(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】動物用玩具又はブランケット
(51)【国際特許分類】
A01K 15/02 20060101AFI20230626BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230626BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230626BHJP
D03D 27/00 20060101ALI20230626BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20230626BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20230626BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20230626BHJP
D06M 17/04 20060101ALI20230626BHJP
A01K 1/015 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A01K15/02 B
D03D1/00 Z
D03D15/283
D03D27/00 Z
D04B1/22
D04B21/20 Z
D06M17/00 H
D06M17/04
A01K1/015 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573443
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021035083
(87)【国際公開番号】W WO2021247461
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521461247
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】バデ イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ジンディ ケヴィン
【テーマコード(参考)】
2B101
4L002
4L032
4L048
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101GB01
4L002BA00
4L002CA00
4L002EA00
4L002FA00
4L032AB01
4L032AB02
4L032AB03
4L032AC01
4L032BA00
4L032BA02
4L032DA00
4L048BA01
4L048CA01
4L048CA15
4L048DA00
4L048EB00
(57)【要約】
充填材料の芯材と、芯材を取り囲むキルト織物とを備える物品であって、織物は、70%~95%の間のカバーファクタ及び少なくとも600N/5cmの引張強度を有する第1の布地であって、芯材材料と接触する織布又は編布である、第1の布地と、接着剤によって第1の布地に接着される第2の布地であって、芯材から離れた第1の布地の側に位置する立毛布帛である、第2の布地と、少なくとも45cN/texのテナシティ及び10%以下の破断点伸び率を有する、織物の外面上の第1のキルティング糸と、少なくとも15cN/texのテナシティ及び10%を超える破断点伸び率を有する、織物の内面上の第2のキルティング糸と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材料の芯材と、前記芯材を取り囲むキルト織物とを備える物品であって、前記織物は、
70%~95%の間のカバーファクタ及び少なくとも600N/5cmの引張強度を有する第1の布地であって、前記芯材材料と接触する織布又は編布である、第1の布地と、
接着剤によって前記第1の布地に接着される第2の布地であって、前記芯材から離れた前記第1の布地の側に位置する立毛布帛である、第2の布地と、
少なくとも45cN/texのテナシティ及び10%以下の破断点伸び率を有する、前記織物の外面上の第1のキルティング糸と、
少なくとも15cN/texのテナシティ及び10%を超える破断点伸び率を有する、前記織物の内面上の第2のキルティング糸と、
少なくとも600Nの縫い目強度を有する縫い目と、
を備える、物品。
【請求項2】
前記織物は、1000Nを超える引張強度、80Nを超える引裂強度、及び100Nを超える穿刺抵抗を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第2のキルティング糸は前記第1のキルティング糸とは異なる、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1のキルティング糸は、p-アラミド、p-アラミドコポリマー、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、又はポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記第2のキルティング糸は、p-アラミド、p-アラミドコポリマー、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー若しくはポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)、ポリエステル、脂肪族ナイロン、又はセルロースである、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記第1の布地は、平織、朱子織、又は綾織の織布である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第1の布地は、ミラニーズ、ラッセル、トリコット、丸編み又は平編み布である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記第2の布地は編布又は織布である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記キルティングパターンは、少なくとも50mmの距離で離間される列の形態である、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記第1の布地は、75%~95%のカバーファクタを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記縫い目は少なくとも800Nの強度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記縫い目は地縫いである、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記芯材材料は、天然若しくは合成の詰め綿又は発泡ポリマー材料である、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記物品は、動物用玩具、動物用ベッド/マットレス、又は動物用ブランケットである、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記接着剤はゴムセメント又は食品用接着剤である、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記第1の布地は、80%~95%のカバーファクタを有する、請求項10に記載の物品。
【請求項17】
前記詰め綿は、ポリエステル、ナイロン、綿、又は羊毛である、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用玩具又はブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
Sacraへの米国特許第7,8708,39号明細書は、外側プラッシュ層と、それに隣接して位置決めされ、それに接着固定されていてもよい内側フリース層とを含む、柔軟で耐久性のあるペット用玩具を説明している。外層及び内層は、立体物のシェルを形成し、充填材がシェルを充填する。外層及び内層の縁部を接合する縫い目は、内側に折り畳まれ、物体内に収容される。縫い目は、網帯片で補強され、糸で緊結されて、可撓性の内部骨格フレームを形成する。かかるペット用玩具を作成するための方法も開示されている。
【0003】
Axelrodへの米国特許出願公開第2005/0053756号明細書は、改善された耐破断性及び耐引裂性を有する布、繊維、又はフィルムベースの動物用玩具が提供されることを教示している。動物用玩具は、圧縮性材料と、圧縮性材料の少なくとも一部の上に配設される布又はフィルム材料とを含む本体を含んでいる。布材は、50,000psi以上の引張強度及び/又は500,000psi以上のモジュラスを有する高強度繊維を含んでいる。フィルム材料は、20,000psi以上の引張強度、及び500,000psi以上のモジュラス値を有するフィルムを含んでいる。更に、使用される繊維及び/又はフィルムは、比較的高い一軸性又は二軸性ポリマー鎖配向の繊維及び/又はフィルム材料である。
【0004】
特に犬による噛み付き、引き裂き、引っ掻き等に対する改善された耐性を有する動物用玩具又はブランケットに対するニーズが依然として存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、充填材料の芯材と、芯材を取り囲むキルト織物とを備える物品であって、織物は、
70%~95%の間のカバーファクタ及び少なくとも600N/5cmの引張強度を有する第1の布地であって、芯材材料と接触する織布又は編布である、第1の布地と、
接着剤によって第1の布地に接着される第2の布地であって、芯材から離れた第1の布地の側に位置する立毛布帛である、第2の布地と、
少なくとも45cN/texのテナシティ及び10%以下の破断点伸び率を有する、織物の外面上の第1のキルティング糸と、
少なくとも15cN/texのテナシティ及び10%を超える破断点伸び率を有する、織物の内面上の第2のキルティング糸と、
少なくとも600Nの縫い目強度を有する縫い目と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
物品
図1の断面図に示すように、物品10は、充填材料の芯材11と、芯材を囲む織物12とを含んでいる。織物はキルティングされている。物品は、任意の特定の形状又は構成に限定されず、例示的な実施例は、ドッグボーン、リング、ボール、クッション、又はブランケットである。
【0008】
織物は、1000Nを超える引張強度、80Nを超える経糸及び緯糸の両方における引裂強度、並びに100Nを超える穿刺抵抗を有することが好ましい。
物品は、犬又は猫用玩具等の動物用玩具、動物用ベッド/マットレス、又は動物用ブランケットであることが好ましい。
【0009】
芯材
芯材11は、充填材(詰め物)を備えている。かかる材料は、比較的高い嵩密度を有することが好ましい。充填材は、ポリエステル、ナイロン、綿、羊毛等の天然又は合成の詰め綿(充填材)であってもよい。詰め物はまた、発泡ポリマー材料の形態であってもよい。詰め綿は、連続繊維、不連続繊維、カーディングした繊維、又は細断された材料を備えていてもよい。芯材は、更に、固形物又はノイズを発生させるアイテムを備えていてもよい。
【0010】
織物
図2は、引裂及び破裂に抵抗することができるキルト織物12の一実施形態の断面図である。織物は、2つの主要な構成要素として第1及び第2の布地を備えている。
【0011】
一実施形態において、第1の布地13は、70%~95%の間のカバーファクタと、少なくとも600N/5cmの引張強度とを有する。別の実施形態において、第1の布地は、75%~95%のカバーファクタを有する。更に別の実施形態において、第1の布地は、80%~95%のカバーファクタを有する。
【0012】
カバーファクタとは、糸によって覆われる布地の表面積の割合、即ち、(縦糸における縦糸の本数/100mm×sqrt(縦糸テックス)/1000)+(横糸における横糸の本数/100mm×sqrt(横糸テックス)/1000)-(縦糸における縦糸の数/100mm×sqrt(縦糸テックス)/1000×横糸における横糸の数/100mm×sqrt(横糸テックス)/1000)を意味する。Sqrtは平方根である。
【0013】
第1の布地13は、織布又は編布であってもよく、芯材11と接触している。織られた第1の布地は、平織、朱子織、又は綾織であることが好ましい。編布は、ミラニーズ、ラッセル、トリコット、丸編み、又は平編み等のスタイルの縦又は横編布のいずれかであってよい。第1の布地はフリースではない。
【0014】
第1の布地は、単一の布地層又は複数のサブコンポーネント布地層を備えていてもよい。
【0015】
第2の布地14は、接着剤15によって第1の布地13に接着され、第2の布地は、芯材11から離れた第1の布地の側に位置する立毛布帛である。立毛布帛は、織物工芸において十分に理解されている布地であり、ファスチアン織り又はベルベットのようなカットナップ又はパイルを有する。第2の布地は、編布又は織布であってもよい。第2の布地はまた、例えば毛皮を模倣するよう、着色又は印刷されてもよい。
【0016】
第2の布地は、単一の布地層又は複数のサブコンポーネント布地層を備えていてもよい。
【0017】
例示的な接着剤には、ゴムセメント、織物若しくは布地接着剤、又は食品用(食品安全)接着剤が含まれる。幾つかの実施形態において、食品用接着剤が好ましい。接着剤は、欧州連合(European Union)の化学物質の登録、評価、認可、及び制限(REACH)要件に準拠することが好ましい。
【0018】
更なる特徴は、織物がキルティングされていることである。
図2は、第1の布地13及び第2の布地14をそれぞれ通る好ましいキルトステッチ配置を示している。
【0019】
第1のキルティング糸16は、織物の外面上に位置し、少なくとも45cN/texのテナシティ及び10%以下の破断点伸び率を有する。
【0020】
第1のキルティング糸は、DuPont、Wilmington、DEから商品名KEVLARで入手可能なp-アラミド又はp-アラミドコポリマーであってもよい。他の好適な糸は、Honeywell International Inc.、Charlotte、NCから商品名SPECTRAによる超高分子量ポリエチレン、Kuraray America Inc.、Houston、TXからVECTRANTMとして入手可能な液晶ポリマー繊維、又は日本国大阪の東洋紡株式会社から商品名ZYLONで入手可能なポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維である。
【0021】
第2のキルティング糸17は、織物の内面上に位置し、少なくとも15cN/texのテナシティ及び10%を超える破断点伸び率を有する。
【0022】
第2のキルティング糸は、第1のキルティング糸と同じであっても又は異なっていてもよい。異なるとは、糸が異なる化学組成のものであるか、又は同じ組成である場合、異なる物理的特性を有することを意味する。第2のキルティング糸は、芳香族又は脂肪族ポリアミド及びそれらのコポリマー、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール、ポリエステル又はセルロース等の材料であってもよい。
【0023】
好ましい実施形態において、第1及び第2のキルティング糸は異なっている。
【0024】
好ましいステッチは、ステッチが、第1のキルティング糸の糸が、第1及び第2の布地の境界面において第2のキルティング糸の糸が第1の布地を通過して重なり合う第2の布地を通過することによって形成される、ロックステッチ(ISO#301)である。好ましい実施形態において、キルティングパターンは、少なくとも50mmの距離だけ離間する列又はパターンの形態である。
【0025】
物品の形成
業界で一般的に用いられる任意の適切な方法を用いて、物品を形成してもよい。
【0026】
縫い目スティッチング糸は、縫い目が少なくとも600Nの縫い目強度を有するようなものであることが好ましい。
【0027】
適切な縫い目ステッチは平編みであり、好ましくは二重縫いである。
【0028】
縫い目糸の例示的な糸種類は、芳香族又は脂肪族ポリアミド及びそのコポリマー、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール、ポリエステル又はセルロース等の材料の紡績糸又は連続フィラメント糸である。
【0029】
接着テープは、縫合された縫い目に加えて、又は代替の閉じ手段として用いることができる。
【0030】
試験方法
織物の引張強度を、DIN EN ISO 13934-1,2013に従って試験した。試験は、50mm×300mmの試料を10kNのロードセルにより100mm/分の速度で行った。
【0031】
織物の引裂強度を、DIN EN ISO 13937-2,2000に従って試験した。試験は、50mm×200mmの試料を10kNのロードセルにより100mm/分の速度で行った。
【0032】
織物の縫い目強度を、BS EN ISO 13935-2,2014に従って、50mm×300mmの試料で試験した。穿刺抵抗は、EN 388,2016に従って測定した。
【実施例】
【0033】
引き裂き、噛み付き等に耐える物品の性能は、織物の性能によって支配される。従って、織物試験は、物品がどのように機能するかについて表す。以下の実施例は、かかる織物アセンブリ及び試験を説明している。
【0034】
実施例1
100%ポリエステルから作製された編物立毛布帛、第2の布地は、200gsmの面重量を有していた。
【0035】
第1の布地は、経糸に20本/cm及び緯糸に11本/cmのピックカウントを有するオックスフォード織り綾織3/1布であった。布地は、27%のカバーファクタ及び240g/m2の面重量を有していた。布地の糸は667dtex(600デニール)のポリエステルであった。
【0036】
2つの布地を従来のカレンダ加工プロセスで組み立て、織物12を形成した。Shanghai AnYu Chemical Company Ltd.からのホットメルトポリウレタン布接着剤NEL-1019を用いて、2つの層の接着を補助した。このアセンブリを、玩具物品のシェルを製造するのに必要なパターンに切断した。
【0037】
次いで、織物をキルティングした。第1のキルティング糸16は、30/3の番手を有し、1.9dtex(1.7デニール)の100%Kevlar(登録商標)ステープル糸を備えていた。第2のキルティング糸17は、40/2の番手を有し、ポリエステル縫糸であった。キルティング機を1cm当たり4ステッチ(1インチ当たり10ステッチ)に設定した。
【0038】
織物の端部をロックステッチして縫い目を形成した。ロックステッチの2本の平行な線を3mm離して作製し、二重縫いした地縫いを形成した。接着テープも用いて、織物の縁部において第1及び第2の布地を更に接着した。第2の布地上の縫い目糸は、第1のキルティング糸に用いたものと同じKevlar(登録商標)ステープル糸であった。第1の布地の縫い糸は、第2のキルティング糸に用いたものと同じ40/2ポリエステル縫い糸であった。縫い目ミシンは、1cm当たり4ステッチ(1インチ当たり10ステッチ)に設定した。
【0039】
表1は試験結果を要約したものである。
【0040】
【国際調査報告】