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特表2023-528070リバース熱間圧延機上での冷却方法および設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】リバース熱間圧延機上での冷却方法および設備
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20230626BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20230626BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20230626BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20230626BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20230626BHJP
   C22F 1/05 20060101ALI20230626BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
B21B45/02 320U
C22C21/02
C22C21/06
B21B1/22 B
B21B3/00 J
B21B45/02 320T
B21B1/22 K
B21B1/22 M
C22F1/05
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 694B
C22F1/00 694A
C22F1/00 691C
C22F1/00 692Z
C22F1/00 692B
C22F1/00 692A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574668
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 FR2021051002
(87)【国際公開番号】W WO2021245355
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,845
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2007191
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2012174
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(71)【出願人】
【識別番号】522470817
【氏名又は名称】コンステリウム マッスル ショールズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM MUSCLE SHOALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】デュー,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ギリオンダ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ベルヌ,ロマン-ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】マニャン,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】デダ,エリン
(72)【発明者】
【氏名】アンテルファンジェ,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス,ジョン エム
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア,トレヴァー
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AA08
4E002AD01
4E002AD05
4E002AD12
4E002BA03
4E002BC07
4E002BD07
4E002BD09
(57)【要約】
本発明は、アルミニウム製ブランクに放散するノズルの傾斜部で構成された単数または複数の冷却システムが備わったリバース熱間圧延機に関する。本発明は同様に、このリバース熱間圧延機に結び付けられた熱間圧延方法において、冷却システムが少なくとも一回使用され、これにより、有利な形でアルミニウム板材を生産することが可能となる方法にも関する。本発明は同様に、熱間圧延の間にブランクが冷却されるAA6xxx系のアルミニウム合金の圧延方法、そしてこの方法によって得られる薄板にも関する。本発明は冶金学的品質および/または他の加工ステップの生産性を改善することによってリバース圧延機の生産性を改善することを可能にする。本発明は、自動車産業向けの高品質6xxx合金製板材を供給するために特に有用である。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ワークロール(21)および下部ワークロール(22)という2本のワークロール、ならびにブランク(11)を冷却するための少なくとも1つの冷却システムを含むリバース熱間圧延機において、前記ブランク(11)がローラ(23)上を移動し、2本のワークロール(21)および(22)の間でリバース熱間圧延機を通過し、前記冷却システムが2つの冷却装置、すなわちブランク(11)の上部冷却装置とブランク(11)の下部冷却装置とで構成されているリバース熱間圧延機であって、
・ 上部冷却装置が、上部ワークロール(21)の軸に実質的に平行に配置されたノズル(35)の少なくとも1つの傾斜部(30)を含み、ノズル(35)がブランク(11)の上部面に冷却流体噴流(36)を散布すること、
・ 下部冷却装置が、ローラ(23)間または下部ワークロール(22)と最も近いローラ(23)との間に配置され、下部ワークロール(22)の軸に実質的に平行であるノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部(40)を含み、ノズル(45)が、ブランク(11)の下部面に冷却流体噴流(46)を散布し、冷却流体噴流(46)の軸がブランクの下部表面に実質的に直交して方向付けられていること、
を特徴とするリバース熱間圧延機。
【請求項2】
熱間圧延の開始時点で、好適には熱間圧延の持続時間全体にわたり、縁部(111)の上部面を伴う、冷却流体噴流(36)の放散を直接受ける上部表面(51)間の交差部が空であり、かつ/または熱間圧延の開始時点で、好適には熱間圧延の持続時間全体にわたり、縁部(111)の下部面を伴う、冷却流体噴流(46)の放散を直接受ける下部表面(61)間の交差部が空であることを特徴とする、請求項1に記載のリバース熱間圧延機。
【請求項3】
熱間圧延の持続時間全体にわたり、端部(112)の上部面を伴う、冷却流体噴流(36)の放散を直接受ける上部表面(51)間の交差部が空であり、かつ/または、熱間圧延の持続時間全体にわたり、端部(112)の下部面を伴う、冷却流体噴流(46)の放散を直接受ける下部表面(61)間の交差部が空であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリバース熱間圧延機。
【請求項4】
下部ノズル(45)が、ブランク(11)の存在下ではローラ(23)にもロール(22)にも直接到達せず、好適にはローラ(23)に対しほぼ接線方向にある冷却流体噴流(46)を生成し、ブランク(11)の下部表面上のロール(22)の軸の投影である直線C2との凸包絡(62)のあらゆる点の距離の最小値からロール(22)の半径R2を減じたものである距離D67が、好適には下部ロール(22)の半径より大きく、より好適には下部ロール(22)の直径より大きく、かつ/または、上部ノズル(35)が、上部ワークロール(21)に直接到達しない冷却流体噴流(36)を生成し、好適には、ブランク(11)の上部表面上のロール(21)の回転軸の投影である直線C1との凸包絡(52)のあらゆる点の距離の最小値からロール(21)の半径R1を減じたものである距離D57が、上部ロール(21)の半径よりも大きく、より好適には、距離D57が、上部ロール(21)の直径より大きいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項5】
下部ノズル(45)が、前記ノズル(45)の近くに位置するローラ(23)の回転軸を通る平面の下にあり、かつ/または、下部ノズル(45)が、冷却流体噴流(46)を通過させるための開口部を有する部品(47)によって保護されており、かつ/または、上部ノズル(35)が、冷却流体噴流(36)を通過させるための開口部を有する部品(37)によって保護されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項6】
各ノズル(35)および(45)が、高速応答ゲート弁(49)によって個別に補給されており、有利にもこのゲート弁の応答時間が1秒未満、好適には0.5秒未満、より好適には0.2秒未満であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項7】
ノズル(35)および(45)が、冷却流体噴流(36)および(46)を平担なおよび/または円錐形のおよび/または円筒の形状で生成でき、かつ/またはノズル(35)および(45)が、噴霧により冷却流体噴流(36)および(46)を生成でき、好適には、ノズル(35)および(45)が、噴霧により中実円錐形の流体噴流を生成できることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項8】
各冷却システムについて、ブランク(11)の上部表面から冷却流体を排出するための少なくとも1つの装置(38)が、圧延機の反対側の領域(54)の上方および/または圧延機に隣接する領域(53)の上方に設置されており、好適には、前記装置(38)が、ブランク(11)の縁部(111)の1つに向かって冷却流体を押しやり冷却流体に対してそれが縁端部(1111)上に流出しないように十分な速度を付与するエアブラストであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項9】
各冷却システムについて、放散を受ける上部凸包絡(52)が、放散を受ける下部凸包絡(62)と、上部ワークロール(21)の直径の寸法の2倍、好適には1倍の許容誤差を伴って対面しており、好適には、前記凸包絡(52、62)が、実質的に対面していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項10】
ノズルアセンブリ(35)および(46)が、最大1500l/min/m、好適には600~1200l/min/mという、ブランク(11)の一面あたりの冷却流体の表面流量を供給できることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項11】
上部ワークロール(21)の近くのノズル(35、351)が、冷却流体噴流(36)を生成し、ブランク(11)の変位方向S上に投影されたこの冷却流体噴流の全ての変位成分が、圧延機のワークロール(21)および(22)に向かって方向付けられていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項12】
放散を受ける上部凸包絡(52)および放散を受ける下部凸包絡(62)が、圧延機のロールの近くにあり、D55が、ブランク(11)の上部表面上のロール(21)の回転軸の投影である直線C1との凸包絡(52)の全ての点の距離の最大値からロール(21)の半径R1を減じたものであり、D65が、ブランク(11)の下部表面上のロール(22)の軸の投影である直線C2との凸包絡(62)の全ての点の最大値からロール(22)の半径R2を減じたものであるものとして、最大距離D55およびD65が、ワークロール(21)および(22)の直径のうち最も大きいものの3倍よりも小さく、かつ/または、D56が長さD55からD57を減算したものであり、D66が長さD65から長さD67を減算したものであるものとして、前記凸包絡(52、62)の長さD56およびD66は、ワークロール(21)または(22)のうちの最も大きいものの直径の2倍、好適には1倍よりも小さいことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項13】
前記リバース熱間圧延機の別の側に第2の冷却システムを含み、第2の冷却システムが好適には、ワークロール(21)および(22)の軸を通る平面との関係において第1の冷却システムと対称であることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項14】
上部冷却装置が、ノズル(353、354)の少なくとも1対の傾斜部(303および304)、好適には3対の傾斜部(303および304)を含み、各々の傾斜部対(303および304)の中で、冷却流体噴流(363、364)が対向して方向付けられており、差β-α/2は正またはゼロ、好ましくはゼロであり、ここでαはノズルにより生成される冷却流体噴流の円錐の角度であり、βはノズル(353、354)の軸がブランク(11)の上部面に直交する直線Vと成す傾斜角度であり、噴流(363、364)の放散を受けるブランク(11)の表面(513、514)が、好適には1/3~2/3、好適には1/2の率で重なり、下部冷却装置が少なくとも1つのノズル(45)の傾斜部(40)、好適には8つの傾斜部(40)を含み、その冷却流体噴流(46)は円錐形で、実質的にブランク(11)に対し法線方向の軸を有していることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項15】
上部冷却装置が、ノズル(35)の少なくとも1つの傾斜部(30)、好適には6つの傾斜部(30)を含み、下部冷却装置が、ノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部(40)、好適には8つの傾斜部(40)を含み、これら全てが、ブランク(11)に実質的に直交する軸を有しかつ20°未満の噴流(36)の円錐の角度αを有する円錐形の冷却流体噴流(36)および(46)を生成し、好適には上部ノズル(35)の噴流(36)の円錐の角度αが、実質的に15°であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載のリバース熱間圧延機。
【請求項16】
リバース熱間圧延機が、熱間列の一部を成し、この列内でリバース熱間圧延機には第2の熱間圧延機が後続しており、リバース熱間圧延機の冷却システムが、リバース熱間圧延機と第2のリバース熱間圧延機の間に設置されており、好適には、冷却システムと第2の熱間圧延機の間の距離は、冷却システムと第2の熱間圧延機が独立して機能するのに十分なものであることを特徴とする、請求項14または15に記載のリバース熱間圧延機。
【請求項17】
アルミニウム合金の熱間圧延方法において、
a. 任意には熱間圧延の入口温度でクラッドされたアルミニウム合金製圧延プレートを供給するステップ、
b. 請求項1から16のいずれか一つに記載の熱間圧延機を用いて、熱間圧延および/または冷却の複数のパスを実施するステップであって、冷却システムが少なくとも一回使用されるステップ、
c. 熱間加工方法の後続部分のために熱間圧延の出口温度で、ブランク(11)または板材もしくは帯材の形をした完成品を移送するステップ、
という連続したステップを含む方法。
【請求項18】
ブランクが、AA6xxx、AA5xxx、AA7xxx、AA3xxx、AA2xxx系のアルミニウム合金を含み、好適には、AA3003、AA3004、AA3207、AA3104,AA4017、AA4025、AA5006、AA5052、AA5083、AA5086、AA5088、AA5154、AA5182、AA5251、AA5383、AA5754、AA5844、AA6005、AA6009、AA6013、AA6014、AA6016、AA6022、AA6056、AA6061、AA6111、AA6181、AA6216、AA6316、AA6451、AA6501、AA6502、AA6603、AA6605、AA6607、AA7072、AA7075の中から選択された合金、重量%で0.5未満、好ましくは0.3未満のSi、0.7未満、好ましくは0.3未満のFe、1.9未満、好ましくは1~1.5のMn、1.5未満、好ましくは0.5~1、好ましくは0.5~0.8のCu、0.15未満、好ましくは0.1未満のTi、0.5未満、好ましくは0.3未満、好ましくは0.05未満のMg、各々0.05以下、合計0.15以下の他の成分という組成の合金を含むこと、そして任意にはブランクは片面または両面がAA1xxx、AA4xxxまたはAA7xxx系および好適にはAA4004、AA4045、AA4343、AA7072の単数または複数のアルミニウム合金でクラッドされていることを特徴とする、請求項17に記載の熱間圧延方法。
【請求項19】
熱モデルが、散布幅を計算し、端部(112)における冷却モードを選択し、好適には、熱モデルが、傾斜部(30)および(40)に補給する水力システムを予備調節し、その後各パスにおいて熱モデルが、ブランク(11)の計算上または測定上の温度と所望の温度を比較し、熱モデルが、ブランク(11)の位置に応じてノズル(35)および(45)のゲート弁(49)を制御し、好適には、熱モデルが、上部ノズル(35)と下部ノズル(45)を異なる形で管理することを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ブランク(11)、好適には、縁部(111)上および/または端部(112)上を除くブランク(11)の、圧延機および冷却装置の保持部からのその解放後の表面温度の不均質性が、20℃未満、好適には10℃未満であり、かつ/または、ブランク(11)の上部面と下部面の間の温度差の絶対値が、10℃未満、より好適には7℃未満、より好適には5℃未満、より好適には2℃未満であり、さらに好適には、ブランク(11)の上部面の温度が、実質的にブランク(11)の下部面の温度に等しいことを特徴とする、請求項11から19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
上部凸包絡(52)と下部凸包絡(62)の間をブランク(11)が通過する間のブランク(11)の平均温度の平均冷却速度が、V=C/eであり、ここでVが℃/sの単位であり、eがmmの単位のブランクの厚みであり、Cが400~1000℃/s×mm、好適には600~900℃/s×mm、より好適には700~800℃/s×mmの定数であることを特徴とする、請求項17から20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
AA6xxx合金、好適にはAA6016合金製ブランク(11)の熱間圧延のサイクル時間が、前記方法を用いない圧延に比べて、少なくとも30秒、好適には少なくとも60秒、より好適には少なくとも90秒短縮されており、かつ/または、AA5182合金製ブランク(11)の熱間圧延のサイクル時間が、前記方法を用いない圧延に比べて、少なくとも15秒、好適には20秒、より好適には45秒短縮されていることを特徴とする、請求項17から21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
熱間圧延機が、請求項14から16のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする、請求項17から21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
冷却システムが、400℃超の平均温度に至るまで少なくとも50℃だけブランク(11)の平均温度を低減させるように好適には1回だけ使用されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
AA6xxx系のアルミニウム合金の圧延方法において、
a. AA6xxx系の合金製圧延プレートの鋳造ステップと、
b. 圧延プレートの均質化ステップ、そして任意にはそれに続く再加熱ステップと、
c. 熱間圧延の開始の第1の温度に基づいて第1の出口厚みを有するブランクへと圧延プレートを加工するための第1の熱間圧延ステップと、
d. こうして得られたブランクの、V=C/eという、ブランクの平均温度から第2の熱間圧延の開始の第2の温度に至るまでの平均冷却速度での冷却ステップであって、ここでVは℃/sの単位であり、eはmmの単位のブランクの厚みであり、Cは400~1000℃/s×mm、好適には600~900℃/s×mm、より好適には700~800℃/s×mmの定数であるステップと、
e. 帯材が少なくとも50%まで再結晶するような変形および温度条件下で、このように冷却されたブランクを最終的な熱間圧延厚みの帯材へと加工するための第2の熱間圧延ステップと、
f. 帯材から薄板への冷間圧延ステップと、
を含む、圧延方法。
【請求項26】
第1の熱間圧延および冷却が、請求項17から21のいずれか一つに記載の熱間圧延機を用いて実施されること、およびステップdの冷却の際に冷却システムが、400℃超の平均温度に至るまで少なくとも50℃だけ、ブランクの平均温度を低減させるように好適には1回だけ使用されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1の熱間圧延の際の温度が、450℃より高く、好ましくは470℃より高く、より好ましくは490℃より高く維持され、かつ/または、第1の出口厚みが、90mm~140mm、好適には100~130mm、より好適には110mm~120mmであり、かつ/または第2の熱間圧延の出口温度が、少なくとも345℃、好ましくは少なくとも350℃、より好適には少なくとも355℃であり、かつ/または、第2の熱間圧延の最後のパスの圧下が、少なくとも25%、好適には少なくとも30%、好適には40%、より好適には45%であり、かつ/または、冷間圧延による圧下が、70%~80%または80%超であることを特徴とする、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
ステップfの後、補足的ステップ、すなわち、
g. このように得られた薄板を、連続熱処理炉内で溶体化処理し焼入れするステップであって、ここで好適には、連続熱処理炉は、560℃での等価保持持続時間
【数1】
が30秒未満、好ましくは25秒未満、より好ましくは20秒未満となるような形で機能し、この等価保持持続時間は、式
【数2】
を用いて計算され、
Qは、200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kであるステップ、
が実施されることを特徴とする、請求項25から27のいずれか一つに記載の方法。
【請求項29】
溶体化処理および焼入れの後、予備時効が任意に実施され、冶金学的質別T4に達するような形で薄板が、周囲温度で時効され、その最終的な形状を得るまで切断され成形され、塗装され、焼成により硬化されることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
560℃での等価保持持続時間
【数3】
が、20秒未満となるように機能する連続熱処理炉であって、この等価保持持続時間が、式
【数4】
を用いて計算され、Qが200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kである連続熱処理炉内での溶体化処理の後、90秒という560℃での等価保持持続時間
【数5】
で溶体化処理した後に得られる最大引張強度の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の引張強度に達するような、請求項25から28のいずれか一つに記載の方法により得られた薄板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製の平担な製品の圧延の分野に関する。より厳密には、本発明は、アルミニウム合金製の平担な製品用の極めて高速、均質でかつ再現性のある冷却システムの備わったリバース熱間圧延機に関する。
【0002】
本発明は同様に、圧延中におけるアルミニウム合金製の平担な製品のより良い熱制御を可能にする冷却システムの備わった前記リバース熱間圧延機によって実施される方法にも関する。本発明は同様に、本発明によって得ることのできる熱間圧延の間の冷却を用いた方法による薄板にも関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金の圧延用の熱間ラインには常に、粗圧延機または粗延機とも呼ばれるリバース圧延機(すなわち往復運動によって圧延を行なう圧延機)、および場合によっては、出口でまだ高温の金属が巻取られるタンデム圧延機とも呼ばれる多段圧延機が含まれている。パス数およびパス設定(パス当たりの厚みの圧下)は、製品の硬度(その流動応力)そして当然のことながらトルクおよび応力の観点から見た圧延機の出力により左右される。生産性のためには、各パスにおいて可能なかぎり大きな圧下を行なうことが必要となる。しかしながら、この場合、例えば「Mise en forme de l’aluminium-Laminage-Patrick Deneuville、(著作権)Techniques de l’Ingenieur-2010」という論文中に記載されているように、圧延応力および/または圧延トルクの観点から見た圧延機の能力により制限される。熱間圧延などのアルミニウムの熱間加工の間、金属の温度は常に、少なくとも典型的に200℃である。
【0004】
さらに、2本のリバース圧延機が連続しその後にタンデム圧延機が続く熱間ラインが公知である。
【0005】
リバース熱間圧延機は多くの場合、工場内生産の障害となることが多く、それが象徴する多額の投資から見て、その生産性を増大させることは大きな課題であり、明らかに、圧延の応力および/またはトルクの観点から見た圧延機の能力を増大させることが常に考えられてきた。
【0006】
先行技術において、多くの場合、リバース圧延機の生産性ではなくむしろタンデム圧延機の生産性を改善することが企図された。以下の出願は、特に仕上げ用熱間タンデム圧延機上に設置された冷却プロセスまたは方法に関するものである。
【0007】
国際公開第2015/58902号は、アルミニウム帯材の熱間圧延列およびアルミニウム帯材の熱間圧延方法に関するものである。
【0008】
この出願は、圧延の方向で下流側に組付けられた少なくとも1つのコイラーおよび結び付けられた少なくとも1つの冷却用区分を含む多段タンデム仕上げ圧延列を含むアルミニウム帯材の熱間圧延列について、アルミニウム帯材の熱間圧延の際の圧延すべき製品内の温度-時間経路および冷却曲線をより良い形で調整できる解決法を提案することを目的としている。このために、単数または複数の冷却区分は、アルミニウム帯材の熱間圧延列の出口領域内に配設されており、圧延方向で下流側に設置された少なくとも1つの断裁機が、タンデム仕上げ圧延列に結び付けられている。
【0009】
欧州特許第2991783号明細書は、金属帯材の製造方法に関する。この特許は、帯材が多段圧延機内で圧延され、最終段の背後において輸送方向で圧延機から退出し、冷却装置の中で冷却させられる、金属帯材の製造方法に関する。有利な細粒構造および高い平面度を得るために、該特許によると、帯材または薄板は、圧延機の最終段のワークロールを通過した直後に、補足的高速冷却に付され、ここで帯材または板材の冷却はさらに、輸送方向での圧延機の最終段の領域内で少なくとも部分的に行なわれ、高速冷却は、帯材または板材に対して上および下から冷却流体を適用することによって行なわれ、帯材または板材に対して下から適用される冷却流体の体積流量は、帯材または板材に対して上から適用される冷却流体の体積流量の少なくとも120%となっている。
【0010】
国際公開第2008/89827号は、金属帯材を冷却するための装置に関するものである。この出願は、圧延機の2つの段の間で金属帯材を冷却するための装置において、帯材が平面的設計の上部誘導要素上で誘導されている装置に関する。上部誘導要素の下方には、噴霧要素が配置されており、この要素が冷却流体を、上部誘導要素内の少なくとも1つの開口部を通って、帯材の下側に向かって導いている。改善された噴霧設計を得るため、この出願によると、帯材の前進方向に対する横断方向で並置された少なくとも2つの開口部が、上部誘導要素内に設けられており、細長い形状を有する。開口部の長手方向軸は、帯材の前進方向に対し一定の角度に沿って方向づけられている。
【0011】
同様に、熱間圧延の供給開始前に厚板を冷却するための方法および設備も存在する。
【0012】
国際公開第2016/012691号は、冷却方法および設備に関するものである。この出願は、アルミニウム合金製圧延厚板の冶金学的均質化熱処理の後、そしてその熱間圧延の前の、前記厚板の冷却方法において、30~150℃での値の冷却が150~500℃/hの速度で実施され、その均質性が厚板の処理対象部分全体にわたり40℃未満であることを特徴とする方法を目的としている。この出願は同様に、前記方法の実施を可能にする施設ならびに前記実施をも目的としている。
【0013】
国際公開第2018/011245号は、6xxx系のアルミニウム合金製薄板の製造方法において、インゴットを形成するための6xxx系のアルミニウム合金の鋳造ステップ、インゴットの均質化ステップ、熱間圧延の出発温度まで直接、少なくとも150℃/hの冷却速度で、均質化されたインゴットを冷却するステップ、最終的な厚みに至るまでインゴットを熱間圧延し、少なくとも50%の再結晶率を得ることを可能にする条件下で熱間圧延後に最終的な厚みで巻取るステップ、冷間圧延された薄板を得るための冷間圧延ステップを含む方法を目的としている。発明の方法は、高い引張弾性限界および冷間プレス作業に適応された成形性ならびに優れた表面品質および高い耐食性を高い生産性と組合せた、自動車産業向けの薄板の製造のために、極めて有用である。
【0014】
6000系の合金については、生産性および/または冶金学的特性を改善するための他の修正も同様に企図されている。
【0015】
欧州特許第1165851号明細書は、6000系のアルミニウム合金のインゴットを自己焼鈍シートに変換させることのできる方法に関する。この方法は、インゴットを2段階均質化処理、すなわち最初に少なくとも560℃の温度、次に450°~480℃の温度での均質化処理に付すことからなる。この方法は、その後、450°~480℃の出発温度、次に320℃~360℃の到着温度で、均質化済みインゴットを熱間圧延することからなる。こうして、並外れて低い立方晶系再結晶成分を含む熱間圧延薄板が得られる。
【0016】
米国特許出願公開第2016/0201158号明細書は、T4および焼成後の高い強度および少ないローピングを有する熱処理に適した自動車産業用アルミニウム板材製品のための連続焼鈍および再溶体化熱処理ライン上で生産性を増大できるようにする新規の方法に関する。非限定的な例として、該発明に係る方法は、自動車産業において利用可能である。合金は、熱処理に適しており、該発明に係る方法は、同様に、海洋産業、航空宇宙産業および輸送においても応用可能である。
【0017】
欧州特許第1375691号明細書は、主成分としてSiおよびMgを含有し、フラットヘム加工を可能にするために十分な優れた成形適性、優れた隆起耐性および、被覆の焼成中の良好な硬化性を有する、6000系のアルミニウム合金製の積層シートに関する。合金シートは、0.4超のLankford係数での異方性、または20以上のテクスチャ立方晶系配向についての抵抗係数を有し、180℃で0.5mm以下の臨界曲率半径を有し、周囲温度での時効により従来のフロー閾値に対する強度が140MPaを超える場合であっても撓む。本発明は同様に、アルミニウム合金製積層シートの生産方法において、インゴットを均質化処理に付し、場合によっては周囲温度に至るまで、100℃/h以上の冷却速度で350℃未満の温度にそれを冷却し、再び300~500℃の温度に加熱し熱間圧延に付し、熱間圧延済み製品の冷間圧延を実施し、焼入れを行う前に400℃以上の温度で、冷間圧延済みシートを溶体化処理に付すことからなる方法にも関する。
【0018】
欧州特許第0786535号明細書は、0.4重量%以上1.7重量%未満のSi、0.2重量%以上1.2重量%未満のMgならびにAlおよび固体としての不可避的不純物を含有するアルミニウム合金インゴットの500℃以上の温度での均質化に関し、その後、得られた製品は、500℃以上の温度から、350~450℃の範囲内に位置する温度まで冷却され、その出発点が熱間圧延を可能にする。熱間圧延段階は、200~300℃の範囲内に位置する温度で達成されることから、冷間圧延で得られた製品を、溶体処理の直前で50%以上の圧下率に付す。その後、冷間圧延済み製品を溶体化処理に付し、ここでこの製品は多くとも10分間、2℃/s以上の温度上昇率で500~580℃に位置する範囲内にある温度で保存され、その後、得られた製品を硬化に付し、この硬化中にこの製品は、5℃/s以上の冷却率で100℃以下の温度まで冷却される。こうして、高い強度および成形性ならびにその成形後表面上の優れた外観を有する成形向けのアルミニウム合金プレートの生産方法が得られ、このプレートは、自動車用外部プレートなどの輸送設備部品向けの材料として適切な形で利用される。
【0019】
特開2015-067857号公報は、平担折曲げの加工能力を有し折曲げ可能でプレス加工性に優れ、形状安定性、塗装焼付の硬化性、および耐食性に優れた自動車用パネル向けのAl-Mg-Si系のアルミニウム合金シートの提供、および、0.4~1.5%のSi、0.2~1.2%のMg、0.001~1.0%のCu、0.5%以下のZn、0.1%以下のTi、50ppm以下のB、0.30%以下の単数または複数のタイプのMn、0.20%以下のCr、および0.15%以下のZrそして残りが不可避的不純物を伴うAlを含む自動車用パネル向けのAl-Mg-Si系のアルミニウム合金シートを用いた、この目的のための製造方法に関する。表面からシートの厚みの4分の1の深さの部分におけるCube方位密度の分布は、10~25の範囲内にあり、値rr(r=(r+r+r×2)/4)の平均は0.05以上であり、値rΔr(Δr=(r+rr×2)/2)の平面内の異方性指数の絶対値は、0.30以下であり、結晶粒子の平均直径は50μm以下である。
【0020】
冶金学上または生産性上の理由から、熱間圧延の後に帯材を焼入れすることも企図可能である。
【0021】
例えば、リバース圧延機とそれに続く「プール」が公知であり、ここで最終熱間厚みを有する金属はこのプール内に浸漬されて冷却される(「Mise en forme de l’aluminium-Laminage-Patrick Deneuville、(著作権)Techniques de l’Ingenieur-2010」)。
【0022】
国際公開第2019/241514号は、圧延後の金属帯材の焼入れ用システムおよび方法に関するものである。この出願は、帯材の温度が中間温度に冷却されるまで金属基材の上部表面と下部表面を冷却することを含む、金属基材の焼入れ用システムおよび方法に関する。金属基材の上部表面の冷却は、帯材の温度が中間温度に達した時点で中断され、金属基材の下部表面の冷却は、金属基材が目標温度に達するまで続行され、目標温度は、中間温度よりも低い。
【0023】
仏国特許出願公開第2378579号明細書は、ローラコンベア上に載置され散水を受ける、丸棒またはスラブ状の連続鋳造材の高速冷却のための方法に関するものである。この出願によると、この方法は、前記棒材が冷却の全持続時間中、往復運動で移動させられ、この運動の経路は、引抜き方向において、反対方向よりも大きいことを特徴とする。
【0024】
米国特許第6309482号明細書は、リバース圧延機(Steckel圧延機)および、炉の直ぐ下流側に制御された加速冷却器を伴うそのコイラー炉のオンライン組合せ、および、少なくとも約3:1の包括的な圧下を得るために可逆的に鋼を逐次圧延することを可能にする、結び付けられた方法に関するものである。
【0025】
米国特許第9643224号明細書は、圧延済み製品の冷却用、好ましくは、冷間圧延中の冷却用の装置において、圧延済み製品上に冷却剤を塗布するためのノズルを含み、このノズルと流体連通状態にあり帯材の送り出し平面に対しほぼ平行に延在する冷却用チャンバが、圧延済み製品上への冷却剤の塗布のために具備されている装置に関係するものである。
【0026】
欧州特許第2979769号明細書は、品質の変動がより少ない高品質の鋼板を保証することのできる、鋼板製造用の方法および施設に関係するものである。この特許は、熱間圧延ステップ、形状矯正ステップおよび加速冷却ステップをこの順序で含む、鋼板製造方法にも関係する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際公開第2015/58902号
【特許文献2】欧州特許第2991783号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/89827号
【特許文献4】国際公開第2016/012691号
【特許文献5】国際公開第2018/011245号
【特許文献6】欧州特許第1165851号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2016/0201158号明細書
【特許文献8】欧州特許第1375691号明細書
【特許文献9】欧州特許第0786535号明細書
【特許文献10】特開2015-067857号公報
【特許文献11】国際公開第2019/241514号
【特許文献12】仏国特許出願公開第2378579号明細書
【特許文献13】米国特許第6309482号明細書
【特許文献14】米国特許第9643224号明細書
【特許文献15】欧州特許第2979769号明細書
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】「Mise en forme de l’aluminium-Laminage-Patrick Deneuville、(著作権)Techniques de l’Ingenieur-2010」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明が解決しようとする問題は、得られる製品の冶金学的品質を劣化させることなく、さらには冶金学的品質および/または他の加工ステップの生産性を改善することによってリバース圧延機の生産性を改善することにある。詳細には、高い生産性を有する方法に対する自動車産業における需要が存在し、特に機械的強度、成形性および組み立て性、および塗装後の表面外観の観点から見て、さらに優れた品質の6xxx合金製板材を供給するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の第1の目的は、上部ワークロール(21)および下部ワークロール(22)という2本のワークロール、ならびにブランク(11)を冷却するための少なくとも1つの冷却システムを含むリバース熱間圧延機において、前記ブランク(11)がローラ(23)上を移動し、2本のワークロール(21)および(22)の間でリバース熱間圧延機を通過し、前記冷却システムが2つの冷却装置、すなわちブランク(11)の上部冷却装置とブランク(11)の下部冷却装置とで構成されているリバース熱間圧延機であって、
・ 上部冷却装置が、上部ワークロールの軸に実質的に平行に配置されたノズル(35)の少なくとも1つの傾斜部(30)を含み、ノズル(35)がブランク(11)の上部面に冷却流体噴流(36)を散布すること、
・ 下部冷却装置が、ローラ(23)間または下部ワークロール(22)と最も近いローラ(23)との間に配置され、下部ワークロール(22)の軸に実質的に平行であるノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部(40)を含み、ノズル(45)が、ブランク(11)の下部面に冷却流体噴流(46)を散布し、冷却流体噴流(46)の軸がブランク(11)の下部表面に実質的に直交して方向づけられていること、
を特徴とするリバース熱間圧延機にある。
【0031】
本発明の別の目的は、アルミニウム合金の熱間圧延方法において、
a. 熱間圧延の入口温度で単数または複数のアルミニウム合金を用いたアルミニウム合金製圧延プレートを供給するステップ、
b. 本発明の熱間圧延機を用いて、熱間圧延および/または冷却の複数のパスを実施するステップであって、冷却システムが少なくとも一回使用されるステップ、
c. 加工方法の後続部分のために熱間圧延の出口温度で、ブランク(11)または板材もしくは帯材の形態をした完成品を移送するステップ、
という連続したステップを含む方法にある。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、AA6xxx系のアルミニウム合金の圧延方法において;
a. AA6xxx系の合金製圧延プレートの鋳造ステップと;
b. 圧延プレートの均質化ステップ、そして任意にはそれに続く再加熱ステップと、
c. 熱間圧延の開始の第1の温度に基づいて第1の出口厚みを有するブランクへと圧延プレートを加工するための第1の熱間圧延ステップと、
d. こうして得られたブランクの、おおよそV=C/eという、ブランクの平均温度から第2の熱間圧延の開始の第2の温度に至るまでの典型的な平均冷却速度での冷却ステップであって、ここでVは℃/sの単位であり、eはmmの単位のブランクの厚みであり、Cは400~1000℃/s×mm、好適には600~900℃/s×mm、より好適には700~800℃/s×mmの定数であるステップと、
e. 帯材が少なくとも50%まで再結晶するような変形および温度条件下で、このように冷却されたブランクを最終的な熱間圧延厚みの帯材へと加工するための第2の熱間圧延ステップと、
f. 帯材から薄板への冷間圧延ステップ、
という連続したステップを含む、圧延方法にある。
【0033】
本発明のさらに別の目的は、560℃での等価保持持続時間
【数1】
が20秒未満となるように機能する連続熱処理炉であって、この等価保持持続時間が、式
【数2】
を用いて計算され、Qが200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kである連続熱処理炉内での溶体化処理の後、
98秒という560℃での等価保持持続時間
【数3】
での溶体化処理後に得られた最大引張強度の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の引張強度に達するような、本発明の方法により得られた薄板にある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】圧延機を通過するブランクの斜視図であり、冷却システムは表わされていない。
図2】本発明に係る圧延機を通過するブランクの上面図であり、ブランク上の最初の衝撃の際に冷却流体噴流の放散を直接受ける表面の凸包絡が表わされている。
図3】本発明に係る圧延機を通過するブランクの下面図であり、ブランク上の最初の衝撃の際に冷却流体噴流の放散を直接受ける表面の凸包絡が表わされている。
図4】冷却流体噴流の方向づけの好ましい実施形態における圧延機を通過するブランクの別の上面図であり、ブランク上の最初の衝撃の際の冷却流体噴流が表わされている。
図5a】高速応答ゲート弁を伴うノズルの図である。
図5b】高速応答ゲート弁を伴うノズルの図である。
図6】本発明に係る圧延機の一実施形態の縦断面図である。
図7】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図8】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図9】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図10】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図11a】本発明に係る圧延機の一実施形態の横断面図である。
図11b】本発明に係る圧延機の一実施形態の横断面図である。
図12】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図13】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図14】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図15】本発明に係る圧延機の別の実施形態の縦断面図である。
図16】冷却システムの制御の原理の図である。
図17】先行技術に係る方法についてのブランクの温度の不均質性の例である。
図18】好ましい一実施形態にしたがって本発明に係る圧延機を利用することによる、ブランクの温度の不均質性の例である。
図19】別の好ましい実施形態にしたがった本発明に係る圧延機を用いた熱間圧延用エマルジョンによる、8秒間で470℃から420℃への114mmのAA6xxxアルミニウム製板材の高速冷却の例である。
図20】別の好ましい実施形態にしたがった本発明に係る圧延機を用いた熱間圧延用エマルジョンによる、10秒間で470℃から420℃への140mmのAA6xxxアルミニウム製板材の高速冷却の例である。
図21】実施例A中で説明されている本発明を用いていないローピング(「roping」)表面品質の写真である。
図22】実施例B中で説明されている本発明を用いていないローピング(「roping」)表面品質の写真である。
図23】実施例D中で説明されている本発明を用いたローピング(「roping」)表面品質の写真である。
図24】実施例E中で説明されている本発明を用いたローピング(「roping」)表面品質の写真である。
図25】異なる条件下での再結晶率を示すメタログラフィである。
図26】機械特性に対する溶体化処理持続時間の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下で問題となっている全てのアルミニウム合金は、別段の記載の無いかぎり、「Aluminum Association」が、定期的に刊行するその「Registration Record Series」中で定義している規則および名称に準じて呼称される。
【0036】
問題となっている冶金学的質別は、欧州規格EN-515にしたがって呼称される。
【0037】
引張における静的機械特性は、NF EN ISO 6892-1規格に準じた引張試験によって決定される。
【0038】
別段の記載の無いかぎり、EN 12258規格の定義が適用される。
【0039】
ここでブランクと呼ぶのは、任意には単数または複数のアルミニウム合金でクラッドされたアルミニウム合金製の板材、帯材またはシートの形をした完成品の製造向けの、任意にはスカルピングされ、任意には単数または複数のアルミニウム合金でクラッドされた鋳造インゴットまたはプレートなどの圧延プレートの圧延によって得られたアルミニウム合金製中間製品のことである。したがって、ブランクは、圧延プレートと完成品の中間の厚みを有する圧延製品である。
【0040】
別段の表示の無いかぎり、「圧延機」なる用語は、ここでは「リバース圧延機」を対象としている。
【0041】
圧延の応力および/またはトルクの観点から見た圧延機の能力を増大させることによってリバース圧延機の生産性を増大させるか、または先行または後続するステップの生産性を改善する先行技術とは異なり、本発明者らは、これらの解決法を援用することなく、リバース圧延機の生産性を改善することに成功した。
【0042】
本発明者らは、特に、アルミニウム合金の硬度を考慮すると、大部分のアルミニウム合金が、各パス設定毎に過熱する傾向にある、ということを確認した。その場合、例えばパス設定を減少させることによってかまたは、各々の圧延パスの間に待機時間を設けることによって圧延機を減速させる必要がある。
【0043】
本発明によると、熱間圧延ステップの間にブランクを冷却することで、製品の冶金学的品質を同一に保つかまたは改善しながら、熱間圧延機の生産性を改善するか、または生産のいくつかのステップを削除することでより経済的な新しい製造方法を創出することが可能になる、ということが確認された。したがって、リバース圧延機上での圧延の間にブランクを冷却することは同様に、意外にも、圧延完成品に対し機械特性、表面状態または耐食性などの補足的物理特性を付与することをも可能にし得る。
【0044】
本発明に係るリバース熱間圧延機は、上部ワークロール(21)および下部ワークロール(22)という2本のワークロール、ならびにブランク(11)を冷却するための少なくとも1つの冷却システムを含むリバース熱間圧延機において、前記ブランク(11)がローラ(23)上を移動し、2本のワークロール(21)および(22)の間でリバース熱間圧延機を通過し、前記冷却システムが2つの冷却装置、すなわちブランク(11)の上部冷却装置とブランク(11)の下部冷却装置とで構成されている。例えば非限定的な例としてバックアップロール、モータ、支柱、シャフトなど、当業者にとって周知の熱間圧延機の多くの他の部品およびシステムは、図中に表わされていない。
【0045】
上部冷却装置は、上部ワークロール(21)の軸に実質的に平行に配置されたノズル(35)の少なくとも1つの傾斜部(30)を含み、ノズル(35)は、ブランク(11)の上部面に冷却流体噴流(36)を散布する。
【0046】
下部冷却装置は、ローラ(23)間または下部ワークロール(22)と最も近いローラとの間に配置され、下部ワークロール(22)の軸に実質的に平行であるノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部(40)を含み、ノズル(45)は、ブランク(11)の下部面に冷却流体噴流(46)を散布し、冷却流体噴流(46)の軸は、ブランク(11)の下部表面に実質的に直交して方向づけられている。
【0047】
図1は、リバース熱間圧延機を通過するブランク(11)を示す(この図には冷却システムは表わされていない)。図1は、縁部(111)、縁端部(1111)および端部(112)を示す。ブランク(11)は、単純化された形で平行六面体として表わされているが、現実はより複雑である。
【0048】
端部(112)は、ロール(21)および(22)の保持部に最初に係合し最後にそこから解放されるブランク(11)の部分に対応する。端部(112)は、図1中、単純化された形で平行六面体として表わされている。端部(112)は、最終製品の製造および品質を保証するために除去されなくてはならないことから、当業者であれば端部(112)について熟知しているものである。端部(112)は、概して、熱間圧延の作用下で丸くなり2つに開く形に変形し、この現象は当業者により、ワニ口割れ(crocodiling)と称されている。端部(112)は同様に、長さ方向で圧延が均質でないブランクの領域にも対応する。端部(112)は同様に、プレートを製造した鋳造の開始または終了の過渡状態に対応する領域を含むこともできる。端部(112)の長さは、合金、圧延および鋳造の条件ならびに最終的な利用分野に左右される。この端部(112)の除去は、最終製品およびその製造方法の特異的制約条件に応じて、熱間列上に設置されたせん断機上でも、製造方法において後にでも行なわれ得る。端部(112)の長さは、典型的には、100mm、200mm、300mm、400mm、500mmまたは600mmという最大値をとることができる。縁端部(1111)は、上部ロール(21)と接触しているブランク(11)の上部面と、下部ロール(22)と接触しているブランク(11)の下部面とを、端部(112)の一部となることなく連結させている面である。縁部(111)は、端部(112)を除いて縁端部(1111)の近くにあるブランク(11)の部分である。縁部(111)は、完成品の製造および品質を保証するために除去されなければならないことから、当業者によく知られている。産業的現実においては、縁部(111)および縁端部(1111)は、当業者にとっては周知である割れやひだがそこに出現することが多いため、図1が図式化しているものよりもはるかに複雑な形状を有している。これらの変形は除去されなければならない。縁部(111)は、縁端部(1111)が近接していることを考慮すると、幅において均質に圧延されず、最終製品の特性を保証する目的で除去されなければならない。この縁部(111)の除去は、最終製品およびその製造の特異的制約条件に応じて、熱間圧延の終りでも、製造方法において後にでも行なわれ得る。縁部(111)の幅は、典型的には、25mm、50mm、50mm、75mm、100mm、125mm、150mm、175mm、200mmまたは250mmという最大値を取ることができる。
【0049】
各冷却システムについて、ブランク(11)上への最初の衝撃の際にそれぞれ冷却流体噴流(36)および(46)の放散を直接受けるそれぞれの表面(51)および(61)の凸包絡として、それぞれ上部凸包絡(52)および下部凸包絡(62)が定義される。放散を受ける表面(51、61)の凸包絡(52、62)の一例が、図2および3によって例示されており、そこには、冷却システムは表わされていない。凸包絡中に、跳ね返りおよび流出は考慮されない。集合は、この集合内にその端部がある全ての区分について、区分の各点が完全にこの集合内に包含されている場合に、凸である。1つの集合の凸包絡は、それを含む最も小さい凸集合である。凸包絡の決定は、異なる冷却システムをその機能に応じて分離することによって行なわれる。2つの冷却システムは、それらの間にロール(21)および(22)が存在する場合に分離されている。図7は、第2の冷却システムを含む非限定的な実施例を例示する。この実施例において、各システムの凸包絡は、一方のシステムがロール(21)と(22)間の通過前のブランク(11)を冷却し、他方のシステムがロール(21)と(22)間の通過後にブランクを冷却することから、別個に分析される。2つの冷却システムは、少なくとも2本、または少なくとも3本、または少なくとも4本、または少なくとも5本のローラ(23)が存在し、それらの間にブランクの下部面の冷却用ノズル(45)が存在しない場合、分離されている。図15は、3つの冷却システムを伴う一実施例を示しており、リバース熱間圧延機の両側に2つの冷却システムがあり、3番目の冷却システムは、さらに遠くにあり、この非限定的な実施例の場合には、そのロール(25)および(26)を伴う第2の熱間圧延機に向かってブランク(11)を移送する前の高速冷却に役立つ。図15では、2つのブランクが2つの位置で表わされているが、これらのブランクは同時に存在し得ない可能性もある、ということが指摘される。
【0050】
図2に例示されているように、各冷却システムについて、凸包絡(52)からロール(21)までの最大距離D55は、ブランク(11)の上部表面上のロール(21)の回転軸の投影である直線C1との凸包絡(52)のあらゆる点の距離の最大値から、ロール(21)の半径R1を減じたものである。
【0051】
図2に例示されているように、各冷却システムについて、ロール(21)までの凸包絡(52)の最小距離D57は、ブランク(11)の上部表面上のロール(21)の回転軸の投影である直線C1との凸包絡(52)のあらゆる点の距離の最小値からロール(21)の半径R1を減じたものである。
【0052】
図3に例示されているように、各冷却システムについて、凸包絡(62)からロール(22)までの最大距離D65は、ブランク(11)の下部表面上のロール(22)の軸の投影である直線C2との凸包絡(62)のあらゆる点の距離の最大値から、ロール(22)の半径R2を減じたものである。
【0053】
図3に例示されているように、各冷却システムについて、ロール(22)までの凸包絡(62)の最小距離D67は、ブランク(11)の下部表面上のロール(22)の軸の投影である直線C2との凸包絡(62)のあらゆる点の距離の最小値からロール(22)の半径R2を減じたものである。
【0054】
各冷却システムについて、圧延機の反対側の領域(54)および圧延機に隣接する領域(53)は、図1の単純化された平行六面体とみなされるブランク(11)の上部凸包絡(52)を含みかつ直線C1によって境界画定されている半平面の一部を成す表面である。
【0055】
各冷却システムについて、図2に例示されているように、圧延機の反対側の領域(54)は、凸包絡(52)を含まずかつ直線C1に平行で直線C1からロール(21)の半径R1を加えた最大距離D55のところにある直線E1によって境界画定されている半平面である。
【0056】
各冷却システムについて、圧延機に隣接する領域(53)は、直線C1によって、および直線C1に平行で直線C1からロール(21)の半径R1を加えた最小距離D57のところにある直線D1によって、境界画定されている。
【0057】
方向Sは、ブランク(11)の移動の方向である。
【0058】
図2によると、各冷却システムについて、凸包絡(52)の方向Sに沿った距離D56は、長さD55から長さD57を減算したものである。
【0059】
図3によると、各冷却システムについて、凸包絡(62)の方向Sに沿った距離D66は、長さD65から長さD67を減算したものである。
【0060】
図6により非限定的に例示されている実施形態において、上部冷却装置は、上部ワークロール(21)の軸に実質的に平行に配置されたノズル(35)の1つの傾斜部(30)で構成されており、ノズル(35)は、ブランク(11)の上部面に冷却流体噴流(36)を散布している。図6により例示されている下部冷却装置は、ローラ(23)間に配置され、かつ下部ワークロール(22)の軸に実質的に平行であるノズル(45)の2つの傾斜部(40)で構成されており、ノズル(45)は、ブランク(11)の下部面に冷却流体噴流(46)を散布し、冷却流体噴流(46)の軸はブランク(11)の下部表面に実質的に直交して方向づけられている。図10により例示されている一実施形態において、下部冷却装置は、下部ワークロール(22)と最も近いローラ(23)との間に位置設定されたノズル(45)の1つの傾斜部で構成されている。
【0061】
例えば図8および図12により非限定的に例示された実施形態は、それぞれノズル(35)の2つおよび3つの傾斜部(30)で構成された上部冷却装置を示している。
【0062】
好適には、下部ノズル(45)は、ブランク(11)の存在下ではローラ(23)にもロール(22)にも直接到達せず、好適にはローラ(23)に対しほぼ接線方向にある冷却流体噴流(46)を生成し、距離D67は、好適には下部ロール(22)の半径より大きく、より好適には下部ロール(22)の直径より大きく、かつ/または、上部ノズル(35)は、上部ワークロール(21)に直接到達しない冷却流体噴流(36)を生成し、好適には、距離D57は、上部ロール(21)の半径よりも大きく、より好適には、距離D57は上部ロール(21)の直径より大きい。図5bにより例示されている一実施形態において、冷却流体噴流(46)は、これらの噴流がブランク(11)の温度にしか影響を及ぼさないようにローラ(23)に直接到達しない。傾斜部(40)がロール(22)とローラ(23)の間に配置されている、図10により例示されている一実施形態において、冷却流体噴流(46)は、これらの噴流がブランクの温度にしか影響を及ぼさず、熱間圧延の品質にとって重要な要因であるロール(22)の温度場を混乱させないように、ロール(22)に直接到達しない。距離D67が下部ロール(22)の半径R1、好適には下部ロール(22)の直径よりも大きく、流体噴流(46)の跳ね返りがロール(22)に到達しロール(22)の温度場を混乱させ得るのことを回避することが有利である。同様に、下部冷却流体噴流(46)の放散を受けるブランク(11)の下部表面の領域が、熱交換を改善するために最大化されることも有利である。ローラ(23)に触れることなく噴流(46)の放散を受ける表面を最大化するためには、図5bにより例示されているように噴流(46)が前記ローラ(23)に触れることなくすれすれに通過することが有利である。したがって、これらの下部噴流(46)は好ましくは、ローラ(23)に対しほぼ接線方向である。本発明はこうして、熱交換にとっての有効表面を増大させるために放散を受ける表面を最大化することを可能にする。噴流(36)は、有利には、熱間圧延の品質の重要な要因であるロール(21)の温度場を混乱させないように、ロール(22)に接触しない。距離D57が上部ロール(21)の半径R1よりも大きいこと、好適には、距離D57が上部ロール(21)の直径よりも大きく、流体噴流(36)の跳ね返りが、ロール(21)に到達してその温度場を混乱させ得るのを回避すること、が有利である。
【0063】
図6に例示され、ロール(21)および(22)の専用であるノズル(24)は、ブランク(11)とは独立して、これらの機構をそれらの特定のニーズに応じて冷却または潤滑するために設置され得る。例示されていない一実施形態において、特定的ノズルは、ローラ(23)を冷却するために設置され得る。図6中のノズル(24)の位置は、単に原則的なものであり、限定的ではない。
【0064】
好ましくは、下部ノズル(45)は、前記ノズル(45)の近くに位置するローラ(23)の回転軸を通る平面の下方にあり、かつ/または、下部ノズル(45)は、冷却流体噴流(46)を通過させるための開口部を有する部品(47)によって保護されており、かつ/または上部ノズル(35)は、冷却流体噴流(36)を通過させるための開口部を有する部品(37)によって保護されている。ノズル(35)および(45)を保護することは有利である、というのも当業者が「ワニ口割れ」と称し、ノズルに衝突することになり得るブランク(11)の端部(112)の開口部を熱間圧延が誘発し得るからである。ブランク(11)は同様に、熱間圧延中、ブリッジまたはボート(bridges または boats)を形成する可能性がある、すなわち、ブランク(11)は、実質的に平面的である代りに、ブランク(11)の端部が上または下を指して、圧延機から出て長手方向に曲がる可能性がある。したがって、ブランク(11)からノズル(35)および(45)を保護することは、前記ノズルの損傷を回避するために有利である。ノズル(35)および(45)を保護する部品(37)および(47)の非限定的な例が、図8図9および図13に例示されている。図7は、ノズル(35)のみが保護部品(47)によって保護されている非限定的な例である。ローラ(23)が、互いに非常に接近している場合、ローラ(23)の軸の平面の下方にノズル(45)を設置することで、図6および7に例示されているように、保護部品(47)を設置することなく経済的にこれらのノズルを保護することが可能である。
【0065】
好適には、各ノズル(35)および(45)は、有利には応答時間が1秒未満、好適には0.5秒未満、より好適には0.2秒未満である高速応答ゲート弁(49)によって個別に補給される。図5aおよび5bは、それぞれの傾斜部(30)および(40)とそれぞれのノズル(35)および(45)との間に組付けられた高速応答ゲート弁(49)の非限定的な例を示す。高速ゲート弁を用いて個別にノズルに補給を行なうことは、ブランク(11)の上部表面および下部表面の各々の点を特定的に冷却できるようにすることから、有利である。これらの応答時間は、詳細には、十分な信頼性でブランク(11)の端部(112)に放散を行なって、ロール(21)および(22)間でのその係合を容易にするような形でその温度を調整することを可能にする。このとき、ブランク(11)の端部(112)における温度を適応させて、リバース熱間圧延機内でのその係合を容易にすることが可能である。同様に、例えばブランクの有効幅を削減しさらにはブランクの破断をひき起こし得る割れ現象を制限するために、縁部(111)上の温度を適応させることも可能である。したがって、完成品上に求められる特性に応じて、または生産の後続ステップに求められる特性に応じて、ブランク(11)の他の部分の温度を最適化することも可能である。例えば、それは、AA3104合金製製品についての幅における異方性または、AA6xxx合金製製品の機械特性の均一性などのような、最終製品の特性をより良好に制御するために有利である。最後に、ブランク(11)の各点を特定的に冷却することで、示差膨張作用を制御して、ブランク(11)の平担性を制御することも同様に可能である。
【0066】
一実施形態において、ノズル(35)および(45)は、平担なおよび/または円錐形のおよび/または円筒の形状で冷却流体噴流(36)および(46)を生成することができる。噴流の形状が円筒形である場合、ロールの断面は好適には円形である。一実施形態において、ノズル(35)および(45)は、噴霧により冷却流体噴流(36)および(46)を生成することができ、好適には、ノズル(35)および(45)は、円錐形噴流と呼ばれる中実円錐形の冷却流体噴流(36)および(46)を噴霧により生成することができる。円錐形噴流(46)および(36)は、平担なまたは円筒形の噴流よりも優れた構成である。実際、円錐形噴流は、ブランク(11)上への冷却流体のより良い分布を可能にする。したがって、これにより、さらに均質な熱交換が可能となり、こうして、例えば20℃未満、好適には10℃未満の温度の不均質性を有するブランク(11)を得ることができる。
【0067】
好適には、円錐形の冷却流体噴流(46)は、90°の円錐の角度を有する。この角度は、ローラ(23)の存在によって、特にローラ(23)の回転軸を通る平面の下方にノズル(45)がある場合にこれらのローラ(23)に放散しないように、例えば60°に制限され得る。ローラ(23)が非常に接近している場合には、より大きな表面(61)に放散するために、ローラ(23)の軸を通る平面の上方にノズル(45)を置くことが好ましい可能性がある。図5bでは、ノズル(451)は、ローラ23の回転軸の平面の下方に設置され、冷却噴流(461)を生成する。図5bでは、ノズル(452)は、ローラ(23)の回転軸の平面の上方に設置され、冷却噴流(462)を生成し、この状況下では好適には設置すべきである保護部品(47)は表わされていない。したがって、噴流(462)は、表わされていないが噴流(461)に比べてさらに大きいブランク(11)の表面に散布を行なう。
【0068】
好適には、各冷却システムについて、ブランク(11)の上部表面から冷却流体を排出するための少なくとも1つの装置(38)が、ブランクの上方に設置される。該装置(38)の非限定的な例が、図8図10または図12に示されている。圧延機の反対側の領域(54)の上方および/または圧延機に隣接する領域(53)の上方に、装置(38)を設置することができる。好適には、前記装置(38)は、冷却流体をブランク(11)の縁部(111)の1つに向かって押しやり、好適には冷却流体に対しそれが縁端部(1111)上に流出しないように十分な速度を付与するエアブラストである。装置(38)は、ブランク(11)の上部面全体にわたる冷却流体の流出を妨げることを可能にする。これは、ブランク(11)の温度不均質性の優れた繰返し性および優れた再現性を有するように制御された冷却を保証することに寄与する。冷却流体が縁端部(1111)上で流出するのを回避することは、ブランク(11)の周縁の熱制御に寄与し、詳細には、周縁が過度に冷却されることを回避できるようにし、こうして縁部(111)内の割れの出現が制限される。上部冷却装置がロール(21)の近くにある場合、冷却流体の排出装置(38)は有利には、冷却流体の流出を遮断する堰の代わりとなるロール(21)によって補完または置換される。これにより、詳細には、装置(38)のエネルギー消費量を削減することが可能になる。ロール(21)の近くで冷却流体を排出するための装置(38)がロール(21)により置換されている構成の非限定的な一例が、図10によって例示されている。
【0069】
一実施形態において、上部冷却装置(36)の円錐形噴流は、多くとも20°、好適には実質的に15°以下の円錐の角度αを有し、前記円錐形噴流の円錐は実質的に垂直な軸を有する。この構成により、ブランク(11)上への冷却流体の流出を制限することが可能になる。好適には、少なくとも1つのこのような円錐形噴流を有する冷却システムは、図12により非限定的に例示されているように、冷却流体の排出装置(38)によって取り囲まれている。円錐の角度αは、図5aによって例示されており、円錐の角度αは、ノズルが生成する冷却流体噴流の円錐の角度である。
【0070】
別の一実施形態において、上部冷却装置(36)の円錐形噴流は、垂直線との関係において傾斜している。傾斜角度βは、図5aによって例示されており、これは、ブランク(11)の上部面に直交する直線Vとノズルの軸が成す角度である。好適には、差β-α/2は-20°超、好適には実質的に-15°超、より好適には正またはゼロである。好適には、差β-α/2が負である場合、ブランク(11)の表面上の流出を妨げるために、冷却流体排出装置(38)が好適には設置される。上部冷却装置(36)の冷却流体噴流がワークロール(21)の近くにある場合、冷却流体噴流(36)の軸は、有利には、ロール(21)の堰効果を利用するためにワークロール(21)の放散を受ける表面(51)を接近させるように方向付けられる。この構成は、放散を受ける表面(51)を増大させて冷却システムの冷却能力を増大させることも可能にする。冷却流体噴流がワークロールから離れている場合には、上部冷却装置(30)の傾斜部を2つずつまとめ、冷却流体噴流(36)の軸を、それらのそれぞれの放散を受ける表面(51)を接近させるように方向付けることが有利である。この構成は、冷却流体を噴流(36)の重なり領域の少なくとも一部分の中に集中させ、こうしてブランク(11)の縁端部(1111)上に流出しないように十分な速度で冷却流体を周縁上に吐出させ、これによりブランク(11)の縁部(111)を過度に冷却しないことが可能になるため、有利である。
【0071】
図8は、先の実施形態の非限定的な一例である。ワークロールの近くのノズル(351)は、軸がワークロール(21)に向かって方向付けられており、差β-α/2は-20°超である。ノズル(352)は垂直方向に方向付けられ、その円錐形噴流(36)の角度αは20°未満である。
【0072】
図9は、先の実施形態の別の非限定的な一例である。ワークロールの近くのノズル(351)は全て、ワークロールに向かって放散を受ける表面(51)を接近させるように傾斜しており、円錐形噴流の差β-α/2は、ブランク(11)上への冷却流体の流出を回避するために正またはゼロである。
【0073】
図12は、円錐の角度αが20°未満である垂直な円錐形冷却噴流(36)を伴う、先の実施形態の別の非限定的な例である。
【0074】
図13は、先の実施形態の別の非限定的な例である。傾斜部(303)および(304)は対になっており、ノズル(353)および(354)は、図4により例示されている放散を受ける表面(513)および(514)が接近するように方向付けられている。差β-α/2は正またはゼロである。
【0075】
好適には、各々の冷却システムについて、放散を受ける上部凸包絡(52)は、放散を受ける下部凸包絡(62)と、上部ワークロール(21)の直径の寸法の2倍、好適には1倍の許容誤差を伴って対面しており、好適には、前記凸包絡(52、62)は、実質的に対面している。凸包絡の決定は、本発明の異なる冷却システムを分離することによって行なわれる。図7は、第2の冷却システムが存在する非限定的な例を示している。この場合、各システムの凸包絡は、一方のシステムがロール(21)および(22)間の通過前に冷却し、他方のシステムがロール(21)および(22)間の通過後に冷却することから、別個に分析される。図15は、3つの冷却システムを伴う実施例を示しており、2つの冷却システムはリバース熱間圧延機の両側にあり、第3の冷却システムは、より遠くにあって、この非限定的な例の場合、ロール(25)および(26)を伴う第2の熱間圧延機と合流する前の高速冷却に役立つ。この配置は、ブランク(11)の熱均質性に寄与することから、有利である。各々の冷却システムの前記上部および下部凸包絡(52、62)を対面させることは、それによってブランク(11)の厚みの中での均質な冷却が可能となり、それが、平担な製品であるブランクにとって重要な特性であるブランク(11)の平担性の制御に寄与することから、極めて有利である。
【0076】
好適には、ノズルアセンブリ(35)および(46)は、最大1500l/min/m、好適には600~1200l/min/mという、ブランク(11)の一面当たりの冷却流体の表面流量を供給できる。この流体は、噴射ガスによって推進されてよい。冷却流体は水、脱イオン水、液化されたまたはされていないガス、好適には、水、好適には脱イオン水と油およびブランク(11)とロール(21)および(22)の潤滑に役立つ圧延用添加剤のエマルジョン、であり得る。好適には、脱イオン水は、105kΩcm超の抵抗率を有する。
【0077】
一実施形態において、上部冷却装置(35)のノズルは可動であり、好適にはロール(21)を維持するメカニズムに取付けられることでブランク(11)の上部表面から一定の距離のところに維持されている。これにより、ブランク(11)の冷却のより優れた繰り返し性を保証することが可能になる。別の一実施形態において、ノズル(35)は、可動ではない。コストがより低いこの可動でない実施形態においては、縁部(111)に散布するかまたは例えばノズル(35)が円錐形噴流(36)を生成する場合には縁部(111)の近くで散布を行なうノズル(35)を、相応して制御する必要がある。実際、固定ノズル(35)により投射される円錐形噴流(36)の場合、縁部(111)上の冷却流体の分布は、リバース熱間圧延の設計の連続パスの際にブランクの厚みが減少するにつれて拡大する。図11aおよび11bは、この状況の非限定的な例である。ブランク(11)は、図11aでは熱間圧延の開始時点において示され、図11bでは熱間圧延の終了時点において示され、各回とも、冷却流体噴流(36)を生成する上部ノズル(35)の数は同じである。噴流(36)の形状が円錐形であること、そしてブランク(11)の厚みが減少していることから、縁部(111)は、11aで例示されている圧延開始時点では放散を受けておらず、一方、11bに例示されている圧延の終了時点では部分的に放散を受けている。したがって、一実施形態において、熱間圧延の開始時点で、好適には熱間圧延の持続時間全体にわたり、縁部(111)の上部面を伴う、冷却流体噴流(36)の放散を直接受ける上部表面(51)間の交差部は空である。したがって、一実施形態において、熱間圧延の開始時点で、好適には熱間圧延の持続時間全体にわたり、縁部(111)の下部面を伴う、冷却流体噴流(46)の放散を直接受ける下部表面(61)間の交差部は空である。
【0078】
図10で非限定的な例により例示された好ましい一実施形態において、上部ワークロール(21)の近くのノズル(351)は、ブランク(11)の変位方向S上に投射された全ての変位成分が圧延機のワークロール(21)および(22)に向かって方向付けられている冷却流体噴流(36)を生成する。好適には、上部冷却装置の冷却流体噴流(36)は、円錐形であり、差β-α/2は、正またはゼロである。図6により例示されている通りのより好ましい一実施形態においては、1つの上部傾斜部(30)と2つの下部傾斜部(40)しか存在しない。
【0079】
図6の非限定的な例によって例示された好ましい一実施形態において、図6では表わされていない放散を受ける上部凸包絡(52)および放散を受ける下部凸包絡(62)は、圧延機のロールの近くにあり、好適には、放散を受ける凸包絡(52)および(62)からロール(21)および(22)までの最大距離D55およびD65は、ワークロール(21)および(22)の直径のうち最も大きいものの3倍未満であり、かつ/または、前記凸包絡(52、62)の長さD56およびD66は、ワークロール(21)または(22)のうちの最も大きいものの直径の2倍未満、好適には1倍未満である。この実施形態は、ロール(21)および(22)の保持部から出た時点で直ちにブランク(11)を冷却し、ブランクが熱間圧延の次のパスのためにもう一方の方向に再出発する前にロールから過度に離れるのを回避することを可能にすることから、有利である。このことは、熱間圧延機の生産性を改善するため、特に有利である。実際、リバース熱間圧延機の速度は多くの場合、燃焼、割れ、ワニ口割れ、さらにはブランク(11)の破断を導く発熱を回避するために制限される。
【0080】
図7の非限定的な例により例示された好ましい一実施形態においては、前記リバース熱間圧延機の別の側に第2の冷却システムが存在しており、この第2の冷却システムは、好適には、ワークロール(21)および(22)の軸を通る平面との関係において第1の冷却システムと対称である。この配置は、各圧延パスにおいて同じ仕方で、リバース圧延機の保持部に入るまでそしてリバース圧延機の保持部から出た時点で直ちにブランク(11)を冷却することを可能にすることから、有利である。
【0081】
図4および13で非限定的な例により例示された好ましい別の一実施形態において、上部冷却システムは、ノズル(353、354)の少なくとも1対の傾斜部(303および304)、好適には3対の傾斜部(303および304)を含んでおり、各傾斜部対(303および304)の中で、冷却流体噴流(363、364)は、対向して方向付けられ、差β-α/2は正またはゼロ、好ましくはゼロであり、ここでαはノズルにより生成される冷却流体噴流の円錐の角度であり、βはノズル(353、354)の軸がブランク(11)の上部面に直交する直線Vと成す傾斜角度であり、噴流(363、364)による放散を受けるブランク(11)の表面(513、514)は、好適には1/3~2/3、好適には1/2の率で重なり、下部冷却装置はノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部(40)、好適には8つの傾斜部(40)を含み、その冷却流体噴流(46)は円錐形であり、その軸は実質的にブランク(11)に対し法線方向である。好ましくは、ブランク(11)は実質的に水平である。角度は、図5a中の一般的事例において、ノズル(35)、傾斜部(30)および冷却流体噴流(36)と共に図式化されている。図4は放散を受ける表面(51)を例示している。この構成は、冷却流体を噴流(36)の重なり領域の少なくとも一部分の中に集中させ、こうしてブランク(11)の縁端部(1111)上に流出しないように十分な速度で冷却流体を周縁上に吐出させ、これによりブランク(11)の縁部(111)を過度に冷却しないことが可能になるため有利である。これにより、冷却流体の排出装置(38)のエネルギー消費量を減少させ、さらにはそれを無くすることが可能になる。
【0082】
図12に非限定的に図式化されている好ましい別の一実施形態において、上部冷却装置は、ノズル(35)の少なくとも1つの傾斜部(30)、好適には6つの傾斜部(30)を含み、下部冷却装置は、ノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部(40)、好適には8つの傾斜部(40)を含み、これら全てが、ブランク(11)に実質的に直交する軸を有しかつ20°未満の噴流(36)の円錐の角度αを有する円錐形の冷却流体噴流(36)および(46)を生成し、好適には噴流(36)の円錐の角度αは実質的に15°である。この装置には、製造がより簡単であるという利点がある。円錐形噴流の角度は、ブランク(11)上の衝撃に際しての冷却流体の速度の水平成分を制限し、結果としてブランク(11)上の冷却流体の広がりを制限してその冷却を制御することを可能にする。
【0083】
図14および図15により非限定的に例示された好ましい別の一実施形態において、本発明に係るリバース熱間圧延機は、熱間列の一部を成しており、この列内で、本発明に係るリバース熱間圧延機には好適には、ワークロール(25)および(26)と共に図式化されているリバース圧延機またはタンデム圧延機であり得る第2の熱間圧延機が後続している。図14によって例示されている実施形態において、本発明に係るリバース熱間圧延機の冷却システムは、本発明に係るリバース熱間圧延機と第2の熱間圧延機との間に設置されており、好適には、冷却システムと第2の熱間圧延機の間の距離は、本発明に係る冷却システムおよび第2の熱間圧延機が独立して機能するのに十分なものである。この配置は、第1のリバース熱間圧延機から第2のリバース熱間圧延機へのブランクの移送中に能力を喪失することなく製造フロー内で冷却作業を実施することを可能にすることから、有利である。冷却システムと第2の熱間圧延機の間の距離は、それがブランクの長さとの関係において十分なものである場合、例えば冷却システム内を通過するためおよび第2の熱間圧延機内を通過するために異なる速度を選択することを可能にすることから、重要でもある。ブランクの長さは、EP×LP/eによって算定され、ここでEPはプレートの厚みであり、LPはプレートの長さであり、eは2つの圧延機間のブランクの厚みである。図15によって例示されている実施形態においては、本発明に係るリバース熱間圧延機のために3つの冷却システムが存在し、うち2つのシステムは、ワークロール(21、22)の近くでその両側に位置付けされ、1つのシステムは本発明に係るリバース熱間圧延機と第2の熱間圧延機との間に設置されており、好適には、冷却システムと第2の熱間圧延機の間の距離は、本発明に係る冷却システムおよび第2の熱間圧延機が独立して機能するために十分なものである。
【0084】
本発明は、アルミニウム合金の熱間圧延方法において、
a. 任意には熱間圧延の入口温度でクラッドされたアルミニウム合金製圧延プレートを供給するステップ、
b. 本発明に係るリバース熱間圧延機を用いて、熱間圧延および/または冷却の複数のパスを実施するステップであって、冷却システムが少なくとも一回使用されるステップ、
c. 熱間加工方法の後続部分のために熱間圧延の出口温度で、ブランク(11)または板材もしくは帯材の形態をした完成品を移送するステップ、
という連続したステップを含む方法をも目的とする。
【0085】
ブランク(11)の最小幅は典型的には、100mm、200mm、300mm、400mm、500mm、700mm、800mm、900mmおよび1000mmの値を取り得る。ブランク(11)の最大幅は典型的には、1500mm、2000mm、2500mm、3000mm、3500mm、4000mm、4500mmおよび5000mmの値を取り得る。
【0086】
ブランク(11)の最小厚みは典型的には、5mm、6.35mm、10mm、12mm、12.7mm、15mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm、150mm、200mm、および250mmの値を取り得る。典型的に鋳造プレートの最大厚みに近いものであるブランク(11)の最大厚みは典型的には、300mm、350mm、400mm、450mm、500mm、550mm、600mm、650mm、700mmおよび800mmの値を取り得る。
【0087】
ブランク(11)の最小長さは典型的には、2m、3m、4m、5mの値を取り得る。ブランク(11)の最大長さは、典型的には、6m、7m、8m、9m、10m、15m、20m、30m、40m、50m、75m、100m、150m、200m、300m、400mの値を取り得る。2つの制約条件が作用して、ブランク(11)の最大長さを制限する。第1の制約条件は、熱間圧延の開始前の圧延プレートの金属量である。最大長さの規模はこの場合、熱間圧延の圧延開始前のプレートの長さを熱間圧延の終了時のブランクの厚みで除し、熱間圧延の開始前のプレートの厚みを乗じたものとなる。ブランクの長さの第2の制限は、熱間圧延機が設置される工業設備によって左右される。非限定的例として、工業設備がリバース熱間圧延機とそれに続くタンデム熱間圧延機または第2のリバース熱間圧延機で構成されている場合、最大長さは、本発明に係るリバース圧延機とタンデム圧延機または第2のリバース熱間圧延機の間の距離によって課せられる。このことは、以上で列挙した熱間圧延前後の長さ、厚みの構成全てが、産業施設に応じて全て実行可能でない可能性があるということを暗に意味している。
【0088】
プレートは、熱間圧延の入口温度で供給される。プレートは、再加熱および/または均質化を受けた可能性がある。
【0089】
本発明に係るリバース熱間圧延機は、熱間圧延機を用いた複数回の熱間圧延および/または冷却パスを実施する。したがって、圧延の無い、ひいてはブランクの厚みの圧下の無い冷却が存在してもよい。この機能は、必要であれば、冷却システムの冷却能力の増強を可能にすることから、有利である。同様に、冷却の無い圧延パスも存在し得るが、本発明に係る方法は、本発明に係る冷却システムでの一回の冷却を伴うパスを少なくとも一回含む。プレートは、熱間圧延の入口温度で供給されることから、好ましくは最初の圧延パスの前に冷却は無い。端部の切断、縁部形成、より小さい複数のブランクへのブランクの切断、ブランクの待機、ブランク(11)またはプレートの熱間圧延の方向付けを変更するためのブランクの回転などの作業は、熱間圧延中の通常の作業である。言及されたステップの例は限定的なものではない。前記通常の作業の存在は、熱間圧延の中断ではなく、これらは熱間圧延の通常の作業の一部を成すものであるため、本発明の範囲を限定しない。
【0090】
その後、ブランクは、本発明に係るリバース圧延機の熱間圧延の出口温度で移送される。熱間圧延の出口温度は、好ましくは、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも220℃、好適には少なくとも240℃であり、好適には少なくとも260℃である。熱間圧延のこの出口温度は、第2の熱間圧延の実施と相容れる温度である。ブランク(11)は、熱間列上での全ての通常のステップ、すなわち熱間タンデム圧延機、第2のリバース熱間圧延機、熱間巻取りまたは熱間繰出しに向かって移送され得る。
【0091】
好適には、ブランクは、AA6xxx、AA5xxx、AA7xxx、AA3xxx、AA2xxx系のアルミニウム合金を含む。好適には、ブランクは、AA3003、AA3004、AA3207、AA3104,AA4017、AA4025、AA5006、AA5052、AA5083、AA5086、AA5088、AA5154、AA5182、AA5251、AA5383、AA5754、AA5844、AA6005、AA6009、AA6013、AA6014、AA6016、AA6022、AA6056、AA6061、AA6111、AA6181、AA6216、AA6316、AA6451、AA6501、AA6502、AA6603、AA6605、AA6607、AA7072、AA7075の中から選択された合金、および重量%で0.5未満、好ましくは0.3未満のSi、0.7未満、好ましくは0.3未満のFe、1.9未満、好ましくは1~1.5のMn、1.5未満、好ましくは0.5~1、好ましくは0.5~0.8のCu、0.15未満、好ましくは0.1未満のTi、0.5未満、好ましくは0.3未満、好ましくは0.05未満のMg、残りがアルミニウムおよび各々最大0.05、合計0.15以下の不可避の不純物という組成の合金を含む。任意にはブランクは、片面または両面がAA1xxx、AA4xxxまたはAA7xxx系および好適にはAA4004、A4104、AA4045、AA4343、AA7072の単数または複数のアルミニウム合金でクラッドされている。
【0092】
好適には、圧延機および冷却装置の保持部から解放された後のブランク(11)の表面温度の不均質性は20℃未満、そして好適には10℃未満である。本発明に係る冷却システムによって得られるこの特性は、製品の冶金学的特性の繰り返し性を改善するために有用である。ブランク(11)の不均質性は、縁部(111)上を除きかつ/または端部(112)上を除いたブランク(11)の最高点の温度とブランク(11)の最低点の温度の間の差として、そして代替的にはブランク(11)の最高点の温度とブランク(11)の最低点の温度の間の差として定義される。
【0093】
本発明が備わっていない熱間圧延機では、縁端部(1111)の熱交換表面を考慮に入れて、縁部(111)は当然のことながら、ブランク(11)の残りの部分よりも低温である。縁部(111)の最も低い温度は、ブランクの有効幅を削減するかまたはその破断を誘発し得る縁部上の割れまたは亀裂の1つの原因である。したがって、ブランク(11)の縁部(111)は、好適には、ブランク(11)の残りの部分に比べ縁部への放散を少なくすることによって、ブランクの残りの部分ほど冷却されない。好適には、その噴流(36)および(46)が縁部(111)への散布を行ない得るノズル(35)および(45)は、前記縁部(111)に散布しないように閉鎖される。図11aおよび11bは、上部傾斜部(30)および下部傾斜部(40)を通過する方向Sに直交する平面に沿った断面図で、非限定的な例を示している。いくつかの上部ノズル(35)および下部ノズル(45)は、縁部(111)に散布しないように閉鎖されている。
【0094】
本発明が備わっていない熱間圧延機では、端部における補足的熱交換表面を考慮に入れて、端部(112)は当然のことながら、ブランク(11)の残りの部分よりも低温である。端部(112)のより低い温度は、熱間圧延の際のブランクの係合の拒絶の1つの原因である。したがって、本発明を備えた圧延機では、端部(112)は、好適には、ブランク(11)の残りの部分に比べ端部(112)への放散を少なくすることによって、ブランクの残りの部分ほど冷却されない。好適には、その噴流(36)および(46)が端部(112)への散布を行ない得るノズル(35)および(45)は、これらの端部の通過の際に閉鎖される。この機能は、好適には、有利には応答時間が1秒未満、好適には0.5秒未満、そしてより好適には0.2秒未満である高速応答ゲート弁(49)による各ノズル(35)および(45)の個別補給によって実施可能である。高速応答ゲート弁(49)は、図5aおよび5bの非限定的例によって例示されている。したがって、一実施形態において、好適には熱間圧延の持続時間全体にわたり、端部(112)の上部面を伴う、冷却流体噴流(36)の放散を直接受ける上部表面(51)間の交差部は空である。したがって、一実施形態において、好適には熱間圧延の持続時間全体にわたり、端部(112)の下部面を伴う、冷却流体噴流(46)の放散を直接受ける下部表面(61)間の交差部は空である。
【0095】
冷却流体は、好適には、ブランク上で蒸気膜形成状態にある。蒸気膜形成とは、温度が十分に高い表面と流体の間に現われる薄い蒸気膜のことである(ライデンフロスト効果)。このことは、流体が蒸気膜形成状態にない表面の領域が存在する状況に比べて均質な熱交換を保証することから、有利である。
【0096】
好適には、熱モデルは、散布幅を計算し、端部(112)における冷却モードを選択し、好適には、熱モデルは、傾斜部(30)および(40)に補給する水力システムを予備調節し、その後各パスにおいて熱モデルは、ブランク(11)の計算または測定上の温度と所望の温度を比較し、熱モデルは、ブランク(11)の位置に応じてノズル(35)および(45)のゲート弁(49)を制御し、好適には、熱モデルは、上部ノズル(35)と下部ノズル(45)を異なる形で管理する。
【0097】
好適には、冷却システムの制御の原理は、図16に図式化されているようなものである。計算機上でコード化された熱モデルまたはオートマトンが、ブランクの幅に対応する散布幅を計算する。好適には、縁部の割れなどの欠陥を減少させる目的で可能なかぎり縁部(111)の冷却を少なくするため、散布幅から縁部(111)は除外される。熱モデルは、端部(112)における冷却モードを選択する。好適には、熱間圧延機内への係合を容易にし、ワニ口割れ現象を減少させる目的で可能なかぎり端部(112)の冷却を少なくするため、端部(112)に散布は行なわれない。好適には、該モデルは、ゲート弁(49)の開放後直ちに冷却流体噴流(36)および(46)が急速に確立されるように、傾斜部(30)および(40)に補給を行なう水力システムの予備調節を定義する。その後、各々のパスにおいて、熱モデルは、ブランク(11)の計算または測定上の温度と所望の温度を比較する。測定上の温度は、非限定的な例として、非接触赤外線高温測定による表面温度の測定によって、またはブランク(11)の表面上の接触測定によって得ることができる。計算上の温度は、表面温度に関するものであるかまたは平均温度に関するものであってよい。計算上の温度は、非限定的な例として、MSC Marcなどの熱シミュレーションソフトウェアを用いて計算され得る。所望の温度とブランク(11)の温度の比較によって、熱モデルは、ブランク(11)の位置および寸法を使用することにより、ノズル(35)および(45)のゲート弁(49)を制御する。ブランク(11)の位置は、計算または測定され得る。冷却システムの上部装置と下部装置の間にブランク(11)が存在しない場合、ノズル(35)および(45)は、非限定的な例として、下部ノズル(45)の噴流(46)が上部ロール(21)に放散することまたは上部ノズル(36)の噴流(36)が下部ロール(22)に放散することを回避するため、補給を受けない。ブランク(11)の、好適には縁部(111)上および/または端部(112)上を除くブランク(11)の、圧延機および冷却装置の保持部からの解放後の表面温度の最大の不均質性は20℃未満、好適には10℃未満であり得る。好適には、熱モデルは、ブランク(11)のブリッジまたはボート(bridges または boats)形成を回避するために、上部ノズル(35)および下部ノズル(45)を異なる形で管理する。好適には、ブランク(11)の上部面と下部面の間の温度差の絶対値は、10℃未満、より好適には7℃未満、より好適には5℃未満、より好適には2℃未満である。より好適には、ブランク(11)の上部面の温度は、実質的にブランク(11)の下部面の温度に等しい。
【0098】
縁部(111)および/または端部(112)を伴ってまたは伴わずに所望されるブランク(11)の温度の最大不均質性レベルおよび所望される温度は、生産すべき製品に左右される冶金学的な選択である。好適には、冷却システムの制御は、圧延パラメータを制御するリバース熱間圧延機の制御システムに統合されている。
【0099】
好適には、熱装置は、ブランク(11)の表面を、冷却流体のライデンフロスト温度未満に冷却しない。ライデンフロスト温度は、それより高くなると冷却流体が蒸気膜形成する温度である。ブランク上に噴霧された冷却液のライデンフロスト温度は、冷却液の性質およびその表面流量によって左右される。この温度の値は、典型的な冷却流体、エマルジョンおよび圧延用油および添加剤について典型的には、おおよそ300℃前後であり、これは、リバース圧延機上での熱間圧延の通常の温度よりも低い。冷却システムは、ブランク(11)の表面と芯部の間の温度の強い不均質性を誘発し得る。ブランク(11)に過度に長時間または過度に集中的に散布することで、ブランク(11)の表面温度は、瞬間的にライデンフロスト温度より低くなる可能性があり、これにより、こうして冷却されたブランク(11)の均質性および平均値における熱制御が喪失されるリスクが著しく増大すると考えられる。したがって、各パスにおいて、熱モデルは、後続するパスで想定されている散布がライデンフロスト温度よりも低いブランク温度を生成する危険性がないことを監視する。
【0100】
好適には、上部凸包絡(52)と下部凸包絡(62)の間をブランク(11)が通過する間のブランク(11)の平均温度の典型的な平均冷却速度Vは、おおよそV=C/eであり、ここでVは℃/sの単位であり、eはmmの単位のブランクの厚みであり、Cは400~1000℃/s×mm、好適には600~900℃/s×mm、より好適には700~800℃/s×mmの定数である。式V=C/eは、詳細には、ブランク(11)の表面がライデンフロスト温度よりも上にとどまることを求める近似である。冷却システムの上部凸包絡(52)と下部凸包絡(62)を通過した後のブランク(11)の℃の単位の平均温度DTの低下は、典型的におおよそDT=C/e×dであり、ここでdは前記凸包絡間のブランク(11)の一点の通過持続時間であり、ブランク(11)の速度は一定である。この式は、詳細には、ブランク(11)の表面がライデンフロスト温度よりも上にとどまることを求める近似である。好適には、前記式の適用のためのブランク(11)の厚み範囲は、最小が25mm、好適には50、好適には75mm、好適には100mm、好適には110mmであり、最大が200mm、好適には175mm、好適には150mm、好適には140mm、好適には130mm、好適には125mm、好適には120mmである。
【0101】
好ましい一実施形態において、AA6xxx合金、好適にはAA6016合金製ブランク(11)の熱間圧延のサイクル時間は、本発明に係る方法では、前記方法を用いない圧延に比べて少なくとも30秒、好適には少なくとも60秒、より好適には少なくとも90秒短縮される。好ましい一実施形態において、AA5182合金製ブランク(11)の熱間圧延のサイクル時間は、前記方法を用いない圧延に比べて、少なくとも15秒、好適には20秒、より好適には45秒短縮される。サイクル時間は、本発明のリバース熱間圧延機を用いた熱間圧延の最初のパスの開始と最後のパスの終了の間の持続時間である。
【0102】
好ましい別の一実施形態において、冷却システムは、多くとも114mmの厚みのブランク(11)について10秒以内で、好適には8秒以内で、400℃超の平均温度に至るまで少なくとも50℃だけ、ブランクの平均温度を低減させるように好適には1回だけ使用される。
【0103】
一実施形態において、冷却システムは、熱間圧延の間予め定義された熱経路上でブランク(11)の温度を制御することを可能にする。熱経路は、熱間圧延の持続時間中のブランク(11)の温度の推移である。熱経路は、合金、完成品に所望される特性および熱間圧延機の能力によって左右される冶金学的な選択である。
【0104】
好ましい一実施形態において、冷却システムは、等温熱経路上のブランク(11)を制御することを可能にする。熱経路は、熱間圧延中のブランク(11)の温度が、熱間圧延開始直前のプレートの温度に比べ±10℃変動しない場合、等温である。好適には、ブランク(11)の温度は、実質的に、熱間圧延の開始前のプレートの温度に等しい。
【0105】
図6によって例示されている第1の実施形態においては、各冷却システムについて、放散を受ける上部凸包絡(52)および放散を受ける下部凸包絡(62)は、圧延機のロールの近くにあり、好適には、放散を受ける凸包絡(52)および(62)からロール(21)および(22)までの方向Sに沿った最大距離D55およびD65は、ワークロール(21)および(22)の直径のうち最も大きいものの3倍よりも小さく、かつ/または前記凸包絡(52、62)の方向Sに沿った長さD56およびD66は、ワークロール(21)または(22)のうち最も大きいものの直径よりも小さい。好適には、凸包絡(52、62)は、実質的に向かい合っている。この実施形態は、ロール(21)および(22)の保持部から出た時点で直ちにブランク(11)を冷却することを可能にするため、有利である。リバース熱間圧延機の速度は、ブランク(11)の燃焼さらには破断を導くブランク(11)の加熱を回避するために制限されることが多いことから、このことは極めて有利である。このことは、熱間圧延機の生産性を改善することから、極めて有利である。実際、リバース熱間圧延機の速度は、ブランク(11)の燃焼さらには破断を導く加熱を回避するために制限されることが多い。
【0106】
この第1の実施形態において、好適には、前記リバース熱間圧延機の別の側に第2の冷却システムが存在しており、その非限定的な例が図7である。第2の冷却システムは、好適には、ワークロール(21)および(22)の軸を通る平面との関係において第1の冷却システムと対称である。この配置は、各々の圧延パスにおいて、同じ仕方で、リバース圧延機の保持部に入るまでそしてこの保持部から出た時点で直ちにブランク(11)を冷却することを可能にすることから、有利である。
【0107】
このシステムは、ブランクのリバース圧延の間、各パスにおいて、ブランクの温度をより良く制御できるようにし、このことは、製品の冶金学的品質にとっても前記リバース圧延機の生産性にとっても有益であることから、有利である。
【0108】
第1の実施形態の非限定的な他の実施例が、図9および図10によって提供されている。
【0109】
第1の好ましい実施形態において、ブランク(11)の熱間圧延のサイクル時間は、AA6xxx合金について、好適にはAA6016合金について少なくとも30秒、好適には60秒、より好適には90秒短縮される。
【0110】
第1の好ましい実施形態において、ブランク(11)の熱間圧延のサイクル時間は、好ましくは、AA5182合金について少なくとも15秒、好適には20秒、より好適には45秒短縮される。
【0111】
第2の実施形態は、熱間圧延中にブランク(11)を急速に冷却することを可能にする冷却システムである。
【0112】
この実施形態は、10秒間、好適には8秒間ブランク(11)の各点に散布を行なうように構想されている。当業者であれば、以下の特性を自らの特定の圧延機およびブランク(11)の速度に適応させることができるものである。
【0113】
非限定的に図13に例示されている第2の好ましい実施形態の好ましい一実施形態において、上部冷却装置は、ノズル(353、354)の少なくとも1対の傾斜部(303および304)、好適には3対の傾斜部(303および304)を含み、各々の傾斜部対(303および304)の中で、冷却流体噴流(363、364)は対向して方向付けられており、差β-α/2は正またはゼロ、好ましくはゼロであり、噴流(363、364)による放散を受けたブランク(11)の表面(513、514)は好適には1/3~2/3、好適には1/2の率で重なり、下部冷却装置はノズル(45)の少なくとも一つの傾斜部(40)、好適には8個の傾斜部(40)を含み、その冷却流体噴流(46)は円錐形で、実質的にブランク(11)に直交する軸を有している。角度βは、ノズル(353、354)の軸がブランク(11)の上部面に直交する直線Vと成す角度である。角度αは、前記ノズルにより生成される冷却流体噴流の円錐の角度である。これらの角度は、傾斜部(30)、ノズル(35)および噴流(36)と共に図5a中で図式化されている。この構成は、冷却流体を噴流(36)の重なり領域の少なくとも一部分の中に集中させこうして、ブランク(11)の端部に向かって流出しないように周縁上において十分な速度で冷却流体を吐出させ、これにより、ブランクの長さ全体を均一に冷却することが可能になるため、有利である。このシステムは、さらに、冷却流体の排出装置(38)のエネルギー消費量を減少させ、さらにはこれらの装置を無くすことを可能にする。
【0114】
非限定的に図12または図14によって例示されている第2の好ましい実施形態の別の一実施形態において、上部冷却装置は、ノズル(35)の少なくとも1つの傾斜部(30)、好適には6つの傾斜部(30)を含み、下部冷却装置は、ノズル(45)の少なくとも1つの傾斜部、および好適には8つの傾斜部(40)を含み、全ての傾斜部が円錐形の冷却流体噴流(36)および(46)を生成し、これらの冷却流体噴流の軸は実質的にブランク(11)に対し法線方向にあり、その噴流(36)の円錐の角度αは20°未満であり、好適には、噴流(36)の円錐の角度は実質的に15°である。この装置には、製造がより簡単であるという利点がある。円錐形噴流の20°未満、好適には実質的に15°の角度αは、ブランク(11)上での衝撃の際の冷却流体の速度の水平方向成分を制限し、結果としてブランク(11)上の冷却流体の流出を制限してその冷却を制御することを可能にする。
【0115】
第2の好ましい実施形態において、冷却システムは、図19に示されているように、多くとも114mmの厚みのブランク(11)について10秒以内で、好適には8秒以内で、400℃超の平均温度に至るまで少なくとも50℃だけブランク(11)の平均温度を低減させるように好適には1回だけ使用される。
【0116】
別の一実施形態においては、例えば冷却システムの下を2回通過させることによって、ブランク(11)をさらに冷却することが可能である。
【0117】
別の一実施形態においては、ブランク(11)の通過速度を低下させるかまたは放散を受ける表面(51)および(61)の長さを増大させることによって、より厚みのあるブランクを50℃だけ冷却することが可能である。非限定的な例として、図20で示されているように、140mmのブランク(11)を少なくとも15秒で、好適には少なくとも10秒で50℃だけ冷却することができる。
【0118】
別の一実施形態において、上部凸包絡(52)と下部凸包絡(62)の間をブランク(11)が通過する間のブランク(11)の平均温度の典型的な平均冷却速度Vは、おおよそV=C/eであり、ここでVは℃/sの単位であり、eはmmの単位のブランクの厚みであり、Cは400~1000、好適には600~900、より好適には700~800の定数である。式V=C/eは、詳細には、ブランク(11)の表面がライデンフロスト温度よりも上にとどまることを求める近似である。冷却システムの上部凸包絡(52)と下部凸包絡(62)を通過した後のブランク(11)の℃の単位の平均温度DTの低下は、典型的におおよそDT=C/e×dであり、ここでdは前記凸包絡間のブランク(11)の一点の通過持続時間であり、ブランク(11)の速度は一定である。この式は、詳細には、ブランク(11)の表面がライデンフロスト温度よりも上にとどまることを求める近似である。好適には、前記式の適用のためのブランク(11)の厚み範囲は、最小が25mm、好適には50、好適には75mm、好適には100mm、好適には110mmであり、最大が200mm、好適には175mm、好適には150mm、好適には140mm、好適には130mm、好適には125mm、好適には120mmである。
【0119】
第3の好ましい実施形態は、AA6xxx系のアルミニウム合金の圧延方法において:
a. AA6xxx系の合金製圧延プレートの鋳造ステップと、
b. 圧延プレートの均質化ステップ、そして任意にはそれに続く再加熱ステップと、
c. 熱間圧延の開始の第1の温度に基づいて第1の出口厚みを有するブランクへと圧延プレートを加工するための第1の熱間圧延ステップと、
d. こうして得られたブランクの、おおよそV=C/eという、ブランクの平均温度から第2の熱間圧延の開始の第2の温度に至るまでの典型的な平均冷却速度での冷却ステップであって、ここでVは℃/sの単位であり、eはmmの単位のブランクの厚みであり、Cは400~1000℃/s×mm、好適には600~900℃/s×mm、より好適には700~800℃/s×mmの定数であるステップと、
e. 帯材が少なくとも50%まで再結晶するような変形および温度条件下で、このように冷却されたブランクを最終的な熱間圧延厚みの帯材へと加工するための第2の熱間圧延ステップと、
f. 帯材から薄板への冷間圧延ステップと、
を含む、圧延方法である。
【0120】
第1の熱間圧延および冷却は、好ましくは本発明に係るリバース熱間圧延機を用いて実施される。ステップdの冷却の際に冷却システムは、好適には、400℃超の平均温度に至るまで少なくとも50℃だけ、ブランクの平均温度の典型的な平均冷却速度で平均温度を低減させるように好適には1回だけ使用される。好適には、この冷却に際してのブランクの厚み範囲は、最小が25mm、好適には50、好適には75mm、好適には100mm、好適には110mmであり、最大が200mm、好適には175mm、好適には150mm、好適には140mm、好適には130mm、好適には125mm、好適には120mmである。
【0121】
第3の好ましい実施形態の一実施形態において、ステップdの冷却の際に、冷却システムは、多くとも114mmの厚みのブランク(11)について10秒以内で、好適には8秒以内で、400℃超の平均温度に至るまで少なくとも50℃だけ、ブランクの平均温度を低減させるように好適には1回だけ使用される。
【0122】
発明者らは、意外にも、この方法が、本発明に係る方法を用いないで得られるものと少なくとも等しい機械特性、表面品質特性および耐食性特性を保ちながら生産性を改善することを可能にする、ということを発見した。これらの製品は、詳細には、車体の外部部品を製造するため、自動車産業において極めて有用であり得る。
【0123】
第3の好ましい実施形態においては、AA6xxx系の合金中でも、好ましい合金は、AA6005、AA6009、AA6013、AA6014、AA6016、AA6022、AA6056、AA6061、AA6111、AA6181、AA6216、AA6316、AA6451、AA6501、AA6502、AA6603、AA6605、AA6607である。
【0124】
第3の好ましい実施形態の一実施形態において、AA6xxx系の合金製プレートの組成は、重量%で0.5~0.8のSi;0.3~0.8のMg;最大0.3のCu;最大0.3のMn;最大0.5のFe;最大0.15のTi;残りがアルミニウムおよび各々最大0.05、合計で0.15以下の不可避的な不純物、そして好適には、0.6~0.75のSi;0.5~0.6のMg;最大0.1のCu;最大0.1のMn;0.1~0.25のFe;最大0.05のTi;残りがアルミニウムおよび各々最大0.05、合計で0.15以下の不可避的な不純物を含む合金である。
【0125】
第3の好ましい実施形態の別の一実施形態において、AA6xxx系の合金製プレートの組成は、重量%で0.7~1.3のSi;0.1~0.8のMg;最大0.3のCu;最大0.3のMn;最大0.5のFe;最大0.15のTi;残りがアルミニウムおよび各々最大0.05、合計で0.15以下の不可避的な不純物、そして好適には、0.8~1.1のSi;0.2~0.6のMg;最大0.1のCu;最大0.2のMn;0.1~0.4のFe;最大0.1のTi;残りがアルミニウムおよび各々最大0.05、合計で0.15以下の不可避的な不純物を含む合金である。
【0126】
鋳造の後、プレートは、好適には、典型的には少なくとも4時間の持続時間中そして好適には少なくとも8時間の間、500~570℃、好適には540~560℃の温度で均質化される。好ましい一実施形態において、均質化の最大温度は、高くとも555℃である。均質化は、単一のステップでまたは複数のステップで、燃焼のリスクを減少させるため温度が上昇する状態で行なわれ得る。
【0127】
第3の好ましい実施形態において、プレートはその後、リバース圧延機上での第1の熱間圧延中にブランクへと圧延される。第1の熱間圧延の圧延開始温度は、好適には470℃超、より好ましくは490℃超、そしてさらに好ましくは500℃超である。好ましくは、この第1の熱間圧延中、温度は450℃超、好ましくは470℃超そしてより好ましくは490℃超に維持される。好ましくは、第1の出口厚みは90mm~140mm、好適には100~130mm、より好適には110mm~120mmである。
【0128】
ブランクのこの厚みは、その熱間圧延列が連続的に、2つのリバース熱間圧延機で、そして任意には1つの熱間タンデム圧延機で構成されている工場において、極めて有利である。実際、このブランクの厚みは、第1のリバース圧延機と第2のリバース圧延機の間のその移送の際のブランクの厚みに対応する。このとき、冷却は、全く時間を無駄にすることなく行なわれ得る。
【0129】
その後ブランクは、ブランクの平均温度から第2の熱間圧延の開始の第2の温度まで、少なくとも5℃/sの冷却速度にしたがって冷却される。有利には、第1の熱間圧延および冷却は、特に図12~15によって例示されているような本発明に係るリバース熱間圧延機を用いて実施される。
【0130】
冷却後、ブランクは、第2の熱間圧延によって、帯材へと圧延される。第2の熱間圧延は、複数の熱間圧延機、例えば第2のリバース熱間圧延機とそれに続くタンデム圧延機上で、または第1の熱間圧延のために使用されたリバース熱間圧延機とそれに続くタンデム圧延機上で、連続的に実施され得る。好ましくは、第2の熱間圧延の開始温度は380~450℃、より好ましくは400~440℃、そしてより好適には420~435℃である。帯材は、冷却後の帯材が少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、そしてより好ましくは少なくとも90%、そして特に好適には少なくとも98%再結晶させられるような条件下で、熱間圧延の最終厚みまで圧延される。それぞれ少なくとも50%、80%、90%および98%の再結晶とは、厚みを介してかつ幅の少なくとも3点において測定された再結晶率がそれぞれ少なくとも50%、80%、90%および98%であることを意味する。典型的には、再結晶化は、厚みを介して変動し、表面で完全であり、中間の厚みにおいて不完全であり得る。好ましい再結晶率は、帯材の合金に左右される。
【0131】
前記再結晶を得るためには、第2の熱間圧延の出口温度が少なくとも345℃、好ましくは少なくとも350℃そしてより好適には少なくとも355℃であることが有利である。第2の圧延の最後のパスの際の厚みの圧下は、再結晶を保証するための1つのパラメータである。第2の熱間圧延の最後のパスの前記圧下は、少なくとも25%、好適には少なくとも30%、好適には40%、そしてより好適には少なくとも45%である。第2の熱間圧延で得られる帯材の典型的厚みは、4~10mmである。
【0132】
帯材はその後、薄板へと冷間圧延される。本発明の方法によると、機械特性、成形性特性、表面状態特性または腐食特性を得るために、熱間圧延と冷間圧延の間または冷間圧延中に焼鈍および/または溶体化処理を実施する必要がない。好ましくは、熱間圧延と冷間圧延の間または冷間圧延中に焼鈍および/または溶体化処理は実施されない。薄板は、典型的に、0.5~2mmの厚みを有する。好ましい一実施形態において、冷間圧延による圧下は70%~80%である。別の好ましい一実施形態において、帯材と薄板の間の圧下率は、最も有利な表面品質を得るためには、少なくとも80%である。
【0133】
好適には、ステップfの後、補足的ステップ、すなわち
g. このように得られた薄板を、連続熱処理炉内で溶体化処理し焼入れするステップ、
を実施することができる。
【0134】
前記連続熱処理炉は、好適には、560℃での等価保持持続時間
【数4】
が30秒未満、好ましくは25秒未満、より好ましくは20秒未満となるような形で機能し、この等価保持持続時間は、式
【数5】
を用いて計算され、
Qは、200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kである。
【0135】
好適には、溶体化処理および焼入れの後、予備時効が任意に実施され、冶金学的質別T4に達するような形で薄板は周囲温度で時効され、その最終的な形状を得るまで切断され成形され、塗装され、焼成により硬化される。
【0136】
薄板は、560℃での等価保持持続時間
【数6】
が20秒未満となるように機能する連続熱処理炉であって、この等価保持持続時間が、式
【数7】
を用いて計算され、Qが200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kである連続熱処理炉内での溶体化処理の後、98秒という560℃での等価保持持続時間
【数8】
で溶体化処理した後に得られる最大引張強度の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の引張強度に達する。
【0137】
冷間圧延に由来する薄板は、溶体化処理により容易に処理できることが理由であるにせよ、極めて有利である。車体の外部板材向けの品質と相容れる優れた表面状態を得ることを目的とする従来の作業には、概して、本発明によって得られる薄板に比べて、一連の加工工程間の補足的熱処理が含まれる。この補足的熱処理が存在するため、当業者は、供給されたままの冶金学的質別において十分高い機械強度を得るための連続的焼鈍を伴いかつ塗装の後焼成を伴う溶体化処理ライン上で、高い温度および長い等価保持持続時間を使用する必要がある。これとは異なり、本発明の冷間圧延された薄板は、560℃での等価保持持続時間
【数9】
が短く、典型的には25秒未満となるように機能する連続的焼鈍ライン内での溶体化処理を使用することができ、ここで等価保持持続時間は、式
【数10】
を用いて計算され、Qは200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kである。
【0138】
概して、連続的焼鈍ラインは、400℃未満の金属の温度について薄板の加熱速度が10℃/s以上であり、530℃超で経過する時間が15秒~90秒であり、0.9~1.1mmの厚みについて焼入れ速度が10℃/s以上、好ましくは15℃/s以上であるような形で機能する。溶体化処理により、金属は、固相線の温度より低いもののこれに近い温度、つまり概して530℃超、570℃未満の温度に到達することになる。溶体化処理後の巻取り温度は、好ましくは50℃~90℃、好ましくは60℃~80℃である。
【0139】
溶体化処理と焼入れの後に、薄板は、冶金学的質別T4に達するような形で時効され得、その後最終的な幾何形状を得るまで切断され成形され、塗装され、焼成によって硬化させられる。
【0140】
本発明の方法は、高い引張り弾性限界および冷間プレス作業に適合した成形性、ならびに部品上の優れた表面品質および高い耐食性を高い生産性と組合わせた、自動車産業向けの薄板の製造のために、極めて有用である。
【0141】
第4の好ましい実施形態において、熱間圧延機は、第1の好ましい実施形態と第2の実施形態を組合わせている。
【0142】
非限定的な一実施例が図15に示されている。熱間圧延機は、その生産性を改善できるようにする冷却システムに取り囲まれている。第3の冷却システムは、熱間圧延の後続部分に向かう移送中に、高速冷却を実施することを可能にする。この第4の実施形態は、リバース熱間圧延機上の生産性の増大、圧延の後続部分に向かう移送中の生産性に影響の無い高速冷却を組合わせることを可能にし、その全体が、溶体化処理および焼入れラインの生産性を改善しながら優れた表面品質を有するAA6xxx合金板材の供給を可能にする。
【0143】
実施例1:
図7により例示されている本発明に係るリバース熱間圧延機には、ワークロールの両側に対称に設置された2つの冷却システムが含まれる。これらの2つの冷却システムの各々は、上部冷却装置と下部冷却装置で構成されている。上部冷却装置は、ロール(21)の方に方向付けられたノズル(35)の傾斜部(30)を含んでいる。各々の上部ノズルの傾斜部は、保護部品(37)によって保護されている。下部冷却装置は、ローラ(23)の軸の平面の下方に設置された下部ノズル(45)の2つの傾斜部(40)、すなわちロール(22)からの第1のローラ(23)と第2のローラ(23)との間の第1の傾斜部(40)および、第2のローラと第3のローラ(23)との間のノズル(45)の第2の傾斜部(40)を含んでいる。ローラ(23)は、保護部品(47)の設置を必要としない程度に十分に近接している。ノズル(35)および(45)は、噴霧により中実の円錐形噴流を生成する。ノズル(45)は、ローラ(23)に対しほぼ接線方向である円錐形噴流を生成する。ノズル(35)および(45)は高速応答ゲート弁により供給され、その応答時間は0.2秒である。上部放散を受ける表面の凸包絡は、実質的に下部放散を受ける表面の凸包絡と向かい合っている。前記凸包絡は、リバース熱間圧延機の2本のワークロールのうち最も大きいものの直径の3倍未満のところにある。一表面あたりの平均表面流量は、約1200l/min/mである。冷却流体は、ブランク(11)の熱間圧延の際にこのブランクを潤滑するのに役立つ圧延機エマルジョンである。冷却流体は、ブランク(11)の表面上で蒸気膜形成状態にある。
【0144】
各熱間圧延パスにおいて、厚み500mmのプレートを、本発明に係る冷却を伴って熱間圧延した。図18は、リバース熱間圧延の最後のパスから出た直後の、幅2000mm、厚み50mmおよび長さ5000mmのAA6016合金製ブランクの上部表面における温度場を示す。縁部および端部を含めたブランクの表面温度の不均質性は、長さにおいても幅においても10℃である。
【0145】
同じ合金の同一のプレートを同様に、ただし本発明の冷却システムを使用せずに熱間圧延した。図17は、リバース熱間圧延の最後のパスから出た直後の、図18に提示されたものと同じ寸法の得られたブランクの上部表面における温度場を示す。ブランクの表面の表面温度の不均質性は、本発明の冷却システムの使用が無い場合に、長さにおいても幅においても25℃である。
【0146】
圧延の設計中のブランクの冷却は、本発明を用いない実践に対し本発明を使用することによるブランクの熱的均一性の顕著な改善に加えて、リバース熱間圧延サイクル時間を90秒短縮することを可能にする。
【0147】
幅1480mmおよび厚み510mmのAA5182合金製の2枚のプレートを、第1のものは本発明を用いて、第2のものは本発明を用いないで、熱間圧延した。第1のプレートの熱間圧延サイクル時間は、第2のものよりも64秒短かった。
【0148】
実施例2:
ノズル(35)の6つの上部傾斜部(30)とノズル(45)の8つの下部傾斜部(40)を有する冷却システムおよびワークロール(21、22)を含む本発明に係る熱間圧延機が、図14に表わされている。これは、ワークロール(25、26)を含む第2のリバース圧延機を含む熱間列の一部を成す。これら2つのリバース熱間圧延機は、熱間タンデム圧延機をさらに含む熱間列の一部を成す。上部傾斜部のノズル(35)は、ブランク(11)の平面に直交して方向付けられている。上部ノズル(36)の噴流は、中実の円錐形であり、その円錐の角度は実質的に15°である。冷却流体は、熱間圧延の際にワークロールの潤滑に役立つエマルジョンである。下部傾斜部(40)のノズル(45)は、ブランク(11)の下部面に向かって直交して方向付けられている。下部ノズルの噴流は、中実の円錐形であり、その円錐の角度は実質的に90°である。放散を受ける表面(52)および(62)は、実質的に向かい合っている。
【0149】
システムは、デジタルシミュレーションによって得られた図19のグラフに示されているように、厚み114mmの薄板を470℃の温度から420℃の平均温度まで8秒間で冷却することができる。冷却開始から20秒後、ブランクの厚みにおける不均質性は約9℃であり、冷却開始から30秒後、ブランクの厚みにおける不均質性は約2℃である。表1中、AA6xxx系の合金製の114および109mmのブランクである例DおよびEは、より高温の縁部または端部を有するように特別な調節の無いシステムを用いて冷却されたものである。表1中に記載されている温度は、ブランクの表面で行なった測定値である。第1のリバース熱間圧延機と冷却システムの間および冷却システムと第2のリバース熱間圧延機の間の30秒超の移送時間から見て、ブランクDおよびEの表面温度は、前記ブランクの平均温度ならびに芯部における温度を表わすものである。したがって、板材DおよびEは、57および75℃だけ冷却された。
【0150】
【表1】
【0151】
表1に重量%の単位で組成が示されている5つのプレートを鋳造した。表1は、同様に、加工方法も詳述している。A欄およびB欄は、表面品質の観点から見た要件の無い内部車体要素を生産するためのプレート、およびそのブランク、次に帯材、次に薄板への加工ステップに関して記載している。C欄は、表面品質の観点から見た重要な要件のある外部車体要素を生産するためのプレート、およびそのブランク、次に帯材、次に薄板への典型的な加工ステップに関して記載している。これは、熱間圧延中に冷却を行わない基準例である。D欄およびE欄は、本発明の実施例である。
【0152】
5つのプレートA、B、C、DおよびEを表1の条件により均質化した。プレートA、B、DおよびEを、第1のリバース熱間圧延に向かって移送した。プレートCを周囲温度まで冷却し、その後第1の熱間圧延の開始温度に再加熱し、第1のリバース熱間圧延に向かって移送した。5つのプレートを第1の熱間圧延機により、厚み109mmのブランクに圧延されたプレートEを除いて、厚み114mmのブランクに圧延した。その後、第1の熱間圧延機の冷却システムを通過して第2のリバース熱間圧延機に向かって、5つのブランクを移送した。ブランクA、BおよびCは、散布を受けることなく冷却システムを通過し、第2のリバース熱間圧延機に向かうそれらの移送中、空気による自然冷却のみを受けた。ブランクDおよびEは、作動中の冷却システムを通過し、したがって表1に記されている表面温度まで冷却された。その後、5つのブランクを第2のリバース熱間圧延機で圧延し、次に、タンデム熱間圧延機を用いて帯材へと圧延した。タンデム熱間圧延機から出た時点で、表1中の特性にしたがって、帯材を巻取った。冷却後、5つのコイラーを薄板へと冷間圧延した。
【0153】
最後の熱間圧延パスの後で巻取り前に、帯材C、DおよびEの試料を採取した。これらの試料を周囲温度で水タンク中に浸漬させることによって、高速冷却した。その後、実験室内において各試料を異なる温度に加熱することによって、再結晶速度試験を実施し、その後、熱間圧延後のコイラーの冷却と同じように試料を冷却する。その後、メタログラフィを実施し(図25)、再結晶率を評価した(表2)。
【0154】
【表2】
【0155】
薄板A、B、DおよびEについて、ローピング(roping)状の表面状態の品質を特徴付けした。ローピングは、以下の仕方で測定される。およそ270mm(圧延方向を横断する方向)×50mm(圧延方向)の試料を、薄板内で切断する。その後、圧延方向に直交する、すなわち試料の長さ方向に、15%の引張による予備変形を印加する。その後、試料をP800タイプの研磨布紙の作用に付して、ローピングを明らかにする。
【0156】
本発明にしたがって製造された薄板DおよびEは、薄板Dについては図23に、そして薄板Eについては図24に示されるように、車体外部要素を製造するために適合した表面品質を有する。薄板Aについては図21に、そして薄板Bについては図22に示されるように、薄板AおよびBについては、これは該当しない。該冷却システムは、車体外部要素を生産するのに役立ち表面品質について特定的に特徴付けされていない薄板Cの場合のように、再加熱を削除したより経済的な方法を用いて表面品質を得るためのその有用性を実証するものである。
【0157】
3つの薄板C、DおよびEの溶体化処理の速度を評価するために、以下の特徴付けを行なった。3つの薄板C、DおよびEについて、最終厚みに至るまでの冷間圧延の後、試料を採取した。まず、570℃で流動床炉内での試料の溶体化処理時間を変動させることにより、試料についてさまざまな溶体化熱処理を実施した。試料を完全に溶体化処理するために、570℃で90秒の長い浸漬時間を用いた。570℃で90秒の持続時間は、式
【数11】
を用いて、560℃で98秒の持続時間と等価であり、ここでQは、200kJ/molの活性化エネルギーであり、R=8.314J/mol/Kである。
【0158】
合金の不完全溶解の溶体化処理を得るために、570℃の流動床炉内でより短い溶体化処理の持続時間を使用した。これらの溶体化熱処理全てには、80℃に至るまでの水焼入れおよび80℃で8時間の予備時効処理が後続していた。これらの溶体化処理、その後の焼入れそしてその後の予備時効という異なる熱処理の後、冶金学的質別T6に到達するべく油浴内において205℃で2時間、試料を時効した。
【0159】
その後、引張り試験を実施した。冶金学的質別T6での最終時効処理の後に得た弾性限界(Rp0.2)を、試料の溶体化品質の指標として使用した。実際、薄板内に存在する析出状態に応じて、これらの析出物を溶解させるために必要な溶体化処理温度(ここでは570℃)での溶体化処理の持続時間は、変動する。溶体化処理を実施する生産機械上での生産性の理由から、溶体化処理持続時間は可能なかぎり短かいことが有利である。
【0160】
3つの薄板C、DおよびEの引張り試験の結果は、表3中および図26に表示されている。このグラフ上では、測定された各々の弾性限界(T6YS)は、570℃で流動床内において90秒の溶体化処理時間の後の同じ薄板について得た弾性限界(T6YSmax)を用いて正規化される。
【0161】
図26は、本発明に係る2つの薄板DおよびEの溶体化処理反応速度が、比較例Cのものよりもはるかに速いことを示している。実際、570℃の流動床内への50秒の浸漬の後、本発明に係る実施例DおよびEの質別T6での弾性限界は、質別T6での最大弾性限界の99%超に達しており、一方比較例Cは質別T6での最大弾性限界の98%超にすぎない。同様に、570℃の流動床内での30秒の溶体化処理の後、本発明に係る実施例DおよびEの質別T6でのその弾性限界は、質別T6での最大弾性限界の98%超に達しており、一方、比較例Cは質別T6での最大弾性限界の96%にある。したがって、本発明は、さらに、溶体化処理の生産性を加速させることを可能にする。
【0162】
【表3】
【符号の説明】
【0163】
11 ブランク
21 上部ワークロール
22 下部ワークロール
23 ローラ
30 傾斜部
35 ノズル
36 冷却流体噴流
40 傾斜部
45 ノズル
46 冷却流体噴流

図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】