(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】TIGITに対する抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230626BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230626BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230626BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230626BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230626BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230626BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K39/00 H
A61K45/00
C12P21/08
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573465
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021035268
(87)【国際公開番号】W WO2021247591
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518242226
【氏名又は名称】アーカス バイオサイエンシズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴティエ, ケルシー シビック
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー, ナイジェル ペラム クリントン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, シャオニン
(72)【発明者】
【氏名】リッピンコット, ジョン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA20
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA05
4C084AA19
4C084AA22
4C084NA05
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA03
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4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、TIGITに特異的に結合する抗体を提供する。抗体は、CD155へのTIGITの結合を阻害することによって、T細胞及びナチュラルキラー細胞を実質的に活性化する能力を有する。抗体は、他の用途の中でも、がん及び感染性疾患の治療に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)配列番号36に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1、配列番号37に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号39に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖(LC)CDR1、配列番号40に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号41に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(b)配列番号42に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号43に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号44に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号45に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号46に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号47に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(c)配列番号48に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号49に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号50に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号51に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号52に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号53に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(d)配列番号54に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号55に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号56に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号57に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号58に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号59に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(e)配列番号60に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号61に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号62に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号64に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(f)配列番号60に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号66に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(g)配列番号69に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号55に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号70に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号71に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(h)配列番号72に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号73に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、あるいは
(i)配列番号74に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号75に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、を含む、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
(a)配列番号36を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号37を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号38を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号39に対する同一性を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号40を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号41を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(b)配列番号42を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号43を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号44を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号45を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号46を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号47を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(c)配列番号48を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号49を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号50を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号51を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号52を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号53を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(d)配列番号54を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号55を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号56を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号57を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号58を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号59を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(e)配列番号60を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号61を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号62を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号64を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(f)配列番号60を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号66を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号67を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(g)配列番号69を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号55を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号70を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号71を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、
(h)配列番号72を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号73を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号67を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、あるいは
(i)配列番号74を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号75を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号67を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、を含む、請求項1に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(a)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号2に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(b)配列番号3に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(c)配列番号5に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号6に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(d)配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(e)配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(f)配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(g)配列番号13に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(h)配列番号15に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(i)配列番号17に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(j)配列番号76に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号77に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(k)配列番号78に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号77に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(l)配列番号76に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号79に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、あるいは
(m)配列番号78に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号79に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、を含む、請求項1又は2に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、モノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、キメラ、ヒト化、又はベニア化抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記キメラ抗体が、ヒトIgG1/カッパFab定常ドメインを含む、請求項5に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、ヒト抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、TIGITのCD155への結合を阻害し、任意選択的に、前記TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、実施例1のように測定される、約0.1nM~約10nM、約0.1nM~約5nM、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.4nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMのIC
50で結合を阻害する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体が、変異型ヒトIgG1、変異型ヒトIgG2、変異型ヒトIgG3、又は変異型ヒトIgG4から選択される変異型重鎖定常領域と、任意選択的に、ヒト軽鎖定常領域と、を更に含む、請求項1~5又は7~8のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記変異型重鎖定常領域が、野生型重鎖定常領域と比較して、増強又は低減したエフェクター機能を有する、請求項9に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記変異型ヒトIgG重鎖定常領域が、配列番号97、配列番号99、又は配列番号101を含む、請求項10に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体が、野生型ヒトIgG重鎖定常領域と、任意選択的に、ヒト軽鎖定常領域と、を更に含む、請求項1~5又は7~8のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
前記野生型ヒトIgG重鎖定常領域が、配列番号94を含む、請求項12に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
ヒト軽鎖カッパ定常領域を含み、任意選択的に、前記ヒト軽鎖定常領域が配列番号95を含む、請求項12又は13に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗体が、重鎖及び軽鎖を有し、
(a)前記重鎖は配列番号92を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、あるいは
(b)前記重鎖は配列番号96を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、あるいは
(c)前記重鎖は配列番号98を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、あるいは
(d)前記重鎖は配列番号100を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、請求項1~5又は7~8のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
前記抗体又はその結合断片が、
(a)表面プラズモン共鳴によって測定される、約0.01×10
-11M~約100×10
-11M、約0.1×10
-11M~約100×10
-11M、約0.1×10
-11M~約10×10
-11M、約1×10
-11M~約100×10
-11M又は約1×10
-11M~約10×10
-11Mの平衡結合定数(KD)を有する、
(b)実施例1のように測定される、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.6nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMの半数阻害濃度(IC50)で、細胞表面ヒトTIGITへの可溶性ヒトCD155リガンドの結合を遮断する、
(c)少なくともTIGITの次の残基を含むエピトープに結合する、
(i)配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、
(ii)配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、
(iii)配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つ、
(iv)配列番号80のE60、D72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つ、又は、
(v)配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82、あるいは
(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせである、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記抗体又はその抗原結合断片が、実請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、TIGITへの結合について競合する、請求項16に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
過剰の前記抗体又はその抗原結合断片が、競合結合アッセイにおいて測定するとき、参照抗体と、TIGITへの結合について少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%競合し、前記参照抗体は、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、請求項16又は17に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
ヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
TIGITのCD155への結合を阻害する方法であって、TIGITを、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む、方法。
【請求項21】
がんの治療又は効果的な予防の方法であって、がんを有する又はがんのリスクがある対象に、有効なレジメン又は治療有効量の、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片のうちのいずれか1つを投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記がんが、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、メルケル細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん、B細胞リンパ腫、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、消化管がん、膀胱がん、骨がん、骨髄、皮膚がん、胆嚢がん、心臓がん、肺がん、唾液腺がん、副腎がん、甲状腺がん、神経節がん、中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)のがん、並びに、造血系のがん、免疫系のがんである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象に、前記抗体又はその抗原結合断片によって活性化される腫瘍浸潤T細胞が投与される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象に、前記がんに対する免疫応答を誘導するワクチンが投与され、前記抗体又はその抗原結合断片によって増強される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ワクチンが、がん細胞の表面上に発現する抗原又はその断片を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象に、前記がんに対する細胞傷害性が前記抗体又はその抗原結合断片によって増強されるナチュラルキラー細胞が投与される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象に、がんの細胞の表面上に発現する抗原に対する第2の抗体が更に投与され、それによって、前記がんに対する前記第2の抗体のエフェクター媒介性細胞傷害性が、前記抗体又はその抗原結合断片によって増強される、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象に、免疫細胞の表面上に発現する抗原に対する第2の抗体が更に投与される、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫細胞が、T細胞又はナチュラルキラー細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗原が、CTLA-4、PD-1又はPD-L1である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項31】
前記対象に、化学療法、放射線、細胞系療法、及び手術からなる群から選択される1つ以上の治療法が更に施される、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象に、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドの阻害剤が更に投与される、請求項21~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、PVRIG、BTLA、VISTA、CD96、A
2aR,A
2bR、A
2a/A
2bR、アルギナーゼ、CD39、CD73、IDO、及びTDOからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ランブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項36】
配列番号80の次のアミノ酸残基、すなわち、T55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むヒトTIGITのエピトープに結合する、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項37】
前記抗体又はその抗原結合断片が、少なくともTIGITの次の残基、すなわち、
(i)配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、
(ii)配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、
(iii)配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つ、
(iv)配列番号80のE60、D72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つ、あるいは
(v)配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82、を含むエピトープに結合する、請求項36に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
前記抗体又はその抗原結合断片が、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、TIGITへの結合について競合する、請求項36又は37に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項39】
過剰の前記抗体又はその抗原結合断片が、競合結合アッセイにおいて測定するとき、参照抗体と、TIGITへの結合について少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%競合し、前記参照抗体は、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、請求項36又は37に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項40】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号80の次のアミノ酸残基、すなわち、T55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むヒトTIGITのエピトープに結合する、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提供されるのは、とりわけ、TIGITに特異的に結合する抗体、並びに、他の用途の中でも、がん及び感染性疾患の治療のためのその使用である。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月2日に出願された米国特許仮出願第63/033,609号の優先権を主張するものであり、この開示は、あらゆる図面を含むその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表の組み込み
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。050658_531001WO_Sequence_Listing_ST25と名付けられた添付の配列表テキストファイルは、2021年5月31日に作成され、143KBである。
【背景技術】
【0004】
腫瘍では、T細胞及びNK細胞の機能が細胞表面チェックポイント受容体によって調節され、がん細胞が免疫系を回避することを可能にする高度に抑制性の微小環境が存在する。細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)及びプログラム細胞死1(PD-1)などの抑制性チェックポイント受容体の機能的遮断は、患者にとって有望な結果をもたらしており、潜在的な干渉標的として作用し得る更なる共抑制性分子の探索において大きな関心が生じている。
【0005】
TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、細胞質側末端において免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を有する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、制御性T細胞(Treg)、活性化T細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞によって発現される共阻害受容体である。いくつかのグループが、様々な腫瘍において、CD8+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びTregでTIGIT発現が上昇したことを報告している。また、血液におけるHIV感染、及びリンパ組織におけるSIV感染中のエフェクターCD8+T細胞が、より高いレベルのTIGITを示すことも報告されている。更に、TIGITの遮断は、ヒトT細胞培養物における活性化活性、及び異なる腫瘍の動物モデルにおける治療的利益を示した。したがって、TIGITは、抗腫瘍免疫において重要な役割を果たし、がん並びに他の様々な疾患及び状態の管理に対する有望な治療標的として機能する可能性がある。したがって、有益な治療目的のためTIGIT結合を妨げ得る分子が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、とりわけ、抗TIGIT抗体に関する。
【0007】
本明細書で提供されるのは、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、(a)配列番号36に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1、配列番号37に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号39に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖(LC)CDR1、配列番号40に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号41に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(b)配列番号42に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号43に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号44に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号45に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号46に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号47に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(c)配列番号48に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号49に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号50に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号51に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号52に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号53に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(d)配列番号54に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号55に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号56に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号57に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号58に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号59に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(e)配列番号60に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号61に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号62に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号64に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(f)配列番号60に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号66に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(g)配列番号69に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号55に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号70に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号71に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(h)配列番号72に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号73に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、又は、(i)配列番号74に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号75に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、を含む、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号2に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(b)配列番号3に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(c)配列番号5に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号6に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(d)配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(e)配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(f)配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(g)配列番号13に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(h)配列番号15に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(i)配列番号17に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(j)配列番号76に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号77に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(k)配列番号78に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号77に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(l)配列番号76に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号79に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は、(m)配列番号78に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号79に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、を含む。
【0009】
本明細書に提供されるのは、TIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のE60、D72、及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載のCDRの構造的特徴及び可変配列を有する。
【0010】
本開示の抗TIGIT抗体は、単離された抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はベニア化抗体である。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒトIgG1/カッパFab定常ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、TIGITのCD155への結合を阻害する。
【0011】
本明細書に提供されるのは、本開示に記載の抗TIGIT抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物である。
【0012】
本明細書で提供されるのは、がんを有する又はがんのリスクがある対象に、有効なレジメン又は治療有効量の本開示に記載の任意の抗TIGIT抗体を投与することを含む、がんの治療又は効果的な予防の方法である。いくつかの実施形態では、がんは、血液がんである。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病又は成人T細胞白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍、非小細胞肺がん、黒色腫、子宮頸がん、多発性骨髄腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胃がん、胃食道接合部腺がん、又は食道がんである。いくつかの実施形態では、対象はまた、腫瘍浸潤T細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象はまた、がんに対する免疫応答を誘導するワクチンを投与される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、がん細胞の表面上に発現する抗原又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、対象はまた、がんに対する細胞傷害性が抗体によって増強されるナチュラルキラー細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は更に、がんの細胞の表面上に発現する抗原に特異的に結合する第2の抗体を投与され、それにより、がんに対する第2の抗体のエフェクター媒介性細胞傷害性が、本開示の抗TIGIT抗体によって増強される。いくつかの実施形態では、対象は更に、免疫細胞の表面上に発現する抗原に特異的に結合する第2の抗体を投与される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞又はナチュラルキラー細胞である。いくつかの実施形態では、抗原は、CTLA-4、PD-1又はPD-L1である。いくつかの実施形態では、対象は更に、化学療法、放射線、細胞系療法、及び手術からなる群から選択される1つ以上の治療法を施される。いくつかの実施形態では、対象に、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドの阻害剤が更に投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、PVRIG、BTLA、VISTA、CD96、A2aR,A2bR、A2a/A2bR、アルギナーゼ、CD39、CD73、IDO、及びTDOからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、A2aR,A2bR、A2a/A2bR、アルギナーゼ、CD39、及びCD73からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ランブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0013】
本明細書に提供されるのは、がんを有する対象に、治療有効量の本明細書に記載の抗TIGIT抗体のいずれかを投与することを含む、がんの治療を支援する方法である。いくつかの実施形態では、がんは、血液がんである。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病又は成人T細胞白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍、非小細胞肺がん、黒色腫、子宮頸がん、多発性骨髄腫、リンパ腫、非ホジキン(hon-hodgkin)リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胃がん、胃食道接合部腺がん、又は食道がんである。いくつかの実施形態では、対象はまた、抗体によって活性化される腫瘍浸潤T細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象はまた、抗体によって増強されるがんに対する免疫応答を誘導するワクチンを投与される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、がん細胞の表面上に発現する抗原又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、対象はまた、がんに対する細胞傷害性が本開示の抗TIGIT抗体によって増強されるナチュラルキラー細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象はまた、がんの細胞の表面上に発現する抗原に特異的に結合する第2の抗体を投与され、それにより、がんに対する第2の抗体のエフェクター媒介性細胞傷害性が、本開示の抗TIGIT抗体によって増強される。いくつかの実施形態では、対象は更に、免疫細胞の表面上に発現する抗原に特異的に結合する第2の抗体を投与される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞又はナチュラルキラー細胞である。いくつかの実施形態では、抗原は、CTLA-4、PD-1又はPD-L1である。いくつかの実施形態では、対象は更に、化学療法、放射線、細胞系療法、及び手術からなる群から選択される1つ以上の治療法を施される。いくつかの実施形態では、対象に、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドの阻害剤が更に投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、PVRIG、BTLA、VISTA、CD96、A2aR,A2bR、A2a/A2bR、アルギナーゼ、CD39、CD73、IDO、及びTDOからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、A2aR,A2bR、A2a/A2bR、アルギナーゼ、CD39、及びCD73からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ランブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0014】
本明細書に記載の態様及び実施形態の各々は、実施形態又は態様の文脈から明示的又は明確に除外されない限り、一緒に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】21F8の成熟VH(配列番号1)及び21F8の成熟VL(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号36)、HC-CDR2(配列番号37)、及びHC-CDR3(配列番号38)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号39)、LC-CDR2(配列番号40)、及びLC-CDR3(配列番号41)として特定される。
【
図1B】30M18の成熟VH(配列番号3)及び30M18の成熟VL(配列番号4)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号42)、HC-CDR2(配列番号43)、及びHC-CDR3(配列番号44)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号45)、LC-CDR2(配列番号46)、及びLC-CDR3(配列番号47)として特定される。
【
図1C】24F8の成熟VH(配列番号5)及び24F8の成熟VL(配列番号6)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号48)、HC-CDR2(配列番号49)、及びHC-CDR3(配列番号50)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号51)、LC-CDR2(配列番号52)、及びLC-CDR3(配列番号53)として特定される。
【
図1D】5J24の成熟VH(配列番号7)及び5J24の成熟VL(配列番号8)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号54)、HC-CDR2(配列番号55)、及びHC-CDR3(配列番号56)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号57)、LC-CDR2(配列番号58)、及びLC-CDR3(配列番号59)として特定される。
【
図1E】21B9の成熟VH(配列番号9)及び21B9の成熟VL(配列番号10)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号60)、HC-CDR2(配列番号61)、及びHC-CDR3(配列番号62)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号63)、LC-CDR2(配列番号64)、及びLC-CDR3(配列番号65)として特定される。
【
図1F】22B22の成熟VH(配列番号11)及び22B22の成熟VL(配列番号12)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号60)、HC-CDR2(配列番号66)、及びHC-CDR3(配列番号67)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号63)、LC-CDR2(配列番号68)、及びLC-CDR3(配列番号65)として特定される。
【
図1G】28P24の成熟VH(配列番号13)及び28P24の成熟VL(配列番号14)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号69)、HC-CDR2(配列番号55)、及びHC-CDR3(配列番号70)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号71)、LC-CDR2(配列番号68)、及びLC-CDR3(配列番号65)として特定される。
【
図1H】21B16の成熟VH(配列番号15)及び21B16の成熟VL(配列番号16)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号72)、HC-CDR2(配列番号73)、及びHC-CDR3(配列番号67)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号63)、LC-CDR2(配列番号68)、及びLC-CDR3(配列番号65)として特定される。
【
図1I】28O12の成熟VH(配列番号17)及び28O12の成熟VL(配列番号12)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号74)、HC-CDR2(配列番号75)、及びHC-CDR3(配列番号67)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号63)、LC-CDR2(配列番号68)、及びLC-CDR3(配列番号65)として特定される。
【
図1J】Hu24F8.1の成熟VH(配列番号76)及びHu24F8.1の成熟VL(配列番号77)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号48)、HC-CDR2(配列番号49)、及びHC-CDR3(配列番号50)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号51)、LC-CDR2(配列番号52)、及びLC-CDR3(配列番号53)として特定される。
【
図1K】Hu24F8.2の成熟VH(配列番号78)及びHu24F8.2の成熟VL(配列番号77)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号48)、HC-CDR2(配列番号49)、及びHC-CDR3(配列番号50)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号51)、LC-CDR2(配列番号52)、及びLC-CDR3(配列番号53)として特定される。
【
図1L】Hu24F8.3の成熟VH(配列番号78)及びHu24F8.3の成熟VL(配列番号79)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号48)、HC-CDR2(配列番号49)、及びHC-CDR3(配列番号50)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号51)、LC-CDR2(配列番号52)、及びLC-CDR3(配列番号53)として特定される。
【
図1M】Hu24F8.4の成熟VH(配列番号76)及びHu24F8.4の成熟VL(配列番号79)のアミノ酸配列を示す。VHのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、HC-CDR1(配列番号48)、HC-CDR2(配列番号49)、及びHC-CDR3(配列番号50)として特定される。VLのCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ下線が引かれ、LC-CDR1(配列番号51)、LC-CDR2(配列番号52)、及びLC-CDR3(配列番号53)として特定される。
【
図2】Ch24F8、Ch28O12、及びCh22B22が、カニクイザルCD4
+及びCD8
+細胞上に発現したcyno TIGITに結合できたことを示す。蛍光強度の幾何平均(gMFI)を得て、データをアイソタイプ対照に対するgMFIの倍率として示した。
【
図3A】ヒトTIGITを過剰発現するCHO-K1細胞へのヒト化抗TIGIT抗体の結合を示すグラフである。
【
図3B】カニクイザルTIGITを過剰発現するCHO-K1細胞へのヒト化抗TIGIT抗体の結合を示すグラフである。
【
図4A】マウスTIGITを過剰発現するCHO-K1細胞へのヒト化抗TIGITの結合を示すグラフである。
【
図4B】ラットTIGITを過剰発現するCHO-K1細胞へのヒト化抗TIGITの結合を示すグラフである。
【
図5A】ヒトの活性化されていないCD8
+T細胞へのヒト化抗TIGIT抗体の結合を示すグラフである。
【
図5B】ヒトの活性化CD8
+T細胞へのヒト化抗TIGIT抗体の結合を示すグラフである。
【
図6】ヒト化抗TIGIT抗体による、ヒトTIGITを過剰発現するCHO-K1細胞へのヒトCD155結合の阻害を示すグラフである。
【
図7】Jurkat Dual Reporter Cell Line Blockade Assayにおける、ヒト化抗TIGIT抗体によるヒトTIGITへのヒトCD155結合の阻害を示すグラフである。
【
図8】Fab24F8のTIGITへの結合を示す。
【
図9】Fab24F8と水素結合、塩架橋、及びファンデルワールス相互作用を有するTIGIT残基を示す。
【
図10A】TIGITへのCD155の結合がFab24F8によって遮断されることを示す。ヒトTIGIT(分子表面として表される)に結合したヒトCD155(リボン状)の複合体構造の概略図を示す。
【
図10B】TIGITへのCD155の結合がFab24F8によって遮断されることを示す。TIGITに結合したFab24F8(各々が分子表面によって表される)の結晶構造複合体の概略図上にある、
図10Aと同じ向きのCD155の重ね合わせ図を示す。
【
図11】Hu24F8.2-IgG1、AB122、AB122、及びHu24F8.2-IgG1、又はアイソタイプ対照の存在下における、1人の対象のSEAに対するIL-2応答を示す。バー及び誤差は、平均±標準誤差平均を示す。
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001、Sidakの多重比較検定を伴う一元配置分散分析(Hu24F8.2-IgG1対各濃度のIgG1、及びAB122+Hu24F8.2-IgG1対AB122単独又はHu24F8.2-IgG1単独)。
【
図12A】Hu24F8.2-IgG1又はアイソタイプ対照の存在下における、SEAに対する健康対象又はがん対象PBMCのIL-2応答を示す。各記号は個々の対象を表す。
*p<0.05、対応のあるt検定。
【
図12B】AB122及びHu24F8.2-IgG1と比較するAB122の存在下における、SEAに対する健康対象PBMCのIL-2応答を示す。各記号は個々の対象を表す。
*p<0.05、対応のあるt検定。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、とりわけ、TIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を提供する。本開示の抗体は、本明細書で「抗TIGIT抗体」とも称し、TIGITのCD155への結合を阻害し、それによってT細胞及び/又はNK細胞を活性化できる。抗体はまた、他の用途の中でも、がん及び感染性疾患の治療に使用できる。本開示の抗TIGIT抗体の追加の構造的及び機能的特徴を、以下で更に詳細に説明する。
【0017】
I.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術分野、表記、及び他の科学用語又は専門用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合において、一般に理解される意味を有する用語は、明確にするため及び/又はすぐに参照できるように本明細書で定義され、本明細書におけるそのような定義の包含は、当該技術分野で理解されているものに対する実質的な違いを表すものと必ずしも解釈されるものではない。本明細書で説明又は参照される技術及び手順の多くは、当業者によって従来の方法論を使用して十分に理解され、一般的に用いられる。
【0018】
「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈上他に明確に示されない限り、複数の指示を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、それらの混合物を含む1つ以上の細胞を含む。「A及び/又はB」は、本明細書では、以下の代替物:「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」の全てを含むように使用される。
【0019】
「抗体」という用語は、単一の抗原に特異的に結合するか、又は複数の抗原に特異的に結合する(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体などの多重特異性抗体)、完全な抗体及びその結合断片を含む。したがって、抗体へのいかなる言及も、文脈が別途必要としない限り、完全形の抗体又は結合断片を指すと理解されるべきである。本開示の文脈において企図される追加の機能(例えば、抗原結合)は、抗PD-1、抗PD-LI、抗TIM-3、抗LAG-3、抗PVRIG、抗VISTA、抗CTLA-4、抗4-1BB、抗BTLA、抗CD39、抗CD73、抗OX40L、及び抗OX40断片を含む。
【0020】
「抗原結合断片」と互換的に使用され得る「結合断片」という用語は、本明細書において、1つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成された抗体断片、又は抗原に特異的に結合するが、完全な天然抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を指す。抗原結合断片の例として、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、トリアボディ、テトラボディ、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体、多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ミニボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、IgNAR、V-NAR、及びhcIgGが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、結合断片は、特異的結合について由来する完全な抗体と競合する。結合断片は、組換えDNA技術によって、又は完全な免疫グロブリンの酵素的又は化学的分離によって生成することができる。
【0021】
抗体に関する「Fab」とは、ジスルフィド結合によって単一の重鎖の可変領域及び第1の定常領域に結合した単一の軽鎖(可変領域及び定常領域の両方)からなる抗体の部分を指す。
【0022】
「Fab’」は、ヒンジ領域の一部を含むFab断片を指す。
【0023】
「F(ab’)2」は、Fab’の二量体を指す。
【0024】
抗体に関する「Fc」とは、ジスルフィド結合を介して第2の重鎖の第2及び第3の定常領域に結合した第1の重鎖の第2及び第3の定常領域からなる抗体の部分を指す。抗体のFc部分は、ADCC及びCDCなどの様々なエフェクター機能に関与するが、抗原結合において機能しない。
【0025】
抗体に関する「Fv」とは、完全な抗原結合部位を有する抗体の最小の断片を指す。Fv断片は、単一の重鎖の可変領域に結合した単一の軽鎖の可変領域からなる。
【0026】
「単鎖Fv抗体」又は「scFv」は、直接又はペプチドリンカー配列を介して互いに連結した軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる遺伝子操作された抗体を指す(Huston J.S.et al.,Proc Natl Acad Sci USA,85:5879(1988))。
【0027】
「単鎖Fv-Fc抗体」又は「scFv-Fc」は、抗体のFc領域に連結したscFvからなる遺伝子操作された抗体を指す。
【0028】
「ラクダ化された単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体」、又は「HCAb」は、2つのVHを含有し、軽鎖を含まない抗体を指す(Riechmann L.and Muyldermans S.,J Immunol Methods.December 10;231(1-2):25-38(1999);Muyldermans S.,J Biotechnol.June;74(4):277-302(2001);国際公開第94/04678号;同94/25591号;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体は、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、及びラマ)に由来した。軽鎖がないが、ラクダ化抗体は、標準的な抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C.et al.,Nature.June 3;363(6428):446-8(1993);Nguyen V.K.et al.「Heavy-chain antibodies in Camelidae;a case of evolutionary innovation,」Immunogenetics.April;54(1):39-47(2002);Nguyen V.K.et al.Immunology.May;109(1):93-101(2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって生成される最小の既知の抗原結合ユニットを表す(Koch-Nolte F.et al.,FASEB J.November;21(13):3490-8.Epub 2007 Jun.15(2007))。
【0029】
「ナノボディ」は、重鎖抗体由来のVHHドメイン、並びに2つの定常ドメイン、CH2及びCH3からなる抗体断片を指す。
【0030】
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を含み、断片は、同一ポリペプチド鎖中のVLドメインに連結したVHドメイン(VH-VL又はVL-VH)を含む(例えば、Holliger P.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.July 15;90(14):6444-8(1993);EP404097;国際公開第93/11161号)。同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、強制的に別の鎖の相補ドメインと対になり、それによって2つの抗原結合部位を作成する。抗原結合部位は、同じ又は異なる抗原(又はエピトープ)を標的とすることができる。
【0031】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含有する抗体断片を指す。場合によっては、2つ以上のVHドメインは、ペプチドリンカーと共有結合して、二価又は多価ドメイン抗体を作成する。二価ドメイン抗体の2つのVHドメインは、同じ又は異なる抗原を標的とすることができる。
【0032】
特定の実施形態では、「(dsFv)2」は、3つのペプチド鎖:ペプチドリンカーによって連結され、ジスルフィド架橋によって2つのVL部分に結合した2つのVH部分を含む。
【0033】
特定の実施形態では、「二重特異性dsダイアボディ」は、VL1-VH2(ペプチドリンカーによって連結)に、VH1とVL1との間のジスルフィド架橋を介して結合したVH1-VL2(これもペプチドリンカーによって連結)を含む。
【0034】
特定の実施形態では、「二重特異性dsFv」又はdsFv-dsFv’」は、3つのペプチド鎖:重鎖がペプチドリンカー(例えば、長い可動性リンカー)によって連結し、それぞれジスルフィド架橋を介して、VL1及びVL2部分に結合したVH1-VH2部分を含み、各ジスルフィド対重鎖及び軽鎖は、異なる抗原特異性を有する。
【0035】
特定の実施形態では、「scFv二量体」は、別のVH-VL部分と共に二量体化されたVH-VL(ペプチドリンカーによって連結)を含む二価ダイアボディ又は二価ScFv(BsFv)であり、1つの部分のVHが別の部分のVLと配位、同じ抗原(又はエピトープ)又は異なる抗原(又はエピトープ)を標的とすることができる2つの結合部位を形成する。他の実施形態では、「scFv二量体」は、VL1-VH2(ペプチドリンカーによって連結)と関連付けられたVH1-VL2(これもペプチドリンカーによって連結)を含む二重特異性ダイアボディであり、VH1及びVL1が配位し、VH2及びVL2が配位し、各配位した対は異なる抗原特異性を有する。「単離された」抗体は、その自然環境の構成成分から分離されているものである。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、当該技術分野で既知の方法によって決定されるように、95%超又は99%超の純度に精製される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、例えば、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一のコピー又はクローン由来の抗体を指す。「モノクローナル抗体」は、任意の特定の方法によって産生された抗体に限定されない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、並びに組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、又はそのような技術の組み合わせ、及び当技術分野で容易に既知の他の技術を使用して生成することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト及び非ヒト(例えば、マウス又はラット)の両方の抗体由来の配列を含む抗体を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、抗体が、ヒト又はヒト免疫細胞によって産生される、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用するトランスジェニック非ヒト動物などの非ヒト源に由来する抗体のものに対応する、アミノ酸配列、特に抗原結合残基を有するか、又はそれらからなることを意味する。特定の実施形態では、完全ヒト抗体は、非ヒト抗体に由来するアミノ酸残基(特に抗原結合残基)を含まない。
【0039】
例えば、天然の完全な抗体によって例示されるような基本の抗体構造単位は、サブユニットの四量体である。各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対を含み、各対は、1つの「軽」(約25kDa)鎖及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110個又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。この可変領域は、まずは、切断可能なシグナルペプチドと連結されている状態で発現される。シグナルペプチドのない可変領域は、成熟可変領域と呼ばれることもある。したがって、例えば、軽鎖成熟可変領域は、軽鎖シグナルペプチドのない軽鎖可変領域を意味する。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を定義する。
【0040】
軽鎖はカッパ又はラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEとして定義する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖はまた、約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。(一般的に、Fundamental Immunology(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.、1989)、第7章を参照)(全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる)。
【0041】
各軽鎖/重鎖対の成熟可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、完全な天然抗体は、2つの同一の結合部位を有する、二重特異性抗体は、2つの非同一の結合部位を有する、三重特異性抗体は、3つの非同一の結合部位を有する重鎖及び軽鎖の成熟可変領域は全て、相補性決定領域又はCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって結合された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対の2本の鎖からのCDRは、フレームワーク領域によって整列され、特定のエピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端まで、軽鎖及び重鎖の両方が、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、MD、1987及び1991)、又はChothia & Lesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、Chothiaら、Nature 342:878-883(1989)の定義に従う。Kabatはまた、広く使用されている番号付け規則(Kabat番号付け)を提供し、この規則では、異なる重鎖間又は異なる軽鎖間の対応する残基に同じ番号が割り当てられる。
【0042】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、1つ以上のタンパク質の三次元フォールディングによって並置された連続アミノ酸又は非連続アミノ酸から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープ(線状エピトープとしても知られる)は、通常、変性溶媒への曝露時に保持されるのに対し、三次元フォールディングによって形成されるエピトープ(立体配座エピトープとしても知られる)は、通常、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、通常、固有の空間的立体配座において、少なくとも3個、より通常は少なくとも5個、又は8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体配座を決定する方法は、例えば、X線結晶解析及び2次元核磁気共鳴を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols、Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい。
【0043】
同じ又は重複するエピトープを認識する抗体は、1つの抗体が別の抗体の標的抗原への結合と競合する能力を示す単純な免疫測定法において同定することができる。抗体のエピトープはまた、接触残基を同定するために、その抗原に結合した抗体のX線結晶解析によって定義することができる。あるいは、一方の抗体の結合を減少又は排除する抗原における全てのアミノ酸変異が、他方の結合を減少又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を減少又は排除する全てではないが一部のアミノ酸変異が、他方の結合を減少又は排除する場合、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0044】
抗体間の競合は、試験条件下の抗体が共通抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイによって決定される(例えば、Junghansら、Cancer Res.50:1495,1990を参照)。過剰の試験抗体(例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又はそれ以上、これらの値の間に含まれる数を含む)が、参照抗体の結合を少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%、90%、又は99%阻害する場合、試験抗体は参照抗体と競合する。他の実施形態では、競合結合アッセイにおいて測定するとき、過剰の試験抗体が、参照抗体の結合を少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれかで阻害する場合、試験抗体は参照抗体と競合する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体と、立体障害が生じるために参照抗体によって結合されたエピトープに十分に近くにある隣接エピトープに結合する抗体とを含む。参照抗体は、治療用抗体候補と同様の機能を有する市販のモノクローナル抗体、対象となる標的タンパク質と機能的に相互作用するポリクローナル抗体、又はパブリックドメインにおいて利用可能な配列から再構成された抗体であり得る。例えば、限定するものではないが、TIGITに結合する参照抗体は、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」及び「特異的に結合する」という用語は、抗原(例えば、TIGIT)と抗体との間の結合など、測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、抗原に特異的に結合する抗体は、他の抗原に結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、及び/又はより長い持続時間でこの標的に結合する抗体である。抗原に対する親和性及び分子の平衡解離定数(KD)は反比例する。抗原に対する高い親和性は、低いKD値によって測定される。本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定される、10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下の抗原に対するKD;又は、10-6M~10-13M、若しくは10-9M~10-13M、若しくは10-9M~10-12M、若しくは10-10M~10-13M、若しくは10-10M~10-12M、若しくは10-11M~10-13M、若しくは10-10M~10-11M、若しくは10-11M~10-12Mの範囲のKDを有する。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、任意の他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、分子が特定のポリペプチド上の特定のポリペプチド又はエピトープに結合する結合を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「個体」又は「対象」は、ヒト(例えば、ヒト個体)及び非ヒト動物などの動物を含む。いくつかの実施形態では、「個体」又は「対象」は、医師の治療下の患者である。したがって、対象は、目的の疾患(例えば、がん)、及び/又はその疾患の1つ以上の症状を有する、又はそれを有するリスクがある、又はそれを有する疑いがある、ヒト患者又は個体であり得る。対象はまた、診断時以降に目的の状態のリスクを有すると診断された個体であり得る。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、非ヒト霊長類、及び、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリなどの他の哺乳動物、及び、両生類、爬虫類などの非哺乳動物が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される場合、参照アミノ酸配列のアミノ酸残基と「対応する」又は「対応している」又は「対応した」目的のアミノ酸配列のアミノ酸残基は、目的の配列のアミノ酸残基が、参照アミノ酸配列中の列挙された残基と相同又は同等の場所にあることを示す。当業者は、TIGITポリペプチドなどのポリペプチド中の特定のアミノ酸残基位置が、相同参照配列に対応するかどうかを決定することができる。例えば、TIGITポリペプチドの配列は、既知の技術(例えば、basic local alignment search tool(BLAST)、ClustalW2、Structure based sequences alignment program(STRAP)など)を使用して参照配列の配列と整列させることができる。更に、参照配列の結晶構造座標は、相同ポリペプチド残基の三次元構造の決定支援として使用され得る(Stengel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109:5399-5404,2012)。別の態様では、同等の残基は、三次構造のレベルで相同性を決定することによって特定することができる。そのような方法を使用すると、TIGITポリペプチド変異体のアミノ酸残基は、参照配列の対応するアミノ酸残基位置の番号付けに従って番号付けされ得る。例えば、配列番号80のアミノ酸配列は、目的のヒトTIGIT変異体又はエピトープの各アミノ酸残基のアミノ酸残基位置の番号付けを決定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、1つのアミノ酸配列が、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を共有する場合、別のアミノ酸配列に対応する。
【0048】
アミノ酸置換を保存的又は非保存的に分類する目的で、アミノ酸は次のようにグループ分けされる:グループI(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile、グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr、グループIII(酸性側鎖):asp、glu、グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg、グループV(鎖配向に影響する残基):gly、pro、及び、グループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換には、同じクラスのアミノ酸間の置換が含まれる。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換する性質のものである。
【0049】
配列同一性のパーセンテージは、Kabat番号付け規則によって最大限に整列された抗体配列で決定される。整列後、対象抗体領域(例えば、重鎖又は軽鎖の成熟可変領域全体)を参照抗体の同じ領域と比較する場合、対象と参照抗体領域との間の配列同一性のパーセンテージは、対象抗体領域及び参照抗体領域の両方で同じアミノ酸によって占有される位置の数を、ギャップがカウントされていない2つの領域の整列された位置の総数で割り、100を乗算してパーセンテージに変換したものである。
【0050】
1つ以上の列挙された要素を「含む(comprising)」若しくは「含む(including)」(又はその任意の文法的変化型)組成物又は方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含んでもよい。例えば、抗体を含む組成物は、抗体を単独で、又は他の成分と組み合わせて含んでもよい。
【0051】
ある特定の範囲は、数値に「約」という用語が先行して本明細書に提示される。「約」という用語は、本明細書では、近似という元々の意味を有し、それが先行する正確な数、及びその用語が先行する数の付近又は近似である数の逐語的な支持を提供するために使用される。数が具体的に列挙された数の付近又は近似であるかどうかを決定する際に、付近又は近似である列挙されていない数は、数が提示される文脈において、具体的に列挙された数の実質的な同等物を提供する数であり得る。例えば、近似度が文脈から明らかではない場合、「約」は、提供された値の±10%以内、又は最も近い有効数字に丸められるかのいずれかを意味し、全ての場合において提供された値を含む。範囲が提供される場合、それらは境界値を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」及びその任意の文法的変化型は、広範な用語であり、ほぼ全面的又は大部分であるが、完全ではないことを非限定的に含む、その通常の意味で使用される。例えば、この用語は、100%完全な数値でなくてもよい数値を指し得、数値は、完全な数値の0.1%未満、0.5%未満、約1%未満、約2%未満、約3%未満、約4%未満、約5%未満、約6%未満、約7%未満、約8%未満、約9%未満、約10%未満、約11%未満、約12%未満、約13%未満、約14%未満、約15%未満、約16%未満、約17%未満、約18%未満、約19%未満、又は約20%未満であり得る。例えば、対象抗体又はその抗原結合断片が、対応する参照抗体又はその抗原結合断片に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の配列同一性を有するとき、対象抗体又はその抗原結合断片は、対応する参照抗体又はその抗原結合断片に実質的に由来し得る。別の例では、対象抗体中のCDRが、参照抗体中の対応するCDRに対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の配列同一性を有するとき、対象抗体中のCDRは、参照抗体中の対応するCDRに実質的に由来し得る。更に別の例では、限定するものではないが、対象抗体中のCDRにおいて、参照抗体中の対応するCDRに対して、2つ以下のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されているとき、対象抗体中のCDRは、参照抗体中の対応するCDRに実質的に由来し得る。
【0053】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適な部分組み合わせで提供され得る。本開示に関連する実施形態の全ての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、それぞれ及び全ての組み合わせが個別にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。更に、様々な実施形態及びその要素の全ての部分組み合わせもまた、本開示によって具体的に包含され、本明細書にはそれぞれ及び全てのそのような部分組み合わせが個別にかつ明示的に本明細書に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0054】
II.標的分子
別段の指示がない限り、TIGITは、ヒトTIGIT(hTIGIT)を意味する。cyno TIGIT又はcTIGITは、カニクイザルTIGITを指す。
【0055】
代表的なhTIGIT配列は、Swiss-Protアクセッション番号Q495A1が割り当てられている。完全なhTIGIT配列は、アミノ酸1~21がシグナルペプチドであり、22~244が成熟タンパク質(配列番号81)を構成する244アミノ酸(配列番号80)を有する。およそ残基22~141は、hTIGITの細胞外ドメイン(配列番号82)を構成する。およそ残基142~162は、hTIGITの膜貫通ドメインを構成し、およそ残基163~244は、hTIGITの細胞質ドメインを構成する。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインhTIGITは、HISタグ付き(配列番号83)である。代表的なcyno TIGIT配列は、Swiss-Prot A0A2K5UW92が割り当てられている。完全なcynoTIGIT配列は、312個のアミノ酸(配列番号84)を有する。いくつかの実施形態では、cynoTIGITの細胞外ドメインは、HISタグ付き(配列番号85)である。
【0056】
特に指示がない限り、CD155は、このタンパク質のヒト形態を指す。ヒトCD155の代表的なヒト配列はSwiss-Prot P15151であり、これは、417アミノ酸のタンパク質であり、そのおよそ残基1~20はシグナルペプチドであり、21~343は細胞外ドメイン(配列番号86)を構成し、344~367は膜貫通ドメインを構成し、368~417は細胞質ドメインを構成する。
【0057】
文脈から別途明らかでない限り、上記のタンパク質のうちの1つへの言及は、少なくともタンパク質の細胞外ドメイン、及び通常は切断可能なシグナルペプチド以外の完全なタンパク質を意味する。
【0058】
III.本開示の抗体
A.結合特異性及び機能的特性
本開示は、TIGITに特異的に結合する抗体、より具体的にはTIGITタンパク質の細胞外ドメイン内のエピトープを提供する。特定の実施形態では、本開示の抗TIGIT抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、10
-8M以下(例えば、10
-8、10
-9、10
-10など)のTIGITのKDを有する。様々な実施形態では、本開示の抗TIGIT抗体は、約1×10
-9M~約1×10
-13M、又は約1×10
-9M~約1×10
-12M、又は約1×10
-10M~約1×10
-13M、又は約1×10
-10M~約1×10
-12M、又は約1×10
-11M~約1×10
-13M、又は約1×10
-10M~約1×10
-11M、又は約1×10
-11M~約1×10
-12Mの範囲内のTIGITに対するKDを有する。21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、及び28O12と称される抗体は、9つのそのような代表的なマウス抗体である。Ch22B22、Ch21B16、Ch28O12、Ch5J24、Ch21B9、Ch24F8、及びCh30M18と称される抗体は、7つのそのような代表的なキメラ抗体である。Hu24F8.1、Hu24F8.2、Hu24F8.3及びHu24F8.4と称される抗体は、代表的なヒト化抗体である。マウス及びヒト化抗体の重鎖及び軽鎖成熟可変領域及びCDRの配列を、表1及び表2にそれぞれ示す。
【表1】
【表2】
【0059】
本開示のいくつかの抗体は、21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、若しくは28O12と称する抗体、又はHu24F8.1、Hu24F8.2、Hu24F8.3、若しくはHu24F8.4と称する抗体と同じ又は重複するエピトープに結合する。そのような結合特異性を有する他の抗体は、マウスを、TIGIT又は所望のエピトープを含むその一部で免疫化し、任意選択的に21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、28O12、Hu24F8.1、Hu24F8.2、Hu24F8.3、又はHu24F8.4との競合において、TIGITの細胞外ドメインへの結合について得られた抗体をスクリーニングすることによって生成され得る。抗体はまた、TIGIT抗原の変異誘発形態に対してスクリーニングされ、突然変異変化群に対して21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、28O12、Hu24F8.1、Hu24F8.2、Hu24F8.3、又はHu24F8.4と同じ又は同様の結合プロファイルを示す抗体を特定することができる。変異は、TIGIT抗体の細胞外ドメイン全体に、又はエピトープが存在することが知られているセクション全体に、一度に1つの残基、又はより広く離間した間隔で、アラニン(又は既にアラニンが存在する場合はセリン)により系統的に置換することができる。いくつかの実施形態では、本開示のいくつかの抗体は、TIGITの次のエピトープ残基、すなわち、配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの少なくとも1つに結合する。いくつかの実施形態では、本開示のいくつかの抗体は、TIGITの次のエピトープ残基、すなわち、配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する。いくつかの実施形態では、本開示のいくつかの抗体は、TIGITの次のエピトープ残基、すなわち、T55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82に結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、配列番号80のE60、D72、及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する。
【0060】
選択されたマウス抗体(例えば、21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、又は28O12)、又は選択されたヒト化抗体(例えば、Hu24F8.1、Hu24F8.2、Hu24F8.3、又はHu24F8.4)の結合特異性を有する抗体はまた、ファージディスプレイ法の変法を使用して生成することもできる。Winter、国際公開第92/20791号を参照されたい。この方法は、ヒト抗体の産生に特に好適である。この方法では、選択されたマウス抗体の重鎖又は軽鎖可変領域のいずれかを、出発物質として使用する。例えば、軽鎖可変領域が出発物質として選択される場合、メンバーが、同じ軽鎖可変領域(すなわち、マウス出発物質)及び異なる重鎖可変領域を提示するファージライブラリーが構築される。重鎖可変領域は、例えば、再構成したヒト重鎖可変領域のライブラリーから得ることができる。TIGITに対する強い特異的結合(例えば、少なくとも108、又は少なくとも109M-1)、を示すファージを選択する。続いて、このファージ由来の重鎖可変領域は、更なるファージライブラリーを構築するための出発物質として機能する。このライブラリーでは、各ファージは、同じ重鎖可変領域(すなわち、第1のディスプレイライブラリーから同定された領域)及び異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、例えば、再構成したヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得ることができる。この場合も、TIGITに対する強い特異的結合を示すファージが選択される。得られた抗体は通常、マウス出発物質と同じ又は同様のエピトープ特異性を有する。
【0061】
いくつかの抗体は、mAb 21F8に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 30M18に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 24F8に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 5J24に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 21B9に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 22B22に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 28P24に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 21B16に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。いくつかの抗体は、mAb 28O12に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域を有する。CDRは、以下の表3に示されるように、Kabat、Chothia、Kabat及びChothia混合、AbM又はContact定義を含む任意の従来の定義によって規定され得る。
【表3】
【0062】
他の抗体は、21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、又は28O12などの、代表的な抗体の重鎖及び軽鎖をコードするcDNAの突然変異誘発によって得ることができる。成熟重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のアミノ酸配列において、21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、若しくは28O12と、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%のいずれかで同一であり、その機能的特性を維持している抗体、並びに/又は、少数の機能的に重要度が低いアミノ酸置換(例えば、保存的置換)、欠失、又は挿入によってそれぞれの抗体とは異なる抗体もまた、本開示に含まれる。結合にとって重要である可能性が高い可変領域フレームワーク中のアミノ酸は、以下のヒト化のセクションに記載されているように特定することができる。21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、又は28O12の対応するCDRと、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のいずれかで同一である、Kabatによって定義される、少なくとも1つ、及びいくつかの実施形態では、6つ全てのCDRを有する抗体も含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態では、抗体は、次の特徴、すなわち、(i)ヒトCD155へのヒトTIGITの結合を阻害する、(ii)CD112及びCD113などの他のリガンドへのTIGITの結合を阻害する、(iii)抗原特異的T細胞応答を亢進する、(iv)ナチュラルキラー細胞を活性化する、(v)内因性のT細胞活性化を刺激する、並びに(vi)T細胞及び免疫系の他の細胞による1つ以上の免疫刺激性サイトカインの生成を刺激する及び/又は1つ以上の免疫抑制サイトカインの生成を低下する、のうちの1つ以上を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、CD155へのTIGITの結合を完全に又は部分的に阻害する。本開示の抗TIGIT抗体は、実施例1のように測定される、約0.1nM~約10nM、又は約0.1nM~約8nM、又は約0.1nM~約5nM、又は約0.1nM~約4nM、又は約0.1nM~約3nM、又は約0.1nM~約2nM、又は約0.1nM~約1nMの半数阻害濃度(IC50)で、このような相互作用を阻害できる。特定の実施形態では、本開示のいくつかの抗TIGIT抗体は、実施例1のように測定される、約0.1nM~約2nM、又は約0.2nM~約2nMのIC50で、CD155へのTIGITの結合を阻害できる。特定の実施形態では、本開示のいくつかの抗TIGIT抗体は、実施例1のように測定される、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.4nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMのIC50で、CD155へのTIGITの結合を阻害できる。いくつかの抗体は、実施例1のように測定される、約25~300ng/mL、25~75ng/mL、25~50ng/mL、40~75ng/mL、50~75ng/mL、50~90ng/mL、50~100ng/mL、75~100ng/mL、50~150、75~175ng/mL、100~200ng/mL、125~225ng/mL、100~250ng/mL、150~300ng/mL、175~250ng/mL、200~300ng/mL、25~275ng/mL、250~300ng/mL、49+/-10%ng/mL、65+/-10%ng/mL、又は76+/-10%ng/mLのうちいずれかの半数阻害濃度((IC50)で、このような相互作用を阻害できる。他の実施形態では、抗体は、少なくとも約25ng/mL、50ng/mL、75ng/mL、100ng/mL、125ng/mL、150ng/mL、175ng/mL、200ng/mL、225ng/mL、250ng/mL、275ng/mL、又は300ng/mL、又はそれ以上(これらの値の間に含まれる濃度数を含む)のうちいずれかのIC50で、CD155へのTIGITの結合を完全に又は部分的に阻害できる。更に、いくつかの抗体は、1.5~3倍、例えば約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3倍、又はそれ以上のうちいずれか、抗原特異的T細胞応答を亢進できる。あるいは又は加えて、いくつかの抗体は、1.5~3倍、例えば約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3倍、又はそれ以上のうちいずれか、NK細胞及び/又はT細胞によるIL-2、IL-6、TNFα及びIFNγのうち1つ、2つ、3つ、又は全ての産生を増加できる。あるいは又は加えて、いくつかの抗体は、1.5~3倍、例えば約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3倍、又はそれ以上のうちいずれか、内因性T細胞活性化を亢進できる。あるいは又は加えて、いくつかの抗体は、動物モデル又は臨床試験において示されるように、がん又は感染性疾患を阻害できる。ヒトがん細胞をマウス又はラットなどの免疫不全実験動物に注入するがんの動物モデルは、広く利用可能である。
【0065】
例示的な実施形態では、抗体は、TIGITに特異的に結合し、抗体24F8に完全に又は実質的に由来する、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む成熟重鎖可変領域と、LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む成熟軽鎖領域とを含む。様々な実施形態では、抗体は、(i)表面プラズモン共鳴によって測定される、約0.01×10-11M~約100×10-11M、約0.1×10-11M~約100×10-11M、約0.1×10-11M~約10×10-11M、約1×10-11M~約100×10-11Mの平衡結合定数(KD)を有する、及び/又は(ii)実施例1のように測定される、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.4nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMの半数阻害濃度(IC50)で、細胞表面ヒトTIGITへの可溶性ヒトCD155リガンドの結合を遮断する、ことができる。あるいは、又は上記若しくはこれらの組み合わせの個々の結合及び遮断特性に加えて、いくつかの実施形態では、抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、(i)配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(ii)配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(iii)配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つ、(iv)配列番号80のE60、D72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つ、又は(v)配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82を含む、エピトープに結合する。
【0066】
抗体のヒト化又はキメラ化により、出発したマウス抗体に対してインビボ半減期が増加する。得られた半減期は、例えばヒトにおいて10~50日であり得る。半減期は、Kim et al,Eur J of Immunol 24:542(1994)によって記載されているような薬物動態研究によって測定することができる。
【0067】
B.非ヒト抗体
TIGITに対する他の非ヒト抗体、例えば、マウス、モルモット、霊長類、ウサギ、ニワトリ又はラットの産生は、例えば、動物をTIGIT若しくはその断片、又はTIGITを有する細胞で免疫化することによって達成することができる。Harlow & Lane、Antibodies、A Laboratory Manual(CSHP NY、1988)(参照により全ての目的のために組み込まれる)を参照されたい。このような免疫原は、天然源から、ペプチド合成によって、又は組換え発現によって得ることができる。任意選択的に、免疫原は、担体タンパク質と融合されるか又は他の方法で複合体化されて投与され得る。任意選択的に、免疫原は、アジュバントと共に投与することができる。以下に記載されるように、いくつかの種類のアジュバントを使用することができる。実験動物の免疫化には、完全フロイントアジュバントとそれに続く不完全アジュバントを使用できる。ウサギ又はモルモットは、典型的には、ポリクローナル抗体を作製するために使用される。マウスは、典型的には、モノクローナル抗体を作製するために使用される。抗体は、TIGITへの特異的結合についてスクリーニングされる。任意選択的に、抗体は、TIGITの特定の領域への結合について更にスクリーニングされる。そのようなスクリーニングは、TIGITの一連の欠失変異体に対する抗体の結合を決定し、どの欠失変異体が抗体に結合するかを決定することによって達成することができる。結合は、例えば、ウエスタンブロット、FACS、又はELISAによって評価することができる。
【0068】
C.ヒト化抗体
HAMA(ヒト抗マウス(ヒト抗ラット又はヒト抗ウサギ又はヒト抗ハムスターなどにも適用可能)抗体)応答の低減又は排除は、好適な治療薬の臨床開発の重要な要素である。例えば、Khaxzaeli et al.,J.Natl.Cancer Inst.(1988),80:937;Jaffers et al.,Transplantation(1986),41:572;Shawler et al.,J.Immunol.(1985),135:1530;Sears et al.,J.Biol.Response Mod.(1984),3:138;Miller et al.,Blood(1983),62:988;Hakimi et al.,J.Immunol.(1991),147:1352;Reichmann et al.,Nature(1988),332:323;Junghans et al.,Cancer Res.(1990),50:1495を参照されたい。本明細書に記載されるように、本開示は、HAMA応答が低減又は排除されるようにヒト化された抗体を提供する。これらの抗体の変異体は、当該技術分野で既知の通常の方法を使用して更に得ることができ、そのいくつかを以下に更に記載する。
【0069】
ヒト化抗体は、非ヒト「ドナー」抗体からのCDRがヒト「アクセプター」抗体配列に移植される、遺伝子操作された抗体である(例えば、Queen、米国特許第5,530,101号及び同第5,585,089号、Winter、米国特許第5,225,539号、Carter、米国特許第6,407,213号、Adair、米国特許第5,859,205号、同6,881,557号、Foote、米国特許第6,881,557号参照)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、そのような配列の複合体、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、又は生殖細胞系列領域配列であり得る。したがって、ヒト化抗体は、完全に又は実質的にドナー抗体由来の一部又は全てのCDRと、存在する場合に完全に又は実質的にヒト抗体配列由来の可変領域フレームワーク配列及び定常領域とを有する抗体である。同様に、ヒト化重鎖は、完全に又は実質的にドナー抗体重鎖由来の少なくとも1つ、2つ、通常は3つ全てのCDRと、存在する場合に実質的にヒト重鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列由来の重鎖可変領域フレームワーク配列及び重鎖定常領域とを有する。同様に、ヒト化軽鎖は、完全に又は実質的にドナー抗体軽鎖由来の少なくとも1つ、2つ、通常は3つ全てのCDRと、存在する場合に実質的にヒト軽鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列由来の軽鎖可変領域フレームワーク配列及び軽鎖定常領域とを有する。本出願の他の箇所のようにここでは、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の対応する残基(Kabatによる定義)が、それぞれのCDR間で同一であるとき、対象抗体中のCDRは、参照抗体中の対応するCDRに実質的に由来し、しかしながら、少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の対応する残基(Kabatによる定義)が、それぞれのCDR間で同一であるとき、対象抗体中のKabatにより定義されるCDR H2は、参照抗体中の対応するCDRに実質的に由来する。抗体鎖の可変領域フレームワーク配列又は抗体鎖の定常領域は、Kabatによって定義された対応する残基の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が同一である場合、それぞれ、実質的にヒト可変領域フレームワーク配列又はヒト定常領域に由来する。
【0070】
ヒト化抗体は、多くの場合、非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の6つ全てのCDR(例えば、Kabatによって定義される)を組み込むが、それらは、非ヒト抗体由来の全てのCDR(例えば、少なくとも3、4、又は5つの)CDRより少ない数で作製することもできる(例えば、Pascalis et al.,J.Immunol.169:3076,2002;Vajdos et al.,Journal of Molecular Biology,320:415-428,2002;Iwahashi et al.,Mol.Immunol.36:1079-1091,1999;Tamura et al,Journal of Immunology,164:1432-1441,2000)。
【0071】
いくつかの抗体では、CDRの一部のみ、すなわちSDRと呼ばれる結合に必要なCDR残基のサブセットは、ヒト化抗体において結合を保持するために必要である。抗原に接触しておらず、かつSDR中にないCDR残基は、Chothiaの超可変ループ(Chothia,J.Mol.Biol.196:901,1987)の外側にあるKabat CDRの領域から、分子モデリング及び/若しくは経験的に、又はGonzales et al.,Mol.Immunol.41:863,2004に記載されているように、これまでの研究に基づいて同定することができる(例えば、CDR H2中の残基H60~H65は多くの場合必要ではない)。1つ以上のドナーCDR残基が存在しないか、又はドナーCDR全体が省略されている位置でのそのようなヒト化抗体では、その位置を占めるアミノ酸は、アクセプター抗体配列における対応する位置(Kabat番号付けによる)を占めるアミノ酸であり得る。含めるべきCDR中のドナーアミノ酸に対するアクセプターのそのような置換の数は、競合する考慮事項のバランスを反映する。そのような置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させ、結果として潜在的な免疫原性を減少させるのに有利である可能性がある。しかしながら、置換もまた親和性の変化を引き起こす可能性があり、親和性の顕著な低下を回避することができる。CDR内の置換の位置及び置換すべきアミノ酸もまた、経験的に選択することができる。
【0072】
アクセプターは、ヒト免疫グロブリン又はヒトコンセンサスフレームワーク由来であるかどうかに関わらず、選択されたヒトフレームワーク配列と配列において同一であり得るが、本開示は、アクセプター配列がヒト免疫グロブリン配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に対する既存のアミノ酸置換を含み得ることを企図する。これらの既存の置換は、最低限であり得、一般に、ヒト免疫グロブリン配列又はコンセンサスフレームワーク配列と比較して、4つ、3つ、2つ、又は1つのみのアミノ酸の違いがある。
【0073】
ヒトアクセプター抗体配列は、多くの既知のヒト抗体配列の中から任意選択的に選択されて、ヒトアクセプター配列可変領域フレームワークとドナー抗体鎖の対応する可変領域フレームワークとの間の、高度の配列同一性(例えば、65~85%同一)を提供することができる。
【0074】
ヒト可変領域フレームワーク残基由来の特定のアミノ酸は、CDR立体配座及び/又は抗原への結合に対するそれらの可能な影響に基づいて置換について選択することができる。そのような可能な影響の探索は、モデリング、特定の位置におけるアミノ酸の特徴の研究、又は特定のアミノ酸の置換若しくは突然変異誘発の影響の経験的観察による。
【0075】
例えば、アミノ酸が非ヒト可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なる場合、そのアミノ酸が、
(1) 抗原に直接共有結合しない、
(2) CDR領域に隣接する、
(3) そうでなければ、CDR領域と相互作用する(例えば、CDR領域の約6Å以内である)とき、ヒトフレームワークアミノ酸は、非ヒト抗体由来の同等のフレームワークアミノ酸によって置換され得る。
【0076】
置換についての他の候補は、その位置においてヒト免疫グロブリンにとっては通常ではないアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、非ヒトドナー抗体の同等の位置由来、又はより典型的なヒト免疫グロブリンの同等の位置由来のアミノ酸で置換され得る。置換についての他の候補は、その位置においてヒト免疫グロブリンにとっては通常ではないアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。
【0077】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、ゼロ~2個のアミノ酸置換又は欠失を有する配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1と、ゼロ~2個のアミノ酸置換又は欠失を有する配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR2と、ゼロ~2個のアミノ酸置換又は欠失を有する配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR3と、GenBankアクセッション番号AAV40102.1のフレームワーク領域又はGenBankアクセッション番号ADX65334.1のフレームワーク領域と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するフレームワーク領域と、を含む成熟重鎖可変領域を有し、ゼロ~2個のアミノ酸置換又は欠失を有する配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1と、ゼロ~2個のアミノ酸置換又は欠失を有する配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2と、ゼロ~2個のアミノ酸置換又は欠失を有する配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR3と、GenBankアクセッション番号ACY78416.1のフレームワーク領域又はGenBankアクセッション番号ADU32611.1のフレームワーク領域と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するフレームワーク領域と、を含む成熟軽鎖可変領域を有する。AAV40102.1、ADX65334.1、ACY78416.1、及びADU32611.1のフレームワーク領域は、Kabat定義に従って決定され、実施例2参照、又は配列番号76~79参照であり、AAV40102.1、ADX65334.1、ACY78416.1、及びADU32611.1及びドナーCDRのフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、成熟重鎖可変領域は、重鎖定常領域の少なくとも一部に連結され、成熟軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域の少なくとも一部に連結されている。いくつかの実施形態では、完全長抗体の発現のために、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に連結され、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に連結されている。適切な定常領域は、セクションIII(F)において更に詳細に記載されている。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、機能的FcγR結合能を有する。なお更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号94を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる(comprises of consists of)。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、低下した機能的FcγR結合能を有する。更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号97を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。なお更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号101を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、増強した機能的FcγR結合能を有する。更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号99を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。
【0078】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、配列番号76に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号77に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを有する。いくつかの実施形態では、任意の変異は、結合にとって重要であり得ると特定されたもの以外の可変領域フレームワーク残基で生じる。いくつかの実施形態では、任意の変異は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号76を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号77を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。本開示のHu24F8.1抗体は、配列番号76の配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号77の配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。上記のいくつかの実施形態では、成熟重鎖可変領域は、重鎖定常領域の少なくとも一部に連結され、成熟軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域の少なくとも一部に連結されている。いくつかの実施形態では、完全長抗体の発現のために、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に連結され、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に連結されている。適切な定常領域は、セクションIII(F)において更に詳細に記載されている。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導することができる。なお更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号94を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導しない。
【0079】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、配列番号78に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号77に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを有する。いくつかの実施形態では、任意の変異は、結合にとって重要であり得ると特定されたもの以外の可変領域フレームワーク残基で生じる。いくつかの実施形態では、任意の変異は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号78を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号77を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。本開示のHu24F8.2抗体は、配列番号78の配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号77の配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。上記のいくつかの実施形態では、成熟重鎖可変領域は、重鎖定常領域の少なくとも一部に連結され、成熟軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域の少なくとも一部に連結されている。いくつかの実施形態では、完全長抗体の発現のために、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に連結され、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に連結されている。適切な定常領域は、セクションIII(F)において更に詳細に記載されている。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導することができる。なお更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号94を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導しない。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号97を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号101を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、増強したFcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号99を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。
【0080】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、配列番号76に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号79に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを有する。いくつかの実施形態では、任意の変異は、結合にとって重要であり得ると特定されたもの以外の可変領域フレームワーク残基で生じる。いくつかの実施形態では、任意の変異は、保存的アミノ酸置換である。任意選択的に、抗体は、配列番号76を含む配列を有する重鎖可変領域と、配列番号79を含む配列を有する軽鎖可変領域とを含む。本開示のHu24F8.3抗体は、配列番号78の配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号79の配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。上記のいくつかの実施形態では、成熟重鎖可変領域は、重鎖定常領域の少なくとも一部に連結され、成熟軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域の少なくとも一部に連結されている。いくつかの実施形態では、完全長抗体の発現のために、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に連結され、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に連結されている。適切な定常領域は、セクションIII(F)において更に詳細に記載されている。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導することができる。なお更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号94を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導しない。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号97を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号101を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、増強したFcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号99を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。
【0081】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、配列番号78に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号79に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%未満の同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを有する。いくつかの実施形態では、任意の変異は、結合にとって重要であり得ると特定されたもの以外の可変領域フレームワーク残基で生じる。いくつかの実施形態では、任意の変異は、保存的アミノ酸置換である。任意選択的に、抗体は、配列番号78を含む配列を有する重鎖可変領域と、配列番号79を含む配列を有する軽鎖可変領域とを含む。本開示のHu24F8.4抗体は、配列番号76の配列を有する成熟重鎖可変領域と、配列番号79の配列を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。上記のいくつかの実施形態では、成熟重鎖可変領域は、重鎖定常領域の少なくとも一部に連結され、成熟軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域の少なくとも一部に連結されている。いくつかの実施形態では、完全長抗体の発現のために、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に連結され、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に連結されている。適切な定常領域は、セクションIII(F)において更に詳細に記載されている。上記の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導することができる。なお更なる実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号94を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、Fcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導しない。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号97を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号101を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。他の実施形態では、重鎖定常領域は、市販の抗体依存性細胞媒介性傷害を報告するバイオアッセイキットにおいて製造元の指示に従って測定するとき、増強したFcγ受容体(FcγR)媒介シグナル伝達を誘導する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号99を含むか又はそれからなり、軽鎖定常領域は、配列番号95を含むか又はそれからなる。
【0082】
上記それぞれについて更なる実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、(i)表面プラズモン共鳴によって測定される、約0.01×10-11M~約100×10-11M、約0.1×10-11M~約100×10-11M、約0.1×10-11M~約10×10-11M、約1×10-11M~約100×10-11M、若しくは更に約1×10-11M~約10×10-11Mの平衡結合定数(KD)を有する、及び/又は(ii)実施例1のように測定される、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.4nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMの半数阻害濃度(IC50)で、細胞表面ヒトTIGITへの可溶性ヒトCD155リガンドの結合を遮断する、ことができる。あるいは、又は上記若しくはこれらの組み合わせの個々の結合及び遮断特性に加えて、いくつかの実施形態では、ヒト化抗TIGIT抗体は、少なくともTIGITの次のアミノ酸残基、すなわち、(i)配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(ii)配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(iii)配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つ、(iv)配列番号80のE60、D72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つ、又は(v)配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82を含む、エピトープに結合する。
【0083】
D.キメラ及びベニア化抗体
本開示は更に、実施例のキメラ及びベニア形態の非ヒト抗体、特に21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、及び28O12抗体を提供する。
【0084】
キメラ抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス)の軽鎖及び重鎖の成熟可変領域が、ヒト軽鎖及び重鎖定常領域と組み合わされている抗体である。このような抗体は、非ヒト抗体の結合特異性を実質的に又は完全に保持し、約3分の2のヒト配列である。
【0085】
ベニア化抗体は、CDRの一部、通常は全て、及び非ヒト抗体の非ヒト可変領域フレームワーク残基の一部を保持するが、B細胞エピトープ又はT細胞エピトープに寄与し得る他の可変領域フレームワーク残基、例えば、曝露された残基(Padlan、Mol.Immunol.28:489、1991)をヒト抗体配列の対応する位置からの残基で置き換えるヒト化抗体の一種である。その結果、CDRが完全に又は実質的に非ヒト抗体に由来し、非ヒト抗体の可変領域フレームワークが、置換によってよりヒト様になる抗体が得られる。21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、又は28O12抗体のベニア化形態が本開示に含まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス可変ドメインとヒトIgG1/カッパ定常ドメインとを有するマウスヒトキメラである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス21F8VH(配列番号1)及び21F8VL(配列番号2)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch21F8)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス30M18VH(配列番号3)及び30M18VL(配列番号4)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch30M18)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス24F8VH(配列番号5)及び24F8VL(配列番号6)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch24F8)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス5J24VH(配列番号7)及び5J24VL(配列番号8)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch5J24)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス21B9VH(配列番号9)及び21B9VL(配列番号10)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch21B9)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス22B22VH(配列番号11)及び22B22VL(配列番号12)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch22B22)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス28P24VH(配列番号13)及び28P24VL(配列番号14)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch28P24)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス21B16VH(配列番号15)及び21B16VL(配列番号16)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch21B16)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。ある実施形態では、TIGITキメラ抗体は、マウス28O12VH(配列番号17)及び28O12VL(配列番号12)ドメイン、並びにヒトIgG1/カッパFab定常ドメイン(Ch28O12)から構築されたキメラFabmVH+mVLである。
【0087】
E.ヒト抗体
TIGITに対するヒト抗体は、以下に記載される様々な技術によって提供される。いくつかのヒト抗体は、競合結合実験によって、Winterのファージディスプレイ方法によって、又は他の方法によって選択され、実施例に記載されるマウスモノクローナル抗体のうちの1つなどの特定のマウス抗体と同じエピトープ特異性を有する。ヒト抗体はまた、標的抗原としてTIGITの断片のみを使用することによって、及び/又は一連のTIGITの欠失変異体に対する抗体をスクリーニングすることによって、特定のエピトープ特異性についてスクリーニングされ得る。
【0088】
ヒト抗体を産生するための方法としては、Oestbergら、Hybridoma 2:361-367(1983)、Oestberg、米国特許第4,634,664号、及びEnglemanら、米国特許第4,634,666号のトリオーマ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックマウスの利用(例えば、Lonbergら、国際公開第93/12227号(1993)、米国特許第5,877,397号、同第5,874,299号、同第5,814,318号、同第5,789,650号、同第5,770,429号、同第5,661,016号、同第5,633,425号、同第5,625,126号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、Nature 148,1547-1553(1994)、Nature Biotechnology 14,826(1996)、Kucherlapati、国際公開第91/10741号(1991)参照、並びに、ファージディスプレイ法(例えば、Dower et al.、国際公開第91/17271号及びMcCaffertyら、国際公開第92/01047号、米国特許第5,877,218号、同第5,871,907号、同第5,858,657号、同第5,837,242号、同第5,733,743号、及び同第5,565,332号参照)が挙げられる。
【0089】
F.定常領域の選択
キメラ、ヒト化(ベニア化を含む)、又はヒト抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、各々ヒト定常領域の少なくとも一部に連結され得る。いくつかの実施形態では、上記セクションに記載される重鎖可変ドメインは、ヒト重鎖定常領域の一部に連結され、上記セクションに記載される軽鎖可変ドメインは、ヒト軽鎖定常領域の一部に連結されている。いくつかの実施形態では、上記セクションに記載される重鎖可変ドメインは、ヒト重鎖定常領域の一部に連結され、上記セクションに記載される軽鎖可変ドメインは、完全長のヒト軽鎖定常領域に連結されている。重鎖定常領域は、Fc(フラグメント結晶化可能)領域を含み、これは、細胞表面受容体(Fc受容体)と補体系の一部のタンパク質と相互作用する抗体の尾部領域である。いくつかの実施形態では、上記セクションに記載される重鎖可変ドメインは、完全長のヒト重鎖定常領域に連結され、上記セクションに記載される軽鎖可変ドメインは、完全長のヒト軽鎖定常領域に連結されている。
【0090】
定常領域(又はその切断部位)の選択は、部分的に、エフェクター機能が所望されるかどうか、又は更に強化される必要があるかに依存する。「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプに依存して変化する抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の非限定例としては、C1複合体上のC1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)、並びにB細胞活性化が挙げられる。ヒト抗体は、それらの重鎖に従って5つのアイソタイプ(IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE)に分類され、各々が異なる機能を提供する。IgGは、各々が異なる重鎖を含む4つのヒトサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)からなる。これらの相同性は高く、主にヒンジ領域と、宿主免疫系を活性化する程度において異なる。例えば、ヒトアイソタイプIgG1及びIgG3は、補体依存性細胞傷害性を媒介でき、ヒトアイソタイプIgG2及びIgG4は媒介しないか、又は媒介しても非常に低レベルである。軽鎖定常領域は、サブクラスがラムダ又はカッパであり得る。TIGITを発現しないがん又は病原体に対する免疫療法では、ヒトIgG1及びIgG3に加えて、ヒトIgG2若しくはIgG4、又は、エフェクター機能が低下しているヒトIgG1の減弱化形態を使用できる。ヒトIgG4の場合、Fabアーム交換を防止するため、重鎖にS228P(Eu番号付け)の操作した突然変異を含めることを利用できる。しかしながら、免疫抑制のためにTIGITを発現するがん細胞(例えば、T細胞又はNK細胞の腫瘍)の排除については、ヒトIgG1又はIgG3を使用できる。例えば、TIGITを発現するがん細胞(例えば、一部の血液悪性腫瘍)の直接的な殺滅、又は免疫抑制については、Fcエフェクター機能を有する抗体(例えば、ヒトIgG1又はIgG3)を使用できる。ヒトIgG1又はIgG3の好適な配列は、当該技術分野で既知であり、例えば、配列番号94及び米国特許第5,624,821号に開示されているヒトIgG3が挙げられる。
【0091】
ヒト定常領域は、異なる個体間でアロタイプ変異及びアイソアロタイプ変異を示し、即ち、定常領域は、1つ以上の多型位置で異なる個体において異なる可能性がある。アイソアロタイプは、アイソアロタイプを認識する血清が1つ以上の他のアイソタイプの非多型領域に結合するという点でアロタイプとは異なる。ヒト定常領域への言及は、任意の天然アロタイプ、又は天然アロタイプの多型位置を占める残基の任意の順列を有する定常領域を含む。
【0092】
重鎖のC末端リジンなどの軽鎖及び/又は重鎖のアミノ末端又はカルボキシ末端における1つ又はいくつかのアミノ酸は、分子の一部又は全てにおいて欠落しているか、又は誘導体化されている可能性がある。重鎖又は軽鎖のN末端グルタミンは、ピログルタミン酸の形成を防ぐために、グルタミン酸残基で置換され得る。置換を定常領域内に起こして、補体依存性細胞傷害性(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を低減若しくは増大させる(例えば、Winterら、米国特許第5,624,821号;Tsoら、米国特許第5,834,597号;及び、Lazar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:4005,2006参照)、又は、ヒトにおける半減期を延長することができる(例えば、Hinton et al.,J.Biol.Chem.279:6213,2004参照)。代表的な置換は、抗体の半減期を増加させるための、位置250のGln及び/又は位置428(Eu番号付け)のLeuを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、上記の野生型重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、野生型重鎖定常領域は、配列番号94である。配列番号92は、配列番号94の野生型定常領域を含む代表的な重鎖アミノ酸配列である。他の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、変異型ヒトIgG1、変異型ヒトIgG2、変異型ヒトIgG3、又は変異型ヒトIgG4から選択される野生型重鎖定常領域(又はその切断部)の変異体を有する。いくつかの実施形態では、変異型重鎖定常領域は、配列番号97、配列番号99、又は配列番号101である。配列番号96、98、及び100は、変異型重鎖定常領域を含む代表的な重鎖アミノ酸配列である。
【0094】
本開示のいくつかの抗体は、変異を含まない同じ抗体と比較して、CDC及びADCC又は抗体依存性細胞貪食(ADCP)などのエフェクター機能が低減するように、定常領域の変異を導入することによって操作される。いくつかの実施形態では、これらのエフェクター機能の各々又は全ては、変異を含まない抗体と比較して、少なくとも50%、75%、90%、又は95%低減される。他のアッセイは、Shields et al,2001 J.Biol.Chem.,Vol.276,p 6591-6604;Chappel et al,1993 J.Biol.Chem.,Vol 268,p 25124-25131;Lazar et al,2006 PNAS,103;4005-4010によって説明されている。
【0095】
位置234、235、236、及び/又は237のいずれか又は全ての置換は、Fcγ受容体、特にFcγRI受容体に対する親和性を低下させる(例えば、米国特許第6,624,821号を参照)。いくつかの実施形態では、アラニン残基を、L234A/L235A二重変異などの置換に使用して、エフェクター機能を低減する。エフェクター機能の低下を伴う変異の他の組み合わせとして、L234A/L235A/G237A、E233P/L234V/L235A/ΔG236、A327G/A330S/P331S、K322A、L234A及びL235A,L234F/L235E/P331S(Eu番号付け)が挙げられる。任意選択的に、ヒトIgG2における234位、236位、及び/又は237位はアラニンで置換され、235位はグルタミンで置換される。(例えば、米国特許第5,624,821号を参照)。Euインデックス位置330及び331の補体C1q結合部位における2つのアミノ酸置換は、補体結合を低下させる(Tao et al., J.Exp.Med.178:661(1993)及びCanfield and Morrison,J.Exp.Med.173:1483(1991)参照)。位置233~236のIgG2残基のヒトIgG1、並びに位置327、330、及び331のIgG4残基への置換は、ADCC及びCDCを低減させる(例えば、Armour KL.et al.,1999 Eur J Immunol.29(8):2613-24;及びShields RL.et al.,2001.J Biol Chem.276(9):6591-604参照)。N297A、N297Q、又はN297G(Eu番号付け)変異は、グリコシル化を低下させ、それによってエフェクター機能を低下させる。
【0096】
本開示の抗体は、いくつかの実施形態では、Fcエフェクター機能を増強するために操作され得る。例えば、FcγR結合は、アミノ酸操作によって増強され得る。いくつかの実施形態では、これは、Fc領域中の1つ以上のアミノ酸を置換することによって行うことができる。望ましい変異は、例えば、アラニンスキャニング又は合理的設計のいずれか、及びライブラリースクリーニングによって決定することができる。FcRへの結合が増強され、エフェクター機能が増強されたIgG変異体は、これらの手法を使用して特定することができる。あるいは、Fc受容体領域に対するいくつかの突然変異は、当該技術分野で既知であり、例えば、Smith P.et al(2012)PNAS 6181-6186に記載されている。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、修飾を含まない野生型IgG1と比較して、抗体がADCCを媒介する能力を増加させる修飾型IgG1定常ドメインを含む。修飾型IgG1ドメインは、L235V、S239D、F243L、R292P、A330L、I332E、P396L(Eu番号付け)のうちの1つ以上でのアミノ酸置換によって特徴付けることができる。他の実施形態では、修飾型IgG1ドメインは、S239D、A330L、及びI332E(Eu番号付け)での置換によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、治療有効量の本明細書に記載の抗体は、当該技術分野で説明される方法によって評価されるとき、1、2、又は3時間以内に、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、又は少なくとも65%のTIGIT発現細胞において細胞死を誘導することができる。
【0098】
あるいは、グリコフォーム摂動を使用して、Fc媒介治療用抗体機能を増強することができる。IgG1抗体上のN結合型Fcグリコシル化は、エフェクター機能にとって重要である。シアリル化、ガラクトシル化、バイセクト糖、及びフコシル化は全て、IgG分子の結合及び活性に影響を及ぼし得る。治療用抗体上のグリコシル化パターンを制御することは、多くの異なる方法で行うことができる。組換え抗体を産生する細胞の種類及びその培養条件は、治療用抗体のグリコシル化及び活性に影響を及ぼし得る。更に、バイオリアクター条件及び下流処理はまた、グリカンの微小不均一性に影響を及ぼし得る。低フコシル化又は無フコシル化抗体は、Fc媒介特性を増強することが示されている。糖鎖工学によってこのフコースレベルの低減を達成するための多数の方法は、当該技術分野において周知である。1つの方法は、抗体の翻訳後修飾に関与する酵素を操作することである。これは、β-1-4-N-アセチルグルコサミン転移酵素IIIなどのグルコシダーゼの過剰発現、フコシルトランスフェラーゼのノックアウト、又は天然のフコース欠損細胞株若しくは低フコシル化レベルを発現するように変異している細胞株の使用を含み得る。更に、カスタノスペルミンなどのN結合型グルコシダーゼの阻害剤を使用して、低フコースのIgG分子を得ることもできる。
【0099】
いくつかの実施形態では、アミノ酸が操作された変異体は、複数のFcγRに対してより広範に増強された親和性を有することができるが、グリコフォームが操作された抗体は、一般に、増強したFcγRIIIa結合についてより特異的な親和性を有することができる。グリコフォームは、Fc部分上の近位アミノ酸と相互作用し、Igオリゴ糖と接触するアミノ酸の置換は、異なるグリコフォーム構造をもたらし得る。
【0100】
G.組換え抗体の発現
キメラ、ヒト化(ベニア化を含む)及びヒト抗体は、典型的には、組換え発現によって産生される。したがって、本開示はまた、このセクションIIIA~Gの抗TIGIT抗体をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、及びベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0101】
本開示の抗TIGIT抗体をコードするポリヌクレオチドは、増幅、発現、又は更なる最適化のためにベクターに挿入され得る。多くのベクターが利用可能である。いくつかの実施形態では、ベクター系は、哺乳動物、細菌、酵母系などを含み、例えば、限定されないが、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pCMV、pEGFP、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS420、pLexA、pACT2.2などのプラスミド、及び他の実験的に利用可能なベクター及び市販のベクターを含む。好適なベクターは、プラスミド、又はウイルスベクターを含み得る(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)。ベクター構成要素として、一般に、シグナル配列、複製開始点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、及び転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。発現において、組換えポリヌクレオチド構築物は、典型的には、天然に会合した、又は異種のプロモーター領域を含む、抗体鎖のコード配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトすることができる、ベクター中の真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、並びに組換え抗体の回収及び精製に好適な条件下で維持される。
【0102】
本開示の抗TIGIT抗体をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターは、クローニング又は遺伝子発現のために宿主細胞に導入され得る。本明細書のベクター中のポリヌクレオチド配列をクローニング又は発現するための好適な宿主細胞には、原核生物細胞及び真核生物細胞が含まれる。好適な原核生物の非限定例としては、グラム陰性菌又はグラム陽性菌などの真正細菌、例えば、Escherichia、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、及びShigellaなどの腸内細菌、並びに、B.subtilis及びB.licheniformisなどの桿菌、P.aeruginosaなどのシュードモナス、並びに、ストレプトマイセスが挙げられる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、抗TIGIT抗体をコードするベクターの好適なクローニング又は発現宿主である。非限定例としては、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、及びK.marxianusなど;yarrowia(欧州特許第402,226号);Pichia pastoris(欧州特許第183,070号);Candida;Trichoderma reesia(欧州特許第244,234号);Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis;並びに、糸状菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladiumなど、並びに、Aspergillus宿主、例えば、A.nidulans及びA.nigerが挙げられる。好適な宿主細胞はまた、多細胞生物に由来し得る。無脊椎動脈細胞の例として、植物及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株及び変異体、並びに、Spodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、及びBombyx moriなどの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1変異体、及びBombyx mori NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、かかるウイルスは、本発明による本明細書のウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションに使用できる。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、petunia、トマト、及びタバコの植物細胞培養物も、宿主として利用できる。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、免疫グロブリン又はその断片をコードするヌクレオチドセグメントを発現するための宿主細胞として使用される。Winnacker、「From Genes to Clones」(VCH Publishers、NY、1987年)を参照されたい。インタクトな異種タンパク質を分泌することができるいくつかの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞、並びにSp2/0及びNS0を含む非抗体産生骨髄腫が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒトである。これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば、複製開始点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49(1986))、並びにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終止配列などの必要なプロセシング情報部位が含まれ得る。いくつかの実施形態では、発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、及びウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターである。Co et al.,J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0103】
宿主細胞は、抗TIGIT抗体産生のために上記の発現又はクローニングベクターによって形質転換され、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択する、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に変更された従来の栄養培地で培養される。発現させると、抗体を、HPLC精製、カラムクロマトグラフィ、及びゲル電気泳動などを含む、当技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(概して、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,NY,1982)を参照のこと)。
【0104】
IV.治療用途
本開示の抗TIGIT抗体は、がん及び感染症の治療における免疫応答を増強するために使用できる。本開示の抗体によって治療可能な疾患として、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、メルケル細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん、B細胞リンパ腫、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、消化管がん(例えば、食道がん、胃食道接合部のがん、中咽頭がん、胃がん、小腸又は大腸がん、結腸がん、又は直腸がん)、膀胱がん、骨髄のがん、皮膚がん、胆嚢がん、心臓がん、肺がん、唾液腺がん、副腎がん、甲状腺がん、中枢神経系(CNS)のがん、及び末梢神経系(PNS)のがん、並びに、造血系及び免疫系のがん(例えば、脾臓又は胸腺)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本開示はまた、例えば、免疫原性腫瘍、非免疫原性腫瘍、休眠状態の腫瘍、ウイルス誘発性がん(例えば、上皮細胞がん、内皮細胞がん、扁平上皮がん、及びパピローマウイルス)、腺がん、奇形がん、化学物質誘発性がん、転移、及び血管新生を含む、他のがん関連疾患、障害、又は状態を治療又は予防する方法を提供する。特定の実施形態では、腫瘍又はがんは、結腸がん、卵巣がん、乳がん、黒色腫、肺がん、神経膠芽腫、又は白血病である。がん関連疾患、障害、及び状態という用語の使用は、がんと直接的又は間接的に関連する状態を広く指すことを意味し、例えば、血管新生及び異形成などの前がん状態を含む。特定の実施形態では、がんは、転移性又は転移性になるリスクであり得るか、又は拡散組織で発生し得、血液又は骨髄のがん(例えば、白血病)を含む。
【0106】
そのようながんは、TIGIT又はCD155を発現してもしなくてもよい。TIGITのCD155との相互作用の阻害がそのようながんに対する免疫応答を刺激するため、TIGITに対する抗体は、TIGITを発現していないがんに対して有効である。血液悪性腫瘍の例として、急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性単球性白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫を含む、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫が挙げられる。固形腫瘍の例として、卵巣がん、子宮内膜がん、乳がん、肺がん(小細胞若しくは非小細胞)、結腸がん、前立腺がん、子宮頸がん、膵臓がん、胃がん、食道がん、肝細胞がん(肝臓がん)、腎細胞がん(腎臓がん)、頭頸部腫瘍、中皮腫、黒色腫、肉腫、及び脳腫瘍(例えば、神経膠芽腫などのグリオーマ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本開示の方法は、アジュバント環境で実施することができる。「アジュバント環境」は、対象が増殖性疾患、特にがんの既往歴を有し、一般に(必ずしも必須ではない)、手術、放射線療法、及び/又は化学療法を含むが、これらに限定されない治療に応答している臨床環境を指す。しかしながら、増殖性疾患の既往歴のため、これらの対象は、その疾患を発症するリスクがあると考えられる。「アジュバント環境」における治療又は投与は、治療の後続形態を指す。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、がんを有する又はがんのリスクがある対象に、治療有効量の本明細書に開示される任意の抗体をアジュバント環境で投与することを含む、がんの治療又は効果的な予防の方法である。
【0108】
本明細書で提供される方法はまた、「ネオアジュバント環境」でも実施することができ、すなわち、方法は、一次/根治治療の前に実施することができる。いくつかの態様では、対象は、以前に治療されている。他の態様では、対象は、以前に治療されていない。いくつかの態様では、治療は、第1選択治療である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、がんを有する又はがんのリスクがある対象に、治療有効量の本明細書に開示される任意の抗体をネオアジュバント環境で投与することを含む、がんの治療又は効果的な予防の方法である。
【0109】
本開示の抗体によって治療可能な他の疾患には、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、及び他の病原体(例えば、肝炎(A型、B型、又はC型)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、cornovirus、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、HIV、SIV、及びアルボウイルス脳炎ウイルス、クラミジア、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、treptocci、肺炎球菌、髄膜炎菌及びconococci、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ、及びライム病菌の感染性疾患が挙げられる。
【0110】
A.抗体の投与
本明細書に記載される抗体は、発症を遅延させ、重症度を低減させ、更なる悪化を阻害し、及び/又は疾患の少なくとも1つの徴候若しくは症状を改善する、投与量、投与経路、及び投与頻度を意味する、有効なレジメンで投与される。対象が既に障害に罹患している場合、レジメンは、治療的に有効なレジメンと称することができる。対象が一般集団と比較して疾患のリスクが高いが、まだ症状を経験していない場合、レジメンは予防効果的レジメンと称することができる。いくつかの例では、治療的又は予防的有効性は、同じ対象における歴史的対照又は過去の経験と比較し、個々の対象において観察され得る。他の例では、治療的又は予防的有効性は、未治療対象の対照集団と比較して、治療対象の集団における前臨床試験又は臨床試験で実証することができる。
【0111】
場合によっては、対象は、PD-L1陽性、CD155陽性、TIGIT陽性、高頻度MSI、浸潤T細胞を有する、活性化T細胞を有する、抗原プロセシング及び提示に関連する高レベルの分子を有する、TMB高値、又はそれらの任意の組み合わせとして特定される。いくつかの実施形態では、患者は、対照集団と比較して、例えば、CD8+細胞及び/又はCD4+細胞及び/又はNK細胞上のTIGITの高発現に基づいて、本明細書に記載の抗体による治療のために選択される。場合によっては、対象は、がん遺伝子が引き起こすがんを有するものとして特定され、TP53、VHL、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、RAC1、EGFR、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、PHF6、NF1、CIC、ARID1A、ZFHX3、ZCCHC12、GNA11、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、PIK3R1、SCAF4、PMS2、RNF43、SMC1A、BCOR、FGFR2、COL5A1、ATM、KMT2B、CTNNB1、MYC、RAD21、PTEN、AXL、HIF1A、EPAS1、PAK4、RHOB、TBL1XR1、KEAP1、ZFP36L2、FGFR3、FOXA1、FLT3、TRAF3、RNF111、PPP2R1A、TXNIP、STAG2、RIT1、TGIF1、FOXQ1、ATR、CYSLTR2、PCBP1、PIK3R2、ASXL1、HIST1H1C、KLF5、PIK3CB、SPOP、MECOM、CACNA1A、CTNND1、DACH1、XPO1、ZNF750、FBXW7、MUC6、KDM6A、GATA3、ZBTB20、PIK3CA、RB1、SOX17、SMARCA4、KIT、CHD8、CHD4、及びAPOBからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子中に変異を有する。
【0112】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法のうちのいずれかは、治療有効量の本明細書に記載の抗TIGIT抗体のうちの1つ以上を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、抗がん療法(本明細書に記載の抗TIGIT抗体のうちのいずれかなど)の「治療有効量」又は「治療有効投与量」は、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。治療的使用における、有益な又は所望の結果としては、がんによる1つ以上の症状が減少する、がんに罹患している対象の生活の質が向上する、がんの治療に必要な他の薬剤の用量が減少する、標的化などによって別の薬剤の効果が増強する、疾患の進行が遅れる、及び/又は生存期間が延長することが挙げられるが、これらに限定されない。有効投与量は、1回以上の投与で投与され得る。本開示の目的のために、抗がん療法の有効投与量は、直接的又は間接的のいずれかで治療的又は予防的処置を達成するのに十分な量である。臨床文脈において理解されるように、抗がん療法の治療有効投与量は、別の抗がん療法と併せて達成されてもよく、又は達成されなくてもよい。
【0113】
本明細書に記載の抗体のうちのいずれかの代表的な投与量は、約0.1~20mg/kg又は0.5~5mg/kg体重(例えば、約0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、又は20mg/kg)、又は固定容量として10~1600mg(例えば、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、又は1600mg未満のうちいずれか、又はそれ以上、これらの間の値を含む)である。一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、3週間毎に約300~1500mgの量で投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、4週間毎に約300~1800mgの量で投与される。投与量は、他の要因の中でも、対象の状態、及び以前の治療に対する応答(もし存在する場合)、治療が予防的又は治療的であるかどうか、及び障害が急性又は慢性であるかどうかに依存する。
【0114】
投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、腫瘍内、局所、鼻腔内、又は筋肉内であり得る。いくつかの実施形態では、全身循環への投与は、静脈内又は皮下投与によるものである。静脈内投与は、例えば、30~90分などの期間にわたる注入によるものであり得る。
【0115】
投与の頻度は、とりわけ、循環中の抗体の半減期、対象の状態、及び投与経路に依存する。頻度は、対象の状態の変化、又は治療されている障害の進行に応じて、毎日、毎週、毎月、四半期毎、又は不規則な間隔であり得る。ある実施形態では、頻度は、2週間サイクルであり得る。別の実施形態では、頻度は、3週間サイクルであり得る。別の実施形態では、頻度は、4週間サイクルである。別の実施形態では、頻度は、6週間サイクルである。静脈内投与の例示的な頻度は、治療の連続的な原因により毎週~四半期の間であるが、より多い又はより少ない頻度の投与も可能である。皮下投与の場合、例示的な投与頻度は毎日~毎月であるが、より多い又はより少ない頻度の投与も可能である。
【0116】
投与の数量は、障害が急性又は慢性であるかどうか、及び治療に対する障害の応答に依存する。急性障害又は慢性障害の急性増悪については、1~10回の用量で充分であることが多い。場合によっては、単回ボーラス用量は、任意に分割形態で、急性障害又は慢性障害の急性増悪に充分である。急性障害の再発又は急性増悪に対して治療を繰り返すことができる。慢性障害の場合、抗体は、一定の間隔、例えば、少なくとも1、5、若しくは10年間、又は対象の生涯にわたり、毎週、隔週、四半期毎、6ヶ月毎で投与することができる。
【0117】
抗TIGIT抗体を含む治療は、がんを有する対象の無増悪生存期間又は全生存期間の中央値を、対照対象と比較して、少なくとも約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは更には100%延長させる、又は、これらの期間のいずれかを2週間、1、2、若しくは3ヶ月、若しくは4若しくは6ヶ月、若しくは更には9ヶ月、若しくは1年延長させることによって、疾患を軽減することができる。追加的又は代替的に、抗TIGIT抗体を含む治療は、対象の完全奏効率、部分奏効率、客観的奏効率(完全+部分)を、対照対象と比較して、少なくとも約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は更には100%増加させることができる。対照対象は、抗TIGIT抗体以外は、抗TIGIT抗体を受けた対象と同じ治療を受ける。したがって、対照対象は、プラセボ単独か、又は、プラセボと、抗TIGIT抗体以外のいくつかの化学療法剤を抗TIGIT抗体を受けた対象も投与されている場合はその化学療法剤との組み合わせを受けることができる。
【0118】
本明細書に開示される抗TIGIT抗体は、CD155発現細胞(例えば、非限定的にK562細胞)のNK細胞媒介性細胞傷害性を、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のうちの1つの非存在下のCD155発現細胞のNK細胞媒介性細胞傷害の量に対して、約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%のいずれか、又はそれ以上、増強することができる。
【0119】
典型的には、臨床試験(例えば、第II相、第II/III相、又は第III相試験)において、対照群の対象と比較して、抗TIGIT抗体で治療された対象の無増悪生存期間及び/又は奏効率の増加は、例えば、p=0.05又は0.01又は更には0.001のレベルで統計的に有意である。完全奏効率及び部分奏効率は、がんの臨床試験で一般的に使用される客観的基準により、例えば、National Cancer Institute及び/又はFood and Drug Administrationによって列挙されているように決定され、例えば、とりわけ、腫瘍体積、腫瘍の数、転移、生存期間、及び生活の質の尺度を挙げることができる。
【0120】
非経口投与用の医薬組成物は、無菌で、実質的に等張であり、GMP条件下で製造され得る。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための投与量)で提供することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又は補助剤を用いて製剤化することができる。製剤は選択される投与経路に依存する。注射用に、抗体を、水溶液中、例えば生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水若しくは酢酸緩衝液などにおいて製剤化することができる(注射部位の不快感を低減するため)。溶液は、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの配合剤を含有することができる。あるいは、抗体は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、発熱性物質除去蒸留水で構成するための凍結乾燥形態であってもよい。液体製剤中の抗体の濃度は、例えば、約10~150mg/mLで変わり得る。いくつかの製剤では、濃度は約20~80mg/mLである。
【0121】
B.併用療法
本開示は、抗TIGIT抗体の、単独での、又は1つ以上の活性治療薬と組み合わせての使用を企図する。追加の活性治療薬は、小化学分子;タンパク質、抗体、ペプチボディ、ペプチド、DNA、RNAなどの高分子、又はそのような高分子の断片;又は細胞療法若しくは遺伝子療法であってよい。併用療法は、異なるが補完的な作用機序を標的とし、それによって、基礎となる疾患、障害、又は状態に対して相乗的な治療効果又は予防効果を有することができる。加えて、又は代替的に、併用療法は、薬剤のうちの1つ以上の用量低減を可能にし、それによって、薬剤のうちの1つ以上に関連する有害作用を改善、低減、又は排除することができる。
【0122】
そのような併用療法における活性治療薬は、単一の組成物として、又は別個の組成物として製剤化することができる。別々に投与される場合、併用における各治療薬は、同時若しくはほぼ同時に、又は異なる時間に投与され得る。更に、治療薬は、異なる投与形態(例えば、経口カプセル及び静脈内)を有する、異なる投与間隔で与えられる、一方の治療薬は一定の投与レジメンで与えられ、別の治療薬は漸増、漸減、若しくは中止される、又は併用における各治療薬は、患者の治療過程中に独立して漸増、漸減、若しくは用量増加若しくは減少、若しくは中止及び/若しくは再開される場合であっても、「併用」投与される。併用薬が別個の組成物として製剤化される場合、いくつかの実施形態では、別個の組成物は、キットで一緒に提供される。
【0123】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかは、追加の活性治療薬のうちの1つ以上と順次投与又は適用され、例えば、このとき、追加の活性治療薬のうちの1つ以上は、本開示による抗TIGIT抗体の投与前又は投与後に投与される。他の実施形態では、抗体は、追加の活性治療薬のうちの1つ以上と同時に投与され、例えば、このとき、抗TIGIT抗体は、追加の治療薬のうちの1つ以上と同時又はほぼ同時に投与され、抗TIGIT抗体、及び追加の治療薬のうちの1つ以上は、2つ以上の別個の製剤中に存在し得るか、又は単一の製剤(すなわち、共製剤)に組み合わされ得る。追加の薬剤が抗TIGIT抗体と連続的又は同時に投与されるかどうかに関係なく、本開示の目的において併用して投与されると考えられる。
【0124】
本開示の抗体は、その状況下における適切な任意の方法で、少なくとも1つの他の(活性)薬剤と組み合わせて使用できる。一実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤及び本開示の少なくとも1つの抗TIGIT抗体による治療は、一定期間にわたって維持される。別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による治療は、低減又は中止される(例えば、対象が安定している場合)が、本開示の抗TIGIT抗体による治療は一定の投与レジメンで維持される。更なる実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による治療は、低減又は中止される(例えば、対象が安定している場合)が、本開示の抗TIGIT抗体による治療は低減される(例えば、用量低減、投与頻度低減、又は治療レジメン短縮)。更に別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による治療は、低減又は中止され(例えば、対象が安定している場合)、本開示の抗TIGIT抗体による治療は増加される(例えば、用量増加、投与頻度増加、又は治療レジメン延長)。更に別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による治療は維持され、本開示の抗TIGIT抗体による治療は低減又は中止される(例えば、用量低減、投与頻度低減、又は治療レジメン短縮)。更に別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による治療及び本開示の抗TIGIT抗体による治療は、低減又は中止される(例えば、用量低減、投与頻度低減、又は治療レジメン短縮)。
【0125】
本開示の抗体による治療は、治療される障害に対して有効な他の治療と組み合わせることができる。増殖性状態、がん、腫瘍、又は前がん性疾患、障害、又は状態の治療に使用されるとき、本開示の抗体は、化学療法、放射線(例えば、局所放射線療法又は全身放射線療法)、幹細胞治療、手術、又は他の生物製剤による治療と組み合わせることができる。
【0126】
本開示の抗体は、がんに対する免疫応答を誘発するワクチンと共に投与することができる。そのような免疫応答は、本開示の抗体によって増強される。ワクチンは、任意選択的に担体分子に連結された、免疫応答を誘発するのに有効ながん性細胞及び/又は腫瘍の表面上に発現する抗原、その断片を含み得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬のうち1つ以上は、免疫調節剤である。本開示で使用できる好適な免疫調節剤としては、CD40L、B7、及びB7RP1;抗CD40、抗CD38、抗ICOS、及び4-IBBリガンドなどの刺激性受容体に対する活性化モノクローナル抗体(mAb);樹状細胞抗原負荷(インビボ又はインビトロ);樹状細胞がんワクチンなどの抗がんワクチン;IL1、IL2、IL12、IL18、ELC/CCL19、SLC/CCL21、MCP-1、IL-4、IL-18、TNF、IL-15、MDC、IFNα/β、M-CSF、IL-3、GM-CSF、IL-13、及び抗IL-10などのサイトカイン/ケモカイン;細菌リポ多糖(LPS);インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤及び免疫刺激性オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0128】
特定の実施形態では、本開示は、腫瘍成長の相加的又は相乗的抑制を達成するために、シグナル伝達阻害剤(STI)と併用して本明細書に記載の抗TIGIT抗体を投与することを含む、腫瘍成長の抑制のための方法を提供する。本明細書で使用される場合、「シグナル伝達阻害剤」という用語は、シグナル伝達経路において1つ以上の工程を選択的に阻害する薬剤を指す。本開示によって企図されるシグナル伝達阻害剤(STI)として、(i)bcr/ablキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブメシル酸塩、GLEEVEC(登録商標))、(ii)キナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ及びオシメルチニブ)を含む上皮成長因子(EGF)受容体阻害剤及び抗体、(iii)her-2/neu受容体阻害剤(例えば、HERCEPTIN(登録商標))、(iv)Aktファミリーキナーゼ又はAkt経路の阻害剤(例えば、ラパマイシン)、(v)細胞周期キナーゼ阻害剤(例えば、フラボピリドール)、及び(vi)ホスファチジルイノシトールキナーゼ阻害剤が挙げられる。免疫調節に関与する薬剤はまた、がん患者における腫瘍増殖の抑制のために、本明細書に記載の抗TIGIT抗体と併用して使用され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬のうちの1つ以上は、化学療法剤である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メトレドパ、ウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;ナイトロジェンマスタード類、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトレビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポマリドミド、ポルフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナリン、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金及び白金配位錯体、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼロダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;アントラサイクリン;及び上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
化学療法剤としてはまた、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、及びトレミフェンを含む、抗エストロゲン、並びに、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン、並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体などの、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤が挙げられる。特定の実施形態では、併用療法は、1つ以上の化学療法剤を含む化学療法レジメンを含む。特定の実施形態では、併用療法は、ホルモン又は関連するホルモン剤の投与を含む。
【0131】
抗TIGIT抗体と組み合わせて使用できる追加の治療モダリティには、放射線療法、腫瘍抗原に対する抗体、抗体と毒素との複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、又は、かかる抗原提示細胞を刺激するために使用されるTLRアゴニストを含む抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)が挙げられる。
【0132】
特定の実施形態では、本開示は、遺伝子発現を停止させるためのRNA干渉ベースの療法と組み合わせた本明細書に記載の抗TIGIT抗体の使用を企図する。RNAiは、長い二本鎖RNAをより小さい干渉RNA(siRNA)に切断することから始まる。siRNAの1つの鎖は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体に組み込まれ、次いで、組み込まれたsiRNA鎖に少なくとも部分的に相補的なmRNA分子を特定するために使用される。RISCはmRNAに結合するか、又はmRNAを切断することができ、それらの両方が翻訳を阻止する。
【0133】
特定の実施形態では、本開示は、アデノシンのレベルを調節する薬剤と組み合わせた本明細書に記載の抗TIGIT抗体の使用を企図する。そのような治療薬は、ATPのアデノシンへの変換を触媒するエクトヌクレオチドに作用することができ、ATPからADP、及びADPからAMPに加水分解するエクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1(ENTPD1、CD39又は表面抗原分類39としても知られる)、並びに、AMPをアデノシンに変換する5’-ヌクレオチダーゼ、エクト(NT5E又は5NT、CD73又は表面抗原分類73としても知られる)を含む。一実施形態では、本開示は、国際公開第2017/120508号、同第2018/094148号、及び同第2018/067424号に記載されているものなどのCD73阻害剤との併用を企図する。一実施形態では、CD73阻害剤は、AB680である。別のアプローチでは、アデノシンA2a及びA2b受容体が標的化される。A2a及び/又はA2b受容体のアンタゴニストとの併用も企図される。一実施形態では、本開示は、国際公開第2018/136700号又は同第2018/204661号に記載のアデノシン受容体アンタゴニストとの併用を企図する。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、AB928(エトルマデナント)である。
【0134】
特定の実施形態では、本開示は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、特にPI3Kγアイソフォームの阻害剤と組み合わせた本明細書に記載の抗TIGIT抗体の使用を企図する。PI3Kγ阻害剤は、骨髄細胞の調節を通じて、例えば、抑制性骨髄細胞を阻害する、免疫抑制性腫瘍浸潤性マクロファージを弱める、又はマクロファージ及び樹状細胞を刺激することによって抗がん免疫応答を刺激し、有効なT細胞応答に寄与するサイトカインを作製でき、がん発生及び拡散の減少をもたらす。本明細書に記載の抗TIGIT抗体と併用できる代表的なPI3Kγ阻害剤には、国際公開第2020/0247496(A1)号に記載されているものが含まれる。一実施形態では、PI3Kγ阻害剤は、IPI-549である。
【0135】
特定の実施形態では、本開示は、炎症誘発性免疫機能不全、腫瘍免疫逃避、感染性疾患の免疫抑制及び免疫病理の原因であるか、又は関与することが示されているアルギナーゼの阻害剤と併用する、本明細書に記載の抗TIGIT抗体の使用を企図する。代表的なアルギナーゼ化合物は、例えば、国際出願PCT/US2019/020507号及び国際公開第2020/102646号に見出すことができる。
【0136】
特定の実施形態では、本開示は、低酸素利用率に対する細胞応答において重要な役割を果たす、HIF-2αの阻害剤との本開示による抗TIGIT抗体の使用を企図する。低酸素条件下では、低酸素誘導因子(HIF)転写因子は、代謝、血管新生、細胞増殖、及び生存、免疫回避、及び炎症反応を調節する遺伝子の発現を活性化できる。HIF-2αの過剰発現は、様々ながん患者における臨床転帰不良と関連しており、低酸素症はまた、炎症性腸疾患及び関節リウマチなどの多くの急性及び慢性の炎症性疾患においても一般的である。
【0137】
本開示はまた、本明細書に記載の抗TIGIT抗体と1つ以上のRASシグナル伝達阻害剤との併用を企図する。RASファミリー遺伝子、例えば、HRAS、KRAS、及びNRASにおける発がん性変異は、様々ながんに関連している。例えば、KRASファミリー遺伝子において、とりわけ、G12C、G12D、G12V、G12A、G13D、Q61H、G13C、及びG12Sの変異は、複数の腫瘍タイプで観察されている。変異体RASシグナル伝達の阻害について、直接的及び間接的な阻害戦略が研究されてきた。間接的阻害剤は、RASシグナル伝達経路におけるRAS以外のエフェクターを標的とし、RAF、MEK、ERK、PI3K、PTEN、SOS(例えば、SOS1)、mTORC1、SHP2(PTPN11)、及びAKTの阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。開発中の間接的阻害剤の非限定例として、RMC-4630、RMC-5845、RMC-6291、RMC-6236、JAB-3068、JAB-3312、TNO155、RLY-1971、BI1701963が挙げられる。RAS変異体の直接的阻害剤も探索されており、一般にKRAS-GTP複合体又はKRAS-GDP複合体を標的とする。開発中の代表的な直接的RAS阻害剤としては、ソトラシブ(AMG510)、MRTX849、mRNA-5671、及びARS1620が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、1つ以上のRASシグナル伝達阻害剤は、RAF阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、PI3K阻害剤、PTEN阻害剤、SOS1阻害剤、mTORC1阻害剤、SHP2阻害剤、及びAKT阻害剤からなる群から選択される。他の実施形態では、1つ以上のRASシグナル伝達阻害剤は、RAS変異体を直接阻害する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示による抗TIGIT抗体と、1つ以上のanexelekto(すなわち、AXL)の阻害剤との併用を目的とする。AXLシグナル伝達経路は、腫瘍成長及び転移に関連しており、様々ながん療法に対する耐性を媒介すると考えられている。TAMファミリーにおける他のキナーゼ(すなわち、TYRO3、MERTK)、並びに、とりわけ、MET、FLT3、RON、及びAURORAなどの他の受容体チロシンキナーゼも阻害する、開発中の様々なAXL阻害剤が存在する。代表的な多種キナーゼ阻害剤として、ギルテリチニブ、メレスチニブ、カボザンチニブ、BMS777607、及びフォレチニブが挙げられる。AXL特異的阻害剤、例えば、SGI-7079、TP-0903(すなわち、デュベルマチニブ)、BGB324(すなわち、ベムセンチニブ)及びDP3975もまた開発されている。
【0139】
特定の実施形態では、本開示は、抗腫瘍活性を有する免疫細胞をがん患者に投与する、新しく有望な形態の個別化免疫療法である養子細胞療法と組み合わせる、本明細書に記載の抗TIGIT抗体の使用を企図する。養子細胞療法は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように操作された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びT細胞を使用して研究されている。養子細胞療法は、一般に、個体からT細胞を回収すること、特定の抗原を標的とする、又はそれらの抗腫瘍効果を増強するようにそれらを遺伝子改変すること、それらを十分な数まで増幅すること、及び、遺伝子改変したT細胞をがん患者に注入することを含む。T細胞は、増殖した細胞を後に再注入する患者から回収することができ(例えば、自家)、又はドナー患者から回収することができる(例えば、同種異系)。
【0140】
T細胞媒介性免疫は、それぞれが、応答を最適化するために刺激シグナル及び阻害シグナルを釣り合わせることによって制御される、複数の逐次的な工程を含む。免疫応答におけるほぼ全ての阻害シグナルは、最終的に細胞内シグナル伝達経路を調節するが、膜受容体を通して多くが開始され、そのリガンドは膜結合又は可溶性(サイトカイン)のいずれかである。T細胞活性化を調節する共刺激受容体及び抑制性受容体及びリガンドは、通常の組織と比較してがんにおいて過剰発現されていないが、組織におけるT細胞エフェクター機能を調節する阻害性リガンド及び受容体は、腫瘍細胞又は腫瘍微小環境に関連する非形質転換細胞上で一般的に過剰発現する。可溶性及び膜結合受容体(リガンド免疫チェックポイント)の機能は、アゴニスト抗体(共刺激経路)又はアンタゴニスト抗体(阻害経路)を使用して調節することができる。したがって、がん療法に対して現在承認されているほとんどの抗体とは対照的に、免疫チェックポイントを遮断又は刺激する抗体は、腫瘍細胞を直接標的とせず、むしろリンパ球受容体又はそれらのリガンドを標的として、内因性抗腫瘍活性を増強する。[Pardoll,(April 2012)Nature Rev.Cancer 12:252-64参照]。
【0141】
免疫チェックポイント(リガンド及び受容体)の例、その一部は、様々な種類の腫瘍細胞で選択的に上方調節され、遮断の候補として、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、PD-L1(プログラム細胞死1リガンド1)、BTLA(B及びTリンパ球減衰因子)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)、TIM-3(T細胞免疫グロブリンムチンタンパク質3)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)、及びキラー細胞抑制受容体(それらの構造的特徴に基づいて、i)キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、及びii)C型レクチン受容体(II型膜貫通受容体ファミリーのメンバー)の2つのクラスに分割できる)が挙げられる。受容体(例えば、2B4(CD244としても知られる)受容体)及びリガンド(例えば、B7-H3(CD276としても知られる)及びB7-H4(B7-S1、B7x及びVCTN1としても知られる)などの特定のB7ファミリー阻害性リガンド)の両方を含む、他のあまりよく分かっていない免疫チェックポイントは、文献に記載されている。[Pardoll,(April 2012)Nature Rev.Cancer 12:252-64参照]。
【0142】
本開示は、前述の免疫チェックポイント受容体及びリガンド、並びにまだ説明されていない免疫チェックポイント受容体及びリガンドの阻害剤と併用する、本明細書に記載の抗TIGIT抗体の使用を企図する。免疫チェックポイントの特定の修飾薬は現在承認されており、他の多くは開発中である。2011年に黒色腫の治療について承認されたとき、完全ヒト化CTLA4モノクローナル抗体であるイピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標)、Bristol Myers Squibb)は、米国で薬事承認を得た最初の免疫チェックポイント阻害剤となった。CTLA4及び抗体(CTLA4-Ig、abatcept(例えば、ORENCIA(登録商標)、Bristol Myers Squibb))を含む融合タンパク質は、関節リウマチの治療に使用されており、他の融合タンパク質は、エプスタインバーウイルスに感作される腎移植患者において有効であることが示されている。薬事承認を得た次のクラスの免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1及びそのリガンドであるPD-L1及びPD-L2に対するものであった。承認された抗PD-1抗体としては、扁平上皮がん、古典的ホジキンリンパ腫、及び尿路上皮がんを含む様々ながんに対する、ニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標)、Bristol Myers Squibb)及びペンブロリズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標)、Merck)が挙げられる。承認された抗PD-L1抗体としては、尿路上皮がんを含む特定のがんに対する、アベルマブ(例えば、BAVENCIO(登録商標)、EMD Serono及びPfizer)、アテゾリズマブ(例えば、TECENTRIQ(登録商標)、Roche/Genentech)、及びデュルバルマブ(例えば、IMFINZI(登録商標)、AstraZeneca)が挙げられる。本明細書で提供されるいくつかの組み合わせでは、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI-0680、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、ブディジャリマブ、BI-754091、カムレリズマブ、コシベリマブ、デュルバルマブ、ドスタルリマブ、セミプリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、レチファンリマブ、ササンリマブ、及びジムベレリマブ(AB122)から選択される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI-0680(AMP-514、国際公開第2012/145493号)又はピジリズマブ(CT-011)である。PD-1受容体を標的とする別の方法は、IgG1のFc部分に融合したPD-L2の細胞外ドメイン(B7-DC)から構成される、AMP-224と呼ばれる組換えタンパク質である。一実施形態では、本開示は、PD-1抗体との本開示による抗TIGIT抗体の使用を企図する。一実施形態では、PD-1阻害剤は、ジムベレリマブである。いくつかの実施形態では、抗TIGIT抗体は、3週間毎に約200~1500mgの量で提供され、抗PD-1抗体は、3週間毎に約100~1200mgの量で提供される。別の実施形態では、本明細書に記載の抗TIGIT抗体は、4週間毎に約300~1800mgの量で与えられ、抗PD-1抗体は、4週間毎に約200~1500mgの量で提供される。更に別の実施形態では、抗PD-1抗体は、ジムベレリマブであり、3週間又は4週間毎に約360mg又は480mgの量で提供される。
【0143】
別の態様では、本開示は、免疫応答を刺激するため、T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-B、VEGF、及び他の免疫抑制サイトカイン)、又はT細胞活性化を刺激するサイトカインとの組み合わせを企図する。
【0144】
更に別の態様では、T細胞応答は、開示された抗TIGIT抗体と、(i)T細胞活性化を阻害するタンパク質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)のアンタゴニスト、例えばCTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、PVRIG、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1、及びTIM-4、及び/又は(ii)T細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト、例えばB7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3及びCD2のうちの1つ以上との組み合わせによって刺激され得る。がんの治療のために本開示の抗TIGIT抗体と併用され得る他の薬剤として、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニスト、又はNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが挙げられる。例えば、本明細書に記載の抗TIGIT抗体は、リリルマブなどのKIRのアンタゴニストと併用され得る。
【0145】
併用療法のための更に他の薬剤としては、マクロファージ又は単球を阻害又は枯渇させる薬剤が挙げられ、RG7155(国際公開第11/70024号、同第11/107553号、W)11/131407号、同第13/87699号、同第13/119716号、同第13/132044号)又はFPA-008(国際公開第11/140249号、同第13169264号、同第14/036357号)を含むCSF-1Rアンタゴニスト抗体などのCSF-1Rアンタゴニストを含むがこれらに限定されない。
【0146】
別の態様では、開示された抗TIGIT抗体は、陽性共刺激受容体を結合するアゴニスト剤、阻害性受容体を介したシグナル伝達を弱める遮断剤、アンタゴニスト、及び抗腫瘍T細胞の出現頻度を全身的に増加させる1つ以上の薬剤、腫瘍微小環境内の別個の免疫抑制経路を克服する薬剤(例えば、阻害性受容体係合(例えば、PD-L1/PD-1相互作用)の遮断、Tregの枯渇又は阻害(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)の使用、又はエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇)、又は、T細胞アネルギー若しくは疲弊の逆転/予防)、並びに腫瘍部位での自然免疫活性化及び/又は炎症を誘発する薬剤のうち、1つ以上と併用できる。
【0147】
一態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アンタゴニストCTLA-4抗体などのCTLA-4アンタゴニストである。好適なCTLA-4抗体として、例えば、イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標)、Bristol Myers Squibb)又はトレメリムマブが挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アンタゴニストPD-L1抗体などのPD-L1アンタゴニストである。好適なPD-L1抗体としては、例えば、アテゾリズマブ(MPDL3280A、国際公開第2010/077634号)(例えば、TECENTRIQ(登録商標)、Roche/Genentech)、デュルバルマブ(MEDI4736)、BMS-936559(国際公開第2007/005874号)、及びMSB0010718C(国際公開第2013/79174号)が挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アンタゴニストLAG-3抗体などのLAG-3アンタゴニストである。好適なLAG-3抗体としては、例えば、BMS-986016(国際公開第10/19570号、同第14/08218号)、又はIMP-731若しくはIMP-321(国際公開第08/132601号、同第09/44273号)が挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アゴニストCD137抗体などのCD137(4-1BB)アゴニストである。好適なCD137抗体としては、例えば、ウレルマブ及びPF-05082566(国際公開第12/32433号)が挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アゴニストGITR抗体などのGITRアゴニストである。好適なGITR抗体としては、例えば、BMS-986153、BMS-986156、TRX-518(国際公開第06/105021号、同第09/009116号)及びMK-4166(国際公開第11/028683号)が挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アゴニストOX40抗体などのOX40アゴニストである。好適なOX40抗体としては、例えば、MEDI-6383又はMEDI-6469が挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、アンタゴニストOX40抗体などのOX40Lアンタゴニストである。好適なOX40Lアンタゴニストとしては、例えば、RG-7888(国際公開第06/029879号)が挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的は、アゴニストCD40抗体などのCD40アゴニストである。更に別の実施形態では、免疫腫瘍学的薬剤は、アンタゴニストCD40抗体などのCD40アンタゴニストである。好適なCD40抗体としては、例えば、ルカタムマブ又はダセツズマブが挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的は、アゴニストCD27抗体などのCD27アゴニストである。好適なCD27抗体としては、例えば、バルリルマブが挙げられる。別の態様では、免疫腫瘍学的薬剤は、MGA271(B7H3に対する)(国際公開第11/109400号)である。更に別の実施形態では、本開示による抗TIGIT抗体と、Trop-2に対する薬剤、例えば、抗体薬物複合体であるサシツズマブゴビテカン-hziyとの組み合わせが企図される。更に別の実施形態では、本明細書に記載の抗TIGIT抗体と、CD47-SIRPα経路を阻害する薬剤との組み合わせが企図される。抗CD47抗体の例は、マグロリマブである。
【0148】
心血管及び/又は代謝関連疾患、障害、及び状態の治療のための併用療法に有用な治療薬の例として、コレステロールの酵素的合成を阻害するスタチン(例えば、CRESTOR(登録商標)、LESCOL(登録商標)、LIPITOR(登録商標)、MEVACOR(登録商標)、PRAVACOL(登録商標)、及びZOCOR(登録商標))、コレストロールを捕捉し、その吸収を阻害する胆汁酸樹脂(例えば、COLESTID(登録商標)、LO-CHOLEST(登録商標)、PREVALITE(登録商標)、QUESTRAN(登録商標)、及びWELCHOL(登録商標))、コレステロールの吸収を遮断するエゼチミブ(ZETIA(登録商標))、トリグリセリドを低下させ、HDLをやや増加させることができるフィブリン酸(例えば、TRICOR(登録商標))、LDLコレステロール及びトリグリセリドをやや低下させるナイアシン(例えば、NIACOR(登録商標))、並びに/又は前述の組み合わせ(例えば、VYTORIN(登録商標)(エゼチミブとシンバスタチン)が挙げられる。本明細書に記載の抗TIGIT抗体と組み合わせて使用するための候補であり得る代替コレステロール治療として、様々なサプリメント及びハーブ(例えば、ニンニク、ポリコサノール、及びグッグル)が挙げられる。
【0149】
免疫及び炎症関連疾患、障害、又は状態に対する併用療法において有用な治療薬の例として、アスピリン、イブプロフェン、及び他のプロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、及びチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、fuirofenac、イブフェナク、イソキセパック、oxpinac、スリンダク、チオピナック、トルメチン、ジドメタシン、及びゾメピラック)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸及びトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサル及びフルフェニサール)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム及びテノキシカム)、サリチル酸塩(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)並びにピラゾロン(アパゾン、bezpiperylon、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられるが、これらに限定されない。他の組み合わせには、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤が含まれる。
【0150】
組み合わせのための他の活性薬剤としては、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、又はヒドロコルチゾンなどのステロイドが挙げられる。そのような組み合わせは、必要なステロイド用量を漸減することによって、ステロイドの1つ以上の有害作用を低減又は更に排除することができるため、特に有利であり得る。
【0151】
例えば、関節リウマチを治療するために併用して使用できる活性薬剤の追加の例としては、サイトカイン抑制抗炎症薬(CSAID)、他のヒトサイトカイン又は成長因子、例えば、TNF、LT、IL-10、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-15、IL-16、IL-18、EMAP-II、GM-CSF、FGF、又はPDGFに対する抗体又はアンタゴニストが挙げられる。
【0152】
活性薬剤の特定の組み合わせは、自己免疫及びその後の炎症カスケードの異なる点を妨害でき、TNFアンタゴニスト、例えば、キメラ、ヒト化、又はヒトTNF抗体である、REMICADE(登録商標)、HUMIRA(登録商標)、抗TNF抗体断片(例えば、CDP870)、及び可溶性p55又はp75 TNF受容体、それらの誘導体、p75TNFRIgG(ENBREL(登録商標)又はp55TNFR1gG(レネルセプト)、可溶性IL-13受容体(sIL-13)、更にTNFα-変換酵素(TACE)阻害剤を含み、同様に、IL-1阻害剤(例えば、インターロイキン-1変換酵素阻害剤)が有効であり得る。他の組み合わせとして、インターロイキン11、抗P7s、及びp-セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)が挙げられる。本明細書に記載のA2AR/A2BR阻害剤と組み合わせて有用な薬剤の他の例としては、インターフェロン-131a(AVONEX(登録商標))、インターフェロン-13lb(BETASERON(登録商標))、コパキソン、高圧酸素、静脈内免疫グロブリン、clabribine、及び他のヒトサイトカイン又は成長因子の抗体又はアンタゴニスト(例えば、CD40リガンド及びCD80に対する抗体)が挙げられる。
【0153】
いくつかの実施形態では、組み合わせは、本開示の抗体と、対照正常組織と比較して、がん細胞上で優先的に発現される表面抗原に対する第2の抗体である。がんの治療のための本開示の抗体との併用療法で投与され得る抗体のいくつかの例としては、HER2抗原に対するHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、VEGFに対するAvastin(登録商標)(ベバシズマブ)、又はEGF受容体に対する抗体、例えば、(Erbitux(登録商標)、セツキシマブ)、及びVectibix(登録商標)(パニツムマブ)が挙げられる。投与され得る他の薬剤としては、PD-1、PD-L1、CTLA-4、4-1BB、BTLA、PVRIG、VISTA、TIM-3、及びLAG-3のいずれかの抗体又は他の阻害剤、又は他の下流のシグナル伝達阻害剤、例えば、mTOR及びGSK3β阻害剤、並びにサイトカイン、例えば、インターフェロンγ、IL-2、及びIL-15が挙げられる。追加の薬剤のいくつかの特定の例としては、イピリムマブ、パゾパニブ、スニチニブ、ダサチニブ、ペンブロリズマブ、INCR024360、ダブラフェニブ、トラメチニブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、エルロチニブ(例えば、TARCEVA(登録商標))、コビメチニブ、ニボルマブ、及びジムベレリマブが挙げられる。併用療法のための第2の抗体又は他の薬剤の選択は、治療されるがんに依存する。任意選択的に、がんは、適切な抗体の選択を導くために抗原の発現又は優先的発現について試験される。いくつかの実施形態では、第2の抗体のアイソタイプは、ADCC、CDC、及び食作用などのエフェクター機能を促進するためのヒトIgG1である。
【0154】
同様の併用療法は、感染性疾患、例えばウイルス、細菌、真菌、及び寄生虫感染性疾患、障害及び状態、並びにそれに関連する障害などの治療又は予防に使用できる。例えば、本開示の抗体は、病原体に対する抗体、又は病原体に対するワクチン、例えば、ラウス肉腫ウイルスに対するパリビズマブなどと組み合わせられ得る。ワクチンは、免疫応答を誘発するのに有効な病原体のタンパク質又はその断片であり得る。本開示の抗体は、病原体に対する抗体又はワクチンの免疫応答を増強する。本開示の抗体はまた、エクスビボで増殖させたT細胞又はナチュラルキラー細胞と投与することもできる。
【0155】
そのような併用療法には、ウイルスの様々な生活環ステージを標的とし、異なる作用機序を有する抗ウイルス剤が含まれ、ウイルス脱殻の阻害剤(例えば、アマンタジン及びリマンチジン)、逆転写酵素阻害剤(例えば、アシクロビル、ジドブジン、及びラミブジン)、インテグラーゼを標的とする薬剤、ウイルスDNAへの転写因子の結合を遮断する薬剤、翻訳に影響を与える薬剤(例えば、アンチセンス分子)(例えば、ホミビルセン)、翻訳/リボザイム機能を調節する薬剤、プロテアーゼ阻害剤、ウイルス構築調節剤(例えば、リファンピシン)、例えば、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤などの抗レトロウイルス薬(例えば、アジドチミジン(AZT)、ddl、ddC、3TC、d4T)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、エファビレンツ、ネビラピン)、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤、及びウイルス粒子の放出を防止する薬剤(例えば、ザナミビル及びオセルタミビル)が挙げられるが、これらに限定されない。特定のウイルス感染(例えば、HIV)の治療及び/又は予防は、しばしば、抗ウイルス剤の群(「カクテル」)を伴う。
【0156】
本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかと組み合わせて使用するために企図される他の抗ウイルス剤としては、アバカビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、ampligen、arbidol、アタザナビル、ATRIPLA(登録商標)、boceprevirertet、シドホビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、imunovir、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、種々インターフェロン(例えば、ペグインターフェロンα-2a)、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、nexavir、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リトナビル、pyramidine、サキナビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、TRUVADA(登録商標)、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、viramidine、及びザルシタビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
本開示は、抗寄生虫剤と併用する本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの使用を企図する。そのような薬剤としては、チアベンダゾール、ピランテルパモ酸塩、メベンダゾール、プラジカンテル、ニクロサミド、ビチオノール、オキサムニキン、メトリホナート、イベルメクチン、アルベンダゾール、エフロルニチン、メラルソプロール、ペンタミジン、ベンズニダゾール、ニフルチモックス、及びニトロイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、寄生障害の治療に有用性を見出すことができる他の薬剤を認識している。
【0158】
本開示の実施形態は、細菌障害の治療又は予防に有用な薬剤と併用する、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの使用を企図する。抗菌剤は、作用機序、化学構造、及び活性スペクトルなどに基づいて、様々な方法で分類することができる。抗菌剤の例としては、細菌細胞壁を標的とするもの(例えば、セファロスポリン及びペニシリン)又は細胞膜を標的とするもの(例えば、ポリミキシン)、又は必須細菌酵素を妨害するもの(例えば、スルホンアミド、リファマイシン、及びキノリン)が挙げられる。タンパク質合成を標的とするほとんどの抗菌剤(例えば、テトラサイクリン及びマクロライド)は静菌性であるが、アミノグリコシドなどの薬剤は殺菌性である。抗菌剤を分類する別の手段は、それらの標的特異性に基づき、「狭域」薬剤は、特定のタイプの細菌を標的とする(例えば、連鎖球菌などのグラム陽性菌)、一方、「広域」薬剤は、より広範囲の細菌に対する活性を有する。当業者は、特定の細菌感染症における使用に適した抗菌剤の種類を認識している。
【0159】
本開示の実施形態は、真菌障害の治療又は予防に有用な薬剤と併用する、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの使用を企図する。抗真菌剤としては、ポリエン(例えば、アンホテリシン、ナイスタチン、及びピマリシン)、アゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、及びケトコナゾール)、アリルアミン(例えば、ナフチフィン、及びテルビナフィン)及びモルホリン(例えば、アモロルフィン)、及び代謝拮抗薬(例えば、5-フルオロシトシン)が挙げられる。
【0160】
本開示は、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体を包含する。
【0161】
V.他の用途
本開示の抗TIGIT抗体は、臨床診断又は治療の文脈で、又は研究においてTIGITを検出するために使用できる。例えば、抗体は、対象が治療に適したがん又は感染性疾患に罹患していることの指標として、T細胞、ナチュラルキラー細胞及びがん細胞上のTIGITの存在を検出するために使用され得る。がん又は感染性疾患に罹患している対象のT細胞、ナチュラルキラー細胞及び/又はがん細胞上のTIGITの発現はまた、がん又は感染性疾患が本開示の抗体による治療に適しているという指標を提供する。抗体はまた、T細胞、ナチュラルキラー細胞、及びがん細胞、並びに様々な刺激に対するそれらの応答を検出する際の実験室での研究のための研究用試薬としても販売できる。そのような使用において、抗体は、蛍光分子、スピン標識分子、酵素、又は放射性同位体を含むがこれらに限定されない1つ以上の検出可能なシグナルで標識することができ、TIGITに対するアッセイを実施するための全ての必要な試薬と共にキットの形態で提供することができる。本開示の抗TIGIT抗体は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによって、TIGITを精製するためにも使用できる。
【0162】
VI.キット
TIGITに対する抗体は、キットの構成要素として、併用療法で使用するために記載された第2の抗体又は薬剤のいずれかと組み合わせることができる。本明細書に開示される開示は、本明細書に開示される抗体のうちの1つ以上、並びに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は担体(限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、滅菌水、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油、ゴマ油、油/水エマルション又は水/油エマルションなどのエマルション、ミクロエマルション、ナノ担体、及び様々な種類の湿潤剤など)を含有する1つ以上のキットを提供する。アルコール、油、グリコール、防腐剤、香味剤、着色剤、懸濁剤などの添加剤も、担体、希釈剤、又は賦形剤と共に本開示のキットに含めることができる。一実施形態では、本明細書に開示される抗体組成物における使用に適切な薬学的に許容される担体は、無菌で、病原体を含まず、かつ/又は関連する感染及び他の過度の有害な副作用のリスクなしに対象に投与するのに安全である。キットにおいて、それぞれの薬剤は、組み合わせた後に投与するための説明書、又は別々の投与のための説明書と共に、別個のバイアルにおいて提供され得る。キットはまた、本明細書に開示される抗TIGIT抗体のいずれかの適切な取り扱い及び保管のための書面による説明書を含むことができる。
【0163】
VII.実施形態
実施形態1.ヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、(a)配列番号36に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1、配列番号37に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号38に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号39に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖(LC)CDR1、配列番号40に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号41に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(b)配列番号42に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号43に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号44に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号45に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号46に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号47に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(c)配列番号48に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号49に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号50に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号51に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号52に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号53に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(d)配列番号54に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号55に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号56に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号57に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号58に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号59に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(e)配列番号60に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号61に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号62に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号64に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(f)配列番号60に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号66に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(g)配列番号69に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号55に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号70に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号71に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(h)配列番号72に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号73に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、又は、(i)配列番号74に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR1、配列番号75に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR2、及び配列番号67に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR1、配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR2、及び配列番号65に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、を含む、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0164】
実施形態2.(a)配列番号36を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号37を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号38を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号39に対する同一性を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号40を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号41を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(b)配列番号42を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号43を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号44を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号45を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号46を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号47を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(c)配列番号48を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号49を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号50を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号51を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号52を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号53を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(d)配列番号54を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号55を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号56を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号57を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号58を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号59を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(e)配列番号60を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号61を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号62を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号64を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(f)配列番号60を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号66を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号67を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(g)配列番号69を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号55を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号70を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号71を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、(h)配列番号72を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号73を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号67を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、又は、(i)配列番号74を含むアミノ配列を有するHC-CDR1、配列番号75を含むアミノ配列を有するHC-CDR2、及び配列番号67を含むアミノ配列を有するHC-CDR3を含む、重鎖可変領域;並びに、配列番号63を含むアミノ配列を有するLC-CDR1、配列番号68を含むアミノ配列を有するLC-CDR2、及び配列番号65を含むアミノ配列を有するLC-CDR3を含む、軽鎖可変領域、を含む、実施形態1に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0165】
実施形態3.(a)配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号2に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(b)配列番号3に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(c)配列番号5に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号6に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(d)配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(e)配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(f)配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(g)配列番号13に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(h)配列番号15に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(i)配列番号17に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(j)配列番号76に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号77に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(k)配列番号78に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号77に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(l)配列番号76に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号79に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は、(m)配列番号78に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号79に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、を含む、実施形態1又は2に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0166】
実施形態4.抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、モノクローナル抗体である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0167】
実施形態5.抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、キメラ、ヒト化、又はベニア化抗体である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0168】
実施形態6.キメラ抗体が、ヒトIgG1/カッパFab定常ドメインを含む、実施形態5に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0169】
実施形態7.抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、ヒト抗体である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0170】
実施形態8.抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、TIGITのCD155への結合を阻害し、任意選択的に、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片が、実施例1のように測定される、約0.1nM~約10nM、約0.1nM~約5nM、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.4nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMのIC50で結合を阻害する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0171】
実施形態9.抗体が、変異型ヒトIgG1、変異型ヒトIgG2、変異型ヒトIgG3、又は変異型ヒトIgG4から選択される変異型重鎖定常領域と、任意選択的に、ヒト軽鎖定常領域と、を更に含む、実施形態1~5又は7~8のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0172】
実施形態10.変異型重鎖定常領域が、野生型重鎖定常領域と比較して、増強又は低減したエフェクター機能を有する、実施形態9に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0173】
実施形態11.変異型ヒトIgG重鎖定常領域が、配列番号97、配列番号99、又は配列番号101を含む、実施形態10に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0174】
実施形態12.抗体が、野生型ヒトIgG重鎖定常領域と、任意選択的に、ヒト軽鎖定常領域と、を更に含む、実施形態1~5又は7~8のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0175】
実施形態13.野生型ヒトIgG重鎖定常領域が、配列番号94を含む、実施形態12に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0176】
実施形態14.ヒト軽鎖カッパ定常領域を含み、任意選択的に、ヒト軽鎖定常領域が配列番号95を含む、実施形態12又は13に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0177】
実施形態15.抗体が、重鎖及び軽鎖を有し、(a)重鎖は配列番号92を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、又は(b)重鎖は配列番号96を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、又は(c)重鎖は配列番号98を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、又は(d)重鎖は配列番号100を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖は配列番号93を含むアミノ酸配列を有する、実施形態1~5又は7~8のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0178】
実施形態16.抗体又はその結合断片が、(a)表面プラズモン共鳴によって測定される、約0.01×10-11M~約100×10-11M、約0.1×10-11M~約100×10-11M、約0.1×10-11M~約10×10-11M、約1×10-11M~約100×10-11M又は約1×10-11M~約10×10-11Mの平衡結合定数(KD)を有する、(b)実施例1のように測定される、約0.2nM~約2nM、約0.2nM~約0.8nM、約0.6nM~約0.8nM、又は約0.6nM~約0.8nMの半数阻害濃度(IC50)で、細胞表面ヒトTIGITへの可溶性ヒトCD155リガンドの結合を遮断する、(c)少なくともTIGITの次の残基、すなわち、(i)配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(ii)配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(iii)配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つ、(iv)配列番号80のE60、D72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つ、若しくは(v)配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82、を含む、エピトープに結合する、又は(d)(a)、(b)、及び(c)の任意の組み合わせである、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0179】
実施形態17.抗体又はその抗原結合断片が、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片と、TIGITへの結合について競合する、実施形態16に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0180】
実施形態18.過剰の抗体又はその抗原結合断片が、競合結合アッセイにおいて測定するとき、参照抗体と、TIGITへの結合について少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%競合し、参照抗体は、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、実施形態16又は17に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0181】
実施形態19.ヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0182】
実施形態20.TIGITのCD155への結合を阻害する方法であって、TIGITを、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む、方法。
【0183】
実施形態21.病原体に感染した対象を治療する方法であって、有効なレジメン又は治療有効量の実施形態1~20のいずれか1つに記載の抗体を対象に投与することを含む、方法。
【0184】
実施形態22.病原体が、ウイルス、細菌、真菌、又は原生動物である、実施形態21に記載の方法。
【0185】
実施形態23.病原体が、HIV、SIV、肝炎、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、cornovirus、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、アルボウイルス脳炎ウイルス、クラミジア、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、treptocci、肺炎球菌、髄膜炎菌、conococci、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ、及びライム病菌である、実施形態22に記載の方法。
【0186】
実施形態24.対象が、抗体によって増強される病原体に対する免疫応答を誘導するワクチンで治療される、実施形態21~23のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態25.ワクチンが、病原体のタンパク質又はその断片を含む、実施形態24に記載の方法。
【0188】
実施形態26.対象に、病原体に対する第2の抗体が更に投与され、病原体に対する第2の抗体のエフェクター媒介性細胞傷害性が、抗体によって増強される、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
実施形態27.対象に、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗菌剤、又は抗真菌剤のうちの1つ以上が更に投与される、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態28.がんの治療又は効果的な予防の方法であって、がんを有する又はがんのリスクがある対象に、有効なレジメン又は治療有効量の、実施形態1~27のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片のうちのいずれか1つを投与することを含む、方法。
【0191】
実施形態29.がんが、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、メルケル細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮がん、B細胞リンパ腫、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、消化管がん、膀胱がん、骨がん、骨髄、皮膚がん、胆嚢がん、心臓がん、肺がん、唾液腺がん、副腎がん、甲状腺がん、神経節がん、中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)のがん、並びに、造血系のがん、免疫系のがんである、実施形態28に記載の方法。
【0192】
実施形態30.対象に、抗体又はその抗原結合断片によって活性化される腫瘍浸潤T細胞が投与される、実施形態28又は29に記載の方法。
【0193】
実施形態31.対象に、がんに対する免疫応答を誘導するワクチンが投与され、抗体又はその抗原結合断片によって増強される、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態32.ワクチンが、がん細胞の表面上に発現する抗原又はその断片を含む、実施形態31に記載の方法。
【0195】
実施形態33.対象に、がんに対する細胞傷害性が抗体又はその抗原結合断片によって増強されるナチュラルキラー細胞が投与される、実施形態28~32のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態34.対象に、がんの細胞の表面上に発現する抗原に対する第2の抗体が更に投与され、それによって、がんに対する第2の抗体のエフェクター媒介性細胞傷害性が、抗体又はその抗原結合断片によって増強される、実施形態28~33のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態35.対象に、免疫細胞の表面上に発現する抗原に対する第2の抗体が更に投与される、実施形態28~33のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
実施形態36.免疫細胞が、T細胞又はナチュラルキラー細胞である、実施形態35に記載の方法。
【0199】
実施形態37.抗原が、CTLA-4、PD-1又はPD-L1である、実施形態35又は36に記載の方法。
【0200】
実施形態38.対象に、化学療法、放射線、細胞系療法、及び手術からなる群から選択される1つ以上の治療法が更に施される、実施形態28~37のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
実施形態39.対象に、1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドの阻害剤が更に投与される、実施形態28~38のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施形態40.1つ以上の免疫チェックポイント受容体又はリガンドが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、PVRIG、BTLA、VISTA、CD96、A2aR,A2bR、A2a/A2bR、アルギナーゼ、CD39、CD73、IDO、及びTDOからなる群から選択される、実施形態39に記載の方法。
【0203】
実施形態41.阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ランブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、実施形態39に記載の方法。
【0204】
実施形態42.実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0205】
実施形態43.配列番号80の次のアミノ酸残基、すなわち、T55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むヒトTIGITのエピトープに結合する、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0206】
実施形態44.抗体又はその抗原結合断片が、少なくともTIGITの次の残基、すなわち、(i)配列番号80のD72、並びに配列番号80のT55、Q56、N58、E60、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(ii)配列番号80のE60及びD72、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、S80、及びK82のうちの少なくとも1つ、(iii)配列番号80のD72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、E60、及びS80のうちの少なくとも1つ、(iv)配列番号80のE60、D72及びK82、並びに任意選択的に配列番号80のT55、Q56、N58、及びS80のうちの少なくとも1つ、又は(v)配列番号80のT55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82、を含む、エピトープに結合する、実施形態43に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0207】
実施形態45.抗体又はその抗原結合断片が、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片と、TIGITへの結合について競合する、実施形態43又は44に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0208】
実施形態46.過剰の抗体又はその抗原結合断片が、競合結合アッセイにおいて測定するとき、参照抗体と、TIGITへの結合について少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%競合し、参照抗体は、配列番号92を含むアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号93を含むアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含む、実施形態43又は44に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0209】
実施形態47.抗体又はその抗原結合断片が、配列番号80の次のアミノ酸残基、すなわち、T55、Q56、N58、E60、D72、S80、及びK82のうちの少なくとも1つを含むヒトTIGITのエピトープに結合する、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【0210】
本明細書の全体を通して与えられる全ての最大数値限定は、それよりも小さい全ての数値限定を、かかるより小さい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように含むことが意図される。本明細書の全体を通して与えられる全ての最小数値限定は、それよりも高い全ての数値限定を、かかるより高い数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書の全体を通して与えられる全ての数値範囲は、かかるより広い数値範囲内に含まれるより狭い全ての数値範囲を、かかるより狭い数値範囲があたかも全て本明細書に明確に記載されているかのように含む。
【0211】
上記又は下記に引用される全ての特許出願、ウェブサイト、他の刊行物、受託番号などは、個々の項目が参照によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。配列の異なるバージョンが異なる時点で受託番号と関連付けられる場合、本出願の有効出願日での受託番号と関連付けられているバージョンを意味する。有効出願日とは、実際の出願日、又は該当する場合、受託番号を言及する優先権出願の出願日のいずれか早い方を意味する。同様に、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが異なる時点で公開されている場合、特に明記しない限り、本出願の有効出願日において最も近く公開されたバージョンを意味する。本発明の任意の特徴、工程、要素、実施形態、又は態様は、特に明記しない限り、他の任意のものと組み合わせて使用することができる。
【0212】
本発明は、明確さ及び理解の目的のために説明及び例示としてある程度詳細に説明されているが、特定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【実施例】
【0213】
以下の実施例は、ヒトTIGITに対する抗体の産生、特性評価、及びヒト化について考察し、本出願に記載の抗体が決定され得る結合特性による代表的な方法も提供する。
【0214】
実施例1.抗TIGIT抗体の生成
抗TIGIT抗体は、免疫化マウスから得た。配列番号83を有するHisタグ付きヒトTIGITタンパク質(hTIGIT-His)及び配列番号85を有するcynoTIGITタンパク質(cTIGIT-His)の細胞外ドメインを、HEK293細胞内で一過性に発現させ、抗His親和性クロマトグラフィーによって精製した。BALB/cマウスのRIMMS免疫化を、組換えhTIGIT-HisとcTIGIT-Hisタンパク質の混合物を用いて行った。免疫原に対するELISAアッセイによる最終追加免疫の前に、血漿力価を試験し、良好な力価を確認した。最終追加免疫後、脾臓、鼠径部、腕部、腋窩、及び頸部リンパ節と共に末梢血を採取した。採取した材料をB細胞精製にかけた後、初期スクリーニングのため融合させてハイブリドーマを生成した。
【0215】
融合10日後のELISAアッセイを使用して、ハイブリドーマの一次スクリーニングを行った。384ウェルのELISAプレートを1μg/mLのhTIGIT-Hisタンパク質でコーティングし、プレートをブロッキングした後、20μLのハイブリドーマ上清を添加し、TIGITをコーティングしたプレートに結合させた。室温でインキュベートした後、プレートを洗浄し、TIGITをコーティングしたプレートに結合した抗体を、HRP共役ヤギ抗マウスIgG抗体を使用して検出した。
【0216】
次いで、陽性ハイブリドーマ細胞を48ウェルプレートで増殖させ、上清を回収して、ELISAアッセイにおいて抗体特異性を試験した。ELISAプレートをhTIGIT-Hisタンパク質、又はcTIGIT-Hisタンパク質でコーティングし、免疫原タンパク質のHisタグを認識する抗体の選択を解除するため、CD47-Hisタンパク質(Acro Biosystems、カタログ番号CD7-H5227)を対照カウンターアッセイとして使用した。次いで、ヒト及びcynoTIGIT両方への陽性結合を示すが、ヒトタグ付き対照タンパク質には陰性である抗体を、TIGIT/CD155結合の機能的遮断について試験した。
【0217】
ヒトTIGIT細胞外ドメインをマウスFc配列に融合し、このhTIGIT-mFc(配列番号87)タンパク質をHEK293細胞で発現させ、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。R&D Systems(カタログ番号9174-CD-01M)のヒトFc配列に融合した細胞外ドメインを含む組換えヒトCD155(hCD155-hFc)を使用して、CD155/TIGIT相互作用の遮断アッセイを確立した。抗体の機能的遮断活性を試験するために、0.5μg/mLのhTIGIT-mFcタンパク質を使用してELISAプレートをコーティングし、ブロッキング後、ハイブリドーマ上清を0.5μg/mLのhCD155-hFcタンパク質と一緒に添加した。インキュベーション後、ELISAプレートを洗浄し、結合したhCD155-hFcをHRP共役ヤギ抗ヒトIgG抗体を使用して検出した。ヒト及びカニクイザル-TIGITの両方に結合することができ、抗体結合がCD155/TIGIT相互作用を遮断することができたクローンを同定した。
【0218】
これらのクローンを更に増殖させ、プロテインGカラムを使用して抗体を精製した。これらの精製抗体を、細胞表面上に発現したヒト及びcynoTIGITへの結合について、フローサイトメトリーによって試験した。完全長ヒトTIGITクローン2A7を発現する安定なCHO-K1細胞株(Swiss-Prot Q495A1、配列番号80)又は完全長cynoTIGITクローンC10(Swiss-Prot A0A2K5UW92、配列番号84)が開発された。フローアッセイの場合、細胞を回収し、様々な濃度の抗体の存在下(又は非存在火)で100μLのHBSS緩衝液中で4℃にて1時間インキュベートした。HBSSで洗浄した後、細胞上の抗体結合を2μg/mLのAlexa488標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A-11001)で4℃にて30分間検出した。次いで、細胞を洗浄し、PBS中に再懸濁し、Attune NxTフローサイトメーター(ThermoFisher Scientific(Waltham,MA))を使用するフローサイトメトリーに供した。蛍光強度の幾何平均は、単一のホールセル集団について得られた。細胞表面上に発現したヒト及びcynoTIGITの両方に結合することができる抗体を、CHO細胞の表面上のヒトTIGITに結合する組換えヒトCD155に対するそれらの阻止活性について更に試験した。CHO-hTIGIT細胞(10
5細胞)を、様々な濃度の抗体の存在下、室温で1時間、2.5μg/mLのhCD155-Fcタンパク質とインキュベートした。HBSS緩衝液で洗浄後、hTIGIT-CHO細胞へのhCD155-Fc結合をPerCP-eFluor 710共役抗CD155抗体(ThermoFisher、カタログ番号1550-42)で検出した。次いで、細胞を洗浄し、フローサイトメトリー分析に供した。表4は、ヒト及びcynoTIGITに結合する抗体の半数有効濃度(EC
50)(n=2)、並びにTIGITに結合するCD155の阻害についてのIC
50を示す。
【表4】
【0219】
上位のハイブリドーマ細胞株を、ヒト及びcynoTIGITの両方に対する結合親和性、並びにTIGITとのCD155結合を遮断する能力に基づいて選択した。これらのクローンのハイブリドーマを増殖し、マウス抗TIGIT抗体の重鎖及び軽鎖可変領域(それぞれVH及びVL)配列決定を、標準的な手順に従って行った。抗体21F8、30M18、24F8、5J24、21B9、22B22、28P24、21B16、及び28O12の成熟VH及びVLのアミノ酸配列を、下線を付けたCDRと共に
図1A~1Iに示す。CDR配列の割り当て及びアミノ酸位置の番号付けは、Kabat定義に従う。
【0220】
図1A~
図1Iに示される抗体のうち7つは、マウス可変ドメイン及びヒトIgG1/カッパ定常ドメインを有するマウスヒトキメラとして組換えで発現した。組換えタンパク質をHEK293細胞から発現させ、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0221】
これらのキメラ抗TIGIT抗体の細胞表面に過剰発現したヒト及びcynoTIGITへの結合能は、前述のフローサイトメトリーアッセイを利用して確認された。キメラ抗TIGIT抗体をhTIGIT-CHO又はcTIGIT-CHOと共にインキュベートした後、Alexa 488共役ヤギ抗ヒトIgG抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A-11013)を使用して、結合抗体を検出した。hTIGIT-CHO-K1細胞への組換えhCD155-hFc結合を阻害する抗体機能活性もまた、前述のフローアッセイを使用して決定した。ヒト及びcynoTIGITに結合する抗TIGITキメラ抗体のEC
50、並びに、hTIGIT発現細胞へのhCD155結合の阻害についてのIC
50を決定し、表5に示した。
【表5】
【0222】
単離されたヒトCD4
+及びCD8
+上で内因的に発現するTIGITへのキメラ抗TIGIT抗体の結合能を、フローサイトメトリーアッセイを使用して細胞を試験した。ヒトCD4
+又はCD8
+T細胞を、RosetteSep(商標)ヒトCD4
+T細胞濃縮カクテル(Stemcell、カタログ番号15022)又はヒトCD8
+T細胞濃縮カクテル(Stemcell、カタログ番号15022)をそれぞれ使用して、ヒト全血から単離した。表6に示されるように、同等のEC
50が、ヒトCD4
+又はCD8
+細胞に結合する組換え抗TIGIT抗体について観察され、CHO-K1細胞上の過剰発現した完全長ヒトTIGITへの結合親和性と同様であった。しかしながら、クローン間で最大結合活性(MFImax)の違いが観察された。
【表6】
【0223】
カニクイザル全血に対する組換え抗TIGITキメラ抗体の結合について試験し、CD4
+及びCD8
+細胞上の内因性cynoTIGITタンパク質に対する抗体の結合能を確認した。カニクイザル全血を、20μg/mL、5μg/mL、1μg/mL、及び0.2μg/mLで組換え抗TIGITキメラ抗体と共にインキュベートした。4℃で30分間インキュベートした後、RBC溶解を室温で15分間行った。次いで、細胞を洗浄し、遠心分離によって回収し、Fcブロック(BD Biosciences、カタログ番号564219)及びLive-dead fixable Aqua(Invitrogen、カタログ番号L34957)を含有するカクテルでブロッキングした。細胞が結合した抗TIGIT抗体を、4℃で30分間、抗ヒトIgGFc-ビオチン(Southern Biotech、カタログ番号9040-08)で検出し、続いて、細胞を洗浄して遠心分離し、PE-共役ストレプトアビジン(Invitrogen、カタログ番号12-4317-87)と共に4℃にて30分間、2回目のインキュベーションを行った。野生型ヒトIgG1抗体をアイソタイプ対照として使用し、直接共役した抗ヒトTIGIT-PE(eBiosciences、カタログ番号12-9500-42)を陽性対照として使用した。
図2は、Ch24F8、Ch28O12、及びCh22B22が、カニクイザルCD4
+及びCD8
+細胞上に発現したcynoTIGITに結合できたことを示す。蛍光強度の幾何平均(gMFI)を得て、データをアイソタイプ対照に対するgMFIの倍率として示した。
【0224】
これらの組換え抗TIGIT抗体のヒトTIGITへの動的結合は、Bio-Rad ProteOn XPR36機器を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した。組換え抗体を、プロテインAでコーティングされたGLCセンサチップを使用して固定化し、可溶性Hisタグ付きTIGIT(Acro Biosystems、カタログ番号TIT-H52H3)を分析物として使用した。結合定数を25℃で決定した。表7に示されるように、試験した7つの組換え抗TIGITキメラ抗体の中で、クローン24F8は、平衡解離定数(K
D)によって測定される最も高い結合親和性を有する。
【表7】
【0225】
実施例2.ヒト化抗TIGIT抗体の生成
マウス抗体24F8を、CDRグラフト化技術を使用するヒト化のために選択した(Queen et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:10029-10033,1989)。24F8のマウス可変重鎖(VH)配列及び可変軽鎖(VL)配列を使用して、各鎖について最も近い2つのヒト生殖系列を特定した。VHについては、70%の配列同一性を有するIGHV4-34
*09、及び66%の同一性を有するIGHV4-4
*02が見出された。VLについては、70%の配列同一性を有するIGKV1-33
*01、及び67%の同一性を有するIGKV3-15
*01が見出された(表8)。
【表8】
【0226】
VH鎖中の3つの重鎖CDR(HC-CDR)配列及びVL鎖中の3つの軽鎖CDR(LC-CDR)配列の位置決めは、Kabatに従って定義された。
【0227】
VH及びVLフレームワークのヒトアクセプターを、GenBankデータベース内で検索し(Benson et al.,Nucleic Acids Res.2005,33,D34-D38)、ヒトcDNAをコードするVH及びVL配列を特定した(表8参照)。
【0228】
各ヒトアクセプターのCDRグラフト化を、VHアクセプターについてHC-CDR1(配列番号48)、HC-CDR2(配列番号49)、及びHC-CDR3(配列番号50)、並びにVLアクセプターについてLC-CDR1(配列番号51)、LC-CDR2(配列番号52)、及びLC-CDR3(配列番号53)を使用して行った。得られた配列を、任意の潜在的な翻訳後修飾の導入又は化学分解部位について調べ、そのような可能性がないことを確認した。マウス逆突然変異に対する推定残基も、抗体相同性グラフィックモデリングを使用して同定した。
【0229】
2つのVH及び2つのVLをグラフト化したヒトアクセプターについて、ヒトIgG1/カッパ定常ドメインを有するFab断片としてオリゴヌクレオチドを設計して合成し、タンパク質精製を必要としない、発現レベル及び生物物理学的特性の高スループットスクリーニングのためベクター系に挿入した(Zhang & Hirama、米国特許出願公開第2012/0178110号)。VH1(配列番号76)又はVH2(配列番号78)の、VL1(配列番号79)又はVL2(配列番号77)との4つ全ての組み合わせ(
図1J~
図1M)を、マウス24F8VH(配列番号5)及び24F8VL(配列番号6)ドメイン及びヒトIgG1/カッパFab定常ドメインから構築されたキメラFab mVH+mVLと共にスクリーニングした。SASA(血清アルブミンに対する単一ドメイン抗体)融合タンパク質として分泌されたFabの上清を、BSAコーティングされたチップ及び分析物としての可溶性Hisタグ付きTIGITを使用するFab捕捉によって、Biacore 8K機器を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析した。ヒト及びcynoTIGITの動的結合データを、5つのFab断片について表9に示す。
【表9】
【0230】
これらのデータは、VH1+VL2とVH2+VL2のヒト化可変ドメインの組み合わせが、平衡解離定数(K
D)によって測定されるとき、ヒト及びcynoTIGITの両方に最も強く結合し、またマウス/ヒトキメラFabの結合親和性の大部分を保持したことを示した。この結果として、マウスフレームワーク残基の逆突然変異を含む構築物は検討しなかった。これらの2つのVH/VLの組み合わせ(
図1J及び
図1K)は、それぞれ完全長のHu24F8.1及びHu24F8.2 IgG1/カッパ抗体の構築物設計に選択した。
【0231】
Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAは、配列番号97のアミノ酸配列を有する重鎖定常領域及び配列番号95のアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を有するIgG1/カッパ抗体である。「IgG1.AA」の表記は、重鎖定常領域が位置234及び235(Eu番号付け)においてロイシンからアラニンへのアミノ酸置換を有することを示す。対照的に、「IgG1」の表記は、野生型IgG1 Fc領域を示す。例えば、Hu24F8.2-IgG1は、配列番号94のアミノ酸配列を有する重鎖定常領域及び配列番号95のアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を有するIgG1/カッパ抗体である。これらの実施例で使用されたHu24F8.1-IgG1.AA、Hu24F8.2-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1抗体は、HEK293又はCHO細胞中で組換えにより産生され、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製された。
【0232】
精製された完全長抗体であるHu24F8.1-IgG1.AA(VH1+VL2を含む)及びHu24F8.2-IgG1.AA(VH2+VL2を含む)は、24F8マウスVH+VL及びヒトIgG1/カッパ定常ドメイン(Ch24F8)の完全長キメラ抗体と共に、抗ヒトIgGコーティングしたチップ及び可溶性hTIGIT-His又はcTIGIT-Hisを分析物として使用する抗体捕捉によって、Biacore T200機器を用いてSPRによって分析した。ヒト及びcynoTIGITの動的結合データを、表10に示す。
【表10】
【0233】
両方の完全長ヒト化抗体の動的結合親和性データにより、マウス抗体の結合親和性が完全に保持されており、任意のマウスフレームワーク残基の逆突然変異を導入する必要がないことが確認された。
【0234】
実施例3.抗TIGIT抗体のインビトロ結合研究
細胞表面上に発現したTIGITに対する抗体Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAの結合を、フローサイトメトリーによって調べた。細胞表面上にTIGITを発現する細胞を回収し、様々な濃度の抗体の存在下(又は非存在火)で100μLのHBSS緩衝液中で4℃にて1時間インキュベートした。HBSSで洗浄した後、細胞上の抗体結合を2μg/mLのAlexa488標識ヤギ抗ヒトIgG抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A-11013)で4℃にて30分間検出した。次いで、細胞を洗浄し、PBS中に再懸濁し、Attune NxTフローサイトメーター(ThermoFisher Scientific(Waltham,MA))を使用するフローサイトメトリーに供した。蛍光強度の幾何平均は、単一のホールセル集団について得られ、一過性トランスフェクションの場合、トランスフェクトされていない細胞を用いて、陽性細胞の割合を得るために陽性結合細胞集団をゲーティングした。データは、標準的な4パラメータ曲線適合を使用するGraphPad Prismによって計算した。
【0235】
ヒトTIGIT(クローン2A7)及びcynoTIGIT(クローンC10)を発現する安定したCHO-K1細胞株を使用して、Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAを、それぞれ、ヒトTIGIT及びcynoTIGITへの結合について上記のように試験した。Hu24F8.1-IgG1.AAは、0.447±0.22nM(n=8)のEC
50でヒトTIGITに(
図3A)、0.237±0.33nM(n=6)のEC
50でcynoTIGITに(
図3B)結合した。Hu24F8.2-IgG1.AAは、0.29±0.15nM(n=8)のEC
50でヒトTIGITに(
図3A)、0.35±0.16nM(n=6)のEC
50でcynoTIGITに(
図3B)結合した。これらの結果は、Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAの両方が、細胞表面上に発現するヒト及びcynoTIGITに強く結合することを示している。
【0236】
Hu24F8.2-IgG1.AAのマウスTIGIT(Swiss-Prot Q86176、配列番号88)及びラットTIGIT(Swiss-Prot D3ZTQ2、配列番号89)への結合は、完全長マウス又はラットTIGIT発現構築物を一過性にトランスフェクトしたCHO-K1細胞を使用して調べた。マウスTIGIT発現は、対照抗体GNE10A7(米国特許第9,499,596号、Clarkら、2016)を用いて確認し、ラットTIGIT発現は、対照抗体eBioscience(商標)G1GD7(Invitrogen、カタログ番号12-9501-82)を使用して確認した。最大30nMの抗体で試験するとき、Hu24F8.2-IgG1.AAは、マウスTIGIT(
図4A)又はラットTIGIT(
図4B)のいずれにも結合しない。
【0237】
Hu24F8.2-IgG1.AAの単離されたヒトCD8
+T細胞への結合を、フローサイトメトリーによって調べた。CD8
+T細胞を、製造元の推奨に従い、RosetteSep(商標)ヒトCD8
+T細胞濃縮カクテル(Stemcell、カタログ番号15023)を使用して単離した。次いで、細胞を、20U/mLのrhIL-2を添加された抗CD3/CD28ビーズで7~9日間活性化した。活性化又は非活性化CD8
+細胞を、ヒトFcブロック(BD Biosciences、カタログ番号564219)でブロッキングし、その後フローサイトメトリー抗体結合アッセイに供した。
図5A及び
図5Bに示されるように、Hu24F8.2-IgG1.AAは、非活性か細胞であるCD8
+細胞に0.098±0.013nM(n=2)のEC
50で、活性化CD8
+細胞に0.14±0.036nM(n=2)でそれぞれ結合する。結合のEC
50は、活性化及び非活性化CD8
+細胞で類似しているが、最大結合シグナルにおいて有意差があり、これは、活性化時に細胞表面上のCD8
+におけるTIGIT発現の上昇と一致する。
【0238】
実施例4.抗TIGIT抗体のインビトロ遮断研究
Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAの、TIGITのCD155との相互作用を遮断する活性を、実施例1に記載されるように、ヒトTIGIT(CHO-hTIGIT)及びヒトCD155-Fc融合組換え可溶性タンパク質(hCD155-Fc)を安定的に過剰発現するCHO細胞を使用してフローサイトメトリーにより分析した。
図6に示されるように、Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAの両方が、用量依存的に、細胞表面上のhCD155-FcとCHO-hTIGITとの間の相互作用を遮断した。TIGIT-CD155相互作用の遮断のIC
50は、Hu24F8.1-IgG1.AAについて0.68nM、Hu24F8.2-IgG1.AAについて0.67nMであった。
【0239】
実施例5.抗TIGIT抗体のJurkat Dual Reporter Cell Lineによる特性評価
Hu24F8.1-IgG1.AA及びHu24F8.2-IgG1.AAの、ヒトTIGIT受容体遮断に対する機能的活性を、PromegaのTIGIT/CD155 Blockade Bioassey(Promega、カタログ番号J2205)を使用してアッセイした。このアッセイでは、エフェクター細胞株は、TIGITを過剰発現し、並びにT細胞受容体(TCR)の下流で活性化されるルシフェラーゼレポーターを有するジャーカット細胞株である。別の安定した細胞株は、TCRに結合して活性化するT細胞活性化タンパク質に加えて、ヒトCD155を過剰発現するCHO-K1細胞株である。このCD155 aAPC/CHO-K1細胞株は、人工抗原提示細胞として機能する。これらの2つの細胞株を共培養すると、CHO-K1細胞上のaAPCによってTCR活性化がもたらされ、これによりレポーター構築物が活性化し、その経路活性化は、TIGIT/CD155相互作用によって阻害されて、低いルシフェラーゼ信号をもたらす。抗TIGIT抗体が存在すると、TIGIT/CD155相互作用を阻害し、TIGIT阻害効果が得られ、ルシフェラーゼ信号の増加をもたらす。アッセイは、製造業者のプロトコルに従って行ったが、簡潔には、エフェクタージャーカット細胞を、細胞培養インキュベーター内の96ウェルプレートで一晩回収し、試験抗体を段階希釈してエフェクター細胞、続いて抗原提示CD155 aAPC/CHO-K1細胞に添加する。37℃、5%CO
2での6時間の共培養後、ルシフェラーゼの基質であるBio-Glo試薬を添加し、発光シグナルをEnvision(PerkinElmer)で読み取った。
図7に示されるように、Hu24F8.1-IgG1.AAは、3.35±0.26nM(n=3)のEC
50で用量依存的にレポーター活性を増強でき、一方、Hu24F8.2-IgG1.AAは2.78±0.83nM(n=3)のEC
50を示した。ヒトIgG1対照は、いかなる効果も示さなかった。
【0240】
実施例6.抗TIGIT抗体の分子分析
TIGIT及びFabの発現、精製、結晶化
ヒトTIGITの成熟細胞外ドメイン(残基22~130)の可溶性タンパク質を、HEK293細胞において組換え発現させた。構築物(配列番号90)は、(Gly)4-Ala-(Gly)4リンカーを有するC末端ヘキサヒスチジンタグを含み、アスパラギン残基32及び101をグルタミンに変異させて、N-グリコシル化部位を除去した。清澄化した上清を、Nickel Sepharose Excel(GE Healthcare Life Sciences)カラムを使用した親和性クロマトグラフィー、続くSuperdex 200pg(GE Healthcare Life Sciences)カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。8.4mg/mLの濃度のTIGITタンパク質は、20mM Tris pH7.0、100mM NaClの最終緩衝剤配合物中にあり、液体窒素で急速凍結した。
【0241】
ヒトIgG1抗体Hu24F8.2-IgG1.AAの可溶性Fab断片(Fab24F8)を、リン酸緩衝生理食塩水中、37℃にて3時間パパイン(Thermo Scientific、カタログ番号20341)消化し、続いて室温で一晩消化することによって調製した。切断されたFc断片をMabSelect SuRe Protein A(GE Healthcare Life Sciences)カラムを使用して除去し、通過画分をSuperdex 200pg(GE Healthcare Life Sciences)カラムを使用するSECによって更に精製した。28mg/mLの濃度のFab24F8タンパク質は、20mM Tris pH7.0、100mM NaClの最終緩衝剤配合物中にあり、液体窒素で急速凍結した。
【0242】
TIGITを、4℃で60分間撹拌しながら1:1のモル比でFab24F8タンパク質と混合して、Fab-TIGIT複合体を形成し、続いてSuperdex 200pg(GE Healthcare Life Sciences)カラムを使用する最終SEC精製を行い、タンパク質溶出液の濃度を44mg/mLにした。精製した複合体を、約1500の異なる条件の標準的スクリーニングを用いて、20℃で結晶化試験に使用した。最初に得られた条件は、標準的な戦略、結晶化に顕著に影響を及ぼす体系的に変化するパラメータを用いて最適化した。これらの条件は、体系的に変化するpH又は沈殿物濃度によって更に精密化した。構造解明に適したFab-TIGIT複合体の結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を使用して、0.1μLのタンパク質溶液(20mM Tris pH 7.0中15mg/mL、100mM NaCl)を、0.1μLのリザーバー溶液(20%(w/v)PEG3350、0.20M LiSO4)と混合することによって得た。
【0243】
データ収集及び構造解析
結晶を急速凍結し、100Kの温度で測定した。X線回折データを、極低温条件を使用して、Canadian Light Source(CLS、Saskatoon,Canada)にてFab-TIGIT複合体の結晶から収集した。結晶は、空間群P1に属する。データは、コンピュータソフトウェアプログラムである、autoPROC、XDS、及びAIMLESS(The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography”.Acta Cryst.D50,760-763)を使用して処理した、表11参照。
【表11】
1 括弧内の値は、resolution binの最高値を指す。
【0244】
構造を決定し分析するために必要な相情報は、分子置換によって得られた。以前に解明されたFab(Bohrmann et al.,J.Alzheimers Dis.28:49-69,2012)及びTIGIT(Stengel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2012)の構造を、探索モデルとして使用した。結晶学的非対称単位中に、Fab-TIGIT複合体の3つの分子がある。その後のモデル構築及び精密化は、それぞれプログラムCOOT及びソフトウェアパッケージCCP4を用いる標準的プロトコルに従って実施した。最終モデルの正確さを交差検証するための尺度であるfree R因子の計算には、測定された反射の約4.6%を精密化手順から除外した。TLS精密化(CCP4プログラムREFMAC5を使用)を実行することにより、より低いR因子とより高い品質の電子密度マップが得られた。自動的に生成された局所的なNCS制限を適用した。水モデルは、3.0σで輪郭形成されたFo-Fcマップのピークに水分子を置くことによってCOOTの「Find waters」アルゴリズムを用いて構築され、その後、REFMAC5で精密化されて、COOTの検証ツールで全ての水をチェックした。疑わしい水のリストの基準は、B因子が80Å
2超、2Fo-Fcマップが1.2σ未満、最も近い接触までの距離が2.3Å未満又は3.5Å超とした。73.5~2.24Åの分解能範囲のデータは、精密化の最終サイクルにあり、R
cryst及びR
freeのR因子は、それぞれ22.3及び26.8%であった。最終モデルのラマチャンドランプロットは、全ての残基の89.8%が最も好ましい領域に、8.8%が追加的に許容される領域に、0.7%が一般的に許容される領域にあることを示す。精密化の概要については、表12を参照されたい。
【表12】
1 試験セットは、測定された反射の4.6%を含む
2 幾何学的目標値からの平均二乗偏差
3 MOLEMANによる計算
4 PROCHECKによる計算
ヒトTIGITに結合したFab24F8の構造
【0245】
結晶学的非対称単位中に複合体の3つの独立した分子があり、その原子座標は、全ての非水素原子について、0.53~1.13Åの平均二乗偏差で互いに対で重ね合わされる。最終モデルは、Fab重鎖の残基Gln1~Ser223、Fab軽鎖のGlu1~Cys214、及びTIGITのMet22~Ser129を含む。いくつかの短いループ領域は、電子密度によって完全には定義されず、最終モデルには含まれない。
【0246】
Fab重鎖のHC-CDR2 & HC-CDR3及び軽鎖の3つ全てのLC-CDRは、TIGITの大きなβシート構造、すなわち、配列番号80のポリペプチド鎖
55TQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFK
82及び
109IYH
111から構成される、βストランドC、C’、C’’及びF、並びにループC’C’’及びC’’Dと広範な相互作用を形成する(
図8及び9)。この結合相互作用は、FabフラグメントとTIGIT(PISA、EMBL-EBI)との間に、790±10Å
2(n=3)の表面積を有するタンパク質-タンパク質界面をもたらす。この相互作用の分子的性質は、親水性と疎水性の両方である。TIGIT残基のThr55、Gln56、Asn58、Glu60、Asp72、Ser80、及びLys82(
図9中で棒状で示される)は、Fab重鎖及び軽鎖CDRの残基と、直接又は水媒介水素結合相互作用(ドナー/アクセプター間の原子間距離3.1Å以下)を形成する。更に、TIGIT残基のGlu60は、Fab軽鎖上のArg30と塩架橋を形成する(表13)。TIGITの疎水性残基Leu65、Ile68、Leu73、Pro79、及びIle109(
図9中で四角で示される)は、Fab重鎖及び軽鎖の残基とファンデルワールス接触を行う。
【表13】
*水媒介水素結合
【0247】
図10Aは、Stengel et al.,2012で報告されるように、ヒトTIGIT(分子表面として表される)に結合したヒトCD155(リボン状)のN末端Ig様ドメイン(配列番号91)の複合体構造の概略図を示す。
図10Bは、TIGITに結合したFab24F8(各々が分子表面によって表される)の結晶構造複合体の概略図上にある、
図10Aと同じ向きのCD155の重ね合わせ図を示す。TIGITの細胞外ドメインに結合しているHu24F8.2又はマウス抗体24F8に由来する他の抗体が、CD155のTIGITへの結合を遮断することが明確に実証され得る。
【0248】
実施例7.抗TIGIT抗体は、単独又は抗PD-1抗体と併用の両方でT細胞応答を促進する
この実施例は、Hu24F8.2-IgG1が、単独で又はAB122などの抗PD-1抗体との併用で、健康な対象又はがん対象のヒト一次T細胞応答を増強することを実証する。0.1、1、又は10μg/mLのHu24F8.2-IgG1で処理した健康及びがん対象のPBMCは、アイソタイプ対照と比較して、IL-2濃度を有意に増加させた。健康な対象由来のPBMCでは、10μg/mLのHu24F8.2-IgG1と1μg/mLの抗ヒトPD-1抗体(AB122、ジムベレリマブ)の組み合わせで処理すると、AB122単独と比較して、IL-2レベルが有意に高かった。
【0249】
健康な対象由来のPBMCを、Leukoreduction System(LRS)チャンバから単離し、がん対象由来のPBMCをCPTチューブから単離し、0.1、1、又は10μg/mLのHu24F8.2、1μg/mLのAB122、又は10μg/mLのHu24F8.2-IgG1と1μg/mLのAB122の組み合わせのいずれかと共に、1ng/mLのSEAの存在下、インビトロで培養した。4日後、上清中のIL-2濃度をcytometric bead array(CBA)によって測定した。IgG1アイソタイプを陰性対照として含めた。
【0250】
方法
健康な対象のPBMCをLRSチャンバから単離し、一方、がん対象のPBMCをCPTチューブから単離した。PBMCを、1mL当たり2×106細胞の濃度で再懸濁し、ウェルあたり100μLを96ウェル丸底プレートに分注した。ウェルあたり50μLのCTS Optimizer培地に再懸濁した4倍濃縮抗体を、適切なウェルに添加した:Hu24F8.2-IgG1又はヒトIgG1アイソタイプ対照を、0.1、1及び10μg/mLの最終濃度に添加し、AB122又はヒトIgG4アイソタイプ対照を、1μg/mLの最終濃度に添加した。アッセイプレートを37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。ウェル当たりの50μLのCTS Optimizer培地に再懸濁した4倍濃縮Staphylococcal enterotoxin A(SEA)を、1ng/mLの最終濃度で適切なウェルに添加した。最終ウェル量が200μLのアッセイプレートを、37℃、5%CO2で4日間インキュベートし、その後の分泌されたIL-2の定量化のため上清を回収した。上清を、Human Soluble Protein Master Buffer Kitのアッセイ用希釈剤中で1:2に希釈した。アッセイの実行、データ取得、及び定量化は、製造業者の指示に従って、Human IL-2 Flex SetをHuman Soluble Protein Master Buffer Kitと共に使用して実施した。
【0251】
結果
試験で使用した全てのドナー由来のPBMCは、CD14+単球集団へのSEA刺激及びCD155(TIGITのリガンド)に応答する、非T調節性細胞であるCD4+T細胞集団上で、TIGITを発現することが確認された。10例の健康な対象及び7例のがん対象から単離されたPBMCを、各々0.1、1、又は10μg/mLのHu24F8.2-IgG1単独、1μg/mLのAB122単独、又は10μg/mLのHu24F8.2-IgG1と1μg/mLのAB122との組み合わせと共に、1ng/mLのSEAの存在下で培養した。IL-2濃度を、4日後の上清中で測定した。Hu24F8.2処理群のIL-2レベルを、それぞれのIgG1アイソタイプ対照処理群のIL-2レベルと比較し、一方、AB122及びHu24F8.2-IgG1併用処理群のIL-2レベルを、AB122単独処理群のIL-2レベルと比較した(表14及び表15)。1例の健康な対象(#566)のIL-2レベルの例を、試験した全ての濃度のHu24F8.2-IgG1について
図11中に示す。これらの2例の対象について、それぞれのIgG1アイソタイプ対照と比較して、試験したHu24F8.2-IgG1の全ての濃度においてIL-2分泌が統計的に有意に増加した。健康な対象#566についても、AB122処理単独と比較して、AB122及びHu24F8.2-IgG1併用処理によるIL-2分泌が統計的に有意に増加した。コホートレベルでは、健康な対象及びがん対象の両方のPBMCにおいて、IgG1アイソタイプ対照と比較して、10μg/mLのHu24F8.2-IgG1処理によりIL-2分泌が統計的に有意に増加し(
図12A)、健康な対象のPBMCにおいて、AB122の処理単独と比較して、AB122及びHu24F8.2-IgG1併用処理によりIL-2分泌が統計的に有意な増加した(
図12B)。要約すると、0.1μg/mLのHu24F8.2-IgG1は、6/10例の健康な対象のPBMC試料において(1.1~3.4倍)、及び2/5例のがん対象のPBMC試料(1.6~1.7倍)において、IL-2濃度を有意に増加させ(対アイソタイプ)、1μg/mLのHu24F8.2-IgG1は、7/10例の健康な対象のPBMC試料において(1.4~4.0倍)、及び4/7例のがん対象のPBMC試料において(1.6~2.0倍)、IL-2濃度を有意に増加させ(対アイソタイプ)、10μg/mLのHu24F8.2-IgG1は、7/10例の健康な対象のPBMC試料において(1.2~4.0倍)、及び4/7例のがん対象のPBMC試料において(1.3~2.0倍)、IL-2濃度を有意に増加させ(対アイソタイプ)、10μg/mLのHu24F8.2-IgG1+AB122は、6/10例の健康な対象のPBMC試料において(1.9~8.3倍)、IL-2濃度を増加させた(対AB122単独)。
【表14】
a n=3実験回数
b Sidakの多重比較検定を伴う一元配置分散分析(アイソタイプ対Hu24F8.2、又はAB122+Hu24F8.2対AB122)、NS、有意でない、nt、試験せず、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
***p<0.0001。
【表15】
a n=3 実験回数
b Sidakの多重比較検定を伴う一元配置分散分析(アイソタイプ対Hu24F8.2)、NS、有意でない、nt、試験せず、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
***p<0.0001
【0252】
これらのデータは、Hu24F8.2-IgG1が、単独で又はAB122などの抗PD-1抗体との併用で、健康な対象又はがん対象のヒト一次T細胞応答を増強することを実証する。
【0253】
実施例8.インビトロ補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイによる抗体特性評価
CDCは、抗体のフラグメント結晶化可能(Fc)領域への補体成分1q(C1q)の結合によって、補体系が抗体依存性細胞殺滅に関与する免疫応答である。これにより、補体カスケード反応が開始され、抗体のFab領域によって認識される標的タンパク質を発現する標的細胞の細胞膜を損傷する膜侵襲複合体の形成をもたらす。この実施例では、Hu24F8.2-IgG1のCDC活性を、正常なヒト血清補体(NHSC、Quidel)の存在下でGS-J1/TIGIT細胞(GenScript M00693)を使用して確認した。
【0254】
CDCによる細胞溶解を、ATPの定量に基づいて培養中の生存細胞の数を決定するCell Titer-Glo(登録商標)Assay Kit(Promega)によって決定した。簡潔に説明すると、GS-J1/TIGIT細胞(5000細胞/ウェル)を、5%、10%、又は20%のNHSCの存在下において、10μg/mLのHu24F8.2-IgG1又はヒトIgG1(Abcam)陰性対照で、37℃、5%CO2で4時間処理し(NHSC%最適化アッセイ)、又はGS-J1/TIGIT細胞(5000細胞/ウェル)を、5%NHSCの存在下において、連続希釈したHu24F8.2-IgG1(10μg/mL)又はヒトIgG1(10μg/mL)で、37℃、5%CO2で4時間処理した(CDC濃度応答試験)。陽性対照として、ラージ細胞(ATCC CCL-86、(5000細胞/ウェル))を、5%NHSCの存在下において、連続希釈したリツキシマブ(10μg/mL)で、37℃、5%CO2で4時間処理した。試験抗体又は対照抗体とのインキュベーション後、Cell Titer-Glo(登録商標)試薬を添加し、試料を室温で更に10~30分間インキュベートし、PHERAstar FSX(BMG LabTech)で発光を読み取った。CDCによる細胞溶解を、以下の式で計算した。細胞溶解%=100%×(1-(RLUsample-RLUNHSC)/(RLUcell+NHSC-RLUNHSC))。
【0255】
システム対照(ラージ細胞に対するリツキシマブ)の結果は、両方の試験において品質管理基準を満たした。しかしながら、試験試料(Hu24F8.2-IgG1)又は陰性対照(ヒトIgG1)の濃度依存的CDC活性は、NHSC%最適化アッセイ又はCDC濃度応答試験のいずれにおいても観察されなかった。結果を、それぞれ表16及び17に要約する。GS-J1/TIGIT細胞へのHu24F8.2-IgG1結合のFACS分析を使用して、CDCが見られないことが、標的細胞に結合していないためではないことを確認した(データは示さず)。
【表16】
【表17】
【0256】
実施例9.SPRによる抗体特性評価
Hu24F8.2-IgG1は、抗ヒトIgGをコーティングしたチップ又はプロテインAをコーティングしたチップを6つの異なる密度で使用する抗体捕捉によって、BioRad ProteOn XPR36機器を用いてSPRによって分析した。分析物は、最高濃度として33nMに希釈した可溶性hTIGIT-His(33.3μMで調製したストック溶液)とし、Hu24F8.2-IgG1表面において3倍希釈系列で3回試験した。泳動緩衝液は、10mM HEPES、150mM NaCl、0.05%tween(登録商標)-20及び0.2mg/mL BSAを含有した。全てのデータを25℃で収集した。6つの表面密度全てからのデータを、ローカルRmaxを使用する1:1の相互作用モデルに全体的に適合させた。結果を、表18に示す。
【表18】
注:括弧内の数字は、6つの異なる密度表面の全体的適合由来の最後に報告された桁における標準誤差を表す。
【配列表】
【国際調査報告】