(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】カルボン酸類化合物、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C07C 59/125 20060101AFI20230626BHJP
C22B 3/32 20060101ALI20230626BHJP
C07C 51/367 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C07C59/125 A CSP
C22B3/32
C07C51/367
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518324
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2020123531
(87)【国際公開番号】W WO2022000881
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010599602.9
(32)【優先日】2020-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522476750
【氏名又は名称】北京博萃循環科学技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOTREE CYCLING SCI & TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 303, Unit 3, Building 5, Yichengdongyuan, Haidian District, Beijing 100083, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】王雪
【テーマコード(参考)】
4H006
4K001
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB80
4H006AC43
4H006AC46
4H006BB25
4H006BC10
4H006BE21
4H006BP10
4H006BS10
4K001AA02
4K001AA06
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA19
4K001AA30
4K001AA34
4K001AA36
4K001DB30
4K001DB34
(57)【要約】
本発明は式(I)のカルボン酸類化合物、その調製方法及び使用を開示する。当該カルボン酸類化合物は金属イオンの抽出分離に使用する時に、分離係数が高く、逆抽出酸性度が低く、担持率が高く、逆抽出率が高く、且つ安定性が高く、水溶性が低いことによって、抽出プロセスを安定させ、環境汚染を低減させ、成分を低減させることができる。本発明のカルボン酸類化合物は三元電池の回収、電池レベル硫酸ニッケルの調製などの多種の体系に使用できる。
【化1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩。
【化1】
(R
1及びR
2は独立してC
3~C
12直鎖又は分岐アルキル基である。)
【請求項2】
R
1はC
4~C
9直鎖又は分岐アルキル基であり;
及び/又は、R
2はC
3~C
10直鎖又は分岐アルキル基であり;
及び/又は、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と塩基とをモル比1:1の割合で、反応させて調製して得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩。
【請求項3】
R
1はC
4~C
9直鎖アルキル基、例えばn-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基又はn-オクチル基であり;
及び/又は、R
2はC
6~C
8直鎖又は分岐アルキル基であり、例えばn-ヘキシル基、n-オクチル基又はイソオクチル基(例えば
【化2】
及び/又は、R
1及びR
2の総炭素数nは10~20であり、例えばnは12、14又は16である、ことを特徴とする請求項2に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩。
【請求項4】
前記式Iで表されるカルボン酸類化合物は下記の化合物
【化3】
から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩。
【請求項5】
溶媒中に、塩基の作用で、式IIで表される化合物と式IIIで表される化合物とを反応させてもよいことを含み、
【化4】
Xはハロゲンであり、R
1及びR
2の定義は請求項1~4のいずれか一項に記載の通りであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩。
【請求項6】
前記ハロゲンはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、例えば塩素又は臭素、また、例えば臭素であり;
及び/又は、前記溶媒はエーテル類溶媒であり、前記エーテル類溶媒は例えばテトラヒドロフランであり;
及び/又は、前記溶媒と前記式IIIで表される化合物との体積質量比の使用量範囲は1~10mL/g、例えば5.3、6.25、7.0、7.1又は7.7mL/gであり;
及び/又は、前記塩基はアルカリ金属又はアルカリ金属水素化物、例えばナトリウム又は水素化ナトリウムであり;
及び/又は、前記塩基と前記式IIで表される化合物とのモル比は(1~1.5):1、例えば1.1:1、1.2:1又は1.35:1であり;
及び/又は、前記式IIで表される化合物と前記式IIIで表される化合物とのモル比は1:(1~1.5)、例えば1:1.1又は1:1.2であり;
及び/又は、前記反応の温度は60~70℃であり;
及び/又は、前記反応の時間は6~12時間、例えば10時間である、ことを特徴とする請求項5に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物の調製方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩の抽出剤としての使用。
【請求項8】
請求項7に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩の抽出剤としての使用であって、
前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物中の一種又はそれらの組み合わせであり;
及び/又は、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩は抽出剤として金属イオンの抽出・分離に用い;好ましくは、前記金属イオンはNi
2+、Co
2+及びMn
2+中の一種又はそれらの組み合わせであり、前記金属イオンはFe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、Cd
2+及びCa
2+中の一種又はそれらの組み合わせも含んでもよい、前記金属イオンはさらに、Mg
2+及び/又はLi
+を含んでもよい、ことを特徴とする請求項7に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩の抽出剤としての使用。
【請求項9】
前記抽出剤は以下の化合物
【化5】
から選ばれるいずれか一種又はそれらの組み合わせであり、
及び/又は、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩が抽出剤として金属イオンの抽出・分離に用いると、前記金属イオンは「Ni
2+、Co
2+及びMn
2+の少なくとも一種」と「Fe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、Cd
2+、Ca
2+、Mg
2+及びLi
+の少なくとも一種」の組み合わせであり、好ましくは、前記金属イオンはNi
2+、Co
2+、Mn
2+、Fe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、Cd
2+、Ca
2+、Mg
2+及びLi
+の組み合わせである、請求項8に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩の抽出剤としての使用。
【請求項10】
抽出剤及び希釈剤を含んで、前記抽出剤は請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物及び/又は請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含む、ことを特徴とする抽出組成物。
【請求項11】
前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1、例えば1:1であり;好ましくは、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含み、より好ましくは、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1であり;
及び/又は、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば200番号ソルベントナフサ又は260番号ソルベントナフサ)、灯油、Escaid 110、ヘキサン、ヘプタン及びドデカン(例えばn-ドデカン)の一種又はそれらの組み合わせであり;好ましくは、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば260番号ソルベントナフサ)、ドデカン(例えばn-ドデカン)及びEscaid 110の一種又はそれらの組み合わせであり;
及び/又は、前記抽出剤と前記希釈剤のモル体積比は0.1mol/L~1.5mol/L、好ましくは0.16mol/L~0.85mol/L、例えば0.16mol/L、0.33mol/L又は0.6mol/Lである、ことを特徴とする請求項10に記載の抽出組成物。
【請求項12】
抽出剤を含む有機相で金属イオンを含む水相を抽出し、金属イオンを含む有機相が得られるステップを含む抽出方法であって、
前記抽出剤を含む有機相において、前記抽出剤は請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物及び/又は請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含み;
前記金属イオンを含む水相において、前記金属イオンはNi
2+、Co
2+、Mn
2+、Fe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、Cd
2+及びCa
2+の一種又はそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする抽出方法。
【請求項13】
前記金属イオンは「Ni
2+、Co
2+及びMn
2+の少なくとも一種」と「Fe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、Cd
2+、Ca
2+、Mg
2+及びLi
+の少なくとも一種」の組み合わせであり、好ましくは、前記金属イオンはNi
2+、Co
2+、Mn
2+、Fe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、Cd
2+、Ca
2+、Mg
2+及びLi
+の組み合わせであり;
及び/又は、前記抽出剤を含む有機相において、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1、例えば1:1であり、好ましくは、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含み;より好ましくは、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1であり;
及び/又は、前記抽出剤を含む有機相は希釈剤も含み、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば200番号ソルベントナフサ又は260番号ソルベントナフサ)、灯油、Escaid 110、ヘキサン、ヘプタン及びドデカン(例えばn-ドデカン)の一種又はそれらの組み合わせであり;好ましくは、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば260番号ソルベントナフサ)、ドデカン(例えばn-ドデカン)及びEscaid 110の一種又はそれらの組み合わせであり;
前記抽出剤と前記希釈剤のモル体積比は0.1mol/L~1.5mol/L、好ましくは0.16mol/L~0.85mol/L、例えば0.16mol/L、0.33mol/L又は0.6mol/Lであり;
及び/又は、前記抽出剤を含む有機相と前記金属イオンを含む水相の体積比は1:(1~10)、好ましくは1:(1~5)、例えば1:1、1:2又は1:4であり;
及び/又は、前記抽出方法において、振とうによって物質移動させ;
及び/又は、前記抽出の温度は10℃~50℃、好ましくは25℃~40℃であり;
及び/又は、前記抽出の時間は5~60分間、例えば15分間又は30分間である、ことを特徴とする請求項12に記載の抽出方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の抽出方法で得られた金属イオンを含む有機相を酸の水溶液と組み合わせしてもよいステップを含む、ことを特徴とする逆抽出方法。
【請求項15】
前記酸の水溶液のモル濃度は0.5mol/L~5mol/L、好ましくは1~3mol/L、例えば1mol/L又は2mol/Lであり;
及び/又は、前記酸の水溶液中の酸は無機酸であり、好ましくは前記の無機酸は塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸中の一種又は複数種であり、より好ましくは硫酸であり;
及び/又は、前記金属イオンを含む有機相と前記酸の水溶液の体積比は(1~50):1、より好ましくは(10~20):1、例えば10:1又は15:1である、ことを特徴とする請求項14に記載の逆抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月28日に出願された出願番号が2020105996029である中国特許出願に対して優先権を主張するものである。前記中国特許出願の全ての内容を引用により本出願に援用する。
【0002】
本発明はカルボン酸類化合物、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電気自動車の急速な進展と普及につれて、リチウムイオン電池の需要規模も拡大している。ニッケル・コバルト・マンガン三元系正極材は、サイクル特性がよく、構造が安定し、コストパフォーマンスに優れ、これは新たなリチウムイオン電池正極材料であり、三元系正極材の前駆体製品の主な原料はニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩である。
【0004】
コバルトの多くはニッケルにと共に生じ、ニッケルラテライト鉱などの、鉱物において同時に現れることが多い。様々な業界で、ニッケル、コバルトなどの有価金属を含むスラッジ、例えば廃棄動力電池材料、ニッケル・コバルト含有スラッジ、廃棄触媒などが生成されて、これらのスラッジの多くは、同時に高いマンガンを含有しており、高い回収価値を有しており、これらを回収して、ニッケル・コバルト・マンガン三元系前駆体の調製に使用することができる。
【0005】
溶媒抽出技術は溶液から種々の金属を分離・抽出する有効技術であり、分離効率が高く、プロセスやデバイスが簡単で、操作が連続化され、自動制御を実現しやすいなどの利点があり、従来より多くの研究者に注目され発展し続けている。環境保護や資源リサイクルの緊急性に伴い、抽出システムのエネルギー消費、酸消費、汚水排出及び生産能力などに対してもより高い要求が出されているため、環境及び経済のニーズに合わせるため、抽出剤の抽出効率、分離効果及び溶解性などの性能を向上させる必要がある。
【0006】
酸性リン酸類抽出剤P204、P507、C272、中性錯体抽出剤TBP、キレート抽出剤LiX84及びカルボン酸類抽出剤Versatic10、Versatic911などの常用のカチオン交換抽出剤は、抽出分離効果に優れているため、金属元素分離及び精製に広く用いられている。中国特許出願公開第109449523号では、まず仕込液をpH=4.2~4.5に調節し、P204で仕込液を抽出して、P204ラフィネート及び担持有機相が得られ、硫酸で担持有機相を逆抽出して硫酸マンガンが得られ;前記P204ラフィネートをpH=4.5~5に調節し、C272で前記P204ラフィネートを抽出してC272ラフィネート及び担持有機相が得られ、硫酸で前記C272担持有機相を逆抽出し、硫酸コバルト溶液が得られ;C272ラフィネートをpH=5~5.5に調節し、P507を採用してこのラフィネートをNi抽出し、硫酸でP507担持有機相を逆抽出し、硫酸ニッケル溶液が得られる廃棄リチウムイオン電池総合回収方法が開示されている。しかし、これらの抽出剤は分離過程において顕著な欠点も存在する:P507/P204はニッケルコバルトの分離に用いられるが、リチウムイオン電池正極材料の回収の面で、ニッケル・コバルト・マンガンを同時に抽出できず、ニッケル、コバルト、マンガンをそれぞれ回収するプロセスはコストが高く、且つ逆抽出酸性度が高く、汚染が深刻である;C272はニッケル元素を抽出する前にカルシウム、マグネシウムを抽出し、操作工程が複雑で、不純物除去のコストが高い;Versatic10抽出剤は水相への溶解度が高く、プロセスの不安定さと環境汚染を招きやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第109449523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の不足について、本発明はカルボン酸類化合物、その調製方法及び使用を提供する。前記カルボン酸類化合物は抽出剤として用いられ、イオン(特にニッケル・コバルト・マンガンイオン)に対して良好な選択性を有し、逆抽出酸性度が低く、且つ水溶性が低く、安定性が高く、コストが低いなどの利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の技術案により前記技術的課題を解決する。
【0010】
本発明は、式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩を提供する。
【0011】
【0012】
(ここで、R1及びR2は独立してC3~C12直鎖又は分岐アルキル基である。)
【0013】
ここで、好ましくは、R1はC4~C9直鎖又は分岐アルキル基であり、より好ましくは、R1はC4~C9直鎖アルキル基、例えばn-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基又はn-オクチル基である。
【0014】
ここで、好ましくは、R2はC3~C10直鎖又は分岐アルキル基であり、より好ましくは、R2はC6~C8直鎖又は分岐アルキル基であり、例えばn-ヘキシル基、n-オクチル基又はイソオクチル基である(例えば
【0015】
【0016】
ここで、好ましくは、R1及びR2の総炭素数nは10~20であり、例えばnは12、14又は16である。
【0017】
ここで、好ましくは、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物は下記の化合物から選ばれるいずれ一つである。
【0018】
【0019】
ここで、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩は、一般的に式Iで表されるカルボン酸類化合物と塩基とを反応させることにより調製して得られ、例えば前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と塩基とをモル比1:1の割合で、反応させて調製して得られる。前記塩基は当該分野の通常の塩基、例えばアルカリ金属水酸化物又はアンモニア水、また水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はアンモニア水であってもよく、これにより前記カルボン酸類化合物の塩はナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩であってもよい。
【0020】
ここで、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩の調製方法の条件は、当該分野において一般的に酸と塩基を利用して塩を生成するための反応の通常条件であってもよい。
【0021】
ここで、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物は自然物から抽出してもよく、あるいは常法で合成してもよく、抽出に用いる場合、抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物中の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)であってもよい。
【0022】
さらに、本発明は、溶媒中に、塩基の作用で、式IIで表される化合物と式IIIで表される化合物とを反応させてもよいことを含む、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の調製方法を提供する。
【0023】
【0024】
(ここで、Xはハロゲンであり、R1及びR2の定義は前記と同じである。)
【0025】
前記調製方法において、好ましくは、前記ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、例えば塩素又は臭素、また、例えば臭素である。
【0026】
前記調製方法において、前記溶媒は当該分野におけるこの種類の反応の常用の溶媒、例えばエーテル類溶媒であってもよく、前記エーテル類溶媒は、例えばテトラヒドロフランである。
【0027】
前記調製方法において、前記溶媒の使用量は当該分野におけるこの種類の反応の通常の使用量であってもよく、反応の進行に影響を与えないようにすればよい。例えば、前記溶媒と前記式IIIで表される化合物との体積質量比の使用量範囲は1~10mL/g、例えば5.3、6.25、7.0、7.1又は7.7mL/gである。
【0028】
前記調製方法において、前記塩基は当該分野におけるこの種類の反応の常用の塩基、例えばアルカリ金属又はアルカリ金属水素化物であってもよく、例えばナトリウム又は水素化ナトリウムである。
【0029】
前記調製方法において、前記塩基の使用量は当該分野のこの種類の反応の通常の使用量であってもよく、例えば、前記塩基と前記式IIで表される化合物とのモル比は(1~1.5):1、例えば1.1:1、1.2:1又は1.35:1である。
【0030】
前記調製方法において、前記式IIで表される化合物と前記式IIIで表される化合物とのモル比は当該分野におけるこの種類の反応の通常の割合であってもよく、1:(1~1.5)が好ましく、例えば1:1.1又は1:1.2である。
【0031】
前記調製方法において、前記反応の温度は当該分野におけるこの種類の反応中の通常の温度であってもよく、本発明において、好ましくは60~70℃である。
【0032】
前記調製方法において、前記反応の過程は当該分野中の通常監視方法(例えばTLC、HPLC又はNMR)を採用して検出し、一般に、前記の式IIで表される化合物がなくなるタイミング、あるいは反応しなくなったタイミングを反応終点とする。前記の反応時間は6~12時間、例えば10時間であってもよい。
【0033】
さらに、本発明は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩の抽出剤としての使用を提供する。
【0034】
前記使用において、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物中の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)であってもよく、例えば以下の化合物から選ばれるいずれか一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)。
【0035】
【0036】
前記使用において、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩は抽出剤として金属イオンの抽出・分離に用いる。好ましくは、前記金属イオンはNi2+、Co2+及びMn2+の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)であり、前記金属イオンは例えばFe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+及びCa2+中の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)も含むことができ、前記金属イオンはさらに、例えばMg2+、Li+などのほかのイオンを含むことができる。例えば、前記金属イオンは「Ni2+、Co2+及びMn2+の少なくとも一種」と「Fe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びLi+の少なくとも一種」の組み合わせである。また、例えば、前記金属イオンはNi2+、Co2+、Mn2+、Fe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びLi+の組み合わせである。好ましくは、前記金属イオンは廃棄リチウムイオン電池正極材料、ニッケルラテライト鉱又はニッケル・コバルト含有スラッジから由来することができる。そのため、本発明の好ましい態様の一つにおいて、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物又はその塩は抽出剤として、廃棄リチウムイオン電池正極材料、ニッケルラテライト鉱又はニッケル・コバルト含有スラッジ中の金属イオンの抽出・分離に用いる。
【0037】
さらに、本発明は、抽出剤及び希釈剤を含む抽出組成物を提供し、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物及び/又は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含む。
【0038】
前記抽出組成物において、好ましくは、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1(例えば1:1)である。
【0039】
前記抽出組成物において、好ましくは、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含み、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1である。
【0040】
前記抽出組成物において、前記希釈剤は当該分野における常用の希釈剤であってもよく、好ましくは、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば200番号ソルベントナフサ又は260番号ソルベントナフサ)、灯油、Escaid 110、ヘキサン、ヘプタン及びドデカン(例えばn-ドデカン)の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)であり;より好ましくは、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば260番号ソルベントナフサ)、ドデカン(例えばn-ドデカン)及びEscaid 110の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)である。
【0041】
前記抽出組成物において、前記希釈剤の使用量は具体的に限定されなくてもよく、前記抽出組成物の抽出及び逆抽出性能に影響を与えないようにすればよい、好ましくは、前記抽出剤と前記希釈剤のモル体積比は0.1mol/L~1.5mol/Lであり、0.16mol/L~0.85mol/Lが好ましく、例えば0.16mol/L、0.33mol/L又は0.6mol/Lである。
【0042】
さらに、本発明は、抽出剤を含む有機相で金属イオンを含む水相を抽出し、金属イオンを含む有機相が得られるステップを含む抽出方法を提供する。
【0043】
前記抽出剤を含む有機相では、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物及び/又は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含む。
【0044】
前記金属イオンを含む水相では、前記金属イオンはNi2+、Co2+、Mn2+、Fe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+及びCa2+の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)を含む。
【0045】
前記金属イオンを含む水相では、前記金属イオンは例えばMg2+、Li+などの他のイオンも含んでもよい。好ましくは、前記金属イオンは廃棄リチウムイオン電池正極材料、ニッケルラテライト鉱又はニッケル・コバルト含有スラッジから由来することができる。好ましくは、前記金属イオンは「Ni2+、Co2+及びMn2+の少なくとも一種」と「Fe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びLi+の少なくとも一種」との組み合わせである。例えば、前記金属イオンはNi2+、Co2+、Mn2+、Fe3+、Al3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びLi+の組み合わせである。
【0046】
前記抽出剤を含む有機相では、好ましくは、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1(例えば1:1)である。
【0047】
前記抽出剤を含む有機相では、好ましくは、前記抽出剤は前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩とを含み、前記式Iで表されるカルボン酸類化合物と前記式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩のモル比は(0.4~9):1である。
【0048】
前記抽出方法において、好ましくは、前記抽出剤を含む有機相は希釈剤も含む。前記希釈剤は当該分野の常用の希釈剤であってもよく、好ましくは、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば200番号ソルベントナフサ又は260番号ソルベントナフサ)、灯油、Escaid 110、ヘキサン、ヘプタン及びドデカン(例えばn-ドデカン)の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)であり、より好ましくは、前記希釈剤はソルベントナフサ(例えば260番号ソルベントナフサ)、ドデカン(例えばn-ドデカン)及びEscaid 110の一種又はそれらの組み合わせ(例えば二種以上)である。前記希釈剤の使用量は具体的に限定されなくてもよく、前記抽出剤を含む有機相の抽出及び逆抽出性能に影響を与えないようにすればよい、好ましくは、前記抽出剤を含む有機相には、前記抽出剤と前記希釈剤のモル体積比は0.1mol/L~1.5mol/Lであり、0.16mol/L~0.85mol/L、例えば0.16mol/L、0.33mol/L又は0.6mol/Lであることが好ましい。
【0049】
前記抽出方法において、前記抽出剤を含む有機相と前記金属イオンを含む水相の体積比は当該分野における通常抽出に使用される割合であってもよく;前記抽出剤を含む有機相と前記金属イオンを含む水相の体積比は1:(1~10)であることが好ましい、1:(1~5)、例えば1:1、1:2又は1:4であることがより好ましい。
【0050】
前記抽出方法において、好ましくは、振とうによって物質移動させる。
【0051】
前記抽出方法において、好ましくは、前記抽出の温度は当該分野におけるこの種類の抽出に通常使用されるものであってもよく、好ましくは10℃~50℃であり、より好ましくは25℃~40℃である。前記抽出の時間は当該分野における通常の時間であってもよく、好ましくは5~60分間、例えば15分間又は30分間である。
【0052】
さらに、本発明は、前記抽出方法で得られた金属イオンを含む有機相を酸の水溶液と混合してもよいステップを含む逆抽出方法を提供する。
【0053】
前記逆抽出方法において、前記金属イオンを含む有機相に担持される金属イオンは水相へ移動し、金属イオン濃厚水相と再生有機相を得る。
【0054】
前記逆抽出方法において、前記酸の水溶液のモル濃度は当該分野におけるこの種類の逆抽出の常用のモル濃度であってもよく、好ましくは0.5mol/L~5mol/L、より好ましくは1~3mol/L、例えば1mol/L又は2mol/Lであり、前記のモル濃度とは、前記の酸の水溶液総体積に占める前記の酸の物量の比である。
【0055】
前記逆抽出方法において、前記酸の水溶液中の酸は当該分野における通常の酸、好ましくは無機酸である。前記の無機酸は塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸の一種又は複数種が好ましく、より好ましくは硫酸である。
【0056】
前記逆抽出方法において、前記金属イオンを含む有機相と前記酸の水溶液との体積比は当該分野の通常の割合であってもよく、好ましくは(1~50):1であり、より好ましくは(10~20):1であり、例えば10:1又は15:1である。
【0057】
本発明において、前記振とうは有機相と水相との混合を均一にするために伝達物質に必要であり、それに代えて、当該分野における他の通常操作、例えば撹拌などの操作を採用できる。
【0058】
当該分野における常識に反しないことを前提に、上記の各好適な条件を任意に組み合わせて本発明の各好適な実例を得ることができる。
【0059】
本発明に使用される試薬も原料も市販で得られる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の有益の効果は以下である。
(1)本発明のカルボン酸類化合物は金属イオンの抽出分離に使用する場合、分離係数が高く、逆抽出酸性度が低く、担持率が高く(Ni2+に対する飽和容量≧16g/L)、逆抽出率が高い(一次逆抽出率>99%);
(2)本発明のカルボン酸類化合物は抽出剤として安定性が高く、水溶性が低く(抽出系平衡pHが7.23時に抽出された油含有量≦75mg/L)、抽出プロセスを安定にさせて、環境汚染を低減し、コストを低減することができる;
(3)本発明のカルボン酸類化合物はコストが低く、重要な使用将来性を有し、三元系電池の回収、電池レベルな硫酸ニッケルの調製などの多種の体系に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】各イオンに対する化合物BC196の抽出率E%‐pHグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、実施例の形態により本発明をさらに説明するが、本発明はその実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、常法及び条件、又は商品の説明書にしたがって選択される。
【0063】
実施例実験に関する由来情報は以下の通りである。
【0064】
有機相とは抽出剤及び希釈剤を含む有機相であり、このうち、前記抽出剤は式Iで表されるカルボン酸類化合物及び/又は式Iで表されるカルボン酸類化合物の塩を含む。
【0065】
水相とは金属イオンを含む水相であり、このうち、前記金属イオンを含む水相は常法で調製してもよく、例えば一定の質量の塩を脱イオン水に溶解し、必要の濃度まで希釈させてもよいステップを含む。
【0066】
相の比(O:A)は有機相と水相の体積比を代表する。
【0067】
「ケン化」とは、抽出剤における水素イオンをアルカリ金属イオン及び/又はNH4
+に転換し(転換後のアルカリ金属イオン及び/又はNH4
+は水相中で抽出された金属イオンと交換することで、抽出の作用を実現する)、ケン化のステップでは、有機相を塩基の水溶液と混合してもよい。好ましくは、前記したケン化に使用される塩基の水溶液は水酸化ナトリウムの水溶液、水酸化カリウムの水溶液又はアンモニア水であってもよい。
【0068】
ケン化の割合とは、抽出剤における元の水素イオンに占めるアルカリ金属及び/又はNH4
+の割合、即ち、下式(1)である。
【0069】
η=(V塩基×C塩基)/(V有×C有) (1)
式(1)では、V塩基は加える塩基の水溶液の体積、C塩基は加える塩基の水溶液中の塩基の濃度、V有は有機相の体積、C有は有機相中の抽出剤の濃度である。
【0070】
本発明実施例において、水相中の金属イオン含有量は誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)で測定してから、差引き算で有機相中の金属イオン含有量を求める。
【0071】
酸含有量の電位差滴定は、文献であるオルガノリン化合物の研究XVI:リン化合物の長炭素鎖アルキル基及びアルコキシ基のσp定数と基の連通性[J].(袁承業、胡水生;化学学報、1986、44、590-596)にしたがって行って;電位差滴定器がMetrohm 907Titrandoである。本発明実施例は酸含有量で抽出剤の純度を表す。
【0072】
配分比Dは、一回の抽出完了後に、平衡有機相における金属イオン含有量と、平衡水相における金属イオン含有量(平衡水相における金属イオン含有量は誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)で検出してから、差引き算で平衡有機相中の金属イオン含有量を求める)との割合の値であり、即ち、下式(2)である。
【0073】
D=Corg/Caq=(C’aq-Caq)/Caq (2)
式(2)では、Corgは一回の抽出完了後の平衡有機相中の金属イオン濃度を示し;Caqは一回の抽出完了後の平衡水相中の金属イオン濃度を示し;C’aqは一回の抽出前の水相中の金属イオン濃度を示す。
【0074】
抽出率Eは、元の水相における抽出される物質の総量に占める抽出過程で抽出された物質の水相から有機相へ移動した量の百分率であり、即ち、下式(3)である。
【0075】
E=100%×(C’aq-Caq)/C’aq (3)
式(3)では、Caqは一回の抽出完了後の平衡水相中の金属イオン濃度を示し;C’aqは一回の抽出前の水相中の金属イオン濃度を示す。
【0076】
分離係数βとは、一定の条件で抽出分離する時、二種の分離される物質の両相間における配分比の割合の値であり、抽出分離因数も称される。
【0077】
以下、実施例で調製方法がない原料のいずれも市販で得られる。
【0078】
実施例1
【0079】
【0080】
三つ口フラスコに50gイソオクタノール、225mLテトラヒドロフラン(THF)、8.8gナトリウムペレットを加えて、60~70℃で6h反応して、大量な白い固形分が生成し、少量のナトリウムペレットが残った。60℃で8mol/Lの2‐ブロモオクタン酸を含むTHF溶液40mLを滴下して、続いて60℃で4h反応した。冷却した後に、回転蒸発してTHFを除き、その後、濃縮液へ200mL水と200mL酢酸エチル(EA)を加えて、振盪して分層ささせ、水層を取った。塩酸で水層をpH≒1まで酸化させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を二回水洗して、スピンドライして65g淡い黄色製品である化合物BC195が得られた。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ4.1(1H),3.52(1H),3.35(1H),1.82(2H),1.54(3H),1.20-1.31(14H),0.91(6H),0.87(3H);13CNMR(101MHz,CDCl3)δ171(s),79(s),72(s),36(s),32(s),29(s),26-28(m),22-23(m),14(s),11(s);MS[M-H]-:271.
【0081】
実施例2
【0082】
【0083】
三つ口フラスコに28.6gイソオクタノール、200mLテトラヒドロフラン(THF)、8.8gの60%水素化ナトリウム(鉱油に分散された)を加えて、60~70℃で6h反応して、大量な白い固形分が生成し、少量のナトリウムペレットが残った。60℃で10mol/Lの2‐ブロモヘキサン酸のTHF溶液20mLを滴下して、続いて60℃で4h反応した。冷却した後に、回転蒸発してTHFを除き、その後、濃縮液へ200mL水と200mL酢酸エチル(EA)を加えて、振盪して分層させ、水層を取った。塩酸で水層をpH≒1まで酸化させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を二回水洗して、スピンドライして38g淡い黄色製品である化合物BC196が得られた。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.97(1H),3.41(1H),3.26(1H),1.70(2H),1.45(3H),1.05-1.24(10H),0.91(9H);13CNMR(101MHz,CDCl3)δ175(s),82(s),76(s),40(s),32(s),30(s),29(s),27(s),22-23(m),14(s),11(s);MS[M-H]-:243.
【0084】
実施例3
【0085】
【0086】
三つ口フラスコに32gn‐オクタノール、200mLテトラヒドロフラン(THF)、5.7gナトリウムペレットを加えて、60~70℃で6h反応して、大量な白い固形分が生成し、少量のナトリウムペレットが残った。60℃でそれぞれ10mol/Lの2‐ブロモヘキサン酸のTHF溶液20mLを滴下して、続いて60℃で4h反応した。冷却した後に、回転蒸発してTHFを除き、その後、濃縮液へ200mL水と200mL酢酸エチル(EA)を加えて、振盪して分層させ、水層を取った。塩酸で水層をpH≒1まで酸化させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を二回水洗して、スピンドライして目的化合物である化合物BC191が得られた。
【0087】
化合物BC191 1H NMR(400MHz,CDCl3)δ12.53(1H),4.01(1H),3.32(2H),1.65(2H),1.20-1.32(16H),0.89(6H);13CNMR(101MHz,CDCl3)δ173(s),81(s),65(s),32-30(m),22-23(m),14(s);MS[M-H]-:243。
【0088】
実施例4
【0089】
【0090】
三つ口フラスコに32gn‐オクタノールを加えて、200mLテトラヒドロフラン(THF)、5.7gナトリウムペレットを加えて、60~70℃で6h反応して、大量の白い固形分が生成され、少量のナトリウムペレットが残った。60℃でそれぞれ10mol/Lの2‐ブロモオクタン酸のTHF溶液22mLを滴下して、続いて60℃で4h反応した。冷却した後に、回転蒸発してTHFを除き、その後、濃縮液へ200mL水と200mL酢酸エチル(EA)を加えて、振盪して分層させ、水層を取った。塩酸で水層をpH≒1まで酸化させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を二回水洗して、スピンドライして目的化合物である化合物BC192が得られた。
【0091】
化合物BC192 1H NMR(400MHz,CDCl3)δ11.54(1H),3.98(1H),3.30(2H),1.63(2H),1.42-1.44(4H),1.20-1.32(16H),0.89(6H);MS[M-H]-:271。
【0092】
実施例5
【0093】
【0094】
三つ口フラスコにそれぞれ、28g n‐ヘキサノールを加えて、200mLテトラヒドロフラン(THF)、6.4gナトリウムペレットを加えて、60~70℃で6h反応して、大量の白い固形分が生成され、少量のナトリウムペレットが残った。60℃でそれぞれ10mol/Lの2‐ブロモヘキサン酸のTHF溶液20mLを滴下して、続いて60℃で4h反応した。冷却した後に、回転蒸発してTHFを除き、その後、濃縮液へ200mL水と200mL酢酸エチル(EA)を加えて、振盪して分層させ、水層を取った。塩酸で水層をpH≒1まで酸化させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を二回水洗して、スピンドライして目的化合物である化合物BC193が得られた。
【0095】
化合物BC193 1H NMR(400MHz,CDCl3)δ12.34(1H),3.89(1H),3.29(2H),1.61(2H),1.20-1.32(10H),0.89(6H);MS[M-H]-:215.
【0096】
実施例6
【0097】
【0098】
三つ口フラスコに28g n‐ヘキサノールを加えて、200mLテトラヒドロフラン(THF)、6.4gナトリウムペレットを加えて、60~70℃で6h反応して、大量な白い固形分が生成し、少量のナトリウムペレットが残った。60℃でそれぞれ10mol/Lの2‐ブロモオクタン酸のTHF溶液22mLを滴下して、続いて60℃で4h反応した。冷却した後に、回転蒸発してTHFを除き、その後、濃縮液へ200mL水と200mL酢酸エチル(EA)を加えて、振盪して分層させ、水層を取った。塩酸で水層をpH≒1まで酸化させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を二回水洗して、スピンドライして目的化合物である化合物BC194が得られた。
【0099】
化合物BC194 1H NMR(400MHz,CDCl3)δ12.86(1H),4.04(1H),3.37(2H),1.67(2H),1.42-1.44(8H),1.20-1.32(8H),0.89(6H);MS[M-H]-:215.
【0100】
効果実施例1 化合物BC196の抽出性能
化合物BC196の構造は:
【0101】
【0102】
化合物BC196は希釈剤、即ち260番号ソルベントナフサに溶解し、0.6mol/Lの有機相を調製し、0.02mol/LのCu2+、Zn2+、Fe3+、Al3+、Cd2+、Ni2+、Co2+、Mn2+、Ca2+、Mg2+及びLi+を含む混合硫酸塩溶液を調製して水相とする。まず、11.9mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で有機相をケン化し、ケン化度は0%~70%にし、水相は初期pHのままで2.08であり、異なる程度でケン化した後の有機相と水相の体積比が1:1である条件で水相を抽出し、平衡時間は15分、温度は25℃である。
【0103】
抽出した後に、抽出率と平衡pHについて図を作製し、各イオンに対する化合物BC196の抽出率E%-pHグラフが得られた結果を
図1と表1に示し、各イオン間に対する化合物BC196の分離係数は表2に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
図1と表1から分かるように、各イオンに対する化合物BC196の抽出順番はそれぞれFe
3+、Cu
2+、Ca
2+、Al
3+、Cd
2+、Zn
2+、Ni
2+、Co
2+、Mn
2+、Mg
2+、Li
+であり、平衡pH値が4.5である場合、化合物BC196は、Znに対する抽出率が約65%で、Ni、Co、Mnに対する抽出率が25%~45%であるが、Mgはほとんど抽出されなかった。表2から分かるように、ZnとNi、Co、Mnそれぞれの分離係数は2.21、3.10、4.31で、Ni、Co、MnそれぞれとMgの分離係数は45.34、32.33、23.25であり、化合物BC196はニッケル、コバルト、マンガンをマグネシウムイオンより前に抽出され、且つニッケル、コバルト、マンガンとマグネシウム、亜鉛などの不純物金属イオンとの分離度が高いことが分かった。以上の結果から、報告された抽出剤P204、P507及びC272と比べて、化合物BC196はイオンに対して比較的良い選択性を有し、ニッケル、コバルト、マンガンの同時回収を実現でき、リチウムイオン電池正極材料の回収の面で実現性のある使用価値を有することがわかった。
【0107】
効果対比例1
効果実施例1との区別とは、化合物BC196を抽出剤CA12(市販、酸含有量98%)に代えることにあり、結果を表3に示す。
【0108】
【0109】
表3から分かるように、同じ実験条件で、化合物BC196はCA12と比較すると、各イオンに対する分離係数が高く、約20~30%と高い。pH値約4.5の条件で、Ni/Mg及びNi/Znに対する化合物BC196の分離係数はそれぞれ45.34及び2.21であるが、Ni/Mg及びNi/Znに対するCA12の分離係数はそれぞれ31.98及び1.66であり、これは化合物BC196はCA12よりもイオンに対して高い分離効果を有することを説明している。
【0110】
効果実施例2 化合物BC196が金属イオンを担持した後の逆抽出性能
化合物BC196をドデカンに溶解して0.33mol/Lの有機相を調製し、0.02mol/LのNi2+硫酸塩溶液を含む水相を仕込液とし、9mol/Lのアンモニア水で有機相をケン化させ、ケン化の割合は50%である。相の比1:4でケン化後の有機相を使用してこの仕込液を抽出し、平衡時間が15分、温度が25℃である。Niが担持された有機相が得られ、このNiが担持された有機相におけるNiの含有量は0.08mol/Lである。
【0111】
1mol/Lの硫酸水溶液でこのNiが担持された有機相を逆抽出し、逆抽出時、相の比は10:1、逆抽出率>99%である。
【0112】
Niが担持されたP507有機相は一般的に、2mol/Lの硫酸で逆抽出され、一回の逆抽出率が約85%である。前記結果から、本発明のカルボン酸化合物が金属イオンの抽出に使用する時に、低い逆抽出酸性度の前提で高い逆抽出率が得られることがわかった。
【0113】
効果実施例3 Ni2+に対する化合物BC196の飽和容量テスト
実験方法:化合物BC196をドデカンに溶解し、0.6mol/Lの有機相を調製した。水相として50g/LのNiSO4水溶液を調製した。
【0114】
50mL分液ロートを取って、10mL有機相を加えて、10mol/LのNaOH水溶液でケン化し、ケン化の割合は60%であり。ケン化後の有機相は相を分離する必要がなく、そのまま10mLの水相を加えて、振とうによって15分混合した。水相を分離し、また新たな50g/LのNiSO4水溶液(10mL)を加えて、振とうによって15分混合した。水相におけるイオン濃度が変わらなくなるまで前記操作を繰り返し、この時、有機相における金属の濃度は抽出剤の飽和容量である。有機相を逆抽出して得たNi2+に対する化合物BC196の飽和容量は16g/Lである。
【0115】
効果実施例4 化合物BC195に金属イオンが担持された後の逆抽出性能
化合物BC195の構造:
【0116】
【0117】
化合物BC195をEscaid 110に溶解して0.16mol/Lの有機相に調製し、0.02mol/LのNi2+硫酸塩溶液を仕込液として調製し、10mol/LのNaOH水溶液で有機相をケン化し、ケン化の割合は50%である。相の比1:2でケン化後の有機相を使用してこの仕込液を抽出し、平衡時間が15分、温度が25℃である。Niが担持された有機相が得られ、このNiが担持された有機相中にNiの含有量は0.04mol/Lである。
【0118】
1mol/Lの硫酸水溶液でこのNiが担持された有機相を逆抽出し、逆抽出時、相の比は15:1、逆抽出率>99%である。
【0119】
Niが担持されたP507有機相は一般、2mol/Lの硫酸で逆抽出し、一回の逆抽出率約85%。前記結果から、本発明のカルボン酸化合物を金属イオンの抽出に使用する際、低い逆抽出酸性度であることを前提とすると高い逆抽出率が得られることがわかた。
【0120】
効果実施例5 抽出剤BC199及び抽出剤CA12の抽出系中の溶解性実験
抽出剤BC199は以下化合物をモル比1:1:1:1で混合して得られる。
【0121】
【0122】
抽出:有機相として抽出剤BC199と希釈剤Escaid 110を0.6mol/Lの溶液に調製し、有機相における各化合物の濃度は0.15mol/L、水相は0.2mol/LのNiSO4水溶液であり、250mL分液ロートを取って、100mL有機相を加えて、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてケン化し、ケン化割合は24%にし、ケン化後、水相100mLを加えて、平衡まで30分抽出し、温度は25℃である。
【0123】
油含有量テスト:前記平衡後の水相50mLを取って100mL分液ロートに加えて、また適宜HClを加えて水相pH値を2以下にすればよく、ピペットマンで25mLテトラフルオロエチレンを正確に量り取って分液ロートに移動し、10分振盪した後に静置し、分液ロートの下にあるテトラクロロエチレンをコニカルフラスコ内に入れ、コニカルフラスコ内に約1g/L無水硫酸ナトリウムを加えて、振盪し、硫酸ナトリウムが固まらないことを観察してテトラクロロエチレンの水分をきれいに除去できることを確保する。テトラクロロエチレンをブランクとして、赤外油分測定器を採用してサンプルの油含有量を測定する。
【0124】
効果対比例2
効果実施例5との区別とは、抽出剤BC199を抽出剤CA12(市販、酸含有量98%)に代えて、抽出剤CA12の抽出系中の溶解性を測定することにある。
【0125】
効果実施例5及び効果対比例2のテスト結果を表4に示す。
【0126】
【0127】
以上の実験から分かるように、希釈剤ブランク(即ち、抽出剤を添加しない以外、操作ステップも効果実施例5と同じである)と水相との平衡の後に抽出された油含有量は45mg/Lであり、抽出剤BC199は抽出系平衡pHが8.20の時に抽出された油含有量は約120mg/Lで、CA12は抽出系平衡pHが8.09の時に抽出された油含有量は約6000mg/Lであった。結果から、抽出系におけるCA12の溶解ロスがかなり大きく、不安定なプロセスの実行を招きやすいが、抽出剤BC199を金属イオンの抽出分離に使用すると、抽出剤の水相への溶解度が大きいという課題を解決し、プロセスコストを大幅に低減し、且つプロセスを安定して実行できる。
【0128】
効果実施例6
化合物BC195と希釈剤Escaid110を0.62mol/L溶液に調製し、水相は1.33g/L Ni及び4g/L Mgを含む高マグネシウム塩化ニッケルの仕込液であり、250mL分液ロートを取って、100mL有機相を加えて、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてケン化させ、ケン化割合は24%である。ケン化後に水相100mLを加え、平衡まで30分抽出し、温度は25℃である。
【0129】
油含有量テスト:水相を分離してH2SO4を加えて、この時、水相溶液[H+]濃度は約1mol/Lである。CH2Cl2で抽出し(30mL×3)、CH2Cl2層を抽出・収集して、1g無水Na2SO4で乾燥してCH2Cl2中の水を除き、濾過し、ろ液を回転蒸発し、また油ポンプで30分乾燥した。回転蒸発前後のフラスコの重量を秤量することによって体系CH2Cl2抽出後の油含有量が得られる。
【0130】
効果対比例3
効果実施例6との区別とは、化合物BC195を抽出剤CA12(市販、酸含有量98%)に代えることにある。
【0131】
効果実施例6及び効果対比例3のテスト結果を表5に示す。
【0132】
【0133】
以上の実験から分かるように、希釈剤ブランク(即ち、抽出剤を添加しないほか、操作ステップも効果実施例6と同じである)と水相との平衡の後に抽出した油含有量は45mg/Lで、化合物BC195が抽出系平衡pHが約7.2の時に抽出した油含有量は75mg/L程度で、CA12油含有量は4180mg/L前後で、抽出系におけるCA12の溶解ロスが非常に大きい。化合物BC195を金属イオンの抽出分離に使用すると、抽出剤の水相への溶解度が大きいという課題を解決し、プロセスが安定し、実行コストが低減する。
【国際調査報告】