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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】医療用換気マスク
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573588
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 IL2021050657
(87)【国際公開番号】W WO2021245668
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】275097
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】283119
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522463336
【氏名又は名称】インスパイア ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナミアス、ナダヴ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルム、エリヤフ
(57)【要約】
【課題】効率的かつ安全にエアロゾル飛沫を捕集および除去するエアロゾル防止用換気マスクの提供。
【解決手段】
気体開口部、内部部分と外部部分とを有するマスクフレーム、内部縁部を有する内部シール、外部縁部を有する外部シール、および真空ラインと流体連通するようにマスクフレームに接続された少なくとも1つの真空排気口を備える医療用換気マスク。
【選択図】なし



【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有する医療用換気マスクであって、少なくとも前記マスクが使用可能な状態にあるときに、以下を備える医療用換気マスク:
流体連通して換気装置と接続されるように構成され、中心軸に垂直な基準平面の位置を画定する気体開口部;
内部部分と外部部分とを有し、気体開口部と内部部分との流体連通を提供するように気体開口部を収容するマスクフレームであって、外部部分が、中心軸に沿ったその延長部分の少なくとも一部に沿って前記内部部分を覆い、その間に補助空間を含むマスクフレーム;
シールの一端で前記内部部分に接続され、シールの別の端に内部縁部を有する内部シールであって、前記マスクフレームの内部部分および前記内部シールが、加圧された換気気体を対象者の気道に供給するために、気体開口部と流体連通する換気空洞を対象者の顔面とともに画定するように、対象者の顔面に接触するように構成され、前記内部縁部が中心軸に沿って基準平面から第1の距離D1まで間隔を置いて設けられた内部シール;
シールの一端で前記外部部分に接続され、シールの別の端に外部縁部を有する外部シールであって、中心軸に垂直な方向で内部縁部から間隔を置いた位置で対象者の顔面に接触するように構成され、補助空間を含むマスクフレームの前記外部部分と外部シールとが、対象者の顔面とともに真空空洞を画定し、前記外部縁部が中心軸に沿って基準平面から第1の距離より長い第2の距離D2まで間隔を置いて設けられた外部シール;および、
前記補助空間と真空ラインとの間が流体連通するようにマスクフレームに接続され、換気空洞内の換気を中断することなく、同時に、真空空洞に真空を適用することによってエアロゾルクリアランスを提供する、少なくとも1つの真空排気口。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクであって、前記マスクフレームは、外壁と、中心軸に垂直な方向で外壁から内側に間隔をあけて配置された内壁とを備え、
外壁は、少なくとも部分的にマスクフレームの前記外部部分を画定し、内壁は、少なくとも部分的にマスクフレームの前記内部部分を画定し、
マスクフレームは、任意に、開口部が中心軸と同軸であるように気体開口部を収容するキャップ壁をさらに備え、
このキャップ壁に、外壁と内壁とが、中心軸に沿って、かつ中心軸に垂直な方向に沿って気体開口部から間隔を置いた位置で接続され、
内部部分が、キャップ壁および内壁によって画定される、マスク。
【請求項3】
中心軸を有する医療用換気マスクであって、少なくとも前記マスクが使用可能な状態にあるときに、以下を備える医療用換気マスク:
外壁と、少なくとも中心軸に沿った外壁および内壁の壁の長さの大部分に沿って、外壁から内側に間隔をあけて配置された内壁とを有し、内壁は少なくとも部分的にマスクフレームの内部部分を画定し、外壁は、外壁と内壁との間の補助空間を含むマスクフレームの外部部分を、少なくとも部分的に画定するマスクフレーム;
換気装置に接続可能で、マスクフレームの内部部分と流体連通する気体開口部;
一端で前記内壁に接続され、別の端で内部縁部を有する内部シールであって、内部シールが対象者の顔面と接触するように構成され、内部部分および内部シールが、対象者の気道に加圧換気気体を供給するための気体開口部に流体連通して、対象者の顔面とともに換気空洞を画定する内部シール;
一端で前記外壁に接続され、別の端に外部縁部を有する外部シールであって、外部シールが、少なくとも中心軸に垂直な方向において、内部縁部から間隔を置いた位置で対象者の顔面と接触するように構成され、補助空間を伴う前記外部部分と内部シールとが、対象者の顔面とともに真空空洞を画定する外部シール;
前記補助空間と真空ラインとの間が流体連通するようにマスクフレームに接続され、換気空洞内の換気を中断することなく、同時に、真空空洞に真空を適用することによってエアロゾルクリアランスを提供する、少なくとも1つの真空排気口;および、
任意に、気体開口部を収容し、中心軸に沿って、かつ中心軸に垂直な方向に沿って気体開口部から間隔を置いた位置で、内壁および外壁が接続されるキャップ壁をさらに備え、内部部分は、キャップ壁と内壁とによって画定されるマスクフレーム。
【請求項4】
内部縁部が、中心軸に沿って基準平面から第1の距離D1までの間隔を置き、外部縁部が、中心軸に沿って基準平面から第1の距離よりも長い第2の距離D2までの間隔を置く、請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
D1:D2の比が、少なくとも1:1.10である、請求項1、2または4に記載のマスク。
【請求項6】
内部シールおよび外部シールの少なくとも一方は、マスクフレームのそれぞれの内壁および外壁に、任意に迅速接続継手により、さらに任意に弾力継手により、着脱可能に取り付けられる、請求項2、3または4に記載のマスク。
【請求項7】
キャップ壁と外壁の外面との間に延在する構造補強配置をさらに備える、請求項2、3または4に記載のマスク。
【請求項8】
前記配置が、中心軸の周囲に互いに半径方向に間隔を置いて配置された複数の補強要素を備える、請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記内部縁部が、内部部分の内側に向かって開いた湾曲した内部リップを備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項10】
前記外部縁部が、湾曲した外部リップを備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項11】
前記湾曲した外部リップが、補助空間から離れる方向に開いている、請求項10に記載のマスク。
【請求項12】
前記湾曲した外部リップが、補助空間に向かって開いている、請求項10に記載のマスク。
【請求項13】
前記外部部分が、鼻梁領域を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項14】
前記外部部分が、中心軸に垂直な方向に沿って鼻梁領域から反対方向に間隔をあけて配置される顎領域を備える、請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
前記真空排気口が、鼻梁領域に近接して配置される、請求項13に記載のマスク。
【請求項16】
請求項14に従属する場合、顎部に近接して配置され、前記外部部分とマスクの外部との間の流体連通を提供する圧力調整吸排気口をさらに備える、請求項14または15に記載のマスク。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者を換気する医療の分野に属し、より具体的には、非侵襲的換気(non-invasive ventilation、NIV)において使用するための換気マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
医療換気とは、呼吸を必要とする対象者の気道(口、喉または鼻のいずれか)を通して酸素を肺に直接供給し、ある時には、肺から二酸化炭素を除去することにより、呼吸を機械的に支援する手順である。換気は、特に自律呼吸ができない対象者または手術中の対象者に適用される。非侵襲的換気(NIV)は、一般に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome、OSAS)などの慢性疾患および慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)の増悪などの急性疾患を有する患者の支援に使用される。
【0003】
コロナウイルス(COVID-19)の大流行により、医療用人工呼吸器のニーズが急増した。人工呼吸器不足を解消するために、他の呼吸器系機器が人工呼吸器に転用されるようになった。2020年3月、米国食品医薬品局(FDA)は、医療従事者に対し、呼吸不全を治療するために持続気道陽圧(continuous positive airway pressure、CPAP)装置および二相式陽圧(bi-level positive air pressure、BiPAP)装置を変更するよう指導する文書(Letter to Health Care Providers)を発表した。この指導では、主に、ウイルスのエアロゾル化を防止しながら行うよう概説されている。エアロゾルとは、空気などの気体中に液滴が懸濁したものである。大きな液滴とは異なり、エアロゾルは長時間空気中に存在し、空気感染につながる可能性がある。そのため、ウイルスのエアロゾルなどの微生物のエアロゾルは、感染力が強いとされている。エアロゾルは、病原体を含んだ唾液または鼻汁に高圧の空気が接触することにより発生する。一般的な例として咳およびくしゃみがあるが、NIVおよび吸入もエアロゾル生成の原因となる。また、換気中にエアロゾル薬剤が追加投与される場合もあり、それにより、好ましくない、および、時には危険なエアロゾル薬剤が拡散されることになる。
【0004】
これらの厄介な問題を考慮すると、薬物療法としてのCPAPの使用は、製造業者修正が必要であり、慎重に監視する必要があると判断された。
【0005】
CPAP装置とは、対象者に対して連続的に一定の加圧空気を供給する機械的換気装置である。CPAPは、現在では睡眠時無呼吸治療法として知られており、睡眠中に呼吸気道が閉塞しないように維持することにより、一晩中対象者を補助する。同様に、BiPAP装置は、吸気用の圧力および呼気用の低い圧力の2つの空気圧を供給する。感染症に罹患している対象者に対して非侵襲性装置を使用する場合、環境汚染の危険性がかなりある。この危険性は、フェイスマスクシステム、高流量鼻カニューレシステムまたはCPAPシステムを使用する場合に、実際に深刻化している。特に、CPAPは開放型であり、呼気が周囲に拡散する。したがって、FDAは、CPAP装置を換気装置として使用する場合、ウイルスのエアロゾル化およびその後の疾患の蔓延を避けるために、予防的に行動し、可能であれば負圧または追加的なろ過シールを適用することを推奨している。2003年のSARS流行時に行われた研究でも、CPAP装置がウイルスを環境に送り出し、フェイスマスクから空気を逃がすことによって疾患の蔓延につながるという同様の研究結果が得られている。
【0006】
実際には、CPAPは病院および家庭の両方でエアロゾル感染を増加させているため、専門家は、公衆衛生を損なうことなくCPAP装置を人工呼吸器として導入することに苦心した。明らかになった主な問題点は、換気環境からウイルスのエアロゾル化を回避し、除去することであった。米国麻酔科学会(The American Society of Anesthesiologists)でさえも、COVID-19対象者にはCPAPの使用を控えるようにというガイダンスを出したほどである。現在、かなりの数の対象者が、2、3例を挙げると、挿管に関連する合併症の減少および高い稼働率といった治療の恩恵を結果的に享受できないでいる。
【0007】
そのため、エアロゾルを発生させず、環境的に安全な非侵襲的換気(NIV)の解決策の必要性が高まっている。
【0008】
U.S. Patent 4,895,172(特許文献1)は、対象者によって吐き出された麻酔ガスを収集するための収集装置を開示している。この装置は、下顎装着型部材と対象者の口付近の開口配置とを含む。
【0009】
WO88/06044(特許文献2)は、呼吸室、フェイスシール、ガス吸気口、接続チャネルおよび真空排気口を備える麻酔薬排除フェイスマスクを開示する。
【0010】
CN202724407U(特許文献3)は、麻酔ガスを吸引するための汚染防止マスクを開示する。このマスクは、連続的な負圧吸引を行うための負圧吸引パイプと接続された負圧吸引コネクタを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4895172号明細書
【特許文献2】国際公開第88/06044号パンフレット
【特許文献3】中国特許出願公開第20272440U号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示によって提供されるものは、効率的かつ安全にエアロゾル飛沫を捕集および除去するエアロゾル防止用換気マスクである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示されるマスクは、ウイルス性疾患などの微生物疾患に罹患した対象者に対して医療換気を可能にする一方で、呼気中のエアロゾルが換気システムの外部に漏れることを防止して、換気対象者の環境を安全に保つことができる。本開示の環境的に安全な換気は、換気の過程において対象者が吐き出すエアロゾルを捕集し、除去することにより可能となる。真空源に接続可能な真空ポートにウイルス性エアロゾルを捕集することにより、環境的に安全な換気が保証される。
【0014】
本開示は、エアロゾルの捕集およびクリアランスを含むCPAPなどのNIV換気のための解決策を提供する。CPAP換気では、医療処置を可能にするために、加えられた圧力は比較的高く、また一定のままである。これらの医療的な必要条件は、CPAP換気中の比較的重いエアロゾル液滴のクリアランスを、非常に困難な作業とする。本開示は、安全換気中の、制御された真空に基づくエアロゾルの除去を保証する。また本開示は、換気自体を潜在的に妨害し、NIV換気の利点を否定し得る直接吸引の制限の少なくともいくつかを回避する。この様式の真空は、本開示のいくつかの実施形態により利用され、残留エアロゾルの密封および改善された掃気をも保証し、環境へのエアロゾルの拡散を防止する。
【0015】
本開示は、その形態の第1によれば、中心軸を有する医療用換気マスクであって、少なくともマスクが使用可能な状態にあるときに、以下を備える医療用換気マスクを提供する。すなわち、流体連通して換気装置と接続されるように構成され、中心軸に垂直な基準平面の位置を画定する気体開口部;内部部分と外部部分とを有し、気体開口部と内部部分との流体連通を提供するように気体開口部を収容するマスクフレームであって、外部部分が、中心軸に沿ったその延長部分の少なくとも一部に沿って前記内部部分を覆い、その間に補助空間を含むマスクフレーム;シールの一端で前記内部部分に接続され、シールの別の端に内部縁部を有する内部シールであって、前記マスクフレームの内部部分および前記内部シールが、加圧された換気気体を対象者の気道に供給するために、気体開口部と流体連通する換気空洞を対象者の顔面とともに画定するように、対象者の顔面に接触するように構成され、前記内部縁部が中心軸に沿って基準平面から第1の距離D1まで間隔を置いて設けられた内部シール;シールの一端で前記外部部分に接続され、シールの別の端に外部縁部を有する外部シールであって、中心軸に垂直な方向で内部縁部から間隔を置いた位置で対象者の顔面に接触するように構成され、補助空間を含むマスクフレームの前記外部部分と外部シールとが、対象者の顔面とともに真空空洞を画定し、前記外部縁部が中心軸に沿って基準平面から第1の距離より長い第2の距離D2まで間隔を置いて設けられた外部シール;および、前記補助空間と真空ラインとの間が流体連通するようにマスクフレームに接続された少なくとも1つの真空排気口;を備える。
【0016】
いくつかの実施形態により、マスクフレームは、外壁と、中心軸に垂直な方向で外壁から内側に間隔をあけて配置された内壁とを備え、外壁は、少なくとも部分的にマスクフレームの前記外部部分を画定し、内壁は、少なくとも部分的にマスクフレームの前記内部部分を画定する。ここで、マスクフレームは、任意に、開口部が中心軸と同軸であるように気体開口部を収容するキャップ壁をさらに備え、このキャップ壁に、外壁と内壁とが、中心軸に沿って、かつ中心軸に垂直な方向に沿って気体開口部から間隔を置いた位置で接続され、内部部分は、キャップ壁および内壁によって画定される。
【0017】
本開示の第2の形態によれば、中心軸を有し、少なくともマスクが使用可能な状態にあるときに、以下を備える医療用換気マスクが提供される。すなわち、外壁と、少なくとも中心軸に沿った外壁および内壁の壁の長さの大部分に沿って、外壁から内側に間隔をあけて配置された内壁とを有し、内壁は少なくとも部分的にマスクフレームの内部部分を画定し、外壁は、外壁と内壁との間の補助空間を含むマスクフレームの外部部分を、少なくとも部分的に画定するマスクフレーム;換気装置に接続可能で、マスクフレームの内部部分と流体連通する気体開口部;一端で前記内壁に接続され、別の端で内部縁部を有する内部シールであって、内部シールが対象者の顔面と接触するように構成され、内部部分および内部シールが、対象者の気道に加圧換気気体を供給するための気体開口部に流体連通して、対象者の顔面とともに換気空洞を画定する内部シール;一端で前記外壁に接続され、別の端に外部縁部を有する外部シールであって、外部シールが、少なくとも中心軸に垂直な方向において、内部縁部から間隔を置いた位置で対象者の顔面と接触するように構成され、補助空間を伴う前記外部部分と内部シールとが、対象者の顔面とともに真空空洞を画定する外部シール;マスクフレームに接続され、前記補助空間と真空ラインとの間の流体連通を提供する少なくとも1つの真空排気口;を備え、ここで、マスクフレームは、任意に、気体開口部を収容し、中心軸に沿って、かつ中心軸に垂直な方向に沿って気体開口部から間隔を置いた位置で、内壁および外壁が接続されるキャップ壁をさらに備え、内部部分は、キャップ壁と内壁とによって画定される。
【0018】
第1の形態のマスクと同様に、第2の形態のマスクにおいて、内部縁部は、中心軸に沿って基準平面から第1の距離D1までの間隔を置き、外部縁部は、中心軸に沿って基準平面から第1の距離よりも長い第2の距離D2までの間隔を置く。
【0019】
換気中に、過剰な換気気体および吐き出された呼気が、換気空洞から補助空間に漏れる。補助空間は負圧になり、それによって前記過剰な換気気体および呼気が、少なくとも1つの真空排気口から真空ラインへ排出される。
【0020】
距離D2がD1より大きいということは、外部縁部が内部縁部より対象者の顔面に向かって突出することを意味し、これにより、対象者の顔面へのマスクの装着時に、換気空洞および真空空洞のそれぞれを密閉することができ、それにより、マスクをヒトの顔面の解剖学的構造に合わせ、マスクを二重密閉マスクとすることができる。さらに、距離D2がD1より大きいことにより、換気時のエアロゾルの捕集および掃気も容易となる。つまり、理論に束縛されることなく、距離D2が長いほど、ヒトの顔面の凸部を補い、その結果、両方の空洞の密閉性を高め、それによって安全な換気中に環境的に安全なエアロゾルの掃気を可能にする。
【0021】
二重密閉マスクに2つの空洞があることにより、異なる圧力領域下で同時に操作することがでる。すなわち、高い換気圧で換気空洞を操作することができ、また負圧で真空空洞を操作することができる。これにより、マスクは、真空空洞での吸引により、換気空洞の換気を中断することなく、同時にエアロゾルクリアランスを管理し、換気中の安全なエアロゾル除去を可能にする。
【0022】
上述したように、マスクは、2つの顔面係合縁部:内部縁部および外部縁部を備え、それぞれが、対象者の顔面皮膚にしっかりと取り付けられるように構成されており、内部縁部および外部縁部のそれぞれと顔面皮膚との間に気密シールを作り出し、これにより、途切れない換気を可能にしながら、潜在的に有害なエアロゾル粒子の環境への放出から保護される。
【0023】
距離D1およびD2については、ヒトの顔面の自然な地形に適するような差が必要であり、外部シールが顔面に接触する位置が、内部縁部が顔面に接触する位置よりも、マスクの外部から離れている、
【0024】
したがって、いくつかの実施形態において、D1:D2の比は、少なくとも1:1.10であり、より詳細には、少なくとも以下のそれぞれであり得る:1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2。
【0025】
いくつかの実施形態により、D1:D2の比は、1:1.1~1:1.3である。
【0026】
例えば、D2とD1との差は、5mm~20mmの範囲とすることができる。より詳細には、D2とD1との前記差は、5mm、7mm、10mm、12mm、15mm、18mmまたは20mmであってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態により、内部シールおよび外部シールの少なくとも一方は、マスクフレームのそれぞれの内壁および外壁に、任意に迅速接続継手により、さらに任意に弾力継手により、着脱可能に取り付けられる。
【0028】
マスクフレームは、その内壁および外壁がそれぞれ、気体開口部に隣接するマスクフレームの領域から、そこから離れるように延びるような形状を有することができる。あるいは、マスクフレームは、気体開口部、気体吸排気口またはその両方を収容するキャップ壁、例えば中心軸と同軸のキャップ壁と、中心軸に沿って気体開口部から離間した位置で、中心軸に垂直な方向に沿って内壁および外壁が接続されるキャップ壁とからなり、内部部分は、キャップ壁および内壁によって画定されることができる。
【0029】
いくつかの実施形態により、内部シールおよび外部シールの1つまたはそれぞれは、シール縁部とは反対側に装着端部を有し、この装着端部は、マスクフレームのそれぞれの内壁および外壁にしっかりと接続されるように構成される。この接続は、恒久的であってもよいし、取り外し可能であってもよい。
【0030】
他の実施形態により、内部シールおよび外部シールは、マスクフレームのそれぞれの内壁および外壁に、任意に熱溶接により一体的に接続することができる。
【0031】
他の実施形態により、内部シールおよび外部シールは、マスクフレームと一体的に形成することができる。
【0032】
マスクは、キャップ壁と外壁の外面との間に延在する構造補強配置をさらに備えることができる。この配置は、真空室に真空が適用されたときに、マスクフレームの内部部分への外部部分の崩壊を防止するように構成することができる。
【0033】
マスクは、ヘッドギアまたはストラップを接続するための係合要素をさらに有し、対象者の顔面へのマスクの装着および位置決めを可能にすることができる。前記係合要素は、ヘッドギア要素、ストラップ挿入用に構成された円形構造ならびに迅速接続および取り外し用に構成されたクリップ、ならびにストラップから選択され得る。マスクフレームの外部に位置する係合要素は、マスクフレームと一体的に接続されるか、またはマスクフレームと一体的に形成されることができる。
【0034】
構造的な補強配置は、係合要素を介してマスクに加えられる引っ張り力が、内部部分と外部部分との間で均一に分配されるように構成され、それによって、上述した二重密閉を容易にすることが可能である。例えば、補強配置は、ストラップまたはヘッドギアを引っ張る際にそこに加えられる力を、マスクフレームの外部部分から内部部分へ伝達するように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態により、前記配置は、中心軸の周囲に互いに半径方向に間隔を置いて配置された複数の補強要素を備える。任意に、前記1つ以上の補強要素は、硬化されたシリコーン肋材である。
【0036】
他の実施形態により、前記補強配列は、単一の連続的な要素の形態にある
【0037】
内部縁部は、内部リップの先端と、内部リップが終端する内部縁部端とを有する内部湾曲リップから構成されてもよい。加えて、または代替的に、外部縁部は、外部湾曲リップ先端および外部リップが終端する外部縁部端を有する湾曲外部リップを備えてもよい。「先端」という用語は、縁部の最外点/領域、すなわち、中心軸に沿って、気体開口部またはそれによって画定される基準平面から最大範囲に間隔をあけた点/領域を意味する。
【0038】
いくつかの実施形態により、前記湾曲した内部リップは、内部部分の内側に向かって開いており、前記湾曲した外部リップは、補助空間から離れる方向に開いている。理論に拘束されることなく、これらの反対側のリップ方向は、2つのリップが互いに干渉し、密閉性が損なわれ、それによってマスク機能が低下することを防止する。換気空洞は陽圧なので、換気空洞に向かって開いた内部リップは、換気時に顔面に密着する。補助空間は負圧になるため、補助空間から離れた位置に開いた外部リップは、換気時に対象者の顔面に密着する。
【0039】
他の実施形態により、前記湾曲した内部リップは、内部部分の内側に向かって開いており、前記湾曲した外部リップは、補助空間に向かって開いている。
【0040】
過剰な換気気体および呼気は、内部部分フレームまたは外部部分が対象者の顔面に弱く密閉されている場所または領域から漏れる可能性がある。いくつかの実施形態により、前記外部部分は、鼻梁領域を有する。
【0041】
いくつかの実施形態により、マスクは、追加の顎領域を備える。
【0042】
いくつかの実施形態により、前記顎領域は、中心軸に垂直な方向に沿って前記鼻梁領域から反対方向に間隔をあけて配置される。
【0043】
いくつかの実施形態により、前記少なくとも1つの真空排気口は、前記鼻梁領域に近接して配置される。本明細書で定義される「近接」という用語は、30mmを超えない距離を含む。
【0044】
いくつかの実施形態により、2つの真空排気口のうちの1つは、鼻梁領域および顎領域のうちのいずれか1つまたは両方に近接して配置される。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記マスクは、前記補助空間と前記マスクの外部との間で流体連通する少なくとも1つの圧力調整吸排気口をさらに備える。
【0046】
前記少なくとも1つの圧力調整吸排気口の種類および位置は、補助空間内の気体循環を改善し、それによってエアロゾルの掃気性能を向上させるように構成してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態により、前記少なくとも1つの圧力調整吸排気口は、外部部分内の基本吸排気口であり、補助空間とマスク外部との間の無制限の流体連通を可能にする。理論に拘束されることなく、前記基本吸排気口は、一定の負圧にさらされる補助空間内の圧力調節を支援する。
【0048】
ある実施形態では、前記吸排気口は、顎部に近接して配置される。ある時には、前記少なくとも1つの圧力調整吸排気口は、2つの状態;すなわち、補助空間への気体の侵入を許容する開放状態と、補助空間からの気体の排出を妨げる閉鎖状態とを有するように構成された一方向弁である。
【0049】
前記少なくとも1つの圧力調整吸排気口は、(i)真空空洞内の比較的一定の圧力を維持し、したがって気体掃気を支援する、および(ii)気体が換気空洞から吸引されないようにし、それによって換気処理効果を損なうことなくエアロゾルの除去を達成する、という2つの機能を果たすように構成されてもよい。いくつかの実施形態により、少なくとも1つの圧力調整弁は、一方向弁、半閉鎖弁、常時開放吸排気口、または仕切り弁のいずれか1つまたは組み合わせであってもよい。前記少なくとも1つの弁は、ゴムなどのエラストマーで形成されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態により、マスクは、換気空洞および補助空間のいずれか一方または両方の密閉を、二値的または定量的に示すための視覚的表示器をさらに備えてもよい。
【0051】
本開示の別形態によれば、または上記の形態のいずれかへの追加として、医療用換気マスクであって、以下を備える医療用換気マスクが提供される:すなわち、換気された対象者の顔面に接触するように構成されたマスク縁部を有し、気体開口部から加圧換気気体を対象者の気道に送り、対象者によって吐き出された息を排気するように構成された換気空洞を画定するマスクフレームおよびそれに接続されたシール;ならびに、マスクフレームに画定され、呼気気体からエアロゾルを集めるように構成された1つ以上のエアロゾル除去吸排気口からなり、前記吸排気口は真空源への接続のために少なくとも1つの真空排気口を有する1つ以上の気体導管を介して流れ連通するエアロゾル除去装置を備える。
【0052】
したがって、呼気からのエアロゾルを運ぶ、前記吸排気口を通って流れる気体は、導管系を通って流れ、真空吸排気口を通って真空ラインに排気される。真空吸排気口または真空ラインは、排気された気体からエアロゾル粒子を捕捉するための捕捉装置を含んでいてもよい。
【0053】
気体導管システムを通って流れる気体は、前記1つ以上の真空吸排気口を介して、換気空洞から排気された気体だけで構成されてもよい。あるいは、気体導管システムは、換気空洞以外の供給源から、例えば、導管システムを外部と連結し、空気が外部から侵入し、前記導管システムを通って流れ、次に真空吸排気口から出ることを可能にする外部吸排気口から、そこを通って一定の気体の流れを有するように構成されてもよい。このような外部吸排気口には、通常、一方向弁装置が取り付けられ、導管システムへの空気の流れのみを可能にし、このような吸排気口を通して外部への気体の排出を妨げる。このような一定の流れは、エアロゾル粒子の効果的なキャリアとして機能し、真空吸排気口へのこれらの流線型の輸送を容易にすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態により、前記マスクは、補助フレームをさらに備え、マスクフレームの少なくとも一部を覆い、1つ以上のエアロゾル除去吸排気口から真空排気口につながる前記1つ以上の気体導管を画定し、前記補助フレームは、前記少なくとも1つの真空排気口をさらに備える。
【0055】
いくつかの実施形態により、前記1つ以上の気体連通導管は、補助フレームとマスクフレームとの間に画定される。
【0056】
いくつかの実施形態により、補助空間は、補助フレームとマスクフレームとの間に画定され、真空吸排気口、前記1つ以上の気体導管を画定する前記補助空間、および換気空洞から補助空間へ通じる前記1つ以上のエアロゾル除去吸排気口を備える。
【0057】
いくつかの実施形態により、前記補助フレームは、対象者の顔面に接触するための補助縁部を有する。
【0058】
いくつかの実施形態により、前記マスクは、補助フレームに配置された調圧弁を備える。
【0059】
いくつかの実施形態により、前記真空吸排気口は、流量制御弁を備える。
【0060】
上記のすべての態様において、マスクフレームは、剛性または半剛性でありヒト対象者の気道の上に配置され、完全に覆うように構成された形状を有することができる。いくつかの実施形態により、マスクフレームは、鼻用、口腔用、および口腔/鼻用マスクフレームから選択される。いくつかの実施形態により、マスクは、概ね凹状の楕円形または三角形の形状を有する。マスクは、ポリエチレン(PP)およびポリプロピレン(PE)などの硬質で透明なプラスチックで作られてもよい。いくつかの実施形態により、マスクフレームは、非弾性材料から構成される。いくつかの実施形態によって、マスクは、弾性材料から構成される。いくつかの実施形態により、前記弾性エラストマーは、ポリウレタン、シリコーンおよび透明ゴムから選択される。いくつかの実施形態により、マスクフレームは、ポリカーボネート、ポリエチレン(PET)、PPおよび透明プラスチックのうちのいずれかから作られる。いくつかの実施形態により、キャップ壁と外壁の外面またはマスクフレームおよび補助フレームのいずれかもしくは両方との間に補強を提供する剛性フレームまたは筋交いシステムは、前記マスク内に構成される。前記補強は、材料の厚さ、硬度または設計によって得られる。
【0061】
いくつかの実施形態により、マスクフレームは剛性材料で作られ、内部シールおよび外部シールは弾性材料で作られ、マスクフレームの内壁および外壁とそれぞれの内部シールおよび外部シールとの接続は、機械的手段、例えば、迅速接続継手、任意に弾力継手によって提供される。あるいは、マスクフレームおよびシールは、同じ弾性材料で作ることができ、マスクフレームは、任意の適切な手段によって補強される。例えば、マスクフレームの厚さは、シールの厚さよりも大きくてもよく、または、マスクフレームを補強要素で形成することができる。したがって、マスクフレームは、多用途マスクまたは使い捨てマスクとすることができる。
【0062】
いくつかの実施形態により、マスクは、1回使用の使い捨てマスクであり、マスクフレーム、内部シールおよび外部シールはすべて弾性材料で作られ、マスクフレームの内部部分および外部部分は、それぞれの内部シールおよび外部シールに、任意に熱溶着によって一体的に接続される。
【0063】
本明細書に記載されるすべての形態において、マスクは、マスクを対象者の顔面に装着して位置決めするためのヘッドギアまたはストラップなどのマスク係合要素をさらに含むことができる。上述した第1および第2の形態のマスクにおいて、マスク係合要素は、内壁と外壁との間の距離が最小となる領域の近傍に位置する位置決め領域で、マスクフレームに接続することができる。マスクフレームが、内壁および外壁の両方が接続されるキャップ壁を有する場合、位置決め領域は、少なくとも一部がキャップ壁上に位置する。
【0064】
本明細書に記載されるすべての形態において、マスクは、NIV用に構成される。NIVマスクは、例えば、CPAP換気、および二相式陽圧(bi-level positive air pressure、BiPAP)換気のために構成されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態により、マスクは、対象者の顔面全体を密閉された領域で覆う、全顔面マスクである。
【0066】
既存の麻酔マスク(換気圧力と比較して低い気体圧力を扱う)とは異なり、本明細書に開示されるマスクは、高流量および圧力(およびそれに応じて高いエアロゾル速度)、例えば120+LPMの流量を支持すると同時に、エアロゾルを除去するように独自に構成される。
【0067】
いくつかの実施形態により、マスクは、高流量または換気圧の下で使用するように構成される。いくつかの実施形態により、マスクは、少なくとも10LPM、時には120+LPMの流量の下で使用するように構成される。
【0068】
いくつかの実施形態により、シールのいずれか一方または両方は弾性であり、例えば、シリコーン、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはポリウレタンで作られる。
【0069】
本明細書に記載されたすべての形態において、シールという用語は、一端においてマスクフレームの一部と接続するように構成され、他端において対象者の顔面と接触するように構成された要素を意味する。上記のすべての形態において、本明細書に記載されるシールは、当該技術分野で公知の任意の顔面シールを包含する。いくつかの実施形態により、呼吸終末陽圧(Positive End Expiratory Pressure、PEEP)における前記圧力は、本発明の分野で公知である。ある時には、前記圧力は、3~10cmHOから選択されるが、10cmHOより高くてもよく、例えば、10~65cmHOの範囲であってもよい。
【0070】
上記のすべての形態において、本開示に記載されたマスクは、対象者を換気するために使用されてもよく、ある時には、異なる種類の患者および異なる状態の患者を換気することができる。これらには、慢性的な医学的状態または緊急の医学的状態に罹患している対象者が含まれる。対象者は、例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome、OSAS)、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome、ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)及び肺水腫のいずれかに罹患していてもよい。他の例としては、微生物病原体疾患、例えば、SARS-CoV-2(COVID-19パンデミックの原因ウイルス)、MERS(中東呼吸器症候群)または他のコロナウイルス感染症などのウイルス性疾患に罹患した対象者が挙げられる。また、対象者は、ウイルス性疾患および付加的な病的状態に罹患していてもよい。
【0071】
上記のすべての形態において、対象者の顔面に装着されたとき、マスクフレームは、マスクフレームの内部部分および内部シールと顔面皮膚との間に囲まれた空間であり、対象者の気道と気体連通している換気空洞を画定している。換気空洞は、加圧された換気気体を気体開口部から対象者の気道に送り、呼気を排出するように構成され、対象者の気道から来る浮遊するエアロゾル粒子を搬送する。
【0072】
換気気体は、患者の換気に適用される任意の気体であってよく、患者の状態および治療に応じて異なる気体混合物であってもよい。それは、空気、酸素富化空気、純酸素、これらと他の気体との混合物等であってもよい。また、換気気体は、麻酔薬または鎮痛薬などの気体、エアゾールまたは気化した薬剤を含んでもよい。前記換気気体の圧力は、前記状態および意図された治療処置によって決定されてもよい。
【0073】
上記のすべての形態において、加圧気体は、気体開口部に接続可能な気体吸排気口から前記換気空洞に送られ、直接または間接的に、換気装置に送られる。換気装置は、非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive-pressure、NIPPV)および負圧換気(Negative-Pressure Ventilation、NPV)装置などの任意のNIV換気装置であってもよい。換気装置はまた、二相式気道陽圧(bilevel positive airway pressure、BiPAP)、連続気道陽圧(continuous positive airway pressure、CPAP)、自動気道陽圧(automatic positive airway pressure、APAP)および適応補助換気(adaptive servo ventilation、ASV)装置であってもよい。
【0074】
換気呼吸サイクルの呼気部分の間、換気空洞は、対象者によって吐き出された気体およびエアロゾル(すなわち気体担持液滴)の両方を含む呼気で満たされる。
【0075】
エアロゾル粒子は、小さな(0.01~10μm)または大きな(10~100μm)液滴であって、微生物を潜在的に担持する乾燥した飛沫残渣である飛沫核を含んでもよい。いくつかの実施形態により、前記エアロゾルは、エアロゾル薬剤を含む。
【0076】
上記のすべての形態において、換気マスクは、1以上のエアロゾル除去吸排気口を備えるエアロゾル除去装置を備えてもよい。エアロゾル除去吸排気口という用語は、マスクフレームに画定され、エアロゾル粒子を収集するように構成された開口部を指す。前記除去吸排気口は、可変の大きさ、形状および形体を有してもよい。前記除去吸排気口の直径は、0.5~10mmの範囲内であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態により、マスクは、一連の除去吸排気口を備える。
【0078】
前記除去吸排気口は、呼気気体からエアロゾルを収集するように構成され、真空源に接続するための少なくとも1つの真空排気口を有する気体導管を介して流れ連通流路連通する。
【0079】
いくつかの実施形態により、1以上のエアロゾル除去吸排気口は、マスクが使用されると、縁部と対象者の顔面との間に隙間を画定するマスク縁部の起伏によって構成される。いくつかの実施形態により、マスク縁部は、規定された圧力においてのみ、前記縁部の下への空気の漏れを許容するように構成される。
【0080】
いくつかの実施形態により、前記少なくとも1つの除去吸排気口は、少なくとも1つの弱められた密封フレーム領域によって画定される。ある時には、前記弱められた領域は、対象者の頬骨、鼻またはその両方に近似している。
【0081】
いくつかの実施形態により、前記少なくとも1つの除去吸排気口は、一定の圧力閾値以下または一定の圧力閾値までの流れを許容するように構成される。これは、吸排気口内に配置された低圧安全弁または比例安全弁を配置することによって達成されてもよい。
【0082】
気体導管という用語は、気体流の連通が可能な任意の管または室を包含する。前記連通は、典型的には、前記除去吸排気口と前記少なくとも1つの真空排気口との間(直接または1つ以上の合流した気体導管のいずれかを介して)である。
【0083】
上記のすべての形態において、真空排気口は、マスクからエアロゾルが排出される排気口である。前記真空吸排気口は、真空源に直接または間接的に接続可能である。いくつかの実施形態では、前記真空源は、医療用吸引機、ポンプ、中央真空源などである。いくつかの実施形態では、印加される負圧は、-10~-300cmHOの範囲である。印加される負圧は、マスクの大きさ、換気圧および換気の種類(BiPAPまたはCPAP)に依存し得る。いくつかの実施形態により、印加される負圧は、一定の圧力である。他の実施形態により、印加される負圧は、可変負圧である。上記のすべての形態において、前記流量制御弁は、パルス状の態様で真空を誘導してもよい。ある時には、前記誘導された真空は、気体吸排気口、マスクフレーム、換気空洞、補助空間エアロゾル除去吸排気口、補助フレーム、気体導管および真空排気口のいずれか1つ以上において、予め定められた圧力の感知によってもたらされてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態により、前記少なくとも1つのエアロゾル除去吸排気口は、少なくとも1つの真空吸排気口に近接している。
【0085】
いくつかの実施形態により、前記弁は、1つ以上の気体導管と換気空洞との間の予め定められた圧力差の下で開くように構成される。
【0086】
本開示によって提供されるマスクは、換気機能を妨害しない、または損なわない一方で、吸引を介したエアロゾルのクリアランスを可能にするように設計されている。 それによって、エアロゾル除去装置における真空は、換気空洞内の同時圧力維持を可能にする任意の値に決定される。エアロゾル除去装置内の真空が換気空洞内の圧力に影響しない(または、ほんのわずかだけ影響する)ように、エアロゾル除去吸排気口からの気体流は、換気流と比較して低くなるように制御する必要がある。これは、吸排気口の大きさを制御することによって、流量制限器の使用によって、または弁によって達成され得る。いくつかの実施形態により、前記医療用換気マスクは、気体吸排気口、マスクフレーム、換気空洞、エアロゾル除去吸排気口、補助フレーム、気体導管および真空排気口のいずれか1つ以上に少なくとも1つの圧力センサおよび/または流量計をさらに備える。
【0087】
気体連通導管は、補助フレームとマスクフレームとの間に画定されてもよい。これら2つのフレームは、既に上述したように、それらの間に補助空間を画定してもよい。補助空間は、気体導管として機能してもよいし、仕切り壁によって、それぞれが気体導管を構成する1つ以上の付属空間(または副空間)に分離されてもよく、そのすべてが1つ以上の真空吸排気口に連結されていてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態により、前記1つ以上のエアロゾル除去吸排気口は、マスクフレームに設けられた、換気空洞から補助フレームに至る1つ以上の開口部によって画定される。ある時には、前記1つ以上の開口部には、例えば圧力調整弁の形態の流量制御部材が装着される。他の実施形態により、前記圧力調整弁は、換気空洞から出る方向への一方向の流れのみを許容する一方向弁である。
【0089】
本開示は、エアロゾル除去吸排気口、気体導管および真空吸排気口の数または構造的配置によって限定されず、これらは数および構造が変動してもよい。いくつかの実施形態により、換気マスクは、対応する一連のエアロゾル除去排気口から少なくとも1つの真空吸排気口に至る一連の気体導管を備える。ある時には、2つ以上の気体導管は、互いに気体連通しており、例えば、これらの気体導管を真空吸排気口に連結する結合導管に互いに合流してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態により、マスクは、補助フレームとマスクフレームとの間に画定された補助空間を一連の副空間の配列に分割して含み、各副空間は、換気空洞との間に少なくとも関連するエアロゾル除去吸排気口を有し、各副空間は、少なくとも1つの真空排気口と流れ連通している。
【0091】
上記のすべての形態において、マスクは、非侵襲的換気(NIV)で使用するように構成される。ある時には、前記マスクは、二相式気道陽圧(BiPAP)、持続気道陽圧(CPAP)、自動気道陽圧(APAP)および適応補助換気(ASV)装置用に構成される。
【0092】
本明細書に記載されるすべての形態において、マスクは、紫外線清浄器を備えてもよい。
【0093】
本明細書に記載されるすべての形態において、マスクは、少なくとも1つの真空排気口内にフィルターを備えてもよい。ある時には、前記フィルターは、ウイルスを捕獲するためのウイルスフィルターである。ある時には、前記フィルターは、SARS-CoV-2フィルターである。
【0094】
いくつかの実施形態により、マスクは、対象者の顔面に装着されたときに、マスクの任意の部分(例えば、換気空洞、補助空間)における密閉性の低下を警告するための警報要素をさらに含む。
【0095】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実施され得るかを例示するために、換気マスクの実施形態が、これから非限定的な例のみによって、添付の図面を参照しながら説明され、具体的に示されない限り、換気マスクは使用できる状態で示される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1A】本開示の主題の例示的な実施形態による換気マスクの概略正面図である。
図1B】本開示の主題の例示的な実施形態による換気マスクの斜視図である。
図1C】本開示の主題の例示的な実施形態による換気マスクの縦断面図である。
図1D】本開示の主題の例示的な実施形態による換気マスクの側面図である。
図2A】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの概略正面図である。
図2B】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの背面図である。
図2C】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの上面図である。
図2D】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの分解図である
図3A】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの概略側面図である。
図3B】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの上面図である。
図3C】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの斜視図である。
図3D】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの縦断面図である。
図3E】本開示の主題の別の例示的な実施形態によるマスクの縦断面図である。
図4図3A図3Eに示されたマスクを対象者の顔面に装着したときの概略側面図である。
図5】本開示の主題のさらなる例示的な実施形態による換気マスクの概略側面図である。
図6】本開示の主題のさらなる例示的な実施形態による、対象者の顔面に装着された換気マスクの概略側面図である。
図7】先の図面に示されたマスクのいずれでもあり得るマスクの概略背面図である。
図8】本開示の主題の例示的な実施形態による、先の図面に示されたマスクのいずれかが有し得る、マスクの一部の概略拡大側面図である。
図9A】本開示の主題のさらなる例示的な実施形態による換気マスクの概略上面図である。
図9B】本開示の主題のさらなる例示的な実施形態による換気マスクの背面図である。
図9C】本開示の主題のさらなる例示的な実施形態による換気マスクの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本開示の例示的な実施形態のエアロゾル防止換気マスク100の概略図が図1A図1Dに示されており、図1A図1Dは、それぞれマスクの正面図、斜視図、縦断面図および側面図を分けて示している。マスク100は、換気中に対象者によって吐き出されるエアロゾルを収集し除去することによって、安全な換気を可能にする。換気中にマスク100を対象者の顔面に装着するとき、ウイルスエアロゾルは、真空源(図示せず)に接続可能な真空吸排気口124に掃気される。図1Cに最もよく見られるように、マスク100は、マスクの前面を画定し、マスクの中心軸146と同軸でマスクの基準平面を画定し、そこに気体開口部122が取り付けられるキャップ壁104を有するマスクフレーム102、キャップ壁とともにマスクフレームの内部部分106を画定する内壁116、その間に補助空間126を残すように内壁116に重なる外壁118、外壁およびマスクフレームの外部部分107を画定する補助空間を備える。内壁および外壁は、中心軸に沿った方向および中心軸に垂直な方向の両方で、気体開口部から間隔を置いた領域105でキャップ壁と合体する。
【0098】
真空排気口124は、任意に、鼻梁領域に近接して配置され、フィルター(図示せず)を備えてもよい。
【0099】
マスク100は、その一端で外壁118に接続され、その他端で外部縁部114を有する外部シール112をさらに備え、マスクフレームの外部部分がその補助空間126とともに真空空洞(図4において442として指定される)を画定するように、対象者の顔面に接触するように構成される。
【0100】
マスク100は、その一端で内壁116に接続され、その他端に内部縁部110を有する内部シール108をさらに備え、対象者の気道に加圧換気気体を供給するための気体開口部122と流体連通する換気空洞(図4において440として指定される)をそこに定めるように対象者の顔面と接触するよう構成される。ガス開口部122は、マスクフレーム102のキャップ壁104の前端部にある。
【0101】
言い換えれば、マスク100は、2つの顔面係合縁部:そなわち、内部縁部110および外部縁部114を備え、それぞれが、マスクと顔面皮膚との間の気密シールをともに形成しながら、対象者の顔面皮膚にしっかりと取り付けられるように構成されており、潜在的に有害なエアロゾル粒子の環境への放出を防止する一方で、途切れない換気を可能にする。
【0102】
図4を参照すると、換気空洞での換気中に、過剰な換気気体および呼気は、理想的な密閉が不可能なために、内部シールの内部縁部と対象者の顔面との間に生じる隙間を介して換気空洞440から真空空洞442に漏出する(図示せず)。
【0103】
ガス開口部122は、換気装置に接続可能であり、真空吸排気口124は真空ライン(図示せず)に接続可能である。したがって、動作時には、換気空洞は、加圧された換気気体を対象者の気道に供給するための陽圧にさらされ、真空空洞は負圧を受けて、それにより、過剰な換気気体および呼気が真空吸排気口124を通って排出される。
【0104】
図1Cに戻ると、内部縁部110および外部縁部114は、中心軸に沿って基準平面を画定する気体開口部122から、それぞれの距離D1 150およびD2 152まで間隔を置かれ、後者の距離は、前者の距離より長い。D1 150とD2 152との間の差は、外部縁部114が顔面に接触する位置が、内部縁部110が顔面に接触する位置よりも、気体開口部122または基準平面から遠くにあるヒトの顔面の地形に適合し得る。外部縁部114は、内部縁部110よりも対象者の顔面に向かって突出しているので、過剰な換気気体および呼気とともに換気空洞から逃げる潜在的に有害なエアロゾル粒子は、真空空洞から除去される前に、マスクフレームの外壁によってマスクフレームの外部縁部に到達しないよう防止される。それにより、マスク100は、対象者の顔面へのマスクの装着時に、密閉された換気空洞と密閉された真空空洞とを有する二重密閉マスクとなる。その結果、二重密閉構成は、安全な換気中に環境的に安全なエアロゾル掃気を可能にする。
【0105】
内壁116および外壁118は、キャップ壁104と一体的に形成される。内部シール108および外部シール112も、内壁および外壁と一体的に形成することができるが、代替的に、例えば熱溶着または任意の機械的手段によって、これらの壁に一体的に接続することができる。
【0106】
マスク100は、キャップ壁104と外壁118の外面との間に延びる構造的な補強構造をさらに含んでもよい。そのような構造の一例は、図5に示されており、ここでは536として示されており、ここでは、互いに間隔を置いた複数の補強構造を備えることが示されている。
【0107】
図8に示されるように、湾曲した内部リップ738を備えることができる内部リム710と、740として図示される湾曲した外部リップを備えることができる外部リム714とがある。この例では、内部湾曲リップ738は、内側に、すなわち換気空洞の内部に向かって開いており、外部湾曲リップ740は、マスクの使用時に外側に、すなわちマスクの外部に向かって開いている。内部リップおよび外部リップのより詳細な説明は、図8の詳細な説明の中で以下に示される。
【0108】
マスクフレームの外部部分107は、鼻梁領域および任意に鼻梁領域から対向的に間隔を置かれた顎領域を有することができる。マスク100は、顎領域の近傍に位置し、外部部分107とマスクの外部との間の流体連通を提供する圧力調整吸排気口(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0109】
マスク100はまた、マスクを気道の上で対象者の顔面に固定するためのストラップに連結されてもよいマスク係合要素134を含む。マスク100は、非侵襲的換気(NIV)、(CPAP)換気または(BiPAP)換気において使用するように構成されてもよく、また紫外線清浄器をさらに備えてもよい。
【0110】
マスク200の例示的な実施形態が、図2A図2Bに模式的に示されており、このマスクは、上述したマスク100と同じ要素を備える。
【0111】
これらの図では、参考のために、100で切り替えられた数字は、そこで見られるマスク200の要素に使用され、図1A図1Dを参照して上述したマスク100のものと同じように機能する。マスク100におけるこれらの要素の説明が参照される。例えば、図2A図2Cでは、補助空間226を構成するその内部部分206および外部部分207を有するマスクフレーム202が示されており、これらは、補助空間126を有するその内部部分106および外部部分107を有するマスクフレーム102と同じものである。
【0112】
図2Cに示されるように、マスク200は、加圧された換気気体を対象者の気道に供給するために、気体開口部222と流体連通する換気空洞を画定するように、対象者の顔面に接触するための内部縁部210を有する内部シール208、ならびに、マスクフレームの外壁218に接続され、換気中に対象者によって吐き出され、過剰な換気気体および呼気の漏れとともに逃れたエアロゾルを換気空洞から真空空洞に取り除くための真空吸排気口224と流体連通している真空空洞232を形成するために、対象者の顔面と接触するように構成された外部縁部214を有する外部シール212をさらに備える。
【0113】
図2Dは、マスク200の分解図を示し、キャップ壁204と一体となったマスクフレーム202、外壁218、マスクフレームの内壁(図2Dでは見えない)に接続される内部シール208、およびマスク100を参照して上記に説明したように、またはマスク300に関して以下に説明するように、任意の適切な機械的接続手段によって外壁216に接続するように構成された外部シール212を備える。
【0114】
マスク300が図3A図3Eに概略的に示されており、それは、上述したマスク100および200と同じ要素を有する。これらの図では、参考のために、200で切り替えられた数字は、これらの図に見られるマスク300の要素に使用され、これらは、図1A図1Dを参照して上述したマスク100のものと同様に機能する。マスク100におけるこれらの要素の上記説明が参照される。
【0115】
図3Eは、中心軸346を有し、キャップ壁304、外壁318、内壁316、内部シール308および外部シール312を有するマスクフレーム302を備えるマスク300の縦断面図である。キャップ壁は、気体吸排気口(図示せず)を接続するように構成された開口部322と、補助空間326に開放された真空吸排気口324とを備えて形成される。
【0116】
開口部322は、中心軸346に垂直な基準平面RP348内にあるか、またはそれを画定する。内部シール312の内部縁部310は、中心軸346に沿って基準平面RPから第1の距離D1 350まで間隔が置かれており、外部シール308の外部縁部314は、中心軸346に沿って基準平面RPから第1の距離D1 350より長い第2の距離D2 352まで間隔が置かれている。
【0117】
内壁および外壁は、中心軸346に沿って、およびこの軸に垂直な方向の両方で、基準平面から間隔を置いた領域305でキャップ壁と合流する。内壁および外壁のそれぞれは、内部シールおよび外部シールが装着可能な装着端部346および348をそれぞれ有する。
【0118】
内部シールおよび外部シールのそれぞれは、シールのシール縁部とは反対側に、それぞれ342および344として指定された装着端部を有し、マスクフレームの対応する内壁および外壁に確実に接続される。この接続は、恒久的であってもよいし、取り外し可能であってもよい。
【0119】
図4に戻ると、マスクが、シールの内部縁部および外部縁部が対象者の顔面に密着している状態で対象者の顔面に装着され、気体吸排気口が換気装置に接続され、真空吸排気口が真空ライン(両方とも図示せず)に接続されているときの、上述のマスク100、200および300のそれぞれの二重密閉機能を示す。二重密閉機能は、マスクが上記のように一旦装着されると、対象者の顔面とともにマスクによって作られる以下の2つの空洞:すなわち、加圧換気気体を対象者の気道に供給するための気体開口部と流体連通する換気空洞440、ならびに、換気中に対象者によって吐き出され、過剰な換気気体および呼気の漏れとともに逃れたエアロゾルを換気空洞から真空空洞に取り除くための真空吸排気口と流体連通している真空空洞442により提供される。
【0120】
図5は、マスクフレームの外壁の外面上に一連のシリコーン縁部536の形態にある構造的補強配置を有する、上述のマスクのいずれでもあり得る換気マスクを示す。このような補強は、対象者の顔面へのマスクの二重密閉を支持するための弾性材料で構成される使い捨てマスクに実装してもよい。図示された補強配置は、係合要素に接続されたストラップを引っ張るときに、マスクの内部部分を安全かつ制御して締め付けることを可能にし、それによって、安全かつ確実な二重密閉を可能にする。
【0121】
上述のマスクのいずれも、図6に示されるように、2つの真空吸排気口を有することができ、右向きの矢印は流入換気気体を示し、2つの左向きの矢印は2つの真空吸排気口554および556から吸引されたエアロゾルおよび呼気気体を示し、2つの真空吸排気口は、マスクの鼻梁領域および顎領域がある密閉が弱い場所に近接して配置される。
【0122】
図7は、上述したマスク100、200および300のいずれかであり得るマスクの背面図であり、真空排気口への、626として指定された補助空間内の呼気流パターンを矢印で模式的に表している。
【0123】
図8に戻ると、非限定的な実施形態によれば、マス100、200および300のいずれかの部分の拡大図が描かれており、この部分は、それぞれの内部湾曲リップ738および外部湾曲リップ740を有する内部縁部および外部縁部の一部を含む。図8に見られるように、各湾曲リップは、先端とリップが終端する縁部端とを有し、内部湾曲リップ738は、マスクの使用時に、マスクの内部に向かって、または換気空洞に向かって開いており、外部湾曲リップ740は、マスクの使用時に、マスクの外部に向かって、または換気空洞および真空空洞から離れるように開いている。これは、内部湾曲リップの縁部端760が、マスクの使用時に、マスクの内部または換気空洞内に配置され、外部湾曲リップの縁部端764が、マスクの使用時に、マスクの任意の内部空間および真空空洞の外部に配置されることを意味する。リップ738および740のそれぞれの先端758および762は、マスクの基準平面(この図には示されていない)から、マスク100および300の説明で上述した、それぞれの距離D1およびD2に間隔をあけて配置されている。
【0124】
マスク800のさらに別の例示的な実施形態が、図9A図9Cに模式的に示されており、それぞれマスクの上面図、背面図、および斜視図を表す。これらの図では、参考のために、700で切り替えられた数字は、図1A図1Dのものと同様の機能を有する要素に使用されている。それらの機能の説明のために、必要に応じて、図1A図1Dの説明が参照される。例えば、参照数字108および808は、それぞれのマスクフレーム100および800の内部シールを参照するために使用され、参照数字112および812は、これらのマスクの外部シールを参照するために使用される。上述したいずれのマスクにも適用可能なこの実施形態において、マスク800は、本明細書の発明の概要の部分で説明したように機能するように構成されたマスクフレーム802の内壁816と外壁818との間の補助空間826の周縁部に形成された複数の気体導管846を備える。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】