が、台形の形状を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項17】
前記液体サイクロンが、3D印刷によって製造されたものである、請求項1~16のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項18】
前記流体が、生体流体若しくは前記生体流体の一部分を含むか、又は生体材料を含有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項19】
前記粒子が、ナノ粒子、リポソーム、細胞、分泌された細胞外小胞、ウイルス粒子、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、タンパク質凝集体、核酸凝集体、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の液体サイクロン。
【請求項20】
前記分泌された細胞外小胞は、エクソソームである、請求項19に記載の液体サイクロン。
【請求項21】
流体中の粒子を分離するためのシステムであって、前記システムは、
流体を収容するための供給タンクと、
請求項1~20のいずれか一項に記載の液体サイクロンと、
前記供給タンクから前記流体を受け入れ、前記流体を前記液体サイクロン内に送るためのポンプと、を備える、システム。
【請求項22】
前記システムが、前記液体サイクロンの前記アンダーフローポートから前記供給タンクに流体を運ぶためのリサイクルチューブを更に備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ポンプが、9.6~16.25m/秒の速度で前記流体を前記液体サイクロン内に送るように構成されている、請求項21又は22に記載のシステム。
【請求項24】
流体中の粒子を分離するための方法であって、前記方法は、
請求項1~20のいずれか一項に記載の液体サイクロンの前記少なくとも1つの入口内に流体を送ることと、
前記液体サイクロンの前記オーバーフローポートから前記分離された粒子を回収することと、を含む、方法。
【請求項25】
前記液体サイクロンの前記少なくとも1つの入口内に流体を送ることは、9.6~16.25m/秒の速度で前記液体サイクロンの前記少なくとも1つの入口内に流体を送ることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記液体サイクロンの前記アンダーフローポートから流体を回収することと、その後、前記回収された流体を、前記液体サイクロンの少なくとも1つの入口内に、又は前記供給タンク内に再び送ることを更に含む、請求項24又は25に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して、流体中の粒子を分離するための装置及び方法に関する。具体的には、実施形態は、流体中の微粒子及び/又はナノ粒子を分離するための小型液体サイクロンに関する。
【背景技術】
【0002】
製造、水処理、鉱物処理、化学合成、食品処理、及びバイオメディカル分析を含む数多くの分野において、粒径及び粒子の密度に基づいて溶液中の粒子を引き離す能力が望まれている。特に、連続フローにおける粒子の引き離し及び分離がこれらのプロセスに有利である可能性がある。流体技術は、粒径及び粒子の密度に基づいて粒子の連続的な引き離し及び選別を可能にするが、既知の流体技術は、微粒子及びナノ粒子を分離するためなど、粒径が小さい粒子の引き離しに上手く対処することができない。
【0003】
粒子を分離するための従来の装置及び方法に関連付けられた1つ以上の短所若しくは欠点に取り組むか若しくは改善すること、又は少なくともこれらへの有用な代替を提供することが望ましい。
【0004】
本明細書全体を通して、「comprise(備える)」という用語、又は「comprises」若しくは「comprising」などのバリエーションは、記載された要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップのグループを含むことを意味するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップのグループを排除することを意味しないと理解されるであろう。
【0005】
本文献において、要素が選択肢のリストの「少なくとも1つ」であり得るという記述は、要素が列挙されている選択肢のうちの任意の1つであり得ること、又は列挙されている選択肢のうちの2つ以上の任意の組み合わせであり得ることを意味すると理解されたい。
【0006】
本明細書に含まれる文献、行為、材料、装置、又は物品等の任意の議論は、これらの事項のうちのいずれか又は全てが、添付の特許請求の範囲の各請求項の優先日より前に存在したために、先行技術基準の一部を形成する、又は本開示に関連する分野における通常の一般的知識であることを認めるものではない。
【発明の概要】
【0007】
一部の実施形態は、流体中の粒子を分離するための液体サイクロンに関し、液体サイクロンは、
上側円錐部分であって、流体を受け入れるための少なくとも1つの入口と、上側円錐部分内に伸びる渦ファインダと、渦ファインダに流体接続されており、流体の一部を上側円錐部分から排出するように構成されたオーバーフローポートと、を画定する、上側円錐部分と、
アンダーフローポートを画定する下側円錐部分であって、アンダーフローポートは、下側円錐部分から残りの流体を排出し、下側円錐部分は、単一の中空ボリュームを画定するように、上側円錐部分に流体接続されている、下側円錐部分と、を備え、
下側円錐部分の壁は凹状であり、
液体サイクロンの形状は、所定の粒径より小さい粒子をオーバーフローポートから排出することによって、粒子を分離させる。
【0008】
一部の実施形態によれば、所定の粒径は5μm未満である。一部の実施形態では、所定の粒径は1μm未満である。一部の実施形態では、液体サイクロンの形状が、所定の粒径よりも大きい粒子をアンダーフローポートから排出させる。
【0009】
一部の実施形態によれば、液体サイクロンの直径は、0.5mm~5mmである。一部の実施形態では、少なくとも1つの入口の直径は、0.25~0.71mmである。一部の実施形態によれば、オーバーフローポートの直径は、0.075~0.75mmである。一部の実施形態では、アンダーフローポートの直径は、0.05~1.5mmである。
【0010】
一部の実施形態では、上側円錐部分は、流体を受け入れるための2つの逆向きに配設された入口を画定する。
【0011】
一部の実施形態によれば、渦ファインダの長さは、0.5~1.67mmである。一部の実施形態では、上側円錐部分の長さは、1.0~3.6mmである。一部の実施形態では、下側円錐部分の長さは、2~98.6mmである。
【0012】
一部の実施形態では、下側円錐部分の円錐形状は、0.6~1である。
【0013】
一部の実施形態では、液体サイクロンの内部の粗さは、3~10μmである。
【0014】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つの入口は、円形の形状を有する。一部の実施形態では、少なくとも1つの入口は、台形の形状を有する。
【0015】
一部の実施形態では、液体サイクロンは3D印刷によって製造されたものである。
【0016】
一部の実施形態によれば、流体は、生体流体若しくは生体流体の一部を含むか、又は生体材料を含有する。一部の実施形態では、粒子は、ナノ粒子、リポソーム、細胞、分泌された細胞外小胞、ウイルス粒子、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、タンパク質凝集体、核酸凝集体、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
一部の実施形態は、流体中の粒子を分離するためのシステムに関し、システムは、
流体を収容するための供給タンクと、
一部の他の実施形態の液体サイクロンと、
供給タンクから流体を受け入れ、流体を液体サイクロン内に送るためのポンプと、を備える。
【0018】
一部の実施形態は、液体サイクロンのアンダーフローポートから供給タンク内に流体を運ぶためのリサイクルチューブを更に備える。
【0019】
一部の実施形態では、ポンプは、9.6~16.25m/秒の速度で流体を液体サイクロン内に送り込むように構成される。
【0020】
一部の実施形態は、流体中の粒子を分離するための方法に関し、方法は、
一部の他の実施形態の液体サイクロンの少なくとも1つの入口内に流体を送ることと、
液体サイクロンのオーバーフローポートから分離された粒子を回収することと、を含む。
【0021】
一部の実施形態では、液体サイクロンの少なくとも1つの入口内に流体を送ることは、9.6~16.25m/秒の速度で液体サイクロンの少なくとも1つの入口内に流体を送ることを含む。
【0022】
一部の実施形態は、液体サイクロンのアンダーフローポートから流体を回収することと、その後、回収された流体を、液体サイクロンの少なくとも1つの入口内に、又は供給タンク内に再び送ることを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の添付図面を参照しながら、例として実施形態を更に詳細に説明する。
【0024】
図1】一部の実施形態に係る液体サイクロンを示す。
図2】一部の実施形態に係る代替の液体サイクロンを示す。
図3図1又は図2の液体サイクロンの寸法の図を示す。
図4A図2の液体サイクロンの入口を更に詳細に示す。
図4B図1の液体サイクロンの入口を更に詳細に示す。
図5図1の液体サイクロンが組み込まれた、ナノ粒子を分離するための処理システムを示す。
図6図1の液体サイクロンを組み込まれた、ナノ粒子を分離するための代替の処理システムを示す。
図7図1又は図2の液体サイクロン内を移動する粒子の図式表現を示す。
図8図1の液体サイクロンが組み込まれた、リサイクルが行われる、ナノ粒子を分離するための処理システムを示す。
図9図1の液体サイクロンを使用して生姜汁中の微粒子を分離した結果を実証するグラフを示す。
図10図1の2つの液体サイクロンが直列に組み込まれた、ナノ粒子を分離するための処理システムを示す。
図11A図10の第1の液体サイクロンを使用して乳清中の微粒子を分離した結果を実証するグラフを示す。
図11B図10の第2の液体サイクロンを使用して、図10の第1の液体サイクロンからのオーバーフロー流体をフィードとして使用して乳清中の微粒子を分離した結果を実証するグラフを示す。
図12A】リサイクルを行うことなく、図1の液体サイクロンを使用して乳清中の微粒子を分離した結果を実証するグラフを示す。
図12B】リサイクルを行い、図1の液体サイクロンを使用して乳清中の微粒子を分離した結果を実証するグラフを示す。
図13】リサイクルを行い、図1の液体サイクロンを使用して乳清中の微粒子を分離した結果を実証する更なるグラフを示す。
図14A】乳清を含む、図1の液体サイクロンの供給流のTEM画像を示す。
図14B】乳清を含む、図1の液体サイクロンのオーバーフロー流のTEM画像を示す。
図15A】生姜汁を含む、図1の液体サイクロンの供給流のTEM画像を示す。
図15B】生姜汁を含む、図1の液体サイクロンのオーバーフロー流のTEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態は、概して、流体中の粒子を分離するための装置及び方法に関する。具体的には、実施形態は、流体中の微粒子及びナノ粒子を分離するための小型液体サイクロンに関する。
【0026】
流体中の粒子を引き離すための従来の既知の装置では、微粒子及びナノ粒子などの粒径が小さい粒子を引き離すのに苦労する。特に、小さな粒子の引き離し用に設計された従来の液体サイクロンは層流を実現することができなかったため、粒径が小さくなるにつれて効率が低下した。以下に記載される実施形態は、流体中の微粒子及びナノ粒子の分離のための新しい液体サイクロンに関する。具体的には、記載の実施形態は、特定の幾何学形状及び動作パラメータを有する液体サイクロンに関する。一部の実施形態は、レイノルズ数の減少及び液体サイクロン内の乱流の減少を可能にする液体サイクロンに関する。一部の記載の実施形態は、かかる液体サイクロンのレイノルズ数が層流を許容しないことを示唆している過去のデータにもかかわらず、液体サイクロン内で層流が発生することを可能にし、粒子の分離の効率を向上させる。したがって、以下に記載される一部の実施形態は、従来可能であったものよりも2~3桁小さい粒子を分離することを可能にするとともに、引き離し効率を向上させる。
【0027】
図1は、流体中の粒子を分離するための液体サイクロン100を示す。粒子は、一部の実施形態では微粒子又はナノ粒子であってもよい。流体は気体又は液体を含み得る。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100は特に、流体の密度が粒子の密度よりも低い場合に流体中の粒子を分離するために使用されてもよい。
【0028】
液体サイクロン100はダブル円錐液体サイクロンであり、上側円錐部分110及び下側円錐形部分120を含むボディを有する。上側円錐部分110及び下側円錐部分120は中空な円錐台形又は切頭円錐形を有し、両者の交点において流体結合された単一のボリュームを一緒に画定する。
【0029】
上側円錐部分110は入口130及び135を含む。2つの入口130及び135が図示されているが、一部の実施形態は1つの入口のみを含み、一部の実施形態は3つ以上の入口を含み得る。図示された入口130及び135は、上側円錐部分110の上端の反対側に逆向きに配設されており、円錐部分110の上端に正接するように位置づけられている。一部の実施形態によれば、入口130及び135は、上側円錐部分110の上端の周りに不均等な間隔で配置され得る。図示されている実施形態では、入口130及び135は、入口130又は135に入る流体を、上側円錐部分110内で時計回り方向に誘導するように配置されている。一部の実施形態によれば、入口130及び135は、入口130又は135に入る流体を、上側円錐部分110内で反時計回り方向に誘導するように配置され得る。
【0030】
上側円錐部分110は、アクセプト又はオーバーフローポート140を更に含む。オーバーフローポート140は、上側円錐部分110の上面に対して垂直に配置され、粒子の出口流を、液体サイクロン100から上向きに出るように誘導するように構成されている。一部の実施形態によれば、上側円錐部分110は、上側円錐部分110の上面から上側円錐部分110の中心に向かって下方に伸びる渦ファインダ(図3に示される)を含む。渦ファインダは上向きに伸び、オーバーフローポート140となる。
【0031】
下側円錐部分120の下端は、リジェクトポート又はアンダーフローポート150を含む。アンダーフローポート150は、粒子の出口流を、液体サイクロン100から下向きに出るように誘導するように構成されている。
【0032】
動作中、液体サイクロン100は流体中の粒子を引き離すために使用され得る。具体的には、粒子を含む流体が入口130及び135に注入され得る。流体は、液体サイクロン100の上側円錐部分110に正接して入り、液体サイクロン100の垂直軸に沿った正味内向きの流れを有する循環経路を形成する。より大きく、より重く、かつ/又はより密度の高い粒子は、上側円錐部分110の壁に向かって押し出され、下側円錐部分120へと下向きに移動する。最終的に、これらの粒子は、ある割合の流体とともにアンダーフローポート150から出る。アンダーフローポート150から出る流体の割合は液体サイクロンのスプリット比によって定義され、アンダーフローポート150から出る流体のボリュームは、液体サイクロンのスプリット比及び供給(フィード)流量によって定義される。より小さく、より軽く、かつ/又はより密度の低い粒子は、液体サイクロン100の垂直軸に沿って生成される渦に向かって内側に引き寄せられ、上方に移動し、最終的に残りの流体とともにオーバーフローポート140から出る。オーバーフローポート140から出る流体の割合は液体サイクロンのスプリット比によって定義され、オーバーフローポート140から出る流体の体積は、液体サイクロンのスプリット比及び供給流量によって定義される。
【0033】
液体サイクロン100/200のスプリット比Rは、下式を使用して、アンダーフローポート150の流量Qと入口130/135の流量Qの比として定義されてもよい。
【数1】
【0034】
スプリット比は、液体サイクロン100/200の幾何学的パラメータと、入口流量、圧力、及び供給濃度を含む動作パラメータとの両方の影響を受ける。入口流量が増加すると、提出された流れの圧力エネルギーが増加する。これは液体サイクロン100/200内の空気コア又は内部渦ボリュームを膨張させ、アンダーフローポート150への流れを制限する。これにより、スプリット比が変化する。例えば、スプリット比が減少し得る。入口130/135における圧力が増加すると、圧力降下が増加する。これは液体サイクロン100/200内の空気コア又は内部渦ボリュームを膨張させ、アンダーフローポート150への流れを制限する。これもスプリット比を変化させる。例えば、スプリット比が減少し得る。供給濃度が変更される場合、それに比例してアンダーフローポート150への流れも変化し得る。これにより、スプリット比に対応する変化が生じる。例えば、供給濃度が増加すると、アンダーフローポート150への流量も増加し、結果としてスプリット比が増加する。
【0035】
一部の実施形態によれば、液体サイクロン100は、微粒子をアンダーフローポート150から排出し、ナノ粒子をオーバーフローポート140から排出するように設計されてもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100は、所定の閾値粒径より大きい粒子をアンダーフローポート150から排出し、所定の閾値粒径より小さい粒子をオーバーフローポート140から排出するように設計されてもよい。一部の実施形態では、所定の粒径は5μm以下であってもよい。一部の実施形態では、所定の粒径は1μmであってもよい。所定の閾値サイズは、液体サイクロンのカットサイズと称される場合があり、液体サイクロンの幾何学的形状、特に液体サイクロンのボディの直径を変更することによって広範に設定され得る。概して、直径が小さいほどカットサイズが小さくなる。カットサイズは、50%の効率でオーバーフローポート140によって排出される粒径として定義され得る。一部の実施形態によれば、直径2.5mmの液体サイクロンは5μmのカットサイズを有し得る。
【0036】
一部の実施形態によれば、液体サイクロン100は、所定の閾値密度よりも高密度の粒子をアンダーフローポート150から排出し、所定の閾値密度よりも低密度の粒子をオーバーフローポート140から排出するように設計されてもよい。
【0037】
液体サイクロン100内の小さい粒子及び大きい粒子の引き離しは、遠心力場における固体粒子の終末沈降速度に基づく。具体的には、粒子は、粒子の粒径、形状、及び密度に基づいて、加速する遠心力によって引き離しされる。抗力により、沈降がより遅い粒子が、液体サイクロン100内に形成された内部渦に沿って低圧ゾーンに移動される。渦は、沈降がより遅い粒子を(図3に示される)渦ファインダを通してオーバーフローポート140へと上方に運ぶ。
【0038】
図7は、液体サイクロン100内を移動する粒子710の図式的表現を示す。液体サイクロン100は、入口130、オーバーフローポート140、及びアンダーフローポート150を含む。粒子710は直径D、密度ρ、及び質量mを有する。液体サイクロン100内を移動する粒子710は軸速度V、接線速度V、及び径方向速度Vを有する。粒子710が径方向距離rにおいて液体サイクロン100内を移動しているとき、粒子710には3つの力が作用している。これらの3つの力は、接線速度vに起因する径方向外向きの遠心力F、流体ρと粒子ρとの密度差に起因する径方向内向きの浮力F、及び、流体粘度μに起因する、粒子の運動に常に対向するように粒子の径方向速度vの方向に応じて内向き又は外向きの方向を有する抗力Fである。抗力は粒子の形状及び粒径、並びに流れの乱流強度に依存する。これらの力のそれぞれを記述する式を以下に示す。
【数2】
【0039】
定常状態での動作では、粒子にかかる正味の力はゼロになる。
+F+F=0
【0040】
直径がDの液体サイクロン100の場合、これは、引き離し可能な粒子の粒径を下式のようにして計算できることを意味する。
【数3】
【0041】
上式からわかるように、粒子ρの密度と流体ρの密度との差が大きいほど、液体サイクロン100は粒子を効率的に引き離すことができる。
【0042】
図2は、一部の実施形態に係る代替の液体サイクロン200を示す。液体サイクロン200は、下側円錐部分120のみを含むシングル円錐液体サイクロンである。上側円錐部分の代わりに、液体サイクロン200は上側円筒部分210を含む。上側円筒部分210及び下側円錐部分120はともに中空であり、両者の交点において流体結合された単一のボリュームを一緒に画定する。
【0043】
上記の点を除き、液体サイクロン200は液体サイクロン100と同一であってもよく、上側円筒部分210は入口130及び135、並びにオーバーフローポート140を含み、下側円錐部分120はアンダーフローポート150を含む。
【0044】
液体サイクロン100/200は可動部を有さないため、その動作は2つの主要なパラメータ、すなわち、入口130/135に注入される流体の供給流の特性、及び液体サイクロン100/200の特定の具体的形状に依存する。供給流の特性は、流体の密度及び粘度、流体中の粒子の粒径及び密度、並びに流体中の粒子の濃度など、所与の流体の定数の物理化学的特性を含む可能性がある。供給流の特性はまた、流体の速度又は流量、及びアンダーフローのリサイクル率などの変数を含み得る。
【0045】
液体サイクロン100/200の幾何学形状の説明を可能にするために、垂直軸310を有する液体サイクロン100/200の寸法に符号が付されている図3が提供される。図1及び図2に関して上記したように、液体サイクロン100/200は上側部分110/210及び下側部分120を有する。上側部分110/120は、少なくとも1つの入口130/135及びオーバーフローポート140を含む。上側部分110/120はまた、オーバーフローポート140に接続された渦ファインダ320を備える。下側部分120はアンダーフローポート150を含む。
【0046】
入口130/135の直径には「a」という符号が付されている。入口130/135の直径は、一部の実施形態では0.25~0.71mmであってもよい。一部の実施形態によれば、入口130/135の直径は0.25~0.6mmであり得る。一部の実施形態によれば、入口130/135の直径は約0.35mmであり得る。
【0047】
渦ファインダ320及びオーバーフローポート140の直径にはDという符号が付されている。一部の実施形態では、渦ファインダ320及びオーバーフローポート140の直径は0.075~0.75mmであってもよい。一部の実施形態によれば、渦ファインダ320及びオーバーフローポート140の直径は0.075~0.6mmであってもよい。一部の実施形態によれば、渦ファインダ320及びオーバーフローポート140の直径は約0.45mmであってもよい。
【0048】
渦ファインダ320の長さにはSという符号が付されている。一部の実施形態では、渦ファインダ320の長さは0.5~1.67mmであってもよい。一部の実施形態によれば、渦ファインダ320の長さは0.5~1.5mmであり得る。一部の実施形態によれば、渦ファインダ320の長さは約0.84mmであり得る。
【0049】
上側部分110/210における液体サイクロン100/200のボディの直径には、Dという符号が付されている。一部の実施形態では、液体サイクロン100/200のボディの直径は0.5~5mmであってもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200のボディの直径は0.5~4mmであってもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200のボディの直径は約2.5mmであってもよい。
【0050】
液体サイクロンがダブル液体サイクロン100である場合、上側部分110における液体サイクロン100のボディの直径は、円錐の上面の直径及び底面の直径という2つの測定値として与えられ得る。一部の実施形態によれば、円錐の上面の直径は約3.5mmであってもよく、円錐の底面の直径は約2.5mmであってもよい。
【0051】
上側部分110/120の長さには、Hという符号が付されている。一部の実施形態では、上側部分110/120の長さは1.0~3.6mmであってもよい。一部の実施形態によれば、上側部分110/120の長さは1.0~3mmであってもよい。一部の実施形態によれば、上側部分110/120の長さは約1.8mmであり得る。
【0052】
軸310からの下側部分120の円錐表面の径方向距離には、Dという符号が付されている。Dの値は液体サイクロン100/200の形状に依存し、部分120の上部から部分120の下部まで変化する。
【0053】
アンダーフローポート150の直径には、Dという符号が付されている。一部の実施形態によれば、アンダーフローポート150の直径は0.05~1.5mmであり得る。一部の実施形態によれば、アンダーフローポート150の直径は0.05~0.6mmであり得る。一部の実施形態によれば、アンダーフローポート150の直径は約0.5mmであり得る。
【0054】
下側部分120の長さには、Hという符号が付されている。一部の実施形態では、下側部分120の長さは2~98.6mmであってもよい。一部の実施形態によれば、下側部分120の長さは2~37mmであってもよい。一部の実施形態によれば、下側部分120の長さは約19.3mmであり得る。
【0055】
アンダーフローポート150の長さを含む下側部分120の全長には、Hという符号が付されている。一部の実施形態によれば、アンダーフローポート150の長さは約1mmであり得る。一部の実施形態では、アンダーフローポート150の長さは0.5mm~2mmであってもよい。したがって、下側部分120の長さは、一部の実施形態では、3~99.6mmであってもよい。一部の実施形態によれば、アンダーフローポート150の長さを含む下側部分120の全長は、約20.3mmであってもよい。
【0056】
上記の各パラメータの値に、液体サイクロン100/200の幾何学的形状及び供給流の特性に関連する更なるパラメータの値を加えた表が以下に提供されている。具体的には、この表は、様々なパラメータのそれぞれの動作範囲及び好ましい値を示している。
【表1】
【0057】
供給流量及び入口速度は相互に依存する可能性があり、供給流量は入口速度に基づいて変化し得る。一部の実施形態によれば、供給流量は、入口の面積に入口速度を乗じたものであってもよい。一部の実施形態によれば、供給流量は3~66mL/秒であってもよい。一部の実施形態によれば、供給流量は10~66mL/秒であってもよい。一部の実施形態では、供給流量は約66mL/秒であり得る。一部の実施形態では、入口速度は8~40m/秒であってもよい。一部の実施形態によれば、入口速度は9.6~16.25m/秒であり得る。一部の実施形態によれば、入口速度は約9.6m/秒であり得る。
【0058】
液体サイクロン内の流量及び入口速度の増加は、概して、引き離し効率を変化させ、アンダーフローから排出される流体の量を増加させる。引き離し効率は、低流量範囲において最初は流量の増加とともに増加するが、流量が更に増加すると、液体サイクロン内の流体の乱れが増すことに起因して減少する。具体的には、高流量で入口速度を増加させると、液体サイクロン内の流体のレイノルズ数及び接線速度が増加し、結果として乱流がより強くなり、高流量レジームでの引き離し効率が低下する。対照的に、低流量で入口速度を増加させると接線速度が高くなり、これは遠心力を増加させ、したがって引き離し効率を向上させる。
【0059】
しかし、液体サイクロン100/200は、上記のような幾何学形状に基づいて、液体サイクロン100/200のボディ内に層流領域を作り出すことによって、より高い流量を可能にする。
【0060】
円錐形状(n)は、下側部分120の凸状又は凹状のレベルを表す値である。具体的には、円錐形状値1は、凸状又は凹状を呈さない平坦な壁を有する下側部分120に対応し、1未満の円錐形状値は、凹状壁を有する下側部分120に対応し、1を超える円錐形状値は、凸状壁を有する下側部分120に対応する。
【0061】
円錐形状値は以下の式に従って求められ得る。
【数4】
【0062】
ここで、Lは、オーバーフロー140及びアンダーフロー150を含む液体サイクロン100/200の全長である。
【0063】
一部の実施形態では、円錐形状は0.6~1.4であってもよい。一部の実施形態によれば、円錐形状は1未満であってもよい。一部の実施形態によれば、円錐形状は0.6~1であり得る。一部の実施形態では、円錐形状は約0.6であり得る。
【0064】
一部の実施形態では、液体サイクロン100/200の内部の表面粗さは0~10μmであってもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200の内部の表面粗さは約3μmであり得る。表面粗さは、使用される製造方法及び材料に依存し得る。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200は3D印刷によって製造されてもよく、これは表面粗さに影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、液体サイクロン100/200は、ドリリング又は溶接によって製造されてもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200は金属又はプラスチックで製造されてもよい。例えば、液体サイクロン100/200は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)プラスチック、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド若しくはナイロン、ガラス充填ポリアミド、エポキシ樹脂などのステレオリソグラフィ材料、チタン、ステンレス鋼、フォトポリマー、ポリカーボネート、セラミックス、高衝撃性ポリスチレン、又は、例えばポリエチレングリコール若しくはポリビニルアルコールなどの合成ポリマーから製造されてもよい。液体サイクロン100/200が生体試料を処理するために使用される場合、液体サイクロン100/200は、ガンマ線によって滅菌された、又はガンマ線によって滅菌されるのに適した材料から製造されてもよい。材料は、生体試料の取り扱いに特に適したものであってもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200は、医薬品適正製造基準(GMP)の規制に従う材料から製造され得る。
【0065】
円錐の数は、液体サイクロン100/200の上側部分110/210が円錐形状であるかどうかを表す。円錐の数が1である場合、上側部分は円筒形であり、図2に示されるように、液体サイクロン200の上側部分210に対応する。円錐の数が2である場合、上側部分は円錐形であり、図1に示されるように、液体サイクロン100の上側部分110に対応する。
【0066】
液体サイクロン100/200の動作に影響を与える更なるファクタは、入口130/135の形状である。図4A及び図4Bは、2つの例示的な入口形状を示す。図4Aは、上側部分210及びオーバーフローポート140を有する液体サイクロン200を示す。上側部分210は円形入口410を画定する。図4Bは、上側部分110及びオーバーフローポート140を有する液体サイクロン100を示す。上側部分110は台形入口420を画定する。実際には、液体サイクロン100又は200のいずれも、円形又は台形入口ポート130/135のいずれかを有するように製造され得る。
【0067】
一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200の動作は、アンダーフローポート150から出る流体がリサイクルされる場合に改善され得る。図5及び図6は、液体サイクロン100/200が組み込まれた例示的なシステムを示す。図5は、リサイクルを組み込んでいないシステム500を示し、図6は、リサイクルを組み込んでいるシステム600を示す。
【0068】
図5は、液体サイクロン100/200が組み込まれた、粒子を分離するための処理システム500を示す。処理システム500は、分離すべき微粒子又はナノ粒子などの粒子を有する流体を収容するための供給タンク510を含む。
【0069】
処理システム500は、0℃~50℃の温度で動作するように構成されてもよい。一部の実施形態によれば、処理システム500は、10~30℃の温度で動作するように構成されてもよい。一部の実施形態によれば、処理システム500は約25℃の温度で動作するように構成されてもよい。流体の粘度は高温で減少し、粘度が低い流体はより高い引き離し効率をもたらすことから、一部の実施形態によれば、システム500は、処理される流体又は試料の損傷又は変性を引き起こすことなく、可能な限り高い温度で動作するように構成され得る。
【0070】
一部の実施形態では、流体は、ギアポンプであり得るポンプ530によって、供給タンク510から液体サイクロン100/200の入口130/135内にチューブ520を通して引き込まれる。ポンプ530は、流体の移動を補助するために、機械的作用によって流体に圧力を加えるように構成されてもよい。
【0071】
流体は、ポンプ530から液体サイクロン100/200の入口130/135内に送られる。より小さく、より軽く、かつ/又はより密度の低い粒子は、回収及び更なる処理のために分離され、オーバーフローポート140から出てチューブ550内に入り、残りの粒子及び流体は、アンダーフローポート150から出てチューブ560内に入った後、廃棄される。例えば、一部の実施形態によれば、ナノ粒子は分離されて、オーバーフローポート140から出る一方、微粒子はアンダーフローポート150から出得る。一部の実施形態によれば、アンダーフローポート150から出る粒子及び流体を廃棄する代わりに、更なる処理のために保持してもよい。システム500は連続フローシステムとして動作してもよい。
【0072】
図6は、液体サイクロン100/200が組み込まれた、粒子を分離するための代替の処理システム600を示す。処理システム600も、分離すべき微粒子又はナノ粒子などの粒子を有する流体を収容するための供給タンク510を含む。流体は、ポンプ530によって供給タンク510から液体サイクロン100/200の入口130/135内にチューブ520を通して引き込まれる。より小さく、より軽く、かつ/又はより密度の低い粒子は、回収及び更なる処理のために分離され、オーバーフローポート140から出てチューブ550内に入る一方、残りの粒子及び流体はアンダーフローポート150から放出される。しかし、廃棄の代わりに、アンダーフローポート150は、残りの粒子及び流体を供給タンク510内に戻るように運ぶチューブ610に接続されており、少なくともある割合の粒子及び流体がシステム600を通して混合及びリサイクルされる。したがって、流体中に残る小さくて軽い粒子を次のサイクルで分離することができる。リサイクルされる残りの粒子及び流体の割合は、リサイクル比に基づいて変化し得る。リサイクルされる流体の量を増加させることにより、オーバーフローから取り出される流体は、リサイクル比の倍率で減少する。
【0073】
液体サイクロン100/200のリサイクル比を、図8を参照しながら更に詳細に説明する。図8に示されるように、オーバーフローポート140から出る流体の流量はQとして定義され、入口130/135の流量はQとして定義される。アンダーフローポート150から出る流体の流量はQとして定義され、リサイクル流Q及び次段階流Qnextという2つの流れに分割され得る。リサイクル比Rは、リサイクル流Qを介してリサイクルされて入口130/135に戻るアンダーフローポート150から出る流体の割合として定義される。
【数5】
【0074】
システムの全体的な質量バランスは以下の式によって定義される。
+Q=Q+Qnext
【0075】
図8の点1を中心とした質量バランスは以下の式によって定義される。
=Q+Qnext
【0076】
したがって、リサイクル比はQnextにのみ影響を及ぼし得る。Q、及び液体サイクロン100/200のスプリット比は影響を受けない。
【0077】
システム600などのシステムを使用したリサイクルの効果が図12A及び図12Bに示されている。
【0078】
図12Aは、エクソソーム源からミクロンサイズの粒子を分離するために、液体サイクロン100を有し、アンダーフローリサイクルが行われないシステム500などのシステムを使用した結果を示すグラフ1200を示す。具体的には、図12Aは、乳清を処理するときの液体サイクロン100のフィード、アンダーフロー、及びオーバーフロー内で特定される様々な粒径の粒子のボリュームを示す。
【0079】
図12Aに示される実験のために使用された液体サイクロン100は、ボディ直径(D)が2.5mm、円錐の数が2、円錐形状(n)が1、下側部分の長さ(H)が19.3mm、入口直径(a)が0.35mm、オーバーフロー直径(D)が0.45mm、渦ファインダの長さ(S)が0.84mm、アンダーフロー直径(D)が0.5mm、上側部分の長さ(H)が1.8mmである。
【0080】
処理中、実際の供給流量は132.2mL/分と測定され、各入口130/135における流量が66.1mL/分であった。
【0081】
フィード、オーバーフロー、及びアンダーフローの流体に対して動的光散乱法を実行し、存在する粒子の粒径を求めた。この分析の結果を図12Aのグラフ1200に示す。処理後、初期フィードボリュームのうちのオーバーフロー流体のボリューム寄与は33.5%であり、初期フィードボリュームのうちのアンダーフローボリュームのボリューム寄与は、残りの66.5%を占めた。
【0082】
グラフ1200は、特定された粒子の粒径又は直径をnm単位で示すx軸1205と、各流体中の特定された粒子のパーセントとしてボリュームを示すy軸1210とを有する。線1215は、供給流体内で特定された粒子を表し、線1220は、オーバーフロー流体内で特定された粒子を表し、線1225は、アンダーフロー流体内で特定された粒子を表す。矢印1230は、オーバーフロー内で特定された粒子のカットオフサイズを示し、約5μmである。
【0083】
対照的に、図12Bは、エクソソーム源からミクロンサイズの粒子を分離するために、液体サイクロン100を有し、アンダーフローリサイクルが行われるシステム600などのシステムを使用した結果を示すグラフ1250を示す。具体的には、図12Bは、乳清を処理するときの液体サイクロン100のフィード、アンダーフロー、及びオーバーフロー内で特定される様々な粒径の粒子のボリュームを示す。
【0084】
図12Bに示される実験のために使用された液体サイクロン100は、ボディ直径(D)が2.5mm、円錐の数が2、円錐形状(n)が1、下側部分の長さ(H)が19.3mm、入口直径(a)が0.35mm、オーバーフロー直径(D)が0.45mm、渦ファインダの長さ(S)が0.84mm、アンダーフロー直径(D)が0.5mm、上側部分の長さ(H)が1.8mmである。
【0085】
処理中、実際の供給流量は132.2mL/分と測定され、各入口130/135における流量が66.1mL/分であった。
【0086】
フィード、オーバーフロー、及びアンダーフローの流体に対して動的光散乱法を実行し、存在する粒子の粒径を求めた。この分析の結果を図12Bのグラフ1250に示す。処理後、初期フィードボリュームのうちのオーバーフロー流体のボリューム寄与は32.5%であり、初期フィードボリュームのうちのアンダーフローボリュームのボリューム寄与は、残りの67.5%を占めた。
【0087】
グラフ1250は、特定された粒子の粒径又は直径をnm単位で示すx軸1255と、各流体中の特定された粒子のパーセントとしてボリュームを示すy軸1260とを有する。線1265は、供給流体内で特定された粒子を表し、線1270は、オーバーフロー流体内で特定された粒子を表し、線1275は、アンダーフロー流体内で特定された粒子を表す。矢印1280は、オーバーフロー内で特定された粒子のカットオフサイズを示し、約2μmである。
【0088】
グラフ1200とグラフ1250との比較から明らかなように、システム600などのシステムを使用したリサイクルは、液体サイクロン100によってもたらされる引き離しを改善する。
【0089】
リサイクルとともに液体サイクロン100を使用する更なる例を図13に示す。図13は、エクソソーム源からミクロンサイズの粒子を分離するために、液体サイクロン100を有し、アンダーフローリサイクルが行われるシステム600などのシステムを使用した結果を示すグラフ1300を示す。具体的には、図13は、乳清を処理するときの液体サイクロン100のフィード、アンダーフロー、及びオーバーフロー内で特定される様々な粒径の粒子のボリュームを示す。
【0090】
処理中、実際の供給流量は150mL/分と測定され、各入口130/135における流量が75mL/分であった。4分間の処理時間で、乳清をアンダーフローのリサイクルを使用して処理した。
【0091】
フィード、オーバーフロー、及びアンダーフローの流体に対して動的光散乱法を実行し、存在する粒子の粒径を求めた。この分析の結果を図13のグラフ1300に示す。処理後、初期フィードボリュームのうちのオーバーフロー流体のボリューム寄与は58.38%であり、初期フィードボリュームのうちのアンダーフローボリュームのボリューム寄与は、残りの41.61%を占めた。
【0092】
グラフ1300は、特定された粒子の粒径又は直径をnm単位で示すx軸1305と、各流体中の特定された粒子のパーセントとしてボリュームを示すy軸1310とを有する。線1315は、供給流体内で特定された粒子を表し、線1320は、オーバーフロー流体内で特定された粒子を表し、線1325は、アンダーフロー流体内で特定された粒子を表す。
【0093】
グラフから明らかなように、液体サイクロン100を使用して、5μmより大きい大粒子を良好に分離することができた。これらの結果は、リサイクルとともに使用した場合、液体サイクロン100が、直径5μmを超える粒子を良好に分離するために使用され得ることを示す。
【0094】
グラフ1300の結果はまた、図13の実験で使用された液体サイクロンの供給流及びオーバーフロー流の透過電子顕微鏡(TEM)画像をそれぞれ示す図14A及び図14Bによって実証される。
【0095】
図14Aは、200nmに拡大された、乳清を含む供給流のTEM画像1400を示す。様々な粒径分布の粒子1410を画像内で観察することができる。
【0096】
図14Bは、100nmに拡大された、オーバーフロー流のTEM画像1450を示す。約40~180nmの範囲内のエクソソーム1460を画像内で観察することができる。この画像は、オーバーフロー流内のエクソソーム1460の存在を証明し、液体サイクロン100を使用して、乳清からエクソソームを分離することができることを証明する。
【0097】
液体サイクロン100の動作はまた、様々な流体から粒子を分離又は精製するために使用され得る。
【0098】
一部の実施形態によれば、流体は、生体流体若しくは生体流体の一部、又は加工食品などの生体材料を含有する流体を含んでもよい。そのような流体の例としては、乳、乳清、植物抽出物、血清、血液、血漿、ビールなどの発酵製品、果汁、果肉、唾液、涙、精子、尿、糞便、脳脊髄液、間質液、滑液、骨髄から分離された流体、呼吸器、腸管、若しくは尿生殖路由来の粘液又は流体、廃水、細胞抽出物、細胞又は組織抽出物、細胞外小胞(例えば、エクソソーム)などの細胞から分泌された粒子を含む(又は細胞及び粒子の両方が分泌される)培地又は同様のもの、ウイルス、タンパク質(ワクチン産生のための抗体又はタンパク質/ペプチドなど)、及び核酸が挙げられるが、これらに限定されない。分泌又は抽出される粒子は、限定されないが、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、鳥類細胞、藻類細胞、細菌細胞、又は真菌細胞などの任意の種類の細胞から得ることができる。
【0099】
一部の実施形態によれば、流体は、水、空気、グリセロール、排気ガス、石油化学物質、化学溶液、油水エマルション、デンプン溶液、エタノール、ディーゼル、及び他の流体などの非生体流体を含み得る。これは、例えば食品加工業、鉱業、及び廃水処理業などの産業で有用であり得る。
【0100】
一部の実施形態によれば、流体は、1.5g/cc未満の密度を有する。一部の実施形態によれば、流体は、1.3g/cc未満の密度を有する。
【0101】
一部の実施形態では、粒子は、リポソーム、細胞(哺乳類細胞、微生物細胞、又はHeLa細胞など)、分泌された細胞外小胞(エクソソームなど)、ウイルス(哺乳類ウイルスなど)、ウイルス粒子(又はビリオン)、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、タンパク質(ワクチン産生のための抗体若しくはタンパク質/ペプチド、又は乳清など)、タンパク質凝集体、核酸、核酸凝集体、DNA、RNA、バイオ医薬品粒子、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。分離される細胞は動物細胞であってもよいが、分離される細胞は、藻類細胞、細菌細胞(E.coliなど)、又は真菌細胞(酵母細胞など)などのより小さい細胞であってもよい。粒子はまた、油粒子、グリース粒子、デンプン粒子、シリカ粒子、PMMA粒子、ポリスチレンラテックス(PSL)粒子、マイクロビーズ粒子、及びスラッジ粒子のうちの1つ以上であってもよい。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200は、一部の粒子タイプを分離するが、他の粒子タイプは分離しないように構成され得る。例えば、一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200は、エクソソーム粒子を分離するが、オレオソーム粒子は分離しないように構成され得る。
【0102】
一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200を使用して分離される粒子の粒径は、40μm未満、20μm未満、10μm未満、5μm未満、又は1μm未満である。
【0103】
一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200を使用して分離される粒子は、0.5~2.5g/ccの密度を有する。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200を使用して分離される粒子は、0.7~2.0g/ccの密度を有する。一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200を使用して分離される粒子は、1.0~2.0g/ccの密度を有する。
【0104】
一部の実施形態によれば、流体の密度が粒子の密度よりも低い場合、粒子が液体サイクロン100/200を使用して流体から分離され得る。
【0105】
図9には、エクソソーム源からミクロンサイズの粒子を分離するために液体サイクロン100を使用した結果を示すグラフ900が示されている。図9に示される実験のために使用された液体サイクロン100は、ボディ直径(D)が2.5mm、円錐の数が2、円錐形状(n)が1、下側部分の長さ(H)が19.3mm、入口直径(a)が0.35mm、オーバーフロー直径(D)が0.45mm、渦ファインダの長さ(S)が0.84mm、アンダーフロー直径(D)が0.5mm、上側部分の長さ(H)が1.8mmである。
【0106】
具体的には、図9は、生姜汁を処理するときの液体サイクロン100のフィード、アンダーフロー、及びオーバーフロー内で特定される様々な粒径の粒子のボリュームを示す。
【0107】
グラフ900に示される結果を生成するために使用された生姜汁は、一定量の生姜から出発して取得され、生姜の皮を剥き、表面上の汚れ又は混入物を除去するために洗浄した。皮を剥いた生姜を、pH8の10mMリン酸緩衝液に30分間浸した。次に、生姜を細かくすりおろし、汁を抽出した。その後、汁をふるいに通し、残りの固形物及び繊維を濾し取った。濾された汁は、処理システム500などの処理システム内の液体サイクロン100の供給液体として使用された。実際の供給流量は240mL/分と測定され、各入口130/135における流量が120mL/分であった。生姜汁を2分間の処理時間で処理した。
【0108】
フィード、オーバーフロー、及びアンダーフローの流体に対して動的光散乱法を実行し、存在する粒子の粒径を求めた。この分析の結果を図9のグラフ900に示す。処理後、初期フィードボリュームのうちのオーバーフロー流体のボリューム寄与は37.9%であり、初期フィードボリュームのうちのアンダーフローボリュームのボリューム寄与は、残りの62.1%を占めた。
【0109】
グラフ900は、特定された粒子の粒径又は直径をnm単位で示すx軸910と、各流体中の特定された粒子のパーセントとしてボリュームを示すy軸920とを有する。線930は、供給流体内で特定された粒子を表し、線940は、オーバーフロー流体内で特定された粒子を表し、線950は、アンダーフロー流体内で特定された粒子を表す。
【0110】
グラフから明らかなように、供給流体から特定された粒子のボリュームの大半の粒径は3500~7500nmであり、より少量は300~1500nmであり、一層少ないボリュームが100~200nmであった。オーバーフロー流体では、特定された粒子のほとんど全てが200nm~450nmであった。アンダーフロー流体では、4000~7500nmの粒径の粒子、及び250~1500の粒径の粒子のボリュームの割合が等しく、80~250nmの粒径の粒子がいくらか特定された。
【0111】
これらの結果は、液体サイクロン100を使用して、直径1μmより大きい粒子を分離することができることを示す。
【0112】
グラフ900の結果はまた、図9の実験で使用された液体サイクロンの供給流及びオーバーフロー流の透過電子顕微鏡(TEM)画像をそれぞれ示す図15A及び図15Bによって実証される。
【0113】
図15Aは、200nmに拡大された、生姜汁を含む供給流のTEM画像1500を示す。様々な粒径分布の粒子1510を画像内で観察することができる。
【0114】
図15Bは、100nmに拡大された、液体サイクロン100からのオーバーフロー流のTEM画像1550を示す。約37~91nmの範囲内のエクソソーム1560を画像内で観察することができる。挿入画像1570は、50nmまで更に拡大されたエクソソーム1580を示す。これらの画像は、オーバーフロー流内のエクソソーム1560/1580の存在を証明し、液体サイクロン100を使用して、生姜汁からエクソソームを分離することができることを証明する。
【0115】
一部の実施形態によれば、液体サイクロン100/200は、1つ以上の追加の液体サイクロン100/200と直列に動作してもよく、これにより生成される引き離しが更に改善される可能性がある。
【0116】
図10は、2つの液体サイクロン100/200が直列に組み込まれた、粒子を分離するための処理システム1000を示す。具体的には、システム1000は、第1の液体サイクロン1010及び第2の液体サイクロン1020を含む。
【0117】
図5を参照して上記したように、処理システム1000は、分離すべき微粒子又はナノ粒子などの粒子を有する流体を収容するための供給タンク510を更に含む。処理システム500と同様に、処理システム1000は、0℃~50℃の温度で動作するように構成されてもよい。一部の実施形態によれば、処理システム1000は、10~30℃の温度で動作するように構成されてもよい。一部の実施形態によれば、処理システム1000は約25℃の温度で動作するように構成されてもよい。流体の粘度は高温で減少し、粘度が低い流体はより高い引き離し効率をもたらすことから、一部の実施形態によれば、システム1000は、処理される流体又は試料の損傷又は変性を引き起こすことなく、可能な限り高い温度で動作するように構成され得る。
【0118】
流体は、図5を参照して上記したポンプ530などのポンプであり得るポンプ1030によって、供給タンク510から第1の液体サイクロン1010の入口130/135内にチューブ520を通して引き込まれる。
【0119】
流体は、ポンプ1030から液体サイクロン1010の入口130/135内に送られる。より小さく、より軽く、かつ/又はより密度の低い粒子は、回収及び更なる処理のために分離され、オーバーフローポート140から出てチューブ550内に、次いでオーバーフロータンク1040内に入り、残りの大きな粒子及び流体は、アンダーフローポート150から出てアンダーフロー回収タンク1050内に放出される。
【0120】
オーバーフロータンク1040からの流体は更に処理され、図5を参照して上記したポンプ530などのポンプであり得る第2のポンプ1060によって、オーバーフロータンク1040から第2の液体サイクロン1020の入口130/135内にチューブ1045を通して引き込まれる。
【0121】
流体は、ポンプ1060から液体サイクロン1020の入口130/135内に送られる。より小さく、より軽く、かつ/又はより密度の低い粒子は、回収及び更なる処理のために分離され、オーバーフローポート140から出てチューブ1065内に入り、残りの粒子及び流体は、アンダーフローポート150から出て第2のアンダーフロー回収タンク1080内に入る。
【0122】
図11A及び図11Bは、システム1000を使用してエクソソーム源から粒子を分離した結果を示す。具体的には、図11A及び図11Bは、乳清を処理するときの液体サイクロン1010及び1020のフィード、アンダーフロー、及びオーバーフロー内で特定される様々な粒径の粒子のボリュームを示しており、粒子のボリュームは動的光散乱法を使用して求められている。
【0123】
図11A及び図11Bに示す実験の場合、液体サイクロン1010及び液体サイクロン1020はいずれも、液体サイクロン100に関して上述したように、ダブル円錐液体サイクロンであり、実質的に同一の形状及びサイズを有した。液体サイクロン1010及び1020はいずれも、ボディ直径(D)が2.5mm、円錐の数が2、円錐形状(n)が1、下側部分の長さ(H)が19.3mm、入口直径(a)が0.35mm、オーバーフロー直径(D)が0.45mm、渦ファインダの長さ(S)が0.84mm、アンダーフロー直径(D)が0.5mm、上側部分の長さ(H)が1.8mmである。
【0124】
図11Aは、処理システム1000などの処理システム内で第1の液体サイクロン1010を使用して乳清を処理した後の結果を示すグラフ1100を示す。ポンプ1030によってもたらされるポンプ流量は150mL/分に設定され、実際の流量は合計で120mL/分、又は各入口130/135で60mL/分と測定された。
【0125】
処理後、初期フィードボリュームのうちのオーバーフロー流体のボリューム寄与は57%であり、初期フィードボリュームのうちのアンダーフローボリュームのボリューム寄与は、残りの43%を占めた。
【0126】
グラフ1100は、特定された粒子の粒径又は直径をnm単位で示すx軸1110と、各流体中の特定された粒子のパーセントとしてボリュームを示すy軸1120とを有する。線1130は、供給流体内で特定された粒子を表し、線1140は、オーバーフロー流体内で特定された粒子を表し、線1150は、アンダーフロー流体内で特定された粒子を表す。
【0127】
グラフから明らかなように、供給流体から特定された粒子のボリュームの大半の粒径は4000~7500nmであり、より少量は400~1500nmであり、一層少ないボリュームが100~300nmであった。オーバーフロー流体では、特定された粒子の大半は350nm~1500nmであった。アンダーフロー流体では、4000~7500nmの粒径の粒子、及び350~2000の粒径の粒子のボリュームの割合が等しく、100~200nmの粒径の粒子がいくらか特定された。
【0128】
図11Bは、その後、処理システム1000などの処理システム内の第2の液体サイクロン1020を用いて、液体サイクロン1010のオーバーフロー流体から出力された乳清液を処理した後の結果を示すグラフ1160を示す。ポンプ1060によってもたらされるポンプ流量は150mL/分に設定され、実際の流量は合計で120mL/分、又は各入口130/135で60mL/分と測定された。
【0129】
処理後、初期フィードボリュームのうちのオーバーフロー流体のボリューム寄与は17.4%であり、初期フィードボリュームのうちのアンダーフローボリュームのボリューム寄与は22%を占めた。
【0130】
グラフ1160は、特定された粒子の粒径又は直径をnm単位で示すx軸1165と、各流体中の特定された粒子のパーセントとしてボリュームを示すy軸1170とを有する。線1175は、供給流体内で特定された粒子を表し、線1180は、オーバーフロー流体内で特定された粒子を表し、線1185は、アンダーフロー流体内で特定された粒子を表す。
【0131】
グラフから明らかなように、供給流体から特定された粒子のボリュームの大半の粒径は300~2000nmであり、より少量が100~200nmであった。オーバーフロー流体では、特定された粒子の大半は150nm~1100nmであり、より少量が70~150nmであった。アンダーフロー流体では、特定された粒子の大半は150nm~2000nmであり、より少量が70~150nmであった。
【0132】
グラフ1100と1160との比較に基づいて明らかなように、オーバーフロー流体を2回処理するときには更なる粒子を分離することができたため、図10に示すように2つの液体サイクロン100を直列で使用することで粒子分離が改善された。
【0133】
当業者は、本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多くの変更及び/又は改変がなされ得ることを理解されるであろう。したがって、上記実施形態はあらゆる点で例示的であり、制限的ではないと見なされるべきである。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
【国際調査報告】