(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】低温布製誘電体バリア放電デバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20230626BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20230626BHJP
D02G 3/12 20060101ALI20230626BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61L2/14
D02G3/36
D02G3/12
H05H1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573499
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 US2021035346
(87)【国際公開番号】W WO2021247637
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーシュマン,ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ライチェス,エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】ヤトム,シュリク
(72)【発明者】
【氏名】エフシミオン,フィリップ
【テーマコード(参考)】
2G084
4C058
4L036
【Fターム(参考)】
2G084AA24
2G084AA25
2G084BB03
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD22
4C058AA28
4C058BB06
4C058KK06
4C058KK11
4L036MA04
4L036MA39
4L036RA24
4L036UA25
(57)【要約】
布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス、相互接続された絶縁導電性繊維を含む繊維製品材料を使用して、第1の繊維の導電性コアから、導電性コアを取り囲む誘電体層に至り、空隙を通って、例えば第2の繊維又はヒト皮膚に向かう放電経路を形成することによって、コールド均質プラズマを生成することができる。空隙の内及び周辺に点火するプラズマが、(例えば、細菌及び/又はウイルスを包含する)汚染表面と接触すると、それは、反応種が汚染表面上に形成されるように誘導し、次いで、反応種は、細菌及び/又はウイルスを死滅させることが可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスであって、
複数の繊維であって、各繊維が、少なくとも1つの誘電体層によって取り囲まれた導電性コアを備え、1本以上の繊維が、相互接続繊維メッシュを形成する、複数の繊維と、
前記1本以上の繊維に動作可能に接続された電源であって、電流が印加されたときに繊維間に形成される空隙内で、プラズマが点火することができるように構成された電源と、を備える、布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、
前記複数の繊維と、
前記電源と、
1つ以上のスイッチと、
任意選択的に、1つ以上のプロセッサと、
任意選択的に、1つ以上のセンサと、
任意選択的に、1つ以上のディスプレイ又は視覚的指示器と、から本質的になる、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項3】
前記複数の繊維のうちの第1の繊維の少なくとも1つの誘電体層が、前記複数の繊維のうちの第2の繊維の少なくとも1つの誘電体層とは異なる、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項4】
前記複数の繊維の各繊維の前記少なくとも1つの誘電体層は、同一である、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項5】
前記電源は、AC電圧を提供する、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項6】
前記電源は、DC電圧を提供する、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項7】
前記電源は、1kHz~1GHzのパルス周波数を有する電圧を提供する、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、複数の相互接続繊維層を備える、請求項1に記載の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項9】
前記DBDデバイスは、携帯電源によって給電される、請求項1に記載の誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項10】
前記電流は、2mA以下である、請求項1に記載の誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項11】
前記デバイスの温度は、約22℃~約40℃である、請求項1に記載の誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項12】
少なくとも1つのスイッチを更に備える、請求項1に記載の誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項13】
温度センサ及び電流センサを更に備える、請求項8に記載の誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項14】
前記温度センサ及び電流センサからのフィードバックに基づいて前記電源を制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサを更に備える、請求項9に記載の誘電体バリア放電(DBD)デバイス。
【請求項15】
表面を滅菌するための方法であって、
布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスを提供することであって、前記デバイスは、
複数の繊維であって、各繊維が、少なくとも1つの誘電体層によって取り囲まれた導電性コアを備え、1本以上の繊維が、相互接続繊維メッシュを形成する、複数の繊維と、
前記1本以上の繊維に動作可能に接続された電源であって、電流が印加されたときに1本以上の繊維間に形成される空隙内で、プラズマが点火することができるように構成された電源と、を備える、提供することと、
前記複数の繊維のうちの第1の繊維の導電性コアから、前記第1の繊維の前記導電性コアを取り囲む少なくとも1つの誘電体層に至り、空隙を通って前記複数の繊維のうちの第2の繊維又はヒトに向かう放電経路を形成することによって、コールド均質プラズマを生成することと、
汚染表面を、前記生成されたコールド均質プラズマと接触させることによって、応性種が前記汚染表面上に形成されるように誘導することであって、前記汚染表面は、細菌、ウイルス、又はそれらの組み合わせを包含する、誘導することと、
前記反応種が前記細菌、ウイルス、又はそれらの組み合わせを死滅させることを可能にすることと、を含む方法。
【請求項16】
前記放電経路は、前記複数の繊維のうちの前記第1の繊維の前記導電性コアから、前記第1の繊維の前記導電性コアを取り囲む前記少なくとも1つの誘電体層に至り、空隙を通って前記複数の繊維のうちの第2の繊維の導電性コアを取り囲む少なくとも1つの誘電体層に至り、前記第2の繊維の前記導電性コアに至るように形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも所定の時間、前記プラズマを汚染表面と接触させておくことを更に含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月2日に出願された米国仮特許出願第63/033,457号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究又は開発に関する声明
この発明は、エネルギー省から授与された助成金第DE-AC02-09-CH11466号のもとで政府の支援を受けて行われた。政府は、発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
消毒及び殺菌用の薬剤及び技術の幅広い使用に対する緊急の必要性が存在する。現在のCOVID-19の世界的流行に注目して、それは、もはや医療、医薬品、又は食品業界に限定されず、ドアノブ、並びにマスク、携帯電話、及びペンなどのデバイスなど、一般的に使用される表面の除染にも拡大している。
【0004】
一般的な課題は、布が感染することに関与する。これに対抗するために、多くのアプローチが取られている。典型的には、現在の自己洗浄布は、それらの生物活性特性を化学滅菌剤の添加から獲得する。布には、化学殺菌剤を含浸させることもあるし、又は、重金属、銅、及び細菌の付着及び増殖に抵抗するが微生物を死滅させない様々なポリマーなどの、ウイルス及び他の病原菌に損傷を与える他の材料を組み込むこともある。他者によって開発中の他の材料は、例えばチタンナノ粒子などの、太陽光に曝露されたときに殺生特性を獲得するナノ粒子又はナノチューブを組み込むことに基づく。この種の材料の大きな欠点は、太陽光の必要性である。例えば銀などの殺菌特性を有する他のナノ粒子を繊維に組み込んでもよいし、様々なポリマーを化学処理によって活性化して、薬剤耐性細菌及びウイルスに抗する酸性環境を作り出すこともできる。これらの方法は全て、別の物質の添加を必要とし、一時的な活性を有し、いずれも完全な殺菌を提供することはない。代わりに、これらの材料は全て、増殖を遅らせるか、かつ/又は細菌負荷を低減するかのいずれかである。したがって、殺菌布を提供するための新しいアプローチが必要である。
【0005】
過去20年間にわたり、細菌及びウイルスの不活化及び表面殺菌の領域において、コールド大気圧プラズマ(CAP)が急速に発展してきた。最近の考察では、細菌、ウイルス、真菌、及び細菌胞子を効果的に不活性化する誘電体バリア放電(DBD)を含む広範囲のCAPプラズマ源の達成がまとめられている。
【0006】
これらの達成にもかかわらず、the Centers for Disease Controlによって現在推奨され、業界で広く受け入れられているプラズマを伴う滅菌方法は、最も効果的でクリーンな殺菌化学物質のうちの1つである過酸化水素水蒸気のプラズマ活性化に基づく剛性デバイスと、真空チャンバを利用するものだけである。米国特許第4,952,370号を参照されたい。過酸化水素は、その分解生成物が水及び酸素であるので、危険な残留物を残さない。
【0007】
プラズマの殺菌、更に滅菌効果は、活性酸素種(ROS)及び窒素種(RNS)、電子、電流、電場及び電磁場、並びに紫外線などの生物活性特性に起因する。細菌不活性化のメカニズムは、多くのグループによって調査されているが、不明なままである。化学的及び電気的プラズマ特性は、段階的に細菌細胞に影響を及ぼし得る。電子及び電場は、細胞膜に影響を与え、RNS及びいくつかの長寿命ROSによる細胞浸透を助成する。ROSは、細胞膜に損傷を与え、RNS/ROSの細胞内への輸送を助成する脂質過酸化及び他の酸化反応に関与する。
【0008】
細胞内で、ROS/RNSは、タンパク質、脂質、DNAに損傷を与える。これらのプロセスの併合効果が、細菌細胞不活性化である。DBDの医学的及び生物学的用途に関する研究のほとんどは、浮動電極構成、プラズマジェット(浮動電極又は2つの電極)、及びあまり一般的でない表面DBDという3つの構成のうちの1つに行われている。浮動電極デバイスでは、高電圧電極が誘電体材料内に封入され、処理表面が接地電極として作用し、処理表面は、高電場及び荷電粒子束に曝露される。最も広範囲に研究されているのは、パルスdcからマイクロ波の範囲の電力を使用するプラズマジェットであり、プラズマ流出物は気体流によって処理表面へ搬送される。プラズマ流出物は、医療用途に好適であるが、圧縮気体供給を必要とする。表面DBDは、主に、航空用途の流量制御のため、及び大面積表面改変のためのアクチュエータとして研究されている。
【0009】
大気圧プラズマは、細菌及びウイルスからの表面除染に有効であることが示されているが、不活性化のレベル及び速度は、生物種、実験条件、及びプラズマ源に強く依存する。例えば、D値(1log10減少の時間)は、1つの周知のDBDによって生成される気体への曝露では225秒、別の周知のDBDでは150秒、大気圧ヘリウム/空気グロー放電に曝露されたE.coliでは35秒、及び紙製DBDでは15秒である。紙製基板上の印刷パターン電極を使用していて、2kHz、3.5kV AC、10Wで動作させた単回使用の可撓性DBDデバイスによって、高速減少D=15秒が達成された。これは、使い捨てデバイスである。
【0010】
プラズマ殺菌の別の変形態様は、低圧プラズマ活性化過酸化水素蒸気の使用である。Sterlis Healthcareの低温滅菌システムのようなシステムは、高い温度、湿度、及び腐食の影響を受けやすい材料の、広く容認された滅菌方法である。より最近の研究では、大気圧でのプラズマ殺菌を増強するために、過酸化水素の添加が探求されている。コロナ放電にH2O2液滴を添加すると、6log10の減少が生じ、プラズマ流出物にH2O2蒸気を添加すると、細菌負荷が6log10よりも大きく減少し、バイオフィルム及び胞子が著しく減少した。増強を担う支配的なメカニズムは、プラズマタイプ、H2O2の状態に依存する。H2O2蒸気は、プラズマ中で電離してH2O2-を形成し、液滴は負に帯電し得、H2O2の水溶液は、プラズマ活性化水に類似した溶液中にプラズマによって導入される活性種にさらされる。純水は、抗菌効果を増強するプラズマによって酸性化され、リン酸緩衝液(PBS)などの緩衝液はpHレベルを維持するが、溶解したオゾン、硝酸塩、及び過酸化水素ラジカルの影響を受ける。
【0011】
この結果及び条件の多様性は、生物活性を提供するために他の化学物質に依存しない自己殺菌性布が必要であることを示している。
【発明の概要】
【0012】
本明細書及び図面に詳細に記載されるように、自己殺菌性プラズマ布であって、とりわけ、(個々の消費者のため、及び医療用途のための、実験用白衣、前掛け、マスク、保護シート、手袋などの)自己殺菌性個人防護具(PPE)のため、既存のPPEを殺菌すること、自己消毒性PPEの製造に組み込まれること、(包帯、カバーシート、褥瘡などの創傷治療用パッド、皮膚感染症の治療/予防、その他などであり、単独で、又は既存の包帯及び/若しくは化学的創傷治療と組み合わせて使用することができる)広範囲の医療用途ための自己殺菌性繊維製品、生物剤に対する防御としての軍事用途、並びに専門的場面又は家庭で表面を消毒する際に支援することのために、採用され得る自己殺菌性プラズマ布が開示される。本明細書で使用される場合、「布」という用語は、織る、編む、織機で作る、その他によってなど、任意の適切な方法で相互接続された任意の構成の繊維を対象とすることが意図される。好ましくは、布は、手作り又は織機で作られた織布である。
【0013】
開示のアプローチは、誘電体バリア放電源を採用する。プラズマ源は、絶縁導電性繊維から作られる。好ましくは、ポケットサイズの高電圧高周波電源がプラズマ源を駆動する。プラズマは、繊維間の自然空間内で生成される。プラズマは、布自体を殺菌し、他の表面も殺菌することができる。
【0014】
既存の材料とは対照的に、本明細書に開示の自己殺菌性プラズマ布は、ボタンをひと押しすると、必要に応じて自己殺菌、更には滅菌することができる。それは、複雑な機器を必要とせず、バッテリ式ポケット電源で駆動される。オンにすると、布は、必要に応じて材料の両側で、布が暴露された可能性のある病原菌を破壊する。この布は、真の自己殺菌性繊維製品材料である。
【0015】
本開示の1つの態様は、布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスである。デバイスは、複数の繊維であって、各繊維が、少なくとも1つの誘電体層によって取り囲まれた導電性コアを備え、1本以上の繊維が、相互接続繊維メッシュを形成する、複数の繊維と、1本以上の繊維に動作可能に接続された(好ましくは携帯電源である)電源と、を備える。電源は、電流(好ましくは≦2mA)が印加され、好ましくは、デバイスの温度が約22℃~約40℃であるときに、繊維間に形成される空隙内でプラズマが点火することができるように構成されるべきである。
【0016】
任意選択的に、布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスは、(i)複数の繊維、(ii)電源、(iii)1つ以上のスイッチ、(iv)任意選択的に、1つ以上のプロセッサ、(v)任意選択的に、1つ以上のセンサ、及び(vi)任意選択的に、1つ以上のディスプレイ又は視覚的指示器から本質的になる。
【0017】
任意選択的に、布製デバイス内で、第1の繊維の少なくとも1つの誘電体層は、第2の繊維の少なくとも1つの誘電体層とは異なる(例えば、異なる材料で構成されるか、又は異なる厚さを有する)。布製デバイスは、複数の相互接続繊維層で構成され得る。
【0018】
任意選択的に、布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスは、少なくとも1つのスイッチを更に備える。温度センサ及び/又は電流センサも、任意選択的に、組み込まれ得る。少なくとも1つのプロセッサ、例えば、温度センサ及び電流センサからのフィードバックに基づいて電源を制御するように構成されたプロセッサも、利用され得る。
【0019】
任意選択的に、布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスは、タイマーによって制御され得る。例えば、それは、ボタンの押下から開始し、細菌を死滅させるのに、及びウイルスの生存率を低下させるのに十分であることが示されている所定の時間(例えば、2分など)の後に、自動的に止まるように設定することができる。
【0020】
本開示の第2の態様は、表面を滅菌するための方法である。方法は、まず、前述したような布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスを提供することを含む。次いで、複数の繊維のうちの第1の繊維の導電性コアから、第1の繊維を取り囲む少なくとも1つの誘電体層に至り、複数の繊維のうちの第2の繊維を取り囲む少なくとも1つの誘電体層に至り、第2の繊維の導電性コアに至る放電経路を形成することによって、コールド均質プラズマを生成することができる。プラズマが(例えば細菌及び/又はウイルスを包含する)汚染表面と接触すると、それは、反応種が汚染表面上に形成されるように誘導し、次いで、反応種は、細菌及び/又はウイルスを死滅させることが可能になる。場合によっては、方法は、少なくとも所定の時間、プラズマが表面との接触を維持することを保証することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】布製誘電体バリア放電デバイスの一実施形態の図である。
【
図2】複数の層を有する繊維の一実施形態の断面図である。
【
図3】動作中の布製誘電体バリア放電デバイスの一実施形態の簡略図である。
【
図4】複数の繊維層を備える布製誘電体バリア放電デバイスの一実施形態の簡略断面図である。
【
図5】複数の繊維層及び2つの半透過性外側層を備える布製誘電体バリア放電デバイスの一実施形態の簡略断面図である。
【
図6】デューティサイクル及び周波数がそれぞれ20%及び40kHzで一定に維持されたとき、平均電力が印加電圧振幅の関数として線形増加することを示すグラフである。
【
図7】開示の方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図8】120秒間の曝露後の織物DBDのサイズよりも大きい領域における細菌の殺菌の図である。
【
図9】動作パラメータを以下の通りとして、布製DBDの一実施形態の動作中に記録された電流及び電圧トレースを示すグラフである:V
max=3.8kV、40.7kHz、25%デューティサイクル、0.1amJ/サイクル。
【
図10】
図9の電流及び電圧トレースに対応するリサージュ図である。
【
図11】布製DBDの一実施形態への暴露後の単純ヘルペスウイルス(HSV)の乾燥懸濁液及び液体懸濁液におけるウイルス負荷の減少を示すグラフである。エラーバーは、条件ごとに3回繰り返された試行に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示の布は、誘電体バリア放電(DBD)による大気圧での低温プラズマ滅菌に基づく。DBDは、一般に、一方又は両方の電極が、誘電体材料で覆われ、しばしばkHz周波数範囲で駆動される、容量結合プラズマ源として理解され得る。誘電体バリアと電力の高周波とにより、DBDは、ヒトの接触に安全である。DBDは、創傷治療並びにその他の殺菌及び治療用途のために、医療分野に参入している。DBDは、主に活性酸素(ROS:O2-、OH、その他)及び窒素種(RNS:NO、N2O、NO3-)の生成に帰属する生物活性特性を有する気体プラズマを生成する。DBD内で生成されるような低温プラズマの細菌及びウイルス汚染に対する有効性は、以前に実証された。
【0023】
図1を参照すると、開示の布製誘電体バリアデバイス(100)の実施形態は、概して、2つの基本構成要素、つまり(i)相互接続されて繊維メッシュ(例えば、基板層)を形成する複数の繊維(110)と、(ii)電源(140)とを必要とすると考えることができる。複数の繊維(110)の各々は、2つの構成要素、つまり(i)内部導電層又はコア(120)と、(ii)内部導電層を取り囲む1つ以上の外部誘電体層(130)から構成される、から本質的になる、又はからなる。
【0024】
各繊維の断面は、円形、楕円形、又は矩形などの任意の適切な断面形状であり得る。
【0025】
各繊維の内部導電層又はコアは、金属、合金、導電性化合物、又はそれらの組み合わせを含む任意の適切な導電性材料から、独立に構成され得る。内部導電層又はコアは、導電性材料の単層であり得る。そのような適切な導電性材料の具体例としては、銅、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。いくつかの実施形態では、内部導電層又はコアは、炭素繊維、又は炭素被膜ポリマー繊維である。好ましくは、内部導電層又はコアは、ある程度の可撓性/非剛性を有するように構成される。
【0026】
各内部導電層又はコアの直径又は厚さは、特に限定されない。好ましくは、直径又は厚さは、≦10mm、≦6mm、≦3mm、≦2mm、≦1mm、又は≦0.5mmである。好ましい実施形態では、ワイヤは、30又は32AWGゲージワイヤである。
【0027】
1つ以上の誘電体層は、任意の適切な誘電体材料から構成され得るが、好ましくは、層は、可撓性/非剛性材料から構成される。例えば、誘電体層は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シリコン系材料、石英、ガラス、又は当業者に周知の他の誘電体材料から構成され得るが、石英及びガラスは好ましくない。
【0028】
各内部導電層又はコアの直径又は厚さは、好ましくは、≦10mm、≦6mm、≦3mm、≦2mm、≦1mm、≦0.5mm、≦0.4mm、≦0.3mm、≦0.25mm、又は≦0.2mmである。
【0029】
図2を参照すると、各繊維は、複数の誘電体層を含む、複数の層を備え得る。例えば、いくつかの実施形態では、繊維(111)は、内部導電性コア(121)と、内部導電性コア(121)を取り囲みかつそれと接触している第1の誘電体材料で構成された第1の誘電体層(131)と、第1の誘電体層(131)を取り囲みかつそれと接触している第2の異なる誘電体材料で構成された第2の誘電体層(132)と、を備え得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、繊維のうちの1本以上が、他のコーティング又は材料を含む。特定の所望の特性を提供するために、適宜、複数のコーティングを利用することができる。非限定的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)並びに関連材料、並びにポリシロキサン又は他のシリコン系ポリマー材料が挙げられる。好ましくは、追加コーティングは、可撓性、可鍛性、低導電性ポリマーである絶縁材料である。
【0031】
いくつかの実施形態では、布の1平方インチ当たりの縦糸繊維(例えば、開示のプラズマ布の長さ方向に配向された繊維又は繊維の部分)の総数は、横糸繊維(例えば、開示のプラズマ布の幅方向に配向された繊維又は繊維の部分)の総数に等しい。いくつかの実施形態では、縦糸繊維の総数は、布の1平方インチ当たりの横糸繊維の総数に等しくない。1平方インチ当たりの繊維の数は、同じ生物学的又は殺菌結果に対してエネルギー消費を最適化するように変えることができる。例えば、手袋よりも、1平方インチ当たりの繊維が少なく、開口部が大きい織物を利用するマスクが、作成され得る。
【0032】
特に好ましい実施形態では、各布製DBDは、
図12に見られるように配置された2つの繊維を使用する。具体的には、複数の繊維(900)は、2つの単一繊維(901、902)からなる。第1の単一繊維(901)は、布を横切って行ったり来たりして、繊維の大部分が、例えば複数の横糸繊維の等価物を形成するように構成される。第2の単一繊維(902)は、第1の単一繊維に垂直な方向で布を横切って行ったり来たりして、繊維の大部分が、例えば複数の縦糸繊維の等価物を形成するように構成される。次いで、電源を、それらの2つの繊維に接続し、各繊維の自由端を絶縁することができる。
【0033】
図3を参照すると、動作中の開示の布製誘電体バリアデバイス(200)の実施形態が示されている。ここで、電源及び繊維の構成により、繊維(210、211)の内部導電層(220、221)が電源(240)に接続され、電流が印加されると、プラズマ(260)が、繊維(210、211)間の空隙(250)の内及び周辺に形成され(例えば、「点火し」)、2本以上の繊維の一部分を包囲する空間の容積を満たす。すなわち、例えば、複数の繊維のうちの第1の繊維(210)の導電性コア(220)から、第1の繊維を取り囲む少なくとも1つの誘電体層(230)に至り、空隙(250)を通って複数の繊維のうちの第2の繊維(211)を取り囲む少なくとも1つの誘電体層(231)に至り、第2の繊維の導電性コア(221)に至る放電経路を形成することによって、コールド均質プラズマを生成することができる。
【0034】
1本の繊維の外側表面と第2の繊維の外側表面との間の空隙(250)は、典型的には、繊維の周りで非対称であり、すなわち、典型的には、繊維の一部分が別の繊維に接触し得、一方、繊維の別の部分は、小さな間隙を有し、一方、更に別の部分は、更に大きな間隙を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、空隙は、≦10μm、≦5μm、≦4μm、又は≦3μmである。
【0036】
いくつかの実施形態では、任意の所与の繊維層について、各縦糸繊維は、全ての横糸繊維に接触し、かつ/又は各横糸繊維は、全ての縦糸繊維に接触する。ワイヤが接触する場合でも、少なくとも小さな空隙が存在する。
【0037】
これらのデバイスによって生成されるプラズマは、デバイスが自己殺菌性プラズマクロスとして作用することを可能にする。可撓性クロスは、例えば、様々なツール、表面、その他、及び/又は(例えば、布製DBDがマスクなどのPPEとして使用される場合)それ自体を繰り返し殺菌するために使用することができる。
【0038】
更に、
図1は、布製誘電体バリアデバイスを単一層として示しているが、デバイスは、複数の層をなす第1及び第2の電極を有する放電セルを備えてもよく、第1の電極は、所望により、ただ1つの層、2つの層、又は3つ以上の層を通る布であり得る。
図4には、布製誘電体バリア(400)が、2つの層(410、420)を備えるとして示され、各層は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、各層は、1つの層の繊維の二次元方向が他の層の繊維の二次元方向と一致するように配向される。すなわち、1つの層が、概ね左から右へ、かつ上から下へ配向された繊維を有する場合、次の層は、やはりそれらの方向に配向されている繊維を有する。いくつかの実施形態では、各層は、1つの層からの繊維の二次元方向が他の繊維層の二次元方向と一致しないように、異なって配向される。すなわち、1つの層が、概ね左から右へ、かつ上から下へ配向された繊維を有する場合、次の層は、45度回転された繊維を有し得、したがって、繊維は、左下から右上へ、かつ右下から左上へ配向される。代替的に、繊維は、最初にねじられ、次いで、布製デバイスを作るために使用され得る。
【0039】
図5に示すように、任意選択の半透過性層も利用され得る。
図5に見られるように、布製誘電体バリアデバイス(500)は、半透過性層(540、541)、並びに1つ以上の布層(510、520)及び電源(530)を含み得る。半透過性層は、例えば、誘電体布又はメッシュを含む任意の適切な形態をとり得、かつ、誘電体材料又は絶縁材料を含む任意の適切な材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、半透過性層は、開示の布層の周りの使い捨てカバーであり、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリマーから構成され得る。
【0040】
図1を参照すると、布製誘電体バリアデバイス(100)は、任意選択的に、携帯電源であり得、任意選択的に、例えば1つ以上のバッテリ又は超コンデンサを備え得る、電源(140)によって供電される。任意の適切な電源が想定される。電源は、AC又はDC電力を提供するように構成され得る。
【0041】
電源に要求される出力は、布製DBDのサイズに部分的に基づいて決定される。好ましくは、電源は、1kHz~1GHzの周波数の電力を提供するように構成される。好ましくは、電源は、好ましくは100V~10kVの電圧で、電力を提供するように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、電源は、比較的小さい(例えば、4立方インチ以下であるハウジング内)。
【0043】
全ての導電性糸は絶縁されているので、接地する必要はなく、それで、ユーザは絶縁によって保護されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、電源は、2mA以下の電流を提供するように構成される。電源は、例えばワイヤ、導電性糸、又は導電性テープを介することを含む任意の適切な手段を使用して、電極に接続されている。反対側の電極は、例えば、介することを含む、任意の適切な手段を介してグループに接続されている。電源は、布の端部において、例えばワイヤ、導電性糸、導電性テープ、又は布ストリップスを介することを含む任意の適切な手段を使用して、電極に接続されている。
【0045】
これらのデバイスは、好ましいことに、いかなる追加気体供給又は高機能電源もないし、好ましいことに、長期的に安定した動作ができるように構成されている(すなわち、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも2ヶ月、より好ましくは少なくとも3ヶ月)。
【0046】
いくつかの実施形態では、電源は、デバイスの温度が≦50℃、又は≦40℃、かつ≧15℃、又は≧22℃に維持されるように電流を提供するように制御又は構成される。いくつかの実施形態では、電源は、デバイスの温度が約15℃~約50℃、より好ましくは約22℃~約40℃に維持されるように電流を提供するように制御又は構成される。本明細書で使用される場合、「約」温度という用語は、必要に応じて、概ね±5%以内の値を示す(例えば、範囲下限は-5%であり、範囲上限は+5%である)。例えば、「約10℃~約100℃」は、9.5℃~105℃をカバーすることが意図される。
【0047】
布製誘電体バリアデバイス(100)は、繊維への電流を制御するための1つ以上のスイッチ又は他の電気構成要素(145)、1つ以上のセンサ(146)、1つ以上のディスプレイ又は視覚的指示器(147)、及び1つ以上のプロセッサ(148)を含む、追加構成要素を任意選択的に包含し得る。1つ以上のプロセッサ(148)は、電源(140)、センサ(146)、及び/又はディスプレイ若しくは視覚的指示器(147)などの、システム内の様々な構成要素のうちの1つ以上と動作可能に通信するように構成される。
【0048】
好ましい実施形態では、デバイスは、電源オン/オフスイッチとして構成された少なくとも1つのスイッチ(145)を含む。
【0049】
1つ以上のセンサ(146)が含まれる場合、そのようなセンサは、1つ以上のプロセッサ(148)、又は1つ以上のディスプレイ若しくは視覚的指示器(147)と動作可能に通信し得る。例えば、温度センサが、(当技術分野でよく理解されている)いくつかの基本回路を通して警告灯に接続され得、したがって、温度が閾値を超えると、警告灯がオンになる。いくつかの実施形態では、センサは、温度及び電流についてのフィードバックをプロセッサに送信し得、次いで、プロセッサはそれを使用して、電流を調整する必要があるかどうか、そして必要がある場合には、どの程度かを判定したり、又は故障が発生したかどうかを判定する。その判定に基づいて、次いで、プロセッサは、電源(140)に電流を遮断又は調整させたり、かつ/又は問題の表示がディスプレイ又は指示灯(147)に現れるようにすることができる。
【0050】
加えて、デバイスの1つ以上の表面又は部分もまた、それらの温度又は他のパラメータが、温度センサ(146)によって、定期的又は継続的に、測定又は監視され得る。いくつかの実施形態では、1本以上の繊維の誘電体層の表面が、センサによって監視され得る。熱電対などの任意の適切なセンサが利用され得る。
【0051】
ディスプレイ又は視覚的指示器(147)は、カラー又はモノクロのLED/OLEDディスプレイ及び/又はLED灯を含む、任意の周知のディスプレイ又は視覚的指示器を含み得る。バッテリ寿命を最大化するために、ディスプレイ又は視覚的指示器は、好ましくは、小さくて低出力であるか、又は(1分以下などの)短時間のみ「オン」であることが意図される。
【0052】
1つ以上のプロセッサ又は制御回路(148)は、デバイスのプラズマの生成及び/又は他の構成要素を制御するために存在し得る。プロセッサ又は制御回路は、温度センサ(146)及び電源(140)に動作可能に接続され得る。プロセッサ又は制御回路は、前述したように、適切な動作温度を維持するように構成され得る。プロセッサ又は制御回路は、温度が目標範囲外であるか又は閾値を超えていると検出された場合、自動安全停止を有するように構成され得る。安全停止はまた、電圧又は電流が特定の閾値を超える場合に発生するように構成され得る。
【0053】
動作中の放電デバイスの例として、典型的な電流トレースは、例えば(42±2)kHzの変位電流正弦波成分と、重畳された急激なスパイク、例えば放電に対応する持続時間で10~50nsとで構成される。変位電流を、測定された合計電流から差し引いて、放電電流を得ることができる。放電の回数、それらの全体の持続時間、及びそれらの振幅は、電圧の増加に伴って増加し得る。
【0054】
個々の放電又は電流ピークの数は、最大印加電圧(過電圧)に応じて変わる。例えば、いくつかの実施形態では、(10mAを超える)電流ピークの数は、2kVで15±8であり、3kVで45±8に増加する。
【0055】
リサージュプロットから明らかなように、電流スパイクの数が多いほど、回路内を転送される電荷の量が多くなる。リサージュプロットは、負電圧(正のパターン電極)に対してより強力な放電の数が多いことに起因して、わずかな非対称性を有する2つの傾斜の形状を有する。1サイクル当たりの、回路内で散逸されるエネルギーは、リサージュプロットの面積として計算することができ、次いで、周波数f、デューティサイクルνを使用して、電力Pが決定される:P=fv∫QdV、ここで、Qはコンデンサプローブによって測定された電荷であり、dVは高電圧プローブによって得られた電圧である。
【0056】
例えば、ピーク電圧1.9kVでは、1サイクル当たりのエネルギーは0.04mJ/サイクルであった。周波数41kHz及び20%デューティサイクルでは、0.3Wの電力が得られる。最大電圧2.9kVでは、1サイクル当たりのエネルギーは0.14mJ/サイクルであり、電力は1.1Wであった。およそ2cm
2のデバイスの対応する電力密度は0.15~0.5W/cm
2である。周波数及びデューティサイクルを一定に保ちながら、印加される最大AC電圧を1.6kVから約3kVまで変化させた。結果として生じる電力は、印加電圧に伴って線形に変化し(
図8参照)、これは、所与のデバイスの所望の電力を設定するための較正曲線として使用することができる。動作電圧を増加させると、放電電力が増加し、それは、個々の放電の回数及びプラズマの生成の増加に対応する。デューティサイクルを増加させると、デバイスによる全消費電力を増加させるが、サイクル当たりの個々の放電の回数は変化しない。
【0057】
いくつかの実施形態では、最も外側の誘電体層と殺菌されるべき標的表面との間の任意の間隙は、≦2cm、好ましくは≦1cm、より好ましくは≦5mm、最も好ましくは≦2mmである。いくつかの実施形態では、間隙は、≦1mmである。いくつかの実施形態では、間隙は、1μm~2mm、好ましくは1mm~2mmである。
<実施例>
【0058】
いくつかの実施例を手織り機で織った。使用した繊維は、導電性コアとして、32本のAmerican Wire Gauge(AWG)銅線からなり、各々は可撓性シリコーンで取り囲まれていた。いくつかの実施例では、織りはきつく、繊維は互いに接触していた。他のサンプルでは、各横糸繊維間及び各縦糸繊維間の間隔は、1~2mmであった。これらの実施例は、個人用品のための殺菌袋を作製するのに、及び/又は創傷包帯に組み込むのに、好適である。
【0059】
また、を含む、表面を滅菌するための方法も開示される。
図9に見られるように、方法(600)の1つの実施形態は、開示の布製誘電体バリア放電(DBD)デバイスを提供すること(610)によって存在する。
【0060】
次いで、デバイスを活性化し、コールド均質プラズマを生成する(620)。この生成プロセスは、複数の繊維のうちの第1の繊維の導電性コアから、第1の繊維を取り囲む少なくとも1つの誘電体層に至り、そして空隙を通る放電経路を形成することによって生じる(プラズマは空隙の内及び周辺に点火する)。放電経路は、好ましくは、複数の繊維のうちの第2の繊維を取り囲む少なくとも1つの誘電体層まで、第2の繊維の導電性コアまで続く。いくつかの実施形態では、放電経路は、第2の繊維まで続くのではなく、ヒトに向かって、及びヒトを通して続き得る。繊維とヒト(又は衣服、その他)との間の空隙は、プラズマが形成されることを可能にし得る。
【0061】
いったんプラズマが空隙の周辺の空間の容積内に形成されると、汚染表面を、生成されたコールド均質プラズマと接触させることによって、反応種が汚染表面上に(630)形成されるように誘導することができる。汚染表面は、典型的には、細菌、ウイルス、又はそれらの組み合わせを包含する。また、それは、真菌などの他の生物種も包含し得る。汚染表面は、開示の布製DBD内の繊維の外側表面でもあり得るし、又は、それは、ヒト皮膚、作業表面、その他などの外側表面でもあり得る。
【0062】
任意選択的に、方法は、少なくとも1秒、少なくとも5秒、又は少なくとも10秒などの少なくとも所定の時間、汚染表面とのプラズマの接触を保持又は維持すること(640)を含み得る。
【0063】
次いで、反応種は、汚染表面上の細菌、ウイルス、又はそれらの組み合わせを死滅させることができる(650)。
【0064】
実施例2
プラズマ布製デバイスの抗菌効果を、E.coliをモデル細菌として使用して試験した。この実施例では、緑色蛍光タンパク質を発現し、LB寒天プレート上に広がったときに密生芝を形成することから、E.coli OP-50-GFP株を使用した。死滅した細菌は、このタンパク質を発現できず、したがって、緑色に発光しない。
【0065】
時刻=0で、寒天プレート全体が緑色に蛍光した。30秒後、布製デバイス下のプレート面積の約97%が、細菌を除去され、全プレート面積の約70%が、細菌を除去された。60秒後、布製デバイス下のプレート面積の99%超が、細菌を除去され、全プレート面積の約85%が、細菌を除去された。
図8は、曝露120秒後の結果をグラフで示す。具体的には、寒天プレート(701)上に、布製デバイスが置かれたところの輪郭(702)が示されている。見られるように、寒天プレート内の唯一の細菌(705)は、布製デバイスから離れたプレートの縁部における少量である。布製デバイスが置かれたところの周辺に、細菌を含まない大きな領域(707)の空間が存在する。実際には、布製デバイス下のプレート面積の100%が、細菌を除去され、全プレート面積の97%で、大体、細菌は完全に排除された。
【0066】
この実施例で使用した布製デバイスは、およそ2.5cm
2のデバイスであり、1cm当たりおよそ10本の繊維を有した。織物は、2本の連続したシリコン絶縁30ゲージワイヤで作製した。各ワイヤ/繊維の一端を、kHz範囲のAC電源の出力に接続した。電圧及び電流のトレースを
図9に示す。デバイスと直列の10nF測定コンデンサを使用して、転送された電荷も測定した。リサージュ図(
図10)を使用して、1サイクル当たりのエネルギーEを求めた。デバイスの平均電力は、P=v・f・Eとして計算し、ここで、v-オン時間の一部としてのデューティサイクル、f-周波数(Hz)、E-1サイクル当たりのエネルギー(J)であった。
図10に示すグラフは、織物の面積について、Vmax=3.8kV、40.7kHz、25%デューティサイクル、0.1mJ/サイクル、およそ1W、0.4W/cm
2に対応する。
【0067】
細菌の除染に成功した後、次いで、布製デバイスをウイルスに対して試験し、追加の実験を行った。
【0068】
単純ヘルペスウイルス(HSV)を使用して、ウイルス殺菌実験を行った。ウイルス懸濁液の液滴を直径30mmのペトリ皿に入れ、目視乾燥するまで約20分間乾燥させた。乾燥懸濁液を有するペトリ皿を、布製DBD(「織物」)を有するホルダの上で反転させ、したがって、織物は乾燥懸濁液と接触した。各処理の直後に、1mLの緩衝液をペトリ皿に添加して、反応を直ちに停止させた。結果として生じるウイルス懸濁液を使用して、プラーク形成単位の濃度を決定し、未処理の懸濁液と比較した。織物は、4分間の処置後に、生存ウイルスの99.3%の減少を示した(
図11を参照)。
【0069】
更に、殺菌及び他の生物学的結果は、デバイスの気体出力に依存するので、フーリエ変換赤外吸収分光法を使用して、生物学的活性種の出力を確認する実験を実施した。
【0070】
生物学的活性種の出力を判定するために、この実施例の布製DBDを気体セル(10cm光路)に入れ、電源投入した。より低い及びより高い電圧及び電力を含む異なる条件での動作中に、FTIR吸収スペクトルを得た。スペクトルを使用して、デバイスからの気体流出流中に存在する分子種を識別し、殺菌及び他の生物医学的用途に重要なオゾン及び窒素酸化物の絶対濃度を計算した。例えば、0.175mJ/サイクルで、以下の濃度が決定された:O3-8.2×1015cm-3(0.09%)、及びN2O-6.75×1013cm-3(0.003%)。電力の増加に伴って、O3の濃度は低下し、N2Oは増加した。このように、デバイス出力の組成は、入力電力に依存する。
【0071】
所与の所望の結果に対して電力を調整するとは、ユーザがデバイスを「ダイヤルイン」して、所望の気体出力組成を提供することができることを意味する。例えば、窒素酸化物よりもオゾンの影響を受けやすい種を死滅させるには、より低い電力入力を使用することがより効果的である。いくつかの実施形態では、デバイスの1つ以上のプロセッサは、例えば入力電力を気体出力と相関させる曲線を包含する様々なデータベース又はテーブル、及び、生物種を、様々な出力気体(オゾン、窒素酸化物、その他)に曝露されたときに所与の種の細菌の一定の割合(例えば、99%)を死滅させる時間と相関させる他のデータベース又はテーブルにアクセスすることができる。それらのデータベースに基づいて、デバイスは、1種以上の標的細菌を効果的な方法で死滅させる気体組成物を生成する入力電力を識別することによって、細菌を死滅させるための最適な入力電力を計算するか、又は別様に決定することができる。
【0072】
当業者は、本明細書に記載の発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、認識したり、又は、単なる日常的な実験を使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】