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特表2023-528093光透過性の生地の一種、人工皮革、および自動車のインテリア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】光透過性の生地の一種、人工皮革、および自動車のインテリア
(51)【国際特許分類】
   D03D 11/00 20060101AFI20230627BHJP
   D03D 9/00 20060101ALI20230627BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230627BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20230627BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
D03D9/00
D03D1/00 Z
D06N3/00
B60R13/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021516592
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2020082137
(87)【国際公開番号】W WO2021195864
(87)【国際公開日】2021-10-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521102188
【氏名又は名称】カナディアン ジェネラル-タワー(チャンシュー)カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドンチン ユ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイフェン ソン
【テーマコード(参考)】
3D023
4F055
4L048
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BE04
3D023BE06
4F055AA01
4F055AA21
4F055BA11
4F055EA22
4F055EA24
4F055GA32
4L048AA21
4L048AB10
4L048BA06
4L048BA09
4L048CA00
4L048DA00
4L048DA25
4L048EB00
(57)【要約】
【構成】本発明は、人工皮革に取り付けられる、または自動車のインテリアに用いられる光透過性の生地である。光透過性の生地は、互いに平行であり間隔を置いて配置された2つの生地層と、当該2つの生地層を繋ぎ合わせる支持層とからなる。支持層は結合糸で形成され、生地層は生地糸から織られている。第1の生地層に形成されたメッシュは第1のメッシュであり、第2の生地層に形成されたメッシュは第2のメッシュであり、第1のメッシュの80%~100%が第2のメッシュと一対一で位置合わせされる。結合糸の支持細糸の少なくとも80%は「I」の形状に配置され、結合糸の直径と生地糸の直径との比は1.1:1.5である。光透過性の生地は、高い透過率と高い機械的性能の両方を備え持つ。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行であり間隔を置いて配置された2つの生地層であって、前記生地層は、生地糸から織られ、前記生地糸で形成された複数のメッシュを含む2つの生地層と、
前記2つの生地層を繋ぎ合わせる支持層であって、前記支持層は結合糸で形成され、前記結合糸は前記2つの生地層の間で延伸する支持細糸と、前記2つの生地層に織り込まれた結合細糸とからなる支持層と、
からなる光透過性の生地であり、
前記光透過性の生地において、前記2つの生地層の一方における複数のメッシュの80%~100%は各々前記2つの生地層の他方の複数のメッシュのうちの1つと一対一で位置合わせされ、
前記結合糸の前記支持細糸の少なくとも80%はI字形状に配置され、
前記結合糸の直径と前記生地糸の直径の比は1.1:1.5であることを特徴とする、光透過性の生地。
【請求項2】
前記複数のメッシュは各々多角形状のメッシュであり、各多角形状のメッシュの各辺に最大3本の生地糸が存在する、請求項1に記載の光透過性生地。
【請求項3】
前記生地糸と前記結合糸は各々透明または半透明のモノフィラメントで形成されている、請求項1に記載の光透過性生地。
【請求項4】
複数のメッシュの各々の最大スパンサイズと生地糸の直径の比は8:32である、請求項1に記載の光透過性生地。
【請求項5】
前記結合糸の結合細糸は、前記多角形状のメッシュの辺に沿ってジグザグに延伸する、請求項2に記載の光透過性の生地。
【請求項6】
前記結合細糸は、前記多角形状のメッシュの任意の辺に沿って最大4回ジグザグに延伸する、請求項5に記載の光透過性生地。
【請求項7】
前記生地糸と前記結合糸は無着色の糸である、請求項1に記載の光透過性生地。
【請求項8】
前記複数のメッシュの数は10よりも多い、請求項1に記載の光透過性生地。
【請求項9】
前記生地糸と前記結合細糸の透過率はそれぞれ50%から70%の範囲である、請求項1に記載の光透過性生地。
【請求項10】
前記結合糸の支持細糸はすべてI字形に配置される、あるいは、前記結合糸の支持細糸は、I字形に配置される第1の支持細糸と、V字形および/またはX字形に配置される第2の支持細糸とに分かれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の光透過性生地。
【請求項11】
前記生地糸の直径は0.05mmから0.1mmの範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の光透過性生地。
【請求項12】
前記結合糸の直径は0.055mmから0.15mmの範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の光透過性生地。
【請求項13】
前記支持層の厚さの前記支持細糸の直径に対する比は6:55である、請求項12に記載の光透過性生地。
【請求項14】
前記支持層の厚さは1mmから3mmの範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の光透過性生地。
【請求項15】
前記光透過性生地の透過率は70%以上である、請求項12の光透過性生地。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の透明な生地に互いに取り付けられた単層の革からなる人工皮革。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の光透過性生地または請求項16に記載の人工皮革を用いた自動車インテリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用インテリア材の技術分野に関する。特に、本発明は、一実施形態において人工皮革に取り付ける光透過性の生地の一種に関し、当該光透過性生地および人工皮革は自動車のインテリアに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
確かな乗り心地を得るために、自動車のインテリアの表皮層の内側にスポンジの層を設けて、柔らかい手触りを実現している。しかしながら、スポンジ層は弾力性が低く、変異性が高く、さらには通気性も低いため、ますます多くの自動車のインテリアに、スポンジの代わりに三次元スペーサ生地が用いられている。
【0003】
三次元スペーサ生地は三次元生地であり、2つの生地層と、当該2つの生地層の間にスペース糸で作られた支持層と、からなる。三次元スペーサ生地は、高い圧縮弾性、通気性、吸湿性、透湿性、構造的完全性、成形性などの利点を有する。
【0004】
自動車のインテリアの品質と快適性に対する需要が高まったことで、人工皮革はクラッド材ではなくなった。その一方で、人工皮革の開発プロセスには、多くの機能の導入が待たれている。例えば、一定の透過率を有する人工皮革は、バックライトがある場合には、バックライトで自動車のインテリアの雰囲気を向上させるのに役立つ。現在、一般的に使用されるスペーサ生地は、V、X、IXIのタイプに分類される。スペーサ糸は、上下の生地層と共に安定した三角形の構造を形成することができるため、生地層は、横方向の荷重下であっても、2つの生地層の間に一定の間隔を保った状態で、高い安定性と耐圧性とを維持することができる。上述のようにスペーサ生地を置いたことで、当該スペーサ生地に向かう光は、大幅に減衰するか、あるいは消滅する。すなわち、既存の三次元スペーサ生地の光透過率は非常に低い。自動車のフレームまたはその一部の表面がこのような三次元スペーサ生地で覆われている場合、自動車のフレームまたは一部に向けられた光源からの光は、三次元スペーサ生地をほとんど透過しないため、スペーサ生地を取り入れた自動車のインテリアを光透過性にして使用するシナリオを成立させることは不可能である。あるいは、自動車のインテリアの光透過性にして使用するシナリオを成立させるには、三次元スペーサ生地またはスポンジを除去する必要があるが、これは自動車のインテリアに用いるファブリックの弾力性と手触り感を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術に鑑みて、本発明の主な目的は、人工皮革に取り付けることができ、自動車のインテリアに用いて当該自動車のインテリアの雰囲気を向上させることのできる光透過性の生地を提供して、光が自動車のインテリアを透過することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術スキームを採用する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、互いに平行かつ間隔を空けて配置された2つの生地層と、当該2つの生地層を繋ぎ合わせる支持層とからなる光透過性の生地を提供する。支持層は結合糸で形成されている。結合糸は、2つの生地層の間に挟まれた支持細糸と、当該2つの生地層内に織り込まれた結合細糸とからなる。生地層は生地糸から織られており、当該生地糸によって形成された複数のメッシュを含むように織られている。本明細書では、2つの生地層を「第1の生地層」および「第2の生地層」と呼び、第1の生地層に形成されたメッシュは「第1のメッシュ」であり、第2の生地層に形成されたメッシュは「第2のメッシュ」である。本発明において、第1のメッシュは、第2のメッシュと一対一で位置合わせされる、または、第1のメッシュの80%~100%が、第2のメッシュと一対一で位置合わせされる。結合糸の支持細糸の少なくとも80%は「I」の形状に配置される。結合糸の直径と生地糸の直径の比は1.1:1.5である。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、メッシュは多角形状のメッシュであり、その中の多角形の各辺に最大3つの生地糸が存在する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、生地糸および結合糸は双方透明または半透明のモノフィラメントで形成されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、メッシュの最大スパンサイズと生地糸の直径との比は8:32である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、結合糸の結合細糸は、多角形状のメッシュの多角形の辺に沿ってジグザグに延伸する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、結合細糸は、多角形状のメッシュの多角形の任意の辺に沿ってジグザグに最大4回延伸する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、生地糸および結合糸は無着色の糸である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、メッシュの数は10個よりも多い。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、生地糸および結合細糸の透過率は、それぞれ50%から70%の範囲である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、生地糸および結合糸は双方ポリエチレンテレフタレート(PET)でできている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、結合糸の支持細糸はすべて「I」の形状に配置される。あるいは、結合糸の支持細糸は第1の支持細糸と第2の支持細糸とに分けられ、第1の支持細糸は「I」の形状に配置され、第2の支持細糸は「V」および/または「X」の形状に配置される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、生地糸の直径は、0.05mmから0.1mmの範囲である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、結合糸の直径は、0.055mmから0.15mmの範囲である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、支持細糸の直径に対する支持層の厚さの比は6:55である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、支持層の厚さは1mmから3mmの範囲である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、光透過性生地の透過率は70%以上である。
【0023】
第2の態様では、本発明は、本明細書で説明するように、互いにおよび光透過性の生地に取り付けられた単層の革からなる人工皮革である。
【0024】
第3の態様では、本発明は、本明細書で説明する光透過性生地、または本明細書で説明する人工皮革を含む自動車のインテリアである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の提供する光透過性生地において、一方の生地層に形成された第1のメッシュは、他方の生地層に形成された第2のメッシュと位置合わせされる、またはほぼ位置合わせされるように構成することで、2つの生地層間でのメッシュの不揃いを最小限に抑えて、より多くの光が光透過性の生地を透過できるようにする。支持細糸は、結合糸の支持細糸が互いにほぼ平行になるように、かつ支持細糸が第1のメッシュと第2のメッシュとの接合部に対応するように、大半が「I」の形状に配置されている。これは、より多くの光が光透過性の生地を透過することができるようにする目的のために、第1の生地層に垂直な方向から見て支持細糸を最大限引き下げるために行うものである。さらに、結合糸の直径を大きくすることで、結合糸の靭性を効果的に向上させることができる。これにより、光透過性生地の機械的特性を確保し、横力が加えられた場合に支持細糸が変形するのを防ぐ。
【0026】
本発明の具体的な技術的特徴および技術スキームの紹介において、本発明の他の有利な効果を本発明の具体的な実施形態に基づいて説明する。そのような本発明の具体的な技術的特徴および技術スキームに基づく、従来技術に対する本発明の有利な効果は、当業者には明らかであるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の好ましい実施形態を、以下の図面を参照して説明する。当該図面には、以下が含まれる。
図1】本発明の好ましい実施形態に係る光透過性生地の断面図である。
図2】本発明の光透過性生地の4つの構成ユニットの構造図であり、第1のメッシュを第2のメッシュと位置合わせした図である。
図3】本発明の光透過性生地の4つの構成ユニットの構造図であり、第1のメッシュが第2のメッシュと不揃いである図である。
図4】本発明における位置合わせを立体図として示す斜視図である。
図5】本発明の光透過性生地の2つの構成ユニットの構造図であり、第1のメッシュおよび第2のメッシュがそれぞれ六角形状である図である。
図6】本発明の好ましい実施形態に係る光透過性生地の第1の生地層の上面図である。
図7】一組の第1のメッシュの辺に沿ってジグザグに延伸する、本発明の光透過性生地の結合糸における結合細糸の斜視図である。
【0028】
いくつかの図面では、第1の生地層100、第1のメッシュ110、第2の生地層200、第2のメッシュ210、支持層300、結合糸310、支持細糸311、結合細糸312、および生地糸400を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を様々な実施形態に基づいて以下に説明するが、本明細書に列挙するもの以外にも多くの本発明の実施形態が存在するものとする。本明細書における本発明の詳細な説明では、一部の特定の特徴のみを具体的かつ詳細に説明するものとする。本発明の本質についての混乱を回避するために、当技術分野において周知の方法、プロセス、手順、または構成要素は、本明細書においては詳細に説明しない。
【0030】
さらに、本明細書で参照する図面はすべて例示のみを目的としたものであり、すべての図面が必ずしも一定の縮尺で描画されているわけではないことは当業者には明らかである。
【0031】
別途明示しない限り、あるいは文脈上指定しないかぎり、「有する」、「包含する」および「含む」などの語、ならびにこれらと同様の語や文言は、排他的または網羅的な語ではなく、包括的な語として解釈すべきものとする。すなわち、これらの語ならびに同様の語および文言は、「~を含むが、これに限定されるものではない」と解釈すべきものとする。
【0032】
本明細書中の本発明の説明における「第1の」および「第2の」という語は、説明の目的にのみ使用され、相対的な重要性を示したり示唆したりするものではない。さらに、本明細書中の本発明の説明における「いくつかの」、「複数の」などの語は、2つ以上を意味するものとする。
【0033】
本明細書の説明における「透過率」の試験方法は、ASTMインターナショナルのASTME1348に従うものとする。
【0034】
このように、自動車のインテリアの雰囲気を向上させる目的で、インテリアの表面に用いる人工皮革をバックライトが透過できるようにする必要があることを考慮して、本明細書における発明は、三次元スペーサ生地の透過率を高めることでこのような必要性に対処するものとする。
【0035】
既存の三次元スペーサ生地の透過率が不十分であることに起因する現行の問題は、既存の三次元スペーサ生地の構造に関する以下の欠陥によって生じるものである。1.2つの生地層のメッシュが互い大きくずれており、光の伝播を妨げている。2.スペーサ糸が互いに交差しており(すなわち、三次元スペーサ生地に垂直な方向から見てメッシュ内に過剰なスペーサ糸が存在しており)、光の伝播を妨げている。
【0036】
上に参照した従来技術の欠陥に対処するために、本発明では、図1に示すように、光透過性の生地を用いる。光透過性生地は、互いに平行で間隔を置いて配置された2つの生地層と、2つの生地層を繋ぎ合わせる支持層300とからなる。支持層300は、結合糸310から形成されている。結合糸310は、2つの生地層の間に挟まれた支持細糸311と、2つの生地層にそれぞれ織り込まれた結合細糸312とからなる。生地層は、生地糸400から織られており、生地糸400によって形成された複数のメッシュを含む必要がある。2つの生地層は、それぞれ第1の生地層100および第2の生地層200である。第1の生地層100に形成されたメッシュは第1のメッシュであり、第2の生地層110に形成されたメッシュは第2のメッシュである。本発明の実施形態では、第1のメッシュの80%~100%が第2のメッシュと一対一で位置合わせされる。すなわち、第1のメッシュの80%~100%が対応する第2のメッシュと位置合わせされ、第2のメッシュの80%~100%が対応する第1のメッシュと位置合わせされる。第1のメッシュ110を第2のメッシュ210と一対一で位置合わせした場合(すなわち、第1のメッシュ110の100%を対応する第2のメッシュと位置合わせし、第2のメッシュの100%を対応する第1のメッシュと位置合わせした場合)、図2に示すように、第1のメッシュ110のうちの1つは、対応する第2のメッシュ210と構成ユニットを形成する。図2は、四辺形のメッシュによって形成された4つの構成ユニットを示す。各構成ユニットにおいて、第1のメッシュ110は、第2のメッシュ210と一対一で位置合わせされており、第1のメッシュ110の各角は、結合細糸312を介して対応する第2のメッシュ310の角と垂直なカラムを形成する。第1のメッシュ110と第2のメッシュ210とが揃う割合が各構成ユニットにおいて80%以上100%未満である場合、図3に示すように、第1のメッシュ110は、第2のメッシュ210と不揃いになるように構成され、第1のメッシュ110の各角は、結合細糸312を介して対応する第2のメッシュ310の角と垂直なカラムを形成する。図4は、第1のメッシュ110と第2のメッシュ210とが位置合わせされる領域を示す。図4に示すように、当該位置合わせはさらに、第2の生地層200上の第1のメッシュ110の投影と、当該投影に最も近い第2のメッシュ210との重複部分(すなわち、図4の影付き領域)を指し、当該位置合わせ領域は影付き領域に等しい。第1のメッシュ110を第2のメッシュ210と一対一で位置合わせされるように構成する場合、または第1のメッシュ110を第2のメッシュ210とほぼ一対一で位置合わせされるように構成する場合、第1のメッシュ110と第2のメッシュ210のずれが最小限になり、従来技術によって達成し得るよりも多くの光が光透過性生地を透過することができる。
【0037】
さらに、本発明の実施形態では、結合糸310の支持細糸の少なくとも80%が「I」の形状に配置される。具体的には、「I」の形状に配置された支持細糸311は互いにほぼ平行であり、支持細糸311は、第1の生地層100に垂直であるか、あるいは、第1のメッシュ110が第2のメッシュ210と位置合わせされ、支持細糸311が第1の生地層100に対して傾斜している。理解できるように、本明細書の説明における垂直とは、支持細糸311と第1のメッシュ110との接合部が、支持細糸311と第2のメッシュ210との接合部と位置合わせされることを意味する。換言すれば、第2の生地層200の支持細糸311と第1のメッシュ110との接合部の投影は、支持細糸311と第2のメッシュ210との接合部と位置合わせされる。また、ニッティングおよび糸の剛性によって生じる(図1に示す)屈曲も、本明細書で説明する垂直の範囲内である。結合糸310の支持細糸311の大半が互いにほぼ平行であり、かつ支持細糸311が第1のメッシュ110と第2のメッシュ210との接合部に対応するため、第1の生地層100に垂直な方向から見て、支持細糸311を最大限下方に下げるか、または真下に伸ばすことができる。これにより、より多くの光が光透過性の生地を通過できるようになる。
【0038】
本発明の一実施形態では、結合糸の支持細糸がすべて「I」の形状に配置されており、透過率が従来技術よりも高くなる。本発明の別の実施形態では、結合糸の支持細糸の一部が「I」の形状に配置され、一方で、残りは、支持の性能を向上させるために、「V」や「X」など1つ以上の他の形状に配置される。あるいは、一部が「V」の形状に配置され、残りが「X」の形状に配置される。例えば、結合糸の支持細糸のすべてを、「I」の形状に配置する第1の支持細糸と、「V」および/または「X」の形状に配置する第2の支持細糸とに分けてもよい。「V」の形状は、第1の細糸と第2の細糸とによって形成される第2の支持細糸の形状になる(第1の細糸は左側にあり、第2の細糸は右側にある)。前記V字形状の2つの上端点は、第1の生地層100の結合細糸312に結合されている。一方、2つの下端点は、第2の生地層200の結合細糸312に結合されている。「X」の形状は、第3の細糸と第4の細糸とによって形成される第2の支持細糸の形状になる(上方から右に傾斜した細糸は第3の細糸であり、上方から左に傾斜した細糸は第4の細糸である)。前記X字形状の2つの上端点は、第1の生地層100の結合細糸312に結合されている。一方、2つの下端点は、第2の生地層200の結合細糸312に結合されている。本発明のそのような実施形態では、第1の支持細糸の数は、支持細糸の総数の80%超である。さらに、本発明の別の実施形態では、第2の細糸は「V」形状にのみ配置され、第1の細糸はすべて互いに平行であり、第3の細糸はすべて互いに平行である。一方、本発明のさらに別の実施形態では、第2の細糸はX形状にのみ配置され、第3の細糸はすべて互いに平行であり、第4の細糸はすべて互いに平行である。本発明の一実施形態では、第2の細糸の一部は「V」の形状に配置され、一部は「X」の形状に配置される。第1の細糸および第3の細糸はすべて互いに平行であり、第2の細糸および第4の細糸はすべて互いに平行であるため、第2の支持細糸による遮光は可能な限り最小限に抑えられる。本発明の実施形態では、立体スペーサ生地の透過率を確保した状態で、第2の支持細糸を使用して、光透過性生地の支持強度を高めることができる。光透過性生地に対する第2の支持細糸の遮光効果を最小限にするために、本発明の好ましい実施形態では、第2の支持細糸は光透過性生地の縁に用いられる。
【0039】
前述の構造的配置により、まず、第1のメッシュ110は、第2のメッシュ210と可能な限り位置合わせすることができる。次に、光透過性生地の透過率を従来技術の透過率と比較して大幅に向上させることを目的として、支持細糸311を、光透過性が効果的に増大するように、生地層に対して可能な限り垂直にしてもよい。
【0040】
支持細糸311は互いにほぼ平行であり、かつ生地層にほぼ垂直であるため、横力が加えられた場合であっても、高度に変形可能である。この問題を解決するために、本発明の一実施形態では、結合糸310の直径を生地糸400の直径よりも大きく設定する。一方、結合糸310の直径と生地糸400の直径の比は、1.1:1.5に設定する。結合糸310の靭性は、結合糸310の直径を大きくすることで効果的に向上させることができ、これにより、光透過性生地の機械的特性を確保し、支持細糸311が横力によって変形するのを防ぐことができる。さらに、支持層300の厚さ(すなわち、支持細糸311の長さ)は、三次元スペーサ生地の支持性能に影響を与える。本発明の実施形態では、光透過性生地の機械的特性を確保するために、支持層300および結合糸310の厚さには制限がある。好ましくは、支持層300の厚さの支持細糸311の直径に対する比は、6:55に、またはそのような比から好ましい比である18:20までの間で設定される。
【0041】
さらに、支持層300が厚すぎる場合、光の散乱が結果として生じ、光透過性能が影響を受ける(低下する)。一方で、支持層300が薄すぎると、光透過性生地上に乗った場合の快適性が影響を受ける(低下する)。本発明の好ましい実施形態では、支持層300の厚さは1~3mmに設定される。
【0042】
さらに、本発明では、第1の生地層100に垂直な方向から見た場合に、結合糸310がメッシュ開口部を占有する(当該開口部内に配置されるか、または当該開口部を跨いで延伸する)ことを最大限防ぐように結合糸310を織る技術が改善される。そのような技術によって、結合糸310が光を遮断するのを防ぐ。具体的には、結合糸310の結合細糸312は、メッシュの辺に沿って延伸する。本発明の大半の実施形態においてメッシュは一種の多角形状であるため、結合糸310の結合細糸312はそのような多角形の辺に沿ってジグザグに延伸する。例えば、図5は、2つの隣接するメッシュが六角形状である構成ユニットを示す。図5の太線は、2つの隣接する構成ユニットによって共有される結合糸310がジグザグに延伸する箇所(すなわち、結合細糸312の位置)を示す。このようにして、結合細糸312はメッシュ開口部上で延伸することはなく、その結果、より多くの光が透過することができる。
【0043】
本発明の実施形態では、二酸化チタンなどの着色剤が生地糸400および結合糸310の紡績プロセスにおいて加えられる。本発明の好ましい実施形態では、光透過性生地の透過性を向上させるために、生地糸400および結合糸310は無着色である。本発明の実施形態では、生地糸400および結合糸310は、透明材料であるポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明または半透明のモノフィラメントでできている。これにより、生地糸400および結合細糸310の透過率は、最大50%~70%に達する。言うまでもなく、ここでの「半透明」とは、光が通過可能であることを意味するが、これは必ずしもスネルの法則に従うということではない。言い換えれば、半透明の媒体は光が透過することのできる媒体であり、一方で、透明な媒体は、光が透過することができるだけでなく、画像形成も可能にする媒体である。
【0044】
光透過性生地の透過率を向上させるために、従来技術では、より多くの光が光透過性生地を透過できるように、メッシュ密度を最小化する必要がある。メッシュ密度が高すぎると光が著しく遮断されるためである。しかしながら、本発明者は、試験を通して、メッシュ密度が極端に低いと光透過性生地の支持能力および弾性に深刻な影響を及ぼすこと、および光透過性生地の支持能力および弾性を確保するために、生地糸400の厚さまたはメッシュの辺の全体的な厚さを従来技術を超えた厚さにすることが必要不可欠であることを見出した。このような増加の結果、光で照らした場合、メッシュの輪郭が人工皮革の表面に浮かびやすくなり、見た目が良くない。さらに、本発明者は、透過率が向上した場合、自動車のインテリアを快適に保つためには、弾性および支持能力を確保する必要があることを見出した。本発明において、前述の要件は、メッシュの辺を形成する糸の数、メッシュの密度、メッシュのサイズ、および糸の直径を制限することで満たされる。具体的には、メッシュの辺は、生地糸400のみからなってもよいし、生地糸400および結合細糸310の双方からなってもよい。生地糸400の直径は、0.05~0.1mmに設定され、さらに、本発明の好ましい実施形態では、0.06~0.08mmに設定される。本発明の実施形態では、メッシュの辺は、最大3本の生地糸400および最大4本の結合糸310を含む、最大7本の糸からなる。すなわち、結合糸310は、多角形状の辺に沿ってジグザグに最大4回延伸する。例えば、図7に示す本発明の実施形態では、太線は生地糸400であり、細線は結合細糸312である。図7に示すように、左上の生地糸400によって形成される辺の結合細糸312と、下方の2つの生地糸400によって形成される辺の結合細糸312とは、双方ジグザグに2回延伸する。一方で、右上の生地糸400によって形成される辺の結合細糸312は、ジグザグに3回延伸する。言うまでもなく、図7に太線と細線とを示すのは、生地糸と結合細糸とを区別するためであり、これらの糸の太さを相対的に示すためではない。さらに、本発明の一実施形態では、各メッシュは多角形状に構成され、当該多角形の各辺には最大3本の生地糸400が存在する。あるいは、各辺に同数または異なる数の生地糸400が存在してもよい。例えば、本発明の好ましい実施形態では、図6に示すように、メッシュは四辺形であり、2つの隣接する辺のいずれかに2つの生地糸400が存在する(図6の各太線は2本の生地糸400である)。一方、その他の2つの隣接する辺のいずれかに1つの生地糸400が存在する(図6の各細線は1本の生地糸400である)。別の例として、本発明の一実施形態では、メッシュは六角形状である。六角形の方が構造的に安定しているため、支持能力を確保することを前提として、使用する生地糸400の数を少なくすることもできる。また、六角形の各辺の生地糸400の数を1本に設定することも可能である。本発明の別の実施形態では、メッシュの数は10個よりも多く、本発明の好ましい実施形態では、メッシュの数は14個よりも多い。例えば、メッシュが四辺形状である本発明の一実施形態では、四辺形の辺の長さは、0.9~1.1mmに設定される。本発明の実施形態では、メッシュの最大スパンサイズと生地糸400の直径の比は、8:32に設定される。
【0045】
前述の構成配置により、本発明の実施形態の光透過性生地の透過率は、70%より高くなり得る(言うまでもなく、光透過性生地には平行に位置合わせしたメッシュが多く存在するため、光透過性生地の透過率は、平行に位置合わせしたメッシュの場合で最大100%である。一方、光透過性の生地の透過率は、糸が位置合わせされていない場合で50%~70%である。本明細書で説明する透過率は、光透過性生地の単位面積あたりの透過率の平均を指す)。
【0046】
さらに、本発明の実施形態は、互いに、および本明細書で説明した光透過性生地に取り付けられた単層の革からなる人工皮革である。光透過性の生地は本明細書で説明した構造を有しており、これで形成した人工皮革の透過率は8%よりも高い。人工皮革は、シート、ルーフ、センターコンソールなど、自動車のインテリアに使用することができる。このようにして、車体のスケルトンフレームなど人工皮革で覆われた箇所に光源を設けることができる。その光がオフの場合には、インテリアは普通に見えるが、当該ライトがオンの場合には、人工皮革が透過効果を生む。
【0047】
その中における単層革は、全体の加工技術を用いて、光透過性の生地で加工することができる。例えば、単層革は、表皮層、支持層、および接着層からなる。接着層が乾いていない場合、光透過性の生地を接着層に取り付けて、これらの層を互いに接着できるようにする。この構造による人工皮革の透過率は最大9%~17%である。
【0048】
言うまでもなく、単層革を最初に用意し、次に透明な接着剤を介して光透過性の生地に接着することもできる。本発明の一実施形態では、単層革は、表皮層、支持層、接着層、および生地層からなる。その中で、生地層は、例えば、織布または不織布である。生地層は、透明な接着剤によって光透過性の生地に接着されている。この構造による人工皮革の透過率は最大8%~15%である。生地層を配置することは透過率に一定の影響を与えるため、接着層と生地層とを省略できればより好ましい。一方で、単層革を支持する構造として、光透過性の生地が用いられる。具体的には、単層革は、表皮層と支持層とで構成される。当該支持層は、透明な接着剤を介して光透過性生地に接着され、これにより、人工皮革の透過率をさらに向上させることができる。この構造形態による人工皮革の透過率は、10%から18%に達する可能性がある。
【0049】
言うまでもなく、上記の接着層は、カレンダリング技術または剥離紙コーティング技術などの単層革作成技術によって作成された材料層であり、単層革の一部である。接着層の原材料には、PVC粉末、可塑剤、安定剤などが含まれる。上記の透明接着剤は、ホットメルト接着剤など透明度の高い接着剤の一種を指す。半透明の生地に接着できるように、革を用意した後に単層の革に接着する必要がある。
【0050】
さらに、本発明の実施形態は、本明細書に開示の、自動車のインテリアの透明性を向上させる光透過性生地または人工皮革を用いた自動車のインテリアを提供する。
【0051】
相互に相反する特徴がないという前提の下で、本明細書に開示する実施形態は、それぞれ自由に組み合わせることができる、または互いに重ね合わせることができることは、当業者には明らかである。
【0052】
本明細書に開示する実施形態は、例示的な実施形態を示すことのみを目的としており、限定を意図したものではない。当業者によってなされた上記の詳細の明らかなまたは均等な変形または置換は、本発明の基本原理から逸脱することなく、本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0053】
100 第1の生地層
110 第1のメッシュ
200 第2の生地層
210 第2のメッシュ
300 支持層
310 結合糸
311 支持細糸
312 結合細糸
400 生地糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】