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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】気管瘻装置ホルダー
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573487
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 SE2021050503
(87)【国際公開番号】W WO2021246938
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】2050635-8
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マールテン ヤン アントニー ファン アルフェン
(72)【発明者】
【氏名】マルチェ レーマンス
(72)【発明者】
【氏名】エスコ エーベルト ヘールト ヘクマン
(72)【発明者】
【氏名】リシャルト ディルフェン
(57)【要約】
人の気管瘻に気管瘻装置を保持するための気管瘻装置ホルダー(10)が提供される。気管瘻装置ホルダー(10)は、気管瘻装置と係合するためのヘッド部分(50)と、人の気管瘻に気管瘻装置ホルダー(10)を固定するための固定部分(20)とを含む。固定部分(20)の少なくとも一部分は変形可能な材料(60)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の気管瘻に気管瘻装置を保持するための気管瘻装置ホルダー(10)であって、前記気管瘻装置ホルダー(10)は:
気管瘻装置と係合するためのヘッド部分(50)と;
前記人の前記気管瘻に前記気管瘻装置ホルダー(10)を固定するための固定部分(20)であって、前記固定部分(20)の少なくとも一部分は変形可能な材料(60)を備える、固定部分(20)と
を含む、気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項2】
前記変形可能な材料(60)は、膨張可能なポリビニルアルコール(PVA)フォームである、請求項1に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項3】
前記固定部分(20)の少なくとも外面部分が前記変形可能な材料(60)を備える、請求項1又は2に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項4】
前記固定部分(20)は、チューブ部分(30)、及び半径方向に拡張する部分(40)を含み、前記半径方向に拡張する部分(40)は、一方の端部で前記チューブ部分(30)に取り付けられ、及び他方の端部で前記ヘッド部分(50)に取り付けられる、請求項3に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項5】
前記チューブ部分(30)の前記外面の少なくとも一部分が前記変形可能な材料(60)を備える、請求項4に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項6】
前記半径方向に拡張する部分(40)の前記外面の少なくとも一部分が前記変形可能な材料(60)を備える、請求項4又は5に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項7】
前記変形可能な材料(60)の厚さは5~6mmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項8】
前記変形可能な材料(60)は前記固定部分(20)に直接取り付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項9】
前記変形可能な材料(60)の表面が取付シリンダーに取り付けられ、前記取付シリンダーは、前記変形可能な材料(60)を前記固定部分(20)の前記外面の前記少なくとも一部分に固定するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項10】
前記取付シリンダーは、取付装置を介して、前記変形可能な材料(60)を前記固定部分(20)の前記外面に固定するように構成される、請求項9に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項11】
前記気管瘻装置ホルダー(10)はシリコーンゴムで作製される、請求項1~10のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項12】
前記固定部分(20)及び前記ヘッド部分(50)は、1つの一体型及びモノリシックな本体として製造される、請求項1~11のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項13】
前記気管瘻装置ホルダー(10)は、前記気管瘻を開放状態に維持する気管瘻ボタンであるように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項14】
前記ヘッド部分(50)は気管瘻装置継手(45)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項15】
前記ヘッド部分(50)は、自動スピーキングバルブ(ASV)と係合するように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【請求項16】
前記ヘッド部分(50)は、熱湿交換器(HME)と係合するように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の気管瘻装置ホルダー(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、気管瘻装置ホルダーに関する。より詳細には、本発明は、人の気管瘻に気管瘻装置を保持するための気管瘻装置ホルダーに関する。気管瘻装置ホルダーは、気管瘻装置と係合するためのヘッド部分と、人の気管瘻に気管瘻装置ホルダーを固定するための固定部分とを含む。
【背景技術】
【0002】
気管切開術は、頸部の前面を通って気管中へと開口が形成される外科的処置である。開口は気管瘻と呼ばれる。気管切開チューブが、気管瘻と気管との間に延在するように設けられ得る。気管切開術は、例えば、神経系又は呼吸通路に関して、例えば外傷や障害の結果として機能不全があるときに、実施され、その機能不全によって、十分な空気を得ることができない。肺活量が劣ること又は気道の治療の必要性も、気管切開につながり得る。
【0003】
喉頭切除術は、外科的処置であり、例えば癌腫を治療するために使用され、喉頭の切除、及び気管瘻の形成を伴う。処置の結果、気管は、もはや咽頭にはつながっておらず、気管瘻へと進路を変えられている。この処置後、通常の鼻の機能は不可能になる。呼吸が正常に機能している対象者は、鼻及び鼻腔(nasal cavity)の粘膜が、吸入空気の調整の重要な機能を果たす。曲がりくねった通路及び十分な血液供給が、吸入空気の温度及び湿度の双方を上げる働きをして、肺の表面のパラメータとこれらのパラメータの差を最小限にする。通常、呼気が大気へ放出される前に、ある程度の熱及び水分がまた、呼気から奪われる。鼻腔(nasal passages)の粘膜はまた、吸入空気から、塵埃微粒子、汚染物質及び微生物などの粒子状物質を除去する働きをし、並びに繊毛作用によって、粘液及びいずれの粒子も、肺から離れるように運ぶ。
【0004】
人が喉頭切除術を受けたら、事実上、全ての吸入空気が気管瘻を経由して肺に入り、及び鼻は、効果的に吸入過程に含まれない。呼気は、気管瘻を通過し得るか、又は、音声プロテーゼが取り付けられた場合には、瘻は塞がれ得るため、呼気は、音声プロテーゼを通って咽頭及び口の中へと進路を変えられ、人が話すことができるようになる。呼気の流れが気管瘻バルブによって制御されることが望ましい。これらの状況では、バルブは、呼吸の最中、開放したままとなるように配置され得るが、呼気の流れをさらに少し増加することによって空気の流れの進路を変えるために閉鎖され得る。
【0005】
この点において、気管瘻装置、例えばフィルター装置、熱湿交換器(HME:Heat and Moisture Exchanger)、呼吸用保護具、及びスピーチバルブが、吸入空気に湿気を与えること、前記吸入空気中の小粒子及びバクテリア物質の除去、並びに手動操作で気管瘻を通る通気路を閉鎖することによって、人に話す能力をもたらすことを可能にするために、開発されている。代替例として、一部の人々は、話すことによって起動される「ハンズフリー」HME(自動スピーキングバルブ)を使用する。ハンズフリーHMEは、喉頭摘出者が指で塞ぐ必要なく、話すことができるようにする。装置は、HMEと自動スピーキングバルブとの組み合わせからなり、これは、話すために空気を吐き出すと、自動的に閉鎖して、肺の空気を、音声プロテーゼを通って食道中へと進路を変えることができるようにする。これは、呼気が減ると自動的に再開放する。
【0006】
これらの気管瘻装置は、固定装置又は気管瘻装置ホルダーによって、気管瘻に保持されるように配置される。気管瘻装置は、気管瘻装置を使用する人と係合される1つの部分と、気管瘻装置と係合して配置される1つの部分とを有するように配置される。気管瘻装置を使用して人と係合して配置される部分は、一般的に、瘻周囲(peristomal)、すなわち瘻の周り、又は気管内、瘻内のいずれかの、固定方法を使用する。
【0007】
しかしながら、気管瘻装置ホルダーに関連付けられた問題がある。それらは、使用するのが非常に不快であるかもしれない。気管瘻装置ホルダーは、非機能的な形状を有し、及び人によって気管瘻の形態が大きく違うことに起因して、適合が悪い。平均的な気管瘻形態はないため、全ての気管瘻に適合するカスタマイズされた気管瘻装置ホルダーを作製することは不可能である。これに加えて、剛性材料、一定圧力、並びに皮膚及び粘膜の刺激性の可能性に起因して、気管瘻装置ホルダーはまた、非常に不快であるかもしれない。気管瘻装置の固定は、瘻周囲又は気管の組織の外傷につながり得る。これに加えて、気管瘻装置ホルダーは、首の可動性を制限する。
【0008】
気管瘻装置ホルダーの適合不良は、不快なだけでなく、気管瘻装置が外れてしまうこと(dislodgement)にもつながり得る。気管瘻と気管瘻装置との間の適合不良は、空気の漏れにつながり得る。これらは、特にハンズフリースピーチを使用して自動スピーキングバルブを使用するときの主要な問題である。自動スピーキングバルブは、手動で閉鎖されたフィルターよりも多くの応力を固定装置に加えるため、最適な気密シールは、圧力に耐えて、ハンズフリースピーチを可能にする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、改良型の気管瘻装置ホルダー、特に、気密シールのある良好な適合を含む、使用者の快適さを高めることが可能である気管瘻装置ホルダーが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その結果、本発明は、好ましくは、上記で特定した欠陥及び不都合な点の1つ以上を、1つずつ又は任意の組み合わせで、軽減しようとする又はなくそうとするものであり、及び人の気管瘻に気管瘻装置を保持するための気管瘻装置ホルダーを提供することによって、少なくとも上述の問題を解決する。前記気管瘻装置ホルダーは、気管瘻装置と係合するためのヘッド部分と、人の気管瘻に気管瘻装置ホルダーを固定するための固定部分とを含む。固定部分の外面の少なくとも一部分は、変形可能な材料を備える。変形可能な材料は、気管瘻装置ホルダーと気管瘻の気管瘻壁との間に、変形可能な固定面及びシールを提供し得る。
【0011】
それにより、広範囲の気管瘻の形状に好適となり得、使用者の快適さ、強度及び気管内固定の気密性を高めた気管瘻装置ホルダーが、提供される。
【0012】
これらの及び他の態様、本発明で達成可能であるその特徴及び利点が、添付図面を参照して、本発明の実施形態の以下の記載から明らかになり、及び説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】気管瘻装置ホルダーの側面図である。
図1b】気管瘻装置ホルダーの斜視図である。
図2a】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの側面図である。
図2b】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの斜視図である。
図2c】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの側面図である。
図2d】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの断面図である。
図3】使用中の、本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーを示す。
図4a-c】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの断面図である。
図5a】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの側面図である。
図5b】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの斜視図である。
図5c】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの側面図である。
図6】使用中の、本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーを示す。
図7】本発明の実施形態による気管瘻装置ホルダーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、人の気管瘻に気管瘻装置を保持するための気管瘻装置ホルダーに応用可能な本発明の実施形態に焦点を合わせている。これに関連して、気管瘻装置は、HME、スピーチバルブなどとし得る。
【0015】
図1aは、人の気管瘻に気管瘻装置を保持するための気管瘻装置ホルダー10を開示している。気管瘻装置ホルダー10は、気管瘻装置と係合するためのヘッド部分50を含む。気管瘻装置ホルダー10は、さらに、人の気管瘻に気管瘻装置ホルダー10を固定又は封止するための固定部分20を含む。図1bは、そのような気管瘻装置ホルダー10の斜視図を示す。
【0016】
図2aは、本発明による第1の実施形態を示す。図1a及び図1bに関して説明したのと同様に、本発明による気管瘻装置ホルダー10は、気管瘻装置と係合するためのヘッド部分50と、人の気管瘻に気管瘻装置ホルダー10固定するための固定部分20とを含む。本開示によれば、固定部分20の外面の少なくとも一部分は、変形可能な材料60を備える。変形可能な材料は、膨張可能なポリビニルアルコール(PVA)フォームとし得る。図2aにも示すように、変形可能な材料60は、固定部分20の外面、すなわち固定部分20の外側に配置され、その面は、気管瘻の方に対面している。固定部分20の変形可能な材料60は、気管瘻装置ホルダー10が気管瘻に固定されるときに、変形可能な材料60が気管瘻に曝されるように、配置される。
【0017】
気管瘻装置ホルダー10が使用中ではないとき、変形可能な材料60は変形されない。上述の通り、変形可能な材料60の例は膨張可能なPVAフォーム60とし得る。そのような例示的な実施形態では、PVAフォームは、気管瘻装置ホルダー10が使用中ではないとき、乾燥した親水性PVAフォームとし得る。乾燥したPVAフォーム60を備える気管瘻装置ホルダー10の例は、図2aに示されている。乾燥した親水性PVAフォーム60は、気管瘻環境内の呼気及び粘液からの水分などの流体の影響下で、膨張する。それゆえ、気管瘻装置ホルダー10、又はより具体的には、PVAフォーム60を備える固定部分20が、固定のために、気管瘻に、又はその内側に置かれると、PVAフォーム60は、水分を引きつけて膨張する。PVAフォーム60は、気管瘻に配置されると、数分以内に十分に膨張し得る。膨張したPVAフォーム60は、固定部分20の外部に位置して、気管瘻装置ホルダー10と気管瘻の気管瘻壁との間に、変形可能な固定面及びシールを提供する。
【0018】
図2cは、変形した変形可能な材料60を備える気管瘻装置ホルダー10の例示的な実施形態を示す。図2cに示す、変形した変形可能な材料60は、例えば、膨張したPVAフォーム60、すなわち、水分を引きつけたPVAフォーム60とし得る。膨張したPVAフォーム60は、変形可能であるため、気管瘻に順応する。変形可能な材料60であることに起因して、異なるサイズ及び形状の気管瘻に1つのタイプの気管瘻装置ホルダー10を使用することが可能であり、それゆえ、使用者固有のカスタマイズの必要性を減らす。材料60が変形可能であるため、気管壁に過度の圧力を加えることなく、気管瘻への良好な適合ももたらす。過度の圧力がなければ、疼痛や虚血性障害のリスクもなくされ得る、又は少なくとも減らされ得る。気管瘻装置ホルダー10を使用するときに、最も重要な危険のうちの1つは、気管粘膜に加わる一定圧力に起因する間接的な外傷であり、虚血性障害につながる。気管壁の軟組織は、短い持続時間、圧力を持続できる。しかしながら、圧力がより長い期間加えられると、又は32mmHgの毛細血管充満圧を上回ると、虚血としても公知の、閉塞又は粘膜の灌流の減少を引き起こし得る。虚血が続くと、数時間以内に虚血性障害が発生し得る。しかしながら、この問題は、PVAフォーム60などの変形可能な材料60を備える固定部分20を提供することによって、対処される。その結果、快適な気管瘻装置ホルダー10が提供され、これは、気管瘻への非常に良好な適合をもたらし、疼痛や虚血性障害の原因となり得る過度の圧力を気管壁に加えることがない。提供された気管瘻装置ホルダー10は、装着が快適であり、並びに気管及び首の自然な動きを可能にする。さらに、外面の少なくとも一部分が変形可能な材料60を備えている固定部分20はまた、封止機能を提供し得、並びに自動スピーキングバルブのハンズフリースピーチ中に、気管瘻内に高い及び快適な気密固定を与え得る。
【0019】
図2dに示すように、気管瘻装置ホルダー10は、貫通孔、又は呼吸ルーメン65を備える。認識され得るように、孔65は、空気が気管瘻装置ホルダー10を通って流れることを可能にするために設けられる。それゆえ、本開示による気管瘻装置ホルダー10の全ての異なる部分が、中心に孔65が設けられる。その結果、使用中、空気の流れは、気管瘻装置ホルダー10を装着している人の周囲から、気管瘻装置ホルダー10を通って、前記人の気管中へと通過する。それゆえ、気管瘻装置ホルダー10は、気管瘻装置ホルダー10にある近位開口部12と連通する遠位開口部11を含む。これをまた図1aに示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、図2a~dに示すように、気管瘻装置ホルダー10の固定部分20は、長尺状のチューブ部分30と、半径方向に拡張する部分40とを含む。長尺状のチューブ部分30は、気管瘻を通して気管中へと気管瘻に挿入するように構成され得る。チューブ部分30及び半径方向に拡張する部分40を含む固定部分20を提供することによって、気管瘻装置ホルダー10は、気管瘻装置ホルダー10を使用することを意図した人の気管瘻に簡単に挿入できる。それゆえ、気管瘻装置ホルダー10は、気管内固定をもたらし得、これにより、気管内固定方法を使用して気管瘻装置ホルダー10を固定することを可能にし得る。気管内固定を使用ことによって、余分な瘻周囲の固定の必要性がなくされるか、又は少なくとも減らされる。これは、気管瘻装置ホルダー10を使用している人の快適さを高め得る。
【0021】
図3は、人に取り付けられた、本開示による気管瘻装置ホルダー10を示す。図3に示すように、気管瘻装置ホルダー10は、上述のような気管内固定方法を使用している。上述の通り、気管内固定による気管瘻装置ホルダー10を使用することによって、余分な瘻周囲固定を使用する必要性がなくなるか、又は少なくとも減らされる。例えば、瘻周囲の皮膚を刺激する可能性のある接着性ベースプレートの使用が、回避され得る。さらに、人の首の周りでの嵩張る保持装置もなくされ得る、又は少なくとも減らされ得る。気管瘻装置ホルダー10は、大きい声でのスピーチ及び咳の最中に外れてしまうことなく、気管瘻に固定されたままとし得る。これらの実施形態によれば、気管瘻装置ホルダー10は、さらに、気管瘻ボタンとして使用され得る。気管瘻ボタンは、気管瘻を開いた状態に維持するような構成にされ得る。
【0022】
図3にも示されているように、本開示による気管瘻装置ホルダー10は、近位端及び遠位端を含む。これに関連して、近位は、瘻の方へ向かう、すなわち気管瘻装置ホルダー10の使用者の方へ向かう位置又は方向を指す一方で、遠位は、瘻から離れる、すなわち気管瘻装置ホルダー10の使用者から離れる位置又は方向を指す。それゆえ、固定部分20は、気管瘻装置ホルダー10の近位端に位置する一方で、ヘッド部分50は、気管瘻装置ホルダー10の遠位端に位置する。固定部分20がチューブ部分30及び半径方向に拡張する部分40を含む実施形態では、チューブ部分30は、気管瘻装置ホルダー10の近位端に位置する。外部は、貫通孔65の軸100から半径方向に離れる位置又は方向を指す一方で、中心は、中心軸100の方へ向かう位置又は方向を指す。それゆえ、固定部分20の外面は、気管瘻に対面する表面であり、及び半径方向に拡張する部分40は、外部、又は外向きの方向に膨張する。軸100は、気管瘻装置ホルダー10を通って遠位-近位方向に延在する。有利なことに、前記軸100は、前記気管瘻装置ホルダー10の中心軸と一致し得る。
【0023】
図2dに示すように、半径方向に拡張する部分40は、一方の端部でチューブ部分30に接続され、及び他方の端部で気管瘻装置ホルダー10のヘッド部分50に接続される。チューブ部分30、半径方向に拡張する部分40、及びヘッド部分50は、好ましくは、1つの一体型及びモノリシックな本体として、一体的に形成され、及び製造され得る。チューブ部分30、半径方向に拡張する部分40、及びヘッド部分50を1つの一体型本体として製造することによって、異なる部分又は部品が接合される必要がなく、全ての部分に1種の材料を選択する必要があるだけであるため、生産ステップ数が減らされる。生産プロセスは、部品が1つのプロセスで一緒に製造され得るため、単純化され得る。さらに、チューブ部分30と、半径方向に拡張する部分40と、ヘッド部分50との間の境界面をなくすことによって、境界面が存在しないために、部品間の境界面が壊れるリスクが少なくなり得る。
【0024】
気管瘻装置ホルダー10は、好ましくは周囲の生物組織の剛性に適合する医療グレードの材料から作製される。気管瘻装置ホルダー10は、好ましくはシリコーンゴムで作製される。気管瘻装置ホルダー10のシリコーンゴムのヤング率は、天然の気管粘膜のヤング率に近い。シリコーンゴムは、好都合な安全性特性、例えば生体適合性及び耐久性を有する。無毒であり、アレルギー反応を引き起こさない。
【0025】
上述の通り、固定部分20の外面の少なくとも一部分は、変形可能な材料60、例えば膨張可能なPVAフォームを備える。図2a~dに示す固定部分20は、チューブ部分30、及び半径方向に拡張する部分40を含む。図2a~dでは、変形可能な材料60を備える固定部分20の少なくとも一部分が、チューブ部分30の少なくとも一部分に対応している。それゆえ、これらの実施形態では、変形可能な材料60は、チューブ部分30の少なくとも一部分にのみ提供される。他の実施形態によれば、図4aにも示すように、固定部分20の外面の少なくとも一部分は、半径方向に拡張する部分40の少なくとも一部分に対応する。それゆえ、これらの実施形態によれば、半径方向に拡張する部分40の少なくとも一部分は、変形可能な材料60を備える。図4a及び図4bでは、変形可能な材料は、膨張可能なPVAフォームとして例示される。図4aは、乾燥したPVAフォーム60を備える気管瘻装置ホルダー10を示し、及び図4bは、膨張したPVAフォーム60を備える気管瘻装置ホルダー10を示す。図4cは、これらの実施形態による、使用中の気管瘻装置ホルダー10を示す。図4a~cでは、半径方向に拡張する部分40の少なくとも一部分が変形可能な材料60を備えるとき、変形可能な材料60は、主に、封止機能を果たし得る。図4a~cに示すように、これらの実施形態によれば、気管瘻装置ホルダー10の固定部分20は、さらに、接着性ベースプレート25を含み得る。接着性ベースプレート25は、気管瘻装置ホルダー10が適所に保たれることを保証し得る。
【0026】
図2a~d及び図4a~cに示す実施形態では、それぞれの部分、すなわちチューブ部分30及び半径方向に拡張する部分40の一部分は、変形可能な材料60を備える。しかしながら、これらの部分の外面の少なくとも一部分は、挿入部分30又は半径方向に拡張する部分40の全外面が変形可能な材料60を備え得る実施形態も網羅することが認識され得る。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、半径方向に拡張する部分40及びチューブ部分30の双方の外面の少なくとも一部分が、変形可能な材料60を備える。この例が図5a~cに示されている。図5aは、この実施形態による変形可能な材料60を備える気管瘻装置ホルダー10の側面図を示す。図5b及び図5cは、変形した変形可能な材料60を備える気管瘻装置ホルダー10を示す。変形可能な材料60が、PVAフォームとして例示されるときには、図5b及び図5cは、膨張したPVAフォームを、すなわちPVAフォーム60が水分と接触したときを示し得る。図6は、図5a~cに開示した実施形態による、使用中の気管瘻装置ホルダー10を示す。図5a~c及び図6が、固定部分20の外面の一部分が変形可能な材料60を備える実施形態を示す場合でも、固定部分20の全外面が変形可能な材料60を備える実施形態も提供され得ることが認識され得る。
【0028】
変形可能な材料60の寸法は変えられ得る。変形可能な材料60がより厚くてより長いほど、より固定される。しかしながら、長さ及び厚さの双方において、より大きな変形可能な材料60は、より高い圧力を生じ得、そこに、気管瘻装置ホルダー10が固定されたままになる。それゆえ、変形可能な材料60の寸法は、注意して選択され得る。図5aに示す、変形可能な材料60の長さLは、固定部分20の長さに関して選択され得る。固定部分20が短い場合、変形可能な材料60の長さLも短い。しかしながら、より長い固定部分20では、変形可能な材料60の長さLも長くされ得、及び長さLは、短い固定部分20に対するよりも長くされ得る。一般的に、軸100に沿った変形可能な材料60の長さLの変化は、変形可能な材料60の厚さの変化よりも固定の量に対する影響力を持っている。しかしながら、固定部分20の外面に提供される変形可能な材料60の最小長Lでも、気管瘻内での気管瘻装置ホルダー10の固定を増し得、咳に至るまでの圧力に耐えるようにすることが認識され得る。
【0029】
変形可能な材料の外部の厚さは、変えられ得る。例えば、変形可能な材料60がPVAフォーム60として例示される場合、PVAフォームの外部の厚さは3~10mmとし得る。一層好ましくは、PVAフォームの外部の厚さは5~6mmとし得る。上述の通り、変形可能な材料60が厚いほど、例えばより厚いPVAフォーム60ほど、気管瘻装置ホルダー10を気管瘻によりしっかりと固定する。しかしながら、非常に厚い変形可能な材料60、例えば非常に厚いPVAフォームは、気管瘻に非常に高い圧力を加え得る。それゆえ、固定の量と虚血性障害のリスクとには兼ね合いがある。PVAフォームが変形可能な材料60として使用されるときの気管瘻壁での虚血及び虚血性障害のリスクをなくす、又は少なくとも減らすために、膨張したPVAフォーム60は、使用時に、その全フォーム厚さの60%未満、圧縮され得る。そのため、気管瘻装置ホルダー10は、虚血性障害につながる圧力を加えない。5~6mmのPVAフォームの外部の厚さは、色々な気管瘻形状に対する気管瘻装置ホルダー10の安全でしっかりとした固定をもたらす。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、変形可能な材料60のヤング率は、気管粘膜のヤング率よりもわずかに高いとし得る。その結果、気管瘻装置ホルダー10がシリコーンゴムから作製されるとき、変形可能な材料60の剛性は、気管瘻装置ホルダー10の剛性よりも遥かに低いとし得る。
【0031】
変形可能な材料60は、気管瘻装置ホルダー10の固定部分20に、いくつかの異なる方法で取り付けられ得る。変形可能な材料60は気管瘻装置ホルダー10に固定されて、気管瘻装置ホルダー10を挿入し、装着し、及び取り外す間、変形可能な材料60が固定部分20の外面に留まるようにする。いくつかの実施形態によれば、変形可能な材料60は、固定部分20に直接取りけられ得る。変形可能な材料60は、変形可能な材料60を、固定部分20に位置する機械的な取付装置に係合することによって、取り付けられ得る。他の実施形態では、変形可能な材料60は、気管瘻装置ホルダー10の固定部分20に直接接着され得る。さらに他の実施形態では、変形可能な材料60は取付シリンダーに取り付けられ得、取付シリンダーは、変形可能な材料60を固定部分20の外面の前記少なくとも一部分に固定するように構成される。例えば、変形可能な材料60の遠位面が取付シリンダーに取り付けられ得る。取付シリンダーは、変形可能な材料60に取り付けられ得、及び取付シリンダーは、気管瘻装置ホルダー10の固定部分20の周りに配置され得る。取付シリンダーは、例えば、細いシリコーンゴムシリンダーとし得る。例えば、取付シリンダーは、取付装置を介して変形可能な材料60を固定部分20の外面に固定するような構成にされ得る。取付装置は、ある種のロック機構とし得、及び例えば、気管瘻装置ホルダー10の対となる取付部に引っ掛かり得る突出側面取付部を含み得る。別の例によれば、変形可能な材料60は取付シリンダーに接着され得る。認識され得るように、変形可能な材料60は、固定部分20の外面に、いくつかの方法で取り付けられ得、説明した実施形態は、説明のために提供されるにすぎない。
【0032】
例えば図6に示すように、ヘッド部分50は、気管瘻装置ホルダー10から遠位側に延在している。気管瘻装置ホルダー10のヘッド部分50は、気管瘻装置と係合し、それにより、それを保持するように構成される。ヘッド部分50は、熱湿交換器(HME)と係合するような構成にされ得る。それに加えて、又はその代わりに、ヘッド部分50は、自動スピーキングバルブと係合するような構成にされ得る。
【0033】
ヘッド部分50は、気管瘻装置と、異なる方法で係合し得る。一実施形態によれば、ヘッド部分50は気管瘻装置継手45を含み得る。気管瘻装置継手45の例は、図7に示されている。気管瘻装置継手45は、チューブ状気管瘻装置継手45とし得る。気管瘻装置継手45は、気管瘻装置ホルダー10を通って延在する貫通通路65を含む。好ましくは、気管瘻装置継手45は貫通孔65と同心とし得る。チューブ状気管瘻装置継手45は、気管瘻装置を受け入れるような構成にされ得、気管瘻装置が気管瘻装置ホルダー10にしっかりと締結され得るようにする。
【0034】
気管瘻装置ホルダー10は、使用者の気管瘻に取り付けられ得、気管瘻装置ホルダー10のチューブ状部分30が気管瘻に挿入されるようにし、及び気管瘻装置、例えばスピーチバルブが、気管瘻装置継手45に公知の方法で接続されるようにする。
【0035】
固定部分20の少なくとも一部分に変形可能な材料60を備える、本明細書で提供される気管瘻装置ホルダー10は、人の気管瘻に対する気管瘻装置ホルダー10の挿入及び取り外しの最中の快適さ及び安全性を保証する。気管瘻装置ホルダー10は、疼痛及び虚血の原因となり得る過度の圧力を気管壁に加えることなく、気管瘻開口部内での気管瘻装置の封止機能及び気密固定を提供する。提供された気管瘻装置ホルダー10は、同様に、目立つ瘻周囲リップを有していない、人の気管瘻への気管瘻装置の固定をもたらすことを可能にする。
【0036】
特定の実施形態を参照して本発明を上記で説明してきたが、本明細書で説明した特定の形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲のみによって限定され、上記の詳細以外の実施形態は、添付の特許請求の範囲内で同様に可能である。
【0037】
特許請求の範囲では、用語「含む(comprises/comprising)」は、他の要素又はステップの存在を排除しない。さらに、個別にリストするが、複数の手段、要素又は方法ステップは、例えば単一のユニット又はプロセッサーによって実施され得る。さらに、個々の特徴は、異なる特許請求項に含まれ得るが、これらは、ことによると好都合にも組み合わせられ得、及び異なる請求項に含まれるものは、特徴の組み合わせが実現可能ではない及び/又は好都合ではないことを暗示しない。さらに、単数の言及は、複数を排除しない。用語「a」、「an」、「第1」、「第2」などは、複数を除外しない。特許請求の範囲内での参照符号は、単に例を明確にするために提供され、及び特許請求の範囲を限定するとなんら解釈されるものではない。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7
【国際調査報告】