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特表2023-528030耐久性を高めた炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】耐久性を高めた炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20230626BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230626BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20230626BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C04B40/02
C04B28/02
C04B18/14 F
B28B11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573394
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 CA2021050533
(87)【国際公開番号】W WO2021243441
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,037
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520431166
【氏名又は名称】カービクリート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】フチェン チー
(72)【発明者】
【氏名】メールダッド マホーティアン
(72)【発明者】
【氏名】カルメン ホッジ
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA01
4G055BA02
4G112RA02
(57)【要約】
炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む混合物を得るステップと、混合物を成形中間体に成形するステップと、成形中間体を脱型して脱型中間体を得るステップであって、脱型中間体が第1の水対結合材比を有する、ステップと、脱型中間体を調整して、脱型中間体の第1の水対結合材比よりも小さい第2の水対結合材比を有する調整物品を提供するステップと、調整物品の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿し、それによって調整物品の重量を増加させ、保湿製品を提供するステップであって、保湿製品の第1の部分の第3の水対結合材比が、保湿製品の残りの部分の第4の水対結合材比よりも大きい、ステップと、保湿製品を二酸化炭素で養生して、炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む混合物を得るステップと、
前記混合物を成形中間体に成形するステップと、
前記成形中間体を脱型して脱型中間体を得るステップであって、前記脱型中間体が第1の水対結合材比を有する、ステップと、
前記脱型中間体を調整して、前記脱型中間体の前記第1の水対結合材比よりも小さい第2の水対結合材比を有する調整物品を提供するステップと、
前記調整物品の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿し、それによって前記調整物品の重量を増加させ、保湿製品を提供するステップであって、前記保湿製品の第1の部分の第3の水対結合材比が、前記保湿製品の残りの部分の第4の水対結合材比よりも大きい、ステップと、
前記保湿製品を二酸化炭素で養生して、前記炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの表面を保湿するステップは、
前記少なくとも1つの表面の一部又は全体を水含有液体に浸漬するステップ、
前記少なくとも1つの表面に前記水性媒体を噴霧するステップ、又は
前記少なくとも1つの表面にローラー装置で前記水性媒体を塗布するステップ、から選択される塗布方法を用いて前記水性媒体を塗布するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調整物品の前記少なくとも1つの表面を保湿するステップは、前記調整物品の重量が少なくとも10g/m増加するまで、前記少なくとも1つの表面を保湿するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性媒体を塗布するステップは、前記少なくとも1つの表面上に水、水性溶液及び/又は水性スラリーを塗布するステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水性媒体を塗布するステップは、15~25℃の前記水性媒体を塗布するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脱型中間体を調整するステップは、前記脱型中間体の当初含水率の20重量%~70重量%が除去されるまで、前記脱型中間体を調整するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物を得るステップは、
乾燥部と液体部とを得るステップであって、前記乾燥部が少なくとも1つの骨材材料と少なくとも1つの結合材料とを有し、前記液体部が水を有する、ステップと、
前記乾燥部と前記液体部とを混合して、前記混合物を得るステップと、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
添加剤を前記乾燥部と前記液体部に混合するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
マイクロファイバーと前記乾燥部とを混合するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を得るステップは、前記少なくとも1つの結合材料を有する前記混合物を得るステップであって、前記少なくとも1つの結合材料が非セメント質である、ステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を得るステップは、鉄鋼スラグとセメントとを含む前記少なくとも1つの結合材を有する前記混合物を得るステップであって、鉄鋼スラグとセメントの重量比が1:20~20:1である、ステップを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を得るステップは、前記骨材を有する前記混合物を得るステップであって、前記混合物の総重量に対する前記骨材の重量比が0.3~0.8である、ステップを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物を得るステップは、前記混合物の総重量に対する添加剤の重量比が0.005~0.010である前記混合物を得るステップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物を得るステップが、混和剤を含む前記混合物を得るステップを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混和剤が撥水性混和剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混和剤が、可塑剤、超可塑剤又はポリカルボン系減水剤である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物を成形するステップが、前記混合物を形成中間体に形成するステップを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物を成形するステップが、前記形成中間体を圧密して成形中間体を提供するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む基材混合物、及び少なくとも1つの第2の結合材料と、第2の骨材と、水と、を含む外層混合物を得るステップと、
前記基材混合物と前記外層混合物を、外層と基材とを有する多層成形中間体に成形するステップと、
前記多層成形中間体を脱型して脱型多層中間体を得るステップであって、前記脱型多層中間体が、前記基材に対する第1の水対結合材比と、前記外層に対する第2の水対結合材比と、を有する、ステップと、
前記脱型多層中間体を調整して、前記第1の水対結合材比と前記第2の水対結合材比とを有する、前記脱型多層中間体よりも水の量が減少した調整多層物品を提供するステップと、
前記調整多層物品の前記外層の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿して、前記外層の重量を増加させて保湿多層製品を提供するステップであって、前記保湿多層製品の前記外層の第3の水対結合材比が前記第2の水対結合材比よりも大きい、ステップと、
前記保湿多層製品を二酸化炭素で養生して、前記炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記外層の前記少なくとも1つの表面を保湿するステップは、
前記少なくとも1つの表面の一部又は全体を水含有液体に浸漬するステップ、
前記少なくとも1つの表面に前記水性媒体を噴霧するステップ、又は
ローラー装置で前記少なくとも1つの表面に前記水性媒体を塗布するステップ、から選択される塗布方法を用いて前記水性媒体を塗布するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む成形混合物から脱型中間体を得るステップであって、前記脱型中間体が第1の水対結合材比を有する、ステップと、
前記脱型中間体を調整して、前記脱型中間体の第1の水対結合材比よりも小さい第2の水対結合材比を有する調整物品を提供するステップと、
前記調整物品の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿して、前記調整物品の重量を増加させて保湿製品を提供するステップであって、前記保湿製品の第1の部分の第3の水対結合材比が、前記保湿製品の残りの部分の第4の水対結合材比よりも大きい、ステップと、
前記保湿製品を二酸化炭素で養生して、前記炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許出願(出願番号第63/034,037号、出願日2020年6月3日)の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、コンクリートパイプ、交通障壁、壁、ボックス、カルバート、タイル、舗装材、中空コアスラブ、パティオスラブ、ステップ、縁石、擁壁、コンクリート組積ユニットなどのプレキャストコンクリート製品に関するが、これらに限定されない。より詳細には、本開示は、炭酸プレキャストコンクリート製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
建設業界では、プレキャストコンクリートが広く採用されるようになってきている。プレキャストコンクリートは、条件を管理した工場で再利用可能な金型又は型枠に鋳造される建設製品である。プレキャストコンクリートは、工場内の管理された養生環境で硬化する。養生後、建築現場へ運ばれる。
【0004】
プレキャストコンクリートには、幅広い構造的及び建築的用途がある。一般的な例としては、舗装材、基礎、スラブ、梁、床、柱、壁、擁壁、マンホール、下水管、ブロック、モジュールボックス、船橋甲板などが挙げられる。
【0005】
従来、プレキャストコンクリート製品の製造には、結合材としてポルトランドセメントが使用されてきた。しかし、ポルトランドセメントを製造すると環境に望ましくない影響を与えることが知られている。1トンのポルトランドセメントを生産するごとに、約1トンのCOが排出される。ポルトランドセメントの入手には採石が必要であり、大気汚染物質を排出し、大規模な窯の使用を伴うため、相当量のエネルギーを必要とする。
【0006】
セメント系のプレキャスト製品は、十分な強度を得るためにセメントの水和に依存している。従来のセメント系プレキャストコンクリート製品では、早期強度発現を促進するための標準的な養生方法として、熱及び蒸気養生技術が広く採用されてきた。
【0007】
プレキャストコンクリートをCOが豊富な環境で養生すると、プレキャストコンクリートの環境への負荷を軽減し得る。これは、炭酸プレキャストコンクリートとして知られている。このような炭酸プレキャストコンクリートには一定の環境上の利点がある一方で、凍結融解サイクル及び摩耗によりよく耐える能力などの、炭酸プレキャストコンクリートの他の物理的特性を改善する必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む混合物を得るステップと、混合物を成形中間体に成形するステップと、成形中間体を脱型して脱型中間体を得るステップであって、脱型中間体が第1の水対結合材比を有する、ステップと、脱型中間体を調整して、脱型中間体の第1の水対結合材比よりも小さい第2の水対結合材比を有する調整物品を提供する、ステップと、調整物品の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿し、それによって調整物品の重量を増加させ、保湿製品を提供するステップであって、保湿製品の第1の部分の第3の水対結合材比が、保湿製品の残りの部分の第4の水対結合材比よりも大きい、ステップと、保湿製品を二酸化炭素で養生して、炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む。
【0009】
別の態様では、炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む基材混合物、及び少なくとも1つの第2の結合材料と、第2の骨材と、水と、を含む外層混合物を得るステップと、基材混合物と外層混合物を、外層と基材とを有する多層成形中間体に成形するステップと、多層成形中間体を脱型して脱型多層中間体を得るステップであって、脱型多層中間体が、基材に対する第1の水対結合材比と、外層に対する第2の水対結合材比と、を有するステップと、脱型多層中間体を調整して、第1の水対結合材比と第2の水対結合材比とを有する、脱型多層中間体よりも水の量が減少した調整多層物品を提供するステップと、調整多層物品の外層の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿して、外層の重量を増加させて保湿多層製品を提供するステップであって、保湿多層製品の外層の第3の水対結合材比が第2の水対結合材比よりも大きい、ステップと、保湿多層製品を二酸化炭素で養生して炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む。
【0010】
さらに別の態様では、炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、を含む成形混合物から脱型中間体を得るステップであって、脱型中間体が第1の水対結合材比を有する、ステップと、脱型中間体を調整して、脱型中間体の第1の水対結合材比よりも小さい第2の水対結合材比を有する調整物品を提供するステップと、調整物品の少なくとも1つの表面を水性媒体で保湿して、調整物品の重量を増加させて保湿製品を提供するステップであって、保湿製品の第1の部分の第3の水対結合材比が、保湿製品の残りの部分の第4の水対結合材比よりも大きい、ステップと、保湿製品を二酸化炭素で養生して、炭酸プレキャストコンクリート製品を得るステップと、を含む。
【0011】
本明細書及び上記に記載の方法は、以下の追加の構成及び/又はステップのうちの1つ以上を、全体的又は部分的に、及び任意の組み合わせでさらに含んでもよい。
【0012】
特定の実施形態では、少なくとも1つの表面を保湿するステップは、少なくとも1つの表面の一部又は全体を水含有液体に浸漬するステップ、少なくとも1つの表面に水性媒体を噴霧するステップ、又は少なくとも1つの表面にローラー装置で水性媒体を塗布するステップ、から選択される塗布方法を用いて水性媒体を塗布するステップを含む。
【0013】
特定の実施形態では、調整物品の少なくとも1つの表面を保湿するステップは、調整物品の重量が少なくとも10g/m増加するまで、少なくとも1つの表面を保湿するステップを含む。
【0014】
特定の実施形態では、水性媒体を塗布するステップは、少なくとも1つの表面上に水、水性溶液及び/又は水性スラリーを塗布するステップを含む。
【0015】
特定の実施形態では、水性媒体を塗布するステップは、15~25℃の水性媒体を塗布するステップを含む。
【0016】
特定の実施形態では、脱型中間体を調整するステップは、脱型中間体の当初含水率の20重量%~70重量%が除去されるまで、脱型中間体を調整するステップを含む。
【0017】
特定の実施形態では、混合物を得るステップは、乾燥部と液体部とを得るステップであって、乾燥部が少なくとも1つの骨材材料と少なくとも1つの結合材料とを有し、液体部が水を有する、ステップと、乾燥部と液体部とを混合して、混合物を得るステップと、を含む。
【0018】
特定の実施形態では、本方法は、添加剤を乾燥部と液体部に混合するステップを含む。
【0019】
特定の実施形態では、本方法は、マイクロファイバーと乾燥部とを混合するステップを含む。
【0020】
特定の実施形態では、混合物を得るステップは、少なくとも1つの結合材料を有する混合物を得るステップであって、少なくとも1つの結合材料が非セメント質である、ステップを含む。
【0021】
特定の実施形態では、混合物を得るステップは、鉄鋼スラグとセメントとを含む少なくとも1つの結合材を有する混合物を得るステップであって、鉄鋼スラグとセメントの重量比が1:20~20:1である、ステップを含む。
【0022】
特定の実施形態では、混合物を得るステップは、骨材を有する混合物を得るステップであって、混合物の総重量に対する骨材の重量比が0.3~0.8である、ステップを含む。
【0023】
特定の実施形態では、混合物を得るステップは、混合物の総重量に対する添加剤の重量比が0.005~0.010である混合物を得るステップを含む。
【0024】
特定の実施形態では、混合物を得るステップは、混和剤を含む混合物を得るステップを含む。
【0025】
特定の実施形態では、混和剤は撥水性混和剤である。
【0026】
特定の実施形態では、混和剤は、可塑剤、超可塑剤又はポリカルボン系減水剤である。
【0027】
特定の実施形態では、混合物を成形するステップは、混合物を形成中間体に形成するステップを含む。
【0028】
特定の実施形態では、混合物を成形するステップは、形成中間体を圧密して成形中間体を提供するステップを含む。
【0029】
本改良に関する多くのさらなる構成及びその組み合わせは、本開示の読解後に当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】炭酸プレキャストコンクリート製品の製造工程を示すフローチャートである。
図2】厚さが異なる2つの層を有するプレキャストコンクリート製品の概略図である。
図3図2に示すような2層炭酸プレキャストコンクリート製品の製造工程を示すフローチャートである。
図4】厚さ方向に3つの層を有するプレキャストコンクリート製品の概略図である。
図5】本開示の工程を用いた異なる作製段階におけるプレキャストコンクリート製品の平均含水率を示すグラフである。
図6】試料Aの混合設計で調製されたプレキャストコンクリート試料の含水率の変化を、調整後(実線)と表面保湿後(破線)の厚さで測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
炭酸プレキャストコンクリート製品を調製するための本工程は、必要なセメントがより少なく、場合によってはセメントを必要としなくてもよく、コンクリートが製品内にCOを貯蔵することを可能にし得る。本開示の炭酸プレキャストコンクリート製品は、有利には、凍結融解サイクルと摩耗に対する耐性などの、物理的攻撃耐性を改善し得る。また、炭酸化養生は、セメントの代替物として産業廃棄物を導入する可能性をもたらす。このような廃棄物としては、例えば鉄鋼スラグが挙げられる。本開示の工程は、コンクリートのCOフットプリントを削減できるだけでなく、鉄鋼スラグ及びボトムアッシュなどの現在あまり利用されていない低コストの産業廃棄物を使用することにより、プレキャストコンクリート製品をより手頃な方法で製造し得る。鉄鋼スラグは、鉄鋼の副産物であり、鉄鋼炉の不純物から溶鋼を分離する際に生成される。鉄鋼スラグは、溶融液体溶融物として生じ、ケイ酸塩と酸化物を含む溶液であり、冷却時に凝固する。ボトムアッシュは、石炭燃焼により生じる粗粒状の不燃性副産物であり、炉底から回収される。
【0032】
本明細書に記載の方法を用いて製造され得るプレキャストコンクリート製品の例としては、コンクリートパイプ、交通障壁、擁壁を含む壁、モジュールボックスを含むボックス、カルバート、タイル、舗装材、基礎、中空コアスラブを含むスラブ、パティオスラブ、ステップ、縁石、コンクリート組積ユニット、梁、床、柱、マンホール、下水管、枕木及び他のプレキャストコンクリート製品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
炭酸プレキャストコンクリート製品の製造は、主に、炭酸化養生工程中に二酸化炭素を適用する点において、また適格な結合材源(例えばセメント)の選択が幅広い点において、従来のセメント系プレキャストコンクリートの製造とは異なる。炭酸プレキャストコンクリートは、混合物中の十分な量の水を用いて、導入された二酸化炭素ガスと、結合材中のカルシウム及び/又はマグネシウムの酸化物及び/又は水酸化物との間の反応によって、主にその強度を獲得する。高濃度又は低濃度のCOに曝されるとき、このような鉱物を含有するプレキャストは、しばしば急速に硬化する。
【0034】
[凍結融解と摩耗耐久性]
ある種の既存のコンクリート構造物の耐久性の欠如は、場合によっては深刻かつ有害な損傷を引き起こし、製品を意図した用途に適さなくすることがある。本開示は、耐久性が改善された、より具体的には、凍結融解耐久性と摩耗耐久性が改善されたコンクリート製品を製造し得る工程に関する。場合によっては、開示された工程は、他の機械的/物理的特性を改善し得る。
【0035】
凍結融解サイクルを繰り返すことで蓄積される内部引張応力によって、凍結融解損傷が誘発される。水の膨張と、非凍結水粒子の膨張力による水圧は、凍結融解サイクルが引き起こす損傷の一因となる。凍結融解工程に除氷塩が存在するとき、プレキャストコンクリートに生じる損傷が悪化する可能性がある。
【0036】
表面磨耗(wear)とは、繰り返し摩擦サイクルによってコンクリートの表面から漸進的に質量が減少することである。摩耗とは、主な表面磨耗メカニズムの1つであり、コンクリートの表面に沿って移動する他の固体物体の摩擦を指す。摩耗の原因は、プレキャストコンクリートの用途に依存する。
【0037】
プレキャストコンクリート製品の耐久性は、一連の標準試験によって測定される。試験と要件は、製品の種類と用途によって異なる。一例として、プレキャストコンクリート舗装材と擁壁に関する標準試験の概要を以下に示す。本開示は、複数の規格(例えばASTM規格)を参照する。これらの規格は、本特許出願の出願日に利用可能であったバージョンに対応することが理解されよう。
【0038】
プレキャストコンクリートの摩耗耐性を評価する方法はいくつかある。コンクリート舗装材の摩耗耐性を評価するためにASTM C936で規定されているサンドブラスト試験法(ASTM C418)に加えて、回転カッター法(ASTM C944)を適用してプレキャストコンクリート製品の摩耗耐性を測定することもできる。回転カッター法では、試験装置はドリルプレスと回転カッターからなる。コンクリート試料を回転カッターの下に置き、カッターを回すスピンドルに98Nの一定の垂直荷重をかける。試料を200rpmの速度で2分間研磨磨耗させ、質量減少率を計算する(ASTM、2019a)。
【0039】
プレキャストコンクリート舗装材の凍結融解耐久性は、ASTM C936で要求されているCSA A231.2又はASTM C1645に準拠して試験される。試験中、プレキャストコンクリート試料は、3%塩化ナトリウム溶液に完全に浸漬される。16時間の凍結と8時間の融解の、24時間のサイクルで凍結と融解を繰り返す。凍結融解試験を28サイクルした後、プレキャストコンクリートの質量は全表面積の225g/mを超えて減少してはならず、又は、凍結融解試験を49サイクルした後、プレキャストコンクリートの質量は全表面積の500g/mを超えて減少してはならない(ASTM、2019b、ASTM、2018a、CSA、2005)。
【0040】
プレキャストコンクリート擁壁の凍結融解耐久性は、ASTM C1262に準拠して試験される。試験中、擁壁試料を深さ13±2mmの水中に下向きに置く(ASTM、2018b)。5つの試料のセットの重量は、凍結と融解を100サイクルした後に当初重量の1%を超えて減少してはならず、又は、5つの試料のうち4つの重量は、150サイクルした後に当初重量の1.5%を超えて減少してはならない(ASTM、2017)。凍結と融解の1サイクルは、完全な凍結サイクルに続いて完全な融解サイクルを行うことで定義される。擁壁試料の一部を3%塩化ナトリウム溶液に浸漬することもできる。この場合、質量の減少が1%未満という要件は、一般に凍結融解試験が40サイクルまで削減される。
【0041】
炭酸コンクリートは凍結融解耐性が低いため、舗装材及び擁壁などの用途に適さない場合がある。さらに、炭酸プレキャストコンクリートは摩耗条件下で性能が低下することがあり、舗装材の用途には不適切な場合がある。
【0042】
従来の方法では、炭酸化養生の前にプレキャストコンクリートの表面の水分が不足することが多い。この表面の水分の不足は、炭酸プレキャストコンクリートの圧縮強度にはそれほど影響を与えないが、炭酸コンクリート製品の曲げ強度、表面硬度及び表面耐久性(摩耗耐性と凍結融解耐性の少なくとも一方を含む)などの他の特定の特性が損なわれると考えられている。その結果、炭酸プレキャストコンクリート製品は、使用が想定されている用途のための特定の耐久性要件を満たしていないことが多い。
【0043】
本明細書に開示される工程は、凍結融解及び摩耗耐性によって測定される、炭酸プレキャストコンクリート製品の少なくとも特定の耐久特性を改善し得ることがわかった。また、このようにして作られた炭酸プレキャストコンクリート製品は、時間と凍結融解サイクルを経ても強度を維持し得ることが観察された。
【0044】
本開示は、炭酸プレキャストコンクリート製品の製造工程に関するものである。炭酸プレキャストコンクリートを作るための主な構成要素は、結合材と、骨材と、水と、を含む。原材料の種類及び炭酸プレキャストコンクリートの仕様によっては、他の添加剤が含まれてもよい。
【0045】
[結合材]
炭酸プレキャストコンクリートにおけるセメント質及び/又は非セメント質結合材としては、普通ポルトランドセメント、他の種類のセメント、非水硬性セメント、水硬性セメント、粉砕造粒高炉スラグ(GGBFS)、鉄鋼スラグ、飛散灰、ボトムアッシュ、ステンレス鋼スラグ、並びにCaO及び/又はMgO及び/又はケイ酸カルシウム含有量が豊富な他の材料などの炭酸化可能な材料のいずれか、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。2種以上の結合材の任意の適切な組み合わせを使用してもよい。場合によっては、単一の結合材を使用してもよい。いくつかの実施形態では、結合材はセメント質結合材であり、普通ポルトランドセメント、他の種類のセメント、非水硬性セメント、水硬性セメント及びそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合材は非セメント質結合材であり、鉄鋼スラグ、飛散灰、ボトムアッシュ、ステンレス鋼スラグ、並びにCaO及び/又はMgO、ケイ酸カルシウム含有量が豊富な他の材料、並びにそれらの組み合わせを含んでもよい。1つの特定の例では、結合材は非セメント質結合材であり、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満のセメントを含む。
【0046】
例えば、本明細書では、結合材の唯一の構成要素として、又は必要に応じて結合材の主要構成要素としてセメントの配分と共に鉄鋼スラグを使用して、二酸化炭素を硬化剤として使用する炭酸プレキャストコンクリート製品を製造することができる。言い換えれば、セメントの全部又は大部分が鉄鋼スラグに置き換わる。二酸化炭素は、スラグの強度を高め、硬化させ、活性化するためにも適用される。
【0047】
一実施形態では、結合材は、鉄鋼スラグからなる。場合によっては、結合材は、鉄鋼スラグと別の適切な構成要素とを含む。
【0048】
一実施形態では、結合材は、基本的に鉄鋼スラグから構成される。本明細書で使用する「基本的に~から構成される」という用語は、一例では、少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%又は少なくとも98重量%を意味することができる。場合によっては、結合材は、鉄鋼スラグの大部分(例えば50重量%超)を含んでもよい。
【0049】
一実施形態では、結合材は鉄鋼スラグとセメントとを含み、鉄鋼スラグとセメントの重量比が約1:20、約1:15、約1:10、1:5、約1:20~約20:1、約1:10~約10:1又は約1:5~約5:1である。あるいは、いくつかの実施形態では、鉄鋼スラグとセメントの重量比は、約20:1、又は約15:1、又は約10:1、又は約5:1である。
【0050】
さらなる実施形態、特に本明細書で定義される多層製品では、最上層/外層における結合材は、鉄鋼スラグからなるか、又は基本的に鉄鋼スラグを含むか、又は鉄鋼スラグとセメントの重量比が約1:20~約20:1であるか、又は鉄鋼スラグとセメントの重量比が約20:1、若しくは約15:1、若しくは約10:1、若しくは約5:1である。
【0051】
一実施形態では、骨材+結合材+水+添加剤を含む組成物の総重量に対する結合材(鉄鋼スラグ、セメント及び他の炭酸化可能材料のいずれか又は全てなど)の重量比は、約0.20~約0.60、好ましくは約0.25~約0.50、又はより好ましくは約0.30~約0.50の範囲である。
【0052】
[セメント]
本開示では、以下の非限定的なセメントのリストを使用して、炭酸プレキャストコンクリートを製造することができる。ポルトランドセメント(I型-V型)、ポルトランド石灰石セメント、急速硬化セメント、急結セメント、低熱セメント、高炉スラグセメント、ポルトランドスラグセメント、高アルミナセメント、白色セメント、着色セメント、ポゾランセメント(ポルトランド-ポゾランセメント)、空気連行セメント、水路セメント、非水硬セメント、三元ブレンドセメント。
【0053】
本明細書で使用するように、有効なセメントは、水と反応したときに強度を得ることができるケイ酸カルシウム相、具体的にはCSを含有するセメントである。ケイ酸カルシウム相の存在により、短期的かつ長期的な強度発現が確保される。
【0054】
[鉄鋼スラグとステンレス鋼スラグ]
本明細書において「鉄鋼スラグ」とは、鉄鋼を製造する際に生成されるスラグ副産物を指す。鉄鋼スラグは、Linz-Donawitz(LD)工程のスラグ、LDスラグとしても知られる塩基性酸素炉(BOF)から生成されるスラグを含み得る。また、鉄鋼スラグは、電気アーク炉(EAF)から生成されるスラグを含み得る。本明細書で使用する鉄鋼スラグは、取鍋スラグをさらに含み得る。鉄鋼スラグは、上記のスラグの組み合わせとすることができる。本明細書で使用する「鉄鋼スラグ」は、ポゾランスラグのように、鉄の製造中に一般的に発生し、セメントの製造に使用され得る鉄スラグと高炉スラグを除外することが理解されよう。
【0055】
本明細書で使用する「取鍋スラグ」とは、鉄鋼スラグの一種である。取鍋スラグは、取鍋精錬作業の副産物として生成される。様々な鉄鋼工程において、EAF又はBOF工程で製造された溶鋼は、所望の鉄鋼の品質に基づいて追加の精錬工程を受ける。
【0056】
本明細書で使用する「EBHスラグ」とは、EAF-BOFハイブリッドを指し、これは、EAF生成スラグとBOF生成スラグの混合物から形成される鉄鋼スラグの一種である。
【0057】
ステンレス鋼スラグは、ステンレス鋼製造時に発生するスラグを含むことがある。ステンレス鋼スラグは、主にアルゴン酸素脱炭(AOD)及び/又は取鍋冶金(LM)工程から発生する。
【0058】
[鉄鋼スラグの化学組成]
一実施形態では、本明細書で使用する鉄鋼スラグは、累積ケイ酸カルシウム含有量(例えば、CS+CS+CS相濃度)が少なくとも約15質量%である。
【0059】
一実施形態では、本明細書で使用する鉄鋼スラグは、累積ケイ酸カルシウム含有量(例えば、CS+CS+CS相濃度)が少なくとも約20質量%である。
【0060】
一実施形態では、本明細書で使用する鉄鋼スラグは、累積ケイ酸カルシウム含有量(例えば、CS+CS+CS相濃度)が少なくとも約30質量%である。
【0061】
一実施形態では、本明細書で使用する鉄鋼スラグは、累積ケイ酸カルシウム含有量(例えば、CS+CS+CS相濃度)が少なくとも約40質量%である。
【0062】
一実施形態では、本明細書で使用する鉄鋼スラグは、S含有量が少なくとも約6質量%、又はより好ましくは少なくとも約15質量%である。
【0063】
[ステンレス鋼スラグの化学組成]
一実施形態では、本明細書で使用するステンレス鋼スラグは、S含有量が少なくとも約15質量%、又はより好ましくは少なくとも約20質量%である。
【0064】
一実施形態では、本明細書で使用するステンレス鋼スラグは、酸化カルシウム含有量が少なくとも約30重量%、又はより好ましくは少なくとも約35重量%である。
【0065】
[鉄鋼スラグの物性]
鉄鋼スラグは、粗スラグ片と微細スラグ片との混合物を含むことがある。粗スラグ片は、ブレーン微粉度が約50m/kg未満であり、微細スラグ片は、ブレーン微粉度が約50m/kg超であり得る。粗スラグ片、微細スラグ片、又はその両方は、一般的な鉄鋼工程の結果として埋め立てられることがある。廃棄物(埋立及び/又は産業廃棄物など)から生じた鉄鋼スラグを受け取って、任意に精錬することができる。
【0066】
鉄鋼スラグを精錬することは、受け取った鉄鋼スラグを濾過して、粗スラグ片と微細スラグ片とに分離することを含み得る。
【0067】
代替的に又は追加的に、受け取った鉄鋼スラグを精製することは、鉄鋼スラグを微粉末に粉砕することも含み得る。いくつかの例示的な実施形態では、濾過された微細片は粉砕されるが、粗い片は粉砕されない。例えばEAF鉄鋼スラグの場合、スラグは、少なくとも50m/kg、好ましくは約180m/kgのブレーン微粉度に粉砕され得る。例えばEBH鉄鋼スラグ(EAFとBOFと取鍋スラグとの混合物)の場合、スラグは、少なくとも100m/kg、好ましくは約240m/kgのブレーン細粒度に粉砕され得る。他の例示的な実施形態では、鉄鋼スラグは、より微細なサイズに粉砕されてもよい。別の例では、粉砕スラグの少なくとも50パーセントが100ミクロン未満であり、D(50)<100ミクロンである。
【0068】
[骨材]
骨材は、天然由来又は人工材料の通常重量及び軽量のものを使用することができる。大きさによって粗骨材と細骨材とに分けることができる。粗骨材と細骨材の種類、配分、大きさは、これらの入手可能性、費用、粒度によって異なり、またコンクリート混合物の必要な作業性、並びに炭酸プレキャストコンクリートの望ましい表面性状及び特性によっても異なる。いくつかの実施形態では、細骨材は、3/8″より大きい直径を持つ粒子が5%未満である。いくつかの実施形態では、粗骨材の直径は、1/4″より大きい。さらなる実施形態では、粗骨材の直径は、1/2″より大きい。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する「通常重量」という用語は、石灰石、花こう岩などの自然に存在する又は粉砕された砂利又は砂で、比重が約2.7のものをいう。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する「軽量骨材」という用語は、天然又は人工の粒子で比重が約0.3~約1.9の範囲のものをいう。本明細書では、「約」という表現は、値のプラスマイナス10%の変動を意味する。
【0069】
一実施形態では、骨材+結合材+水+添加剤を含む組成物の総重量に対する骨材の重量比は、約0.3~約0.8、好ましくは約0.4~約0.7、又はより好ましくは約0.40~約0.65の範囲である。
【0070】
[添加剤]
本明細書で使用する添加剤としては、空気連行混和剤、減水混和剤、収縮低減混和剤、腐食抑制混和剤、促進又は遅延混和剤、粘度調整剤、顔料、撥水性混和剤及び他の天然又は化学添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる原料/添加剤としては、最終用途に応じて炭酸プレキャストコンクリートを配合する際に添加され得る繊維(Euclid社のPSI Multi-Mix 80など)が挙げられる。また、添加剤は、鉱物混和剤とすることができる。
【0071】
圧縮強度を高め、水分量を下げ、空隙率を下げ、透水性を下げるために、コンクリート混合物に減水混和剤を添加する。減水混和剤は、可塑剤又は超可塑剤(すなわちポリカルボン酸系減水剤)に分類される。本発明の減水剤として使用することができるのは、必要な水分量を約50%まで減少させることができるか、又は圧縮強度を約60%まで増加させることができる任意の減水混和剤である。本発明で使用する混和剤は、ASTM C494(コンクリート用化学混和剤の標準仕様、ASTMインターナショナル、ペンシルバニア州ウェストコンショホッケン、2019)の要件を満たす必要がある。
【0072】
撥水性混和剤は、コンクリートに出入りする水の毛細管現象に影響を与えることにより、コンクリートに一体的な撥水性を提供するように設計される。撥水性混和剤は、水の移動をより困難にする経路を作る、静的細孔栓として機能することができ、又は細孔を塞ぐだけでなくコンクリート表面から化学的に水をはじく「その場の(in situ)」疎水性材料を形成する、反応性化学物質として機能することができる。
【0073】
本開示の特定の実施形態では、本明細書の記載による添加剤は、本明細書に記載されるような表面を保湿するステップを経ることを意図した調整脱型製品(すなわち調整物品)又はその一部に存在する。当該添加剤は、空気連行混和剤である。
【0074】
一実施形態では、骨材+結合材+水+添加剤を含む組成物の総重量に対する添加剤としての空気連行混和剤の重量比は、約0.0001~約0.001、又は約0.0002~約0.0008、又は約0.0004~約0.0006の範囲である。
【0075】
特定の実施形態では、撥水性混和剤は、本明細書に記載されるような表面を保湿するステップを経ることを意図しない/必要としない、多層製品などの調整脱型製品(すなわち調整物品)又はその一部にのみ存在する。
【0076】
特定の実施形態では、撥水性混和剤は、結合材と、骨材と、水と、を含む組成物中に、少なくとも約0.005、又は少なくとも約0.006、好ましくは少なくとも約0.007、又は少なくとも約0.008、又は少なくとも約0.009又は少なくとも約0.010の重量比(組成物の総重量に対する)で存在する。
【0077】
特定の実施形態では、撥水性混和剤は、結合材と、骨材と、水と、を含む組成物中に、少なくとも約0.005及び最大約0.009~0.010の重量比(組成物の総重量に対する)で存在する。
【0078】
[水対結合材比]
水対結合材比は、製造工程(湿式キャスト法又は乾式キャスト法)、結合材と骨材の含有量、混合設計における減水剤の使用法及び使用量に依存する。一般に、水対結合材比は、約0.10~約0.50(重量基準比)で変動する。
【0079】
一実施形態では、水対結合材比は、約0.10~約0.25の範囲である。
【0080】
一実施形態では、水対結合材比は、少なくとも約0.10、又は少なくとも約0.11、又は少なくとも約0.12、又は少なくとも約0.13、又は少なくとも約0.14、又は少なくとも約0.15、又は少なくとも約0.20又は少なくとも約0.25であり得る。
【0081】
一実施形態では、骨材+結合材+水+添加剤を含む組成物の総重量に対する水の重量比は、約0.01~約0.10、好ましくは約0.05~約0.10、又はより好ましくは約0.06~約0.08の範囲である。
【0082】
図1を参照すると、本開示による炭酸プレキャストコンクリート製品を製造するための工程100が提供されている。以下でより詳細に説明するように、工程100は、原材料を混合するステップ102を含み、原材料は、結合材と、骨材と、水と、いくつかの任意選択の添加剤と、を含む。工程100は、少なくとも1つの結合材と、骨材と、水と、の混合物を成形中間体に成形するステップを含む。図示の実施形態では、混合物を成形中間体に成形するステップは、混合物を形成して形成中間体を得るステップ104と、形成中間体を圧密して、圧密中間体を得るステップ106と、を含み、これは成形中間体に対応し得る。成形中間体の初期養生を実行する任意選択のステップ108を行ってもよい。成形中間体を脱型して、脱型中間体を得るステップ110を実行する。脱型中間体は、第1の水対結合材比を有する。ステップ112は、脱型中間体を調整して、第2の水対結合材比を有する調整物品を提供する。調整物品の第2の水対結合材比は、脱型中間体の第1の水対結合材比よりも小さい。ステップ114は、調整物品の表面を保湿して、保湿製品を得る。保湿するステップ114は、調整物品の重量を増加させる。保湿製品の第1の部分の第3の水対結合材比は、保湿製品の残りの部分の第4の水対結合材比よりも大きい。いくつかの実施形態では、第3の水対結合材比を有する第1の部分は、保湿製品の外層又は外面に対応し、第4の水対結合材比を有する保湿製品の残りの部分は、外層又は外面によって少なくとも部分的に囲まれるか又は覆われる保湿製品のコアに対応し得る。また、保湿製品を空気乾燥させる任意選択のステップ116を含んでもよく、その後、保湿製品を二酸化炭素で養生するステップ118が続く。任意選択のステップは図1に破線で示されている。ステップ102~118の各々を、本明細書において以下でより詳細に説明する。
【0083】
[構成要素の混合]
混合するステップ102は、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤、例えば混和剤と、を用いて実行する。一実施形態では、混合するステップ102の前に、本方法は、a)乾燥部と液体部とを提供するステップであって、当該乾燥部が少なくとも1つの骨材材料と少なくとも1つの結合材料とを含み、当該液体部が水と任意選択の添加剤とを含む、ステップと、乾燥部と液体部とを組み合わせるステップと、を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、コンクリート製品の意図する用途の機能として必要であれば、添加剤及び他の原料を混合物に任意に導入することができる。
【0085】
[形成と圧密]
成形するステップ104は、結合材と、好適な骨材と、水分と、任意の既知の手段による任意選択の添加剤と、を含有する十分な量の混合材料を、構成要素を所望の形状に成形するための金型に加えるステップを含む。本明細書では「成形」又は「成形する」という表現を使用するが、この表現は、フレーム/金型のような形状を提供し、次いで任意に平坦化するための任意の中空型枠又は母型を想定している。言い換えれば、混合物は、内部空洞を画定するような方法で成形されてもよい。
【0086】
圧密するステップ106は、例えば振動又は締固め又は圧縮又は組み合わせた力を用いて、形成中間体を所望の厚さ、形状、密度に圧密するステップを含む。所望の厚さ、形状、密度は、当技術分野で既知の所望の用途に応じて選択することができる。
【0087】
形成するステップ104と圧密するステップ106は共に、本明細書では製品を成形するステップと呼ぶことがある。言い換えれば、形成するステップ104と圧密するステップ106は、混合物を成形するステップの2つのサブステップと考えることがある。
【0088】
一実施形態では、形成するステップ104の前に、本方法は、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤と、を混合して基材混合物を提供するさらなるステップを含み、当該混合するステップは、混合するステップ102の前、同時又は後に行うことができる。一実施形態では、本方法は、当該基材混合物を形成して形成中間体を提供するステップを含み、当該形成するステップは、ステップ104の前、同時又は後に行うことができる。さらなる実施形態では、基材混合物を混合するステップ102と基材を形成するステップ104の1つ以上を繰り返してもよい。さらなる実施形態では、少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤と、の当該混合物の各々は、これらの構成要素を同じ比率又は異なる比率で含んでもよい。しかし、これらの混合物の少なくとも1つ、特に表面を保湿するステップ114を経るものは、セメント以外の結合材、例えばスラグ結合材、又は好ましくは鉄鋼スラグを含む。上記実施形態内において、成形製品(すなわち成形中間体)、脱型製品(すなわち脱型中間体)、調整脱型製品(すなわち調整物品)、保湿予備硬化成形製品(すなわち保湿製品)、炭酸プレキャストコンクリート製品の各々は、多層化される(例えば2層以上の製品)。
【0089】
[初期養生(任意選択)]
場合によっては、特にプレキャストコンクリートが湿式キャスト工程で作製されるとき、成形中間体を最初に養生するステップ108を任意に実行し、成形中間体がステップ110で金型から取り出される前に満足のいく初期強度を提供する。プレキャストコンクリートは、結合材の水和/凝結又は他の物理的/化学的/活性化に依存して、例えば2時間から数日まで続くこの初期養生段階において所望の強度を得る。
【0090】
[調整(脱型プレキャストコンクリートの水分量を減らす)]
炭酸化養生は、プレキャストコンクリートを脱型した直後に行うこともできるが、二酸化炭素ガスを導入する前に一定期間圧密コンクリートを調整することが一般的である。この調整するステップ112は、成形中間体を脱型するステップ114の後、かつ脱型中間体をCOで養生するステップ118の前に始まる。調整するステップ112は、過剰な水の除去を制御することを含む。その主な目的は、過剰な水を除去することにより、コンクリート内で迅速かつ均一な炭酸化反応を促進することである。水が余分にあると、反応物へのCOの拡散が妨げられて反応が制限され、一方水分量が不十分だと、水が欠乏して反応が停止する場合がある。このように、最適な炭酸化のために、炭酸化の前に最適な水分量を達成することができる。
【0091】
調整するステップ112は、脱型するステップ110の後に、脱型中間体(任意に初期養生後の)製品に対して行う。調整するステップ112は、室温、15~25℃の温度と30~60%の湿度で、強制空気循環の補助の有無にかかわらず行うことができる。調整の継続時間は、10分~24時間以上の間で異なる場合がある。この調整するステップ112は、水の蒸発によってプレキャストコンクリートの含水率を低下させるのに役立つ可能性がある。水分が放出されると、圧密プレキャストコンクリートの内部に多数の細孔が残る。これは、所望量のCOを取り込んでプレキャストコンクリート製品全体にわたって均一に炭酸化するために重要であると考えられる。CO取り込み量が比較的多いことと炭酸化分布が均一であることは、炭酸プレキャストコンクリート製品の物理的-機械的特性にとって非常に重要であると考えられている。一実施形態では、混合物の当初水分の20~70重量%、好ましくは30~60重量%、特に40~50重量%が、調整するステップ112の終了時にはプレキャストコンクリートから取り出されている。水分を減少させる他の既知の方法、例えば熱を、調整するステップ中に代替的に使用することができる。
【0092】
[水性媒体への製品の表面の曝露]
本開示の工程100は、調整物品の表面を保湿するステップ114を含む。保湿するステップ114は、当該調整物品の少なくとも1つの表面を水性媒体に曝して、重量を増加させるステップを含む。成形製品を調整112した後、プレキャストコンクリートの含水率、すなわち結合材に対する水の比率が低下する。母型中の含水率が十分であれば、二酸化炭素が均一に浸透し、COを十分に取り込むことができ、炭酸プレキャストコンクリートとして満足のいく性能を発揮できる可能性がある。しかし、当技術分野で説明されているように、調整に関連する欠点があり、それは成形製品の外側(露出)表面がプレキャストコンクリートの内部よりもはるかに速く水分を失うことである。これにより、内部の含水率が理想的なレベルにあるとき、外表面上の含水率はより低くなっていると考えられる。外表面上の水分が不足すると、その続の炭酸化養生工程が外表面上で不完全になる。二酸化炭素と、ケイ酸カルシウム相又はカルシウム及びマグネシウムの酸化物若しくは水酸化物との間の反応を促進させるためには十分な量の水が必要だからである。
【0093】
本明細書で定める工程を操作する際には、炭酸化養生の前に外表面の表面含水率を適切なレベルまで増加させることが望ましい。これにより、プレキャストコンクリート製品の全体積を通して、十分な程度の炭酸化反応を達成できることを保証し得る。
【0094】
調整物品の表面を水性媒体に曝すことによって当該調整物品の表面を保湿するステップ114では、水性媒体(すなわち水含有材料又は相)を調整物品の少なくとも1つの表面に塗布することによって、表面含水率を増加させることができる。この水性媒体は、水のみ、又は水性溶液、又は水性スラリーとすることができる。この水含有材料を表面保湿工程で塗布するときの温度については具体的な要件はないが、室温に近い温度(すなわち約15~約25℃)が好ましい。本明細書で使用する、調整物品の表面の重量を増加させるための水性媒体は、十分な量のCaO/Ca(OH)/MgOを含み、表面に水分を供給することができ、コンクリートの製造に適した、任意の水含有手段(懸濁液/溶液又は他の相/材料)を含む。また、1~25%濃度の水溶性化学溶液、例えばケイ酸ナトリウム(水ガラス)を表面の保湿に使用することができる。また、水和セメント、鉄鋼スラグ、GGBFS、ステンレス鋼スラグ、石灰、非水和セメント、飛散灰又は十分な量のCaO/Ca(OH)/MgOを含む固形分1~80%の任意の材料のスラリーを表面の保湿に使用することができる。スラリーを使用するとき、その固形分は質量基準で1~25%とすることができるが、5~10%の固形分が好ましい。スラリーは、攪拌機を備えた容器に、室温(15~25℃)で、CaO及び/又はMgOに富む物質を水道水などの比例量の水に添加することで調製することができる。スラリー調製及び表面保湿工程では、固形分を一定に保つために撹拌機を稼働させておかなくてはならない。調製した水性媒体は、pH値が6.5~13.5でなければならない。
【0095】
水性媒体は様々な塗布方法を用いて塗布することができ、表面の一部若しくは全体を水含有液体に浸漬すること、又は水性媒体を表面に噴霧すること、又は水性媒体をローラー若しくは類似の装置で表面に塗布することが挙げられるが、これらに限定されない。浸漬を選択した場合、水含有液体へのプレキャストコンクリートの浸漬時間は、1秒~5時間、好ましくは3~5秒とすることができる。
【0096】
どのような塗布方法を選択しても、保湿製品は、表面保湿処理が完了した後、保湿するステップ114の間に少なくとも10g/m、好ましくは少なくとも50g/m、好ましくは50~350g/m又は75~325g/m(プレキャストコンクリートの全保湿表面積基準)の重量を増加させることができる。
【0097】
[CO養生と任意選択の空気乾燥]
表面を保湿するステップ114の後、保湿製品を硬化(炭酸化)させることができる。養生するステップ118は、保湿するステップ114の直後に行ってもよい。これは、二酸化炭素で養生するステップ118で行われる。いくつかの実施形態では、表面保湿プレキャストコンクリートを輸送し、それを炭酸化養生室に装填するなどの炭酸プレキャストコンクリート製造工程における必要な待ち時間を考慮すると、保湿するステップ114の後、養生するステップ118の前に、任意に保湿製品を空気乾燥するステップ116を実行することができる。この期間は最大1時間、好ましくは5~20分継続することができる。この期間中、表面保湿プレキャストコンクリートは、過度に高温、乾燥又は風の強い環境に曝されてはならない。もし1時間以上の空気乾燥時間が必要な場合は、表面保湿作業を遅らせるべきである。さもなければ、表面保湿プレキャストコンクリートをプラスチックシート又は同様の材料で覆い、炭酸化養生前に水分がさらに失われるのを防がなければならない。いくつかの実施形態では、気温は15~40℃の範囲、好ましくは約22℃である。相対湿度は、30%~90%の範囲、好ましくは約50%であってもよい。気流速度は、0.1m/s~100m/s、好ましくは約2m/sであってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、表面保湿プレキャストコンクリートは、炭酸化養生が行われる圧力室に入れられる。純度5~99.9%の二酸化炭素ガスを密封圧力室に導入する。コンクリートは、大気圧又は大気圧超のガスで硬化される。大気圧超の場合、圧力室内の二酸化炭素ガスの圧力は、少なくとも5分間、好ましくは2~24時間続く炭酸化養生工程中に0.07~0.689MPa(0.1~100psi)に調節される。
【0099】
[層状炭酸製品構造]
本明細書で議論したように、本開示の工程100は、炭酸プレキャストコンクリート製品の特定の機械的特性と耐久性、具体的には摩耗耐性と耐凍結性と融解耐性に好影響を与えることができる。したがって、このような工程100により、有益な特性を複合的に持つ製品を提供できる可能性がある。例えば、層状炭酸製品構造を調製することができる。本開示は、必要に応じて、所与の製品に複数の層を製造/使用することを企図する。炭酸製品は、製品又は構成に応じて外被と考えらえ得る少なくとも第1/外/最上層と、製品又は構成に応じて第2/内/最下/基材層と称され得る第2層と、を含有し得る。2つの層の組成は、結合材(本明細書では少なくとも複数の結合材を使用することが好ましいと考えるが)、骨材、混合配分、添加剤及び他の任意選択の構成要素に関して異なっていてもよい。さらに層の厚さは異なっていてもよく、したがってそれらの相対的なサイズ比率は異なっていてもよい。2つの層の特性は異なっていてもよく、第1/外/最上層は、第2/内/最下/基材層と比較して少なくとも1つの特性が改善されており、当該特性は、摩耗耐性と凍結耐性と融解耐性のうちの少なくとも1つである。
【0100】
図2に示すように、炭酸プレキャストコンクリート製品1の例示的な実施形態は、厚さが異なる2つの層10、20で構成され得る。最上部には、より高密度で強度/耐久性のあるプレキャストコンクリート層10がある。最上層10の下には基材層20がある。一実施形態では、最上層10の厚さは、コンクリート製品1の総厚の半分未満であってもよい。
【0101】
最上層の実施形態では、1)厚さは5~20mm、好ましくは6~13mmとすることができる。2)基材層20と同じ種類の結合材を使用してもよく、また基材層20とは異なる種類の結合材を使用することもできる。3)基材層20と同じ種類の結合材を使用する場合、最上層10は、結合材の含有量を基材層20と同じにしてもよいが、第1の水対結合材比はより大きい。また、最上層10は、結合材の含有量を基材層20よりも大きくしてもよいが、第1の水対結合材比は基材層20と同様か又はそれよりも大きい。このような配分手法は、炭酸プレキャストコンクリートの摩耗耐性の改善に有益である可能性がある。4)調整工程が完了した後に、任意に、上述した表面保湿ステップを、プレキャストコンクリートのこの層又は全部に適用することが推奨される。5)表面保湿ステップ214を適用する場合、吸湿工程を容易にするために、プレキャストコンクリート混合物に撥水性混和剤を添加してはならない。6)炭酸プレキャストコンクリート供用中の主な摩耗及び破損作用に耐えられる表面として設計されている。基材層20の実施形態は、1)結合材質量の少なくとも0.1%、好ましくは1.5~2.0%の撥水性混和剤を添加する。2)最上層10よりも結合材含有量を小さくして、材料費を節約する。3)密度の高い最上層10の二酸化炭素ガスの透過性の低下を補うために、質量比で水対結合材比が最上層10よりも低い。4)最上層10よりも厚い。撥水性混和剤の使用量が高いことにより、基材層20の凍結融解耐性と吸水性の両方を改善する可能性がある。また、寸法的に安定した基材を提供することができ、これは比較的薄い最上層の耐久性にとって重要であり得る。
【0102】
一実施形態では、以下を含む炭酸プレキャストコンクリート製品の製造方法が提供される。
【0103】
1)少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤と、を混合するステップであって、好ましくは、結合材は、セメントからなり、又は基本的にセメントからなり、又はセメントと鉄鋼スラグ若しくは他の炭酸化可能材料との比が約1:20~約20:1であるか、又はセメントと鉄鋼スラグ若しくは他の炭酸化可能材料との重量比が約20:1、若しくは約15:1若しくは約10:1若しくは約5:1であることを含む、ステップ。
【0104】
1A)少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤と、を混合して基材混合物を提供するステップであって、好ましくは、結合材は、鉄鋼スラグ及び/又は任意の他の炭酸化可能材料からなり、又は基本的に鉄鋼スラグからなり、又は鉄鋼スラグとセメントの比が約1:20~約20:1であることを含む、ステップ。
【0105】
当該ステップ1A)は、ステップ1)の前、同時又は後に行う。
【0106】
2)ステップ1)の混合した少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤と、を形成して、形成製品を提供するステップ。
【0107】
2A)当該基材混合物を形成して形成基材混合物を提供するステップであって、当該ステップ2A)をステップ2)の前、同時又は後に行うことができる、ステップ。
【0108】
ステップ1)と2)及び/又は1A)と2A)のうちの1つ以上を任意に繰り返し、任意に、当該混合した少なくとも1つの結合材料と、骨材と、水と、任意選択の添加剤と、の各々が、同じ又は異なる構成要素を同じ又は異なる比率で含むことができる、ステップ。
【0109】
3)ステップ2)及び2A)の形成製品を、第1の水対結合材比を有する成形製品に圧密するステップ。
【0110】
4)当該第1の水対結合材比を有するステップ3)の当該成形製品を脱型して、脱型製品を提供するステップ。
【0111】
5)ステップ4)の当該脱型製品を調整して、第1の水対結合材比を有する成形製品と比較して水の量が減少した調整脱型製品を提供するステップ。
【0112】
6)ステップ5)の当該調整脱型製品を二酸化炭素で養生するステップ。
【0113】
ここで図3を参照すると、基材層と最上層とを有する炭酸プレキャストコンクリート製品を製造するための工程300が提供されている。以下でより詳細に説明するように、工程300は、基材層(基材混合物)のための結合材と、骨材と、水と、混和剤と、他の添加剤と、を混合するステップ302a、及び最上層(最上又は外層混合物)のための結合材と、骨材と、水と、混和剤と、他の添加剤と、を混合するステップ302bを含む。ステップ304は、基材混合物からの基材層と、最上層混合物からの最上層と、を有するコンクリート製品(多層コンクリート製品)を形成して、多層成形中間体を得る。ステップ306は、多層成形中間体を圧密して、多層圧密中間体を得る。任意選択のステップ308は、多層圧密中間体の初期養生を実行する。ステップ310は、多層圧密中間体を脱型して、脱型多層中間体を得る。脱型多層中間体は、基材に対する第1の水対結合材比と、最上層に対する第2の水対結合材比と、を有する。ステップ312は、脱型多層中間体を調整して、調整多層物品を得る。調整多層物品の少なくとも最上層は、調整するステップ312中に水対結合材比が減少する。場合によっては、脱型多層中間体を調整するステップ312の後、基材層と最上層の両方の水対結合材比が、それぞれの第1の水対結合材比と第2の水対結合材比よりも減少する。ステップ314は、調整多層物品の少なくとも1つの表面(例えば最上層)を保湿して、保湿多層製品を得る。最上層を保湿するステップ314の後、最上層の第3の水対結合材比は、第2の水対結合材比よりも大きい。任意選択のステップ316は、保湿多層製品を空気乾燥する。そしてステップ318は、保湿多層製品を二酸化炭素で養生する。任意選択のステップは図3に破線で示されている。ステップ302a/302b~318の各々を、本明細書において以下でより詳細に説明する。
【0114】
図3は、二層炭酸プレキャストコンクリート製品300を製造する別の工程を示す。工程300を使用して多層製品を製造してもよい。工程300は、基材層20(図2)の構成要素を混合するステップ302aと、最上層10(図2)の構成要素を混合するステップ302bと、を含む。前述したように、基材層を混合するステップ302aと最上層を混合するステップ302bは、異なる結合材、異なる結合材含有量と異なる水対結合材比を使用してもよい。加えて、基材層20は、撥水性混和剤の使用量が比較的高くてもよい。最上層10には空気連行混和剤が推奨され、使用量は供給者によって変化する。ただし、基材層20には撥水性混和剤が広く使用されているため、基材層20には空気連行混和剤が必要でない場合がある。任意に、マイクロファイバーを0.2~0.5%(原材料の総量に対して)の使用量で添加することができる。マイクロファイバーを添加すると、ひび割れの可能性が減少するが、炭酸プレキャストコンクリートの摩耗耐性が増加する可能性がある。さらに、表面保湿ステップ314を実施する場合、最上層10は、撥水性混和剤を含まなくてもよい。別々にバッチ処理して混合した後、最上層10と基材層20の混合物を形成/成形ステーションに輸送する。次いで、必要な量と順序に従って2つの層を金型に加えることによって、形成するステップ304と、圧密するステップ306と、が続く。なお、最初に最上層の混合物を金型に加えることも、基材層の混合物を加えることもできることに留意すべきである。これら2つの層10、20の間で強力かつ耐久性のある接合を達成するために、第2の層の混合物を、水平であるが圧縮されていない第1の層の材料上に直ちに添加するべきである。これら2つの層間の接合をより良くするために、第1の層の上にメッシュを置くこと、又は第2の層を鋳造する前に第1の層の表面を粗くすることなどを含む他の技術を実施することができる。初期養生するステップ308は、図1を参照して上述したステップ108を参照して本明細書で説明したように任意に実行する。さらに、脱型するステップ310と調整するステップ312を、図1のステップ110と112を参照して上述した本明細書で説明したように実行する。調整するステップ312の後、プレキャストコンクリートは、最上層10がセメント系結合材、例えば水硬性セメントを含有する場合、表面保湿ステップ314を用いずに炭酸化養生するステップ318にかけることができる。そうでなければ、最上層10又はプレキャストコンクリート全体は、本明細書で上述した方法で表面保湿ステップ314を受ける。撥水性混和剤を多量に添加することにより、基材層20の疎水性が非常に強くなり、基材層20に対する表面保湿ステップ314が不要になり得る。表面を保湿するステップ314の後、必要に応じて、プレキャストコンクリートは、炭酸化養生するステップ318にかけられる前に、任意に空気乾燥するステップ316を短時間受けてもよい。この空気乾燥の継続時間と、空気乾燥の時間が1時間より長いときにとられる措置は、例えば図1のステップ116で前述したものと同じである。2層構造のプレキャストコンクリートを圧力室に装填し、次いでステップ318で炭酸化養生を行う。炭酸化養生するステップ318には、本明細書で記載した、例えば図1のステップ118に記載したような2層構造のプレキャストコンクリートのパラメータが含まれている。
【0115】
表面保湿段階を追加する以外に、十分な量の撥水性混和剤をプレキャストコンクリート混合物に添加することも、炭酸プレキャストコンクリートの凍結融解耐性を改善する効果的な方法である可能性がある。水又は除氷塩溶液が炭酸プレキャストコンクリートに浸透できなければ、凍結融解による損傷を防ぐことができる。十分な量の撥水性混和剤を添加することで、飽和状態での炭酸プレキャストコンクリートの吸水率が大幅に低下し、凍結融解耐性を改善する可能性がある。通常、プレキャストコンクリートへの撥水性混和剤の推奨使用量は、0.4%(結合材の質量基準)未満である。このように撥水性混和剤の使用量が低いと、コンクリートの凍結融解耐性に対して非常に限られた効果しか持たない可能性がある。本開示の工程は、撥水性混和剤の使用量を1.0%以上まで増加させてもよい。
【0116】
この撥水性混和剤の使用量が高い炭酸プレキャストコンクリートは、上述の表面保湿ステップを追加しなくても、凍結融解試験において良好な性能を発揮する可能性がある。
【0117】
ここで図4を参照すると、上述の2層構造設計は、3層構造2設計にさらに拡張することができる。この設計の最上部と最下部は、より高密度で強度/耐久性のあるプレキャストコンクリート層10である。これらの2つの層の間には、コア層30がある。最上及び最下層10のプレキャストコンクリートは、図2を参照して本明細書で上述した2層プレキャストコンクリート1の第1/外/最上層10と同じ方法で調製してもよい。コア層30は、図2を参照して本明細書で上述した2層構造設計1の第2/内/最下/基材層20の調製に使用されるものとは全く異なる原料源と混合設計を有していてもよい。このようなサンドイッチ設計は、耐久性の改善の上に曲げ性能の改善、バランスのとれた構造、調整及び炭酸化養生時間の短縮の可能性、並びに他の必要な機能の追加など、炭酸プレキャストコンクリートに多くの利益をもたらす可能性がある。図3に示す2層炭酸プレキャストコンクリートの製造工程300は、成形順序を若干変更することにより、3層炭酸プレキャストコンクリートでも採用することができる。したがって、3層以上の多層炭酸プレキャストコンクリート2を形成することができる。
【0118】
以下の実施例では、炭酸プレキャストコンクリート製品は、以下に列挙する原材料の一部又は全部を配合したものである。
・鉄鋼スラグ:EAFスラグとBOFスラグ(EBHスラグ)の混合物で、平均粒径(D50)が25μm、推定比重が3.3である。鉄鋼スラグは、累積ケイ酸カルシウム含有量が少なくとも約20%である。鉄鋼スラグは、酸化カルシウム含有量が少なくとも20%である。鉄鋼スラグは、二酸化ケイ素含有量が少なくとも約6%である。
・普通ポルトランドセメント:タイプI。
・水:水道水。
・骨材:比重2.7の砕石。4.76mm(No.4)ふるいを100%通過。含水率0.25%、吸水率0.75%。
・空気連行混和剤(AEA):BASF(登録商標)社製、製品名Micro Air。
・撥水性混和剤(WRA):BASF(登録商標)社製、製品名MasterPel 240。
・消石灰:四水酸化カルシウムマグネシウムの白色粉末で、DAP Canada社から供給されている。
・炭酸化養生には、純度>99.9%のシリンダ内の圧縮COが使用される。
【0119】
製造した炭酸プレキャストコンクリートの特性を評価し、セグメント擁壁ユニットのASTM C1372又はコンクリートインターロッキング舗装ユニットのASTM C936のいずれかの仕様と比較した。これらの実施例は、本開示の方法で作られた炭酸プレキャストコンクリートによって望ましい特性が得られ得ることを実証することのみを意図している。原材料と工程、並びに製品と用途は、実施例で示したものに限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]
以下の表1aと1bに示す混合設計でプレキャストコンクリート試料Aを調製した。
【0121】
【表1a】
【0122】
【表1b】
【0123】
原材料をミキサーで5分間混合し、成形し、圧縮振動下で所望の密度に圧密した。脱型後、プレキャストコンクリート試料Aを、市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で2時間調整し、当初含水率を50%低下させた。その後、試料Aを水に1秒間完全に浸漬して表面を保湿するステップを行い、重量を189g/m増加させた。次いで、表面保湿プレキャストコンクリートを周囲温度で約5分間空気乾燥してから、圧力室に装填して炭酸化養生を行った。炭酸化養生開始前の増量の増加は172g/mとなった。0.1MPa(15psi)の圧力に調節した二酸化炭素ガスを密封圧力室に導入した。炭酸化養生時間は24時間とした。炭酸化養生後、炭酸プレキャストコンクリートの以下の特性を評価した。
【0124】
密度、吸水量、圧縮強度-ASTM C140(ASTM、2018c)に準拠。
【0125】
凍結融解耐性-ASTM C1262に準拠。
【0126】
摩耗耐性-ASTM C944に準拠。
【0127】
凍結融解耐性試験では、炭酸プレキャストコンクリート試料の一部を3%NaCl溶液に浸漬し、凍結融解サイクルを40回繰り返し、10サイクルごとに遊離粒子を回収して塩水を交換した。ASTM C1372では、セグメント化されたコンクリート擁壁ユニットの凍結融解試験100サイクル後の累積質量減少が1%以下であることを要件としているが、この仕様は、除氷塩溶液ではなく水に一部を浸漬したコンクリート擁壁に対するものであると一般的には考えられている。コンクリートは、除氷塩溶液によって物理的及び化学的に複雑な変化を受けるため、凍結解凍工程にNaClのような除氷塩が存在するとき、より速い、より深刻な劣化が起こることが多い。この違いから、多くの州運輸省では、コンクリート擁壁の凍結融解試験において、3%NaClが存在するときの40サイクル後の累積質量減少が1%以下であることを合格基準として規定している。一般に、炭酸プレキャストコンクリートがこの基準を満たすことができる場合、水中での凍結融解試験100サイクル後の質量減少が1%以下であるという要件にも容易に適合するはずである。
【0128】
比較のために、試料Aと同一の配合で、表面保湿ステップを欠いた従来の炭酸プレキャストコンクリート試料Bを作製した。調整による水分の減少は56%であった。また、炭酸化養生後の物理的-機械的特性と耐久性を評価した。
【0129】
【表1c】
【0130】
【表2】
【0131】
試料AとBの両方の試験結果を表1cにまとめた。得られた試験結果をASTM C1372の仕様(表2)と比較する。表面保湿工程によって表面が強化されたため、試料Aは試料Bよりも凍結融解耐性と摩耗耐性がはるかに優れている。表面保湿ステップを行わない場合、炭酸プレキャストコンクリートは、凍結融解耐性が低いため、その他の特性はASTM C1372の要件を満たすものの、セグメント擁壁の用途には受け入れられない。表面強化効果により、試料Aは、コンクリートセグメント擁壁のASTM C1372の要件全てに適合するようになった。
【0132】
試料作製工程の異なる段階におけるプレキャストコンクリートの含水率をモニタリングし、その結果を図5に示した。プレキャストコンクリートの当初水分のおおよそ50%が調整工程の終了時に蒸発していた。表面保湿工程により、プレキャストコンクリートにある程度の水分が戻り、水分の減少は当初含水率の約40%となった。炭酸プレキャストコンクリートの内部と表面の品質又は凍結融解耐性を大きく改善するのは、平均含水率の変化ではなく、表面保湿工程後の含水率分布の変化であることがわかる。調整試料Bの厚さに沿って含水率を測定し、その結果を図6に示す。試料Bの最上面から最下面にかけて、含水率はわずかに歪んだベル曲線のように分布する。中心の含水率は3%であった。この含水率は、扇風機による調整工程の結果として、中心から外面に向かうにつれて減少し続ける。試料Bの最外部では、含水率は1%まで低下した。このように含水率が低いと、炭酸化反応には反応物として十分な水が必要なため、プレキャストコンクリートの炭酸化養生が不完全になる。このように外表面上での炭酸化養生が不完全であると、炭酸プレキャストコンクリートの表面が弱くなる。これが、試料Bが凍結融解耐性、摩耗耐性ともに非常に劣っていた理由である。
【0133】
プレキャストコンクリートの厚さに沿った含水率分布は、表面保湿工程によって完全に修正された。図6に示すように、水中浸漬後、プレキャストコンクリートの中心と外表面の含水率差は0.5%未満にまで狭められた。これは、試料の厚さ方向の水分分布がより均一化されたことを表している。さらに重要なことに、プレキャストコンクリートの外表面の含水率が、表面保湿工程後に当初の1%から約4%まで上昇した。実際、プレキャストコンクリートが最大限の炭酸化養生を達成するためには、約4%の含水率が最適値であると考えられている。プレキャストコンクリートの外表面とその近傍に十分な量の水分があることで、炭酸反応は最高のポテンシャルを発揮する。このため、炭酸プレキャストコンクリートの内部と表面の品質が改善された。これが、試料Aが試料Bよりも凍結融解変形と摩耗変形の両方についてはるかに耐性が高い理由である。
【0134】
[実施例2]
実施例1の配合と製造方法でプレキャストコンクリート試料を作製したが、表面保湿方法を変更した。調整プレキャストコンクリート試料を扇風機で2時間調整した後、水に浸漬する代わりに、5%セメント(すなわち混合組成が上記と同じポルトランドセメント)スラリー(試料C)又は5%消石灰スラリー(試料D)に1秒間浸漬した。調整による水分の減少は、それぞれ試料Cが56%、試料Dが55%である。表面保湿ステップ完了後の重量の増加は、それぞれ248g/mと234g/mであった。次いで、表面保湿試料を約6分間空気乾燥してから、0.1MPa(15psi)の圧力で24時間炭酸化養生した。炭酸プレキャストコンクリート試料の凍結融解耐性と摩耗耐性を試料Aと同じように評価し、結果を表3に記録した。従来の炭酸プレキャストコンクリート(表1の試料B)の試験結果と比較すると、提案した表面保湿ステップにより凍結融解耐性と摩耗耐性が改善したことは明らかである。
【0135】
【表3】
【0136】
[実施例3]
実施例1の配合と製造方法でプレキャストコンクリート試料を作製したが、表面保湿時間を長くした。調整プレキャストコンクリート試料を、水に1秒間浸漬する代わりに、水に3秒間(試料E)又は5秒間(試料F)浸漬した。扇風機の前で2時間調整した後、試料EとFは、それぞれ当初含水率の55%と54%を失った。表面保湿ステップ後、それぞれ重量が231g/mと222g/m増加した。表面保湿に続いて約6分の空気乾燥後、0.1MPa(15psi)圧力に調節した二酸化炭素ガスで24時間硬化させた。炭酸プレキャストコンクリート試料の摩耗耐性を試料Aと同じように評価し、結果を表4に記録した。従来の炭酸プレキャストコンクリート(表1の試料B)の試験結果と比較すると、表面保湿ステップを追加することにより摩耗耐性が改善したことは明らかである。
【0137】
【表4】
【0138】
[実施例4]
実施例1の配合と製造方法でプレキャストコンクリート試料を作製したが、表面保湿方法を変更した。調整プレキャストコンクリート試料を、水に浸漬する代わりに、25%セメントスラリー(試料G)又は25%消石灰スラリー(試料H)又は25%鉄鋼スラグスラリー(試料I)のいずれかに1秒間浸漬した。扇風機の前で2時間調整した後、試料G、H、Iはそれぞれ当初含水率の47%、50%、51%を失った。表面保湿ステップ後、それぞれ重量が213、268、258g/増加した。表面保湿に続いて約6分の空気乾燥後、0.1MPa(15psi)の圧力の二酸化炭素ガスで24時間硬化させた。炭酸プレキャストコンクリート試料の摩耗耐性を試料Aと同じように評価し、結果を表5に記録した。従来の炭酸プレキャストコンクリート(表1の試料B)の摩耗試験結果と比較すると、表面保湿ステップを追加したことにより摩耗耐性が改善したことは明らかである。加えて、セメント又は消石灰スラリーを使用するよりも鉄鋼スラグスラリーを使用する方が、炭酸プレキャストコンクリートの摩耗耐性の改善にはより効果的である。
【0139】
【表5】
【0140】
[実施例5]
以下に示す混合設計でプレキャストコンクリート試料を調製した。
【0141】
【表6a】
【0142】
【表6b】
【0143】
原料を一緒に混合し、形成し、次いで所望の密度に圧密した。脱型後、プレキャストコンクリート試料を、市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で2時間調整した。この調整工程により、試料J、試料Kともに53%の水分が減少し、試料L、試料Mともに49%の水分が減少した。その後、プレキャストコンクリート試料Jを水に5秒間完全に浸漬して表面保湿を行い、重量が245g/m増加した。プレキャストコンクリート試料K、L、Mを、それぞれ25%セメントスラリー、25%鉄鋼スラグスラリー、25%消石灰スラリーに5秒間完全に浸漬して表面保湿し、それぞれ重量が283、295、305g/m増加した。次いで、表面保湿プレキャストコンクリート試料を周囲温度で約10分間空気乾燥してから、圧力室に装填して炭酸化養生した。0.1MPa(15psi)の圧力に調節した二酸化炭素ガスを密封圧力室に導入した。炭酸化養生時間は24時間とした。炭酸化養生後、実施例1に記載の方法に従って、炭酸プレキャストコンクリート試料の密度、吸水量、圧縮強度、凍結融解耐性を評価した。得られた結果を表6cに記録した。表2に示すASTM C1372の仕様と比較すると、試料J、K、L、Mは全てが擁壁の用途に受け入れられる。これらの試料は、表面保湿ステップによって、従来の炭酸プレキャストコンクリート(表1の試料B)よりもはるかに高い凍結融解耐性を持つ。加えて、セメントスラリー又は水に浸漬することで、鉄鋼スラグ又は消石灰のスラリーに浸漬するよりも、炭酸プレキャストコンクリートの凍結融解耐性が高まる。さらに、表1の試料Aの凍結融解試験結果と試料Jの凍結融解試験結果を比較すると、水に1秒間だけ浸漬するよりも、水に5秒間浸漬した方が炭酸プレキャストコンクリートの凍結融解耐性が高くなる。
【0144】
【表6c】
【0145】
[実施例6]
以下に示す混合設計でプレキャストコンクリート試料Nを調製した。この混合設計の主な特徴は、二元結合材システム(鉄鋼スラグと普通ポルトランドセメントの併用)と共に、撥水性混和剤(WRA)の使用量が従来の0.2~0.4%から2.0%に増加したことである。
【0146】
【表7a】
【0147】
【表7b】
【0148】
原料を一緒に混合し、形成し、次いで所望の密度に圧密した。脱型後、プレキャストコンクリート試料Nを、市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で30分間調整し、水分が21%減少した。その後、このプレキャストコンクリート試料を直ちに圧力室に装填して炭酸化養生し、表面保湿は行わなかった。0.1MPa(15psi)の圧力に調節した二酸化炭素ガスを密封圧力室に導入した。炭酸化養生時間は24時間とした。炭酸化養生後、実施例1に記載の方法に従って、炭酸プレキャストコンクリート試料の密度、吸水量、圧縮強度、凍結融解耐性、摩耗耐性を評価した。得られた結果を表7cに記録した。表2に示すASTM C1372の仕様と比較すると、試料Nは、擁壁の用途に十分に受け入れられる。この試料Nは、従来の炭酸プレキャストコンクリート(表1の試料B)よりもはるかに優れた耐凍結融解耐性を持つ。表面保湿処理を施した炭酸プレキャストコンクリート(表1の試料A、表3の試料CとD、表6cの試料J、K、L、M)よりも凍結融解耐性が優れている。表7cの摩耗試験結果を表1の試料Bの摩耗耐性と比較すると、残念ながら、撥水性混和剤の使用量が多くても摩耗耐性の改善は得られない。
【0149】
【表7c】
【0150】
[実施例7]
90%の鉄鋼スラグと10%の普通ポルトランドセメントを含有する二元結合材組成の層状構造体を用いて試料Oを作製した。この炭酸プレキャストコンクリートは、コンクリート舗装材又は同様の用途のために設計されたものである。試料Oの最上層の厚さは6mmであった。基材層の厚さは24~45mmであり、必要な物性試験によって変化させた。試料Oの混合設計を以下に示す。
【0151】
【表8a】
【0152】
【表8b】
【0153】
最上層と基材層のコンクリート混合物を別々に調製した。全ての原材料を一緒に混合した後、基材層混合物を金型に形成し、平らにしてから最上層混合物を加えた。次いで、形成した材料を圧縮振動下で所望の密度に圧密した。脱型後、プレキャストコンクリート試料Oを、市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で2時間調整し、水分を36%減少させた。その後、プレキャストコンクリート試料Oの最上層部を水に3秒間浸漬して表面保湿を行い、重量を84g/m増加させた。次いで、表面保湿プレキャストコンクリートを周囲温度で約10分間空気乾燥してから、圧力室に装填して炭酸化養生した。0.1MPa(15psi)の圧力に調節した二酸化炭素ガスを密封圧力室に導入した。炭酸化養生時間は24時間とした。炭酸化養生後、炭酸プレキャストコンクリートの以下の特性を評価した。
【0154】
密度、含水率、吸水率、圧縮強度-ASTM C140に準拠。
【0155】
凍結融解耐性-ASTM C1645に準拠し、3%NaCl溶液を使用。
【0156】
摩耗耐性-ASTM C944に準拠。
【0157】
比較のために、試料Oの基材層の混合設計に非常に近い混合設計で、単層炭酸プレキャストコンクリート試料Pを作製した。唯一の違いは、試料Pの混合物は当初水対結合材比が0.11であるのに対し、試料Oの基材層の混合物は水対結合材比が0.13である点である。試料Pは、試料Nと同一の配分及び製造工程で作製した。炭酸化養生前に、市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で2時間調整し、水分を26%減少させた。試料Pの特性を、試料Oに用いた試験方法と同じ方法で評価した。試料OとPの両方の試験結果を表8cにまとめた。次いで、得られた試験結果を、表9に示すコンクリート舗装材についてのASTM C936の仕様と比較する。
【0158】
ASTM C936は、コンクリート舗装材の摩耗耐性を測定するサンドブラスト法(ASTM C418)を規定している。しかし、ASTM C418は複雑で入手しにくいという問題があるため、代替方法のASTM C944を選択して、試料OとPの摩耗耐性を評価することとした。
【0159】
試料OとPの摩耗耐性品質を判断するために、4つのコンクリート連動舗装ユニットと5つの異なる種類の舗装スラブを含む市販のコンクリート舗装材をホームデポから調達した。購入したコンクリート舗装材の摩耗耐性をASTM C944に準拠して試験した。試験した市販のコンクリート舗装材の中で摩擦による質量の減少が最も小さいものを、試料OとPの摩耗耐性を評価するためのベンチマークとして選択した。結果を表9に示す。
【0160】
層状構造のない試料Pは、摩耗耐性が非常に悪い。摩耗試験後の質量の減少は、試料Oの25倍である。また、試料Pは試料Oよりも強度がわずかに劣るが、吸水性と凍結融解耐性が優れている。ASTM C936の仕様と表9に示す市販のコンクリート舗装材の最良の摩耗耐性と比較して、試料Pは主に摩耗耐性が劣るため、コンクリート舗装材の用途には受け入れられない。逆に試料Oは、層状構造と表面保湿による表面強化効果により、市販のコンクリート舗装材の最高クラスとほぼ同等の摩耗耐性を有する(表9)。試料Oの吸水性、強度、凍結融解耐性は、ASTM C936の要件に適合している。試料Oがコンクリート舗装材の用途によく適していることは明らかである。
【0161】
【表8c】
【0162】
【表9】
【0163】
表8cから、試料Oは試料Pよりも凍結融解試験28サイクル後の質量減少が大きいことがわかる。このような結果は、試料Pに多量の撥水性混和剤を使用したことに起因する可能性がある。試料Oの上面は、表面保湿ステップを追加することで強化されるが、この表面強化効果は凍結融解耐性において高使用量の撥水性混和剤ほど効果的ではない可能性がある。それでも、試料Oの凍結融解による質量の減少は、コンクリート舗装材のASTM規格の最大許容範囲内である。
【0164】
[実施例8]
層状構造を使用して試料Qを作製し、結合材は鉄鋼スラグのみとした。この炭酸プレキャストコンクリートは、コンクリート舗装材又は同様の用途のために設計されたものである。試料Qの最上層の厚さは6mmである。試料Qの基材層の厚さは24~45mmであり、必要な物性試験によって変化させる。プレキャストコンクリート試料を、以下に示す混合設計で調製した。
【0165】
【表10a】
【0166】
【表10b】
【0167】
最上層と基材層のコンクリート混合物を別々に調製した。全ての原材料を一緒に混合した後、基材層混合物を金型に形成し、平らにしてから最上層混合物を加えた。次いで、形成した材料を圧縮振動下で所望の密度に圧密した。脱型後、プレキャストコンクリート試料Qを、市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で2時間調整し、当初含水率を41%低下させた。その後、プレキャストコンクリートの最上層部を水に3秒間浸漬して表面保湿を行い、吸水により重量を103g/m増加させた。次いで、表面保湿プレキャストコンクリートを周囲温度で約10分間空気乾燥してから、圧力室に装填して炭酸化養生した。0.1MPa(15psi)の圧力に調節した二酸化炭素ガスを密封圧力室に導入した。炭酸化養生時間は24時間であった。炭酸化養生後、炭酸プレキャストコンクリートの物理的-機械的特性と耐久性を実施例7に記載したように評価した。
【0168】
比較のために、試料Qの基材層と同一の配合で、表面保湿ステップを行わない単層炭酸プレキャストコンクリート試料Rを作製した。市販の扇風機の前で空気流量43m/分、室温で2時間調整した後、試料Rは当初含水率が47%低下した。試料Rの特性も評価した。試料QとRの両方の試験結果は表10cにまとめられている。
【0169】
層状構造と表面保湿ステップのない試料Rは、摩耗耐性が非常に悪い。摩耗試験後の質量の減少は、試料Qの9倍である。また、試料Rは試料Qよりも吸水性が高いが、強度は試料Qと同等であり、凍結融解耐性はわずかに優れている。ASTM C936の仕様と表9に示す市販のコンクリート舗装材の最良の摩耗耐性と比較して、試料Rは主に摩耗耐性が劣るため、コンクリート舗装材の用途には受け入れられない。逆に試料Qは、層状構造と表面保湿による表面強化効果により、市販のコンクリート舗装材の最高クラス(表9)よりも摩耗耐性が良好である。試料Qの吸水性、強度、凍結融解耐性は、ASTM C936の要件に適合している。試料Qがコンクリート舗装材の用途によく適していることは明らかである。
【0170】
【表10c】
【0171】
[参考文献]
以下の参考文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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【国際調査報告】